(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ヒトインターロイキン2の変異体又はその誘導体を含む医薬組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 38/20 20060101AFI20231115BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231115BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231115BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231115BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20231115BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231115BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20231115BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231115BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20231115BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20231115BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231115BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231115BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20231115BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231115BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20231115BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231115BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20231115BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20231115BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20231115BHJP
C07K 14/55 20060101ALN20231115BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20231115BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20231115BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231115BHJP
C12N 15/26 20060101ALN20231115BHJP
【FI】
A61K38/20 ZNA
A61P25/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/02
A61P17/00
A61P11/06
A61P3/10
A61P37/00
A61P37/08
A61P37/06
A61K47/26
A61K9/19
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/68
A61K47/64
A61K47/60
A61K47/54
C07K14/55
C07K19/00
C07K16/00
C12N15/13
C12N15/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528086
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2021130246
(87)【国際公開番号】W WO2022100684
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】202011269123.7
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110614713.7
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】520392096
【氏名又は名称】上海盛迪医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI SHENGDI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.1288 Haike Road, Zhangjiang Town, Pudong New District, Shanghai 201210, China
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【氏名又は名称】時岡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】葉 林茂
(72)【発明者】
【氏名】范 迎方
(72)【発明者】
【氏名】孫 燕燕
(72)【発明者】
【氏名】于 淑香
(72)【発明者】
【氏名】陳 昊
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC01
4C076CC03
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC21
4C076DD01
4C076EE23
4C076EE59
4C076FF61
4C076FF63
4C076FF68
4C076GG06
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
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4C084BA23
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4C084BA37
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4C084DA14
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4C084ZA011
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4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB151
4C084ZB152
4C084ZC351
4C084ZC352
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA53
4H045BA57
4H045CA40
4H045DA04
4H045DA70
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
ヒトインターロイキン2の変異体又はその誘導体を含む医薬組成物及びその用途を提供する。具体的に、ヒトインターロイキン2(IL-2)の変異体又はその誘導体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。上記医薬組成物は、改善された高温・凍結融解・常温安定性及び外見的製剤再現性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-2、マンニトール、トレハロース及びヒスチジン塩緩衝液を含む医薬組成物であって、マンニトールとトレハロースの質量比は1:7~3:4であり、好ましくは3:4である、医薬組成物。
【請求項2】
前記IL-2は、IL-2変異体又はその誘導体であり、
前記IL-2変異体又はその誘導体は、N26QとN29S変異を含み、好ましくは、N88R、N88G、N88I又はN88Dから選ばれる変異を更に含む、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記マンニトール濃度は約10 mg/mL~約100 mg/mLであり、好ましくは約10 mg/mL~約50 mg/mL、より好ましくは約30 mg/mLである、前記請求項の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記トレハロース濃度は約10 mg/mL~約100 mg/mLであり、好ましくは約30 mg/mL~約70 mg/mL、より好ましくは約40 mg/mLである、前記請求項の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記IL-2の濃度は約0.1 mg/mL~約100 mg/mLであり、好ましくは約1 mg/mL~約10 mg/mL、より好ましくは約2 mg/mLである、前記請求項の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
界面活性剤を更に含み、好ましくはポリソルベート、より好ましくはポリソルベート80である、前記請求項の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤の濃度は約0.01 mg/mL~約0.2 mg/mL、好ましくは約0.05 mg/mL~約0.1 mg/mL、より好ましくは約0.05 mg/mLである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ヒスチジン塩緩衝液濃度は約2 mM~約50 mMであり、好ましくは約5 mM~約20 mM、より好ましくは約10 mMである、前記請求項の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物のpHは約4.5~約6.0であり、好ましくは約5.0~約5.6、より好ましくは約5.3である、前記請求項の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
