(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】エルゴチオネインの安定化におけるヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースの使用、及びヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースを含有するエルゴチオネイン組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 233/84 20060101AFI20231114BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20231114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231114BHJP
A61K 31/4172 20060101ALI20231114BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231114BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231114BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231114BHJP
C12P 13/04 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
C07D233/84
A23L33/17
A61P43/00 111
A61P43/00 107
A61K31/4172
A61K47/36
A61K47/26
A61K9/14
C12P13/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529006
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2021129504
(87)【国際公開番号】W WO2022100567
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】202011249538.8
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521282033
【氏名又は名称】ブルーメイジ バイオテクノロジー コーポレイション リミティド
(71)【出願人】
【識別番号】523174217
【氏名又は名称】ブルーメイジ バイオテック(ティアンジン)コーポレイション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】魏玉潔
(72)【発明者】
【氏名】陸震
(72)【発明者】
【氏名】陳清平
(72)【発明者】
【氏名】李杰
(72)【発明者】
【氏名】孫元軍
(72)【発明者】
【氏名】謝文娟
(72)【発明者】
【氏名】杜冉冉
(72)【発明者】
【氏名】郭文逸
(72)【発明者】
【氏名】郭学平
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD19
4B018MD29
4B018MD42
4B018MD82
4B018ME06
4B018MF06
4B018MF13
4B064AE03
4B064CA07
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4C076AA30
4C076BB01
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4C076CC26
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4C076DD67Q
4C076EE37
4C076EE37Q
4C076FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZB22
4C086ZC21
(57)【要約】
本願は、エルゴチオネインの安定化におけるヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースの使用、ヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースを含むエルゴチオネイン安定化用の添加剤、及びエルゴチオネイン、ヒアルロン酸又はその塩及びトレハロースを含む組成物を提供する。本発明によるヒアルロン酸又はその塩及びトレハロースは、他の補助材料と比較して、高温によるエルゴチオネインの破壊を著しく軽減し、エルゴチオネイン粉末製品の収率を向上させることができる。本発明により得られる組成物は、優れた抗酸化作用及び抗アポトーシス効果を有する。