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特表2023-548998強靭化分解性ポリグリコール酸組成物、強靭化分解性ポリグリコール酸材料およびその調製方法並びに用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】強靭化分解性ポリグリコール酸組成物、強靭化分解性ポリグリコール酸材料およびその調製方法並びに用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20231115BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20231115BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231115BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20231115BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20231115BHJP
【FI】
C08L67/04 ZBP
C08L67/00
C08L101/00
C08K5/29
C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506198
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 CN2021107038
(87)【国際公開番号】W WO2022037349
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】202010837326.5
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520335934
【氏名又は名称】国家能源投資集団有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA ENERGY INVESTMENT CORPORATION LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】523031068
【氏名又は名称】北京低▲タン▼清潔能源研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】王栄
(72)【発明者】
【氏名】孫小杰
(72)【発明者】
【氏名】陳蘭蘭
(72)【発明者】
【氏名】リァン,ウェンビン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002BB09Y
4J002BN05Y
4J002CD19Y
4J002CF03X
4J002CF05X
4J002CF18W
4J002CF18X
4J002CF19X
4J002ER006
4J002FD206
4J002FD20Y
4J200AA04
4J200BA13
4J200BA14
4J200BA15
4J200BA17
4J200BA20
4J200CA01
4J200CA06
4J200EA03
4J200EA07
(57)【要約】
本発明は、ポリグリコール酸変性の分野に関し、強靭化分解性ポリグリコール酸組成物、強靭化分解性ポリグリコール酸材料およびその調製方法並びに用途に関する。強靭化分解性ポリグリコール酸組成物は、ポリグリコール酸、生分解性ポリエステルおよび相溶化剤を含み、前記生分解性ポリエステルは生分解性ホモポリエステルおよび/またはコポリエステルを含み、前記相溶化剤はエポキシ化合物、無水マレイン酸グラフトポリマー、無水マレイン酸ポリオレフィンコポリマーおよびイソシアナート系化合物から選択された少なくとも1つを含む。この組成物は、得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料の靭性を高め、高靭性を有する完全生分解材料を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリコール酸、生分解性ポリエステルおよび相溶化剤を含み、前記生分解性ポリエステルは生分解性ホモポリエステルおよび/またはコポリエステルを含み、前記相溶化剤はエポキシ化合物、無水マレイン酸グラフトポリマー、無水マレイン酸ポリオレフィンコポリマーおよびイソシアナート系化合物から選択された少なくとも1つを含む、強靭化分解性ポリグリコール酸組成物。
【請求項2】
前記組成物において、ポリグリコール酸が20~90重量部であり、前記生分解性ポリエステルが10~80重量部であり、前記相溶化剤が0.2~10重量部であり、
