(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(54)【発明の名称】供給原料からポリ(HIBA)を産生可能な微生物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20231114BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20231114BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20231114BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231114BHJP
C12P 7/625 20220101ALI20231114BHJP
C12P 7/40 20060101ALI20231114BHJP
C12N 15/52 20060101ALI20231114BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20231114BHJP
C12P 7/62 20220101ALI20231114BHJP
C12P 7/52 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C12N15/31
C12N9/00 ZNA
C12N9/10
C12N1/21
C12P7/625
C12P7/40
C12N15/52 Z
C12N15/54
C12P7/62
C12P7/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552159
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 US2021058728
(87)【国際公開番号】W WO2022103799
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523171102
【氏名又は名称】インダストリアル マイクロブス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クラーク, エリザベス ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】グリーンフィールド, デレク ロリン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン, ノア チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ロス, ティモシー ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ズヴォヴァ, ニアラゾ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AD06
4B064AD13
4B064AD61
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA16
4B065AA01Y
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4B065AA26X
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4B065AA45Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA10
4B065CA11
4B065CA12
4B065CA27
4B065CA60
(57)【要約】
本開示は、供給原料からポリ(ヒドロキシイソ酪酸)(ポリ(HIBA))を産生可能な微生物、及び供給原料からポリ(HIBA)と、メタクリル酸(MAA)と、メタクリレートエステル(MAE)とを産生する方法に関する。本明細書では、MAAまたはポリ(2-HIBA)もしくはポリ(3-HIBA)を産生するための商業的に実行可能な方法を、操作された微生物の形態で提供する。第1の態様は、CoA-リガーゼ及びPHAポリメラーゼを含み、またはそれからなり、供給原料からポリ(HIBA)を産生可能である、操作された微生物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CoA-リガーゼ及びPHAポリメラーゼを含み、供給原料からポリ(HIBA)を産生可能である、操作された微生物。
【請求項2】
前記ポリ(HIBA)が、ポリ(2-HIBA)及び/またはポリ(3-HIBA)を含む、請求項1に記載の操作された微生物。
【請求項3】
前記CoA-リガーゼが、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸-CoAシンテターゼ(ICS)(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの1つ以上に対し少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1に記載の操作された微生物。
【請求項4】
前記PHAシンターゼが、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)に対し少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1に記載の操作された微生物。
【請求項5】
前記操作された微生物が、前記供給原料からヒドロキシイソ酪酸(HIBA)を産生するための操作された経路をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の操作された微生物。
【請求項6】
前記供給原料が、メタン、エタン、プロパン、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセロール、グルコース、コハク酸、及びこれらの組合せを含む、請求項5に記載の操作された微生物。
【請求項7】
前記HIBAが、2-ヒドロキシイソ酪酸(2-HIBA)及び/または3-ヒドロキシイソ酪酸(3-HIBA)を含む、請求項5に記載の操作された微生物。
【請求項8】
前記操作された経路が、MMO、ADH、ACDH、及び/またはアセチル-CoAシンターゼを含む、またはそれからなる、請求項5に記載の操作された微生物。
【請求項9】
前記操作された経路が、スリーピングビューティームターゼ(Sbm)をさらに含む、またはそれからなる、請求項5に記載の操作された微生物。
【請求項10】
前記操作された経路が、メチルマロニル-CoAレダクターゼ(mmcr)をさらに含む、またはそれからなる、請求項9に記載の操作された微生物。
【請求項11】
前記操作された微生物が、Escherichia coliである、請求項1に記載の操作された微生物。
【請求項12】
供給原料からポリ(ヒドロキシイソ酪酸)(ポリ(HIBA))を産生する方法であって、前記方法が、
1)前記供給原料を含む栄養培地を準備することと、
2)操作された微生物を前記栄養培地中で培養することであって、前記操作された微生物が、CoA-リガーゼ及びポリヒドロキシアルカン酸(PHA)ポリメラーゼを含む、培養することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記ポリ(HIBA)が、ポリ(2-ヒドロキシイソ酪酸)(ポリ(2-HIBA))及び/またはポリ(3-ヒドロキシイソ酪酸)(ポリ(3-HIBA))を含む、またはそれからなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記CoA-リガーゼが、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸-CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記PHAシンターゼが、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの1つ以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記操作された微生物が、前記供給原料からヒドロキシイソ酪酸(HIBA)を産生するための操作された経路をさらに含む、またはそれからなる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記供給原料が、メタン、エタン、プロパン、メタノール、エタノール、プロパノール、及びこれらの組合せを含む、またはそれからなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記HIBAが、2-ヒドロキシイソ酪酸(2-HIBA)及び/または3-ヒドロキシイソ酪酸(3-HIBA)を含む、またはそれからなる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記操作された経路が、MMO、ADH、ACDH、及び/またはアセチル-CoAシンターゼを含む、またはそれからなる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記操作された経路が、スリーピングビューティームターゼ(Sbm)をさらに含む、またはそれからなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記操作された経路が、メチルマロニル-CoAレダクターゼ(mmcr)をさらに含む、またはそれからなる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(i)前記栄養培地から前記微生物を分離することと、(ii)任意選択で、前記微生物から前記ポリ(HIBA)を抽出することと、(iii)前記ポリ(HIBA)を、約150℃~約450℃の範囲の温度に約0.5~120分の期間の間加熱して、メタクリル酸(MAA)を産生することとをさらに含む、請求項12~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記MAAをアルコールによりエステル化して、メタクリレートエステル(MAE)を産生することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリ(HIBA)を前記栄養培地から分離することと、前記ポリ(HIBA)を脱重合して前記HIBAにすることと、触媒を用いて前記HIBAを変換して、メタクリル酸(MAA)を産生することとをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、米国仮出願第63/112,093号(2020年11月10日出願、表題「Production of Methacrylic Acid and Methacrylate Esters」)及び米国仮出願第63/176,027号(2021年4月16日出願、表題「Production of Methacrylic Acid and Methacrylate Esters」)の優先権及び利益を主張し、これらの文献の内容全体は、参照により本明細書に援用及び依拠される。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、当該配列表の全体が参照により本明細書に援用される。前述のASCIIコピーは2021年11月5日に作成され、名称は1107367_00025_SL.txt、サイズは226,241バイトである。
【0003】
分野
本開示は、供給原料からポリ(ヒドロキシイソ酪酸)(ポリ(HIBA))を産生可能な微生物、及び供給原料からポリ(HIBA)と、メタクリル酸(MAA)と、メタクリレートエステル(MAE)とを産生する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
メタクリル酸(MAA)及びメタクリレートエステル(MAE)は、大規模に産生される有用な化学物質である。毎年100万トンを超えるメタクリル酸及びメタクリレートエステルが産生されている。これらの化学物質は、一般的な用途(例えば、ガラスの軽量代替物としてのプラスチックアクリルガラス)に使用されている。
【0005】
MAA及びMAEを作製するためのいくつかの方法が存在する(例えば、Mahboub et al.,“Catalysis for the synthesis of methacrylic acid and methyl methacrylate”,Chem.Soc.Rev.,Issue 20,2018,DOI:10.1039/c8cs00117kを参照(当該文献は、参照により全体として本明細書に援用される))。ただし、残念ながらこれらの方法は、結果的に温室効果ガスを大量放出することになる。
過去の研究により、3-ヒドロキシプロピオン酸の重合体は、熱分解プロセスを用いてアクリル酸に変換し、続いて蒸留によってアクリル酸蒸気を取得し、次いでこれを高純度で凝縮することができることが示されている(例えば、WO2013/185009を参照(当該文献は、参照により全体として本明細書に援用される))。他の研究者は、MAAの潜在的な前駆体としての2-ヒドロキシイソ酪酸(2-HIBA)及び3-ヒドロキシイソ酪酸(3-HIBA)の生物学的産生用に、操作された微生物の発酵を用いて研究している(例えば、米国特許第8241877号を参照(当該文献は、参照により全体として本明細書に援用される))。
しかし、MAAまたは2-HIBAまたは3-HIBAを生物学的に産生するための商業的に実行可能な方法を首尾よく開発した者は、まだ存在しない。その理由は、おそらくは微生物に対しMAAが毒性を有すること、発酵プロセスからの産物の精製に関連するコストが高いこと、供給原料(例えば、砂糖)に関連するコストが高いこと、及び供給原料から産物への変換効率によるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/185009号
【特許文献2】米国特許第8241877号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Mahboub et al.,“Catalysis for the synthesis of methacrylic acid and methyl methacrylate”,Chem.Soc.Rev.,Issue 20,2018,DOI:10.1039/c8cs00117k
【発明の概要】
【0008】
概要
本明細書では、MAAまたはポリ(2-HIBA)もしくはポリ(3-HIBA)を産生するための商業的に実行可能な方法を、操作された微生物の形態で提供する。
【0009】
第1の態様は、CoA-リガーゼ及びPHAポリメラーゼを含み、またはそれからなり、供給原料からポリ(HIBA)を産生可能である、操作された微生物に関する。いくつかの実施形態において、ポリ(HIBA)は、ポリ(2-HIBA)及び/またはポリ(3-HIBA)を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、CoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸-CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、PHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0010】
いくつかの実施形態において、CoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、PHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0011】
いくつかの実施形態において、供給原料は、メタン、エタン、プロパン、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセロール、グルコース、脂肪酸、コハク酸、及びこれらの組合せを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、HIBAは、2-ヒドロキシイソ酪酸(2-HIBA)及び/または3-ヒドロキシイソ酪酸(3-HIBA)を含む、またはそれからなる。
【0012】
いくつかの実施形態において、操作された微生物は、供給原料からヒドロキシイソ酪酸(HIBA)を産生するための操作された経路をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、MMO、ADH、ACDH、及び/またはアセチル-CoAシンターゼを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、スリーピングビューティームターゼ(Sbm)をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、メチルマロニル-CoAレダクターゼ(mmcrまたはmcr)をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上の内在性酵素を修飾することを含む、またはそれからなる。
【0013】
いくつかの実施形態において、操作された微生物は、Escherichia coliである。
【0014】
