(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】発酵飲料の殺菌方法
(51)【国際特許分類】
C12H 1/06 20060101AFI20231115BHJP
C12H 1/00 20060101ALI20231115BHJP
A23L 3/28 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C12H1/06
C12H1/00
A23L3/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528518
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 IB2021000817
(87)【国際公開番号】W WO2022101680
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522039924
【氏名又は名称】マーク アンソニー インターナショナル エスアールエル
【氏名又は名称原語表記】MARK ANTHONY INTERNATIONAL SRL
【住所又は居所原語表記】1 Haggatt Hall, St. Michael, Barbados
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン、トレーシー、エル.
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエイラ、アンソニー、シー.
(72)【発明者】
【氏名】プタシュニク、マイケル、ジー.
【テーマコード(参考)】
4B021
4B128
【Fターム(参考)】
4B021LA42
4B021LP10
4B021LW06
4B128AC10
4B128AG01
4B128AG09
4B128AP03
4B128AP06
4B128AP13
4B128AP18
4B128AP19
4B128AP20
4B128AP21
4B128AP22
(57)【要約】
紫外線を用いて、発酵飲料を製造するための発酵プロセスで利用される発酵飲料及び/又は組成物を消毒又は殺菌するプロセスにおける方法及びシステム。そのような方法及びシステムは、望ましくない酸性同族体を中和し、得られた酸性同族体の塩を分離して、ニュートラルモルトベース、グルテンフリーベース、グルテン還元ベース、グレインニュートラルスピリッツ、ワインベース、及び砂糖醸造ベースが挙げられるがこれらに限定されない精製した発酵飲料を生成するプロセスと組み合わせることができる。風味付き麦芽飲料及びハードセルツァー飲料が挙げられるがこれらに限定されない飲用可能な発酵飲料も、本明細書に記載のシステム又は方法のいずれかを用いて紫外線で消毒又は滅菌することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製発酵飲料(FB)の製造方法であって、
(a) i)酢酸;クエン酸;乳酸;プロピオン酸;酪酸;カプロン酸;吉草酸;イソ吉草酸;コハク酸;及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる1以上の有機酸を有する酸性同族体;
ii)酵母、カビ、ウイルス、細菌、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる1以上の微生物を有する微生物汚染物質;
を有するブライトビール組成物を提供する工程:
(b)前記有機酸の少なくとも一部を前記酸性同族体の塩に変換するのに十分な量のアルカリ処理剤を前記ブライトビール組成物に添加することにより、前記酸性同族体の少なくとも一部を中和する工程;
(c)限外ろ過;ナノろ過;逆浸透ろ過;活性炭又はセピオライト材料を用いる吸着;カラム蒸留;真空蒸留;多段フラッシュ蒸留;多重効用蒸留;蒸気圧縮蒸留;イオン交換クロマトグラフィー、特に陽イオン交換クロマトグラフィー;重力;遠心分離;デカンテーション;凍結融解システム;太陽蒸発システム;及び逆電気透析;からなる群から選ばれる1以上の分離システムを用いて、アルカリ処理ブライトビールから前記酸性同族体の塩の少なくとも一部を除去して精製FBを形成する工程;及び
(d)前記ブライトビール、アルカリ処理ブライトビール、又は精製FBの少なくとも 1つを、前記微生物汚染物質の少なくとも99%(log-2)の死滅を引き起こすのに十分な時間、紫外(UV)光で処理する工程;
を有する、上記方法。
【請求項2】
前記酸性同族体が酢酸を有し、
十分な量のアルカリ処理剤が前記ブライトビール内の前記酢酸を酢酸塩に変換し、アルカリ処理ブライトビール内の酢酸塩と酢酸との比率が少なくとも約50:50から最大で約99:1までの範囲であり、
前記酢酸塩の少なくとも一部は、前記1以上の分離プロセスによって除去され、それによって酢酸レベルが低下した精製FBを形成する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酢酸に加えて、前記酸性同族体がさらに乳酸を有し、酒石酸、プロピオン酸、酪酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる1以上の有機酸を任意に有する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
精製FBが無色、無臭、無味のニュートラルベースアルコールであり、該ニュートラルベースアルコールがニュートラルモルトベース(NMB)、グルテンフリーベース(GFB)、砂糖醸造ベース、グレインニュートラルスピリットベース、及びグルテン低減ベースからなる群から選ばれる請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ニュートラルベースアルコールが、エチルアルコールを少なくとも10体積%、最大20体積%有し;酢酸濃度が100ppm未満であり;酢酸に対する滴定酸度が1リットルあたり0.5グラム未満であり;且つpHが5.8~6.5の範囲である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が前記ニュートラルベースアルコールに1以上の補助成分を添加し風味付きFBを形成する工程をさらに有し、前記1以上の補助成分が水、ジュース、甘味料、香料、希釈剤、安定剤、酸味料、pH調整剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項4又は請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記風味付きFBは、アルコール容積含量(ABV)が少なくとも3%、最大10%である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
風味付きFBが25ppm未満の酢酸を有する請求項6又は請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
風味付きFBが二次微生物汚染物質をさらに有し、前記方法が仕上げ工程をさらに有し、該仕上げ工程が
i)前記二次微生物汚染物質を少なくともlog-2死滅させるのに十分な時間、風味付けFBをUV光で処理し、それによってUV処理風味付きFBを形成するサブ工程;
ii)UV処理風味付きFBを容器、好ましくは貯蔵タンク、小樽、ボトル、缶、及び箱からなる群から選ばれる容器に分配するサブ工程;及び
iii)前記容器を密封するサブ工程;
からなる請求項6~8のいずれかに記載の方法:
【請求項10】
風味付けFBがハードセルツァーである請求項6~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ブライトビールの製造方法であって、
a) i)ブドウ糖、ショ糖、コーンシロップ、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる1以上の発酵性糖;及び
ii)酵母、カビ、ウイルス、細菌、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる1以上の微生物を有する微生物汚染物質;
を有する麦汁を提供する工程;
b) 少なくともlog-2の微生物汚染物質の死滅を引き起こすのに十分な時間、前記麦汁をUV光で処理し、UV処理麦汁を形成する工程;
c) UV処理麦汁に酵母を加えて発酵組成物を形成する工程;
d) 発酵組成物内の発酵性糖の実質的に全てをエチルアルコールに発酵させ、それによって発酵生成物を形成する工程;及び
e) 発酵生成物から固形物を、好ましくは遠心分離を用いて、除去し、ブライトビールを形成する工程;
を有する、上記方法。
【請求項12】
麦汁がキビ、コメ、モロコシ、コーン、オオムギ、コムギ、ライムギ及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる発酵性炭水化物源から抽出される1以上の糖又はデンプンをさらに有し、前記発酵性炭水化物源から抽出される前記1以上の糖も発酵工程で発酵する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
1以上の発酵性糖がブドウ糖である請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
発酵性炭水化物源が麦芽抽出物である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
麦芽抽出物:ブドウ糖の質量比が1:20未満、好ましくは1:200未満、より好ましくは1:1000未満である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
麦汁を提供する工程が、ホップの存在下で麦汁を加熱するサブ工程をさらに有する請求項11~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ブライトビール内の二次微生物汚染物質の少なくともlog-2の死滅を引き起こすのに十分な時間、ブライトビールをUV光で処理して、UV処理ブライトビールを形成する請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ブライトビールが、酢酸;クエン酸;乳酸;プロピオン酸;酪酸;カプロン酸;吉草酸;イソ吉草酸;コハク酸;及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる1以上の有機酸を有する酸性同族体を有し、ブライトビールをさらに加工して精製FBを形成し、該ブライトビールのさらなる加工が、
(I)前記ブライトビール組成物に十分な量のアルカリ処理剤を添加することにより、前記酸性同族体の少なくとも一部を中和し、前記有機酸の少なくとも一部を前記酸性同族体の塩に変換する工程;及び
(II)限外ろ過;ナノろ過;逆浸透ろ過;活性炭又はセピオライト材料を用いた吸着;カラム蒸留;真空蒸留;多段フラッシュ蒸留;多重効用蒸留;蒸気圧縮蒸留;イオン交換クロマトグラフィー、特に陽イオン交換クロマトグラフィー;重力;遠心分離;デカンテーション;凍結融解システム;太陽蒸発システム;及び逆電気透析からなる群から選ばれる1以上の分離システムを用いて、前記アルカリ処理ブライトビールから前記酸性同族体の前記塩の少なくとも一部を除去して精製FBを形成する工程;
を有する請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記酸性同族体が酢酸を有し、
前記十分な量のアルカリ処理剤が前記ブライトビール内の前記酢酸を酢酸塩に変換し、アルカリ処理ブライトビール内の酢酸塩と酢酸との比率が少なくとも約50:50から最大で約99:1までの範囲であり、
前記酢酸塩の少なくとも一部は、前記1以上の分離プロセスによって除去され、それによって酢酸レベルが低下した精製FBを形成する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
酢酸に加えて、前記酸性同族体がさらに乳酸を有し、酒石酸、プロピオン酸、酪酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる1以上の有機酸を任意に有する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
精製FBが無色、無臭、無味のニュートラルベースアルコールであり、該ニュートラルベースアルコールがエチルアルコールを少なくとも10体積%、最大20体積%有し;酢酸濃度が100ppm未満であり;酢酸に対する滴定酸度が1リットルあたり0.5グラム未満であり;且つpHが5.8~6.5の範囲である請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ニュートラルベースアルコールをさらに加工し風味付きFBを形成し、前記ニュートラルベースアルコールの前記加工が1以上の補助成分を前記ニュートラルベースアルコールに添加し風味付きFBを形成し、前記1以上の補助成分が水、ジュース、甘味料、香料、希釈剤、安定剤、酸味料、pH調整剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記風味付きFBは、アルコール容積含量(ABV)が少なくとも3%、最大10%である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
風味付きFBが25ppm未満の酢酸を有する請求項22又は請求項23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
風味付きFBが二次微生物汚染物質をさらに有し、前記方法が仕上げ工程をさらに有し、該仕上げ工程が
i)前記二次微生物汚染物質を少なくともlog-2死滅させるのに十分な時間、風味付けFBをUV光で処理し、それによってUV処理風味付きFBを形成するサブ工程;
ii)UV処理風味付きFBを容器、好ましくは貯蔵タンク、小樽、ボトル、缶、及び箱からなる群から選ばれる容器に分配するサブ工程;及び
iii)前記容器を密封するサブ工程;
からなる請求項22~24のいずれかに記載の方法:
【請求項26】
風味付けFBがハードセルツァーである請求項22~25のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホップ酸を含む発酵飲料を含む発酵飲料中の微生物汚染物質を紫外線で不活化することに関する。
【発明の背景】
【0002】
伝統的な発酵プロセスは、麦芽大麦及び他の穀物を麦汁又は麦汁抽出物に変換するためにいくつかの処理工程を経る。この麦汁又は麦汁抽出物は、発酵して未加工の発酵生成物を形成し、さらに処理してビールや麦芽飲料などの飲用可能な発酵飲料(FB)を形成することができる。FBの一例としてニュートラルモルトベース(NMB)があり、これは理想的には無色、無味、無臭の溶液であり、さらに処理してさまざまな風味のモルト飲料を作ることができる。そのようなプロセスは、米国特許第4,440,795号、同第5,294,450号、同第5,618,572号、及び同第7,008,652号、並びに米国特許公開第2014/0127354号に詳細に記載されており、これらの開示は参照によりその全体が組み込まれる。
【0003】
大麦をベースとする飲料は歴史的に麦芽製造所で製造され、大麦を麦芽大麦に変えてきた。モルティングは、大麦の穀粒を浸して発芽を促進させた後、高温でキルン乾燥させることを含む。麦芽は、コメ、コーン、又は小麦などのデンプンを豊富に含む副原料で一部代用することができる。麦芽と水のスラリー(「マッシュ」)を60℃以上の温度で浸すと、麦芽中の酵素がデンプンと他のタンパク質を消化して、主に単糖類、二糖類、及び三糖類、並びにペプチド及びアミノ酸からなる糖類の混合物を形成する。次に、マッシュをろ過して、麦汁と呼ばれる糖分が豊富な混合物を生成する。次に、麦汁をさらに煮沸し、特定の割合で他の糖類とブレンドし、ホップを加えて、酵母と組み合わせてエチルアルコールを生成できる最終的な発酵基質を生成する。あるいは、麦汁を加熱又は減圧して濃縮し、混合物から水を蒸発させて液体麦芽抽出物を形成するか、又は完全に乾燥させて乾燥麦芽抽出物を形成することができる。いずれの麦芽抽出物も、発酵混合物に加えるまでの期間、容器に入れて、保存することができる。発酵混合物に含めるためのホッピング麦汁を製造する複数の例が、カナダ特許第1,034,064号及び米国特許第4,495,204号に記載されており、これらの双方は参照によりその全体が組み込まれる。
【0004】
微生物汚染物質を低減するか又は防止するために、FBの生産において形成される麦汁、FB、及び/又は他の中間体を処理することは醸造産業において一般的である。処理方法の1つは、パスツーリゼーション、特に瞬間パスツーリゼーションである。瞬間パスツーリゼーションは典型的には、液体組成物を高温(約60~70℃又はそれ以上)に短時間(約15~30秒)さらした後、低温(約4~5℃)まで急冷する必要がある。最も一般的には、完成したFBは瓶詰め又は容器入れの直前に瞬間殺菌され、FBの貯蔵寿命を潜在的に数か月延長するが、最終的なFBの臭気及び/又は味に影響を与える可能性のある不要な同族体の生成から微生物(例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、及びアセトバクター(Acetobacter)細菌)を防止するために、生成のいかなるポイントにおいても瞬間パスツーリゼーションを用いることができる。しかしながら、瞬間パスツーリゼーションは、特に大規模なものでは、メンテナンスに手間がかかり、資本集約的で労働集約的で、時間と費用がかかるプロセスになる可能性がある。醸造業者が単一の生産ラインで複数の瞬間パスツーリゼーションシステムを必要とする場合、この費用は劇的に増加する。その結果、FBを処理するための新しい技術を開発する必要がある。特にインラインFB製造プロセスでは、瞬間パスツーリゼーションやその他の資源集約型の微生物除染プロセスを使用する必要性を最小限に抑えるか、又は排除することができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、紫外線(UV)光を用いて、発酵飲料(FB)、特にハードセルツァー及び麦芽飲料などのビールベースの飲料内の微生物集団を不活化、消毒又は滅菌するための方法及びシステムを提供する。
【0006】
様々な態様において、本明細書に記載の方法又はシステムのいずれかによって生成したFBを、UV光を用いて処理することにより、微生物汚染物質の一部又は全てを死滅させるためにFBを煮沸及び/又は瞬間パスツーリゼーションを行う必要をなくすことができる。また、UV光はFB製造プロセスのどの段階でも用いることができる。非限定的な例として、麦汁の形成に用いられる水及び/又は麦汁自体;アルコールを含む生の発酵製品;ブライトビール;処理ブライトビール;NMB又はGFB;最終的な飲用可能なFB;及び/又は風味付きNMB又はGFBが挙げられるがこれらに限定されない飲用可能なFBの製造過程で形成される任意の中間体;を、UV光を用いて処理することができる。
