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特表2023-549081PETイメージングおよび放射線療法のための放射標識エーテルデンドリマーコンジュゲート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】PETイメージングおよび放射線療法のための放射標識エーテルデンドリマーコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/12 20060101AFI20231115BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20231115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A61K49/12
A61K47/59
A61P35/00
A61P25/28
A61P21/04
A61P21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526255
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 US2021057430
(87)【国際公開番号】W WO2022094327
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/108,230
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/253,308
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/187,851
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522223121
【氏名又は名称】アシュバッタ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クリーランド, ジェフリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ, リシ
(72)【発明者】
【氏名】ソン, ミンハオ
(72)【発明者】
【氏名】アピアニ ラ ローザ, サンティアゴ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076CC01
4C076CC27
4C076CC50
4C076EE59
4C085HH01
4C085KA29
4C085KA30
4C085KB74
4C085KB75
4C085KB76
4C085LL18
4C085LL20
(57)【要約】
対象における炎症部位または腫瘍を検出する、モニターする、およびイメージングするための組成物および方法が開発されている。エーテル連結を介して放射性核種(複数可)にコンジュゲートしたヒドロキシル末端デンドリマーの組成物を、イメージングおよび放射線療法(腫瘍)の両方のために提供する。in vivoで対象における、1つまたは複数のイメージング剤にコンジュゲートしたデンドリマーの非侵襲性かつ特異的な陽電子放出断層撮影(PET)イメージングまたは磁気共鳴画像法(MRI)のための方法もまた提供される。方法は、放射性核種またはMRI造影剤にコンジュゲートしたデンドリマーを、レシピエントの腫瘍における反応性ミクログリアまたは反応性免疫細胞に選択的に送達する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エーテル連結を通して、必要に応じて1つまたは複数の連結部分を介して、1つもしくは複数の放射性核種または1つもしくは複数の磁気共鳴画像法(MRI)造影剤にコンジュゲートしたヒドロキシル末端デンドリマーを含む組成物。
【請求項2】
前記デンドリマーが、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリプロピルアミン(POPAM)デンドリマー、ポリエチレンイミンデンドリマー、ポリリシンデンドリマー、ポリエステルデンドリマー、イプチセンデンドリマー、脂肪族ポリ(エーテル)デンドリマー、または芳香族ポリエーテルデンドリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記デンドリマーが、第4世代、第5世代、第6世代、第7世代、または第8世代PAMAMデンドリマーである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記1つまたは複数の放射性核種が、18F、51Mn、52Fe、60Cu、68Ga、72As、94mTc、または110In、18F、124I、125I、131I、123I、77Br、76Br、99mTc、51Cr、67Ga、68Ga、47Sc、51Cr、167Tm、141Ce、111In、168Yb、175Yb、140La、90Y、88Y、153Sm、166Ho、165Dy、166Dy、62Cu、64Cu、67Cu、97Ru、103Ru、186Re、188Re、203Pb、211Bi、212Bi、213Bi、214Bi、105Rh、109Pd、117mSn、149Pm、161Tb、177Lu、225Ac、198Au、および199Au、または89Zrからなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記1つまたは複数の放射性核種が、18F、89Zr、90Y、または177Luである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記1つまたは複数のMRI造影剤が、Gd、Mn、BaSO、酸化鉄、および鉄白金からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記MRI造影剤がGdである、請求項1~3および6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
炎症部位における反応性ミクログリアおよび/もしくはマクロファージ内にまたは腫瘍における反応性免疫細胞に選択的に蓄積するために有効な量の、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
1つまたは複数の追加の活性剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
エステル、エーテル、またはアミド連結を通して放射性核種またはMRI造影剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む化合物を含む組成物であって、前記デンドリマーが、高密度の表面ヒドロキシル基を含む、組成物。
【請求項11】
前記放射性核種または前記MRI造影剤が、スペーサーを通して前記エステル、エーテル、またはアミド連結にコンジュゲートしている、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記スペーサーが、アルキル基、ヘテロアルキル基、またはアルキルアリール基を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記スペーサーがペプチドを含む、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
前記スペーサーがポリエチレングリコールを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記放射性核種または前記MRI造影剤のコンジュゲーションが、前記コンジュゲーション前に利用可能な前記デンドリマーの総表面官能基の50%未満で起こる、請求項10~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記放射性核種または前記MRI造影剤のコンジュゲーションが、前記コンジュゲーション前に利用可能な前記デンドリマーの総表面官能基の5%未満、10%未満、20%未満、30%未満、または40%未満で起こる、請求項10~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記放射性核種が、18F、51Mn、52Fe、60Cu、68Ga、72As、94mTc、110In、18F、124I、125I、131I、123I、77Br、76Br、99mTc、51Cr、67Ga、68Ga、47Sc、51Cr、167Tm、141Ce、111In、168Yb、175Yb、140La、90Y、88Y、153Sm、166Ho、165Dy、166Dy、62Cu、64Cu、67Cu、97Ru、103Ru、186Re、188Re、203Pb、211Bi、212Bi、213Bi、214Bi、105Rh、109Pd、117mSn、149Pm、161Tb、177Lu、225Ac、198Au、199Au、および89Zrからなる群より選択される、請求項10~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記放射性核種が、18F、89Zr、90Y、または177Luである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記MRI造影剤が、Gd、Mn、BaSO、酸化鉄、および鉄白金からなる群より選択される、請求項10~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記MRI造影剤がGdである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記デンドリマーが、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリプロピルアミン(POPAM)デンドリマー、ポリエチレンイミンデンドリマー、ポリリシンデンドリマー、ポリエステルデンドリマー、イプチセンデンドリマー、脂肪族ポリ(エーテル)デンドリマー、および芳香族ポリエーテルデンドリマーからなる群より選択される、請求項10~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記化合物のゼータ電位が、-25mV~25mVの間である、請求項10~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記化合物のゼータ電位が、-20mV~20mVの間、-10mV~10mVの間、-10mV~5mVの間、-5mV~5mVの間、または-2mV~2mVの間である、請求項10~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記化合物の表面電荷が中性またはほぼ中性である、請求項10~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記デンドリマーが、エーテルまたはアミド連結を通して前記放射性核種または前記MRI造影剤にコンジュゲートしている、請求項10~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記デンドリマーが、エーテル連結を通して前記放射性核種または前記MRI造影剤にコンジュゲートしている、請求項10~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項28】
腹腔内、静脈内、髄腔内、腫瘍内、または経口投与のために製剤化された、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
1つまたは複数の炎症細胞および/またはがん細胞の検出またはイメージングを、それを必要とする対象において行うための方法であって、エステル、エーテル、またはアミド連結を通して放射性核種またはMRI造影剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む化合物を含む有効量の組成物を前記対象に投与することを含み、前記デンドリマーが高密度の表面ヒドロキシル基を含む、方法。
【請求項30】
前記組成物が、前記対象に全身投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物が、腹腔内、静脈内、髄腔内、腫瘍内、または経口経路を介して投与される、請求項29または請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、前記対象における1つまたは複数の炎症部位またはがんを検出する、診断する、またはモニターするために有効な量で投与される、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象における前記1つまたは複数の炎症部位が、1つもしくは複数の炎症疾患に関連する、または敗血症もしくは敗血症ショックに関連する、またはマクロファージ活性化症候群を含むマクロファージ活性化のいずれかの機構によって引き起こされる、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象における前記1つまたは複数の炎症部位が、1つまたは複数の自己免疫疾患または障害に関連する、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記1つまたは複数の自己免疫疾患または障害が、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、多発性硬化症、シェーグレン症候群、重症筋無力症、グレーヴス病、アジソン病、セリアック病、橋本甲状腺炎、悪性貧血、ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、血管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、炎症性腸疾患、および甲状腺疾患からなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記対象における前記1つまたは複数の炎症部位が、中枢神経系の1つまたは複数の神経炎症部位を含む、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象における中枢神経系の前記1つまたは複数の神経炎症部位がアルツハイマー病に関連する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記対象における前記1つまたは複数の炎症部位が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連する、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象ががんを有する、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記がんが、任意のタイプの固形腫瘍または脳転移である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記対象を分子イメージングデバイスによってイメージングして、前記対象における1つまたは複数の放射性核種にコンジュゲートした前記デンドリマーを検出するステップをさらに含み、1つまたは複数の放射性核種にコンジュゲートした前記デンドリマーの検出が、炎症またはがん細胞の存在を示す、請求項29~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記分子イメージングデバイスが、陽電子放出断層撮影(PET)スキャニングのためのガンマカメラまたは磁気共鳴画像法のためのスキャナを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
1つまたは複数の炎症細胞および/またはがん細胞の検出またはイメージングを、それを必要とする対象において行うための方法であって、有効量の請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項44】
がんを処置するための方法であって、有効量の請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項45】
がんを処置するための方法であって、エステル、エーテル、またはアミド連結を通して放射性核種またはMRI造影剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む化合物を含む有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含み、前記デンドリマーが高密度の表面ヒドロキシル基を含む、方法。
【請求項46】
前記組成物が前記対象に全身投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記組成物が、腹腔内、静脈内、髄腔内、腫瘍内、または経口経路を介して投与される、請求項45または請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記がんが、乳がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、精巣胚細胞腫瘍、脳がん、胃がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、腎細胞がん、および結腸がんである、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記有効量が腫瘍サイズを低減するために有効である、請求項45~48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
エーテル連結を介して1つもしくは複数の陽電子放出断層撮影(PET)イメージング剤または1つもしくは複数の磁気共鳴画像法(MRI)造影剤に共有結合によりコンジュゲートしたヒドロキシルデンドリマーを作製する方法であって、前記方法は、必要に応じて1つまたは複数のスペーサーを介する、前記デンドリマーの1つまたは複数の表面基の1つまたは複数のPETイメージング剤へのコンジュゲーションの前に、前記デンドリマーの前記1つまたは複数の表面基のエーテル化を含み、前記コンジュゲーションが、エーテル連結を介する、方法。
【請求項51】
前記PETイメージング剤または前記MRI造影剤が、p-SCN-Bn-デフェロキサミン、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、ジアミンジチオール、活性化メルカプトアセチル-グリシル-グリシル-グリシン(MAG3)、およびヒドラジドニコチンアミド(HYNIC)からなる群より選択されるキレーターを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記PETイメージング剤が、64Cu、89Zr、90Y、105Rh、111In、117mSn、149Pm、153Sm、161Tb、166Tb、166Dy、166Ho、175Yb、177Lu、225Ac、186/188Re、および199Auからなる群より選択される放射性核種を含む、請求項50または請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記MRI造影剤が、Gd、Mn、BaSO、酸化鉄、および鉄白金からなる群より選択される金属を含む、請求項50または請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記デンドリマーが、1つまたは複数の治療剤、予防剤、および/または診断剤とさらに複合体を形成するおよび/またはそれにコンジュゲートしている、請求項50~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
神経変性障害を処置するための方法であって、エステル、エーテル、またはアミド連結を通して放射性核種またはMRI造影剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む化合物を含む有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含み、前記デンドリマーが、高密度の表面ヒドロキシル基を含む、方法。
【請求項56】
前記神経変性障害がアルツハイマー病である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記神経変性障害がALSである、請求項55に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、35U.S.C.§119(e)の下で、その各々の全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる、2021年10月7日に出願された米国仮特許出願第63/253,308号、2021年5月12日に出願された米国仮特許出願第63/187,851号、および2020年10月30日に出願された米国仮特許出願第63/108,230号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
ミクログリアは、病原体の侵入を防止し、細胞デブリを脳実質から絶えず除去し、ニューロン傷害を修復することによって脳の恒常性を維持する、脳における重要な常在免疫細胞である。ミクログリア/マクロファージは、中枢神経系(CNS)の傷害後に重要な役割を果たし、損傷のタイミングおよびタイプに基づいて保護効果および有害効果の両方を有し得る。ミクログリアの活性化は、ニューロン傷害およびさらなる疾患進行をもたらす初期脳傷害における主要な病的事象である(Li, et al., Nature Reviews Immunology, 2017, 18, 225; Hernadez-Ontiveros, et al., Frontiers in Neurology 2013, 4 (30); Ramlackhansingh, et al., Annals of neurology 2011, 70 (3), 374-383)。
【0003】
活性化ミクログリアを追跡するためのスマートで特異的かつ非侵襲性の前臨床および臨床でのイメージングプローブの開発が必要である。特に、新たな神経炎症治療のin vivoでの有効性を評価するためのツールおよびシステムが必要である。しかし、神経炎症をイメージングするためのナノプローブの開発は、血液脳関門(BBB)、脳組織透過、および反応性ミクログリアの標的化の特異性に関連する問題を克服しなければならない。
【0004】
陽電子放出断層撮影(PET)は、がん診断のための臨床腫瘍学、脳機能評価のための神経学、心機能評価のための心臓学、および感染疾患において広く適用されている。トランスロケータータンパク質18kDa(TSPO)は、脳のPETイメージングのために最もよく研究されているバイオマーカーであり、いくつかのTSPOリガンドに基づくPETトレーサーが現在使用されている。しかし、TSPOに細胞特異性がないことは、活性化ミクログリアに特異的な高感度PETプローブの必要性を必然的に伴う定量の場合には問題となる(Vaquero, et al, Annu Rev Biomed Eng 2015, 17, 385-414; Narayanaswami, et al., Mol Imaging 2018, 17, 1536012118792317-1536012118792317; Janssen, et al., Academic Press: 2019; Vol. 165, pp 371-399; Werry, et al., Int J Mol Sci 2019, 20 (13), 3161; Papadopoulos, Experimental Neurology 2009, 219 (1), 53-57)。
【0005】
他のイメージング技術としては、コンピュータ断層撮影(CT)および磁気共鳴画像法(MRI)が挙げられる。磁気共鳴画像法(MRI)は、MRI機器の開口部を取り巻く強い磁場の存在下でラジオ波を使用し、患者が横になって組織に自身のラジオ波を放出させる。異なる組織(腫瘍を含む)は、その化学構成に基づいてより強いまたはより弱いシグナルを放出し、体臓器の写真を、コンピュータスクリーン上に表示することができる。CTスキャンと同様に、MRIは体の部分の三次元画像を作成することができるが、MRIは、時に軟部組織を識別する場合にはCTスキャンよりも感度がよい。