(a)約0.1 mg/mL~約100 mg/mLのIL-2と、
(b)約10 mg/mL~約100 mg/mLのマンニトールと、
(c)約10 mg/mL~約100 mg/mLのトレハロースと、
(d)約0.01 mg/mL~約0.2 mg/mLのポリソルベートと、
(e)約2 mM~約50 mMのヒスチジン塩緩衝液と、を含み、
前記医薬組成物のpHは約4.5~約6.0であり、
好ましくは、前記医薬組成物は、
(a)約1 mg/mL~約10 mg/mLのIL-2と、
(b)約10 mg/mL~約50 mg/mLのマンニトールと、
(c)約30 mg/mL~約70 mg/mLのトレハロースと、
(d)約0.02 mg/mL~約0.1 mg/mLのポリソルベート80と、
(e)約5 mM~約20 mMのヒスチジン塩緩衝液と、を含み、
前記医薬組成物のpHは約5.0~約5.5であり、
より好ましくは、前記医薬組成物は、
(a)約2 mg/mLのIL-2と、
(b)約30 mg/mLのマンニトールと、
(c)約40 mg/mLのトレハロースと、
(d)約0.05 mg/mLのポリソルベート80と、
(e)約10 mMのヒスチジン塩緩衝液と、を含み、
前記医薬組成物のpHは約5.3である、
前記請求項の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
生理学的に許容される溶媒を更に含み、好ましくは生理食塩水、注射用水又はグルコース溶液である、前記請求項の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記IL-2はIL-2変異体又はその誘導体であり、配列番号2と8~12から選ばれる何れか1つで示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記配列番号2と8~12における1番目のメチオニン(M)は存在してもしなくてもよい、前記請求項の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記IL-2は、単量体、及び/又はPEG化、及び/又はグリコシル化、及び/又はアルブミン抱合若しくは融合、及び/又はFc融合、及び/又はヒドロキシエチル化、及び/又は脱O-グリコシル化されたものであり、
好ましくは、PEGはIL-2変異体のN末端に連結され、
より好ましくは、PEGの相対分子量は約5 KD~約50 KDであり、
最も好ましくは、PEGの相対分子量は約20 KDである、
前記請求項の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記IL-2は式Iで示される構造を含み、そのうち、前記PEGの相対分子量は約20 KDであり、示されるアミノ酸配列は配列番号2で示されるアミノ酸配列と同様である、前記請求項の何れか一項に記載の医薬組成物:
【化1】
(式I)。
【請求項15】
請求項1~14の何れか一項に記載の医薬組成物を凍結乾燥することで得られ、又は再溶解して請求項1~14の何れか一項に記載の医薬組成物を形成することができる、凍結乾燥製剤。
【請求項16】
請求項15に記載の凍結乾燥製剤を再溶解することで調製して得られる、再溶解溶液。
【請求項17】
薬剤の調製における請求項1~14の何れか一項に記載の医薬組成物、又は請求項15に記載の凍結乾燥製剤、又は請求項16に記載の再溶解溶液の用途であって、前記薬剤は、自己免疫疾患又は臓器移植後の自己免疫反応を治療及び/又は予防することに用いられ、好ましくは、前記自己免疫疾患は、1型糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、湿疹、喘息から選ばれる、用途。
【請求項18】
請求項1~14の何れか一項に記載の医薬組成物を調製する方法であって、IL-2を各薬用添加物と混合するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医薬製剤分野に関し、より具体的に、ヒトインターロイキン2の変異体又はその誘導体を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトインターロイキン-2(Interleukin-2、IL-2)は、T細胞増殖因子(TCGF)とも呼ばれ、133個のアミノ酸から構成され、分子量が約15 KDであり、そのコード遺伝子が4番染色体(4q27)にあり、合計7 kbの配列を含む。1976年及び1977年に、Doris Morgan、Francis Ruscetti、Robert GalloとSteven Gillis、Kendal Smithらは、それぞれ活性化したT細胞培養液がT細胞の増殖を促進可能なことを発見した。その後、培養液における刺激因子は、精製されて単一のタンパク質であるIL-2として同定された。IL-2は、体内でリンパ球群を拡大させてこれらの細胞のエフェクター機能を向上させる能力を持つことで抗腫瘍効果が付与され、IL-2免疫療法は、ある転移性がん患者の治療のために選択されるようになり、現在、高用量のIL-2は、既に転移性腎細胞がん及び悪性黒色腫の治療に承認された。
【0003】
現在各国では、多数の製薬会社がIL-2変異体の開発に取り組んでおり、関連特許出願は、WO2012062228、CN201280017730.1、US8906356、US9732134、US7371371、US7514073、US8124066、US7803361、WO2016014428などを含む。例えば、WO2020125743は、より高い安定性を有すると共に、免疫治療剤として使用される改善特性がある、新規のIL-2変異体及びその誘導体に関する。
【0004】
IL-2変異体及びその誘導体は、経口投与で容易に分解され、熱的に不安定で、加水分解されやすいという特性を有するタンパク薬物である。安定的で外観の良い製剤を得ることは、重要な意味を持っている。US4604377には、安定剤であるマンニトールと、可溶化剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)又はデオキシコール酸硫酸ナトリウムとを含む、凍結乾燥したIL-2製剤が記載されている。US5417970には、加水分解ゼラチン又はヒト血清アルブミンと、アラニンとを含むIL-2凍結乾燥製剤が記載されている。しかし、SDSは、タンパク質と結合することで除去され難くなる恐れがあり、復元に不利であり、血清アルブミンは、市場の需要が高くて高価であり、製造プロセスが複雑である。ZL01814445.4には、ヒスチジン、スクロースとグリシンが安定したIL-2製剤が開示され、且つTween80により可溶性IL-2凝集物の形成が促進され、凍結乾燥前に顕著な量の可溶性凝集物ができることが発見されている。Wangら(Wei W et al. Dual effects of Tween 80 on protein stability[J]. Int J Pharm、2008、347(1-2):31-38.)も、Tween 80が振動によるIL-2変異タンパク質の凝集を顕著に抑制するものの、Tween 80がIL-2の貯蔵安定性に影響を及ぼし、この影響は温度に関係しており、即ち、5℃で22ヶ月間貯蔵した場合は、Tween 80の存在で、凝集がほとんど検出されず、40℃で2ヶ月間貯蔵した場合は、0.1%のTween 80を加えることで貯蔵期間でのIL-2変異タンパク質の凝集速度を顕著に向上させることができることを発見した。
【0005】
また、外観は、凍結乾燥製品の重要な品質特性の一つであり、合格した凍結乾燥製品は、外観が粗鬆且つ多孔質で、均一な色で、きめの細かい固体であるべきである。大量生産において、凍結乾燥した固形製品は、収縮や分解などの不合格な外観になることがあり、極めて大きな経済的損失を引き起こしてしまい、添加物成分は、凍結乾燥製品の外観に影響を与える。
【0006】
本開示は、IL-2の薬物の特性と剤型の特徴によって、大量のスクリーニング作業により、外観、RP-HPLC¥SE-HPLC¥IE-HPLC純度、安定性などの指標をもって、医薬組成物のpH、緩衝液、賦形剤、界面活性剤などの様々な側面をスクリーニングすることで、IL-2を含む医薬組成物を取得し、上記医薬組成物は、改善された高温・凍結融解・常温安定性及び外見的製剤再現性を有し、実際生産と臨床応用のためにより優れた性能の製品を提供する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、IL-2、マンニトールとトレハロースを含む医薬組成物を提供する。
【0008】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物では、上記IL-2濃度は約0.1 mg/mL~100 mg/mLであり、幾つかの具体的な実施形態において、IL-2の濃度は約1 mg/mL~約50 mg/mL、約1 mg/mL~約10 mg/mL、約2 mg/mL~約5 mg/mLである。
【0009】
幾つかの実施形態において、IL-2の濃度は約0.1 mg/mL、0.2 mg/mL、約0.3 mg/mL、約0.4 mg/mL、約0.5 mg/mL、約0.6 mg/mL、約0.7 mg/mL、約0.8 mg/mL、約0.9 mg/mL、約1.0 mg/mL、約1.1 mg/mL、約1.2 mg/mL、約1.3 mg/mL、約1.4 mg/mL、約1.5 mg/mL、約1.6 mg/mL、約1.7 mg/mL、約1.8 mg/mL、約1.9 mg/mL、約2.0 mg/mL、約2.1 mg/mL、約2.2 mg/mL、約2.3 mg/mL、約2.4 mg/mL、約2.5 mg/mL、約2.6 mg/mL、約2.7 mg/mL、約2.8 mg/mL、約2.9 mg/mL、約3.0 mg/mL、約3.1 mg/mL、約3.2 mg/mL、約3.3 mg/mL、約3.4 mg/mL、約3.5 mg/mL、約3.6 mg/mL、約3.7 mg/mL、約3.8 mg/mL、約3.9 mg/mL、約4.0 mg/mL、約4.1 mg/mL、約4.2 mg/mL、約4.3 mg/mL、約4.4 mg/mL、約4.5 mg/mL、約4.6 mg/mL、約4.7 mg/mL、約4.8 mg/mL、約4.9 mg/mL、約5.0 mg/mL、約6.0 mg/mL、約7.0 mg/mL、約8.0 mg/mL、約9.0 mg/mL、約10 mg/mL、約20 mg/mL、約30 mg/mL、約40 mg/mL、約50 mg/mL、約60 mg/mL、約70 mg/mL、約80 mg/mL、約90 mg/mL、約100 mg/mLである。
