IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボールド セラピューティクス インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-549272癌を治療するためのトランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】癌を治療するためのトランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/45 20060101AFI20231115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20231115BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A61K38/45
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K33/24
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/7105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529082
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 CA2021051639
(87)【国際公開番号】W WO2022104470
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/115,587
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/165,641
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521478706
【氏名又は名称】ボールド セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】バゼット,マーク
(72)【発明者】
【氏名】キャリー,アダム
(72)【発明者】
【氏名】パンコビッチ,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】カーソン,ロビー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン・シェイブルック,サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ラハ,パロミータ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA23
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086HA10
4C086HA28
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
有効量のトランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)](BOLD-100)を投与することを含む、それを必要とする患者の癌を治療するための方法及び対応する使用が提供される。BOLD-100は、有効量の毛細血管拡張性運動失調症変異の阻害剤及びRad3関連プロテインキナーゼ(ATRi)と組み合わせて使用され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とするヒト患者の癌を治療するための方法であって、有効量のトランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]と、有効量の毛細血管拡張性運動失調症変異の阻害剤及びRad3関連プロテインキナーゼ(ATRi)と、を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記有効量のトランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]及び前記有効量のATRiが、前記癌を治療するために相乗的に有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌が、トランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]単独での治療に抵抗性の癌であるか、又はATRi単独での治療に抵抗性の癌であるか、又は別の化学療法剤若しくは化学療法レジメンに抵抗性の癌である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記癌が、結腸直腸癌(CRC)又は骨髄腫である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記CRCが腺癌であるか、又は前記骨髄腫が多発性骨髄腫である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が、BRAF変異(BRAFMT)を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が、マイクロサテライト安定性(MSS)を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
それを必要とするヒト患者の癌を治療するための方法であって、有効量のトランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]を投与することを含み、前記癌が、BRAF変異(BRAFMT)又はコンセンサス分子サブタイプ(CMS)CMS1若しくはCMS4のCRCを特徴とする結腸直腸癌(CRC)である、方法。
【請求項9】
前記BRAFMT CRCが腺癌である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記BRAFMT CRCが、マイクロサテライト安定性(MSS)を特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記トランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、有効量の毛細血管拡張性運動失調症変異の阻害剤及びRad3関連プロテインキナーゼ(ATRi)と組み合わせて投与される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記有効量のトランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]及び前記有効量のATRiが、前記癌を治療するために相乗的に有効である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記癌が、トランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]単独での治療に抵抗性の癌であるか、又はATRi単独での治療に抵抗性の癌であるか、又は別の化学療法剤若しくは化学療法レジメンに抵抗性の癌である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記トランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]及び前記ATRiが、任意の順序で、逐次的に投与される、請求項1~7又は11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記トランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]及び前記ATRiが、組み合わせて、共製剤で、又は別々に投与される、請求項1~7又は11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
以下の遺伝子:ATR(ATRセリン/トレオニンキナーゼ;CYB561D2(シトクロムb561ファミリー、メンバーD2);DLC1(DLC1 Rho GTPアーゼ活性化タンパク質);DMBT1(悪性脳腫瘍1において欠失);E2F1(E2F転写因子1);GLTSCR2(神経膠腫腫瘍抑制因子候補領域遺伝子2);GPS1(Gタンパク質経路抑制剤1);HSP90B1(熱ショックタンパク質90kDaベータ(Grp94)、メンバー1);JUNB(jun B癌原遺伝子);KSR2(ras2のキナーゼサプレッサー);LZTS2(ロイシンジッパー、推定腫瘍抑制因子2);MEN1(多発性内分泌新生物I);MTUS1(微小管関連腫瘍抑制因子1);NF1(ニューロフィブロミン1);NPRL2(窒素パーミアーゼレギュレーター様2(出芽酵母(S.cerevisiae));OVCA2(卵巣腫瘍抑制因子候補2);RAD54L(RAD54様(出芽酵母(S.cerevisiae));RSPH14(ラジアルスポーク頭部14ホモログ(クラミドモナス(Chlamydomonas));SACM1L(アクチン変異1様(酵母)のSAC1サプレッサー);SUFU(融合ホモログ(ショウジョウバエ)のサプレッサー);TGFBR2(トランスフォーミング成長因子、ベータ受容体II(70/80kDa));TNFSF10(腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリー、メンバー10);WTAP(ウィルムス腫瘍1関連タンパク質)のうちの1つ以上の発現の阻害剤を投与することをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記発現阻害剤が、siRNAである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
