(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ピストンリング
(51)【国際特許分類】
F16J 9/18 20060101AFI20231115BHJP
F16J 9/16 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
F16J9/18
F16J9/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516109
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 DE2020000206
(87)【国際公開番号】W WO2022053088
(87)【国際公開日】2022-03-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178522
【氏名又は名称】ビューラハ エンジニアリング インターナショナル ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビューター、ヨーゼフ
【テーマコード(参考)】
3J044
【Fターム(参考)】
3J044AA02
3J044AA14
3J044BA01
3J044BC09
3J044CB21
3J044CB25
3J044DA16
(57)【要約】
本発明は、リング本体(1)とリングジョイント(9)とを有するピストンリングに関し、該リング本体(1)は、互いに反対側に静止し、リングジョイント(9)を形成する第1のリング本体端部(7)及び第2のリング本体端部(8)を有する。第1のリング本体端部(7)は、突出輪郭断面(11)を有する突出部(10)を有し、第2のリング本体端部(8)は、基部輪郭(13)を有する基部(12)を有し、突出部(10)の突出部分離面(16)及び基部(12)の基部分離面(17)は、二次元的に互いに密着して分離面(18)を形成するため互いに反対側に静止する。分離面(18)は、第1の軸方向リング面(5)の傾斜とは反対の傾斜を有し、分離面(18)は、外側分離線(19)及び内側分離線(20)を形成する。分離線(19、20)の少なくとも1つは、リング本体(1)と同心の曲率半径を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング本体(1)とリングジョイント(9)とを備え、
前記リング本体(1)が、半径方向リング面(3)ならびに第1の軸方向リング面(5)及び第2の軸方向リング面を有するリング本体面(2)を有し、
前記半径方向リング面(3)が、シリンダの円筒形内側バレル面(4)に対して軸方向に変位可能な摺動接触面として設計され、
前記第1の軸方向リング面(5)が、ピストンの外側リング溝(6)の軸方向リング溝面内に静止するレイオン面として設計され、
前記リング本体(1)が、第1のリング本体端部(7)及び第2のリング本体端部(8)を有し、
前記リングジョイント(9)の反対側に配置されている前記リング本体端部が、前記リングジョイント(9)を形成し、
前記第1のリング本体端部(7)が、突出輪郭断面(11)を有する突出部(10)を有し、
前記第2のリング本体端部(8)が、基部輪郭(13)を有する基部(12)を有し、前記基部(12)が、受入輪郭断面(15)を有する受入輪郭(14)を形成し、
前記突出部(10)が前記受入輪郭(14)で係合し、前記受入輪郭断面(15)と前記突出部断面(10)とが一致し、
前記突出部(10)の突出部分離面(16)と前記基部(12)の基部分離面(17)とが、面接触及び封止物理的接触で互いに反対側に設けられ、分離面(18)を形成し、
前記分離面(18)が前記第1の軸方向リング面(5)に対して傾斜を有し、前記分離面(18)が前記半径方向リング面(3)と交差し、前記分離面(18)と前記半径方向リング面(3)との交差線に外側分離線(19)が形成され、前記分離面(18)が前記第1の軸方向リング面(5)と交差し、前記分離面(18)と前記第1の軸方向リング面(3)との交差線に内側分離線(20)が形成され、前記分離線(19、20)が前記分離面(16、17)を画定し、前記分離線(19、20)の少なくとも一方が前記リング本体(1)に対して同心の曲率半径を有する、
ピストンリング。
【請求項2】
前記外側分離線(19)及び前記内側分離線(20)が、前記リング本体(1)及び互いに対して同心の曲率半径を有する
ことを特徴とする、
請求項1に記載のピストンリング。
【請求項3】
前記分離面が円錐台の副表面として形成される
ことを特徴とする、
