(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ZnAlMg被膜を有する鋼板の製造方法、対応する被覆鋼板、部品及び車両
(51)【国際特許分類】
C23C 2/20 20060101AFI20231115BHJP
C23C 2/06 20060101ALI20231115BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20231115BHJP
C22C 18/04 20060101ALI20231115BHJP
C22C 18/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C23C2/20
C23C2/06
C23C2/40
C22C18/04
C22C18/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528648
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 IB2021060553
(87)【国際公開番号】W WO2022101872
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2020/060737
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,エリク
(72)【発明者】
【氏名】マテーニュ,ジャン-ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】アグリッツィ・ロンクェーティ,ラリッサ
(72)【発明者】
【氏名】キーファー,マリネ
【テーマコード(参考)】
4K027
【Fターム(参考)】
4K027AA22
4K027AB05
4K027AB14
4K027AB44
4K027AC18
4K027AC52
4K027AE02
4K027AE03
4K027AE33
4K027AE35
(57)【要約】
本発明は、0.80~1.40重量%のAl、0.80~1.40重量%のMg、不可避の不純物及び任意にSi、Sb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Zr又はBiから選択される1種以上の追加元素を含み、被膜における各追加元素の重量含有率が0.3%未満であり、残余はZnである被膜を備えた鋼板の製造方法であって、該被覆鋼板の外表面はスキンパス前に0.50μm以下のうねりWa0.8を有する方法、この方法により得られる被覆鋼板、該鋼板の変形により得られる部品及び該部品を含む車体を備える陸上自動車に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.80~1.40重量%のAl、0.80~1.40重量%のMg、不可避の不純物及び任意にSi、Sb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Zr又はBiから選択される1種以上の追加元素を含み、被膜における各追加元素の重量含有率は0.3%未満であり、残余はZnである被膜を備えた鋼板の製造方法であって、
以下の連続するステップ
A. 鋼板を提供するステップ、
B. 該鋼板を冷間圧延するステップであって、少なくとも最後の圧延パスが、作業面が0.5μm以下の粗さRa
2.5を有する、整流され、エッチングされていない作業ロールで行われるステップ、
C. 該鋼板を連続焼鈍ラインで焼鈍するステップ、
D. 該鋼板を溶融浴に浸漬することによって該被膜を堆積させるステップ、
E. 少なくとも1つの出口を通って、主噴出方向(E)に沿って板の両側にワイピングガスを噴射するワイピングノズルを含む閉じ込めゾーンを通って被覆鋼板を走行させ、ワイピングが、以下の式のうちの少なくとも1つを満たすステップ、
【数1】
[式中、
Vは、ノズルの前の鋼板の走行速度であり、Vはm・s
-1で表され、
Pは、ノズル内のワイピングガスの圧力であり、PはPaで表され、
Zは、主噴出方向(E)に沿った鋼板とノズルとの間の距離であり、Zはmmで表され、
dは、ノズルの前の鋼板の走行方向(S)に沿ったノズルの出口の平均高さであり、dはmmで表され、
po
2は、閉じ込めゾーン内の酸素分圧である。]
F. 該被膜を凝固させるステップ、
G. 該被覆鋼板を5μm未満の粗さRa
2.5を有する作業ロールでスキンパスするステップ
を含む方法。
【請求項2】