第2の態様は、供給原料からポリ(ヒドロキシイソ酪酸)(ポリ(HIBA))を産生するための方法であって、当該方法が、1)供給原料を含む栄養培地を準備することと、2)栄養培地中で操作された微生物を培養することであって、操作された微生物が、CoA-リガーゼ及びポリヒドロキシアルカン酸(PHA)ポリメラーゼを含む、またはそれからなる、培養することとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、ポリ(HIBA)は、ポリ(2-ヒドロキシイソ酪酸)(ポリ(2-HIBA))及び/またはポリ(3-ヒドロキシイソ酪酸)(ポリ(3-HIBA))を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、CoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸-CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、PHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0015】
いくつかの実施形態において、CoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、PHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0016】
いくつかの実施形態において、供給原料は、メタン、エタン、プロパン、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセロール、グルコース、脂肪酸、コハク酸、及びこれらの組合せを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、HIBAは、2-ヒドロキシイソ酪酸(2-HIBA)及び/または3-ヒドロキシイソ酪酸(3-HIBA)を含む、またはそれからなる。
【0017】
いくつかの実施形態において、操作された微生物は、供給原料からヒドロキシイソ酪酸(HIBA)を産生するための操作された経路をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、MMO、ADH、ACDH、及び/またはアセチル-CoAシンターゼを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、スリーピングビューティームターゼ(Sbm)をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、メチルマロニル-CoAレダクターゼ(mmcr)をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上の内在性酵素を修飾することを含む、またはそれからなる。
【0018】
いくつかの実施形態において、操作された微生物は、Escherichia coliである。
【0019】
いくつかの実施形態において、方法は、(i)栄養培地から微生物を分離することと、(ii)任意選択で、微生物からポリ(HIBA)を抽出することと、(iii)ポリ(HIBA)を、約150℃~約450℃の範囲の温度に約0.5~120分の期間の間加熱して、メタクリル酸(MAA)を産生することとをさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、方法は、MAAをアルコールによりエステル化してメタクリレートエステル(MAE)を産生することをさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、方法は、ポリ(HIBA)を栄養培地から分離することと、ポリ(HIBA)を脱重合してHIBAにすることと、触媒を用いてHIBAを変換してメタクリル酸(MAA)を産生することとをさらに含む、またはそれからなる。
【0020】
本開示の第3の態様は、供給原料からポリ(HIBA)への変換を触媒する第1の操作された経路でのCoA-リガーゼ及びポリヒドロキシアルカン酸(PHA)ポリメラーゼをコードする、1つ以上の第1のポリヌクレオチドを含む、またはそれからなる、核酸コンストラクトを提供する。いくつかの実施形態において、ポリ(HIBA)は、ポリ(2-HIBA)及び/またはポリ(3-HIBA)を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、CoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸-CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、PHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0021】
いくつかの実施形態において、供給原料は、メタン、エタン、プロパン、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセロール、グルコース、脂肪酸、コハク酸、及びこれらの組合せを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、HIBAは、2-ヒドロキシイソ酪酸(2-HIBA)及び/または3-ヒドロキシイソ酪酸(3-HIBA)を含む、またはそれからなる。
【0022】
いくつかの実施形態において、核酸コンストラクトは、供給原料からヒドロキシイソ酪酸(HIBA)への変換を触媒する操作されたHIBA経路での酵素(または操作されたHIBA経路酵素)をコードする1つ以上の第2のエレメントをさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上の第2のエレメントは、1つ以上の第1のポリヌクレオチドの一部である、またはそれと同じである。いくつかの実施形態において、1つ以上の第2のエレメントは、1つ以上の第1のポリヌクレオチドとは異なる1つ以上の第2のポリヌクレオチドである。
【0023】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、1つ以上の修飾を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上の修飾は、1つ以上のシャペロンタンパク質をコードし、かつそれを発現可能であるポリヌクレオチドを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上のシャペロンは、groEL及び/またはgroESを含む、またはそれからなる。
【0024】
いくつかの実施形態において、操作されたHIBA経路は、MMO、ADH、ACDH、及び/またはアセチル-CoAシンターゼを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作されたHIBA経路は、スリーピングビューティームターゼ(Sbm)をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作されたHIBA経路は、メチルマロニル-CoAレダクターゼ(mmcr)をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上の内在性酵素を修飾することを含む、またはそれからなる。
【0025】
いくつかの実施形態において、タンパク質は、操作された微生物内で十分な量で発現する。いくつかの実施形態において、操作された微生物は、Escherichia coliである。
【0026】
いくつかの実施形態において、CoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0027】
いくつかの実施形態において、PHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析による試料の分析結果であり、MAAが形成されたことを示している。
【0029】
【
図2】
図2は、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析による試料の分析結果であり、対照株からはMAAが形成されなかったことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての専門用語、表記、及びその他の科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有することが意図されている。場合によっては、一般的に理解されている意味を有する用語が、明快性のため、及び/またはすぐに参照できるように本明細書で定義されているが、このような定義を本明細書に含めることが、必ずしも、当技術分野で概して理解されているものとの相違を表すものと解釈されるべきではない。本明細書で説明または言及されている技法及び手順は、概して当業者に十分理解され、従来の方法論、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd ed.(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYに記載の広く利用されている分子クローニングの方法論を使用して一般的に用いられているものである。必要に応じて、市販のキット及び試薬の使用を伴う手順は概して、別段の記載がない限り、製造業者が定義するプロトコル及び/またはパラメーターに従って行われる。
【0031】
本明細書で使用する場合、文脈による別段の明確な指示がない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」には複数の指示対象が含まれる。
【0032】
「約」という用語は、指示値及びその値の上下の範囲を示し、包含する。ある特定の実施形態において、「約」という用語は、指定された値±10%、±5%、または±1%を示す。ある特定の実施形態において、「約」という用語は、指定された値±その値の1標準偏差を示す。
【0033】
「その組み合わせ」という用語は、その用語が指す要素のあらゆる可能な組み合わせを含む。
【0034】
本明細書で使用する場合、「ACDH」または「アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ」とは、アセトアルデヒドからアセチル-CoAへの変換を触媒する酵素である。1つの実施形態において、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼは、EC 1.2.1.10におけるアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼである。
【0035】
本明細書で使用する場合、「Acs」または「アセチル-CoAシンターゼ」または「ACS」とは、酢酸の代謝に関与するタンパク質、酵素、及び酵素複合体のクラスを指すものとする。アセチル-CoAシンテターゼ(EC 6.2.1.1)は、ATP依存的に酢酸をアセチル-CoAに活性化するリガーゼクラスに属する。1つの実施形態において、アセチル-CoAシンテターゼは、EC 6.2.1.1におけるアセチル-CoAシンターゼである。
【0036】
本明細書で使用する場合、「ADH」または「アルコールデヒドロゲナーゼ」または「ADHP」とは、エタノール活性中鎖アルコールデヒドロゲナーゼ/アセトアルデヒドレダクターゼを指すものとする。1つの実施形態において、アルコールデヒドロゲナーゼは、EC 1.1.1.1または1.1.1.2または1.1.2.8または1.1.3.13におけるアルコールデヒドロゲナーゼである。
【0037】
本明細書で使用する場合、「バイオマス」という用語は、微生物を培養下の成長に適切な条件下で培養するプロセスから生じる、細胞から構成された生物学的物質の集合を意味するように意図されている。ある場合には、バイオマスは単に細胞及びその内容物を含み、他の場合には、バイオマスは、細胞膜の境界外で培養物に分泌される巨大分子(例えば、タンパク質)を含む。
【0038】
本明細書で使用する場合、「炭素源」という用語は、培養物中の微生物が使用することができる、工業プロセスに投入される炭素原子を含む原材料を意味するように意図されている。
【0039】
本明細書で使用する場合、「シャペロン」、「タンパク質フォールディングシャペロン」、及び「フォールディングシャペロン」という用語は、ポリペプチド(アミノ酸)鎖の3次元構造へのフォールディングを改善する1つ以上のタンパク質を意味するように意図されている。タンパク質フォールディングシャペロンは、それらの基質(すなわち、他のタンパク質)が適切にフォールディングされるのを助け、しばしば溶解性を高めるのも助ける。ほとんどのタンパク質は、機能する上で特定の形状にフォールディングされなければならないため、タンパク質フォールディングシャペロンの発現により、細胞内のある特定の酵素の適切な集成を支援して、基質タンパク質の酵素活性を高めることができる。
【0040】
本明細書で使用する場合、「CoA」または「補酵素A」という用語は、活性酵素システムを形成するために多くの酵素(アポ酵素)の活性にその存在が必要とされる、有機補因子または補欠分子族(酵素の非タンパク質部分)を意味するように意図されている。補酵素Aは、ある特定の縮合酵素で機能し、アセチル基または他のアシル基の転移、脂肪酸の合成及び酸化、ピルビン酸の酸化、ならびに他のアセチル化において作用する。
【0041】
本明細書で使用する場合、「CoA-リガーゼ」とは、CoAと別の代謝産物との共有結合に関与するタンパク質、酵素、及び酵素複合体のクラス、例えばEC 6.2.1で指定されているものを指すものとする。1つの実施形態において、CoA-リガーゼ(例えば、EC 6.2.1に該当する酵素)活性は、HIBA(2-HIBA及び3-HIBAを含む)からHIBA-CoA(2-HIBA-CoA及び3-HIBA-CoAを含む)への変換に寄与する。CoA-リガーゼ酵素の例の一覧を表1に示す。
【0042】
本明細書で使用する場合、「培養」という用語は、実験室または工業的条件下での微生物の成長または維持を意味するように意図されている。微生物の培養は、微生物学の分野では標準的に行われている。
【0043】
本明細書で使用する場合、「操作」、「修飾」、「遺伝子改変」、「遺伝子改変された」、「遺伝子操作」、「遺伝子操作された」、「遺伝子修飾」、「遺伝子修飾された」、または「遺伝子調節」とは、互換的に使用されるものとし、例えば、所望される効果(例えば、所望される表現型)をもたらすように生物のゲノムまたは遺伝子を直接的または間接的に操作することを指すものとする。
【0044】
本明細書で使用する場合、「酵素」という用語は、化学反応を促進または触媒する分子または生物学的触媒を指すものとする。他の触媒と同様、酵素は、活性化エネルギーを低下させることによって反応速度が高まる。細胞内のほぼ全ての代謝プロセスは、生命の維持に十分な速度で代謝を行うのに酵素を必要とする。
【0045】
本明細書で使用する場合、「HIBA経路で操作された酵素」または「操作されたHIBA経路酵素」とは、1つ以上の酵素ステップを用いて供給原料または基質化学物質(単数または複数)から産物化学物質HIBA(2-HIBA及び/または3-HIBAを含む)への変換を触媒する酵素の集合を意味するものとする。HIBA経路で操作される酵素は、本明細書では、限定されるものではないが、MMO、ADH、ACDH、Sbm、及びmmcrのうちの1つ以上複数を含む、またはそれからなる酵素の集合であるように意図されている。いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上の内在性酵素を修飾することを含む、またはそれからなる。
【0046】
本明細書で使用する場合、「エタン」とは、化学式C2H6を有する有機化合物を指すものとする。
【0047】
本明細書で使用する場合、「エタノール」または「エチルアルコール」または「穀物アルコール」または「飲酒用アルコール」または「アルコール」または「EtOH」とは、有機化学化合物を指すものとする。これは、化学式C2H6Oを有する単純なアルコールである。
【0048】
本明細書で使用する場合、「供給原料」または「炭素源」という用語は、培養物中の微生物が使用することができる、工業プロセスに投入される炭素原子を含む原材料を指すものとする。
【0049】
本明細書で使用する場合、「HCL」とは、CoAと別の代謝産物との共有結合に関与する、EC 6.2.1におけるCoA-リガーゼ酵素のクラスを指すものとする。HCL活性は、HIBA(2-HIBA及び3-HIBAを含む)からHIBA-CoA(2-HIBA-CoA及び3-HIBA-CoAを含む)への変換に寄与する。
【0050】
本明細書で使用する場合、「ヒドロキシイソ酪酸」または「HIBA」とは、化学式C4H8O3を有するヒドロキシル及びカルボン酸の両方の官能基を有する炭素4個の有機化合物の群を指すものとする。2つの官能基間の距離によって区別される2つの異性体、すなわち、2-ヒドロキシイソ酪酸(別名:2-メチル乳酸、2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸、アセトン酸、アルファ-ヒドロキシイソ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、または2-HIBA)、及び3-ヒドロキシイソ酪酸(別名:3-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸、β-ヒドロキシイソ酪酸、ベータ-ヒドロキシイソ酪酸または3-HIBA)が存在する。
【0051】
本明細書で使用する場合、「イソ酪酸-CoAシンテターゼ」または「ICS」とは、CoAと別の代謝産物との共有結合に関与するタンパク質、酵素、及び酵素複合体のクラスを指すものとする。イソ酪酸-CoAシンテターゼ(EC 6.2.1)とは、HIBA(2-HIBA及び3-HIBAを含む)からHIBA-CoA(2-HIBA-CoA及び3-HIBA-CoAを含む)への変換を触媒する酵素を指す。
【0052】
本明細書で使用する場合、「イソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ」または「hadA」とは、CoA-トランスフェラーゼ活性を有し、CoAと別の代謝産物との共有結合に関与する酵素のクラスを指すものとする。イソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(hadA)(EC 6.2.1)酵素は、HIBA(2-HIBA及び3-HIBAを含む)からHIBA-CoA(2-HIBA-CoA及び3-HIBA-CoAを含む)への変換を触媒する。
