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特表2023-549174クロルプロマジンを含む神経炎症性疾患の予防または治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】クロルプロマジンを含む神経炎症性疾患の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5415 20060101AFI20231115BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A61K31/5415 ZNA
A61P25/00
A61P29/00
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P9/10
A61P25/28
A61P25/16
A61P21/00
A61P25/14
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/04
A61P25/02
A61P37/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527997
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 KR2021015855
(87)【国際公開番号】W WO2022098106
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0146060
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0150049
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】523165891
【氏名又は名称】グリアセルテック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GLIACELLTECH INC.
(71)【出願人】
【識別番号】516280679
【氏名又は名称】テグ・ギョンブク・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ソン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ヒェリ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨンファン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC89
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA21
4C086ZA36
4C086ZA94
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は神経炎症性疾患の予防または治療用組成物に関するものであって、より具体的には、クロルプロマジンまたはその塩を含む神経炎症性疾患の予防、改善または治療用途に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロルプロマジン(Chlorphromazine)またはその薬学的に許容可能な塩を含む、対象の神経炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記疾患は、正常対象に比べて概日時計性炎症性サイトカイン(Circadian clock-controlled inflammatory cytokines)の過発現特性を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記概日時計性炎症性サイトカインは、IL-6、CXCL1、CCL2、およびCCL5からなる群より選択された1種以上である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記疾患は、正常対象に比べて中枢神経系(central nerve system)神経膠細胞で概日時計性炎症性サイトカイン(Circadian clock-controlled inflammatory cytokines)の過発現特性を有する、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記疾患は、正常対象に比べてNuclear Receptor Subfamily 1 Group D Member 1(Nr1d1)遺伝子の低発現特性を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記疾患は、Presenilin 2(PSEN)2突然変異を含む疾患である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記PSEN2突然変異は、PSEN2 N141I外A85V、N141Y、M174I、G212V、A237V、M239I、およびM239Vからなる群より選択された1種以上を含む、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記神経炎症性疾患は、多発性硬化症、神経芽細胞腫、脳卒中、アルツハイマー病、パキスン病、ルゲリック病、ハンチントン病、クロイツフェルトヤコブ病、心的外傷後ストレス障害、うつ病、精神分裂病、神経障害性疼痛、および筋萎縮性側索硬化症からなる群より選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記疾患はPresenilin2遺伝子変異があるアルツハイマー疾患またはアルツハイマー関連認知症である、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記疾患は、家族性アルツハイマー病である、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記対象は、Psenilin2遺伝子変異、概日時計性サイトカインの過発現およびNr1d1遺伝子の低発現からなる群より選択された1種以上の特性を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記組成物は、正常対象に比べて概日時計性炎症性サイトカインの過発現を抑制する、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記組成物は、TNF-alphaの過発現を抑制しない、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記組成物は、神経炎症の抑制、概日時計性炎症性サイトカインの過発現を抑制、REV-ERVa発現回復、記憶力回復、および認知改善からなる1種以上の特性を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記クロルプロマジン(Chlorphromazine)またはその薬学的に許容可能な塩を神経炎症を減少させるのに十分な量で投与する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記クロルプロマジン(Chlorphromazine)またはその薬学的に許容可能な塩は、クロルプロマジン free baseとして0.0001~1.0mg/kg/dayである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
クロルプロマジン(Chlorphromazine)またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物をこれを必要とする対象に投与する段階を含む、対象の神経炎症性疾患の予防または治療方法。
【請求項18】
対象の神経炎症性疾患の予防または治療で使用される、クロルプロマジン(Chlorphromazine)またはその薬学的に許容可能な塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は神経炎症性疾患の予防または治療用組成物に関するものであって、より具体的には、クロルプロマジンまたはその塩を含む神経炎症性疾患の予防または治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
神経炎症は神経系の免疫反応の一種で、アルツハイマー、パーキンソン病、多発性硬化症を含む多くの退行性神経疾患と非常に密接に関連しており、現在退行性神経疾患の典型的特徴と考えられている。神経炎症反応は先天性免疫細胞(小膠細胞)の活性化、炎症媒介体、例えば酸化窒素(nitric oxide;NO)、サイトカインおよびケモカインの放出、大食細胞浸潤を含み、これは神経細胞の死滅を誘導する。小膠細胞および星状細胞の炎症活性化は、病理学的マーカおよび退行性神経疾患の進行において重要なメカニズムと考えられる。小膠細胞活性の厳格な調節は脳恒常性を維持し感染および炎症疾患を予防するのに必須的であるため、小膠細胞の活性を調整して神経炎症を緩和させるための物質の発掘が必要である。
【0003】
神経炎症性疾患の一種であるアルツハイマーは認知症の発病形態の一つと知られており、認知症(dementia)は記憶力障害、判断力喪失など精神機能の全般的な障害を伴う疾患である。認知症の発病形態は非常に多様であり、約50%程度はアルツハイマー型認知症(dementia of Alzheimer type)であり、約30%程度は血管性認知症(dementia of Vascular type)、アルコール性認知症、およびパーキンソン病認知症であり、約20%程度はアルツハイマー型認知症および血管性認知症など両側性で発病すると知られている。アルツハイマー認知症のうち、多数は特別な遺伝的要因がない散発性(sporadic)アルツハイマー認知症であるが、一部はamyloid precursor protein(APP)、presenilin 1(Psen1)、そしてPsen2遺伝子の突然変異による家族性(familial)アルツハイマー認知症に分類される。
【0004】
アルツハイマーは、疾病特性上患者本人だけでなく家族の精神的、肉体的負担が非常に深刻な疾病である。アルツハイマー病は65~74才で10%、75~84才で19%、85才以上で47%が発病し、毎年発病率が増加しており、大韓民国で1995年65才以上と登録されたアルツハイマー病患者数は241,000人で、老人全体人口の8.3%を占めており、2020年には619,000人になると予測されたことがあって大きな社会的問題として浮上している。現在まで知られたアルツハイマー病の予防はもちろん確立された早期診断方法もない。また、治療剤も現在まで開発されたものがなく、ただ症状を緩和させる薬物のみ使用されているだけである。
【0005】
一方、クロルプロマジン(Chlorpromazine)はフェノチアジン(Phenothiazine(FEEN-oh-THYE-a-zeen))系で、統合失調症治療のために1950年代にRhone-Poulenc Labで合成された1世代薬剤と知られており、大脳で感情または嘔吐を統制する部分に作動して神経が過度に興奮するようになると発生される物質、例えばドーパミン、セロトニンなどの生産と分泌を統制することによって興奮を抑制し不安、緊張、心配、悪心、嘔吐などを鎮静させる薬物と知られている。現在市販濃度で長期服用時、統合失調症がある老年層で死亡率が増加するという副作用があるのが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のような問題点を解決するために、本発明は、クロルプロマジン(Chlorphromazine)、その誘導体、その代謝産物またはその塩を含む、神経炎症性疾患の予防、改善または治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の追加一例は、クロルプロマジン、その誘導体、その代謝産物またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物をこれを必要とする対象に投与する段階を含む、対象の神経炎症性疾患の予防または治療方法に関するものである。
【0008】
本発明の追加一例は、対象の神経炎症性疾患の予防または治療用に使用される、クロルプロマジン(Chlorphromazine)またはその薬学的に許容可能な塩に関するものである。
【0009】
本発明の一実施形態で、前記組成物は、概日時計性神経炎症性サイトカインIL-6(Interleuckine-6)、CXCL1、CCL2、CCL5の発現を抑制することができる。本発明の他の実施形態で、前記組成物は、神経炎症を抑制して記憶力を回復させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、クロルプロマジン(Chlorphromazine)、その誘導体、その代謝産物またはその塩を含む、神経炎症性疾患の予防、改善または治療用薬学的組成物および健康機能食品組成物を提供する。
【0011】
本発明の“クロルプロマジン(Chlorpromazine、CPZ)”は化学式C17H19ClN2Sで構成され、IUPAC命名法によって3-(2-chloro-10H-phenothiazin-10-yl)-N,N-dimethyl-propan-1-amineと命名され、下記[化学式I]の構造を有する化合物を意味し、本発明で神経炎症性疾患の予防、改善または治療用薬学的組成物において有効成分は、クロルプロマジン、その誘導体、代謝産物および薬学的に許容可能な塩を含む群より選択された1種以上であってもよい。
[化学式I]
【化1】
【0012】
