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特表2023-549135フォトン伝播性を改質した付加製造用組成物、及びそれを使用した付加製造の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】フォトン伝播性を改質した付加製造用組成物、及びそれを使用した付加製造の方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20231115BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20231115BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20231115BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20231115BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231115BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20231115BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20231115BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20231115BHJP
   B22F 10/14 20210101ALI20231115BHJP
   B22F 10/12 20210101ALI20231115BHJP
   B22F 1/10 20220101ALI20231115BHJP
   C04B 35/634 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B29C64/124
B29C64/314
B33Y70/10
B33Y10/00
B22F1/00 R
B22F1/05
B22F10/28
B22F10/14
B22F10/12
B22F1/10
C04B35/634 680
C04B35/634 880
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527385
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 US2021057644
(87)【国際公開番号】W WO2022098613
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】63/109,882
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/515,625
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521440998
【氏名又は名称】ビーダブリューエックスティ・アドバンスト・テクノロジーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BWXT Advanced Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】サラシン,ジョン アール
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ベンジャミン ディ
【テーマコード(参考)】
4F213
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AA19
4F213AA29
4F213AB04
4F213AB16
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL24
4F213WL29
4F213WL43
4K017AA02
4K017AA08
4K017BA10
4K017CA07
4K017CA08
4K017DA07
4K018AA40
4K018BA20
4K018BB04
4K018BB05
4K018CA33
4K018KA28
(57)【要約】
付加製造組成物は、300nm~700nmの波長において、0Au~1.0Au未満の吸光度を有し、例えば0.001Au~0.7Auの吸光度を有する低吸収性粒子、又は非吸収性粒子を含む。かかる粒子及びウラン含有粒子を含む、付加製造法で使用されるスラリーは、硬化放射線に対して高い透過深さを有する。低吸収性粒子、又は非吸収性粒子を、製造中のプロダクトの後処理中に取り除くことは、製造中のプロダクトに多孔性を形成する細孔をもたらし、これが核分裂性気体を収容する容積を与え、及び/又は特定のヒートパイプ冷却液のウィッキングを高める。低吸収性粒子、又は非吸収性粒子は、例えばセラミック収率を向上させるための核分裂性物質、均質性を高めるための可燃性毒物若しくは安定剤、安定剤を局所的に運搬するための安定剤、又はこれらの組み合わせ等を用いて、特性を改良させるために機能化され得る。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造用のスラリーであって、前記スラリーが、前記スラリーの総体積に対して、以下:
30体積%~40体積%の複数の第1粒子;
10体積%~20体積%の複数の第2粒子;
0体積%超~5体積%の分散剤;
0体積%超の光吸収剤;
0体積%超の光開始剤;及び
25体積%~45体積%未満の少なくとも1つのモノマーレジン
を含む組成物を有し、
前記複数の第1粒子と、前記複数の第2粒子との合計量は、最大で60体積%であり、
前記第1粒子は、ウラン含有材料を含む組成物を有し、
前記ウラン含有材料は、ウラン金属、ウラン合金、ウランセラミック、又はウラン-モリブデン合金であり、
前記複数の第1粒子は、40nm~10μmの粒径D50を有し、
前記第2粒子は、300nm~700nmの波長において、0.001Au以上0.7Au以下の吸光度を有し、
前記第2粒子は、ポリアミド、又はポリエチレングリコールを含む組成物を有し、
前記光吸収剤及び光開始剤は、300nm~700nmの入射波長において作用し、
前記モノマーレジンは、アクリル酸ベースのモノマーレジン、又はメタクリル酸ベースのモノマー、又はこれらの混合物である、
付加製造用のスラリー。
【請求項2】
前記第2粒子が、2体積%~5体積%の中性子吸収剤を更に含む組成物を有し、前記中性子吸収剤が、60,000barns以上の中性子吸収断面積を有する、請求項1に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項3】
前記中性子吸収剤が、セリウム、イットリウム、ガドリニウム、キセノン、及びサマリウムから成る群から選択される元素を少なくとも1つ含む組成物を有する、請求項2に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項4】
前記第2粒子が、2体積%~5体積%の局在化安定剤を更に含む組成を有する、請求項2に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項5】
前記局在化安定剤が、鉄を含む組成物を有する、請求項4に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項6】
前記モノマーレジンのうち、少なくとも50%がアクリル酸ベースである、請求項1に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項7】
前記アクリル酸ベースのモノマーレジンが、単官能性、二官能性、三官能性、四官能性、又はこれらの混合物である、請求項1に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項8】
前記アクリル酸ベースのモノマーレジンのうち、少なくとも50%が二官能性である、請求項7に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項9】
前記組成物が、0体積%超~15体積%の希釈剤を更に含み、前記希釈剤の屈折率が、前記モノマーレジンの屈折率以上である、請求項1に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項10】
前記希釈剤が、メチルナフタレンである、請求項9に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項11】
付加製造用のスラリーであって、前記スラリーが、前記スラリーの総体積に対して、以下:
30体積%~40体積%の複数の第1粒子;
10体積%~20体積%の複数の第2粒子;
0体積%超~5体積%の分散剤;
0体積%超の光吸収剤;
0体積%超の光開始剤;及び
25体積%~45体積%未満の少なくとも1つのモノマーレジン
を含む組成物を有し、
前記複数の第1粒子と、前記複数の第2粒子との合計量は、最大で60体積%であり、
前記第1粒子は、ウラン含有材料を含む組成物を有し、
前記第2粒子は、300nm~700nmの波長において、0.001Au~0.7Au、0.01Au~0.6Au、又は0.1Au~0.5Auの吸光度を有し、
前記光吸収剤及び光開始剤は、300nm~700nmの入射波長で作用する、付加製造用のスラリー。
【請求項12】
前記第2粒子が、300nm~700nmの波長において、0.001Au~0.26Auの吸光度を有する、請求項11に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項13】
前記第2粒子が、ポリアミド又はポリエチレングリコールを含む組成物を有する、請求項11又は12に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項14】
前記第2粒子が、2体積%~5体積%の中性子吸収剤を更に含む組成物を有し、前記中性子吸収剤が、60,000barns以上の中性子吸収断面積を有する、請求項11~13のいずれか1項に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項15】
前記中性子吸収剤が、セリウム、イットリウム、ガドリニウム、キセノン、及びサマリウムから成る群から選択される元素を少なくとも1つ含む組成物を有する、請求項14に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項16】
前記第2粒子が、2体積%~5体積%の局在化安定剤を更に含む組成物を有する、請求項11~15のいずれか1項に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項17】
前記局在化安定剤が、鉄を含む組成物を有する、請求項16に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項18】
前記ウラン含有材料が、ウラン金属、ウラン合金、ウランセラミック、又はウラン-モリブデン合金である、請求項11~17のいずれか1項に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項19】
前記ウラン含有材料が、酸化ウラン、二酸化ウラン、炭化ウラン、ウランオキシカーバイド、窒化ウラン、ケイ化ウラン、フッ化ウラン、塩化ウラン、酸化ウランとタングステンとのサーメット、二酸化ウランとタングステンとのサーメット、酸化ウランとモリブデンとのサーメット、又は二酸化ウランとモリブデンとのサーメットである、請求項11~17のいずれか1項に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項20】
前記ウラン含有材料が、酸化ウラン、二酸化ウラン、又は三酸化ウランである、請求項19に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項21】
