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  • 特表-加熱式製品用のシリカゲル冷却部 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】加熱式製品用のシリカゲル冷却部
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/04 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
A24D3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517936
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2021130761
(87)【国際公開番号】W WO2022100745
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】202011282393.1
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520401631
【氏名又は名称】ユンナン タバコ バイオロジカル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YUNNAN TOBACCO BIOLOGICAL TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】5 / F, Building 2, Yunnan Returnees Pioneer Park, No. 80, Chunman Avenue, Luoyang Sub District Office, Economic Development Zone, Kunming Pilot Free Trade Zone, Kunming, Yunnan, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジガン
(72)【発明者】
【氏名】ファン リャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ジン
(72)【発明者】
【氏名】シー チンジェン
【テーマコード(参考)】
4B045
【Fターム(参考)】
4B045BA03
4B045BA05
4B045BB03
4B045BB06
4B045BB10
4B045BC01
4B045BC08
4B045BC13
4B045BC22
(57)【要約】
加熱式製品用のシリカゲル冷却部(1)である。シリカゲル冷却部(1)は、種々の断面形状を有する直線状孔煙流路(2)と、煙流路(2)を包囲する流路壁とからなる筒状の冷却部であり、発煙部(3)等とともに2元又は2元を超える構造のタバコに直接まとめることができる。シリカゲル冷却部(1)は、高い通気度、高い比熱容量及び良好な耐熱性という特性を有し、煙温度は、シリカゲル中の結合水の蒸発吸熱及びシリカゲルの比熱容量という二重冷却により低下し、さらに、喫煙中に熱崩壊及び溶融がないため、煙の濃度が上昇する一方で、煙温度が低下し、香気物質の添加により、タバコ風味が豊かであり、消費者の消費体験が満足する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱式製品用のシリカゲル冷却部であって、前記シリカゲル冷却部が、円形、三角形、五角形、五点形又は他の不規則な形状等の種々の断面形状を有する直線状孔の煙流路と、前記煙流路を包囲する流路壁とからなる筒状の冷却部であり、前記シリカゲル冷却部のシリカゲルの含水量が1.0~3.0重量%である、加熱式製品用のシリカゲル冷却部。
【請求項2】
前記シリカゲル冷却部が、既存の高温硬化成形法を用いてシリカゲルから予備製作シリカゲル冷却部を作製することによって作製され、前記予備製作シリカゲル冷却部が、18~22℃の温度及び68~72%の相対湿度で24時間を超えて維持され、前記予備製作シリカゲル冷却部の含水量が1.0~3.0重量%に達したとき、前記シリカゲル冷却部が得られる、請求項1に記載の加熱式製品用のシリカゲル冷却部。
【請求項3】
前記高温硬化成形法が、押出成形、フィルムプレス成形、射出成形又は接着剤滴下成形である、請求項2に記載の加熱式製品用のシリカゲル冷却部。
【請求項4】
前記シリカゲル冷却部の前記シリカゲルが、メチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルビニルフェニルシリコーンゴム、ニトリルシリコーンゴム又はフルオロシリコーンゴムの食品用シリコーンゴム材料である、請求項1又は2に記載の加熱式製品用のシリカゲル冷却部。