請求項1又は2に記載のピストンリング。
【請求項4】
前記受入輪郭断面(15)が三角形として設計されている
ことを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載のピストンリング。
【請求項5】
前記分離面がワイヤ浸食面として設計されている
ことを特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載のピストンリング。
【請求項6】
前記リング本体(1)が、半径方向に内側に配置されている少なくとも1つの弱化凹部(28)を有する
ことを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載のピストンリング。
【請求項7】
第1のピストンリング(24)及び第2のピストンリング(25)を備え、
前記ピストンリング(24、25)が、請求項1~5のいずれか一項に従って設計され、
前記ピストンリング(24、25)がそれぞれ、軸方向リング面(26、27)を有し、
前記ピストンリング(24、25)が平行に配置され、前記第1のピストンリング(24)の前記軸方向リング面(26)及び前記第2のピストンリング(25)の前記軸方向リング面(27)が互いに物理的に接触して静止している、
ことを特徴とする、ピストンリング配置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高い封止効果を有するシールピストンリングに関する。
【背景技術】
【0002】
最新技術は、多数の異なるピストンリングを記載している。ピストンリングは、機械工学及び自動車工学において、特にエンジン、油圧シリンダ及び他の多くの適用分野に使用される。基本的に、ピストンリングの機能は、シリンダボアとピストンのバレル表面との間の移動間隙を液体及び気体の圧力媒体に対してシールすることである。この目的のために、最新技術では特に分割ピストンリングが使用されている。ピストンリングの円周での分割は、リングギャップとしても知られている。通常、ピストンリングは、シリンダボアに適合するように弾性設計を有する。ピストンリングは、張力のない楕円形状で製造される。これらは、設置されると、シリンダ壁に適合する意図された丸みを帯びた形状をとり、次いで、一定量の予張力を示す。リングギャップは、熱伸びを補償するために設置された状態で完全には閉じないので、常に一定量の漏れがある。これは、圧力損失及び媒体オーバーフローをもたらす。ピストンリングの封止機能は多くの要因に依存するため、最適化の必要性は依然として大きい。
【0003】
第1に、シール面は、シリンダボアのバレル面及びピストンのリング溝の肩面に形成される摺動面に形成される。したがって、封止機能の面圧は、媒体の圧力及びシールリングの予張力に依存する。後者の依存性は、媒体の圧力のみが動的効果を有するように一定の大きさである。
【0004】
さらに、開断面、したがって圧力損失及び媒体オーバーフローを低減するために、リングジョイントにおいて2つの対向するピストンリング端部の重なりを提供することが従来技術から基本的に知られている。この解決策の欠点は、多くの用途では封止効果が低すぎること、及び摩耗が増加するにつれて残りの漏れが増加することである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、広範囲の用途、特に油圧及び空気圧用途、ならびに内燃機関などの燃焼プロセスにおける用途に適し、高い耐摩耗性を有する、高い封止効果を有するシールピストンリングを提供することである。
【0006】
この課題は、請求項1に示す特徴によって解決される。好ましいさらなる実施形態は、従属請求項から生じる。
【0007】
本発明によるピストンリングは、円周の周りで分割される実質的に回転対称の構成要素であり、したがってリング本体及びリングジョイントを有する。
【0008】
リング本体は、リング本体面と、第1及び第2のリング本体端部とを有する。
【0009】
特に、リング本体面は、半径方向リング面及び傾斜リング面を有する。第2の軸方向リング面は、それ自体既知の方法で第1の軸方向リング面の反対側に設けられる。
【0010】
半径方向リング面は、シリンダの円筒形内側バレル面に対して軸方向に変位可能な摺動接触面として形成されている。したがって、半径方向リング面は、本発明によるピストンが意図されたように使用されるとき、それ自体既知の方法でシリンダの内壁と物理的に接触し、物理的接触は、ピストンがシリンダに対して移動するときの摺動接触である。
【0011】
