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特表2023-5492671~30重量%の結晶性水酸化炭酸アルミニウムアンモニウムを含むシリカ-アルミナ組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】1~30重量%の結晶性水酸化炭酸アルミニウムアンモニウムを含むシリカ-アルミナ組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 21/12 20060101AFI20231115BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20231115BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20231115BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20231115BHJP
   B01J 37/30 20060101ALI20231115BHJP
   B01J 37/06 20060101ALI20231115BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231115BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20231115BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20231115BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20231115BHJP
   B01J 23/888 20060101ALI20231115BHJP
   C01F 7/782 20220101ALN20231115BHJP
【FI】
B01J21/12 Z
B01J37/04 102
B01J37/03 B
B01J37/10
B01J37/30
B01J37/06
B01J37/08
B01J37/00 F
B01J32/00
B01J35/10 301A
B01J23/888 M
C01F7/782
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528667
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 IB2021056626
(87)【国際公開番号】W WO2022101693
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/114,086
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョティムルゲサン、カンダスワミ
(72)【発明者】
【氏名】ティムケン、ヘ - キョン チョ
【テーマコード(参考)】
4G076
4G169
【Fターム(参考)】
4G076AA10
4G076AA15
4G076AA19
4G076AB04
4G076AB08
4G076AB09
4G076BA13
4G076BC07
4G076BD01
4G076BE04
4G076DA01
4G169AA01
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01C
4G169BA02C
4G169BA03A
4G169BA03B
4G169BA15C
4G169BA21C
4G169BA37
4G169BA42C
4G169BA47C
4G169BB05A
4G169BB06C
4G169BB08C
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4G169BB12C
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4G169BB20A
4G169BB20C
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4G169BC02C
4G169BC16A
4G169BC16C
4G169BC60B
4G169BC68B
4G169BD01C
4G169BD02C
4G169BD04C
4G169BD05C
4G169BD12C
4G169BE08C
4G169CB41
4G169CC05
4G169DA06
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC07X
4G169EC07Y
4G169EC08X
4G169EC08Y
4G169EC14X
4G169EC15X
4G169EC18X
4G169EC21Y
4G169EC26
4G169FA01
4G169FB05
4G169FB09
4G169FB26
4G169FB27
4G169FB30
4G169FB63
4G169FC02
4G169FC03
4G169FC06
4G169FC08
4G169FC09
(57)【要約】
改善された特性を有するシリカ-アルミナ組成物の製造工程が提供される。当該工程は、(a)ケイ素化合物の水溶液とアルミニウム化合物及び酸の水溶液とを、混合溶液のpHを1~3の範囲に維持しながら混合し、酸性化したシリカ-アルミナゾルを得るステップと、(b)塩基性沈殿剤の水溶液を、最終pHが5~8の範囲になるまで、酸性化したシリカ-アルミナゾルに添加してシリカ-アルミナスラリーを共沈殿させるステップであって、塩基性沈殿剤は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択される当該ステップと、(c)任意選択で、シリカ-アルミナスラリーを熱水熟成させ、熱水熟成シリカ-アルミナスラリーを形成するステップと、(d)シリカ-アルミナスラリーまたは熱水熟成シリカ-アルミナスラリーから沈殿固体を回収するステップであって、沈殿固体はシリカ-アルミナ組成物を含む当該ステップを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質シリカ-アルミナ組成物の調製工程であって、
(a)ケイ素化合物の水溶液とアルミニウム化合物及び酸の水溶液とを、混合溶液のpHを1~3の範囲に維持しながら混合し、酸性化したシリカ-アルミナゾルを得るステップと、
