(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】静電性能が改善された基板
(51)【国際特許分類】
C03C 17/23 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
C03C17/23
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527396
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 US2021057661
(87)【国際公開番号】W WO2022098618
(87)【国際公開日】2022-05-12
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 康之
(72)【発明者】
【氏名】中西 久典
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA08
4G059AB17
4G059AC30
4G059EA05
4G059EA07
4G059EB05
4G059EB06
(57)【要約】
基板は、ガラスシートと、該ガラスシートの主面に堆積された堆積層とを含む。堆積層は、無機粒子を含み、約0.4ナノメートルから約50ナノメートルの範囲の主面の表面粗さを与える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板であって、
第1の主面、及び前記第1の主面に対してほぼ平行な方向に延在する反対側の第2の主面、並びに
ガラスシート、及び前記ガラスシートと前記第2の主面との間に延在する堆積層
を含み、前記堆積層が無機粒子を含み、かつ約0.4ナノメートルから約50ナノメートルの範囲の前記基板の前記第2の主面の表面粗さを与える、
基板。
【請求項2】
前記第1の主面が約0.5ナノメートル未満の表面粗さを有する、請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記無機粒子が、1gあたり少なくとも約100平方メートルのブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項4】
約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲における前記第1の主面と前記第2の主面との間の厚さ0.5ミリメートルあたりの全光線透過率が、少なくとも約90%である、請求項1に記載の基板。
【請求項5】
前記第2の主面の静電電荷(ESC)の絶対値が約200ボルト(V)未満である、請求項1に記載の基板。
【請求項6】
前記第1の主面と前記第2の主面との間の基板厚さが、約0.1ミリメートルから約1ミリメートルの間である、請求項1に記載の基板。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の基板を含む、電子デバイス。
【請求項8】
基板を製造する方法であって、
ガラスシート上に堆積層を堆積する工程を含み、前記堆積層が前記ガラスシートと前記基板の第2の主面との間に延在し、前記ガラスシートが前記堆積層と前記基板の第1の主面との間に延在し、かつ前記第1の主面に対してほぼ平行な方向に延在し、前記堆積層が無機粒子を含み、かつ約0.4ナノメートルから約50ナノメートルの範囲の前記基板の前記第2の主面の表面粗さを与える、
方法。
【請求項9】
前記方法が、溶融ガラスから前記ガラスシートを形成する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記堆積層が、分散液中で前記ガラスシート上に堆積される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記分散液が、前記ガラスシート上に堆積された後に乾燥工程に供される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基板が、前記乾燥工程の後に洗浄工程に供される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記無機粒子が、1gあたり少なくとも約100平方メートルのブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積を含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その全体がここに参照することにより本願に援用される、2020年11月6日出願の米国仮特許出願第63/110,548号の米国法典第35編特許法119条(e)に基づく優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して基板に関し、より詳細には、静電性能が改善された基板に関する。
【背景技術】
【0003】
薄いガラス基板は、一般に、液晶ディスプレイ(LCD)及び有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)デバイスで利用されている。FPDデバイスに用いられる基板は、概して、薄膜トランジスタが製造される機能的なA側表面と、A側表面の反対側の非機能的な裏面又はB側表面とを有する。FPDデバイスの製造中、ガラス基板のB側表面は、金属、セラミック、ポリマー材料などのさまざまな材料の搬送及び取り扱い装置と接触する可能性がある。基板とこれらの材料との間の相互作用により、多くの場合、摩擦電気効果又は接触帯電による帯電が発生する。その結果、電荷がガラス表面に移動し、基板上に蓄積する可能性がある。ガラス基板の表面に電荷が蓄積すると、ガラス基板の表面電位も変化する。
【0004】
FPDデバイスに用いられるガラス基板のB側表面の静電気帯電(ESC)は、ガラス基板の性能を低下させる、及び/又はガラス基板を損傷する可能性がある。例えば、B側表面の静電気帯電は、絶縁破壊や電界誘起帯電により、ガラス基板のA側表面に堆積された薄膜トランジスタ(TFT)デバイスにゲート損傷を生じさせる可能性がある。さらには、ガラス基板のB側表面の帯電により、塵又は他の粒子状の破片などの粒子が引き寄せられる可能性があり、これがガラス基板に損傷を与える、又はガラス基板の表面品質を劣化させる可能性がある。いずれの状況でも、ガラス基板の静電気帯電は、FPDデバイスの製造歩留まりを低下させ、それによって製造プロセスの全体的なコストを増加させる可能性がある。
【0005】
さらには、ガラス基板と取り扱い及び/又は搬送装置との間の摩擦接触は、このような装置を摩耗させ、それによって装置の耐用年数を短縮させる可能性がある。摩耗した機器を修理又は交換すると、プロセスのダウンタイムが発生し、製造歩留まりが低下し、FPDデバイス製造プロセス全体のコストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、電荷の発生を軽減し、ガラス基板とFPDデバイスの製造に利用される装置との間の摩擦を低減する、ガラス基板処理方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される実施形態は基板を含む。基板は、第1の主面と、該第1の主面に対してほぼ平行な方向に延在する反対側の第2の主面とを含む。基板はまた、ガラスシート、及び該ガラスシートと第2の主面との間に延在する堆積層も含む。堆積層は無機粒子を含み、約0.4ナノメートルから約50ナノメートルの範囲の基板の第2の主面上の表面粗さを与える。
