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特表2023-548977病原体の検出のための、二次元材料をベースにした電界効果トランジスター、及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】病原体の検出のための、二次元材料をベースにした電界効果トランジスター、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20231114BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20231114BHJP
   G01N 27/414 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G01N27/00 J
G01N33/569 L
G01N27/414 301V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552154
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 US2021058581
(87)【国際公開番号】W WO2022103731
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/111,892
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/245,444
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597158986
【氏名又は名称】オーバーン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Auburn University
(71)【出願人】
【識別番号】523171722
【氏名又は名称】マーサー・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マスード・マジューリ-サマニ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・シー・ハミルトン
(72)【発明者】
【氏名】マルセロ・クロダ
(72)【発明者】
【氏名】サハル・ハシム
(72)【発明者】
【氏名】パルヴィン・ファティ-ハフシェジャニ
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA15
2G060AA19
2G060AD06
2G060DA14
2G060GA03
2G060JA07
2G060KA09
(57)【要約】
少なくとも1つの例示的な実施形態では、病原体の検出のための電界効果トランジスターバイオセンサーは、基板と、生体認識要素で官能化される二次元単層又は数層の金属カルコゲナイド(104)から形成されたチャネルとを含む。生体認識要素は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する抗体等の抗体であってもよい。バイオセンサーを製造するための方法は、非晶質二次元材料を、パルスレーザーアブレーションで基板上に堆積する工程と、非晶質二次元材料を結晶化して、基板に連結された二次元単層を生成する工程と、非晶質二次元材料を結晶化した後に、生体認識要素で二次元材料の表面を活性化する工程とを含む。二次元材料の組成は、調整され得る。基材は、フォトリソグラフィーによりパターニングされてもよい。その他の実施形態が記述され、請求項に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の病原体を検出する電界効果トランジスターバイオセンサーであって、
基板と、
生体認識要素で官能化される二次元単層又は数層の金属カルコゲナイドを含む、前記基板に連結されたチャネルと
を含む、バイオセンサー。
【請求項2】
前記生体認識要素が抗体を含む、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項3】
前記生体認識要素を前記二次元単層又は前記数層の金属カルコゲナイドに取着するプローブリンカーを更に含む、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項4】
前記プローブリンカーが、前記金属カルコゲナイドの表面の空孔欠陥に結合する、請求項3に記載のバイオセンサー。
【請求項5】
イオン性溶液に連結されたゲート電極を更に含み、前記イオン性溶液が前記二次元単層又は前記数層の金属カルコゲナイドと接する、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項6】
前記イオン性溶液が前記試料と混合される、請求項5に記載のバイオセンサー。
【請求項7】
前記二次元単層又は前記数層の金属カルコゲナイドが、遷移金属ジカルコゲナイドを含む、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項8】
前記遷移金属ジカルコゲナイドがMX1.5~2の組成を有する、請求項7に記載のバイオセンサー。
【請求項9】
前記遷移金属ジカルコゲナイドが、二セレン化タングステンを含む、請求項7に記載のバイオセンサー。