前記ウラン含有材料が、U(C,O,N,Si,F,Cl)である、請求項11~17のいずれか1項に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項22】
前記複数の第1粒子が、40nm~10μmの粒径D50を有する、請求項11~21のいずれか1項に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項23】
前記モノマーレジンが、アクリル酸ベースのモノマーレジン、又はメタクリル酸ベースのモノマー、又はこれらの混合物である、請求項11~22のいずれか1項に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項24】
前記モノマーレジンのうち、少なくとも50%がアクリル酸ベースである、あるいは、70~90%がアクリル酸ベースである、請求項23に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項25】
前記アクリル酸ベースのモノマーレジンが、単官能性、二官能性、三官能性、四官能性、又はこれらの混合物である、請求項11~24のいずれか1項に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項26】
前記アクリル酸ベースのモノマーレジンのうち、少なくとも50%が二官能性である、又は少なくとも80%が二官能性である、又は70%~90%が二官能性である、請求項25に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項27】
前記組成物が、0体積%超~15体積%の希釈剤を更に含む、請求項11~26のいずれか1項に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項28】
前記希釈剤の屈折率が、前記モノマーレジンの屈折率以上である、請求項27に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項29】
前記希釈剤が、不活性である、請求項27又は28に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項30】
前記希釈剤が、メチルナフタレンである、請求項27~29のいずれか1項に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項31】
前記組成物が、光開始又は電子ビーム照射によって硬化される、請求項1~30のいずれか1項に記載の付加製造用のスラリー。
【請求項32】
原子炉システムのコンポーネントの製造方法であって、前記製造方法は、
核燃料スラリーを用いた付加製造プロトコルを使用し、原子炉システムのコンポーネントのグリーンボディを製造することを含み、
前記核燃料スラリーは、スラリーの総体積に対して、以下:
30体積%~40体積%の複数の第1粒子;
10体積%~20体積%の複数の第2粒子;
0体積%超~5体積%の分散剤;
0体積%超の光吸収剤;
0体積%超の光開始剤;及び
25体積%~45体積%未満の少なくとも1つのモノマーレジン
を含む組成物を有し、
前記複数の第1粒子と、前記複数の第2粒子との合計量は、最大で60体積%であり、
前記第1粒子は、ウラン含有材料を含む組成物を有し、
前記ウラン含有材料は、ウラン金属、ウラン合金、ウランセラミック、又はウラン-モリブデン合金であり、
前記複数の第1粒子は、40nm~10μmの粒径D50を有し、
前記第2粒子は、300nm~700nmの波長において、0.001Au~0.7Auの吸光度を有し、
前記第2粒子は、ポリアミド、又はポリエチレングリコールを含む組成物を有し、
前記光吸収剤及び光開始剤は、300nm~700nmの入射波長で作用し、
前記モノマーレジンは、アクリル酸ベースのモノマーレジン、又はメタクリル酸ベースのモノマー、又はこれらの混合物である、
製造方法。
【請求項33】
原子炉システムのコンポーネントの製造方法であって、前記製造方法は、
核燃料スラリーを用いた付加製造プロトコルを使用し、原子炉システムのコンポーネントのグリーンボディを製造することを含み、
前記核燃料スラリーは、スラリーの総体積に対して、以下:
30体積%~40体積%の複数の第1粒子;
10体積%~20体積%の複数の第2粒子;
0体積%超~5体積%の分散剤;
0体積%超の光吸収剤;
0体積%超の光開始剤;及び
25体積%~45体積%未満の少なくとも1つのモノマーレジン
を含む組成物を有し、
前記複数の第1粒子と、前記複数の第2粒子との合計量は、最大で60体積%であり、
前記第1粒子は、ウラン含有材料を含む組成物を有し、
前記第2粒子は、300nm~700nmの波長において、0Au~1.0Au未満、別として、0.001Au~0.7Au、0.01Au~0.6Au、又は0.1Au~0.5Auの吸光度を有し、
前記光吸収剤及び光開始剤は、300nm~700nmの入射波長で作用する、
製造方法。
【請求項34】
前記第2粒子が、300nm~700nmの波長において、0.001Au~0.26Auの吸光度を有する、請求項33に記載の製造方法。
【請求項35】
前記第2粒子が、可燃性毒物、又は減速材を含む組成物を有する、請求項33又は34に記載の製造方法。
【請求項36】
前記第2粒子が、2体積%~5体積%の中性子吸収剤を更に含む組成物を有し、前記中性子吸収剤が、60,000barns以上の中性子吸収断面積を有する、請求項33~35のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項37】
前記中性子吸収剤が、セリウム、イットリウム、ガドリニウム、キセノン、及びサマリウムから成る群から選択される元素を少なくとも1つ含む組成物を有する、請求項36に記載の製造方法。
【請求項38】
前記第2粒子が、2体積%~5体積%の局在化安定剤を更に含む組成物を有する、請求項33~37のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項39】
前記局在化安定剤が、鉄を含む組成物を有する、請求項38に記載の製造方法。
【請求項40】
前記ウラン含有材料が、ウラン金属、ウラン合金、ウランセラミック、又はウラン-モリブデン合金である、請求項33~39のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項41】
前記ウラン含有材料が、酸化ウラン、二酸化ウラン、炭化ウラン、ウランオキシカーバイド、窒化ウラン、ケイ化ウラン、フッ化ウラン、塩化ウラン、酸化ウランとタングステンとのサーメット、二酸化ウランとタングステンとのサーメット、酸化ウランとモリブデンとのサーメット、又は二酸化ウランとモリブデンとのサーメットである、請求項33~39のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項42】
前記ウラン含有材料が、酸化ウラン、又は二酸化ウランである、請求項41に記載の製造方法。
【請求項43】
前記ウラン含有材料が、U(C,O,N,Si,F,Cl)である、請求項33~39のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項44】
更にグリーンボディを焼結し、原子炉システムのコンポーネントを形成することを含む、請求項32~43のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項45】
付加製造プロトコルが、サロゲートスラリーを使用して開発される、請求項32~44のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、付加製造に使用される組成物、及び付加製造の方法に関する。特に、本開示の付加製造用組成物は、低い吸収性、又は非吸収性を有する粒子と、高い吸収性を有する粒子との組み合わせを含む。一の態様において、低い、又は非吸収性を有する粒子の存在により、硬化放射線波長における吸収が減少するために、硬化放射線は、付加製造工程で使用されるスラリーへの透過深さ(penetration depth)を増加させる。その他の一の態様において、含まれる低~非吸収性粒子は、高吸収性粒子(例えばウラン含有粒子)よりも低い吸光度を有する。更なるその他の一の態様において、低/非吸収性粒子は、付加製造工程中、付加製造用組成物内に、例えば印刷相(printing phase)中に存在するが、それらは製造中の製品(as-manufactured product)の後処理中に取り除かれ、製造中の製品に多孔性を形成する細孔をもたらす。核分裂炉アプリケーションにおいて、細孔及び生じた多孔性は、核分裂性ガスを収容する容積(volume)を与え、及び/又はウィッキング等によって、特定のヒートパイプ冷却液の輸送を強化する。更なる態様において、低~非吸収性粒子を、特性を高めるために機能化することが可能であり、例えばセラミック収率を高めるために核分裂性物質を用いて機能化する;均質性(homogeneity)を高めるために可燃性毒物(burnable poisons)、減速材 (moderators)、又は安定剤(stabilizers)を用いて機能化する;安定剤の局所的な輸送のために安定剤を用いて機能化する;又は特性向上を組み合わせるために、これらの組み合わせを用いて特性を改善することが可能である。
【0002】
低~非吸収性粒子と高吸収性粒子との組み合わせを含むスラリーは、コンポーネントを製造するための付加製造工程の付加製造プロトコルに導入され得る。かかるスラリーは、燃料集合体構成材料(fuel assembly structure materials)(例えばNi、W、Mo、又はN-W-Mo合金)、減速材材料(例えばグラファイト、ホウ素、又は炭素ベース材料)、及び核燃料スラリー材料(例えばウラン、又はウラン-モリブデンベース材料)といった、適切な高吸収性材料と共に使用し、原子炉の製造に使用するコンポーネント等の、半最終、又は最終コンポーネントを付加的に製造することが可能である。原子炉コンポーネントの文脈において、上記スラリーは、低~非吸収性粒子を10体積%~20体積%、及びウラン含有材料(例えばウラン金属、ウラン合金、ウランセラミック、又はウラン-モリブデン合金等)を含む組成物を有する粒子を30体積%~40体積%含む。
【背景技術】
【0003】
以下の説明では、特定の構造及び/又は方法について述べる。しかしながら、以下の参照は、これらの構造、及び/又は方法が先行技術を構成することを認めるものと解釈されるべきではない。出願人は、かかる構造、及び/又は方法が、本発明に対する先行技術として的確でないことを示す権利を明確に留保する。
【0004】
三次元オブジェクトを作製するために、コンピュータ制御下で材料を接合させる、又は固めること、例えば、組み合わさった材料を加える(液体分子を硬化させる、又は粉末粒子を融着させる等)ことにより、様々な方法が使用可能である。溶融/堆積技術、又は堆積/硬化技術に基づく様々な技術が存在し、これらの技術は、デジタルモデルデータを使用する殆ど全ての形状(shape or geometry)のオブジェクトの製造に使用可能であり、例えば3Dモデル、又はコンピュータ支援設計(CAD)モデル、若しくは付加製造ファイル(AMF)(大抵は連続層において)といった、その他の電子データソース由来のデジタルモデルデータが挙げられる。
【0005】
利用可能な製造方法は多くあるが、これらの方法間の主な違いは、部位を作るために層を積層する方法、及び使用される材料にある。いくつかの方法は、材料を溶融させる、または軟化させて層を形成する。例として、熱溶解フィラメント(fused filament fabrication, FFF)あるいは熱溶解積層(fused deposition modeling, FDM)、熱溶解粒子(fused particle fabrication, FPF)、又は熱溶解グラニュール(fused granular fabrication, FGF)としても知られる方法が挙げられ、それは小さなビーズ、又はすぐに硬化して層を形成する材料の流れを押し出すことによってコンポーネントを製造する。その他の方法では、液体ベースの材料を、液体材料に含まれる1つ以上の成分を層ごとのアプローチ(layer-by-layer approach)により固化させて製造物(manufactured object)を構築する、様々な技術を用いて硬化させる。例として、様々な光学、又は化学に基づく方法(光学反応性、又は化学反応性の材料を使用する)を利用するステレオリソグラフィーが挙げられる。各例において、製造物は、製造材料に応じた特性を有する。
