(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】新規ステロイドホルモンリガンドアッセイ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20231114BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20231114BHJP
C12Q 1/6897 20180101ALN20231114BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
C12N15/09 Z ZNA
C12N15/11 Z
C12Q1/6897 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528222
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 NZ2021050201
(87)【国際公開番号】W WO2022103282
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521330482
【氏名又は名称】インサイチュジェン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INSITUGEN LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー,アリソン・ケイ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ61
4B063QR80
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、ステロイドホルモン受容体に結合し活性化する、リガンドの検出に関する。具体的には、本発明は、試験試料からのステロイドホルモン受容体リガンドの選択的同定のための、試験キット及びアッセイ法を提供する。重要なことには、本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法は無細胞であり、それらの実施のために製造の高価な核抽出物を必要としない。その代わりに、本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法は、レポーター構築物に連結された、T7RNAポリメラーゼなどの、単一のポリペプチドポリメラーゼを使用する。酵素の活性は、標的リガンドの存在下においてのみ形成する、リガンドの結合したステロイドホルモン受容体複合体によって、活性化されるよりも、むしろ阻害される。したがって、測定されたレポーター構築物の物理特性の変化(例えば蛍光出力)を使用して、調査中の試料中における標的リガンドの存在を決定し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットであって、該試験キットは、
(i)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできるステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)(a)配列番号85を含むか又はからなるポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド-受容体複合体が結合することのできる、応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、及び(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)場合により、T7 RNAポリメラーゼ
を含む、試験キット。
【請求項2】
赤芽球形質転換特異的転写因子ERG;ステロイド受容体コアクチベーターであるSRC-1、SRC-2、SRC-3を含む1つ以上のp160コアクチベーター;Rho GTPアーゼグアニンヌクレオチド交換因子であるVav3;E2F1;ATAD2;CBP/p300;Leupaxin;FHL2;ARAファミリータンパク質;GRIP1;BRAC1;及びZac1から選択された、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーターをさらに含む、請求項1記載の試験キット。
【請求項3】
(i)熱ショックタンパク質90(HSP90);
(ii)HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)の複合体;
(iii)HSP90とHSP70と熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;
(iv)HSP90とHSP70とHSP40とp23の複合体;
(v)HSP90とHSP70とHSP40とp23と熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体:
(vi)HSP90とHSP70とHSP40とp23とHopと48kDのHipタンパク質(Hip)の複合体;
(vii)HSP90とHSP70とHSP40とp23とHopとHipとp60の複合体;
(viii)HSP90とHSP70とHSP40とp23とHopとHipとp60とFKBP52の複合体;及び
(ix)(i)から(viii)の任意の組合せ
の少なくとも1つを含む、ステロイドホルモン受容体コリプレッサーをさらに含む、請求項1又は2記載の試験キット。
【請求項4】
核酸が、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー(e)をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項記載の試験キット。
【請求項5】
スペーサーが、約2から約32ヌクレオチド長である、請求項4記載の試験キット。
【請求項6】
スペーサーが、
(i)約2ヌクレオチド長;
(ii)約15ヌクレオチド長;又は
(iii)約27ヌクレオチド長である、請求項4又は請求項5記載の試験キット。
【請求項7】
核酸分子が、少なくとも1つのERGコアクチベータータンパク質に結合する少なくとも1つの結合部位(d)をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項記載の試験キット。
【請求項8】
レポーター構築物が、フルオロフォアに結合することのできるRNAアプタマーをコードしている配列を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の試験キット。
【請求項9】
RNAアプタマーが、MangoII又はiSpinachである、請求項8記載の試験キット。
【請求項10】
試験キットがF30足場をさらに含む、請求項9記載の試験キット。
【請求項11】
細胞溶解液が、ステロイドホルモン受容体及び/又は少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター又は少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサーをコードしているプラスミドを発現している宿主細胞に由来する、請求項1~10のいずれか一項記載の試験キット。
【請求項12】
リボヌクレオシド三リン酸をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の試験キット。
【請求項13】
ステロイドホルモン受容体が、アンドロゲン受容体(AR);エストロゲン受容体α(ER-α)及びエストロゲン受容体β(ER-β);プロゲステロン受容体A(PRA)及びプロゲステロン受容体B(PRB);鉱質コルチコイド受容体(MR);及び糖質コルチコイド受容体(GR)からなる群より選択される、請求項1~14のいずれか一項記載の試験キット。
【請求項14】
応答配列が、
a.5’-AGAACAnnnTGTTCT-3’(配列番号4)を含む配列を含むがこれらに限定されないアンドロゲン応答配列(ARE)、ここでのnはA、T、G又はCである;
b.5’-AGGTCAnnnTGACCT-3’(配列番号8)を含む配列を含むがこれらに限定されないエストロゲン応答配列(ERE)、ここでのnはA、T、G又はCである;
c.5’-GGTACAAACTGTTCT-3’(配列番号10)を含む配列を含むがこれらに限定されないプロゲステロン応答配列(PRE);
d.5’-AGAACAnAATGTTCT-3’(配列番号12)を含む配列を含むがこれらに限定されない鉱質コルチコイド応答配列(MRE)、ここでのnはA、T、G又はCである;及び
e.5’-AGAACAnAATGTTCT-3’(配列番号12)を含む配列を含むがこれらに限定されない糖質コルチコイド応答配列(GRE)、ここでのnはA、T、G又はCである
から選択される、請求項1~13のいずれか一項記載の試験キット。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項記載の試験キットの成分を、アスリートから得られた試料と合わせて、試料が、ステロイドホルモン受容体に結合して活性化し、そしてレポーター構築物の物理的特性の変化を引き起こすに十分なリガンドを含むかどうかを確認することによって、アスリートのドーピング状態を決定するための方法であって、ここでのレポーター構築物の物理的特性の変化は、アスリートのドーピング状態に関する情報を提供する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は一般的に、試料からのステロイドホルモンリガンド(群)の検出に関する。特に、本発明は、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、そして例えばインビトロでレポーター構築物の転写を駆動することによって、ステロイドホルモン特異的ゲノム応答を惹起するその能力によって特徴付けられるような、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするのに十分なアッセイ、方法、及び試験キットを提供する。
【0002】
発明の背景
ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの検出は、生化学、分子生物学、及び医学の多くの分野において重要である。このようなリガンドとしては、内因性ステロイド、外因性ステロイド、非ステロイド性合成分子が挙げられる。例えば、血清又は血漿中の全ホルモンの生理活性の決定は、加齢、閉経周辺期、閉経期、低アンドロゲン症、高アンドロゲン症、ホルモン補充療法、内分泌がん(乳がん及び前立腺がんを含む)、他のホルモン関連容態、例えば骨粗鬆症及び肝毒性、月経不順、多嚢胞性卵巣症候群、性分化疾患、及び不妊を含む、ヒト及び動物の健康に関連した容態をモニタリングするのに重要である。アンドロゲン/エストロゲン分子及び抗アンドロゲン/抗エストロゲン分子の従来の検出法は、ホルモンの生物学的活性に関する情報を全く提供しない。ホルモンの生物学的活性は、健康状態を駆り立てる基礎にある機序を解明するのに重要な尺度であり、これにより、適切な処置/介入を実施することできる。
【0003】
試料中のホルモンの生理活性の検出もまた、違法なヒト及び動物の運動能力向上、損傷を覆い隠すもの、サプリメント及び食品の粗悪品、酪農業における成長促進剤、並びに環境汚染物質をモニタリングするのに重要である。ホルモンの生理活性の測定は、体内で内分泌経路を調節するようであり、それ故、ヒト及び動物の健康に影響する、混入物及び/又は不純物に関する情報を提供する。
【0004】
ステロイドホルモンゲノム応答を惹起するリガンドはまず、真核細胞の細胞質又は核内でステロイドホルモン受容体タンパク質と複合体を形成して、活性化された受容体タンパク質を形成することによって、該ステロイドホルモン受容体タンパク質を活性化する。リガンドは、不活化された受容体タンパク質を安定化させるように作用する共調節因子を置き換え、その後、DNA結合モチーフを露出させる。活性化された受容体タンパク質は、第二の活性化された受容体タンパク質と二量体を形成し、核に移動して、応答配列と呼ばれる特定のヌクレオチド配列に結合することによってDNAと相互作用する。通常の生物学的機能では、応答配列に結合した、リガンドにより活性化されたステロイドホルモン受容体タンパク質の集合体は、RNAポリメラーゼIIにより媒介される転写の開始を増強又は抑制することによって、遺伝子発現を調節する。その天然状態では、活性化された受容体は、他のコアクチベータータンパク質を動員し、そのDNAとの結合を安定化させるか及び/又はRNAポリメラーゼIIとの結合を助けるかのいずれかを行ない得る。RNAポリメラーゼIIは、会合して、DNA鋳型に対してヌクレオチド三リン酸を重合化することによってRNAの転写を触媒する、マルチサブユニットホロ酵素である。
【0005】
ステロイドホルモンゲノム応答は、ステロイドホルモン受容体タンパク質及び受容体特異的応答配列、例えば、アンドロゲン受容体(AR)及びアンドロゲン応答配列(ARE)、エストロゲン受容体-α(ER-α)、エストロゲン受容体-β(ER-β)及びエストロゲン応答配列(ERE)、糖質コルチコイド受容体(GR)及び糖質コルチコイド応答配列(GRE)、鉱質コルチコイド受容体(MR)及び鉱質コルチコイド応答配列(MRE)、プロゲステロン受容体-A(PR-A)、プロゲステロン受容体-B(PR-B)、及びプロゲステロン応答配列(PRE)に結合する、リガンドによって誘導される。
【0006】
しかしながら、ステロイドホルモン受容体タンパク質に結合する全てのリガンドが、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起するわけではない。いくつかのリガンドは、Gタンパク質活性化などの、セカンドメッセンジャーシグナル伝達によって特徴付けられる非ゲノム応答を惹起する。このような非ゲノム応答は、リガンドと結合して数秒間から数分間以内に起こり、そしてこれは古典的なステロイドホルモン応答ではない。
【0007】
試料中のリガンドの存在を検出するための一般的な方法は、その試料中でそれを直接測定することである。しかしながら、試料はしばしば、分子の複合した混合物であり、典型的には分析のために複雑化した調製プロセスを必要とする。試料中のリガンド(群)の存在の検出は典型的には、複合した混合物から分子種を、比較的純粋な組成の画分へと分離するための、液体又はガスクロマトグラフィーなどのプロセスに依拠し、その後、各画分を、質量分析などの構造に対して感度の高い方法を用いて分析する。100個を超えるリガンドを、このアプローチを使用して、任意の1つの試料中で試験することができる。自動精製システム、ガス又は液体クロマトグラム、及び質量分析計は、費用的に及び技術的に、複雑な実験機器であり、これは信頼性のある結果を出すために、絶えず校正され、熟練技術者によって操作されなければならない。別の欠点は、いくつかのリガンドは、性ホルモン結合グロブリン又は血清アルブミンなどのタンパク質との相互作用によって生物学的に不活性となる可能性があり、この方法は、生物学的に活性なリガンド画分と生物学的に不活性なリガンド画分とを区別しないことである。また、イオン化プロセスにより、いくつかのステロイド分子が崩壊する可能性があり、よって、それらはこのような方法を使用して測定されることができない。さらに、この方法は、全ての既知のリガンドが同定できるわけではない場合、複数のリガンドに由来する、試料の全生物学的活性についての情報を提供しないか、又はリガンドが同定され得る場合、活性が相加的であるか、相乗的であるか、若しくはさらには競合的であるかは分からない。さらに、リガンド(群)の生物学的代謝に起因する、リガンド(群)及びその関連した代謝物(群)の分子構造の事前知識が、試料中のリガンド(群)の存在の信頼性のある同定を達成するために必要とされる。
【0008】
試料中のステロイドホルモンリガンドの存在を検出するための別の一般的な方法は、ラジオイムノアッセイ及び酵素結合免疫吸着アッセイなどの、免疫学的技術に基づいた生物学的アッセイを使用することである。免疫学的技術の限界は、抗体分子が、直接的にリガンドを又は性ホルモン結合性グロブリンに結合したリガンドを検出する必要性である。免疫学的アッセイは、異なるアッセイ製造業者によって生産された抗体分子の高度なばらつきに因り、再現性が欠落している。
【0009】
試料中のリガンドの検出に伴う様々な限界、(例えば)化合物の構造の知識の必要性及び/又は抗体などの複雑な検出試薬を提供する必要性などを克服するために、出願人は、酵素又は蛍光により媒介されるレポーターの読み出し情報を含む、様々な世代のインビトロでの生理活性アッセイを開発した。これらのアッセイは、試験試料からの標的リガンドの検出を容易にするために、インビボでのホルモンシグナル伝達の必須成分をインビトロで組み立てることによって、生物学的システムを模倣している。必須なアッセイ成分は、例えば、ステロイドホルモン受容体、ステロイドホルモン受容体共調節因子(群)、及び関心対象のリガンドの存在下においてのみ結合/活性化される特定のDNA結合モチーフを含むレポーター構築物を含む。例えば、試験キット、アッセイ及び方法は、PCT/NZ2020/050045及びPCT/NZ2020/050046に記載されている。
【0010】
つい最近、出願人は、以前に記載されているような試験キット、アッセイ及び方法の構成及び性能の改善を確立するために、さらなる最適化研究を行なった。例えば、レポーター構築物の構造の改善、並びに/あるいは、アッセイの特異性及び/又は感度を増強させる追加の共調節因子の包含。
【0011】
さらに、スケールアップの必要条件を満たすに十分な、細胞溶解液によるステロイドホルモン受容体の産生に関する、製造の改善が開発された。このアプローチは、試験キットの製造に必要な道具の総費用を低減させるだけでなく、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法の、ステロイドホルモンの生物機能へのより広範な応用及びその商業的応用のための、変異/デザイナーステロイドホルモン受容体の組換え産生に関する融通性も創出する。
【0012】
したがって、本発明は、これらの明瞭ではない改善にも関する。
【0013】
発明の要約
本明細書に記載及び特許請求された本発明は、本発明のこの要約に示されるか又は記載されているか又は参照されているものを含むがこれらに限定されない、多くの特色及び例を有する。それは包括的であることを意図するものではなく、本明細書に記載された及び特許請求された本発明は、本発明のこの要約において同定された特色又は例に限定されないか又はそれによって限定されず、該要約は説明の目的のためにのみ含まれ、制限する目的のために含まれるのではない。
【0014】
本発明の態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできるステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)(a)RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合することのできる、応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]又は[(a)、(e)、(b)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)場合により、RNAポリメラーゼ、例えば単一ポリペプチドRNAポリメラーゼ
を含む。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできるステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)(a)T7RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合することのできる、応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]又は[(a)、(e)、(b)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)場合により、T7RNAポリメラーゼ
を含む。
【0016】
本発明のさらに別の態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできるステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)(a)配列番号85によって定義される配列を含むか又はからなる、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合することのできる、応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]又は[(a)、(e)、(b)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)場合により、T7RNAポリメラーゼ
を含む。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできるステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び/又は
(iii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;及び
(iv)(a)RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合することのできる、応答配列;
(c)レポーター構築物;及び
(d)場合により、少なくとも1つのコアクチベータータンパク質ERGが結合することのできる、少なくとも1つの結合部位、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの結合部位(d)は、応答配列(b)のすぐ上流(d5')、すぐ下流(d3')、又はすぐ上流(d5')とすぐ下流(d3')の両方に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)及び(c)]、[(a)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(b)、(d3’)及び(c)]、[(a)、(e)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)、(d3’)及び(c)]又は[(a)、(e)、(d5’)、(b)、(d3’)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(v)場合により、RNAポリメラーゼ、例えば単一ポリペプチドRNAポリメラーゼ
を含む。
【0018】
本発明のさらに別の態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできるステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び/又は
(iii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;及び
(iv)(a)T7RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合することのできる、応答配列;
(c)レポーター構築物;及び
(d)場合により、少なくとも1つのコアクチベータータンパク質ERGが結合することのできる、少なくとも1つの結合部位、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの結合部位(d)は、応答配列(b)のすぐ上流(d5')、すぐ下流(d3')、又はすぐ上流(d5')とすぐ下流(d3')の両方に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)及び(c)]、[(a)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(b)、(d3’)及び(c)]、[(a)、(e)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)、(d3’)及び(c)]又は[(a)、(e)、(d5’)、(b)、(d3’)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)場合により、T7RNAポリメラーゼ
を含む。
【0019】
本発明のさらに別の態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできるステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び/又は
(iii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;及び
(iv)(a)配列番号85によって定義される配列を含むか又はからなる、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合することのできる、応答配列;
(c)レポーター構築物;及び
(d)場合により、少なくとも1つのコアクチベータータンパク質ERGが結合することのできる、少なくとも1つの結合部位、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの結合部位(d)は、応答配列(b)のすぐ上流(d5')、すぐ下流(d3')、又はすぐ上流(d5')とすぐ下流(d3')の両方に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)及び(c)]、[(a)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(b)、(d3’)及び(c)]、[(a)、(e)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)、(d3’)及び(c)]又は[(a)、(e)、(d5’)、(b)、(d3’)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)場合により、T7RNAポリメラーゼ
を含む。
【0020】
本発明のさらに別の態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできるステロイドホルモン受容体;及び
(ii)(a)配列番号85を含むか又はからなる、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合することのできる、応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
及び、[(a)、(b)及び(c)]及び[(a)、(e)、(b)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)場合により、T7RNAポリメラーゼ
を含む。
【0021】
本発明のさらに別の態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできるステロイドホルモン受容体;及び
(ii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び/又は
(iii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;及び
(iv)(a)場合により配列番号85を含むか又はからなる、RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合することのできる、応答配列;
(c)レポーター構築物;及び
(d)場合により、少なくとも1つのコアクチベータータンパク質ERGが結合することのできる、少なくとも1つの結合部位、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの結合部位(d)は、応答配列(b)のすぐ上流(d5')、すぐ下流(d3')、又は応答配列(b)のすぐ上流(d5')とすぐ下流(d3')の両方に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)及び(c)]、[(a)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(b)、(d3’)及び(c)]、[(a)、(e)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)、(d3’)及び(c)]又は[(a)、(e)、(d5’)、(b)、(d3’)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)場合により、T7RNAポリメラーゼ
を含む。
【0022】
本発明のさらに別の態様では、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(1)試料を、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)(a)RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド-受容体複合体が結合する応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]又は[(a)、(e)、(b)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)RNAポリメラーゼ、例えば単一ポリヌクレオチドRNAポリメラーゼ;及び
(iv)リボヌクレオシド三リン酸
と接触させる工程;及び
(2)応答配列へのリガンド-受容体複合体の結合によって引き起こされた、レポーター構築物の転写の減少又は阻害を測定する工程
ここで測定されたリポーター構築物の転写の減少又は阻害は、試料中のリガンドの検出を反映する、
を含む。
【0023】
本発明のさらに別の態様では、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(1)試料を、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)(a)T7RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド-受容体複合体が結合する、応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]又は[(a)、(e)、(b)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)T7RNAポリメラーゼ;及び
(iv)リボヌクレオシド三リン酸
と接触させる工程;及び
(2)応答配列へのリガンド-受容体複合体の結合によって引き起こされた、レポーター構築物の転写の減少又は阻害を測定する工程
ここで測定されたリポーター構築物の転写の減少又は阻害は、試料中のリガンドの検出を反映する、
を含む。
【0024】
本発明のさらに別の態様では、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(1)試料を、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)(a)配列番号85によって定義される配列を含むか又はからなるT7RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド-受容体複合体が結合する、応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]又は[(a)、(e)、(b)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)T7RNAポリメラーゼ;及び
(iv)リボヌクレオシド三リン酸
と接触させる工程;及び
(2)応答配列へのリガンド-受容体複合体の結合によって引き起こされた、レポーター構築物の転写の減少又は阻害を測定する工程、
ここで測定されたリポーター構築物の転写の減少又は阻害は、試料中のリガンドの検出を反映する、
を含む。
【0025】
本発明のさらに別の態様では、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(1)試料を、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び/又は
(iii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;及び
(iv)(a)RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合することのできる、応答配列;
(c)レポーター構築物;及び
(d)場合により、少なくとも1つのコアクチベータータンパク質ERGが結合することのできる、少なくとも1つの結合部位、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの結合部位(d)は、応答配列(b)のすぐ上流(d5')、すぐ下流(d3')、又はすぐ上流(d5')とすぐ下流(d3')の両方に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)及び(c)]、[(a)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(b)、(d3’)及び(c)]、[(a)、(e)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)、(d3’)及び(c)]又は[(a)、(e)、(d5’)、(b)、(d3’)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(v)RNAポリメラーゼ、例えば単一ポリペプチドRNAポリメラーゼ;及び
(vi)リボヌクレオシド三リン酸
と接触させる工程;及び
(2)応答配列へのリガンド-受容体複合体の結合によって引き起こされた、レポーター構築物の転写の減少又は阻害を測定する工程、ここで測定されたリポーター構築物の転写の減少又は阻害は、試料中のリガンドの検出を反映する、
を含む。
【0026】
本発明のさらに別の態様では、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(1)試料を、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び/又は
(iii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;及び
(iv)(a)T7RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合することのできる、応答配列;
(c)レポーター構築物;及び
(d)場合により、少なくとも1つのコアクチベータータンパク質ERGが結合することのできる、少なくとも1つの結合部位、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの結合部位(d)は、応答配列(b)のすぐ上流(d5')、すぐ下流(d3')、又はすぐ上流(d5')とすぐ下流(d3')の両方に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)及び(c)]、[(a)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(b)、(d3’)及び(c)]、[(a)、(e)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)、(d3’)及び(c)]又は[(a)、(e)、(d5’)、(b)、(d3’)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(v)T7RNAポリメラーゼ;及び
(vi)リボヌクレオシド三リン酸
と接触させる工程;及び
(2)応答配列へのリガンド-受容体複合体の結合によって引き起こされた、レポーター構築物の転写の減少又は阻害を測定する工程、
ここで測定されたリポーター構築物の転写の減少又は阻害は、試料中のリガンドの検出を反映する、
を含む。
【0027】
本発明のさらに別の態様では、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(1)試料を、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び/又は
(iii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;及び
(iv)(a)配列番号85によって定義される配列を含むか又はからなるT7RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合する、応答配列;
(c)レポーター構築物;及び
(d)場合により、少なくとも1つのコアクチベータータンパク質ERGが結合することのできる、少なくとも1つの結合部位、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの結合部位(d)は、応答配列(b)のすぐ上流(d5')、すぐ下流(d3')、又はすぐ上流(d5')とすぐ下流(d3')の両方に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)及び(c)]、[(a)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(b)、(d3’)及び(c)]、[(a)、(e)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)、(d3’)及び(c)]又は[(a)、(e)、(d5’)、(b)、(d3’)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(v)T7RNAポリメラーゼ;及び
(vi)リボヌクレオシド三リン酸
と接触させる工程;及び
(2)応答配列へのリガンド-受容体複合体の結合によって引き起こされた、レポーター構築物の転写の減少又は阻害を測定する工程、
ここで測定されたリポーター構築物の転写の減少又は阻害は、試料中のリガンドの検出を反映する、
を含む。
【0028】
本発明のさらに別の態様では、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(1)試料を、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)(a)配列番号85によって定義される配列を含むか又はからなるT7RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド-受容体複合体が結合する、応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
及び[(a)、(b)及び(c)]又は[(a)、(e)、(b)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)T7RNAポリメラーゼ;及び
