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特表2023-549078陽イオン性物質を含む組成物及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】陽イオン性物質を含む組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/787 20060101AFI20231115BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A61K31/787
A61P37/04
A61P43/00 107
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526242
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 KR2021015147
(87)【国際公開番号】W WO2022092784
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0142534
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518018056
【氏名又は名称】スンクワン メディカル ファウンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】519137394
【氏名又は名称】チャ ユニバーシティ インダストリー-アカデミック コオペレーション ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,キュン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】パク,クン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,スン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヘ ジン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ヒ ジョン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA03
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB22
4C086ZB26
(57)【要約】
一態様による陽イオン性物質を有効成分として含む組成物によれば、パーフォリンタンパク質の安定度を向上させ、細胞内パーフォリンタンパク質の蓄積を誘導することにより、免疫細胞の活性を増加させる効果がある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン性物質を有効成分として含む、細胞内パーフォリンタンパク質増加用組成物。
【請求項2】
前記細胞は、免疫細胞である、請求項1に記載の細胞内パーフォリンタンパク質増加用組成物。
【請求項3】
前記陽イオン性物質は、ポリエーテルイミド(Polyetherimide: PEI)である、請求項1に記載の細胞内パーフォリンタンパク質増加用組成物。
【請求項4】
前記ポリエーテルイミドの分子量は、10,000mMないし30,000mMである、請求項1に記載の細胞内パーフォリンタンパク質増加用組成物。
【請求項5】
前記ポリエーテルイミドは、分枝状である、請求項1に記載の細胞内パーフォリンタンパク質増加用組成物。
【請求項6】
前記ポリエーテルイミドの含量は、1μg/mlないし10μg/mlである、請求項1に記載の細胞内パーフォリンタンパク質増加用組成物。
【請求項7】
陽イオン性物質を有効成分として含む、免疫細胞活性増加用組成物。
【請求項8】
陽イオン性物質及び免疫細胞を培養する段階を含む、ナチュラルキラー細胞の活性を促進する培養方法。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物を個体に投与する段階を含む、癌の予防または治療方法。
【請求項10】
細胞内パーフォリンタンパク質増加に使用するための請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項11】
免疫細胞活性増加に使用するための請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項12】
細胞内パーフォリンタンパク質増加に使用するための陽イオン性物質の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年10月29日出願された韓国特許出願第10-2020-0142534号を優先権として主張し、前記明細書の全体が本願の参考文献である。
【0002】
本発明は、陽イオン性物質を含む組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
ナチュラルキラー細胞(Natural Killer cell: NK cell)は、先天免疫系において体内一次防御作用を行う免疫細胞である。ナチュラルキラー細胞は、異常細胞を認知する受容体を含んでおり、特定の抗原なしにも癌細胞またはウイルスなどの異常細胞を即時に感知して除去し、免疫系を調節し、癌細胞の増殖、再発及び転移を効果的に抑制する役割を行う。
【0004】
前記のようなナチュラルキラー細胞の特徴を利用して、最近、ナチュラルキラー細胞を利用した抗癌免疫治療剤の研究が活発になっている。免疫抗癌治療方法のうち免疫細胞治療剤とは、体内の免疫細胞を利用して遺伝子工学的に変形させ、再び体内に投入する治療剤をいう。免疫抗癌治療剤は、細胞性免疫を強化することが目的であるが、キメラ抗原受容体T-細胞(CAR-T細胞)は、遺伝子組換えが複雑であり、治療費用が高価であるという短所が存在し、T細胞の特性により、サイトカイン放出症候群及びさまざまな副作用をもたらすという問題点も存在した。前記のような問題点を克服するために、ナチュラルキラー細胞が免疫抗癌治療分野で新たに注目されている。