ヒアルロン酸又はその塩とトレハロースとを複合化したものを補助材料とした組成物は、ヒアルロン酸又はその塩又はトレハロース単独を補助材料とした組成物よりも、細胞内活性酸素フリーラジカルの抑制・除去効果が著しく高い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルゴチオネインの安定化におけるヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースの使用。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースはエルゴチオネインの熱安定性を向上させるために使用されることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸又はその塩の分子量が3KDa~30KDa、好ましくは3KDa~10KDaであることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
ヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースを含むことを特徴とするエルゴチオネイン安定化用の添加剤。
【請求項5】
ヒアルロン酸又はその塩とトレハロースとを含み、前記ヒアルロン酸又はその塩とトレハロースとの質量比が1:99~50:50、好ましくは1:19~1:10であることを特徴とする請求項4に記載の添加剤。
【請求項6】
前記ヒアルロン酸又はその塩の分子量が3KDa~30KDa、好ましくは3KDa~10KDaであることを特徴とする請求項4に記載の添加剤。
【請求項7】
エルゴチオネイン発酵液を噴霧乾燥処理するための補助材料として用いられることを特徴とする請求項4に記載の添加剤。
【請求項8】
エルゴチオネイン、ヒアルロン酸又はその塩、及びトレハロースを含むことを特徴とする組成物。
【請求項9】
重量部として、エルゴチオネインは1重量部、ヒアルロン酸又はその塩は20~1000重量部、好ましくは100~180重量部、トレハロースは1000~1980重量部、好ましくは1800~1900重量部であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ヒアルロン酸又はその塩の分子量が3KDa~30KDa、好ましくは3KDa~10KDaであることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
抗酸化効果を有することを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生物化学の技術分野に関し、特にエルゴチオネインの安定化におけるヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースの使用、及びヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースを含有するエルゴチオネイン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エルゴチオネイン(Ergothioneine;2-mercaptohistidine trimethylbetaine)は希少なアミノ酸であり、抗酸化、紫外線保護や細胞修復の効果がある。エルゴチオネインは多くの動植物の体内に存在し、動物の生体自体で合成することはできず、食物から摂取するしかない。エルゴチオネインの製造方法は化学合成法、抽出法及び微生物発酵法の3種類がある。化学合成と抽出法によるエルゴチオネインの製造はコストが高く、安全でないなどの問題があるため、微生物発酵法によるエルゴチオネインの製造はますます注目されている。
【0003】
微生物発酵法を用いてエルゴチオネインを製造する場合、エルゴチオネイン発酵液の乾燥には噴霧乾燥法が一般的である。噴霧乾燥は噴霧で材料液を噴霧して霧滴にして高温中に分散させ、材料液に含まれる水分を急速に蒸発させる乾燥方法であり、伝熱が速く、水分蒸発が速く、乾燥時間が短いという特徴があり、しかも製品の品質が良く、組織がサクサクして、溶解性能も良く、ある製剤の溶解速度を改善することができる。一般的な噴霧乾燥補助材料はデキストリン、β-シクロデキストリン、可溶性デンプン、アエロシル、微結晶セルロース、ラクトース、マルトデキストリンである。既存の噴霧乾燥法でエルゴチオネインを乾燥する場合、エルゴチオネインが破壊されやすく、エルゴチオネインを乾燥して得られる粉末製品の収率に影響を与える。
【発明の概要】
【0004】
従来技術の問題を解決するために、本発明は、エルゴチオネインの安定化におけるヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースの使用、エルゴチオネイン安定化用の添加剤、及び組成物を提供する。本発明の技術的解決手段は次のとおりである。
【0005】
1.エルゴチオネインの安定化におけるヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースの使用。
2.前記ヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースはエルゴチオネインの熱安定性を向上させるために使用される、ことを特徴とする項1に記載の使用。
