(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ピストンリング
(51)【国際特許分類】
F16J 9/18 20060101AFI20231115BHJP
F16J 9/16 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
F16J9/18
F16J9/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513317
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 DE2020000205
(87)【国際公開番号】W WO2022053087
(87)【国際公開日】2022-03-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178522
【氏名又は名称】ビューラハ エンジニアリング インターナショナル ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブエター、ヨーゼフ
【テーマコード(参考)】
3J044
【Fターム(参考)】
3J044AA02
3J044AA14
3J044BA01
3J044BC09
3J044CB21
3J044CB25
3J044DA16
(57)【要約】
本発明は、リング本体(1)とリング継手(9)とを備え、リング本体(1)が、互いに対向して位置する、リング継手(9)を形成する第1のリング本体端部(7)および第2のリング本体端部(8)を備え、第1のリング本体端部(7)が、突出部輪郭断面(11)を有する突出部分(10)を備え、第2のリング本体端部(8)が、基部輪郭(13)を有する基部(12)を備え、突出部分(10)の突出部分分離面(16)および基部(12)の基部分離面(17)が、面的およびシール性物理的接触で互いに対向し、分離平面(18)を形成し、分離平面(18)が、傾斜リング面(5)に対して逆傾斜を有し、分離平面(18)が、外側分離線(19)および内側分離線(20)を形成し、分離線(19,20)の少なくとも1つが、リング本体(1)に対して同心の曲率半径を有する、ピストンリングに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング本体(1)とリング継手(9)とを備え、
前記リング本体(1)が、径方向リング面(3)と傾斜リング面(5)とを有するリング本体面(2)を有し、
前記径方向リング面(3)が、シリンダの円筒状内側バレル面(4)に対して軸方向に変位可能な摺接面として設計され、
前記傾斜リング面(5)が、ピストンの外側リング溝(6)の傾斜リング溝面に載置されるように重ね合わせ面として設計され、
前記リング本体(1)が、第1のリング本体端部(7)および第2のリング本体端部(8)を有し、
前記リング継手(9)の両側に配置された前記リング本体端部が、前記リング継手(9)を形成し、
前記第1のリング本体端部(7)が、突出部輪郭断面(11)を有する突出部分(10)を有し、
前記第2のリング本体端部(8)が、基部輪郭(13)を有する基部(12)を有し、前記基部(12)が、受入れ輪郭断面(15)を有する受入れ輪郭(14)を形成し、
前記突出部分(10)が、前記受入れ輪郭(14)と係合し、前記受入れ輪郭断面(15)と前記突出部分断面(10)とが一致し、
前記突出部分(10)の突出部分分離面(16)と前記基部(12)の基部分離面(17)とが、面的およびシール性物理的接触で互いに対向して設けられ、分離平面(18)を形成し、
前記分離平面(18)が前記傾斜リング面(5)に対して逆傾斜を有し、前記分離平面(18)が前記径方向リング面(3)と交差し、前記分離平面(18)と前記径方向リング面(3)との交差線に外側分離線(19)が形成され、前記分離平面(18)が前記傾斜リング面(5)と交差し、前記分離平面(18)と前記傾斜リング面(3)との交差線に内側分離線(20)が形成され、前記分離線(19,20)が前記分離面(16,17)を画定し、前記分離線(19,20)の少なくとも1つが前記リング本体(1)と同心の曲率半径を有する、ピストンリング。