したがって、一部の態様では、本開示は、対象における炎症または神経炎症部位の非侵襲的検出のための組成物および方法、ならびにその作製および使用方法を提供する。一部の態様では、本開示は、がん細胞、例えば転移性がん細胞のin vivo分子イメージングのための組成物、ならびにその作製および使用方法を提供する。一部の態様では、本開示は、がん細胞に放射線療法を選択的に標的化するための組成物および方法を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Vaqueroら、Annu Rev Biomed Eng(2015)17、385~414
【非特許文献2】Narayanaswamiら、Mol Imaging(2018)17、1536012118792317~1536012118792317
【非特許文献3】Janssenら、Academic Press(2019)Vol.165、pp371~399
【非特許文献4】Werryら、Int J Mol Sci(2019)20(13)3161
【非特許文献5】Papadopoulos、Experimental Neurology(2009)219(1)53~57
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本開示の態様は、放射性核種、例えば18F(フッ素-18)、89Zr(ジルコニウム-89)、90Y(イットリウム-90)、および177Lu(ルテニウム-177)とコンジュゲートしたまたは複合体を形成したデンドリマー(例えば、ヒドロキシルPAMAMデンドリマー)が、反応性ミクログリアの存在下でBBBを通過し、全身投与後これらのミクログリアを選択的に標的とすることができるという発見に関する。一部の実施形態では、これらのコンジュゲートは、反応性ミクログリアのin vivoでの非侵襲性かつ特異的イメージングのための安定な陽電子放出断層撮影(PET)イメージングプローブ、および腫瘍の処置のための安定な放射線療法剤である。一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象における1つまたは複数の炎症部位を検出するための組成物および方法を提供する。一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象におけるがんを処置するための組成物および方法を提供する。
【0008】
一部の態様では、本開示は、エーテル連結を介して1つまたは複数のイメージング剤にコンジュゲートしたヒドロキシル末端デンドリマーの組成物を提供する。一部の実施形態では、ヒドロキシル末端デンドリマーは、放射性核種またはMRI造影剤を含み得るイメージング剤にコンジュゲートしている。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートは、in vivoで安定なイメージングプローブとしてまたは放射線療法剤として、炎症部位の反応性ミクログリア内におよび腫瘍における反応性免疫細胞に選択的に蓄積する。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートはまた、例えば炎症部位またはがんに放射線療法剤を選択的に送達することによって、炎症部位またはがんも処置する。他の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートは、1つまたは複数の追加の活性剤を含む。したがって、一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートは、1つまたは複数の追加の活性剤をin vivoで増加した安定性で炎症、神経炎症の部位、または腫瘍に送達する。一部の実施形態では、放射性核種および/またはMRI造影剤は、エーテル連結を介してデンドリマーに付着させられる。
【0009】
一部の態様では、本開示は、エステル、エーテル、またはアミド連結を通して放射性核種またはMRI造影剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む化合物を含む組成物を提供する。一部の実施形態では、デンドリマーは、高密度の表面ヒドロキシル基を含む。一部の実施形態では、デンドリマーは、エーテルまたはアミド連結を通して放射性核種またはMRI造影剤にコンジュゲートしている。一部の実施形態では、デンドリマーは、エーテル連結を通して放射性核種またはMRI造影剤にコンジュゲートしている。
【0010】
一部の実施形態では、放射性核種またはMRI造影剤は、スペーサーを通してエステル、エーテル、またはアミド連結にコンジュゲートしている。一部の実施形態では、スペーサーは、アルキル基、ヘテロアルキル基、および/またはアルキルアリール基を含む。一部の実施形態では、スペーサーはペプチドを含む。一部の実施形態では、スペーサーはポリエチレングリコールを含む。
【0011】
一部の実施形態では、放射性核種またはMRI造影剤のコンジュゲーションは、コンジュゲーションの前に利用可能なデンドリマーの全表面官能基の50%未満で起こる。一部の実施形態では、放射性核種またはMRI造影剤のコンジュゲーションは、コンジュゲーションの前に利用可能なデンドリマーの全表面官能基の5%未満、10%未満、20%未満、30%未満、または40%未満で起こる。
【0012】
一部の実施形態では、放射性核種は、18F、51Mn、52Fe、60Cu、68Ga、72As、94mTc、110In、18F、124I、125I、131I、123I、77Br、76Br、99mTc、51Cr、67Ga、68Ga、47Sc、51Cr、167Tm、141Ce、111In、168Yb、175Yb、140La、90Y、88Y、153Sm、166Ho、165Dy、166Dy、62Cu、64Cu、67Cu、97Ru、103Ru、186Re、188Re、203Pb、211Bi、212Bi、213Bi、214Bi、105Rh、109Pd、117mSn、149Pm、161Tb、177Lu、225Ac、198Au、199Au、および89Zrからなる群より選択される。一部の実施形態では、放射性核種は、18F、89Zr、90Y、または177Luである。一部の実施形態では、MRI造影剤は、Gd、Mn、BaSO、酸化鉄、および鉄白金からなる群より選択される。一部の実施形態では、MRI造影剤はGdである。
【0013】
一部の実施形態では、デンドリマーは、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリプロピルアミン(POPAM)デンドリマー、ポリエチレンイミンデンドリマー、ポリリシンデンドリマー、ポリエステルデンドリマー、イプチセンデンドリマー、脂肪族ポリ(エーテル)デンドリマー、および芳香族ポリエーテルデンドリマーからなる群より選択される。
【0014】
一部の実施形態では、化合物のゼータ電位は、-25mV~25mVの間である。一部の実施形態では、化合物のゼータ電位は、-20mV~20mVの間、-10mV~10mVの間、-10mV~5mVの間、-5mV~5mVの間、または-2mV~2mVの間である。一部の実施形態では、化合物の表面電荷は中性またはほぼ中性である。
【0015】
一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象における1つまたは複数の炎症部位を検出するための方法を提供する。一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象における1つまたは複数の炎症部位をイメージングするための方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、有効量の本明細書に記載される組成物を対象に投与することを含む。例えば、一部の実施形態では、組成物は、エステル、エーテル、またはアミド連結を通して放射性核種またはMRI造影剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む化合物を含み、デンドリマーは高密度の表面ヒドロキシル基を含む。
【0016】
一部の実施形態では、方法は、1つまたは複数の放射性核種または磁気共鳴画像法(MRI)造影剤を、レシピエントの標的部位に選択的に送達する。一部の実施形態では、方法は、エーテル連結を介して1つまたは複数の放射性核種またはMRI造影剤にコンジュゲートしたヒドロキシル末端デンドリマーを含む製剤を、対象に投与することを含む。送達することができる例示的な放射性核種としては、18F、51Mn、52Fe、60Cu、68Ga、72As、94mTc、または110In、18F、124I、125I、131I、123I、77Br、76Br、99mTc、51Cr、67Ga、68Ga、47Sc、51Cr、167Tm、141Ce、111In、168Yb、175Yb、140La、90Y、88Y、153Sm、166Ho、165Dy、166Dy、62Cu、64Cu、67Cu、97Ru、103Ru、186Re、188Re、203Pb、211Bi、212Bi、213Bi、214Bi、105Rh、109Pd、117mSn、149Pm、161Tb、177Lu、225Ac、198Auおよび199Au、または89Zrが挙げられる。送達することができる例示的なMRI造影剤としては、Gd、Mn、BaSO、酸化鉄、および鉄白金が挙げられる。
【0017】
一部の実施形態では、方法は、1つまたは複数の放射性核種またはMRI造影剤を、対象において生理的応答を達成するために有効な量で対象に送達する。デンドリマーは、必要に応じて、1つまたは複数の追加の活性剤、例えば治療剤または予防剤と複合体を形成する、共有結合によってそれにコンジュゲートしている、または分子内に分散している、またはそれを中に封入する。一部の実施形態では、製剤は、レシピエントにおける1つもしくは複数の炎症部位もしくはがんを検出する、診断する、もしくはモニターするために、および/または対象における炎症もしくはがんの1つもしくは複数の症状を処置する、緩和する、もしくは防止するために有効な量で対象に全身投与される。検出する、診断する、またはモニターする、および/または処置することができる例示的な炎症部位またはがんとしては、自己免疫疾患または障害の部位、脳における神経炎症部位、および脳腫瘍を含む固形腫瘍が挙げられる。追加の例示的な炎症部位としては、1つもしくは複数の炎症疾患に関連する、または敗血症もしくは敗血症ショックに関連する、またはマクロファージ活性化症候群を含むマクロファージ活性化のいずれかの機構によって引き起こされる炎症部位が挙げられる。一部の実施形態では、対象における1つまたは複数の炎症部位は、中枢神経系の1つまたは複数の神経炎症部位を含む。一部の実施形態では、対象における中枢神経系の1つまたは複数の神経炎症部位は、アルツハイマー病に関連する。一部の実施形態では、対象における1つまたは複数の炎症部位は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連する。一部の実施形態では、デンドリマーは、第4世代、第5世代、または第6世代のポリ(アミドアミン)(PAMAM)ヒドロキシル末端デンドリマーである。
【0018】
一部の態様では、本開示は、対象におけるがん細胞をin vivoで検出するための組成物および方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、腫瘍領域を選択的に標的化する1つもしくは複数の放射性核種および/または1つもしくは複数のMRI造影剤とコンジュゲートしたまたは複合体を形成した1つまたは複数のヒドロキシル末端デンドリマーを、対象に投与することを伴う。一部の実施形態では、次いで、対象を、対象において1つまたは複数の放射性核種とコンジュゲートしたまたは複合体を形成したヒドロキシル末端デンドリマーを検出するために、分子イメージングデバイスによってイメージングすることができる。一部の実施形態では、対象はまた、対象において1つまたは複数のMRI造影剤とコンジュゲートしたまたは複合体を形成したヒドロキシル末端デンドリマーを検出するために、MRIスキャナによってイメージングすることもできる。このように、一部の実施形態では、対象の臓器または組織における標識されたヒドロキシル末端デンドリマーの検出は、臓器におけるがん細胞の指標であり得る。
【0019】
一部の実施形態では、がん細胞は、原発腫瘍または転移したがん細胞であり得る。したがって、一部の実施形態では、方法は、転移したがん細胞を同定するために、1つまたは複数の放射性核種とコンジュゲートしたまたは複合体を形成したデンドリマーを、原発腫瘍を有すると診断された対象に投与することを伴う。他の実施形態では、方法は、原発腫瘍または不顕性腫瘍を検出するために、1つまたは複数の放射性核種とコンジュゲートしたまたは複合体を形成したデンドリマーを、がんのリスクがある対象に投与することを伴う。本開示の方法によって検出することができるがん細胞の非限定的な例としては、腎細胞癌が挙げられる。
【0020】
一部の態様では、本開示は、神経変性障害を処置するための方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、有効量の本明細書に記載される組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。一部の実施形態では、組成物は、エステル、エーテル、またはアミド連結を通して放射性核種またはMRI造影剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む化合物を含み、デンドリマーは高密度の表面ヒドロキシル基を含む。一部の実施形態では、神経変性障害はアルツハイマー病である。一部の実施形態では、神経変性障害はALSである。
【0021】
分子イメージングにおける使用のための例示的なデバイスとしては、例えば陽電子放出断層撮影(PET)スキャニングのためのデバイス;コンピュータ断層撮影(CT)および核医学イメージングのためのデバイス;磁気共鳴画像法(MRI)のためのデバイスが挙げられる。一部の実施形態では、分子イメージングデバイスは、陽電子放出断層撮影(PET)スキャニングおよびMRIスキャナにとって好適なガンマカメラである。
【0022】
一部の実施形態では、製剤は、対象への静脈内投与のために、または経腸投与のために製剤化することができる。一部の実施形態では、製剤は、1つまたは複数の追加の手順による処置または治療の前に、それと共に、その後に、またはそれと交互に投与される。例示的な追加の手順としては、炎症、神経炎症、およびがんの関連する疾患または状態の1つまたは複数の症状を防止または処置するために、1つまたは複数の治療剤、予防剤、および/または診断剤を投与することが挙げられる。
【0023】
一部の態様では、本開示は、1つまたは複数の放射性核種と複合体を形成した、共有結合によりそれにコンジュゲートした、またはそれが中に封入されたヒドロキシルデンドリマーの医薬製剤を提供する。一部の態様では、本開示は、1つもしくは複数の放射性核種または1つもしくは複数のMRI造影剤と複合体を形成した、共有結合によりそれにコンジュゲートした、またはそれが中に封入されたヒドロキシルデンドリマーを含むキットを提供する。
【0024】
一部の態様では、本開示は、1つまたは複数の放射性核種と複合体を形成した、共有結合によりそれにコンジュゲートした、またはそれが中に封入されたヒドロキシルデンドリマーを作製する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、18F標識ヒドロキシルデンドリマーの合成経路を示すスキームである。試薬および条件:(i):DMSO、2%NaOH溶液、室温、ON;(ii):CuBr(I)、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、2時間、60℃;(iii):KF、KCO、クリプタンド222、105℃、20分、DMSO。
【0026】
図2図2は、無視できるほどの脱フッ素化を有する非常に安定なコンジュゲートを示すフッ素化デンドリマーのin vitro血漿中安定性を示す棒グラフである。
【0027】
図3図3は、89Zr標識ヒドロキシルデンドリマーの合成経路を示すスキームである。試薬および条件:(i):臭化アリル、CSCO、TBAI、DMF、室温、ON;(ii):システアミン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、DMF、365nm、8時間、室温;(iii):SCN-Bn-デフェロキサミン、DIPEA、DMSO、室温、ON;(iv):89Zr4+、HEPES緩衝液、pH7.5、室温、60分。
【0028】
図4図4は、無視できるほどの放出を有する非常に安定なコンジュゲートを示すZr標識デンドリマーのin vitro血漿中安定性を示す棒グラフである。
【0029】
図5図5は、90Y標識ヒドロキシルデンドリマーの合成経路を示すスキームである。試薬および条件:(i):DMF、CuSO.5HO、アスコルビン酸ナトリウム、室温、ON;(ii):DMSO、DIPEA、室温、pH7.5、ON;(iii):塩化イットリウム、酢酸アンモニウム緩衝液(0.5M、pH約6.5~7.5)、100℃、30~60分。
【0030】
図6図6は、90Y標識ヒドロキシルデンドリマー-抗腫瘍薬組合せの合成経路を示すスキームである。試薬および条件:(i):DMF、CuSO.5HO、アスコルビン酸ナトリウム、室温、ON;(ii):DMSO、DIPEA、室温、pH7.5、ON;(iii):塩化イットリウム、酢酸アンモニウム緩衝液(0.5M、pH約6.5~7.5)、100℃、30~60分。
【0031】
図7-1】図7A~7Eは、18F標識デンドリマーを使用した神経炎症および神経変性疾患のイメージングの結果を示す。図7Aは、複数のCNS障害モデルにおける血液脳関門(BBB)障害の関数としての、反応性ミクログリアにおけるヒドロキシルデンドリマー局在化の程度の要約を示す。図7Bは、投薬後48時間で屠殺した動物からの、共焦点蛍光顕微鏡によって測定したベータアミロイドプラークを含有する脳切片の組織学を示す画像を示し、7ヶ月齢の5xFADマウスに1回IV投与(55mg/kg)後のCy5標識ヒドロキシルデンドリマーの選択的取り込みを示す。図7Cは、トレーサー投与後50~60分および食塩水またはLPS(10mg/kg)の注射後24時間での合計脳PET/CT画像を表す画像を示す;LPSを注射したマウスは、その症状の重症度を示す多様なマウス敗血症スコアを示し、PETイメージングは、低いおよび高い敗血症スコアを有するマウスを示し、18F-OP-801の、症状の重症度と相関するように増加する炎症レベルを検出する能力を実証する。図7Dは、全身PET/CT画像を実証する画像を示し、これは、食塩水のみを与えたマウスと比較してLPS注射マウスにおいて18F-OP-801の顕著に高い取り込みを明らかにした。図7Eは、食塩水注射マウスまたはLPS注射マウスにおける60分間に及ぶ%ID/gとしての全脳尺度の群平均時間-放射能曲線(TCA)を示す折れ線グラフである。図7Fは、50~60分間の合計脳PET画像の定量を示す棒グラフであり、LPS(n=10)および食塩水注射(n=6)雌性マウスにおける皮質、髄質、嗅球、および橋において大幅に上昇した18F-OP-801取り込みを示す。*:p<0.05、**:p<0.01。図7Gおよび7Hは、LPS注射(n=6)および食塩水注射(n=5)マウスにおける肝臓および肺(図7G)ならびに全脳および海馬(図7H)を含む臓器における25~35分間の合計18F-OP-801PET定量を示す棒グラフである。*:p=0.045。図7Iは、LPS注射(n=4、2例の低MSSスコアマウスを除外した)および食塩水注射(n=5)マウスにおける注射後70分でのex vivoでの18F-OP-801生体分布を示す棒グラフである。図7Jは、代表的な食塩水対高-MSS LPSマウスからの、注射後70分での同じ切片のニッスル染色と重ねた厚さ40μmの矢状脳切片のオートラジオグラフィーからのイメージングを示す。図7Kは、50~60分間のPETからの全脳におけるLPS MSSスコアの%ID/gに対するプロットであり、線形回帰および95%信頼区間を示す。図7Lは、18F標識ヒドロキシルデンドリマー(18F-OP-801)の血漿中安定性(時点あたりn=4の雌性マウス)を示す棒グラフである。図7Mおよび7Nは、3.75ヶ月齢の5xFADマウスおよび年齢をマッチさせた野生型対照における18F-GE180(図7M)および18F-OP-801(図7N)によるPETイメージングの比較を示す。図7Oは、5ヶ月齢の5xFADマウスおよび年齢をマッチさせた野生型対照における18F-OP-801によるPETイメージングの比較を示す。
図7-2】同上。
図7-3】同上。
図7-4】同上。
図7-5】同上。
図7-6】同上。
図7-7】同上。
【0032】
図8図8は、D6-B483の合成を示す。
【0033】
図9図9A~9Bは、脳および固形腫瘍における111In-D6-B483の選択的取り込みを示す。
【0034】
図10図10は、大きい腫瘍における111In-D6-B483の局在化を示す。
【0035】
図11図11は、小さい腫瘍における111In-D6-B483の局在化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
他の態様の中でも、本開示は、放射性核種、例えば18F(フッ素-18)および/または89Zr(ジルコニウム-89)と複合体を形成したまたはコンジュゲートしたヒドロキシル化デンドリマー、例えばヒドロキシルPAMAMデンドリマーが、活性化ミクログリアの非侵襲性かつ特異的イメージングのための安定な陽電子放出断層撮影(PET)イメージングプローブとしての全身投与の際に、いかなる標的化リガンドも存在しない下で、損傷したBBBを通過し、活性化ミクログリアを選択的に標的とすることができるという発見に関する。放射性核種、例えば18Fまたは89Zrと複合体を形成したまたはコンジュゲートしたヒドロキシル化デンドリマー(例えば、ヒドロキシルPAMAMデンドリマー)は、健康な脳の脳細胞では観察されない。理論に拘束されることを望まないが、選択的取り込みの機構は、食作用活性化を増したグリアによる取り込みのために、放射性核種、例えば18Fまたは89Zrと複合体を形成したまたはコンジュゲートしたヒドロキシルデンドリマーの、脳内で良好に拡散する能力に関連すると考えられる。18Fまたは89Zrと複合体を形成したまたはコンジュゲートしたヒドロキシルデンドリマーは、>500mg/kgの静脈内用量であっても非毒性であり、腎臓を通してインタクトで排出される。
【0037】
したがって、一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象においてPETイメージングを介して炎症、例えば神経炎症の部位を診断する、検出する、および/またはイメージングするために、放射性核種、例えば18F(フッ素-18)または89Zrと複合体を形成したまたはコンジュゲートしたデンドリマーを含むデンドリマー複合体の組成物を提供する。一部の実施形態では、18Fまたは89Zrと複合体を形成したデンドリマーの組成物は、1つまたは複数の活性剤、特にそれを必要とする対象における炎症、例えば神経炎症の部位を診断する、検出する、および/またはイメージングするための1つまたは複数の活性剤を送達するために好適である。一部の実施形態では、組成物はまた、in vivoでがん細胞を診断する、検出する、および/もしくはイメージングするために、ならびに/またはがんに関連する1つもしくは複数の症状を処置するもしくは好転させるためにも好適である。
【0038】
一部の態様では、本開示は、放射性核種、例えば18Fまたは89Zrと複合体を形成したまたはコンジュゲートし、エーテル連結を介して1つまたは複数の活性剤にさらにコンジュゲートしたヒドロキシル末端デンドリマーが、in vivoで増強された安定性を有するという発見に関する。本発明者らは、18Fまたは89Zrによって標識され、エーテル連結を介して1つまたは複数の活性剤にさらにコンジュゲートしたヒドロキシル末端デンドリマーが、in vivoで活性剤を炎症、神経炎症、および/または腫瘍の部位に選択的に送達することを認識および理解している。
【0039】