3.前記ヒアルロン酸又はその塩の分子量が3KDa~30KDa、好ましくは3KDa~10KDaである、ことを特徴とする項1に記載の使用。
4.ヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースを含む、ことを特徴とするエルゴチオネイン安定化用の添加剤。
5.ヒアルロン酸又はその塩とトレハロースとを含み、前記ヒアルロン酸又はその塩とトレハロースとの質量比が1:99~50:50、好ましくは1:19~1:10である、ことを特徴とする項4に記載の添加剤。
6.前記ヒアルロン酸又はその塩の分子量が3KDa~30KDa、好ましくは3KDa~10KDaである、ことを特徴とする項4に記載の添加剤。
7.エルゴチオネイン発酵液を噴霧乾燥処理するための補助材料として用いられる、ことを特徴とする項4に記載の添加剤。
8.エルゴチオネイン、ヒアルロン酸又はその塩、及びトレハロースを含む、ことを特徴とする組成物。
9.エルゴチオネインは1重量部、ヒアルロン酸又はその塩は20~1000重量部、好ましくは100~180重量部、トレハロースは1000~1980重量部、好ましくは1800~1900重量部である、ことを特徴とする項8に記載の組成物。
10.前記ヒアルロン酸又はその塩の分子量が3KDa~30KDa、好ましくは3KDa~10KDaである、ことを特徴とする項8に記載の組成物。
11.抗酸化効果を有する、ことを特徴とする項8に記載の組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によるヒアルロン酸又はその塩及びトレハロースは、他の補助材料と比較して、高温によるエルゴチオネインの破壊を著しく軽減し、エルゴチオネイン粉末製品の収率を向上させることができる。本発明により得られる組成物は、優れた抗酸化作用及び抗アポトーシス効果を有する。ヒアルロン酸又はその塩とトレハロースとを複合化したものを補助材料とした組成物は、ヒアルロン酸又はその塩又はトレハロース単独を補助材料とした組成物よりも、細胞内活性酸素フリーラジカルの抑制・除去効果が著しく高い。
【発明を実施するための形態】
【0007】
別段の定義がない限り、本明細書における技術的な用語及び科学的な用語は、当業者が一般に理解する意味と同じである。本明細書に記載されたものと類似又は同一の方法及び材料を、実験又は実際の応用において適用することができるが、本明細書では、材料及び方法については、以下で説明する。矛盾する場合は、本明細書に含まれているその定義は優先され、また、材料、方法及び例は単に説明に供するものであって、限定的なものではない。以下では、具体的な実施例を参照して本願をさらに説明するが、本願の範囲を限定するものではない。
【0008】
以下で使用する実験方法は特別な要求がなければ、すべて通常の方法である。
【0009】
下記に使用する材料、試薬等は、特別な説明がない限り、商業ルートから入手することができる。
【0010】
マツタケは、2020年10月16日に中国武漢市の武漢大学(郵便番号430072)の中国典型培養物寄託センター(CCTCC)に寄託され、寄託番号がCCTCC No:M 2020587となっているマツタケSR-LY(Tricholoma Matsutake SR-LY)が好ましい。
【0011】
ヤマブシタケは、2018年8月23日に中国武漢市の武漢大学(郵便番号430072)の中国典型培養物寄託センター(CCTCC)に寄託されたヤマブシタケ(Hericium erinaceus)CCTCC No:M 2018567が好ましい。
【0012】
噴霧乾燥装置は、遠心式又は加圧式噴霧乾燥機である。
【0013】
本発明は、エルゴチオネインの安定化におけるヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースの使用を提供する。
【0014】
ヒアルロン酸(HA:Hyaluronic Acid)は、直鎖状のD-グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンの交互単位から形成される天然ムコ多糖類である。ヒアルロン酸は、その独特な分子構造と物理化学的性質により、生体内で多くの重要な生理学的機能を示し、特に重要なのは、特殊な保水作用を持ち、現在発見されている自然界で最も保湿性の高い物質であり、理想的な天然保湿因子(NMF)と呼ばれている。また、ヒアルロン酸分子は空間的に剛直ならせん柱状をなしており、柱の内側には多量の水酸基が存在するため強い吸水性が生じ、一方、水酸基の連続的な配向によりヒアルロン酸分子鎖に撥水領域が形成され、これにより、ヒアルロン酸は三次元網目構造を形成する。
【0015】