前記クロルプロマジン代謝物質(Chlopromazine Metabolites)であって、クロルプロマジンは強い代謝変異(metabolic transformation)を経て治療学的に活性がある多数の代謝物質に変わるため、このような代謝物質が本発明の神経炎症性疾患でクロルプロマジンの代わりをすることができる。クロルプロマジンの物質代謝率は、例えば、対応する一級および二級アミンを得るための酸化性N-脱メチル化(oxidative N-demethylation)、フェノールを得るための芳香族酸化(aromatic oxidation)、N-酸化物(N-oxide)を得るためのN-酸化(N-oxidation)、スルホキシドまたはスルホンを得るためのS-酸化(S-oxidation)、フェノチアジン細胞核(phenothiazine nuclei)を得るためのアミノプロピル側チェーンの酸化性脱アミン化(oxidative deamination)、および4級アンモニウムグルクロニド(quaternary ammonium glucuronide)を得るためのフェノールヒドロキシ基(phenolic hydroxy group)および3級アミノ基のグルクロン酸塩化(tertiary amino group glucuronidation)を含む。
【0013】
本発明によるクロルプロマジンは、薬学的に許容可能な塩の形態で使用できる。前記塩としては、薬学的に許容される多様な有機酸または無機酸によって形成された酸付加塩を使用することができる。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸または亜リン酸のような無機酸類と脂肪族モノおよびジカルボキシレート、フェニル-置換されたアルカノエート、ヒドロキシアルカノエート、およびアルカンジオエート、芳香族酸類、脂肪族および芳香族スルホン酸類のような無毒性有機酸から得ることができる。このような無毒性塩類としては、スルフェート、ピロスルフェート、ビスルフェート、スルファート、ビスルファート、ニトレート、ホスフェート、モノヒドロゲンホスフェート、ジヒドロゲンホスフェート、メタホスフェート、ピロホスフェートクロリド、ブロミド、ヨージド、フルオリド、アセテート、プロピオネート、デカノエート、カプリレート、アクリレート、ホルメート、イソブチレート、カプレート、ヘプタノエート、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、スベレート、セバケート、フマレート、マレエート、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキサン-1,6-ジオン酸、安息香酸、クロロ安息香酸、メチル安息香酸、ジニトロ安息香酸、ヒドロキシベンゾエート、メトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタレート、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸、フェニルブチレート、シトレート、ラクテート、β-ヒドロキシブチレート、グリコレート、マレート、タルトレート、メタンスルホネート、プロパンスルホネート、ナフタレン-1-スルホネート、ナフタレン-2-スルホネート、マンデレート、トリフルオロ酢酸などを使用して製造することができる。
【0014】
前記クロルプロマジンの酸付加塩は、通常の方法、例えばクロルプロマジンを過量の酸水溶液に溶解させ、この塩を水混和性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンまたはアセトニトリルを使用して沈殿させて製造することができる。また、この混合物で溶媒や過量の酸を増発させた後に乾燥させるか、または析出された塩を吸入ろ過させて製造することもできる。
【0015】
クロルプロマジンは、塩基を使用して薬学的許容可能な塩を作ることができる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩は例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解し、非溶解化合物塩をろ過し、濾液を蒸発、乾燥させて得る。この時、金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩を製造することが農薬学上適合する。また、これに対応する銀塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例えば、硝酸銀)と反応させて得ることができる。
【0016】
本発明で使用される用語、“神経炎症性疾患”は神経系の炎症によって発生する疾患を全て含む意味であり、詳しくは、正常対象と比較して概日時計性サイトカインの過発現によって発生する神経炎症性疾患を含む意図である。
【0017】
例えば、前記疾患は、多発性硬化症、神経芽細胞腫、脳卒中、アルツハイマー病、パキスン病、ルゲリック病、ハンチントン病、クロイツフェルトヤコブ病、心的外傷後ストレス障害、うつ病、精神分裂病、神経障害性疼痛、および筋萎縮性側索硬化症を含むが、これに制限されない。
【0018】
前記疾患は、神経炎症誘導によって発生される認知障害、記憶力低下、アルツハイマー病またはその関連症状であってもよく、老化、遺伝的変異、頭部外傷、うつ病または高血圧による合併症症状などと共に発生するか悪化することがある。前記アルツハイマー疾病(AD)、例えば、特発性アルツハイマー疾病(sporadic Alzheimer disease、SAD)、または家族性アルツハイマー認知症((Familial Alzheimer’s disease、FAD)などを含む。FADの主原因はPSEN遺伝子のためであると知られており、PSEN遺伝子は膜貫通タンパク質であるpresenilinを発現する遺伝子でありgamma-secretaseの触媒部位を発現させる。
【0019】
本発明で使用される用語“神経炎症誘導によるアルツハイマー”は神経炎症反応を人為的に発生させて誘導された認知症を意味し、老化による認知症モデルと異なり短期間内に認知症を発現させることができる。本発明で使用される用語“神経炎症誘導によるアルツハイマー”は神経炎症反応を人為的に発生させて誘導された認知症を意味する。
【0020】
さらに詳しくは、本発明による対象および/または疾患は、正常対象または正常疾患と比較して概日時計性サイトカイン暗号化遺伝子の過発現、Nr1d1(Nuclear Receptor Subfamily 1 Group D Member 1)遺伝子の低発現およびPsenilin2遺伝子変異からなる群より選択された1種以上の特性を有するものであってもよい。
【0021】
前記対象および/または疾患は、正常対象に比べて概日時計性炎症性サイトカイン(Circadian clock-controlled inflammatory cytokines)の過発現特性を有するものであってもよい。
【0022】
また、前記対象および/または疾患は、正常対象または疾患に比べて中枢神経系(centralnervesystem)神経膠細胞で概日時計性炎症性サイトカイン(Circadian clock-controlled inflammatory cytokines)の過発現特性を有するものである。前記中枢神経系神経膠細胞は放射状神経膠細胞(radial glia)、星状膠細胞(astrocytes)、乏突起神経膠細胞(oligodendrocyte)、乏突起神経膠細胞の前駆細胞(oligodendrocyte progenitor cells)、および小膠細胞(microglia)を含むことができ、詳しくは、小膠細胞と星状膠細胞であってもよく、さらに詳しくは、小膠細胞であってもよい。
【0023】
前記概日時計性炎症性サイトカインは、IL-6、CXCL1、CCL2、およびCCL5からなる群より選択された1種以上である。
【0024】
具体的に、本発明者らは、神経炎症性疾患、例えば、神経炎症性アルツハイマーが発病したマウスモデルに由来した小膠細胞にクロルプロマジンを処理する場合、概日時計性炎症性サイトカインの発現を抑制することによって抗炎症効果および記憶力回復効果が示されることを確認した。
【0025】
前記対象および/または疾患は、正常対象または正常疾患と比較してNr1d1遺伝子の低発現された特性を有するものであってもよく、詳しくは、Nr1d1遺伝子またはそのタンパク質(REV-ERBα)の低発現による概日時計性サイトカイン暗号化遺伝子の過発現を誘発したものであってもよい。
【0026】
前記対象および/または疾患は、正常対象または正常疾患と比較してPSEN2遺伝子の変異を有するものであってもよく、詳しくは、PSEN2遺伝子の変異によってNr1d1遺伝子またはタンパク質発現が減少または阻害されたものであってもよく、また、Nr1d1遺伝子またはタンパク質発現が減少または阻害によって概日時計性サイトカイン暗号化遺伝子の過発現を誘発したものであってもよい。
【0027】
プレセニリン(PS)は、アミロイド-βタンパク質前駆体(AβPP)を切断してアミロイド-β(Aβ)ペプチドを生成する膜結合γ-セクレターゼ複合体の酵素成分である。Presenilin2遺伝子(PSEN2)突然変異は全ての早期発症型家族性アルツハイマー病(EOFAD)事例の5%未満を占めると知られている。
【0028】
早期発症型家族性アルツハイマー病(EOFAD)は、プレセニリン1(PSEN1)、プレセニリン2(PSEN2)、およびAPP遺伝子の異形変異体によって発生するものと知られている。このような遺伝子がアルツハイマー病(AD)を誘発するかAD進行を促進するメカニズムは完全に糾明されていない。プレセニリン(PS)酵素活性がアミロイド-β(Aβ)を生成するということが知られている。
【0029】
本明細書で“PSEN2遺伝子”は、本明細書でPSEN2ポリペプチドを暗号化する遺伝子を称する。PSEN2遺伝子はNCBI基準配列でヒトPSEN2遺伝子はNC_000001.11(226870594..226903829))に位置し、マウスPSEN2遺伝子はNC_000067.7に位置し、これら配列だけでなく公知されたオルソログで含む。“PSEN2ポリペプチド”はヒトPSEN2タンパク質はNCBI基準配列でNP_000438.2に位置し、マウスPSEN2タンパク質はNP_001122077に位置し、これら配列だけでなく公知されたオルソログで含む
【0030】
本発明による神経炎症および/またはアルツハイマー病と関連性を有するPSEN2遺伝子の変異としてはA85V、N141I、N141Y、M174I、G212V、A237V、M239I、またはM239Vが知られているが、これら変異を1種以上含むことができる(Jiang et al.、“A Review of the Familial Alzheimer’s Disease Locus PRESENILIN 2 and Its Relationship to PRESENILIN 1.”Journal of Alzheimer’s Disease 66(2018)1223-1339)。
【0031】
本発明者らは、家族性アルツハイマー突然変異のうちの一つであってpresenilin2遺伝子の141番アミノ酸N(アルギニン)がI(イソロイシン)で置換されたPsen2 N141I knock-in(KI)動物モデルに、クロルプロマジンを処理する場合、概日時計調節を受ける炎症性サイトカインIL-6(Interleuckine-6)、CXCL1、CCL2、そしてCCL5の発現を抑制し、これによって抗炎症効果および記憶力回復効果が示されるのを確認することによって本発明を完成した。
【0032】
本発明による組成物は神経炎症の抑制、概日時計性炎症性サイトカインの過発現を抑制、REV-ERVa発現回復、記憶力回復、および認知改善からなる1種以上の効能を有するものであってもよく、したがって神経炎症性疾患を予防、改善または治療する効能を有することができる。具体的に、本発明は具体的な実施例を通じて本発明による組成物が神経炎症性サイトカインの発現を抑制して動物モデルの記憶力回復および抗炎症効果を通じてアルツハイマーの予防、改善または治療効果を確認した。
【0033】
本発明で使用される用語、“予防”とは、本発明による組成物の投与によって神経炎症性疾患を抑制させるか発病を遅延させる全ての行為を意味する。本発明で使用される用語“改善”とは、本発明による組成物の投与によって神経炎症性疾患の症状程度を減少させる全ての行為を意味する。
【0034】
本発明で使用される用語、“治療”とは、本発明による組成物の投与によって神経炎症性疾患に対する症状が好転するか有利に変更される全ての行為を意味する。詳しくは、本明細書で使用される用語“治療”は、治療中の状態、障害または疾患と関連するかまたはこれによって引き起こされる少なくとも一つの症状の減少または緩和を含む。治療された対象体は症状(例えば、アルツハイマー病または関連した病態)の部分的または全体的緩和を示すことができるか、または症状は本発明による治療後に静的に残っていることがある。用語“治療“は、予防、療法および治癒を含むものと意図される。
【0035】
さらに詳しくは、本発明者らは、クロルプロマジン処理によるREV-ERBαの発現復原およびアルツハイマー動物モデル(Psen2 N141I KI/+マウス)の免疫抑制および認知低下予防効果を確認した。本発明の組成物は、前記サイトカインの発現抑制などの機序で神経炎症を抑制させることによって記憶力を回復させることができる。
【0036】
本発明の一実施形態では、アルツハイマーを誘発させた動物モデルの小膠細胞で概日時計性炎症サイトカインであるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の発現が高く示され、クロルプロマジンを処理する場合、概日時計性炎症サイトカインの分泌および発現が効果的に低減されることを確認した。また、LPS注入前にクロルプロマジンを前処理する場合、概日時計性炎症サイトカインの血中濃度を減少させることを確認し、Y-mazeテストを通じてクロルプロマジンを処理した動物モデルの記憶力回復効果を確認した結果、アーム交代回数が正常対照群と類似しているように維持されることを確認した。