さらに、リング本体面は、ピストンの外側リング溝の軸方向リング溝面へのレイオン面として形成される第1の軸方向リング面を備える。
【0012】
本発明によるピストンリングは、その意図された目的に従ってピストンの外側リング溝に係合する。意図されたように使用される場合、ピストンの周方向リング溝の対応して設計された横方向軸方向リング面と摺動接触する第1の軸方向リング面の設計は、ピストンリングの動的膨張を可能にする。内側半径方向リング面上のピストンリングに半径方向外側に作用する作動媒体の作動圧力は、ピストンリングの半径方向膨張をもたらし、半径方向リング面とシリンダの内側バレル面との間の面圧に力の影響を及ぼす。これにより、封止効果が向上する。同時に、面圧は、作動圧のないピストンの戻り移動中に、ばね効果に基づく面圧まで低下し、摩耗が低減される。
【0013】
さらに、傾斜リング面は、半径方向リング面又はシリンダの内側シリンダ壁が摩耗した場合のピストンリングの自動再調整を支援する。
【0014】
本発明によれば、リング本体端部は、リングジョイントにおいて互いに反対側に配置される。したがって、それらはリングジョイントを形成する。
【0015】
本発明によれば、第1のリング本体端部及び第2のリング本体端部は、互いに補完するように設計される。具体的には、第1のリング本体端部は突出部を備え、第2のリング本体端部は基部を備える。
【0016】
第1のリング本体端部は、突出輪郭断面を有する突出部を有する。突出輪郭断面は、突出の形状によって画定され、主長手方向軸に平行な半径方向断面における突出部の輪郭を示す。したがって、突出輪郭は、ピストンリングの物理的部分によって形成される。
【0017】
第2のリング本体端部は、基部輪郭を有する基部を有し、基部は、受入輪郭断面を有する受入輪郭を同時に形成する。基部輪郭は、ピストンリングの物理的部分によって形成されるが、受入輪郭は自由空間である。受入輪郭断面は、基部輪郭によって充填されていない自由空間によって画定され、主長手方向軸に平行な半径方向断面平面内の輪郭でもある。
【0018】
断面平面は、突出部輪郭断面の1つと同じである。
【0019】
本発明によれば、突出部は、受入輪郭内で係合する。ここで、受入輪郭断面と突出輪郭断面とは一致する。物理的カテゴリとしての突出輪郭断面は、自由空間としての受入輪郭断面を充填する。
【0020】
本発明によれば、突出部の突出部分離面及び基部の基部分離面は、互いに反対側に面接触及び封止物理接触で設けられ、分離面を形成する。以下、突出部分離面及び基部分離面を総称して分離面ともいう。
【0021】
分離面は、第1の軸方向リング面に対して傾斜を有する。傾斜は、分離面が第1の軸方向リング面に対して、したがって同時にピストンリングの主要面に対して傾斜を有するように理解されるべきである。
【0022】
本発明によれば、分離面は、半径方向リング面と交差し、半径方向リング面と分離面の交差線に外側分離線を形成することをさらに特徴とする。
【0023】
さらに、分離線はまた、第1の軸方向リング面と交差し、第1の軸方向リング面と分離面の交差線に内側分離線を形成する。
【0024】
以下、外側分離線及び内側分離線を総称して分離線ともいう。
【0025】
2つの分離線はまた、2つの分離面を画定する。これらは、2つの分離面の半径方向の境界である。
【0026】
特に、本発明によるピストンリングは、2つの分離線の少なくとも一方が、リング本体に対して同心の曲率半径を有することを特徴とする。
【0027】
したがって、驚くべきことに、封止面の物理的接触が分離面に形成されるようにリング本体端部が分離面の傾斜及び同心分離線設計によって互いに対して軸方向、半径方向、及び接線方向に常に自動的に位置合わせされるため、流体及び気体の圧力媒体に対してほぼ完全な封止を確実に提供する解決策が見出されている。
【0028】
一方を他方に係合させ、このように設計されたリング本体端部は、可変の円周方向膨張及び結果として生じる可変リングギャップを伴ってもシールの重なりを示す非常に正確な封止形状を有する。この特徴はまた、少なくとも1つの分離線、好ましくは両方の分離線が同心の曲率半径を有するという事実から生じる。したがって、ピストンリングは、円周方向にいつでも膨張又は収縮することができ、分離線を介したシールが維持される。周囲の膨張又は収縮は、シリンダの内側バレル面の波状形状に起因して、又は温度によって誘発される膨張又は収縮に起因して、或いは摩耗に起因し得る。
【0029】
有利には、本発明によるピストンリングは、その特に高い気密性を同時に維持しながら、これらの要因を補償することができる。
【0030】