【請求項10】
前記二次元単層又は前記数層の金属カルコゲナイドが、金属モノカルコゲナイドを含む、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項11】
前記金属モノカルコゲナイドがMX0.75~1の組成を有する、請求項10に記載のバイオセンサー。
【請求項12】
ソース電極及びドレイン電極を更に含み、前記電極が前記チャネルに連結される、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項13】
前記ソース電極及び前記ドレイン電極のそれぞれが、複数の櫛型フィンガーを含む、請求項12に記載のバイオセンサー。
【請求項14】
試料中の病原体を検出する電界効果トランジスターバイオセンサーを製造するための方法であって、
非晶質二次元材料を、パルスレーザーアブレーションで基板上に堆積する工程と、
前記非晶質二次元材料を結晶化して、前記基板に連結された二次元単層又は数層を生成する工程と、
前記非晶質二次元材料を結晶化した後に、病原体検出のために生体認識要素で前記二次元材料の表面を活性化する工程と
を含む、方法。
【請求項15】
前記非晶質二次元材料を堆積する工程が、前記非晶質二次元材料を室温で堆積する工程を含み、
前記非晶質二次元材料を結晶化する工程が、前記非晶質二次元材料を加熱炉で結晶化する工程を含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記非晶質二次元材料を室温で堆積する工程が、前記非晶質二次元材料を150℃よりも低い動作温度で堆積する工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記二次元材料が、組成上調整可能な遷移金属ジカルコゲナイドを含み、前記遷移金属ジカルコゲナイドがMX1.5~2の組成を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記二次元材料が、調整可能な金属モノカルコゲナイドを含み、前記金属モノカルコゲナイドがMX0.75~1の組成を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記非晶質二次元材料を、パルスレーザーアブレーションで前記基板上に堆積する工程が、前記非晶質二次元材料の厚さを決定するためにレーザーパルスの数を制御する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記基板をデバイスフィーチャーでフォトリソグラフィーパターニングして、パターニングされた基板を作成する工程を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記非晶質二次元材料を堆積する工程が、前記パターニングされた基板上で、前記基板をパターニングした後に前記非晶質二次元材料を堆積する工程を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基板をパターニングする工程が、前記非晶質二次元材料を結晶化した後に前記基板をパターニングする工程を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記二次元単層又は数層上にソース電極及びドレイン電極を堆積する工程を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記基板にソース電極及びドレイン電極を付着させる工程を更に含み、前記非晶質二次元材料を堆積する工程は、前記非晶質二次元材料を前記ソース電極又は前記ドレイン電極上に堆積する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記二次元材料の表面を前記生体認識要素で活性化する工程が、
前記二次元材料の表面に、11-メルカプトウンデカン酸を含む化学リンカーを取着する工程と、
前記化学リンカーを前記表面に取着した後に前記化学リンカーを活性化する工程と、
前記化学リンカーを活性化した後に前記生体認識要素を取着する工程と
を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)(35 U.S.C.§119(e))の下、参照によりそのそれぞれの開示全体が本明細書に組み込まれている、2020年11月10日に出願された米国仮出願第63/111,892号及び2021年9月17日に出願された米国仮出願第63/245,444号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
病原体によって引き起こされる新興感染症は、世界的な脅威である。例えば、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)により生じた新規なコロナウイルス疾患(COVID-19)は、ほとんどの大陸に急速に拡がり、2020年3月にパンデミックとして分類された。典型的には、利用可能なCOVID-19検出用の唯一特異的な診断試験は、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)である。いくつかのタイプのRT-PCR SARS-CoV-2キットが製造され承認されてきているが、しかしながらRT-PCR試験は非常に時間がかかる。