(b)塩基性沈殿剤の水溶液を、最終pHが5~8の範囲になるまで、前記酸性化したシリカ-アルミナゾルに添加してシリカ-アルミナスラリーを共沈殿させるステップであって、前記塩基性沈殿剤は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択される前記ステップと、
(c)任意選択で、前記シリカ-アルミナスラリーを熱水熟成させ、熱水熟成シリカ-アルミナスラリーを形成するステップと、
(d)前記シリカ-アルミナスラリーまたは前記熱水熟成シリカ-アルミナスラリーから沈殿固体を回収するステップであって、前記沈殿固体は前記シリカ-アルミナ組成物を含む前記ステップと、を含む前記工程。
【請求項2】
前記ステップ(d)で得られた前記シリカ-アルミナ組成物を、洗浄、イオン交換、乾燥及び/またはか焼することをさらに含む、請求項1に記載の工程。
【請求項3】
前記ステップ(d)で得られた前記シリカ-アルミナ組成物を噴霧乾燥することを含む、請求項2に記載の工程。
【請求項4】
前記ケイ素化合物は、アルカリ金属ケイ酸塩、ケイ酸、コロイド状シリカ、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、及びそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の工程。
【請求項5】
前記ケイ素化合物はケイ酸ナトリウムである、請求項1に記載の工程。
【請求項6】
前記ケイ酸ナトリウムは、SiO/NaOの重量比が2.5~3.5の範囲である、請求項5に記載の工程。
【請求項7】
前記ケイ素化合物を含む前記水溶液は、SiOとして表されるケイ素の含有量が2重量%~15重量%の範囲である前記ケイ素化合物を含む、請求項1に記載の工程。
【請求項8】
前記アルミニウム化合物は、アルミニウム塩、ハロゲン化アルミニウム、及びアルカリ金属アルミン酸塩からなる群から選択される、請求項1に記載の工程。
【請求項9】
前記アルミニウム化合物を含む前記水溶液は、Alとして表されるアルミニウムの含有量が2重量%~25重量%の範囲である前記アルミニウム化合物を含む、請求項1に記載の工程。
【請求項10】
前記酸は、ギ酸、酢酸、塩酸、硝酸、硫酸、及びそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の工程。
【請求項11】
前記ステップ(c)における熱水熟成は、20℃~200℃の温度で1~6時間実施される、請求項1に記載の工程。
【請求項12】
少なくとも1.0cm/gの全細孔容積を有する非晶質シリカ-アルミナを含むシリカ-アルミナ組成物であって、乾燥状態では、結晶相にある前記シリカ-アルミナ組成物の全重量に対して1~30重量%の水酸化炭酸アルミニウムアンモニウムを含む前記シリカ-アルミナ組成物。
【請求項13】
前記非晶質シリカ-アルミナの細孔容積は、1.0cm/g~2.0cm/gの範囲である、請求項12に記載のシリカ-アルミナ組成物。
【請求項14】
前記シリカ-アルミナ組成物は、乾燥状態では、結晶相にある前記シリカ-アルミナ組成物の全重量に対して3~20重量%の水酸化炭酸アルミニウムアンモニウムを含む、請求項12に記載のシリカ-アルミナ組成物。
【請求項15】
前記シリカ-アルミナ組成物は、乾燥状態では、結晶相にある前記シリカ-アルミナ組成物の全重量に対して5~15重量%の水酸化炭酸アルミニウムアンモニウムを含む、請求項12に記載のシリカ-アルミナ組成物。
【請求項16】
前記シリカ-アルミナは、か焼状態では、結晶性物質を含まない、請求項12に記載のシリカ-アルミナ組成物。
【請求項17】
前記非晶質シリカ-アルミナのシリカの含有量は、20重量%~80重量%の範囲であり、アルミナの含有量は、20重量%~80重量%の範囲である、請求項12に記載のシリカ-アルミナ組成物。
【請求項18】
前記非晶質シリカ-アルミナのBET表面積は、300m/g~500m/gの範囲である、請求項12に記載のシリカ-アルミナ組成物。
【請求項19】
前記非晶質シリカ-アルミナ組成物のメソ細孔容積は、少なくとも0.7cm/gである、請求項12に記載のシリカ-アルミナ組成物。
【請求項20】
前記非晶質シリカ-アルミナ組成物は、200Å~500Åの範囲の直径を有するメソ細孔の容積が、窒素物理吸着によって測定される全細孔容積の30%~80%を表すような空隙率を有する、請求項12に記載のシリカ-アルミナ組成物。
【請求項21】
シリカ-アルミナ組成物を調製する連続工程であって、
(a)ケイ素化合物の水溶液とアルミニウム化合物及び酸の水溶液とを、混合溶液のpHを1~3の範囲に維持しながら、第1の混合領域で連続的に接触及び混合するステップと、
(b)前記第1の混合領域から第1の混合物を連続的に除去するステップであって、前記第1の混合物は酸性化したシリカ-アルミナゾルを含む前記ステップと、
(c)前記第1の混合物と塩基性沈殿剤の水溶液とを、pHを5~8の範囲に維持しながら、第2の混合領域で連続的に接触及び混合し、シリカ-アルミナスラリーを生成するステップであって、前記塩基性沈殿剤は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択される前記ステップと、
(d)前記第2の混合領域から前記シリカ-アルミナスラリーを連続的に除去するステップと、
(e)前記シリカ-アルミナスラリーから沈殿固体を回収するステップであって、前記沈殿固体はシリカ-アルミナ組成物を含む前記ステップと、を含む、前記連続工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高い細孔容積を有する非晶質シリカ-アルミナ組成物及びそのような組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ、アルミナ、及びそれらの非晶質混合物(シリカ-アルミナ)などの化合物は、オリゴマー化や水素化分解反応などの炭化水素の転化反応で広く使用される触媒である。それらを特徴付ける多孔質構造及び高い表面積のために、これらの化合物(特に非晶質シリカ-アルミナ)は、触媒及び金属触媒の担体の両方として使用することができる。例えば、水素化分解反応の場合、工業的規模で最も広く使用されている触媒の1つは、シリカ-アルミナ担体に均一に分散された1つ以上の金属を含む二官能性触媒である。この触媒中の金属成分は水素化反応を触媒するが、シリカ-アルミナは、その酸性特徴により、分解反応を触媒する。
【0003】