また、突出部は、基部との分離面上を半径方向及び円周方向に随時摺動可能である。これにより、常に摩耗補償が保証され、一貫した封止機能が得られる。
【0031】
本発明によるピストンリングを受け入れるためのピストン内に構造的に簡単な方法で外側リング溝を形成することができるように、シールピストンリングが、互いに平行であり、その主要面内にある外側輪郭内に2つの軸方向リング面を備える解決策が見出されたことも有利である。
【0032】
本発明によるシールピストンリングの特定の利点は、その外側断面の実質的に長方形形状が、ほとんどの用途で見られるピストンリングの断面の形状に対応することである。これにより、特に内燃機関、作動シリンダ又は減衰シリンダなどの装置において、本発明によるピストンリングを、設計変更を必要とせずに、特に有利な方法で使用することが可能になる。適切な場合には、既存のピストンリングを本発明による高密度ピストンリングと交換することによって、既存の装置であっても最適化することができる。
【0033】
さらに、ピストンリングは、好ましくは金属製とすることができ、したがって高温応力にも耐えることができることが有利である。
【0034】
したがって、有利には、本発明によるピストンリングは、特に燃焼機関において使用することができるが、油圧若しくは空気圧作動シリンダ又は減衰シリンダ、ならびに高度の気密性が必要とされるか又は特に有利である他のすべての用途においても使用することができる。
【0035】
第1の有利なさらなる展開によれば、外側分離線及び内側分離線の両方は、リング本体に対して同心の曲率半径を有する。加えて、両方の分離線は、したがって、互いに同心であり、したがって同じ曲率半径を有する。
【0036】
この展開は、シリンダの内側バレル面に封止摺動接触する半径方向リング面と、ピストンのリング溝の側面に封止接触する傾斜リング面の両方で、関与するすべての封止面が一緒になり、したがって特に高いレベルの封止を提供するという特に有利な効果を有する。
【0037】
さらに、有利には、突出部の分離面と基部の分離面とが互いに接線方向に、すなわち曲率半径に沿って移動することができ、したがって面封止物理的接触を維持することができるため、ピストンリングの円周の変化が封止に影響を及ぼさないことを可能にする。
【0038】
次の有利なさらなる展開によれば、リング本体端部の分離面は、側方円錐台形面として設計される。
【0039】
この展開では、円錐台面として設計されている突出部の分離面と、円錐台面として設計されている基部の分離面とは互いに反対側にあり、突出部の分離面は凹状内側円錐台面であり、基部の分離面は凸状外側円錐台面である。2つの対向する円錐台表面は同じ形状を有し、したがって、互いに対して長手方向及び横方向の両方に移動することができ、したがって特に高いレベルの気密性を保証する。
【0040】
分離面のこの形状により、円周の変化又は摩耗の場合でも封止効果が維持される。さらに、外側リング溝の軸方向リング溝面に対する傾斜は、半径方向力効果によって封止面圧を強化する。
【0041】
次の有利なさらなる展開によれば、受入輪郭断面は三角形として設計される。
【0042】
これは直角三角形の形状を形成する。ここで、1つの隣辺は半径方向リング面に対応し、第2の隣辺は第1の軸方向リング面に対応し、斜辺は突出部分離面に対応する。
【0043】
受入輪郭断面の三角形輪郭は、特に結果として生じる摩耗から、面封止物理的接触、したがって封止効果を維持しながら、基部、突出部、及びシリンダの内側バレル面の間の位置関係の補償を可能にする。したがって、上述の構成要素は、それら自体が互いに対して自動的に位置合わせし、したがって、それらは、摩耗に依存しない気密性をもたらす。
【0044】
次の有利なさらなる展開では、分離面はワイヤ浸食面として設計される。この精密な製造工程により、突出部分離面と基部分離面との重なり精度が高い面が得られる。したがって、他の製造プロセスによって引き起こされ得る分離面間の隙間を通じた漏れは、有利に最小化されるか、又は完全に排除される。その結果、確実な封止効果が得られる。
【0045】
さらなる有利な展開によれば、ピストンリングには少なくとも1つの弱化凹部が設けられる。好ましくは、互いに及びリングジョイントから均一な角度距離で円周の周りに分布するいくつかの弱化凹部がある。この設計は、円周の周りに分布するシリンダの内側バレル面上のばね力によって引き起こされる接触力を均一に低減し、突出部と基部との間の自由な移動及び自己調整作用を支持する。同時に、圧力媒体の作動圧力によって引き起こされる有利な接触力は損なわれないままである。したがって、同じ初期形状及び同じ材料を有するピストンリングを、ばね力によって誘発される接触圧力によって個々の用途要件に簡単な方法で適合させることができることが特に有利である。