【請求項5】
前記シリカゲル冷却部の前記シリカゲルが、1.9~3.1kJ/(kg・℃)の比熱容量を有する、請求項1に記載の加熱式製品用のシリカゲル冷却部。
【請求項6】
前記シリカゲル冷却部の前記シリカゲルの熱分解温度が300℃以上である、請求項1に記載の加熱式製品用のシリカゲル冷却部。
【請求項7】
前記シリカゲル冷却部の前記煙流路の断面積の非流路の断面積に対する比率が、0.3~2.0である、請求項1に記載の加熱式製品用のシリカゲル冷却部。
【請求項8】
前記シリカゲル冷却部が、5~50mmの長さと、4.0~8.0mmの外径と、20~80度のショア硬度とを有する、請求項1に記載の加熱式製品用のシリカゲル冷却部。
【請求項9】
前記シリカゲル冷却部の前記シリカゲルが、花、ミント、果実又はタバコの香料を含む、請求項1に記載の加熱式製品用のシリカゲル冷却部。
【請求項10】
前記シリカゲル冷却部と発煙部とが、二元構造のタバコにまとめられ、又は、前記シリカゲル冷却部と前記加熱式製品の複数の構造単位とが、包装材料で、二元を超える構造のタバコにまとめられる、請求項1に記載の加熱式製品用のシリカゲル冷却部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月16日に出願された中国特許出願第2020112823931号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、タバコ加工の技術分野に属する。より具体的には、本発明は、加熱式製品用のシリカゲル冷却部に関する。
【背景技術】
【0003】
喫煙が健康に害を及ぼすことはよく知られている。特に、社会の発展と人々の生活水準の継続的な向上とに伴い、人々は自身の身体の健康問題にますます関心を持つようになっており、喫煙者にとっていかに安全にタバコを吸うかは、タバコ技術開発の重要な方向性である。加熱式タバコは、タバコ物質を燃焼させるのではなく、電子デバイスによって300~500℃で加熱するタバコである。加熱式タバコは、喫煙中に直火及びタバコの灰が発生させないため、環境に優しく、消費者が、電子加熱デバイスによってタバコを吸うときにタバコの香気を感じることができるようにし、従来のタバコの燃焼時に高温熱分解によって発生する有害物質を低減させ、消費者の健康的な喫煙のための有効な方法を提供する。この喫煙モードは、国内外でますます人気が高まり、かなりの規模の消費者団体が形成されている。
【0004】
加熱式製品を使用して、喫煙セットが加熱され、タバコ構造が短い場合、喫煙プロセスにおいて熱は急速に発生し、喫煙体験は影響を受ける。例えば、米国特許出願公開第20140305448号明細書は、4要素複合構造を有する加熱式カートリッジを開示しており、その構造の中に、ポリ乳酸フィルムを縮めてギャザーを寄せて重合させることによって丸められた冷却部がある。喫煙プロセスにおいて、ポリ乳酸の相変化原理を通して、煙の一部の温度が吸収されて、吸い込まれる煙の温度が低下し、それにより、喫煙体験が改善される。しかしながら、相変化プロセスでは、物理的な変化だけでなく、化学的な変化もある。ポリ乳酸が高温で溶かされた後、ポリ乳酸フィルムが収縮及び溶融し、煙流路を閉塞し、喫煙の風味に影響を及ぼす。
【0005】
したがって、本発明者らは、先行技術の技術的欠点に関して、加熱式タバコにおけるシリカゲル冷却部について多くの試験及び解析を行って、本発明を完成させた。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、加熱式製品用のシリカゲル冷却部を提供することである。
【0007】
本発明は、以下の技術的解決法によって達成される。
【0008】
本発明は、加熱式製品用のシリカゲル冷却部に関する。
【0009】
加熱式製品のシリカゲル冷却部は、円形、三角形、五角形、五点形又は他の不規則な形状等の種々の断面形状を有する直線状孔煙流路と、煙流路を包囲する流路壁とからなる筒状の冷却部であり、シリカゲル冷却部のシリカゲルの含水量は1.0~3.0重量%である。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、シリカゲル冷却部は、既存の高温硬化成形法を用いてシリカゲルから予備製作(prefabricated)シリカゲル冷却部を作製することによって作製され、予備製作シリカゲル冷却部は、18~22℃の温度及び68~72%の相対湿度で24時間を超えて維持され、予備製作シリカゲル冷却部の含水量が1.0~3.0重量%に達したとき、シリカゲル冷却部が得られる。