以下の遺伝子:ATR(ATRセリン/トレオニンキナーゼ;CYB561D2(シトクロムb561ファミリー、メンバーD2);DLC1(DLC1 Rho GTPアーゼ活性化タンパク質);DMBT1(悪性脳腫瘍1において欠失);E2F1(E2F転写因子1);GLTSCR2(神経膠腫腫瘍抑制因子候補領域遺伝子2);GPS1(Gタンパク質経路抑制剤1);HSP90B1(熱ショックタンパク質90kDaベータ(Grp94)、メンバー1);JUNB(jun B癌原遺伝子);KSR2(ras2のキナーゼサプレッサー);LZTS2(ロイシンジッパー、推定腫瘍抑制因子2);MEN1(多発性内分泌新生物I);MTUS1(微小管関連腫瘍抑制因子1);NF1(ニューロフィブロミン1);NPRL2(窒素パーミアーゼレギュレーター様2(出芽酵母(S.cerevisiae));OVCA2(卵巣腫瘍抑制因子候補2);RAD54L(RAD54様(出芽酵母(S.cerevisiae));RSPH14(ラジアルスポーク頭部14ホモログ(クラミドモナス(Chlamydomonas));SACM1L(アクチン変異1様(酵母)のSAC1サプレッサー);SUFU(融合ホモログ(ショウジョウバエ)のサプレッサー);TGFBR2(トランスフォーミング成長因子、ベータ受容体II(70/80kDa));TNFSF10(腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリー、メンバー10);WTAP(ウィルムス腫瘍1関連タンパク質);APC(大腸腺腫性ポリポーシス);BLM(ブルーム症候群、RecQヘリカーゼ様);CASP8(カスパーゼ8、アポトーシス関連システインペプチダーゼ);CDKN1A(サイクリン依存性キナーゼ阻害剤1A(p21、Cip1));ERAP1(小胞体アミノペプチダーゼ1);ERCC1(除去修復交差相補群1);FANCG(ファンコニ貧血、相補群G);GLTSCR1(神経膠腫腫瘍抑制因子候補領域遺伝子1);PALB2(BRCA2のパートナー及びローカライザー);PTTG1IP(下垂体腫瘍形質転換1相互作用タンパク質);PTTG2(下垂体腫瘍形質転換2);RB1(網膜芽細胞腫1);RB1CC1(RB1誘導性コイル状コイル1);RBBP7(網膜芽細胞腫結合タンパク質7);TP53(腫瘍タンパク質p53);TP53I11(腫瘍タンパク質p53誘導性タンパク質11);TSG101(腫瘍感受性101);TUSC3(腫瘍抑制因子候補3);VBP1(フォンヒッペル・リンダウ結合タンパク質1);WT1(ウィルムス腫瘍1);WWOX(酸化還元酵素を含有するWWドメイン);XPA(色素性乾皮症、相補群A);及び/又はZNF280B(ジンクフィンガータンパク質280B)のうちの1つ以上における変異について前記患者からのサンプルをアッセイすることをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]及び癌を治療するための他の治療薬の併用を含む治療化合物の分野にある。
【背景技術】
【0002】
トランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]は、抗癌活性を有するルテニウムの配位錯体(BOLD-100、KP1339、NKP-1339、IT-139、及びNa[RuIIICl4(Hind)2]としても知られている)である。トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸塩(III)]のアルカリ金属塩を作製する方法は、例えばPCT特許公開WO2018204930に記載されており、そのような化合物は、式Iを有する:
【化1】
(式中、Mは、以下のナトリウム塩を含むアルカリ金属カチオンである)
【化2】
MAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)経路は、細胞増殖、分化、生存及びアポトーシスに関与するRAS/RAF/MEK/ERKシグナル伝達カスケードを伴う。このカスケード内で、RAS及びRAFにおける変異は、ヒト癌における一般的な癌遺伝子である。複数のシグナルがGTPアーゼのRASファミリー(KRAS、NRAS及びHRAS)を活性化し、これが次に下流のRAFプロテインキナーゼ(ARAF、BRAF及びCRAF)を活性化する。プロテインキナーゼのRAFファミリー内で、BRAFは、MEKの頻繁に変異した強力な活性化因子である。BRAF変異(BRAFMT)は、転移性結腸直腸癌(mCRC)の約10~15%で発生し、臨床転帰不良、特にマイクロサテライト不安定性(MSI)を特徴とする疾患とは異なるマイクロサテライト安定性(MSS)疾患を有するものと相関する。これらの理由から、RAS(KRAS及びNRAS)及びBRAF遺伝子のプロファイリング並びにミスマッチ修復(MMR)/MSIの状態の評価は、CRCにおける診断及び治療の指標として有用であり得る。
【0003】
ATR(毛細血管拡張性運動失調症変異(ATM)及びRad3関連プロテインキナーゼ)は、細胞DNA損傷応答(DDR)の中心的構成要素である。DNA損傷又はストレスを受けた複製フォークの部位での複製タンパク質A被覆一本鎖DNA(ssDNA)は、ATRを活性化し、次いでこれは細胞周期チェックポイントを活性化し、複製ストレスを抑制するように機能する。癌細胞は、ATRチェックポイント機能への依存を引き起こす、複製ストレスなどの特徴によって特徴付けられることが多い。この文脈内で、ATR阻害剤(ATRi)は、癌治療薬として有望であることが示されている(国際公開第2017118734号、米国特許出願公開第20190365745号、国際公開第2016112374号、国際公開第2017180723号、国際公開第2018029117号)。市販のATRiには、AZD6783、M4344(以前はVX-803)、VE-821、M6620(以前はVX-970、ベルゾセルチブ又はVE-822)、及びBAY1895344が含まれる(Mei,L.,Zhang,J.,He,K.et al.Ataxia telangiectasia and Rad3-related inhibitors and cancer therapy:where we stand.JHematol Oncol 12,43(2019))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018204930号
【特許文献2】国際公開第2017118734号
【特許文献3】米国特許出願公開第20190365745号
【特許文献4】国際公開第2016112374号
【特許文献5】国際公開第2017180723号
【特許文献6】国際公開第2018029117号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mei,L.,Zhang,J.,He,K.et al.Ataxia telangiectasia and Rad3-related inhibitors and cancer therapy:where we stand.JHematol Oncol 12,43(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有効量のトランス-[テトラクロリドビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)](BOLD-100)を投与することを含む、それを必要とする患者、例えばヒト患者の癌を治療するための方法及び対応する使用が提供される。BOLD-100は、有効量の毛細血管拡張性運動失調症変異の阻害剤及びRad3関連プロテインキナーゼ(ATRi)と組み合わせて使用され得る。有効量のBOLD-100及び有効量のATRiは、例えば、癌の治療に相乗的に有効であり得る。癌は、BOLD-100単独での治療に抵抗性の癌であり得るか、又はATRi単独での治療に抵抗性の癌、又は別の化学療法剤若しくは化学療法レジメンに抵抗性の癌であり、例えば転移性癌であり得る。癌は、CRC腺癌などの結腸直腸癌(CRC)であり得る。癌は、BRAF変異(BRAFMT)を特徴とし得る。癌は、マイクロサテライト安定性(MSS)をさらに特徴とし得る。したがって、選択された実施形態は、転移性MSS BRAFMT CRCなどのMSS BRAFMT CRCの治療において、BOLD-100による単独療法、又はBOLD-100とATRiとの併用療法を伴う。併用療法では、BOLD-100及びATRiは、任意の順序で、逐次的に投与されてもよく、又は組み合わせて、共製剤で、若しくは別々に投与されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】2つのヒートマップを含む図であり、各々がX軸に沿ってコンセンサス分子サブタイプ(CMS)プロファイルを有し、右側のヒートマップでは、Y軸に沿った経路名(Hallmark)を有し、小胞体タンパク質応答(UPR)及びDNA修復が、最も不良な転帰を有するCMS1/BRAFMTサブグループにおいて調節解除された主要な経路であることを示している。
