(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】性腺体細胞のインビトロ誘導
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20231115BHJP
【FI】
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527390
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 US2021072165
(87)【国際公開番号】W WO2022094628
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523163152
【氏名又は名称】コンセプション バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】バーガジェ リシケシュ
(72)【発明者】
【氏名】セレス カルメン ビアンカ
(72)【発明者】
【氏名】ウルタド-ゴンザレス パブロ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー アリッサ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB19
4B065BB40
4B065CA46
(57)【要約】
本明細書では、多能性幹細胞から卵巣体細胞などの性腺細胞集団を生成する方法が提供される。また、その方法において生成される性腺細胞集団および中間細胞集団も含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、
(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、および
(c)性腺細胞集団を産生するために、BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程
を含む、性腺細胞集団を産生する方法。
【請求項2】
(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、
(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに
(c)性腺細胞集団を産生するために、フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程
を含む、性腺細胞集団を産生する方法。
【請求項3】
(a)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、および
(b)性腺細胞集団を産生するために、BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、第2期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程
を含む、性腺細胞集団を産生する方法。
【請求項4】
(a)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに
(b)性腺細胞集団を産生するために、フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、第2期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程
を含む、性腺細胞集団を産生する方法。
【請求項5】
性腺細胞集団を産生するために、BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、ある期間にわたって、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞を培養する工程
を含む、性腺細胞集団を産生する方法。
【請求項6】
性腺細胞集団を産生するために、フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、ある期間にわたって、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞を培養する工程
を含む、性腺細胞集団を産生する方法。
【請求項7】
第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAとグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質とを含む中胚葉誘導培地中で、ある期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程
を含む、第1中間細胞集団を産生する方法。
【請求項8】
レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、ある期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程
を含む、第2中間細胞集団を産生する方法。
【請求項9】
(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAとグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質とを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、ならびに
(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)、FGFおよびグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程
を含む、第2中間細胞集団を産生する方法。
【請求項10】
第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分がブラキウリを発現する、請求項1~4および9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分がOSR1、PAX2またはLHXを発現する、請求項1~4、8および9のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
性腺細胞集団中の細胞の少なくとも一部分がFOXL2、NR2F2またはRUNX1を発現する、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
多能性幹細胞が、1cm
2あたり約10,000~約40,000細胞の密度で播種される、請求項1、2、7および9~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
多能性幹細胞が、フィブロネクチンで被覆された培養プレートに播種される、請求項1、2、7および9~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
多能性幹細胞が、マトリゲルで被覆された培養プレートに播種される、請求項1、2、7および9~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
中胚葉誘導培地がFGFをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
中胚葉誘導培地がBMP4をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
中胚葉誘導培地がアポトーシス阻害物質をさらに含む、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度が約30ng/mL~約70ng/mLである、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度が約50ng/mLである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
中胚葉誘導培地中のFGFがFGF2である、請求項16~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
中胚葉誘導培地中のFGF2の濃度が約5ng/mL~約20ng/mLであり、任意で、中胚葉誘導培地中のFGF2の濃度が約12ng/mLである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
中胚葉誘導培地中のBMP4の濃度が約10ng/mL~約50ng/mLであり、任意で、中胚葉誘導培地中のBMP4の濃度が約30ng/mLである、請求項17~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
中胚葉誘導培地中のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質がCHIR99021である、請求項18~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
CHIR99021の濃度が約1μM~約5μMである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
中胚葉誘導培地中のCHIR99021の濃度が約3μMである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
中胚葉誘導培地内で、
(A)アポトーシス阻害物質がY-27632であり、任意で、Y-27632の濃度が約5μM~約20μMであるか、または
(B)アポトーシス阻害物質が、クロマン1、エムリカサンおよびトランス-ISRIBを含み、任意で、クロマン1の濃度が約30nM~約70nMであり、エムリカサンの濃度が約2μM~約10μMであり、トランス-ISRIBの濃度が約0.2μM~約2μMである、
請求項19~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
中胚葉誘導培地内で、
(A)Y-27632の濃度が約10μMであるか、または
(B)クロマン1の濃度が約50nMであり、エムリカサンの濃度が約5μMであり、トランス-ISRIBの濃度が約0.7μMである、
請求項28記載の方法。
【請求項30】
中胚葉誘導培地中で培養する期間が約24時間~約96時間である、請求項1~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
中胚葉誘導培地中で培養する期間が約24時間~約72時間である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
中胚葉誘導培地中で培養する期間が約56時間~約72時間である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%がブラキウリを発現する、請求項1~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも80%が、MIXL1、N-カドヘリン、EpCam、NCAMのうちの1つまたは複数を発現する、請求項1~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%が、ブラキウリ、N-カドヘリン、EpCamおよびNCAMを発現する、請求項1~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%が中胚葉細胞または中胚葉様細胞である、請求項1~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
第1中間細胞集団が中胚葉細胞または中胚葉様細胞から本質的になる、請求項36記載の方法。
【請求項38】
第1中間細胞集団が、中間中胚葉誘導培地における培養の前に、新しいフィブロネクチン被覆培養プレート上に再プレーティングされ、任意で、第1中間細胞集団が、酵素的に剥離され、遠心分離され、再懸濁されてから、再プレーティングされる、請求項1~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
第1中間細胞集団が約5,000~約25,000細胞/cm
2の密度でプレーティングされる、請求項38記載の方法。
【請求項40】
中間中胚葉誘導培地がFGFをさらに含む、請求項1~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
中間中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質をさらに含む、請求項1~40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
中間中胚葉誘導培地がアクチビンAをさらに含む、請求項1~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
中間中胚葉誘導培地がアポトーシス阻害物質をさらに含む、請求項1~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
第1中間細胞集団を、
(i)まず、第1濃度のアポトーシス阻害物質を含む中間中胚葉誘導培地中で、
(ii)次に、第2濃度以下のアポトーシス阻害物質を含む中間中胚葉誘導培地中で、
培養する工程を含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
中間中胚葉誘導培地中のRAPMがRARアゴニストであり、任意で、RAPMがレチノイン酸(RA)および/またはTTNPBを含む、請求項1~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
(c)RAPMがRAであり、中間中胚葉誘導培地中のRAの濃度が約0.5μM~約2μMであり、および/または
(d)RAPMがTTNPBであり、中間中胚葉誘導培地中のTTNPBの濃度が約0.2μM~約1μMである、
請求項1~45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
(c)中間中胚葉誘導培地中のRAの濃度が約1μMであり、および/または
(d)中間中胚葉誘導培地中のTTNPBの濃度が約0.5μMである、
請求項46記載の方法。
【請求項48】
中間中胚葉誘導培地中のFGFがFGF2であり、FGF2の濃度が約10ng/mL~約30ng/mLである、請求項40~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
中間中胚葉誘導培地中のFGF2の濃度が約20ng/mLである、請求項48記載の方法。
【請求項50】
中間中胚葉誘導培地中のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質がCHIR99021であり、CHIR99021の濃度が約1μM~約5μMである、請求項41~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
中間中胚葉誘導培地中のCHIR99021の濃度が約2μMまたは約3μMである、請求項50記載の方法。
【請求項52】
中間中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度が約10ng/mL~約50ng/mLである、請求項42~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
中間中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度が約30ng/mLである、請求項52記載の方法。
【請求項54】
中胚葉誘導培地内で、
(A)アポトーシス阻害物質がY-27632であり、Y-27632の濃度が約5μM~約20μMであるか、または
(B)アポトーシス阻害物質が、クロマン1、エムリカサンおよびトランス-ISRIBを含み、クロマン1の濃度が約30nM~約70nMであり、エムリカサンの濃度が約2μM~約10μMであり、トランス-ISRIBの濃度が約0.2μM~約2μMである、
請求項43および46~53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
中間中胚葉誘導培地中のアポトーシス阻害物質がY-27632であり、
前記方法が、第1中間細胞集団を、
(i)まず、約10μMのY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、そして
(ii)次に、約2μM以下のY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、
培養する工程を含む、
請求項45~54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
第1中間細胞集団を、
(i)まず、約10μMのY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、約24時間にわたって、
(ii)次に、約2μM以下のY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、約5~6日にわたって、
培養する工程を含む、請求項45~55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
中間中胚葉誘導培地中で培養する期間が約4~14日である、請求項1~56のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
中間中胚葉誘導培地中で培養する期間が約5~9日である、請求項1~57のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
中間中胚葉誘導培地中のアポトーシス阻害物質がY-27632であり、Y-27632の濃度が、中間中胚葉誘導培地における培養時に、
(a)最初の24時間は約10μMである、
(b)24時間~72時間は約2μM以下である、
(c)72時間~120時間は約0.5μM以下である、または
(d)120時間以降は約0.1μM以下である、
請求項1~58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
第1中間細胞集団が、アポトーシス阻害物質を含む中間中胚葉誘導培地中で約24時間にわたって培養され、約24時間後に、該培地の一部分がまず、アポトーシス阻害物質を含まない中間中胚葉誘導培地に交換される、請求項44~59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
培地の前記一部分が培地の約80%である、請求項60記載の方法。
【請求項62】
後続の培地交換をさらに含み、該培地交換が、最初の24時間の培養後、約48時間ごとに該培地の一部分を交換することを含む、請求項60または61記載の方法。
【請求項63】
各後続の培地交換における培地の前記一部分が、培地の約80%である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%が、OSR1、PAX2、LHX1およびRUNX1のうちの1つまたは複数を発現する、請求項1~63のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%が、OSR1、PAX2、LHX1およびRUNX1のうちの2つ以上を発現する、請求項1~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%が、OSR1、PAX2およびLHX1を発現する、請求項1~65のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%が中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞である、請求項1~66のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
第2中間細胞集団が、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞から本質的になる、請求項67記載の方法。
【請求項69】
第2中間細胞集団が、性腺誘導培地における培養の前に、新しいフィブロネクチン被覆培養プレート上に再プレーティングされ、任意で、第2中間細胞集団が、酵素的に剥離され、遠心分離され、再懸濁されてから、再プレーティングされる、請求項1~68のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
第2中間細胞集団が約5,000~約25,000細胞/cm
2の密度でプレーティングされる、請求項69記載の方法。
【請求項71】
性腺誘導培地がRAPMをさらに含む、請求項1~70のいずれか一項記載の方法。
【請求項72】
性腺誘導培地がアポトーシス阻害物質をさらに含む、請求項1~71のいずれか一項記載の方法。
【請求項73】
性腺誘導培地がフォリスタチンをさらに含む、請求項1、3、5および10~72のいずれか一項記載の方法。
【請求項74】
性腺誘導培地中のフォリスタチンの濃度が約10ng/mL~約50ng/mLである、請求項1~73のいずれか一項記載の方法。
【請求項75】
性腺誘導培地中のフォリスタチンの濃度が約25ng/mLである、請求項74記載の方法。
【請求項76】
性腺誘導培地中のBMPが、BMP4、BMP2、BMP7、BMP15またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1、3、5および10~75のいずれか一項記載の方法。
【請求項77】
性腺誘導培地中のBMPの総濃度が約5ng/mL~約20ng/mLまたは約20ng/mL~約70ng/mLである、請求項1、3、5および10~76のいずれか一項記載の方法。
【請求項78】
性腺誘導培地中のBMPの総濃度が約10ng/mLまたは約50ng/mLである、請求項77記載の方法。
【請求項79】
性腺誘導培地中のBMP4の濃度が約5ng/mL~約20ng/mLまたは約20ng/mL~約70ng/mLである、請求項1~78のいずれか一項記載の方法。
【請求項80】
性腺誘導培地中のBMP4の濃度が約10ng/mLまたは約50ng/mLである、請求項79記載の方法。
【請求項81】
性腺誘導培地中のFGFが、FGF2、FGF9、FGF10、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~80のいずれか一項記載の方法。
【請求項82】
FGFの濃度が約1ng/mL~約10ng/mLまたは約5ng/mL~約25ng/mLである、請求項1~81のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
FGFの濃度が約5ng/mLまたは約10ng/mLである、請求項82記載の方法。
【請求項84】
性腺誘導培地中のFGFがFGF2であり、FGF2の濃度が約1ng/mL~約10ng/mLまたは約5ng/mL~約25ng/mLである、請求項1~83のいずれか一項記載の方法。
【請求項85】
性腺誘導培地中のFGF2の濃度が約5ng/mLまたは約10ng/mLである、請求項84記載の方法。
【請求項86】
性腺誘導培地中のRAPMがRARアゴニストであり、任意で、RAPMがレチノイン酸(RA)および/またはTTNPBを含む、請求項71~85のいずれか一項記載の方法。
【請求項87】
(c)RAPMがRAであり、性腺誘導培地中のRAの濃度が約0.5μM~約2μMであり、および/または
(d)RAPMがTTNPBであり、性腺誘導培地中のTTNPBの濃度が約0.2μM~約1μMである、
請求項86記載の方法。
【請求項88】
性腺誘導培地内で、
(A)アポトーシス阻害物質がY-27632であり、任意で、Y-27632の濃度が約5μM~約20μMであるか、または
(B)アポトーシス阻害物質が、クロマン1、エムリカサンおよびトランス-ISRIBを含み、任意で、クロマン1の濃度が約30nM~約70nMであり、エムリカサンの濃度が約2μM~約10μMであり、トランス-ISRIBの濃度が約0.2μM~約2μMである、
請求項72~87のいずれか一項記載の方法。
【請求項89】
性腺誘導培地内で、
(A)Y-27632の濃度が約10μMであるか、または
(B)クロマン1の濃度が約50nMであり、エムリカサンの濃度が約5μMであり、トランス-ISRIBの濃度が約0.7μMである、
請求項88記載の方法。
【請求項90】
性腺誘導培地中で培養する期間が約5日~約21日である、請求項1~89のいずれか一項記載の方法。
【請求項91】
性腺誘導培地中で培養する期間が約7日~約14日である、請求項90記載の方法。
【請求項92】
性腺細胞集団が卵巣体細胞を含む、請求項1~91のいずれか一項記載の方法。
【請求項93】
性腺細胞集団が卵巣体細胞からなる、請求項1~92のいずれか一項記載の方法。
【請求項94】
性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%がFOXL2陽性細胞である、請求項1~93のいずれか一項記載の方法。
【請求項95】
性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%がNR2F2陽性細胞である、請求項1~94のいずれか一項記載の方法。
【請求項96】
性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%がKRT19陽性細胞である、請求項1~95のいずれか一項記載の方法。
【請求項97】
性腺細胞集団の少なくとも90%がFOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞である、請求項1~96のいずれか一項記載の方法。
【請求項98】
性腺細胞集団が、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞から本質的になる、請求項97記載の方法。
【請求項99】
FOXL2陽性細胞が顆粒膜細胞を含み、NR2F2陽性細胞が間質細胞および/または顆粒膜細胞を含み、KRT-19陽性細胞が卵巣上皮細胞を含む、請求項97または98記載の方法。
【請求項100】
中間中胚葉誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団中のNR2F2発現細胞の量が増加している、および/または
(II)性腺細胞集団中のFOXL2発現細胞の量が増加している、および/または
(III)性腺細胞集団中のRUNX1発現細胞の量が増加している、および/または
(IV)性腺細胞集団中のWNT6発現細胞の量が増加している、および/または
(V)性腺細胞集団中のNR5A1発現細胞の量が増加している、および/または
(VI)性腺細胞集団中のOSR1発現細胞の量が増加している、および/または
(VII)性腺細胞集団中のLHX9発現細胞の量が増加している、および/または
(VIII)性腺細胞集団中のEMX2発現細胞の量が増加している、
請求項1~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項101】
中間中胚葉誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団中のNR2F2発現細胞の量が増加している、および/または
(II)性腺細胞集団中のFOXL2発現細胞の量が増加している、および/または
(III)性腺細胞集団中のRUNX1発現細胞の量が増加している、および/または
(IV)性腺細胞集団中のWNT6発現細胞の量が増加している、および/または
(V)性腺細胞集団中のNR5A1発現細胞の量が増加している、および/または
(VI)性腺細胞集団中のOSR1発現細胞の量が増加している、
請求項1~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項102】
中間中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含まない方法によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団中のNR2F2発現細胞の量が増加している、および/または
(II)性腺細胞集団中のFOXL2発現細胞の量が増加している、および/または
(III)性腺細胞集団中のRUNX1発現細胞の量が増加している、および/または
(IV)性腺細胞集団中のWNT6発現細胞の量が増加している、および/または
(V)性腺細胞集団中のNR5A1発現細胞の量が増加している、および/または
(VI)性腺細胞集団中のOSR1発現細胞の量が増加している、および/または
(VII)性腺細胞集団中のLHX9発現細胞の量が増加している、および/または
(VIII)性腺細胞集団中のEMX2発現細胞の量が増加している、
請求項1~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項103】
中間中胚葉誘導培地がより低濃度のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む方法によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団中のNR2F2発現細胞の量が増加している、および/または
(II)性腺細胞集団中のFOXL2発現細胞の量が増加している、および/または
(III)性腺細胞集団中のRUNX1発現細胞の量が増加している、および/または
(IV)性腺細胞集団中のWNT6発現細胞の量が増加している、および/または
(V)性腺細胞集団中のNR5A1発現細胞の量が増加している、および/または
(VI)性腺細胞集団中のOSR1発現細胞の量が増加している、および/または
(VII)性腺細胞集団中のLHX9発現細胞の量が増加している、および/または
(VIII)性腺細胞集団中のEMX2発現細胞の量が増加している、
請求項1~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項104】
中間中胚葉誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)第2中間細胞集団におけるLHX1発現の量が増加している、および/または
(II)第2中間細胞集団におけるPAX2発現の量が増加している、および/または
(III)第2中間集団におけるWT1発現の量が増加している、および/または
(IV)第2中間細胞集団におけるRUNX1発現の量が増加している、および/または
(V)第2中間細胞集団の生存率が増加している、および/または
(VI)第2中間細胞集団の細胞形態がより一様である、
請求項1~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項105】
中間中胚葉誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)第2中間細胞集団におけるLHX1発現の量が増加している、および/または
(II)第2中間細胞集団におけるPAX2発現の量が増加している、および/または
(III)第2中間集団におけるWT1発現の量が増加している、および/または
(IV)第2中間細胞集団におけるRUNX1発現の量が増加している、および/または
(V)第2中間細胞集団の生存率が増加している、および/または
(VI)第2中間細胞集団の細胞形態がより一様である、
請求項1~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項106】
中間中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含まない方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)第2中間細胞集団におけるLHX1発現の量が増加している、および/または
(II)第2中間細胞集団におけるPAX2発現の量が増加している、および/または
(III)第2中間集団におけるWT1発現の量が増加している、および/または
(IV)第2中間細胞集団におけるRUNX1発現の量が増加している、および/または
(V)第2中間細胞集団の生存率が増加している、および/または
(VI)第2中間細胞集団の細胞形態がより一様である、
請求項1~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項107】
中間中胚葉誘導培地がより低濃度のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)第2中間細胞集団におけるLHX1発現の量が増加している、および/または
(II)第2中間細胞集団におけるPAX2発現の量が増加している、および/または
(III)第2中間集団におけるWT1発現の量が増加している、および/または
(IV)第2中間細胞集団におけるRUNX1発現の量が増加している、および/または
(V)第2中間細胞集団の生存率が増加している、および/または
(VI)第2中間細胞集団の細胞形態がより一様である、
請求項1~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項108】
中間中胚葉誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、