【0007】
様々な態様において、FB内の微生物汚染物質を低減又は排除する方法は、(a)酵母、カビ、ウイルス、バクテリア、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる1以上の微生物を有する微生物汚染物質を有するFBを提供する工程;及び(b)FB内の微生物汚染物質の少なくとも一部を死滅させるのに十分な時間、UV光でFBを照射し、UV処理FBを形成する工程;を有することができる。
【0008】
ある態様において、提供されるFBは、ホップの存在下での発酵に由来する化合物を有する。該化合物として、ホップ酸生成物、フムロン及びルプロン(lupulone)、並びにそれらの異性体が挙げられるがこれらに限定されない。ある態様において、方法は、ホップ酸生成物を有するFBをUV光で処理することを有し、その結果、フムロン化合物の光触媒作用によりチオール類が形成される。さらなる態様において、方法は、分離装置、特にろ過装置、より特に限外ろ過、ナノろ過、又は逆浸透ろ過装置(組み合わせを含む)を用いて、UV処理ビールから光触媒作用を受けたホップ酸生成物を分離する工程をさらに有することができる。そのような分離装置は、以下でさらに詳述する。特定の理論に拘束されるものではないが、軽い刺激的なフレーバーノート(flavor note)及び匂いの原因となる化合物を除去又はろ過する工程は、ホップ含有FBの感覚刺激体験を維持又は改善できると考えられる。
【0009】
様々な態様において、UV処理及びろ過されたFBは、UV処理前のFBと比べてホップ酸の量が減少している。ある態様において、UV処理及びろ過されたビールに含まれるホップ酸の量は100ppm未満である。ある態様において、UV処理及びろ過されたFBは測定可能なホップ酸を含まない。
【0010】
様々な態様において、UV処理及びろ過されたFBは、例えば3-メチルブト-2-エン-1-チオールなどのチオール化合物を最小限又はゼロで含む。ある態様において、UV処理及びろ過されたビール内に含まれる3-メチルブト-2-エン-1-チオールの量は100ppb未満である。ある態様において、UV処理及びろ過されたFBは、測定可能な3-メチルブト-2-エン-1-チオールを含まない。
【0011】
様々な態様において、(a)酵母、カビ、ウイルス、細菌、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる1以上の微生物を有する微生物汚染物質を有する麦汁を提供する工程;及び(b)麦汁内の微生物汚染物質の少なくとも一部を死滅させるのに十分な時間、麦汁をUV光で照射し、UV処理麦汁を形成する工程;を有する方法によって、UV光を用いて麦汁から微生物汚染物質を低減するか又は除去することができる。
【0012】
様々な態様において、FB又は麦汁をUV光で処理する際、微生物汚染物質の少なくとも約90%(log-1)、及び最大で少なくとも約99.9999%(log-6)の死滅を達成することができる。
【0013】
様々な態様において、微生物汚染物質は、「一次汚染物質」としても知られる、発酵中に用いられる原料及び醸造所の容器に天然に存在する1以上の微生物を有することができる。提示できる酵母生物の非限定的な例は、野生酵母、並びにブレタノミセス(Brettanomyces)属及びサッカロミセス(Saccharomyces)属由来の酵母、特にサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(「ビール酵母」としても知られる)及びサッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)である。同様に、醸造した製品の酸性度を高めることができるものを含む、いくつかの細菌株が存在する可能性がある。そのような菌株の非限定的な例として、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ペディオバクター(Pediobacter)属、及びアセトバクター(Acetobacter)属からの細菌が挙げられる。
【0014】
様々な態様において、微生物汚染物質は、発酵後、特に缶詰め、瓶詰め、又は樽詰め中に、FB中間体及び/又は飲用可能なFB製品に不注意に導入され得る1以上の微生物を有することができる。「二次汚染物質」としても知られるそのような汚染物質は、たとえ汚染の上流で無菌操作が用いられたとしても、飲用可能なFBの腐敗を引き起こす可能性がある。
【0015】
様々な態様において、FBに適用されるUV光の線量は、任意の値とすることができる。ある態様において、適用されるUV光の線量は、少なくとも10μJ/cm2から最大500,000μJ/cm2以上の範囲である。
【0016】
様々な態様において、FBは、線量、所望のlog死滅、FBのタイプ、FBの不透明度、及び/又は用いる機器が挙げられるがこれらに限定されない因子に部分的に基づいて、任意の所望の時間、UV光で処理することができる。ある態様において、FBの一部は、UV光で少なくとも1秒、最大で少なくとも60秒以上照射することができる。
【0017】
様々な態様において、UV光は、単色光又は多色光として放出することができる。ある態様において、放出UV光は、UV-C範囲(~200nm-~280nm)、例えば250~260nm、特に254nmの少なくとも1つの波長を含む。ある態様において、UV光は、真空UV範囲(200nm未満)、特に185nmの1以上の波長を含む。様々な態様において、放出UV光は、可視スペクトル内の波長を潜在的に含み得る多色光とすることができる。非限定的な例として、多色光源は200nmから600nmの間の出力を有することができる。
【0018】
様々な態様において、UV処理FBは、ブライトビールとすることができる。ある態様において、ブライトビールは、醸造業界内で、麦汁、ブライトビール、又はビール中間体などの組成物から固形物を除去するプロセスを表す一般的な用語である「清澄化」の前にUV光で照射され、UV処理ブライトビールを形成する。ある態様において、ブライトビールを清澄化後UV光で照射し、UV処理清澄化ブライトビールを形成する。清澄化ブライトビール及び他の清澄化FBを形成するのに用いられる分離装置及び技術は、以下でさらに詳述する。
【0019】
様々な態様において、本明細書に記載の方法及びシステムのいずれかによって生成する飲用可能なFBは、FMBである。様々な態様において、飲用可能なFBは、ハードセルツァー飲料である。様々な態様において、飲用可能なFBは蒸留酒である。様々な態様において、飲用可能なFBは、ハードサイダー飲料である。飲用可能なFBの追加の非限定的な例を後述する。
【0020】
様々な態様において、本明細書に記載の飲用可能なFBのいずれも、瓶詰め、缶詰め、樽詰め、又は包装の直前に、追加の又はその後の精製、香味付け、又は加工工程なしでUV光を照射することができる。ある態様において、飲用可能なFBをUV光で照射し、瓶詰め、缶詰め、樽詰め、又は包装の前の期間、供給タンク内に保存することができる。
【0021】
様々な態様において、飲用可能なFBを製造するプロセスにおいて中間組成物が形成される。ある態様において、中間組成物は、ニュートラルモルトベース(NMB);グルテン低減ベース;又はグルテンフリーベース(GFB);グレインニュートラルスピリットベース(GNS)(酵母のみで達成できるABVレベルを超えたレベルまで蒸留され、通常はABV90~95%を超える);及びワインベース(オレンジの皮又はブドウの皮を挙げられるがこれらに限定されない、発酵した果物の特殊な部分から形成される)からなる群から選択される、無色、無味、及び/又は無臭のベースアルコールである。
【0022】
様々な態様において、上記ベースアルコールのいずれかを利用して、飲用可能な風味付きFBを形成することができ、その非限定的な例は、FMB及びハードセルツァー飲料である。ある態様において、精製FBを形成する方法は、水、ジュース、甘味料、香料、希釈剤、安定剤、酸味料、pH調整剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の補助成分をベースアルコールに添加する工程、及び任意のその後の添加、混合、及び精製工程をさらに有することができる。ある態様において、1以上の補助成分を添加する前にベースアルコールをUV光で照射する。ある態様において、全ての成分が添加された後、飲用可能なFBをUV光で照射する。非限定的な例では、風味付きFB内の二次汚染物質は、次のサブ工程からなる仕上げ工程を実行する際に低減又は排除することができる。(i)二次微生物汚染物質の少なくともlog-2の死滅を引き起こすのに十分な時間、風味付きFBをUV光で処理し、それによりUV処理風味付きFBを形成するサブ工程;(ii)UV処理FBを容器、好ましくは貯蔵タンク、小樽、ボトル、缶、及び箱からなる群から選択される容器に分配するサブ工程;及び(iii)容器を密閉するサブ工程。ある態様において、ベースアルコール及び飲用FBの双方をそれぞれ独立してUV光で照射する。
【0023】
様々な態様において、本明細書に記載の液体組成物のいずれもバッチ又はセミバッチ形式で、例えば液体組成物がバット、ドラム缶、タンク、又は同様の保持容器内に含まれるとき、UV光で照射することができる。バッチ形式では、保持容器を液体組成物のバッチで部分的又は完全に満たすことができ、バッチ全体をUV光で処理することができる。その後、UV処理バッチを保持容器から取り出すことができ、連続したバッチを処理することができる。
【0024】
様々な態様において、本明細書に記載の液体組成物のいずれも、インライン形式で、例えば、配管、チュービング、チャネル、又は1つのプロセス、タンク、又は容器から他へと液体流を輸送する同様の装置内でUV光で照射することができる。非限定的な一例において、及びある態様において、配管の1以上の内部セクションは、FB流を照射するUV光装置を有することができる。このような内部UV光装置は、水処理業界ではよく知られている。液体をインライン形式で処理する内部UV光装置の非限定的な一例は、米国特許第8,766,211号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
様々な態様において、FB、特にブライトビールは、発酵プロセスの副産物である酸性同族体を含むことができる。酸性同族体は、1以上の有機酸を有することができ、その非限定的な例は、酢酸、クエン酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、吉草酸、イソ吉草酸、コハク酸、及びそれらの組み合わせである。ある態様において、酸性同族体は、酢酸、乳酸、及び任意に1以上の追加の有機酸を有する。
【0026】
様々な態様において、FB内の微生物汚染物質を低減又は除去する方法は、存在し得る酸性同族体を中和及び除去するサブ工程をさらに有することができる。FBから酸性同族体を中和及び除去する方法及びシステムは、米国特許第10,745,658号、PCT公開第2020/036932号、及び米国特許出願番号第16/927,744号に記載されており、これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。ある態様において、酸性同族体を中和し、それらの塩を除去する工程は、以下のサブ工程を有することができる。(i)酸性同族体を有するブライトビールを提供するサブ工程;(ii)酸性同族体の少なくとも一部を酸性同族体の塩に中和及び変換するのに十分な量のアルカリ処理剤をブライトビールに添加することによりブライトビールを処理するサブ工程;(iii)サブ工程(ii)で形成した酸性同族体の塩の少なくとも一部をアルカリ処理ブライトビールから分離し、それによりサブ工程(i)で提供したブライトビールと比較して酸性同族体のレベルが減少した精製FBを生成するサブ工程。ある態様において、提供したブライトビールを清澄化して清澄化FBを形成する。ある態様において、一旦精製FBを形成すると、それをUV光で照射し、UV処理精製FBを形成することができる。
【0027】
様々な態様において、FBをUV光で照射し、UV処理FBを形成することができ、それにアルカリ処理剤を添加することができる。ある態様において、上記のサブ工程(ii)で形成したアルカリ処理FBをUV光で照射して、UV処理、アルカリ処理FBを形成することができる。様々な態様において、FB内の微生物汚染物質を低減又は除去する方法は、(a)酵母、カビ、ウイルス、バクテリア、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる1以上の微生物を有する微生物汚染物質及び酸性同族体を有するFBを提供する工程;(b)FB内の微生物汚染物質の少なくとも一部を死滅させるのに十分な時間、UV光でFBを照射し、UV処理FBを形成する工程;(c)酸性同族体の少なくとも一部を酸性同族体の塩に中和及び変換するのに十分な量のアルカリ処理剤をUV処理FBに添加することにより、UV処理FBを処理する工程;及び(d)アルカリ処理、UV処理FBから酸性同族体の塩の少なくとも一部を分離して、UV処理精製FBを形成する工程;を有することができる。
【0028】
様々な態様において、FB、アルカリ処理FB、及び精製FBの任意の組み合わせにUV光を照射することができる。非限定的な例として、精製FBを生成する方法は、(A)(i)酢酸;クエン酸;乳酸;プロピオン酸;酪酸;カプロン酸;吉草酸;イソ吉草酸;コハク酸;及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる1以上の有機酸を有する酸性同族体;及び(ii)酵母、カビ、ウイルス、細菌、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の微生物を有する微生物汚染物質;を有するブライトビール組成物を提供する工程;(b)有機酸の少なくとも一部を酸性同族体の塩に変換するのに十分な量のアルカリ処理剤をブライトビール組成物に添加することにより、酸性同族体の少なくとも一部を中和する工程;(c)限外ろ過;ナノろ過;逆浸透ろ過;活性炭又はセピオライト材料を用いる吸着;カラム蒸留;真空蒸留;多段フラッシュ蒸留(multi-stage flash distillation);多重効用蒸留(multiple-effect distillation);蒸気圧縮蒸留;イオン交換クロマトグラフィー、特に陽イオン交換クロマトグラフィー;重力;遠心分離;デカンテーション;凍結融解システム;太陽蒸発システム;及び逆電気透析(electrodialysis reversal)からなる群から選ばれる1以上の分離システムを用いて、アルカリ処理ブライトビールから酸性同族体の塩の少なくとも一部を除去して精製FBを形成する工程;及び(d)ブライトビール、アルカリ処理ブライトビール、又は精製FBの少なくとも1つを、微生物汚染物質の少なくとも99%(log-2)の死滅を引き起こすのに十分な時間、紫外(UV)光で処理する工程;を有することができる。ある態様において、FB、アルカリ処理FB、及び精製FBのそれぞれをUV光で照射することができる。ある態様において、酸性同族体の塩を形成するとき、実質的に全ての酸性同族体を中和することができる。ある態様において、酸性同族体の塩の実質的に全てをろ過するか、そうでなければアルカリ処理FBから分離することができる。ある態様において、酸性同族体の全てを中和して酸性同族体の塩に変換することができ、及び/又は酸性同族体の塩全体をアルカリ処理FBから分離することができる。ある態様において、上記の方法のいずれかによって生成した精製FBは、未処理FBからの酸性同族体の一部を保持し得る。ある態様において、精製FBは、未処理FBからの酸性同族体を全く、又は本質的に全く保持しない可能性がある。ある態様において、麦芽大麦を含むマッシュから形成した麦汁を発酵させて麦芽ブライトビールを形成することができ、そこから生成した精製FBはNMBである。
【0029】
様々な態様において、アルカリ処理FBから除去される塩の量は、用いる分離及び/又はろ過システムのタイプ及び品質に基づいて制御することができる。ある態様において、精製FBを形成する場合、共役塩基塩の少なくとも約10重量%、及び少なくとも約99.9重量%までがアルカリ処理FBから分離される。ある態様において、アルカリ処理FBから除去される共役塩基塩の量は、10重量%~99.9重量%の間の任意の値又は範囲とすることができる。ある態様において、塩の少なくとも約80重量%、最大約99.9重量%が、アルカリ処理FBから除去される。ある態様において、塩の少なくとも約90重量%、最大約99重量%が、アルカリ処理FBから除去される。ある態様において、塩の少なくとも約92重量%から約97重量%までがアルカリ処理FBから除去される。ある態様において、塩の約95重量%がアルカリ処理FBから除去される。
【0030】
様々な態様において、ブライトビールを含むがこれに限定されないFBを醸造するのに用いられる麦汁は、最小限のグルテンで、又はグルテンを完全に含まない状態で発酵させることができる。グルテンは、マッシュを形成するのに用いられるいくつかの炭水化物源だけでなく、ホップにも存在する可能性がある。ある態様において、発酵性炭水化物源は、グルテンの濃度が0ppm~20ppmの範囲になるまでグルテンを低減又は除去するように改変することができ、グルテン低減ブライトビールを形成するために利用することができる。ある態様において、麦芽大麦及び/又はグルテンを含む他の炭水化物源(その非限定的な例は小麦及びライ麦)の非存在下でマッシュを調製することができる。そのようなグルテンを含まない炭水化物源は、キビ、コメ、モロコシ、コーン、及びそれらの任意の混合物又は組み合わせからなる群から選択することができる。ある態様において、グルテンフリーの炭水化物源のみ用いて麦汁を発酵し、ホップを発酵混合物に添加することなく、グルテンフリーのブライトビールを形成する。様々な態様において、グルテンフリー又はグルテン低減のブライトビールを精製し、ろ過し、さもなければ加工し、無色、無臭、及び/又は無味のベースを形成することができ、該ベースをさらに任意に処理して、グルテンフリー又はグルテン低減の飲用可能なFBを形成することができる。ある態様において、グルテンフリーのブライトビールから形成されるベースアルコールはGFBである。
【0031】