【0037】
本発明者らは相同組換え方法を通じてマウスのPsen2を人間AD患者で家族性AD(familial AD、FAD)を起こすと報告されたN141Iで置換させる場合、神経炎症誘導によって認知症を誘発させて短期間内にマウスで認知症をさらに正確にモデリングすることができるのを確認し、野生型のPsen2遺伝子がPsen2 N141Iで置換されたアルツハイマー動物モデルを用いて、クロルプロマジンの効能および濃度を確認した。また、前記動物モデルは、(a)標的化ベクターにPsen2 N141I突然変異遺伝子を挿入させる段階;(b)前記遺伝子が挿入されたベクターを宿主動物に挿入する段階;および(c)前記ベクターが挿入された宿主動物をCreマウスと交配して後代動物を収得する段階で得ることができる。
【0038】
動物自体の正常遺伝子の発現に加えてFADヒト遺伝子を過発現する既存の形質転換方式の動物モデルに比べて、マウスの正常Psen2遺伝子を人間で報告された認知症突然変異と同一な変異を発現するように置換し、またアルツハイマー患者の突然変異と同一に異型接合(heterozygous)突然変異(KI/+)を導入することによって自然的な発現水準を維持するようにして人間アルツハイマー病または関連認知症をさらに正確にモデリングが可能で認知症発病機序に対する精密な分析に活用できる。また、lipopolysaccharide(LPS)を動物モデルに腹腔注射するか、LPSまたはアルツハイマー認知症の直接的病因である凝集された(fibrilized)アミロイドベータ1-42(fAβ42)を小膠細胞に処理して炎症性サイトカインの発現を通じた神経炎症性疾患、例えば、アルツハイマー病を誘導することによってクロルプロマジンの効能を立証した。
【0039】
本発明による組成物が薬学的組成物の形態である場合、薬学的に有効な量のクロルプロマジンを単独で含むか一つ以上の薬学的に許容される担体を含むことができる。
【0040】
本発明によるクロルプロマジンなどは現在錠剤、カプセル、座薬、経口用濃縮液およびシロップ、および注射用配合のような形態で入手することができる。
【0041】
前記薬学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、およびミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるのではない。また、前記成分以外に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを追加的に含むことができる。
【0042】
本発明の薬学的組成物は目的とする方法によって経口投与するか非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)することができ、投与量は患畜の状態および体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および時間によって異なるが、当業者によって適切に選択できる。
【0043】
本発明で“個体”、“対象”または“患者”は、ラット(rat)、家畜、マウス(mouse)、人間など哺乳類であってもよく、具体的に、神経炎症性疾患の治療が必要な伴侶犬、競走馬、人間などであってもよく、好ましくは人間であってもよい。
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において用語“治療的有効量”は、治療的効果を達成するのに必要な量を意味する。治療的効果は、予防、症状改善、症状治療から疾患終結または治癒、例えば、アルツハイマー病または関連した病態の治療までの範囲にある任意の治療効果であってもよい。
【0044】
具体的に、本発明者らは、Psen2家族性アルツハイマーマウスモデルにクロルプロマジンを処理する場合、炎症性サイトカインのうちの概日時計調節を受けるIL-6、CXCL1、CCL2、CC5の発現抑制を通じて抗炎症効果および記憶力回復効果が示されることを確認した。本発明で使用されたクロルプロマジン濃度は既存臨床で抗精神病治療剤として使用される濃度より顕著に低い安全な濃度でも効果的であることを確認した。
【0045】
本発明の一例で、経口投与のために採択されたクロルプロマジンの人間に提供される1日投与量は、既存の抗精神病薬物の投与量より10倍または100倍より低い含量であり、具体的に、クロルプロマジンfree baseを基準にして1.0mg/kg/day以下、0.8mg/kg/day以下、0.6mg/kg/day以下、0.5mg/kg/day以下、0.25mg/kg/day以下、または0.1mg/kg/day以下であってもよく、クロルプロマジンの人間に提供される1日投与量の下限線は目的とする効能を達成することができる最小限に使用することが好ましく、例えば、約0.00001または0.0001mg/kg/dayであってもよい。例えば、クロルプロマジンの人間に提供される1日投与量は、クロルプロマジンfree baseを基準にして0.00001~1.0mg/kg/day、または約0.0001~1.0mg/kg/dayであってもよい。前記薬物は、1回または数回に分割して投与することもできる。現在市販濃度で長期服用時、統合失調症がある老年層で死亡率が増加するという副作用があることが知られていて、以前に知られた抗精神病薬物に比べて本願神経炎症性疾患の薬物に使用する有効量が低いということは非常に優れた特性を有するのである。
【0046】
本発明の薬剤学的組成物において、クロルプロマジンの含量は特に制限されず、投与対象の状態、具体的な病症の種類、進行程度などによって多様に変更できる。必要な場合、組成物の全体含量で含まれてもよい。
【0047】
本発明の他の実施形態では、野生型およびKI/+マウスに18:00基準で多様な容量のLPSを腹腔内(i.p.)注入し20時間後に炎症反応をモニタリングした結果、野生型マウスと比較してKI/+マウスはテストされた全てのLPS容量でIL-6の循環水準が高く示され、低濃度のLPSでKI/+マウスでclock-controlledサイトカインの血中濃度を増加させることによって、低い容量のLPSは免疫反応の過活性を誘導しPsen2 N141I/+マウスで概日時計性炎症性サイトカインの過発現を通じて記憶力欠乏を誘発させることを確認した。
【0048】
本発明者らは、相同組換え方法を通じてマウスの正常Psen2を人間アルツハイマー疾病(AD)患者で家族性AD(familial AD、FAD)を引き起こすと報告されたN141Iで置換させる場合、神経炎症誘導によって認知症を誘発させて短期間内にマウスで認知症をさらに正確にモデリングすることができる動物モデルを製造した。
【0049】
本発明で使用される用語“相同組換え(Homologous recombination)”とは遺伝子が置換挿入ベクターの相同性部位を宿主動物の対立遺伝子に挿入し、ベクターが挿入された宿主動物をCreマウスと交配して後代に動物モデルを製造する方法であって、本発明でベクターはエクソン4部位のPsen2 N141I遺伝子およびNeor-loxp配列を含むことができ、Psen2 N141I遺伝子が置換挿入されたマウスモデルを生成するためにCre-loxpシステムを使用してCreマウスと交配できる。
【0050】
マウスの正常Psen2遺伝子を人間で報告された認知症突然変異と同一な変異を発現するように置換し、またアルツハイマー患者の突然変異と同一に異型接合(heterozygous)突然変異を導入することによって自然的な発現水準を維持するようにして人間認知症をさらに正確にモデリングが可能で認知症発病機序に対する精密な分析に活用できる。また、LPS腹腔注射を通じて炎症性サイトカインの発現を通じた神経炎症誘導アルツハイマーモデルを製造することによって老化による認知症モデルと異なり短期間内(2か月)認知症動物モデルを実現することができて活用度が高いことと期待される。
【0051】
本発明は具体的な実施形態を通じて本発明による動物モデルを製造し、サイトカイン発現、clock-controlled遺伝子発現などを分析することによって人間PSEN2 N141I認知症突然変異を再現することを確認した。
【0052】
図12は、野生型およびPsen2 N141I/+アルツハイマー疾病マウスモデルの小膠細胞で概日時計性炎症性サイトカインの発現機序と、クロルプロマジン処理による変化を示した概略図である。
【発明の効果】
【0053】
本発明は、本発明者らが製作したPsen2 N141I変異家族性アルツハイマーマウスモデルが過度な神経炎症反応を起こすということを確認した後、クロルプロマジンがアルツハイマーマウスモデルの過度な神経炎症反応を抑制する抗炎症性効能および記憶力回復効果を確認したところ、認知症発明機序に対する詳しい機序糾明のための追加的研究を通じて新たな認知症治療法設計に寄与できることと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1a】本発明の一実施形態によってPsen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスモデルの製作に関するものであって、図1aはN141I標的挿入のための模式図を示したものであり、図1bは正常(野生型)、KI/+、KI/KIマウスのSangerシーケンシングクロマトグラム結果である。
図1b】本発明の一実施形態によってPsen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスモデルの製作に関するものであって、図1aはN141I標的挿入のための模式図を示したものであり、図1bは正常(野生型)、KI/+、KI/KIマウスのSangerシーケンシングクロマトグラム結果である。
図2a】本発明の一実施形態によってPsen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスモデルが正常(野生型)マウスに比べて過度に炎症反応を起こすということを確認したものであって、図2aは多様な濃度のlipopolysaccharide(LPS)腹腔注射による神経炎症を誘導した動物でIL-6の血中濃度を示す。多様な濃度のLPS腹腔注射によってIL-6は全てのLSP濃度でPsen2変異アルツハイマーマウスで過発現され、正常マウスとアルツハイマーモデルの発現差は低濃度でますます広がる。図2bはLPS腹腔注射によるTNF-αの生成を示し、全てのLPS濃度でTNF-αは正常マウスとPsen2 N141I変異アルツハイマーマウス間に同一な血中濃度を示す。図2cは概日時計調節を受けると知られた炎症性サイトカインであるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の血中濃度の変化を示す。野生型マウスでは炎症反応を起こさない低濃度のLPS(0.35μg/kg)を注射した時Psen2 N141I変異マウスのみでTNF-αと異なり概日時計性炎症サイトカインが顕著に増加するのを示す。
図2b】本発明の一実施形態によってPsen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスモデルが正常(野生型)マウスに比べて過度に炎症反応を起こすということを確認したものであって、図2aは多様な濃度のlipopolysaccharide(LPS)腹腔注射による神経炎症を誘導した動物でIL-6の血中濃度を示す。多様な濃度のLPS腹腔注射によってIL-6は全てのLSP濃度でPsen2変異アルツハイマーマウスで過発現され、正常マウスとアルツハイマーモデルの発現差は低濃度でますます広がる。図2bはLPS腹腔注射によるTNF-αの生成を示し、全てのLPS濃度でTNF-αは正常マウスとPsen2 N141I変異アルツハイマーマウス間に同一な血中濃度を示す。図2cは概日時計調節を受けると知られた炎症性サイトカインであるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の血中濃度の変化を示す。野生型マウスでは炎症反応を起こさない低濃度のLPS(0.35μg/kg)を注射した時Psen2 N141I変異マウスのみでTNF-αと異なり概日時計性炎症サイトカインが顕著に増加するのを示す。
図2c】本発明の一実施形態によってPsen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスモデルが正常(野生型)マウスに比べて過度に炎症反応を起こすということを確認したものであって、図2aは多様な濃度のlipopolysaccharide(LPS)腹腔注射による神経炎症を誘導した動物でIL-6の血中濃度を示す。多様な濃度のLPS腹腔注射によってIL-6は全てのLSP濃度でPsen2変異アルツハイマーマウスで過発現され、正常マウスとアルツハイマーモデルの発現差は低濃度でますます広がる。図2bはLPS腹腔注射によるTNF-αの生成を示し、全てのLPS濃度でTNF-αは正常マウスとPsen2 N141I変異アルツハイマーマウス間に同一な血中濃度を示す。図2cは概日時計調節を受けると知られた炎症性サイトカインであるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の血中濃度の変化を示す。野生型マウスでは炎症反応を起こさない低濃度のLPS(0.35μg/kg)を注射した時Psen2 N141I変異マウスのみでTNF-αと異なり概日時計性炎症サイトカインが顕著に増加するのを示す。