(iv)リボヌクレオシド三リン酸
と接触させる工程;及び
(2)応答配列へのリガンド-受容体複合体の結合によって引き起こされた、レポーター構築物の転写の減少又は阻害を測定する工程、
ここで測定されたリポーター構築物の転写の減少又は阻害は、試料中のリガンドの検出を反映する、
を含む。
【0029】
本発明のさらに別の態様では、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(1)試料を、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び/又は
(iii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;及び
(iv)(a)場合により配列番号85を含むか又はからなるRNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド-受容体複合体が結合する、応答配列;
(c)レポーター構築物;及び
(d)場合により、少なくとも1つのコアクチベータータンパク質ERGが結合することのできる、少なくとも1つの結合部位、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの結合部位(d)は、応答配列(b)のすぐ上流(d5')、すぐ下流(d3')、又はすぐ上流(d5')とすぐ下流(d3')の両方に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)及び(c)]、[(a)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(b)、(d3’)及び(c)]、[(a)、(e)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)、(d3’)及び(c)]又は[(a)、(e)、(d5’)、(b)、(d3’)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(v)RNAポリメラーゼ;及び
(vi)リボヌクレオシド三リン酸
と接触させる工程;及び
(2)応答配列へのリガンド-受容体複合体の結合によって引き起こされた、レポーター構築物の転写の減少又は阻害を測定する工程
ここで測定されたリポーター構築物の転写の減少又は阻害は、試料中のリガンドの検出を反映する、
を含む。
【0030】
本発明の別の態様では、アンドロゲンリガンド及び/又はエストロゲンリガンドの並列検出のための試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)アンドロゲン受容体を含む細胞溶解液、ここでのアンドロゲン受容体は、試料に由来する相補的リガンドとアンドロゲン受容体-リガンド複合体を形成することができる;及び
(ii)(a)ポリメラーゼプロモーター配列;
(b)アンドロゲン受容体-リガンド複合体が結合することのできる、アンドロゲン応答配列;及び
(c)第一のレポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、及び(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている、
を含む第一の核酸分子;
(iii)エストロゲン受容体を含む細胞溶解液、ここでのエストロゲン受容体は、試料に由来する相補的リガンドとエストロゲン受容体-リガンド複合体を形成することができる;及び
(iv)(d)ポリメラーゼプロモーター配列;
(e)エストロゲン受容体-リガンド複合体が結合することのできるエストロゲン応答配列;及び
(f)第二のレポーター構築物
を含む第二の核酸分子;及び
(v)場合により、単一のポリペプチドポリメラーゼ、
ここでの第一のレポーター構築物と第二のレポーター構築物は異なる、
を含む。
【0031】
本発明の他の態様では、リガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、そしてゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、アンドロゲン受容体を含む細胞溶解液;又は
(ii)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、エストロゲン受容体を含む細胞溶解液、ここでのエストロゲン受容体は、エストロゲン受容体α又はエストロゲン受容体βである;又は
(iii)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、プロゲステロン受容体を含む細胞溶解液、ここでのプロゲステロン受容体は、プロゲステロン受容体A又はプロゲステロン受容体Bである;又は
(iv)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、鉱質コルチコイド受容体を含む細胞溶解液;又は
(v)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、糖質コルチコイド受容体を含む細胞溶解液;及び
(vi)(a)配列番号85を含むか又はからなるT7RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)受容体-リガンド複合体が結合することのできる応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、及び(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている;及び
(vii)場合により、T7RNAポリメラーゼ
を含む。
【0032】
本発明の別の態様では、リガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、そしてゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、アンドロゲン受容体を含む細胞溶解液;又は
(ii)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、プロゲステロン受容体を含む細胞溶解液、ここでのプロゲステロン受容体は、プロゲステロン受容体A又はプロゲステロン受容体Bである;又は
(iii)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、鉱質コルチコイド受容体を含む細胞溶解液;又は
(iv)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、糖質コルチコイド受容体を含む細胞溶解液;及び
(v)場合により、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベータータンパク質及び/又は少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;及び
(vi)(a)配列番号85を含むか又はからなるT7ポリメラーゼプロモーター配列;
(b)受容体-リガンド複合体が結合することのできる応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、及び(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている、
を含む、核酸分子;及び
(vii)場合により、T7RNAポリメラーゼ
を含む。
【0033】
本発明の別の態様では、リガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、エストロゲン受容体と複合体を形成し、そしてゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、少なくとも1つのエストロゲン受容体を含む細胞溶解液;及び
(ii)場合により、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター及び/又は少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び
(iii)(a)配列番号85を含むか又はからなるT7ポリメラーゼプロモーター配列;
(b)受容体-リガンド複合体が結合することのできる応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、及び(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている、
を含む、核酸分子;及び
(vii)場合により、T7RNAポリメラーゼ
を含む。
【0034】
本発明のさらに別の態様では、試料に由来するアンドロゲンリガンド及び/又はエストロゲンリガンドの並列検出のための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)アンドロゲン受容体とエストロゲン受容体とを含む細胞溶解液、
ここでのアンドロゲン受容体は、試料に由来するアンドロゲンリガンドとリガンド-受容体複合体を形成し、及び/又は、エストロゲン受容体は、試料に由来するエストロゲンリガンドとリガンド-受容体複合体を形成する;及び
(ii)場合により、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び/又は
(iii)場合により、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;及び
(iv)(a)RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)受容体-リガンド複合体が結合することのできる応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、及び(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(v)場合により、RNAポリメラーゼ
を含む。
【0035】
本発明のさらに別の態様では、試料の全エストロゲン活性を決定するための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)エストロゲン受容体αとエストロゲン受容体βとを含む細胞溶解液;
(ii)場合により、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び/又は
(iii)場合により、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;及び
(iv)(a)RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)受容体-リガンド複合体が結合することのできる応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、及び(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(v)場合により、RNAポリメラーゼ
を含む。
【0036】
本発明のこの態様に記載の一例では、RNAポリメラーゼは、T7RNAポリメラーゼであり、RNAポリメラーゼプロモーター配列は、配列番号85によって定義されるT7RNAポリメラーゼプロモーター配列である。
【0037】
本発明のこれらの態様及び他の態様に記載の別の例では、核酸配列は場合により、プロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー(e)を含む。関連した例では、スペーサーは、約2から約32ヌクレオチド長である。
【0038】
本発明のさらに別の態様では、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該方法は、
(i)試料を、本明細書に記載のような蛍光に基づいたレポーター構築物を含む試験キットと接触させる工程;及び
(ii)応答配列へのリガンド-受容体複合体の結合によって引き起こされた、レポーター構築物の蛍光の減少又は阻害を測定する工程、
ここで測定されたレポーター構築物の蛍光の減少又は阻害は、試料中のリガンドの検出を反映する、
を含む。
【0039】
本発明のさらなる態様では、試料のステロイドホルモン生理活性を検出するための方法が提供され、該方法は、試料を、本明細書に記載のような試験キットと合わせて、該試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、レポーター構築物の物理特性の変化を引き起こすに十分なリガンドを含むかどうかを確認する工程を含み、ここでのレポーター構築物の物理特性の変化は、試料のステロイドホルモン生理活性に関する情報を提供する。
【0040】
本発明のさらなる態様では、生物学的試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法が提供され、該方法は、生物学的試料を、本明細書に記載のような試験キットと合わせて、該試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、レポーター構築物の物理特性の変化を引き起こすに十分なリガンドを含むかどうかを確認する工程を含み、ここでのレポーター構築物の物理特性の変化は、生物学的試料のステロイドホルモン生理活性に関する情報を提供する。
【0041】
本発明のさらなる態様では、臨床標本のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法が提供され、該方法は、臨床標本から得られた試料を、本明細書に記載のような試験キットと合わせて、該試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、レポーター構築物の物理特性の変化を引き起こすに十分なリガンドを含むかどうかを確認する工程を含み、ここでのレポーター構築物の物理特性の変化は、臨床標本のステロイドホルモン生理活性に関する情報を提供する。
【0042】
本発明のさらなる態様では、食品又は栄養サプリメントのステロイドホルモン生理活性を決定するための方法が提供され、該方法は、食品若しくは栄養サプリメント、又は食品若しくは栄養サプリメントの抽出物を、本明細書に記載のような試験キットと合わせて、該試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、レポーター構築物の物理特性の変化を引き起こすに十分なリガンドを含むかどうかを確認する工程を含み、ここでのレポーター構築物の物理特性の変化は、食品又は栄養サプリメントのステロイドホルモン生理活性に関する情報を提供する。
【0043】
本発明のさらなる態様では、環境源に由来する試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法が提供され、該方法は、環境源から得られた試料を、本明細書に記載のような試験キットと合わせて、該試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、レポーター構築物の物理特性の変化を引き起こすに十分なリガンドを含むかどうかを確認する工程を含み、ここでのレポーター構築物の物理特性の変化は、環境試料のステロイドホルモン生理活性に関する情報を提供する。
【0044】
本発明のさらなる態様では、アスリートのドーピング状態を決定するための方法が提供され、該方法は、アスリートから得られた試料を、本明細書に記載のような試験キットと合わせて、該試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、レポーター構築物の物理特性の変化を引き起こすに十分なリガンドを含むかどうかを確認する工程を含み、ここでのレポーター構築物の物理特性の変化は、アスリートのドーピング状態に関する情報を提供する。
【0045】
本発明のさらなる態様では、試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法が提供され、該方法は、本明細書に記載のようなアッセイ法を、試料に対して実施して、該試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、レポーター構築物の物理特性の変化を引き起こすに十分なリガンドを含むかどうかを確認する工程を含み、ここでのレポーター構築物の物理特性の変化は、試料のステロイドホルモン生理活性に関する情報を提供する。
【0046】
本発明のさらなる態様では、生物学的試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法が提供され、該方法は、本明細書に記載のようなアッセイ法を、試料に対して実施して、該試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、レポーター構築物の物理特性の変化を引き起こすに十分なリガンドを含むかどうかを確認する工程を含み、ここでのレポーター構築物の物理特性の変化は、生物学的試料のステロイドホルモン生理活性に関する情報を提供する。
【0047】
本発明のさらなる態様では、食品又は栄養サプリメントのステロイドホルモン生理活性を決定するための方法が提供され、該方法は、本明細書に記載のようなアッセイ法を、食品若しくは栄養サプリメント、又は食品若しくは栄養サプリメントの抽出物に対して実施して、食品又は栄養サプリメントが、ステロイドホルモン受容体を活性化し、レポーター構築物の物理特性の変化を引き起こすに十分なリガンドを含むかどうかを確認する工程を含み、ここでのレポーター構築物の物理特性の変化は、食品又は栄養サプリメントのステロイドホルモン生理活性に関する情報を提供する。
【0048】
本発明のさらなる態様では、臨床標本のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法が提供され、該方法は、本明細書に記載のようなアッセイ法を、臨床標本に対して実施して、該試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、レポーター構築物の物理特性の変化を引き起こすに十分なリガンドを含むかどうかを確認する工程を含み、ここでのレポーター構築物の物理特性の変化は、臨床標本のステロイドホルモン生理活性に関する情報を提供する。
【0049】
本発明のさらなる態様では、環境源に由来する試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための方法が提供され、該方法は、本明細書に記載のようなアッセイ法を、環境試料に対して実施して、該試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、レポーター構築物の物理特性の変化を引き起こすに十分なリガンドを含むかどうかを確認する工程を含み、ここでのレポーター構築物の物理特性の変化は、ステロイドホルモン生理活性に関する情報を提供する。
【0050】
本発明のさらなる態様では、アスリートのドーピング状態を決定するための方法が提供され、該方法は、本明細書に記載のようなアッセイ法を、アスリートから得られた試料に対して実施して、該試料が、ステロイドホルモン受容体を活性化し、レポーター構築物の物理特性の変化を引き起こすに十分なリガンドを含むかどうかを確認する工程を含み、ここでのレポーター構築物の物理特性の変化は、アスリートのドーピング状態に関する情報を提供する。
【0051】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について試料をスクリーニングするための製品が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該製品は、本明細書に記載のような試験キットを、試料中のリガンドの存在をどのように検出するかの説明書と一緒に含む。
【0052】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について生物学的試料をスクリーニングするための製品が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該製品は、本明細書に記載のような試験キットを、生物学的試料中のリガンドの存在をどのように検出するかの説明書と一緒に含む。
【0053】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について食品又は栄養サプリメントをスクリーニングするための製品が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該製品は、本明細書に記載のような試験キットを、食品又は栄養サプリメント中のリガンドの存在をどのように検出するかの説明書と一緒に含む。
【0054】
本発明のまたさらなる態様では、試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための製品が提供され、該製品は、本明細書に記載のような試験キットを、試料中のステロイドホルモン生理活性の検出についての説明書と一緒に含み、ここでの試料中の生理活性リガンドの存在は、試料のステロイドホルモン生理活性の指標である。
【0055】
本発明のまたさらなる態様では、臨床標本のステロイドホルモン生理活性を決定するための製品が提供され、該製品は、本明細書に記載のような試験キットを、臨床標本中のステロイドホルモン生理活性の検出についての説明書と一緒に含み、ここでの臨床標本中の生理活性リガンドの存在は、臨床標本のステロイドホルモン生理活性の指標である。
【0056】
本発明のまたさらなる態様では、環境試料のステロイドホルモン生理活性を決定するための製品が提供され、該製品は、本明細書に記載のような試験キットを、環境試料中のステロイドホルモンの生理活性の検出についての説明書と一緒に含み、ここでの環境試料中の生理活性リガンドの存在は、環境試料のステロイドホルモン生理活性の指標である。
【0057】
本発明のまたさらなる態様では、アスリートのドーピングを決定するための製品が提供され、該製品は、本明細書に記載のような試験キットを、アスリートに由来する試料中のリガンドの存在の検出についての説明書と一緒に含み、ここでの試料中のリガンドの存在は、アスリートのドーピングの指標である。
【0058】
本発明のまたさらなる態様では、配列番号85によって定義されるT7RNAポリメラーゼプロモーター配列を含むか又はからなる核酸分子が提供される。
【0059】
本発明のまたさらなる態様では、
(a)配列番号85を含むか又はからなるT7RNAポリメラーゼプロモーター配列;及び
(b)ホルモン応答配列
を含む、核酸分子が提供される。
【0060】
本発明のまたさらなる態様では、
(c)配列番号85を含むか又はからなるT7RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(d)ホルモン応答配列;及び
(e)レポーター構築物
を含む、核酸分子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1は、T7プロモーター制御下で、MangoIIアプタマー配列を含む、レポーター構築物のT7RNAポリメラーゼにより媒介される転写の、アンドロゲン応答配列(ARE)により媒介される阻害の図解を示す。
【
図2】
図2は、アンドロゲン受容体が、T7により媒介されるRNA MangoIIアプタマーの転写を減少させることを示す。インビトロでの転写反応は、T7プロモーター-アンドロゲン応答配列-RNA MangoIIアプタマーDNA鋳型を使用して構築された。反応は、0.5mLのエッペンドルフチューブ中で構築され、11.5ng/mLのテストステロンの添加によって開始された。2時間インキュベートした後、RNA MangoIIアプタマーを、TO1-ビオチン(TO1-B)を添加して測定し、増加した蛍光を、標準的な蛍光光度計を使用して検出した。黒色の縦棒グラフ-アンドロゲン受容体が全く添加されていない対照反応、灰色の縦棒グラフ-反応1回あたり100ng又は反応1回あたり400ngのアンドロゲン受容体の添加された反応。
【
図3】
図3は、アンドロゲン受容体が、T7により媒介されるRNA MangoIIアプタマーの転写を減少させることを示す。インビトロでの転写反応は、T7プロモーター-アンドロゲン応答配列-RNA MangoIIアプタマーDNA鋳型を使用して構築された。反応は、0.5mLのエッペンドルフチューブ中で構築された。2時間インキュベートした後、RNA MangoIIアプタマーを、TO1-Bを添加して測定し、増加した蛍光を、標準的な蛍光光度計を使用して検出した。黒色の縦棒グラフ-アンドロゲン受容体が全く添加されていない対照反応、灰色の縦棒グラフ-反応1回あたり100ngのアンドロゲン受容体の添加された反応。濃い灰色の縦棒グラフ-反応1回あたり100ngのアンドロゲン受容体が添加され、11.5ng/mLのテストステロンを用いて活性化された反応。
【
図4】
図4は、HSP90が、T7により媒介されるRNA MangoIIアプタマーの発現のアンドロゲン受容体による抑制を遮断することを示す。インビトロでの転写反応は、T7プロモーター-アンドロゲン応答配列-RNA MangoIIアプタマーDNA鋳型を使用して構築された。反応は、0.5mLのエッペンドルフチューブ中で構築された。2時間インキュベートした後、RNA MangoIIアプタマーを、TO1-Bを添加して測定し、増加した蛍光を、標準的な蛍光光度計を使用して検出した。黒色の縦棒グラフ-アンドロゲン受容体が全く添加されていない対照反応、灰色の縦棒グラフ-反応1回あたり100ngのアンドロゲン受容体の添加された反応。濃い灰色の縦棒グラフ-反応1回あたり100ngのアンドロゲン受容体が添加され、11.5ng/mLのテストステロンを用いて活性化された反応。薄い灰色の縦棒グラフ-反応1回あたり100ngのアンドロゲン受容体が添加され、反応1回あたり200ngのHSP90が添加された反応。最も濃い灰色の縦棒グラフ-反応1回あたり100ngのアンドロゲン受容体が添加され、反応1回あたり200ngのHSP90が添加され、11.5ng/mLでテストステロンが添加された反応。
【
図5】
図5は、テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体が、用量依存的に、T7により媒介されるRNAアプタマーMangoIIの発現を減少させることを示す。反応は、本文に記載のように構築された。これらの反応について、T7により生成されたRNA MangoIIは、エタノール対照によって証明された。エタノール対照は、これがステロイド、テストステロン(T)及びジヒドロテストステロン(DHT)の希釈剤であるために含まれる。エタノール対照についてもたらされた蛍光出力は、恣意的に100%と割り当てられ、リガンドにより活性化された反応のためのリファレンスとして使用された。漸減濃度(2.5mMから25μMの範囲)のテストステロンを加えて、アンドロゲン受容体を活性化させたか、又は代替的にはジヒドロテストステロンを250μMで加えた。T及びDHTの両方が内因性アンドロゲンであり、強力なアンドロゲン受容体の活性化因子である。
****p<0.001(エタノールに対して)ダネット多重比較検定と一元配置分散分析。
【
図6】
図6は、アンドロゲン受容体の滴定が、ΔMangoIIに直接影響を及ぼすことを示す。反応は、本文に記載のように(例えば表7参照)構築された。これらの反応について、T7により生成されたRNA MangoIIは、エタノール対照(灰色の縦棒グラフ)によって証明された。エタノール対照は、これがテストステロン(T)の希釈剤であるために含まれる。エタノール対照についてもたらされた蛍光出力は、恣意的に100%と割り当てられ、250μMのテストステロンにより活性化された反応(黒色の縦棒グラフ)のためのリファレンスとして使用された。50ngから25ngへの14.2ngへの濃度の漸減は、アンドロゲン受容体の有意な遮断レベルを維持したが(n=5)、しかしながら、T7阻害の効果量は、50ngと比較して減少した。アンドロゲン受容体濃度の100ng(n=2)への増加は、T7抑制に対してさらなる効果を全く及ぼさなかった。
****p<0.001、
***p=0.002(エタノールに対して)。ダネット多重比較検定と一元配置分散分析。
【
図7】
図7は、HSP90:アンドロゲン受容体の比が、ΔMangoIIに影響を及ぼすことを示す。反応は、本文に記載のように(表8参照)構築された。これらの反応について、T7により生成されたRNA MangoIIは、エタノール対照(灰色の縦棒グラフ)によって証明された。エタノール対照についてもたらされた蛍光出力は、恣意的に100%と割り当てられ、250μMのテストステロンにより活性化された反応(黒色の縦棒グラフ)のためのリファレンスとして使用された。結果は、アンドロゲン受容体濃度が増加する場合にのみ、1:1の比が効果的であり、最大のΔMangoIIは、アンドロゲン受容体濃度が100ngである場合に報告されている。アンドロゲン受容体濃度が50ng又は100ngであった場合、2:1の比が効果的であり、4:1の比では、より低いアンドロゲン受容体濃度でさえも、アンドロゲン受容体が作動することが可能となり、一方、8:1の比は、ΔMangoIIに対して低下した効果量を示した。
【
図8】
図8は、単一のアンドロゲン応答配列部位が、T7の転写を低下させるのに十分なほど強力であることを示す。反応は、DNA鋳型が異なる以外は、本文に記載のように構築された。1セットの反応では、たった1つのアンドロゲン応答配列をコードしているDNA鋳型を使用したが、第二のセットの反応では、独創的な3×ARE DNA鋳型を使用した(配列は表2に示される)。これらの反応について、T7により生成されたRNA MangoIIは、エタノール対照(灰色の縦棒グラフ)によって証明された。エタノール対照についてもたらされた蛍光出力は、恣意的に100%と割り当てられ、250μMのテストステロンにより活性化された反応(黒色の縦棒グラフ)のためのリファレンスとして使用された。結果は、単一のアンドロゲン応答配列が、3×アンドロゲン応答配列と同じくらい効果的であることを示す(
****p<0.0001、
***p=0.002)。
【
図9】
図9は、DNA鋳型濃度の漸減が、ΔMangoIIを低下させることを示す。反応は、本文に記載のように構築された。これらの反応について、T7により生成されたRNA MangoIIは、エタノール対照(灰色の縦棒グラフ)によって証明された。エタノール対照についてもたらされた蛍光出力は、恣意的に100%と割り当てられ、250μMのテストステロンにより活性化された反応(黒色の縦棒グラフ)のためのリファレンスとして使用された。結果は、DNA鋳型濃度が反応1回あたり25ng未満まで下降するにつれて、ΔMangoIIの検出能は低下したことを示す(
****p<0.0001、
***p=0.003)。
【
図10】
図10は、50Uから10UへのT7単位の滴定は、変化検出閾値未満に蛍光を減少させることを示す。T7RNAポリメラーゼは、50Uから10Uの酵素が反応1回あたりに添加されるように滴定された。反応は、T7RNAポリメラーゼ、DNA鋳型及び反応緩衝液のみからなっていた。特に、50Uで、反応から生成されたMangoIIは、約340000の蛍光の読み出し情報をもたらした。これは、40Uの酵素が添加された場合に、約200000まで好都合に減少させた。さらなる希釈により、測定可能な蛍光の変化は発生せず、このことは、約200000の蛍光単位が、この反応の閾値であることを示す。
【
図11】
図11は、ΔMangoIIの検出閾値を示す。反応は、50U又は100UのT7RNAポリメラーゼ、DNA鋳型、反応緩衝液、50ngのアンドロゲン受容体、100ngのHSP90、及び250μMのテストステロン(又は対照としてのエタノール)を用いて確立された。データは、50UのT7酵素が添加されると、効果量は有意ではあっても比較的小さいが、ΔMangoIIを検出できたことを示す(n=5、
*p=0.0155、シダックポスト事後検定と一元配置分散分析)。100UのT7酵素が添加されると、ΔMangoIIは、より大きな効果量で容易に検出された(n=5、
****p<0.0001)。ΔMangoIIの検出閾値は約200000である。出力がこれを下回る場合、試験結果の解釈は困難となるであろう。
【
図12】
図12は、単一のエストロゲン応答配列部位は、エストラジオールにより活性化されたエストロゲン受容体αが、T7の転写を減少させるのに十分に強力であることを示す。反応は、本文に記載のように構築された。これらの反応について、T7により生成されたRNA MangoIIは、エタノール対照によって証明される。エタノール対照は、これが、ステロイドホルモン、エストラジオール(E2)の希釈剤であるために含まれる。エタノール対照についてもたらされた蛍光出力は、恣意的に100%と割り当てられ、エストラジオールにより活性化された反応のためのリファレンスとして使用された。5μMのエストラジオールを加えて、エストロゲン受容体αを活性化した。n=3、
****p<0.001(エタノールに対する)。ダネット多重比較検定と一元配置分散分析。
【
図13】
図13は、アンドロゲン受容体/HSP90-アンドロゲン応答配列アッセイが、一連のタンパク同化アンドロゲンステロイド及び選択的アンドロゲン受容体モジュレーターを検出することができることを示す。テストステロン(250μM)が、陽性リファレンスとして使用され、一方、エタノールが、陰性リファレンスとして使用され、活性は100%(緑色の点線)に設定された。全てのデータは、エタノール対照に標準化される。アンドロゲン分子のクラスは、本文(表10)に記載されている。
【
図14】
図14は、RNAポリメラーゼ活性が、血清によって影響を受けないことを示す。反応は、DNA鋳型(100ng)、緩衝液、ヌクレアーゼ非含有水、及びアンドロゲン受容体反応のためのアンドロゲン受容体(50ng)、HSP90(100ng)を用いて構築された。反応を100Uの(又は等価な)T7RNAポリメラーゼの添加により開始する前に、ウマ血清又はウシ胎仔血清(10μl)を加えた。反応は、37℃で150分間保持し、その後、MangoIIRNAアプタマーが、TO1-ビオチン(100nM)を用いて検出された。データは、ウマ血清又はウシ胎仔血清の存在が、T7によるMangoIIの生成に対して全く影響を及ぼさなかったことを示す。
【
図15】
図15は、血清試料中のテストステロンの検出を示す。反応は、テストステロンの添加されていた13μlのウシ胎仔血清が添加された以外は、本文に記載の通りに構築された。エタノールの添加されたウシ胎児血清が、活性化していないアンドロゲン受容体の対照として使用され、T7活性は恣意的に100%に設定された。テストステロンは、T7により生成されるMangoIIの用量依存的な抑制を示し、ΔMangoIIは、より高いテストステロン濃度でより大きかった。p<0.0001対エタノール、シダック事後比較検定と一元配置分散分析。
【
図16】
図16は、尿試料中のアンドロゲン活性の検出を示す。反応は、本文に記載のように構築された。エタノールは、アンドロゲン受容体の活性化についての陰性(ビヒクル)対照として使用され、一方、テストステロン(250μM)は、陽性対照として使用された。仔馬1番及び仔馬2番は、2匹の異なる幼若な雄の競走馬から得られた尿試料を示す。去勢馬1番及び去勢馬2番は、2匹の異なる雄の去勢馬から得られた尿試料を示す。トレンボロンの添加は、脱抱合工程及び抽出工程の前に、トレンボロンの添加された、去勢馬の尿試料を示す。エタノール対照について測定されたT7の活性は、恣意的に100%に設定された。テストステロンは、T7により生成されたMangoIIの抑制を示し、これは仔馬尿試料及びトレンボロンの添加された尿試料でも見られたが、しかしながら、去勢馬の試料ではT7活性の非常に僅かな抑制しか測定されなかった。去勢馬は、その精巣が除去され、これらの器官は雄における主なテストステロン産生源であるので、内因性アンドロゲンレベルは低いと予想されるだろう。
【
図17】
図17は、ステロイドホルモン受容体/ステロイド応答配列アッセイを使用したプロホルモンの検出を示す。アンドロステンジオンを、S9肝臓画分と共にプレインキュベートし、その後、肝臓S9画分の反応液をステロイドについて抽出した。その後、抽出された試料を、アンドロゲン活性について試験した。データは、メタノール対照が完全なT7活性を示し、これはアンドロゲン受容体/HSP90がアンドロゲンの非存在下において添加される場合、影響を受けない。アンドロステンジオン/S9抽出試料を試験した場合、アンドロステンジオンと比較して(n=2の独立したNADS9画分なし/抽出反応)、蛍光の読み出し情報は強く減少した(n=2の独立したステロイド代謝/抽出反応)。
【
図18】
図18は、テストステロンにより活性化された組換えアンドロゲン受容体、対、テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体溶解液による、T7活性の抑制を示す。データは、テストステロンにより活性化された組換えアンドロゲン受容体(反応1回あたり25ng)又はテストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体溶解液(反応1回あたり25ng)を用いた反応(表11の通りに構築)がどちらも、減少した蛍光出力によって示されるように、T7活性を減少させたことを示す。蛍光出力の減少は、ステロイドのテストステロンの希釈剤であるビヒクル対照(5%エタノール)と比較される。
【
図19】
図19は、アンドロゲン受容体の溶解液による、T7活性の濃度依存的抑制を示す。データは、アンドロゲン受容体溶解液(反応1回あたり6.25~100ng)の漸増濃度を用いての反応(表11の通りに構築)が、減少した蛍光出力によって示されるように、T7活性を減少させたことを示す。蛍光出力の減少は、ステロイドのテストステロンの希釈剤であるビヒクル対照(5%エタノール)と比較される。6.25/25などの比は、各反応に使用されるアンドロゲン受容体:HSP90の濃度を示す。
【
図20】
図20は、T7溶解液の活性の抑制に対するその効果について、アンドロゲン受容体の溶解液のバッチの比較を示す。データは、減少した蛍光出力によって示されるように、市販のアンドロゲン受容体溶解液(ORIGENE社)の2つの異なるバッチ(OA741番、O11311番)を使用した反応(表11の通りに構築)が、T7活性を減少させたことを示す。蛍光出力の減少は、ステロイドのテストステロンの希釈剤であるビヒクル対照(5%エタノール)と比較される。アンドロゲン受容体の溶解液は、40ng/μLの濃度で使用された。-198656対-139234の勾配。n=2の間の相互間の変動、約30%。
【
図21】
図21は、アンドロゲン受容体の溶解液の社内調製物によるT7活性の抑制を示す。データは、HEK293培養細胞に由来するアンドロゲン受容体溶解液の社内調製物を使用した反応(表11の通りに構築)が、減少した蛍光出力によって示されるように、T7活性を減少させたことを示す。蛍光出力の減少は、ステロイドのテストステロンの希釈剤であるビヒクル対照(5%エタノール)と比較される。細胞溶解液を、同じ細胞調製物に由来する細胞質及び核の抽出物と比較した。アンドロゲン受容体溶解液及び抽出物は、25ng/μLの濃度で使用された。線形回帰の勾配:完全細胞 -181093、細胞質 -137097、及び核 -104102。
【
図22】
