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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】光子計数用フロントエンド電子回路
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/17 20060101AFI20231115BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G01T1/17 G
G01T1/17 H
G01T1/17 A
A61B6/03 320R
A61B6/03 373
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525534
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2021080506
(87)【国際公開番号】W WO2022101071
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】102020129875.7
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521548733
【氏名又は名称】アーエムエス インターナショナル アーゲー
【氏名又は名称原語表記】AMS INTERNATIONAL AG
【住所又は居所原語表記】Eichwiesstrasse 18b, Jona, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル フリドリン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレウ ハラランボス
(72)【発明者】
【氏名】リゴ マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】シュタイナー マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ガヴィレロ ホアン ミゲル
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188AA27
2G188BB02
2G188BB15
2G188CC22
2G188CC28
2G188CC29
2G188EE06
2G188EE07
2G188EE08
2G188EE12
2G188EE14
2G188EE17
4C093AA22
4C093CA04
4C093CA13
4C093EA07
4C093EB13
4C093EB20
4C093EC30
(57)【要約】
光子計数用フロントエンド電子回路(10a、10b)は、増幅器回路(110)と、増幅器回路(110)の入力側と出力側との間のフィードバック経路に配置されるコンデンサ(120)とを備える電荷感応性増幅器(100)を備える。コンデンサ(120)に並列に制御可能スイッチ(200)が配置される。回路(10a、10b)は、電荷感応性増幅器出力信号(CS)の時間遅延表現である遅延回路出力信号(DS)を供給する遅延回路(300)を備える。出力信号生成回路(400)は、電荷感応性増幅器出力信号(CS)から遅延回路出力信号(DS)を減算することによって出力信号(OS)を発生するように構成される。
【選択図】 図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力信号(OS)を供給する出力ノード(O10)と、
入力信号(IS)を受信する入力ノード(I10)と、
前記入力ノード(I10)に接続される入力側と電荷感応性増幅器出力信号(CS)を供給する出力側とを有する増幅器回路(110)と、前記増幅器回路(110)の入力側と出力側との間のフィードバック経路に配置されるコンデンサ(120)とを備える電荷感応性増幅器(100)と、
前記コンデンサ(120)に並列に配置される制御可能スイッチ(200)と、
前記電荷感応性増幅器出力信号(CS)の時間遅延表現である遅延回路出力信号(DS)を供給する遅延回路(300)と、
前記出力ノード(O10)に接続され、前記出力信号(OS)を供給する出力信号生成回路(400)と、を備え、
前記出力信号生成回路(400)は、前記電荷感応性増幅器出力信号(CS)から前記遅延回路出力信号(DS)を減算することにより、前記出力信号(OS)を生成するように構成される、
光子計数用フロントエンド電子回路。
【請求項2】
前記遅延回路(300)は、前記電荷感応性増幅器出力信号(CS)を受信する入力側を有し、
前記遅延回路(300)は、前記遅延回路(300)の入力側で前記電荷感応性増幅器出力信号(CS)を受信した後、第1遅延時間(DT1)で前記遅延回路出力信号(DS)を生成するように構成される、
請求項1に記載のフロントエンド電子回路。
【請求項3】
前記電荷感応性増幅器(110)および前記コンデンサ(120)は、前記入力信号(IS)が電流パルスとして形成されるとき、前記入力信号(IS)の前記電流パルスに依存する電荷が前記コンデンサ(120)に蓄積されるように配置される、
請求項1または2に記載のフロントエンド電子回路。
【請求項4】
前記制御可能スイッチ(200)は、非導通状態および導通状態で動作し、