【請求項2】
前記外側分離線(19)および前記内側分離線(20)が、前記リング本体(1)に対して、および互いに同心の曲率半径を有することを特徴とする、
請求項1に記載のピストンリング。
【請求項3】
前記分離面が側方円錐台形部分表面として設計されることを特徴とする、
請求項1または2に記載のピストンリング。
【請求項4】
前記受入れ輪郭断面(15)が三角形として設計されることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載のピストンリング。
【請求項5】
前記分離面がワイヤ侵食面として設計されることを特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載のピストンリング。
【請求項6】
前記リング本体(1)がさらなる傾斜リング面を有し、前記さらなる傾斜リング面が前記傾斜リング面(5)とは逆に傾斜していることを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載のピストンリング。
【請求項7】
前記第1のリング本体端部(7)が、さらなる突出部輪郭断面(26)を有するさらなる突出部分(25)を有し、
前記基部(12)が、さらなる受入れ輪郭断面(28)を有するさらなる受入れ輪郭(27)を有し、
前記さらなる突出部分(25)が、前記さらなる受入れ輪郭(27)と係合し、前記さらなる受入れ輪郭断面(28)および前記さらなる突出部輪郭断面(26)が一致し、
前記さらなる突出部分(25)のさらなる突出部分分離面(29)と、前記基部(12)のさらなる基部分離面(30)とが、面的およびシール性物理的接触で互いに対向し、さらなる分離平面(31)を形成し、
前記さらなる分離平面(31)が、前記さらなる傾斜リング面(24)に対して逆傾斜を有し、
前記さらなる分離平面(31)が前記径方向リング面(3)と交差し、前記さらなる分離平面(31)と前記径方向リング面(3)との交差線にさらなる外側分離線(32)が形成され、
前記さらなる分離平面(31)が前記さらなる傾斜リング面(24)と交差し、前記さらなる分離平面(31)と前記さらなる傾斜リング面(24)との交差線にさらなる内側分離線(33)が形成され、
前記さらなる分離線(32,33)が前記さらなる分離面(29,30)を画定し、
前記さらなる分離線(32,33)が、互いに、および前記リング本体(1)と同心の曲率半径を有することを特徴とする、
請求項6に記載のピストンリング。
【請求項8】
前記リング本体(1)が、内側に径方向に配置された少なくとも1つの弱化凹部(38)を有することを特徴とする、
請求項1~7のいずれか一項に記載のピストンリング。
【請求項9】
第1のピストンリング(34)と第2のピストンリング(35)とを備え、
前記ピストンリング(34,35)が、請求項1~5のいずれか一項に従って設計され、
前記ピストンリング(34,35)がそれぞれ、軸方向リング面(36,37)を有し、
前記ピストンリング(34,35)が平行に配置され、前記第1のピストンリング(34)の前記軸方向リング面(36)と前記第2のピストンリング(35)の前記軸方向リング面(37)とが互いに物理的に接触して載置されていることを特徴とする、ピストンリング構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高いシール効果を有するシールピストンリングに関する。
【背景技術】
【0002】
最新技術は、多数の異なるピストンリングを記載している。ピストンリングは、機械工学および自動車工学において、特にエンジン、油圧シリンダおよび他の多くの適用分野に使用される。基本的に、ピストンリングの機能は、シリンダボアとピストンのバレル面との間の移動間隙を液体および気体の圧力媒体に対してシールすることである。この目的のために、最新技術では特にスプリットピストンリングが使用されている。ピストンリングの円周での分割は、リング間隙としても知られている。通常、ピストンリングは、シリンダボアに適合するように弾性設計を有する。ピストンリングは、張力のかかっていない楕円形状で製造される。これらは、設置されたときに、シリンダ壁に適合する意図された丸みを帯びた形状をとり、次いで、一定量の予張力を示す。リング間隙は、熱伸びを補償するために、設置された状態で完全には閉じないので、常に一定量の漏れがある。これは、圧力損失および媒体オーバーフローをもたらす。ピストンリングのシール機能は多くの要因に依存するため、最適化の必要性は依然として大きい。