請求項1~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項109】
中間中胚葉誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、
請求項1~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項110】
中間中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含まない方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、
請求項1~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項111】
中間中胚葉誘導培地がより低濃度のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して
(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、
請求項1~99のいずれか一項記載の方法。
【請求項112】
性腺誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団におけるFOXL2発現の量が減少している、ならびに/または
(II)性腺細胞集団におけるNR1H4および/もしくはKITLGの発現の量が減少している、ならびに/または
(III)性腺細胞集団におけるKRT-19発現の量が増加している、ならびに/または
(IV)性腺細胞集団における細胞質KRT-19発現の量が増加している、ならびに/または
(V)性腺細胞集団におけるMSLN、LRRN4および/もしくはTMEM151Aの発現の量が増加している、
請求項1~111のいずれか一項記載の方法。
【請求項113】
性腺誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団におけるFOXL2発現の量が減少している、ならびに/または
(II)性腺細胞集団におけるNR1H4および/もしくはKITLGの発現の量が減少している、ならびに/または
(III)性腺細胞集団におけるKRT-19発現の量が増加している、ならびに/または
(IV)性腺細胞集団における細胞質KRT-19発現の量が増加している、ならびに/または
(V)性腺細胞集団におけるMSLN、LRRN4および/もしくはTMEM151Aの発現の量が増加している、
請求項1~111のいずれか一項記載の方法。
【請求項114】
RAPMと接触させる期間がより短い性腺誘導工程によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団におけるFOXL2発現の量が減少している、ならびに/または
(II)性腺細胞集団におけるNR1H4および/もしくはKITLGの発現の量が減少している、ならびに/または
(III)性腺細胞集団におけるKRT-19発現の量が増加している、ならびに/または
(IV)性腺細胞集団における細胞質KRT-19発現の量が増加している、ならびに/または
(V)性腺細胞集団におけるMSLN、LRRN4および/もしくはTMEM151Aの発現の量が増加している、
請求項1~111のいずれか一項記載の方法。
【請求項115】
多能性幹細胞が哺乳動物幹細胞である、請求項1~114のいずれか一項記載の方法。
【請求項116】
多能性幹細胞がヒト多能性幹細胞である、請求項1~115のいずれか一項記載の方法。
【請求項117】
多能性幹細胞がウシ幹細胞である、請求項1~115のいずれか一項記載の方法。
【請求項118】
多能性幹細胞がマウス多能性幹細胞である、請求項1~115のいずれか一項記載の方法。
【請求項119】
多能性幹細胞が胚性幹細胞または誘導多能性幹細胞である、請求項115~118のいずれか一項記載の方法。
【請求項120】
性腺集団が、顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および上皮細胞またはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の集団を含む、請求項1~6および10~119のいずれか一項記載の方法。
【請求項121】
性腺集団が顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および上皮細胞の混合物を含む、請求項1~6および10~120のいずれか一項記載の方法。
【請求項122】
請求項1~6および10~121のいずれか一項記載の方法によって産生される、性腺細胞集団。
【請求項123】
顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および上皮細胞またはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の集団を含む、請求項122記載の性腺細胞集団。
【請求項124】
顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および上皮細胞の混合物を含む、請求項122または請求項123記載の性腺細胞集団。
【請求項125】
請求項7および13~119のいずれか一項記載の方法によって産生される、第1中間細胞集団。
【請求項126】
請求項6~11および13~119のいずれか一項記載の方法によって産生される、第2中間細胞集団。
【請求項127】
初期中胚葉様細胞(iMeLC)を産生するために、アクチビンA、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質およびROCK阻害物質の存在下で多能性幹細胞を培養する工程、
FGF2、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質およびROCK阻害物質の存在下で、第1期間にわたって、iMeLCを培養する工程、
中間中胚葉細胞を産生するために、iMeLC培養中のROCK阻害物質の量を低減し、次に第2期間にわたって、iMeLCを培養する工程、ならびに
顆粒膜細胞を産生するために、フォリスタチン、BMP4、FGF2およびROCK阻害物質の存在下で中間中胚葉細胞を培養する工程
を含む、顆粒膜細胞を産生する方法。
【請求項128】
グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質がCHIR99021である、請求項127記載の方法。
【請求項129】
ROCK阻害物質がY-27632またはCETである、請求項127または128記載の方法。
【請求項130】
多能性幹細胞が約56~72時間にわたって培養される、請求項127~129のいずれか一項記載の方法。
【請求項131】
多能性幹細胞が約65時間にわたって培養される、請求項127~130のいずれか一項記載の方法。
【請求項132】
多能性幹細胞が、アクチビンA、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質およびROCK阻害物質を含む培地中で培養され、該培地が、約24時間ごとに新鮮培地と交換される、請求項127~131のいずれか一項記載の方法。
【請求項133】
第1期間が約24時間である、請求項127~132のいずれか一項記載の方法。
【請求項134】
第2期間が約5または6日である、請求項127~133のいずれか一項記載の方法。
【請求項135】
iMeLCが、FGF2、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質およびROCK阻害物質を含む培地中で、第1期間にわたって培養され、第1期間後は、該培地の一部分が、FGF2およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含むがROCK阻害物質は含まない培地と交換される、請求項127~134のいずれか一項記載の方法。
【請求項136】
培地の前記一部分が培地の約80%である、請求項135記載の方法。
【請求項137】
第2期間中は約48時間ごとに培地の第2の一部分を交換する工程をさらに含む、請求項135または136記載の方法。
【請求項138】
培地の前記第2の一部分が培地の約80%である、請求項137記載の方法。
【請求項139】
中間中胚葉細胞が約5~7日の期間にわたって培養される、請求項127~138のいずれか一項記載の方法。
【請求項140】
中間中胚葉細胞が、フォリスタチン、BMP4、FGF2およびROCK阻害物質を含む培地中で培養され、該培地の一部分が、約24~48時間ごとに新鮮培地と交換される、請求項127~139のいずれか一項記載の方法。
【請求項141】
iMeLCがブラキウリを発現する、請求項127~140のいずれか一項記載の方法。
【請求項142】
中間中胚葉細胞がOSR1、PAX2およびLHX1を発現する、請求項127~139のいずれか一項記載の方法。
【請求項143】
顆粒膜細胞がFOXL2およびコネキシン43を発現する、請求項127~142のいずれか一項記載の方法。
【請求項144】
多能性幹細胞がヒト誘導多能性幹細胞である、請求項127~143のいずれか一項記載の方法。
【請求項145】
請求項127~144のいずれか一項記載の方法によって産生される顆粒膜細胞を含む集団。
【請求項146】
(a)培養工程のうちの1つもしくは複数が付着培養を含み、および/または
(b)培養工程のうちの1つもしくは複数が3次元オルガノイド培養を含む、
請求項1~145のいずれか一項記載の方法または集団。
【請求項147】
培養工程のうちの1つまたは複数が付着培養を含む、請求項1~146のいずれか一項記載の方法または集団。
【請求項148】
培養工程のうちの1つまたは複数が3次元オルガノイド培養を含む、請求項1~147のいずれか一項記載の方法または集団。
【請求項149】
FOXL2発現細胞、NR2F2発現細胞および/またはKRT-19発現細胞を含み、任意で卵巣体細胞集団である、インビトロ幹細胞由来性腺体細胞集団。
【請求項150】
FOXL2を発現する第1細胞タイプ、NR2F2を発現する第2細胞タイプ、およびKRT-19を発現する第3細胞タイプを、少なくとも含む、請求項149記載の性腺体細胞集団。
【請求項151】
(a)細胞集団内の細胞の少なくとも20%がFOXL2陽性細胞であり、および/または
(b)細胞集団内の細胞の少なくとも20%がNR2F2陽性細胞であり、および/または
(c)性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%がKRT19陽性細胞である、
請求項149または150記載の性腺体細胞集団。
【請求項152】
性腺細胞集団の少なくとも90%が、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞であり、任意で、
性腺体細胞集団が、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞から本質的になる、
請求項149~151のいずれか一項記載の性腺体細胞集団。
【請求項153】
FOXL2陽性細胞が顆粒膜細胞を含み、NR2F2陽性細胞が卵巣間質細胞および/または顆粒膜細胞を含み、KRT-19陽性細胞が卵巣上皮細胞を含む、請求項151または152記載の性腺体細胞集団。
【請求項154】
(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、
(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに
(c)性腺細胞集団を産生するために、BMPおよびFGFならびに任意でフォリスタチンを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程
を含むプロセスにおいて誘導される、請求項149~153のいずれか一項記載の性腺体細胞集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月2日に出願された「HUMAN GRANULOSA DIFFERENTIATION」と題する米国仮出願第63/108,666号および2021年7月16日に出願された「IN VITRO DERIVATION OF GONADAL SOMATIC CELLS」と題する同第63/222,953号に基づく優先権を主張し、これらの出願の内容は参照によりそれぞれの全体があらゆる目的で本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本開示は、概して、多能性幹細胞から卵巣体細胞などの性腺細胞集団を生成する方法に関する。また、その方法において生成される性腺細胞集団および中間細胞集団も含まれる。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、性腺細胞集団を産生する方法であって、(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、(b)レチノイン酸経路調節物質(retinoic acid pathway modulator:RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、および(c)性腺細胞集団を産生するために、BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程を含む方法が提供される。いくつかの態様において、本明細書では、性腺細胞集団を産生する方法であって、(a)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、および(b)性腺細胞集団を産生するために、BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、第2期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程を含む方法が提供される。いくつかの態様において、性腺細胞集団を産生する方法であって、性腺細胞集団を産生するために、BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、ある期間にわたって、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞を培養する工程を含む方法が提供される。いくつかの態様において、BMPは、BMP4、BMP2、BMP7、BMP15またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様において、性腺誘導培地はBMP4を含む。いくつかの態様において、性腺誘導培地はフォリスタチンをさらに含む。
【0004】
本明細書では、性腺細胞集団を産生する方法であって、(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに(c)性腺細胞集団を産生するために、フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程を含む方法が提供される。
【0005】
本明細書では、性腺細胞集団を産生する方法であって、(a)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに(b)性腺細胞集団を産生するために、フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、第2期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程を含む方法も提供される。
【0006】
本明細書では、性腺細胞集団を産生する方法であって、性腺細胞集団を産生するために、フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、ある期間にわたって、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞を培養する工程を含む方法も提供される。
【0007】
本明細書では、第1中間細胞集団を産生する方法であって、第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAとグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質とを含む中胚葉誘導培地中で、ある期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程を含む方法も提供される。本明細書では、第2中間細胞集団を産生する方法であって、レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、ある期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程を含む方法も提供される。本明細書では、第2中間細胞集団を産生する方法であって、(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAとグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質とを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、ならびに(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)、FGFおよびグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程を含む方法も提供される。任意の態様の一部において、第1中間細胞集団および第2中間細胞集団は、性腺細胞集団を産生するための、分化した多能性幹細胞の中間集団である。
【0008】
任意の態様の一部において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、ブラキウリ(Brachyury)を発現する。
【0009】
任意の態様の一部において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、OSR1、PAX2またはLHXを発現する。
【0010】
任意の態様の一部において、性腺細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、FOXL2、NR2F2またはRUNX1を発現する。
【0011】
任意の態様の一部において、多能性幹細胞は、1cm2あたり約10,000~約40,000細胞の密度で播種される。任意の態様の一部において、多能性幹細胞は、フィブロネクチンで被覆された培養プレートに播種される。任意の態様の一部において、多能性幹細胞は、マトリゲルで被覆された培養プレートに播種される。
【0012】
任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地はFGFをさらに含む。任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地はBMP4をさらに含む。任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地はグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質をさらに含む。任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地はアポトーシス阻害物質をさらに含む。
【0013】
任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度は約30ng/mL~約70ng/mLである。任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度は約50ng/mLである。
【0014】
任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地中のFGFはFGF2である。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のFGF2の濃度は約5ng/mL~約20ng/mLである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のFGF2の濃度は約12ng/mLである。
【0015】
任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地中のBMP4の濃度は約10ng/mL~約50ng/mLである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のBMP4の濃度は約30ng/mLである。
【0016】
任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地中のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質はCHIR99021である。いくつかの態様において、CHIR99021の濃度は約1μM~約5μMである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のCHIR99021の濃度は約3μMである。
【0017】
任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地内では、アポトーシス阻害物質がY-27632である。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は約5μM~約20μMである。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は約10μMである。任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地内では、アポトーシス阻害物質が、クロマン1(Chroman1)、エムリカサン(Emricasan)およびトランス-ISRIBを含む。いくつかの態様において、アポトーシス阻害物質はクロマン1であり、クロマン1の濃度は約30nM~約70nMである。いくつかの態様において、クロマン1の濃度は約50nMである。いくつかの態様において、アポトーシス阻害物質はエムリカサンであり、エムリカサンの濃度は約2μM~約10μMである。いくつかの態様において、エムリカサンの濃度は約5μMである。いくつかの態様において、アポトーシス阻害物質はトランス-ISRIBであり、トランス-ISRIBの濃度は約0.2μM~約2μMである。いくつかの態様において、トランス-ISRIBの濃度は約0.7μMである。
【0018】
任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地中で培養する期間は約24時間~約96時間である。任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地中で培養する期間は約24時間~約72時間である。任意の態様の一部において、中胚葉誘導培地中で培養する期間は約56時間~約72時間である。
【0019】
任意の態様の一部において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%はブラキウリを発現する。任意の態様の一部において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも80%は、MIXL1、N-カドヘリン、EpCam、NCAMのうちの1つまたは複数を発現する。任意の態様の一部において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%は、ブラキウリ、N-カドヘリン、EpCamおよびNCAMを発現する。任意の態様の一部において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%は中胚葉細胞または中胚葉様細胞である。任意の態様の一部において、第1中間細胞集団は、中胚葉細胞または中胚葉様細胞から本質的になる。
【0020】
任意の態様の一部において、第1中間細胞集団は、中間中胚葉誘導培地における培養の前に、新しいフィブロネクチン被覆培養プレート上に再プレーティングされる。いくつかの態様において、第1中間細胞集団は、酵素的に剥離され、遠心分離され、再懸濁されてから、再プレーティングされる。任意の態様の一部において、第1中間細胞集団は、約5000~約25000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。
【0021】
任意の態様の一部において、中間中胚葉誘導培地はFGFをさらに含む。任意の態様の一部において、中間中胚葉誘導培地はグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質をさらに含む。任意の態様の一部において、中間中胚葉誘導培地はアクチビンAをさらに含む。任意の態様の一部において、中間中胚葉誘導培地はアポトーシス阻害物質をさらに含む。
【0022】
任意の態様の一部において、本方法は、第1中間細胞集団を、(i)まず、第1濃度のアポトーシス阻害物質を含む中間中胚葉誘導培地中で、(ii)次に、第2濃度以下のアポトーシス阻害物質を含む中間中胚葉誘導培地中で、培養する工程を含む。
【0023】
任意の態様の一部において、中間中胚葉誘導培地中のRAPMはRARアゴニストである。いくつかの態様において、RAPMはレチノイン酸(RA)および/またはTTNPBを含む。いくつかの態様において、RAPMはRAである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のRAの濃度は約0.5μM~約2μMである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のRAの濃度は約1μMである。いくつかの態様において、RAPMはTTNPBである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のTTNPBの濃度は約0.2μM~約1μMである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のTTNPBの濃度は約0.5μMである。
【0024】
任意の態様の一部において、中間中胚葉誘導培地中のFGFはFGF2である。いくつかの態様において、FGF2の濃度は約10ng/mL~約30ng/mLである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のFGF2の濃度は約20ng/mLである。
【0025】
任意の態様の一部において、中間中胚葉誘導培地中のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質はCHIR99021である。いくつかの態様において、CHIR99021の濃度は約1μM~約5μMである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のCHIR99021の濃度は約3μMである。
【0026】
任意の態様の一部において、中間中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度は約10ng/mL~約50ng/mLである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度は約30ng/mLである。
【0027】
任意の態様の一部において、中間中胚葉誘導培地内では、アポトーシス阻害物質がY-27632である。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は約5μM~約20μMである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地内では、アポトーシス阻害物質が、クロマン1、エムリカサンおよびトランス-ISRIBを含む。いくつかの態様において、アポトーシス阻害物質はクロマン1である。いくつかの態様において、クロマン1の濃度は約30nM~約70nMである。いくつかの態様において、アポトーシス阻害物質はエムリカサンである。いくつかの態様において、エムリカサンの濃度は約2μM~約10μMである。いくつかの態様において、アポトーシス阻害物質はトランス-ISRIBである。いくつかの態様において、トランス-ISRIBの濃度は約0.2μM~約2μMである。
【0028】
いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のアポトーシス阻害物質はY-27632であり、この場合、本方法は、第1中間細胞集団を、(i)まず、約10μMのY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、そして(ii)次に、約2μM以下のY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、培養する工程を含む。いくつかの態様において、本方法は、第1中間細胞集団を、(i)まず、約10μMのY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、約24時間にわたって、そして(ii)次に、約2μM以下のY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、約5~6日にわたって、培養する工程を含む。
【0029】
任意の態様の一部において、中間中胚葉誘導培地中で培養する期間は約4~14日である。任意の態様の一部において、中間中胚葉誘導培地中で培養する期間は約5~9日である。
【0030】
任意の態様の一部において、中間中胚葉誘導培地中のアポトーシス阻害物質はY-27632であり、Y-27632の濃度は、それぞれ中間中胚葉誘導培地における培養時に、(a)最初の24時間は約10μM、(b)24時間~72時間は約2μM以下、(c)72時間~120時間は約0.5μM以下、または(d)120時間以降は約0.1μM以下である。任意の態様の一部において、第1中間細胞集団は、アポトーシス阻害物質を含む中間中胚葉誘導培地中で約24時間にわたって培養され、約24時間後に、培地の一部分がまず、アポトーシス阻害物質を含まない中間中胚葉誘導培地に交換される。いくつかの態様において、培地の前記一部分は培地の約80%である。いくつかの態様において、本方法は、後続の培地交換をさらに含み、その培地交換は、最初の24時間の培養後、約48時間ごとに培地の一部分を交換することを含む。いくつかの態様において、各後続の培地交換における培地の前記一部分は、培地の約80%である。
【0031】
任意の態様の一部において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%は、OSR1、PAX2、LHX1およびRUNX1のうちの1つまたは複数を発現する。任意の態様の一部において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%は、OSR1、PAX2、LHX1およびRUNX1のうちの2つ以上を発現する。任意の態様の一部において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%は、OSR1、PAX2およびLHX1を発現する。任意の態様の一部において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%は中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞である。任意の態様の一部において、第2中間細胞集団は、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞から本質的になる。
【0032】
任意の態様の一部において、第2中間細胞集団は、性腺誘導培地における培養の前に、新しいフィブロネクチン被覆培養プレート上に再プレーティングされる。いくつかの態様において、第2中間細胞集団は、酵素的に剥離され、遠心分離され、再懸濁されてから、再プレーティングされる。いくつかの態様において、第2中間細胞集団は、約5000~約25000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。
【0033】
任意の態様の一部において、性腺誘導培地はRAPMをさらに含む。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のRAPMはRARアゴニストである。いくつかの態様において、RAPMはレチノイン酸(RA)および/またはTTNPBを含む。いくつかの態様において、RAPMはRAである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のRAの濃度は約0.5μM~約2μMである。いくつかの態様において、RAPMはTTNPBである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のTTNPBの濃度は約0.2μM~約1μMである。
【0034】
