(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】X線システム及び方法
(51)【国際特許分類】
H05G 1/02 20060101AFI20231115BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20231115BHJP
G21K 1/00 20060101ALI20231115BHJP
G21K 1/06 20060101ALI20231115BHJP
H05G 1/00 20060101ALI20231115BHJP
H05G 1/26 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H05G1/02 J
A61B6/00 300J
G21K1/00 X
G21K1/06 A
H05G1/00 G
H05G1/26 E
A61B6/00 300G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023523620
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2021078778
(87)【国際公開番号】W WO2022084234
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】317016811
【氏名又は名称】エクシルム・エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルンドストレーム、ウルフ
【テーマコード(参考)】
4C092
4C093
【Fターム(参考)】
4C092AA01
4C092BD14
4C092CE09
4C092DD04
4C092EE20
4C093EA02
4C093EA12
(57)【要約】
X線システムであって、X線ビームを生成するように構成された電子衝撃X線源と、X線出口ポートを有する放射線遮蔽筐体と、上記放射線遮蔽筐体内に配置され、上記X線ビームを上記出口ポートに向けて方向付けるように構成されたX線光学素子と、上記出口ポートにおいて配置されたシャッターと、上記シャッターは、出口ポートを通るX線出力を可能にする開位置と、出口ポートを通るX線出力を防止する閉位置との間で移動可能であり、上記出口ポートに向けて方向付けられた、X線源からのX線放射を検出するように配置された検出器と、を備え、上記検出器は、第1のエネルギー範囲内のX線放射を検出するように構成されている、X線システムが開示される。X線システムを動作させる対応する方法もまた開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線システムであって、
X線ビームを生成するように構成された電子衝撃X線源と、
X線出口ポートを有する放射線遮蔽筐体と、
前記放射線遮蔽筐体内に配置され、前記X線ビームを前記X線出口ポートに向けて方向付けるように構成されたX線光学素子と、
前記X線出口ポートにおいて配置されたシャッターと、ここで、前記シャッターは、前記X線出口ポートを通るX線出力を許容する開位置と、前記X線出口ポートを通るX線出力を防止する閉位置との間で移動可能であり、
前記X線出口ポートに向けて方向付けられた、前記電子衝撃X線源からのX線放射を検出するように配置された検出器と、を備え、
前記検出器は、第1のエネルギー範囲内のX線放射を検出するように構成されている、X線システム。
【請求項2】
前記検出器は、前記第1のエネルギー範囲外のエネルギーを有するX線放射が検出されることを防止するフィルタを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記検出器は、ダイオードを備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記検出器は、前記第1のエネルギー範囲内のX線放射を検出するための第1の検出器素子と、第2のエネルギー範囲内のX線放射を検出するための第2の検出器素子と、を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記X線光学素子は、所定のエネルギー範囲内のX線光子のみを透過させるように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のエネルギー範囲は、前記所定のエネルギー範囲から外れ、特に前記所定のエネルギー範囲の上に外れるように選択される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは、前記所定のエネルギー範囲外のエネルギーを有する検出された光子が所定の閾値を超える場合、前記シャッターが前記閉位置にあることを確実にするように構成されている、請求項5又は6に記載のシステム。
【請求項8】