【0010】
幾つかの具体的な実施形態において、IL-2の濃度は約2 mg/mLである。
【0011】
マンニトール、トレハロース:
幾つかの実施形態において、本開示に係る医薬組成物は、糖を含む。上記「糖」は、通常の組成物(CH2O)nとその誘導体を含み、単糖、二糖、三糖、多糖、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む。グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセリン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、sylitol、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンニノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、ソルビトール、マルトースアルコール、ラクトースアルコール、イソ-マルツロースなどから選ばれてもよい。
【0012】
幾つかの実施形態において、本開示に係る医薬組成物は、マンニトール、トレハロースを含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、マンニトールの濃度は約5 mg/mL~約100 mg/mLである。幾つかの具体的な実施形態において、マンニトールの濃度は約10 mg/mL~約50 mg/mL、約15 mg/mL~40 mg/mL、約20 mg/mL~35 mg/mL、約25 mg/mL~40 mg/mL、約25 mg/mL~35 mg/mLである。例えば、約10 mg/mL、約20 mg/mL、約30 mg/mL、約40 mg/mL、約50 mg/mL、約60 mg/mL、約70 mg/mL、約80 mg/mL、約90 mg/mL又は約100 mg/mL、或いは約5 mg/mL、約6 mg/mL、約7 mg/mL、約8 mg/mL、約9 mg/mL、約10 mg/mL、約11 mg/mL、約12 mg/mL、約13 mg/mL、約14 mg/mL、約15 mg/mL、約16 mg/mL、約17 mg/mL、約18 mg/mL、約19 mg/mL、約20 mg/mL、約21 mg/mL、約22 mg/mL、約23 mg/mL、約24 mg/mL、約25 mg/mL、約26 mg/mL、約27 mg/mL、約28 mg/mL、約29 mg/mL、約30 mg/mL、約31 mg/mL、約32 mg/mL、約33 mg/mL、約34 mg/mL、約35 mg/mL、約36 mg/mL、約37 mg/mL、約38 mg/mL、約39 mg/mL、約40 mg/mL、約41 mg/mL、約42 mg/mL、約43 mg/mL、約44 mg/mL、約45 mg/mL、約46 mg/mL、約47 mg/mL、約48 mg/mL、約49 mg/mL、約50 mg/mLである。
【0014】
幾つかの具体的な実施形態において、マンニトールの濃度は約30 mg/mLである。
【0015】
幾つかの実施形態において、本開示に係る医薬組成物におけるトレハロースは、トレハロース又はその水和物を含み、幾つかの具体的な実施形態において、トレハロースはトレハロース二水和物である。
【0016】
幾つかの実施形態において、トレハロースの用量は、トレハロース二水和物で、濃度が約10 mg/mL~約100 mg/mL、約20 mg/mL~約80 mg/mL、約30 mg/mL~約70 mg/mL、約30 mg/mL~約50 mg/mL、約30 mg/mL~約45 mg/mL、約35 mg/mL~約40 mg/mLである。例えば、約10 mg/mL、約20 mg/mL、約30 mg/mL、約40 mg/mL、約50 mg/mL、約60 mg/mL、約70 mg/mL、約80 mg/mL、約90 mg/mL、約100 mg/mLである。
【0017】
幾つかの実施形態において、トレハロースの用量は、トレハロース二水和物で、濃度が約10 mg/mL、約11 mg/mL、約12 mg/mL、約13 mg/mL、約14 mg/mL、約15 mg/mL、約16 mg/mL、約17 mg/mL、約18 mg/mL、約19 mg/mL、約20 mg/mL、約21 mg/mL、約22 mg/mL、約23 mg/mL、約24 mg/mL、約25 mg/mL、約26 mg/mL、約27 mg/mL、約28 mg/mL、約29 mg/mL、約30 mg/mL、約31 mg/mL、約32 mg/mL、約33 mg/mL、約34 mg/mL、約35 mg/mL、約36 mg/mL、約37 mg/mL、約38 mg/mL、約39 mg/mL、約40 mg/mL、約41 mg/mL、約42 mg/mL、約43 mg/mL、約44 mg/mL、約45 mg/mL、約46 mg/mL、約47 mg/mL、約48 mg/mL、約49 mg/mL、約50 mg/mL、約51 mg/mL、約52 mg/mL、約52.5 mg/mL、約53 mg/mL、約54 mg/mL、約55 mg/mL、約56 mg/mL、約57 mg/mL、約58 mg/mL、約59 mg/mL、約60 mg/mL、約61 mg/mL、約62 mg/mL、約63 mg/mL、約64 mg/mL、約65 mg/mL、約66 mg/mL、約67 mg/mL、約68 mg/mL、約69 mg/mL、約70 mg/mL、約71 mg/mL、約72 mg/mL、約73 mg/mL、約74 mg/mL、約75 mg/mL、約76 mg/mL、約77 mg/mL、約78 mg/mL、約79 mg/mL、約80 mg/mLである。
【0018】
幾つかの具体的な実施形態において、トレハロースの用量は、トレハロース二水和物で、濃度が約40 mg/mLである。
【0019】
幾つかの実施形態において、マンニトールとトレハロース(トレハロースで、トレハロース二水和物で)との比率は、1:10~10:1、1:7~7:1、1:6~6:1、1:5~5:1、1:4~4:1、1:3~3:1、1:2~2:1、1:7~3:4、1:7~6:7、1:7~1:1、1:6~3:4、1:6~6:7、1:6~1:1、1:5~3:4、1:5~6:7、1:5~1:1、1:4~3:4、1:4~6:7、1:4~1:1、1:3~3:4、1:3~6:7、1:3~1:1、1:2~3:4、1:2~6:7、1:2~1:1、6:8~6:7である。例えば、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:9、2:8、2:7、2:6、2:5、2:4、2:3、2:2、2:1、3:9、3:8、3:7、3:6、3:5、3:4、3:3、3:2、3:1、4:9、4:8、4:7、4:6、4:5、4:4、4:3、4:2、4:1、5:9、5:8、5:7、5:6、5:5、5:4、5:3、5:2、5:1、6:9、6:8、6:7、6:6、6:5、6:4、6:3、6:2、6:1、7:9、7:8、7:7、7:6、7:5、7:4、7:3、7:2、7:1、8:9、8:8、8:7、8:6、8:5、8:4、8:3、8:2、8:1、9:9、9:8、9:7、9:6、9:5、9:4、9:3、9:2、9:1、10:1、10:9、10:8、10:7、10:6、10:5、10:4、10:3、10:2、10:1である。
【0020】
上記マンニトールとトレハロースとの比率は質量比であり、マンニトールとトレハロースの濃度から実際に換算することにより得られ、この換算方法はこの分野での公知のものである。
【0021】
同様に、本開示に記載される医薬組成物において、IL-2とマンニトール又はトレハロースとの質量比も、濃度から換算して得ることができる。
【0022】
幾つかの実施形態において、IL-2とマンニトールとの質量比の範囲は1:1~1:50であり、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50である。
【0023】
幾つかの実施形態において、IL-2とトレハロースとの質量比の範囲は4:50~4:150であり、例えば、4:50、4:60、4:70、4:80、4:90、4:105、4:120、4:140である。
【0024】
界面活性剤:
幾つかの実施形態において、本開示に係る医薬組成物は、界面活性剤を更に含む。ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー、Triton、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、オクチル配糖体ナトリウム、ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、ステアリル-スルホベタイン、ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、ステアリル-サルコシン、リノレイル-、ミリスチル-、セチル-ベタイン、ラウラミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノレイルアミドプロピル-、ミリストイルアミドプロピル-、パルミトイルアミドプロピル-、イソステアリルアミドプロピル-ベタイン、ミリストイルアミドプロピル-、パルミトイルアミドプロピル-、イソステアリルアミドプロピル-ジメチルアミン、ナトリウムメチルココイル、メチルオレイルタウレートナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンとプロピレングリコールの共重合体などから選ばれてもよい。
【0025】
幾つかの実施形態において、本開示に係る医薬組成物は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60又はポリソルベート80)を含む。幾つかの具体的な実施形態において、本開示に係る医薬組成物は、ポリソルベート80を含む。本開示は、ポリソルベートが、タンパク薬物の凝集現象の発生を減少させることで、安定剤として機能可能なことを発見した。ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)濃度は約0.01 mg/mL~約0.2 mg/mL、約0.02 mg/mL~約0.15 mg/mL、約0.02 mg/mL~約0.1 mg/mL、約0.03 mg/mL~約0.1 mg/mL、約0.04 mg/mL~約0.1 mg/mL、0.02 mg/mL~約0.05 mg/mL、約0.05 mg/mL~約0.1 mg/mLであり、例えば、約0.01 mg/mL、約0.02 mg/mL、約0.03 mg/mL、約0.04 mg/mL、約0.05 mg/mL、約0.06 mg/mL、約0.07 mg/mL、約0.08 mg/mL、約0.09 mg/mL、約0.1 mg/mL、約0.15 mg/mL、約0.2 mg/mLである。