【0011】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、高温硬化成形法は、押出成形、フィルムプレス成形、射出成形又は接着剤滴下成形である。
【0012】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、シリカゲル冷却部のシリカゲルは、メチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルビニルフェニルシリコーンゴム、ニトリルシリコーンゴム又はフルオロシリコーンゴムの食品用シリコーンゴム材料である。
【0013】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、シリカゲル冷却部のシリカゲルは、1.9~3.1kJ/(kg・℃)の比熱容量を有する。
【0014】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、シリカゲル冷却部のシリカゲルの熱分解温度は300℃以上である。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、シリカゲル冷却部の煙流路の断面積の非流路の断面積に対する比率は、0.3~2.0である。
【0016】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、シリカゲル冷却部は、5~50mmの長さと、4.0~8.0mmの外径と、20~80度のショア硬度とを有する。
【0017】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、シリカゲル冷却部のシリカゲルは、花、ミント、果実又はタバコの香料を含む。
【0018】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、シリカゲル冷却部と発煙部とが、二元構造のタバコにまとめられ、又は、シリカゲル冷却部と加熱式製品の複数の構造単位とが、包装材料で、二元を超える構造のタバコにまとめられる。
【0019】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、加熱式製品用のシリカゲル冷却部に関する。
【0021】
シリカゲル冷却部は、円形、三角形、五角形、五点形又は他の不規則な形状等の種々の断面形状を有する直線状孔煙流路と、煙流路を包囲する流路壁とからなる筒状の冷却部である。
【0022】
本発明では、シリカゲル冷却部の直線状孔煙流路は、以下の3つのモードがあり得る。すなわち、第1モードは、直線状孔煙流路がシリカゲル冷却部の中央に位置するものであり、第2モードは、直線状孔煙流路がシリカゲル冷却部の外壁に近接しているものであり、第3モードは、第1モード及び第2モードの組合せである。図1を参照されたい。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、シリカゲル冷却部は、既存の高温硬化成形法を用いてシリカゲルから予備製作シリカゲル冷却部を作製することによって作製され、予備製作シリカゲル冷却部は、18~22℃の温度及び68~72%の相対湿度で24時間を超えて維持され、予備製作シリカゲル冷却部の含水量が1.0~3.0重量%に達したとき、シリカゲル冷却部が得られる。
【0024】
シリカゲルの内部はナノスケールの微細孔構造であり、微細孔の表面には多数の水酸基が存在する。水酸基は水分子に親和性があり、そのため、水を吸収して結合水を形成することができ、結合水は常温で容易に蒸発しない。予備製作シリカゲル冷却部は、高湿度下の環境において水を容易に吸収する。複数回の試験の後、予備製作シリカゲル冷却部は、上記の条件下で安定して含水量に達することができる。
【0025】
既存の高温硬化成形法を用いてシリカゲルから予備製作シリカゲル冷却部を作製する場合、シリカゲルを高温で2~6時間硬化させて、所望の硬度及び形状にする必要がある。硬化した後、シリカゲルの含水量は極めて低いか、又は実質的に水を含まず、そのため、高温硬化成形したシリカゲルに対して水和処理を実施して、シリカゲルの含水量を1.0~3.0重量%にする必要がある。
【0026】
加熱式製品が使用される場合、排出される煙の温度は非常に高い。煙は、シリカゲルと接触すると、シリカゲルを加熱し、シリカゲル中の水分を蒸発させる。水分蒸発のプロセスには多くの熱が必要であり、そのため、煙の一部の温度が低下する。