図3a図3aは正常マウスとPsen2 N141I変異アルツハイマーマウスの海馬でIba-1(小膠細胞標識抗体)染色イメージを示し、図3bはIMARISソフトウェアを使用してIba-1信号を3Dフィラメントイメージ化した図であり、図3cはIMARISソフトウェアのFilamentTracker分析を通じてdendrite長さと枝数データを示す。これによって、Psen2 N141I変異アルツハイマーマウスは低濃度の炎症刺激にも概日時計性サイトカインを生成して過度に免疫反応を起こすということが分かる。
図3b図3aは正常マウスとPsen2 N141I変異アルツハイマーマウスの海馬でIba-1(小膠細胞標識抗体)染色イメージを示し、図3bはIMARISソフトウェアを使用してIba-1信号を3Dフィラメントイメージ化した図であり、図3cはIMARISソフトウェアのFilamentTracker分析を通じてdendrite長さと枝数データを示す。これによって、Psen2 N141I変異アルツハイマーマウスは低濃度の炎症刺激にも概日時計性サイトカインを生成して過度に免疫反応を起こすということが分かる。
図3c図3aは正常マウスとPsen2 N141I変異アルツハイマーマウスの海馬でIba-1(小膠細胞標識抗体)染色イメージを示し、図3bはIMARISソフトウェアを使用してIba-1信号を3Dフィラメントイメージ化した図であり、図3cはIMARISソフトウェアのFilamentTracker分析を通じてdendrite長さと枝数データを示す。これによって、Psen2 N141I変異アルツハイマーマウスは低濃度の炎症刺激にも概日時計性サイトカインを生成して過度に免疫反応を起こすということが分かる。
図4a】Psen2 N141I変異アルツハイマーマウスモデルが低濃度のLPS腹腔注射によって記憶力悪化を示すことを確認した結果であって、図4aはY-maze分析を通じて神経炎症誘導されたPsen2 N141I変異マウスは記憶力悪化を示すのを確認したものである。図4bはY-maze分析でマウスの運動性に差がないのを示すものである。図4cはT-maze分析実験方法に対する模式図であり、図4dはT-maze分析を通じて神経炎症誘導されたPsen2 N141I変異マウスは成功率が顕著に低下して記憶力悪化を示すのを確認したものである。
図4b】Psen2 N141I変異アルツハイマーマウスモデルが低濃度のLPS腹腔注射によって記憶力悪化を示すことを確認した結果であって、図4aはY-maze分析を通じて神経炎症誘導されたPsen2 N141I変異マウスは記憶力悪化を示すのを確認したものである。図4bはY-maze分析でマウスの運動性に差がないのを示すものである。図4cはT-maze分析実験方法に対する模式図であり、図4dはT-maze分析を通じて神経炎症誘導されたPsen2 N141I変異マウスは成功率が顕著に低下して記憶力悪化を示すのを確認したものである。
図4c】Psen2 N141I変異アルツハイマーマウスモデルが低濃度のLPS腹腔注射によって記憶力悪化を示すことを確認した結果であって、図4aはY-maze分析を通じて神経炎症誘導されたPsen2 N141I変異マウスは記憶力悪化を示すのを確認したものである。図4bはY-maze分析でマウスの運動性に差がないのを示すものである。図4cはT-maze分析実験方法に対する模式図であり、図4dはT-maze分析を通じて神経炎症誘導されたPsen2 N141I変異マウスは成功率が顕著に低下して記憶力悪化を示すのを確認したものである。
図4d】Psen2 N141I変異アルツハイマーマウスモデルが低濃度のLPS腹腔注射によって記憶力悪化を示すことを確認した結果であって、図4aはY-maze分析を通じて神経炎症誘導されたPsen2 N141I変異マウスは記憶力悪化を示すのを確認したものである。図4bはY-maze分析でマウスの運動性に差がないのを示すものである。図4cはT-maze分析実験方法に対する模式図であり、図4dはT-maze分析を通じて神経炎症誘導されたPsen2 N141I変異マウスは成功率が顕著に低下して記憶力悪化を示すのを確認したものである。
図5a】低濃度のLPSで神経炎症を誘導したPsen2変異アルツハイマーモデルでクロルプロマジン処理による抗炎症効果を確認したものであって、図5aは一次培養した小膠細胞でクロルプロマジン処理有無による概日時計を有する炎症性サイトカインIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成減少を示したものであり、図5bはクロルプロマジン処理有無による概日時計性炎症性サイトカインのmRNA発現抑制を示したものである。概日時計性サイトカインと異なり、TNF-αの生成とmRNA発現はクロルプロマジンによって影響を受けなかった。図5cは概日時計調節を受けないと知られた他の例であるIL-1βの生成とmRNA発現がLPSによって正常細胞とPsen2 N141I変異小膠細胞間に同一な程度に誘導されるということを示し、クロルプロマジン処理によってIL-1β生成が影響を受けないということを示す。
図5b】低濃度のLPSで神経炎症を誘導したPsen2変異アルツハイマーモデルでクロルプロマジン処理による抗炎症効果を確認したものであって、図5aは一次培養した小膠細胞でクロルプロマジン処理有無による概日時計を有する炎症性サイトカインIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成減少を示したものであり、図5bはクロルプロマジン処理有無による概日時計性炎症性サイトカインのmRNA発現抑制を示したものである。概日時計性サイトカインと異なり、TNF-αの生成とmRNA発現はクロルプロマジンによって影響を受けなかった。図5cは概日時計調節を受けないと知られた他の例であるIL-1βの生成とmRNA発現がLPSによって正常細胞とPsen2 N141I変異小膠細胞間に同一な程度に誘導されるということを示し、クロルプロマジン処理によってIL-1β生成が影響を受けないということを示す。
図5c】低濃度のLPSで神経炎症を誘導したPsen2変異アルツハイマーモデルでクロルプロマジン処理による抗炎症効果を確認したものであって、図5aは一次培養した小膠細胞でクロルプロマジン処理有無による概日時計を有する炎症性サイトカインIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成減少を示したものであり、図5bはクロルプロマジン処理有無による概日時計性炎症性サイトカインのmRNA発現抑制を示したものである。概日時計性サイトカインと異なり、TNF-αの生成とmRNA発現はクロルプロマジンによって影響を受けなかった。図5cは概日時計調節を受けないと知られた他の例であるIL-1βの生成とmRNA発現がLPSによって正常細胞とPsen2 N141I変異小膠細胞間に同一な程度に誘導されるということを示し、クロルプロマジン処理によってIL-1β生成が影響を受けないということを示す。
図6】LPSの代わりにアルツハイマー認知症の直接的病因である凝集された(fibrilized)アミロイドベータ1-42(fAβ42)を小膠細胞で処理した時、概日時計性炎症性サイトカインIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成がPsen2 N141I変異小膠細胞のみで過度に増加し、クロルプロマジンが生成を抑制するということを示す。反面、TNF-αは正常小膠細胞とPsen2 N141I変異小膠細胞で全て同一に生成され、クロルプロマジンによって影響を受けなかった。
図7a図7aはPsen2 N141I遺伝子変異によって小膠細胞でREV-ERBαタンパク質の遺伝子であるNr1d1のmRNA発現が低下しており、クロルプロマジン処理によるNr1d1 mRNA発現回復を示したものであり、図7bはクロルプロマジン処理によるREV-ERBαタンパク質発現回復を確認したものである。
図7b図7aはPsen2 N141I遺伝子変異によって小膠細胞でREV-ERBαタンパク質の遺伝子であるNr1d1のmRNA発現が低下しており、クロルプロマジン処理によるNr1d1 mRNA発現回復を示したものであり、図7bはクロルプロマジン処理によるREV-ERBαタンパク質発現回復を確認したものである。
図8a】REV-ERBα agonistと知られたSR9009薬物の抗炎症効果を確認したものであって、SR9009は正常小膠細胞では時間によってIL-6の生成(図8a)とmRNA発現水準(図8b)を抑制するが、Psen2 N141I変異小膠細胞ではLPSによるIL-6過発現を抑制することができないということを示す。これによって、Psen2 N141I変異による過度な神経炎症反応抑制のためにはREV-ERBαの発現回復が先決されなければならないのが分かる。また、REV-ERBα活性薬物が正常小膠細胞で抗炎症効能があってもPsen2家族性認知症では認知症治療効果がないことがあるのを提示する。
図8b】REV-ERBα agonistと知られたSR9009薬物の抗炎症効果を確認したものであって、SR9009は正常小膠細胞では時間によってIL-6の生成(図8a)とmRNA発現水準(図8b)を抑制するが、Psen2 N141I変異小膠細胞ではLPSによるIL-6過発現を抑制することができないということを示す。これによって、Psen2 N141I変異による過度な神経炎症反応抑制のためにはREV-ERBαの発現回復が先決されなければならないのが分かる。また、REV-ERBα活性薬物が正常小膠細胞で抗炎症効能があってもPsen2家族性認知症では認知症治療効果がないことがあるのを提示する。
図9a】REV-ERBα発現減少が概日時計性サイトカインの過発現原因であるということを立証するための実験であって、図9aは正常小膠細胞でREV-ERBα knockdownを確認したものであり、図9bはREV-ERBα knockdownがLPS処理によるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成をさらに増加させ、図9cはREV-ERBα knockdownがLPS処理によるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現をさらに増加させるということを示す。図9dはPsen2 N141I変異小膠細胞でREV-ERBαを過発現を確認したものであり、図9eはREV-ERBα過発現がLPSによるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成を減少させ、図9fはREV-ERBα過発現がLPSによるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現水準を顕著に減少させることを示す。反面、概日時計調節を受けないTNF-αは、REV-ERBαの発現調節に影響を受けなかった。これによって、REV-ERBαの発現低下がPsen2 N141I変異小膠細胞で概日時計性サイトカインの過発現の原因であるのが分かる。
図9b】REV-ERBα発現減少が概日時計性サイトカインの過発現原因であるということを立証するための実験であって、図9aは正常小膠細胞でREV-ERBα knockdownを確認したものであり、図9bはREV-ERBα knockdownがLPS処理によるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成をさらに増加させ、図9cはREV-ERBα knockdownがLPS処理によるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現をさらに増加させるということを示す。図9dはPsen2 N141I変異小膠細胞でREV-ERBαを過発現を確認したものであり、図9eはREV-ERBα過発現がLPSによるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成を減少させ、図9fはREV-ERBα過発現がLPSによるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現水準を顕著に減少させることを示す。反面、概日時計調節を受けないTNF-αは、REV-ERBαの発現調節に影響を受けなかった。これによって、REV-ERBαの発現低下がPsen2 N141I変異小膠細胞で概日時計性サイトカインの過発現の原因であるのが分かる。
図9c】REV-ERBα発現減少が概日時計性サイトカインの過発現原因であるということを立証するための実験であって、図9aは正常小膠細胞でREV-ERBα knockdownを確認したものであり、図9bはREV-ERBα knockdownがLPS処理によるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成をさらに増加させ、図9cはREV-ERBα knockdownがLPS処理によるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現をさらに増加させるということを示す。図9dはPsen2 N141I変異小膠細胞でREV-ERBαを過発現を確認したものであり、図9eはREV-ERBα過発現がLPSによるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成を減少させ、図9fはREV-ERBα過発現がLPSによるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現水準を顕著に減少させることを示す。反面、概日時計調節を受けないTNF-αは、REV-ERBαの発現調節に影響を受けなかった。これによって、REV-ERBαの発現低下がPsen2 N141I変異小膠細胞で概日時計性サイトカインの過発現の原因であるのが分かる。