【0026】
幾つかの具体的な実施形態において、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)の濃度は、約0.05 mg/mLである。
【0027】
緩衝系:
幾つかの実施形態において、本開示に係る医薬組成物は、緩衝液を更に含む。上記緩衝液は、例えば、クエン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、ヒスチジン塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、炭酸緩衝液、コハク酸緩衝液のような塩の一般的な水和物を含む。
【0028】
幾つかの実施形態において、上記緩衝液はヒスチジン塩緩衝系であり、そのうち、ヒスチジン塩緩衝液は、ヒスチジン-塩酸、ヒスチジン-酢酸塩、ヒスチジン-リン酸塩、ヒスチジン-硫酸塩などの緩衝液から選ばれる。
【0029】
幾つかの具体的な実施形態において、上記緩衝液はヒスチジン-塩酸緩衝液である。
【0030】
幾つかの形態において、医薬組成物では、上記緩衝液濃度は約2 mM~約50 mM、約5 mM~約40 mM、約5 mM~約30 mM、約5 mM~約20 mM、約5 mM~約15 mM、約5 mM~約10 mMであり、例えば、約2 mM、約3 mM、約4 mM、約5 mM、約6 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mM、約10 mM、約11 mM、約12 mM、約13 mM、約14 mM、約15 mM、約16 mM、約17 mM、約18 mM、約19 mM、約20 mM、約25 mM、約30 mM、約40 mM、約50 mMである。
【0031】
幾つかの具体的な実施形態において、医薬組成物では、上記緩衝液濃度は約10 mMである。
【0032】
幾つかの形態において、医薬組成物では、上記緩衝液pHは、約4.5~約6.0、約5.0~約6.0、約5.0~約5.6、約5.3~約5.5、例えば、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0である。
【0033】
幾つかの具体的な実施形態において、医薬組成物では、上記緩衝液pHは約5.3である。
【0034】
溶媒:
幾つかの実施形態において、本開示に係る医薬組成物は、溶媒を更に含む。
【0035】
医薬組成物において、溶媒は、生理学的に許容される無毒性の液体ベクター、例えば、生理食塩水、注射用水、グルコース溶液(例えば、5%のブドウ糖注射液、ブドウ糖塩化ナトリウム注射液)などから選ばれるが、これらに限定されない。
【0036】
また、本開示は、IL-2を含む医薬組成物を更に提供し、
(1)濃度が約1 mg/mL、約2 mg/mL、約5 mg/mL、約10 mg/mL又は約100 mg/mLであるIL-2と、約30 mg/mLのマンニトールと、約40 mg/mLのトレハロースと、約0.05 mg/mLのポリソルベートとを含み、pHが約5.3である医薬組成物、
(2)濃度が約1 mg/mL、約2 mg/mL、約5 mg/mL、約10 mg/mL又は約100 mg/mLであるIL-2と、約30 mg/mLのマンニトールと、約40 mg/mLのトレハロースと、0.1 mg/mLのポリソルベートとを含み、pHが約5.3である医薬組成物、
(3)約2 mg/mLのIL-2と、濃度が約10 mg/mL、約20 mg/mL、約30 mg/mL、約35 mg/mL又は約50 mg/mLであるマンニトールと、約40 mg/mLのトレハロースと、約0.1 mg/mLのポリソルベートとを含み、pHが約5.3である医薬組成物、
(4)約2 mg/mLのIL-2と、濃度が約10 mg/mL、約20 mg/mL、約30 mg/mL、約35 mg/mL又は約50 mg/mLであるマンニトールと、約40 mg/mLのトレハロースと、約0.05 mg/mLのポリソルベートとを含み、pHが約5.3である医薬組成物、
(5)約2 mg/mLのIL-2と、約30 mg/mLのマンニトールと、濃度が約10 mg/mL、約20 mg/mL、約30 mg/mL、約35 mg/mL、約40 mg/mL又は約50 mg/mLであるトレハロースと、約0.1 mg/mLのポリソルベートとを含み、pHが約5.3である医薬組成物、及び
(6)約2 mg/mLのIL-2と、約30 mg/mLのマンニトールと、濃度が約10 mg/mL、約20 mg/mL、約30 mg/mL、約35 mg/mL、約40 mg/mL又は約50 mg/mLであるトレハロースと、約0.05 mg/mLのポリソルベートとを含み、pHが約5.3である医薬組成物、
を含むが、これらに限定されない。
【0037】
幾つかの具体的な実施形態において、上記(1)~(6)の医薬組成物は、約10 mMのヒスチジン塩緩衝液、例えば、ヒスチジン-塩酸緩衝液を更に含む。
【0038】
幾つかの具体的な実施形態において、上記(1)~(6)の医薬組成物に開示されたIL-2は、IL-2変異体又はその誘導体であり、上記IL-2変異体又はその誘導体はN26Q、N29SとN88R部位変異を含み、C125A部位変異を含んでも含まなくてもよく、例えば、IL-2変異体又はその誘導体は配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む。
【0039】
幾つかの実施形態において、上記IL-2は、IL-2変異体又は誘導体である。上記IL-2は、IL-2変異体又はその誘導体を含み、選択的な実施形態において、上記医薬組成物におけるIL-2変異体又はその誘導体は、野生型のヒトIL-2の11番目、26番目、27番目、29番目、30番目、31番目、32番目、33番目、34番目、35番目、36番目、37番目、38番目、39番目、40番目、41番目、42番目、43番目、44番目、70番目、71番目、72番目、78番目、82番目、88番目、125番目、132番目で1つ又は複数のアミノ酸変異を有する。本開示は、変異についてabcで示され、そのうち、aは変異前のアミノ酸タイプ、bは変異部位、cは変異後のアミノ酸タイプである。例えば、N26Sとは、26番目がアスパラギン(N)からセリン(S)に変異されたものであり、N26は26番目のアスパラギン(N)が変異されたことであり、26Sは26番目がセリン(S)に変異されたことである。
【0040】
具体的に、本開示が提供するIL-2変異体又はその誘導体は、26番目、29番目、30番目、71番目、11番目、132番目、70番目、82番目、27番目、78番目という部位での1つ又は複数のアミノ酸変異又はそれらの任意の組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、変異前のアミノ酸(例えば、野生型ヒトIL-2におけるもの)は、26番目がアスパラギン(N)、29番目がアスパラギン(N)、30番目がアスパラギン(N)、71番目がアスパラギン(N)、11番目がグルタミン(Q)、132番目がロイシン(L)、70番目がロイシン(L)、82番目がプロリン(P)、27番目がグリシン(G)、78番目がフェニルアラニン(F)である。
【0041】
幾つかの具体的な実施形態において、IL-2変異体又はその誘導体は、第1種の変異を含み、上記第1種の変異は、下記の(1)~(7)の何れか1つで示され、又はそれらの任意の組み合わせである:
(1)N26Q、
(2)N29S、
(3)N30S、
(4)N71Q、
(5)Q11CとL132C、
(6)L70CとP82C、及び
(7)G27CとF78C。
【0042】
幾つかの具体的な実施形態において、上記IL-2変異体又はその誘導体は、向上した安定性、例えば、向上した脱アミノ安定性及び/又は熱的安定性を有し、具体的に、本開示が提供する第1種の変異は、上記変異を含むIL-2変異体又はその誘導体を野生型IL-2と比べて向上した安定性を有するようにし、向上した脱アミノ安定性及び/又は熱的安定性を有することを含むが、これらに限定されない。
【0043】
幾つかの具体的な実施形態において、IL-2変異体又はその誘導体は第2種の変異を含み、上記第2種の変異は、20、88、126番目という部位での1つ又は複数のアミノ酸変異又はそれらの任意の組み合わせを有する。幾つかの実施形態において、変異前のアミノ酸(例えば、野生型ヒトIL-2におけるもの)は、20番目がアスパラギン酸(D)、88番目がアスパラギン(N)、126番目がグルタミン(Q)である。幾つかの具体的な実施形態において、IL-2変異体又はその誘導体は、第2種の変異を更に含み、上記第2種の変異は、下記を含む何れか1つ又はそれらの任意の組み合わせから選ばれる:N88がA、R、E、L、F、G、I、M、S、Y、V又はDに変異され、D20がA、H、I、M、E、S、V、W又はYに変異され、且つQ126がN、L、P、F、G、I、M、R、S、T、Y、Vに変異される。
【0044】
幾つかの具体的な実施形態において、第2種の変異は、(8)~(10)の何れか1つで示される変異又はそれらの任意の組み合わせから選ばれる:
(8)N88R又はN88G又はN88I又はN88D、
(9)D20H又はD20Y、及び
(10)Q126L。
【0045】
上記第2種の変異は、IL-2のTregに対する増殖誘導と活性化機能を保持することができるが、IL-2のエフェクター細胞(例えば、NKとT細胞)に対する増殖誘導と活性化機能を解消又は低減させる。
【0046】
幾つかの実施形態において、IL-2変異体又はその誘導体は、上述したような第1種の変異と第2種の変異を同時に含み、且つ任意選択的に、C125A部位変異を含んでも含まなくてもよく、第1種の変異は、(11)~(13)から選ばれる何れか1つである:
(11)N26QとN29S、
(12)N26Q、N29SとN71Q、及び
(13)N26QとN30S。
【0047】
第2種の変異は、N88R又はN88G又はN88I又はN88Dである。
