(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】バッテリー診断装置、バッテリー管理システム、バッテリーパック、電気車両及びバッテリー診断方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/367 20190101AFI20231114BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20231114BHJP
G01R 31/387 20190101ALI20231114BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231114BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/387
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528007
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 KR2022013350
(87)【国際公開番号】W WO2023038398
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0120039
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】スン、ヨン-チュル
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョル-テク
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA01
2G216BA02
2G216BA64
2G216BB01
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503EA05
5G503EA08
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF41
(57)【要約】
本発明の一態様に係る、複数の単位セルの並列接続体を含むバッテリーのためのバッテリー診断装置は、前記バッテリーの両端にわたる電圧の経時的変化を示す電圧時系列及び前記バッテリーを介して流れる充放電電流の経時的変化を示す電流時系列を含む充放電データを収集するデータ取得部と、前記充放電データに基づいて、前記バッテリーの満充電容量を示す推定容量値を決定するデータ処理部と、を含む。前記データ処理部は、前記推定容量値の経時的変化をモニターリングして、前記並列接続体の異常を診断するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位セルの並列接続体を含むバッテリーのためのバッテリー診断装置において、
前記バッテリーの両端にわたる電圧の経時的変化を示す電圧時系列及び前記バッテリーを介して流れる充放電電流の経時的変化を示す電流時系列を含む充放電データを収集するデータ取得部と、
前記充放電データに基づいて、前記バッテリーの満充電容量を示す推定容量値を決定するデータ処理部と、
を含み、
前記データ処理部は、
前記推定容量値の経時的変化をモニターリングして、前記並列接続体の異常を診断する、バッテリー診断装置。
【請求項2】
前記データ処理部は、
前記充放電データを容量推定モデルに入力して、前記バッテリーの電流積算値及びSOC変化値を決定し、前記電流積算値と前記SOC変化値との比率から前記推定容量値を決定する、請求項1に記載のバッテリー診断装置。
【請求項3】
前記データ処理部は、
第1時間間隔以上である第2時間間隔をおいて前記第1時間間隔でシフトされる、第1時刻と第2時刻での二つの推定容量値に基づいて、前記並列接続体の異常を診断する、請求項1に記載のバッテリー診断装置。
【請求項4】
前記データ処理部は、
前記第1時刻での前記推定容量値よりも小さく、前記第2時刻に対する閾値容量値を決定し、
前記第2時刻での前記推定容量値を前記閾値容量値と比較して、前記並列接続体の異常を診断する、請求項3に記載のバッテリー診断装置。
【請求項5】
前記データ処理部は、
前記第1時刻での前記推定容量値から基準容量値を差し引いて、前記閾値容量値を決定する、請求項4に記載のバッテリー診断装置。
【請求項6】
前記データ処理部は、
前記第1時刻での前記推定容量値に1未満の基準ファクターを乗算して、前記閾値容量値を決定する、請求項4に記載のバッテリー診断装置。
【請求項7】
前記データ処理部は、
前記第2時刻での前記推定容量値が前記閾値容量値未満である場合、診断カウントをインクリメントさせ、
前記診断カウントが閾値カウントに達したことに応答して、前記並列接続体が異常であると診断する、請求項4に記載のバッテリー診断装置。
【請求項8】
前記データ処理部は、
前記並列接続体が異常であると診断された場合、前記満充電容量の最大の減少が現れる、前記第2時間間隔以下の時間間隔をおいた過去の二つの時刻での二つの推定容量値から、前記複数の単位セルのうち、異常である単位セルの数を決定する、請求項4に記載のバッテリー診断装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のバッテリー診断装置を含む、バッテリーパック。
【請求項10】
請求項9に記載のバッテリーパックを含む、電気車両。
【請求項11】
複数の単位セルの並列接続体を含むバッテリーのためのバッテリー診断方法において、
前記バッテリーの両端にわたる電圧の経時的変化を示す電圧時系列及び前記バッテリーを介して流れる充放電電流の経時的変化を示す電流時系列を含む充放電データを収集するステップと、
前記充放電データに基づいて、前記バッテリーの満充電容量を示す推定容量値を決定するステップと、
前記推定容量値の経時的変化をモニターリングして、前記並列接続体の異常を診断するステップと、
を含む、バッテリー診断方法。
【請求項12】
前記バッテリーの満充電容量を示す推定容量値を決定するステップは、
前記充放電データを容量推定モデルに入力して、前記バッテリーの電流積算値及びSOC変化値を決定するステップと、
