(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】柑橘油抽出物
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20231115BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20231115BHJP
A23L 27/12 20160101ALI20231115BHJP
【FI】
C11B9/00 A
A23L19/00 Z
A23L27/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505463
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2021081553
(87)【国際公開番号】W WO2022101424
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/129016
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス バーディス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アルーダ
(72)【発明者】
【氏名】ロン チェン
(72)【発明者】
【氏名】フイ-ジュアン チャン
【テーマコード(参考)】
4B016
4B047
4H059
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LE05
4B016LG02
4B016LK02
4B016LP02
4B047LB03
4B047LF02
4B047LF05
4B047LF06
4B047LF07
4B047LF09
4B047LF10
4B047LG05
4B047LG38
4B047LP01
4H059BB55
4H059BC13
4H059BC23
4H059CA19
4H059DA09
4H059EA35
(57)【要約】
本発明は、酸化副生化合物の量が2500ppm未満である、酸化副生化合物の量が減じられた柑橘油抽出物に関する。好ましくは、酸化副生化合物は、p-シメン、t-p-メンタ-2-エン-1-オール、t-p-メンタ-2,8-ジエノール、t-リモネン酸化物、カンファー、p-シメン-8-オール、t-リモネン8,9-エポキシド、c-リモネン8,9-エポキシド、およびt-カルベオールからなる群から選択される。本発明はまた、柑橘油抽出物を調製する方法、および本発明の柑橘油抽出物を含む風味付けまたは付香された消費者向製品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化副生化合物の量が減じられた柑橘油抽出物であって、前記酸化副生化合物の量が2500ppm未満である、柑橘油抽出物。
【請求項2】
前記柑橘類果実が、レモン、ライム、グレープフルーツ、温州ミカン、およびタンジェリンを含む群から選択される、請求項1記載の柑橘油。
【請求項3】
前記柑橘類果実がライムであり、かつ前記酸化副生化合物の量が1900ppm未満である、請求項1または2記載の柑橘油抽出物。
【請求項4】
前記柑橘類果実がレモンであり、かつ前記酸化副生化合物の量が1500ppm未満である、請求項1または2記載の柑橘油抽出物。
【請求項5】
前記酸化副生化合物が、p-シメン、t-p-メンタ-2-エン-1-オール、t-p-メンタ-2,8-ジエノール、t-リモネン酸化物、カンファー、p-シメン-8-オール、t-リモネン8,9-エポキシド、c-リモネン8,9-エポキシド、およびt-カルベオールからなる群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の柑橘油抽出物。
【請求項6】
前記酸化副生化合物が、(i)230ppm以下の量のp-シメン、(ii)110ppm以下の量のt-p-メンタ-2-エン-1-オール、(iii)125ppm以下の量のt-p-メンタ-2,8-ジエノール、(iv)10ppm以下の量のt-リモネン酸化物、(v)185ppm以下の量のカンファー、(vi)220ppm以下の量のp-シメン-8-オール、(vii)290ppm以下の量のt-リモネン8,9-エポキシド、(viii)350ppm以下の量のc-リモネン8,9-エポキシド、および/または(ix)420ppm以下の量のt-カルベオールである、請求項1から5までのいずれか1項記載の柑橘油抽出物。
【請求項7】
前記柑橘油抽出物がレモンであり、かつ前記抽出物が、(i)100ppm以下の量のp-シメン、(ii)5ppm以下の量のt-p-メンタ-2-エン-1-オール、(iii)75ppm以下の量のt-p-メンタ-2,8-ジエノール、(iv)5ppm以下の量のt-リモネン酸化物、(v)180ppm以下の量のカンファー、(vi)120ppm以下の量のp-シメン-8-オール、(vii)290ppm以下の量のt-リモネン8,9-エポキシド、(viii)150ppm以下の量のc-リモネン8,9-エポキシド、および/または(ix)420ppm以下の量のt-カルベオールを含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の柑橘油抽出物。
【請求項8】
前記柑橘油抽出物がライムであり、かつ前記抽出物が、(i)230ppm以下の量のp-シメン、(ii)110ppm以下の量のt-p-メンタ-2-エン-1-オール、(iii)125ppm以下の量のt-p-メンタ-2,8-ジエノール、(iv)5ppm以下の量のt-リモネン酸化物、(v)150ppm以下の量のカンファー、(vi)200ppm以下の量のp-シメン-8-オール、(vii)220ppm以下の量のt-リモネン8,9-エポキシド、(viii)350ppm以下の量のc-リモネン8,9-エポキシド、および/または(ix)300ppm以下の量のt-カルベオールを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の柑橘油抽出物。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の柑橘油抽出物を含む風味付け組成物または付香性組成物。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項記載の柑橘油抽出物を含む、風味付けされた消費者向製品であって、ベークド製品、酪農製品、酪農製品類似品、脂肪および油またはそれらのエマルジョンベースの製品、乳製品、菓子製品、デザート、チョコレートおよびコンパウンドコーティング、シリアル製品、風味付けされた炭酸水および炭酸の含まれないミネラルウォータおよびテーブルウォータを含むノンアルコール飲料、アルコール飲料、またはインスタントもしくはレディ・トゥ・ドリンク飲料からなる群から選択される、風味付けされた消費者向製品。
【請求項11】
請求項1から8までのいずれか1項記載の柑橘油抽出物を含む、付香された物品であって、芳香水剤、香水、コロン、浴用ジェル、シャワージェル、シャンプー、ヘアケア製品、化粧品、消臭剤、エアフレッシュナー、洗剤、柔軟仕上げ剤、および家庭用洗浄剤からなる群より選択される、付香された物品。
【請求項12】
A) 柑橘油をハイブリッド薄膜蒸留に供して揮発性物質を蒸発させる工程、
B) 工程A)からの蒸発した前記揮発性物質を冷却凝縮器に入れて、蒸気を液体に変換する工程、
C) 工程B)からの前記液体を、本発明の柑橘油抽出物として収集する工程
を含む、柑橘油抽出物を調製する方法。
【請求項13】
前記A)からの蒸気抽出物を、工程B)の前に分画カラムに通す、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記ハイブリッド薄膜蒸留を、(i)1.33Pa~13333Paの真空、(ii)30~160℃の温度、(iii)前記柑橘油、を使用して行う、請求項12または13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化副生化合物の量が減じられた柑橘油抽出物であって、酸化副生化合物の量が2500ppm未満である柑橘油抽出物、前記抽出物を含む風味付け組成物、および前記抽出物を調製する方法に関する。本発明はさらに、消費者向製品における味またはフレーバー成分としての前記抽出物の使用、および前記抽出物を利用した、消費者向製品の味またはフレーバーを増強、改善、変更する方法に関する。
【0002】
背景
柑橘油抽出物は、食品、飲料、香料、および医薬品業界において広く使用されている。柑橘油抽出物は、消費者に対して魅力的な味や香りを提供することから人気があり、製品開発の基準として消費者受けを考慮する際の主要な成分である。近年、消費者の意識は一層、柑橘油抽出物の品質およびその調製に使用される製造方法に向かっている。化学的な合成工程を経ずに調製された天然生産物は、風味、色、味、色素などを含めた、果実の栄養価の保存が認識されたことで、ますます人気が出てきている。
【0003】
柑橘油抽出物を調製する際の重要な基準は、抽出工程中に生成される酸化副生物の量を最小限に抑えることである。これは、このような副生物が抽出物に望ましくないノートを与えるため、消費者の視点からみて望ましくないからである。
【0004】