トレハロースは2つのグルコース分子がヘミアセタールの水酸基を介して縮合してできたもので、遊離のアルデヒド基が存在しないため、非還元型の二糖類であり、分子式はC12H22O11(結晶水を2つ含む)である。2つのグルコース分子はα-グルコピラノースとβ-グルコピラノースを形成することができるので、α-1,1グリコシド結合により連結すると、トレハロース(α,α)、イソトレハロース(β,β)、ネオトレハロース(α,β)の3つの異性体が得られ得る。トレハロースは独特な生物学的機能を持っており、過酷な環境でも細胞内生物膜と蛋白質、活性ペプチドの安定性と完全性を効果的に維持することができるので、生命の糖として称賛されており、生物製剤、医薬、食品、健康食品、精密化学工業、化粧品、飼料、農業科学などの各業界に広く使用されている。
【0016】
1つの具体的な実施形態では、前記ヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースは、エルゴチオネインの熱安定性を向上させるために使用される。ここで、前記ヒアルロン酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、カルシウム塩、及び4級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種である。
【0017】
エルゴチオネイン(Ergothioneine;2-mercaptohistidine trimethylbetaine)は希少なアミノ酸であり、抗酸化、紫外線保護や細胞修復の効果がある。エルゴチオネインは多くの動植物の体内に存在し、動物の生体自体で合成することはできず、食物から摂取するしかない。
【0018】
微生物発酵法を用いてエルゴチオネインを製造する場合、エルゴチオネイン発酵液の乾燥には噴霧乾燥法が一般的である。噴霧乾燥は噴霧で材料液を噴霧して霧滴にして高温中に分散させ、材料液に含まれる水分を急速に蒸発させる乾燥方法であり、伝熱が速く、水分蒸発が速く、乾燥時間が短いという特徴があり、しかも製品の品質が良く、組織がサクサクして、溶解性能も良く、ある製剤の溶解速度を改善することができる。しかし、エルゴチオネインは高温で破壊されやすく、最終的に乾燥して得られるエルゴチオネイン粉末の収率に影響を与える。
【0019】
本発明は、ヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースを含むエルゴチオネイン安定化用の添加剤を提供する。すなわち、前記添加剤は、ヒアルロン酸又はその塩であってもよいし、トレハロースであってもよいし、ヒアルロン酸又はその塩とトレハロースとを任意の割合で配合したものであってもよい。ここで、前記ヒアルロン酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、カルシウム塩、及び4級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種である。
【0020】
1つの具体的な実施形態では、前記添加剤は、ヒアルロン酸又はその塩とトレハロースとを含む。前記ヒアルロン酸又はその塩とトレハロースとの質量比は1:99~50:50、例えば1:99、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:19、1:10であってもよく、好ましくは1:19~1:10である。
【0021】
1つの具体的な実施形態では、前記添加剤中のヒアルロン酸又はその塩の分子量は3KDa~30KDa、例えば3KDa、5KDa、10KDa、15KDa、20KDa、25KDa、30KDa、好ましくは3KDa~10KDaであってもよい。
【0022】
1つの具体的な実施形態では、前記添加剤はエルゴチオネイン発酵液を噴霧乾燥処理するための補助材料として用いられる。ここで、エルゴチオネイン発酵液は、如何なる先行技術にも存在する微生物の発酵液であってもよい。例えばマツタケやヤマブシタケなどのエルゴチオネイン発酵液である。
【0023】
好ましくは、前記噴霧は遠心式又は加圧式噴霧乾燥であり、吸気温度は150℃~200℃、排気温度は50℃~100℃である。
【0024】
好ましくは、前記エルゴチオネイン含有発酵液には、1~30%(w/v、g/ml)の補助材料が添加されている。
【0025】
本発明は、エルゴチオネイン、ヒアルロン酸又はその塩、及びトレハロースを含む組成物も提供する。前記組成物は、優れた抗酸化作用及び抗アポトーシス効果を有する。また、ヒアルロン酸又はその塩とトレハロースとを複合化したものを補助材料とした組成物は、ヒアルロン酸又はその塩又はトレハロース単独を補助材料とした組成物よりも、細胞内活性酸素フリーラジカルの抑制・除去効果が著しく高い。ここで、前記ヒアルロン酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、カルシウム塩、及び4級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種である。
【0026】
