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特表2023-549066光ピンセット内のトラップされた物体の位置を決定する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】光ピンセット内のトラップされた物体の位置を決定する装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/32 20060101AFI20231115BHJP
   G01N 15/00 20060101ALI20231115BHJP
   B25J 3/00 20060101ALN20231115BHJP
【FI】
G02B21/32
G01N15/00 C
B25J3/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525105
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 IB2020001125
(87)【国際公開番号】W WO2022090761
(87)【国際公開日】2022-05-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハリヨ,シナン
(72)【発明者】
【氏名】レニエ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ゲレナ,エジソン
【テーマコード(参考)】
2H052
3C707
【Fターム(参考)】
2H052AC33
2H052AF14
2H052AF19
3C707BS30
3C707JT05
3C707XG06
(57)【要約】
本発明は、単一のレーザビーム2により同時にトラップされる複数の物体1の位置を決定するための装置10であり、装置が、-レーザビーム2を放射するレーザ源5と、-幾つかのトラップポイント15の間でレーザビーム2を3次元偏向させるための作動システム13、14と、-作動システム13、14から来るレーザビーム2をトラップポイント15に焦点を合わせるための顕微鏡対物レンズ6と、-トラップポイント15上にトラップされる物体1を含む試料チャンバ8と、-試料チャンバ8を照明するための光源11と、-トラップされた物体1の各々の位置を決定するためのカメラ16であって、光源11により放射された光20が試料チャンバ8、顕微鏡対物レンズ6、作動システム13、14及びカメラ16を連続的に通過するように、レーザ源5と作動システム13、14との間に配置されるカメラ16と、を備えることを特徴とする、装置10に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のレーザビーム(2)によって同時にトラップされる複数の物体(1)の位置を決定するための装置(10)であって、前記装置(10)が、
-レーザビーム(2)を放射するレーザ源(5)と、
-いくつかのトラップポイント(15)の間で前記レーザビーム(2)を3次元偏向させるための作動システム(13、14)と、
-前記作動システム(13、14)から来る前記レーザビーム(2)を前記トラップポイント(15)に焦点合わせするための顕微鏡対物レンズ(6)と、
-前記トラップポイント(15)上にトラップされる前記物体(1)を含む試料チャンバ(8)と、
-前記試料チャンバ(8)を照明するための光源(11)と、
-前記トラップされた物体(1)の各々の位置を決定するための画像センサ(16)であって、前記光源(11)によって放射された前記光(20)が、前記試料チャンバ(8)、前記顕微鏡対物レンズ(6)、前記作動システム(13、14)及び前記画像センサ(16)を連続的に通過するように、前記画像センサ(16)が、前記レーザ源(5)と前記作動システム(13、14)との間に配置される、画像センサ(16)と、
を備えることを特徴とする、装置(10)。
【請求項2】
前記作動システム(13、14)が、前記トラップポイント(15)の軸方向(Z)位置を制御するための変形可能ミラー(13)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
前記変形可能ミラー(13)が、前記レーザビームを軸方向に焦点を合わせる、又は焦点をぼかすことができることを特徴とする、請求項2に記載の装置(10)。
【請求項4】
前記レーザ源(5)によって放射された前記レーザビーム(2)を前記変形可能ミラー(13)に数回通過させるためのシステムを備えることを特徴とする、請求項2に記載の装置(10)。
【請求項5】
前記作動システム(13、14)が、前記トラップポイント(15)の平面(X、Y)位置を制御するための平面走査ミラー(14)を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項6】