任意の態様の一部において、性腺誘導培地はアポトーシス阻害物質をさらに含む。いくつかの態様において、性腺誘導培地内では、アポトーシス阻害物質がY-27632である。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は約5μM~約20μMである。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は約10μMである。いくつかの態様において、性腺誘導培地内では、アポトーシス阻害物質が、クロマン1、エムリカサンおよびトランス-ISRIBを含む。いくつかの態様において、アポトーシス阻害物質はクロマン1であり、クロマン1の濃度は約30nM~約70nMである。いくつかの態様において、クロマン1の濃度は約50nMである。いくつかの態様において、アポトーシス阻害物質はエムリカサンであり、エムリカサンの濃度は約2μM~約10μMである。いくつかの態様において、エムリカサンの濃度は約5μMである。いくつかの態様において、アポトーシス阻害物質はトランス-ISRIBであり、トランス-ISRIBの濃度は約0.2μM~約2μMである。いくつかの態様において、トランス-ISRIBの濃度は約0.7μMである。
【0035】
任意の態様の一部において、性腺誘導培地はフォリスタチンをさらに含む。
【0036】
任意の態様の一部において、性腺誘導培地中のフォリスタチンの濃度は約10ng/mL~約50ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のフォリスタチンの濃度は約25ng/mLである。
【0037】
任意の態様の一部において、性腺誘導培地中のBMPは、BMP4、BMP2、BMP7、BMP15、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、性腺誘導培地は少なくともBMP4を単独でまたは別のBMPと組み合わせて含む。いくつかの態様では、性腺誘導培地中に含まれる唯一のBMPがBMP4である。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMPの総濃度は約5ng/mL~約20ng/mLまたは約20ng/mL~約70ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMPの総濃度は約10ng/mLまたは約50ng/mLである。
【0038】
任意の態様の一部において、性腺誘導培地中のBMP4の濃度は約5ng/mL~約20ng/mLである。任意の態様の一部において、性腺誘導培地中のBMP4の濃度は約20ng/mL~約70ng/mLである。任意の態様の一部において、性腺誘導培地中のBMP4の濃度は約10ng/mLまたは約50ng/mLである。
【0039】
任意の態様の一部において、性腺誘導培地中のFGFは、FGF2、FGF9、FGF10、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、性腺誘導培地は少なくともFGF2を単独でまたは別のFGFと組み合わせて含む。いくつかの態様では、性腺誘導培地中に含まれる唯一のFGFがFGF2である。いくつかの態様において、FGFの濃度は約1ng/mL~約10ng/mLまたは約5ng/mL~約25ng/mLである。いくつかの態様において、FGFの濃度は約5ng/mLまたは約10ng/mLである。
【0040】
任意の態様の一部において、性腺誘導培地中のFGFはFGF2である。いくつかの態様において、FGF2の濃度は約1ng/mL~約10ng/mLである。いくつかの態様において、FGF2の濃度は約5ng/mL~約25ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGF2の濃度は約5ng/mLまたは約10ng/mLである。
【0041】
任意の態様の一部において、性腺誘導培地中で培養する期間は約5日~約21日である。任意の態様の一部において、性腺誘導培地中で培養する期間は約7日~約14日である。
【0042】
任意の態様の一部において、性腺細胞集団は卵巣体細胞を含む。任意の態様の一部において、性腺細胞集団は卵巣体細胞からなる。
【0043】
任意の態様の一部では、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%がFOXL2陽性細胞である。任意の態様の一部では、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%がNR2F2陽性細胞である。任意の態様の一部では、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%がKRT19陽性細胞である。任意の態様の一部では、性腺細胞集団の少なくとも90%が、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞である。任意の態様の一部において、性腺細胞集団は、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞から本質的になる。任意の態様の一部において、FOXL2陽性細胞は顆粒膜細胞を含む。任意の態様の一部において、NR2F2陽性細胞は間質細胞および/または顆粒膜細胞を含む。任意の態様の一部において、KRT-19陽性細胞は卵巣上皮細胞を含む。
【0044】
任意の態様の一部において、本方法によって生成される性腺細胞集団では、中間中胚葉誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される対応する性腺細胞集団と比較して、以下のうちの1つまたは複数である:(I)性腺細胞集団中のNR2F2発現細胞の量が増加している、および/または(II)性腺細胞集団中のFOXL2発現細胞の量が増加している、および/または(III)性腺細胞集団中のRUNX1発現細胞の量が増加している、および/または(IV)性腺細胞集団中のWNT6発現細胞の量が増加している、および/または(V)性腺細胞集団中のNR5A1発現細胞の量が増加している、および/または(VI)性腺細胞集団中のOSR1発現細胞の量が増加している、および/または(VII)性腺細胞集団中のLHX9発現細胞の量が増加している、および/または(VIII)性腺細胞集団中のEMX2発現細胞の量が増加している。
【0045】
任意の態様の一部において、本方法によって生成される性腺細胞集団では、中間中胚葉誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される対応する性腺細胞集団と比較して、以下のうちの1つまたは複数である:(I)性腺細胞集団中のNR2F2発現細胞の量が増加している、および/または(II)性腺細胞集団中のFOXL2発現細胞の量が増加している、および/または(III)性腺細胞集団中のRUNX1発現細胞の量が増加している、および/または(IV)性腺細胞集団中のWNT6発現細胞の量が増加している、および/または(V)性腺細胞集団中のNR5A1発現細胞の量が増加している、および/または(VI)性腺細胞集団中のOSR1発現細胞の量が増加している。
【0046】
任意の態様の一部において、本方法によって生成される性腺細胞集団では、中間中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含まない方法によって生成される対応する性腺細胞集団と比較して、以下のうちの1つまたは複数である:(I)性腺細胞集団中のNR2F2発現細胞の量が増加している、および/または(II)性腺細胞集団中のFOXL2発現細胞の量が増加している、および/または(III)性腺細胞集団中のRUNX1発現細胞の量が増加している、および/または(IV)性腺細胞集団中のWNT6発現細胞の量が増加している、および/または(V)性腺細胞集団中のNR5A1発現細胞の量が増加している、および/または(VI)性腺細胞集団中のOSR1発現細胞の量が増加している、および/または(VII)性腺細胞集団中のLHX9発現細胞の量が増加している、および/または(VIII)性腺細胞集団中のEMX2発現細胞の量が増加している。
【0047】
任意の態様の一部において、本方法によって生成される性腺細胞集団では、中間中胚葉誘導培地がより低濃度のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む方法によって生成される対応する性腺細胞集団と比較して、以下のうちの1つまたは複数である:(I)性腺細胞集団中のNR2F2発現細胞の量が増加している、および/または(II)性腺細胞集団中のFOXL2発現細胞の量が増加している、および/または(III)性腺細胞集団中のRUNX1発現細胞の量が増加している、および/または(IV)性腺細胞集団中のWNT6発現細胞の量が増加している、および/または(V)性腺細胞集団中のNR5A1発現細胞の量が増加している、および/または(VI)性腺細胞集団中のOSR1発現細胞の量が増加している、および/または(VII)性腺細胞集団中のLHX9発現細胞の量が増加している、および/または(VIII)性腺細胞集団中のEMX2発現細胞の量が増加している。
【0048】
任意の態様の一部において、本方法によって産生される第2中間細胞集団では、中間中胚葉誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される対応する第2中間細胞集団と比較して、以下のうちの1つまたは複数である:(I)第2中間細胞集団におけるLHX1発現の量が増加している、および/または(II)第2中間細胞集団におけるPAX2発現の量が増加している、および/または(III)第2中間集団におけるWT1発現の量が増加している、および/または(IV)第2中間細胞集団におけるRUNX1発現の量が増加している、および/または(V)第2中間細胞集団の生存率が増加している、および/または(VI)第2中間細胞集団の細胞形態がより一様である。
【0049】
任意の態様の一部において、本方法によって産生される第2中間細胞集団では、中間中胚葉誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される対応する第2中間細胞集団と比較して、以下のうちの1つまたは複数である:(I)第2中間細胞集団におけるLHX1発現の量が増加している、および/または(II)第2中間細胞集団におけるPAX2発現の量が増加している、および/または(III)第2中間集団におけるWT1発現の量が増加している、および/または(IV)第2中間細胞集団におけるRUNX1発現の量が増加している、および/または(V)第2中間細胞集団の生存率が増加している、および/または(VI)第2中間細胞集団の細胞形態がより一様である。
【0050】
任意の態様の一部において、本方法によって産生される第2中間細胞集団では、中間中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含まない方法によって生成される対応する第2中間細胞集団と比較して、以下のうちの1つまたは複数である:(I)第2中間細胞集団におけるLHX1発現の量が増加している、および/または(II)第2中間細胞集団におけるPAX2発現の量が増加している、および/または(III)第2中間集団におけるWT1発現の量が増加している、および/または(IV)第2中間細胞集団におけるRUNX1発現の量が増加している、および/または(V)第2中間細胞集団の生存率が増加している、および/または(VI)第2中間細胞集団の細胞形態がより一様である。
【0051】
任意の態様の一部において、本方法によって産生される第2中間細胞集団では、中間中胚葉誘導培地がより低濃度のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む方法によって生成される対応する第2中間細胞集団と比較して、(I)第2中間細胞集団におけるLHX1発現の量が増加している、および/または(II)第2中間細胞集団におけるPAX2発現の量が増加している、および/または(III)第2中間集団におけるWT1発現の量が増加している、および/または(IV)第2中間細胞集団におけるRUNX1発現の量が増加している、および/または(V)第2中間細胞集団の生存率が増加している、および/または(VI)第2中間細胞集団の細胞形態がより一様である。
【0052】
任意の態様の一部において、本方法によって産生される第2中間細胞集団では、中間中胚葉誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される対応する第2中間細胞集団と比較して、以下のうちの1つまたは複数である:(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している。
【0053】
任意の態様の一部において、本方法によって産生される第2中間細胞集団では、中間中胚葉誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される対応する第2中間細胞集団と比較して、(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している。
【0054】
任意の態様の一部において、本方法によって産生される第2中間細胞集団では、中間中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含まない方法によって生成される対応する第2中間細胞集団と比較して、以下のうちの1つまたは複数である:(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している。
【0055】
任意の態様の一部において、本方法によって産生される第2中間細胞集団では、中間中胚葉誘導培地がより低濃度のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む方法によって生成される対応する第2中間細胞集団と比較して、以下のうちの1つまたは複数である:(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している。
【0056】
任意の態様の一部において、本方法によって産生される性腺細胞集団は、性腺誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される対応する性腺細胞集団と比較して、(I)性腺細胞集団におけるFOXL2発現の量が減少している、ならびに/または(II)性腺細胞集団におけるNR1H4および/もしくはKITLGの発現の量が減少している、ならびに/または(III)性腺細胞集団におけるKRT-19発現の量が増加している、ならびに/または(IV)性腺細胞集団における細胞質KRT-19発現の量が増加している、ならびに/または(V)性腺細胞集団におけるMSLN、LRRN4および/もしくはTMEM151Aの発現の量が増加している、性腺細胞集団である。
【0057】
任意の態様の一部において、本方法によって産生される性腺細胞集団は、性腺誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される対応する性腺細胞集団と比較して、(I)性腺細胞集団におけるFOXL2発現の量が減少している、ならびに/または(II)性腺細胞集団におけるNR1H4および/もしくはKITLGの発現の量が減少している、ならびに/または(III)性腺細胞集団におけるKRT-19発現の量が増加している、ならびに/または(IV)性腺細胞集団における細胞質KRT-19発現の量が増加している、ならびに/または(V)性腺細胞集団におけるMSLN、LRRN4および/もしくはTMEM151Aの発現の量が増加している、性腺細胞集団である。
【0058】
任意の態様の一部において、性腺細胞集団は、RAPMと接触させる期間がより短い性腺誘導工程によって生成される対応する性腺細胞集団と比較して、(I)性腺細胞集団におけるFOXL2発現の量が減少している、ならびに/または(II)性腺細胞集団におけるNR1H4および/もしくはKITLGの発現の量が減少している、ならびに/または(III)性腺細胞集団におけるKRT-19発現の量が増加している、ならびに/または(IV)性腺細胞集団における細胞質KRT-19発現の量が増加している、ならびに/または(V)性腺細胞集団におけるMSLN、LRRN4および/もしくはTMEM151Aの発現の量が増加している、性腺細胞集団である。
【0059】
任意の態様の一部において、多能性幹細胞は哺乳動物幹細胞である。いくつかの態様において、多能性幹細胞はヒト多能性幹細胞である。いくつかの態様において、多能性幹細胞はウシ幹細胞である。いくつかの態様において、多能性幹細胞はマウス多能性幹細胞である。いくつかの態様において、多能性幹細胞は胚性幹細胞または誘導多能性幹細胞である。
【0060】
任意の態様の一部において、性腺集団は、顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および上皮細胞またはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の集団を含む。任意の態様の一部において、性腺集団は、顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および上皮細胞の混合物を含む。
【0061】
本明細書では、提供される方法のいずれかによって産生される性腺細胞集団が提供される。いくつかの態様において、性腺集団は、顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および上皮細胞またはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の集団を含む。いくつかの態様において、性腺集団は、顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および上皮細胞の混合物を含む。
【0062】
本明細書では、提供される方法のいずれかによって産生される第1中間細胞集団が提供される。
【0063】
本明細書では、提供される態様のいずれかによって産生される第2中間細胞集団が提供される。
【0064】
提供される態様には以下の態様が含まれる。
1. 初期中胚葉様細胞(iMeLC)を産生するために、アクチビンA、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質およびROCK阻害物質の存在下で多能性幹細胞を培養する工程、
FGF2、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質およびROCK阻害物質の存在下で、第1期間にわたって、iMeLCを培養する工程、
中間中胚葉細胞を産生するために、iMeLC培養中のROCK阻害物質の量を低減し、次に第2期間にわたって、iMeLCを培養する工程、ならびに
顆粒膜細胞を産生するために、フォリスタチン、BMP4、FGF2およびROCK阻害物質の存在下で中間中胚葉細胞を培養する工程
を含む、顆粒膜細胞を産生する方法。
2. グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質がCHIR99021である、態様1の方法。
3. ROCK阻害物質がY-27632またはCETである、態様1または2の方法。
4. 多能性幹細胞が約56~72時間にわたって培養される、態様1~3のいずれかの方法。
5. 多能性幹細胞が約65時間にわたって培養される、態様1~4のいずれかの方法。
6. 多能性幹細胞が、アクチビンA、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質およびROCK阻害物質を含む培地中で培養され、該培地が、約24時間ごとに新鮮培地と交換される、態様1~5のいずれかの方法。
7. 第1期間が約24時間である、態様1~6のいずれかの方法。
8. 第2期間が約5または6日である、態様1~7のいずれかの方法。
9. iMeLCが、FGF2、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質およびROCK阻害物質を含む培地中で、第1期間にわたって培養され、第1期間後は、該培地の一部分が、FGF2およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含むがROCK阻害物質は含まない培地と交換される、態様1~8のいずれかの方法。
10. 培地の前記一部分が培地の約80%である、態様9の方法。
11. 第2期間中は約48時間ごとに培地の第2の一部分を交換する工程をさらに含む、態様9または10の方法。
12. 培地の前記第2の一部分が培地の約80%である、態様11の方法。
13. 中間中胚葉細胞が約5~7日の期間にわたって培養される、態様11~12のいずれかの方法。
14. 中間中胚葉細胞が、フォリスタチン、BMP4、FGF2およびROCK阻害物質を含む培地中で培養され、該培地の一部分が、約24~48時間ごとに新鮮培地と交換される、態様11~13のいずれかの方法。
15. iMeLCがブラキウリを発現する、態様11~14のいずれかの方法。
16. 中間中胚葉細胞がOSR1、PAX2およびLHX1を発現する、態様11~13のいずれかの方法。
17. 顆粒膜細胞がFOXL2およびコネキシン43を発現する、態様11~16のいずれかの方法。
18. 多能性幹細胞がヒト誘導多能性幹細胞である、態様11~17のいずれかの方法。
19. 態様11~18のいずれかの方法によって産生される顆粒膜細胞を含む、集団。
【0065】
提供される方法または提供される集団のいずれかの態様を含む、提供される態様のいずれかにおいて、(a)培養工程のうちの1つもしくは複数は付着培養を含み、および/または(b)培養工程のうちの1つもしくは複数は3次元オルガノイド培養を含む。いくつかの態様において、培養工程のうちの1つまたは複数は付着培養を含む。いくつかの態様において、培養工程のうちの1つまたは複数は3次元オルガノイド培養を含む。
【0066】
提供される態様のいずれかの一部において、本方法はインビトロで実行される。いくつかの態様において、本方法は、インビトロ幹細胞由来性腺細胞集団を産生する。特定の態様において、細胞は、卵巣体細胞集団(ovarian somatic cell population:OSC)などのインビトロ幹細胞由来性腺体細胞集団である。
【0067】
本明細書では、FOXL2発現細胞、NR2F2発現細胞および/またはKRT-19発現細胞を含むインビトロ幹細胞由来性腺体細胞集団も提供される。いくつかの態様において、性腺体細胞集団は卵巣体細胞集団である。いくつかの態様において、集団は、FOXL2を発現する第1細胞タイプ、NR2F2を発現する第2細胞タイプ、およびKRT-19を発現する第3細胞タイプを、少なくとも含む。いくつかの態様において、細胞集団内の細胞の少なくとも20%はFOXL2陽性細胞である。いくつかの態様において、細胞集団内の細胞の少なくとも20%は、NR2F2陽性細胞である。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%はKRT19陽性細胞である。いくつかの態様において、(a)細胞集団内の細胞の少なくとも20%はFOXL2陽性細胞であり、および/または(b)細胞集団内の細胞の少なくとも20%はNR2F2陽性細胞であり、および/または(c)性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%はKRT19陽性細胞である。いくつかの態様において、性腺細胞集団の少なくとも90%はFOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞であり、任意で、性腺体細胞集団は、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞から本質的になる。いくつかの態様において、FOXL2陽性細胞は顆粒膜細胞を含み、NR2F2陽性細胞は卵巣間質細胞および/または顆粒膜細胞を含み、KRT-19陽性細胞は卵巣上皮細胞を含む。
【0068】
提供される性腺体細胞集団のいずれかの態様の一部において、細胞集団は多能性幹細胞から分化する。任意の態様の一部において、性腺体細胞集団は、(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに(c)性腺細胞集団を産生するために、BMPおよびFGFならびに任意でフォリスタチンを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程を含むプロセスにおいて、誘導される。
【0069】
任意の態様の一部において、性腺体細胞集団は、冷凍保存(cryopreserve)されるか、または冷凍保存されている。いくつかの態様において、性腺体細胞集団を含む組成物が提供される。いくつかの態様において、組成物は冷凍保護物質(cryoprotectant)をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0070】
以下の図面を参照して、本発明の代表的態様を開示する。叙述される態様は、示された詳細そのものに限定されるわけではないと理解すべきである。
【0071】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは中胚葉誘導の特徴を表し、iMeLCの形態(
図1A)、ブラキウリに対する蛍光標識抗体によるiMeLCおよび非誘導細胞の染色(
図1B)を図示している。
【
図2】
図2A~2Dは、中間中胚葉誘導の特徴を表し、培養5日目のIM細胞(
図2A)、分化時のiPSC、iMeLCおよびIMにまたがるOSR1の発現パターン(
図2B)、分化時のiPSC、iMeLCおよびIMにまたがるPAX2の発現パターン(
図2C)、分化時のiPSC、iMeLCおよびIMにまたがるLHX1の発現パターン(
図2D)を図示している。
【
図3A】
図3A~3Cは、性腺細胞分化の特徴を表し、培養7日目の性腺細胞の継代(
図3A)、FOXL2-顆粒膜細胞中で高発現される転写因子についての染色(
図3B)、FOXL2(
図3Cの2行目)およびコネキシン43(
図3Cの3行目)について染色されたIM、腎臓および顆粒膜細胞の代表的免疫蛍光像を図示している。
【
図4】
図4は、iPSCからのインビトロ性腺細胞分化時のCD24発現パターンを表す。
【
図5A】
図5A~CはIM誘導におけるレチノイン酸(RA)の効果を表す。RA/TTNPB処置は、細胞生存率の増加と一様な細胞形態をもたらした(
図5A)。IMマーカー-LHX1、PAX2の発現は、RA濃度およびCHIR濃度を増加させると、発現の上昇を示す(
図5B)。IM系譜のさらなるマーカー-WT1およびRUNX1も、RA濃度またはTTNPB濃度を増加させると、類似する発現の増加を示す(
図5C)。
【
図6A】
図6A~6Eは、レチノイン酸(RA)で処置したIM細胞が、生存率と性腺体細胞分化の誘導の向上を呈したことを表す。
図6Aは、インビトロ性腺体細胞では、どの段階でも、RA処置なしでのバルクRNAseq実験が、顆粒膜細胞マーカー-FOXL2、RUNX1、NR2F2、WNT6およびKRT19の発現増加を呈したことを図示している。
図6Bは、顆粒膜細胞の長期培養において、RA処置細胞が、生存率の向上とFOXL2およびRUNX1の発現増加とを呈したことを表す。
図6Cは、FOXL2およびNR2F2についての、顆粒膜細胞の免疫蛍光染色である。
図6Dは、第2中間細胞集団の分化中にRAで継続的に処置すると、KRT19の発現が増加したことを表す。
図6Eは、性腺体細胞培養の28日目における、KRT19についての免疫蛍光染色を表す。
【
図7】
図7は、顆粒膜細胞マーカーFoxl2、卵巣間質細胞Nr2f2および卵巣上皮細胞KRT19のqRT-PCRを表す。マウス分化プロトコールの13日目における発現を、レチノイン酸(RA)を加えた基本顆粒膜基礎培地と比較した。陽性対照および陰性対照を、それぞれe13マウス卵巣およびmPSCとして含めた。
【
図8】
図8は、7日間の顆粒膜誘導後の、マウス分化プロトコールの13日目における免疫蛍光染色を表し、顆粒膜基礎培地増殖因子に加えて1μMのレチノイン酸処置を追加した場合、または追加しなかった場合の、細胞の数ならびにFoxl2、NR2F2およびKRT19の発現のレベルを表している。
【
図9】
図9Aは、さまざまなFGFファミリーメンバーによる卵巣体細胞(OSC)誘導後の、二分化能(bi-potent)卵巣体細胞前駆体のマーカーの相対的発現レベルを表す。
図9Bは、さまざまなFGFファミリーメンバーによるOSC誘導後の、成熟卵巣顆粒膜細胞のマーカーの相対的発現レベルを表す。
【
図10】
図10Aは、さまざまなBMPアイソフォームによるOSC誘導後の、二分化能卵巣体細胞前駆体のマーカーの相対的発現レベルを表す。
図10Bは、さまざまなBMPアイソフォームによるOSC誘導後の、成熟卵巣顆粒膜細胞のマーカーの相対的発現レベルを表す。
【
図11】
図11Aは、OSC分化のさまざまな段階(iPSC段階;IM D5-中間中胚葉5日目;OSC D7基本-顆粒膜基本培地におけるOSC誘導の7日目;OSC D7二倍-顆粒膜二倍(granulosa double)培地におけるOSC誘導の7日目)におけるステロイド産生酵素CYP19A1の相対的発現を表す。
図11Bは、表示する量のdhTで24時間(左側の4本のバー)または48時間(右側の2本のバー)にわたってOSCを処置した場合の、分泌エストラジオールを表す。
【
図12A】
図12A、12Cおよび12Eは、表示する量のフォリスタチン(Foll)、FGF2(FGF)およびBMP4(BMP)によるOSC誘導後の、二分化能卵巣体細胞前駆体のマーカーであるGATA4の相対的発現レベルを表す。
図12B、12D、12Fは、表示する量のフォリスタチン(Foll)、FGF2(FGF)およびBMP4(BMP)によるOSC誘導後の、成熟卵巣顆粒膜細胞のマーカーであるFOXL2の相対的発現レベルを表す。
【
図13A】
図13Aは、OSCがレチノイン酸(RA)の非存在下で誘導された場合の顆粒膜マーカーFOXL2および卵巣上皮マーカーKRT19の発現を示す、免疫蛍光像のパネルである。
図13Bは、OSCが500nMレチノイン酸(RA)の存在下で誘導された場合の顆粒膜マーカーFOXL2および卵巣上皮マーカーKRT19の発現を示す、免疫蛍光像のパネルである。
図13Cおよび13Dは、表示する濃度のRA中でOSCが誘導された場合の、それぞれ、顆粒膜細胞のマーカーであるFOXL2および卵巣上皮細胞のマーカーであるKRT19の、相対的発現レベルを表す。
図13Eおよび13Fは、表示する濃度のRAの存在下、表示する継続時間にわたって、OSCが誘導された場合の、それぞれ、顆粒膜細胞のマーカーであるFOXL2および卵巣上皮細胞のマーカーであるKRT19の、相対的発現レベルを表す。
【
図14A】
図14Aおよび14Bは、それぞれ、上位200の高変動遺伝子のヒートマップ、および規格化され処理されたデータの主成分分析を表し、第1中間段階から第2中間段階への移行中、および第2中間段階からOSCへの移行中の、遺伝子発現プロファイルの変化を示している。
図14Cは、この実験において解析した10,000超の細胞の群間に観察される、発現が増加している遺伝子の明確に異なるクラスターを表す。
図14D、14E、14F、14Gは、基本顆粒膜培地(基本)、二倍顆粒膜培地(二倍)のいずれかによる、レチノイン酸処置(RA)あり、またはなしでの、性腺体誘導(OSC誘導)の7日目および14日目における細胞の、それぞれ、二分化能性腺体細胞マーカー、卵巣間質マーカー、顆粒膜マーカー、および卵巣上皮マーカーの発現を表す。
【
図15】
図15は、卵巣体細胞(GATA4およびNR5A1発現細胞)および卵巣上皮/中皮細胞(KRT19発現細胞)の存在を示す免疫蛍光像を表す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
発明の詳細な説明
いくつかの局面において、本開示は、多能性幹細胞から卵巣体細胞などの性腺細胞集団を生成する方法に関する。また、その方法において生成される性腺細胞集団および中間細胞集団も含まれる。
【0073】
本出願において言及する刊行物は、特許文書、科学論文およびデータベースを含めていずれも、あたかも個々の刊行物が参照により個別に本明細書に組み入れられた場合と同じ程度に、あらゆる目的で、その全体が本明細書に組み入れられる。本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、特許出願、公開特許出願および他の刊行物において示される定義と相反するかまたは他の形で矛盾する場合は、本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義に優先する。
【0074】
本明細書において使用されるセクション見出しには構成上の目的しかなく、記載されている主題を限定すると解釈してはならない。
【0075】
一般的技法