非晶質シリカ-アルミナ組成物は、一般に、ゼオライトの酸部位よりも弱い表面酸部位を有する。この適度な酸性度により、シリカ-アルミナ系触媒は、一般に高温及び低空間速度で使用され得る。適度な酸性度は、水素化分解触媒をディーゼル生産に選択的にする一方で、軽質ナフサ形成への過分解を最小限に抑えるために望ましい。
【0004】
非晶質シリカ-アルミナ組成物も細孔寸法が広く分布している。これにより、試薬分子の高い拡散速度(重質炭化水素原料の転化工程の場合において特に有利な特性)が得られ、触媒として可能な金属成分を受け、効果的に分散することができる十分な表面積を提供し得る。
【0005】
多種多様な形態の非晶質シリカ-アルミナを調製するための多数の工程が知られている。調製に適用される特定の操作条件は、得られるシリカ-アルミナの触媒特性及び物理化学的特性、例えば細孔構造、全容積、表面積、及び酸性特徴などに大きく影響することも知られている。
【0006】
様々な触媒用途で使用する触媒または触媒の成分として特に有用である特定の物理的特性及び触媒特性を有する非晶質シリカ-アルミナ組成物を提供することは望ましい。
【0007】
特定の所望の物理的特性及び触媒特性を有する非晶質シリカ-アルミナの調製工程を提供することも望ましい。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様において、非晶質シリカ-アルミナ組成物を調製する工程であって、当該工程は、(a)ケイ素化合物の水溶液とアルミニウム化合物及び酸の水溶液とを、混合溶液のpHを1~3の範囲に維持しながら混合し、酸性化したシリカ-アルミナゾルを得るステップと、(b)塩基性沈殿剤の水溶液を、最終pHが5~8の範囲になるまで、酸性化したシリカ-アルミナゾルに添加してシリカ-アルミナスラリーを共沈殿させるステップであって、塩基性沈殿剤は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択される当該ステップと、(c)任意選択で、シリカ-アルミナスラリーを熱水熟成させ、熱水熟成シリカ-アルミナスラリーを形成するステップと、(d)シリカ-アルミナスラリーまたは熱水熟成シリカ-アルミナスラリーから沈殿固体を回収するステップであって、沈殿固体はシリカ-アルミナ組成物を含む当該ステップを含む。
【0009】
第2の態様において、非晶質シリカ-アルミナ組成物を調製する連続工程であって、当該工程は、(a)ケイ素化合物の水溶液とアルミニウム化合物及び酸の水溶液とを、混合溶液のpHを1~3の範囲に維持しながら、第1の混合領域で連続的に接触及び混合するステップと、(b)第1の混合領域から第1の混合物を連続的に除去するステップであって、第1の混合物は酸性化したシリカ-アルミナゾルを含む当該ステップと、(c)第1の混合物と塩基性沈殿剤の水溶液とを、pHを5~8の範囲に維持しながら、第2の混合領域で連続的に接触及び混合し、シリカ-アルミナスラリーを生成するステップであって、塩基性沈殿剤は炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択される当該ステップと、(d)第2の混合領域からシリカ-アルミナスラリーを連続的に除去するステップと、(e)シリカ-アルミナスラリーから沈殿固体を回収するステップであって、沈殿固体はシリカ-アルミナ組成物を含む当該ステップを含む。
【0010】
第3の態様において、少なくとも1.0cm/gの全細孔容積を有する非晶質シリカ-アルミナを含むシリカ-アルミナ組成物であって、乾燥状態では、結晶相にあるシリカ-アルミナ組成物の全重量に対して1~30重量%の水酸化炭酸アルミニウムアンモニウムを含む当該シリカ-アルミナ組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】か焼前のSIRAL(登録商標)-40シリカ-アルミナ乾燥粉末の粉末X線回折(XRD)パターンを示す。
図2】か焼前のSIRAL(登録商標)-40HPVシリカ-アルミナ乾燥粉末試料の粉末XRDパターンを示す。
図3】実施例3で調製されたか焼前のシリカ-アルミナ乾燥粉末試料の粉末XRDパターンを示す。
図4】実施例4で調製されたか焼前のシリカ-アルミナ乾燥粉末試料の粉末XRDパターンを示す。
図5】実施例5で調製されたか焼前のシリカ-アルミナ乾燥粉末試料の粉末XRDパターンを示す。
図6】実施例5で調製された1000°Fでか焼した後のシリカ-アルミナ試料の粉末XRDパターンを示す。
図7】実施例7で調製されたか焼前のシリカ-アルミナ乾燥粉末試料の粉末XRDパターンを示す。
図8】実施例9で調製されたか焼前のシリカ-アルミナ乾燥粉末試料の粉末XRDパターンを示す。
図9】実施例3、4、6、及び8で調製されたシリカ-アルミナ材料のN吸着細孔サイズ分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義及び略語
本明細書において、以下の単語及び表現は、使用される場合、及び使用されるとき、以下で与える意味を有する。
【0013】
「ミクロ細孔」という用語は、2ナノメートル未満(<20Å)の直径を有する細孔を含む固体材料を意味する。
【0014】
「メソ細孔」という用語は、2~50ナノメートル(20~500Å)の直径を有する細孔を含む固体材料を意味する。
【0015】
「マクロ細孔」という用語は、50ナノメートル(>500Å)を超える直径を有する細孔を含む固体材料を意味する。
【0016】
ミクロ細孔、メソ細孔、及びマクロ細孔の上記のそれぞれの定義は、いずれかの所与の試料の細孔サイズの分布におけるパーセンテージまたは値を合計するときに重複されず、細孔を2回カウントされないように、別個のものと見なされる。
【0017】
本明細書における「水溶液」という用語は、溶媒が水であるいずれかの溶液を指す。水溶液は、溶液中に溶解される水溶性物質及び/または溶液中に分散される水不溶性化合物を含み得る。
【0018】
「連続的」という用語は、中断または停止することなく働くシステムを意味する。例えば、シリカ-アルミナゾルを生成する連続的なゾル工程は、反応物(酸性化したアルミニウム溶液及びケイ素化合物の水溶液)が1つ以上の反応器内に連続的に導入され、シリカ-アルミナゾルを含む水性生成物が連続的に取り出される工程である。
【0019】
「コゲル(co-gel)」という用語は、2つ以上の成分のゲル化から生成される生成物を指す。
【0020】