前記制御可能スイッチ(200)および前記コンデンサ(120)は、前記制御可能スイッチ(200)が前記非導通状態で動作するときに、前記コンデンサ(120)が充電され、前記制御可能スイッチ(200)が前記導通状態で動作するときに、前記コンデンサ(120)が放電されるように配置される、
請求項1~3のいずれかに記載のフロントエンド電子回路。
【請求項5】
前記コンデンサ(120)に蓄積された電荷を監視し、前記コンデンサ(120)に蓄積された電荷に応じて前記制御可能スイッチ(200)を制御するように構成される制御回路(500)を備える、
請求項1~4のいずれかに記載のフロントエンド電子回路。
【請求項6】
前記制御回路(500)は、前記コンデンサ(120)に蓄積された電荷が閾値を超えたことを前記制御回路(500)が検出したときに、遅延後に、前記制御可能スイッチ(200)を非導通状態から導通状態に切り替えるように構成される、
請求項5に記載のフロントエンド電子回路。
【請求項7】
前記制御回路(500)は、前記制御可能スイッチ(200)を非導通状態から導通状態に切り替えるための制御信号(S1)を生成するための第2遅延回路(510)を備え、
前記第2遅延回路(510)は、前記制御回路(500)が前記コンデンサ(120)に蓄積された電荷が閾値(Vth)を超えたことを検出した後に、第2遅延時間(DT2)で前記制御信号(S1)を生成するように構成される、
請求項5または6に記載のフロントエンド電子回路。
【請求項8】
前記遅延回路(300)および前記第2遅延回路(510)は、前記第2遅延時間(DT2)が第1遅延時間(DT1)よりも短いか等しくなるように構成される、
請求項7に記載のフロントエンド電子回路。
【請求項9】
前記出力信号生成回路(400)から前記遅延回路(300)を切断する第2制御可能スイッチ(600)を備え、
前記出力信号生成回路(400)は、前記第2制御可能スイッチ(600)に接続された第1入力(I400a)と、前記電荷感応性増幅器回路(110)の出力側に接続された第2入力(I400b)とを有する、
請求項1~8のいずれかに記載のフロントエンド電子回路。
【請求項10】
前記第2制御可能スイッチ(600)は、前記第2制御可能スイッチ(600)が、前記遅延回路(300)を前記出力信号生成回路(400)の前記第1入力(I400a)に接続する第1状態と、前記第2制御可能スイッチ(600)が、前記出力信号生成回路(400)の前記第1入力ノード(I400a)から前記遅延回路(300)を切断し、前記出力信号生成回路(400)の前記第1入力ノード(I400a)を基準電位(VSS)に接続する第2状態とにおいて動作するように構成される、
請求項9に記載のフロントエンド電子回路。
【請求項11】
制御回路(500)は、前記第1状態から前記第2状態へ前記第2制御可能スイッチ(600)を切り替える第1レベルと、前記第2状態から前記第1状態へ前記第2制御可能スイッチ(600)を切り替える第2レベルとを有する第2制御信号(S2)を生成する制御段(520)を備え、
前記制御段(520)は、前記第2制御信号(S2)の第2レベルを生成した後、第3遅延時間(DT3)で前記第2制御信号(S2)の第1レベルを生成するように構成される、
請求項9または10に記載のフロントエンド電子回路。
【請求項12】
前記第3遅延回路(520)は、前記第3遅延時間(DT3)が前記第2遅延時間(DT2)以上であるように構成される、
請求項11に記載のフロントエンド電子回路。
【請求項13】
前記積分回路(100)は、前記コンデンサ(120)に並列に接続された抵抗(130)を備える、
請求項1から請求項12のいずれかに記載のフロントエンド電子回路。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載のフロントエンド電子回路(10)と、
光子感応性領域(21)を有し、光子が前記光子感応性領域(21)に入射したときに、電流パルス(Ipulse)を生成するように構成される、光子検出器(20)と、
前記フロントエンド電子回路(10)の出力ノード(A10)に接続されたエネルギー弁別器(30)と、を備え、
前記光子検出器(20)は、前記光子が前記光子検出器(20)の前記光子感応性領域(21)に入射すると、前記光子検出器回路(20)によって生成された電流パルス(Ipulse)が前記フロントエンド電子回路(10)の入力ノード(I10)に印加されるように、前記フロントエンド電子回路(10)の入力ノード(I10)に接続されており、
前記フロントエンド電子回路(10)は、電流パルス(Ipulse)が前記フロントエンド電子回路(10)の入力ノード(I10)に印加されると、前記フロントエンド電子回路(10)の出力ノード(A10)において、電圧パルス(Vpulse)を生成するように構成され、
前記エネルギー弁別器(30)は、前記電圧パルス(Vpulse)のレベルに応じて、デジタル信号を生成するように構成される、
光子計数回路。
【請求項15】
医療診断装置であって、
請求項14に記載の光子計数回路(2)備え、
前記装置(1)は、X線装置またはコンピューター断層撮影装置として構成される、
