(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】組込み混合物及びイメージング混合物
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/48 20060101AFI20231115BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20231115BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20231115BHJP
【FI】
C12Q1/48 Z
C12Q1/68
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580802
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 EP2021081501
(87)【国際公開番号】W WO2022101400
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】アルティオリ,ジャンルカ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ルサール-ヴィジェ,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】メイザー,ブライアン ディ
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド,セス エム
(72)【発明者】
【氏名】パグリーズ,ケイトリン エム
(72)【発明者】
【氏名】フォン ハッテン,ゼイビア
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR56
4B063QS28
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
組込み混合物の例としては、液体担体、複合体、及び標識ヌクレオチドが挙げられる。複合体は、ポリメラーゼ及びポリメラーゼに連結されたプラズモンナノ構造を含む。標識ヌクレオチドは、ヌクレオチド、ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、及びヌクレオチドの塩基に結合した色素標識を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組込み混合物であって、
液体担体と、
複合体であって、
ポリメラーゼ、及び
前記ポリメラーゼに連結されたプラズモンナノ構造を含む、複合体と、
標識ヌクレオチドであって、
ヌクレオチド、
前記ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、及び
前記ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識を含む、標識ヌクレオチドと、を含む、組込み混合物。
【請求項2】
前記プラズモンナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープケイ素ナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組込み混合物。
【請求項3】
前記プラズモンナノ構造が、前記ポリメラーゼのアミン又はシステインに化学的にコンジュゲートしている、請求項1に記載の組込み混合物。
【請求項4】
オリゴヌクレオチドが、前記ポリメラーゼに結合しており、
前記オリゴヌクレオチドは、前記プラズモンナノ構造に結合した相補的オリゴヌクレオチドテザーにハイブリダイズする、請求項1に記載の組込み混合物。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドが、前記ポリメラーゼに結合しており、
前記オリゴヌクレオチドが、前記プラズモンナノ構造の周りに巻き付けられた追加の部分も含むオリゴヌクレオチドテザーの相補的部分にハイブリダイズする、請求項1に記載の組込み混合物。
【請求項6】
前記プラズモンナノ構造が、結合対の第1のメンバーで官能化され、
前記ポリメラーゼが、前記結合対の第2のメンバーを含むか、又はそれで官能化されている、請求項1に記載の組込み混合物。
【請求項7】
前記第1のメンバー及び前記第2のメンバーが、NiNTA配位子及びヒスチジンタグ、又はストレプトアビジン及びビオチン、又はスパイタグ及びスパイカッチャー、又はマレイミド及びシステイン、又はアジド及びジベンゾシクロオクチンを含む、請求項6に記載の組込み混合物。
【請求項8】
方法であって、
鋳型鎖のクラスターを含むフローセルに組込み混合物を導入する工程であって、前記組込み混合物が、
液体担体と、
複数の複合体であって、各複合体が、
ポリメラーゼ、及び
前記ポリメラーゼに連結されたプラズモンナノ構造を含む、複数の複合体と、
複数の標識ヌクレオチドであって、各標識ヌクレオチドが、
ヌクレオチド、
前記ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、及び
前記ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識を含む、複数の標識ヌクレオチドと、を含み、
それにより、少なくとも1つの前記ポリメラーゼが、i)前記標識ヌクレオチドのうちの個々の1つを前記鋳型鎖の1つに沿って新生鎖に組込み、ii)前記標識ヌクレオチドの個々の1つの近接内にその連結されたプラズモンナノ構造を維持する、組込み混合物を導入する工程と、
前記プラズモンナノ構造が維持されている間に前記組込みを光学的にイメージングする工程と、
を含む、方法。
【請求項9】
キットであって、
組込み混合物であって、
液体担体と、
ポリメラーゼと、
標識ヌクレオチドであって、
ヌクレオチド、
前記ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、及び
前記ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識を含む、標識ヌクレオチドと、を含む組込み混合物、並びに
イメージング混合物であって、
第2の液体担体と、
前記標識ヌクレオチドが関与する組込み事象の後に、前記標識ヌクレオチドの近接内でそれ自体を会合するように官能化されたプラズモンナノ構造と、を含む、イメージング混合物、
を含むキット。
【請求項10】
前記プラズモンナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープケイ素ナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合わせからなる群から選択される、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記プラズモンナノ構造が、第2のポリメラーゼで官能化されている、請求項9に記載のキット。
【請求項12】
前記プラズモンナノ構造が、前記第2のポリメラーゼのアミン又はシステインに化学的にコンジュゲートしている、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
オリゴヌクレオチドが、前記第2のポリメラーゼに結合し、
前記オリゴヌクレオチドが、前記プラズモンナノ構造に結合した相補的オリゴヌクレオチドテザーにハイブリダイズする、請求項11に記載のキット。
【請求項14】
オリゴヌクレオチドが、前記第2のポリメラーゼに結合し、
前記オリゴヌクレオチドが、前記プラズモンナノ構造の周りに巻き付けられた部分を含む相補的オリゴヌクレオチドテザーにハイブリダイズする、請求項11に記載のキット。
【請求項15】
前記プラズモンナノ構造が、結合対の第1のメンバーで官能化され、
前記ポリメラーゼが、前記結合対の第2のメンバーを含むか、又はそれで官能化されている、請求項9に記載のキット。
【請求項16】
前記第1のメンバー及び前記第2のメンバーが、NiNTA配位子及びヒスチジンタグ、又はストレプトアビジン及びビオチン、又はスパイタグ及びスパイカッチャー、又はマレイミド及びシステイン、又はアジド及びジベンゾシクロオクチンを含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記ポリメラーゼが、その表面に結合したDNA結合ドメインを更に含む、請求項15に記載のキット。
【請求項18】
前記ポリメラーゼが、
その表面に結合した表面テザーと、
前記表面テザーに結合したフローセル表面結合剤と、を更に含む、請求項15に記載のキット。
【請求項19】
前記プラズモンナノ構造が、ストレプトアビジンで官能化され、
前記標識ヌクレオチドが、ビオチン化されている、請求項9に記載のキット。
【請求項20】
方法であって、
鋳型鎖のクラスターを含むフローセルに組込み混合物を導入する工程であって、前記組込み混合物が、
液体担体と、
複数のポリメラーゼと、
複数の標識ヌクレオチドであって、各標識ヌクレオチドが、
ヌクレオチド、
前記ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、及び
前記ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識を含む、複数の標識ヌクレオチドと、を含み、
それにより、少なくとも1つの前記ポリメラーゼが、前記標識ヌクレオチドのうちの個々の1つを前記鋳型鎖の1つに沿って新生鎖に組込む、組込み混合物を導入する工程と、
前記フローセルにイメージング混合物を導入する工程であって、前記イメージング混合物が、
第2の液体担体と、
複数の官能化プラズモンナノ構造と、を含み、
それによって、前記官能化プラズモンナノ構造のうちの少なくとも1つが、前記標識ヌクレオチドのうちの個々の1つの近接内にそれ自体を会合させる、イメージング混合物を導入する工程と、
前記官能化プラズモンナノ構造のうちの少なくとも1つが前記標識ヌクレオチドのうちの個々の1つと会合している間に、前記組込みを光学的にイメージングする工程と、
を含む、方法。
【請求項21】
前記官能化プラズモンナノ構造の各々が、第2のポリメラーゼで官能化され、
前記方法が、前記イメージング混合物を導入する前に、前記組込み混合物を除去することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記官能化プラズモンナノ構造の各々が、結合対の第1のメンバーで官能化され、
前記ポリメラーゼの各々が、前記結合対の第2のメンバーを含み、
前記方法が、前記イメージング混合物を導入する前に、前記組込み混合物を除去することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記官能化プラズモンナノ構造の各々が、ストレプトアビジンで官能化され、
前記標識ヌクレオチドの各々が、ビオチン化され、
前記方法が、前記イメージング混合物を導入する前に、前記組込み混合物を除去することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
標識ヌクレオチドであって、
ヌクレオチドと、
前記ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基と、
前記ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識と、
前記ヌクレオチドの塩基又は前記色素標識に結合したプラズモンナノ構造と、を含む、標識ヌクレオチド。
【請求項25】
前記プラズモンナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープケイ素ナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合わせからなる群から選択される、請求項24に記載の標識ヌクレオチド。
【請求項26】
前記プラズモンナノ構造が、二本鎖デオキシリボ核酸鎖を介して前記ヌクレオチドの塩基に結合している、請求項24に記載の標識ヌクレオチド。
【請求項27】
第1の連結分子が、前記色素標識を前記ヌクレオチドの塩基に結合させ、
第2の連結分子が、前記プラズモンナノ構造を前記ヌクレオチドの塩基に結合させ、
前記第1の連結分子は、前記第2の連結分子の第2の長さの約3nm~約12nm以内の第1の長さを有する、請求項24に記載の標識ヌクレオチド。
【請求項28】
第1の連結分子が、前記色素標識を前記ヌクレオチドの塩基に結合させ、
第2の連結分子が、前記プラズモンナノ構造を前記ヌクレオチドの塩基に結合させ、
前記第1の連結分子が、第1の長さを有し、前記第2の連結分子が、第2の長さを有し、前記第1及び第2の長さが合わせて、約3nm~約12nmの範囲である、請求項24に記載の標識ヌクレオチド。
【請求項29】
方法であって、
鋳型鎖のクラスターを含むフローセルに組込み混合物を導入する工程であって、前記組込み混合物が、
液体担体と、
複数のポリメラーゼと、
複数の標識ヌクレオチドであって、各標識ヌクレオチドが、
ヌクレオチド、
前記ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、
前記ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識、及び
前記ヌクレオチドの塩基に結合したプラズモンナノ構造を含む、複数の標識ヌクレオチドと、を含み、
それにより、少なくとも1つのポリメラーゼが、前記標識ヌクレオチドのうちの個々の1つを前記鋳型鎖の1つに沿って新生鎖に組込む、組込み混合物を導入する工程と、
前記組込みを光学的にイメージングする工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月16日に出願された米国特許仮出願第63/114,302号の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生物学的又は化学的研究における様々なプロトコルは、局所支持体表面上又は所定の反応チャンバ内で多数の制御された反応を実施することを含む。次いで、所望の反応を観察又は検出することができ、その後の分析は、反応に関与する化学物質の特性を同定又は明らかにするのに役立ち得る。いくつかの例では、制御された反応は、電荷、導電率、又はいくつかの他の電気的特性を変化させ、したがって、電子システムを検出に使用することができる。他の例では、制御された反応は蛍光を生成し、したがって、光学系を検出に使用することができる。
【発明の概要】
【0003】
組込み及びイメージング混合物が本明細書に開示される。これらの混合物は、ヌクレオチド塩基コールが光シグナルの検出を介して実行される配列決定方法での使用に好適である。本明細書に開示される混合物は、プラズモン共鳴及び組み込まれた標識ヌクレオチドの色素標識に対するプラズモンナノ構造の正確な位置決めを介してこれらの光学シグナルを増強する。配列決定中に新生核酸鎖に組み込まれた標識ヌクレオチドの構成要素である、色素標識の近接を増強するシグナル内にプラズモンナノ構造を局在化するいくつかの機構及び技術が本明細書に開示される。局在化により、プラズモンナノ構造は、イメージング中の色素標識の近接を増強するシグナル内に保持されることを可能にし、したがって、プラズモンナノ構造は、色素標識の光シグナルを増強することができる。
【0004】
導入
本明細書に開示される第1の態様は、液体担体と;複合体であって、ポリメラーゼ及びポリメラーゼに連結されたプラズモンナノ構造を含む、複合体と、標識ヌクレオチドであって、ヌクレオチド、ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、及びヌクレオチドの塩基に結合した色素標識と、を含む、組込み混合物である。
【0005】
第1の態様の例では、プラズモンナノ構造は、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープケイ素ナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合わせからなる群から選択される。
【0006】
第1の態様の例では、プラズモンナノ構造は、ポリメラーゼのアミン又はシステインに化学的にコンジュゲートされる。
【0007】
第1の態様の例では、オリゴヌクレオチドはポリメラーゼに結合し、オリゴヌクレオチドは、プラズモンナノ構造に結合した相補的オリゴヌクレオチドテザーにハイブリダイズする。
【0008】
第1の態様の例では、オリゴヌクレオチドはポリメラーゼに結合し、オリゴヌクレオチドは、プラズモンナノ構造の周りに巻き付けられた追加の部分も含むオリゴヌクレオチドテザーの相補的部分にハイブリダイズする。
【0009】
第1の態様の例では、プラズモンナノ構造は、結合対の第1のメンバーで官能化され、ポリメラーゼは、結合対の第2のメンバーを含むか、又はそれを用いて官能化される。一例では、第1のメンバー及び第2のメンバーは、NiNTA配位子及びヒスチジンタグ、又はストレプトアビジン及びビオチン、又はスパイタグ及びスパイカッチャー、又はマレイミド及びシステイン、又はアジド及びジベンゾシクロオクチンを含む。
【0010】
例えば、シーケンシングイメージング中の増強された蛍光シグナルを含む、本開示に記載される利点を達成するために、第1の態様の任意の特徴を任意の望ましい方法で一緒に組み合わせてもよく、及び/又は本明細書に開示される例のいずれかと組み合わせてもよいことを理解されたい。
【0011】
本明細書に開示される第2の態様は、鋳型鎖のクラスターを含むフローセルに組込み混合物を導入する工程であって、組込み混合物が、液体担体と、複数の複合体であって、各複合体が、ポリメラーゼ、及びポリメラーゼに連結されたプラズモンナノ構造を含む、複数の複合体と、複数の標識ヌクレオチドであって、各標識ヌクレオチドが、ヌクレオチド、ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、及びヌクレオチドの塩基に結合した色素標識を含む、複数の標識ヌクレオチドと、を含み、それにより、少なくとも1つのポリメラーゼが、i)標識ヌクレオチドのうちの個々の1つを鋳型鎖の1つに沿って新生鎖に組込み、ii)標識ヌクレオチドの個々の1つの近接内にその連結されたプラズモンナノ構造を維持する、組込み混合物を導入する工程と、プラズモンナノ構造が維持されている間に組込みを光学的にイメージングする工程と、含む、方法である。
【0012】
第2の態様の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わされてもよいことを理解すべきである。更に、第1の態様及び/又は第2の態様の特徴の任意の組合わせを一緒に使用してもよく、並びに/あるいは本明細書に開示される例のいずれかと組み合わせて、例えばシーケンシングイメージング中の増強された蛍光シグナルを含む、本開示に記載される利点を達成してもよいことを理解されたい。
【0013】
本明細書に開示される第3の態様は、液体担体と、ポリメラーゼと、標識ヌクレオチドであって、ヌクレオチド、ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、及びヌクレオチドの塩基に結合した色素標識を含む、標識ヌクレオチドと、を含む組込み混合物、並びに第2の液体担体と、標識ヌクレオチドを含む組込み事象の後に標識ヌクレオチドの近接内でそれ自体を会合するように官能化されたプラズモンナノ構造と、を含むイメージング混合物を含むキットが開示される。
【0014】
第3の態様の例では、プラズモンナノ構造は、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープケイ素ナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合わせからなる群から選択される。
【0015】
第3の態様の例では、プラズモンナノ構造は、第2のポリメラーゼで官能化される。一例では、プラズモンナノ構造は、第2のポリメラーゼのアミン又はシステインに化学的にコンジュゲートされる。別の例では、オリゴヌクレオチドは、第2のポリメラーゼに結合し、オリゴヌクレオチドは、プラズモンナノ構造に結合した相補的オリゴヌクレオチドテザーにハイブリダイズする。更に別の例では、オリゴヌクレオチドは、第2のポリメラーゼに結合し、オリゴヌクレオチドは、プラズモンナノ構造の周りに巻き付けられた部分を含む相補的オリゴヌクレオチドテザーにハイブリダイズされる。
【0016】
第3の態様の例では、プラズモンナノ構造は、結合対の第1のメンバーで官能化され、ポリメラーゼは、結合対の第2のメンバーを含むか、又はそれを用いて官能化される。一例では、第1のメンバー及び第2のメンバーは、NiNTA配位子及びヒスチジンタグ、又はストレプトアビジン及びビオチン、又はスパイタグ及びスパイカッチャー、又はマレイミド及びシステイン、又はアジド及びジベンゾシクロオクチンを含む。いくつかの例では、ポリメラーゼは、その表面に結合したDNA結合ドメインを更に含む。他の例では、ポリメラーゼは、その表面に結合した表面テザーと、表面テザーに結合したフローセル表面結合剤とを更に含む。
【0017】