【発明の概要】
【0005】
[発明が解決しようとする課題]
本発明者らは、陽イオン性物質を免疫細胞に処理した場合、パーフォリンタンパク質の安定化が向上することを確認することにより、前記のような問題点を解決した。
【0006】
一態様は、陽イオン性物質を有効成分として含む細胞内パーフォリンタンパク質増加用組成物を提供する。
【0007】
他の態様は、陽イオン性物質を有効成分として含む免疫細胞活性増加用組成物を提供する。
【0008】
さらに他の態様は、陽イオン性物質が前処理され、正常細胞に比べてパーフォリンの発現量または含量が増加した免疫細胞を提供する。
【0009】
さらに他の態様は、陽イオン性物質が前処理され、正常細胞に比べてパーフォリンの発現量または含量が増加した免疫細胞を含む癌の予防用または治療用の組成物を提供する。
【0010】
さらに他の態様は、陽イオン性物質及び免疫細胞を有効成分として含む癌の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0011】
さらに他の態様は、陽イオン性物質及び免疫細胞を培養する段階を含む、免疫細胞の活性を促進する培養方法を提供する。
【0012】
さらに他の態様は、陽イオン性物質及び免疫細胞を培養する段階を含む、免疫細胞内のパーフォリンの含量または発現量を増加させる方法を提供する。
【0013】
さらに他の態様は、陽イオン性物質及び免疫細胞を有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含む癌の予防または治療方法を提供する。
【0014】
さらに他の態様は、細胞内パーフォリンタンパク質増加に使用するための、陽イオン性物質を有効成分として含む組成物の使用を提供する。
【0015】
さらに他の態様は、免疫細胞活性増加に使用するための、陽イオン性物質を有効成分として含む組成物の使用を提供する。
【0016】
さらに他の態様は、癌の予防用または治療用の医薬の製造に使用するための、陽イオン性物質を有効成分として含む組成物の使用を提供する。
【0017】
さらに他の態様は、細胞内パーフォリンタンパク質増加に使用するための陽イオン性物質の使用を提供する。
【0018】
[課題を解決するための手段]
一態様は、陽イオン性物質を有効成分として含む細胞内パーフォリンタンパク質増加用組成物を提供する。
【0019】
他の態様は、陽イオン性物質を有効成分として含む免疫細胞活性増加用組成物を提供する。
【0020】
本明細書において用語「陽イオン性物質(Cationic substance)」は、表面に陽イオンを有する物質でもあり、表面に正電荷を有する物質でもある。
【0021】
一実施形態において、前記陽イオン性物質は、ポリエーテルイミド(Polyetherimide: PEI)またはキトサン(chitosan)でもある。好ましくは、前記陽イオン性物質は、ポリエーテルイミドでもある。
【0022】
本明細書において用語「ポリエーテルイミド(Polyetherimide: PEI)」は、(C3724の化学式を有するポリマーであって、密度は1.27g/cmである。前記ポリエーテルイミドは、陽イオン性物質でもある。前記ポリエーテルイミドの陽イオン性は、細胞内部に遺伝子を伝達するものでもある。
【0023】
前記細胞は、免疫細胞でもあり、T細胞、B細胞、樹状細胞またはナチュラルキラー細胞でもある。
【0024】
前記免疫細胞活性増加は、母細胞、例えば、造血細胞または前駆細胞に比べて、細胞の免疫調節能、細胞毒性または細胞死滅能が活性化されたことを意味する。前記免疫細胞は、CAR免疫細胞でもある。
【0025】
本明細書において用語「ナチュラルキラー細胞(Natural Killer cell: NK cell)」は、免疫を担う血液中の白血球の一種であって、肝臓と骨髄で成熟する細胞を意味する。前記ナチュラルキラー細胞は、非特異的免疫を担い、ウイルスや癌細胞などを除去する役割を行う。
【0026】
一実施形態においては、前記組成物をナチュラルキラー細胞に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の免疫調節能、細胞毒性または細胞死滅能が向上したことを確認した。したがって、前記組成物は、免疫調節能、細胞毒性または細胞死滅能が向上したナチュラルキラー細胞を含むことにより、ナチュラルキラー細胞のウイルスまたは癌細胞の死滅能力が向上したことを確認した。
【0027】
本明細書において用語「パーフォリン(Perforin)タンパク質」は、細胞の原形質膜に孔を開けて細胞を破壊する糖タンパク質を意味する。細胞の前記パーフォリンタンパク質は、免疫細胞内に存在するものでもある。
【0028】
前記ポリエーテルイミドは、分枝状でもある。前記分枝状は、化学的構造が線状ではなく、枝を含んでいるものを意味する。また、前記ポリエーテルイミドは、一級アミン、二級アミンまたは三級アミンでもある。
【0029】
前記ポリエーテルイミドの分子量は、10,000mMないし30,000mMでもある。例えば、前記ポリエーテルイミドの分子量は、10,000ないし28,000、10,000ないし27,000、12,000ないし30,000、12,000ないし28,000、12,000ないし27,000、15,000ないし30,000、15,000ないし28,000、あるいは15,000ないし27,000mMでもある。好ましくは、約25,000mMでもある。遺伝子伝達効率は陽イオンの密度と比例して高くなるので、前記分子量の範囲が前記数値超過または未満である場合、遺伝子伝達効率が低下する。