該被覆鋼板のスキンパスは、1.70μm~2.95μmの粗さRa
2.5を有するEDT作業ロールで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の式のうち少なくとも1つをさらに満たす
【数2】
[式中、
Vは、ノズルの前の鋼板の走行速度であり、Vはm・s
-1で表され、
Pは、ノズル内のワイピングガスの圧力であり、PはPaで表され、
Zは、主噴出方向(E)に沿った鋼板とノズルとの距離であり、Zはmmで表され、
dは、ノズルの前の鋼板の走行方向(S)に沿ったノズルの出口の平均高さであり、dはmmで表され、
po
2は、閉じ込めゾーン内の酸素分圧である。]
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記被膜が、1.0~1.40重量%のAl及び1.0~1.40重量%のMgを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ワイピングガスが窒素からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項の方法によって得ることができる被覆鋼板であって、該鋼板は、0.80~1.40%のAl、0.80~1.40%のMg、不可避の不純物、及び任意にSi、Sb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Zr又はBiから選択される1種以上の追加元素を含み、被膜中の各追加元素の重量含有率は0.3%未満であり、残余がZnである被膜を備え、該被覆鋼板の外表面は、スキンパス前に0.5μm以下のうねりWa
0.8を有し、かかるうねりはマルシニアック工具において5%等二軸引張モードで測定される被覆鋼板。
【請求項7】
スキンパス前の前記被覆鋼板の外表面は、0.4μm以下のうねりWa
0.8を有し、かかるうねりはマルシニアック工具において5%等二軸伸長モードで測定される、請求項6に記載の鋼板。
【請求項8】
前記被膜が、1.0~1.40重量%のAl及び1.0~1.40重量%のMgを含む、請求項6又は7に記載の鋼板。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載の被覆鋼板の変形により得られる部品であって、該被覆鋼板の外表面は0.5μm以下のうねりWa
0.8を有し、かかるうねりはマルシニアック工具において5%等二軸伸長モードで測定される部品。
【請求項10】
前記被覆鋼板の外表面が、0.45μm以下のうねりWa
0.8を有し、かかるうねりはマルシニアック工具において5%等二軸伸長モードで測定される、請求項11に記載の部品。
【請求項11】
前記被覆鋼板上に塗料の膜をさらに含む、請求項10に記載の部品。
【請求項12】
前記塗料の膜の厚さが120μm以下である、請求項11に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0.80~1.40重量%のAl、0.80~1.40重量%のMg、不可避の不純物、及び任意にSi、Sb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Zr又はBiから選択される1種以上の追加元素を含み、被膜における追加元素の重量含有率は0.3%未満であり、残余はZnである被膜を備えた鋼板の製造方法、及びこの方法によって得られる被覆鋼板に関する。このような鋼板は、特に、自動車のような陸上のモーター駆動車両用の車体部品を作ることを目的としている。
【背景技術】
【0002】
通常、鋼板を切り出して変形させ、車体部品又は車体を成形する。次に、この車体を、表面の良好な外観を確保し、亜鉛をベースとする被膜と共に腐食から保護する塗料(又は塗料系)の膜で被覆する。
【0003】
鋼板の亜鉛をベースとする被膜はその外表面のうねりと呼ばれるものを有し、これは現在、車体部品としては許容できないいわゆる「オレンジピール」の外観を持つという不利益の下でかなりの厚さの塗料によってのみ補うことができる。
【0004】
被膜の外表面のうねりWは、短波長の幾何学的凹凸に相当する粗さRとは区別されるかなり長波長(0.8~10mm)の滑らかな疑似周期的な幾何学的凹凸である。
【0005】
μmで表されるうねりプロファイルの算術平均Waは、しばしば、鋼板被膜の外表面のうねりの特徴付けに使用され、うねりは、0.8mmのカットオフ閾値で測定され、規格SEP1941に従うWa0.8によって規定される。