【0048】
幾つかの実施形態において、IL-2変異体又はその誘導体は、(14)N26Q、N29SとN88Rで示される変異を含む。
【0049】
本開示に記載されるIL-2変異体又はその誘導体は、(1)~(13)における変異部位、変異タイプの任意の組み合わせ方法を有し、WO2020125743Aに開示されたIL-2変異体を含むが、これに限定されない。
【0050】
幾つかの実施形態において、上記変異は、野生型IL-2に対して発生される変異であり、上記野生型IL-2のアミノ酸配列は配列番号1で示される。本開示に係る変異の部位番号は、配列番号1で示されるアミノ酸配列に基づいて2番目のアミノ酸Aから数えられ、本開示に係る何れのIL-2変異体も、配列番号1で示されるものに基づく1番目のメチオニン(M)を含み、又は1番目のメチオニン(M)を含まない。
【0051】
幾つかの実施形態において、上記IL-2変異体又はその誘導体は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12から選ばれる何れか1つで示されるアミノ酸を含む。上記ポリペプチドのアミノ酸及び対応するヌクレオチド配列番号は、表1に示す通りである(下線は変異アミノ酸である):
【表1-1】
【表1-2】
(注記:上記変異部位番号は、配列番号1で示されるヒトIL-2成熟タンパク質番号に従って計算され、ヒトIL-2成熟タンパク質は、1番目のアミノ酸Mを含まないので、番号は2番目のアミノ酸Aから数えられる。そのうち、「/」は、同一のIL-2変異体において、上記変異が同時に存在することを示す。何れの変異体も、C125Aを含んでも含まなくてもよく、C125Aを含む場合は、二量体の形成を回避するためである。)
【0052】
幾つかの具体的な実施形態において、上記IL-2変異体又はその誘導体は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む。
【0053】
幾つかの具体的な実施形態において、上記IL-2変異体又はその誘導体は、式Iで示されるような構造を有し、式Iで示される構造の相対分子量が約36 KDであり、そのうち、式Iで示される構造は、配列番号2で示されるIL-2変異体のアミノ酸配列を含む。
【0054】
【化1】
(式I)。
(注記:太字の部位は、野生型と比べて変異した部位、即ち、N26Q、N29S、N88R、C125Aであり、連結されるCys58-Cys105は、ジスルフィド結合の位置である。)
【0055】
幾つかの具体的な実施形態において、上記式Iで示される構造は、配列番号2で示されるIL-2変異体と、相対分子量が約20 KDのPEG分子とから調製して得られ、得られた式Iで示される構造の総相対分子量は約36 KDである。
【0056】
幾つかの実施形態において、IL-2変異体の誘導体は、本開示に係るIL-2変異体の全長、部分タンパク質、又は本開示のIL-2変異体を基にして更に変異して得られた変異タンパク質、機能性誘導体、機能性断片、生物活性ペプチド、融合タンパク質、アイソタイプ又はその塩を含む。例えば、IL-2変異体の融合タンパク質、上記IL-2変異体の単量体又は二量体又は三量体又は多量体、上記IL-2変異体の種々の修飾形態(例えば、PEG化、グリコシル化、アルブミン抱合又は融合、Fc融合又は抱合、ヒドロキシエチル化、脱O-グリコシル化など)、及び上記IL-2変異体の各々の種でのホモログを含む。上記IL-2の修飾は、治療に関連する免疫原性に対して不利な影響を与えることはない。
【0057】
幾つかの実施形態において、IL-2変異体又は誘導体はPEG化されたものであり(PEG-IL-2で示されてもよい)、例えば、単一又は二重PEG化されたIL-2変異体又は誘導体である。PEG-IL-2変異体又は誘導体は、SC-PEG連結基を含む。別の幾つかの実施形態において、PEG-IL-2変異体又は誘導体は、メトキシ-PEG-アルデヒド(mPEG-ALD)連結基を含む。ある実施形態において、PEG部分の平均分子量は約5 KD~約50 KDであり、具体的に、約5 KD、約10 KD、約11 KD、約12 KD、約13 KD、約14 KD、約15 KD、約16 KD、約17 KD、約18 KD、約19 KD、約20 KD、約21 KD、約22 KD、約23 KD、約24 KD、約25 KD、約30 KD、約35 KD、約40 KD、約45 KD、約50 KDであり、又は約5 KD~約40 KD、又は約10 KD~約30 KD、又は約10 KD~約30 KDの間、又は約15 KD~約20 KDの間である。ある具体的な実施形態において、mPEG-ALD連結基は、約5 KDa、約12 KDa又は約20 KDa(品質管理基準としては、20±2 KDa)から選ばれる平均分子量を有するPEG分子を含む。ある実施形態において、mPEG-ALDのアルデヒド基は、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド又はブチルアルデヒドなどであってもよい。一実施形態において、IL-2変異体又はその誘導体は、野生型IL-2又はその誘導体と比べて長くなる血清半減期を有する。
【0058】
IL-2変異体又はその誘導体は、第2種の変異を含む場合、幾つかの実施形態において、IL-2変異体又はその誘導体は、IL-2の高親和性受容体(IL-2Rα/β/γ)と中等度親和性受容体(IL-2Rβ/γ)への親和性を低減することができるが、高親和性受容体への親和性は、中等度親和性受容体への親和性よりも多く低減される。幾つかの実施形態において、IL-2変異体又はその誘導体は、IL-2のTregに対する増殖誘導と活性化機能を保持することができるが、IL-2のエフェクター細胞(例えば、NKとT細胞)に対する増殖誘導と活性化機能を解消又は低減させる。
【0059】
WO2020/125743におけるIL-2変異体又はその誘導体、関連配列及び調製方法は、全てここに取り込まれている。
【0060】
凍結乾燥製剤:
本開示は、IL-2を含む医薬組成物の凍結乾燥製剤を調製する方法を更に提供し、上記方法は、上記医薬組成物を凍結乾燥するステップを含む。
【0061】
本開示は、IL-2を含む医薬組成物の凍結乾燥製剤を更に提供し、上記凍結乾燥製剤は、上記何れか一項に記載のIL-2医薬組成物を凍結乾燥して得られる。上記凍結乾燥製剤を調製するプロセスは、
(1) ヒスチジン塩緩衝液を調製し、添加物母液を調製するステップと、
(2) 式Iで示されるIL-2タンパク質溶液を調製相に移すステップと、
(3) 添加物母液を加えるステップと、
(4) 緩衝液を加えてタンパク質濃度を調整するステップと、
(5) 除菌予備ろ過するステップと、
(6) 除菌ろ過して貯液袋に入れるステップと、
(7) 容器に充填し、栓を半分入れるステップと、
(8) 凍結乾燥するステップと、
(9) 栓を入れ、搬出して蓋をするステップと、
を含む。
【0062】
幾つかの実施形態において、凍結乾燥製剤は、凍結乾燥前の充填容量が1.10 mL~約1.20 mLであり、例えば、約1.15 mLである。
【0063】
幾つかの実施形態において、凍結乾燥製剤は、2℃~8℃で暗所で保存されると、少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、少なくとも30ヶ月間安定している。
【0064】
幾つかの実施形態において、当該凍結乾燥製剤は、25℃で少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間安定している。
【0065】
幾つかの実施形態において、当該凍結乾燥製剤は、40℃で少なくとも7日間、少なくとも14日間又は少なくとも30日間安定している。
【0066】
本開示は、IL-2を含む再溶解溶液を更に提供し、上記再溶解溶液は、上記凍結乾燥製剤を再溶解して調製して得られる。
【0067】
本開示は、上記再溶解溶液を調製する方法であって、上記凍結乾燥製剤を再溶解するステップを含む方法を更に提供し、その再溶解用の溶液は、注射用水、生理食塩水、又は5%のブトウ糖注射液、ブトウ糖塩化ナトリウム注射液などのグルコース溶液から選ばれるが、これらに限定されない。
【0068】
本開示は、上記医薬組成物、凍結乾燥製剤又は再溶解溶液が入った容器を含む製品を更に提供する。容器の表示容量は、必要に応じて調整され、0.5 mL、0.6 mL、0.7 mL、0.8 mL、0.9 mL、1.0 mL、1.1 mL、1.2 mL、1.3 mL、1.4 mL、1.5 mL、1.6 mL、1.7 mL、1.8 mL、1.9 mL、2.0 mL、2.1 mL、2.2 mL、2.3 mL、2.4 mL、2.5 mL、5.0 mL、10 mLから選ばれてもよい。注射剤は、臨床投与中に薬液の残留や損失を発生させる可能性があるので、表示容量を確保するために、中国薬局方2020版四部注射剤通則での要求に応じて、実際に生産する時に本品の容量を適当に増加すべきであり、約1 mLあたりの医薬組成物を実際に充填生産する時の目標容量は約1.15 mLと設定し、容量範囲は約1.10 mL~約1.20 mLに制御する。
【0069】
幾つかの実施形態において、当該容器の内装材料は、中性ホウケイ酸ガラス管製の注射剤バイアル、注射用凍結乾燥用のブロモブチルゴム栓及び抗生物質バイアル用のアルミ製の組合せ型蓋である。
【0070】
調製方法:
本開示に係る医薬組成物を調製するには、適量のIL-2と上記薬用添加物とを混合するステップを含む、この分野でよく用いられる方法を利用することができる。
【0071】
幾つかの実施形態において、IL-2を調製した後、それを含む医薬製剤を調製し、適量のトレハロース、マンニトール及び選択的な他の添加物成分を医薬製剤に加えることを含む。
【0072】
用途:
本開示は、自己免疫疾患の治療又は臓器移植後の自己免疫反応の緩和/治療/予防に用いられる、上記IL-2を含む医薬組成物、凍結乾燥製剤又は再溶解溶液の製薬用途を提供する。自己免疫疾患は、1型糖尿病(type I diabetes mellitus)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、慢性胃炎(chronic gastritis)、クローン病(Crohn’s disease)、バセドー氏病(Basedow disease)、ベヒテレフ病(Bechterew disease)、乾癬(psoriasis)、重症筋無力症(myasthenia gravis)、自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis)、APECED、アレルギー性肉芽腫性血管炎(Chrug-Strauss syndrome)、潰瘍性結腸炎(ulcerative colitis)、糸球体腎炎(glomerulonephritis)、ギラン・バレー症候群(Guillain-Barresyndrome)、橋本甲状腺炎(Hashimoto thyroiditis)、硬化性苔癬(lichen sclerosus)、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematodes)、PANDAS、リウマチ熱(rheumatic fever)、サルコイドーシス(sarcoidosis)、シェーグレン症候群(syndrome)、スティフマン症候群(Stiff-Man syndrome)、強皮症(scleroderma)、ウェゲナー肉芽腫症(Wegener’s granulomatosis)、白斑(vitiligo)、自己免疫性腸症(autoimmune enteropathy)、グッドパスチャー症候群(Goodpasture syndrome)、皮膚筋炎(dermatomyositis)、多発性筋炎(polymyositis)、自己免疫性アレルギー(autoimmune allergy)、喘息(asthma)又はそれらの何れかからなる群から選ばれてもよい。
【0073】
幾つかの実施形態において、IL-2変異体又はその誘導体は、免疫阻害剤と併用することができる。幾つかの実施形態において、免疫阻害剤は、デコリン(decortin)やprednisolを含むグルココルチコイド(glucocorticoid)、アザチオプリン(azathioprine)、シクロスポリンA(cyclosporin A)、ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolatemofetil)、タクロリムス(tacrolimus)、ムロモナブ(muromonab)を含む抗リンパ球グロブリンや抗CD3抗体、バシリキシマブ(basiliximab)とダクリズマブ(daclizumab)を含む抗CD25抗体、インフリキシマブ(infliximab)とアダリムマブ(adalimumab)を含む抗TNF-α抗体、アザチオプリン、メトトレキサート(methotrexate)、シクロスポリン(cyclosporin)、シロリムス(sirolimus)、エベロリムス(everolimus)、フィンゴリモド(fingolimod)、セルセプト(CellCept)、マイフォーティック(myfortic)、及びシクロホスファミド(cyclophosphamide)からなる群から選ばれる。
【0074】
幾つかの実施形態において、本開示に係る医薬組成物、凍結乾燥製剤又は再溶解溶液は、治癒することができず、部分的な利益しか提供できない。幾つかの実施形態において、幾つかの利益を有する生理学的変化も治療的に有益であると考えられる。これにより、幾つかの実施形態において、生理学的変化を与えるIL-2変異体又はその誘導体、免疫複合体の量は、「有効量」又は「治療有効量」とされる。治療が必要な対象、患者又は個体は、一般的に哺乳動物、更に特にヒトである。
【0075】
任意の効果的な経路を通じて医薬組成物、凍結乾燥製剤又は再溶解溶液を投与することができ、例えば、注射によれば、注射に適する形、例えば、ボーラス注射法や持続注入法で患者の血流に投与し、又は静脈内注射、皮下注射、皮内注射、腹腔内注射などであってもよい。選択として、腫瘍部位に局所的投与(腫瘍内又は腫瘍周囲投与)してもよい。腫瘍内又は腫瘍周囲に投与する場合、任意の経路により投与することができ、例えば、局所的投与、領域投与、局所投与、全身的投与、対流強化輸送又はそれらの組み合わせで投与する。
【0076】
注射の形は、滅菌水溶液又は分散系を含む。更に、上記医薬組成物は、滅菌注射液又は分散液をリアルタイムに調製するために、滅菌粉末形に調製されてもよい。とにかく、最終的な注射の形は、必ず滅菌で、且つ容易に注射されるように、必ず流れやすいものでなければならない。なお、上記医薬組成物は、調製と貯蔵中に安定しなければならない。従って、好ましくは、上記医薬組成物は、細菌や真菌などの微生物の汚染に強い条件下で保存しなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0077】
用語
本願が更に容易に理解されるように、以下、幾つかの技術・科学用語を具体的に定義する。本明細書の別の箇所で別途明確に定義されていない限り、本明細書に使用される他の技術・科学用語の全ては、当業者に通常理解されている意味を有する。
【0078】
本開示は、開示された特許文書WO2020/125743A1の内容を全て取り込んでいる。
【0079】
本開示に用いられるアミノ酸の3文字コードと1文字コードは、J. Biol. Chem、243、p3558(1968)に記載された通りである。
【0080】
「インターロイキン-2」又は「IL-2」は、霊長類(例えば、ヒト)と齧歯動物(例えば、マウスとラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物に由来する任意の天然のIL-2を指す。当該用語は、未加工のIL-2及び細胞由来の加工された任意の形態のIL-2をカバーする。当該用語は、更に、スプライス変異体や対立遺伝子変異体などの天然に存在するIL-2変異体をカバーする。例示的な野生型ヒトIL-2のアミノ酸配列は、配列番号1で示される通りである。未加工のヒトIL-2は、更に、N末端の20個のアミノ酸のシグナルペプチド(例えば、WO2012107417中の配列番号272で示される)を含み、上記シグナルペプチドは成熟したIL-2分子にはない。
【0081】
「アミノ酸変異」は、最終構築体が実現され、最終構築体が補強された安定性などの所望の特性を有するように、アミノ酸の置換、欠失、挿入、修飾及びそれらの任意の組み合わせを含む。アミノ酸配列の欠失及び挿入は、アミノ基及び/又はカルボキシ末端の欠失及びアミノ酸の挿入を含む。末端欠失の例としては、全長ヒトIL-2の位置1でアラニン残基が欠失している。好ましくは、アミノ酸変異はアミノ酸置換である。例えばIL-2ポリペプチドの結合特性を変えるために、非保存的アミノ酸を置換し、即ち、1つのアミノ酸を異なる構造及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸で置換することができる。好ましくは、アミノ酸置換は、親水性アミノ酸で疎水性アミノ酸を置換することを含む。アミノ酸置換は、天然に存在しないアミノ酸又は20種の標準的なアミノ酸の天然に存在するアミノ酸誘導体(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリジン)による置換を含む。アミノ酸変異は、部位特異的変異導入、PCR、遺伝子合成、化学修飾などの方法を含むこの分野で公知の遺伝学的又は化学的方法によって生成することができる。
【0082】
「野生型IL-2」は、変異体IL-2ポリペプチドの各アミノ酸位置で野生型アミノ酸のIL-2形態を有する以外、変異体IL-2のポリペプチドと同様である。例えば、IL-2変異体が全長IL-2(即ち、何れの他の分子にも融合又は抱合していないIL-2)である場合、この変異体の対応する野生型形態は全長天然のIL-2である。IL-2変異体が、IL-2とその下流にコードされた別のポリペプチド(例えば、抗体鎖)との融合物である場合、このIL-2変異体の対応する野生型形態は、同じ下流ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に融合したIL-2である。また、IL-2変異体が、IL-2の切断形態(IL-2の非切断部分における変異又は修飾した配列)である場合、このIL-2変異体の野生型形態は、野生型配列を有する、切断されたようなIL-2である。各形態のIL-2変異体及び対応するIL-2野生型形態についてIL-2受容体結合親和性又は生物学的活性を比較するために、「野生型」という用語は、例えば、ヒトIL-2の残基125に対応する位置でのシステインをアラニンC125Aで置換するように、天然に存在する天然のIL-2と比べて、IL-2受容体への結合に影響を与えないアミノ酸変異を1つ又は複数含むIL-2形態をカバーする。幾つかの実施形態において、野生型IL-2は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む。
【0083】
「誘導体」は、任意のIL-2に関連する製品を含むように、広い意味で解釈されることを意図する。ヒトと非ヒトのIL-2ホモログ、断片又はトランケーション、融合タンパク質(例えば、シグナルペプチドと融合し、又は他の活性・非活性成分と融合し、活性成分は、例えば抗体又はその抗原結合断片である)、修飾形態(例えば、PEG化、グリコシル化、アルブミン抱合/融合、Fc抱合/融合、ヒドロキシエチル化など)及び保存的に修飾されたタンパク質などを含むが、これらに限定されない。
【0084】
「高親和性IL-2受容体」とは、受容体γサブユニット(一般的なサイトカイン受容体γサブユニット、γc又はCD132とも呼ばれる)、受容体βサブユニット(CD122又はp70とも呼ばれる)と受容体αサブユニット(CD25又はp55とも呼ばれる)からなる、IL-2受容体のヘテロ三量体形態を指す。それに対し、「中等親和性IL-2受容体」は、γサブユニットとβサブユニットのみを含み、αサブユニットのないIL-2受容体を指す(例えば、OlejniczakとKasprzak、MedSci Monit14、RA179-189(2008)を参照)。
【0085】
「制御性T細胞」又は「T制御細胞」又は「Treg」は、他のT細胞の応答を抑制可能な特化したCD4+T細胞の種類を意味する。Tregは、IL-2受容体のαサブユニット(CD25)と転写因子フォークヘッドボックスP3(FOXP3)を発現し、抗原(腫瘍で発現されるような抗原を含む)に対する末梢性自己寛容の誘導と維持において重要な役割を果たすことを特徴とする。Tregは、その機能と発達及びその抑制的特徴の誘導を実現するために、IL-2を必要とする。
【0086】
「エフェクター細胞」とは、IL-2の細胞毒性効果を仲介するリンパ球群である。エフェクター細胞は、CD8+細胞毒性T細胞などのエフェクターT細胞、NK細胞、リンホカインにより活性化されたキラー(LAK)細胞とマクロファージ細胞/単核細胞を含む。