【0027】
シリカゲル冷却部のシリカゲルの含水量は、1.0~3.0重量%である。含水量が1%よりも低い場合、含水量が低すぎて明白な冷却効果を達成することができない。含水量が3%よりも高い場合、余分な水分が発煙部又は他の構造ユニットに拡散し、それは、タバコのカビを発生させやすく、製品の品質に影響を与える。シリカゲルの含水量は、好ましくは2.0~3.0%である。本発明の含水量は、GB/T 23357-2009(タバコ及びタバコ製品-水分量の特定-カール・フィッシャー法)に指定されている試験方法に従って試験される。
【0028】
本発明において、高温硬化成形法は、押出成形、フィルムプレス成形、射出成形又は接着剤滴下成形である。それらの中で、押出成形は、既存の市販の押出機を用いてシリカゲルを押し出して成形する連続成形プロセスである。「大径シリコーンチューブの製造方法」と題する中国特許第102642291号明細書を参照されたい。フィルムプレス成形は、シリカゲル原料及び対応する補助材料を高温金型に入れ、その後、フラット加硫機テーブルを通して圧力を加えて、高温加硫を通して成形することである。「ロール型シリコーンゴムフィルムの製造方法」と題する中国特許第101973128号明細書を参照されたい。射出成形は、シリカゲル排出機により、シリカゲル成分を出力機の装填バレルに押し付け、その後、ノズルによって、シリカゲル成分を高温金型キャビティに押し込んで成形するように実施される。詳細は、「射出成形によりガラス瓶の表面にシリカゲル層を形成するプロセス方法」と題する中国特許出願公開第107639787号明細書を参照されたい。接着剤滴下成形は、シリカゲル液体原料をニードルシリンダに装填し、空気圧で金型上に滴下し、その後、加熱して加硫成形する方法である。詳細は、Zhang, et al.“liquid silica gel molding technology and its application”, China Rubber/Plastics Technology and Equipment, 2012, 38 (18): 35-38を参照されたい。
【0029】
本発明で使用するシリカゲルは、Shenzhen Muwei Technology Co.,Ltd.によってジメチルシリコーンゴムという商品名で販売されているメチルシリコーンゴム、Shenzhen Muwei Technology Co.,Ltd.によってビニルシリコーンゴムという商品名で販売されているメチルビニルシリコーンゴム、Anhui Aiyueta Silicon Oil Co.,Ltd.によって低フェニルシリコーンゴムという商品名で販売されているメチルビニルフェニルシリコーンゴム、Hubei Xinhai Nano Silicon Industry Co.Ltd.によってブチロニトリルシリコーンゴムという商品名で販売されているニトリルシリコーンゴム、Dongguan Huadai Organic Silicon Co.,Ltd.によってγ-トリフルオロプロピルメチルポリシロキサンという商品名で販売されているフルオロシリコーンゴム等、目下市場で販売されているメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルビニルフェニルシリコーンゴム、ニトリルシリコーンゴム又はフルオロシリコーンゴムの食品用シリコーンゴムである。
【0030】
本発明において、冷却部のシリカゲルの熱分解温度は、300℃を超える。喫煙セットが発煙部分を加熱すると、局所温度を上昇させることができる。加熱式タバコの喫煙プロセスでは、煙の温度は200℃以上である。煙が長時間蓄積することにより温度が上昇することになり、そのため、冷却材料は一定の耐熱性を有しているべきである。温度は、GB/T 19466.4-2016(プラスチック-示差走査熱量測定(DSC)-パート3:溶融及び結晶化の温度及びエンタルピーの特定)に従って決定した。冷却部のシリカゲルの熱分解温度が300℃よりも低い場合、喫煙中にシリカゲルが熱崩壊を発生させるか又は溶融し、それは、喫煙の円滑性に影響を与え、より深刻には、冷却効果を喪失させ、喫煙体験に影響を与える。
【0031】
本発明によれば、シリカゲルは、1.9~3.1kJ/(kg・℃)の比熱容量を有する。比熱容量は、熱力学において一般に用いられる物理量であり、単位質量の物質が単位温度を上昇又は下降させる際に吸収又は放出する熱の量と理解されるべきである。本発明のシリカゲルの比熱容量は、1.9~3.1kJ/(kg・℃)である。比熱容量は、GB/T 19466.4-2016(プラスチック-示差走査熱量測定(DSC)-パート4:比熱容量の特定)に従って決定される。
