(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】デンプンの生合成方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/04 20060101AFI20231114BHJP
C12P 7/28 20060101ALI20231114BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20231114BHJP
C12N 15/60 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
C12P19/04 Z
C12P7/28
C12N15/53
C12N15/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535786
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2021113598
(87)【国際公開番号】W WO2022042427
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】202010858974.9
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517265912
【氏名又は名称】中国科学院天津工業生物技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】馬延和
(72)【発明者】
【氏名】蔡韜
(72)【発明者】
【氏名】孫紅兵
(72)【発明者】
【氏名】喬▲ジン▼
(72)【発明者】
【氏名】張▲ファン▼
(72)【発明者】
【氏名】張潔
(72)【発明者】
【氏名】王欽宏
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AC33
4B064AF12
4B064CA21
4B064CB30
4B064CC30
4B064DA20
(57)【要約】
本発明は、ジヒドロキシアセトン、ホルムアルデヒド、ギ酸及びメタノールなどの簡単な化合物からのデンプンの完全人工生合成を実現することができ、二酸化炭素との化学還元などの方法によってカップリングし、更に二酸化炭素を出発原料としてデンプンの完全人工生合成を実現することができるデンプンの生合成方法を提供する。天然デンプンの合成には、合計21~22ステップの反応を必要とするカルビンサイクルが必要であり、本方法は9~12ステップの反応のみが必要であるため、反応ステップが半分近く減少し、生産サイクルを大幅に短縮することができる。また、本方法は、高濃度、高密度の二酸化炭素及び高エネルギー密度の電気エネルギーと水素エネルギーを利用することができ、工業生産モードに更に適用し、生産サイクルを農業栽培の数ヶ月から数日に短縮することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンを合成する方法(I)であって、ジヒドロキシアセトンである化合物Dを原料とし、複数の酵素の触媒作用下で、デンプンに転化するステップを含み、
前記ステップは、
ジヒドロキシアセトンである化合物Dを原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下で、D-3-リン酸グリセルアルデヒドである化合物Fに転化するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた化合物Fを1つ又は複数の酵素の触媒作用下で、D-グルコース-6-リン酸である化合物Iに転化するステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた化合物Iを1つ又は複数の酵素の触媒作用下で、デンプンに転化するステップ(3)と、を含み、
好ましくは、ステップ(1)で使用される酵素は、ワンステップ又はマルチステップの反応によりジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する酵素又は酵素の組み合わせであり、例えば、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素及びリン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせであってもよく、
ステップ(2)で使用される酵素は、ワンステップ又はマルチステップの反応によりD-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する酵素又は酵素の組み合わせであり、例えば、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びD-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-2-a)、或いは、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びD-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-2-b)であってもよく、
ステップ(3)で使用される酵素は、ワンステップ又はマルチステップの反応によりD-グルコース-6-リン酸からアミロース又はアミロペクチンへの転化を触媒する酵素又は酵素の組み合わせであり、例えば、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素との組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-3-a)、或いは、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-3-b)であってもよく、任意選択的に、組み合わせ(I-3-a)又は組み合わせ(I-3-b)には、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素が更に含まれてもよい、
方法。
【請求項2】
ステップ(1)は、
化合物Dを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でリン酸ジヒドロキシアセトンである化合物Eに転化する(当該反応は反応9と表される)ステップ(1-1)といったサブステップと、
ステップ(1-1)で得られた化合物Eを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でD-3-リン酸グリセルアルデヒドである化合物Fに転化する(当該反応は反応10と表される)ステップ(1-2)といったサブステップと、を含み、
好ましくは、ステップ(1-1)で使用される酵素は、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素であり、ステップ(1-2)で使用される酵素は、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素であり、
ステップ(2)は、
化合物Fを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でD-フルクトース-6-リン酸である化合物Hに転化するステップ(2-1)といったサブステップと、
ステップ(2-1)で得られた化合物Hを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でD-グルコース-6-リン酸である化合物Iに転化する(当該反応は反応15と表される)ステップ(2-2)というサブステップと、を含み、
好ましくは、ステップ(2-1)で使用される酵素は、ワンステップ又はマルチステップの反応によりD-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する酵素又は酵素の組み合わせであり、例えば、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する単独の酵素であってもよく、或いは、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びD-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-2-1)であってもよく、ステップ(2-2)で使用される酵素は、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素であり、
より好ましくは、ステップ(2-1)は、化合物Fを、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下で化合物Hに転化する(当該反応は反応13又は14と表される)ように行われてもよく、或いは、ステップ(2-1)は、まず、化合物Fを、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でD-フルクトース-1,6-二リン酸である化合物Gに転化し(当該反応は反応11と表される)、その後、得られた化合物Gを、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でD-フルクトース-6-リン酸に転化する(当該反応は反応12と表される)ように行われてもよく、
ステップ(3)は、
化合物Iを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でα-D-グルコース-1-リン酸である化合物Jに転化する(当該反応は反応16と表される)ステップ(3-1)といったサブステップと、
ステップ(3-1)で得られた化合物Jを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロースである化合物1に転化するステップ(3-2)といったサブステップと、
任意選択的に、ステップ(3-2)で得られた化合物1を1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロペクチンである化合物2に転化する(当該反応は反応20と表される)ステップ(3-3)といったサブステップと、を含み、
好ましくは、ステップ(3-1)で使用される酵素は、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素であり、
ステップ(3-2)で使用される酵素は、α-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素であり、例えば、α-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する単独の酵素であってもよく、或いは、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-3-2)であってもよく、
ステップ(3-3)で使用される酵素は、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素であり、
より好ましくは、ステップ(3-2)は、化合物Jを、α-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でアミロースである化合物1に転化する(当該反応は反応19と表される)ように行われてもよく、或いは、ステップ(3-2)は、まず、化合物Jを、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でアデノシン二リン酸-α-D-グルコースである化合物Kに転化し(当該反応は反応17と表される)、その後、得られた化合物Kを、アデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でアミロースに転化する(当該反応は反応18と表される)ように行われてもよい、
請求項1に記載の方法(I)。
【請求項3】
前記方法(I)は、ステップ(1)の前に、ホルムアルデヒドを原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でジヒドロキシアセトンである化合物Dに転化するステップ(0)を更に含み、当該反応は反応8と表され、より好ましくは、ステップ(0)で使用される酵素は、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素である、
請求項1又は2に記載の方法(I)。
【請求項4】
前記方法(I)は、ステップ(0)の前に、メタノール又はギ酸を原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化するステップ(a)を更に含み、より好ましくは、ステップ(a)において、メタノールを原料としてホルムアルデヒドを合成する時、使用される酵素は、メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素であり、ギ酸を原料としてホルムアルデヒドを合成する時、使用される酵素は、ギ酸からホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素であり、例えば、ギ酸からホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する単独の酵素であってもよく、或いは、ギ酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素といった酵素の組み合わせ(I-a-1)、又は、ギ酸からホルミルリン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、ホルミルリン酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-a-2)であってもよく、
より好ましくは、ステップ(a)において、ギ酸を原料としてホルムアルデヒドを合成する時、
ギ酸を原料とし、ギ酸からホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化する(当該反応は反応3と表される)ステップ(a1)、
まず、ギ酸を原料とし、ギ酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルミル補酵素Aに転化し(当該反応は反応4と表される)、その後、ホルミル補酵素Aを、ホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化する(当該反応は反応7と表される)ステップ(a2)、或いは、
まず、ギ酸を原料とし、ギ酸からホルミルリン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルミルリン酸に転化し(当該反応は反応5と表される)、その後、ホルミルリン酸を、ホルミルリン酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルミル補酵素Aに転化し(当該反応は反応6と表される)、続いて、ホルミル補酵素Aを、ホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化する(当該反応は反応7と表される)ステップ(a3)の何れか1つに従って行われてもよい、
請求項3に記載の方法(I)。
【請求項5】
デンプンを合成する方法(II)であって、
メタノールを原料とし、複数の酵素の触媒作用下でアミロースに転化するステップ1)と、任意選択的に、アミロースを原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロペクチンに転化するステップ2)と、を含み、
好ましくは、ステップ1)で使用される酵素は、複数のステップの反応によりメタノールからのデンプンの合成を触媒する酵素の組み合わせであり、例えば、下記の酵素の組み合わせ、即ち、
メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(II-1-a)、
メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(II-1-b)、
メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(II-1-c)、或いは、
メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(II-1-d)であってもよく、
ステップ2)で使用される酵素は、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素である、
方法。
【請求項6】
デンプンを合成する方法(III)であって、
メタノールを原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でジヒドロキシアセトンである化合物Dに転化するステップ1)と、
ステップ1)で得られたジヒドロキシアセトンを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロースに転化するステップ2)と、
任意選択的に、ステップ2)で得られたアミロースを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロペクチンに転化するステップ3)と、を含み、
好ましくは、ステップ1)で使用される酵素は、メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(III-1)であり、
ステップ2)で使用される酵素は、下記の酵素の組み合わせ、即ち、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(III-2-a)、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(III-2-b)、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(III-2-c)、或いは、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(III-2-d)であり、
ステップ3)で使用される酵素は、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素である、
方法。
【請求項7】
デンプンを合成する方法(IV)であって、
ギ酸を原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でジヒドロキシアセトンに転化するステップ[1]と、
ステップ[1]で得られたジヒドロキシアセトンを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロースに転化するステップ[2]と、
任意選択的に、ステップ[2]で得られたアミロースを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロペクチンに転化するステップ[3]と、を含み、
好ましくは、ステップ[1]で使用される酵素は、ワンステップ又はマルチステップの反応によりギ酸からジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素又は酵素の組み合わせであり、例えば、下記の酵素の組み合わせ、即ち、
ギ酸からホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-1-a)、
ギ酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素、ホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-1-b)、或いは、
ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素及びリン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-1-c)であってもよく、
ステップ[2]で使用される酵素は、ワンステップ又はマルチステップの反応によりジヒドロキシアセトンからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素又は酵素の組み合わせであり、例えば、下記の酵素の組み合わせ、即ち、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-2-a)、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-2-b)、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-2-c)、或いは、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-2-d)であってもよく、
ステップ[3]で使用される酵素は、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素である、
方法。
【請求項8】
デンプンを合成する方法(V)であって、
ギ酸を原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化するステップ[1]と、
ステップ[1]で得られたホルムアルデヒドを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でジヒドロキシアセトンに転化するステップ[2]と、
ステップ[2]で得られたジヒドロキシアセトンを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロースに転化するステップ[3]と、
任意選択的に、ステップ[3]で得られたアミロースを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロペクチンに転化するステップ[4]と、を含み、
好ましくは、ステップ[1]で使用される酵素は、ギ酸からホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する単独の酵素、或いは下記の酵素の組み合わせ、即ち、アルデヒドからホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素といった酵素の組み合わせ(V-1-a)、又は、アルデヒドからホルミルリン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、ホルミルリン酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(V-1-b)であり、
ステップ[2]で使用される酵素は、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素であり、
ステップ[3]で使用される酵素は、下記の酵素の組み合わせ、即ち、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(V-3-a)、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(V-3-b)、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(V-3-c)、或いは、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(V-3-d)であり、
ステップ[4]で使用される酵素は、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素である、
方法。
【請求項9】
デンプンを合成する方法(VI)であって、
ギ酸を原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化するステップ[1]と、
ステップ[1]で得られたホルムアルデヒドを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でD-3-リン酸グリセルアルデヒドである化合物Fに転化するステップ[2]と、
ステップ[2]で得られたD-3-リン酸グリセルアルデヒドを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でD-グルコース-6-リン酸である化合物Iに転化するステップ[3]と、
ステップ[3]で得られたD-グルコース-6-リン酸を1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロースに転化するステップ[4]と、
任意選択的に、ステップ[4]で得られたアミロースを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロペクチンに転化するステップ[5]と、を含み、
好ましくは、ステップ[1]で使用される酵素は、ギ酸からホルミルリン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、ホルミルリン酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(VI-1)であり、
ステップ[2]で使用される酵素は、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素及びリン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(VI-2)であり、
ステップ[3]で使用される酵素は、下記の酵素の組み合わせ、即ち、
D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びD-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(VI-3-a)、或いは、
D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びD-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(VI-3-b)であり、
ステップ[4]で使用される酵素は、下記の酵素の組み合わせ、即ち、
D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(VI-4-a)、或いは、
D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(VI-4-b)であり、
ステップ[5]で使用される酵素は、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素である、
方法。
【請求項10】
各方法の各ステップ、サブステップ又は具体的な反応は複数のステップで行われてもよく、或いは、任意の隣接する2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又はそれ以上のステップ、サブステップ又は具体的な反応は同時に行われてもよく、或いは、全てのステップ又は具体的な反応は同時に行われてもよい、
請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
ジヒドロキシアセトンの合成方法であって、メタノールを原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でジヒドロキシアセトンに転化するステップを含み、
前記ステップは、
メタノールを原料とし、メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたホルムアルデヒドを、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でジヒドロキシアセトンに転化するステップ(2)と、を含み、
好ましくは、ステップ(1)において、メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する前記酵素は、アルコールオキシダーゼ(AOX)又はその突然変異体、コレステロールオキシダーゼ又はその突然変異体、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)又はその突然変異体、メタノールデヒドロゲナーゼ又はその突然変異体、L-スレオニン-3-デヒドロゲナーゼ又はその突然変異体、シクロヘキサノールデヒドロゲナーゼ又はその突然変異体、n-ブタノールデヒドロゲナーゼ又はその突然変異体を含むが、これらに限定されず、
ステップ(2)において、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する前記酵素は、ホルムアルデヒドリアーゼ(FLS)又はその突然変異体(FLS-M)、グリコアルデヒドシンターゼ(GALS)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されず、
そのうち、ステップ(1)と(2)は同時に行われてもよく、複数のステップで行われてもよく、ステップ(1)と(2)が同時に行われる時、反応系は、プライマーであるメタノール、メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する前記酵素及びホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する前記酵素を含み、任意選択的に、カタラーゼなどの補助酵素を更に含んでもよい、
方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2020年8月24日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202010858974.9で、発明名称が「デンプンの生合成方法」である先行出願の優先権を主張する。当該出願の全文は、引用により本願に組み込まれている。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、生合成技術の分野に属し、具体的には、デンプン(アミロースとアミロペクチンを含む)の生合成方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
世界中の食糧生産は、38%の土地及び70%の淡水資源を消費する必要があり、世界人口の増加に伴い、世界中の食糧需要は2050年までに50~70%増加すると予測されている。現在の農業栽培方法は、益々高まっている食糧需要を満たすのは困難である。デンプンは、人体が毎日必要とするエネルギーの約半分を提供する重要な食物原料である。それに加え、デンプンは、化学品を生物学的に製造と生産する重要な原料でもあり、例えば、アミノ酸、有機酸、バイオエタノールなどの生産に使用可能である。
【0004】
農業栽培は、現在、デンプンを生産する唯一の方法である。農作物におけるデンプンの天然合成経路には、20以上の化学反応、中間代謝産物及び複数のオルガネラに関わるカルビンサイクルが含まれている。デンプンの合成は実現されたと報告されているが、グルコース1-リン酸、アデノシン・ジフォスフェイト・グルコース、スクロース及びデキストリンなどのその原料は、依然として農業栽培によって得られるため、これらの報告された方法は、農業栽培に代わりにデンプンのを生産する能力がない。農業栽培に代わりにデンプンを生産する方法の開発は非常に重要である。
【0005】
宇宙を旅して宇宙を探索することは常に人類の夢であるが、宇宙の条件下で食料をどのように提供するかは常に大きなチャレンジである。宇宙大国は、植物栽培に基づいた食物供給方法の開発に取り組んでいるが、農作物によるデンプンの生成方法によって制限されるため、1人あたりのデンプンの需要を満たすには数十から数百立方メートルのスペースが必要である。新しいデンプン合成経路の開発は、宇宙条件下での食物供給の実現に役立つ。
【0006】