前記変形可能ミラー(13)及び前記ミラーガルバノメータ(14)を前記顕微鏡対物レンズ(6)の前記入口開口部と共役させるために、前記変形可能ミラー(13)と前記ミラーガルバノメータ(14)との間に配置された第1のアフォーカル系(f、f)と、前記ミラーガルバノメータ(14)と前記顕微鏡対物レンズ(6)との間に配置された第2のアフォーカル系(f、f)とを備えることを特徴とする、請求項2又は5に記載の装置(10)。
【請求項7】
各トラップされた物体(1)に対する力(F)を、前記カメラ(16)によって決定される前記トラップされた物体(1)の各々の位置の関数として計算するためのシステム(18)を備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項8】
各トラップされた物体に対する力Fが、光学力モデル:F=K(Pレーザ-Pプローブ)を使用して前記システム(18)によって計算され、式中、Pレーザ-Pプローブは、前記レーザ位置と前記トラップされた物体の前記位置との間の変位を表し、Kは、前記トラップの剛性であることを特徴とする、請求項7に記載の装置(10)。
【請求項9】
いくつかの物体(1)が本体に取り付けられた合成物体(22)に加えられる力及びトルクが、各トラップされた物体(1)に対する力(F)の関数として計算されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の装置(10)。
【請求項10】
トラップされる前記物体(1)が、生物学的物体、微小球又は合成物体であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一のレーザビームによって同時にトラップされる複数の物体の位置を決定するための装置に関する。特に、本発明による装置は、物体に加えられる外力を決定することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
光ピンセット(元々は単一ビーム勾配力トラップと呼ばれていた)は、高度に焦点合わせされたレーザビームを使用して、粒子と周囲媒体との間の相対屈折率に応じて引力又は反発力(典型的には、ピコニュートン程度)を提供する科学機器である。これらの力は、ピンセットと同様の方法で、微小物体を物理的に保持し移動させるために使用することができる。それらは、誘電性粒子及び吸収性粒子を含む、サイズが典型的にはミクロン単位である小さな粒子をトラップ及び操作することができる。光ピンセットは、近年、様々な生物学的システムの研究において特に成功している。
【0003】
図1及び図2に示されるように、光ピンセットは、光軸Zに沿って延在する高度に焦点合わせされたレーザビーム2を介して極めて小さい力を及ぼすことによって、ナノメートル及びミクロンサイズの誘電体粒子1を操作することが可能である。ビーム2は、典型的には、それを顕微鏡対物レンズを通して送ることによって焦点合わせされる。ビームウェストとして知られる集光ビームの最も狭い点は、非常に強い電場勾配3を含む。誘電体粒子は、勾配に沿って、ビームの中心である最も強い電場の領域に引き付けられる。レーザ光はまた、ビーム伝搬方向に沿ってビーム内の粒子に力を加える傾向がある。これは、運動量の保存によるものであり、小さな誘電体粒子によって吸収又は散乱される光子が、誘電体粒子に運動量を与える。これは散乱力4として知られており、図1に見られるように、粒子がビームウェストの正確な位置からわずかに下流に変位される結果となる。
【0004】
光トラップでは、密に集光されたレーザビームは、ビームウェスト付近に平衡位置を提供する。トラップされた物体1が平衡位置から離れるように横方向又は軸方向に変位されるとき、光学力は、それを平衡位置に向かって引き戻すように作用する。変位が小さい場合、粒子に加えられる力は1次関数であり、光トラップは、フックの法則に従う単純なばねシステムと比較することができる。このモデルでは、復元光学力Fはその平衡位置からの距離に比例し、トラップ剛性は光強度に比例する。運動範囲及びトラップ剛性を考慮すると、3次元ピコニュートン分解能は達成可能である。
【0005】
この特殊性は、分子間結合の強度、細胞膜の剛性、又はミクロレオロジーのための細胞内測定などの定量的な力測定のための光トラップの使用をもたらした。
【0006】
光学剛性は、材料特性、物体及び環境の両方の屈折率、トラップされた物体のサイズ及び形状などのいくつかの要因に依存するので、妥当な精度での任意の物体の力較正は依然として課題である。これらの理由から、シリコン又はポリスチレン微小球は、マイクロマニピュレーションタスク中に力を間接的に操作及び感知するための力プローブとして使用されることが多い。材料及び形状が均一な人工マイクロビーズを使用することによって、マイクロビーズに加えられる光学力を得ることができる。
