(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21B 1/40 20060101AFI20231114BHJP
B21B 3/00 20060101ALI20231114BHJP
C22C 14/00 20060101ALI20231114BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20231114BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20231114BHJP
C22F 1/18 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
B21B1/40
B21B3/00 K
C22C14/00 Z
H01M8/0206
C22F1/00 604
C22F1/00 623
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 640A
C22F1/00 650F
C22F1/00 661A
C22F1/00 661C
C22F1/00 681
C22F1/00 683
C22F1/00 685
C22F1/00 691
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 694A
C22F1/18 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548997
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 CN2022117653
(87)【国際公開番号】W WO2023036206
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】202111051730.0
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523151012
【氏名又は名称】ルオヤン スンルイ タイタニウム プレシジョン キャスティング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】リー,ボボ
(72)【発明者】
【氏名】タオ,フゥイファ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,インチー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ペイ,トン
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,チャン
【テーマコード(参考)】
4E002
5H126
【Fターム(参考)】
4E002AA08
4E002AD13
4E002BC02
4E002BC03
4E002BC05
4E002BC07
4E002BD09
4E002BD10
5H126AA12
5H126DD05
5H126GG02
5H126HH01
5H126HH02
5H126HH10
5H126JJ03
5H126JJ05
5H126JJ08
5H126JJ09
5H126JJ10
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法は、[O]当をチタンスラブ不純物元素全体の含有量の質量割合と定義し、Fe、C、N、O不純物元素の含有量の質量割合をそれぞれ[Fe]%、[C]%、[N]%、[O]%と定義し、[O]当の計算式は、[O]当=[O]%+0.5*[Fe]%+0.7*[C]%+2.5*[N]%であり、[Fe]%≦0.050%、[C]%≦0.040%、[N]%≦0.010%、[O]%≦0.080%、[O]当≦0.120%のチタンスラブを選択し、それに対して熱間圧延、冷間圧延、中間製品アニーリング、最終製品圧延を順次に行い、チタンテープを得、チタンテープに対して、アルゴンガスの保護下で、連続アニーリング方式で最終製品熱処理を行い、矯正をすることで水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材を得る。本発明の製造方法で製造される水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材は、品質が高く、コストが低い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法であって、
(1)スポンジチタンに対して溶錬及び機械加工を行い、チタンスラブを得る工程であって、[O]
当をチタンスラブ不純物元素全体の含有量の質量割合と定義し、Fe、C、N、O不純物元素の含有量の質量割合をそれぞれ[Fe]%、[C]%、[N]%、[O]%と定義し、[O]
当の計算式は、
[O]
当=[O]%+0.5*[Fe]%+0.7*[C]%+2.5*[N]%であり、
[Fe]%≦0.050%、[C]%≦0.040%、[N]%≦0.010%、[O]%≦0.080%、[O]
当≦0.120%のチタンスラブを選択して直接圧延に用いる工程と、