【0032】
シリカゲルの比熱容量が1.9kJ/(kg・℃)よりも低い場合、単位重量の冷却部が吸収する熱が少なくなり、煙の温度を大きく低下させることがなく、そのため、煙が高温となる。シリカゲルの比熱容量が3.1kJ/(kg・℃)よりも高い場合、単位重量の冷却部がより多くの熱を吸収し、そのため、煙中の水分凝縮現象が明白となり、煙の含水量も明らかに減少し、それにより、煙が乾燥することになる。したがって、シリカゲルは、1.9~3.1kJ/(kg・℃)、好ましくは2.2~2.8kJ/(kg・℃)の比熱容量を有する。
【0033】
本発明では、煙温度は、シリカゲル結合水の蒸発及び吸熱とシリカゲルの比熱容量との二重効果によって低下する。
【0034】
本発明によれば、シリカゲル冷却部の煙流路の断面積の非流路の断面積に対する比率は、0.3~2.0である。本発明において、煙流路の断面積は、シリカゲル冷却部全体の任意の断面におけるすべての煙流路の断面積の和として理解されるべきであり、非煙流路の断面積は、シリカゲル冷却部全体の任意の断面におけるすべての非煙流路の断面積の和として理解されるべきである。煙流路の断面積の非流路の断面積に対する比率が0.3未満である場合、煙流路が小さくなり、喫煙プロセスにおいて吸引抵抗が大きくなり、煙の濃度が不十分となる。煙流路の断面積の非流路の断面積に対する比率が2.0よりも大きい場合、煙流路が大きくなりすぎ、シリカゲル冷却部の熱容量が不十分となり、そのため、煙の温度とタバコカートリッジの唇側端の温度とが高くなりすぎ、それにより、喫煙体験に影響を及ぼす。
【0035】
本発明によれば、シリカゲル冷却部は、5~50mmの長さと、4.0~8.0mmの外径と、20~80度のショア硬度とを有する。シリカゲル冷却部の長さが50mmよりも長い場合、煙路が長くなりすぎ、1回の吸引あたりの煙霧の量が減少する。シリカゲル冷却部の長さが5mmよりも短い場合、煙路が短くなりすぎ、煙の冷却が不十分となり、その温度が高くなりすぎ、それにより、喫煙体験に影響を与える。
【0036】
シリカゲル冷却部の外径は4.0~8.0mmであり、これは、既存の市販のタバコで一般的に使用されている外径である。
【0037】
ショア硬度は、ゴムの硬度を表す規格であり、GB/T 2411-2008(プラスチック及びエボナイト-デュロメーター(ショア硬度)による圧入硬度の特定)に従って検出される。シリカゲル冷却部は、20~80度のショア硬度を有する。シリカゲル冷却部のショア硬度が20度未満である場合、成形性が不十分であり、そのため粗悪な外観となり、それはタバコ成形に寄与しない。シリカゲル冷却部のショア硬度が80度よりも大きい場合、タバコ成形プロセスにおいてシリカゲル冷却部を容易に切り離すことができなくなり、切り口がきれいにならない。好ましくは、シリカゲル冷却部は、30~70度、より好ましくは38~62度のショア硬度を有する。
【0038】
本発明によれば、シリカゲル冷却部のシリカゲルは、花、ミント、果実又はタバコの香料を含む。これらの香料は、ゴムが混合されるときに、シリカゲルに、シリカゲルの0.1~50.0重量%に従って添加される。煙がシリカゲル冷却部を通過するとき、シリカゲルに含まれる芳香物質が煙の熱によって溶出し、そのため、煙の香気、例えば、バラ、クチナシ又はキンモクセイ等の花の香気、メントール、ペパーミント又はアジアミント等のミントの風味、及びポーポー、パッションフルーツ又はキウイ等の果実の芳香等が増大する。
【0039】
本発明で使用する花香気エッセンス、ミントエッセンス、果実香エッセンス及びタバコエッセンスは、目下、市場で販売されている製品である。例えば、Yunnan Bagu Biotechnology Co.Ltd.によってKu-shui roseという商品名で販売されているバラ香気エッセンス、Yunnan Bagu Biotechnology Co.Ltd.によってTouxinliangという商品名で販売されているアジアンミントエッセンス、Yunnan Bagu Biotechnology Co.Ltd.によってパッションフルーツという商品名で販売されているパッションフルーツ芳香エッセンス、及びYunnan Henggang Technology Co.Ltd.によってミックスタバコフレーバー(mixed tobacco flavor)という商品名で販売されているバーレータバコエッセンスである。
【0040】