【0003】
電界効果トランジスター(FET)は、潜在的な選択的バイオセンサーとして研究されてきた。例えばグラフェンをベースにしたFETバイオセンサーは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を同定するのに使用されてきた。グラフェンは高い電子移動度を有するが、グラフェンのゼロに近いバンドギャップにより、グラフェンをベースにしたバイオセンサーでのオフ状態の電流漏洩が増大する可能性があり、擬似信号がもたらされる可能性がある。
【0004】
半導体二次元(2D)材料、例えば2D遷移金属ジカルコゲナイドも、潜在的なバイオセンシングの用途に関して研究されてきた。化学気相成長(CVD)又は分子線エピタキシー(MBE)等の2D材料を製造するための典型的な技法は、フォトリソグラフィー技法と相容れることができない。例えばCVDは、典型的には比較的高い温度で動作し、これはフォトリソグラフィーと相容れるものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様によれば、試料中の病原体を検出する電界効果トランジスターバイオセンサーは、基板及び基板に連結されたチャネルを含む。チャネルは、生体認識要素で官能化される二次元単層又は数層の金属カルコゲナイドを含む。一部の実施形態では、生体認識要素は抗体を含む。
【0006】
一部の実施形態では、バイオセンサーは、生体認識要素を二次元単層金属カルコゲナイドに取着するプローブリンカーを更に含む。一部の実施形態では、プローブリンカーは、金属カルコゲナイドの表面の空孔欠陥に結合する。
【0007】
一部の実施形態では、バイオセンサーは、イオン性溶液に連結されたゲート電極を更に含み、このイオン性溶液は、二次元単層金属カルコゲナイドと接する。一部の実施形態では、イオン性溶液は試料と混合される。
【0008】
一部の実施形態では、二次元単層又は数層の金属カルコゲナイドは、遷移金属ジカルコゲナイドを含む。一部の実施形態では、遷移金属ジカルコゲナイドは、MX1.5~2の組成を有する。一部の実施形態では、遷移金属ジカルコゲナイドは、二セレン化タングステンを含む。
【0009】
一部の実施形態では、二次元単層又は数層の金属カルコゲナイドは、金属モノカルコゲナイドを含む。一部の実施形態では、金属モノカルコゲナイドは、MX0.75~1の組成を有する。
【0010】
一部の実施形態では、バイオセンサーは、ソース電極及びドレイン電極を更に含む。電極はチャネルに連結される。一部の実施形態では、ソース電極及びドレイン電極のそれぞれは、複数の櫛型フィンガーを含む。
【0011】
別の態様によれば、試料中の病原体を検出する電界効果トランジスターバイオセンサーを製造するための方法は、非晶質二次元材料をパルスレーザーアブレーションで基板上に堆積することと、非晶質二次元材料を結晶化して、基板に連結された二次元単層又は数層を生成することと、非晶質二次元材料を結晶化した後に、病原体検出のため生体認識要素で二次元材料の表面を活性化することとを含む。
【0012】
一部の実施形態では、非晶質二次元材料を堆積することは、非晶質二次元材料を室温で堆積することを含み、非晶質二次元材料を結晶化することは、非晶質二次元材料を加熱炉で結晶化することを含む。一部の実施形態では、非晶質二次元材料を室温で堆積することは、非晶質二次元材料を150℃よりも低い動作温度で堆積することを含む。
【0013】
一部の実施形態では、二次元材料は、組成上調整可能な遷移金属ジカルコゲナイドを含む。一部の実施形態では、遷移金属ジカルコゲナイドはMX1.5~2の組成を有する。
【0014】
一部の実施形態では、二次元材料は、調整可能な金属モノカルコゲナイドを含む。一部の実施形態では、金属モノカルコゲナイドは、MX0.75~1の組成を有する。
【0015】
一部の実施形態では、非晶質二次元材料をパルスレーザーアブレーションで基板上に堆積することは、非晶質二次元材料の厚さを決定するためレーザーパルスの数を制御することを含む。
【0016】
一部の実施形態では、方法は、基板をデバイスフィーチャー(device feature)でフォトリソグラフィーパターニングして、パターニングされた基板を作成することを更に含む。一部の実施形態では、非晶質二次元材料を堆積することは、パターニングされた基板上で、基板をパターニングした後に非晶質二次元材料を堆積することを含む。一部の実施形態では、基板をパターニングすることは、非晶質二次元材料を結晶化した後に基板をパターニングすることを含む。
【0017】
一部の実施形態では、方法は、二次元単層又は数層上にソース電極及びドレイン電極を堆積することを更に含む。一部の実施形態では、方法は、基板にソース電極及びドレイン電極を付着させることを更に含み、非晶質二次元材料を堆積することは、非晶質二次元材料をソース電極又はドレイン電極上に堆積することを含む。
【0018】
一部の実施形態では、二次元材料の表面を生体認識要素で活性化することは、二次元材料の表面に化学リンカーを取着することと、化学リンカーを表面に取着した後に化学リンカーを活性化することと、化学リンカーを活性化した後に生体認識要素を取着することとを含む。一部の実施形態では、化学リンカーは11-メルカプトウンデカン酸を含む。
【0019】