図9d】REV-ERBα発現減少が概日時計性サイトカインの過発現原因であるということを立証するための実験であって、図9aは正常小膠細胞でREV-ERBα knockdownを確認したものであり、図9bはREV-ERBα knockdownがLPS処理によるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成をさらに増加させ、図9cはREV-ERBα knockdownがLPS処理によるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現をさらに増加させるということを示す。図9dはPsen2 N141I変異小膠細胞でREV-ERBαを過発現を確認したものであり、図9eはREV-ERBα過発現がLPSによるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成を減少させ、図9fはREV-ERBα過発現がLPSによるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現水準を顕著に減少させることを示す。反面、概日時計調節を受けないTNF-αは、REV-ERBαの発現調節に影響を受けなかった。これによって、REV-ERBαの発現低下がPsen2 N141I変異小膠細胞で概日時計性サイトカインの過発現の原因であるのが分かる。
図9e】REV-ERBα発現減少が概日時計性サイトカインの過発現原因であるということを立証するための実験であって、図9aは正常小膠細胞でREV-ERBα knockdownを確認したものであり、図9bはREV-ERBα knockdownがLPS処理によるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成をさらに増加させ、図9cはREV-ERBα knockdownがLPS処理によるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現をさらに増加させるということを示す。図9dはPsen2 N141I変異小膠細胞でREV-ERBαを過発現を確認したものであり、図9eはREV-ERBα過発現がLPSによるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成を減少させ、図9fはREV-ERBα過発現がLPSによるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現水準を顕著に減少させることを示す。反面、概日時計調節を受けないTNF-αは、REV-ERBαの発現調節に影響を受けなかった。これによって、REV-ERBαの発現低下がPsen2 N141I変異小膠細胞で概日時計性サイトカインの過発現の原因であるのが分かる。
図9f】REV-ERBα発現減少が概日時計性サイトカインの過発現原因であるということを立証するための実験であって、図9aは正常小膠細胞でREV-ERBα knockdownを確認したものであり、図9bはREV-ERBα knockdownがLPS処理によるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成をさらに増加させ、図9cはREV-ERBα knockdownがLPS処理によるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現をさらに増加させるということを示す。図9dはPsen2 N141I変異小膠細胞でREV-ERBαを過発現を確認したものであり、図9eはREV-ERBα過発現がLPSによるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成を減少させ、図9fはREV-ERBα過発現がLPSによるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現水準を顕著に減少させることを示す。反面、概日時計調節を受けないTNF-αは、REV-ERBαの発現調節に影響を受けなかった。これによって、REV-ERBαの発現低下がPsen2 N141I変異小膠細胞で概日時計性サイトカインの過発現の原因であるのが分かる。
図10a図10aは5xFADアルツハイマーマウスモデルの小膠細胞でNr1d1 mRNA発現水準が正常マウス細胞と同一であるという結果である。図10bは5xFADアルツハイマーマウスモデルで炎症性サイトカインIL-6とTNF-αの血中濃度は差がないのを示す結果である。5xFADマウスは総5個の認知症関連突然変異があるAPPおよびPSEN1遺伝子(APP;Swedish(K670N/M671L)、Florida(I716V)、and London(V717I) mutations and PSEN1;M146L and L286V mutations)を発現するマウスモデルであって、この結果はREV-ERBα発現低下による過度な免疫反応がPsen2家族性アルツハイマーの特性であり得るのを提示する。
図10b図10aは5xFADアルツハイマーマウスモデルの小膠細胞でNr1d1 mRNA発現水準が正常マウス細胞と同一であるという結果である。図10bは5xFADアルツハイマーマウスモデルで炎症性サイトカインIL-6とTNF-αの血中濃度は差がないのを示す結果である。5xFADマウスは総5個の認知症関連突然変異があるAPPおよびPSEN1遺伝子(APP;Swedish(K670N/M671L)、Florida(I716V)、and London(V717I) mutations and PSEN1;M146L and L286V mutations)を発現するマウスモデルであって、この結果はREV-ERBα発現低下による過度な免疫反応がPsen2家族性アルツハイマーの特性であり得るのを提示する。
図11a】クロルプロマジン処理によって生体内で概日時計性炎症サイトカインの発現と記憶力回復を確認するための実験であって、図11aは実験概略図を示したものである。この実験でのクロルプロマジン濃度(0.25mg/kg)は既存の知られたクロルプロマジンの用途である抗精神病に使用される濃度(25mg/回、3回/日)より数十倍~数百倍低い濃度である。図11bは図11aの概略図に示された実験を行った結果の血中サイトカイン濃度を示したものであり、図11cはY-maze分析を通じて神経炎症誘導マウスにクロルプロマジン処理による記憶力回復効果を確認したものである。図11dはY-maze分析でマウスの運動性には差がないのを確認したものである。
図11b】クロルプロマジン処理によって生体内で概日時計性炎症サイトカインの発現と記憶力回復を確認するための実験であって、図11aは実験概略図を示したものである。この実験でのクロルプロマジン濃度(0.25mg/kg)は既存の知られたクロルプロマジンの用途である抗精神病に使用される濃度(25mg/回、3回/日)より数十倍~数百倍低い濃度である。図11bは図11aの概略図に示された実験を行った結果の血中サイトカイン濃度を示したものであり、図11cはY-maze分析を通じて神経炎症誘導マウスにクロルプロマジン処理による記憶力回復効果を確認したものである。図11dはY-maze分析でマウスの運動性には差がないのを確認したものである。
図11c】クロルプロマジン処理によって生体内で概日時計性炎症サイトカインの発現と記憶力回復を確認するための実験であって、図11aは実験概略図を示したものである。この実験でのクロルプロマジン濃度(0.25mg/kg)は既存の知られたクロルプロマジンの用途である抗精神病に使用される濃度(25mg/回、3回/日)より数十倍~数百倍低い濃度である。図11bは図11aの概略図に示された実験を行った結果の血中サイトカイン濃度を示したものであり、図11cはY-maze分析を通じて神経炎症誘導マウスにクロルプロマジン処理による記憶力回復効果を確認したものである。図11dはY-maze分析でマウスの運動性には差がないのを確認したものである。
図11d】クロルプロマジン処理によって生体内で概日時計性炎症サイトカインの発現と記憶力回復を確認するための実験であって、図11aは実験概略図を示したものである。この実験でのクロルプロマジン濃度(0.25mg/kg)は既存の知られたクロルプロマジンの用途である抗精神病に使用される濃度(25mg/回、3回/日)より数十倍~数百倍低い濃度である。図11bは図11aの概略図に示された実験を行った結果の血中サイトカイン濃度を示したものであり、図11cはY-maze分析を通じて神経炎症誘導マウスにクロルプロマジン処理による記憶力回復効果を確認したものである。図11dはY-maze分析でマウスの運動性には差がないのを確認したものである。
図12】正常対照群および神経炎症性アルツハイマー動物モデルの小膠細胞で炎症性サイトカインの発現機序と、クロルプロマジン処理による変化を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供させるものに過ぎず、下記の実施例によって本発明の内容が限定されるのではない。
【実施例
【0056】
実施例1:疾患動物モデルの製造
動物の管理および使用に関する全ての手続は動物管理機関(Institutional Animal care)およびDGIST使用委員会(Use Committee of DGIST)の承認を受けて行った。動物はDGIST動物施設(DGIST animal facility)で12時間の明周期、12時間の暗周期下に無菌環境で維持された。
【0057】
人間神経炎症性疾患、例えば、アルツハイマー疾患をより正確に再現し、内因性発現水準を維持するために異型接合Psen2N141I/+(KI/+)マウスを使用した。Psen2N141I/+マウスは相同組換えを使用して生成された。
【0058】
具体的に、家族性アルツハイマー突然変異のうちの一つであってpresenilin2遺伝子の141番アミノ酸N(アルギニン)がI(イソロイシン)で置換されたPsen2 N141I knock-in(KI)動物モデルを製作しようとした。標的化ベクターはエクソン4部位のI141突然変異およびNeo-loxp配列を含む。標的化ベクターの相同性部位は野生型(WT)対立遺伝子のPsen2に挿入された。Psen2N141I/N141I;loxp-Neo-loxpマウスはPsen2N141I突然変異knock-inマウスモデルを生成するためにCre-loxpシステムを使用してCreマウスと交配された。
【0059】
本実施例で“Psen2N141I”とは動物モデルの正常Psen2遺伝子を人間で報告された認知症突然変異と同一な変異を発現するように置換したことを意味し、より具体的には、マウスPresenilin2遺伝子の141番アミノ酸をNからIに置換されたことを意味する。本発明では、Psen2N141I遺伝子として配列番号1のポリヌクレオチドを使用し、野生型Psen2遺伝子は配列番号2に示す。
【0060】
図1aのようにPsen2N141I対立遺伝子(Psen2N141I/+ and Psen2N141I/N141I)を保有したKIマウスを生成した。図1bに示したように、AAC配列からなるAsparagine(N)でAACとATCへの置換はAsparagine(N)とIsoleucine(I)を全て有するKI/+モデル、全てATCで置換されたI141を有するKI/KIモデルをマウスの尾から抽出したDNAのゲノム配列分析を通じて確認した。
【0061】
実施例2:LPSによる疾患動物モデルの炎症誘発
本実施例は、Psen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスモデルが正常(野生型)マウスに比べて過度に炎症反応を起こすということを確認するために行った。
【0062】
2-1:炎症誘発LPS濃度分析
Psen2N141I/+マウスから派生した小膠細胞の免疫反応が悪化するにつれて動物が炎症および認知機能低下を示す傾向があるのを確認するために、多様なLPS濃度で野生型およびPsen2N141I/+マウス間の免疫反応を比較した。
【0063】
マウスの免疫反応は活動が始まる頃から数時間内に最高潮に達する傾向を示すところ、8週齢の野生型およびPsen2N141I/+マウスに18:00時基準でLPSを腹腔内(i.p.)注入し(Zeitgeber時間11:00、07:00に点灯、19:00に消灯)20時間後、翌日14:00時に炎症反応をモニターした。LPSはEscherichia coli 0111:B4 strainから得たものであって、Toll様受容体4のリガンドとして作用して細胞の免疫反応を誘導する。Phosphate-buffered saline(PBS)に濃度に合わせて希釈したLPSを100μLずつマウス腹腔内に注入する。
【0064】
具体的に、前記実施例1で得られたPsen2N141I変異アルツハイマー疾病マウスモデルに1.4、3.6、4.0、25、および5,000μg/kg濃度のLPS腹腔注射によって神経炎症を誘導した。
【0065】
対照実験として、前記アルツハイマー疾病マウスモデルの代わりに、野生型マウスモデルを使用して同一にLPSを注入して神経炎症誘発試験を行った。また、対照実験としてLPSを注入しない野生型マウスとPsen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスモデルを準備した。したがって、グループ1はLPSを注入しない野生型マウス(WT(LPS(-)))、グループ2は多様なLPSを投入した野生型マウス(WT(LPS(+)))、グループ3はLPSを注入しないアルツハイマー疾病マウスモデル(KI/+(LPS(-)))、グループ4は多様なLPSを投入したアルツハイマー疾病マウスモデル(KI/+(LPS(+)))を準備した。一つグループ当りマウスはそれぞれ5~8匹を使用した。
【0066】