代謝工学と合成生物学の発展により、アルテミシニン、オピオイド、リコピン、牛乳、肉類などの多くの医薬品や農産物の工業的発酵による生産が可能になるが、デンプンの工業的合成は未だに実現されていない。
【0007】
二酸化炭素は、主要な温室ガスであると同時に、重要な炭素原料でもある。中国は毎年、約100億トンの二酸化炭素を排出しており、これを転化して重要な工業原料として利用することができる。中国国内と海外では、光、電気、水素エネルギーを使用して二酸化炭素をギ酸、メタノールなどの簡単な化合物に還元できる効率的な化学触媒が開発されているが、化学触媒は、デンプンなどの複雑な化合物を更に合成することができない。
【0008】
従って、従来技術には、一方では一炭素化合物を科学的に利用して二酸化炭素の排出を削減するニーズ、他方ではデンプンの生物学的工業合成を実現するニーズが存在する。現在、この2つのニーズを同時に満たすことができる技術と方法はない。
【0009】
〔発明の概要〕
本発明は、様々な化学反応の組み合わせにより一炭素化合物からアミロース及び/又はアミロペクチンへの合成を実現する新しいデンプン合成経路を提供する。
【0010】
本発明は、ジヒドロキシアセトンである化合物Dを原料とし、複数の酵素の触媒作用下でデンプンに転化するステップを含む、デンプンを合成する方法(I)を提供する。
【0011】
具体的には、
ジヒドロキシアセトンである化合物Dを原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下で、D-3-リン酸グリセルアルデヒドである化合物Fに転化するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた化合物Fを1つ又は複数の酵素の触媒作用下で、D-グルコース-6-リン酸である化合物Iに転化するステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた化合物Iを1つ又は複数の酵素の触媒作用下で、デンプンに転化するステップ(3)と、を含む。
【0012】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(1)で使用される酵素は、ワンステップ又はマルチステップ反応によりジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する酵素又は酵素の組み合わせである。例えば、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素及びリン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせであってもよい。
【0013】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(2)で使用される酵素は、ワンステップ又はマルチステップ反応によりD-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する酵素又は酵素の組み合わせである。例えば、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びD-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-2-a)、或いは、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びD-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-2-b)であってもよい。
【0014】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(3)で使用される酵素は、ワンステップ又はマルチステップ反応によりD-グルコース-6-リン酸からアミロース又はアミロペクチンへの転化を触媒する酵素又は酵素の組み合わせである。例えば、
D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-3-a)、或いは、
D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-3-b)であってもよく、
任意選択的に、組み合わせ(I-3-a)又は組み合わせ(I-3-b)には、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素が更に含まれる。
【0015】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(1)は、
化合物Dを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でリン酸ジヒドロキシアセトンである化合物Eに転化する(当該反応は反応9と表される)ステップ(1-1)といったサブステップと、
ステップ(1-1)で得られた化合物Eを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でD-3-リン酸グリセルアルデヒドである化合物Fに転化する(当該反応は反応10と表される)ステップ(1-2)といったサブステップと、を含む。
【0016】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(1-1)で使用される酵素は、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素である。
【0017】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(1-2)で使用される酵素は、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素である。
【0018】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(2)は、
化合物Fを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でD-フルクトース-6-リン酸である化合物Hに転化するステップ(2-1)といったサブステップと、
ステップ(2-1)で得られた化合物Hを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でD-グルコース-6-リン酸である化合物Iに転化する(当該反応は反応15と表される)ステップ(2-2)といったサブステップと、を含む。
【0019】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(2-1)で使用される酵素は、ワンステップ又はマルチステップ反応によりD-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する酵素又は酵素の組み合わせである。例えば、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する単独の酵素であってもよく、或いは、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びD-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-2-1)であってもよい。
【0020】
具体的には、ステップ(2-1)は、化合物Fを、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下で化合物Hに転化する(当該反応は反応13又は14と表される)ように行われてもよい。そのうち、反応13と反応14は、異なる酵素の触媒作用下で行われ、例えば,6-リン酸フルクトースアルドラーゼ(FSA)又はトランスアルドラーゼによってD-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する反応は反応13と表され、6-リン酸フルクトースアルドラーゼホスファターゼ(FBAP)によってD-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する反応は反応14と表されてもよい。
【0021】
或いは、ステップ(2-1)は、まず、化合物Fを、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でD-フルクトース-1,6-二リン酸である化合物Gに転化し(当該反応は反応11と表される)、その後、化合物Gを、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でD-フルクトース-6-リン酸に転化する(当該反応は反応12と表される)ように行われてもよい。
【0022】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(2-2)で使用される酵素は、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素である。
【0023】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(3)は、
化合物Iを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でα-D-グルコース-1-リン酸である化合物Jに転化する(当該反応は反応16と表される)ステップ(3-1)といったサブステップと、
ステップ(3-1)で得られた化合物Jを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロースである化合物1に転化するステップ(3-2)といったサブステップと、
任意選択的に、ステップ(3-2)で得られた化合物1を1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロペクチンである化合物2に転化する(当該反応は反応20と表される)ステップ(3-3)といったサブステップと、を含む。
【0024】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(3-1)で使用される酵素は、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素である。
【0025】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(3-2)で使用される酵素は、α-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素である。例えば、α-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する単独の酵素であってもよく、或いは、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-3-2)であってもよい。
【0026】
具体的には、ステップ(3-2)は、化合物Jを、α-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でアミロースである化合物1に転化する(当該反応は反応19と表される)ように行われてもよい。或いは、ステップ(3-2)は、まず、化合物Jを、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でアデノシン二リン酸-α-D-グルコースである化合物Kに転化し(当該反応は反応17と表される)、その後、得られた化合物Kを、アデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でアミロースに転化する(当該反応は反応18と表される)ように行われてもよい。
【0027】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(3-3)で使用される酵素は、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素である。
【0028】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、本発明の方法は、ステップ(1)の前に、ホルムアルデヒドを原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でジヒドロキシアセトンである化合物Dに転化する(当該反応は反応8と表される)ステップ(0)を更に含む。
【0029】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(0)で使用される酵素は、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素である。
【0030】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、本発明の方法は、ステップ(0)の前に、メタノール又はギ酸を原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化するステップ(a)を更に含む。
【0031】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(a)において、メタノールを原料としてホルムアルデヒドを合成する時、使用される酵素は、メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素である。
【0032】
本発明の方法(I)の実施形態によれば、ステップ(a)において、ギ酸を原料としてホルムアルデヒドを合成する時、使用される酵素は、ギ酸からホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素である。例えば、ギ酸からホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する単独の酵素であってもよく、或いは、ギ酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素といった酵素の組み合わせ(I-a-1)、又は、ギ酸からホルミルリン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、ホルミルリン酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(I-a-2)であってもよい。
【0033】
具体的には、ステップ(a)において、メタノールを原料としてホルムアルデヒドを合成する時、当該反応はアルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼの触媒作用下で行われてもよい。そのうち、アルコールデヒドロゲナーゼの触媒作用下で行われる反応は反応1と表され、アルコールオキシダーゼの触媒作用下で行われる反応は反応2と表される。
【0034】
具体的には、ステップ(a)において、ギ酸を原料としてホルムアルデヒドを合成する時、
ギ酸を原料とし、ギ酸からホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化する(当該反応は反応3と表される)ステップ(a1)、
まず、ギ酸を原料とし、ギ酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルミル補酵素Aに転化し(当該反応は反応4と表される)、その後、ホルミル補酵素Aを、ホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化する(当該反応は反応7と表される)ステップ(a2)、或いは、
まず、ギ酸を原料とし、ギ酸からホルミルリン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルミルリン酸に転化し(当該反応は反応5と表される)、その後、ホルミルリン酸を、ホルミルリン酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルミル補酵素Aに転化し(当該反応は反応6と表される)、続いて、ホルミル補酵素Aを、ホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化する(当該反応は反応7と表される)ステップ(a3)の何れか1つに従って行われてもよい。