本開示に記述される概念は、例として示されるものであり、添付される図において限定しようとするものではない。例示を単純化し明瞭にするために、図に示される要素は必ずしも縮尺を合わせて描かれていない。例えば、いくつかの要素の寸法は、明瞭化するためのその他の要素に対して誇張される可能性がある。更に、適切と見なされる場合には、対応する又は類似する要素を示すために図の中で参照標識が繰り返されている。詳細な記述は、特に、添付される図に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】二次元材料を使用するバイオセンサーデバイスの、単純化された平面図である。
図2図1のバイオセンサーデバイスの、単純化された正面図である。
図3図1図2のバイオセンサーデバイスの二次元材料単層の、単純化された断面詳細図である。
図4図1図3のバイオセンサーデバイスの官能化二次元材料単層の、単純化された断面詳細図である。
図5図1図4のデバイスにより実現され得る試験結果を例示するプロットである。
図6図1図4のデバイスの少なくとも1つの実施形態の詳細図である。
図7図1図4のデバイスの少なくとも1つのその他の実施形態の詳細図である。
図8図1図4及び図7のバイオセンサーデバイスを製造するための方法を例示する、単純化された概略図である。
図9図8の製造方法の1つの例示的な実施形態の、単純化された流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の概念は、様々な修正及び代替形態を許容可能であるが、それらの特定の例示的な実施形態を、図面に例として示しており、本明細書ではそれらについて詳述する。しかしながら、開示される特定の形態に本開示の概念を限定するものではなく、それとは対照的に本開示の趣旨及び範囲内に含まれる全ての修正例、等価物、及び代替例を包含するものであることを理解すべきである。
【0022】
本明細書で「一実施形態」、「実施形態」、「例示的な実施形態」等と言及する場合、記述される実施形態は、特定の特色、構造、又は特徴を含み得るが全ての実施形態は必ずしも特定の特色、構造、又は特徴を含まなくてもよいことを示す。更に、そのような文言は必ずしも同じ実施形態を指さない。更に、特定の特色、構造、又は特徴が実施形態に関連して記述されるとき、明示的に記述されてもそうでなくても、その他の実施形態に関連したそのような特色、構造、又は特徴を有効にする当業者の知識の範囲内にあることが、考えられる。
【0023】
次に図1及び図2を参照すると、バイオセンサーデバイス100の、1つの例示的な実施形態の単純化された概略図が示されている。バイオセンサー100は、COVID-19の原因であるSARS-CoV-2コロナウイルス等の病原体に結合する生体認識要素を含む、電界効果トランジスター(FET)である。図2に示されるように、バイオセンサーデバイス100は、表面に二酸化ケイ素(SiO)層があるバルクシリコン等の半導体として具現化され得る基板102を含む。官能化金属カルコゲナイド2D材料104は、基板102上に位置決めされる。2D材料104は、2D材料の単層又は結晶化材料の数層(即ち、2D材料の数層)として具現化され得る。したがって2D材料104は、単に数原子の厚さ(例えば、3原子、6原子、2原子、4原子、又は別の比較的小さい数の原子の厚さ)であってもよい。2D材料104は、例示的に遷移金属ジカルコゲナイドであり、より詳細にはセレン化タングステン(WSe)の単層である。他の実施形態では、2D材料104は、異なる遷移金属ジカルコゲナイド(MX)、金属モノカルコゲナイド(MX)、又はその他の2D金属カルコゲナイドであってもよい。加えて、以下に更に記述されるように、2D材料104は、調整された化学組成を有していてもよい。2D材料104は、以下に更に記述される生体認識要素の付加によって官能化される。
【0024】
図1及び図2を再び参照すると、バイオセンサーデバイス100は更に、2D材料104上に形成された1対の櫛型電極106、108を含む。電極106、108のそれぞれは、金、チタン、銅、アルミニウム、又は別の金属性材料として具現化され得る。例示的に、電極106は、コンタクトパッド110と、コンタクトパッド110から離れて延びるトレース112を含む。多数のフィンガー114がトレースから離れて電極108に向かって延びる。同様に電極108は、コンタクトパッド116と、コンタクトパッド116から離れて延びるトレース118を含む。多数のフィンガー120が、トレース118から離れて電極106に向かって延びる。上述のように、それぞれの電極106、108のフィンガー114、120は、櫛型になっており、バイオセンサーデバイス100全体にわたって互いに交互になっている。例示的に、電極106、108のフィンガー114、120のそれぞれは、約30μmのチャネル幅で分離されていてもよい。以下に更に記述されるように、このチャネル幅は、2D材料104の1つ又は複数の結晶により架橋されて、FETベースのバイオセンサーデバイス100のチャネルを形成していてもよい。ソース電極106及びドレイン電極108の櫛型配置構成は、検出領域を増大し得る。当然ながら、他の実施形態では、FETバイオセンサー用の電極106、108の任意の適切な幾何形状が使用され得る。
【0025】
図示されるように、イオン性ゲート溶液122が、電極106、108上に位置決めされ且つ2D材料104と接してもよい。イオン性ゲート溶液122は、脱イオン水に溶かした0.01×リン酸緩衝生理食塩液(PBS)等のイオン性溶液として具現化され得る。病原体を潜在的に含む試料は、曝露及び検出プロセスを行うためにイオン性ゲート溶液122に直接添加され得る。