前記電流積算値と前記SOC変化値との比率から前記推定容量値を決定するステップと、
を含む、請求項11に記載のバッテリー診断方法。
【請求項13】
前記並列接続体の異常を診断するステップは、
第1時間間隔以上である第2時間間隔をおいて前記第1時間間隔でシフトされる、第1時刻と第2時刻での二つの推定容量値に基づく、請求項11または12に記載のバッテリー診断方法。
【請求項14】
前記並列接続体の異常を診断するステップは、
前記第1時刻での前記推定容量値よりも小さく、前記第2時刻に対する閾値容量値を決定するステップと、
前記第2時刻での前記推定容量値を前記閾値容量値と比較して、前記並列接続体の異常を診断するステップと、
を含む、請求項13に記載のバッテリー診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年09月08日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0120039号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、複数の単位セルの並列接続体を含むバッテリーの満充電容量の経時的変化から並列接続体の異常を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、ノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話などのような携帯用電子製品の需要が急激に伸び、電気車両、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星などの開発が本格化するにつれて、繰り返して充放電可能な高性能バッテリーに対する研究が活発に行われている。
【0004】
現在、商用化されているバッテリーとしてはニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリーなどが挙げられるが、そのうちリチウムバッテリーは、ニッケル系列のバッテリーに比べてメモリー効果がほとんど起きないため充放電が自在であり、自己放電率が非常に低くエネルギー密度が高いという利点で脚光を浴びている。
【0005】
バッテリーは、電極組立体を電解質とともに外装材内に同封することにより製造可能である。電極組立体は、並列に接続された複数の単位セル、すなわち、複数の単位セルの並列接続体である。ここで、単位セルとは、独立して再充放電可能な蓄電素子の最小単位のことをいう。例えば、単位セルとは、モノセル(mono-cell)またはバイセル(bi-cell)のうちの少なくともどちらか一方を含むフルセル(full-cell)を意味する。
【0006】
バッテリーの製造上の不良、繰り返し行われた充放電による老巧化、外部の衝撃などといった多種多様な原因により、バッテリー内に配置される並列接続体に異常が生じることがある。バッテリーの容量異常の類型は、2種類に大別できる。最初の類型の異常は、並列接続体を構成するいくつかの単位セルの接続部(例えば、電極タブ)に微小なダメージ及び/または不完全断線故障が生じて、バッテリーの充放電に一時的に寄与できなくなる状態である。二番目の類型の異常は、並列接続体を構成するいくつかの単位セルが修復不可能なように破綻されて、バッテリーの充放電に永久的に寄与できなくなってしまった状態である。
【0007】
特に、バッテリーの並列接続体が二番目の類型の異常を有する場合、最初の類型の容量異常に比べて、正常の単位セルに充放電が集中し、これは、結果的に、バッテリーの火災及び爆発の危険性を高めてしまう原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、複数の単位セルの並列接続体を含むバッテリーの満充電容量を繰り返し決定しながら、満充電容量の経時的変化をモニターリングすることにより、バッテリーの並列接続体の異常を予め検出するバッテリー診断装置及びバッテリー診断方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的及び利点は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施形態によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に示される手段及びその組み合わせによって実現できることが容易に分かるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る、複数の単位セルの並列接続体を含むバッテリーのためのバッテリー診断装置は、前記バッテリーの両端にわたる電圧の経時的変化を示す電圧時系列及び前記バッテリーを介して流れる充放電電流の経時的変化を示す電流時系列を含む充放電データを収集するデータ取得部と、前記充放電データに基づいて、前記バッテリーの満充電容量を示す推定容量値を決定するデータ処理部と、を含み、前記データ処理部は、前記推定容量値の経時的変化をモニターリングして、前記並列接続体の異常を診断するように構成される。
【0011】
前記データ処理部は、前記充放電データを容量推定モデルに入力して、前記バッテリーの電流積算値及びSOC変化値を決定し、前記電流積算値と前記SOC変化値との比率から前記推定容量値を決定するように構成されてもよい。
【0012】
前記データ処理部は、第1時間間隔以上である第2時間間隔をおいて前記第1時間間隔でシフトされる、第1時刻と第2時刻での二つの推定容量値に基づいて、前記並列接続体の異常を診断するように構成されてもよい。
【0013】
前記データ処理部は、前記第1時刻での前記推定容量値よりも小さく、前記第2時刻に対する閾値容量値を決定し、前記第2時刻での前記推定容量値を前記閾値容量値と比較して、前記並列接続体の異常を診断するように構成されてもよい。
【0014】
前記データ処理部は、前記第1時刻での前記推定容量値から基準容量値を差し引いて、前記閾値容量値を決定するように構成されてもよい。
【0015】
前記データ処理部は、前記第1時刻での前記推定容量値に1未満の基準ファクターを乗算して、前記閾値容量値を決定するように構成されてもよい。