1つの具体的な実施形態では、前記組成物において、エルゴチオネイン、ヒアルロン酸又はその塩、及びトレハロースの質量比が1:(20~1000):(1000~1980)である。例えば、1:20:1000、1:20:1500、1:20:1980、1:100:1000、1:100:1500、1:100:1980、1:500:1000、1:500:1500、1:500:1980、1:1000:1000、1:1000:1500、1:1000:1980であってもよい。重量部として、エルゴチオネインは1重量部、ヒアルロン酸又はその塩は20~1000重量部、例えば、20重量部、50重量部、100重量部、300重量部、500重量部、700重量部、1000重量部であってもよく、好ましくは100~180重量部である。トレハロースは1000~1980重量部、例えば1000重量部、1100重量部、1200重量部、1300重量部、1500重量部、1700重量部、1800重量部、1980重量部であってもよく、好ましくは1800~1900重量部である。1つの具体的な実施形態では、前記組成物において、ヒアルロン酸又はその塩の分子量は3KDa~30KDa、例えば3KDa、5KDa、10KDa、15KDa、20KDa、25KDa、30KDaであってもよく、好ましくは3KDa~10KDaである。
【0027】
本発明では、ヒアルロン酸又はその塩及び/又はトレハロースを用いることにより、エルゴチオネインの安定性を著しく向上させ、特にエルゴチオネイン発酵液の噴霧乾燥において高温によるエルゴチオネインの破壊を著しく軽減することができる。エルゴチオネイン発酵液を噴霧乾燥するための補助材料としてヒアルロン酸又はその塩とトレハロースとを一定の割合で用いて処理すると、得られるエルゴチオネイン、ヒアルロン酸又はその塩及びトレハロースを含有する組成物は、優れた抗酸化作用及び抗アポトーシス効果を有する。特に、組成物中のヒアルロン酸又はその塩とトレハロースとの質量比が1:19~1:10である場合、活性酸素フリーラジカルの抑制・除去作用が最適である。
【0028】
本願の以下の実施例は、本願を実現するための具体的な実施形態を説明するためにのみ使用され、これらの実施形態は本願を限定するものとは理解されない。本願の精神的本質及び原理から逸脱しない他の変更、修飾、代替、組合せ、簡略化はすべて同等の置換方法とみなされ、本願の特許範囲内に含まれる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を参照して本発明をさらに説明するが、実施例は、本発明をさらに説明し説明するためにのみ使用されるものであり、本発明を限定するために使用されるものではないことを理解されたい。
【0030】
以下の実施例で使用される実験方法は、特別な要件がない限り、従来の方法である。
【0031】
下記の実施例で使用される材料、試薬等は、特段の説明がない限り、商業的に入手することができる。
【0032】
実施例1 エルゴチオネイン組成物の製造の最適化(マツタケ発酵)
液体種子培地:3.0%(w/v)のラクトース、2.0%(w/v)のジャガイモ浸出粉、0.1%(w/v)のリン酸水素二カリウム、0.1%(w/v)の硫酸ナトリウム、残量の水を、pH 4.0~4.5、121℃で20min滅菌した。
【0033】
発酵培地:3.0%(w/v)のグルコース、2.0%(w/v)のマルトース、1.0%(w/v)の牛肉エキス、1.5%(w/v)のトリプトン、0.06%(w/v)のリン酸二水素ナトリウム、0.0003%(w/v)の塩化亜鉛、0.0005%(w/v)のナイアシン、0.0001%(w/v)のビタミンB1、残量の水を、pH 4.0~4.5、121℃で20min滅菌した。
【0034】
マツタケ(Tricholoma Matsutake)CCTCC No:M 2020587菌糸体斜面菌種を液体種子培地に接種し、23℃、200rpmの振とう条件下で25日間培養し、マツタケ種子液を得た。種子液を体積比5%の接種量で発酵培地に接種し、23℃、200rpmの振とう条件下で25日間培養し、培養20日目に前駆物質であるシステイン、メチオニン、ベタインをそれぞれ5mMずつ補充して、発酵液を得た。発酵終了後、ホモジナイザーを用いて菌糸体発酵液を8000rpmで30min均質化した。さらに1.2μmの微細ろ過板紙、0.22μmのポリエーテルサルホンフィルターエレメントでろ過除菌し、エルゴチオネイン含有溶液を得た。
【0035】
発酵液5%(w/v、g/ml)のマルトデキストリン、微結晶セルロース、3KDaヒアルロン酸ナトリウム、5KDaヒアルロン酸ナトリウム、10KDaヒアルロン酸ナトリウム、15KDaヒアルロン酸ナトリウム、30KDaヒアルロン酸ナトリウム、50KDaポリグルタミン酸ナトリウム、フコース、マンニトール、β-シクロデキストリン、ラクトース、トレハロース及びデキストリンをそれぞれ添加して、均一に混合し、遠心式噴霧乾燥機で噴霧した。噴霧乾燥に用いた吸気温度は180℃、排気温度は90℃で、得られた粉末はエルゴチオネイン含有組成物であり、各組成物中のエルゴチオネイン含有量の結果は表1に示される。
【0036】
【0037】