「乾燥シリカ-アルミナ」という用語は、溶媒、一般に水、または水と1つ以上の水混和性溶媒との混合物が実質的に除去されたシリカ-アルミナ材料を指す。
【0021】
「か焼済みシリカ-アルミナ」という用語は、空気、酸素、または不活性雰囲気中で、少なくとも、乾燥した基板中に存在した残留揮発分(全ての有機材料及び水を含む)が除去される温度まで加熱されたシリカ-アルミナ材料を指す。か焼に用いられる温度は、一般に、約0.25~8時間で400℃~900℃である。
【0022】
「水酸化炭酸アルミニウムアンモニウム」という用語は、「AACH」と略されることがある。
【0023】
シリカ-アルミナの合成
本工程では、対応するシリカ-アルミナコゾル(co-sol)から出発するシリカ-アルミナ組成物のコゲル沈殿物が提供される。
【0024】
本開示に係るシリカ-アルミナは、バッチ及び連続プロセスを多様に組み合わせて採用する様々な方法によって調製し得る。
【0025】
当該工程のステップ(a)では、ケイ素化合物の水溶液とアルミニウム化合物及び酸の水溶液とを混合することにより、酸性化したシリカ-アルミナコゾルが得られる。
【0026】
pHを1~3(例えば、1~2.5)の範囲に維持し、アルミニウム及びシリコン溶液の強力で完全な混合を保証し、望ましくないゲルまたは粒子の形成を最小限に抑えることが望ましい。
【0027】
ケイ素化合物の水溶液は、SiOとして表されるケイ素の含有量が2重量%~15重量%(例えば、5重量%~10重量%)の範囲であるケイ素化合物を含むことができる。
【0028】
好適なケイ素化合物は、アルカリ金属ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ナトリウム)、ケイ酸、コロイドシリカ、沈降シリカ、及びヒュームドシリカであり得る。いくつかの態様において、ケイ素化合物はケイ酸ナトリウム、特にSiO/NaOの重量比が2.5~3.5の範囲であるケイ酸ナトリウムである。
【0029】
アルミニウム化合物の水溶液は、Alとして表されるアルミニウムの含有量が2重量%~25重量%(例えば、5重量%~10重量%)の範囲であるアルミニウム化合物を含むことができる。
【0030】
好適なアルミニウム化合物としては、アルミニウム塩(例えば、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム)、ハロゲン化アルミニウム(例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム)、及びアルカリ金属アルミン酸塩(例えば、アルミン酸ナトリウム)が挙げられる。
【0031】
アルミニウム化合物の水溶液に含まれる好適な酸は、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、または酢酸などの鉱酸及び/または有機酸である。
【0032】
当該工程のステップ(b)では、次いで、塩基性沈殿剤の水溶液が酸性化したシリカ-アルミナゾルに添加される。塩基性沈殿剤の添加によりゾルのpHが上昇し、シリカ及びアルミナ種の共沈またはコゲル化が起こる。塩基性沈殿剤は、炭酸アンモニウム及び/または重炭酸アンモニウムから選択される。
【0033】
ステップ(b)は、バッチプロセスまたは連続プロセスを介して実施することができる。いずれの場合も、共沈pHは均一に維持されるべきである(すなわち、6~8または6.5~7.5などの5~8のpH範囲で一定に保たれる)。シリカ-アルミナゾル溶液を塩基性沈殿剤と強力で完全に混合し、ステップ(b)の際に、混合物全体で均一なpHを維持して、単離されたシリカドメイン及びアルミナドメインの形成を最小限に抑えることが望ましい。
【0034】
当該工程のステップ(a)及び(b)の混合容器または反応容器は、連続撹拌タンク反応器または混合機など、容器の内容物を撹拌するための手段を備えた容器を含む、当該技術分野で知られている任意の好適な容器及び関連機器であり、それらの中の成分を混合及び分散させ、かつ沈殿固体を懸濁及び分散させるために設けられ得る。容器はまた、容器の内容物と熱交換するための手段を備えることにより、容器の内容物の温度を制御し得る。
【0035】
当該工程のステップ(a)及び(b)で成分を混合するために必要な時間は、混合領域内で均一な混合物を得るために必要な時間だけに最小限にすることが望ましい。混合時間は、使用する機器の種類、機器のサイズ、及び他の要因によって異なるが、成分を混ぜ合わせ、混合し、分散させるのに必要な時間は、ステップ当たり、0.1分~30分の範囲である。
【0036】
当該工程のステップ(a)及び(b)は、10℃~90℃(例えば、20℃~80℃)の範囲の温度で実施され得る。
【0037】
当該工程の任意選択のステップ(c)における熱水熟成は、20℃~200℃(例えば、20℃~120℃、または120℃~180℃)の温度で1~6時間実施され得る。
【0038】
当該工程のステップ(d)において、熱水熟成シリカ-アルミナスラリーから沈殿固体を分離するための当業者に公知の任意の好適な方法を使用し、沈殿固体を回収し得る。そのような方法としては、重力分離、圧力分離、及び真空分離が挙げられ、例えば、ベルトフィルタ、プレート及びフレームフィルタ、ならびに回転真空フィルタなどの装置の使用を含み得る。
【0039】
回収された沈殿固体は、洗浄、イオン交換、乾燥、及び/またはか焼によってさらに処理することができる。
【0040】
ステップ(d)で得られる回収された沈殿固体は、通常、水で洗浄し、未反応のケイ酸塩及びアルミニウム塩などの不純物を除去する。沈殿固体を洗浄するために使用される水の量は、2~8(例えば、2.5~7)の範囲のpHを有する洗浄粉末を好適に提供する任意の量であり得る。単一ステップで使用される固体に対する水の重量比は、01:1~100:1(例えば、0.5:1~50:1)の範囲であり得る。
【0041】
洗浄された沈殿固体には、通常、残留ナトリウムを除去するために、アンモニウムイオン交換を実施する。単一ステップで使用される固体に対する水の重量比は、01:1~100:1(例えば、0.5:1~50:1)の範囲であり得る。回収された沈殿固体を精製するために、1つ以上のアンモニウム交換及び洗浄ステップが用いられ得る。洗浄及びアンモニウム交換ステップは、ベルトコンベヤー上で連続的に行い得る。
【0042】
