(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】抗CD73抗体、抗体薬物複合体、及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20231115BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231115BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231115BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231115BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231115BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231115BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 T
A61K39/395 L
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/02
C12N15/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528487
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2021131791
(87)【国際公開番号】W WO2022105881
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/130409
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523173379
【氏名又は名称】ブリス バイオファーマシューティカル(ハンゾウ)カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シァ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】フェン,クイ
(72)【発明者】
【氏名】グ,リシァ
(72)【発明者】
【氏名】リ,チェン
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,ユホン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ジピン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA14
4C085AA27
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
単離された抗ヒトCD73抗体は2つの重鎖を含み、各重鎖はヒンジ領域を含み、当該ヒンジ領域には細胞毒性薬の部位特異的結合を可能にするアミノ酸配列を含む。各重鎖はヒンジ領域の上流に位置し、それに連結されたヒトCH1ドメインを含む。IMGTナンバリングスキームによると、当該CH1ドメインの第142位にシステインが含まれる。更に、抗体と細胞傷害性薬物が結合したADCを提供する。また、抗体又はADCを含む医薬組成物、及び医薬組成物を使用してがんを治療する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む単離された抗体又はその抗原結合部分であって、
各重鎖は、
(a1)配列番号25~37に示されるいずれか1つのアミノ酸配列を含有する重鎖ヒンジ領域;及び
(a2)それぞれ配列番号5、配列番号6、及び配列番号7に示されるアミノ酸配列を含有するCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む重鎖可変ドメインを含み、
各軽鎖は、
(a3)それぞれ配列番号8、配列番号9、及び配列番号10に示されるアミノ酸配列を含有するCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む軽鎖可変ドメインを含む、
単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む単離された抗体又はその抗原結合部分であって、
各重鎖は、
(b1)配列番号25~26に示されるいずれか1つのアミノ酸配列を含有する重鎖ヒンジ領域;及び
(b2)それぞれ配列番号11、配列番号12、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列を含有するCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む重鎖可変ドメインを含み、
各軽鎖は、
(b3)それぞれ配列番号14、配列番号15、及び配列番号16示されるアミノ酸配列を含有するCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む軽鎖可変ドメインを含む、
単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
前記抗体がヒトCD73タンパク質に特異的に結合する、請求項1又は2に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項4】
前記各重鎖は、ヒンジ領域の上流に位置し、それに連結されたヒトCH1ドメインをさらに含み、IMGTナンバリングスキームによると、前記CH1ドメインの第142位にシステインが含まれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項5】
2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む単離された抗体又はその抗原結合部分であって、
各重鎖は、
(a)アミノ酸配列:-(X
1)-C-(X
2)-CPPCP-を含み、ここで、X
1は、0~7個のアミノ酸残基を含むポリペプチドセグメントであり、各アミノ酸残基は独立してシステイン残基ではない任意のアミノ残基から選択され、X
2は、2~7個のアミノ酸残基を有するポリペプチドセグメントであり、各アミノ酸残基は独立してシステイン残基ではない任意のアミノ残基から選択されるヒンジ領域;
(b)ヒンジ領域の上流に位置し、それに連結され、IMGTナンバリングスキームによると、第142位にシステインが含まれるヒトCH1ドメインを含み、
ここで、前記抗体はヒトCD73タンパク質に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合部分。
【請求項6】
前記ヒンジ領域に含まれるアミノ酸配列が、配列番号25~37からなる群より選択される、請求項5に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項7】
重鎖ヒンジ領域に含まれるアミノ酸配列が配列番号25である、請求項5~6のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項8】
重鎖ヒンジ領域に含まれるアミノ酸配列が配列番号26である、請求項5~6のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項9】
更に2つのκ軽鎖含み、各軽鎖は1つの重鎖と対になっている、請求項5~8のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項10】
前記抗体のCH1ドメインが、天然ヒトIgG2、IgG3、又はIgG4サブクラス抗体のCH1ドメインと同じ配列を有する、請求項4~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項11】
前記抗体のCH1ドメインが、天然ヒトIgG1抗体のCH1ドメインの配列を有し、S142C突然変異を携帯している、請求項4~9のいずれか一項記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項12】
前記各重鎖は、天然ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4サブクラス抗体のFcドメインを含み、前記Fcドメインは前記ヒンジ領域の下流に位置し、それに連結され、ここで、前記Fcドメインに任意選択で1つ又は複数の置換が含まれる、請求項4~9のいずれか一項記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項13】
各重鎖は、可変ドメインを含み、前記可変ドメインは配列番号1又は配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、ここで、各軽鎖は、可変ドメインを含み、前記可変ドメインは配列番号2又は配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項14】
