(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】多層コラーゲン構造
(51)【国際特許分類】
A61L 27/24 20060101AFI20231115BHJP
A61L 27/44 20060101ALI20231115BHJP
A61L 27/26 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A61L27/24
A61L27/44
A61L27/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524919
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 IL2021051315
(87)【国際公開番号】W WO2022097149
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520370027
【氏名又は名称】デイタム デンタル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カプリ、ラン
(72)【発明者】
【氏名】ベイヤー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドラスト、アリー
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB04
4C081BA12
4C081BA13
4C081BA16
4C081BB06
4C081CD121
4C081CE01
4C081CE02
4C081DA02
4C081DB01
4C081DC04
4C081EA03
(57)【要約】
本発明は、異なる密度を有する少なくとも2つの層を備えた多層コラーゲン構造体に関する。本発明はさらに、少なくとも1つの分離要素の存在下でフィブリル化コラーゲンを圧縮するステップを含む、そのような多層構造を調製するための方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる密度を有する少なくとも2つのコラーゲン層を含む、層状構造。
【請求項2】
前記少なくとも2つのコラーゲン層は、少なくとも1つの第1コラーゲン層と、少なくとも1つの第2コラーゲン層とを含み、
前記少なくとも1つの第2コラーゲン層は、最大で、前記第1コラーゲン層の約90%までの密度を有する、請求項1に記載の層状構造。
【請求項3】
前記少なくとも2つのコラーゲン層は、少なくとも2つの第1コラーゲン層と、少なくとも1つの第2コラーゲン層とを含み、
前記少なくとも1つの第2コラーゲン層は、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層のそれぞれの間に配置されている、請求項1に記載の層状構造。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2コラーゲン層は、それぞれ独立して、最大で、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層の約90%までの密度を有する、請求項3に記載の層状構造。
【請求項5】
請求項1に記載の層状構造を調製する方法であって、
容器にコラーゲンを導入するステップと、
コラーゲンフィブリルを含むコラーゲンゲルを提供するために、前記コラーゲンをフィブリル化するステップと、
異なる密度を有する少なくとも2つの層を提供するために、少なくとも1つの分離要素の存在下で前記コラーゲンゲルを圧縮するステップと、
前記コラーゲンゲルを架橋するステップと、
架橋コラーゲンを乾燥させるステップと、を含む方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の層状構造を含む、軟組織の成長/増強のための外科用足場。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の層状構造を加えるステップを含む、軟組織を強化する方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の層状構造を加えるステップを含む、骨誘導再生及び組織誘導再生を含む骨成長/増強を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる密度を有する少なくとも2つの層を備えた多層コラーゲン構造に関する。本発明はさらに、少なくとも1つの分離要素の存在下でフィブリル化コラーゲンを圧縮するステップを含む、そのような多層構造を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨誘導再生(GBR)及び組織誘導再生(GTR)は、骨及び組織の増強のための既知の処置である。GBR及びGTRはいずれも、再生された骨または組織が成長する空間を不要な組織が占めないように排除する必要がある。隔離された空間は、骨由来の細胞、間葉系幹細胞、歯肉細胞、線維芽細胞などの増殖、移動、及び骨形成細胞への分化を可能にする。この隔離された空間は、新たな骨が成熟し、再吸収を最小限に抑えて安定するために維持されるべきである。GBR処置の最も高い成功率は、骨移植組織と、骨が再生される空間を望ましくない組織が占めることを防ぐバリア膜との組み合わせによって達成されることが示されている。
【0003】
多くの場合、歯科用インプラントを覆う骨は理想的ではなく、長期的な保護をサポートしていない。天然歯の周囲に歯周病に似たインプラント周囲炎が発生することが度々ある。他の例では、骨及び/または軟組織を介したインプラントの反射に起因して、あるいは、インプラントの金属成分を露出させる軟組織の後退に起因して、インプラント処置の審美性が損なわれる。
【0004】