【0016】
前記データ処理部は、前記第2時刻での前記推定容量値が前記閾値容量値未満である場合、診断カウントをインクリメントさせ、前記診断カウントが閾値カウントに達したことに応答して、前記並列接続体が異常であると診断するように構成されてもよい。
【0017】
前記データ処理部は、前記並列接続体が異常であると診断された場合、前記満充電容量の最大の減少が現れる、前記第2時間間隔以下の時間間隔をおいた過去の二つの時刻での二つの推定容量値から、前記複数の単位セルのうち、異常である単位セルの数を決定するように構成されてもよい。
【0018】
本発明の他の態様に係るバッテリーパックは、前記バッテリー診断装置を含む。
【0019】
本発明のさらに他の態様に係る電気車両は、前記バッテリーパックを含む。
【0020】
本発明のさらに他の態様に係る、複数の単位セルの並列接続体を含むバッテリーのためのバッテリー診断方法は、前記バッテリーの両端にわたる電圧の経時的変化を示す電圧時系列及び前記バッテリーを介して流れる充放電電流の経時的変化を示す電流時系列を含む充放電データを収集するステップと、前記充放電データに基づいて、前記バッテリーの満充電容量を示す推定容量値を決定するステップと、前記推定容量値の経時的変化をモニターリングして、前記並列接続体の異常を診断するステップと、を含む。
【0021】
前記バッテリーの満充電容量を示す推定容量値を決定するステップは、前記充放電データを容量推定モデルに入力して、前記バッテリーの電流積算値及びSOC変化値を決定するステップと、前記電流積算値と前記SOC変化値との比率から前記推定容量値を決定するステップと、を含む。
【0022】
前記並列接続体の異常を診断するステップは、第1時間間隔以上である第2時間間隔をおいて前記第1時間間隔でシフトされる、第1時刻と第2時刻での二つの推定容量値に基づいてもよい。
【0023】
前記並列接続体の異常を診断するステップは、前記第1時刻での前記推定容量値よりも小さく、前記第2時刻に対する閾値容量値を決定するステップと、前記第2時刻での前記推定容量値を前記閾値容量値と比較して、前記並列接続体の異常を診断するステップと、を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の実施形態のうちの少なくとも一つによれば、複数の単位セルの並列接続体を含むバッテリーの満充電容量を繰り返し決定しながら、満充電容量の経時的変化をモニターリングすることにより、バッテリーの並列接続体の異常を検出することができる。
【0025】
また、本発明の実施形態のうちの少なくとも一つによれば、並列接続体の異常が検出されたことに応答して適切な保護措置を取ることにより、バッテリーの火災及び爆発の危険性を未然に取り除くことができる。
【0026】
本発明の効果は、上記の効果に限らず、言及されていない他の効果は特許請求の範囲の記載から当業者にとって明確に理解できるものであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本明細書に添付される以下の図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するものであり、後述する発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項のみに限定されて解釈されてはいけない。
【0028】
【
図1】本発明に係る電気車両の構成を例示的に示す図である。
【
図2】
図1に示すバッテリーの概略的な構成を例示的に示す図である。
【
図3】バッテリーの第1容量異常(不完全断線故障)を説明する上で参照される図である。
【
図4】バッテリーの第2容量異常(完全断線故障)を説明する上で参照される図である。
【
図5】バッテリーの容量異常と満充電容量との関係を説明する上で参照される例示的なグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態に係るバッテリー診断方法を例示的に示す手順図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0030】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0031】
第1、第2などの序数を含む用語は、様々な構成要素のうちのいずれか一つをその他の要素と区別するために使われたものであり、これら用語によって構成要素が限定されることはない。
【0032】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に断りのない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、明細書に記載の「~~部(ユニット、unit)」のような用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで具現され得る。
【0033】
さらに、明細書の全体において、ある部分が他の部分と「接続(連結)」されているというとき、これは「直接的に接続(連結)」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで「間接的に接続(連結)」されている場合も含む。
【0034】
図1は、本発明に係る電気車両の構成を例示的に示す図である。
【0035】
図1を参照すると、電気車両1は、車両コントローラー2、バッテリーパック10及び電気負荷30を含む。バッテリーパック10の充放電端子P+、P-は、充電ケーブルなどを介して充電器40に電気的に結合され得る。充電器40は、電気車両1の内部に含まれたものであってもよく、電気車両1の外部の充電ステーションに設けられたものであってもよい。
【0036】
車両コントローラー2(例えば、エレクトロニックコントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)は、電気車両1に設けられた始動ボタン(図示せず)がユーザーによってON-位置に切り換えられたことに応答して、キー-オン信号をバッテリー管理システム100に伝送するように構成される。車両コントローラー2は、始動ボタンがユーザーによってOFF-位置に切り換えられたことに応答して、キー-オフ信号をバッテリー管理システム100に伝送するように構成される。充電器40は、車両コントローラー2と通信して、バッテリーパック10の充放電端子P+、P-を介して定電流または定電圧の充電電力を供給することができる。