各重鎖は、配列番号17、配列番号19、及び配列番号:21のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を含み;ここで、各重鎖は、配列番号18、配列番号20及び配列番号22のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項15】
(a)前記各重鎖は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、前記各軽鎖は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含み、或いは
(b)前記各重鎖は配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、前記各軽鎖は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、或いは
(c)前記各重鎖は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、前記各軽鎖は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体が、化学リンカーによって細胞毒性薬にコンジュゲートされているものを含む、抗体薬物複合体(ADC)又はその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
前記細胞毒性薬が、エリブリン、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、アウリスタチンE、アウリスタチンF、メイタンシンDM1及びDM4、メイタンシノール、サンドラマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、ピロロベンゾジアゼピン二量体、アントラサイクリン、カリケアマイシン、ドラスタチン10、デュオカルマイシン、ドキソルビシン、タイランスタチンA、ウンシアラマイシン、アマニチン、リシン、ジフテリア毒素、
131I、インターロイキン、腫瘍壊死因子、ケモカイン、イリノテカン(SN38)、エキソテカン及びナノ粒子からなる群より選択される、請求項16に記載のADC又はその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
前記化学リンカーが、6-マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロピオニル(MP)、バリン-シトルリン(Val-Cit)、アラニン-フェニルアラニン(ala-phe)、p-アミノベンゾキシルオキシカルボニル(p-aminobenzyloxycarbonyl、PAB)、6-マレイミドカプロイル-Val-Cit-p-アミノベンゾキシルオキシカルボニル(MC-Val-Cit-PAB)、Mal-PEG
n-Val-Cit-PAB(n=1~20)、Mal-アミド-PEG
n-Val-Cit-PAB(n=1~20)、MC-Gly-Gly-Phe-Gly、Phe-Lys(Fmoc)-PAB、Aloc-D-Ala-Phe-Lys(Aloc)-PAB-PNP、Boc-Phe-(Alloc)Lys-PAB-PNP、及びパーフルオロフェニル3-(ピリジン-2-イルジスルファニル)プロパノエートからなる群より選択される、請求項16又は17のいずれか1項に記載のADC又はその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
前記細胞毒性薬がMMAEである、請求項15又は16に記載のADC又はその薬学的に許容される塩。
【請求項20】
請求項1~15のいずれか1項に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分、或いは請求項16~19のいずれか1項に記載のADC又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項21】
有効量の請求項20に記載の医薬組成物を投与することを含む、ヒト被験者のがんを治療する方法。
【請求項22】
前記がんがヒトCD73タンパク質の過剰発現に関連している、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記がんが、膀胱がん、乳がん、子宮/子宮頸がん、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、食道がん、胃腸がん、膵臓がん、直腸結腸がん、結腸がん、腎臓がん、頭頸部がん、肺がん、胃がん、生殖細胞がん、骨がん、肝臓がん、甲状腺がん、皮膚がん、中枢神経系腫瘍、神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、白血病、骨髄腫、肉腫、又はウイルス関連のがんからなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照:
本出願は、2020年11月20日に提出された国際出願番号PCT/CN2020/130409の優先権を主張し、その開示内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔背景技術〕
CD73はエクト-5’-ヌクレオチダーゼ(ecto-5’-NT)であり、免疫細胞、間質細胞、上皮と内皮細胞、がん細胞、及びエクソソーム群によって発現されるグリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型受容体である。このような酵素は、アデノシン一リン酸(AMP)からアデノシンへの変換を触媒する。CD73は、内皮の完全性を維持し[1]、制御性B及びTリンパ球の抑制機能を媒介する役割を果たしている[2]と考えられている。
【0003】
健康な組織の生物学における役割に加えて、CD73とアデノシンはそれぞれ腫瘍生物学に影響を与える。細胞外アデノシンは腫瘍に蓄積し、細胞傷害性T細胞とナチュラルキラー細胞を阻害する[3]。A2ARは、エフェクターT細胞の炎症時にアップレギュレートされるアデノシン受容体の1つであり、その活性化は、エフェクターT細胞の増殖、細胞傷害活性、及びサイトカインの産生を阻害する[例えば、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターフェロンγ(IFN-γ)]、インターロイキン-2(IL-2)][4]。しかし、制御性T(Treg)細胞でのA2AR活性化は、Tregの拡大と免疫阻害活性を促進し、腫瘍は細胞外アデノシンを利用してがん細胞を保護する。報告は、アデノシン受容体を欠損したノックアウトマウスは、正常マウスよりも容易に腫瘍を拒絶し、CD73を欠損したノックアウトマウスは、正常マウスと比較して抗腫瘍免疫が増加し、発がん性が低下したことを示し[5-7]、これは、更に、腫瘍がCD73を使用してアデノシンを生成して、抗腫瘍免疫を阻害することを支持している。CD73発現の上昇は、ヒトのがんで頻繁に発生し、肺、結腸直腸、乳房、卵巣、腎臓、膠芽腫の腫瘍で観察される予後不良と関連していることがよくある。臨床的に、乳がん、卵巣がん及び結腸直腸がん(CRC)を含むいくつかのがんタイプの腫瘍組織におけるCD73レベルの上昇は、患者の生存率の低下に関連しており[8]、これは腫瘍の進行におけるCD73の重要な役割を強調している。
【0004】
近年、CD73に対する抗体と低分子阻害剤は、抗腫瘍免疫を回復するための魅力的な標的として、前臨床試験と臨床試験に進んでいる[9]。多くの前臨床研究において、CD73(及び/又はA2AR)を阻害すると抗腫瘍免疫を回復させることができ、併用はより優れた有効性を示している。予備的な安全性データでは、BMS-986179(抗CD73ヒト化モノクローナル抗体)、及びニボルマブ(nivolumab)(抗PD-1療法)の併用は、患者の耐性が良好である(NCT02754141)ことが報告された[10]。将来の消化管がんの研究は、アデノシンにより媒介される免疫療法に対する耐性が診断時に存在するか、又は治療に伴って進展するかを判断することに焦点を当て、これには、大きなメリットがある。BMS-986179とニボルマブの併用の早期結果は有望であり、膵臓がんと前立腺がんの1人又は複数の患者における臨床的利益(部分的に緩和)が報告され[10]、これらはどちらも免疫原性が低い腫瘍である。前臨床研究では、CD73/アデノシン療法(例えば、A2ARの欠失)が、免疫原性の弱い肉腫に対してもCD8+T細胞の抗腫瘍活性を解放できることが示されている[11]。KRAS(G12C)の選択的阻害剤であるAMG510(NCT03600883)は、前臨床モデルでICI療法の感受性を高めるなど、有望な抗腫瘍効果を最近示している[12]。それとCD73/アデノシン受容体遮断との組み合わせは、有望な将来のアプローチになる可能性がある。
【0005】