例えば口蓋または結節から自家密性結合組織を収集することにより、例えば審美性のために、必要に応じて口腔軟組織を増強することが可能である。同種移植片も広く使用されており、結果は限定されている。しかしながら、このような処置は、追加の外科的処置を必要とし、痛みや感染症を引き起こし、身体によって拒絶されることがある。したがって、天然歯及び歯科用インプラントの周囲の軟組織及び硬組織を増強するための、生体適合性があり、かつ、可能な限り、少なくとも生分解性のデバイスが当該技術分野において必要とされている。このようなデバイスは、生体適合性があり、かつ、可能な限り生分解性の材料から作成される必要がある。
【0005】
既知の生体適合性かつ生分解性の材料のタイプの1つはコラーゲンである。コラーゲンタンパク質は、生体内のタンパク質の約30%を構成し、骨と細胞との癒着をサポートする役割を果たす。したがって、コラーゲンは、例えば培養細胞の基材において使用され、軟骨、骨、靭帯、角膜実質、及び皮膚の組織工学を含む再生医療のための足場材料としても使用される有用な生体材料であることが知られている。コラーゲンは、例えば創傷包帯材料、骨移植材料、止血材料、または抗癒着材料などの移植材料としても使用される。
【0006】
したがって、生体適合性があり、さらに軟組織と硬組織との両方を増強することができ、それぞれのタイプの組織が所望の領域に留まるコラーゲン構造を調製することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、それぞれが異なる密度を有する少なくとも2つのコラーゲン層を含む層状構造を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、それぞれが異なる密度を有する少なくとも2つのコラーゲン層を含む層状構造を提供し、前記少なくとも2つのコラーゲン層は、少なくとも1つの第1コラーゲン層と、少なくとも1つの第2コラーゲン層とを含み、前記少なくとも1つの第2コラーゲン層(低密度層)は、最大で、第1コラーゲン層(高密度層)の約90%までの密度を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、それぞれが異なる密度を有する少なくとも2つのコラーゲン層を含む層状構造を提供し、前記少なくとも2つのコラーゲン層は、少なくとも2つの第1コラーゲン層と、少なくとも1つの第2コラーゲン層とを含み、前記少なくとも1つの第2コラーゲン層(内層)は、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層(外層)のそれぞれの間に配置されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、それぞれが異なる密度を有する少なくとも2つのコラーゲン層を含む層状構造を提供し、前記少なくとも2つのコラーゲン層は、少なくとも2つの第1コラーゲン層と、少なくとも1つの第2コラーゲン層とを含み、前記少なくとも1つの第2コラーゲン層(内層)は、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層(外層)のそれぞれの間に配置され、前記少なくとも1つの第2コラーゲン層(低密度層)は、それぞれ独立して、最大で、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層の約90%までの密度を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明は、それぞれが異なる密度を有する少なくとも2つのコラーゲン層を含む層状構造を提供し、前記少なくとも2つのコラーゲン層は、少なくとも2つの第1コラーゲン層と、少なくとも1つの第2コラーゲン層とを含み、前記少なくとも1つの第1コラーゲン層(内層)は、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層(外層)のそれぞれの間に配置され、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層(低密度層)は、それぞれ独立して、最大で、前記少なくとも1つの第2コラーゲン層(高密度層)の約90%までの密度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部分で特に指摘され、明確に請求される。しかしながら、本発明は、構成及び操作方法の両方に関して、その目的、特徴、及び利点とともに、添付の図面とともに読まれるとき、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解される。本発明の実施形態は、添付の図面において例として示され、限定するものではなく、同様の参照番号は、対応する、類似の、または同様の要素を示す。
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による3層コラーゲン構造の写真画像図である。
【
図2】本発明の実施形態による3層コラーゲン構造の2倍の拡大図である。
【
図3】L字型の身体欠損を修復するために移植された、移植から4週間後のイヌにおける本発明の層状構造の移植片の顕微鏡写真であり、コラーゲン構造は「M」とマークされ、多層コラーゲン構造の骨化の開始を示している。
【
図4】L字型の身体欠損を修復するために移植された、移植から24週間後のイヌにおける移植片の顕微鏡写真である。
【
図5】L字型の身体欠損を修復するために移植された、移植から4週間後のイヌにおける移植片の顕微鏡写真であり、多層コラーゲン移植構造の2つの外層と1つの内層を示している。
【
図6A】スペーサを使用しない場合の本発明の構造の調製を示す図である。
【
図6B】スペーサを使用する場合の本発明の構造の調製を示図である。
【
図7A】5つの異なる密度の層を有する本発明の層状構造を示す図である。電子顕微鏡画像(低解像度):多層膜の断面図、#1、#5:多層膜の高密度層である外層、#2、#3、#4:多層膜の低密度層である内層。
【
図7B】電子顕微鏡画像(高解像度):多層膜の低密度層と高密度層との比較(コラーゲン繊維の密度の高い態様、及び密度の低い態様)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、それぞれが異なる密度を有する少なくとも2つのコラーゲン層を含む層状構造を提供する。