所望のエネルギー範囲内のX線放射を示す検出器信号を前記検出器から受信するように接続された制御装置を更に備え、前記制御装置は、前記検出器信号が増大するように、前記電子衝撃X線源と前記X線光学素子との間、及び/又は前記X線光学素子と前記X線出口ポートとの間の位置合せを調整するように配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記放射線遮蔽筐体の外部から制御可能であり、前記X線光学素子の位置及び/又は向きを調整するように配置されたマニピュレータを更に備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
X線システムを動作させる方法であって、
電子衝撃X線源を使用して、X線ビームを生成することと、
前記X線ビームを、X線出口ポートを有する放射線遮蔽筐体内へと方向付けることと、
前記放射線遮蔽筐体内に配置されたX線光学素子を使用して、前記X線ビームを前記X線出口ポートに向けて方向付けることと、
シャッターを、前記X線出口ポートを通るX線出力を可能にする開位置と、前記X線出口ポートを通るX線出力を防止する閉位置との間で移動させることによって、前記X線出口ポートを通るX線出力を許容する又は防止するために、前記X線出口ポートにおいて配置された前記シャッターを使用することと、
前記X線出口ポートに向けて方向付けられた、第1のエネルギー範囲内のX線放射を検出することと、
を備える方法。
【請求項11】
前記X線光学素子は、所定のエネルギー範囲内のX線放射を透過させるように構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のエネルギー範囲は、前記所定のエネルギー範囲から外れ、特に前記所定のエネルギー範囲の上に外れるように選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記所定のエネルギー範囲外のエネルギーを有する検出された光子が所定の閾値を超える場合、前記シャッターが前記閉位置にあることを確実にすることを更に備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記X線出口ポートに向けて方向付けられた、所望のエネルギー範囲内の検出されたX線放射が増大するように、前記電子衝撃X線源と前記X線光学素子との間、及び/又は前記X線光学素子と前記X線出口ポートとの間の位置合せを調整することを更に備える、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記所定のエネルギー範囲外のエネルギーを有する前記検出された光子を、前記閾値より下に低減させるために、前記電子衝撃X線源と前記X線光学素子との間の位置合せ、及び/又は前記X線光学素子と前記X線出口ポートとの間の位置合せを調整することを更に備える、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にX線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線システムは、典型的に、X線源と、X線源によって生成されたX線放射を収集して方向付けるように配置されたX線光学系と、を備える。従って、X線システムから利用可能にされ得る有用なX線放射の量は、光学系によって収集され得る放射の量によって部分的に決定される。先行技術は、この点に関して、生成された放射のうちのどれだけが収集され、X線システムからの出力として有用にされ得るかを制限する、全体的な安全要件及び幾何学的制約によって制限される。
【発明の概要】
【0003】
典型的な先行技術のX線システムは、シャッターを有するX線源と、生成されたX線放射を収集し、有用な出力を提供するためのX線光学素子と、を備える。理解されるように、X線光学系がX線源のより近くに配置されている場合、より有用なX線放射が利用可能にされ得る。しかしながら、先行技術では、線源と光学系との間の最小距離は、線源の内部幾何学的形状及びシャッターの寸法によって決定される。
【0004】
シャッターは、安全上の理由で必要とされ、それは、周囲、特に人間を、常にX線への意図しない曝露から保護することが可能でなければならない。X線光学系が適切に調整されていない場合、線源がオンにされると、放射は、潜在的に、ほぼどこにでも行き着く可能性がある。従って、先行技術では、X線光学系は、シャッターの下流に配置されており、これは、線源と光学系との間の距離がどれだけ短くなり得るかに制限を加え、従って、どれだけの有用なX線放射が利用可能にされ得るかにも制限を加える。
【0005】
本発明は、好ましくは、1つの意図されたX線出口のみを有する、放射線遮蔽筐体を設けることによって、光学系を線源のより近くに置く安全な方法を提供する。筐体は、X線源エンクロージャの拡張部であり得るか、又はそれは、剛性的に若しくは柔軟にのいずれかで、エンクロージャに接続され得る。X線放射のいかなる漏れも防止するために、線源と筐体とが合わさる場所に放射トラップが存在するならば、線源と筐体とが互いに切り離されることさえも考えられる。本発明は、X線放射が電子ビームとターゲットとの間の相互作用によって生成される、電子衝撃X線システムにおいて特に有用である。ターゲットは、反射ターゲット若しくは透過ターゲット等の固体ターゲットであり得るか、又は液体ジェットターゲット等の液体ターゲットであり得る。