第3の態様の例では、プラズモンナノ構造は、ストレプトアビジンで官能化され、標識ヌクレオチドは、ビオチン化されている。
【0018】
第3の態様の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わされてもよいことを理解すべきである。更に、第1の態様及び/又は第2の態様及び/又は第3の態様の特徴の任意の組合わせを一緒に使用してもよく、並びに/あるいは本明細書に開示される例のいずれかと組み合わせて、例えばシーケンシングイメージング中の増強された蛍光シグナルを含む、本開示に記載される利点を達成してもよいことを理解されたい。
【0019】
本明細書に開示される第4の態様は、鋳型鎖のクラスターを含むフローセルに組込み混合物を導入する工程であって、組込み混合物が、液体担体と、複数のポリメラーゼと、複数の標識ヌクレオチドであって、各標識ヌクレオチドが、ヌクレオチド、ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、及びヌクレオチドの塩基に結合した色素標識を含む、複数の標識ヌクレオチド、を含み、それにより、少なくとも1つのポリメラーゼが、標識ヌクレオチドのうちの個々の1つを鋳型鎖の1つに沿って新生鎖に組込む、組込み混合物を導入する工程と、フローセルにイメージング混合物を導入する工程であって、イメージング混合物が、第2の液体担体と、複数の官能化プラズモンナノ構造と、を含み、それによって、官能化プラズモンナノ構造の少なくとも1つは、標識ヌクレオチドの個々の1つの近接内でそれ自体を会合する、イメージング混合物を導入する工程と、官能化プラズモンナノ構造の少なくとも1つが標識ヌクレオチドの個々の1つに関連付けられている間に、組込みを光学的にイメージングする工程と、を含む、方法である。
【0020】
第4の態様の例では、官能化プラズモンナノ構造の各々は、第2のポリメラーゼで官能化され、この方法は、イメージング混合物を導入する前に組込み混合物を除去することを更に含む。
【0021】
第4の態様の例では、官能化プラズモンナノ構造の各々は、結合対の第1のメンバーで官能化され、ポリメラーゼの各々が、結合対の第2のメンバーを含み、方法が、イメージング混合物を導入する前に、組込み混合物を除去することを更に含む。
【0022】
第4の態様の例では、官能化プラズモンナノ構造の各々は、ストレプトアビジンで官能化され、標識ヌクレオチドの各々が、ビオチン化され、方法は、イメージング混合物を導入する前に、組込み混合物を除去することを更に含む。
【0023】
第4の態様の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わされてもよいことを理解すべきである。更に、第1の態様及び/又は第2の態様及び/又は第3の態様及び又は第4の態様の特徴の任意の組合わせを一緒に使用してもよく、並びに/あるいは本明細書に開示される例のいずれかと組み合わせて、例えばシーケンシングイメージング中の増強された蛍光シグナルを含む、本開示に記載される利点を達成してもよいことを理解されたい。
【0024】
本明細書に開示される第5の態様は、ヌクレオチドと、ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基と、ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識と、ヌクレオチドの塩基又は色素標識に結合したプラズモンナノ構造と、を含む、標識ヌクレオチドである。
【0025】
第5の態様の例では、プラズモンナノ構造は、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープケイ素ナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合わせからなる群から選択される。
【0026】
第5の態様の例では、プラズモンナノ構造は、二本鎖デオキシリボ核酸鎖を介してヌクレオチドの塩基に結合している。
【0027】
第5の態様の例では、第1の連結分子は、色素標識をヌクレオチドの塩基に結合させ、第2の連結分子が、ヌクレオチドの塩基にプラズモンナノ構造を結合させ、第1の連結分子が、第2の連結分子の第2の長さの約3nm~約12nm以内の第1の長さを有する。
【0028】
第5の態様の例では、第1の連結分子は、色素標識をヌクレオチドの塩基に結合させ、第2の連結分子が、ヌクレオチドの塩基にプラズモンナノ構造を結合させ、第1の連結分子が、第1の長さを有し、第2の連結分子が、第2の長さを有し、第1及び第2の長さが合わせて、約3nm~約12nmの範囲である。
【0029】
第5の態様の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わされてもよいことを理解すべきである。更に、第1の態様及び/又は第2の態様及び/又は第3の態様及び又は第4の態様及び/又は第5の態様の特徴の任意の組合わせを一緒に使用してもよく、並びに/あるいは本明細書に開示される例のいずれかと組み合わせて、例えばシーケンシングイメージング中の増強された蛍光シグナルを含む、本開示に記載される利点を達成してもよいことを理解されたい。
【0030】
本明細書に開示される第6の態様は、鋳型鎖のクラスターを含むフローセルに組込み混合物を導入する工程であって、組込み混合物が、液体担体と、複数のポリメラーゼと、複数の標識ヌクレオチドであって、各標識ヌクレオチドが、ヌクレオチド、ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基と、ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識、及びヌクレオチドの塩基に結合したプラズモンナノ構造を含む、複数の標識ヌクレオチドと、を含み、それにより、少なくとも1つのポリメラーゼが、標識ヌクレオチドのうちの個々の1つを鋳型鎖の1つに沿って新生鎖に組込む、組込み混合物を導入する工程と、組込みを光学的にイメージングする工程と、を含む、方法である。
【0031】
第6の態様の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わされてもよいことを理解すべきである。更に、第1の態様及び/又は第2の態様及び/又は第3の態様及び又は第4の態様及び/又は第5の態様及び/又は第6の態様の特徴の任意の組合わせを一緒に使用してもよく、並びに/あるいは本明細書に開示される例のいずれかと組み合わせて、例えばシーケンシングイメージング中の増強された蛍光シグナルを含む、本開示に記載される利点を達成してもよいことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明及び図面を参照することにより明らかになろう。図面において、同様の参照番号は、類似なものではあるが、おそらく同一ではない構成要素に対応している。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号又は特徴は、それらが現れる他の図面と関連させて記載してもよく、記載しなくてもよい。
【
図2A】ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを介してポリメラーゼに結合した例示的なプラズモンナノ構造の概略図である。
【
図2B】ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド及びプラズモンナノ構造の周りを包むのに十分な長さのオリゴヌクレオチドテザーを介してポリメラーゼに結合した例示的なプラズモンナノ構造の概略図である。
【
図3】
図1の組込み混合物を含む組込み事象の概略図である。
【
図4】標識ヌクレオチドの異なる例の化学構造を示す概略図である。
【
図6】
図5Aの組込み混合物を含む組込み事象の概略図である。
【
図7A】組込み混合物の異なる例及びイメージング混合物の異なる例を含む例示的なキットの概略図である。
【
図7B】組込み混合物の異なる例及びイメージング混合物の異なる例を含む例示的なキットの概略図である。
【
図7C】組込み混合物の異なる例及びイメージング混合物の異なる例を含む例示的なキットの概略図である。
【
図8B】フローセルのフローチャネル及び非パターン化配列決定面の一例を示す、
図8Aの8B-8B線に沿った拡大断面図である。
【
図8C】フローセルのフローチャネル及びパターン化配列決定面の一例を示す、
図8Aの8C-8C線に沿った拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書に開示される例では、配列決定中のヌクレオチド塩基コールは、プラズモン強化光シグナルの検出を介して実行される。プラズモン共鳴を介したシグナル増強は、組み込まれた標識ヌクレオチドの色素標識に対するプラズモンナノ構造の正確な位置決めによって達成される。配列決定中に新生核酸鎖に組み込まれた標識ヌクレオチドの構成要素である、色素標識の近接を増強するシグナル内にプラズモンナノ構造を局在化する機構及び技術が本明細書に開示される。「シグナル増強近接性」とは、プラズモンナノ構造及び色素標識が、i)プラズモンナノ構造及び色素標識が互いに近接すぎる場合に起こり得るクエンチングを防止し、ii)より大きな距離で有意に低下する可能性のあるプラズモン増強を増加させることを意味する。近接を増強する信号に対応する距離は、0nm超~約100nmの範囲であり得るが、プラズモンナノ構造(例えば、組成、形状、サイズ)並びに色素標識に依存する。場合によっては、近接を強化する信号に対応する距離は、約0.1nm~約25nm、例えば、約1nm~約20nm等の範囲である。一具体例では、近接を強化する信号に対応する距離は、約3nm~約12nmの範囲である。本明細書に開示される機構及び技術は、プラズモンナノ構造が、イメージング中に色素標識の近接を増強するシグナル内に保持されることを可能にし、したがって、プラズモンナノ構造は、色素標識の光シグナルを増強することができる。
【0034】
定義
本明細書に使用される用語は、別段の指定がない限り、関連する技術分野における通常の意味をとるものと理解されたい。本明細書で使用されるいくつかの用語及びそれらの意味は、以下に記載される。
【0035】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0036】
含む(comprising)、含む(including)、含有する(containing)という用語、及びこれらの用語の様々な形態は、互いに同義であり、等しく広義であることを意味する。
【0037】
フローセル及び/又はフローセルの様々な構成要素を説明するために、本明細書では、上(top)、下(bottom)、下方(lower)、上方(upper)、近接(adjacent)、上(on)等の用語が使用される。これらの方向を示す用語は、特定の配向を示すことを意味するものではなく、構成要素間の相対的な配向を指定するために使用されることを理解されたい。方向を示す用語の使用は、本明細書に開示される例を任意の特定の配向に制限すると解釈されるものではない。
【0038】
第1、第2などの用語はまた、特定の配向又は順序を示すことを意味するものではなく、むしろ1つの構成要素を別の構成要素から区別するために使用される。
【0039】
「アクリルアミドモノマー」は、構造
【0040】
【化1】
を有するモノマー、又はアクリルアミド基を含むモノマーである。アクリルアミド基を含むモノマーの例としては、アジドアセトアミドペンチルアクリルアミド:
【0041】
【0042】
【化3】
が挙げられる。他のアクリルアミドモノマーを使用してもよい。
【0043】
本明細書に使用されるとき、「アルデヒド」とは、構造-CHOを含む官能基を含有する有機化合物であり、これは、水素、及び、アルキル又は他の側鎖などのR基にも結合した炭素原子を有するカルボニル中心(すなわち、酸素に二重結合した炭素)を含む。アルデヒドの一般構造は、
【0044】
【0045】
本明細書に使用されるとき、「アルキル」は、完全に飽和している(すなわち、二重結合又は三重結合を含有しない)直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有し得る。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。ある例として、表記「C1~4アルキル」は、アルキル鎖中に1~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、アルキル鎖が、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びt-ブチルからなる群から選択されることを示す。
【0046】
本明細書に使用されるとき、「アルケニル」は、1つ以上の二重結合を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有し得る。例示的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどが挙げられる。
【0047】
本明細書に使用されるとき、「アルキン」又は「アルキニル」は、1つ以上の三重結合を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、2~20個の炭素原子を有し得る。
【0048】
本明細書で使用するとき、「アリール」は、環骨格中に炭素のみを含有する芳香環又は環系(すなわち、2個の隣接する炭素原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。アリールが環系である場合、系内の全ての環は芳香環である。アリール基は、6~18個の炭素原子を有し得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アズレニル、及びアントラセニルが挙げられる。
【0049】
「アミノ」官能基は、-NRaRb基を指し、式中、Ra及びRbは各々、本明細書で定義されるように、水素(例えば、
【0050】
【化5】
C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7炭素環、C6~10アリール、5~10員のヘテロアリール、及び5~10員のヘテロ環から独立して選択される。
【0051】
本明細書に使用されるとき、「結合した(attached)」という用語は、2つのものが、直接的又は間接的のいずれかで、互いに、接合、締結、接着、接続、又は結着されている状態を指す。例えば、核酸は、共有結合又は非共有結合によってポリマーヒドロゲルに結合し得る。共有結合は、原子間の電子対の共有によって特徴付けられる。非共有結合は、電子対の共有を伴わない物理結合であり、例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、親水性相互作用、及び疎水性相互作用を挙げることができる。
【0052】
「アジド(azide)」又は「アジド(azido)」官能基は、-N3を指す。
【0053】
本明細書に使用されるとき、「炭素環」は、環系骨格に炭素原子のみを含有する非芳香族環式環又は環系を意味する。炭素環が環系である場合、2つ以上の環が、縮合、架橋、又はスピロ結合方式で一緒に接合され得る。炭素環は、環系内の少なくとも1つの環が芳香族ではないことを条件として、任意の飽和度を有し得る。したがって、炭素環には、シクロアルキル、シクロアルケニル、及びシクロアルキニルが含まれる。炭素環基は、3~20個の炭素原子を有し得る。炭素環式環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、アダマンチル、及びスピロ[4.4]ノナニルが挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用される「カルボン酸」又は「カルボキシル」という用語は、-COOHを指す。
【0055】
「複合体」という用語は、それに連結されたプラズモンナノ構造を有するポリメラーゼを指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキレン」は、2つの結合点を介して分子の残りに結合した完全飽和炭素環式環又は環系を意味する。
【0057】
本明細書に使用されるとき、「シクロアルケニル」又は「シクロアルケン」は、少なくとも1つの二重結合を有する炭素環式環又は環系を意味し、環系内の環は、いずれも芳香族ではない。例としては、シクロヘキセニル又はシクロヘキセン及びノルボルネニル又はノルボルネンが挙げられる。また、本明細書に使用されるとき、「ヘテロシクロアルケニル」又は「ヘテロシクロアルケン」とは、少なくとも1つの二重結合を有する、環骨格内に少なくとも1つのへテロ原子を有する炭素環又は環系を意味し、環系の中のいずれも環も、芳香族ではない。
【0058】
本明細書に使用されるとき、「シクロアルキニル」又は「シクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有する炭素環式環又は環系を意味し、環系内の環は、いずれも芳香族ではない。例は、シクロオクチンである。別の例は、ビクロノニンである。本明細書に使用されるとき、「ヘテロシクロアルキニル」又は「ヘテロシクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有する、環骨格内に少なくとも1つのへテロ原子を有する炭素環式環又は環系を意味し、環系内の環は、いずれも芳香族ではない。
【0059】
本明細書で使用される場合、「くぼみ」という用語は、基材の間隙領域(複数可)によって少なくとも部分的に囲まれた表面の開口部を有する、基材で画定される別個のくぼみフィーチャーを指す。くぼみは、表面の開口部において、例として、円形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を持つ)などの、様々な形状をとることができる。表面と直交するように取られたくぼみの断面は、湾曲形状、正方形、多角形、双曲線、円錐、角のある形状などであることができる。例として、くぼみは、ウェル又は2つの相互接続されたウェルであり得る。
【0060】
「それぞれ」という用語は、項目の集合を参照して使用されるとき、集合内の個々の項目を識別することを意図しているが、必ずしも集合内の全ての項目を指すものではない。明示的な開示又は文脈がそうでないことを明確に指示する場合、例外が生じ得る。
【0061】
「エポキシ」という用語(グリシジル又はオキシラン基とも称される)は、本明細書で使用するとき、
【0062】
【0063】
本明細書で使用される場合、「フローセル」という用語は、反応を行うことができるフローチャネル、試薬(複数可)をフローチャネルに送達するための入口、及びフローチャネルから試薬(試薬)を除去するための出口を有する容器を意味することを意図する。いくつかの例では、フローセルは、フローセル内で起こる反応の検出に対応する。例えば、フローセルは、アレイ、光学的標識分子などの光学的検出を可能にする1つ又は複数の透明な表面を含み得る。
【0064】
本明細書に使用されるとき、「フローチャネル」又は「チャネル」は、液体サンプルを選択的に受容することができる、2つの結合した構成要素間に画定される領域であり得る。いくつかの例では、フローチャネルは、2つの基材間に画定され得、したがって、基材の各々の活性領域と流体連通し得る。他の例では、フローチャネルは、基材と蓋との間に画定されてもよく、したがって、基材の活性領域と流体連通してもよい。
【0065】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、環骨格中に窒素、酸素、及び硫黄を含むがこれらに限定されない、1個以上のヘテロ原子、すなわち炭素以外の元素を含有する芳香環又は環系(すなわち、2個の隣接する原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。ヘテロアリールが環系である場合、系内の全ての環は芳香環である。ヘテロアリール基は、5~18環員を有し得る。
【0066】
本明細書で使用するとき、「複素環」は、環骨格中に少なくとも1つのヘテロ原子を含有する非芳香族環又は環系を意味する。複素環どうしは、縮合、架橋、又はスピロ結合式に、一体に接合されてもよい。複素環は、環系中の少なくとも1つの環が芳香族ではないことを条件として、任意の飽和度を有してもよい。環系の中で、ヘテロ原子は、非芳香環又は芳香環のいずれかに存在してよい。複素環基は、3~20環員(すなわち、炭素原子及びヘテロ原子を含む、環骨格を形成する原子の数)を有してよい。いくつかの例では、ヘテロ原子は、O、N、又はSである。
【0067】
本明細書に使用されるとき、用語「ヒドラジン」又は「ヒドラジニル」とは、-NHNH2基を意味する。
【0068】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用される「ヒドラゾン」又は「ヒドラゾニル」という用語は、
【0069】
【化7】
基を指し、式中、R
a及びR
bは各々、本明細書で定義されるように、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7炭素環、C6~10アリール、5~10員のヘテロアリール、及び5~10員のヘテロ環から独立して選択される。