図2】(A)ウェスタンブロット画像、及び(B)3つの棒グラフ、を有する上部パネル、並びに2つの棒グラフ(A及びB)、を有する下部パネルを含む図であり、一緒になって、BRAFMT、MSS CRC細胞がBOLD-100による処理に対して感受性であることを示している。
図3】(A)ブロット画像の上の折れ線グラフ、(B)ブロット画像、並びに(C)ブロット画像及び散布図、を有する3つのパネルを含む図であり、一緒になって、発癌性BRAFがBOLD-100処理に対する応答の決定因子であることを示している。
図4】(A)2つの表、(B)散布図、(C)棒グラフの上のブロット画像、(D)2つの棒グラフに隣接する2つのブロット画像、を含む図であり、一緒になって、BOLD-100誘導性細胞死がカスパーゼ8に依存することを示している。
図5】(A)ヒートマップ及び(B)2つの概略図、を含む図であり、一緒になって、BOLD-100処理がBRAFMT CRCにおけるDNA損傷修復経路活性化をもたらすことを示している。
図6】(A)2つのヒートマップ及び棒グラフ、(B)2つのヒートマップ及び棒グラフ、並びに(C)細胞培養物の画像及び3つの棒グラフ、を有する3つのパネルを含む図であり、一緒になって、ATR阻害がBRAFMT CRC細胞におけるBOLD-100処理に対する応答を著しく増加させることを示している。
図7】(A)2つのブロット画像、(B)2つの棒グラフ、及び(C)3つの棒グラフ、を有する3つのパネルを含む図であり、一緒になって、ATRi化合物AZD6738、M4344及びベルゾセルチブが、BRAFMT CRCにおけるBOLD-100処理後に細胞死を増加させることを示している。
図8】(A)2つのブロット画像、(B)2つのブロット画像、(C)2つの棒グラフ、並びに(D)ブロット画像及び棒グラフ、を有する4つのパネルを含む図であり、一緒になって、BOLD-100がBRAFMT CRC細胞においてROS依存性ATR/CHK1キナーゼ活性化及び細胞死を誘導することを示している。
図9】BOLD-100が困難なCMS1及びCMS4 CRCの治療に最も効果的であることを示す棒グラフである。
図10】(A)対応する散布図に対する棒グラフ、及び(B)散布図、を有する2つのパネルを含む図であり、ATR阻害が多発性骨髄腫におけるBOLD-100処理に対する応答を著しく増加させることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示されるように、BOLD-100は、BRAFMT CRC細胞の生存に劇的な影響を及ぼすことが示されている。したがって、BOLD-100でBRAFMT CRCを治療するための療法が提供される。さらに、毛細血管拡張性運動失調症変異の阻害剤及びRad3関連プロテインキナーゼ(ATRi)と組み合わせたBOLD-100による、BRAFMT CRC細胞によって例示される癌細胞の処理において相乗効果が開示される。したがって、ATRiと組み合わせたBOLD-100を用いて、BRAFMT CRCを含む癌を治療するための療法が提供される。
【0009】
同質遺伝子対及び非同質遺伝子対のV600E BRAFMT及びBRAFWT細胞のパネルを使用して、インビトロCellTitre-Glo(登録商標)及びアネキシンV/PI感受性試験は、BRAFMT、MSS CRC細胞が、9.25~31μMのIC50値でBOLD-100に対して非常に感受性であることを示した。BOLD-100による処理は、GRP78レベルの早期低下及び小胞体ストレスタンパク質CHOPの発現レベルの増加をもたらした。これは、BRAFMT CRC細胞におけるカスパーゼ-8依存性細胞死に関連していた。注目すべきことに、CHOPのサイレンシングは、BRAFMT CRC細胞におけるBOLD-100誘導性細胞死を抑止しなかったことから、小胞体タンパク質応答(UPR)経路が、BOLD-100後の細胞死において役割を果たさなかったことが示された。RNA配列及びIPAバイオインフォマティクス分析は、細胞周期調節及びDNA修復がBOLD-100処理後の最も有意な脱調節経路であることを示した。さらなる機構的研究により、BOLD-100が、BRAFMT細胞におけるpATRT1989、pChk1S345及びγH2AX発現レベルの急速かつ強力な増加を誘導することが明らかになった。
【0010】
ATRi化合物AZD6783及びM4344は、BOLD-100と組み合わせた場合、特にBRAFMT CRC細胞において、強い相乗作用及びアポトーシスをもたらした。注目すべきことに、ROSスカベンジャーNACは、BOLD-100誘導性CHOP、pATRT1989、pChk1S345及びγH2AXレベルを抑止し、BRAFMT CRC細胞におけるBOLD-100処理後の細胞死を救済した。
【0011】
本発明のさらなる実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸塩(III)]のナトリウム塩(すなわち、BOLD-100)を含有する医薬品を調製するための方法を提供する。
【0012】
本発明の一態様は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]を含有する滅菌凍結乾燥医薬品を調製するための方法を提供する。この製剤は、患者への投与に好適である。この製剤は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、pH緩衝液及び凍結保護剤から構成される。前記製剤を提供するための一般的な方法は、緩衝水溶液を調製するステップ、凍結保護剤水溶液を調製するステップ、緩衝溶液中のトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]の溶解、凍結保護剤溶液の添加、滅菌濾過(例えば無菌濾過)、滅菌条件下でバイアルに充填するステップ、及び滅菌条件下で凍結乾燥するステップを含む。好適な緩衝液には、クエン酸塩、TRIS、酢酸塩、EDTA、HEPES、トリシン及びイミダゾールが含まれるが、これらに限定されない。リン酸緩衝液の使用は、可能であるが、好ましくない。本発明の好ましい態様は、クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液の使用である。好適な凍結保護剤には、糖、モノサッカライド、二糖類、ポリアルコール、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、デキストラン及びデキストロースが含まれるが、これらに限定されない。本発明の好ましい態様は、凍結防止剤としてのマンニトールの使用である。
【0013】
上記のように、本明細書において、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]は、水中で化合物Aに分解することができる(スキームII)。当業者は、この分解反応を制限することが最高純度の生成物を得るのに有利であることを認識するであろう。製剤化プロセス中にトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]溶液を冷却すると、凍結乾燥生成物中に存在する化合物Aの量が大幅に減少することが分かった。本発明の一態様では、製剤化プロセス中にトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]溶液を4℃に冷却する。本発明の別の態様では、製剤化プロセス中にトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]溶液を2~8℃に冷却する。本発明の別の態様では、製剤化プロセス中にトランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]溶液を2~15℃に冷却する。
【0014】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、好適な緩衝液及びマンニトールを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、好適な緩衝液は、クエン酸緩衝液を含む。例えば、いくつかの実施形態では、クエン酸緩衝液は、クエン酸ナトリウム及びクエン酸を含む。