医療診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチエネルギースペクトルCT(COMPUTED TOMOGRAPHY;コンピューター断層撮影)等の光子計数用に使用可能なフロントエンド電子回路に関する。さらに、本開示は、光子計数回路、および医療診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のCTでは、間接検出の原理を使用して、患者の身体の軟組織を容易に通過する光子を検出する。間接検出器は、X線を可視光線に変換するシンチレーターを備え、この可視光線は、光検出器またはフォトダイオードによって取り込まれ、シンチレーターの材質に入射するX線に応答して電気信号を供給する。間接検出の原理を用いる従来のCTとは対照的に、光子計数CTは、直接変換センサーを利用する。直接変換センサーは、例えば、CdTe、CdZnTe、Si、GaAs、TlBr等の特定の材料を使用して、バルク内のX線光子の相互作用に応答して電子-正孔ペアクラウドを生成する。電荷の量は入射する光子のエネルギーに比例する。
【0003】
電子は、例えば、CdTe/CZTの材料の場合、それらの集電極(アノード)上に過渡電流信号を誘起し、その後、フロントエンド電子装置でさらに処理を行う。フロントエンド装置は、入射する光子のエネルギーに比例する振幅を有する電圧パルスを生成する。次に、電圧パルスの振幅を複数のエネルギー弁別器と比較する。パルス振幅より低いエネルギー閾値を有する弁別器は、トグルし、対応するカウンターをインクリメントする。エネルギーあたりの光子数は、時間間隔(画像投影)内で、弁別器にカウントされる。
【0004】
図1は、フロントエンド電子回路10と、光子検出器20と、エネルギー弁別器30とを備える光子計数回路2のブロック図を示す。光子検出器20は、光子が光子検出器20の感光領域21に入射することで生じる過渡電流パルスIPULSEを生成する。フロントエンド電子回路10は、通常、電荷感応性増幅器およびシェーパー段を備える。シェーパー段は、入射するX線光子のエネルギー(電荷)に比例する電圧パルス振幅を生成する。電流パルスIPULSEによって供給される電荷は、時間的にランダムな次の相互作用に対応するために、シェーパー段によって可能な限り速く積分され、再度除去される。シェーパー段によって生成された電圧パルスVパルスの振幅を、エネルギー弁別器30の多数のエネルギー閾値と比較して、そのエネルギーに従って各光子を数え、分類する。
【0005】
CTの場合、X線束は1*109光子/mmを超えることがある。このため、非常に高い計数率が要求され、非常に高弾道欠損条件で動作するフロントエンド電子回路10の設計が推進される。
【0006】
弾道欠損は、フロントエンド電子回路10の電荷感応性増幅器のフィードバックコンデンサの連続放電に関連する、理想的なフルコレクションと比較してパルス振幅が失われることである。結論として、電圧パルスVpulseの最大値は、電荷感応性増幅器のフィードバックコンデンサに並列に接続された抵抗を介した同時放電により、理論上のC/Q値に達しない。後続のパルスをできるだけ速く処理できるようにするために、パルスを整形し、電圧を基準に戻すためのフィードバック抵抗(または他の放電機構)が必要である。
【0007】
弾道欠損は、光子計数検出器のエネルギー分解能において重要な役割を果たす。同じ入射X線エネルギーを有する事象でも、事象の位置(画素の中心や相互作用の深さとの相対関係)に応じて、検出器の過渡応答がわずかに異なる場合がある。非常に高い計数率を可能にするための電子機器は、通常、高弾道欠損条件で動作しなければならない。
【0008】
そのような条件下では、フロントエンド電子回路が、同じエネルギーで相互作用の位置が異なる事象に対して、電圧信号Vpulseのパルス振幅をわずかに異ならせて送出することになる。これは、記録されるエネルギーの不確実性に寄与し、エネルギー分解能の悪化につながる。
【0009】
無視できる程度の弾道欠損を示しつつ非常に高い計数率で動作し、より良好な性能をもたらすことができる光子計数用フロントエンド電子回路が求められている。さらに、計数率およびエネルギー分解能に関して高い性能を有する光子計数回路が望まれている。さらに、非常に高い計数率で動作可能な医療診断装置が望まれている。
【発明の概要】
【0010】
弾道欠損が低減され、高い光子計数率を可能にする光子計数用フロントエンド電子回路が請求項1に記載されている。
【0011】
フロントエンド電子回路は、出力信号を供給する出力ノードと、入力信号を受信する入力ノードと、前記入力ノードに接続される入力側と電荷感応性増幅器出力信号を供給する出力側とを有する増幅器回路と、前記増幅器回路の入力側と出力側との間のフィードバック経路に配置されるコンデンサとを備える電荷感応性増幅器と、を備える。さらに、フロントエンド電子回路は、前記コンデンサに並列に配置される制御可能スイッチと、遅延回路出力信号を供給する遅延回路と、を備える。遅延回路出力信号は、前記電荷感応性増幅器出力信号の時間遅延表現である。フロントエンド電子回路は、前記出力ノードに接続され、前記出力信号を供給する出力信号生成回路を備える。前記出力信号生成回路は、前記電荷感応性増幅器出力信号から前記遅延回路出力信号を減算することにより、前記出力信号を生成するように構成される。
【0012】