ADCは、細胞傷害剤と結合したモノクローナル抗体である。それらは、腫瘍細胞表面タンパク質の標的特異性を利用し、従来の化学療法では達成できなかった特異性と効力で毒性ペイロードを腫瘍に効率的に送達する。CD73をターゲットとするADCは市場承認を受けていない。Yuらは、最初の抗CD73-ADC(Hu001-MMAE、DAR4)を報告し、CD73を高発現する腫瘍細胞に対するその強力な細胞毒性を実証した[13]。CD73-ADCは、また、非小細胞肺がん(NSCLC)とRAS突然変異を有する神経膠瘍を含む複数の体内腫瘍モデルで高い効力を示している。しかし、ヒト以外の霊長類における予備的な毒性/薬物動態研究では、これらのDAR4 ADCsは、可能な限り最高の耐用量レベルに近い用量でも半減期が短いことが示された。
【0006】
改善されたPKプロファイルとより優れた腫瘍抑制活性を備えた抗CD73 ADCが必要である。
【0007】
〔発明の概要〕
一つの方面で、本発明は単離された抗体又はその抗原結合部分を提供する。幾つか実施の態様において、前記抗体は2つの重鎖と2つの軽鎖を含み、各重鎖は、(a1)配列番号25~37に示されるいずれか1つのアミノ酸配列を含有する重鎖ヒンジ領域;及び(a2)それぞれ配列番号5、配列番号6、及び配列番号7に示されるアミノ酸配列を含有するCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む重鎖可変ドメインを含み;各軽鎖は、(a3)それぞれ配列番号8、配列番号9、及び配列番号10に示されるアミノ酸配列を含有するCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む軽鎖可変ドメインを含む。幾つか実施の態様において、前記抗体は2つの重鎖と2つの軽鎖を含み、各重鎖は、(b1)配列番号25~26に示されるいずれか1つのアミノ酸配列を含有する重鎖ヒンジ領域;(b2)それぞれ配列番号11、配列番号12、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列を含有するCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む重鎖可変ドメインを含み、各軽鎖は、(b3)それぞれ配列番号14、配列番号15、及び配列番号16に示されるアミノ酸配列を含有するCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む軽鎖可変ドメインを含む。前記抗体はヒトCD73タンパク質に特異的に結合することができる。幾つかの実施の態様において、各重鎖は、ヒンジ領域の上流に位置し、それに連結されたヒトCH1ドメインをさらに含み、IMGTナンバリングスキームによると、前記CH1ドメインの第142位にシステインを含む。
【0008】
別の実施の態様において、前記抗体は2つの重鎖を含み、各重鎖は、(a)アミノ酸配列:-(X1)-C-(X2)-CPPCP-を含み、ここで、X1は、0~7個のアミノ酸残基を有するポリペプチドセグメントであり、各アミノ酸残基は独立してシステイン残基ではない任意のアミノ残基から選択され、X2は、2~7個のアミノ酸残基を有するポリペプチドセグメントであり、各アミノ酸残基は独立してシステイン残基ではない任意のアミノ残基から選択されるヒンジ領域;(b)IMGTナンバリングスキームによると、第142位にシステインが含まれる、前記ヒンジ領域の上流に位置し、それに連結されたヒトCH1ドメインを含み、ここで、前記抗体はヒトCD73タンパク質に特異的に結合する。ヒンジ領域に含まれるアミノ酸配列は、例えば、配列番号25又は配列番号26等、配列番号25~37からなる群より選択されてもよい。前記抗体は、2つのκ軽鎖を含んでもよく、各軽鎖は1つの重鎖と対になっている。
【0009】
幾つかの実施の態様において、前記抗体のCH1ドメインは、天然ヒトIgG2、IgG3、又はIgG4サブクラス抗体のCH1ドメインと同じ配列を有してもよい。幾つかの実施の態様において、前記抗体のCH1ドメインは天然ヒトIgG1抗体のCH1ドメインの配列を有し、S142C突然変異を有する。幾つかの実施の態様において、各重鎖は、天然ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4サブクラス抗体のFcドメインを更に含み、それはヒンジ領域の下流に位置し、それに連結され、ここで、Fcドメインに任意選択で1つ又は複数の置換が含まれ、例えば、LALA突然変異が含まれる。
【0010】
前記抗体の幾つかの実施の態様において、各重鎖は、配列番号1又は配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する可変ドメインを含み、ここで、各軽鎖は、配列番号2又は配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する可変ドメインを含む。
【0011】
前記抗体の幾つかの実施の態様において、各重鎖は、配列番号17、配列番号198、及び配列番号21に示されるいずれか1つのアミノ酸配列を含み、ここで、各前記重鎖は、配列番号18、配列番号20、及び配列番号22に示されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0012】
具体的な実施の態様において、各重鎖は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、各軽鎖は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
具体的な実施の態様において、各重鎖は配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、各軽鎖は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
具体的な実施の態様において、各重鎖は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、各軽鎖は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
もう一つの方面において、本発明は本発明に記載の抗体が、化学リンカーによって細胞毒性薬にコンジュゲートされているものを含む、抗体薬物複合体(ADC)又はその薬学的に許容される塩を提供する。前記細胞毒性薬は、エリブリン(eribulin)、モノメチルアウリスタチンE(monomethyl auristatin E、MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(monomethyl auristatin F、MMAF)、アウリスタチンE(auristatin E)、アウリスタチンF(auristatin F)、メイタンシンDM1(maytansine DM1)及びDM4、メイタンシノール(maytansinol)、サンドラマイシン(sandramycin)、ピロロベンゾジアゼピン(pyrrolobenzodiazepine)、ピロロベンゾジアゼピン二量体、アントラサイクリン(anthracyclines)、カリケアマイシン(calicheamicin)、ドラスタチン10(dolastatin 10)、デュオカルマイシン(duocarmycin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、タイランスタチンA(thailanstatin A)、ウンシアラマイシン(uncialamycin)、アマニチン(amanitins)、リシン(ricin)、ジフテリア毒素(diphtheria toxin)、131I、インターロイキン(interleukins)、腫瘍壊死因子、ケモカイン、イリノテカン(SN38)、エクサテカン(exatecan)及びナノ粒子からなる群より選択される。前記化学リンカーは、6-マレイミドカプロイル(6-maleimidocaproyl、MC)、マレイミドプロピオニル(maleimidopropionyl、MP)、バリン-シトルリン(Val-Cit)、アラニン-フェニルアラニン(ala-phe)、p-アミノベンゾキシルオキシカルボニル(p-aminobenzyloxycarbonyl、PAB)、6-マレイミドカプロイル-Val-Cit-p-アミノベンゾキシルオキシカルボニル(6-maleimidocaproyl-Val-Cit-p-aminobenzyloxycarbonyl、MC-Val-Cit-PAB)、Mal-PEGn-Val-Cit-PAB(n=1~20)、Mal-アミド-PEGn-Val-Cit-PAB(n=1~20)、MC-Gly-Gly-Phe-Gly、Phe-Lys(Fmoc)-PAB、Aloc-D-Ala-Phe-Lys(Aloc)-PAB-PNP、Boc-Phe-(Alloc)Lys-PAB-PNP、及びパーフルオロフェニル3-(ピリジン-2-イルジスルファニル)プロパノエート(perfluorophenyl 3-(pyridine-2-yldisulfanyl)propanoate)からなる群より選択される。幾つかの実施の態様において、ここで、前記細胞毒性薬はMMAEである。
