(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】異種機械感受性タンパク質を発現する細胞の超音波遺伝学的刺激方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20231115BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231115BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20231115BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231115BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20231115BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20231115BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231115BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20231115BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20231115BHJP
C12N 15/29 20060101ALN20231115BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12N5/10 ZNA
C07K14/00
C12N15/63 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
A61P43/00 105
A61P43/00 107
A61K41/00
A61K38/02
C12N15/29
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528009
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 US2021058708
(87)【国際公開番号】W WO2022103788
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】511154205
【氏名又は名称】ソーク インスティチュート フォー バイオロジカル スタディーズ
(71)【出願人】
【識別番号】501244222
【氏名又は名称】ザ スクリプス リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】トゥファイル ユスフ
(72)【発明者】
【氏名】パテル ヤンキ
(72)【発明者】
【氏名】チャラサニ スリーカンス
(72)【発明者】
【氏名】プロッコ カール
(72)【発明者】
【氏名】コーリー ジョアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ホセ メンドーサ
(72)【発明者】
【氏名】ラミレス マーク デューク
(72)【発明者】
【氏名】リー-クブリ コリン
(72)【発明者】
【氏名】マーシー スウェ-タ
(72)【発明者】
【氏名】パタポウティアン アルデム
(72)【発明者】
【氏名】モウサヴィ セイエド アリ レザ
(72)【発明者】
【氏名】キーナン ウィリアム ティー.
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA05
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4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA30
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
機械感覚性ポリペプチド、及びコードするポリヌクレオチド生成物、及びその組成物、目的の細胞型においてそのようなポリペプチド及びポリヌクレオチドを発現させる方法、並びに、外因性機械感覚性ポリペプチドを発現する様々な種類の細胞の活性及び/又は機能を、超音波を使用して誘導及び/又は改変する方法が提供され、記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞におけるカチオン又はアニオンの流入又は流出を誘導する方法であって、以下の工程を含む、方法:
前記細胞内で、DmFLYC1、DmFLYC2、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2、及びDmOSCA、又はそれらのバリアントからなる群から選択される異種機械感覚性ポリペプチドを発現させる工程、及び
前記細胞に超音波を印加する工程であって、それによって、前記細胞におけるカチオン又はアニオンの流入又は流出を誘導する、工程。
【請求項2】
前記細胞が、超音波によって引き起こされる機械的変形又は伸展に対して鋭敏化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記超音波の印加が、前記細胞における機械感覚性ポリペプチドコンダクタンスの変化をもたらして、細胞活性及び/又は機能を調節する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
超音波を印加する工程が、前記細胞におけるアニオン流入又は流出を誘導する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
超音波を印加する工程が、前記細胞の活性及び/又は機能を阻害又は抑制するアニオン流入を誘導する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
超音波を印加する工程が、前記細胞の活性及び/又は機能を喚起又は刺激するアニオン流出を誘導する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、DmFLYC1、DmFLYC2、DcFLYC1.1、及びDcFLYC1.2、又はそれらのバリアントからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、配列番号5、7、11、13、又は42から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、配列番号5、7、11、13、又は42から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、配列番号5、7、11、13、若しくは42から選択される配列を含むか、又は本質的にそれからなる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、配列番号6、8、12、又は14から選択されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列によってコードされる、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、配列番号6、8、12、又は14から選択されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列によってコードされる、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、配列番号6、8、12、若しくは14から選択される配列を含むか、又は本質的にそれからなる配列によってコードされる、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
超音波を印加する工程が、前記細胞におけるカチオン流入を誘導する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記カチオン流入の誘導が、前記細胞の活性を増加させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリペプチドが、DmOSCAである、請求項1~3、14、又は15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリペプチドが、配列番号9に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~3又は14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリペプチドが、配列番号10に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項1~3又は14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリペプチドが、配列番号10を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項1~3又は14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
超音波によって引き起こされる機械的変形又は伸展に対する細胞応答を開始するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
(a)細胞に、DmFLYC1、DmFLYC2、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2、及びDmOSCA、又はそれらのバリアントから選択される異種機械感覚性ポリペプチドを発現させるように形質導入する工程、
(b)前記細胞に超音波を印加する工程、及び
(c)前記超音波の印加後に、前記機械感覚性ポリペプチドを発現する細胞におけるカチオン又はアニオンの流入又は流出、並びに細胞活性及び/又は機能の変化を誘導する工程であって、それによって、超音波によって引き起こされる機械的変形又は伸展に対する細胞応答を開始する、工程。
【請求項21】
超音波によって引き起こされる機械的変形又は伸展に対する細胞応答を誘導して、細胞の活性及び/又は機能を調節するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
(a)細胞に、DmFLYC1、DmFLYC2、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2、及びDmOSCA、又はそれらのバリアントから選択される異種機械感覚性ポリペプチドを発現させるように形質導入する工程、
(b)前記機械感覚性ポリペプチドを発現する細胞に超音波を印加する工程、及び
(c)前記超音波の印加後に、前記機械感覚性ポリペプチドを発現する細胞におけるカチオン又はアニオンの流入又は流出、並びに細胞活性及び/又は機能の変化を誘導する工程であって、それによって、超音波によって引き起こされる機械的変形又は伸展に対する細胞応答を誘導して、細胞活性及び/又は機能を調節する、工程。
【請求項22】
誘導ステップにおいて、アニオン流入又は流出が誘導される、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記超音波を印加する工程が、前記細胞の活性及び/又は機能を阻害又は抑制するアニオン流入を誘導する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリペプチドが、DmFLYC1、DmFLYC2、DcFLYC1.1、及びDcFLYC1.2、又はそれらのバリアントからなる群から選択される、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリペプチドが、配列番号5、7、11、13、及び42からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列を含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリペプチドが、配列番号5、7、11、13、及び42からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリペプチドが、配列番号5、7、11、13、若しくは42から選択される配列を含むか、又は本質的にそれからなる配列を含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリペプチドが、配列番号6、8、12、及び14からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも85%又は95%の配列同一性を有する配列によってコードされる、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリペプチドが、配列番号6、8、12、及び14からなる群から選択される配列を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
カチオン流入が誘導される、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項31】
前記カチオン流入の誘導が、前記細胞の活性及び/又は機能を増加させる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリペプチドが、DmOSCAである、請求項20、21、30、又は31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリペプチドが、配列番号9に対して少なくとも85%又は95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項20、21、又は30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリペプチドが、配列番号9の配列を含むか、又は本質的にそれからなる、請求項20、21、又は30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリペプチドが、配列番号10に対して少なくとも85%又は95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項20、21、又は30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリペプチドが、配列番号10の配列を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項20、21、又は30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリペプチドが、哺乳動物又はヒト細胞における発現のためにコドン最適化されたポリヌクレオチド配列によってコードされ、かつ天然に存在しない、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリペプチドが、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むプラスミド又はウイルスベクターによる前記細胞の形質導入後に、前記細胞内で発現される、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞が、レンチウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターから選択されるウイルスベクターによって形質導入される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞が、ヒト細胞である、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞が、筋肉細胞、心筋細胞、インスリン分泌細胞、膵臓細胞、腎臓細胞、又は神経細胞のうちの1つ以上である、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞が、神経細胞である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞が植物細胞であり、アニオン流出及び/又は細胞活性の刺激が誘導される、請求項1~4、6~22、又は24~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記超音波が、約0.2MHz~約20MHzの周波数を有する、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記超音波が、約1立方ミリメートル~約1立方センチメートルの焦点ゾーンを有する、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
超音波を印加する前に、前記細胞をマイクロバブルと接触させる工程を更に含む、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞が、インビトロ、エクスビボ、又はインビボである、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞が、対象内にある、請求項1~43及び45~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記対象が、哺乳動物である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記対象が、ヒトである、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
前記超音波が、光音響システム又はトランスデューサを使用して生成される、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記超音波が、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)トランスデューサを使用して生成される、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
DmFLYC1、DmFLYC2、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2、DmOSCA、又はそれらのバリアントから選択される機械感覚性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、プラスミド又はウイルスベクター。
【請求項55】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項54に記載のプラスミド又はウイルスベクター。
【請求項56】
前記ポリペプチドが、配列番号5、7、11、13、42、及び9からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも85%又は95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項54又は55に記載のプラスミド又はウイルスベクター。
【請求項57】
前記ポリペプチドが、配列番号5、7、11、13、42、及び9からなる群から選択される配列を含むか、又は本質的にそれからなる配列を含む、請求項54又は55に記載のプラスミド又はウイルスベクター。
【請求項58】
前記ポリペプチドが、配列番号6、8、12、14、及び10からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも85%又は95%の配列同一性を有する配列によってコードされる、請求項54~57のいずれか一項に記載のプラスミド又はウイルスベクター。
【請求項59】
前記ポリペプチドが、配列番号6、8、12、14、及び10からなる群から選択される配列を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項54~57のいずれか一項に記載のプラスミド又はウイルスベクター。
【請求項60】
請求項54~57のいずれか一項に記載のプラスミド若しくはウイルスベクター、又はDmFLYC1、DmFLYC2、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2、及びDmOSCA、若しくはそれらのバリアントからなる群から選択されるポリペプチドをコードする異種遺伝子配列を含む、細胞。
【請求項61】
哺乳動物細胞である、請求項60に記載の細胞。
【請求項62】
ヒト細胞である、請求項60又は61に記載の細胞。
【請求項63】
筋肉細胞、心筋細胞、インスリン分泌細胞、膵臓細胞、腎臓細胞、又は神経細胞のうちの1つ以上である、請求項60~62のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項64】
神経細胞である、請求項63に記載の細胞。
【請求項65】
植物細胞である、請求項60に記載の細胞。
【請求項66】
前記ポリペプチドが、DmFLYC1であり、かつ配列番号5又は配列番号42に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項8、24、若しくは56のいずれか一項に記載の方法若しくはベクター、又は請求項60~65のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項67】
前記ポリペプチドが、配列番号5若しくは配列番号42を含むか、又は本質的にそれからなるDmFLYC1である、請求項8、24、若しくは56のいずれか一項に記載の方法若しくはベクター、又は請求項60~65のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項68】
前記ポリペプチドが、配列番号6に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項66又は67に記載の方法、ベクター、又は細胞。
【請求項69】
前記ポリペプチドが、配列番号6を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項66又は67に記載の方法、ベクター、又は細胞。
【請求項70】
前記ポリペプチドが、DmFLYC2であり、かつ配列番号7に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項8、24、若しくは56のいずれか一項に記載の方法若しくはベクター、又は請求項60~65のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項71】
前記ポリペプチドが、配列番号7を含むか、又は本質的にそれからなるDmFLYC2である、請求項8、24、若しくは56のいずれか一項に記載の方法若しくはベクター、又は請求項60~65のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項72】
前記ポリペプチドが、配列番号8に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項70又は71に記載の方法、ベクター、又は細胞。
【請求項73】
前記ポリペプチドが、配列番号8を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項70又は71に記載の方法、ベクター、又は細胞。
【請求項74】
前記ポリペプチドが、DcFLYC1.1であり、かつ配列番号11に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項8、24、若しくは56のいずれか一項に記載の方法若しくはベクター、又は請求項60~65のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項75】
前記ポリペプチドが、配列番号11を含むか、又は本質的にそれからなるDcFLYC1.1である、請求項8、24、若しくは56のいずれか一項に記載の方法若しくはベクター、又は請求項60~65のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項76】
前記ポリペプチドが、配列番号12に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項74又は75に記載の方法、ベクター、又は細胞。
【請求項77】
前記ポリペプチドが、配列番号12を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項74又は75に記載の方法、ベクター、又は細胞。
【請求項78】
前記ポリペプチドが、DcFLYC1.2であり、かつ配列番号13に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項8、24、若しくは56のいずれか一項に記載の方法若しくはベクター、又は請求項60~65のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項79】
前記ポリペプチドが、配列番号13を含むか、又は本質的にそれからなるDcFLYC1.2である、請求項8、24、若しくは56のいずれか一項に記載の方法若しくはベクター、又は請求項60~65のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項80】
前記ポリペプチドが、配列番号14に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項78又は79に記載の方法、ベクター、又は細胞。
【請求項81】
前記ポリペプチドが、配列番号14を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項78又は79に記載の方法、ベクター、又は細胞。
【請求項82】
前記ポリペプチドが、DmOSCAであり、かつ配列番号9に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項60~65のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項83】
前記ポリペプチドが、配列番号9を含むか、又は本質的にそれからなるDmOSCAである、請求項60~65のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項84】
前記ポリペプチドが、配列番号10に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項82又は83に記載の細胞。
【請求項85】
前記ポリペプチドが、
配列番号10を含む、配列番号10から本質的になる、ポリヌクレオチド配列
によってコードされる、請求項82又は83に記載の細胞。
【請求項86】
機械感覚性DmFLYC1ポリペプチド又はそのバリアントをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項87】
機械感覚性DmFLYC2ポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項88】
機械感覚性DcFLYC1.1ポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項89】
機械感覚性DcFLYC1.2ポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項90】
機械感覚性DmOSCAポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項91】
哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された、請求項86~90のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項92】
ヒト細胞における発現のためにコドン最適化された、請求項86~90のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項93】
請求項86~92のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドによってコードされる、機械感覚性ポリペプチド。
【請求項94】
請求項86~92のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、プラスミド又はウイルスベクター。
【請求項95】
請求項86~92のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項96】
請求項93に記載の機械感覚性ポリペプチドを発現する、細胞。
【請求項97】
請求項95又は96に記載の細胞を含む、組成物。
【請求項98】
薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤を更に含む、請求項97に記載の組成物。
【請求項99】
前記ポリペプチドが、DmFLYC1又はそのバリアントである、請求項1、7、20、21、又は24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
DmFLYC1ポリペプチドが、配列又は配列番号5若しくは配列番号42を含むか、又は本質的にそれからなる、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
DmFLYC1ポリペプチドが、配列番号6を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記DmFLYC1ポリペプチドが、配列番号42の配列を含むか、又は本質的にそれからなる、請求項99に記載の方法。
【請求項103】
前記アニオン流入又は流出が、塩化物アニオン流入又は流出である、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記ポリペプチドが、配列番号9の配列を含むか、又は本質的にそれからなる、請求項1~3又は14~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月11日に出願された仮特許出願第63/112,256号の優先権及び利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府の支援による研究の下でなされた発明の権利に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された補助事業番号MH111534、NS115591、5R35GM122604、HL143297、P30014195、CA014195、NS072031、及びF32GM101876、並びに国立科学財団(National Science Foundation)によって授与された補助事業番号DBI-0735191、DBI-1265383、及びDBI-1743442の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0003】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されている配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年10月29日に作成された当該ASCIIコピーは、167776-011601PCT_SL.txtという名称であり、64,961バイトのサイズである。
【背景技術】
【0004】
背景
神経回路がどのように特定の挙動を生み出すかを理解するには、参加するニューロンを識別し、それらの活動パターンを記録したり乱したりする能力が必要である。最もよく理解されている運動回路であるカニ口胃神経節(STG)は、明確に定義された細胞型への電気生理学的アクセス及びそれらを操作する能力から恩恵を受けている。光(光遺伝学)又は小分子を使用して神経活動を操作するための多くのアプローチが開発されている。これらの方法は、マウスを含む多くのモデルシステムにおける回路計算への知見を明らかにしてきたが、より深い脳領域に存在する標的ニューロンに刺激を送達するのが困難であるなどの欠点を伴っている。したがって、標的ニューロン及び他の細胞型の非侵襲的操作のための新たな生成物及び方法に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
概要
機械感覚性ポリペプチド及びポリヌクレオチドを特徴とする生成物及び組成物、目的の細胞型においてそのようなポリペプチド及びポリヌクレオチドを発現させる方法、並びに超音波を使用してニューロン及び他の細胞型における機械感覚性ポリペプチドの活性化を誘導する方法が、本明細書において提供され、特徴とされる。
【0006】
一態様では、細胞におけるカチオン又はアニオンの流入又は流出を誘導するための方法が提供され、本方法は、
細胞内で、以下:DmFLYC1、DmFLYC2、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2、及びDmOSCA、のうちの1つ以上から選択される異種機械感覚性ポリペプチドを発現させる工程、及び