洗浄され、アンモニウム交換された沈殿固体は、当技術分野で知られている好適な噴霧乾燥方法のいずれかを使用して再スラリー化及び噴霧乾燥され、取り扱い及び保管に便利な噴霧乾燥粉末として提供し得る。あるいは、洗浄及びアンモニウム交換された沈殿固体をフラッシュ乾燥またはオーブン乾燥し、乾燥粉末として提供し得る。シリカ-アルミナは、空気中または他の好適な乾燥条件下の任意の他の好適な雰囲気中で50℃~200℃(例えば、60℃~180℃)の乾燥温度で、乾燥され得る。
【0043】
必要に応じて、乾燥したシリカ-アルミナ材料を押し出し、乾燥し、か焼して、シリカ-アルミナ触媒または触媒担体を作製し得る。押し出されたペレットは、空気中または他の好適な乾燥条件下の任意の他の好適な雰囲気中で50℃~200℃(例えば、60℃~180℃)の乾燥温度で、乾燥され得る。押し出されたペレットは、好ましくはさらに乾燥された後、好適なか焼条件下、特に酸素含有雰囲気(例えば、空気)下で、か焼温度400℃~900℃(例えば、450℃~650℃)で0.25~8時間か焼され得る。
【0044】
シリカ-アルミナ組成物は、例えば、モレキュラーシーブ、粘土、改質粘土、無機酸化物、炭素、有機物質などの他の材料と複合化し得る。本シリカ-アルミナ組成物から由来する触媒は、活性金属成分を有し得る。活性金属成分は、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、白金、及びパラジウムからなる群から選択され得る。
【0045】
シリカ-アルミナ組成物は、例えば、水素化分解、水素化処理(例えば、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属)、水素化仕上げ、アルキル化、オリゴマー化、アルキル化、脱塩素化、炭化水素の酸化などの工業プロセス及び残留物のアップグレードプロセスにおいて触媒として使用することができる。
シリカ-アルミナ組成物
【0046】
本発明の工程に従って調製されたシリカ-アルミナ組成物は高度に非晶質である。シリカ-アルミナは、乾燥した形態では、結晶性を有する水酸化炭酸アルミニウムアンモニウム水和物を少量含んでいる。いくつかの態様において、結晶性水酸化炭酸アルミニウムアンモニウム水和物の式は、(NHAl(CO(OH)14xHOであり、ドーソナイトアンモニウムと構造的に関連している。結晶性水酸化炭酸アルミニウムアンモニウムの量は、その特徴的な粉末X線回折(XRD)パターンによって示される。本発明のシリカ-アルミナ組成物は、擬ベーマイトなどの他の様々な結晶性アルミナ相を代表するXRDピークが著しく欠如している。一般に、結晶相に存在する水酸化炭酸アルミニウムアンモニウムの量は、乾燥形態のシリカアルミナ組成物の全重量の1~30重量%(例えば、3~20重量%、または5~15重量%)の範囲である。
【0047】
乾燥したシリカ-アルミナ組成物は、か焼すると、完全に非晶質になり、結晶性物質を含まない。「結晶性物質を含まない」とは、結晶相が存在しないこと、または結晶相が存在する場合でも、それらの全量がX線回折によって検出できないことを意味する。
【0048】
非晶質シリカ-アルミナ組成物のシリカ含有量は、20重量%~80重量%(例えば、30重量%~70重量%)の範囲であり得る。アルミナは、20重量%~80重量%(例えば、30重量%~70重量%)の範囲で存在し得る。化学組成は、誘導結合プラズマ-質量分析法(ICP-MS)によって決定される。
【0049】
本工程により得られる非晶質シリカ-アルミナ組成物の特徴は、非常に高い全細孔容積を有することである。非晶質シリカ-アルミナ組成物の全細孔容積は、少なくとも1.0cm/g(例えば、1.0cm/g~2.0cm/g、1.2cm/g~1.9cm/g、または1.3cm/g~1.8cm/g)である。全細孔容積は、ASTM D6761に従って窒素物理吸着によって決定することができる。
【0050】
本工程により得られる非晶質シリカ-アルミナ組成物の別の特徴は、非常に高い表面積を有することである。表面積は、200m/g~500m/g(例えば、300m/g~470m/g)の範囲であり得る。表面積は、ASTM D3663に従ってBET法を用い、窒素物理吸着によって決定することができる。
【0051】
本工程によって得られる非晶質シリカ-アルミナ組成物の別の特徴は、メソ細孔領域(すなわち、20Å~500Å)、特に200Å~500Åのメソ細孔領域において高い全細孔容積を有し得ることである。非晶質シリカ-アルミナ組成物の全メソ細孔容積は、少なくとも0.7cm/g(例えば、0.7cm/g~1.8cm/g)であり得、200Å~500Åのメソ細孔範囲の細孔容積は、少なくとも0.3cm/g(例えば、0.3cm/g~1.0cm/g)であり得る。
【0052】
いくつかの態様において、非晶質シリカ-アルミナ組成物は、200Å~500Åの範囲の直径を有するメソ細孔の容積が、窒素物理吸着によって測定される全細孔容積の30%~80%を表すような空隙率を有する。
【実施例
【0053】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることを意図している。
【0054】
実施例1(比較)
SIRAL(登録商標)-40シリカ-アルミナ(Sasolから入手)を比較例として使用した。この材料の物理的特性を表1にまとめる。
【0055】
SIRAL-40シリカ-アルミナ(受けたままの乾燥粉末)の粉末XRDパターンを図1に示し、これにより、当該材料が相当量の結晶性擬ベーマイトを有することを示す。定量化を用いて、SIRAL-40シリカ-アルミナが結晶性標準に対して約48%の結晶性アルミナ相を含むことを示した。結晶相の定量化は、純粋なCATAPAL(登録商標)Bアルミナを参照として使用して行った。
【0056】
このシリカ-アルミナを使用し、実施例11に記載の水素化分解触媒を調製した。
【0057】
実施例2(比較)
SIRAL(登録商標)-40HPVシリカ-アルミナ(Sasolから入手)を別の比較例として使用した。この材料の物理的特性を表1にまとめる。
【0058】
SIRAL-40HPVシリカ-アルミナ(受けたままの乾燥粉末)の粉末XRDパターンを図2に示し、これにより、当該材料が相当量の結晶性擬ベーマイト及び微量のバイヤライトを有することを示す。定量化を用いて、当該材料が結晶性アルミナ標準に対して約29%の結晶性アルミナ相を含んだことを示した。
【0059】
このシリカ-アルミナを使用し、実施例12に記載の水素化分解触媒を調製した。
【0060】
実施例3(比較)
連続的なゾルの調製及びゲル化によるシリカ-アルミナの合成