【0016】
もう一つの方面において、本発明は本発明に記載の単離された抗体又はその抗原結合部分、或いは本発明に記載のADC又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。もう一つの方面において、本発明は有効量の本発明に記載の医薬組成物を投与することを含む、ヒト被験者のがんを治療する方法を提供する。前記がんは、膀胱がん、乳がん、子宮/子宮頸がん、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、食道がん、胃腸がん、膵臓がん、直腸結腸がん、結腸がん、腎臓がん、頭頸部がん、肺がん、胃がん、生殖細胞がん、骨がん、肝臓がん、甲状腺がん、皮膚がん、中枢神経系腫瘍、神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、白血病、骨髄腫、肉腫、またはウイルス関連のがんからなる群より選択される。
【0017】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕本発明で使用される抗体のアミノ酸ナンバリングスキームの概略図である。(a)ヒトIgG1(κ)のIMGTベースのアミノ酸ナンバリングスキーム。(b)突然変異体(IgG1ヒンジ領域に対する)のナンバリングスキーム。
【0018】
〔
図2〕本発明の実施形態による特定の抗体の生産及び物理化学的試験の結果である。還元性(R)及び非還元性(NR)抗体のSDS-PAGE分析:M35-1抗体(a)、M35-2抗体(b)及びM45-1抗体(c);HEK293細胞で産生された抗体の純度と収量(d)精製抗体:M35-1抗体(e)、M35-2抗体(f)及びM45-1抗体(g)のSEC-HPLC分析。
【0019】
〔
図3〕M35-1、M35-2、及びM45-1抗体で調製されたADCのHICスペクトルである。(a)M35-1-MMAE、(b)M35-2-MMAE及び(c)M45-1-MMAE。
【0020】
〔
図4〕抗CD73裸抗体及びそれに対応するADCとCD73の結合曲線である。(a)M35-1抗体及びM35-1 MMAE;(b)M35-2抗体及びM35-2-MMAE。
【0021】
〔
図5〕CD73発現がん細胞における抗CD73裸抗体とそれに対応するADCの内在化である。a:NCI-H1975細胞、b:NCI-H411細胞。
【0022】
〔
図6〕CD73発現がん細胞に対するM35-1-MMAE、M35-2-MMAE、M45-1-MMAEのCD73の細胞毒性曲線である。a:U87MG細胞、b:NCI-H1975細胞、c:NCI-N87細胞、d:NCI-H292細胞。
【0023】
〔
図7〕U87神経膠腫、NCI-N87胃がん及びNCI-H441 NSCLCを異種移植した無胸腺ヌードマウスにおけるM35-1-MMAE及びM35-2-MMAEの体内薬物効力である。
【0024】
〔発明を実施するための形態〕
本発明はCD73をターゲットとする抗体とADC、及び抗腫瘍能力におけるそれらの使用を提供する。
【0025】
一つの方面において、本発明は抗CD73抗体に基づく修飾された抗CD73抗体、及びこれらの修飾された抗CD73抗体に基づく2つの部位特異性コンジュゲート負荷を有するADCを提供し、即ち、各修飾された抗CD73抗体分子は、2つの細胞傷害性薬剤ペイロードとコンジュゲートされ、薬物対抗体比(「DAR」)は2である。以前に報告されたDAR4 ADCと比較して、本発明のDAR2 ADCは、より良好なPK分布を提供し、より良好な腫瘍組織浸透性及び潜在的により良好な腫瘍阻害活性を提供することができる。
【0026】
一つの方面において、本発明は2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む単離された抗体又はその抗原結合部分であって、
各重鎖は、
(a1)配列番号25~37に示されるいずれか1つのアミノ酸配列(例えば、配列番号25又は配列番号26)を含有する重鎖ヒンジ領域;及び
(a2)それぞれ配列番号5、配列番号6、及び配列番号7に示されるアミノ酸配列を含有するCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む重鎖可変ドメインを含み、
各軽鎖は、
(a3)それぞれ配列番号8、配列番号9、及び配列番号10に示されるアミノ酸配列を含有するCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む軽鎖可変ドメインを含む、
単離された抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0027】
もう一つの方面において、本発明は2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む単離された抗体又はその抗原結合部分であって、
各重鎖は、
(a1)配列番号25~26に示されるいずれか1つのアミノ酸配列(例えば、配列番号25又は配列番号26)を含有する重鎖ヒンジ領域;及び
(a2)それぞれ配列番号11、配列番号12、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列を含有するCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む重鎖可変ドメインを含み、
各軽鎖は、
(a3)それぞれ配列番号14、配列番号15、及び配列番号16示されるアミノ酸配列を含有するCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む軽鎖可変ドメインを含む、
単離された抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0028】
前記抗体は、ヒトCD73タンパク質に特異的に結合できる。いくつかの実施の形態において、重鎖ヒンジ領域に含まれるアミノ酸配列は配列番号25である。いくつかの実施の形態において、重鎖ヒンジ領域に含まれるアミノ酸配列は配列番号26である。
【0029】
この形式の重鎖を含む抗体は、好ましくは、CH1ドメインのC142(又は、第142位近くのシステインであり、下記でさらに説明されるIMGTナンバリングスキームによる)と軽鎖の最後のシステイン残基との間でH-L鎖間ジスルフィド結合を形成する。天然CPPCP配列の上流のヒンジ領域のシステイン残基は、3番目のH-H鎖間ジスルフィド結合を形成する。CH1ドメインのアミノ酸第142位又はその近くのシステインは、IgG1サブタイプの単一アミノ酸の突然変異又は挿入によって導入されるか、又はIgG2、IgG3、又はIgG4サブタイプからのCH1ドメインの天然のシステインであってもよい。IgG1の天然H-Lジスルフィド結合(IgG1抗体重鎖のヒンジ領域のシステインと対になった軽鎖の末端の間に位置する)と比較して、この形式のH-Lジスルフィド結合はより安定しており、抗体への薬物結合中に還元状態で完全な状態をつことができる。これにより、軽鎖薬物複合体を含むADCを得る可能性を大幅に低下させる。
【0030】
免疫グロブリンスーパーファミリーのIMGTナンバリングスキームは、本明細書では、ナンバリングスキーム(
図1のaの概略図)を簡略化するために使用され、ここで、VH又はVL領域はそれぞれアミノ酸残基1~128を含む。従って、CH1ドメインのアミノ酸の番号はaa 129~226であり;κドメインはaa 129~235であり;ヒンジ領域はaa 227~241(IgG1による)であり;CH2はaa 242~351であり、CH3はaa 352~456である(
図1のaを参照)。このナンバリングスキームに基づいて、野生型IgG1(κ)におけるH-L鎖間ジスルフィド結合は、H(C231)~L(C235)の間で形成されるが、IgG2(κ)(又はIgG3(κ)又はIgG4(κ))においては、H(C142)-L(C235)の間で形成される可能性がある。重鎖230位のセレインがシステインに変更されたIgG1突然変異体はIgG1(S230C)と命名され、C231が欠損したIgG1突然変異体はIgG1(Δ231)と命名される。C231後に一つのリジンが挿入されたIgG1突然変異体はK231.1と命名され、C231後に2つのアミノ酸KLが挿入されたIgG1突然変異体はK231.1L231.2と命名される(IgG1のヒンジ領域に導入された突然変異の象徴的な例をいくつか示す
図1のbを参照)。例えば、本発明の操作された抗体である抗体M35-1及びM45-1は、EPPKSCDKTHTVECPPCP(配列番号25)を含む修飾されたヒンジアミノ酸配列を含み、抗体M35-2は、EPPKSDCKTKTVECPPCP(配列番号26)を含む刺修飾されたヒンジアミノ酸を含む。抗体M35-1及びM45-1にはS142C突然変異を有するヒトIgG1 CH1が含まれる一方、抗体M35-2にはヒトIgG2 CH1が含まれていることに注意されたい。