【0006】
うねりWa0.8の減少は、塗料外観の所定の特性を達成するために使用される塗料の膜の厚さの減少、又は塗料膜の一定の厚さに対して、塗料外観の品質を向上し得る。
【0007】
亜鉛被覆鋼板のうねりを低減するいくつかの方法が知られている。
【0008】
実際、特許出願WO2014/135999には、0.2~0.7%のアルミニウムを含む亜鉛被膜を備えた鋼板の製造方法が開示されており、該方法は、鋼板を提供するステップ、鋼板を浴に浸漬することによって鋼板の少なくとも1つの面に被膜を堆積させるステップ、少なくとも1つの出口を通って突き出る少なくとも1つのノズルからのワイピングガスで被膜をワイピングするステップを含み、鋼板は少なくとも1つのノズルの前方を走行し、ワイピングガスは主噴出方向Eに沿ってノズルから噴出され、その被膜の外表面が、凝固後、いずれかのスキンパス操作の前に、0.55μm以下のうねりWa0.8を有し、かつ以下の式のうちの少なくとも1つを満たす。
【0009】
【数1】
式中、
Zは主噴出方向Eに沿った鋼板とノズルとの間の距離であり、Zはmmで表され、dはノズルの前の鋼板の走行方向Sに沿った該少なくとも1つのノズルの出口の平均高さであり、dはmmで表され、Vは該少なくとも1つのノズルの前の鋼板の走行速度であり、Vはm・s
-1で表され、Pは該少なくとも1つのノズル内のワイピングガスの圧力であり、PはN・m
-2で表され、fO
2はワイピングガス内の酸素の体積分率である。
【0010】
また、この特許出願は得られた被覆鋼板、被膜の外表面は任意のスキンパス操作の前に、0.35μm以下のうねりWa0.8を有することを開示している。最後に、この特許は、被膜の外表面が0.43μm以下のうねりWa0.8を有する、前記鋼板の変形によって得られる部品を開示する。
【0011】
しかし、この方法は亜鉛及び少量のアルミニウムを含む被膜のうねりの制御にのみ適している。実際、被膜の性質に依存して、被膜の外表面のうねりが著しく変化し得ることが知られている。
【0012】
最近、亜鉛をベースとする新しい被膜が開発された。通常「ZnAlMg被膜」と呼ばれるこれらの被膜は、アルミニウム、マグネシウムを含み、残余は亜鉛である。それらは鋼板の耐食性をさらに向上させるために使用される。
【0013】
特許出願WO2009/147309は、2~8重量%のアルミニウム、0~5重量%のマグネシウム、及び0.3重量%までの追加元素を含み、残余が亜鉛及び不可避の不純物である溶融浴(350~700℃の温度に維持される)中に鋼帯を通し、被覆鋼帯を得、次いで、該被覆鋼帯を該帯の両側にガスを噴霧するノズルを用いてワイピングし、次いで被膜が完全に凝固するまで制御された方式で被膜を冷却し、該冷却は、該ワイピングが発生するユニットを出る際の温度と凝固の開始との間で15℃/秒未満の速度で、次いでその凝固の開始と終了との間で15℃/秒以上の速度で行われることを含む、腐食防御被膜を有する鋼帯の製造方法を開示する。
【0014】
また、この特許は、溶融めっきされたがスキンパスされていない冷間圧延鋼帯を開示し、その被膜は2~8重量%のアルミニウム、0~5重量%のマグネシウム、及び0.3重量%までの追加元素を含み、残余は亜鉛及び不可避の不純物からなり、該被膜は0.5μm以下のうねりWa0.8を有する。
【0015】
最後に、この特許出願は、変形によって得られた鋼部品であって、その被膜は0.48μm以下のうねりWa0.8を有し、及び変形前にスキンパス加工をさらに受けた、変形によって得られた鋼部品であって、その被膜は0.35μm以下のうねりWa0.8を有する鋼部品を開示する。
【0016】
しかし、この出願では、ZnAlMg被膜は、多量のアルミニウムを含む。実施例で示したように、アルミニウムの量が2%よりも少ない場合には、このような方法を適用してもうねりを平らにする効果は得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2014/135999号
【特許文献2】国際公開第2009/147309号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は、少量のAl及びMgを有するZnAlMg被覆鋼板であって、被膜の外表面は低減されたうねりWa0.8を有する鋼板を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的のために、本発明の目的は請求項1に記載の方法である。
【0020】