細胞に超音波を印加する工程であって、それによって、細胞におけるカチオン又はアニオンの流入又は流出を誘導する、工程、を伴う。
【0007】
別の態様では、超音波によって引き起こされる機械的変形又は伸展に対する細胞応答を開始するための方法が提供され、本方法は、
細胞に、以下:DmFLYC1、DmFLYC2、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2、及びDmOSCA、のうちの1つ以上から選択される異種機械感覚性ポリペプチドを発現させるように形質導入する工程、
細胞に超音波を印加する工程、及び
超音波の印加後に、機械感覚性ポリペプチドを発現する細胞におけるカチオン又はアニオンの流入又は流出、並びに細胞活性及び/又は機能の変化を誘導する工程であって、それによって、超音波によって引き起こされる機械的変形又は伸展に対する細胞応答を開始する、工程、を伴う。
【0008】
別の態様では、超音波によって引き起こされる機械的変形又は伸展に対する細胞応答を誘導して、細胞の活性及び/又は機能を調節するための方法が提供され、本方法は、
細胞に、以下:DmFLYC1、DmFLYC2、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2、及びDmOSCA、のうちの1つ以上から選択される異種機械感覚性ポリペプチドを発現させるように形質導入する工程、
機械感覚性ポリペプチドを発現する細胞に超音波を印加する工程、及び
超音波の印加後に、機械感覚性ポリペプチドを発現する細胞におけるカチオン又はアニオンの流入又は流出、並びに細胞活性及び/又は機能の変化を誘導する工程であって、それによって、超音波によって引き起こされる機械的変形又は伸展に対する細胞応答を誘導して、細胞活性及び/又は機能を調節する、工程、を伴う。
【0009】
上記の方法の一実施形態では、異種機械感覚性ポリペプチドは、DmFLYC1ポリペプチドのバリアントである。一実施形態では、バリアントは、R334E FLYC1バリアントポリペプチドである。実施形態では、R334E FLYC1バリアントポリペプチドは、配列番号42の配列に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、R334E FLYC1バリアントポリペプチドは、配列番号42を含むか、又は本質的にそれからなる。上記の態様のうちのいずれかの実施形態では、細胞は、超音波によって引き起こされる機械的変形又は伸展に対して鋭敏化される。上記の態様のうちのいずれかの実施形態では、超音波の印加は、細胞における機械感覚性ポリペプチドコンダクタンスの変化をもたらして、細胞活性及び/又は機能を調節する。
【0010】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、超音波を印加することは、細胞におけるアニオンの流入又は流出を誘導する。いくつかの実施形態では、超音波を印加することは、細胞の活性及び/又は機能を阻害又は抑制するアニオン流入を誘導する。いくつかの実施形態では、超音波を印加することは、植物細胞の活性及び/又は機能を喚起又は刺激するアニオン流出を誘導する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、以下:DmFLYC1、DmFLYC2、DcFLYC1.1、及びDcFLYC1.2、のうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号5、7、11、13、又は42から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6、8、12、又は14から選択されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6、8、12、又は14から選択されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6、8、12、若しくは14から選択されるポリペプチド配列を含むか、又は本質的にそれからなる配列によってコードされる。
【0011】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、超音波を印加することは、細胞におけるカチオン流入を誘導する。いくつかの実施形態では、カチオン流入は、細胞の活性を増加させる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、DmOSCAである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号9に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号9の配列を含むか、又は本質的にそれからなる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号10を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0012】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、哺乳動物又はヒト細胞における発現のためにコドン最適化されたポリヌクレオチド配列によってコードされ、かつ天然に存在しない。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むプラスミド又はウイルスベクターによる細胞の形質導入後に、細胞内で発現される。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、細胞は、レンチウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターから選択されるウイルスベクターによって形質導入される。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、細胞は、筋肉細胞、心筋細胞、インスリン分泌細胞、膵臓細胞、腎臓細胞、又は神経細胞のうちの1つ以上である。一実施形態では、細胞は、神経細胞である。一実施形態では、細胞は、植物細胞であり、アニオン流出及び/又は植物細胞活性若しくは機能の刺激が、細胞への超音波印加によって誘導される。一実施形態では、細胞は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボである。
【0013】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、超音波は、約0.2MHz~約20MHzの周波数を有する。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、超音波は、約1立方ミリメートル~約1立方センチメートルの焦点ゾーンを有する。一実施形態では、上記の態様のうちのいずれかの方法は、超音波を印加する前に、細胞をマイクロバブルと接触させることを更に伴うことができる。
【0014】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、細胞は、対象内にある。一実施形態では、対象は、哺乳動物である。一実施形態では、対象は、ヒトである。
【0015】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、超音波は、光音響システム又はトランスデューサを使用して生成される。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、超音波は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)トランスデューサを使用して生成される。
【0016】
別の態様では、以下:DmFLYC1、DmFLYC2、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2、DmOSCA、又はそれらのバリアント、のうちの1つ以上から選択される機械感覚性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するプラスミド又はウイルスベクターが提供される。一実施形態では、機械感覚性ポリペプチドは、DmFLYC1ポリペプチドのバリアントである。一実施形態では、バリアントは、R334E FLYC1バリアントポリペプチドである。実施形態では、R334E FLYC1バリアントポリペプチドは、配列番号42の配列に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、R334E FLYC1バリアントポリペプチドは、配列番号42を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0017】
別の態様では、上記の態様のプラスミド若しくはウイルスベクター、又は以下:DmFLYC1、DmFLYC2、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2、及びDmOSCA、又はそれらのバリアント、のうちの1つ以上から選択されるポリペプチドをコードする異種遺伝子配列を含む、細胞が提供される。一実施形態では、コードされたポリペプチドは、DmFLYC1ポリペプチドのバリアントである。一実施形態では、バリアントは、R334E FLYC1バリアントポリペプチドである。実施形態では、R334E FLYC1バリアントポリペプチドは、配列番号42の配列に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、R334E FLYC1バリアントポリペプチドは、配列番号42を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0018】
一実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであるウイルスベクターである。
【0019】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号5、7、11、13、又は9のうちの1つ以上から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列を含む。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号5、7、11、13、又は9のうちの1つ以上から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号5、7、11、13、又は9のうちの1つ以上から選択される配列を含むか、又は本質的にそれからなる配列を含む。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6、8、12、14、又は10のうちの1つ以上から選択されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列によってコードされる。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6、8、12、14、又は10のうちの1つ以上から選択されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列によってコードされる。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6、8、12、14、又は10のうちの1つ以上から選択されるポリヌクレオチド配列を含むか、又は本質的にそれからなる配列によってコードされる。
【0020】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、細胞は、植物細胞であり、アニオン流出及び/又は植物細胞活性若しくは機能の刺激が、細胞への超音波印加によって誘導される。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、細胞は、筋肉細胞、心筋細胞、インスリン分泌細胞、膵臓細胞、腎臓細胞、又は神経細胞のうちの1つ以上である。一実施形態では、細胞は、神経細胞である。
【0021】
別の態様では、機械感覚性DmFLYC1ポリペプチド又はそのバリアントをコードする、単離されたポリヌクレオチドが提供される。別の態様では、機械感覚性DmFLYC2ポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドが提供される。別の態様では、機械感覚性DcFLYC1.1ポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドが提供される。別の態様では、機械感覚性DcFLYC1.2ポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドが提供される。別の態様では、機械感覚性DmOSCAポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0022】
更なる態様では、上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれか1つのポリヌクレオチドによってコードされる、機械感覚性ポリペプチドが提供される。別の態様では、上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれか1つの単離されたポリヌクレオチドを含有する、プラスミド又はウイルスベクターが提供される。
【0023】
一態様では、上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれか1つの単離されたポリヌクレオチドを含有する、細胞が提供される。一態様では、上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれか1つの機械感覚性ポリペプチドを発現する、細胞が提供される。
【0024】
別の態様では、上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの細胞を含む、組成物が提供される。一実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤を更に含む。
【0025】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化される。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化される。
【0026】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号5又は配列番号42に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列を含むDmFLYC1である。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号5又は配列番号42に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むDmFLYC1である。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号5又は配列番号42を含むか、又は本質的にそれからなるDmFLYC1である。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6に対して少なくとも85%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0027】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、DmFLYC2であり、かつ配列番号7に対して少なくとも85%の配列同一性又は少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号7を含むか、又は本質的にそれからなるDmFLYC2である。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号8に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号8を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0028】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、DcFLYC1.1であり、かつ配列番号11に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号11を含むか、又は本質的にそれからなるDcFLYC1.1である。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号12に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号12を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0029】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、DcFLYC1.2であり、かつ配列番号13に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号13を含むか、又は本質的にそれからなるDcFLYC1.2である。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号14に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号14を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0030】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、DmOSCAであり、かつ配列番号9に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号9を含むか、又は本質的にそれからなるDmOSCAである。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号10に対して少なくとも85%又は少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号10を含むか、又は本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0031】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、ポリペプチドは、DmFLYC1である。上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれかの一実施形態では、DmFLYC1ポリペプチドは、配列番号5を含むか、若しくは本質的にそれからなるか、又は配列番号42を含むか、若しくは本質的にそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0032】
上記の態様及びそれらの実施形態のうちのいずれか1つの一実施形態では、アニオン流入又は流出は、塩化物アニオン流入又は流出である。
【0033】
本明細書に記載される態様及び実施形態によって定義される組成物及び物品は、本明細書において提供される実施例に関連して単離されるか、又は他の方法で製造された。本明細書において提供される態様及び実施形態の他の特徴及び利点は、詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0034】
定義
別途定義されない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Singleton et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 1994)、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Press(Cold Spring Harbor,NY 1989)を参照されたい。本明細書に記載されるものと類似の、又は同等の任意の方法、デバイス、及び材料を、本明細書に記載される態様及び実施形態の実施に使用することができる。以下の定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするために提供され、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0035】
「FLYC1」又は「DmFLYC1」は、細胞、例えばニューロンに超音波感受性を付与し、以下に提供されるDmFLYC1ポリペプチド配列、その断片、又はそのヒトオーソログに対して少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有し、本明細書に記載される生物学的活性を有することができる機械感覚性ポリペプチドを意味する。実施形態では、機械感覚性ポリペプチドは、以下に提供されるDmFLYC1ポリペプチド配列、その断片、又はそのヒトオーソログに対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性を有し、本明細書に記載される生物学的活性を有する。いくつかの実施形態では、DmFLYC1ポリペプチドは、以下に提供されるDmFLYC1ポリペプチド配列、又はそれに対して実質的な同一性を有する機能的バリアント、アイソフォーム、ホモログ、若しくはオーソログと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、DmFLYC1ポリペプチドは、以下に提供されるDmFLYC1ポリペプチド配列の機能的ホモログ、アイソフォーム、オーソログ、又は断片である。いくつかの実施形態では、線維芽細胞及びインスリン分泌(INS)細胞などの細胞内で異種発現されるFLYC1ポリペプチドは、超音波(US)刺激時に細胞を阻害する。いくつかの実施形態では、DmFLYC1ポリペプチドは、すぐ下に提供されるDmFLYC1ポリペプチド配列であるか、又はそれを含む。
【0036】
【0037】
一実施形態では、334位のアミノ酸アルギニン(R)がアミノ酸グルタミン酸(E)で置き換えられたFLYC1ポリペプチドのバリアント、すなわち「R334Eバリアント」が提供される。FLYC1アミノ酸配列の334位で「E」に変化した「R」アミノ酸は、上記のDmFLYC1ポリペプチド配列において、下線を引いて太字で示している。334位に「E」を含有するFLYC1R334Eポリペプチドバリアントのアミノ酸配列を以下に示す。334位のバリアント「E」は、下記の配列において、太字で示して下線を引いている。
【0038】
「DmFLYC1ポリヌクレオチド」又は「FLYC1ポリヌクレオチド」は、DmFLYC1ポリペプチドをコードする核酸分子を意味する。特定の実施形態では、DmFLYC1ポリヌクレオチドのコドンは、目的の生物又は目的の生物の細胞における発現のために最適化される(例えば、ヒト発現又はヒト細胞における発現、哺乳動物発現又は哺乳動物細胞発現、植物発現又は植物細胞発現のために最適化される)。例示的なDmFLYC1ポリヌクレオチドの配列を、すぐ下に提供する。いくつかの実施形態では、DmFLYC1核酸分子は、以下に提供されるDmFLYC1核酸分子、又はそれに対して実質的な同一性を有する機能的バリアント、オーソログ、若しくはホモログと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、DmFLYC1核酸分子は、以下に提供されるDmFLYC1ポリヌクレオチド配列を有する核酸分子である。いくつかの実施形態では、DmFLYC1核酸分子は、以下に提供される配列を有する核酸分子の機能的ホモログ、アイソフォーム、又は断片である。いくつかの実施形態では、DmFLYC1核酸分子は、すぐ下に提供されるDmFLYC1ポリヌクレオチド配列であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、例えば、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞における発現のために、以下に提供するコドン最適化DmFLYC1ポリヌクレオチド配列が使用されるか、又はそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列が使用される。実施形態では、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の配列同一性を有する配列が使用される。
【0039】
DmFLYC1ポリヌクレオチド配列(DmFLYC1コドン最適化ポリヌクレオチド配列):
ATGGGATCCTATTTACATGAGCCCCCCGGCGACGAGCCTTCCATGAGGATCGAGCAGCCTAAGACAGCTGACAGAGCTCCCGAGCAAGTTGCCATTCACATCTGTGAACCTTCCAAAGTCGTGACCGAGTCCTTTCCCTTCTCCGAGACAGCCGAGCCCGAGGCTAAGTCCAAGAACTGCCCTTGCCCCGAAATTGCCAGAATTGGCCCTTGCCCTAACAAACCTCCCAAGATCCCTATCAATAGGGGTTTATCTCGTATCTCCACCAACAAGAGCAGACCTAAGTCCAGATTCGGAGAGCCCAGCTGGCCCGTTGAGAGCTCTTTAGACCTCACAAGCCAGTCCCCCGTCAGCCCTTATCGTGAGGAAGCCTTCAGCGTCGAAAATTGCGGCACAGCCGGCTCTCGTAGGGGATCCTTCGCTAGGGGAACAACCAGCAGAGCCGCCTCCAGCTCTCGTAAGGATGAAACAAAGGAGGGCCCCGATGAAAAGGAAGTGTACCAGAGGGTGACAGCCCAGCTGAGCGCTAGAAACCAGAAGAGGATGACCGTCAAGCTGATGATCGAACTGTCCGTGTTTTTATGTCTGCTGGGCTGTCTGGTCTGCTCTTTAACAGTGGATGGATTCAAGAGGTACACCGTGATCGGTTTAGACATCTGGAAATGGTTTTTACTGCTGCTGGTCATCTTCAGCGGAATGCTGATCACACACTGGATCGTGCACGTCGCCGTCTTCTTCGTGGAGTGGAAATTTCTGATGAGAAAAAACGTGCTGTACTTTACCCACGGTTTAAAAACCTCCGTCGAGGTGTTCATCTGGATCACAGTCGTGCTCGCCACTTGGGTGATGCTGATTAAACCCGACGTGAACCAGCCCCACCAAACTCGTAAGATTTTAGAGTTTGTGACTTGGACCATCGTGACAGTCCTCATTGGCGCCTTTTTATGGCTGGTGAAAACCACACTCCTCAAAATTCTGGCCAGCTCCTTCCACCTCAATAGATTCTTCGATCGTATCCAAGAATCCGTGTTTCACCATAGCGTGCTCCAGACACTCGCCGGCAGACCCGTTGTGGAGCTGGCTCAAGGTATTAGCAGAACCGAGAGCCAAGATGGAGCCGGACAAGTTTCCTTTATGGAGCACACAAAGACCCAAAACAAGAAAGTGGTCGACGTGGGCAAGCTGCACCAGATGAAGCAAGAAAAGGTGCCCGCTTGGACAATGCAGCTGCTCGTGGATGTCGTGTCCAACTCCGGTTTATCCACAATGTCCGGCATGCTGGACGAAGACATGGTGGAGGGCGGAGTGGAGCTGGATGACGATGAGATCACCAACGAGGAACAAGCTATTGCCACCGCCGTTCGTATCTTCGACAATATCGTGCAAGATAAGGTGGACCAGAGCTACATTGACAGAGTCGACCTCCATAGGTTTTTAATCTGGGAGGAGGTCGATCATTTATTCCCTTTATTCGAGGTCAATGAGAAGGGCCAAATCTCTTTAAAGGCCTTTGCCAAGTGGGTCGTCAAGGTGTACAATGATCAAGCCGCTTTAAAGCACGCCCTCAACGACAACAAGACCGCCGTGAAGCAACTGAATAAGCTCGTGACCGCTATTCTGATTGTGATGATGATCGTGATTTGGCTGATCGTCACCGGCATCGCCACAACAAAACTGATCGTGCTGCTGAGCAGCCAGCTCGTCGTCGCTGCCTTTATCTTCGGCAACACTTGTAAAACAATCTTCGAGGCCATCATCTTCGTCTTCGTGATGCACCCCTTTGACGTGGGAGATCGTTGTGTCATCGACGGAAACAAAATGCTCGTGGAGGAGATGAACATCCTCACCACCGTCTTTTTAAAATGGGATAAAGAGAAGGTCTATTACCCCAACTCCATTTTATGCACCAAGGCTATCGGCAATTTCTTTCGTAGCCCCGATCAAGGCGACGTTTTAGAGTTCTCCGTCGACTTCACAACACCCGTTTTAAAAATTGGCGATTTAAAGGACAGAATCAAGATGTACCTCGAACAGAATTTAAATTTCTGGCACCCCCAACACAACATGGTGGTCAAGGAGATCGAGAACGTCAACAAGATTAAGATGGCTCTGTTCGTGAACCACACCATCAACTTCCAAGATTTCGCCGAAAAAAATAGGAGGAGATCCGAACTGGTTTTAGAACTGAAAAAGATTTTCGAAGAGCTGGACATCAAGTACAACTTATTACCTCAAGAAATTTCCATTCGTAATATGTGA(配列番号6)。
【0040】
「FLYC2」又は「DmFLYC2」は、細胞、例えばニューロンに超音波感受性を付与し、以下に提供されるDmFLYC2ポリペプチド配列、その断片、又はそのヒトオーソログに対して少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有し、本明細書に記載される生物学的活性を有することができる機械感覚性ポリペプチドを意味する。実施形態では、機械感覚性ポリペプチドは、以下に提供されるDmFLYC2ポリペプチド配列、その断片、又はそのヒトオーソログに対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性を有し、本明細書に記載される生物学的活性を有する。いくつかの実施形態では、DmFLYC2ポリペプチドは、以下に提供されるDmFLYC2ポリペプチド配列、又はそれに対して実質的な同一性を有する機能的バリアント、アイソフォーム、ホモログ、若しくはオーソログと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、DmFLYC2ポリペプチドは、以下に提供されるDmFLYC2ポリペプチド配列の機能的ホモログ、アイソフォーム、オーソログ、又は断片である。いくつかの実施形態では、DmFLYC2ポリペプチドは、すぐ下に提供されるDmFLYC2ポリペプチド配列であるか、又はそれを含む。
【0041】
DmFLYC2ポリペプチド配列:
MEGVRNPLRNSFNKAHEAEPQRKKNLEQEERLILLQHRNDPNSQSFSSEDPNSLLLQVKVEVAGSCDPAKTAVPTKPPVSPGGGGNLIWRDSSYDFRNDVVKGCSRDTDDDSGEFDFQKHRVAEEEDEGEERDPESQTLSPVSESPHEYGKITPRGAAKVSFKESELVHRRPSDGGVFAADGVSASVRDEEVVMCTSNASCQRKSTSTRVKTKSRLLDPPDDGDTRSGRILRSGLMPRSEDHEDEDPFSGEDIPEEYKKMKFSFLSAVELVSLLLIIAGLVCSVVIPVVRRVTVWDMQLWKWEVMVLVLICGGLVSGWLIRFVVFFIERNFLLRKRVLYFVYGLRRAVQRCLWLGWVLIAWRLILDKKVEKETNSRSLLYVTKILVCLVVGTLIWLLKTLLVKVLAMSFHVSTFFDRIQEALFDQYVIETLSGPPTIEIQHVKEDEDQVMLEVQKLQSAGLSIPAELKATCLPNVNVNGKPVGSDPGPTPGVGKSPRSGVIGKSPRFSRAMPEKEEGAGGITIDHLHRLNQKNISAWNMKRLMNIVRYGVLSTLDEQILESGIEDEPSLHIKNENQAKAAAKRLFKNVARPGSKCIYLEDLMRFMREDEAARTMRAIEGSAESKGISKIALKNWVVNVFRERRALALSLNDTKTAVNKLHQLLNFIVGFTIAIIWLLILGVPMTHFFVFITSQLLLLTFMFGNTFKTTFEAIIFLFVMHPFDVGDRCEVEGVQMIVEEMNILTTVFLRYDNLKITYPNSVLATKPINNYYRSPEMGDSVDFCVHISTPVEKIVVMKERITRYMESRRDHWRPSPKVVMREVEDMNRLKFSVWMCHTMNHQDMGERWARRELLVVEMVKIFKELDVQYRMLPHDVNVRTMPSLVCDRLPSNWITCTGK(配列番号7)。