【0031】
いくつかの実施の形態において、各重鎖は、ヒンジ領域の上流に位置し、それに連結されたヒトCH1ドメインをさらに含み、IMGTナンバリングスキームによると、前記CH1ドメインは第142位に位置するシステインを含む。
【0032】
もう一つの方面において、本発明は2つの重鎖を含む単離された抗体又はその抗原結合部分であって、各重鎖は、(a)アミノ酸配列:-(X1)-C-(X2)-CPPCP-を含み、ここで、X1は、0~7個のアミノ酸残基を含むポリペプチドセグメントであり、各アミノ酸残基は独立してシステイン残基ではない任意のアミノ残基から選択され、X2は、2~7個のアミノ酸残基を含むポリペプチドセグメントであり、各アミノ酸残基は独立してシステイン残基ではない任意のアミノ残基から選択され;(b)IMGTナンバリングスキームによると、第142位にシステインが含まれるヒンジ領域の上流に位置し、それに連結されたヒトCH1ドメインを含み、ここで、前記抗体はヒトCD73タンパク質に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0033】
いくつかの実施の形態において、前記ヒンジ領域に含まれるアミノ酸配列は、例えば、配列番号25又は配列番号26等の配列番号25~37からなる群から選択される。いくつかの実施の形態において、本明細書に記載の抗体は、2つのκ軽鎖を含むことができ、それぞれ軽鎖は1つの重鎖と対になっている。抗体における2つの重鎖は同一である可能性がある。抗体における2つの軽鎖は同一である可能性がある。
【0034】
いくつかの実施の形態において、抗体のCH1ドメインは、天然ヒトIgG2、IgG3、又はIgG4サブクラス抗体のCH1ドメインの配列と同じ配列を有するか、又はS142C突然変異を有する天然ヒトIgG1抗体のCH1ドメインの配列と同じ配列を有する。
【0035】
いくつかの実施の形態において、各重鎖は、天然ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4サブクラス抗体のFcドメインを含んでもよく、それは前記ヒンジ領域の下流に位置し、それに連結され、ここで、Fcドメインには、例えばLALA突然変異などの任意選択で1つ又は複数の置換が含まれる。
【0036】
いくつかの実施の形態において、各重鎖は、可変ドメインを含み、前記可変ドメインに配列番号1又は配列番号3に示されるアミノ酸配列が含まれ、各軽鎖は、可変ドメインを含み、前記可変ドメインに配列番号2又は配列番号4に示されるアミノ酸配列が含まれる。
【0037】
いくつかの実施の形態において、各重鎖は、配列番号17、配列番号19、及び配列番号21のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を含み;各軽鎖は、配列番号18、配列番号20及び配列番号22のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0038】
いくつかの実施の形態において、前記各重鎖は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、各軽鎖は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む。
【0039】
いくつかの実施の形態において、前記各重鎖は配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、各軽鎖は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む。
【0040】
いくつかの実施の形態において、前記各重鎖は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、各軽鎖は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む。
【0041】
本明細書で使用される「単離された抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す。抗原に特異的に結合する単離された抗体は、当該抗原に結合しない抗体を実質的に含まない。
【0042】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な分子組成の抗体分子群の製剤を指し、ここで、抗体分子群における個々抗体は、ごく少量存在可能性な自然に発生することができる突然変異を除いて同一である。
【0043】
「ヒトCD73に特異的に結合する」抗体又は分子は、ヒトCD73タンパク質に結合するが、非ヒトCD73タンパク質のタンパク質には実質的に結合しない抗体又はポリペプチド分子を指す。
【0044】
出発ポリペプチドのアミノ酸配列突然変異体をコードするDNAは、当技術分野で知られている様々な方法によって調製することができる。これらの方法には、ポリペプチドをコードする以前に調製されたDNAの部位特異的(又はオリゴヌクレオチドによって媒介される)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、およびカセット突然変異誘発による調製が含まれるが、これらに限定されない。組換え抗体の突然変異体は、制限断片操作、又は合成オリゴヌクレオチドを用いたオーバーラップ伸長PCRによっても構築され得る。変異原性プライマーは、システインコドン置換をコードする。標準的な突然変異誘発技術を用いて、そのような突然変異操作された抗体をコードするDNAを生成させることができる。
【0045】
もう一つの方面において、本発明は、本明細書に記載の抗体又はいずれかの抗体の抗原結合部分をコードする核酸分子を提供する。核酸分子を含む発現ベクターを有する宿主細胞(例えば、CHO細胞、リンパ球細胞、ヒト胎児腎細胞、又は大腸菌などの微生物及び酵母などの真菌)を本発明の抗体の生産に使用でき、好ましくは、モノクローナル抗体である。一つの実施形態において、本発明の部分的又は完全長抗体をコードするDNAは、標準的な分子生物学技術によって得ることができ、遺伝子は、1つ又は複数の発現ベクターへの挿入によって、転写及び翻訳調節配列に作動可能に連結される。「作動可能に連結される(operatively linked)」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節するという意図された機能を果たすように、抗体遺伝子がベクターに連結されていることを示す。「調節配列(regulatory sequence)」という用語は、抗体遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図している。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif.(1990))に記載された通りである。哺乳動物の宿主細胞発現のための好ましい調節配列には、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)から由来し、例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)及びポリオーマプロモーター及び/又はエンハンサーなどのアデノウイルスが含まれる。或いは、ユビキチンプロモーター又はβグロビンプロモーターなどの非ウイルス調節配列を使用することができる。さらに、調節エレメントは、SV40初期プロモーター及びヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端反復からの配列を含むSRαプロモーター系などの、異なる供給源からの配列で構成される(Takebe et al., (1988) Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。
【0046】
抗体をコードするDNAを発現ベクターに挿入することができる。組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体をコードするDNAは、シグナルペプチドがDNAによってコードされる抗体のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(即ち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0047】
もう一つの方面において、抗体-薬物複合体(ADC)又はその薬学的に許容される塩を提供する。いくつかの実施の形態において、ADCは、本発明に記載の化学リンカーによって細胞毒性薬にコンジュゲートされた本発明の抗体を含む。
【0048】