柑橘油抽出物の従来の製造方法では、柑橘油を100℃超の温度で長時間(通常10時間超)加熱する装置を使用する。そのような条件下では、(全ての柑橘油の中に普遍的に存在する)テルペンなどの化合物が、脱水素、エポキシ化、二重結合開裂、熱の存在下でのアリル酸化および/または転位を受けて、酸化副生物を形成する。上記のとおり、柑橘油抽出物中のこのような生成物の存在は、消費者の視点からみて望ましくない。
【0005】
そこで、本発明者らは、現在使用されている方法に代わる抽出方法を使用して、酸化副生化合物の量が減じられる一方で、さらにナチュラルな、または「クリーンラベル」抽出物とも呼ばれる柑橘油抽出物を調製することを目指した。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】ライムから得られた本発明の柑橘油抽出物の酸化副生化合物の組成物を示す図である。
【0007】
詳細な説明
本発明の第1の態様は、酸化副生化合物の量が減じられた柑橘油抽出物を提供するものであり、酸化副生化合物の量は、2500ppm未満である。
【0008】
柑橘油は、よく知られた風味付けおよび付香性の組成物である。柑橘油は、当技術分野で周知の抽出方法を使用して柑橘類果実から調製される。代表的なプロセスでは、果実の内果皮を機械的に破砕して組織を分解すると、内果皮から油が放出される。その後、油を組織から洗い出して、柑橘油/水の混合物が得られる。次いで、油を混合物から単離して、柑橘油を得る。
【0009】
しかしながら、このような柑橘油は、食品および香料製品の製造に使用される場合、重要なノート付与化合物が過度に希釈され、高濃度のテルペンが溶解性の問題を引き起こし、これにより産業分野における使用が難しくなる場合があるため、問題となる。したがって、テルペンの量を減らす一方で、ノート付与化合物を濃縮した柑橘油から抽出物を調製する。
【0010】
柑橘油抽出物の従来の製造方法では、柑橘油を100℃超の温度で長時間(通常10時間超)加熱する装置を使用する。そのような条件下では、(全ての柑橘油の中に普遍的に存在する)テルペンなどの化合物が、脱水素、エポキシ化、二重結合開裂、熱の存在下でのアリル酸化および/または転位を受けて、酸化副生物を形成する。柑橘油抽出工程中、過度に長い時間高温条件下に置かれることにより生成する特定の化合物が当該技術分野でよく知られており、これは当業者であれば十分に理解していることである。柑橘類化合物の酸化は、温度の影響を受けることが判明している。先行技術には、例えばd-リモネンなどのテルペンの酸化による異臭、リモネン酸化物、p-シメン、カルベオールの形成が判明している。
【0011】
しかしながら、このような酸化副生化合物は柑橘油抽出物中に存在する場合、望ましくないノートを付与する。例えば、p-シメンにより酸敗、酸化した柑橘類のノートが、リモネン酸化物によりミントのスペアミントハーブのノートが、カンファーにより薬臭く、カンファーの、メントールの、かつウッディなノートが、t-p-メンタ-2-エン-1-オールによりハーブのノートが、t-p-メンタ-2,8-ジエノールによりミントのノートが、かつp-シメン-8-オールによりスパイシーな、セロリ、ハーブ、黒コショウのノートが付与されることがある。
【0012】
以下に示すように、本発明者らは、柑橘油抽出物中の酸化副生化合物の量を大幅に低減する新しい革新的な方法を発明した。これにより、既存の抽出プロトコルを使用して調製された柑橘油抽出物の、ボディに乏しく平坦かつ蒸留されたような特性と比較して、明るく、みずみずしく、原物に忠実な柑橘油抽出物が得られる(この評価の詳細については、後述の実施例を参照のこと)。このような、消費者性能における改善の理由は、酸化副生化合物の量が、特に2500ppm未満まで低減されることにある。
【0013】
国際公開第2001/039610号には、システインまたはその塩もしくはエステルによる柑橘油の処理が開示されている。一方、本願の特許請求の範囲に記載されている発明は、そのような添加剤を使用しない。さらに、この文献に開示されている抽出方法は、本発明の柑橘油抽出物の調製に使用される抽出方法とは大幅に異なる;例えば、この文献で使用される抽出方法には、蒸留は含まれない。したがって、この文献に記載されている方法では、本明細書で特許請求される柑橘油抽出物は製造されない。
【0014】
米国特許第5558893号明細書は、柑橘果皮油からの農薬の除去に関するものであり、これは本発明で扱われる課題とは非常に異なる。さらに、この文献に開示される抽出方法は、本発明の柑橘油抽出物の調製に使用される抽出方法とも大幅に異なる;例えば、この文献で使用される抽出方法では、薄膜蒸留が使用される。
【0015】
国際公開第2016/121186号は、精製された柑橘精製油の製造方法に関する。この方法では、不揮発性物質から揮発性物質を除去するために薄膜蒸留を使用し、次いで、含酸素化合物を維持しながらモノテルペンを除去するために真空蒸留を使用する。真空蒸留において柑橘油をより長時間加熱すると、より多くの酸化化合物が生成する。一方、本願において特許請求されている柑橘油抽出物は、薄膜内での分画を可能にするハイブリッド薄膜技術を使用する改善された方法を用いて調製される。その結果、この文献に記載されている方法では、本明細書で特許請求される柑橘油抽出物は調製されない。
【0016】
韓国登録特許第10-1921193号公報は、低温圧搾と薄膜蒸発法との組み合わせを用いて、低温圧搾油のエマルションに糖を添加して、果皮から柑橘油を製造する方法に関する。この方法は、本発明で使用されるハイブリッド薄膜蒸留法とは大幅に異なるため、この文献に記載されている方法では、本明細書で特許請求される柑橘油抽出物は調製されない。
【0017】
国際公開第2008/138083号は、分子蒸留法を用いて柑橘類果実から得た油を清澄化および濃縮する方法に関する。しかしながら、この文献は、薄膜蒸留を使用する方法しか開示しておらず、この方法では本明細書で特許請求される柑橘油抽出物は調製されない。
【0018】
本発明は、柑橘油抽出物に関する。柑橘油抽出物は、上記の柑橘油から調製される。したがって、本発明の柑橘油抽出物に含まれるテルペンは、果実から抽出される柑橘油に含まれるテルペンよりも少なく、好ましくは全組成物の50%未満、より好ましくは5%未満である。
【0019】
本発明の柑橘油抽出物は、ミカン科(Rutaceae)のあらゆる柑橘類果実から得られる油から得ることができる。この科はミカン科(rue family)としても知られており、概して強い香りを有する顕花植物を含む。柑橘類果実には、レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツ、温州ミカンならびにタンジェリン、マンダリン、ユズ、ベルガモット、およびブンタンが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、柑橘油抽出物はオレンジではない。より好ましくは、柑橘油抽出物は、レモンまたはライムである。
【0020】
本発明の柑橘油抽出物は、減じられた量の酸化副生化合物を含む。酸化副生化合物の量は、好ましくは2500ppm未満、より好ましくは2300ppm未満、より好ましくは2100ppm未満、より好ましくは1900ppm未満、より好ましくは1800ppm未満、より好ましくは1700ppm未満、好ましくは1600ppm未満、好ましくは1500ppm未満、好ましくは1400ppm未満である。
【0021】
「酸化副生化合物」とは、例えば、柑橘油抽出工程において、過度に長い時間高温条件下に置かれることにより生成する化合物である。上記のように、このような化合物は、抽出物に望ましくないノートを与えるため、消費者の視点からみて望ましくない。
【0022】
好ましい実施形態において、酸化副生化合物は、p-シメン、t-p-メンタ-2-エン-1-オール、t-p-メンタ-2,8-ジエノール、t-リモネン酸化物、カンファー、p-シメン-8-オール、t-リモネン8,9-エポキシド、c-リモネン8,9-エポキシド、およびt-カルベオールからなる群より選択される。
【0023】
化合物の構造およびCAS番号は、当該技術分野で非常によく知られており、当業者であれば、各酸化副生化合物がどのようなものかを理解するであろう。
【0024】
柑橘油抽出物は、好ましくはレモンまたはライムである。好ましい実施形態において、柑橘類果実はレモンであり、酸化副生化合物の量は、1500ppm未満、好ましくは1400ppm、より好ましくは1320ppm未満、より好ましくは1311ppmである。好ましくは、酸化副生化合物の量は、1385ppmである。さらに好ましい実施形態において、柑橘類果実は、ライムであり、酸化副生化合物の量は、1900ppm未満、好ましくは1800ppm未満、より好ましくは1700ppm未満、より好ましくは1650ppm未満、より好ましくは1649ppmである。好ましくは、酸化副生化合物の量は、1453ppmである。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、酸化副生化合物は、(i)230ppm以下の量のp-シメン、(ii)110ppm以下の量のt-p-メンタ-2-エン-1-オール、(iii)125ppm以下の量のt-p-メンタ-2,8-ジエノール、(iv)10ppm以下の量のt-リモネン酸化物、(v)185ppm以下の量のカンファー、(vi)220ppm以下の量のp-シメン-8-オール、(vii)290ppm以下の量のt-リモネン8,9-エポキシド、(viii)350ppm以下の量のc-リモネン8,9-エポキシド、および/または(ix)420ppm以下の量のt-カルベオールである。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態において、柑橘油抽出物はレモンであり、かつ抽出物は、(i)100ppm以下の量のp-シメン、(ii)5ppm以下の量のt-p-メンタ-2-エン-1-オール、(iii)75ppm以下の量のt-p-メンタ-2,8-ジエノール、(iv)5ppm以下の量のt-リモネン酸化物、(v)180ppm以下の量のカンファー、(vi)120ppm以下の量のp-シメン-8-オール、(vii)290ppm以下の量のt-リモネン8,9-エポキシド、(viii)150ppm以下の量のc-リモネン8,9-エポキシド、および/または(ix)420ppm以下の量のt-カルベオールを含む。