2396gの塩化アルミニウム及び711gの塩酸(37%)を6623gの脱イオン水に溶解することにより、酸性アルミニウム溶液(5.2重量%のAlを含有する溶液I)を調製した。
【0061】
2070gの濃縮ケイ酸ナトリウム溶液(29重量%のSiO及び9重量%のNaOを含有)を脱イオン水で希釈することにより、ケイ酸ナトリウムの希釈溶液(6重量%のSiOを含有する溶液II)を調製した。
【0062】
ケイ酸塩溶液(溶液II)及びアルミニウム溶液(溶液I)を別個かつ同時に約100cmの混合チャンバ容積を有するインライン混合機にポンプで注入しながら、1000rpmの混合機ブレード回転で強力に混合し、溶液IIIを調製した。混合チャンバ内の溶液の滞留時間は約0.53分であった。溶液IIIの最終pHは2.1であり、混合により水溶液中に透明なシリカ-アルミナゾルが生成された。最終溶液IIIは、SiO/Alのモル比が2.0であり、H/Naのモル比は1.2であった。
【0063】
ゲル化のために、希アンモニア溶液(8重量%のNHを含む)を調製した。希アンモニア溶液及びシリカ-アルミナゾルを含む溶液IIIを別個かつ同時にインライン混合機の混合チャンバ内へポンプで注入した。インライン混合機内の混合は強力で、混合機ブレードの回転は1600rpmとした。混合チャンバの容積は、1分間にポンプで注入される溶液の全容積よりも小さい(すなわち、容積当たりの滞留時間は1分未満)。アンモニア溶液の添加速度を調整し、ゲル生成物のpHを7.0±0.5に維持した。ゲルスラリーを回収した後、攪拌しながら室温で2時間熟成した。このコゲル化シリカ-アルミナをろ過し、ろ過ケークを作製した。ろ過ケークを硝酸アンモニウムの熱溶液(150°Fで10Lの脱イオン水中の200gの硝酸アンモニウム)で洗浄し、次いで20Lの脱イオン水でリンス洗浄した。洗浄ステップをさらに4回繰り返した。最後に、約550°Fの入口温度及び約212°Fの出口温度を有するMOBILE MINOR(登録商標)噴霧乾燥機(H型、モデル2000、Niro Inc.)を使用してスラリーを噴霧乾燥した。活性化のために、少量の噴霧乾燥したシリカ-アルミナを、過剰乾燥空気下、1000°Fで1時間か焼した。
【0064】
最終シリカ-アルミナの物理的特性を表1及び表2にまとめる。乾燥生成物の粉末XRDを図3に示し、これにより、シリカ-アルミナが粒子全体にわたって均質であり、完全に非晶質であることを示す。
【0065】
この担体を使用し、実施例13に記載の水素化分解触媒を調製した。
【0066】
実施例4(比較)
大気圧下のオープンビーカでのシリカ-アルミナの合成
密閉されたインライン混合機での強力な混合が高い細孔容積のシリカ-アルミナの形成にどのように影響するかを理解するために、背圧が適用されず、炭酸塩がゲル化中のCOの発生により容器から自由に排出され得るオープンビーカでシリカ-アルミナの合成を行った。
【0067】
207gのAlCl・6HO及び59.3gの塩酸(37%)を648gの脱イオン水に溶解することにより、酸性アルミニウム溶液(5.0重量%のAlを含有する溶液I)を調製した。
【0068】
188gの濃縮ケイ酸ナトリウム溶液(29重量%のSiO及び9重量%のNaOを含有)を脱イオン水で希釈することにより、ケイ酸ナトリウムの希釈溶液(5重量%のSiOを含有する溶液II)を調製した。
【0069】
ケイ酸塩溶液(溶液II)及びアルミニウム溶液(溶液I)を別個かつ同時にビーカにポンプで注入しながら、ビーカ内のオーバーヘッドミキサーが2つの入ってくる溶液を強く混合し、溶液IIIを調製した。蠕動ポンプを使用してビーカから溶液IIIを取り出し、ビーカ中の混合溶液の滞留時間を1分未満に維持した。溶液IIIの最終pHは2.2であり、混合により透明なシリカ及びアルミナ溶液が生成された。最終溶液IIIは、SiO/Alのモル比が2.0であり、H/Naのモル比は1.1であった。
【0070】
ゲル化のために、2.0Mの炭酸アンモニウム溶液を調製した。希炭酸アンモニア溶液と、シリカ及びアルミナゾルを含有する溶液IIIとを別個かつ同時に大気圧でビーカ中の混合容器にポンプで注入した。炭酸アンモニア溶液の添加速度を調整し、ゲル生成物のpHを7.0±0.1に維持し、ゲルスラリーを連続的に取り出すことによってゲルスラリーレベルを維持した。ゲルスラリーを回収し、攪拌しながら160°Fで2時間熟成させた。このコゲル化シリカ-アルミナをろ過してろ過ケークを生成した。ろ過ケークを硝酸アンモニウムの熱溶液で洗浄し、次いで脱イオン水でリンス洗浄した。洗浄ステップをさらに4回繰り返した。最後に、スラリーをろ過してろ過ケークを生成し、120℃のオーブンで12時間乾燥させた。活性化のために、少量の乾燥したシリカ-アルミナを、過剰乾燥空気下、1000°Fで1時間か焼した。
【0071】
最終シリカ-アルミナの物理的特性を表1及び表2にまとめる。生成物の粉末XRDを図4に示し、これにより、シリカ-アルミナが粒子全体にわたって均質であり、非晶質であることを示す。このシリカ-アルミナの全細孔容積は、0.49cm/gだけであった。
【0072】
実施例5
連続ゲル化による高い細孔容積シリカ-アルミナの合成
2105gのAl(SO)・xHO及び239gの硫酸(98%)を3023gの脱イオン水に溶解することにより、酸性アルミニウム溶液(6重量%のAlを含有する溶液I)を調製した。
【0073】
1317gの濃縮ケイ酸ナトリウム溶液(29重量%のSiO及び9重量%のNaOを含有)を、4071gの脱イオン水で希釈することにより、ケイ酸ナトリウムの希釈溶液(6.6重量%のSiOを含有する溶液II)を調製した。
【0074】
アルミナ/硫酸溶液(溶液I)及びケイ酸塩溶液(溶液II)を別個かつ同時にインライン混合機の混合チャンバ内へポンプで注入しながら強力に混合した。インライン混合機内の混合は強力で、混合機ブレード回転を1000rpmとし、溶液IIIを得た。溶液IIIの最終pHは2.1であり、混合により透明なシリカ及びアルミナ溶液が生成された。最終溶液IIIは、SiO/Alのモル比が2.0であり、H/Naのモル比は1.2であった。
【0075】