【0042】
「DmFLYC2ポリヌクレオチド」又は「FLYC2ポリヌクレオチド」は、DmFLYC2ポリペプチドをコードする核酸分子を意味する。特定の実施形態では、DmFLYC2ポリヌクレオチドのコドンは、目的の生物又は目的の生物の細胞における発現のために最適化される(例えば、ヒト発現又はヒト細胞における発現、哺乳動物発現又は哺乳動物細胞発現、植物発現又は植物細胞発現のために最適化される)。例示的なDmFLYC2ポリヌクレオチドの配列を、すぐ下に提供する。いくつかの実施形態では、DmFLYC2核酸分子は、以下に提供されるDmFLYC2核酸分子、又はそれに対して実質的な同一性を有する機能的バリアント、オーソログ、若しくはホモログと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、DmFLYC2核酸分子は、以下に提供されるDmFLYC2ポリヌクレオチド配列を有する核酸分子である。いくつかの実施形態では、DmFLYC2核酸分子は、以下に提供される配列を有する核酸分子の機能的ホモログ、アイソフォーム、又は断片である。いくつかの実施形態では、DmFLYC2核酸分子は、すぐ下に提供されるDmFLYC2ポリヌクレオチド配列であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、例えば、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞における発現のために、以下に提供するコドン最適化DmFLYC2ポリヌクレオチド配列が使用されるか、又はそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列が使用される。実施形態では、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の配列同一性を有する配列が使用される。
【0043】
DmFLYC2ポリヌクレオチド配列(DmFLYC2コドン最適化ポリヌクレオチド配列):
ATGGAGGGCGTTCGTAACCCTTTAAGGAACTCCTTCAACAAGGCCCACGAAGCCGAGCCTCAGAGGAAGAAGAATCTGGAACAAGAAGAGAGGCTGATTTTACTGCAACATAGGAACGACCCCAACTCCCAGAGCTTCAGCTCCGAAGATCCTAACTCTTTACTGCTGCAAGTTAAGGTGGAGGTGGCCGGAAGCTGCGATCCCGCTAAAACCGCCGTGCCCACAAAACCCCCCGTTAGCCCCGGTGGCGGCGGAAATTTAATCTGGAGAGACAGCAGCTACGACTTTCGTAATGACGTGGTGAAGGGCTGCTCCAGAGACACCGACGACGACTCCGGCGAATTCGACTTCCAGAAGCATCGTGTGGCCGAGGAGGAGGACGAAGGCGAAGAAAGAGATCCCGAGTCCCAGACACTCAGCCCCGTTTCCGAGTCCCCCCACGAGTATGGCAAAATCACCCCCAGAGGAGCCGCTAAAGTGAGCTTCAAGGAGAGCGAGCTGGTGCACAGAAGGCCTAGCGATGGCGGAGTGTTTGCCGCCGATGGAGTGAGCGCCAGCGTGAGGGACGAGGAGGTCGTGATGTGCACCTCCAACGCCTCTTGTCAGAGGAAGAGCACAAGCACTCGTGTGAAAACCAAGTCTCGTCTGCTCGATCCTCCCGATGACGGCGACACCAGATCCGGTCGTATTTTACGTTCCGGTTTAATGCCCAGAAGCGAAGATCACGAGGACGAAGACCCCTTTTCCGGCGAAGACATCCCCGAAGAGTATAAGAAGATGAAGTTTAGCTTTTTATCCGCTGTGGAGCTGGTCTCTTTATTATTAATCATCGCCGGCCTCGTCTGCAGCGTCGTGATTCCCGTGGTGAGGAGGGTCACCGTGTGGGATATGCAGCTCTGGAAGTGGGAAGTGATGGTGCTCGTTTTAATCTGCGGCGGTTTAGTCAGCGGATGGCTGATCAGATTTGTGGTCTTTTTCATCGAAAGAAACTTTTTACTGAGGAAGAGGGTGCTCTATTTCGTGTACGGTTTAAGAAGGGCTGTGCAAAGGTGCCTCTGGCTGGGCTGGGTGCTGATCGCTTGGAGACTGATCCTCGACAAGAAGGTCGAGAAGGAGACCAATTCTCGTAGCTTATTATATGTCACCAAGATTTTAGTCTGTTTAGTGGTGGGCACTTTAATCTGGCTGCTGAAAACTTTACTGGTGAAGGTTTTAGCCATGTCCTTTCATGTGAGCACCTTCTTCGATCGTATTCAAGAAGCTTTATTCGACCAGTACGTCATTGAAACACTCTCCGGCCCCCCCACAATTGAGATCCAGCATGTCAAGGAAGACGAGGACCAAGTTATGCTGGAGGTGCAGAAACTGCAAAGCGCCGGTTTAAGCATTCCCGCTGAGCTCAAGGCCACTTGTTTACCCAATGTGAATGTCAATGGCAAGCCCGTTGGCAGCGATCCCGGTCCTACACCCGGCGTGGGAAAGTCCCCTAGATCCGGAGTGATTGGAAAGAGCCCTCGTTTCTCTCGTGCCATGCCCGAGAAGGAGGAAGGAGCCGGCGGCATCACCATCGATCACCTCCACAGACTCAACCAGAAGAACATCTCCGCTTGGAATATGAAGAGACTGATGAACATCGTGAGGTATGGCGTTTTATCCACACTGGACGAACAGATCCTCGAGAGCGGCATCGAAGACGAACCCTCTTTACATATCAAGAACGAGAACCAAGCCAAGGCTGCCGCCAAGAGGCTCTTCAAAAATGTCGCTCGTCCCGGTAGCAAATGCATCTATCTGGAGGACCTCATGAGATTCATGAGGGAAGATGAGGCCGCTAGAACAATGAGGGCTATCGAGGGTTCTGCCGAGTCCAAAGGCATCTCCAAGATCGCCCTCAAGAATTGGGTCGTGAATGTGTTCAGAGAGAGGAGGGCTTTAGCTTTATCTTTAAATGACACCAAGACCGCCGTGAACAAGCTGCACCAGTTATTAAACTTCATCGTGGGCTTCACAATCGCCATCATCTGGCTCCTCATTTTAGGCGTGCCCATGACCCACTTCTTTGTGTTCATTACCAGCCAGTTATTACTCCTCACCTTCATGTTCGGAAATACATTCAAAACAACATTTGAGGCCATTATTTTTCTGTTTGTCATGCATCCTTTCGACGTGGGCGACAGATGTGAGGTGGAAGGAGTGCAGATGATCGTGGAAGAGATGAACATTTTAACCACCGTCTTTTTAAGGTACGACAATTTAAAGATCACCTATCCCAATAGCGTTTTAGCTACCAAGCCCATCAACAATTATTACAGAAGCCCCGAAATGGGAGACAGCGTCGACTTCTGCGTCCACATCTCCACCCCCGTCGAAAAGATTGTCGTCATGAAGGAGAGGATCACAAGGTACATGGAGTCTCGTAGGGACCACTGGAGACCTTCCCCCAAAGTGGTCATGAGGGAGGTGGAGGATATGAATAGACTCAAGTTCTCCGTCTGGATGTGCCACACAATGAACCACCAAGACATGGGCGAGAGATGGGCTCGTAGGGAGCTGCTGGTCGTGGAGATGGTCAAGATCTTCAAGGAGCTCGACGTGCAGTATCGTATGCTGCCCCACGATGTGAACGTGAGAACCATGCCCAGCCTCGTGTGCGACAGACTGCCTAGCAATTGGATCACATGCACCGGAAAATGA(配列番号8)。
【0044】
「DmOSCA」は、細胞、例えばニューロンに超音波感受性を付与し、以下に提供されるDmOSCAポリペプチド配列、その断片、又はそのヒトオーソログに対して少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有し、本明細書に記載される生物学的活性を有することができる機械感覚性ポリペプチドを意味する。実施形態では、機械感覚性ポリペプチドは、以下に提供されるDmOSCAポリペプチド配列、その断片、又はそのヒトオーソログに対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性を有し、本明細書に記載される生物学的活性を有する。いくつかの実施形態では、DmOSCAポリペプチドは、以下に提供されるDmOSCAポリペプチド配列、又はそれに対して実質的な同一性を有する機能的バリアント、アイソフォーム、ホモログ、若しくはオーソログと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、DmOSCAポリペプチドは、以下に提供されるDmOSCAポリペプチド配列の機能的ホモログ、アイソフォーム、オーソログ、又は断片である。いくつかの実施形態では、DmOSCAポリペプチドは、すぐ下に提供されるDmOSCAポリペプチド配列であるか、又はそれを含む。
【0045】
DmOSCAポリペプチド配列:
MESNPEYIASLGDIVVAAVINIFFAFVFFIAFAIFRIQPVNDRVYYTKWYLRGLRSSSTNPDAFVRKCVNLSFGSYLKFLNWMPAALQMPETELIQHAGLDSAVYLRIYLVGLKIFIPITILALSIVIPVNWTDGGLEKSKLIAFNNLDKLSISNIRPGSEKFWTHIGMAYTVTFWACYILKKEYESIESMRLQFLASSGRKPEQFTVLVRNVPLDSDESTSELVEHFFKVNHPDDYLTRQVIYDANVLTDLVRERKKKQMWLNFYQLKYTRSQSRKPFCKTGFLGLWGTKVDAIDYYTMEVERLSKEISSKREMIANDTKAVMLAAFVSFKTRRGAAICAHTQQARNPTLWLTQWAPEPRDIYWRNLAIPYASLSIRKLIVSVTFFFLATFFMIPIAFVQSLANIEGIEKALPFLRPVIEARFVKSIIQGFLPGIVLKIFLTFLPSILMMMCKSEGIISLSALERRAAARYYVFLLINVFLGSIVTGTAFEQLNNILHETANAIPETIGAAIPMKVTFFITYTMVDGWAGMAAEILRLKPLICYHLKVCFLVNTEKDKEEAMNPQSFGFNTREPQIQLYFLVALVYAVAAPILLPFIVLLFSLGYIVYRHQIINVYNQEYESGAAFWPDVHKRIVVALVVSQLLLLGLLSTKKASHSTPLLVALPVLTISFHYLCKGRFLPAFVTHPLQEATLKDSMDLAREPGLHFKRYLQNAYTHPLLKVGDNAETDEAFQEVEQGCQLVQTKRQLWRTFS(配列番号9)。
【0046】
「DmOSCAポリヌクレオチド」は、DmOSCAポリペプチドをコードする核酸分子を意味する。特定の実施形態では、DmOSCAポリヌクレオチドのコドンは、目的の生物又は目的の生物の細胞における発現のために最適化される(例えば、ヒト発現又はヒト細胞における発現、哺乳動物発現又は哺乳動物細胞発現、植物発現又は植物細胞発現のために最適化される)。例示的なDmOSCAポリヌクレオチドの配列を、すぐ下に提供する。いくつかの実施形態では、DmOSCA核酸分子は、以下に提供されるDmOSCA核酸分子、又はそれに対して実質的な同一性を有する機能的バリアント、オーソログ、若しくはホモログと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、DmOSCA核酸分子は、以下に提供されるDmOSCAポリヌクレオチド配列を有する核酸分子である。いくつかの実施形態では、DmOSCA核酸分子は、以下に提供される配列を有する核酸分子の機能的ホモログ、アイソフォーム、又は断片である。いくつかの実施形態では、DmOSCA核酸分子は、すぐ下に提供されるDmOSCAポリヌクレオチド配列であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、例えば、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞における発現のために、以下に提供するコドン最適化DmOSCAポリヌクレオチド配列が使用されるか、又はそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列が使用される。実施形態では、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の配列同一性を有する配列が使用される。
【0047】
DmOSCAポリヌクレオチド配列(DmOSCAコドン最適化ポリヌクレオチド配列):
ATGGAGAGCAACCCCGAATATATTGCTAGCCTCGGCGATATCGTGGTCGCTGCCGTCATCAACATCTTCTTCGCCTTTGTGTTTTTTATCGCTTTTGCCATCTTCAGAATCCAGCCCGTGAACGATAGAGTGTACTACACCAAGTGGTATCTGAGAGGACTGAGGTCCTCCAGCACAAACCCCGACGCCTTTGTGAGGAAGTGCGTGAATCTGAGCTTTGGCAGCTATCTGAAGTTTCTGAACTGGATGCCCGCCGCCCTCCAGATGCCCGAGACAGAGCTGATTCAGCATGCTGGACTCGATTCCGCCGTGTACCTCAGAATCTATCTCGTCGGACTGAAGATCTTCATCCCCATCACCATTCTGGCCCTCAGCATCGTGATTCCCGTGAACTGGACCGATGGCGGCCTCGAGAAGTCCAAGCTGATTGCTTTTAACAACCTCGACAAGCTGTCCATCTCCAACATTAGACCCGGAAGCGAGAAGTTTTGGACCCACATCGGCATGGCCTATACCGTCACCTTCTGGGCTTGCTATATTCTGAAAAAAGAGTACGAGAGCATCGAAAGCATGAGGCTCCAGTTTCTCGCCAGCAGCGGAAGGAAGCCCGAGCAGTTTACCGTGCTGGTGAGGAACGTCCCTCTGGATAGCGATGAATCCACCAGCGAACTGGTCGAACACTTCTTCAAGGTGAACCACCCCGATGACTATCTGACAAGGCAAGTGATTTACGACGCCAACGTGCTGACCGACCTCGTGAGGGAGAGGAAGAAAAAGCAGATGTGGCTCAACTTCTACCAGCTGAAGTACACAAGAAGCCAGTCTAGAAAGCCCTTTTGCAAGACCGGCTTCCTCGGACTGTGGGGCACAAAGGTGGACGCCATCGACTACTACACAATGGAGGTGGAGAGACTCAGCAAGGAGATCAGCTCCAAAAGGGAGATGATCGCTAATGACACCAAGGCTGTCATGCTCGCCGCCTTCGTCAGCTTTAAGACAAGGAGGGGCGCTGCCATTTGCGCTCATACACAGCAAGCCAGAAACCCTACCCTCTGGCTGACACAGTGGGCCCCCGAACCTAGGGACATCTACTGGAGGAATCTGGCCATCCCCTACGCCTCTCTGAGCATTAGAAAACTGATCGTGAGCGTGACCTTCTTCTTTCTGGCTACCTTCTTCATGATCCCCATCGCTTTCGTGCAATCTCTGGCCAACATCGAAGGAATCGAGAAAGCCCTCCCCTTTCTGAGGCCCGTCATTGAAGCTAGATTCGTGAAGTCCATCATCCAAGGCTTTCTGCCCGGCATCGTGCTCAAGATTTTTCTGACCTTTCTCCCCAGCATTCTGATGATGATGTGCAAGAGCGAGGGAATCATTTCTCTGAGCGCTCTCGAGAGGAGAGCTGCCGCTAGATACTACGTCTTTCTGCTGATTAACGTCTTTCTGGGCAGCATTGTGACCGGCACCGCCTTCGAACAACTCAACAACATTCTGCACGAAACAGCCAACGCTATCCCCGAGACCATTGGCGCTGCCATCCCCATGAAAGTCACCTTTTTTATCACCTACACCATGGTCGATGGCTGGGCCGGCATGGCTGCCGAGATCCTCAGACTCAAACCTCTGATCTGTTACCATCTGAAGGTGTGTTTTCTGGTGAACACCGAGAAGGACAAGGAGGAGGCTATGAATCCTCAGTCCTTCGGCTTCAACACCAGAGAGCCCCAAATCCAGCTCTATTTTCTGGTGGCTCTGGTCTACGCTGTGGCTGCCCCCATTCTGCTGCCCTTTATCGTCCTCCTCTTCTCCCTCGGCTACATCGTCTACAGACATCAGATCATCAATGTGTACAACCAAGAGTACGAGTCCGGAGCCGCTTTCTGGCCCGATGTGCATAAGAGGATTGTCGTGGCTCTGGTGGTCAGCCAGCTGCTGCTGCTCGGACTGCTCAGCACCAAGAAAGCTAGCCATTCCACACCTCTGCTGGTGGCTCTGCCCGTGCTGACAATCTCCTTCCACTATCTGTGTAAGGGCAGATTTCTGCCCGCCTTCGTGACACATCCTCTGCAAGAGGCCACACTGAAAGACTCCATGGATCTGGCTAGGGAGCCCGGACTGCACTTTAAGAGGTATCTGCAGAACGCTTACACCCACCCTCTGCTGAAGGTGGGCGATAATGCTGAAACCGACGAAGCCTTCCAAGAGGTGGAACAAGGCTGCCAACTGGTGCAAACCAAAAGGCAGCTGTGGAGAACCTTTAGCTGA(配列番号10)。
【0048】
「DcFLYC1.1」は、細胞、例えばニューロンに超音波感受性を付与し、以下に提供されるDcFLYC1.1ポリペプチド配列、その断片、又はそのヒトオーソログに対して少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有し、本明細書に記載される生物学的活性を有することができる機械感覚性ポリペプチドを意味する。実施形態では、機械感覚性ポリペプチドは、以下に提供されるDcFLYC1.1ポリペプチド配列、その断片、又はそのヒトオーソログに対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性を有し、本明細書に記載される生物学的活性を有する。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.1ポリペプチドは、以下に提供されるDcFLYC1.1ポリペプチド配列、又はそれに対して実質的な同一性を有する機能的バリアント、アイソフォーム、ホモログ、若しくはオーソログと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.1ポリペプチドは、以下に提供されるDcFLYC1.1ポリペプチド配列の機能的ホモログ、アイソフォーム、オーソログ、又は断片である。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.1ポリペプチドは、すぐ下に提供されるDcFLYC1.1ポリペプチド配列であるか、又はそれを含む。
【0049】
DcFLYC1.1ポリペプチド配列:
MASNTNISQQGGEINFEKQMAHRRRHEQLAIQIPVKTASQTFRFNEEVDTRSKFSPAPDITMFYPQPSPNKPPRVPNRTLTRRSTTLKTKPKSRFGEPSLPIDPAALWELAPNSPTPSFREATPSSNNHRFSVGRGSSFAKGVTPRVAASSQRGETTIEGPDEKEVYERVTAQLSARDKKRMTVKLLIELAIFLFVSGCLISSLTIHGLKVRKIYGLPIWRLFLFLLVILSGMLVTHWMIHVVVFLIEWKFLLKKNVVYFTHGLKTSVEVFIWITLILATWGLLIEPDVRHTNRIRNALDFITWTLLSLLLGSFLWLIKTIMIKTLAASFHLNRFFDRIQESIFHHYVLQTLSGRPVVELASGVLTRTETHNGMVSFTEHTKTHKEKKMVDMGKLHQMKQEKVPDWTMQLLVDVVSNSGLSTMSGILDEDMAEGGVELDDDEITSEEQAIATAVRIFYNIVKDKDDQSYIDRKDLHRFLICEEVDLVFPLFEVKDKDQINLKAFSKWVVKLFKERQALKHALNDNKTAVKQLDKLVTSILIVVIIAVWLLLTEIMTTKVLLFFSSQLLVAVFVFGNTCKTIFEAIIFVFVMHPFDVGDRCVVDGTMMLVEEMNILTTVFLKWDKEKVYYPNAVLSTKAIGNYYRSPDQVDSLEFSIDFRTPLSKIGEIKERIKKYLHQNPHLWHPNHNFVVKEIENVNKIKMQLIFNHTINFQEFPERMKRRSELVLELKKIFEELDIKYNLLPQEVILNKVSP(配列番号11)。
【0050】
「DcFLYC1.1ポリヌクレオチド」は、DcFLYC1.1ポリペプチドをコードする核酸分子を意味する。特定の実施形態では、DcFLYC1.1ポリヌクレオチドのコドンは、目的の生物又は目的の生物の細胞における発現のために最適化される(例えば、ヒト発現又はヒト細胞における発現、哺乳動物発現又は哺乳動物細胞発現、植物発現又は植物細胞発現のために最適化される)。例示的なDcFLYC1.1ポリヌクレオチドの配列を、すぐ下に提供する。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.1核酸分子は、以下に提供されるDcFLYC1.1核酸分子、又はそれに対して実質的な同一性を有する機能的バリアント、オーソログ、若しくはホモログと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.1核酸分子は、以下に提供されるDcFLYC1.1ポリヌクレオチド配列を有する核酸分子である。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.1核酸分子は、以下に提供される配列を有する核酸分子の機能的ホモログ、アイソフォーム、又は断片である。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.1核酸分子は、すぐ下に提供されるDcFLYC1.1ポリヌクレオチド配列であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、例えば、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞における発現のために、以下に提供するコドン最適化DcFLYC1.1ポリヌクレオチド配列が使用されるか、又はそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列が使用される。実施形態では、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の配列同一性を有する配列が使用される。
【0051】
DcFLYC1.1ポリヌクレオチド配列(DcFLYC1.1コドン最適化ポリヌクレオチド配列):
ATGGCTAGCAACACAAATATTTCCCAGCAAGGCGGCGAGATCAACTTCGAAAAGCAGATGGCCCACAGAAGGAGACATGAGCAGCTGGCCATCCAAATCCCCGTGAAAACCGCCAGCCAGACCTTCAGATTCAACGAGGAAGTGGACACAAGAAGCAAGTTCAGCCCCGCCCCCGACATTACCATGTTCTACCCCCAGCCTAGCCCCAACAAACCTCCTAGGGTGCCCAATAGGACACTCACCAGAAGGAGCACCACACTGAAGACCAAACCCAAATCTAGATTCGGCGAACCTTCTCTGCCTATCGATCCCGCTGCCCTCTGGGAACTGGCTCCCAATTCCCCTACCCCCAGCTTTAGAGAGGCCACCCCCTCCTCCAACAACCATAGATTCTCCGTGGGAAGAGGCAGCAGCTTTGCTAAGGGAGTGACCCCTAGAGTCGCCGCCAGCAGCCAAAGAGGCGAGACAACAATCGAGGGCCCCGACGAGAAAGAAGTGTACGAGAGGGTCACAGCCCAGCTGAGCGCTAGGGATAAGAAGAGGATGACCGTCAAGCTGCTGATCGAGCTGGCCATCTTTCTGTTCGTCAGCGGCTGCCTCATCTCCAGCCTCACAATTCACGGACTGAAGGTGAGAAAGATCTACGGACTGCCTATTTGGAGGCTGTTCCTCTTTCTCCTCGTCATTCTGAGCGGAATGCTGGTGACACACTGGATGATCCATGTCGTGGTGTTTCTGATCGAATGGAAGTTTCTGCTGAAGAAGAATGTGGTCTACTTCACCCACGGACTGAAGACCTCCGTGGAGGTCTTCATTTGGATCACACTGATCCTCGCCACATGGGGACTGCTCATCGAGCCCGACGTCAGACATACCAATAGAATTAGAAATGCCCTCGACTTCATCACATGGACACTGCTGTCTCTGCTGCTCGGCAGCTTTCTCTGGCTGATCAAGACCATCATGATTAAGACACTCGCCGCCTCCTTCCATCTGAATAGATTTTTCGATAGAATCCAAGAGTCCATCTTCCACCACTACGTGCTGCAGACACTCTCCGGCAGACCCGTCGTCGAACTGGCTTCCGGAGTGCTGACAAGGACCGAGACACACAATGGCATGGTCAGCTTTACCGAGCACACAAAGACCCACAAGGAAAAGAAGATGGTGGACATGGGAAAGCTGCACCAGATGAAGCAAGAGAAGGTCCCCGACTGGACAATGCAGCTGCTGGTGGATGTCGTGAGCAACTCCGGCCTCAGCACCATGTCCGGAATTCTGGACGAGGACATGGCTGAGGGAGGCGTGGAGCTCGATGACGACGAGATCACCTCCGAGGAGCAAGCCATTGCTACCGCCGTCAGAATCTTCTATAATATTGTCAAGGACAAGGACGACCAGTCCTACATCGACAGAAAGGACCTCCATAGATTTCTGATCTGTGAGGAGGTGGATCTGGTGTTCCCTCTGTTTGAGGTGAAAGACAAAGACCAGATTAATCTGAAGGCCTTCAGCAAGTGGGTCGTGAAGCTCTTTAAAGAGAGGCAAGCCCTCAAGCACGCCCTCAACGACAACAAGACCGCCGTGAAACAGCTCGATAAGCTGGTGACCTCCATTCTGATTGTGGTGATTATCGCCGTGTGGCTGCTGCTGACCGAGATTATGACCACCAAAGTGCTGCTGTTCTTCTCCTCCCAGCTCCTCGTGGCCGTGTTTGTCTTCGGCAACACATGCAAGACAATCTTCGAGGCCATTATCTTTGTGTTCGTCATGCATCCCTTCGACGTGGGCGATAGATGTGTGGTGGACGGCACCATGATGCTGGTCGAAGAGATGAACATCCTCACCACCGTCTTTCTGAAGTGGGACAAGGAAAAGGTGTACTACCCCAACGCTGTCCTCTCCACCAAGGCTATTGGCAATTACTATAGAAGCCCCGACCAAGTGGATTCTCTGGAGTTCTCCATCGACTTTAGAACACCCCTCTCCAAAATTGGAGAGATCAAAGAGAGGATTAAGAAATATCTCCATCAGAACCCCCATCTGTGGCACCCCAACCACAACTTCGTGGTGAAGGAGATCGAAAATGTCAATAAGATTAAGATGCAGCTGATCTTTAATCACACAATTAATTTCCAAGAGTTTCCCGAGAGGATGAAGAGGAGAAGCGAGCTGGTGCTGGAGCTGAAGAAGATCTTCGAGGAGCTGGACATCAAGTATAATCTGCTGCCCCAAGAGGTCATTCTCAACAAGGTGAGCCCTTGA(配列番号12)。
【0052】
「DcFLYC1.2」は、細胞、例えばニューロンに超音波感受性を付与し、以下に提供されるDcFLYC1.2ポリペプチド配列、その断片、又はそのヒトオーソログに対して少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有し、本明細書に記載される生物学的活性を有することができる機械感覚性ポリペプチドを意味する。実施形態では、機械感覚性ポリペプチドは、以下に提供されるDcFLYC1.2ポリペプチド配列、その断片、又はそのヒトオーソログに対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性を有し、本明細書に記載される生物学的活性を有する。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.2ポリペプチドは、以下に提供されるDcFLYC1.2ポリペプチド配列、又はそれに対して実質的な同一性を有する機能的バリアント、アイソフォーム、ホモログ、若しくはオーソログと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.2ポリペプチドは、以下に提供されるDcFLYC1.2ポリペプチド配列の機能的ホモログ、アイソフォーム、オーソログ、又は断片である。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.2ポリペプチドは、すぐ下に提供されるDcFLYC1.2ポリペプチド配列であるか、又はそれを含む。
【0053】
DcFLYC1.2ポリペプチド配列:
MASNTNISQQGGEINFEKQMAHRRRHEQLAIQIPVKTASQTFPFNEEVDTTRSKFSPAPDITMFYPQPSPNKPPRVPNRNLSRRSTTLKTKPKSRFGEPSLPIDPAALWELAPNSPAPSFREATPSSNNHRASVGRGSSFVKGVTPRVAASSRRGETTIEGPDEREVYERVTAQLSARDKKRMTVKLLIELAVFLFVSGCLISSLTIHGLKVRIICGLPIWRLFLFLLVILSGMLVTHWMLHVVVFLIEWKFLLKKNVVYFTHGLKTSVEVFIWITLILATWALLIEPDVRHTNRIRNALDFITWTLLSLLLCSFLWLIKTIMIKTLAASFHLNRFFDRIQESIFHHYVLQTLSGRPVVELASGVLTRTETHNGMVSFTEHTKTHTEKKMVDMGKLHQMKQEKVPDWTMQLLVDVVSNSGLSTMSGILDEDMAEGGVELDDDEITSEEQAIATAVRIFYNIVKDKDDQTYIDRKDLHRFLICEEVDLVFPLFEVKDKDQISLKAFSKWVVKLFKERQALKHALNDNKTAVKQLDKLVTSILIVVIIAVWLLLTELMTTKVLLFFTSQLLVAVFVFGNTCKTIFEAIIFVFVMHPFDVGDRCVIDGTTMLVEEMNILTTVFLKWDKEKVYYPNAVLSTKAIGNYYRSPDQVDSLEFSIDFRTPLSKIGEIKERIKKYLHQNPHLWHPNHNLVVKEIENVNKIKTQLIFNHTMNFQEFPERMKRRTELVLELKKIFEELDIKYNLLPQEVILNNVGP(配列番号13)。
【0054】