【0030】
前記ポリエーテルイミドは、分枝状(brancned)または直線状(linear)でもある。また、前記分枝状は、一分子内に、一級アミン、二級アミン及び三級アミンからなる群から選択された1以上を有することができる。前記分枝状は、一分子内にアミン構造を1以上有しており、広いpH範囲内で陽イオンに変わることができるプロトンスポンジ(Proton Sponge)効果を有することができる。
【0031】
一具体例において、前記陽イオン性物質の含量は、0.1μg/mlないし10μg/mlでもある。例えば、前記陽イオン性物質の含量は、0.1ないし9μg/ml、0.1ないし8μg/ml、0.5ないし10μg/ml、0.5ないし9μg/ml、0.5ないし8μg/ml、1ないし10μg/ml、1ないし9μg/ml、1ないし8μg/ml、2ないし10μg/ml、2ないし9μg/ml、2ないし8μg/ml、3ないし10μg/ml、3ないし9μg/ml、あるいは3ないし8μg/mlでもある。このとき、陽イオン性物質の含量が前記範囲未満または超過である場合、免疫細胞が十分に活性化されないか、あるいはパーフォリンタンパク質の蓄積度が低下するという問題点がある。
【0032】
一具体例において、前記組成物は、培地組成物でもある。前記パーフォリンタンパク質増加用組成物または免疫細胞活性増加用組成物は、培地組成物であって、免疫細胞と共に培養する場合、免疫細胞内のパーフォリンタンパク質の安定化または蓄積を誘導し、結果として、免疫細胞の活性化を誘導することができる。
【0033】
前記組成物は、ナノ粒子をさらに含んでもよい。
【0034】
本明細書において用語「ナノ粒子(Nanoparticles)」とは、表面を有する1ないし100nmサイズの粒子を意味する。前記ナノ粒子は、コーティングされたものでもある。
【0035】
一具体例において、前記ナノ粒子は、磁性ナノ粒子でもある。より具体的には、前記ナノ粒子のコアは、ZnまたはFeを含むものでもある。前記ナノ粒子は、前記コア層により磁性を有することができる。
【0036】
前記陽イオン性物質は、ナノ粒子に結合可能である。具体的には、前記陽イオン性物質は、ナノ粒子の表面に存在してもよく、ナノ粒子の表面と化学的に結合してもよい。一実施形態による組成物は、ナノ粒子及び陽イオン性物質を一定時間培養することにより、ナノ粒子の表面にポリエーテルイミドを結合させ、前記ナノ粒子及び陽イオン性物質を含む組成物を得ることができる。
【0037】
一具体例において、前記組成物は、パーフォリンタンパク質を安定化させることにより、細胞内パーフォリンタンパク質の蓄積を誘導することができる。前記安定化は、パーフォリンタンパク質量の増加を誘導するタンパク質分解(proteolytic degradation)抵抗性及びパーフォリンmRNAからの翻訳効率性(translation efficacy)の向上を意味する。したがって、前記組成物は、細胞内パーフォリンタンパク質の個数または量を増加させることができる。
【0038】
前記組成物は、免疫抗癌剤と同時に投与可能である。前記組成物は、免疫抗癌剤と同時に投与される場合、免疫抗癌剤の活性度を高くすることができる。
【0039】
前記組成物は、γ-PGA(Gamma-PGA)、グリコールキトサン(glycol chitosan)及びプロタミン(protamine)からなる群から選択された1以上をさらに含んでもよい。
【0040】
さらに他の態様は、陽イオン性物質が前処理され、正常細胞に比べてパーフォリンの発現量または含量が増加した免疫細胞を提供する。
【0041】
さらに他の態様は、前記免疫細胞を含む癌の予防用または治療用の組成物を提供する。
【0042】
前記陽イオン性物質、細胞、パーフォリン及び免疫細胞は、前述の通りである。
【0043】
前記治療用組成物は、免疫抗癌剤でもある。
【0044】
本明細書において用語「免疫抗癌剤」は、人体の免疫細胞を活性化させ、癌細胞を死滅させる抗癌剤であって、患者自身の免疫強化を通じて癌の治療効果を示す薬剤を意味する。一具体例において、前記免疫抗癌剤は、免疫チェックポイント阻害剤でもある。
【0045】
本明細書において用語「免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitor)」は、T細胞抑制に関与する免疫チェックポイントタンパク質(immune checkpoint protein)、例えば、腫瘍細胞で発現されるPD-L1のようなタンパク質の活性化を遮断することにより、T細胞を活性化させ、癌細胞を攻撃する免疫抗癌剤を意味する。
【0046】
一具体例において、前記免疫チェックポイント阻害剤は、NK細胞治療剤、T細胞治療剤、CAR免疫細胞治療剤、DCワクチン、CTL治療剤、抗PD-L1、抗PD-1及び抗CTLA-4からなる群から選択されるいずれか1以上でもあり、例えば、NK細胞治療剤でもある。
【0047】
一具体例において、前記CAR免疫細胞治療剤は、CAR-T(Chimeric antigen receptor-T)細胞またはCAR-NK(Chimeric antigen receptor-NK)細胞を含む免疫チェックポイント阻害剤を意味する。
【0048】
さらに他の態様は、前記薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、個体の癌治療方法を提供する。
【0049】
さらに他の態様は、陽イオン性物質を有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含む癌の予防または治療方法を提供する。
【0050】
前記陽イオン性物質、ポリエーテルイミドまたは免疫細胞の具体的な内容は、前述の通りである。
【0051】