【0053】
本明細書で使用する場合、「メタクリル酸」または「MAA」とは、化学式CH2=C(CH3)CO2(IUPAC名:2-メチル-2-プロペン酸)を有する化合物を指すものとし、これはメタクリレートの酸形態である。メタクリル酸及びメタクリレートは、その中性またはイオン化形態(その塩形態を含む)のいずれかにおける化合物を指すために、全体を通して互換的に使用され得ることを理解されたい。当業者は、具体的な形態がpHに依存することを理解している。
【0054】
本明細書で使用する場合、「メタクリレートエステル」または「MAEと」は、化学式CH2=C(CH3)COORを有する化合物を指し、式中、Rは低級アルキル、すなわちC1~C6の分枝状または直鎖状であり、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、i-プロピル、sec-ブチル、及びtert-ブチル、ペンチル、またはヘキシルがこれに含まれ、これらはいずれも不飽和であってもよく、例えば、プロペニル、ブテニル、ペンチル、及びヘキシルであってもよい。例示的なメタクリレートエステルとしては、限定されるものではないが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、及びn-プロピルメタクリレートが挙げられる。本明細書で使用する場合、メタクリレートエステルは、中~長鎖基である他のR基、すなわちC7~C22も含み、このときメタクリレートエステルは、脂肪アルコール、例えば、2-エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル.デシル、ウンデシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、パルミトリル、ヘプタデシル、ステアリル、ノナデシル、アラキジル、ヘネイコシル、及びベヘニルアルコールに由来し、これらのいずれか1つは任意選択で分岐していてもよく、及び/または不飽和を含んでもよい。
【0055】
本明細書で使用する場合、「メタン」とは、化学式CH4(1個の炭素原子及び4個の水素原子)を有する化合物を指すものとする。
【0056】
本明細書で使用する場合、「メタノール」または「メチルアルコール」または「メチル水和物」とは、式CH3OH(ヒドロキシル基に結合したメチル基、しばしばMeOHと略される)を有する化学物質かつ最も単純なアルコールを指すものとする。
【0057】
本明細書で使用する場合、「メチルマロニル-CoA」とは、メチルマロン酸に結合した補酵素Aからなるチオエステルを指すものとする。これは、多くの有機化合物の生合成において、また炭素同化のプロセスにおいて重要な中間体である。
【0058】
本明細書で使用する場合、「メチルマロニル-CoAレダクターゼ」または「mmcr」または「mcr」とは、3-HIBAを産生するためにメチルマロニル-CoAの切断及び還元を触媒する、EC 1.2.1の酵素のクラスを指すものとする。
【0059】
本明細書で使用する場合、「微生物(microbe)」、「微生物性」、「微生物性生物」または「微生物(microorganism)」とは、古細菌、細菌、または真核生物の領域内に含まれる顕微鏡的細胞として存在する任意の生物を意味するように意図されている。微生物は、顕微鏡的サイズを有する原核または真核の細胞または生物を包含することが意図されており、全ての種の細菌、古細菌、及び真正細菌、ならびに酵母及び真菌などの真核微生物が含まれる。また、この用語は、産物の産生のために培養され得る任意の種の細胞培養物も含む。
【0060】
本明細書で使用する場合、「MMO」または「メタンモノオキシゲナーゼ」とは、メタン及び他のアルカンのC-H結合を酸化可能であるタンパク質、酵素、及び酵素複合体のクラスを指すものとする。MMOには、可溶性メタンモノオキシゲナーゼ(EC 1.14.13.25)及び粒子メタンモノオキシゲナーゼ(EC 1.14.18.3)が含まれる。可溶性メタンモノオキシゲナーゼは、オキシドレダクターゼ(EC 1.14.13.25)のクラスに属する。MMO活性は、操作された微生物(例えば、限定されるものではないが、Escherichia coli)株におけるメタンからメタノールへの変換及びエタンからエタノールへの変換に寄与する。
【0061】
本明細書で使用する場合、「天然」とは、自然界に通常見出される微生物または培養物を指すものとする。
【0062】
本明細書で使用する場合、「NMar_1309」または「3-ヒドロキシプロピオン酸-CoAリガーゼ」または「3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンターゼ」とは、Crenarchaeotaの独立栄養性HP/HBサイクルの修飾バージョンであるヒドロキシプロピオン酸/ヒドロキシ酪酸(HP/HB)サイクルに関与する、EC 6.2.1またはEC 6.2.1.36における酵素を指すものとする。NMar_1309(EC 6.2.1.36)は、CoAと他の代謝産物との共有結合に関与する。NMar_1309(EC 6.2.1.36)の活性は、2-HIBAから2-HIBA-CoAへの変換及び3-HIBAから3-HIBA-CoAへの変換に寄与する。
【0063】
本明細書で使用する場合、「核酸(単数または複数)」とは、既知の全ての生命形態に必須のバイオポリマーまたは大きな生体分子を指すものとする。これらは、5炭糖、リン酸基、及び窒素塩基の3つの構成要素から構成された単量体であるヌクレオチドから構成されている。核酸の2つの主要なクラスは、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)である。
【0064】
本明細書で使用する場合、「経路」という用語は、1つ以上の酵素的ステップを用いて基質化学物質(単数または複数)から産物化学物質(単数または複数)への変換を触媒する酵素の集合を意味するように意図されている。経路は、合成経路(外来性酵素から構成)の場合もあれば、部分的合成経路(外来性酵素及び内在性酵素の両方から構成)の場合もある。
【0065】
本明細書で使用する場合、「PHAポリメラーゼ」または「ポリ(3-ヒドロキシアルカン酸)ポリメラーゼ」または「PHAシンターゼ」または「ポリヒドロキシアルカン酸シンターゼ」とは、様々な基質特異性プロファイル(例えば、2-、3-、4-位置のヒドロキシル基、及び鎖の全長に対する様々な選好性)を有する種々の単量体を重合させる、EC 2.3.1、EC 2.3.1.B2、2.3.1.B3、2.3.1.B4、または2.3.1.B5における酵素及び酵素複合体のクラスを指すものとする。PHAポリメラーゼ活性は、2-HIBA-CoAからポリ(2-HIBA)への変換及び3-HIBA-CoAからポリ(3-HIBA)への変換に寄与する。PHAシンターゼの例の一覧を表2及び表3に示す。
【0066】
本明細書で使用する場合、「phaC」とは、PHA生合成に関与し、単量体ヒドロキシアルカン酸基質を重合して(例えば、ヒドロキシ酸を重合して)より高分子量のPHA産物にすることによって機能する、酵素及び酵素複合体のクラスを指すものとする。PHAシンターゼは、PHA生合成に関与する重要な酵素であり、単量体ヒドロキシアルカン酸基質を重合することによって機能する。1つの実施形態において、phaCは、ポリ(3-ヒドロキシアルカン酸)ポリメラーゼサブユニットPhaC(EC 2.3.1)である。1つの実施形態において、phaCは、Allochromatium vinosum由来のphaC(配列番号22)である。
【0067】
本明細書で使用する場合、「PhaC-PhaE」とは、ヒドロキシ酸を重合してより高分子量のPHA産物にする、EC 2.3.1におけるPHAシンターゼのクラスを指すものとする。PhaC-PhaEは、ヒドロキシイソ酪酸-補酵素A(HIBA-CoA)(2-HIBA-CoA及び/または3-HIBA-CoAを含む)を重合して、高分子量のPHA産物ポリヒドロキシイソ酪酸(ポリ(HIBA))(ポリ(2-HIBA)及びポリ(3-HIBA)を含む)にする。
【0068】
本明細書で使用する場合、「phaC1」とは、ヒドロキシ酸を重合してより高分子量のPHA産物にする、EC 2.3.1におけるPHAシンターゼのクラスを指すものとする(https://www.nature.com/articles/s41598-017-05509-04)。PhaC1は、ヒドロキシイソ酪酸-補酵素A(HIBA-CoA)(2-HIBA-CoA及び/または3-HIBA-CoAを含む)から高分子量のPHA産物ポリ-ヒドロキシイソ酪酸(ポリ(HIBA))(ポリ(2-HIBA)及び/またはポリ(3-HIBA)を含む)への重合を触媒する。
【0069】
本明細書で使用する場合、「PhaC1437」とは、ヒドロキシ酸を重合してより高分子量のPHA産物にする、EC 2.3.1におけるPhaC酵素の四重変異体(E130D、S325T、S477G、及びQ481K)を指すものとする(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/bit.22547)。PhaC1437(EC 2.3.1)は、ヒドロキシイソ酪酸-補酵素A(HIBA-CoA)(2-HIBA-CoA及び/または3-HIBA-CoAを含む)から高分子量のPHA産物ポリ-ヒドロキシイソ酪酸(ポリ(HIBA))(ポリ(2-HIBA)及び/またはポリ(3-HIBA)を含む)への重合を触媒する。
【0070】
本明細書で使用する場合、「PHAポリメラーゼ3」とは、ヒドロキシ酸を重合してより高分子量のPHA産物にする、EC 2.3.1におけるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)ポリメラーゼ酵素のうちの1つを指すものとする。PHAポリメラーゼ3(EC 2.3.1)は、ヒドロキシイソ酪酸-補酵素A(HIBA-CoA)(2-HIBA-CoA及び/または3-HIBA-CoAを含む)から高分子量のPHA産物ポリ-ヒドロキシイソ酪酸(ポリ(HIBA))(ポリ(2-HIBA)及び/またはポリ(3-HIBA)を含む)への重合を触媒する。
【0071】
本明細書で使用する場合、「ポリ(HIBA)」または「ポリ(ヒドロキシイソ酪酸)」とは、ヒドロキシイソ酪酸(HIBA)の重合体を指すものとする。ポリ(HIBA)には、ポリ(2-ヒドロキシイソ酪酸)(ポリ(2-HIBA))、ポリ(3-ヒドロキシイソ酪酸)(ポリ(3-HIBA))、またはこれらの任意の共重合体または混合物が含まれる。
【0072】
本明細書で使用する場合、「2-HIBA」または「ポリ(2-HIBA)」または「ポリ(2-ヒドロキシイソ酪酸)」または「ポリ(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸)」とは、化学式H-[-O-CH(CH
3)
2CO-]
n-OHを有する2-ヒドロキシイソ酪酸(2-HIBA)の重合体を指すものとする。
【化1】
【0073】
本明細書で使用する場合、「3-HIBA」または「ポリ(3-HIBA)」または「ポリ(3-ヒドロキシイソ酪酸)」または「ポリ(3-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸)」とは、化学式H-[-O-CH
2CH(CH
3)CO-]
n-OHを有する3-ヒドロキシイソ酪酸の重合体(3-HIBA)を指すものとする。
【化2】
【0074】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、及び「核酸配列」は、核酸の1つ以上の重合体を意味するように意図されており、限定されるものではないが、コード領域(ポリペプチドまたはシャペロンに転写または翻訳される)、適切な調節または制御配列、制御配列(例えば、翻訳開始及び終止コドン)、プロモーター配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル、転写因子結合部位、終止配列、調節ドメイン、及びエンハンサーが特に含まれる。本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドは、単一の重合体上にその関連領域またはさらには完全なコード領域の全てを含む必要はなく、本明細書で提供する発明は、異なる重合体上に完全なまたは一部のコード領域を有することを企図している。
【0075】
本明細書で使用する場合、「プロパン」とは、分子式C3H8を有する炭素3個のアルカンを指すものとする。
【0076】
本明細書で使用する場合、「プロパノール」とは、式C3H7Oを有し、PrOHまたはn-PrOHと表されることもある一級アルコールを指すものとする。
【0077】
本明細書で使用する場合、「ペプチド」とは、ペプチド結合によって結合したアミノ酸の短鎖を指すものとする。10個または15個より少ないアミノ酸の鎖はオリゴペプチドと呼ばれ、ジペプチド、トリペプチド、及びテトラペプチドがこれに含まれる。
【0078】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」とは、より長い連続的な非分枝状のペプチド鎖を指すものとする。およそ50個より多いアミノ酸を含むポリペプチドは、「タンパク質」として知られている。「タンパク質」は、生物学的に機能するように配置された1つ以上のポリペプチドからなり、しばしば補酵素及び補因子などのリガンドに、あるいは別のタンパク質または他の巨大分子(例えば、DNAもしくはRNA)に、あるいは複合巨大分子集合体に結合している。
【0079】
本明細書で使用する場合、「Sbm」または「スリーピングビューティームターゼ」または「scpA」とは、スクシニル-CoAからメチルマロニル-CoAへの可逆的で立体特異的な相互変換を触媒する、EC 5.4.99.2におけるメチルマロニル-CoAムターゼを指すものとする。
【0080】
本明細書で使用する場合、「3HP-CoAシンテターゼ」とは、CoAと別の代謝産物との共有結合に関与する、EC 6.2.1のCoA-リガーゼ酵素を指すものとする。3HP-CoAシンテターゼ(EC 6.2.1)活性は、HIBA(2-HIBA及び3-HIBAを含む)からHIBA-CoA(2-HIBA-CoA及び3-HIBA-CoAを含む)への変換に寄与する。
【0081】
本明細書では、供給原料からポリ(HIBA)を産生するための操作された微生物及び方法を提供する。操作された微生物は、CoA-リガーゼ及びPHAポリメラーゼを有することができる。操作された微生物は、供給原料を2-HIBAや3-HIBAに変換し、続いてこれらの分子から重合体を生成する。この重合体は細胞内では不活性であり、これを抽出し、次いで熱分解-蒸留の下流プロセスを用いてMAAまたはMAEに変換することができる。代替的に、重合体を分解後の細胞から分離し、次いで脱重合してもよい。この単量体は、塩基性触媒(ヒドロキシル基を除去し、炭素間二重結合を創出する)を用いた脱水を介して、MAAまたはMAEに変換することができる。
【0082】
重要なステップは、ポリ(HIBA)と称される2-HIBAまたは3-HIBAの重合体(ポリ(2-HIBA)及びポリ(3-HIBA)を含む)の形成である。というのは、これが、HIBA単量体の代謝シンクを提供し、産物関連毒性を回避し、発酵ブロスの酸性化を回避するためである。低コスト供給原料は、メタン、エタン、プロパン、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセロール、グルコース、コハク酸、脂肪酸、アミノ酸、糖、バイオマス、及びこれらの組合せを含み得る。
【0083】
第1の態様は、CoA-リガーゼ及びPHAポリメラーゼを含み、またはそれからなり、供給原料からポリ(HIBA)を産生可能である、操作された微生物を提供する。いくつかの実施形態において、ポリ(HIBA)は、ポリ(2-HIBA)及び/またはポリ(3-HIBA)を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、CoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸-CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、PHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0084】
いくつかの実施形態において、CoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する1つ以上のポリペプチドを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、PHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0085】
いくつかの実施形態において、操作された微生物は、供給原料からヒドロキシイソ酪酸(HIBA)を産生するための操作された経路をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、供給原料は、メタン、エタン、プロパン、メタノール、エタノール、プロパノール、及び/またはこれらの組合せを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、HIBAは、2-ヒドロキシイソ酪酸(2-HIBA)及び/または3-ヒドロキシイソ酪酸(3-HIBA)を含む、またはそれからなる。
【0086】