【0008】
本明細書に開示される実施形態はまた、基板を製造する方法も含む。該方法は、ガラスシート上に堆積層を堆積する工程を含む。堆積層はガラスシートと基板の第2の主面との間に延在し、ガラスシートは堆積層と基板の第1の主面との間に延在する。第1の主面は第2の主面に対してほぼ平行な方向に延在する。堆積層は無機粒子を含み、約0.4ナノメートルから約50ナノメートルの範囲の基板の第2の主面上の表面粗さを与える。
【0009】
本明細書に開示される実施形態のさらなる特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載されており、一部にはその説明から当業者には容易に明らかになり、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む、本明細書に記載されるように開示される実施形態を実施することによって認識される。
【0010】
前述の概要及び後述する詳細な説明はいずれも、特許請求の範囲に記載される実施形態の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することが意図されていることが理解されるべきである。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図面は本開示のさまざまな実施形態を例証しており、その説明とともに、それらの原理及び動作を説明する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】例となるフュージョンダウンドローガラス製造装置及びプロセスの概略図
【
図3】液体分散堆積層が堆積されたガラスシートの側面断面図
【
図4】堆積層が堆積されたガラスシートの側面断面図
【
図5】動作の第1段階のリフト試験装置の側面断面図
【
図6】動作の第2段階のリフト試験装置の側面断面図
【
図7】動作の第3段階のリフト試験装置の側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
これより、その例が添付の図面に示されている本開示の好ましい実施形態について、詳細に説明する。可能な場合はいつでも、同一又は類似した部分についての言及には、図面全体を通して同じ参照番号が用いられる。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0013】
本明細書では、範囲は、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表現することができる。このような範囲が表現される場合、別の実施形態は、その1つの特定の値から及び/又は他方の特定の値までを含む。同様に、例えば先行詞「約」の使用によって、値が近似値として表される場合、その特定の値は別の実施形態を形成することが理解されよう。さらには、範囲の各々の端点は、他の端点に関連して、及び他の端点とは独立してのいずれにおいても重要であることが理解されよう。
【0014】
本明細書で用いられる方向の用語(例えば、上、下、右、左、前、後、上部、底部)は、描かれた図を参照してのみ作られており、絶対的な方向を意味することは意図していない。
【0015】
特に明記しない限り、本明細書に記載されるいずれの方法も、その工程が特定の順序で実行されることを必要とすること、若しくは、装置には特定の向きが必要であると解釈されることは、決して意図していない。したがって、方法クレームが、そのステップが従うべき順序を実際に記載していない場合、若しくは装置クレームが個々の構成要素に対する順序又は向きを実際に記載していない場合、あるいは、ステップが特定の順序に限定されるべきであることが特許請求の範囲又は明細書に別段に明確に述べられていない場合、若しくは装置の構成要素に対する特定の順序又は向きが記載されていない場合には、いかなる意味においても、順序又は方向が推測されることは決して意図していない。これには、次のような解釈のためのあらゆる非明示的根拠が当てはまる:ステップの配置、動作フロー、構成要素の順序、又は構成要素の方向に関する論理的事項;文法上の編成又は句読点から派生した平明な意味;及び、明細書に記載される実施形態の数又はタイプ。
【0016】
本明細書で用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「ある1つの(a)」構成要素への言及は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、そのような構成要素を2つ以上有する態様を含む。
【0017】
本明細書で用いられる場合、「表面粗さ」という用語は、本明細書に記載される表面粗さ測定技法によって決定される、基板の主面上の測定された粗さを指す。
【0018】
本明細書で用いられる場合、「静電電荷」という用語は、本明細書に記載される表面電位測定技法によって決定される基板の主面上の測定された電荷を指す。
【0019】
図1に例示的なガラス製造装置10が示されている。幾つかの例では、ガラス製造装置10は、溶融容器14を含むことができるガラス溶融炉12を備えることができる。溶融容器14に加えて、ガラス溶融炉12は、任意選択的に、原料を加熱して該原料を溶融ガラスへと変換する加熱要素(例えば、燃焼バーナ又は電極)などの1つ以上の追加の構成要素を含むことができる。さらなる例では、ガラス溶融炉12は、溶融容器の近傍からの熱損失を低減する熱管理装置(例えば断熱構成要素)を含んでいてもよい。さらに別の例では、ガラス溶融炉12は、原材料のガラス溶融物への溶融を促進する電子デバイス及び/又は電気機械デバイスを含むことができる。さらにまた、ガラス溶融炉12は、支持構造(例えば、支持シャーシ、支持部材等)又は他の構成要素を含んでいてもよい。
【0020】
ガラス溶融容器14は、典型的には耐火セラミック材料、例えばアルミナ又はジルコニアを含む耐火セラミック材料などの耐火材料で構成される。幾つかの例では、ガラス溶融容器14は、耐火セラミックブリックで構成されていてもよい。ガラス溶融容器14の特定の実施形態は、以下により詳細に説明される。
【0021】
幾つかの例では、ガラス溶融炉をガラス製造装置の構成要素として組み込んで、ガラスシート、例えば連続長のガラスリボンを製造することができる。幾つかの例では、本開示のガラス溶融炉は、スロットドロー装置、フロートバス装置、フュージョンプロセスなどのダウンドロー装置、アップドロー装置、プレス圧延装置、管延伸装置、又は本明細書に開示される態様からの利益を享受するであろう他の任意のガラス製造装置を含む、ガラス製造装置の構成要素として組み込まれてもよい。例として、
図1は、その後に個別のガラスシートへと加工するためにガラスリボンを溶融延伸するためのフュージョンダウンドローガラス製造装置10の構成要素としてのガラス溶融炉12を概略的に示している。
【0022】
ガラス製造装置10(例えばフュージョンダウンドロー装置10)は、任意選択的に、ガラス溶融容器14に対して上流に位置付けられた上流側ガラス製造装置16を含みうる。幾つかの例では、上流側ガラス製造装置16の一部又は全体をガラス溶融炉12の一部として組み込むことができる。