したがって、一部の態様では、本開示は、デンドリマー中で複合体を形成したおよび/またはコンジュゲートした1つまたは複数の予防剤、治療剤、および/または診断剤を含む、放射性核種、例えば18Fまたは89Zrと複合体を形成したまたはコンジュゲートしたヒドロキシル末端デンドリマーの組成物を提供する。一部の実施形態では、1つまたは複数の活性剤は、約0.01重量%~約30重量%、例えば、約1重量%~約20重量%、約5重量%~約20重量%の濃度でデンドリマー複合体中で複合体を形成するおよび/またはコンジュゲートする。一部の実施形態では、ヒドロキシル末端デンドリマーのヒドロキシル基は、少なくとも1つのエーテル連結を介して、必要に応じて1つまたは複数のリンカー/スペーサーを介して1つまたは複数の活性剤に共有結合によりコンジュゲートしている。一部の実施形態では、ヒドロキシル末端デンドリマーの表面基は、1つまたは複数のリンカーおよび活性剤へのコンジュゲーションの前にエーテル化反応を介して修飾される。一部の実施形態では、1つまたは複数のリンカーがデンドリマーと活性剤の間に存在する場合、デンドリマーの表面基とリンカーの間の共有結合は、例えば図1および3に示すように、エーテル結合である。
【0040】
追加の作用剤(agent)の存在は、粒子のゼータ電位または表面電荷に影響を及ぼし得る。一部の実施形態では、デンドリマーのゼータ電位は、-100mV~100mVの間、-50mV~50mVの間、-25mV~25mVの間、-20mV~20mVの間、-10mV~10mVの間、-10mV~5mVの間、-5mV~5mVの間、または-2mV~2mVの間である。一部の実施形態では、表面電荷は、中性またはほぼ中性である。上記の範囲は、-100mV~100mVの全ての値を包含する。
【0041】
デンドリマー
デンドリマーは、高密度の表面末端基を含む三次元、高分岐、単分散、球状、および多価高分子である(Tomalia, D. A., et al., Biochemical Society Transactions, 35, 61 (2007);およびSharma, A., et al., ACS Macro Letters, 3, 1079 (2014))。
【0042】
過去数十年の間に、デンドリマーは、その正確に良好に規定された高分岐および多価アーキテクチャにより、科学界から、特に標的化分子送達の分野において大いに注目を集めている。これらの樹様球状高分子は、その構造により、表面基を容易に操作して多様なリガンドおよび他の治療関連生物活性分子を導入することができる、高度に制御された合成様式で効率的に開発することができる。その一意的構造および物理的特色により、デンドリマーは、標的化薬物/遺伝子送達、イメージングおよび診断を含む様々な生物医学適用のためのナノ担体として有用である(Sharma, A., et al., RSC Advances, 4, 19242(2014); Caminade, A.-M., et al., Journal of Materials Chemistry B, 2, 4055(2014); Esfand, R., et al., Drug Discovery Today, 6, 427(2001);およびKannan, R. M., et al., Journal of Internal Medicine, 276, 579(2014))。
【0043】
デンドリマー表面基は、その生体分布に大幅な影響を有する(Nance, E., et al., Biomaterials, 101, 96 (2016))。ヒドロキシル末端第4世代PAMAMデンドリマー(サイズ約4nm)は、いかなる標的化リガンドも伴わずに、脳性麻痺(CP)のウサギモデルにおいて全身投与すると、損傷したBBBを健康な対照と比較して大幅に多く(>20倍)通過し、活性化ミクログリアおよび星細胞を選択的に標的とする(Lesniak, W. G., et al., Mol Pharm, 10 (2013))。
【0044】
一部の実施形態では、「デンドリマー」という用語は、これらに限定されないが、内部コアおよびこの内部コアに付着してそこから伸びる反復単位の層(または「世代」)を有する分子アーキテクチャを含み、各層は1つまたは複数の分岐点を有し、末端基の外部表面は最も外側の世代に付着している。一部の実施形態では、デンドリマーは、規則的なデンドリマー構造または「スターバースト」分子構造を有する。
【0045】
一部の実施形態では、デンドリマーは、約1nm~約50nmの間、約1nm~約20nmの間、約1nm~約10nmの間、または約1nm~約5nmの間の直径を有する。一部の実施形態では、直径は、約1nm~約2nmの間である。コンジュゲートは、一部の実施形態では、一般的に同じサイズ範囲内にあるが、抗体などの大きいタンパク質は、サイズを5~15nm増加させ得る。一部の実施形態では、作用剤は、より大きい世代のデンドリマーの場合、1:1~4:1の間の作用剤のデンドリマーに対する比でデンドリマーに封入されているまたはコンジュゲートしている。一部の実施形態では、デンドリマーは、肝細胞を標的とするため、および肝細胞において長期間保持するために有効な直径を有する。
【0046】
一部の実施形態では、デンドリマーは、約500ダルトン~約100,000ダルトンの間、約500ダルトン~約50,000ダルトンの間、または約1,000ダルトン~約20,000ダルトンの間の分子量を有する。分子量は、モノマー分子量の関数である。
【0047】
使用することができる好適なデンドリマー足場としては、PAMAMとしても公知のポリ(アミドアミン)またはSTARBURST(商標)デンドリマー、ポリプロピルアミン(POPAM)、ポリエチレンイミン、ポリリシン、ポリエステル、イプチセン、脂肪族ポリ(エーテル)、および/または芳香族ポリエーテルデンドリマーが挙げられる。デンドリマーは、カルボキシ、アミン、および/またはヒドロキシル末端を有し得る。一部の実施形態では、デンドリマーは、ヒドロキシル末端を有する。デンドリマー複合体の各デンドリマーは、他のデンドリマーと同じ、または類似、または異なる化学性質のデンドリマーであり得る(例えば、第1のデンドリマーはPAMAMデンドリマーを含み得るが、第2のデンドリマーは、POPAMデンドリマーであり得る)。
【0048】
「PAMAMデンドリマー」という用語は、ポリ(アミドアミン)デンドリマーを意味し、これはアミドアミン構成要素を含む異なるコアを含有してもよく、第1世代PAMAMデンドリマー、第2世代PAMAMデンドリマー、第3世代PAMAMデンドリマー、第4世代PAMAMデンドリマー、第5世代PAMAMデンドリマー、第6世代PAMAMデンドリマー、第7世代PAMAMデンドリマー、第8世代PAMAMデンドリマー、第9世代PAMAMデンドリマー、または第10世代PAMAMデンドリマーを含むが、これらに限定されない任意の世代のカルボキシ、アミン、およびヒドロキシル末端を有し得る。一部の実施形態では、デンドリマーは、製剤において可溶性であり、世代(「G」)4、5または6のデンドリマー(すなわち、G4~G6デンドリマー)、および/またはG4~G10デンドリマー、G6~G10デンドリマー、またはG2~G10デンドリマーである。デンドリマーは、その機能的表面基に付着したヒドロキシル基を有し得る。一部の実施形態では、デンドリマーは、第4世代、第5世代、第6世代、第7世代、または第8世代ヒドロキシル末端デンドリマー(例えば、ポリ(アミドアミン)デンドリマー)である。
【0049】
一部の実施形態では、デンドリマーは、複数のヒドロキシル基を含む。一部の例示的な高密度ヒドロキシル基含有デンドリマーとしては、市販のポリエステル樹状ポリマー、例えば高分岐2,2-ビス(ヒドロキシル-メチル)プロピオン酸ポリエステルポリマー(例えば、高分岐ビス-MPAポリエステル-64-ヒドロキシル、第4世代)、樹状ポリグリセロールが挙げられる。
【0050】
一部の実施形態では、高密度ヒドロキシル基含有デンドリマーは、オリゴエチレングリコール(OEG)様デンドリマーである。例えば、第2世代OEGデンドリマー(D2-OH-60)は、非常に効率的、ロバストで原子節約型(atomic economical)の化学反応、例えばCu(I)触媒アルキン-アジドクリックケミストリーおよび光触媒チオール-エンクリックケミストリーを使用して合成することができる。最少反応ステップでの非常に低世代の高密度ポリオールデンドリマーは、例えばWO2019094952に記載されるように直交型ハイパーモノマー(hypermonomer)およびハイパーコア(hypercore)戦略を使用することによって達成することができる。一部の実施形態では、デンドリマー骨格は、in vivoでのデンドリマーの崩壊を回避するために、および体から単一の実体としてそのようなデンドリマーの排除を可能にするために(非生分解性)、構造全体を通して非切断性のポリエーテル結合を有する。
【0051】
一部の実施形態では、デンドリマーは、特定の組織領域および/または細胞タイプ、例えば肝細胞を特異的に標的とする。一部の実施形態では、デンドリマーは、標的化部分なしで、特定の組織領域および/または細胞タイプを特異的に標的とする。
【0052】
一部の実施形態では、デンドリマーは、デンドリマーの周辺部に複数のヒドロキシル(-OH)基を有する。ヒドロキシル(-OH)基の表面密度は、一部の実施形態では、少なくとも1個のOH基/nm(ヒドロキシル表面基の数/nmでの表面積)である。例えば、一部の実施形態では、ヒドロキシル基の表面密度は、2個より多く、3個より多く、4個より多く、5個より多く、6個より多く、7個より多く、8個より多く、9個より多く、10個より多くのOH基/nm;少なくとも10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、または50個より多くのOH基/nmである。さらなる実施形態では、ヒドロキシル(-OH)基の表面密度は、約1個~約50個のOH基/nmの間、または5個~20個のOH基/nm(ヒドロキシル表面基の数/nmでの表面積)であるが、約500Da~約10kDaの間の分子量を有する。
【0053】
一部の実施形態では、デンドリマーは、ヒドロキシル基の一部が外部表面に露出し、その他はデンドリマーの内部コアに存在してもよい。一部の実施形態では、デンドリマーは、少なくとも1個のOH基/nm(ヒドロキシル基の数/nmでの体積)のヒドロキシル(-OH)基の体積密度を有する。例えば、一部の実施形態では、ヒドロキシル基の体積密度は、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個のOH基/nm、または10個より多く、15個より多く、20個より多く、25個より多く、30個より多く、35個より多く、40個より多く、45個より多く、および50個より多くのOH基/nmである。一部の実施形態では、ヒドロキシル基の体積密度は、約4~約50個のOH基/nmの間、約5~約30個のOH基/nmの間、約10~約20個のOH基/nmの間である。デンドリマーの直径は、表面積および体積を決定するために、透過型電子顕微鏡および原子力顕微鏡、動的光散乱、コンピュータによる計算、またはそれらの組合せによって一般的に決定することができる。
【0054】
一部の実施形態では、デンドリマーは、CNSの疾患、障害、もしくは傷害、炎症部位、または腫瘍領域での活性化ミクログリアを標的化するために有効な数のヒドロキシル基を含む。
【0055】
イメージング剤を含むデンドリマー複合体
1つまたは複数の診断剤またはイメージング剤とコンジュゲートしたデンドリマーの複合体を説明する。デンドリマーを、シンチグラフィー、SPECT、もしくはPETイメージングにとって適切な放射性核種レポーター、および/または放射線療法にとって適切な放射性核種;またMRIイメージングのためのMRI造影剤とコンジュゲートすることができる。デンドリマーが、診断イメージングにとって有用な放射性核種またはMRI造影剤のキレーターおよび放射線療法にとって有用なキレーターの両方とコンジュゲートしたデンドリマー複合体が具体的に企図され、一部の実施形態では、コンジュゲーションは、エーテル連結を介する。したがって、一部の実施形態では、単一のデンドリマー/イメージング剤組成物が、体の1つまたは複数の場所で疾患または状態を同時に処置および/または診断することができる。同様に、放射性標識SPECT、または好適な量の放射能を有するシンチグラフィーイメージング剤もまた開示される。
【0056】
好適なイメージング剤は、イメージング方法の選択に基づいて選択することができる。例えば、一部の実施形態では、イメージング剤は、光学イメージングのための近赤外線蛍光色素、MRIイメージングのためのガドリニウムキレート、PETもしくはSPECTイメージングのための放射性核種、またはCTイメージングのための金ナノ粒子である。
【0057】
1つまたは複数の放射性核種を含む陽電子放出断層撮影(PET)のための1つまたは複数のイメージングプローブとコンジュゲートしたまたは複合体を形成したデンドリマーの組成物を提供する。
【0058】
PETは、臓器および組織の機能を評価するために、in vivoで少量の放射活性の放射性トレーサーまたは放射性医薬品を検出するために専用のカメラおよびコンピュータを使用する技術である。PETは、他の試験が検出することができるよりも前に疾患の早期発生を検出することができる。
【0059】
PETは、同時計数法(coincidence method)を使用して、これらに限定されないが、およそ110分の半減期を有する18F、およそ20分の半減期を有する11C、およそ10分の半減期を有する13N、およびおよそ2分の半減期を有する15Oを含む、短命な陽電子放出放射性同位体からの消滅光子の形態でガンマ線の検出を伴う。したがって、PET剤としての使用のために、デンドリマーを、様々な陽電子放出金属イオン、例えば51Mn、52Fe、60Cu、68Ga、72As、94mTc、または110Inの1つまたは複数とコンジュゲートするまたは複合体を形成することができる。本開示のデンドリマーはまた、放射性核種、例えば18F、124I、125I、131I、123I、77Br、および76Brとコンジュゲートするまたは複合体を形成することができる。シンチグラフィーまたは放射線療法のための金属放射性核種の例としては、99mTc、51Cr、67Ga、68Ga、47Sc、51Cr、167Tm、141Ce、111In、168Yb、175Yb、140La、90Y、88Y、153Sm、166Ho、165Dy、166Dy、62Cu、64Cu、67Cu、97Ru、103Ru、186Re、188Re、203Pb、211Bi、212Bi、213Bi、214Bi、105Rh、109Pd、117mSn、149Pm、161Tb、177Lu、225Ac、198Au、および199Auが挙げられる。金属の選択は、所望の治療適用または診断適用に基づいて決定される。例えば、診断目的の場合、放射性核種の例としては、64Cu、67Ga、68Ga、99mTc、および111Inが挙げられる。治療目的の場合、放射性核種の例としては、64Cu、90Y、105Rh、111In、117mSn、149Pm、153Sm、161Tb、166Tb、166Dy、166Ho、175Yb、177Lu、225Ac、186/188Re、および199Auが挙げられる。99mTcは、その低コスト、利用可能性、イメージング特性、および高い比放射能のために診断適用にとって有用である。99mTcの核および放射性特性により、この同位体は理想的なシンチグラフィーイメージング剤となる。この同位体は、140keVの単一光子エネルギーおよび約6時間の放射性半減期を有し、99Mo-99mTc発生装置から容易に入手可能である。18F、4-[18F]フルオロベンズアルデヒド(18FB)、Al[18F]-NOTA、68Ga-DOTA、および68Ga-NOTAは、PETイメージングのためのデンドリマーへのコンジュゲーションのための典型的な放射性核種である。153Smは、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)キレーターまたは1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンテトラメチレンホスホン酸(DOTMP)などのキレーターと共に使用することができる。
【0060】
磁気共鳴画像法(MRI)は、脳疾患、脊髄障害、血管造影、心機能、および筋骨格損傷を評価するために今日広く使用されている。MRIは、コンピュータ断層撮影(CT)よりも長い獲得時間を必要とするが、MRIは、電離放射線の使用を必要とせず、任意の選択された配向でスキャンを実施することができる。これは、完全な三次元(3-D)性能、優れた軟部組織コントラストおよび高い空間分解能を特色とする。さらに、MRIは、形態学的イメージングおよび機能的イメージングに非常に適している。このように、1つまたは複数のMRI造影剤を含む磁気共鳴画像法のための1つまたは複数のイメージングプローブとコンジュゲートしたまたは複合体を形成したデンドリマーの組成物を提供する。送達することができる例示的なMRI造影剤としては、Gd、Mn、BaSO、酸化鉄、鉄白金が挙げられる。
【0061】
エーテル連結を介したイメージング剤へのデンドリマーのコンジュゲーション
エーテル連結を介して、必要に応じて1つまたは複数のリンカー/スペーサーによって放射性核種またはMRI造影剤にコンジュゲートしたヒドロキシル末端デンドリマーを含む組成物を説明する。一実施形態では、18Fを、図1で化合物5として示されるヒドロキシル末端第4世代PAMAMデンドリマーにコンジュゲートする。別の実施形態では、89Zrは、図3で化合物5として示されるデンドリマーにコンジュゲートしたp-SCN-Bn-デフェロキサミン(DFO)を通してのキレート化を介してヒドロキシル末端第4世代PAMAMデンドリマーと複合体を形成する。
【0062】
一部の実施形態では、デンドリマーの表面基とリンカーとの、またはデンドリマーと放射性核種(いかなる連結部分も用いずにコンジュゲートする場合)との間の共有結合は、in vivo条件下で安定であり、すなわち対象に投与した場合にほとんど切断されず、および/または体からインタクトで排出される。例えば、総デンドリマー複合体の5%未満、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、または0.1%未満が、in vivo投与後24時間、48時間、または72時間以内に放射性核種などの活性剤を切断する。一部の実施形態では、これらの共有結合はエーテル結合である。一部の実施形態では、デンドリマーの表面基とリンカーとの、またはデンドリマーと放射性核種(いかなる連結部分も用いずにコンジュゲートする場合)との間の共有結合は、エステル結合などの加水分解によっても酵素によっても切断可能な結合ではない。
【0063】
一部の実施形態では、ヒドロキシル末端デンドリマーの1つまたは複数のヒドロキシル基は、以下の式(I)に示す通り1つまたは複数のエーテル結合を介して1つまたは複数の連結部分および1つまたは複数の放射性核種にコンジュゲートする。
【化1】
式中、Dはデンドリマー(例えば、G2~G10デンドリマー、例えばG2~G10ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマー)であり;Lは、1つまたは複数の連結部分またはスペーサーであり;Xは、放射性核種または放射性核種もしくはMRI造影剤と複合体を形成するためのキレーターであり;nは、1~100の整数であり;mは、16~4096の整数であり;
Yは、二級アミド(-CONH-)、三級アミド(-CONR-)、スルホンアミド(-S(O)-NR-)、二級カルバメート(-OCONH-;-NHCOO-)、三級カルバメート(-OCONR-;-NRCOO-)、カーボネート(-O-C(O)-O-)、ウレア(-NHCONH-;-NRCONH-;-NHCONR-、-NRCONR-)、カルビノール(-CHOH-、-CROH-)、ジスルフィド基、ヒドラゾン、ヒドラジド、チオエーテル(-S-、-SR-)、およびエーテル(-O-、-OR-)(ここで、Rはアルキル基、アリール基、または複素環基である)から選択されるリンカーである。一部の実施形態では、Yはin vivoでほとんど切断されない結合または連結である。一部の実施形態では、Yは、C~C12、例えばC~Cアルキル基、またはポリエチレングリコールリンカーを含む。
【0064】
一実施形態では、Dは、G4 PAMAMデンドリマーであり;Lは、1つまたは複数の連結部分またはスペーサー部分であり;Rは、18Fであり;nは約8~12であり;mは、約52~56の整数であり;n+m=64である。一部の実施形態では、Lは、C~C12アルキル基、例えばC~Cアルキル基、またはポリエチレングリコールリンカーを含む。
【0065】
別の実施形態では、Dは、G4 PAMAMデンドリマーであり;Lは、1つまたは複数の連結部分またはスペーサー部分であり;Rは、p-SCN-Bn-デフェロキサミンであり;nは約8~12であり;mは、約52~56の整数であり;n+m=64である。
【0066】
i.キレート剤(Chelation Agent)
一部の実施形態では、1つまたは複数の放射性核種は、キレート剤(chelating agent)を介してデンドリマーとコンジュゲートしている。金属放射性核種は、例えば、線状、大環状、ターピリジン、およびNS、N、またはN錯化剤(米国特許第5,367,080号、米国特許第5,364,613号、米国特許第5,021,556号、米国特許第5,075,099号、米国特許第5,886,142号も参照されたい)、ならびにこれらに限定されないが、HYNIC、DTPA、EDTA、DOTA、DO3A、TETA、NOTA、およびビスアミノビスチオール(BAT)キレーター(米国特許第5,720,934号も参照されたい)を含む当技術分野で公知の他のキレーターによってキレート化することができる。例えば、Nキレーターは、米国特許第6,143,274号;米国特許第6,093,382号;米国特許第5,608,110号;米国特許第5,665,329号;米国特許第5,656,254号;および米国特許第5,688,487号に記載されている。ある特定のN35キレーターは、PCT/CA94/00395、PCT/CA94/00479、PCT/CA95/00249、ならびに米国特許第5,662,885号;米国特許第5,976,495号;および米国特許第5,780,006号に記載されている。キレーターはまた、キレート化リガンドの誘導体である、NSを含有するメルカプト-アセチル-アセチル-グリシル-グリシン(MAG3)、およびN系、例えばMAMA(モノアミドモノアミンジチオール)、DADS(NSジアミンジチオール)、およびCODADSも含み得る。これらのリガンド系および多様な他のリガンド系は、例えば、Liu, S, and Edwards, D., 1999. Chem. Rev., 99:2235-2268、およびその中の参考文献に記載されている。
【0067】
キレーターはまた、四座アレイにおいて金属に供与されないリガンド原子を含有する複合体も含み得る。これらは、例えば、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,183,653号;米国特許第5,387,409号;および米国特許第5,118,797号に記載されているテクネチウムおよびレニウムジオキシムのボロン酸付加物を含む。
【0068】
一実施形態では、キレーターは、89Zrをキレート化するためのp-SCN-Bn-デフェロキサミン(DFO)である。別の実施形態では、キレーターは、90Yおよび/またはGdをキレート化するためのDOTAである。
【0069】
キレーターを、必要に応じてリンカーを介してデンドリマーに共有結合により連結し、次いで放射性核種またはMRI造影剤によって直接標識することができる。一部の実施形態では、デンドリマーは、安定性の増強のためにエーテル連結を通して、リンカーを伴ってまたは伴わずにキレーターにコンジュゲートしている。18F、89Zr(ジルコニウム-89)またはGdを含むデンドリマーは、診断イメージングのために本明細書に提供される。放射性テクネチウムの複合体もまた、診断イメージングのために有用であり、放射性レニウムの複合体は、放射線療法にとって特に有用である。
【0070】
ii.フッ素-18/デンドリマーコンジュゲート
一部の実施形態では、デンドリマーは、18F(フッ素-18)にコンジュゲートしている。18F(フッ素-18)は、PETイメージングのための最も一般的に使用される同位体である。これは高い陽電子崩壊率、低いエネルギー、好ましい半減期(109.8分)、および高い比放射能および十分に確立された放射化学を有するフッ素の同位体である。これは最も低い陽電子エネルギーを有する陽電子を放出することによって崩壊し、高解像度イメージングの獲得に寄与する。複数の18F放射性トレーサー、例えば、グルコースのアナログである2-デオキシ-2-18F-フルオロ-β-D-グルコース(18F-FDG)が、臨床適用のためにFDAによって承認され、腫瘍の早期検出のために使用されている。このように、一部の実施形態では、エーテル連結を介してヒドロキシル末端デンドリマーにコンジュゲートする放射性核種は、18Fである。エーテル連結を介して18Fにコンジュゲートした例示的なヒドロキシル末端デンドリマーを図1に示す。