図22は、T7活性の抑制に対する、6つのHEK293アンドロゲン受容体細胞溶解液の社内調製物のバッチの比較を示す。データは、HEK293培養細胞に由来するアンドロゲン受容体溶解液の社内調製物を使用した反応(表11の通りに構築)が、減少した蛍光出力によって示されるように、T7活性を減少させたことを示す。社内アンドロゲン受容体の溶解液を、組換えアンドロゲン受容体(25ng/μL)と比較した。蛍光出力の減少は、ステロイドのテストステロンの希釈剤であるビヒクル対照(5%エタノール)と比較される。アンドロゲン受容体溶解液は、40ng/μLの濃度で使用された。線形回帰の勾配:1番 -201331、2番 -159597、3番 -222680、4番 -196456、5番 -148207、6番 -150676、組換えアンドロゲン受容体 -248851。
【
図23】
図23は、アンドロゲン受容体溶解液が、他のステロイドホルモンのエストラジオール及びデキサメタゾンによって活性化されないことを示す。データは、テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体溶解液を使用した反応(表11の通りに構築)が、減少した蛍光出力によって示されるように、T7活性を減少させたことを示す。アンドロゲン受容体溶解液は、エストラジオール(1nM)又はデキサメタゾン(1μM、100nM)によって活性化されなかった。蛍光出力の減少は、ビヒクル対照(エストラジオールでは5%エタノール、又は5%アセトニトリル)と比較される。アンドロゲン受容体溶解液は、40ng/μLの濃度で使用された。線形回帰の勾配:テストステロン -93453、エストラジオール +22616、+デキサメタゾン1μM +22617、+デキサメタゾン100nM +4309。
【
図24】
図24は、アンドロゲン受容体溶解液が、タンパク同化アンドロゲンステロイド(AAS)及び選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)に対して応答することを示す。データは、テストステロン、アンダリン、又は11ケト-テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体溶解液を使用した反応(表11の通りに構築)が、減少した蛍光出力によって示されるように、T7活性を減少させたことを示す。蛍光出力の減少は、ビヒクル対照(5%エタノール)と比較される。アンドロゲン受容体溶解液は、40ng/μLの濃度で使用された。線形回帰の勾配は用量依存的に増加した:250μMのテストステロン -569498、125μMのテストステロン -426615、及び2.5mM -873008、1mM -538241、250μMの11ケトテストステロン -430247。
【
図25】
図25は、アンドロゲン受容体溶解液が、ウマ血漿中のアンドロゲンを検出することができたことを示す。データは、血漿中アンドロゲンにより活性化されたアンドロゲン受容体溶解液(ORIGENE OA741)、又は血漿中アンドロゲンにより活性化された組換えアンドロゲン受容体を使用した反応(表11の通りに構築)が、減少した蛍光出力によって示されるように、T7活性を減少させたことを示す。蛍光出力の減少は、市販のウマ血清と比較される。アンドロゲン受容体溶解液は、40ng/μLの濃度で使用され、組換えアンドロゲン受容体は、25ng/μLの濃度で使用された。G44は、HEK293細胞に基づいたアンドロゲンバイオアッセイによって決定されるように、G33よりも高いアンドロゲン生理活性を有する。G44は、アンドロゲン受容体溶解液又は組換えアンドロゲン受容体によって決定されるように、アンドロゲンスクリーニングアッセイにおいてT7活性のより強い抑制を示し、これはより高いアンドロゲン生理活性の指標となる。
【
図26】
図26は、アンドロゲン受容体溶解液が、ヒト男性血清中のアンドロゲンを検出することができたことを示す。データは、ヒト男性血清中のアンドロゲンにより活性化されたアンドロゲン受容体溶解液(ORIGENE OA741)を使用した反応(表11の通りに構築)が、減少した蛍光出力によって示されるように、T7活性を減少させたことを示す。蛍光出力の減少は、市販のヒト女性血清と比較される。アンドロゲン受容体溶解液は、40ng/μLの濃度で使用された。ヒト男性血清は、アンドロゲン受容体溶解液又は組換えアンドロゲン受容体によって決定されるように、ヒト女性血清よりも高いアンドロゲン生理活性を有する。
【
図27】
図27は、配列番号1、82及び83によって同定されるT7プロモーター配列を含む構築物の相対的なT7活性を示す。データは、異なるT7プロモーター配列をコードするDNA鋳型を使用した反応(表11の通りに構築)を示す。T7活性は、増加した蛍光として報告されている。配列番号1は18bpの配列であり、配列番号82は野生型配列を示し、配列番号83は野生型配列に対する3'修飾を示す。配列番号1は、最も高いT7活性を示し、配列番号82は、配列番号83より55%劣る。配列番号83は、文献で報告されているように、配列番号82と比較して増加したT7活性を支持する。
【
図28】
図28は、アンドロゲンに対する応答性について、配列番号1、82及び83によって定義された異なるT7プロモーター配列の評価を示す。データは、異なるT7プロモーター配列をコードするDNA鋳型を使用した反応(表11の通りに構築)を示す。組換えアンドロゲン受容体は、テストステロンを用いて活性化され、対照(5%エタノール)からの差を比較した。蛍光出力の減少を、対照と比較する。
【
図29】
図29は、配列番号1及び配列番号84によって定義されるT7プロモーター配列の相対的なT7活性を示す。データは、異なるT7プロモーター配列をコードするDNA鋳型を使用した反応(表11の通りに構築)を示す。T7活性は、増加した蛍光として報告される。
【
図30】
図30は、アンドロゲンに対する応答性についての、配列番号1及び84によって定義される異なるT7プロモーター配列の評価を示す。データは、異なるT7プロモーター配列をコードするDNA鋳型を使用した反応(表11の通りに構築)を示す。組換えアンドロゲン受容体はテストステロンを用いて活性化され、対照(5%対照)からの差を比較した。蛍光出力の減少は、対照と比較される。
【
図31】
図31は、配列番号1及び84によって定義されるT7プロモーター配列の相対的なT7活性を示す。データは、配列番号1及び84によって定義されるT7プロモーターをコードするDNA鋳型を使用した反応(表11の通りに構築)を示す。組換えアンドロゲン受容体はテストステロンを用いて活性化され、対照(5%対照)からの差を比較した。蛍光出力の減少は、対を形成した対照反応と比較される。
【
図32】
図32は、配列番号84によって定義されるT7プロモーター配列を含むDNAリポーター構築物を含むアンドロゲンスクリーニングアッセイは、組換えアンドロゲン受容体が含まれる場合には、他のステロイドホルモン、すなわちエストラジオール及びデキサメタゾンによって活性化されないことを示す。データは、テストステロンにより活性化される組換えアンドロゲン受容体を使用した反応(表11の通りに構築)が、減少した蛍光出力によって示されるように、T7活性を低下させたことを示す。組換えアンドロゲン受容体は、エストラジオール(1nM)又はデキサメタゾン(1μM、100nM)によって活性化されなかった。蛍光出力の減少は、ビヒクル対照(エストラジオールでは5%エタノール、又は5%アセトニトリル)と比較される。組換えアンドロゲン受容体は、25ng/μLの濃度で使用された。線形回帰の勾配:テストステロン -358043、エストラジオール -150583、+1μMのデキサメタゾン 221551、+100nMのデキサメタゾン -169732。
【
図33】
図33は、配列番号84によって定義されるT7プロモーター配列を含むDNAリポーター構築物を含むアンドロゲンスクリーニングアッセイは、アンドロゲン受容体溶解液が含まれる場合には、他のステロイドホルモン、すなわちエストラジオール及びデキサメタゾンによって活性化されないことを示す。データは、テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体溶解液を使用した反応(表11の通りに構築)が、減少した蛍光出力によって示されるように、T7活性を低下させたことを示す。アンドロゲン受容体溶解液は、エストラジオール(1nM)又はデキサメタゾン(1μM、100nM)によって活性化されなかった。蛍光出力の減少は、ビヒクル対照(エストラジオールでは5%エタノール又は5%アセトニトリル)と比較される。アンドロゲン受容体溶解液は、40ng/μLの濃度で使用された。線形回帰の勾配:テストステロン -570551、1nMのエストラジオール -252629、0.1nMのエストラジオール 276445、+1μMのデキサメタゾン -91645、+100nMのデキサメタゾン 58589。
【
図34】
図34は、配列番号1及び84によって定義されるT7プロモーターを含むDNAリポーター構築物を用いた、T7活性についての時間経過アッセイを示す。データは、配列番号1及び84並びにテストステロンにより活性化された組換えアンドロゲン受容体を用いた反応(表11の通りに構築)が、経時的に減少した蛍光出力によって示されるように、対照と比較してT7の活性を減少させたことを示す。蛍光出力の減少は、ビヒクル対照(5%エタノール)と比較される。組換えアンドロゲン受容体は、25ng/μLの濃度で使用された。配列番号84は、対数曲線の最初のヒルの勾配によって示されるように、より高いT7活性を示す。
【
図35】
図35は、50ng及び100ngのこのDNA構築物の存在下における、配列番号84によって定義されるT7プロモーターを含むDNAレポーター構築物を用いた、T7活性についての時間経過アッセイを示す。データは、50ng及び100ngの配列番号84並びにテストステロンにより活性化された組換えアンドロゲン受容体を用いた反応(表11の通りに構築)が、経時的に減少した蛍光出力によって示されるように、対照と比較してT7活性を減少させたことを示す。組換えアンドロゲン受容体は、25ng/μLの濃度で使用された。配列番号84によって定義される50ngのT7プロモーターは、より低いT7活性を示し、このことは、T7DNAは過剰に存在せず、T7RNAポリメラーゼ酵素は、DNA鋳型より過剰にあることを示す。
【
図36】
図36は、25ng、50ng又は100ngの組換えアンドロゲン受容体の存在下における、配列番号1及び84によって定義されるT7プロモーターを含むDNAリポーター構築物を用いたT7活性についての時間経過アッセイを示す。データは、配列番号84並びに25ng、50ng、及び100ngの組換えアンドロゲン受容体を用いた反応(表11の通りに構築)を示す。テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体は、経時的に減少した蛍光出力によって示されるように、対照と比較してT7の活性を減少させた。反応1回あたり25ng又は50ngのアンドロゲン受容体は、T7活性に干渉せず、どちらの反応も時間依存的な蛍光の増加を示した。反応1回あたり50ngのアンドロゲン受容体は、テストステロンの反応と対照の反応との間のより良好な分離を示し、このことは、アンドロゲン受容体:T7/DNAの比が最適であることを示唆する。反応1回あたり100ngのアンドロゲン受容体が使用される場合、T7活性はあまりにも多く遮断され、非常に僅かなT7活性しか報告されず、テストステロンと対照との間の差の測定が困難となる。特に、テストステロンと対照との間の差は、30~40分で明白である。
【
図37】
図37は、ETSが、アンドロゲンスクリーニングアッセイの動的範囲を増加させることを示す。反応は、12.5ngのERGタンパク質が添加されて、表1の通りに構築された。組換えアンドロゲン受容体は、ビヒクル対照(5%エタノール)と比較して、250μMのテストステロンを用いて活性化された。第一の反応では、アンドロゲン受容体/HSP90は、ERGタンパク質の存在を全く伴うことなく、活性化された。第二の反応では、アンドロゲン受容体/HSP90は、ERGタンパク質の存在下で活性化された。ERGタンパク質は、T7活性の抑制を増加させ、このことは、アンドロゲン受容体はDNAとより強力に相互作用して、T7RNAポリメラーゼの進行を阻害することを示唆する(n=1)。
【
図38】
図38は、最小の3:1のERG:アンドロゲン受容体の比が、アンドロゲン受容体単独よりも、T7活性の遮断においてより効果的であることを示す。反応は、DNA配列88(100ng)、T7RNAポリメラーゼ(8U/μL)、T7反応緩衝液、アンドロゲン受容体(50ng)及びHSP90(100ng)を用いて確立された。アンドロゲン受容体は、テストステロン(250μM)を用いて又はビヒクル対照として(5%エタノール)活性化された。T7反応液を37℃で1時間インキュベートし、その後、RNA MangoIIは、フルオロフォアチアゾールオレンジ-1(TO-1)への結合によって検出された。
【
図39】
図39は、T7結合部位とアンドロゲン応答配列の間のスペーサー長が、アンドロゲンの検出に影響を及ぼすことを示す。これはT7RNAポリメラーゼがプロモーターに結合し、その後、約7bp進むためのようである。この点で、T7RNAポリメラーゼは、DNA鋳型から解離し得るか、又は継続され伸長工程に至り得る。配列番号86によって定義されるスペーサーは、T7プロモーター配列から15bpにアンドロゲン応答配列の配列を保持し、T7RNAポリメラーゼが、7bpの開始工程を通り過ぎ継続することで、15bpの伸長工程へと進むことを可能とするであろう。配列番号74によって定義されたスペーサーは、T7プロモーターから12bpにアンドロゲン応答配列の配列を保持し、これも良好な転写比を可能とするが、しかしながら、アンドロゲンの検出範囲は、15bpのスペーサー長と比較してより感度が低い。配列番号87は、9bpのスペーサーをコードし、これは良好な、T7により媒介される転写又はアンドロゲンの検出を支持しない。
【
図40】
図40は、Pc-3アンドロゲン受容体細胞溶解液が、無細胞アッセイにおいて組換えアンドロゲン受容体を代用することができることを示す。反応は、ビヒクル対照(100%のT7RNAポリメラーゼ活性として設定)としてのエタノールを用いて、テストステロン(250μM、黒色の棒グラフ)、又はアンダリン(1μM、白色の棒グラフ)によって活性化された、アンドロゲン受容体を用いて、実施例10に従って調製された。Pc-3溶解液を、アンドロゲン受容体を発現しているHEK293細胞溶解液(40ng、社内で調製)、商業的に入手されたHEK293細胞溶解液(40ng、Origene社)又は組換えアンドロゲン受容体タンパク質(40ng、rAR、Creative Biomart社)と比較した。アンドロゲン受容体調製物と組換えアンドロゲン受容体との間の有意差は全く測定されなかった(ダネット多重比較検定と一元配置分散分析)。
【
図41】
図41は、Pc-3アンドロゲン受容体溶解液が、用量依存的にテストステロンを検出することができることを示す。反応は、500~31.25μMの濃度のテストステロンとビヒクル対照(100%のT7RNAポリメラーゼ活性として設定される)としてのエタノールによって活性化された、25ngのPc-3アンドロゲン受容体溶解液を用いて、実施例10に従って、調製された。
【
図42】
図42は、Pc-3アンドロゲン受容体溶解液が、一連のアンドロゲン分子を検出することができることを示す。反応は、ビヒクル対照(100%のT7RNAポリメラーゼ活性として設定される)としてのエタノールを用いて、250、125及び62.5μMのテストステロン(用量T)、又は2.5及び1μMのアンダリン(用量A)によって活性化された、40ngのPc-3アンドロゲン受容体溶解液を用いて、実施例10に従って、調製された。
【
図43】
図43は、Pc-3アンドロゲン受容体溶解液が、一連のテストステロン調製物を検出することができることを示す。反応は、ビヒクル対照(100%のT7RNAポリメラーゼ活性として設定される)としてのエタノールを用いて、250、125及び62.5μMのテストステロン(用量T)、又は2.5及び1μMのアンダリン(用量A)によって活性化された、40ngのPc-3アンドロゲン受容体溶解液を用いて、実施例10に従って、調製された。T=テストステロン。
【
図44】
図44は、テストステロン検出能に対する、T7プロモーターとアンドロゲン受容体結合部位との間のスペーサー長の効果を示す。反応は、テストステロン(250μM、黒色の棒グラフ)及びビヒクル対照(100%のT7RNAポリメラーゼ活性として設定される)としてのエタノールによって活性化された組換えアンドロゲン受容体(rAR、Creative Biomart社)を用いて、実施例11に従って、調製された。MangoIIの生成に由来する生の蛍光出力によって決定されるようなエタノール:テストステロン(E:T)のT7RNAポリメラーゼ活性が計算された。より高いエタノール:テストステロンの比は、アンドロゲン受容体によるT7RNAポリメラーゼの遮断のより良好な効力を示す。試験されたDNA配列は、12bp、15bp、18bp、21bp、24bp、27bp、及び2bpのスペーサーであった(表14参照)。ダネット多重比較検定と一元配置分散分析を、統計比較のために使用した。
【
図45】
図45は、アンドロゲンスクリーニングアッセイに対する、アンドロゲン応答配列のフランキング配列又はスペーサー配列の効果を示す。反応は、テストステロン(250μM、黒色の棒グラフ)及びビヒクル対照(100%のT7RNAポリメラーゼ活性として設定)としてのエタノールによって活性化された組換えアンドロゲン受容体(rAR、Creative Biomart社)を用いて、実施例12に従って、調製された。MangoIIの生成に由来する生の蛍光出力によって決定されるようなエタノール:テストステロン(E:T)のT7RNAポリメラーゼ活性が計算された。より高いE:Tの比は、アンドロゲン受容体によるT7RNAポリメラーゼの遮断のより良好な効力を示す。試験されたDNA配列は、配列番号94(フランキングしている塩基対はAに変更)、配列番号95(フランキングしている塩基対はTに変更)、配列番号96(5’アンドロゲン応答配列のスペーサーはTに設定)、配列番号97(5’及び3'のアンドロゲン応答配列のスペーサーは、それぞれT及びAに設定)であった(表15参照)。標準的なアンドロゲン応答配列及びそのフランキングしている塩基対になされた全ての変更のためにテストステロン:エタノールの比は有意に低下した。ダネット多重比較検定と一元配置分散分析が、統計比較のために使用された。
【0062】
一般的な定義
特記しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、技術分野(例えば免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、分子遺伝学、合成生物学及び生化学)における通常の技術者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有するとされるだろう。
【0063】
本明細書に開示された一連の数字(例えば1~10)への言及はまた、その範囲内の全ての関連した数字(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9及び10)及びまた、その範囲内の任意の有理数の範囲(例えば2~8、1.5~5.5、及び3.1~4.7)、及びそれ故、本明細書において明確に開示された全ての範囲の全ての部分範囲への言及も取り込むことを意図する。これらは具体的に意図するものの単なる例であり、列挙された最低値と最高値の間の数値の全ての可能な組合せが、同様に本出願に明確に記載されていると考えられる。
【0064】
「及び/又は」、例えば「X及び/又はY」という用語は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味又は片方の意味についての明確な支持を与えると捉えられるだろう。
【0065】
「1つの(a)」又は「1つの(an)」という用語は、1つ又は1つを超える明記された実体を指し;例えば、「受容体(a receptor)」又は「核酸分子(a nucleic acid molecule)」は、1つ以上の受容体若しくは核酸分子、又は少なくとも1つの受容体若しくは核酸分子を指す。したがって、「1つの(a)」又は「1つの(an)」、「1つ以上」及び「少なくとも1つの」という用語は本明細書において同義語として使用することができる。
【0066】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」という単語又は変化形、例えば「含む(comprises)」又は「含んでいる」は、記載の要素、整数、若しくは工程、又は一群の要素、整数、若しくは工程の包含を意味するが、任意の他の要素、整数若しくは工程、又は一群の要素、整数若しくは工程の除外を意味しないことが理解されるだろう。
【0067】
本明細書全体を通して、特記されない限り、又は内容から他が必要とされない限り、単一の工程、問題の組成物、一群の工程、又は問題の一群の組成物は、1つ及び複数(すなわち1つ以上)の、それらの工程、問題の組成物、一群の工程、又は問題の一群の組成物を包含すると捉えられるだろう。
【0068】
選択された定義
本発明の目的のために、以下の用語は、以下の意味を有するだろう。
【0069】
本明細書において使用する「試験キット」という用語は、本明細書に記載の本発明に従ってアッセイ及び方法を実施するための様々な成分を含む製品を指す。
【0070】
本明細書において使用する「ステロイドホルモン受容体」又は「SHR」という用語は、リガンド(該リガンドは、ステロイドホルモン受容体を活性化することができる)に選択的に結合する、タンパク質又はポリペプチド(組換えポリペプチドを含む)を指し、これには、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、鉱質コルチコイド受容体、及び糖質コルチコイド受容体が挙げられるがこれらに限定されない。典型的には、ステロイドホルモン受容体は、リガンド結合ドメイン、活性化ドメイン、及びデオキシリボ核酸結合ドメインを含む。この定義によると、「ステロイドホルモン受容体」は場合により、ステロイドホルモン受容体を、リガンドによる活性化のために折り畳まれた状態及びホルモン応答性状態に保つことを助ける他のコリプレッサー(これには、(例えば)熱ショックタンパク質などが含まれる)を含んでいてもよい。
【0071】
本明細書において使用する「ステロイドホルモン受容体共調節因子」という用語は、「ステロイドホルモン受容体アクチベーター」及び/又は「ステロイドホルモン受容体リプレッサー」を含む。
【0072】
本発明に記載の「ステロイドホルモン受容体リプレッサー」は、リガンドによって置換されるまで(この時点でステロイドホルモン受容体は活性化状態となる)、ステロイドホルモン受容体を不活性化状態に保つタンパク質又は分子を含む。本発明に記載のステロイドホルモン受容体リプレッサーの例としては、熱ショックタンパク質90(HSP90);HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)の複合体;HSP90とHSP70と熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90とHSP70とHSP40とp23の複合体;HSP90とHSP70とHSP40とp23と熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90とHSP70とHSP40とp23とHopと48kDのHipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90とHSP70とHSP40とp23とHopとHipとp60の複合体;及び、HSP90とHSP70とHSP40とp23とHopとHipとp60とFKBP52の複合体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0073】
本発明に記載の「ステロイドホルモン受容体アクチベーター」は、ステロイドホルモン受容体を活性化状態に保つ、及び/又は活性化されたステロイドホルモン受容体とその相補的応答要素の間の結合相互作用を増強する、タンパク質又は分子を含む。本発明に記載のステロイドホルモン受容体アクチベーターの例としては、赤芽球形質転換特異的転写因子ERG;ステロイド受容体コアクチベーター、すなわちSRC-1、SRC-2、SRC-3を含むp160コアクチベーター;Rho GTPアーゼグアニンヌクレオチド交換因子であるVav3;E2F1;ATAD2;CBP/p300;Leupaxin;FHL2;ARAファミリータンパク質;GRIP1;BRAC1;及びZac1が挙げられるがこれらに限定されない。当業者は、特定の細胞型が、特定のサブタイプのステロイドホルモン受容体アクチベーターを発現し、そして、これらの細胞は、コアクチベーターの内因性発現を増加させるように遺伝子的に改変されていてもよいか、又は目的の用途に応じて異なる種類のコアクチベーターを発現するように改変されていてもよいことを認識しているだろう。同じことが、受容体の種類(群)にも該当する。
【0074】
「リガンド」という用語は一般的に、受容体に結合する任意の分子を指し、そしてこれには、ステロイド、ポリペプチド、タンパク質、ビタミン、炭水化物、糖タンパク質、治療剤、薬物、グリコサミノグリカン、又はそれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。本明細書において使用する「リガンド」としては、ステロイドホルモン、例えば性ホルモン(エストロゲン、プロスターゲン、アンドロゲンなどを含むがこれらに限定されない)並びに天然及び合成の誘導体及び類似体及びそれらの代謝物、デザイナーステロイドホルモン、タンパク同化アンドロゲンステロイド、及び選択的アンドロゲン、プロゲスターゲン、及びエストロゲン受容体モジュレーター、現在公知であるもの、及び開発されることが期待されるもの、又は生物学的試料中に天然にみられるものが挙げられるがこれらに限定されない。本明細書において同義語として使用される「受容体-リガンド複合体」及び「活性化されたステロイドホルモン受容体」という用語は、リガンドが結合したステロイドホルモン受容体を指し、ここでのステロイドホルモン受容体は、リガンドと結合すると構造的変換を受けて、その後、活性化形であると言われる。本明細書に記載のような受容体-リガンド複合体としては、リガンドが結合したホルモン受容体の二量体(すなわちHR-L)2)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0075】
本明細書において使用する「AAS」という用語は、タンパク同化アンドロゲンステロイドを指す。これらの化合物は、アンドロゲン受容体に結合して、活性化されたアンドロゲン受容体-リガンド複合体を形成することができる。
【0076】
本明細書において使用する「SARM」という用語は、選択的アンドロゲン受容体モジュレーターを指す。これらの化合物も、アンドロゲン受容体に結合して、活性化されたアンドロゲン受容体-リガンド複合体を形成することができる。
【0077】
本明細書において使用する「EtOH」という用語は、エタノールを指し、これは本明細書に記載の様々な実験においてビヒクル対照として広く使用されている。
【0078】
本明細書において使用する「ゲノム応答」という用語は、活性化されたステロイドホルモン受容体(又は受容体-リガンド複合体)が、その対応する核酸応答配列に選択的に結合し、下流遺伝子の転写を活性化又は抑制する能力を指す。細胞内環境では、リガンドが結合した受容体は、核酸応答配列に結合し、外来刺激(すなわちリガンドの存在)に応答して遺伝子のスイッチをオン又はオフにする。本発明に記載の試験キット、アッセイ及び方法は、細胞内環境で、細胞系の態様を模倣したレポーターに基づいたフレームワークを提供することによって、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起するだろう、リガンドを同定するために開発された。
【0079】
本明細書において使用する「ステロイド代謝機構」という用語は、任意の酵素を指し、リガンドを生理学的に不活性な形態から生理学的に活性な形態へ、又は生理学的に活性な形態からより生理学的に活性な形態へ、又は生理学的に活性な形態からあまり生理学的に活性ではない形態へ、又は生理学的に活性な形態から生理学的に不活性な形態へと変換するのに十分な酵素の組合せを含む。
【0080】
本明細書において使用する「検出手段」という用語は、活性化されたステロイドホルモン受容体と核酸応答配列との間の結合相互作用の検出に適応した、任意の装置、機器、又は機器構成を指す。検出手段の例としては、光学的方法、分光法、可視分光法、ラマン分光法、紫外分光法、表面プラズマ共鳴法、電子化学的方法、インピーダンス、抵抗、静電容量、質量変化、機械的共振の変化による機械的感知、電気泳動、ゲル電気泳動、ゲル遅延度、イメージング、蛍光及び蛍光共鳴エネルギー移動、ポリメラーゼ連鎖反応などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0081】
本明細書において使用する「核酸配列」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)配列、リボ核酸配列(RNA)、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)及び相補的DNA(cDNA)を指し、2つ以上連続したヌクレオチド配列を含み、これはポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドとも呼ばれる。核酸配列は、一本鎖であっても、又は二本鎖であってもよい。
【0082】
本明細書において使用する「レポーター構築物」という用語は、RNAをコードしているレポーター分子をコードしている核酸配列を指し、その発現をアッセイし得;このようなRNAとしては、フルオロフォア結合性アプタマー、又は合成RNA若しくはmRNAが挙げられるがこれらに限定されない。さらに、レポーター遺伝子は、その発現産物がRNA分析によって検出され得る、関心対象の任意の遺伝子を包含し得る。
【0083】
本明細書において使用する「プロモーター」という用語は、作動可能に連結され転写された配列の5'末端の、転写開始部位の近くに位置する、核酸配列である。該プロモーターは、作動可能に連結された遺伝子の転写の調節のために相互作用する、1つ以上の調節配列を含み得る。本発明に記載のプロモーターの例としては、T7、T3及びSP6バクテリオファージプロモーター又は開始配列が挙げられるがこれらに限定されない。「プロモーター」、「プロモーター配列」、「イニシエーター配列」又は「開始配列」という用語は、本明細書全体を通して同義語として使用され得、同じことを意味する。
【0084】
本明細書において使用する「T7」又は「T7ポリメラーゼ」という用語は、T7RNAポリメラーゼ酵素を指す。
【0085】
本明細書において使用する「作動可能に連結された」という用語は、第一の配列の活性の調節が、第二の配列に対する効果を誘導するように並べられた、2つの巨大分子配列のことをいう。このように、プロモーター配列の活性の調節は、作動可能に連結されたレポーター構築物の発現を改変及び/又は調節するために使用され得る。例えば、プロモーター配列に作動可能に連結されているレポーター構築物の転写は、プロモーターの活性を「活性化」する因子によって誘導され;プロモーター配列に作動可能に連結されているレポーター構築物の転写は、プロモーターの活性を「遮断」する因子によって阻害される。したがって、プロモーター領域は、このようなレポーター構築物の転写が、プロモーターの活性によって影響を受ける場合に、レポーター構築物に作動可能に連結されている。
【0086】
本明細書において使用する「発現」という用語は、遺伝子内にコードされた情報が発現されるプロセスを指す。遺伝子がタンパク質をコードしている場合、発現は、DNAからmRNAへの転写、(必要であれば)mRNAから成熟mRNA産物へのプロセシング、及び成熟mRNAからタンパク質への翻訳の両方を含む。核酸分子、例えばデオキシリボ核酸(DNA)又は遺伝子は、該分子が、ポリペプチドのコード配列と、適切な宿主環境においてDNAに含まれる遺伝子情報をタンパク質産物へと転写、プロセシング及び翻訳する能力を与える発現制御配列とを含む場合、そしてこのような発現制御配列が、ポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列に作動可能に連結されている場合、ポリペプチド(又はタンパク質)を「発現することができる」と言われる。
【0087】
本明細書において使用する「試料」という用語は、リガンドの存在について試験することが望ましい、任意の試料を指す。「試料」及び「試験試料」という用語は、本明細書において同義語として使用される。
【0088】
本明細書において使用する「相対効力」又は「RP」という用語は、リファレンス化合物と比較した、試験化合物によって示される生物学的活性の乗数を指し、ここでの生物学的活性は、(例えば)本明細書に記載のアッセイ及び試験キットを使用して測定されるような、該化合物が、ステロイドホルモン受容体に結合し活性化する能力によって定義される。相対効力が1を超える場合、試験化合物は、リファレンス化合物と比較して、その生物学的活性の点からより効力があり;ここでの相対効力が1未満である場合、試験化合物は、リファレンス化合物と比較して、その生物学的活性の点から、より効力が低く;ここでの相対効力が1に等しい場合、試験化合物及びリファレンス化合物は、それらの生物学的活性の点から同等の効力がある。
【0089】
本明細書において使用する「活性化係数」又は「AF」という用語は、(例えば)生理学的に不活性な状態から生理学的な活性な状態への、又は生理学的にあまり活性ではない状態から生理学的により活性な状態への、試験化合物の代謝変換の尺度に関する。1を超える活性化係数は、試験化合物が、アッセイにおける代謝機構の存在下で、生理学的により活性な状態への代謝変換を受けたことを意味する。
【0090】
「リファレンス閾値」又は「リファレンス標準」という用語は、同義語として使用され、(例えば)試験試料の非存在下において、又は試験試料とステロイドホルモン受容体の非存在下において測定されたアッセイ活性のレベルを意味し得る。本明細書に記載の本発明による特定の例では、リファレンス閾値又はリファレンス標準は、試験試料の代わりにエタノールを使用して決定される。リファレンス閾値は、任意の基線の活性、すなわち標的リガンドの非存在下におけるアッセイのシグナルを確立することを目的とする。
【0091】
詳細な説明
本発明は、ステロイドホルモン受容体を活性化し、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について、試料をスクリーニングするのに有用な試験キット、アッセイ及び方法を提供する。
【0092】
本発明に記載の特定の例では、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法は、例えば、被験体から得られた試料のアンドロゲン活性及び/又はエストロゲン活性を測定することによって、ヒト又は動物の被験体のホルモン状態を決定するのに有用である。その後、この情報は、例えば、該被験体が、がんを有しているか若しくは発症するリスクがあるかを決定するために、又は内分泌問題を調べるために、又は例えば閉経などの加齢に伴うステロイドホルモンプロファイルの変化のモニタリングのために、又はホルモン補充療法若しくはホルモン阻害療法の有効性を評価するために使用され得る。
【0093】
本発明に記載の他の例では、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法は、禁止された添加物について、又はホルモン感受性がんを促進する可能性のある植物性エストロゲン若しくは外因性アンドロゲン若しくは外因性エストロゲンを含むがこれらに限定されない、健康に有害である可能性のある天然活性化因子について、食品及び健康食品サプリメントをスクリーニングするのに有用である。
【0094】
酵素により媒介される活性のアッセイ及び試験キット
本明細書に記載の試験キット及び方法が基本としている、本発明に記載のアッセイは、検査中の試料に由来するリガンドの結合を通したステロイドホルモン受容体活性化の原則に基づいて機能する、基本的に、活性に基づいたアッセイである。ステロイドホルモン受容体の活性化は、リガンドが受容体に結合し、受容体タンパク質の三次構造のコンフォメーション変化を誘導する場合に起こり、これは、受容体-リガンド複合体(本明細書において「活性化されたステロイドホルモン受容体」とも呼ばれる)が、その後、核酸応答配列に結合し、RNAポリメラーゼに影響を及ぼし、いわゆる「ゲノム応答」を惹起することができることを意味する。換言すれば、細胞のゲノムに由来する遺伝子の発現をアップレギュレート又はダウンレギュレートし、その後、それにより生理学的効果をもたらす能力。検査中の試料中のステロイド活性又はステロイド様活性を有するリガンドの存在を検出する代理手段としての、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法によって復元されたインビトロでのシステムで測定されるのは、活性化されたステロイドホルモン受容体と核酸応答配列との間のこの結合相互作用である。
【0095】
重要なことには、このことは、本発明に記載の試験キット及びアッセイが、(例えば)「デザイナー薬物」などの未知の構造のリガンドによって惹起されるステロイドホルモンの生理活性/活性を検出する能力を有することを意味する。歴史的には、これは可能ではなかった。なぜなら、従来の研究室の検査機器、例えばガス/液体クロマトグラフィー及び質量分析計は、調査される分子の構造の事前の知識を必要とするからである。
【0096】
以前に記載されているような先行技術のアッセイに伴う限界に対処するために、出願人は、酵素又は蛍光により媒介されるレポーターの読み出し情報を含む、様々な世代のインビトロでの無細胞の生理活性アッセイを開発した。これらのアッセイは、インビトロで、標的リガンドの検出を容易にするために、インビボの必須ホルモンシグナル伝達成分を構築することによって、生物学的システムを模倣する。必須アッセイ成分は、例えば、ステロイドホルモン受容体、ステロイドホルモン受容体共調節因子(群)、及び標的リガンドの存在下のみで、結合される/活性化される特定のDNA結合モチーフを含むレポーター構築物を含む。
【0097】
例えば、PCT/NZ2018/050158は、RNAポリメラーゼIIを含む、酵素に基づいた転写及び/又は翻訳アッセイを記載する。しかしながら、これらのアッセイに伴う固有の限界は、レポーター遺伝子の転写又は翻訳を駆動するのに必要とされる酵素及び共調節因子(群)の両方の入手源として、(例えば)哺乳動物又は酵母の起源に由来する細胞抽出物を提供する必要性があることである。
【0098】
PCT/NZ2020/050046に記載の出願人の次世代のアッセイは、反応混液中に単一サブユニットポリメラーゼを使用することによって、細胞由来抽出物の必要性を排除した。例えば、T7RNAポリメラーゼは、RNAポリメラーゼIIとは異なり、組換え産生され得る。結果として、低下した分子的複雑さのレベルは、アッセイの特異性/感度が有意に増強したことを意味した。なぜなら、必須アッセイ成分間の分子化学量論を正確に制御することができたからである。