いくつかの実施形態において、操作された経路は、MMO、ADH、ACDH、及び/またはアセチル-CoAシンターゼを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、スリーピングビューティームターゼ(Sbm)をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、メチルマロニル-CoAレダクターゼ(mmcr)をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上の内在性酵素を修飾することを含む、またはそれからなる。
【0087】
いくつかの実施形態において、操作された微生物は、Escherichia coliである。
【0088】
微生物
操作された微生物は、当業者には知られているような任意の微生物(例えば、古細菌、細菌、または真核生物)に由来することができる。いくつかの実施形態において、操作された微生物は、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Bacillus methanolicus、Pseudomonas putida、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Pichia methanolica、Salmonella enterica、Corynebacterium glutamicum、Klebsiella oxytoca、Anaerobiospirillum succiniciproducens、Actinobacillus succinogenes、Mannheimia succiniciproducens、Rhizobium etli、Gluconobacter oxydans、Zymomonas mobilis、Lactococcus lactis、Lactobacillus plantarum、Streptomyces coelicolor、Clostridium acetobutylicum、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas chlororaphis、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus、Aspergillus terreus、Aspergillus niger、Yarrowia lipolytica、Hansenula polymorpha、Issatchenkia orientalis、Candida sonorensis、Candida methanosorbosa、Clostridium difficile、Nitrosopumilus maritimus、Sulfolobus solfataricus、Metallosphaera sedula、Allochromatium vinosum、Chromobacterium、Rhodococcus opacus、Betaproteobacterium、及びCandida utilisのうちの少なくとも1つに由来する。いくつかの実施形態において、操作された微生物は、Escherichia coliに由来する。
【0089】
いくつかの実施形態において、操作された微生物は、1つの微生物を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された微生物は、1つ以上の微生物を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、例えば、限定されるものではないが、1つ以上の操作された微生物は、CoA-リガーゼを含む、またはそれからなり、また1つ以上の操作された微生物は、PHAポリメラーゼを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、単一の微生物または1つ以上の微生物は、Escherichia coliを含む、またはそれからなる。
【0090】
供給原料
供給原料は、炭素源であってもよく、培養物中の微生物が利用することができる、工業プロセスに投入される炭素原子を含む任意の原材料であってもよい。例えば、微生物の工業的培養では、グルコースが炭素原子の供給源として使用され得る。いくつかの実施形態において、培養物は、炭素原子を含む単一の使用可能な化合物を含む培地中で成長する。炭素は生命に必須の元素であるため、培養物は、炭素原子を含む単一の化合物を、生物の生存に必要な他の多くの生物学的分子に変換するための代謝経路を有しなければならない。
【0091】
微生物の工業的培養では、グルコースが炭素原子の供給源として使用され得る。糖及びアミノ酸などの典型的な供給原料に加えて、炭素源は、追加的にまたはさらに、メタン、メタノール、エタン、エタノール、プロパン、プロパノール、グリセロール、グルコース、コハク酸、糖、アミノ酸、バイオマス、あるいはこれらの化合物の任意の組合せであってもよい。また、「二次原料」を使用してもよい、これは、リサイクルし、生産材料用に再び投入される廃棄物を指す。
【0092】
いくつかの実施形態において、供給原料はメタンである。メタンは、化学式CH4(1個の炭素原子及び4個の水素原子)を有する化合物である。メタンは最も単純なアルカンであり、天然ガスの主な構成成分である。メタンは、地球上で比較的豊富なことにより、経済的に魅力的な燃料であるものの、温度及び圧力における通常条件下では気体状態のため、その取得及び保存が技術的課題となっている。
【0093】
いくつかの実施形態において、供給原料はメタノールである。メタノールは、式CH3OH(ヒドロキシル基に結合したメチル基、しばしばMeOHと略される)を有する最も単純なアルコールである。メタノールは、軽量で揮発性で無色の可燃性液体であり、エタノール(飲用アルコール)に類似する独特のアルコール臭を有する。極性溶媒のメタノールは、かつては主に木材の分解蒸留によって産生されていたことから木精という名称を得た。現在、メタノールは主に、一酸化炭素の水素化によって工業的に産生されている。メタノールは、極性のヒドロキシル基に結合したメチル基からなる。
【0094】
いくつかの実施形態において、供給原料はエタンである。エタンは、化学式C2H6を有する有機化合物である。エタンは、標準的な温度及び圧力では無色無臭の気体である。エタンは、多くの炭化水素のように、天然ガスから、及び石油精製の石油化学副産物として、工業規模で単離される。その主な用途は、エチレン産生の供給原料である。
【0095】
いくつかの実施形態において、供給原料はエタノールである。これは、化学式C2H6Oを有する単純なアルコールである。その式は、CH3-CH2-OHまたはC2H5OH(ヒドロキシル基に結合したエチル基)と表記されることもあり、しばしばEtOHと略される。エタノールは、揮発性で可燃性の無色液体であり、特徴的なワインのような臭い及び辛味を有する。
【0096】
いくつかの実施形態において、供給原料はプロパンである。プロパンは、分子式C3H8を有する炭素3個のアルカンである。プロパンは、標準的な温度及び圧力では気体であるが、輸送可能な液体に圧縮することができる。プロパンは、天然ガス処理及び石油精製の副産物である。家庭及び産業用途における、ならびに低排出の公共交通機関における燃料として、一般的に使用されている。
【0097】
いくつかの実施形態において、供給原料はプロパノールである。プロパノールは、式C3H7Oを有する一級アルコールであり、PrOHまたはn-PrOHと表されることもある。プロパノールは無色の液体であり、化学式CH3CH2CH2OHを有する1-プロパノール、及び化学式CH3CH(OH)CH3を有する2-プロパノールの2つの異性体を有する。プロパノールは、多くの発酵プロセスで自然に少量で形成され、医薬産業では主に樹脂及びセルロースエステルの溶媒として、また時として消毒剤として使用される。
【0098】
HIBA
「HIBA」は、化学式C4H8O3を有し、ヒドロキシル及びカルボン酸官能基をともに有する炭素4個の有機化合物である。2つの官能基間の距離によって区別される2つの異性体、すなわち、2-ヒドロキシイソ酪酸(別名:2-メチル乳酸、2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸、アセトン酸、アルファ-ヒドロキシイソ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、または2-HIBA)、及び3-ヒドロキシイソ酪酸(別名:3-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸、β-ヒドロキシイソ酪酸、ベータ-ヒドロキシイソ酪酸または3-HIBA)が存在する。
【0099】
いくつかの実施形態において、HIBAは、2-HIBA、3-HIBA、またはこれらの混合物を含む。2-ヒドロキシイソ酪酸または2-HIBAは、化学式(CH3)2CH(OH)COOHを有し、カルボキシルに隣接する炭素上にヒドロキシル基を有するヒドロキシイソ酪酸である。3-ヒドロキシイソ酪酸または3-HIBAは、化学式CH2(OH)CH(CH3)COOHを有する有機化合物である。ポリ(2-HIBA)は、化学式:H-[-O-CH(CH3)2CO-]n-OHを有する2-ヒドロキシイソ酪酸(2-HIBA)の重合体である。ポリ(3-HIBA)は、化学式:H-[-O-CH2CH(CH3) CO-]n-OHを有する3-ヒドロキシイソ酪酸(3-HIBA)の重合体である。
【0100】
MAAまたはMAE
MAAは、化学式CH2=C(CH3)CO2を有する化合物であり(IUPAC名:2-メチル-2-プロペン酸)、メタクリレートの酸形態である。MAAは、無色で粘性の液体であり、刺激性の不快な臭いを有するカルボン酸である。MAAは温水に可溶性であり、ほとんどの有機溶媒に混和する。メタクリル酸は、そのエステルの前駆体として大規模に工業的に産生されている。MAAは、ローマンカモミールの油中に少量で天然に存在する。
【0101】
MAEは、化学式CH2=C(CH3)COORを有する化合物であり、式中、Rは、分枝状または直鎖状のアルキルであり、これには、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル.オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、パルミトリル、ヘプタデシル、ステアリル、ノナデシル、アラキジル、ヘネイコシル、及びベヘニルアルコールが含まれ、これらのいずれか1つは、任意選択で分岐し、及び/または不飽和を含んでもよい。
【0102】
HIBAからHIBA-CoA、続いてポリ(HIBA)に至る経路
HIBAからポリ(HIBA)への変換には、それぞれ2-HIBA及び3-HIBAの変換のための下記の反応(1)及び(2)に示すように、2つの酵素的ステップが必要である。反応(1)及び(2)に示すように、HIBAは最初に、CoA-リガーゼ(EC 6.2.1)を用いてHIBA-CoAに変換される。第二に、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)ポリメラーゼ(例えば、EC 2.3.1.B2;2.3.1.B3;2.3.1.B4;または2.3.1.B5におけるもの)を用いて、HIBA-CoAを重合してポリ(HIBA)を形成する。
2-HIBA→2-HIBA-CoA→ポリ(2-HIBA) (1)
3-HIBA→3-HIBA-CoA→ポリ(3-HIBA) (2)
【0103】
CoA-リガーゼ酵素
操作された微生物は、少なくとも1つのCoA-リガーゼを有する。多くの酵素がCoA-ライゲーションステップを実施可能である(EC 6.2.1)。これらの酵素は、しばしば多くの基質に対しプロミスキャスな活性を有するものの、一部の酵素は、3-HIBAより2-HIBAに対し、またはその逆に対しより高い活性を有することがある。
【0104】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのCoA-リガーゼは、HIBA(2-HIBA及び3-HIBAを含む)からHIBA-CoA(2-HIBA-CoA及び3-HIBA-CoAを含む)への変換を触媒することによってCoA-ライゲーションステップを実施可能な1つ以上の酵素を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのCoA-リガーゼは、表1の1つ以上の酵素を含む、またはそれからなる。
【0105】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0106】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのCoA-リガーゼは、イソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ、イソ酪酸-CoAシンテターゼ(ICS)、NMar_1309、HCL、acs、及び/または3HP-CoAシンテターゼのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのCoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸-CoAシンテターゼ(ICS)(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0107】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのCoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、S.sulfaraticus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0108】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのCoA-リガーゼは、イソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、イソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)は、Clostridium difficile由来である(配列番号3)。イソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼは、HIBA(2-HIBA及び3-HIBAを含む)からHIBA-CoA(2-HIBA-CoA及び3-HIBA-CoAを含む)への変換を触媒する。
【0109】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのCoA-リガーゼは、イソ酪酸-CoAシンテターゼ(ICS)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、イソ酪酸-CoAシンテターゼ(ICS)は、Pseudomonas chlororaphis由来である(配列番号10)。イソ酪酸-CoAシンテターゼは、HIBA(2-HIBA及び3-HIBAを含む)からHIBA-CoA(2-HIBA-CoA及び3-HIBA-CoAを含む)への変換を触媒する。
【0110】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのCoA-リガーゼは、NMar_1309を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、NMar_1309は、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来である(配列番号15)。NMar_1309は、Crenarchaeotaの独立栄養性HP/HBサイクルの修飾バージョンであるヒドロキシプロピオン酸/ヒドロキシ酪酸(HP/HB)サイクルに関与する酵素である。Nmar_1309は、3-ヒドロキシプロピオン酸、補酵素A(CoA)、及びATPから3-ヒドロキシプロピオニル-CoA、ADP、及びリン酸の形成を触媒する。
【0111】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのCoA-リガーゼは、HCLを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、HCLは、A.tertiaricarbonus L108由来である(配列番号4)。HCL活性は、HIBA(2-HIBA及び3-HIBAを含む)からHIBA-CoA(2-HIBA-CoA及び3-HIBA-CoAを含む)への変換に寄与する。
【0112】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのCoA-リガーゼは、acsを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、acsは、Sulfolobus solfataricus由来である(配列番号14)。acsは、CoAと他の代謝産物との共有結合に関与する酵素のクラスである。acsは、酢酸をATP依存的にアセチル-CoAに活性化する酵素のリガーゼクラスに属する。acs活性は、HIBA(2-HIBA及び3-HIBAを含む)からHIBA-CoA(2-HIBA-CoA及び3-HIBA-CoAを含む)への変換に寄与する。
【0113】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのCoA-リガーゼは、3HP-CoAシンテターゼを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、3HP-CoAシンテターゼは、Metallosphaera sedula由来である(配列番号12)。3HP-CoAシンテターゼ活性は、HIBA(2-HIBA及び3-HIBAを含む)からHIBA-CoA(2-HIBA-CoA及び3-HIBA-CoAを含む)への変換に寄与する。