【0006】
光開始工程を伴って光学的、又は化学的硬化方法を使用する付加製造において、放射線は液体材料に侵入し、a)ポリマー相を透過する、b)粒子相を透過、及び屈折する、c)光開始成分によって吸収される、又はd)粒子相によって吸収される。粒子相による吸収は、硬化放射線の減衰により、液体材料の重合を妨げる。しかしながら、粒子相が、(工程で使用される特定の放射線において)高い吸収特性を有する(例えばウラン含有材料)場合、粒子相による吸収は増加し、透過及び屈折は減少する。これにより、硬化深さ、即ち、硬化して層を形成する液体材料の厚さが減少する。硬化深さの減少により、付加製造により積層する連続層それぞれの厚さが減少し、これにより効率性が下がる。場合によっては、硬化深さの減少は、十分な硬化を完全に妨げる可能性があり、付加製造法を使用するかかる液体材料組成物からの堆積を不可能にする、例えば、「印刷不可能」であることを意味する。硬化深さの減少の一部は、粒子相の濃度を低下させることで改善され得るが、かかる粒子相の濃度の低下は、液体材料のレオロジー、及び印刷後の工程(即ち全密度までの焼結)に対して、負の影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願番号第16/835,370号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. Torrent et al., ”Diffuse Reflectance Spectroscopy,” in Methods of Soil Analysis Part 5-Mineralogical Methods, Eds. A. Ulery et al., Number 5 in the Soil Science Society of America Book Series, Madison, Wisconsin: Soil Science Society of America, Inc. (2008),367~385ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記を考慮すると、硬化放射線の透過深さを増加させること、特に、液体材料が硬化放射線に対する高い吸光度を有する成分(例えばウラン含有材料)を含む場合の、液体材料(本明細書ではスラリーとも呼称する)への、300nm~700nmの硬化放射線の透過深さを増加させること、が望ましい。同時に、付加製造法、特にステレオリソグラフィーで使用する液体材料の適切なレオロジーを維持するために、粒子相の濃度の低下を最小化する、別として、低下させないことが望ましい。
【0010】
本開示は一般に、付加製造に使用する組成物、及び堆積/硬化技術に基づく付加製造の方法に関する。より具体的には、本開示は、堆積/硬化付加製造技術、特にステレオリソグラフィーに適用できる組成物及び方法に関する。スラリーの組成物は、高吸光成分(例えばウラン含有粒子)、及び低/非吸光(low- or non-absorbance)成分(例えば上記の高吸光成分よりも、同条件下で低い吸光度を有する粒子)を含む。高吸光成分、及び低/非吸光成分のそれぞれにおいて、吸光度は、付加製造法で使用される硬化放射線に関し、例えば300nm~700nmの硬化放射線、別として400nm~600nm、390nm~415nm、490nm~510nm、又は600~620nm、等に関する。
【0011】
吸光度は、サンプルによって反射若しくは散乱した光の量、又はサンプルを透過した光の量に関する。全ての光がサンプルを透過する場合、吸収はないため、吸光度はゼロであり、透過率は100%である。一方、光がサンプルを透過しない場合、吸光度は無限大であり、透過率は0%である。吸光度(例えば硬化放射線の吸光度)は、「吸光度単位」で表され、それはAuという略称で表記され、無次元であり、対数スケールで記録される。かくして、対数トレンドにおいて、0Auは、吸光度0%(100%透過)に等しく、1.0Auは、吸光度90%(10%透過)に等しく、2.0Auは、吸光度99%(1%透過)に等しく、3.0Auは、吸光度99.9%(0.1%透過)に等しい。
【0012】
本明細書で使用される場合、吸光度(A)は、積分球アタッチメントと共にShimadzu 2600/2700i UV/Vis Spectrometerを使用した拡散反射分光法によって測定した。上記分光計を、粉末サンプルの拡散反射を測定するために使用した。正確なシステムの初期化、及びバックグランドデータの収集は、マニュアルに則って行った。サンプルは、石英サンプル容器にロードし、均質な表面を得るために加圧した。測定は、拡散反射モードで行い、対象範囲(range of interest)、即ち、185~1400nmの範囲で収集した。その後、反射パターンは、分光計のソフトウェア内のKubelka-Munk変換によって評価した。上記の評価範囲において、吸光度vs.波長を出力した。上記出力は、他の対象材料との相対比較において使用し、ウラン含有材料の吸光度に対する材料の吸光度を分類した。拡散反射分光法のその他の詳細及び態様は、J. Torrent et al., ”Diffuse Reflectance Spectroscopy,” in Methods of Soil Analysis Part 5-Mineralogical Methods, Eds. A. Ulery et al., Number 5 in the Soil Science Society of America Book Series, Madison, Wisconsin: Soil Science Society of America, Inc. (2008), pp. 367-385に開示されており、当該内容は参照により本明細書に完全に援用する。当該開示は、第1粒子相の粉体サンプル、及び第2粒子相の粉体サンプルにすぐに適用、応用することが可能な、拡散反射スペクトルを記録するための研究室で利用可能な方法(available laboratory method)が記載されており、当該方法を本明細書で開示した液体材料において使用した。本明細書で開示した材料に対して拡散反射分光法を行った際、サンプルの希釈は行わなかったことに注意されたい。
【0013】
低吸光性粒子は、硬化放射線をより深くまでスラリー中に透過させ、硬化深さの増加、より厚い堆積層、スラリー中のセラミック材料(UOなど)のより高いローディング、又はこれらの組み合わせを可能にする特性を与える。かかる粒子は、スラリー材料の残渣(remainder)と反応せず、硬化後に粒子は、製造後の後処理に、加水分解又は熱分解などによって取り除かれ得る。
【0014】
本明細書で使用される場合、「非吸光性粒子」は、0Auに等しい吸光度を有する。本明細書で使用される場合、「低吸光性粒子」の硬化放射線に対する吸光度は、0超であり、かつウラン含有粒子の硬化放射線に対する吸光度よりも低い。即ち、
0Au<(低吸光性粒子の吸光度)<(ウラン含有粒子の吸光度)
である。いくつかの実施形態において、ウラン含有粒子の硬化放射線に対する吸光度は1Au~3Auであり、低吸光性粒子の硬化放射線に対する吸光度は0.001Au以上、かつウラン含有粒子の硬化放射線に対する吸光度以下である。即ち、
0.001Au<(低吸光性粒子の吸光度)<(ウラン含有粒子の吸光度)
である。いくつかの実施形態において、低吸光性粒子は、硬化放射線に対して、1.0Au未満の吸光度を有し、例えば硬化放射線に対して、0.001Au以上、又は0.01Au以上、又は0.1Au以上から、0.7Au以下、又は0.6Au以下、又は0.5Au以下の範囲の吸光度を有する。特定の一の実施形態において、低吸光性粒子は、硬化放射線に対して、0.001Au以上から、0.26Au以下の範囲の吸光度を有する。
【0015】
本明細書で使用される場合、硬化放射線は、スラリーのレジンを硬化するために使用される放射線の波長を指す。スラリーのレジンを硬化するために使用される放射線の波長は、スラリーの組成物に応じて変化する。しかしながら、実施形態の例において、硬化放射線は300nm~700nmの波長を有し、別として、390nm~415nm、又は490nm~510nm、又は600nm~620nmの波長を有する。特定の実施例において、硬化放射線は、405nm、又は500nm、又は618nmの波長を有する。
【0016】
連続的な層ごとの製造法のために、本開示の付加製造法は、複雑なコンポーネントの製造に適している。原子炉コンポーネントの文脈においては、複雑なコンポーネントの例として、燃料集合体(fuel assemblies)(例えば燃料要素(燃料及び可燃性毒物を含む)の配置、燃料集合体構造用の機械的支持(mechanical support)、スペーサーグリッド(コンポーネントの間隔を保持し、燃料要素をガイドする)、及び、例えば制御棒又は炉心計装などの非燃料チューブ)(燃料バンドルとしても知られている)が挙げられる。構造の複雑さは、原子炉内のその他のシステムにも及び、例えば、設計、チュービング、ポンプ、計装(instrumentation)、熱交換器、及び蒸気発生器などに応じて、一次サイクル(一次冷却水にさらされる、接触する、またはその他の方法でさらされるシステムを意味する)の様々なコンポーネントを含むシステムが挙げられる。
【0017】
本開示の付加製造の方法の使用は、これら複雑な構造、特に燃料要素及び燃料集合体の製造において有利であることが見出され、製造法それ自体、及び製造された複雑な構造(かかる構造の品質保証を含む)の両方を改善する。本開示の組成物と組み合わせた本開示の付加製造の方法の使用は、これらの目的において非常に有利であることを見出した。
【0018】
本明細書で開示される実施形態は、付加製造法開発及びプロトタイプ開発中の両方、並びに稼働中部品の最終製造中において、コンポーネント、特に核分裂炉のコンポーネントを付加製造するための方法、並びにかかるコンポーネントの付加製造において使用されるスラリーの組成物を含む。
【0019】
原子炉システムのコンポーネントを製造する方法の実施形態は、付加製造プロトコルにおいて低~非吸収性粒子を含むスラリーの使用、及び付加製造法の付加製造プロトコルにおいてスラリーを使用する原子炉システムのコンポーネントのグリーンボディ(green body)の製造を含む。
【0020】
付加製造用スラリーの実施形態は、組成物を含み、当該組成物は、粉体の全容積に対して、30体積%~40体積%の複数の第1粒子;10体積%~20体積%の複数の第2粒子;0体積%超~5体積%の分散剤;0体積%超の光吸収剤;0体積%超の光開始剤;及び25体積%~45体積%未満の1つ以上のモノマーレジン組成物を含む。ここで、第1粒子と第2粒子との合計量は、最大で60体積%である。第1粒子は、ウラン含有材料を含む組成物を含む。第2粒子は、300nm~700nmの波長において、0Au~1.0Au未満の吸光度を有し、別として、0.001Au又は0.01Au又は0.1Au以上~0.7Au又は0.6Au又は0.5Auの吸光度を有する。光吸収剤及び光開始剤は、300nm~700nmの入射波長において作用する。
【0021】
原子炉システムのコンポーネントの製造法の実施形態は、核燃料スラリーを使用する付加製造プロトコルを使用して、原子炉システムのコンポーネントのグリーンボディを製造すること、を含む。ここで、核燃料スラリーは、組成物を含み、当該組成物は、スラリーの全容積に対して、30体積%~40体積%の複数の第1粒子;10体積%~20体積%の複数の第2粒子;0体積%超~5体積%の分散剤;0体積%超の光吸収剤;0体積%超の光開始剤;及び25体積%~45体積%未満の1つ以上のモノマーレジン組成物を含む。ここで、第1粒子と第2粒子との合計量は、最大で60体積%である。第1粒子は、ウラン含有材料を含む組成物を含む。第2粒子は、300nm~700nmの波長において、0Au~1.0Au未満の吸光度を有し、別として、0.001Au又は0.01Au又は0.1Au以上~0.7Au又は0.6Au又は0.5Auの吸光度を有する。光吸収剤及び光開始剤は、300nm~700nmの入射波長において作用する。