エルゴチオネインは高温噴霧時にある程度の破壊が避けられず、表1の結果から、ヒアルロン酸ナトリウムとトレハロースを補助材料として得られた組成物では、エルゴチオネインの含有量はそれぞれ0.167%、0.168%、0.169%、0.165%、0.167%及び0.168%であり、他のいくつかの通常の噴霧補助材料の場合に得られた粉末より明らかに高かった。このことは、ヒアルロン酸ナトリウムとトレハロースが他の補助材料と比較して、高温によるエルゴチオネインの破壊を明らかに軽減できることを示している。
【0038】
実施例2 エルゴチオネイン組成物の製造の最適化(ヤマブシタケ発酵)
液体種子培地:4.0%(w/v)のスクロース、1.5%(w/v)の大豆かす粉、0.2%(w/v)のリン酸二水素ナトリウム、0.1%(w/v)の硫酸ナトリウム、残量の水をpH 4.0~4.5、121℃で20min殺菌した、
【0039】
発酵培地:3.0%(w/v)のグルコース、1.5%(w/v)の牛肉エキス、0.05%(w/v)のリン酸二水素ナトリウム、0.03%(w/v)の硫酸ナトリウム、0.0003%(w/v)の塩化亜鉛、0.0006%(w/v)のナイアシン、0.0001%(w/v)のビタミンB1、残量の水を、pH 4.0~4.5、121℃で20min滅菌した。
【0040】
ヤマブシタケ(Hericium erinaceus)CCTCC No:M 2018567菌糸体斜面種菌を液体種子培地に接種し、23℃、200rpmの振とう条件下で7日間培養し、ヤマブシタケ種子液を得た。種子液を体積比5%の接種量で発酵培地に接種し、23℃、200rpmの振とう条件下で10日間培養し、培養5日目に前駆物質であるシステイン、メチオニン、ベタインをそれぞれ5mMずつ補充して、発酵液を得た。発酵終了後、ホモジナイザーを用いて菌糸体発酵液を8000rpmで30min均質化した。さらに1.2μmの精密ろ過板紙、0.22μmのポリエーテルサルホンフィルターエレメントでろ過除菌し、エルゴチオネイン含有溶液を得た。発酵液5%(w/v、g/ml)のマルトデキストリン、微結晶セルロース、3KDaヒアルロン酸ナトリウム、5KDaヒアルロン酸ナトリウム、10KDaヒアルロン酸ナトリウム、15KDaヒアルロン酸ナトリウム、30KDaヒアルロン酸ナトリウム、50KDaポリグルタミン酸ナトリウム、フコース、マンニトール、β-シクロデキストリン、ラクトース、トレハロース及びデキストリンをそれぞれ添加して、均一に混合し、遠心式噴霧乾燥機で噴霧した。噴霧乾燥に用いた吸気温度は180℃、排気温度は90℃で、得られた粉末はエルゴチオネイン含有組成物であり、各組成物中のエルゴチオネイン含有量の結果は表2に示される。
【0041】
【0042】
表2の結果から、エルゴチオネインの含有量は、ヤマブタケ発酵を利用し、ヒアルロン酸ナトリウムとトレハロースを補助材料とした組成物においても、他のいくつかの一般的な噴霧補助材料の場合に得られる粉末よりも明らかに高かった。このことは、ヒアルロン酸ナトリウムとトレハロースが噴霧時の高温によるエルゴチオネインの破壊を明らかに軽減することを示している。
【0043】
実施例3 ヒアルロン酸とトレハロースの配合比の最適化
実施例1と実施例2の結果から、ヒアルロン酸ナトリウムとトレハロースはいずれもエルゴチオネインに対して良好な安定化作用を有することが分かった。このうち、ヒアルロン酸ナトリウムは保湿、抗炎症等の効果に優れているが、価格が高いため、低コスト化と保湿、抗炎症等の効果に優れた組成物を得ることを両立させるため、噴霧補助材料としてヒアルロン酸ナトリウム(5KDa)とトレハロースを異なる割合で配合して使用することを検討した。実施例1の発酵液を用い、発酵液を噴霧乾燥する際に、ヒアルロン酸ナトリウムとトレハロースとの混合物を補助材料とし、ヒアルロン酸ナトリウムとトレハロースとの質量比を1:99~50:50の間に調整する。同様に発酵液5%(w/v、g/ml)の補助材料添加量で上記同様の噴霧乾燥操作の条件を用いて得られた組成物では、エルゴチオネイン含有量を表3に示す。
【0044】
【0045】
上記の表から、ヒアルロン酸ナトリウムとトレハロースを1:99~50:50の質量比で配合したものを補助材料とすることにより、噴霧時の高温によるエルゴチオネインの破壊を効果的に軽減することができる。しかし、ヒアルロン酸ナトリウムの分子量が10KDa以上の場合、分子量が大きく粘度が高いため、噴霧による粉末収率が若干低下するため、ヒアルロン酸ナトリウムの分子量は3KDa~10KDaが好ましい。
【0046】
実施例4 組成物の抗酸化活性
1.活性酸素フリーラジカル生成への影響
サンプル溶液の調製:上記実施例で製造したサンプルC3、C9、S1-9をそれぞれ無血清DMEM培養液で0.1%(w/v、g/ml)濃度の溶液に、サンプルS4を0.05%(w/v、g/ml)、0.1%(w/v、g/ml)、0.2%(w/v、g/ml)、0.3%(w/v、g/ml)濃度の溶液にそれぞれ製造し、0.22μmの膜ろ過で除菌した。
【0047】
(1)活性酸素フリーラジカル除去試験
ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(DCFH-DA)プローブ溶液の調製:DCFH-DAをPBS溶液(0.1M、pH 7.4)で希釈し、1mLPBSを0.375μL加えて希釈した。