フロントエンド電子回路の実施可能な実施形態によれば、前記遅延回路は、前記電荷感応性増幅器出力信号を受信する入力側を有する。前記遅延回路は、前記遅延回路の入力側で前記電荷感応性増幅器出力信号を受信した後、第1遅延時間で前記遅延回路出力信号を生成するように構成される。
【0013】
フロントエンド電子回路の実施可能な実施形態によれば、前記増幅器回路および前記コンデンサは、前記入力信号が電流パルスとして形成されるとき、電荷が前記コンデンサに蓄積されるように配置される。電荷は入力信号の電流パルスに依存する。
【0014】
フロントエンド電子回路の実施可能な実施形態によれば、前記制御可能スイッチは、非導通状態および導通状態で動作する。前記制御可能スイッチおよび前記コンデンサは、前記制御可能スイッチが前記非導通状態で動作するときに、前記コンデンサが充電され、前記制御可能スイッチが前記導通状態で動作するときに、前記コンデンサが放電されるように配置される。
【0015】
この構成により、フロントエンド電子回路にリセットトポロジーを設けることができる。リセットトポロジーにより、高抵抗フィードバック経路を使用することが可能になり、ひいては高計数率能力を維持しつつ、弾道欠損を低減することが可能になる。入力信号の各パルスが入力ノードで受信された後、および入力事象の全電荷をフィードバック経路のコンデンサに回収させた後、電荷感応性増幅器は制御可能スイッチによってリセットされる。フロントエンド電子回路は、パルスパイルアップ以外のフラックス依存のエネルギー歪みがなく、無視できる程度の弾道欠損を示す。
【0016】
フロントエンド電子回路の実施可能な実施形態によれば、回路は、前記コンデンサに蓄積された電荷を監視し、前記コンデンサに蓄積された電荷に応じて前記制御可能スイッチを制御するように構成される制御回路をさらに備える。すなわち、前記制御回路は、前記コンデンサに蓄積された電荷が閾値を超えたことを前記制御回路が検出したときに、遅延後に、前記制御可能スイッチを前記非導通状態から前記導通状態に切り替えるように構成される。
【0017】
フロントエンド電子回路の実施可能な実施形態によれば、前記制御回路は、前記制御可能スイッチを前記非導通状態から前記導通状態に切り替えるための制御信号を生成するための第2遅延回路を備える。前記第2遅延回路は、前記制御回路が前記コンデンサに蓄積された電荷が閾値を超えたことを検出した後に、第2遅延時間で前記制御信号を生成するように構成される。
【0018】
結論として、閾値を超えるエネルギーを有する入力電流パルスが検出された後、遅延がトリガーされる。遅延が経過すると、(フィードバック)コンデンサがリセットされる。
【0019】
フロントエンド電子回路の実施可能な実施形態によれば、前記遅延回路および前記第2遅延回路は、前記第2遅延時間が前記第1遅延時間よりも短いか等しくなるように構成される。第2遅延時間は、最悪の場合の電荷収集時間が考慮されるように選択される。(過渡)遅延回路の第1遅延時間により、(フィードバック)コンデンサ内の全電荷の回収が保証される。
【0020】
フロントエンド電子回路の実施可能な実施形態は、前記出力信号生成回路から前記遅延回路を切断する第2制御可能スイッチをさらに備える。前記出力信号生成回路は、前記第2制御可能スイッチに接続された第1入力と、前記電荷感応性増幅器回路の出力側に接続された第2入力とを有する。
【0021】
前記第2制御可能スイッチは、前記第2制御可能スイッチが、前記遅延回路を前記出力信号生成回路の前記第1入力に接続する第1状態と、前記第2制御可能スイッチが、前記出力信号生成回路の前記第1入力ノードから前記遅延回路を切断し、前記出力信号生成回路の前記第1入力ノードを基準電位に接続する第2状態とにおいて動作するように構成される。
【0022】
第2制御可能スイッチは、利点として、出力信号生成回路の第1入力ノードを基準電位に接続することによって、出力信号生成回路から遅延回路出力信号を切断するために使用され得る。特に、第2制御可能スイッチは、利点として、電荷感応性増幅器の(フィードバック)コンデンサのリセットのために供給される。第2制御可能スイッチは、信号生成回路への遅延回路出力信号の伝搬が中断されることを保証し、結果として、フロントエンド電子回路の出力ノードにおける出力信号の追加アンダーシュートをなくす。
【0023】
フロントエンド電子回路の実施可能な実施形態によれば、前記制御回路は、前記第1状態から前記第2状態へ前記第2制御可能スイッチを切り替える第1レベルと、前記第2状態から前記第1状態へ前記第2制御可能スイッチを切り替える第2レベルとを有する第2制御信号を生成する制御段を備える。第3遅延回路は、前記第2制御信号の第2レベルを生成した後、第3遅延時間で前記第2制御信号の第1レベルを生成するように構成される。
【0024】
フロントエンド電子回路の実施可能な実施形態によれば、前記第3遅延回路は、前記第3遅延時間が前記第2遅延時間以上であるように構成される。この場合、フロントエンド電子回路の出力ノードにおける出力信号は、アンダーシュートのない電子回路の積分器の(フィードバック)コンデンサのリセットに追従することになる。
【0025】
提案するフロントエンド電子回路の構成は、臨床用途のCTに非常に重要な、計数率とエネルギー分解能のトレードオフを解決する。入力過渡応答の変化に対する耐性があるため、信号全体の安定性も向上する。
【0026】