本発明では、シリカゲル冷却部と発煙部とが、包装材料で、二元構造のタバコにまとめられ、又は、シリカゲル冷却部と加熱式製品の複数の構造単位とが、包装材料で、二元を超える構造のタバコにまとめられる。例えば、二元構造のタバコは、発煙部とシリカゲル冷却部とからなるタバコであり、二元を超える構造のタバコは、発煙部と、ろ過部と、支持部と、シリカゲル冷却部とからなるタバコである。発煙部は、例えば、シートタイプの発煙部である。ろ過部は、例えば、アセテート繊維のフィルタロッドであり、支持部は、例えば、中空紙筒である。具体的な構造状況については、図2を参照されたい。
【0041】
煙濃度及び煙温度の測定方法と官能評価方法とについては、後述する。
【0042】
GB/T 19609-2004(タバコ-繰り返し分析喫煙機を用いた、全体及びニコチン除去乾燥重量物質の特定)及びGB/T 16447-2004(タバコ及びタバコ製品-調整及び試験用雰囲気)に従って、Dongguan Juwei Electronics Co.Ltd.製のMYUZ喫煙セットが使用され、Dongguan Feihong Instrument Equipment Co.Ltd.製の煙濃度検出器を使用して煙濃度が検出され、K型熱電対温度検出器を使用してカートリッジの煙温度が決定される。GB 5606.4-2005(タバコ-パート4:官能評価のための技術的要件)に従って、タバコの香気部分に対して官能評価を行う。同時に、対照1として、Philip Morris International社製の加熱式HEETsオリジナルフレーバーカートリッジも対応して検出及び評価される。
【0043】
本発明の加熱式製品用のシリカゲル冷却部は、以下の特徴を有する。
1.本発明のシリカゲル冷却部は、比較的高い比熱容量を有する。本発明のシリカゲル冷却部は、喫煙プロセスで高温の煙と熱交換する。煙の熱を吸収しながら、煙の温度が下げられ、そのため、シリカゲル部全体の温度の変化はわずかであり、主流煙及び唇側端の温度の低下が確実になり、喫煙がより快適になる。
2.本発明のシリカゲル冷却部内の水分は、喫煙プロセス中に150℃よりも高い煙に接すると、蒸発して熱を吸収し、それにより、煙の一部の温度を低下させることができる。
3.本発明のシリカゲル冷却部は、良好な耐熱性を有し、喫煙プロセス中に崩壊することがなく、したがって、煙の平滑な流れを確実にする。
4.喫煙中の香気を豊かにするとともに喫煙の快適性を向上させるように、加工プロセスにおいて香気を装填するステップが追加される。
【0044】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。
本発明のシリカゲル冷却部は、通気度が高く、比熱容量が高く、耐熱性が良好であるという物性を有する。煙の温度は、二重冷却、すなわち、シリカゲル中の結合水の蒸発による吸熱とシリカゲルの比熱容量とにより、低下する。さらに、喫煙中に熱崩壊及び溶融がないため、煙の濃度が上昇する一方で、煙温度が低下する。香気物質の添加により、タバコ風味が豊かになるとともに、消費者の消費体験が満足する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の加熱式製品用のシリカゲル部の断面図である。
図2】カートリッジにおける本発明の加熱式製品用のシリカゲル部の位置の概略図である。
【0046】
本発明は、以下の実施例からよりよく理解されるであろう。
【実施例
【0047】
実施例1:本発明の加熱式製品用のシリカゲル冷却部
本実施形態の実施態様は以下の通りである。
【0048】
シリカゲル冷却部は、円形断面を有する直線状孔煙流路と、煙流路を包囲する流路壁とからなる筒状の冷却部であり、直線状孔煙流路はシリカゲル冷却部の中央に位置し、煙流路の断面積と非流路の断面積に対する比率は、0.8である。
【0049】
Shenzhen Muwei Technology Co.,Ltd.によってジメチルシリコーンゴムという商品名で販売されている、300℃を超える熱分解温度を有するメチルシリコーンゴムの食品用のシリカゲルを用いて、本明細書に記載する押出高温硬化成形法を使用し、その後、22℃の温度及び68%の相対湿度で24.5時間維持することにより、予備製作シリカゲル冷却部を作製する。本明細書に記載する検出方法を用いて、予備製作シリカゲル冷却部の含水量が1.5重量%に達したことが検出され、シリカゲル冷却部が得られる。シリカゲル冷却部の長さは50mmであり、その外径は5.6mmである。本明細書に記載する方法に従って、そのショア硬度は20度であり、比熱容量は2.1kJ/(kg・℃)であることが検出された。それは、Yunnan Bagu Biotechnology Co.Ltd.によってKu-shui roseという商品名で販売されているバラ香気エッセンスを含む。
