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特表2023-549094環状炭化水素の酸化触媒を用いた線状炭化水素二重酸の製造方法
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  • 特表-環状炭化水素の酸化触媒を用いた線状炭化水素二重酸の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】環状炭化水素の酸化触媒を用いた線状炭化水素二重酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/31 20060101AFI20231115BHJP
   C07C 55/14 20060101ALI20231115BHJP
   C07C 55/21 20060101ALI20231115BHJP
   B01J 27/198 20060101ALI20231115BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20231115BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231115BHJP
【FI】
C07C51/31
C07C55/14
C07C55/21
B01J27/198 Z
B01J23/889 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526331
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 KR2021015305
(87)【国際公開番号】W WO2022092851
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0143258
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514074957
【氏名又は名称】コリア・アドバンスト・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ ウ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジェイル
(72)【発明者】
【氏名】イ ウォンヒョン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BC54A
4G169BC54B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169CB07
4G169CB38
4G169DA05
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC46
4H006BA12
4H006BA16
4H006BA20
4H006BA30
4H006BA35
4H006BA60
4H006BC10
4H006BC11
4H039CA65
4H039CC30
4H039CH70
(57)【要約】
本発明は、環状炭化水素の酸化触媒を用いた炭化水素二重酸の製造方法に関し、バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒および/または酸化マンガンコバルトをベースとする触媒の存在下で、シクロヘキサン-シクロヘキサノン混合物の酸化反応に用い、アジピン酸をシクロドデカン-シクロドデカノンの混合物の酸化反応に用いて、ドデカンジオン酸の環境汚染の問題を解決するとともに、高収率で生産することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒もしくは酸化マンガンコバルトをベースとする触媒、またはこれらの混合物の存在下で、C6~C12のシクロアルカンおよびC6~C12のシクロケトンからなる群より選ばれる1種以上の環炭化水素化合物を酸化するステップを含む、炭化水素二重酸の製造方法。
【請求項2】
前記シクロアルカンがシクロヘキサンであるか、前記シクロケトンがシクロヘキサノンであり、前記炭化水素二重酸は、アジピン酸であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素二重酸の製造方法。
【請求項3】
前記シクロアルカンがシクロドデカンであるか、前記シクロケトンがシクロドデカノンであり、前記炭化水素二重酸は、ドデカンジオン酸であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素二重酸の製造方法。
【請求項4】
前記シクロアルカンがシクロヘキサンおよびシクロドデカンであるか、前記シクロケトンがシクロヘキサノンおよびシクロドデカノンであり、前記炭化水素二重酸は、アジピン酸およびドデカンジオン酸であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素二重酸の製造方法。
【請求項5】
(a)バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒もしくは酸化マンガンコバルトをベースとする触媒、またはこれらの混合物の存在下で、シクロヘキサンとシクロヘキサノンとの混合物を酸化してアジピン酸を得るステップ;および
(b)バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒もしくは酸化マンガンコバルトをベースとする触媒、またはこれらの混合物の存在下で、シクロドデカンとシクロドデカノンとの混合物を酸化してドデカンジオン酸を得るステップ;