【0035】
本発明は、
メタノールを原料とし、複数の酵素の触媒作用下でアミロースに転化するステップ1)と、任意選択的に、ステップ1)で得られたアミロースを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロペクチンに転化するステップ2)と、を含む、デンプンを合成する方法(II)を更に提供する。
【0036】
本発明の方法(II)の実施形態によれば、ステップ1)で使用される酵素は、マルチステップ反応によりメタノールからのデンプンの合成を触媒する酵素の組み合わせである。例えば、
メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(II-1-a)、
メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(II-1-b)、
メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(II-1-c)、或いは、
メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(II-1-d)であってもよい。
【0037】
具体的には、ステップ1)は、上記の反応2、8、9、10、13、15、16、17及び18の組み合わせ、反応2、8、9、10、14、15、16、17及び18の組み合わせ、反応2、8、9、10、11、12、15、16、17及び18の組み合わせ、反応2、8、9、10、13、15、16及び19の組み合わせ、反応2、8、9、10、14、15、16及び19の組み合わせ、又は反応2、8、9、10、11、12、15、16及び19の組み合わせにより行われてもよい。
【0038】
本発明の方法(II)の実施形態によれば、ステップ2)で使用される酵素は、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素である。
【0039】
具体的には、ステップ2)は、上記の反応20により行われてもよい。
【0040】
本発明は、
メタノールを原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でジヒドロキシアセトンである化合物Dに転化するステップ1)と、
ステップ1)で得られたジヒドロキシアセトンを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロースに転化するステップ2)と、
任意選択的に、ステップ2)で得られたアミロースを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロペクチンに転化するステップ3)と、を含む、デンプンを合成する方法(III)を更に提供する。
【0041】
本発明の方法(III)の実施形態によれば、ステップ1)で使用される酵素は、メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(III-1)である。
【0042】
具体的には、ステップ1)は、上記の反応1と8の組み合わせ又は反応2と8の組み合わせにより行われてもよい。
【0043】
本発明の方法(III)の実施形態によれば、ステップ2)で使用される酵素は、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(III-2-a)、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(III-2-b)、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(III-2-c)、或いは、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(III-2-d)である。
【0044】
具体的には、ステップ2)は、上記の反応9、10、13、15、16、17及び18の組み合わせ、反応9、10、14、15、16、17及び18の組み合わせ、又は反応9、10、11、12、15、16、17及び18の組み合わせ、反応9、10、13、15、16及び19の組み合わせ、反応9、10、14、15、16及び19の組み合わせ、又は反応9、10、11、12、15、16及び19の組み合わせにより行われてもよい。
【0045】
本発明の方法(III)の実施形態によれば、ステップ3)で使用される酵素は、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素である。
【0046】
具体的には、ステップ3)は、上記の反応20により行われてもよい。
【0047】
本発明は、
ギ酸を原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でジヒドロキシアセトンに転化するステップ[1]と、
ステップ[1]で得られたジヒドロキシアセトンを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロースに転化するステップ[2]と、
任意選択的に、ステップ[2]で得られたアミロースを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロペクチンに転化するステップ[3]と、を含む、デンプンを合成する方法(IV)を更に提供する。
【0048】
本発明の方法(IV)の実施形態によれば、ステップ[1]で使用される酵素は、ワンステップ又はマルチステップ反応によりギ酸からジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素又は酵素の組み合わせである。例えば、
ギ酸からホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-1-a)、
ギ酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素、ホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-1-b)、或いは、
ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素及びリン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-1-c)であってもよい。
【0049】
具体的には、ステップ[1]は、上記の反応3と8の組み合わせ、反応4、7及び8の組み合わせ又は反応5、6、7及び8の組み合わせにより行われてもよい。
【0050】
本発明の方法(IV)の実施形態によれば、ステップ[2]で使用される酵素は、ワンステップ又はマルチステップ反応によりジヒドロキシアセトンからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素又は酵素の組み合わせである。例えば、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-2-a)、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-2-b)、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-2-c)、或いは、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(IV-2-d)であってもよい。
【0051】
具体的には、ステップ[2]は、上記の反応9、10、13、15、16及び19の組み合わせ、反応9、10、14、15、16及び19の組み合わせ、反応9、10、13、15、16、17及び18の組み合わせ、反応9、10、14、15、16、17及び18の組み合わせ、反応9、10、11、12、15、16及び19の組み合わせ又は反応9、10、11、12、15、16、17及び18の組み合わせにより行われてもよい。
【0052】
本発明の方法(IV)の実施形態によれば、ステップ[3]で使用される酵素は、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素である。
【0053】
具体的には、ステップ[3]は、上記の反応20により行われてもよい。
【0054】
本発明は、
ギ酸を原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化するステップ[1]と、
ステップ[1]で得られたホルムアルデヒドを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でジヒドロキシアセトンに転化するステップ[2]と、
ステップ[2]で得られたジヒドロキシアセトンを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロースに転化するステップ[3]と、
任意選択的に、ステップ[3]で得られたアミロースを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロペクチンに転化するステップ[4]と、を含む、デンプンを合成する方法(V)を更に提供する。
【0055】
本発明の方法(V)の実施形態によれば、ステップ[1]で使用される酵素は、ギ酸からホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する単独の酵素、或いは下記の酵素の組み合わせ、即ち、アルデヒドからホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素といった酵素の組み合わせ(V-1-a)、又は、アルデヒドからホルミルリン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、ホルミルリン酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(V-1-b)である。
【0056】
具体的には、ステップ[1]は、上記の反応3、反応4と7の組み合わせ又は反応5、6及び7の組み合わせにより行われてもよい。
【0057】
本発明の方法(V)の実施形態によれば、ステップ[2]で使用される酵素は、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素である。
【0058】
具体的には、ステップ[2]は、上記の反応8により行われてもよい。
【0059】
本発明の方法(V)の実施形態によれば、ステップ[3]で使用される酵素は、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(V-3-a)、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(V-3-b)、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(V-3-c)、或いは、
ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素、D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(V-3-d)である。
【0060】
具体的には、ステップ[3]は、上記の反応9、10、13、15、16及び19の組み合わせ、反応9、10、14、15、16及び19の組み合わせ、反応9、10、13、15、16、17及び18の組み合わせ、反応9、10、14、15、16、17及び18の組み合わせ、反応9、10、11、12、15、16及び19の組み合わせ又は反応9、10、11、12、15、16、17及び18の組み合わせにより行われてもよい。
【0061】
本発明の方法(V)の実施形態によれば、ステップ[4]で使用される酵素は、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素である。
【0062】
具体的には、ステップ[4]は、上記の反応20により行われてもよい。
【0063】
本発明は、
ギ酸を原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化するステップ[1]と、
ステップ[1]で得られたホルムアルデヒドを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でD-3-リン酸グリセルアルデヒドである化合物Fに転化するステップ[2]と、
ステップ[2]で得られたD-3-リン酸グリセルアルデヒドを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でD-グルコース-6-リン酸である化合物Iに転化するステップ[3]と、
ステップ[3]で得られたD-グルコース-6-リン酸を1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロースに転化するステップ[4]と、
任意選択的に、ステップ[4]で得られたアミロースを1つ又は複数の酵素の触媒作用下でアミロペクチンに転化するステップ[5]と、を含む、デンプンを合成する方法(VI)を更に提供する。
【0064】
本発明の方法(VI)の実施形態によれば、ステップ[1]で使用される酵素は、ギ酸からホルミルリン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、ホルミルリン酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(VI-1)である。
【0065】
具体的には、ステップ[1]は、上記の反応3、反応4と7の組み合わせ又は反応5、6及び7の組み合わせにより行われてもよい。
【0066】
本発明の方法(VI)の実施形態によれば、ステップ[2]で使用される酵素は、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素及びリン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(VI-2)である。
【0067】
具体的には、ステップ[2]は、上記の反応8、9及び10の組み合わせにより行われてもよい。
【0068】
本発明の方法(VI)の実施形態によれば、ステップ[3]で使用される酵素は、
D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びD-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(VI-3-a)、或いは、
D-3-リン酸グリセルアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びD-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(VI-3-b)である。
【0069】
具体的には、ステップ[3]は、上記の反応11、12及び15の組み合わせにより行われてもよく、或いは、ステップ[3]は、上記の反応13と15の組み合わせ又は反応14と15の組み合わせにより行われてもよい。
【0070】
本発明の方法(VI)の実施形態によれば、ステップ[4]で使用される酵素は、
D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素及びアデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(VI-4-a)、或いは、
D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素及びα-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素の組み合わせといった酵素の組み合わせ(VI-4-b)である。