【0003】
まず、シール面は、シリンダボアのバレル面およびピストンのリング溝の肩面に形成された摺動面に形成される。したがって、シール機能の面圧は、媒体の圧力およびシールリングの予張力に依存する。後者の依存性は、媒体の圧力のみが動的効果を有するように一定の大きさである。
【0004】
さらに、開断面、したがって圧力損失および媒体オーバーフローを低減するために、リング継手において2つの対向するピストンリング端部の重なりを設けることが従来技術から基本的に知られている。この解決策の欠点は、多くの用途ではシール効果が低すぎること、および摩耗が増加するにつれて残存する漏れが増加することである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、広範囲の用途、特に油圧および空気圧用途、ならびに内燃機関などの燃焼プロセスにおける用途に適し、高い耐摩耗性を有する、シール効果の高いシールピストンリングを提供することである。
【0006】
この課題は、請求項1に示す特徴によって解決される。好ましいさらなる実施形態は、従属請求項から生じる。
【0007】
本発明によるピストンリングは、円周の周りに分割された、したがってリング本体およびリング継手を有する実質的に回転対称の構成要素である。
【0008】
リング本体は、リング本体面と、第1および第2のリング本体端部とを有する。
【0009】
特に、リング本体面は、径方向リング面および傾斜リング面を有する。
【0010】
径方向リング面は、シリンダの円筒状内側バレル面に対して軸方向に変位可能な摺接面として形成されている。したがって、径方向リング面は、本発明によるピストンが意図されたように使用されるとき、それ自体公知の様式でシリンダの内壁と物理的に接触し、物理的接触は、ピストンがシリンダに対して移動するとき、摺動接触である。
【0011】
また、リング本体面は、ピストンの外側リング溝の傾斜リング溝面との重ね合わせ面として形成された傾斜リング面を有する。傾斜リング面の設計は、意図したように使用されたときにピストンの周方向リング溝に対応して設計された傾斜側方リング面と係合し、ピストンリングの動的拡張を容易にする。この拡張は、傾斜リング面の斜めに作用する力を介して起こる。したがって、圧力媒体の圧力負荷から生じる軸方向に作用する力は、ピストン溝の傾斜面に斜めに作用する接触力をもたらす。さらに、傾斜リング面におけるくさび効果は、ピストンリングの径方向の拡張をもたらし、径方向リング面とシリンダの内側バレル面との間の面圧に対する力効果をもたらす。これにより、シール効果が向上する。同時に、面圧は、作動圧のないピストンの戻り移動中に、ばね効果に基づく面圧まで低下し、摩耗が低減される。さらに、傾斜リング面は、径方向リング面またはシリンダの内側シリンダ壁が摩耗した場合のピストンリングの自動再調整をサポートする。
【0012】
本発明によれば、リング本体端部は、リング継手において互いに対向して配置される。したがって、それらはリング継手を形成する。
【0013】
本発明によれば、第1のリング本体端部および第2のリング本体端部は、互いに補完するように設計される。具体的には、第1のリング本体端部は突出部分を備え、第2のリング本体端部は基部を備える。
【0014】
第1のリング本体端部は、突出部輪郭断面を有する突出部分を有する。突出部輪郭断面は、突出部の形状によって決定され、主長手方向軸に平行な径方向断面平面における突出部分の輪郭を示す。したがって、突出部輪郭は、ピストンリングの物理的部分によって形成される。
【0015】