を含む、請求項1に記載の炭化水素二重酸の製造方法。
【請求項6】
前記バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒、または酸化マンガンコバルトをベースとする触媒が、メソポーラスシリカ支持体に担持されたものであることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素二重酸の製造方法。
【請求項7】
前記バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒が、VOPO・2HO、(VO)、またはVOPO・2HOと(VO)との混合物であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素二重酸の製造方法。
【請求項8】
前記酸化マンガンコバルトをベースとする触媒におけるマンガン:コバルトのモル比が、2:0.5~2:4であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素二重酸の製造方法。
【請求項9】
前記バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒もしくは酸化マンガンコバルトをベースとする触媒、またはこれらの混合物の注入量が、前記環炭化水素化合物の質量に対して0.02~2%の質量比であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素二重酸の製造方法。
【請求項10】
前記酸化は、10~40barの圧力および120~250℃の温度で、酸素雰囲気下で2~15時間行われることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素二重酸の製造方法。
【請求項11】
前記シクロヘキサンとシクロヘキサノンとの混合物におけるシクロヘキサノンの含有量が、シクロヘキサンの5~150%(モル比)であることを特徴とする請求項5に記載の炭化水素二重酸の製造方法。
【請求項12】
前記シクロドデカンとシクロドデカノンとの混合物におけるシクロドデカノンの含有量が、シクロドデカンの10~300%(モル比)であることを特徴とする請求項5に記載の炭化水素二重酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状炭化水素の酸化触媒を用いた線状炭化水素二重酸の製造方法に関し、より詳しくは、バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒および/または酸化マンガンコバルトをベースとする触媒の存在下で、C6~C12シクロアルカンおよび/またはC6~C12シクロケトンの環状炭化水素化合物を酸化することによって、亜酸化窒素を発生することなく、アジピン酸とドデカンジオン酸などの線状炭化水素二重酸を高収率で生産できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
6個の炭素からなるジカルボン酸であるアジピン酸は、ナイロン-6,6ポリアミドの原料であって、1930年代にDupont社から商業的に生産を開始した以来、その生産方法が開発および改善し続けてきた。現在、商業的にアジピン酸を生成する反応は、その反応物として、シクロヘキサンを用いる。酸素を用いてシクロヘキサンを一次的に酸化すると、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンとの混合物が得られ、硝酸を用いてこれをさらに酸化すると、最終的にアジピン酸が得られる。しかし、このとき、副産物として亜酸化窒素がともに生成されるが、これはそのまま排出される場合、成層圏に上昇してオゾン層を破壊する温室効果ガスとなる。そのため、亜酸化窒素を分離する追加の工程が必要とされ、これはアジピン酸の生成の経済性を低下させる要因となる。また、シクロヘキサンからアジピン酸が生成されるには、シクロヘキサンの環構造が切断されなければならないが、シクロヘキサンは安定な物質であるため、アジピン酸まで酸化が進行しないことが多く、シクロヘキサンの転化率およびアジピン酸の選択度が低下するというデメリットも存在する。
【0003】
ドデカンジオン酸の場合、12個の炭素からなるジカルボン酸であって、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンなどの高分子製品の核心原料として使用される。ドデカンジオン酸の製造は、シクロドデカンを反応物として用いる化学的製造と、バイオ廃棄物を用いる生物学的製造とに大別される。このとき、化学的製造方法の場合、中間物質であるシクロドデカノンの酸化にもまた硝酸が用いられる。
【0004】
そのため、酸化剤として硝酸を用いることなく、環状炭化水素を酸化する方法に関する研究が多く行われてきた。A. Mazzi et al.は、セリウムオキシド支持体に担持したVPO触媒を用いて、シクロヘキサンを酸化し、触媒支持体によって反応性が変わることを示しているが(A. Mazzi, S. Paul, F. Cavani, and R. Wojcieszak, ChemCatChem, 10:3680-3682(2018))、合成したVPO触媒の相の種類やその効果については言及していない。F. Ivars-Barcelо et al.は、VPOの相が変化してバナジウムの酸化数が変わると、生成物の選択度が変化すると記述しており、種々のVPO相を合成する方法を提示している(F. Ivars-Barcelо, G. J. Hutchings, J. K. Bartley, S. H. Taylor, P. Sutter, … and B. Solsona, Journal of catalysis, 354:236-249(2017))。さらに、M. Wu et al.は、Mn-Co触媒を用いてシクロヘキサンを酸化したが、触媒を支持体に担持しておらず、生成されたアジピン酸の収率が非常に低かった(M. Wu, W. Zhan, Y. Guo, Y. Guo, Y. Wang, L. Wang, and G. Lu, Applied Catalysis A: General, 523:97-106(2016))。