【0070】
本明細書に使用されるとき、「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」は、-OH基を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「間隙領域」という用語は、例えば、くぼみを分離するか又はレーンを囲む基材の領域を指す。例えば、間隙領域は、アレイの1つの凹部を、アレイの別の凹部から分離することができる。別の例では、間隙領域は、フローセルの1つのレーンをフローセルの別のレーンから分離することができる。互いに分離されたくぼみ及びレーンは、別個であってもよい、すなわち、互いとの物理的な接触が欠如していてもよい。多くの例では、間隙領域は、連続的であるが、くぼみ又はレーンは、例えば、それ以外が連続的である表面に、又はその上に画定される複数のくぼみ又はレーンの場合のように、別個である。間隙領域によって提供される分離は、部分的又は完全な分離であり得る。間隙領域は、くぼみ又はレーンの表面材料とは異なる表面材料を有してもよい。例えば、くぼみ又はレーンは、その中にポリマーヒドロゲル及びプライマーを有することができ、間隙領域は、ポリマーヒドロゲル及びプライマーの両方を含まなくてもよい。
【0072】
「ニトリルオキシド」は、本明細書で使用される場合、「RaC≡N+O-」基を意味し、式中、Raは本明細書で定義される。ニトリルオキシドの調製例としては、クロラミド-Tでの処理による、又は、イミドイルクロリド[RC(Cl)=NOH]上での塩基作用による、又は、ヒドロキシルアミンとアルデヒドとの反応によるアルドキシムからのin situ生成が挙げられる。
【0073】
本明細書で使用される「ニトロン」は、R3が水素(H)ではないことを除いて、R1、R2、及びR3が本明細書で定義されるRa及びRb基のいずれかであり得る
【0074】
【0075】
本明細書に使用されるとき、「ヌクレオチド」は、窒素含有複素環式塩基、糖、及び1つ以上のリン酸基を含む。ヌクレオチドは、核酸配列のモノマー単位である。RNAでは、糖はリボースであり、DNAでは、糖は、デオキシリボース、すなわち、リボースの2’位に存在するヒドロキシル基が欠如している糖である。窒素含有複素環式塩基(すなわち、核酸塩基)は、プリン塩基であってもピリミジン塩基であってもよい。プリン塩基としては、アデニン(A)及びグアニン(G)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。ピリミジン塩基としては、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1又はプリンのN-9に結合する。核酸類似体は、リン酸骨格、糖、又は核酸塩基のいずれかが変化していてもよい。核酸類似体の例としては、例えば、ペプチド核酸(peptide nucleic acid、PNA)などのユニバーサル塩基又はリン酸-糖骨格類似体が挙げられる。「標識ヌクレオチド」は、少なくとも色素標識が結合したヌクレオチドである。
【0076】
「プラズモンナノ構造」は、プラズモン共鳴を呈することができる任意の独立した構造を含む。
【0077】
「ポリマーヒドロゲル」という用語は、液体及びガスに対して透過性である半硬質ポリマーを指す。ポリマーヒドロゲルは、液体(例えば、水)が取り出され、例えば乾燥によって液体が除去されるときに収縮する可能性がある場合に膨潤することができる。ヒドロゲルは水を吸収し得るが、水溶性ではない。
【0078】
本明細書で使用するとき、「プライマー」という用語は、一本鎖核酸配列(例えば、一本鎖DNA)として定義される。本明細書において増幅プライマーと称されるいくつかのプライマーは、鋳型増幅及びクラスター生成の開始点として機能する。本明細書において配列決定プライマーと称される他のプライマーは、DNA合成の開始点として機能する。プライマーの5’末端は、ポリマーヒドロゲルの官能基でカップリング反応を可能にするように修飾されてもよい。プライマーの長さは、任意の数の塩基の長さであることができ、様々な非天然ヌクレオチドを含むことができる。一例では、配列決定プライマーは、10~60塩基、又は20~40塩基の範囲の短鎖である。
【0079】
「実質的に距離を規定する」という語句は、イメージング中にプラズモンナノ構造と色素標識との間に所望の分離を生じさせる構成要素を説明するために使用される。本明細書で使用される場合、この語句は、列挙された構成要素(複数可)が、プラズモンナノ構造と色素標識との間の所望の分離の少なくとも85%を生成することを意味する。他の15%は、標識ヌクレオチド(例えば、塩基)の一部、空気、又はプラズモンナノ構造と色素標識との間に存在し得る流体を含み得る。構成要素も可撓性であり、溶液中で急速に移動することができることを理解されたい。したがって、プラズモンナノ構造と色素標識との間の距離は、イメージング中にわずかに変化し得る。
【0080】
「チオール」官能基とは、-SHを意味する。
【0081】
本明細書に使用されるとき、用語「テトラジン」及び「テトラジニル」とは、4つの窒素原子を含む6員のヘテロアリール基を意味する。テトラジンは、任意に置換され得る。
【0082】
本明細書に使用されるとき、「テトラゾール」とは、4つの窒素原子を含む5員の複素環基を意味する。テトラゾールは、任意に置換され得る。
【0083】
プラズモンナノ構造
本明細書に記載されるように、プラズモンナノ構造は、プラズモン共鳴を呈することができる任意の独立した構造を含む。プラズモン共鳴は、材料表面層内の電子が、ある特定の入射角で入射光の光子によって励起され、次いで材料表面に平行に伝播する現象である。プラズモンナノ構造の表面は、伝搬する又は局所的な表面プラズモンとの結合を通じて電磁界を強く閉じ込めることができる。この相互作用は、局所電界の大きな増強に関連付けられており、これにより、励起及び発光速度を向上させ、蛍光エミッタの励起状態の寿命を減少させる可能性がある。これにより、増幅蛍光シグナルが得られ、光漂白に対する耐性も改善され得る。
【0084】
本明細書で「プラズモン材料」と称されるプラズモン共鳴が可能な任意の材料は、プラズモンナノ構造として使用され得る。いくつかの金属(例えば、金、銀、スズ、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、アルミニウム等)、ドープされた半金属(例えば、ドープケイ素)、直接バンドギャップ半導体(例えば、ガリウムヒ素)、及び金属複合材料が、プラズモン共鳴可能である。金属複合材料は、上記の金属のうちの2つ以上を含み得る。例として、2金属複合材料は銀及び金を含み、3金属複合材料は銀、金、及び白金を含む。本明細書に記載の例のいずれかでは、プラズモンナノ構造は、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープケイ素ナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合わせからなる群から選択され得る。
【0085】
一例では、プラズモンナノ構造は球状ナノ粒子である。別の例では、プラズモンナノ構造は、立方体、三角形、棒形状、ケージ様(例えば、多孔質シェルを有する非球形、中空粒子)等の非球状ナノ粒子である。更に別の例では、プラズモンナノ構造は、不規則な形状のナノ粒子である。
【0086】
プラズモンナノ構造はまた、固体、中空、又はコア-シェル構造であり得る。コア-シェル構造は、コアとして1つの材料、及びコアを少なくとも部分的にカプセル化するシェルとして別の材料を有する。いくつかの例では、2つの異なるプラズモン材料がコア及びシェルとして使用される。他の例では、コアは、プラズモン材料であり、シェルは、非プラズモン材料である。好適なシェル材料のいくつかの例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、及び酸化タンタル等の金属酸化物、ウシ血清アルブミン等のタンパク質、及び配列決定中に使用される波長に対して透過性の有機ポリマー、例えばポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(乳酸)(PLA)、及びポリ(メチルアクリレート)(PMA)が挙げられる。非プラズモン材料は、コアのプラズモン共鳴を妨げず、その厚さは、色素標識の近接性を高めるシグナル内にコアを位置付けるのを助けるように調整することができる。一例として、コア-シェルプラズモンナノ構造のシリカシェルが、例えば標識ヌクレオチドに結合している結合対の第2のメンバーに結合することができる結合対の第1のメンバーで官能化されている場合、シリカシェルの厚さ及び結合対の結合メンバーの長さ(任意のリンカーを含む)は、色素標識とプラズモンナノ構造コアとの間の距離を実質的に規定する。別の例として、コア-シェルプラズモンナノ構造のシリカシェルが、例えば、ポリメラーゼに結合している結合対の第2のメンバーに結合することができる結合対の第1のメンバーで官能化される場合、結合対の結合メンバーの長さ(任意の連結分子を含む)、及びポリメラーゼのサイズは、色素標識とプラズモンナノ構造コアとの間の距離を実質的に画定する。
【0087】
プラズモンナノ構造の寸法は、その形状に応じて変化し得る。本明細書に開示される例では、プラズモンナノ構造の最大寸法(例えば、直径、長さ、中央値等)はナノスケールであり、したがって約1nm~1000nm未満の範囲である。いくつかの例では、ナノ構造は、1nm以上、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、又は100nm以上の直径を有するナノ粒子である。
【0088】
光シグナルのプラズモン増強は、シグナルが増強される色素標識からのプラズモンナノ構造の距離に強く依存する。本明細書に開示される機構及び技術は、プラズモンナノ構造がイメージング中に色素標識の近接を増強するシグナル内に保持されることを可能にする。これらの機構及び技術の各々をここで説明する。
【0089】
組込み混合物中のプラズモンナノ構造
プラズモンナノ構造は、組込み混合物に含まれ得る。いくつかの例では、プラズモンナノ構造は、ポリメラーゼも含む複合体の一部である。これらの例では、複合体は、プラズモンナノ構造が、色素標識の近接性を増強するシグナル内に保持される機構である。他の例では、ナノ構造は、標識ヌクレオチドの一部である。これらの実施例では、標識ヌクレオチドは、プラズモンナノ構造が色素標識の近接性を増強するシグナル内に保持される機構である。
【0090】
組込み混合物の一例を
図1に概略的に示す。この例示的な組込み混合物10Aは、液体担体12、ポリメラーゼ16を含む複合体14、及びポリメラーゼ16に連結されたプラズモンナノ構造18、及びヌクレオチド22を含む標識ヌクレオチド20、ヌクレオチド22の糖に結合した3’OHブロッキング基24、及びヌクレオチド22の塩基に結合した色素標識26を含む。
【0091】
組込み混合物10Aの液体担体12は、水及び/又はイオン性塩緩衝液、例えばミリモルからモル濃度のクエン酸生理食塩水、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸緩衝生理食塩水等、及び/又は他の緩衝液、例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)若しくは(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)であり得る。液体担体12はまた、Mg2+、Mn2+、Ca2+等の組込み反応を意図した触媒金属を含んでもよい。単一の触媒金属又は触媒金属の組合わせを使用してもよく、総濃度は約0.01mM~約100mMの範囲であってもよい。
【0092】
複合体14は、ポリメラーゼ16と、ポリメラーゼ16に連結されたプラズモンナノ構造18とを含む。組込み混合物10A中の複合体14の濃度は、約1nM~約10mMの範囲であり得る。他の例として、組込み混合物10A中の複合体14の濃度は、約50nM~約100μM、約1nM~約50μM等の範囲であり得る。
【0093】
標識ヌクレオチド22を受け入れることができ、ヌクレオチド塩基を鋳型鎖に沿って新生鎖に成功裏に組み込むことができる任意のポリメラーゼ16が使用され得る。ポリメラーゼの例としては、Bsu Polymerase、Bst Polymerase、Taq Polymerase、T7 Polymerase等のファミリーAのポリメラーゼ;Phi29ポリメラーゼ及び他の高度にプロセッシブなポリメラーゼ(ファミリーB2)、Pfuポリメラーゼ(ファミリーB)、KODポリメラーゼ(ファミリーB)、9oN(ファミリーB)等のファミリーB及びB2からのポリメラーゼ;大腸菌(Escherichia coli)DNA Pol III等のファミリーCからのポリメラーゼ、及び他の多くのポリメラーゼ、及び多くの他のもの、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)DNA Pol II等のファミリーDからのポリメラーゼ、及び多くの他のもの;DNA Pol μ、DNA Pol β、DNA Pol σ、及び他の多く等のファミリーXからのポリメラーゼが挙げられる。
【0094】
プラズモンナノ構造18は、標識ヌクレオチド組込みを実行するポリメラーゼ16に連結されているため、ポリメラーゼ16は、色素標識26とプラズモンナノ構造18との間の空間を少なくとも部分的に画定する。したがって、ポリメラーゼ16のサイズは、近接を強化する信号を作成するように選択され得る。一例では、ポリメラーゼ16のサイズは、約3nm~約9nmの範囲である。別の例では、ポリメラーゼ16のサイズは約4nm~約7nmの範囲である。更に別の例では、ポリメラーゼ16のサイズは、約5nmである。
【0095】
ポリメラーゼ16に加えて、複合体14はまた、ポリメラーゼ16に連結されたプラズモンナノ構造18を含む。複合体14のプラズモンナノ構造18は、本明細書に記載の例のいずれかであり得る。ポリメラーゼ16は、ヌクレオチド組込みのための活性部位を有し、活性部位から離れたポリメラーゼ16の領域にプラズモンナノ構造18を連結することが望ましい場合がある。例えば、活性部位から遠位にある内部又は末端タグは、ポリメラーゼ16の活性が阻害されないようにプラズモンナノ構造体18の結合に望ましい場合がある。プラズモンナノ構造18をポリメラーゼ16に連結するために、以下の技術のいずれかを使用することができる。
【0096】
一例では、プラズモンナノ構造18は、ポリメラーゼ16に化学的にコンジュゲートされる。化学的コンジュゲーションは、結合対で達成され得、プラズモンナノ構造18は、結合対の第1のメンバーで官能化され、ポリメラーゼ16は、結合対の第2のメンバーを含むか、又はそれを用いて官能化される。例示的な結合対では、第1のメンバー及び第2のメンバーは、それぞれ、NiNTA(ニッケル-ニトリロ三酢酸)配位子及びヒスチジンタグ、又はストレプトアビジン若しくはアビジン及びビオチン、又はスパイタグ及びスパイカッチャー、若しくはマレイミド及びシステイン、又はアジド及びジベンゾシクロオクチン(DBCO)を含む。これらの実施例のいくつかは、ポリメラーゼ16上に存在するアミン又はシステインへの化学的コンジュゲーションを伴う。ポリメラーゼ16上の天然又は操作されたシステインは、いくつかの官能化プラズモンナノ構造(例えば、金、銀、白金、それらの合金)の表面と容易に反応する。ポリメラーゼ16上の天然又は操作されたシステインはまた、いくつかの官能化プラズモンナノ構造の表面に組み込まれたマレイミド基と容易に反応する。任意のプラズモンナノ粒子をカルボキシル基で官能化することができ、これをEDC(1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)で活性化することにより、ポリメラーゼ16上の天然に存在するアミン又は操作されたアミンと反応させることができる。N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)を使用して、リジン等のポリメラーゼ16上のアミン基を標識することができる。一例では、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)化学物質は、N末端アミンのみが反応性であるpH範囲(例えば、pH7)で用いられ得、その結果、単一のプラズモンナノ構造18が、ポリメラーゼ16に対して添加される。化学的コンジュゲーションはまた、πクランプ媒介システインコンジュゲーション、SUMO(小ユビキチン様修飾剤)タンパク質、又は任意の他の好適なコンジュゲーション法によって達成され得る。
【0097】
別の例では、プラズモンナノ構造18は、ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドを介してポリメラーゼ16に結合している。この例は、
図2Aに概略的に示されている。この例では、一本鎖オリゴヌクレオチド28は、ポリメラーゼ16に結合し、その相補的一本鎖オリゴヌクレオチドテザー30は、プラズモンナノ構造18に結合している。オリゴヌクレオチド28は、相補的オリゴヌクレオチドテザー30にハイブリダイズして、プラズモンナノ構造18をポリメラーゼ16に連結する。本明細書に開示される化学的コンジュゲーション技術のいずれかを使用して、オリゴヌクレオチド28をポリメラーゼ16に結合させ、相補的オリゴヌクレオチドテザー30をプラズモンナノ構造18に結合させることができる。2つの例として、チオール化オリゴヌクレオチドは、金ナノ粒子又は銀ナノ粒子の表面に直接結合することができる。更に、相補的オリゴヌクレオチドテザー30は、アジド-アルキンクリック反応、銅フリークリック反応、アルデヒド官能性オリゴアミンプラズモンナノ構造反応を含む様々な他の化学物質を通して、プラズモンナノ構造18に結合し得る。
【0098】
オリゴヌクレオチド28及び相補的オリゴヌクレオチドテザー30は、同じ長さを有し、これは、約5ヌクレオチド~約30ヌクレオチドの範囲であり得る。
【0099】
この例では、ポリメラーゼ16並びにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド28及び30は、色素標識26とプラズモンナノ構造18との間の距離を少なくとも部分的に規定する。したがって、ポリメラーゼ16のサイズ及びオリゴヌクレオチド28及び30の長さは、イメージング中に、プラズモンナノ構造18が色素標識26の近接性を増強するシグナル内にもたらされるように選択され得る。
【0100】
更に別の例では、プラズモンナノ構造18は、プラズモンナノ構造18に巻き付くオリゴヌクレオチドテザー32を介してポリメラーゼ16に結合している。このオリゴヌクレオチドテザー32は、プラズモンナノ構造18の周りに巻き付けるのに十分な長さの部分34と、ポリメラーゼ16に結合したオリゴヌクレオチド28に相補的な部分36とを含む。プラズモンナノ構造18を包むのに十分な長さである部分34の長さは、プラズモンナノ構造18のサイズに依存するであろう。一例では、プラズモンナノ構造18は、約5nm~約12nmの範囲の直径を有し、プラズモンナノ構造18の周りに巻き付けるのに十分な長さの部分34は、約40ヌクレオチド~約150ヌクレオチドを含み得る。これらのヌクレオチドは、プラズモンナノ構造18の表面と選択的に結合することができる。一例では、プラズモンナノ構造18は金であり、プラズモンナノ構造18の周りに巻き付けるのに十分に長い部分34は、ポリ-アデニンである。
【0101】
オリゴヌクレオチドテザー32の相補的部分36は、ポリメラーゼ16上のオリゴヌクレオチド28にハイブリダイズして、部分34に巻き付けられたプラズモンナノ構造18をポリメラーゼ16に連結する。この例では、相補的部分36及びオリゴヌクレオチド28は、同じ長さを有し、これは、約5ヌクレオチド~約20ヌクレオチドの範囲であり得る。本明細書に開示される化学的コンジュゲーション技術のいずれも、オリゴヌクレオチド28をポリメラーゼ16に結合させるために使用され得る。
【0102】
この例では、ポリメラーゼ16並びにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド28及び部分36は、色素標識26とプラズモンナノ構造18との間の距離を少なくとも部分的に規定する。したがって、ポリメラーゼ16のサイズ及びオリゴヌクレオチド28及び部分36の長さは、イメージング中に、プラズモンナノ構造18が色素標識26の近接性を増強するシグナル内にもたらされるように選択され得る。
【0103】
いくつかの例では、複合体14はまた、洗浄サイクル後のフローセルにおける複合体14の保持を改善するための追加の構成要素を含み得る。
【0104】