様々な態様において、FBに添加するアルカリ処理剤の量は、精製FB中の酢酸に起因する酢のような味及び/又は臭気を減少させるのに十分な量とすることができる。ある態様において、FBに添加するアルカリ処理剤の量は、精製FBにおいて酢酸からのビネガー様の味が実質的に知覚できないようにするのに十分な量とすることができる。本発明によれば、FBに添加するアルカリ処理剤の量は、精製FBにおいて酢酸からのビネガー様の臭気を実質的に知覚できないようにするのに十分な量とすることができる。本発明によれば、精製FB中のアルカリ処理剤の量により、得られる精製FBは官能的に純粋になる、すなわち知覚できる味又は臭気がなくなる。
【0032】
様々な態様において、NMB、グルテン低減ベース、GFB、GNS、及びワインベースを含むがこれらに限定されない、上記の無色、無臭、及び/又は無味のベースアルコールのいずれかを、本明細書に記載されているか、又は米国特許第10,745,658号、PCT公開番号第2020/036932号、及び米国特許出願番号第16/927,744号に開示されているFBから酸性同族体を中和及び/又は除去する方法のいずれかを用いて、形成することができる。ある態様において、FBを醸造する方法は、FB内に含まれる固形物を除去して清澄化FBを形成する工程をさらに有する。ある態様において、麦汁、生の発酵生成物、ブライトビール、清澄化FB又はブライトビール、精製FB又はブライトビール、ベースアルコール、又は飲用可能なFBの製造中に形成される任意の他の中間体のうちの1以上を、それぞれのFB組成物内の微生物汚染物質の少なくとも一部を死滅させるのに十分な時間、UV光で照射することができる。ある態様において、中和した酸性同族体、ホップ酸、及び/又はそれらのそれぞれの塩の少なくとも一部は、処理FB組成物から後で分離、ろ過、又は別の方法で除去することなく、必要に応じて保持することができる。特に酸性同族体に関して、特定の理論に限定されるものではないが、酸性同族体が酸性の形態にある場合に酸性同族体は味によって検出できるだけである一方、中和した有機酸性同族体及び/又はその塩がFB内にまだ存在している場合でも、中和した有機酸性同族体は、味への影響は無視できる、と考えられている。
【0033】
特に、且つ様々な態様において、ブライトビールから酸性同族体を中和及び/又は除去する方法は、酢酸が存在する場合、多くの場合、望ましくない酢のような風味及び臭いノート(odor note)を付与するかもしれない酢酸のレベルを低減又は無視できる程度の精製FBを生成することができる。ある態様において、精製FBは、NMB、グルテン低減ベース、GFB、GNS、又はワインベースである。ある態様において、上記のベース又は風味付き飲料のいずれかにおける酢のようなフレーバーノート(flavor note)及び/又は匂いは、飲料を飲んだり嗅いだりしている人には実質的に知覚できないか、又はまったく存在しないかのいずれかであり得る。
【0034】
様々な態様において、酸性同族体の中和及び除去から形成されるNMB、グルテン低減ベース、GFB、GNS、又はワインベースは、以下の特性を有することができる:(a)pHが5.5から8.5の範囲、好ましくは5.8~6.5;及び/又は(b)エチルアルコールを少なくとも10体積%、最大20体積%;及び/又は(c)酢酸及び酢酸塩の合計濃度が1000ppm未満。ある態様において、精製FBは、酢酸に対する滴定酸度(titratable acidity)が精製FBの1リットル当たり約0.5グラム未満、好ましくは1リットル当たり約0.25グラム未満とし、プロトン化酢酸濃度が約100ppm未満、好ましくは約50ppm未満、より好ましくは25ppm未満とすることができる。ある態様において、精製FBは、測定可能なプロトン化酢酸を有しないこととするか、及び/又は酢酸に対する滴定酸度を有しないこととすることができる。
【0035】
様々な態様において、ホップ材料を含む発酵から形成したブライトビールは、ホップ酸をさらに有することができ、その非限定的な例は、フムロン(フムロン、コフムロン、アドフムロン)及びルプロン(ルプロン、コルプロン、アドルプロン)、並びにそれらのエピマーと異性体である。ある態様において、ホップ酸は、UV触媒によるチオールへの分解に耐性のある異性化前の形態で、発酵のために麦汁に添加することができる。
【0036】
様々な態様において、ホップ酸を有するFB組成物中の微生物汚染物質を低減又は排除する方法は、FB組成物をUV光で照射する前に、ビール組成物中のホップ酸の少なくとも一部をホップ酸塩に中和し、FB組成物からホップ酸塩を除去する工程をさらに有することができる。特定の理論に拘束されるものではないが、ビール組成物にUV光を照射する前にホップ酸を塩として除去することにより、UV処理工程で形成することができるチオールの形成を低減又は排除できると考えられる。ある態様において、ホップ酸を中和し、ホップ酸塩を除去する工程は、(i)1以上のホップ酸を有する出発FBを提供するサブ工程;(ii)1以上のホップ酸の少なくとも一部を中和し、ホップ酸塩に変換するのに十分な量のアルカリ処理剤を出発FBに添加することにより出発FBを処理するサブ工程;(iii)工程(ii)で形成したホップ酸塩の少なくとも一部をアルカリ処理FBから分離し、それによって出発FB組成物と比較してホップ酸のレベルが低下した精製FBを生成するサブ工程;を有することができる。ある態様において、ホップ酸を有する出発FBはブライトビールである。ある態様において、ホップ酸を有する出発FBは、FMB又はハードセルツァー飲料を含むがこれらに限定されない飲用可能なFB製品を形成するプロセス中に形成される中間体である。
【0037】
様々な態様において、ブライトビールは、酸性同族体及び1以上のホップ酸の双方を有することができる。一般に、そのようなホップ豊かなブライトビールは、ホップ、酵母、及び麦汁を有する発酵混合物から製造される。ある態様において、発酵混合物は使用済みホップを有する。したがって、ある態様において、アルカリ処理剤をホップ豊かなブライトビールに添加して、ホップ酸と酸性同族体の双方の少なくとも一部を同時に中和し、それぞれの塩を形成することができる。ある態様において、酸性同族体を含むホップ豊かなブライトビール内の微生物汚染物質を低減又は除去する方法は、(a)酸性同族体及び1以上のホップ酸を有するホップ豊かなブライトビールを提供する工程;(ii)ホップ酸及び/又は酸性同族体の少なくとも一部を中和し、1以上の塩に変換するのに十分な量のアルカリ処理剤をホップ豊かなブライトビールに添加することによりホップ豊かなブライトビールを処理する工程;(iii)工程(ii)で形成した塩の少なくとも一部をアルカリ処理ホップ豊かなブライトビールから分離し、それによって工程(i)で提供したホップ豊かなブライトビールと比較してホップ酸及び/又は酸性同族体のレベルが低下した精製ブライトビールを生成する工程;を有することができる。ある態様において、ホップ豊かなブライトビールをUV光で照射して、アルカリ処理剤を添加することができるUV処理ホップ豊かなブライトビールを形成することができる。ある態様において、1以上の塩を分離して精製ブライトビールを形成する前に、工程(ii)で形成したアルカリ処理化ホップ豊かなブライトビールをUV光で照射し、UV処理、アルカリ処理化ホップ豊かなブライトビールを形成することができる。ある態様において、精製ブライトビールが一旦形成されると、UV光で照射し、UV処理精製ブライトビールを形成することができる。ある態様において、ブライトビール、アルカリ処理ブライトビール、及び精製ブライトビールの任意の組み合わせをUV光で照射する。ある態様において、ブライトビール、アルカリ処理ブライトビール、及び精製ブライトビールのそれぞれをUV光で照射する。ある態様において、実質的に全ての酸性同族体を中和して塩を形成することができる。ある態様において、ホップ酸塩を形成するとき、実質的に全てのホップ酸を中和することができる。ある態様において、酸性同族体の塩及び/又はホップ酸塩の実質的に全てをろ過するか、又はアルカリ処理ブライトビールから分離することができる。ある態様において、酸性同族体の全てを中和し塩に変換することができ、及び/又は酸性同族体塩の全量をアルカリ処理ブライトビールから分離することができる。ある態様において、ホップ酸の全てを中和しホップ酸塩に変換することができ、及び/又はホップ酸塩の全量をアルカリ処理ブライトビールから分離することができる。ある態様において、上記の方法のいずれかによって生成した精製ブライトビールは、未処理のホップ豊かなブライトビールからの酸性同族体又はホップ酸の一部を保持してもよい。ある態様において、精製ブライトビールは、未処理のブライトビールからの酸性同族体又はホップ酸を全く保持しないか、又は本質的に保持しない場合がある。
【0038】
様々な態様において、中和前にホップ豊かなブライトビールをUV処理する場合、存在する任意の光触媒アルファ酸生成物、特に3-メチルブト-2-エン-1-チオールを、酸性同族体及びホップ酸塩と同時に、アルカリ処理ブライトビールから分離することができる。ある態様において、光触媒アルファ酸生成物及び塩を、ろ過、特に限外ろ過、ナノろ過、逆浸透ろ過、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるろ過技術を用いて、アルカリ処理ブライトビールから分離することができる。ある態様において、ろ過は逆浸透ろ過を有する。ある態様において、ろ過は、ナノろ過及び逆浸透ろ過を有する。
【0039】
様々な態様において、FB内のホップ酸又は酸性同族体を中和するのに用いられるアルカリ処理剤は、強塩基及び弱塩基の両方を含む、酸と反応することができる任意の塩基性化合物を有することができる。ある態様において、アルカリ処理剤は、水との溶液中の水酸化物イオンの濃度を増加させる少なくとも1つのアレニウス塩基を有する苛性組成物とすることができる。非限定的な例として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、及び水酸化ルビジウムなどのアルカリ(I族)金属水酸化物及びアルカリ土類(II族)金属水酸化物が挙げられる。本発明によれば、アルカリ処理剤は、50重量%までの水酸化ナトリウムを有することができる。
【0040】
様々な態様において、アルカリ処理剤は弱塩基を有してもよく、該塩基及びその共役酸は互いに平衡状態で存在する。本発明によれば、アルカリ処理剤は、50重量%までの重炭酸ナトリウムを有することができる。ある態様において、アルカリ処理剤は、1以上の苛性剤、1以上の弱塩基、及び/又は1以上の苛性剤と1以上の弱塩基との組み合わせを有することができる。
【0041】
様々な態様において、FBに滴定され得るアルカリ処理剤の量は、酸性同族体及び/又はホップ酸の、10重量%と99.9重量%との間及びそれらを含む任意の中和パーセント又は範囲を含む、少なくとも約10重量%、及び少なくとも約99.9重量%までを中和するのに十分な量とすることができる。ある態様において、酸性同族体及び/又はホップ酸の少なくとも約90%から約99%までが中和される。ある態様において、存在する酸性同族体及び/又はホップ酸の全て又は実質的に全てを中和するのに十分なアルカリ性処理剤をFBに滴定することができる。
【0042】
様々な態様において、中和される酸性同族体及び/又はホップ酸の部分は、FB、特にブライトビールに添加されるアルカリ処理剤の量によって制御することができ、アルカリ処理剤で目標pHを達成することができる。ある態様において、アルカリ処理FBの目標pHは、少なくとも約5.0から少なくとも約8.7までとすることができ、5.0と8.7との間の任意のpH値又は範囲を含む。ある態様において、アルカリ処理FBの標的pHは、少なくとも約5.5、最大約7.0である。ある態様において、アルカリ処理FBの標的pHは、少なくとも約5.8であり、最大約6.5である。ある態様において、アルカリ処理FBの標的pHは、少なくとも約7.0、最大約8.7である。ある態様において、アルカリ処理FBの標的pHは、約8.7より高い。
【0043】
様々な態様において、中和される酸性同族体内のホップ酸又は有機酸のそれぞれのパーセントは、構成酸のそれぞれのpKa及びアルカリ処理FBのpHの関数とすることができる。例えば、pHが5.75であり、酢酸(pKa~4.75)を含む組成物内では、酢酸の10%がその酸形態のままである一方、酢酸の90%がその共役塩基形態(酢酸塩)である。組成物内に乳酸(pKa~3.8)も存在する場合、乳酸の約1%がその酸の形のままである一方、約99%がその共役塩基である乳酸塩として存在する。特定の理論に制限されることなく、酸性同族体に含有するホップ酸及び有機酸を含む、存在し得る他の弱酸(その非限定的な例としてプロピオン酸、酪酸、及び/又は酒石酸が挙げられる)は、それらのそれぞれのpKa値及び組成物のpHに基づいて同様の平衡を有する。したがって、ある態様において、FBに添加するアルカリ処理剤の量は、アルカリ処理FB中に共役塩基形態で存在する酸の少なくとも約10重量%、及び少なくとも約99.9重量%までを引き起こすのに十分なpHを上げるのに十分な量とすることができる。ある態様において、アルカリ処理FB中に共役塩基形態で存在する酸の量は、10重量%~99.9重量%の間の任意の値又は範囲とすることができる。ある態様において、アルカリ処理FB内の酸の少なくとも約80重量%から約99.9重量%までが、それぞれの共役塩基形態である。ある態様において、アルカリ処理FB内の酸の少なくとも約90重量%から約99重量%までが、それぞれの共役塩基形態である。ある態様において、アルカリ処理FB内の酸の少なくとも約92重量%及び最大約97重量%が、それぞれの共役塩基形態である。ある態様において、アルカリ処理FB内の酸の約95重量%がそれぞれの共役塩基形態である。
【0044】
様々な態様において、その酸性形態で存在するホップ酸又は酸性同族体の相対存在量と、共役塩基として存在する量は、比として表すことができる。例えば、酢酸に関して、そのpKaでの酢酸を含む組成は50:50であるが、pH5.75では90:10である。したがって、酸性同族体含量の低減は、単一の酸、例えば酢酸の中和を目標とすることができる。特定の理論に拘束されるものではないが、上述のように、酢酸と同時にブライトビールに存在する他の酸も、定量化されていなくても、アルカリ処理剤の添加の際、中和される。ある態様において、アルカリ処理FB中の酢酸と比較した酢酸塩の相対量は、少なくとも約50:50から最大で少なくとも約99.9:0.1までの範囲とすることができる。ある態様において、アルカリ処理FB内の酢酸塩と酢酸との相対存在量は、約90:10から約99:1までの範囲とすることができる。ある態様において、アルカリ処理FB内の酢酸の全て又は実質的に全てを酢酸塩に中和することができる。ある態様において、アルカリ処理FBのpHが少なくとも8.7に上昇した場合、酢酸の全て又は実質的に全てを中和することができる。
【0045】
様々な態様において、本明細書に記載のホップ酸又は酸性同族体の濃度を低下させる方法のいずれかは、中和後にアルカリ処理FBに対して行うことができる1以上の塩除去又は分離工程をさらに含むことができる。ある態様において、除去工程は、アルカリ処理FBをフィルタに通過させて、ホップ酸及び/又は酸性同族体塩を分離及び除去することを有することができる。典型的には適切なフィルタとして、海水の淡水化に十分なフィルタ又は別個の装置が挙げられる。水及びFBを含む液体組成物から塩を分離するろ過システムの非限定的な例として、上述したように、限外ろ過、逆浸透ろ過、及びナノろ過が挙げられる。ある態様において、FBから他の微粒子又はろ過可能な同族体を除去するために、中和前にFBをろ過することができる。ある態様において、アルカリ処理FBから中和塩を分離することは、ろ過に加えて、又はろ過の代わりとして、活性炭吸着;カラム蒸留;真空蒸留; 多段フラッシュ蒸留;多重効用蒸留;蒸気圧縮蒸留;イオン交換クロマトグラフィー、特に陽イオン交換クロマトグラフィー;重力;遠心分離;デカンテーション;凍結融解システム;太陽蒸発システム;及び逆電気透析を挙げることができるがこれらに限定されない分離工程を有することができる。
【0046】
様々な態様において、UV光は、発酵混合物の成分の1つ以上に適用することができる。ある態様において、発酵に利用される水、又は「醸造水(brew water)」を、発酵混合物を形成する前にUV光で照射することができる。ある態様において、醸造水は、逆浸透精製(RO)水とすることができる。ある態様において、発酵混合物を形成する前にRO醸造水をUV光で照射する。ある態様において、麦汁は、ホップ材料を含まないマッシュから形成される。
【0047】
様々な態様において、ブライトビールを醸造する方法は、以下の工程を有することができる:(a)微生物汚染物質を有する麦汁であって、キビ、コメ、モロコシ、コーン、オオムギ、コムギ、ライムギ、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される発酵性炭水化物源から抽出した1以上の糖又はデンプンを有する麦汁を提供する工程;(b)麦汁内の微生物汚染物質の少なくとも一部を死滅させるのに十分な時間、UV光で麦汁を処理し、UV処理麦汁を形成する工程;(c)UV滅菌した麦汁に酵母を加えて発酵組成物を形成する工程;及び(d)発酵組成物中のデンプン及び糖を発酵させてエチルアルコールにし、それによってブライトビールを形成する工程。ある態様において、提供する麦汁は、ホップ植物から抽出したホップ酸をさらに有する。ある態様において、発酵組成物内のデンプン及び糖を発酵させる工程は、使用済みホップを浸漬するサブ工程をさらに有する。ある態様において、FBを醸造する方法は、ブドウ糖、ショ糖、コーンシロップ、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる1以上の発酵性糖を麦汁に添加する工程をさらに有する。ある態様において、発酵性炭水化物源は麦芽抽出物であり、発酵性糖はブドウ糖である。ある態様において、麦芽抽出物は、麦芽抽出物とブドウ糖の合計重量の5重量%未満の任意の値を有する(すなわち、麦芽抽出物:ブドウ糖の比率が1:20未満)。ある態様において、麦芽抽出物は、0未満の任意の値を含む。麦芽抽出物とブドウ糖の組み合わせの5重量%未満の任意の値を有する(すなわち、麦芽抽出物:ブドウ糖の比率が1:200未満)。ある態様において、麦芽抽出物は、麦芽抽出物とブドウ糖を合わせた重量の0.1重量%未満を有する(すなわち、麦芽抽出物とブドウ糖の比率が1:1000未満)。
【0048】