【0023】
図示される例に示すように、上流側ガラス製造装置16は、貯蔵ビン18、原料送達デバイス20、及び該原料送達デバイスに接続されたモータ22を備えることができる。貯蔵ビン18は、矢印26で示すように、ガラス溶融炉12の溶融容器14に供給することができる、ある量の原料24を保管するように構成することができる。原料24は、典型的には、1つ以上のガラス形成金属酸化物と1つ以上の改質剤とを含む。幾つかの例では、原料送達デバイス20が所定量の原料24を貯蔵ビン18から溶融容器14に送達するように、モータ22によって原料送達デバイス20に動力を与えることができる。さらなる例では、モータ22は、溶融容器14の下流で感知された溶融ガラスのレベルに基づいて制御された速度で原料24を導入するように原料送達デバイス20に動力を与えることができる。その後、溶融容器14内の原料24を加熱して溶融ガラス28を形成することができる。
【0024】
ガラス製造装置10はまた、任意選択的に、ガラス溶融炉12に対して下流に位置付けられた下流側ガラス製造装置30を含むことができる。幾つかの例では、下流側ガラス製造装置30の一部をガラス溶融炉12の一部として組み込むことができる。幾つかの事例では、以下で論じる第1の接続導管32、又は下流側ガラス製造装置30の他の部分をガラス溶融炉12の一部として組み込むことができる。第1の接続導管32を含む下流側ガラス製造装置の要素は、貴金属から形成することができる。適切な貴金属には、白金、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、及びパラジウムからなる金属の群から選択される白金族金属、又はそれらの合金が含まれる。例えば、ガラス製造装置の下流構成要素は、約70~約90質量%の白金及び約10質量%~約30質量%のロジウムを含む白金-ロジウム合金から形成することができる。しかしながら、他の適切な金属は、モリブデン、パラジウム、レニウム、タンタル、チタン、タングステン、及びそれらの合金を含みうる。
【0025】
下流側ガラス製造装置30は、溶融容器14の下流に位置し、かつ、上記第1の接続導管32によって溶融容器14に結合された、清澄容器34などの第1の調整(すなわち、処理)容器を含みうる。幾つかの例では、溶融ガラス28は、第1の接続導管32によって溶融容器14から清澄容器34へと重力供給されてもよい。例えば、重力によって、溶融ガラス28を、溶融容器14から清澄容器34へと第1の接続導管32の内部経路を通過させることができる。しかしながら、他の調整容器を、例えば溶融容器14と清澄容器34との間など、溶融容器14の下流に配置することができるものと理解されたい。幾つかの実施形態では、一次溶融容器からの溶融ガラスをさらに加熱して溶融プロセスを継続するか、又は清澄容器に入る前に溶融容器内の溶融ガラスの温度より低い温度へと冷却する調整容器を溶融容器と清澄容器との間に用いることができる。
【0026】
気泡は、清澄容器34内の溶融ガラス28から、さまざまな技法によって除去することができる。例えば、原料24は、加熱されると化学還元反応を被り、酸素を放出する、酸化スズなどの多価化合物(すなわち清澄剤)を含みうる。他の適切な清澄剤としては、限定はしないが、ヒ素、アンチモン、鉄、及びセリウムが挙げられる。清澄容器34は、溶融容器温度より高い温度へと加熱され、それによって溶融ガラスと清澄剤を加熱する。清澄剤の温度誘発性の化学還元によって生じた酸素気泡は、清澄容器内の溶融ガラスを通って上昇し、ここで、溶融炉内で生成した溶融ガラス内のガスは、清澄剤によって生成された酸素気泡中に拡散又は一体化しうる。次に、拡大した気泡は、清澄容器内の溶融ガラスの自由表面へと上昇し、その後、清澄容器から排出されうる。酸素気泡はさらに、清澄容器内での溶融ガラスの機械的混合も生じさせることができる。
【0027】
下流側ガラス製造装置30は、溶融ガラスを混合するための混合容器36など、別の調整容器をさらに含むことができる。混合容器36は、清澄容器34の下流に配置することができる。混合容器36を使用して均質なガラス溶融組成物をもたらし、それによって、そうでなければ清澄容器から出る清澄された溶融ガラス内に存在しうる化学的又は熱的不均一性のコードを低減することができる。示されるように、清澄容器34は、第2の接続導管38によって混合容器36に連結されうる。幾つかの例では、溶融ガラス28は、第2の接続導管38によって清澄容器34から混合容器36へと重力供給することができる。例えば、重力によって、溶融ガラス28を、清澄容器34から混合容器36へと第2の接続導管38の内部経路を通過させることができる。混合容器36が清澄容器34の下流に示されているが、混合容器36は、清澄容器34の上流に位置付けられてもよいことに留意すべきである。幾つかの実施形態では、下流側ガラス製造装置30は、例えば清澄容器34の上流の混合容器と清澄容器34の下流の混合容器など、複数の混合容器を含んでいてもよい。これらの複数の混合容器は、同じ設計のものであっても、異なる設計のものであってもよい。
【0028】
下流側ガラス製造装置30は、混合容器36の下流に配置することができる送達容器40などの別の調整容器をさらに含んでいてもよい。送達容器40は、溶融ガラス28を調整し、下流の成形装置内へと供給することができる。例えば、送達容器40は、出口導管44によって成形体42への溶融ガラス28の一定の流れを調整及び/又は提供するためのアキュムレータ及び/又は流量制御装置として機能することができる。示されるように、混合容器36は、第3の接続導管46によって送達容器40に連結されうる。幾つかの例では、溶融ガラス28は、第3の接続導管46によって混合容器36から送達容器40へと重力供給されうる。例えば、重力によって、第3の接続導管46の内部経路を通って混合容器36から送達容器40へと溶融ガラス28を駆動させることができる。
【0029】
下流側ガラス製造装置30は、上述の成形体42と入口導管50とを含む成形装置48をさらに含むことができる。出口導管44は、溶融ガラス28を送達容器40から成形装置48の入口導管50へと送達するように位置付けることができる。例えば、出口導管44は入口導管50の内面に入れ子にされ、かつ、そこから離間され、それによって出口導管44の外面と入口導管50の内面との間に位置付けられた溶融ガラスの自由表面を提供することができる。フュージョンダウンドローガラス製造装置の成形体42は、該成形体の上面に位置付けられたトラフ52と、成形体の底部エッジ56に沿って延伸方向に収束する収束成形面54とを含みうる。送達容器40、出口導管44、及び入口導管50を介して成形体トラフへと送達された溶融ガラスは、トラフの側壁から溢れ出て、溶融ガラスの別々の流れとして収束成形面54に沿って下降する。溶融ガラスの別々の流れは、底部エッジ56の下及び底部エッジ56に沿って合流し、重力、エッジロール72、及びプルロール82などによってガラスリボンに張力を印加することにより、ガラスが冷えてガラスの粘性が増すにつれてガラスリボンの寸法を制御するように底部エッジ56から延伸方向又は流れ方向60に延伸される、単一のガラスリボン58を生成する。したがって、ガラスリボン58は、粘弾性転移を経て、ガラスリボン58に安定した寸法特性を与える機械的性質を獲得する。ガラスリボン58は、幾つかの実施形態では、ガラスリボンの弾性領域においてガラス分離装置100によって個々のガラスシート62へと分離することができる。次いで、ロボット64によって、把持具65を使用して個々のガラスシート62をコンベヤシステムに移すことができ、その後、個々のガラスシートをさらに処理することができる。