いくつかの実施の形態において、前記細胞毒性薬は、エリブリン、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、アウリスタチンE、アウリスタチンF、メイタンシンDM1及びDM4、メイタンシノール、サンドラマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、ピロロベンゾジアゼピン二量体、アントラサイクリン、カリケアマイシン、ドラスタチン10、デュオカルマイシン、ドキソルビシン、タイランスタチンA、ウンシアラマイシン、アマニチン、リシン、ジフテリア毒素、131I、インターロイキン、腫瘍壊死因子、ケモカイン、イリノテカン(SN38)、エキソテカン及びナノ粒子からなる群より選択される。他の実施の形態において、ADC中の細胞毒性薬はMMAEである。
【0049】
抗体部分と細胞傷害性薬物を連結する化学リンカーは、切断可能又は切断不可能であり得る。いくつかの実施の形態において、リンカーは、nが1~20(即ち、1から20の反復単位(CH2CH2O)を有する)であるPEGnスペーサーを含む。いくつかの実施の形態において、前記化学リンカーは、PEGnスペーサーに連結されたリンカーセグメントをさらに含む。いくつかの実施の形態において、前記化学リンカーはリンカーセグメントを含むが、PEGnスペーサーは含まない。いくつかの実施の形態において、前記化学リンカーは、6-マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロピオニル(MP)、バリン-シトルリン(Val-Cit)、アラニン-フェニルアラニン(ala-phe)、p-アミノベンゾキシルオキシカルボニル(PAB)、6-マレイミドカプロイル-Val-Cit-p-アミノベンゾキシルオキシカルボニル(MC-Val-Cit-PAB)、Mal-PEGn-Val-Cit-PAB(n=1~20)、Mal-アミド-PEGn-Val-Cit-PAB(n=1~20)、MC-Gly-Gly-Phe-Gly、Phe-Lys(Fmoc)-PAB、Aloc-D-Ala-Phe-Lys(Aloc)-PAB-PNP、Boc-Phe-(Alloc)Lys-PAB-PNP、及びパーフルオロフェニル3-(ピリジン-2-イルジスルファニル)プロパノエート及びその組み合わせからなる群より選択されるフラグメントを含む。
【0050】
本発明において、ADCの薬学的に許容される塩には、無機酸、カルボン酸及びスルホン酸の酸付加塩が含まれ、例えば、下記の酸の塩:塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸及び安息香酸が含まれる。
【0051】
本発明の抗体-薬物複合体の薬学的に許容される塩には、従来の塩基の塩がさらに含まれ、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩及びマグネシウム塩)とアンモニア又は1~16個の炭素原子を含む有機アミンから誘導されるアンモニウム塩が含まれ、ここで、有機アミンは、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンズアミド、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、アルギニン、リジン、1,2-エチレンジアミンである。
【0052】
本明細書で使用されるADCは、薬物分子と抗体(又はその抗原結合部分)を含む分子を指し、ここで、薬物と抗体(又はその抗原結合部分)はリンカーによって共有結合されている。本明細書における「ADC製剤」は、ADC分子のコレクション又は群を指し、その構造は化学リンカーと抗体(又はその抗原結合部分)の異なる付着部位によって異なる場合がある。いくつかの実施の形態において、化学リンカーは主に又は大部分(例えば、≧80%、≧85%、≧90%、≧95%、又は≧98%)で重鎖上のシステインと共役して、ADC製剤が実質的に共役する軽鎖がない結果を引き起こす。いくつかの実施の形態において、化学リンカーは、主に抗体の重鎖のヒンジ領域のシステインを介して抗体と共役する。いくつかの実施の形態において、薬物対抗体比(DAR)が2であるADC分子は、ADC分子の総量の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%を占める。
【0053】
もう一つの方面において、本発明は本発明の1つ又は複数の抗体、ADC、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。本発明に使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤が含まれる。これらには、生理学的に適合した溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、界面活性剤、増粘剤又は乳化剤、固体結合剤、分散剤又は懸濁助剤、可溶化剤、着色剤、調味剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、防腐剤、等張剤などが含まれるが、これらに限定されない。適切な担体の選択は、当業者の知識の範囲内にある。
【0054】
当該組成物は、別の抗体、薬物、例えば、細胞傷害剤又は抗腫瘍剤などの薬物の1つ又は複数の追加的な薬学的に活性成分を含んでもよい。本発明の医薬組成物は、例えば、別の抗がん剤、別の抗炎症剤などとの併用療法で投与することもできる。
【0055】
前記医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、表皮、及びその他の投与経路に適している。投与経路に応じて、活性成分を材料でコーティングするか、又は材料又は構造に充填して、酸及びそれを不活性化させる可能性のある他の自然条件から保護することができる。本発明で使用される「非経口投与」という語句は、通常は注射による経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内注射及び注入を含むが、これらに限定されない。或いは、本発明の組成物は、例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下又は局所などの局所、表皮又は粘膜投与経路などの非経口経路を介して投与することができる。
【0056】
もう一つの方面において、本発明は有効量の本明細書の医薬組成物を投与することを含む、ヒト被験者におけるがんを治療する方法を提供する。がんは、ヒトCD73タンパク質の過剰発現又はアップレギュレーションに関連するがんであり得る。例えば、がんは、膀胱がん、乳がん、子宮/子宮頸がん、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、食道がん、胃腸がん、膵臓がん、結腸直腸がん、結腸がん、腎臓がん、頭頸部がん、肺がん、胃がん、胚細胞がん、骨がん、肝臓がん、甲状腺がん、皮膚がん、中枢神経系腫瘍、神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、白血病、骨髄腫、肉腫、又はウイルス関連のがんからなる群より選択され得る。がんは、転移性がん、難治性がん、又は再発性がんであり得る。
【0057】
被験者に組成物を投与する時、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように投与量を調節することができる。被験者、治療する疾患などに応じて、単回ボーラス又は分割投与が可能である。本明細書で使用される投与量の単位形態は、治療される対象のための単位投与量として適した物理的に分離された単位を指す。各単位投与量には、必要な薬学的担体と関連して、所望の治療効果を生み出すように計算された所定の量の有効成分が含まれる。徐放性製剤を使用することができるが、その場合、より少ない頻度で投与する必要がある。
【0058】
本発明の抗体又はそのADCの薬学的に許容される塩の投与について、投与量の範囲は、被験者の体重に応じて、約0.0001~100mg/kgであり得、より通常は0.01~10mg/kg体重であり得る。例えば、投薬量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、又は10mg/kg体重、又は1~10mg/kgの範囲内であり得る。適切な治療法案は、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、月に1回などであり得る。本発明の抗EGFR抗体の投与方案の実例には、1mg/kg体重又は3mg/kg体重の静脈内投与が含まれ得る。
【0059】
本発明の抗体又はADC又はその薬学的許容可される塩の「治療有効量」又は「有効量」は、好ましくは、疾患症状の重症度の低下、疾患症状のない期間の頻度及び/又は持続期間の増加、或いは疾患による怪我又は障害可能性の予防又は軽減、或いは疾患の進行の阻害又は遅延である。例えば、腫瘍担持被験者の治療では、未治療の被験者と比較して、抗体組成物の「治療有効量」は、腫瘍増殖を少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは、少なくとも約80%を阻害することができる。