【0005】
そこで、本発明者らは、前記の問題点を解決するために鋭意検討した結果、メソポーラスシリカ支持体に担持したバナジウムホスフェートオキシド(vanadium phosphate oxide、VPO)をベースとする触媒、または酸化マンガンコバルトをベースとする触媒の存在下で、C6~C12シクロアルカンおよび/またはC6~C12シクロケトンの環状炭化水素化合物を酸化する場合、温室効果ガスである亜酸化窒素を発生することなく、アジピン酸とドデカンジオン酸などの線状炭化水素二重酸を高収率で生産できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、温室効果ガスである亜酸化窒素を発生することなく、高収率でアジピン酸とドデカンジオン酸などの線状炭化水素二重酸を生産する方法を提供することにある。
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒もしくは酸化マンガンコバルトをベースとする触媒、またはこれらの混合物の存在下で、C6~C12のシクロアルカンおよびC6~C12のシクロケトンからなる群より選ばれる1種以上の環状炭化水素化合物を酸化するステップを含む、炭化水素二重酸の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1によって、単一相を有するVPO触媒を合成するステップで得られたVOPO・2HO触媒のXRDピークの概形を示すグラフである。
図2】本発明の実施例1によって、単一相を有するVPO触媒を合成するステップで得られた(VO)触媒のXRDピークの概形を示すグラフである。
図3】本発明の実施例2によって得られた酸化マンガン-コバルト触媒のXRDピークの概形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての用語(技術用語および科学用語)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同様の意味を有している。一般に、本明細書で使用される命名法は、本技術分野において広く知られており、通常使用されるものである。
【0010】
本発明は、既存のアジピン酸およびドデカンジオン酸の生産工程において、副産物として発生する亜酸化窒素が、温室効果ガスとして環境に悪影響を及ぼすことを認識し、メソポーラスシリカ支持体に担持したVPOまたは酸化マンガン-コバルト触媒を用いることによって、前記で言及した温室効果ガスを生成することなく、シクロヘキサンまたはシクロドデカンからそれぞれアジピン酸とドデカンジオン酸が生成できることを確認した。また、反応物として使用されるシクロヘキサンとシクロドデカンの酸化反応に、それぞれシクロヘキサノンとシクロドデカノンがさらに投入される場合、それぞれの生成物であるアジピン酸とドデカンジオン酸の収率が増加することを確認した。
【0011】
そこで、本発明は、バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒もしくは酸化マンガンコバルトをベースとする触媒、またはこれらの混合物の存在下で、C6~C12のシクロアルカンおよびC6~C12のシクロケトンからなる群より選ばれる1種以上の環状炭化水素化合物を酸化するステップを含む、炭化水素二重酸の製造方法に関する。
【0012】
本明細書において、C6~C12のシクロアルカン(cycloalkane)は、6~12個の炭素原子が環状に結合しており、それぞれの炭素原子に水素が結合した環状炭化水素を意味し、例えば、シクロヘキサン(cyclohexane、C12)、シクロヘプタン(cycloheptane、C14)、シクロオクタン(cyclooctane、C16)、シクロノナン(cyclononane、C18)、シクロデカン(cyclodecane、C1020)がある。
【0013】
本明細書において、C6~C12のシクロケトン(cycloketone)は、ケトン基を有し、且つ6~12個の炭素原子が環状に結合しており、それぞれの炭素原子に水素が結合した環状炭化水素を意味し、例えば、化学式1のシクロヘキサノン(cyclohexanone、C10O)、化学式2のシクロヘプタノン(cycloheptanone、C12O)、化学式3のシクロオクタノン(cyclooctanone、C14O)、化学式4のシクロノナノン(cyclononanone、C16O)、化学式5のシクロドデカノン(cyclododecanone、C1028O)がある。
【0014】
【化1】
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】
【化4】
【0018】
【化5】
【0019】
本発明において、前記シクロアルカンがシクロヘキサンであるか、前記シクロケトンがシクロヘキサノンであり、このとき、前記炭化水素二重酸は、アジピン酸(adipic acid、化学式6)であってもよい。