多様な濃度のLPS注入による神経炎症を調査するために、前記LPSを注入して約20時間が経過した後に、グループ2の野生型マウスおよびグループ4のアルツハイマー疾病マウスモデルの頬静脈から血液を抽出し、遠心分離を通じて得られた血清でそれぞれIL-6、TNFα、CCL2、CXCL1、CCL5用ELISAキット(R&D Systems)を用いて製造会社の指針に従って各タンパク質量をELISA方法で測定した。また、グループ1のLPSを注入しない野生型マウスとグループ3のPsen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスモデルで同一に血清を抽出してキット製造会社の指針に従って各タンパク質量をELISA方法で測定した。
【0067】
前記グループ1~グループ4のマウスの血清で分析したIL-6とTNF-α濃度を下記表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1は、各グループでL-6とTNF-αの血中濃度の平均値(mean±SEM)を示す。LPS注入したグループ2の野生型マウスおよびグループ4のアルツハイマー疾病マウスモデルで多様な濃度のLPS腹腔注射によってIL-6は全て過発現され、野生型マウスとアルツハイマー疾病マウスモデルの発現差は低濃度でますます広がる。LPSによってTNF-αは野生型マウスとアルツハイマー疾病マウスモデル間に同一な血中濃度を示す。グループ1のLPSを注入しない野生型マウスとグループ3のPsen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスモデルではIL-6とTNF-αの両方とも分泌量が非常に少なくて同一である。
【0070】
その結果、図2aは野生型マウスと比較してKI/+アルツハイマー疾病マウスはテストされた全てのLPS容量でIL-6の循環水準が高く、遺伝子型間の差は低い容量でさらに著しく示されることを確認し、TNF-αの血中濃度は全ての容量で遺伝子型間に同一に示されることを確認した。
【0071】
2-2:低濃度のLPS処理による疾病動物の炎症誘発
前記実施例2-1と同様な方法でグループ1~グループ4の動物を準備し、但しグループ2およびグループ4では多様な濃度のLPS処理の代わりに、野生型マウスでは炎症反応を起こさない低濃度のLPS(0.35μg/kg)を使用した。
【0072】
マウスモデルで同一に血清を抽出しキット製造会社の指針に従って各タンパク質量をELISA方法で測定した。前記グループ1~グループ4のマウスの血清で分析した概日時計調節を受けると知られた炎症性サイトカインであるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の血中濃度を下記表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
上記表2に概日時計調節を受けると知られた炎症性サイトカインであるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の血中濃度の変化(mean±SEM)を示す。グループ2で、野生型マウスでは炎症反応を起こさない低濃度のLPS(0.35μg/kg)を注射した時、グループ4のPsen2アルツハイマー疾病マウスのみでTNF-αと異なり炎症性サイトカインが顕著に増加するのを確認した。
【0075】
図2bに示したように、最も低いLPS容量(0.35μg/体重kg)は野生型マウスで炎症を起こさなかったが、Psen2アルツハイマー疾病マウスで概日時計調節を受けるサイトカイン(IL-6、CXCL1、CCL2そしてCCL5)の血中濃度が顕著に増加するのを示す。
【0076】
実施例3:小膠細胞形態分析を用いた神経炎症動物モデルの炎症悪化確認
小膠細胞の形態はその機能と密接な関連があり、小膠細胞の活性化は形状変化と関連することを特徴とし、概日時計調節を受けるサイトカインの増加された生産が小膠細胞の形態に反映されるかどうかを確認するために、免疫組織化学分析を通じて、小膠細胞特異的マーカであるIba-1に対抗する抗体を使用して野生型およびPsen2変異アルツハイマー疾病マウスの海馬で小膠細胞の形状を調査した。
【0077】
前記実施例2-2で準備されたグループ1~グループ4のマウスに対して免疫組織化学分析および共焦点分析を行った。前記グループ2およびグループ4に注入されたLPS濃度は野生型マウスで炎症反応を起こさない低濃度のLPS(0.35μg/kg)を使用したのである。
【0078】
免疫組織化学分析は具体的に、マウスはゾレチル(Virbac、50mg/kg)とロムプン(Bayer、10mg/kg)混合物を注入して麻酔した。その後、マウスにPBSを灌流し、4%のparaformaldehyde(PFA)を灌流して固定した。脳を採取して4%PFAで16時間固定させた後、チューブ底に沈むまで30%のスクロースに移した後frozen溶液を用いて保管した。Coronal方向に50μm厚さでスライスした脳試料を95℃で抗原復旧(antigen retrieval)過程を経た後、4℃で24時間3%ウシ血清アルブミンが含有されたPBSでIBA-1抗体(1:250)を処理後、常温で2時間2次抗体を処理した。イメージはLSM7およびLSM700共焦点レーザスキャン顕微鏡を用いた。
【0079】
図3aに示したように、グループ1の野生型マウスの海馬にある小膠細胞は高度に分派した過程を有する小さな細胞体を有しており、サイトカイン放出誘導がないものと一致して低容量のLPSはグループ2の野生型マウス海馬の小膠細胞の形態を変更しない反面、LPS注入がない場合にもグループ3のPsen2変異アルツハイマー疾病マウスの海馬小膠細胞はさらに短い丸い形状の拡大された体細胞を示し、このような形態学的特徴はグループ4でLPS注入によってさらに増加することを確認した。
【0080】
図3bに示したように、グループ1~グループ4のマウス海馬の小膠細胞の組織学的共焦点イメージを3D形態に再構成しIMARISソフトウェアを使用して多様な形態学的媒介変数を測定した。具体的に、共焦点顕微鏡で無作為に選択されたフィールドの全体Z軸を合わせてイメージを得た後、IMARISソフトウェア(v9.2.1、bitplane AG)を使用して3Dイメージング化した。
【0081】
【表3】
【0082】
上記表3は、dendrite長さ、dendrite枝数の定量値(mean±SEM)を整理した。
【0083】
その結果、図3cに示したように、各小膠細胞の総樹状突起長さと樹状突起末端地点はグループ1と2の野生型マウスに比べてグループ3と4のアルツハイマー疾病マウスおよびLPS注入によってさらに減少することを確認した。前記結果から、形態学に基づいた時、小膠細胞活性化はPsen2変異アルツハイマー疾病マウスで明らかに示され、軽いLPS注入によって追加的に誘導されるのを確認した。
【0084】
実施例4:神経炎症動物モデルの記憶力減退確認
4-1.Y-maze分析
前記実施例2-2で準備されたグループ1~グループ4のマウスの空間学習能力および記憶能力を検査するためにLPS注入20時間後、Y-mazeテストを行った。前記グループ2およびグループ4に注入されたLPS濃度は野生型マウスで炎症反応を起こさない低濃度のLPS(0.35μg/kg)を使用したのである。
【0085】
具体的に、Y-mazeは空間作業記憶能力を評価するのに使用される。Y字形態の迷路の白いプラスチックアームで行い、マウスをアームに入れて5分間自由にアームを探索することができるようにした。実験はEthoVisionソフトウェア(Noldus)で記録された。エントリーの数とトライアド数を分析して3個の連続エントリーの数を可能なトライアド数×100(総アームエントリー-2)で割って交代比率(alternation)を計算した。
【0086】
【表4】
【0087】
上記表4は各グループのY-mazeの交代比率とアームエントリー数の平均値(mean±SEM)を示したものである。その結果、図4aおよび4bに示したように、Y-mazeでアーム交代はグループ1の野生型マウス(13匹)とLPSを注入した野生型マウスグループ2(13匹)では炎症性サイトカイン分泌と比例して記憶能力の差はない。LPS注入ないグループ1の野生型マウスとグループ3のPsen2変異アルツハイマー疾病マウス(12匹)でも記憶能力の差を示さないが、LPSを注入したグループ4のPsen2変異アルツハイマー疾病マウスグループ(15匹)では有意味に減少した。アームエントリー総数は全てのグループで同一なので正常的な運動機能を示すことを確認した。
【0088】
4-2.T-maze分析
前記実施例2-2で準備されたグループ1~グループ4のマウスの学習記憶力を追加的に分析するためにLPS注入20時間後に食品報酬を通じたT-mazeテストを行った。前記グループ2およびグループ4に注入されたLPS濃度は野生型マウスで炎症反応を起こさない低濃度のLPS(0.35μg/kg)を使用したのである。
【0089】
具体的に、T-mazeは、報酬に対する空間学習と記憶を評価するのに使用された。図4cで示したように、T字形状の迷路の白いプラスチックアームで行われ、実験前5分間マウスを迷路と餌報酬に適応させ、その次の施行では両アームに一側アームを遮断し一側に報酬を与えた。マウスは開放されたアームに到着して報酬を確認し、次の施行では以前に閉鎖したアームを開放して、マウスを再び出発させて、新しく開放されたアームを選択すれば報酬を確認することができるようにする。もしマウスが以前に訪問したアームを誤って選択したとすれば、報酬を受けることができない。数回の施行を通じて正しいアームを訪問した施行回数は全体施行の百分率で計算する。
【0090】
【表5】
【0091】
上記表5は、各グループのT-maze遂行結果成功率の平均値(mean±SEM)を示す。その結果、図4dに示したようにグループ1の野生型マウス(11匹)とLPSを注入したグループ2(11匹)では炎症性サイトカイン分泌と比例して学習および記憶能力の差はない。LPS注入ないグループ1の野生型マウスとグループ3のアルツハイマー疾病マウス(10匹)でも学習および記憶能力の差を示さないが、LPSを注入したグループ4のアルツハイマー疾病マウスグループ(10匹)では有意味に減少した。
【0092】
前記結果から、低い容量のLPSは免疫反応の過活性を誘導しPsen2 N141I KI/+アルツハイマー疾病マウスでIL-6を含む概日時計調節を受けるサイトカインの過量生産を通じて記憶力欠乏を誘発する反面、同一な容量のLPSは野生型マウスには無害であるということを確認した。
【0093】
実施例5:疾患動物の小膠細胞を用いた薬物の神経炎症抑制効能
5-1:マウスで一次培養した小膠細胞準備
野生型マウスとPsen2N141I/+アルツハイマー疾病マウスで一次培養した小膠細胞を準備した。具体的に、1~3日齢の新生マウスから脳を抽出した後、細胞を分離し、10%熱-不活性化させたウシ胎児血清(HI-FBS、Hyclone)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Hyclone)が補充されたDulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM、Corning)で培養した。1次小膠細胞は試験管内でタッピング(tapping)して12日に分離された。1次小膠細胞の純度は小膠細胞マーカである抗-Iba-1抗体で免疫染色して推定した。
【0094】
5-2:小膠細胞を用いたクロルプロマジン処理による概日時計性サイトカイン生成および発現分析
前記実施例5-1で得られた、野生型マウスとPsen2変異アルツハイマー疾病マウスに由来した一次培養した小膠細胞に全てLPS(1μg/mL)を12時間処理し、この時、クロルプロマジンを処理しない実験群と、クロルプロマジンを小膠細胞のメディアに0.5μM容量で30分から前処理を行った実験群で抗炎症効果を比較分析した。具体的に、前記実施例5-1で得られた野生型マウスに由来した一次培養した小膠細胞にクロルプロマジンを処理しないグループをグループ5(WT/LPS(+)/CPZ(-))と、クロルプロマジンを処理したグループをグループ6(WT/LPS(+)/CPZ(+))と、前記実施例5-1で得られたPsen2変異アルツハイマー疾病マウスに由来した一次培養した小膠細胞にクロルプロマジンを処理しないグループをグループ7(KI/+/LPS(+)/CPZ(-))と、クロルプロマジンを処理したグループをグループ8(KI/+/LPS(+)/CPZ(+))と命名した。
【0095】
概日時計サイトカイン生成を測定するためには、処理した細胞の培養液を集めてそれぞれIL-6、TNFα、CCL2、CXCL1、CCL5用ELISAキット(R&D Systems)を用いて製造会社の指針に従って各サイトカイン量をELISA方法で測定した。
【0096】
前記各グループから培養液を採取した後、小膠細胞から分析対象サイトカインのmRNA発現水準をqRT-PCR(Quantitative RT-PCR)方法で測定した。具体的に、小膠細胞からRNAを分離しImProm-II Reverse Transcriptase kit(Promega)を使用してcDNAを合成した。PCRプライマーは商業的に合成した(Cosmo Genetech)。qRT-PCRはマウスcDNAに特異的なTaq Polymerase(Invitrogen)および下記表6に開示されたプライマーを使用して実施した。また、TOPrealTM qPCR 2×PreMIX(SYBR Green with low ROX)(Enzynomics)を使用し、CFX96 Real-Time System(Bio-Rad)を使用して全てのプライマーに対して50-cycle amplificationを適用した。Actbは正規化のための参照遺伝子として使用された。
【0097】
【表6】
【0098】
【表7】
【0099】
【表8】
【0100】