本明細書において記載または言及する技法および手順は一般によく理解されており、これらは、当業者により、従来の方法論を使って、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrook et al.,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2012)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.,2003)、Methods in Enzymologyシリーズ(Academic Press,Inc.)、PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.,1995)、Antibodies,A Laboratory Manual(Harlow and Lane,eds.,1988)、Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications(R.I.Freshney,6th ed.,J.Wiley and Sons,2010)、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,Academic Press,1998)、Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,Plenum Press,1998)、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,J.Wiley and Sons,1993-8)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1996)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullis et al.,eds.,1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)、Short Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.,J.Wiley and Sons,2002)、Immunobiology(C.A.Janeway et al.,2004)、Antibodies(P.Finch,1997)、Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989)、Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)、Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.Harlow and D.Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999)、The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995)およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVita et al.,eds.,J.B.Lippincott Company,2011)に記載の広く利用されている方法論などを使って、よく使用されている。
【0076】
定義
本明細書の解釈にあたっては、以下の定義が適用され、単数形で使用される単語は、適当である場合は常に、複数形も包含し、逆もまた同じである。以下に記載するいずれの定義も、それが参照により本明細書に組み入れられる任意の文書と矛盾する場合は、以下に記載する定義が優先される。
【0077】
本明細書において使用される単数形「a」、「an」および「the」は、別段の表示がある場合を除き、複数の指示対象を包含する。
【0078】
本明細書に記載される本発明の局面および態様は、局面および態様「を含む」、「からなる」および「から本質的になる」を包含すると理解される。
【0079】
本明細書において使用される「約」という用語は、この技術分野の当業者にはすぐにわかる、それぞれの値にとっての通常の誤差範囲を指す。本明細書において、ある値またはパラメータについて「約」という場合は、その値またはパラメータそのものに向けられる態様が包含され(そして記載され)る。
【0080】
本明細書において使用される「均一な」という用語は、構造または組成がくまなく一貫しているまたは一様である何かを指す。いくつかの例において、この用語は、所与の集団内で一貫した成熟状態、マーカー発現または表現型を有する細胞を指す。
【0081】
本明細書において使用される「阻害する」という用語は、特定標的の存在または活性を遮断し、低減し、排除し、または他の形で拮抗する作用を指す。例えば、タウタンパク質のリン酸化を阻害するとは、タウタンパク質のリン酸化を減少させ、低減し、拮抗し、排除し、遮断し、または他の形で減じることにつながる任意の作用を指しうる。阻害は部分的な阻害または完全な阻害を指しうる。別の例において、核酸の発現の阻害は、核酸の転写の低減、mRNA存在量の低減(例えばmRNA転写をサイレンシングすること)、mRNAの分解、mRNA翻訳の阻害などを含みうるが、それらに限定されない。
【0082】
本明細書において使用される「抑制する」という用語は、特定標的の存在または活性を減少させ、低減し、禁止し、制限し、削減し、または他の形で減じる作用を指しうる。抑制は部分的な抑制または完全な抑制を指しうる。例えば、タウタンパク質のリン酸化を抑制するとは、タウタンパク質のリン酸化を減少させ、低減し、禁止し、制限し、削減し、または他の形で減じる任意の作用を指しうる。別の例において、核酸の発現の抑制は、核酸の転写の低減、mRNA存在量の低減(例えばmRNA転写をサイレンシングすること)、mRNAの分解、mRNA翻訳の阻害などを含みうるが、それらに限定されない。
【0083】
本明細書において使用される「増強する」という用語は、特定標的の存在または活性を改良し、増大させ、高め、または他の形で増加させる作用を指しうる。例えば、ステロイド産生を増強するとは、ステロイド産生を改良し、増大させ、高め、または他の形で増加させる任意の作用を指しうる。
【0084】
本明細書において使用される「調節する」という用語は、特定標的の存在または活性を変化させ、変更し、変動させ、または他の形で改変する作用を指しうる。例えば、シグナル伝達経路を調節することには、シグナル伝達経路の活性を変化させ、変更し、変動させ、または他の形で改変する任意の作用が含まれうるが、それらに限定されない。いくつかの例において、「調節する」とは、特定標的の存在または活性を増強することを指す。いくつかの例において、「調節する」とは、特定標的の存在または活性を抑制することを指す。例えば、レチノイン酸シグナル伝達の量を調節することには、レチノイン酸シグナル伝達の量を抑制または増強することが含まれうるが、それらに限定されない。
【0085】
本明細書において使用される「誘導する」という用語は、ある結果を開始させ、促進し、刺激し、確立し、または他の形で生じさせることを指しうる。例えば、変異遺伝子の発現を誘導するとは、変異遺伝子の所望の発現を開始させ、促進し、刺激し、確立し、または他の形で生じさせる任意の作用を指しうる。別の例において、核酸の発現を誘導することには、核酸の転写の開始、mRNA翻訳の開始などが含まれうるが、それらに限定されない。いくつかの例において、胚葉を誘導するとは、胚葉の所望の誘導を開始させ、促進し、刺激し、確立し、または他の形で生じさせることにつながる、またはつながるように設計された、任意の作用を指しうる。
【0086】
本明細書にいう「幹細胞」とは、さらなる定義がある場合を除き、任意の非体細胞を指す。最終分化細胞でも最終的にコミットされた細胞(terminally committed cell)でもない任意の細胞を幹細胞と呼びうる。これには、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、造血幹細胞、前駆細胞、および部分的に分化した前駆細胞が含まれる。幹細胞は、全能性(totipotent)、多能性(pluripotent)または複能性(multipotent)の幹細胞でありうる。2つの異なるタイプの細胞に分化する潜在能力を有する細胞はいずれも、本出願においては、幹細胞と見なされる。
【0087】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」または「薬理学的に適合する」とは、生物学的にも他の形でも望ましくないことのない材料、例えば重大な望ましくない生物学的効果を引き起こすことも、それを含有する組成物の他の構成要素のいずれかと有害な形で相互作用することもなく、患者に投与される薬学的組成物中に組み込まれうる材料を意味する。薬学的に許容される担体または賦形剤は、好ましくは、毒性試験および製造試験の要求基準を満たしており、米国食品医薬品局が作成したInactive Ingredient Guide(不活性成分ガイド)に掲載されている。
【0088】
本明細書に記載する構造的および機能的特徴のいずれについても、それらの特徴を決定する方法は、当技術分野において公知である。
【0089】
性腺子孫細胞の誘導、分化および成熟
ヒトiPSCは、ヒト疾患のモデル化のための強力なツールになっており、標的発見と医薬品開発における橋渡し研究に大きな可能性を秘めている。
【0090】
最近の進歩により、インビトロで多能性幹細胞から卵母細胞を生成させうることが示されているが、これらの誘導細胞は、生殖細胞として完全に発生するためには、適正な体性環境(somatic environment)を依然として必要とする。初期始原生殖細胞またはインビトロ誘導始原生殖細胞様細胞が配偶子に成熟するのは、正しい構成の卵巣体細胞と組み合わされた場合だけである。本明細書では、多能性幹細胞から、特に卵巣体細胞などの性腺細胞集団を産生する方法が提供される。いくつかの態様において、提供される細胞集団は、例えばインビトロ配偶子形成に関連して、インビトロで卵母細胞発生をサポートするための方法において、使用することができる。
【0091】
幹細胞の分化は、遺伝子発現の変化によって特定することができるさまざまな段階を経て進行する。一連の定常安定状態を経由して幹細胞を漸進的に転化することによって性腺細胞(卵巣体細胞など)を生成するための方法が記載される。いくつかの態様では、純粋な均一卵巣体細胞培養を得るために、純度および効率が最大になるように、条件を最適化した。別の態様では、顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および卵巣上皮細胞を含む一定の不均一卵巣体細胞培養を得るために、条件を最適化した。いくつかの態様において、本明細書では、顆粒膜細胞分化のための、2つのキー中間工程が提供される。いくつかの態様において、本明細書では、卵巣体細胞分化のための、2つのキー中間工程が提供される。いくつかの態様において、2つのキー中間工程は、多能性幹細胞をまず中胚葉中間体(mesoderm intermediate)に分化させ、次に中間中胚葉集団に分化させてから、細胞を性腺細胞集団(卵巣体細胞、OSCなど)に誘導することを含む。
【0092】
いくつかの態様において、本明細書において記載されるプロトコールは、異なる哺乳動物(例えば限定するわけではないが、ヒト、マウス、ウシなど)からの異なる幹細胞株に使用することができる。ロバストな分化のために、誘導物質(例えばサイトカインまたは低分子)の濃度および継続時間を変えることによって、各工程において、一定のマーカーの発現を最適化しうる。より重要なことに、配偶子の産生と成熟を容易にするために機能的な「ミニ卵巣」を形成させるには、異なる卵巣体細胞タイプ(例えば限定するわけではないが、顆粒膜細胞、上皮細胞および間質細胞)の厳密なバランスおよび組織化が、必要になりうるので、誘導物質の濃度および継続時間を変えることによって、卵巣体細胞の最終組成が最適化される。本明細書における知見は、中間中胚葉の誘導および/または性腺細胞集団の誘導時に、異なる濃度の特定化合物(例えば限定するわけではないがレチノイン酸およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3)および異なるタイミングでのインキュベーションを使用することで、顆粒膜細胞、上皮細胞および間質細胞を含む卵巣体細胞のさまざまな集合体を含む性腺細胞集団が産生されることが示されたことを裏付けている。そのような最適化は、本明細書において実証されるとおり、異なる遺伝的背景を持つ細胞株でも機能するであろうロバストな普遍的方法に組み込まれる。そのような方法および細胞集団は、異なるプロトコールによって生成される多能性幹細胞由来卵母細胞の発生および成熟を調整し、容易にすることもできるだろう。
【0093】
性腺細胞集団の誘導
性腺細胞集団および中間細胞集団を生成する方法
いくつかの局面において、多能性幹細胞から性腺体細胞集団を生成する方法が提供される。いくつかの態様において、本明細書では、性腺体細胞集団を産生する方法であって、(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、および(c)性腺細胞集団を産生するために、BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程を含む方法が提供される。
【0094】
いくつかの態様において、性腺誘導培地はフォリスタチンをさらに含む。
【0095】
いくつかの局面において、多能性幹細胞から性腺細胞集団を生成する方法が提供される。いくつかの態様において、本明細書では、性腺細胞集団を産生する方法であって、(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに(c)性腺細胞集団を産生するために、フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程を含む方法が提供される。
【0096】
いくつかの態様において、性腺細胞集団を産生する方法であって、(a)RAPMを含む中間中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、および(b)性腺細胞集団を産生するために、BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、第2期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程を含む方法が提供される。いくつかの態様において、性腺誘導培地はフォリスタチンをさらに含む。いくつかの態様において、性腺細胞集団を産生する方法であって、(a)RAPMを含む中間中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに(b)性腺細胞集団を産生するために、フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、第2期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程を含む方法が提供される。
【0097】
いくつかの態様において、性腺細胞集団を産生する方法であって、性腺細胞集団を産生するために、BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、ある期間にわたって、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞を培養する工程を含む方法が提供される。いくつかの態様において、性腺誘導培地はフォリスタチンをさらに含む。いくつかの態様において、性腺細胞集団を産生する方法であって、性腺細胞集団を産生するために、フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、ある期間にわたって、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞を培養する工程を含む方法が提供される。
【0098】
いくつかの態様において、第1中間細胞集団を産生する方法であって、第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAとグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質とを含む中胚葉誘導培地中で、ある期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程を含む方法が提供される。
【0099】
いくつかの態様において、第2中間細胞集団を産生する方法であって、RAPMを含む培地中で、ある期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程を含む方法が提供される。
【0100】
いくつかの態様において、第2中間細胞集団を産生する方法であって、(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAとグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質とを含む培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、(b)RAPM、FGFおよびグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程を含む方法が提供される。
【0101】
本明細書記載の方法のいずれか一つによるいくつかの態様において、
【0102】
性腺細胞集団および中間細胞集団
いくつかの局面において、FOXL2発現細胞、NR2F2発現細胞および/またはKRT-19発現細胞を含むインビトロ幹細胞由来性腺体細胞集団が提供され、任意で、この性腺体細胞集団は卵巣体細胞集団である。いくつかの態様において、性腺体細胞集団は、(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、および(c)BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養し、それによって性腺細胞集団を生成する工程を含むプロセスによって生成される。いくつかの態様において、性腺誘導培地はフォリスタチンをさらに含む。
【0103】
本明細書記載の方法によって生成される性腺細胞集団および中間細胞集団も提供される。いくつかの態様において、本明細書では、(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに(c)フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養し、それによって性腺細胞集団を生成する工程を含む方法によって生成される性腺細胞集団が、提供される。いくつかの態様において、本明細書では、(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、および(c)BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養し、それによって性腺細胞集団を生成する工程を含む方法によって生成される性腺細胞集団が、提供される。いくつかの態様において、性腺誘導培地はフォリスタチンをさらに含む。
【0104】
いくつかの態様において、本明細書では、(a)RAPMを含む中間中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに(b)フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、第2期間にわたって、第2中間細胞集団を培養し、それによって性腺細胞集団を生成する工程を含む方法によって生成される性腺細胞集団が、提供される。いくつかの態様において、本明細書では、(a)RAPMを含む中間中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、および(b)BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、第2期間にわたって、第2中間細胞集団を培養し、それによって性腺細胞集団を生成する工程を含む方法によって生成される性腺細胞集団が、提供される。いくつかの態様において、性腺誘導培地はフォリスタチンをさらに含む。
【0105】
いくつかの態様では、性腺細胞集団を産生するために、フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、ある期間にわたって、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞を培養する工程を含む方法によって生成される性腺細胞集団が、提供される。いくつかの態様では、性腺細胞集団を産生するために、BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、ある期間にわたって、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞を培養する工程を含む方法によって生成される性腺細胞集団が、提供される。いくつかの態様において、性腺誘導培地はフォリスタチンをさらに含む。
【0106】
いくつかの態様において、アクチビンAとグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質とを含む中胚葉誘導培地中で、ある期間にわたって、多能性幹細胞を培養し、それによって第1中間細胞集団を生成する工程を含む方法によって生成される第1中間細胞集団が、提供される。
【0107】
いくつかの態様において、RAPMを含む培地中で、ある期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程を含む方法によって生成される第2中間細胞集団が、提供される。
【0108】
いくつかの態様において、(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAとグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質とを含む培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程;(b)RAPM、FGFおよびグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程を含む方法によって生成される第2中間細胞集団が、提供される。
【0109】
誘導培地、分化プロトコールおよび前駆体細胞
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、多能性幹細胞はヒト多能性幹細胞またはマウス多能性幹細胞である。いくつかの態様において、多能性幹細胞は胚性幹細胞または誘導多能性幹細胞である。いくつかの態様において、多能性幹細胞は哺乳動物多能性幹細胞である。いくつかの態様において、多能性幹細胞はマウスまたはヒト多能性幹細胞である。いくつかの態様において、多能性幹細胞はマウス多能性幹細胞である。いくつかの態様において、多能性幹細胞はヒト多能性幹細胞である。いくつかの態様において、多能性幹細胞はウシ多能性幹細胞である。
【0110】
いくつかの態様において、多能性幹細胞は、1cm2あたり約10,000~約40,000細胞の密度で播種される。いくつかの態様において、
【0111】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度は約30ng/mL~約70ng/mLである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度は約50ng/mLである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度は、およそ、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、200、300、400または500ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度は、およそ、約30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68または70ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。
【0112】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、中胚葉誘導培地はFGFをさらに含む。いくつかの態様において、FGFは、FGF2、FGF4またはFGF9のうちの1つまたは複数である。いくつかの態様において、FGFはFGF2である。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地はFGF2を含み、FGF2の濃度は、およそ、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のFGF2の濃度は約5ng/mL~約20ng/mLである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のFGF2の濃度は約12ng/mLである。
【0113】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、中胚葉誘導培地はBMP4をさらに含む。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のBMP4の濃度は、およそ、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、200、300、400または500ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のBMP4の濃度は、およそ、約10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48または50ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のBMP4の濃度は約10ng/mL~約50ng/mLである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のBMP4の濃度は約30ng/mLである。
【0114】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、中胚葉誘導培地はグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質をさらに含む。いくつかの態様において、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質はCHIR99021である。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のCHIR99021の濃度は、およそ、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、20.0、30.0、40.0、50.0μMのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、CHIR99021の濃度は約1μM~約5μMである。いくつかの態様において、CHIR99021の濃度は約3μMである。
【0115】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、中胚葉誘導培地はアポトーシス阻害物質をさらに含む。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のアポトーシス阻害物質はY-27632である。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は、およそ、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は約5μM~約20μMである。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は約10μMである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中のアポトーシス阻害物質は、クロマン1、エムリカサンおよびトランス-ISRIBを含む。いくつかの態様において、クロマン1の濃度は約30nM~約70nMであり、エムリカサンの濃度は約2μM~約10μMであり、および/またはトランス-ISRIBの濃度は約0.2μM~約2μMである。いくつかの態様において、クロマン1の濃度は約50nMであり、エムリカサンの濃度は約5μMであり、および/またはトランス-ISRIBの濃度は約0.7μMである。
【0116】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、中胚葉誘導培地中で培養する期間は、およそ、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76、80、84、88、92、96、120、144、168、192時間のうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の長さのうちの1つである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中で培養する期間は、少なくともおよそ、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76、80、84、88、92、96、120、144、168、192時間のうちのいずれか1つである。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中で培養する期間は、約24時間~約96時間である。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中で培養する期間は、約24時間~約72時間である。いくつかの態様において、中胚葉誘導培地中で培養する期間は、約56時間~約72時間である。
【0117】
いくつかの態様において、第1中間細胞集団は、中間中胚葉誘導培地における培養の前に、新しいフィブロネクチン被覆培養プレート上に再プレーティングされ、任意で、第1中間細胞集団は、酵素的に剥離され、遠心分離され、再懸濁されてから、再プレーティングされる。いくつかの態様において、第1中間細胞集団は、約5000~約25000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。いくつかの態様において、第1中間細胞集団は、約25000~約75000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。いくつかの態様において、第1中間細胞集団は、約75000~約150000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。いくつかの態様において、中胚葉細胞または中胚葉様細胞は、約5000~約25000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。いくつかの態様において、中胚葉細胞または中胚葉様細胞は、約25000~約75000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。いくつかの態様において、中胚葉細胞または中胚葉様細胞は、約75000~約150000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。
【0118】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のRAPMはRARアゴニストである。いくつかの態様において、RAPMはレチノイン酸(RA)および/またはTTNPBを含む。いくつかの態様において、RAPMはRAである。いくつかの態様において、RAPMはTTNPBである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のRAの濃度は、およそ、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、20.0、30.0、40.0、50.0μMのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、TTNPBの濃度は、およそ、0.005、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、20.0μMのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のRAの濃度は、約0.5μM~約2μMであり、および/または中間中胚葉誘導培地中のTTNPBの濃度は、約0.2μM~約1μMである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のRAの濃度は約1μMであり、および/または中間中胚葉誘導培地中のTTNPBの濃度は約0.5μMである。
【0119】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地はFGFをさらに含む。いくつかの態様において、FGFは、FGF2、FGF4またはFGF9のうちの1つまたは複数である。いくつかの態様において、FGFはFGF2である。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地はFGF2を含み、FGF2の濃度は、およそ、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、50、60、70、80、90、100ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の一濃度である。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のFGF2の濃度は約10ng/mL~約30ng/mLである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のFGF2の濃度は約20ng/mLである。