(2)工程(1)で選択されたチタンスラブを熱間圧延し、黒皮状態の熱間圧延チタンコイルを得、表面処理をして表面に酸化物皮膜及び欠陥が残留しない熱間圧延チタンコイルを得る工程と、
(3)工程(2)で得た熱間圧延チタンコイルに対して多工程冷間圧延及び中間製品アニーリングを行い、最終製品圧延用マスターテープを得る工程と、
(4)工程(3)で得た最終製品圧延用マスターテープに対して最終製品圧延を行い、チタンテープを得る工程と、
(5)工程(4)で得たチタンテープに対して、アルゴンガスの保護下で、連続アニーリング方式で最終製品熱処理を行い、矯正をすることで前記水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材を得る工程と、
を含むことを特徴とする、水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法。
【請求項2】
工程(1)において、スポンジチタンは、0グレード以上のスポンジチタンであることを特徴とする、請求項1に記載の水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法。
【請求項3】
工程(1)において、前記溶錬は、EB炉によって1回行われることを特徴とする、請求項1に記載の水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法。
【請求項4】
工程(2)において、前記表面処理のプロセスは、連続アニーリングショットピーニング酸洗ラインにより黒皮状態の熱間圧延チタンコイルに対してアニーリングを1回、ショットピーニング酸洗を2回行ってから、研磨及びショットピーニング酸洗処理を行うことであることを特徴とする、請求項1に記載の水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法。
【請求項5】
工程(3)において、中間製品アニーリングの温度は600~850℃であることを特徴とする、請求項1に記載の水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法。
【請求項6】
工程(4)において、圧延工程の変形量は50%~65%であり、単位張力は200~400kg/mm
2であり、圧延速度は50~150m/minであり、圧延力は200~400トンであることを特徴とする、請求項1に記載の水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法。
【請求項7】
工程(5)において、連続アニーリングの熱処理温度は600~800℃であり、保温時間は0.5~2.5minであり、アニーリング張力は0.5~2.5KNであることを特徴とする、請求項1に記載の水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法。
【請求項8】
工程(5)において、アルゴンガスは、純度≧99.99%であることを特徴とする、請求項1に記載の水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法。
【請求項9】
工程(5)において、矯正の張力は500~1500KNであり、矯正の引張変形率は0.1%~0.3%であることを特徴とする、請求項1に記載の水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法。
【請求項10】
工程(5)で得た水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材は、厚さ精度≦±0.003mmであり、うねり≦1.5mm/mであり、降伏強度(R
P0.2)≦260MPaであり、伸び率(A
50mm)≧30%であり、結晶粒度6~10であり、カッピング値≧6.0mmであることを特徴とする、請求項1に記載の水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄金属加工の技術分野に関し、具体的には、水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素燃料電池は、水素エネルギーを効率よくクリーンに利用するツールであり、エネルギー変換率が高く、熱放射が低く、騒音が低く、持続時間が長く、ゼロエミッションであるなどの利点があり、自動車、船舶、航空宇宙、及び分散型電源に広く応用可能であり、広い応用見通しがある。バイポーラプレートは、水素燃料電池スタックの主要部材として、集電導電、放熱、反応媒体の均一分散、漏洩防止などの複数の機能を発揮し、蒸し暑い、電気化学腐食、酸腐食などのマルチフィールド結合による複雑で悪い環境下で作動し、バイポーラプレート基材は一旦、腐食漏洩が発生すると、水素燃料電池スタックの無効化及び安全面でのリスクが生じるので、バイポーラプレートは、燃料電池全体の性能、寿命、及び信頼性に大きく影響を及ぼす。
【0003】