【0046】
本発明のさらなる態様は、ピストンリング配置である。この配置は、第1及び第2のピストンリングを有し、これらの2つのピストンリングは、本発明によるピストンリングである。
【0047】
本発明によれば、ピストンリングはそれぞれ第2の軸方向リング面を有する。さらに、ピストンリングは平行に配置され、第1のピストンリングの第2の軸方向リング面及び第2のピストンリングの第2の軸方向リング面は、互いに物理的に接触して静止する。したがって、2つのピストンリングは、ピストンの同じリング溝内で互いに回転又は鏡像反転されて配置される。リング溝は、矩形断面を有し、この目的のために2つの平行な軸方向溝側面を有する。ピストンリングは、それらの主要面内で、リング溝内で互いに対して、及びピストンに対して摺動可能に移動可能であり、したがって浮動方式で支持される。
【0048】
本発明によるこの配置は、複動式シリンダのための特定の利点を有するさらなる解決策を表す。2つの相互に鏡像反転されたピストンリングが上下に使用される。これにより、軸方向に反対の2つの側面から交互に作用する圧力媒体に対して等しく効果的な封止を提供することが可能になる。この変形例はまた、シリンダ-ピストン配置の異なる公差に対する補償が、互いに対して浮動するリングの設置位置によって大幅に改善されるという利点を有する。第1及び第2のピストンリングが好ましくは同一であり、したがって2つの例では1つの種類のピストンリングのみを使用することができるという技術的利点及びコスト上の利益もある。
【0049】
以下、例示的な実施形態を用いて、添付の図面に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図3】リング本体端部におけるピストンリングの詳細断面の斜視図である。
【
図5】弱化凹部を有するピストンリングの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、ピストンの移動軸に対応する主長手方向軸に沿ったピストンリングを上面図で示す。本図は、半径方向リング面3及び第1の軸方向リング面5を備えるリング本体面2を有するリング本体1を示している。リング本体1は、一箇所で途切れている。ここで、第1のリング本体端部7と第2のリング本体端部8とは互いに反対側にある。それらの間の中断は、リングジョイント9である。
【0052】
リングは、弛緩位置とも呼ばれる、組み立てられていない弛緩した製造位置に示されている。この実施形態では、リング本体端部7、8は、弛緩位置において上下に突出していない。ここには示されていない代替設計では、それぞれの他方のリング本体端部7、8への部分的な突出部が弛緩位置に既に存在する。
【0053】
図1では、内側分離線20の同心形成を示すために、内側分離線20上に円弧も半径矢印で描かれており、これは本発明に必須である。
【0054】
図2は、リングジョイント9を通るリング本体1の断面を示す。リング本体面2は、完全なピストンリングの表面を示す。リング本体1の外側バレル面は、半径方向リング面3である。リング本体1の2つの側面の一方には、第1の軸方向リング面5がある。第2の軸方向リング面26は、これに対して反対側に設けられる。この表面によって、ピストンリングは、ピストンの円周方向リング溝の一致する対向輪郭に係合する。さらに、図は、破線の円形線によって強調表示された突出輪郭断面11、ならびに突出部分離面16を有する突出部10を示している。内側分離線20は第1の軸方向リング面5上に位置し、外側分離線19は半径方向リング面3上に位置し、両方とも互いに、及び全体としてリング本体1に対して同心である。
【0055】
図3は、リングジョイント9及びリング本体端部7、8におけるピストンリングの断面を斜視図で示す。
【0056】
この図では、ピストンリングの非設置形状が弛緩位置に示されている。これは、半径方向リング面3の方向におけるピストンリングの外側を示す。第1の軸方向リング面5は、これに対して傾斜した角度で円周方向に位置する。突出部10は、第1のリング本体端部7に位置し、
図3の視線方向とは反対側の突出部分離面16を備える。
【0057】
第2のリング本体端部8の対応する相対物は基部12である。受入輪郭14は、分離面18によって画定される。受入輪郭は、基部分離面を形成し、突出部10を面状に受け入れる。張力がかけられた設置位置では、突出部分離面16を有する突出部10は、基部12上、すなわち基部分離面17上に平坦に位置する。そこに分離面18が形成される。リングジョイント9で中断されたピストンリングは、分離面18における突出部分離面16と基部分離面17との面接触によって再び封止される。