【0060】
実施例
1.操作されたM35-1、M45-1、及びM35-2抗体
高いDAR2比を持つADCを生成するための操作された抗体は、表1に示される仕様で設計された。
【0061】
【0062】
2.M35-1、M35-2及びM45-1抗体の発現と精製
M35-1、M35-2及びM45-1抗体の発現では、HEK293細胞での産生を改善するために、コドンの最適化と遺伝子合成を実行した。全長の重鎖と軽鎖のDNAをそれぞれ個別のpcDNA3プラスミドにクローニングした。対になったプラスミドはHEK293細胞に一過性トランスフェクションされ、プロテインAを1ステップの精製により、テストに十分な量のタンパク質を調製した。この形態で作製された抗体は、発見が良好で、収量で十分で、プロテインAの1ステップ精製プロセスで高純度に精製することができた(
図2)。
【0063】
3.M35-1、M35-2及びM45-1抗体の共役によるADCの生成
薬物コンジュゲートを生成させるために、中性のpHでTCEPを精製抗体を含むPBS溶液に加えた。穏やかな還元条件(TCEP:mAb=1.1~2.4、中性pH、室温で240分未満)では、抗体の鎖間ジスルフィド結合を部分的に還元した。DMAに薬物―リンカー(MC-Val-Cit-PAB-MMAE)を加えて抗体と反応させて、所望の薬物対抗体比(DAR)を得た。ADCを特徴付けるために、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を使用して、ADCにおける薬物分布及び薬物と抗体のモル比を評価し、代表的なHICクロマトグラムは
図3に示された通りである。これらの穏やかな還元/共役条件下では、前記3つすべての操作された抗体(M35-1、M35-2、及びM45-1)で調製されたADCは主にDAR2 ADC種で構成され、マイナーピーク(minor peak)は裸抗体(DAR0)とDAR4 ADC種であった(
図3のa、
図3のb、
図3のc)。
【0064】
4.抗体及びそれに対応するADCのCD73結合活性の測定
ELISA測定を使用して、抗体とADCのCD73結合能力を評価及び比較した。ヒトCD73タンパク質を96ウェルプレートにコーティングし、プレートを4℃で一晩培養した。試料を勾配希釈し、合計8個の希釈液とした。次に、希釈した試料をCD73コーティングプレートに移し、室温で1.5時間培養した。HRP標識ヤギ抗ヒトIgG Fc抗体(Sigma、A0170)を検出試薬とし、TMBを使用して比色反応を実行した。マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、SpectraMax 190)でプレートの450/650nmにおける吸光度を読み取り、用量応答曲線形式の4パラメータロジスティックモデルを使用してデータ分析を実行した。
【0065】
図4及び表2の結果は、M35-1抗体又はM35-2抗体で調製されたADC(M35-1-MMAE及びM35-2-MMAE)は、対応する裸抗体と比較して、CD73と同様の結合活性を有し、ペイロード結合がADCの標的結合能力に影響を与えないことを示唆した。
【0066】
【0067】
5.CD73発現細胞への抗体及びADCの結合の測定
FACS測定を使用して、抗体及びADCのCD73発現細胞への結合能力を試験及び比較した。測定のために、標的細胞と試料を4℃で1時間培養した。0.5%のBSAを含むPBSで洗浄した後、試料と二次抗体(ヤギpAb抗ヒトIgG(FITC)(Abcam、ab97224))を4℃で0.5時間培養した。低サイトメーター(BD、Accuri C6 Plus)でFACSを実行し、平均蛍光強度(MFI)を記録した。複数のCD73発現細胞に対するM35-1、M35-2のMFIは表3に示された通りである。CD73高発現細胞及び低発現細胞を代表する4つの細胞株(NCI-H1975、NCI-H292、NCI-H441及びPC9)を使用して、異なる抗体構築物とADCの結合能力を比較した。M35-1及びM35-2抗体、並びにそれらに対応するADC(M35-1-MMAE、M35-2-MMAE)は、試験したすべての細胞で同様のMFIレベルを示し(表4)、CD73結合活性が共役の影響を受けないことを示した。
【0068】
【0069】
【0070】
6.CD73発現細胞への抗体及びADCの内在化
FACSベースの内在化アッセイを使用して、NCI-H1975及びNCI-H441(それぞれCD73高発現細胞及び低発現細胞である)への裸抗体及びそれに対応するADCの内在化を検出し、比較した。当該検出は、抗体又はADC(10000ng/mL)と標的細胞を混合したチューブから開始し、4℃で1時間冷却させた後、チューブを37℃に移した。抗体-標的又はADC-標的複合体の内在化測定時間は、4時間であった。
図5に示されるように、抗体とADCの両方がNCI-H1975とNCI-H441に効率的に内在化できた。
【0071】
7.CD73発現細胞に対するADCの細胞毒性
ADC(M35-1-MMAE、M35-2-MMAE又はM45-1-MMAE)の細胞毒性を評価し、体外細胞毒性測定で、異なるCD73発現レベルの複数の細胞株と比較した。測定を実施するために、標的細胞を各細胞株の最適化細胞密度で96ウェル平底組織培養プレートに播種し、37℃、5%のCO
2で一晩(16~20時間)培養した。ADC試料の勾配希釈液を細胞プレートに移し、測定プレートを定義された期間(細胞株に応じて3~7日)培養して、最適な殺傷を実現した。4パラメータロジスティックモデルの用量反応曲線を用いてデータ分析を実行した。
図6に示されるように、M35-1-MMAE、M35-2-MMAE、及びM45-1-MMAEは、CD73を高発現するU87MG細胞に対して同様の細胞毒性を発揮したが、M35-2-MMAEは、M35-1-MMAEよりもNCI-H1975細胞に対して強力であるようであった。効力の差は、CD73を低発現するNCI-N87及びNCI-H292細胞ではより大きいようであった。
【0072】
8.抗神経膠腫がん異種移植の無胸腺ヌードマウスにおけるM35-1-MMAE及びM35-2-MMAEの体内有効性。
【0073】
M35-1-MMAE及びM35-2-MMAEの抗腫瘍の可能性は、ヌードマウスで構築されたヒトU87神経膠腫、NCI-H1975NSCLC、及びNCI-N87胃がん異種移植片モデルで評価された。がん細胞は、無胸腺ヌードマウスの背中に移植された。担がんマウスは、コントロール(ビヒクル)、M35-1、又はM35-2 ADCのいずれかの単回静脈内治療を受けた。治療後の様々な時点で腫瘍体積を測定した。
図7に示される結果は、高DAR2 ADCの抗CD73による治療が、すべての試験モデルで腫瘍増殖を劇的に阻害できるだけではなく、CD73高発現腫瘍モデル(U87及びNCI-H1975モデル)で腫瘍拒絶を引き起こす可能性があることを示した。
【0074】
引用文献
[1] Saze Z, Schuler PJ, et al., Blood, 2013; 122:9-18
[2] Jalkanen S, Salmi M. Arterioscler Thromb Vasc Biol, 2008; 28:18-26
[3] Willingham SB, Ho PY, et al., Cancer Immunol Res. 2018, 6:1136-1149
[4] Lappas CM, Rieger JM, et al., J Immunol. 2005, 174:1073-80
[5] Ohta A, Gorelik E, Prasad SJ, et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2006; 103:13132-13127
[6] Waickman AT, Alme A, Senaldi L, et al., Cancer Immunol Immunother. 2012; 61:917-926
[7] Stagg J, Beavis PA, Divisekera U, et al., Cancer Res. 2012; 72:2190-2196
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[9] Perrot I, Michaud HA, Giraudon-Paoli M, et al., Cell Rep. 2019, 27:2411-2425
[10] Siu LL, Burris H, Le DT, et al., Cancer Res. 2018,78
[11] Kjaergaard J, Hatfield S, Jones G, et al., J Immunol. 2018, 201:782-791
[12] Canon J, Rex K, Saiki AY, et al., Nature 2019, 575:217-223.