【0030】
図2は、第1の主面162、該第1の主面162とほぼ平行な方向に延在する第2の主面164(ガラスシート62の第1の主面とは反対側)、並びに、第1の主面162と第2の主面164との間に延在し、かつ、第1及び第2の主面162、164とほぼ垂直な方向に延在するエッジ表面166を有するガラスシート62の斜視図を示している。
【0031】
図3は、液体分散堆積層202が堆積されたガラスシート62の側面断面図を示している。具体的には、液体分散堆積層202は、ガラスシート62の第2の主面164上に堆積されて、基板前駆体62’を形成する。液体分散堆積層202は、限定はしないが、スピンコーティング、流し塗り、又はスプレーコーティングのうちの少なくとも1つを含む、当業者に知られている方法に従って、分散機300を介してガラスシート62上に堆積させることができる。
【0032】
ある特定の例示的な実施形態では、堆積層は、液体分散堆積層202が水性分散液を含むように水中に分散させることができる。堆積層はまた、例えば、アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アミン、エステル、エーテル、及び/又はケトンなどの有機溶媒を含む他の液体中に分散させることもできる。
【0033】
液体分散堆積層202中の固体の質量パーセント(質量%)は、限定はしないが、例えば、約0.1質量%から約10質量%、例えば約0.5質量%から約5質量%、さらには例えば約1質量%から約3質量%の範囲でありうる。
【0034】
ある特定の例示的な実施形態では、液体分散堆積層202は、無機粒子を含む固体材料を含むことができる。このような粒子は、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び/又はコロイド状シリカのうちの少なくとも1つを含みうる。液体分散堆積層202に組み込まれる前に、このような粒子は、例えば、1gあたり少なくとも約100平方メートル、例えば、少なくとも約200平方メートル/グラム、さらには、約100平方メートル/グラムから約500平方メートル/グラム、例えば約200平方メートル/グラムから約400平方メートル/グラムを含む、少なくとも約300平方メートル/グラムのブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積を含みうる。BET比表面積は、固体表面へのガスの物理吸着を観察し、当業者には知られているブルナウアー・エメット・テラー(BET)吸着等温式を使用して表面の単分子層に相当する吸着ガスの量を計算することによって決定される。
【0035】
無機粒子が酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び/又はコロイド状シリカを含む場合、それらは非晶質であっても結晶の形態であってもよい。液体分散堆積層202に使用することができる酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムの例としては、非晶質酸化アルミニウム、アルファアルミナ、ベータアルミナ、ガンマアルミナ、ギブサイト、バイヤライト、ノルドストランド石、ベーマイト、ダイアスポア、又はトーダイトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
ガラスシート62上に堆積させた後、液体分散堆積層202は、当業者に知られているように、例えばエアナイフの使用及び/又は高温乾燥などによって液体を蒸発させるために、乾燥工程に供することができる。例えば、高温乾燥は、少なくとも約100℃、例えば少なくとも約200℃、例えば約100℃から約500℃の温度で、少なくとも約10秒間、例えば約10秒から約20分の間、行うことができる。エアナイフ乾燥は、例えば、少なくとも約30秒、例えば約30秒から約30分の間、行うことができる。
【0037】
図4は、堆積層204が堆積されたガラスシート62の側面断面図を示している。具体的には、堆積層204は、ガラスシート62の第2の主面164上に堆積されて、基板62”を形成する。堆積層204は、例えば、上述したように液体分散堆積層202の乾燥の結果として、ガラスシート62の第2の主面164上に堆積させることができる。
【0038】
堆積層204は、約0.4ナノメートルから約50ナノメートル、例えば約0.6ナノメートルから約20ナノメートル、さらには例えば約0.8ナノメートルから約10ナノメートルの範囲の基板62”の第2の主面206の表面粗さを与えうる。一方、基板62”の第1の主面162は、例えば、約0.05ナノメートルから約0.5ナノメートル、例えば約0.1ナノメートルから約0.25ナノメートルを含む、例えば約0.25ナノメートル未満など、約0.5ナノメートル未満の表面粗さを有しうる。
【0039】
第2の主面206の上記表面粗さは、少なくとも部分的には、無機粒子を含む堆積層204に起因しうる。このような粒子は、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び/又はコロイド状シリカのうちの少なくとも1つを含みうる。加えて、このような粒子は、例えば、1gあたり少なくとも約100平方メートル、例えば、少なくとも約200平方メートル/グラム、さらには、約100平方メートル/グラムから約500平方メートル/グラム、例えば約200平方メートル/グラムから約400平方メートル/グラムを含む、少なくとも約300平方メートル/グラムのブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積を含みうる。
【0040】
無機粒子が酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び/又はコロイド状シリカを含む場合、それらは非晶質であっても結晶の形態であってもよい。堆積層204に使用することができる酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムの例としては、非晶質酸化アルミニウム、アルファアルミナ、ベータアルミナ、ガンマアルミナ、ギブサイト、バイヤライト、ノルドストランド石、ベーマイト、ダイアスポア、又はトーダイトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
