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特表2023-548993ハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20231115BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H01M4/58
C01B25/45 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577335
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 CN2022104544
(87)【国際公開番号】W WO2023056767
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】202111175470.8
(32)【優先日】2021-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522485888
【氏名又は名称】湖北万潤新能源科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUBEI WANRUN NEW ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 嬌嬌
(72)【発明者】
【氏名】王 勤
(72)【発明者】
【氏名】程 国章
(72)【発明者】
【氏名】高 川
(72)【発明者】
【氏名】趙 旭
(72)【発明者】
【氏名】余 随淅
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050CA01
5H050GA02
5H050GA05
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、ハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料およびその製造方法に関する。該方法では、モル比1:1~1:1.05で鉄源とリチウム源を秤量し、この鉄源とリチウム源の合計質量に対する5~15%の炭素源及び0~1%の金属イオンドープ剤を秤量し、それらに水を加えてボールミリングし、D50が100~200nmに制御されるようにサンドミルリングし、その後に噴霧して前駆体を得、前駆体を焼結炉に入れ、同時に窒素保護ガスを導入し、650~700℃の温度下で焼結し、冷却後、焼結材を得、その後、焼結材を粉砕し、ふるいにかけて鉄を除去した後、リン酸鉄リチウムを得る。本発明により製造されるリン酸鉄リチウムでは、良好なレート性能及びサイクル安定性能を有し、0.1Cでの放電容量が160mAh/gになり、10Cでの放電容量が140mAh/gになる。この正極材料は、ミクロ形態が略球状の粒子であり、一次粒子の平均値が100nmである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料の製造方法であって、
前記リン酸鉄リチウム正極材料は、ミクロ形態が略球状粒子であり、一次粒子の粒径が100nmであり、
前記リン酸鉄リチウム正極材料の製造方法は、高温固相法であり、
所定のモル比で秤量した鉄源およびリチウム源、所定量で秤量した炭素源およびイオンドープ剤に純水を加え、所定の固形分含有量のスラリーに調製するようにボールミリングする工程Aと、
ボールミリング後のスラリーをサンドミルにて粒子の直径を所定の範囲に制御するようにサンドミルリングする工程B、
サンドミルリング後のスラリーを噴霧し、淡黄色の前駆体粉末を得る工程Cと、
前記前駆体粉末を焼結炉にて窒素保護下で高温焼結し、冷却後に焼結材を得る工程Dと、
前記焼結材を粉砕し、ふるいにかけて鉄を除去した後、リン酸鉄リチウムを得る工程Eとを含むことを特徴とする、リン酸鉄リチウム正極材料の製造方法。
【請求項2】
前記工程Aで選択される前記鉄源は、無水リン酸鉄であり、ハニカム構造を有し、BETが9~11m/gであることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の製造方法。
【請求項3】
前記工程Aにおける前記鉄源とリチウム源のモル比が1:1~1:1.05であることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の製造方法。
【請求項4】