本方法はまた、個別に又は組み合わせとして取り込まれる請求項2~7の特徴を有することができる。
【0021】
本発明の目的は、請求項8に記載の鋼板でもある。
【0022】
この鋼板はまた、請求項9に記載の特徴を備えることもできる。
【0023】
本発明の目的は、請求項10に記載の部品でもある。
【0024】
また、この部品は、個別に又は組み合わせとして取り込まれる請求項11~13に記載の特徴を備えることもできる。
【0025】
本発明の目的は、請求項14に記載の車両でもある。
【0026】
本発明は、限定としてではなく、指標として与えられ、また、添付図に関連して与えられている例によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の方法を説明するための模式的側面図である。
【
図2】
図1の丸で囲った部分Iの部分概略拡大図である。
【
図3】2の矢印IIに沿って取り込まれ、
図2のノズルの出力の形状を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の目的は、0.80~1.40重量%のAl、0.80~1.40重量%のMg、不可避の不純物及び任意にSi、Sb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Zr又はBiから選択される1種以上の追加元素を含み、被膜における各追加元素の重量含有率は0.3%未満であり、残余はZnである被膜で被覆された鋼板を含む被覆鋼板の製造方法であって、以下の連続するステップ
A. 該鋼板を提供するステップ、
B. 該鋼板を冷間圧延するステップであって、少なくとも最後のパスが、作業面が0.5μm以下の粗さRa2.5を有する、整流され、エッチングされていない作業ロールで行われるステップ、
C. 該鋼板を連続焼鈍ラインで焼鈍するステップ、
D. 該鋼板を溶融浴に浸漬することによって該被膜を堆積させるステップ、
E. 少なくとも1つの出口を通って、主噴出方向(E)に沿って板の両側にワイピングガスを噴射するワイピングノズルを含む閉じ込めゾーンを通って該被覆鋼板を走行させ、該ワイピングが、以下の式のうちの少なくとも1つを満たすステップ、
【0029】
【数2】
[式中、
Vは、ノズルの前の鋼板の走行速度であり、Vはm・s
-1で表され、
Pは、ノズル内のワイピングガスの圧力であり、PはPaで表され、
Zは、主噴出方向(E)に沿った鋼板とノズルとの間の距離であり、Zはmmで表され、
dは、ノズルの前の鋼板の走行方向(S)に沿ったノズルの出口の平均高さであり、dはmmで表され、
po
2は、閉じ込めゾーン内の酸素分圧である。]
F. 該被膜を凝固させるステップ
を含む方法に関する。
【0030】
いかなる理論にも拘束されるつもりはないが、本発明による方法は、0.80~1.40重量%のAl、0.80~1.40重量%のMgを含み、残余はZnである被膜を備えた鋼板が、高度に改善された表面外観、特に塗装された外観を導くのに十分低いうねりWa0.8を有する外表面を得ることを可能にすると考えられる。実際、これらのZnAlMg被覆鋼板については、先行技術の従来の方法は、かかる低いうねりをもたらさないように思われる。発明者らは、被膜の化学元素及びこの被膜中の元素の量だけでなく、適用した方法がうねりに影響を及ぼすことを見出した。上記の特定量のAl及びMgを有するZnAlMg被覆鋼板について可能な限り低いうねりを得るためには、上記のZnAlMg被覆の表面を制御し、先行技術には到達しなかったうねり値を得るために、本発明による方法が必要であると思われる。
【0031】
好ましい実施形態では、本発明による方法のワイピングステップは、以下の式のうち少なくとも1つをさらに満たすようなものである。
【0032】
【数3】
[式中、
Vは、ノズルの前の鋼板の走行速度であり、Vはm・s
-1で表され、
Pは、ノズル内のワイピングガスの圧力であり、PはPaで表され、
Zは、主噴出方向(E)に沿った鋼板とノズルとの間の距離であり、Zはmmで表され、
dは、ノズルの前の鋼板の走行方向(S)に沿ったノズルの出口の平均高さであり、dはmmで表され、
po
2は、閉じ込めゾーン内の酸素分圧である。]
【0033】
式(1)又は(2)のうち少なくとも1つを満たすことに加えて、式(3)又は(4)の少なくとも1つを満たすことにより、被覆鋼板のうねりをさらに低下させることができることが観察された。
【0034】