【0071】
iii.ジルコニウム-89/デンドリマーコンジュゲート
一部の実施形態では、デンドリマーは、89Zr(ジルコニウム-89)にコンジュゲートしている。89Zrは、抗体の薬物動態とマッチする長い半減期(78.4時間)を有する別のPET同位体であり、395keV.19の比較的低い平均陽電子エネルギーを有する。89Zrに基づく放射性トレーサーは、取り扱いがより安全であり、in vivoでより安定であることから、臨床適用のための良好な候補となる。このように、一部の実施形態では、エーテル連結を介してヒドロキシル末端デンドリマーにコンジュゲートする放射性核種は、89Zrである。エーテル連結を介して89Zrにコンジュゲートした例示的なヒドロキシル末端デンドリマーを図3に示す。
【0072】
iv.イットリウム-90/デンドリマーコンジュゲート
一部の実施形態では、デンドリマーは、90Y(イットリウム-90)にコンジュゲートしている。90Yは、イットリウムの同位体である。90Yは、0.93MeVの平均崩壊エネルギーを有する純粋なベータ放射体であり、ヒト組織における平均透過深度は4~5mmである。Y-90の物理的半減期は64.2時間である。イットリウム-90は、一部の形態のがんを処置するために放射線治療における広範囲の使用が見いだされている。
【0073】
このように、一部の実施形態では、エーテル連結を介してヒドロキシル末端デンドリマーにコンジュゲートする放射性核種は、90Yである。エーテル連結を介してDOTAにコンジュゲートし、90Yとキレート化される例示的なヒドロキシル末端デンドリマーを、図5に示す。あるいは、Gdを、このヒドロキシル末端デンドリマーDOTAコンジュゲートとキレート化してもよい。がんの処置の場合、1つまたは複数の放射性核種によって標識されたデンドリマーを、1つまたは複数の抗がん薬にさらにコンジュゲートすることができる。1つまたは複数の抗がん薬にさらにコンジュゲートした1つまたは複数の放射性核種によって標識されたデンドリマーの例示的な構造を図6に示す。
【0074】
スペーサーおよび連結剤
一部の実施形態では、デンドリマーに対するイメージング剤または診断剤の付着は、ジスルフィド、エーテル、チオエステル、カルバメート、カーボネート、ヒドラジン、またはアミド連結の1つまたは複数を介して起こる。一部の実施形態では、付着は、活性剤の所望の放出動態に応じて、放射性核種とデンドリマーの間にエーテル結合またはアミド結合を提供する適切なスペーサーを介して起こる。デンドリマーと放射性核種の間の1つまたは複数のスペーサー/リンカーは、in vivoでデンドリマー/作用剤複合体の非放出性の、またはほとんど放出されない形態を提供するように設計することができる。一部の実施形態では、エーテル結合は、デンドリマー複合体の非放出性の、またはほとんど放出されない形態のために導入される。加えて、1つまたは複数の有機官能基を、活性剤のデンドリマー/作用剤コンジュゲートへの共有結合による付着を容易にするように選択することができる。
【0075】
連結部分は、一般的に、1つまたは複数の有機官能基を含む。好適な有機官能基の例としては、二級アミド(-CONH-)、三級アミド(-CONR-)、スルホンアミド(-S(O)-NR-)、二級カルバメート(-OCONH-;-NHCOO-)、三級カルバメート(-OCONR-;-NRCOO-)、カーボネート(-O-C(O)-O-)、ウレア(-NHCONH-;-NRCONH-;-NHCONR-、-NRCONR-)、カルビノール(-CHOH-、-CROH-)、ジスルフィド基、ヒドラゾン、ヒドラジド、エーテル(-O-)、およびエステル(-COO-、-CHC-、-CHROC-)(ここで、Rは、アルキル基、アリール基、または複素環基である)が挙げられる。
【0076】
ある特定の実施形態では、連結部分は、スペーサー基と組み合わせた上記の有機官能基の1つまたは複数を含む。スペーサー基は、オリゴマーおよびポリマー鎖を含む、原子の任意のアセンブリで構成され得る;しかし、スペーサー基における原子の総数は、3~200原子の間、3~150原子の間、3~100原子の間、または3~50原子の間である。好適なスペーサー基の例としては、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルキルアリール基、オリゴおよびポリエチレングリコール鎖、ならびにオリゴおよびポリ(アミノ酸)鎖が挙げられる。スペーサー基の変形形態は、in vivoでの作用剤の放出に対して追加の制御を提供する。連結基がスペーサー基を含む実施形態では、1つまたは複数の有機官能基を一般的に使用して、スペーサー基を放射性核種およびデンドリマーの両方に接続する。一部の実施形態では、スペーサーはポリエチレングリコールである。
【0077】
作用剤をデンドリマーにコンジュゲートさせるための組成物および方法は、当技術分野で公知であり、米国特許出願公開第2011/0034422号、同第2012/0003155号、および同第2013/0136697号に詳しく記載されている。一部の実施形態では、活性剤は、必要に応じて1つまたは複数の連結部分を介して、デンドリマー/作用剤コンジュゲートへのコンジュゲーションのために官能化される。一部の実施形態では、官能化された活性剤および/または連結部分は、in vivoでデンドリマー/作用剤コンジュゲートからの活性剤の所望の放出速度を有するように設計される。官能化された活性剤および/または連結部分は、加水分解により、酵素により、またはその組合せによって切断されて、in vivoで活性剤の持続的放出を提供するように設計することができる。一部の実施形態では、官能化された活性剤および/または連結部分は、in vivoでデンドリマー/作用剤コンジュゲートに結合したままであるように設計される。
【0078】
したがって、一部の実施形態では、官能化された活性剤および/または連結部分は、in vivoで最小の、または問題にならない低い速度で切断されるように設計される。連結部分の組成もまた、活性剤の所望の放出速度を考慮して選択することができる。一部の実施形態では、1つまたは複数の活性剤は、例えばエーテル連結を介して、必要に応じて1つまたは複数のスペーサー/リンカーによって、デンドリマー/作用剤コンジュゲートからin vivoで切断不能であるか、またはほとんど切断されないように官能化される。
【0079】
放射性核種などのイメージング剤の最適な負荷は、必然的に放射性核種の選択、デンドリマーの構造およびサイズ、ならびに標的化/イメージングされる組織を含む多くの要因に依存する。一部の実施形態では、1つまたは複数のイメージング剤は、約0.01重量%~約45重量%、約0.1重量%~約30重量%、約0.1重量%~約20重量%、約0.1重量%~約10重量%、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約5重量%、約3重量%~約20重量%、および約3重量%~約10重量%の濃度でデンドリマーに封入される、会合する、および/またはコンジュゲートする。しかし、任意のイメージング剤の最適な負荷、デンドリマー、および標的部位は、記載される方法などの通常の方法によって特定され得る。
【0080】
一部の実施形態では、イメージング剤および/またはリンカーのコンジュゲーションは、1つまたは複数の表面基および/または内部基を通して起こる。このように、一部の実施形態では、活性剤/リンカーのコンジュゲーションは、コンジュゲーション前に利用可能なデンドリマー/作用剤の総表面官能基、例えばヒドロキシル基の約1%、2%、3%、4%、または5%を介して起こる。他の実施形態では、活性剤/リンカーのコンジュゲーションは、コンジュゲーション前に利用可能なデンドリマーの総表面官能基の5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、35%未満、40%未満、45%未満、50%未満、55%未満、60%未満、65%未満、70%未満、75%未満で起こる。一部の実施形態では、デンドリマー/作用剤複合体は、特定の細胞タイプを標的化するための表面官能基の有効量を保持しているが、疾患または障害を処置する、防止する、および/またはイメージングするために活性剤の有効量にコンジュゲートしている。
【0081】
一部の態様では、本開示は、末端のエステル、エーテル、またはアミド結合を通して1つまたは複数の作用剤(例えば、イメージング剤、治療剤)にコンジュゲートしたデンドリマーを含む化合物を提供する。一部の実施形態では、デンドリマーは、必要に応じて作用剤によって置換された表面(例えば、末端)ヒドロキシル基を含む。本明細書で使用される場合、一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートは、1つまたは複数の作用剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む化合物を指す。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートは、イメージング剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートは、イメージング剤または治療剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートは、イメージング剤および治療剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む。
【0082】
一部の態様では、本開示は、末端のエステル、エーテル、またはアミド結合を通して作用剤(例えば、イメージング剤および/または治療剤)にコンジュゲートしたデンドリマーを含む化合物を含む組成物を提供する。一部の実施形態では、デンドリマーは、必要に応じて作用剤によって置換された高密度の末端ヒドロキシル基を含む。一部の実施形態では、作用剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む化合物は、作用剤の10~20質量%である。一部の実施形態では、末端のエステル、エーテル、またはアミド結合は、リンカーまたはスペーサーを通して作用剤にコンジュゲートしている。一部の実施形態では、デンドリマーは、末端のエーテル結合を通して作用剤にコンジュゲートしている。一部の実施形態では、化合物は、作用剤の約10質量%~約15質量%である。一部の実施形態では、化合物は、作用剤の約15質量%~約20質量%である。一部の実施形態では、デンドリマーにおける末端部位の少なくとも50%が、末端ヒドロキシル基を含む。一部の実施形態では、デンドリマーにおける末端部位の少なくとも50%および最大99%(例えば、50~95%、50~90%、50~80%、50~70%、50~60%、60~80%、70~90%)が、末端ヒドロキシル基を含む。
【0083】
一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物の作用剤(例えば、イメージング剤または治療剤)は、デンドリマーの非存在下で作用剤を含むコンジュゲートされていない化合物と比較して増加した水溶解度を有する。一部の実施形態では、水溶解度は、コンジュゲートされていない化合物と比較して少なくとも10%増加する。一部の実施形態では、水溶解度は、コンジュゲートされていない化合物と比較して約10%~約100%の間増加する。一部の実施形態では、水溶解度は、コンジュゲートされていない化合物と比較して少なくとも約2倍増加する。一部の実施形態では、水溶解度は、コンジュゲートされていない化合物と比較して約2倍~約10倍増加する。一部の実施形態では、水溶解度は、生理的条件下での溶解度である。一部の実施形態では、水溶解度は、約7.0~約8.0の間のpHを有する水中での溶解度である。一部の実施形態では、イメージング剤は、コンジュゲートされていない化合物が生理的条件下で不溶性である濃度で存在する。
【0084】
一部の実施形態では、デンドリマーの表面官能基(例えば、末端官能基)は、1つもしくは複数のヒドロキシル基、1つもしくは複数のアミン基、および/または1つもしくは複数のカルボキシル基を含む。一部の実施形態では、デンドリマーの末端官能基は、それを通して少なくとも1つの作用剤(例えば、イメージング剤および/または治療剤)がコンジュゲートしてデンドリマーコンジュゲートを形成する付着部位を提供する。したがって、一部の実施形態では、少なくとも1つの作用剤は、デンドリマーの末端官能基へのコンジュゲーションによって形成されたエーテル結合、アミド結合、またはエステル結合を通してデンドリマーにコンジュゲートしている。一部の実施形態では、少なくとも1つの作用剤は、エーテル結合またはアミド結合を通してデンドリマーにコンジュゲートしている。一部の実施形態では、少なくとも1つの作用剤は、エーテル結合を通してデンドリマーにコンジュゲートしている。
【0085】
一部の実施形態では、デンドリマーにおける末端部位の数は、特定のデンドリマー足場およびその世代に依存し得る。例えば、一部の実施形態では、デンドリマーは、第0世代、第1世代、第2世代、第3世代、第4世代、第5世代、第6世代、第7世代、第8世代、第9世代、または第10世代PAMAMデンドリマー足場に基づき、それぞれ4、8、16、32、64、128、256、512、1024、2048、および4096個の末端部位を有する。しかし、各世代で異なる数の末端部位を有する異なるデンドリマー足場を、本開示に従って使用することができると理解すべきである。
【0086】
一部の実施形態では、デンドリマーの全ての末端部位がヒドロキシル基を含む。一部の実施形態では、デンドリマーの各末端部位は、ヒドロキシル基またはアミン基のいずれかを含む。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートの各末端部位は、ヒドロキシル基、アミン基、またはエーテルもしくはアミド結合を通してデンドリマーにコンジュゲートした作用剤(例えば、イメージング剤または治療剤)を含む。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートの各末端部位は、ヒドロキシル基、またはエーテル結合を通してデンドリマーにコンジュゲートした作用剤のいずれかを含む。
【0087】
一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートにおける末端部位の少なくとも50%がヒドロキシル基を含む(例えば、末端部位の少なくとも50%は、アミン基も作用剤も含まない)。例えば、一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートにおける末端部位の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%がヒドロキシル基を含む。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートにおける末端部位の約50~99%、約60~99%、約70~99%、約80~99%、約90~99%、約95~99%、約98~99%、約70~95%、約70~90%、約80~95%、または約80~90%がヒドロキシル基を含む。
【0088】
一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートにおける1つまたは複数の末端部位は、作用剤(例えば、イメージング剤および/または治療剤)を含む。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートにおける少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、またはそれより多くの末端部位が作用剤を含む。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートにおける末端部位の少なくとも1%が作用剤を含む。例えば、一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートにおける末端部位の少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、または少なくとも30%が作用剤を含む。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートにおける末端部位の約1~50%、約1~40%、約1~25%、約1~10%、約5~50%、約5~40%、約5~25%、約5~10%、約10~50%、約10~40%、または約10~25%が作用剤を含む。一部の実施形態では、デンドリマーにおける末端部位の約1%、約2%、約3%、約4%、または約5%が作用剤を含む。一部の実施形態では、デンドリマーにおける末端部位の5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、35%未満、40%未満、45%未満、50%未満、55%未満、60%未満、65%未満、70%未満、75%未満が作用剤を含む。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートは、本明細書に記載されるようにイメージングおよび/または処置するための作用剤の有効量を有しながら、特定の細胞タイプを標的化するための末端官能基(例えば、末端ヒドロキシル基)の有効量を有する。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートの末端部位は、作用剤および/または末端官能基を有する末端部位のパーセンテージを決定するために、当技術分野で公知のプロトン核磁気共鳴(H NMR)、または他の分析方法を使用して評価することができる。
【0089】
一部の実施形態では、所望の作用剤の負荷は、作用剤の選択、デンドリマーの構造およびサイズ、ならびに処置される細胞または組織を含むある特定の要因に依存し得る。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートは、作用剤(例えば、イメージング剤および/または治療剤)の約0.01質量%~約45質量%(m/m)である。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートは、作用剤の約10質量%~約20質量%である。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートは、作用剤の約0.1質量%~約30質量%、約0.1質量%~約20質量%、約0.1質量%~約10質量%、約1質量%~約10質量%、約1質量%~約5質量%、約3質量%~約20質量%、約3質量%~約10質量%である。
【0090】
本明細書で記載されるように、一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートは、作用剤の質量パーセンテージ(例えば、質量%(m/m))に関して特徴付けることができる。一部の実施形態では、質量パーセンテージは、デンドリマーコンジュゲートにおける作用剤の分子量(Da)パーセンテージを指す。一部の実施形態では、質量パーセンテージは、一般式:(作用剤M)/(コンジュゲートM)×100によって決定することができる。例えば、一部の実施形態では、(作用剤M)は、単一の分子または化合物(コンジュゲートされているまたはコンジュゲートされていない)としての作用剤の分子量を計算または概算し、この値に作用剤がデンドリマーコンジュゲートに存在する末端部位の数を乗算することによって決定することができる。一部の実施形態では、(作用剤M)は、デンドリマーコンジュゲート中で作用剤を形成する全ての原子の原子質量の総和を計算または概算することによって決定することができる。(作用剤M)の値は、デンドリマーコンジュゲート(コンジュゲートM)の総分子量の一部として得、これに100を乗算して質量パーセンテージを提供することができる。一部の実施形態では、質量パーセンテージは、実験的または経験的手段によって決定することができる。例えば、一部の実施形態では、質量パーセンテージは、プロトン核磁気共鳴(H NMR)または当技術分野で公知の他の分析方法を使用して決定することができる。
【0091】
一部の実施形態では、デンドリマーの作用剤への付着は、作用剤とデンドリマー/作用剤との間のエーテル結合を提供する適切なスペーサーを介して起こる。一部の実施形態では、in vivoで所望のおよび有効な結合および/または薬物動態を達成するために、1つまたは複数のスペーサー/リンカーが、デンドリマーと活性剤との間に付加される。
【0092】
スペーサーは、単一の化学実体、またはポリマーと治療剤またはイメージング剤とを架橋するために共に連結される2つもしくはそれより多くの化学実体のいずれかであり得る。スペーサーは、スルフヒドリル、チオピリジン、スクシンイミジル、マレイミド、ビニルスルホン、およびカーボネート末端を有する任意の小型の化学実体、ペプチド、またはポリマーを含み得る。
【0093】
スペーサーは、スルフヒドリル、チオピリジン、スクシンイミジル、マレイミド、ビニルスルホン、およびカーボネート基で終わる化合物のクラスの中から選択することができる。スペーサーは、チオピリジン末端化合物、例えばジチオジピリジン、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエートLC-SPDP、またはSulfo-LC-SPDPを含み得る。スペーサーはまた、本質的にスルフヒドリル基を有する線状または環状であるペプチド、例えばグルタチオン、ホモシステイン、システイン、およびそれらの誘導体、arg-gly-asp-cys(RGDC)、シクロ(Arg-Gly-Asp-d-Phe-Cys)(c(RGDfC))、シクロ(Arg-Gly-Asp-D-Tyr-Cys)、シクロ(Arg-Ala-Asp-d-Tyr-Cys)も含み得る。スペーサーは、メルカプト酸誘導体、例えば3メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、4メルカプト酪酸、チオラン-2-オン、6メルカプトヘキサン酸、5メルカプト吉草酸および他のメルカプト誘導体、例えば2メルカプトエタノールおよび2メルカプトエチルアミンであり得る。スペーサーは、チオサリチル酸およびその誘導体、(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-アルファ-2-ピリジルチオ)トルエン、(3-[2-ピリジルチオ(pyridithio)]プロピオニルヒドラジドであり得る。スペーサーは、マレイミド末端を有してもよく、スペーサーは、ポリマーまたは低分子化学実体、例えばビスマレイミドジエチレングリコールおよびビスマレイミドトリエチレングリコール、ビスマレイミドエタン、ビスマレイミドヘキサンを含む。スペーサーは、ビニルスルホン、例えば1,6-ヘキサン-ビス-ビニルスルホンを含み得る。スペーサーは、チオグリコシド、例えばチオグルコースを含み得る。スペーサーは、ウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンなどの還元されたタンパク質、ジスルフィド結合を形成することが可能な任意のチオール末端化合物であり得る。スペーサーは、マレイミド、スクシンイミジル、およびチオール末端を有するポリエチレングリコールを含み得る。
【0094】
核イメージング(放射性核種イメージング)および放射線療法のための製剤
一部の実施形態では、放射性核種を含む1つまたは複数の診断剤またはイメージング剤にコンジュゲートしたデンドリマーは、核イメージング(放射性核種イメージング)および放射線療法技術における使用のために製剤化される。一部の実施形態では、投与される単位用量は、約0.01mCi~約100mCi、または約1mCi~約20mCiの放射能を有する。一部の実施形態では、単位投薬量で注射される溶液は、約0.01mL~約10mLである。一部の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートは、約0.01mCi~100mCi/mLの濃度で放射能を含有する溶液中で放射性複合体として形成することができる。
【0095】