上記表7は図5aの小膠細胞の培養液で測定した概日時計調節炎症性サイトカイン分泌量に対する平均値(mean±SEM)、表8は図5bの小膠細胞から抽出したmRNAで測定した概日時計調節炎症性サイトカイン発現量に対する平均値(mean±SEM)を示したものである。
【0101】
図5aは、LPS処理によって、前記実施例2-2のマウス血清の炎症性サイトカイン分析のように、グループ5の野生型に比べてグループ7のPsen2変異小膠細胞で概日時計調節炎症性サイトカイン(IL-6、CXCL1、CCL2、CCL5)が増加するということを示す。そして、グループ7に比べてクロルプロマジン0.5μM容量が処理されたグループ8のPsen2変異小膠細胞でIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成減少を示している。グループ5とグループ6の比較を通じて野生型の小膠細胞でクロルプロマジン処理による効果は見られない。また、全てのグループの一次培養した小膠細胞で概日時計調節サイトカインと異なりTNF-αの生成量は同一であり、クロルプロマジンによって影響を受けなかった。
【0102】
図5bは、図5aの分泌量と同様に、LPS処理によってグループ5の野生型に比べてグループ7のPsen2変異アルツハイマー疾病マウスに由来した一次培養小膠細胞で概日時計調節炎症性サイトカイン(IL-6、CXCL1、CCL2、CCL5)のmRNA発現が増加する。そして、グループ7に比べてクロルプロマジン0.5μM容量が処理されたグループ8のPsen2変異小膠細胞でIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現が減少するのを示している。グループ5とグループ6の比較を通じて野生型の小膠細胞でクロルプロマジン処理による効果は見られない。また、全てのグループの一次培養した小膠細胞で概日時計調節サイトカインと異なりTNF-αのmRNA発現水準は同一であり、クロルプロマジンによって影響を受けなかった。
【0103】
5-3:小膠細胞でクロルプロマジン処理による非概日時計性サイトカインIL-1β生成および発現分析
前記実施例5-2で、全てのグループで概日時計調節サイトカインと異なりTNF-αの生成と発現はクロルプロマジンの影響を受けない。同様に、概日時計調節を受けないと知られた他の例であるIL-1βの生成と発現を本実施例5-3で比較した。
【0104】
IL-1βは小膠細胞のインフラマソーム活性化によって分泌されるサイトカインであって、LPSで炎症反応を誘導した後、インフラマソーム活性化を誘導する薬物の追加処理が必要である。野生型とPsen2変異アルツハイマー疾病マウスに由来した一次培養した小膠細胞の培養液にクロルプロマジンを処理しない実験群とクロルプロマジンを0.5μM容量で処理する実験群を分け、クロルプロマジンを30分前処理し、ウシ胎児血清(HI-FBS)を除いた培養液でLPS(1μg/mL)を3時間処理する。その後、培養液にnigericin(10μM)とATP(5mM)を40分処理した後、培養液を集めてIL-1β用ELISAキット(R&D Systems)を用いて製造会社の指針に従ってタンパク質量をELISA方法で測定した。その結果得られた実験群は、実施例5-2で得られたグループ5~8に対して、それぞれNigericinおよびATP処理有無によって10個下位グループに細分でき、それぞれ下位グループは下記表11に示す。
【0105】
そして、培養液を除いた小膠細胞からRNAを抽出して前記実施例5-2のようにmRNAをqRT-PCR分析で測定した。プライマーは表9に開示した。
【0106】
【表9】
【0107】
下記表10および表11は、野生型とPsen2変異アルツハイマー疾病マウスに由来した一次培養小膠細胞にLPS処理とインフラマソーム活性化によるIL-1β生成と発現に対する各グループの平均値(mean±SEM)を示したものである。
【0108】
【表10】
【0109】
【表11】
【0110】
図5cは概日時計調節を受けないと知られた他の例であるIL-1βの生成とmRNA発現がLPSによる炎症反応と二種類のインフラマソーム活性化誘導薬物によって野生型とPsen2変異アルツハイマー疾病マウス由来一次培養小膠細胞間に同一な程度のみ誘導されるということを示し、クロルプロマジンによっても全てのグループがIL-1β生成に影響を受けないということを示す。
【0111】
実施例6:疾患動物の小膠細胞でアミロイドベータで神経炎症誘発および薬物による神経炎症抑制効果
前記実施例5は、野生型とPsen2変異アルツハイマー疾病マウスで一次培養した小膠細胞の培養液にLPSを処理して神経炎症反応を誘発しクロルプロマジンの抑制効果を比較した。
【0112】
本実施例6では、疾病条件をさらによく模写することができるように、神経炎症反応を誘導する人工的な物質LPSの代わりに、アルツハイマーの直接病因である凝集されたアミロイドベータを野生型とKI/+アルツハイマー疾病マウスで一次培養した小膠細胞に処理して神経炎症反応を誘導した時にクロルプロマジンの効果を比較しようとした。
【0113】
具体的に、FITC信号が結合されたアミロイドベータ1-42は下記参照に従って製造した(Cho, M.-H.et al. “Autophagy in microglia degrades extracellular β-amyloid fibrils and regulates the NLRP3 inflammasome.”Autophagy 10, 1761-1775(2014))。
【0114】
前記実施例5-1で準備したPsen2変異アルツハイマー疾病マウスモデル(KI/+)および野生型マウス(WT)に由来した一次培養小膠細胞に、前記製造された凝集された(fibrilized)アミロイドベータ1-42(fAβ42)を4μM濃度で小膠細胞の培養液に直接処理した。前記fAβ42処理された小膠細胞にクロルプロマジンを処理しない実験群と、クロルプロマジン0.5μM容量で処理した実験群で培養液を集めて前記実施例5-2のようにそれぞれIL-6、TNFα、CCL2、CXCL1、CCL5用ELISAキット(R&D Systems)を用いて製造会社の指針に従って各タンパク質量をELISA方法で測定した。
【0115】
【表12】
【0116】
上記表12は、fAβ42処理によって誘導された神経炎症反応とクロルプロマジン処理による炎症抑制反応に対するグループの各概日時計性炎症サイトカインの平均値(mean±SEM)を示したものである。
【0117】
図6は、人工的誘導物質であるLPSの代わりにアルツハイマー認知症の直接的病因である凝集された(fibrilized)アミロイドベータ1-42(fAβ42)を処理したグループ23と25で野生型小膠細胞に比べてPsen2アルツハイマー疾病マウスモデルの小膠細胞で概日時計性炎症サイトカインであるIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成が顕著に増加することを示す。そして、グループ24と26でクロルプロマジンを処理した時、野生型小膠細胞(グループ24)ではクロルプロマジンの効果がないが、Psen2変異アルツハイマー疾病マウスモデルの小膠細胞(グループ26)で炎症抑制効果があるのを示している。
【0118】
反面、TNF-αは、前記実施例5と同様に、野生型小膠細胞とPsen2変異アルツハイマー疾病マウス由来小膠細胞で全て同一に生成され、クロルプロマジンによって影響を受けなかった。このような結果から、Psen2家族性アルツハイマー病が正常グループには無害の程度の低い免疫刺激にも過敏に免疫反応を起こし、その結果、概日時計性サイトカインが過発現されるということが主な特徴であり、概日時計性サイトカインのみを選択的に抑制しても神経炎症を減らすことができるのを確認することができた。これによって、正常グループには影響を与えず、Psen2家族性認知症特異的に過活性化された炎症反応を調節して副作用の少ない認知症治療開発の可能性を提示する。
【0119】
実施例7:病気モデルの小膠細胞を用いた薬物のREV-ERBα発現回復試験
前記実施例5-1の細胞培養方法を使用し、野生型マウスとPsen2アルツハイマー疾病マウスモデルに由来した一次培養小膠細胞を得た後、LPS処理なく試験に使用した。得られた小膠細胞にクロルプロマジンを処理しない実験群と、クロルプロマジン0.5μM容量で処理した実験群で効果を分析した。
【0120】
前記実施例で確認した概日時計調節炎症サイトカイン(IL-6、CXCL1、CCL2、CCL5)を調節する概日リズムと関連するタンパク質と知られたREV-ERBαの遺伝子であるNr1d1のmRNA発現は、実施例5と実質的に同一な方法でqRT-PCR分析を行った。但し、qRT-PCRに使用されたプライマーセットは下記表13に示す。
【0121】
【表13】
【0122】
【表14】
【0123】
上記表14は、野生型とPsen2変異アルツハイマー疾病マウス由来一次培養した小膠細胞でクロルプロマジンの処理有無に対するREV-ERBαタンパク質の遺伝子であるNr1d1のmRNA発現量とREV-ERBαタンパク質発現量に対する平均値(mean±SEM)を示したものである。
【0124】
REV-ERBαタンパク質の遺伝子であるNr1d1のmRNA発現分析結果を、図7aに示した。グループ27の野生型小膠細胞に対比してグループ29のPsen2変異アルツハイマー疾病マウス由来小膠細胞でNr1d1のmRNA発現量が非常に減少しているのを示す。グループ30のクロルプロマジンを0.5μMを処理したPsen2変異アルツハイマー疾病マウス由来小膠細胞で野生型小膠細胞の発現量だけ回復した。反面、グループ28のようにクロルプロマジンは野生型で発現量に影響を与えなかった。
【0125】
また、REV-ERBαタンパク質発現量を比較するためにウェスタンブロット方法で分析した。具体的に、一次培養した小膠細胞を1%TritonX-100溶解緩衝液(1% Triton X-100、250 mM sucrose、1 mM EDTA、1 mM phenylmethylsulfonyl fluoride、and 50 mM NaCl in 20 mM Tris-HCl、pH 7.4)で1×protease and phosphatase inhibitors(Thermo Fisher Scientific)および0.1 M dithiothreitol(Sigma-Aldrich)と共に溶解した。細胞溶解液をsodium dodecyl sulfate-polyacrylamideゲルで電気泳動し、polyvinylidene fluorideメンブレインにトランスファした。前記メンブレインに適切な1次抗体を処理して培養し、結合された抗体に対する種特異的ホースラディッシュペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)が接合された2次抗体を処理した。その後、タンパク質バンドを分析するために化学発光検出(Chemiluminscence)を行った。
【0126】
前記ウェスタンブロット分析結果、図7bは、図7aのmRNA発現量と同様にグループ27の野生型小膠細胞のREV-ERBαタンパク質発現量に比べてグループ29のPsen2変異アルツハイマー疾病マウスモデルに由来した小膠細胞で顕著に減少しているのを示す。グループ30のクロルプロマジンを0.5μMを処理したアルツハイマー疾病マウス由来小膠細胞で野生型小膠細胞の発現量だけ回復した。そして、グループ28でクロルプロマジンの処理は野生型小膠細胞では影響を与えない。
【0127】
前記結果、前記実施例で確認した概日時計調節炎症サイトカイン(IL-6、CXCL1、CCL2、CCL5)を調節する概日リズムと関連するタンパク質と知られたREV-ERBαの発現量はPsen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスモデルで顕著に減少しており、これに対するクロルプロマジンの回復効能を確認した。
【0128】
実施例8:疾病動物の小膠細胞でREV-ERBα活性薬物の効果
前記実施例5-1と同様に、野生型マウスとPsen2変異アルツハイマー疾病マウスモデルに由来した一次培養小膠細胞を得て試験に使用した。
【0129】
前記準備した野生型とPsen2変異アルツハイマー疾病マウスモデルに由来した一次培養小膠細胞の培養液にLPS(1μg/mL)を2、6、12、24時間処理し、各グループのLPS処理前にREV-ERBα agonistと知られたSR9009薬物を10μM容量で処理した実験群と、SR9009薬物を処理していない実験群を準備し、LPS処理以後2、6、12、24時間によってIL-6の生成量とmRNA発現量を実施例5のELISA方法とqRT-PCR方法と実質的に同様な方法で分析して、SR9009薬物の効果を分析した。
【0130】
【表15】
【0131】
【表16】
【0132】
上記表15および表16は、野生型とPsen2変異アルツハイマー疾病マウス由来一次培養した小膠細胞でクロルプロマジンの処理有無によるIL-6の生成とmRNA発現量に対する平均値(mean±SEM)を示したものである。
【0133】
図8aに示したように、SR9009は一次培養した野生型小膠細胞では時間(2、6、12、24時間)によってグループ31に比べてSR09009を処理したグループ32でIL-6の生成を抑制するが、グループ33のPsen2変異アルツハイマー疾病マウスモデル由来小膠細胞で過発生するIL-6に比べてSR9009を処理したグループ4で抑制できないことを示す。
【0134】
図8bに示したように、SR9009は一次培養した野生型小膠細胞では時間(2、6、12、24時間)によってグループ31に比べてSR09009を処理したグループ32でIL-6のmRNA発現を抑制するが、グループ33のPsen2変異アルツハイマー疾病マウスモデル由来小膠細胞で過発現するIL-6に比べてSR9009を処理したグループ34で抑制できないことを示す。
【0135】