【0027】
好ましくは、柑橘油抽出物はレモンであり、かつ抽出物は、(i)100ppmの量のp-シメン、(ii)0ppmの量のt-p-メンタ-2-エン-1-オール、(iii)75ppm以下の量のt-p-メンタ-2,8-ジエノール、(iv)0ppmの量のt-リモネン酸化物、(v)178ppmの量のカンファー、(vi)116ppmの量のp-シメン-8-オール、(vii)282ppmの量のt-リモネン8,9-エポキシド、(viii)147ppmの量のc-リモネン8,9-エポキシド、および(ix)413ppmの量のt-カルベオールを含む。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態において、柑橘油抽出物はライムであり、かつ抽出物は、(i)230ppm以下の量のp-シメン、(ii)110ppm以下の量のt-p-メンタ-2-エン-1-オール、(iii)125ppm以下の量のt-p-メンタ-2,8-ジエノール、(iv)5ppm以下の量のt-リモネン酸化物、(v)150ppm以下の量のカンファー、(vi)200ppm以下の量のp-シメン-8-オール、(vii)220ppm以下の量のt-リモネン8,9-エポキシド、(viii)350ppm以下の量のc-リモネン8,9-エポキシド、および/または(ix)300ppm以下の量のt-カルベオールを含む。
【0029】
好ましくは、柑橘油抽出物はライムであり、かつ抽出物は、(i)229ppmの量のp-シメン、(ii)0ppmの量のt-p-メンタ-2-エン-1-オール、(iii)123ppmの量のt-p-メンタ-2,8-ジエノール、(iv)0ppmの量のt-リモネン酸化物、(v)145ppmの量のカンファー、(vi)195ppmの量のp-シメン-8-オール、(vii)214ppmの量のt-リモネン8,9-エポキシド、(viii)345ppmの量のc-リモネン8,9-エポキシド、および(ix)292ppmの量のt-カルベオールを含む。
【0030】
本発明の更なる態様において、酸化副生化合物の量が減じられたオレンジ柑橘油抽出物が提供され、酸化副生化合物の量は、15000ppm未満である。
【0031】
オレンジ柑橘油抽出物は、好ましくは(i)100ppm以下の量のp-シメン、(ii)100ppm以下の量のt-p-メンタ-2-エン-1-オール、(iii)1500ppm以下の量のt-p-メンタ-2,8-ジエノール、(iv)2500ppm以下の量のt-リモネン酸化物、(v)100ppm以下の量のカンファー、(vi)500ppm以下の量のp-シメン-8-オール、(vii)100ppm以下の量のt-リモネン8,9-エポキシド、(viii)1000ppm以下の量のc-リモネン8,9-エポキシド、および/または(ix)8000ppm以下の量のt-カルベオールを含む。
【0032】
好ましくは、オレンジ柑橘油は、1269ppmの量のt-p-メンタ-2,8-ジエノール、2183ppmの量のt-リモネン酸化物、388ppmの量のp-シメン-8-オール、900ppmの量のc-リモネン8,9-エポキシド、および7712ppmの量のt-カルベオールを含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ppm」値は、柑橘油抽出物中の指定された化合物の量を示す。試料中の化合物のppm値を測定する方法は、当該技術分野で周知であり、例えばガスクロマトグラフィーを使用する方法が挙げられる。本明細書では、そのような測定システムの使用の一例を、後述の実施例にて説明する。
【0034】
本発明の別の目的は、本発明の柑橘油抽出物を、風味付け組成物または付香性組成物として使用することである。換言すれば、本発明は、風味付け、もしくは付香性組成物、または風味付けされた、もしくは付香された物品、または表面の、匂い特性を付与、増強、改善、または変更する方法、もしくはプロセスに関し、この方法は、前記組成物または物品に、本発明の柑橘油抽出物の有効量を、例えばその代表的なノートを付与するために添加することを含む。
【0035】
本明細書において、「本発明の柑橘油抽出物の使用」とは、本発明の柑橘油抽出物を含有し、香料またはフレーバー産業において有利に使用され得るあらゆる組成物の使用とも理解されなければならない。
【0036】
さらに、本発明の柑橘油抽出物は、有利には前記組成物が添加される消費者向製品の味を積極的に付与または変更するために、フレーバー分野の全てにおいて使用することができる。したがって、本発明は、上記で定義される本発明の柑橘油抽出物を含む、風味付けされた消費者向製品に関する。
【0037】
明確化のために、「風味付けされた消費者向製品」とは、例えば、医薬組成物、食用ジェル混合物および組成物、歯科用組成物、食品飲料、および飲料製品などの食用製品または口腔用組成物を指すことを意味する。風味付けされた消費者向製品の形態は様々であってよい。消費者向製品の適切な形態の非網羅的なリストには、揚げた、凍結した、マリネされた、衣を付けて油で揚げた、冷却された、脱水された、粉末ブレンドされた、缶詰の、水で戻した、レトルトされた、焼かれた、調理された、発酵した、精密ろ過された、殺菌された、ブレンドされた、または保存された形態が含まれる。したがって、本発明による風味付けされた消費者向製品は、本発明の組成物、ならびに所望の食用製品、例えばクリームデザートなどの味および風味プロファイルに対応する任意の有益剤をも含有する。
【0038】
したがって、本発明の更なる態様は、本発明の柑橘油抽出物を含む風味付けされた消費者向製品であって、ベークド製品、酪農製品、酪農製品類似品、脂肪および油またはそれらのエマルジョンベースの製品、乳製品、菓子製品、デザート、チョコレートおよびコンパウンドコーティング、シリアル製品、風味付けされた炭酸水および炭酸の含まれないミネラルウォータおよびテーブルウォータを含むノンアルコール飲料、アルコール飲料、またはインスタントもしくはレディ・トゥ・ドリンク飲料からなる群から選択される。
【0039】
食品または飲料の成分の性質および種類は、本明細書においてより詳細に説明するまでもなく、当業者は、その一般的な知識に基づき、かつ前記製品の性質に従い、それらを選択することができる。
【0040】
前記風味付けされた消費者向製品の代表的な例としては、
・ベークド製品(例えば、パン、ドライビスケット、ケーキ、餅、せんべい、クッキー、クラッカー、ドーナツ、マフィン、ペストリー、プレミックス、他のベークド製品)、
・ノンアルコール飲料(例えば、水性飲料、強化水飲料/微糖水飲料、風味付けされた炭酸飲料および炭酸の含まれないミネラルウォータおよびテーブルウォータ、炭酸清涼飲料、非炭酸飲料、炭酸水、炭酸の含まれない水、清涼飲料、ボトル入りウォーター、スポーツ/エネルギー飲料、ジュース飲料、野菜ジュース、野菜ジュース調製物、ブロス飲料)、
・アルコール飲料(例えば、ビールおよび麦芽飲料、蒸留飲料、ワイン、リキュール)、
・インスタントまたはレディ・トゥ・ドリンク飲料(例えば、インスタント野菜飲料、粉末清涼飲料、インスタントコーヒーおよび茶、紅茶、緑茶、ウーロン茶、ハーブ浸出飲料、(例えば、水ベースの)カカオ、茶ベース飲料、コーヒーベース飲料、カカオベース飲料、浸出飲料、シロップ、冷凍果実、冷凍果実ジュース、水ベースのアイス、フルーツアイス、シャーベット)、
・シリアル製品(例えば、朝食用シリアル、シリアルバー、エネルギーバー/栄養バー、グラノーラ、調理済み既製米製品、米粉製品、雑穀およびモロコシ製品、生または調理済み麺、およびパスタ製品)、
・酪農製品(例えば、フルーツヨーグルトまたは風味付けされたヨーグルト、アイスクリーム、フルーツアイス、フローズンデザート、フレッシュチーズ、ソフトチーズ、ハードチーズ、乳飲料、ホエー、バター、部分的または完全に加水分解された乳タンパク質含有製品、発酵乳製品、コンデンスミルクおよび類似品)、
・酪農製品ではない成分(植物性タンパク質、植物性脂肪)を含む酪農製品類似品(酪農製品イミテーション)、
・菓子製品(例えば、フィリング、トッピング、チューインガム、ハードおよびソフトキャンディー)、
・チョコレートおよびコンパウンドコーティング(例えば、チョコレート、スプレッド)、
・脂肪および油またはそのエマルジョンベースの製品(例えば、マヨネーズ、スプレッド、通常のまたは低脂肪マーガリン、バター/マーガリンブレンド、風味付けされた油、ショートニング、レムラード、ドレッシング、サラダドレッシング、スパイス調製物、ピーナッツバター)、
・卵または卵製品(乾燥卵、卵白、卵黄、カスタード)、