ある特定の例示的な実施形態では、基板62”は、上述の乾燥工程に続いて、洗浄工程に供することができる。具体的には、第1の主面162又は基板62”の第2の主面206の少なくとも一方を、水又は有機溶媒などの溶媒と少なくとも1つの溶質とを含む液体洗浄液で洗浄することができる。ある特定の例示的な実施形態では、溶質は、少なくとも1つの洗剤及び/又は界面活性剤を含みうる。ある特定の例示的な実施形態では、溶媒は水(例えば、脱イオン水)を含み、溶質は、水酸化カリウム(KOH)又は水酸化ナトリウム(NaOH)の少なくとも一方を含む洗剤など、アルカリ洗剤を含み、その市販例として、Semi Clean KG及びPK-LCG225Xが挙げられる。ある特定の例示的な実施形態では、溶質は、少なくとも約1%、例えば約0.1%から約10%、さらには例えば約1%から約5%を含む、少なくとも約0.1%の質量パーセントで溶液中に存在しうる。ある特定の例示的な実施形態では、洗浄液は、少なくとも約20℃、例えば約20℃から約80℃の温度で、少なくとも約10秒間、例えば約10秒から約10分の間、適用されうる。加えて、洗浄液は、噴霧、ブラッシング、及び浸漬を含むがこれらに限定されない、当業者に知られている方法に従って適用することができる。
【0042】
ある特定の例示的な実施形態では、基板62”は、上述の洗浄工程に続いて、乾燥工程に供することができる。例えば、洗浄工程に続いて、当業者には知られているように、エアナイフ及び/又は高温乾燥を使用して、基板62”を乾燥させることができる。例えば、高温乾燥は、少なくとも約100℃、例えば少なくとも約200℃、例えば約100℃から約500℃の温度で、少なくとも約10秒間、例えば約10秒から約20分の間、行うことができる。エアナイフ乾燥は、例えば、少なくとも約30秒、例えば約30秒から約30分の間、行うことができる。
【0043】
ある特定の例示的な実施形態では、基板62”はまた、酸エッチング工程などのエッチング工程に供することができる。例えば、フッ化水素酸(HF)などのエッチング液を含む溶液を、噴霧、浸漬、又はブラッシングなど、当業者に知られている方法に従って、少なくとも基板62”の第2の主面206に適用することができる。酸エッチング液は、例えば、約0.1質量%から約10質量%の範囲の濃度の溶液中に存在し、約20℃から約60℃の範囲の温度で約10秒から約10分の範囲の時間、適用することができる。
【0044】
本明細書に開示される実施形態は、エッチング工程が基板62”の第2の主面206の表面粗さに大きな影響を与えない実施形態を含む。例えば、エッチング工程の後、基板62”の第2の主面206は、約0.4ナノメートルから約50ナノメートル、例えば約0.6ナノメートルから約20ナノメートル、さらには例えば約0.8ナノメートルから約10ナノメートルの範囲の表面粗さを有しうる。
【0045】
ある特定の例示的な実施形態では、基板62”の第2の主面206の静電電荷(ESC)の絶対値は、約200ボルト(V)未満、例えば約150ボルト(V)未満、さらには100ボルト(V)未満、さらには約50ボルト(V)未満、例えば約0ボルト(V)から約200ボルト(V)、さらには例えば約1ボルト(V)から約150ボルト(V)、さらには例えば約2ボルト(V)から約100ボルト(V)、さらには例えば約5ボルト(V)から約50ボルト(V)である。
【0046】
ある特定の例示的な実施形態では、約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲における第1の主面162と基板62”の第2の主面206との間の厚さ0.5ミリメートルあたりの全光線透過率は、約90%から約99%を含む、例えば少なくとも約95%など、少なくとも約90%である。以下の実施例を含めて本明細書に記載される全光線透過率は、厚さ0.5ミリメートルの基板試料を日立U-4000分光光度計に配置し、約400から約850ナノメートルの間の波長範囲におけるパーセント透過率(T%)を測定することによって決定した。
【0047】
本明細書に開示される実施形態は、堆積層204が焼結されない実施形態を含みうる。本明細書に開示される実施形態はさらに、堆積層204が溶融しない実施形態を含みうる。加えて、本明細書に開示される実施形態は、堆積層204に圧縮応力が印加されない実施形態を含みうる。本明細書に開示される実施形態はまた、堆積層204が実質的な量(例えば、1質量%超)のガラス、金属、及び/又は有機化合物(例えば、結合剤など)を含まない実施形態も含みうる。さらに、本明細書に開示される実施形態は、堆積層204の適用前にガラスシート62に対して湿式又は乾式のエッチング工程(湿式又は乾式の酸エッチング工程など)が行われない実施形態を含みうる。
【0048】
ある特定の例示的な実施形態では、第1の主面162と第2の主面206との間の基板62”の厚さは、例えば、約0.1ミリメートルから約1ミリメートルの間を含む、さらには約0.2ミリメートル及び約0.5ミリメートルを含む、約0.5ミリメートル未満など、約1ミリメートル未満でありうる。
【0049】
本明細書に開示される実施形態は、さまざまなガラス組成物とともに使用することができる。このような組成物は、例えば、58~65質量パーセント(質量%)のSiO2、14~20質量%のAl2O3、8~12質量%のB2O3、1~3質量%のMgO、5~10質量%のCaO、及び0.5~2質量%のSrOを含有する、無アルカリガラス組成物などのガラス組成物を含みうる。このような組成物はまた、58~65質量%のSiO2、16~22質量%のAl2O3、1~5質量%のB2O3、1~4質量%のMgO、2~6質量%のCaO、1~4質量%のSrO、及び5~10質量%のBaOを含有する、無アルカリガラス組成物などのガラス組成物も含みうる。このような組成物は、さらには、57~61質量%のSiO2、17~21質量%のAl2O3、5~8質量%のB2O3、1~5質量%のMgO、3~9質量%のCaO、0~6質量%のSrO、及び0~7質量%のBaOを含有する、無アルカリガラス組成物などのガラス組成物も含みうる。このような組成物は、55~72質量%のSiO2、12~24質量%のAl2O3、10~18質量%のNa2O、0~10質量%のB2O3、0~5質量%のK2O、0~5質量%のMgO、及び0~5質量%のCaOを含み、ある特定の実施形態では、1~5質量%のK2O及び1~5質量%のMgOも含みうる、例えばアルカリ含有ガラス組成物などのガラス組成物をさらに含みうる。
【0050】
表面粗さ測定技法
以下の実施例を含めて本明細書に記載されるように、表面粗さとは、日立High-Tech AFM5400Lを使用して測定される原子間力顕微鏡粗さ(AFM Ra)分析を指す。分析する各試料について、AFMの表面形態画像を、カンチレバーSI-DF20P2(バネ定数=9N/m、共振周波数:100~200kHz、先端の半径:7nm、先端の高さ:14μm、レバーの長さ:160μm、レバーの幅:40μm、レバーの厚さ:3.5μm)を使用し、ダイナミックフォースモード(DFM)でスキャンした。分析する各試料について、次の分析パラメータを使用して、測定中に基板表面に軟X線を照射した:積分ゲイン(0.2)、比例ゲイン(0.05)、Zリミット(500nm)、走査領域(10μm×10μm)、画質X軸(256)及びY軸(256)。また、表面の最も高い「山」と最も深い「谷」との差(P-V値)も求めた。
【0051】
表面電位測定技法
以下の実施例を含めて本明細書に記載される基板の第2の主面の静電電荷(ESC)は、
図5~7に概略的に示されるように、リフト試験装置に基板試料を配置することによって決定した。具体的には、
図5に示されるように、動作の第1段階では、約10×10cm
2の基板試料62”を、該試料が陽極酸化アルミニウムテーブル404の約30ミリメートル上方に位置するように、リフト試験装置400の3つのリフトピン408a、408b、及び408c上に配置する。この段階中、イオン発生器410が、基板試料62”の第2の主面とテーブルとの間の空隙を約30秒間、処理する。次に、動作の第2段階では、