【0020】
【化6】
【0021】
本発明において、前記シクロアルカンがシクロドデカンであるか、前記シクロケトンがシクロドデカノンであり、このとき、前記炭化水素二重酸は、ドデカンジオン酸(dodecanedioic acid、化学式7)であってもよい。
【0022】
【化7】
【0023】
本発明において、前記シクロアルカンがシクロヘキサンおよびシクロドデカンであるか、前記シクロケトンがシクロヘキサノンおよびシクロドデカノンであり、このとき、前記炭化水素二重酸は、アジピン酸およびドデカンジオン酸であってもよい。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態は、(a)バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒もしくは酸化マンガンコバルトをベースとする触媒、またはこれらの混合物の存在下で、シクロヘキサンとシクロヘキサノンとの混合物を酸化してアジピン酸を得るステップ;および(b)バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒もしくは酸化マンガンコバルトをベースとする触媒、またはこれらの混合物の存在下で、シクロドデカンとシクロドデカノンとの混合物を酸化してドデカンジオン酸を得るステップ;を含むことができる。
【0025】
本発明の他の好ましい一実施形態は、(a)単一相を有する2種類のVPOをメソポーラスシリカ支持体に担持して、2種類のVPOをベースとする環状アルカン酸化触媒を、酸化マンガン-コバルト前駆体をメソポーラスシリカ支持体に担持して、酸化マンガン-コバルトをベースとする環状アルカン酸化触媒を製造するステップ;(b)前記ステップ(a)で得られた2種類のVPOをベースとする触媒と、酸化マンガン-コバルトをベースとする触媒とを用いて、種々の環状アルカンおよびケトン混合物から線状二塩基酸を製造するステップ;(c)線状二塩基酸の収率を最大化するために、VPOをベースとする触媒および酸化マンガン-コバルトをベースとする触媒において、2つの環の反応混合物における最適比および最適な反応圧力条件を得るステップを含むことができる。
【0026】
本発明において、前記バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒、または酸化マンガンコバルトをベースとする触媒は、メソポーラスシリカ支持体に担持されたものを用いることが好ましい。
【0027】
本発明において、バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒は、VOPO・2HO、(VO)、またはVOPO・2HOと(VO)との混合物であってもよい。
【0028】
本発明において、前記酸化マンガンコバルトをベースとする触媒におけるマンガン:コバルトのモル比は、2:0.5~2:4であってもよい。
【0029】
本発明において、前記バナジウムホスフェートオキシドをベースとする触媒もしくは酸化マンガンコバルトをベースとする触媒、またはこれらの混合物の注入量は、前記環状炭化水素化合物の質量に対して、0.02~2%の質量比であってもよい。
【0030】
本発明において、前記酸化は、10~40barの圧力および120~250℃の温度で、酸素雰囲気下で2~15時間行われてもよい。
【0031】
本発明において、前記シクロヘキサンとシクロヘキサノンとの混合物におけるシクロヘキサノンの含有量は、シクロヘキサンに対して5~150%(モル比)であってもよい。
【0032】
本発明において、前記シクロドデカンとシクロドデカノンとの混合物におけるシクロドデカノンの含有量は、シクロドデカンに対して10~300%(モル比)であってもよい。
【0033】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
本発明に係るアジピン酸およびドデカンジオン酸の製造方法は、次のステップを含むことができる:
(a)単一相を有する2種類のVPOをメソポーラスシリカ支持体に担持して、2種類のVPOをベースとする環状アルカン酸化触媒を、酸化マンガン-コバルト前駆体をメソポーラスシリカ支持体に担持して、酸化マンガン-コバルトをベースとする環状アルカン酸化触媒を製造するステップ;
(b)前記ステップ(a)で得られた2種類のVPOをベースとする触媒と、酸化マンガン-コバルトをベースとする触媒とを用いて、種々のシクロヘキサン-シクロヘキサノン混合物からアジピン酸を得て、VPOをベースとする触媒の場合、2つの触媒および2つの反応物における最適比と最適な反応圧力条件を、酸化マンガン-コバルトをベースとする触媒の場合、2つの反応物における最適比と最適な反応圧力条件を得るステップ;および
(c)前記ステップ(a)で得られた2種類のVPOをベースとする触媒または酸化マンガン-コバルトをベースとする触媒を用いて、種々のシクロドデカン-シクロドデカノン混合物からドデカンジオン酸を得て、VPOをベースとする触媒の場合、2つの触媒および2つの反応物における最適比と最適な反応圧力条件を、酸化マンガン-コバルトをベースとする触媒の場合、2つの反応物における最適比と最適な反応圧力条件を得るステップ。
【0035】
本発明に係るアジピン酸およびドデカンジオン酸の製造方法は、次のステップを含むことができる。
【0036】
(a)触媒合成ステップ
【0037】
本発明に係る酸化触媒の製造方法は、単一相を有する2種類のVPO前駆体を合成し、これをメソポーラスシリカ支持体に担持するステップを含む。