【0087】
「保存的修飾」は、アミノ酸及びヌクレオチド配列に適用される。特定のヌクレオチド配列に対して、保存的変性は、同様又は基本的に同様のアミノ酸配列をコードするような核酸、又はヌクレオチドがアミノ酸配列をコードしない場合に、基本的に同様のヌクレオチド配列を指す。アミノ酸配列に対して、「保存的修飾」とは、タンパク質の生物学的活性を変更せずに頻繁に変更することができるように、類似する特徴(例えば、電荷、側鎖の大きさ、疎水性/親水性、主鎖の配座や剛性など)を有する他のアミノ酸でタンパク質におけるアミノ酸を置換することを指す。当業者であれば、一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換が基本的に生物学的活性を変えないことが分かる(例えば、Watson et al.(1987)Molecular Biology of the Gene、The Benjamin/Cummings Pub.Co.、P224、(第4版)を参照)。
【0088】
「PEG化」とは、少なくとも1つのPEG分子を別の分子(例えば、治療用タンパク質)に連結することを指す。例えば、Adagen(アデノシンデアミナーゼのPEG化製剤)は、重症複合型免疫不全症の治療に承認された。ポリエチレングリコールの連結によりタンパク質分解作用を防止可能なことが示されている(例えば、Sada et al.、(1991)J.Fermentation Bioengineering 71:137-139を参照)。最も一般的な形態において、PEGは、一端がヒドロキシ基に連結される直鎖又は分岐鎖のポリエーテルであり、且つHO-(CH2CH2O)n-CH2CH2-OHという通常の構造を有する。PEGを分子(ポリペプチド、多糖、ポリヌクレオチド及び小さな有機分子)と複合するために、末端に官能基を有する幾つか又は2つのPEGの誘導体を調製することでPEGを活性化することができる。タンパク質のPEG抱合の一般的な方法は、リシン及びN末端アミノ酸基との反応に適する官能基によってPEGを活性化することである。特に、抱合に関与する一般的な反応基は、リシンのα又はεアミノ基である。ペグ化連結基とタンパク質の反応により、PEG部分が、主にタンパク質のN-末端のαアミノ基、リシン残基側鎖上のεアミノ基、又はヒスチジン残基側鎖上のイミダゾリル基という部位で連結されることを引き起こすことができる。殆どの組換えタンパク質は、単一のα及び多くのεアミノ基及びイミダゾリル基を有するため、連結基の化学的特性に基づき、多くの位置異性体を産生することができる。
【0089】
「投与」、「与える」及び「処理」は動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官や生物流体に適用される場合に、外因性薬剤、治療剤、診断薬又は組成物の、動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官や生物流体との接触を意味する。「投与」、「与える」及び「処理」は例えば、治療、薬物代謝動態、診断、研究と実験方法を意味してもよい。細胞の処理は、試薬と細胞との接触、及び試薬と流体との接触を含み、ここで、上記流体は細胞と接触する。「投与」、「与える」及び「処理」はまた、試薬、診断、結合組成物により、又は別種の細胞を通じて、体外及びインビトロで例えば細胞を処理することを意味する。「投与」、「処理」はヒト、獣医学又は研究対象に適用される場合に、治療的処理、予防又は予防的措置、研究と診断的応用を意味する。
【0090】
「治療」は、対象に内用又は外用の治療剤、例えば、本開示の何れか1つのIL-2変異体及びその誘導体又は上記変異体若しくは誘導体を含む組成物を投与することを意味し、上記対象は、1つ又は複数の疾患症状を患っており、患っている恐れがあり、又は患いやすいものであり、上記治療剤は、これらの症状に対して治療作用を有することが知られている。通常、このような症状の退行を誘導することによるにせよ、臨床的に測定不可能な何れかの程度まで進行しないようにこのような症状を阻害することによるにせよ、治療される対象又は集団に、1種又は複数種の疾患症状を効果的に緩和する量で治療剤を投与する。
【0091】
「有効量」は、医学障害の症状又は病症を改善又は予防するために十分な量を含む。有効量は、更に、診断の許容又は促進に十分な量を指す。特定の対象又は獣医学的対象に使用される有効量は、例えば、治療すべき病状、対象の全体的健康状態、投与の方法や経路と用量、及び副作用の重症度といった要因によって変化することができる。有効量は、顕著な副作用又は毒性作用を回避する最大用量又は投与計画であってもよい。
【0092】
「緩衝液」は、その酸-塩基共役成分の作用によりpHの変化に耐える緩衝液を指す。pHを適当な範囲に制御する緩衝液の例は、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン塩、シュウ酸塩、乳酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グリシルグリシン及び他の有機酸緩衝液を含む。
【0093】
「ヒスチジン塩緩衝液」は、ヒスチジンイオンを含む緩衝液である。ヒスチジン塩緩衝液の実例は、ヒスチジン-塩酸塩、ヒスチジン-酢酸塩、ヒスチジン-リン酸塩、ヒスチジン-硫酸塩などの緩衝液を含むが、これらに限定されない。好ましくはヒスチジン-酢酸塩緩衝液又はヒスチジン-塩酸緩衝液であり、ヒスチジン-酢酸塩緩衝液はヒスチジンと酢酸で調製してなり、ヒスチジン-塩酸緩衝液はヒスチジンと塩酸で調製してなる。
【0094】
「クエン酸塩緩衝液」は、クエン酸イオンを含む緩衝液である。クエン酸塩緩衝液の実例は、クエン酸-クエン酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸カリウム、クエン酸-クエン酸カルシウム、クエン酸-クエン酸マグネシウムなどを含む。好ましくは、クエン酸塩緩衝液は、クエン酸-クエン酸ナトリウムである。
【0095】
「コハク酸塩緩衝液」は、コハク酸イオンを含む緩衝液である。コハク酸塩緩衝液の実例は、コハク酸-コハク酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸カリウム、コハク酸-コハク酸カルシウム塩などを含む。好ましくは、コハク酸塩緩衝液は、コハク酸-コハク酸ナトリウムである。
【0096】
「リン酸塩緩衝液」は、リン酸イオンを含む緩衝液であり、リン酸塩緩衝液は、当業者に知られている、本開示の系に適用されるリン酸塩緩衝液から選ばれる何れか1つであればよく、リン酸塩緩衝成分は、1種又は複数種のリン酸塩緩衝液を含むことが好ましく、例えば、一塩基リン酸塩、二塩基リン酸塩などの混合である。特に有用なリン酸塩緩衝液は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のリン酸塩から選ばれる。リン酸塩緩衝液の実例は、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム-クエン酸、Tris-HCl緩衝液、リン酸ナトリウム-リン酸溶液、リン酸水素二ナトリウム-リン酸溶液、リン酸ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム溶液などを含む。好ましくは、リン酸塩緩衝液は、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウムである。必要に応じて、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムは、無水又は水和物であってもよく、例えば、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、リン酸水素二ナトリウム七水和物、リン酸水素二ナトリウム十二水和物などである。
【0097】
「酢酸塩緩衝液」は、酢酸イオンを含む緩衝液である。酢酸塩緩衝液の実例は、酢酸-酢酸ナトリウム、酢酸-ヒスチジン塩、酢酸-酢酸カリウム、酢酸-酢酸カルシウム、酢酸-酢酸マグネシウムなどを含む。好ましくは、酢酸塩緩衝液は、酢酸-酢酸ナトリウムである。
【0098】
「医薬組成物」は、1種又は複数種の本明細書に記載される化合物又はその生理学的/薬学的に許容される塩又はプロドラッグと、生理学的/薬学的に許容されるベクターと賦形剤などの他の化学成分とを含む混合物を示す。医薬組成物は、抗体の活性成分の安定性を保持し、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与して更に生物活性を発揮するためのものである。
【0099】
本明細書において、「医薬組成物」と「製剤」は互いに排他的ではない。
【0100】
「凍結乾燥製剤」は、液体若しくは溶液形態の医薬組成物又は液体若しくは溶液製剤に対して真空凍結乾燥工程を行った後に得られた製剤又は医薬組成物を示す。
【0101】
本明細書に使用される「約」、「ほぼ」という用語は、数値が当業者により測定された具体値の許容可能な誤差範囲にあることを意味し、上記数値部分が如何に計測又は測定するか(即ち、計測システムの限度)に依存する。例えば、「約」は、1以内又は1を超えた標準偏差を意味してもよい。或いは、「約」又は「基本的に含む」は、多くとも20%の範囲、例えば、1%~15%の間、1%~10%の間、1%~5%の間、0.5%~5%の間、0.5%~1%の間に変化することを意味してもよく、本開示では、数字又は数値範囲の前に「約」という用語がある何れの場合も、所定の数の実施形態を含む。特に説明のない限り、具体値が本願及び特許請求の範囲に現れる場合、「約」又は「基本的に含む」の意味は、当該具体値の許容可能な誤差範囲内にあると仮定すべきである。
【0102】