「DcFLYC1.2ポリヌクレオチド」は、DcFLYC1.2ポリペプチドをコードする核酸分子を意味する。特定の実施形態では、DcFLYC1.2ポリヌクレオチドのコドンは、目的の生物又は目的の生物の細胞における発現のために最適化される(例えば、ヒト発現又はヒト細胞における発現、哺乳動物発現又は哺乳動物細胞発現、植物発現又は植物細胞発現のために最適化される)。例示的なDcFLYC1.2ポリヌクレオチドの配列を、すぐ下に提供する。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.2核酸分子は、以下に提供されるDcFLYC1.2核酸分子、又はそれに対して実質的な同一性を有する機能的バリアント、オーソログ、若しくはホモログと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.2核酸分子は、以下に提供されるDcFLYC1.2ポリヌクレオチド配列を有する核酸分子である。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.2核酸分子は、以下に提供される配列を有する核酸分子の機能的ホモログ、アイソフォーム、又は断片である。いくつかの実施形態では、DcFLYC1.2核酸分子は、すぐ下に提供されるDcFLYC1.2ポリヌクレオチド配列であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、例えば、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞における発現のために、以下に提供するコドン最適化DcFLYC1.2ポリヌクレオチド配列が使用されるか、又はそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列が使用される。実施形態では、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%の配列同一性を有する配列が使用される。
【0055】
DcFLYC1.2ポリヌクレオチド配列(DmFLYC1.2コドン最適化ポリヌクレオチド配列):
ATGGCTAGCAACACAAATATTTCCCAGCAAGGCGGCGAGATCAACTTCGAAAAGCAGATGGCTCATAGAAGAAGGCATGAGCAACTCGCTATCCAGATCCCCGTGAAGACAGCCAGCCAGACCTTCCCCTTCAACGAGGAAGTCGATACCACAAGAAGCAAGTTCAGCCCCGCCCCCGACATCACCATGTTCTACCCCCAACCTAGCCCTAACAAACCCCCTAGGGTGCCCAATAGGAATCTGTCTAGAAGATCCACCACACTGAAGACAAAGCCCAAGTCTAGATTCGGCGAACCCAGCCTCCCTATTGACCCCGCCGCTCTGTGGGAACTGGCCCCCAACAGCCCCGCTCCCTCCTTTAGGGAAGCCACACCCTCCAGCAACAACCACAGAGCCTCCGTGGGAAGGGGCAGCTCCTTCGTGAAGGGAGTCACACCTAGGGTGGCCGCCAGCTCTAGAAGAGGCGAAACCACAATTGAAGGCCCCGACGAGAGAGAGGTCTATGAGAGAGTGACAGCTCAGCTGAGCGCCAGAGATAAGAAGAGAATGACCGTGAAGCTCCTCATTGAGCTCGCCGTCTTTCTGTTTGTGTCCGGATGTCTGATCTCCAGCCTCACAATTCACGGACTGAAGGTGAGAATTATCTGTGGACTGCCCATCTGGAGACTGTTTCTGTTTCTGCTGGTGATCCTCTCCGGAATGCTGGTCACACACTGGATGCTCCATGTCGTCGTGTTCCTCATCGAATGGAAGTTTCTGCTGAAAAAGAATGTCGTGTACTTCACCCACGGACTGAAAACCTCCGTCGAGGTGTTCATCTGGATCACACTGATTCTGGCCACATGGGCTCTGCTGATTGAGCCCGACGTGAGACACACCAATAGAATCAGAAACGCCCTCGACTTCATCACATGGACACTGCTGTCTCTGCTGCTCTGCTCCTTTCTCTGGCTGATCAAGACCATCATGATCAAGACACTGGCCGCTTCCTTCCATCTGAATAGGTTCTTTGATAGAATCCAAGAGTCCATCTTCCATCACTACGTGCTCCAGACCCTCTCCGGAAGGCCCGTGGTCGAGCTCGCTTCCGGCGTCCTCACCAGAACAGAGACCCACAACGGAATGGTCAGCTTCACCGAGCATACCAAGACCCACACAGAGAAGAAGATGGTGGACATGGGCAAGCTCCACCAAATGAAGCAAGAGAAGGTCCCCGACTGGACCATGCAGCTGCTGGTGGATGTGGTGAGCAATAGCGGACTGAGCACCATGTCCGGCATTCTGGACGAAGACATGGCCGAAGGCGGAGTCGAACTGGACGATGACGAGATCACCTCCGAAGAGCAAGCCATTGCCACCGCTGTGAGGATTTTCTACAACATCGTCAAGGACAAAGACGACCAGACCTACATCGATAGAAAGGATCTGCATAGATTTCTGATCTGCGAAGAAGTGGACCTCGTGTTCCCCCTCTTTGAAGTGAAGGACAAGGACCAGATCTCTCTGAAGGCCTTTAGCAAGTGGGTGGTGAAGCTCTTCAAGGAGAGGCAAGCCCTCAAGCACGCCCTCAACGACAATAAGACCGCCGTCAAGCAGCTGGATAAACTCGTGACAAGCATCCTCATCGTGGTCATCATCGCCGTCTGGCTGCTGCTGACCGAACTCATGACCACCAAGGTGCTGCTGTTCTTCACCAGCCAACTGCTCGTGGCCGTGTTTGTGTTTGGAAATACATGTAAAACAATCTTTGAGGCTATCATCTTCGTGTTCGTGATGCACCCTTTCGACGTGGGCGATAGATGTGTGATCGATGGAACCACCATGCTGGTCGAGGAGATGAATATCCTCACCACAGTGTTTCTGAAGTGGGACAAAGAAAAAGTGTACTACCCCAACGCCGTGCTGAGCACCAAAGCTATTGGAAATTACTATAGGTCCCCCGACCAAGTGGACTCTCTGGAGTTTAGCATCGATTTTAGAACCCCTCTGTCCAAAATCGGAGAGATTAAGGAAAGGATCAAAAAATATCTGCACCAGAATCCCCATCTGTGGCACCCTAATCACAATCTGGTGGTCAAGGAGATCGAGAATGTGAACAAGATCAAAACACAACTCATTTTCAATCACACCATGAACTTCCAAGAGTTCCCCGAGAGGATGAAGAGAAGGACAGAACTCGTGCTGGAGCTGAAGAAAATCTTCGAGGAGCTGGACATCAAATACAATCTGCTGCCCCAAGAAGTCATTCTGAACAACGTGGGACCCTGA(配列番号14)。
【0056】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様の方法で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされたもの、並びに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合したα炭素、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)を有する化合物を指す。かかる類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様の方法で機能する化学化合物を指す。「天然に存在しないアミノ酸」及び「非天然アミノ酸」という用語は、天然には見られないアミノ酸類似体、合成アミノ酸、及びアミノ酸模倣物を指す。
【0057】
アミノ酸は、本明細書において、一般に知られている3文字記号、又はIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される1文字記号のいずれかによって言及されてもよい。ヌクレオチドは、同様に、それらの一般に受け入れられている一文字コードによって言及されてもよい。
【0058】
「保存的に修飾されたバリアント」は、アミノ酸配列及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾されたバリアントは、同一若しくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、又は核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一の配列を指す。遺伝暗号が縮重しているために、多数の機能的に同一の核酸が任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、及びGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定される全ての位置で、コードされたポリペプチドを変化させることなく、記載された対応するコドンのうちのいずれかにコドンを変化させることができる。そのような核酸変異は、保存的に修飾された変異の一種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書の全ての核酸配列は、核酸の全ての可能なサイレント変異も記載している。当業者は、核酸中の各コドン(通常、メチオニンの唯一のコドンであるAUG、及び通常、トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一の分子を産生するように修飾され得ることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、実際のプローブ配列に関してではなく、発現産物に関して、記載された各配列に暗示されている。
【0059】
「変化した」は、増加(又は増強)、又は減少(又は低減)を意味する。増加は、任意のプラスの変化、例えば、少なくとも約5%、10%、若しくは20%、又は約25%、50%、75%、又は更には100%、200%、300%、若しくはそれ以上である。減少は、マイナスの変化、例えば、約5%、10%、若しくは20%の減少、又は約25%、50%、75%の減少、又は更には100%、200%、300%、若しくはそれ以上の増加である。
【0060】
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」という用語は、米国特許法でそれらに付与される広範な意味を有することを意図しており、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味することができる。
【0061】
「接触すること」は、その明白な通常の意味に従って使用され、少なくとも2つの異なる種(例えば、生体分子、試薬、又は細胞を含む化学化合物)が反応するか、相互作用するか、影響を与えるか、影響を及ぼすか、又は物理的に触れるのに十分な程近位になることを可能にするプロセスを指す。しかしながら、得られる反応生成物は、添加された試薬間の反応から、又は1つ以上の添加された試薬の中間体から直接産生され得、これは、反応混合物中で、又は接触条件下で産生され得ることを理解されたい。接触することは、2つの種が反応するか、相互作用するか、又は物理的に触れるのを可能にすることを含んでもよく、2つの種は、本明細書に記載される組換えウイルス粒子及び細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、2つの種は、超音波に曝露される超音波造影剤及び細胞である。いくつかの実施形態では、2つの種は、超音波及び細胞である。
【0062】
遺伝子に関して本明細書で使用される「発現」又は「発現された」という用語は、その遺伝子の転写及び/又は翻訳産物を意味する。細胞内のDNA分子の発現レベルは、細胞内に存在する対応するmRNAの量、又は細胞によって産生されるそのDNAによってコードされるタンパク質の量のいずれかに基づいて決定され得る。非コード核酸分子(例えば、siRNA)の発現レベルは、当該技術分野で周知の標準的なPCR又はノーザンブロット法によって検出され得る。例えば、Sambrook et al.,1989 Molecular Cloning:A Laboratory Manual,18.1-18.88を参照されたい。
【0063】
トランスフェクトされた遺伝子の発現は、細胞内で一過的に又は安定して起こり得る。「一過性発現」の間、トランスフェクトされた遺伝子は、細胞分裂中には娘細胞に移らない。その発現はトランスフェクトされた細胞に限定されるため、遺伝子の発現は時間の経過とともに失われる。対照的に、トランスフェクトされた遺伝子の安定発現は、その遺伝子が、トランスフェクトされた細胞に選択の利点を付与する別の遺伝子で共トランスフェクトされるときに起こり得る。そのような選択の利点は、細胞に提示される特定の毒素に対する耐性であり得る。トランスフェクトされた遺伝子の発現は、宿主ゲノムへのトランスポゾン媒介性挿入によって更に達成することができる。トランスポゾン媒介性挿入の間、遺伝子は、宿主ゲノムへの挿入及びその後の切り出しを可能にする2つのトランスポゾンリンカー配列間で予測可能な様式で配置される。トランスフェクトされた遺伝子の安定発現は、レンチウイルスベクターを細胞に感染させることによって更に達成することができ、レンチウイルスベクターは、感染後に細胞ゲノムの一部を形成し(細胞ゲノムに組み込まれ)、それによって、遺伝子の安定発現をもたらす。
【0064】
「外因性」(「異種」と同義)という用語は、所与の細胞又は生物の外側の供給源を起源とするか、又はそれに由来する分子、試薬、又は物質(例えば、化合物、核酸(ポリヌクレオチド)、又はタンパク質(ポリペプチド若しくはペプチド))を指す。例えば、本明細書で言及される「外因性プロモーター」は、それが発現される供給源(例えば、所与の細胞又は生物)を起源としないプロモーターである。例えば、本明細書で言及される「外因性」又は「異種」ポリペプチド又はポリヌクレオチドは、それが発現される供給源(例えば、所与の細胞、組織、臓器、又は生物)を起源とするものではなく、異なる供給源から取得又は誘導され、遺伝学的又は組換え技術によって所与の細胞、組織、臓器、又は生物内に導入又は送達され、その後、その所与の細胞、組織、臓器、又は生物内で発現される。例として、外因性プロモーターは、細菌、植物、又は真菌(酵母)などの所与の生物に由来し、哺乳動物細胞などの別の生物又は細胞型において使用され得る。逆に、「内因性」(例えば、「内因性プロモーター」、「内因性タンパク質又はポリペプチド」、又は「内因性ポリヌクレオチド」)という用語は、所与の細胞、組織、臓器、若しくは生物に固有である(native to)か、又はその中から発生する(originates within)分子又は物質を指す。「異種発現される」又は「外因的に発現される」という用語は、本明細書において、細胞における異種又は外因性ポリペプチドの発現に関して、互換的に使用される。
【0065】
「断片」は、ポリペプチド又は核酸分子の一部分を意味する。この部分は、例えば、参照核酸分子又はポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%を含有する。断片は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000個のヌクレオチド又はアミノ酸を含有し得る。
【0066】
「遺伝子」という用語は、タンパク質の産生に関与するDNAのセグメントを意味し、個々のコードセグメント(エクソン)間のコード領域(リーダー及びトレーラー)並びに介在配列(イントロン)の前後の領域を含む。リーダー、トレーラー、及びイントロンには、遺伝子の転写及び翻訳中に必要な調節要素が含まれる。更に、「タンパク質遺伝子産物」は、特定の遺伝子から発現されるタンパク質である。
【0067】
「ハイブリダイゼーション」は、相補的核酸塩基間の水素結合を意味し、これは、ワトソン-クリック、フーグスティーン、又は逆フーグスティーン水素結合であり得る。例えば、アデニン及びチミンは、水素結合の形成を介して対合する相補的核酸塩基である。
【0068】
「同一」又は「同一性」パーセントという用語は、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈で、以下に記載されるデフォルトパラメータを有するBLAST又はBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用して測定される場合、又は手動アラインメント及び目視検査によって測定される場合、同じであるか、又は同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを特定のパーセンテージ(すなわち、比較ウィンドウ若しくは指定領域にわたって最大対応について比較され、アラインメントされた場合、特定の領域にわたって、約60%同一性、又は65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくはもっと高い同一性)で含む、2つ以上の配列又はサブ配列を指す。次いで、そのような配列は、「実質的に同一」又は「相同」であると言われる。この定義はまた、試験配列の相補性を指すか、又はそれに適用され得る。この定義には、欠失及び/又は付加を有する配列、並びに置換を有する配列も含まれる。以下に記載されるように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを考慮することができる。一実施形態では、同一性は、長さが少なくとも約25個のアミノ酸若しくはヌクレオチドである領域、又は長さが50~100個のアミノ酸若しくはヌクレオチドである領域にわたって存在する。
【0069】
「単離された」、「精製された」、又は「生物学的に純粋な」という用語は、その天然状態で見出されるように、材料に通常付随する成分を様々な程度で含まない材料を指す。「単離する」は、元の供給源又は周囲からのある程度の分離を意味する。「精製する」は、単離よりも高い程度の分離を意味する。「精製された」又は「生物学的に純粋な」タンパク質は、いかなる不純物もタンパク質の生物学的特性に実質的に影響を与えないように、又は他の有害な結果を引き起こさないように、十分に他の材料を含まない。すなわち、核酸、ポリペプチド、又はペプチドは、組換えDNA技術によって産生されるときには細胞物質、ウイルス物質、若しくは培養培地を実質的に含まない場合、又は化学的に合成されるときには化学前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない場合に、精製されている。純度及び均質性は、典型的には、分析化学技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高性能液体クロマトグラフィーを使用して決定される。「精製された」という用語は、核酸又はタンパク質が電気泳動ゲル内で本質的に1つのバンドを生じさせることを示すことができる。修飾、例えば、リン酸化又はグリコシル化を受けることができるタンパク質について、異なる修飾は、別々に精製することができる、異なる単離されたタンパク質を生じさせ得る。
【0070】
「単離されたポリヌクレオチド」は、本明細書に記載される核酸分子が由来する生物の天然に存在するゲノムにおいて、ある遺伝子に隣接する遺伝子を含まない核酸(例えば、DNA)を意味する。したがって、この用語は、例えば、ベクターに組み込まれる組換えDNA、自律的に複製するプラスミド若しくはウイルスに組み込まれる組換えDNA、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれる組換えDNA、又は他の配列とは無関係に別個の分子(例えば、PCR又は制限エンドヌクレアーゼ消化によって産生されるcDNA又はゲノム若しくはcDNA断片)として存在する組換えDNAを含む。更に、この用語は、DNA分子から転写されるRNA分子、及び追加のポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAを含む。
【0071】
「単離されたポリペプチド」は、本明細書に記載されるポリペプチドであって、当該ポリペプチドに天然に付随する成分から分離された、ポリペプチドを意味する。典型的には、ポリペプチドは、それが、天然に会合するタンパク質及び天然に存在する有機分子を含まない、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、又は少なくとも60重量%である場合に、単離されている。実施形態では、調製物は、少なくとも75重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも99重量%の、本明細書に記載の機械感覚性ポリペプチドである。本明細書に記載の単離されたポリペプチドは、例えば、天然供給源からの抽出によって、かかるポリペプチドをコードする組換え核酸の発現によって、又はタンパク質を化学的に合成することによって得られ得る。純度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、又はHPLC分析によって測定することができる。
【0072】
「哺乳動物」は、非ヒト霊長類(サル、類人猿、ヒヒなど)、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ラット、イヌ、ネコなどを含むがこれらに限定されない任意の温血動物を意味する。一実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0073】
本明細書で使用される「機械感受性」、「機械的に活性化された」、「機械受容体」、「機械伝達」、「伸展ゲートされた」、「音響的に感受性のある」、及び他の同様の技術用語は、互換可能であるとみなされ、細胞、組織、若しくはポリペプチド、又は超音波などの音響エネルギーによる活性化又は不活性化に感受性のある他の有形物を指すために使用される。
【0074】
「調節すること」は、細胞、組織、臓器、生物、又は対象を、例えば、超音波刺激に供することによって、細胞、組織、臓器、生物、又は対象の活性又は機能に影響を与えるか、又は変化させることを意味する。一実施形態では、インスリン分泌細胞又は神経細胞などの細胞の活性又は機能は、細胞に超音波又は超音波を印加又は送達することによって調節される。実施形態では、対象における、例えば、対象の脳又はCNSにおける細胞を調節することは、対象の挙動、又は薬剤、刺激、状況、効果、若しくは活性に対する対象の応答に影響を及ぼす。いくつかの実施形態では、活性又は機能を調節することは、細胞活性若しくは機能、又は対象の応答若しくは応答性の増加(増強)若しくは減少(阻害若しくは抑制)を引き起こし得る。
【0075】
「核酸」は、一本鎖若しくは二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド及びそれらのポリマー、又はそれらの相補体を指す。「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの直鎖配列を指す。用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」は、本明細書において互換的に使用される。「ヌクレオチド」という用語は、典型的には、ポリヌクレオチドの単一ユニット、すなわち、モノマーを指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、又はそれらの修飾バージョンであり得る。本明細書で企図されるポリヌクレオチドの例としては、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖RNA(siRNAを含む)、並びに一本鎖及び二本鎖DNAとRNAとの混合物を有するハイブリッド分子が挙げられる。この用語はまた、既知のヌクレオチド類似体又は修飾された骨格残基又は連結を含有する核酸を包含し、これらは、合成され、天然に存在し、天然に存在せず、参照核酸と同様の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと同様の方法で代謝される。かかる類似体の例には、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、及び2-O-メチルリボヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係に配置されるときに、「作動可能に連結される」。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結され、プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結され、又はリボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置される場合、コード配列に作動可能に連結される。一般的に、「作動可能に連結される」は、連結されるDNA配列が互いに近接しており、分泌リーダーの場合には、連続しており、かつ読み取り段階にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、連続している必要はない。連結は、好都合な制限部位でのライゲーションによって達成される。かかる部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーは、従来の慣行に従って使用される。
【0077】
「薬剤を得ること」におけるような「得ること」という用語は、薬剤、例えば、タンパク質、ポリヌクレオチド、又は試料を合成、誘導、単離、購入、又は他の方法で取得することを含む。
【0078】
「発現のために位置決めされる」は、ポリヌクレオチド(例えば、DNA分子)が、転写を指示するDNA配列に隣接して位置決めされ、タンパク質については、配列の翻訳(すなわち、例えば、本明細書に記載される組換えポリペプチド又はRNA分子の産生を容易にする)を意味する。
【0079】
「プラスミド」又は「ベクター」という用語は、遺伝子の発現に必要な遺伝子及び/又は調節要素をコードする核酸分子を指す。プラスミド又はベクターからの遺伝子の発現は、シス又はトランスにおいて生じ得る。遺伝子がシスで発現される場合、遺伝子及び調節要素は、同じプラスミド及びベクターによってコードされる。トランスでの発現は、遺伝子及び調節要素が別々のプラスミド又はベクターによってコードされる事例を指す。
【0080】
本明細書で使用される場合、「予防する」、「予防すること」、「予防」、「予防的治療」などの用語は、障害又は状態を有しないが、それを発症する危険性があるか、又はそれを発症しやすい対象において障害又は状態を発症する可能性を低下させることを指す。
【0081】
「低減する」は、少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、又は100%のマイナスの変化を意味する。
【0082】
「参照」又は「対照」は、標準状態を意味する。例えば、参照として使用される未処理の細胞、組織、又は臓器である。
【0083】
「タンパク質」、「ペプチド」、及び「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸ポリマー、又は2つ以上の相互作用若しくは結合アミノ酸ポリマーのセットを示すために互換的に使用される。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。本明細書に記載の特定のポリペプチド(例えば、MscS、MscL、MscK、MscL G22S、MscS様、MscMJ、MscMJLR、Msc様3、MscSfam)について、名前付きポリペプチドは、ポリペプチドの天然に存在する形態、又はポリペプチドの機械感覚性活性を維持する(例えば、天然ポリペプチドと比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の活性内)バリアント、アイソフォーム、若しくはホモログのうちのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、バリアント又はホモログは、天然に存在する形態と比較して、ポリペプチド配列の全体配列又はその一部分(例えば、50、100、150、又は200個の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。他の実施形態では、ポリペプチドは、そのGenbankアクセッション番号によって特定されるポリペプチドである。
【0084】
本明細書で提供される範囲は、その範囲内の全ての値の略記であると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50からなる群からの任意の数、数値の組み合わせ、又は部分範囲を含むと理解される。
【0085】
「組換え」という用語は、例えば、細胞、又は核酸、タンパク質、又はベクターを参照しつつ使用される場合、その細胞、核酸、タンパク質、又はベクターが、異種核酸若しくはタンパク質の導入又は天然の核酸若しくはタンパク質の変化によって改変されていること、又はその細胞が、そのように改変された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、その細胞の天然(非組換え)形態には見られない遺伝子を発現するか、又は他の方法では異常に発現されるか、過小発現されるか、又は全く発現されない天然遺伝子を発現する。トランスジェニック細胞及び植物は、典型的には組換え方法の結果として、異種遺伝子又はコード配列を発現するものである。
【0086】
「超音波遺伝学(sonogenetics)」、「超音波遺伝学(sonogenetic)」、「超音波遺伝学(sonogenics)」又は「超音波遺伝学(sonogenic)」という用語は、超音波、例えば、低強度超音波に応答する異種又は外因性機械感受性(機械伝達とも呼ばれる)チャネルを発現するニューロン(例えば、運動ニューロン)などの細胞又は細胞型の活性又は機能を操作、制御、又は調節する非侵襲的アプローチ、方法、又は技術を指す。神経細胞活性などの細胞活性は、標的細胞、例えば、運動ニューロンなどのニューロン又は神経細胞型内で異種又は外因性機械感受性チャネルを発現させ、細胞を超音波(低強度超音波)に供することによって制御又は調節することができ、それによって、超音波又は超音波パルスに応答する。一実施形態では、細胞型は、哺乳動物脳内に位置する。そのような異種又は外因性機械感受性チャネルを発現する標的細胞は、非侵襲性超音波によって生成される機械的変形に対してそれらの細胞を感受性にする特定の細胞である。一実施形態では、細胞は、脳の領域内又は脊髄(中枢神経系、CNS)内のニューロンである。一実施形態では、細胞は、末梢神経系(PNS)内にある。一実施形態では、脳の領域は、視床下部である。一実施形態では、超音波は、外部トランスデューサを使用して視床下部に送達又は印加される。一実施形態では、トランスデューサは、覚醒中の哺乳動物対象の頭部上に非侵襲的に配置される。一実施形態では、トランスデューサは、PZTベースのトランスデューサである。一実施形態では、細胞は、脊髄内のニューロンである。
【0087】
本明細書で使用される「対象」という用語は、脊椎生物、例えば、哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、げっ歯類、ウマ、ウシ、ウサギ、ヤギ、非ヒト霊長類、又はヒトを指す。一実施形態では、対象は、ヒト個体又は患者であり得る。
【0088】
「実質的に同一」は、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のアミノ酸配列のうちのいずれか1つ)又は核酸配列(例えば、本明細書に記載の核酸配列のうちのいずれか1つ)に対して少なくとも50%の同一性を示すポリペプチド又は核酸分子を意味する。実施形態では、かかる配列は、アミノ酸レベル又は核酸において、比較のために使用される配列と少なくとも60%、又は少なくとも80%若しくは85%、又は少なくとも90%、95%、若しくは更には99%同一である。
【0089】
配列同一性は、典型的には、配列解析ソフトウェア(例えば、the Genetics Computer Group,University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,Wis.53705のSequence Analysis Software Package、BLAST、BESTFIT、GAP、又はPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を使用して測定される。そのようなソフトウェアは、様々な置換、欠失、及び/又は他の修飾に相同性の程度を割り当てることによって、同一又は類似の配列を照合する。保存的置換は、典型的には、以下の基:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン、リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン内の置換を含む。同一性の程度を決定する例示的なアプローチでは、BLASTプログラムを使用してもよく、e-3~e-100の確率スコアは、密接に関連する配列を示す。
【0090】
「形質転換細胞」は、組換えDNA技術によって、本明細書に記載されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子(又はその祖先)を導入された細胞を意味する。