・デザート(例えば、ゼラチン、プリン、デザートクリーム)、
・大豆タンパク質または他の大豆画分から作られる製品(例えば、豆乳および豆乳から作られる製品、大豆レシチン含有調製物、豆腐もしくはテンペなどの発酵製品、またはこれらから製造される製品、醤油)
・野菜調製物(例えば、ケチャップ、ソース、加工および戻し野菜、乾燥野菜、急速冷凍野菜、調理済み野菜、酢漬け野菜、野菜濃縮物またはペースト、調理済み野菜、ジャガイモ調製物)
・フルーツ調製物(例えば、ジャム、マーマレード、フルーツ缶詰)
・ベジタリアン用の肉類似品または肉代替品、ベジタリアン用のバーガー
・スパイスまたはスパイス調製物(例えば、マスタード調製物、西洋ワサビ調製物、ピクルス)、混合スパイス、および特に、例えばスナックの分野で使用される調味料、
・スナック製品(例えば、焼いた、もしくは揚げたポテトチップスまたはポテト生地製品、パン生地製品、トウモロコシ、米または粉砕ナッツベースの押出物)、
・調理済み料理(例えば、インスタント麺、米、パスタ、ピサ、トルティーヤ、ラップ)ならびにスープおよびブロス(例えば、ストック、風味キューブ、乾燥スープ、インスタントスープ、調理済みスープ、レトルトスープ)、ソース(インスタントソース、乾燥ソース、既製ソース、グレービーソース、スイートソース、薬味ソース、サワーソース)、
・口腔ケア製品、例えばデンタルペースト、洗口剤、歯科用ケア製品(例えば、義歯接着剤)、歯科用リンス、口内スプレー、歯科用パウダー、歯科用ジェルまたはデンタルフロス、
・ペット用または動物用フード
が挙げられる。
【0041】
好ましくは、風味付けされた消費者向製品は、ベークド製品、酪農製品、酪農製品類似品、脂肪および油またはそれらのエマルジョンベースの製品、乳製品、菓子製品、デザート、チョコレートおよびコンパウンドコーティング、シリアル製品、ノンアルコール飲料、アルコール飲料、またはインスタントもしくはレディ・トゥ・ドリンク飲料であってもよい。
【0042】
好ましくは、風味付けされた消費者向製品は、クラストおよびフィリングであってもよく、砂糖ベースの製品、パン、ドライビスケット、ケーキ、餅、せんべい、クッキー、クラッカー、ドーナツ、マフィン、ペストリー、プレミックス、フィリング、トッピング、フルーツまたは風味付けされたヨーグルト、アイスクリーム、フルーツアイス、フローズンデザート、スプレッド、通常のまたは低脂肪マーガリン、バター/マーガリンブレンド、風味付けされた油、ショートニング、ドレッシング、スパイス調製物、ピーナッツバター、フレッシュチーズ、ソフトチーズ、乳飲料、ホエー、バター、部分的にまたは完全に加水分解された乳タンパク質含有製品、発酵乳製品、コンデンスミルクおよび類似品、ゼラチン、プリン、デザートクリーム、チョコレート、スプレッド、水性飲料、強化水飲料/微糖水飲料、風味付けされた炭酸飲料および炭酸の含まれないミネラルウォータおよびテーブルウォータ、炭酸清涼飲料、非炭酸飲料、炭酸水、炭酸の含まれない水、清涼飲料、ボトル入りウォーター、スポーツ/エネルギー飲料、ジュース飲料、野菜ジュース、野菜ジュース調製物、ビールおよび麦芽飲料、蒸留飲料、ワイン、リキュール、インスタント野菜飲料、粉末清涼飲料、インスタントコーヒーおよび茶、紅茶、緑茶、ウーロン茶、ハーブ浸出飲料、カカオ、茶ベース飲料、コーヒーベース飲料、カカオベース飲料、浸出飲料、シロップ、チューインガム、ハードおよびソフトキャンディー、冷凍果実、冷凍果実ジュース、水ベースのアイス、フルーツアイス、シャーベット、朝食用シリアル、シリアルバー、エネルギーバー/栄養バー、グラノーラ、調理済み既製米製品、米粉製品、雑穀およびモロコシ製品、生麺または調理済みの麺、およびパスタ製品であってもよい。
【0043】
上記の風味付けされた消費者向製品のいくつかは、本発明の柑橘油抽出物に対して攻撃的な媒体を呈する場合があるため、例えばカプセル化などにより早期分解から本発明の柑橘油抽出物を保護しなくてはならない場合がある。
【0044】
本発明の柑橘油抽出物を上記の様々な製品に配合できる割合は、広範囲の値で変動する。これらの値は、風味付けされる消費者向製品の性質および所望の官能効果に依存するとともに、本発明の柑橘油抽出物が、当該技術分野で一般的に使用されている付香性もしくは風味付け成分、溶媒、または添加剤と混合される場合の所与のベース中の補助成分の性質に依存する。
【0045】
本発明の抽出物の代表的な有効量は、組成物の重量、または本発明の抽出物が配合される物品の重量に対して、0.001ppm~1000ppm、より好ましくは0.1ppm~500ppm、さらに好ましくは0.5ppm~350ppm、最も好ましくは1ppm~250ppm、最も好ましくは1ppm~150ppm、最も好ましくは1ppm~100ppm、最も好ましくは1ppm~50ppm、最も好ましくは1ppm~30ppm、最も好ましくは1ppm~20ppm、最も好ましくは1ppm~10ppmである。
【0046】
本発明の柑橘油抽出物はまた、現代の香料、すなわち香水または機能性香料の全ての分野において、前記組成物が添加される消費者向製品の匂いを積極的に付与または変更するために、有利に使用することができる。したがって、本発明の別の目的は、上記で定義された本発明の柑橘油抽出物を含む付香された消費者向製品である。
【0047】
明確化のために、「付香された消費者向製品」は、それが適用される表面または空間(例えば、皮膚、毛髪、テキスタイル、空気、または住居の表面)に少なくとも心地良い付香効果をもたらす消費者向製品を指すことを意味する。換言すれば、本発明による付香された消費者向製品は、所望の消費者向製品に対応する機能性配合物、ならびに任意で追加の有益剤、および嗅覚的有効量の本発明の柑橘油抽出物を含む付香された消費者向製品である。明確化のために、前記付香された消費者向製品は、非食用製品である。
【0048】
したがって、本発明の更なる態様は、本発明の柑橘油抽出物を含む付香された物品を提供し、付香された物品は、芳香水剤、香水、コロン、浴用ジェル、シャワージェル、シャンプー、ヘアケア製品、化粧品、消臭剤、エアフレッシュナー、洗剤、柔軟仕上げ剤、および家庭用洗浄剤からなる群から選択される。
【0049】
付香された消費者向製品の成分の性質および種類は、本明細書においてさらに詳細に説明するまでもなく、いずれにせよ網羅されることはないが、当業者は、その一般的な知識に基づいて、かつ製品の性質および所望の効果に従い、それらを選択することができる。
【0050】
適切な付香された消費者向製品の非限定的な例としては、香料、例えば、香水、スプラッシュもしくはオーデパルファム、コロン、またはシェーブもしくはアフターシェーブローション;布地ケア製品、例えば、液体もしくは固体洗剤、布地柔軟剤、液体もしくは固体の芳香増強剤、布地リフレッシャー、アイロン水、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品;ボディケア製品、例えば、ヘアケア製品(シャンプー、カラーリング調製物またはヘアスプレー、カラーケア製品、整髪製品、デンタルケア製品など)、消毒剤、インティメイトケア製品;化粧品調製物(スキンクリームまたはローション、バニシングクリームまたはデオドラントもしくは制汗剤(スプレーまたはロールオンなど)、脱毛剤、タンニング用もしくは日焼け止用もしくは日焼け後用製品、ネイル用製品、スキンクレンジング、メーキャップなど);またはスキンケア製品(石鹸、シャワーもしくはバスムース、オイルもしくはジェル、または衛生製品、またはフット/ハンドケア製品);エアケア製品、例えば、住居関連の空間(部屋、冷蔵庫、食器棚、靴または車)および/または公共の空間(ホール、ホテル、モールなど)で使用可能なエアフレッシュナーまたは「すぐに使用できる」粉末状エアフレッシュナー;またはホームケア製品、例えば、カビ取り剤、家具ケア製品、ワイプ、食器用洗剤もしくは硬質表面(例えば、床、浴槽、サニタリー、または窓洗浄)用洗剤;皮革ケア製品;カーケア製品、例えば、ポリッシュ、ワックスまたはプラスチッククリーナーが挙げられる。
【0051】
上記の付香された消費者向製品のいくつかは、本発明の組成物に対して攻撃的な媒体を呈する場合があるため、例えばカプセル化、または酵素、光、熱もしくはpHの変化などの適切な外部刺激に反応して本発明の組成物の成分部分を放出させるのに適した他の化学物質へ化学結合させることにより、早期分解から本発明の組成物を保護しなくてはならない場合がある。
【0052】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、本発明の柑橘油抽出物は、1種以上の風味付けまたは付香性補助成分と組み合わせてもよい。
【0053】
本明細書において、「風味付けまたは付香性補助成分」とは、風味付けまたは付香性調製物または組成物に使用され、快楽的な効果を付与する化合物を意味する。つまり、このような成分が風味付けまたは付香性の成分と見なされるためには、単に味または匂いを有するだけではなく、組成物の味または匂いを、積極的な、または心地良い形で付与または変更することができるものであると、当業者によって認識されなければならない。
【0054】