【0015】
「層状構造」という用語は、互いに重ねて配置されている少なくとも2つのコラーゲン層の集合を包含すると理解されるべきである。本発明の層状構造は、少なくとも2つのコラーゲン層を含み、これらの2つの層のそれぞれは、他方の層とは異なる密度を有する。この用語は、「コラーゲン層状構造」及び「コラーゲン層状膜」という用語と互換的に使用される。層状構造は、デバイス、マトリックス、または足場の一部であり得る。
【0016】
コラーゲンは、体内の様々な結合組織の細胞外マトリックスにおける主要な構造タンパク質であり、コラーゲンヘリックスとして知られる細長い線維の三重らせんを形成するべく互いに結合したアミノ酸からなる。コラーゲンヘリックスは主に、軟骨、骨、腱、靭帯、及び皮膚などの結合組織や膜に見られる。
【0017】
石灰化の程度に応じてコラーゲン層の密度が異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、コラーゲン層は、剛性(例えば骨において)、追従性(例えば腱において)、または剛性から追従性への勾配(例えば軟骨において)を有していてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記層状構造は膜である。他の実施形態では、前記層状構造は移植可能な膜である。
【0019】
軟組織及び/または硬組織は、各コラーゲン層の密度の違いに起因して、本発明の層状構造のコラーゲン層ごとに別様に増強され得る。いくつかの実施形態によれば、再生組織は、6ヶ月を超えて維持される。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、軟組織の成長/増強(例えば、背側増強)のための外科用足場として使用される。さらなる実施形態によれば、本発明の層状構造は、必要に応じて、例えばヘルニア修復中に、軟組織を補強するために使用される。さらなる実施形態によれば、本発明の層状構造は、骨の成長/増強を含む治療(例えば、歯周欠損の治療における骨誘導再生(GBR)及び組織誘導再生(GTR)など)に使用される。本発明の層状構造はさらに、例えば鼻または耳の、歯肉増強、フェイスリフト/修復、軟組織及び軟骨のリフト/増強などの、軟組織の成長/増強に使用され得る。いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、膜が配置される領域に応じて、任意の軟組織及び硬組織の成長/増強を組み合わせて使用される。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、組織及び臓器における癒着を防止するために使用される。癒着の防止は、より高密度の外側のコラーゲン層よりも速い速度で分解することができる比較的低密度の内側のコラーゲン層を含む本発明の層状構造を使用することによって生じ、内側層が分解されると本発明の層状構造は本質的に2つの別々の膜に分離するため、本発明の層状構造の上方の組織とその下方の組織との間の癒着を防止することができる。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、歯及び歯科インプラント並びに他の増補部位に長期の保護及び審美性を提供する。本明細書で詳述するように、本発明の移植された層状構造は、部分的にまたは完全に密集し、分解され、周囲の組織と置き換わる。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造の1以上の層は、様々な細胞型の増殖を促進する。いくつかの実施形態によれば、様々な細胞型の促進は、層の密度に依存する。したがって、本発明の層状構造の特定の領域は、歯肉組織及び骨組織を含む特定の種類の組織の成長を促進する。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、骨組織の成長は比較的高密度のコラーゲン層で促進される一方で、軟組織の成長は比較的低密度のコラーゲン層で促進される。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、高密度のコラーゲン層が周囲の組織に対して露出されるように、比較的高密度のコラーゲン層の間に挟まれた比較的低密度のコラーゲン層を含む。いくつかの実施形態によれば、高密度コラーゲン層は骨組織の成長を促進する一方で、低密度コラーゲン層は軟組織の成長を促進する。いくつかの実施形態によれば、線維芽細胞は、例えば、本発明の層状構造の少なくとも1つの高密度コラーゲン層を通って、及び/または、本発明の層状構造の少なくとも1つの高密度コラーゲン層の下方/上方/周囲を通って、内側コラーゲン層に入り込み、内側の低密度コラーゲン層の軟組織を成長させることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、「高密度コラーゲン層」、「比較的高密度のコラーゲン層」などの用語は、約1.41g/cm3の平均密度を有する層を定義する。さらに、「密度の低いコラーゲン層」、「低密度コラーゲン層」、「比較的低密度のコラーゲン層」などの用語は、約1.17g/cm3の平均密度を有する層を定義する。さらに、「約」という用語には、開示された値の±10%の範囲が含まれる。いくつかの実施形態によれば、比較的高密度のコラーゲン層の密度は、約1.0~1.7g/cm3の範囲である。いくつかの実施形態によれば、比較的高密度のコラーゲン層の密度は、約1.0~2g/cm3の範囲である。いくつかの実施形態によれば、比較的低密度のコラーゲン層の密度は、約0.4~1.0g/cm3の範囲である。
【0027】