【0022】
スラリー及び方法のいくつかの実施形態において、ウラン含有材料は、ウラン金属、ウラン合金、ウランセラミック、ウラン-モリブデン合金、又はこれらの混合物、である。いくつかの実施形態において、ウラン含有材料は、酸化ウラン、二酸化ウラン、炭化ウラン、ウランオキシカーバイド、窒化ウラン、ケイ化ウラン、フッ化ウラン、塩化ウラン、酸化ウランとタングステンとのサーメット、二酸化ウランとタングステンとのサーメット、酸化ウランとモリブデンとのサーメット、二酸化ウランとモリブデンとのサーメット、又はこれらの混合物、である。しかしながら、無機種を含有するウラン含有材料、及び有機配位子/アニオン種を含有するウラン含有材料を含む、その他のウラン含有材料も使用可能である。
【0023】
一の特定の実施形態において、付加製造用の核燃料スラリーは組成物を含み、当該組成物は、30体積%~45体積%のアクリル酸ベースのモノマーレジン;ウラン含有材料を含む組成物を含む、30体積%~40体積%の複数の粒子;300nm~700nmの波長において、0Au~1.0Au未満の吸光度を有し、別として、0.001Au又は0.01Au又は0.1Au~0.7Au又は0.6Au又は0.5Auの吸光度を有する、10体積%~20体積%の複数の粒子;核燃料スラリー中の粒子の分散に適した、0体積%超~7体積%の分散剤;品質管理検査中の、続く活性化用の0体積%超の光活性化染料(photoactivated dye);スラリーのフリーラジカル重合を止めることにより架橋を減少させる、0体積%超の光吸収剤、及びスラリー組成物の硬化に使用され得る放射線の波長に適合するよう選択される、または逆も同様である、0体積%超の光開始剤、並びに希釈剤として、0体積%~18体積%のメチルナフタレンを、含む。
【0024】
付加製造プロトコル、例えばステレオリソグラフィーの付加製造プロトコルは、低吸収断面積粒子を導入するために変性されたサロゲートスラリー(surrogate slurry)を使用して開発され得る(2020年3月31日提出の米国特許出願番号第16/835,370号に開示。当該文献の内容は参照により本明細書に完全に援用する)。
【0025】
本開示の反応炉および炉心(core)は、複雑な機械的形状(mechanical geometries)を有するコンポーネントを含むにも関わらず、核分裂性の燃料物質を含む不可欠で反復的な(integral and iterative)製造は、コンポーネントの製造をより容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
上述の概要、及び以下の実施形態の詳細な説明は、添付の図面と紐付けて読むとよりよく理解され得る。記載された実施形態は、示された配置及び器具に正確に限定されるものではないことを理解されるべきである。
【0027】
図1図1は、硬化放射線が、複数の非/低吸収性粒子から成るスラリーと相互作用する際に生じるこれらの様々なプロセスを概略的に示す。
図2図2は、モノマー相内に二酸化ウランの粒子相を含むスラリーへの、硬化放射線の透過を概略的に示す。
図3図3は、スラリー内の粒子相のローディングの低下による、硬化放射線の透過深さ、及びスラリーの印刷可能深さを増加させる実施形態を、概略的に示す。
図4図4は、低(又はゼロに近い、又はゼロの)吸光度を有する第2粒子相の追加による、硬化放射線の透過深さ、及びスラリーの印刷可能深さを増加させる実施形態を、概略的に示す。
図5
図6図5及び図6は、本明細書に開示したスラリー組成物、及び付加製造法に対応して製造された、製造グリーンボディの例を示す。
図7図7は、実施例のサンプルについて、(低吸光度の第2粒子相):(第1粒子相)の比の関数として硬化深さ(μm)の結果を示すグラフである。
【0028】
詳細な説明
一般に、堆積/硬化技術に基づく付加製造用のスラリーは、モノマー相(典型的には1つ以上のモノマーレジンを含む)、粒子相(典型的にはセラミック材料を含む)、分散剤(ポリマー相内の粒子相の分散を促進させる)、光開始剤(硬化放射線と相互作用し、モノマー相のラジカル重合を開始させる)、及び光吸収剤(特定波長内の入射放射線を吸収し、その波長に起因するスラリーのフリーラジカル重合を停止させ、または減少させ、それによって架橋を減少させる)、を含む。堆積/硬化技術に基づく付加製造において、硬化放射線がスラリーと相互作用する場合、硬化放射線は、(i)スラリーのモノマー相を透過する、(ii)スラリーの粒子相を透過する、及び屈折する、(iii)スラリーの光開始剤、若しくは光吸収剤によって吸収される、又は(iv)スラリー内の粒子相によって吸収される、のいずれかが起こり得る。図1は、硬化放射線がスラリーと相互作用する場合に起こる、これらの様々なプロセスを概略的に示す。図1に、モノマー相102、及び粒子相104を含む溶液であるスラリー100の体積を示す。図1において、粒子相内の粒子は、入射硬化放射線に対して、0Au~1.0Au未満の吸光度を有し、別として、0.001Au又は0.01Au又は0.1Au~0.7Au又は0.6Au又は0.5Auの吸光度を有する。粒子相における粒子は、例えば酸化セリウム(CeO)を含むが、その他の粒子、例えば二酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ベリリウム(BeO)、及びポリアミドも、粒子相として使用され得る、または含まれ得る。分散剤、光開始剤、及び光吸収剤は、モノマー相102中に溶解される、又は混合されるが、図1には示していない。硬化放射線110(300nm~700nmの幅の波長を有する放射線、又は紫外線(UV)放射;特定の実施例においては、405nm、又は500nm、又は618nmの硬化放射線、等)は、スラリー100に入射し、複数の様々な現象が起こり得る。例えば、硬化放射線110の第1部分120は、モノマー相102を透過し、かつスラリー100を透過する。また、例えば硬化放射線110の第2部分122は、スラリー100の粒子相104を透過する、及び粒子相104によって屈折される。屈折は、入射放射線が粒子相104の粒子と相互作用する際に発生し、方向及び/又は波長を変える。更なる例として、スラリー100中に存在する粒子相104によって吸収される、硬化放射線110の第3部分124が挙げられる。場合によっては、これらの効果の組み合わせが起こる可能性があり、この場合、硬化放射線110は、モノマー相102によって吸収される前に、1回以上(それぞれの現象について)透過及び屈折され得る。スラリー100に入射する硬化放射線110、並びに多数の透過、及び/又は屈折が起きる例は、図1に示される(例えば入射放射線126を見よ)。硬化放射線110の第4部分は、スラリー100の光開始剤、又は光吸収剤によって吸収される(図1には示していない)。
【0029】
付加製造法においては、十分な重合反応を開始させて相互に連結した固体物品を形成するために、十分な量の硬化放射線が、スラリー100の容積を透過し、スラリー100中のモノマー相102によって吸収されなければならない(屈折前、又は後のいずれか)。かくして、硬化放射線100はスラリーを深さD2まで透過し得るが、十分な硬化放射線110がスラリー100に透過し、モノマー相102中で十分な重合反応を開始させ、相互に連結した固体物品を形成する深さD1は、深さD2よりも小さい。この差は主に、スラリー100中に存在する粒子相104によって吸収される硬化放射線110の第3部分124等の吸収イベント(absorption events)の結果、利用可能な硬化放射線110が減少することに起因する。従って図1において、深さD2は、硬化放射線110の90%が消滅する透過深さであり得る一方、深さD1は、印刷可能深さを表し、かつ十分な硬化放射線110がスラリー100に透過し、モノマー相102中で十分な重合反応を開始させ、相互に連結した固体物品を形成する深さを表す。一の実施例において、直径4μmのCeO粒子、及び405nmの入射硬化放射線を含むスラリーは、約30μmの印刷可能深さを有した。
【0030】
スラリー内の所定の粒子相ローディング(濃度とも呼ぶ)において、透過深さD2、及び印刷可能深さD1は、特定の波長に対して、より高い、又はより低い吸光度値を有する粒子相に応じて変化する。例えば、二酸化ウラン(UO)は、405nmにおいて99%超の吸収を示す。従って、UO、又はUO化合物から成る粒子相を含むスラリーは、粒子相と相互作用する、硬化放射線由来の全てのフォトンを本質的に消滅(annihilated)させ、UOを通る1%未満の硬化放射線の屈折、及び透過が観察される。図2は、モノマー相202中に二酸化ウランの粒子相204を含むスラリー200への硬化放射線の透過を概略的に示す。入射硬化放射線210は、スラリー200のモノマー相202を透過する。UO等の酸化ウランの、405nmの波長における1.0Au~3.0Auの吸光特性により、硬化放射線210と、二酸化ウランの粒子相204との相互作用が起きるとすぐに、90%超、別として99%超、又は99.9%超の入射硬化放射線210は吸収され、入射硬化放射線210の屈折、及び/又は透過は僅か(1%未満)である。結果的に、入射硬化放射線210のスラリー200への透過は、粒子相204との相互作用が起こらない経路長のみに限定され、事実上、透過深さD2及び印刷可能深さD1は、殆ど同じ(±3%~5%)になる。
【0031】
上記所見を考慮し、硬化放射線のスラリーへの透過を増加させるためには、二酸化ウランといった高吸光性粒子の相互作用が起こらない経路長を増加させる必要がある、と判断した。
【0032】
第1の態様において、スラリー組成物の実施形態、及びかかるスラリー組成物を使用する製造法の実施形態は、高吸光度を有する粒子相のローディングを減少させることによって、透過深さD2及び印刷可能深さD1を増加させる。二酸化ウラン等の粒子相のローディングの減少は、粒子相間の間隔を増大させる。これらの実施形態において、酸化ウランから成る粒子相を50体積%含むスラリーが、405nmの硬化放射線において約9μmの透過深さD2を、及び酸化ウランから成る粒子相を25体積%含むスラリーが、405nmの硬化放射線において、約20μmの透過深さD2を有することを見出した。一般に、25体積%~50体積%の酸化ウランから成る粒子相において、光透過深さD2(μm)は、酸化ウランから成る粒子相の体積%の関数として変化した。例えば以下の式:
I=I-αz
は、入射強度(I)及び減衰係数αの関数としての、所定の深さ(z)における透過光の強度(I)の関係であり、光透過深さD2(μm)は、強度(I)の対数に対して直線的に変化した、又は強度(I)に対して対数的に変化した。更に、安定なコロイド分散を形成する粒子相のローディングにおいて、ローディングを減少させると、スラリー全体に均質な効果があることを見出した。
【0033】
図3は、スラリー内の高吸光性粒子相のローディングを減少させることで、スラリーの透過深さD2及び印刷可能深さD1が増加する実施形態を、概略的に示す。図3は、モノマー相302中に二酸化ウランの粒子相304を含むスラリー300への、硬化放射線310の透過を概略的に示す。ここで、高吸光性粒子相304の体積ローディングは、図2に描写した体積ローディングのほぼ3分の1である。以下のミー理論(Mie theory)では、吸収減衰係数は、体積ローディングに正比例する。従って、体積ローディングが、図2よりも図3の方が低いため、光透過深さD2は、図2と比べると高くなる。更に、それによって硬化深さも増加するため、図2のような体積ローディングがより高い場合と比べると、印刷可能深さD1は高くなる。
【0034】