組成物中に存在する風味付けまたは付香性補助成分の性質および種類は、本明細書においてさらに詳細に説明するまでもなく、当業者は、その一般的な知識に基づいて、かつ意図する使用または用途、および所望の官能効果に従い、それらを選択することができる。大まかに言えば、これらの風味付けまたは付香性補助成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素または硫黄複素環式化合物、および精油などの化学薬品クラスに属し、天然由来であっても合成由来であってもよい。これらの補助成分の多くは、いずれにせよ、書籍S. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはその最新版、またはその他の同様の内容の出版物などの参考文献、ならびにフレーバーおよび香料分野の数多の特許文献に列記されている。前記補助成分は、様々な種類の風味付けまたは付香性化合物を、制御された方法で放出することが知られている化合物であってもよいとも理解される。
【0055】
使用可能な適切な風味付け補助成分の非限定的なリストには、フェノール、2-メトキシフェノール、2-メトキシ-4-ビニル-フェノール、4-メチル-フェノール、2-メトキシ-4-(2-プロペン-1-イル)フェノール、2-メトキシ-4-(1-プロペン-1-イル)フェノール、2-メトキシ-4-メチル-フェノール、2,6-ジメトキシ-フェノール、2-エトキシ-5-(1-プロペニル)フェノール、4-エテニルフェノール、2-メチル-フェノール、4-ヒドロキシ-ベンゼンメタノール、(4-メトキシフェニル)ギ酸メチル、4-メトキシベンズアルデヒド、3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド、3,4-ジメトキシ-ベンズアルデヒド、4-メトキシ-安息香酸、1,3-ベンゾジオキソール-5-カルバルデヒド、4-メトキシ-ベンゼンメタノール、3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン、4-(4-メトキシフェニル)-2-ブタノン、4-メトキシベンジルアセテート、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3-フラノン、4-メトキシ-ベンゼンメタノールアセテート、エチル3-フェニル-2-プロペノエート、メチル-3-フェニル-2-プロペノエート、安息香酸エチル、1,4-ジメトキシ-ベンゼン、2-エチル-3-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オン、3-フェニル-2-プロペナール、フェニルアセトアルデヒド、5,6-ジヒドロ-6-ペンチル-2H-ピラン-2-オン、デカン酸、ブタン酸;2-メチルプロパン酸、ジヒドロ-5-ペンチル-2(3H)-フラノン、メチル2-ヒドロキシ安息香酸、メチル2-ヒドロキシ安息香酸、6-メチル-2H-1-ベンゾピラン-2-オン、3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-2-オン、1-ベンゾピラン-2-オン、ヘキサヒドロ-3,6-ジメチル-2(3H)-ベンゾフラノン、テトラヒドロ-6-プロピル-2H-ピラン-2-オン、6-ブチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン、6-ヘプチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン、3-フェニル-2-プロペン-1-オール、2-フランメタノール、3-フェニル-2-プロペン酸、2-フランカルボキシアルデヒド、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、2,3-ペンタンジオン、2-ヒドロキシベンズアルデヒド、5-ペンチルフラン-2(5H)-オン、メチル2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾエート、5-アリル-1,2,3-トリメトキシベンゼン、(-)-(1R,4E,9S)-4,11,11-トリメチル-8-メチレンビシクロ[7.2.0]ウンデカ-4-エン、テトラヒドロ-6-ペンチル-2H-ピラン-2-オン、3-メチルブタナール、1-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)エタノン、ココア抽出物、バニラ抽出物、ベンゾイン抽出物、ペルーバルサム抽出物、トルーバルサム抽出物、ガイヤックウッド油、およびそれらの組み合わせが含まれる。好ましくは、風味付け補助成分は、フェノール、2-メトキシフェノール、2-メトキシ-4-ビニル-フェノール、4-メチル-フェノール、2-メトキシ-4-(2-プロペン-1-イル)フェノール、2-メトキシ-4-(1-プロペン-1-イル)フェノール、2-メトキシ-4-メチル-フェノール、2,6-ジメトキシ-フェノール、2-エトキシ-5-(1-プロペニル)フェノール、4-エテニルフェノール、2-メチル-フェノール、4-ヒドロキシ-ベンゼンメタノール、(4-メトキシフェニル)ギ酸メチル、4-メトキシベンズアルデヒド、3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド、3,4-ジメトキシ-ベンズアルデヒド、4-メトキシ-安息香酸、1,3-ベンゾジオキソール-5-カルバルデヒド、4-メトキシ-ベンゼンメタノール、3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン、4-(4-メトキシフェニル)-2-ブタノン、4-メトキシベンジルアセテート、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3-フラノン、4-メトキシ-ベンゼンメタノールアセテート、3-フェニル-2-プロペニル-オール、2-フランメタノール、3-フェニル-2-プロペン酸、2-フランカルボキシアルデヒド、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、2,3-ペンタンジオン、テトラヒドロ-6-ペンチル-2H-ピラン-2-オン、3-メチルブタナール、1-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)エタノン、ココア抽出物、バニラ抽出物、ベンゾイン抽出物、ペルーバルサム抽出物、トルーバルサム抽出物、ガイヤックウッド油、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。さらに好ましくは、風味付け補助成分は、フェノール、2-メトキシフェノール、2-メトキシ-4-ビニル-フェノール、2-メトキシ-4-(2-プロペン-1-イル)フェノール、2-メトキシ-4-(1-プロペン-1-イル)フェノール、2-メトキシ-4-(1-プロペン-1-イル)フェノール、2-メトキシ-4-メチル-フェノール、2-エトキシ-5-(1-プロペニル)フェノール、4-エテニルフェノール、4-メトキシベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド、4-メトキシ-安息香酸;1,3-ベンゾジオキソール-5-カルバルデヒド、3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3-フラノン、1-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)エタノン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0056】
これらの化合物の濃度(単位:ppm RTC)は:フェノール(0.0001~0.3);2-メトキシフェノール(0.0001~0.5);2-メトキシ-4-ビニル-フェノール(0.0001~0.3);2-メトキシ-4-(2-プロペン-1-イル)フェノール;2-メトキシ-4-(1-プロペン-1-イル)フェノール(0.0001~0.1);2-メトキシ-4-メチル-フェノール(0.0001~0.5);2-エトキシ-5-(1-プロペニル)フェノール(0.0001~5);4-エテニルフェノール(0.0001~0.3);4-メトキシベンズアルデヒド(0.0005~5);ベンズアルデヒド(0.0001~5);4-メトキシ安息香酸(0.1~200);1,3-ベンゾジオキソール-5-カルバルデヒド(0.01~50);3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン(0.05~200)、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3-フラノン(0.05~100)である。
【0057】
上記実施形態のいずれか1つによれば、本発明の柑橘油抽出物は、少なくとも1種の風味または香料担体と組み合わせることができる。「風味または香料担体」という用語は、風味付け成分または付香性成分の官能特性を大きく変更しない限り、風味付けまたは付香性の観点から実質的に中立である材料を指す。担体は、液体でも固体でもよい。
【0058】