【0026】
使用中、電極106、108のそれぞれは、FETベースのバイオセンサーデバイス100用のソース電極又はドレイン電極として作用し得る。例示的に、電極106はソース電極106と呼ばれ、電極108はドレイン電極108と呼ばれるが、しかしながらその他の実施形態では、電極106、108の役割は逆にしてもよい。電極106、108の間に位置決めされた2D材料104は、FETベースのバイオセンサーデバイス100のチャネルとして作用し得る。イオン性ゲート溶液122は、ゲートとして作用してもよい。特に、電圧が電極106、108に印加されてもよく、ゲート電極(図示せず)は、バイオセンサーデバイス100を能動化するために電圧をイオン性ゲート溶液122に印加してもよい。センサーデバイス100の電気輸送特性の変化(例えば、電極106、108の間を通過する電流)を使用して、ゲート溶液122中の病原体の存在を検出してもよい。特に、病原体粒子と2D材料104の官能化表面との相互作用は、2D材料104の電気輸送特性を修正でき、したがってFETベースのバイオセンサーデバイス100のチャネルを通過した電流に変化がもたらされる。
【0027】
上述のように、2D材料104は、特定の病原体を検出するように官能化される。次に図3を参照すると、官能化前の結晶化2D材料単層124の断面図が示される。例示的な2D材料単層124は、遷移金属ジカルコゲナイド(TMDC)であり、より詳細には二セレン化タングステン(WSe)の単層である。更に又は代わりに、単層124として図3図4に示されているが、一部の実施形態では、2D材料104がWSe又はその他のTMDCの数層として具現化され得ることを理解すべきである。図3に示されるように、2D材料単層124は、基板102の表面に吸着される結晶化単層である。結晶化単層124は、例示的に、その外面に多数の空孔126を含む。各空孔126は、原子(例えば、セレン原子)が規則的な結晶構造から失われている結晶格子の場所を表す。これらの空孔126は、結晶化単層124によってp型半導体の性質を示すことが可能になる。結晶化単層124に存在する空孔126の数は、図8図9に関連して以下に更に記述されるように、結晶化単層124を製造するのに使用される2D材料の組成を調整することによって制御され得る。
【0028】
次に図4を参照すると、官能化されてきた2D材料104の断面図が示される。結晶化2D材料単層124は、リンカー化学物質128を2D単層124の表面に取着することによって官能化される。例示的に、リンカー化学物質128は、11-メルカプトウンデカン酸(MUA)である。図示されるように、リンカー128は、化学吸着プロセスを経て2D単層124の空孔126に取着され得る。特に、MUA分子のSH末端の硫黄イオンは、WSe結晶のセレン空孔に結合し得る。リンカー128は、物理吸着を経て2D材料単層124の表面に取着されてもよく、その場合MUA分子は、その他の分子及び2D材料単層124表面とのファンデルワールス相互作用によって引き付けられる。したがってMUAリンカー128は、自己組織化単層を、結晶化材料単層124上に形成する。MUAリンカー128及び2D単層124は、基板102の上方約2.8nmの平均高さを有していてもよく、これはMUAリンカー128が、図4に示されるように垂直の向きに自己組織化されることを示している。次に、リンカー128の自由端が生体認識要素130に取着され、その例示的な実施形態は抗体130である。より詳細には、抗体130は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対するモノクローナル抗体である。検出プロセス中、抗体130は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質等の病原体粒子132又はウイルス粒子全体に結合してもよい。SARS-CoV-2抗体130として例示されるが、生体認識要素130は、任意のその他の抗体、リガンド、又はその他の生体認識要素として具現化され得ることを理解すべきである。
【0029】
使用中、バイオセンサーデバイス100は、試料中のSARS-CoV-2スパイクタンパク質の存在を検出するのに使用されてもよい。次に図5を参照すると、プロット500は、デバイス100によって実現され得る試料結果を示す。デバイス100は、例示的に、ドレイン電極108とソース電極106との間に1Vの電圧を印加することによって動作した。イオン性ゲート溶液122が存在する場、-0.5Vの電圧を、イオン性ゲート溶液122とソース電極106との間に印加した。ゲート溶液122からソース電極106に印加された正電圧は、デバイス100をオフにし、したがって検出に使用されない。
【0030】
デバイス100を特徴付けるため、純粋なイオン性液体の一連の液滴(それぞれ8μLの0.01×PBS)をデバイス100に滴下し、ソース電極106とドレイン電極108との間の電流を測定した。プロット500の曲線502は、純粋なイオン性ゲート溶液122に関して測定された電流を示す。ピーク506、508、510は、純粋なイオン性ゲート溶液122の液滴の、デバイス102への添加に該当する。図示されるように、曲線502に関するピーク506、508、510のそれぞれは、比較的低く、元のゼロに向かって減衰する。