高吸光性粒子相の体積ローディングを下げる場合、硬化深さ及び印刷可能深さは増加し得るが、焼結工程における所望の微細構造製品の実現に対して、不利な効果が存在する。かくして、体積ローディングの減少が、グリーンボディ付加製造法の実現可能性を増加させる一方、例えば、65%未満の理論密度(TD)をもたらす相互に連結した多孔性(porosity)による高密度化の不足が見られる部位、及び/又は、例えば収縮中の歪みによる応力割れという形態で著しい収縮が観察される部位の、プロセス後の強化に対しても不利な効果を及ぼす。
【0035】
第2の態様において、スラリー組成物の実施形態、及びかかるスラリー組成物を使用する製造法の実施形態は、低吸光性の第2粒子相(例えば、0Auに近い、又は0Auの吸光度を有する低吸光性粒子相)の追加により、透過深さD2及び印刷可能深さD1を増加させる。第2粒子相は、第1粒子相、即ち高吸光性粒子相中に分散され、第1粒子相の粒子間の間隔を増大させる。この間隔の少なくとも一部は、低吸光性を有する第2粒子相(例えば、0Auに近い、又は0Auno吸光度を有する低吸光性粒子相)の粒子によって占められ、入射硬化放射線の透過経路を与える。結果的に、第2粒子相の粒子は、入射硬化放射線に対する透過窓(transmittance window)種として機能し、スラリーへの更なる透過を可能にさせる。非限定的な例として、第2粒子相は、300nm~700nmの範囲の波長の硬化放射線を透過する有機粒子を含み得る、別として、上記有機粒子から成り得る。第2粒子相において適切な有機粒子は、ポリアミド、ポリアクチド(PLA)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びこれらの組み合わせ、を含む。第2粒子相(例えば、0Auに近い、又は0Auの吸光度を有する低吸光性粒子相)の粒子の適切な濃度は、約5~25体積%、別として、10~15体積%であり、低、又は非吸収性粒子のモルフォロジー及びサイズに応じて変化する。更に、濃度範囲の上限は一般的に、硬化放射線の透過深さの増加と、それに伴う製造中の製品内の多孔性の増大との間のバランスである。一方、濃度範囲の下限は、透過深さに及ぼすあらゆる影響を最小化することによって支配される-換言すると、低すぎる濃度は、透過深さへの影響が実質的になくなる。これらの実施形態において、(i)第1粒子相として、粒径4μmの酸化ウランから成る40体積%の高吸光性粒子相、及び(ii)第2粒子相として、粒径9μmのポリアミドから成る低/非吸光性粒子相、を含むスラリーは、405nmの硬化放射線に対して、約12μmの透過深さD2を有した。比較として、粒径4μmの酸化ウランから成る40体積%の粒子相から成る粒子相を1つだけ含むスラリーの透過深さD2は、405nmの硬化放射線に対して、約5μmの透過深さD2を有した。
【0036】
第2粒子相中の粒子のサイズは、それ以外には印刷不可能なスラリー組成物、即ち、ベースライン条件下で9μm未満の印刷可能深さしか有しないスラリー組成物であっても、透過深さD2および印刷可能深さD1の増加をもたらす。この効果は加算的である。例えば、第1粒子相のスラリー組成物が、いずれの低/非吸収性粒子を追加せずにそれ自体で使用される場合に6μmの深さまでしか硬化できない場合であっても、7μmの粒径を有する低/非吸収性粒子の第2粒子相を追加することは、深さ13μm、即ち、[(第1粒子相の硬化深さ)+(第2粒子相の粒径(直径))]まで硬化放射線がスラリーを透過する透過窓をもたらす。これは印刷可能な十分な厚さである。理論的には完全に加算的であるが、いくつかのロスが、硬化放射線の透過深さを合計[(第1粒子相の硬化深さ)+(第2粒子相の粒径(直径))]未満に低下させると思われる。
【0037】
本明細書で使用される場合、ベースライン条件は、印刷可能深さの1.5倍の透過深さである。例えば、10μmの層を印刷する場合、ベースライン条件は15μmの透過深さである。30μmの層を印刷する場合、ベースライン条件は45μmの透過深さである。透明粒子を使用せずに印刷可能深さの1.5倍を達成するために、セラミック層の体積%ローディングを減少させる、及び/又は平均粒径を増加させることができる。一の態様において、これは、微細粒子(かかる粒子は、2μm未満の直径を有する)を除去することによって達成され得る。実施例として、ZrOを、55体積%ローディングのミル済粒子(milled particles)、又は40体積%ローディングのナノ粒子を使用し、405nmの硬化放射線において、(i)30~50μmの硬化深さ、及び(ii)20~30μmの印刷深さが観察された。TiOにおいて、50体積%のローディングを使用し、405nmの硬化放射線において、(i)21μmの硬化深さ、及び(ii)10~15μmの印刷深さが観察された。ブラックジルコニアにおいて、45体積%ローディングを使用し、445nmの硬化放射線において、(i)16μmの硬化深さ、及び(ii)10μmの印刷深さが観察された。これらの実施例において、モノマー混合物及びドクターブレード厚さは同一であり、露光条件は、最大力の95%で、15秒間であった。ベースライン条件は、層の接着を促すために、ある程度過剰に露光させた。
【0038】
実施例の結果は、透過深さD2が、第2粒子相の低吸光性粒子の含有によって増加し得ることを示唆する。更に、透過深さD2の増加は、以下の関係:
透過深さ(D2)=[(第1粒子相の硬化深さ)+(第2粒子相の粒径(直径))]
に基づいて予想される。いくつかの実施形態において、透過深さは、第1粒子相の硬化深さの2倍、又は3倍になり得る。論理的には加算的であるにも関わらず、いくつかのロスが、観察される透過深さを、理論的な透過深さ未満に減少させることが予想される。
【0039】
図4は、スラリーの透過深さD2及び印刷可能深さD1が、低吸光度を有する第2粒子相(例えば、0Auに近い、又は0Auの吸光度を有する低吸光性粒子相)の追加によって増加する実施形態を概略的に示す。図4の実施形態は、二酸化ウランの第1粒子相404、及びモノマー相402中に有機ポリマー(これは405nmの波長に対して0に近い吸光度を有する)の第2粒子相406を含むスラリー400への硬化放射線の透過を示す。入射硬化放射線410は、スラリー400のモノマー相402を透過する。入射硬化放射線410は、モノマー相402と相互作用する、又は二酸化ウランの第1粒子相404若しくは有機ポリマーの第2粒子相406のいずれかと相互作用することができる。入射硬化放射線410が、二酸化ウランの第1粒子相404と相互作用する場合、図2を参照して説明したように、99%超の入射硬化放射線410は吸収され、並びに入射放射線410の屈折、及び/又は透過は僅か(1%未満)である。しかしながら、入射硬化放射線410が、有機ポリマーの第2粒子相406と相互作用する場合、硬化放射線410は、第2粒子相406を透過する。場合によっては、硬化放射線410は、第2粒子相406によって屈折され得る。その他の例において、これらの効果の組み合わせが生じる場合、硬化放射線410は、モノマー相402、又は第2粒子相406によって吸収される前に、複数回、透過及び屈折され得る(各現象において)。スラリー400に入射し、二酸化ウランの第1粒子相404によって吸収される、又は1回以上の透過、及び/若しくは屈折、並びにこれらの現象の組み合わせを受ける硬化放射線410の例は、図4に示される(例えば、二酸化ウランの第1粒子相404によって吸収される入射硬化放射線420、モノマー相402及び第2粒子相406を、透過深さD2まで透過する入射硬化放射線422、並びにモノマー相402及び第2粒子相406を透過し、二酸化ウランの第1粒子相404によって吸収される入射硬化放射線424を見よ)。
【0040】
上記に記載した第2の態様における透過窓の効果は、それ自体はベースライン条件下で印刷不可能であるレジンを、印刷可能にさせ得る。この技術は、粒子光相互作用(particle light interactions)が印刷可能性に及ぼす不利な影響を実質的に切り離し、10μmの層を使用して、(付加製造において)あらゆる材料をグリーンボディの状態まで繰り返し製造することができる。
【0041】
最終的に、第2粒子相の追加は、粒子相のローディングを減少させることよりも、均質性の効果が低いことに注意されたい。
【0042】
第1及び第2の態様における、本技術及びアプローチは、単一で、又は組み合わせで実施することが可能である。
【0043】
本明細書で先に述べたように、液体材料において、低い(又はゼロに近い、又はゼロの)吸光度を有する第2粒子相を含むことには、レオロジー的な態様がある。副次的な低モル吸光係数相の追加は、フォーミュレーションレオロジー(formulatoin rheology)の変化をもたらす。Kreiger-Dougherty式によると、粒子の体積が増加する(透明粒子を追加する場合のような)につれ、粘度が増加する。更に、シアシニング(shear thinning)挙動はほとんど見られず、シアシックニング(shear thickening)(臨界剪断応力によって定義される)の発生(onset)は、低い剪断速度まで減少する。ローディングが増加し、粒子間の間隔が低下すると、低応力におけるシアシックニングの発生が確認される。剪断誘起流(shear induced flow)が、テープがキャストされた薄膜の製造、並びにビルドプレートをゼロにして新しい層を製造する際の過剰レジン及び気泡の除去に使用される場合、付加製造時の、例えば印刷中のビルドの不良を防ぐために、付加プロセス中に観察される剪断応力よりも、臨界剪断応力を高くする必要がある。いくつかの実施形態において、粘度はゼロ剪断粘度として非常に高く始まり、溶液が剪断されると、粘度はニュートンプラトー(Newtonian plateau)と呼ばれるところまで減少する点で動的であることに注意されたい。また、適切な粘度は、レジンが連続薄膜へ加工される能力に基づいて、例えばシアシニング現象が適切かどうか判断する洞察を与えるドクターブレードによって、定量的に評価可能である。
【0044】
処理パラメータに到達する際に考慮される一般化された臨界剪断応力への影響は、以下:
・粒子の容積ローディング(Φ)が減少すると、臨界剪断応力は増加する;
・粒子半径(a)が減少すると、臨界剪断応力は増加する(α-(2~3)のように);
・理論最大パッキングファクター(Φ)が増加すると、臨界剪断応力は増加する;
・Φ一定において粒度分布がより広がると、臨界剪断応力は増加する;
・粒子の異方性及び粗さが減少すると、臨界剪断応力は増加する;
・流体層の粘度が低下すると、臨界剪断応力は増加する;
・斥力(立体的、及び静電的な)が増加すると、臨界剪断応力は増加する;及び
・立体分散剤(steric dispersant)と溶媒との相溶性(compatibility)が増加すると、臨界剪断応力は増加する、
を含む。
【0045】
特定の実施形態において、モノマーとしてSR494、及び直径4μmの二酸化ウラン粒子を濃度40%で含む液体材料は、10,000cPのプロセス粘度を有し、9μmの硬化深さを示した。9μmのポリアミド粒子を、低(又は0に近い、または0)吸光度を有する第2粒子相として使用し、本例の液体材料へ濃度15%まで添加した際、液体材料の粘度は増加し、硬化深さは18μmまで到達できた。
【0046】
第2粒子相としてポリアミド、又はPEGを使用することは、後処理中に副次的な有益な効果を与える。かかる粒子が液体材料の硬化中に存在し、それにより、上記液体材料を使用する付加製造法により形成された構造のボディに組み込まれるが、これらの粒子はその後、高密度化に先立って、グリーンボディから除去され得る。第2粒子相の組成物に応じて、適切な除去処理が、高密度化に先立って適用され得る。例えば、ポリアミド粒子は、熱分解されてボディから除去され得る。上記熱分解は、ポリマーネットワークの高密度化が起こる温度よりも低い温度で、例えば少なくとも20℃、別として約100℃~200℃低い温度で起こり、相互に連結したミクロポロシティの残渣ネットワーク(residual network of interconnected microporosity)が形成される。その他の実施例において、PEG粒子は、加水分解によって溶解し、高密度化される前のボディから除去され得る。これも、相互に連結したミクロポロシティの残渣ネットワークを形成する。