【0114】
PHAポリメラーゼまたはPHAシンターゼ酵素
操作された微生物は、少なくとも1つのポリメラーゼまたはPHAシンターゼを有する。PHAシンターゼは、その一次配列、基質特異性、及びサブユニット構成に基づき、4つの主要なクラスに分類されている。クラスIは、ホモ二量体を形成する1つのタイプのPhaCのみからなる酵素を含み、クラスIIは、PhaC1及びPhaC2の2つのタイプのシンターゼを含む。クラスIII及びIVシンターゼは、それぞれPhaC-PhaE及びPhaC-PhaRを含むヘテロ二量体を形成する。クラスI、III、及びIVシンターゼは、C3~C5の炭素鎖長を含む短鎖長(SCL)単量体を好む傾向がある。
【0115】
PHAシンターゼ酵素は、様々な基質特異性プロファイル(例えば、2-、3-、4-位置のヒドロキシル基、及び鎖の全長に対する様々な選好性)を有する異なる単量体を重合することが知られている。C4 SCL単量体の典型例は、(R)-3-ヒドロキシ酪酸(3HB)であり、PhaCは、3-ヒドロキシブチリル-補酵素A(3HB-CoA)のアシル部分を重合して、高分子量のPHA産物ポリヒドロキシ酪酸(PHB)にする。クラスIIシンターゼは、C6~C14炭素鎖長を含む中鎖長(MCL)単量体(例えば、C6単量体の3-ヒドロキシヘキサン酸(3HHx))を好む。
【0116】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのPHAシンターゼは、HIBA-CoAからポリ(HIBA)への変換を触媒することによって重合ステップを実施可能な酵素を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのPHAシンターゼは、表2の1つ以上の酵素または表3の1つ以上の酵素を含む、またはそれからなる。
【表2-1】
【表2-2】
【表3】
【0117】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのPHAシンターゼは、PhaC-PhaE、phaC1、PhaC1437、PHAポリメラーゼ3、及び/またはphaCのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのPHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0118】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのPHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0119】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのPHAシンターゼは、1つ以上のphaCを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上のphaCは、Betaproteobacterium由来である。PhaCは、PHA生合成に関与し、単量体ヒドロキシアルカン酸基質を重合することによって機能する。PhaCは、PHA生合成に関与する重要な酵素であり、単量体ヒドロキシアルカン酸基質を重合することによって機能する。
【0120】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのPHAシンターゼは、1つ以上のPhaC-PhaEを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上のPhaC-PhaEは、Allochromatium vinosum由来である。PhaC-PhaEは、ヒドロキシ酸を重合してより高分子量のPHA産物にする、PHAシンターゼのクラスである。PhaC-PhaEは、ヒドロキシイソ酪酸-補酵素A(HIBA-CoA)(2-HIBA-CoA及び/または3-HIBA-CoAを含む)からポリ-ヒドロキシイソ酪酸(ポリ(HIBA))(ポリ(2-HIBA)及び/またはポリ(3-HIBA)を含む)への変換を触媒する。
【0121】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのPHAシンターゼは、1つ以上のphaC1を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上のphaC1は、Chromobacterium USM2由来である。PhaC1は、ヒドロキシイソ酪酸-補酵素A(HIBA-CoA)(2-HIBA-CoA及び/または3-HIBA-CoAを含む)からポリ-ヒドロキシイソ酪酸(ポリ(HIBA))(ポリ(2-HIBA)及び/またはポリ(3-HIBA)を含む)への重合を触媒する。PhaC1は、C6~C14炭素鎖長を含む中鎖長(MCL)単量体(例えば、C6単量体の3-ヒドロキシヘキサン酸(3HHx))を好むことがある。
【0122】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのPHAシンターゼは、1つ以上のPhaC1437を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上のPhaC1437は、Pseudomonas由来である。PhaC1437は、PhaC酵素の四重変異体(E130D、S325T、S477G、及びQ481K)である。PhaC1は、ヒドロキシイソ酪酸-補酵素A(HIBA-CoA)(2-HIBA-CoA及び/または3-HIBA-CoAを含む)からポリ-ヒドロキシイソ酪酸(ポリ(HIBA))(ポリ(2-HIBA)及び/またはポリ(3-HIBA)を含む)への重合を触媒する。
【0123】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのPHAシンターゼは、1つ以上のPHAポリメラーゼ3を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上のPHAポリメラーゼ3は、Rhodococcus opacus由来である。PHAポリメラーゼ3は、ヒドロキシイソ酪酸-補酵素A(HIBA-CoA)(2-HIBA-CoA及び/または3-HIBA-CoAを含む)からポリ-ヒドロキシイソ酪酸(ポリ(HIBA))(ポリ(2-HIBA)及び/またはポリ(3-HIBA)を含む)への重合を触媒する。
【0124】
改善されたPHAシンターゼバリアントを特定するためのタンパク質操作
PHAシンターゼ酵素は過去に発表されておらず、2-HIBAまたは3-HIBAに対する活性を有することは示されていない。しかし、場合によってはPHAシンターゼのわずかな活性がタンパク質操作によって改善され得る。指向性進化は、当業者に周知された酵素を改善する方法である。簡潔に説明すると、このプロセスは、3つのステップ、すなわち、遺伝子多様性の生成と、有益、中立的、及び有害な変異を特定するための目的の特性における多様性のアッセイ(スクリーニングまたは選択)と、ひいては改善された変異体をスクリーニングすることができる変異のサブセットとの反復からなる。これらの遺伝子バリアントは、さらなるラウンドで変異のサブセットを組換えするための、またはさらなる遺伝子多様性を発見するための鋳型として使用することができる。目的のシステムに応じて、遺伝子多様性の生成、変異体のアッセイ、及び変異体の組換えに使用される方法は様々であり得る。
【0125】
DNA配列の遺伝子多様性の生成には多くの方法が利用可能であり、化学的変異誘発、紫外線誘導変異誘発、エラープローンPCR、指向性飽和変異誘発などがある。これらの方法の任意の組合せを使用することもできる。目的は、所望される酵素の機能にとって有益な、または最悪の場合でも中立的な変異を同定することである。
【0126】
次にこれらを遺伝子の組換えに供し、機能性改善のためにスクリーニングすることができる。したがって、最終的にこの目的を達成できるような遺伝子多様性を生成する任意の一連の方法があれば十分となる。最適な方法は、各変異を、所望の酵素の機能(単数または複数)に及ぼす影響と結び付け、これを1つ以上の特徴または次元に沿って測定することと考えられる。
【0127】
Escherichia coliにおけるPHAのアッセイは、他のグループでも研究されている。一連の可能な方法が存在し、これには光散乱、Nile Red蛍光(“A sensitive,viable-colony staining method using Nile Red for direct screening of bacteria that accumulate polyhydroxyalkanoic acids and other lipid storage compounds,”Archives of Microbiology 171(2):73-80-February 1999,DOI:10.1007/s002030050681;“High-throughput screen for poly-3-hydroxybutyrate in Escherichia coli and Synechocystis sp.strain PCC6803,”Appl.and Environ.Microbiol.,May 2006,p.3412-3417,DOI:10.1128/AEM.72.5.3412-3417.2006)、バイオセンサー、熱分解GCMSなどが含まれる。
【0128】
望ましい変異の一覧を作成したら、これらの変異を組み換えて、その組合せが親配列のいずれかを上回る望ましい活性を示すかどうかを試験することができる。これらの組合せは、特に所望されるクローンを意図的に構築することにより、または「ワンポット」反応でランダムに変異を組み換えることにより、試験することができる。
【0129】
組換えライブラリーのためのDNA構築の方法は当業者に周知されており、これにはSOE PCR、transfer PCR、Quikchange変異誘発(Agilent Technologies)を含む様々な技法が含まれる。組換え変異体が構築されたら、元の変異体ライブラリーのアッセイに以前使用した同じ技法を用いて、または酵素の特性を測定する他のアッセイを用いて、これらのバリアントをアッセイすることができる。
【0130】
操作された経路
いくつかの実施形態において、操作された微生物は、操作された経路を含む、またはそれからなる。高品質のMAAまたはMAEへの経済的に実現可能なプロセスを開発する上で重要な因子は、低コストの供給原料から高純度のPHAを操作することである。多くの生物学的システムが、炭素源(例えば、グルコース、グリセロール、または脂肪酸)を消費することができるが、特に有用な供給原料は、低コストであり、高い収率で産物を生成するものである。MAA及びMAEの場合、供給原料のメタン、エタン、及びプロパンはいずれも、安価であることと、MAA及びMAEへの収率が高いこととにより、優れた選択肢となる。
【0131】
細胞内の重合体が異なる単量体の混合物を含む場合、得られる生成物は、酸、エステル、または他の分子の混合物となる。混合物は、これらの分子の下流用途にとって望ましくないが、特に、標準的な化学的操作法を用いてこれらの混合物を純粋な化学物質に分離することが困難であるまたはコストがかかる場合には望ましくない。この結果を回避する1つの方法は、生物学的代謝産物が、重合され得る単一のCoA結合部位のみを有する、生物学的経路を使用することである。
【0132】
供給原料エタンから3-HIBAに至る1つの例示的な経路を下記の反応(3)~(5)に示す。この経路では、メタンモノオキシゲナーゼ(MMO)を用いて、エタンがエタノールに変換される。酵素ADHがエタノールをアセトアルデヒドに変換し、次いでこれを酵素ACDHにより、または酢酸を介して酵素アセチルCoAシンターゼ(acs)により、アセチルCoAにする。
【0133】
アセチル-CoAは、中央代謝の主要な接続点である。これは、グリオキシル酸バイパスを用いて効率的にコハク酸に変換され、このとき2つのアセチル-CoA分子が1つのコハク酸分子を産生する(https://ecocyc.org/ECOLI/NEW-IMAGE?tvpe=PATHWAY&obiect=TCA-GLYOX-BYPASS&detail-level=2に記載の通り(当該文献の内容全体は、あらゆる目的において参照により本明細書に援用され、依拠される))。このコハク酸分子は、スリーピングビューティームターゼ(sbm/scpA)として知られる遺伝子を介してメチルマロニル-CoAに変換される(https://ecocyc.org/gene?orgid=ECOLI&id=EG11444に記載の通り(当該文献の内容全体は、あらゆる目的において参照により本明細書に援用され、依拠される))。次いでメチルマロニル-CoAは、メチルマロニル-CoAレダクターゼ(mmcr)酵素(例えば、Chloroflexus aurantiacus由来)を用いて3-HIBAに変換される。
【化3】
【0134】
いくつかの実施形態において、操作された経路は、MMO、ADH、ACDH、及び/またはアセチル-CoAシンターゼのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0135】
いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上のMMOを含む、またはそれからなる。MMOは、メタン及び他のアルカンのC-H結合を酸化可能であるタンパク質、酵素、酵素複合体のクラスである。メタンモノオキシゲナーゼ(MMO)は、オキシドレダクターゼ酵素(EC 1.14.13.25)のクラスに属する。MMO活性は、操作された微生物(例えば、Escherichia coli)株におけるエタンからエタノールへの変換に寄与する。
【0136】
天然のメタン消費微生物は、少なくとも2つのクラスのモノオキシゲナーゼ酵素:可溶性モノオキシゲナーゼ(「sMMO」)及び粒子モノオキシゲナーゼ(「pMMO」)を進化させている。これらのカテゴリーの任意の酵素もしくは酵素複合体、任意の変異した酵素もしくは複合体、または研究者が設計したメタンをメタノールに変換する任意の酵素または酵素複合体は、メタンモノオキシゲナーゼ酵素とみなされると考えられる。これらの酵素の多くは、例えば、エタンからエタノールというように広範囲の基質も酸化することができ、よってエタンモノオキシゲナーゼとして機能する。
【0137】
いくつかの実施形態において、1つ以上のMMOは、1つ以上のsMMOを含む、またはそれからなる。Methylococcus capsulatus(Bath)由来のsMMOは、十分に研究されている。Methylococcus capsulatus(Bath)は、多数の基質に対しヒドロキシル酸として機能することができる(Vazquez-Duhalt及びQuintero-RomeroによるPetroleum Biotechnology(2004)を参照(当該文献は、参照により全体として本明細書に援用される))。Methylococcus capsulatus(Bath)由来のsMMOは、in vitroでアッセイしたときに、数十の基質をさらに多くの産物にヒドロキシル化することができる。いくつかの実施形態において、MMOは、Methylococcus capsulatus(Bath)由来のモノオキシゲナーゼを含む、またはそれからなる。
【0138】
いくつかの実施形態において、1つ以上のMMOは、1つ以上のMethylosinus trichosporium OB3b、Methylomonas methanica、Methylocaldum sp.175、Methyloferula stellata、Methylocystis LW5、Solimonas aquatica(DSM25927)、Methylovulum miyakonense、Rhodococcus ruber IGEM231、及び/またはConexibacter woesei由来のメタンモノオキシゲナーゼを含む、またはそれからなる。
【0139】
いくつかの実施形態において、1つ以上のMMOは、以下の表4に記載のようなモノオキシゲナーゼを含む、またはそれからなる。
【表4】
【0140】
いくつかの実施形態において、1つ以上のMMOは、1つ以上のpMMOを含む、またはそれからなる。このタンパク質複合体は、3つのサブユニットから構成され、ネイティブ生物の内膜に存在する。
【0141】
いくつかの実施形態において、1つ以上のpMMOは、pMMOを含む、またはpMMOからなる。このタンパク質複合体は、3つのサブユニットから構成され、ネイティブ生物の内膜に存在する。pMMOをEscherichia coli内で首尾よく発現させるためには、正しいN末端リーダー配列を3つのサブユニットの各々と適切に融合させなければならない。いくつかの実施形態において、MMOは、Methylococcus capsulatus由来のpMMOを含む、またはそれからなる(Elliot,S.et al,Regio- and Stereo selectivity of particulate methane monooxygenase from Methylococus capsulatus(Bath),J.Am.Chem.Soc.119,9949-9955(1997)を参照(当該文献は、参照により全体として本明細書に援用される))。
【0142】
いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上のACDHを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上のACDHは、Escherichia coliまたはCorynebacterium glutamicum由来である。ACDHは、アセトアルデヒドからアセチル-CoAへの変換を触媒する。
【0143】
いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上のアセチル-CoAシンターゼを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上のアセチル-CoAシンターゼは、Escherichia coli由来である。
【0144】
アセチルCoAシンターゼは、酢酸の代謝に関与するタンパク質、酵素、及び酵素複合体のクラスである。アセチル-CoAシンターゼは、酢酸をATP依存的にアセチル-CoAに活性化する酵素のリガーゼクラスに属する。アセチルCoAシンターゼ活性は、Escherichia coliが酢酸をアセチルCoAに活性化する2つの異なる経路のうちの1つを構成する。アセチル-CoAシンターゼ経路(酢酸からアセチル-CoAへの変換)は、主に同化の役割において機能し、細胞外培地中に存在する酢酸を除去する。アセチルCoAシンターゼ発現の誘導は、この経路を活性化する代謝スイッチとして機能する。
【0145】
いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上のアルコールデヒドロゲナーゼを含む、またはそれからなる。アルコールデヒドロゲナーゼは、多くの生物に存在するデヒドロゲナーゼの群であり、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)からNADHへの還元により、アルコールとアルデヒドまたはケトンとの間の相互変換を促進する。酵母、植物、及び多くの細菌において、いくつかのアルコールデヒドロゲナーゼは、発酵の一部としての逆の反応を触媒して、一定のNAD+供給を確実にする。アルコールデヒドロゲナーゼは、アセトアルデヒド還元の逆方向でより効率的である。いくつかの実施形態において、ADH活性は、操作された微生物(例えば、限定されるものではないが、Escherichia coli)株におけるエタノールからアセトアルデヒドへの変換に寄与する。
【0146】
いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上のスリーピングビューティームターゼを含む、またはそれからなる。スリーピングビューティームターゼは、スクシニル-CoAからメチルマロニル-CoAへの可逆的な立体特異的相互変換を触媒するメチルマロニル-CoAムターゼ酵素である。
【0147】
いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上のメチルマロニル-CoAレダクターゼ(mcrまたはmmcr)を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上のメチルマロニル-CoAレダクターゼは、Chloroflexus aurantiacus由来である。メチルマロニル-CoAレダクターゼは、メチルマロニル-CoAを切断及び還元して3-HIBAを産生する酵素のクラスである。いくつかの実施形態において、メチルマロニル-CoAレダクターゼは、Chloroflexus aurantiacus由来である。
【0148】
産生方法
第2の態様は、供給原料からポリ(ヒドロキシイソ酪酸)(ポリ(HIBA))を産生するための方法であって、当該方法が、1)供給原料を含む栄養培地を準備することと、2)栄養培地中で操作された微生物を培養することであって、操作された微生物が、CoA-リガーゼ及びポリヒドロキシアルカン酸(PHA)ポリメラーゼを含む、またはそれからなる、培養することとを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、ポリ(HIBA)は、ポリ(2-ヒドロキシイソ酪酸)(ポリ(2-HIBA))及び/またはポリ(3-ヒドロキシイソ酪酸)(ポリ(3-HIBA))を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、CoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸-CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、PHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0149】
いくつかの実施形態において、CoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、PHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0150】
いくつかの実施形態において、操作された微生物は、供給原料からヒドロキシイソ酪酸(HIBA)を産生するための操作された経路をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、供給原料は、メタン、エタン、プロパン、メタノール、エタノール、プロパノール、及びこれらの組合せを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、HIBAは、2-ヒドロキシイソ酪酸(2-HIBA)及び/または3-ヒドロキシイソ酪酸(3-HIBA)を含む、またはそれからなる。
【0151】
いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上のMMO、ADH、ACDH、及び/またはアセチル-CoAシンターゼ(acs)を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上のスリーピングビューティームターゼ(Sbm)をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上のメチルマロニル-CoAレダクターゼ(mmcr)をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上の内在性酵素を修飾することを含む、またはそれからなる。
【0152】
いくつかの実施形態において、操作された微生物は、Escherichia coliである。
【0153】
いくつかの実施形態において、方法は、(i)栄養培地から微生物を分離することと、(ii)任意選択で、微生物からポリ(HIBA)を抽出することと、(iii)ポリ(HIBA)を、約150℃~約450℃の範囲の温度に約0.5~120分の期間の間加熱して、メタクリル酸(MAA)を産生することとをさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、方法は、MAAをアルコールによりエステル化してメタクリレートエステル(MAE)を産生することをさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、方法は、ポリ(HIBA)を栄養培地から分離することと、ポリ(HIBA)を脱重合してHIBAにすることと、触媒を用いてHIBAを変換してメタクリル酸(MAA)を産生することとをさらに含む、またはそれからなる。
【0154】
培養
微生物は、液体または固体の培地を微生物の栄養源として用いて培養することができる。一部の微生物は、精製された化学構成要素を用いた調製によって液体または固体の培地が生成される規定培地中で培養することができる。培養基の組成は、微生物または培養の工業的目的に合わせて調整することができる。
【0155】
培養パラメーターとしては、限定されるものではないが、培養基の温度、溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度、液体培地の撹拌速度、容器内の圧力などの特徴を挙げることができる。
【0156】
いくつかの実施形態において、方法は、微生物を培地から分離することをさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、方法は、ポリ(HIBA)を約150℃~約450℃の範囲の温度に加熱することをさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、加熱は、約0.5~約120分実施される。
【0157】
ポリ(HIBA)からMAAへの熱分解は、重合体を十分な高温に加熱することによって達成することができる。ポリ(3-ヒドロキシプロピオン酸)からアクリル酸に変換するための方法は、Metabolixらによって説明されている(国際特許第WO2013185009A1号を参照(当該文献は、任意の図面を含めて、参照により全体として本明細書に援用される))。同様のプロセスは、本特許出願の実施例9に記載のように、ポリ(HIBA)からメタクリル酸(MAA)への変換にも適用可能と考えられる。
【0158】
いくつかの実施形態において、MAAが産生される。いくつかの実施形態において、MAAはアルコールによりエステル化されて、MAEを産生する。いくつかの実施形態において、ポリ(HIBA)は、栄養培地から分離される。いくつかの実施形態において、ポリ(HIBA)は、脱重合されてHIBAとなる。いくつかの実施形態において、HIBAは、触媒によりMAAに変換される。
【0159】
メタノール、エタノール、または他のアルコールの存在下で熱分解/熱分解を実施することで、結果としてメタクリル酸分子とアルコールとのエステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなど)が形成され得る。国際特許第WO2013185009A1号の内容全体が、あらゆる目的において参照により本明細書に援用され、依拠される。
【0160】
核酸(単数または複数)
第3の態様は、供給原料からポリ(HIBA)への変換を触媒する第1の操作された経路でのCoA-リガーゼ及び/またはポリヒドロキシアルカン酸(PHA)ポリメラーゼをコードする、1つ以上の第1のポリヌクレオチドを含む、またはそれからなる、核酸を提供する。核酸は、5炭糖、リン酸基、及び窒素塩基の3つの構成要素から構成された単量体であるヌクレオチドから構成されている。核酸の2つの主要なクラスは、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)である。糖がリボースの場合、重合体はRNAであり、糖がリボース誘導体のデオキシリボースの場合、重合体はDNAである。核酸は、細胞内の主要な情報担体分子として機能し、遺伝子材料を構成する天然の化学化合物である。
【0161】
核酸は、全ての生物に豊富に存在し、地球上のあらゆる生物形態の細胞を創出し、情報を暗号化し、次いでそれを保存する。そして核酸は、細胞核の内外のその情報を、細胞の内部の働きに、そして究極的には各生物の次世代に伝達及び発現するように機能する。コードされた情報は、RNA及びDNAの分子内でヌクレオチドを「はしご段」状に秩序化する核酸配列を介して収容及び伝達される。核酸は、タンパク質合成の指示において特に重要な役割を担う。
【0162】
ペプチドは、ペプチド結合によって結合したアミノ酸の短い鎖である。10個または15個より少ないアミノ酸の鎖はオリゴペプチドと呼ばれ、ジペプチド、トリペプチド、及びテトラペプチドがこれに含まれる。ペプチドは、核酸、オリゴ糖、多糖などとともに生物学的重合体及びオリゴマーの広い化学的クラスに分類される。
【0163】
ポリペプチドは通常、より長い連続的な非分枝状のペプチド鎖である。およそ50個より多いアミノ酸を含むポリペプチドは、「タンパク質」として知られている。「タンパク質」は、生物学的に機能するように配置された1つ以上のポリペプチドからなり、しばしば補酵素及び補因子などのリガンドに、あるいは別のタンパク質または他の巨大分子(例えば、DNAもしくはRNA)に、あるいは複合巨大分子集合体に結合している。
【0164】
核酸は、本明細書に記載の任意のタンパク質をコードすることができる。例えば、核酸は、1つ以上のCoA-リガーゼをコードすることができる。いくつかの実施形態において、1つ以上のCoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸-CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0165】
核酸は、さらに1つ以上のPHAシンターゼをコードすることができる。いくつかの実施形態において、1つ以上のPHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0166】
いくつかの実施形態において、核酸コンストラクトは、供給原料からヒドロキシイソ酪酸(HIBA)への変換を触媒する操作されたHIBA経路での酵素(または操作されたHIBA経路酵素)をコードする1つ以上の第2のエレメントをさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、供給原料は、メタン、エタン、プロパン、メタノール、エタノール、プロパノール、及びこれらの組合せを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、HIBAは、2-ヒドロキシイソ酪酸(2-HIBA)及び/または3-ヒドロキシイソ酪酸(3-HIBA)を含む、またはそれからなる。
【0167】
いくつかの実施形態において、1つ以上の第2のエレメントは、1つ以上の第1のポリヌクレオチドの一部である、またはそれと同じである。いくつかの実施形態において、1つ以上の第2のエレメントは、1つ以上の第1のポリヌクレオチドとは異なる1つ以上の第2のポリヌクレオチドである。
【0168】
いくつかの実施形態において、操作されたHIBA経路は、MMO、ADH、ACDH、及び/またはアセチル-CoAシンターゼを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作されたHIBA経路は、スリーピングビューティームターゼ(Sbm)をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作されたHIBA経路は、メチルマロニル-CoAレダクターゼ(mmcr)をさらに含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、操作された経路は、1つ以上の内在性酵素を修飾することを含む、またはそれからなる。
【0169】
いくつかの実施形態において、1つ以上の核酸は、操作された微生物内でタンパク質を十分な量で発現する。いくつかの実施形態において、操作された微生物は、Escherichia coliである。
【0170】
いくつかの実施形態において、1つ以上のCoA-リガーゼは、Clostridium difficile由来のイソカプレノイル-CoA:2-ヒドロキシイソカプロン酸CoA-トランスフェラーゼ(HadA)(配列番号3)、Pseudomonas chlororaphis由来のイソ酪酸CoAシンテターゼ(配列番号10)、Nitrosopumilus maritimus SCM1由来のNMar_1309(配列番号15)、A.tertiaricarbonus L108由来のHCL(配列番号4)、Sulfolobus solfataricus由来のacs(配列番号14)、及び/またはMetallosphaera sedula由来の3HP-CoAシンテターゼ(配列番号12)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する1つ以上のポリペプチドを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上のPHAシンターゼは、Allochromatium vinosum由来のPhaC-PhaE(配列番号22及び23)、Chromobacterium USM2由来のphaC1(配列番号20)、Pseudomonas由来のPhaC1437(配列番号21)、Rhodococcus opacus PD630由来のPHAポリメラーゼ3(配列番号40)、及び/またはBetaproteobacterium由来のphaC(配列番号34)のうちの少なくとも1つに対し少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドのうちの1つ以上を含む、またはそれからなる。
【0171】
1つ以上のポリヌクレオチドを、微生物のゲノム内に挿入または統合することができる。いくつかの実施形態において、1つ以上のヌクレオチドが修飾される。1つ以上のポリペプチドまたは1つ以上のヌクレオチドに対する絶対的な同一性が厳密に必要とされるわけではないことは、当業者には認識されよう。例えば、ポリペプチドまたは1つ以上のポリペプチドをコードする配列を含む特定の遺伝子またはポリヌクレオチドを変化させ、上記のように活性をスクリーニングすることができる。このように修飾または変異されたポリヌクレオチド及びポリペプチドは、指向性進化に関連する方法において、当技術分野で知られている方法を用いて及び上記のようにして、発現または機能についてスクリーニングすることができる。このような修飾または変異されたポリヌクレオチド及びポリペプチドは、本開示の範囲内であるように意図されている。
【0172】
当業者であれば、遺伝暗号の縮重性質により、ヌクレオチド配列が異なる様々なポリヌクレオチドを使用して、微生物、培養物、もしくは操作された微生物に固有の1つ以上の遺伝子または本開示の1つ以上のポリペプチドをコードすることができることを認識するであろう。遺伝暗号の固有の縮重により、実質的に同じまたは機能的に同等のポリペプチドをコードする他のポリヌクレオチドも使用することができる。本開示は、本開示の方法で利用される1つ以上のポリペプチドのポリペプチド及びタンパク質のアミノ酸配列をコードする任意の配列のポリヌクレオチドを含む。
【0173】