【0120】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地はグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質をさらに含む。いくつかの態様において、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質はCHIR99021である。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のCHIR99021の濃度は、およそ、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、20.0、30.0、40.0、50.0μMのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、CHIR99021の濃度は約1μM~約5μMである。いくつかの態様において、CHIR99021の濃度は約3μMである。
【0121】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれかによるいくつかの態様では、誘導物質(例えば増殖因子または低分子)の濃度および曝露継続時間が異なると、組成が異なる最終卵巣体細胞集団が獲得されうる。
【0122】
いくつかの態様では、第2中間細胞集団の誘導において、濃度および曝露継続時間が異なるRAPMおよび/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を使用することができる。いくつかの態様では、誘導時に濃度および曝露継続時間が異なるRAPMおよび/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を使用すると、それによって生成される第2中間細胞集団の発生能が異なるものになる。いくつかの態様において、RAPMはレチノイン酸(RA)および/またはTTNPBを含む。いくつかの態様において、RAPMはRAである。いくつかの態様において、RAPMはTTNPBである。
【0123】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地はアポトーシス阻害物質をさらに含む。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のアポトーシス阻害物質はY-27632である。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は、およそ、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は約5μM~約20μMである。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は約10μMである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中のアポトーシス阻害物質は、クロマン1、エムリカサンおよびトランス-ISRIBを含む。いくつかの態様において、クロマン1の濃度は約30nM~約70nMであり、エムリカサンの濃度は約2μM~約10μMであり、および/またはトランス-ISRIBの濃度は約0.2μM~約2μMである。いくつかの態様において、クロマン1の濃度は約50nMであり、エムリカサンの濃度は約5μMであり、および/またはトランス-ISRIBの濃度は約0.7μMである。いくつかの態様において、本方法は、第1中間細胞集団を、(i)まず、約10μMのY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、そして(ii)次に、約2μM以下のY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、培養する工程を含む。いくつかの態様において、本方法は、第1中間細胞集団を、(i)まず、約10μMのY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、約24時間にわたって、(ii)次に、約2μM以下のY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、約5~6日にわたって、培養する工程を含む。
【0124】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中で培養する期間は、およそ、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、28、30、35、42、49日のうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の長さの1つである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中で培養する期間は、少なくともおよそ、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、28、30、35、42、49日のうちのいずれか1つである。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中で培養する期間は約4日~約14日である。いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地中で培養する期間は約5日~約9日である。
【0125】
いくつかの態様において、第2中間細胞集団は、性腺誘導培地における培養の前に、新しいフィブロネクチン被覆培養プレート上に再プレーティングされ、任意で、第2中間細胞集団は、酵素的に剥離され、遠心分離され、再懸濁されてから、再プレーティングされる。いくつかの態様において、第2中間細胞集団は、約5000~約25000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。いくつかの態様において、第2中間細胞集団は、約25000~約75000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。いくつかの態様において、第2中間細胞集団は、約75000~約150000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。いくつかの態様において、中胚葉細胞または中胚葉様細胞は、約5000~約25000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。いくつかの態様において、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞は、約5000~約25000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。いくつかの態様において、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞は、約25000~約75000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。いくつかの態様において、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞は、約75000~約150000細胞/cm2の密度でプレーティングされる。
【0126】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、性腺誘導培地中のフォリスタチンの濃度は、およそ、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、50、60、70、80、90、100、200、500ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のフォリスタチンの濃度は約10ng/mL~約50ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のフォリスタチンの濃度は約25ng/mLである。
【0127】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMP4の濃度は、およそ、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、200、300、400または500ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMP4の濃度は、およそ、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれらの間なる任意の濃度のうちのいずれか1つである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMP4の濃度は、およそ、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68または70ng/mLのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMP4の濃度は約5ng/mL~約20ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMP4の濃度は約30ng/mL~約70ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMP4の濃度は約10ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMP4の濃度は約50ng/mLである。
【0128】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMPは、BMP4、BMP2、BMP7、BMP15、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMPの濃度は、およそ、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、200、300、400または500ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMPの濃度は、およそ、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれらの間なる任意の濃度のうちのいずれか1つである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMPの濃度は、およそ、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68または70ng/mLのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMPの濃度は、約5ng/mL~約20ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMPの濃度は、約30ng/mL~約70ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMPの濃度は、約10ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMPの濃度は、約20ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のBMPの濃度は、約50ng/mLである。
【0129】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGFは、FGF2、FGF4またはFGF9のうちの1つまたは複数である。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGFはFGF2である。いくつかの態様において、性腺誘導培地はFGF2を含み、FGF2の濃度は、およそ、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、50、60、70、80、90、100ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGF2の濃度は、約1ng/mL~約10ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGF2の濃度は、約5ng/mL~約25ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGF2の濃度は、約1ng/mL~約10ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGF2の濃度は、約5ng/mL~約25ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGF2の濃度は、約5ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGF2の濃度は、約10ng/mLである。
【0130】
いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGFは、FGF2、FGF4、FGF9、FGF10、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、FGFの濃度は、およそ、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、50、60、70、80、90、100ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGFの濃度は、約1ng/mL~約10ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGFの濃度は、約5ng/mL~約25ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGFの濃度は、約1ng/mL~約10ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGFの濃度は、約5ng/mL~約25ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGFの濃度は、約5ng/mLである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のFGFの濃度は、約10ng/mLである。
【0131】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、性腺培地はRAPMをさらに含む。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のRAPMはRARアゴニストである。いくつかの態様において、RAPMはレチノイン酸(RA)および/またはTTNPBを含む。いくつかの態様において、RAPMはRAである。いくつかの態様において、RAPMはTTNPBである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のRAの濃度は、およそ、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、20.0、30.0、40.0、50.0μMのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のTTNPBの濃度は、およそ、0.005、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、20.0μMのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のRAの濃度は約0.5μM~約2μMであり、および/または性腺誘導培地中のTTNPBの濃度は約0.2μM~約1μMである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のRAの濃度は約1μMであり、および/または性腺誘導培地中のTTNPBの濃度は約0.5μMである。
【0132】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、性腺誘導培地はアポトーシス阻害物質をさらに含む。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のアポトーシス阻害物質はY-27632である。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は、およそ、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100ng/mLのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は約5μM~約20μMである。いくつかの態様において、Y-27632の濃度は約10μMである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中のアポトーシス阻害物質はクロマン1、エムリカサンおよびトランス-ISRIBを含む。いくつかの態様において、クロマン1の濃度は約30nM~約70nMであり、エムリカサンの濃度は約2μM~約10μMであり、および/またはトランス-ISRIBの濃度は約0.2μM~約2μMである。いくつかの態様において、クロマン1の濃度は約50nMであり、エムリカサンの濃度は約5μMであり、および/またはトランス-ISRIBの濃度は約0.7μMである。
【0133】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、性腺誘導培地中で培養する期間は、およそ、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、28、30、35、42、49、56、63、70日のうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の長さのうちの1つである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中で培養する期間は、少なくともおよそ、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、28、30、35、42、49、56、63、70日のうちのいずれか1つである。いくつかの態様において、性腺誘導培地中で培養する期間は約5日~約21日である。いくつかの態様において、性腺誘導培地中で培養する期間は約7日~約14日である。
【0134】
いくつかの態様において、本明細書では、性腺細胞集団を産生する方法であって、(a)約50ng/mLのアクチビンA、約3μMのCHIR99021を含む中胚葉誘導培地中で、約56~約72時間にわたって、多能性幹細胞を培養し、それにより、集団内の細胞の少なくとも約80%がブラキウリを発現する第1中間細胞集団を産生する工程、(b)約1μMのRA、約3μMのCHIR99021および約20ng/mLのFGF2を含む中間中胚葉誘導培地中で、約5~9日にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それにより、集団内の細胞の少なくとも約80%がPAX2を発現する第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに(c)約25ng/mLのフォリスタチン、約10ng/mLのBMP4および約5ng/mLのFGFを含む性腺誘導培地中で、約7日~約14日にわたって、第2中間細胞集団を培養し、それにより、集団内の細胞の少なくとも約20%がFOXL2および/またはNR2F2を発現する性腺細胞集団を産生する工程を含む方法が、提供される。
【0135】
性腺細胞集団および中間細胞集団の特徴づけ
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、性腺細胞集団は、1種または複数種の発現マーカーによって特徴づけることができる。いくつかの態様において、性腺細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、FOXL2、NR2F2、WNT6、KITLGおよびNR1H4のうちの1つまたは複数を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、NR2F2、GPC3およびCOL1A1のうちの1つまたは複数を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、NR2F2、GPC3およびCOL1A1のうちの1つまたは複数を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、KRT-19およびUPK3Bのうちの1つまたは複数を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、FOXL2、NR2F2およびKRT-19のうちの1つまたは複数を発現する。
【0136】
いくつかの態様において、第1性腺細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、FOXL2を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約20%はFOXL2を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約50%はFOXL2を発現する。
【0137】
いくつかの態様において、第1性腺細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、NR2F2を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約20%はNR2F2を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約50%はNR2F2を発現する。
【0138】
いくつかの態様において、第1性腺細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、RUNX1を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約20%はRUNX1を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約50%はRUNX1を発現する。
【0139】
いくつかの態様において、第1性腺細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、LGR5を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約20%はLGR5を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約50%はLGR5を発現する。
【0140】
いくつかの態様において、第1性腺細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、WNT6を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約20%はWNT6を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約50%はWNT6を発現する。
【0141】
いくつかの態様において、第1性腺細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、KITLGを発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約20%はKITLGを発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約50%はKITLGを発現する。
【0142】
いくつかの態様において、第1性腺細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、NR1H4を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約20%はNR1H4を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約50%はNR1H4を発現する。
【0143】
顆粒膜細胞は成熟するとステロイド産生細胞になり、これらの細胞は、テストステロンなどのアンドロゲンをエストラジオールなどのエストロゲンに転化することができる。ステロイド産生を担うキー酵素の一つはアロマターゼ-CYP19A1である。
【0144】
いくつかの態様において、第1性腺細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、CYP19A1を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約20%はCYP19A1を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約50%はCYP19A1を発現する。
【0145】
いくつかの態様において、性腺細胞集団は、ジヒドロキシ-テストステロン(dhT)で処置すると、エストラジオールを分泌する。いくつかの態様において、dhTで処置した後の成熟性腺細胞集団のエストラジオール分泌レベルは、無処置細胞の場合よりも、少なくともおよそ、10%、20%、50%、80%、100%、10倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、100000倍または1000000倍のうちのいずれか1つ、高い。いくつかの態様において、dhTで処置した後の成熟性腺細胞集団のエストラジオール分泌レベルは、二分化能性腺細胞集団の場合よりも、少なくともおよそ、10%、20%、50%、80%、100%、10倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、100000倍または1000000倍のうちのいずれか1つ、高い。いくつかの態様において、dhTで処置した後の成熟性腺細胞集団のエストラジオール分泌レベルは、中胚葉マーカーを発現する中間細胞集団の場合よりも、少なくともおよそ、10%、20%、50%、80%、100%、10倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、100000倍または1000000倍のうちのいずれか1つ、高い。いくつかの態様において、dhTで処置した後の成熟性腺細胞集団のエストラジオール分泌レベルは、中間中胚葉マーカーを発現する中間細胞集団の場合よりも、少なくともおよそ、10%、20%、50%、80%、100%、10倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、100000倍または1000000倍のうちのいずれか1つ、高い。いくつかの態様において、dhTで処置した後の成熟性腺細胞集団のエストラジオール分泌レベルは、多能性幹細胞の場合よりも、少なくともおよそ、10%、20%、50%、80%、100%、10倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、10000倍、100000倍または1000000倍のうちのいずれか1つ、高い。
【0146】
いくつかの態様において、第1性腺細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、GPC3を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約20%はGPC3を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約50%はGPC3を発現する。
【0147】
いくつかの態様において、第1性腺細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、COL1A1を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約20%はCOL1A1を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約50%はCOL1A1を発現する。
【0148】
いくつかの態様において、第1性腺細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、KRT19を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約20%はKRT19を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも約50%はKRT19を発現する。
【0149】
いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも90%は、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞である。いくつかの態様において、性腺細胞集団は、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞から本質的になる。いくつかの態様において、FOXL2陽性細胞は顆粒膜細胞を含む。いくつかの態様において、NR2F2陽性細胞は間質細胞および/または顆粒膜細胞を含む。いくつかの態様において、KRT-19陽性細胞は卵巣上皮細胞を含む。
【0150】
いくつかの態様において、性腺細胞集団は卵巣体細胞(OSC)を含む。いくつかの態様において、性腺細胞集団は卵巣体細胞集団である。いくつかの態様において、性腺細胞集団は二分化能性腺体細胞(例えば二分化能卵巣体細胞)を含む。いくつかの態様において、二分化能性腺体細胞は、GATA4、WT1、LHX9およびZFPM2のうちの1つまたは複数を発現する。いくつかの態様において、性腺細胞集団は成熟卵巣体細胞を含む。いくつかの態様において、性腺細胞集団は、顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および/または卵巣上皮細胞のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの態様において、顆粒膜細胞は、FOXL2、KITLGおよび/またはNR1H4のうちの1つまたは複数を発現する。いくつかの態様において、卵巣間質細胞はNR2F2を発現する。いくつかの態様において、卵巣上皮は、KRT19、MSLN、TMEM151Aおよび/またはLRRN4のうちの1つまたは複数を発現する。
【0151】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、第1中間細胞集団は、1種または複数種の発現マーカーによって特徴づけることができる。いくつかの態様において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、ブラキウリ、MIXL1、N-カドヘリン、ECPAM、NCAMのうちの1つまたは複数を発現する。
【0152】
いくつかの態様において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分はブラキウリを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分はMIXL1を発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分はN-カドヘリンを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分はEpCamを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分はNCAMを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分はGSCを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、ブラキウリ、MIXL1、N-カドヘリン、EpCam、NCAMのうちの2つ以上を発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、ブラキウリ、MIXL1、N-カドヘリン、EpCam、NCAMのうちの3つ以上を発現する。
【0153】
いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、ブラキウリを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約80%はブラキウリを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%はブラキウリを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約95%はブラキウリを発現する。