様々な態様において、ブライトビールは、麦芽抽出物などの発酵性炭水化物源から抽出した炭水化物を有さない麦汁の発酵から形成される。ある態様において、ブライトビールを醸造するためのそのような方法は、以下の工程を含むことができる:(a)微生物汚染物質を有する麦汁であって、ブドウ糖、ショ糖、コーンシロップ、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる1以上の発酵性糖を有する麦汁を提供する工程;(b)麦汁内の微生物汚染物質の少なくとも一部を死滅させるのに十分な時間、麦汁をUV光で処理し、UV処理麦汁を形成する工程;(c)UV殺菌した麦汁に酵母を加えて発酵組成物を形成する工程;及び(d)発酵性糖の一部又は実質的に全てを発酵させてエチルアルコールにし、それによってブライトビールを形成する工程であって、麦汁が発酵性炭水化物源から抽出した炭水化物を含まず、発酵性炭水化物源がキビ、コメ、モロコシ、コーン、オオムギ、コムギ、ライムギ、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される工程。ある態様において、1以上の発酵性糖はブドウ糖である。ある態様において、発酵性糖のみから生成されるニュートラルベースアルコール(neutral base alcohol)は、砂糖醸造ベースと呼ばれる。
【0049】
様々な態様において、上記の方法のいずれかで麦汁を提供する工程は、(i)異性化ホップ酸の抽出を行うのに十分な時間、ホップの存在下で麦汁を煮沸しホップから麦汁とするサブ工程;(ii)麦汁を沸点以下、特に発酵温度まで冷却するサブ工程;及び(iii)麦汁からホップを除去して、液体のホップ麦汁(hopped wort)を生成するサブ工程;をさらに有することができる。ある態様において、麦汁は、少なくとも2分間、最大で少なくとも2時間煮沸することができる。発酵温度は、酵母による麦汁中のデンプン及び糖のアルコールへの発酵が起こり得る任意の温度とすることができる。発酵に利用する酵母の同一性及び特徴、及び/又は産生するFBのタイプに基づいて発酵温度を選択することは、十分に当業者の能力の範囲内である。さらなる態様において、1以上のホップ酸の少なくとも一部を中和し、ホップ酸塩に変換するのに十分な量のアルカリ処理剤をブライトビールに添加し;アルカリ処理ブライトビールからホップ酸塩の少なくとも一部を除去することによりホップ麦汁の発酵から得られるブライトビールを処理して、光触媒アルファ酸生成物、特に3-メチルブト-2-エン-1-チオールを除去し、それにより精製ブライトビールを製造することができる。ある態様において、分離工程は、ナノろ過及び/又は逆浸透ろ過システムを用いて行われる。
【0050】
様々な態様において、FB内の微生物汚染物質を死滅させるのに用いられるインラインUV処理システムは、(a)FB流を運ぶパイプシステム;(b)FB流をUV光で照射するように構成される1以上のUV処理装置;(c)フロー又は時間遅延機構;及び(d)UV処理装置の各々を通るFB流の流速を調節するフロー又は時間遅延機構と電子通信するコントローラ、例えば中央プログラマブルロジックコントローラ;を有することができる。
【0051】
様々な態様において、UV処理装置の各々は、醸造水、麦汁;ブライトビール、清澄ブライトビール;アルカリ処理ブライトビール;が挙げられるがこれらに限定されない出発材料;ベースアルコール、NMB、グルテン低減ベース、GFB、GNS、又はワインベースが挙げられるがこれらに限定されない精製FB、並びにそれから生成される任意のFMB又は飲用可能なFB製品からなる群から選ばれる任意のFB製品を処理するように構成することができる。ある態様において、インラインUV処理システムは、麦汁をUV光で照射するUV処理装置、及び缶詰め、瓶詰め、又は樽詰めの前に、精製FB、FMB、及び/又は他の飲用可能なFBをUV光で照射するUV処理装置を有することができる。
【0052】
様々な態様において、インラインUV処理システムは、FB流から酸性同族体を中和及び除去するインライン苛性注入システム(in-line caustic dosing system)と組み合わせることができる。ある態様において、インライン中和は、(a)FB流を運ぶパイプシステム;(b)FB流のpHを検出する1以上のpHメータ、又は処理済みFB流のpHを検出する1以上のpHメータ、又はその両方;(c)アルカリ処理剤を収容するアルカリ容器;(d)制御量のアルカリ処理剤をFB流に導入する計量手段;及び(e)1以上のpHメータ及び計量手段と通信するコントローラ、例えば中央プログラマブルロジックコントローラ;を有することができる。計量手段は、計量ポンプ又は液体フローコントローラとすることができる。ある態様において、インライン苛性注入システムは、アルカリ処理剤をFB流に均質化する混合手段をさらに有する。混合手段は、インラインミキサー、保持配管、及びインライン混合容器、又は再循環システムを有することができる。ある態様において、インライン苛性注入システムは、FB流、処理済みFB流、又はその両方の導電率を検出する導電率計をさらに有してもよい。
【0053】
様々な態様において、FB(その非限定的な例は、酸性同族体を含むブライトビールである)は、以下の工程によるインライン苛性注入システム及び少なくとも1つの分離装置を有するインライン中和システム内で中和することができる:(1)酸性同族体を有するFB流をインライン苛性注入システムに導入する工程;(2)pHメータを用いてFB流のpHを検出する工程;(3)コントローラを用いて、酸性同族体の一部、大部分又は全てを中和するのに十分なアルカリ処理剤の中和量を決定する工程;(4)中和量のアルカリ性処理剤をアルカリ容器からFB流に分注し、処理済みFB流を形成して、酸性同族体の一部、大部分又は全てを塩に形成する工程、及び(5)酸性同族体の塩の少なくとも一部をFB流から分離する工程。ある態様において、インライン苛性注入システムは、アルカリ処理剤が導入されてFB流に混合される場所の下流の位置でFB流のpHを検出するpHメータ又は処理済みFB流のpHを検出するpHメータ、もしくはその双方を有することができる。処理ブライトビール流の検出pHをコントローラによって用いて、アルカリ処理剤の十分な中和量を決定することができる。様々な態様において、処理ブライトビール流のpHは、FB流内の1以上の酸性同族体のpKa値によって選択又は決定される。ある態様において、少なくとも1つの分離装置は、上記のように、1以上のろ過又は除去システムをさらに有することができる。ある態様において、インライン苛性注入システムは、ナノろ過及び/又は逆浸透ろ過システムを有することができる。
【0054】
様々な態様において、インライン苛性注入システム又はUV処理システム内で、FB流の量は、質量流量又は体積流量を有することができ、アルカリ処理剤の中和量は、質量流量又は体積流量を有することができる。ある態様において、FB流又はアルカリ処理剤の質量流量又は体積流量は、実質的に一定とすることができる。ある態様において、FB流又はアルカリ性処理剤の質量流量又は体積流量は、FB流の検出pH、FB流の現在の質量流量又は体積流量、及び/又はFB流の質量又は単位体積にさらされるUV光の所望の線量が挙げられるがこれらに限定されない要因に基づいて、検出及び調整することができる。
【0055】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明から当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】
図1は、ビールを醸造する一般的なプロセスを例示するフローチャートを示す。
図2は、マッシング工程なしでビールを醸造する一般的なプロセスを例示するフローチャートを示す。
【
図2】
図3は、アルファ酸、ベータ酸、及びそれらの構成要素の化学構造を示す。
図4は、ホップ酸を含む麦汁を沸騰させた際のフムロンのイソフムロンへの変換を例示する反応スキームを示す。
【
図3】
図5は、UV光の存在下でのイソフムロンの分解の結果としての3-メチルブト-2-エン-1-チオールの生成を例示する反応スキームを示す。
【
図4】
図6Aは、麦汁をUV光で照射して、発酵前に麦汁を処理、消毒、又は殺菌する例示的な方法を例示するフローチャートを示す。
図6Bは、ブドウ糖/水麦汁をUV光で照射して、発酵前に麦汁を処理、消毒、又は殺菌する例示的な方法を例示するフローチャートを示す。
【
図5】
図7は、さらに処理して飲用可能な発酵飲料を形成する前に、ブライトビールをUV光で照射して、ブライトビールを処理、消毒、又は殺菌する例示的な方法を例示するフローチャートを示す。
【
図6】
図8は、苛性溶液計量ポンプを使用するインライン連続中和システムを用いて、FB溶液中の有機酸を中和する苛性注入システム及びプロセスの概略図を示す。
【
図7】
図9は、アルカリ処理工程及び少なくとも1つのUV処理工程を有する、麦汁を発酵させて最終的に飲用可能なFBを生成する例示的なプロセスを例示するフローチャートを示す。
【発明の詳細な説明】
【0057】
定義
本明細書で用いるとき、「及び/又は」という用語は、実体のリストの文脈で用いる場合、実体が単独で又は組合せて存在することを意味する。したがって、例えば、「A、B、C、及び/又はD」という句は、A、B、C、及びDを個別に含むが、A、B、C、及びDのありとあらゆる組合せ及び部分的な組合せも含む。
【0058】
本明細書で用いるとき、「ブライトビール(bright beer)」(「若いビール」又は「グリーンビール」ともいう)という用語は、酵母をデカント、ろ過、又は他の方法で除去した後の、粗の飲料グレードのエチルアルコール含有発酵液体製品を意味する。
【0059】
「アルカリ処理ブライトビール」という用語は、アルカリ処理剤で中和又は処理して酸性同族体の塩を形成した後のブライトビールの溶液をいうが、塩は溶液から分離されていない。「UV処理ブライトビール」という用語は、UV光で照射したブライトビール又はアルカリ処理化ブライトビールの溶液をいう。
【0060】
本明細書で用いるとき、「苛性(caustic)」という用語は、水と相互作用して完全に解離して水酸化物イオンを生成し、強塩基性pHを有する溶液を形成する化合物を意味する。このような化合物には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、及び水酸化ルビジウムなどの第I族および第II族の水酸化物を挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書で用いるとき、「清澄発酵飲料(clarified fermented beverage)」に関して「清澄(clarified)」という用語は、麦汁、ビール、又は他の発酵飲料から固形物を除去する任意のプロセスを表す醸造業界内の一般的な用語を指すことができる。本発明によれば、発酵飲料、又は精製発酵飲料の清澄は、任意の機械的、化学的、又は物理的分離技術を用いて達成することができる。非限定的な例として、限外ろ過;逆浸透ろ過;ナノろ過;粒状活性炭の分離;カラム蒸留;真空蒸留;多段フラッシュ蒸留;多重効用蒸留;蒸気圧縮蒸留;イオン交換クロマトグラフィー、特に陽イオン交換クロマトグラフィー;重力;遠心分離;デカンテーション;凍結融解システム;太陽蒸発システム;及び逆電気透析が挙げられる。
【0062】
本明細書で用いるとき、「同族体(congener)」という用語は、発酵中に生成する所望のタイプのアルコールであるエタノール以外の物質であり、発酵飲料内に少量存在することができる。従来の同族体の例として、メタノール、アセトン、アセトアルデヒド、エステル、タンニン、アルデヒド、及びその他の有機化合物などの化学物質がある。
【0063】
本明細書で用いるとき、「酸性同族体」という用語は、有機酸を意味し、その例として、発酵飲料の味又は匂いに影響を及ぼすことができる、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酒石酸、及び酪酸を挙げることができる。「酸性同族体」という語句は、発酵飲料に存在する全ての酸又は有機酸を指す場合もあれば、単一の酸又は有機酸に至るまで、存在する酸又は有機酸のサブセットを指す場合もある。
【0064】
本明細書で用いるとき、「発酵飲料」(FB)という用語は、エチルアルコールを含むか含まないかにかかわらず、典型的には酵母が除去された後の、任意の発酵性糖源からの発酵の生成物である液体飲料溶液を意味する。FBとして、アシドフィリン、アグド(agkud)、アレベリー(aleberry)、アマシ(amasi)、アレベリー(aleberry)、アマザケ(amazake)、アポ(apo)、アラ(ara)、バハリナ(bahalina)、ベイス(bais)、バシ(basi)、ビール、ビグネイワイン、ビックル(bikkle)、バイオネード(bionade)、ブランド(blaand)、ボージ(boj)、ボーザ(boza)、ブロットトランク(brottrunk)、カルピス(Calpis)、カウイム(cauim)、チャン(chhaang)、チバークシェークシェーク(Chibuku Shake Shake)、チカ(chicha)、シードル(cider)、コイオールワイン(coyol wine)、ドゥーグ(doogh)、デュハットワイン(duhat wine)、ファスブラース(fassbrause)、ジンジャービール(ginger beer)、枸杞酒(gouqi jiu)、ハンディア(handia)、ハルダリエ(hardaliye)、黄酒(huangjiu)、イブワツ(ibwatu)、インタス(intus)、ジャボル(jabol)、ジュン(jun)、カバルワラン(kabarwaran)、カシリ(kasiri)、ケフィア(kefir)、キルジュ(kilju)、キヌティル(kinutil)、紅茶キノコ(kombucha)、馬乳酒(kumis)、クバス(kvass)、クウェテ(kwete)、ランバノグ(lambanog)、ラッシー(lassi)、マゲウ(mageu)、麦芽飲料(malt beverage)、麦芽飲料(malt drink)、マツン(matzoon)、マウビー(mauby)、ムベージ(mbege)、メリッサ(merisa)、ネラ(neera)、ニハマンチ(nihamanchi)、オシクンドゥ(oshikundu)、ペレック(palek)、パームワイン(palm wine)、パンガシー(pangasii)、パラカリア(parakaria)、ペリー(perry)、ポドピウェーク(podpiwek)、プルノ(pruno)、プルケ(pulque)、プル(purl)、レジュベラック(rejvelac)、日本酒、リャジェンカ(ryazhenka)、シャルガム(salgam)、シッケ(sikye)、タプイ(tapuy)、テフイノ(tejuino)、テパチェ(tepache)、テスギノ(tesguino)、スフォン(thwon)ティビコス(tibicos)、ティスウィン(tiswin)、トンバ(tongba)、トノ(tono)、チューバ(tuba)、ウムクォンボティ(umqombothi)、ワイン、及びゼチカ(zincica)が挙げられるが、これらに限定されない。また、「発酵飲料」という用語は、蒸留してスピリッツ酒を形成するFBも含む。
【0065】
本明細書で用いるとき、「風味付き麦芽飲料(flavored malt beverage)」(FMB)という用語は、消費可能な飲料製品を製造するために、ニュートラルモルトベース(neutral malt base)がろ過され、処理され、加工された後に形成される最終麦芽飲料製品を意味する。
【0066】
本明細書で用いるとき、「グルテンフリー」という用語は、ビール組成物が実質的にグルテンを含まないことを意味する。グルテンフリーベース(GFB)は、グルテンを含まない、穀物を含む、発酵可能な糖源から糖を発酵させることによって調製することができる。このようなグルテンフリーの穀物には、キビ、コメ、モロコシ、ソバ、及び/又はコーンが含まれるが、これらに限定されない。本発明によれば、GFBは、麦芽、特に麦芽大麦又はホップ材料の存在なしで調製される。
【0067】
本明細書で用いるとき、「グルテン低減」又は「グルテン除去」という用語は、ビールがグルテンを20ppm未満で含有することを意味する。通常、グルテン低減及びグルテン除去ビールは、グルテンを実際に含む大麦、ライ麦、及びその他の発酵性糖源から調製されるが、発酵が完了した後に飲料からグルテンを除去する。しかしながら、グルテン低減飲料及びグルテン除去飲料は、合計で20ppm未満の最小限のグルテンを含む発酵性糖源から調製することができる。
【0068】
本明細書で用いるとき、「マッシュ(mash)」又は「マッシング(mashing)」という用語は、麦芽に典型的に存在するデンプンを、酵母による発酵に適した単糖類、二糖類、及び三糖類を含む低次の糖分子に変換し、エチルアルコールを生成するプロセスを意味する。
【0069】
本明細書で用いるとき、「中和する(neutralize)」又は「中和する(neutralizing)」という用語は、発酵飲料中の酸(有機酸を含む)の少なくとも一部をアルカリ処理剤で中和して、そこから塩(有機塩を含む)を形成することを意味する。
【0070】
本明細書で用いるとき、「ニュートラルモルトベース(neutral malt base)」(NMB)又は「麦芽飲料ベース(malt beverage base)」という用語は、ブライトビール又は他の発酵飲料のろ過、処理及び/又は脱色の結果として形成されるエチルアルコール含有液体を意味する。本発明によれば、本発明の方法及びシステムによって生成するNMBは、無色、無味、及び/又は無臭である。
【0071】
本明細書で用いるとき、「官能的に純粋な」という用語は、たとえ中和及び/又は分離後も有機酸性同族体の一部が酸性形態で依然存在していたとしても、中和される前にFB中にもともと存在していた有機酸性同族体からの知覚可能な味又は匂いが実質的に存在しない、中和FB又は精製FBをいう。
【0072】
本明細書で用いるとき、「精製発酵飲料」に関する「精製(refined)」という用語は、発酵飲料内の1以上の酸性同族体の一部又は全てがアルカリ処理剤によって中和されて塩を形成し、次いで、中和した発酵飲料から塩の一部又は全部を除去して、精製発酵飲料を生成する本発明の方法及びシステムによって生成した発酵飲料をいうことができる。本発明によれば、精製発酵飲料は、発酵中に自然に生成する酸性同族体の一部又は全ては取り除かれていない、麦汁、ビール、又は他の発酵飲料内の固体に関して清澄化した清澄化発酵飲料から調製することができる。本発明によれば、精製発酵飲料は、固形物のみが除去された発酵飲料から、又は前もって清澄化していない発酵生成物から調製してもよい。本発明によれば、分離技術又は装置が塩に加えて、清澄化の際に通常除去される固形物を除去する限り、発酵飲料を同時に清澄化及び精製してもよい。本発明によれば、清澄ビールを形成することなく、処理ブライトビールを精製して精製ビールを形成してもよく、精製ビールを後で清澄して清澄ビールを形成してもよい。
【0073】
本明細書で用いるとき、「滴定酸度(titratable acidity)」という用語は、通常、グラム/リットルで表される、溶液中の滴定可能な酸の総質量の測定値である。滴定可能な酸の総質量には、ヒドロニウムイオンと、酢酸(CH3COOH)などのまだプロトン化されている弱酸の両方を含む。醸造業界では、飲料内の知覚可能な酸度を評価するために、滴定酸度を用いて、任意のFB、GFB、グルテン低減FB又はグルテン除去FB、NMB、FMB、飲用蒸留酒、又はその他の中和製品に存在する有機酸を定量化することがしばしばある。