現在、水素燃料電池バイポーラプレートは、主に黒鉛バイポーラプレートと金属バイポーラプレートとを含む。黒鉛バイポーラプレートは、脆くなりやすい、組み立てにくい、厚さを薄くしにくい、機械加工効率が低いといった欠点があることにより、黒鉛バイポーラプレート水素燃料電池は体積が大きく、パワー密度が低く、コストが高くなり、乗用車及び他の分野における応用の見通しが制限されている。金属バイポーラプレートの材質は、主にステンレス鋼であるが、ステンレス鋼は、水素燃料電池の酸性環境下で、表面に腐食が発生しやすく、腐食により溶解された金属イオンは触媒被毒を起こしやすく、水素燃料電池の寿命及び信頼性が比較的低くなる。チタン金属は、腐食耐性、低密度などのメリットがあり、水素燃料電池の性能、寿命、及び信頼性の向上に寄与し、水素燃料電池金属バイポーラプレート基材の望ましい材料である。
【0004】
金属バイポーラプレートの重量はスタックの総重量に対して50%以上であり、将来の市場の需要は非常に大きく、水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材は、厚さが一般的に0.05~0.2mmであり、プレス微細構造流路の深さ及び溝幅が一般的に0.2~2.0mmであり、プレス投影面積が板面の総面積に対して50%以上であり、後で表面コーティング処理が必要となり、基材の成型性能、寸法精度、及び表面品質などが厳しく要求されている。しかし、従来のチタン基材は、生産中、成型性能が比較的低く、水素燃料電池での普及・応用が制限されている。また、従来のチタン基材は、材料選択が厳しいため、生産コストが高く、加工難易度が大きくなり、水素燃料電池での普及・応用がさらに制限されている。水素燃料電池金属バイポーラプレートの後加工及びサービス要件に対して、チタン基材の製造プロセス及び総合性能を設計し、チタン基材を製造する必要がある。したがって、水素燃料電池の使用需要を満たすために、高品質、低コストのチタン金属バイポーラプレート基材を開発することは、業界の発展の急激な需要になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高品質、低コストのチタン金属バイポーラプレート基材を製造し、水素燃料電池のチタン金属基材への需要を満たすための水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明で採用される技術方案は、水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法であって、(1)スポンジチタンに対して溶錬及び機械加工を行い、チタンスラブを得る工程であって、[O]当をチタンスラブ不純物元素全体の含有量の質量割合と定義し、Fe、C、N、O不純物元素の含有量の質量割合をそれぞれ[Fe]%、[C]%、[N]%、[O]%と定義し、[O]当の計算式は、[O]当=[O]%+0.5*[Fe]%+0.7*[C]%+2.5*[N]%であり、[Fe]%≦0.050%、[C]%≦0.040%、[N]%≦0.010%、[O]%≦0.080%、[O]当≦0.120%のチタンスラブを選択して直接圧延に用いる工程と、(2)工程(1)で選択されたチタンスラブを熱間圧延し、黒皮状態の熱間圧延チタンコイルを得、表面処理をして表面に酸化物皮膜及び欠陥が残留しない熱間圧延チタンコイルを得る工程と、
(3)工程(2)で得た熱間圧延チタンコイルに対して多工程冷間圧延及び中間製品アニーリングを行い、最終製品圧延用マスターテープを得る工程と、(4)工程(3)で得た最終製品圧延用マスターテープに対して最終製品圧延を行い、チタンテープを得る工程と、(5)工程(4)で得たチタンテープに対して、アルゴンガスの保護下で、連続アニーリング方式で最終製品熱処理を行い、矯正をすることで前記水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材を得る工程と、を含む、水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造方法である。
【0007】
さらに、工程(1)において、スポンジチタンは、0グレード以上のスポンジチタンである。
【0008】
さらに、工程(1)において、前記溶錬は、EB炉によって1回行われる。
【0009】
さらに、工程(2)において、前記表面処理のプロセスは、連続アニーリングショットピーニング酸洗ラインにより黒皮状態の熱間圧延チタンコイルに対してアニーリングを1回、ショットピーニング酸洗を2回行ってから、研磨及びショットピーニング酸洗処理を行うことである。
【0010】
さらに、工程(3)において、中間製品アニーリングの温度は600~850℃である。
【0011】
さらに、工程(4)において、圧延工程の変形量は50%~65%であり、単位張力は200~400kg/mm2であり、圧延速度は50~150m/minであり、圧延力は200~400トンである。
【0012】
さらに、工程(5)において、連続アニーリングの熱処理温度は600~800℃であり、保温時間は0.5~2.5minであり、アニーリング張力は0.5~2.5KNである。
【0013】
さらに、工程(5)において、アルゴンガスは、純度≧99.99%である。
【0014】
さらに、工程(5)において、矯正の張力は500~1500KNであり、矯正の引張変形率は0.1%~0.3%である。
【0015】