好ましくは、ポリグリコール酸が30~70重量部であり、前記生分解性ポリエステルが30~70重量部であり、前記相溶化剤が0.5~5重量部である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリグリコール酸は、240℃、2.16kg荷重におけるメルトインデックスが2~100g/10min、好ましくは20~85g/10minである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリグリコール酸と前記組成物は240℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックスがそれぞれMFR1およびMFR2であり、MFR2≦60%×MFR1、好ましくは、MFR2が(10~40%)×MFR1であり、
好ましくは、前記組成物は、240℃における複素粘度が1000~30000Pa・sである、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記生分解性ポリエステルは、ポリアジピン酸/ブチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレングリコールサクシネート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチルエステルおよびポリヒドロキシ脂肪酸エステルから選択された少なくとも1つを含み、
好ましくは、前記生分解性ポリエステルおよび相溶化剤の重量比が2~40:1、好ましくは6~30:1である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記エポキシ化合物は、グリシジルメタクリレート基を含有するコポリマーを含み、好ましくは、前記エポキシ化合物は、スチレン-アクリロニトリル-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-エチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、POEエラストマー-グリシジルメタクリレートコポリマー、スチレン-メタクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマーから選択された少なくとも1つであり、
好ましくは、前記無水マレイン酸グラフトポリマーは、エチレン-無水マレイン酸グラフトコポリマー、POEエラストマー-無水マレイン酸グラフトコポリマー、プロピレン-無水マレイン酸グラフトコポリマーから選択された少なくとも1つであり、好ましくは、前記無水マレイン酸グラフトポリマーのグラフト率が0.2~5重量%であり、
好ましくは、前記無水マレイン酸ポリオレフィンコポリマーは式1で示される構造を有し、
【化1】

ここで、RはH、C-Cのアルキル、フェニルまたはC-Cアルコキシであり、nは2以上の整数であり、
好ましくは、前記イソシアナート系化合物はトルエン-2,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネートおよびポリイソシアネートから選択された少なくとも1つである、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物を溶融押出して、強靭化分解性ポリグリコール酸材料を得るステップを含み、
好ましくは、前記溶融押出の条件としては、温度が220~245℃、好ましくは230~240℃であり、時間が4~10分、好ましくは5~8分であり、押出機回転数が60~110rpm、好ましくは80~100rpmである、強靭化分解性ポリグリコール酸材料の調製方法。
【請求項8】
請求項7に記載の調製方法により製造された強靭化分解性ポリグリコール酸材料。
【請求項9】
前記強靭化型分解性ポリグリコール酸材料のノッチ衝撃強度が5kJ/m以上で、破断伸度が80%以上である、請求項8に記載の材料。
【請求項10】
請求項8または9に記載の材料の射出成形、ブリスター成形、ブロー成形における用途。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願〕
本出願は、2020年08月19日に出願された中国特許出願202010837326.5の利益を主張し、その出願の内容が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、ポリグリコール酸変性の分野に関し、具体的に強靭化分解性ポリグリコール酸組成物、強靭化分解性ポリグリコール酸材料およびその調製方法並びに用途に関する。
【0003】
〔背景技術〕
ポリグリコール酸(略してPGA)は、炭素数が最も少なく、完全に分解可能なエステル構造を持ち、分解速度が最も速い脂肪族ポリエステルポリマーであり、微生物分解や水分解が可能で、毒性がなく、最終的には水と二酸化炭素に分解されるため、地球環境と生命を守る素材として世界的に認知されているのである。ポリグリコール酸は優れた機械的特性を持ち、その曲げ強さと引張強さは通常の樹脂よりも高く、多くのエンジニアリングプラスチックよりも優れている。PGAはその優れた生体適合性から、医療用吸収性外科縫合糸、薬剤徐放、模擬人体組織材料、生分解性高分子足場などの高付加価値製品に広く使用されている。しかし、PGAは脆く、溶融強度が低いという欠点があり、多くの分野での加工応用に大きな制約を与えている。したがって、PGAを強靭化変性し、高靭性のPGA材料の調製は非常に重要である。しかし、現在、PGAの強靭化変性に関する研究はほとんどない。