前記工程Aにおける前記炭素源が、グルコース、PEG2000、PEG6000、白砂糖、およびクエン酸からなる群より選択された1つ又は複数種であることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の製造方法。
【請求項5】
前記工程Aにおける前記金属イオンドープ剤が二酸化チタン、二酸化ジルコニウムのうちの1つであることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の製造方法。
【請求項6】
前記工程Bにおいて、サンドミルリング後のスラリーの粒径D50が100~200nmに制御されることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の製造方法。
【請求項7】
前記工程Cにおいて、前記噴霧の送風温度が240~280℃であり、前記噴霧の排気温度が80~95℃であることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の製造方法。
【請求項8】
前記工程Dにおいて、前記前駆体粉末が、窒素保護下、650~700℃の焼結温度下で、18~20時間高温焼結されることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の製造方法。
【請求項9】
前記工程Eにおいて、前記焼結材の粉砕粒径D50が0.4~1.5μmに制御されることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸鉄リチウム正極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池の技術分野に属し、リチウムイオン電池の正極材料の製造、特にハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料の製造方法に関する。
【0002】
<相互参照>
この出願は、2021年10月9日に中国特許庁に出願され、出願番号202111175470.8、発明の名称「ハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料の製造方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その全内容が援用により本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
従来の鉛蓄電池は、技術が成熟しており、コストが低いが、その質量および体積エネルギー密度が低く、サイクル寿命が短く、産業チェーンに鉛汚染が存在する恐れがある。それに対して、リン酸鉄リチウムを代表とするポリアニオンリン酸鉄リチウムといったリチウムイオン電池用正極材料は、高理論容量、良好な熱安定性、良好なサイクル性能、安定した構造、環境に優しいなどの利点を持ち、特に動力電池やアイドリングストップ電源の分野で大きな注目を集めている。リン酸鉄リチウムの技術がますます成熟するにつれて、リン酸鉄リチウムは、鉛蓄電池の代わりに起動停止電源の分野でますます広く使用されていく。
【0004】
リン酸鉄リチウム正極材料の合成方法は、高温固相法、炭素熱還元法、マイクロ波合成法、ゾルゲル法及び水熱/ソルボサーマル法という5つの種類に分けられる。水熱/ソルボサーマル法及び高温固相法は、リン酸鉄リチウムの合成に使用されている主な方法である。水熱/ソルボサーマル法により製造されたリン酸鉄リチウム材料は、結晶構造が完全で、不純物ピークがなく、粒子の粒径が均一で、粒子表面の炭素被覆層が均一であるという利点を持っているが、製造プロセスが複雑で、リチウム源の消費量が比較的多く、コストが高く、また水熱/ソルボサーマル法によるリン酸鉄リチウムの製造時の反応温度が低く、材料結晶格子にアンチサイト欠陥が生じやすい。
【0005】
高温固相法は、リチウム源、鉄源、リン源、炭素源および純水を一定の割合で十分に研磨したものを高温噴霧により熱分解させて淡黄色の前駆体粉末を得、保護雰囲気下で一定時間高温反応させた後、結晶性の良いリン酸鉄リチウムを得る方法である。この方法には、コストが低く、プロセスルートが簡単で、製品安定性が良く、炭素被覆が均一で、大規模な工業生産が容易という利点があるが、一次粒子が大きく、粒径が不均一で、リチウムイオンの拡散距離が長く、拡散係数が低く、大電力の起動停止電源への適用に大きく制限されているという欠点もある。そこで、上記の問題を検討して解決することは、高温固相法のさらなる研究の方向になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の高温固相法により製造されたリン酸鉄リチウム正極材料は一次粒子が大きく、粒子が不均一になりやすいという問題を解決するために、本発明は、新規なハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料およびその製造方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様により実現される。