【0071】
具体的には、ステップ[4]は、上記の反応16、17及び18の組み合わせにより行われてもよく、或いは、ステップ[4]は、上記の反応16及び19の組み合わせにより行われてもよい。
【0072】
本発明の方法(VI)の実施形態によれば、ステップ[5]で使用される酵素は、アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素である。
【0073】
具体的には、ステップ[5]は、上記の反応20により行われてもよい。
【0074】
本発明は、メタノールを原料とし、1つ又は複数の酵素の触媒作用下でジヒドロキシアセトンに転化するステップを含む、ジヒドロキシアセトンの合成方法を更に提供する。
【0075】
本発明の実施形態によれば、上記ジヒドロキシアセトンの合成方法は、
メタノールを原料とし、メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でホルムアルデヒドに転化するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたホルムアルデヒドを、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素の触媒作用下でジヒドロキシアセトンに転化するステップ(2)と、を含む。
【0076】
本発明の実施形態によれば、ステップ(1)において、メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する上記酵素は、アルコールオキシダーゼ(AOX)又はその突然変異体、コレステロールオキシダーゼ又はその突然変異体、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)又はその突然変異体、メタノールデヒドロゲナーゼ又はその突然変異体、L-スレオニン-3-デヒドロゲナーゼ又はその突然変異体、シクロヘキサノールデヒドロゲナーゼ又はその突然変異体、n-ブタノールデヒドロゲナーゼ又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。
【0077】
ステップ(2)において、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する上記酵素は、ホルムアルデヒドリアーゼ(FLS)又はその突然変異体(FLS-M)、グリコアルデヒドシンターゼ(GALS)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。
【0078】
本発明の実施形態によれば、ステップ(1)と(2)は同時に行われてもよく、複数のステップで行われてもよい。
【0079】
本発明の実施形態によれば、ステップ(1)と(2)は同時に行われ、例えば、反応系は、プライマーであるメタノール、メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素及びホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素を含む。例えば、反応系には、プライマーであるメタノール、アルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼ、及びホルムアルデヒドリアーゼが含まれる。また、反応系には、任意選択的に、カタラーゼなどの補助酵素が更に含まれてもよい。
【0080】
本発明の実施形態によれば、上記反応系は、NaCl、Mg2+、Zn2+などを更に含む。
【0081】
本発明の実施形態によれば、上記反応系のpHは、6.5~8.5、例えば7~8であり、例えばHepes緩衝液で上記pH環境を提供する。
【0082】
本発明によれば、本発明の各方法の各ステップ、サブステップ及び具体的な反応(例えば反応1、反応2など、反応の番号は上記の発明内容の部分又は
図1を参照できる)は、複数のステップで行われてもよく、或いは、任意の隣接する2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又はそれ以上のステップ、サブステップ又は具体的な反応は同時に行われてもよく、或いは、全てのステップ又は具体的な反応は同時に行われてもよい。上記の「隣接する」ステップ、サブステップ又は具体的な反応は、前のステップ、サブステップ又は具体的な反応の生成物が次のステップ、サブステップ又は具体的な反応の反応物として使用できる場合、この2つのステップ、サブステップ又は具体的な反応が「隣接する」と呼ばれることを意味する。上記の「複数のステップで行われる」とは、前の反応が終了後、生成物の精製が行われるか行われず、次の反応を触媒する酵素又は必要な成分を投入して次の反応が行われることを意味する。上記の「同時に行われる」とは、反応が開始する時、関連する各反応を触媒する酵素をプライマーと共にリアクターに投入して反応が行われることを意味する。例えば、以下に「-」でつながれた各反応は、同時に行われることを示す:反応2-8、反応4-7、反応5-6-7、反応5-6-7-8、反応8-9-10、反応11-12-15、反応13-15、反応14-15、反応16-17-18、反応16-19、反応9-10-11-12-15-16-17-18、反応9-10-13-15-16-17-18、反応9-10-14-15-16-17-18、反応9-10-13-15-16-19、反応9-10-11-12-15-16-17-18-20、反応2-8-9-10-11-12-15-16-17-18。例えば、「反応2-8」は反応2と反応8が同時に行われることを示し、「反応4-7」は反応4と反応7が同時に行われることを示し、これにより類推する。
【0083】
本発明の文脈において、「反応AとB...の組み合わせ」は、組み合わせた各反応により反応物から生成物への転化を実現することを意味し、組み合わせにおける各反応は複数のステップで行われてもよく、同時に行われてもよい。例えば、「反応4と7の組み合わせ」は、反応4と反応7によりギ酸からホルムアルデヒドへの転化を実現することを意味し、そのうち、反応4と反応7は複数のステップで行われてもよく、同時に行われてもよい。「反応9、10、11、12、15、16及び19の組み合わせ」は、反応9、反応10、反応11、反応12、反応15、反応16及び反応19によりジヒドロキシアセトンからアミロースへの転化を実現することを意味し、そのうち、反応9、反応10、反応11、反応12、反応15、反応16及び反応19における隣接する2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又は7つの反応は複数のステップで行われてもよく、同時に行われてもよい。これにより類推する。
【0084】
本発明によれば、各方法において同一のステップ又はサブステップにおける原料と生成物がいずれも同じな異なる反応の間は、相互置換可能である。
【0085】
本発明によれば、各方法において異なるステップ又はサブステップにおける各反応の間は、次の反応が前の反応の生成物を原料とし、且つそれらの組み合わせがデンプンである最終生成物の合成を実現することができれば、任意に組み合わせられてもよい。
【0086】
例えば、化合物1(即ちアミロース)は、ジヒドロキシアセトンを原料とし、反応9、10、11、12、15、16、17及び18の組み合わせ、反応9、10、13、15、16、17及び18の組み合わせ、反応9、10、14、15、16、17及び18の組み合わせ、反応9、10、11、12、15、16及び19の組み合わせ、反応9、10、13、15、16及び19の組み合わせ、反応9、10、14、15、16及び19の組み合わせといった反応の組み合わせにより実現することができる(反応番号は
図1を参照する)。
【0087】
化合物2(即ちアミロペクチン)は、ジヒドロキシアセトンを原料とし、反応9、10、11、12、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応9、10、13、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応9、10、14、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応9、10、11、12、15、16、19及び20の組み合わせ、反応9、10、13、15、16、19及び20の組み合わせ、反応9、10、14、15、16、19及び20の組み合わせといった反応の組み合わせにより実現することができる(反応番号は
図1を参照する)。
【0088】
化合物1(即ちアミロース)は、ホルムアルデヒドを原料とし、反応8、9、10、11、12、15、16、17及び18の組み合わせ、反応8、9、10、13、15、16、17及び18の組み合わせ、反応8、9、10、14、15、16、17及び18の組み合わせ、反応8、9、10、11、12、15、16及び19の組み合わせ、反応8、9、10、13、15、16及び19の組み合わせ、反応8、9、10、14、15、16及び19の組み合わせといった反応の組み合わせにより実現することができる(反応番号は
図1を参照する)。
【0089】
化合物2(即ちアミロペクチン)は、ホルムアルデヒドを原料とし、反応8、9、10、11、12、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応8、9、10、13、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応8、9、10、14、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応8、9、10、11、12、15、16、19及び20の組み合わせ、反応8、9、10、13、15、16、19及び20の組み合わせ、反応8、9、10、14、15、16、19及び20の組み合わせといった反応の組み合わせにより実現することができる(反応番号は
図1を参照する)。
【0090】
化合物1(即ちアミロース)は、メタノール、ギ酸を原料とし、反応1、8、9、10、11、12、15、16、17及び18の組み合わせ、反応2、8、9、10、11、12、15、16、17及び18の組み合わせ、反応3、8、9、10、11、12、15、16、17及び18の組み合わせ、反応4、7、8、9、10、11、12、15、16、17及び18の組み合わせ、反応5、6、7、8、9、10、11、12、15、16、17及び18の組み合わせ、反応1、8、9、10、13、15、16、17及び18の組み合わせ、反応2、8、9、10、13、15、16、17及び18の組み合わせ、反応3、8、9、10、13、15、16、17及び18の組み合わせ、反応4、7、8、9、10、13、15、16、17及び18の組み合わせ、反応5、6、7、8、9、10、13、15、16、17及び18の組み合わせ、反応1、8、9、10、14、15、16、17及び18の組み合わせ、反応2、8、9、10、14、15、16、17及び18の組み合わせ、反応3、8、9、10、14、15、16、17及び18の組み合わせ、反応4、7、8、9、10、14、15、16、17及び18の組み合わせ、反応5、6、7、8、9、10、14、15、16、17及び18の組み合わせ、反応1、8、9、10、11、12、15、16及び19の組み合わせ、反応2、8、9、10、11、12、15、16及び19の組み合わせ、反応3、8、9、10、11、12、15、16及び19の組み合わせ、反応4、7、8、9、10、11、12、15、16及び19の組み合わせ、反応5、6、7、8、9、10、11、12、15、16及び19の組み合わせ、反応1、8、9、10、13、15、16及び19の組み合わせ、反応2、8、9、10、13、15、16及び19の組み合わせ、反応3、8、9、10、13、15、16及び19の組み合わせ、反応4、7、8、9、10、13、15、16及び19の組み合わせ、反応5、6、7、8、9、10、13、15、16及び19の組み合わせ、反応1、8、9、10、14、15、16及び19の組み合わせ、反応2、8、9、10、14、15、16及び19の組み合わせ、反応3、8、9、10、14、15、16及び19の組み合わせ、反応4、7、8、9、10、14、15、16及び19の組み合わせ、及び反応5、6、7、8、9、10、14、15、16及び19の組み合わせといった反応の組み合わせにより実現することができる(反応番号は
図1を参照する)。
【0091】
化合物2(即ちアミロペクチン)は、メタノール、ギ酸を原料とし、反応1、8、9、10、11、12、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応2、8、9、10、11、12、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応3、8、9、10、11、12、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応4、7、8、9、10、11、12、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応5、6、7、8、9、10、11、12、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応1、8、9、10、13、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応2、8、9、10、13、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応3、8、9、10、13、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応4、7、8、9、10、13、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応5、6、7、8、9、10、13、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応1、8、9、10、14、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応2、8、9、10、14、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応3、8、9、10、14、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応4、7、8、9、10、14、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応5、6、7、8、9、10、14、15、16、17、18及び20の組み合わせ、反応1、8、9、10、11、12、15、16、19及び20の組み合わせ、反応2、8、9、10、11、12、15、16、19及び20の組み合わせ、反応3、8、9、10、11、12、15、16、19及び20の組み合わせ、反応4、7、8、9、10、11、12、15、16、19及び20の組み合わせ、反応5、6、7、8、9、10、11、12、15、16、19及び20の組み合わせ、反応1、8、9、10、13、15、16、19及び20の組み合わせ、反応2、8、9、10、13、15、16、19及び20の組み合わせ、反応3、8、9、10、13、15、16、19及び20の組み合わせ、反応4、7、8、9、10、13、15、16、19及び20の組み合わせ、反応5、6、7、8、9、10、13、15、16、19及び20の組み合わせ、反応1、8、9、10、14、15、16、19及び20の組み合わせ、反応2、8、9、10、14、15、16、19及び20の組み合わせ、反応3、8、9、10、14、15、16、19及び20の組み合わせ、反応4、7、8、9、10、14、15、16、19及び20の組み合わせ、及び反応5、6、7、8、9、10、14、15、16、19及び20の組み合わせといった反応の組み合わせにより実現することができる(反応番号は
図1を参照する)。
【0092】