第2のリング本体端部は、基部輪郭を有する基部を有し、基部は、受入れ輪郭断面を有する受入れ輪郭を同時に形成する。基部輪郭は、ピストンリングの物理的部分によって形成されるが、受入れ輪郭は自由空間である。受入れ輪郭断面は、基部輪郭によって満たされていない自由空間によって画定され、主長手方向軸に平行な径方向断面平面内の輪郭でもある。断面平面は、突出部分輪郭断面の1つと同じである。
【0016】
本発明によれば、突出部分は、受入れ輪郭に係合する。ここで、受入れ輪郭断面と突出部輪郭断面とは一致する。物理的カテゴリとしての突出部輪郭断面は、自由空間としての受入れ輪郭断面を満たす。
【0017】
本発明によれば、突出部分の突出部分分離面と基部の基部分離面とは、面的およびシール性物理的接触で互いに対向して設けられ、分離平面を形成する。以下、突出部分分離面および基部分離面を総称して分離面ともいう。
【0018】
分離面は、傾斜リング面に対して逆傾斜を有する。逆傾斜は、傾斜リング面および分離面の両方がそれぞれピストンリングの主要面に対して傾斜を有し、これらの傾斜がそれぞれ主要面の異なる側に対して存在するように理解されるべきである。
【0019】
本発明によれば、分離平面は、径方向リング面と交差し、分離平面と径方向リング面との交差線に外側分離線を形成することをさらに特徴とする。
【0020】
また、分離線は、傾斜リング面とも交差し、分離平面と傾斜リング面との交差線に内側分離線を形成する。
【0021】
以下、外側分離線および内側分離線を総称して分離線ともいう。
【0022】
2つの分離線はまた、2つの分離面を画定する。これらは、2つの分離面の径方向の境界である。
【0023】
特に、本発明によるピストンリングは、2つの分離線の少なくとも1つが、リング本体に対して同心の曲率半径を有することを特徴とする。
【0024】
したがって、驚くべきことに、リング本体端部が、傾斜リング面および分離平面の傾斜ならびに同心分離線設計によって、互いに軸方向、径方向、および接線方向にも常に自動的に整列し、その結果、シール性の面的な物理的接触が分離面で確立されるので、流体および気体の圧力媒体に対してほぼ完全なシールを確実に提供する解決策が見出された。
【0025】
一方を他方に係合させる、このように設計されたリング本体端部は、可変の周方向拡張および結果として生じる可変のリング間隙を伴ってもシールの重なりを示す非常に精確なシール形状を有する。この特徴はまた、少なくとも1つの分離線、好ましくは両方の分離線が同心の曲率半径を有するという事実から生じる。したがって、ピストンリングは、周方向に随時拡張または収縮することができ、分離線を介したシールが維持される。円周の周りの拡張または収縮は、シリンダの内側バレル面の波状形状、または温度によって誘発される拡張もしくは縮小、または摩耗に起因し得る。
【0026】
有利には、本発明によるピストンリングは、その特に高い気密性を同時に維持しながら、これらの要因を補償することができる。
【0027】
また、突出部分は、基部との分離面を径方向および周方向に随時摺動可能である。これにより、常に摩耗補償が保証され、一貫したシール機能が得られる。
【0028】
傾斜リング面により、本発明によるピストンリングは、有利には、ピストンに対するピストンリングの同心整列を支持する自己センタリング効果を示す。
【0029】
さらに、ピストンリングは、好ましくは金属製とすることができ、したがって高温応力にも耐えることができることが有利である。
【0030】
したがって、有利には、本発明によるピストンリングは、特に燃焼機関において使用することができるが、液圧または空気圧作動シリンダまたは減衰シリンダ、ならびに高度の気密性が必要とされるかもしくは特に有利である他のすべての用途においても使用することができる。
【0031】
第1の有利なさらなる発展形態によれば、外側分離線および内側分離線の両方は、リング本体に対して同心の曲率半径を有する。さらに、両方の分離線は、したがって、互いに同心であり、したがって同じである曲率半径を有する。
【0032】
この発展形態は、シリンダの内側バレル面にシール摺動接触する径方向リング面と、ピストンのリング溝の側面にシール接触する傾斜リング面との両方において、関与するすべてのシール面が一緒になって、したがって特に高いレベルのシールを提供するという特に有利な効果を有する。