【0015】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸及びマンニトールを含む組成物を提供する。
【0016】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール及びmer,トランス-[RuIIICl3(Hind)2(H2O)]を含む組成物を提供する。
【0017】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール、mer,トランス-[RuIIICl3(Hind)2(H2O)]及びセシウム塩を含む組成物を提供する。
【0018】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸及びマンニトールナトリウムを含む組成物であって、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が非晶質である、組成物を提供する。
【0019】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール及びmer,トランス[RuIIICl3(Hind)2(H2O)]を含む組成物であって、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が非晶質である、組成物を提供する。
【0020】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール、mer,トランス[RuIIICl3(Hind)2(H2O)]及びセシウム塩を含む組成物であって、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が非晶質である、組成物を提供する。
【0021】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール、mer,トランス[RuIIICl3(Hind)2(H2O)]及びセシウム塩を含む組成物であって、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、組成物の約0.01~約0.4重量パーセントであり、
セシウムが、組成物の約0.00001~約0.01パーセントである、組成物を提供する。
【0022】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール、mer,トランス[RuIIICl(Hind)(HO)]及びセシウム塩を含む組成物であって、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、組成物の約0.01~約0.4重量パーセントであり、
セシウムが、組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、組成物を提供する。
【0023】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール、mer,トランス[RuIIICl(Hind)(HO)]及びセシウム塩を含む組成物であって、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、組成物の約0.01~約0.2重量パーセントであり、
セシウムが、組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、組成物を提供する。
【0024】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、mer,トランス[RuIIICl(Hind)(HO)]及びセシウム塩を含む組成物であって、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、組成物の約0.01~約0.40重量パーセントであり、
セシウムが、組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、組成物を提供する。
【0025】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、mer,トランス[RuIIICl(Hind)(HO)]及びセシウム塩を含む組成物であって、
組成物が、凍結乾燥粉末であり、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、組成物の約0.01~約0.40重量パーセントであり、
セシウムが、組成物の約0.00001~約0.01重量パーセントである、組成物を提供する。
【0026】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール、mer,トランス[RuIIICl(Hind)(HO)]及びセシウム塩を含む組成物であって、
組成物が、凍結乾燥粉末であり、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、組成物の約0.01~約0.3重量パーセントであり、
セシウムが、組成物の約0.00001~約0.1重量パーセントである、組成物を提供する。
【0027】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール、mer,トランス[RuIIICl(Hind)(HO)]及びセシウム塩を含む組成物であって、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、組成物の約0.01~約0.3重量パーセントであり、
セシウムが、組成物の約0.00001~約0.1重量パーセントである、組成物を提供する。
【0028】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール、mer,トランス[RuIIICl(Hind)(HO)]及びセシウム塩を含む組成物であって、
組成物が、凍結乾燥粉末であり、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約11.5~約14.0重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約43.9~約53.7重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約25.7~約23.1重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約11.5~約14.0重量パーセントであり、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、組成物の約0.01及び約0.3重量パーセントであり、
セシウムが、組成物の約0.00001~約0.1重量パーセントである、組成物を提供する。
【0029】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール、mer,トランス[RuIIICl(Hind)(HO)]及びセシウム塩を含む組成物であって、
組成物が、凍結乾燥粉末であり、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約10.2~約15.3重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約39.0~約58.5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約20.5~約30.8重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約10.2~約15.3重量パーセントであり、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、組成物の約0.01及び約0.3重量パーセントであり、
セシウムが、組成物の約0.00001~約0.1重量パーセントである、組成物を提供する。
【0030】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトール、mer,トランス[RuIIICl(Hind)(HO)]及びセシウム塩を含む組成物であって、
組成物が、凍結乾燥粉末であり、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約10.2~約15.3重量パーセントであり、
mer,トランス-[RuIIICl(Hind)(HO)]が、約0.01及び約0.3重量パーセントの組成であり、
セシウムが、組成物の約0.00001~約0.1重量パーセントである、組成物を提供する。