[13] Jin R , Liu L , Xing Y , et al., Molecular Cancer Therapeutics, 2020。
【0075】
本明細書に記載されたすべての特許文献及び非特許文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0076】
以上、本発明を1つまたは複数の実施形態と結合してして説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、この説明は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれる可能性のあるすべての代替物、修正物、及び均等物を網羅することを意図していることを理解されたい。
【0077】
配列表
M35-1とM35-2のVH:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKTSGYTFTNYYIYWVRQAPGQRLEWMGWIYPGNLNIKYNEKFKGRVTITADTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARDDNYAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号1)。
【0078】
M35-1とM35-2のVL:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWTNTRHTGVPSRFSGSGSGTDHTLTISSLQPEDFATYYCQQHYSTPFTFGQGTKLEIK (配列番号2)。
【0079】
M45-1のVH:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTLTSYWMHWVRQAPGQGLEWMGEINPSQGRSNYNEKFKSRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARRGVSGNYFDYWGQGTLVTVSS(配列番号3)。
【0080】
M45-1のVL:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDINTYLSWFQQKPGKSPKSLIYRSNILVSGVPSRFSGSGSGQDYTLTISSLQPEDFATYYCLQYDEFPYTFGGGTKLEIK (配列番号4)。
【0081】
M35-1とM35-2のVHのCDR1:
NYYIY(配列番号5)。
【0082】
M35-1とM35-2のVHのCDR2:
WIYPGNLNIKYNEKFKG(配列番号6)。
【0083】
M35-1とM35-2のVHのCDR3:
DDNYAWFAY(配列番号7)。
【0084】
M35-1とM35-2のVLのCDR1:
KASQDVSTAVA(配列番号8)。
【0085】
M35-1とM35-2のVLのCDR2:
WTNTRHT(配列番号9)。
【0086】
M35-1とM35-2のVHのCDR3:
DDNYAWFAY(配列番号10)。
【0087】
M45-1のVHのCDR1:
SYWMH(配列番号11)。
【0088】
M45-1のVHのCDR2:
EINPSQGRSNYNEKFKS(配列番号12)。
【0089】
M45-1のVHのCDR3:
RGVSGNYFDY(配列番号13)。
【0090】
M45-1のVLのCDR1:
KASQDINTYLS(配列番号14)。
【0091】
M45-1のVLのCDR2:
RSNILVSG(配列番号15)。
【0092】
M45-1のVLのCDR3:
LQYDEFPYT(配列番号16)。
【0093】
M35-1の重鎖:
【0094】
【0095】
M35-1の軽鎖:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWTNTRHTGVPSRFSGSGSGTDHTLTISSLQPEDFATYYCQQHYSTPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号18)。
【0096】
M35-2の重鎖:
【0097】
【0098】
M35-2の軽鎖:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWTNTRHTGVPSRFSGSGSGTDHTLTISSLQPEDFATYYCQQHYSTPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号20)。
【0099】
M45-1の重鎖:
【0100】
【0101】
M45-1の軽鎖:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDINTYLSWFQQKPGKSPKSLIYRSNILVSGVPSRFSGSGSGQDYTLTISSLQPEDFATYYCLQYDEFPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号22)。
【0102】
M35-1とM45-1のCH1(以IgG1S142C格式):
ASTKGPSVFPLAPCSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRV(配列番号23)。
【0103】
M35-2のCH1(以IgG2格式):
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTV(配列番号24)。
【0104】
M35-1とM45-1の重鎖のヒンジ配列:
EPPKSCDKTHTVECPPCP(配列番号25)。
【0105】
M35-2の重鎖のヒンジ配列:
EPPKSDCKTKTVECPPCP(配列番号26)。
【0106】
の重鎖のヒンジ配列の他の実例:
CKTHTCPPCP(配列番号27)
DKTCHTCPPCP(配列番号28)
ERKSCVECPPCP(配列番号29)
EPKSDCKTHTCPPCP(配列番号30)
EPKSDKCTHTCPPCP(配列番号31)
EPKSDCKTHTVECPPCP(配列番号32)
EPKSDCKTVECPPCP(配列番号33)
EPKSDKCTHTVECPPCP(配列番号34)
EPPPKSCDKTHTVECPPCP(配列番号35)
EPPPPKSCDKTHTVECPPCP(配列番号36)
EPPKSDCKTKTVECPPCP(配列番号37)。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【
図1】本発明で使用される抗体のアミノ酸ナンバリングスキームの概略図である。(a)ヒトIgG1(κ)のIMGTベースのアミノ酸ナンバリングスキーム。(b)突然変異体(IgG1ヒンジ領域に対する)のナンバリングスキーム。
【
図2】本発明の実施形態による特定の抗体の生産及び物理化学的試験の結果である。還元性(R)及び非還元性(NR)抗体のSDS-PAGE分析:M35-1抗体(a)、M35-2抗体(b)及びM45-1抗体(c);HEK293細胞で産生された抗体の純度と収量(d)精製抗体:M35-1抗体(e)、M35-2抗体(f)及びM45-1抗体(g)のSEC-HPLC分析。
【
図3】M35-1、M35-2、及びM45-1抗体で調製されたADCのHICスペクトルである。(a)M35-1-MMAE、(b)M35-2-MMAE及び(c)M45-1-MMAE。
【
図4】抗CD73裸抗体及びそれに対応するADCとCD73の結合曲線である。(a)M35-1抗体及びM35-1 MMAE;(b)M35-2抗体及びM35-2-MMAE。
【
図5】CD73発現がん細胞における抗CD73裸抗体とそれに対応するADCの内在化である。a:NCI-H1975細胞、b:NCI-H411細胞。
【
図6】CD73発現がん細胞に対するM35-1-MMAE、M35-2-MMAE、M45-1-MMAEのCD73の細胞毒性曲線である。a:U87MG細胞、b:NCI-H1975細胞、c:NCI-N87細胞、d:NCI-H292細胞。
【
図7】U87神経膠腫、NCI-N87胃がん及びNCI-H441 NSCLCを異種移植した無胸腺ヌードマウスにおけるM35-1-MMAE及びM35-2-MMAEの体内薬物効力である。
【配列表】
【国際調査報告】