【0074】
本明細書で用いるとき、「麦汁」又は「麦汁抽出物」という用語は、酵母で発酵させてエチルアルコールを生成するのに適したマッシング及び/又は調理プロセスから得られる、糖分に富む溶液又は混合物を意味する。
【0075】
消毒又は滅菌されたビールを製造するための発酵プロセス
本発明は、原料発酵生成物(ブライトビール)を含むがこれに限定されない発酵飲料(FB)溶液;風味付きFB(FMB)及びハードセルツァーを含むがこれらに限定されない市販及び/又は飲用可能な発酵飲料;及び/又はそのような飲用可能なFB製品を調製する過程で形成される中間体;を処理、消毒、又は殺菌する方法及びシステムを提供する。異性化ホップ酸を含むFB組成物をUV光で処理すると、得られたチオールがビールに不快な「軽い刺激」の味を与えることがあり、これをUV処理FBから分離することができる。その結果、発酵から直接発生する可能性がある微生物汚染物質、及び/又は市販及び/又は飲用可能なFBを生成するのに利用する装置、構成要素、及びプロセスから導入される微生物汚染物質が消毒され、一部の態様では滅菌されたFB製品が得られる。
【0076】
ニュートラル・モルト・ベース(NMB)の生産に用いられる発酵産物を形成する伝統的な方法は、当業界で広く知られており、特に米国特許第4,440,795号、同第5,294,450号、同第5,618,572号、及び同第7,008,652号、並びに米国特許公開公報第2014/0127354号に詳細に記載されており、それらの開示は、参照によりその全体が組み込まれる。当業者は、発酵生成物自体を「ビール」又は「ブライトビール」と呼ぶことができるが、これらは発酵生成物を説明するための一般的な用語であり、必ずしもビールとして市販されている飲用可能なFBではないことを理解するであろう。
【0077】
一般化したビール製造プロセスのフローチャートを
図1に示す。このプロセスは、De Keukeleire (2000) Quimica Nova 23(1): 108-112にも詳述され、その開示は参照によりその全体が組み込まれる。一般に、ビールを製造するには、まず麦芽を調達する必要がある。麦芽は、ビール及び他の醸造飲料を製造するのに適した、当技術分野で知られている任意の従来型のものであってもよい。適切な麦芽の非限定的な一例は、Briess Malt & Ingredients Co.から入手可能な「ブルワーズモルト(Brewers Malt)」である。その後、麦芽を脱イオン水と混合し、高温で加熱してマッシュを生成する。この段階で、マッシュにはさまざまな麦芽由来の発酵性糖(例えばマルトースやマルトトリオースが挙げられるがこれらに限定されない)を含み、それらは酵母によってエチルアルコール、並びに酵母によってはエチルアルコールに分解することができない、いくつかの麦芽由来の非発酵性糖類(例えばマルトテトラトース及びマルトペンタトースが挙げられるがこれらに限定されない)に発酵される。
【0078】
マッシュ製品を生成した後、醸造業界で知られている、マッシュ製品をろ過又はデカンテーションする任意の装置又はプロセスを用いて、しばしば固形物をマッシュ製品から除去する。液状ろ液はまた、口語的に麦汁又は麦汁抽出物として知られている糖分の豊富な発酵組成物を生成するための、当業界で知られているいくつかのプロセスのいずれかによって改変することができる。そのようなプロセスには、デンプンを分解できる酵素を添加すること、マッシュを連続的に加熱してデンプンが糖へ化学変換するのを触媒すること、及び追加の発酵性糖(例えばブドウ糖、ショ糖、及び/又はコーンシロップ)及び/又はホップコーン、異性化前のペレット化ホップ、及び/又は溶媒抽出濃縮ホップエキスが挙げられるがこれらに限定されない広範囲の種々の製品を包含することができる「ホップ材料」で補うことが挙げられるがこれらに限定されない。ホップは通常、存在する実質的な量の麦芽に比べて麦汁のごく一部に過ぎないが、ホップ材料は、ビール製造プロセスと最終的な飲用可能なビール製品にいくつかの影響を与える、定性的に主要な成分とすることができる。このような影響には、タンパク質及びポリペプチドとの不溶性複合体の形成、ビールのコロイド安定性の向上、細菌汚染物質に対する殺菌、及び苦味の寄与が挙げられるがこれらに限定されない。一方、ホップ材料内に存在するホップ酸は、ビール製品に軽い風味と臭いを引き起こすチオールに変換することができる。
【0079】
次いで、酵母を麦汁に添加して発酵を開始することができ、発酵性糖が残らなくなるまで続ける。通常、発酵プロセスは7~11日間続けることができるが、発酵時間は、最終的には温度を含むがこれに限定されない多くの要因に依存する。通常、温度が高いほど発酵が速くなるが、過度の熱はいくつかの問題を引き起こす可能性があり、多くの場合避けられる。発酵完了後、アルコール含有発酵生成物からの酵母を生成物から沈降させ、従来のデカンテーション、遠心分離、及び/又はろ過技術によって除去し、飲用不能なブライトビールを形成する。
【0080】
ブライトビールは、存在する有機酸の同一性及び総濃度に基づいて、典型的にはpHが約4.0±0.25であり、通常は着色、香りがあり、生の発酵生成物から除去されなかった小さな沈殿物を含む。ジアセチルやペンタン-2,3-ジオンなど、ブライトビールの不快な味や臭いの原因となる非ホップ酸化合物は典型的には、該化合物が10億分の1(ppb)の濃度範囲又はそれ以下に達するまで、通常、数日から数週間の範囲の熟成期間中に分解する。さらに、ブライトビールを物理的に処理して、時間の経過とともに分解しない他の不純物を除去することができる。販売用に製造したビール及びその他の発酵飲料(FB)を瞬間パスツーリゼーションして、殺菌包装直前に該製品を殺菌することができる。
【0081】
あるいは、
図2に示すように、ブドウ糖などの容易に発酵可能な単純な糖を有する溶液を醸造水と組み合わせることによって、マッシュすることなく麦汁を生成することができる。麦汁をパスツーリゼーションし、例えばホップなどの麦芽抽出物、酵母、及びその他の任意の成分と組み合わせて発酵を開始する。その後、発酵製品は、
図1について上述したプロセスと同様に、ろ過、熟成、及び包装することができる。
【0082】
ホップとホップ酸
ホップ材料の存在下で醸造したFBの味は、いくつかの異なる揮発性及び非揮発性化合物の官能的印象に部分的に由来する可能性がある。ホップ材料の中で、揮発性化合物は一般にホップ油(ホップに0.5~3%)に含まれており、ホップポリフェノール画分(3~6%)に存在する非揮発性物質はテイスティング中の完全な口当たりに寄与する。上述のDe Keukeleireを参照のこと。ホップを含む麦汁の従来の沸騰又は瞬間パスツーリゼーション中に、多くの成分が揮発又は酸化し、ホップに存在する元の化合物とは大きく異なるいくつかのホップ由来の成分が形成する。特に、アルファ酸(フムロン)及びベータ酸(ルプロン)などのホップ酸は、苦味の官能プロファイルの最も重要な要因の一部である。アルファ酸及びベータ酸はそれぞれ、疎水性アミノ酸であるロイシン、バリン、及びイソロイシンに由来する側鎖の性質に基づいて異なる3つの構成要素を含む。これらの成分を
図3に示す。アルファ酸とベータ酸の両方とその成分は、純粋な状態では淡黄色がかった固体として存在し、水への溶解度が低く、苦味はほとんどない。さらに、ホップ酸は、乳酸、酢酸、及びその他の有機酸を生成する細菌ではないが、本来の形でグラム陽性菌の成長を強力に阻害する。
【0083】
しかしながら、アルファ酸及びベータ酸は両方ともに修飾、特に酸化反応及び/又は光触媒作用によって形成するアルファ酸及びベータ酸の反応生成物であって、たとえアルファ酸及びベータ酸の反応生成物がFB自体を酸化から保護するとしても不快な官能特性を有する反応生成物に敏感である。アルファ酸は、
図4の反応スキームに示すように、麦汁(wort)の加熱プロセスで特にイソフムロンへの熱異性化を起こしやすい傾向にある。各フムロンは、2つのエピマー フムロン、cis-イソフムロン及びtrans-イソフムロンを生成し、結果として6つの主要なイソアルファ酸(cis-イソフムロン及びtrans-イソフムロン、cis-イソコフムロン及びtrans-イソコフムロン、cis-イソアドフムロン及びtrans-イソアドフムロン)を生成する。イソフムロン類は全て強烈な苦味があり、通常、市販のビールに約15ppm~約100ppmの範囲で含まるが、イソフムロン類からの苦味は残留糖で修飾され、「心地よい苦味」となることができる。
【0084】
イソアルファ酸はUV光の存在下で分解されやすく、それが「光に打たれた(lightstruck)」風味の形成につながることは、醸造業界全体で広く知られている。
図4に示すように、イソアルファ酸は、C(4)位の3級アルコールと同じくC(4)位のアミノ酸側鎖のカルボニル基を有してなるアシロイン基を有する。イソフムロン類をUV光で活性化すると、ノリッシュI型反応による結合開裂が生じ、ケチル-アシルラジカル対を生成する。その後、アシルラジカルから一酸化炭素が失われ、得られた断片がチオールラジカルと再結合することで、デヒドロフムリン酸とともに、それ自体が有害な分解生成物である(米国特許第5,073,396号を参照のこと。その開示はその全体が参照として本明細書に組み込まれる)「スカンクのチオール(skunky thiol)」としても知られる化合物、3-メチルブト-2-エン-1-チオールを形成することができる。3-メチルブト-2-エン-1-チオールを生成する反応スキームを
図5に示す。風味の閾値が非常に低いため、わずか数ppbの濃度でもFBの品質が不可逆的に損なわれる。
【0085】
結果として、アルファ酸を有する組成物は一般に、スカンクのチオールの形成を引き起こさずにUV光を用いて消毒又は殺菌することはできない。アルファ酸を含むことができるそのような組成物の非限定的な例として、麦汁、麦汁抽出物、ブライトビール、ニュートラルベースアルコール、並びにFMB及びハードセルツァー飲料を含むがこれらに限定されない飲用可能なFB製品が挙げられる。代わりに、組成物を煮沸又は瞬間パスツーリゼーションにより消毒又は殺菌することができるが、いずれかのプロセスで熱を加えると、フムロンがイソフムロンに変換され、UV光にさらされるとFBがスカンク臭(skunking)しやすくなる。
【0086】
アルファ酸とは対照的に、ベータ酸は、芳香族第三級アルコールを含まないため、イソ酸を形成することができず、したがってチオールを形成する光触媒作用を受けにくい。しかしながら、ベータ酸は、時間の経過とともに、増加し且つ潜在的に望ましくない苦味を引き起こす可能性がある好気性酸化反応に敏感である。このような分解生成物には、ヒドロキシトリシクロルプロン(両方のエピマー)、デヒドロトリシクロルプロン(両方のエピマー)、ヒドロペルオキシトリシクロルプロン(両方のエピマー)、及びノルトリシクロルプロン(例えば、Mikyska, A., et al., Acta Horticulturae (2013) 1010: 221-230及びKrofta, K. et al., Kvasny Prum 59: 306-312を参照のこと。これらの開示はその全体が本明細書に参照として組み込まれる)を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0087】
UV光での発酵製品の処理
ある態様において、本発明は、ブライトビール、FB中間体、ベースアルコール、FMB及びその他の飲用可能なFBが挙げられるがこれらに限定されないFB組成物を紫外(UV)光で照射することによってFB組成物を処理、消毒、及び/又は殺菌する方法、及びホップ酸から形成される、組成物に軽い刺激と不快な官能体験を与えるフレーバーノートや臭気を除去する方法を提供する。他の態様において、ホップ酸がFB組成物内に存在するとき、FB組成物をUV光で照射する前に、ホップ酸を中和してFB組成物から除去することができる。
【0088】
したがって、他の態様において、発酵に利用される成分の少なくとも1つをUV処理する方法に従って、ブライトビールを発酵させることができる。ある態様において、麦汁を、発酵混合物に添加される前にUV光で照射することができる。ある態様において、麦汁を、ろ過したマッシュ製品から形成する。他の態様において、醸造水を、ブドウ糖及び麦芽抽出物と組み合わせる前にUV処理する。ある態様において、麦汁は、麦汁がUV光で照射される時点で、ホップ材料、特にホップ酸を含まない。他の態様において、麦汁は、麦汁がUV光で照射される時点で、ホップ材料、特にホップ酸、より具体的にはフムロンを含む。さらなる態様において、ホップ酸をUV処理麦汁から分離する。他のさらなる態様において、発酵完了後、ホップ酸をブライトビールから分離する。
【0089】
非限定的な一例において、UV光を利用して、発酵に用いられる麦汁を処理、消毒、又は殺菌してブライトビールを生成し、その後処理してニュートラルベースアルコールを形成することができる。そのような方法は、
図6Aに示すように、(a)キビ、コメ、モロコシ、コーン、大麦、小麦、ライ麦、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる発酵性炭水化物源から抽出した1以上の発酵性炭水化物(デンプン及び糖)を有するマッシュから形成される麦汁を提供する工程;(b)麦汁又は麦汁抽出物内の微生物汚染物質の少なくとも一部を死滅させるのに十分な時間、
図6Aにhνとして示す紫外(UV)光で麦汁を処理し、UV処理麦汁を形成する工程;(c)UV処理麦汁に酵母を加えて発酵組成物を形成する工程;及び(d)発酵組成物中の発酵性炭水化物(デンプン及び糖)の実質的に全てを発酵させてエチルアルコールにし、それによって発酵生成物を形成する工程;を有することができる。ある態様において、酵母を添加する際に発酵を開始する前に、ホップをUV処理麦汁に任意に添加することができる。
【0090】
別の非限定的な例において、麦汁は、
図6Bに示すように、糖、好ましくはブドウ糖、及び水、好ましくは脱イオン又は逆浸透精製水の溶液から形成することができる。必要に応じて、ブドウ糖と組み合わせる前に、水自体をUV光で照射して処理することができる。ある態様において、ブドウ糖及び水から形成される麦汁を利用して、非限定的な例としてハードセルツァー飲料を含む、風味付き飲用可能なFBの製造に利用するグルテンフリーベースを形成することができる。ある態様において、
図6Aに示すプロセスと同様に、ブドウ糖/水の麦汁を酵母と組み合わせて発酵混合物を形成することができる。ある態様において、発酵混合物を形成する際に、酵母と共に、ブドウ糖/水の麦汁を、麦芽抽出物、及び任意にホップと組み合わせることができる。ある態様において、麦芽抽出物はキビ麦芽抽出物である。
【0091】
他の態様において、UV光を利用して、風味付き麦芽飲料、ハードセルツァー、又はニュートラルベースアルコールから形成する他の製品、特にホップ材料を含まない製品を処理、消毒、又は殺菌することができる。ニュートラルベースアルコール、特にニュートラルモルトベースは、米国特許第4,440,795号、同第5,294,450号、同第5,618,572号、及び同第7,008,652号、並びに米国特許公開公報第2014/0127354号(その全体を参照により組み込まれる)に記載されるプロセスのいずれかのプロセスに従って形成することができる。
【0092】
UV光を、食品及び水処理産業で周知である流体放射線処理システムを用いて、本明細書の出発材料及び/又はFB組成物のいずれかに適用することができる。そのような流体放射線治療システムを説明するいくつかの特許及び特許公開公報として、米国特許第4,317,041号;同第4,482,809号;同第4,872,980号;同第5,006,244号;同第5,418,370号;同第5,539,210号;同第5,846,437号;同第5,866,910号;同第5,994,705号;同第6,015,229号;同第6,916,452号;同第7,166,850号;同第7,390,225号;同第7,695,675号;同第7,985,956号;同第8,167,654号;及び同第8,766,211号が挙げられる。これらの開示は、その全体が参照により組み込まれる。
【0093】
一般に、サンプルにUV光を当てて微生物集団の標的「死滅」に影響を与え、特定の表面、組成物、又はサンプルの処理、消毒、又は殺菌を行う。様々な態様において、微生物汚染物質の少なくとも約90%が不活性化される。微生物汚染物質の90%を不活化することは、ビール内の微生物数をlog-1減少させることに相当する。ある態様において、ビール内の微生物汚染物質の少なくとも約log-2(99%)部分、例えば、少なくともlog-3(99.9%)、log-4(99.99%)、log-5(99.999%)、又はlog-6(99.9999%)を消毒するのに十分な時間、ビールをUV光で照射する。ある態様において、UV光による処理は、組成物内の微生物の少なくともlog-3死滅(消毒)に影響を与える。ある態様において、UV光による処理は、サンプル内の微生物の少なくともlog-5死滅(消毒)に影響を与える。
【0094】
不活化した水性組成物、場合によってはアルコール含有組成物内の微生物適用量は、照射する光の波長、線量、及び時間、伝達の伝染性、及び汚染の初期レベルを含むがこれらに限定されない複数の要因に依存する。
【0095】
ある態様において、UV光を1以上の波長で照射することができる。単色又は多色UV光を放射するランプは当業界で周知である。ある態様において、放出されたUV光は、UV-C範囲(~200nm~~280nm)の波長、例えば250~260nmの波長を有する少なくとも1つの光波を含む。特に、波長254nmのUV光は微生物の細胞壁又はエンベロープを透過し、微生物のDNA内にあるチミンの不可逆的な二量体化を引き起こし、微生物の再生を妨げることができる。
【0096】
ある態様において、UV光は、微生物によって栄養素として用いられる有機炭素源をヒドロキシルラジカルによって酸化することができる、真空-UV範囲(200nm未満)の波長、特に185nmの波長を有する1以上の光波を含む。ある態様において、UV光は、UV-C範囲、特に254nm、及び真空-UV範囲、特に185nmの光波を含む。
【0097】
ある態様において、微生物汚染物質を含む出発材料又はFB組成物を多色光で照射することができる。多色光源から照射する波長の非限定的な例には、光の一部が可視スペクトルにある場合であっても、200nm~600nmの範囲が含むことができる。多色UV光は、単色UV光よりもはるかに多くのUVエネルギーで放射でき、高流量の材料を処理できるコンパクトな処理システムで利用できる。ある態様において、多色UV光は、少なくとも250nmから260nmまでの範囲の少なくとも1つの波長、特に254nmである光波を含む。