洗浄サイクル後の複合体保持を改善するための一例では、複合体14は、ポリメラーゼ16に遺伝子融合されたDNA結合ドメインを含む。一例では、DNA結合ドメインは、一本鎖DNA(ss-DNA)結合ドメインを含み得、これは、例えば、フローセル内の鋳型鎖のアダプター部分に結合することができる。ss-DNA結合ドメインは、非配列特異的であり得る。これらのDNA結合ドメインの例としては、オリゴヌクレオチド/オリゴ糖/オリゴペプチド結合(OB)折畳み、K相同性(KH)ドメイン、RNA認識モチーフ(RRM)、及びwhirlyドメインが挙げられる。別の例では、DNA結合ドメインは、二本鎖DNA(ds-DNA)結合ドメインを含み得、これは、例えば、配列決定プライマー/鋳型二本鎖の二本鎖部分に結合することができる。これらのDNA結合ドメインの例としては、TOPO-Vヘリックス-ヘアピン-ヘリックスドメイン及びPCNA(増殖細胞核抗原)が挙げられる。
【0105】
洗浄サイクル後の複合体保持を改善する別の例では、複合体14は表面テザー42(
図3に示す)を含み得る。表面テザー42は、組込み及びイメージング中に、複合体14をパターン化された又は非パターン化されたフローセル表面44に固定するために使用される。一例では、ポリメラーゼ16は、その表面に結合した表面テザー42を含み、フローセル表面結合剤は、表面テザー42に結合する(例えば、ポリメラーゼ16が結合している場所の反対側の末端に)。この例では、フローセル表面44は、ポリメラーゼ16がフローセルに導入されるときにポリメラーゼ結合表面テザー42を結合させるように官能化される。別の例では、フローセルは、その表面44に結合した表面テザー42を含み、ポリメラーゼ結合剤は、表面テザー42に結合している。この例では、ポリメラーゼ16がフローセルに導入されるとき、ポリメラーゼ表面は、フローセル結合表面テザー42に結合するように官能化される。これらの例のいずれかにおいて、表面テザー42は、結合対の1つのメンバーを含み得、ポリメラーゼ16は、他のメンバー:ビオチン/アビジン、マルトース結合タンパク質/マルトース、His6/NiNTA、Spycatcher002/Spytag002、又はグルタチオンS-トランスフェラーゼ/グルタチオンを有する。
【0106】
好適な表面テザー42の1つの具体的な例としては、ビオチン-ポリエチレングリコール(PEG)-ビオチンが挙げられる。この例では、表面テザー42のビオチン末端は、ポリメラーゼ16の表面上及びフローセル表面44上に位置するストレプトアビジン又はアビジンにそれぞれコンジュゲートすることができる。したがって、この例では、一方の末端でのビオチンは、フローセル表面結合剤である。好適な表面テザー42の別の具体的な例は、フローセル表面44上にアビジンタンパク質を含む。この例では、ポリメラーゼ16は、ビオチン化され得る。好適な表面テザー42の更に別の具体的な例としては、ハロゲン-ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。この例では、PEGは、フローセル表面44に結合し得、ハロゲンは、ポリメラーゼ16に結合したHaloTag(登録商標)に結合し得る。
【0107】
表面テザー42の長さは、表面結合ポリメラーゼ16が鋳型鎖48と配列決定プライマー50又は配列決定プライマー50から延在する成長する新生鎖52との間の接合部46のどこにでも結合するのを可能にするのに十分である。一例では、表面テザー42は、フローセル表面44上で配列決定されるライブラリー断片の長さに部分的に応じて、約2nm~約200nm、又は約5nm~約150nm、又は約10nm~約100nmの範囲の長さを有し得る。
【0108】
図1を再び参照すると、複合体14に加えて、
図1に示される組込み混合物10Aはまた、標識ヌクレオチド20を含む。本明細書で言及されるように、標識ヌクレオチド20は、ヌクレオチド22、ヌクレオチド22の糖に結合した3’OHブロッキング基24、及びヌクレオチド22の塩基に結合した色素標識26を含む。標識ヌクレオチド20A、20B、20Cのいくつかの例を
図4に示す。
【0109】
標識ヌクレオチド20のヌクレオチド22は、窒素含有複素環塩基と、糖と、1つ以上のリン酸基とを含む。ヌクレオチド22は、核酸配列のモノマー単位である。RNAでは、糖はリボースであり、DNAでは、糖は、デオキシリボース、すなわち、リボースの2’位に存在するヒドロキシル基が欠如している糖である。窒素含有複素環式塩基(すなわち、核酸塩基)は、プリン塩基であってもピリミジン塩基であってもよい。プリン塩基としては、アデニン(A)及びグアニン(G)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。ピリミジン塩基としては、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。リボース又はデオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1又はプリンのN-9に結合する。ヌクレオチド22は、一リン酸塩、又はいくつかのリン酸基(例えば、トリホスフェート(すなわち、ガンマリン酸)、テトラホスフェート、ペンタ-リン酸塩、ヘキサ-リン酸塩等)を含むポリリン酸塩であり得る。核酸類似体は、リン酸骨格、糖、又は核酸塩基のいずれかが変化していてもよい。核酸類似体の例としては、例えば、ペプチド核酸(peptide nucleic acid、PNA)などのユニバーサル塩基又はリン酸-糖骨格類似体が挙げられる。
図4では、ヌクレオチド22の塩基はシトシンであり、糖はデオキシリボースであり、リン酸は三リン酸又はγ-リン酸である。
【0110】
標識ヌクレオチド20のヌクレオチド22はまた、それに結合した3’OHブロッキング基24を含む。3’OHブロッキング基24は、ヌクレオチド22中の糖分子の3’酸素原子に連結され得る。3’OHブロッキング基24は、各配列決定サイクルで単一塩基組込みを発生させることを可能にする可逆的ターミネータであり得る。可逆的ターミネータは、追加の塩基が、鋳型ポリヌクレオチド鎖(本明細書では鋳型鎖48(
図3)とも呼ばれる)に相補的である新生鎖52(
図3)に組み込まれることを停止する。これにより、単一の組み込まれた塩基の検出及び識別が可能になる。続いて、3’OHブロッキング基24を除去することができ、各鋳型ポリヌクレオチド鎖で追加の配列決定サイクルを行うことができる。3’-ONH
2可逆的ターミネータ(24Aに示す)、3’-O-アリル可逆的ターミネータ(すなわち、-CH=CHCH
2であり、24Bに示されている)、及び3’-O-アジドメチル可逆的ターミネータ(すなわち、-CH
2N
3であり、24Cで示されている)を含む、異なる3’OHブロッキング基24の例を
図4に参照番号24A、24B、24Cで示す。他の適切な可逆的ターミネータとしては、o-ニトロベンジルエーテル、アルキルo-ニトロベンジルカルボナート、エステル部分、他のアリル部分、アセタール(例えば、tert-ブトキシ-エトキシ)、MOM(-CH
2OCH
3)部分、2,4-ジニトロベンゼンスルフェニル、テトラヒドロフラニルエーテル、3’ホスフェート、エーテル、-F、-H
2、-OCH
3、-N
3、-HCOCH
3及び2-ニトロベンゼンカルボナートが挙げられる。
【0111】
標識ヌクレオチド20のヌクレオチド22はまた、ヌクレオチド22の塩基に結合した色素標識26を含む。色素標識26は、発光、化学発光、蛍光、蛍光発色、発色団及び/又は発色性部分を含む任意の光学的に検出可能な部分であり得る。好適な光学的に検出可能な部分のいくつかの例としては、フルオレセイン標識、ローダミン標識、シアニン標識(例えば、Cy3、Cy5等)、及び蛍光色素のALEXA FLUOR(登録商標)ファミリー(Molecular Probes,Inc.から)及び他の蛍光及び蛍光発生色素)が挙げられる。
【0112】
色素標識26は、任意の好適な連結分子を使用して、ヌクレオチド22の塩基に結合し得る。一例では、連結分子は、式-((CH
2)
2O)
n-(式中、nは2から50の整数である)のスペーサー基である。連結分子の他の例は、
図4の参照番号38A、38B、及び38Cに示されている。連結分子38A、38B、38Cは、
図4の矢印によって同定される切断部位40を含む。
【0113】
一例では、組込み混合物10Aは、異なる塩基、例えば、A、T、G、C(及びU又はI)を含む、異なる標識ヌクレオチド20の混合物を含む。異なる標識ヌクレオチド20に対して異なる種類の色素標識26を利用することも望ましい場合がある。例えば、蛍光又は蛍光発生標識は、各標識が、他の標識と区別可能な波長で励起放射線を吸収し、かつ/又は蛍光を放出するように選択され得る。そのような識別可能な類似体は、同じ反応混合物中で異なる標識26の存在を同時に監視する能力を提供する。いくつかの例では、組込み混合物10A中の4つの標識ヌクレオチド20のうちの1つは、色素標識26を含まなくてもよく、他方の3つの標識ヌクレオチド20は、異なる色素標識26を含む。
【0114】
図3に戻って参照すると、以下の説明は、組込み混合物10Aを含む例示的な方法に関する。この説明を通して、フローセルが参照され、簡単に説明される。フローセルの例は、
図8A、
図8B、及び
図8Cに示されており、それらの図を参照して以下でより詳細に説明される。
【0115】
配列決定中、配列決定される鋳型鎖48は、フローセル表面44上に固定化された増幅プライマー(
図3には示されていない)を使用してフローセル表面44上に形成され得る。鋳型鎖形成の開始時に、ライブラリー鋳型を任意の核酸試料(例えば、DNA試料又はRNA試料)から調製することができる。DNA核酸サンプルは、同様にサイズ決定された(例えば、1000bp未満の)一本鎖DNA断片に断片化されてもよい。RNA核酸サンプルは、相補的DNA(cDNA)を合成するために使用することができ、cDNAは、同様にサイズ決定された(例えば、1000bp未満の)一本鎖cDNA断片に断片化されてもよい。調製中に、アダプターは断片いずれかの末端に追加され得る。低減されたサイクル増幅により、異なるモチーフ、例えば配列決定プライマー結合部位、インデックス、及びフローセル表面44上の増幅プライマーに相補的な領域がアダプターに導入され得る。いくつかの例では、単一の核酸サンプルからの断片は、断片に追加された同じアダプターを有する。最終的なライブラリー鋳型は、DNA又はcDNA断片と、両端にアダプターとを含む。DNA又はcDNA断片は、シーケンシングしようとする最終ライブラリー鋳型の一部分を表す。
【0116】
複数のライブラリー鋳型が、フローセルに導入されてもよい。複数のライブラリー鋳型は、例えば、フローセル表面44に固定化された2種類の増幅プライマーのうちの一方にハイブリダイズする。
【0117】
次に、クラスター生成が実行され得る。クラスター生成の一つの例では、ライブラリー鋳型は、高忠実度DNAポリメラーゼ(high-fidelity DNA polymerase)を使用して3’伸長によって、ハイブリダイズされたプライマーからコピーされる。元のライブラリー鋳型を変性させ、コピーをフローセル表面44に固定化したままにする。固定化されたコピーを増幅するために、等温ブリッジ増幅又は他の何らかの形態の増幅が使用され得る。例えば、コピーされた鋳型はループオーバーして隣接する相補的なプライマーにハイブリダイズし、ポリメラーゼはコピーされた鋳型をコピーして二本鎖ブリッジ構造を形成し、当該構造は変性して2本の一本鎖を形成する。これらの2本の鎖は、ループオーバーして隣接する相補的なプライマーにハイブリダイズし、再度伸長して、2つの新しい二本鎖ループを形成する。このプロセスを、等温変性及び増幅のサイクルによって各鋳型コピーに対して繰り返して、密集したクローンクラスターを作り出す。二本鎖ブリッジ構造の各クラスターが変性される。一例では、逆鎖は、特異的塩基切断によって除去され、順方向鋳型鎖を残す。単一の鋳型鎖48が
図3に示されているが、クラスタリングは、フローセル表面44上に固定化されたいくつかの鋳型鎖48の形成をもたらす(例えば、
図8Bに示されるようなレーン、又は
図8Cに示されるようなくぼみにある)。このクラスター化の例はブリッジ増幅と呼ばれ、実行できる増幅の一つの例である。排除増幅(Examp)ワークフロー(Illumina Inc.)などの他の増幅技術が使用され得ることを理解すべきである。
【0118】
鋳型鎖48の配列の相補的部分にハイブリダイズする配列決定プライマー50を導入することができる。この配列決定プライマー50は、組込み混合物10Aを使用して、鋳型鎖48を配列決定する準備が整うようにする。
【0119】
例示的な配列決定方法は、(配列決定プライマー50がハイブリダイズした)鋳型鎖48のクラスターを含むフローセルに組込み混合物10Aを導入することを含み、組込み混合物10Aは、複数の複合体14及び複数の標識ヌクレオチド20を含み、それにより、少なくとも1つのポリメラーゼ16は、i)標識ヌクレオチド20の個々の1つを鋳型鎖48の1つに沿って新生鎖52に組み込み、ii)その連結されたプラズモンナノ構造18を標識ヌクレオチド20の個々の1つの近接内に維持し、プラズモンナノ構造18が維持されている間の組込みを光学的にイメージングする。
【0120】
この例示的な方法では、組込み混合物10Aの任意の例が、例えば、入力ポートを介してフローセルに導入される。組込み混合物10Aがフローセルに導入されると、混合物10Aはフローチャネルに入り、鋳型鎖48が存在する表面(複数可)44に接触する。
【0121】
組込み混合物10Aは、フローセル内でインキュベートされ、標識ヌクレオチド20は、複合体14のそれぞれのポリメラーゼ16によって組み込まれる。
図3に示されるように、組込み中、標識ヌクレオチド20のうちの一方は、それぞれのポリメラーゼ16によって、一方の配列決定プライマー50を伸長し、鋳型鎖48のうちの一方に相補的な一方の新生鎖52に組み込まれる。組込みは、鋳型鎖依存的様式で実施され、したがって、新生鎖52に添加された標識ヌクレオチド20の順序及びタイプの検出を使用して、鋳型鎖48の配列を決定することができる。組込みは、単一の配列決定サイクル中にフローセル表面44を横切る鋳型鎖48の少なくとも一部で起こる。したがって、フローセルにわたる鋳型鎖48の少なくともいくつかにおいて、それぞれのポリメラーゼ16は、ハイブリダイズした配列決定プライマー50を、組込み混合物10A中の標識ヌクレオチド20のうちの1つだけ伸長させる。
【0122】
組み込まれた標識ヌクレオチド20は、3’OHブロッキング基24の存在による可逆的終端特性を含み、標識ヌクレオチド20が添加されると、更なる配列決定プライマー伸長を終了させる。
【0123】
インキュベーション及び組込みの所望の時間の後、組み込まれていない標識ヌクレオチド20を含む組込み混合物10Aは、洗浄サイクル中にフローセルから除去され得る。洗浄サイクルは、例えばポンプ又は他の適切な機構によって、洗浄液(例えば、緩衝液)がフローチャネル内に導かれ、フローチャネルを通り、次いでフローチャネルから出るフロースルー技術を含んでもよい。
【0124】
組込みを行うポリメラーゼ16の少なくとも一部及びそれらのそれぞれの複合体14は、洗浄サイクル後に鋳型鎖48と最後に組み込まれた標識ヌクレオチド20との間の接合部46で定位置に留まる。一例では、複合体14の約20%~約90%は、洗浄サイクル後にフローセル内に残る。1つの例示的な範囲が提供されるが、様々な異なる要因に応じて、残りの複合体14のパーセンテージがより多くてもより少なくてもよいことを理解されたい。本明細書で言及されるように、洗浄サイクル中及び洗浄サイクル後に保持された複合体14のパーセンテージを増加させるために、複合体14は、鋳型鎖48に(例えば、DNA結合ドメインを介して)又はフローセル表面44に(例えば、表面テザー42を介して)繋ぎ留められ得る。各保持された複合体14はプラズモンナノ構造18を含むため、これらのプラズモンナノ構造18はまた、
図3に示すように、鋳型鎖48と最後に組み込まれた標識ヌクレオチド20との間の接合部46で定位置に保持される。したがって、プラズモンナノ構造18は、組込み後に色素標識26の近接を増強するシグナル内に保持される。
【0125】
更なる組込みが行われることなく、直近で組み込まれた標識ヌクレオチド20を、イメージング事象を通して検出することができる。イメージング事象中、照明システム(図示せず)は、フローセル表面44に励起光を供給することができる。組み込まれた標識ヌクレオチド20の色素標識26は、励起光に応答して光シグナルを放出する。更に、保持されたプラズモンナノ構造18は、それぞれの色素標識26の近接を増強するシグナル内に保持されるため、色素標識26からの信号は、プラズモン共鳴を通して増強され得る。
【0126】
イメージングを行った後、次いで切断混合物をフローセルに導入することができる。この例では、切断混合物は、i)組み込まれたヌクレオチド20から3’OHブロッキング基24を除去すること、及びii)組み込まれたヌクレオチド20から色素標識26を切断すること、ができる。切断混合物中の3’OHブロッキング基24及び好適な脱ブロッキング剤/構成要素の例は、以下を含み得る。塩基加水分解によって除去することができるエステル部分;Nal、クロロトリメチルシラン及びNa2S2O3で又はアセトン/水中のHg(II)で除去することができるアリル部分;トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)又はトリ(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)などのホスフィンで切断することができるアジドメチル;酸性条件で切断することができるtert-ブトキシ-エトキシなどのアセタール;LiBF4及びCH3CN/H2Oで切断することができるMOM(-CH2OCH3)部分;チオフェノール及びチオサルフェートなどの求核剤で切断することができる2,4-ジニトロベンゼンスルフェニル;Ag(I)又はHg(II)で切断することができるテトラヒドロフラニルエーテル;並びにホスファターゼ酵素(例えば、ポリヌクレオチドキナーゼ)によって切断され得る3’リン酸。切断混合物中の適切な色素標識切断剤/構成要素の例としては、隣接ジオールを切断することができる過ヨウ素酸ナトリウム;アジドメチル結合を切断することができるトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)又はトリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)等のホスフィン;アリルを切断することができるパラジウム及びTHP;エステル部分を切断することができる塩基;又は任意の他の好適な切断剤を挙げることができる。
【0127】
切断混合物又はその後の洗浄で洗浄することにより、鋳型鎖48又はフローセル表面44に別様に連結されていない保持複合体14を除去することもできる。
【0128】
複合体14が鋳型鎖48に(例えば、DNA結合ドメインを介して)又はフローセル表面44に連結されると(例えば、表面テザー42を介して)、追加の複合体除去剤を切断混合物に添加することができる。複合体除去剤は、複合体14と鋳型鎖48との間、又は複合体14とフローセル表面44との間に形成される結合に依存する。本明細書に記載の例示的な色素標識切断剤のいくつかは、複合体14を切断することができる場合がある。一例では、ビオチン-ストレプトアビジン結合対は、表面テザー42をフローセル表面44に連結する。この例では、複合体除去剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、尿素とビオチンの組合わせ、又は約10%体積~約50%体積のホルムアミド及び任意の緩衝液を含むホルムアミド試薬と、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム及び生体適合性界面活性剤を含む塩緩衝液の残部との組合わせであり得る。別の例では、結合対構成要素のうちの過剰なものは、結合対間(例えば、ポリメラーゼ16と表面テザー42との間、又は表面テザー42とフローセル表面44との間)の結合を破壊することができ、そのいずれかがフローセル表面44上で結合部位を開いたままにする。更に別の例では、ヌクレアーゼ又はアリル切断化学物質を添加して、表面テザー42を切断することができる。更に別の例では、外因性DNAを添加して、DNA結合ドメインが表面コンジュゲートDNAから放出することを促進し得る。
【0129】
洗浄(複数可)は、様々な流体送達ステップの間で行ってもよい。次いで、配列決定サイクルを「n」回繰り返して、配列決定プライマー50をn個のヌクレオチドだけ伸長させ、それによって長さnの配列を検出することができる。いくつかの例では、順鎖がシーケンシング及び除去され、次いで、逆鎖が構築され、シーケンシングされるペアエンドシーケンシングを使用してよい。
【0130】
ここで
図5Aを参照すると、組込み混合物10Bの別の例が概略的に示されている。この例示的な組込み混合物10Bは、標識ヌクレオチド20’の別の例を含む。この標識ヌクレオチド20’は、ヌクレオチド22、ヌクレオチド22の糖に結合した3’OHブロッキング基24、ヌクレオチド22の塩基に結合した色素標識26、及びヌクレオチド22の塩基に結合したプラズモンナノ構造18を含む。
【0131】
本明細書に記載のヌクレオチド22、3’OHブロッキング基24、及び色素標識26のいずれも、標識ヌクレオチド20’に使用され得る。更に、本明細書に記載のプラズモンナノ構造18のいずれも、標識ヌクレオチド20’に使用され得る。
【0132】