一部の実施形態では、放射性核種標識デンドリマーの用量は、10~20mCiを提供することができる。一部の実施形態では、放射性核種標識デンドリマーの患者への注射後、イメージング剤に組み込まれた核種のガンマ線エネルギーに関して較正したガンマカメラを使用して、作用剤の取り込みエリアをイメージングし、部位に存在する放射能の量を定量する。in vivoでの部位のイメージングは、ほんの数分で行うことができる。しかし、イメージングは、望ましければ放射標識デンドリマー組成物を患者に投与後、数時間またはそれより長い間で行うことができる。一部の実施形態では、投与される用量の十分量が、1時間の約0.1以内にイメージングされるエリアに蓄積して、シンチフォトを得ることを可能にする。
【0096】
本開示の放射線療法化合物の適当な投薬スケジュールは、当業者に公知である。化合物は、これらに限定されないが、1回または複数回のIVまたはIP注射を含む多くの方法を使用して、標的化された組織の損傷または切除を引き起こすために十分であるが、非標的(正常組織)に実質的な損傷を引き起こすほど多くはない放射能の量を使用して投与され得る。必要な量および線量は、使用される同位体のエネルギーおよび半減期、作用剤の取り込みの程度および体から排出される程度、ならびに標的組織の質量に応じて異なる構築物に関して異なる。一般的に、線量は、約30~50mCiの1回線量から、最大約3Ciの累積線量までの範囲であり得る。
【0097】
放射線療法組成物は、生理的に許容される緩衝液を含み得、注射前の化合物に対する放射線分解損傷を防止するために放射線安定剤を必要とし得る。放射線安定剤は、当業者に公知であり、例えばパラアミノ安息香酸、アスコルビン酸、ゲンチシン酸等を含み得る。
【0098】
追加の活性剤
一部の実施形態では、1つまたは複数の放射性核種と複合体を形成したまたはコンジュゲートしたデンドリマーは、1つまたは複数の活性剤とさらにコンジュゲートしている。例示的な追加の活性剤としては、治療剤、予防剤、または診断剤が挙げられる。
【0099】
デンドリマーは、複数の治療剤、予防剤、および/または診断剤を同じデンドリマーで送達することができるという利点を有する。したがって、1つまたは複数のタイプの活性剤を、デンドリマー/イメージング剤に封入する、それと複合体を形成する、またはそれにコンジュゲートすることができる。一実施形態では、デンドリマー/イメージング剤は、2つまたはそれより多くの異なるクラスの作用剤と複合体を形成するかまたはそれにコンジュゲートし、標的部位で異なるまたは独立した放出動態で同時送達を提供する。含まれる作用剤は、タンパク質またはペプチド、糖または炭水化物、核酸またはオリゴヌクレオチド、脂質、低分子(例えば、分子量2,500ダルトン未満、2,000ダルトン未満、または1,500ダルトン未満)であり得る。核酸は、タンパク質をコードするオリゴヌクレオチド、例えばDNA発現カセットまたはmRNAであり得る。代表的なオリゴヌクレオチドは、siRNA、マイクロRNA、DNA、およびRNAを含む。一部の実施形態では、追加の活性剤は、治療抗体である。
【0100】
例えば、一部の実施形態では、デンドリマー/イメージング剤は、少なくとも1つの追加の検出可能な部分および/または少なくとも1つの他のクラスの作用剤に共有結合により連結される。さらなる実施形態では、各々が異なるクラスの追加の作用剤を有するデンドリマー/イメージング剤複合体は、併用処置のために同時に投与される。
【0101】
デンドリマーの選択的標的化は、デンドリマーにコンジュゲートしていない同じ活性剤と比較して、同じ治療効果を達成するためにより少ない活性剤を投与することを可能にし、このように、活性剤に関連する用量関連細胞毒性および/または他の副作用を低減する。デンドリマーはまた、送達される1つまたは複数の追加の治療剤、予防剤、および/または診断剤の溶解度も増加させることができる。追加の活性剤の例としては、1つまたは複数の炎症性疾患または障害またはがんを処置するおよび防止するために有効性を有することが示されている治療剤が挙げられる。
【0102】
一部の実施形態では、追加の活性剤は、診断剤である。有用な追加の診断剤は、in vivoで投与し、その後検出することができる部分を含む。追加の作用剤は、例えば、非侵襲性および/またはin vivo可視化技術によって直接または間接的に検出を容易にする任意の部分であり得る。追加の診断剤の例としては、常磁性分子、蛍光化合物、磁気分子、x線イメージング剤、および造影媒体が挙げられる。他の好適な造影剤の例としては、放射線不透過性の気体または気体放出化合物が挙げられる。一部の実施形態では、デンドリマー複合体は、投与される組成物の場所を決定するために有用な作用剤、例えば蛍光タグ、および造影剤をさらに含む。例示的な診断剤としては、色素、蛍光色素、近赤外線色素、蛍光分子(蛍光色素およびフルオロフォアとしても知られる)、化学発光試薬(例えば、ルミノール)、生物発光試薬(例えば、ルシフェリンおよび緑色蛍光タンパク質(GFP))、金属(例えば、金ナノ粒子)、および放射性同位体(ラジオアイソトープ)が挙げられる。好適な検出可能な標識を、イメージング方法の選択に基づいて選択することができる。例えば、一部の実施形態では、追加の検出可能な標識は、光学イメージングのための近赤外線蛍光色素、MRIイメージングのためのガドリニウムキレート、またはCTイメージングのための金ナノ粒子である。
【0103】
一部の実施形態では、追加の作用剤は、イメージング剤と診断剤の両方、および/または治療剤である。一部の実施形態では、追加の作用剤は、タンタル化合物、有機ヨード酸、例えばヨードカルボン酸、トリヨードフェノール、ヨードホルムおよび/またはテトラヨードエチレン、非放射性の検出可能な作用剤、例えば非放射性同位体、例えば酸化鉄およびGd、酵素、フルオロフォア、および量子ドット(QDOT(登録商標))、リサミンローダミンPE、例えば可視色を付与することができるまたは可視波長または他の波長、例えば赤外線または紫外線で電磁放射線の特徴的なスペクトルを反映する蛍光または非蛍光染料または色素、例えば、ローダミン、強磁性化合物、常磁性化合部得、例えばガドリニウム、超常磁性化合物、例えば酸化鉄、および反磁性化合物、例えば硫酸バリウムである。
【0104】
一部の実施形態では、1つまたは複数の追加の活性剤は、所望の放出動態のためにデンドリマーとのコンジュゲーションを容易にするために、例えばエーテルまたはアミド連結によって、必要に応じて1つまたは複数のスペーサー/リンカーによって官能化される。一部の実施形態では、1つまたは複数の追加の活性剤は、例えばエーテルを介して、必要に応じて1つまたは複数のスペーサー/リンカーによって、デンドリマーコンジュゲートからin vivoで切断不能であるかまたはほとんど切断されないように官能化される。他の実施形態では、デンドリマーコンジュゲートを介して送達される1つまたは複数の追加の活性剤は、標的細胞、組織、領域において治療的に有効であるために有効な量で哺乳動物対象に投与後、少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、少なくとも1週間、2週間、または3週間、少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、または6ヶ月間、デンドリマー複合体から放出される。
【0105】
作用剤および/または標的化部分は、共有結合により付着させられる、または分子内に分散される、またはデンドリマーコンジュゲートに封入され得る。一部の実施形態では、1つまたは複数の放射性核種またはMRI造影剤にコンジュゲートしたデンドリマーは、ヒドロキシル末端を有する最大第10世代のデンドリマー、例えばPAMAMデンドリマーである。
【0106】
デンドリマー/作用剤複合体を作製するための方法
一部の態様では、本開示は、1つまたは複数のイメージング剤または診断剤と複合体を形成したまたはコンジュゲートしたデンドリマーを作製する方法を提供する。方法は、デンドリマーを、シンチグラフィー、SPECT、もしくはPETイメージングにとって適切な1つもしくは複数の放射性核種レポーター、1つもしくは複数のMRI造影剤、および/または放射線療法にとって適切な1つもしくは複数の放射性核種とコンジュゲートする。デンドリマーが診断イメージングにとって有用な第1の放射性核種および放射線療法にとって有用な第2の放射性核種とコンジュゲートしたデンドリマー複合体を作製する方法が具体的に企図され、一部の実施形態では、第1および/または第2の放射性核種(または、第1および/または第2の放射性核種の適切なキレーター)へのコンジュゲーションは、エーテル連結を介する。したがって、一部の実施形態では、単一のデンドリマー/放射性核種組成物が、体の1つまたは複数の場所で疾患または状態を同時に処置および/または診断することができる。同様に、好適な量の放射能を有する放射性標識SPECTまたはシンチグラフィーイメージング剤もまた開示される。
【0107】
デンドリマーを作製するための方法
デンドリマーは、購入するか、または多様な化学反応ステップを介して調製することができる。デンドリマーは通常、構築のあらゆる段階でその構造の制御を可能にする方法に従って合成される。樹状構造は、多くの場合、2つの主な異なるアプローチ、すなわち発散性および収束性アプローチによって合成される。
【0108】
デンドリマーを作製するための方法は、当業者に公知であり、一般的に中心の開始コア(例えば、エチレンジアミンコア)周囲に樹状のβ-アラニン単位の同心円のシェル(世代)を産生する2ステップ反復反応シーケンスを伴う。その後の各成長ステップは、より大きい分子直径を有し、反応性表面部位の数が2倍で、前の世代の分子量のほぼ倍であるポリマーの新しい「世代」を表す。使用に好適なデンドリマー足場は、多様な世代が市販されている。一部の実施形態では、デンドリマー組成物は、第0世代、第1世代、第2世代、第3世代、第4世代、第5世代、第6世代、第7世代、第8世代、第9世代、または第10世代デンドリマー足場に基づく。そのような足場はそれぞれ、4、8、16、32、64、128、256、512、1024、2048、および4096個の反応部位を有する。このように、これらの足場に基づくデンドリマー化合物は、リンカーを通して直接または間接的に、それに結合した作用剤または部分の最大の対応する数を有し得る。
【0109】
一部の実施形態では、デンドリマーは、デンドリマーが多機能コアからアセンブルされる異なる方法を使用して調製され、これは一連の反応、一般的にマイケル反応によって外側に伸長する。戦略は、反応基および保護基を保有するモノマー分子の多機能コア部分とのカップリングを伴い、これによってコア周囲に世代の段階的付加をもたらし、その後保護基が除去される。例えば、PAMAM-NHデンドリマーは、N-(2-アミノエチル)アクリルアミドモノマーをアンモニアコアにカップリングすることによって最初に合成される。
【0110】
他の実施形態では、デンドリマーは、収束方法を使用して調製され、この場合デンドリマーは球の表面で終わる低分子から構築され、反応は内向きに進行して内向きに構築し、最終的にコアに付着する。
【0111】
デンドリマーの調製のために多くの他の合成経路、例えば直交アプローチ、加速アプローチ、ダブルステージ収束法(Double-stage convergent method)、またはハイパーコアアプローチ(hypercore approach)、ハイパーモノマー法(hypermonomer method)、または分岐モノマーアプローチ、二重指数法(Double exponential method)、直交カップリング法、または2段階アプローチ、2モノマーアプローチ、AB-CDアプローチが存在する。
【0112】
一部の実施形態では、デンドリマーのコア、1つもしくは複数の分岐単位、1つもしくは複数のリンカー/スペーサー、および/または1つもしくは複数の表面基を、1つまたは複数の銅支援アジド-アルキン環化付加(CuAAC)、ディールスアルダー反応、チオール-エンおよびチオール-イン反応、ならびにアジド-アルキン反応(Arseneault M et al., Molecules. 2015 May 20;20 (5):9263-94)を用いるクリックケミストリーを介してさらなる官能基(分岐単位、リンカー/スペーサー、表面基等)、モノマー、および/または活性剤へのコンジュゲーションを可能にするように改変することができる。一部の実施形態では、事前に作製されたデンドロンを、高密度ヒドロキシルポリマー上にクリックする。「クリックケミストリー」は、例えば第1の部分の表面上のアルキン部分(またはその等価物)と、第2の部分のアジド部分(例えば、トリアジン組成物に存在する、またはその等価物)または任意の活性末端基(例えば、一級アミン末端基、ヒドロキシル末端基、カルボン酸末端基、チオール末端基等)との間の1,3-双極子環化付加反応を介した、2つの異なる部分(例えば、コア基と分岐単位;または分岐単位と表面基)のカップリングを伴う。
【0113】
一部の実施形態では、デンドリマー合成は、1つまたは複数の反応、例えばチオール-エンクリック反応、チオール-インクリック反応、CuAAC、ディールスアルダークリック反応、アジド-アルキンクリック反応、マイケル付加、エポキシ開環、エステル化、シランケミストリー、およびそれらの組合せに依存する。
【0114】
任意の既存の樹状プラットフォームを使用して、所望の官能性、すなわち高ヒドロキシル含有部分、例えば1-チオ-グリセロールまたはペンタエリスリトールをコンジュゲートすることによって高密度の表面ヒドロキシル基を有するデンドリマーを作製することができる。例示的な樹状プラットフォーム、例えばポリアミドアミン(PAMAM)、ポリ(プロピレンイミン)(PPI)、ポリ-L-リシン、メラミン、ポリ(エーテルヒドロキシルアミン)(PEHAM)、ポリ(エステルアミン)(PEA)、およびポリグリセロールを合成および探索することができる。
【0115】
デンドリマーはまた、2つまたはそれより多くのデンドロンを組み合わせることによって調製することもできる。デンドロンは、反応性のフォーカルポイント官能基を有するデンドリマーのくさび形状の部分である。多くのデンドロン足場が市販されている。それらは、第1世代、第2世代、第3世代、第4世代、第5世代、および第6世代に入り、それぞれ2、4、8、16、32、および64個の反応基を有する。ある特定の実施形態では、1つのタイプの活性剤が、1つのタイプのデンドロンに連結され、異なるタイプの活性剤が、別のタイプのデンドロンに連結される。次いで2つのデンドロンを接続してデンドリマーを形成する。2つのデンドロンを、1つのデンドロン上のアジド部分と別のデンドロン上のアルキン部分との間のクリックケミストリー、すなわち1,3-双極子環化付加反応を介して連結して、トリアゾールリンカーを形成することができる。
【0116】
デンドリマーを作製する例示的な方法は、国際特許公開WO2009/046446号、WO2015168347号、WO2016025745号、WO2016025741号、WO2019094952号、および米国特許第8,889,101号に詳細に記載されている。
【0117】
放射性核種および/またはMRI造影剤とのデンドリマー複合体
1つまたは複数の放射性核種またはMRI造影剤とのデンドリマー複合体を作製する方法を記載する。作用剤をデンドリマーにコンジュゲートする方法は当技術分野で公知であり、米国特許出願公開第2011/0034422号、同第2012/0003155号、および同第2013/0136697号に詳細に記載されている。
【0118】
作用剤のデンドリマーへの共有結合による付着に有用な反応および戦略は、当技術分野で公知である。例えば、March, "Advanced Organic Chemistry," 5th Edition, 2001, Wiley-Interscience Publication, New York)およびHermanson, "Bioconjugate Techniques," 1996, Elsevier Academic Press, U.S.Aを参照されたい。所定の活性剤の共有結合による付着のための適切な方法は、所望の連結部分、ならびに官能基の適合性に関連することから全体としての作用剤およびデンドリマーの構造、保護基戦略、および不安定な結合の存在を考慮して選択することができる。
【0119】
エーテル連結を介した放射性核種またはMRI造影剤へのデンドリマーのコンジュゲーション
同様に、放射性核種および/またはMRI造影剤を、エーテル連結を介して、必要に応じて1つまたは複数のリンカー/スペーサーを介してヒドロキシル末端デンドリマーに組み込む方法も提供される。
【0120】
一部の実施形態では、ヒドロキシル末端デンドリマーの表面基または末端基は、1つまたは複数のリンカー/スペーサーおよび1つまたは複数の活性剤(例えば、放射性核種またはMRI造影剤)へのコンジュゲーションの前にエーテル化反応を介して修飾される。エーテル化は、アルコールの脱水によりエーテルを形成することである。一部の実施形態では、ヒドロキシル末端デンドリマーの1つまたは複数のヒドロキシル基は、1つまたは複数の連結部分および1つまたは複数の活性剤へのコンジュゲーションの前にエーテル化反応を受ける。
【0121】
一実施形態では、エーテル連結は、実施例1に記載されるようにDMSO中の2%水酸化ナトリウム溶液の存在下で臭化プロパルギルと反応することによってヒドロキシルPAMAMデンドリマーの表面基に導入される(図1)。さらなる実施形態では、DMF中の臭化アリル、無水炭酸セシウム、およびヨウ化テトラブチルアンモニウムを使用する、第4世代ヒドロキシル末端PAMAMデンドリマー、PAMAM-G4-OHのエーテル化反応を実施例3に記載し、反応スキームを図3に示す。
【0122】
例示的な合成経路を図1および3に示す。18Fは、図1に化合物5として示されるヒドロキシル末端第4世代PAMAMデンドリマーにコンジュゲートし;89Zrは、図3で化合物5として示されるデンドリマーにコンジュゲートしたp-SCN-Bn-デフェロキサミン(DFO)を通してのキレート化を介してヒドロキシル末端第4世代PAMAMデンドリマーと複合体を形成する。
【0123】
医薬製剤
1つもしくは複数の放射性核種および/または1つもしくは複数のMRI造影剤、ならびに必要に応じて1つまたは複数の活性剤にコンジュゲートしたデンドリマーを含む医薬組成物は、薬学的に使用することができる調製物への活性化合物の加工処理を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理的に許容される担体を使用して、通常の様式で製剤化され得る。適当な製剤は、選択される投与経路に依存する。一部の実施形態では、組成物は、非経口送達のために製剤化される。一部の実施形態では、組成物は、皮下注射のために製剤化される。典型的に、組成物は、処置される組織または細胞への注射のために滅菌食塩水または緩衝溶液中で製剤化される。組成物は、使用直前の再湿潤化のために1回使用バイアル中で凍結乾燥して保存され得る。再湿潤化および投与の他の手段は、当業者に公知である。
【0124】
医薬製剤は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて1つまたは複数のデンドリマー/作用剤複合体を含有する。代表的な賦形剤としては、溶媒、希釈剤、pH改変剤、保存剤、抗酸化剤、懸濁化剤、湿潤剤、粘度調整剤、張度剤(tonicity agent)、安定化剤、およびそれらの組合せが挙げられる。好適な薬学的に許容される賦形剤は、一部の実施形態では、一般的に安全であると認識され(GRAS)、望ましくない生物学的副作用または不要な相互作用を引き起こすことなく個体に投与され得る材料から選択される。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2000, p. 704を参照されたい。
【0125】
一部の実施形態では、組成物は、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために投薬単位形態で製剤化される。「投薬単位形態」という語句は、処置される患者にとって適切なコンジュゲートの物理的に別個の単位を指す。しかし、組成物の全体で1回の投与が、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されると理解される。治療有効用量は最初に、細胞培養アッセイまたは動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌ、またはブタのいずれかにおいて推定することができる。動物モデルはまた、望ましい濃度範囲および投与経路を達成するためにも使用される。そしてそのような情報は、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定するために有用でなければならない。コンジュゲートの治療有効性および毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順、例えばED50(用量が、集団の50%において治療的に有効である)およびLD50(用量が、集団の50%に対して致死性である)によって決定することができる。毒性効果の治療効果に対する用量比が治療指数であり、これは、比LD50/ED50として表すことができる。大きい治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを使用して、ヒトで使用するためのある範囲の投薬量を製剤化することができる。
【0126】
非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内、または皮下注射)および経腸投与経路による投与のために製剤化された医薬組成物が記載される。
【0127】
非経口投与
「非経口投与」および「非経口投与される」という語句は、当技術分野で認識された用語であり、経腸および局部投与以外の投与様式、例えば注射を含み、これらに限定されないが、静脈内、筋肉内、胸膜内、血管内、心膜内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内(intrastemal)注射および注入を含む。デンドリマー組成物は、非経口に、例えば硬膜下、静脈内、髄腔内、脳室内、動脈内、羊水内、腹腔内、または皮下経路によって投与され得る。一部の実施形態では、デンドリマー組成物は、皮下注射を介して投与される。
【0128】
液体製剤の場合、薬学的に許容される担体は、例えば、水性または非水性溶液、懸濁物、エマルジョン、または油であり得る。非経口ビヒクル(皮下、静脈内、動脈内、または筋肉内注射のため)としては、例えば塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルおよび固定油が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および注射可能有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は、例えば食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、シクロデキストリン、エマルジョンまたは懸濁物を含む。デンドリマー組成物はまた、エマルジョン中で、例えば油中水エマルジョン中で投与することもできる。油の例は、石油、動物、植物、または合成起源の油、ワセリン、および鉱物である。非経口製剤における使用のための好適な脂肪酸としては、例えばオレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、好適な脂肪酸エステルの例である。
【0129】
非経口投与にとって好適な製剤は、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および保存剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁物を含み得る。静脈内ビヒクルは、流体および栄養補充剤、電解質補充剤、例えばリンゲルデキストロースに基づく補充剤を含み得る。一般的に、水、食塩水、水性デキストロース、および関連する糖溶液、ならびにプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に注射可能溶液のための液体担体の例である。
【0130】