【0031】
検出は、濃度を上昇させてSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むイオン性溶液の一連の液滴を滴下し(それぞれ8μL)、ソース電極106とドレイン電極108との間の電流を測定することによって、試験した。プロット500の曲線504は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を含むイオン性溶液に関して測定された電流を示す。ピーク506、508、510は、それぞれ25fg/μL、200fg/μL、及び1.66pg/μLのSARS-CoV-2スパイクタンパク質濃度を含む液滴の添加に該当する。図示されるように、曲線504に関するピーク506、508、510は、比較的高く、電流の明瞭な段階的増加を示す。更に、電流は、スパイクタンパク質のより高い濃度に関して増加し続けた(図示せず)。WSe結晶のセレン空孔126上のMUA分子の化学吸着は、p型半導体挙動を低減させることによって伝導率を低下させ得ると考えられる。次いで伝導率は、SARS-CoV-2抗体及びスパイクタンパク質の添加後に増加し、これは電荷輸送プロセスに起因し得る。
【0032】
したがってプロット500は、0.01×PBS中、25fg/μLよりも低い濃度での、バイオセンサーデバイス100によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質の首尾良くなされた検出を示す。追加の試験は、SARS-CoV-2に対するバイオセンサーデバイス100の選択的応答を実証した。例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)を含む試料に関する電流応答は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を含む試料に関する応答と比較して無視でき、これはSARS-CoV-2の選択的検出を示している。したがってバイオセンサーデバイス100は、試料中のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を検出することが可能であり、したがってin vitroでのSARS-CoV-2の迅速で感受性ある選択的検出を提供し得る。更に、バイオセンサーデバイス100は、種々の病原体、サイトカイン、タンパク質、又はその他のバイオマーカーをターゲットとする種々の生体認識要素118(例えば、種々の抗体)で使用され得る。
【0033】
次に図6を参照すると、バイオセンサーデバイス600の、1つの可能性ある実施形態の詳細図が示される。バイオセンサーデバイス600は、バイオセンサーデバイス100の例示的な実施形態であり、2D材料104が、化学気相成長(CVD)プロセスを使用して基板102上で結晶として成長している。図示されるように、2D材料104は、三角形のWSe結晶を基板102の表面に形成する。結晶は、基板102上でランダムに分布され、各結晶は約20~40μmの幅を有する。ソース電極106のフィンガー114及びドレイン電極108のフィンガー120の両方に接触する各2D材料104結晶は、バイオセンサーデバイス600のチャネルとして作用し得る。したがって、2D材料104結晶の分布は個々のバイオセンサーデバイス600間で様々になるので、各バイオセンサーデバイス600のチャネル構成及び電極特性も様々である。したがって各バイオセンサーデバイス600は、図5に関連して上記にて説明されたように、試料を分析する前に、イオン性ゲート溶液122として純粋なイオン化液体を使用して較正され得る。
【0034】
次に図7を参照すると、バイオセンサーデバイス700の別の可能性ある実施形態の詳細図が示されている。バイオセンサーデバイス700は、パルスレーザー堆積プロセスを使用して製造されたバイオセンサーデバイス100の例示的な実施形態である。デバイス700を製造するための方法の1つの可能性ある実施形態を、図8及び図9と関連して以下に記述する。例示的なバイオセンサーデバイス700は、電極106、108の間で基板102全体を覆う2D材料104を含む。2D材料104は、例えば、基板102全体を覆う単一WSe結晶であってもよい。上述のように、2D材料104は、WSe結晶の単層又はWSe結晶の数層を含んでいてもよい。したがって図7に示される実施形態において、電極106、108のフィンガー114、120の間の2D材料104全体は、バイオセンサーデバイス700のチャネルとして作用し得る。したがって、個々のバイオセンサーデバイス700のそれぞれは類似の電子特性を有していてもよく、単一の所定の較正を、個々のバイオセンサーデバイス700の全てに使用してもよい。更に、チャネルとして作用し得る2D材料104の更に大きい相対表面積に起因して、デバイス700は、図6に示される該当するデバイス600よりも感受性が高くなる可能性がある。
【0035】