【0091】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「治療すること」、「治療」などは、疾患、障害、病理、若しくは状態、及び/又はそれらに関連する症状を低減、緩和、減少、改善、又は排除することを指す。除外されないが、疾患、障害、又は状態を治療することは、それらに関連する疾患、障害、病理、状態、又は症状が完全に排除されることを必要としないことを理解されたい。
【0092】
「形質転換細胞」は、組換えDNA技術によって、本明細書に記載されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子(又はその祖先)を導入された細胞を意味する。
【0093】
「トランスフェクション」、「形質導入」、「トランスフェクトすること」、又は「形質導入すること」という用語は、互換的に使用することができ、核酸分子又はタンパク質を細胞に導入するプロセスとして定義される。核酸は、非ウイルス又はウイルスベースの方法を使用して細胞に導入される。核酸分子は、完全なタンパク質又はそれらの機能部分をコードする遺伝子配列であってもよい。トランスフェクションの非ウイルス性方法は、核酸分子を細胞に導入するための送達系としてウイルスDNA又はウイルス粒子を使用しない任意の適切なトランスフェクション方法を含む。例示的な非ウイルス性トランスフェクション方法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソームトランスフェクション、核融合、ソノポレーション、熱ショックによるトランスフェクション、マグネトフェクション、及びエレクトロポレーションが挙げられる。いくつかの実施形態では、核酸分子は、当該技術分野で周知の標準的な手順に従って、エレクトロポレーションを使用して細胞に導入される。トランスフェクションのウイルスベースの方法のために、任意の有用なウイルスベクターを、本明細書に記載の方法において使用してもよい。ウイルスベクターの例には、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、及びアデノ随伴ウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、核酸分子は、当該技術分野で周知の標準的な手順に従って、レトロウイルスベクターを使用して細胞に導入される。「トランスフェクション」又は「形質導入」という用語は、外部環境から細胞にタンパク質を導入することも指す。典型的には、タンパク質の形質導入又はトランスフェクションは、細胞膜を通過することができるペプチド又はタンパク質の、目的のタンパク質への結合に依存する。例えば、Ford et al.(2001)Gene Therapy 8:1-4及びProchiantz(2007)Nat.Methods 4:119-20を参照されたい。
【0094】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、「治療」などの用語は、障害及び/又はそれに関連する症状を軽減又は改善することを指す。除外されないが、障害又は状態を治療することは、障害、状態、又はそれらに関連する症状を完全に排除することを必要としないことが理解されるであろう。
【0095】
「有効量」は、記載される目的を達成する(例えば、それが投与される効果を達成する、疾患を治療する、酵素活性を低下させる、疾患又は状態の1つ以上の症状を低下させる、細胞内のウイルス複製を低減する)のに十分な量である。「有効量」の例は、疾患の1つ以上の症状の治療、予防、又は軽減に寄与するのに十分な量であり、これは「治療的有効量」とも称され得る。1つ以上の症状の「軽減」(及びこの句の文法的等価物)は、症状の重症度又は頻度の減少、又は症状の排除を意味する。薬物の「予防有効量」は、対象に投与されると、意図される予防的効果、例えば、損傷、疾患、病態若しくは状態の発症(若しくは再発)を予防するか、若しくは遅延させる、又は損傷、疾患、病態若しくは状態、若しくはそれらの症状の発症(若しくは再発)の可能性を低減する、薬物の量である。完全な予防的効果は、必ずしも1回の用量の投与によって生じるわけではなく、一連の用量の投与後にのみ生じ得る。予防有効量を、1回以上の投与で投与してもよい。本明細書で使用される「活性減少量」は、アンタゴニストが存在しない場合と比較して酵素又はタンパク質(例えば、Tat、Rev)の活性を減少させるために必要なアンタゴニストの量を指す。本明細書で使用される「機能破壊量」は、アンタゴニストが存在しない場合と比較して酵素又はタンパク質の機能を破壊するために必要なアンタゴニストの量を指す。正確な量は、処理の目的に応じて異なり、既知の技術を使用して当業者によって確認可能である(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992)、Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999)、Pickar,Dosage Calculations(1999)、及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,2003,Gennaro,Ed.,Lippincott,Williams & Wilkinを参照されたい)。
【0096】
「患者」、「対象」、又は「それを必要とする対象」は、本明細書において提供される生成物、組成物、及び方法を使用することによって治療することができる疾患、病態、障害、又は状態に罹患している(suffering from)か、それに悩んでいる(afflicted with)か、それを有しているか、その危険性があるか、又はそれに罹患しやすい若しくは罹患する傾向がある(susceptible or prone to)生体又は個体を指す。この用語は、対象が特定の疾患と診断されたことを必ずしも示すものではなく、典型的には、医学的監督下にある個体を指す。非限定的な例としては、ヒト、他の哺乳動物、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ、シカ、及び他の非哺乳類動物が挙げられる。いくつかの実施形態では、患者又は対象は、ヒトである。
【0097】
「超音波(ultrasonic wave)」、「音響エネルギー」、「音波」、又は「超音波(ultrasound)」という用語は、本明細書では、材料を通るエネルギーの機械的伝達(mechanical transfer)又は機械的導入(mechanical transduction)に対応する材料における妨害を指すために互換可能に使用される。様々な実施形態では、妨害は、材料の構成要素の振動である。いくつかの実施形態では、材料は、ある体積の液体、細胞、細胞膜、組織、又は臓器である。
【0098】
本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、具体的に記載されていないか、又は文脈から明らかでない限り、包含的であると理解される。本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という用語は、具体的に記載されていないか、又は文脈から明らかでない限り、単数又は複数であると理解される。
【0099】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特に明記されていないか、又は文脈から明らかでない限り、当該技術分野における正常許容範囲内、例えば、平均の2標準偏差内であると理解される。「約」は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内であると理解され得る。文脈から明確でない限り、本明細書において提供される全ての数値は、「約」という用語によって修飾される。
【0100】
本明細書における変数の任意の定義における化学基のリストの記載には、任意の単一の基又は列挙された基の組み合わせとしての、その変数の定義が含まれる。本明細書における変数又は態様についての実施形態の記載は、その実施形態を、本明細書に記載される任意の単一の実施形態として、又は任意の他の実施形態又はその一部分と組み合わせて含む。
【0101】
本明細書において提供されるいかなる組成物又は方法及びそれらの実施形態も、本明細書において提供される他の組成物、方法及びそれらの実施形態のうちのいずれかの1つ以上と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1A】
図1A~
図1Dは、ハエトリグサ(Venus flytrap)の感覚毛における推定される機械感覚性チャネルの識別に関連する画像、走査電子顕微鏡写真、プロット、及び棒グラフである。
図1Aは、土壌で育ったハエトリグサクローン(左)、ハエトリグサの葉(中央)、及び単一の感覚毛(右)の代表的な画像を示している。中央の画像の黒い矢印は、葉の上に感覚毛があることを示している。
図1Bは、感覚毛の走査電子顕微鏡写真を示す。レバー(L)、くぼみゾーン(In)、及び葉柄(P)の細胞が示される。また、裂片(lobe)の平坦面(floor)上には消化腺も見られる。
図1Cは、トラップと比較した、感覚毛における、長さが100個超のアミノ酸(黒い円)のタンパク質コード遺伝子の濃縮倍率を示すプロットを提示する。FLYC1、FLYC2、及びOSCAは、「CPM」(すなわち、マッピングされた配列決定リード100万個当たりのカウント)とラベル付けされている。
図1Dは、トラップ及び感覚毛におけるFLYC1、FLYC2、及びOSCAについての、マッピングされたリード100万個当たりの転写産物のキロベース当たりの平均断片(FPKM)を示す棒グラフを示す。同じ色合いのグレーのドットは、ペアになった生物学的複製を示す。**FDR<0.005。
【
図2A】
図2A~
図2Eは、FLYCATCHER及びOSCAタンパク質の分子系統発生関係に関する系統樹及びポリペプチドトポロジマップを提示する。
図2Aは、大腸菌(Escherichia coli) MscSタンパク質の保存されたMscSドメイン、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) MSLタンパク質(MSL1~MSL10)、並びにハエトリソウ(Dionaea muscipula)/ハエトリグサ(DmFLYC1及びDmFLYC2)及びドロセラ・カペンシス(Drosera capensis)/ケープモウセンゴケ(DcFLYC1.1及びDcFLYC1.2)のFLYCATCHERタンパク質間の関係を示すための最尤法による系統発生解析を提示する系統樹を提示する。
図2B及び
図2Cは、DmFLYC1(
図2B)及びDmFLYC2(
図2C)タンパク質の予測トポロジを示すポリペプチドトポロジマップを示す。
図2Dは、Arabidopsis thaliana OSCAファミリータンパク質とハエトリグサDmOSCAとの関係を示す、最尤法による系統発生解析を提示する系統樹である。
図2Eは、DmOSCAタンパク質の予測トポロジを示すポリペプチドトポロジマップである。
図2A及び
図2Dには、50を超えるブートストラップ値が示されており、スケール、部位ごとの置換が示されている。
図2B、
図2C、及び
図2Eにおいて、シロイヌナズナ属(Arabidopsis) MSL10、MSL5、及びOSCA1.5でそれぞれ保存されているアミノ酸残基は、暗い円で示され、同一性が類似している残基は、より明るい円で示されている。各タンパク質について予測される細孔ドメインは、黒い線で囲まれている。
【
図3A】
図3A~
図3Eは、ハエトリグサ感覚毛におけるFLYC1 mRNAの局在を実証する画像である。
図3Aは、感覚毛の基部に亘る、トルイジン青染色された縦断面を示す画像である。細長い感覚細胞が、くぼみゾーン(矢印)に見える。
図3Bは、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション後の縦断面に亘る、最大投影画像を提示する。(上)くぼみゾーンの低(左)及び高(右)倍率でのFLYC1転写産物及びDAPI。FLYC1転写産物点は、感覚細胞に局在していた。(下)FLYC1センスプローブを使用した場合、信号は観察されなかった。高いバックグラウンド蛍光が、全てのチャネルで観察される。
図3Cは、くぼみゾーンに亘る、トルイジン青染色横断面を示す画像を示す。外側環を形成する細胞は、メカノセンサーであると推定される。
図3Dは、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション後の横断面に亘る、最大投影画像を提示する。低(左)及び高(右)倍率でのFLYC1転写産物(赤)。FLYC1転写産物点は、くぼみゾーンの感覚細胞に主に局在していた。
図3Eは、感覚毛レバーの横断面に亘る、最大投影画像を提示する。転写産物は、全く観察されなかった。スケールバー、μm。
【
図4A】
図4A~
図4Dは、FLYC1が伸展活性化電流を誘導することを実証するプロット、概略図、及び棒グラフを集めたものである。
図4Aは、パッチクランプ法の概略図、及び-80mVの膜電位で、細胞付着パッチクランプ構成において、FLYC1発現HEK-P1KO細胞から記録された伸展活性化電流の代表的なトレースを示すプロットを提供する。現在のトレースの上に示されている刺激トレース。左:0~100mmHg(Δ10mmHg)のグレーディングされた負圧ステップに応答する電流。右:-70mmHg圧力の単一パルスに応答する電流。
図4Bは、モック(N=7)、マウスPIEZO1(N=5)、又はFLYC1プラスミド(N=10)でトランスフェクトした細胞からの最大電流応答の定量化を示す棒グラフである。p=0.0251(モック対PIEZO1)、p=0.0070(モック対FLYC1)、ダンの多重比較検定。
図4C(左)は、示される膜電位での、伸展に応答する代表的な単一チャネルトレースを示すプロットを提示する。
図4C(右)は、FLYC1トランスフェクト細胞からの伸展活性化された単一チャネル電流の平均I-V関係を示すプロットを提示する。
図4D(左)は、示される膜電位での、非対称NaCl溶液における、切り出されたインサイドアウトパッチ構成から記録された代表的な伸展活性化単一チャネル電流を示すプロットを提示する。
図4D(右)は、非対称NaCl溶液における、伸展活性化単一チャネル電流の平均I-Vを示すプロットを提示する(E
rev:-30.0±1.4mV(N=7))。
【
図5A】
図5A~
図5Eは、DcFLYC1.1及びDcFLYC1.2がモウセンゴケ属(Drosera)の接触(touch)感知構造に局在することを実証する画像及び棒グラフである。
図5Aは、粘膜分泌物を伴う触毛突起を示す、ケープモウセンゴケの葉の画像である。
図5Bは、昆虫(イエバエ)の接触に応答して触毛が屈曲している画像である。矢じりは、内側に屈曲した触毛の例を示す。
図5Cは、qRT-PCRによる、触毛のない葉に対する、モウセンゴケ触毛におけるDcFLYC1.1及びDcFLYC1.2の相対発現を示す棒グラフである。** p<0.005、モデレートt検定、各組織タイプの4つの生物学的複製からの結果。
図5Dは、ケープモウセンゴケ触毛の頭部及び上頸部に亘る、トルイジン青染色された縦断面を示す画像を提示する。頭部は、木部(X)、内皮様層(E)、及び分泌細胞(S)で構成される。
図5Eは、DcFLYC1.1及びDcFLYC1.2 mRNAの、触毛頭部(上)の外側分泌細胞への集合的な局在を示す、低(左)及び高倍率(右)での最大投影画像を提示する。矢印は、DcFLYC点を有する例示的な分泌細胞を示す。葉(下)では、バックグラウンド上のシグナルは観察されなかった。
図5A、
図5B、
図5D、及び
図5Eにおいて、スケールバーは、μmを表す。
【
図6A】
図6A及び
図6Bは、食虫性モウセンゴケ科(Droseraceae)植物における接触誘導運動のモデルを提示する概略図である。
図6Aは、ハエトリグサの概略モデルを提示する。理論に縛られることを望まないが、被食動物による感覚毛の機械的刺激によって、くぼみゾーンの感覚細胞が屈曲し(1)、機械的に誘導された機械感受性(MS)チャネルの活性化及び塩化物流出をもたらす(2)。これは、感覚細胞の基部から原形質連絡により葉柄の細胞に伝播する活動電位を誘発する(3)。葉の裂片を通る活動電位の伝播は、トラップの閉鎖をもたらす。
図6Bは、モウセンゴケ触毛の概略モデルを示す。理論に拘束されることを望まないが、粘液の引っ張りは、触毛頭部の外側細胞層におけるDcFLYC1.1及びDcFLYC1.2タンパク質の活性化につながり、触毛茎を通る活動電位の下方伝播を引き起こす可能性がある。
【
図7A】
図7A及び
図7Bは、ハエトリグサクローン増殖システムに関する画像及び図である。
図7Aは、Jang及びParkから適応した方法を使用した、組織培養物(10cmプレート)中で成長するクローンハエトリグサの例を提示する画像である。Jang,G.W.,Kim,K.S.,& Park,R.D.(2003)“Micropropagation of Venus fly trap by shoot culture” Plant Cell Tissue and Organ Culture,72(1),95-98を参照されたい。
図7Bは、伝播方法を示す図である。根茎を分割することによって、ロゼットを分離した。次いで、植物を新鮮な滅菌成長培地に移して培養中に更に繁殖させるか、又は土壌に移して、実験の前に少なくとも2~3ヶ月間「ハードニング」させた。
【
図8A】
図8A及び
図8Bは、ハエトリグサにおける自己蛍光及びEF1α転写産物発現を示す画像を提示する。
図8Aは、植物キューティクルからの自己蛍光を示すために、異なるチャネルにおける未処理のハエトリグサ感覚毛の画像を提示する。画像は、インサイチュハイブリダイゼーションに供した組織と同じ設定で画像を撮影した。
図8Bは、ハウスキーピング遺伝子EF1α及びFLYC1並びにDAPIに対するsmFISHを有する感覚毛及びトラップの縦断面の画像を示す。白い矢印は、組織全体の様々な細胞におけるEF1α発現の例を示す。スケールバー、μm。
【
図9A】
図9A及び
図9Bは、感覚毛におけるFLYC2及びDmOSCA転写産物の発現を示す画像を提示する。(
図9A)DmFLYC2転写産物及び(
図9B)DmOSCA転写産物の低(左)及び高(中央及び右)解像度での蛍光インサイチュハイブリダイゼーション後の縦断面に亘る、最大投影。DmFLYC2については、転写産物は観察されなかったが、OSCAは主に感覚細胞で観察された。スケールバー、μm。
【
図10】DmFLYC2及びDmOSCAの機能性に関する棒グラフである。X軸に沿って同定されたポリペプチド、すなわち、モック(N=7)、MmPiezo1(N=5)、AtMSL10(N=9)、DmFLYC1(N=10)、DmFLCY2(N=10)、AtOSCA1.5(N=4)、及びDmOSCA(N=12)プラスミドの各々をコードするポリヌクレオチドを含有するプラスミドでトランスフェクトしたHEK P1-KO細胞から、肉眼的伸展活性化電流を記録した。
【
図11】プロット及び概略図である。
図11は、DmFLYC1における塩化物透過性を示すプロットを提示する。細胞付着パッチクランプ構成において記録されたDmFLYC1伸展活性化電流の平均I-V(N=5)。記録ピペットは、100mMのグルコン酸カルシウムで構成した。概略図は、伸展活性化電流を記録するためのパッチクランプ技術を示す。
【
図12A】
図12A~
図12Dは、配列アラインメント、タンパク質構造画像、及びMscS様チャネル構造と適合性であるFLYC1における推定される細孔形成ヘリックスの配列に関するプロットを提示する。
図12Aは、MSL10及びMscSと、ハエトリグサFLYC1並びにDrosera DcFLYC1.1及びDcFLYC1.2タンパク質の推定される細孔ヘリックスとの配列アラインメントを示す。非極性及び極性残基はライトグレーとして示され、イオン化可能な残基はダークグレーで示される。ヘリックスの中央の屈曲部に局在すると予測されるグリシンは、グレーのボックス内に示される。
図12Aに提示される配列は、以下の通りである。FLYC1(D.muscipula):ATTKLIVLLSSQLVVAAFIFGNTCKTIFEAIIFVFVMHP(配列番号1)。FLYC1.1(D.capensis):MTTKVLLFFSSQLLVAVFVFGNTCKTIFEAIIFVFVMHP(配列番号2)。FLYC1.2(D.capensis):MTTKVLLFFTSQLLVAVFVFGNTCKTIFEAIIFVFVMHP(配列番号3)。McsS(E.coli):QTASVIAVLGAAGLAVGLALQGSLSNLAAGVLLVMFRPF(配列番号4)。
図12Bは、モデル化された七量体組織を提示する画像である。ハエトリグサFLYC1の配列を、閉じたコンフォメーション(PDB 2OAU)で七量体MscSの内部ヘリックス上にねじ込み、C
7対称性を課しつつ、ロゼッタエネルギー関数を使用して最小化した。細孔セグメントのセリン間の予測されたサブユニット間水素結合が示され、一方、フェニルアラニン環(F572)が細孔を収縮させる。中心細孔を形成するヘリックスTM6a、及び両親媒性ヘリックスTM6bは、1つの細孔セグメントに対して示される。
図12Cは、静電電位によって着色されたタンパク質表面に亘る、断面の画像であり、電荷のない(ライトグレーの)細孔と、該細孔の上下の正の電荷(より暗いグレー)を示している。
図12Dは、非対称NaCl溶液における、FLYC1(N=7)及びFLYC1(K579E)(N=4)からの伸展活性化単一チャネル電流の平均I-Vを示すプロットである。FLYC1データは、
図3Dと同様である。
【
図13A】
図13A及び
図13Bは、ケープモウセンゴケ触毛の変動を示す走査電子顕微鏡画像である。
図13Aは、ケープモウセンゴケ葉身上の異なる長さの粘膜産生触毛を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。アスタリスク(*)は、ステージングニードルを示す。触毛は、葉縁に向かって長さが長くなる。
図13Bは、キイロショウジョウバエ(D.melanogaster)であるハエの周りで屈曲している触毛を示す3枚のSEM顕微鏡写真の複合画像を提示する。スケールバー、200μm。
【
図14】ケープモウセンゴケ触毛の頭部に亘る、トルイジン青染色された縦断面を提示することによって、ケープモウセンゴケ感覚細胞/排出細胞の独自の細胞形態を示す画像である。E:内皮様細胞;S:分泌細胞の外側2層。矢印は、単一の外側分泌細胞の独自の細胞壁バットレスを示し、その周りに膜亀裂(crenellations)が発生する。
【
図15】Drosera FLYC機能性を示すグラフを提示する。モック(N=7)、DmFLYC1(N=10)、DcFLCY1.1(N=7)、DcFLYC1.2(N=10)、及びDcFLYC1.1/1.2(N=11)プラスミドでトランスフェクトしたHEKP1-KO細胞から記録された肉眼的伸展活性化電流。
【
図16A】
図16A及び
図16Bは、ハエトリグサの葉が超音波刺激に応答することを実証する画像及びプロットを提示する。
図16Aは、超音波刺激後のハエトリグサの葉が開いている(上)及び閉じている(下)ことを示す画像を提示する。
図16Bは、トラップを異なる超音波強度で閉じるのに必要な100ミリ秒のパルスの数を示すプロットを示す。各条件について、n>30。平均値及び標準偏差が示される。
【
図17A】
図17A及び
図17Bは、FLYC1が超音波の印加時にINS1活性を抑制することを実証するプロットを提示する。プロットは、INS1対照(
図17A)及びINS1-FLYC1細胞(
図17B)におけるベースラインに対するGCaMP蛍光の変化の比(y軸はデルタF/Fの単位を有する)を示す。超音波の100ミリ秒のパルスは、グレーの縦帯で表される。n>17。X軸は、「フレーム」とラベル付けされ、0.1秒の単位であり、y軸は「デルタF/F」とラベル付けされている。
【
図18A】
図18A及び
図18Bは、FLYC1が超音波時にINS1活性を抑制することを示すグラフを提供する。
図18Aに示されるグラフは、INS1細胞が、FLIPRアッセイにおいてKClに対する用量依存的応答を示すことを実証する。
図18Bに示されるグラフは、FLYC1発現が、超音波刺激時にKClに対するINS1応答を抑制することを示している。それぞれn=12ウェル、*p<0.05 ボンフェローニ補正によるt検定。
【
図19】ソノサイレンシングチャネルの監視から生じる、パッチクランプ電気生理学的トレースを提示する。トレースは、6.91MHzトランスデューサからの、異なる持続時間の超音波刺激で刺激された、FLYC1を発現する興奮性HEK細胞の例を提供する。
【
図20】
図20A及び
図20Bは、FLYC1が超音波誘発性hsTRPA1カルシウムイベントを抑制することを実証するドットプロットを示す。超音波刺激(
図20A)又はAITC化学アゴニスト(30μM濃度)への曝露(
図20B)時の、hsTRPA1+dTom対照又はhsTRPA1+FLYC1を発現するHEK細胞におけるベースラインに対するGCaMP蛍光の変化率を示す。各条件について、n>60。**は、ロジスティック回帰によるp<0.01を示す。
【
図21A】
図21A及び
図21Bは、R334Eバリアントが異なる活性化動態を示すことを実証する代表的なトレース及びプロットを示す。
図21Aは、-70mmHgのピペット圧力に応答して、-80mVの膜電位での、細胞付着構成における、野生型(WT)(上部トレース)及びR334E(下部トレース)を発現するHEK-P1KO細胞からの、伸展活性化電流の例示的なトレースを示す。
図21B(左プロット)は、
図21Aに記載される細胞についての現在時刻及び不活性化時刻(右プロット)時間を示す。n=6。**は、p<0.01を示す。ダンの多重比較検定。
【発明を実施するための形態】
【0103】
実施形態の詳細な説明
機械感覚性ポリペプチド及びポリヌクレオチドを特徴とする生成物及び組成物、目的の細胞型においてそのようなポリペプチド及びポリヌクレオチドを発現させる方法、並びに超音波を使用して神経細胞(例えば、ニューロン)及び他の細胞型における機械感覚性ポリペプチドの活性化を誘導する方法が本明細書において提供され、特徴とされる。
【0104】
本明細書に記載される態様及び実施形態は、植物由来の特定のタンパク質、例えば、機械感覚性タンパク質は、標的細胞内に形質導入又はトランスフェクトされ、標的細胞表面上の異種タンパク質として発現されるときに超音波への感受性を付与するという発見に少なくとも部分的に基づいている。本明細書において提供及び記載される実施例は、そのような機械感覚性タンパク質が超音波に対する感受性を有することを実証する。理論に束縛されることを望まないが、超音波は、発現した機械感覚性タンパク質の活性化につながる焦点ゾーンに機械的なたわみを生じさせる可能性がある。本明細書に記載及び例示される実施形態では、細胞を制御するために機械感覚性タンパク質を非侵襲的に使用することができる。
【0105】
特に、本明細書に記載及び例示されるように、ハエトリグサタンパク質FLYCATCHER1(FLYC1)は、ポリペプチド(タンパク質)をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクト又は形質導入されたナイーブ細胞において、塩化物透過性伸展活性化及び/又は超音波活性化電流を誘導することができるポリペプチド(タンパク質)として同定された。本明細書に記載及び実証されるように、FLYC1は、哺乳動物細胞における塩化物選択的阻害性機械感受性チャネルタンパク質である。FLYC1は、興奮性HEK細胞及び自発的に活動するインスリノーマ細胞(INS-1)において発現し、タンパク質は、両方の種類の細胞株において超音波依存的に活性を阻害することができた。理論に拘束されることを望まないが、FLYC1ポリペプチドを、ハエトリグサが接触を感知することを可能にする可能性のある機械感受性イオンチャネルであると決定した。本明細書に記載の生成物、組成物、及び方法は、細胞阻害の精密な標的化を可能にし、超音波刺激時の細胞の活性を阻害又は抑制することを可能にする。
【0106】
本明細書に記載及び例示されるように、イオンチャネルのFLYC及びOSCAファミリーのメンバーは、食虫植物における、迅速な触覚における、候補メカノセンサーとして同定された。両方のイオンチャネルファミリーのメンバーは、ハエトリグサの感覚毛(sensory trigger hair)における発現が濃縮されていることが示された。これらの中で、FLYC1遺伝子は、そのmRNAが、接触誘導シグナルの形質導入を開始する推定される機械感覚性細胞において高発現/濃縮されているため、主要候補として同定された。コードされたポリペプチドであるFLYC1は、感覚細胞における活動電位の生成を容易にするであろう特性を有する機械的に活性化されたイオンチャネルを形成した。加えて、FLYC遺伝子の発現は、Droseraceaeの、科の異なる属からの2つの形態学的に異なる接触感受性構造において著しく保存された。
【0107】
本明細書の実施例に記載及び実証されるように、哺乳動物細胞発現系のFLYC1発現細胞において、堅牢な巨視的電流及び単一チャネル伸展活性化電流が検出され、チャネル特性に重要な残基が同定され、FLYC1が機械感受性イオンチャネルを形成したという発見が支持された。理論に束縛されることを意図するものではないが、FLYC1のような塩化物透過性チャネルは、植物細胞における膜脱分極に寄与する可能性がある。これは、増大する細胞外塩化物イオンの濃度が、機械的刺激に対するハエトリグサ感覚細胞の電気応答を減少させる又は止めることが以前に示された、という発見と一致する。FLYC1媒介性脱分極は、おそらくFLYC2及びOSCA(機械感受性カルシウム透過性イオンチャネル)と組み合わせて、感覚細胞の基底側にクラスタリングされた原形質連絡を介して葉に伝播する活動電位を開始し、トラップの閉鎖を引き起こし得る(
図6A)。同様の一連のイベントは、モウセンゴケ触毛で発生するであろう:被食動物(prey)と触毛との接触は、触毛の機械感覚性頭部及び茎の外側細胞層に沿って原形質連絡を介して伝播し、触毛の屈曲を誘発し得るDcFLYC誘導活動電位をもたらす(
図6B)。一実施形態では、植物細胞において、FLYC1は、植物細胞における塩化物選択的興奮性機械感受性チャネルタンパク質である可能性が高い。本明細書に記載及び例示される所見は、FLYC1が接触の真正センサーとして同定されることと一致する。様々な実施形態では、FLYC1ポリペプチドは、細胞内で異種ポリペプチドとして発現される場合、細胞における活性を調節するために使用され得る。
【0108】
様々な実施形態では、本明細書に記載の異種機械感覚性タンパク質は、ニューロン、心筋、膀胱組織、T細胞、又はベータ細胞を超音波に応答させるために使用することができる。いくつかの実施形態では、機械感覚性タンパク質は、カチオン(例えば、カルシウム、カリウム、ナトリウム)又はアニオン(例えば、塩化物、フッ化物、臭化物、又はヨウ化物)濃度の急速な変化に感受性である超音波に対して感受性にするために使用することができる。機械感覚性タンパク質を使用して、インビボ、インビトロ、又はエクスビボで細胞機能を変化させることができる。加えて、機械感覚性タンパク質は、細胞培養中にこれらのタンパク質を発現する細胞の細胞機能を変化させるために使用することができる。
【0109】
したがって、機械感覚性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドを含む発現ベクター、異種機械感覚性ポリペプチドを発現する細胞、異種組換え機械感覚性ポリペプチドを発現する細胞、及び超音波でそのような細胞を刺激する方法が提供され、記載される。
【0110】
超音波
超音波は、無傷の薄い骨及び深部組織を介してほんの数立方ミリメートルの体積に(G.T.Clement and K.Hynynen,Phys Med Biol 47(8),1219(2002))焦点を合わせやすいため、ニューロン集団を刺激するのに適している(K.Hynynen and F.A.Jolesz,Ultrasound Med Biol 24(2),275(1998))。超音波刺激の非侵襲的性質は、(一部の現在の光遺伝学的方法に必要な)光ファイバーを挿入するための、手術などの侵襲的技術の必要性を排除するため、ヒトのニューロンを含む脊椎動物ニューロンを操作するために特に重要である。また、超音波の小さな焦点体積は、脳組織の複数の層によって散乱される光とよく比較される(S.I.Al-Juboori et al.,PLoS ONE 8(7),e67626(2013))。更に、超音波は、ヒトの手の深部神経構造を操作し、慢性的な痛みを軽減するために以前より使用されてきた(W.D.O’Brien,Jr.,Prog Biophys Mol Biol 93(1-3),212(2007);L.R.Gavrilov et al.,Prog Brain Res 43,279(1976))。本明細書に記載されるように、細胞における機械感覚性ポリペプチドの異種発現のための新規の非侵襲的組成物が提供され、低強度超音波刺激を使用して異種機械感覚性ポリペプチドを発現する細胞の活性又は機能を刺激又は調節する方法が提供される。一実施形態では、異種機械感覚性ポリペプチドを発現する細胞は、神経細胞であり、方法は、超音波刺激、特に低強度超音波の非侵襲的使用による神経調節を伴う。
【0111】
組換え機械感覚性ポリペプチドを含む細胞及び細胞組成物