【0099】
低下した分子の複雑さに伴う利点にも関わらず、PCT/NZ2020/050046に記載のアッセイの限界は、精製されたステロイドホルモン受容体を提供する必要性があることである。
【0100】
組換えステロイドホルモン受容体タンパク質は、スケールアップした生産に必要とされる量で生産するには高価である。低温で保存される必要があるために取り扱いも困難であり、その大きなサイズにより、分解されやすい。例示にすぎないが、アンドロゲン受容体(AR)タンパク質は、約110kDaの大きなタンパク質である。遺伝子的に修飾された酵母、昆虫、細菌、又は哺乳動物の宿主細胞による発現は、他の細胞内タンパク質からステロイドホルモン受容体を精製するために複雑な精製技術を必要とし、このために、完全長で活性なタンパク質が確実に回収されることはより困難となる。通常、ステロイドホルモン受容体の発現及び精製は、努力を要する操作中の、タンパク質の安定性を増強するためにリガンドの存在下において実施される。したがって、組換えステロイドホルモン受容体タンパク質の購入又は生産にはかなりの費用がかかり、反応に添加されたリガンドがステロイドホルモン受容体中に存在する可能性があり、これにより、上昇したホルモンレベルが報告されるか、又は実際に偽陽性(アスリートの試料の検査の場合)となるだろう。
【0101】
本発明は、一部には、特定のステロイドホルモン受容体(群)及び/又は細胞特異的共調節因子(群)を発現する天然に存在する細胞株(例えば、アンドロゲン受容体を発現するLnCaP細胞;エストロゲン受容体α及びエストロゲン受容体βを発現するHeLa細胞)、又は目的の用途に応じて関心対象のステロイドホルモン受容体タンパク質(群)及び/又は共調節因子(群)を発現するように遺伝子的に改変された修飾された細胞株に由来する細胞溶解液を含む、試験キット、アッセイ及び方法を提供することによって、これらの限界に対処することを探索する。ステロイドホルモン受容体溶解液の使用は、スクリーニングアッセイの発生し得る費用を顕著に減少させる。なぜなら、大量かつ費用のかかる精製工程を全く必要としないからである。
【0102】
例示にすぎないが、真下に言及された実験に使用された原型アッセイは、T7ポリメラーゼを含み、その活性は、アンドロゲン受容体に結合するリガンドによって、活性化されるよりもむしろ、減少又は阻害される。
【0103】
図18~20と併せて読んで、実施例7を参照すると、出願人は、T7ポリメラーゼにより媒介されるMangoIIRNAアプタマーの蛍光の読み出し情報を含む、原型アンドロゲンアッセイにおいて、アンドロゲン受容体を含有している2つの異なる市販の細胞溶解液を試験した(アッセイ成分については表11を参照)。
【0104】
これらのデータは、試験された各々のアンドロゲン受容体細胞溶解液が、アンドロゲン受容体に結合し活性化することが広く知られているリガンドであるテストステロンの存在下において、T7RNAポリメラーゼ活性を適切に抑制したことを示す。
【0105】
バッチ生産における相互間の変動を探索するために、その後、様々な社内製のアンドロゲン受容体溶解液を、ヒトアンドロゲン受容体発現プラスミドを用いて安定にトランスフェクトしておいたヒト胚性腎臓細胞(例えばHEK293細胞;実施例8参照)から生成した。これらのデータはまた、
図21~22と併せて読まれる実施例7にも提示され、アッセイの性能における相互間の変動は最小(すなわち16%)であったことを実証する。相対的な性能についての、様々なアンドロゲン受容体細胞溶解液のスクリーニングアッセイが、組換えアンドロゲン受容体を使用したアッセイと同様に実施された(
図22)。
【0106】
実施例10及び
図40を参照して、出願人はさらに、代替的な細胞源を起源とする細胞溶解液の適切性を実証する。これらのデータは、アンドロゲン受容体を発現しているPc-3細胞に由来する細胞溶解液が、本明細書に記載のインビトロアッセイにおいて効率的に機能し、組換えアンドロゲン受容体の代用品として使用され得ることを示す。例示にすぎないが、
図40は、アンドロゲン受容体を発現しているPc-3細胞が、組換えアンドロゲン受容体、及びアンドロゲン受容体を発現することが知られている社内製(「HEK293」)又は市販の(「Origene社」)HEK293細胞に由来する細胞溶解液と類似したレベルのT7活性を惹起することができたことを示す。
【0107】
図41に提示されたデータはさらに、アンドロゲン受容体の入手源としてのPc-3細胞溶解液の適切性を実証し、ここでは、上昇した濃度のテストステロンは、これらの実験に使用されたレポーター構築物の低下した蛍光によって測定されるように、より低いT7ポリメラーゼ活性をもたらす。ここでも、実施例10を参照されたい。最後に、
図42~43に提示されたデータは、一連のタンパク同化アンドロゲンステロイド(
図42)及びテストステロンエステル(
図43)の検出のためのアンドロゲン受容体の入手源としてのPc-3細胞溶解液の有用性を実証する。
【0108】
組換え受容体タンパク質の入手源に対して、ステロイドホルモン受容体の入手源として細胞溶解液を使用することの特有のリスクは、レポーター構築物内に位置するホルモン応答配列の受容体交差活性化の可能性である。例えば、細胞溶解液内に見られる活性化された糖質コルチコイド受容体(GR)は、レポーター構築物内のアンドロゲン応答配列に結合し活性化する可能性を有し、これにより、アンドロゲンリガンドの検出について偽陽性の結果をもたらす。しかしながら、
図23と併せて読まれる実施例7に提示されたデータは、デキサメタゾン(すなわちGRリガンド)の存在下で、試験されたHEK293細胞溶解液を使用して、糖質コルチコイド受容体によるアンドロゲン応答配列の活性化は全くなされなかったことを実証する。
【0109】
アンドロゲンスクリーニングアッセイにおける別の可能性のある交絡因子は、エストラジオール(E2)である。標準的な細胞培養条件では交差活性化に十分なレベルのエストラジオール又はあらゆる他のエストロゲンを生成しないが、非生理学的濃度では、エストラジオールは、アンドロゲン受容体を活性化し得る。実際に、
図23も併せて読まれる実施例7に提示されたデータは、エストラジオール(1nM)が、T7活性を抑制することに失敗したことを実証する。したがって、アンドロゲン受容体細胞溶解液アッセイで観察されたT7活性のあらゆる減少は、アンドロゲンリガンドの存在に起因し、これは、
図23のテストステロンデータ点の比較によって確認される。
【0110】
最後に、
図24~26と併せて読まれた実施例7に提示された残りのデータは、アンドロゲン細胞溶解液スクリーニングアッセイが、タンパク同化アンドロゲンステロイド(AAS)並びに選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARMS)の存在を正確に検出し(
図24)、ウマ血漿試料(
図25)及びヒト血漿試料(
図26)中のアンドロゲン生理活性を決定することができたことを確認する。
【0111】
ステロイドホルモン受容体タンパク質の入手源として細胞溶解液を使用することには数多くの利点がある。製造費用削減の他に、ステロイドホルモン受容体タンパク質の入手源としての細胞溶解液の使用は、多種多様の宿主細胞を、検査中のステロイドホルモンの生物機能に応じて、様々なステロイドホルモン受容体のアイソタイプ又は変異体を発現するように遺伝子的に改変し得ることを意味する。例えば、その相補的応答配列に対して優れた親和性を有するステロイドホルモン受容体タンパク質、又はそのリガンドに対して優れた親和性を有するステロイドホルモン受容体タンパク質を含む、細胞溶解液を産生することによって。したがって、記載の試験キット及びアッセイ法における細胞溶解液の使用は、(例えば)スポーツドーピング用途に加えて、臨床応用(群)にも広範に及び得る。
【0112】
宿主細胞はまた、複数のステロイドホルモン受容体(例えばアンドロゲン受容体とエストロゲン受容体)を同時発現するように、又は、細胞溶解液中に存在する場合、有利には本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法の性能を最適化するのを助ける所望の共調節因子タンパク質を同時発現するように遺伝子的に改変され得る。
【0113】
さらに、全ての細胞溶解液は、ステロイドホルモン共調節因子タンパク質を含むだろう。(例えば)アンドロゲン受容体の場合、30個を超える異なる共調節因子タンパク質が存在する。文献において、これらの共調節因子タンパク質の中のあるサブセットが「中心」であり、全ての細胞型において発現されている。しかしながら、共調節因子タンパク質の別のサブセットは、細胞型に特異的である。したがって、本発明はさらに、受容体及び共調節因子タンパク質の両方を過剰発現するための、特定の細胞型の遺伝子操作を考える。
【0114】
上記に言及された様々な実験が、アンドロゲンスクリーニングアッセイを使用した細胞溶解液のアプローチの検証を含むが、当業者は、相補的なアッセイのフレームワークが確立されたならば、これらの原則が、他のステロイドホルモンリガンドの検出にも同等に適用されるであろうことを理解するだろう。例えば、エストロゲンリガンドの検出のための、(例えば)エストラジオール-エストロゲン受容体複合体によってのみ結合/活性化されるであろうエストロゲン応答配列を含むレポーター構築物と組み合わせた、エストロゲン受容体細胞溶解液(例えばエストロゲン受容体発現プラスミドで形質転換された細胞から得られた)を含む類似のスクリーニングアッセイ。
【0115】
図18、22及び25に提示されたデータによって証明されるように、組換えアンドロゲン受容体を含むアッセイと比較した、細胞溶解液スクリーニングアッセイにおけるアンドロゲンリガンドの検出は、全体的により感度が低い。しかしながら、重要なことには、細胞溶解液スクリーニングアッセイは依然として、例えば「ダイリュート アンド シュート(dilute and shoot)」アッセイなどの現場での適用における使用を保証するのに十分なレベルの感度に到達している。
【0116】
細胞溶解液スクリーニングアッセイによって付与される別の利点は、宿主細胞による組換え発現のための変異/デザイナーステロイドホルモン受容体を選択できることである。次いで、これにより、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法の、ステロイドホルモン生物機能へのより広範な応用、及びそこでの商業的応用が可能となる。
【0117】
細胞溶解液は、ステロイドホルモン受容体発現プラスミドの一過性又は安定な発現から調製され得、これは例えば標的リガンドに対するより強い結合親和性を有する特定の受容体のスクリーニングアッセイにおける使用を可能とするだろう。あるいは、(例えば)アンドロゲン受容体の場合、該受容体は、それがアンドロゲン非感受性症候群、又は部分的なアンドロゲン非感受性症候群を示すように改変されていてもよく、これにより遺伝子スクリーニングの確立が可能となる。
【0118】
細胞溶解液は、種特異的なステロイドホルモン受容体発現プラスミドの一過性又は安定な発現から調製され得、これは例えばウマ細胞において発現されたウマアンドロゲン受容体の発現を可能とするだろう。あるいは、イヌ細胞において発現されるイヌアンドロゲン受容体。これは、動物の診断への応用及び/又はアスリート動物の生物学的試料中のデザイナーステロイドの検出に特に有用であり得る。
【0119】
細胞溶解液アプローチによって付与される別の利点は、例えば、ステロイドホルモン受容体及び1つ以上のステロイドホルモン受容体共調節因子、(例えば)HSP90及び/又はERGを発現している、共トラスフェクトされた細胞を調製できることである。本明細書において確立されているように、これらの補因子タンパク質は、本明細書に記載の様々なスクリーニングアッセイにおける、ステロイドホルモン受容体の挙動の調節を助ける。
【0120】
したがって、本発明の1つの態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできるステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)(a)RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド-受容体複合体が結合することのできる、応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及び(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)場合により、RNAポリメラーゼ
を含む。
【0121】
本発明のこの態様による一例では、細胞溶解液はさらに、定義によって、本明細書において定義されているような少なくとも1つのコアクチベータータンパク質及び/又は少なくとも1つのコリプレッサータンパク質を含む、少なくとも1つの共調節因子タンパク質を含む。
【0122】
出願人はまた、T7プロモーター認識配列とアンドロゲン応答配列間の距離がどの程度までアッセイの性能に影響を及ぼしたかを調べた。
図39は、プロモーター配列の近くにアンドロゲン応答配列を配置することが、開始工程を遮断することによって、より実質的にT7を阻害し得ることを実証する。15bpのスペーサー長(配列番号86)を、9bpのスペーサー長(配列番号87)及び12bpのスペーサー長(配列番号88)と比較した。12bpのスペーサー(配列番号88)は15bpのスペーサー(配列番号86)と同様にT7活性を支持したことが示されたが、テストステロンによって誘導されたT7活性の遮断の抑制においてそれほど効果的ではなかった(すなわち、配列番号86の勾配と配列番号88の勾配を比較)。9bpのスペーサー(配列番号87)は、T7活性を支持するのに非効率的であることが示され(より低い蛍光出力)、T7プロモーターの3'末端とアンドロゲン応答配列との間がたった9bpであった場合には、テストステロンにより誘導されるT7活性の遮断は消失した。15bpのスペーサー(並びに27bpのスペーサー;以下を参照)は、物理的な遮断を許容するための、T7酵素との結合とアンドロゲン受容体との結合の間の適切な空間を提供する。
【0123】
最適なスペーサー長のさらなる調査は、
図44と併せて読まれる実施例11に提示されている。具体的には、これらのデータは、2bp、15bp及び27bpのスペーサー長は、より高いエタノール:テストステロン比をもたらし、これらは、(例えば)12bpのスペーサー長と比較して、及びより程度は低いが18bp、21bp及び24bpのスペーサー長と比較して、アンドロゲン受容体によるT7RNAポリメラーゼの遮断のより高まった有効性を示した。しかしながら、(例えば)12bp、18bp、21bp及び24bpのスペーサー長は依然として、十分な受容体により媒介されるT7RNAポリメラーゼ活性の遮断を促進し、したがって、約2bpから約32bpというスペーサー長の定義を支持することが、当業者によって認識されるだろう。
【0124】
図44に提示されたデータは驚くべきことには、2bpのスペーサー長が、より長いスペーサーと比較して、受容体により媒介されるT7RNA活性の遮断の有意な増加をもたらしたことを実証する。110kDaのアンドロゲン受容体タンパク質が近くにあることは、T7RNAポリメラーゼがそのプロモーター配列に結合することを物理的に遮断するようである。しかしながら、距離が9bpである場合、T7RNAポリメラーゼ転写及びアンドロゲン受容体遮断問題の両方が存在することが分かり、このことは、近くにあることで、両方のタンパク質のいくらかの結合が可能となるが、それらは立体障害のためにそれらのDNAとの結合において不安定である可能性があることを示唆する。12~15bp及びそれ以上のbpの長さは、両方のタンパク質のより安定な結合を可能とし、これにより、アンドロゲン受容体は、DNA結合よりもむしろ、T7RNAポリメラーゼの転写を遮断し得る。
【0125】
したがって、本発明のこれらの態様及び他の態様に記載の一例では、核酸分子はさらに、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー(e)を含む。
【0126】
上記に参照されたデータは、本明細書に記載のアンドロゲンスクリーニングアッセイの脈絡において真実であるが、活性化されたステロイドホルモン受容体-リガンド複合体とその応答配列との間の結合相互作用の関与するスクリーニングアッセイは異なり得ることが可能である。
【0127】
したがって、出願人は、スペーサーが、約2ヌクレオチド長から約32ヌクレオチド長である核酸(すなわちDNA)配列を含み得ることを実証する。誤解を避けるために、「約2ヌクレオチド長から約32ヌクレオチド長」という用語は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、及び32ヌクレオチド長を意味することを意図する。当業者は、「約2ヌクレオチド長から約32ヌクレオチド長」の脈絡における「約」という用語は、(例えば)33、34、又は35又はそれ以上のヌクレオチド長であるスペーサー長を除外しないことを認識するだろう。実施例11に提示されたデータは、過度の実験又はさらなる進歩性を要求することなく、本明細書に定義された任意の所与のレポーター構築物についての、最適なスペーサー長を決定する方法を当業者に教示する。
【0128】
関連した例では、スペーサーは2ヌクレオチド長である。
【0129】
さらに関連した例では、スペーサーは15ヌクレオチド長である。
【0130】
別の関連した例では、スペーサーは27ヌクレオチド長である。
【0131】
スペーサーの役割は、RNAポリメラーゼプロモーター配列とステロイドホルモン応答配列との間の物理的障壁であり、これにより、T7RNAポリメラーゼは、重要な構造再構成工程(これにより、RNAポリメラーゼは、開始(結合)工程から伸長工程へと移行する)において妨害される。T7RNAポリメラーゼは、新生RNAが8~12ヌクレオチド長になった後に、高度に進行性の伸長工程に入る。T7RNAポリメラーゼが伸長への完全な移行を達成することを不可能とするのに十分に短いが、2つの大きなタンパク質(T7RNAポリメラーゼ及びステロイドホルモン受容体)が鋳型DNAに結合することを可能とし、そして結合したステロイドホルモン受容体が活性なT7RNAポリメラーゼを立体妨害することを可能とするに十分大きいスペーサー長を有するか、又はT7RNAポリメラーゼがそのプロモーター配列に結合することを不可能とするに十分に短いスペーサー長を有することが最適である。これは、アンドロゲン受容体/HSP90及びDNA鋳型及び試料が、T7RNAポリメラーゼより前に添加されるように、反応混液が規則正しい方法で確実に作製されることによって成し遂げられる。アンドロゲン受容体とT7RNAポリメラーゼをこのように時間的な隔てることにより、アンドロゲン受容体がまずDNA鋳型に結合することを可能とし、これにより、T7RNAポリメラーゼのその結合部位への接近を遮断する。
【0132】
さらに、スペーサーの配列組成は、その機能には重要ではなく、当技術分野において公知である任意の天然又は非天然のヌクレオチドを含有していてもよい。
【0133】
本明細書に提供された教示に基づいて、当業者が特定の構築物/アッセイ構築に基づいた最適なスペーサー長を決定することは(例えば、アッセイが、T3プロモーター配列に結合するT3ポリメラーゼを使用するように構成された場合)、通常の最適化であると考えられるだろう。
【0134】
本発明のこれらの態様及び他の態様による別の例では、試験キットはさらに、リボヌクレオチド三リン酸(NTP)を含む。
【0135】
本発明のこれらの態様及び他の態様によるさらに別の例では、試験キットはさらに、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできる、試料中のリガンドの存在をどのように決定するかの説明書を含む。
【0136】
また、本発明によって、上記の試験キットフレームワーク(群)を使用した、転写の減少又は阻害を測定することによる、ステロイドホルモンリガンドの検出法が考えられる。
【0137】
したがって、本発明のさらに別の態様では、試料中のリガンドを検出するためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(1)試料を、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成するステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)(a)RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド-受容体複合体が結合する、応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、及び(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)RNAポリメラーゼ;及び
(iv)リボヌクレオシド三リン酸
と接触させる工程;及び
(2)応答配列へのリガンド-受容体複合体の結合によって引き起こされる、レポーター構築物の転写の減少又は抑制を測定する工程、
ここで測定されたレポーター構築物の転写の減少又は抑制は、試料中のリガンドの検出を反映する、
を含む。
【0138】
ここでも、本発明のこの態様による一例では、細胞溶解液はさらに、定義によって、本明細書において定義されているような少なくとも1つのコアクチベータータンパク質及び/又は少なくとも1つのコリプレッサータンパク質を含む、少なくとも1つの共調節因子タンパク質を含む。
【0139】
ステロイドホルモン受容体の入手原として、(例えば)精製/組換えステロイドホルモン受容体ではなく、細胞溶解液を使用することは、反応混液中の受容体の絶対濃度が未知であることを意味する。しかしながら、最適な細胞溶解液の濃度は、経験的に導くことができる。例えば、
図19と併せて読まれる実施例7を参照すると、アンドロゲン受容体細胞溶解液(すなわちAR細胞溶解液)は、150ng/μLから6.25ng/μLまで滴定された。
図19に提示されたデータは、アンドロゲンリガンドの存在下においてT7RNAポリメラーゼ活性を適切に抑制するアンドロゲン受容体細胞溶解液の最適濃度は、40ng/μLであり、至適濃度範囲は30~50ng/μLであったことを示す。しかしながら、滴定範囲にわたってさえも、T7活性の測定可能な抑制が、テストステロンの存在下で観察された。
【0140】
したがって、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法によるさらなる例では、ステロイドホルモン受容体の濃度は、約1.0ng/μLから約300ng/μL、特に約5ng/μLから約200ng/μL、特に約6.25ng/μLから約150ng/μL、特に約10ng/μLから約100ng/μL、特に約20ng/μLから約80ng/μL、特に約30ng/μLから約70ng/μL、特に約30ng/μLから約60ng/μL、特に約30ng/μLから約50ng/μL、特に約40ng/μLである。
【0141】
当業者は、「約10ng/μLから約100ng/μL」という用語は、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、
53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び約100ng/μLを含むがこれらに限定されず、そして定義によって、「約20ng/μLから約80ng/μL」、「約30ng/μLから約70ng/μL」、「約30ng/μLから約60ng/μL」、及び「約30ng/μLから約50ng/μL」という用語を含む。
【0142】
したがって、本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法によるさらに別の例では:
(i)該試験キットはアンドロゲン受容体を含み、そしてアンドロゲン受容体の濃度は、約10ng/μLから約100ng/μLであり、これは約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95及び約100ng/μLを含むがこれらに限定されない;
(ii)該試験キットはエストロゲン受容体を含み、そしてエストロゲン受容体の濃度は、約10ng/μLから約100ng/μLであり、これは、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95及び約100ng/μLを含むがこれらに限定されない;
(iii)該試験キットはプロゲステロン受容体を含み、そしてプロゲステロン受容体の濃度は、約10ng/μLから約100ng/μLであり、これは、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95及び約100ng/μLを含むがこれらに限定されない;
(iv)該試験キットは鉱質コルチコイド受容体を含み、そして鉱質コルチコイド受容体の濃度は、約10ng/μLから約100ng/μLであり、これは、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95及び約100ng/μLを含むがこれらに限定されない;
(v)該試験キットは糖質コルチコイド受容体を含み、そして糖質コルチコイド受容体の濃度は、約10ng/μLから約100ng/μLであり、これは、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95及び約100ng/μLを含むがこれらに限定されない。
【0143】
上記の考慮にも関わらず、アッセイをあまりに多くの受容体で飽和させないように注意を払わなければならない。なぜなら、これはそれ自体で、リガンド-受容体複合体のその相補的応答配列に対する最適な結合を妨げる、熱力学的又は動力学的障壁を作り出す可能性があるからである。本明細書に提供された開示に従って、当業者は、本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法の性能について、ステロイドホルモン受容体を含んでいる細胞溶解液の最適化濃度/範囲を滴定するために通常の実験を行なうことができる(例えば以下の実施例7参照)。
【0144】
以前に記載されているように、出願人はさらに、ステロイドホルモン受容体は、そのステロイドホルモン受容体に特異的なリガンドの非存在下において、その対応する核酸応答配列に結合しそして活性化する何らかの能力を保持すると決定した。この現象は時に、核酸応答配列の自己活性化と呼ばれる。したがって、標的リガンドを含有する試料の存在下において、絶対値のアッセイシグナル/読み出し情報の決定を支えるために、リガンドの非存在下においてリファレンス閾値(すなわち、応答配列の自己活性化の結果としての基線シグナル)を決定することが望ましくあり得る。
【0145】
したがって、本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による別の例では、リファレンス閾値と比較した、レポーター構築物の転写の減少又は阻害が測定される。
【0146】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法によるさらに別の例では、試験試料の非存在下において、レポーター構築物の転写を測定することによって決定されるような、リファレンス閾値と比較した、レポーター構築物の転写の減少又は阻害が測定される。
【0147】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法によるまたさらなる例では、試験試料の非存在下及び受容体の非存在下においてレポーター構築物の転写を測定することによって決定されるような、リファレンス閾値と比較した、レポーター構築物の転写の減少又は阻害が測定される。
【0148】
アッセイの特異性及び性能を増強する平行的なアプローチでは、本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法は、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体共調節因子タンパク質又は分子を含むように改変されていてもよい。共調節因子タンパク質又は分子は、細胞溶解液それ自体によって提供されても、あるいは、それはキットの別々の完全体、すなわち(例えば)組換え発現を使用して産生及び/又は精製され、キット内に別々に梱包されたタンパク質又は分子として含まれていてもよい。
【0149】
共調節因子タンパク質又は分子の主な目的は、(i)ステロイドホルモン受容体を不活性なコンフォメーションに保ち、これにより、それが標的リガンドの非存在下においてホルモン応答配列に結合して活性化するのを防ぐことか(すなわち、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサーの活性を通して)、又は(ii)ステロイドホルモン受容体を活性な状態に保つ及び/又は活性化ステロイドホルモン受容体とその相補的応答配列との間の結合相互作用を増強すること(すなわち少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーターの活性を通して)かのいずれかである。
【0150】
したがって、本発明のこれらの態様及び他の態様による一例では、ステロイドホルモン受容体共調節因子は、ステロイドホルモン受容体コリプレッサーを含む。関連した例では、ステロイドホルモン受容体コリプレッサーは、熱ショックタンパク質90(HSP90);HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)の複合体;HSP90とHSP70と熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90とHSP70とHSP40とp23の複合体;HSP90とHSP70とHSP40とp23と熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90とHSP70とHSP40とp23とHopと48kDのHipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90とHSP70とHSP40とp23とHopとHipとp60の複合体;HSP90とHSP70とHSP40とp23とHopとHipとp60とFKBP52の複合体のうちの少なくとも1つ;及び任意のその組合せを含む。
【0151】
試験キットを試験試料と接触させると、リガンドの存在はコリプレッサーの置換を引き起こし、次いで、リガンドが結合した受容体は遊離して、第二のリガンドが結合した受容体と複合体を形成し、そしてその相補的なホルモン応答配列に結合する。後者は、コアクチベータータンパク質又は分子の活性によって安定化され得る。
【0152】
したがって、本発明のこれらの態様及び他の態様による別の例では、ステロイドホルモン受容体共調節因子は、ステロイドホルモン受容体アクチベーターを含む。関連した例では、ステロイドホルモン受容体アクチベーターは、赤芽球形質転換特異的転写因子ERG;ステロイド受容体コアクチベーター、SRC-1、SRC-2、SRC-3を含むp160コアクチベーター;Rho GTPアーゼグアニンヌクレオチド交換因子であるVav3;E2F1;ATAD2;CBP/p300;Leupaxin;FHL2;ARAファミリータンパク質;GRIP1、BRAC1、及びZac1を含む前立腺細胞特異的コアクチベーターの中の少なくとも1つを含む。
【0153】
実際に、赤芽球形質転換特異的転写因子ERGの効果は、
図37及び38に提示されたデータによってよく記載されている。具体的には、
図37に提示されたデータは、反応混液中に全くERGが存在しない実験と比較して、蛍光の有意に増強された低減を実証する。
【0154】
この実験では、1:1のERG:アンドロゲン受容体のモル比が使用されたか、又は、25ngのアンドロゲン受容体:12.5ngのETSと50ngのHSP90というタンパク質濃度の比として表現された。
【0155】
その後、出願人は、反応混液中のERGの量を滴定し、これらのデータは、
図38に提示されている。具体的には、0.5:1のERG:アンドロゲン受容体、1:1のERG:アンドロゲン受容体、2:1のERG:アンドロゲン受容体、及び3:1のERG:アンドロゲン受容体の比が、T7反応混液中に使用された。アンドロゲン受容体及びHSP90の濃度は、それぞれ50ng及び100ngで一定に保持された。結果は、2:1の比では異常なデータが観察されたが、ERGタンパク質の添加が反応を改善することを実証する。しかしながら、全体的にデータは、3:1の比のERG:アンドロゲン受容体により、試験された他の比よりも、より大きなT7活性の抑制がもたらされたことを示す。出願人は、3:1を超える比により、蛍光出力のより優れた抑制がもたらされる可能性がある場合、この時点で下げることはできない。
【0156】
クラスIIのステロイドホルモン受容体(すなわちアンドロゲン受容体、プロゲステロンA受容体、プロゲステロンB受容体、鉱質コルチコイド受容体、及び糖質コルチコイド受容体を含む)に関して、ステロイドホルモン受容体-リガンド複合体を活性化状態で保持する主要なコアクチベータータンパク質は、赤芽球形質転換特異的転写因子ERGであると考えられる。
【0157】
逆に、クラスIのステロイドホルモン受容体(すなわちエストロゲン受容体α及びエストロゲン受容体βを含む)に関して、ステロイドホルモン受容体-リガンド複合体を活性化状態で保持する主要なコアクチベータータンパク質は、ステロイド受容体コアクチベーターであると考えられ、これには(例えば)SRC-1、SRC-2及び/又はSRC-3が含まれる。
【0158】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイの特異性は、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー及び少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーターを含めることによって増強され得る、ということになる。関連した例では、本明細書に記載の試験キット及びアッセイは、(i)熱ショックタンパク質90(HSP90);HSP90と熱ショックタンパク質70(HSP70)の複合体;HSP90とHSP70と熱ショックタンパク質40(HSP40)の複合体;HSP90とHSP70とHSP40とp23の複合体;HSP90とHSP70とHSP40とp23と熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)の複合体;HSP90とHSP70とHSP40とp23とHopと48kDのHipタンパク質(Hip)の複合体;HSP90とHSP70とHSP40とp23とHopとHipとp60の複合体;、HSP90とHSP70とHSP40とp23とHopとHipとp60とFKBP52の複合体の中の少なくとも1つ;及び任意のその組合せを、(ii)赤芽球形質転換特異的転写因子ERG又は少なくとも1つのステロイド受容体コアクチベーター(SRC-1、SRC-2及び/又はSRC-3を含むがこれらに限定されない)の中の少なくとも1つと組み合わせて含む。
【0159】
しかしながら、少なくとも1つのステロイドホルモン調節タンパク質又は分子の存在は、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法の必須の特色ではないことが当業者によって理解されるだろう。これは、アッセイの結果が依然として、コリプレッサータンパク質若しくは分子又はコアクチベータータンパク質若しくは分子の一方又は両方の非存在下において達成され得るからである。したがって、「場合により」という用語が、本明細書及び特許請求に記載の試験キット及びアッセイ法を定義するために使用されている。
【0160】
したがって、本発明の別の態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできるステロイドホルモン受容体を含む、細胞溶解液;及び
(ii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び/又は
(iii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;
(iv)(a)RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合することのできる、応答配列;
(c)レポーター構築物;及び
(d)場合により、少なくとも1つのコアクチベータータンパク質ERGが結合することのできる、少なくとも1つの結合部位、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの結合部位(d)は、応答配列(b)のすぐ上流(d5')、すぐ下流(d3')、又はすぐ上流(d5')とすぐ下流(d3')の両方に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)及び(c)]、[(a),(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(b)、(d3’)及び(c)]、[(a)、(e)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)、(d3’)及び(c)]又は[(a)、(e)、(d5’)、(b)、(d3’)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(v)場合により、RNAポリメラーゼ
を含む。
【0161】
当業者は、T7RNAポリメラーゼを含むRNAポリメラーゼが場合により、本明細書に記載の試験キット内に存在することを理解するだろう。なぜなら、酵素は、全部、外部を入手源とすることができるからである(例えば研究室の冷凍庫のストックから)。
【0162】
本発明のこれらの態様及び他の態様による一例では、試験キットはさらに、ヌクレオチド三リン酸(NTP)を含む。
【0163】
また、本発明によって、本明細書において上記及びどこかで定義されたフレームワークを使用した転写の減少又は阻害の測定による、ステロイドホルモンリガンドの検出法が考えられる。
【0164】
しかしながら、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体共調節因子(例えばコアクチベーター及び/又はコリプレッサー)の存在は、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法の必須な特色ではないことが当業者によって理解されるだろう。これは、アッセイ結果が、共調節因子の非存在下においても依然として達成され得るからである。例えば、実施例1/
図4に提示されたデータは、熱ショックタンパク質90の非存在下において、リガンドを含むアッセイの結果とリガンドを含まないアッセイの結果(すなわちアンドロゲン受容体/テストステロン対アンドロゲン受容体)の間には依然として測定可能なシグナル差が存在したことを示す。
【0165】
実際に、例えばアッセイ法が実施される温度を変更することによって、リガンド結合していない受容体による、ホルモン応答配列の自己活性化によって発生したシグナルの量を最小限とするためのさらなるアプローチが存在する。