【0004】
CN102993654Aは生分解バリアフィルムを開示し、調製原料は、質量%で、0~80wt%の生分解ホモポリエステル、0~80wt%の生分解コポリエステル、1~30wt%のエチレン-ビニルアルコールコポリマー、および0~5wt%の添加剤を含み、前記生分解ホモポリエステルは、ヒドロキシ脂肪酸モノマーから縮合反応または開環重合反応により得られ、前記生分解コポリエステルは二塩基性モノマーと脂肪族ジオールから重合反応によって得られる。生分解性フィルムがバリア性を有しない欠点を克服するために使用される。しかし、強靭化や増量に関する内容がない。
【0005】
CN107083032Aは、加工・押出し時の架橋反応により、高強度・高靭性の生分解性ポリ乳酸系複合材料を調製する方法を開示し、前記生分解性ポリ乳酸系複合材料は、重量分率で、ポリ乳酸60~100部、生分解ポリエステル5~60部およびポリオールまたはポリオールエーテル架橋剤3~20部を含み、前記生分解性ポリ乳酸系複合材料は溶融混練-押出方法によって調製され、具体的に、(1)乾燥ポリ乳酸樹脂、生分解ポリエステルおよびポリオールまたはポリオールエーテル架橋剤を均一に混合するステップと、(2)ステップ(1)で得られた混合物を二軸押出機に加え、溶融混練反応により押出成形するステップとを含む。この発明は、ポリ乳酸系複合材料の調製において、柔軟性ポリエステルの添加によりポリ乳酸材料の相溶性や強度が低下する問題を解決する。この特許は、主にポリオールとポリエーテルを用いた架橋に関するものであり、強度向上の意義が大きく、靭性向上にはあまり意味がない。
【0006】
CN107987494Aは生分解ポリエチレンテレフタレートブレンドを開示し、重量部で、ポリエチレンテレフタレート50~70部、ポリグリコール酸10~40部、相溶化剤5~10部、酸化防止剤0.1~0.5部、加水分解防止剤1~2部を含む。しかし、この特許では、PETの分解性能を向上させるためにポリグリコール酸を添加しているだけで、必ずしも材料の靭性が向上しているわけではない。さらに、PET自体は生分解性ではないので、素材全体の完全生分解性にも影響する。
【0007】
現在、ポリグリコール酸材料は、材料の強靭化および相溶性改善の問題を解決する必要があり、高靭性の分解性材料の開発が必要である。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、従来のポリグリコール酸材料の低靭性、低溶融強度、低加工性、および変性における非分解性樹脂の添加による材料自身の分解の劣化破壊の問題を克服し、強靭化分解性ポリグリコール酸組成物、強靭化分解性ポリグリコール酸材料およびその調製方法並びに用途を提供することである。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の第1側面は、ポリグリコール酸、生分解性ポリエステルおよび相溶化剤を含み、前記生分解性ポリエステルは生分解性ホモポリエステルおよび/またはコポリエステルを含み、前記相溶化剤はエポキシ化合物、無水マレイン酸グラフトポリマー、無水マレイン酸ポリオレフィンコポリマーおよびイソシアナート系化合物から選択された少なくとも1つを含む強靭化型分解性ポリグリコール酸組成物を提供する。
【0010】
本発明の第2側面は、本発明の組成物を溶融押出して、強靭化分解性ポリグリコール酸材料を得るステップを含む強靭化分解性ポリグリコール酸材料の調製方法を提供する。
【0011】
本発明の第3側面は、本発明の調製方法により製造された強靭化分解性ポリグリコール酸材料を提供する。
【0012】
本発明の第4側面は、本発明が提供する上記材料の射出成形、ブリスター成形、ブロー成形における用途を提供する。
【0013】
上記の技術的解決手段によれば、本発明が提供する組成物において、相溶化剤はPGAおよびその他の分解性エステルと化学反応してネットワーク構造を形成し、両相の相溶性を高め、PGA中の分解性エステルの分散サイズを小さくし、さらには微細繊維連続相構造を形成し、得られた複合材料の靭性を大幅に高め、高靭性の完全生分解材料を得ることができる。さらに、組成物の溶融粘度やメルトインデックスを調整することで、PGA材料の加工性能を向上させ、その適用分野を拡大する。
【0014】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕原料PGA、PBAT、MDIおよび本発明の実施例1で得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料の赤外線スペクトルである。
【0015】
図2〕比較例4で得られたポリグリコール酸材料のSEM図である。
【0016】
図3〕実施例6で得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料のSEM図である。
【0017】
図4〕比較例4で得られたポリグリコール酸材料、実施例6で得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料の複素粘度-周波数を示す図である。