機械感覚性ポリペプチド(例えば、FLYC1)をコードする異種核酸分子を含む、細胞が提供される。このような機械感覚性ポリペプチドは、目的の細胞型において異種発現又は外因的に発現される。一実施形態では、目的の細胞型は、本明細書に記載の異種機械感覚性ポリペプチドを発現し、超音波による細胞の活性の機械感覚性調節又は阻害に関連するアニオン(例えば、塩化物、臭化物、フッ化物、又はヨウ化物)又はカチオン(例えば、カルシウム、カリウム、ナトリウム)濃度の急速な変化に対して感受性である。一実施形態では、細胞型は、心臓細胞において発現するのに好適なプロモーター(例えば、NCX1プロモーター)の制御下にある機械感覚性ポリヌクレオチドを含む心筋細胞である。一実施形態では、細胞型は、筋肉細胞における発現に好適なプロモーター、例えば、myoDプロモーターの制御下にある機械感覚性ポリヌクレオチドを含む筋肉細胞である。別の実施形態では、細胞型は、インスリン分泌細胞における発現に好適なプロモーター、例えば、Pdx1プロモーターの制御下にある機械感覚性ポリヌクレオチドを含むインスリン分泌細胞(例えば、ベータ(β)膵島細胞)である。別の実施形態では、細胞型は、脂肪細胞における発現に好適なプロモーター(例えば、iaP2)の制御下にある機械感覚性ポリヌクレオチドを含む脂肪細胞である。別の実施形態では、細胞型は、神経細胞における発現に好適なプロモーターの制御下にある機械感覚性ポリヌクレオチドを含む神経細胞型(ニューロン)である。一実施形態では、非限定的な例として、神経細胞は、中枢神経又は末梢神経系のニューロン、脳又は脊髄のニューロン、運動ニューロン、感覚ニューロン、インターニューロン、又はアグーチ関連タンパク質発現陽性(AGRP-+ve)ニューロンであり得る。非限定的な例として、ネスチン又はTuj1プロモーターは、概して、ニューロンにおける機械感覚性ポリヌクレオチドの発現に好適であり、H2bプロモーターは、運動ニューロンにおける機械感覚性ポリヌクレオチドの発現に好適であり、Islet 1プロモーターは、インターニューロンにおける機械感覚性ポリヌクレオチドの発現に好適であり、OMPプロモーター、T1R、T2Rプロモーター、ロドプシンプロモーター、又はTrpチャネルプロモーターは、感覚ニューロンにおける機械感覚性ポリヌクレオチドの発現に好適である。いくつかの実施形態では、細胞は、植物細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、免疫系の細胞、例えば、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞であり得る。かかる細胞は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボの細胞であってもよい。特定の実施形態では、細胞は、超音波に感受性である機械感覚性ポリペプチドを発現する。特定の実施形態では、機械感覚性ポリペプチドは、DmFLYC1、DmFLYC2、DmOSCA、DcFLYC1.1、若しくはDcFLYC1.2ポリペプチド、又はその機能部分、アイソフォーム、オーソログ、若しくはホモログである。別の実施形態では、機械感覚性ポリペプチド、例えば、DmFLYC1、DmFLYC2、DmOSCA、DcFLYC1.1、若しくはDcFLYC1.2ポリペプチド、又はその機能部分、アイソフォーム、オーソログ、若しくはホモログ、又は機械感覚性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドなどは、哺乳動物細胞又は植物細胞における発現のためにコドン最適化される。別の実施形態では、機械感覚性ポリペプチド、例えば、DmFLYC1、DmFLYC2、DmOSCA、DcFLYC1.1、若しくはDcFLYC1.2、又はその機能部分、アイソフォーム、オーソログ、若しくはホモログ、又は機械感覚性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドなどは、哺乳動物細胞又はヒト細胞における発現のためにコドン最適化される。
【0112】
組換え機械感覚性ポリペプチドの発現
1つのアプローチでは、目的の細胞(例えば、運動ニューロン、感覚ニューロン、中枢若しくは末梢神経系のニューロンなどのニューロン、神経細胞株、又は植物細胞)は、発現により細胞が超音波刺激に応答性になる異種機械感覚性ポリヌクレオチドを発現するように遺伝的又は組換え的に操作される。かかる細胞の超音波刺激は、カチオン又はアニオンの流入又は流出を誘導する。異種ポリペプチドを発現するために細胞を遺伝的又は組換え的に操作することに関与する分子技術は、当該技術分野の当業者に周知であり、かつ日常的に実施される。
【0113】
機械感覚性ポリペプチドは、構成的に発現されてもよく、又はその発現は、機械感覚性ポリペプチドの発現の高度に制御された調節又はタイミングを必要とする条件では、誘導性プロモーター又は他の制御機構によって調節されてもよい。例えば、発現される機械感覚性ポリペプチド遺伝子をコードする異種DNAは、1つ以上の事前に選択されたDNA配列に挿入される。これは、相同組換えによって、又は宿主細胞ゲノムへのウイルス組み込みによって達成することができる。所望の遺伝子配列はまた、プラスミド発現ベクター及び核局在配列を使用して、細胞、特にその核に組み込むことができる。ポリヌクレオチドを核に向ける方法は、当該技術分野において記載されている。遺伝物質は、ある特定の化学物質/薬物を使用して目的の遺伝子を正又は負に誘導することを可能にするプロモーターを使用して導入して、所与の薬物/化学物質の投与後に排除することができるか、又は化学物質による誘導若しくは特定の細胞区画内での発現を可能にするためにタグ付けすることができる。
【0114】
リン酸カルシウムトランスフェクションは、標的遺伝子又はポリヌクレオチドを含有するプラスミドDNAを細胞に導入するために使用することができ、当業者にとってDNA移入の標準的な方法である。当業者にも知られているDEAE-デキストラントランスフェクションは、しばしばより効率的であるため、一過性トランスフェクションが望まれるリン酸カルシウムトランスフェクションよりも好ましい場合がある。本明細書に記載される細胞は単離された細胞であるため、マイクロインジェクションは、遺伝物質を細胞に移入させるために特に有効であり得る。この方法は、所望の遺伝物質を核に直接送達し、注入されたポリヌクレオチドの細胞質分解及びリソソーム分解の両方を回避するので有利である。細胞はまた、エレクトロポレーションを使用して遺伝的に改変することができる。
【0115】
細胞を遺伝的に改変するためのDNA又はRNAのリポソーム送達は、ポリヌクレオチドと安定な複合体を形成するカチオン性リポソームを使用して実行することができる。リポソーム複合体の安定化のために、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)又はジオレオイルホスファチジルコリン(DOPQ)を添加することができる。リポソーム転移のための市販の試薬としては、Lipofectin(Life Technologies)が挙げられる。Lipofectinは、例えば、カチオン性脂質N-[l-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N-N-N-トリメチルアンモニアクロリドとDOPEとの混合物である。リポソームは、より大きなDNA片を運ぶことができ、一般に、分解からポリヌクレオチドを保護することができ、特定の細胞又は組織を標的とすることができる。カチオン性脂質媒介性遺伝子移入効率は、精製されたウイルス又は細胞エンベロープ成分、例えば、水疱性口内炎ウイルスエンベロープの精製されたG糖タンパク質(VSV-G)を組み込むことによって向上させることができる。リポポリアミン被覆DNAを使用して、DNAを確立された初代哺乳動物細胞株に送達するのに有効であることが示されている遺伝子移入技術を使用して、本明細書に記載の脱分化細胞又は再プログラム細胞に標的DNAを導入することができる。
【0116】
裸のプラスミドDNAは、目的の細胞を含む組織に直接注入することができる。マイクロプロジェクタイル遺伝子移入はまた、インビトロ又はインビボのいずれかで遺伝子を細胞に移入するために使用することができる。マイクロプロジェクタイル遺伝子移入のための基本的な手順は、Gene Therapeutics(1994),page195においてJ.Wolffによって記載されている。同様に、微粒子注入技術は、以前に説明されており、方法は、当業者に既知である。シグナルペプチドはまた、プラスミドDNAに付着させて、より効率的な発現のためにDNAを核に向けることができる。
【0117】
ウイルスベクターは、本明細書において提供及び記載されるような細胞及びそれらの子孫を遺伝的に変化させるために使用される。ウイルスベクターは、前述の物理的方法と同様に、機械感覚性ポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチド配列を、例えば、細胞に送達するために使用される。ウイルスベクター及びそれらを使用して、DNA又はRNAなどのポリヌクレオチドを細胞に送達又は導入するための方法は、当業者に周知である。本明細書において提供及び記載されるような細胞へのポリヌクレオチドの送達に使用され得るウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターを含む)、アルファウイルスベクター(例えば、シンドビスベクター)、及びヘルペスウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。実施形態では、ウイルスベクターは、組換えウイルスベクターである。
【0118】
標的細胞型
機械感覚性ポリペプチドは、目的の実質的に任意の真核細胞又は原核細胞において異種発現することができる。一実施形態では、細胞(又は標的細胞)は、細菌細胞又は病原性細胞型である。別の実施形態では、細胞(又は標的細胞)は、脂肪細胞、筋肉細胞、心筋細胞、免疫細胞、インスリン分泌細胞(例えば、ベータ(β)膵島細胞)、又はニューロン(例えば、運動ニューロン、感覚ニューロン、中枢神経系のニューロン(例えば、脳又は脳の領域、例えば、視床下部のニューロン)、末梢神経系のニューロン、神経間細胞、及び神経細胞株又は集団)などの哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、植物細胞である。いくつかの実施形態では、植物細胞は、Dionaea muscipulaでもDrosera capensis細胞でもない。
【0119】
細胞の活性及び/又は機能を調節する方法
本明細書において提供される方法は、とりわけ、機械感覚性ポリペプチドを発現する細胞の活性及び/又は機能の調節(例えば、増加、減少、抑制、又は阻害)に有用である。特に、そのような細胞の超音波刺激は、カチオン又はアニオンの流入又は流出を誘導し、それによって、細胞活性及び/又は機能を変化させる。超音波の強度を変化させることは、機能及び/又は活性の変化の程度を調節する。
【0120】
「ニューロン」、「神経系細胞(neural cell)」、又は「神経細胞」という用語は、本明細書で互換的に使用され、中枢神経系(CNS)又は末梢神経系(PNS)などの脳又は神経系の細胞を指す。神経系細胞又は神経細胞の非限定的な例としては、ニューロン、インターニューロン、グリア細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、及びミクログリア細胞が挙げられる。神経系細胞が刺激される場合、神経系細胞の機能又は活性(例えば、興奮性)は、例えば、神経系細胞内の所与の遺伝子又はタンパク質(例えば、機械感覚性ポリペプチド)の発現又は活性を調節することによって調節される。発現又は活性の変化は、対照(例えば、非刺激細胞)と比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上であってもよい。ある特定の事例では、発現又は活性は、刺激がない場合の発現又は活性よりも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、若しくはそれよりも高い、又は低い。ある特定の事例では、発現又は活性は、刺激がない場合の発現又は活性よりも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、又はそれよりも低い。神経系細胞は、神経系細胞に超音波を印加することによって刺激され得る。
【0121】
本明細書において提供される「適用すること」という用語は、その明白な通常の意味に従って使用され、接触すること、導入すること、及び曝露することという用語を含む。本明細書において提供される「超音波」は、人間の聴覚範囲の上限よりも大きい周波数を有する振動音圧波である。したがって、超音波(ultrasound)(超音波(ultrasonic wave))は、物理的特性の違いによっては「通常の」(可聴)音と区別されず、人間には聞こえないという事実によってのみ区別される。この限度は人によって異なるが、健康な若い成人では約20キロヘルツ(20,000ヘルツ)である。超音波(超音波)デバイスは、20kHzから数ギガヘルツまでの周波数で動作する。本明細書において提供される方法は、超音波のエネルギーを使用して、外因性機械感覚性タンパク質を発現する神経系細胞を刺激する。本明細書において提供される機械伝達タンパク質は、機械的刺激(例えば、音、圧力、動き)を化学活性に変換することができる細胞タンパク質を指す。機械感覚性又は機械伝達に対する細胞応答は、可変的であり、様々な変化及び感覚を引き起こす。いくつかの実施形態では、機械感覚性タンパク質は、音、圧力、又は動きが細胞(例えば、感覚ニューロン)の興奮性の変化を引き起こすことを可能にする、機械的にゲートされたイオンチャネルである。機械感覚性タンパク質の刺激は、機械的に感受性のあるイオンチャネルを開き、細胞の膜電位を変化させる形質導入電流を生成させ得る。
【0122】
一態様では、細胞を刺激する方法が提供される。この方法は、外因性(異種)機械感覚性ポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えベクター又はウイルスベクターで細胞にトランスフェクトするか、又は形質導入することを含み、トランスフェクト細胞又は形質導入細胞は、特に、細胞膜内で機械感覚性ポリペプチドを発現する。超音波がトランスフェクト細胞又は形質導入細胞に印加され、それによって細胞を刺激する。いくつかの実施形態では、機械感覚性ポリペプチドは、DmFLYC1、DmFLYC2、DmOSCA、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2、又はそのホモログ若しくはオーソログである。いくつかの実施形態では、機械伝達ポリペプチドは、機械感覚性ポリペプチド、又はその機能部分、ホモログ、若しくはオーソログである。いくつかの実施形態では、異種DmFLYC1、DmFLYC2、DmOSCA、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2機械感覚性ポリペプチド又はそのホモログ若しくはオーソログを発現する細胞に印加される超音波は、細胞内の活性又は機能の低減、阻害、又は抑制をもたらす。いくつかの実施形態では、超音波は、約0.8MHz~約4MHzの周波数を有する。いくつかの実施形態では、超音波は、約1MHz~約3MHzの周波数を有する。いくつかの実施形態では、超音波は、約1立方ミリメートル~約1立方センチメートルの焦点ゾーンを有する。いくつかの実施形態では、超音波は、約385KHzの周波数を有する。いくつかの実施形態では、超音波は、約10MHzの周波数を有する。いくつかの実施形態では、超音波は、約0.001MHz、0.01MHz、0.1MHz、0.2MHz、0.3MHz、0.4MHz、0.5MHz、1MHz、2MHz、3MHz、4MHz、5MHz、6MHz、7MHz、8MHz、9MHz、10MHz、11MHz、12MHz、13MHz、14MHz、15MHz、20MHz、30MHz、40MHz、又は50MHzの周波数を有する。いくつかの実施形態では、超音波は、約0.001MHz、0.01MHz、0.1MHz、0.2MHz、0.3MHz、0.4MHz、0.5MHz、1MHz、2MHz、3MHz、4MHz、5MHz、6MHz、7MHz、8MHz、9MHz、10MHz、11MHz、12MHz、13MHz、14MHz、15MHz、20MHz、30MHz、40MHz、又は50MHz未満の周波数を有する。いくつかの実施形態では、超音波は、約0.2MHz~約20MHz、約0.15MHz~約0.6MHz、約0.3MHz~約0.4MHz、約9MHz~約11MHz、又は約5MHz~約20MHzの周波数を有する。いくつかの実施形態では、超音波は、500mW/cm2未満の強度を有する。
【0123】
いくつかの実施形態では、超音波は、約0.01W/cm2、0.5W/cm2、1W/cm2、5W/cm2、10W/cm2、25W/cm2、50W/cm2、100W/cm2、150W/cm2、200W/cm2、250W/cm2、300W/cm2、又は400W/cm2の強度を有する。いくつかの実施形態では、超音波は、約0.01W/cm2、0.5W/cm2、1W/cm2、5W/cm2、10W/cm2、25W/cm2、50W/cm2、100W/cm2、150W/cm2、200W/cm2、250W/cm2、300W/cm2、又は400W/cm2未満の強度を有する。いくつかの実施形態では、超音波は、標的領域内で0.05~3MPaの間のピーク負圧を生成する。
【0124】
いくつかの実施形態では、超音波は、パルス又はバーストで細胞又は組織に投与される。いくつかの実施形態では、パルス又はバーストのためのパルス繰り返し周波数は、約0.1Hz~約200Hz、又は約0.5Hz~約2Hzである。いくつかの実施形態では、パルス繰り返し周波数は、約1Hzである。様々な実施形態では、超音波は、約0.005%~約100%、約0.01%~約50%、約0.1%~約10%、又は約0.5%~約2%のデューティサイクルで投与される。いくつかの実施形態では、デューティサイクルは、約1%である。「デューティサイクル」は、超音波を積極的に投与する超音波投与の単一のオン・オフサイクルの持続時間の割合を意味する。
【0125】
いくつかの実施形態では、本方法は、超音波を印加する前に、トランスフェクト細胞又は形質導入細胞、例えば、限定されないが、神経系細胞を、超音波造影剤と接触させることを更に含む。様々な実施形態では、超音波造影剤は、マイクロバブルである。特定の実施形態では、マイクロバブルは、約0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.75μm、1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、又は5μm~約6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、50μm、又は100μmの直径を有する。特定の実施形態では、神経系細胞は、生物の一部を形成する。いくつかの実施形態では、生物は、哺乳動物(例えば、非ヒト霊長類、ヒト、マウス、ウシ、ヒツジ、げっ歯類、ラクダ、ネコ、イヌ哺乳動物)である。
【0126】
音響エネルギー(超音波)の生成
音響及び超音波エミッタ、トランスデューサ又は圧電トランスデューサ、複合トランスデューサ、容量性微細加工超音波トランスデューサ(cMUT)を含む微細加工超音波トランスデューサ(MUT)、微小電気機械システム(MEMS)、シリコン・オン・インシュレータMEMS(SOI MEMS)などの様々なデバイスを使用して超音波を生成してもよい。超音波を生成するためのデバイスは、単一又は複数のトランスデューサとして、又はアレイ構成で提供され得る。超音波は、任意の形状であり得、集束又は非集束であり得る。焦点スポットのサイズは、プローブの有効絞り直径(A)、波長(ラムダ)、及び焦点距離(F)によって異なる。均一な圧力下での、クランプされた円形プレートの中心たわみは、円形膜に関する次の式から求めることができる。
式中、Pは膜に印加される均一な圧力、Rは膜半径、yは中心たわみ、σは膜材料の固有応力、Eは膜材料のヤング係数、νは膜材料のポアソン比である。この式を使用して、所定の膜のたわみ下での超音波の圧力を推定することができる。このようなエミッタは、基板の上に作製され得る。複数の基板を組み合わせて単一のアプリケータを形成することができる。複数のアプリケータを組み合わせて単一のプローブを形成することができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、超音波は、例えば、米国特許第6,022,309号及び米国特許出願公開第2005/0021013号(その開示全体は、あらゆる目的のために参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるものなどの、光音響システム又はトランスデューサによって生成される。いくつかの実施形態では、超音波は、パルスレーザー光によって送達される光エネルギーによって生成され、光ファイバーを通って任意に誘導される。いくつかの実施形態では、光ファイバーは、カテーテル内に配置される。いくつかの実施形態では、光エネルギーは、水ベースの光エネルギー吸収流体、例えば、生理食塩水、血栓溶解剤、血液、又は血栓中に堆積され、熱弾性及び/又は熱力学機構を通じて流体中に音響インパルスを生成する。レーザーを繰り返し速度(例えば、10Hz~100kHz)でパルスすることによって、超音波を媒体内で局所的に確立することができる。いくつかの実施形態では、高繰り返し速度のレーザーシステムが、光エネルギーを生成するために使用される。様々な実施形態では、レーザー光は、約10Hz~約100kHzの範囲内、若しくは約20kHz~約1,000kHzの範囲内、若しくは約0.1MHz~約50MHzの範囲内、若しくは約0.1MHz~約20MHzの範囲内、若しくは約0.2MHz~約10MHzの範囲内、若しくは約1MHz~約20MHzの範囲内のパルス周波数、又は約200nm~約5,000nmの範囲内の波長、及び約0.01J/cm2~約4J/cm2の範囲内のエネルギー密度を有する。一実施形態では、パルス周波数は、約5kHz~約25kHzの範囲内である。様々な実施形態では、流体に光エネルギーを送達するために使用される光ファイバーは、200ミクロン又は100ミクロン以下のコア直径を有する。
【0128】
理論に拘束されることを望まないが、吸収流体は、光エネルギーによって加熱された、ある体積の組成物(例えば、流体、血液、組織、細胞、細胞を含む組成物など)において、高圧領域が流体内に作られるように、光エネルギーの堆積に対して熱弾性的に応答する。高圧ゾーンの境界は、あるパターンの音波に減衰し、圧縮波は、エネルギー堆積領域(発散波フロント)から離れて伝播し、希薄波は、エネルギー堆積領域(収束波フロント)の中心に向かって伝播する。希薄波は、初期堆積領域の中心に収束すると、より大きな気泡を形成するために結合するキャビテーションバブル群の形成を促進する引張応力の領域を作成する。最終的に、キャビテーションバブルは崩壊し、音波の拡大をもたらす。キャビテーションバブルの崩壊とその後のリバウンドは周囲の流体中に音波を生成し、キャビティのエネルギーの一部が持ち去られる。崩壊及びリバウンドプロセスは、主に流体密度及び初期キャビティの最大サイズによって支配される時間スケールで行われる。最初の崩壊及びリバウンドに続いて、キャビティのエネルギーが流体中で消散するまで、強度を低下させる崩壊及びリバウンドのイベントが生じる。いくつかの実施形態では、後続のレーザーパルスは、このサイクルを繰り返すか、又は継続して、レーザーパルス周波数によって決定される1つ以上の周波数で超音波を生成するために送達される。
【0129】
本明細書に記載されるように使用されるパルスレーザーエネルギー源は、限定的ではなく、非限定的な例として、気体、液体又は固体媒体をベースとすることができる。希土類ドープ固体レーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Nd:YAG(ネオジムドープイットリウムアルミガーネット;Nd:Y3Al5O12)レーザー、及びHo:YLF(ネオジムドープイットリウムリチウムフルオライド)レーザー。これらの固体レーザーのうちのいずれかには、基本的なレーザー波長の高調波を生成するために非線形周波数倍結晶又は周波数三倍結晶が組み込まれる場合がある。紫外線のコヒーレントビームを生成する固体レーザーは、本明細書に記載の組成物及び方法に直接関連して使用されてもよく、又は紫外線及び可視スペクトルの広い部分にわたって調整可能な出力ビームを生成するために色素レーザーと併せて使用されてもよい。
【0130】
一態様では、超音波は、(i)レーザーエネルギーを送達するために使用される光ファイバーの寸法(例えば、レーザーエネルギーが流体によって吸収される領域の直径又は最大寸法)に匹敵する体積の流体中に、(例えば、レーザー波長及び/又は吸収流体の選択によって制御されるように)当該寸法にわたって音響通過時間よりも短い持続時間の時間スケールで、レーザーエネルギーを堆積させることと、(ii)生成されたキャビテーションバブルの最大サイズがファイバー寸法とほぼ同じであるようにレーザーエネルギーを制御することと、(iii)本プロセスの複数のサイクルが流体内に音響放射場を生成するような繰り返し速度でレーザーをパルスすることと、によって流体中に生成され得る。共振動作は、レーザーパルス繰り返し速度をキャビティ寿命と同期させることによって達成され得る。いくつかの実施形態では、この動作により、100~200μmの往復変位量で、1~100kHzでサイクルする、流体ベースのトランスデューサが得られる。様々な実施形態では、音波は、少量の流体を取り囲む組織又は流体に伝播される。
【0131】
別の態様では、超音波は、(i)血管内又は組織に包囲された少量の液体(例えば、レーザー波長と吸収流体の選択によって制御される)中にレーザーエネルギーを堆積させることと、(ii)生成される蒸気バブルの最大サイズが、蒸気バブルが生成される血管の直径若しくは蒸気バブルが生成される包囲組織によって画定される直径とほぼ同じであるか、又はそれよりも小さいように、レーザーエネルギーを制御することと、(iii)バブル生成及び崩壊プロセスの複数のサイクルが流体内に音波を生成するような繰り返し速度でレーザーエネルギーをパルスすることと、によって流体中に生成され得る。様々な実施形態では、音波は、少量の流体を取り囲む組織又は流体に伝播される。
【0132】
治療及び細胞操作の方法
一態様では、非侵襲的治療方法が提供及び記載され、本方法は、超音波印加の最初の供給源の局所で及び/又は下流で、細胞機能を喚起させる、増加させる、抑制する、又は阻害する機械感受性細胞膜貫通タンパク質(機械受容体)を活性化させるための音波(超音波)の使用を伴う。別の態様では、動物の標的組織部分を神経支配する感覚単位の機能を変化させる方法が提供される。別の態様では、細胞又は組織、特に、ヒト細胞若しくは組織を含む哺乳動物細胞若しくは組織、又は植物細胞若しくは組織、の活性又は機能を操作するための方法が提供される。一実施形態では、植物は、Dionaea muscipulaでもDrosera capensisでもない。本方法は、細胞内で異種ポリペプチドを発現させることを伴う。本方法は、対象の細胞又は組織内で、治療有効量の外因性機械感覚性ポリペプチド(例えば、DmFLYC1、DmFLYC2、DmOSCA、DcFLYC1.1、及びDcFLYC1.2)を発現させることと、超音波(超音波)を対象、細胞、又は組織に印加し、それによって、細胞又は組織内での機械感覚性ポリペプチドコンダクタンス、例えば、カチオン又はアニオンの流入又は流出の変化をもたらすことと、を含む。一実施形態では、本方法は、対象の細胞又は組織に、外因性機械感覚性ポリペプチド(例えば、DmFLYC1、DmFLYC2、DmOSCA、DcFLYC1.1、及びDcFLYC1.2)をコードする治療有効量の組換え核酸、ベクター、又はウイルスベクターを投与又は送達することと、超音波(超音波)を細胞又は組織に印加して、機械感覚性ポリペプチドコンダクタンス、例えば、カチオン又はアニオンの流入又は流出の変化をもたらすことと、を含む。一実施形態では、本方法は、組織又は細胞を、エクスビボ、インビボ、インサイチュ、又はエクスサイチュで操作するために使用される。一実施形態では、本方法は、疾患又は障害を有する対象における細胞活性又は機能を調節、例えば、増強、増加、抑制、又は阻害することによって、疾患又は障害を治療又は改善することを含む。特定の実施形態では、外因性機械感覚性ポリペプチドは、機械感覚性ポリペプチド、すなわち、DmFLYC1、DmFLYC2、DmOSCA、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2、そのオーソログ若しくはホモログ、又はその機能部分である。
【0133】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象、細胞、又は組織に超音波を印加する前に、超音波造影剤を対象、細胞、又は組織に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、超音波造影剤は、マイクロバブルである。いくつかの実施形態では、マイクロバブルは、約0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.75μm、1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、若しくは5μm~約6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、50μm、又は100μmの直径を有し、それが超音波刺激を増強する組織又は細胞を含有する身体(例えば、脳)、組織、細胞、植物、若しくは培養培地に注入されるか、又は他の方法で導入される。
【0134】
様々な実施形態では、本方法は、標的化組織又は細胞に音響エネルギー(超音波)を送達又は印加することを含む。一般に、標的化組織又は細胞への音響エネルギーの送達又は印加は、非侵襲的である。いくつかの実施形態では、標的組織又は細胞は、感覚単位の一部を形成する。様々な実施形態では、組織又は細胞は、音響的に感受性のある膜貫通タンパク質、例えば、外因性又は異種の音響的に感受性のある膜貫通タンパク質を発現するように構成されており、その結果、組織又は細胞が音響エネルギーに曝露されると、組織を含む細胞の膜電位は、音響的に感受性のあるタンパク質が音響エネルギーに曝露されることに少なくとも部分的に起因して調節される。組織又は細胞は、音響的に感受性のある膜貫通タンパク質を発現するように遺伝的又は組換え的に改変されていてもよい。音響的に感受性のある膜貫通タンパク質は、DmFLYC1、DmFLYC2、DmOSCA、DcFLYC1.1、DcFLYC1.2、又はそのオーソログ若しくはホモログから選択され得る。
【0135】
音響源は、非限定的な例として、圧電トランスデューサ、例えば、PZTベースのトランスデューサ、複合トランスデューサ、微細加工超音波トランスデューサ、容量性微細加工超音波トランスデューサ、及び微小電気機械システムから選択され得る。音響源は、シリコン・オン・インシュレータ型の微小電気機械システムを含み得る。いくつかの実施形態では、音響エネルギーは、音響源から経皮的に送達される。いくつかの実施形態では、音響エネルギーは、経頭蓋的に送達される。いくつかの実施形態では、組織又は細胞は、対象の脳、例えば、視床下部にある。いくつかの実施形態では、組織又は細胞は、中枢神経系の一部を構成する。いくつかの実施形態では、組織又は細胞は、末梢神経系の一部を構成する。いくつかの実施形態では、音響源は、対象又は植物の組織又は臓器上に、又はその中に配置される。いくつかの実施形態では、音響源は、対象の脳の上に又はその中に配置される。特定の実施形態では、本明細書に記載される音響感受性異種機械感覚性タンパク質を、1つの領域において、例えば、脊髄において発現する、神経細胞(nerve cell)、例えば、運動ニューロンは、音響エネルギー(超音波)で刺激され、結果として、別の領域、例えば、下流筋肉組織における神経細胞、例えば、運動ニューロンの活性化、阻害、又は抑制がもたらされる。いくつかの実施形態では、本方法は、対象の細胞又は組織を活性化させるために、複数の音響エミッタを使用することを伴う。実施形態では、細胞は、脊髄内及び/又は下流筋肉内のニューロン、例えば、運動ニューロンである。
【0136】
一態様では、患者における超音波遺伝学に基づく神経調節のための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、超音波遺伝学的喚起及び/又は阻害によって促進され得る所望の神経系の機能調節の決定を伴う。本方法は、そのような結果を提供するために、患者内の神経解剖学的リソースの選択を更に伴うことができる。本方法は、神経解剖学的リソースの細胞に、それらを音響エネルギーに対して感受性にするようにさせることを伴うことができる。本方法は、標的神経構造(targeted neuroanatomy)に音響エネルギーを送達して、その細胞中の機械応答性タンパク質の存在により、そのような神経構造の制御された特異的喚起及び/又は阻害を引き起こすことを更に伴うことができる。いくつかの実施形態では、機械感覚性タンパク質は、細胞の膜を通してイオン、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、塩化物、臭化物、フッ化物、又はヨウ化物イオンを輸送することによって、ニューロン、又は他の種類の細胞の膜電位を調節する。