この例では、第1の連結分子38は、色素標識26をヌクレオチド22の塩基に結合させ、第2の連結分子38’は、プラズモンナノ構造18をヌクレオチド22の塩基に結合させる。第1及び第2の連結分子38、38’の長さは、連結分子38、38’が塩基にどのように結合するかに依存し得る。いくつかの例では、信号増強近接性に関連する距離が0.1nm~100nmである場合、長さは約1nm~約12nm、又は最大約100nmの範囲になる。
【0133】
第1及び/又は第2の連結分子38、38’は、色素標識26を塩基に連結するために記載された連結分子のいずれか、例えばスペーサー基-((CH
2)
2O)
n-(nは2~50の範囲)又は
図4の参照番号38A、38B及び38Cで示される例であり得る。いくつかの例では、第1及び/又は第2の連結分子38、38’は、組込み及びイメージング後に同じ機構を使用して切断され得るように、同じタイプのリンカーであるように選択される。第2の連結分子38’の別の例は、ds-DNA(二本鎖DNA)である。ds-DNAリンカーの剛性が特に望ましい場合がある。これらの例のいずれにおいても、第2の連結分子38’は、プラズモンナノ構造18に化学的にコンジュゲートすることができる末端基を含み得る。一例として、ビオチンは、第2の連結分子38’の末端に添加され得、プラズモンナノ構造18は、ビオチンに結合することができるアビジン又はストレプトアビジンで官能化され得る。別の例として、チオールを第2の連結分子38’の末端に添加してもよく、これは金ナノ粒子の表面に直接結合することができる。
【0134】
図5Aに示すように、組込み混合物10Bのこの例はまた、液体担体12及びポリメラーゼ16を含む。ポリメラーゼ16及び/又は標識ヌクレオチド20’の濃度は、約50nM~約100μM、約1nM~約50μM等の範囲であり得る。
【0135】
組込み混合物10Bの液体担体12は、水及び/又は本明細書に記載の緩衝液のいずれかであり得る。
【0136】
組込み混合物10Bのポリメラーゼ16は、本明細書で提供される実施例のいずれかであり得る。これらの実施例では、組込み混合物10B中のポリメラーゼ16は、複合体14の一部ではないことを理解されたい。したがって、ポリメラーゼ16は、プラズモンナノ構造18に結合していない。ポリメラーゼ16とプラズモンナノ構造18とは別個であるため、これらの例のポリメラーゼ16は、鋳型鎖48(例えば、DNA結合ドメインを介して)又はフローセル表面44(例えば、表面テザー42を介して、)への繋ぎ留めのために官能化されていなくてもよい。
【0137】
ここで
図5Bを参照すると、組込み混合物10Cの別の例が概略的に示されている。この例示的な組込み混合物10Cは、標識ヌクレオチド20’’’の別の例を含む。この標識ヌクレオチド20’’’は、ヌクレオチド22、ヌクレオチド22の糖に結合した3’OHブロッキング基24、ヌクレオチド22の塩基に結合した色素標識26、及び色素標識26に結合したプラズモンナノ構造18を含む。色素標識26へのプラズモンナノ粒子18の結合は、
図5Aに示される例示的な標識ヌクレオチド20’よりも立体的に充填していなくてもよい。
【0138】
本明細書に記載のヌクレオチド22、3’OHブロッキング基24、及び色素標識26のいずれも、標識ヌクレオチド20’’’に使用され得る。更に、本明細書に記載のプラズモンナノ構造18のいずれも、標識ヌクレオチド20’’’に使用され得る。
【0139】
この例では、第1の連結分子38は、色素標識26をヌクレオチド22の塩基に結合させ、第2の連結分子38’は、プラズモンナノ構造18を色素標識26に結合させる。第1及び第2の連結分子38、38’の全長は、連結分子38が塩基にどのように結合するか、及び連結分子38’が色素標識26にどのように結合するかに依存し得る。いくつかの例では、連結分子38’の長さは、近接を増強する信号と関連する距離が0.1nm~100nmである場合、約1nm~約12nm、又は最大約100nmの範囲である。
【0140】
第1及び/又は第2の連結分子38、38’は、色素標識26を塩基に連結するために記載された連結分子のいずれか、例えばスペーサー基-((CH
2)
2O)
n-(nは2~50の範囲)又は
図4の参照番号38A、38B及び38Cで示される例であり得る。
【0141】
図5Bに示すように、組込み混合物10Cのこの例はまた、液体担体12及びポリメラーゼ16を含む。ポリメラーゼ16及び/又は標識ヌクレオチド20’’’の濃度は、約50nM~約100μM、約1nM~約50μM等の範囲であり得る。
【0142】
組込み混合物10Cの液体担体12は、水及び/又は本明細書に記載の緩衝液のいずれかであり得る。組込み混合物10Cの液体担体12はまた、触媒金属(複数可)を含み得る。
【0143】
組込み混合物10Cのポリメラーゼ16は、本明細書で提供される実施例のいずれかであり得る。これらの実施例では、組込み混合物10C中のポリメラーゼ16は、複合体14の一部ではないことを理解されたい。したがって、ポリメラーゼ16は、プラズモンナノ構造18に結合していない。ポリメラーゼ16とプラズモンナノ構造18とは別個であるため、これらの例のポリメラーゼ16は、鋳型鎖48(例えば、DNA結合ドメインを介して)又はフローセル表面44(例えば、表面テザー42を介して、)への繋ぎ留めのために官能化されていなくてもよい。
【0144】
ここで
図6を参照すると、以下の説明は、組込み混合物10Bを含む例示的な方法に関する。この方法はまた、
図8A、
図8B、及び
図8Cを参照して詳細に示され説明されるフローセルの例を利用する。この方法の開始時に、鋳型鎖48は、
図3を参照して説明したように形成されている。
【0145】
図6に示すように、鋳型鎖48の配列の相補的部分にハイブリダイズする配列決定プライマー50を導入することができる。この配列決定プライマー50は、組込み混合物10Bを使用して、鋳型鎖48を配列決定する準備が整うようにする。
【0146】
例示的な配列決定方法は、(配列決定プライマー50がハイブリダイズした)鋳型鎖48のクラスターを含むフローセルに組込み混合物10Bを導入することを含み、組込み混合物10Bは、液体担体12、複数のポリメラーゼ16、及び複数の標識ヌクレオチド20’を含み、それにより、少なくとも1つのポリメラーゼ16が、標識ヌクレオチド20’の個々の1つを鋳型鎖48の1つに沿って新生鎖52に組み込み、前記組込みを光学的にイメージングする。
【0147】
この例示的な方法では、組込み混合物10Bの任意の例が、例えば、入力ポートを介してフローセルに導入される。組込み混合物10Bがフローセルに導入されると、混合物10Bはフローチャネルに入り、鋳型鎖48が存在する表面(複数可)44に接触する。
【0148】
組込み混合物10Bは、フローセル内でインキュベートされ、標識ヌクレオチド20’は、それぞれのポリメラーゼ16によって組み込まれる。
図6に示されるように、組込み中、標識ヌクレオチド20’のうちの一方は、それぞれのポリメラーゼ16によって、一方の配列決定プライマー50を伸長し、鋳型鎖48のうちの一方に相補的な一方の新生鎖52に組み込まれる。この組込みはまた、鋳型鎖依存的様式で実施され、したがって、新生鎖52に添加された標識ヌクレオチド20’の順序及びタイプの検出を使用して、鋳型鎖48の配列を決定することができる。組込みは、単一の配列決定サイクル中にフローセル表面44を横切る鋳型鎖48の少なくとも一部で起こる。
【0149】
組み込まれた標識ヌクレオチド20’は、3’OHブロッキング基24の存在による可逆的終端特性を含み、標識ヌクレオチド20’が添加されると、更なる配列決定プライマー伸長を終了させる。
【0150】
インキュベーション及び組込みの所望の時間の後、組み込まれていない標識ヌクレオチド20’を含む組込み混合物10Bは、洗浄サイクル中にフローセルから除去され得る。洗浄サイクルは、例えばポンプ又は他の適切な機構によって、洗浄液(例えば、緩衝液)がフローチャネル内に導かれ、フローチャネルを通り、次いでフローチャネルから出るフロースルー技術を含んでもよい。
【0151】
それぞれのプラズモンナノ構造18は、組み込まれた標識ヌクレオチド20’に連結されているため、これらのプラズモンナノ構造18は、組込み後の色素標識26の近接を増強するシグナル内の所定の位置に保持される。
【0152】
更なる組込みが行われることなく、直近で組み込まれた標識ヌクレオチド20’を、イメージング事象を通して検出することができる。イメージング事象中、照明システム(図示せず)は、フローセル表面44に励起光を供給することができる。組み込まれた標識ヌクレオチド20’の色素標識26は、励起光に応答して光シグナルを放出し、組み込まれた標識ヌクレオチド20’のそれぞれのプラズモンナノ構造18は、プラズモン共鳴を通じてこれらの光シグナルを増強する。
【0153】
イメージングを行った後、次いで切断混合物をフローセルに導入することができる。この例では、切断混合物は、i)組み込まれたヌクレオチド20’から3’OHブロッキング基24を除去すること、ii)色素標識26を組み込まれたヌクレオチド20’から切断すること、及びiii)組み込まれたヌクレオチド20’からプラズモンナノ構造18を切断することができる。
【0154】
この例では、3’OHブロッキング基24を切断するための本明細書に記載の脱ブロッキング剤/構成要素のいずれかを使用することができる。また、この例では、色素標識26を切断するための本明細書に記載の切断剤/構成要素のいずれかが使用され得る。色素標識26及びプラズモンナノ構造18をそれぞれ結合するために使用される連結分子38、38’が同じである場合、切断混合物は、連結分子38、38’を切断することができる単一の切断剤/構成要素を含み得る。色素標識26及びプラズモンナノ構造18をそれぞれ結合させるために使用される連結分子38、38’が異なる場合、切断混合物は、それぞれの連結分子38、38’を切断することができる異なる切断剤/構成要素を含み得る。一例として、各連結分子38、38’の特定の配列を標的とする制限酵素を使用することができる。
【0155】
洗浄(複数可)は、様々な流体送達ステップの間で行ってもよい。次いで、配列決定サイクルをn回繰り返して、配列決定プライマー50をn個のヌクレオチドだけ伸長させ、それによって長さnの配列を検出することができる。いくつかの例では、順鎖がシーケンシング及び除去され、次いで、逆鎖が構築され、シーケンシングされるペアエンドシーケンシングを使用してよい。
【0156】
組込み混合物10Cは、組込み混合物10Bの代わりに
図6を参照して説明した方法で使用され得る。方法(例えば、組込み、インキュベーション、信号増強等)は、切断プロセスが簡略化され得ることを除いて、
図6を参照して説明したものと同様であろう。組込み混合物10Cでは、プラズモンナノ構造18は、色素標識26に結合している。したがって、色素標識26が切断されると、プラズモンナノ構造18も切断される。したがって、本方法中に、連結分子38’に対する追加の切断剤は使用されない。
【0157】
イメージング混合物中のプラズモンナノ構造
本明細書に開示される他の例では、プラズモンナノ構造18は、組込み混合物10A又は10B又は10Cではなく、イメージング混合物に含まれ得る。これらの実施例では、ナノ構造18は、組み込まれた標識ヌクレオチド(例えば、標識ヌクレオチド20)と会合することができるように官能化される。これらの例では、官能化は、プラズモンナノ構造体18が色素標識26のシグナル増強近接内に局在化する機構の少なくとも一部である。
【0158】
図7A、
図7B及び
図7Cは、組込み混合物10D、10E及び10F並びにイメージング混合物56、56’及び56’’の両方を含むキット54、54’、54’’の3つの例を示す。各キット54、54’、54’’は、液体担体12、ポリメラーゼ16又は16’’の一例、及び標識ヌクレオチド20又は20’’の一例を含む、組込み混合物10D、10E、及び10Fの異なる例を含む。各キット54、54’、54’’はまた、第2の液体担体12’と、標識ヌクレオチド20又は20’’を含む組込み事象の後に、標識ヌクレオチド20又は20’’の近接内でそれ自体を会合させるために官能化されたプラズモンナノ構造18’、18’’、又は18’’’の例と、を含むイメージング混合物56、56’、56’’の例も含む。
【0159】
組込み混合物10D、10E、及び10Fの液体担体12、並びにイメージング混合物56、56’、56’’の第2の液体担体12’は、水、及び/又は本明細書に記載の緩衝液のいずれかであってもよい。液体担体12’はまた、触媒金属(複数可)を含み得る。
【0160】
これらの例示的キット54、54’、54’’の各々は、一般に以下を含む配列決定方法で使用することができ、これは、鋳型鎖48のクラスターを含むフローセルに組込み混合物10D、10E、及び10Fを導入し、それにより、ポリメラーゼ16又は16’’の少なくとも1つは、標識ヌクレオチド20又は20’’の個々の1つを鋳型鎖48の1つに沿って新生鎖52に組み込む工程と、イメージング混合物56又は56’又は56’’をフローセルに導入し、それによって、少なくとも1つの官能化プラズモンナノ構造18’、18’’、又は18’’’は、標識ヌクレオチド20又は20’’のうちの個々の1つの近接内にそれ自体を会合させる工程と、少なくとも1つの官能化プラズモンナノ構造18’、18’’、又は18’’’が、標識ヌクレオチド20又は20’’のうちの個々の1つと会合している間に、組込みを光学的にイメージングする工程と、を含む。
【0161】
キット54、54’、54’’及びその関連する配列決定方法の各々は、参照
図7A、
図7B、及び
図7Cにそれぞれ更に記載される。
【0162】
図7Aに示される例示的なキット54では、組込み混合物10Dは、
図5Aを参照して記載されているようなポリメラーゼ16を含み、
図1を参照して記載されているような標識ヌクレオチド20を含む。ポリメラーゼ16は、組込みで使用するために本明細書に開示される実施例のいずれかであってもよく、鋳型鎖48に(例えば、DNA結合ドメインを介して)又はフローセル表面44に(例えば、表面テザー42を介して)繋ぎ留めるために官能化されていなくてもよい。ポリメラーゼ16は、
図6を参照して説明したように、組込み事象中に標識ヌクレオチド20を組み込むために使用される。組込み混合物10Dは、複数のポリメラーゼ16を含むことを理解されたい。
【0163】
また、
図7Aに示される例示的なキット54において、イメージング混合物56は、第2のポリメラーゼ16’で官能化されたプラズモンナノ構造18’を含む。第2のポリメラーゼ16’で官能化されたプラズモンナノ構造18’は、第2のポリメラーゼ16’が標識ヌクレオチド20の組込みに利用されず、むしろ、組込みが行われた後に鋳型鎖48と最後に組み込まれた標識ヌクレオチド20との間の接合部46付近にプラズモンナノ構造18’を局在化するために利用されることを除いて、複合体14と同様である。
【0164】
第2のポリメラーゼ16’は、本明細書に記載のポリメラーゼ16の任意の例であり得るか、又はヌクレオチド組込みに対して不活性であるポリメラーゼであり得る。本明細書に記載のポリメラーゼのいずれも、第2のポリメラーゼ16’を組込み反応を触媒することができない、活性部位変異に曝露され得る。ポリメラーゼは、2つの活性部位アスパラギン酸残基を使用して共通の機構を共有し、これらの残基の一方又は両方を変異させることにより、重合が不活性になる。第2のポリメラーゼ16’はまた、新生鎖52の3’末端に特異的に結合することができるように選択される。
【0165】
プラズモンナノ構造18’は、新生鎖52の3’末端に特異的に結合する第2のポリメラーゼ16’に連結されているため、ポリメラーゼ16’は、少なくとも部分的に(組み込まれたヌクレオチド20の)色素標識26とプラズモンナノ構造18’との間の空間を画定する。したがって、ポリメラーゼ16’のサイズは、近接を強化する信号を作成するように選択され得る。一例では、ポリメラーゼ16’のサイズは、約3nm~約12nmの範囲である。別の例では、ポリメラーゼ16’のサイズは約4nm~約7nmの範囲である。更に別の例では、ポリメラーゼ16’のサイズは、約5nmである。近接を増強する信号と関連付けられた距離が0.1nm~100nmである場合、ポリメラーゼ16’のサイズは、より大きくてもよく、例えば、最大約100nmであってもよい。
【0166】
第2のポリメラーゼ16’は、ポリメラーゼ16をプラズモンナノ粒子18に連結するための本明細書に記載の同じ技術を使用して、プラズモンナノ構造18’に連結されてもよい。一例では、第2のポリメラーゼ16’は、本明細書に記載の化学コンジュゲーション技術のいずれかを使用して、プラズモンナノ構造18’に連結され得る。別の例では、
図2Aに示されるものと同様の結合は、オリゴヌクレオチド28が第2のポリメラーゼ16’に結合している場合に使用される。更に別の例では、オリゴヌクレオチド28が第2のポリメラーゼ16’に結合し、オリゴヌクレオチドテザー32がプラズモンナノ粒子18’の周りに巻き付けられている、
図2Bに示されるものと同様の結合が使用される。
【0167】
以下の説明は、キット54を含む例示的な方法に関する。この方法はまた、
図8A、
図8B、及び
図8Cを参照して示され説明されるフローセルの例を利用する。この方法の開始時に、鋳型鎖48は、
図3を参照して説明したように形成されている。
【0168】
鋳型鎖48の配列の相補的部分にハイブリダイズする配列決定プライマー50を導入することができる。この配列決定プライマー50は、組込み混合物10D及びイメージング混合物56を使用して、鋳型鎖48を配列決定する準備が整うようにする。
【0169】
この例示的な方法では、組込み混合物10Dは、例えば、入力ポートを介してフローセルに導入される。組込み混合物10Dがフローセルに導入されると、混合物10Dはフローチャネルに入り、鋳型鎖48が存在する表面(複数可)44に接触する。
【0170】
組込み混合物10Dは、フローセル内でインキュベートされ、標識ヌクレオチド20は、それぞれのポリメラーゼ16によって組み込まれる。
図6に示される例と同様に、組込み中、標識ヌクレオチド20のうちの一方は、それぞれのポリメラーゼ16によって、一方の配列決定プライマー50を伸長し、鋳型鎖48のうちの一方に相補的な一方の新生鎖52に組み込まれる。この組込みはまた、鋳型鎖依存的様式で実施され、したがって、新生鎖52に添加された標識ヌクレオチド20の順序及びタイプの検出を使用して、鋳型鎖48の配列を決定することができる。組込みは、単一の配列決定サイクル中にフローセル表面44を横切る鋳型鎖48の少なくとも一部で起こる。
【0171】
組み込まれた標識ヌクレオチド20は、3’OHブロッキング基24の存在による可逆的終端特性を含み、標識ヌクレオチド20が添加されると、更なる配列決定プライマー伸長を終了させる。
【0172】
インキュベーション及び組込みの所望の時間の後、組み込まれていない標識ヌクレオチド20を含む組込み混合物10Dは、洗浄サイクル中にフローセルから除去され得る。組込み混合物10Dは、イメージング混合物56を導入する前に除去される。この例では、全てではないが、洗浄サイクル中に組込み混合物10Dからのポリメラーゼ16のほとんどが除去されることが望ましい。除去されるポリメラーゼ16の割合を増加させるために、複数の洗浄サイクルを実行することができる。洗浄サイクル(複数可)は、本明細書に記載のフロースルー技術を含み得る。
【0173】
次いで、イメージング混合物56は、例えば、入力ポートを介してフローセルに導入される。イメージング混合物56がフローセルに導入されると、混合物56はフローチャネルに入り、直近に組み込まれた標識ヌクレオチド20を含む鋳型鎖48が存在する表面(複数可)44に接触する。
【0174】
イメージング混合物56は、フローセル内でインキュベートされ、第2のポリメラーゼ16’の少なくともいくつかは、新生鎖52の少なくともいくつかの3’末端に特異的に結合する。各プラズモンナノ構造18’は、第2のポリメラーゼ16’で官能化されているため、各プラズモンナノ構造18’は、結合した第2のポリメラーゼ16’が新生鎖52の3’末端に特異的に結合するときに、色素標識26の近接を増強するシグナル内にもたらされる。更に、標識ヌクレオチド20は、イメージング混合物56で導入されず、したがって、追加の標識ヌクレオチド20の組込みは行われない。
【0175】
更なる組込みが行われることなく、直近で組み込まれた標識ヌクレオチド20を、イメージング事象を通して検出することができる。イメージング事象中、照明システム(図示せず)は、フローセル表面44に励起光を供給することができる。組み込まれた標識ヌクレオチド20の色素標識26は、励起光に応答して光シグナルを放出し、第2のポリメラーゼ16’によって固定されたそれぞれのプラズモンナノ構造18’は、プラズモン共鳴を通してこれらの光シグナルを増強する。
【0176】
イメージングを行った後、次いで切断混合物をフローセルに導入することができる。この例では、切断混合物は、i)組み込まれたヌクレオチド20から3’OHブロッキング基24を除去すること、ii)色素標識26を組み込まれたヌクレオチド20から切断すること、及びiii)第2のポリメラーゼ16’及びそれに結合したプラズモンナノ粒子18’を除去することができる。