【0033】
さらに、有利には、突出部分の分離面と基部の分離面とが互いに接線方向に、すなわち曲率半径に沿って移動することができ、したがって面的なシール性物理的接触を維持することができるため、ピストンリングの円周の変化がシールに影響を及ぼさないことが可能になる。
【0034】
次の有利なさらなる発展形態によれば、リング本体端部の分離面は、側方円錐台形面として設計される。
【0035】
この発展形態では、円錐台形面として設計された突出部分の分離面と、円錐台形面として設計された基部の分離面とは、互いに対向し、突出部分の分離面は凹状の内側円錐台形面であり、基部の分離面は凸状の外側円錐台形面である。対向する両方の円錐台形面は同じ幾何学的形状を有し、したがって、互いに対して長手方向および横断方向の両方に移動することができ、したがって特に高いレベルの気密性を保証する。
【0036】
分離面のこの形状により、円周の変化または摩耗の場合でもシール効果が維持される。さらに、外側リング溝の傾斜リング溝面に対する逆傾斜は、径方向の力効果によってシール面圧を強化する。
【0037】
次の有利なさらなる発展形態によれば、受入れ輪郭断面は三角形として設計される。
【0038】
好ましくは、この形状は二等辺三角形を形成する。ここで、基部側は、シリンダの内側バレル面に載置され、第1の脚部は、基部の受入れ輪郭に載置される。第2の脚部は、傾斜リング面に対応し、ピストンのリング溝の側壁に対して載置される。三角形が二等辺三角形でない場合も同様である。
【0039】
受入れ輪郭断面の三角形輪郭は、面的なシール性物理的接触、したがってシール効果を維持しながら、特に摩耗に誘発される、基部、突出部分、およびシリンダの内側バレル面の間の位置関係の補償を可能にする。したがって、上述の構成要素は、それら自体が互いに対して自動的に整列し、したがって、それらは、摩耗に関係なく気密性をもたらす。
【0040】
次の有利なさらなる発展形態では、分離面はワイヤ侵食面として設計される。この精確な製造プロセスにより、突出部分分離面と基部分離面との重なり精度が高い面が得られる。したがって、他の製造プロセスによって引き起こされ得る分離面間の間隙を通じた漏れは、有利に最小化されるか、または完全に排除される。その結果、確実なシール効果が得られる。
【0041】
次の有利なさらなる発展形態では、リング本体は、さらなる傾斜リング面を有し、さらなる傾斜リング面の傾斜は、傾斜リング面とは逆である。したがって、ピストンリングは、好ましくは台形断面を有する。
【0042】
このさらなる発展形態は、特に複動シリンダにおいて特別な利点を有する。ここでは、圧力媒体は、交互の軸方向に、ピストンに作用する。どちらの負荷の場合にも同じ作用モードを達成するために、ピストンリングの2つの傾斜リング面は、軸方向に互いに対向し、対向する方向に傾斜している。
【0043】
今説明した変形形態による次の有利なさらなる発展形態では、第1のリング本体端部は、さらなる突出部輪郭断面を有するさらなる突出部分を有する。さらに、基部は、さらなる受入れ輪郭断面を有するさらなる受入れ輪郭を有する。さらに、さらなる突出部分は、さらなる受入れ輪郭に係合し、さらなる受入れ輪郭断面とさらなる突出部輪郭断面とは一致する。その結果、さらなる突出部分のさらなる突出部分分離面および基部のさらなる基部分離面は、対面して、面的およびシール性物理的接触の状態にあり、さらなる分離平面を形成する。さらに、さらなる分離平面は、さらなる傾斜リング面に対して逆傾斜を有し、さらなる分離平面は、径方向リング面と交差し、さらなる分離平面と径方向リング面との交差線にさらなる外側分離線を形成する。さらに、さらなる分離平面は、さらなる傾斜リング面と交差し、さらなる分離平面とさらなる傾斜リング面との交差線にさらなる内側分離線を形成し、これらはさらなる分離面を画定する。さらに、さらなる分離線は、互いにおよびリング本体に対して同心の曲率半径を有する。
【0044】