【0038】
本発明に係る酸化触媒の製造方法は、酸化マンガン-コバルト前駆体を合成し、これをメソポーラスシリカ支持体に担持するステップを含む。
【0039】
(b)アジピン酸の製造ステップ
【0040】
本発明に係るアジピン酸の製造方法は、前記ステップ(a)で得られたVPOをベースとする触媒、または酸化マンガン-コバルトをベースとする触媒の存在下で、シクロヘキサン-シクロヘキサノン混合物を酸化して、アジピン酸を得るステップを含む。
【0041】
本発明に係るアジピン酸の製造方法は、VPOをベースとする触媒、または酸化マンガン-コバルトをベースとする触媒を用いて、酸素雰囲気下でシクロヘキサン-シクロヘキサノン混合物をアジピン酸に酸化することができる。
【0042】
前記シクロヘキサン-シクロヘキサノン混合物において、シクロヘキサノンは、シクロヘキサンに対して5~150%のモル比で含まれていてもよく、好ましくはシクロヘキサンに対して25~50%のモル比で含まれていてもよい。アジピン酸の生成反応にはシクロヘキサンとシクロヘキサノンの両方が関与するため、シクロヘキサノンの量がシクロヘキサンのモルに対して5%より少ないか、または150%より多いと、アジピン酸が生成されないという問題点がある。
【0043】
本発明において、シクロヘキサン-シクロヘキサノン混合物の酸化反応に使用するVPO触媒は、VOPO・2HOまたは(VO)の相を有していてもよい。この場合、全触媒量において、それぞれの相は、0~100%の質量比を有していてもよい。したがって、VOPO・2HO相を有する触媒のみ使用されるか、逆に、(VO)相を有する触媒のみ使用され得るが、好ましくはVOPO・2HO相を20~80%の質量比で含むことができる。
【0044】
本発明において、シクロヘキサン-シクロヘキサノン混合物の酸化反応に使用する酸化マンガン-コバルト触媒は、2:0.5~2:4のマンガン:コバルトのモル比を有していてもよく、好ましくは2:2~2:3のマンガン:コバルトのモル比を有していてもよい。
【0045】
前記酸化反応は、酸素を酸化剤として使用し、絶対圧力で10~40bar、好ましくは10~20bar、さらに好ましくは13~15barで行われてもよい。10bar未満の圧力で反応を行う場合、酸化剤の量が不足してアジピン酸の収率が低下するという問題があり、逆に、40barを超える場合、望まない副産物の生成が増加して、アジピン酸の収率が低下するという問題がある。
【0046】
前記酸化反応において、触媒の量は、反応物であるシクロヘキサン-シクロヘキサノンの質量に対して、0.02~2%の質量比であってもよい。0.02%の質量比未満の触媒を使用する場合、相対的に不足した触媒の量により、反応物が十分に酸化できないという問題点があり、2%の質量比を超える場合、増加した触媒の量に対するアジピン酸の転化率が増加しないため、経済的に非効率的という問題点がある。
【0047】
前記酸化反応において、反応物の温度は、120~250℃、好ましくは120~160℃、さらに好ましくは135~145℃であってもよい。反応物の温度が120℃より低いと、アジピン酸が生成されず、逆に、反応物の温度が250℃を超えて高くなると、生成されたアジピン酸が分解する反応が起こり得る。
【0048】
前記酸化反応において、反応時間は、温度が上がった後、2~15時間行うことができる。
【0049】
前記酸化反応において、シクロヘキサン-シクロヘキサノンの転化率またはアジピン酸の収率は、反応物の温度と酸素の圧力、触媒の量、シクロヘキサンとシクロヘキサノンとの相対比率によって変化し得る。
【0050】
(c)ドデカンジオン酸の製造ステップ
【0051】
本発明に係るドデカンジオン酸の製造方法は、前記ステップ(a)で得られたVPOをベースとする触媒、または酸化マンガン-コバルトをベースとする触媒の存在下で、シクロドデカン-シクロドデカノン混合物を酸化して、ドデカンジオン酸を得るステップを含む。
【0052】
本発明に係るドデカンジオン酸の製造方法は、VPOをベースとする触媒または酸化マンガン-コバルトをベースとする触媒を用いて、酸素雰囲気下でシクロドデカン-シクロドデカノン混合物をドデカンジオン酸に酸化することができる。
【0053】
前記シクロドデカン-シクロドデカノン混合物において、シクロドデカノンは、シクロドデカンに対して10~300%のモル比で含まれていてもよく、好ましくはシクロドデカンに対して25~50%のモル比で含まれていてもよい。
【0054】
本発明において、シクロドデカン-シクロドデカノン混合物の酸化反応に使用するVPO触媒は、VOPO・2HOまたは(VO)の相を有していてもよい。このとき、全触媒量において、それぞれの相は0~100%の質量比を有していてもよい。したがって、VOPO・2HO相を有する触媒のみ使用されるか、逆に、(VO)相を有する触媒のみ使用され得るが、好ましくはVOPO・2HO相を20~80%の質量比で含んでいてもよい。
【0055】
本発明において、シクロドデカン-シクロドデカノン混合物の酸化反応に用いる酸化マンガン-コバルト触媒は、2:0.5~2:4のマンガン:コバルトのモル比を有していてもよく、好ましくは2:2~2:3のマンガン:コバルトのモル比を有していてもよい。
【0056】
前記酸化反応は、酸素を酸化剤として使用し、絶対圧力で10~20bar、好ましくは13~15barで行われてもよい。10bar未満の圧力で反応を行う場合、酸化剤の量が不足してドデカンジオン酸の収率が低下するという問題があり、逆に、20barを超える場合、望まない副産物の生成が増加して、ドデカンジオン酸の収率が低下するという問題がある。