いくつかの実施形態では、密度はHgポロシメトリーによって決定される。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、少なくとも2つのコラーゲン層を含み、少なくとも1つのコラーゲン層は比較的低い密度を有し、少なくとも1つのコラーゲン層は比較的高い密度を有し、比較的低い密度のコラーゲン層は、最大で、高密度層の約90%までの密度を有する。いくつかの実施形態によれば、比較的低密度のコラーゲン層は、最大で、高密度層の約85%までの密度を有する。いくつかの実施形態によれば、比較的低密度のコラーゲン層は、最大で、高密度コラーゲン層の約80%までの密度を有する。いくつかの実施形態によれば、比較的低密度のコラーゲン層は、最大で、高密度コラーゲン層の約75%までの密度を有する。いくつかの実施形態によれば、比較的低密度のコラーゲン層は、最大で、高密度層の約70%までの密度を有する。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、比較的低密度のコラーゲン層は、高密度コラーゲン層の10%から90%の間の密度を有する。いくつかの実施形態によれば、比較的低密度のコラーゲン層は、高密度コラーゲン層の20%から90%の間の密度を有する。いくつかの実施形態によれば、比較的低密度のコラーゲン層は、高密度コラーゲン層の30%から90%の間の密度を有する。いくつかの実施形態によれば、比較的低密度のコラーゲン層は、高密度コラーゲン層の40%から90%の間の密度を有する。いくつかの実施形態によれば、比較的低密度のコラーゲン層は、高密度コラーゲン層の50%から90%の間の密度を有する。いくつかの実施形態によれば、比較的低密度のコラーゲン層は、高密度コラーゲン層の60%から90%の間の密度を有する。いくつかの実施形態によれば、比較的低密度のコラーゲン層は、高密度コラーゲン層の70%から90%の間の密度を有する。いくつかの実施形態によれば、比較的低密度のコラーゲン層は、高密度コラーゲン層の80%から90%の間の密度を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明は、それぞれが異なる密度を有する少なくとも2つのコラーゲン層を含む層状構造を提供し、前記少なくとも2つのコラーゲン層は、少なくとも1つの第1コラーゲン層と、少なくとも1つの第2コラーゲン層とを含み、前記少なくとも1つの第2コラーゲン層(低密度層)は、最大で、第1コラーゲン層(高密度層)の約90%までの密度を有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明は、それぞれが異なる密度を有する少なくとも2つのコラーゲン層を含む層状構造を提供し、前記少なくとも2つのコラーゲン層は、少なくとも2つの第1コラーゲン層と、少なくとも1つの第2コラーゲン層とを含み、前記少なくとも1つの第2コラーゲン層(内側層)は、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層(外側層)のそれぞれの間に配置される。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明は、それぞれが異なる密度を有する少なくとも2つのコラーゲン層を含む層状構造を提供し、前記少なくとも2つのコラーゲン層は、少なくとも2つの第1コラーゲン層と、少なくとも1つの第2コラーゲン層とを含み、前記少なくとも1つの第2コラーゲン層(内側層)は、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層(外側層)のそれぞれの間に配置され、前記少なくとも1つの第2コラーゲン層(低密度層)は、それぞれ独立して、最大で、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層(高密度層)の約90%までの密度を有する。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明は、それぞれが異なる密度を有する少なくとも2つのコラーゲン層を含む層状構造を提供し、前記少なくとも2つのコラーゲン層は、少なくとも2つの第1コラーゲン層と、少なくとも1つの第2コラーゲン層とを含み、前記少なくとも1つの第2コラーゲン層(内側層)は、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層(外側層)のそれぞれの間に配置され、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層(低密度層)は、それぞれ独立して、最大で、少なくとも1つの第2コラーゲン層(高密度層)の約90%までの密度を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも2つのコラーゲン層は、少なくとも1つの第1コラーゲン層と、少なくとも1つの第2コラーゲン層とを含み、前記少なくとも1つの第1コラーゲン層は、前記少なくとも1つの第2コラーゲン層の密度よりも少なくとも90%を超えて高い密度を有する。
【0035】
いくつかのさらなる実施形態では、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層は、独立して、前記少なくとも1つの第2コラーゲン層の密度よりも少なくとも90%を超えて高い密度を有する。
【0036】
いくつかのさらなる実施形態では、前記少なくとも1つの第2コラーゲン層は、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層のそれぞれの密度よりも少なくとも90%を超えて高い密度を有する。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、2、3、4または5層のコラーゲン層を含む。いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、それぞれが異なる密度を有する複数の層を含む。いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、明確に区別された別個の層を含むのではなく、デバイスの少なくとも1つのセクションが、デバイスの別のセクションとは異なり、場合によっては変化する密度を有するように、密度の勾配を含む。