本明細書において用語「個体」は、癌の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒト、または非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、犬、猫、馬、牛などの哺乳類を意味する。前記癌は、乳癌、甲状腺癌、胃癌、大腸癌、肺癌、肝癌、前立腺癌、膵臓癌、胆嚢癌、胆道癌、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、口唇癌、精巣癌、急性骨髄性白血病、基底細胞癌、卵巣上皮癌、脳腫瘍、多発性骨髄腫、血液癌、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、膀胱癌、腹膜癌、舌癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、小腸癌、食道癌、腎臓癌、心臓癌、悪性リンパ腫、尿道癌、子宮頸癌、直腸癌、扁桃癌及び喉頭癌からなる群から選択された1以上でもある。
【0052】
本明細書において用語「予防」は、本発明による組成物の投与により、癌の発生を抑制または遅延させる全ての行為を意味する。
【0053】
本明細書において用語「治療」は、疾患、障害、病態またはその1以上の症状の軽減、進行抑制または予防を意味するか、あるいはそれを含み、「有効成分」または用語「薬剤学的有効量」は、疾患、障害、病態またはその1以上の症状の軽減、進行抑制または予防に十分な、本願で提供される発明を実施する過程で利用される組成物の任意の量を意味する。
【0054】
前記薬学的組成物は、陽イオン性物質により、パーフォリンの含量が増加した免疫細胞を含むことにより、免疫反応が活性化された免疫細胞を有効成分として含み、癌を効果的に治療することができる。
【0055】
前記組成物は、既存に知られている他の免疫抗原補強剤をさらに含んでもよく、他の免疫抗原補強剤としては、好ましくは、モノホスホリルリピドA(monophosphoryl lipid A, MPL)及びGLA-SE(Glucopyranosyl Lipid Adjuvant, formulated in a stable nano-emulsion of squalene oilin-water)のうち1つを含んでもよい。
【0056】
前記薬学的組成物の投与方法は、特に制限されるものではないが、目的とする方法によって、静脈内、皮下、腹腔内、吸入または局所適用のような非経口投与、あるいは経口投与が可能である。投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度などによって、その範囲が多様である。1日投与量は、治療を必要とする個体に投与されることによって軽減した疾病状態に対する治療に十分な、一態様による治療用物質の量を意味する。治療用物質の効果的な量は、特定化合物、疾病状態及びその深刻度、治療を必要とする個体によって異なり、これは、当業者によって通常決定されうる。非制限的な例として、一態様による組成物の人体への投与量は、患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態及び疾患程度によっても異なる。体重が70kgである大人患者を基準とするとき、例えば、約1,000~10,000細胞/回、1,000~100,000細胞/回、1,000~1,000,000細胞/回、1,000~10,000,000細胞/回、1,000~100,000,000細胞/回、1,000~1,000,000,000細胞/回、1,000~10,000,000,000細胞/回で、一定時間間隔で1日1回ないし数回に分割投与することもでき、一定時間間隔で複数回投与することもできる。
【0057】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体及び/または添加物を含むこともできる。例えば、滅菌水、生理食塩水、慣用の緩衝剤(リン酸、クエン酸、その他の有機酸など)、安定剤、塩、酸化防止剤(アスコルビン酸など)、界面活性剤、懸濁剤、等張化剤または保存剤などを含んでもよい。局所投与のために、生体高分子(biopolymer)などの有機物、ハイドロキシアパタイトなどの無機物、具体的には、コラーゲンマトリックス、ポリ乳酸重合体または共重合体、ポリエチレングリコール重合体または共重合体、及びその化学的誘導体などと組み合わせるものも含んでもよい。一具体例による薬学的組成物が注射に適当な剤形に調剤される場合には、免疫細胞またはその活性を増加させる物質が薬学的に許容可能な担体中に溶解されているか、あるいは溶解されている溶液状態に凍結されている。
【0058】
前記薬学的組成物は、その投与方法や剤形によって、必要な場合、懸濁剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、還元剤、酸化防止剤などを適切に含んでもよい。前述のものをはじめとして本発明に好適な薬学的に許容される担体及び製剤は、文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences, 19th ed., 1995]に詳細に記載されている。前記薬学的組成物は、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができる方法により、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されたり、大容量容器内に含めて製造されたりする。このとき、剤形は、油性媒質または水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であってもよく、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル状であってもよい。