【0137】
本明細書に記載される態様及び実施形態の実施は、別段の指示がない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技術を使用し、これらは当業者の範囲内である。そのような技術は、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition (Sambrook,1989)、“Oligonucleotide Synthesis”(Gait,1984)、“Animal Cell Culture”(Freshney,1987)、“Methods in Enzymology”“Handbook of Experimental Immunology”(Weir,1996)、“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells”(Miller and Calos,1987)、“Current Protocols in Molecular Biology”(Ausubel,1987)、“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis,1994)、“Current Protocols in Immunology”(Coligan,1991)などの文献において完全に説明されている。これらの技術は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド及びポリペプチドの産生に適用可能であり、したがって、記載される態様及び実施形態の作製及び実施において考慮され得る。特定の実施形態のための特に有用な技術は、以下のセクションで説明される。
【0138】
以下の実施例は、記載されるアッセイ、スクリーニング、及び治療方法を作製及び使用する方法についての完全な開示及び説明を当業者に提供するために提出されており、限定することを意図していない。
【0139】
組成物及び薬学的組成物
本明細書に記載の異種又は外因性機械感覚性ポリペプチドを発現する細胞を含む組成物が提供される。一実施形態では、組成物は、薬学的組成物である。典型的には、そのような組成物のための担体又は賦形剤は、滅菌水、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液、エタノール、又はそれらの組み合わせなどの薬学的に許容される担体又は賦形剤である。滅菌性、pH、等張性、及び安定性を確保する、そのような溶液の調製は、当該技術分野で確立されたプロトコルに従って影響を受ける。一般に、担体又は賦形剤は、アレルギー及び他の望ましくない影響を最小限に抑え、特定の投与経路、例えば、皮下、筋肉内、鼻腔内などに適合するように選択される。
【0140】
組成物又は薬学的組成物は、疾患、障害、又は状態、及び/又はそれらの症状の影響を改善、減少、低下、軽減、緩和、又は排除する投与量又は有効量で投与される。組成物は、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、又は腹腔内)投与経路に適した剤形で提供され得る。薬学的組成物は、従来の薬学的慣行に従って製剤化され、調製され得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),ed.A.R.Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins,2000及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New Yorkを参照されたい)。薬学的組成物は、注射、注入、又は移植(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、くも膜下腔内など)によって非経口的に投与され得る。非経口使用のための組成物は、単位剤形(例えば、単回投与アンプル)で、又はいくつかの用量を含み、好適な防腐剤が添加され得るバイアルで提供され得る(下記を参照されたい)。組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、注入デバイス、又は移植用送達デバイスの形態であり得る。
【実施例】
【0141】
実施例1:FLYCATCHER1及びFLYCATCHER2(FLYC1及びFLYC2)、並びにDmOSCAの発見
ハエトリグサは、迅速な接触誘導運動を進化させてきた。ハエトリグサのいずれか1つの感覚毛の屈曲は、感覚毛の基部にある感覚細胞で活動電位を生成し、トラップを通して伝播し、葉トラップ細胞中の細胞質カルシウムの増加と相関する。ハエトリグサからの初期の記録は、活動電位生成の時間スケールに基づいて、機械感受性イオンチャネルが力を電気信号に伝達する役割を果たす可能性があることを示唆している。ハエトリグサの接触応答に必要な可能性のあるイオンチャネルを同定するために、感覚毛に優先的に発現する遺伝子を見つける努力が開始された。
【0142】
ハエトリグサのゲノムは非常に大きく、一般的に研究されているモデル植物Arabidopsis thalianaの約20倍の大きさであり(表1)、利用可能な近交系は存在しない。したがって、遺伝的に同一の物質の収集のためのクローン繁殖システムを確立した(
図1A、
図1B、
図7A及び
図7B)。これらのクローンを使用して、Illuminaベースのショート配列決定リードから、トラップ組織内で発現した遺伝子を表すデノボトランスクリプトームを生成した。クローン株のトランスクリプトームは、少なくとも100個のアミノ酸の予測タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを有する、ほぼ28,000個の独自の転写産物から構成されていた。これは、以前にゲノム配列決定によって予測された約21,000個の遺伝子よりも大きく、トランスクリプトーム内の複数のアイソフォームの存在、可能性のあるヘテロ接合性及び株の違い、並びに/又はゲノム/トランスクリプトームの完全性の違いを反映しており、BUSCO分析によって示されている(材料及び方法を参照されたい)。植物の感覚毛のトランスクリプトームを、葉のトラップのみのトランスクリプトームと比較すると、495個のタンパク質コード遺伝子が、感覚毛において、2倍以上差次的に濃縮されていたのに対し、1,844個のタンパク質コード遺伝子が、トラップにおいて、同様に濃縮されていたことが分かった。Arabidopsisとの相同性に基づいて、葉のトラップにおいて優先的に発現する多くの遺伝子は光合成機能と関連していたが、感覚毛においてより多く発現する遺伝子には、細胞及び臓器構造に影響を与える可能性のある転写因子及び遺伝子が含まれていた。
【0143】
【0144】
潜在的な機械感受性イオンチャネルを見つけるために、感覚毛での濃縮されたトランスクリプトームを、可能性の高い複数回膜貫通タンパク質をコードする転写産物についてスクリーニングした。45個のそのような転写産物のうちの3つは、Arabidopsisタンパク質への相同性に基づいて可能性のある候補をコードしていた。これらのうちの2つは、MSLファミリータンパク質(転写産物ID:comp2014_c0_seq1及びcomp28902_c0_seq1)、及び1つは、OSCAファミリー(comp16046_c0_seq1)と共通の相同性を有する。これらの遺伝子は、それぞれFLYCATCHER1及びFLYCATCHER2(FLYC1及びFLYC2)、並びにDmOSCAと命名した。機械的に活性化されたPIEZOチャネルへのホモログの濃縮発現は観察されなかった。これらのMSL関連転写産物の1つであるFLYC1は、感覚毛において、トラップ組織におけるよりも85倍高く発現し(
図1C及び
図1D)、2番目に高い濃縮遺伝子であった(推定されるテルペン合成酵素は176倍濃縮された;材料及び方法を参照されたい)。対照的に、他の2つの推定されるイオンチャネルは、7倍未満で差次的に発現された。トランスクリプトームを検証するために、FLYC1のcDNAからの転写産物配列を、サンガー配列決定を使用して検証して、完全な遺伝子配列を決定した。株中のエクソンにおいてアミノ酸変化を引き起こす一塩基多型(SNP)の非存在は、タンパク質産物の選択を示すと判定された(材料及び方法)。
【0145】
実施例2:FLYC1、FLYC2、及びDmOSCAの構造、配列、及び系統発生分析
FLYC1及びFLYC2は、それぞれ、Arabidopsis MSL10及びMSL5との相同性を有する、752個及び897個のアミノ酸の予測タンパク質をコードした(
図2A)。10個のMSL(MscS様)タンパク質は、細菌の機械感受性チャネルの小コンダクタンスであるMscSとの類似性に基づいて、以前にArabidopsisで発見された。理論に束縛されることを望まないが、Escherichia coliでは、MscSが開くことにより、浸透圧ダウンショック及び細胞腫脹時のイオン放出が可能になり、それによって、細胞の破裂が防止される。Arabidopsisでは、MSL8は花粉の再水和で機能するが、機械感覚性生理学的プロセスにおける残りのMSLの役割は不明である。MSL10は、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞において異種発現されると、塩化物をわずかに好む機能的な機械感受性イオンチャネルを形成する。更に、MSLファミリーの他のメンバーとともに、MSL10は、根のプロトプラストから記録された伸展活性化電流を説明する。FLYC1及びFLYC2は、38.8%同一であったが、それぞれ、MSL10と47.5%及び35.5%の同一性を共有し、細胞質側のN末端にほとんどの変異があった。MscSと比較して、FLYC1及びFLYC2は、3つの追加の予測される膜貫通ヘリックス、合計6つを有し、タンパク質のC末端は、最も高い相同性を共有していた(
図2B及び
図2C)。
【0146】
DmOSCAは、ArabidopsisのOSCAタンパク質の15メンバーファミリーに属する、Arabidopsis OSCA1.5に対する最も高い相同性(64%同一性)を有する予測される754個のアミノ酸タンパク質をコードした(
図2D及び
図2E)。初期の同定では、OSCAファミリーを高浸透圧活性化カルシウムチャネルとして特徴付けたが、OSCAファミリーのいくつかのメンバーは、カチオンに対して非選択的であり、ある程度の塩化物透過性を有する機械感受性イオンチャネルであることが実証されている。ハエ及び哺乳動物のオーソログであるTmem63も機械感受性イオンチャネルをコードし、OSCA遺伝子の分子機能が保存されていることを示唆している。更に、プロテオリポソーム中のAtOSCA1.2の精製及び再構成により、伸展活性化電流が誘導され、これらのタンパク質が本質的に機械感受性であることを示している。注目すべきことに、突然変異体OSCA1.1植物は、細胞サイズの変化に応答して機械伝達が損なわれた結果として、過浸透症ストレスにさらされたときに葉及び根の成長を阻害している可能性がある。これは、MSLファミリーと同様に、これらのチャネルがオスモセンサーとしての祖先の役割を果たしていることを示唆している。
【0147】
実施例3:FLYC1、FLYC2、及びDmOSCAを発現する細胞の同定
FLYC1、FLYC2、及びDmOSCA遺伝子を発現する感覚毛における細胞を同定するための実験を行った。感覚毛は、2つの主要な領域に分けることができる:クチン化されたレバー、及び、レバーが位置する葉柄。葉柄の上部にあるくぼみゾーンは、2つの領域を隔てている(
図3A及び
図3C)。このゾーンは、感覚毛のほとんどの屈曲が起こる場所である。電気生理学的記録は、感覚毛の機械的刺激が、葉柄又はレバーの他の細胞からではなく、このくぼみゾーンでの感覚細胞の単層から、活動電位を生成することを実証している。蛍光インサイチュハイブリダイゼーションによって、FLYC1転写産物を、くぼみゾーンの感覚細胞内で特異的に検出した(
図3B、
図3C、及び
図3D)。レバー又は下部葉柄の細胞において転写産物は観察されなかった(
図3B及び
図3E)。対照的に、ハウスキーピング遺伝子であるEF1α転写産物は、感覚毛及びトラップ全体で検出された(
図8A及び
図8B)。FLYC1センスプローブは、バックグラウンド上でシグナルを生成しなかった(
図3B)。同様のインサイチュハイブリダイゼーション法を使用して、FLYC2転写産物は検出されなかったが、DmOSCAは、感覚毛感覚細胞内で、高レベルで見出されたが、他の細胞型でも低レベルで見出された(
図9A及び
図9B)。これらの結果は、FLYC2及びDmOSCAが、FLYC1と比較してバックグラウンドトラップ組織ではそれほど濃縮されておらず、かつFLYC2の場合には、弱くしか発現しなかった(
図1D)、全感覚毛からのRNA-seqの所見と一致する。それにもかかわらず、FLYC1及びDmOSCAの発現プロファイルは、これらの遺伝子が活動電位の接触誘導性開始部位にあり、トラップの閉鎖をもたらすことと一致した。
【0148】
実施例4:HEK-P1KO細胞におけるFLYC1、FLYC2、及びDmOSCAの外因性発現
FLYC1、FLYC2、及びDmOSCAが機械的に活性化されたイオンチャネルであり、ナイーブ細胞に機械感受性を付与したかどうかを試験するために、これらの遺伝子のヒトコドン最適化ポリヌクレオチド配列を、機械的に非感受性の、HEK-P1KO細胞において、外因的に発現させた。細胞付着パッチ構成で記録ピペットに負圧が加えられたときに、FLYC1発現細胞から堅牢な伸展活性化電流が記録されたが(
図4A及び
図4B)、FLYC2-又はDmOSCA発現細胞からは記録されなかった(
図10)。これらの実験では、ヒトコドン最適化MSL10及びサブクローニングしたOSCA1.5サブクローニングの過剰発現は、HEK-P1KO細胞を使用するシステム内で伸縮活性化電流を生成しなかった(
図10)。理論に束縛されることを意図するものではないが、卵母細胞におけるMSL10の発現は伸展活性化電流を誘発することが示されており、したがって、これらの植物タンパク質の輸送は、哺乳動物細胞における発現後に損なわれる場合がある。当業者によって理解されるように、ポリヌクレオチド発現技術、HEK-P1KOで植物タンパク質を発現するために使用される条件、他の発現系及び宿主細胞の使用、及び/又は更なるコドン最適化などを改変することは、これらの外因的に発現された植物由来タンパク質のうちのある特定のものによる機能的な伸展活性化電流をもたらし得る。高い転写産物濃縮、感覚細胞における局在、及び機械感受性を考慮して、FLYC1を、ハエトリグサ感覚毛における可能性の高い機能的メカノセンサーとして選択した。
【0149】
FLYC1チャネル特性の更なる特徴付けは、伸展誘導されたFLYC1の活性化が-70±4mmHg(N=9)で生じ、チャネルは164±9pS(N=6)のコンダクタンスを有することを示した(
図4C)。卵母細胞中のMSL10伸展活性化電流と同様に、FLYC1電流は、活性化のための立ち上がり時間が遅く、飽和しなかったことから、これらのチャネルが不活性化しなかったことが示唆される。伸展刺激が除去されると、電流は、167±34ms(N=5)の時間定数で減衰した。理論に束縛されることを望まないが、陸上植物及び緑藻類では、塩化物透過性チャネル開口部は、電気化学的勾配の下への塩化物イオンの流出に起因して、膜脱分極に関連している。したがって、FLYC1が塩化物に透過性であるかどうかを、非対称NaCl溶液における、切り出されたパッチからの伸展活性化FLYC1電流を記録することによって試験した。FLYC1は、9.8±1.8(N=7)のP
Cl/P
Na比を有するナトリウムよりも塩化物の方が好ましいことが実証され(
図4D及び
図11)、この比は、MSL10(P
Cl/P
Na:5.9)及びMscS(P
Cl/P
K:1.2~3.0)について以前に得られた比よりも高かった。
【0150】
実施例5:細孔内層(pore-lining)ヘリックスの評価
細菌MscSは、膜張力によってゲートされた機械的に活性化されたイオンチャネルであることが知られているが、植物MSLの構造と機能については、ほとんど知られていない。MscSを用いたMSL10の相同性モデリングは、チャネルコンダクタンスを変化させる特定の残基を示してきたが、MSL10における選択性及びゲーティングの分子決定因子は、依然としてほとんど知られていない。MscS、MSL10、及びFLYC1タンパク質のC末端に高い配列類似性があるため(
図12A)、推定される細孔内層ヘリックスの分子構造がこれらのチャネル間で共有されている程度を評価した。既知のMscS構造を有するFLYC1の相同性モデリングは、細孔形成膜貫通ドメイン(TM6)の特定の特徴が保存されていることを示唆した。これらには、細孔(TM6a)を内層とするヘリックスの部分内の疎水性残基、及びG575でのグリシンねじれ(kink)、続いて内側の形質膜表面に平行に存在する両親媒性ヘリックス(TM6b)が含まれる(
図12B及び
図12C)。FLYC1が塩化物を好む結果に基づいて、推定される孔(K558及びK579)の両側の正荷電リジン残基が細孔特性を付与し得るかどうかを試験した。558位及び579位のリジン残基をグルタミン酸残基で置換し、P
Cl/P
Naを測定した。両方の変異体における塩化物の選択性は変化しなかったが、K579E変異体は、正の膜電位でより小さな単一チャネル電流を示し(
図12D)、これはK579が細孔の近傍にあったことを示唆している。この分析は、FLYC1の予測されるTM6が、MSL10における変異誘発結果と一致する、チャネルの細孔内層領域の一部であることを確認した。これらの知見は、AtMSL1のcryo-EM(電子顕微鏡)構造によって更に支持され、これはチャネルの最後の膜貫通(TM)の同様のアーキテクチャを示した。
【0151】
実施例6:DcFLYC1.1及びDcFLYC1.2の外因性発現
接触誘導的な被食動物認識のためのFLYC1の重要性のために、機械感覚性構造におけるFLYC1の発現及び機能は、食虫性Droseraceae植物全体で保存されると仮定した。この仮説を検証するために、当該科の中で最大の属である約200種のモウセンゴケ植物を含むDroseraを調査した。モウセンゴケは、触毛と呼ばれるその葉表面上の接触感知突起を特徴とする(
図5A)。これらの触毛は、典型的には、頭部から粘着性粘膜の塊を分泌し、これが、被食昆虫(insect prey)が接触すると捕捉接着剤として機能する。接着した昆虫が動くと、触毛に沿って活動電位が発生し、これに伴って、しばしば触毛が葉の中心に向かって半径方向に動く。これにより、更に多くの粘液分泌触毛に対してもがいている昆虫を捕捉し、消化が起こることを可能にする(
図5B)。
【0152】
ケープモウセンゴケ(Drosera capensis)における2つのFLYC1ホモログの発現が、定量的逆転写酵素-(qRT-)PCRによって同定された。ハエトリグサの実験研究からの知見と一致して、これらの2つの転写産物は、触毛のない葉組織と比較して触毛内での発現が30~40倍高かった(
図5C)。これらの2つの遺伝子のクローニングされたcDNA(DcFLYC1.1及びDcFLYC1.2と命名)は、96.4%の同一性を有するほぼ同一の予測タンパク質産物をコードした。それらは、それぞれ、ハエトリグサFLYC1と66.2%及び65.6%の同一性を共有した(
図2A)。
【0153】
ケープモウセンゴケ触毛は、葉の上のそれらの位置に応じて長さが変化する(
図13A及び
図13B)が、分泌細胞の2つの外層を有する同様の機械感覚性頭部構造を共有する(
図5D)。以前は、最も外側の分泌細胞が、触覚の部位として二重になると仮定されていた。これらの細胞は、被食昆虫が接着して引っ張る粘液環境に直接曝露されているだけでなく、独自の形態:外側細胞壁バットレス(buttress)及び形質膜の亀裂を示す(
図14)。更に、セルロース原線維は、外側細胞壁からキューティクル内に、ハエトリグサくぼみゾーンとほぼ同じように延びる。DcFLYC1.1及びDcFLYC1.2転写産物に対するsmFISHプローブは、外側分泌細胞に局在しているが、触毛の基部の葉には転写産物は観察されなかった(
図5E)。
【0154】
ヒトコドン最適化DcFLYC1.1及びDcFLYC1.2cDNAの異種発現は、HEK-P1KO細胞内で独立して又は一緒になって、伸展活性化電流をもたらさなかった(
図15)。DmFLYC2及びDmOSCAの発見と同様に、活性の欠如は、これらのタンパク質の誤った折り畳み及び輸送に起因する可能性がある。これらのイオンチャネルのライブラベリングにおける技術的な困難により、このための証拠を提示する能力が制限されている(材料及び方法を参照)。それにもかかわらず、発現データは、食虫性Droseraceae植物における2つの異なる種におけるFLYC1の保存された役割と一致している。
【0155】
実施例1~6に関連する材料及び方法
植物の原料及び成長条件
ハエトリグサは、以前に記載された方法から改変された方法を使用して、組織培養中で増殖させた(Jang,G.W.,Kim,K.S.,& Park,R.D.(2003)“Micropropagation of Venus fly trap by shoot culture”Plant Cell Tissue and Organ Culture,72(1),95-98)。種子(FlytrapStore.com、OR)を、0.1%のTriton X-100で70%のエタノールを使用して5分間(分)表面滅菌し、すすぎ、次いで、1/3×Murashige and Skoog(MS)塩及びビタミン(Caisson Labs)、3%のスクロース、並びに4.3g/Lのゲランガムに播種した。発芽後、組織操作を容易にするために、組織培養及び大型での堅牢な成長のために植物を選択した。単一の種子(CP01)に由来する単一の株を、根茎の連続的な分裂によって更なる増殖のために選択した。培養9~12ヶ月後、最大のロゼットを土壌(微細グレードのスファグナムピートモス)に移し、温室条件下(25~30℃、約16時間光、8時間暗く、夜間に頭上の人工赤色光を加えて16時間光の長さにした)で成長させた。精製水を用いて土壌を常に湿らせた。植物は、実験の前に少なくとも2~3ヶ月間、土壌上でハードニングさせた。
【0156】
Drosera capensis var.rubra(ケープモウセンゴケ)種子(AK Carnivores、HI)を表面滅菌し、プレート上で発芽させ、苗木を土壌に移し、温室条件下で栽培した。
【0157】
撮像 細胞壁染色組織切片の撮像のために、新鮮に採取した植物組織を、2%(v/v)のパラホルムアルデヒド及び1.25%(v/v)のグルタルアルデヒドの50mmol/Lのパイプ緩衝液(pH7.2)中で解剖し、同じ溶液中で2時間(h)固定した。試料を、段階的なエタノールシリーズで脱水し、製造業者の説明書に従って、JB-4 Plus Embedding Media(Electron Microscopy Sciences)に包埋した。ただし、浸潤は7日間にわたって室温で実行した。次いで、いくつかの脱水試料を、切片形成中に材料を視覚化するのを助けるために、100%エタノール中の0.1%エオシンで染色してから包埋した。切片を4~6μmで切断し、dH2Oの滴からProbe On Plusスライド(ThermoFisher Scientific)上で乾燥させた。組織切片を0.01%水性トルイジンブルーOで染色し、カバースリップさせ、Olympus BX51顕微鏡で検査した。
【0158】
走査型電子顕微鏡(SEM)は、フィールド放射走査型電子顕微鏡(Sigma VP;Zeiss)の可変圧力モードで、5Paの窒素で新鮮な植物組織を可変圧力二次電子検出器で撮像することによって実行した。
【0159】
給餌中のD.capensisのタイムラプス動画及び光画像のために、植物にDrosophila melanogaster(Canton-S)又はイエバエ(Musca domestica)を与え、Olympus Tough TG-5カメラを使用して撮像した。給餌を助けるために、植物給餌の直前に5~10分間氷上のチューブに入れて、全ての昆虫を一時的に麻痺させた。
【0160】
核ゲノムサイズの推定
核ゲノムサイズは、以前に報告されたものと同様のフローサイトメトリー法(Arumuganathan,K.,& Earle,E.D.,1991,Plant Molecular Biology Reporter,9(3),229-241.doi:10.1007/bf02672073)を使用して推定し、Benaroya Research Institute(Seattle,WA)において実行した。10mMのMgSO4、50mMのKCl、5mMのHepes(pH8.0)、3mMのジチオスレイトール、0.1mg/mLのヨウ化プロピジウム(PI)、1.5mg/mLのDNAseフリーRNAse(Roche)、及び0.25%のTriton X-100の0.5mL溶液中に、50mgのArabidopsis葉又はハエトリグサ葉柄組織からの核を懸濁した。核を30μmのナイロンメッシュを通して濾過し、37℃で30分間インキュベートした。染色した核を、FACScaliburフローサイトメーター(Becton-Dickinson)を用いて分析した。内部標準として、試料には、ニワトリの赤血球(2.5pg/2C)からの核が含まれていた。各測定について、1000個の核からのPI蛍光面積信号(FL2-A)を収集し、分析し、試料及び内部標準のG0/G1ピークの平均位置を、CellQuestソフトウェア(Becton-Dickinson)を使用して決定した。核DNAサイズの推定値は、4つの測定値の平均である。
【0161】
RNA-seq及びqRT-PCRのための組織収集
感覚毛組織からRNA-seqライブラリーを生成するために、感覚毛を、人工的な赤色光の下で、1ヶ月にわたって、1週間に3~4回、6:30~9:30pmの時間帯に収集した。長さが1.5cmを超えるトラップのみを使用した。液体N2中で急速凍結する前に、一度に2枚の葉の表面から12本の感覚毛を切断した(切断と凍結との間は5分未満)。感覚毛のアリコートを、後にRNA抽出中にプールした。感覚毛を除去したトラップ(約20個)のサンプリングを、比較組織として同時に収集した。実験を3回実行した。最初の実験では250本の感覚毛を収集し、2回目と3回目の実験ではそれぞれ750本の感覚毛を収集した。
【0162】
給餌されたトラップ試料と給餌されていないトラップ試料について、各組織試料には2つのトラップ(長さ1.5cm超)が含まれ、それぞれに24時間イエバエ一匹を給餌した。給餌したトラップを採取時に開き、組織を急速凍結する前にハエの死体を除去した。試料を2回収集した。
【0163】
ケープモウセンゴケ触毛は、植物から新鮮な葉を取り除き、これらを液体N2に直接置くことによって採取した。液体N2に浸漬しながら、葉を攪拌して、及び/又はこすって触毛を引きちぎった。次いで、触毛と残りの葉物質を分離してRNA抽出した。各試料タイプを、4回収集した。
【0164】
qRT-PCR及びRNA-seqのためのRNA抽出
他に記載される方法と同様の、改変されたLiClベースの方法を使用して、全RNAを抽出した(Bemm,F.et al.,2016,Genome Res,26(6),812-825.doi:10.1101/gr.202200.115、Jensen,M.K.et al.,201),PLoS One,10(4),e0123887.doi:10.1371/journal.pone.0123887)。簡潔に述べると、凍結した植物材料を粉末に粉砕し、700μLのRNA抽出緩衝液(2%のCTAB、2%のポリビニルピロリドンK25、100mMのTris HCl pH8.0、25mMのNa-EDTA pH8.0、2MのNaCl、2%v/vのβ-メルカプトエタノール)を添加した。必要に応じて、組織アリコートをこの段階で、又はエタノール沈殿中の後にプールした。試料を2分間ボルテックスし、次いで65℃で10分間インキュベートし、時折ボルテックスした。遠心分離によりデブリを除去し、上清に600μLのクロロホルムを加え、混合した。試料を10,000rpmで10分間遠心分離した。1/3volの7.5M LiClを水相に加え、次いで、穏やかに混合して、4℃で一晩インキュベートした。RNAを、10,000rpmで、4℃で10分間遠心分離することによってペレット化した。RNAペレットを70%エタノールで洗浄し、空気乾燥させ、100μLのH2O中に再懸濁した。次いで、低収率試料のために0.1volの3M NaAcetate(pH5.2)、2.5volの100%エタノール、及び任意の1.5μLのGlycoBlue(Thermo Fisher)を添加し、混合し、-80℃で1時間インキュベートすることによって、RNAを再沈殿させた。RNAを12,000rpmで20分間、4℃で遠心分離することによってペレット化した。ペレットを70%エタノールで洗浄し、空気乾燥させ、30~50μLのH2O中に再懸濁した。次いで、これらの試料を直接使用して、qRT-PCRのためのcDNAを生成した。あるいは、RNA-seqの試料を22μLのH2O中に再懸濁し、これに2.5μLの10倍TURBO緩衝液及び1μLのTURBO DNase(Thermo Fisher)を添加した。試料を37℃で20~30分間インキュベートした。次に、2.5μLの不活化試薬を添加し、試料を更に室温で5分間インキュベートし、時折混合した。樹脂を、10,000rpmで1.5分間遠心分離して除去し、上清を新しいチューブに移した。RNAの品質及び収率を、配列決定ライブラリーの生成を進める前に、AgilentのTapeStationによって評価した。
【0165】
RNA-Seq及びハエトリグサトラップトランスクリプトームアセンブリ
Illumina TruSeq Stranded mRNA Library Prep Kitを使用して、製造業者の説明書に従って、鎖mRNA-Seqライブラリーを調製した。ライブラリーを、Salk NGS CoreのIllumina HiSeq2500プラットフォームを使用して、ペアエンド125bpリードで定量化し、プールし、配列決定した。生の配列決定データをデマルチプレックスし、CASAVA(v1.8.2)を使用してFASTQファイルに変換した。全ての試料を、単一のフローセルレーン上で同時に配列決定した。平均配列決定深度は、ライブラリー当たり880万リードであった。ライブラリーの品質を、FastQC(v0.11.5)及びIlluminaアダプター配列を使用して評価し、Trimmomatic(0.36.0)を使用してトリミングされた低品質のリードを、Trinity(当該技術分野で広く使用されているデノボトランスクリプトームを生成するためのアプリケーション)によって推奨されるパラメータでトリミングした。
【0166】
デノボトランスクリプトームアセンブリ及びRNA-Seq分析の大部分の態様は、CyVerseサイバーコンピューティングインフラストラクチャ(S.Goff et al.,2011,Frontiers in Plant Science,2,doi:10.3389/fpls.2011.00034)を使用して実行した。ハエトリグサトラップトランスクリプトームの最も完全な表現を取得するために、感覚毛トラップ試料及び感覚毛がないトラップ試料のペアに加えて、イエバエを給餌されたトラップ及び給餌されなかったトラップから収集されたリードを含めて、トラップトランスクリプトームを構築した(表2)。Trinity(v2.5.1)は、デフォルト設定及び300ntを超える組み立てられたコンティグの長さを使用して、デノボビルドに使用した。最終的なトランスクリプトームには、80,592個のコンティグが含まれ、これらを77,539種の成分にグループ化した。本明細書において、各Trinity成分は、一般に、「遺伝子」と称される。最大結合長は15,873nt、平均及び中央値はそれぞれ867nt及び536nt、及びN50 1,197ntであった。
【0167】
【0168】
CEGMA(Core Eukaryotic Genes Mapping Approach)及びBUSCO(Benchmarking Universal Single-Copy Orthologs)分析を使用して、ハエトリグサトラップトランスクリプトームの完全性を評価した。CEGMAを使用して、248個の超保存されたコア真核生物遺伝子のうち、全てがトランスクリプトームに存在し、そのうち246個のコード配列は、CEGMA基準によって完全であると定義された。BUSCO(v3.0;系統:plantae;種:Arabidopsis)を使用したほぼ普遍的な単一コピーオーソログの存在についての検索では、BUSCOの94.7%が存在し、そのうちの92.6%が完全であると定義された。この数は、以前に公開されたハエトリグサトラップゲノム配列について報告された数よりも多い(Palfalvi,G. et al.,2020,Curr Biol,30(12),2312-2320 e2315,doi:10.1016/j.cub.2020.04.051)。
【0169】