いくつかの実施形態によれば、様々なセクションの密度は、0.4~2g/cm3の範囲である。いくつかの実施形態によれば、比較的高密度のコラーゲン層の密度は、約1.0~1.7g/cm3の範囲である。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は3つのコラーゲン層を含み、外側層は高密度である一方で、内側層は比較的低密度である。いくつかの実施形態では、内側層はゲル様層であってもよい。いくつかの実施形態によれば、より高密度の外側層は、内側層とは異なる厚さを有する。いくつかの実施形態では、内側層の厚さは外側層の厚さよりも大きい。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、内側層は約0.5~5.0mmの厚さを有する。いくつかの実施形態によれば、内側層は約0.5~1.0mmの厚さを有する。いくつかの実施形態によれば、内側層は約1.0~2.0mmの厚さを有する。いくつかの実施形態によれば、内側層は約2.0~3.0mmの厚さを有する。いくつかの実施形態によれば、内側層は約3.0~4.0mmの厚さを有する。いくつかの実施形態によれば、内側層は約4.0~5.0mmの厚さを有する。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、外側層は約0.05~0.4mmの厚さを有する。いくつかの実施形態によれば、外側層は約0.05~0.1mmの厚さを有する。いくつかの実施形態によれば、外側層は約0.1~0.2mmの厚さを有する。いくつかの実施形態によれば、外側層は約0.2~0.3mmの厚さを有する。いくつかの実施形態によれば、外側層は約0.3~0.4mmの厚さを有する。
【0041】
本発明の層状構造の実施形態は、例えば、
図1(等倍の写真画像)及び
図2(デバイスの断面の2倍の倍率)に示されている。いくつかの実施形態によれば、外側層の平均密度は約1.41g/cm
3である。いくつかの実施形態によれば、内側層の平均密度は約1.17g/cm
3である。いくつかの実施形態によれば、外側層の密度は約1.0~1.7g/cm
3の範囲である。いくつかの実施形態によれば、内側層の密度は約0.4~1.0g/cm
3の範囲である。
【0042】
本発明の実施形態は、本発明の層状構造を調製する方法に関し、当該方法は、容器にコラーゲンを導入するステップと、コラーゲンフィブリル(コラーゲン原繊維)を含むコラーゲンゲルを提供するために、コラーゲンをフィブリル化するステップと、異なる密度を有する少なくとも2つの層を提供するために、少なくとも1つの分離要素の存在下でコラーゲンゲルを圧縮するステップと、コラーゲンゲルを架橋するステップと、架橋コラーゲンを乾燥させるステップと、を含む。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、コラーゲンは、フィブリル化剤を使用してフィブリル化される。コラーゲンは、当該技術分野で知られている任意の方法によってフィブリル化されてよい。いくつかの実施形態によれば、コラーゲンは、例えば、中性または塩基性のpHを有する緩衝溶液と混合することで、そのpHを中和することによってフィブリル化される。いくつかの実施形態によれば、フィブリル化剤は、リン酸ナトリウム、トリスHCl、水酸化カリウム、または水酸化ナトリウムなどの1以上の塩基及び/または塩を含む。
【0044】
コラーゲンがフィブリル化されると、コラーゲンは、異なる密度を有する少なくとも2つの層を提供するために、分離要素の存在下で少なくとも部分的に圧縮され得る。いくつかの実施形態によれば、コラーゲンの圧縮は、層が形成されるように行われる。例えば、コラーゲンが圧縮されると、その外側層は内側層よりも多く圧縮され、コラーゲン、特に内側層は、分離要素の存在に起因して完全には圧縮されない。したがって、例えばデバイスの外側に比較的密度の高い層が形成され、デバイスの内側に比較的密度の低い層が形成されると、圧縮は、任意の適切な状態で停止し得る。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、外側層のうちの少なくとも1つは、内側層よりも圧縮される。いくつかの実施形態によれば、2つの外側層は1つの内側層よりも圧縮され、これにより、2つの比較的高密度の外側層と、1つの比較的低密度の内側層とを有する3層コラーゲン構成要素が提供される。いくつかの実施形態によれば、2つの外側層は1つの内側層よりも圧縮され、これにより、比較的高密度の第1の外層と、第1の外層よりも低い密度を有する第2の外層と、1つの比較的低密度の内側層とを備えた3層コラーゲン構成要素が提供される。いくつかの実施形態によれば、圧縮は、本発明の層状構造の外側層における高密度から、より内側の層におけるより低い密度までの範囲の密度勾配を提供する。2つの外側層は、同様の密度(約10%の差)を有していてもよく、異なる密度を有していてもよいが、いずれも内側層より高い密度を有する。
【0046】
上述のように、コラーゲンは、例えば重りなどの圧縮要素がフィブリル化コラーゲンを完全に圧縮するのを防止する少なくとも1つの分離要素の存在下で圧縮される。
図6A及び6Bを参照すると、分離要素が存在しない場合(
図6A)及び分離要素が存在する場合(