【0050】
シリカゲル冷却部及びシートタイプの発煙部は、既存の成形紙包装材料で、二元構造のタバコにまとめられる。
【0051】
本出願の明細書に記載する方法に従って、煙温度、煙濃度及び官能評価を検出し、その検出結果及び喫煙評価結果を表1に記載している。
【0052】
同時に、対照1として、Philip Morris International社製の加熱式HEETsオリジナルフレーバーカートリッジも同様に検出及び評価され、その検出結果及び喫煙評価結果も表1に記載している。
【0053】
実施例2:本発明の加熱式製品用のシリカゲル冷却部
シリカゲル冷却部は、五角形断面を有する直線状孔煙流路と、煙流路を包囲する流路壁とからなる筒状の冷却部である。直線状孔煙流路は、シリカゲル冷却部の中央に位置している。煙流路の断面積の非流路の断面積に対する比率は、1.2である。
【0054】
Shenzhen Muwei Technology Co.,Ltd.によってビニルシリコーンゴムという商品名で販売されている、300℃を超える熱分解温度を有するメチルビニルシリコーンゴムの食品用のシリカゲルを用いて、本明細書に記載するフィルムプレス高温硬化成形法を使用し、その後、18℃の温度及び70%の相対湿度で24.8時間維持することにより、予備製作シリカゲル冷却部が作製される。本明細書に記載する検出方法を用いて、予備製作シリカゲル冷却部の含水量が1.8重量%に達したことが検出され、シリカゲル冷却部が得られる。シリカゲル冷却部の長さは30mmであり、その外径は6.5mmである。本明細書に記載する方法に従って、そのショア硬度は60度であり、比熱容量は2.8kJ/(kg・℃)であることが検出された。それは、Yunnan Bagu Biotechnology Co.Ltd.によってTouxinliangという商品名で販売されているアジアンミントエッセンスを含む。
【0055】
シリカゲル冷却部及びシートタイプの発煙部は、既存の成形紙包装材料で、二元構造のタバコにまとめる。
【0056】
実施例3:本発明の加熱式製品用のシリカゲル冷却部
シリカゲル冷却部は、五点形断面を有する直線状孔煙流路と、煙流路を包囲する流路壁とからなる筒状の冷却部である。直線状孔煙流路は、シリカゲル冷却部の外壁に近接している。煙流路の断面積の非流路の断面積に対する比率は、1.6である。
【0057】
Anhui Aiyueta Silicon Oil Co.,Ltd.によって低フェニルシリコーンゴムという商品名で販売されている、300℃を超える熱分解温度を有するメチルビニルフェニルシリコーンの食品用ゴムを用いて、本明細書に記載する射出高温硬化成形法を使用し、その後、20℃の温度及び72%の相対湿度で25.2時間維持することにより、予備製作シリカゲル冷却部が作製される。本明細書に記載する検出方法を用いて、予備製作シリカゲル冷却部の含水量が2.5重量%に達したことが検出され、シリカゲル冷却部が得られる。シリカゲル冷却部の長さは18mmであり、その外径は7.0mmである。本明細書に記載する方法に従って、そのショア硬度は50度であり、比熱容量は2.5kJ/(kg・℃)であることが検出された。それは、Yunnan Bagu Biotechnology Co.Ltd.によってパッションフルーツという商品名で販売されているパッションフルーツ芳香エッセンスを含む。
【0058】
シリカゲル冷却部及びシートタイプの発煙部は、既存の成形紙包装材料で、二元構造のタバコにまとめる。
【0059】
実施例4:本発明の加熱式製品用のシリカゲル冷却部
シリカゲル冷却部は、五角形断面を有する直線状孔煙流路と、煙流路を包囲する流路壁とからなる筒状の冷却部である。合計20個の直線状煙流路があり、10個はシリカゲル冷却部の中央に位置し、10個はシリカゲル冷却部の外壁に近接している。煙流路の断面積の非流路の断面積に対する比率は、1.9である。
【0060】
Hubei Xinhai Nano Silicon Industry Co.Ltd.によってブチロニトリルシリコーンゴムという商品名で販売されている、300℃を超える熱分解温度を有するニトリルシリコーンゴムの食品用のシリカゲルを用いて、本明細書に記載する接着剤滴下高温硬化成形法を使用し、その後、18℃の温度及び70%の相対湿度で24.8時間維持することにより、予備製作シリカゲル冷却部が作製される。本明細書に記載する検出方法を用いて、予備製作シリカゲル冷却部の含水量が3.0重量%に達したことが検出され、シリカゲル冷却部が得られる。シリカゲル冷却部の長さは25mmであり、その外径は8.0mmである。本明細書に記載する方法に従って、そのショア硬度は30度であり、比熱容量は2.3kJ/(kg・℃)であることが検出された。それは、Yunnan Henggang Technology Co.Ltd.によってミックスタバコフレーバーという商品名で販売されているバーレータバコエッセンスを含む。