【0031】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約49.86重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約49.86重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.187重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.093重量百分率である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0032】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約40~約60重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約40~約60重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.01~約0.5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.001~約0.25重量百分率である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0033】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸及びクエン酸ナトリウムを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約30~約70重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約30~約70重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.001~約1重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.0001~約1重量百分率である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0034】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム及びRuIIICl(Hind)(HO)を含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約49.86重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約49.86重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.187重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.093重量百分率であり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、組成物の0.5重量百分率以下である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0035】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム及びRuIIICl(Hind)(HO)を含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約40~約60重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約40~約60重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.01~約0.5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.001~約0.25重量百分率であり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、組成物の約0~約0.5重量百分率である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0036】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、RuIIICl(Hind)(HO)及びセシウムを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約30~約70重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約30~約70重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.001~約1重量百分率であり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.0001~約1重量百分率であり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、組成物の0.5重量百分率以下であり、
セシウムが、組成物の0.25重量パーセント以下である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0037】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム及びセシウムを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約49.61重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約49.86重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.187重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.093重量百分率であり、
セシウムが、組成物の約0.25重量百分率である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0038】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム及びセシウムを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約40~約60重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約40~約60重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.01~約0.5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.001~約0.25重量百分率であり、
セシウムが、組成物の約0.1~約0.5重量百分率である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0039】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム及びセシウムを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約30~約70重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約30~約70重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.001~約1重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.0001~約1重量百分率であり、
セシウムが、組成物の約0.01~約1重量百分率である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0040】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、RuIIICl(Hind)(HO)、RuIIICl(Hind)(CHCN)、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)及びセシウムを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約46.61重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約49.86重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.187重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.093重量百分率であり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、組成物の0.5重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)が、組成物の1.25重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、組成物の1.0重量百分率以下であり、