対数成長期にあるHaCaT細胞を取り、5×104個/mLの密度で12ウェル培養プレートに接種し、1ウェル当たり2mLの細胞懸濁液とし、二酸化炭素インキュベータに入れて37℃、5%CO2で通常培養を24h行った。以下のように群分けして操作した。
【0048】
(1)照射群では、培養液1mLを捨ててラップをかけ、2000μW/cm2の強度でUVAを2~3h照射し、700μW/cm2の強度でUVBを7min照射した。照射終了後に、古い培養液を捨て、各サンプル溶液をウェルごとに2mLずつ加えた。
【0049】
(2)損傷モデル群では、照射群と同じ操作を行い、照射終了後に、古い培養液を捨て、無血清培養液をウェルごとに2mLずつ加えた。
【0050】
(3)正常対照群では、通常培養を行い、照射群と同時に液を交換し、無血清培養液をウェルごとに2mLずつ加えた。
【0051】
その後、16h培養を続けた後、すべての培養液を捨て、PBSで2回洗浄した。ウェルごとにDCFH-DA溶液1.5mLを加え、細胞インキュベータに入れて30minインキュベートを続け、5minごとに均一に混合してプローブを十分に結合させた。プローブ液を捨て、無血清培地で2回洗浄し、1ウェル当たり無血清培地1mLを加えて、37℃で10min培養した。PBSで洗浄後、トリプシンで細胞を消化し、PBSで2回洗浄し、PBS 300μLに再懸濁させ、フローサイトメトリーによりダブルチャンネル検出を行い、サンプルのローディング前に細胞をろ過し、FL1-Hチャンネルでは、サンプルごとに10000個の細胞を収集した。1チャンネル(FL1-H)で得られた信号データ、すなわちDCFで発生した蛍光強度又は蛍光総量からROSクリアランスを算出した。平均蛍光強度を使用してROSクリアランスを算出した。
【0052】
ROSクリアランス%=(1-実験群蛍光強度平均値/対照群蛍光強度平均値)×100%
【0053】
(2)活性酸素フリーラジカル抑制試験
対数成長期にあるHaCaT細胞をとり、4×104個/mLの密度で12ウェル培養プレートに接種し、1ウェルあたり2mLの細胞懸濁液とし、二酸化炭素インキュベータに入れて37℃、5%CO2で通常培養を24h行った。
【0054】
古い培養液を捨て、実験群はウェルごとにサンプル溶液2mLを加え、正常対照群はウェルごとに無血清培養液2mLを加え、24h培養を持続した後に照射し、正常対照群はアルミホイルで覆って照射しなかった。
【0055】
照射群は培地1mLを捨ててラップをかけ、2000μW/cm2の強度でUVAを1h照射し、700μW/cm2の強度でUVBを3min照射し、正常対照群は照射しなかった。培地を捨て、PBSで2回洗浄した。ウェルごとDCFH-DA に1.5mLを加え、細胞インキュベータに入れて30minインキュベートし、5minごとに1回均一に混合して、プローブを十分に結合させた。プローブを捨て、予熱した無血清培地で2回洗浄し、1ウェル当たり無血清培地1mLを加えて、37℃で10minインキュベートした。PBSで1回洗浄した後、トリプシンで細胞を消化し、PBSで2回洗浄し、PBS 300μLに再懸濁させ、フローサイトメトリーによりダブルチャンネル(サンプルのローディング前の細胞はろ過が必要)を行い、FL1-Hチャンネルでは、サンプルごとに10000個の細胞を収集した。1チャンネル(FL1-H)で得られた信号データ、すなわちDCFで発生した蛍光強度又は蛍光総量からROS抑制率を算出した。平均蛍光強度を用いてROS抑制率を算出した。
【0056】
ROS抑制率%=(1-実験群蛍光強度平均値/対照群蛍光強度平均値)×100%
【0057】
得られた各サンプルのROSクリアランスと抑制率の結果を表4と表5に示す。
【0058】
【0059】
【0060】
表4の結果から、本発明により得られるエルゴチオネイン組成物では、優れた抗酸化効果を有し、また、ヒアルロン酸塩とトレハロースを複合したものを補助材料とした組成物は、ヒアルロン酸塩又はトレハロース単独を補助材料とした組成物よりも、細胞内活性酸素フリーラジカルの抑制及び除去効果が著しく高い。また、ヒアルロン酸塩とトレハロースの添加割合が1:19~1:10の場合、活性酸素フリーラジカルの抑制と除去作用が最も顕著であった。表5の結果から、サンプルS4は0.01%、0.05%、0.1%、0.2%の濃度範囲内で、0.1%濃度ではエルゴチオネインは紫外損傷による細胞内活性酸素フリーラジカルに対して最も強い抑制と除去効果があり、抑制率とクリアランスはそれぞれ19.28%と32.43%であり、比較的低濃度と比較的高濃度では、抑制と除去効果はいずれも低下した。
【0061】
2.DPPHラジカル除去試験
上記で製造したサンプルS4を水に溶解し、最終濃度が0.05%(w/v)、0.1%(w/v)、0.2%(w/v)、0.3%(w/v)の溶液を製造しておく。1,1-ジフェニル-2-トリニトロフェニルヒドラジン(DPPH)溶液5.0mLと、さまざまな濃度のS5サンプル溶液5.0mLをそれぞれ精密に秤量して、栓付き試験管に入れ、均一に混合した。等体積の95%エタノール-水混合溶液でゼロ調整を行った。室温で30分間放置し、523 nmで溶液の吸光度を測定し、濃度ごとに3回繰り返した、別の群を設けて、DPPH溶液5.0mLと精製水5.0mLをそれぞれ精密に秤量し、混合し、ブランク対照とし、同様に操作した。計算方法は次のとおりである。