【0057】
前記酸化反応において、触媒の量は、反応物であるシクロドデカン-シクロドデカノンの質量に対して、0.02~2%の質量比であってもよい。0.02%の質量比未満の触媒を使用する場合、比較的に不足した触媒の量により、反応物が十分に酸化しないという問題点があり、2%の質量比を超える場合、増加した触媒の量に対するドデカンジオン酸の転化率が増加しないため、経済的に非効率的という問題点がある。
【0058】
前記酸化反応における反応物の温度は、120~160℃、好ましくは135~145℃であってもよい。反応物の温度が120℃より低いと、ドデカンジオン酸が生成されず、逆に、反応物の温度が160℃以上に高くなると、生成されたドデカンジオン酸が分解する反応が起こり得る。
【0059】
前記酸化反応において、反応時間は、温度が上がった後、2~15時間行うことができる。
【0060】
前記酸化反応において、シクロドデカン-シクロドデカノンの転化率またはドデカンジオン酸の収率は、反応物の温度と酸素の圧力、触媒の量、シクロドデカンとシクロドデカノンとの相対比率によって変化し得る。
【0061】
以下、本発明の理解を容易にするために、好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかであり、かかる変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0062】
[実施例]
【0063】
実施例1:メソポーラスシリカ支持体に担持したVPO触媒の製造
【0064】
単一相を有する2種類のVPO前駆体を合成し、これを高い表面積を有するメソポーラスシリカ支持体にそれぞれ担持した。
【0065】
250mLの丸底フラスコ(round bottomed flask)にバナジウム(V)オキシド(V、≧99.6%、Sigma-Aldrich)6gと、リン酸(HPO、min. 89.0w/w%、TCI)8.3g、イソブタノール(Isobutanol、>99%、TCI)125mLを入れ、100℃で16時間還流を行った。その後、前記溶液を0.8μmの濾紙を使ってろ過し、250mLのビーカーに100mLのアセトン(Acetone、>99.5%、TCI)を入れ、常温で30分間300rpmで撹拌して洗浄した。その後、上述の洗浄-ろ過過程を合計3回繰り返し、90℃で12時間乾燥した。
【0066】
乾燥が完了した固体をアルミナるつぼに入れた後、反応器に入れ、空気が通うように、るつぼの両末端を開けた状態で、焼成過程を行った。この時、反応器の温度を5℃/分の速度で20℃から550℃まで昇温した後、3時間550℃に維持し、その後、常温に冷却してVOPO・2HO触媒を得た。
【0067】
前記過程中、乾燥が完了した固体をアルミナるつぼに入れた後、反応器に入れ、ヘリウム(He、>99.999%、サムオ特殊ガス)を50mL/分の流量で流しながら焼成過程を行った。この時、反応器の温度を5℃/分の速度で20℃から550℃まで昇温した後、3時間550℃に維持し、その後、常温に冷却して(VO)触媒を得た。
【0068】
前記過程中、乾燥が完了した固体の含有量が5wt%になるように、当該固体およびメソポーラスシリカ(MCM-41、4.5-4.8nm、Sigma-Aldrich)を250mLのビーカーに入れた後、固体1gあたり30mL分の蒸留水を入れ、常温で24時間撹拌した。その後、蒸留水を全て蒸発させ、残った固体を100℃で乾燥した。当該固体をアルミナるつぼに入れた後、反応器に入れて空気が通うように、るつぼの両末端を開けた状態で、焼成過程を行い、このとき、反応器の温度を5℃/分の速度で20℃から550℃まで昇温した後、3時間550℃に維持し、その後、常温に冷却してメソポーラスシリカ支持体に担持したVOPO・2HO触媒を得た。また、前記乾燥過程が完了した固体をアルミナるつぼに入れた後、反応器に入れ、ヘリウム(He、>99.999%、サムオ特殊ガス)を50mL/分の流量で流しながら焼成過程を行った。このとき、反応器の温度を5℃/分の速度で20℃から550℃まで昇温した後、3時間550℃に維持し、その後、常温に冷却してメソポーラスシリカ支持体に担持した(VO)触媒を得た。
【0069】
合成した触媒をXRD(Smartlab)で分析した。合成したVOPO・2HO触媒のXRDピークの概形は図1に、(VO)触媒のXRDピークの概形は図2にそれぞれ示した。
【0070】
実施例2:メソポーラスシリカ支持体に担持した酸化マンガン-コバルト触媒の製造
【0071】
酸化マンガン-コバルト前駆体を合成し、これを高い表面積を有するメソポーラスシリカ支持体に担持した。
【0072】
250mLのビーカーに、マンガン:コバルトのモル比が2:3となるように、Co(NO・6HOとMn(NOを入れた後、全ての固体が完全に溶けるまで蒸留水を入れた。ホットプレートを用いて、前記溶液の温度を60℃まで上げ、300rpmの速度で撹拌した。その後、pHメーターを用いて、溶液のpHを測定しながら、pHが8になるまでビュレットを用いて1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を1滴ずつ溶液に滴下した。前記溶液の温度を60℃に保持しながら、4時間継続的に撹拌してエージングを行い、これが完了した溶液を0.8μmのろ紙を使ってろ過した。その後、250mLのビーカーに100mLの蒸留水を入れ、常温で30分間300rpmで撹拌して洗浄した。その後、上述の洗浄-ろ過過程を合計3回繰り返し、120℃で12時間乾燥した。
【0073】