本発明によるピストンリングのこのさらなる発展形態は、複動シリンダのための特定の利点を有する解決策を提供する。ピストンリングの幾何学的形状は、主平面とも呼ばれるピストンリングの軸方向に垂直な平面で鏡像反転され、ピストンリングは、ここでは2つの対向する交互の傾斜リング面を有する。さらに、リング本体端部の幾何学的形状は、主平面内で鏡映される。このようにして、ピストンリングに遠位径方向に作用し、それを円周の周りに伸張させるくさび効果は、両方のピストン移動方向に交互にピストン移動する場合にも与えられる。ピストンリングの径方向リング面は、ピストンの内側および外側両方への移動の間、シリンダの内側バレル面に押し付けられる。
【0045】
さらなる有利なさらなる発展形態によれば、ピストンリングには少なくとも1つの弱化凹部が設けられる。互いにおよびリング継手から均一な角度距離で円周の周りに分布されたいくつかの弱化凹部が存在することが好ましい。この設計は、円周の周りに分布する、シリンダの内側バレル面上のばね力に誘発される接触力を均一に低減し、突出部分と基部との間の自由な移動および自己調整作用を支持する。同時に、圧力媒体の動作圧力によって引き起こされる有利な接触力は損なわれないままである。したがって、同じ初期形状および同じ材料を有するピストンリングを、ばね力に誘発される接触圧力によって個々の用途要件に簡単な様式で適合させることができることが特に有利である。
【0046】
本発明のさらなる態様は、ピストンリング構成である。この構成は、第1および第2のピストンリングを有し、これらの2つのピストンリングは、本発明によるピストンリングである。
【0047】
この設計では、ピストンリングはそれぞれ、軸方向リング面を有する。さらに、ピストンリングは、平行に配置され、第1のピストンリングの軸方向リング面および第2のピストンリングの軸方向リング面は、互いに物理的に接触して載置される。したがって、2つのピストンリングは、ピストンの同じリング溝内で互いに回転または鏡像反転されて配置される。リング溝は、台形の径方向に拡張する断面を有し、2つの傾斜した、好ましくは対称的に傾斜した溝側面を有する。
【0048】
本発明によるこの構成は、複動シリンダのための特定の利点を有するさらなる解決策を示す。2つの相互に鏡像反転されたピストンリングが上下に使用される。これにより、軸方向に対向する2つの側面から交互に作用する圧力媒体に対して等しく効果的なシールを提供することが可能になる。この変形形態はまた、シリンダ-ピストン配置の異なる公差に対する補償が、互いに浮動するリングの設置位置によって大幅に改善されるという利点を有する。第1および第2のピストンリングが好ましくは同一であり、したがって2つの例において1つのタイプのピストンリングのみを使用することができるという技術的利点およびコスト的利点もある。リング溝の台形断面は、ピストンリングの傾斜リング面と併せて、それらが互いに対して自動的にセンタリングされるという効果も有する。
【0049】
以下、例示的な実施形態を用いて、添付の図面に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図4】リング本体端部におけるピストンリングの斜視詳細断面図である。
【
図5】リング本体端部の断面図および概略図である。
【
図6】2つの傾斜リング面を有するピストンリングの断面図である。
【
図7】2つの傾斜リング面および2つの突出部分を有するピストンリングの断面図である。
【
図8】2つの傾斜リング面および2つの突出部分を有するピストンリングの概略図である。
【
図9】2つの傾斜リング面および2つの突出部分を有するピストンリングの基部の概略図である。
【
図10】弱化凹部を有するピストンリングの上面図である。
【0051】
図1は、ピストンリングの第1の概観図を斜視図で示す。
図2は、ピストンリングを、ピストンの移動軸に対応する主長手方向軸に沿って上面図で示す。
図1および
図2のいずれも、リング本体面2を有するリング本体1を示し、リング本体面2は、径方向リング面3および傾斜リング面5を含む。リング本体1は、一点で中断されている。ここで、第1のリング本体端部7および第2のリング本体端部8は、互いに対向した位置にある。それらの間の中断部は、リング継手9を形成する。
【0052】