【0059】
さらに他の態様は、陽イオン性物質及び免疫細胞を培養する段階を含む、免疫細胞の活性を促進させる培養方法を提供する。
【0060】
さらに他の態様は、陽イオン性物質及び免疫細胞を培養する段階を含む、免疫細胞内のパーフォリンの含量または発現量を増加させる方法を提供する。
【0061】
前記陽イオン性物質、ポリエーテルイミド、免疫細胞及び活性促進に係わる具体的な内容は、前述の通りである。
【0062】
前記培養する段階は、陽イオン性物質及び免疫細胞を5ないし60時間培養することができる。例えば、5ないし60時間、12ないし60時間、6ないし58時間、6ないし55時間、6ないし53時間、6ないし50時間、8ないし60時間、8ないし58時間、8ないし55時間、8ないし53時間、8ないし50時間、10ないし60時間、10ないし58時間、10ないし55時間、10ないし53時間、あるいは10ないし50時間培養することができる。前記培養時間が前記数値超過または未満である場合、パーフォリンの安定化が十分に行われていない。
【0063】
前記方法は、陽イオン性物質及び免疫細胞を培養することにより、パーフォリンタンパク質の安定化を向上させ、細胞内蓄積を誘導することにより、結果として、細胞死滅能を増進させることができる。
【0064】
さらに他の態様は、細胞内パーフォリンタンパク質増加に使用するための、陽イオン性物質を有効成分として含む組成物の使用を提供する。
【0065】
さらに他の態様は、免疫細胞活性増加に使用するための、陽イオン性物質を有効成分として含む組成物の使用を提供する。
【0066】
さらに他の態様は、癌の予防用または治療用の医薬の製造に使用するための、陽イオン性物質を有効成分として含む組成物の使用を提供する。
【0067】
さらに他の態様は、細胞内パーフォリンタンパク質増加に使用するための陽イオン性物質の使用を提供する。
【0068】
前記陽イオン性物質、ポリエーテルイミド、免疫細胞、活性促進、個体、投与、予防または治療などの用語の意味は、前述の範囲内でもある。
【発明の効果】
【0069】
一態様による陽イオン性物質を有効成分として含む組成物によれば、パーフォリンタンパク質の安定度を向上させ、細胞内パーフォリンタンパク質の蓄積を誘導することにより、免疫細胞の活性を増加させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】ポリエーテルイミドをナチュラルキラー細胞に処理した結果を示す模式図である。
図2A】ナチュラルキラー細胞に分枝状または線状のポリエーテルイミドを処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図2B】ナチュラルキラー細胞に分枝状または線状のポリエーテルイミドを処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図2C】ナチュラルキラー細胞に分枝状または線状のポリエーテルイミドを処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図2D】ナチュラルキラー細胞に分枝状または線状のポリエーテルイミドを処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図2E】ナチュラルキラー細胞に分枝状または線状のポリエーテルイミドを処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図2F】ナチュラルキラー細胞に分枝状または線状のポリエーテルイミドを処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図2G】ナチュラルキラー細胞に分枝状または線状のポリエーテルイミドを処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図2H】ナチュラルキラー細胞に分枝状または線状のポリエーテルイミドを処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図2I】ナチュラルキラー細胞に分枝状または線状のポリエーテルイミドを処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図3A】乳癌細胞に25K分子量のポリエーテルイミドを濃度別に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図3B】乳癌細胞に25K分子量のポリエーテルイミドを濃度別に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図3C】乳癌細胞に25K分子量のポリエーテルイミドを濃度別に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図3D】乳癌細胞に25K分子量のポリエーテルイミドを濃度別に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図3E】乳癌細胞に25K分子量のポリエーテルイミドを濃度別に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図3F】乳癌細胞に25K分子量のポリエーテルイミドを濃度別に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図4】乳癌細胞に25K分子量のポリエーテルイミドを濃度別に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を定量化して示すグラフである。
図5A】乳癌細胞及び25K分子量のポリエーテルイミド5μg/mlをE:T比別に培養した結果、乳癌細胞の細胞死滅程度を示す図面である。