【0007】
変位が小さい場合、光学力は、ばねモデルによって記述することができる:
F=K(Pレーザ-Pプローブ
ここで、Pレーザ及びPプローブは、それぞれレーザ及び粒子1の位置を表す。Fは、3次元光学力である。K:[K,K,K]はトラップ剛性であり、ここでK、K
、Kはそれぞれx,y,z方向の剛性を表す。したがって、光学力Fは、平衡トラップ位置からの粒子の変位を測定することによって得られる。
【0008】
等分配法及びストークスの抵抗法のような正確な剛性較正のための十分に確立された方法が存在する。したがって、力感知は、レーザの位置及びトラップされた物体のうちの1つを検出する能力から直接生じる。
【0009】
この位置の決定は、ビデオカメラの画像が情報を抽出するために使用される画像ベースの位置検出によって、又はレーザが試料を通過した後のビーム変位が、象限フォトダイオードQDPを介して測定される干渉法によって行うことができる。
【0010】
光ピンセットシステムにおける変位は、プラットフォームを移動させるか、又はレーザビームを移動させることによって達成することができ、これは受動作動又は能動作動と呼ばれる。
【0011】
受動作動において、電動ステージの組み込みは、試料チャンバの動的制御を可能にし、一方で、操作される物体はトラップ上に固定されたままである。
【0012】
能動作動では、レーザ方向は、能動光学部品を通して変更される。更に、固有のレーザ源を使用していくつかの物体を同時にトラップするために、トラップレーザビームを多重化することが可能である。いくつかのトラップ位置の間でレーザビームを迅速に偏向させることによって、物体が2回のレーザ訪問の間に広がる時間を有さないように、いくつかの物体をトラップすることが可能である。この方法を時間共有方式と呼ぶ。あるいは、空間光変調器(SLM)などの能動回折光学素子を使用することによって、いくつかのトラップを動的に制御して、異なる位置にいくつかの回折スポットを生成することができ、これは空間共有方法と呼ばれる。
【0013】
光ピンセットを用いた定量的な力測定では、光トラップが固定されたままであり、トラップされた物体の位置情報のみが必要とされるので、受動方法が通常使用される。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、力測定能力をいくつかのトラップに拡張する3次元マルチトラップ作動システムによって生成された全てのトラップに対して位置測定、したがって力測定を実行することである。
【0015】
この目的のために、本発明は、単一のレーザビームによって同時にトラップされる複数の物体の位置を決定するための装置を提供することを目的とする。
【0016】
本発明による装置は、
-レーザビームを放射するレーザ源と、
いくつかのトラップポイントの間でレーザビームを3次元偏向させるための作動システムと、
-作動システムから来るレーザビームをトラップポイントに焦点合わせするための顕微鏡対物レンズと、
-トラップポイント上にトラップされる物体を含む試料チャンバと、
-試料チャンバを照明するための光源と、
-トラップされた物体の各々の位置を決定するための画像センサ(カメラ)であって、光源によって放射された光が、試料チャンバ、顕微鏡対物レンズ、作動システム及び画像センサを連続的に通過するように、当該画像センサが、レーザ源と作動システムとの間に配置される、画像センサと、を備える。
【0017】
作動システムは、物体の3次元位置を制御する。画像センサはレーザ源と作動システムとの間に配置され、作動システムは可逆的であるので、画像センサによって得られる画像は常にレーザスポットと位置合わせされる。次いで、各物体の3次元位置を追跡することによって、受動作動方法において実行されたのと同様に、いくつかのトラップの3次元力情報を得ることが可能である。
【0018】
作動システムは、トラップポイントの軸方向位置を制御するための変形可能ミラーを含むことができる。「軸方向」という用語は、レーザビームの軸を指す。平面走査ミラーは、ミラーガルバノメータとすることができる。
【0019】
変形可能ミラーは、典型的には、レーザビームを軸方向に焦点を合わせる又は焦点をぼかすことができる。
【0020】
装置は、レーザ源によって放射されたレーザビームを変形可能ミラーに数回通過させるためのシステムを備えることができる。
【0021】