リングは、弛緩位置とも呼ばれる、組み立てられていない弛緩した製造位置で示されている。この実施形態では、リング本体端部7、8は、弛緩位置で上下に突出していない。ここには示されていない代替設計では、それぞれの他方のリング本体端部7、8への部分的な突出部が弛緩位置で既に存在する。
【0053】
図3は、リング継手9を通るリング本体1の断面を示す。リング本体面2は、ピストンリング全体の表面を示す。リング本体1の外側バレル面は、径方向リング面3である。軸方向側において、リング本体1は傾斜リング面5を有し、それによってピストンリングはピストンの周方向リング溝の一致する対向輪郭に係合する。さらに、破線の円形線で強調表示された突出部輪郭断面11を有する突出部分10、ならびに突出部分分離面16が示されている。
【0054】
図4は、リング継手9およびリング本体端部7、8におけるピストンリングの断面を斜視図で示す。
【0055】
この図では、弛緩位置にあるピストンリングの非設置形状が示されている。これは、径方向リング面3の方向にピストンリングの外側に示されている。傾斜リング面5は、これに対して傾斜して周方向に位置している。突出部分10は、第1のリング本体端部7に位置し、
図3の図面方向とは反対の突出部分分離面16を含む。
【0056】
第2のリング本体端部8の対応する相手は、基部12を形成する。受入れ輪郭14は、分離平面18によって画定され、基部の分離面を形成し、突出部分10を面状に受け入れる。張力がかけられた設置位置では、突出部分分離面16を有する突出部分10は、基部12上、すなわち基部分離面17上に平坦に位置する。そこに分離平面18が形成される。リング継手9において中断されたピストンリングは、分離平面18における突出部分分離面16と基部分離面17との面接触によって再びシールされる。
【0057】
突出部分分離面16と基部分離面17との重複ゾーンにおいて、分離平面18は、この例示的な実施形態では円錐台形面の断面形状を有する。内側分離線20は、傾斜リング面5への湾曲した縁部に形成され、外側分離線19は、径方向リング面3への湾曲した縁部に形成される。分離線19、20は、リング本体の円中心点に対して同心円状に配置された円弧を示し、したがって、ピストンリングの周方向拡張または周方向縮小中に、突出部分分離面16と基部分離面17とを互いに重ねて合同で摺動させることを可能にする。
【0058】
図5は、設置状態のピストンリングの概略図である。様々な構成要素間の個々の間隙は、よりよく見えるように大きく拡大されており、縮尺通りではない。
図5は、概略図であり、各構成要素の位置関係および移動関係と、各構成要素に作用する力とを示すものである。
【0059】
したがって、
図5によれば、リング本体1は、ピストン21のリング溝6に設置される。この溝は、傾斜リング溝面23を有するように設計されている。ピストンがシリンダ内で移動するとき、ピストンリングは、シリンダ22の内側バレル面4から軸方向に離れて径方向リング面3によって摺動する。圧力媒体は、ピストンリングの平坦な軸方向リング面(参照符号なし)に圧力pで作用する。ピストンリングは、ピストン21のリング溝6内で傾斜リング溝面23に押し付けられ、傾斜リング面5によって傾斜リング溝面23を摺動させる。傾斜は、圧力媒体に対するシール効果をもたらすと同時に、くさび効果に起因してピストンリングに径方向の力を引き起こし、したがってピストンリングを拡張させるように設計される。これにより、径方向リング面3がシリンダ22の内側バレル面4に確実に押し付けられ、シール効果が向上する。さらに、突出部輪郭断面11は、基部輪郭13の基部分離面17上の突出部分分離面16によって、分離面16、17の間の二重矢印によって示されるように横断方向にも、長手方向、すなわち円周に沿っても、摺動することができる。同時に、突出部分10および基部12は、径方向リング面3および内側バレル面4に沿って互いに対して軸方向に変位可能であり、それにより、たとえ摩耗した場合であっても、分離面16、17間の間隙を常に再び閉じることができる。
【0060】
部分10、12の軸方向変位性と併せて、分離面16、17を横断方向および長手方向に摺動させることにより、摩耗によるピストンリングの材料摩耗の補償が可能になり、常に面接触が保証され、したがって耐用年数の間、一定のシール効果が保証される。