図5B】乳癌細胞及び25K分子量のポリエーテルイミド5μg/mlをE:T比別に培養した結果、乳癌細胞の細胞死滅程度を示す図面である。
図5C】乳癌細胞及び25K分子量のポリエーテルイミド5μg/mlをE:T比別に培養した結果、乳癌細胞の細胞死滅程度を示す図面である。
図6】乳癌細胞及び25K分子量のポリエーテルイミド5μg/mlをE:T比別に培養した結果、乳癌細胞の細胞死滅程度を定量的に示すグラフである。
図7A】ポリエーテルイミドの陽イオン性を阻害してナチュラルキラー細胞に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図7B】ポリエーテルイミドの陽イオン性を阻害してナチュラルキラー細胞に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図7C】ポリエーテルイミドの陽イオン性を阻害してナチュラルキラー細胞に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図7D】ポリエーテルイミドの陽イオン性を阻害してナチュラルキラー細胞に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
図8】ポリエーテルイミドの陽イオン性を阻害してナチュラルキラー細胞に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を定量化して示すグラフである。
図9】ポリエーテルイミド5μg/ml及びナチュラルキラー細胞を時間別に培養した結果、グランザイムタンパク質の発現変化を示すグラフである。
図10】ポリエーテルイミド5μg/ml及びナチュラルキラー細胞を時間別に培養した結果、パーフォリンタンパク質の発現変化を示すグラフである。
図11】ポリエーテルイミド5μg/ml及びナチュラルキラー細胞を時間別に培養した結果、グランザイムタンパク質及びパーフォリンタンパク質の発現変化を示すイメージである。
図12】ポリエーテルイミド5μg/ml及びナチュラルキラー細胞を48時間培養した結果、グランザイムタンパク質及びパーフォリンタンパク質の発現変化を示す図面である。
図13】ポリエーテルイミド及びナチュラルキラー細胞にMG132を処理して培養した結果、パーフォリンタンパク質の発現変化を示すイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、本発明を、実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、それらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がそれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
実施例1.材料及び動物モデルの準備
1.1 化合物の準備過程または仕入先
分枝状のポリエーテルイミド(シグマアルドリッチ社製、Sigma 408727)を蒸留水に5mg/ml希釈し、容量に合うように使用した。
【0073】
1.2 NK細胞の準備過程
α-MEM培地(gibco 12561-056)のベースに、12.5%のFBS(gibco 16000-044)、1%のP/S(gibco 15140-122)、2mMのL-グルタミン(gibco 25030-081)、0.2mMのイノシトール(Sigma I7508);0.1mMの2-メルカプトエタノール;0.02mMの葉酸(Sigma F8785)を均一に希釈した後、フィルタ(corning 430758)を使用して滅菌した後に使用した。NK細胞は、T75フラスコにおいて3×10/mlで37℃ CO 5%インキュベータ内で培養した。
【0074】
1.3 インビトロにおけるナチュラルキラー細胞の活性誘導能の分析方法
緑色蛍光を標識したMDA MB 231細胞とナチュラルキラー細胞とを1.5mlのエッペンドルフチューブにそれぞれの割合で入れて混合し、37℃ CO 5%インキュベータで4時間反応させた。反応が終了した後には、7AAD(Invitrogen A1310)で20分間染色し、固定した。流細胞分析器を通じて、混合されている細胞のうち、緑色蛍光の有無も、2つの細胞群集を区分した後、死細胞の割合を測定し、グループ別に比較し、活性を分析した。
【0075】
1.4 ウェスタンブロット分析方法
ナチュラルキラー細胞のタンパク質抽出物を、10% SDS-PAGEを使用して分離し、ポリ二フッ化ビニリデン膜(polyvinylidene difluoride amersham Biosciences)に120V条件下で90分間転写した。3%ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin: BSA)を含むトリス緩衝生理食塩水トゥイーン(Tris-buffered saline-Tween)[TBST;0.2M NaCl、0.1% Tween-20及び10mM Tris(pH7.4)]内で、前記膜を1時間ブロッキングした。ブロッキングされた膜を、ラビットポリクローナル抗パーフォリン抗体(1:1000;ab180773、アブカム社製)またはラビットモノクローナル抗GAPDH抗体(1:1000;3683S、セルシグナリング社製)と共にインキュベーションした。インキュベーション後、膜を抗ラビットポリクローナルIgG(1:5000;#7074、セルシグナリングテクノロジー社製)と共に1時間室温でインキュベーションした。それぞれの段階後、膜をTBSTで数回洗浄し、結合された抗体を、化学発光検出システム(enhanced chemiluminescence detection system)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社バイオサイエンス)を使用して製造社指針によって検出した。
【0076】