【0037】
バッテリーパック10は、バッテリーグループBG、リレー20及びバッテリー管理システム100を含む。
【0038】
バッテリーグループBGは、少なくとも一つのバッテリーBを含む。バッテリーBは、例えば、リチウムイオンセルのように繰り返し充放電できるものである限り、その種類は特に限定されない。
図1には、バッテリーグループBGが複数のバッテリーB
1~B
N(Nは2以上の自然数)の直列接続体であることが例示されている。複数のバッテリーB
1~B
Nは、互いに同一の電気化学的な仕様を有するように製造されたものであってもよい。以下では、複数のバッテリーB
1~B
Nに共通する内容について説明するに当たって、バッテリーに対して「B」を付している。
【0039】
リレー20は、バッテリーグループBG及びインバーター31を連結する電力パスを介して、バッテリーグループBGに電気的に直列に接続される。
図1には、リレー20がバッテリーグループBGの正極端子と充放電端子P+との間に接続されていることが例示されている。リレー20は、バッテリー管理システム100からのスイッチング信号に応答して、オンオフ制御される。リレー20は、コイルの磁力によってオンオフされる機械式コンタクターであってもよいし、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect transistor)などの半導体スイッチであってもよい。
【0040】
電気負荷30は、インバーター31及び電気モーター32を含む。インバーター31は、バッテリー管理システム100または車両コントローラー2からの命令に応答して、バッテリーパック10に含まれているバッテリーグループBGからの直流電流を交流電流に変換するように提供される。電気モーター32は、インバーター31からの交流電力を用いて駆動する。電気モーター32としては、例えば三相交流モーターが使用可能である。
【0041】
バッテリー管理システム100は、センシング回路110、メモリー120及び演算回路130を含む。バッテリー管理システム100は、通信回路140をさらに含んでいてもよい。バッテリー管理システム100は、本発明に係る「バッテリー診断デバイス」の一例である。
【0042】
センシング回路110は、バッテリーBから観測可能なバッテリー物理量のうちの少なくともいずれか一つを収集するように構成される。バッテリー物理量は、バッテリーBの電圧、電流及び/または温度を含む。センシング回路110とメモリー120は、本発明に係る「データ取得部」の一例である。センシング回路110は、電圧検出器111及び電流検出器112を含む。センシング回路110は、温度検出器113をさらに含んでいてもよい。
【0043】
電圧検出器111は、バッテリーグループBGに含まれている複数のバッテリーB1~BNのそれぞれの正極端子及び負極端子に接続されて、複数のバッテリーB1~BNの両端にわたる電圧であるバッテリー電圧V1~VNを検出し、バッテリー電圧V1~VNの電圧値を示す電圧信号を生成するように構成される。
【0044】
電流検出器112は、バッテリーグループBGとインバーター31との間の電流パスを介してバッテリーグループBGに直列に接続される。電流検出器112は、バッテリーグループBGを介して流れる充放電電流を検出し、充放電電流の電流値を示す電流信号を生成するように構成される。複数のバッテリーB1~BNは、直列に接続されているため、複数のバッテリーB1~BNには共通の充放電電流が流れる。電流検出器112は、シャント抵抗、ホール効果素子などの公知の電流検出素子のうちのいずれか一つまたは二つ以上の組み合わせで実現され得る。
【0045】
温度検出器113は、バッテリーグループBGの温度であるバッテリー温度を検出し、検出されたバッテリー温度を示す温度信号を生成するように構成される。温度検出器113は、バッテリーグループBGの実際の温度に近い温度を検出できるように、バッテリーグループBGから所定の距離内に配置されてもよい。例えば、温度検出器113は、バッテリーグループBGに含まれている少なくとも一つのバッテリーBの表面に取り付けられてもよく、バッテリーBの表面温度をバッテリー温度として検出することができる。温度検出器113は、熱電対、サーミスター、バイメタルなどの公知の温度検出素子のうちのいずれか一つまたは二つ以上の組み合わせで実現され得る。
【0046】
メモリー120は、例えば、フラッシュメモリー(登録商標)タイプ(flash memory type)、ハードディスクタイプ(hard disk type)、ソリッドステートディスクタイプ(SSDタイプ:Solid State Disk type)、シリコンディスクドライブタイプ(SDDタイプ:Silicon Disk Drive type)、マルチメディアカードマイクロタイプ(multimedia card micro type)、ランダムアクセスメモリー(RAM:random access memory)、スタティックランダムアクセスメモリー(SRAM:static random access memory)、リードオンリーメモリー(ROM:read-only memory)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリー(EEPROM:electrically erasable programmable read-only memory)、及びプログラム可能な読み取り専用メモリー(PROM:programmable read-only memory)のうち少なくとも一つのタイプの記憶媒体を含み得る。メモリー120は、センシング回路110によって収集されたバッテリー物理量の測定値を時間に沿って並べることにより、バッテリーBの充放電データを記録することができる。充放電データは、バッテリーBの両端にわたるバッテリー電圧の経時的変化を示す電圧時系列及びバッテリーBを介して流れる充放電電流の経時的変化を示す電流時系列を含む。メモリー120は、演算回路130による演算動作の結果を示すデータを記憶することができる。メモリー120は、バッテリーBの制御、管理及び診断に求められる色々なプログラム、アルゴリズム、診断ロジック、及び/または関数などを記憶することができる。