【0166】
出願人は、その核酸応答配列に対する、リガンドの結合したステロイドホルモン受容体とリガンドの結合していないステロイドホルモン受容体との間の結合親和性/動態の差を観察した。したがって、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法は、リガンドの結合していない受容体よりも、リガンドの結合した受容体によるホルモン応答配列の活性化を優先的に測定する温度で又は温度範囲内で実施され得、これにより、リガンドの結合していない受容体によって発生したあらゆるバックグラウンドシグナルは最小限となり得る。
【0167】
したがって、本発明のこの態様によるさらに別の例では、試験キット又はアッセイ法の性能は、約25℃から約60℃、好ましくは約35℃から約37℃の温度範囲内で実施される。
【0168】
「約25℃から約60℃までの温度範囲」という用語は、25℃~42℃の任意の温度を含むことを意図し、これは、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃及び60℃を含むがこれらに限定されない。当業者は、小数点の範囲の温度も使用され得ることを認識しているだろう。この点をさらに説明するために、「約35℃から約37℃の温度範囲」は、35.0℃、35.1℃、35.2℃、35.3℃、35.4℃、35.5℃、35.6℃、35.7℃、35.8℃、35.9℃、36.0℃、36.1℃、36.2℃、36.3℃、36.4℃、36.5℃、36.6℃、36.7℃、36.8℃、36.9℃、及び37.0℃を含むがこれらに限定されない。
【0169】
出願人はさらに、共調節因子とステロイドホルモン受容体との間の化学量論関係を操作することにより、さらにアッセイ感度を増強させ得ることを発見した。例えば、実施例2に記載のアンドロゲンアッセイ原型2によると、HSP90:アンドロゲン受容体の比が1.22から4.88である場合、アンドロゲン受容体は、アンドロゲン受容体特異的リガンドによって活性化され、かつアンドロゲン応答配列に結合するという点で、最も効果的であることが、出願人によって決定された。
【0170】
以前に考察されているように、本明細書に記載の細胞溶解液アッセイでは、受容体の絶対濃度は依然として未知である。しかしながら、実施例7に提示されたデータによると、約2:1という最適なHSP90:アンドロゲン受容体の比は、30ng/μLを超えるアンドロゲン受容体の細胞溶解液の濃度に基づいて経験的に導かれた。
図19及び表12を参照されたい。したがって、少なくとも本明細書に記載のHEK細胞溶解液では、約30ng/μLから約50ng/μLの細胞溶解液の濃度がスクリーニングアッセイに使用される場合、約2:1というHSP90:アンドロゲン受容体の最適比が達成される。
【0171】
したがって、本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法によるさらなる例では、HSP90:ステロイドホルモン受容体の比は、約1:1から約5:1と定義される。これは、1.0:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2.0:1、2.1:1、2.2:1、2.3:1、2.4:1、2.5:1、2.6:1、2.7:1、2.8:1、2.9:1、3.0:1、3.1:1、3.2:1、3.3:1、3.4:1、3.5:1、3.6:1、3.7:1、3.8:1、3.9:1、4.0:1、4.1:1、4.2:1、4.3:1、4.4:1、4.5:1、4.6:1、4.7:1、4.8:1、4.9:1、又は5.0:1と定義される、HSP90:ステロイドホルモン受容体の比を含むがこれらに限定されない。
【0172】
しかしながら、当業者は、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体共調節因子とステロイドホルモン受容体との間の分子化学量論は、試験キット/アッセイの組成に応じて変更され得ることを理解しているだろう。例えば、試験キット/アッセイは、エストロゲン受容体α又はエストロゲン受容体βを含む、エストロゲン受容体に結合するリガンドを検出するように構成され得、そしてエストロゲン受容体共調節因子とエストロゲン受容体との間の比は、(例えば)約1:1から約20:1であり得る。
【0173】
したがって、本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法によるさらに別の例では:
(i)該試験キットはアンドロゲン受容体を含み、そしてアンドロゲン受容体共調節因子とアンドロゲン受容体の比は、約1:1から約20:1であり、これには、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、又は20:1を含むがこれらに限定されず;
(ii)該試験キットはエストロゲン受容体を含み、そしてエストロゲン受容体共調節因子とエストロゲン受容体の比は、約1:1から約20:1であり、これには、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、又は20:1を含むがこれらに限定されず;
(iii)該試験キットはプロゲステロン受容体を含み、そしてプロゲステロン受容体共調節因子とプロゲステロン受容体の比は、約1:1から約20:1であり、これには、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、又は20:1を含むがこれらに限定されず;
(iv)該試験キットは鉱質コルチコイド受容体を含み、そして鉱質コルチコイド受容体共調節因子と鉱質コルチコイド受容体の比は、約1:1から約20:1であり、これには、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、又は20:1を含むがこれらに限定されず;
(v)該試験キットは糖質コルチコイド受容体を含み、そして糖質コルチコイド受容体共調節因子と糖質コルチコイド受容体の比は、約1:1から約20:1であり、これには、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、又は20:1を含むがこれらに限定されない。
【0174】
実施例4の表9の情報は、本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法の組成を考慮する場合の分子化学量論に関する議論に関連した重要な考察を要約し、これは特に、実施例1~3に伴うデータによって支持される。
【0175】
本発明に記載のアッセイ反応混液は典型的には、10μLから50μLの全容量を含有しているだろう。表9に要約された情報によると、このことは以下を意味する:
(i)ステロイドホルモン受容体の濃度は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60nMのステロイドホルモン受容体を含むがこれらに限定されない、約10nMから約60nMによって定義される範囲内に保たれるべきであり;
(ii)ホルモン応答配列を含む核酸分子の濃度は、0.70、0.80、0.90、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、又は3.3nMの核酸分子を含むがこれらに限定されない、約0.70nMから約3.5nMによって定義される範囲内に保たれるべきであり;及び
(iii)存在する場合、熱ショックタンパク質90の濃度は、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60nMの熱ショックタンパク質90を含むがこれらに限定されない、約40nMから約60nMによって定義される範囲内に保たれるべきである。
【0176】
さらなる考察は酵素の濃度/量であり、ここでの最適のアッセイ結果は、基線の絶対閾値活性を約200,000U(例えばRNAアプタマーMangoIIが読み出し情報である場合)と推定して、約50~100酵素単位(U)が反応混液に使用された場合に達成された。
図10及び11を参照されたい。
【0177】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法によるさらに別の例では、転写の減少又は阻害は、バクテリオファージRNAポリメラーゼ、ウイルスRNAポリメラーゼ、細菌RNAポリメラーゼ、及び真核生物ウイルスRNAポリメラーゼから選択された単一ポリペプチドポリメラーゼによって媒介される転写の減少又は阻害である。
【0178】
関連した例では、ポリメラーゼは、バクテリオファージRNAポリメラーゼである。さらに関連した例では、プロモーター配列は、バクテリオファージRNAポリメラーゼ開始配列である。
【0179】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法によるさらに別の例では、ポリメラーゼは、DNA依存性RNAポリメラーゼ(T7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ及びSP6RNAポリメラーゼを含む)からなる群より選択されたバクテリオファージポリメラーゼである。
【0180】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による別の例では、バクテリオファージポリメラーゼはT7RNAポリメラーゼである。
【0181】
本発明のこの態様による一例では、試験キットはさらに、ヌクレオチド三リン酸(NTP)を含む。
【0182】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による別の例では、プロモーター配列はT7RNAポリメラーゼ開始配列である。
【0183】
関連した例では、T7RNAポリメラーゼ開始配列は、5’-TAATACGACTCACTATAG-3’(配列番号82)によって定義される配列を含む。
【0184】
出願人は次に、ステロイドホルモンスクリーニングアッセイの感度をさらに最適化する試みで、T7プロモーターの構造を調べた。
【0185】
文献は、様々なT7プロモーター(又は開始)配列を記載し、ここでのヌクレオチド組成の変化は、増加したT7活性をもたらした。例えば、5’-TAATACGACTCACTATAGGGAGA-3’(配列番号83)によって定義される野生型T7プロモーター配列をその3’末端において修飾することにより、5’-TAATACGACTCACAATCGCGGAG-3’(配列番号84)が得られた。この変異プロモーターは報告によると、T7活性の約2倍の増加を促進する。実際に、これは、実施例9に記載され、
図27及び28と併せて読まれる、T7スクリーニングアッセイ実験によって確認された。これらのデータは、文献に広く報告されている野生型プロモーター(すなわち配列番号83)の切断短縮形である配列番号82に対して、T7スクリーニングアッセイにおいて、これらのプロモーターの相対的活性を比較する。配列番号84において配列番号83を約2倍上回る活性の増加が観察されたが、配列番号82は依然として最善の性能のプロモーター配列であった。
【0186】
したがって、関連した例では、T7RNAポリメラーゼ開始配列は、5’-TAATACGACTCACAATCGCGGAG-3’(配列番号84)によって定義される配列を含む。
【0187】
しかしながら、出願人は、3’及び5’の両方に修飾を含有し、かつ5’-GGAGGCCGGAGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGAGACGCGTGT-3’(配列番号85)によって定義される配列を有する、修飾形のT7プロモーターは、アンドロゲンリガンドの検出についてT7スクリーニングアッセイの増強された感度の点から、優れた性能をもたらしたことを発見した。
図29~31と併せて読み、実施例9を参照すると、ここでの配列番号85は、(相対的)T7活性及びアンドロゲン応答性の点から配列番号82よりも優れていた。
【0188】
したがって、関連した例では、T7RNAポリメラーゼ開始配列は、5’-GGAGGCCGGAGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGAGACGCGTGT-3’(配列番号85)によって定義される配列を含む。
【0189】
図33に提示されるデータは、
図34~36に提示されたデータと併せて読むと、本明細書に記載の様々なT7スクリーニングアッセイのためのステロイドホルモン受容体源としての細胞溶解液の有用性をさらに強化する。特に、重要なアッセイ成分間の関係(群)を最適化するために行なわれたさらなる実験研究を詳述する実施例9を参照すると、これらのデータは、配列番号85によって定義されるT7プロモーター配列を含むT7スクリーニングアッセイが、より迅速でより再現性の高い試験を可能とすることを実証する。実際に、出願人は、150分間から40分間まで反応時間を短縮し得ることを示し、より大きな変化がビヒクル対照から観察された。要するに、これらのデータは、本明細書に記載の細胞溶解液スクリーニングアッセイが、他の状況で予想されるよりも現場での適用に良く適していることを実証する。
【0190】
重要なことには、配列番号85によって定義されるT7プロモーター/開始配列は、エストラジオール又はデキサメタゾンによる交差活性化の点において、スクリーニングアッセイの性能に影響を及ぼさなかった。この観察は、組換え型のアンドロゲン受容体が使用されようと(すなわち
図32)又はアンドロゲン受容体細胞溶解液が使用されようと(すなわち
図33)該当した。
【0191】
したがって、本発明の別の態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは:
(i)ステロイドホルモン受容体又はステロイドホルモン受容体を含む細胞溶解液、ここでのステロイドホルモン受容体は、試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することができる;及び
(ii)(a)配列番号85によって定義される配列を含むか又はからなるT7RNAポリメラーゼ―プロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合することのできる、応答配列;及び
(c)レポーター構築物
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]又は[(a)、(e)、(b)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)場合により、T7RNAポリメラーゼ
を含む。
【0192】
本発明のこの態様による一例では、試験キットはさらに、ヌクレオチド三リン酸(NTP)を含む。
【0193】
また、本発明によって、上記のフレームワークを使用した、転写の減少又は阻害の測定による、ステロイドホルモンリガンドの検出法も考えられる。
【0194】
したがって、本発明のさらに別の態様では、試料中のリガンドを検出するアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は:
(1)試料を、
(i)ステロイドホルモン受容体又はステロイドホルモン受容体を含む細胞溶解液、ここでの、ステロイドホルモン受容体は、試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成する;及び
(ii)(a)配列番号85によって定義される配列を含むか又はからなる、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)リガンド-受容体複合体が結合する、応答配列;及び
(c)レポーター構築物
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし[(a)、(b)及び(c)]又は[(a)、(e)(b)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(iii)T7RNAポリメラーゼ;及び
(iv)リボヌクレオシド三リン酸
と接触させる工程;及び
(2)応答配列へのリガンド-受容体複合体の結合によって引き起こされる、レポーター構築物の転写の減少又は阻害を測定する工程
を含み、ここで測定されたレポーター構築物の転写の減少又は阻害は、試料中のリガンドの検出を反映する。
【0195】
本明細書に記載のスクリーニングアッセイの必須な特色ではないが、本明細書に定義されているようなステロイドホルモン共調節因子の包含はさらに、本発明のこれらの態様及び他の態様のために考えられる。
【0196】
したがって、本発明のさらに別の態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは:
(i)ステロイドホルモン受容体又はステロイドホルモン受容体を含む細胞溶解液、ここでの、ステロイドホルモン受容体は、試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することができる;及び
(ii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び/又は
(iii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;
(iv)(a)配列番号85を含むか又はからなる、T7RNAポリメラーゼ―プロモーター配列;
(b)リガンド受容体複合体が結合することのできる、応答配列;
(c)レポーター構築物;及び
(d)場合により、少なくとも1つのコアクチベータータンパク質であるERGに結合することのできる、少なくとも1つの結合部位、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、
及びここでの結合部位(d)は、応答配列(b)のすぐ上流(d5')、すぐ下流(d3')、又はすぐ上流(d5')とすぐ下流(d3')の両方に位置し、
及びここでの核酸分子は場合により、ポリメラーゼプロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー配列(e)を含み、
ただし、[(a)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)及び(c)]、[(a)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(b)、(d3’)及び(c)]、[(a)、(e)、(d5’)、(b)及び(c)]、[(a)、(e)、(b)、(d3’)及び(c)]又は[(a)、(e)、(d5’)、(b)、(d3’)及び(c)]は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(v)場合により、T7RNAポリメラーゼ
を含む。
【0197】
本発明のこの態様による一例では、試験キットはさらに、ヌクレオチド三リン酸(NTP)を含む。
【0198】
また、本発明によって、本明細書において上記及びどこかで定義されたフレームワークを使用した転写の減少又は阻害の測定による、ステロイドホルモンリガンドの検出法が考えられる。
【0199】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法によるさらなる例では、バクテリオファージポリメラーゼはT3RNAポリメラーゼであり、プロモーター配列はT3RNAポリメラーゼ開始配列である。
【0200】
関連した例では、T3RNAポリメラーゼ開始配列は、5’-AATTAACCCTCACTAAAG-3’(配列番号2)によって定義される配列を含む。
【0201】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法によるまたさらなる例では、バクテリオファージポリメラーゼはSP6RNAポリメラーゼであり、プロモーター配列はSP6RNAポリメラーゼ開始配列である。
【0202】
関連した例では、SP6RNAポリメラーゼ開始配列は、5’-ATTTAGGTGACACTATAG-3’(配列番号3)によって定義される配列を含む。
【0203】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法によるさらに別の例では、レポーター構築物は、転写されてRNAアプタマーを形成すると、フルオロフォアに結合し、これにより蛍光シグナルを発生することのできる、RNAアプタマーをコードしている配列を含む。
【0204】
関連した例では、RNAアプタマーはさらに、RNAアプタマーの二次構造の形成を促進するRNA足場によって支持され、これにより、そのフルオロフォア(群)との結合相互作用は最適化される。さらに関連した例では、RNA足場としては、F30が挙げられるがこれらに限定されない。
【0205】
別の例では、RNAアプタマーは、MangoI、MangoII、MangoIII、及びMangoIVを含むがこれらに限定されない、Mangoである。関連した例では、MangoRNAアプタマーに結合し、これにより蛍光シグナルを発生する、フルオロフォアは、チアゾールオレンジ(TO)の誘導体である。
【0206】
別の例では、RNAアプタマーは、Spinach、iSpinach、baby Spinach及びBroccoliから選択される。関連した例では、iSpinach、Spinach又はBroccoliRNAアプタマーに結合し、それにより蛍光シグナルを発生するフルオフォアは、3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノン(DFHBI)である。
【0207】
別の例では、RNAアプタマーはマラカイトグリーンである。関連した例では、マラカイトグリーンRNAアプタマーに結合し、それにより蛍光シグナルを発生するフルオロフォアはマラカイトグリーンである。
【0208】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法によるさらなる例では、レポーター構築物は、単一の配列のコピーのRNAアプタマー、又は複数の配列のコピーのRNAアプタマーを含む。「複数の配列コピー」という用語は、RNAアプタマーをコードしている、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、又はそれ以上のコピーの配列を意味することを意図するがこれらに限定されない。当業者は、RNAアプタマー配列のコピー数は、通常のアッセイの最適化によって決定されるような、最適な信号対雑音比によって左右されるであろうことを認識しているだろう。
【0209】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による他の例では、レポーター構築物は、RNA分析によって検出され得るタンパク質又はポリペプチドをコードしているか又はコードしていない、遺伝子からなる群より選択される。
【0210】
したがって、本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法は、ステロイドホルモン受容体活性を有するリガンドの存在について、試料をスクリーニングするための手段として、試験試料をアッセイと組み合わせた場合に、例えば、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)又は相補的デオキシリボース核酸(cDNA)のレベルを調べることによって、レポーター構築物の転写レベルを検出するように構成され得る。
【0211】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法によるまたさらなる例では、レポーター構築物の転写の減少又は阻害抑制は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量PCR(リアルタイムPCRとしても知られる、qPCR)、デジタルPCR(dPCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、逆転写qPCR(RTqPCR)、逆転写デジタルPCR(RTdPCR)、RNAシークエンス、又はインサイチュハイブリダイゼーションを使用して測定され得る。
【0212】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による他の例では、(例えば)mRNA又はcDNAを含むレポーター遺伝子転写物のレベルは、定量ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムqPCR及び逆転写qPCRを含む、qPCR)などの確立された技術を使用して、又は間に入り込んでいる色素の検出に基づいた若しくは蛍光ヌクレオチドの直接的添加に基づいた蛍光などの他の技術を使用して、半定量/定量され得る。例えば、本明細書に記載のような、RNAアプタマーに結合することによりRNA-フルオロフォア複合体を形成するフルオロフォアの使用。これらの技術及び他の技術は、当業者には公知であろう。
【0213】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法は、アンドロゲン受容体(AR)、エストロゲン受容体α(ER-α)、エストロゲン受容体β(ER-β)、プロゲステロン受容体A(PRA)、プロゲステロン受容体B(PRB)、鉱質コルチコイド受容体(MR)、及び糖質コルチコイド受容体(GR)を含む、ステロイドホルモン受容体に結合するであろう、既知の構造及び未知の構造の両方の様々なリガンドの検出のために構成される。
【0214】
アンドロゲン受容体に結合することが知られているリガンドの例としては、テストステロン、ジヒドロテストステロン;アンドロゲンタンパク同化ステロイド(AAS)(TRENA、17α-トレンボロン、17β-トレンボロン、トレンジオン、ナンドロロン、ボルデノンを含むがこれらに限定されない);選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)(93746、BMS-546929、LGD4033、ACP105、YK-11、アンダリン、リガンドロール、オスタリンを含むがこれらに限定されない);アンドロゲンプロゲスターゲン(アルトレノゲストを含むがこれらに限定されない)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0215】
エストロゲン受容体αに結合することが知られているリガンドの例としては、エストラジオール、エストロン、エストリオール;選択的エストロゲン受容体モジュレーター(ラロキシフェン、タモキシフェン、トレミフェン、オスペミフェン、ラソフォキシフェン、シクロフェニル、クロミフェン、ブロパレストロール、バセドキシフェン、アノルドリンを含む);植物性エストロゲン(食事中のエストロゲン、例えばポリフェノール(レスベラトロール)、フラバノン(エリオジクチオール、ヘスペレチン、ホモエリオジクチオール、ナリンゲニン)、フラボン(アピゲニン、ルテオリン、タンゲレチン(Tangeritin))、フラボノール(フィセチン、ケンペロール、ミリセチン、パキポドール、ケルセチン、ラムナジン)、カテキン(プロアントシアニジン)、イソフラボノイド(イソフラボンビオカニンA、グリシテイン(Clycitein)、ダイゼイン、ホルモノネチン、ゲニステイン)、イソフラバン(エクオール)、クメスタン(クメストロール)を含むがこれらに限定されない);エストロゲン様内分泌攪乱化学物質(EEDC)(ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ビスフェノールA(BPA)、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、フタル酸エステル、エンドスルファン、アトラジン、ゼラノールを含むがこれらに限定されない);デザイナー化合物、例えばヒドラジド誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0216】
エストロゲン受容体βに結合することが知られているリガンドの例としては、エストロゲン受容体αに結合する全てのリガンド、並びに、ジアリールプロピオニトリル(DPN)及びワイス社由来のベンゾオキサゾール、例えばWay-659、Way-818及びWay-200070が挙げられるがこれらに限定されない。
【0217】
プロゲステロン受容体A及びプロゲステロン受容体Bに結合することが知られているリガンドの例としては、プロゲステロン、ノルエチステロン、レボノルゲストレル、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ジヒドロゲステロン、ドロスピレノン、アルトレノゲスト;選択的プロゲステロン受容体モジュレーター、例えば酢酸ウリプリスタル、酢酸テラプリストン、ビラプリサン、アソプリスニル、アソプリスニルエカメート(Ecamate);抗黄体ホルモン、例えばミフェプリストン、オナプリストン、リロプリトン(Lilopritone)及びゲストリノンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0218】
鉱質コルチコイド受容体に結合することが知られるリガンドの例としては、アルドステロン;合成鉱質コルチコイド、例えばフルドロコルチゾン;抗鉱質コルチコイド、例えばスピロノラクトン及びエプレレノン;糖質コルチコイド受容体リガンド、例えば以下に記載されているものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0219】
糖質コルチコイド受容体に結合することが知られるリガンドの例としては、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、ハルシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルオコルトロン、ハロメタゾン、モメタゾン、又はアンタゴニストとしてのミフェプリストン及びケトコナゾールが挙げられるがこれらに限定されない。
【0220】
例示的なアッセイ成分及び構築物
試料中に存在するリガンドによって活性化されるステロイドホルモン受容体は、二量体化し(すなわち定義されているような受容体-リガンド複合体を形成している)、その相補的ホルモン応答配列に結合するだろう。本明細書に記載の試験キット及びアッセイでは、ホルモン応答配列は、レポーター構築物に連結され、レポーター構築物の物理特性の変化は、検査中の試料中のリガンドの存在を反映するために使用され得る。本発明に記載の例示的なホルモン応答配列としては、アンドロゲン応答配列(ARE)、エストロゲン応答配列(ERE)、プロゲステロン応答配列(PRE)、鉱質コルチコイド応答配列(MRE)及び糖質コルチコイド応答配列(GRE)が挙げられる。
【0221】
以前に記載のように、様々なホルモン応答配列が、活性化されたリガンド-受容体複合体に選択的に結合するように構成された結合モチーフを取り込んでいる。例えば、アンドロゲン応答配列、エストロゲン応答配列、プロゲステロン応答配列、鉱質コルチコイド応答配列、及び糖質コルチコイド応答配列のそれぞれが、その二次構造の方向において、ジンクフィンガー結合モチーフを介した二量体化リガンド受容体複合体(すなわち(HR-L)2)の結合を促進する、不完全な2つの六量体の回文配列を含む。
【0222】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による一例では、アンドロゲン応答配列は、活性化されたアンドロゲン受容体に結合するDNA結合モチーフを含む。関連した例では、DNA結合モチーフは、リガンドに結合したアンドロゲン受容体の二量体(すなわち(AR-L)2;ここでの「AR」はアンドロゲン受容体であり、「L」はリガンドである)に結合する。関連した例では、DNA結合モチーフは、活性化されたアンドロゲン受容体とアンドロゲン応答配列との間に結合特異性を作り出す、不完全な2つの六量体の回文配列を含む。さらなる関連した例では、DNA結合モチーフを含むアンドロゲン応答配列は、二本鎖デオキシリボ核酸である。
【0223】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による一例では、エストロゲン応答配列は、活性化されたエストロゲン受容体に結合する、DNA結合モチーフを含む。関連した例では、DNA結合モチーフは、リガンドの結合したエストロゲン受容体の二量体である(すなわち(ER-L)2;ここでの「ER」は、ER-α又はER-βから選択されたエストロゲン受容体である)に結合する。さらなる関連した例では、DNA結合モチーフは、活性化されたエストロゲン受容体とエストロゲン応答配列との間に結合特異性を作り出す、不完全な2つの六量体の回文配列を含む。さらなる関連した例では、DNA結合モチーフを含むエストロゲン応答配列は、二本鎖デオキシリボ核酸である。
【0224】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による一例では、プロゲステロン応答配列は、活性化されたプロゲステロン受容体に結合する、DNA結合モチーフを含む。関連した例では、DNA結合モチーフは、リガンドの結合したプロゲステロン受容体の二量体(すなわち(PR-L)2;ここでの「PR」は、PRA又はPRBから選択されたプロゲステロン受容体である)に結合する。さらなる関連した例では、DNA結合モチーフは、活性化されたプロゲステロン受容体とプロゲステロン応答配列との間に結合特異性を作り出す、不完全な2つの六量体の回文配列を含む。さらなる関連した例では、DNA結合モチーフを含むプロゲステロン応答配列は、二本鎖デオキシリボ核酸である。
【0225】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による一例では、鉱質コルチコイド応答配列は、活性化された鉱質コルチコイド受容体に選択的に結合する、DNA結合モチーフを含む。関連した例では、DNA結合モチーフは、リガンドの結合した鉱質コルチコイド受容体の二量体(すなわち(MR-L)2;ここでの「MR」は、鉱質コルチコイド受容体である)に結合する。さらなる関連した例では、DNA結合モチーフは、活性化された鉱質コルチコイドン受容体と鉱質コルチコイド応答配列との間に結合特異性を作り出す、不完全な2つの六量体の回文配列を含む。さらなる関連した例では、DNA結合モチーフを含む鉱質コルチコイド応答配列は、二本鎖デオキシリボ核酸である。
【0226】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による一例では、糖質コルチコイド応答配列は、活性化された糖質コルチコイド受容体に選択的に結合する、DNA結合モチーフを含む。関連した例では、DNA結合モチーフは、リガンドの結合した糖質コルチコイド受容体の二量体(すなわち(GR-L)2;ここでの「GR」は、糖質コルチコイド受容体である)に結合する。さらなる関連した例では、DNA結合モチーフは、活性化された糖質コルチコイドン受容体と糖質コルチコイド応答配列との間に結合特異性を作り出す、不完全な2つの六量体の回文配列を含む。さらなる関連した例では、DNA結合モチーフを含む糖質コルチコイド応答配列は、二本鎖デオキシリボ核酸である。
【0227】
テストステロン、ジヒドロテストステロン、アンドロゲンタンパク同化ステロイド、及び選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(すなわちSARM)及び植物アンドロゲン又は異種アンドロゲンなどの、アンドロゲン受容体に結合し活性化するリガンドの検出は、活性化されたアンドロゲン-受容体複合体に結合することのできるアンドロゲン応答配列と一緒に、アンドロゲン受容体を含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0228】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による一例では、アンドロゲン応答配列は、5’-AGAACAnnnTGTTCT-3’(配列番号4)の配列を含むか又はからなり、ここでのnは、G、C、T又はAから選択された任意の核酸塩基である。その相補的アンチセンス配列は、5’-AGAACAnnnTGTTCT-3’(配列番号5)と定義され、ここでのnは、配列番号4と5の間の配列アラインメントに基づいて、配列番号4に相補的である塩基を示す(すなわちA=T;T=A;G=C;C=G)。
【0229】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による別の例では、アンドロゲン応答配列は、5’-GGTACAnnnTGTTCT-3’(配列番号6)の配列を含むか又はからなり、ここでのnは、G、C、T又はAから選択された任意の核酸塩基である。その相補的アンチセンス配列は、5’-AGAACAnnnTGTACC-3’(配列番号7)と定義され、ここでのnは、配列番号6と7の間の配列アラインメントに基づいて、配列番号6に相補的である塩基を示す(すなわちA=T;T=A;G=C;C=G)。
【0230】
エストラジオール、エストロン、他のエストロゲン様ステロイドホルモン(植物性エストロゲン及び異種エストロゲンを含む)、及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)などの、エストロゲン受容体に結合し活性化するリガンドの検出は、活性化されたエストロゲン-受容体複合体に結合することのできるエストロゲン応答配列と一緒に、エストロゲン受容体α(ER-α)又はエストロゲン受容体β(ER-β)のいずれかを含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0231】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による一例では、エストロゲン応答配列は、5’-AGGTCAnnnTGACCT-3’(配列番号8)の配列を含むか又はからなり、ここでのnはG、C、T又はAから選択された任意の核酸塩基である。その相補的アンチセンス配列は、5’-AGGTCAnnnTGACCT-3’(配列番号9)と定義され、ここでのnは、配列番号8と9の間の配列アラインメントに基づいて、配列番号8に相補的である塩基を示す(すなわちA=T;T=A;G=C;C=G)。
【0232】
プロゲステロン、ノルエチステロン、レボノルゲストレル、他のプロゲステロン様ステロイドホルモン及び選択的プロゲステロン受容体モジュレーター(SPRM)などの、プロゲステロン受容体に結合し活性化するリガンドの検出は、活性化されたプロゲステロン-受容体複合体に結合することのできるプロゲステロン応答配列と一緒に、プロゲステロン受容体A(PRA)又はプロゲステロンB(PRB)のいずれかを含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0233】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による一例では、プロゲステロン応答配列は、5’-GGTACAAACTGTTCT-3’(配列番号10)の配列を含むか又はからなる。その相補的アンチセンス配列は、5’-AGAACAGTTTGTACC-3’(配列番号11)と定義される。
【0234】