【0177】
この例では、3’OHブロッキング基24を切断するための本明細書に記載の脱ブロッキング剤/構成要素のいずれかを使用することができる。また、この例では、色素標識26を切断するための本明細書に記載の切断剤/構成要素のいずれかが使用され得る。
【0178】
洗浄(複数可)は、様々な流体送達ステップの間で行ってもよい。次いで、配列決定サイクルをn回繰り返して、配列決定プライマー50をn個のヌクレオチドだけ伸長させ、それによって長さnの配列を検出することができる。いくつかの例では、順鎖がシーケンシング及び除去され、次いで、逆鎖が構築され、シーケンシングされるペアエンドシーケンシングを使用してよい。
【0179】
図7Bに示される例示的なキット54’では、組込み混合物10Eは、
図1を参照して記載されているように、ポリメラーゼ16’’及び標識ヌクレオチド20を含む。
【0180】
この例では、ポリメラーゼ16’’は、標識ヌクレオチド20の組込み、並びにイメージング混合物56’に導入されるプラズモンナノ粒子18’’を結合するために使用される。したがって、ポリメラーゼ16’’は、ヌクレオチド組込みにおける使用のために本明細書に開示される実施例のいずれかであり、結合対の1つのメンバー58Aでも官能化される。組込み後にポリメラーゼ16’’が所定の位置に留まることが望ましいため、ポリメラーゼ16’’はまた、鋳型鎖48に(例えば、DNA結合ドメインを介して)又はフローセル表面44に(例えば、表面テザー42を介して)繋ぎ留めるために官能化され得る。本明細書に記載の表面テザー42の任意の例を使用して、ポリメラーゼ16’’を固定することができる。組込み混合物10Eは、複数のポリメラーゼ16’’を含むことを理解されたい。
【0181】
プラズモンナノ構造18’’は、最終的に、組込みに使用されるポリメラーゼ16’’に結合するため、ポリメラーゼ16’’は、少なくとも部分的に(組み込まれたヌクレオチド20の)色素標識26とプラズモンナノ構造18’’との間の空間を画定する。したがって、ポリメラーゼ16’’のサイズは、近接を強化する信号を作成するように選択され得る。一例では、ポリメラーゼ16’’のサイズは、約3nm~約9nmの範囲である。別の例では、ポリメラーゼ16’’のサイズは約4nm~約7nmの範囲である。更に別の例では、ポリメラーゼ16’のサイズは、約5nmである。
【0182】
また、
図7Bに示される例示的なキット54’では、イメージング混合物56’は、結合対の別のメンバー58Bで官能化されたプラズモンナノ構造18’’を含む。プラズモンナノ粒子18’’上のメンバー58Bは、ポリメラーゼ16’’上のメンバー58Aに結合することができる。例示的な結合対として、メンバー58B(プラズモンナノ粒子18’’上)及びメンバー58A(ポリメラーゼ16’’上)はそれぞれ、NiNTA(ニッケル-ニトリロ三酢酸)配位子及びヒスチジンタグ、又はストレプトアビジン若しくはアビジン及びビオチン、又はスパイタグ及びスパイカッチャー、又はマレイミド及びシステイン、又はアジド及びジベンゾシクロオクチン(DBCO)を含む。
【0183】
以下の説明は、キット54’を含む例示的な方法に関する。この方法はまた、
図8A、
図8B、及び
図8Cを参照して詳細に示され説明されるフローセルの例を利用する。この方法の開始時に、鋳型鎖48は、
図3を参照して説明したように形成されている。
【0184】
鋳型鎖48の配列の相補的部分にハイブリダイズする配列決定プライマー50を導入することができる。この配列決定プライマー50は、組込み混合物10E及びイメージング混合物56’を使用して、鋳型鎖48を配列決定する準備が整うようにする。
【0185】
この例示的な方法では、組込み混合物10Eは、例えば、入力ポートを介してフローセルに導入される。組込み混合物10Eがフローセルに導入されると、混合物10Eはフローチャネルに入り、鋳型鎖48が存在する表面(複数可)44に接触する。
【0186】
組込み混合物10Eは、フローセル内でインキュベートされ、標識ヌクレオチド20は、それぞれのポリメラーゼ16’’によって組み込まれる。
図6に示される例と同様に、組込み中、標識ヌクレオチド20のうちの一方は、それぞれのポリメラーゼ16’’によって、一方の配列決定プライマー50を伸長し、鋳型鎖48のうちの一方に相補的な一方の新生鎖52に組み込まれる。この組込みはまた、鋳型鎖依存的様式で実施され、したがって、新生鎖52に添加された標識ヌクレオチド20の順序及びタイプの検出を使用して、鋳型鎖48の配列を決定することができる。組込みは、単一の配列決定サイクル中にフローセル表面44を横切る鋳型鎖48の少なくとも一部で起こる。
【0187】
組み込まれた標識ヌクレオチド20は、3’OHブロッキング基24の存在による可逆的終端特性を含み、標識ヌクレオチド20が添加されると、更なる配列決定プライマー伸長を終了させる。
【0188】
インキュベーション及び組込みの所望の時間の後、組み込まれていない標識ヌクレオチド20を含む組込み混合物10Eは、洗浄サイクル中にフローセルから除去され得る。組込み混合物10Eは、イメージング混合物56’を導入する前に除去される。組込みを行うポリメラーゼ16の少なくとも一部は、洗浄サイクル後に鋳型鎖48と最後に組み込まれた標識ヌクレオチド20との間の接合部46で定位置に留まる。一例では、約20%~約90%のポリメラーゼ16’’は、洗浄サイクル後にフローセル内に残る。本明細書で言及されるように、洗浄サイクル中及び洗浄サイクル後に保持されたポリメラーゼ16’’のパーセンテージを増加させるために、ポリメラーゼ16’’は、鋳型鎖48に(例えば、DNA結合ドメインを介して)又はフローセル表面44に(例えば、表面テザー42を介して)繋ぎ留められ得る。
【0189】
次いで、イメージング混合物56’は、例えば、入力ポートを介してフローセルに導入される。イメージング混合物56’がフローセルに導入されると、混合物56’はフローチャネルに入り、直近に組み込まれた標識ヌクレオチド20を含む鋳型鎖48が存在する表面(複数可)44に接触する。
【0190】
イメージング混合物56’は、フローセル内でインキュベートされ、プラズモンナノ構造18’’のメンバー58Bの少なくともいくつかは、鋳型鎖48と直近に組み込まれた標識ヌクレオチド20との間の接合部46に残るポリメラーゼ16’’のメンバー58Aに結合する。したがって、プラズモンナノ構造18’’は、そのメンバー58Bがポリメラーゼ16’’上のメンバー58Aに特異的に結合するとき、色素標識26の近接性を高めるシグナル内にもたらされる。
【0191】
更なる組込みが行われることなく、直近で組み込まれた標識ヌクレオチド20を、イメージング事象を通して検出することができる。イメージング事象中、照明システム(図示せず)は、フローセル表面44に励起光を供給することができる。組み込まれた標識ヌクレオチド20の色素標識26は、励起光に応答して光シグナルを放出し、ポリメラーゼ16’’によって固定されたそれぞれのプラズモンナノ構造18’’は、プラズモン共鳴を通してこれらの光シグナルを増強する。
【0192】
イメージングを行った後、次いで切断混合物をフローセルに導入することができる。この例では、切断混合物は、i)組み込まれたヌクレオチド20から3’OHブロッキング基24を除去すること、ii)色素標識26を組み込まれたヌクレオチド20から切断すること、及びiii)ポリメラーゼ16’’及びそれに結合したプラズモンナノ粒子18’’を除去することができる。
【0193】
この例では、3’OHブロッキング基24を切断するための本明細書に記載の脱ブロッキング剤/構成要素のいずれかを使用することができる。また、この例では、色素標識26を切断するための本明細書に記載の切断剤/構成要素のいずれかが使用され得る。ポリメラーゼ16’’が鋳型鎖48に(例えば、DNA結合ドメインを介して)又はフローセル表面44に連結されると(例えば、表面テザー42を介して)、本明細書に記載の追加のポリメラーゼ除去剤を切断混合物に添加することができる。ポリメラーゼ除去剤は、ポリメラーゼ16’’と鋳型鎖48との間、又はポリメラーゼ16’’とフローセル表面44との間に形成される結合に依存する。一例では、ビオチン-ストレプトアビジン結合対は、表面テザー42(及びポリメラーゼ16’’)をフローセル表面44に連結する。この例では、ポリメラーゼ除去剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、尿素とビオチンの組合わせ、又は約10%体積~約50%体積のホルムアミド及び任意の緩衝液を含むホルムアミド試薬と、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム及び生体適合性界面活性剤を含む塩緩衝液の残部との組合わせであり得る。
【0194】
洗浄(複数可)は、様々な流体送達ステップの間で行ってもよい。次いで、配列決定サイクルをn回繰り返して、配列決定プライマー50をn個のヌクレオチドだけ伸長させ、それによって長さnの配列を検出することができる。いくつかの例では、順鎖がシーケンシング及び除去され、次いで、逆鎖が構築され、シーケンシングされるペアエンドシーケンシングを使用してよい。
【0195】
図7Cに示される例示的なキット54’’では、組込み混合物10Fは、
図5Aに記載されるようなポリメラーゼ16、及び標識ヌクレオチド20’’の別の例を含む。
【0196】
組込み混合物10Fのこの例では、ポリメラーゼ16は、組込みで使用するために本明細書に開示される実施例のいずれかであってもよく、鋳型鎖48に(例えば、DNA結合ドメインを介して)又はフローセル表面44に(例えば、表面テザー42を介して)繋ぎ留めるために官能化されていなくてもよい。ポリメラーゼ16は、
図6を参照して説明したように、組込み事象中に標識ヌクレオチド20’’を組み込むために使用される。組込み混合物10Fは、複数のポリメラーゼ16を含むことを理解されたい。
【0197】
標識ヌクレオチド20’’は、ヌクレオチド22、ヌクレオチド22の糖に結合した3’OHブロッキング基24、ヌクレオチド22の塩基に結合した色素標識26を含む。標識ヌクレオチド20’’もビオチン化されており、したがってビオチン標識60を含む。ビオチン標識60は、適切な連結分子、例えば式-((CH
2)
2O)
n-(式中、nは2~50の整数である)のスペーサー基、PEGリンカー、又は
図4に示す連結分子38A、38B、38Cのいずれかを介して、標識ヌクレオチド20’’の塩基に付加されてもよい。代替的に、ビオチン標識60は、色素標識26を過ぎて(すなわち、色素標識26に結合して)組み込まれ得る。
【0198】
プラズモンナノ構造18’’’は、最終的に、標識ヌクレオチド20’’のビオチン標識60に結合し、したがって、ビオチン標識60に結合する連結分子の長さは、結合したプラズモンナノ構造18’’’が標識ヌクレオチド20’’の色素標識26の近接性を増強するシグナル内にあるように選択され得る。一例では、ビオチンラベルの連結分子は、色素標識の連結分子38の長さの約3nm~約12nm以内の長さを有する。別の例では、ビオチン標識の連結分子は、第1の長さを有し、色素標識の連結分子38は、第2の長さを有し、第1及び第2の長さは、約3nm~約12nmの範囲である。
【0199】
また、
図7Cに示される例示的なキット54’’では、イメージング混合物56’’は、ストレプトアビジン62で官能化されたプラズモンナノ構造18’’’を含む。プラズモンナノ構造18’’’上のストレプトアビジン62及び標識ヌクレオチド20’’上のビオチン標識60は、結合対を形成する。
【0200】
以下の説明は、キット54’’を含む例示的な方法に関する。この方法はまた、
図8A、
図8B、及び
図8Cを参照して詳細に示され説明されるフローセルの例を利用する。この方法の開始時に、鋳型鎖48は、
図3を参照して説明したように形成されている。
【0201】
鋳型鎖48の配列の相補的部分にハイブリダイズする配列決定プライマー50を導入することができる。この配列決定プライマー50は、組込み混合物10F及びイメージング混合物56’’を使用して、鋳型鎖48を配列決定する準備が整うようにする。
【0202】
この例示的な方法では、組込み混合物10Fは、例えば、入力ポートを介してフローセルに導入される。組込み混合物10Fがフローセルに導入されると、混合物10Fはフローチャネルに入り、表面(複数可)44に接触し、鋳型鎖48(配列決定プライマー50がそれにハイブリダイズする)が存在する。
【0203】
組込み混合物10Fは、フローセル内でインキュベートされ、標識ヌクレオチド20’’は、それぞれのポリメラーゼ16によって組み込まれる。
図6に示される例と同様に、組込み中、標識ヌクレオチド20’’のうちの一方は、それぞれのポリメラーゼ16によって、一方の配列決定プライマー50を伸長し、鋳型鎖48のうちの一方に相補的な一方の新生鎖52に組み込まれる。この組込みはまた、鋳型鎖依存的様式で実施され、したがって、新生鎖52に添加された標識ヌクレオチド20’’の順序及びタイプの検出を使用して、鋳型鎖48の配列を決定することができる。組込みは、単一の配列決定サイクル中にフローセル表面44を横切る鋳型鎖48の少なくとも一部で起こる。
【0204】
組み込まれた標識ヌクレオチド20’’は、3’OHブロッキング基24の存在による可逆的終端特性を含み、標識ヌクレオチド20’’が添加されると、更なる配列決定プライマー伸長を終了させる。
【0205】
インキュベーション及び組込みの所望の時間の後、組み込まれていない標識ヌクレオチド20’’を含む組込み混合物10Fは、洗浄サイクル中にフローセルから除去され得る。組込み混合物10Fは、イメージング混合物56’’を導入する前に除去される。この例では、全てではないが、洗浄サイクル中に組込み混合物10Fからのポリメラーゼ16のほとんどが除去されることが望ましい。除去されるポリメラーゼ16の割合を増加させるために、複数の洗浄サイクルを実行することができる。洗浄サイクル(複数可)は、本明細書に記載のフロースルー技術を含み得る。
【0206】
次いで、イメージング混合物56’’は、例えば、入力ポートを介してフローセルに導入される。イメージング混合物56’’がフローセルに導入されると、混合物56’’はフローチャネルに入り、直近に組み込まれた標識ヌクレオチド20’’を含む鋳型鎖48が存在するフローセル表面(複数可)44に接触する。
【0207】
イメージング混合物56’’をフローセル内でインキュベートし、プラズモンナノ粒子18’’の少なくとも一部は、その表面のストレプトアビジン62を介して、組み込まれたヌクレオチド20’’の少なくとも一部のビオチン標識60に特異的に結合する。ビオチン標識60は、プラズモンナノ粒子18’’’が結合する標識ヌクレオチド20’’の一部であるので、プラズモンナノ構造18’は、その標識ヌクレオチド20’’の色素標識26の近接を増強するシグナル内にもたらされる。
【0208】
更なる組込みが行われることなく、直近で組み込まれた標識ヌクレオチド20’’を、イメージング事象を通して検出することができる。イメージング事象中、照明システム(図示せず)は、フローセル表面44に励起光を供給することができる。組み込まれた標識ヌクレオチド20’’の色素標識26は、励起光に応答して光学シグナルを放出し、それぞれのプラズモンナノ構造18’’’は、ストレプトアビジン62とビオチン標識60との間の相互作用によって固定され、プラズモン共鳴によってこれらの光学シグナルを増強する。
【0209】
イメージングを行った後、次いで切断混合物をフローセルに導入することができる。この例では、切断混合物は、i)組み込まれたヌクレオチド20’から3’OHブロッキング基24を除去すること、ii)色素標識26を組み込まれたヌクレオチド20’から切断すること、及びiii)組み込まれたヌクレオチド20’からビオチン標識60を切断することができる。
【0210】
この例では、3’OHブロッキング基24を切断するための本明細書に記載の脱ブロッキング剤/構成要素のいずれかを使用することができる。また、この例では、色素標識26を切断するための本明細書に記載の切断剤/構成要素のいずれかが使用され得る。ビオチン標識連結分子が色素標識連結分子38と同じである場合、切断混合物は、ビオチン標識60及び色素標識26の両方を切断することができる単一の切断剤/構成要素を含み得る。ビオチン標識連結分子が色素標識連結分子38とは異なる場合、切断混合物は、それぞれの連結分子を切断することができる異なる切断剤/構成要素を含み得る。
【0211】
洗浄(複数可)は、様々な流体送達ステップの間で行ってもよい。次いで、配列決定サイクルをn回繰り返して、配列決定プライマー50をn個のヌクレオチドだけ伸長させ、それによって長さnの配列を検出することができる。いくつかの例では、順鎖がシーケンシング及び除去され、次いで、逆鎖が構築され、シーケンシングされるペアエンドシーケンシングを使用してよい。
【0212】
フローセル
本明細書に開示される実施例で使用され得るフローセルの例を、ここで
図8A、
図8B、及び
図8Cを参照して説明する。
【0213】
フローセル64の例の上面図を
図8Aに示す。
図8B及び
図8Cを参照して説明するように、フローセル64のいくつかの例は、配列決定が行われ得る2つの対向するフローセル表面44を含む。パターン化されていない配列決定表面44A、44A’の一例が
図8Bに示されており、パターン化された配列決定表面44B、44B’の一例が
図8Cに示されている。各配列決定表面44A、44A’、又は44B、44B’は、基材(一般に
図8Aに66として示される)によって支持され、フローチャネル(一般に
図8Aの68として示される)は、配列決定表面44A、44A’又は44B、44B’の間に画定される。他の例では、フローセル64は、基材66によって支持された一方の配列決定表面44A又は44Bと、基材66に取り付けられた蓋とを含む。これらの例では、フローチャネル68は、配列決定表面44A又は44Bと蓋との間に画定される。
【0214】
いずれの例でも、基材66は、単一の層/材料であってよい。単層基材の例を
図8Bの参照番号66A及び66A’に示す。適切な単層基材66A、66A’の例としては、エポキシシロキサン、ガラス、修飾又は官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、スチレンと他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(ChemoursのTEFLON(登録商標)等)、環状オレフィン/シクロオレフィンポリマー(COP)(ZeonのZEONOR(登録商標)等)、ポリイミド等を含む)、ナイロン(ポリアミド)、セラミック/酸化セラミック、シリカ、溶融シリカ、又はシリカベースの材料、ケイ酸アルミニウム、ケイ素及び修飾ケイ素(例えば、ホウ素ドープp+ケイ素)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化ケイ素(SiO
2)、五酸化タンタル(Ta
2O
5)又は他の酸化タンタル(TaO
x)、酸化ハフニウム(HfO
2)、炭素、金属、無機ガラス等が挙げられる。
【0215】
基材66はまた、多層構造であってもよい。多層基材の例を
図8Cの参照番号66B及び66B’に示す。多層構造66B、66B’のいくつかの例は、光学イメージングに使用される光に対して等価性な五酸化タンタル又は別の酸化物のコーティング層を有するガラス又はケイ素を含む。
図8Cを特に参照すると、多層構造66B、66B’の他の例は、下部支持体70、70’を含み、その上にパターン化された樹脂72、72’を有する。多層基材66B、66B’の更に他の例は、ケイ素オンインシュレータ(SOI)基材を含み得る。
【0216】
一例では、基材66(単層であるか、多層である)は、円形であってもよく、約2mm~約300mmの範囲の直径を有するか、又は最大約10フィート(~3メートル)の最大寸法を有する長方形のシート若しくはパネルを有し得る。一例では、基材26は、約200mm~約300mmの範囲の直径を有するウェーハである。別の例では、基材66は、約0.1mm~約10mmの範囲の幅を有するダイである。例示的な寸法が提供されるが、任意の適切な寸法を有する基材66を使用できることを理解すべきである。別の例として、300mmの丸いウェーハよりも大きな表面積を有する長方形の支持体であるパネルが使用され得る。
【0217】
図8Aに示す例では、フローセル64は、フローチャネル68を含む。いくつかのフローチャネル68が示されるが、任意の数のチャネル68がフローセル64(例えば、単一のチャネル68、4つのチャネル68等)に含まれ得ることを理解すべきである。本明細書に開示される例のいくつかでは、各フローチャネル68は、2つの配列決定表面(例えば、44A及び44A’又は44B及び44B’)の間及び2つの結合した基材(例えば、66A及び66A’又は66B及び66B’)によって画定される領域である。本明細書に開示される実施例の他の例では、各フローチャネル68は、1つの配列決定表面(例えば、44A又は44B)と蓋との間に画定された領域である。組込み混合物10A~10F、イメージング混合物56、56’、56’’、及び本明細書に記載の他の流体は、フローチャネル(複数可)68に導入され、そこから除去され得る。各フローチャネル68は、任意の特定のフローチャネル68に導入された流体が任意の隣接するフローチャネル68に流れ込まないように、フローセル64内でフローチャネル68ごとに分離されていてよい。