【0154】
いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、MIXL1を発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約80%はMIXL1を発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%はMIXL1を発現する。
【0155】
いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、N-カドヘリンを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約80%はN-カドヘリンを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%はN-カドヘリンを発現する。
【0156】
いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、EPCAMを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約80%はEPCAMを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%はEPCAMを発現する。
【0157】
いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、N-カドヘリンを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約80%はN-カドヘリンを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%はN-カドヘリンを発現する。
【0158】
いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、NCAMを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約80%はNCAMを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%はNCAMを発現する。
【0159】
いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、GSCを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約80%はGSCを発現する。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%はGSCを発現する。
【0160】
いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、中胚葉細胞である。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、中胚葉様細胞である。いくつかの態様において、中胚葉様細胞とは、インビボの対応する中胚葉の1つまたは複数のマーカーをディスプレイする細胞を指しうる。いくつかの態様において、中胚葉様細胞とは、インビボの対応する中胚葉の発生能の一部または全部を有する細胞を指しうる。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%は中胚葉細胞である。いくつかの態様において、第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%は中胚葉様細胞である。いくつかの態様において、少なくとも第1中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%は中胚葉細胞または中胚葉様細胞である。
【0161】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれか一つによるいくつかの態様において、第2中間細胞集団は、1種または複数種の発現マーカーによって特徴づけることができる。いくつかの態様において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、OSR1、PAX2、LHX1およびRUNX1のうちの1つまたは複数を発現する。
【0162】
いくつかの態様において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分はOSR1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分はPAX2を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分はLHX1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分はWT1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分はSALL1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分はGSCを発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、OSR1、PAX2、LHX1、RUNX1、WT1およびSALL1のうちの1つまたは複数を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、OSR1、PAX2、LHX1、RUNX1、WT1およびSALL1のうちの2つ以上を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分は、OSR1、PAX2、LHX1、RUNX1、WT1およびSALL1のうちの3つ以上を発現する。
【0163】
いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、LHX1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%はLHX1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約95%はLHX1を発現する。
【0164】
いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、PAX2を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%はPAX2を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約95%はPAX2を発現する。
【0165】
いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、OSR1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約80%はOSR1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%はOSR1を発現する。
【0166】
いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、RUNX1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約80%はRUNX1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%はRUNX1を発現する。
【0167】
いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、WT1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約80%はWT1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%はWT1を発現する。
【0168】
いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、SALL1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約80%はSALL1を発現する。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%はSALL1を発現する。
【0169】
いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、中間中胚葉細胞である。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%または98%のうちのいずれか1つは、中間中胚葉様細胞である。いくつかの態様において、中間中胚葉様細胞とは、インビボの対応する中間中胚葉の1つまたは複数のマーカーをディスプレイする細胞を指しうる。いくつかの態様において、中胚葉様細胞とは、インビボの対応する中間中胚葉の発生能の一部または全部を有する細胞を指しうる。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約80%は中間中胚葉細胞である。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも約90%は中間中胚葉様細胞である。いくつかの態様において、第2中間細胞集団内の細胞の少なくとも90%は、中間中胚葉細胞および/または中間中胚葉様細胞である。
【0170】
いくつかの態様では、中間中胚葉誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される対応する第2中間細胞集団と比較して、(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(VII)DLK1-および/もしくはGPC3発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(VIII)LHX9発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(IX)KRT19発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している。
【0171】
いくつかの態様では、中間中胚葉誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される対応する第2中間細胞集団と比較して、(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(VII)DLK1-および/もしくはGPC3発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(VIII)LHX9発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(IX)KRT19発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している。
【0172】
いくつかの態様では、中間中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含まない方法によって生成される対応する第2中間細胞集団と比較して、(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(VII)DLK1-および/もしくはGPC3発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(VIII)LHX9発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(IX)KRT19発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している。
【0173】
いくつかの態様において、中間中胚葉誘導培地がより低濃度のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む方法によって生成される対応する第2中間細胞集団と比較して、(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(VII)DLK1-および/もしくはGPC3発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(VIII)LHX9発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加しており、ならびに/または(IX)KRT19発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している。
【0174】
いくつかの態様では、性腺体細胞集団の誘導において、RAPMの濃度およびRAPMへの曝露継続時間を調整することができる。いくつかの態様において、誘導時にRAPMの濃度およびRAPMへの曝露継続時間を調整すると、それによって生成される性腺体細胞集団の細胞運命および組成が異なるものになる。いくつかの態様において、RAPMはレチノイン酸(RA)および/またはTTNPBを含む。いくつかの態様において、RAPMはRAである。いくつかの態様において、RAPMはTTNPBである。
【0175】
いくつかの態様において、RAPMはRAである。本明細書記載の方法または細胞集団のいずれかによるいくつかの態様において、性腺誘導培地は、少なくともおよそ、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、20.0、30.0、40.0、50.0μMのうちのいずれか1つ、またはそれらの間にある任意の濃度のうちの1つである濃度のRAを含む。いくつかの態様において、性腺誘導は、RAの存在下(上述した濃度のいずれか1つ、例えば限定するわけではないが0.1、0.5または1.0μMにおいて)、少なくともおよそ、2、4、6、8、10、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、72、96、120、144、168、192または240時間のいずれか1つにわたって、行われる。
【0176】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれかによるいくつかの態様において、性腺誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される対応する性腺細胞集団と比較して、(I)性腺細胞集団におけるFOXL2発現の量が減少しており、ならびに/または(II)性腺細胞集団におけるNR1H4ならびに/またはKITLGの発現の量が減少しており、ならびに/または(III)性腺細胞集団におけるKRT-19発現の量が増加しており、ならびに/または(IV)性腺細胞集団における細胞質KRT-19発現の量が増加しており、ならびに/または(V)性腺細胞集団におけるMSLN、LRRN4および/もしくはTMEM151Aの発現の量が増加している。
【0177】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれかによるいくつかの態様において、性腺誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される対応する性腺細胞集団と比較して、(I)性腺細胞集団におけるFOXL2発現の量が減少しており、ならびに/または(II)性腺細胞集団におけるNR1H4ならびに/またはKITLGの発現の量が減少しており、ならびに/または(III)性腺細胞集団におけるKRT-19発現の量が増加しており、ならびに/または(IV)性腺細胞集団における細胞質KRT-19発現の量が増加しており、ならびに/または(V)性腺細胞集団におけるMSLN、LRRN4および/もしくはTMEM151Aの発現の量が増加している。
【0178】
本明細書記載の方法または細胞集団のいずれかによるいくつかの態様において、RAPMと接触させる期間がより短い性腺誘導工程によって生成される対応する性腺細胞集団と比較して、(I)性腺細胞集団におけるFOXL2発現の量が減少しており、ならびに/または(II)性腺細胞集団におけるNR1H4および/もしくはKITLGの発現の量が減少しており、ならびに/または(III)性腺細胞集団におけるKRT-19発現の量が増加しており、ならびに/または(IV)性腺細胞集団における細胞質KRT-19発現の量が増加しており、ならびに/または(V)性腺細胞集団におけるMSLN、LRRN4および/もしくはTMEM151Aの発現の量が増加している。
【0179】
提供される方法のいずれかによって産生される性腺細胞集団(例えば卵巣体細胞)も提供される。
【0180】
本明細書では、FOXL2発現細胞、NR2F2発現細胞および/またはKRT-19発現細胞を含むインビトロ幹細胞由来性腺体細胞集団も提供される。いくつかの態様において、性腺体細胞集団は卵巣体細胞集団である。いくつかの態様において、集団は、FOXL2を発現する第1細胞タイプ、NR2F2を発現する第2細胞タイプ、およびKRT-19を発現する第3細胞タイプを、少なくとも含む。いくつかの態様において、細胞集団内の細胞の少なくとも20%はFOXL2陽性細胞であり、例えば集団内の細胞の少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%がFOXL2陽性細胞である。いくつかの態様において、細胞集団内の細胞の少なくとも20%はNR2F2陽性細胞であり、例えば集団内の細胞の少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%はNR2F2陽性細胞である。いくつかの態様において、性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%はKRT19陽性細胞であり、例えば集団内の細胞の少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%はKRT192陽性細胞である。いくつかの態様において、(a)細胞集団内の細胞の少なくとも20%はFOXL2陽性細胞であり、および/または(b)細胞集団内の細胞の少なくとも20%はNR2F2陽性細胞であり、および/または(c)性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%はKRT19陽性細胞である。いくつかの態様において、(a)細胞集団内の細胞の約20%~40%はFOXL2陽性細胞であり、および/または(b)細胞集団内の細胞の約20%~40%はNR2F2陽性細胞であり、および/または(c)性腺細胞集団内の細胞の約20%~40%はKRT19陽性細胞である。いくつかの態様において、性腺細胞集団の少なくとも85%は、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞である。いくつかの態様において、性腺細胞集団の少なくとも90%は、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞である。いくつかの態様において、性腺細胞集団の少なくとも95%は、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞である。いくつかの態様において、性腺体細胞集団は、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞から本質的になる。いくつかの態様において、FOXL2陽性細胞は顆粒膜細胞を含み、NR2F2陽性細胞は卵巣間質細胞および/または顆粒膜細胞を含み、KRT-19陽性細胞は卵巣上皮細胞を含む。
【0181】
提供される性腺体細胞集団のいずれかの態様の一部において、細胞集団は多能性幹細胞から分化する。いくつかの態様では、性腺体細胞集団(例えば卵巣体細胞)を、本明細書において提供される方法のいずれかによって産生することができる。任意の態様の一部において、性腺体細胞集団は、(a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに(c)性腺細胞集団を産生するために、BMPおよびFGFならびに任意でフォリスタチンを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程を含むプロセスにおいて、誘導される。
【0182】
任意の態様の一部において、性腺体細胞集団は、冷凍保存されるか、または冷凍保存されている。いくつかの態様において、性腺体細胞集団を含む組成物が提供される。いくつかの態様において、組成物は冷凍保護物質をさらに含む。提供される態様のいずれかの一部において、本方法は、性腺細胞集団、例えば提供される方法によって産生または収穫される細胞集団を、冷凍保護物質(冷凍保存剤(cryopreservative)とも呼ぶ)と共に製剤化する工程をさらに含む。いくつかの態様において、冷凍保護物質は、グリセロール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様において、冷凍保護物質はDMSOを含む。いくつかの態様において、冷凍保護物質はDMSOである。
【0183】
いくつかの態様において、製剤緩衝液は冷凍保存剤を含有する。いくつかの態様において、細胞は、1.0%~30%DMSO溶液、例えば5%~20%DMSO溶液または5%~10%DMSO溶液を含有する冷凍保存溶液と共に製剤化される。いくつかの態様において、冷凍保存溶液は、例えば20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS、または他の適切な細胞凍結培地であるか、またはそれを含有する。いくつかの態様において、冷凍保存溶液は、例えば少なくとも7.5%または約7.5%DMSOであるか、またはそれを含有する。いくつかの態様において、本方法は、細胞を冷凍保存溶液に置き換えるために分化細胞を洗浄する工程を伴いうる1つまたは複数の処理工程を含む。いくつかの態様において、細胞は、培地および/または溶液中、12.5%、12.0%、11.5%、11.0%、10.5%、10.0%、9.5%、9.0%、8.5%、8.0%、7.5%、7.0%、6.5%、6.0%、5.5%もしくは5.0%、または約12.5%、12.0%、11.5%、11.0%、10.5%、10.0%、9.5%、9.0%、8.5%、8.0%、7.5%、7.0%、6.5%、6.0%、5.5%もしくは5.0%DMSO、または1%~15%、6%~12%、5%~10%もしくは6%~8%DMSOの最終濃度で、凍結、例えば冷凍保存または冷凍保護される。特定の態様において、細胞は、培地および/または溶液中、5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.25%、1.0%、0.75%、0.5%もしくは0.25%、または約5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.25%、1.0%、0.75%、0.5%もしくは0.25%HSA、または0.1%~-5%、0.25%~4%、0.5%~2%もしくは1%~2%HSAの最終濃度で、凍結、例えば冷凍保存または冷凍保護される。いくつかの態様において、本方法によって産生される性腺細胞集団(例えば卵巣体細胞)は、約10%DMSOと共に製剤化される。いくつかの態様において、1つまたは複数の組成物は、前もって冷凍保存され貯蔵されており、それらのさらなる使用の前に、融解される。
【0184】
例示的態様
提供される態様には以下の態様が含まれる。
1. (a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、
(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、および
(c)性腺細胞集団を産生するために、BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程
を含む、性腺細胞集団を産生する方法。
2. (a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、
(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに
(c)性腺細胞集団を産生するために、フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程
を含む、性腺細胞集団を産生する方法。
3. (a)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、および
(b)性腺細胞集団を産生するために、BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、第2期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程
を含む、性腺細胞集団を産生する方法。
4. (a)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに
(b)性腺細胞集団を産生するために、フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、第2期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程
を含む、性腺細胞集団を産生する方法。
5. 性腺細胞集団を産生するために、BMPとFGFとを含む性腺誘導培地中で、ある期間にわたって、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞を培養する工程
を含む、性腺細胞集団を産生する方法。
6. 性腺細胞集団を産生するために、フォリスタチン、BMP4およびFGFを含む性腺誘導培地中で、ある期間にわたって、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞を培養する工程
を含む、性腺細胞集団を産生する方法。
7. 第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAとグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質とを含む中胚葉誘導培地中で、ある期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程
を含む、第1中間細胞集団を産生する方法。
8. レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、ある期間にわたって、中胚葉細胞または中胚葉様細胞を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程
を含む、第2中間細胞集団を産生する方法。
9. (a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAとグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質とを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、ならびに
(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)、FGFおよびグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程
を含む、第2中間細胞集団を産生する方法。
10. 第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分がブラキウリを発現する、態様1~4および9のいずれかの方法。
11. 第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも一部分がOSR1、PAX2またはLHXを発現する、態様1~4、8および9のいずれかの方法。
12. 性腺細胞集団中の細胞の少なくとも一部分がFOXL2、NR2F2またはRUNX1を発現する、態様1~6のいずれかの方法。
13. 多能性幹細胞が、1cm2あたり約10,000~約40,000細胞の密度で播種される、態様1、2、7および9~11のいずれかの方法。
14. 多能性幹細胞が、フィブロネクチンで被覆された培養プレートに播種される、態様1、2、7および9~13のいずれかの方法。
15. 多能性幹細胞が、マトリゲルで被覆された培養プレートに播種される、態様1、2、7および9~13のいずれかの方法。
16. 中胚葉誘導培地がFGFをさらに含む、態様1~15のいずれかの方法。
17. 中胚葉誘導培地がBMP4をさらに含む、態様1~16のいずれかの方法。
18. 中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質をさらに含む、態様1~17のいずれかの方法。
19. 中胚葉誘導培地がアポトーシス阻害物質をさらに含む、態様1~18のいずれかの方法。
20. 中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度が約30ng/mL~約70ng/mLである、態様1~19のいずれかの方法。
21. 中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度が約50ng/mLである、態様20の方法。
22. 中胚葉誘導培地中のFGFがFGF2である、態様16~21のいずれかの方法。
23. 中胚葉誘導培地中のFGF2の濃度が約5ng/mL~約20ng/mLであり、任意で、中胚葉誘導培地中のFGF2の濃度が約12ng/mLである、態様22の方法。
24. 中胚葉誘導培地中のBMP4の濃度が約10ng/mL~約50ng/mLであり、任意で、中胚葉誘導培地中のBMP4の濃度が約30ng/mLである、態様17~23のいずれかの方法。
25. 中胚葉誘導培地中のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質がCHIR99021である、態様18~24のいずれかの方法。
26. CHIR99021の濃度が約1μM~約5μMである、態様25の方法。
27. 中胚葉誘導培地中のCHIR99021の濃度が約3μMである、態様26の方法。
28. 中胚葉誘導培地内で、
(A)アポトーシス阻害物質がY-27632であり、任意で、Y-27632の濃度が約5μM~約20μMであるか、または
(B)アポトーシス阻害物質が、クロマン1、エムリカサンおよびトランス-ISRIBを含み、任意で、クロマン1の濃度が約30nM~約70nMであり、エムリカサンの濃度が約2μM~約10μMであり、トランス-ISRIBの濃度が約0.2μM~約2μMである、
態様19~27のいずれかの方法。
29. 中胚葉誘導培地内で、
(A)Y-27632の濃度が約10μMであるか、または
(B)クロマン1の濃度が約50nMであり、エムリカサンの濃度が約5μMであり、トランス-ISRIBの濃度が約0.7μMである、
態様28の方法。
30. 中胚葉誘導培地中で培養する期間が約24時間~約96時間である、態様1~29のいずれかの方法。
31. 中胚葉誘導培地中で培養する期間が約24時間~約72時間である、態様30の方法。
32. 中胚葉誘導培地中で培養する期間が約56時間~約72時間である、態様31の方法。
33. 第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%がブラキウリを発現する、態様1~32のいずれかの方法。
34. 第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも80%が、MIXL1、N-カドヘリン、EpCam、NCAMのうちの1つまたは複数を発現する、態様1~33のいずれかの方法。
35. 第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%が、ブラキウリ、N-カドヘリン、EpCamおよびNCAMを発現する、態様1~34のいずれかの方法。
36. 第1中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%が中胚葉細胞または中胚葉様細胞である、態様1~35のいずれかの方法。
37. 第1中間細胞集団が中胚葉細胞または中胚葉様細胞から本質的になる、態様36の方法。
38. 第1中間細胞集団が、中間中胚葉誘導培地における培養の前に、新しいフィブロネクチン被覆培養プレート上に再プレーティングされ、任意で、第1中間細胞集団が、酵素的に剥離され、遠心分離され、再懸濁されてから、再プレーティングされる、態様1~37のいずれかの方法。
39. 第1中間細胞集団が約5,000~約25,000細胞/cm2の密度でプレーティングされる、態様38の方法。
40. 中間中胚葉誘導培地がFGFをさらに含む、態様1~39のいずれかの方法。
41. 中間中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質をさらに含む、態様1~40のいずれかの方法。