同様にして、ポリペプチドは、典型的には、所望の活性の喪失または顕著な喪失を伴わずに、そのアミノ酸配列における1つ以上のアミノ酸置換、欠失、及び挿入を許容することができる。本開示は、修飾またはバリアントポリペプチドが参照されるポリペプチドと同一または類似の活性を有する限りにおいて、本明細書に記載の特定のタンパク質とは異なるアミノ酸配列を有するこのような1つ以上のポリペプチドを含む。したがって、本明細書に示すポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、本開示の実施形態を単に例示するに過ぎない。
【0174】
また、本開示は、修飾またはバリアントポリペプチドが、望ましいが参照ポリペプチドとは異なる活性を有する場合、本明細書に記載の特定のタンパク質とは異なるアミノ酸配列を有する1つ以上のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、酵素は、発現したタンパク質が野生型バージョンよりも活性が高いか低いように、酵素をコードする遺伝子を修飾することにより、改変することができる。
【0175】
当業者は理解するであろうように、特定の宿主(例えば、限定されるものではないがEscherichia coli)での発現を強化するようにコード配列を修飾することは有利であり得る。遺伝暗号は64の可能なコドンによって重複しているが、ほとんどの生物は、典型的にはこれらのコドンのサブセットを使用する。コドンは、「コドン最適化」とも呼ばれるプロセスにおいて、対応するタンパク質のアミノ酸配列にいかなる結果的な変化も伴わずに、置換して配列の翻訳速度を高めたり低めたりすることができる。本明細書に記載の表には、本明細書で開示するコドン最適化配列の一部を示すために注釈が付されている。
【0176】
最適化されたコード配列は、例えば、翻訳速度を高めるように、または最適化されていない配列から産生された転写産物と比較して、望ましい特性(例えば、より長い半減期)を有する組換えRNA転写産物を産生するように調製することができる。また、翻訳終止コドンは、宿主選好性を反映するように修飾することもできる。加えて、ポリヌクレオチドもしくは酵素のホモログ、または1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質は、本開示によって包含される。
【0177】
2つのアミノ酸配列、または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、配列は、最適な比較目的のためにアラインメントされる(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較目的のために相同でない配列を無視することができる)。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列内の位置を、同じアミノ酸残基またはヌクレオチドが第2の配列内の対応する位置として占有している場合、その位置の分子は同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、配列が共有する同一の位置の数の関数であり、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要のあるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮に入れている。
【0178】
同一でない残基位置は、しばしば保存的アミノ酸置換によって異なることを認識されたい。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、配列同一性パーセントまたは相同性の程度は、置換の保存的性質を補正するために実際的に上方に調整することができる。この調整を行うための手段は、当業者に周知されている(例えば、Pearson W.R.,1994,Methods in Mol Biol 25:365-89を参照(当該文献は、全体として本明細書に援用される)。
【0179】
ポリペプチドにおける配列相同性及び配列同一性は、典型的には配列分析ソフトウェアを用いて測定される。分子配列を異なる生物からの多数の配列を含むデータベースと比較するための典型的なアルゴリズムが、コンピュータプログラムBLASTである。多数の異なる生物からの配列を含むデータベースを検索する際は、アミノ酸配列を比較するのが典型的である。
【0180】
さらに、微生物(microbe)もしくは微生物(microorganism)、培養物、または操作された微生物に固有の1つ以上のポリヌクレオチド、あるいは酵素をコードする遺伝子、あるいは固有の微生物、培養物、または操作された微生物に固有の1つ以上のポリペプチドまたは遺伝子(または、本明細書で言及されている任意の他のもの(またはその発現を制御または調節する調節エレメント))のいずれも、遺伝子/タンパク質操作技法(例えば、当業者に知られている指向性進化または合理的変異誘発)によって最適化することができる。このような措置により、当業者は、酵母、細菌、または任意の他の好適な細胞もしくは生物における発現及び活性のために酵素を最適化することができる。
【0181】
例えば、1つ以上のポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNAの変異によって調製することができる。変異誘発及びヌクレオチド配列改変のための方法としては、例えば、Kunkel,(1985)Proc Natl Acad Sci USA 82:488-92;Kunkel,et al.,(1987)Meth Enzymol 154:367-82;米国特許第第4,873,192号;Walker and Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York)、及びこれらの文献に引用されている参考文献が挙げられる。タンパク質の生物学的活性に影響を及ぼす可能性が低いアミノ酸置換に関する指針は、例えば、Dayhoff,et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl Biomed Res Found,Washington,D.C)のモデルで見出すことができる(当該文献の各々は、参照により全体として援用される)。
【0182】
当業者に知られている技法は、追加の相同な(または他の形で類似する)遺伝子及び相同な(または他の形で類似する)酵素の同定に適していると考えられる。概して、類似する遺伝子及び/または類似する酵素は、機能的分析によって特定することができ、機能的な類似性を有することになる。一例として、相同なまたは類似する生合成経路遺伝子、タンパク質、または酵素を同定するための技法としては、限定されるものではないが、目的の遺伝子/酵素の公開された配列に基づくプライマーを用いたPCRによる、または目的の遺伝子間の保存領域を増幅するように設計された縮重プライマーを用いた縮重PCRによる遺伝子のクローニングを挙げることができる。
【0183】
さらに、当業者であれば、機能的な相同性または類似性を用いて、相同のまたは類似する遺伝子、タンパク質、または酵素を同定するための技法を使用することができる。技法は、(例えば、本明細書またはKiritani,K.,Branched-Chain Amino Acids Methods Enzymology,1970に記載のように)活性についてのin vitro酵素アッセイを通じた酵素の触媒活性のための細胞または細胞培養物を検討することと、次いで精製を通じて活性を有する酵素を単離することと、エドマン分解、可能性のある核酸配列に対するPCRプライマーの設計、PCRを通じたDNA配列の増幅、及び核酸配列のクローニングなどの技法を通じて、酵素のタンパク質配列を決定することと、を含む。相同なもしくは類似する遺伝子、及び/または相同なもしくは類似するタンパク質、類似の遺伝子及び/または類似のタンパク質を特定するための技法には、候補遺伝子または酵素に関するデータをBRENDA、KEGG、またはMetaCYCなどのデータベースと比較することも含まれる。候補遺伝子またはタンパク質は、本明細書の教示に従って、上記のデータベース内で特定することができる。
【0184】
いくつかの実施形態において、1つ以上のポリペプチドを発現する微生物、培養物、または操作された微生物は、遺伝子が修飾、欠失された、または発現が低下もしくは消失した微生物、培養物、または操作された微生物に固有の1つ以上の遺伝子を有する。発現の低下または消失は、当業者に知られている任意の方法によって行うことができ、微生物、培養物、または操作された微生物に固有の遺伝子の発現を遺伝子修飾、欠失、及び/または低下もしくは消失する全ての方法が本明細書で提供される。特に、当業者であれば、任意の形態の遺伝子改変または遺伝子操作または遺伝子修飾が、欠失の代替手段として使用され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態において、欠失の代替手段として使用され得る他の形態の遺伝子修飾としては、例えば、限定されるものではないが、遺伝子ノックアウト、変異、遺伝子標的化、相同組換え、遺伝子ノックダウン、遺伝子サイレンシング、遺伝子付加、分子クローニング、遺伝子減衰、ゲノム編集、CRISPR干渉、または特定の表現型の抑制もしくは改変もしくは強化に使用され得る任意の技法が挙げられる。
【0185】
いくつかの実施形態において、微生物、培養物、または操作された微生物に固有のポリヌクレオチドは、他の方法で改変することができ、これには、限定されるものではないが、ポリペプチドの修飾形態が微生物もしくは操作された微生物において増加もしくは減少した溶解度を示すポリペプチドの修飾形態を発現すること、活性が阻害されるドメイン欠如を伴うポリペプチドの改変形態を発現すること、または微生物、培養物、もしくは操作された微生物内で発現する経路において、他の分子によるフィードバックもしくはフィードフォワード調節によって多かれ少なかれ影響を受けるポリペプチドの改変形態を発現することが含まれる。いくつかの実施形態において、微生物、培養物、または操作された微生物に固有の1つ以上の遺伝子のヌクレオチド配列が作用可能に結合するプロモーター、エンハンサー、もしくはオペレーターの強度も操作、減少、もしくは増加させることができ、または異なるプロモーター、エンハンサー、もしくはオペレーターを導入することもできる。
【0186】
核酸(単数または複数)の発現
1つ以上の操作された微生物での1つ以上のポリヌクレオチドの発現は、微生物または培養物での発現を可能にする調節エレメントの制御下で、1つ以上の外来性ポリヌクレオチドを微生物に導入するか、または1つ以上のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を培養することにより、達成することができる。
【0187】
核酸は、制限なく、当業者に知られている任意の方法により、微生物または培養物に導入することができる(例えば、Hinnen et al.(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1292-3;Cregg et al.(1985)Mol.Cell.Biol.5:3376-3385;Goeddel et al.eds,1990,Methods in Enzymology,vol.185,Academic Press,Inc.,CA;Krieger,1990,Gene Transfer and Expression-A Laboratory Manual,Stockton Press,NY;Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning-A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,NY;及びAusubel et al.,eds.,Current Edition,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,NYを参照(これらの文献の各々は、参照により全体として本明細書に援用される))。例示的な技法としては、限定されるものではないが、スフェロプラスト、エレクトロポレーション、PEG1000媒介形質転換、及び酢酸または塩化リチウムを介した形質転換が挙げられる。
【0188】
いくつかの実施形態において、核酸は、1つ以上のプラスミドを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、核酸は、1つ以上の染色体外プラスミドを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、核酸は、ヌクレオチド配列を微生物または培養物の染色体に統合することができる染色体統合ベクターである。
【0189】
修飾
本明細書で提供する操作された微生物は、供給原料からポリ(HIBA)を産生可能であるCoA-リガーゼ及びPHAポリメラーゼを含む、またはそれからなる。当業者であれば、本明細書に記載の方法に従って、操作された微生物を産生することができるであろう。遺伝子及びゲノムの発現は、修飾することができる。いくつかの実施形態において、1つ以上のポリヌクレオチドの発現が修飾される。例えば、ポリペプチドをコードする遺伝子の転写を改変することにより、微生物または培養物中の酵素または1つ以上のポリヌクレオチドのコピー数を改変することができる。これは、例えば、1つ以上のポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列のコピー数を修飾することにより(例えば、コピー数がより多いもしくは少ないヌクレオチド配列を含む発現ベクターを使用することにより、またはヌクレオチド配列の追加のコピーを微生物のゲノムもしくは培養物に導入することにより、または同じもしくは類似のポリペプチドを発現する追加のヌクレオチド配列を微生物のゲノムもしくは培養物に導入することにより、または微生物のゲノムもしくは培養物中のヌクレオチド配列を遺伝子的に修飾もしくは欠失もしくは破壊することにより)、オペロンのポリシストロンmRNA上のコード配列の順序を変更することにより、あるいはオペロンを、各々が独自の制御エレメントを有する個々の遺伝子に分割することにより、達成することができる。ヌクレオチド配列が作用可能に結合しているプロモーター、エンハンサー、またはオペレーターの強度も操作または増加または減少することができ、あるいは異なるプロモーター、エンハンサー、またはオペレーターを導入することができる。
【0190】
代替的にまたは追加として、1つ以上のポリペプチドのコピー数は、1つ以上のポリペプチドをコードするmRNAの翻訳レベルを修飾することにより、改変することができる。これは、例えば、mRNAの安定性の修飾、リボソーム結合部位の配列の修飾、リボソーム結合部位と酵素コード配列の開始コドンとの間の距離または配列の修飾、酵素コード領域の開始コドンの上流または5’側に隣接するシストロン間領域全体の修飾、ヘアピン及び特殊な配列を用いたmRNA転写産物の3’末端の安定化、酵素のコドン使用頻度の修飾、酵素の生合成に使用される希少コドンtRNAの発現の修飾、及び/または、例えばそのコーディング配列の変異を介した酵素の安定性の増加により、達成することができる。
【0191】
1つ以上のポリヌクレオチドの発現は、特定の遺伝子を標的とすることにより、修飾または調節することができる。例えば、限定されるものではないが、本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、微生物、培養物、または操作された微生物を、切断可能な、すなわち、選択された部位内の指定された領域で切断を引き起こすことが可能な1つ以上のヌクレアーゼに接触させる。いくつかの実施形態において、切断は一本鎖切断であり、すなわち、標的部位の両鎖ではなく一方の鎖が切断される。いくつかの実施形態において、切断は、二本鎖切断である。いくつかの実施形態において、切断誘導剤が使用される。切断誘導剤は、特定のポリヌクレオチド認識配列を認識及び/またはそれに結合して、認識配列で、またはその付近で切断を生じさせる任意の薬剤である。切断誘発剤の例としては、限定されるものではないが、エンドヌクレアーゼ、部位特異的リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、トポイソメラーゼ、及びジンクフィンガーヌクレアーゼが挙げられ、またこれらの修飾された誘導体、バリアント、及びフラグメントが含まれる。
【0192】
いくつかの実施形態において、選択された標的部位内の認識配列は、微生物、培養物、または操作された微生物のゲノムに対し内在性または外来性であり得る。認識部位が内在性または外来性配列であるとき、認識部位は、天然のまたはネイティブな切断誘発剤によって認識される認識配列であり得る。代替的に、内在性または外来性認識部位は、内在性または外来性認識配列を特異的に認識して切断をもたらすように設計または選択された、修飾または操作された切断誘発剤によって認識及び/または結合されてもよい。いくつかの実施形態において、修飾された切断誘導剤は、ネイティブな天然の切断誘導剤に由来する。他の実施形態において、修飾された切断誘導剤は、人工的に作成または合成されている。このような修飾または操作された切断誘導剤を選択するための方法は、当技術分野で知られている。
【0193】
いくつかの実施形態において、1つ以上のヌクレアーゼは、CRISPR/Cas由来のRNAガイドエンドヌクレアーゼである。CRISPRは、RNAまたはDNAレベルでの遺伝子エレメントの認識、遺伝子修飾、及び/またはサイレンシング、あるいは異種または相同の遺伝子の発現に使用することができる。また、CRISPRは、内在性または外来性核酸の調節に使用することもできる。当技術分野で知られている任意のCRISPR/Casシステムは、本明細書で提供される方法及び組成物において、ヌクレアーゼとして使用される。本明細書で提供される方法及び組成物において使用されるCRISPRシステムには、国際公開第WO2013/142578A1号、同第WO2013/098244A1号、及びNucleic Acids Res(2017)45(1):496-508に記載のものも含まれ、これらの文献の内容は全体として本明細書に援用される。