実施例2.ポリエーテルイミドの構造別のナチュラルキラー細胞の活性誘導能の確認
ポリエーテルイミドの分子量及び形態別のナチュラルキラー細胞の活性誘導能を確認するために、前記実施例1のナチュラルキラー細胞に、分子量及び形態別のポリエーテルイミドまたは比較群を混合し、48時間培養した。
【0077】
実験に使用された分子量及び形態別のポリエーテルイミドまたは比較化合物の分子量、電荷及び構造を下記表1に示した。
【0078】
具体的には、下記表1に示したように、分子量1.8Kの分枝状ポリエーテルイミド、分子量10Kの分枝状ポリエーテルイミド、分子量25Kの線状ポリエーテルイミド、分子量25Kの分枝状ポリエーテルイミド、分子量750Kのγ-PGA(gamma-PGA)、分子量5Kのグリコールキトサン、及び分子量4.5Kのプロタミン(Protamine)をナチュラルキラー細胞と混合し、48時間培養した。前記分枝状ポリエーテルイミドは、一級アミン、二級アミン及び三級アミンを使用し、前記線状ポリエーテルイミドは、二級アミンを使用した。
【0079】
【表1】
【0080】
次いで、培養したナチュラルキラー細胞を洗浄し、新鮮な培養液に再懸濁(resuspension)させた。以後、前記ナチュラルキラー細胞と三重陰性乳癌細胞株であるMDA_MB231とをE:T比10:1で混合し、4時間培養した。最後に、前記培養された細胞を、CFSE-7AAD分析法を利用して、標的細胞の細胞死滅程度を定量的に分析した。
【0081】
図2は、ナチュラルキラー細胞に分枝状または線状のポリエーテルイミドを処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。
【0082】
その結果、図2に示したように、比較対象であるターゲットのみがある場合(1.32)、NK細胞のみがある場合(21.36)、分子量1.8Kの分枝状ポリエーテルイミドを混合した場合(22.99)、分子量10Kの分枝状ポリエーテルイミドを混合した場合(24.07)、分子量25Kの線状ポリエーテルイミドを混合した場合(26.12)、分子量750Kのγ-PGA(gamma-PGA)を混合した場合(23.08)、分子量5Kのグリコールキトサンを混合した場合(32.14)、及び分子量4.5Kのプロタミン(Protamine)を混合した場合(25.31)は、細胞死滅程度が低かった。一方、ナチュラルキラー細胞及び分子量25Kの分枝状ポリエーテルイミドを培養した場合(Branched PET(25K))(59.28)は、比較群に比べて三重陰性癌細胞の細胞死滅程度が高かった。そのような結果は、10K以上の分枝状ポリエーテルイミドを使用した場合、他の化合物と比べて、ナチュラルキラー細胞の活性を増加させることを意味する。
【0083】
実施例3.ポリエーテルイミドの濃度別の癌細胞死滅能の確認
ポリエーテルイミドの濃度別のナチュラルキラー細胞の活性誘導能を確認するために、前記実施例1のナチュラルキラー細胞に、分子量25Kのポリエーテルイミドを濃度別(0μg/ml、0.63μg/ml、1.25μg/ml、2.5μg/ml、または5μg/ml)に処理し、48時間培養した。
【0084】
次いで、培養したナチュラルキラー細胞を洗浄し、新鮮な培養液に再懸濁(resuspension)させた。以後、前記ナチュラルキラー細胞と三重陰性乳癌細胞株であるMDA_MB231とをE:T比10:1で混合し、4時間培養した。最後に、前記培養された細胞を、CFSE-7AAD分析法を利用して、標的細胞の細胞死滅程度を定量的に分析した。
【0085】
図3は、乳癌細胞に25K分子量のポリエーテルイミドを濃度別に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。比較対象であるターゲットのみがある場合(5.0)、ターゲットがない場合(N,9.1)、0.63μg/mlの濃度で処理した場合(14.6)、1.25μg/mlの濃度で処理した場合(24.2)、2.5μg/mlの濃度で処理した場合(32.8)、及び5μg/mlの濃度で処理した場合(55.1)の活性度を示す。
【0086】
図4は、乳癌細胞に25K分子量のポリエーテルイミドを濃度別に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を定量化して示すグラフである。
【0087】
その結果、図3及び図4に示したように、ポリエーテルイミドの濃度が高くなるほど、細胞死滅能は向上し、5μg/mlの濃度においてNK細胞の活性を90%以上維持しつつ、最も高い免疫活性を示し、10μg/ml以上の濃度では、細胞死滅能が顕著に低下することを確認することができた。
【0088】
実施例4.ポリエーテルイミド及び乳癌細胞の比率別の細胞死滅能の確認
ポリエーテルイミド及び癌細胞の混合比率別の癌細胞死滅能を確認するために、前記実施例1のナチュラルキラー細胞に、分子量25K、5μg/mlのポリエーテルイミドを濃度別に処理し、処理したナチュラルキラー細胞を三重陰性乳癌細胞MDA_MB231とE:T比別(1.25:1、2.5:1、5:1または10:1)に48時間培養した。
【0089】
次いで、培養したナチュラルキラー細胞を洗浄し、新鮮な培養液に再懸濁(resuspension)させた。以後、前記ナチュラルキラー細胞と三重陰性乳癌細胞株であるMDA_MB231とをE:T比10:1で混合し、4時間培養した。最後に、前記培養された細胞を、CFSE-7AAD分析法を利用して、標的細胞の細胞死滅程度を定量的に分析した。
【0090】
図5は、乳癌細胞及び25K分子量のポリエーテルイミド5μg/mlをE:T比別に培養した結果、乳癌細胞の細胞死滅程度を示す図面である。比較対象であるターゲットのみがある場合には、数値が2.58であった。無処理群(Non-treat)は、E:T比1.25の場合に9.80、E:T比2.5の場合に9.53、E:T比5の場合に11.92、E:T比10の場合に17.56を示した。PEIを5μg/mlの濃度で処理した群は、E:T比1.25の場合に36.55、E:T比2.5の場合に39.90、E:T比5の場合に43.82、E:T比10の場合に49.55を示した。