【0098】
流体要素が受けるUV線量は、UV強度と露光時間の積として定義される。デバイスを出る流体要素が受けた累積UV線量は、各位置で受けた個々の線量の合計である。UV強度はUV光源からの距離に応じて減衰するため、UV光源から遠い領域から光源に近い強度の高い領域に流体要素を混合することが望ましい。
【0099】
特定の理論に限定されるものではないが、微生物消毒の大きさは、液体組成物に適用されるUV光の線量に比例することができる。一般に、適用されるUV光の線量は、UV光の強度と滞留時間との積として定義され、平方センチメートルあたりのマイクロジュール(μJ/cm2)、又は同等に平方センチメートルあたりのマイクロワット秒(μW・s/cm2)で表すことができる。種々の態様において、適用される紫外線の線量は、少なくとも10μJ/cm2で最大で500,000μJ/cm2以上の範囲内の任意の値にすることができる。そのような線量の非限定的な例は、少なくとも50μJ/cm2、少なくとも100μJ/cm2、少なくとも500μJ/cm2、少なくとも1,000μJ/cm2、少なくとも2,500μJ/cm2、少なくとも5,000μJ/cm2、少なくとも10,000μJ/cm2、少なくとも50,000μJ/cm2、少なくとも100,000μJ/cm2、又は少なくとも250,000μJ/cm2である。様々な病原体の不活性化に必要なμJ/cm2での平均UV線量を以下の表1に示す。
【0100】
【0101】
組成物が受ける線量に影響を与える可能性のある要因として、流速、UV透過率、濁度、水の硬度(該当する場合)、及び組成物のpHを挙げることができるがこれらに限定されない。例えば、インラインシステムでは、組成物が受ける線量は流速に反比例すると考えられている。すなわち、インラインシステムを低速の流速で通過した組成物は、より速い流速でシステムを通過した組成物に比べてより高い線量のUV光を受ける。
【0102】
UV透過率は、組成物の出射光に対する組成物への入射光の比であり、通常、1cmの経路長について報告され、パーセンテージ(%UVT)として表される。例えば、脱イオン水又は逆浸透精製水は多くの場合、UVTが~99%である一方、牛乳などの組成物はUVTが0.0001%である。一般に、本発明の方法及びシステムに従ってUV光で照射した出発原料、最終飲料、及び/又はそれらの中間体は、組成に応じて、少なくとも0.001%UVT、少なくとも1%UVT、少なくとも30%UVT、少なくとも50%UVT、少なくとも65%UVT、少なくとも80%UVT、少なくとも95%UVT、又は少なくとも9%UVTを有する。
【0103】
同様の組成物特性である濁度(典型的にはネフェロメトリック濁度単位(NTU)で報告される)は、組成物中の懸濁物質の測定値であり、病原体がUV光と接触するのを遮蔽することによって微生物の死滅に影響を与えることができる。その結果、組成物がより濁るにつれて、より低い濁度を有する組成物と比較して、所望の微生物死滅を達成するために効果的により多くの用量が必要とされる。一般に、本発明の方法及びシステムに従ってUV光で照射された出発原料、最終飲料、及び/又はそれらの中間体は、5NTU未満の濁度を有することができるが、それにもかかわらず、より濁った組成物をUV光で消毒することができる。曝気を用いた濁った組成物のUV消毒方法の非限定的な例は、米国特許公開公報第2004/0213696号に記載され、この開示は、その全体が参照により組み込まれる。別の非限定的な例では、保持配管(以下でさらに詳述する)などの混合手段を利用して、UV光で照射しながら組成物をブレンド又は均質化することができる。
【0104】
さらに、水中に存在する可溶化した金属イオンも、微生物の死滅に関するUVシステムの性能に影響を与える可能性がある。例えば、鉄、カルシウム、及びその他の金属塩は、組成物のUVTに直接影響を与える可能性があり、システムコンポーネント上に残留物又はフィルムを形成することによって間接的に性能に影響を与える可能性がある。同様に、組成物のpHは、存在し得る塩及び他の成分が可溶化されるか、又は固体として懸濁されるかに影響を及ぼし得る。非限定的な例示的な発酵混合物、ブライトビール、加工発酵飲料、及びそれらの中間体のpHは、以下にさらに詳述する。
【0105】
ある態様において、微生物汚染物質の少なくとも一部を処理、消毒、又は殺菌するのに十分な時間は、少なくとも1秒、少なくとも5秒、少なくとも10秒、少なくとも15秒、少なくとも20秒、少なくとも30秒、又は少なくとも60秒の非限定的な例などの滞留時間とすることができる。
【0106】
望ましい微生物の死滅に影響を与えるのに十分な時間、UV光の選択された線量で、既知又は推定UVTを有する組成物を照射することができる放射線源及びシステムを選択できることは、十分に当業者の範囲内である。ある態様において、UV処理がインラインUV処理システム内のFB流に対して実行されるとき、システムは、FDAの2019年のグレード「A」パスツーリゼーション化牛乳条例(Grade “A” Pasteurized Milk Ordinance)の修正で施行されているように、UV光で処理した水をパスツーリゼーションと同等であるとみなすのに必要な基準のリストを満たすように構成することができる。注目すべきことに、この条例では、水全体が線量186,000μW・s/cm2(log-4アデノウイルス相当)で254nmの低圧UV光、及び120,000μW・s/cm2(log-4アデノウイルス相当)の中圧UV光を受けるようにUV光を少なくとも適用するようにUV消毒システムが少なくとも次のように構成されていること;流れの流量を調節し、全体の流れを最低限の所望の線量のUV光で処理することを保証する流量又は時間遅延機構;全ての粒子が最低限の線量を受けるようにフローを制限する自動フロー制御システム又は弁;250~280nmの殺菌スペクトルに対する感度を制限するためにフィルタリングされた、UVランプ毎に1つのセンサーを有する校正済みUV強度センサー;正確且つ信頼性ある線量測定を継続的に計算するリアルタイムUVT分析に基づく光調整;及び他の材料及び記録要件のうち、消毒済みの流れが未処理の流れと接触するのを防ぐ分流弁又は自動シャットオフ;を要求する。
【0107】
利用できる適切なインライン流体処理システムの非限定的な一例は、米国特許第8,766,211号に記載され、これは一般に、放射放出面を有する少なくとも1つのUV放射源及び該放射放出面から離間した流体放出開口部を有する少なくとも1つのノズル要素を有し、該流体放出開口部は、処理すべき流体を前記放射放出面の少なくとも一部に衝突させるように構成されている。特に、そのようなシステムは、流体の加圧流を受け取る流体入口;該流体入口と流体連通する流体処理ゾーン;該流体処理ゾーンに配置される少なくとも1つの細長いUV放射源;該少なくとも1つの細長い放射源に対して環状構成で配置される複数のノズル要素;及び処理される流体を排出する流体出口;を有することができ、各ノズル要素は、該少なくとも1つの細長い放射源の軸に対して実質的に軸方向に処理すべき流体に衝突するように構成される流体放出開口部を有し、該複数のノズル要素の該環状構成は、処理すべき流体を、前記少なくとも1つの細長い放射源の放射線放出部分の全長の半分よりも長く、実質的に軸方向に衝突するように配置される。上記のようなシステム、及び同様に流体組成物をUV光で処理できるその他のシステムは、Trojan UV Technologies Group ULC及びAquafine(商標)Corporationから市販されており、Aquafine(商標)SwiftBeverageシリーズ、Logicシリーズ、OptiVennシリーズ、及びAvantシリーズが挙げられる。
【0108】
他の態様において、UV光を照射して組成物を処理、消毒、又は殺菌すると、光触媒作用から形成される化合物、並びにその他の不純物を、任意の分離又はろ過装置を用いて除去することができる。分離装置は、光に打たれた(lightstruck)風味、中和した有機酸塩、未処理FBに元々存在するその他の同族体、及び小分子や金属キレート、タンパク質や核酸などの高分子、細菌及び/又はウイルスなどの微生物、及び微粒子が挙げられるがそれらに限定されない固形物を除去する1以上のフィルタを有することができる。フィルタの孔径は、ニュートラルベース及び/又は最終飲用可能な製品の所望の特性に基づいて選択することができ、1000ミクロン未満から1ミクロン未満(0.1ミクロン未満を含む)の範囲とすることができる。さらに、粗ろ過、マイクロろ過、ナノろ過、及び/又は限外ろ過;逆浸透ろ過;珪藻土ろ過;及び活性炭ろ過が挙げられるがこれらに限定されない1つ以上のろ過システムを利用することができる。ある態様において、後ろ過又は分離装置は、逆浸透ろ過装置を有することができる。他の分離装置として、イオン交換クロマトグラフィー、特に陽イオン交換クロマトグラフィー;重力;遠心分離;カラム蒸留、真空蒸留、多段フラッシュ蒸留、多重効用蒸留、及び蒸気圧縮蒸留用に構成される蒸留装置;及び/又はデカンテーションを挙げることができる。このような分離装置は、以下にさらに詳述する。
【0109】
他の態様において、UV光を利用して、ブライトビールを処理、消毒、又は殺菌することができる。そのような方法は、
図7に示すように、(a)アルコール含有液体部分及び酵母含有粒子部分を有する発酵生成物を提供する工程;(b)例えば、デカンテーション又は遠心分離によって粒子部分からアルコール含有液体部分を分離及び保持して、ブライトビールを形成する工程;(c)ブライトビール内の微生物汚染物質を低減、消毒、又は殺菌するのに十分な時間、ブライトビールをUV光で処理し、UV処理ブライトビールを形成する工程;を有することができる。ある態様において、上記の分離又はろ過装置のいずれかを用いて、光触媒生成物をUV処理ブライトビールから除去することができる。ある態様において、発酵生成物の生成に使用する麦汁は麦芽大麦由来の麦芽を有し、ブライトビールを処理してさらにニュートラルモルトベースを生成する。ある態様において、キビ、コメ、モロコシ、コーン、及びそれらの任意の混合物又は組み合わせからなる群から選ばれる、グルテンフリーの供給源由来の発酵性炭水化物から麦汁を形成し、得られたブライトビールを処理してさらにグルテンフリーベースを生成する。ニュートラルモルトベース及びグルテンフリーベース、並びにそれらを形成する方法を以下にさらに詳述する。
【0110】
発酵飲料のアルカリ処理
他の態様において、UV処理は、ベースアルコールから調製される風味付き麦芽飲料(FMB)、ハードセルツァー飲料、及び他の発酵飲料を飲むときに人の官能経験に悪影響を及ぼす可能性がある酸性同族体を除去する方法及びシステムと組み合わせることができる。このような酸は、意図した風味を妨害する可能性があり、酢酸の場合、酸味と臭気を与える可能性がある。
【0111】
酸は、穀物の麦芽化及びマッシングから発酵飲料中に自然に存在することが多い。マッシングプロセス中に、麦芽から沈殿したリン酸塩及びタンパク質が不溶性のカルシウム塩を形成する可能性があり、これはマッシュのpHの低下と強く相関する。さらに、いくつかの麦芽品種は、最終的にマッシュに移される高レベルの乳酸塩(South, J.B. “Variation in pH and Lactate Levels in Malts” (1996) J. Inst. Brew. 102: 155-159を参照のこと。その開示は、その全体が参照により組み込まれる)、酢酸塩、酪酸塩、プロピオン酸塩を含む。例えば、Southは、数種類の麦芽中の乳酸塩の濃度が麦芽100グラム(乾燥重量)あたり17.6~126.3mgの範囲であると測定した。乳酸塩の濃度は麦汁のpHに反比例し、最も高い乳酸塩濃度での5.59から最も低い乳酸塩濃度での6.02までの範囲である。特定の理論に拘束されるものではないが、酢酸塩、酪酸塩、プロピオン酸塩、及び乳酸塩の含量の増加の多くは、ラクトバチルス、ペディオバクター(Pediobacer)、及びアセトバクターが挙げられるがこれらに限定されない、マッシュ製品に存在する可能性のある多数のバクテリアに由来すると考えられている。
【0112】
ビール組成物から酸性同族体を中和及び除去する方法及びシステムは、米国特許第10,745,658号、PCT公開公報第2020/036932号、及び上記で引用した米国特許出願第16/927,744号に記載される。このような方法を利用して、無色、無臭、無味のベースアルコールを生成することができ、ベースアルコールに風味添加剤を混合して、FMB、ハードセルツァー、及び他の飲用可能な風味付き発酵飲料を形成することができる。一般に、1以上の有機酸性同族体を有するFB溶液から精製FB、特にニュートラルベースアルコールを生成するプロセスは、(a)FB溶液に含まれる1以上の有機酸性同族体を、滴定するか又は1以上の有機酸性同族体の少なくとも一部をその共役塩基に変換して有機塩を形成するのに十分な量のアルカリ処理剤をFBに添加する工程;及び(b)アルカリ処理FB溶液から有機塩を除去し、精製FBを製造する工程;を有することができる。ある態様において、FB溶液は、清澄化又は未清澄化ブライトビールである。
【0113】
FBから酸性同族体を中和及び除去するシステムの非限定的な一例は、
図8に示すようなインライン苛性注入システムである。インライン苛性注入システム110は、FB流1を精製FB6の流出に加工する。FB流1は、インライン苛性注入システム110に送られ、インライン苛性注入システム110におけるFB流1のpH処理後、得られた中和ブライトビール24を、後中和分離4で加工されて、有機酸の塩形態を除去又はろ過して、精製FB6を生成する。
【0114】
インライン苛性注入システム110は、計量ポンプ12として示す、容器14から2つのpH計の間に配置される配管システム16の接合部へ苛性溶液の量を計量する計量手段を含み、インライン苛性注入システム110に入るビール流20のpHを検出する第1のpHメータ18、及び苛性ストック溶液、例えば50%(w/v)水酸化ナトリウム又は50%(w/v)水酸化カリウムの添加後の処理FB流24のpHを検出する第2のpHメータ22を含む。該2つのpHメータ18及び22並びに計量ポンプ12は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)26とのデータ信号転送及び制御通信を行って、FB流のpHを検出し、苛性ストックの量を決定してFB組成物中の酸性同族体を中和し、ビール流20中の有機酸性同族体を中和するのに十分な目標pH範囲までFB流を中和するのに十分である、FB流に添加する苛性ストック溶液の量及び/又は速度を制御する通信及び制御ループ28を形成する。
【0115】
FB流20の流速を、FB組成物1を作製する上流の処理条件によって決定する。体積流速は通常一定であるが、いくらかの変動が予想される。本発明のある態様において、FB組成物1の上流のフローを保持容器内に捕捉し、より一定の体積速度で容器からインライン苛性注入システム110に送り込むことができる。保持容器は、インライン苛性注入システム110へのFB組成物20の流速を維持又は調節しながら、流入するFB組成物の変動を許容するのに十分な体積を有している。あるいは、圧力ポンプからの圧力下で溶液を調整する流量制御弁を用いて、十分な量の苛性アルカリ原液を制御することができる。
【0116】
典型的には、該苛性注入システムに流入するFB組成物のpHは約6.0未満である。ある態様において、該組成物のpHは、約5.0未満、又は約4.0未満、又は約3.0未満である。しかしながら、組成物のpHは、その中の酸性同族体の同一性及び濃度に従って変化させることができる。例えば、酢酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸のpKa値は、それぞれ4.75、3.86、4.87、及び4.82である。Smithが報告したように(上記の“Variation in pH and Lactate Levels in Malts”を参照のこと)、様々なモルト品種の乳酸塩濃度は、麦芽100gあたり17.6~126.3mgの範囲であった。pHメータ18で決定した苛性アルカリ投与システムに流入するFB組成物のpHに基づいて、PLC26は、計量ポンプ12によって流れに添加する苛性溶液の量を決定し、pHを目標pH範囲内に上昇させて有機酸性同族体を中和する。
【0117】
ある態様において、十分な量のアルカリ性処理剤は、FB組成物のpHを少なくとも約5.0、例えば少なくとも約5.5、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.5、6.8、7.0、7.5、8.0、8.2、又は8.5を含み、少なくとも約8.7を含む値に上昇させるのに十分な量である。ある態様において、十分な量のアルカリ性処理剤は、FB組成物のpHを、約8.5、8.2、8.0、7.8、7.5、7.0、6.8、6.5、6.4、6.3、6.2、6.0、5.8、又は5.5未満を含み、約5.0未満より低い値を含む、約8.7未満にまで上昇させるのに十分な量である。ある態様において、十分な量のアルカリ性処理剤は、FB組成物のpHを約5.5から最大約5.8、又は5.9、又は6.0、又は6.1、又は6.2、又は6.3、又は6.5、又は6.8、又は7.0、又は7.5、又は7.8、又は8.0、又は8.2、又は8.5までのpH範囲まで上昇させるのに十分な量である。ある態様において、十分な量のアルカリ性処理剤は、FB組成物のpHを約5.8から最大約5.9、又は6.0、又は6.1、又は6.2、又は6.3、又は6.5、又は6.8、又は7.0、又は7.5、又は7.8、又は8.0、又は8.2、又は8.5までのpH範囲まで上昇させるのに十分な量である。ある態様において、十分な量のアルカリ性処理剤は、FB組成物のpHを約6.0から約6.1、又は6.2、又は6.3、又は6.5、又は6.8、又は7.0、又は7.5、又は7.8、又は8.0、又は8.2、又は8.5までのpH範囲まで上昇させるのに十分な量である。ある態様において、処理又は中和FB組成物の標的pHは、約6.5から約6.8、又は7.0、又は7.5、又は7.8、又は8.0、又は8.2、又は8.5までである。ある態様において、十分な量のアルカリ性処理剤は、FB組成物のpHを、5.0~8.5の間の、上に列挙された任意の2つのpH値の間のpH範囲まで上昇させるのに十分な量である。
【0118】