図1の鋼板1は、上記のZnAlMg被膜をそれぞれ2つの面の各々に被覆した鋼板を含む。好ましくは、鋼板は、低炭素鋼、例えば、インタースティシャルフリー鋼(IF鋼)、焼付硬化性鋼、又はAlキルド鋼である。
【0035】
被膜は一般に25μm以下の厚さを有し、鋼板1を腐食から保護することを目的とする。
【0036】
鋼板1を作成するためには、例えば、以下のように進めることが可能である。
【0037】
例えば、熱間圧延後に冷間圧延して得られる鋼板などの板が用いられる。
【0038】
好ましくは、冷間圧延では、一般に30~85%の間に含まれる圧下率の板を冷間圧延することから始まり、例えば、0.2~2mmの間に含まれる厚さの板1を得る。少なくとも最後の冷間圧延パスが、いわゆる滑らかな又はブライト(bright)な作業ロール、すなわち整流され、エッチングされていないロールで実行されることを保証することが必要である。そのためには、作業面が0.5μ以下の粗さRa2.5、すなわち、2.5mmでのカットオフ閾値で測定された粗さを有する。
【0039】
作業ロールは、その変形を確実にするために、板1に直接接触する圧延機のロールであることを想起される。1つは、作業面という用語で、板1と接触している表面を指す。
【0040】
滑らかな作業ロールは、圧延機内の板の走行方向を考慮すると、少なくとも圧延機の最後のスタンドに存在することになる。
【0041】
少なくとも最後の圧延パスに滑らかな作業ロールを使用することにより、一方で板を被覆することによってその後得られる鋼板1と、他方で鋼板1を変形させることによって製造され得る部品とのうねりWa0.8をより良好に制御することが可能になる。
【0042】
特に、このような冷間圧延は、例えば、ショットブラスティング又は電気放電(いわゆる、電子放電テクスチャ(EDT)ロール)のいずれかによってエッチングされるより激しい粗さを有するロールにのみ頼る圧延と比較して、うねりWa0.8の減少を可能にする。
【0043】
ステップC)では、冷間圧延板1を連続焼鈍ラインで焼鈍する。好ましくは、焼鈍は還元雰囲気下で行い、冷間圧延作業中に受けた加工硬化後の再結晶を目的とする。
【0044】
再結晶焼鈍はさらに、板の表面を活性化して、その後の浸漬被覆操作に必要な化学反応を促進する可能性を与える。
【0045】
鋼のグレードにもよるが、再結晶焼鈍は、650~1200℃の間、好ましくは650~900℃の間に含まれる温度で、鋼の再結晶及び表面の活性化に必要な時間実施することができる。
【0046】
次いで、板は、るつぼ3内に収容された溶融浴2の温度に近い温度まで冷却される。
【0047】
ステップD)では、このような浴2における溶融めっきにより鋼板を被覆する。浴2の組成は亜鉛をベースとし、0.8~1.4重量%のアルミニウム及び0.8~1.4重量%のマグネシウムを含有する。好ましくは、被膜は、1.0~1.40重量%のAl及び1.0~1.40重量%のMgを含む。実際、いかなる理論によっても拘束されるつもりはないが、Zn被膜と比較して改善された耐食性を維持しながら、被膜中のこれらの量のAlとMgは、ZnAlMg被膜のうねりをさらに改善すると考えられる。
【0048】
浴2はまた、Si、Sb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni、Zr又はBiなどの任意の追加元素を0.3重量%まで含有してもよい。
【0049】
これらの異なる元素は、例えば、被膜の耐食性、又はその脆弱性又はその接着性の改善を可能にし得る。
【0050】
被膜の特性に対するそれらの効果を認識している当業者は、求められた追加目的に従ってそれらを使用する方法を知っているものである。また、これらの元素が、本発明の方法によって得られるうねりの制御に干渉しないことを確認した。
【0051】
最後に、浴2は、タンクに供給するためのインゴットからの又はさらには板1の浴2の通過からの不可避の不純物を含む場合がある。したがって、特に、例えば、5重量%までの鉄を挙げることが可能である。
【0052】
溶融めっき被覆の間、浴中に存在するアルミニウムは、まず、鋼と反応して、アルミニウム及び鉄で作られた金属間元素から構成されるいわゆる阻止層を作り出す。このような阻止層は、通常、FeAl3から構成され、20~80nmの厚さを有する。上記のように、0.8~1.4重量%のアルミニウム及び0.8~1.4重量%のマグネシウムを含有する被膜層が、この阻止層上に形成される。
【0053】