したがって、レーザビームを同じ変形可能ミラーに数回通過させることによって、焦点合わせ(変形可能ミラーの集光構成の場合)又はデフォーカス(変形可能ミラーの発散構成の場合)が増幅され、したがって、顕微鏡対物レンズの入口におけるレーザビームの角度が増加(変形可能ミラーの発散構成の場合)又は減少(変形可能ミラーの集光構成の場合)される。したがって、トラップポイントの軸方向位置は、(変形可能ミラーの発散構成の場合に)増加させることができ、又は(変形可能ミラーの集光構成の場合に)減少させることができる。本発明は、大きな作業空間におけるトラップポイントの高速運動制御を可能にする。装置は依然としてミラーのみに基づいているので、光路は双方向性であり、すなわち、光路は伝搬方向から独立しており、光学効率は最大化される。この特性は、照明光が操作レーザと同じ経路に沿って戻るので、軸方向における物体のトラップと、トラップされた物体の軸平面における視覚化とを同時に可能にする。
【0022】
したがって、作動軸作業空間は、直列のいくつかの「仮想」変形可能ミラーを使用することによって拡大することができる。この考え方は、例えば1組のミラーを使用して、同じ変形可能ミラーにレーザビームを数回通過させることである。仮想変形可能ミラーが対物レンズの入口開口部の共役面に配置されることを確実にすることによって、作業空間をかなり増加させることが可能であり、一方で、対物レンズの入口開口部におけるレーザビーム直径のサイズが、レーザビームの集光又は発散の程度にかかわらず、同じままであることを確実にする。
【0023】
作業空間、生成され得るトラップの数、及び最大適用可能力が増加する。それは、大きな3D作業空間内のいくつかの生物学的及び合成物体を同時に操作又は刺激するために使用され得る。この作動技術はまた、微小物体(生物学的又は合成)の3D配向が必要とされる異なる用途、例えば、細胞手術用途(例えば、核移植、胚微量注入、極体生体検査)、生体試料の3D断層撮影撮像、又はマイクロ流体装置におけるマイクロアセンブリにおいて有用である。
【0024】
レーザビームを変形可能ミラーに数回通過させるためのシステムは、変形可能ミラー上のレーザビームの2つの連続する通過の間にレーザビームを案内するための少なくとも1組の2つのミラーを備えることができる。
【0025】
レーザビームを変形可能ミラーに数回通過させるためのシステムは、有利には、変形可能ミラーを通るレーザビームの2つの連続する通過の間に、変形可能ミラーを通るレーザ
ビームの当該2つの連続する通過を共役させるためのアフォーカル系を備える。
【0026】
アフォーカル系は、2つの集光レンズを備えることができる。
【0027】
作動システムは、トラップポイントの平面位置を制御するための平面走査ミラーを含むことができる。「平面」という用語は、レーザビームの軸に垂直な平面を指す。平面走査ミラーは、ミラーガルバノメータとすることができる。
【0028】
この装置は、有利には、変形可能ミラー及び平面走査ミラーを顕微鏡対物レンズの入口開口部と共役させるために、変形可能ミラーと平面走査ミラーとの間に配置された第1のアフォーカル系と、平面走査ミラーと顕微鏡対物レンズとの間に配置された第2のアフォーカル系とを備える。
【0029】
装置は、各トラップされた物体にかかる力を、カメラによって決定されたトラップされた物体の各々の位置の関数として計算するシステムを備えることができる。
【0030】
各トラップされた物体にかかる力Fは、光学力モデルを使用してシステムによって計算することができる。
F=K(Pレーザ-Pプローブ
ここで、Pレーザ-Pプローブは、レーザ位置とトラップされた物体の位置との間の変位を表し、Kはトラップの剛性である。
【0031】
トラップされた物体にかかる力は、物体をその平衡位置から移動させる外力の合計、すなわち、レーザビームによって適用される力を除いて物体を移動させる外力の合計である。
【0032】
いくつかの物体がその本体に取り付けられた合成物体に加えられる力及びトルクは、各トラップされた物体に対する力Fの関数として計算することができる。
【0033】
トラップされる物体は、赤血球及び細菌細胞などの生物学的物体、又は力を間接的に操作及び測定するために使用することができる光学ロボット(特に、異なるタイプのエンドエフェクタを有するプリント設計マイクロ構造)などの合成物体であり得る。したがって、トラップされる物体は、生物学的物体、微小球又は合成物体であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、単に非限定的な例として与えられる以下の説明を読み、添付の図面を参照することによって明らかになるであろう。
図1】前述したように、光ピンセットの概略図である。
図2】前述したように、図1の光ピンセットにトラップされた物体に加えられた外力の決定を示す。
図3】本発明による光ピンセット内にトラップされた物体の位置を決定するための装置を概略的に示す。
図4】本発明による装置に関連付けられた触覚インタフェースを示す図である。
図5】本発明による装置で使用されるミラーガルバノメータを概略的に示す。
図6】本発明による装置で使用される変形可能ミラーを概略的に示す。
図7】本発明による装置で使用される変形可能ミラーを概略的に示す。