【0006】
本発明の基礎となる一般的な考え方は、1つ又は複数のX線光学素子は、このような放射線遮蔽筐体内に、従って、シャッターの上流に配設される場合、X線源のより近くに配置され得るということであり、ここで、X線放射の不用意な出力を防止するシャッターは、放射線遮蔽筐体の出口ポートに配設されている。X線光学系は、X線源によって生成されたX線放射を出口ポートに向けて方向付けるように構成されている。従って、放射線遮蔽筐体は、X線放射の漏れを防止し、出口ポートを通る出力のみを可能にするという目的を果たし、シャッターは、出口ポートを通る出力を可能にするか、又は防止するかを制御するために使用される。
【0007】
従来、安全シャッターは、X線源と一体化され、即ち、X線源に組み込まれ、X線光学系及び/又はモノクロメータは、安全シャッターの下流に配置されてきた。従って、代わりに、安全シャッターを光学系/モノクロメータの下流の位置に移動させることは、当業者には直感に反するように見えるかもしれない。しかしながら、本発明によれば、これは、X線光学素子がその内部に配置されている放射線遮蔽筐体によって可能になる。
【0008】
好都合には、出口ポートに向けて方向付けられたX線放射を検出するために、放射線遮蔽筐体内部に1つ以上の検出器が設けられ得る。例えば、検出器が、放射線遮蔽筐体の内部に面している側でシャッターに取り付けられ得る。このような検出器は、好ましくは、1つ以上のダイオードとして具現化され得る。代替の検出器は、位置合せ中により多くの情報を提供する画素化検出器、又はより良好な感度を提供し得るシンチレータベースの検出器を備え得る。実施形態は、第1のエネルギー範囲内のX線放射を検出するように構成された検出器を備える。エネルギー範囲は、上限、下限、又は上限と下限の両方を有し得る。例示的な実施形態では、フィルタが、上記第1のエネルギー範囲外のエネルギーのX線放射が検出器に到達することを防止するように配置されている。他の実施形態は、少なくとも第1及び第2のエネルギー範囲からのX線放射の別個の検出を含み得る。具体的には、所望のエネルギー範囲内のエネルギーを有するX線光子、及び上記所望のエネルギー範囲を上回るエネルギーを有するX線光子の別個の検出が有利であり得る。所望のエネルギー範囲内の光子によって生成された第1の信号が、位置合せ手順中に使用され得る。X線源とX線光学素子との間、及び/又はX線光学素子と出口ポートとの間の位置合せが、この信号を増大させるように調整され得る。上記所望のエネルギー範囲を上回るエネルギーを有する光子によって生成された第2の信号が、以下に説明されるように、誤動作を軽減するために使用され得る。
【0009】
出口ポートに向けて方向付けられたある一定のエネルギー範囲内のX線放射を検出するように構成された検出器を含めることは、それが、X線光学素子の位置及び/又は向きの調整を、オペレータにとって行いやすくする又は自動化することを可能にする、位置合せツールとして使用され得るという点で有利である。更に、このような検出器はまた、出口ポートにおいて配置されたシャッターと共に、所望のエネルギー範囲外のエネルギーを有するX線放射が出口ポートを通って放出されることを防止するために使用され得る。これら及び他の利点は、様々な例示的な実施形態において、以下で更に説明される。
【0010】
典型的に、X線システムは、所定の光子エネルギー範囲内のX線放射を送達するように設計され、単色化X線光学系が、この目的のために通常使用される。しかしながら、X線システムにおける構成要素の位置ずれ等の誤動作の場合、所定の範囲外の光子エネルギーを有するX線放射が、光学系を通過し得る。いくつかの実施形態では、このような状況は、所定のエネルギー範囲外の、例えば、所定のエネルギー範囲の上に外れるエネルギーを有する光子を別個に検出するように検出器を構成することによって対処される。所定のエネルギー範囲外のエネルギーを有する光子の量が所定の閾値を超えることが検出された場合には、システムは、出口ポートを通るそのようなエネルギーのいかなるX線放射の出力も防止するために、シャッターが閉位置にあることを確実にするように構成され得る。閉位置と開位置との間のシャッターの移動は、好ましくは、電気機械アクチュエータ、モータ、又は同様のもの使用して実施される。
【0011】