【0047】
通信回路140は、演算回路130と車両コントローラー2との間の有線通信または無線通信をサポートするように構成される。有線通信は、例えばコントローラーエリアネットワーク(CAN:contoller area network)通信であり得、無線通信は、例えば、ZigBee(登録商標)またはBluetooth(登録商標)通信であり得る。演算回路130と車両コントローラー2との間の有無線通信をサポートする限り、通信プロトコルの種類は特に限定されないことは言うまでもない。通信回路140は、演算回路130及び/または車両コントローラー2から受信した情報をユーザー(運転者)が認識可能な形態で提供する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー)を含んでいてもよい。
【0048】
演算回路130は、リレー20、センシング回路110及び通信回路140のうちの少なくとも一つに動作可能に結合される。二つの構成要素が動作可能に結合されるということは、単方向または両方向に信号を送受信可能なように二つの構成要素が直間接的に接続されていることを意味する。演算回路130は、「オン-ボード(On-Board)コントローラー」と呼ぶことができ、本発明に係る「データ処理部」の一例である。
【0049】
演算回路130は、バッテリーグループBGの充電、放電及び/または休止中に、電圧検出器111からの電圧信号、電流検出器112からの電流信号、及び/または温度検出器113からの温度信号を一定の時間間隔毎に周期的にまたは不規則的な時間間隔をあけて非周期的に収集することができる。すなわち、演算回路130は、内部に設けられたアナログ―ディジタルコンバーター(ADC:Analog to Digital Converter)を用いて、検出器111、112、113から収集されたアナログ信号から電圧検出値、電流検出値、及び/または温度検出値を取得してメモリー120に記録することができる。
【0050】
演算回路130は、ハードウェア的に、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuits)、デジタルシグナルプロセッサー(DSP:digital signal processors)、デジタル信号処理装置(DSPD:digital signal processing devices)、プログラマブルロジックデバイス(PLD:programmable logic devices)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate arrays)、マイクロプロセッサー(microprocessors)、及びその他の機能遂行のための電気ユニットのうちの少なくとも1つを使用して実現されてもよい。
【0051】
リレー20がターンオンされる間に電気負荷30及び/または充電器3が動作する場合、バッテリーグループBGは、充電モードまたは放電モードとなる。リレー20がターンオフされる場合、バッテリーグループBGは、休止モードに切り換えられる。
【0052】
演算回路130は、キー-オン信号に応答して、リレー20をターンオンさせることができる。演算回路130は、キー-オフ信号に応答して、リレー20をターンオンさせることができる。キー-オン信号は、休止から充電または放電への切り換えをリクエストする信号である。キー-オフ信号は、充電または放電から休止への切り換えをリクエストする信号である。あるいは、リレー20のオンオフ制御は、演算回路130の代わりに車両コントローラー2が担当してもよい。
【0053】
遠隔バッテリー監視器300は、本発明に係る「バッテリー診断デバイス」の他の例であり、電気車両1の外部に位置するクラウドサーバーなどの形態で提供され得る。遠隔バッテリー監視器300は、通信回路310、メモリー320及び演算回路330を含む。通信回路310及びメモリー320は、本発明に係る「データ取得部」の他の例である。演算回路330は、本発明に係る「データ処理部」の他の例であり、「オフ-ボード(Off-Board)コントローラー」と呼ぶことができる。通信回路310は、バッテリー管理システム100の通信回路140と有無線通信チャンネルを介して接続されてバッテリー管理システム100からバッテリーBの充放電データを収集し、収集された充放電データをメモリー320に記録する。演算回路330は、バッテリーグループBGの少なくとも一つのバッテリーBに含まれている並列接続体200の異常を診断するに当たって、バッテリー管理システム100の演算回路130と共通する動作及び機能を担当する。後述する演算回路130についての説明は、演算回路330に共通しているということに留意されたい。
【0054】
図2は、
図1に示すバッテリーの概略的な構成を例示的に示す図であり、
図3は、バッテリーの第1容量異常(不完全断線故障)を説明する上で参照される図であり、
図4は、バッテリーの第2容量異常(完全断線故障)を説明する上で参照される図である。
【0055】
図2を参照すると、バッテリーBは、電極組立体200、正極リード210、負極リード220及び外装材230を含む。
【0056】
電極組立体200は、複数の単位セルUC1~UCM(Mは2以上の自然数)の並列接続体の一例である。単位セルUCは、セパレータ―203、正極板201及びセパレータ―203によって正極板201と絶縁される負極板202を含む。
【0057】
正極板201は、正極リード210の一方の端部側に接続される部分である正極タブ205を有し、負極板202は、負極リード220の一方の端部側に接続される部分である負極タブ206を有する。
【0058】