図8】本発明による装置に関連付けられた光学ロボットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図3は、本発明による、単一のレーザビーム2によって同時にトラップされる複数の物
体1の位置を決定するための装置10を示す。
【0036】
装置10は、レーザビーム2を放射するレーザ源5を備える。レーザ源5は1070nmレーザであってもよい。トラップの剛性はレーザ出力に依存し、通常使用される出力レーザ出力は100mW~2Wであり得る。
【0037】
レーザビーム2は、いくつかのトラップ位置の間でレーザビーム2を偏向させるための作動システムを通過する。単一のレーザ源を使用するいくつかの同時トラップポイントの生成は、空間的又は時間的共有方法を使用して達成することができる。1組の位置の間でレーザビームを迅速に偏向させることによって、複数の安定したトラップポイントを生成することができる。光トラップシステムにおける変位は、プラットフォームを移動させるか、又はレーザビームを移動させることによって達成することができ、これは受動作動又は能動作動と呼ばれる。
【0038】
受動作動において、電動ステージの組み込みは、試料チャンバの動的制御を可能にし、一方で、操作される物体はトラップ上に固定されたままである。
【0039】
能動作動では、レーザ方向は、能動光学部品を通して変更される。更に、固有のレーザ源を使用していくつかの物体を同時にトラップするために、トラップレーザビームを多重化することが可能である。いくつかのトラップ位置の間でレーザビームを迅速に偏向させることによって、物体が2回のレーザ訪問の間に広がる時間を有さないように、いくつかの物体をトラップすることが可能である。この方法を時間共有方式と呼ぶ。あるいは、空間光変調器(SLM)などの能動回折光学素子を使用することによって、いくつかのトラップを動的に制御して、異なる位置にいくつかの回折スポットを生成することができる。この方法を空間共有方式と呼ぶ。
【0040】
顕微鏡対物レンズ6は、作動システムから来るレーザビーム2をトラップポイントに焦点合わせし、トラップされた物体1を撮像するために使用される。試料7の物体1は、プラットフォーム9(3次元ナノステージとすることができる)上に配置された試料チャンバ8内に配置される。
【0041】
光源11は試料を照らすために使用される。光源は、LED(発光ダイオード)とすることができる。
【0042】
光20は、レンズ12を介して試料8上に軸方向Zに焦点合わせされる。
【0043】
作動システムは、物体1の3次元位置、すなわちZ軸方向並びに平面X、Y方向の位置を制御する。それは、変形可能ミラー13及びガルバノメータ14を含み、これらは、トラップポイントの軸方向Z位置及び平面X、Y位置をそれぞれ制御するために使用される。
【0044】
Z軸上には、レーザビーム2を焦点を合わせる又は焦点をぼかすことができる変形可能ミラー13が用いられている。変形可能ミラー13及びガルバノメータ14は、顕微鏡対物レンズ6の入口開口部上の共役面に配置される。したがって、レーザビーム2は、顕微鏡対物レンズ6の入口開口部の周りを旋回し、入射ビーム2のコリメーションの角度又は度合いとは無関係に、オーバーフィルを同じ度合いに保持し、等しく安定したトラップを生成する。
【0045】
変形可能ミラー13は、111個のアクチュエータと、2kHzを超える更新レートを有する37個のピストン先端傾斜セグメントとを有する微小電気機械部品とすることがで
きる。各セグメントは700μmの直径を有し、一方、アレイは3.5mmの開口部を有し、5.8μmの最大ダイナミックレンジ(ストローク)を有する。静電作動は、ナノメートル及びマイクロラジアンの分解能(波面分解能<15nm rms)で各セグメントの正確な位置決めを可能にする。機械的ステップ応答速度は、200μs(10~90%)未満であり、高い反射率(>99.9%)を有する。
【0046】
セグメント化された変形可能ミラー13は、滑らかな形状を効果的に生成することができ、レーザビーム2のコリメーションの程度を制御するために使用される。ミラーガルバノメータ14の向きと変形可能ミラー13の動きとを同期させることによって、回折限界性能を維持しながら焦点スポットを横方向及び軸方向に変位させることが可能である。この軸方向走査は、非常に低い機械的慣性を意味し、したがって、Z帯域幅は、ガルバノメータ14に適合する。3次元トラップ位置間の全体的な切り替え速度は、従来技術における同等の2次元システムと同程度の大きさである。したがって、著しい収差を導入することなく非常に安定したトラップを得ることが可能である。
【0047】