セシウムが、組成物の0.25重量百分率以下である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0041】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、RuIIICl(Hind)(HO)、RuIIICl(Hind)(CHCN)、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)及びセシウムを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約46.61重量パーセントの間であり、
マンニトールが、組成物の約49.86重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.187重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.093重量百分率であり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、組成物の0.5重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)が、組成物の1.25重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、組成物の1.0重量百分率以下であり、
セシウムが、組成物の0.25重量百分率以下である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0042】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、RuIIICl(Hind)(HO)、RuIIICl(Hind)(CHCN)、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)及びセシウムを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約40~約60重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約40~約60重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.01~約0.5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.001~約0.25重量百分率であり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、組成物の約0.5重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)が、組成物の約1.25重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、組成物の約1.0重量百分率以下であり、
セシウムが、組成物の0.25百分率以下である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0043】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、RuIIICl(Hind)(HO)、RuIIICl(Hind)(CHCN)、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)及びセシウムを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約30~約70重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約30~約70重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.001~約1重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.0001~約1重量百分率であり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、組成物の約0.5重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)が、組成物の約1.25重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、組成物の約1.0重量百分率以下であり、
セシウムが、組成物の0.25百分率以下である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0044】
本発明の一実施形態は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、RuIIICl(Hind)(HO)、RuIIICl(Hind)(CHCN)、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)及びセシウムを含む組成物であって、
トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]が、組成物の約20~約80重量パーセントであり、
マンニトールが、組成物の約20~約80重量パーセントであり、
クエン酸が、組成物の約0.0001~約5重量パーセントであり、
クエン酸ナトリウムが、組成物の約0.00001~約5重量百分率であり、
RuIIICl(Hind)(HO)が、組成物の約0.5重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)が、組成物の約1.25重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)が、組成物の約1.0重量百分率以下であり、
セシウムが、組成物の0.25百分率以下である、組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末である。
【0045】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の製剤又は組成物を含む単位剤形を提供する。本明細書で使用される「単位剤形」という表現は、治療される対象に適切な提供される製剤の物理的に別個の単位を指す。しかしながら、提供される製剤の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決められることが理解されよう。任意の特定の対象又は生物に対する具体的な有効用量レベルは、治療される障害及び障害の重症度;用いられる特定の活性剤の活性;用いられる特定の製剤;対象の年齢、体重、全身の健康状態、性別及び食事;用いられる特定の活性剤の投与時間及び排泄速度;治療期間;用いられる特定の(1又は複数の)化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物及び/又は追加の療法、並びに医学分野で周知の同様の要因を含む種々の因子に依存するであろう。
【0046】
本発明の組成物は、単位剤形として提供することができる。いくつかの実施形態では、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウムを含むバイアルが単位剤形である。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム及びセシウムを含むバイアルが単位剤形である。
【0048】
いくつかの実施形態では、本発明は、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、RuIIICl(Hind)(HO)、RuIIICl(Hind)(CHCN)、RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)及びセシウムを含むバイアルが単位剤形である。
【0049】
本発明によってさらに包含されるのは、本明細書に記載の組成物を含む医薬パック及び/若しくはキット、又は提供される組成物を含む単位剤形、並びに容器(例えば、箔若しくはプラスチックパッケージ、又は他の好適な容器)である。使用説明書がそのようなキットにさらに提供されていてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明は、単位剤形として提供することができる。実際、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウムを含むバイアルは、表3に示す単位剤形である
【表1】
いくつかの実施形態では、表3に記載の医薬成分は、セシウムをさらに含み、
セシウムは、組成物の0.25重量百分率以下である。
【0051】