注射可能組成物のための注射可能な薬学的担体は当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J.B. Lippincott Company, Philadelphia, PA, Banker and Chalmers, eds., pages 238-250 (1982)、およびASHP Handbook on Injectable Drugs, Trissel, 15th ed., pages 622-630 (2009)を参照されたい)。
【0131】
経腸投与
組成物を、経腸投与することができる。担体または希釈剤は、固体製剤のためのカプセル剤もしくは錠剤などの固体担体もしくは希釈剤、液体製剤のための液体担体もしくは希釈剤、またはそれらの混合物であり得る。
【0132】
液体製剤の場合、薬学的に許容される担体は、例えば水性または非水性溶液、懸濁物、エマルジョン、または油であり得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は、例えば食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、シクロデキストリン、エマルジョン、または懸濁物を含む。
【0133】
油の例は、石油、動物、植物、または合成起源の油、例えば落花生油、大豆油、鉱油、オリーブ油、ヒマワリ油、肝油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ、ワセリン、および鉱物である。非経口製剤における使用のために好適な脂肪酸は、例えばオレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸を含む。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、好適な脂肪酸エステルの例である。
【0134】
ビヒクルは、例えば、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルおよび固定油を含む。製剤は、例えば、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性および非水性の等張滅菌注射溶液、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および保存剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁物を含む。ビヒクルは、例えば流体および栄養補充剤、電解質補充剤、例えばリンゲルデキストロースに基づく補充剤を含み得る。一般的に、水、食塩水、水性デキストロース、および関連する糖溶液は、液体担体の例である。これらはまた、タンパク質、脂肪、糖、および幼児用処方物の他の構成要素と共に製剤化され得る。
【0135】
一部の実施形態では、組成物は経口投与のために製剤化される。経口製剤は、チューインガム、ゲルストリップ、錠剤、カプセル剤、またはトローチ剤の形態であり得る。腸溶コーティングされた経口製剤の調製のための封入物質は、酢酸フタル酸セルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびメタクリル酸エステルコポリマーを含む。ある特定の実施形態では、固体経口製剤、例えばカプセル剤または錠剤が提供される。エリキシル剤およびシロップ剤もまた、周知の経口製剤である。
【0136】
使用方法
1つもしくは複数の放射性核種または1つもしくは複数のMRIイメージング剤にコンジュゲートしたデンドリマーの組成物は、これらに限定されないが、診断、治療および分析適用を含むいくつかの適用にとって好適である。特に、デンドリマー組成物を対象に投与することによって、対象における1つまたは複数の炎症部位またはがんを同定および標識する方法が開示される。
【0137】
マクロファージ(Mφ)は、分極した活性化相を通して感染した組織の免疫応答において多くの重要な役割を果たす。活性化マクロファージ(Mφ*)は、主にM1(炎症促進性)およびM2(抗炎症性)マクロファージとして分類される。M1およびM2マクロファージの両方は、食作用の炎症性プロセス、抗原提示、およびスカベンジング活性(M1)ならびに創傷治癒および腫瘍成長(M2)のプロセスにとって重要な役割を有する。しかし、マクロファージの選択集団の直接標的化、すなわち非活性化マクロファージ(Mφ)と活性化マクロファージ(Mφ*)とを識別することは、難題である。
【0138】
1つもしくは複数の放射性核種または1つもしくは複数のMRIイメージング剤にコンジュゲートしたデンドリマーの組成物は、対象における特定の状況または状態、例えば、それを必要とする対象における関節リウマチなどの1つまたは複数の炎症疾患、脳性麻痺などの神経炎症、アルツハイマー病およびALSなどの神経変性障害、ならびにがんをin vivoで診断およびイメージングするために好適である。特に、本開示の方法および組成物は、炎症疾患、例えばアルツハイマー病、ALS、認知症、肝炎、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、およびがんを含む、活性化マクロファージに関連する1つまたは複数の疾患または状態を診断する、イメージングする、および/または処置するために好適である。
【0139】
炎症領域の検出およびイメージング
1つもしくは複数の放射性核種または1つもしくは複数のMRIイメージング剤にコンジュゲートしたデンドリマーを使用して炎症をイメージングする方法を説明する。方法は、デンドリマーコンジュゲートの有効量を、炎症および/またはがんに関連する疾患または障害を有する対象に投与することを含む。一部の実施形態では、デンドリマーは、in vivoでの安定性の増強のために、エーテル連結を介して1つもしくは複数の放射性核種または1つもしくは複数のMRIイメージング剤にコンジュゲートしている。
【0140】
一部の実施形態では、方法は、全身性のウイルスおよび/または細菌感染症、全身性の炎症応答症候群、敗血症、または敗血症ショックに関連する炎症の1つまたは複数の領域をイメージングするために好適である。一部の実施形態では、方法はマクロファージ活性化症候群を含むマクロファージ活性化の任意の機構によって引き起こされる炎症の1つまたは複数の領域をイメージングするために好適である。一部の実施形態では、方法は、神経炎症を含む多臓器機能障害に関連する炎症の1つまたは複数の領域をイメージングするために好適である。一部の実施形態では、方法は、過剰反応性のM1マクロファージならびに/または炎症促進性マーカー、例えばIL-6、CRP、フェリチン、およびIL-1bの上昇に関連する炎症の1つまたは複数の領域をイメージングするために好適である。一部の実施形態では、方法は、サイトカインストームによって特徴付けられる炎症の1つまたは複数の領域をイメージングするために好適である。
【0141】
自己免疫または炎症疾患
1つまたは複数の自己免疫または炎症疾患または障害に関連する炎症をイメージングおよび/または診断するために、1つもしくは複数の放射性核種または1つもしくは複数のMRIイメージング剤にコンジュゲートしたデンドリマーを使用する方法を説明する。例示的な自己免疫または炎症疾患または障害としては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊髄炎(anklosing spondylitis)、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群(alps)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労症候群免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素病、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、円板状狼瘡、本態性混合クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、グレーヴス病、ギランバレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少症紫斑病(ITP)、Iga腎症、インスリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群(polyglancular syndromes)、リウマチ性多発筋痛症、多発筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、血管炎、白斑、ならびにウェゲナー肉芽腫症が挙げられる。
【0142】
一部の実施形態では、炎症は、活動性炎症、組織破壊、および組織修復の試みを伴う、長期にわたる調節不全の非適応性応答である慢性炎症である。持続性の炎症は、アレルギー、アテローム性動脈硬化症、がん、関節炎、および自己免疫疾患を含む多くの慢性的なヒトの状態および疾患に関連する。
【0143】
神経炎症
神経炎症をイメージングおよび/または診断するために1つもしくは複数の放射性核種または1つもしくは複数のMRIイメージング剤にコンジュゲートしたデンドリマーを使用する方法もまた説明する。
【0144】
活性化ミクログリアおよび星細胞によって媒介される神経炎症は、様々な神経障害の主な特徴であり、これによって潜在的治療標的となる(Hagberg, H et al., Annals of Neurology 2012, 71, 444; Vargas, DL et al., Annals of Neurology 2005, 57, 67;およびPardo, CA et al., International Review of Psychiatry 2005, 17, 485)。複数の科学的報告が、これらの細胞を標的化することによって早期に神経炎症を軽減することが、疾患の発生を遅らせることができ、次に処置のためのより長い治療ウィンドウを提供することができることを示唆している(Dommergues, MA et al., Neuroscience 2003, 121, 619; Perry, VH et al., Nat Rev Neurol 2010, 6, 193; Kannan, S et al., Sci. Transl. Med. 2012, 4, 130ra46;およびBlock, ML et al., Nat Rev Neurosci 2007, 8, 57)。血液脳関門を越える活性剤の送達は、難しい課題である。神経炎症は、血液脳関門(BBB)の破壊を引き起こす。神経炎症障害における損傷したBBBを利用して、薬物を負荷したナノ粒子を脳全体に輸送することができる(Stolp, HB et al., Cardiovascular Psychiatry and Neurology 2011, 2011, 10;およびAhishali, B et al., International Journal of Neuroscience 2005, 115, 151)。
【0145】
組成物および方法を使用して、イメージング/診断剤を、神経疾患または神経変性疾患または障害、または中枢神経系障害に関連する神経炎症部位に送達することができる。一部の実施形態では、組成物および方法は、神経炎症に関連する活性化マクロファージにPETイメージングプローブを選択的に送達するために有効である。例えば、組成物および方法を使用して、疾患または障害、例えばパーキンソン病(PD)およびPD関連障害、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)および他の認知症、プリオン病、例えばクロイツフェルトヤコブ病、皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、HIV-関連認知機能障害、軽度認知障害、運動ニューロン疾患(MND)、脊髄小脳運動失調(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、フリードライヒ運動失調、レビー小体病、アルパース病、バッテン病、脳-眼-顔-骨格症候群、皮質基底核変性症、ゲルストマン-シュトラウスラー-シャインカー病、クールー、リー病、単肢性筋萎縮症(Monomelic Amyotrophy)、多系統萎縮症、起立性低血圧を伴う多系統萎縮症(シャイ-ドレーガー症候群)、多発性硬化症(MS)、脳鉄蓄積を伴う神経変性、オプソクロヌスミオクローヌス、後部皮質萎縮症、原発性進行性失語症、進行性核上性麻痺、血管性認知症、進行性多巣性白質脳症、レビー小体型認知症(DLB)、ラクナ症候群、水頭症、ウェルニッケ-コルサコフ症候群、脳炎後認知症、がんおよび化学療法に関連する認知障害および認知症、ならびにうつ病誘発性認知症および偽性認知症を有する対象をイメージングする、診断する、および/または処置することができる。
【0146】
一部の実施形態では、本開示の方法および組成物は、対象における1つまたは複数の神経炎症部位をイメージングするために使用することができ、1つまたは複数の神経炎症部位は、神経変性障害、例えばアルツハイマー病またはALSに関連する。一部の実施形態では、本開示の方法および組成物は、神経変性障害、例えばアルツハイマー病またはALSをイメージングするおよび/または処置するために使用することができる。本発明者らは、本開示の標識デンドリマーが、初期アルツハイマープラークを有するマウスの皮質および海馬における神経炎症を検出したが、TSPO放射性トレーサーは、これらのマウスにおいて神経炎症を検出できなかったことを実証した(実施例7)。神経炎症モデルにおけるTSPO放射性トレーサーと比較した標識デンドリマーの感度および選択性の改善は、神経変性障害に関連する神経炎症部位を検出するためのイメージング剤としての標識デンドリマーの有効性を実証している。
【0147】
一部の実施形態では、障害は、神経細胞を遮蔽するミエリン鞘の成長または維持に対する有害効果によって特徴付けられるペルオキシソーム障害または白質ジストロフィーである。白質ジストロフィーは、例えばミエリン塩基性タンパク質の欠損を伴う18q症候群、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、急性播種性白質脳炎、急性出血性白質脳症、X連鎖性副腎白質ジストロフィー(ALD)、副腎脊髄ニューロパチー(AMN)、エカルディ-グティエール症候群、アレクサンダー病、成人発症常染色体優性白質ジストロフィー(ADLD)、神経軸索スフェロイドを伴う常染色体優性びまん性白質脳症(HDLS)、常染色体優性遅発性白質脳症、びまん性CNS髄鞘形成不全を伴う小児運動失調(CACHまたは白質消失病)、カナバン病、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、脳腱黄色腫症(CTX)、白質脳症を伴う頭蓋骨幹端異形成(Craniometaphysical Dysplasia)、RNASET2を伴う嚢胞性白質脳症、臨床症状のない広範囲の大脳白質異常、小脳失調症および認知症として現れる家族性成人発症白質ジストロフィー、成人発症型認知症と異常な糖脂質貯蔵を伴う家族性白質ジストロフィー、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病)、慢性進行性多発性硬化症に類似の遺伝性成人発症白質ジストロフィー、大脳基底核および小脳の萎縮を伴う髄鞘形成不全(HABC)、髄鞘形成不全、低ゴナドトロピン症、性腺機能低下症および歯数不足(4H症候群)、白質ジストロフィーを伴う脂肪膜性骨異形成(Lipomembranous Osteodysplasia)(那須病)、異染性白質ジストロフィー(MLD)、皮質下嚢胞を持つ大頭型白質ジストロフィー(MLC)、軸索スフェロイドを伴う神経軸索白質脳症(スフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症-HDLS)、新生児副腎白質ジストロフィー(NALD)、脳白質異常を伴う眼歯指異形成(Oculodetatoldigital Dysplasia)、色素性グリアを伴う正染性白質ジストロフィー、卵巣白質ジストロフィー症候群、ペリツェウス-メルツバッハー病(X連鎖性痙性対麻痺)、レフサム病、シェーグレン-ラーセン症候群、ズダン好性白質ジストロフィー、ファンデルクナープ症候群(皮質下嚢胞またはMLCを伴う空胞性白質ジストロフィー)、白質消失病(VWM)または中枢神経系のびまん性髄鞘形成不全を伴う小児運動失調症、(CACH)、X連鎖副腎白質ジストロフィー(X-ALD)、およびツェルヴェーガー症候群を含むツェルヴェーガースペクトラム障害、新生児副腎白質ジストロフィー、乳児レフサム病、脳幹および脊髄の病変および乳酸上昇を伴う白質脳症(LBSL)、またはDARS2白質脳症であり得る。一部の実施形態では、白質ジストロフィーは、副腎白質ジストロフィー(ALD)(X連鎖型ALDを含む)、異染性白質ジストロフィー(MLD)、クラッベ病(グロボイド細胞白質ジストロフィー)、またはDARS2白質脳症である。
【0148】
一部の実施形態では、対象は、興奮毒性障害を有する。興奮毒性は、神経細胞が過剰刺激されるために損傷を受けるようになるプロセスである。卒中、外傷性脳傷害、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、および脊髄傷害を含むいくつかの状態が興奮毒性に関連している。神経細胞に対する損傷は、どの細胞が損傷を受けたか、および損傷がどの程度広範であるかに応じて変動し得る対応する神経症状をもたらす。このように、一部の実施形態では、デンドリマー/作用剤複合体は、1つまたは複数の興奮毒性障害をイメージングまたは診断するために使用される。
【0149】
一部の実施形態では、組成物および方法を使用して、イメージング/診断剤を神経炎症、特にミクログリア媒介神経炎症の部位に送達することができる。一部の実施形態では、障害は、非適応性神経炎症、例えば外傷性脳傷害後の非適応性炎症である。
【0150】
in vivoでのがんの検出、イメージング、および/または処置
がんおよび/または転移性がんをイメージングする、診断する、および/または処置する方法であって、有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法もまた提供する。同様に、対象におけるがんおよび/または転移性がんの局在化における使用のための本開示のデンドリマー組成物のいずれかも開示する。
【0151】
組成物および方法は、対象における腫瘍の成長を遅らせるもしくは阻害すること、腫瘍の成長もしくはサイズを低減すること、腫瘍の転移を阻害もしくは低減すること、および/または腫瘍の発達もしくは成長に関連する症状を阻害もしくは低減することによって、良性または悪性腫瘍を有する対象をイメージングする、診断する、および/または処置するために有用である。
【0152】
一部の実施形態では、エーテル連結を介して1つもしくは複数の放射性核種または1つもしくは複数のMIR造影剤にコンジュゲートしたデンドリマーは、陽電子放出断層撮影(PET)によるがんのイメージングのために使用される。がんのイメージングのための例示的なPETイメージング剤としては、18F(フッ素-18)、89Zr(ジルコニウム-89)、90Y(イットリウム-90)、および177Lu(ルテニウム-177)が挙げられる。がんのイメージングのための例示的なMRIイメージング剤としては、Gd、Mn、BaSO、酸化鉄、および鉄白金が挙げられる。
【0153】
診断および/または処置され得る悪性腫瘍は、腫瘍が由来する組織の胚起源に従って分類される。癌腫は、内胚葉または外胚葉組織、例えば皮膚または内部臓器の上皮内層および腺から生じる腫瘍である。組成物は、癌腫をイメージングする、診断する、および/または処置するために特に有効である。より発生頻度が低い肉腫は、中胚葉結合組織、例えば骨、脂肪、および軟骨に由来する。白血病およびリンパ腫は、骨髄の造血細胞の悪性腫瘍である。白血病は単細胞として増殖するが、リンパ腫は腫瘍塊として成長する傾向がある。悪性腫瘍は、体の複数の臓器または組織で現れて、がんを確立し得る。
【0154】
提供される組成物および方法によって診断する、イメージングする、および/または処置することができるがんのタイプとしては、これらに限定されないが、がん、例えば血管のがん、例えば多発性骨髄腫、骨、膀胱、脳、乳房、子宮頸部、結腸直腸、食道、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭(nasopharangeal)、膵臓、前立腺、皮膚、胃、および子宮の腺癌および肉腫が挙げられる。一部の実施形態では、組成物は、複数のがんタイプを同時に処置するために使用される。組成物はまた、複数の場所における転移または腫瘍を処置するためにも使用することができる。
【0155】
例示的な腫瘍細胞としては、がん、例えば白血病、例えばこれらに限定されないが、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、例えば骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病 白血病および骨髄異形成症候群、慢性白血病、例えばこれらに限定されないが、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ球性白血病、ヘアリーセル白血病;真性赤血球増加症;リンパ腫、例えばこれらに限定されないが、ホジキン病、非ホジキン病;多発性骨髄腫、例えばこれらに限定されないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞白血病、孤立性形質細胞腫および髄外形質細胞腫;ワルデンストレームマクログロブリン血症;意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症;良性単クローン性高ガンマグロブリン血症;重鎖病;骨および結合組織肉腫、例えばこれらに限定されないが、骨の肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫瘍、骨の線維肉腫、脊索腫、骨膜性骨肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(angiosarcoma)(血管肉腫(hemangiosarcoma))、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫;脳腫瘍、例えばこれらに限定されないが、神経膠腫、星細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、乏突起神経膠腫、非グリア腫瘍、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽腫、原発性脳リンパ腫;乳がん、例えばこれらに限定されないが、腺癌、小葉(小細胞)癌、腺管内癌、髄様乳がん(medullary breast cancer)、粘液性乳がん、乳腺管状がん、乳頭乳がん、ページェット病、および炎症性乳がん;副腎がん、例えばこれらに限定されないが、褐色細胞腫(pheochromocytom)および副腎皮質癌;甲状腺がん、例えばこれらに限定されないが、甲状腺乳頭がんまたは甲状腺濾胞がん、甲状腺髄様がんおよび未分化甲状腺がん;膵臓がん、例えばこれらに限定されないが、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、およびカルチノイドまたは島細胞腫瘍;下垂体がん、例えばこれらに限定されないが、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症、および尿崩症;眼のがん、例えばこれらに限定されないが、眼内黒色腫、例えば虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫、および毛様体黒色腫、および網膜芽細胞腫;膣がん、例えばこれらに限定されないが、扁平上皮癌、腺癌、および黒色腫;外陰がん、例えばこれらに限定されないが、扁平上皮癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、およびページェット病;子宮頸がん、例えばこれらに限定されないが、扁平上皮癌、および腺癌;子宮がん、例えばこれらに限定されないが、子宮内膜癌および子宮肉腫;卵巣がん、例えばこれらに限定されないが、卵巣上皮癌、境界腫瘍、胚細胞腫瘍、および間質腫瘍;食道がん、例えばこれらに限定されないが、扁平上皮がん、腺癌、腺様嚢胞癌、粘液性類表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、疣贅癌、および燕麦細胞(小細胞)癌;胃がん、例えばこれらに限定されないが、腺癌、腫瘤形成性(fungating)(ポリープ状)、潰瘍形成性、表層拡大型、びまん性拡大型、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および癌肉腫;結腸がん;直腸がん;肝臓がん、例えばこれらに限定されないが、肝細胞癌および肝芽腫、胆嚢がん、例えばこれらに限定されないが、腺癌;胆管癌、例えばこれらに限定されないが、乳頭状、結節性、およびびまん性;肺がん、例えばこれらに限定されないが、非小細胞肺がん、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌および小細胞肺がん;精巣がん、例えばこれらに限定されないが、胚腫瘍、セミノーマ、未分化型、古典的(典型的)、精母細胞性(spermatocytic)、非セミノーマ、胚性癌、奇形腫癌、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)、前立腺がん、例えばこれらに限定されないが、腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫;陰茎がん(penal cancers);口腔がん、例えばこれらに限定されないが、扁平上皮癌;基底がん;唾液腺がん、例えばこれらに限定されないが、腺癌、粘液性類表皮癌、および腺様嚢胞癌;咽頭がん、例えばこれらに限定されないが、扁平上皮がん、および疣贅;皮膚がん、例えばこれらに限定されないが、基底細胞癌、扁平上皮癌、および黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節型黒色腫、悪性黒子黒色腫(lentigo malignant melanoma)、末端部黒子黒色腫;腎臓がん、例えばこれらに限定されないが、腎細胞がん、腺癌、グラヴィッツ腫瘍、線維肉腫、移行細胞がん(腎盂および/または尿管(uterer));ウィルムス腫瘍;膀胱がん、例えばこれらに限定されないが、移行細胞癌、扁平上皮がん、腺癌、癌肉腫の腫瘍細胞が挙げられる。