図6に示されるように、3つのリフトピン408a、408b、及び408cが下降し、基板試料62”の第2の主面がテーブル404に接触し、真空406がテーブル404と基板試料62”との間に約70秒間、オンになる。次に、動作の第3段階では、
図7に示されるように、真空406がオフになり、基板試料62”が3つのリフトピン408a、408b、及び408cによって持ち上げられ、Hanwa静電気力顕微鏡(ESFM)402で約30秒間監視され、ボルト(V)単位の静電電荷(ESC)が決定される。この段階中、基板試料62”の第1の主面とESFM402との間の間隙は約10ミリメートルであり、基板試料62”の第2の主面とテーブル404との間の間隙は約30ミリメートルである。
【実施例】
【0052】
以下の非限定的な実施例を参照して、本明細書に開示される実施形態をさらに説明する。
【0053】
実施例1:
約300m2/gのBET比表面積を有する非晶質酸化アルミニウム粒子を水と合わせて固形分約1質量%の水性分散液を生成し、約1,000rpmで回転するスピンコータを介して厚さ約0.5ミリメートルのCorning Lotus(商標)NXTガラスの主面に塗布した。次いで、表面を約200℃で約15秒間、乾燥させた。得られた基板は、約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲において、その主面間の全光透過率が約91.4%を示した。コーティングされた主面の表面粗さ(AFM Ra)は約11.4ナノメートルであると測定され、P-V値は約209ナノメートルであると測定された。対照的に、コーティングされていない反対側の主面の表面粗さは約0.2ナノメートルであった。コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約+49Vであった。次に、TFTプロセスのシミュレーションとして、基板を約590℃で約30分間加熱し、その後、コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約-9Vであった。次に、さらなるTFTプロセスのシミュレーションとして、基板を約1質量%のHFを含む水溶液中に約23℃で約45秒間、浸漬し、その後、コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約+69Vであった。
【0054】
実施例2:
約220m2/gのBET比表面積を有するベーマイト粒子を水と合わせて固形分約1質量%の水性分散液を生成し、約1,000rpmで回転するスピンコータを介して厚さ約0.5ミリメートルのCorning Lotus(商標)NXTガラスの主面に塗布した。次いで、表面を約200℃で約15秒間、乾燥させた。次いで、得られた基板を1%のParker225X洗剤を含む水溶液を用いて約40℃で約60秒間洗浄し、脱イオン(DI)水で約40℃で約60秒間すすぎ、次に、約150℃のオーブン内で約20分間、乾燥させた。基板は、約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲において、約91.6%のその主面間の全光透過率を示した。コーティングされた主面の表面粗さ(AFM Ra)は約6.37ナノメートルであると測定され、P-V値は約166ナノメートルであると測定された。対照的に、コーティングされていない反対側の主面の表面粗さは約0.2ナノメートルであった。コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約-42Vであった。次に、TFTプロセスのシミュレーションとして、基板を約590℃で約30分間加熱し、その後、コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約-1Vであった。次に、さらなるTFTプロセスのシミュレーションとして、基板を約1質量%のHFを含む水溶液中に約23℃で約45秒間、浸漬し、その後、コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約+114Vであった。
【0055】
実施例3:
約220m2/gのBET比表面積を有するベーマイト粒子を水と合わせて固形分約3質量%の水性分散液を生成し、約4,000rpmで回転するスピンコータを介して厚さ約0.5ミリメートルのCorning Lotus(商標)NXTガラスの主面に塗布した。次いで、表面を約150℃で約15分間、乾燥させた。次いで、得られた基板を1%のParker225X洗剤を含む水溶液を用いて約40℃で約60秒間洗浄し、脱イオン(DI)水で約40℃で約60秒間すすぎ、次に、約150℃のオーブン内で約20分間、乾燥させた。基板は、約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲において、約91.4%のその主面間の全光透過率を示した。コーティングされた主面の表面粗さ(AFM Ra)は約7.4ナノメートルであると測定され、P-V値は約99ナノメートルであると測定された。対照的に、コーティングされていない反対側の主面の表面粗さは約0.2ナノメートルであった。コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約-1Vであった。
【0056】
実施例4:
約300m2/gのBET比表面積を有する非晶質酸化アルミニウム粒子を水と合わせて固形分約1質量%の水性分散液を生成し、約2,000rpmで回転するスピンコータを介して厚さ約0.5ミリメートルのCorning Lotus(商標)NXTガラスの主面に塗布した。次いで、表面を、エアナイフを用いて室温で約10分間、乾燥させた。次いで、得られた基板を1%のParker225X洗剤を含む水溶液を用いて約40℃で約90秒間洗浄し、脱イオン(DI)水で約40℃で約90秒間すすぎ、次に、約150℃のオーブン内で約20分間、乾燥させた。基板は、約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲において、約91.3%のその主面間の全光透過率を示した。コーティングされた主面の表面粗さ(AFM Ra)は約11.0ナノメートルであると測定され、P-V値は約193ナノメートルであると測定された。対照的に、コーティングされていない反対側の主面の表面粗さは約0.2ナノメートルであった。コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約+52Vであった。
【0057】
実施例5:
約220m2/gのBET比表面積を有するベーマイト粒子を水と合わせて固形分約1質量%の水性分散液を生成し、約2,000rpmで回転するスピンコータを介して厚さ約0.5ミリメートルのCorning Lotus(商標)NXTガラスの主面に塗布した。次いで、表面を、エアナイフを用いて室温で約10分間、乾燥させた。次いで、得られた基板を1%のParker225X洗剤を含む水溶液を用いて約40℃で約90秒間洗浄し、脱イオン(DI)水で約40℃で約90秒間すすぎ、次に、約150℃のオーブン内で約20分間、乾燥させた。基板は、約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲において、約91.5%のその主面間の全光透過率を示した。コーティングされた主面の表面粗さ(AFM Ra)は約4.6ナノメートルであると測定され、P-V値は約166ナノメートルであると測定された。対照的に、コーティングされていない反対側の主面の表面粗さは約0.2ナノメートルであった。コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約+19Vであった。
【0058】
実施例6:
約300m2/gのBET比表面積を有する非晶質酸化アルミニウム粒子を水と合わせて固形分約1質量%の水性分散液を生成し、フローコータを介して厚さ約0.5ミリメートルのCorning Lotus(商標)NXTガラスの主面に塗布した。次いで、表面を、エアナイフを用いて室温で約10分間、乾燥させた。次いで、得られた基板を1%のParker225X洗剤を含む水溶液を用いて約40℃で約90秒間洗浄し、脱イオン(DI)水で約40℃で約90秒間すすぎ、次に、約150℃のオーブン内で約20分間、乾燥させた。基板は、約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲において、約91.4%のその主面間の全光透過率を示した。コーティングされた主面の表面粗さ(AFM Ra)は約15.9ナノメートルであると測定され、P-V値は約253ナノメートルであると測定された。対照的に、コーティングされていない反対側の主面の表面粗さは約0.2ナノメートルであった。コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約+106Vであった。
【0059】
実施例7:
約220m2/gのBET比表面積を有するベーマイト粒子を水と合わせて固形分約1質量%の水性分散液を生成し、フローコータを介して厚さ約0.5ミリメートルのCorning Lotus(商標)NXTガラスの主面に塗布した。次いで、表面を、エアナイフを用いて室温で約10分間、乾燥させた。次いで、得られた基板を1%のParker225X洗剤を含む水溶液を用いて約40℃で約90秒間洗浄し、脱イオン(DI)水で約40℃で約90秒間すすぎ、次に、約150℃のオーブン内で約20分間、乾燥させた。基板は、約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲において、約91.3%のその主面間の全光透過率を示した。コーティングされた主面の表面粗さ(AFM Ra)は約8.1ナノメートルであると測定され、P-V値は約105ナノメートルであると測定された。対照的に、コーティングされていない反対側の主面の表面粗さは約0.2ナノメートルであった。コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約-26Vであった。
【0060】
実施例8:
約110m2/gのBET比表面積を有する非晶質酸化ケイ素(コロイド状シリカ)粒子を水と合わせて固形分約1質量%の水性分散液を生成し、約2,000rpmで回転するスピンコータを介して厚さ約0.5ミリメートルのCorning Lotus(商標)NXTガラスの主面に塗布した。次いで、表面を、エアナイフを用いて室温で約10分間、乾燥させた。次いで、得られた基板を1%のParker225X洗剤を含む水溶液を用いて約40℃で約90秒間洗浄し、脱イオン(DI)水で約40℃で約90秒間すすぎ、次に、約150℃のオーブン内で約20分間、乾燥させた。基板は、約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲において、約91.5%のその主面間の全光透過率を示した。コーティングされた主面の表面粗さ(AFM Ra)は約1.5ナノメートルであると測定され、P-V値は約74ナノメートルであると測定された。対照的に、コーティングされていない反対側の主面の表面粗さは約0.2ナノメートルであった。コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約-21Vであった。
【0061】
実施例9:
各々約220m2/gのBET比表面積を有する、ベーマイトと非晶質酸化ケイ素(コロイド状シリカ)との質量%比70:30の混合物を水と合わせて固形分約1質量%の水性分散液を生成し、約2,000rpmで回転するスピンコータを介して厚さ約0.5ミリメートルのCorning Lotus(商標)NXTガラスの主面に塗布した。次いで、表面を、エアナイフを用いて室温で約10分間、乾燥させた。次いで、得られた基板を1%のParker225X洗剤を含む水溶液を用いて約40℃で約90秒間洗浄し、脱イオン(DI)水で約40℃で約90秒間すすぎ、次に、約150℃のオーブン内で約20分間、乾燥させた。基板は、約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲において、約91.7%のその主面間の全光透過率を示した。コーティングされた主面の表面粗さ(AFM Ra)は約13.6ナノメートルであると測定され、P-V値は約162ナノメートルであると測定された。対照的に、コーティングされていない反対側の主面の表面粗さは約0.2ナノメートルであった。コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約+73Vであった。
【0062】
実施例10:
約220m2/gのBET比表面積を有するベーマイト粒子を水と合わせて固形分約0.2質量%の水性分散液を生成し、フローコータを介して厚さ約0.5ミリメートルのCorning Lotus(商標)NXTガラスの主面に塗布した。水性分散液をシートの傾斜によって20秒間水切りし、次に、得られた基板を4%のParker225X洗剤を含む水溶液を用いて約50℃で約10分間洗浄し、脱イオン(DI)水で約40℃で約10分間すすぎ、次に、約150℃のオーブン内で約20分間、乾燥させた。基板は、約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲において、約91.7%のその主面間の全光透過率を示した。コーティングされた主面の表面粗さ(AFM Ra)は約0.50ナノメートルであると測定され、P-V値は約17ナノメートルであると測定された。対照的に、コーティングされていない反対側の主面の表面粗さは約0.2ナノメートルであった。コーティングされた主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約-94Vであった。
【0063】
比較例:
厚さ約0.5ミリメートルのCorning Lotus(商標)NXTガラス1%のParker225X洗剤を含む水溶液を用いて約40℃で約20分間洗浄し、脱イオン(DI)水で約40℃で約20分間すすぎ、次に、約150℃のオーブン内で約20分間、乾燥させた。ガラスは、約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲において、約91.8%のその主面間の全光透過率を示した。両主面の表面粗さ(AFM Ra)は約0.2ナノメートルであると測定され、P-V値は約16ナノメートルであると測定された。ガラスの主面とリフト試験装置との間で測定されたESCは約-350Vであった。