上記のハイレートのリン酸鉄リチウム材料は、略球状の形態を有し、一次粒子の粒径が100nmである。
【0008】
上記のハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料に用いられる無水リン酸鉄は、ハニカム構造を有し、そのBETが9~11m/gである。
【0009】
上記のハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料においては、前記前駆体粉末とリチウム源を十分に混合し、鉄源とリチウム源のモル比を1:1~1:1.05とし、炭素源の質量を鉄源とリチウム源の合計質量に対して5~15%とする。
【0010】
前記リン酸鉄リチウム正極材料の製造方法においては、前記炭素源がグルコース、PEG2000、PEG6000、白砂糖、クエン酸のうちの1つ又は複数種である。
【0011】
前記リン酸鉄リチウム正極材料の製造方法においては、サンドミルリング後のスラリーの最終粒径D50が100~200nmに制御される。
【0012】
前記リン酸鉄リチウム正極材料の製造方法においては、前記前駆体は、窒素雰囲気の保護下、650~700℃の焼結温度下で高温焼結される。以下の本発明の好ましい態様においては、リチウム源の過剰係数、炭素源の種類、サンドミルの粒径D50、及び高温焼成の温度などの条件が限定される。
【0013】
前記リン酸鉄リチウム正極材料の製造方法においては、
所定量のリン酸鉄と炭酸リチウムをモル比1:1~1:1.05で秤量し、該リン源とリチウム源材料の合計質量に対する10%の炭素源化合物を採取し、固形分含有量40%のスラリーを調製する工程と、
上記スラリーをボールミルにてスラリーを均一に混合できるように2時間ボールミリングする工程と、
ボールミリングしたスラリーをサンドミルにて、サンドミルリング後の最終の粒径D50を100~200nmに制御するように微粉砕する工程と、
サンドミルリング完了後のスラリーを、噴霧の送風温度を240~280℃とし、噴霧の排気温度を80~95℃として噴霧乾燥し、淡黄色の前駆体粉末を得る工程と、
前駆体粉末を黒鉛匣鉢に入れ、窒素雰囲気の保護下で650~700℃の焼結温度下で18~20時間高温焼結し、その後自然冷却する工程とが含まれる。
【0014】
焼結した材料をジェットミルにて、粉砕粒径D50が0.4~1.5μmに制御されるように粉砕した後、ふるいにかけて電流により鉄を除去し、ハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料を得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
本発明の高温固相法によれば、略球状形態の、一次粒子の粒径が100nmであるリン酸鉄リチウム前駆体が製造される。製造されたリン酸鉄リチウム材料は、XRDスペクトルの特徴を調べたところ、リン酸鉄リチウムの特徴的なピークが現れ、不純物ピークは見られなかった。製造された材料を用いてCR2032ボタン型半電池を組み立てた。CR2032ボタン型半電池の電気的特性を測定したところ、製造された略球状のリン酸鉄リチウム正極材料では、室温で0.1Cの電流下で初回放電比容量が161mAh/gに達し、10Cの電流下で初回放電比容量が140mAh/gに達し、25℃で、17878回の動作サイクル後の容量維持率が95%以上であった。図8に示すように、実施例1の材料では、45℃で11922回の動作サイクル後の容量維持率が90%以上であり、良好なレート性能(rate capability)及びサイクル安定性を有する。
【0016】
本発明により製造される材料では、完全な結晶構造を有し、不純物ピークがなく、良好な放電容量及びサイクル性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明における実施例1のリン酸鉄リチウム正極材料のXRDパターンである。
図2図2は、本発明における実施例1のリン酸鉄リチウム正極材料のSEM画像である。
図3図3は、本発明における実施例1のリン酸鉄リチウム正極材料の0.1Cでの初回の充放電曲線である。
図4図4は、0.5C充電、0.5C放電、0.5C充電、1C放電/0.5C充電、0.5C放電/2C充電、0.5C放電/5C充電、10C放電の場合の、本発明における実施例1のリン酸鉄リチウム正極材料の粒度分布曲線図である。