アルドステロン、合成鉱質コルチコイド、例えばフルドロコルチゾン及び抗鉱質コルチコイド、例えばスピロノラクトン及びエプレレノンなどの硬質コルチコイド受容体に結合し活性化するリガンドの検出は、活性化された鉱質コルチコイド-受容体複合体に結合することのできる鉱質コルチコイド応答配列と一緒に、鉱質コルチコイド受容体を含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0235】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による一例では、鉱質コルチコイド応答配列は、5’-AGAACAnAATGTTCT-3’(配列番号12)の配列を含むか又はからなり、ここでのnは、G、C、T又はAから選択されたに任意の核酸塩基である。その相補的アンチセンス配列は、5’-AGAACATTnTGTTCT-3’(配列番号13)と定義され、ここでのnは、配列番号12と13の間の配列アラインメントに基づいて、配列番号12に相補的である塩基を示す(すなわちA=T;T=A;G=C;C=G)。
【0236】
コルチゾール、デキサメタゾン及び11-ジヒドロコルチコステロンなどの糖質コルチコイド受容体に結合し活性化するリガンドの検出は、活性化された糖質コルチコイド-受容体複合体に結合することのできる糖質コルチコイド応答配列と一緒に、糖質コルチコイド受容体を含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0237】
本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法による一例では、糖質コルチコイド応答配列は、5’-AGAACAnAATGTTCT-3’(配列番号12)を含むか又はからなり、ここでのnは、G、C、T又はAから選択された任意の核酸塩基である。その相補的アンチセンス配列は、5’-AGAACATTnTGTTCT-3’(配列番号13)と定義され、ここでのnは、配列番号12と13の間の配列アラインメントに基づいて、配列番号12に相補的である塩基を示す(すなわちA=T;T=A;G=C;C=G)。
【0238】
ここに記載の試験キット及びアッセイ法による例示的な核酸配列としては、
T7i-アンドロゲン応答配列(n)-MangoII:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-エストロゲン応答配列(n)-MangoII:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-プロゲステロン応答配列(n)-MangoII:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-鉱質コルチコイド応答配列(n)-MangoII:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-糖質コルチコイド応答配列(n)-MangoII:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-アンドロゲン応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-エストロゲン応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-プロゲステロン応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-鉱質コルチコイド応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-糖質コルチコイド応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-アンドロゲン応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-エストロゲン応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-プロゲステロン応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-鉱質コルチコイド応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-糖質コルチコイド応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-アンドロゲン応答配列(n)-F30-iSpinach:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-エストロゲン応答配列(n)-F30-iSpinach:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-プロゲステロン応答配列(n)-F30-iSpinach:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-鉱質コルチコイド応答配列(n)-F30-iSpinach:ここでのnは、1、2、3、4であり;
T7i-糖質コルチコイド応答配列(n)-F30-iSpinach:ここでのnは、1、2、3、4である
(ここでのT7iは、T7RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列/開始配列を示す)
が挙げられるがこれらに限定されない。
【0239】
関連した一例では、T7iプロモーター配列/開始配列は、5’-TAATACGACTCACTATAG-3’(配列番号1)によって定義される。
【0240】
別の関連した例では、T7RNAポリメラーゼ開始配列は、5’-TAATACGACTCACTATAGGGAGA-3’(配列番号83)によって定義される配列を含む。
【0241】
別の関連した例では、T7RNAポリメラーゼ開始配列は、5’-TAATACGACTCACAATCGCGGAG-3’(配列番号84)によって定義される配列を含む。
【0242】
別の関連した例では、T7RNAポリメラーゼ開始配列は、5’-GGAGGCCGGAGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGAGACGCGTGT-3’(配列番号85)によって定義される配列を含む。
【0243】
ここに記載された試験キット及びアッセイ法による代替的な例示的な核酸配列としては、
T3i-アンドロゲン応答配列(n)-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-エストロゲン応答配列(n)-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-プロゲステロン応答配列(n)-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-鉱質コルチコイド応答配列(n)-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-糖質コルチコイド応答配列(n)-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-アンドロゲン応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-エストロゲン応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-プロゲステロン応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-鉱質コルチコイド応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-糖質コルチコイド応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-アンドロゲン応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-エストロゲン応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-プロゲステロン応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-鉱質コルチコイド応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-糖質コルチコイド応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-アンドロゲン応答配列(n)-iSpinach×3:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-エストロゲン応答配列(n)-iSpinach×3:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-プロゲステロン応答配列(n)-iSpinach×3:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-鉱質コルチコイド応答配列(n)-iSpinach×3:ここでのnは1、2、3、4であり;
T3i-糖質コルチコイド応答配列(n)-iSpinach×3:ここでのnは1、2、3、4である
(ここでのT3iは、T3RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列又は開始配列を示す)
が挙げられるがこれらに限定されない。
【0244】
関連した一例では、T3iプロモーター配列/開始配列は、5’-AATTAACCCTCACTAAAG-3’(配列番号2)によって定義される。
【0245】
ここに記載された試験キット及びアッセイ法による代替的な例示的な核酸配列としては、
SP6i-アンドロゲン応答配列(n)-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-エストロゲン応答配列(n)-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-プロゲステロン応答配列(n)-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-鉱質コルチコイド応答配列(n)-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-糖質コルチコイド応答配列(n)-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-アンドロゲン応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-エストロゲン応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-プロゲステロン応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-鉱質コルチコイド応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-糖質コルチコイド応答配列(n)-F30-MangoII:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-アンドロゲン応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-エストロゲン応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-プロゲステロン応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-鉱質コルチコイド応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-糖質コルチコイド応答配列(n)-iSpinach:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-アンドロゲン応答配列(n)-iSpinach×3:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-エストロゲン応答配列(n)-iSpinach×3:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-プロゲステロン応答配列(n)-iSpinach×3:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-鉱質コルチコイド応答配列(n)-iSpinach×3:ここでのnは1、2、3、4であり;
SP6i-糖質コルチコイド応答配列(n)-iSpinach×3:ここでのnは1、2、3、4である
(ここでのSP6iは、SP6RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列又は開始配列を示す)
が挙げられるがこれらに限定されない。
【0246】
関連した一例では、SP6iプロモーター配列/開始配列は、5’-ATTTAGGTGACACTATAG-3’(配列番号3)によって定義される。
【0247】
本発明による別の例では、試験キット及び/又はアッセイ法は、アンドロゲン受容体に結合するリガンドを検出するように構成され、T7RNAポリメラーゼ開始配列、アンドロゲン応答配列、及びF30足場とMangoIIRNAアプタマーとをコードしているレポーター構築物を含む、核酸配列は、以下のように、配列番号14に示される配列を含む。
【0248】
【0249】
本発明によるさらに別の例では、試験キット及び/又はアッセイ法は、エストロゲン受容体α又はエストロゲン受容体βに結合するリガンドを検出するように構成され、T7RNAポリメラーゼ開始配列、エストロゲン応答配列、及びF30足場とMangoIIRNAアプタマーとをコードしているレポーター構築物を含む、核酸配列は、以下のような、配列番号15に示される配列を含む。
【0250】
【0251】
本発明によるまたさらに別の例では、試験キット及び/又はアッセイ法は、プロゲステロン受容体A又はプロゲステロン受容体Bに結合するリガンドを検出するように構成され、T7RNAポリメラーゼ開始配列、プロゲステロン応答配列、及びF30足場とMangoIIRNAアプタマーとをコードしているレポーター構築物を含む、核酸配列は、以下のような、配列番号16に示される配列を含む。
【0252】
【0253】
本発明による別の例では、試験キット及び/又はアッセイ法は、鉱質コルチコイド受容体に結合するリガンドを検出するように構成され、T7RNAポリメラーゼ開始配列、鉱質コルチコイド応答配列、及びF30足場とMangoIIRNAアプタマーとをコードしているレポーター構築物を含む、核酸配列は、以下のような、配列番号17に示される配列を含む。
【0254】
【0255】
本発明による別の例では、試験キット及び/又はアッセイ法は、糖質コルチコイド受容体に結合するリガンドを検出するように構成され、T7RNAポリメラーゼ開始配列、糖質コルチコイド応答配列、及びF30足場とMangoIIRNAアプタマーとをコードしているレポーター構築物を含む、核酸配列は、以下のような、配列番号18に示される配列を含む。
【0256】
【0257】
本発明による試験キット及びアッセイ法に使用するための他の核酸/構築物は、以下の表1に要約されている。
【0258】
【0259】
マルチプレックスアッセイシステム
本発明はさらに、同じ試験試料から2つ以上のステロイドホルモンゲノム応答を検出するように構成されたマルチプレックスアッセイを考える。
【0260】
マルチプレックスシステムの適用可能性をさらに例証するため、特定の環境において、臨床医が、例えば、被検者におけるアンドロゲン及びエストロゲンのレベル/活性の両方を知るために、被検者のホルモン状態を調べることに有用であろう。
【0261】
同じ試験試料からのアンドロゲンリガンド及びエストロゲンリガンドの並行検出が可能である。なぜなら、アンドロゲン受容体に結合するリガンドは、同じアッセイに存在するエストロゲン受容体には結合せず活性化しないであろうからである;逆に、エストロゲン受容体に結合するリガンドは、これもまた同じアッセイに存在するアンドロゲン受容体には結合せず活性化しないであろう。これは、なぜなら、アンドロゲン受容体及びエストロゲン受容体は、異なるステロイドホルモン受容体クラスに属し、よって、受容体活性化の点で「クロストーク」しないからである。よって、同じ試料からアンドロゲンリガンド及びエストロゲンリガンドの両方を検出するマルチプレックスアッセイが開発された。
【0262】
したがって、本発明の別の態様では、アンドロゲンリガンド及び/又はエストロゲンリガンドの並行検出のための試料をスクリーニングための試験キットが提供され、該試験キットは、
(i)アンドロゲン受容体を含む細胞溶解液、ここでのアンドロゲン受容体は、試料に由来する相補的リガンドとアンドロゲン受容体-リガンド複合体を形成することができる;及び
(ii)(a)ポリメラーゼプロモーター配列;
(b)アンドロゲン受容体-リガンド複合体が結合することのできる、アンドロゲン応答配列;及び
(c)第一のレポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、及び(a)、(b)及び(c)が作動可能に連結されている、
を含む第一の核酸分子;
(iii)(i)と同じ細胞溶解液、又はエストロゲン受容体を含む異なる細胞溶解液、ここでのエストロゲン受容体は、試料に由来する相補的リガンドとエストロゲン受容体-リガンド複合体を形成することができる;及び
(iv)(a)ポリメラーゼプロモーター配列;
(b)エストロゲン受容体-リガンド複合体が結合することのできるエストロゲン応答配列;及び
(c)第二のレポーター構築物
を含む第二の核酸分子;及び
(v)場合により、単一のポリペプチドポリメラーゼ、
ここでの第一のレポーター構築物と第二のレポーター構築物は異なる、
を含む。
【0263】
本明細書に記載の本発明の特定の例によると、すぐ上で言及された態様におけるアッセイ成分(i)及び(iii)は、同じ細胞溶解液によって提供され得る。
【0264】
本発明のこれらの態様及び他の態様によると、試験キットは、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー及び少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーターを含むように改変されていてもよい。
【0265】
本発明のこの態様による一例では、第一及び第二の核酸分子は別個の分子である。
【0266】
本発明のこの態様による別の例では、第一及び第二の核酸分子は作動可能に連結されている。
【0267】
本発明のこの態様によるさらに別の例では、第一の核酸分子は、配列番号14によって定義される配列を含む。
【0268】
本発明のこの態様によるさらなる例では、第二の核酸分子は、配列番号15によって定義される配列を含む。
【0269】
本発明のこの態様によるまたさらなる例では、第一及び第二の核酸分子は作動可能に連結され、配列番号100によって定義される配列を含む。
【0270】
【0271】
有利には、本明細書に記載のアッセイ及び試験キットは、マルチプレックスシステムでの構成に特に適している。なぜなら、本明細書に記載のアッセイシステムの単純性は、以下を意味するからである:既存のアッセイ又は試験キットを、第二のリガンドの検出に特異的な第二又は後続の受容体/レポーター構築物の組合せを含むように通常の方法で改変し得る;同じインビトロでの転写機構(例えばバクテリオファージポリメラーゼ+ヌクレオシド三リン酸)を修飾することによって、各レポーターによって生じた別個のシグナルを簡便に検出することができる。この点をさらに説明するために、本発明に記載のマルチプレックスアッセイシステムは、アンドロゲン又はアンドロゲン様リガンドの存在下においてレポーターの読み出し情報を発生するであろう、アンドロゲン特異的レポーター構築物を含み得、これは、同じ試料中のエストロゲン又はエストロゲン様リガンドの検出に特異的であるレポーター構築物によって発生する読み出し情報とは独立して測定することができる。
【0272】
当業者は、本発明のマルチプレックスシステムに伴う分子の複雑さがないことによって付与される利点を認識し、そして同じ試験試料からの複数の別個のステロイドホルモンゲノム応答(例えば2つ、3つ、4つ又はそれ以上)の検出が可能であることを認識するだろう。
【0273】
したがって、本発明に記載の試験キットは、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体と、少なくとも1つのレポーター構築物を含む少なくとも1つの核酸分子とを含む。
【0274】
したがって、本明細書に記載の試験キット及び方法による「ステロイドホルモン受容体」という用語は、2つ以上の異なる種類のステロイドホルモン受容体(例えば、単に説明のために、テストステロンに結合するステロイドホルモン受容体とエストラジオールに結合するステロイドホルモン受容体)が存在し得るという意味において、「少なくとも1つのステロイドホルモン受容体」を意味することを意図する。
【0275】
同様に、「[応答配列を含む]核酸分子」という用語は、は、2つ以上の別個の核酸分子が存在し得るという意味において、「少なくとも1つの核酸」を意味することを意図し、各々が、異なる応答配列及び場合により異なるレポーター分子を含む。
【0276】
本発明のこの態様による一例では、試験キットは
(i)エストロゲン受容体、及びエストロゲン応答配列を含む核酸分子、及び(ii)アンドロゲン受容体、及びアンドロゲン応答配列を含む核酸分子を含む。
【0277】
関連した例では、エストロゲン応答配列を含む核酸分子はさらに、第一のフルオロフォアに結合することのできる第一のRNAアプタマーを含む。
【0278】
別の関連した例では、アンドロゲン応答配列を含む核酸分子はさらに、第二のフルオロフォアに結合することのできる、第二のRNAアプタマーを含む。
【0279】
関連した例では、第一及び第二のRNAアプタマーとしては、MangoI、MangoII、MangoIII、及びMangoIV、Spinach、iSpinach、baby Spinach、Broccoli及びマラカイトグリーンが挙げられるがこれらに限定されない(ただし、第一のRNAアプタマーは、第二のRNAアプタマーとは同一ではない)。
【0280】
さらなる関連した例では、第一のRNAアプタマーは、MangoIIであり、第二のRNAアプタマーはマラカイトグリーンである。
【0281】
さらなる関連した例では、第一のRNAアプタマーはMangoIIであり、第二のRNAアプタマーはiSpinachである。
【0282】
臨床への応用
本発明はさらに、様々な臨床への応用のための、本明細書に記載の試験キット及びアッセイ法の有用性を考える。
【0283】
例えば、試験(例えば生物学的)試料の全エストロゲン活性を知ることが望ましい場合がある。本明細書のどこかで記載されているように、2つのエストロゲン受容体サブタイプ、すなわち、エストロゲン受容体α及びエストロゲン受容体βが存在する。したがって、本発明は、試料の全エストロゲン活性を測定するための、本明細書に記載のアッセイ原則に基づいた、2つのエストロゲン受容体サブタイプを含む、マルチプレックスアッセイフォーマットを考える。
【0284】
したがって、本発明のさらに別の態様では、試験試料の全エストロゲン活性を決定するための試験キットが提供され、該試験キットは
(i)エストロゲン受容体αとエストロゲン受容体βとを含む細胞溶解液;
(ii)場合により、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体;
(iii)場合により、少なくとも1つのステロイドホルモン受容体;及び
(iv)(a)RNAポリメラーゼプロモーター配列;
(b)受容体-リガンド複合体が結合することのできる応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、及び(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(v)場合により、RNAポリメラーゼ
を含む。
【0285】
本発明のこの態様による一例では、RNAポリメラーゼはT7RNAポリメラーゼであり、RNAポリメラーゼプロモーター配列は、配列番号85によって定義されるT7RNAポリメラーゼプロモーター配列である。
【0286】
本発明のこの態様による別の例では、核酸配列は、プロモーター配列(a)と応答配列(b)との間に位置するスペーサー(e)を含む。関連した例では、スペーサー(e)は、約2から約32ヌクレオチド長である。
【0287】
試験キット及びアッセイの有用性
有利には、本発明は、ステロイドホルモン受容体活性化の原則に基本的に基づいて働く、活性に基づいた試験キット、アッセイ、及び方法を提供する。試験される予定の試料中に存在する標的リガンドによる、ステロイドホルモン受容体活性化(結果としてそのホルモン応答配列への結合を伴う)を検出することによって、本発明は、調べるリガンド(群)の構造に関する知識に依拠せず、生物学的に活性なリガンドと不活性なリガンドとを容易に区別することができ、実施に複雑な実験機器又は特殊な専門知識を必要としない、費用対効果が高く、確実であり、そして再現性の高いシステムを提供する、無細胞試験キット、アッセイ及び方法を提供する。
【0288】
したがって、本発明の別の態様では、アスリートのドーピング状態を決定するための方法が提供され、該方法は、アスリートから得られた試料を、本明細書に記載されているような試験キットと合わせる工程、及びアスリートのドーピング状態を決定する工程を含む。
【0289】
本発明のこの態様による一例では、アスリートから得られた試料は、血清試料、血漿試料、又は尿試料である。
【0290】
別の例では、アスリートは、ヒトのアスリート、又はウマ、ラクダ若しくはイヌから選択されたヒト以外のアスリートである。
【0291】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための製品が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体を活性化し、そして細胞内でゲノム応答を惹起することができ、該製品は、本明細書に記載のような試験キットを、試料中のリガンドの存在をどのように検出するかの説明書と一緒に含んでいる。
【0292】
本発明のまたさらなる態様では、アスリートにおけるドーピングを決定するための製品が提供され、該製品は、本明細書に記載のような試験キットを、アスリートから得られた試料中のリガンドの存在を検出するための説明書と一緒に含み、ここで試料中のリガンドの存在は、アスリートにおけるドーピングの指標となる。
【0293】
本明細書に記載の様々な試験キット及びアッセイは各々、(i)試験される予定の試料中に存在し得るリガンドと結合するための、リガンド結合性ドメインを含む、ステロイドホルモン受容体、及び(ii)活性化されたステロイドホルモン受容体(又はリガンド-受容体複合体;HR-L)が結合するタンパク質結合性ドメインを含む、核酸応答配列を提供する。「活性化されたステロイドホルモン受容体」という用語は、受容体-リガンド複合体を指し;HR-L構造の様々な並べ替えを含み得る(例えば単量体、二量体、三量体など)。重要なことには、ホルモン応答配列は、受容体-リガンド複合体に特異的な結合モチーフを含む。したがって、本発明の試験キット及びアッセイを関心対象の試料と組み合わせることによって、ステロイドホルモン受容体に結合し、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起する能力を有する、リガンドの検出が可能である。
【0294】
「受容体結合性ドメイン」、「活性化された受容体結合性ドメイン」、「ホルモン受容体結合性ドメイン」、「活性化されたホルモン受容体結合性ドメイン」、「受容体-リガンド結合性ドメイン」及び「ホルモン受容体-リガンド結合性ドメイン」という用語は、は同義語として使用され、本明細書において定義されているような、活性化されたホルモン受容体又はリガンド-受容体複合体が結合する、ホルモン応答配列のタンパク質結合性ドメインを指す。
【0295】
他の例では、本明細書に記載の本発明は、ヒト並びにヒト以外のアスリート(競走馬、ラクダ及びイヌを含む)に使用される、運動能力向上プロドラッグ/薬物(例えばタンパク同化ステロイド)の検出に有用性を見出す。他の例では、本明細書に記載の本発明は、ステロイドホルモン受容体に結合し、細胞内でゲノム応答を惹起するか又は代謝プロセス後にそうし得る(すなわち、いわゆる「プロドラッグ」の場合)添加物について、食品及び健康食品サプリメントをスクリーニングする際に有用性を有する。
【0296】
本発明はさらに、試験試料からの1つ以上の生理学的に不活性なリガンドの検出を考え、該リガンドは最終的には、生理学的に活性な形態へと変換されると、ステロイドホルモン受容体を活性化することができる。したがって、本明細書に記載のような試験キット、アッセイ及び方法は、その対応するステロイドホルモン受容体を活性化するであろう方法で、リガンドを処理することのできるステロイド代謝機構をさらに含む。このように、栄養サプリメントなどの試料からの生理学的に不活性なリガンド(例えばプロホルモン)の検出が可能である。
【0297】
したがって、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法はさらに、生理学的に不活性な形態から生理学的に活性な形態へと、又は生理学的に活性な形態から生理学的により活性な形態へと、又は生理学的に活性な形態から生理学的にあまり活性ではない形態へと、又は生理学的に活性な形態から生理学的に不活性な形態へとリガンドを変換するに十分なステロイド代謝機構を含み得る。リガンドは生理学的に活性な形態である場合にのみ、ステロイドホルモン受容体を活性化し、ゲノム応答を惹起する能力を有する。したがって、本発明に記載の試験キット、アッセイ及び方法へのステロイド代謝機構の包含は、関心対象の試験試料からの生理学的に不活性なリガンドの検出を促進することを助け、(例えば)該リガンドはプロドラッグ(例えばプロホルモン)として存在し、さもなくば確立された方法を使用した検出から逃れ得る。さらに、本発明に記載の試験キット、アッセイ及び方法へのステロイド代謝機構の包含は、効果を示すのに必要なリガンドの生物学的活性/効力を決定することを助ける。
【0298】
図17に提示されたデータはさらに、この点を説明する。アンドロステンジオン(すなわちアンドロゲンプロホルモン)を、S9肝臓画分と共にプレインキュベートし、その後、反応混液をステロイドについて抽出した(すなわち、存在し得るあらゆる非特異的なリガンドを除去するために)。その後、様々な試験試料及び対照試料を、アンドロゲン活性について分析した。結果は、無処置対照(すなわちアンドロステンジオン-S9肝臓)と比較して、アンドロステンジオン+S9肝臓処置についてのレポーター構築物の蛍光の統計学的に有意な減少を示し、ここでの無処置の対照についてのアンドロゲン活性レベルは、ビヒクル対照(すなわちメタノール+T7;メタノール+アンドロゲン受容体/HSP90)に近似した。
【0299】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法はさらに、定義されているような、受容体-リガンド複合体と、核酸内に含まれる応答配列との間の結合を検出するための検出手段を含み得る。
【0300】
本発明に記載の試験キット及びアッセイは無細胞である。これは特に重要である。なぜなら、アッセイシステムの分子的複雑さが有意に減少するからである。例えば、(i)ステロイドホルモン分子の熱力学的低下が起こる可能性を有する、細胞膜構造が存在しないこと、及び(ii)細胞に基づいたシステムに観察される内因性ステロイドホルモン代謝が存在しないことは、アッセイシステムに、増強された感度及び特異性を与える。さらに、有利には、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法によると、必須構造成分の相対量(例えばステロイドホルモン受容体、及び1つ以上の活性化された受容体結合性ドメインを含む核酸応答配列)を正確に制御することにより、増強されたアッセイ機能及び増加した感度がもたらされ得る。
【0301】
本明細書に記載の方法によると、試験結果を、試験試料中に存在するリガンドによって発生するシグナルの絶対レベルを決定するために、リファレンス閾値と比較し得る。実際に、出願人は、リガンドに結合していない受容体による、応答配列の非特異的結合及び/又は活性化を観察した。したがって、任意の与えられた試験試料について半定量分析を実施することが望ましい場合、本明細書に記載のアッセイ及び方法は、試験試料の非存在下において実施して、まずリファレンス閾値を確立し得る(例えば、陰性対照として作用するエタノールの存在下)。試験試料から得られたアッセイ結果をその後、リファレンス閾値と比較して、簡単な引き算を使用して、試料中に存在するリガンド(群)に起因する絶対活性を決定し得る。
【0302】
本発明はさらに、リファレンス化合物と比較した、試験化合物の効力を決定するための、本明細書に記載のアッセイ及び試験キットの使用を考える。本発明によると、「相対効力」という用語は、リファレンス化合物に対して試験化合物の生物学的活性を標準化することによって決定されるような、リファレンス化合物に対する試験化合物の生物学的活性の乗数と定義される。
【0303】
試験化合物及びリファレンス化合物の生物学的活性は、EC50、すなわちその特定の化合物についての用量反応曲線から最大反応の半量を与える化合物の濃度を使用して決定され得る。用量反応曲線は、該化合物を連続希釈し、そのステロイドホルモン受容体結合/活性化プロファイルを測定することによって作成される。その後、測定された活性(例えば蛍光によって測定)、対、化合物の濃度(すなわち、化合物の連続希釈は濃度範囲を生じ、これは対数の尺度で最善に提示される)のプロットが作成される。
【0304】
当業者は、試験化合物の相対効力の尺度は、使用されるリファレンス化合物に対するものであることを認識しているだろう。換言すれば、試験化合物の相対効力は、その生物学的活性が標準化されるリファレンス化合物に応じて異なる可能性がある。
【0305】
相対効力が1を超える場合、試験化合物は、リファレンス化合物と比較して、アッセイにおいて測定されたより高い生物学的活性を誘起する。相対効力が1未満である場合、試験化合物は、リファレンス化合物と比較して、アッセイにおいて測定されたより低い生物学的活性を誘起する。相対効力が1に等しい場合、試験化合物及びリファレンス化合物は、アッセイにおいて同等な生物学的活性を誘起する。
【0306】
相対効力はまた、問題の試験化合物の活性化係数を決定するためにも使用することができる。本明細書において使用されるように、活性化係数は、試験化合物の2つの状態間の相対的活性化の尺度としての、哺乳動物細胞において又は哺乳動物細胞非含有抽出物(すなわち、代謝機構を含む)を使用して決定された試験化合物の相対効力に対する、酵母細胞において又は酵母細胞非含有抽出物(すなわち代謝機構を含まない)を使用して決定された、同試験化合物の相対効力に関する。1を超える活性化係数は、試験化合物が、アッセイ中の代謝機構の存在下においてより生理学的に活性な状態への代謝変換を受けたことを意味する。
【0307】
本発明に記載の試験キット及びアッセイによって付与されるさらに別の利点は、相対的な実行し易さである。換言すれば、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法の性能は、複雑な細胞培養技術、経験豊富な実験技術者、又は煩雑な実験検査機器及び分析を必要としない。これは特に有利である。なぜなら、本発明に記載の試験キット、アッセイ及び方法は、相対的に簡単な試験手順に従って、現場で訓練されていない個人によって実施され得るからである。さらに、試験キット、アッセイ及び方法の実施は、(例えば)競技直前又は競技直後に、アスリートから採取された試料中の運動能力向上物質について試験する場合、リアルタイムの情報を提供し得る。
【0308】
本発明の他の態様では、リガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、アンドロゲン受容体を含む細胞溶解液;又は
(ii)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、エストロゲン受容体を含む細胞溶解液、ここでのエストロゲン受容体は、エストロゲン受容体α又はエストロゲン受容体βである;又は
(iii)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、プロゲステロン受容体を含む細胞溶解液、ここでのプロゲステロン受容体は、プロゲステロン受容体A又はプロゲステロン受容体Bである;又は
(iv)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、鉱質コルチコイド受容体を含む細胞溶解液;又は
(v)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、糖質コルチコイド受容体を含む細胞溶解液;及び
(vi)(a)配列番号85を含むか又はからなるT7ポリメラーゼプロモーター配列;
(b)受容体-リガンド複合体が結合することのできる応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、そして(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている、
を含む、核酸分子;及び
場合により、T7ポリメラーゼ
を含む。
【0309】
本発明の他の態様では、リガンドの存在について試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、アンドロゲン受容体を含む細胞溶解液;又は
(ii)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、エストロゲン受容体を含む細胞溶解液、ここでのエストロゲン受容体は、エストロゲン受容体α又はエストロゲン受容体βである;又は
(iii)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、プロゲステロン受容体を含む細胞溶解液、ここでのプロゲステロン受容体は、プロゲステロン受容体A又はプロゲステロン受容体Bである;又は
(iv)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、鉱質コルチコイド受容体を含む細胞溶解液;又は
(v)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、糖質コルチコイド受容体を含む細胞溶解液;及び
(vi)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;
(vii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体;及び
(ix)(a)配列番号85を含むか又はからなるT7ポリメラーゼプロモーター配列;