【0064】
本明細書に開示される実施形態は、ガラス基板の表面電位を大幅に低下させることができ、その結果、ガラス基板のA側表面に堆積されたTFTデバイスへのゲート損傷の低減、ガラス基板のB側表面における粒子及び破片の低減、FPDデバイス製造の歩留まりの増加、並びにガラス基板の取り扱い及び/又は搬送装置の耐用年数の増加を可能にすることができる。
【0065】
本明細書に開示される実施形態には、本明細書に開示される基板のいずれかを含む電子デバイスも含まれる。
【0066】
上記の実施形態は、フュージョンダウンドロープロセスを参照して説明されているが、このような実施形態は、フロートプロセス、スロットドロープロセス、アップドロープロセス、チューブドロープロセス、及びプレス圧延プロセスなどの他のガラス成形プロセスにも適用可能であるものと理解されたい。
【0067】
本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本開示の実施形態に対してさまざまな修正及び変形がなされうることは、当業者にとって明白であろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に入ることを条件として、そのような修正及び変形にも及ぶことが意図されている。
【0068】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0069】
実施形態1
基板であって、
第1の主面、及び前記第1の主面に対してほぼ平行な方向に延在する反対側の第2の主面、並びに
ガラスシート、及び前記ガラスシートと前記第2の主面との間に延在する堆積層
を含み、前記堆積層が無機粒子を含み、かつ約0.4ナノメートルから約50ナノメートルの範囲の前記基板の前記第2の主面の表面粗さを与える、
基板。
【0070】
実施形態2
前記第1の主面が約0.5ナノメートル未満の表面粗さを有する、実施形態1に記載の基板。
【0071】
実施形態3
前記無機粒子が、1gあたり少なくとも約100平方メートルのブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積を含む、実施形態1に記載の基板。
【0072】
実施形態4
前記無機粒子が、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び/又はコロイド状シリカのうちの少なくとも1つを含む、実施形態3に記載の基板。
【0073】
実施形態5
約400ナノメートルから約850ナノメートルの間の波長範囲における前記第1の主面と前記第2の主面との間の厚さ0.5ミリメートルあたりの全光線透過率が、少なくとも約90%である、実施形態1に記載の基板。
【0074】
実施形態6
前記第2の主面の静電電荷(ESC)の絶対値が約200ボルト(V)未満である、実施形態1に記載の基板。
【0075】
実施形態7
前記第1の主面と前記第2の主面との間の基板厚さが、約0.1ミリメートルから約1ミリメートルの間である、実施形態1に記載の基板。
【0076】
実施形態8
前記ガラスシートが、58~65質量%のSiO2、14~20質量%のAl2O3、8~12質量%のB2O3、1~3質量%のMgO、5~10質量%のCaO、及び0.5~2質量%のSrOを含む無アルカリガラス組成物を含む、実施形態1に記載の基板。
【0077】
実施形態9
前記ガラスシートが、58~65質量%のSiO2、16~22質量%のAl2O3、1~5質量%のB2O3、1~4質量%のMgO、2~6質量%のCaO、1~4質量%のSrO、及び5~10質量%のBaOを含む無アルカリガラス組成物を含む、実施形態1に記載の基板。
【0078】
実施形態10
前記ガラスシートが、57~61質量%のSiO2、17~21質量%のAl2O3、5~8質量%のB2O3、1~5質量%のMgO、3~9質量%のCaO、0~6質量%のSrO、及び0~7質量%のBaOを含む無アルカリガラス組成物を含む、実施形態1に記載の基板。
【0079】
実施形態11
前記ガラスシートが、55~72質量%のSiO2、12~24質量%のAl2O3、10~18質量%のNa2O、0~10質量%のB2O3、0~5質量%のK2O、0~5質量%のMgO、及び0~5質量%のCaO、1~5質量%のK2O、及び1~5質量%のMgOを含むガラス組成物を含む、実施形態1に記載の基板。
【0080】
実施形態12
実施形態1に記載の基板を含む、電子デバイス。
【0081】
実施形態13
基板を製造する方法であって、
ガラスシート上に堆積層を堆積する工程を含み、前記堆積層が前記ガラスシートと前記基板の第2の主面との間に延在し、前記ガラスシートが前記堆積層と前記基板の第1の主面との間に延在し、かつ前記第1の主面に対してほぼ平行な方向に延在し、前記堆積層が無機粒子を含み、かつ約0.4ナノメートルから約50ナノメートルの範囲の前記基板の前記第2の主面の表面粗さを与える、
方法。
【0082】
実施形態14
前記方法が溶融ガラスから前記ガラスシートを形成する工程をさらに含む、実施形態13に記載の方法。
【0083】
実施形態15
前記堆積層が分散液中で前記ガラスシート上に堆積される、実施形態13に記載の方法。
【0084】
実施形態16
前記分散液が、スピンコーティング、流し塗り、又はスプレーコーティングのうちの少なくとも1つによって前記ガラスシート上に堆積される、実施形態15に記載の方法。
【0085】
実施形態17
前記分散液が、前記ガラスシート上に堆積された後に乾燥工程に供される、実施形態15に記載の方法。
【0086】
実施形態18
前記基板が、前記乾燥工程の後に洗浄工程に供される、実施形態17に記載の方法。
【0087】
実施形態19
前記無機粒子が、1gあたり少なくとも約100平方メートルのブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積を含む、実施形態13に記載の方法。
【0088】
実施形態20
前記無機粒子が、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び/又はコロイド状シリカのうちの少なくとも1つを含む、実施形態19に記載の方法。
【符号の説明】
【0089】
10 ガラス製造装置
12 ガラス溶融炉
14 溶融容器
16 上流側ガラス製造装置
18 貯蔵ビン
20 原料送達デバイス
22 モータ
24 原料
28 溶融ガラス
30 下流側ガラス製造装置
32 第1の接続導管
34 清澄容器
36 混合容器
38 第2の接続導管
40 送達容器
42 成形体
44 出口導管
46 第3の接続導管
48 成形装置
50 入口導管
54 収束成形面
56 底部エッジ
58 ガラスリボン
62 ガラスシート
62’ 基板前駆体
62” 基板
72 エッジロール
82 プルロール
100 ガラス分離装置
162 第1の主面
164 第2の主面
166 エッジ表面
202 液体分散堆積層
204 堆積層
206 第2の主面
300 分散機
400 リフト試験装置
402 静電気力顕微鏡(ESFM)
404 陽極酸化アルミニウムテーブル
406 真空
408a,408b,408c リフトピン
410 イオン発生器
【国際調査報告】