ゲル化のために、2.0Mの炭酸アンモニウム溶液を調製した。希炭酸アンモニア溶液及びシリカ及びアルミナゾルを含む溶液IIIを別個かつ同時にインライン混合機の混合チャンバ内へポンプで注入した。インライン混合機内の混合は強力で、混合機ブレードの回転は1000rpmとした。混合チャンバの容積は、1分間にポンプで注入される溶液の全容積よりも小さかった(すなわち、容積当たりの滞留時間は1分未満)。炭酸アンモニア溶液の添加速度を調整し、ゲル生成物のpHを7.0±0.1に維持した。ゲルスラリーを回収した後、攪拌しながら160°Fで2時間熟成した。このコゲル化シリカ-アルミナをろ過してろ過ケークを生成した。ろ過ケークを硝酸アンモニウムの熱溶液(150°Fで10Lの脱イオン水中の200gの硝酸アンモニウム)で洗浄し、次いで20Lの脱イオン水でリンス洗浄した。洗浄ステップをさらに4回繰り返した。最後に、約550°Fの入口温度及び約212°Fの出口温度を有するMOBILE MINOR噴霧乾燥機を使用してスラリーを噴霧乾燥した。活性化のために、少量の噴霧乾燥したシリカ-アルミナを、過剰乾燥空気下、1000°Fで1時間か焼した。
【0076】
最終シリカ-アルミナの物理的特性を表1及び表2にまとめる。乾燥ケークの粉末XRDパターンを図5に示し、これにより、沈殿剤として炭酸アンモニウムを使用して調製されたシリカ-アルミナ生成物が、結晶相ならびに非晶質シリカ-アルミナを含む均一なゲルを生成したことを示す。XRD特徴づけにより、結晶相は、水酸化炭酸アルミニウムアンモニウム水和物[(NHAl(CO(OH)14・xHO]として、構造的にアンモニウムドーソナイトに関連する物質であることが確認された。XRD強度の定量化は、水酸化炭酸アルミニウムアンモニウム水和物の約10%の結晶相がシリカ-アルミナゲル中に存在することを示す。結晶相の定量化は、X.H.Li et al.(Proc.2012 Int.Conf.Mech.Eng.Mater.Sci.(MEMS 2012)2013,601-603)の手順に従って合成された純粋水酸化炭酸アルミニウムアンモニウム、NHAl(OH)COを使用して行われた。このシリカ-アルミナ材料には、擬ベーマイト、ベーマイト、またはギブサイトなどの典型的なアルミナ相のいずれも含まれていない。
【0077】
最終のか焼済みシリカ-アルミナの物理的特性を表1にまとめる。1000°Fでか焼した後、シリカ-アルミナは完全に非晶質になり、結晶性物質は存在しなかった。か焼された形態のシリカ組成物のXRDパターンを図6に示す。か焼された形態のシリカ-アルミナは、1.45cm/gの全細孔容積及び384m/gの全表面積を有していた。
【0078】
このシリカ-アルミナを使用し、実施例14に記載の水素化分解触媒を調製した。
【0079】
実施例6
連続ゾル調製と連続ゲル化による高い細孔容積シリカ-アルミナの合成
スラリーの熟成を除き、実施例5のシリカ-アルミナの合成を繰り返した。シリカ-アルミナ沈殿スラリーは、熟成せず、直ちにろ過ステップに進んだ。次いで、実施例5と同様の手順でケークをアンモニウム交換した。乾燥ケークの粉末XRDパターン(データは示さない)は、実施例5と同様に、約10%の結晶性水酸化炭酸アルミニウムアンモニウム水和物を含んでいた。か焼すると、材料は完全に非晶質になった(データは示さない)。か焼された材料は、1.23cm/gの細孔容積及び324m/gの表面積を有していた。この材料の特性を表2にまとめる。
【0080】
実施例7
連続ゲル化によるシリカ-アルミナの合成
調製手順は、1525gの塩化アルミニウム及び453gの塩酸(37%)を3389gの脱イオン水に溶解することにより、酸性アルミニウム溶液(6重量%のAlを含有する溶液I)を調製したことを除いて、実施例5と同様であった。
【0081】
シリカ-アルミナ生成物の粉末XRDパターンを図7に示し、これにより、当該材料が約10%の結晶性水酸化炭酸アルミニウムアンモニウム水和物を含んでいたことを示す。
【0082】
このシリカ-アルミナを使用し、実施例15に記載の水素化分解触媒を調製した。
【0083】
最終シリカ-アルミナの物理的特性を表1にまとめる。
【0084】
実施例8
連続ゲル化による高い細孔容積シリカ-アルミナの合成
実施例7のシリカ-アルミナの合成を繰り返した。か焼後のこのシリカ-アルミナの全細孔容積は、1.81cm/gであった。この材料の特性を表2にまとめる。
【0085】
実施例9
連続ゲル化によるシリカ-アルミナの合成
調製手順は、SiO/Alのモル比が3.0であることを除いて、実施例7の手順と同様であった。
【0086】
最終シリカ-アルミナの物理的特性を表1にまとめる。シリカ-アルミナ生成物の粉末XRDパターンを図8に示し、これにより、当該材料が約5%の結晶性水酸化炭酸アルミニウムアンモニウム水和物を含んでいたことを示す。
【0087】
このシリカ-アルミナを使用し、実施例16に記載の水素化分解触媒を調製した。
【表1】
【0088】
4つのコゲルシリカ-アルミナ(実施例3、4、6、及び8)をさらに分析し、特性の違いの原因を把握して、結果を表2にまとめた。図9は、これらの材料のN細孔サイズ分布を示す。
【表2】
【0089】
表2に示すように、水酸化アンモニウム溶液による沈殿から調製されたコゲルシリカ-アルミナ(実施例3)は、0.73cm/gのメソ細孔容積を有し、これらの細孔は、主に30Å~200Åの細孔サイズ範囲にあった。本発明の実施例6及び8の高い細孔容積シリカ-アルミナもまた、実施例3と同様に、細孔サイズが30Å~200Åの範囲の相当量のメソ細孔を含んでいた。さらに、実施例6及び8のコゲルシリカ-アルミナは、200Åを超えるメソ細孔に由来する相当の細孔容積を含んでいた。実施例6及び8の大きい細孔のシリカ-アルミナは、メソ細孔のバイモーダルな細孔サイズ分布を有する。大きいメソ細孔は、実施例6及び8でそれぞれ示される1.23cm/g及び1.81cm/gの高い細孔容積を提供する。
【0090】
実施例4のようにオープンビーカ中でシリカ-アルミナ合成法を適用した場合、得られたシリカ-アルミナは高い細孔容積のシリカ-アルミナを生成しなかった。この材料の全細孔容積はちょうど0.49cm/gであった。
【0091】
実施例4の乾燥ケークの元素分析は、炭酸アンモニウムの役割が、酸性AlCl溶液を中和してシリカ-アルミナゲルの沈殿を引き起こすことは示すが、シリカ-アルミナゲルへの炭酸塩の組み込みは示さない、炭素がほとんどないことを示した。実施例6及び8の乾燥粉末試料の元素分析は、シリカ-アルミナへの炭酸塩の組み込みを示す、それぞれ2.7重量%及び2.1重量%の炭素が示された。シリカ-アルミナ材料の粉末X線回折スペクトルは、結晶性水酸化炭酸アルミニウムアンモニウム水和物の存在を示す。結果は、本開示の高い細孔容積のシリカ-アルミナを作製するためには、炭酸アンモニウムの組み込み及びコゲル中の結晶性水酸化炭酸アルミニウムアンモニウム水和物相が存在する必要があることを示す。