トランスクリプトームの品質を更に試験するために、Bowtie2(v2.2.4)を使用して、各試料のリード値をトランスクリプトームに戻した。各試料について、対になったリード値の80~90%が一致してマッピングされたが、全体的なアラインメントレートは90%超であった。これらの値は、第2の配列決定ランからの各試料のリードが独立してアラインメントされたときに類似していた。
【0170】
TransDecoder(v1.0)を使用して、+鎖上の長さが少なくとも100個のアミノ酸の可能性のあるタンパク質又は不完全なタンパク質断片をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を見出した。合計で、これらの基準を満たす33,710個のORF(オープンリーディングフレーム)を見出した(この数は、-鎖も含めると、34,080個までと、わずかな量しか増加しなかった)。これらのうち、14,886個が完全であることが確認された。これらの値は、複数の組織から生成されたハエトリグサトラップトランスクリプトームについて以前に報告されたものと同様である(Jensen,M.K.et al.,(2015),Transcriptome and genome size analysis of the Venus flytrap,PLoS One,10(4),e0123887.doi:10.1371/journal.pone.0123887)。
【0171】
Arabidopsisからの相同配列をタンパク質コード転写産物に割り当てるために、Blastp(v2.2.29)のデフォルト設定を使用して、完全及び部分ポリペプチドをArabidopsis TAIR 10プロテオームに対してブラストし、e値閾値は0.01未満であった。トップヒットは、下流分析のためにのみ保持した。タンパク質当たりの膜貫通数を予測するために、TMHMM v.2.0を使用した。
【0172】
デノボハエトリグサトラップトランスクリプトームは、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information、NCBI)のTranscriptome Shotgun Assembly(TSA)データベースから入手可能であり、アクセッション番号はGHJF00000000である。アップロードされたトランスクリプトームは、上記のものからの以下の改変を有し、以下の差次的遺伝子発現分析に使用される:最後の42ntのcontig comp11005_c0_seq1及び最初の21ntのcomp46326_c0_seq1(可能なアダプター配列)が除去され、18個のコンティグが、可能な汚染物質としてフラグ付けされ、欠失された。アップロードされたトランスクリプトームは、80,574個のコンティグを含む。
【0173】
RNA-seq差次的遺伝子発現分析
Trinityによって支持される方法は、感覚毛トラップ組織試料と感覚毛のないトラップ組織試料との間で差次的に発現する遺伝子を見つけるために使用した。任意の所与のコンティグにわたって配列決定リードカウント数を増加させるために、全ての試料の第2の配列決定ランを実行した(SRAアクセッション番号:SRR8834210、SRR8834209、SRR8834208、SRR8834207、SRR8834212、及びSRR8834211)。連結されたリードを、上記のようにTrimmomaticを使用して両方の配列決定実行からトリミングし、これらを、Bowtieを使用してデノボハエトリグサトラップトランスクリプトームにアラインメントさせた。RSEM(v1.2.12)は、予想される遺伝子カウントを見つけるために使用し、edgeRは、統計学的試験のためのペアの実験設計を使用して差次的発現遺伝子を見つけるために使用した。edgeR(v3.12.1)における分析のために、遺伝子リストを最初に選別して、少なくとも100個のアミノ酸長のタンパク質(又はその断片)をコードするORF(オープンリーディングフレーム)を含む転写産物を含むTrinity成分のみを含むようにした。そのようなタンパク質が複数割り当てられた成分については、最も長いORF(オープンリーディングフレーム)が最も関連性があると想定され、遺伝子/成分にArabidopsisホモログを割り当てるための基礎として使用された。半数以上の試料で2未満のカウント/百万(CPM)を有する遺伝子は、分析から除外された。トラップ及び感覚毛における平均CPMとしての遺伝子発現値、並びに誤発見率(FDR)を有するedgeRアルゴリズムを使用して計算された感覚毛とトラップとの差次的発現を示すこれらの基準を通過する遺伝子の表は、GEOシリーズアクセッション番号GSE131340を有するNCBI遺伝子発現オムニバス(GEO)データベースで見つけることができる。このリポジトリには、Arabidopsisプロテオームに対する全てのタンパク質コード遺伝子及びBLAST結果のリストも含まれている。FDR<0.05に加えて、2倍以上の倍率濃縮差を有する遺伝子を、毛髪又はトラップ濃縮発現を誘発するものとして指定した。濃縮倍率は、平均CPM値から直接ではなく、edgeRアルゴリズムを使用して計算した。遺伝子オントロジー(GO)解析のために、GO用語が、その相同性Arabidopsisタンパク質に基づいて各遺伝子に割り当てられた(Arabidopsis TAIR10注釈データは、2018年4月にダウンロードした)。GO濃縮は、BiNGO 3.03(生物学的プロセス用語のみ)を使用して、Benjamini及びHochberg補正p値<0.05で実行した。
【0174】
感覚毛トランスクリプトーム中で、最も高い差次的発現遺伝子は、テルペン合成酵素との相同性を有するタンパク質をコードした(転写産物ID:comp18811_c0_seq1;約175倍の濃縮)。この遺伝子の発現は、祖先の触毛のような分泌構造から感覚毛が進化したとする進化歴の遺残である可能性がある。しかしながら、明らかに揮発性産生(volatile production)に関連する他の遺伝子の濃縮発現は観察されなかった。転写産物をArabidopsis TAIR10ゲノムに対してブラストしたところ、保存された17ntの伸長に起因して、Arabidopsis MSL10に対するヒットが報告されていた。したがって、この転写産物とMSL関連遺伝子との間には共通の調節配列が存在し得る。
【0175】
ハエトリグサcDNAのクローニング、及びDmFLYC1ゲノムDNAの配列決定
ハエトリグサの全トラップ組織からのcDNAを、Maxima First Strand cDNA Synthesis Kit(Thermo Fisher)を使用してRNAから調製した。次いで、FLYC1 cDNA(Trinity ID#comp20014_c0_seq1)を、予測される5’及び3’UTRにおいてアニールするプライマーCP1010及びCP1011(表3)を使用してPCR増幅し、pCR-Blunt II-TOPO(Invitrogen)にライゲーションした。サンガー配列決定法によって評価されるように、デノボトランスクリプトームからの予測配列と一致するクローンを生成した。同様に、EF1α(comp10702_c0_seq1)を、プライマーCP1144及びCP1145を用いてcDNA鋳型からPCR増幅し、pCR-Blunt II-TOPOにライゲーションした。このEF1α転写産物を、全てのRNA-seq組織試料中での高発現のために、RNAscope実験のためのユビキタス発現対照遺伝子として選択した。pCR-Blunt II-TOPOベクターにおいてアニーリングする、隣接するM13F及びM13Rプライマーを使用して、EF1α cDNAインサートを配列決定し、cDNAの最初の約1.1kb及び最後の約350bpが、新規トランスクリプトームからの予測と一致することを検証した。
【0176】
【0177】
ハエトリグサトラップゲノムDNAを、CTABベースの方法(Murray,M.G.,& Thompson,W.F.(1980),Rapid isolation of high molecular weight plant DNA,Nucleic Acids Res,8(19),4321-4325)を使用して、新鮮な植物組織から抽出した。これを鋳型として使用して、遺伝子をカバーする重複断片をPCR増幅し、サンガー配列決定を使用して配列決定した。重複及びネストされたプライマーセットは、CP1010及びCP0995、CP0994及びCP1034、CP1033及びCP1035、CP1172及びCP1173、CP1176及びCP1177、並びにCP1174及びCP1009(表3を参照されたい)であった。クロマトグラム上の2つの重複するピークの存在を、ヘテロ接合性及び対立遺伝子変異の証拠として使用した。最も3’側のプライマー(CP1009)は、終止コドン及びコード配列の最後の31塩基にわたってアニールしたため、この伸長内に追加のSNPが存在することを排除することができない。FLYC1遺伝子では合計32個のSNPが検出され、そのうちの2個のみがコード領域内で発見され、サイレントであった(すなわち、同じアミノ酸についてコードされた)。
【0178】
電気生理学的特徴付けのために、FLYC1、FLYC2、及びOSCA cDNAを遺伝子合成(ヒトコドン最適化)し、GenewizからのpIRES2-mCherryベクターに入れた。FLYC1におけるK558E及びK579E置換を、製造業者の指示に従ってQ5 Site-Directed Mutagenesis Kit(New England BioLabs)を使用して生成し、完全長DNA Sanger配列決定によって確認した。
【0179】
Drosera capensis cDNA配列の同定及びqRT-PCRプライマーの設計
Drosera FLYC1ホモログを見つけるために、ハエトリグサFLYC1の最初のエクソンを、D.capensisゲノムの足場アセンブリに対してブラストした(Butts,C.T.et al.,2016,Proteins,84(10),1517-1533,doi:10.1002/prot.25095)。最初のエクソンは、MSLファミリーメンバー間で最も多岐にわたるN末端細胞質ドメインをコードしているため、異なるMSL遺伝子間で最もよく区別し、最良のFLYC1ホモログを同定する可能性がある。この方法を使用して、4つの近接相同配列が見出された(e値:0.0;60%超のクエリカバー;NCBI blastn)。そのうちの2つは足場LIEC01006169.1に位置し、1つはLIEC01010092.1に位置し、もう1つはLIEC01012078.1に位置した。足場LIEC01006169.1 の42843~46002位(逆鎖;開始→終止コドン(start to stop codon))及び足場LIEC01012078.1の23270~26408位(順鎖;開始→終止コドン)は、推測されたエクソン構造及び保存された配列に基づいて、完全なハエトリグサFLYC1配列に密接に類似する転写産物をコードすると予測された。これらの遺伝子はそれぞれDcFLYC1.1及びDcFLYC1.2と呼ばれた。
【0180】
D.capensis植物においてコードされる正確なDcFLYC1.1及びDcFLYC1.2配列を決定するために、cDNAを、5’及び3’UTR(それぞれ、プライマーCP1240及びCP1243;並びにCP1224及びCP1225)で結合すると予測されるプライマーを使用して増幅した。各cDNAを2つの異なる植物由来の鋳型から増幅し、これらのPCR産物を独立してpCR-Blunt II-TOPOベクターにクローニングした。DcFLYC1.1について、独立した鋳型からの2つの反応のそれぞれからの2つのクローンのうちの1つ及び2つのクローンのうちの2つは、サンガー配列決定によって決定されたのと同じcDNA配列を共有した。DcFLYC1.2について、2つの反応のそれぞれからの7つのクローンのうちの3つ及び8つのクローンのうちの4つは、同じcDNA配列を共有した。他のクローンには、他のクローンには見られない追加の塩基の違いがあった。これらは、この四倍体種における内因性変異を表すかもしれないが、それらは、PCR増幅エラー又は低忠実度転写及び逆転写プロセスの結果である可能性が高い。
【0181】
DcFLYC1.1及びDcFLYC1.2cDNAは、高い配列類似性を共有する。qRT-PCRによって2つの間を解決するために、2つのプライマーのうちの1つが、5’又は3’UTR(それぞれ、CP1242及びCP1237、並びにCP1224及びCP1233)中の、保存度の低い残基の伸長においてアニールするプライマー対を設計した。これらのプライマーを使用した2つのcDNAの分解は、サンガー配列決定によって2つのPCR産物を直接配列決定することによって確認した。DcFLYC1.1及びDcFLYC1.2cDNAを、Genewizによって遺伝子合成(ヒトコドン最適化)し、電気生理学的特徴付けのためにpIRES2-mCherryベクターにサブクローニングした。
【0182】
D.capensis EF1α参照転写産物のqRT-PCRプライマーを設計するために、プライマーCP1208及びCP1209を使用して、cDNA鋳型からのPCR産物を増幅した。この産物のサンガー配列決定は、クロマトグラム上の二重ピークによって証明されるように、少なくとも2つの非常に類似したEF1α転写産物の存在を示唆した。これらは、異なる遺伝子又は対立遺伝子の産物を表し得る。任意の1つのEF1α転写産物に対するバイアスを回避するために、qRT-PCRプライマーを精製して、曖昧でない塩基(CP1218及びCP1219)上でアニールした。
【0183】
qRT-PCR
qRT-PCRによる、ケープモウセンゴケの葉及び触毛の分析は、SYBRグリーンベースのプロトコルを使用して行った。簡潔に述べると、500~1000ngのRNAを使用して、Maxima First Strand cDNA Synthesis Kit(Thermo Fisher)を使用してcDNAを生成し、そこから希釈液をqPCRの鋳型として使用した。比較は、生物学的に4回実行した。サイクル反応温度は、10秒間95℃、20秒間60℃、及び30秒間72℃であった。ΔΔCt法を用いて遺伝子発現の変化倍率を算出した。
【0184】
バイオインフォマティクス分析:相同性モデリング、タンパク質/ヌクレオチド比較、タンパク質トポロジ予測、及び進化歴
特に明記しない限り、全てのヌクレオチド及びアミノ酸比較は、MUSCLEのデフォルト設定を使用して行った。
図2A及び
図2Dに示されるMscSドメイン及びOSCAタンパク質の系統樹解析のために、最尤ツリー(Maximum Likelihood tree)を、MEGA Xソフトウェア(LG+Gモデル、4つの個別のGammaカテゴリ)を使用して、MscSドメインのMUSCLEアラインメント(Haswell,E.S.,& Meyerowitz,E.M.(2006).MscS-like proteins control plastid size and shape in Arabidopsis thaliana.Curr Biol,16(1),1-11.doi:10.1016/j.cub.2005.11.044)及び全長OSCAタンパク質から構築し、iTOLを使用して閲覧した。サイトカバー率が95%未満の全ての位置を削除した(部分削除オプション)。1000個の反復から最も高い対数尤度及びブートストラップ値を有するツリーを図に示す。
【0185】
FLYC1及びFLYC2(
図2B及び
図2C)のタンパク質トポロジを、Protterを使用して予測した。DmOSCAトポロジ(
図2E)は、Arabidopsis OSCA1.2に対してタンパク質をアラインメントさせ、TM(膜貫通)ドメイン及び細孔ドメインをOSCA1.2タンパク質構造において同定された同じ位置に割り当てることによって決定した。ハエトリグサFLYC1 TM6推定細孔ドメインをモデル化するために、残基A555-P593を、閉じたコンフォメーション(PDB2OAU)中のMscSの残基Q92-F130にねじ込んだ。ロゼッタスクリプトを使用してC7対称性を課し、部分構造内の露出した疎水性のために溶媒和項をオフにしたロゼッタエネルギー関数を使用して側鎖及び骨格コンフォメーションを最小化した。
【0186】
アクセッション番号
RNA-Seqデータ、デノボトランスクリプトーム、ORF(オープンリーディングフレーム)同定、及び下流の鑑別遺伝子発現分析は、上記で参照されたアクセッション番号を使用してNCBIで、及びumbrella Bioproject PRJNA530242の下で見出すことができる。植物cDNAテンプレートからサブクローニング及び配列決定されたCDS配列は、GenBankで入手可能である(DmFLYC1、DcFLYC1.1及びDcFLYC1.2)。
【0187】
異種ポリヌクレオチドによる細胞培養及び一過性トランスフェクション
PIEZO1-ノックアウトヒト胚性腎臓293T(HEK-P1KO)細胞を全ての異種発現実験に使用した。HEK-P1KO細胞を、CRISPR-Cas9ヌクレアーゼゲノム編集技術を使用して、以前に記載されているように(Lukacs,V.et al.,2015,Nat Commun,6,8329.doi:10.1038/ncomms9329)作製し、これはマイコプラズマ汚染について陰性であった。細胞を、4.5mg.ml-1グルコース、10%ウシ胎仔血清、50単位.ml-1ペニシリン、及び50μg.ml-1ストレプトマイシンを含有するDulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)中で成長させた。細胞を、24ウェルプレートに配置された12mmの丸いガラスポリ-D-リジンコーティングカバースリップにプレーティングし、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して、製造業者の説明書に従ってトランスフェクトした。全てのプラスミドを、700ng.ml-1の濃度でトランスフェクトした。細胞は、トランスフェクションの24~48時間後に記録した。
【0188】
電気生理学
細胞におけるパッチクランプ実験を、Axopatch 200B増幅器(Axon Instruments)を使用して、標準的な細胞付着又は切り出しパッチ(インサイドアウト)モードで実行した。電流を20kHzでサンプリングし、2kHz又は10kHzでフィルタリングした。機械的刺激前の漏れ電流は、電流のトレースからオフラインで差し引いた。電圧は、イオン選択性実験を除いて、液体接合電位(LJP)について補正されなかった。LJPは、Clampex 10.6ソフトウェアを使用して計算した。全ての実験は、室温で実行した。
【0189】
溶液
細胞付着パッチクランプ記録のために、膜電位をゼロにするために使用した外部溶液は、KCl:140、MgCl2:1、グルコース:10、及びHEPES(KOHによりpH7.3):10を含有していた(単位:mM)。記録ピペットは、NaCl:130mM、KCl:5、CaCl2:1 MgCl2:1、TEA-Cl:10、及びHEPES(NaOHによりpH7.3):10(単位:mM)で構成される標準溶液を充填した場合、1~3MΩの抵抗であった。
【0190】
イオン選択性実験は、インサイドアウトパッチ構成で実施した。PCl/PNaを、NaCl:150及びHEPES(NaOHによりpH7.3):10(単位:mM)で構成される細胞外溶液中で測定し、細胞内溶液を、NaCl:30、HEPES:10及びスクロース(NaOHによりpH7.3):225(単位:mM)で構成した。グルコン酸カルシウム溶液を、グルコン酸カルシウム:50、CaCl2:0.5、HEPES:10、スクロース(NaOHによりpH7.3):170(単位:mM)で構成した。
【0191】
機械的刺激
細胞に取り付けられた、又は切り出された、インサイドアウトパッチクランプ構成において、肉眼的な伸展活性化電流を記録した。膜パッチを、クランペックス制御圧力クランプHSPC-1デバイス(ALA-scientific)を使用して、記録電極を通して1秒間の負の超音波印加で刺激し、スイープ間持続時間は40秒であった。伸展活性化された単一チャネル電流を、細胞付着構成で記録した。単一チャネル振幅は圧力強度とは無関係であるため、最適な圧力刺激を使用して、単一チャネル振幅測定を可能にする応答を誘発した。これらの刺激値は、記録細胞の所与のパッチにおけるチャネルの数に大きく依存していた。所与の電位における単一チャネル振幅を、5~10回の反復記録のトレースヒストグラムから測定した。ヒストグラムには、Clampfit 10.6ソフトウェアを使用してガウス方程式を適用した。各個々のセルの単一チャネル勾配コンダクタンスを、単一チャネルI-Vプロットに適合する線形回帰曲線から計算した。
【0192】
透磁率測定
上述の溶液中の各細胞についての逆転電位は、それぞれの電流電圧データの内挿によって決定した。透過率は、以下のゴールドマン-ホジキン-カッツ(GHK)方程式を使用して計算した。
PCl/PNa比:
【0193】
インサイチュハイブリダイゼーション及び撮像
植物から、ハエトリグサ全体とケープモウセンゴケの葉を切り取り、液体N
2で新鮮凍結し、15μmの切片を採取した。RNAインサイチュハイブリダイゼーション(RNAscope)を、DmFLYC1(ACDBio;参照:546471、ロット:18177B)、DmFLYC1センス(ACDBio;参照:566181-C2、ロット:18361A)、DmFLYC2(ACDBio;参照:546481、ロット:18177C)、DmOSCA(ACDBio;参照:571691、ロット:19032A)、DcFLYC1.1/DcFLYC1.2(ACDBio;参照:572451、ロット:19037B)、及びEF1α(ACDBio;参照:559911-C2、ロット:18311B)に対するプローブを使用して、製造業者の説明書(ACDBio:#323100)に従って切片上で実行した。DmFLYC1センス(
図3B)及びDmFLYC2(
図9A及び
図9B)を同じ切片について試験した。しかしながら、DmFLYC2プローブは、2つの追加の実験において独立して試験され、シグナルは観察されなかった。スライドは、Vectashield+DAPI(参照:H1200、ロット:ZE0815)によって定量化した。染色した切片をニコンC2レーザー走査共焦点顕微鏡で撮像し、60倍の対物レンズを用いて切片全体を通してzスタックを取得した。表示される画像は、zスタック全体の最大投影である。画像は、ImageJ(Fiji画像処理パッケージ)を使用して処理した。
【0194】
ブンガロトキシン結合配列(BBS)を標的とする免疫染色実験
DmFLYC1の標識効率は、DmFLYC2、DmOSCA、及びDcFLYC1.1/1.2について同様の戦略を使用することを目的として、最初に試験した。膜におけるタンパク質発現は、目的のタンパク質の推定される細胞外ループにブンガロトキシン結合配列(BBS)を挿入し、蛍光タグにコンジュゲートされたα-ブンガロトキシンで免疫標識し、フローサイトメトリーを使用して蛍光効率を測定することによって推定することができる。13アミノ酸ブンガロトキシン結合配列(WRYYESSLEPYPD;配列番号41)を、DmFLYC1-ires mCherryの部位G216、P287、V289、又はP292でのQ5部位特異的変異誘発キットを使用してクローニングした。膜において発現するように実証されたPIEZO1-BBS-ires GFP(緑色蛍光タンパク質)構築物を陽性対照として使用した。HEK-P1 KO細胞をPIEZO1-BBS及びFLYC1-BBS構築物でトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間、培地を吸引し、細胞を100μLの標識緩衝液(2%ウシ胎児血清及び1mM EDTAを含むPBS)中に再懸濁させ、ヴェルセンを用いてプレートから細胞を分離させた。細胞を、PIEZO1用の1:100 Alexa Fluor 647コンジュゲートα-ブンガロトキシン、及びDmFLYC1用のAlexa Fluor 488コンジュゲートα-ブンガロトキシン(Thermo Fisher Scientific、参照:B13422、参照:B35450)を100μLの標識緩衝液中で、室温で15分間インキュベートした。次いで、各工程で5分間のインキュベーションを伴って、標識緩衝液で細胞を3回洗浄し、フローサイトメトリー(LSR II)に供した。標識効率は、Flowjoを用いて測定した。PIEZO1-BBSの陽性標識が観察されたが、FLYC1の標識は、タンパク質の2つの推定される細胞外ループの4つの異なる部位では観察されなかった。FLYC1中のBBSの挿入は、野生型タンパク質の折り畳み及び輸送に影響を与えた可能性がある。
【0195】
実施例7:ハエトリグサ植物は超音波刺激に感受性である
陸上植物及び緑藻類では、塩化物透過性チャネル開口部は、電気化学的勾配の下への塩化物イオンの流出に起因して、膜脱分極に関連している。植物が超音波刺激によって誘発され得る機械感受性の塩化物チャネルを有するかどうかを確認するために、周知の食虫植物であるDionaea muscipula(ハエトリグサ)を実験のために選択した。ハエトリグサの葉は、開いた両葉トラップで構成されており、揮発性の分泌物によって動物の被食動物(昆虫)を引き付ける。動物が各裂片の3~4の機械感覚性毛の1つに接触すると、毛を屈曲させ、その毛の基部の感覚細胞において活動電位を生成し、トラップ全体に伝播する。短い30秒の時間枠内の2つの活動電位によって急速に閉じて、被食動物を罠にかける。このトラップは、植物界で最も速い動きのうちの1つである100ミリ秒で閉じる。
【0196】
上記の実施例1~6では、感覚毛において選択的に発現される遺伝子が同定され、これらは、MSLクラスに対する相同性を有する2つの転写産物及びOSCAファミリーに対する相同性を有する1つの転写産物を含んでいた。これらの3つの転写産物のうちの1つは、機械感受性感覚毛に非常に富んでおり、FLYC1(flycatcher 1)と呼ばれた。上記の実施例4は、機械的に非感受性の、HEK-P1KO細胞(A.E.Dubin et al.,2017,Neuron,94:266-270.E263)において、ヒトコドン最適化FLYC1を発現させると、それらは膜伸展に対して感受性が得られることを実証し、したがって、このチャネルが塩化物選択的であることを確認する。
【0197】
ハエトリグサ植物の超音波刺激に対する感受性を試験するために、植物をニオブ酸リチウムトランスデューサに取り付けて、異なる周波数の超音波刺激の送達を可能にし、植物の応答を監視した。植物のトラップは、1MPa超の超音波刺激の少なくとも2つのパルスが30ミリ秒以内に送達されたときに閉じることが分かった(
図16A及び
図16B)。これらのデータは、超音波刺激が機械感覚性毛を誘発し、閉鎖をもたらす可能性があることを確認した。
【0198】
実施例8:FLYC1をソノサイレンスチャネル候補として確立する外因性発現
上記のように、FLYC1は、ハエトリグサ感覚毛に高濃縮された塩化物選択的機械感受性タンパク質である。遺伝的にコードされたカルシウムインジケータであるGCaMP6(T.W.Chen et al.,Nature,499:295-300)を発現するために、不死化ラット膵ベータ細胞株(INS1)(I.Cosar-Castellano et al.,2008,Diabetes,57:3056-3068)を使用した。これらの細胞は、GCaMP6蛍光の変化によって測定されるように、自発的なカルシウムイベントを示した。FLYC1ポリペプチドをコードするヒトコドン最適化ポリヌクレオチド配列を使用して、異種FLYC1ポリペプチドを発現するINS1細胞に形質導入した。異種FLYC1ポリペプチド発現INS1細胞は、超音波刺激後に自発的応答が低下していることが判明した(
図17A及び
図17B)。加えて、INS1細胞の形態は、FLYC1変化又は超音波刺激によって変化しなかった。これらの実験の結果は、FLYC1ポリペプチドが、INS1細胞などの別の細胞型において異種タンパク質として発現されるときに、ソノサイレンシングチャネルとして機能し得ることを示唆する。
【0199】
実施例9:蛍光イメージングプレートリーダー膜電位アッセイ
プレートリーダーベースの蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR)膜電位アッセイ(FMPアッセイ)を使用して、所与の細胞内で異種(又は外因性)ポリペプチドとして発現されたときに、FLYC1ポリペプチドがイオンチャネルとして機能することを確認した。FMP(FLIPR膜電位)キットは、当業者によるGPCR(Gタンパク質共役受容体)及びイオンチャネル発見で使用するために、Molecular Dynamicsによって開発された独自のアッセイを提供する。異種FLYC1ポリペプチドを発現するように分子操作されたINS1細胞を、96ウェルプレート中で培養した。FMP色素(FLIPR膜電位色素)をウェルに加え、プレートリーダーからベースライン(t=0)のリード値を得た。異なる量の塩化カリウムをウェルに添加し、FMP(FLIPR膜電位)蛍光の変化を最大20分間、5分ごとに監視した。製造業者のハンドブックと一致して、60mM KClに対して約2.5倍の変化のピーク応答で、蛍光の用量依存的な増加が観察された。異種FLYC1ポリペプチドを発現するINS1細胞は、KCl刺激に対してより低い応答を示した(
図18A及び
図18B)。
図17A、
図17B、
図18A、及び
図18Bはまた、INS-1細胞において異種発現したFLYC1が、INS-1細胞活性を抑制し、インスリン分泌を低下させることができることを示す。
【0200】
実施例10:ソノサイレンシング特徴
HEK細胞内で外因的に発現したFLYC1ポリペプチドのソノサイレンシング特性を決定するために、異種FLYC1ポリペプチドを発現する各細胞を+60mVに保持し、6.91MHzトランスデューサを用いて様々な超音波パルス持続時間刺激を細胞に送達した。塩化物の平衡電位は約-70mVであるため、最大の過分極応答を観察するために、細胞を+60mVに保持した。ニオブ酸リチウムトランスデューサを使用して、細胞に超音波刺激を送達した。FLYC1ポリペプチドを発現するHEK細胞は、強度が一定に保たれている間(2MPa)、異なる持続時間の超音波刺激に可変的に反応することが判明した。加えて、FLYC1ポリペプチドを発現したHEK細胞は、脱分極膜電位においていくらかの電圧依存性を示したことが観察された(
図19)。
図19によって実証されるように、INS-1細胞において発現されたFLYC1は、興奮性細胞を阻害することができた。
【0201】
実施例11:カルシウムイメージング解析
カルシウムイメージングを使用して、細胞内で発現したFLYC1ポリペプチドがhsTRPA1の超音波活性化を抑制することができるかどうかを評価した。これらの実験では、超音波トランスデューサを細胞培養皿ホルダと位置合わせし、細胞応答の変化をGCaMP蛍光の変化として記録したイメージング技術を用いた。理論に拘束されることを意図するものではないが、hsTRPA1の超音波活性化は膜結合カルシウムチャネルからの増幅を必要とするため、FLYC1ポリペプチドの発現による塩化物イオンの同時導入で、この応答を減衰させることが期待された。結果は、細胞におけるFLYC1ポリペプチドの発現が、AITC活性化されたTRPA1応答ではなく、一貫して超音波(US)誘発を抑制することを示した(
図20A及び
図20B)。AITCは、超音波非依存メカニズムを介してTRPA1を活性化させる化学アゴニストである。(M.Raisinghani et al.,2011,J.Physiol Cell Physiol,301:C587-600及びM.Duque et al.,2020,bioRxiv:2020.2010.2014.338699。)
図20A及び
図20Bによって確立されるように、外因性FLYC1ポリペプチドの発現は、hsTRPA1発現細胞の超音波誘発活性化を抑制することによって阻害される。
【0202】
加えて、細胞(例えば、HEK-P1KO細胞(
図21A及び
図21B))において発現されたときに、膜伸展に応答してより遅い不活性化動態を示すFLYC1ポリペプチドのR334Eバリアントが同定された。R334E FLYC1バリアントポリペプチド配列は、配列番号42に提供される。細胞におけるFLYC1バリアントポリペプチドの発現により、FLYC1ポリペプチドが異なる機能特性を示すチャネルを得るように変更され得ることが確認された。
【0203】
他の実施形態
前述の説明から、様々な使用法及び条件に適応するために、本明細書に記載されるような様々な態様及び実施形態に変形及び改変が行われ得ることが明らかであろう。このような実装形態はまた、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0204】
本明細書における変数の任意の定義における要素のリストの記載には、任意の単一の要素又は列挙された要素の組み合わせ(又は副組み合わせ)としてのその変数の定義が含まれる。本明細書における実施形態の記載は、その実施形態を、任意の単一の実施形態として、又は任意の他の実施形態又はその一部分と組み合わせて含む。
【0205】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各独立した特許及び刊行物が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されたときと同程度に、本明細書において参照により組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】