【0047】
その他の技術も、高密度化の前に、グリーンボディから第2粒子相を除去するために適切に使用可能である。これらは、超音波処理、及びグリーンボディの材料に影響を及ぼさずに第2粒子相に選択的である溶媒の使用を含む。更に、これらの技術の組み合わせも使用可能である。例えば、熱分解及び加水分解による溶解の組み合わせ、又は加水分解による溶解及び超音波処理の組み合わせ、等が挙げられる。各例において、単一で、又は組み合わせで使用されようとも、層ごとに連結したミクロポロシティのネットワークは、その後の高密度化工程で形成されるガスにおいて、ボディから排出させるための経路を与え、かかる気体が内部に蓄積(build-up)することによる、ボディの圧力によるクラッキングのリスクを限定的にさせる。
【0048】
また、連結したミクロポロシティのネットワークは、原子力運転(nuclear operations)中に、副次的な有利な効果をもたらす。特に、予備高密度化処理中に形成された、相互に連結したミクロポロシティのネットワークは、高密度化処理によって保護され、最終製品中に残存し得る。最終製品において、相互に連結したミクロポロシティのネットワークは、原子力運転中に発生した核分裂気体(fission gases)を収容するための容積をもたらす。付加製造中のボディの液体相形成において発生する、第2粒子相の均質な分散が、最終製品中のミクロポロシティの均質な分散に反映される。第2粒子相に使用される有機粒子のサイズを変えることは、ミクロポロシティのサイズに影響を与えるために使用され得るその他のメカニズムである。
【0049】
一の実施例において、第2粒子相の粒子は、セラミックウランベアリングレジン由来のポリマーから形成された樹脂粒子であり、それは粘度を上昇させる、光を透過させる、及び脱結合(debindering)を補助する、及び原子炉アプリケーションにおけるセラミックの収率を増加させるための、追加の化学量論量のウランを与える。
【0050】
その他の一の実施例において、第2粒子相の粒子は、セリウム、イットリウム、ガドリニウム、又はその他安定剤でドープされたポリマー材料である。一の態様において、この実施形態は、安定剤を粉体としてセラミックスラリーへ直接的にローディングすることなく、燃料形態(fuel form)におけるこれら安定剤の組織的な分散を可能にする。従来は、セラミックスラリーに使用される、粉体相における安定剤の直接的なローディングは、分散の均質性を保証するために、しばしば粉体のかなりの混合を必要とした。しかしながら、第2粒子相のポリマー粒子へのドーパントとしての同じ安定剤のローディングは、かかる混合の努力を必要とせずに、安定剤の均等な分散を保証することを容易にする。
【0051】
この実施形態のその他の態様は、核エネルギー推進(NTP)アプリケーションへ適用可能である。例えば、安定剤は樹脂粒子へロードされ、付加製造によって製造したボディ(燃料要素構造など)中に生じた細孔内に、上記安定剤が沈着する。鉄は、この方法において使用可能な安定剤の一例である。非常に還元性の高い環境において酸素は、2200K(又はそれ以上)の温度でUOから分離し始め、ウラン金属が形成される。これらの条件下でウラン金属は、第2粒子相によって形成された、相互に連結したミクロポロシティのネットワーク内の位置に移動する。樹脂粒子内にロードされた鉄(又はその他安定剤)は、上記相互に連結したミクロポロシティのネットワーク内に、残渣として存在する(上記で議論したように、第2粒子相がグリーンボディから除去された後)。ウラン金属が細孔内の鉄と相互作用すると、鉄はウラン金属と共晶を形成する。この鉄-ウラン共晶は、反応炉のクールダウン中の水素化合物の形成に耐性を示す。しかしながら、いくつかのウラン金属が鉄と合金化していな場合、相互に連結したミクロポロシティのネットワークの容積は、UO燃料要素全体にクラッキングを生じさせることなく、水素化ウラン(UH)を形成できる容積をもたらす。上記水素化ウラン形成の容積拡大は、UONTP燃料要素の主要な不良モードであるため、クラック形成を軽減する容積を拡大させることで、NTP燃料要素の上記不良モードに対する耐性の向上をもたらすことができる。
【0052】
第2粒子相のポリマー粒子は、安定剤として有用な二次相を導入するために使用され得るだけでなく、より広くは、ポリマー粒子は、透明有機相にトラップ、またはドープされ得る全てのもののためのキャリアとして使用され得る。このようにポリマー粒子は、様々な材料をグリーンボディに導入し、それに次いで、製造物に導入するための媒体(vehicle)となることが可能である。
【0053】
また、相互に連結した、調節可能なミクロポーラス(microporous)ネットワークは、ヒートパイプリアクター(heat pipe reactor)の設計、及び液体材料サーメット原子炉の設計における液体相冷却材の毛細管流動用に使用され得る。ミクロポロシティは、水、NaK、液体銀等の、特定のヒートパイプ冷却液の燃料要素へのウィッキング(wicking)を高める。典型的な細孔径は、20~500μmである。
【0054】
付加製造におけるスラリー(例えば核燃料スラリー)の実施例は、モノマーレジン、ウラン含有粒子、低/非吸収性粒子(付加製造法において使用される硬化放射線において)、分散剤、光吸収剤、光開始剤、並びに任意選択的に、希釈剤及び光活性化染料の1つ、または両方を含む組成物を含む。
【0055】
スラリー(例えば核燃料スラリー)は、25体積%~45体積%未満、別として、25体積%~35体積%未満、別として、25体積%~30体積%の量で存在するモノマーレジンを含む。特定の実施例において、モノマーレジンは、アクリル酸ベースモノマーレジン、又はメタクリル酸ベースモノマーレジン、又はこれらの混合物である。いくつかの実施形態において、モノマーレジンは少なくとも50%がアクリル酸ベース、別として、70~90%がアクリル酸ベースである。その他の実施形態において、アクリル酸ベースのモノマーレジンは機能化され、例えば単官能性、二官能性、三官能性、四官能性、又はこれらの混合物、等が挙げられる。アクリル酸ベースのモノマーレジンは、少なくとも50%が二官能性、別として、少なくとも80%が二官能性、別として、70~90%が二官能性であり得る。適切なアクリル酸ベースモノマーレジンの特定の一の実施形態は、ヘキサン-ジオールジアクリレート(hexane-diol di-acrylate)(Sartomer(Arkemaグループ)から、ブランド名SR238で入手可能)である。その他の適切なアクリル酸ベースモノマーレジンの特定の一例は、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート(ethoxylated (4) pentaerythritol tetraacrylate)(Sartomer(Arkemaグループ)から、ブランド名SR494で入手可能)である。別として、オリゴマーベースレジンが、アクリル酸ベースモノマーレジンの代替品となり得る。オリゴマーベースレジンの使用は、モノマーレジンと比べ、収縮制御の領域、重合率、及び粘度において改善がもたらされ得る。
【0056】
スラリー(例えば核燃料スラリー)は、30体積%~40体積%、別として、32体積%又は34体積%又は36体積%~38体積%又は40体積%の量で存在するウラン含有材料の粒子を含む。ウラン含有材料の例は、ウラン金属、ウラン合金、ウランセラミック、及びウラン-モリブデン合金を含む。いくつかの実施形態において、代わりの(surrogate)粒子によって表されるウラン含有材料は、酸化ウラン、二酸化ウラン、炭化ウラン、ウランオキシカーバイド、窒化ウラン、ケイ化ウラン、フッ化ウラン、塩化ウラン、酸化ウランとタングステンとのサーメット、二酸化ウランとタングステンとのサーメット、酸化ウランとモリブデンとのサーメット、又は二酸化ウランとモリブデンとのサーメット、である。その他の実施形態において、ウラン含有材料は、U(C,O,N,Si,F,Cl)という化学式で表すことが可能で、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)、ケイ素(Si)、フッ素(F)、塩素(Cl)、及びこれらの組み合わせのいずれか1つ以上が、化学量論的に、及び非化学量論的に、ウランと共に存在し得る。
【0057】
ウラン含有材料の他の非限定的な例は、U(OH,B,Sb,P,As,S,Se,Te,Cl,Br,I);ウランの水酸化物及び水素化物;臭化ウラン;ヨウ化ウラン;セレン化ウラン;テルル化ウラン;塩化ウラン;硫化ウラン;ホウ化ウラン;リン化ウラン;ヒ化ウラン及びアンチモン化ウランといった無機種を含む。有機配位子/アニオン種も、ウラン含有材料として使用され得る。しかしながら、これら多原子イオンのサイズが大きくなるにつれ、ウラン質量の濃度が減少し、核燃料関連アプリケーション用の構造への製造のために好ましくない上限が生じる。ウラン含有材料の非制限的な例は、ウラン酸アンモニウム(ammonium urinates);ウランカルボニル(uranium carbonyl);硝酸ウラニル;シュウ酸ウラニル;過酸化ウラニル;酢酸ウラニル;安息香酸ウラニル;タンニン酸ウラニル(uranyl tannate);及びキノリン酸ウラニル(uranyl quinolinate)等の有機配位子/アニオン種を含む。
【0058】
更に、ウラン含有材料は、ある形態で付加的に製造され、続いてその他のウランの形態に変換され得る(例えば焼結工程後における酸化、還元、浸炭(carburization)、窒化(nitriding)によって)。例えば、付加製造中に形成されたウラン含有材料由来のウランは、酸化工程を通じて、酸化ウランに変換され得る。
【0059】
スラリー(例えば核燃料スラリー)は、0体積%超~7体積%、別として1体積%~5体積%、別として4体積%~6体積%の量で存在する分散剤を含む。特定の分散剤は、スラリー組成物、及びウラン含有材料の粒子中におけるその分散能のために選択される。分散剤の量は、少なくとも完全に粒子をコートするのに十分で、かつよく分散された、チキソトロピックでない(not be thixotropic)、シアシニング非ニュートン流体(shear thinning non-Newtonian fluid)を製造するために十分な量であるべきである。一の例において、スラリーは100000センチポアズ(cP)以下の粘度を、別として、10000cP以下の粘度を有する。高すぎるゼロシアー粘度、又はシアシニング挙動の不足(チキソトロピック、又はシアシックニング)は、連続的な、欠陥のない製造を妨げる。
【0060】
特定の実施形態において、分散剤は、VARIQUAT(登録商標)CC-9、若しくはVARIQUAT(登録商標)CC-42(いずれもドイツのEvonik Industries AGから入手可能)といった第四級塩化アンモニウムを含む組成物を有するか、又はTEGO(登録商標) Dispers 660C、若しくはTEGO(登録商標)Dispers 670(いずれもドイツのEvonik Industries AGから入手可能)といった高分子量ポリマー分散剤である。更なる特定の一例において、2つの異なる分散剤、又は分散剤の混合物が使用できる。例えば、第1組成物の分散剤、及び第2組成物の分散剤は、第2成分に対する第1成分の割合(第1成分:第2成分)が、2~2.5、別として2.15~2.35の範囲で、混合され得る。
【0061】
光吸収剤は、特定の波長内の入射放射線を吸収し、この波長において起こるスラリーのフリーラジカル重合を停止させ、または減少させ、それによって架橋を減少させる。特定の実施例において、光吸収剤は、トリアジンベースの光吸収剤であり、好ましくは、18~20%の2-メトキシ-1-プロピルーアセタート(2-methoxy-1-propyl-acetate)を含む、2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジンである(例えばTinuven(登録商標)477(BASFから入手可能)が挙げられ、これは高い熱安定性、優れた光耐久性(photopermanence)、並びに金属触媒及びアミン架橋剤との最小限の相互作用を示す、レッドシフトしたトリスレゾルシノールトリアジン発色団に基づく、液体トリアジンベースの光吸収剤である)。