適切な液体担体としては、例えば、乳化系、すなわち溶媒および界面活性剤系、またはフレーバーもしくは香料において一般的に使用される溶媒が挙げられる。フレーバーまたは香料において一般的に使用される溶媒の性質および種類については、網羅して詳細に説明することはできない。フレーバーで使用される適切な溶媒としては、例えば、プロピレングリコール、トリアセチン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(neobee(登録商標))、トリエチルシトレート、ベンジルアルコール、エタノール、例えばアマニ油、ヒマワリ油またはココナッツ油などの植物油、グリセロールが挙げられる。香料溶媒の非限定的な例としては、ブチレンまたはプロピレングリコール、グリセロール、ジプロピレングリコールおよびそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセテート、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセテート、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノール、クエン酸トリエチル、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたはその他のテルペン、Isopar(登録商標)(製造元:Exxon Chemical)の商標で知られているようなイソパラフィン、またはDowanol(登録商標)(製造元:Dow Chemical Company)の商標で知られているようなグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、またはCremophor(登録商標)RH40(製造元:BASF)の商標で知られているような硬化ヒマシ油、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0059】
適切な固体担体としては、例えば、吸収性ガムまたはポリマー、さらにはカプセル化材料が挙げられる。そのような材料の例としては、壁形成および可塑化材料、例えば単糖類、二糖類、多糖類、天然または加工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、アラビアガム、アカシアガム、またはさらに参考文献、例えばH. Scherz, Hydrokolloid: Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr’s Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996に引用された材料が挙げられる。カプセル化は当業者に周知の方法であり、例えば、噴霧乾燥、凝集、押出、被覆、めっき、コアセルベーションなどの技術を用いて実施してもよい。
【0060】
本発明の柑橘油抽出物は、少なくとも1種のフレーバー補助剤を含んでもよい。本明細書において、「フレーバー補助剤」とは、色(例えばカラメル)、化学的安定性などの更なる追加の利点を付与することができる成分を意味する。風味付け組成物に一般的に使用される補助剤の性質および種類を網羅して詳細に説明することは不可能である。にもかかわらず、そのような補助剤は当業者に周知であるため、当業者はその一般知識に基づいて、かつ意図される使用または用途に従って、それらを選択することができるであろう。非限定的な具体例としては、粘性剤(例えば、乳化剤、増粘剤、ゲル化および/またはレオロジー調整剤、例えば、ペクチンまたは寒天ガム)、安定剤(例えば、抗酸化剤、熱/光安定剤およびまたは緩衝剤、例えば、クエン酸)、着色剤(例えば、天然または合成着色剤、または着色用天然抽出物)、保存剤(例えば、抗バクテリア剤、または抗菌剤、または抗真菌剤、例えば、安息香酸)、ビタミンおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0061】
本発明の柑橘油抽出物は、少なくとも1種の香料補助剤と組み合わせてもよい。本明細書において、「香料補助剤」とは、色、特定の耐光性、化学的安定性等の更なる追加の利点を付与することができる成分を意味する。付香性組成物に一般的に使用される補助剤の性質および種類を網羅して詳細に説明することは不可能であるが、それらの成分が当業者に周知であることには言及する必要がある。非限定的な具体例としては、粘性剤(例えば、界面活性剤、増粘剤、ゲル化および/またはレオロジー調整剤)、安定剤(例えば、保存剤、抗酸化剤、熱/光安定剤および/または緩衝剤、またはBHTなどのキレート剤)、着色剤(例えば、染料および/または顔料)、保存剤(例えば、抗バクテリア剤、または抗菌剤、または抗真菌剤、または抗刺激剤)、研磨剤、皮膚冷却剤、定着剤、防虫剤、軟膏、ビタミン、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0062】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、本発明の柑橘油抽出物を甘味料と組み合わせてもよい。適切な甘味料の非限定的な例としては、一般的な糖類甘味料、例えば、スクロース、フルクトース(D-フルクトースなど)、グルコース(D-グルコースなど);天然の糖を含む甘味料組成物、例えば、ステビア(全ての種類および等級)、コーンシロップ(高フルクトースコーンシロップを含む)もしくは他のシロップ、または天然の果物および野菜に由来する甘味料濃縮物;半合成の「糖アルコール」甘味料、例えば、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルトデキストリン、グリセロール、スレイトール、アラビトール、リビトール、およびズルシトール;人工甘味料、例えば、ミラクリン、アスパルテーム、スーパーアスパルテーム、サッカリン、サッカリン-ナトリウム塩、アセスルファム-K、シクラメート、シクラメートナトリウム、およびアリテーム;その他の甘味料、例えばトレハロース、メレジトース、メリビオース、ラフィノース、パラチノース、ラクツロース、シクラミン酸、モグロシド、タガトース(D-タガトースなど)、マルトース、ガラクトース(D-ガラクトースなど)、L-ラムノース、D-ソルボース、マウノース(D-マウノースなど)、ラクトース、L-アラビノース、D-リボース、D-グリセルアルデヒド、クルクリン、ブラゼイン、モグロシド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(NHDC)、ネオテームおよび他のアスパルテーム誘導体、D-トリプトファン、D-ロイシン、D-スレオニン、グリシン、D-アスパラギン、D-フェニルアラニン、L-プロリン、マルチトール、水添グルコースシロップ(HGS)、magap、スクラロース、ラグドゥネーム、スクロノネート、スクロオクテート、モナチン、フィロズルシン、水添デンプン加水分解物(HSH)、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドD、レバウジオシドM、およびその他の甘味ステビアベースのグリコシド、ラカンカ、タウマチン、モネリン、carrelameand、および他のグアニジンベースの甘味料が挙げられる。
【0063】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、本発明の柑橘油抽出物は、少なくとも1種の冷却剤と組み合わせてもよい。好適な冷却剤の非限定的な例としては、WS-23(2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミド)、FEMA 3804;WS-3(N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド)、FEMA 3455;WS-5[エチル3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート]、FEMA 4309;WS-12(1R,2S,5R)-N-(4-メトキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4681;WS-27(N-エチル-2,2-ジイソプロピルブタンアミド)、FEMA 4557;N-シクロプロピル-5-メチル-2-イソプロピルシクロヘキサンカルボキサミド、FEMA 4693、WS-116(N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,2-ジエチルブタンアミド)、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)2,2-ジエチルブタンアミド、FEMA 4603、メントキシエタノール、FEMA 4154、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4496;N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)-3-p-メンタンカボキサミド、FEMA 4549;N-(2-ヒドロキシエチル)-2-イソプロピル-2,3-ジメチルブタンアミド、FEMA 4602および(またN-(4-(カルバモイルメチル)フェニル)-メンチルカルボキサミド、FEMA 4684;(1R,2S,5R)-N-(4-メトキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド(WS-12)、FEMA 4681;(2S,5R)-N-[4-(2-アミノ-2-オキソエチル)フェニル]-p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4684;およびN-シクロプロピル-5-メチル-2-イソプロピルシクロヘキサンカルボンカルボキサミド、FEMA 