さらに、工程(5)で得た水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材は、厚さ精度≦±0.003mmであり、うねり≦1.5mm/mであり、降伏強度(RP0.2)≦260MPaであり、伸び率(A50mm)≧30%であり、結晶粒度6~10であり、カッピング値≧6.0mmである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有利な効果は以下のとおりである。
【0017】
1.本発明の製造方法は、応用時、単一の不純物元素の含有量と総合的な不純物元素の含有量とを採用し、2重制御を行い、チタン金属バイポーラプレート基材の成型性能を確保し、元素によっては影響強度が互いに異なるため、[O]当量を不純物元素の含有量のプレス成型の性能への影響を総合的に評価するインデックスとして採用することによって、成型性能が良好なバイポーラプレート基材を製造することを確保するとともに、単一の不純物元素の含有量の上限を緩くし、材料選択の基準を低く、スポンジチタンの選択範囲がより広くなり、幅広い素材の取得に有利であり、製造コストが低下する。
【0018】
2.本発明の製造方法は、応用時、アニーリング温度及び時間を制御することにより、最適な最終製品の結晶粒度の範囲を取得し、材料の伸び率が向上し、プレスプロセスにおいて結晶粒が一様に変形するようになるとともに、金属バイポーラプレートの成型特性に対して、成分、結晶粒度、降伏強度、伸び率、及びカッピング値からなる総合的な制御インデックスを設計し、チタン基材の成型性能をさらに大幅に向上させ、金属バイポーラプレートの特別なマイクロチャネルの成型要求を保証している。
【0019】
3.本発明の製造方法は、応用時、生産効率が高く、コストが低い。一方、真空度が高く、過熱度が大きく、高・低密度混在による除去の効果が良好であるとともに、精錬作用があるEB溶錬を1回採用することにより、不純物元素の増加量を減少し、チタンスラブの品質を品質管理の要求に合わせるようにすることができ、かつ、スラブ製造フローは従来の2~3回VAR溶錬に対して40%以上短縮し、収率は5%以上向上する。他方、高温短時間アニーリングプロセス方法を採用することにより、アニーリング生産の効率が向上し、アルゴンガスの消費量が低下し、基材のアニーリングのコストがさらに低下する。
【0020】
4.本発明の製造方法は、応用時、チタン金属バイポーラプレート基材は、表面品質に優れ、品質が均一で安定性が良好である。一方、当該製造方法は、溶錬真空度が高く、過熱度が大きく、高・低密度混在による除去の効果が良好であるとともに、精錬作用があるEB炉によりスラブを製造することで、冶金品質の問題による超薄いテープ・コイルの最終製品の混在、ポーラス等の欠陥を顕著に減少することができる。他方、熱間圧延チタンコイルの製造プロセスにおいて、当該製造方法は、2回の酸洗、研磨、及び再酸洗の方法を採用するものであり、酸化皮膜を徹底的に除去することを確保できるだけでなく、同時に機械的研磨及び複数回のショットピーニング酸洗化学法により観察しにくいほど微小な欠陥を除去し、最終製品における欠陥の残存をできる限り減少する。
【0021】
5.本発明の製造方法は、応用時、最終製品チタンコイルは、アルゴンガス高温短時間アニーリングを採用し、高純度のアルゴンガスで保護することにより、アニーリング時間を減少させ、チタンコイルの酸化層の厚さを顕著に改善し、後でチタン金属バイポーラプレートをコーティングする前に酸化層を除去する難しさ及びコストを大幅に低下させる。
【0022】
6.本発明の製造方法で得たチタン金属バイポーラプレート基材は、水素燃料電池の性能、寿命、及び信頼性の向上に有利である。一方、チタン材は、密度がステンレス鋼に対して40%以上低いため、電池の単位質量あたりの電力密度を大幅に高くし、電池の性能を向上させることができる。また、チタンは、優れた耐腐食性を有し、ステンレス鋼金属バイポーラプレートに比べ、蒸し暑い環境及び酸性環境下で、チタン金属バイポーラプレートのコートが一部脱落しても、バイポーラプレートの腐食穿孔及びFeイオンによる膜電極触媒の被毒が起こらないので、水素燃料電池の寿命を大幅に長くすることができる。他方、水素燃料電池スタックは、数百枚のバイポーラプレートと膜電極とからなり、積算誤差及び応力作用により、一旦、バイポーラプレートの漏洩、又は、うねり及び厚さの精度が基準を超えることが発生すると、スタックが損なわれてしまう。本発明の製造方法で得たチタン基材は、成型性能が良好で、うねり及び厚さの精度に優れ、応用時、水素燃料電池の信頼性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例1でレベリングした後、サンプリングしたミクロ組織である。
【
図2】実施例2でレベリングした後、サンプリングしたミクロ組織である。
【
図3】実施例3でレベリングした後、サンプリングしたミクロ組織である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的、技術方案、及び利点をさらに明確にするため、以下において、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。なお、ここで説明した具体的な実施例は、本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するためのものではない。