42. 中間中胚葉誘導培地がアクチビンAをさらに含む、態様1~41のいずれかの方法。
43. 中間中胚葉誘導培地がアポトーシス阻害物質をさらに含む、態様1~42のいずれかの方法。
44. 第1中間細胞集団を、
(i)まず、第1濃度のアポトーシス阻害物質を含む中間中胚葉誘導培地中で、
(ii)次に、第2濃度以下のアポトーシス阻害物質を含む中間中胚葉誘導培地中で、
培養する工程を含む、態様43の方法。
45. 中間中胚葉誘導培地中のRAPMがRARアゴニストであり、任意で、RAPMがレチノイン酸(RA)および/またはTTNPBを含む、態様1~44のいずれかの方法。
46. (c)RAPMがRAであり、中間中胚葉誘導培地中のRAの濃度が約0.5μM~約2μMであり、および/または
(d)RAPMがTTNPBであり、中間中胚葉誘導培地中のTTNPBの濃度が約0.2μM~約1μMである、
態様1~45のいずれかの方法。
47. (c)中間中胚葉誘導培地中のRAの濃度が約1μMであり、および/または
(d)中間中胚葉誘導培地中のTTNPBの濃度が約0.5μMである、
態様46の方法。
48. 中間中胚葉誘導培地中のFGFがFGF2であり、FGF2の濃度が約10ng/mL~約30ng/mLである、態様40~47のいずれかの方法。
49. 中間中胚葉誘導培地中のFGF2の濃度が約20ng/mLである、態様48の方法。
50. 中間中胚葉誘導培地中のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質がCHIR99021であり、CHIR99021の濃度が約1μM~約5μMである、態様41~49のいずれかの方法。
51. 中間中胚葉誘導培地中のCHIR99021の濃度が約2μMまたは約3μMである、態様50の方法。
52. 中間中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度が約10ng/mL~約50ng/mLである、態様42~51のいずれかの方法。
53. 中間中胚葉誘導培地中のアクチビンAの濃度が約30ng/mLである、態様52の方法。
54. 中胚葉誘導培地内で、
(A)アポトーシス阻害物質がY-27632であり、Y-27632の濃度が約5μM~約20μMであるか、または
(B)アポトーシス阻害物質が、クロマン1、エムリカサンおよびトランス-ISRIBを含み、クロマン1の濃度が約30nM~約70nMであり、エムリカサンの濃度が約2μM~約10μMであり、トランス-ISRIBの濃度が約0.2μM~約2μMである、
態様43および46~53のいずれかの方法。
55. 中間中胚葉誘導培地中のアポトーシス阻害物質がY-27632であり、
前記方法が、第1中間細胞集団を、
(i)まず、約10μMのY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、そして
(ii)次に、約2μM以下のY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、
培養する工程を含む、
態様45~54のいずれかの方法。
56. 第1中間細胞集団を、
(i)まず、約10μMのY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、約24時間にわたって、
(ii)次に、約2μM以下のY-27632を含む中間中胚葉誘導培地中で、約5~6日にわたって、
培養する工程を含む、態様45~55のいずれかの方法。
57. 中間中胚葉誘導培地中で培養する期間が約4~14日である、態様1~56のいずれかの方法。
58. 中間中胚葉誘導培地中で培養する期間が約5~9日である、態様1~57のいずれかの方法。
59. 中間中胚葉誘導培地中のアポトーシス阻害物質がY-27632であり、Y-27632の濃度が、中間中胚葉誘導培地における培養時に、
(a)最初の24時間は約10μMである、
(b)24時間~72時間は約2μM以下である、
(c)72時間~120時間は約0.5μM以下である、または
(d)120時間以降は約0.1μM以下である、
態様1~58のいずれかの方法。
60. 第1中間細胞集団が、アポトーシス阻害物質を含む中間中胚葉誘導培地中で約24時間にわたって培養され、約24時間後に、該培地の一部分がまず、アポトーシス阻害物質を含まない中間中胚葉誘導培地に交換される、態様44~59のいずれかの方法。
61. 培地の前記一部分が培地の約80%である、態様60の方法。
62. 後続の培地交換をさらに含み、該培地交換が、最初の24時間の培養後、約48時間ごとに該培地の一部分を交換することを含む、態様60または61の方法。
63. 各後続の培地交換における培地の前記一部分が、培地の約80%である、態様62の方法。
64. 第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%が、OSR1、PAX2、LHX1およびRUNX1のうちの1つまたは複数を発現する、態様1~63のいずれかの方法。
65. 第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%が、OSR1、PAX2、LHX1およびRUNX1のうちの2つ以上を発現する、態様1~64のいずれかの方法。
66. 第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%が、OSR1、PAX2およびLHX1を発現する、態様1~65のいずれかの方法。
67. 第2中間細胞集団中の細胞の少なくとも90%が中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞である、態様1~66のいずれかの方法。
68. 第2中間細胞集団が、中間中胚葉細胞または中間中胚葉様細胞から本質的になる、態様67の方法。
69. 第2中間細胞集団が、性腺誘導培地における培養の前に、新しいフィブロネクチン被覆培養プレート上に再プレーティングされ、任意で、第2中間細胞集団が、酵素的に剥離され、遠心分離され、再懸濁されてから、再プレーティングされる、態様1~68のいずれかの方法。
70. 第2中間細胞集団が約5,000~約25,000細胞/cm2の密度でプレーティングされる、態様69の方法。
71. 性腺誘導培地がRAPMをさらに含む、態様1~70のいずれかの方法。
72. 性腺誘導培地がアポトーシス阻害物質をさらに含む、態様1~71のいずれかの方法。
73. 性腺誘導培地がフォリスタチンをさらに含む、態様1、3、5および10~72のいずれかの方法。
74. 性腺誘導培地中のフォリスタチンの濃度が約10ng/mL~約50ng/mLである、態様1~73のいずれかの方法。
75. 性腺誘導培地中のフォリスタチンの濃度が約25ng/mLである、態様74の方法。
76. 性腺誘導培地中のBMPが、BMP4、BMP2、BMP7、BMP15またはそれらの任意の組み合わせを含む、態様1、3、5および10~75のいずれかの方法。
77. 性腺誘導培地中のBMPの総濃度が約5ng/mL~約20ng/mLまたは約20ng/mL~約70ng/mLである、態様1、3、5および10~76のいずれかの方法。
78. 性腺誘導培地中のBMPの総濃度が約10ng/mLまたは約50ng/mLである、態様77の方法。
79. 性腺誘導培地中のBMP4の濃度が約5ng/mL~約20ng/mLまたは約20ng/mL~約70ng/mLである、態様1~78のいずれかの方法。
80. 性腺誘導培地中のBMP4の濃度が約10ng/mLまたは約50ng/mLである、態様79の方法。
81. 性腺誘導培地中のFGFが、FGF2、FGF9、FGF10、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、またはそれらの任意の組み合わせを含む、態様1~80のいずれかの方法。
82. FGFの濃度が約1ng/mL~約10ng/mLまたは約5ng/mL~約25ng/mLである、態様1~81のいずれかの方法。
83. FGFの濃度が約5ng/mLまたは約10ng/mLである、態様82の方法。
84. 性腺誘導培地中のFGFがFGF2であり、FGF2の濃度が約1ng/mL~約10ng/mLまたは約5ng/mL~約25ng/mLである、態様1~83のいずれかの方法。
85. 性腺誘導培地中のFGF2の濃度が約5ng/mLまたは約10ng/mLである、態様84の方法。
86. 性腺誘導培地中のRAPMがRARアゴニストであり、任意で、RAPMがレチノイン酸(RA)および/またはTTNPBを含む、態様71~85のいずれかの方法。
87. (c)RAPMがRAであり、性腺誘導培地中のRAの濃度が約0.5μM~約2μMであり、および/または
(d)RAPMがTTNPBであり、性腺誘導培地中のTTNPBの濃度が約0.2μM~約1μMである、
態様86の方法。
88. 性腺誘導培地内で、
(A)アポトーシス阻害物質がY-27632であり、任意で、Y-27632の濃度が約5μM~約20μMであるか、または
(B)アポトーシス阻害物質が、クロマン1、エムリカサンおよびトランス-ISRIBを含み、任意で、クロマン1の濃度が約30nM~約70nMであり、エムリカサンの濃度が約2μM~約10μMであり、トランス-ISRIBの濃度が約0.2μM~約2μMである、
態様72~87のいずれかの方法。
89. 性腺誘導培地内で、
(A)Y-27632の濃度が約10μMであるか、または
(B)クロマン1の濃度が約50nMであり、エムリカサンの濃度が約5μMであり、トランス-ISRIBの濃度が約0.7μMである、
態様88の方法。
90. 性腺誘導培地中で培養する期間が約5日~約21日である、態様1~89のいずれかの方法。
91. 性腺誘導培地中で培養する期間が約7日~約14日である、態様90の方法。
92. 性腺細胞集団が卵巣体細胞を含む、態様1~91のいずれかの方法。
93. 性腺細胞集団が卵巣体細胞からなる、態様1~92のいずれかの方法。
94. 性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%がFOXL2陽性細胞である、態様1~93のいずれかの方法。
95. 性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%がNR2F2陽性細胞である、態様1~94のいずれかの方法。
96. 性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%がKRT19陽性細胞である、態様1~95のいずれかの方法。
97. 性腺細胞集団の少なくとも90%がFOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞である、態様1~96のいずれかの方法。
98. 性腺細胞集団が、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞から本質的になる、態様97の方法。
99. FOXL2陽性細胞が顆粒膜細胞を含み、NR2F2陽性細胞が間質細胞および/または顆粒膜細胞を含み、KRT-19陽性細胞が卵巣上皮細胞を含む、態様97または98の方法。
100. 中間中胚葉誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団中のNR2F2発現細胞の量が増加している、および/または
(II)性腺細胞集団中のFOXL2発現細胞の量が増加している、および/または
(III)性腺細胞集団中のRUNX1発現細胞の量が増加している、および/または
(IV)性腺細胞集団中のWNT6発現細胞の量が増加している、および/または
(V)性腺細胞集団中のNR5A1発現細胞の量が増加している、および/または
(VI)性腺細胞集団中のOSR1発現細胞の量が増加している、および/または
(VII)性腺細胞集団中のLHX9発現細胞の量が増加している、および/または
(VIII)性腺細胞集団中のEMX2発現細胞の量が増加している、
態様1~99のいずれかの方法。
101. 中間中胚葉誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団中のNR2F2発現細胞の量が増加している、および/または
(II)性腺細胞集団中のFOXL2発現細胞の量が増加している、および/または
(III)性腺細胞集団中のRUNX1発現細胞の量が増加している、および/または
(IV)性腺細胞集団中のWNT6発現細胞の量が増加している、および/または
(V)性腺細胞集団中のNR5A1発現細胞の量が増加している、および/または
(VI)性腺細胞集団中のOSR1発現細胞の量が増加している、
態様1~99のいずれかの方法。
102. 中間中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含まない方法によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団中のNR2F2発現細胞の量が増加している、および/または
(II)性腺細胞集団中のFOXL2発現細胞の量が増加している、および/または
(III)性腺細胞集団中のRUNX1発現細胞の量が増加している、および/または
(IV)性腺細胞集団中のWNT6発現細胞の量が増加している、および/または
(V)性腺細胞集団中のNR5A1発現細胞の量が増加している、および/または
(VI)性腺細胞集団中のOSR1発現細胞の量が増加している、および/または
(VII)性腺細胞集団中のLHX9発現細胞の量が増加している、および/または
(VIII)性腺細胞集団中のEMX2発現細胞の量が増加している、
態様1~99のいずれかの方法。
103. 中間中胚葉誘導培地がより低濃度のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む方法によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団中のNR2F2発現細胞の量が増加している、および/または
(II)性腺細胞集団中のFOXL2発現細胞の量が増加している、および/または
(III)性腺細胞集団中のRUNX1発現細胞の量が増加している、および/または
(IV)性腺細胞集団中のWNT6発現細胞の量が増加している、および/または
(V)性腺細胞集団中のNR5A1発現細胞の量が増加している、および/または
(VI)性腺細胞集団中のOSR1発現細胞の量が増加している、および/または
(VII)性腺細胞集団中のLHX9発現細胞の量が増加している、および/または
(VIII)性腺細胞集団中のEMX2発現細胞の量が増加している、
態様1~99のいずれかの方法。
104. 中間中胚葉誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)第2中間細胞集団におけるLHX1発現の量が増加している、および/または
(II)第2中間細胞集団におけるPAX2発現の量が増加している、および/または
(III)第2中間集団におけるWT1発現の量が増加している、および/または
(IV)第2中間細胞集団におけるRUNX1発現の量が増加している、および/または
(V)第2中間細胞集団の生存率が増加している、および/または
(VI)第2中間細胞集団の細胞形態がより一様である、
態様1~99のいずれかの方法。
105. 中間中胚葉誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)第2中間細胞集団におけるLHX1発現の量が増加している、および/または
(II)第2中間細胞集団におけるPAX2発現の量が増加している、および/または
(III)第2中間集団におけるWT1発現の量が増加している、および/または
(IV)第2中間細胞集団におけるRUNX1発現の量が増加している、および/または
(V)第2中間細胞集団の生存率が増加している、および/または
(VI)第2中間細胞集団の細胞形態がより一様である、
態様1~99のいずれかの方法。
106. 中間中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含まない方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)第2中間細胞集団におけるLHX1発現の量が増加している、および/または
(II)第2中間細胞集団におけるPAX2発現の量が増加している、および/または
(III)第2中間集団におけるWT1発現の量が増加している、および/または
(IV)第2中間細胞集団におけるRUNX1発現の量が増加している、および/または
(V)第2中間細胞集団の生存率が増加している、および/または
(VI)第2中間細胞集団の細胞形態がより一様である、
態様1~99のいずれかの方法。
107. 中間中胚葉誘導培地がより低濃度のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)第2中間細胞集団におけるLHX1発現の量が増加している、および/または
(II)第2中間細胞集団におけるPAX2発現の量が増加している、および/または
(III)第2中間集団におけるWT1発現の量が増加している、および/または
(IV)第2中間細胞集団におけるRUNX1発現の量が増加している、および/または
(V)第2中間細胞集団の生存率が増加している、および/または
(VI)第2中間細胞集団の細胞形態がより一様である、
態様1~99のいずれかの方法。
108. 中間中胚葉誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、
態様1~99のいずれかの方法。
109. 中間中胚葉誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、
態様1~99のいずれかの方法。
110. 中間中胚葉誘導培地がグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含まない方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して、
(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、
態様1~99のいずれかの方法。
111. 中間中胚葉誘導培地がより低濃度のグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含む方法によって生成される、対応する第2中間細胞集団
と比較して
(I)NR2F2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(II)FOXL2発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(III)RUNX1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(IV)WNT6発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(V)NR5A1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、および/または
(VI)OSR1発現性腺細胞に分化する第2中間細胞集団の潜在能力が増加している、
態様1~99のいずれかの方法。
112. 性腺誘導培地がより低濃度のRAPMを含む方法によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団におけるFOXL2発現の量が減少している、ならびに/または
(II)性腺細胞集団におけるNR1H4および/もしくはKITLGの発現の量が減少している、ならびに/または
(III)性腺細胞集団におけるKRT-19発現の量が増加している、ならびに/または
(IV)性腺細胞集団における細胞質KRT-19発現の量が増加している、ならびに/または
(V)性腺細胞集団におけるMSLN、LRRN4および/もしくはTMEM151Aの発現の量が増加している、
態様1~111のいずれかの方法。
113. 性腺誘導培地がRAPMを含まない方法によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団におけるFOXL2発現の量が減少している、ならびに/または
(II)性腺細胞集団におけるNR1H4および/もしくはKITLGの発現の量が減少している、ならびに/または
(III)性腺細胞集団におけるKRT-19発現の量が増加している、ならびに/または
(IV)性腺細胞集団における細胞質KRT-19発現の量が増加している、ならびに/または
(V)性腺細胞集団におけるMSLN、LRRN4および/もしくはTMEM151Aの発現の量が増加している、
態様1~111のいずれかの方法。
114. RAPMと接触させる期間がより短い性腺誘導工程によって生成される、対応する性腺細胞集団
と比較して、
(I)性腺細胞集団におけるFOXL2発現の量が減少している、ならびに/または
(II)性腺細胞集団におけるNR1H4および/もしくはKITLGの発現の量が減少している、ならびに/または
(III)性腺細胞集団におけるKRT-19発現の量が増加している、ならびに/または
(IV)性腺細胞集団における細胞質KRT-19発現の量が増加している、ならびに/または
(V)性腺細胞集団におけるMSLN、LRRN4および/もしくはTMEM151Aの発現の量が増加している、
態様1~111のいずれかの方法。
115. 多能性幹細胞が哺乳動物幹細胞である、態様1~114のいずれかの方法。
116. 多能性幹細胞がヒト多能性幹細胞である、態様1~115のいずれかの方法。
117. 多能性幹細胞がウシ幹細胞である、態様1~115のいずれかの方法。
118. 多能性幹細胞がマウス多能性幹細胞である、態様1~115のいずれかの方法。
119. 多能性幹細胞が胚性幹細胞または誘導多能性幹細胞である、態様115~118のいずれかの方法。
120. 性腺集団が、顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および上皮細胞またはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の集団を含む、態様1~6および10~119のいずれかの方法。
121. 性腺集団が顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および上皮細胞の混合物を含む、態様1~6および10~120のいずれかの方法。
122. 態様1~6および10~121のいずれかの方法によって産生される、性腺細胞集団。
123. 顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および上皮細胞またはそれらの組み合わせから選択される1つまたは複数の集団を含む、態様122の性腺細胞集団。
124. 顆粒膜細胞、卵巣間質細胞および上皮細胞の混合物を含む、態様122または態様123の性腺細胞集団。
125. 態様7および13~119のいずれかの方法によって産生される、第1中間細胞集団。
126. 態様6~11および13~119のいずれかの方法によって産生される、第2中間細胞集団。
127. 初期中胚葉様細胞(iMeLC)を産生するために、アクチビンA、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質およびROCK阻害物質の存在下で多能性幹細胞を培養する工程、
FGF2、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質およびROCK阻害物質の存在下で、第1期間にわたって、iMeLCを培養する工程、
中間中胚葉細胞を産生するために、iMeLC培養中のROCK阻害物質の量を低減し、次に第2期間にわたって、iMeLCを培養する工程、ならびに
顆粒膜細胞を産生するために、フォリスタチン、BMP4、FGF2およびROCK阻害物質の存在下で中間中胚葉細胞を培養する工程
を含む、顆粒膜細胞を産生する方法。
128. グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質がCHIR99021である、態様127の方法。
129. ROCK阻害物質がY-27632またはCETである、態様127または128の方法。
130. 多能性幹細胞が約56~72時間にわたって培養される、態様127~129のいずれかの方法。
131. 多能性幹細胞が約65時間にわたって培養される、態様127~130のいずれかの方法。
132. 多能性幹細胞が、アクチビンA、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質およびROCK阻害物質を含む培地中で培養され、該培地が、約24時間ごとに新鮮培地と交換される、態様127~131のいずれかの方法。
133. 第1期間が約24時間である、態様127~132のいずれかの方法。
134. 第2期間が約5または6日である、態様127~133のいずれかの方法。
135. iMeLCが、FGF2、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質およびROCK阻害物質を含む培地中で、第1期間にわたって培養され、第1期間後は、該培地の一部分が、FGF2およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害物質を含むがROCK阻害物質は含まない培地と交換される、態様127~134のいずれかの方法。
136. 培地の前記一部分が培地の約80%である、態様135の方法。
137. 第2期間中は約48時間ごとに培地の第2の一部分を交換する工程をさらに含む、態様135または136の方法。
138. 培地の前記第2の一部分が培地の約80%である、態様137の方法。
139. 中間中胚葉細胞が約5~7日の期間にわたって培養される、態様127~138のいずれかの方法。
140. 中間中胚葉細胞が、フォリスタチン、BMP4、FGF2およびROCK阻害物質を含む培地中で培養され、該培地の一部分が、約24~48時間ごとに新鮮培地と交換される、態様127~139のいずれかの方法。
141. iMeLCがブラキウリを発現する、態様127~140のいずれかの方法。
142. 中間中胚葉細胞がOSR1、PAX2およびLHX1を発現する、態様127~139のいずれかの方法。
143. 顆粒膜細胞がFOXL2およびコネキシン43を発現する、態様127~142のいずれかの方法。
144. 多能性幹細胞がヒト誘導多能性幹細胞である、態様127~143のいずれかの方法。
145. 態様127~144のいずれかの方法によって産生される顆粒膜細胞を含む集団。
146. (a)培養工程のうちの1つもしくは複数が付着培養を含み、および/または
(b)培養工程のうちの1つもしくは複数が3次元オルガノイド培養を含む、
態様1~145のいずれかの方法または集団。
147. 培養工程のうちの1つまたは複数が付着培養を含む、態様1~146のいずれかの方法または集団。
148. 培養工程のうちの1つまたは複数が3次元オルガノイド培養を含む、態様1~147のいずれかの方法または集団。
149. FOXL2発現細胞、NR2F2発現細胞および/またはKRT-19発現細胞を含み、任意で卵巣体細胞集団である、インビトロ幹細胞由来性腺体細胞集団。
150. FOXL2を発現する第1細胞タイプ、NR2F2を発現する第2細胞タイプ、およびKRT-19を発現する第3細胞タイプを、少なくとも含む、態様149の性腺体細胞集団。
151. (a)細胞集団内の細胞の少なくとも20%がFOXL2陽性細胞であり、および/または
(b)細胞集団内の細胞の少なくとも20%がNR2F2陽性細胞であり、および/または
(c)性腺細胞集団内の細胞の少なくとも20%がKRT19陽性細胞である、
態様149または150の性腺体細胞集団。
152. 性腺細胞集団の少なくとも90%が、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞であり、任意で、
性腺体細胞集団が、FOXL2陽性細胞、NR2F2陽性細胞および/またはKRT-19陽性細胞から本質的になる、
態様149~151のいずれかの性腺体細胞集団。
153. FOXL2陽性細胞が顆粒膜細胞を含み、NR2F2陽性細胞が卵巣間質細胞および/または顆粒膜細胞を含み、KRT-19陽性細胞が卵巣上皮細胞を含む、態様151または152の性腺体細胞集団。
154. (a)第1中間細胞集団を産生するために、アクチビンAを含む中胚葉誘導培地中で、第1期間にわたって、多能性幹細胞を培養する工程、
(b)レチノイン酸経路調節物質(RAPM)を含む中間中胚葉誘導培地中で、第2期間にわたって、第1中間細胞集団を培養し、それによって第2中間細胞集団を産生する工程、ならびに
(c)性腺細胞集団を産生するために、BMPおよびFGFならびに任意でフォリスタチンを含む性腺誘導培地中で、第3期間にわたって、第2中間細胞集団を培養する工程
を含むプロセスにおいて誘導される、態様149~153のいずれかの性腺体細胞集団。
【実施例】
【0185】
本出願は、本出願の例示的態様として提供される以下の非限定的な実施例を参照することによって、よりよく理解されうる。諸態様をより詳しく例証するために以下の実施例を提示するが、それらが本出願の幅広い範囲を限定するとは、決して解釈してはならない。本発明の一定の態様を本出願に示して説明したが、そのような態様が例示のために提供されるに過ぎないことは、自明であるだろう。当業者は、本発明の要旨および範囲から逸脱することなく、数多くの変形、変更および置換を思いつきうる。本明細書に記載する方法の実施には、本明細書に記載する態様のさまざまな代替態様を使用しうることを、理解すべきである。
【0186】
実施例1:培地製剤
いくつかの態様において、少なくともおよそ、30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%のうちのいずれか1つ、以下に掲載する1つまたは複数の実施例において使用するために、以下の培地を調製した。
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
実施例2:iMeLC細胞の産生
幹細胞の分化は、遺伝子発現の変化によって特定することができるさまざまな段階を経て進行する。胎児卵巣の胚発生を模倣する一連の定常安定状態を経由して幹細胞を漸進的に転化することによって卵巣体細胞を生成するための方法を記載する。各工程について、純粋な均一卵巣体細胞培養を得るために、純度および効率が最大になるように、条件を最適化した。顆粒膜細胞分化における2つのキー中間工程とそれらの工程のそれぞれについてのマーカー遺伝子とを同定した。以下のプロトコールを2つの異なる幹細胞株で試験した。ロバストな分化のために、誘導物質(例えばサイトカインまたは低分子)の濃度および継続時間を変えることによって、各工程において、一定のマーカーの発現を最適化した。そのような最適化は、異なる遺伝的背景を持つ細胞株でも機能するであろうロバストな普遍的方法に組み込まれる。
【0197】
細胞を扱う前に、12ウェルプレートの各ウェルを、600μLのPBS(室温)+10μLのフィブロネクチン(1mg/ml;Millipore、FC010、氷上に保持)を使って調製した610μLのフィブロネクチン溶液で被覆し、37℃で1時間インキュベートした。その後、ヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)から培地を取り除き、細胞をPBS(室温)で穏やかに洗浄した。次にPBSを取り除き、500μLの1:1 TrypLE Select+500μLの0.5mM EDTA溶液(37℃)を、iPSCの各ウェルに加えた後、37℃で2~3分間、インキュベートした。次に、ウェルに1mLのMEF培地を噴射することによって細胞を取り出し、細胞を3~5回ピペッティングすることで単細胞懸濁液へと再懸濁した。細胞を計数してから、1200rpmで5分間遠心分離した。遠心分離した細胞をGK2培地に再懸濁することで、約10×106細胞/mLとした。細胞を再び計数し、誘導に付される、ウェルの数×70K個の細胞を、1.5mL(数多くのウェルを収集する場合は15mL)チューブに移した。これらのhiPSCを遠心分離し、iMeLC培地に再懸濁することで、約70k細胞/mLとした。
【0198】
フィブロネクチン被覆溶液を被覆ウェルから取り除き、ウェルをPBSで1回洗浄した。上記70k個のiPSCを含有するiMeLC培地1mLをウェルに加えた。プレーティングした細胞をインキュベーター中、37℃、5%CO2で、56~72時間(好ましくは65時間)培養した。iMeLC培地は24時間ごとに替えた。1枚の12ウェルプレートから、各ウェル約2~4百万個のiMeLCが産生された。
【0199】
iMeLCを、ブラキウリなどの転写因子の発現によって特徴づけた。蛍光標識抗体を使ってiMeLCにおけるタンパク質発現を検出した。
図1Aは位相差イメージングでのiMeLCの形態を示し、
図1Bは幹細胞誘導48時間後のブラキウリの高発現を表す(一番下のパネル)。CHIRおよびアクチビンで処置しなかった細胞(中央のパネル)はブラキウリの発現を示さないか、または低いブラキウリ発現を示す。
【0200】
実施例3:IM細胞の産生