【0018】
〔発明を実施するための形態〕
本明細書に開示された範囲の終点および任意の値は、その特定の範囲または値に限定されるものではなく、その範囲または値に近い値を包含するものと理解さるべきである。数値範囲については、各範囲の終点値同士、各範囲の終点値と個々の点値同士、および個々の点値同士を組み合わせて1つまたは複数の新たな数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は本明細書に具体的に開示されているものと見なす。
【0019】
本発明の第1側面は、ポリグリコール酸、生分解性ポリエステルおよび相溶化剤を含み、前記生分解性ポリエステルは生分解性ホモポリエステルおよび/またはコポリエステルを含み、前記相溶化剤はエポキシ化合物、無水マレイン酸グラフトポリマー、無水マレイン酸ポリオレフィンコポリマーおよびイソシアナート系化合物から選択された少なくとも1つを含む強靭化型分解性ポリグリコール酸組成物を提供する。
【0020】
本発明のいくつかの実施例では、前記生分解性ポリエステルを使用することにより、得られたポリグリコール酸材料の靭性と加工性能を改善することができる。特定の生分解性ポリエステルを選択すると、ポリグリコール酸にマッチングし、調製材料の完全分解性だけでなく、ポリグリコール酸の材料性能を損なわないようにすることも可能である。好ましくは、前記生分解性ポリエステルはポリアジピン酸/ブチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレングリコールサクシネート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチルエステルおよびポリヒドロキシ脂肪酸エステルから選択された少なくとも1つを含む。より好ましくは、ポリアジピン酸/ブチレンテレフタレート(PBAT)は、高靭性、生分解性、高熱安定性の特性を有し得る。例えばBASF社のEcoflex F blend C1200のように商業的に入手可能であり、ポリカプロラクトンは柔らかく、高いストレッチ特性を有し、可塑化効果を与え、例えばアメリカSolvayの6800のような市販品であり得る。
【0021】
またさらに、本発明のいくつかの実施形態では、前記生分解性ポリエステルおよび相溶化剤の重量比が2~40:1、好ましくは6~30:1である。前記生分解性ポリエステルおよび相溶化剤の重量比が上記範囲にない場合、ポリグリコール酸との相溶性が悪くなり、ポリグリコール酸の靭性が向上せず、材料の溶融強度に影響し、加工性も損なわれる。
【0022】
本発明のいくつかの実施例では、前記組成物が提供する各成分の使用量が以下の関係を満たし、ポリグリコール酸が20~90重量部であり、前記生分解性ポリエステルが10~80重量部であり、前記相溶化剤が0.2~10重量部である。この組成の組成物は、より高靭性と改善された加工性能を有するポリグリコール酸材料をさらに製造することが可能である。
【0023】
本発明のいくつかの実施例では、好ましくは、ポリグリコール酸が30~70重量部であり、前記生分解性ポリエステルが30~70重量部であり、前記相溶化剤が0.5~5重量部である。
【0024】
本発明のいくつかの実施例では、好ましくは、前記ポリグリコール酸は、240℃、2.16kg荷重におけるメルトインデックスが2~100g/10min、好ましくは20~85g/10minである。好ましくは、前記ポリグリコール酸の重量平均分子量が5万~30万、好ましくは9~25万である。この性能パラメータを有するポリグリコール酸を選択することで、十分な機械的強度と良好な加工性の効果が得られる。前記ポリグリコール酸は、例えば上海浦景化工有限公司のポリグリコール酸のような市販品であり得る。
【0025】
本発明のいくつかの実施例では、好ましくは、前記ポリグリコール酸と前記組成物は、240℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックスがそれぞれMFR1およびMFR2であり、MFR2≦60%×MFR1、好ましくは、MFR2が(10~40%)×MFR1である。前記ポリグリコール酸と前記組成物間のメルトインデックスが上記関係を満たすことで、溶融強度を上げ、加工性能を改善することができる。
【0026】
本発明のいくつかの実施例では、好ましくは、前記組成物の溶融粘度が1000~30000Pa・sである。本発明では、前記組成物の溶融粘度は回転式レオメーターにより測定される。240℃、歪み2%、周波数0.05rad/sの条件下で測定が行われる。その結果、本発明が提供する前記組成物はより良好な加工性能を有することができる。
【0027】
本発明では、前記ポリグリコール酸と前記組成物間が上記関係を満たすことで、溶融強度および加工性能を改善する作用または効果を発揮することができる。
【0028】