ガウシアンレーザビーム(1070nm)は、ガルバノメータ14、変形可能ミラー13、及び標準的な光学素子を介して倒立顕微鏡6に導かれる。2つのアフォーカル系f、f及びf、fは、好ましくは、2つのアクチュエータ13、14を顕微鏡対物レンズ6の入口開口部と共役させ、レーザビーム2を拡大するために使用される。これは、トラップ効率を改善するために対物レンズ入口をオーバーフィル(20%)するために拡張される。
【0048】
図5は、ミラーガルバノメータ14の小さな動きに対して、レーザビーム2が顕微鏡対物レンズの入口開口部の周りをどのように旋回して、光学面において光トラップの動きを生成し、したがって、いくつかのトラップポイント15を生成するかを示す。
【0049】
トラップポイント15のZ位置を変化させるための変形可能ミラー13の焦点合わせ(図6)又はデフォーカス(図7)の効果が示されている。対物レンズの入口開口部におけるビーム2のサイズは、入射ビームのコリメーションの程度にかかわらず、同じままである。
【0050】
本発明によれば、トラップされた物体1の各々の位置を決定するための画像センサ16が、レーザ源5と作動システム13、14との間、より正確にはレーザ源5と変形可能ミラー13との間に配置され、その結果、光源11によって放射された光は、試料7、顕微鏡対物レンズ6、作動システム13、14を連続的に通過し、次いでダイクロイックミラー21を介してカメラ16に案内される。画像センサは、イベントベースのカメラであり得る。
【0051】
作動システム13、14がミラーのみを使用するという事実により、光の通過は双方向であり、すなわち、経路は伝搬方向から独立している。この特性を使用し、カメラ16の特定の位置のおかげで、3次元位置であり、物体1が常にカメラ16の視野の中心に維持されるため、一度に1つのトラップポイント15を見ることによって、トラップされた物体1の位置を追跡することが可能である。
【0052】
カメラ16をレーザ源5と作動システム13、14との間に配置すると、白色光20は、レーザビーム2とは正確に反対方向に作動システム13、14に到達して通過する。このようにして、センサ16上の画像は、常にレーザスポット上で走査される。この構成では、1つのセンサのみが全ての走査点の測定を受信する。マルチトラップ作動技術とイベントベースカメラ16(又は他のカメラ)とを同期させることによって、異なるトラップ15から来るイベント(又はフレーム)を区別することが可能になる。この解決策は、マ
ルチトラップ力測定において移動レーザの中心を決定する問題を回避する。画素の全体が各トラップされた物体の位置を決定するために使用されるので、空間分解能と時間分解能との間のトレードオフが残る可能性があるが、測定を行う時間は、生成されたトラップの数及び走査周波数に依存する。このようにして、例えば、3つの異なるトラップを空間内に任意に位置決めすることが可能であり、センサは、走査された全ての点から情報を受信し、したがって、各トラップされた物体のレーザに対する位置を測定し、最終的に、各トラップに対する外力の情報を抽出する。
【0053】
複数の3次元位置で同時に力を測定するこの能力は、融合段階中の複数の点で細胞の膜の剛性を特徴付けること、又は異なる細胞で同時に剛性を測定することなど、多くの生体力学的研究において重要である。また、マルチトラップ力測定は、メカノトランスダクションの研究、例えば、反復刺激に対する細胞の適応においても有用であり、細胞がどのように形状を変化させ、その移動挙動を制御するかを明らかにする。
【0054】
光学ロボット22は、特に、その本体に取り付けられた球状ハンドルを介して光ピンセットによって6DoF(6自由度)で作動される、異なるタイプのエンドエフェクタを有する印刷設計微細構造である(図8)。
【0055】
ロボットの各ハンドルについて3次元力を測定することによって、各トラップの情報を組み合わせることによって6軸力/トルク測定を行うことができる。6軸力センサを有するこれらの6-DoF Optobotsは、トキソプラズマゴンディの機構などの新しい生物学的相互作用の研究を可能にする。この後者は、細胞侵入を完了するために並進及び回転ねじれ運動の機械的作業を必要とし、したがって、6軸力/トルクセンサでのみ特徴付けることができる。
【0056】
図4に示すように、触覚インタフェース17を使用することができる。ユーザは、マイクロロボットの3次元位置を制御し、上述のように加えられた力を決定する力センサ18を介してマイクロロボットに加えられた3次元外力Fを感知する。コンピュータ19は、オペレータに視覚認知及び環境情報を与えることを可能にする。
図1
図2
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図4
図5
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図7
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【国際調査報告】