【0061】
シリカゲル冷却部と既存のシートタイプの発煙部とアセテート繊維ろ過部とは、成形紙包装材料で、三元構造のタバコにまとめる。
【0062】
実施例5:本発明の加熱式製品用のシリカゲル冷却部
シリカゲル冷却部は、他の不規則な形状の断面を有する直線状孔煙流路(図1右下図参照)と、煙流路を包囲する流路壁とからなる筒状の冷却部である。直線状煙流路は、シリカゲル冷却部の中央に位置している。煙流路の断面積の非流路の断面積に対する比率は、1.8である。
【0063】
Dongguan Huadai Organic Silicon Co.,Ltd.によってγ-トリフルオロプロピルメチルポリシロキサンという商品名で販売されている、300℃を超える熱分解温度を有するフルオロシリコーンゴムの食品用のシリカゲルを用いて、本明細書に記載する射出高温硬化成形法を使用し、その後、20℃の温度及び68%の相対湿度で24.2時間維持することにより、予備製作シリカゲル冷却部が作製される。本明細書に記載する検出方法を用いて、予備製作シリカゲル冷却部の含水量が2.2重量%に達したことが検出され、シリカゲル冷却部が得られる。シリカゲル冷却部の長さは40mmであり、その外径は5.0mmである。本明細書に記載する方法に従って検出すると、シリカゲル冷却部のショア硬度は80度であり、その比熱容量は3.1kJ/(kg・℃)である。それは、Yunnan Bagu Biotechnology Co.Ltd.によってパパイヤという商品名で販売されているポーポー果実香エッセンスを含む。
【0064】
シリカゲル冷却部及びシートタイプの発煙部は、既存の成形紙包装材料で、二元構造のタバコにまとめる。
【0065】
実施例6:本発明の加熱式製品用のシリカゲル冷却部
シリカゲル冷却部は、円形断面を有する直線状孔煙流路と、煙流路を包囲する流路壁とからなる筒状の冷却部である。合計40個の直線状孔煙流路があり、14個はシリカゲル冷却部の中央に位置し、26個はシリカゲル冷却部の外壁に近接している。煙流路の断面積の非流路の断面積に対する比率は、2.0である。
【0066】
Shenzhen Muwei Technology Co.,Ltd.によってジメチルシリコーンゴムの商品名で販売されている、300℃を超える熱分解温度を有するメチルシリコーンゴムの食品用のシリカゲルを用いて、本明細書に記載する押出高温硬化成形法を使用し、その後、22℃の温度及び72%の相対湿度で25.8時間維持することにより、予備製作シリカゲル冷却部が作製される。本明細書に記載する検出方法を用いて、予備製作シリカゲル冷却部の含水量が1.0重量%に達したことが検出され、シリカゲル冷却部が得られる。シリカゲル冷却部の長さは5mmであり、その外径は4.0mmである。本明細書に記載する方法に従って検出すると、そのショア硬度は70度であり、その比熱容量は1.9kJ/(kg・℃)である。それは、Yunnan Henggang Technology Co.Ltd.によってミックスタバコフレーバーという商品名販売されているバーレータバコエッセンスを含む。
【0067】
シリカゲル冷却部及び既存のシートタイプの発煙部、並びにアセテート繊維ろ過部及び紙管の空筒部は、成形紙包装材料で、四元構造のタバコにまとめる。
【0068】
発明の概要に記載する方法により、実施例1~6の煙温度、煙濃度及び官能評価が検出され、その検出結果及び喫煙評価結果を表1に記載する。
【0069】
【表1】
【0070】
表1の結果により、シリカゲル冷却部を含む加熱式製品の煙温度は、HEETs対照サンプルと比較して約4~7℃低下し、煙濃度の差は少なくとも14.1%であることが明確に示されている。発煙量に関して、発煙部とともにまとめられた二元構造のカートリッジは、二元を超える構造のカートリッジよりも著しく良好である。官能評価の結果は、対照サンプルの冷却部において、実施例1~6では見られない崩壊が発生していることを示す。全体として、実施例1~6のシリカゲル冷却部は、対照サンプルよりも低い煙温度と高い煙濃度とを有している。本発明によるシリカゲル冷却部を有する加熱式製品は、低い煙温度と高い煙濃度という二重の特性を有する。
【符号の説明】
【0071】
1 シリカゲル部
1-1 外側溝
1-2 内側溝
2 煙流路
3 発煙部
4 ろ過部
5 支持部
6 空筒部
図1
図2
【国際調査報告】