本発明のいくつかの実施例では、前記相溶化剤は、鎖末端の水酸基と反応して相溶性および溶融強度を向上させる技術効果を提供することが可能である。好ましくは、前記エポキシ化合物はグリシジルメタクリレート(GMA)基を含有するコポリマーからなるが、これに限定されなく、好ましくは、GMA含有量が0.5重量%~20重量%である。好ましくは、前記エポキシ化合物は、スチレン-アクリロニトリル-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-エチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、POEエラストマー-グリシジルメタクリレートコポリマー、スチレン-メタクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマーから選択された少なくとも1つである。前記エポキシ化合物は前記組成物において両成分と反応して架橋を形成する作用または効果を発揮することが可能である。例えばBASF社のADR-4468(GMA含有量が10重量%、重量平均分子量が約6680)のような市販品であり得る。
【0029】
本発明のいくつかの実施例では、好ましくは、前記無水マレイン酸グラフトポリマーは、エチレン-無水マレイン酸グラフトコポリマー、POEエラストマー-無水マレイン酸グラフトコポリマー、プロピレン-無水マレイン酸グラフトコポリマーから選択された少なくとも1つであり、好ましくは、前記無水マレイン酸グラフトポリマーのグラフト率が0.2~5重量%である。前記無水マレイン酸グラフトポリマーの重量平均分子量が2万~15万であり、例えばJOYAL GR216(グラフト率0.5重量%~1.0重量%)のような市販品であり得る。上記性能パラメータを満たす無水マレイン酸グラフトポリマーを選択することにより、前記組成物を提供することによって得られた強靭化型分解性ポリグリコール酸材料の高靭性をさらに促進することができる。
【0030】
本発明のいくつかの実施例では、好ましくは、前記無水マレイン酸ポリオレフィンコポリマーは、式1に示す構造を有し、
【0031】
【化1】
【0032】
ここで、RはH、C-Cのアルキル、フェニルまたはC-Cアルコキシであり、nは2以上の整数である。例えば、Yusuo新材料科技有限公司のSMA1000であり、Rはフェニル、nは27、重量平均分子量Mは約5500である。
【0033】
本発明のいくつかの実施例では、好ましくは、前記イソシアナート系化合物はトルエン-2,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネートおよびポリイソシアネートから選択された少なくとも1つである。前記イソシアナート系化合物は前記組成物において成分と反応し、溶融強度および体系相溶性を向上させる作用または効果を発揮することが可能である。前記ポリイソシアネートの粘度(25℃)が150~250mPa・sであり、官能基数が2.6~2.7である。前記ポリイソシアネートは、例えばWanhua化学製のPM200(25℃の粘度が150~250mPa.s、-NCO含有量が30.2~32重量%、官能基数が2.6~2.7)のような市販品である。
【0034】
より好ましくは、前記相溶化剤はエポキシ化合物および/またはイソシアナート系化合物である。
【0035】
本発明の第2側面は、本発明の組成物を溶融押出して、強靭化分解性ポリグリコール酸材料を得るステップを含む強靭化分解性ポリグリコール酸材料の調製方法を提供する。
【0036】
本発明が提供する具体的な実施形態では、前記調製方法は、以下のステップを含む。
【0037】
1)レシピに従ってポリグリコール酸、生分解性エステルを秤量して真空オーブンに入れて乾燥させ、乾燥温度50~80℃、乾燥時間4~10時間として水分を除去する。
【0038】
2)レシピに従って乾燥後のポリグリコール酸、分解性ポリエステル、相溶化剤を均一に混合する。
【0039】
3)ステップ2)で得られた混合物を二軸押出機に添加し、溶融混練反応押出を行う。
【0040】
本発明のいくつかの具体的な実施形態では、好ましくは、前記溶融混練の条件としては、温度が220~245℃、好ましくは230~240℃であり、時間が4~10分、好ましくは5~8分であり、押出機回転数が60~110rpm、好ましくは80~100rpmである。
【0041】
本発明では、発明者らは溶融混練の条件を研究した結果、上記条件を用いて強靭化型分解性ポリグリコール酸組成物を溶融混練する時、押出工程中のポリグリコール酸の分解を回避し、得られたポリグリコール酸組成物の性能劣化を回避することができる。
【0042】
本発明の第3側面は、本発明の調製方法で得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料を提供する。
【0043】
本発明で得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料は、改善された性能を有し、好ましくは、いくつかの実施例では、前記強靭化分解性ポリグリコール酸材料のノッチ衝撃強度が5kJ/m以上、破断伸度が80%以上である。
【0044】