本願の文脈で使用される酵素は、「A物質からB物質への転化を触媒する機能を有する酵素」と記述する時、上記酵素がA物質からB物質に転化する反応を触媒することを意味し、上記反応はワンステップ反応であってもよく、マルチステップ反応であってもよく、上記酵素はA物質からのB物質の生成における何れか1つの反応に必要な酵素であってもよく、そのため、上記酵素は、ワンステップ反応を触媒する単一の酵素であってもよく、マルチステップ反応におけるワンステップ又は複数のステップを触媒する酵素の組み合わせであってもよい。上記触媒機能を有する酵素のアミノ酸配列と由来は、上記触媒機能を実現できれば、特に制限されない。具体的には、「メタノールからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素」は、メタノールからホルムアルデヒドに転化する反応を触媒できる酵素を指し、アルコールオキシダーゼ(AOX、EC 1.1.3.13)又はその突然変異体、コレステロールオキシダーゼ(EC 1.1.3.6)又はその突然変異体、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH、EC 1.1.1.1、EC 1.1.1.2、EC 1.1.1.71、EC 1.1.2.8)又はその突然変異体、メタノールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.244、EC 1.1.2.7、EC 1.1.2.B2)又はその突然変異体、L-スレオニン-3-デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.103)又はその突然変異体、シクロヘキサノールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.245又はその突然変異体)、n-ブタノールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.2.9)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、ピキア、カンジダ、ストレプトマイセス、コリネバクテリウム・グルタミクム、大腸菌、ロドコッカス、タウレラなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「ギ酸からホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素」は、ギ酸からホルムアルデヒドに転化する反応を触媒できる酵素を指し、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ADH、EC 1.2.1.3、EC 1.2.1.4、EC 1.2.1.5)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、バークホルデリア、シュードモナス、酢酸菌、酵母などの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「ギ酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素」は、ギ酸からホルミル補酵素Aに転化する反応を触媒できる酵素を指し、アセチル-補酵素A合成酵素(ACS、EC 6.2.1.1)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、サルモネラ、シュードモナス、ムーレラ、ピュロバクルムなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「ホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素」は、ホルミル補酵素Aからホルムアルデヒドに転化する反応を触媒できる酵素を指し、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ACDH、EC 1.2.1.10)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、リステリア、シュードモナス、アシネトバクター、ジアルジアなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「ギ酸からホルミルリン酸への転化を触媒する機能を有する酵素」は、ギ酸からホルミルリン酸に転化する反応を触媒できる酵素を指し、酢酸キナーゼ(ACKA、EC 2.7.2.1)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、サルモネラ、クロストリジウム、メタノサルシナなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「ホルミルリン酸からホルミル補酵素Aへの転化を触媒する機能を有する酵素」は、ホルミルリン酸からホルミル補酵素Aに転化する反応を触媒できる酵素を指し、リン酸アセチルトランスフェラーゼ(PTA、EC 2.3.1.8)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、クロストリジウム、テルモトガ門、メタノサルシナなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素」は、ホルムアルデヒドからジヒドロキシアセトンに転化する反応を触媒できる酵素を指し、ホルムアルデヒドリアーゼ(FLS)又はその突然変異体(FLS-M)、グリコホルムアルデヒドシンターゼ(GALS)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。「ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンへの転化を触媒する機能を有する酵素」は、ジヒドロキシアセトンからリン酸ジヒドロキシアセトンに転化する反応を触媒できる酵素を指し、トリトキナーゼ(EC 2.7.1.28)又はその突然変異体、ヒドロキシアセトンキナーゼ(DAK、EC 2.7.1.29)又はその突然変異体、グリセロールキナーゼ(EC 2.7.1.30)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、クロストリジウム、サッカロミセス・セレビシエ、ピキア、シトロバクター、バチルス・サーモフィルス、ヒトなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルホルムアルデヒドへの転化を触媒する機能を有する酵素」は、リン酸ジヒドロキシアセトンからD-3-リン酸グリセルホルムアルデヒドに転化する反応を触媒できる酵素を指し、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI、EC 5.3.1.1)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、酵母、黄色ブドウ球菌、結核菌、シロイヌナズナ、ヒトなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。
【0093】
「D-3-リン酸グリセルホルムアルデヒドからD-フルクトース-1,6-二リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素」は、D-3-リン酸グリセルホルムアルデヒドとリン酸ジヒドロキシアセトンからD-フルクトース-1,6-二リン酸に転化する反応を触媒できる酵素を指し、フルクトース-二リン酸アルドラーゼ(FBA、EC 4.1.2.13)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、酵母、バチルス、藻類、クロストリジウム、ヒトなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素」は、D-フルクトース-1,6-二リン酸からD-フルクトース-6-リン酸に転化する反応を触媒できる酵素を指し、フルクトース-ビスホスファターゼ(FBP、EC 3.1.3.11)又はその突然変異体(FBP-M)、イノシトールホスファターゼ(EC 3.1.3.25)又はその突然変異体、N-アシルノイラミミン(糖)-酸-9-ホスファターゼ(EC 3.1.3.29)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミクム、酵母、バチルス、藻類、クロストリジウム、ヒトなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「D-3-リン酸グリセルホルムアルデヒドからD-フルクトース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素」は、D-3-リン酸グリセルホルムアルデヒドとジヒドロキシアセトン又はリン酸ジヒドロキシアセトンからD-フルクトース-6-リン酸に転化する反応を触媒できる酵素を指し、6-リン酸フルクトースアルドラーゼ(FSA)又はその突然変異体、トランスアルドラーゼ(EC 2.2.1.2)又はその突然変異体、6-リン酸フルクトースアルドラーゼホスファターゼ(FBAP、EC 4.1.2.13&3.1.3.11)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、酵母、藻類、古細菌、ヒトなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素」は、D-フルクトース-6-リン酸からD-グルコース-6-リン酸に転化する反応を触媒できる酵素を指し、グルコースリン酸イソメラーゼ(PGI、EC 5.3.1.9)又はその突然変異体、ホスホマンノースイソメラーゼ(EC 5.3.1.8)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、酵母、メタン生成菌、結核菌、サルモネラ、根粒菌などの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸への転化を触媒する機能を有する酵素」は、D-グルコース-6-リン酸からα-D-グルコース-1-リン酸に転化する反応を触媒できる酵素を指し、ヘキソースリン酸ホスホムターゼ(PGM、EC 5.4.2.2)又はその突然変異体、ホスホアセチルグルコサミンムターゼ(EC 5.4.2.3)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、ラクトコッカス・ラクティス、酵母、バチルス、シュードモナス、サルモネラ、トウモロコシ、ヒトなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースへの転化を触媒する機能を有する酵素」は、α-D-グルコース-1-リン酸からアデノシン二リン酸-α-D-グルコースに転化する反応を触媒できる酵素を指し、グルコース-1-アデノシンリン酸アシルトランスフェラーゼ(GlgC、EC 2.7.7.27)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、ラクトコッカス・ラクティス、酵母、バチルス、シュードモナス、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、トウモロコシ、ジャガイモなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「アデノシン二リン酸-α-D-グルコースからアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素」は、アデノシン二リン酸-α-D-グルコースからへアミロースに転化する反応を触媒できる酵素を指し、デンプン合成酵素(GlgA、EC 2.4.1.21)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、酵母、バチルス、藻類、トウモロコシ、ジャガイモなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「α-D-グルコース-1-リン酸からアミロースへの転化を触媒する機能を有する酵素」は、α-D-グルコース-1-リン酸からアミロースに転化する反応を触媒できる酵素を指し、単独のデンプンホスホリラーゼ(αGP、EC 2.4.1.1)又はその突然変異体、或いは、グルコース-1-アデノシンリン酸アシルトランスフェラーゼ(GlgC、EC 2.7.7.27)又はその突然変異体及びデンプン合成酵素(GlgA、EC 2.4.1.21)又はその突然変異体の組み合わせを含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、酵母、バチルス、藻類、トウモロコシ、ジャガイモなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。「アミロースからアミロペクチンへの転化を触媒する機能を有する酵素」は、アミロースからアミロペクチンに転化する反応を触媒できる酵素を指し、1,4-α-D-グルカン分枝酵素(GlgB、EC 2.4.1.18)又はその突然変異体を含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、大腸菌、バチルス、ビブリオ、酵母、トウモロコシ、ジャガイモなどの異なる種に由来してもよいが、これらに限定されない。
【0094】
本発明の文脈で使用される酵素又はその突然変異体は、粗酵素溶液、粗酵素溶液の凍結乾燥粉末、純粋な酵素又は全細胞の形態であってもよい。上記粗酵素溶液、粗酵素溶液の凍結乾燥粉末、純粋な酵素又は全細胞は、市販品から入手するか、或いは、文献で知られている方法又は当該分野における従来の方法に従って調製することができる。例えば、上記粗酵素溶液、粗酵素溶液の凍結乾燥粉末及び純粋な酵素はいずれも、宿主細胞において上記酵素又はその突然変異体を発現し、組換え細胞を得るステップと、上記組換え細胞を溶解し、上記粗酵素溶液、粗酵素溶液の凍結乾燥粉末又は純粋な酵素を得るステップと、を含む方法に従って調製して得られる。上記全細胞はいずれも、宿主細胞において上記酵素又はその突然変異体を発現し、上記全細胞である組換え細胞を得るステップを含む方法に従って調製して得られる。
【0095】
有益な効果
本発明の方法は、ジヒドロキシアセトン、ホルムアルデヒド、ギ酸及びメタノールなどの簡単な化合物からのデンプンの人工生合成を実現することができ、二酸化炭素の化学的還元などの現在比較的に成熟した方法とカップリングすることで、二酸化炭素を出発原料としてデンプンの完全人工生合成を実現することもできる。天然デンプンの合成には、合計21~22ステップの反応を必要とするカルビンサイクルが必要であるが、本発明の方法は9~12ステップの反応のみが必要であるため、反応ステップが半分近く減少し、且つ、本発明の方法は、公知の律速酵素Rubiscoを必要とせず、合成速度は更に優位性があり、合成サイクルを大幅に短縮することができる。また、空気中の低濃度の二酸化炭素と低エネルギー密度の太陽エネルギーのみを利用できる農業栽培に比べて、本発明の方法は、高濃度の二酸化炭素と高エネルギー密度の電気エネルギーと水素エネルギーを利用することができるため、工業生産モードに更に適用し、生産サイクルを農業栽培の数か月から数日に短縮することができ、且つ、農地と水の使用量を大幅に削減することが期待され、中国の人口が多く、耕作地が少なく、淡水資源が限られているという問題を解決する上で非常に重要である。更に、これらの特徴によって、本発明の方法は、宇宙船や宇宙ステーションなどの密閉空間でのデンプンの循環供給の実現にも適し、中国の宇宙探索戦略にとって非常に重要である。
【0096】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、メタノール又はギ酸を出発原料としてアミロースである化合物1及びアミロペクチンである化合物2を合成する合成経路を示す。
【0097】
【0098】
【0099】