アルカリ処理剤は、有機酸と反応して中和することができる、強塩基及び弱塩基の双方を含む1以上の塩基性化合物を含むことができる。適切な強塩基として、アルカリ金属(I族)の水酸化物及びアルカリ土類(II族)金属の水酸化物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、及び水酸化ルビジウムなどの、水を含む溶液中の水酸化物イオンの濃度を増加させる少なくとも1つのアレニウス塩基を含む苛性溶液が含まれるが、これらに限定されない。苛性溶液の原液は任意の濃度であり得るが、ある態様において、濃度は、その体積に実質的に影響を与えることなく、ブライトビール内の酸性同族体を中和するのに最小限の量の苛性溶液を安全に追加するのに十分な濃度である。ある態様において、苛性原液は、水酸化ナトリウムの50%(v/v)までの溶液を有する。ある態様において、苛性原液は、水酸化カリウムの50%(v/v)までの溶液を有する。
【0119】
上記の金属水酸化物のいずれかと反応すると、以下の式1の正味のイオン式に従って、少なくとも1つの有機酸性同族体が塩と水に変換される。
【0120】
【0121】
非限定的な例において、有機酸性同族体が酢酸である場合、中和反応は、以下に示す式2に従って進行する。
【0122】
【0123】
他の態様において、アルカリ処理剤は弱塩基を有することができる。一般に、弱塩基は水中で完全には解離せず、その共役酸と平衡状態で存在することができる。強塩基と同様に、FB組成物内の酸性同族体の一部を中和するのに十分な弱塩基を加えることができる。ある態様において、FB組成物内に存在する酸性同族体の全てを完全に中和するのに十分な弱塩基が添加される。適切な弱塩基には、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及び水酸化アンモニウムが含まれるが、これらに限定されない。ある態様において、アルカリ処理剤は水酸化アンモニウムを有する。非限定的な例として、酢酸と水酸化アンモニウムとの間の中和反応の式を以下の式3に示す。
【0124】
【0125】
ただし、弱酸と弱塩基との間の任意の反応では、得られる正味のイオン式は、以下の式4による水の生成をもたらす。
【0126】
【0127】
他の態様において、少なくとも1つの酸性同族体の中和は、FB組成物内の有機酸性同族体の少なくとも一部を有機塩、又はそのろ過可能な形態に変換するのに十分な量のアルカリ処理剤をFB組成物に滴定することによって達成することができる。ある態様において、FB組成物内の有機酸性同族体の全て、又は実質的に全てが、有機塩又はそのろ過可能な形態に中和され、FB組成物内の各有機酸性同族体の当量点に達するか又は超えて、それらを各共役塩基に変換するのに十分にpHを上げることによって達成することができる。弱酸をNaOHなどの強塩基で滴定するとき、当量点はpH7を超えると発生する。非限定的な例として、酢酸のpKaは4.75であり、酢酸の全て又は実質的に全てが酢酸塩に変換される当量点でのpHは典型的には、約8.7~8.8である。当量点を超えて強塩基でFB組成物のpHを上昇させることは、酢酸の濃度に測定可能な影響を与えることなく、溶液に水酸化物イオンを追加するだけである。
【0128】
したがって、ある態様において、少なくとも1つの酸性同族体の中和は、FB組成物内の有機酸の少なくとも一部を有機塩、又はそのろ過可能な形態に変換するのに十分な量のアルカリ処理剤をFB組成物に滴定することによって達成することができる。ある態様において、FB組成物に添加するアルカリ処理剤の量は、FB組成物内の有機酸性同族体の少なくとも約10重量%を中和するのに十分な量であり、それは、FB組成物内の有機酸性同族体の少なくとも約25重量%、又は少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%、又は少なくとも96重量%、又は少なくとも97重量%、又は少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%、又は少なくとも99.5重量%、又は少なくとも約99.9重量%とすることができる。ある態様において、FB組成物内の有機酸性同族体の約99.9重量%未満を中和し、それには、約99.5重量%未満、99重量%未満、98重量%未満、97重量%未満、96重量%未満、95重量%未満、90重量%未満、85重量%未満、80重量%未満、75重量%未満、70重量%未満、60重量%未満、50重量%未満、又は25重量%未満を含み、10重量%未満以下を含む。
【0129】
ある態様において、上記の酢酸、乳酸、プロピオン酸、酒石酸、及び酪酸同族体を含む単一の有機酸の中和を定量化することができる。ある態様において、定量化される単一の有機酸同族体は酢酸である。アルカリ処理剤をFB組成物に添加すると、酢酸は続いて酢酸塩に変換される。約4.75である酢酸のpKaで、溶液内の酢酸塩と酢酸の比率は50:50である。溶液のpHが増大すると、酢酸と比較して酢酸塩の相対量(relative abundance)も増加し、pKaよりpHが1単位あがった5.75で、酢酸塩と酢酸の比率は90:10であり、pKaよりpHが2単位あがった点で、酢酸塩と酢酸の比率は99:1というように続く。したがって、ある態様において、FB組成物に添加されるアルカリ処理剤の量は、酢酸と比較した酢酸塩の相対量を、少なくとも約50:50とするよりも上昇させるのに十分な量とすることができ、少なくとも約60:40、70:30、75:25、80:10、85:15、90:10、95:5、96:4、97:3、98:2、99:1、又は99.5:0.5を含み、最大少なくとも約99.9:0.1とすることができる。ある態様において、処理FB組成物内の酢酸に対する酢酸塩の相対量は、約90:10~約99:1、又は約92:8~約98:2、又は約95:5である。ある態様において、FB組成物のpHを少なくとも8.7まで上げると、FB組成物内の酢酸の全て又は実質的に全てが酢酸塩に中和される。
【0130】
インライン苛性注入システム110はまた、FB流と苛性溶液を、目標pH範囲に調整したpHを有する均質なpH処理溶液に混合する混合手段を含むことができる。混合手段は、pH処理FB組成物の均一性を確保し、中和制御及び結果を改善する。混合手段のある態様は、
図3に示すように、静的インラインミキサーなどのインラインミキサー30である。他の態様において、混合手段は、苛性溶液がブライトビールの流れと接触する時間を増加させるための保持配管を有することができる。保持配管は、ある長さのフロー配管31を有することができ、フロー配管31は、1つまたは複数のエルボー又は配管の曲がりを含むことができ、フロー配管及び/又は1つまたは複数のエルボーの長さは、pH処理FBを均質化するのに十分とすることができる。
【0131】
後述する混合手段の流出側に位置する第2のpHメータ22は、苛性溶液を注入又は添加した後、pH処理FB組成物のpHをPLC26に通信することによってフィードバック制御を提供する。本発明のある態様において、FB組成物がインライン苛性注入システム110を通過した後、中和又は処理FB組成物は、有機酸同族体を中和するのに十分なpHを有する。PLC26は、中和(処理)FB組成物のpHが目標pH範囲内になるまで、インライン苛性注入システム110によって注入される苛性溶液の量又は速度を増加又は減少させるように構成することができる。
【0132】
他の態様において、インライン苛性注入システムは、1以上のpHメータの1つに対する補足の代わりとして利用する導電率計を有することができる。一般に、導電率計は、溶液内のイオン化種の量を測定することによって、溶液内の電気伝導率を測定する。導電率の測定は、導電率を迅速に測定でき、製造工程ごとに導電率を比較できることが多いため、一定温度でのインライン酸塩基滴定にしばしば役立つ。
【0133】
例えば、強塩基が1以上の弱酸の溶液に滴定される酸塩基滴定において、強塩基の添加は弱酸溶液の導電率を変化させる。最初に、NaOHの添加により、溶液内のH+濃度がゆっくりとしか減少せず、導電率がわずかに低下する緩衝液が生成する。溶液により多くの塩基を導入し、より多くのNa+が弱酸の共役塩基とともに生成され、溶液の伝導率が増加するにつれて、伝導率の低下は打ち消される。全ての酸が中和され、当量点に達した後、NaOHをさらに追加すると、OH-イオンが蓄積し始め、溶液内のイオン種を支配し始めるため、通常、システムの導電率が急激に増加する。
【0134】
酸性同族体の塩は、中和後分離4で上述の分離装置のいずれかを用いてFB組成物から分離及び除去することができる。ある態様において、1以上の分離装置は、粗ろ過、マイクロろ過、ナノろ過、及び/又は限外ろ過;逆浸透ろ過;珪藻土ろ過;及び活性炭ろ過を含むがこれらに限定されない1以上のろ過システムを有することができる。ある態様において、1以上の分離システムは、ナノろ過、逆浸透ろ過、活性炭ろ過、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。ある態様において、逆浸透ろ過を部分的に利用して酸性同族体の塩を除去する。
【0135】
他の態様において、後ろ過又は分離装置4は、精製蒸留酒を製造するプロセスで利用できる1以上の蒸留装置を有することができ、エタノールを含む画分が、中和有機酸塩、並びにマッシングプロセス中に生成するか又は存在するその他の微量の化学成分を含む水性画分から分離される。蒸留装置として、カラム蒸留、真空蒸留、多段フラッシュ蒸留、多重効用蒸留、及び蒸気圧縮蒸留装置を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0136】
他の態様において、ろ過及び蒸留装置は、それらを組み合わせて、又は互いに完全に分離して利用することができる。例えば、ある態様において、精製FB組成物は、蒸留を用いずに有機酸同族体をろ別することによって生成することができる。ある態様において、ろ過を用いずに、塩の形態の有機酸性同族体を含む中和FB組成物からアルコールを留去することによって精製蒸留酒を生成することができる。ある態様において、処理FB組成物から有機酸性同族体の塩形態を最初にろ別し、次いでろ液を蒸留して精製蒸留酒を生成することによって、精製蒸留酒を生成することができる。
【0137】
あるいは、酸性同族体の有機塩を含む中和されたFB組成物からエタノールを蒸留することによって、有機酸性同族体のレベルが低減したか又は無視できるレベルの精製蒸留酒を、ろ過装置を利用せずに、生成するができる。他の態様において、有機塩の一部は、蒸留工程の前に、中和FB組成物からろ過することができる。ある態様において、(a)エタノール及び少なくとも1つの有機酸性同族体を有する蒸留飲料を提供し;(b)該蒸留飲料を滴定するか又は該少なくとも1つの酸性同族体を有機塩に変換するのに十分な量のアルカリ処理剤を該蒸留飲料に添加することにより、少なくとも1つの酸性同族体の少なくとも一部を中和し、中和蒸留飲料を形成し;(c)該中和蒸留飲料から有機塩を分離して精製蒸留酒を生成する:ことにより、測定可能なレベルの酸性同族体、特に有機酸をまだ含んでいるが、すでに蒸留されている飲料から精製蒸留酒を生成することができる。
【0138】
例えば、完全に無味、無臭、無色のニュートラルベースが望まれるとき、pH処理FB組成物から有機酸性同族体の塩形態を除去又は分離した後、測定可能な有機酸を実質的に含まない精製FBを生成することができる。そのような精製ニュートラルベースは、風味付き飲料の製造において導入される風味のいずれとも衝突することなく、多用途に用いることができる。しかしながら、ある態様において、例えば、ある有機酸によってもたらされる風味が、結果として得られるFMB、ハードセルツァー、又は精製FBから製造されるその他の飲料の臭気及び/又は味を補足又は増強し得る場合、中和後に有機酸のいくつかが保持される精製FB又はニュートラルベースが所望され得る。このような精製FBは、精製FBに残るいずれかの有機酸のpKaに依存して、ろ過されない中和ブライトビールのpHよりも、わずかに異なり、部分的に低いpH、又は部分的に高いpHを有することができる。
【0139】
FB内の有機酸の中和の程度を決定する1つの方法は、未処理のFBと処理且つ精製FBの滴定酸度(titratable acidity)を比較することであり、これは、溶液の体積におけるヒドロニウムイオン(H3O+)及びプロトン化した弱酸の総質量の計算であり、多くの場合、1リットルあたりのグラム数又は100万分の1(parts per million)で表される。pHは溶液中のH3O+イオンの量のみを表すため、醸造業界及びワイン製造業界では滴定酸度が一般的に用いられる。対照的に、人間は、H3O+イオン及びプロトン化した弱酸の双方から酸性度を知覚することができる。滴定酸度は、飲料のpHを所定の値(通常は滴定の当量点付近である)まで上昇させるために、飲料に追加する必要がある塩基、通常はNaOH、の量を計算することによって決定する。醸造業界において、存在する有機酸の種類と相対量に基づいて、所定のpH値は通常、約8.0から8.5の間である。
【0140】
なお、FB組成物自体の知覚される酸性度は、滴定酸度を用いて評価することができる。滴定酸度が低下すると、知覚される酸性度も低下し、最終的にはFB内の酸の味及び/又は臭いを人が知覚できなくなるポイントに到達する可能性がある。ある態様において、精製FBの滴定酸度は、約1グラム/リットル(g/L)未満であり、約0.75g/L未満、0.5g/L未満、0.4g/L未満、0.3g/L未満、0.2g/L未満、0.1g/L未満、又は0.05未満を含み、約0.01未満までを含む。
【0141】
同様に、酢酸の濃度を分析的に決定することができる。酢酸濃度を決定する分析方法の非限定的な例には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び酵素アッセイが含まれる。酢酸の濃度を測定するそのような酵素アッセイキットの1つは、Megazyme(登録商標)から購入可能なK-ACETRM酢酸試験キットである。アッセイ条件下で、サンプル中に存在する酢酸の全て又は実質的に全てが酢酸塩に変換される。しかしながら、FBサンプルのpHが既知である場合、上述したように、pKaに基づいて酢酸の量を決定することができる。例えば、FBのpHが6.35で、サンプル中の酢酸塩の濃度が300ppmであると決定された場合、処理FB組成物中の酢酸の約4%がプロトン化された形で存在するか、又は約12ppmである。
【0142】
したがって、ある態様において、中和中に形成された酸性同族体の塩を分離及び除去した後の、精製FB又はニュートラルベースアルコール内の酢酸及び酢酸塩の合計濃度は、重量で約1000ppm未満とすることができ、約900ppm未満、又は約800ppm未満、又は約700ppm未満、又は約600ppm未満、又は約500ppm未満、又は約400ppm未満、又は約300ppm未満、又は約200ppm未満、約100ppm未満、又は約50ppm未満とすることができる。ある態様において、精製FB内の酢酸と酢酸塩の合計濃度は、約200ppmから約500ppmの範囲である。ある態様において、精製FB内の酢酸と酢酸塩の合計濃度は、約300ppmから約400ppmの範囲である。
【0143】
他の態様において、精製FB又はニュートラルベースアルコール内のプロトン化形態の酢酸の濃度は、そのpHに基づいて、約500ppm未満であり、約400ppm未満、300ppm未満、200ppm未満、100ppm未満、75ppm未満、50ppm未満、25ppm未満、10ppm未満、又は5ppm未満であり、約1ppm未満までである。ある態様において、精製FB又はニュートラルベースアルコール中のプロトン化酢酸の濃度は、約10ppmから約100ppm、又は約25ppmから約75ppmの範囲である。ある態様において、精製FB又はニュートラルベースアルコール内にプロトン化酢酸は実質的に存在しない。さらなる態様において、ニュートラルベースアルコールはNMBである。さらなる態様において、ニュートラルベースアルコールはGFBである。
【0144】
他の態様において、精製FBは、ニュートラルベースアルコール、例えばNMB、GFB、又はグルテン低減ベースである。他の態様において、精製FBはNMBである。ある態様において、精製FBのアルコール含量(ABV)は、少なくとも約0.05%ABVであり、少なくとも約0.1%ABV、少なくとも約0.5%ABV、少なくとも約1%ABV、少なくとも約2%ABV、少なくとも約3%ABV、約4%ABV、少なくとも約5%ABV、少なくとも約6%ABV、少なくとも約7%ABV、少なくとも約8%ABV、少なくとも約9%ABV、少なくとも約10%ABV、少なくとも約12%ABV、少なくとも約15%ABV、少なくとも約17%ABV、少なくとも約20%ABV、少なくとも約25%ABV、少なくとも約30%ABV、少なくとも約35%ABV、少なくとも約40%ABV、少なくとも約45%ABV、少なくとも約50%ABV、少なくとも約55%ABV、少なくとも約60%ABV、及び少なくとも約65%ABVが含まれる。他の態様において、精製FBのABVは約65%ABV以下であり、約60%ABV以下、約55%ABV以下、約50%ABV以下、約45%ABV以下、約40%ABV以下、約35%ABV以下、約30%ABV以下、約25%ABV以下、約20%ABV以下、約15%ABV以下、約10%ABV以下、約9%ABV以下、約8%ABV以下、約7%ABV以下、約6%ABV以下、約5%ABV以下、約4%ABV以下、約3%ABV以下、約2%ABV以下、約1%ABV以下、約0.5%ABV以下、約0.1%ABV以下、及び約0.05%ABV以下が含まれる。有用な範囲は、約0.05%ABV~約65%ABVの間及びそれに含まれるいかなるABV値のいずれかから選択することができ、約5%ABV~約20%ABV、約10%ABV~20%ABV、約12%~20%ABV、約15%ABV~約20%ABV、約17%ABV~約20%ABV、約10%ABV~約17%ABV、又は約12%ABV~約15%のABVが含まれる。ある態様において、上記の中和方法又はシステムのいずれかによって生成した精製蒸留酒のABVは、少なくとも約0.05%ABV、最大95%ABVであり、約0.05%ABVと約95%ABVとの間及びそれらを含むいかなるABV又はABVの範囲が含まれる。
【0145】
他の態様において、風味付きFB(その非限定的な例はFMB及びハードセルツァー飲料である)は、ベースアルコールに1以上の補助成分を加えることによって形成することができ、その非限定的な例は、水、ジュース、甘味料、香味料、希釈剤、安定剤、酸味料、pH調整剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができ、任意のその後の添加、混合、及び精製工程を伴う。
【0146】