本発明が提供する強靭化分解性ポリグリコール酸材料は、ポリグリコール酸に比べて生分解性ポリエステルおよび相溶化剤を添加するため、強靭化の同時に、体系溶融強度を高め、加工性能を改善することができ、好ましくは、前記強靭化分解性ポリグリコール酸材料は、240℃、歪み2%、周波数0.05rad/s条件における複素粘度が1000~30000Pa・s、好ましくは2000~20000Pa・sである。
【0045】
本発明の第4側面は、本発明が提供する上記材料の射出成形、ブリスター成形、ブロー成形の調製における用途を提供する。例えばフィルム、繊維およびシートの調製における用途を提供する。
【0046】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。以下の実施例では、
得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料をSEMで観察し、Nova NanoSEM 450サンプル液体窒素で冷凍し、脆性破壊、断面にカーボンスプレーを行った後材料中の各成分の分散と粒子径を、倍率10000倍で観察する。
【0047】
メルトインデックスはGB/T 3682-2000方法によって測定され、
複素粘度は回転式レオロジー周波数スキャン(240℃、歪み2%、周波数0.05~100rad/s)方法によって測定され、
GB/T 1043-2008に従ってサンプルのノッチ衝撃強度を測定し、サンプルは少なくとも5個試験し、平均値を取り、
GB/T 16421-1996に従って射出成形した小型サンプルストリップの引張性能を試験し、少なくとも5個のサンプルを試験し、平均値を取り、
ポリグリコール酸(PGA)は上海浦景化工技術有限公司から購入され、PGA-1(メルトインデックスが64.0g/10min、重量平均分子量が15万)、PGA-2(メルトインデックスが85.0g/10min, 重量平均分子量が9万)、PGA-3(メルトインデックスが45.0g/10min、重量平均分子量が20万)、
生分解性ポリエステルPBAT、BASF Ecoflex F blend C1200、
無水マレイン酸ポリオレフィンコポリマー:SMA1000(Rはフェニル、nは27、重量平均分子量Mは約5500)、Yusuo新材料科技有限公司、
MDIはInnochemから購入され、
ポリイソシアネート(PMDI)、Wanhua化学製PM200(25℃の粘度が150~250mPa.s、-NCO含有量が30.2~32重量%、官能基数2.6~2.7)、
エポキシ化合物:BASF社ADR-4468(GMA含有量が10重量%、重量平均分子量は約6680)。
【0048】
<実施例1>
70重量部のポリグリコール酸PGA-1、30重量のPBAT、5重量部のMDIを均一に混合し、二軸押出機で240℃で6分間溶融混練し、押出機回転数が100rpmで押出造粒して、強靭化分解性ポリグリコール酸材料を得る。
【0049】
組成物のレシピおよび試験結果は表1に示される。
【0050】
原料PGA、PBAT、MDIと実施例1で得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料を赤外線スペクトルで試験し、図1のスペクトル結果を得る。図から分かるように、PGA/PBAT/MDIブレンド中のMDIに属する2300cm-1-N=C=Oの特徴ピークが消失し、3320cm-1に位置する新しい-NH-が生成し、これは、-OHと-N=C=Oの反応生成物であり、MDIはPGA、PBATの鎖末端の-OHと反応して架橋ネットワーク構造を形成することができることを示している。
【0051】
<実施例2>
50重量部のポリグリコール酸PGA-1、50重量のPBAT、2重量部のMDIを均一に混合し、二軸押出機で235℃で8分間溶融混練し、押出機回転数が80rpmで押出造粒して、強靭化分解性ポリグリコール酸材料を得る。
【0052】
組成物のレシピおよび試験結果は表1に示される。
【0053】
<実施例3>
40重量部のポリグリコール酸PGA-1、60重量のPBAT、5重量部のMDIを均一に混合し、二軸押出機で230℃で5分間溶融混練し、押出機回転数が90rpmで押出造粒して、強靭化分解性ポリグリコール酸材料を得る。
【0054】
組成物のレシピおよび試験結果は表1に示される。
【0055】
<実施例4>
30重量部のポリグリコール酸PGA-1、70重量のPBAT、5重量部相溶化剤(MDI)を均一に混合し、二軸押出機で240℃で6分間溶融混練し、押出機回転数が100rpmで押出造粒して、強靭化分解性ポリグリコール酸材料を得る。
【0056】
組成物のレシピおよび試験結果は表1に示される。
【0057】
<実施例5>
50重量部のポリグリコール酸PGA-1、50重量のPBAT、5重量部相溶化剤(ADR-4468)を均一に混合し、二軸押出機で240℃で6分間溶融混練し、押出機回転数が100rpmで押出造粒して、強靭化分解性ポリグリコール酸材料を得る。
【0058】
組成物のレシピおよび試験結果は表1に示される。
【0059】
<実施例6>
50重量部のポリグリコール酸PGA-1、50重量のPBAT、5重量部PMDIを均一に混合し、二軸押出機で240℃で6分間溶融混練し、押出機回転数が100rpmで押出造粒して、強靭化分解性ポリグリコール酸材料を得る。