図4は、メタノールから化合物D(即ちジヒドロキシアセトン)への合成経路の収量を示す。
【0100】
図5は、化合物1(即ちアミロース)から化合物2(アミロペクチン)への経路の反応前後の全波長スキャンスペクトルを示す。
【0101】
図6は、化合物Dから化合物1への様々な経路の収量を示す。
【0102】
図7は、化合物Dから化合物2への様々な経路の収量を示す。
【0103】
図8は、メタノールから化合物1への合成経路の収量を示す。
【0104】
〔発明を実施するための形態〕
以下に具体的な実施例に合わせて、本発明の合成方法を更に詳細に説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明により請求される請求範囲内に含まれる。
【0105】
特に明記しない限り、下記の実施例で使用される原料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって調製することができる。
【0106】
特別な説明がない限り、各実施例にかかる各反応で使用される触媒(酵素)は、下記の表1に示される通りである。
【0107】
【0108】
そのうち、アルコールデヒドロゲナーゼ及びアルコールオキシダーゼはSigma社から購入する(https://www.sigmaaldrich.com/china-mainland.html)。アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アセチル-補酵素A合成酵素、酢酸キナーゼ、リン酸アセチルトランスフェラーゼ、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、無機ピロホスファターゼは、PCR又は遺伝子合成により得られ、簡単なクローニング(Simple Cloning)(You, C., et al. (2012). 「Simple Cloning via Direct Transformation of PCR Product (DNA Multimer)to Escherichia coli and Bacillus subtilis.」 Appl. Environ. Microbiol. 78(5):1593-1595.)の方法によりpET20b、pET21b、pET26b及びpET28aベクター(Novagen、Madison、WI)にそれぞれクローニングされ、相応する発現ベクターpET28a-FADH、pET21b-ACS、pET28a-ACKA、pET28a-PTA、pET21b-ACDH、pET26b-CAT、pET20b-FDH、pET21b-PPaseが得られる。この8つのプラスミドはいずれも、大腸菌発現株BL21(DE3)(Invitrogen、Carlsbad、CA)に転化され、タンパク質の発現及び精製が行われている。
【0109】
ホルムアルデヒドリアーゼ、ヒドロキシアセトンキナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼは、PCR又は遺伝子合成により得られ、簡単なクローニング(You, C., et al. (2012). Appl. Environ. Microbiol. 78(5):1593-1595.)の方法によりpET21a、pET21b及びpET28aベクター(Novagen、Madison、WI)にそれぞれクローニングされ、対応する発現ベクターpET21a-FLS、pET21b-TPI、pET28a-DAKが得られる。この3つのプラスミドはいずれも、大腸菌発現株BL21(DE3)(Invitrogen、Carlsbad、CA)に転化され、タンパク質の発現及び精製が行われている。
【0110】
フルクトース-二リン酸アルドラーゼ、フルクトース-ビスホスファターゼ、6-リン酸フルクトースアルドラーゼ、6-リン酸フルクトースアルドラーゼホスファターゼ、グルコースリン酸イソメラーゼは、PCR又は遺伝子合成により得られ、簡単なクローニング(You, C., et al. (2012). Appl. Environ. Microbiol. 78(5):1593-1595.)の方法によりpET21bベクター(Novagen、Madison、WI)にそれぞれクローニングされ、対応する発現ベクターpET21b-FBA、pET21b-FBP、pET21b-FSA、pET21b-FBAP、pET21b-PGIが得られる。この5つのプラスミドはいずれも、大腸菌発現株BL21(DE3)(Invitrogen、Carlsbad、CA)に転化され、タンパク質の発現及び精製が行われている。
【0111】
ヘキソースリン酸ホスホムターゼ、グルコース-1-アデノシンリン酸アシルトランスフェラーゼ、デンプン合成酵素、デンプンホスホリラーゼは、PCR又は遺伝子合成により得られ、簡単なクローニング(You, C., et al. (2012). Appl. Environ. Microbiol. 78(5):1593-1595.)の方法によりpET20b、pET21bベクター(Novagen、Madison、WI)にそれぞれクローニングされ、対応する発現ベクターpET21b-PGM、pET21b-GlgC、pET21b-GlgA、pET20b-αGPが得られる。この4つのプラスミドはいずれも、大腸菌発現株BL21(DE3)(Invitrogen、Carlsbad、CA)に転化され、タンパク質の発現及び精製が行われている。
【0112】
1,4-α-D-グルカン分枝酵素は、PCR又は遺伝子合成により得られ、簡単なクローニング(You, C., et al. (2012). Appl. Environ. Microbiol. 78(5):1593-1595.)の方法によりpET28aベクター(Novagen、Madison、WI)にそれぞれクローニングされ、対応する発現ベクターpET28a-GlgBが得られる。この1つのプラスミドはいずれも、大腸菌発現株BL21(DE3)(Invitrogen、Carlsbad、CA)に転化され、タンパク質の発現及び精製が行われている。
【0113】
実施例1 ギ酸又はメタノールからのホルムアルデヒドである化合物Cの合成
ギ酸又はメタノールから化合物Cへの転化は、5つの経路によって実現することができ、それぞれは、経路1(メタノールからホルムアルデヒドへ)、経路2(メタノールからホルムアルデヒドへ)、経路3(ギ酸からホルムアルデヒドへ)、経路4-7(ギ酸からホルミル補酵素Aへ、更にホルムアルデヒドへ)、及び経路5-6-7(ギ酸からホルミルリン酸へ、更にホルミル補酵素Aへ、更にホルムアルデヒドへ)である(反応番号は
図1に示される)。まず、各経路の各化学反応を触媒できる触媒(即ち酵素)を選択する(表1に示される)、しかし対応する触媒機能を有する酵素は表1に列挙されたものに限定されない。次に、経路によって様々な触媒を組み合わせ、対応する反応系を確立し、一定の時間反応させた後、ホルムアルデヒドの収量を検出した。
【0114】
化合物Cの収量は下記の方法によって検出された。200 μLの水に適切に希釈された50 μLの測定待ちの溶液を加え、25 μLのアセチルアセトン溶液(100 mLのアセチルアセトン溶液には0.5 mLのアセチルアセトン、50 gの酢酸アンモニウム及び6 mLの氷酢酸が含まれる)を更に加え、60℃で15 min反応させた後、遠心分離により200 μLの上清液を取ってOD414値を検出し、ホルムアルデヒド標準曲線により化合物Cの含有量を計算した。
【0115】
経路1:反応系は100 mMのpH8.5のTris緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、3.5 mg/mLのADH、100 mMのNAD+、1 Mのメタノールであり、3時間反応させ、ホルムアルデヒドの収量は0.27 mMであった。
【0116】
経路2:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、1 U/mLのAOX、300 U/mLのCAT(AOXにより生成された過酸化水素の除去に用いられる補助酵素)、20 mMのメタノールであり、0.5時間反応させ、ホルムアルデヒドの収量は12 mMであった。
【0117】
経路3:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、4 mg/mLのFADH、100 mMのNADH、250 mMのギ酸ナトリウムであり、3時間反応させ、ホルムアルデヒドの収量は0.1 mMであった。
【0118】
経路4-7:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、2 mMのATP、1.5 mMのNADH、0.1 mMのCoA、3.7 mg/mLのACS、0.2 mg/mLのACDH、0.024 mg/mLのFDH(NADHの再生に用いられる補助酵素)、0.1 mg/mLのPPase(ピロリン酸の加水分解に用いられる補助酵素)、50 mMのギ酸ナトリウムであり、1時間反応させ、ホルムアルデヒドの収量は0.6 mMであった。
【0119】
経路5-6-7:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、0.5 mMのNADH、10 mMのATP、0.1 mMのCoA、2 mMのβ-メルカプトエタノール、0.24 mg/mLのACKA、1.2 mg/mLのPTA、0.2 mg/mLのACDH、0.024 mg/mLのFDH(NADHの再生に用いられる補助酵素)、50 mMのギ酸ナトリウムであり、1時間反応させ、ホルムアルデヒドの収量は2 mMであった。
【0120】
実施例2 メタノールからのジヒドロキシアセトンである化合物Dの合成
メタノールからの化合物Dの合成は、下記の経路によって実現することができる。
【0121】
経路2-8:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、1 U/mLのAOX、300 U/mLのCAT、20 mMのメタノール、5 mg/mLのFLSであり、2時間反応させ、化合物Dの収量は2.1 mMであった。
【0122】
化合物Dの検出方法:5 mMの希硫酸が移動相であり、HX87カラム(Bio-Rad、Aminex@、300 mm×78 mm)であり、流速が0.6 mL/minであり、ローディング量が10 μL/針であり、DHA標準曲線に基づいて化合物Dの収量を計算した。
図4には、メタノールから化合物Dへの経路2-8の収量が示される。
【0123】
実施例3 ホルムアルデヒドからのジヒドロキシアセトンである化合物Dの合成
ホルムアルデヒドからの化合物Dの合成は、下記の経路によって実現することができる。
【0124】
経路8:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、25 mMのホルムアルデヒド、0.5 mMのTPP、10 mg/mLのFLS(由来:Pseudomonas putida)であり、2時間反応させ、実施例2の方法により化合物Dが検出され、その結果、ホルムアルデヒドリアーゼFLSにより合成された化合物Dの収量は7.092 mMであった。
【0125】
実施例4 ギ酸からのジヒドロキシアセトンである化合物Dの合成
ホルムアルデヒドからの化合物Dの合成は、下記の経路によって実現することができる。
【0126】
経路5-6-7-8:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、50 mMのギ酸ナトリウム、0.5 mMのTPP、0.1 mMのCoA、10 mMのATP、2 mMのβ-メルカプトエタノール、0.24 mg/mLのACKA、1.2 mg/mLのPTA、0.2 mg/mLのACDH、0.024 mg/mLのFDH、0.5 mMのNADHであり、30℃で1~1.5時間反応させた後、7.5 mg/mLのFLS(由来:Pseudomonas putida)を加え、30℃で3.5時間反応し続けた後、ガスクロマトグラフィー/質量分析法により化合物Dが検出され、その結果、経路5-6-7-8により合成された化合物Dの収量は0.23 mMであった。
【0127】
化合物Dのガスクロマトグラフィー/質量分析法は下記の通りである。
【0128】
1)試料の前処理:適切に希釈された500 μLの試料、100 μLの200 mMのPFBOA(O-(2,3,4,5,6-Pentafluorobenzyl)hydroxylamine hydrochloride、O-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル)ヒドロキシルアミン塩酸塩)を、30℃で1時間反応させ、100 μLのn-ヘキサンを加えて抽出し、40 μLの有機相を取って同じ体積のMSTFA(N-Methyl-N-(trimethylsilyl)trifluoroacetamide、N-メチル-N-(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド)を加え、37℃で2時間反応させた。
【0129】
2)ガスクロマトグラフィー条件:Agilent 7890Aガスクロマトグラフであり、キャリアガスがヘリウムガスであり、キャリアガス流速が1.2 mL/minであり、カラムがDB-5MS Ultra Inertキャピラリーカラム(30 m×250 μm×0.25 μm)であり、開始温度60℃で1分間保持して1分間実行し、昇温速度1とする5℃/minで240℃まで9分間実行し、昇温速度2とする25℃/minで300℃まで5分間保持して22分間実行し、注入量が1 μL/針であり、注入口温度が250℃であった。
【0130】
3)質量分析条件:Agilent 7200 Q-TOF質量分析計であり、溶媒遅延を4分間に設定し、電離モードがEIであり、電子エネルギーが70 eVであり、イオン源温度が230℃であり、スキャン範囲が35~550 amuであり、質量分析取得速度が5 spectra/sであった。
【0131】
4)Mass HunterソフトウェアQualitative Analysisを使用してデータを分析し、NIST化学データベースの比較と人工分析により標的代謝物を決定し、DHAの収量を計算した。
【0132】
実施例5 ホルムアルデヒドである化合物CからのD-3-リン酸グリセルホルムアルデヒドである化合物Fの合成
化合物Cから化合物Fへの転化は、経路8-9-10(反応番号は
図1に示される)によって実現することができる。まず、経路における各化学反応を触媒できる触媒を選択する(表1に示される)、しかし前記触媒機能を有する酵素は表1に列挙されたものに限定されない。次に、経路によって様々な触媒を組み合わせ、対応する反応系を確立し、一定の時間反応させた後、化合物Fの収量を検出した。
【0133】
化合物Eと化合物Fは同分子異性体であるが、不利な自由エネルギーにより、化合物Fの累積量が非常に低いため、化合物E+化合物Fの収量を検出した。化合物E+化合物Fの収量は、下記の方法により検出された。100 μLの検出系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、20 U/mLのリン酸グリセルホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、20 U/mLのトリオースリン酸イソメラーゼ、1 mMのNAD+、4 mMのヒ酸カリウムを含み、反応終了後、適切に希釈された測定待ちの試料を取り、そのOD340の変化を検出した。3-リン酸グリセルホルムアルデヒドの標準曲線に基づいて化合物E+化合物Fの収量を計算した。
【0134】
経路8-9-10:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、10 mMのATP、0.5 mMのチアミンピロリン酸、5 mg/mLのFLS、0.1 mg/mLのDAK、0.14 mg/mLのTPI、10 mMの化合物Cであり、2時間反応させ、化合物E+化合物Fの収量は1.25 mMであった。
【0135】
実施例6 D-3-リン酸グリセルホルムアルデヒドである化合物FからのD-グルコース-6-リン酸である化合物Iの合成