【0025】
実施例1:0.15mm水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造
0グレード以上のスポンジチタンを選択し、0.15mm水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材を生産した。スポンジチタンに対してEB炉溶錬及び機械加工を1回行い、Fe含有量が0.020%であり、C含有量が0.010%であり、N含有量が0.010%であり、O含有量が0.020%であり、[O]
当が0.062%であるチタンスラブを得、それを直接圧延に用いることができる。ステッケルミルを使用してチタンスラブ元材を厚さ3.0mmに熱間圧延し、連続アニーリングショットピーニング酸洗ラインにより、黒皮状態の熱間圧延チタンコイルに対して熱処理及び酸化皮膜の除去を行い、ここで、アニーリングを1回、ショットピーニング酸洗を2回行った。20段圧延機及び熱処理炉を使用して熱間圧延チタンコイルに対して多工程冷間圧延及び中間製品アニーリングを行い、0.3mmアニーリング状態のマスターテープを得、中間製品アニーリング温度は600℃とする。さらに、20段圧延機によりアニーリング状態のマスターテープを0.15mmのチタンテープに圧延し、圧延工程の変形率は50%であり、圧延パラメータは表1に示されるとおりである。アルゴンガス保護による連続アニーリング炉によりチタンテープに対して最終製品熱処理を行い、熱処理のアニーリング温度は750℃、保温時間は2minとし、ここで、アルゴンガスは純度≧99.99%とし、アニーリング張力は2KNとする。アニーリング後、テンションレベラを使用してチタンテープを矯正し、矯正張力は1000KN、引張変形率は0.20%とする。レベリングした後、サンプリングし、そのミクロ組織は
図1に示されるとおりであり、物理的及び化学的性能は表2に示されるとおりである。最終製品は、物理的及び化学的性能に優れ、プレス成型性能が良好で、プレス後は合格し、チタンテープのうねり≦1.2mm/mであり、厚さ精度≦±0.002mmである。最終製品は、厚さ精度≦±0.003mm、うねり≦1.5mm/m、降伏強度(R
P0.2)≦260MPa、伸び率(A
50mm)≧30%、結晶粒度6~10、カッピング値≧6.0mmという要求を満たした。
【0026】
比較例1:2回の溶錬によりスラブを鍛造し、Fe含有量が0.040%であり、C含有量が0.030%であり、N含有量が0.007%であり、O含有量が0.070%であり、[O]当が0.129である0.15mm水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材を生産し、その以外の生産プロセス及びプロセスパラメータは実施例1と同じであり、比較例1の物理的及び化学的性能は表2に示されるとおりである。
【0027】
【0028】
【0029】
表2から分かるように、比較例1のチタンスラブ不純物元素の成分は、実施例1に対して比較的高いことから、チタン金属バイポーラプレート基材の最終製品の降伏強度、伸び率、及びカッピング値が要求に達しておらず、最終製品の降伏強度が高く、伸び率が低いため、成型性能が比較的低く、カッピング値が低くなるので、プレス成型後は不合格になり、成型後は広い面積で割れが発生する場合がある。
【0030】
実施例2:0.10mm水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造
0グレード以上のスポンジチタンを選択し、0.15mm水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材を生産した。スポンジチタンに対してEB炉溶錬及び機械加工を1回行い、Fe含有量が0.037%であり、C含有量が0.040%であり、N含有量が0.004%であり、O含有量が0.050%であり、[O]
当が0.107%であるチタンスラブを得、それを直接圧延に用いることができる。ステッケルミルを使用して元材を厚さ3.0mmに熱間圧延し、黒皮状態の熱間圧延チタンコイルに対して熱処理及び酸化皮膜の除去を行い、ここで、アニーリングを1回、ショットピーニング酸洗を2回行った。20段圧延機及び熱処理炉を使用して熱間圧延チタンコイルに対して多工程冷間圧延及び中間製品アニーリングを行い、0.2mmアニーリング状態のマスターテープを得、中間製品アニーリング温度は750℃とする。20段圧延機によりアニーリング状態のマスターテープを0.10mmに圧延し、圧延工程の変形量は50%であり、圧延パラメータ表は表3のとおりである。アルゴンガス保護による連続アニーリング炉によりチタンテープに対して最終製品熱処理を行い、熱処理のアニーリング温度は700℃、保温時間は1.5minとし、ここで、アルゴンガスは純度≧99.99%とし、アニーリング張力は2KNとする。アニーリング後、テンションレベラを使用してチタンテープをレベリングし、矯正張力は1500KN、引張変形率は0.30%とする。レベリングした後、サンプリングし、そのミクロ組織は