光子検出器に入射する多数の光子の検出を可能にする光子計数回路が、請求項14に記載されている。
【0027】
光子計数回路は、上記実施形態のいずれかに記載のフロントエンド電子回路と、光子感応性領域を有する光子検出器とを備える。光子検出器は、光子が前記光子感応性領域に入射したときに、電流パルスを生成するように構成される。
【0028】
光子計数回路は、前記フロントエンド電子回路の出力ノードに接続されたエネルギー弁別器をさらに備える。前記光子検出器は、前記光子が前記光子検出器の前記光子感応性領域に入射すると、前記光子検出器回路によって生成された電流パルスが前記フロントエンド電子回路の入力ノードに印加されるように、前記フロントエンド電子回路の入力ノードに接続されている。
【0029】
前記フロントエンド電子回路は、電流パルスが前記フロントエンド電子回路の入力ノードに印加されると、前記フロントエンド電子回路の出力ノードにおいて、電圧パルスを生成するように構成される。前記エネルギー弁別器は、前記電圧パルスのレベルに応じて、デジタル信号を生成するように構成される。
【0030】
光子計数の原理を使用する医療診断装置が、請求項15に記載されている。上述したように、当該装置は光子計数回路を備える。当該装置は、X線装置またはコンピューター断層撮影装置として構成され得る。
【0031】
以下の詳細な説明において、フロントエンド電子回路のさらなる特徴および利点について示す。前述の全体的な説明と以下の詳細な説明は、ともに単なる例示であり、特許請求の範囲の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを目的としていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。そのため、本開示は、添付の図面を参照した、以下の詳細な説明から、より完全に理解される。
図1】光子計数回路のブロック図を示す。
図2A】低減された弾道欠損および高計数率能力を有する光子計数用フロントエンド電子回路の第1の実施形態を示す。
図2B】低減された弾道欠損および高計数率能力を有する光子計数用フロントエンド電子回路の第2の改良された実施形態を示す。
図3】光子計数用フロントエンド電子回路の第2の(改良された)実施形態の機能を示す。
図4】パルス閾値以下およびパルス閾値以上の入射光子に対する、フロントエンド電子回路の第1の実施形態の応答を示す。
図5】医療診断装置のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図2Aは、入力過渡電流、例えば図1に示す光子検出器20によって生成された電流パルスに応答して、電圧パルスとして構成された出力信号OSを生成するためのフロントエンド電子回路10aの一実施形態を示す。フロントエンド電子回路10aは、出力信号OSを供給するための出力ノードO10と、入力信号ISを受信するための入力ノードI10とを備える。フロントエンド電子回路は、入力ノードI10に接続される入力側と、電荷感応性増幅器出力信号CSを供給する出力側とを有する増幅器回路110を備える電荷感応性増幅器100をさらに備える。電荷感応性増幅器100は、増幅器回路110の入力側と出力側との間のフィードバック経路に配置された(フィードバック)コンデンサ120をさらに備える。電荷感応性増幅器100は、必要に応じて、コンデンサ120に並列に接続された(フィードバック)抵抗130を有してもよい。
【0034】
フロントエンド電子回路10aは、コンデンサ120に並列に配置された制御可能スイッチ200をさらに備える。また、フロントエンド電子回路10aは、遅延回路出力信号DSを供給するための遅延回路300を備える。遅延回路出力信号DSは、電荷感応性増幅器出力信号CSの時間遅延表現である。フロントエンド電子回路10aは、出力信号OSを供給するための出力ノードO10に接続される出力信号生成回路400を備える。出力信号生成回路400は、電荷感応性増幅器出力信号CSから遅延回路出力信号DSを減算して出力信号OSを生成するように構成される。実施可能な実施形態によれば、出力信号生成回路400は、信号加算器として構成される。
【0035】
図2Aに示すように、増幅器回路110およびコンデンサ120は、入力信号ISが電流パルスとして、例えば図1に示す光子検出器20で生成された電流パルスIPULSEとして形成され、制御可能スイッチ200が非導通状態にある場合に、電荷がコンデンサ120に蓄積されるように構成されている。コンデンサ120に蓄積された電荷は、入力信号ISの電流パルスに依存する。
【0036】
制御可能スイッチ200は、非導通状態および導通状態で動作するように構成される。制御可能スイッチ200およびコンデンサ120は、制御可能スイッチ200が非導通状態で操作された場合にコンデンサ120が充電され、制御可能スイッチ200が導通状態で操作された場合にコンデンサ120が放電されるように配置される。
【0037】
フロントエンド電子回路10aは、コンデンサ120に蓄積された電荷を監視し、コンデンサ120に蓄積された電荷に応じて制御可能スイッチ200を制御するように構成された制御回路500を備える。フロントエンド電子回路の実施可能な実施形態によれば、制御回路500は、制御回路500がコンデンサ120に蓄積された電荷が閾値Vthを超えたことを検出した場合に、制御可能スイッチ200を非導通状態から導通状態に切り替えるように構成される。