化合物Fから化合物Iへの転化は、3つの経路によって実現することができ、それぞれは、経路11-12-15、経路13-15及び経路14-15である(反応番号は
図1に示される)。まず、各経路における各化学反応を触媒できる触媒を選択する(表1に示される)、しかし前記触媒機能を有する酵素は表1に列挙されたものに限定されない。次に、経路によって様々な触媒を組み合わせ、対応する反応系を確立し、一定の時間反応させた後、化合物Iの収量を検出した。
【0136】
化合物Iの収量は、下記の方法により検出された。100 μLの検出系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、20 U/mLの6-グルコースリン酸デヒドロゲナーゼ、20 μLの1 mMのNAD+、を含み、反応終了後、適切に希釈された測定待ちの試料を取り、そのOD340の変化を検出した。6-グルコースリン酸の標準曲線に基づいて化合物Iの収量を計算した。
【0137】
経路11-12-15:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、3 mMの化合物F、3 mMの化合物E、0.1 mg/mLのFBA、0.2 mg/mLのFBP及び0.17 mg/mLのPGIであり、0.5時間反応させ、化合物Iの収量は2.3 mMであった。
【0138】
経路13-15:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、3 mMの化合物F、3 mMの化合物D、0.3 mg/mLのFSA、0.17 mg/mLのPGIであり、0.5時間反応させ、化合物Iの収量は1.28 mMであった。
【0139】
経路14-15:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、3 mMの化合物F、3 mMの化合物E、0.3 mg/mLのFBAP及び0.17 mg/mLのPGIであり、0.5時間反応させ、化合物Iの収量は0.13 mMであった。
【0140】
実施例7 D-グルコース-6-リン酸である化合物Iからのアミロースである化合物1の合成
化合物Iから化合物1への転化は、2つの経路によって実現することができ、それぞれは、経路16-17-18及び経路16-19である(反応番号は
図1に示される)。まず、各経路における各化学反応を触媒できる触媒を選択する(表1に示される)、しかし前記触媒機能を有する酵素は表1に列挙されたものに限定されない。次に、経路によって様々な触媒を組み合わせ、対応する反応系を確立し、一定の時間反応させた後、化合物1の収量を検出した。
【0141】
化合物1の収量は、下記の方法により検出された。化合物1を定量的に検出し、反応終了後に試料を適切に希釈し、その後、化合物1がグルコースに完全に加水分解されるまで、30 U/mLのα-アミラーゼ及び33 U/mLのグルコースアミラーゼと共に一定の時間インキュベートし、続いてグルコースアッセイキット(北京Applygen遺伝子技術有限公司、E1010)によりグルコースの含有量を検出した。化合物1の収量はグルコースの含有量で示された。
【0142】
経路16-17-18:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、5 mMの化合物I、10 mMのATP、10 mg/Lのデキストリン、0.275 mg/mLのPGM、0.46 mg/mLのGlgC、0.2 mg/mLのPPase及び0.235 mg/mLのGlgAであり、3時間反応させ、化合物1の収量は436.8 mg/Lであった。
【0143】
経路16-19:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、5 mMの化合物I、10 mg/Lのデキストリン、0.275 mg/mLのPGM及び0.13 mg/mLのαGPであり、3時間反応させ、化合物1の収量は100.7 mg/Lであった。
【0144】
実施例8 アミロースである化合物1からのアミロペクチンである化合物2の合成
化合物1から化合物2への転化は、経路20によって実現することができる(反応番号は
図1に示される)。まず、化学反応20を触媒できる触媒を選択する(表1に示される)、しかし前記触媒機能を有する酵素は表1に列挙されたものに限定されない。次に、経路によって様々な触媒を組み合わせ、対応する反応系を確立し、一定の時間反応させた後、化合物2の収量を検出した。
【0145】
化合物2の収量は、下記の方法により検出された。1)化合物2の定性検出:アミロースがヨウ素溶液に触れると青色になり(最大吸収波長は620 nm程度)、アミロペクチンがヨウ素溶液に触れると紫赤色になる(最大吸収波長は530 nm程度)の原理に基づき、ヨウ素染色により反応前後の化合物の最大吸収波長の変化が検出され、化合物2が生成されたか否かを定性的に判断した。2)化合物2を定量的に検出し、反応終了後、適切に希釈された試料を取り、その後、化合物2がグルコースに完全に加水分解されるまで、30 U/mLのα-アミラーゼ及び33 U/mLのグルコースアミラーゼと共に一定の時間インキュベートし、続いてグルコースアッセイキット(北京Applygen遺伝子技術有限公司、E1010)によりグルコースの含有量を検出した。化合物2の収量はグルコースの含有量で示された。
【0146】
経路20:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg
2+、10 μMのZn
2+、3 g/Lの化合物1、0.05 mg/mLのGlgBであり、3時間反応させ、化合物2の収量は2.7 g/Lであった。
図5は、化合物1から化合物2への経路の反応前後の全波長スキャンスペクトルを示す。
【0147】
実施例9 ジヒドロキシアセトンである化合物Dからのアミロースである化合物1の合成
化合物Dから化合物Iへの転化は、下記の経路によって実現することができる。
【0148】
経路9-10-11-12-15-16-17-18:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、0.077 mg/mLのDAK、0.33 mg/mLのTPI、0.15 mg/mLのFBA、0.6 mg/mLのFBP-M、0.069 mg/mLのPGI、0.565 mg/mLのPGM、0.5 mg/mLのGlgA、1 mg/mLのGlgC-M、0.1 mMのEDTA、1 mMのADP、0.2 mMのポリリン酸、0.22 mg/mLのPPK(ATPの再生に用いられるポリリン酸キナーゼ)、3 mMの化合物D、10 mg/Lのデキストリンであった。5時間反応させ、化合物1の収量は116.2 mg/Lであった。
【0149】
経路9-10-13-15-16-17-18:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、0.077 mg/mLのDAK、0.33 mg/mLのTPI、0.3 mg/mLのFSA、0.069 mg/mLのPGI、0.565 mg/mLのPGM、0.5 mg/mLのGlgA、1 mg/mLのGlgC-M、0.1 mMのEDTA、1 mMのADP、0.2 mMのポリリン酸、0.22 mg/mLのPPK(ATPの再生に用いられるポリリン酸キナーゼ)、3 mMの化合物D、10 mg/Lのデキストリンであった。5時間反応させ、化合物1の収量は74.5 mg/Lであった。
【0150】
経路9-10-14-15-16-17-18:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg2+、10 μMのZn2+、0.077 mg/mLのDAK、0.33 mg/mLのTPI、2.5 mg/mLのFBAP、0.069 mg/mLのPGI、0.565 mg/mLのPGM、0.5 mg/mLのGlgA、1 mg/mLのGlgC-M、0.1 mMのEDTA、1 mMのADP、0.2 mMのポリリン酸、0.22 mg/mLのPPK(ATPの再生に用いられるポリリン酸キナーゼ)、3 mMの化合物D、10 mg/Lのデキストリンであった。5時間反応させ、化合物1の収量は134.4 mg/Lであった。
【0151】
経路9-10-13-15-16-19:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg
2+、10 μMのZn
2+、0.077 mg/mLのDAK、0.33 mg/mLのTPI、0.3 mg/mLのFSA、0.069 mg/mLのPGI、0.565 mg/mLのPGM、1 mg/mLのαGP、0.1 mMのEDTA、1 mMのADP、0.2 mMのポリリン酸、0.22 mg/mLのPPK(ATPの再生に用いられるポリリン酸キナーゼ)、10 mMの化合物D、10 mg/Lのデキストリンであった。23時間反応させ、化合物1の収量は206.55 mg/Lであった。
図6は、化合物Dから化合物1への経路の収量を示す。
【0152】
実施例9で使用されるFBP-Mはフルクトース-ビスホスファターゼ(FBP)の突然変異体であり、それぞれは、位置104のリジン(AAAによってコードされる)からグルタミン(CAGによってコードされる)への突然変異、位置132のアルギニン(CGCによってコードされる)からイソロイシン(ATTによってコードされる)への突然変異、位置210のチロシン(TACによってコードされる)からフェニルアラニン(TTTによってコードされる)への突然変異、位置218のリジン(AAGによってコードされる)からグルタミン(CAGによってコードされる)への突然変異といった、合計4つの突然変異部位を含んだ。GlgC-Mはグルコース-1-アデノシンリン酸アシルトランスフェラーゼ(GlgC)の突然変異体であり、それぞれは、位置295のプロリン(CCGによってコードされる)からアスパラギン酸(GATによってコードされる)への突然変異、位置336のグリシン(GGCによってコードされる)からアスパラギン酸(GATによってコードされる)への突然変異といった、合計2つの突然変異部位を含んだ。融合PCRの方法により、標的突然変異を含む遺伝子断片が得られ、簡単なクローニング(You, C., et al. (2012). 「Simple Cloning via Direct Transformation of PCR Product (DNA Multimer) to Escherichia coli and Bacillus subtilis.」 Appl. Environ. Microbiol. 78(5):1593-1595.)の方法により、いずれもpET21bベクター(Novagen、Madison、WI)にクローニングされ、対応する発現ベクターpET21b-FBP-M及びpET21b-GlgC-Mが得られた。この2つのプラスミドはいずれも、大腸菌発現株BL21(DE3)(Invitrogen、Carlsbad、CA)に転化され、タンパク質の発現及び精製が行われた。
【0153】
実施例10 ジヒドロキシアセトンである化合物Dからのアミロペクチンである化合物2の合成
化合物Dからの化合物2の合成は、下記の経路によって実現することができる。
【0154】
経路9-10-11-12-15-16-17-18-20:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg
2+、10 μMのZn
2+、0.77 mg/mLのDAK、0.33 mg/mLのTPI、0.15 mg/mLのFBA、0.43 mg/mLのFBP-M、0.1 mg/mLのPGI、0.565 mg/mLのPGM、0.47 mg/mLのGlgA、0.92 mg/mLのGlgC-M、0.02 mg/mLのGlgB、0.1 mMのEDTA、1 mMのADP、0.4 mMのポリリン酸(1時間ごとに0.2 mMを補充する)、PPK 0.44 mg/mL(ATPの再生に用いられるポリリン酸キナーゼ)、20 mMの化合物D、0.1 g/Lのデキストリンであった。4時間反応させ、化合物2の収量は1107.77 mg/Lであった。
図7は、化合物Dから化合物2への合成経路の収量を示す。
【0155】
実施例11 メタノールからのアミロースである化合物1の合成
メタノールからの化合物1の合成は、下記の経路によって実現することができる。
【0156】
経路2-8-9-10-11-12-15-16-17-18:反応系は100 mMのpH7.5のHepes緩衝液、100 mMのNaCl、5 mMのMg
2+、10 μMのZn
2+、1 U/mLのAOX、300 U/mLのCAT、5 mg/mLのFLS-M、0.5 mMのピロリン酸チアミン、0.035 mg/mLのDAK、0.33 mg/mLのTPI、0.05 mg/mLのFBA、0.2 mg/mLのFBP-M、0.023 mg/mLのPGI、0.11 mg/mLのPGM、0.1 mg/mLのGlgA、0.2 mg/mLのGlgC-M、0.1 mMのEDTA、1 mMのADP、0.2 mMのポリリン酸、0.22 mg/mLのPPK(ATPの再生に用いられるポリリン酸キナーゼ)、20 mMのメタノール、0.01 g/Lでのデキストリンあった。6時間反応させ、化合物1の収量は221.1 mg/Lであった。
図8は、メタノールから化合物1への合成経路の収量を示す。
【0157】
実施例11で使用されるFLS-Mはホルムアルデヒドリアーゼ(FLS)の突然変異体であり、それぞれは、位置28のイソロイシン(ATTによってコードされる)からロイシン(CTAによってコードされる)への突然変異、位置90のスレオニン(ACCによってコードされる)からロイシン(CTGによってコードされる)への突然変異、位置283のアスパラギン(AACによってコードされる)からヒスチジン(CATによってコードされる)への突然変異といった、合計3つの突然変異部位を含んだ。融合PCRの方法により、標的突然変異を含む遺伝子断片が得られ、簡単なクローニング(You, C., et al. (2012). 「Simple Cloning via Direct Transformation of PCR Product (DNA Multimer) to Escherichia coli and Bacillus subtilis.」 Appl. Environ. Microbiol. 78(5):1593-1595.)の方法によりpET21aベクター(Novagen、Madison、WI)にクローニングされ、対応する発現ベクターpET21a-FLS-Mが得られた。この2つのプラスミドはいずれも、大腸菌発現株BL21(DE3)(Invitrogen、Carlsbad、CA)に転化され、タンパク質の発現及び精製が行われた。
【0158】
実施例11で使用されるFBP-Mは、実施例9で使用されるFBP-Mと同じである。
【0159】
上記の実施例は、本発明の方法がジヒドロキシアセトン、ホルムアルデヒド、ギ酸及びメタノールなどの簡単な化合物からのデンプンの完全人工生合成を実現でき、短いサイクル、高い収量を有することが示されている。
【0160】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の要旨及び原則を逸脱しない範囲で行われた何れかの修正、同等の取替え、改良などは、いずれも本発明の請求範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【
図1】メタノール又はギ酸を出発原料としてアミロースである化合物1及びアミロペクチンである化合物2を合成する合成経路を示す。
【
図4】メタノールから化合物D(即ちジヒドロキシアセトン)への合成経路の収量を示す。
【
図5】化合物1(即ちアミロース)から化合物2(アミロペクチン)への経路の反応前後の全波長スキャンスペクトルを示す。
【
図6】化合物Dから化合物1への様々な経路の収量を示す。
【
図7】化合物Dから化合物2への様々な経路の収量を示す。
【
図8】メタノールから化合物1への合成経路の収量を示す。
【国際調査報告】