次に図8を参照すると、図800は、バイオセンサーデバイス100を製造するように使用され得るパルスレーザーアブレーション(PLA)/パルスレーザー堆積(PLD)プロセスを例示する。調製された基板102が、真空チャンバー802内に配置される。基板102は、真空チャンバー802に配置される前に、1つ又は複数のデバイスフィーチャー(例えば、ソース、ドレイン、チャネル等)がフォトリソグラフィーによってパターニングされていてもよい。二次元材料ターゲット804を、真空チャンバー802のターゲットカルーセル806上に配置する。二次元材料ターゲット804は、2D材料104を形成することになる元素、例えばタングステン及びセレン又はその他の金属及びカルコゲナイド原子を含む。ターゲット804の組成は調整可能である。例えば、遷移金属ジカルコゲナイドでは、ターゲット804の組成がMX1.5~MXの間で様々であってもよい。
【0036】
レーザー808は、真空チャンバー802の窓810を通してターゲット804を狙う。レーザー808は、例示的にエキシマレーザー(KrF 248nm、20nsパルス幅、及びフルエンス2J/cm)である。使用中、レーザー808は、ターゲット804をアブレーションするいくつかのレーザーパルスを実行する。このアブレーションは、二次元材料の非晶質前駆体812を基板102上に堆積させる。非晶質前駆体812は、更に以下に記述される結晶化単層又は数層104に形成され得る、正確な量の化学量論的非晶質2D材料を含む。非晶質前駆体812の厚さは、レーザー808により実行されたパルスの数を制御することによって、制御され得る。PLDプロセスは、室温で又はその付近で行われてもよい(例えば、約150℃よりも低い温度で)。したがってPLDプロセスは、パターニングされた基板102上で行われてもよく、そうでない場合にはフォトリソグラフィープロセスと適合可能である。
【0037】
したがって、図8に示され且つ図9に関連した以下に更に記述されるPLDプロセスは、それらの化学組成、物理的寸法、及び成長部位の精密な制御による、2D層状化結晶及び混成構造の制御された成長のための固体状態の前駆体として、化学量論的非晶質材料の形成を可能にし得る。したがって本明細書に記述されるプロセスは、従来の気相成長とは対照的に、2D材料及び混成構造のより決定的な、改善された成長を提供し得る。更に、フォトリソグラフィープロセス等のデバイス製作技術との適合性に起因して、本明細書に記述される製造技法は、2D量子材料の、現行の及び関連ある将来の技術との一体化を可能にし得る。
【0038】
次に図9を参照すると、バイオセンサーデバイス100を製作するのに使用され得る方法900の1つの例示的な実施形態が、単純化された流れ図として示されている。方法900は、一連のブロック902~924として例示され、そのいくつかは、一部の実施形態で任意選択で行われてもよい(したがって、破線で示されている)。方法900の一部の実施形態は、追加の又は異なるプロセス及びサブプロセス、例えば様々な前処理及び後処理技法を含んでいてもよいことが、当業者に理解されよう。
【0039】
方法900は、ウェハ基板102にフォトリソグラフィーで1つ又は複数のデバイスフィーチャーがパターニングされる、ブロック902で開始され得る。基板102は、二酸化ケイ素コーティングを持つシリコンウェハ、例えば4インチ-ウェハとして具現化されてもよい。ウェハ基板102には、ソース、ドレイン、チャネル、又はその他のデバイス幾何形状等のトランジスターフィーチャーを含むデバイスフィーチャーがパターニングされてもよい。一部の実施形態では、生体認識デバイス100の多数の実例が同じウェハ基板102上にパターニングされ得る。パターニング後、ウェハ基板102は、デバイスフィーチャーを画定する、基板102の表面に位置決めされたフォトレジスト又はその他の化学物質を有していてもよい。パターニングした後に、基板102は、パターニングされた表面がターゲットカルーセル806に面した状態で、真空チャンバー802内に位置決めされる。
【0040】
ブロック904では、前駆体2D材料を含むターゲット804が、ターゲットカルーセル806に投入される。例えば、WSe等の遷移金属ジカルコゲナイドの1インチターゲットが、ターゲットカルーセル上に配置されてもよい。位置決めされたら、基板102を例えばターゲット804の上方約13センチメートルの場所に位置付けてもよい。一部の実施形態では、ブリロック906で、前駆体2D材料804の組成が調整され得る。特に、ターゲット804における特定の元素の比は、製作された2D材料104の所望の化学量論的組成を実現するために調節されてもよい。例えば、上記にて論じたように、リンカー化学物質128は、結晶化単層124の表面空孔126に結合されてもよい。したがって、ある特定の数の空孔126を持つ結晶化単層124を生成するために、カルコゲナイド原子の金属原子に対する比が低減されてもよい。WSe等の遷移金属ジカルコゲナイドに関する実施例を継続すると、ターゲット804の組成は、遷移金属原子ごとに1.5~2.0の間のカルコゲン原子を含むように調整されてもよい(即ち、MX1.5~MXの組成)。同様に、金属モノカルコゲナイドに関しては、ターゲット804の組成は、金属原子ごとに0.75~1.0の間のカルコゲン原子を含むように調整されてもよい(即ち、MX0.75~MXの組成)。
【0041】
ブロック908では、真空チャンバー802は、ウェハ基板102及びターゲット804に真空を印加する。真空チャンバー802は、例えば約10-6Torrまでポンプダウンしてもよい。
【0042】