【0194】
いくつかの実施形態において、1つ以上のヌクレアーゼは、TAL-エフェクターDNA結合ドメイン-ヌクレアーゼ融合タンパク質(TALEN)である。Xanthomonas属の植物病原性細菌のTALエフェクターは、宿主DNAを結合し、エフェクター特異的宿主遺伝子を活性化することにより、疾患において重要な役割を果たし、または防御を誘発する(例えば、Gu et al.(2005)Nature 435: 1122-5;Yang et al.,(2006)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103: 10503-8;Kay et al.,(2007)Science 318:648-51;Sugio et al.,(2007)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104: 10720-5;Romer et al.,(2007)Science 318:645-8;Boch et al.,(2009)Science 326(5959):1509-12;及びMoscou and Bogdanove,(2009)326(5959):1501を参照,(これらの文献の各々は、参照により全体として本明細書に援用される))。TALエフェクターは、1つ以上のタンデムリピートドメインを通じてDNAと配列特異的に相互作用するDNA結合ドメインを含む。繰り返される配列は、典型的には34個のアミノ酸を含み、繰り返される配列は、典型的には互いに91~100%相同である。リピートの多型は通常は位置12及び13にあり、位置12及び13におけるリピート可変二残基の同一性とTALエフェクターの標的配列の連続ヌクレオチドの同一性との間に一対一対応が存在するように思われる。
【0195】
TAL-エフェクターDNA結合ドメインは、所望の配列に結合するように操作し、例えば、II型制限エンドヌクレアーゼからのヌクレアーゼドメイン、典型的にはFokIなどのII型制限エンドヌクレアーゼからの非特異的切断ドメインと融合させることができる(例えば、Kim et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:1156-1160を参照(当該文献は、参照により全体として本明細書に援用される))。他の有用なエンドヌクレアーゼとしては、例えば、HhaI、HindIII、Nod、BbvCI、EcoRI、BglI、及びAlwIを挙げることができる。したがって、いくつかの実施形態において、TALENは、TALENが特定のヌクレオチド配列内またはそれに隣接する標的DNAを切断するように、組み合わせて標的DNA配列内の特定のヌクレオチド配列に結合する複数のTALエフェクター反復配列を含むTALエフェクタードメインを含む。本明細書で提供する方法に有用なTALENとしては、WO10/079430及び米国特許出願公開第2011/0145940号に記載のものが挙げられ、これらの文献は参照により全体として本明細書に援用される。
【0196】
いくつかの実施形態において、1つ以上のヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。ZFNは、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン及び切断誘導剤ドメインから構成された、操作された切断誘導剤である。操作されたZFNは、2つのジンクフィンガーアレイ(ZFA)からなり、その各々が、二量体化すると活性化する非特異的エンドヌクレアーゼの単一サブユニット(例えば、FokI酵素のヌクレアーゼドメイン)と融合している。
【0197】
有用なジンクフィンガーヌクレアーゼには、既知のものと、1つ以上の部位に対する特異性を有するように操作されたものが含まれる。ジンクフィンガードメインは、選択されたポリヌクレオチド認識配列に特異的に結合するポリペプチドの設計に適用できる。したがって、特定の遺伝子を標的とすることにより、発現の修飾または調節に適用できる。
【0198】
シャペロン
いくつかの実施形態は、1つ以上のシャペロンをさらに含む。タンパク質フォールディングシャペロンは、ポリペプチド(アミノ酸)鎖の3次元構造へのフォールディングを改善するタンパク質である。タンパク質フォールディングシャペロンは、それらの基質(すなわち、他のタンパク質)が適切にフォールディングされるのを助け、しばしば溶解性を高めるのも助ける。ほとんどのタンパク質は、機能する上で特定の形状にフォールディングされなければならないため、タンパク質フォールディングシャペロンの発現により、細胞内のある特定の酵素の適切な集成を支援して、基質タンパク質の酵素活性を高めることができる。
【0199】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、1つ以上の修飾を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上の修飾は、1つ以上のシャペロンタンパク質をコードし、かつそれを発現可能であるポリヌクレオチドを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、1つ以上のシャペロンタンパク質は、groEL及び/またはgroESを含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、groEL及び/またはgroESは、Escherichia coli groEL及び/もしくはgroES、Methylococcus capsulatus groEL及び/もしくはgroES、またはこの両方である。いくつかの実施形態において、1つ以上のシャペロンは、1つ以上のポリペプチドを含み、1つ以上のポリペプチドの各々はアミノ酸配列を有し、アミノ酸配列は、配列番号62~66のいずれか1つに対し、それぞれ約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、または約99%超同一である。
【実施例】
【0200】
実施例1
3-HIBAのin vivo重合
本試験では、基質3-HIBAに対する株のパネルの活性を、3-HIBAのin vivo重合及びポリ(HIBA)からメタクリル酸(MAA)への変換について評価する。
【0201】
本試験では、一方はCoAリガーゼを発現し、一方はポリヒドロキシアルカン酸(PHA)シンターゼを発現する2つのプラスミドを含む株のパネルを構築した。
【0202】
NH283株は、E.coli(NEB Express ΔaraBAD::cat)の株であり、公報WO2017087731A1の段落[0153]に記載の通りに構築したものである。
【0203】
LC706株は、BW25113株(CGSC 7636,“Datsenko,KA,BL Wanner 2000.One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products,”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97(12):6640-5.”)と同等であり、これは、E.coli K-12の標準的で広く利用可能な株である。
【0204】
本試験で試験した株を下記の表5に示す。これらの株を3-HIBAが存在する条件下で培養し、次いでポリ(3-HIBA)及びメタクリル酸(MAA)についてアッセイした。
【0205】
500μLのLBにカルベニシリン(100μg/mL)及びカナマイシン(50μg/mL)を加えたものが入ったディープウェル96ウェル培養プレートに、株のパネルを接種した。プレートを通気性シール(Nunc Breathe-Easier)で覆い、37℃及び800rpmで16時間インキュベートした。500μLのLBにカルベニシリン(100μg/mL)及びカナマイシン(50μg/mL)を加えたものの中で、このプレート上の全ての株を、およそ5μL一晩培養物から開始して副次培養した。これらの株を37℃及び800rpmで24時間培養した。LBから構成された500μLの培地に20×PBS(最終濃度2×PBS)、0.25%(w/v)ラセミ3-ヒドロキシイソ酪酸(ナトリウム塩)、10g/Lグリセロール、カルベニシリン(100μg/mL)、及びカナマイシン(50μg/mL)の1:10希釈液を加えたものに、各々5μLの一晩培養物をピペッティングすることにより、これらの株を副次培養した。このプレートを通気性シールで覆い、密閉容器に入れ、37℃及び900rpmで4日間インキュベートした。本試験で試験したこれらの株を下記の表5に示す。
【0206】
PHAベース消化プロトコル
0.5~1.5mLの細胞培養試料を1.5mLポリプロピレンチューブまたは2mLポリプロピレン96ウェルプレートのいずれかに採取し、卓上遠心機でスピンダウンして、固体バイオマスを採取した。上清を廃棄した。得られた細胞ペレットを1mLの冷水に再懸濁し、再びスピンダウンした。この洗浄ステップを最低3回繰り返した。最終洗浄後、固体バイオマスペレットをNunc breath-easierナイロン通気性シールで覆い、55℃のオーブンに入れて48~72時間乾燥した。200μLの1N水酸化ナトリウム水溶液を各乾燥ペレットに加え、ポリプロピレンチューブ蓋またはシリコーンプレートマットのいずれかで覆い、70~80℃のオーブンで4時間インキュベートした。次いで試料を取り出し、冷却し、200μLの1N塩酸水溶液で中和した。次いで150μLの各試料を96ウェルPTFEプレートフィルターに移し、15μLの100mMクエン酸と混合した。試料をフィルターを通してスピンさせ、Coming Costarポリプロピレン96ウェルプレートに採取し、ゾーンフリーポリエチレンプレートシール(Excel Scientific)で密封し、分析のためにAgilent 1290 HPLCシステムに入れた。
【0207】
HPLC分析については、Biorad Aminex HPX-87Hカラムを用いて、0.008N硫酸を移動相として0.6mL/分の流量で20μLの各試料を分離した。DAD及びRIDの両方を介して溶出物を検出し、調製した3-ヒドロキシイソ酪酸(ラセミ体)及びメタクリル酸の標準物質一式と比較した。この比較から、乾燥バイオマスから測定されたこれらの種のいずれかが消化された重合体に対応すると仮定し、ポリ-3-ヒドロキシイソ酪酸の概算推定値を算出した。検出された分子種を定量的に測定するために、Agilentソフトウェアを使用して、消化された重合体に対応するピークを統合した。
【0208】
バックグラウンドレベルは、CoA-リガーゼ及びPHAシンターゼの両方を含まない培地または株のみを含む試料を分析することによって決定した。
【0209】
試験結果を下記の表5に示す。表5に示すように、多数の株が3-HIBA及びMAAの両方の保持時間において顕著なピークを示し、これにより細胞内にポリ(3-HIBA)が存在することが示された。これらのピークは、対照株では存在しないか、またはバックグラウンドレベルを上回った。下記の表5に示すように、以下の株がこのアッセイで顕著なシグナルを示した:sTRiM0256、sTRiM0404、sTRiM0470(sTRiM0256と重複)、sTRiM0249、sTRiM0250、sTRiM0459、sTRiM0180、sTRiM0257、sTRiM0426、sTRiM0179、sTRiM0222、sTRiM0258、sTRiM0214、sTRiM0447、sTRiM0397、及びsTRiM0251。出願人は、驚くべきことに、ある特定の酵素の組合せはこのアッセイで顕著なシグナルを示したが、表5に示すように、一部の他の組合せはポリ(3-HIBA)またはMAAを産生する活性を示さなかったことを見出した。
【0210】
表5.株のパネル(各株は、一方がCoA-リガーゼを発現し一方がポリヒドロキシアルカン酸(PHA)シンターゼを発現する2つのプラスミドを含めて構築した)の、3-HIBAからポリ(3-HIBA)への重合と、ポリ(3-HIBA)からメタクリル酸へのさらなる変換とを触媒する基質3-HIBAに対する活性を示す、3-HIBA及びMAAスクリーンエリアの試験結果。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【0211】
実施例2
3-HIBAからポリ(3-HIBA)への変換及びポリ(3-HIBA)からMAAへの熱分解。
この試験では、3-HIBAのin vivo重合及びさらにポリ(HIBA)からメタクリル酸(MAA)への変換について、基質3-HIBAに対する2つの特定の株sTRIM0256及びsTRIM0290の活性を比較する。
【0212】
株sTRIM0256を上記の実施例1及び表5に記載のように構築した。この株は、CoA-リガーゼ(Clostridium difficile由来のhadA、配列番号3)ならびにPHAシンターゼ(Allochromatium vinosum由来のphaC及びphaE、配列番号22及び23)を構成的に発現する2つのプラスミドを有するEscherichia coliを含む。sTRIM0290株は、sTRIM0256株と同一であるが、PHAシンターゼを一切含まない。これらの株を3-HIBAが存在する条件下で培養し、次いでポリ(3-HIBA)及びメタクリル酸(MAA)についてアッセイした。
【0213】
両方の株を、2mLのLBに100μg/mLの最終濃度のカルベニシリン及び50μg/mLの最終濃度のカナマイシンを加えたものに接種した。これらの株を37℃で16時間、280rpmで振とうしながらインキュベートした。これらの培養物から1mLを、25mLのLBに2×PBS、10g/Lグリセロール、0.25%(w/v)の最終濃度のラセミ体3-ヒドロキシイソ酪酸、カルベニシリン(100μg/mL)、及びカナマイシン(50μg/mL)を加えたものに移した。これらの培養物を125mLのバッフル付きフラスコ内で37℃で、200rpmで振とうしながら4日間インキュベートした。4日後、培養物を各々2mLチューブに分割し、遠心分離機で13000rpmでスピンした。上清を廃棄した。試料を2mLの冷水に懸濁し、遠心分離機でスピンし、上清を廃棄した。試料は1mLの冷水でさらに2回同様に洗浄した。最終洗浄後、チューブを開けたままにして、55℃のオーブンで3日間乾燥した。
【0214】
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(GCMS)によって試料を分析した。sTRIM0256株及びsTRIM0290株の試験結果をそれぞれ
図1及び
図2に示す。sTRIM0256株の試料では、
図1に示すようなスペクトルが得られ、メタクリル酸(MAA)に対応する顕著なピークを示した。
【0215】
10分~12分の収集時間で出現したピークは、熱分解GCMSによってメタクリル酸であることが特定された。対照株sTRIM0290では、
図2に示すように、メタクリル酸(MAA)に対応するピークは得られなかった。
【0216】
図1及び
図2の試験結果は、sTRIM0256株は3-HIBAからポリ(3-HIBA)への変換を触媒する上で高い活性を有し、一方sTRIM0290株は3-HIBAの重合を触媒する上で活性を有しないことを明確に示すものである。
【0217】
本開示は、供給原料からポリ(HIBA)を産生可能な微生物、及び供給原料からメタクリル酸(MAA)及びメタクリレートエステル(MAE)を産生する方法に関する多くの特徴について、様々な議論及び情報を提供する。
実施例S.配列
【0218】
表Sは、本明細書で参照されている配列を示す。
【0219】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【表6-6】
【表6-7】
【表6-8】
【表6-9】
【表6-10】
【表6-11】
【表6-12】
【表6-13】
【表6-14】
【表6-15】
【表6-16】
【表6-17】
【表6-18】
【表6-19】
【表6-20】
【表6-21】
【表6-22】
【表6-23】
【表6-24】
【表6-25】
【表6-26】
【0220】
さらなる詳細がなくても、当業者であれば、先の説明を使用して、特許請求された発明を最大限に活用することができると考えられる。本明細書で開示する実施例及び実施形態は、単なる例示として解釈するものとし、いかなる形でも本開示の範囲の限定として解釈しないものとする。当業者には、上述の実施形態の細部に対し、議論された根底にある原理から逸脱することなく、様々な変更及び修正がなされ得ることは明らかであろう。言い換えれば、上記の説明で具体的に開示された実施形態の様々な修正及び改良は、添付の請求項の範囲内である。例えば、記載された様々な実施形態の特徴の任意の好適な組合せが企図される。なお、ミーンズプラスファンクション形式で記載された要素は、米国特許法第112条第6項に従って解釈されることが意図されている。そのため、本発明の範囲は、以下の請求項によって定義される。
【0221】
本明細書で引用された全ての参考文献は、あたかも各々が個別に参照により全体として援用されたかのように、参照により援用される。本出願の実施形態を説明する際、明快性のために特定の用語が用いられている。しかし、本発明は、このように選択された特定の用語に限定されることは意図されていない。本明細書のいかなる部分も、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0222】
提示した全ての例は、代表的かつ非限定的なものである。上述の実施形態は、上記の教示を踏まえて当業者に理解されるように、本発明から逸脱することなく、修正または変形することができる。そのため、本発明が、請求項及びその等価物の範囲内で、具体的に説明した以外の方法でも実行され得ることを理解されたい。
【配列表】
【国際調査報告】