【0062】
光開始剤は、スラリー組成物の硬化に使用される入射放射線(即ち硬化放射線)と適合するよう選択され、逆も同様である。特定の実施例において、光開始剤はタイプI、又はタイプIIの光開始剤であり、好ましくはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Bis(2,4,6-trimethylbenzoyl)-phenylphosphineoxide)であり、例えばアメリカのIGM Resinsから入手可能なOmniRad 819(旧名はIrgacure 819)が挙げられる。これは不飽和樹脂を硬化放射線に曝露するラジカル重合用の光開始剤である。
【0063】
スラリー(例えば核燃料スラリー)は、任意選択的に希釈剤を含む。希釈剤は通常、モノマー相に及ぼすその効果のために使用され、脱バインダー(debindering)工程における製造中の部位(as-manufactured part)に及ぼす効果のために追加、又は適用される。例えば、希釈剤が脱バインダーにおいて追い出される(driven-off)場合、製造中の部位に小さな空隙が残存し、原子炉用コンポーネントにおいて、上記小さな空隙がガス排出容積をもたらし、これがコンポーネントのクラッキングを最小化する、または防止することに寄与する。希釈剤を使用する場合、希釈剤は、4体積%~40体積%、別として4体積%~20体積%、別として4体積%~6体積%、別として8体積%~40体積%又は10体積%~30体積%、別として8体積%~20体積%又は8体積%~15体積%の量で存在する。適切な希釈剤は、室温で液体であり、400℃未満、別として300℃未満の温度で希釈剤が追い出され得るような十分に低い沸点を有する。特定の実施例において、希釈剤はメチルナフタレンである。
【0064】
スラリー(例えば核燃料スラリー)は、任意選択的に光活性化染料を含む。光活性化染料を含む場合、光活性化染料は0体積%超、別として0.05体積%~0.10体積%の量で存在する。光活性化染料は、硬化時に硬化層の色を変化させることにより、硬化層を可視化させる。かかる可視化は、特定の波長下、例えばUV光において検知可能であり、障害検出、又はその他の検査目的のために使用可能である。特定の実施例において、光活性化染料は、トリアリールメタン(triarylmethane)染料、好ましくはC2530CIN(Crystal violetというブランド名で、アメリカのSigma-Aldrich社から入手可能)。Crystal violetは青色の、アニリン由来の染料である。その他の特定の実施例において、光活性化染料は、0.002モル/リットルのモノマーレジンの量で存在する。
【0065】
特定の実施形態において、光吸収剤、光開始剤、及び光活性化染料(使用する場合)は、放射線フォトソース(photosource)に効果的であるように選択される。例えば、光吸収剤、光開始剤及び光活性化染料は、300~700nm、別として400nm~620nm、又は400nm~560nmで効果的であるように選択される。
【0066】
本開示の核燃料スラリーは、付加製造法において使用可能である。コンポーネントの製造において使用される材料における特定の条件(requirements)(例えば化学耐性など)、装置それ自体の使用における特定の条件(例えば特定の雰囲気、又は真空条件)、並びに製造コンポーネントのサイズ及び形状を収容できる、適切な付加製造装置が使用可能である。適切な付加製造装置の例は、SLA及びDLP機、電子ビームベースの付加製造装置、及びDLPステレオリソグラフィー装置を含み、これらのいずれか1つは、特定の条件のために修正、又は採用され得る。
【0067】
本開示の液体材料及びスラリー、並びに低い(又は0に近い、又は0)吸光度を有する第2粒子相の導入は、あらゆる適切な付加製造法での使用において順応され得る。適切な付加製造法の例は、ISO/ASTM52900-15に開示される。これは付加製造法のカテゴリーを定義し、バインダージェッティング(binder jetting)、指向性エネルギー堆積(directed energy deposition)、材料押出(material extrusion)、マテリアルジェッティング(material jetting)、粉末床溶融結合(powder bed fusion)、シート積層(sheet lamination)、及び光重合(photopolymerization)を含む。ISO/ASTM52900-15の内容は、参照により本明細書に引用する。ステレオリソグラフィーは、光重合法を使用する付加製造の一形態である。実施形態の例において、ステレオリソグラフィック付加製造技術は、UV放射線、又はベータ放射線への曝露による光開始(photoinitiation)を含む。いくつかの実施形態の例において、紫外線放射は、デジタルライトプロセッサ(degital light processor, DLP)、又は光造形法(stereolithography apparatus, SLA)で生み出される。その他の実施形態の例において、ベータ放射線は、電子ビーム(EBeam)装置、又は電子照射(EBI)装置で生み出される。本明細書で開示した方法及び組成物は、ステレオグラフィーの文脈内に記載されているが、かかる方法及び組成物が、その他の付加製造法にまで拡大され得る、又は適用され得る事は、明確に予期される。
【0068】
付加製造法の例は、製造されるコンポーネントの設計を、付加製造装置のコントローラ(controller)に与えることを含み得る。かかる設計は、付加製造プロトコルに導入され得る。方法の一の例において、溶液槽(bath)又は貯留槽(reservoir)といった、核燃料スラリー組成物の供給容積が確立される。コンポーネントのグリーンボディのベース部分は、付加製造装置の可動ベースと接触するスラリー組成物の一部を硬化することによって形成される。別として、ベース部分は、付加製造法の開始前に事前に組み立てられ得る。コンポーネントのグリーンボディの追加部分は、まずベース部分と接触しているスラリー組成物の一部分を硬化させてグリーンボディの第1層を形成し、続いて、供給容積の表面と、最も直近に形成された追加部分との界面に対して、可動ベースを移動させながら、グリーンボディの直近堆積層と接触しているスラリー組成物の一部分を硬化させて追加部分を形成することによって、各層(layer-by-layer)の基礎上に形成される。可動ベースの移動(translation)は通常、コンポーネントの設計に従い、及び付加製造プロトコルの指示に従って行われる。実施形態の例において、供給容積の表面と、最も直近に形成されたグリーンボディの追加部分との界面に対して可動ベースを移動させることは、50μm又はそれ以上のX軸分解能及びY軸分解能、並びに20μm又はそれ以上のZ軸分解能を有する。実施形態の例において、各層の基礎上に形成されたコンポーネントのグリーンボディの各追加部分は、10μm以上の、別として25μm~50μmの厚さを有する。コンポーネントのグリーンボディの各層の製造が完結するとすぐ、コンポーネントのグリーンボディを付加製造装置から取り除いて焼結し(又はその他の脱バインダー/強化技術による処理をし)、高密度化セラミックを形成することができる。
【0069】
続いて、製造グリーンボディは、焼結して製造コンポーネント(例えば原子炉システムの製造コンポーネント等)を形成することができる。その他の適切な強化の形態(温度、圧力、及び雰囲気の組み合わせを含む)は、製造コンポーネントを形成するために使用され得る。強化製造コンポーネントは、例えば1つ以上の機械加工、研削(grinding)、研磨(polishing)、コーティング、浸炭、窒化、酸化、及びエッチング等によって更に加工され得る。
【0070】
最後に、図5及び6は、アクリル酸ベーススラリー材料を使用して製造したグリーンボディ500、510、520を、2つの異なる角度から示している。アクリル酸ベーススラリー組成物は以下の表1に記載され、分離希釈剤コンポーネント(separate diluent component)、即ち、ポリエチレングリコール、又はPRO14388(SR238モノマー/PEG類似希釈剤ブレンドで、Sartomerから市販されている)が使用される。
【0071】
表1-スラリー組成物
【表1】
【0072】
アクリル酸ベーススラリー組成物は、本明細書に開示のように、特にデジタルライトプロセッサ(DLP)を使用する付加製造法において使用した。本明細書に示したグリーンボディは、テスト構造の形態であるが、適切な付加製造プロトコルを使用することで、任意の構造を形成できる。
【0073】
実施例の試験A:不均質粒子戦略の評価を、無機粒子(表2)及び試験波長領域(405nm)において低吸収性の有機粒子(表3)の両方を使用して行った。SR238ベースのモノマーフォーミュレーションは、表2の各サンプルにおいて使用した。この基本的なフォーミュレーションを、高度なマルチモノマーフォーミュレーションの影響を取り除くために、及び透明粒子の追加の効果、即ち第2粒子相材料の追加の効果のみに焦点を合わせるために使用した。また、SR238ベースのモノマーフォーミュレーションは、SR238の低いベース粘度が、より高いベース粘度を有する混合モノマーフォーミュレーションと比べ、可能な限り高い粒子ローディングをもたらすために使用した。表2は、サンプルA~Lの、低吸光性粒子及びウラン粒子のローディング(体積%)の関数としての硬化深さ(μm)の変化を示す。これは、有機及び無機透明層の両方で、以下の表3に示すモノマーフォーミュレーションを使用して行った。
【0074】
表2-様々なフォーミュレーションにおける硬化深さ
【表2】
【0075】
表3-フォーミュレーション
【表3】
【0076】
表3のモノマーフォーミュレーションは、低吸光性粒子のローディングの関数として透過深さを評価するために使用した。上記フォーミュレーションにおいて、(ウラン含有、又は低吸光性)粉体の濃度が上がると、モノマーレジン及び分散剤の相対体積が変化した。従って、表3において、分散剤は、粉体に対する相対量(relative terms)で記載され、光開始剤は、モノマーレジンに対する相対量で記載される。
【0077】
表3の体積%でのフォーミュレーション、及び表2に記載の材料を、174mW/cmにおいて15秒間、405nmの硬化放射線に曝露し、硬化が起きたスラリー容積での深さ(「硬化深さ」)を測定した。3Dプリンターで硬化放射線に曝露し、その透過深さを、マイクロメーターを使用して測定した。表2は、いくつかのサンプルにおける硬化深さの実験測定結果を含み、図7は、より大きなサンプルセットにおける、(低い吸光度を有する第2粒子相):(第1粒子相)の割合の関数としての硬化深さ(μm)の結果を示す。図7に示すように、透明樹脂粒子:ウラン粒子の割合が増加すると、硬化深さは増加した。これらのデータポイントは、モノマー、光開始システム(photo-initiating system)、及びウランの体積ローディングが異なるが、透明樹脂粒子:ウラン粒子の比率で正規化されている。このように正規化されると、透明粒子の増加に伴い深さが増加するという明確な傾向が見られる。言い換えると、様々なフォーミュレーション、ウラン粒子のローディング、及び光開始システムにおいて、図7は、低吸光度を有する第2粒子相のローディング(体積%)の増加は一般に、硬化深さ(μm)の増加をもたらすことを示す。上記効果は、約0.25の比率までは線形的であるが、約0.25~1.0の比率においては、1.0の比率における硬化深さの限界22μmに漸近する。この漸近最大値は、樹脂粒子由来の効果が、ウラン粒子由来の効果よりも優位である領域を反映している。
【0078】