複数の単位セルUC1~UCMの正極タブ205と負極タブ206が正極リード210及び負極リード220のそれぞれの一方の端部側に結合された状態で、電極組立体200が電解質とともに外装材230内に収容される。外装材230の外部に露出された正極リード210及び負極リード220のそれぞれの他方の端部側がバッテリーBの正極端子と負極端子として提供される。
【0059】
図3を参照すると、電極組立体200の第1容量異常は、複数の単位セルUC
1~UC
Mのうちのいくつかの単位セルUC
1、UC
2の電極タブ205、206に微小なダメージ及び/または不完全断線故障が生じて、単位セルUC
1、UC
2と電極リード210、220との間のコンタクト抵抗R
1、R
2が大幅に不規則的に可変となる状態である。不完全断線故障は、電極タブ205、206の切断された個所が互いに離れ合った状態を保てず、バッテリーBの収縮-膨張に伴い、切断された個所同士の接続と離隔が流動的に生じ、接続時の接触面積もまた可変的な状態である。単位セルUC
1、UC
2におけるコンタクト抵抗が小さく保たれる間には、すべての単位セルUC
1~UC
Mがほとんど均等に充放電されていて、コンタクト抵抗R
1、R
2が増加するにつれて、単位セルUC
1、UC
2が残りの単位セルUC
3~UC
Mから脱落(断線)された状態に近づき、それにより、バッテリーBの容量は、単位セルUC
1、UC
2のコンタクト抵抗R
1、R
2に大きく依存しながら急激に増加したり減少したりする挙動を不規則的に示すことになる。例えば、バッテリーBの膨らみによって単位セルUC
1、UC
2の電極タブ205、206と電極リード210、220との間に大きな引っ張り力が働く間に、単位セルUC
1、UC
2のコンタクト抵抗R
1、R
2が増加し、逆に、引っ張り力が次第に減るにつれて、単位セルUC
1、UC
2のコンタクト抵抗R
1、R
2が減少する。
【0060】
図4を参照すると、電極組立体200の第2容量異常は、複数の単位セルUC
1~UC
Mのうちのいくつかの単位セルUC
1、UC
2が修復不可能なように破綻された状態、すなわち、単位セルUC
1、UC
2の完全断線故障によって単位セルUC
1、UC
2と電極リード210、220との間の充放電電流パスが非可逆的に失われた状態に等価化される。完全断線故障は、単位セルUC
1、UC
2の電極タブ205、206や電極板201、202が互いに再接続できないほどに離れ合った多数の個所に切断された状態であるという点で、前述した不完全断線故障とは区別される。バッテリーBの製造中または使用中のある任意の時刻に単位セルUC
1、UC
2による第2容量異常が生じたということは、単位セルUC
1、UC
2が電極リード210、220から修復不可能なように脱落されたことを意味する。したがって、第2容量異常が生じた特定の時刻からは、単位セルUC
1、UC
2は、バッテリーBの充放電にいかなる寄与もすることができないため、バッテリーBの容量は、単位セルUC
1、UC
2が除かれた残りの単位セルUC
3~UC
Mの容量にのみ依存する。
【0061】
演算回路130は、充放電データに容量推定モデルを適用して、バッテリーの満充電容量(FCC:Full Charge Capacity、完全充電容量、フル充電容量)を示す推定容量値を決定する手続きを周期的にまたは非周期的に繰り返し行う。すなわち、演算回路130は、推定容量値の経時的な変化をモニターリングする。
【0062】
容量推定モデルは、充放電データを入力されて、それに対応する出力として推定容量値を提供する一種のアルゴリズムであって、色々な関数の組み合わせである。
【0063】
具体的に、容量推定モデルは、(i)バッテリーBの電流時系列から、過去の一定の期間または可変期間にわたっての、バッテリーBの充放電電流の電流積算値を演算する第1関数、(ii)バッテリーBの電圧時系列及び/または電流時系列から、過去の一定の期間または可変期間にわたっての、バッテリーBの開路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)を演算する第2関数、(iii)予め与えられたOCV-充電状態(SOC:State Of Charge)の関係テーブルを用いて、バッテリーBのOCVからバッテリーBのSOCを演算する第3関数、及び(iv)共通の期間に対してそれぞれ演算された、電流積算値とSOC変化値との比率からバッテリーBの満充電容量の推定結果、すなわち、推定容量値を演算する第4関数を含んでいてもよい。下記の(数1)式は、第4関数の一例である。
【0064】
【0065】
上記の数式において、ΔAht1-t2は、二つの時刻t1、t2の間の時間範囲にわたって繰り返し測定された充放電電流の電流積算値であり、ΔSOCt1-t2は、二つの時刻t1、t2の間の時間範囲にわたってのSOC変化値であり、FCCt2は、時刻t2での満充電容量を示す推定容量値である。時刻t1は時刻t2に先行し、ΔAht1-t2の絶対値が基準積算値以上であること及び/またはΔSOCt1-t2の絶対値が基準変化値以上であることが満たされる最近の時刻であってもよい。基準積算値と基準変化値は、ΔAht1-t2及び/またはΔSOCt1-t2の絶対値が非常に小さいことに起因するFCCt2の正確度の低下を防ぐために予め定められ得る。
【0066】
電流積算値を演算するに当たって、充電電流は正数に設定され、放電電流は負数に設定され得る。時刻t2は、満充電容量の演算タイミングである。満充電容量を第1時間間隔毎に繰り返し演算する場合、時刻t2は、第1時間間隔でシフトされるということは当業者にとって容易に理解できる筈である。
【0067】
一例を挙げると、過去の共通の期間にわたっての電流積算値とSOC変化値がそれぞれ+100Ah[ampere-hour]及び+80%である場合、満充電容量の推定容量値は125Ahである。他の例を挙げると、過去の共通の期間にわたっての電流積算値とSOC変化値がそれぞれ-75Ah[ampere-hour]及び-60%である場合、満充電容量の推定容量値もまた125Ahである。
【0068】
満充電容量は、バッテリーBに最大限に貯留可能な容量、すなわち、SOC 100%におけるバッテリーBの残存容量を示す。満充電容量は、バッテリーBが退化されるにつれて、緩やかに減少することが正常である。したがって、短い時間間隔の間の満充電容量の減少量が一定のレベルを上回るということは、第1容量異常または第2容量異常の発生を示す。