【0058】
突出部分離面16と基部分離面17との重複ゾーンにおいて、分離面18は、この例示的な実施形態では円錐台形面の断面の形状を有する。内側分離線20は、第1の軸方向リング面5への湾曲した縁部に形成され、外側分離線19は、半径方向リング面3への湾曲した縁部に形成される。分離線19、20は、リング本体の円の中心点に対して同心円状に配置された円弧を記述しており、これにより、ピストンリングの円周方向の膨張又は円周方向の収縮中に、突出部分離面16と基部分離面17との互いの上部で一致して摺動することが可能になる。
【0059】
図4は、設置状態のピストンリングの概略図である。様々な構成要素間の個々の隙間は、よりよく見えるように大きく拡大されており、縮尺通りではない。
図4は、模式図として、各構成要素の位置と移動の関係、及び作用する力を示すことを意図する。
【0060】
したがって、
図4によれば、リング本体1は、ピストン21のリング溝6内に設置される。リング溝6は、軸方向リング溝面23を備える。ピストンがシリンダ内で移動すると、ピストンリングは、その半径方向リング面3と共にシリンダ22の内側バレル面4から軸方向に摺動する。圧力媒体は、圧力pでピストンリングの第2の軸方向リング面に作用する。ピストンリングは、ピストン21のリング溝6内で軸方向リング溝面23に押し付けられ、その上を第1の軸方向リング面5で浮動方式で摺動する。同時に、圧力媒体は、ピストンリングの半径方向内側リング面に対してリング溝6の溝基部の領域で作用し(参照符号なし)、圧力に応じて、半径方向リング面3がシリンダ22の内側バレル面4に対して押圧されることを確実にし、それにより、この摺動接触面での封止効果を高める。さらに、突出輪郭断面11は、分離面16、17の間の二重矢印によって示されるように、横方向及び長手方向、すなわち円周に沿って、の両方で、分離面18に沿って基部輪郭13の基部分離面17上の突出部分離面16で摺動することができる。同時に、突出部10及び基部12は、半径方向リング面3及び内側バレル面4に沿って互いに対して軸方向に変位可能であり、それにより、摩耗した場合であっても、分離面16、17間の間隙を常に再び閉じることができる。
【0061】
部10、12の軸方向変位性と併せて、分離面16、17を横方向及び長手方向に摺動させることにより、摩耗によるピストンリングの材料摩耗の補償が可能になり、常に面接触が保証され、したがって耐用年数の間、一定の封止効果が保証される。
【0062】
図5は、弱化凹部28が半径方向リング面3の反対側に配置されているピストンリングを示す。例示的な実施形態では、互いに45度の角度で配置される合計7つの弱化凹部28が設けられている。さらに、リングジョイント9に隣接する弱化凹部28は、リングジョイント9に対して同様に45度の角度を含む。弱化凹部28により、また、それらの均一な分布により、シリンダの内側バレル面4に対するばね力に誘発される接触力が均一に分布して円周の周りで低減され、突出部と基部との間の自由な移動性及び自己調整作用が支持される。同時に、圧力媒体の作動圧力によって引き起こされる有利な接触力は損なわれないままである。
【0063】
図6は、第1のピストンリング24及び第2のピストンリング25を備えるピストンリング配置を示す。両方のピストンリング24、25は、本発明によるピストンリングとして設計されている。さらに、それらはそれぞれ、第2の軸方向リング面26、27を有する。2つのピストンリング24、25は、軸方向リング面26、27において互いに接触して静止し、このようにして、それらは互いに対して浮動位置に取り付けられる。
【符号の説明】
【0064】
1 リング本体
2 リング本体面
3 半径方向リング面
4 内側バレル面
5 第1の軸方向リング面
6 ピストンの外側リング溝
7 第1のリング本体端部
8 第2のリング本体端部
9 リングジョイント
10 突出部
11 突出輪郭断面
12 基部
13 基部輪郭
14 受入輪郭
15 受入輪郭断面
16 突出部分離面
17 基部分離面
18 分離面
19 外側分離線
20 内側分離線
21 ピストン
22 シリンダ
23 軸方向リング溝面
24 第1のピストンリング
25 第2のピストンリング
26 第1のピストンリングの第2の軸方向リング面
27 第2のピストンリングの第2の軸方向リング面
28 弱化凹部
【国際調査報告】