【0091】
図6は、乳癌細胞及び25K分子量のポリエーテルイミド5μg/mlをE:T比別に培養した結果、乳癌細胞の細胞死滅程度を定量的に示すグラフである。
【0092】
その結果、図5及び図6に示したように、全てのE:T比のナチュラルキラー細胞の活性が無処理群より高く、特にE:T比が10:1である場合が最も優れている。
【0093】
実施例5.ポリエーテルイミドの陽イオン依存性分析
ポリエーテルイミドの電荷に対するナチュラルキラー細胞の活性誘導能を確認するために、前記実施例1のナノ粒子に、陰イオン性を有するヒアルロン酸をコーティングした。
【0094】
具体的には、Zn/Feナノ粒子に、電気的相互作用による方法によって陽イオン性ポリエーテルイミドを先に結合させ、その上に陰イオン性ヒアルロン酸を陽イオン性ポリエーテルイミドと結合させ、ナノ粒子の電荷(zeta potential)を測定し、陰イオン性を確認した。
【0095】
次いで、培養したナチュラルキラー細胞を洗浄し、新鮮な培養液に再懸濁(resuspension)させた。以後、前記ナチュラルキラー細胞と三重陰性乳癌細胞株であるMDA_MB231とをE:T比10:1で混合し、4時間培養した。最後に、前記培養された細胞を、CFSE-7AAD分析法を利用して、標的細胞の細胞死滅程度を定量的に分析した。
【0096】
図7は、ポリエーテルイミドの陽イオン性を阻害してナチュラルキラー細胞に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を示す図面である。MDA-MB-231の場合に1.02、MDA-MB-231及びNK-92MIの場合に18.47、MDA-MB-231、NK-92MI及びaNPの場合に18.21の数値を示した。
【0097】
図8は、ポリエーテルイミドの陽イオン性を阻害してナチュラルキラー細胞に処理した結果、ナチュラルキラー細胞の活性度を定量化して示すグラフである。
【0098】
その結果、図7及び図8に示したように、陰イオン性コーティングにより陽イオン性を減少させた場合、ナチュラルキラー細胞の活性化能が阻害されたことが分かる。そのような結果は、ポリエーテルイミドのナチュラルキラー細胞の活性化能が陽イオン性に依存することを意味する。
【0099】
実施例6.ポリエーテルイミドのパーフォリンタンパク質の安定化能力分析
6.1 培養時間別の安定化能力分析
ポリエーテルイミドが細胞内パーフォリン量を増加させるか否かを確認するために、前記実施例1のナチュラルキラー細胞に5μg/mlのポリエーテルイミドを処理し、時間別(0時間、3時間、6時間、12時間、24時間または48時間)に培養した後、培養したナチュラルキラー細胞にウェスタンブロットを遂行し、グランザイムB及びパーフォリンタンパク質の量を確認した。
【0100】
図9は、ポリエーテルイミド5μg/ml及びナチュラルキラー細胞を時間別に培養した結果、グランザイムタンパク質の発現変化を示すグラフである。
【0101】
図10は、ポリエーテルイミド5μg/ml及びナチュラルキラー細胞を時間別に培養した結果、パーフォリンタンパク質の発現変化を示すグラフである。
【0102】
図11は、ポリエーテルイミド5μg/ml及びナチュラルキラー細胞を時間別に培養した結果、グランザイムタンパク質及びパーフォリンタンパク質の発現変化を示すイメージである。
【0103】
図12は、ポリエーテルイミド5μg/ml及びナチュラルキラー細胞を48時間培養した結果、グランザイムタンパク質及びパーフォリンタンパク質の発現変化を示す図面である。
【0104】
その結果、図12に示したように、培養されたナチュラルキラー細胞は、グランザイムBのタンパク質量には変化がなかったものの、パーフォリンタンパク質量は有意に増加したことを確認することができた。特に、図9ないし図11に示したように、48時間培養した場合、48時間未満培養した細胞と比べて、パーフォリンタンパク質量が顕著に増加したことを確認することができた。そのような結果は、ポリエーテルイミドがパーフォリンタンパク質の安定化を誘導して量を増加させることにより、結果として、ナチュラルキラー細胞の活性化を誘導することを意味する。
【0105】
6.2 細胞内パーフォリン量のパーフォリン安定度依存性確認
前記実施例6.2の細胞内パーフォリン量増加が、細胞内パーフォリン安定化程度と関連性があるか否かを確認するために、前記実施例1のナチュラルキラー細胞にタンパク質分解阻害剤であるMG132を処理し、細胞内タンパク質分解を阻んだ後、培養した。以後、培養したナチュラルキラー細胞にウェスタンブロットを遂行し、グランザイムB及びパーフォリンタンパク質の量を確認した。
【0106】
図13は、ポリエーテルイミド及びナチュラルキラー細胞にMG132を処理して培養した結果、パーフォリンタンパク質の発現変化を示すイメージである。
【0107】
その結果、図13に示したように、細胞内タンパク質分解を阻んだ後、パーフォリンタンパク質量を分析した結果、MG132処理によりパーフォリンタンパク質量が増加することを確認することができた。そのような結果は、ポリエーテルイミド処理がタンパク質の安定度を向上させ、結果として、細胞内パーフォリンタンパク質量が増加するので、MG132処理によりパーフォリンタンパク質量がさらに増加しないことを確認したものである。したがって、ナチュラルキラー細胞内パーフォリン量は、タンパク質の安定度によって調節されることを意味する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】