ブロック910では、アブレーションレーザー808をターゲット804上にパルス照射する。レーザーパルスは、ターゲット804から2D前駆体材料812をアブレーションし、非晶質2D材料812をウェハ基板102の表面に堆積させる。一部の実施形態では、基板102上に堆積される非晶質2D材料の厚さは、レーザー808のパルスの数を制御することによって、制御され得る。
【0043】
ブロック914では、過剰な材料を除去するのにアセトンを使用して、基板102上でリフトオフプロセスが行われてもよい。リフトオフプロセスは、例えばフォトレジスト材料及び過剰な非晶質2D材料を除去し得る。リフトオフプロセスを行った後、パターニングされた非晶質2D材料は、基板102上に位置決めされたままになる。
【0044】
ブロック916では、非晶質2D材料前駆体812が、加熱炉で結晶化される。例えば非晶質2D材料前駆体812を含む基板102は、アルゴン緩衝ガス環境の制御された雰囲気中、3ゾーン石英管加熱炉でアニールされてもよい。結晶化温度は、生成されている特定の2D材料に依存し得る。例えば非晶質MoSナノシートは、450℃から700℃までの温度で、より詳細には約500℃の温度で結晶質構造に変換されてもよい。
【0045】
ブロック918では、1つ又は複数の電気コンタクトが、基板102及び/又は結晶化2D材料104上に、フォトリソグラフィープロセスを使用して堆積されてもよい。例えば、1つ又は複数の金の電気コンタクトが、クリーンルーム環境でポジフォトリソグラフィーを使用して堆積されてもよい。例示的に、ソース電極106及びドレイン電極108が、結晶化2D材料104上に堆積される。誘電体層、ゲートコンタクト、及びその他のフィーチャー等の追加のフィーチャーが、1つ又は複数のフォトリソグラフィープロセスを使用して堆積されてもよい。更に又は代わりに、単層又は数層104の堆積及び結晶化後に生じることが例示されるが、一部の実施形態では、1つ又は複数の電気コンタクト又はその他のフィーチャーは、2D材料104の堆積前に基板102上に堆積されてもよいことを、理解すべきである。
【0046】
ブロック920で、結晶化2D材料104は、生体認識要素で官能化される。例示的なプロセスでは、2D材料104は、リンカー化学物質128が2D材料104の表面に取着され、次いで生体認識要素130がリンカー化学物質128に取着される、2工程プロセスを使用して官能化される。ブロック922では、結晶化単層又は数層104の表面が、例示的に11-メルカプトウンデカン酸(MUA)であるリンカー化学物質128で修飾される。上述のように、MUA分子のSH末端は、カルコゲン原子と強力に相互作用し、好ましくはWSe結晶124の表面の空孔部位126と強力に作用し、したがってその表面に取着する。ブロック924では、MUA分子が活性化され、SARS-CoV-2抗体が活性化MUAに取着される。特に、MUA分子の上端カルボキシル基は、MUAアセンブリをn-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及び塩酸カルボジイミド(EDC)溶液に室温で曝露することにより、n-ヒドロキシスクシンイミドエステルを形成するよう活性化される。100mM/400mMであるNHSのEDCに対する体積比、及び6時間の曝露時間が、使用されてもよい。活性化後、デバイスをSARS-CoV-2溶液中に浸漬する。MUA分子の活性化エステルは、求核攻撃を受け易く、次いで抗体により提供されたアミノ基と反応することになり、アミド結合の形成に繋がる。2D材料104を官能化した後、バイオセンサーデバイス100が完成する。方法900は、ブロック902にループバックし、追加のバイオセンサーデバイス100が製造されてもよい。
【0047】
ある特定の例示的な実施形態が、図及び先の記述で詳述されてきたが、そのような図示及び記述は、例示的なものであり且つ特徴を制限するものではないと見なされるものとし、単なる例示的な実施形態が図示され記述されており、且つ本開示の趣旨の範囲内に包含される全ての変更及び修正が保護されることが望まれると理解される。本明細書に記述される装置、システム、及び方法の様々な特色から生じる本開示の複数の利点がある。本開示の装置、システム、及び方法の代替の実施形態は、記述される特色の全てを含まなくてもよく、それでも依然としてそのような特色の利点の少なくともいくつかから利益を得ることに留意されたい。当業者は、本開示の特色の1つ又は複数を組み込んだ装置、システム、及び方法のそれら自体の実現例を容易に考えられる。
【符号の説明】
【0048】
100 バイオセンサーデバイス
102 基板
104 2D材料
106 電極
108 電極
110 コンタクトパッド
112 トレース
114 フィンガー
116 コンタクトパッド
118 トレース
120 フィンガー
122 ゲート溶液
124 2D材料単層
126 空孔
128 リンカー化学物質
130 抗体
132 病原体粒子
500 プロット
502 プロット500の曲線
504 プロット500の曲線
506 曲線504に関するピーク
508 曲線504に関するピーク
510 曲線504に関するピーク
600 バイオセンサーデバイス
700 バイオセンサーデバイス
802 真空チャンバー
804 二次元材料ターゲット
806 ターゲットカルーセル
808 アブレーションレーザー
810 真空チャンバー802の窓
812 非晶質前駆体
900 方法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】