【0092】
実施例10
モデル化合物試験
実施例1~3、5、及び7のシリカ-アルミナ組成物には、50重量%のn-ヘキサン(n-C6)及び50重量%の3-メチルペンタン(MP)を含むモデル原料を用いて組成物の触媒活性を測定するモデル化合物試験を行った。試験は、900°Fで実施された。ヘリウムキャリアガスで気化されている炭化水素原料を、24/40USメッシュペレットのシリカ-アルミナ上方に、触媒材料の1グラム当たり0.68時間-1WHSVで流し、炭化水素種の転化を、ガスクロマトグラフィーを用いて測定した。結果を表3に示す。
【表3】
【0093】
表3は、コゲルシリカ-アルミナ(実施例3)の活性が、結晶性アルミナの分離相である擬ベーマイトを含むSIRALシリカ-アルミナ材料(実施例1及び2)よりも高いことを示している。理論に拘束されるものではないが、本開示のコゲルシリカ-アルミナは、シリカ及びアルミナの小さなドメインからなる完全に非晶質のシリカ-アルミナを生成してアルミニウムをより効果的に利用することで、より高い活性によって証明されるように、より多くの酸部位をもたらすと考えられる。
【0094】
本発明の実施例5及び7は、コゲルシリカ-アルミナ及び大きな細孔を含む。モデル化合物吸着用の細孔が非常に大きいため、3-メチルペンタンの転化率が多少低下した。これらのシリカ-アルミナ材料は、n-ヘキサンの異性化に非常に効果的である。シリカ-アルミナのこれらの特性(大きな細孔及び高い酸部位濃度)は、ディーゼル成分のナフサへの過剰分解を最小限に抑えることが望ましい第2段階の水素化分解触媒の開発に有用であり得る。
【0095】
実施例11(比較)
シリカ-アルミナを用いたNiW水素化分解触媒の調製
触媒A
実施例1のSIRAL-40シリカ-アルミナを含有する規範事例の水素化分解触媒を、以下の手順に従って調製した。67部のSIRAL-40シリカ-アルミナ粉末、8部の低酸性超安定Y(USY)ゼオライト、及び25部の擬ベーマイトアルミナ粉末をよく混合した。この混合物に、希硝酸及び十分な量の脱イオン水を加え、押し出し可能なペーストを形成した(100%の固形物基準で全粉末に対して1重量%のHNO)。ペーストを1/16インチのシリンダーに押し出し、250°Fで一晩乾燥させた。乾燥させた押出物を、過剰乾燥空気でパージしながら、1100°Fで1時間か焼し、室温まで冷却した。
【0096】
ニッケル及びタングステンは、硝酸ニッケル及びメタタングステン酸アンモニウムを含む溶液を使用し、完成した触媒の目標金属負荷量まで含浸させた。溶液の全容積は、ベース押出物試料の100%の水細孔容積と一致した(初期湿潤法)。押出物を回転させながら、ベース押出物に金属溶液を徐々に添加した。溶液の添加が完了したら、浸した押出物を2時間熟成させた。次いで、押出物を250°Fで一晩乾燥させた。乾燥させた押出物を、過剰乾燥空気でパージしながら、935°Fで1時間か焼し、室温まで冷却した。
【0097】
実施例12(比較)
触媒B
実施例2のSIRAL-40HPVシリカ-アルミナを含有する規範事例の水素化分解触媒を、以下の手順に従って調製した。73部のSIRAL-40HPVシリカ-アルミナ粉末、2部の低酸性USYゼオライト、及び25部の擬ベーマイトアルミナ粉末をよく混合した。この混合物に、希硝酸及び十分な量の脱イオン水を加え、押し出し可能なペーストを形成した(100%の固形物基準で全粉末に対して1重量%のHNO)。ペーストを1/16インチのシリンダーに押し出し、250°Fで一晩乾燥させた。乾燥させた押出物を、過剰乾燥空気でパージしながら、1100°Fで1時間か焼し、室温まで冷却した。ニッケル及びタングステンは、実施例11に記載したように含浸された。
【0098】
実施例13(比較)
触媒C
SIRAL-40HPVの代わりに、実施例3のシリカ-アルミナを使用したことを除いて、実施例12を繰り返した。
【0099】
実施例14
触媒D
SIRAL-40HPVの代わりに、実施例5のシリカ-アルミナを使用したことを除いて、実施例12を繰り返した。
【0100】
実施例15
触媒E
SIRAL-40HPVの代わりに、実施例7のシリカ-アルミナを使用したことを除いて、実施例12を繰り返した。
【0101】
実施例16
触媒F
SIRAL-40HPVの代わりに、実施例9のシリカ-アルミナを使用したことを除いて、実施例12を繰り返した。
【0102】
完成した触媒A~Fの特性を表4にまとめる。
【表4】
【0103】
表4に示すように、コゲルシリカ-アルミナ(触媒C)で作製した完成された触媒は、ベンチマークシリカ-アルミナ(触媒A及びB)で作製した触媒と比較し、それぞれN物理吸着及びHgポロシメトリーによって測定されたように、より高い嵩密度とより低い細孔容積とを有している。塩基性沈殿剤を炭酸アンモニウムに切り替えると、コゲルシリカ-アルミナの細孔容積が大幅に増加した。シリカ-アルミナの細孔容積の増加により、触媒D、E、及びFに示すように、細孔容積の大きい触媒の調製が可能になった。本発明の触媒(触媒D、E、及びF)は、ベンチマーク(触媒A及びB)のいずれよりも高い細孔容積及び低い嵩密度を有している。
【0104】
実施例17
水素化分解触媒試験
上記のように調製した触媒の水素化分解条件下での試験を、6cmの24/40(US)メッシュの触媒を有する貫流で下降流式のマイクロユニット内で行なった。試験に使用した原料は、表5に示す特性を有する典型的な水素化分解炭化水素原料であった。
【表5】
【0105】
操作条件には、2000psigの反応器圧力、1.5h-1LHSVの供給速度、及び5000SCFのH/bblオイルに対応する貫流のH流量が含まれた。触媒床の温度を変え、700°F+供給物の700°F-生産物への転化の60~80重量%を覆うようにした。C4-ガス、ナフサ、ならびに軽質及び重質の蒸留物成分の産出量を、ASTM D2887模擬蒸留分析結果を用いて計算した。全体的な産出量及び反応器温度のデータを、70重量%転化に補間し、表4にまとめた。本発明の触媒D、E、及びFは、SIRAL-40ベンチマーク触媒(触媒A)よりも約2%高い重質蒸留物選択性を示した。改善された蒸留物選択性は、本開示のシリカ-アルミナ組成物の全く予想外の利点である。高い細孔容積を有し、大きなメソ細孔を含むこれらの水素化分解触媒は、特に重い高分子量炭化水素の転化で良好に機能すると予想される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】