(b)受容体-リガンド複合体が結合することのできる、応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、及び(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(x)場合により、T7ポリメラーゼ
を含む。
【0310】
本発明のまたさらなる態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは:
(i)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、アンドロゲン受容体を含む細胞溶解液;又は
(ii)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、エストロゲン受容体を含む細胞溶解液、ここでのエストロゲン受容体は、エストロゲン受容体α又はエストロゲン受容体βである;又は
(iii)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、プロゲステロン受容体を含む細胞溶解液、ここでのプロゲステロン受容体は、プロゲステロン受容体A又はプロゲステロン受容体Bである;又は
(iv)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、鉱質コルチコイド受容体を含む細胞溶解液;又は
(v)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、糖質コルチコイド受容体を含む細胞溶解液;及び
(vi)(a)配列番号85を含むか又はからなるT7ポリメラーゼプロモーター配列;
(b)上記の(i)から(v)のいずれかに定義される、受容体-リガンド複合体が結合することのできる、応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、及び(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている)
を含む核酸分子;及び
(vii)場合により、T7ポリメラーゼ;及び
(viii)ヌクレオシド三リン酸
を含む。
【0311】
本発明のまたさらなる態様では、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起することのできるリガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該試験キットは:
(i)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、アンドロゲン受容体を含む細胞溶解液;又は
(ii)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、エストロゲン受容体を含む細胞溶解液、ここでのエストロゲン受容体は、エストロゲン受容体α又はエストロゲン受容体βである;又は
(iii)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、プロゲステロン受容体を含む細胞溶解液、ここでのプロゲステロン受容体は、プロゲステロン受容体A又はプロゲステロン受容体Bである;又は
(iv)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、鉱質コルチコイド受容体を含む細胞溶解液;又は
(v)試験試料に由来するリガンドとリガンド-受容体複合体を形成することのできる、糖質コルチコイド受容体を含む細胞溶解液;及び
(vi)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コアクチベーター;及び/又は
(vii)少なくとも1つのステロイドホルモン受容体コリプレッサー;及び
(viii)(a)配列番号85を含むか又はからなるT7ポリメラーゼプロモーター配列;
(b)上記の(i)から(v)のいずれかに定義されているような、受容体-リガンド複合体が結合することのできる、応答配列;及び
(c)レポーター構築物、
ここでの応答配列(b)は、プロモーター配列(a)とレポーター構築物(c)との間に位置し、そして(a)、(b)及び(c)は作動可能に連結されている、
を含む核酸分子;及び
(ix)場合により、T7ポリメラーゼ;及び
(x)場合により、ヌクレオシド三リン酸
を含む。
【0312】
本発明のアッセイ、方法及び試験キットによる特定の例では、核酸分子は、応答配列又はレポーター構築物を含む、核酸の様々な成分の1つ以上のコピーを含む。例えば、レポーター構築物又は核酸分子は、1つのコピー、又は2コピー、3コピー、4コピーなどを含むがこれらに限定されない複数のコピーの核酸応答配列を含み得る。
【0313】
本発明の別の例では、ステロイドホルモン受容体は、細胞から精製されるか、又は、組換えクローニング、発現及び精製を通して細胞に基づいたホルモン受容体から得られる。さらなる例では、ステロイドホルモン受容体は合成であり、その配列は、当技術分野において公知である内因性ステロイドホルモン受容体配列に基づいてモデル化されたか又はそれから発展させた。
【0314】
当業者はまた、任意のステロイドホルモン受容体を、本発明の試験キット、アッセイ及び方法に使用し得るが、ただし、それは検出のために関心対象のリガンドに結合し、該リガンドによって活性化される能力を保持することを認識しているだろう。これは、内因性細胞形態に基づいたステロイドホルモン受容体、並びに、組換え又は合成の形態を含む。
【0315】
したがって、本発明に記載の試験キット、アッセイ、及び方法は、ステロイドホルモンゲノム応答を惹起する任意のリガンドをスクリーニング/検出するように構成され得る。しかしながら、当業者は、本明細書に記載の様々なアッセイ概念によると、様々なホルモンクラス(すなわちリガンド)の検出が、試験キット、アッセイ及び方法のフォーマットが適切に構成及び最適化されていることを必要とすることを認識しているだろう。例えば、テストステロン並びに他のテストステロン様ホルモンなどの、アンドロゲン受容体に結合し活性化するリガンドの検出は、活性化されたアンドロゲン-受容体複合体などに結合することのできる、アンドロゲン応答配列と一緒に、アンドロゲン受容体を含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0316】
デザイナーステロイド及び非ステロイドタンパク同化薬物は、アンチドーピング研究所に対して重大で漸増している難題を課している。2000年代初期に初めてテトラヒドロゲストリノン及びマドールの検出と共に同定され、デザイナータンパク同化薬物によって課される脅威は、数多くの薬剤候補を含んで急速に増大している。これらの合成由来のタンパク同化薬物は、製造及び供給の両方の点から検出又は法的規制を避けるように設計され、多くがインターネット上で広く入手可能であり、ここではそれらはいわゆる「サプリメント」として販売されている。
【0317】
質量分析法は依然として、生物学的試料及び/又はサプリメント中の、既知の違法なステロイドホルモン及び非ステロイドタンパク同化薬物の同定の主な技術である。その感度及び特異性にも関わらず、質量分析法は依然として、検出のためにステロイド及び非ステロイドタンパク同化薬物の化学構造の事前の知識を必要とすることによって限定される。さらに、質量分析法は、検出されたタンパク同化薬物の生物学的活性に関する情報は提供できず、生理活性分子と不活性分子を区別できない。これは、アスリート、コーチ、トレーナー、マネージャー、及び製造業者の起訴に必要とされる情報である。
【0318】
近年、酵母及び哺乳動物細胞に基づいたインビトロでのアンドロゲンバイオアッセイを使用して、サプリメント中の、新規合成アンドロゲン、アンドロゲン性を有するプロゲスティン、並びに、アンドロゲン、プロアンドロゲン、デザイナーアンドロゲン、及びデザイナー非ステロイドタンパク同化薬物の存在を検出している。しかしながら、これらのアッセイは、本明細書の何処かで記載されているような、分子の複雑さに伴う限界があり、分子的性質及び細胞的性質の両方の技術を必要とし、時間がかかり、大きな労働力を有し、高価である。したがって、通常のスクリーニングに含めるのに、その現在の形態のアッセイを考えることは実行可能ではない。換言すれば、酵母及び哺乳動物細胞に基づいたアッセイにはかなりの限界がある。なぜなら、それらはハイスループットではないか、又は費用対効果が高くないからである。
【0319】
有利には、本発明は、ステロイドホルモン受容体活性化の原則に基づいて基本的には働く、活性に基づいた試験キット、アッセイ及び方法を提供する。試験される予定の試料内に存在するリガンドによってステロイドホルモン受容体活性化を検出することによって、本発明は、調べるリガンド(群)の構造に関する知識に依拠せず、生物学的に活性なリガンドの存在と不活性なリガンドの存在とを容易に区別することができ、実施に複雑な実験機器又は特殊な専門知識を必要としない、費用対効果が高く、確実であり、再現性の高いシステムを提供する、無細胞試験キット、アッセイ及び方法を提供する。
【0320】
したがって、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法による一例では、リガンドは、運動能力向上デザイナー薬物及び/又はステロイドである。
【0321】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法による別の例では、リガンドは、未知の化学構造のものである。
【0322】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法によるさらなる例では、リガンドは、以前に未知であった化学構造のものである。
【0323】
本発明はさらに、リガンドがもはや受容体を活性化せずゲノム応答を惹起しないように、リガンドのそのステロイドホルモン受容体への結合を妨げるであろう化合物について、関心対象の試料をスクリーニングすることによって、標的リガンドのアンタゴニストを検出するための、本明細書に記載のような試験キット、アッセイ及び方法の使用を考える。
【0324】
これは、(例えば)内分泌がん及び非内分泌がんの処置のための治療薬候補として、ステロイドホルモン受容体の活性化を遮断するアンタゴニストについてスクリーニングする必要性がある場合に特に有用である。例えば、本発明に記載の1つ以上のエストロゲン受容体を含む、活性に基づいた試験キット、方法及びアッセイを使用して、アンタゴニストの存在について化合物ライブラリーをスクリーニングし得るか、又はがん療法中の患者の乳がん組織若しくは血液中のエストロゲン受容体活性化の減少をモニタリングし得る。
【0325】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法の全ての態様によるまたさらなる例では、生物学的試料は、ウマ、イヌ、ラクダ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、トリ、サル、マウス、ウサギ、シカ、魚類、サケ、霊長類、及びヒトからなる群より選択された動物に由来する。
【0326】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法の全ての態様によるまたさらなる例では、試験試料は、尿、唾液、糞便、毛髪、血液(血漿及び血清)、筋肉を含むがこれらに限定されない組織、腫瘍、精液などからなる群より選択された生物学的物質に由来する。
【0327】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法の全ての態様によるまたさらなる例では、試験試料は、野菜、肉類、飲料(スポーツドリンク及びミルクを含むがこれらに限定されない)、サプリメント(食品サプリメント及びスポーツ用サプリメント、栄養サプリメントを含むがこれらに限定されない)、生薬エキスなどからなる群より選択された食物に由来する。
【0328】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法の全ての態様によるまたさらなる例では、試験試料は、薬物、トニック剤、シロップ剤、丸剤、ロゼンジ剤、クリーム剤、噴霧剤、及びゲル剤からなる群より選択された医薬品に由来する。
【0329】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法の全ての態様によるまたさらなる例では、試料は、液体、水、土壌、繊維製品(プラスチックを含むがこれらに限定されない)、及び鉱物からなる群より選択された環境に由来する。
【0330】
図14~16と併せて読まれる実施例6に提示された情報は、試験キット及びアッセイ法を使用して、仔馬(
図15及び16)から得られた尿だけでなく、仔牛及びウマ(
図14)から得られた血清などの生体マトリックスからもテストステロン(例示的なステロイドホルモンリガンドとしての)を検出したことを実証する。これらのデータは、現場での、例えば、ヒト及びウマのアスリートのトラックの側でのドーピング状態を決定する際の、又は輸出/輸入品質管理の一部としての食品サプリメントに関する分析を実施するための、本発明による試験キット及びアッセイ法の有用性を強調する。
【0331】
したがって、別の例では、試料は生物学的試料である。関連した例では、生物学的試料は生体液体試料であり、これには、血液、血漿、血清、唾液、腸液、精液及び尿が挙げられるがこれらに限定されない。
【0332】
別の例では、試料は、葉、花、幹、樹皮、根、芽、さや、花粉及び種子を含むがこれらに限定されない、植物に由来する。
【0333】
別の例では、試料は、ウマ動物、イヌ動物、ヒトコブラクダ動物、ウシ動物、ブタ動物、ヒツジ動物、ヤギ動物、トリ動物、サル動物、マウス動物、ウサギ動物、シカ動物、魚類動物、サケ動物、霊長類動物、及びヒト動物を含むがこれらに限定されない動物に由来する。
【0334】
別の例では、試験試料は、非生物学的試料である。関連した例では、非生物学的試料としては、液体試料(水を含む)、土壌試料、繊維製品の試料(プラスチックを含むがこれらに限定されない)、鉱物試料、食品試料、及び医薬品が挙げられるがこれらに限定されない。
【0335】
食品試料の例としては、野菜、肉類、飲料、サプリメント、及び生薬エキスが挙げられるがこれらに限定されない。
【0336】
医薬品の例としては、薬物、トニック剤、シロップ剤、丸剤、ロゼンジ剤、クリーム剤、噴霧剤、及びゲル剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0337】
本発明はさらに、以下の実施例を参照して記載されている。特許請求されているような本発明は、いずれにしてもこれらの実施例によって制限されないものであることが理解されるだろう。
【0338】
実施例
以下の情報及びデータは、(例えば)テストステロン及びジヒドロテストステロンを含む、アンドロゲン受容体に結合し活性化するリガンド、又は(例えば)エストラジオールを含む、エストロゲン受容体に結合し活性化するリガンドの検出に関する、様々な原型アッセイを実証する。これらの例を使用して、本明細書において記載及び特許請求された活性のアッセイのプラットフォームを説明し、ここでのアンドロゲン受容体に結合するリガンド、又はエストロゲン受容体(すなわちER-α及びER-β)に結合するリガンドの検出によって例示されるアッセイの概念及び原理は、プロゲステロンを含むがこれらに限定されない、プロゲステロン受容体に結合するリガンド、アルドステロンを含むがこれらに限定されない、鉱質コルチコイド受容体に結合するリガンド、及びコルチゾールを含むがこれらに限定されない、糖質コルチコイド受容体に結合するリガンドを含むがこれらに限定されない、関心対象の他の受容体リガンドの検出にも同等に応用されるだろう。
【0339】
実施例1
アンドロゲンアッセイの原型1:アッセイの構築及び結果
1.1 インビトロでの転写プラットフォーム
出願人は最初に、組換えアンドロゲン受容体(AR)、組換え熱ショックタンパク質90(HSP90)、T7RNAポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、及び転写用緩衝液と組み合わせた、MangoII用のRNAアプタマー配列の上流の、3×アンドロゲン応答配列(ARE)のタンデムアレイの上流にT7RNA共通プロモーター配列をコードしている、DNA構築物を含む、インビトロの転写プラットフォームを開発した。T7プロモーターは、高レベルのRNAアプタマー発現を駆動し、これはフルオロフォアであるチアゾールオレンジ1-ビオチン(TO1)に結合することによって検出されるだろう。T7により駆動されるアプタマー発現の抑制は、アンドロゲン応答配列に、リガンドによって活性化されたアンドロゲン受容体受容体が結合した時に起こるだろう。
【0340】
アンドロゲン応答配列(ARE)
・これらの実験で試験されたアンドロゲン応答配列は、3×AREのタンデムアレイであった。
【0341】
アンドロゲン受容体(AR)
・シグマアルドリッチ社製の市販の組換えアンドロゲン受容体が試験された。
【0342】
T7RNAポリメラーゼ
・サーモフィッシャー社製のMegaScriptキットを、T7RNAポリメラーゼ、並びに必要な緩衝液及びヌクレオチド三リン酸の入手原としてこれらの研究に使用した。
【0343】
1.2 アンドロゲン応答配列により媒介される転写/翻訳の説明
天然アンドロゲンシグナル伝達は、細胞内へのアンドロゲン分子の拡散から始まり、細胞内で該アンドロゲン分子は、熱ショックタンパク質90(HSP90)に結合して細胞質内で不活性化状態で保持されているアンドロゲン受容体に結合する。アンドロゲン分子(又はリガンド)が結合すると、アンドロゲン受容体はコンフォメーション変化を受け、HSP90を遊離し、核局在化部位及び二量体化部位を露出する。リガンド-アンドロゲン受容体複合体は、核への移行へと標的化され、核ではアンドロゲン受容体は、DNA及びRNAポリメラーゼIIホロ酵素集合体内のアンドロゲン応答配列部位に結合し、アンドロゲン受容体により調節される遺伝子の転写を開始する。RNAポリメラーゼIIによる遺伝子の転写は、mRNA転写物を生成し、これは次に、リボソーム機構のための鋳型として作用して、タンパク質を作製する。
【0344】
アンドロゲン応答配列が、T7プロモーター(及び転写開始部位)の下流に配置されており、テストステロンというリガンドの結合したアンドロゲン受容体が、アンドロゲン応答配列に結合すると、T7により媒介される転写は減少/阻害されることから、この天然の生物機能を活用して、ここに記載の実験は、テストステロン(天然のアンドロゲン)により活性化されたアンドロゲン受容体は、T7により媒介される転写を減少させることを示す。
【0345】
図1は、T7RNAポリメラーゼにより媒介される転写のアンドロゲン応答配列により媒介される遮断の図を示す。
【0346】
天然アンドロゲンであるテストステロンなどのリガンドの存在下では、アンドロゲン受容体はアンドロゲン応答配列に結合し、T7ポリメラーゼによる転写を阻害する。この状態では、より少ないRNA MangoIIアプタマーが形成される。
【0347】
リガンドの非存在下では、アンドロゲン受容体は活性化されてアンドロゲン応答配列に結合することはなく、それ故、DNAは妨害タンパク質から離れる。T7はDNA構築物に沿って進み、RNA MangoIIアプタマーを生成し、これは続いてTO1-Bとの結合及び蛍光によって検出される。
【0348】
図2及び3に提示された結果を参照して、アンドロゲン受容体による転写の遮断のテストステロンによる活性化を調べた。アンドロゲン受容体がない場合には、完全なT7により媒介される転写、及びRNA MangoIIアプタマーの発現を示す。これは、アンドロゲン受容体があると減少し、アンドロゲン受容体が11.5ng/mlのテストステロンによって活性化されると、さらに減少する。
【0349】
図4を参照して、次に、HSP90が、アンドロゲン受容体の活性化の基線を阻害し得るかどうかを調べた。アンドロゲン受容体は、テストステロンを介した局所的な活性化因子-1(AF-1)の活性化を通した、又は局所的な活性化因子-2(AF-2)の自己活性化を介したコンフォメーション変化によって活性化される。アンドロゲン受容体では、AF-2は非常に活性が高く、アンドロゲン受容体活性の最大50%までを示し得る。AF-2の自己活性化を抑制するために、HSP90を加えて、アンドロゲン受容体を不活化状態に保ち、これはリガンドの非存在下ではアンドロゲン応答配列には結合しないだろう。しかしながら、リガンドの存在下では、HSP90は、アンドロゲン受容体から競合的に解離し得、リガンドの結合したアンドロゲン受容体はアンドロゲン応答配列に結合するだろう。
【0350】
実施例2:
アンドロゲンアッセイの原型2:アッセイの構築及び結果
アンドロゲンアッセイの原型2の概念は、単一タンパク質のRNAポリメラーゼ、例えばT7RNAポリメラーゼが、DNA鋳型上のそのプロモーター配列に結合するというものである。DNA鋳型は、プロモーターの下流にRNAアプタマーMangoII配列をコードしている。ホルモン応答配列(HRE)は、T7プロモーターとMangoII配列との間に位置する。ステロイドホルモン受容体(SHR)がT7のインビトロ転写(IVT)反応混液に添加され、受容体特異的リガンドによって活性化されると、SHRはDNA鋳型上のHREに結合し、この結合した位置においてT7RNAポリメラーゼがDNAからRNAへと転写するのを阻害し、それ故、MangoIIアプタマーは全く形成されない。MangoIIの形成は、反応混液に、MangoIIアプタマーに結合するTO-1ビオチンなどの特異的なフルオロフォアを添加することによって検出される。MangoIIアプタマーに結合すると、TO1は、510nmの波長によって励起されると、535nmの波長で励起波長を発光する。蛍光は、標準的な蛍光光度計を使用して測定される。
【0351】
2.1 アンドロゲンアッセイの原型2の開発に使用されるDNA配列
以下の実験は、ステロイドホルモン受容体の例としてアンドロゲン受容体又はエストロゲン受容体αを、及びホルモン応答配列の例としてアンドロゲン応答配列又はエストロゲン応答配列を使用する。
【0352】
T7により媒介されるインビトロでの転写を支持する重要な工程は、DNA鋳型内のそのプロモーター配列の認識についてである。その後、T7の転写が起こったかどうかを測定するために、DNA配列は、レポーター酵素(タンパク質)又はレポーターRNA(例えばアプタマー)をコードし得る。以下の例では、DNA配列は、レポーターDNA(MangoII)をコードしていた。
【0353】
商業的なDNA断片合成を使用して、(1)T7開始配列、(2)アンドロゲン応答配列、(3)F30足場を有するMangoIIRNAアプタマーをコードする一連のDNA鋳型を作製した。これらのDNA断片をプラスミドにクローニングし、形質転換された大腸菌(E.coli)を使用して増幅した。それに続くプラスミドの抽出、精製及び鎖状化により、原型アッセイのための最終的なDNA鋳型が得られた。転写因子がT7活性を遮断した他の例は、T7開始配列と転写因子部位の間の約10~32bpが、T7の進行を遮断するのに最適であることを示す。それ故、12bpのフィラー配列をDNA断片に含めた。
【0354】
【0355】
2.2 テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体は、T7により媒介されたRNAアプタマーであるMangoIIの発現を抑制することができる。
ステロイドホルモン受容体リガンドを検出するためのステロイドホルモン受容体-ホルモン応答配列-RNAアプタマー反応は、ホルモン応答配列に結合したステロイドホルモン受容体によるT7の転写の遮断によって決まる。以下の例では、アンドロゲン受容体及びアンドロゲン応答配列を使用して、ステロイドホルモン受容体及びホルモン応答配列を示した。
【0356】
【0357】
反応を構築し、T7RNAポリメラーゼの添加により開始し、37℃で150分間インキュベートした。この時間中、RNAMangoIIアプタマーが生成された。MangoIIの検出は、フルオロフォアであるチアゾールオレンジ(TO1)の添加、並びに、510nmでの励起及び535nmでの発光の蛍光光度計を用いた出力の測定によってであった。
図5は、テストステロンによって活性化されたアンドロゲン受容体が、用量依存的にT7により生成されたRNAアプタマーMangoIIの量を減少させることができることを示す。テストステロンは、体内で循環している最も豊富な内因性のアンドロゲンを示す。テストステロンは、周辺組織(例えば生殖腺)においてジヒドロテストステロン(DHT)へと変換され得る。DHTはまた、T7によるMangoIIの生成の、アンドロゲン受容体により調節される低減を活性化することが判明した。
【0358】
2.3 ステロイドホルモン受容体の滴定
上記のように、アンドロゲン受容体は、以下の実験においてステロイドホルモン受容体の例として使用された。
【0359】
上記の実験では、そして表3に示されるように、初期アンドロゲン受容体濃度は、本発明者らの研究室で確立された以前の無細胞アッセイに基づいていた。T7により媒介されるMangoIIの生成の減少は、DNA鋳型に現在結合しそして活性である、全てのT7酵素分子を遮断するのに十分なアンドロゲン受容体が存在することに依存している。このことは、アンドロゲン受容体:T7及びアンドロゲン受容体:DNA鋳型の比の両方が重要であることを意味する。しかしながら、アンドロゲン受容体のレベルは、蛍光の変化の検出に必要とされる、十分なMangoIIの生成を支える、最適なレベルのT7及び/又はDNA鋳型の脈絡から考える必要がある。
【0360】
次の一連の実験では、反応1回あたりのアンドロゲン受容体の濃度が、Δ[MangoII]に対する効果を示すために変更された。
【0361】
【0362】
「標準的な」反応として50ngのアンドロゲン受容体の反応を使用して、アンドロゲン受容体の分子数は、3.798×1010のDNA分子数(63.06fmol、又は3.15nM)に対して、2.737×1011(454.55fmol又は22.72nM)であり、その結果、7.2:1という過剰なアンドロゲン受容体:DNAの比となる。アンドロゲン受容体の濃度を100ngまで倍化すると、14.4:1まで比は倍加する。アンドロゲン受容体濃度を25ngまで半減すると、3.6:1まで比は半減し、さらに再度14.2ngのアンドロゲン受容体までにすると1.8:1となる。
【0363】
図6のデータは、7.2:1又はそれ以上のアンドロゲン受容体:DNAの比は、より大きなΔMangoIIをもたらすことを示す。より低い比でも依然として、ΔMangoIIを示すが、効果量は低減する。特に、7.2から14.4までの比の跳躍は、ΔMangoIIに対する効果量の改善を全く示さず、このことは、7.2:1におけるDNAに対する過剰なアンドロゲン受容体は、T7活性を遮断するのに十分であり、さらに過剰を有すると冗長性が起こる。
【0364】
ステロイドホルモンによるステロイドホルモン受容体の活性化を考える場合、ステロイドホルモン受容体に対するHSP90の比を調べることも必要である。なぜなら、過剰なHSP90はステロイドホルモン受容体の活性化を、特に低いリガンド濃度では遮断し、一方、不十分なHSP90は、ステロイドホルモン受容体の自己活性化を可能とするだろうからである。ここでも、代表的なステロイドホルモン受容体としてアンドロゲン受容体を使用して、次のセットの実験では、アンドロゲン受容体に対するHSP90の比を変更して、テストステロンによるT7によるMangoIIの生成に対する効果を吟味した。
【0365】
【0366】
図7は、2.44:1のHSP90:アンドロゲン受容体の比を有する、50nのアンドロゲン受容体及び100ngのHSP90の標準的な反応が最適であったが、しかしながら、他の比も、同じレベルのΔMangoIIを達成できたことを示す。例えば、6.69×10
11個の分子(1.11pmol又は55.5nM)に相当する100ngのHSP90、及び5.47×10
11個の分子(909.09fmol又は45.5nM)に相当する100ngのアンドロゲン受容体、すなわち1.22:1の比もまた、T7により媒介されるMangoIIの生成の良好な抑制を示した。同等に、1.37×10
11個の分子(227.27fmol又は11.4nM)及び6.69×10
11個の分子(1.11pmol又は55.5nM)をそれぞれ示す、アンドロゲン受容体(25ng)及びHSP90(100ng)、すなわち4.88:1の比は、2.44:1の比と異ならなかったΔMangoIIを示した。しかしながら、9.76:1の比は、アンドロゲン受容体濃度が100ng未満であった場合の1.22:1の比と同様に、減少したΔMangoIIを示した。
【0367】
重要なことには、
図6及び7のデータは、生物学的反応を化学量論的に規定する独特な能力を強調する。
【0368】
アンドロゲン受容体は、アンドロゲン受容体:DNAの比が7.2:1以上である場合に、アンドロゲン応答配列への結合及びT7の進行の遮断において最も効果的である。アンドロゲン受容体は、HSP90:アンドロゲン受容体の比が1.22:1から4.88:1の間である場合に、リガンドによる活性化及びアンドロゲン応答配列への結合において最も効果的である。
【0369】
2.4 ホルモン応答配列の操作
これまでのデータは、細胞に基づいたアンドロゲン受容体バイオアッセイに一般的に使用される3×アンドロゲン応答配列の配列を使用した(表2参照)。しかしながら、同定された最初のアンドロゲン応答配列は、AGAACAgccTGTTCTの配列である。このアッセイの機能(これによりT7酵素は、アンドロゲン受容体によって物理的に遮断される)を考えると、3×アンドロゲン応答配列の配列の存在は必要ではない可能性がある。以下の試験では、配列中の1つの、しかし主要なアンドロゲン応答配列が、T7DNA鋳型にクローニングされた。
図8は明確に、単一のアンドロゲン応答配列が、活性化されたアンドロゲン受容体がT7RNAポリメラーゼを遮断することに、3×アンドロゲン応答配列と同様に効果的であったことを示す。
【0370】
2.5 DNA鋳型の滴定
DNA鋳型は、アッセイの重要な成分であり、T7の転写を支持するが、存在するアンドロゲン受容体分子の数が、T7酵素によるレポーター構築物の転写を立体的に妨害し得るほどには過剰ではない濃度である必要がある。
【0371】
次のシリーズの実験では、アンドロゲン受容体及びT7を一定に保ちつつ、DNA鋳型を滴定した。これにより、転写を支持し、アンドロゲン受容体による遮断を維持するのに必要とされる、DNA分子の数への洞察がもたらされた。
図9のデータは、アンドロゲン受容体の濃度が50ng(2.737×10
11個の分子、454.55fmol又は22.72nM)であり、DNAの濃度が100ng(3.798×10
10、63.06fmol又は3.15nM)であった場合、ΔMangoIIは良好に検出されたことを示し、アンドロゲン受容体:DNAの比は7.2:1を示す。DNAの濃度を下げることによって、DNAに対する過剰なアンドロゲン受容体の量を増加させて、14.4:1、17.28:1、及び28.8:1の比を試験することは、ΔMangoIIの改善に全く効果はなかった。したがって、7.2:1の過剰な比は、最大の効果を達成する。DNA鋳型を6.46×10
9又は3.398×10
9へと減少させることは、ΔMangoIIに影響を及ぼすことを注記する。なぜなら、T7により媒介される蛍光出力が劇的に減少したからである(データは示されていない)。したがって、9.495×10
9個の分子の二本鎖DNAは、成功裏の反応に必要とされる最小レベルであり、一方、過剰なアンドロゲン受容体:DNAは、7.2:1より上に維持されなければならない。より多くのアンドロゲン受容体の添加により7.2を超えると、冗長性が生じ、一方、DNAを減少させ比を増加させると、T7により媒介される転写それ自体にリスクがある。
【0372】
図9のデータは、生物学的に効果があるが、合成的に達成されたステロイドホルモン受容体反応を定義し続けた。個々の成分の化学量論的な分析を通して、実験により、アンドロゲン受容体は、アンドロゲン受容体:DNAの比が7.2:1以上である場合に、アンドロゲン応答配列への結合、及びT7の進行の遮断において、最も効果的であることが確認された。しかしながら、この比とする場合に、DNA鋳型濃度を、最小限の9.495×10
9個の分子の二本鎖DNA分子に固定することが必要であり、さもなければ、基礎転写レベルは損なわれる。
【0373】
2.5 T7ポリメラーゼの滴定
ステロイドホルモン受容体の生物機能を模倣することのできる、完全に規定された化学量論的反応を可能とするために考慮される必要のある、アンドロゲンアッセイの原型2の最終成分は、T7酵素それ自体である。T7RNAポリメラーゼは、この反応においてレポーターを生成するために使用され、該レポーターはこれらの例では、RNAアプタマーのMangoIIである。
【0374】
T7酵素の量は、最適な動態範囲を可能とするであろうスペクトル内に、蛍光の読み出し情報を維持するために重要である。T7は酵素であるので、重要な因子であるのは濃度だけでなく、活性も重要な因子である。次のシリーズの実験は、ΔMangoIIに対するT7活性の変更の効果を示した。
【0375】
図10では、データは、T7単位が50Uから10Uまで滴定される時の、T7により生成されるMangoII:TO1Bの蛍光レベルを示す。40~10Uの酵素範囲内では、測定された蛍光の明確な差はなく、全ての測定値が200000に近く、これは明瞭な検出の基線を示し、この点では感度は、出力の変化を測定するのに十分なほど高くない。このことは、ΔMangoIIを測定するためには、蛍光測定値は、200000を超えなければならないことを示唆する。
【0376】
最小蛍光レベルの効果をさらに実証するために、T7(50U)又はT7(100U)を使用して、テストステロンによって誘発されたアンドロゲン受容体を用いて又は対照としてのエタノールを用いて遮断された反応中で、MangoIIRNAアプタマーを生成した。
図11のデータは、50Uが使用される場合、蛍光は約250000~300000であり、テストステロンによる活性化は、約9%のΔMangoIIを示すが、蛍光が600000を超える範囲内にある場合、同じ反応は約16%のΔMangoIIを示すことを示す。したがって、データは、T7の活性が、300000を超えるMangoII―TO1Bの蛍光を発生する範囲内でなければならないことを強調する。正確な活性又は単位は、バッチ毎の及び/又は業者毎の組換えT7RNAポリメラーゼの比活性の相違に依存するだろう。
【0377】
実施例3:
エストロゲンアッセイの原型3:アッセイの構築及び結果
上記の例では、アンドロゲン受容体/アンドロゲン応答配列は、ステロイドホルモン受容体/ホルモン応答配列の例として使用した。以下のシリーズの実験は、他のステロイドホルモン受容体、この場合エストロゲン受容体αへの試験の応用可能性を示すために、アンドロゲン受容体/アンドロゲン応答配列のために化学量論的に確立された規定の反応を使用した。以下に提示された結果は、エストラジオールにより活性化されたエストロゲン受容体αが、T7により媒介されるRNAアプタマーのMangoIIの発現を抑制することができることを実証する。
【0378】
【0379】
テストステロンの成功裏な検出検査であることが判明した標準的なアンドロゲン受容体/アンドロゲン応答配列の条件が使用されたが、しかしながらアンドロゲン受容体は、エストロゲン受容体αで置き換えられ、1つのエストロゲン応答配列をコードしているDNA鋳型が、アンドロゲン応答配列のDNA鋳型を置き換えた(表6)。
図12は、アンドロゲン受容体を、HSP90(100ng)と組み合わせたエストロゲン受容体α(50ng)で置き換え、5μMのエストラジオール(E2)を用いて活性化することにより、MangoII:TO1の出力は減少したことを示す。ΔMangoIIは約60%であった。比を考慮する場合、68kDaのエストロゲン受容体αは、アンドロゲン受容体(110kDa)より小さく、それ故、重量に対して添加される分子数は4.428×10
11(735.20fmol又は36.8nM)であった。それ故、HSP90:エストロゲン受容体αの比は、6.69×10
11:4.428×10
11又は1.51:1であり、エストロゲン受容体α:DNAは4.428×10
11:3.798×10
10又は11.66:1であった。これらは両方共に、アンドロゲン受容体型のステロイドホルモン受容体/ホルモン応答配列検査を用いたアンドロゲンの検出で成功裏な比であることが判明した範囲内であった。
【0380】
【0381】
エストロゲンの検出におけるエストロゲン受容体α:エストロゲン応答配列の反応の重要性は、二重である。第一に、それは、アンドロゲン受容体/アンドロゲン応答配列のDNA鋳型からエストロゲン受容体/エストロゲン応答配列のDNA鋳型へと必須検査成分を切り替えるという単純性を示す。第二に、それは、アンドロゲン受容体へのリガンドの結合、そしてHSP90から置き換えられることによって、アンドロゲンの生物機能を模倣した、アンドロゲン受容体/アンドロゲン応答配列について確立された規定の化学量論的な反応、及びアンドロゲン応答配列への結合は、第二のステロイドホルモン受容体/ステロイド応答配列の組合せに変換することができることを示す。
【0382】
データは、検査が、無細胞の様式でステロイドホルモンの生物機能を再現することができ、このようにして、あらゆる成分を定めることができ、これは真にインサイチュの検査であることを示す。これは、細胞に基づいたバイオアッセイ、又はホロ酵素RNAポリメラーゼIIを与える核抽出物に基づいた無細胞バイオアッセイを使用する場合には、インビトロの状況とは異なる。細胞に基づいたバイオアッセイの場合、ステロイドホルモン受容体、HSP90、DNA鋳型、及びRNAポリメラーゼIIのレベルは、全く規定できない。なぜなら、それらは細胞の発現パターンによって影響を受けるからである。核抽出物に基づいた無細胞バイオアッセイは、部分的には、ステロイドホルモン受容体、HSP90及びホルモン応答配列のレベルを記載することによって反応の化学量論を規定することができるが、RNAポリメラーゼレベルを規定することはできない。RNAポリメラーゼIIは、いくつかのサブユニット又はタンパク質から作られたホロ酵素であり、それ故、核抽出物の形態でしか供給され得ない。核抽出物は、他のどのようなタンパク質が存在するかは規定されない。この単一のポリペプチドのRNAポリメラーゼ形のアッセイでは、反応の化学量論は完全に規定され得、そしてデータは、このような反応が、ステロイドホルモン受容体の天然の生物機能を模倣するように合成で操作され得ることを示す。
【0383】
実施例4
原型アッセイのためのリガンド-ステロイドホルモン受容体/ホルモン応答配列の化学量論的反応
実施例2及び3に提示されたデータは、リガンドが特異的な受容体に結合して、それにより、該受容体はHSP90から置き換わり、ステロイド応答配列に結合するという古典的なステロイドホルモンゲノム応答というステロイドホルモン受容体の生物機能を模倣した規定の化学量論を明らかにした。天然では、ステロイドホルモン受容体は、標的遺伝子の発現を活性化又は抑制するだろう。本明細書に記載の原型アッセイでは、リガンドの結合したステロイドホルモン受容体の結合は、レポーター分子の発現を抑制する。
【0384】
【0385】
【0386】
実施例5
アンドロゲンアッセイの原型2は、アンドロゲン分子を検出する