【0218】
フローチャネル68の一部分は、基材66の材料に部分的に依存する任意の好適な技術を使用し、基材66内に画定され得る。一例では、フローチャネル68の一部は、基材66A、66A’等のガラス基材にエッチングされる。別の例では、フローチャネル68の一部は、フォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ等を使用して多層基材66B、66B’の樹脂72、72’にパターニングされてもよい。別個の材料(例えば、
図8B及び
図8Cの材料74)が基材66に適用されて、別個の材料が、フローチャネル68の壁の少なくとも一部を画定することができる。
【0219】
一例では、フローチャネル68は、丸みを帯びた端部を有する実質的に長方形の構成を有する。フローチャネル68の長さ及び幅は、それぞれ、基材66の長さ及び幅よりも小さくてもよく、その結果、フローチャネル68を取り囲む基材表面の一部分は、別の基材66又は蓋への結合に利用可能である。いくつかの事例では、各フローチャネル68の幅は、少なくとも約1mm、少なくとも約2.5mm、少なくとも約5mm、少なくとも約7mm、少なくとも約10mm、又はそれ超であり得る。いくつかの事例では、各フローチャネル68の長さは、少なくとも約10mm、少なくとも約25mm、少なくとも約50mm、少なくとも約100mm、又はそれ超であり得る。各フローチャネル68の幅及び/又は長さは、上で指定した値よりも大きくてもよく、それよりも小さくてもよく、又はそれらの間であってもよい。別の例では、フローチャネル68は正方形(例えば、10mm×10mm)である。
【0220】
各フローチャネル68の深さは、例えば、マイクロコンタクト、エアロゾル、又はインクジェット印刷を使用して、フローチャネルの壁を画定する別個の材料74を堆積させる場合、少数の単層の厚さ程度に薄くてよい。他の例では、各フローチャネル68の深さは、約1μm、約10μm、約50μm、約100μm、又はそれ以上であってよい。一例では、深さは、約10μmから約100μmの範囲であり得る。別の例では、深さは約5μm以下である。各フローチャネル68の深さはまた、上で指定された値よりも大きいか、小さいか、又はそれらの間であり得ることを理解すべきである。フローチャネル68の深さはまた、例えば、パターン化された配列決定表面44B、44B’が使用される場合、フローセル64の長さ及び幅に沿って変化してもよい。
【0221】
図8Bは、パターン化されていない対向する配列決定表面44A、44A’を含むフローセル64の断面図を示す。一例では、これらの表面44A、44A’のそれぞれは、基材66A、66A’上に作製されてもよく、次いで、基材44A、44A’は、フローセル64の一例を形成するために互いに結合してもよい。接着剤、結合を助ける放射線吸収材料等の任意の適切な結合材料74を使用して、基材66A、66A’を共に結合してもよい。
【0222】
図8Bに示す例では、フローチャネル68の一部は、単層基材66A、66A’の各々に画定される。例えば、各基材66A、66A’は、配列決定表面44A、44A’の構成要素が導入され得るその中に画定されたくぼみ領域76A、76A’を有し得る。配列決定表面44A、44A’の構成要素によって占められていないくぼみ領域76A、76A’内の任意の空間は、フローチャネル68の一部であると見なされ得ることを理解されたい。
【0223】
配列決定表面44A、44A’は、ポリマーヒドロゲル78A、78A’と、ポリマーヒドロゲル78A、78A’’に結合した増幅プライマー80A、82A又は80A’、82A’とを含む。図示されていないが、配列決定面44A、44A’のいくつかの例はまた、表面テザー42に結合することができる結合剤(例えば、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチン等)を含むことができる。この結合剤は、くぼみ領域76A、76A’内に存在してもよい。
【0224】
ポリマーヒドロゲル78A、78A’の例としては、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド、PAZAM等のアクリルアミドコポリマーが挙げられる。PAZAM及び他のいくつかの形態のアクリルアミドコポリマーは、次の構造(I)で表され、
【0225】
【化9】
式中、
R
Aは、アジド、任意選択で置換アミノ、任意選択で置換アルケニル、任意選択で置換アルキン、ハロゲン、任意選択で置換ヒドラゾン、任意選択で置換ヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意選択で置換テトラゾール、任意選択で置換テトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、硫酸塩、及びチオールからなる群から選択され、
R
BはH又は任意選択で置換アルキルであり、
R
C、R
D、及びR
Eはそれぞれ、H及び任意選択で置換アルキルからなる群から独立して選択され、
-(CH
2)
p-のそれぞれは、任意選択で置き換えられ得、
pは1から50の範囲の整数であり、
nは1から50,000の範囲の整数であり、及び
mは、1から100,000の範囲の整数である)。
【0226】
当業者は、構造(I)において繰り返される特徴「n」及び「m」の配置が代表的なものであり、モノマーサブユニットがポリマー構造(例えば、ランダム、ブロック、パターン化、又はそれらの組合わせ)中に任意の順序で存在し得ることを認識する。
【0227】
PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーの分子量は、約5kDaから約1500kDa又は約10kDaから約1000kDaの範囲であり得るか、あるいは特定の例では、約312kDaであり得る。
【0228】
いくつかの例では、PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーは線状ポリマーである。他のいくつかの例では、PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーは、軽度に架橋されたポリマーである。
【0229】
他の例では、ポリマーヒドロゲル78A、78A’は、構造(I)の変形であってもよい。一例では、アクリルアミドユニットはN,Nージメチルアクリルアミド
【0230】
【化10】
で置き換えられ得る。この例では、構造(I)のアクリルアミドユニットは
【0231】
【化11】
で置き換えられ得、ここで、R
D、R
E、及びR
FはそれぞれH又はC1~C6アルキルであり、R
G及びR
HはそれぞれC1~C6アルキルである(アクリルアミドの場合のようにHではない)。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。別の例では、アクリルアミドユニットに加えて、N,N-ジメチルアクリルアミドが使用され得る。この例では、構造(I)は繰り返す特徴「n」及び「m」に加えて
【0232】
【化12】
を含み得、ここでR
D、R
E、及びR
FはそれぞれH又はC1~C6アルキルであり、R
G及びR
HはそれぞれC1~C6アルキルである。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。
【0233】
ポリマーヒドロゲル78A、78A’の別の例として、構造(I)の反復する「n」特徴は、構造(II)を有する複素環式アジド基を含むモノマーで置き換えられてもよく、
【0234】
【化13】
式中、R
1はH又はC1~C6アルキルであり、R
2はH又はC1~C6アルキルであり、Lは、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子と、炭素上の10個の任意選択の置換基及び鎖中の任意選択的な窒素原子を有する線状鎖を含むリンカーであり、Eは、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子を含む線状鎖であり、その線状鎖中の炭素原子及び任意の窒素原子上に任意選択的な置換基を含み、Aは、H又はC1~C4アルキルがNに結合したN置換アミドであり、Zは窒素含有複素環である。Zの例としては、単環構造又は縮合構造として存在する5~10員環が挙げられる。Zのいくつかの具体的な例としては、ピロリジニル、ピリジニル、又はピリミジニルが挙げられる。
【0235】
更に別の例として、ポリマーヒドロゲル78A、78A’は、構造(III)及び(IV)のそれぞれの反復単位を含み得、
【0236】
【化14】
ここで、R
1a、R
2a、R
1b及びR
2bのそれぞれは、水素、任意選択では置換アルキル又は任意選択では置換フェニルから独立して選択され、R
3a及びR
3bのそれぞれは、水素、任意選択で置換アルキル、任意選択で置換フェニル、又は任意選択で置換C7~C14アラルキルから独立して選択され、L
1及びL
2のそれぞれは、任意選択で置換アルキレンリンカー又は任意選択で置換ヘテロアルキレンリンカーから独立して選択される。
【0237】
他のモノマーは、増幅プライマー80A、82A又は80A’、82A’をグラフトするように官能化されている限り、ポリマーヒドロゲル78A、78A’を形成するために使用され得ることが理解されるべきである。適切なポリマー層の他の例としては、アガロースなどのコロイド構造、又はゼラチンなどのポリマーメッシュ構造、又はポリアクリルアミドポリマー及びコポリマー、シランフリーアクリルアミド(SFA)、又はアジド分解バージョンのSFAなどの架橋ポリマー構造を有するものが挙げられる。適切なポリアクリルアミドポリマーの例は、アクリルアミドとアクリル酸若しくはビニル基を含むアクリル酸とから、又は[2+2]光付加環化反応を形成するモノマーから合成され得る。適切なポリマーヒドロゲル78A、78A’の更に他の例には、アクリルアミドとアクリレートの混合コポリマーが含まれる。本明細書に開示される実施例では、星状ポリマー、星型又は星型ブロックポリマー、デンドリマーなどを含む分岐ポリマーなど、アクリルモノマー(例えば、アクリルアミド、アクリレートなど)を含む様々なポリマー構造は利用され得る。例えば、モノマー(例えば、アクリルアミドなど)は、ランダムに又はブロックで、星型ポリマーの分岐(アーム)に組み込まれ得る。
【0238】
ポリマーヒドロゲル78A、78A’をくぼみ領域76A、76A’に導入するために、ポリマーヒドロゲル78A、78A’の混合物を生成し、次いで、それぞれの基材66A、66A’に塗布することができる(内部に画定されたくぼみ領域76A、76A’を有する)。一例では、ポリマーヒドロゲル78A、78A’は、混合物中(例えば、水と、又はエタノール及び水と)に存在してもよい。次に、混合物は、スピンコーティング、浸漬又は浸漬コーティング、あるいは正圧又は負圧下での材料のフロー、又は別の適切な技術を使用し、それぞれの基材表面(くぼみ領域76A、76A’を含む)に適用され得る。これらのタイプの技術は、ポリマーヒドロゲル78A、78A’を基材のそれぞれの基材66A、66A’上に無分別に堆積させる(例えば、くぼみ領域76A、76A’内、及びそれに隣接する間隙領域84A、84A’上)。他の選択的堆積技術(例えば、マスク、制御された印刷技術等を含む)を使用して、間隙領域84A、84A’ではなく、くぼみ領域76A、76A’にポリマーヒドロゲル78A、78A’を特異的に堆積させることができる。
【0239】
いくつかの例では、基材表面(くぼみ領域76A、76A’を含む)が活性化され得、次に、混合物(ポリマーヒドロゲル78A、78A’を含む)がそれに適用され得る。一例では、シラン又はシラン誘導体(例えば、ノルボルネンシラン)は、蒸着、スピンコーティング、又は他の堆積方法を使用し、基材表面に堆積され得る。別の例では、基材表面をプラズマ灰化に曝露させて、ポリマーヒドロゲル78A、78A’に付着し得る表面活性化剤(例えば、-OH基)を生成することができる。
【0240】
ポリマーヒドロゲル78A、78A’の化学的性質に応じて、適用された混合物を硬化プロセスに曝露してもよい。一例では、硬化は、室温(例えば、約25℃)~約95℃の範囲の温度で、約1ミリ秒~約数日の範囲の時間にわたって行うことができる。
【0241】
次いで、くぼみ領域76A、76A’の周囲の間隙領域84A、84A’からポリマーヒドロゲル78A、78A’を除去し、一方、くぼみ領域76A、76A’の表面上のポリマーヒドロゲル78A、78A’を少なくとも実質的に無傷のままにするために、研磨を実行することができる。
【0242】
配列決定表面44A、44A’はまた、ポリマーヒドロゲル78A、78A’に結合した増幅プライマー80A、82A又は80A’、82A’を含む。
【0243】
増幅プライマー80A、82A又は80A’、82A’をくぼみ領域76A、76A’内のポリマーヒドロゲル78A、78A’にグラフトするために、グラフト化プロセスを行うことができる。一例では、増幅プライマー80A、82A又は80A’、82A’は、プライマー80A、82A又は80A’、82A’の5’末端又はその近くでの単一点共有結合によってポリマーヒドロゲル78A、78A’に固定化することができる。この結合により、i)プライマー80A、82A又は80A’、82A’のアダプター特異的部分は、その同族の配列決定可能な核酸断片に自由にアニールすることができ、ii)3’ヒドロキシル基は、自由にプライマーを伸長することができる。この目的のために、任意の好適な共有結合を使用することができる。使用できる末端プライマーの例としては、アルキン末端プライマー(例えば、ポリマーヒドロゲル78A、78A’のアジド表面部分に結合し得る)、又はアジド末端プライマー(例えば、ポリマーヒドロゲル78A、78A’のアルキン表面部分に結合し得る)が挙げられる。
【0244】
好適なプライマー80A、82A又は80A’、82A’の具体例としては、HISEQ(商標)、HISEQX(商標)、MISEQ(商標)、MISEQDX(商標)、MINISEQ(商標)、NEXTSEQ(商標)、NEXTSEQDX(商標)、NOVASEQ(商標)、GENOME ANALYZER(商標)、ISEQ(商標)、及び他の機器プラットフォームでの配列決定のためにIllumina Inc.により販売されている市販のフローセルの表面上で使用されるP5及びP7プライマーが挙げられる。P5及びP7プライマーのいずれも、ポリマーヒドロゲル78A、78A’のそれぞれにグラフトされ得る。
【0245】
一例では、グラフトは、フロースルー堆積(例えば、一時的に結合した蓋を使用する)、ダンクコーティング、スプレーコーティング、液滴分配、又はプライマー(複数可)80A、82A又は80A’、82A’をポリマーヒドロゲル78A、78A’に結合させる別の適切な方法によるものであり得る。これらの例示的な技術のそれぞれは、プライマー(複数可)80A、82A又は80A’、82A’、水、緩衝液、及び触媒を含み得る、プライマー溶液又は混合物を利用し得る。グラフト法のうちのいずれかを用いて、プライマー42、42’は、くぼみ領域76A、76A’においてポリマーヒドロゲル78A、78A’の反応基と反応し、周囲の基材66A、66A’に対して親和性を有さない。したがって、プライマー80A、82A、又は80A’、82A’は、ポリマーヒドロゲル78A、78A’に選択的に移植する。
【0246】
図8Cは、パターン化された対向する配列決定表面44B、44B’を含むフローセル64の断面図を示す。一例では、これらの表面44B、44B’のそれぞれは、基材66B、66B’上に作製されてもよく、次いで、基材66B、66B’は、フローセル64の一例を形成するために互いに(例えば、材料74を介して)結合してもよい。
【0247】
図8Cに示す例では、フローセル64は、多層基材66B、66B’を含み、その各々は、支持体70、70’と、支持体70、70’上に配置されたパターン化材料72、72’と、を含む。パターン化材料72、72’は、間隙領域84B、84B’によって分離されたくぼみ88、88’を画定する。
【0248】
図8Cに示す例では、パターン化された材料72、72’は、それぞれ支持体70、70’上に配置される。くぼみ88、88’及び間隙領域84B、84B’を形成するために選択的に堆積、又は堆積及びパターニングすることができる任意の材料を、パターニングされた材料72、72’に使用することができることを理解されたい。
【0249】
一例として、無機酸化物は、蒸着、エアロゾル印刷、又はインクジェット印刷を介して支持体70、70’に選択的に適用され得る。適切な無機酸化物の例としては、酸化タンタル(例えば、Ta2O5)、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3)、酸化ケイ素(例えば、SiO2)、酸化ハフニウム(例えば、HfO2)などが挙げられる。
【0250】
別の例として、樹脂は支持体70、70’に塗布されてからパターン化され得る。好適な堆積技術としては、化学蒸着、ディップコーティング、ダンクコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、液滴分配、超音波スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷等を含む。好適なパターニング技術としては、フォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ(nanoimprint lithography:NIL)、スタンピング技術、エンボス技術、成形技術、マイクロエッチング技術、印刷技術等が挙げられる。好適な樹脂のいくつかの例としては、多面体オリゴマーシルセスキオキサンベースの樹脂、非多面体オリゴマーシルセスキオキサンエポキシ樹脂、ポリ(エチレングリコール)樹脂、ポリエーテル樹脂(例えば、開環エポキシ)、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、アモルファスフルオロポリマー樹脂(例えば、BellexからのCYTOP(登録商標))、及びそれらの組合わせが挙げられる。
【0251】
本明細書で使用される場合、「多面体オリゴマーシルセスキオキサン」(Hybrid Plasticsから商標名「POSS」として市販)という用語は、シリカ(SiO2)とケイ素(R2SiO)とのハイブリッド中間体(例えば、RSiO1.5)である化学組成物を指す。多面体オリゴマーシルセスキオキサンの例は、Kehagias et al.,Microelectronic Engineering 86(2009),pp.776-778に記載されているものであり得、これは、参照によりその全体が組み込まれる。一例では、組成物は、化学式[RSiO3/2]nを有する有機ケイ素化合物であり、R基は同じであっても異なってもよい。POSSの例示的なR基としては、エポキシ、アジド(azide)/アジド(azido)、チオール、ポリ(エチレングリコール)、ノルボルネン、テトラジン、アクリレート、及び/若しくはメタクリレート、又は更には、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、及び/若しくはハロアルキル基が挙げられる。本明細書に開示される樹脂組成物は、モノマーユニットとして1つ以上の異なるケージ又はコア構造を含み得る。平均ケージ含有量は、合成期間に調整され得、及び/又は精製方法によって制御され得、モノマーユニットのケージサイズの分布は本明細書に開示される実施例で使用され得る。
【0252】
図8Cに示すように、パターン化材料72、72’は、その中にそれぞれ画定されたくぼみ88、88’と、隣接するくぼみ88、88’を分離する間隙領域84B、84B’とを含む。規則的、繰り返し、及び非規則的なパターンを含む、くぼみ88、88’の多くの異なるレイアウトが想定され得る。一例では、くぼみ88、88’は、密なパッキング及び改善された密度のために六角形グリッドに配置される。他のレイアウトは、例えば、直線的な(長方形)レイアウト、三角形のレイアウトなどを含み得る。いくつかの例では、レイアウト又はパターンは、行及び列をなしているくぼみ88、88’のx-y形式であり得る。他のいくつかの例では、レイアウト又はパターンは、くぼみ88、88’及び/又は間隙領域84B、84B’の繰り返し配置であり得る。更に他の例では、レイアウト又はパターンは、くぼみ88、88’及び/又は間隙領域84B、84B’のランダムな配置であり得る。パターンは、ストライプ、渦巻き、線、三角形、長方形、円、円弧、格子柄、対角線、矢印、及び/又は正方形を含んでもよい。
【0253】