図6B)のフィブリル化コラーゲンの圧縮が示されている。図示のように、分離要素は、圧縮要素と反応容器の底との間に距離を生み出すので、圧縮要素がフィブリル化コラーゲンを完全に圧縮することを防止する。したがって、図示のように、分離要素の存在下で圧縮すると、調製された本発明の多層構造は、分離要素を使用せずに調製された本発明の層構造よりも厚い。本発明の多層構造の最終的な厚さは、分離要素の高さに少なくとも部分的に依存することに留意されたい。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、分離要素の高さは約0.1~10mmである。いくつかの実施形態によれば、分離要素の高さは約0.1~1.0mmである。いくつかの実施形態によれば、分離要素の高さは約1.0~2.0mmである。いくつかの実施形態によれば、分離要素の高さは約2.0~3.0mmである。いくつかの実施形態によれば、分離要素の高さは約3.0~4.0mmである。いくつかの実施形態によれば、分離要素の高さは約4.0~5.0mmである。いくつかの実施形態によれば、分離要素の高さは約5.0~6.0mmである。いくつかの実施形態によれば、分離要素の高さは約6.0~7.0mmである。いくつかの実施形態によれば、分離要素の高さは約7.0~8.0mmである。いくつかの実施形態によれば、分離要素の高さは約8.0~9.0mmである。いくつかの実施形態によれば、分離要素の高さは約9.0~10mmである。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、分離要素は、テフロン(登録商標)、ステンレス鋼、シリコーン、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはそれらの任意の組み合わせなどのコラーゲンを調製する処理に干渉することなく、所望の距離を提供することができる任意の適切な材料から調製される。いくつかの実施形態によれば、分離要素は、反応容器内に固定される。いくつかの実施形態によれば、分離要素は、反応容器内に垂直に配置される。いくつかの実施形態によれば、分離要素は、圧縮前の任意の段階で反応容器に設けられる。いくつかの実施形態によれば、分離要素が設けられる前にフィブリル化コラーゲンが過剰に圧縮されない限り、分離要素は圧縮中の任意の段階で反応容器に設けられてよい。他の実施形態によれば、フィブリル化コラーゲンは、圧縮前に、分離要素を備えた反応容器に移されてもよい。圧縮が完了すると、反応容器から分離要素を取り除くか、あるいは反応容器から本発明の多層構造を取り除くことにより、本発明の調製された多層構造から分離要素が分離される。
【0049】
少なくとも部分的に圧縮されると、コラーゲンは、当該技術分野で知られている任意の方法によって架橋される。いくつかの実施形態によれば、圧縮コラーゲンゲルが架橋剤と接触する。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、コラーゲンは、酵素媒介プロセスによって、物理的処理(例えば、熱、UV放射)によって、または化学架橋剤によって架橋され、架橋剤は、還元糖もしくは還元糖誘導体、またはそれらの任意の組み合わせなどの還元剤を含む。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、架橋剤は、アルデヒドもしくはケトンモノシュガー、またはモノシュガー誘導体を含み、α-炭素は、水溶液中でアルデヒドまたはケトン状態にある。いくつかの実施形態によれば、架橋剤は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,346,515号明細書に詳述されている化合物及び試薬を含む。米国特許第6,346,515号明細書に詳述されているように、還元糖は、コラーゲン分子のアミノ酸のαまたはεアミノ基とシッフ塩基を形成し得る。次いで、シッフ塩基は、アマドリ転位を受けてケトアミン生成物を形成する。次いで、隣接する2つのケトアミン基が縮合して、安定した分子間または分子内架橋を形成する。
【0052】
還元剤には、例えば、グリセロース、トレオース、エリトロース、リキソース、キシロース、アラビノース、リボース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロースもしくは任意の他のジオース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノース、デコース、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。例えば、架橋剤がリボースを含む場合、ペントシジン基を介した安定な架橋が形成され得る。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造の分解速度は、コラーゲンフィブリル間の架橋の程度によって制御される。架橋の程度は、例えば、架橋剤の濃度、温度、及びコラーゲンフィブリルが架橋剤に曝露される時間によって制御される。いくつかの実施形態によれば、架橋は約0.01%~5%の範囲の架橋剤濃度で実施される。いくつかの実施形態によれば、架橋は約20~40℃の範囲の温度で実施される。いくつかの実施形態によれば、架橋は約6~360時間の範囲の持続時間にわたって実施される。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造を取り囲む組織は、本発明の層状構造と置き換わるように、少なくとも部分的に、経時的に再生される。したがって、本発明の層状構造は、周囲の組織が成長するための空間を提供する。いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造を調製するためのプロセスで使用される分離要素は、デバイスの調製中にコラーゲンが完全に圧縮されなかったためにコラーゲン分子間に空隙を備えた本発明の層状構造を提供する。形成された空隙は、周囲の組織が、形成された空間に入り込み、時間の経過とともにその空間の中で成長し、分解するコラーゲンと置き換わることを可能にする。いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、石灰化し、続いて骨化し、骨細胞集団の基礎を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は生分解性である。いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、約3~24ヶ月以内に生分解される。いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、約4~8ヶ月以内に生分解される。いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、約5~7ヶ月以内に生分解される。いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、約3~10ヶ月以内に生分解される。いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、約10~17ヶ月以内に生分解される。いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、約17~24ヶ月以内に生分解される。いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、約6ヶ月以内に生分解される。本発明の層状構造は、約70、80、90、または95%を超えて分解されたときに、生物分解されたとみなされることに留意されたい。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造の別々の層は、それらの密度に応じて異なる速度で分解される。いくつかの実施形態によれば、密度の高い層は、密度の低い層よりも緩やかな速度で分解される。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、コラーゲンが架橋されると、本発明の調製された層状構造が洗浄されることにより、フィブリル化剤、架橋剤、非架橋コラーゲンなどの反応物の残留物が除去される。さらなる実施形態によれば、コラーゲン膜は、その後、空気乾燥、凍結乾燥、臨界点乾燥、またはそれらの任意の組み合わせなどの任意の適切な手段によって少なくとも部分的に脱水される。乾燥処理は、本発明の多層構造をさらに殺菌し、乾燥させ、それらの保存寿命を効果的に延長する。いくつかの実施形態によれば、本発明の脱水された多層構造の層はあまり目立たないが、いくつかの実施形態によれば、水、生理食塩水、血液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液などの任意の適切な液体による再水和は、本発明の多層構造の三次元構造を復元する。いくつかの実施形態によれば、本発明の多層構造は、インビトロで再水和される。他の実施形態によれば、本発明の多層構造は、インビボで再水和される。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、様々な治療効果を有する活性剤を含む。いくつかの実施形態によれば、活性剤は、例えば還元糖などの架橋剤によって、あるいは、コラーゲンに結合するその固有の傾向によって、本発明の層状構造内に固定される。本発明の層状構造が徐々に生分解する間、このような活性剤は体内に徐々に放出され、これにより、制御された放出システムが提供される。このような活性剤には、抗菌剤、抗炎症剤、組織再生誘導特性を有する成長因子、及び、これらの任意の組み合わせが含まれる。
【0059】
抗菌剤には、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、スルホンアミド、及びミコナゾールが含まれ得る。抗炎症剤には、コルチゾン、その合成誘導体などが含まれ得る。組織再生誘導因子には、分化因子、骨形成タンパク質、付着因子及び成長因子、例えば、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、トランスフォーミング成長因子、セメント質成長因子、インスリン様成長因子などが含まれ得る。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、キトサン、ヒアルロン酸及びそれらの混合物などの追加の生分解性材料が加えられてもよい。さらなる実施形態によれば、リン酸三カルシウム、酸化ケイ素、ヒドロキシアパタイトなどの任意の種類のミネラルが加えられてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態によれば、ヒト細胞、骨細胞、培養細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、(間葉系)幹細胞、骨細胞、脂肪細胞、内皮細胞などの細胞は、骨の方向に配置されるべき外側高密度層などの、複数の層のうちの少なくとも1つの上または中に播種される。このような層は、栄養物、例えば、ミネラルなどを含有する流体をデバイスの内側層及び/またはデバイスの下に見られる組織に供給する可能性を提供するために、保護的な半透過性の層として機能し、デバイスの内側層及び/またはデバイスの下の組織は、他の細胞タイプとの直接的な相互作用から保護される。いくつかの実施形態によれば、内側層及び/またはデバイスの下の組織の相互作用は、本発明の多層構造における少なくとも1つの層の細孔サイズに起因して防止され、細孔サイズは特定の細胞タイプが通るために必要なサイズよりも小さい。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、本発明の多層構造は、空間維持材料(「空間維持装置」または「スペーサ」)と組み合わせて使用することができる。「組み合わせて」という用語は、空間維持装置が本発明の多層構造に隣接している、任意の適切な手段によって本発明の層構造に取り付けられている、あるいは、本発明の多層構造に組み込まれている使用を包含することを意図している。
【0063】
再生細胞が移動して再増殖できる空間を維持するために、いくつかの処置で空間維持装置が使用される。いくつかの例では、例えば腫瘍が骨から切除されたときに、そのような空間が自然に生じる。様々な種類の歯周損傷または骨損傷などの他の例では、そのような空間は生じない。そのような場合、コラーゲン膜と再生組織との間に充填材を挿入する必要がある。空間維持装置の例としては、以下のものが挙げられる:(i)ヒアルロナン(ヒアルロン酸)、(ii)ミネラル化された凍結乾燥骨、(iii)タンパク質が除去された骨、(iv)合成ヒドロキシアパタイト、(v)(ii)~(iv)で言及されたもの以外のオステオカルシンまたはビトロネクチンが豊富な結晶性材料、及び(vi)骨由来物質がヒト起源である、熱処理された脱塩骨。ヒアルロナンと1以上の他の空間維持装置との組み合わせなどの、上記の空間維持装置のいずれかの組み合わせであってもよい。