図5図5は、0.5C充電、0.5C放電、0.5C充電、1C放電/0.5C充電、0.5C放電/2C充電、0.5C放電/5C充電、10C放電の場合の、本発明における実施例2のリン酸鉄リチウム正極材料の粒度分布曲線図である。
図6図6は、0.5C充電、0.5C放電、0.5C充電、1C放電/0.5C充電、0.5C放電/2C充電、0.5C放電/5C充電、10C放電の場合の、本発明における実施例3のリン酸鉄リチウム正極材料の粒度分布曲線図である。
図7図7は、本発明における実施例1のリン酸鉄リチウム正極材料の25℃での動作サイクル曲線図である。
図8図8は、本発明における実施例1のリン酸鉄リチウム正極材料の45℃での動作サイクル曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を参照しながら本発明の技術案を明確かつ完全に説明するが、記載される実施例が本発明の全ての実施形態ではなく、一部の実施形態にすぎないことが明らかである。当業者が本発明における実施形態に基づいて創造的な努力なしに得た他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲に属する。
【0019】
本発明に係るハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料は、略球状の形態をしており、一次粒子の粒径が100nmであり、具体的に次のような方法で製造された。
【0020】
まず、リン酸鉄と炭酸リチウム材料をモル比1:1~1:1.05で秤量し、次にこの鉄源とリチウム源材料の合計質量に対する5~15%の炭素源、及び鉄源とリチウム源材料の合計質量に対する0~1%の金属イオンドープ剤を秤量し、それらに純水を加えて固形分含有量40%のスラリーを調製した。このスラリーをボールミリングし、D50粒径が100~200nmに制御されるようにサンドミルリングすることで、鉄源、リチウム源、リン源、炭素源などの原材料が十分に混合されるようにした。さらに、得られたスラリーを遠心噴霧で乾燥させ、淡黄色の前駆体粉末を得た。前駆体を黒鉛匣鉢に入れ、窒素雰囲気の保護下、650~700℃の保温温度下で18~20時間高温焼結した。自然冷却した後、ジェットミルで粉砕し、鉄を除去した後、ハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料を得た。
【0021】
ただし、鉄源及びリン源としては、ハニカム構造を有し、BETが9~11m/gである無水リン酸鉄を使用した。
リチウム源としては、主含有量≧99.7%の電池グレードの炭酸リチウムを使用した。
炭素源としては、グルコース、PEG2000、PEG6000、白砂糖、クエン酸の1つ又は複数種を使用した。
金属イオンドープ剤としては、ナノ二酸化チタン、二酸化ジルコニウムの1つ又は複数種を使用した。
【0022】
本発明では、高温固相法を採用して球形形態のリン酸鉄リチウム前駆体を製造し、前駆体を焼結した後、一次粒子の粒径が100nmである略球状形態のリン酸鉄リチウム正極材料を得た。製造された材料は、完全な結晶構造を有し、不純物ピークがなく、良好な放電容量及びサイクル性能を有する。
【実施例
【0023】
<実施例1>
まず、25gの無水リン酸鉄、6.3gの炭酸リチウム、2.64gのグルコース及び0.32gのPEG2000、0.25gの二酸化チタンを秤量し、上記の原料を5.3gの脱イオン水に分散させ、2時間ボールミリングした後、サンドミルにて粒径D50が100~200nmに制御されるようにサンドミルリングし、鉄源、リチウム源、炭素源、金属イオンドープ剤などの原材料を十分にかつ均一に混合し、さらに遠心噴霧で乾燥させ、淡黄色の前駆体粉末を得た。前駆体を黒鉛匣鉢に入れ、窒素雰囲気の保護下、650~700℃の保温温度下で18~20時間高温焼結した。自然冷却した後、ジェットミルで粉砕し、鉄を除去した後、ハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料を得た。
【0024】
<実施例2>
まず、25gの無水リン酸鉄、6.3gの炭酸リチウム、3.8gのスクロース及び0.78gのPEG2000、0.25gの二酸化チタンを秤量し、上記の原料を5.3gの脱イオン水に分散させ、2時間ボールミリングした後、サンドミルにて粒径D50が100~200nmに制御されるようにサンドミルリングし、鉄源、リチウム源、炭素源、金属イオンドープ剤などの原材料を十分にかつ均一に混合し、さらに遠心噴霧で乾燥させ、淡黄色の前駆体粉末を得た。前駆体を黒鉛匣鉢に入れ、窒素雰囲気の保護下、650~700℃の保温温度下で18~20時間高温焼結した。自然冷却した後、ジェットミルで粉砕し、鉄を除去した後、ハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料を得た。