REV-ERBα agonistと知られたSR9009薬物の抗炎症効果がPsen2 N141Iアルツハイマー疾病マウスモデル由来小膠細胞で効果がないのを確認した。これによって、Psen2 N141I変異による過度な神経炎症反応抑制のためにはREV-ERBαの発現回復が先決されなければならないのが分かる。また、REV-ERBα活性薬物が正常小膠細胞で抗炎症効能があってもPsen2家族性認知症では認知症治療効果がないことがあるのを提示する。
【0136】
実施例9:疾病動物の小膠細胞でREV-ERBα発現減少が概日時計性サイトカインの過発現原因であるのを立証
9-1:野生型マウス由来小膠細胞でREV-ERBα knockdown
REV-ERBα knockdownされた小膠細胞を製造するために、shNr1d1(22747)をAddgeneで購入した。レンチウイルスは伝達ベクター(PLKO.1-shNr1d1)、包装ベクター(psPAX2、Addgene)、およびVSV-G外皮発現ベクター(PM2)を使用して生成した。各ベクターをHEK293T細胞にtransfectionし、3日後に上澄み液を採取しウイルス収得のために2時間Optima XPN-100(Beckman Coulter)を用いて25,000xgで高速遠心分離した。前記準備したレンチウイルスを、前記一次培養した小膠細胞に臭化ヘキサジメトリン(8μg/mL)と共に処理した。レンチウイルス伝達効率を推定するために72時間後に蛍光顕微鏡を使用してeGFP発現をモニターした。
【0137】
前記実施例5-1と同様に、野生型マウスに由来した一次培養小膠細胞を得て試験に使用した。前記野生型マウスから得られた小膠細胞に前記の方法を用いてレンチウイルスを通じてshNr1d1を発現させてREV-ERBα knockdownを誘導した。
【0138】
図9aは、野生型マウスで一次培養した野生型小膠細胞でREV-ERBα knockdownがREV-ERBαタンパク質量を減少させたのを、前記実施例7のようにウェスタンブロット法を用いて確認した。
【0139】
図9bは、正常野生型小膠細胞とREV-ERBα knockdownした野生型小膠細胞を培養液にLPS(1μg/mL)を12時間処理して炎症性サイトカインIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5とTNF-αの生成を前記実施例5のような方法でELSIAを用いて施行し、Psen2変異アルツハイマー疾病マウスモデル由来小膠細胞にLPS処理した結果のようにTNF-αを除いたIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成をさらに増加させるということを示す。
【0140】
図9cは、野生型マウスに由来した小膠細胞とREV-ERBα knockdownした野生型マウスに由来した小膠細胞を培養液にLPS(1μg/mL)を12時間処理して炎症性サイトカインIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5とTNF-αのmRNA発現を前記実施例5のqRT-PCRで分析した。前記分析結果、Psen2変異アルツハイマー疾病マウスモデル由来小膠細胞にLPS処理した結果のように、野生型マウスに由来した小膠細胞でもTNF-αを除いたIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現をさらに増加させるということを確認した。
【0141】
9-2:Psen2変異アルツハイマー疾病マウスモデル由来小膠細胞でREV-ERBαを過発現
REV-ERBαを過発現する小膠細胞を製造するために、人間NR1D1 cDNAをレンチウイルスを生成するためのPLJM1-EGFPベクターに挿入した。レンチウイルスは伝達ベクター(PLJM1-NR1D1-EGFP)、包装ベクター(psPAX2、Addgene)、およびVSV-G外皮発現ベクター(PM2)を使用して生成した。その後の方法は前記実施例9-1のような方法で行った。
【0142】
前記実施例5-1と同様にPsen2変異アルツハイマー疾病マウスに由来した一次培養小膠細胞を得て試験に使用した。前記Psen2変異一次培養小膠細胞に実施例9-1の方法を用いてレンチウイルスを通じてNR1D1を過発現させた。
【0143】
図9dは、Psen2変異アルツハイマー疾病マウスで一次培養した小膠細胞でREV-ERBα過発現がREV-ERBαタンパク質量を増加させたのを前記実施例7のようにウェスタンブロット法を用いて確認した。
【0144】
図9eは、Psen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスに由来した小膠細胞とREV-ERBα過発現したPsen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスに由来した小膠細胞の培養液にLPS(1μg/mL)を12時間処理して炎症性サイトカインIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5とTNF-αのタンパク質生成を実施例5のELSIA方法で確認した。その結果、Psen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスに由来した小膠細胞は、野生型マウス由来小膠細胞にLPS処理した結果のようにTNF-αを除いたIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5の生成が顕著に減少することを確認した。
【0145】
図9fは、Psen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウス由来小膠細胞とREV-ERBα過発現したPsen2 N141I変異小膠細胞の培養液にLPS(1μg/mL)を12時間処理して炎症性サイトカインIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5とTNF-αのmRNA発現を、実施例5のqRT-PCR方法で分析した。その結果、Psen2 N141I変異アルツハイマー疾病マウスに由来した小膠細胞は、野生型マウス由来小膠細胞にLPS処理した結果のようにTNF-αを除いたIL-6、CXCL1、CCL2、CCL5のmRNA発現が顕著に減少することを確認した。
【0146】
これによって、Psen2変異アルツハイマー疾病マウス由来小膠細胞でREV-ERBαの発現低下が、疾病マウス由来小膠細胞の概日時計性サイトカイン過発現の原因であるのが分かる。
【0147】
実施例10:5xFADアルツハイマー疾病動物の比較を通じたPsen2家族性アルツハイマー疾患の特性分析
10-1:5xFADマウスモデル
アルツハイマー病研究に用いられる動物モデルのうちの一つであって、総5個のAD関連突然変異があるAPPおよびPSEN1遺伝子(APP;Swedish(K670N/M671L)、Florida(I716V)、and London(V717I) mutations and PSEN1;M146L and L286V mutations)を発現する5XFADマウスモデルを用いた。Thy1(matureニューロン特異的標識)プロモーターによってAPPおよびPSEN1突然変異遺伝子が発現され、半接合マウスでも深刻なアミロイド病理と行動欠乏を示す。(Jawhar S. et al. “Motor deficits, neuron loss, and reduced anxiety coinciding with axonal degeneration and intraneuronal Aβ aggregation in the 5XFAD mouse model of Alzheimer’s disease.” Neurobiology of Aging 196. e29-40(2012))
【0148】
10-2:Psen2家族性アルツハイマーの特性
前記実施例5-1と同様に、野生型マウスと5xFADアルツハイマーマウスモデルに由来した一次培養した小膠細胞を得て試験に使用した。前記野生型マウスと5xFADアルツハイマーマウスモデルで得られた小膠細胞に前記実施例7のように表13のNr1d1プライマーを用いたqRT-PCR方法を用いてNr1d1 mRNA発現量を比較した。下記表17は、野生型マウスと5xFADアルツハイマーマウスモデルに由来した一次培養した小膠細胞のNr1d1 mRNA発現量に対する平均値(mean±SEM)を示したものである。
【0149】
【表17】
【0150】
また、実施例2のように、野生型マウスと5xFADアルツハイマー疾病マウスの頬から血液を抽出して遠心分離を通じて血清を得てELISA方法を用いて炎症サイトカイン生成量を測定した。下記表18は、野生型マウスと5xFADアルツハイマーマウスモデルに由来した一次培養した小膠細胞の炎症サイトカインIL-6、TNF-αの生成に対する平均値(mean±SEM)を示したものである。
【0151】
【表18】
【0152】
図10aは、野生型マウスと5xFADアルツハイマーマウスモデルで一次培養した小膠細胞でNr1d1 mRNA発現水準が野生型マウスの小膠細胞と同一であるのを確認した。図10bは、野生型マウスと5xFADアルツハイマーマウスで炎症性サイトカインIL-6とTNF-αタンパク質の血中濃度は差がないのを示す結果である。5xFADマウスはAPPおよびPSEN1遺伝子変異を発現するマウスモデルであって、この結果はREV-ERBα発現低下による過度な免疫反応がPsen2 N141I家族性アルツハイマーの特性であり得るのを提示する。
【0153】
実施例11:疾患動物モデルの生体内概日時計性サイトカインの発現と記憶力回復に対する薬物の効果比較
11-1:LPSによる疾患動物モデルの炎症誘発に対する薬物の効果
実施例1で得られた野生型およびPsen2変異アルツハイマー疾病マウスに14:00時にクロルプロマジン(0.25mg/体重kg)を腹腔注入し免疫反応活性化のために前記実施例2のように野生型マウスでは炎症反応を起こさない低濃度のLPS(0.35μg/kg)を18:00時に野生型およびPsen2変異アルツハイマー疾病マウスに腹腔注入し(Zeitgeber時間11:00、07:00に点灯)20時間後に炎症反応および記憶行動をモニタリングした。この実験でのクロルプロマジン濃度(0.25mg/体重kg)は既存の知られたクロルプロマジンの用途である抗精神病に使用される濃度(25mg/回、3回/日)より数十倍~数百倍低い濃度である。上記の内容に対する概略図を図11aに開示した。
【0154】
図11aの概略図のように実験を行った後、LPSを腹腔注入した野生型およびPsen2 N141I KI/+アルツハイマー疾病マウスでクロルプロマジン注入有無による炎症反応程度を前記実施例2のように血清でELISA方法で概日時計性サイトカイン(IL-6、CXCL1、CCL2、CCL5)のタンパク質生成量を分析して確認した。下記表19は野生型およびPsen2変異アルツハイマー疾病マウスの血清で測定した概日時計性炎症サイトカインの生成量に対する平均値(mean±SEM)を示したものである。
【0155】
【表19】
【0156】
表19および図11bに示したように、野生型マウスでは炎症反応を起こさない低濃度のLPS(0.35μg/kg)を注入したグループ37と38ではクロルプロマジンの注入は概日時計性サイトカイン生成抑制に影響を与えなかった。反面、グループ39のようにPsen2変異アルツハイマー疾病マウスでは低濃度のLPSが概日時計性サイトカインの過発現を誘導し、クロルプロマジンを注入したPsen2変異アルツハイマーマウス(グループ40)では生成を顕著に抑制するのを示している。
【0157】
11-2:LPSによる疾患動物モデルの炎症誘発による記憶力減退に対する薬物の効果
LPSによって疾患動物モデルで誘導された炎症反応が記憶力減退を起こし、クロルプロマジンの注入がそれを回復するか確認した。前記実施例4のように記憶力行動能力測定のためにY-mazeを施行した。下記表20は、野生型およびPsen2変異アルツハイマー疾病マウスでLPS腹腔注入による記憶力減退に対してクロルプロマジンの影響に対するY-maze測定値(mean±SEM)を示したものである。
【0158】
【表20】
【0159】
その結果、図11cに示したように、Y-mazeでアーム交代は何らの薬物処理もしていない野生型グループ41と比較してクロルプロマジンのみを注入した野生型マウス(グループ42)やLPSのみを注入した野生型マウス(グループ43)、そしてLSPとクロルプロマジンを共に注入したマウス(グループ44)が全て正常的な記憶能力を示した。また、何らの薬物処理もしていないグループ45のPsen2変異アルツハイマーマウス(7匹)とグループ46のクロルプロマジンのみを注入したPsen2変異アルツハイマーマウス(7匹)も記憶能力の差がない。反面、グループ47のLPSを注入したPsen2変異アルツハイマー疾病マウス(9匹)は記憶力の減退が顕著に示され、グループ48のクロルプロマジンを注入したPsen2変異アルツハイマー疾病マウスはクロルプロマジン注入がLPSによって誘導された記憶能力低下が十分に回復することを示している。
【0160】
図11dは、アームエントリー総数は全てのグループで同一なので正常的な運動機能を示すことを示す。
【0161】
前記の結果、Psen2 N141Iアルツハイマー疾病マウスにクロルプロマジンの生体内注入は疾患マウスの神経炎症過発現と記憶力減退を十分に回復させることができるのを示している。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
図9f
図10a
図10b
図11a
図11b
図11c
図11d
図12
【配列表】
2023549174000001.app
【国際調査報告】