乾燥が完了した固体の含有量が5wt%になるように、当該固体とメソポーラスシリカ(MCM-41、4.5-4.8nm、Sigma-Aldrich)を250mLのビーカーに入れた後、固体1g当たり30mL分の蒸留水を入れ、常温で24時間撹拌した。その後、蒸留水をすべて蒸発させ、残った固体を100℃で乾燥した。乾燥が完了した固体をアルミナるつぼに入れた後、反応器に入れ、空気が通うようにるつぼの両末端を開けた状態で、焼成過程を行った。このとき、反応器の温度を5℃/分の速度で20℃から400℃まで昇温した後、4時間400℃に維持し、その後、常温に冷却してメソポーラスシリカ支持体に担持した酸化マンガン-コバルト触媒を得た。
【0074】
合成した触媒をXRD(Smartlab)で分析した。合成した酸化マンガン-コバルト触媒のXRDピークの概形を図3に示した。
【0075】
実施例3:アジピン酸の生成反応において、2つの相を有するVPO触媒の最適比およびシクロヘキサン-シクロヘキサノン混合物の最適比の決定
【0076】
単一相を有する2つのVPO触媒の相対量およびシクロヘキサン-シクロヘキサノン混合物の比率を変更しながら、当該触媒下で、シクロヘキサン-シクロヘキサノン混合物をアジピン酸に転化する反応における最適値を決定した。
【0077】
10mLのシクロヘキサン、そしてシクロヘキサンのモルに対してそれぞれ0、25、50、100、150、200%に該当するシクロヘキサノンを、反応器に注入した。その後、全触媒量を15mgに維持しながら、VOPO・2HOの相を有するVPO触媒の質量比をそれぞれ0、50、80、100%に増加させ、反応実験を行った。反応物の温度を135℃に上げ、温度が設定値に到達すると、反応器を酸素13barで充填した後、5時間反応物を酸化した。
【0078】
反応後の結果物は、On-line GC(Agilent 7890A)により定量分析した。これにより確認したVOPO・2HOの相を有するVPO触媒の質量比がそれぞれ0、50、80、100%のときのシクロヘキサンの転化率およびアジピン酸の収率を表1~4にそれぞれ示した。
【0079】
VOPO・2HO/MCM-41触媒よりも、(VO)/MCM-41触媒を使用した場合のアジピン酸の生成量が多かった。また、単一相のみを触媒として使用した場合よりも、2つの触媒をともに使用した場合におけるアジピン酸の生成量が増加した。2つの触媒の割合が1:1のときには、シクロヘキサンとシクロヘキサノンのモル比が1:0.25の場合にアジピン酸の生成量が最も多く、VOPO・2HO/MCM-41の割合が全触媒量の80%を占める場合には、シクロヘキサンとシクロヘキサノンとのモル比が1:0.5のときにアジピン酸が最も多く生成された。
【0080】
また、シクロヘキサンのみ存在するか、シクロヘキサノンの割合が高すぎる場合には、アジピン酸は生成されなかった。これは、現在の触媒系を使用する場合、シクロヘキサノンが存在しなければアジピン酸まで反応が行われないことを意味する。また、単にシクロヘキサノンが存在するからといって、必ずしもアジピン酸が生成されるわけではなく、シクロヘキサンとシクロヘキサノンが適正な比率で存在しなければアジピン酸が得られないことを確認した。
【0081】
実施例4:メソポーラスシリカに担持したVPO触媒を用いたアジピン酸の生成反応における酸素圧力の効果
【0082】
単一相を有する2つのVPO触媒の両方を用いたシクロヘキサン-シクロヘキサノン混合物の酸化反応において、酸素圧力を増加させながら、これがアジピン酸の生成に及ぼす影響を確認した。
【0083】
10mLのシクロヘキサン、そしてシクロヘキサンのモルに対して50%に該当するシクロヘキサノンを反応器に注入した。その後、全触媒量を15mgに維持しながら、VOPO・2HOの相を有するVPO触媒の質量比をそれぞれ50、80%として反応実験を行った。反応物の温度を135℃に上げ、温度が設定値に到達すると、反応器を酸素13または15または17barで充填した後、5時間反応物を酸化した。
【0084】
反応後の結果物は、On-line GC(Agilent 7890A)により定量分析した。これにより確認したVOPO・2HOの相を有するVPO触媒の質量比がそれぞれ50、80%のときに、様々な酸素圧力(13~17bar)下でのシクロヘキサンの転化率およびアジピン酸の収率を表5~6にそれぞれ示した。
【0085】
酸素の圧力を13barから15barに増加させたときには、アジピン酸の生成量が増加した。これは、アジピン酸の生成において、酸素の供給が非常に重要であることを示している。しかし、さらに17barで酸素圧力を増加させたときには、むしろアジピン酸の選択度が減少し、全体としてアジピン酸の生成量が減少した。したがって、供給される酸素の量が一定水準を超えると、望まない副反応が起こることが確認できた。
【0086】
実施例5:メソポーラスシリカに担持した酸化マンガン-コバルト触媒を用いたアジピン酸の生産反応における酸素圧力の効果
【0087】
メソポーラスシリカに担持した酸化マンガン-コバルト触媒を用いたシクロヘキサン-シクロヘキサノン混合物の酸化反応において、酸素圧力を増加させながら、これがアジピン酸の生成に及ぼす影響を確認した。
【0088】
10mLのシクロヘキサン、そしてシクロヘキサンのモルに対して50%に該当するシクロヘキサノンを反応器に注入した。その後、15mgの酸化マンガン-コバルト触媒を注入し、反応物の温度を135℃に上げた。温度が設定値に到達すると、反応器を酸素13または15または17barで充填した後、5時間反応物を酸化した。
【0089】