【0069】
図5は、バッテリーの容量異常と満充電容量との間の関係を説明する上で参照される例示的なグラフである。
【0070】
図5を参照すると、カーブ500は、正常バッテリーの満充電容量の経時的変化を例示する。理解への一助となるために、正常バッテリーの満充電容量が時間の経過とともに線形的に減少するようにカーブ500を単純化している。
【0071】
カーブ510は、第1容量異常と第2容量異常がこの順に生じる場合のバッテリーBの満充電容量の経時的変化を例示する。カーブ510を参照すると、
図3でのように、単位セルUC
1、UC
2の微小なダメージ及び/または不完全断線故障に起因する第1容量異常が生じたバッテリーBの満充電容量を示す。カーブ510において、満充電容量は、時刻t
a(例えば、バッテリーの出庫時刻)から時刻t
bまでにわたって緩やかに減少していて、時刻t
bから時刻t
cまでにわたって急減した後、時刻t
cから時刻t
dまでにわたって急増している。すなわち、時刻t
bから時刻t
cまでにおける満充電容量の減少分が時刻t
cから時刻t
dまでにわたってほとんど修復されている。これは、
図3を参照して前述したように、単位セルUC
1、UC
2のコンタクト抵抗R
1、R
2が時刻t
bから時刻t
cまでにおいて急増していて、時刻t
cから時刻t
dまでにわたって正常レベルに戻った結果である。
【0072】
第1容量異常が長期にわたって続く場合、第2容量異常に発展(深化)され得るということである。カーブ510を参照すると、時刻t
dの後、時刻t
eから時刻t
fまでにわたって、以前の時刻t
bから時刻t
cまでと略同様に、満充電容量の急減が現れている。但し、時刻t
c~t
dでの挙動とは対照的に、満充電容量の急減が止まった時刻t
fの後にも、満充電容量が正常レベルに修復できていないままで、カーブ500と略同一の勾配を有する。これは、
図4を参照して前述したように、時刻t
eの近くにおいて単位セルUC
1、UC
2の完全断線故障、すなわち、第2容量異常が生じた結果である。
【0073】
演算回路130は、カーブ510に伴う満充電容量、すなわち、推定容量値の経時的変化(時系列)をモニターリングして、並列接続体200の第1容量異常及び/または第2容量異常の発生有無を判定する。すなわち、本発明に係るバッテリー診断装置は、並列接続体200単位で本発明に係るバッテリーの異常の有無を診断する診断ロジックを行い、具体的には、前記診断ロジックに基づいて、並列接続体200に含まれている単位セルの異常の有無を識別(または、診断)することができる。
【0074】
換言すれば、本発明に係るバッテリー診断装置は、本発明の診断ロジックに基づいて、並列接続体200を診断することにより、異常単位セルを少なくとも一つ含むか、あるいは、しきい数以上を含む並列接続体200を識別することができ、したがって、結果的に、非正常である並列接続体200(または、並列接続体200の異常)を診断することができる。
【0075】
具体的に、演算回路130は、第1時間間隔以上である第2時間間隔をおいて第1時間間隔でシフトされる、第1時刻と第2時刻での二つの推定容量値に診断ロジックを適用して、並列接続体200の第1容量異常及び/または第2容量異常の発生有無を判定することができる。第2時刻は、第1時刻よりも第2時間間隔に見合う分だけ後行した時刻であり、第1時刻と第2時刻は、それぞれ第1時間間隔毎に第1時間間隔分ずつ増加するように演算回路130によって設定され得る。第1時間間隔は充放電データの収集周期(または、推定容量値の演算周期)と同じであってもよいし、第2時間間隔は第1時間間隔の整数倍(例えば、10倍)であってもよい。
【0076】
診断ロジックは、(i)第1時刻での推定容量値よりも小さく、第2時刻に対する閾値容量値を決定する第1ルーチン、及び(ii)第2時刻での推定容量値を第2時刻に対する閾値容量値と比較する第2ルーチンを含んでいてもよい。
【0077】
第1ルーチンにおいて、第2時刻に対する閾値容量値は、第1時刻での推定容量値から基準容量値を差し引いた結果または第1時刻での推定容量値に1未満の基準ファクターを乗算した結果と同じであってもよい。基準容量値は、バッテリーBに含まれている複数の単位セルUC
1~UC
Mの総数MとバッテリーBの設計容量(新品状態での満充電容量)を考慮して予め定められた値としてメモリー120に記録されていてもよい。基準ファクターは、バッテリーBに含まれている複数の単位セルUC
1~UC
Mの総数Mを考慮して予め定められた値(例えば、(M-1)/M、(M-2)/M)としてメモリー120に記録されていてもよい。
図5のカーブ520は、カーブ510に第1ルーチンを適用して演算される閾値容量値の経時的変化を例示している。
【0078】
演算回路130は、第2時刻での推定容量値が第2時刻に対する閾値容量値未満である場合、並列接続体200に第1容量異常と第2容量異常のうちの少なくともどちらか一方が生じたと判定することができる。
【0079】
演算回路130は、第2時刻での推定容量値が第2時刻に対する閾値容量値未満である度に、診断カウントを1だけインクリメントさせることができる。演算回路130は、第2時刻での推定容量値が第2時刻に対する閾値容量値以上である度に、診断カウントを初期値(例えば、0)にリセットしたり、診断カウントを1だけデクリメントさせたりすることができる。診断カウントが閾値カウントに達する前の第2時刻での推定容量値が第2時刻に対する閾値容量値以上に修復されることに応答して、演算回路130は、並列接続体200の異常の類型が第1容量異常であると判定することができる。演算回路130は、診断カウントが閾値カウント(例えば、5)に達したことに応答して、並列接続体200の第2容量異常が生じたと判定することができる。
【0080】
図5中、時刻t
a+、t
b+、t
c+、t
d+、t
e+及びt
f+は、それぞれ時刻t
a、t
b、t
c、t
d、t
e及びt
fから第2時間間隔分ずつ正の方向でシフトされた時刻である。時刻t
xと時刻t