他の態様において、風味付きFB(その非限定的な例はFMB及びハードセルツァーである)のアルコール含量(ABV)は少なくとも約0.05%ABVであり、少なくとも約0.1%ABV、少なくとも約0.5%ABV、少なくとも約1%ABV、少なくとも約2%ABV、少なくとも約3%ABV、少なくとも約4%ABV、少なくとも約5%ABV、少なくとも約6%ABV、少なくとも約7%ABV、少なくとも約8%ABV、少なくとも約9%ABV、少なくとも約10%ABV、少なくとも約12%%ABV、少なくとも約15%%ABV、少なくとも約17%%ABV、及び少なくとも約20%ABVが含まれる。他の態様において、風味付きFBのABVは、約20%ABV以下であり、約15%ABV以下、約10%ABV以下、約9%ABV以下、約8%ABV以下、約7%ABV以下、約6%ABV以下、約5%ABV以下、約4%ABV以下、約3%ABV以下、約2%ABV以下、約1%ABV以下、約0.5%ABV以下、約0.1%ABV以下、及び約0.05%ABV以下が含まれる。有用な範囲は、約0.05%ABV~約20%ABVの間及びそれに含まれる上記のABV値のいずれかから選択することができ、約5%ABV~約20%ABV、約3%ABV~10%ABV、又は約4%ABV~8%ABVが含まれる。
【0147】
他の態様において、酸性同族体を除去した風味付きFBは、プロトン化形態の酢酸を約500ppm未満の濃度で有することができ、約400ppm未満、300ppm未満、200ppm未満、100ppm未満、75ppm未満、50ppm未満、25ppm未満、10ppm未満、又は5ppm未満が含まれ、約1ppm未満までが含まれる。ある態様において、風味付きFB中のプロトン化酢酸の濃度は、約5ppm~約50ppm、又は約10ppm~約30ppmの範囲である。
【0148】
中和及び精製FBのUV処理
他の態様において、本明細書に記載の方法のいずれかに従って、アルカリ処理剤による中和の前又は後に、FBをUV光で照射して微生物汚染物質を不活化、消毒、又は殺菌することができる。したがって、非限定的な一例において、発酵飲料を不活化、消毒、又は殺菌する方法は、以下の工程を有することができる:(a)微生物汚染物質及び酸性同族体を有するFBを提供する工程;(b)FB内の微生物汚染物質を不活化、消毒、又は消毒するのに十分な時間、FBをUV光で処理し、UV処理FBを形成する工程;(c)酸性同族体の少なくとも一部を中和するのに十分な量のアルカリ処理剤をUV処理ブライトビールに添加し、中和、UV処理FB内に酸性同族体の塩を形成する工程;及び(d)中和、UV処理FBから酸性同族体の塩の少なくとも一部を分離して精製FBを形成する工程。
【0149】
別の非限定的な例において、発酵飲料を不活化、消毒、又は殺菌する方法は、以下の工程を有することができる:(a)微生物汚染物質及び酸性同族体を有するFBを提供する工程;(b)酸性同族体の少なくとも一部を中和するのに十分な量のアルカリ処理剤をFBに添加し、中和FB内に酸性同族体の塩を形成する工程;(c)中和FB内の微生物汚染物質の一部又は全てを死滅させるのに十分な時間、中和FBをUV光で処理する工程;及び(d)中和、UV処理FBから酸性同族体の塩の少なくとも一部を分離して精製FBを形成する工程。あるいは、分離及びUV処理工程の手順を、酸性同族体の塩を中和FBから分離し精製FBを形成し、その後、該精製FBをUV処理しUV処理、精製FBを形成するような、逆の順序で実行することもできる。
【0150】
上記態様のいずれかにおいて、酸性同族体は酢酸を有する。ある態様において、中和ブライトビール内の酢酸塩と酢酸の比率は、少なくとも約50:50から約99:1までの範囲である。さらなる他の態様において、酸性同族体は、乳酸、酒石酸、プロピオン酸、及び酪酸からなる群から選択される少なくとも1つの有機酸も有する。
【0151】
上記態様のいずれかにおいて、提供されるFBはホップ酸を有するブライトビールであり、ホップ酸及び/又は光触媒ホップ酸生成物の少なくとも一部は、上記のろ過又は分離方法のいずれかを用いて、酸性同族体の塩と共に分離される。さらなる態様において、分離工程は逆浸透ろ過を有する。
【0152】
特定の理論に限定されるものではないが、ブライトビールをUV光で照射する前に、アルカリ処理剤を添加すると、ブライトビール内のホップ酸が中和することができると考えられる。ホップ酸は水に非常に溶けにくく、いくつかの潜在的な共鳴構造を持つ複雑な平衡として組成物内に存在することができるが、それにもかかわらず、ホップ酸の見かけの溶解度をpHの関数(trans-イソフムロン=1.28±0.11;フムロン=3.88±0.25;及びコルプロン=5.89±0.12;Simpson, W.J., J. Inst. Brew. (Jul-Aug 1993) 99: 317-326、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)として測定することにより、見かけのpKa値を割り当てることができる。特に、イソフムロン及びフムロン、直接的又は間接的に触媒作用を及ぼしデヒドロフムリン酸及び3-メチルブト-2-エン-1-チオールを形成することができるアルファ酸は、酸性同族体内の有機酸のpKa値よりも低いか又は同等である見かけのpKa値を有する。結果として、これらのホップ酸は、酸性同族体の塩とともに、それらの共役塩基塩に変換でき、上記の分離方法のいずれかを用いて、中和ブライトビールからろ過又は分離することができる。同様に、中和されていないホップ酸及び/又は光触媒ホップ酸生成物は、酢酸ナトリウムなどの有機塩よりも大きな表面積を有し、精製FBを形成するときに酸性同族体の塩と一緒に分離することができるとも考えられる。
【0153】
他の態様において、ブライトビール内のベータ酸の少なくとも一部を中和するのに十分なアルカリ処理剤を、ホップ酸を有するブライトビールに添加することができる。ある態様において、ブライトビールのpHを少なくとも6.0、又は少なくとも6.1、又は少なくとも6.2、又は少なくとも6.3、又は少なくとも6.4、又は少なくとも6.5、又は少なくとも6.6、又は少なくとも6.7、又は少なくとも6.8、又は少なくとも6.9、又は少なくとも7.0、又は少なくとも7.5、又は少なくとも8.0、又は少なくとも8.5、又は少なくとも8.7に上昇させるのに十分なアルカリ処理剤を添加し、存在するベータ酸の少なくとも一部をそれらの共役塩基塩に変換することができる。ある態様において、ブライトビールのpHを上げて、ベータ酸の少なくとも50重量%、又は少なくとも55重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも65重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%、又は少なくとも99重量%、又は少なくとも100重量%をそれらの共役塩基塩に変換するのに十分なアルカリ処理剤を添加することができる。
【0154】
また、他の態様において、ホップ酸、ホップ酸の塩、及びホップ酸の光触媒生成物(例えば、デヒドロフムリン酸及び3-メチルブト-2-エン-1-チオール)は、分離工程で、特に、分離を逆浸透ろ過などのサイズに基づいて行うとき、中和ブライトビールから部分的又は完全に除去することができる。ある態様において、ホップ酸、ホップ酸の塩、及びホップ酸の光触媒生成物の少なくとも50重量%、又は55重量%、又は60重量%、又は65重量%、又は70重量%、又は75重量%、又は80重量%、又は85重量%、又は90重量%、又は95重量%、又は99重量%、又は100重量%を分離工程において中和ブライトビールから除去する。
【0155】
UV処理も行った精製FBは、pH、ABV、滴定酸度、酢酸濃度、色、臭気、及び風味に関して上記の特性のいずれかを有することができる。また、他の態様において、そのような精製FBは、UV処理前のブライトビールと比べて減少した量のホップ酸を維持することができる。ある態様において、UV処理製品内に含まれるホップ酸の量は、100ppm以下、例えば100ppm以下、90ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、60ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、15ppm以下、10ppm以下、5ppm以下、1ppm以下、0.5ppm以下、又は0.1ppm以下である。ある態様において、UV処理製品は、測定可能なホップ酸を含まない。同様に、精製FBは、ホップ酸の光触媒作用からの副産物、すなわちデヒドロフムリン酸及び3-メチルブチ-2-エン-1-チオールを最小限又はゼロで含むことができる。ある態様において、UV処理製品内に含まれるデヒドロフムリン酸又は3-メチルブト-2-エン-1-チオールの量は、100ppb以下、例えば、100ppb以下、90ppb以下、80ppb以下、70ppb以下、60ppb以下、50ppb以下、40ppb以下、30ppb以下、20ppb以下、15ppb以下、10ppb以下、5ppb以下、又は1ppbである。ある態様において、UV処理製品は、測定可能なデヒドロフムリン酸又は3-メチルブト-2-エン-1-チオールを含まない。
【0156】
他の態様において、上記精製FBのいずれかをニュートラルベースアルコールとして利用し、これに1以上の成分を加えて飲用可能なFBを形成することができる。そのような市販の飲用可能なFBの非限定的な例には、FMB及びハードセルツァー飲料が含まれる。ある態様において、精製FBは、NMB、グルテンフリーベース、又はグルテン低減ベースである。ある態様において、1以上の成分は、香味料、果汁、酸味料、甘味料、防腐剤、塩、及び希釈剤、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される成分を1以上含むことができる。ある態様において、精製FBは炭酸化することができる。
【0157】
他の態様において、飲用可能なFBは、容器、好ましくは貯蔵タンク、小樽、ボトル、缶、及び箱からなる群から選ばれる容器に入れる直前に殺菌することができる。現在、ビール、FMB、ハードセルツァー、その他の飲用可能なFBは、瞬間パスツーリゼーション、必要な微生物の死滅を達成するのに十分な時間、飲料を70℃以上に加熱し、急速冷却段階、典型的には約4℃にする必要があるエネルギー集約的なプロセスにより殺菌されている。しかしながら、本発明の方法により製造した飲用可能なFBは、瞬間パスツーリゼーションの代わりにUV光で処理することができる。特定の理論に限定されるものではないが、アルカリ中和及び/又はUV処理工程前から成分を分離することにより、UV処理飲用可能なFBを次の分離工程又はろ過工程に付することなく、容器、好ましくは貯蔵タンク、小樽、ボトル、缶、及び箱からなる群から選ばれる容器に入れる直前に飲用可能なFBのUV処理を促進することができる。
【0158】
飲用可能なFBを製造するプロセス200の非限定的な一例を
図9に示す。提供された麦汁に酵母を添加して、発酵工程202を開始する。ある態様において、発酵混合物はホップ材料も含む。得られた発酵生成物を遠心分離工程204で処理して、使用済み酵母及び他の固形成分を除去し、上澄みとしてブライトビールを形成することができる。その後、中和工程206においてアルカリ処理剤をブライトビールに添加し、中和ブライトビールを形成する。中和ブライトビールを1以上の中和後分離工程212を通過させ、酸性同族体の塩を分離し、精製FBを形成する。最後に、混合工程216で精製FBに1以上の補助成分を加えて飲用可能なFBを形成し、その後、包装工程220で密封及び包装される。プロセスには、発酵工程202の前に麦汁をUV処理する工程230、アルカリ中和工程208の前にブライトビールをUV処理する工程240、分離工程212後に精製FBをUV処理する工程250、及び包装直前に飲用可能なFBをUV処理する工程260を含む、いくつかの任意のUV処理工程も含まれる。ある態様において、飲用可能なFBを生成する方法は、少なくとも1つのUV処理工程を有する。ある態様において、飲用可能なFBを生成する方法は、UV処理工程260を有する。ある態様において、飲用可能なFBを生成する方法は、UV処理工程230を有する。ある態様において、飲用可能なFBを生成するプロセスは、UV処理工程230及び260を有する。ある態様において、飲用可能なFBを生成するプロセスは、UV処理工程230、240、250及び260の各々を有する。
【0159】
本発明の特定の態様について説明してきたが、本発明は、本開示の精神及び範囲内でさらに修正することができる。当業者は、本明細書に記載の特定の手順、態様、特許請求の範囲、及び実施例に対する多くの均等物を、通常の実験のみを用いて認識するか、又は確認することができる。したがって、そのような等価物は本発明の範囲内にあるとみなされ、したがって、本出願は、その一般原則を用いて、本発明のあらゆる変形、使用、又は適応をカバーすることを意図している。さらに、本発明は、本発明が関係し、添付の特許請求の範囲に含まれる当技術分野における既知又は慣例の範囲内にあるような、本開示からの逸脱をカバーすることを意図している。
【0160】
明確にするために、別個の態様の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の態様において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の態様の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別々に、又は任意の適切なサブコンビネーションで、又は本発明の他の説明された態様で適切に提供されてもよい。態様がそれらの要素なしでは機能しない場合を除き、様々な態様の文脈で説明される特定の特徴は、それらの態様の必須の特徴とみなされるべきではない。
【0161】
本明細書で言及される全ての参考文献、特許、及び特許出願の内容は、参考として本明細書に組み込まれ、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈すべきではない。本明細書に組み込まれた全ての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する当業者のレベルを示すものであり、あたかも個々の刊行物又は特許出願が具体的に示され、参照により個々に示されたかのように同程度に組み込まれる。
【実施例】
【0162】
以下の実施例は、現在最もよく知られている本発明の態様を例示する。しかしながら、以下は、本発明の原理の適用の単なる例示又は説明であることを理解すべきである。当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の修正及び代替の組成物、方法、及びシステムを考案することができる。したがって、本発明を詳細に説明してきたが、以下の実施例は、本発明の最も実用的で好ましい態様であると現在考えられるものに関してさらに詳細を提供する。
【0163】
実施例1:苛性注入システムを使用したNMBの生成
本開示の態様に従って、上記の腐食性投与システムのいずれかを用いてNMBを生成する。酸性同族体を含むブライトビールを苛性注入システムに導入し、処理FBの所定の目標pH、約6.0に達するまで、一定量の水酸化ナトリウムをブライトビールに混合しながら添加する。処理FBを、次に逆浸透膜を通してろ過し、処理FBから中和有機酸を除去し、NMBを形成する。目標pHがそれぞれ7.0及び8.0であることを除いて、同じ手順を用いて追加のNMBを生成する。
【0164】
実施例2:NMBの酸性度の物理化学的分析
本開示の態様に従って研究を行い、実施例1の苛性注入システムによって生成したNMBの酸性度及び有機酸、特に酢酸の中和及び除去の程度を決定する。実施例1で製造した3つのNMBの各々、並びに未処理ブライトビールのサンプルを、pH、滴定酸度、及び酢酸含量について評価する。各FBサンプルのpHを、pHメータを用いて、スタンドアロンの機器として、又は苛性注入システム内に配置して測定する。各FBサンプルの滴定酸度を、FBサンプルの元のpHに基づいて、例えば8.2、8.5、又は8.7などの所定のpHに到達するように既知濃度の水酸化ナトリウムを滴定することによって概算する。各FBサンプルの酢酸濃度を、プロトン化(酢酸)又は脱プロトン化(酢酸ナトリウム)のいずれかの形で、少量FBサンプルをMegazyme(登録商標)K-ACETRM酢酸テストキットに含まれる試薬と、キットに付属の説明書に従って反応させることによって測定する。
【0165】
ブライトビールのpHは約4.0であり、NMBサンプルのpHは、各pH目標、それぞれ6.0、7.0、及び8.0のpHで0.25以内にあると予想される。また、ブライトビールの滴定酸度は1.00g/Lを超え、特に2.00g/Lを超えると予想されるが、NMBサンプルの各々の滴定可能な活性(titratable activity)は、ブライトビールの滴定可能な活性に対して少なくとも80%減を示す。各NMBサンプルの滴定酸度によって示される中和の程度は、サンプルのpHの関数として増加すると予想され、pH8.0に中和したNMBは、他のサンプルと比較して滴定可能な活性が最も低くなる。最終的に、酢酸のプロトン化及び脱プロトン化形態の総濃度は、ブライトビールサンプルと比較して、NMB FBサンプルのそれぞれで少なくとも75%減少すると予想され、最大の効果はpH8.0FBサンプルで再び見られる。しかしながら、NMBサンプルの実際のpHに基づくと、各NMBサンプルのプロトン化酢酸の濃度は、ブライトビールサンプルと比べて少なくとも95%減少すると予想される。
【0166】
実施例3:NMBの味プロファイルの決定
本開示の態様に従って研究を行い、ブライトビールからの酢酸の中和及び除去によって引き起こされる官能効果を決定する。プロトン化酢酸の存在に起因するビネガーの味を区別するように訓練された官能パネルの参加者は、実施例1で生成したNMBのそれぞれをサンプリングし、リッカート型スケール(Linkert-type scale)に従ってそれらを採点するように求められる。味覚と嗅覚の評価で使用されるリッカートのようなスケールは、参加者に0から5までのスコアを割り当てるよう求めることができる。各スコアは特に定義されており、多くの場合、半分のスコアは許可されない。特に酢の香りに関しては、リッカート型スケールは次の定義を持つことができる。0=酢の香りが感じられない。1=ほのかな酢の香りが感じられる。2=酢の香りがわずかに感じられる。3=酢の香りがわずかに中程度に感じられる。4=酢の香りが中程度に感じられる。5=酢の香りが中程度から強く感じられる。
【0167】
比較的高濃度のプロトン化酢酸を有する未処理のブライトビールは、酢の香りのわずかに中程度から中程度の知覚を示す平均的な味覚スコアを示すと予想される。水酸化ナトリウムで処理すると、処理されたサンプルのそれぞれの平均味覚スコアは、ブライトビールに比べて低下し、pHに関して実施例2で測定した滴定酸度及び酢酸濃度と同じ関係を示すと予想される。pH8.0のNMBは、他のNMBサンプルと比較して、酢の香りの知覚が最も減少している。処理NMBの少なくとも1つ、特にpH8.0まで処理したNMBは、知覚できる酢の香りを持たないことも予想される。
【国際調査報告】