【0061】
図6は、ピストンリングがさらなる傾斜リング面23を有する実施形態を示す。
【0062】
主に、
図2に対する説明は、対応する様式で適用される。また、ここでは、さらなる傾斜リング面23が設けられている。この実施形態では、リング面5、23は、互いに反対側に対称的に配置される。
【0063】
図7および
図8は、ピストンリングが、さらなる傾斜リング面24に加えて、さらなる突出部分25およびさらなる突出部輪郭26を有する実施形態を示す。よりよく説明するために、
図7は、例示的な実施形態における対称的な設計を概略的に示しており、ここでも、
図4と同様に、様々な構成要素間の間隙は、よりよく見えるように大きく拡大されており、縮尺通りではない。
【0064】
傾斜リング面5、突出部分分離面16、およびそれに対向する、内側分離線20と外側分離線19との間に形成され、それらによって画定される分離平面18を有する基部12の基部分離面17は、突出部分10に割り当てられる。
【0065】
さらなる傾斜リング面24、さらなる突出部分分離面29、およびそれに対向する、さらなる内側分離線33とさらなる外側分離線32との間に形成され、それらによって画定される、さらなる分離面31を有する基部12のさらなる基部分離面30は、さらなる突出部分25に割り当てられる。
【0066】
図9は、径方向断面平面における概略断面図で基部12を示す。
図9は、特に、その受入れ輪郭断面11を有する受入れ輪郭14と、その受入れ輪郭断面28を有するさらなる受入れ輪郭27とを示す。他のすべての点では、
図8の説明の内容および参照番号がそれに応じて適用される。
図8に示されるように、さらなる受入れ輪郭27にまたがる設置空間に、さらなる突出部分25は、緊張状態で配置される。したがって、突出部分10は、同様に
図8に示されるように、受入れ輪郭14にまたがる設置空間内の緊張位置に配置される。
【0067】
図10は、弱化凹部38が径方向リング面3の反対側に配置されているピストンリングを示す。例示的な実施形態では、互いに45度の角度で配置された合計7個の弱化凹部38が設けられている。さらに、リング継手9に隣接する弱化凹部38はそれぞれ、リング継手9に対して同様に45度の角度を有する。弱化凹部38により、また、それらの均一な分布により、シリンダの内側バレル面4に対する、ばね力に誘発される接触力が、均一分布式に円周の周りで低減され、突出部分と基部との間の自由な移動および自己調整作用が支持される。同時に、圧力媒体の動作圧力によって引き起こされる有利な接触力は損なわれないままである。
【0068】
図11は、第1のピストンリング34と第2のピストンリング35とを備えるピストンリング構成を示す。両方のピストンリング34、35は、本発明によるピストンリングとして設計されている。さらに、それらはそれぞれ、軸方向リング面36、37を有する。2つのピストンリング34、35は、軸方向リング面36、37において互いに押し当てて配置され、このようにして、それらは互いに対して浮動位置に取り付けられる。
【符号の説明】
【0069】
1 リング本体
2 リング本体面
3 径方向リング面
4 内側バレル面
5 傾斜リング面
6 ピストンの外側リング溝
7 第1のリング本体端部
8 第2のリング本体端部
9 リング継手
10 突出部分
11 突出部輪郭断面
12 基部
13 基部輪郭
14 受入れ輪郭
15 受入れ輪郭断面
16 突出部分分離面
17 基部分離面
18 分離平面
19 外側分離線
20 内側分離線
21 ピストン
22 シリンダ
23 傾斜リング溝面
24 さらなる傾斜リング面
25 さらなる突出部分
26 さらなる突出部輪郭断面
27 さらなる受入れ輪郭
28 さらなる受入れ輪郭断面
29 さらなる突出部分分離面
30 さらなる基部分離面
31 さらなる分離平面
32 さらなる外側分離線
33 さらなる内側分離線
34 第1のピストンリング
35 第2のピストンリング
36 第1のピストンリングの軸方向リング面
37 第2のピストンリングの軸方向リング面
38 弱化凹部
【国際調査報告】