実施例試験B:いくつかの実施形態において、第2粒子相の粒子用のポリマー材料は、(ウラン含有粒子に対して)低い、又はゼロに近い、又はゼロの吸光度を有する非高分子材料に置き換えられる。例えば、アルミナ(Al)は第2粒子相の粒子として使用され得る。アルミナは、硬化放射線に対して非常に透過的(0.25Au未満の吸光度を有する)であり、低い屈折率を有する(400nmにおいて約1.8)ため、アルミナは、第2粒子相の粒子において使用可能な(viable)材料である。典型的な実施例において、アルミナ粒子は、3μm~12μm、別として6μm~10μm、別として8μm~10μmの直径を有する。
【0079】
この実施形態の実験的な調査のために、1200グリット(直径約3μm)でアルミナを使用し、2つのスラリーを調製した。スラリーは、表1に記載のスラリー組成物をベースにし、以下の変更を加えた:スラリーAは、SR238/SR494のバランスを含む25%の二酸化ウランを含み、かつアルミナを含まない;スラリーBは、SR238/SR294のバランスを含む25%の二酸化ウラン、及び25%のアルミナを含む。スラリーを同様に混合し、174mW/cmで15秒間、405nmにおける硬化放射線の透過深さを調べた。この透過深さ試験は、表2~3及び図7に関連して報告されたスラリー及び結果に関連して記録されたものと同じ手順を使用して行った。この実施例において、スラリーAの透過深さは13μm、及びスラリーBの透過深さは18μmであった。これらの透過深さの結果は、硬化放射線の透過深さを増加させるために、(二酸化ウランと比較して)低い(又はゼロに近い、又はゼロの)吸光度を有する粒子を含む第2粒子相を使用することの有効性を示す。
【0080】
原子炉の付加製造コンポーネント、特に燃料要素に関連するコンポーネントと関連させて記載してきたが、本願で開示した液体材料、スラリー、及び付加製造法は、原子炉のその他のコンポーネント、例えば被覆材の製造に適用することが可能であり、その他技術、例えば石油化学工業(例えば、化学反応槽)、航空宇宙産業(例えば、タービンブレード及びハウジングの部品用、並びに燃焼室、ノズル、バルブ、及び冷却水管を含む、ミサイル及びロケットにおける部品用)の技術の製造、及びその他の複雑な製造物品に適用することが可能である。更に、核分裂性の燃料物質、原子炉、及び関連するコンポーネントに関して記載したが、本明細書に開示した原理、組成物、構造、特徴、配置、及び工程は、その他の材料、その他の組成物、その他の構造、その他の特徴、その他の配置、及びその他の工程に適用することが可能であり、それらの製造、及びその他の反応炉タイプにも同様に適用することができる。
【0081】
本明細書における実質的に全ての複数及び/又は単数の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又はアプリケーションに適合するように、複数形を単数形に変換可能、及び/又は単数形を複数形に変換可能である。本明細書では、様々な単数/複数の置き換え(permutations)は、明確性の目的の為に明確に説明していない。
【0082】
本明細書に記載した主題は、時に、様々なその他のコンポーネント内に含まれる、又は関連する様々なコンポーネントを示す。かかる描写された構成(depicted architectures)は、単に例示的なものであり、実際は同様の機能を実現する多くのその他の構成が実装可能であることを理解されたい。概念的な意味では、同様の機能を実現するためのコンポーネントのあらゆる配置が、所望の機能が実現されるように、事実上”関連”づけられている。したがって、本明細書に開示した、特定の機能を達成するために組み合わされるいずれか2つのコンポーネントは、構成や介在するコンポーネントに関係なく、所望の機能が実現されるように、互いに「関連する」とみなすことが可能である。同様に、そのように関連するいずれか2つのコンポーネントは、所望の機能を実現するために、互いに「作動的に連結した(operably connected)」又は「作動的に組み合わさった(operably coupled)」ともみなすことが可能であり、及びそのように組み合わされ得る2つのコンポーネントはいずれも、所望の機能を実現するために、互いに「作動的に組み合わされ得る(operably couplable)」とみなすことも可能である。作動的に組み合わされ得る特定の実施例は、物理的に結合した(mateable)、及び/又は物理的に相互作用するコンポーネント、及び/又はワイヤレスに相互作用可能な、及び/又はワイヤレスに相互作用するコンポーネント、及び/又は理論的に相互作用する、及び/又は理論的に相互作用可能なコンポーネントを含むが、これらに限定されない。
【0083】
場合によっては、1つ以上のコンポーネントは、本明細書において、「~するよう構成された(configured to)」、「~によって構成された(configured by)」、「~するよう構成され得る(configurable to)」、「~するよう動作し得る(operable/operative to)」、「適用された/適用され得る(adapted/adaptable)」、「~できる(able to)」、「適合可能である/~に適合した(conformable/conformed to)」等と言及され得る。文脈で特段の要求がない限り、当業者は、かかる用語(例えば「~するよう構成された」)は一般に、アクティブ状態のコンポーネント、及び/又は非アクティブ状態のコンポーネント、及び/又は待機状態のコンポーネントを包含し得ると認識するだろう。
【0084】
本明細書に記載した主題の特定の態様を示し、説明してきたが、本明細書の記載に基づいて、本明細書に記載した主題及びその広範な態様から逸脱しない範囲で、変更及び修正を当業者が加え得ることは明らかであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、本明細書に記載された主題の真の趣旨及び範囲内にあるようなかかる全ての変更及び修正を、その範囲内に包含するものである。一般に、本明細書で使用される用語、及び特に添付の特許請求の範囲で使用される用語(例えば、添付の特許請求の範囲のボディ)は、一般に「オープン」な用語であることを、当業者は理解するであろう(例えば、用語「含む(including)」は、「含むが、それに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「含むが、それに限定されない」と解釈されるべきである、等)。更に、導入されたクレームに記載の特定の数字が意図される場合、かかる意図はクレーム中に明示的に記載され、かかる記載がない場合は、かかる意図がないことを、当業者は理解するだろう。例えば、理解の目的のために、以下の特許請求の範囲は、クレームの記載を導入するために、前置きのフレーズ「少なくとも1つ」及び「1つ又はそれ以上」の使用を含むだろう。しかしながら、かかるフレーズの使用は、不定冠詞「a」または「an」によるクレームの記載の導入が、かかる導入されたクレームの記載を含む特定のクレームを、かかる記載を1つだけ含むクレームに限定することを意味する、と解釈されるべきではない。上記は、同じクレームが前置きのフレーズ「1つ又はそれ以上」又は「少なくとも1つ」、及び「a」又は「an」といった不定冠詞を含む場合であっても、同様である(例えば「a」及び/又は「an」は、通常は「少なくとも1つ」又は「1つ又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである);クレーム記載の導入に使用される定冠詞についても同様である。更に、導入クレームの特定の数値が明示的に記載されている場合であっても、当業者は、かかる記載は一般に、「少なくとも」記載された数値、を意味すると解釈されるべきである、と理解するだろう(例えば、他の修飾語(modifier)を伴わない「2つの記載」のベア(bare)な記載は一般に、少なくとも2つの記載、又は2つ若しくはそれ以上の記載を意味する)。更に、「少なくとも1つのA、B、及びC等」と類似する慣習(convention)が使用されている場合、一般的に、当業者であればその慣習を理解する意味で、かかる構造(construction)は意図されている(例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有する、Bのみを有する、Cのみを有する、A及びBの両方を有する、A及びCの両方を有する、B及びCの両方を有する、並びに/又はA、B、及びCのいずれをも有するシステム、等を含むがこれらに限定されない)。「少なくとも1つのA、B、又はC等」と類似する慣習が使用されている場合、一般的に、当業者であればその慣習を理解する意味で、かかる構造は意図されている(例えば、「A、B、又はCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有する、Bのみを有する、Cのみを有する、A及びBの両方を有する、A及びCの両方を有する、B及びCの両方を有する、並びに/又はA、B、及びCのいずれもを有するシステム、等を含むが上記に限定されない)。更に、明細書、特許請求の範囲、又は図面中のいずれにおいても、2つ又はそれ以上の選択的な(alternative)用語を表す離接語(disjunctive word)である「及び/又は」というフレーズは、文脈でその他の指示が無い限りは、1つの用語、いずれかの用語、又は両方の用語を含み得ると考えられるべきであることを、当業者は理解するであろう。例えば、「A又はB」というフレーズは一般に、「A又はB」又は「A及びB」を含み得ると理解される。
【0085】
添付の特許請求の範囲に関して、当業者は、本明細書に記載された操作が、一般的にいかなる順序で行われてもよいことを理解するだろう。また、様々な操作フローがシーケンスで記載されているにも関わらず、様々な操作は、示された順序でない順序で行っても、又は同時に行ってもよいことは理解されるべきである。かかる代替的な順序の例としては、文脈でその他の指示が無い限りは、重複(overlapping)、インターリーブ(interleaved)、中断(interrupted)、再配列(reordered)、増分(incremental)、予備(preparatory)、追加(supplemental)、同時(simultaneous)、逆(reverse)又はその他の変形(variant)順序が挙げられる。更に、「~に応答して(responsive to)」、「~に関連してrelated to」、又はその他の過去形の形容詞のような用語は、文脈でその他の指示がない限りは一般に、かかる変形を除外することを意図するものではない。
【0086】
上述の特定の例示的な工程、及び/又はデバイス、及び/又は技術は、本明細書の他の箇所(例えば、添付の特許請求の範囲、及び/又は本出願の他の箇所)に教示される、より一般的な工程、及び/又はデバイス、及び/又は技術を代表するものであることを、当業者は理解するであろう。
【0087】
様々な態様及び実施形態を本明細書で開示したが、その他の態様及び実施形態も、当業者にとって明白であるだろう。本明細書で開示した様々な態様及び実施形態は、開示の目的のためであり、以下の特許請求の範囲によって示される、真の範囲及び趣旨に限定されることは意図されていない。
【0088】
明細書、図面、及び特許請求の範囲に記載された例示的な実施形態は、限定されることを意味するものではない。本明細書に記載した主題の趣旨又は範囲から逸脱することが無ければ、その他の実施形態が使用されてもよく、及びその他の変更がなされてもよい。
【0089】
本明細書に記載したコンポーネント(例えば操作)、デバイス、物(objects)、及びそれらに付随する議論は、概念的な明白性のための例として使用され、それら様々なコンフィギュレーションの変更が期待されることを、当業者は認識するだろう。その結果、本明細書で使用される場合、記載された特定の例および付随の議論は、それらのより一般的な分類を代表するものであることが意図される。一般的に、いずれかの特定の例示の使用は、その分類を代表するものが意図され、並びに記載されていない特定のコンポーネント(例えば操作)、デバイス、及びモノは、制限されるものと捉えられるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】