【0060】
組成物のレシピおよび試験結果は表1に示される。
【0061】
実施例6で得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料をSEMで観察し、図3に示されるSEM図を得る。反応性相溶化剤MDIを添加した後、PGA-2がPBATと反応し、両相相溶性が高まり、さらに微細繊維の連続相構造を形成することができることがわかる。
【0062】
<実施例7>
50重量部のポリグリコール酸PGA-1、50重量のPBAT、5重量部の相溶化剤(SMA1000)を均一に混合し、二軸押出機で240℃で6分間溶融混練し、押出機回転数が100rpmで押出造粒して、強靭化分解性ポリグリコール酸材料を得る。
【0063】
<実施例8>
50重量部のポリグリコール酸PGA-2、50重量のPBAT、5重量部のMDIを均一に混合し、二軸押出機で240℃で6分間溶融混練し、押出機回転数が100rpmで押出造粒して、強靭化分解性ポリグリコール酸材料を得る。
【0064】
組成物のレシピおよび試験結果は表1に示される。
【0065】
<実施例9>
50重量部のポリグリコール酸PGA-3、50重量のPBAT、5重量部のMDIを均一に混合し、二軸押出機で240℃で6分間溶融混練し、押出機回転数が100rpmで押出造粒して、強靭化分解性ポリグリコール酸材料を得る。
【0066】
組成物のレシピおよび試験結果は表1に示される。
【0067】
<比較例1>
100重量部のポリグリコール酸PGA-1を二軸押出機で240℃で6分間溶融押出造粒し、回転数が100rpmである。試験結果は表1に示される。
【0068】
<比較例2>
100重量部のポリグリコール酸PGA-1と5重量部のMDIを均一に混合し、二軸押出機で240℃で6分間溶融混練し、押出機回転数が100rpmで押出造粒する。
【0069】
<比較例3>
70重量部のポリグリコール酸PGA-1、30重量のPBATを均一に混合し、二軸押出機で240℃で6分間溶融混練し、押出機回転数が100rpmで押出造粒する。組成物のレシピおよび試験結果は表1に示される。
【0070】
<比較例4>
50重量部のポリグリコール酸PGA-1、50重量のPBATを均一に混合し、二軸押出機で240℃で6分間溶融混練し、押出機回転数が100rpmで押出造粒する。組成物のレシピおよび試験結果は表1に示される。
【0071】
比較例4で得られたポリグリコール酸材料をSEMで観察し、図2に示されるSEM図を得る。比較例4の両相相溶性が悪く、相溶化剤の不在による相分離構造が顕著に現れていることがわかる。
【0072】
比較例4で得られたポリグリコール酸材料、実施例6で得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料について粘度測定を行い、図4に示されるレオロジー複合粘度-周波数図を得る。反応性相溶化剤MDIを添加した後、PGAとPBATは互いに反応することができ、分子鎖は成長し、分子鎖の絡み合いが増加し、溶融粘度は著しく増加したことがわかる。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
実施例、比較例および表1の結果から分かるように、本発明が提供する組成物、生分解性樹脂および増量剤を用いて強靭化変性して得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料は、より高いノッチ衝撃強度、破断伸度、引張強度を有することが可能である。例えば、実施例1と比較例3、実施例2、5-9と比較例4を比較し、組成物の溶融体強度が改善され、より良好な加工性能を有し、得られた材料の靭性と引張性能が著しく向上する。実施例3、4で得られた技術的効果も比較例よりも優れる。比較例1、2が提供する材料の靭性と引張性能は、いずれも本発明が提供する強靭化分解性ポリグリコール酸材料の性能よりも低い。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明の技術的思想の範囲内で、本発明の技術的解決手段に様々な単純な変形を加え、各技術的特徴を他の任意の適切な方法で組み合わせることができ、これらの単純な変形および組み合わせは同様に本発明の開示内容と見なされ、すべて本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】原料PGA、PBAT、MDIおよび本発明の実施例1で得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料の赤外線スペクトルである。
図2】比較例4で得られたポリグリコール酸材料のSEM図である。
図3】実施例6で得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料のSEM図である。
図4】比較例4で得られたポリグリコール酸材料、実施例6で得られた強靭化分解性ポリグリコール酸材料の複素粘度-周波数を示す図である。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】