【0038】
遅延回路300は、電荷感応性増幅器出力信号CSを受け取る入力側を有する。遅延回路300は、遅延回路300の入力側で電荷感応性増幅器出力信号CSを受け取った後、第1遅延時間DT1で遅延回路出力信号DSを生成するように構成される。
【0039】
図2Aは、制御回路500の実施可能な態様を示す。制御回路500は、第2遅延回路510を備え、制御信号s1を生成して、制御可能スイッチ200を非導通状態から導通状態、およびその逆に切り替える。第2遅延回路510は、制御回路500がコンデンサ120に蓄積された電荷が閾値Vthを超えたことを検出した後、第2遅延時間DT2で制御信号s1を生成するように構成される。
【0040】
フロントエンド電子回路10aは遅延線シェーパーとして機能するように構成される。すなわち、電荷感応性増幅器出力信号を時間的に遅延させたもの、すなわち遅延回路出力信号DSが、電荷感応性増幅器出力信号CSから減算されることにより、低周波成分、例えば、入力段の1/fノイズおよびリークを除去する。遅延時間DT1としては、コンデンサ120において入力信号ISに起因する電荷のフルコレクションが確保されるように、十分に長く選択される。信号ISは、直接変換器として構成され得る光子検出器20から生成されてもよい。電荷感応性増幅器出力信号CSから遅延回路出力信号DSを減算すると、狭パルスを有する出力信号OSが得られる。このように、フロントエンド電子回路10aは、電流パルスである入力信号ISに応答して狭電圧パルスを生成する。
【0041】
遅延時間DT1が、最悪な場合の過渡反応に対応するのに十分な長さに設定される場合、回路10aは、低い弾道欠損を示す。また、減算により、回路10aは、本質的にリーク電流の影響を受けず、動的成分に対するベースラインの復元を必要としない。
【0042】
また、フロントエンド電子回路10aは、制御回路500によって制御される制御可能スイッチ200によって実現されるリセットトポロジーを備える。制御回路500は、コンデンサ120の電圧を閾値Vthと比較するように構成された比較回路530を備える。コンデンサ120の電圧が閾値Vthを超えると、比較回路530の出力信号の状態が変化し、遅延が開始される。
【0043】
つまり、閾値Vthによって決定されるパルス閾値レベルを上回るエネルギーを有する入力パルスISが検出され、比較回路530の出力の状態が変化した後、遅延が遅延回路510によってトリガーされる。その結果、制御信号s1は、制御可能スイッチ200を導通状態に切り替えるように比較回路530の出力値が変化した後、遅延時間DT2で遅延回路510によって生成される。
【0044】
結論として、遅延時間DT2の経過後、フィードバックコンデンサ120は、コンデンサ120が導通状態で動作する制御可能スイッチ200を介して放電されることでリセットされる。遅延回路510のためのトリガーがベースラインを上回る閾値であるので、パルスのオンセットが開始されたとき、計数率性能を最大にするために、遅延時間DT2は、過渡遅延時間DT1よりも短いか等しくなるように選択されてもよい。
【0045】
フロントエンド電子回路10aは、入力電流パルスISに応答した、例えば電圧パルスのようなパルス状の出力信号OSの生成を可能にする。制御可能スイッチ200は、最初、非導通/開放状態で操作され、これにより、コンデンサ120は、入力ノードI10に印加された電流パルスISに応答して充電される。したがって、出力信号OSは立ち上がりエッジを有する。遅延時間DT1の経過後、遅延回路300は遅延回路出力信号DSを生成する。ここで、遅延回路出力信号DSの振幅が電荷感応性増幅器出力信号CSから減算されることにより、出力信号パルスOSは、立ち下がりエッジを示す。
【0046】
コンデンサ120に蓄積された電荷が閾値Vthを超え、遅延時間DT2が経過するとすぐに、制御回路500によって制御可能スイッチ200が導通状態に切り換えられ、その結果、コンデンサ120が突然放電され、出力信号OSがゼロレベルに低下する。
【0047】
図2Bは、図2Aの構成の改良された変形例であるフロントエンド電子回路10bの一実施形態を示す。図2Bに示すように、図2Aの回路は、第2制御可能スイッチ600によって拡張され、遅延回路300を出力信号生成回路400から切断する。出力信号生成回路400は、第2制御可能スイッチ600に接続された第1入力I400aと、増幅器回路110の出力側に接続された第2入力I400bとを有する。第2制御可能スイッチ600は、第2制御可能スイッチ600が遅延回路300を出力信号生成回路400の第1入力I400aに接続する第1状態と、第2制御可能スイッチ600が遅延回路300を出力信号生成回路400の第1入力ノードI400aから切断し、かわりに第1入力ノードI400aを例えばグランド電位の基準電位VSSに接続する第2状態とで動作するように構成される。
【0048】
第2制御可能スイッチ600の第1および第2状態を制御するために、制御回路500は、第3遅延回路521およびフリップフロップ522を備える制御段520によって拡張される。制御段520は、第2制御可能スイッチ600を第1状態から第2状態に切り換えるための第1レベルと、第2制御可能スイッチ600を第2状態から第1状態に切り換えるための第2レベルとを有する第2制御信号s2を生成するように構成される。さらに、制御段520は、第2制御信号s2の第2レベルを生成した後に、第3遅延時間DT3で第2制御信号s2の第1レベルを生成するように構成される。