いくつかの実施形態では、表3に記載の医薬成分は、セシウム、RuIIICl(Hind)(HO)、RuIIICl(Hind)(CHCN)及びRuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)をさらに含み、
セシウムは、組成物の約0.25重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(HO)は、組成物の約0.5重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)は、組成物の約1.25重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)は、組成物の約1.0重量百分率以下である。
【0052】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、表4のものから選択される:
【表2】
いくつかの実施形態では、表4に記載の医薬成分は、セシウムをさらに含み、
セシウムは、組成物の0.25重量百分率以下である。
【0053】
いくつかの実施形態では、表4に記載の医薬成分は、セシウム、RuIIICl(Hind)(HO)、RuIIICl(Hind)(CHCN)及びRuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)をさらに含み、
セシウムは、組成物の約0.25重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(HO)は、組成物の約0.5重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)は、組成物の約1.25重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)は、組成物の約1.0重量百分率以下である。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明は、単位剤形として提供することができる。実際、トランス-[テトラクロロビス(1H-インダゾール)ルテニウム酸ナトリウム(III)]、マンニトール、クエン酸、クエン酸ナトリウムを含むバイアルは、表5に示す単位剤形である:
【表3】
いくつかの実施形態では、表5に記載の医薬成分は、セシウムをさらに含み、
セシウムは、組成物の0.25重量百分率以下である。
【0055】
いくつかの実施形態では、表5に記載の医薬成分は、セシウム、RuIIICl(Hind)(HO)、RuIIICl(Hind)(CHCN)及びRuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)をさらに含み、
セシウムは、組成物の約0.25重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(HO)は、組成物の約0.5重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)は、組成物の約1.25重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)は、組成物の約1.0重量百分率以下である。
【0056】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、表6のものから選択される:
【表4】
いくつかの実施形態では、表6に記載の医薬成分は、セシウムをさらに含み、
セシウムは、組成物の0.25重量百分率以下である。
【0057】
いくつかの実施形態では、表6に記載の医薬成分は、セシウム、RuIIICl(Hind)(HO)、RuIIICl(Hind)(CHCN)及びRuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)をさらに含み、
セシウムは、組成物の約0.25重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(HO)は、組成物の約0.5重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(CHCN)は、組成物の約1.25重量百分率以下であり、
RuIIICl(Hind)(HN=C(Me)ind)は、組成物の約1.0重量百分率以下である。
【0058】
いくつかの実施形態では、医薬成分は、表3~6のいずれかに記載の通りであり、セシウムをさらに含む。いくつかの実施形態では、セシウムは、組成物の約0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.010、0.015、0.020、0.025、0.030、0.035、0.040、0.045、0.050、0.055、0.060、0.065、0.070、0.075、0.080、0.085、0.090、0.095、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95又は1.0重量百分率の量で存在する。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明は、有効量のBOLD-100を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において癌を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、ヒト患者である。いくつかの実施形態では、癌は、結腸直腸癌(CRC)であり、BRAF変異(BRAFMT)を特徴とし得、マイクロサテライト安定性(MSS)をさらに特徴とし得る。いくつかの実施形態では、BOLD-100は、免疫腫瘍剤などの化学療法剤、例えば毛細血管拡張性運動失調症変異の阻害剤及びRad3関連プロテインキナーゼ(ATRi)と組み合わせて使用され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、有効量のBOLD-100は、単独で、又は組み合わせてのいずれか、例えばATRiと組み合わせて、BOLD-100を投与した後の癌細胞中のGRP78の量を減少させるのに有効であり得る。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、それを必要とする患者において癌を治療するための方法であって、
1)患者に化学療法剤(ATRiなど)を投与するステップと、
2)続いて、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物を患者に投与するステップと、
3)任意選択で、ステップ1及び2を繰り返すステップと、を含む、方法を提供する。
【0062】
特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、化学療法剤(ATRiなど)の1日後に投与される。他の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、化学療法剤(ATRiなど)の1週間後に患者に投与される。さらに他の実施形態では、BOLD-100は、化学療法剤(ATRiなど)の1~7日後に患者に投与される。
【0063】
特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、化学療法剤(ATRiなど)と同時に投与される。特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物及び化学療法剤(ATRiなど)は、互いに約20~28時間以内、又は互いに約22~26時間以内、又は互いに約24時間以内に投与される。
【0064】
特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、化学療法剤(ATRiなど)の前に投与される。特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約8~16時間前、又は化学療法剤(例えば、ATRi)の少なくとも約10~14時間前、又は化学療法剤(例えば、ATRi)の少なくとも約12時間前に投与される。
【0065】
特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約20~28時間前、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約22~26時間前、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約24時間前に投与される。
【0066】
特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約44~52時間前、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約46~50時間前、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約48時間前に投与される。
【0067】