【0156】
一部の実施形態では、処置される対象は、1つまたは複数の固形腫瘍を有する対象である。固形腫瘍は、通常、嚢エリアも液体エリアも含有しない組織の異常な塊である。固形腫瘍は良性(がんではない)または悪性(がん)であり得る。固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫、およびリンパ腫である。一部の実施形態では、組成物および方法は、皮膚、肺、肝臓、膵臓、脳、腎臓、乳房、前立腺、結腸、および直腸、膀胱等のがんの1つまたは複数の症状を処置するために有効である。さらなる実施形態では、腫瘍は、限局性リンパ腫または濾胞性リンパ腫である。
【0157】
一部の実施形態では、処置される対象は、任意のタイプの固形腫瘍または脳転移を有する対象である。固形腫瘍は、体内の臓器におけるがん様組織において形成される。例示的な臓器としては、これらに限定されないが、脳、乳房、肺、膵臓、腎臓、肝臓、前立腺、卵巣、肺、甲状腺、および下垂体が挙げられる。脳転移は、体の別の領域(例えば、肺または乳房)を起源とする悪性(がん)細胞が、脳に侵入して、固形腫瘍塊を形成する疾患である。
【0158】
放射性医薬品治療
放射性医薬品治療(RPT)は、多くのタイプのがんを処置するための安全かつ有効な標的化アプローチとして出現している。組成物および方法は、腫瘍領域における標的化された細胞に放射線を特異的に送達するために有用である。一部の実施形態では、エーテル連結を介して1つまたは複数の放射性核種にコンジュゲートしたデンドリマーは、がんを処置することにおいて放射性医薬品治療のために使用される。好適な放射性核種は、β粒子およびα粒子放射体の両方を含む。放射性医薬品治療のための例示的な放射性核種としては、18F(フッ素-18)、89Zr(ジルコニウム-89)、90Y(イットリウム-90)、131I(ヨウ素-131)、153Sm(サマリウム-153)、166Ho、177Lu(ルテニウム-177)、レニウム-186、211At、212Pb、223Ra(ラジウム-223)、225Ac、および227Thが挙げられる。
【0159】
腫瘍細胞は、免疫抑制機構を利用し、強い免疫抑制性の腫瘍微小環境(TME)を確立し、これは抗腫瘍免疫応答を阻害し、疾患進行を支持する。がん関連線維芽細胞、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、制御性T細胞(Treg)、および腫瘍関連マクロファージ(TAM)を含む多くの細胞タイプが、免疫抑制性TMEの生成に寄与すると考えられている。一部の実施形態では、デンドリマー/放射性核種は、腫瘍領域における1つまたは複数の反応性免疫細胞に特異的に送達される。一部の実施形態では、デンドリマー/放射性核種は、がん関連線維芽細胞、MDSC、Treg、および/またはTAMに特異的に送達される。
【0160】
したがって、腫瘍部位での1つまたは複数の反応性免疫細胞を枯渇させる、阻害する、または低減する方法を説明する。例示的な反応性免疫細胞としては、腫瘍許容性および免疫抑制性の免疫細胞、例えば、TAMおよびMDSCが挙げられる。腫瘍組織でのTAMおよび/またはMDSCの1つまたは複数に放射線療法を選択的に送達することによって、対象における腫瘍組織での腫瘍関連マクロファージ(TAM、またはM2様マクロファージ)および/またはMDSCを枯渇させる、阻害する、または低減する方法を説明する。方法は、腫瘍組織でのTAMおよび/またはMDSCを枯渇させる、阻害する、またはそれらの量を低減するために有効な量の1つまたは複数の放射性核種を含むデンドリマー複合体を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、方法は、放射線療法を腫瘍部位に送達し、標的細胞ならびに周辺の腫瘍細胞を殺滅する、枯渇させる、または低減させるために有効である。
【0161】
一部の実施形態では、放射性核種標識デンドリマーは、さらに1つまたは複数の抗腫瘍薬にコンジュゲートしている。例示的な抗腫瘍薬としては、STINGアゴニスト、CSF1R阻害剤、PARP阻害剤、VEGFRチロシンキナーゼ阻害剤、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤、MEK阻害剤、グルタミナーゼ阻害剤、TIE IIアンタゴニスト、およびCXCR2阻害剤が挙げられる。
【0162】
例示的な抗腫瘍薬としてはまた、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、エキセメスタン、エトポシド、エピルビシン、オキサリプラチン、オクトレオチド、カペシタビン、カルボプラチン、カルモフール、クラドリビン、クラリスロマイシン、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、シクロホスファミド、シスプラチン、シタラビン、ジノスタチン、セツキシマブ、タモキシフェン、ダウノルビシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、テガフール、トポテカン、トレミフェン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドセタキセル、ニムスチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、ネダプラチン、ピラルビシン、フルオロウラシル、フルタミド、ブレオマイシン、ファドロゾール、マイトマイシン、フルダラビン、プレドニゾン、ペントスタチン、ミトキサントロン、メドロキシプロゲステロン、メルカプトプリン、ミトタン、ジノスタチン、ラパマイシン、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、およびミゾリビンも挙げられる。
【0163】
他の例示的な抗腫瘍薬としては、EGFR、ERBB2、VEGFR、Kit、PDGFR、ABL、SRC、およびmTORの1つまたは複数を標的化する阻害剤が挙げられる。一部の実施形態では、1つまたは複数の抗腫瘍薬は、阻害剤、例えばクリゾチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、ブリガチニブ、ボスチニブ、ダサチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、イブルチニブ、パルボシクリブ、ソラフェニブ、リボシクリブ、カボザンチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ルキソリチニブ、トファシチニブ、トラメチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、バンデタニブ、ダコミチニブ、およびポナチニブである。一部の実施形態では、1つまたは複数の抗腫瘍薬は、チロシンキナーゼ阻害剤、例えばHER2阻害剤、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤である。例示的なEGFRチロシンキナーゼ阻害剤としては、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ダコミチニブ、およびオシメルチニブが挙げられる。
【0164】
さらなる例示的な抗腫瘍薬としては、抗血管新生剤、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)に対する抗体、例えばベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))およびrhuFAb V2(ラニビズマブ、LUCENTIS(登録商標))、および他の抗VEGF化合物、例えばアフリベルセプト(EYLEA(登録商標));MACUGEN(登録商標)(ペガプタニブナトリウム(pegaptanim sodium)、抗VEGFアプタマーまたはEYE001)(Eyetech Pharmaceuticals);色素上皮由来因子(複数可)(PEDF);COX-2阻害剤、例えばセレコキシブ(CELEBREX(登録商標))およびロフェコキシブ(VIOXX(登録商標));インターフェロンアルファ;インターロイキン-12(IL-12);サリドマイド(THALOMID(登録商標))およびその誘導体、例えばレナリドミド(REVLIMID(登録商標));スクアラミン;エンドスタチン;アンジオスタチン;リボザイム阻害剤、例えばANGIOZYME(登録商標)(Sirna Therapeutics);多機能抗血管新生剤、例えばNEOVASTAT(登録商標)(AE-941)(Aeterna Laboratories、Quebec City、Canada);受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤、例えばスニチニブ(SUTENT(登録商標));チロシンキナーゼ阻害剤、例えばソラフェニブ(Nexavar(登録商標))およびエルロチニブ(Tarceva(登録商標));上皮増殖因子受容体に対する抗体、例えばパニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))およびセツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、ならびに当技術分野で公知の他の抗血管新生剤が挙げられる。
【0165】
対照
必要に応じて1つまたは複数の追加の活性剤を含むデンドリマー/作用剤組成物の効果を、対照と比較することができる。好適な対照は、当技術分野で公知であり、例えば、無処置対象、またはプラセボ処置対象を含む。典型的な対照は、標的化された作用剤の投与前および投与後の対象の状態または症状の比較である。状態または症状は、生化学的、分子的、生理学的、または病理学的読み出しであり得る。例えば、デンドリマー/作用剤組成物の、特定の症状、薬理学的、または生理学的指標に対する効果を、無処置対象または処置前の対象の状態と比較することができる。一部の実施形態では、症状、薬理学的、または生理学的指標は、処置前の対象において測定され、処置の開始後、再度1回または複数回測定される。一部の実施形態では、対照は、処置される疾患または状態を有しない1つまたは複数の対象(例えば、健康な対象)における症状、薬理学的、または生理学的指標を測定することに基づいて決定された参照レベルまたは平均値である。一部の実施形態では、処置の効果を、当技術分野で公知の従来の処置と比較する。一部の実施形態では、無処置対照の対象は、処置対象と同じ疾患または状態に罹患している。
【0166】
投薬量および有効量
投薬量および投薬レジメンは、障害もしくは状態の重症度および場所、ならびに/または投与方法に依存し、当業者によって決定され得る。
【0167】
一部の実施形態では、活性剤は、疾患を有する/損傷した組織内ではなく、それに関連もしない健康な細胞を標的にしたり、それ以外の方法で健康な細胞の活性も量もモジュレートしたりしないか、または炎症に関連する細胞もしくは腫瘍領域の細胞と比較して低減されたレベルでモジュレートする。このようにして、組成物に関連する副産物および他の副作用が低減される。
【0168】
デンドリマー組成物の治療有効量および薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤を含む医薬組成物を説明する。一部の実施形態では、医薬組成物は、1つまたは複数の放射性核種にコンジュゲートしたヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーの有効量を含む。放射線療法またはイメージング線量は、最適な線量範囲を決定するために、多様な程度の炎症および/または腫瘍サイズを有する対象の臨床試験から決定される。
【0169】
デンドリマー組成物を含む医薬組成物の投薬形態もまた提供する。「投薬形態」は、患者に投与されることが意図されるカプセルまたはバイアルなどの、治療化合物の用量の物理的形態を指す。「投薬単位」という用語は、1回用量で患者に投与される治療化合物の量を指す。
【0170】
デンドリマー複合体の実際の有効量は、投与される特定の活性剤、製剤化される特定の組成物、投与様式、ならびに処置される対象の年齢、体重、状態、ならびに投与経路および疾患または障害を含む要因に応じて変動し得る。一部の実施形態では、対象はヒトである。一般的に、投薬量は、静脈内注射または注入の場合はより低くなり得る。
【0171】
一般的に、投与のタイミングおよび頻度は、所定の処置の有効性または診断スケジュールと所定の送達系の副作用とのバランスを取るように調整される。例示的な投薬頻度は、連続注入、1回および複数回投与、例えば毎時間、毎日、毎週、毎月、または毎年の投薬を含む。
【0172】
一部の実施形態では、デンドリマー組成物の投薬量は、毎日1回、2回、または3回または1日おきに、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、または6日毎にヒトに投与される。一部の実施形態では、投薬量は、毎週、2週間毎、3週間毎、または4週間毎に約1回または2回投与される。一部の実施形態では、投薬量は、1ヶ月毎、2ヶ月毎、3ヶ月毎、4ヶ月毎、5ヶ月毎、または6ヶ月毎に約1回または2回投与される。
【0173】
投薬レジメンが、対象における障害を処置するために十分な任意の長さの期間であり得ることは当業者によって理解されるであろう。一部の実施形態では、レジメンは、1つまたは複数の治療ラウンドのサイクル後に休薬日(例えば、薬物なし)を含む。休薬日は、1、2、3、4、5、6、もしくは7日間;または1、2、3、4週間、または1、2、3、4、5、もしくは6ヶ月間であり得る。
【0174】
キット
組成物をキットに包装することができる。キットは、デンドリマーに封入された、それと会合した、またはそれにコンジュゲートした1つまたは複数の放射性核種を含む組成物の単一用量または複数用量、および組成物を投与するための指示を含み得る。具体的には、指示は、有効量の組成物が、示される特定の状態/疾患を有する個体に投与されることを指示する。組成物は、特定の処置方法を参照して上記のように製剤化することができ、任意の簡便な様式で包装することができる。
【0175】
組成物は、複合体を調製するために必要な構成要素の全てを含有する単一のバイアルまたは複数バイアルのキットに包装することができる。一部の実施形態では、複数バイアルのキットは、同じ一般的構成要素を含有するが、放射性医薬品を復元することにおいて1つより多くのバイアルを用いる。バイアルの内容物を凍結乾燥することが有利である。
【0176】
キットはまた、凍結乾燥プロセスを助けるように設計された安定剤、増量剤、例えばマンニトール、および当業者に公知の他の添加剤を含有し得る。
【0177】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照してさらに理解される。
【実施例
【0178】
(実施例1)
2つの合成経路を介した18F標識デンドリマーの合成および特徴付け
18Fデンドリマー(すなわち、図1に示す化合物5)を、2つの化学経路のいずれかを使用することによって合成する。両方の経路に関して、第1の合成ステップは、デンドリマーの表面上に10~12個のアセチレン基を有するアルキン末端デンドリマー2の合成である。図1に示すように、第4世代PAMAMデンドリマーを例示的なデンドリマーとして使用して、合成経路を例証する。簡単に説明すると、化合物2を、DMSO中の2%水酸化ナトリウム溶液の存在下で臭化プロパルギルと反応させることによってヒドロキシルPAMAMデンドリマー(化合物1)を部分的に修飾することによって合成する。溶液を室温で一晩撹拌した。反応の完了時、pHを、飽和塩化アンモニウムによっておよそ7に調整し、接線流濾過(TFF)を実施して生成物を精製した。
【0179】
アセチレンデンドリマー(化合物2)を、H NMRを使用して特徴付け、ここでδ8.05~7.70ppmの間の内部アミドピークは参照ピークである。O-CH-アセチレンに対応する鋭いピークがδ4.13ppmに存在し、プロトン積分法により、プロパルギル基の10~12アームのデンドリマーへの付加が示された。HPLCクロマトグラムは、開始G4-OHデンドリマーからの保持時間のシフトを示し、デンドリマー(化合物2)のピークは12.6分で観察された。次のステップでは、3-アジドプロピル4-メチルベンゼンスルホネート(化合物3)を、銅触媒クリックケミストリーを使用して化合物(2)にクリックして、化合物(4)を得た。クリック反応は、無水DMFの存在下、CuBrおよびN,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミンを使用して2時間撹拌することによって実施した。化合物(4)を、水中でのTFFを使用して速やかに精製した。遊離の銅塩の除去のためにEDTA洗浄も行った。再度、反応の完了を、H NMRおよびHPLCを通してモニターした。H NMRは、化合物(3)の8~10個の分子の付着を明らかにした。δ7.49ppmで化合物(3)からの芳香族CHに対応する多重線、および4.37ppmでクリック反応後に形成されたO-CHトリアゾールに対応するピークが観察された。デンドリマーの内部アミドプロトン、トリアゾールプロトン、およびトシル基からのArプロトンは、δ8.05~7.70の間に出現した。化合物(4)のHPLCクロマトグラムは、化合物(3)と比較して疎水性領域に向かう右シフトを示し、19.1分で出現した(データは示していない)。次に、トシル基のコールドのフッ素交換を、DMSO中のフッ化カリウム、クリプタンド222、および無水炭酸カリウムを使用して100℃で実施した。反応を30分間実施し、速やかな精製を通して生成物を回収した。H NMRでは、δ7.49ppmでのトシル基に対応するプロトンは完全に消失し、トシル基の次に存在するO-CHもδ4.40ppmで低磁場側にシフトしたが、これはフッ素交換後に予想される。コールドのフッ素デンドリマー(5)の保持時間は再度、HPLCにおいて12分で親水性領域に向かってシフトした。
【0180】
他の合成経路を使用して、化合物3を最初に18Fによって標識してフルオロ(18)-プロピルアジド(3a)を得た後、これをデンドリマー2でクリックして最終的なデンドリマー化合物5を得た。全ての中間体および最終の放射標識デンドリマーを十分に特徴付ける。
【0181】
(実施例2)
コールドのフッ素化デンドリマーの血漿中安定性試験
生理的温度での血漿中のフッ素化デンドリマーの安定性を評価した。フッ素化デンドリマーを、マウス血漿に1mg/mlの濃度で溶解し、血漿溶液を37℃でインキュベートした。様々な時点、0時間(対照)、2時間、5時間、および8時間で、フッ素化デンドリマーの血漿試料(1ml)を、Amicon分子量カットオフフィルター(3kDa)によって遠心分離によって分離した。上清を収集し、イオンクロマトグラフィー(IC)によってそのフッ素含有量に関して分析し、NHFを、標準物質として使用した。各時点での上清中のフッ素のパーセンテージを、上清中のF-に基づいて計算し、フッ素化デンドリマーのフッ素の全量を計算した。
【0182】
脱フッ素化(上清中のフッ素の変化)は、マウス血漿中、37℃で8時間のインキュベーション後にフッ素化デンドリマーから観察されず(図2)、高度に安定なフッ素化デンドリマーコンジュゲートを示している。
【0183】
(実施例3)
89Zr-標識デンドリマーの合成および特徴付け
D-デフェロキサミン-89Zr標識デンドリマー5の合成(図3)に関して、第4世代ヒドロキシル末端PAMAMデンドリマー、PAMAM-G4-OH(1)から合成を開始し、DMF中の臭化アリル、無水炭酸セシウム、およびヨウ化テトラブチルアンモニウムを使用して、室温でエーテル化を実施した。反応を室温で一晩撹拌した。完了時、反応混合物を、TFFを実施することによって精製し、その後凍結乾燥した。H NMRは、9~10個のアリル基アームがデンドリマーに付着した化合物2の形成を確認した。H NMRは、δ5.85~5.73でアリル基に対応する-CHの、およびδ5.15ppmでCHの多重線を示した。化合物(2)の純度を、HPLCを使用して評価し、ピークは7.9分で現れ、純度は>98%であった。次のステップの間に、光化学チオール-エンクリックを使用して、システアミンを反マルコフニコフ的にアリル基周囲に付加した。反応を、無水DMF中で実施し、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンを反応の光開始剤として使用した。反応を365nmのUV光の下で8時間実施した。完了時、DMFを蒸発させ、TFFを実施して化合物D-アミン(3)を精製した。再度、反応をH NMRおよびHPLCを使用してモニターした。H NMRにおけるアリルピークの完全な消失により、反応が首尾よく完了したことが確認された。H NMRは、δ1.6ppmでチオール挿入後に創出された-CHピークを示した。アミン末端デンドリマー(3)の準備ができた後、これをDMSO中のp-SCN-Bn-デフェロキサミン(DFO)とカップリングさせた。カップリングをpH7.5で撹拌しながら一晩実施した。生成物の形成を再度、H NMRによってチェックし、デフェロキサミンピークがコンジュゲーション後NMRに出現した。DFOのN-アセチルピークは、δ1.97で出現し、DFOからの-CHピークは、δ1.65~1.15ppmで出現した。プロトン積分法を適用して、DFOの最終的な負荷を計算したところ、9~10個の分子が、デンドリマーに付着していることが見出された(化合物4)。DFO分子を付着させると、デンドリマー-DFO(4)に対応するHPLCピークは、13.1分で疎水性側にシフトした。最後のステップは、シュウ酸ジルコニウムを用いてホットの89Zrによって放射標識することであり、ここでホットのZr分子は、DFOアームでキレート化されて、化合物5が得られる。このキレート化反応は、HEPES緩衝液、pH7.4で実施する。シュウ酸溶液中の89Zr(オキサレート)を最初にNaCOによって中和した後、DFO-デンドリマー(化合物4)と共にインキュベートする。放射標識反応を、撹拌ヒートブロック上、室温で60分間実施する。放射標識が達成された後、反応のクエンチングをDTPAの50mM溶液によって行う。放射標識デンドリマー(化合物5)を、HPLCまたはPD-10カラムによって精製する。最終構築物の安定性を、生理的条件下、マウスおよびヒト血漿中で評価する。
【0184】
(実施例4)
ジルコニウムのデンドリマー-DFOへのキレート化