yとの間の時間範囲にわたって、カーブ510がカーブ510の下に位置している。したがって、時刻t
xの後から時刻t
yまで、診断カウントは第1時間間隔毎に1ずつインクリメントしていく。演算回路130は、時刻t
yの前に診断カウントが閾値カウントに達したことに応答して、バッテリーBが第2容量異常と関連付けられた所定の保護機能を活性化させることができる。
【0081】
図6は、本発明の一実施形態に係るバッテリー診断方法を例示的に示す手順図である。
図6の方法は、第1時間間隔にて繰り返し行われ得る。
【0082】
図1から
図6を参照すると、ステップS610において、データ取得部は、バッテリーBの充放電データを収集する。バッテリー管理システム100がバッテリー診断装置として用いられる場合、センシング回路110及びメモリー120がデータ取得部に該当する。遠隔バッテリー監視器300がバッテリー診断装置として用いられる場合、通信回路310及びメモリー320がデータ取得部に該当する。
【0083】
ステップS620において、データ処理部は、バッテリーBの満充電容量を示す推定容量値を決定する。バッテリー管理システム100がバッテリー診断装置として用いられる場合、演算回路130がデータ処理部に該当する。遠隔バッテリー監視器300がバッテリー診断装置として用いられる場合、演算回路330がデータ処理部に該当する。ステップS620は、ステップS622及びステップS624を含んでいてもよい。ステップS622において、データ処理部は、充放電データを容量推定モデルに入力して、バッテリーBの電流積算値及びSOC変化値を決定する。ステップS624において、データ処理部は、バッテリーBの電流積算値とSOC変化値との比率からバッテリーBの満充電容量を示す推定容量値を決定する。推定容量値の時系列は、データ取得部に記録される。
【0084】
ステップS630において、データ処理部は、推定容量値の経時的変化をモニターリングして、並列接続体200の異常を検出する。ステップS630は、ステップS632、S634、S636、S638、及びステップS639を含んでいてもよい。ステップS632において、データ処理部は、第1時刻での推定容量値よりも小さく、第2時刻に対する閾値容量値を決定する。一例を挙げると、第2時刻は、現回の推定容量値が演算されたタイミングであり、第1時刻は、10回前の推定容量値が演算されたタイミングであってもよい。ステップS634において、データ処理部は、第2時刻での推定容量値を第2時刻に対する閾値容量値と比較する。第2時刻での推定容量値が第2時刻に対する閾値容量値未満であることは、並列接続体200に第1容量異常及び第2容量異常のうちの少なくともどちらか一方が生じたことを示す。ステップS634の値が「はい」である場合、ステップS636に進む。その他は、ステップS638に進み得る。ステップS636において、データ処理部は、診断カウントを1だけインクリメントさせる。ステップS638において、データ処理部は、診断カウントをリセットする。ステップS639において、データ処理部は、診断カウントが閾値カウントに達したか否かを判定する。ステップS639の値が「はい」であることは、並列接続体200の少なくとも一つの単位セルUCが完全断線故障である第2容量異常が生じたと診断されたことを示す。
【0085】
ステップS640において、データ処理部は、所定の保護機能を活性化させることができる。保護機能は、例えば、警告メッセージの出力、リレー20のオフなどであってもよい。データ処理部は、推定容量値の最大の減少が現れる、第2時間間隔以下の時間間隔をおいた過去の二つの時刻(例えば、te、tf)での二つの推定容量値から、複数の単位セルUC1~UCMのうち、異常(完全断線故障)である単位セルの数を決定することができる。
【0086】
異常単位セルの数は、ΔAhmax/(Ahp/M)よりも大きくない最大の整数と同一に決定され得る。Ahpは、二つの時刻(例えば、te、tf)のうち、先行した時刻teでの推定容量値である。ΔAhmaxは、並列接続体200の異常が検出されたタイミングの前の二つの時刻(例えば、te、tf)にわたっての満充電容量の最大の減少量であって、先行した時刻teでの推定容量値から後行した時刻tfでの推定容量値を差し引いた結果である。例えば、Ahp=122Ah,ΔAhmax=27Ah,M=10である場合、2≦27Ah/(122Ah/10)<3であるため、異常単位セルの数は2に決定される。警告メッセージは、複数のバッテリーB1~BNのうち、異常バッテリー(例えば、B1)の識別情報を含み得る。警告メッセージは、異常バッテリー(例えば、B1)の並列接続体200に含まれている異常単位セル(例えば、UC1、UC2)の数を示すデータを含み得る。
【0087】
以上説明した本発明の実施形態は、装置及び方法によってのみ実現されるものではなく、本発明の実施形態の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を介して実現されてもよい。このような実現は、上述した実施形態の記載から本発明が属する技術分野の専門家であれば容易に実現できるものである。
【0088】
以上、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0089】
また、以上で説明した本発明は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者により、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の置換、変形及び変更が可能であるため、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるのではなく、様々な変形のため各実施形態の全部または一部が選択的に組み合わせられて構成され得る。
【符号の説明】
【0090】
1 電気車両
2 車両コントローラー
10 バッテリーパック
20 リレー
30 電気負荷
40 充電器
100 バッテリー管理システム
110 センシング回路
120 メモリー
130 演算回路
140 通信回路
300 遠隔バッテリー監視器
310 通信回路
320 メモリー
330 演算回路
【国際調査報告】