X線システムにはまた、放射を遮断するように構成された外側放射線遮蔽体又はキャビネットが設けられ得る。キャビネットは、X線源、X線光学系、試料位置、及び検出装置のうちの少なくともいくつかを封入し得る。例えば、このような外側キャビネットは、X線光学系が出力として提供するように設計されているそれらのエネルギーに対応する光子エネルギーでの放射を遮断するように構成され得る。従って、いくつかの実装形態では、検出器は、意図された出力に対応する放射に対して非感受性でありながら、外側キャビネットを通過するリスクがあり得る放射を検出するように構成され得る。このようにして、さもなければ不用意に放出され、及び場合によっては、外側放射線遮蔽体を透過する可能性がある、所定のエネルギー範囲よりも高いエネルギーのX線放射は、検出され、そのようなX線放射が検出された場合にシャッターが閉じられることを確実にすることによって、内側放射線遮蔽に閉じ込められ得る。
【0012】
出口ポートに向けて方向付けられたX線放射を検出するための検出器を設けることはまた、X線システムの構成要素の位置合せにも使用され得る。出口ポートに向けて方向付けられたX線放射、例えば、所定の範囲内の放射を検出することによって、及び検出器からの検出器信号を制御装置に供給することによって、X線源とX線光学系との間、及び/又はX線光学系と出口ポートとの間の位置合せが、検出器信号が増大するように、制御装置によって調整され得る。この目的のために、制御装置は、好ましくは、X線源のX線スポット、及び/又は、X線光学系の位置若しくは向きを移動させるために使用され得るマニピュレータに結合される。好都合なことに、このような位置合せは、シャッターがその閉位置にある間に行われ得、従って、いかなるX線放射も出口ポートを通って出力されることを防止している。従って、X線光学素子の位置及び/又は向きを調整するように配置されたマニピュレータは、好ましくは、放射線遮蔽筐体の外部から制御可能である。これは、不十分な位置合せが、所定の範囲外のエネルギーを有するX線放射が出口ポートに到達することを引き起こし得るという点で、有利である。
【0013】
X線光学系に対するX線スポットの移動は、例えば、X線源全体の移動によってか、ターゲット上にX線放射を生成するために、上記ターゲットに衝突する電子ビームを偏向させることによってか、又はX線ターゲットを移動させることによって、達成され得る。トランスレーションの異なるモードが、異なる方向において使用され得、例えば、第1の方向へのX線スポットの移動は、電子ビームを偏向させることによって実現され得、一方、第1の方向に垂直である等の別の方向に沿った移動は、ターゲットを移動させることによって実現され得る。
【0014】
X線光学系の移動は、例えば、ステッピングモータ等のモータ、又は電磁アクチュエータ若しくは圧電アクチュエータ等のアクチュエータを用いて達成され得る。
【0015】
いくつかの修正及び変形が、本発明の範囲内で可能である。特に、多材料ターゲット、1つより多くのターゲット、又は1つより多くの電子ビームを備えるX線源が、本発明の概念の範囲内で考えられる。また、1つより多くの明確に定義された波長のX線放射を方向付けるように設計されたX線光学系も企図される。更に、本明細書で説明されるタイプのX線システムは、有利には、限定はしないが、医療診断、非破壊検査、リソグラフィ、結晶分析、顕微鏡検査、材料科学、顕微鏡検査表面物理学、X線回折によるタンパク質構造決定、X線光分光法(XPS:X-ray photo spectroscopy)、限界寸法小角X線散乱(CD-SAXS:critical dimension small angle X-ray scattering)、及びX線蛍光(XRF)によって例示される特定用途向けに作られ得る。
【0016】
以下の発明を実施するための形態では、添付の図面への参照が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、X線システムの一例を概略的に示す。
【
図2】
図2は、X線システムの別の例を概略的に示す。
【
図3】
図3は、X線システムの別の例を概略的に示す。
【
図4】
図4は、例示的な検出器配置を概略的に示す。
【
図5】
図5は、本発明による方法の概略的なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、X線システムの一例を概略的に示す。X線システムには、エンクロージャ3が設けられ、そこから、X線放射が、X線透過窓4を通って放出される。X線放射は、電子が電子源1から放出され、相互作用領域においてターゲット2に衝突することによって生成され、従って、X線スポットを作り出している。放射線遮蔽筐体5は、エンクロージャ3に隣接して配置され、窓4を通って放出されるX線放射を受ける。X線光学系6が、放射線遮蔽筐体5内に設けられている。筐体5及びエンクロージャ3は、この例では、互いに対して独立に移動可能である。従って、位置合せは、筐体5若しくはエンクロージャ3のいずれか又は両方を移動させることによって行われ得る。放射漏れを防止するために、放射トラップ9が、筐体5とエンクロージャ3との間の境界面において配置され得る。筐体5には、出口ポートが設けられており、これを通ってX線放射が出力され得る。X線放射の不用意な出力を防止するために、出口ポートには、出口ポートを通るX線出力を可能にする開位置と、出口ポートを通るX線出力を防止する閉位置との間で移動可能なシャッター7が設けられている。シャッター7が閉じているとき、X線放射は、周囲環境に放出されることはない。シャッター7が開いているとき、X線放射は、そうでない場合にはシャッターによって覆われている、筐体における出口ポートを通って放出され得る。出口ポートに向けて方向付けられた任意のX線放射を検出するために、1つ以上の検出器(