図1及び2に示すように、ステップE)では、鋼板1は、浴2を出た後、鋼板1の両側に配置され、ワイピングガス、例えば、空気又は不活性ガスを被膜の外表面に向けて噴射するワイピングノズル4を含む閉じ込めゾーンに入る。閉じ込めゾーンは、例えば、WO2010/130883に従って構築することができ、以下、すなわち、
- 底部でワイピングライン(
図2の点線で示す)により、
- 及びワイピングノズル4の上外面
- 頂部では、板の両側に配置され、ノズル4の直上に配置され、ワイピングラインに対して少なくとも10cmの高さを有する2つの閉じ込め箱5の上部により、
- 側面では、該閉じ込め箱5の横方向部品により
境界が示される。
【0054】
ワイピングガスは、主噴出方向Eに沿って各ノズル4から噴出される。
【0055】
図示された例では、方向Eは水平かつ鋼板1に対して直交しており、ワイピングラインに追従している。他の実施形態において、方向Eは鋼板1に対して相対的に他の傾きを有していてもよい。
【0056】
使用する生産ライン上の板1の走行速度Vは、一般に60m/分~200m/分の間に含まれ、80m/分~120m/分が好ましい。
【0057】
あるいは、ノズル4は、異なる構造、異なる位置、及び/又は異なる調整で作動することができる。なお、鋼板1の片面にのみノズルを設けてもよい。
【0058】
ノズル4は出口6を有し、これを通って、ワイピングガスが反対側に配置された被膜の外表面に向かって射出される。ノズル4については、様々な外形が考えられる。
【0059】
ノズル4の出口6は、主射出方向Eに沿って鋼板1から距離Zに位置する。
図3に示すように、一般に、出口6は、鋼板1の幅に少なくとも等しい幅Lにわたって、
図3の走行方向S及び平面に対し垂直に延びる細長い隙間として現れる。
【0060】
出口6の高さ、すなわちノズル4の前面における鋼板1の走行方向Sに平行な寸法は、
図3に示すように一定であることが好ましい。この場合、ある特定の代替案では、この高さは排出口6の幅に亘って変化し得る。したがって、出口6は、例えば、その端部に向かってわずかに広がった形状(ボウタイ(bowtie)の形状)を有していてもよい。
【0061】
これらの可能な高さの変動及び異なる可能な実施形態を考慮するために、次にその幅Lにおける出口6の平均高さdが考慮されるであろう。
【0062】
ノズル4は、鋼板の両側にガスを噴射し、該ガスは、4体積%の酸素及び96体積%の窒素からなる雰囲気の酸化力よりも低い酸化力を有することが好ましい。特に、純粋な窒素若しくは純粋なアルゴン、又は窒素若しくはアルゴンと酸化性ガスとの混合物、例えば、酸素、CO/CO2混合物又はH2/H2O混合物を使用することは有利であり得る。不活性ガスを加えないCO/CO2混合物又はH2/H2O混合物を用いることも可能である。好ましくは、ワイピングガスは窒素からなる。
【0063】
次いで、ステップF)において、被膜は、それが凝固するように制御された方法で放冷される。
【0064】
この凝固ステップに加えて、被膜7の外表面23に質感を与え、その後の鋼板1の成形方法を容易にするためのスキンパス操作からなるステップG)を行うことができる。
【0065】
実際、スキンパス操作は、その成形方法が適切に実施されるために十分な粗さを鋼板1の被膜の外表面に転写する可能性を与え、その一方で、それが成形される前に鋼板1に塗布された油の良好な保持を促進する。スキンパス操作中の鋼板1の伸び率は、一般に0.5~2%の間に含まれる。
【0066】
作業ロールは5μm未満の粗さを有する表面を持つため、スキンパス操作は低いうねりWa0.8を保つ可能性を与える。
【0067】
スキンパス操作は、好ましくは、作業面が1.70~2.95μmの間に含まれる粗さRa2.5を有するEDT作業ロールで行われる。スキンパス操作中の伸び率が1.1%以下であれば、EDT作業ロールの作業面の粗さRa2.5は、好ましくは2.50~2.95μmの間に含まれる。スキンパス操作中の伸び率が1.1%以上の場合、EDT作業ロールの作業面の粗さRa2.5は、好ましくは1.70~2.50μmの間に含まれる。
【0068】
スキンパス操作は、一般に、自動車の車体部品を製造することを目的とした鋼板1に対して行われる。
【0069】
鋼板1が家庭用電気製品を製造することを意図している場合、例えば、この追加操作は行われない。家庭用電気製品の部品の場合、それ自体が知られている物理的及び/又は化学的手段で塗料の膜を焼付操作に供することも可能である。
【0070】
この目的のために、塗装された部品を熱気又は誘導オーブンに通すか、さらにUVランプ下又は電子線を拡散する装置下を通過させることが可能である。