アンドロゲン分子は、主なステロイドホルモンである。テストステロン及びジヒドロテストステロンは、最も豊富な内因性アンドロゲンである。それらの構造に基づいて、合成アンドロゲンタンパク同化ステロイド(AAS)が設計され市販されている。AASは、ヒト及び同様に動物のアスリートにも、最もよく乱用されている運動能力向上薬である。合成由来である別のクラスのアンドロゲン分子は、選択的アンドロゲン受容体モジュレーターすなわちSARMである。AASと同様、SARMもアスリートによって乱用されている。AAS及びSARMのどちらも、それらの構造において異なり、非常に多種多様な異なる側鎖及び骨格を有する。この次のシリーズの実験は、アンドロゲン受容体/HSP90-アンドロゲン応答配列原型アッセイが、異なるアンドロゲンタンパク同化ステロイド及び選択的アンドロゲン受容体モジュレーターを検出することができるかどうかを試験した。
【0387】
【0388】
図13は、アッセイが、多種多様なアンドロゲンタンパク同化ステロイド及び選択的アンドロゲン受容体モジュレーターを検出することができたことを示す。
【0389】
実施例6
アンドロゲンアッセイの原型2は、生体マトリックスにおいてアンドロゲン分子を検出する
アンドロゲンアッセイの原型2は次に、血清又は血漿などの生体マトリックス中に存在する場合の、そのテストステロン検出能について試験した。まず、T7RNAポリメラーゼが、血清の存在下で作動し続けたこと、すなわち、血清それ自体は、MangoIIアプタマーの生成においてT7の効力を抑制しなかったことを実証する必要があった。
図14は、ウマ血清又はウシ胎仔血清(FCS)の存在下で、T7RNAポリメラーゼが、MangoIIを生成し続けたことを示す。
【0390】
血清がT7活性を偶然に抑制したというエビデンスは全くなかった。次に、血清の存在下で、アンドロゲン受容体が、例示的なリガンドとしてのテストステロンに応答性であるままであるかどうかが試験された。今回は水成分が、テストステロン(又はビヒクルとしてのエタノール)の添加された血清と置き換えられた以外は、反応は上記のように確立された。
図15は、血清が反応成分として存在している場合、反応は損なわれないことを示す。この結果は非常に重要である。なぜなら、アッセイは、例えば臨床応用又はスポーツドーピングへの応用のための生物学的に関連した試料中のアンドロゲンレベルを検出することができることを示すからである。
【0391】
次のフェーズの試験では、アンドロゲンアッセイの原型2は、ウマ尿試料に由来する脱抱合及び抽出された内因性アンドロゲンを検出するその能力について試験された。競走馬の尿試料をレース日に収集し、ステロイドを、通常のプロセスを使用して脱抱合及び抽出した。抽出されたステロイドは、エタノールに懸濁され、アッセイにかけられた。
【0392】
図16は、アンドロゲンアッセイの原型2は、仔馬(雄ウマ)に由来する尿試料中に高いレベルのアンドロゲンを検出することができたが、去勢馬(去勢された雄ウマ)からは高いレベルを検出できなかったことを示す。去勢馬の尿中のテストステロン及び添加されたトレンボロン(アンドロゲンタンパク同化ステロイド)が対照として使用された。
【0393】
図15及び
図16からのデータは、アッセイが、血清及び尿を含む、生体マトリックス中のアンドロゲン分子を検出することができることを示す。
【0394】
実施例7
ステロイドホルモン受容体の入手源としての細胞溶解液の有用性
アンドロゲンスクリーニングアッセイの主成分は、リガンドの非存在下では共調節タンパク質によって不活性化状態に保持されている、ステロイドホルモン応答配列(HRE)及びステロイドホルモン受容体(SHR)である。リガンドの存在下では、調節タンパク質は、ステロイドホルモン受容体から遊離し、リガンドの結合したステロイドホルモン受容体は、二本鎖DNAレポーター構築物上にコードされているステロイドホルモン応答配列に結合する。
【0395】
この実施例では、DNAレポーター構築物は、RNAポリメラーゼプロモーター部位、ホルモン応答配列、及びRNAアプタマーをコードするが、当業者は、フルオロフォアの結合したRNAアプタマーは、本明細書に記載の他の例を含む、任意の他のレポーター構築物によって置き換えられてもよいことを認識しているだろう。
【0396】
この実施例では、RNAポリメラーゼは、単一の組換えタンパク質RNAポリメラーゼである、T7酵素である。その後、DNAレポーター構築物は、T7部位の下流に、一連の又は1つのホルモン応答配列を、さらに下流に位置するRNAアプタマーレポーターと共にコードしている。T7が活性である場合、それはそのプロモーターに結合し、このDNA断片を転写し、RNAアプタマーを生成する。このRNAアプタマーはレポーターとして作用する。このT7反応が、ステロイドホルモンの存在下で実施されると、ステロイドホルモンはそのステロイドホルモン受容体に結合し、共調節タンパク質を取り除き、ステロイドホルモン-ステロイドホルモン受容体はホルモン応答配列に結合するだろう。この位置では、ステロイドホルモン受容体はT7RNAポリメラーゼがRNAアプタマーを転写するのを物理的に阻害するだろう。それ故、蛍光の読み出し情報は、ステロイドホルモンリガンドの存在下で減少する。
【0397】
アッセイの重要な成分としては、T7RNAポリメラーゼ及び組換えステロイドホルモン受容体タンパク質が挙げられる。費用対効果が高く、迅速で再現性の高いアッセイを作成する目的で、RNAポリメラーゼ及びステロイドホルモン受容体タンパク質の両方の活性が、ステロイドホルモン受容体の例としてアンドロゲン受容体(AR)で、調べられた。しかしながら、当業者は、アンドロゲン受容体が、以下に概略が示されたものと同じか又は類似した出力を達成するために、エストロゲンホルモン受容体を含む、任意のステロイドホルモン受容体に切り替えることができることを認識しているだろう。
【0398】
以下の実験に使用される反応混液は表11に反映される。
【0399】
【0400】
組換えアンドロゲン受容体タンパク質は、スケールアップ生産に必要とされる量で生産するのは高くつく。組換えアンドロゲン受容体は、取り扱いも難しい。なぜなら、それは低温での保存を必要とし、その大きなサイズにより、分解し易いからである。組換えアンドロゲン受容体タンパク質は、遺伝子的に改変された細胞において発現され、ここでの宿主細胞は、酵母、昆虫、細菌、又は哺乳動物であり得る。一旦細胞内で発現されると、長いプロセスを実施して、他の全ての細胞性タンパク質から組換えアンドロゲン受容体を精製する。アンドロゲン受容体タンパク質は110kDaの大型タンパク質であるので、精製プロセスは、確実に完全長で活性なタンパク質とするのはさらにより困難となる。理解できるように、このタンパク質の購入又は生産にはかなりの費用がかかる。
【0401】
細胞内で不活性なアンドロゲン受容体は、細胞質内に位置するか、又はアンドロゲン受容体はそのリガンドにより活性化された状態で核内に見られる。過剰発現細胞系では、それによってプラスミドは高度に活性な恒常的プロモーターをコードし、アンドロゲン受容体は、アンドロゲンの非存在下でさえも、通常よりはるかに高いレベルで発現され、これにより、大量の不活性なアンドロゲン受容体がもたらされる。
【0402】
組換えアンドロゲン受容体タンパク質を精製する場合の最初の工程の1つは、細胞溶解液を産生することである。この細胞溶解液は、タンパク質を含む、全ての細胞性物質を含有している。過剰発現されたアンドロゲン受容体は、このタンパク質プールに存在するだろう。
【0403】
アンドロゲンスクリーニングアッセイにおいて、精製された組換えアンドロゲン受容体タンパク質を使用する必要性を無視するために、出願人は、HEK293細胞に由来する完全細胞溶解液が、アンドロゲン受容体の入手源として作用し得るかどうかを試験した。市販のアンドロゲン受容体の一過性過剰発現の溶解液(転写物変異体1、NM_000044、OriGene社、LY400012)(ここでの発現宿主はHEK293T細胞(ヒト胚性腎臓細胞)であった)が使用された。アンドロゲン受容体濃度は不明であるので、実験は最初に、25ng/μlのタンパク質濃度の溶解液を使用した。
図18は、アンドロゲン受容体細胞溶解液が、テストステロンで活性化された場合に、T7RNAポリメラーゼ活性を抑制したことを示す。
【0404】
アンドロゲン受容体細胞溶解液中のアンドロゲン受容体の絶対濃度は不明である。反応において最も効果的であったアンドロゲン受容体溶解液の濃度を次に、経験的に決定した。アンドロゲン受容体溶解液は、150ng/μlから6.25ng/μlまで滴定された。結果は、線形勾配が40ng/μlの溶解液の場合に最高であり、30~50ng/μlの範囲が最強であったことを示す(
図19、表12)。この結果は、このアンドロゲン受容体溶解液のバッチでは、30~50ng/μlの濃度が、T7RNAポリメラーゼ活性を適切に抑制するのに必要とされる濃度でアンドロゲン受容体を提供することを示唆する。
【0405】
【0406】
以前に、2:1のHSP90:アンドロゲン受容体の比が最適であるが、8:1の範囲には、おそらく冗長性を伴いつつ耐容性を示すと決定された。アンドロゲン受容体溶解液を使用すると、アンドロゲン受容体の絶対濃度を決定し、続いて、2:1のHSP90:アンドロゲン受容体の比を決定することは不可能である。その代わりに、比は、細胞溶解液の全タンパク質濃度に基づいた比を用いて経験的に導き出され、そしてng/μlに基づいた2:1のHSP90:アンドロゲン受容体溶解液が維持された(
図19)。これは、全ての反応において2:1を超える比を維持するだろう。
【0407】
要するに、これらのデータは、アッセイにおいて使用されるアンドロゲン受容体溶解液の濃度が、少なくとも6.25ng/μlから150ng/μlまで変更され得ることを示す。耐容性を示す溶解液の濃度が広範囲であることが、予想されるバッチ毎の変動のために推奨される。アンドロゲン受容体溶解液の異なるバッチは、アンドロゲン受容体の含量において異なるだろうと予想される。アンドロゲンスクリーニングアッセイの信頼性に対するアンドロゲン受容体溶解液の変動の影響を試験するために、2つの市販されているOriGeneアンドロゲン受容体溶解液(OA741番、O11311番)を比較した。これらのデータは
図20に提示され、両方のアンドロゲン受容体溶解液がT7RNAポリメラーゼ活性を抑制したことを示す。
【0408】
バッチ間変動をさらに探索するために、アンドロゲンスクリーニングアッセイを、社内で調製されたアンドロゲン受容体溶解液調製物を用いて実施した(以下の実施例8参照)。ヒトアンドロゲン受容体発現プラスミドを用いて安定に形質転換されたHEK293細胞を培養し、これらの細胞から、細胞溶解液、細胞質抽出物及び核抽出物を調製した。アンドロゲン受容体が細胞質及び核内に捕捉されているために、細胞質抽出物及び核抽出物が調製され、よってこれらの抽出物内に濃縮されたアンドロゲン受容体は、完全細胞溶解液よりも良好な成績を示すだろうと仮定された。
図21は、全ての調製物が、アンドロゲンスクリーニングアッセイにおいて機能したことを示す。しかしながら、細胞溶解液は、T7活性の最高の抑制によって実証されるように、最善の成績を示した(最も高い勾配、
図21)。細胞溶解液は調製がより簡単で最も安価であるので、結果は、アンドロゲン受容体の費用対効果の高い入手源を達成する上で役立つ。
【0409】
社内製のHEK293細胞溶解液が、アンドロゲンスクリーニングアッセイにおいて機能したことを考えると、次のシリーズの実験は、バッチ間の変動の問題に戻った。6つの独立した社内製のHEK293細胞溶解液が調製され、アンドロゲンスクリーニングアッセイにおいて組換えアンドロゲン受容体タンパク質と共に試験された。6つ全てのHEK293溶解液のバッチが、アッセイにおいて機能した(
図22)。バッチ間の変動は16%であると示された。
【0410】
細胞溶解液の使用に関する重要な考慮は、それが、糖質コルチコイド受容体(GR)を含む、多くの内因性ステロイドホルモン受容体を含有している可能性があるということである。糖質コルチコイド受容体は、アンドロゲン応答配列においてアンドロゲン受容体と交差反応する可能性がある。なぜなら、糖質コルチコイド受容体及びアンドロゲン受容体はどちらも、類似した応答配列を認識するからである。しかしながら、糖質コルチコイド受容体は、アンドロゲンスクリーニングアッセイにおいてはテストステロンによって活性化されないであろうが、HEK293細胞培養中に内因性リガンドが、糖質コルチコイド受容体を活性化し得た可能性はある。リガンドによって活性化された糖質コルチコイド受容体が存在する場合、これは、アンドロゲンスクリーニングアッセイにおいて偽陽性の結果を生じる可能性がある。
【0411】
リガンドにより活性化された糖質コルチコイド受容体がHEK293アンドロゲン受容体溶解液中に存在したかどうかを試験するために、アンドロゲンスクリーニングアッセイを、一般的な糖質コルチコイドであるデキサメタゾンを用いて活性化した。
図23は、アンドロゲンスクリーニングアッセイが、1μM又は100nMのデキサメタゾンには応答しなかったことを示す。これは、HEK293細胞に由来するアンドロゲン受容体溶解液を使用する場合には、アンドロゲンスクリーニングアッセイにおいて糖質コルチコイド受容体/アンドロゲン受容体の交差反応性はないという確証を提供する。
【0412】
アンドロゲンスクリーニングアッセイの別の可能性のある交絡因子は、エストラジオール(E2)である。極めて高い非生理的な濃度のエストラジオールは、アンドロゲン受容体を活性化し得る。標準的な細胞培養条件は、高いレベルのエストラジオール又は任意の他のエストロゲンを生成しないであろう。しかしながら、高濃度のエストラジオールに対するアンドロゲンスクリーニングアッセイの応答性を決定するために、反応をアンドロゲン受容体溶解液を用いて実施し、1nMのエストラジオールによって活性化した。
図23は、エストラジオールが応答を惹起しなかったことを示し、このことは、テストステロンに対するアンドロゲンスクリーニングアッセイの応答が、アンドロゲンに起因し、細胞溶解液中に存在する可能性のあるエストラジオールには起因しないことを示す。
【0413】
主な内因性アンドロゲンはテストステロンである。アンドロゲン受容体溶解液に基づいたアンドロゲンスクリーニングアッセイは、テストステロンに対して良好に応答する。タンパク同化アンドロゲンステロイド(AAS)と呼ばれる合成ステロイド、及び選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)と呼ばれる合成アンドロゲン分子がある。アンドロゲン受容体の入手源として細胞溶解液を用いるアンドロゲンスクリーニングアッセイを、合成ステロイドである11ケト-テストステロン、及びSARMであるアンダリンを検出するその能力について試験した。
図24に提示された結果は、アンドロゲン受容体溶解液を用いて確立されたアンドロゲンスクリーニングアッセイが、試験されたアンドロゲンに対して応答することができたことを示す。
【0414】
アンドロゲンスクリーニングアッセイは、精製された化合物だけでなく、相対的にアンドロゲン生理活性を有する生物学的試料も検出するように設計された。アンドロゲン受容体溶解液に基づいたアンドロゲンスクリーニングアッセイが、相対的なアンドロゲン生理活性を区別できることを示すために、既知の高い数値及び低い数値を有する2つのウマ血漿試料を試験した。アンドロゲンスクリーニングアッセイは、反応1回あたり50ngのアンドロゲン受容体溶解液及び15%(v/v)の血漿を用いて確立された。結果は、アンドロゲン受容体溶解液-アンドロゲンスクリーニングアッセイが、2つのウマ血漿試料間の差を検出でき、組換えアンドロゲン受容体に対して少なくとも等価であったことを示す(n=1、
図25)。
【0415】
ヒトでは、循環中のアンドロゲンは、女性より男性の方が平均して10倍から20倍高い。市販のヒト男性血清(単一のドナー)を、市販のヒト女性血清(単一のドナー)と比較した。アンドロゲンスクリーニングアッセイを、反応1回あたり50ngのアンドロゲン受容体溶解液と共に使用した。アッセイは、15%v/vの血清試料を使用して実施された。結果は、男性の血清が、女性の血清と比較して、より強力にT7活性を抑制したことを示す(
図26)。
【0416】
要約すると、アンドロゲン受容体溶解液は、アンドロゲンスクリーニングアッセイにおいて組換えアンドロゲン受容体を模倣することができる。アンドロゲン受容体溶解液は、デザイナーアンドロゲンなどの精製されたアンドロゲン化合物及びSARMの両方、並びに血漿及び血清などの生体マトリックス中に存在する内因性アンドロゲンに対して応答する。アンドロゲン受容体溶解液の使用は、アンドロゲンスクリーニングアッセイの予想される費用を顕著に減少させる。なぜなら、大量かつ高価な精製工程の必要が全くないからである。
【0417】
アンドロゲン受容体溶解液を使用するさらなる利点がある:
(i)細胞型の利点:細胞溶解液は、アンドロゲン受容体共調節タンパク質を含有しているだろう。アンドロゲン受容体には30個を超える異なる共調節因子タンパク質が存在する。これらの中のある部分集合は中心的であり、全ての細胞型に発現されている。別の部分集合は、細胞型に特異的である。それ故、特定の細胞型から調製されたアンドロゲン受容体溶解液は、これまでのデータを得るために使用されたアンドロゲン受容体溶解液よりも感度が高いであろうという。
(ii)アンドロゲン受容体の改変の利点:細胞溶解液は、アンドロゲン受容体の発現プラスミドの一過性又は安定な発現から調製され得る。これは、例えばアンドロゲンに対するより強い結合親和性を有するアンドロゲン受容体溶解液が、アンドロゲンスクリーニングアッセイにおいて使用されることを可能とするだろう。あるいは、アンドロゲン受容体は、それがアンドロゲン非感受性症候群又は部分的アンドロゲン非感受性症候群を示すように改変されていてもよく、これにより遺伝子スクリーニングの確立が可能となる。
(iii)タンパク質発現の利点:細胞溶解液は、例えばアンドロゲン受容体及びHSP90又は他の共調節タンパク質を発現する、同時形質転換された細胞から調製され得る。これらの共調節タンパク質は、アンドロゲンスクリーニングアッセイにおいてアンドロゲン受容体の挙動を調節するのを助け得る。
【0418】
実施例8
HEK細胞株におけるアンドロゲン受容体細胞溶解液の産生
ヒトアンドロゲン受容体cDNA発現プラスミドを用いて安定に形質転換されたHEK293細胞を、10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン及び5.5μg/mLのピューロマイシンの補充された、DMEM培地中で90%の集密度となるまで培養した。細胞を、1×PBSで洗浄することによって収集し、その後、1.7mlのエッペンドルフチューブを用いて細胞を掻把した。細胞を4℃で800×gで5分間遠心分離にかけて、細胞をペレット化した。細胞を500μlのPBSで懸濁によって洗浄し、続いて、4℃で500×gで2~3分間遠心分離にかけた。その後、細胞質内及び核内抽出物のプロトコールは、サーモフィッシャーサイエンティフィック社のNE-PER核及び細胞質抽出試薬キット(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、78835番)によって記載された通りであった。完全細胞抽出物のために、細胞ペレットを、氷冷RIPA緩衝液(50mMのトリスHCl pH7.4、150mMのNaCl、0.1%のSDS、1%のトリトンX-100、1mMのEDTA)に再懸濁した。各5mlのRIPA緩衝液に、阻害剤、200μlのcOmplete(cOmpleteプロテアーゼ阻害剤カクテル、シグマアルドリッチ社、25倍)、500μlのPhosSTOP(PhosSTOPホスファターゼ阻害剤カクテル、シグマアルドリッチ社、10倍)及び50μLのフェニルメチルスルホニルフルオライド(シグマアルドリッチ社、100mM)を補充した。細胞を、RIPA溶解緩衝液中で30分間インキュベートし、ボルテックスにかけ、その後、4℃で14,000×gで10分間遠心分離にかけた。細胞溶解液を、-20℃で保存するために、1.5mlのエッペンドルフチューブに分注し、細胞溶解液を、アッセイ用のタンパク質安定化カクテルで希釈する。
【0419】
実施例9
T7プロモーターの構造の最適化
次のシリーズの実験は、T7RNAポリメラーゼのプロモーターの変種を試験した。T7RNAポリメラーゼは、共通の特異的なDNA結合部位への結合によって、RNA転写を開始する。結合部位すなわちプロモーターは、たったの18bp(配列番号82)であってもよい。例えば、DNA鋳型をPCRに使用してRNAを生成する場合には、この18bpの配列を、PCRによってDNA鋳型に通常付加する。
【0420】
野生型T7結合部位は23bpであり、余分な塩基対が3'末端に含まれている(配列番号83)。
【0421】
文献では、変異プロモーターが記載され、これにより改変されたDNA配列により、T7活性は増加する。例えば、野生型23bpの3'配列が修飾され、このような修飾は報告によると、T7プロモーター活性を、約2倍増加させる(配列番号84)。別の例では、5’配列及び3'配列の両方に修飾を有する、実質的により長いプロモーター配列は報告によると、T7プロモーター活性を最大23倍まで増加させた(配列番号84)(Moll et al. (2004) Anal Biochem 334:164-174)。
【0422】
【0423】
図27は、18bp(配列番号82)、23bp(野生型、配列番号83)、及び23bp(3'修飾、配列番号84)のDNA鋳型に対するT7プロモーター活性を示す。配列番号82の出力が最も高く、野生型の配列番号83は、比較的に低い。配列番号84は、配列番号83を2倍上回ると報告された増加を示したが、それでも依然として配列番号82よりは劣っていた。しかしながら、配列番号85は配列番号82よりも優れ、はるかにより高い蛍光出力を示した(比較データは
図27には示されていない)。
【0424】
図18は、配列番号82~85のアンドロゲンスクリーニングアッセイの結果を示す。配列番号82は、テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体によるT7活性の遮断を検出する上で、配列番号83及び配列番号84と比較して、明らかに最善の配列である。しかしながら、
図29は、配列番号85が、T7活性を支持する上で、配列番号82よりも優れていたことを示す。さらに、
図30は、配列番号85が、T7RNAポリメラーゼを遮断する上で配列番号82よりも効果的であり、配列番号82からは有意差で減少していた(p<0.001、チューキー事後検定と一元配置分散分析)。
【0425】
要約すると、配列番号85は、アンドロゲンスクリーニングアッセイに使用する際に、より強力なT7プロモーターであることが示された。
【0426】
配列番号85に基づいたアンドロゲンスクリーニングアッセイの特異性が、エストラジオール及びデキサメタゾンに対する応答を評価することによって試験された。
図32は、T7の配列番号85が、いずれのステロイドにも応答しなかったことを示した。これは、アンドロゲンスクリーニングアッセイが、組換えアンドロゲン受容体を用いて確立されても、又はアンドロゲン受容体細胞溶解液を用いて確立されても、配列番号85について示された(
図33)。
【0427】
配列番号85に基づいた反応により、より多くの蛍光出力が発生したことを考えると、次に反応を、分子レベルで調べた。MangoII(蛍光出力)を生成する初期反応速度は、DNAへのT7の結合という重要な事象で見られる。ポリメラーゼの結合は、続く開始工程/伸長工程をトリガーする。この全事象は、T7プロモーター配列、T7の量、及びDNAの濃度に非常に依存している。T7がDNA配列に迅速にかつ効率的に結合すれば、RNAの転写はより高くなるだろうということになる。
【0428】
理想的には、最適な反応では、あらゆるDNA鋳型にT7RNAポリメラーゼが結合しているだろう。しかしながら、アンドロゲン受容体のレベルも、アンドロゲンスクリーニングアッセイにおいて考慮される必要がある。なぜなら、アンドロゲン受容体のレベルが低すぎると、T7はアンドロゲン受容体より過剰となり、T7RNAポリメラーゼに結合するDNA鋳型は過剰となり、これによりT7の転写は妨害されずに起こることが可能となるだろう。それに続く高い基線は、少数のアンドロゲン受容体によるT7の抑制を遮蔽する可能性がある。
【0429】
アンドロゲンスクリーニングアッセイを最適化するために、T7:DNAの比は1以上であり、1を超えるアンドロゲン受容体:T7/DNAの比が望ましい。
【0430】
図34は、DNA鋳型T7/配列番号85を用いた反応勾配が、DNA鋳型T7/配列番号82を用いた反応で測定されたものよりも高いことを示す。より急な勾配は、DNA鋳型が配列番号85のT7RNAプロモーターをコードしている場合には、より多くのDNA鋳型が、T7DNAポリメラーゼによって利用されることを示唆する。これは、配列番号85によって定義されるプロモーターに対するT7の高い結合親和性のためである可能性が最も高い。
【0431】
上記の
図34について記載された反応では、DNA鋳型の濃度は100ngであった。テストステロンによって活性化されたアンドロゲン受容体がT7RNAポリメラーゼを抑制する能力は限定されていたので、アンドロゲン受容体:T7/DNAの比は1未満であった可能性がある。それ故、アンドロゲン受容体:T7/DNAの比を下げるために、T7RNAポリメラーゼ及びアンドロゲン受容体の濃度は定常に保ちつつ、反応1回あたりの配列番号85のDNA鋳型を、50ngまで半減させ、このDNA配列に最適な濃度を決定した。
図35は、DNA鋳型の濃度を低下させることによって、T7RNAポリメラーゼの活性は有意に減少したことを示す。それ故、50ngのDNA濃度では、過剰なT7RNAポリメラーゼ:DNA(1を超える比)である。DNAに対する過剰なT7は、存在し得る全てのDNA鋳型が、T7RNAポリメラーゼに結合することができたことを意味する。これに加えてさらに、アンドロゲン受容体濃度がDNA鋳型を超えている場合、全てのT7RNAポリメラーゼ活性を遮断するに十分なアンドロゲン受容体(完全に活性化されている場合)が存在する可能性がある。T7:DNAの比を遮断する最適なアンドロゲン受容体濃度を試験するために、アンドロゲン受容体タンパク質を、反応1回あたり25ngから100ngまで滴定した。
図36は、25ngのアンドロゲン受容体及び50ngのアンドロゲン受容体の濃度が、アンドロゲン受容体によるT7RNAポリメラーゼの遮断を検出するのに十分に強いことを示す。
図36はまた、100ngのアンドロゲン受容体が反応に添加されると、T7RNAポリメラーゼは完全に遮断されることを示す。2:1の比のHSP90:アンドロゲン受容体が、これらの実験中に維持されたことを注記する。
【0432】
要約すると、T7配列番号85-アンドロゲンスクリーニングアッセイは、より迅速で再現性の高い試験を可能とする。反応時間は150分間から40分間まで短縮され、ビヒクル対照から大きな変化を伴った。
【0433】
実施例10
代替的な入手源の細胞溶解液の調査
代替的な宿主細胞の使用を探索するために、アンドロゲンスクリーニングアッセイを、アンドロゲン受容体を発現しているPc-3細胞に由来する、社内製(本発明者らの研究室)のアンドロゲン受容体溶解液調製物を用いて実施した。Pc-3細胞は元来、グレードIVの前立腺がんの骨転移から単離され、報告によると一連のアンドロゲン受容体共調節タンパク質(GRIP1、BRCA1、及びZac1を含む)を発現している(PMID:15264248)。Pc-3細胞から、細胞抽出物を調製し、無細胞反応におけるアンドロゲン受容体の入手源として利用した。
【0434】
無細胞反応では、マスター混液を、この順番で添加された成分を用いて調製した:NTP緩衝液(E2050SのNEB2052AVIAL成分)、50ngのDNA鋳型(配列番号85)、Pc-3溶解液(40ng)、HSP90(80ng)、テストステロン、アンダリン、又はビヒクル対照としてのエタノール、及びT7RNAポリメラーゼ混液。マスター混液は、ピペッティングすることによって穏やかに混合され、37℃で40分間インキュベートされた。その後、200mMのKCl、10mMのNa
2HPO
4、0.05%のTween20及びpH7.2の溶液中のTO1B(100nMの最終濃度)からなる検出用緩衝液を加えた。蛍光は、Spectramax i3×(モレキュラーデバイス社)プレートリーダーを使用して、510nmでの励起及び535nmでの発光で測定された(バンド幅15nm)。
図40は、アンドロゲン受容体及びその共調節因子の入手源としてのPc-3溶解液が、社内製の調製物又は市販の(Origene社)アンドロゲン受容体を発現しているHEK293溶解液に同等であったことを示す。全ての溶解液は、組換えアンドロゲン受容体(Creative Biomart社)と比較して有効性が同等であった。これらの反応のために、T7により生成されたRNA MangoIIは、エタノール対照(100%のT7活性として設定)によって証明された。テストステロン(黒色の縦棒グラフ、250μM)又はアンダリン(白色の縦棒グラフ、1μM)を加えて、溶解液のアンドロゲン受容体を活性化した。
【0435】
これらのデータは、アンドロゲン受容体を発現している細胞に由来する細胞溶解液が、無細胞反応において効率的に機能し、そしてこれを使用して組換えアンドロゲン受容体を代替することができることを示す。
【0436】
Pc-3のアンドロゲン受容体溶解液により誘導されるアンドロゲンの検出の感度を試験するために、反応は25ngのPc-3のアンドロゲン受容体溶解液を用いて確立された以外は、上記で使用される反応は漸減濃度のテストステロンを用いて実施された。
図41は、テストステロンを、用量依存的に検出することができたことを示す。
【0437】
リガンド依存性のアンドロゲン受容体溶解液により駆動される反応の誘導がテストステロンだけに特異的ではなかったことを試験するために、アスリートによって使用されるような一般的に検出される、多くのタンパク同化アンドロゲンステロイド又は代替的なテストステロン調製物を、アンドロゲン受容体の活性化因子として、テストステロンの代用とした。
【0438】
様々なアンドロゲンを試験するために、マスター混液を、この順番で添加された成分を用いて調製した:NTP緩衝液(E2050SのNEB2052AVIAL成分)、50ngのDNA鋳型(配列番号85)、Pc-3溶解液(40ng)、HSP90(80ng)、及びT7RNAポリメラーゼ混液。マスター混液を、ピペッティングすることによって穏やかに混合し、個々のウェルに分注した。その後、試験されたステロイドは、100μMの最終濃度になるまで添加され、37℃で40分間インキュベートされた。その後、200mMのKCl、10mMのNa2HPO4、0.05%のTween20及びpH7.2の溶液中のTO1B(100nMの最終濃度)からなる検出用緩衝液を加えた。蛍光は、Spectramax i3×(モレキュラーデバイス社)プレートリーダーを使用して、510nmでの励起及び535nmでの発光で測定した(バンド幅15nm)。
【0439】
図42は、Pc-3アンドロゲン受容体溶解液が、試験された様々なタンパク同化アンドロゲン受容体によって示されるように、多種多様なアンドロゲン構造を検出することができたことを示す。
【0440】
最後に、
図43は、Pc-3アンドロゲン受容体溶解液がまた、エステル形で提示された場合にも、テストステロンを検出することができたことを示す。エステルは、テストステロン分子が、油中でより可溶性となることを、すなわちテストステロンの好ましい注射剤形を可能とする。
【0441】
実施例11
スペーサー長-さらなる調査
出願人は以前に、15bp(配列番号86)のスペーサー長が、9bp(配列番号87)又は12bp(配列番号74)のスペーサー長と比較して、テストステロンにより活性化されるアンドロゲン受容体によるT7RNAポリメラーゼ活性の遮断(
図39)をより良好に支持することができたことを実証した。さらに、全体的なT7RNAポリメラーゼ活性を支持する能力は相対的に同等であるにも関わらず、少なくとも12bpのスペーサーについては、この遮断の改善が起こった。より長い又はより短いスペーサー長が、より良好に、テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体によるT7RNAポリメラーゼ活性の遮断を支持し得るかどうかを調べるために、多くのスペーサー長を、エタノール(最大のT7RNAポリメラーゼ活性)対テストステロン(T7RNAポリメラーゼ活性の遮断)の比について評価した。配列番号85によって定義されるT7RNAポリメラーゼプロモーターが、このシリーズの実験において全てのDNA構築物のために使用され、2bp(配列番号88)、12bp(配列番号74)、15bp(配列番号86)、18bp(配列番号89)、21bp(配列番号90)、24bp(配列番号91)、又は27bp(配列番号92)のスペーサーが、単一のアンドロゲン応答配列部位(配列については表14を参照)の前に挿入された。アンドロゲン応答配列の部位は、32merF30足場MangoIIレポーター構築物の上流に位置していた。
【0442】
様々なDNA鋳型を試験するために、マスター混液は、この順番で添加された成分を用いて調製された:社内製の反応緩衝液、NTP混液(1mM)、DNA鋳型(50ng)、Pc-3溶解液(50ng)、HSP90(100ng)、テストステロン(250μM)、又はエタノール(5%)。マスター混液を、ピペッティングすることによって穏やかに混合し、個々のウェルに分注し、NEB Hi-T7 T7RNAポリメラーゼ(50U)を加え、反応を、50℃で40分間インキュベートした。その後、200mMのKCl、10mMのNa2HPO4、0.05%のTween20及びpH7.2の溶液中のYO3(100nMの最終濃度)からなる検出用緩衝液を加えた。蛍光は、Spectramax i3×(モレキュラーデバイス社)プレートリーダーを使用して、595nmでの励起及び620nmでの発光で測定された(バンド幅15nm)。
【0443】
【0444】
図44は、12bp及び24bpのスペーサー長が、テストステロンをあまり検出することができなかったことを示す。18bp及び21bpのスペーサー長は、減少したテストステロンの検出を示したが、エタノール:テストステロンの比は、15bpとは有意に異ならなかった。27bpのスペーサー長は、テストステロンを検出する同等な能力を示した。興味深いことには、2bpのスペーサーは、T7RNAポリメラーゼ活性のより大きな遮断によって証明されるように、テストステロンの検出において最も効果的であった。2bpのスペーサーは、アンドロゲン受容体が、T7RNAポリメラーゼ活性を物理的に遮断することを可能とするようであり、すなわち、T7RNAポリメラーゼが、結合し及び/又は転写を開始することを可能としない。
【0445】
それにも関わらず、これらの実験に使用された各々の異なるスペーサーは、テストステロンを検出でき、約2から約32のヌクレオチドによって定義されるスペーサー長の特色に対するさらなる支持を加える。
【0446】
実施例12
ホルモン応答配列及びスペーサーのヌクレオチド組成の調査
転写の出力のレベルに影響を及ぼすシグナルとしては、ステロイドホルモン応答配列を含む、シス調節配列の配列組成が挙げられる。アンドロゲン受容体では、DNA結合モチーフの配列は、受容体の活性を調節する。アンドロゲン応答配列は、3bpのスペーサーで隔てられた、6bpの2つのハーフサイトの2つの逆方向反復配列を含む。この15bpの標準的なアンドロゲン応答配列は、共通配列AGAACAGCCTGTTCT(配列番号93)である。AGAACA(配列番号98)及びTGTTCT(配列番号99)の配列は、アンドロゲン受容体の二量体が二本鎖DNAに結合する場所を示すが、すぐ近くにフランキングする塩基対は、3bpのスペーサーの付け足しと同様に、ステロイドホルモン受容体の活性に影響を及ぼし得る。
【0447】
【0448】
T7-アンドロゲン応答配列-MangoIIの本発明者らの例示的な配列において、アンドロゲン応答配列(実線)は、G/Cの組合せによってフランキングされている。フランキングしている塩基対をG/CではなくむしろA/Tに変更することで、アンドロゲンスクリーニングアッセイの有効性が改善するかどうかを解明するために、配列番号94及び95を試験した(表15)。
【0449】
フランキング配列に加えて、3bpのスペーサー配列は、ステロイドホルモン受容体の活性を改変し得る。GからT又はCからAへの変更が、アンドロゲンスクリーニングアッセイの有効性に影響を及ぼすかどうかを決定するために、配列番号96及び97を試験した(表15)。
【0450】
【0451】
図45は、共通アンドロゲン応答配列又は標準的なフランキング領域への任意の改変が、アンドロゲンスクリーニングアッセイの有効性を低下させたことを示す。これらのデータは、フランキング領域をG/CからA/Tへと変更することにより、テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体が、T7RNAポリメラーゼ転写活性を遮断する能力が低下したことを示す。これは、改変されたDNA配列とアンドロゲン受容体のDNA結合ドメインとの間の結合親和性の低下に起因するようである。
【0452】
本発明は例として記載したが、変更及び修飾が、特許請求の範囲で定義されているような本発明の範囲から逸脱することなく行なわれ得ることが理解されるべきである。さらに、公知の均等物が特定の特色に存在する場合、このような均等物も、本明細書に具体的に言及されているかのように組み込まれる。
【0453】
本明細書において参照又は記述された全ての特許、刊行物、科学文献、ウェブサイト、並びに他の文書及び資料は、本発明が属する技術分野の技術者のレベルを示し、各々のこのような参考文書及び資料は、参照によりその全体が個々に取り込まれているか、又はその全体が本明細書に示されているのと同じ程度で、参照によりここに組み込まれる。出願人は、本明細書に、任意のこのような特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電子的に入手可能な情報、及び他の参照された資料又は文書からの任意及び全ての資料及び情報を物理的に取り込む権利を保有する。
【0454】
使用された用語及び表現は、説明の見地から使用され、制限のためではなく、このような用語及び表現の使用には、示され及び記載された特色の任意の均等物又はその一部を除外する意図は全くないが、様々な改変が、特許請求されるような本発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施態様及び任意選択の特色によって具体的に開示されているが、本明細書において開示された概念の修飾及び変更が、当業者によって行われ得、そしてこのような修飾及び変更は、本明細書に記載のような及び添付の特許請求の範囲によって定義されるような、本発明の範囲内であると考えられることが理解されるだろう。
【0455】
本発明は、本明細書において広くかつ包括的に記載されている。包括的な開示内に該当するより狭い種及び下位属の分類も各々、本発明の一部を形成する。これは、削除された物質が本明細書において具体的に列挙されているか否かに関係なく、属から任意の対象を除外するという、但し書き又は否定的限定を持つ本発明の包括的な記載を含む。
【0456】
他の例も、以下の特許請求の範囲内である。さらに、本発明の特色又は態様が、マーカッシュ群で表して記載されている場合、当業者は、本発明はまたこれにより、マーカッシュ群の任意の個別のメンバー又はメンバーのサブグループの表現で記載されていることを認識しているだろう。
【配列表】
【国際調査報告】