【0064】
再生部位のサイズ、形態、及び位置に応じた様々な用途のために、空間維持装置は、1以上の上記の抗菌、抗炎症、及び組織誘導因子によって強化され、及び/または、例えばコラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、オステオネクチン、オステオポンチン、テネイシン、トロンボスポンジン、及び/または、ヘパリン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸などを含むグリコサミノグリカンを含む群から選択される1つ以上のマトリックスタンパク質などの、空間維持装置のマトリックスの形状の維持を助けることを意図した物質で強化されている。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、本発明の層状構造は、組織が再生される空間を満たすように設計される。したがって、組織が再生され、本発明の生分解性の層状構造に置き換わるので、空間維持装置の使用は必要ない。いくつかの実施形態によれば、本明細書に詳述されるように、本発明の層状構造は、任意のサイズまたは形状を有するように調製される。
【0066】
図3~
図5を参照すると、イヌのL字型骨欠損における移植後4週間の顕微鏡写真が示されている。デバイスの中間層で進行する初期の骨化に注意されたい(矢印)。デバイスの最初のコラーゲンマトリックスは(M)とマークされている(
図3)。
【0067】
図4は、イヌのL字型骨欠損における移植後24週間の顕微鏡写真である。デバイスの中間層の骨化の進行に注意されたい(矢印)。
【0068】
図5は、イヌのL字型骨欠損における移植後4週間の顕微鏡写真である。膜は、軟組織に囲まれた特徴的な3層構造を有している(*低密度、矢印:高密度)。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、本発明の多層構造は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第62/317,569号明細書に詳細に示されているように、足場を含む。
【0070】
本発明がどのように実施され得るかをよりよく理解するために、以下の実施例が提供され、本開示によるプロセスが実証される。
【0071】
実施例
【0072】
実施例1
【0073】
320mlのコラーゲンのアリコートを、pH11.2の、200mMのリン酸ナトリウムからなるフィブリル化緩衝液30mlと混合した。フィブリル化緩衝液と混合した後、コラーゲンを、高さ3mmのテフロン(登録商標)ベースの分離要素を含む11x16cmの成形プレートに注ぎ、膜の所望の最終厚さを維持した。37℃で18時間にわたってフィブリル化を進行させた。得られたゲルを、1Kgの重りを使用して37℃で20時間圧縮し、分離要素により、圧縮の間、重りと成形プレートの底部との間に少なくとも3mmの距離を確実に維持した。コラーゲンシートを、リボース10g、エタノール158g、及びPBS790gの0.2ミクロン(micron)の濾過媒体中で、37℃で11日間、架橋した。その後、得られた膜を水で洗浄し、エタノールで脱水し、凍結乾燥により乾燥させた。
図1は、低倍率の、調製された湿ったコラーゲン膜を示し、
図2は、高倍率の、調製された湿ったコラーゲン膜の断面を示す。
【0074】
本発明の特定の特徴を本明細書に示し、説明したが、多くの修正、置換、変更、及び均等物が当業者に想起され得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の趣旨に含まれるすべての修正及び変更を包含することを意図していると理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのコラーゲンの層を含む層状構造であって、
前記層状構造は密度の勾配を有し、
前記コラーゲンは架橋されている、層状構造。
【請求項2】
前記少なくとも2つのコラーゲン
の層は、少なくとも1つの第1コラーゲン層と、少なくとも1つの第2コラーゲン層とを含み、
前記少なくとも1つの第2コラーゲン層は、最大で、前記第1コラーゲン層の約90%までの密度を有する、請求項1に記載の層状構造。
【請求項3】
前記少なくとも2つのコラーゲン
の層は、少なくとも2つの第1コラーゲン層と、少なくとも1つの第2コラーゲン層とを含み、
前記少なくとも1つの第2コラーゲン層は、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層のそれぞれの間に配置されている、請求項1に記載の層状構造。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2コラーゲン層(低密度層)は、それぞれ独立して、最大で、前記少なくとも2つの第1コラーゲン層の約90%までの密度を有する、請求項3に記載の層状構造。
【請求項5】
少なくとも2つのコラーゲンの層を含む層状構造を調製する方法であって、
容器にコラーゲンを導入するステップと、
コラーゲンフィブリルを含むコラーゲンゲルを提供するために、前記コラーゲンをフィブリル化するステップと、
密度の勾配を有する複数のコラーゲン層を提供するために、少なくとも1つの分離要素の存在下で前記コラーゲンゲルを圧縮するステップと、
前記コラーゲンゲルを架橋するステップと、
架橋コラーゲンを乾燥させるステップと、を含む方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の層状構造を含む、軟組織の成長/増強
に使用するための外科用足場。
【請求項7】
軟組織の増強に使用するための、請求項1~4のいずれか1項に記載の層状構造。
【請求項8】
骨誘導再生及び組織誘導再生を含む骨成長/増強の治療に使用するための、請求項1~4のいずれか1項に記載の層状構造。
【国際調査報告】