図1において参照番号8で示す)が、例えば、シャッター7上に設けられ得る。従って、シャッター7が閉じているとき、検出器(複数可)8は、シャッターに到達したX線放射の量を示す信号を提供する。位置合せ手順中、X線光学系とX線スポットとの相対位置は、この信号が増大するように調整され得る。
【0019】
また、試料位置(即ち、調査中の試料が配置されるべき位置)において位置するか、又は試料位置の上流若しくは下流のビーム経路において位置する検出器からのフィードバックに基づいて位置合せ手順を行うことも考えられる。この場合、シャッター7は、X線放射が検出器に到達するように、位置合せ手順の間、その開位置にあることになる。
【0020】
X線光学素子6は、多層膜ミラー等のミラー、ゾーンプレート、モノキャピラリ光学素子(monocapillary optical element)、又はポリキャピラリ光学素子(polycapillary optical element)であり得る。いくつかの好ましい実施形態では、X線光学素子は、モンテルミラーである。他の実施形態では、X線光学素子は、結晶光学系、例えば、二重湾曲結晶光学系(DCC光学系)として実装され得る。
【0021】
放射線遮蔽筐体5の内部は減圧状態であり得るか、又はそれはヘリウム若しくは窒素等の不活性ガスで充填され得る。筐体5の内部を減圧状態に保つか、又はそれを不活性ガスで充填しておく1つの理由は、光学系6上の汚染物質の蓄積を低減させるため、並びに/又は、X線放射の散乱及び吸収を低減させるためであり得る。
【0022】
別の例示的な実装形態を
図2に概略的に示す。この例では、筐体5は、エンクロージャ3に剛性的に取り付けられている。この実装形態では、位置合せは、マニピュレータ10によって、X線光学系6の位置若しくは向き、又は、電子源1によって作り出される電子ビームを移動させることによって、ターゲット2上のX線スポットのロケーション、のいずれかを調整することによって行われ得る。筐体5は、剛性的且つ放射線を遮蔽するようにエンクロージャ3に接続されているので、シャッター7が閉じられている限り、位置合せ手順がどのように行われるかに関係なく、X線放射が筐体の外側に存在することはない。電子源1は、この実装形態では、ターゲット2上のX線スポットのロケーションを調整するための偏向板又は位置合せコイル等の好適な電気光学構成要素を備え得る。マニピュレータ10は、X線光学系の手動又は電動の移動を提供し得る。好ましくは、マニピュレータ10及びX線源1、並びに検出器8は、位置合せ調整が検出器信号を増大させるために都合よく行われ得るように、自動位置合せのための制御装置11に接続されている(図中に破線で示す)。この実装形態は、光学系6とターゲット2上のX線スポットとの間のより短い距離を提供し得る。X線源1は、エンクロージャ3の中に含まれているので、筐体5内に減圧を提供する必要はない。窓4は、エンクロージャ3内部の減圧領域と筐体5との間の境界面として機能する。筐体5は、放射線遮蔽を提供するだけでよいので、マニピュレータ10の構造は、ある程度単純化され得る。筐体5は、空気散乱及び吸収を低減し、そしてまた、X線光学系の汚染を防止するために、ヘリウム等の不活性ガスでフラッシングされ得る。
【0023】
なお別の例示的な実装形態を
図3に概略的に示す。この実装形態では、放射線遮蔽筐体5は、X線源1のためのエンクロージャも備えるように拡張されている。この場合、ターゲット2(従って、X線スポット)とX線光学系6との間の距離は、その間にX線透過窓が必要とされないので、より一層低減され得る。減圧領域は、この場合、放射線遮蔽筐体5内に設けられている。従って、X線透過窓4は、好ましくは、出口ポートにおいて設けられ、従って、シャッター7がその閉位置にあるときに、シャッター7によって覆われることになる。
図3に示される種類の実装形態は、軟X線放射(約4keVより下のエネルギー)を提供するように設計されたX線システムに有用であり得る。X線源1、X線光学系のためのマニピュレータ10、及び検出器(複数可)8は、
図2の実装形態と同様の方法で制御装置11に接続され得る。
【0024】
例示的な検出器配置を
図4に概略的に示す。筐体5内部のX線ビーム経路に沿って見た、シャッター7の平面図が示されている。X線放射がそれを通って筐体5から放出される出口ポートは、