くぼみ88、88’のレイアウト又はパターンは、画定された領域におけるくぼみ88、88’の密度(例えば、くぼみ88、88’の数)により特徴付けられ得る。例えば、くぼみ88、88’は、1mm2あたり約200万の密度で存在し得る。例えば、1mm2あたり約100、1mm2あたり約1,000、1mm2あたり約10万、1mm2あたり約100万、1mm2あたり約200万、1mm2あたり約500万、1mm2あたり約1000万、1mm2あたり約5000万、又はそれ以下の密度を含む、異なる密度に調整され得る。パターン化材料72、72’のくぼみ88、88’の密度は、上記範囲から選択された下方値の1つと上方値の1つとの間であり得ることを更に理解されたい。例として、高密度アレイは、約100nm未満で分離されたくぼみ88、88’を有するものとして特徴付けられ得、中密度アレイは、約400nm~約1μmで分離されたくぼみ88、88’を有するものとして特徴付けられ得、低密度アレイは、約1μmを超えて分離されたくぼみ88、88’を有するものとして特徴付けられ得る。密度の例が提供されるが、任意の適切な密度を使用できることを理解すべきである。くぼみ88、88’の密度は、くぼみ88、88’の深さに部分的に依存し得る。いくつかの場合では、くぼみ88、88’間の間隔は、本明細書に列挙される例よりも更に大きいことが望ましい場合がある。
【0254】
くぼみ88、88’のレイアウト又はパターンはまた、又は代替的に、平均ピッチ、又はくぼみ88、88’の中心から隣接するくぼみ88、88’の中心までの間隔(中心間の間隔)、又は1つのくぼみ88、88’の左端から隣接するくぼみ88、88’の右端までの間隔(エッジ間の間隔)に関して特徴付けられ得る。パターンは、平均ピッチ周辺の変動係数が小さくなるように規則的である場合もあれば、パターンが不規則である場合もあり、その場合、変動係数は比較的大きくなる可能性がある。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、おおよそ約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約5μm、約10μm、又は約100μmであってもよい。くぼみ88、88’の特定のパターンの平均ピッチは、上記の範囲から選択された低い値の1つと高い値の1つとの間であり得る。一例では、くぼみ88、88’は、約1.5μmのピッチ(中心間の間隔)を有する。平均ピッチ値の例が提供されるが、他の平均ピッチ値も使用され得ることを理解すべきである。
【0255】
くぼみ88、88’のそれぞれのサイズは、その体積、開口面積、深さ、及び/又は直径によって特徴付けられ得る。
【0256】
くぼみ88、88’のそれぞれは、フローセル64に導入される少なくともいくらかの流体を隔離する(confining)ことができる任意の体積を有し得る。最小又は最大の体積は、例えば、フローセル64の下流での使用に期待されるスループット(例えば、多重度)、解像度、ヌクレオチド、又は分析物の反応性に対応するように選択され得る。例えば、体積は、少なくとも約1×10-3μm3、少なくとも約1×10-2μm3、少なくとも約0.1μm3、少なくとも約1μm3、少なくとも約10μm3、少なくとも約100μm3、又はそれ以上であり得る。代替的又は更に、体積は、最大で約1×104μm3、最大で約1×103μm3、最大で約100μm3、最大で約10μm3、最大で約1μm3、最大で約0.1μm3、又はそれ以下であり得る。
【0257】
各くぼみの開口部が占有する面積は、上記の体積と同様の基準に基づいて選択され得る。例えば、各くぼみ開口部の面積は、少なくとも約1×10-3μm2、少なくとも約1×10-2μm2、少なくとも約0.1μm2、少なくとも約1μm2、少なくとも約10μm2、少なくとも約100μm2、又はそれ以上であり得る。代替的又は更に、面積は、最大で約1×103μm2、最大で約100μm2、最大で約10μm2、最大で約1μm2、最大で約0.1μm2、最大で約1×10-2μm2、又はそれ以下であり得る。各くぼみの開口部が占有する面積は、上記の値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であり得る。
【0258】
各くぼみ88、88’の深さは、ポリマーヒドロゲル78B、78B’の一部を収容するのに十分な大きさであり得る。一例では、深さは、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、又はそれ以上であり得る。代替的又は更に、深さは、最大で約1×103μm、最大で約100μm、最大で約10μm、又はそれ以下であり得る。いくつかの例では、深さは約0.4μmである。それぞれのくぼみ88、88’の深さは、上記の値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であり得る。
【0259】
いくつかの例では、くぼみ88、88’のそれぞれの直径又は長さ及び幅は、少なくとも約50nm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、又はそれ以上であり得る。代替的又は更に、直径又は長さ及び幅は、最大で約1×103μm、最大で約100μm、最大で約10μm、最大で約1μm、最大で約0.5μm、最大で約0.1μm、又はそれ以下(例えば、約50nm)であり得る。いくつかの例では、直径又は長さ及び幅は約0.4μmである。各くぼみ88、88’の直径又は長さ及び幅は、上記の値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であり得る。
【0260】
この例では、配列決定表面44B、44B’の構成要素の少なくともいくつかがくぼみ88、88’に導入され得る。配列決定表面44B、44B’の構成要素によって占有されていないくぼみ88、88’内のあらゆる空間は、フローチャネル68の一部であると見なされ得ることを理解すべきである。
【0261】
図8Cに示す例では、ポリマーヒドロゲル78B、78B’は、くぼみ88、88’のそれぞれの中に配置される。ポリマーヒドロゲル78B、78B’は、ポリマーヒドロゲル78A、78A’について本明細書に記載された例のいずれかであってもよく、
図8Bを参照して説明したように適用することができ(例えば、堆積とそれに続く研磨)、その結果、ポリマーヒドロゲル78B、78B’はくぼみ88、88’内に存在し、周囲の間隙領域84B、84B’上には存在しない。
【0262】
図8Cに示す例では、プライマー80B、82B又は80B’、82B’は、プライマー80A、82A又は80A’、82A’について本明細書に記載の例のいずれかであってもよく、くぼみ88、88’のそれぞれ内のポリマーヒドロゲル78B、78B’にグラフトされてもよい。プライマー80B、82B又は80B’、82B’は、
図8Bを参照して説明したように適用することができ、したがって、ポリマーヒドロゲル78B、78B’にグラフトし、周囲の間隙領域84B、84B’にはグラフトしない。
【0263】
図示されていないが、配列決定面44B、44B’のいくつかの例はまた、表面テザー42に結合することができる結合剤(例えば、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチン等)を含むことができる。この結合剤は、くぼみ88、88’に存在し得る。
【0264】
図8B及び
図8Cに示すように、配列決定表面44A及び44A’又は44B及び44B’がその間に画定されたフローチャネル68により対向するように、基材66A及び66A’又は66B及び66B’を互いに結合させる。
【0265】
基材66A及び66A’又は66B及び66B’は、間隙領域84A及び84A’又は84B及び84B’の一部又は全てにおいて互いに結合してもよい。基材66Aと66A’又は66Bと66B’との間に形成される結合は、化学的結合、又は機械的結合(例えば、留め具を使用する等)であり得る。
【0266】
レーザー結合、拡散結合、陽極結合、共晶結合、プラズマ活性化結合、ガラスフリット結合、又は当技術分野で知られる他の方法等の任意の適切な技術を使用し、基材66A及び66A’又は66B及び66B’を共に結合し得る。一例では、スペーサー層(例えば、材料74)を使用し、基材66A及び66A’又は66B及び66B’を結合し得る。スペーサー層は、基材66Aと66A’又は66Bと66B’の少なくとも一部を共にシールする任意の材料74であり得る。いくつかの例では、スペーサー層は、結合を助ける放射線吸収材料であり得る。
【0267】
示されていないが、フローセルが1つの配列決定表面を有するように、蓋が基材66A又は66Bのうちの1つに結合してもよいことを理解されたい。
【0268】
追記事項
以下により詳細に考察される、前述の概念及び更なる概念の全ての組合わせが、(かかる概念が相互に矛盾しなければ)本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図されることを理解されたい。具体的には、本開示の終わりに現れる特許請求される主題の全ての組合わせは、本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図される。本明細書で明示的に用いられ、また参照により組み込まれる任意の開示においても出現し得る用語は、本明細書で開示される特定の概念と最も一致する意味が与えられるべきであることも理解すべきである。
【0269】
「一例」、「別の例」、「ある例」などへの本明細書全体を通じての言及は、例に関連して記載されている特定の要素(例えば、特徴、構造、及び/又は特性)が、本明細書に記載されている少なくとも1つの例に含まれており、他の例に存在していても、存在していなくともよいことを意味している。更に、文脈上明確に別段の指示がない限り、任意の例に関する記載の要素は、様々な例において任意の好適な様式で組み合わせ得ることを理解すべきである。
【0270】
本明細書に提供される範囲は、そのような値又は部分範囲が明示的に列挙されているかのように、示される範囲及びその示される範囲内の任意の値又は部分範囲を含むことを理解されたい。例えば、約2mm~約300mmの範囲は、約2mm~約300mmの明示的に列挙された限界だけでなく、約40mm、約250.5mm等の個々の値、及び約25mm~約175mm等の部分範囲も含むと解釈されるべきである。
【0271】
更に、「約」及び/又は「実質的に」が値を説明するために利用される場合、それらは、示された値からのわずかな変動(最大で±10%)を包含することを意味する。
【0272】
いくつかの実施例を詳細に説明してきたが、開示された例は修正され得ることを理解すべきである。したがって、これまでの説明は非限定的なものであると考えるべきである。
【0273】
代表的な特徴
代表的な特徴は、以下の番号付けされた条項に記載されており、単独であってもよく、又は任意の組合わせで、本明細書の本文及び/又は図面に開示される1つ以上の特徴と組み合わされてもよい。
条項1.組込み混合物であって、
液体担体と、
複合体であって、
ポリメラーゼ、及び
ポリメラーゼに連結されたプラズモンナノ構造を含む複合体と、
標識ヌクレオチドであって、
ヌクレオチド、
ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、及び
ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識を含む標識ヌクレオチドと、
を含む、組込み混合物。
条項2.プラズモンナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープケイ素ナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合わせからなる群から選択される、条項1に記載の組込み混合物。
条項3.プラズモンナノ構造が、ポリメラーゼのアミン又はシステインに化学的にコンジュゲートしている、条項1又は条項2に記載の組込み混合物。
条項4.
オリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼに結合しており、
オリゴヌクレオチドは、プラズモンナノ構造に結合した相補的オリゴヌクレオチドテザーにハイブリダイズする、条項1~3のいずれか一項に記載の組込み混合物。
条項5.
オリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼに結合しており、
オリゴヌクレオチドは、プラズモンナノ構造の周りに巻き付けられた追加の部分も含むオリゴヌクレオチドテザーの相補的部分にハイブリダイズする、条項1~4に記載の組込み混合物。
条項6.
プラズモンナノ構造が、結合対の第1のメンバーで官能化され、
ポリメラーゼが、結合対の第2のメンバーを含むか、又はそれで官能化されている、条項1~5に記載の組込み混合物。
条項7.第1のメンバー及び第2のメンバーが、NiNTA配位子及びヒスチジンタグ、又はストレプトアビジン及びビオチン、又はスパイタグ及びスパイカッチャー、又はマレイミド及びシステイン、又はアジド及びジベンゾシクロオクチンを含む、条項6に記載の組込み混合物。
条項8.方法であって、
鋳型鎖のクラスターを含むフローセルに組込み混合物を導入する工程であって、組込み混合物が、
液体担体と、
複数の複合体であって、各複合体が、
ポリメラーゼ、及び
ポリメラーゼに連結されたプラズモンナノ構造を含む、複数の複合体と、
複数の標識ヌクレオチドであって、各標識ヌクレオチドが、
ヌクレオチド、
ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、及び
ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識を含む、複数の標識ヌクレオチドと、を含み、
それにより、少なくとも1つのポリメラーゼが、i)標識ヌクレオチドのうちの個々の1つを鋳型鎖の1つに沿って新生鎖に組込み、ii)標識ヌクレオチドの個々の1つの近接内にその連結されたプラズモンナノ構造を維持する、組込み混合物を導入する工程と、
プラズモンナノ構造が維持されている間に組込みを光学的にイメージングする工程と、
を含む、方法。
条項9.キットであって、
組込み混合物であって、
液体担体と、
ポリメラーゼと、
標識ヌクレオチドであって、
ヌクレオチド、
ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、及び
ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識を含む、標識ヌクレオチドと、を含む組込み混合物、並びに
イメージング混合物であって、
第2の液体担体と、
標識ヌクレオチドが関与する組込み事象の後に、標識ヌクレオチドの近接内でそれ自体を会合するように官能化されたプラズモンナノ構造と、を含むイメージング混合物と、
を含む、組込み混合物を含むキット。
条項10.プラズモンナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープケイ素ナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合わせからなる群から選択される、条項9に記載のキット。
条項11.プラズモンナノ構造が、第2のポリメラーゼで官能化されている、条項9又は条項10に記載のキット。
条項12.プラズモンナノ構造が、第2のポリメラーゼのアミン又はシステインに化学的にコンジュゲートしている、条項11に記載のキット。
条項13.
オリゴヌクレオチドが、第2のポリメラーゼに結合し、
オリゴヌクレオチドは、プラズモンナノ構造に結合した相補的オリゴヌクレオチドテザーにハイブリダイズする、条項11に記載のキット。
条項14.
オリゴヌクレオチドが、第2のポリメラーゼに結合し、
オリゴヌクレオチドが、プラズモンナノ構造の周りに巻き付けられた部分を含む相補的オリゴヌクレオチドテザーにハイブリダイズされる、条項11に記載のキット。
条項15.
プラズモンナノ構造が、結合対の第1のメンバーで官能化され、
ポリメラーゼが、結合対の第2のメンバーを含むか、又はそれで官能化されている、条項9~14に記載のキット。
条項16.第1のメンバー及び第2のメンバーが、NiNTA配位子及びヒスチジンタグ、又はストレプトアビジン及びビオチン、又はスパイタグ及びスパイカッチャー、又はマレイミド及びシステイン、又はアジド及びジベンゾシクロオクチンを含む、条項15に記載のキット。
条項17.ポリメラーゼが、その表面に結合したDNA結合ドメインを更に含む、条項15又は条項16に記載のキット。
条項18.ポリメラーゼが、
表面に結合した表面テザーと、
表面テザーに結合したフローセル表面結合剤と、を更に含む、条項15~17のいずれか一項に記載のキット。
条項19.
プラズモンナノ構造が、ストレプトアビジンで官能化され、
標識ヌクレオチドが、ビオチン化されている、条項9~18のいずれか一項に記載のキット。
条項20.方法であって、
鋳型鎖のクラスターを含むフローセルに組込み混合物を導入する工程であって、組込み混合物が、
液体担体と、
複数のポリメラーゼと、
複数の標識ヌクレオチドであって、各標識ヌクレオチドが、
ヌクレオチド、
ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、及び
ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識を含む、複数の標識ヌクレオチドと、
を含み、
それにより、少なくとも1つのポリメラーゼが、標識ヌクレオチドのうちの個々の1つを鋳型鎖の1つに沿って新生鎖に組込む、組込み混合物を導入する工程と、
フローセルにイメージング混合物を導入する工程であって、イメージング混合物が、
第2の液体担体と、
複数の官能化プラズモンナノ構造と、を含み、
それによって、官能化プラズモンナノ構造のうちの少なくとも1つが、標識ヌクレオチドのうちの個々のものの近接内にそれ自体を会合させる、イメージング混合物を導入する工程と、
官能化プラズモンナノ構造のうちの少なくとも1つが標識ヌクレオチドのうちの個々のものと会合している間に、組込みを光学的にイメージングする工程と、
を含む、方法。
条項21.条項20に記載の方法であって、
官能化プラズモンナノ構造の各々が、第2のポリメラーゼで官能化され、
方法が、イメージング混合物を導入する前に、組込み混合物を除去することを更に含む、条項20に記載の方法。
条項22.条項20又は21に記載の方法であって、
官能化プラズモンナノ構造の各々が、結合対の第1のメンバーで官能化され、
ポリメラーゼの各々が、結合対の第2のメンバーを含み、
方法が、イメージング混合物を導入する前に、組込み混合物を除去することを更に含む、条項20又は21に記載の方法。
条項23.条項21又は22のいずれか一項に記載の方法であって、
官能化プラズモンナノ構造の各々が、ストレプトアビジンで官能化され、
標識ヌクレオチドの各々が、ビオチン化され、
方法が、イメージング混合物を導入する前に、組込み混合物を除去することを更に含む、条項21又は22に記載の方法。
条項24.標識ヌクレオチドであって、
ヌクレオチドと、
ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基と、
ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識と、
ヌクレオチドの塩基又は色素標識に結合したプラズモンナノ構造と、を含む、標識ヌクレオチド。
条項25.プラズモンナノ構造が、金ナノ構造、銀ナノ構造、スズナノ構造、ロジウムナノ構造、ルテニウムナノ構造、パラジウムナノ構造、オスミウムナノ構造、イリジウムナノ構造、白金ナノ構造、クロムナノ構造、銅ナノ構造、ガリウムヒ素ナノ構造、ドープケイ素ナノ構造、アルミニウムナノ構造、マグネシウムナノ構造、銀及び金複合ナノ構造、並びにそれらの組合わせからなる群から選択される、条項24に記載の標識ヌクレオチド。
条項26.プラズモンナノ構造が、二本鎖デオキシリボ核酸鎖を介してヌクレオチドの塩基に結合している、第24項又は第25項に記載の標識ヌクレオチド。
条項27.
第1の連結分子が、色素標識をヌクレオチドの塩基に結合させ、
第2の連結分子が、プラズモンナノ構造をヌクレオチドの塩基に結合させ、
第1の連結分子は、第2の連結分子の第2の長さの約3nm~約12nm以内の第1の長さを有する、条項24~26のいずれか一項に記載の標識ヌクレオチド。
条項28.
第1の連結分子が、色素標識をヌクレオチドの塩基に結合させ、
第2の連結分子が、プラズモンナノ構造をヌクレオチドの塩基に結合させ、
第1の連結分子が、第1の長さを有し、第2の連結分子が、第2の長さを有し、第1及び第2の長さが、約3nm~約12nmの範囲である、条項24~27のいずれか一項に記載の標識ヌクレオチド。
条項29.方法であって、
鋳型鎖のクラスターを含むフローセルに組込み混合物を導入する工程であって、組込み混合物が、
液体担体と、
複数のポリメラーゼと、
複数の標識ヌクレオチドであって、各標識ヌクレオチドが、
ヌクレオチド、
ヌクレオチドの糖に結合した3’OHブロッキング基、
ヌクレオチドの塩基に結合した色素標識、及び
ヌクレオチドの塩基に結合したプラズモンナノ構造を含む、複数の標識ヌクレオチドと、を含む、鋳型鎖のクラスターを含むフローセルに組込み混合物を導入する工程と、
それにより、少なくとも1つのポリメラーゼが、標識ヌクレオチドのうちの個々の1つを鋳型鎖の1つに沿って新生鎖に組込む工程と、
組込みを光学的にイメージングする工程と、を含む、方法。
【国際調査報告】