デンドリマー-DFOコンジュゲートにおけるジルコニウムのキレート化を実施し、キレート化の成功を、HPLC、NMR、およびICPを使用して評価した。Zrキレート化が、首尾よく達成されたことは、3つ全ての技術によって確認された。HPLCの結果は、Zr-DFO-デンドリマーの極性がD4-DFOよりも増加すること、およびピークがキレート化後により広くなることを示した。
【0185】
デンドリマー-DFO-Zr複合体を、H NMRによってさらに分析し、これはキレート化の結果としてその限定的な運動性によりDFOプロトンが存在しないことを示すことによって、DFOプロトンのZrとの相互作用を明白に明らかにした。
【0186】
Zrキレート化はまた、誘導結合プラズマ(ICP)を介しても確認された。ジルコニウム標準溶液を、5%硝酸(微量金属)溶液による市販のZr標準物質(998±3ppm)の連続希釈から作製した。濃度0.1ppm、0.5ppm、1ppm、5ppm、10ppm、20ppm、50ppm、および100ppmの標準物質溶液を較正のために調製した。Zr-DFO-デンドリマー(1mg)を、10mlの5%硝酸に溶解し、ICP測定のために使用した。DFO/デンドリマーの比は、10~11/1であるが、Zr/デンドリマーは、ICP測定により13/1である。
【0187】
(実施例5)
Zr標識デンドリマーのin vitro血漿中安定性
Zr標識デンドリマーの生理的温度でのin vitro血漿中安定性を評価した。Zr-DFO-デンドリマーを、ヒトまたはマウス血漿中に2mg/mlの濃度で溶解し、37℃でインキュベートした。様々な時点、例えば、0時間(対照)、4時間、24時間、48時間、および7日目で、Zr-DFO-デンドリマー血漿試料(1ml)を、Amicon分子量カットオフフィルター(3kDa)によって遠心分離によって分離した。遊離のZr4+を含有する上清を収集し、ICP解析のために5%硝酸によって希釈した(10倍)。血漿上清中のZr4+濃度を、ICP機器のソフトウェアによって標準較正曲線に基づいて計算した。各時点でのZr4+の放出パーセンテージを、上清中のZr4+およびデンドリマー-DFO-Zrコンジュゲート中のZrの全量に基づいて計算した。血漿中で72時間インキュベーション後に2%未満のZr放出が観察され、デンドリマー-DFO-Zrコンジュゲートの高度に安定な性質を示唆している(図4)。
【0188】
プロパルギルアームを、非常に穏やかな条件(2%水酸化ナトリウム)を使用してデンドリマーに導入したが、手順全体は非常に再現性がよく、容易である。開発された合成プロセスは、大規模合成にとって高度に適応性である。
【0189】
(実施例6)
抗腫瘍薬にコンジュゲートした90Y標識デンドリマーの合成
90Y標識ヒドロキシルデンドリマーの合成
90イットリウム標識ヒドロキシルデンドリマーの構築のために、デンドリマー-アセチレン(化合物1)から合成を開始し、これを、硫酸銅およびアスコルビン酸ナトリウムの存在下で銅触媒クリックを使用してアジド-PEG-アミンでクリックした(図5)。デンドリマー(化合物2)を、接線流濾過を使用して精製し、凍結乾燥した。HPLCおよびH NMRの助けを借りて特徴付けを行った。アミン官能化デンドリマー(化合物2)の準備ができると、これを、DMSO中で1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸モノ-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(DOTA-NHS)とpH7.5でさらに反応させて、DOTAの8~10アームがデンドリマーに付着したデンドリマー-DOTA(化合物3)を得た。最終ステップでは、デンドリマー-DOTAを、pH6.5~7.5の酢酸アンモニウム緩衝液中でホットのイットリウムと反応させることによって90Y-標識デンドリマー(化合物4)に変換した。90Y標識デンドリマーを、PD-10カラムまたは放射性-HPLCを使用して精製した。
【0190】
90Y標識デンドリマー-抗腫瘍薬の組合せの合成
いくつかの前臨床試験から、免疫療法および/または化学療法を放射線療法と組み合わせることは、処置有効性の相乗的増強にとって有望な戦略であり得ることは明らかである。多価性の存在により、デンドリマーは、複数の構成要素(薬物、放射性核種、イメージング、およびリガンド)を、高い再現性および純度で単一のデンドリマーに正確に導入することができる潜在的ツールとして役立つ。放射線療法および抗腫瘍薬を、相乗効果を有するように同じデンドリマー構築物において組み合わせる。その方向に向かって、図6は、放射性核種および抗腫瘍薬の両方をデンドリマーにコンジュゲートするための合成スキームを概説し:最初にデンドリマー(化合物1)上の5~6個のアセチレンアームを使用して薬物を付着させ、アームの残りを使用してDOTAを付着させる。最後のステップでは、ホットの放射性核種が、DOTA標識デンドリマー-薬物コンジュゲートにおいて複合体を形成する。
【0191】
(実施例7)
リポ多糖誘導敗血症および神経変性疾患のマウスモデルにおける非適応性神経炎症のイメージングのための18F標識デンドリマー
骨髄系細胞、例えば反応性マクロファージおよびミクログリア、ならびに自然免疫応答の他の構成要素は、多くの神経変性疾患の発生および進行において重要な役割を果たしている。PETイメージングは、脳および末梢における炎症を可視化および定量するための非侵襲性の方法を提供するが(Jain, P. et al., JNM. 2020, 62 (8)1107-1112)、現在の至適標準的なPETトレーサーであるTSPOは、マクロファージ活性を特異的にイメージングしない。
【0192】
OP-801は、合成PAMAMヒドロキシルデンドリマーであり、炎症の存在下でBBBを通過し、反応性ミクログリアおよびマクロファージによって選択的に取り込まれる(>95%)。全身投与後、これらのヒドロキシルデンドリマー(いかなるリガンドも抗体も必要としない)は、神経炎症の存在下で血液脳関門を通過し、反応性ミクログリア/マクロファージおよび星細胞を選択的に標的とし、健康な脳および組織にはほとんど取り込まれない。蛍光標識デンドリマーは、神経炎症を有する動物における反応性ミクログリアにおいて首尾よく測定される。これらのヒドロキシルデンドリマーは、試験動物において反応性ミクログリアによって選択的にエンドサイトーシスを受け、このことは全身用量の投与後4時間以内にデンドリマーを含有する反応性ミクログリアが>95%であることによって実証される。図7Aに示されるように、反応性ミクログリアにおけるヒドロキシルデンドリマーの取り込みの程度は、神経炎症の程度と相関し、様々な重症度の急性神経炎症モデルにおいて定量的に評価されている。これらの非臨床試験は、スーパーオキシドジスムターゼ1遺伝子変異を有するALSマウスモデル(ALS(SOD1マウス))を試験することを含む。
【0193】
本試験は、反応性ミクログリアを標的とする最初のヒドロキシルデンドリマーに基づくPETトレーサーを開発することを目的としており、リポ多糖(LPS)誘導敗血症のマウスモデルにおける軽微な炎症を検出するその潜在性を評価する。
【0194】
方法
5xFADトランスジェニックマウスモデルにおいて、7ヶ月齢のマウスに、Cy5標識とコンジュゲートしたG4ヒドロキシルデンドリマーをIV投与した。マウスを投薬後48時間で屠殺し、食塩水によって灌流した。脳の組織学は、ベータアミロイドプラーク周囲の反応性ミクログリアによるヒドロキシルデンドリマーの選択的取り込みを示したが、乏突起膠細胞またはニューロンによる検出可能な取り込みはなく、図7Bに実証されるように正常なミクログリアによる検出可能な取り込みはない。正常なミクログリアと比較して反応性ミクログリアに関する選択性の程度は、OP-801が、正常および反応性のミクログリアおよび星細胞の両方に存在するトランスロケータータンパク質(TSPO)などのタンパク質発現に基づく現行のイメージングアプローチよりも、神経炎症領域に対してより選択的であることを示唆している。
【0195】
組織学所見をin vivo分子イメージングアプローチに変換するために、ヒドロキシルデンドリマーを、図1に示すように2ステップアジドフッ素化およびCu触媒クリック反応を介して放射標識し、18F標識ヒドロキシルデンドリマー(図1の化合物10、18F-OP-801とも呼ばれる)を得た。生成物を、SECを使用して注射のために製剤化し、マウスあたり150~250μCi(5~10ngの18F-OP-801)を、10mg/kg LPS(n=6)または食塩水(n=5)の腹腔内注射による投与の24時間後に注射した。血漿中安定性を、注射後60分(n=4)および150分(n=4)で評価した。60分間の動的PET画像を獲得し、25~35分間または50~60分間の計数をビニングすることによって静的画像を取得した。非常に低いマウス敗血症スコアを有するLPSマウス2匹を分析から除外した(Shrum, B. et al., BMC Res Notes. 2014, 7 (233))。イメージング後、マウスを灌流し、臓器を解剖した;ガンマカウンターを使用して、放射能を測定した。脳内のトレーサーの分布を、オートラジオグラフィーおよび矢状脳切片のニッスル染色を使用して評価した。成体雌性マウスを全ての試験に使用した。
【0196】
結果
図7Cおよび7Dに示すように、正常(食塩水)マウスは、18F-OP-801を腎臓から膀胱へと急速に排出し、健康なヒトボランティアに投与した別のD4ヒドロキシルデンドリマーの結果(データは示していない)と一致した。これに対し、LPS処置マウスは、腹腔全体を通しておよび脳内の18F-OP-801の顕著な取り込みを有し、炎症の程度と相関した。LPSは、一般的に18F-OP-801およびヒドロキシルデンドリマーの標的であるマクロファージおよびミクログリアの活性化を引き起こす。
【0197】
合計50~60分間の静的PET画像は、複合MSSスコア(R=0.94)での18F-OP-801取り込みの直線的な増加を明らかにした。動的画像時間放射能曲線は、最適な静的イメージング時間が、18F-OP-801の注射後25~60分の間であることを示した(図7E)。合計50~60分間のPET画像の脳アトラス解析から、取り込みが、LPSおよび食塩水処置マウスの間で、皮質、髄質、嗅球、および橋において大幅(p<0.05)に異なったことが示された(図7F)。海馬の取り込みは、25~35分間の静的画像によって実証されるように、LPS処置マウスと食塩水処置マウスの間で大幅に異なった(p=0.045)(図7Gおよび7H)。ex vivo生体分布データおよびPETは、以下にさらに詳しく記載されるように、LPS(n=4) 対 食塩水(n=5)マウスにおいて類似の取り込みパターンを示した(図7I)。
【0198】
潜在的線量制限臓器(すなわち、放射線量測定)を決定するために、マウスにおける18F-OP-801生体分布のイメージングに基づく評価およびex vivoガンマ計数を実施した。簡単に説明すると、18F-OP-801(150~250μCi)を、健康な雌性C57BL/6マウス(n=30)に静脈内投与した。マウス4匹を各時点:5、15、30、60、90、270分で灌流なしで安楽死させた。臓器を解剖し、秤量し、ガンマカウンターに入れて放射能を測定した。画像に基づく線量測定試験に関して、60分間の動的PET/CTイメージングを、健康な雄性(n=5)および健康な雌性(n=3)C57BL/6マウスにおいて行い、その後90分、および270分で5分間の静的スキャンを行った。関心領域(ROI)を、各画像における臓器の上に手動で描いて、各構造内の放射能を定量した。これらのデータ(雄性マウスの臓器の画像に基づく定量および雌性マウスの画像+ガンマカウンターに基づく定量)を、推定のヒト%ID/gに変換し、OLINDAに入力した。健康な対照雌性マウスの予備的なPETイメージングに基づいて、線量制限臓器は、腎臓および膀胱であると予想される(図7I)。これらの結果は、ガンマ計数生体分布試験によって裏付けられた。肝臓(2.7±2.20食塩水 対 35.2±35.14LPS%ID/g、p=0.032)、肺(2.9±4.34 対 36.4±27.27%ID/g、p=0.032)、および脾臓(2.0±1.60 対 26.2±20.98%ID/g、p=0.016)を含む、増加した免疫応答を有すると予想される臓器において有意差が観察された。
【0199】
オートラジオグラフィーの結果は、PET画像からの脳取り込みを裏付けた(図7J)。50~60分PETからの全脳におけるLPS MSSスコア 対 %ID/gのプロットを、線形回帰および95%信頼区間と共に図7Kに示す。これらの結果は、18F-OP-801などのヒドロキシルデンドリマーを使用して、全身炎症ならびに神経炎症を選択的にイメージングする能力を示している。
【0200】
血漿中安定性および線量測定もまた、マウスにおいて行った。健康なマウスにおける18F-OP-801のex vivo血漿中安定性を、注射後60分および150分で評価した(n=4/群)。血漿中安定性は、雌性マウスにおいて150分後、平均で>95%であった(図7L)。
【0201】
要約すると、本試験は、標識ヒドロキシルデンドリマーが、ALSおよびアルツハイマーの患者のイメージングを含む、非適応性炎症の非侵襲性分子イメージングに関して極めて高い潜在能を有する非常に特異的なPETトレーサーであることを示している。
【0202】
18F-OP-801が神経変性疾患における神経炎症をイメージングする能力をさらに評価するために、5xFADトランスジェニックマウスモデルを使用した。5xFADトランスジェニックマウス(B6SJL-Tg(APPSwFlLon,PSEN1*M146L *L286V)6799Vas)は、ヒトAPPおよびPSEN1トランスジーンを発現し、生後数ヶ月以内にアミロイドプラークを生じさせるが、TSPO PET放射性トレーサーによる以前の試験は、高親和性TPSO放射性トレーサー18F-GE180によっておよそ6ヶ月齢(約26週齢)で神経炎症を検出することができるに過ぎなかった。5xFAD雌性マウスおよび年齢をマッチさせた対照を、3.75ヶ月齢で使用してTPSO放射性トレーサー18F-GE180と比較して18F-OP-801を評価した。18F-OP-801(150~250μCi)を、3.75ヶ月齢の野生型(n=7)および5xFAD雌性マウス(n=12)にIVボーラスとして注射した。18F-GE180(150~250μCi)を、3.75ヶ月齢の5xFADトランスジェニック(n=5)および野生型(n=4)雌性マウスに投与した。10分間の静的PET/CT画像を、注射後50~60分で獲得した。VivoQuant脳アトラスをCT画像の上に重ねて、PETに登録して、特定の脳領域における取り込みを定量した。18F-OP-801は、野生型マウスと比較して5xFADマウスにおいて3倍高いPETシグナルを生じたが、18F-GE180は、5xFADマウスと野生型対照の間で最小のPETシグナルの差を提供した(図7Mおよび7N;表1)。
表1: 3.75ヶ月齢で18F-OP-801または18F-GE180のいずれかによって処置した5xFADマウスにおけるアミロイド病態を提示することが公知の脳の領域におけるトランスジェニック(TG)の野生型(WT)に対する比(シグナル対バックグラウンド比と等価である)の比較
【表1】
【0203】
18F-OP-801を5ヶ月齢のマウスに投与すると、野生型対照と比較して5xFADマウスにおいて4倍高いPETシグナルが観察された(図7O;表2)。5ヶ月では、5xFADトランスジェニック(TG)マウスと野生型(WT)マウスとの間に、皮質(p=0.005)(TG:0.26±0.095SUV、WT:0.11±0.041SUV)、海馬(p=0.017)(TG:0.18±0.065SUV、WT:0.10±0.026SUV)および全脳(p=0.004)(TG:0.20±0.082SUV、WT:0.10±0.039SUV)における18F-OP-801取り込みの有意差が観察された。まとめると、これらの結果は、18F-OP-801が、TSPO PET放射性トレーサーのより低い選択性と比較してその優れた選択性により、高い感度で初期神経炎症を検出することができること、および経時的に神経炎症の進行に関する情報を提供することを実証する。
表2: 5ヶ月齢で18F-OP-801によって処置した5xFADマウスにおいてアミロイド病態を提示することが公知の脳の領域におけるトランスジェニック(TG)の野生型(WT)に対する比(シグナル対バックグラウンド比と等価である)
【表2】
【0204】
Sprague DawleyラットにおけるGLP毒物学試験を、イメージング処置から計画されるヒト用量曝露を再現するために、1回用量(1日目)として投与される予想されるヒト質量用量に対して1000倍より高い安全性係数でOP-801(コールド)によって行った(表3)。GLP試験を、Charles River Laboratoriesにおいて、群あたり10匹の雄性および10匹の雌性Sprague Dawleyラットによって行った。試験群は、ビヒクル対照、1日目に投与した低用量、中用量、および高用量のOP-801(コールド)を含んだ。1群あたり性別あたり5匹のラットを2日目および13日目に安楽死させた。標準的な組織および肉眼的病変の全てのセットに関する臨床病理学、肉眼での剖検、および組織学を、屠殺後各試験動物について行った。追加のラット(群あたり性別あたり6匹)を、毒物動態に関して評価した。毒物動態解析は、AIT Biosciencesが、ラット血漿中のOP-801を検出するために、検証されたLC/MS法を使用して行った。
表3: OP-801の1回用量ラットGLP毒物学試験設計(試験3101-011)
【表3】
エンドポイント-GLPラット試験
・死亡率のチェック(毎日、午前および午後)。
・臨床観察(投薬後1および4時間)および非投薬日に毎日。
・体重(毎日)。
・飼料消費量(毎日)。
・眼科検査(処置前、15日の終了前)。
・剖検および肉眼での所見の記録(2、9、および15日目)。
・臓器の重量。
・組織病理学。
・全ての対照および高用量動物からの組織ならびにより低い用量群からの肉眼的病変および標的臓器の包括的リスト。
・毒物動態(1日目および8日目の投薬後)。
【0205】
(実施例8)
正所性マウス多形性神経膠芽腫モデルにおける腫瘍の標的化イメージングのためのヒドロキシルデンドリマーに基づくSPECTイメージング剤、111In-D6-B483
ヒドロキシルデンドリマー(HD)は、正所性多形性神経膠芽腫(GBM)の動物モデルにおいて抗体より優れた選択性で腫瘍関連マクロファージおよびミクログリア(TAM)によって取り込まれる。111In-D6-B483、すなわち表面ヒドロキシル基に付着した共有結合的に連結したDOTAを有するHDを開発する最初の試みは、マウスモデルにおいて正所性GBMを標的化する潜在能を示したが、臨床での使用のためにはさらなる最適化を必要とした(Liaw et al, Bioeng Transl Med 2020; 5 (2): 1-12 (https://doi.org/10.1002/btm2.10160); Cleland et al, Cancer Res 2020; 80 (16 Suppl): Abstract 679; Cleland et al, Clin Cancer Res 2021; 27 (8Suppl): Abstract PO-097)。
【0206】
GBMをイメージングするための現在のアプローチは、神経膠腫の状態を診断および等級付けるために磁気共鳴画像法(MRI)に依存している。111In-D6-B483は、神経膠腫の重症度と相関し得るTAM関与の程度を定量するための潜在能を有する。加えて、D6-B483を、111Inの代わりに90Yを使用する放射線療法のために使用してもよい。HDは、1回投与後最大1ヶ月間TAMにおいて保持されることが観察され、全身曝露による放射線の局所リザーバーを提供する(全身クリアランスは2日以内である)。
【0207】
方法:D6-B483の合成は、2つの反応ステップで達成された。最初の合成ステップの間に、デンドリマーの部分的プロパルギル化が、水素化ナトリウムおよび臭化プロパルギルを使用して達成された。第2のステップでは、アジド末端DOTAを、プロパルギルデンドリマーに付着させてD-B483を得た。図8は、111In-D6-B483の合成に使用したスキームおよび反応条件の例を示す。Cy5標識デンドリマーの合成のために、デンドリマーにおける1~2個のプロパルギル官能基をCy5アジドと反応させて、Cy5-D6-B483を得た。2~3または8~10個のDOTAのいずれかを有するCy5標識D6-B483(10mg/kg)を、マウスにIV投与した。マウス(3匹/時点)を、投薬後15分、4、24、48、および96時間で屠殺した。Cy5-D6-B483の量を、組織ホモジナイゼーションおよび抽出後に腎臓および肝臓において測定した(Liao 2020)。D6-B483を、85℃に加熱した111InClと混合して、73%の標識効率を得た。膜遠心分離システム(3kDaカットオフ)を使用して、生成物の緩衝液を交換して遊離の111Inを除去し、PBS中で注射のために製剤化した。最終生成物は、放射化学純度96%を有した。
【0208】
111In-D6-B483の選択的取り込みを脳および固形腫瘍において評価した。20匹の雌性マウスに、10個のGL-261-luc2細胞を、定位頭蓋内(IC)手術によって移植した。脳腫瘍サイズおよび場所を、生物発光(BLI)によって測定して、腫瘍が投薬前に15~60mmの間であることを確認した。8匹のマウスの別個の群に10個のGL-261-luc2細胞を皮下(SC)に移植し、腫瘍が125~350mm(キャリパー測定)の間になったら投薬した。全てのマウスに111In-D6-B483(約230μCi、45μg)の1回IV用量を与え、SPECT/CT画像を投薬後3~6、24、48、72、および96時間で得た。結果の例を図9Aに示す。最終の屠殺後24時間以内に、組織のガンマ計数を実施した。
【0209】
結果:HDは、動物およびヒトにおいて腎臓から分泌され、肝臓への取り込みは最小であることが以前に実証されている(Lesniak et al, Mol. Pharmaceutics 1013; 10: 4560-4571)。2~3個のDOTAを有するD6-B483は、8~10個のDOTAを有するD6-B483よりも肝臓に対する曝露が少なく、腎臓に対する曝露は同等であった。マウス血清中での4日までの111In-D6-B483の安定性は、親の90%よりも高かった。生物発光イメージングを使用して12匹のIC腫瘍および4匹のSC腫瘍を有するマウスを試験に登録した。SPECT/CTイメージングは、反対側の脳におけるおよそ1%ID/gと比較して、IC腫瘍およびSC腫瘍において111In-D6-B483の比較的高い取り込みを示した(図9Bに示すように、それぞれ、およそ15%ID/gおよび8%ID/g)。
【0210】
結論:111In-D6-B483は、脳腫瘍の非侵襲性イメージングのための標的化された非常に選択的なSPECTトレーサーであり、HD取り込みおよび対応するTAM関与の正確な定量を可能にする。111In-D6-B483は、現在、GBMおよび脳転移患者において第I相試験のために開発中である。
【0211】
大きい腫瘍(図10)および小さい腫瘍(図11)における111In-D6-B483の局在化もまた評価した。大きい腫瘍を、クライオ蛍光断層撮影(CFT)によってイメージングし、これは48時間後にCy5-D6-B483の局在化を示した(腫瘍サイズ:47mm)(図10、左のパネル)。111In-D6-B483を使用して、48時間後に大きい腫瘍(腫瘍サイズ:61mm)をイメージングした場合、腫瘍/反対側の比=8:1が見出された(図10、右のパネル)。小さい腫瘍もまた、クライオ蛍光断層撮影(CFT)を使用してイメージングし、Cy5-D6-B483の局在化が48時間で観察された(腫瘍サイズ:6mm)(図11、左のパネル)。111In-D6-B483をまた使用して、48時間後の腫瘍(腫瘍サイズ:9mm)をイメージングし、小さい腫瘍を検出する高い感度を示した(図11、右のパネル)。
【0212】
当業者は、単なる通常の実験を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されると意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図7-5】
図7-6】
図7-7】
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】