【0049】
特に、フリップフロップ522は、制御信号s1の状態を受け取った後、第2制御信号s2の第1レベルを生成して、導通状態の第1制御可能スイッチ200を切り替える。結果として、第2の制御スイッチ600は、基準電位に切り換えられる。第2制御信号s2の第1レベルを受信した後、遅延回路521は、遅延時間DT3後に出力信号を生成し、これによりフリップフロップ522がトリガーされ、第2制御信号s2の第1レベルが生成される。第2制御信号s2の第1レベルによって、第2制御可能スイッチ600は、第2制御可能スイッチ600が遅延回路300を出力信号生成回路400に接続する第1状態に切り戻される。
【0050】
図3は、図2Bのフロントエンド電子回路10bのトポロジーの機能を示す。光子検出器20に入射する光子は、回路10bの入力信号ISとして電流パルスの発生を引き起こす。コンデンサ120は最大値まで充電され、電荷感応性増幅器出力信号CSおよび出力信号OSは立ち上がりエッジを伴って生成される。遅延時間DT1経過後に、遅延回路出力信号DSは出力信号生成回路400により電荷感応性増幅器出力信号CSから減算され、その結果、出力信号OSは立ち下がりエッジを示す。コンデンサ120に蓄積された電荷が閾値Vthによって規定されるパルス閾値を超えた後、遅延回路510は、制御可能スイッチ200が導通状態に切り替えられるように、制御信号s1を生成する。この結果、コンデンサ120が突然放電され、電荷感応性増幅器出力信号CSがゼロレベルに低下する。
【0051】
フロントエンド電子回路10bの改良された構成によれば、電荷感応性増幅器出力信号を遅延させたもの、すなわち遅延回路出力信号DSは、遅延時間DT3に等しい期間、制御可能スイッチ600により出力信号生成回路400から切断される。フィードバックコンデンサ120のリセットにより制御可能スイッチ600が供給される。上述のように、リセットは、電荷感応性増幅器出力信号CSをゼロレベルに低下させる。信号生成回路400による電荷感応性増幅器出力信号CSからの遅延回路出力信号DSの減算は、電荷感応性増幅器出力信号を遅延したものがリセット前の信号をまだ伝播しているため、大きな追加のアンダーシュートを引き起こすことになる。第2制御可能スイッチ600は、伝搬が考慮されないよう保証し、追加のアンダーシュートを解消する。
【0052】
好適な実施形態によれば、第2制御可能スイッチ600は、遅延時間DT2と同じ時間、すなわち、遅延時間DT2が遅延時間DT3に等しい時間、基準電位、例えば接地に保たれる。この場合、回路10bの出力信号OSは、アンダーシュートなく、電荷感応性増幅器100のリセットに追従する。第2制御可能スイッチ600が強制的に基準電位VSSとなる遅延時間DT3は、図3では「ブランク」として示されている。
【0053】
ブランク期間は、パイルアップの挙動を妨げない。リセット後、電荷感応性増幅器100は、次のパルスを受ける準備が整った状態となる。遅延線がブランクされることは、過渡遅延時間DT1自体に干渉しない限り、いかなる役割も果たさない。
【0054】
特に興味深いのは、入射光子のエネルギー、ひいては入力信号ISの入力電流パルスが非常に低く、リセットがトリガーされないという効果である。しかしながら、フロントエンド電子回路10aおよび10bは、そのような事象が依然として遅延線トポロジーによって処理されることを保証する。すなわち、出力信号OSは、非常に狭い小さなパルスとなり、このパルスは、非常に狭く、パイルアップの確率による以外に、エネルギードリフトに寄与しない。
【0055】
図4は、そのような2つのより高いエネルギー事象の間の事象を示す。例えば、図4に示す約6keV程度の2番目の光子の入射事象は、閾値Vthで規定されるパルス閾値を超えないため、リセットをトリガーしない。しかしながら、フロントエンド電子回路10aおよび10bにより実現される遅延線減算は、パルスが非常に狭い間隔に限定されることを保証する。遅延線トポロジーがない場合、電荷感応性増幅器100は、コンデンサ120内に電荷を蓄積し、エネルギーペデスタルを引き起こす。このため、閾値Vthを超える次のパルスは、エネルギーペデスタルにより間違ったエネルギーを示すことになる。
【0056】
図2Aおよび図2Bに示すように、フロントエンド電子回路がフィードバック抵抗130を備える場合、小さな残留アンダーシュートが低エネルギー事象に追従することがある。したがって、第2の高いエネルギー事象は、ごくわずかな誤差を示す。ただし、この残留アンダーシュートは、第2のパルスを超えて伝播しない。残留アンダーシュートはエネルギーに依存する。これはパルス閾値を下回るパルスに対してのみ発生するため、誤差は、非常に低いレベルのエネルギーに抑制される。しかし、上記で説明したように、フィードバック抵抗130は任意のものであるため、フィードバック抵抗が設けられない場合、残留アンダーシュートは存在しないことになる。
【0057】