【0071】
本発明による方法を用いると、スキンパス前に0.50μm以下、好ましくは0.45μm以下、さらに良好には0.40μm以下又は0.35μm以下のうねりWa0.8を有する外表面を有する鋼板を得ることができる。
【0072】
次いで、スキンパスさせた鋼板1を切断し、次いで、例えば、引張、屈曲又はプロファイリングによる成形方法を経て部品を形成し、該部品を塗装して塗料の膜(又は塗料系)を両側に得ることができる。
【0073】
変形後、部分の外表面は、0.50μm以下、又はさらに0.45μm以下又は0.40μm以下、又はさらに0.38μm以下のうねりWa0.8を有する。
【0074】
このうねりは、マルシニアック工具を用いた5%等二軸引張後に測定することができる。従来の方法では、3.5%等二軸引張後にうねりを測定することができる。一般に、3.5~5%の引張からは0.03のうねり値の相違が考えられる。
【0075】
自動車用途については、リン酸塩被覆後、各部品を電気泳動浴に浸漬し、プライマー塗装層、ベース塗装層、任意に仕上げワニス層を順次塗布する。
【0076】
電気泳動層を部品に塗布する前に、後者を予め脱脂し、次いで電気泳動の付着を確実にするようにリン酸塩を被覆する。
【0077】
電気泳動層は、部品に腐食に対するさらなる保護を与える。プライマー塗装層は、一般にはガンで塗布され、部品の最終的な外観を整え、石による傷及びUVに対する防御を行う。ベース塗装層は、部品にその色及び最終的な外観を与える。ワニス層は、部品の表面に良好な機械的強度、強力な化学剤に対する耐性及び良好な表面外観を与える。
【0078】
一般に、リン酸塩被覆層の重量は、1.5~5g/m2の間に含まれる。
【0079】
保護及び部品に最適な表面外観を保証するために塗布される塗料の膜は、例えば、厚さが15~25μmの電気泳動層、厚さが35~45μmのプライマー塗料のコート、及び厚さが40~50μmの塗料のベースコートを含む。
【0080】
塗料の膜がさらにワニス層を含む場合、異なる塗装層の厚さは一般に次の通りである。
電気泳動層:15~25μmの間、好ましくは20μm未満、
プライマー塗装層:45μm未満、
ベース塗装層:20μm未満、及び
ワニス層:55μm未満。
【0081】
好ましくは、塗料の膜の総厚さは120μm未満、又は100μm未満でさえある。
【0082】
最後に、本発明の目的は、車体を含む陸上自動車に関するものであり、車体は本発明による部品を含む。
【0083】
本発明を、ここでは、限定としてではなく、指標として与えられた試験によって説明する。
【実施例】
【0084】
全ての試料について、通常のIF鋼を冷間圧延し、作業面が0.35μmの粗さRa2.5を有する、整流され、エッチングされていない作業ロールで最終圧延パスを行った。その後、試料を765℃の温度で焼鈍し、1.2重量%のAl、1.2重量%のMg(試料2~38)又は1.5重量%のAl、1.5重量%のMg(試料1)を含み、残余はZnである溶融浴で溶融めっきした。その後、それらは閉じ込めゾーンに送られ、窒素でワイピングした。被膜の凝固後、被覆鋼板を、2.1μmの粗さRa2.5を有する作業面を有するロールでスキンパスした。
【0085】
全ての試料をマルシニアック工具を用いて変形させた。それらを、5%の等二軸引張モードで引張させた。スキンパス(SKP)前、スキンパス後及びスキンパス及び変形(DEF)後のうねりを、各試料について測定した。
【0086】
うねりWa0.8の測定手順は、SEP1941規格に従ったプロトコルに従い、圧延方向の長さが50mmの鋼板プロファイルを機械的プロービング(probing)(スキッドレス)(skidless)によって取得することからなる。プロービングによって得られた信号から、次数5の多項式を持つその一般的な形状の近似値を差し引く。次いで、0.8mmのカットオフを適用することによって、うねりWa及び算術平均粗さRaをガウスフィルタによって分離する。変形後の鋼板の場合、この手順を、板の変形ゾーン及び未変形ゾーンに適用する。
【0087】
試験1~15のプロセスパラメータ及びうねりの値を表1にまとめた。本発明による試験は、いずれも式(1)又は式(2)を満足するものである。
【0088】
その後、うねり値が改善された追加の試験16~38を実施し、対応するプロセスパラメータ及びうねり値を表2にまとめた。このような試験はすべて、式(1)に加えて、式(3)又は式(4)を満足する。
【0089】
【0090】
【国際調査報告】