本開示に記載される凍結乾燥製剤は、安定的な効果を達成することができ、即ち、その中のタンパク質が貯蔵後にその物理的安定性、化学的安定性及び/又は生物学的活性を基本的に保持している医薬組成物である。貯蔵期間は、一般的に医薬組成物の所定の保存期間によって選択される。現在、タンパク質の安定性を測定する分析技術は、RP-HPLC、SE-HPLC、IE-HPLCを含めて多種あり、選択された温度で、選択された期間貯蔵された後の安定性を測定することができる。安定性の典型的な許容可能な基準としては、RP-HPLC、SE-HPLC又はIE-HPLCにより、凝集又は分解したタンパク質(例えば、IL-2変異体又は誘導体)が通常、約10%を超えず、例えば、約5%を超えないことが測定される。視覚的分析により、製剤は、淡黄色でほぼ無色透明な液体、又は無色、又は清澄からやや乳白色である。上記製剤の濃度、pH及び重量モル浸透圧濃度は、変化が±10%を超えない。通常、約10%を超えず、例えば、約5%を超えない減少が見られる。色及び/又は透明度を目視で検査した後、又はUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び動的光散乱(DLS)により測定した後、タンパク質が顕著な凝集の増加、沈殿及び/又は変性を示さないと、上記タンパク質は、医薬製剤において「その物理的安定性を保持している」とする。タンパク質の配座の変化は、蛍光分光法(タンパク質の三次構造を確定するもの)により、及びFTIR分光法(タンパク質の二次構造を確定するもの)により評価されてもよい。
【0103】
IL-2変異体又は誘導体が顕著な化学的変化を示さないと、上記IL-2変異体又は誘導体は、医薬製剤において「その化学的安定性を保持している」とする。化学的に形態が変化されたタンパク質を検出・定量することにより、化学的安定性を評価することができる。タンパク質の化学構造を常に変化させる分解プロセスは、加水分解又は切断(サイズ排除クロマトグラフィー及びSDS-PAGEなどの方法により評価される)、酸化(質量分析法又はMALDI/TOF/MSと組み合わせるペプチドマッピングなどの方法により評価される)、脱アミド化(イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン酸の測定などの方法により評価される)及び異性化(イソアスパラギン酸の含有量の測定、ペプチドマッピングなどにより評価される)を含む。
【0104】
所定の期間におけるIL-2変異体又は誘導体の生物活性が医薬製剤の調製時に示された生物活性の所定範囲にあると、上記IL-2変異体又は誘導体は、医薬製剤において「その生物活性を保持している」とする。IL-2の生物活性は、例えば、細胞の活性化又は下流シグナル伝達経路試験によって決定することができる。
【0105】
本開示において、「IL-2変異体」と「IL-2類似体」は共通している。
【0106】
本開示に記載されるPEGの「相対分子量」は、MALDI-TOFにより検出される相対分子質量を指し、PEGの繰り返し単位の回数は、PEGの相対分子量によって逆算して得ることができる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例と合わせて更に説明するが、これらの実施例は、本開示の請求範囲を限定するためではない。
【0108】
実施例又は試験例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、一般的に通常の条件、或いは原料又は商品メーカーにより推奨された条件に従う。Sambrookら、分子クローニング、実験室マニュアル、コールドスプリングハーバー研究所、及び現代分子生物学方法、Ausubelら作成、Greene出版協会、Wiley Interscience、NYを参照し、或いは原料又は商品メーカーにより推奨された条件に従う。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0109】
実施例1. IL-2の原薬としての安定性研究
IL-2は、下記の構造情報(式I)を持つポリエチレングリコール化組換えヒトインターロイキン-2類似体である。
【化2】
(式I)
(注記:太字の部位は、野生型と比べて変異した部位、即ち、N26Q、N29S、N88R、C125Aであり、連結されるCys58-Cys105は、ジスルフィド結合の位置である。)
そのうち、上記式Iで示される構造は、配列番号2で示されるIL-2変異体と、分子量が約20 KDのPEG分子とから調製して得られた。
式Iの相対分子量:約36 KD。
外観:無色又は淡黄色で透明な液体。
pH:4.5~6.0。
【0110】
加速試験で考察した結果、加速条件下で1ヶ月後に、製品の品質に顕著な変化がないことが示された。3バッチの原薬原液(原液の所在する溶液系は、後の実施例でスクリーングして得られた溶液系と同様である)は、加速(5℃±3℃)条件下で1ヶ月間放置したところ、各検出指標には顕著な変化がなく、何れの結果も品質基準範囲内にある。上記IL-2原液の溶液系は、4±0.5 g/Lの原薬とpH 5.30±0.05の10 mMのヒスチジン-塩酸緩衝液を含む。
【0111】
本開示は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(還元型)により検出したところ、分子量が35.5±3.6 KDである。
【0112】
原薬における微生物と細菌のエンドトキシン濃度は、製剤完成品の品質に影響を及ぼすので、原薬における微生物と細菌のエンドトキシン濃度を、何れも中国薬局方2015年版四部通則の規定に合うように制御する必要がある。
【0113】
実施例2. IL-2製剤における緩衝系とpHのスクリーニング
好適な緩衝系をスクリーニングするために、IL-2変異体(式Iで示される)の濃度として2 mg/mL、賦形剤として5%のマンニトール、安定剤として0.05 mg/mLのポリソルベート80のままにするという前提で、緩衝系が10 mMのクエン酸-水酸化ナトリウム(pH 4.0~pH 5.5)、10 mMのコハク酸-水酸化ナトリウム(pH 5.0)、10 mMのヒスチジン-塩酸(pH 5.5とpH 6.0)、10 mMのリン酸塩(pH 6.0~pH 8.0)である溶液をそれぞれ調製した。その後、上記緩衝系の異なる製剤を40℃で14 d放置し、そして0 d、7 d、14 dに関連指標を考察した。各緩衝系試料の考察結果は、表2に示されている。
【0114】
【表2】
表2の考察結果から分かるように、SEC-HPLCとRP-HPLCのデータにより、ヒスチジン-塩酸緩衝系(pH 5.5とpH 6.0)は比較的安定的で、コハク酸塩、クエン酸塩とリン酸塩系はそれぞれ異なる程度の分解を示すことが示され、最も好ましくはヒスチジン-塩酸5.5系である。従って、ヒスチジン-塩酸緩衝系を選択して使用した。
【0115】
実施例3. IL-2製剤における凍結乾燥保護剤とpH値のスクリーニング
実施例2から分かるように、ヒスチジン-塩酸緩衝系は安定性が良く、且つpH 5.5がpH 6.0よりも優れている。低いpHがタンパク質の安定に有利であると推測されるので、pH 5.5とpH 6.0を基にしてヒスチジンpH 5.0を増加した。リン酸塩系においては、溶液状態で、pH 6.0とpH 7.0のタンパク質安定性が同系の他のpH群より良いため、本実施例は、凍結乾燥系の中で、この2つのpH系のタンパク質安定性への影響を考察した。
【0116】
IL-2変異体(式Iで示される)の濃度として2 mg/mL、安定剤として0.05 mg/mLのポリソルベート80のままにするという前提で、それぞれ5%のマンニトール、1%のマンニトール+7%のスクロース、1%のマンニトール+7%のトレハロースという組み合わせ方法を賦形剤として、IL-2タンパク質への保護作用を考察した。上記処方の異なる製剤を40℃で30 d放置し、そして0 d、7 d、14 d、30 dに関連指標を考察し、考察結果を表3に示している。
【0117】
【0118】
上記考察結果から分かるように、40℃ 0 d、7 d、14 d、30 d実験では、リン酸塩pH 7.0系はRPでもSEでも悪く、リン酸塩pH 6.0系は前期溶液において安定性がヒスチジン-塩酸系よりも弱くて緩衝限界にあることを発見したので、リン酸塩系を除外したが、ヒスチジン-塩酸pH 5.5の条件では、7%のスクロース+1%のマンニトール及び7%のトレハロース+1%のマンニトールは30日間のSE結果が何れも5%のマンニトールよりも優れ、ヒスチジン-塩酸pH 6.0系は30日間のRPとSE値がヒスチジン-塩酸pH 5.5とpH 5.0系よりも低くて安定性が悪いので、例えば、5.3を目標pHとするように、pHの好適な範囲を5.0~5.5と決定した。
【0119】
実施例4. IL-2製剤における賦形剤の比率とポリソルベート80の濃度のスクリーニング
賦形剤の比率によっては、製品の外観だけではなく、タンパク質の安定性にも影響を与える。最初に賦形剤としてマンニトールとトレハロースを選択して使用し、賦形剤の用量を考察した。具体的に、緩衝系としてpH 5.3 10 mMのヒスチジン-塩酸、IL-2変異体(式Iで示される)の濃度として2 mg/mLのままにするという前提で、1%のマンニトール+7%のトレハロース及び3%のマンニトール+4%のトレハロース試料をそれぞれ調製すると共に、3%のマンニトール+4%のトレハロースの条件下で異なる濃度のポリソルベート80のタンパク質安定性への影響を考察した。その後、上記処方の異なる製剤を40℃で30 d放置し、そして0 d、14 d、30 dに関連指標を考察した。IL-2変異体(式Iで示される)の考察結果は、表4に示されている。
【0120】
【0121】
試験結果から分かるように、高温40℃で30 d放置した後、ポリソルベートが0.05 mg/mLである場合に、1%のマンニトール+7%のトレハロース及び3%のマンニトール+4%のトレハロースという処方は、安定性に差がほぼなく、3%のマンニトール+4%のトレハロースでは、ポリソルベート80が0.05 mg/mLと0.1 mg/mLである場合に、安定性に有意差がないが、安全性を考慮すると、ポリソルベート80の用量は少ない方が良いので、ポリソルベート80の濃度として0.05 mg/mLを選択した。試料の安定性と外観を総合的に考えた上で、最終的にIL-2変異体(式Iで示される)製剤中の賦形剤組成物の用量を3%のマンニトール+4%のトレハロース、即ち、マンニトールの濃度が30 mg/mL、トレハロースの濃度が40 mg/mL、ポリソルベートが0.05 mg/mLであるとした。
【0122】
本開示において、トレハロースの分子式はC12H22O11・2H2O、ヒスチジンの分子式はC6H9N3O2、ヒスチジン-塩酸の分子式はC6H9N3O2.HCl.H2Oであり、注射用水は凍結乾燥工程で除去され、製品表示容量が1 mLである場合、実際生産時の目標容量は1.15 mLと設定してもよい。
【0123】
明らかに理解されるように、図面と実例によって上記発明を詳しく説明したが、説明と実例は、本開示の範囲を制限するものと解釈すべきではない。本明細書に引用された全ての特許と科学文献の開示内容は、引用により完全且つ明らかに組み込まれている。
【配列表】
【国際調査報告】