結論として、フロントエンド電子回路10aおよび10bのそれぞれの実施形態は、パルスパイルアップ以外のフラックス依存のエネルギー歪みがなく、無視できる程度の弾道欠損を示す。リセット機構を用いることにより、遅延線シェーパー特有のアンダーシュートを抑制することができる。また、遅延線シェーパートポロジーを用いることにより、リセット事象に起因するエネルギーペデスタルを防止することができる。
【0058】
フロントエンド電子回路10aおよび10bによって生成される出力信号OSは、過渡遅延よりも大幅に大きな時定数を持つ漏れ成分や低周波成分に対して本質的に影響を受けない。提案するフロントエンド電子回路10aおよび10bの構成はリセット機構を備えるので、電荷感応性増幅器110の飽和は問題にならない。漏れおよび/または低周波成分によって生じる電荷感応性増幅器の出力における任意の電圧スイングは、パルス閾値によって抑制される。電荷感応性増幅器出力信号CSのレベルがそれを上回ると、回路は自己リセットする。したがって、電荷感応性増幅器100は、フィードバック抵抗130を厳密に必要としない。
【0059】
ただし、リセット機構に起因するkT/Cノイズも、最終的には電荷感応性増幅器出力信号CSとその遅延バージョンDSとの減算によって除去されるため、補償される。
【0060】
フロントエンド電子回路10aおよび10bの、結果として得られる計数率性能は、本質的に無力化されない。リセット動作と遅延線減算はともに、無力化されない特性のベースラインへの復帰を実現する。
【0061】
提案するフロントエンド電子回路10aおよび10bの構成は、優れた弾道欠損性能を示す。特に、同じ電荷を有するものの、第2パルスが時間的に10%短くなる2つの入力パルスの場合、フロントエンド電子回路10aおよび10bによって生成される出力信号OSは、両方の入力パルスに応答して同じ出力振幅を送出するのに対して、弾道欠損を示すフロントエンド電子回路は、同じ電荷を有するにもかかわらず、入力に応答して異なるパルス振幅を送出する。
【0062】
遅延回路300は、例えば、位相シフトを有するカスケード増幅器、遅延ロックループ回路などの異なるタイプの回路によって実現されてもよい。過渡遅延時間DT1は、通常、5ナノ秒から25ナノ秒であってもよく、好ましくは7ナノ秒から12ナノ秒である。過渡遅延時間DT1は、常に、規則的に動作するダイレクトコンバータピクセルの最悪の過渡応答よりも長い。
【0063】
閾値Vthによって規定されるパルス閾値は、通常、電子機器のノイズの3~5倍の間で、誤トリガーを防止するためのノイズレベルを上回る入射光子の最低可能エネルギーレベルである。あるいは、通常20~30keVの間の比較システムの最低閾値も、入射する光子を検出し、リセット信号をトリガーする目的のために使用されてもよい。
【0064】
提案するフロントエンド電子回路10aおよび10bの構成は、CT、セキュリティ、手荷物検査、ならびに高い光子計数率および信号の安定性を必要とする他の任意の用途など、様々な光子計数の用途に使用され得る。
【0065】
図5は、フロントエンド電子回路10aまたは10bを備える光子計数回路2が、医療診断装置1に設けられた場合の応用例を示す。この装置は、例えば、X線装置またはCTスキャナとして構成されてもよい。
【0066】
以上、本明細書に開示される光子計数用フロントエンド電子回路の実施形態について、フロントエンド電子回路の設計の新規な態様を読者が理解できるよう説明した。以上、好適な実施形態について説明したが、開示された概念の様々な変更、修正、等価物、および置換が、特許請求の範囲から不必要に逸脱することなく、当業者によって行われ得る。
【0067】
特に、光子計数用フロントエンド電子回路の設計は、開示された実施形態に限定されず、説明された実施形態に含まれる特徴について可能な限り多くの代替例を与える。しかしながら、開示された概念の任意の修正、等価物、および置換は、本明細書に添付される特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0068】
個々の従属請求項に記載された特徴は、有利に組み合わせることができる。さらに、特許請求の範囲で使用される参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0069】
さらに、本明細書において、「備える」という用語は、他の要素を除外しない。また、本明細書において、冠詞である「a」は、1つまたは2つ以上の構成部または要素を含むことを意味し、1つのみを意味すると解釈されることに限定されない。
【0070】
本特許出願は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、出願番号102020129875.7を有するドイツ特許出願の優先権を主張する。
【符号の説明】
【0071】
1 医療診断装置
2 光子計数回路
10 フロントエンド電子回路
20 光子検出器
21 光子感応性領域
30 エネルギー弁別器
100 電荷感応性増幅器
110 増幅器回路
120 コンデンサ
130 抵抗
200 制御可能スイッチ
300 遅延回路
400 出力信号生成回路
500 制御回路
510 遅延回路
520 制御段
521 遅延回路
522 フリップフロップ
530 比較回路
600 制御可能スイッチ
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
【国際調査報告】