iMeLCの培養を65時間まで拡張することで、均一なiMeLC集団を確保し、次にそれをIM細胞へと誘導した。IM細胞は、PAX2、OSR1およびLHX1の発現を特徴とする。IM細胞の培養を数回の継代および複数週にわたって拡張するための培養条件を特定した。これにより、IM細胞の拡大培養が可能になり、下流の系譜へと分化させることができる純粋で均一な培養も得られる。さらにまた、IM細胞のバルクを凍結して、次の工程における顆粒膜細胞の再現性ある分化のための、優れたバッチ対照を確保することもできる。
【0201】
実施例2からのウェル中のiMeLC培地を取り除き、1mLのPBSで洗浄した。500μLのTrypLEを各ウェルに加え、プレートを37℃で2分間インキュベートした。500μLのMEF培地を各ウェルに加え、上下に3回ピペッティングすることで、単細胞懸濁液を得た。その懸濁液を1.5mL(数多くのウェルを収集する場合は15mL)チューブに移し、残りの細胞は別のMEF培地500μLで収集した。
【0202】
その細胞懸濁液を1200RPMで5分間遠心分離し、上清を捨てた。遠心分離された細胞を1mlのGK2培地に再懸濁し、細胞を計数した。約720,000個の細胞(24ウェルプレートから:1ウェルあたり30,000個の細胞)を12mLのIM培地(実施例1で調製、ただしROCK阻害物質を含まないもの)に加えた。12μLのROCK阻害物質Y-27632(1000×)または36μLのCET(3:1000)(培地中のCETの最終濃度:50nMクロマン1、5uMエムリカサン、0.7uMトランス-ISRIB)を加えて、60,000細胞/mLとした。その溶液500μLをフィブロネクチン被覆24ウェルプレートの各ウェルに入れた(約30,000細胞/ウェル)。それらのプレートを24時間にわたって培養し、次に培地の80%をROCK阻害物質を含まない新鮮IM培地と交換した。細胞がコンフルエントになるまで(約5~6日)、1日おきに、培地の80%を再び交換した。細胞がコンフルエントになったら、継代後に1ウェルあたり少なくとも50,000細胞(25k/cm2)となるように、細胞を新鮮フィブロネクチン被覆24ウェルプレートに継代した。約4~500万個のIM細胞/24ウェルプレートが産生された。
【0203】
図2は、位相差イメージングでの、5日目の培養IM細胞の形態を表す。細胞をOSR1、PAX2およびLHX1について染色した。IM細胞(
図2B~Dのそれぞれの一番下のパネル)は、iPSCおよびiMeLCと比較して、試験したすべてのマーカーについて、高発現を示す。シグナルの単峰型の分布は、培養IM細胞の純度と均一性を示す。
【0204】
実施例4:顆粒膜および他の系譜への分化
IM細胞から消耗した培地(depleted media)を取り除き、細胞を室温のPBS 500uLで洗浄した。200μLのTrypLE(37℃)を加え、細胞を37℃で2分間インキュベートした。300μLのMEF培地(室温)を各ウェルに加え、上下に3回ピペッティングすることで、単細胞懸濁液を得た。その懸濁液を15mLチューブに移した。残りの細胞を別のMEF培地500μLで収集した。移した細胞を1200RPMで5分間遠心分離し、上清を捨てた。細胞を1mlのGK2培地に再懸濁し、細胞を計数した。
【0205】
ROCK阻害物質(前述のようにY-27またはCETのどちらか)を含む分化培地500μL(約30,000細胞)を、フィブロネクチン被覆24ウェルプレートの各ウェルに加えた。以下の分化培地(37℃)のそれぞれを使って別々の実験を行った:顆粒膜基本、顆粒膜二倍、顆粒膜BMP7、代替分化培地(50ng FGF9)、CHIR分化培地、およびIM(対照)。
【0206】
いずれの場合も、プレートを24時間培養し、次に分化培地の80%を新鮮培地と交換した。細胞がコンフルエントになるまで(約5~6日)、1日おきに、培地の80%を再び交換した。細胞がコンフルエントになったら、このプロセスを繰り返して、各継代後に1ウェルあたり少なくとも30,000細胞(15k細胞/cm2)となるように、IM細胞を新鮮フィブロネクチン被覆24ウェルプレートに継代した。約5~7日間の顆粒膜細胞の分化後に、24ウェルプレートあたり2~4百万個の顆粒膜細胞が産生された。
【0207】
分化7日目に、顆粒膜細胞を特徴づける転写因子をFOXL2で染色するために、細胞を収集した。
図3Aは顆粒膜細胞の形態を表す(左)。
図3Bは、さまざまな培養条件におけるFOXL2+細胞の分布を表し、FLOXL2+細胞のパーセンテージは、顆粒膜分化において最も高い。FOXL2およびコネキシン43についての免疫蛍光染色は、IMおよび腎臓細胞と比較した、顆粒膜細胞におけるFOXL2の発現を表す(
図3C)。
【0208】
実施例5:顆粒膜分化の中間段階の同定
IM細胞は、卵巣体細胞を含む複数の系譜へと分化することができる複能性前駆細胞である。卵巣体細胞には複数のタイプがあり、卵巣体細胞系譜にコミットされていて、これらの細胞タイプに分化することができる前駆細胞が、同定された。CD24は、初期分化における高発現細胞表面マーカーであると同定されたが、その発現は、細胞が卵巣体細胞運命にコミットするにつれて、減少する。これは、我々に、下流の応用のための顆粒膜細胞分化のガイド経路(guiding trajectory)を与える。
【0209】
実施例6:ヒト多能性幹細胞からの、Foxl2+顆粒膜細胞を含む、中間中胚葉および胎児卵巣体細胞の生成
培地製剤
(表10)IM誘導培地製剤
【0210】
A. 中胚葉を代表するマーカーを発現する第1中間細胞集団の生成
12ウェルプレートを、600μLのPBS(室温)+10μLのフィブロネクチン(1mg/ml;Millipore、FC010、氷上に保持)を使って調製した610μLのフィブロネクチン溶液で被覆し、37℃で1時間インキュベートした。その後、ヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)から培地を取り除き、細胞をPBS(室温)で穏やかに洗浄した。次にPBSを取り除き、500μLの1:1 TrypLE Selectを、iPSCの各ウェルに加えた後、37℃で2~3分間、インキュベートした。次に、ウェルに1mLのMEF培地を噴射することによって細胞を取り出し、細胞を3~5回ピペッティングすることで単細胞懸濁液へと再懸濁した。細胞を計数してから、1200rpmで5分間遠心分離した。遠心分離した細胞をGK2培地に再懸濁することで、約10×106細胞/mLとした。細胞を再び計数し、プレーティングされる、ウェルの数×60K個の細胞を、1.5mL(数多くのウェルを収集する場合は15mL)チューブに移した。これらのhiPSCを遠心分離し、iMeLC培地(表9参照)(中胚葉誘導培地)に再懸濁することで、約60k細胞/mLとした。
【0211】
フィブロネクチン被覆溶液を被覆ウェルから取り除き、上記60k個のiPSCを含有するiMeLC培地1mLをウェルに加えた。プレーティングした細胞をインキュベーター中、37℃、5%CO2で、56~72時間(好ましくは65時間)培養した。iMeLC培地は24時間ごとに替えた。1枚の12ウェルプレートから、各ウェル約2~4百万個のiMeLCが産生された。
【0212】
iMeLCを、ブラキウリなどの転写因子の発現によって特徴づけた。蛍光標識抗体を使ってiMeLCにおけるタンパク質発現を検出した。
図1Aは位相差イメージングでのiMeLCの形態を示し、
図1Bは幹細胞誘導48時間後のブラキウリの高発現を表す(一番下のパネル)。CHIRおよびアクチビンで処置しなかった細胞(中央のパネル)はブラキウリの発現を示さないか、または低いブラキウリ発現を示す。
【0213】
B. 中間中胚葉を代表するマーカーを発現する第2中間細胞集団の生成
第1中間細胞集団(中胚葉を代表するマーカーを発現するもの)のウェル中のiMeLC培地を取り除き、1mLのPBSで洗浄した。500μLのTrypLEを各ウェルに加え、プレートを37℃で2分間インキュベートした。500μLのMEF培地を各ウェルに加え、上下に3回ピペッティングすることで、単細胞懸濁液を得た。その懸濁液を1.5mL(数多くのウェルを収集する場合は15mL)チューブに移し、残りの細胞は別のMEF培地500μLで収集した。
【0214】
その細胞懸濁液を1200RPMで5分間遠心分離し、上清を捨てた。遠心分離された細胞を1mlのGK2培地に再懸濁し、細胞を計数した。約720,000個の細胞(24ウェルプレートから:1ウェルあたり30,000個の細胞)を12mLのIM誘導培地(表10で調製、ただしROCK阻害物質を含まないもの)に加えた。12μLのROCK阻害物質Y-27632(1000×)または36μLのCET(3:1000)(培地中のCETの最終濃度:50nMクロマン1、5uMエムリカサン、0.7uMトランス-ISRIB)を加えて、60,000細胞/mLとした。その溶液500μLをフィブロネクチン被覆24ウェルプレートの各ウェルに入れた(約30,000細胞/ウェル)。それらのプレートを24時間にわたって培養し、次に培地の80%をROCK阻害物質を含まない新鮮IM誘導培地と交換した。細胞がコンフルエントになるまで(約5~6日)、1日おきに、培地の80%を再び交換した。細胞がコンフルエントになったら、継代後に1ウェルあたり少なくとも50,000細胞(25k/cm2)となるように、細胞を新鮮フィブロネクチン被覆24ウェルプレートに継代した。各24ウェルプレートにつき、約4~500万個の第2中間細胞が産生された。
【0215】
第2中間細胞集団の誘導の有効性に対するGSK3阻害物質およびレチノイン酸経路調節物質(RAPM)の効果をさらに決定するために、上述した第1中間細胞集団の再プレーティングに続いて、細胞を、RAPMおよびGSK阻害物質のレベルを増加させたIM誘導培地と共にインキュベートした。レチノイン酸(RA)で処置したIM細胞は、生存率と性腺体細胞分化の誘導の向上を示す(データ省略)。
【0216】
図5Aは、表10に従ってGK2培地、FGF2およびCHIRと、0.5μM、1μMまたは2μMのいずれかのRAPM TTNPBとを含むIM誘導培地における第1中間細胞集団のインキュベーションの5日後、位相差イメージングでの、結果として生じた第2中間細胞集団の形態を表す。
図5Aに示すように、RA濃度の増加は、細胞の生存率の増加と一様な細胞形態をもたらした。
【0217】
図5Bは、表10記載の濃度のGK2培地およびFGF2;1μM、2μMまたは3μMいずれかのGSK3阻害物質CHIR;および50nM、100nM、500nMまたは1μMいずれかのRAを含むIM誘導培地において第1中間細胞集団をインキュベートした後の、結果として生じた第2中間細胞集団における中間中胚葉マーカーLHX1およびPAX2の発現を表す。
図5Bに示すように、RAおよび/またはCHIRの濃度の増加は、LHX1(上側のパネル)およびPAX2(下側のパネル)の発現の増加をもたらした。
【0218】
図5Cは、表10記載の濃度のGK2培地およびFGF2;0.5μM、1μMまたは2μMいずれかのGSK3阻害物質CHIR;および0μM、0.1μM、0.5μMまたは1μMいずれかのRAまたはTTNPBを含むIM誘導培地において第1中間細胞集団をインキュベートした後の、結果として生じた第2中間細胞集団における中間中胚葉マーカーWT1およびRUNX1の発現を表す。
図5Cに示すように、RAおよび/またはCHIRの濃度の増加は、WT1(左側のパネル)およびRUNX1(右側のパネル)の発現の増加をもたらした。
【0219】
C. 性腺体細胞の生成
表10記載の濃度のGK2培地およびFGF2;0.5μM、1μMまたは2μMいずれかのGSK3阻害物質CHIR;および0μM、0.1μM、0.5μMまたは1μMいずれかのRAまたはTTNPBを含むIM誘導培地中で第1中間細胞集団をインキュベートする上記のプロトコールに従って、中間中胚葉を代表するマーカーを発現する第2中間細胞集団を生成させた。
【0220】
中間中胚葉を代表するマーカーを発現する第2中間細胞集団から消耗した培地を取り除き、細胞を室温のPBS 500uLで洗浄した。200μLのTrypLEを加え、細胞を37℃で2分間インキュベートした。300μLのMEF培地(室温)を各ウェルに加え、上下に3回ピペッティングすることで、単細胞懸濁液を得た。その懸濁液を15mLチューブに移した。残りの細胞を別のMEF培地500μLで収集した。移した細胞を1200RPMで5分間遠心分離し、上清を捨てた。細胞を1mlのGK2培地に再懸濁し、細胞を計数した。
【0221】
上述した条件のそれぞれにおいて生成された約60,000個の第2中間集団細胞を、ROCK阻害物質(前述のようにY-27632またはCETのいずれか)を含む500μLの分化培地に再構成し、フィブロネクチン被覆24ウェルプレートの各ウェルに再プレーティングした。第2中間集団(さまざまな濃度のCHIRおよびRAPM下で生成させたもの)からそれぞれに再プレーティングした細胞を、表3の顆粒膜基本培地中で、500nMのRAをさらに補足してまたは補足せずに、インキュベートした。
【0222】
RNA-seq解析、免疫蛍光染色およびフローサイトメトリーのために、細胞を縦断的に収集した。バルクRNAseq実験でアッセイした場合、
図6Aは、どの段階でもRA処置がなかった場合に、結果として生じた性腺細胞は、性腺体細胞マーカーFOXL2、RUNX1、NR2F2、WNT6およびKRT19の発現の増加を示したことを示しており、FOXL2は顆粒膜細胞を特徴づける転写因子である。
図6Bは、長期培養では、RAを含む分化培地におけるインキュベーションが、生存率の増加(RA処置なしの細胞は分化D21まで生き延びなかった)および顆粒膜細胞マーカーFOXL2およびRUNX1発現の増加につながったことを示している。
【0223】
図6Cにおける免疫蛍光染色によって示されるとおり、第2中間細胞集団生成時のIM誘導培地における高濃度のRAは、性腺細胞集団における高レベルのFOXL2陽性およびNR2F2陽性細胞をもたらした。本発明者らは、
図6Dに示すように、RA処置によるKRT19の発現の増加を、同時に観察した。これは、28日間の継続的RA処置細胞においてKRT19について免疫染色することによっても確認された。本発明者らは、第2中間細胞集団および性腺体細胞の生成時のRA処置の長さと濃度の間の微妙なバランスがFOXL2およびKRT19陽性細胞の変動する%につながることを観察した(データ省略)。これを活用すれば、下流の応用のために望ましい不均一性を獲得することができるだろう。
【0224】
実施例7:マウス多能性幹細胞からのFoxl2+顆粒膜細胞を含む中間中胚葉および胎児卵巣体細胞の生成
ヒト多能性幹細胞を使って設計された顆粒膜分化プロトコールをマウスモデル系に適合させたところ、マウス多能性幹細胞からのFoxl2+顆粒膜様細胞の誘導がもたらされた。初期卵巣発生を再現するために2次元組織培養環境でマウス多能性幹細胞を増殖因子で処置した。まず、細胞を第1中間細胞集団に方向づけ、次に第2中間細胞集団、そして次に胎児卵巣体細胞運命に方向づけた。各段階において、qRT-PCRおよびタンパク質染色によって細胞を解析することで、段階特異的マーカーの遺伝子およびタンパク質発現を評価した。
【0225】
A. インビトロでの第1マウス中間細胞集団の生成
マウス多能性幹細胞は、以前に公表された技法を使って培養し、維持し、解離させた(Chow et al.npg Regenerative Medicine 2020,PMID:32351711)。第1中間細胞集団誘導に向けた誘導を始める前に、24ウェルプレートを、DMEM-F12に希釈した100μg/mLのマトリゲル0.5mLを使って、室温で1時間または4℃で一晩、被覆した。次に、50,000個のマウス多能性幹細胞を、24ウェルプレートの各ウェルのプライミング培地(priming medium)に播種した。細胞を5%CO2のインキュベーター中、37℃で48時間成長させた。次に細胞をマウス中胚葉誘導培地(表14)で48時間処置した。その結果生じた細胞は、qRT-PCRおよび免疫染色では、高レベルの中胚葉マーカー、ブラキウリを発現した(データ省略)。
【0226】
B. インビトロでの第2マウス中間細胞集団の生成
第1中間細胞集団を室温の無菌PBSで1回洗浄し、次にマウス中間中胚葉誘導培地(表15)で48~72時間処置した。結果として生じた細胞は、qRT-PCRでは、中間中胚葉マーカーPax2およびLhx1を発現した(データ省略)。
【0227】
C. インビトロでのマウス胎児卵巣体細胞の生成
第2マウス中間細胞集団を室温の無菌PBSで1回洗浄し、次にマウス性腺誘導培地(基礎培地または1μM RAを補足した基礎培地;表16)で7日間処置した。結果として生じた細胞をRT-PCR解析および免疫蛍光染色用に収穫した。RAありまたはRAなしで処置した細胞上のFoxl2についての免疫蛍光染色により、1μMのレチノイン酸の添加はFoxl2タンパク質を発現する細胞の総数の増加につながることが明らかになった(
図8、左端のパネル)。qRT-PCRでアッセイした場合、
図7は、結果として生じた誘導性腺細胞が、顆粒膜細胞(Foxl2)、間質細胞(Nr2f2)および卵巣上皮細胞(KRT19)のマーカーを、胎児卵巣細胞と比較して同等か、それより高いレベルに発現したことを示している。
図8における免疫染色によって示されるとおり、結果として生じた誘導性腺細胞は、顆粒膜細胞(Foxl2)、間質細胞(Nr2f2)および卵巣上皮細胞(Krt19)のタンパク質マーカーを発現した。
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
実施例8:さまざまなBMPアイソフォームによるOSCの誘導
この実施例では、第2中間集団から性腺体細胞(例えば卵巣体細胞--OSC)を誘導する能力における、さまざまなBMPアイソフォームの効果を例証する。異なるBMPアイソフォームを含む顆粒膜二倍培地において性腺体細胞を誘導し、結果として生じた細胞における二分化能性腺マーカーの発現および顆粒膜マーカーの発現を測定した。
【0235】
実施例6記載のプロトコールに従って、中胚葉を代表するマーカーを発現する第1中間細胞集団および中間中胚葉を代表するマーカーを発現する第2中間細胞集団を生成させた。
【0236】
第2中間集団から再プレーティングした細胞を、表17の顆粒膜二倍培地(性腺誘導培地またはOSC誘導培地ともいう)中で、20ng/mLのBMP4、BMP2、BMP7またはBMP15のいずれかと共にインキュベートした。結果として生じた細胞において、二分化能性腺マーカー(WT1、LHX9、GADD45GおよびGATA4)ならびに顆粒膜マーカー(FOXL2、NR1H4およびKITLG)の発現を、qPCRによって測定した。
【0237】
図9Aに示すように、BMP2、BMP7またはBMP15を含む培地によるOSC誘導では、二分化能性腺マーカーの発現が、BMP4を含む培地によるOSC誘導と比較して同等であるか、またはそれより高かった。
【0238】
図9Bに示すように、BMP2、BMP7またはBMP15を含む培地によるOSC誘導では、顆粒膜マーカーの発現が、BMP4を含む対応する培地によるOSC誘導と比較して同等であるか、またはそれより高かった。
【0239】
これらの結果は、BMP4、BMP2、BMP7、BMP15またはそれらの組み合わせを含む顆粒膜二倍培地を使って、OSCを誘導できることを示している。
【0240】
(表17)BMPアイソフォームが異なる顆粒膜二倍培地
【0241】
実施例9:さまざまな線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーメンバーによるOSCの誘導
線維芽細胞増殖因子(FGF)は、多種多様なプロセスにおけるシグナル伝達事象にとって重要な、大きなタンパク質ファミリーである。この実施例では、第2中間集団から性腺体細胞(例えば卵巣体細胞--OSC)を誘導する能力における、さまざまなFGFファミリーメンバーの効果を例証する。簡単に述べると、異なるFGFを含む顆粒膜二倍培地において性腺細胞を誘導し、結果として生じた細胞における二分化能性腺マーカーの発現および顆粒膜マーカーの発現を測定した。
【0242】
実施例6記載のプロトコールに従って、中胚葉を代表するマーカーを発現する第1中間細胞集団および中間中胚葉を代表するマーカーを発現する第2中間細胞集団を生成させた。
【0243】
第2中間集団から再プレーティングした細胞を、表18の顆粒膜二倍培地(性腺誘導培地またはOSC誘導培地ともいう)中で、同じ濃度のFGF2、9、10、16、17、18または19のいずれかと共にインキュベートした。結果として生じた細胞において、二分化能性腺マーカー(WT1、LHX9、GADD45GおよびGATA4)ならびに顆粒膜マーカー(FOXL2、NR1H4およびKITLG)の発現を、測定した。
【0244】
図10Aに示すように、FGF9、10、16、17、18および19を含む培地によるOSC誘導では、二分化能性腺マーカーの発現が、FGF2を含む対応する培地によるOSC誘導と比較して同等であるか、またはそれより高かった。
【0245】
図9Bに示すように、FGF9、10、16、17、18および19を含む培地によるOSC誘導では、顆粒膜マーカーの発現が、BMP4を含む対応する培地によるOSC誘導と比較して同等だった。
【0246】
これらの結果は、FGF2、9、10、16、17、18もしくは19、またはそれらの組み合わせを含む顆粒膜二倍培地を使って、OSCを誘導できることを示している。
【0247】
(表18)BMPアイソフォームが異なる顆粒膜二倍培地
【0248】
実施例10:多能性幹細胞から誘導されたOSCは機能的である
顆粒膜細胞は成熟するとステロイド産生細胞になり、これらの細胞は、テストステロンなどのアンドロゲンをエストラジオールなどのエストロゲンに転化することができる。ステロイド産生を担うキー酵素の一つはアロマターゼ-CYP19A1である。
【0249】
多能性幹細胞から生成させた性腺体細胞(例えば卵巣体細胞--OSC)が機能的であるかどうかをアッセイするために、CYP19A1の発現をqPCRによってアッセイし、ステロイド産生をエストラジオール用のELISAによって測定した。
【0250】
実施例6記載のプロトコールに従って、中胚葉を代表するマーカーを発現する第1中間細胞集団、および中間中胚葉を代表するマーカーを発現する第2中間細胞集団、およびOSCを生成させた。
【0251】
7日間の誘導後にCYP19A1の発現をqPCRによってOSCにおいて測定した。
図11Aに示すように、CYP19A1の発現は、基本誘導培地(基本)によって生成させたOSCでは増加し、基本誘導培地の2倍の増殖因子を含有する誘導(二倍)によって生成させたOSCではさらに増加した。
【0252】
顆粒膜細胞のこの機能性をさらに実証するために、ジヒドロキシ-テストステロン(dhT)によるOSCの処置後に培地に分泌されるエストラジオールをELISAによって測定した。
図11Bに示すように、24時間のインキュベーション後に、培地中に観察されるエストラジオールレベルは、dHT処置の濃度が高くなるほど増加した。加えて、OSCを50ng/mlのdHTで処置した場合、インキュベーション時間を長くすると(48時間)、24時間のインキュベーションと比較して、エストラジオールレベルのさらなる増加が観察された。
【0253】
これらの結果は、上述の実施例におけるOSC誘導プロトコールの方法を使って、成熟顆粒膜細胞を生成させうることを示している。
【0254】
実施例11:OSC誘導のためのBMP4、フォリスタチンおよびFGFの濃度タイトレーション
一定の初期実験では、性腺体細胞(例えば卵巣体細胞--OSC)の誘導に、10ng/mlのBMP4、25ng/mlのフォリスタチンおよび5ng/mlのFGF2を含む培地を使用することで、第2中間集団の分化能を調べた。OSC誘導において、BMP4、フォリスタチンおよびFGFのさまざまな濃度タイトレーションを調べ、結果として生じた細胞を二分化能性腺マーカーの発現および顆粒膜マーカーの発現について検討した。
【0255】
実施例6記載のプロトコールによる、中胚葉を代表するマーカーを発現する第1中間細胞集団、および中間中胚葉を代表するマーカーを発現する第2中間細胞集団。実施例6記載のプロトコールに基づいてOSCを誘導した。ただし、さまざまな濃度のBMP4、フォリスタチンおよびFGFを試験した。
【0256】
BMP4
まず、BMP4濃度を変えて、OSC誘導条件を調べた。BMP4が全く存在しない誘導は低い生存率につながったが、試験した他のすべてのBMP4濃度は、類似する同等の形態につながった。結果として生じた細胞の遺伝子発現を、二分化能性腺細胞マーカー(GATA4)および顆粒膜細胞マーカー(FOXL2)について、qPCRによって試験した(それぞれ
図12Aおよび
図12B)。BMP4濃度が高くなるとGATA4の発現は増加し、FOXL2発現は試験した条件では10ng/mlのBMP4でピークに達するようだった。
【0257】
以降の実験では、前駆体および成熟OSC集団についての発現結果に基づいて、20ng/mlのBMP4をOSC誘導試験に使用した。
【0258】
フォリスタチン
次に、前述のようにBMP4の濃度を20ng/mlに一定に保って、4つの異なる濃度のフォリスタチンをOSC誘導において試験した。結果として生じた細胞の遺伝子発現を、二分化能性腺細胞マーカー(GATA4)および顆粒膜細胞マーカー(FOXL2)について、qPCRによって試験した(それぞれ
図12Cおよび
図12D)。
図12CのGATA4発現は、フォリスタチンの非存在下で前駆体からOSCを生成することが可能であることを示した。FOXL2発現によって成熟OSCの生成も検討した。
図12Dに示すように、フォリスタチンの濃度を上げると、FOXL2発現のわずかな増加が観察された。後続の実験では、フォリスタチンの非存在下または低濃度のフォリスタチンでのOSC誘導を、さらに探究した。
【0259】
FGF2
次に、BMP4の濃度を20ng/mLの一定に保ち、フォリスタチンを取り除いて(0ng/mL)、5つの異なる濃度のFGF2を、OSC誘導において試験した。結果として生じた細胞の遺伝子発現を、二分化能性腺細胞(GATA4)および顆粒膜細胞(FOXL2)について、qPCRによって試験した(それぞれ
図12Eおよび
図12F)。
図12Eおよび
図12Fによって示されるとおり、GATA4発現とFOXL2発現はどちらも、20ng/mLのFGF2で飽和に達した。
【0260】
結果
上記BMP4、フォリスタチンおよびFGF2の包括的な濃度タイトレーションによって示されるとおり、BMP4は前駆体集団(二分化能性腺細胞)を促進するが、試験した条件下で、OSCについては、その効果は20ng/mlで飽和するようであることを、これらの結果は示した。同様に、前駆体集団および成熟集団の生成に対するFGF2の効果も、試験した条件下では20ng/mlで飽和することを、本発明者らは見出した。一方、フォリスタチンを完全に取り除くとGATA4発現は増加するようであったものの、GATA4を発現する前駆体は、OSCに加えて他の系譜も潜在的に生じうる。したがって、フォリスタチン濃度の影響は、FOXL2発現の結果にも基づいて検討した。25ng/mlのフォリスタチンでは、FOXL2発現のわずかな増加が観察されたが、それ以上のフォリスタチン濃度ではFOXL2発現は増加しなかった。これらの結果は、フォリスタチンなしでも、試験したさまざまな濃度のフォリスタチンを使っても、OSC誘導は実行できることを示した。OSC誘導におけるフォリスタチンの関連性を理解するには、さらなる実験が必要だろう。
【0261】
実施例12:前顆粒膜対上皮細胞への細胞運命に対するRAの時間勾配および濃度勾配の効果
本発明者らの先の実験から、性腺体細胞(例えば卵巣体細胞--OSC)の誘導中に2日超にわたってRAが存在すれば、さらに多くの細胞が、より高レベルのKRT19および細胞質KRT19を発現することは示されていた。これらはいずれも、上皮/中皮細胞の比率が高くなっていることを示す。他方、OSC誘導中にRAが存在しない場合は、FOXL2を発現する細胞の比率が高くなるだろう。これは、顆粒膜細胞の比率が高くなっていることを示す。
【0262】
上皮/中皮細胞と顆粒膜細胞との間の微妙なバランスに対するOSC誘導中のRAの効果をさらに理解するために、本発明者らは0μmから10μMまでのRAの10段階濃度勾配を作成した。RA濃度の増加に伴って、FOXL2染色についての核陽性率の減少と500nM前後のRA濃度でピークに達するKRT19染色の対応する増加とを、本発明者らは観察した(
図13A、13B、13C、13D)。次に、本発明者らは、RAへの曝露の長さが、FOXL2発現細胞とKRT19発現細胞の間のこのバランスに影響を及ぼすかどうかを調べた。この試験は、3つの異なるRA濃度、すなわち100nM、500nMおよび1μMで行った。4分の1のウェルにはRAを一切加えず、次の4分の1のウェルには最初の20時間にわたってRAを加え、別の4分の1のウェルには48時間にわたってRAを加え、残り4分の1のウェルには実験全体(7日)にわたってRA曝露を続けた。D7にすべての細胞を固定し、FOXL2およびKRT19について染色した。FOXL2発現はFOXL2陽性核のパーセントによって定量し、一方、KRT-19発現はDAPI染色に基づく核の数に規格化したKRT-19染色の平均強度によって測定した。
【0263】
以前に観察された傾向と同様に、RAへの短い曝露でも、KRT19陽性細胞の増加とFOXL2陽性細胞の減少につながった(
図13E、13F)。これらの結果により、RAの短いパルスまたは低濃度のRAであっても、OSC誘導中に上皮/中皮細胞を誘導し増加させるには十分であることが確認された。
【0264】
実施例13 マーカー遺伝子に関するqPCR、単一細胞RNAseq、およびバルクRNAseqからの、遺伝子発現プロファイルに基づくOSCの特徴づけ
遺伝子発現レベルでOSCを特徴づけるために、本発明者らはバルクRNAseq実験用に縦断的試料を収集した。細胞を、iPSCとして、第1および第2中間段階(すなわち第1および第2中間細胞集団)において、ならびにOSCとして(レチノイン酸処置ありまたはなしで、OSC誘導のD7およびD14)、瞬間凍結した。上位200の高変動遺伝子のヒートマップ、および規格化され処理されたデータの主成分分析は、第1中間段階から第2中間段階への移行中、および第2中間段階からOSCへの移行中の、遺伝子発現プロファイルの激しい変化を示した(
図14Aおよび14B)。本発明者らは、レチノイン酸で処置したOSCが、ホルモンレベルおよび細胞増殖の調節に関して濃縮された遺伝子のクラスターにおける発現の増加を呈することを観察した(
図14A)。分化するOSCの不均一性をさらに特徴づけるために、本発明者らは、レチノイン酸処置ありまたはなしで2日目および7日目のOSCを収集し、それらを、10Xゲノミクスプラットフォームを製造者のプロトコールに従って使用することによる単一細胞解析に付した。発現が増加している遺伝子の5つの明確に異なるクラスターが、この実験において解析した10,000超の細胞の間に観察された。本発明者らは、これらのクラスターが、マーカー遺伝子発現によって特徴づけられるとおり、前顆粒膜、間質細胞、増殖性前駆体および上皮細胞に対応することを観察した(
図14C)。さらにまた、これらのシーケンシングに基づく遺伝子発現リードアウトを検証するために、本発明者らは、二分化能(biopotential)性腺マーカー-GATA4、WT1、LHX9およびZFPM2;間質細胞マーカー-NR2F2;顆粒膜細胞マーカー-FOXL2、KITLGおよびNR1H4;ならびに上皮細胞マーカー-KRT19、TMEM151AおよびLRRN4について、qPCRアッセイを行った(それぞれ
図14D、14E、14F、14G)。これらの遺伝子の大部分について、本発明者らは、レチノイン酸処置ありまたはなしの基本条件または二倍条件下でのOSC誘導後、7日目および14日目に、発現の増加を観察した。
【0265】
実施例14 誘導卵巣体細胞でのqPCRおよび免疫蛍光アッセイ
実施例6記載のプロトコールによる、中胚葉を代表するマーカーを発現する第1中間細胞集団、および中間中胚葉を代表するマーカーを発現する第2中間細胞集団。性腺体細胞(例えば卵巣体細胞--OSC)を実施例6記載のプロトコールに基づいて誘導した。
【0266】
OSCの同定をさらに立証するために、顆粒膜マーカー遺伝子-FOXL2ならびに二分化能性腺遺伝子-LHX9およびWT1について、遺伝子発現を解析した。これら3つすべての遺伝子の発現が、培養継続時間が長くなるにつれて、アップレギュレートされた。本発明者らは、培養継続時間が長くなるにつれて、成熟顆粒膜細胞のマーカー-KITLGおよびNR1H4の発現の増加も認めた(データ省略)。
【0267】
qPCRアッセイはバルクでの遺伝子発現を評価するのには有効だが、培養中に存在する細胞タイプの不均一性を適切に実証することはできない。OSC分化における不均一性と異なる細胞タイプの局在とを評価するために、細胞凝集物を薄切し、免疫蛍光イメージングのために染色した。
図15に示すように、卵巣体細胞が誘導されると共に(GATA4およびNR5A1発現細胞によって示される)、卵巣上皮/中皮細胞(KRT-19発現細胞によって示される)も誘導された。
【0268】
これらの結果は、多能性幹細胞から記載の体細胞タイプを誘導するために、この分化プロトコールを使用できることを示した。
【0269】
開示した特定態様は、例えば本発明のさまざまな局面を例示するなどの目的で提供されているのであって、本発明の範囲は、それらの特定態様に限定されるものではない。記載の組成物および方法のさまざまな変更態様は、本明細書における記載および教示から、明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および要旨から逸脱することなく実施することができ、本発明の範囲に包含されるものとする。
【国際調査報告】