図4において点線の円として概略的に示されている。2つのダイオード101、102が、シャッターが閉位置にあるときに出口ポートの前に配置されることになるロケーションにおいて、シャッター7上に設けられている。第1のダイオード101は、X線光学系に対して最も近くに配置されており、所定の所望のエネルギー範囲内のX線放射を検出するために使用される。第2のダイオード102は、放出されたX線放射の方向に見て、第1のダイオードの後ろに配置されている。
図4において、第2のダイオード102の一部は、第1のダイオード101の後ろに位置することを例示するために、破線で描かれている。従って、第1のダイオードは、第2のダイオードのための高域フィルタとして機能し得る。次いで、第2のダイオードが、所定のエネルギー範囲外のエネルギーを有するX線放射がX線光学系から放出されたかどうかを検出するために使用され得る。更なるエネルギーフィルタリングが必要な場合、オプションのフィルタ(
図4には図示せず)が、これら2つのダイオードの間に配置され得る。
【0025】
一般に、実施形態は、シャッターのその閉位置と開位置との間の移動を実施するための、1つ以上の電気機械アクチュエータ、モータ、又は同様のものを含み得る。このようなアクチュエータ、モータ、又は同様のものは、上述の制御装置に接続され得るか、又は1つ以上の別個の専用制御装置を有し得る。シャッターの位置が検出器からの入力に基づいて制御されることになる実装形態では、検出器及びアクチュエータ/モータを、共通の制御装置に接続させることが好ましい。X線システムは、全ての制御入力及び出力を処理する単一の制御装置を使用して実装され得る。
【0026】
図5を参照すると、本発明によるX線システムを動作させる例示的な方法が、電子衝撃X線源を使用して、X線ビームを生成すること501と、X線ビームを、X線出口ポートを有する放射線遮蔽筐体内へと方向付けること502と、を備える。X線ビームは、放射線遮蔽筐体内に配置されたX線光学素子を使用して、出口ポートに向けて方向付けられる503。出口ポートにおいて配置されたシャッターが、出口ポートを通るX線出力を可能にする又は防止するために使用され504、ここで、シャッターは、出口ポートを通るX線出力を可能にする開位置と、出口ポートを通るX線出力を防止する閉位置との間で移動される。方法はまた、出口ポートに向けて方向付けられたX線放射を検出すること505を含み得る。オプションで、方法は、上記出口ポートを通って放出されるX線放射の量を増大させるために、X線源スポットとX線光学系との相対的な向きを位置合せする更なるステップ506を含み得る。これは、好ましくは、X線システムにおいて1つ以上の検出器と位置合せマニピュレータとの両方に接続された制御装置を使用して、シャッターが閉じている間に相対的な向きを調整することによって行われ得る。調整は、出口ポートに向けて方向付けられたX線放射の検出量が増大するように行われ得る。制御装置は、達成された増大が限界値より下になると、更なる調整を停止するように構成され得る。更に、方法は、制御装置によって、検出器が所定の範囲外のエネルギーを有するX線放射を検出したときに、シャッターが閉じられることを確実にするステップを備え得る。
【0027】
更なる実施形態では、方法は、所定の範囲外のエネルギーを有する検出されたX線放射の量が所定の閾値より下であるように、X線スポットとX線光学系との間、及び/又はX線光学系と出口ポートとの間の相対的な向きを調整すること507を備える。好ましくは、この調整は、シャッターが閉じている間に制御装置によって行われ、従って、所定の範囲外のエネルギーを有するX線放射が、出口ポートを通って放出されることを防止する。
【0028】
[終わりに]
X線ビームを生成するように構成された電子衝撃X線源と、X線出口ポートを有する放射線遮蔽筐体と、上記放射線遮蔽筐体内に配置され、上記X線ビームを上記出口ポートに向けて方向付けるように構成されたX線光学素子と、上記出口ポートにおいて配置されたシャッターと、上記シャッターは、出口ポートを通るX線出力を可能にする開位置と、出口ポートを通るX線出力を防止する閉位置との間で移動可能である、を備えるX線システムが開示される。いくつかの実施形態では、出口ポートに向けて方向付けられたX線放射は、システムにおける構成要素の位置合せを容易にするために、及び/又は安全上の理由で放射の不用意な出力を防止するために検出される。X線システムを動作させる対応する方法もまた開示される。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線システムであって、
X線ビームを生成するように構成された電子衝撃X線源と、
X線出口ポートを有する放射線遮蔽筐体と、
前記放射線遮蔽筐体内に配置され、前記X線ビームを前記X線出口ポートに向けて方向付けるように構成されたX線光学素子と、
前記X線出口ポートにおいて配置されたシャッターと、ここで、前記シャッターは、前記X線出口ポートを通るX線出力を許容する開位置と、前記X線出口ポートを通るX線出力を防止する閉位置との間で移動可能であり、
前記放射線遮蔽筐体内に配置され、前記X線出口ポートに向けて方向付けられた、前記電子衝撃X線源からのX線放射を検出するように