図2に示されるとおりであり、物理的及び化学的性能は表4に示されるとおりである。最終製品は、物理的及び化学的性能に優れ、プレス成型性能が良好で、プレス後は合格し、チタンテープのうねり≦1.0mm/mであり、厚さ精度≦±0.0016mmである。最終製品は、厚さ精度≦±0.003mm、うねり≦1.5mm/m、降伏強度(R
P0.2)≦260MPa、伸び率(A
50mm)≧30%、結晶粒度6~10、カッピング値≧6.0mmという要求を満たした。
【0031】
【0032】
比較例2:2回の溶錬によりスラブを鍛造し、Fe含有量が0.030%であり、C含有量が0.030%であり、N含有量が0.012%であり、O含有量が0.04%であり、[O]当が0.106である0.10mm水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材を生産し、20段圧延機により0.10mmに圧延した後、真空カバー式アニーリング方式により最終製品アニーリングを行い、保温温度は630℃とし、2時間保温した。比較例2の物理的及び化学的性能は表4に示されるとおりである。
【0033】
【0034】
表4から分かるように、比較例2のチタンスラブ不純物元素の成分は、実施例2に対して比較的高く、かつ、従来の低温カバー式アニーリング方式を採用したことから、チタン金属バイポーラプレート基材の最終製品は、降伏強度、伸び率、及びカッピング値がいずれも要求に達しておらず、成型性能が比較的低く、プレス成型後は不合格になり、成型後は広い面積で割れが発生する場合がある。
【0035】
実施例3:0.075mm水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材の製造
0グレード以上のスポンジチタンを選択し、0.15mm水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材を生産した。スポンジチタンに対してEB炉溶錬及び機械加工を1回行い、Fe含有量が0.050%であり、C含有量が0.020%であり、N含有量が0.004%であり、O含有量が0.070%であり、[O]
当が0.119%であるチタンスラブを得、それを直接圧延に用いることができる。ステッケルミルを使用して元材を厚さ3.0mmに熱間圧延し、黒皮状態の熱間圧延チタンコイルに対して熱処理及び酸化皮膜の除去を行い、ここで、アニーリングを1回、ショットピーニング酸洗を2回行った。20段圧延機及び熱処理炉を使用して熱間圧延チタンコイルに対して多工程冷間圧延及び中間製品アニーリングを行い、0.20mmアニーリング状態のマスターテープを得、中間製品アニーリング温度は850℃とする。20段圧延機により0.075mmに圧延し、ここで、圧延工程の変形率は62.5%であり、圧延パラメータ表は表5のとおりである。アルゴンガス保護による連続アニーリング炉によりチタンテープに対して最終製品熱処理を行い、熱処理のアニーリング温度は650℃、保温時間は1minとし、ここで、アルゴンガスは純度≧99.99%とし、アニーリング張力は1KNとする。アニーリング後、テンションレベラを使用してチタンテープをレベリングし、矯正張力は500KN、引張変形率は0.10%とする。レベリングした後、サンプリングし、そのミクロ組織は
図3に示されるとおりであり、物理的及び化学的性能は表6に示されるとおりである。最終製品は、物理的及び化学的性能に優れ、プレス成型性能が良好で、プレス後は合格し、チタンテープのうねり≦1.0mm/mであり、厚さ精度≦±0.0012mmである。最終製品は、厚さ精度≦±0.003mm、うねり≦1.5mm/m、降伏強度(R
P0.2)≦260MPa、伸び率(A
50mm)≧30%、結晶粒度6~10、カッピング値≧6.0mmという要求を満たした。
【0036】
【0037】
比較例3:2回の溶錬によりスラブを鍛造し、Fe含有量が0.050%であり、C含有量が0.020%であり、N含有量が0.004%であり、O含有量が0.098%であり、[O]当が0.147である0.075mm水素燃料電池チタン金属バイポーラプレート基材を生産し、20段圧延機及び熱処理炉を使用して熱間圧延チタンコイルに対して多工程冷間圧延及び中間製品アニーリングを行い、0.50mmアニーリング状態のマスターテープを得、20段圧延機により0.075mmに圧延し、最終製品の圧延工程の変形率は85%であり、アニーリング後は矯正を行わなかった。比較例3の物理的及び化学的性能は表6に示されるとおりである。
【0038】
【0039】
表6から分かるように、比較例3のチタンスラブ不純物元素の成分は、実施例3に対して比較的高く、かつ、最終製品の圧延工程の変形量が比較的大きいことから、チタン金属バイポーラプレート基材の最終製品は、降伏強度、伸び率、及びカッピング値がいずれも要求に達しておらず、成型性能が比較的低く、プレス成型後は不合格になり、成型後は広い面積で割れが発生する場合がある。
【0040】
説明すべきものとして、以上の実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明は、以上の実施例に限定されない。本発明の技術実質により以上の実施例に対する簡単な変更、等価変化及び修飾は、全て本発明の保護範囲に入っている。
【国際調査報告】