【0025】
<実施例3>
まず、25gの無水リン酸鉄、6.3gの炭酸リチウム、5.68gのクエン酸、0.13gの二酸化チタンを秤量し、上記の原料を5.3gの脱イオン水に分散させ、2時間ボールミリングした後、サンドミルにて粒径D50が100~200nmに制御されるようにサンドミルリングし、鉄源、リチウム源、炭素源、金属イオンドープ剤などの原材料を十分にかつ均一に混合し、さらに遠心噴霧で乾燥させ、淡黄色の前駆体粉末を得た。前駆体を黒鉛匣鉢に入れ、窒素雰囲気の保護下、650~700℃の保温温度下で18~20時間高温焼結した。自然冷却した後、ジェットミルで粉砕し、鉄を除去した後、ハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料を得た。
【0026】
<実施例4>
まず、25gの無水リン酸鉄、6.3gの炭酸リチウム、5.68gのグルコース及び0.32gのPEG2000、0.31gの二酸化ジルコニウムを秤量し、上記の原料を5.3gの脱イオン水に分散させ、2時間ボールミリングした後、サンドミルにて粒径D50が100~200nmに制御されるようにサンドミルリングし、鉄源、リチウム源、炭素源、金属イオンドープ剤などの原材料を十分にかつ均一に混合し、さらに遠心噴霧で乾燥させ、淡黄色の前駆体粉末を得た。前駆体を黒鉛匣鉢に入れ、窒素雰囲気の保護下、650~700℃の保温温度下で18~20時間高温焼結した。自然冷却した後、ジェットミルで粉砕し、鉄を除去した後、ハイレートのリン酸鉄リチウム正極材料を得た。
【0027】
日本リガク型のX線粉末回折計(XRD)を使用して実施例1で製造されたリン酸鉄リチウム材料を特徴付けた結果、図1に示すように、XRDスペクトルにはリン酸鉄リチウムの特徴的なピークが現れ、不純物ピークはなかった。Zeiss Sigma500電界放出型走査電子顕微鏡(SEM)を使用して実施例1で製造されたリン酸鉄リチウム材料を特徴付けた結果、図2に示すように、製造されたリン酸鉄リチウム材料は、略球状の粒子の形態をしており、一次粒子の粒径が100nmであった。
【0028】
実施例1で製造されたリン酸鉄リチウム正極材料、導電性炭素粉及びPVDF結合剤を90:5:5の質量比で混合し、均質化後にアルミニウム箔シートに塗布し、100℃で乾燥させた後、対ローラーで圧延し、その後、打ち抜き機で直径14mmの電極シートを得、次に秤量し、アルミニウム箔の質量を差し引いて活物質の質量を得た。乾燥後、ドイツのブラウン社UNlab型不活性ガスグローブボックスで、負極シェル、リチウムシート、電解液、セパレータ、電解液、ピース、ガスケット、コネクタ、正極シェルの順に、CR2032ボタン型半電池を組み立てた。Wuhan LAND Electronics Co.,Ltd.製CT2001A型バッテリーテストシステムを使用して、電圧範囲を2.0~3.9Vとして、CR2032ボタン型半電池の電気化学的性能を測定した結果を図3図4に示す。図3に示すように、実施例1で製造されたリン酸鉄リチウム正極材料では、室温で0.1Cの電流下での初回放電容量が161mAh/gに達した。図4に示すように、実施例1で製造されたリン酸鉄リチウム正極材料では、室温で0.5Cの充電電流下で、10Cでの放電容量が140mAh/gに達した。図5に示すように、実施例2で製造されたリン酸鉄リチウム正極材料では、室温で0.5Cの充電電流下で10Cでの放電容量が135mAh/gに達した。図6に示すように、実施例3で製造されたリン酸鉄リチウム正極材料では、室温で0.5Cの充電電流下で10Cでの放電容量が124mAh/gに達した。図7に示すように、実施例1の材料では、25℃で17878回の動作サイクル後の容量維持率が95%以上であった。図8に示すように、実施例1の材料では、45℃で11922回の動作サイクル後の容量維持率が90%以上であり、優れたレート性能及びサイクル性能を有した。
【0029】
なお、以上に記載されたのは本発明の好ましい実施形態に過ぎなく、当業者であれば、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改良や修正を行う可能性があり、これらの改良や修正も本発明の保護範囲に含まれることに留意する必要がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】