構成された検出器と、を備え、
前記検出器は、第1のエネルギー範囲内のX線放射を検出するように構成されている、X線システム。
【請求項2】
前記検出器は、前記第1のエネルギー範囲外のエネルギーを有するX線放射が検出されることを防止するフィルタを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記検出器は、ダイオードを備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記検出器は、前記第1のエネルギー範囲内のX線放射を検出するための第1の検出器素子と、第2のエネルギー範囲内のX線放射を検出するための第2の検出器素子と、を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記X線光学素子は、所定のエネルギー範囲内のX線光子のみを透過させるように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のエネルギー範囲は、前記所定のエネルギー範囲から外れ、特に前記所定のエネルギー範囲の上に外れるように選択される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは、前記所定のエネルギー範囲外のエネルギーを有する検出された光子が所定の閾値を超える場合、前記シャッターが前記閉位置にあることを確実にするように構成されている、請求項5又は6に記載のシステム。
【請求項8】
所望のエネルギー範囲内のX線放射を示す検出器信号を前記検出器から受信するように接続された制御装置を更に備え、前記制御装置は、前記検出器信号が増大するように、前記電子衝撃X線源と前記X線光学素子との間、及び/又は前記X線光学素子と前記X線出口ポートとの間の位置合せを調整するように配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記放射線遮蔽筐体の外部から制御可能であり、前記X線光学素子の位置及び/又は向きを調整するように配置されたマニピュレータを更に備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
X線システムを動作させる方法であって、
電子衝撃X線源を使用して、X線ビームを生成することと、
前記X線ビームを、X線出口ポートを有する放射線遮蔽筐体内へと方向付けることと、
前記放射線遮蔽筐体内に配置されたX線光学素子を使用して、前記X線ビームを前記X線出口ポートに向けて方向付けることと、
シャッターを、前記X線出口ポートを通るX線出力を可能にする開位置と、前記X線出口ポートを通るX線出力を防止する閉位置との間で移動させることによって、前記X線出口ポートを通るX線出力を許容する又は防止するために、前記X線出口ポートにおいて配置された前記シャッターを使用することと、
前記放射線遮蔽筐体内に配置された検出器を用いて、前記X線出口ポートに向けて方向付けられた、第1のエネルギー範囲内のX線放射を検出することと、
を備える方法。
【請求項11】
前記X線光学素子は、所定のエネルギー範囲内のX線放射を透過させるように構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のエネルギー範囲は、前記所定のエネルギー範囲から外れ、特に前記所定のエネルギー範囲の上に外れるように選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記所定のエネルギー範囲外のエネルギーを有する検出された光子が所定の閾値を超える場合、前記シャッターが前記閉位置にあることを確実にすることを更に備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記X線出口ポートに向けて方向付けられた、所望のエネルギー範囲内の検出されたX線放射が増大するように、前記電子衝撃X線源と前記X線光学素子との間、及び/又は前記X線光学素子と前記X線出口ポートとの間の位置合せを調整することを更に備える、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記所定のエネルギー範囲外のエネルギーを有する前記検出された光子を、前記閾値より下に低減させるために、前記電子衝撃X線源と前記X線光学素子との間の位置合せ、及び/又は前記X線光学素子と前記X線出口ポートとの間の位置合せを調整することを更に備える、請求項13に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
[終わりに]