4693;2-[(2-p-メントキシ)エトキシ]エタノール、FEMA 4718;(2,6-ジエチル-5-イソプロピル-2-メチルテトラヒドロピラン、FEMA 4680);トランス-4-tert-ブチルシクロヘキサノール、FEMA 4724;2-(p-トリルオキシ)-N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-((チオフェン-2-イル)メチル)アセトアミド、FEMA 4809;メントングリセロールケタール、FEMA 3807;メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808);(-)-メントキシプロパン-1,2-ジオール;3-(1-メントキシ)-2-メチルプロパン-1,2-ジオール、FEMA 3849;イソプレゴール;(+)-cis & (-)-trans p-メンタン-3,8-ジオール、比~62:38、FEMA 4053;2,3-ジヒドロキシ-p-メンタン;3,3,5-トリメチルシクロヘキサノングリセロールケタール;カルボン酸メンチルピロリドン;(1R,3R,4S)-3-メンチル-3,6-ジオキサヘプタノエート;(1R,2S,5R)-3-メンチルメトキシアセテート;(1R,2S,5R)-3-メンチル3,6,9-トリオキサデカノエート;(1R,2S,5R)-3-メンチル3,6,9-トリオキサデカノエート;(1R,2S,5R)-3-メンチル(2-ヒドロキシエトキシ)アセテート;(1R,2S,5R)-メンチル11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデカノエート;クベボール、FEMA 4497;N-(4-シアノメチルフェニル)p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4496;2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシル4-(ジメチルアミノ)-4-オキソブタノエート、FEMA 4230;N-(4-シアノメチルフェニル)p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4496;N-(2-ピリジン-2-イルエチル);p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4549、メンチルラクテート、FEMA 3748;6-イソプロピル-3,9-ジメチル-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2-オン、FEMA 4285;N-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-3-p-メンタンカルボキサミド;N-(1-イソプロピル-1,2-ジメチルプロピル)-1,3-ベンゾジオキソール-5-カルボキサミド;N-(R)-2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル-(1R,2S,5R)-p-メンタン-3-カルボキサミド;2,2,5,6,6-ペンタメチル-2,3,6,6a-テトラヒドロペンタレン-3a(1H)-オールと、5-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-3,4,4-トリメチルシクロペンタ-2-エン-1-オンとの混合物;(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチル-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)シクロヘキサンカルボキサミド、FEMA 4549;(2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチル-N-(2-(ピリジン-4-イル)エチル)シクロヘキサンカルボキサミド;N-(4-シアノメチルフェニル)p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4496;(1S,2S,5R)-N-(4-(シアノメチル)フェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド;1/7-イソプロピル-4/5-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン誘導体;4-メトキシ-N-フェニル-N-[2-(ピリジン-2-イル)エチル]ベンズアミド;4-メトキシ-N-フェニル-N-[2-(ピリジン-2-イル)エチル]ベンゼンスルホンアミド;4-クロロ-N-フェニル-N-[2-(ピリジン-2-イル)エチル]ベンゼンスルホンアミド;4-シアノ-N-フェニル-N-[2-(ピリジン-2-イル)エチル]ベンゼンスルホンアミド;4-((ベンズヒドリルアミノ)メチル)-2-メトキシフェノール;4-((ビス(4-メトキシフェニル)-メチルアミノ)-メチル)-2-メトキシフェノール;4-((1,2-ジフェニルエチルアミノ)メチル)-2-メトキシフェノール;4-((ベンズヒドリルオキシ)メチル)-2-メトキシフェノール、4-((9H-フルオレン-9-イルアミノ)メチル)-2-メトキシフェノール;4-((ベンズヒドリルアミノ)メチル)-2-エトキシフェノール;1-(4-メトキシフェニル)-2-(1-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ビニル4-メトキシベンゾエート;2-(1-イソプロピル-6-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1-(4-メトキシフェニル)ビニル4-メトキシベンゾエート;(Z)-2-(1-イソプロピル-5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1-(4-メトキシ-フェニル)ビニル-4-メトキシベンゾエート;3-アルキル-p-メタン-3-オール誘導体;フェンチル、D-ボルニル、L-ボルニル、エキソ-ノルボルニル、2-メチルイソボルニル、2-エチルフェンチル、2-メチルボルニル、シス-ピナン-2-イル、ベルバニル、およびイソボルニルの誘導体;オキサミン酸メンチル誘導体;メンチル3-オキソカルボン酸エステル;N α-(メンタンカルボニル)アミノ酸アミド;p-メンタンカルボキサミドおよびWS-23類似体;(-)-(1R,2R,4S)-ジヒドロウンベルロール;p-メンタンアルキルオキシアミド;シクロヘキサン誘導体;ブトン誘導体;3-メントキシ-1-プロパノールと、1-メントキシ-2-プロパノールとの混合物;1-[2-ヒドロキシフェニル]-4-[2-ニトロフェニル-]-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-2-オン;4-メチル-3-(1-ピロリジニル)-2[5H]-フラノン;およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、冷却剤は、メントール、メントールメチルエーテル、メントングリセリルアセタール(FEMA GRAS 3807)、メントングリセリルケタール(FEMA GRAS 3808)、メンチルラクテート(FEMA GRAS 3748)、メンチルアセテート、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、モノメチルサクシネート(FEMA GRAS 3810)、モノメンチルグルタメート(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3784)、メントキシ-2-メチル-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3849)、(1R,2S,5R)-N-(4-(シアノメチル)フェニル)メンチルカルボキサミド(FEMA GRAS 4496)、(1R,2S,5R)-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)メンチルカルボキサミド(FEMA GRAS 4549)、それらのメンタンカルボン酸エステルおよびアミドWS-3、WS-4、WS-5、WS-12、WS-14、WS-30ならびに混合物からなる群より選択される。
【0064】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、本発明の柑橘油抽出物は、さらに、温熱効果、ピリピリ感、唾液分泌効果、洗浄効果、またはアルコール増強効果を付与する成分、例えばトウガラシ抽出物、香辛料抽出物(ショウガ、ギニアショウガ、サンショウを含む全種類のコショウ、ピペリン、カプサイシン、ジャンブーエキス、スピラントールなど)と組み合わせてもよい。
【0065】
当業者であれば、試行錯誤するだけでなく、単に当技術分野の標準的な知識を適用することで、所望の効果を得るための最適な配合物を、上記の風味付けまたは付香性組成物の成分を混合することによって、完全に設計できるものと理解される。
【0066】