【0062】
ラジカルクリアランス(%)=(1-サンプル吸光度値/ブランク対照吸光度値)×100%
【0063】
得られた結果を表6に示す。
【0064】
【0065】
表6の結果から、組成物濃度が高くなるにつれてDPPHラジカルのクリアランスが向上し、組成物濃度が0.3%である場合、クリアランスは74.80%、濃度が0.5%である場合、88.14%のクリアランスに達する。
【0066】
実施例5 組成物の抗アポトーシス効果の評価
サンプル溶液の調製:サンプルS4を無血清培地で濃度0.1%(w/v)、0.3%(w/v)、0.5%(w/v)の溶液にそれぞれ製造し、0.22μmの膜ろ過で除菌した。
(1)UVB照射によるアポトーシスに対する被検品の修復作用
プレートへの接種:対数成長期にあるHaCaT細胞を取り、トリプシンで消化した後、細胞密度を1×106個/mLに調整し、6ウェル細胞培養プレートに接種し、1ウェルあたり2mLの細胞懸濁液とし、二酸化炭素インキュベータに入れて37℃、5%CO2で通常培養を一晩行った。
【0067】
照射:6ウェルプレートの蓋を開け、ラップで封止し、70mJ/cm2UVB(400μW 3min)をHaCaT細胞に照射し、試験の群分けを表7に示す。
【0068】
【0069】
薬剤添加:照射終了後、培養液を捨て、試験群は1ウェルあたり2mLの異なる濃度のサンプル溶液を、正常群とモデル群は同量の培地を加え、インキュベータに入れて培養を続けた。
【0070】
検出:24h培養を続けた後、6ウェルプレート中の各群の細胞を収集し、古い培養液をEP管に吸い取り、PBSを用いて細胞を1回洗浄し、トリプシンを加えて消化を行い、古い培養液を加えて消化を停止し、上記のEP管に収集し、1000 rpm/minで5分遠心分離し、上清を捨て、予冷したPBSで2回洗浄した後、1×BindingBufferで細胞を再懸濁させ、細胞密度を1×106個/mLに調整し、細胞懸濁液100μLを新しい1.5mL EP管に移し、キットの説明書に従って、それぞれ5μL Annexin V-FITCとPI染色液を加え、軽く均一に混合し、室温で10分間の遮光培養を行い、フローサイトメーターで検出した。
【0071】
(2)UVB照射によるアポトーシスに対する被検品の保護作用
プレートへの接種:対数成長期にあるHaCaT細胞を取り、トリプシンで消化後、細胞密度を1×106個/mLに調整し、6ウェル細胞培養プレートに接種し、1ウェルあたり2mL細胞懸濁液とし、二酸化炭素インキュベータに入れて37℃、5%CO2で通常培養を一晩行った。
【0072】
薬剤添加:古い培養液を捨て、試験群はウェルごとに異なる濃度のサンプル溶液を2mL加え、正常群とモデル群は同量の培地を加え、インキュベータに入れて培養を続けた。
【0073】
照射:6ウェルプレートの蓋を開け、ラップで封止し、70mJ/cm2UVB(400μW 3min)をHaCaT細胞に照射し、試験の群分けは表8に示す。
【0074】
【0075】
検出:照射後24h続けて培養した後、6ウェルプレート中の各群の細胞を収集し、古い培養液をEP管に吸い取り、PBSで細胞を1回洗浄し、トリプシンを加えて消化を行い、更に古い培養液を加えて消化を停止し、上記のEP管に収集し、1000 rpm/minで5分遠心分離し、上清を捨て、予冷したPBSで2回洗浄した後、1×BindingBufferで細胞を再懸濁させ、細胞密度を1×106個/mlに調整し、細胞懸濁液100μLを新しい1.5mL EP管に移し、キットの説明書に従って、それぞれ5μL Annexin V-FITCとPI染色液を加え、軽く均一に混合し、室温で10分間の遮光培養を行い、フローサイトメーターで検出した。
【0076】
正常細胞では、ホスファチジルセリン(PS)は細胞膜脂質二重層の内側にのみ分布しているが、細胞アポトーシスの早期には、細胞膜中のホスファチジルセリン(PS)は脂質膜の内側から外側に転向する。Annexin Vは分子量35~36kDのCa2+依存性リン脂質結合蛋白質であり、ホスファチジルセリンとの親和性が高いため、細胞の外側に露出したホスファチジルセリンを介してアポトーシス早期細胞の細胞膜に結合する。ヨウ化プロピジウム(PI:Propidium Iodide)は完全な細胞膜を透過しない核酸染料であるが、アポトーシスの中期および後期にある細胞や死んだ細胞では、PIは細胞膜を透過して核を赤く染めることができる。そこで、Annexin VをPIと合わせて用いることで、異なるアポトーシス時期にある細胞を区別することができる。
【0077】
その結果、表9に示すように、紫外損傷の前にサンプルと接触しても、紫外照射損傷の後にサンプルと接触しても、0.1%濃度では、サンプルS4のアポトーシス抑制作用が最も強く、サンプル濃度の更なる向上に伴い、抗アポトーシス効果は逆に弱まった。
【0078】
【国際調査報告】