X線ビームを生成するように構成された電子衝撃X線源と、X線出口ポートを有する放射線遮蔽筐体と、上記放射線遮蔽筐体内に配置され、上記X線ビームを上記出口ポートに向けて方向付けるように構成されたX線光学素子と、上記出口ポートにおいて配置されたシャッターと、上記シャッターは、出口ポートを通るX線出力を可能にする開位置と、出口ポートを通るX線出力を防止する閉位置との間で移動可能である、を備えるX線システムが開示される。いくつかの実施形態では、出口ポートに向けて方向付けられたX線放射は、システムにおける構成要素の位置合せを容易にするために、及び/又は安全上の理由で放射の不用意な出力を防止するために検出される。X線システムを動作させる対応する方法もまた開示される。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] X線システムであって、
X線ビームを生成するように構成された電子衝撃X線源と、
X線出口ポートを有する放射線遮蔽筐体と、
前記放射線遮蔽筐体内に配置され、前記X線ビームを前記X線出口ポートに向けて方向付けるように構成されたX線光学素子と、
前記X線出口ポートにおいて配置されたシャッターと、ここで、前記シャッターは、前記X線出口ポートを通るX線出力を許容する開位置と、前記X線出口ポートを通るX線出力を防止する閉位置との間で移動可能であり、
前記X線出口ポートに向けて方向付けられた、前記電子衝撃X線源からのX線放射を検出するように配置された検出器と、を備え、
前記検出器は、第1のエネルギー範囲内のX線放射を検出するように構成されている、X線システム。
[2] 前記検出器は、前記第1のエネルギー範囲外のエネルギーを有するX線放射が検出されることを防止するフィルタを備える、[1]に記載のシステム。
[3] 前記検出器は、ダイオードを備える、[1]又は[2]に記載のシステム。
[4] 前記検出器は、前記第1のエネルギー範囲内のX線放射を検出するための第1の検出器素子と、第2のエネルギー範囲内のX線放射を検出するための第2の検出器素子と、を備える、[1]~[3]のいずれか一項に記載のシステム。
[5] 前記X線光学素子は、所定のエネルギー範囲内のX線光子のみを透過させるように構成されている、[1]~[4]のいずれか一項に記載のシステム。
[6] 前記第1のエネルギー範囲は、前記所定のエネルギー範囲から外れ、特に前記所定のエネルギー範囲の上に外れるように選択される、[5]に記載のシステム。
[7] 前記システムは、前記所定のエネルギー範囲外のエネルギーを有する検出された光子が所定の閾値を超える場合、前記シャッターが前記閉位置にあることを確実にするように構成されている、[5]又は[6]に記載のシステム。
[8] 所望のエネルギー範囲内のX線放射を示す検出器信号を前記検出器から受信するように接続された制御装置を更に備え、前記制御装置は、前記検出器信号が増大するように、前記電子衝撃X線源と前記X線光学素子との間、及び/又は前記X線光学素子と前記X線出口ポートとの間の位置合せを調整するように配置されている、[1]~[7]のいずれか一項に記載のシステム。
[9] 前記放射線遮蔽筐体の外部から制御可能であり、前記X線光学素子の位置及び/又は向きを調整するように配置されたマニピュレータを更に備える、[1]~[8]のいずれか一項に記載のシステム。
[10] X線システムを動作させる方法であって、
電子衝撃X線源を使用して、X線ビームを生成することと、
前記X線ビームを、X線出口ポートを有する放射線遮蔽筐体内へと方向付けることと、
前記放射線遮蔽筐体内に配置されたX線光学素子を使用して、前記X線ビームを前記X線出口ポートに向けて方向付けることと、
シャッターを、前記X線出口ポートを通るX線出力を可能にする開位置と、前記X線出口ポートを通るX線出力を防止する閉位置との間で移動させることによって、前記X線出口ポートを通るX線出力を許容する又は防止するために、前記X線出口ポートにおいて配置された前記シャッターを使用することと、
前記X線出口ポートに向けて方向付けられた、第1のエネルギー範囲内のX線放射を検出することと、
を備える方法。
[11] 前記X線光学素子は、所定のエネルギー範囲内のX線放射を透過させるように構成されている、[10]に記載の方法。
[12] 前記第1のエネルギー範囲は、前記所定のエネルギー範囲から外れ、特に前記所定のエネルギー範囲の上に外れるように選択される、[11]に記載の方法。
[13] 前記所定のエネルギー範囲外のエネルギーを有する検出された光子が所定の閾値を超える場合、前記シャッターが前記閉位置にあることを確実にすることを更に備える、[12]に記載の方法。
[14] 前記X線出口ポートに向けて方向付けられた、所望のエネルギー範囲内の検出されたX線放射が増大するように、前記電子衝撃X線源と前記X線光学素子との間、及び/又は前記X線光学素子と前記X線出口ポートとの間の位置合せを調整することを更に備える、[10]~[13]のいずれか一項に記載の方法。
[15] 前記所定のエネルギー範囲外のエネルギーを有する前記検出された光子を、前記閾値より下に低減させるために、前記電子衝撃X線源と前記X線光学素子との間の位置合せ、及び/又は前記X線光学素子と前記X線出口ポートとの間の位置合せを調整することを更に備える、[13]に記載の方法。
【国際調査報告】