反応後の結果物は、On-line GC(Agilent 7890A)により定量分析した。これにより確認したメソポーラスシリカ支持体に担持した酸化マンガン-コバルト触媒下で、様々な酸素圧力(13~17bar)がシクロヘキサンの転化率およびアジピン酸の収率に及ぼす影響を表7にそれぞれ示した。
【0090】
酸化マンガン-コバルト触媒を用いた場合も、上述のVPO触媒と同様に、酸素の圧力が13barから15barに増加したときには、アジピン酸の生成量が増加し、17barに酸素圧力を増加させたときには、むしろアジピン酸の選択度が減少しながら、全体としてアジピン酸の生成量が減少した。
【0091】
実施例6:ドデカンジオン酸の生成反応において、2つの相を有するメソポーラスシリカ支持体に担持したVPO触媒の最適比の決定
【0092】
単一相を有する2つのメソポーラスシリカ支持体に担持したVPO触媒の相対量を変更しながら、当該触媒下で、シクロドデカン-シクロドデカノン混合物をドデカンジオン酸に転化する反応における最適値を決定した。
【0093】
シクロドデカンとシクロドデカノンとのモル数の和が92.45mmolとなるようにし、シクロドデカンのモル比を25%、シクロドデカノンのモル比を75%として、2つの物質を反応器に注入した。その後、全触媒量を15mgに維持しながら、VOPO・2HOの相を有するVPO触媒の質量比をそれぞれ0、50、100%に増加させながら反応実験を行った。反応物の温度を135℃に上げ、温度が設定値に到達すると、反応器を酸素13barで充填した後、5時間反応物を酸化した。
【0094】
反応後の結果物は、NMRにより定量分析した。この際、溶媒としては、1mLのクロロホルム-Dと、20μLのジメチルスルホキシド-D6とを併用し、スタンダード溶液としては、0.01mmolのエチレンカーボネートを使用した。これにより確認したメソポーラスシリカ支持体に担持したVPO触媒下で、様々なVOPO・2HO相の質量比がドデカンジオン酸の収率に及ぼす影響を表8に示した。
【0095】
VOPO・2HO/MCM-41触媒よりも、(VO)/MCM-41触媒を使用した場合におけるドデカンジオン酸の生成量がより多かった。単一相のみを触媒として使用した場合に比べて、2つの触媒をそれぞれ50%の質量比で混合して使用したときのドデカンジオン酸の生成量が、VOPO・2HO/MCM-41触媒を使用した場合とほぼ同等であった。
【0096】
実施例7:メソポーラスシリカに担持した酸化マンガン-コバルト触媒を用いたドデカンジオン酸の生産反応におけるシクロドデカン-シクロドデカノン混合物の最適比の決定
【0097】
メソポーラスシリカ支持体に担持した酸化マンガン-コバルト触媒を用いたシクロドデカン-シクロドデカノン混合物の酸化反応において、シクロドデカン-シクロドデカノン混合物の割合を変更しながら、当該触媒下で、シクロドデカン-シクロドデカノン混合物をドデカンジオン酸に転化する反応における最適比の値を決定した。
【0098】
シクロドデカンとシクロドデカノンとのモル数の和が92.45mmolとなるようにし、シクロドデカノンを0、25、50、75、100%のモル比に増加させながら、混合物の割合を変更した。当該混合物と共に15mgの酸化マンガン-コバルト触媒を注入し、反応物の温度を135℃に上げた。温度が設定値に到達すると、反応器を酸素13barで充填した後、5時間反応物を酸化した。
【0099】
反応後の結果物は、NMRにより定量分析した。この際、溶媒としては、1mLのクロロホルム-Dと、20μLのジメチルスルホキシド-D6とを併用し、スタンダード溶液としては、0.01mmolのエチレンカーボネートを用いた。これにより確認したメソポーラスシリカ支持体に担持した酸化マンガン-コバルト触媒下で、様々なシクロドデカン-シクロドデカノン混合物の割合がドデカンジオン酸の収率に及ぼす影響を表9に示した。
【0100】
シクロドデカンとシクロドデカノンとをそれぞれ単独で使用するときにもドデカンジオン酸が形成されるが、シクロドデカンとシクロドデカノンとの混合物を使用したときに、ドデカンジオン酸の収率が増加した。これにより、シクロドデカンがドデカンジオン酸に転化する反応において、反応の中間物質であるシクロドデカノンのさらなる投入が、誘導時間を減少させることによって、ドデカンジオン酸の生成を促進することを確認した。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
【表7】
【0108】
【表8】
【0109】
【表9】
【0110】
本発明に係る製造方法によると、メソポーラスシリカ支持体に担持したVPO、または酸化マンガン-コバルトを触媒として使用することで、既存のステップにおける副産物である温室効果ガスである亜酸化窒素を生成することなく、アジピン酸とドデカンジオン酸などの線状二塩基酸を得ることができる。また、環状ケトンを環状アルカンに反応物としてともに入れることで、環状アルカンを単独の反応物として使用する場合よりも、さらに高収率で二塩基酸をそれぞれ得ることができる。
【0111】
以上、本発明の内容における特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、かかる具体的な技術は、単に好ましい実施形態に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されるわけではないという点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、請求項およびそれらの等価物によって定義されると言うべきである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】