明確化のために、化学合成から直接得られるあらゆる混合物、例えば十分に精製されておらず、本発明の化合物が出発原料、中間生成物、または最終生成物として含まれる可能性のある反応媒体は、そのような混合物が香料またはフレーバーに適した形で本発明の化合物を提供しない限り、本発明の風味付けまたは付香性組成物として見なすことはできないことも理解される。したがって、特に明記しない限り、一般に未精製の反応混合物は、本発明から除外される。
【0067】
本発明の更なる態様は、
A) 柑橘油をハイブリッド薄膜蒸留に供して揮発性物質を蒸発させる工程、
B) 工程A)からの蒸発した揮発性物質を冷却凝縮器に入れて、蒸気を液体に変換する工程、
C) 工程B)からの液体を、本発明の柑橘油抽出物として収集する工程
を含む、柑橘油抽出物を調製する方法を提供する。
【0068】
本発明の一実施形態において、工程A)からの蒸気抽出物を、工程B)の前に分画カラムに通す。好ましくは、分画カラムは、ハイブリッド薄膜蒸留装置と一体である。
【0069】
本発明の方法の実施形態において、工程は、好ましくは2回、3回、4回、5回、またはそれ以上の回数繰り返され、柑橘油抽出物をさらに濃縮する。
【0070】
本発明の方法の実施例は、以下の例に記載されている。
【0071】
本発明の方法の工程A)は、柑橘油をハイブリッド薄膜蒸留に供して揮発性物質を蒸発させることを必要とする。上述のように、柑橘油は、ミカン科のあらゆる柑橘類果実、好ましくは、レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツ、温州ミカンおよびタンジェリン、マンダリン、ユズ、ベルガモット、ならびにブンタンから得ることができるが、これらに限定されない。柑橘油は、一般的に知られている方法を使用して調製してもよいし、または多数存在する柑橘油の供給者から、商業的に得てもよい。
【0072】
本発明の方法の第1の工程は、柑橘油をハイブリッド薄膜蒸留に供して揮発性物質を蒸発させることを必要とする。「ハイブリッド薄膜蒸留」とは、当該技術分野で知られており、当業者によって容易に使用することができる抽出方法である。本質的に、この方法は、柑橘油を、分子間衝突の機会が少ない高真空条件下で、かつ化合物の酸化副生物への転化の機会が少ない温度で、短時間加熱する蒸留方法である。
【0073】
ハイブリッド薄膜蒸留を実施するための装置は周知であり、当業者は容易に利用することができる。そのような装置の例およびその使用のためのプロトコルは、以下の例に記載されている。
【0074】
好ましい実施形態において、ハイブリッド薄膜蒸留は、(i)1.33Pa~13333Paの真空、(ii)30~160℃の温度、を使用して実施され、(iii)柑橘油は、3~15分間、好ましくは1分未満、より好ましくは3~15秒間、ハイブリッド薄膜蒸留に供される。
【0075】
本発明の好ましい実施形態において、工程A)は2回以上繰り返され、2回目または最後の工程A)では、最初の工程A)に比べて温度は高く圧力は低い。
【0076】
好ましくは、真空は、1.33Pa~13333Pa、より好ましくは13.3Pa~1333Pa、66.6Pa~666Pa、好ましくは100Pa~400Paである。
【0077】
好ましくは、温度は、30℃~160℃、より好ましくは50℃~130℃、75℃~125℃、80℃~120℃、90℃~110℃である。
【0078】
好ましくは、柑橘油は、3~15分、4~10分、4~8分、5~6分間、ハイブリッド薄膜蒸留に供される。より好ましくは、柑橘油は、3~15秒、4~10秒、4~8秒、5~6秒間、ハイブリッド薄膜蒸留に供される。
【0079】
本発明の方法の工程B)は、工程A)からの蒸発した揮発性物質を冷却凝縮器に通過させて、蒸気を液体に変換することを必要とする。
【0080】
冷却凝縮器は、当該技術分野で周知の標準的な実験装置であり、分画カラム装置と容易に組み合わせることができる。それらは、工程B)からの蒸気抽出物が、直接、冷却凝縮器内に入るように連結されている。そのような装置の例およびその使用のためのプロトコルは、以下の例に記載されている。
【0081】
本発明の方法の工程C)は、工程B)からの液体が、本発明の柑橘油抽出物として収集されることを必要とする。ここでもまた、そのような装置の例およびその使用のためのプロトコルは、以下の例に記載されている。
【0082】
本発明の方法の任意の工程では、A)からの蒸気抽出物を工程B)の前に分画カラムに通す。この任意の工程により、抽出物からテルペンおよび他の油をより多く除去し、したがって、本発明の柑橘油抽出物の溶解性を高めることができる。
【0083】
分画カラムとは、当該技術分野で周知の標準的な実験装置であり、ハイブリッド薄膜蒸留装置と容易に組み合わせることができる。分画カラムは、工程A)からの蒸気抽出物が直接分画カラムに入るように連結されている。そのような装置の例およびその使用のためのプロトコルは、以下の例に記載されている。
【0084】
ここで、本発明の効果および利点を説明する以下の実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
【0085】
実施例
実施例1:本発明の柑橘油抽出物組成物の調製
以下に、本発明の柑橘油抽出物を調製する方法を示す。出発材料は、市販の柑橘油であった。
【0086】
工程1
分画カラムを備えた拭膜式蒸発器の内面を80℃~120℃°に設定し、圧力を2000Pa~3000Paに減圧して、蒸発器への柑橘油の供給を開始する。供給速度は、系の利用可能な蒸発容量を最適化するのに十分であり、かつ凝縮器に過負荷をかけないようにするべきである。初期還流比を設定し、必要に応じて調整し、留出物中のアルデヒド濃度が0.5%以下となるようにする。供給速度および/または圧力を調整して、望ましい残留物対留出物比を達成する。
【0087】
本発明の方法のこの工程により、出発原料である柑橘油中に存在する不要な成分が除去される。
【0088】
工程2
内部凝縮器を備えたショートパス蒸留器の内面を、工程1よりも高い温度、例えば100℃~120℃に設定し、かつ圧力を工程1よりも低く、例えば150Pa未満に減圧し、工程1からの残留物の供給を開始する。供給速度は、系の利用可能な蒸発容量を最適化するのに十分であり、かつ凝縮器に過負荷をかけないようにするべきである。留出物流と残留物流とを別個に固有の生成物として収集し、その比は供給物の組成により決定される。
【0089】
実施例2:本発明の柑橘油抽出物の組成の分析
本発明者らは、本発明の柑橘油抽出物の酸化副生化合物の成分を調べ、これを、従来の真空蒸留法により調製された柑橘油抽出物の組成と比較した。結果を以下に示す。
【0090】
試料の分析を、Agilent 6890N GCシステム(Agilent Technologies、カルフォルニア州サンタクララ)を使用して行った。入口温度を250℃に設定し、オーブン温度プログラムは40℃から360℃まで、5℃/分の線形勾配からなっていた。注入量は0.2uL(100:1のスプリット比)であった。
【0091】
同定分析を、Masshunterソフトウェアを備えたAgilent 5975四重極質量分析装置(Agilent Technologies、カルフォルニア州サンタクララ)、および寸法30m×0.25mm、i.d.×0.25μmのZB-5MSiキャピラリーカラム(Phenomenex、カリフォルニア州トーランス)を使用して実施した。ヘリウムを、0.8mL/分のコンスタントフロー(constant flow)モードでキャリアガスとして使用した。ソースを230℃、四重極を150℃に維持した。移送ラインおよびインジェクタを300℃に維持した。陽イオンモードにおける電子衝撃イオン化を使用し、15~300m/zの質量範囲を時間0~2.4分まで走査し、次いで、33~450m/zを走査した。質量スペクトルマッチングは、NIST 2008 バージョン2.0標準スペクトル(NIST、メリーランド州ゲイザースバーグ)とインハウスのMSライブラリーとの比較により行った。MSデコンボリューションを、AMDIS バージョン2.69(NIST、メリーランド州ゲイザースバーグ)によって実施した。
【0092】
定量分析は、GCシステムのビルトインFIDを使用して行った。ヘリウムを1.4mL/分のコンスタントフローモードでキャリアガスとして使用した。FID温度を300℃に設定し、水素燃料ガス流量を40.0mL/分、ユーティリティ圧縮空気を400.0mL/分に設定した。メイクアップガスを止め、Litオフセット(lit offset)を1に設定した。
【0093】
上記の分析方法を使用して、真空蒸留を用いた従来のレモン油抽出物、本発明のレモン油抽出物、真空蒸留を用いた従来のライム油抽出物、本発明のライム油抽出物の、4つの試料の組成を分析した。データを以下に示し、ライム抽出物については
図1にも示す。
【0094】
【0095】
【0096】
ここで、本発明の柑橘油抽出物は、従来の真空蒸留法を使用して調製された抽出物よりも、はるかに少ない酸化副生化合物を有することが明らかに分かる。上記のとおり、酸化副生化合物は抽出物に望ましくないノートを与えることから、これは消費者にとって好ましいことである。
【0097】
実施例3:本発明の柑橘油抽出物の官能分析
官能分析を、0~5のヘドニックスケールで記述分析により行った。標準的な味覚溶液(7%のスクロースおよび0.1%のクエン酸)で調製した試料を、訓練を受けたパネリストにブラインドで提示し、みずみずしさについて試料を0~5で評価するように依頼した。データを以下の表3に示す。
【0098】
【国際調査報告】