特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約64~80時間前、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約70~74時間前、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約72時間前に投与される。
【0068】
特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、化学療法剤(ATRiなど)の前に投与される。特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約8~16時間後、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約10~14時間後、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約12時間後に投与される。
【0069】
特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約20~28時間後、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約22~26時間後、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約24時間後に投与される。
【0070】
特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約44~52時間後、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約46~50時間後、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約48時間後に投与される。
【0071】
特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約64~80時間後、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約70~74時間後、又は化学療法剤(ATRiなど)の少なくとも約72時間後に投与される。
【0072】
BRAFMT CRC患者(転移性疾患を有する患者など)を含む特定の実施形態では、化学療法剤レジメンは、5フルオロウラシル、ロイコボリン及びオキサリプラチン(FOLFOX);又は5-フルオロウラシル、ロイコボリン及びイリノテカン(FOLFIRI);又はカペシタビン+オキサリプラチン;又はベバシズマブと共に5-フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン及びイリノテカン(FOLFOXIRI+bev)の使用を伴い得る。
【0073】
特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、ATRiと同時に投与される。特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物及びATRiが組み合わせて投与される場合、2つの治療薬は、互いに約20~28時間以内、又は互いに約22~26時間以内、又は互いに約24時間以内に投与され得る。
【0074】
特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、ATRiの前に投与される。特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、ATRiの少なくとも約8~16時間前、又はATRiの少なくとも約10~14時間前、又はATRiの少なくとも約12時間前に投与される。特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、ATRiの少なくとも約20~28時間前、又はATRiの少なくとも約22~26時間前、又はATRiの少なくとも約24時間前に投与される。特定の実施形態では、BOLD-100又はその薬学的に許容され得る組成物は、ATRiの少なくとも約44~52時間前、又はATRiの少なくとも約46~50時間前、又はATRiの少なくとも約48時間前に投与される。
【0075】
滴定可能な投薬量は、例えば、患者が単位用量よりも少ない用量で薬剤を摂取することを可能にするように適合させることができ、「単位用量」は、任意の時点又は特定の投薬期間内に摂取することができる薬剤の最大用量として定義される。すべての患者が同じ利益を達成するために同じ用量を必要とするわけではないので、用量の滴定は、異なる患者が薬剤が有効であると感じるまで用量を漸増的に増加させることを可能にする。より大きい体格又はより速い代謝を有する人は、より小さい体格又はより遅い代謝を有する人と同じ効果を達成するために、より大きい用量を必要とし得る。したがって、滴定可能な投薬量は、標準的な投薬形態を超える利点を有する。
【0076】
選択された実施形態では、製剤は、以下の舌下、頬側、経口、直腸、鼻、非経口及び肺系を介してのうちの1つ以上を標的とするように送達されるように適合され得る。製剤は、例えば、以下のゲル、ゲルスプレー、錠剤、液体、カプセル、注射による、又は気化のための形態のうちの1つ以上であり得る。
【0077】
従来の薬学的実務を用いて、対象に製剤を投与するのに好適な製剤又は組成物を提供し得る。投与経路には、例えば、非経口、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼内、脳室内、嚢内、脊髄内、髄腔内、嚢内、腹腔内、鼻腔内、吸入、エアロゾル、局所、舌下又は経口投与が含まれ得る。治療用製剤は、液体溶液又は懸濁液の形態であり得;経口投与の場合、製剤は、錠剤又はカプセル剤の形態であり得、鼻腔内製剤の場合、製剤は、散剤、点鼻薬又はエアロゾルの形態であり得、舌下製剤の場合、製剤は、滴剤、エアゾール剤又は錠剤の形態であり得る。
【0078】
製剤を作製するための当技術分野で周知の方法は、例えば、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」(第21版)、ed.David Troy,2006,Lippincott Williams&Wilkinsに見られる。非経口投与のための製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水若しくは生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物起源の油又は水素化ナフタレンを含有し得る。生体適合性の生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを使用して、化合物の放出を制御し得る。他の潜在的に有用な非経口送達系には、エチレン-酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み型注入系及びリポソームが含まれる。吸入のための製剤は、賦形剤、例えばラクトースを含有し得るか、又は例えばポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸及びデオキシコール酸を含有する水溶液であり得るか、又は点鼻薬の形態で若しくはゲルとして投与するための油性溶液であり得る。
【0079】
本発明の医薬組成物は、組成物を患者に投与することを可能にする任意の形態であり得る。例えば、組成物は、固体、液体又は気体(エアロゾル)の形態であり得る。本発明の医薬組成物は、その中に含有される有効成分が患者への組成物の投与時に生物学的に利用可能であるように製剤化される。患者に投与される組成物は、1つ以上の投与単位の形態をとることができ、例えば、錠剤、カプセル又はカシェは、単一の投薬単位であり得、エアロゾル形態の化合物の容器は、複数の投薬単位を保持し得る。
【0080】
医薬組成物の調製に使用される材料は、使用される量で薬学的に純粋で無毒であるべきである。本発明の組成物は、特に望ましい効果が知られている1つ以上の化合物(有効成分)を含み得る。医薬組成物中の(1又は複数の)有効成分の最適な投薬量は、種々の要因に依存することが当業者には明らかであろう。関連因子には、対象の種類(例えば、ヒト)、有効成分の特定の形態、投与様式及び用いられる組成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
一般に、医薬組成物は、1つ以上の担体と混合した、本明細書に記載の本発明の製剤を含む。(1又は複数の)担体は、組成物が例えば錠剤又は粉末形態であるように、粒子状であり得る。(1又は複数の)担体は、液体であり得、組成物は、例えば、経口シロップ又は注射可能な液体である。加えて、(1又は複数の)担体は、例えば吸入投与に有用なエアロゾル組成物を提供するために、気体であり得る。
【0082】
経口投与を意図する場合、組成物は、好ましくは固体又は液体形態のいずれかであり、半固体、半液体、懸濁液及びゲル形態は、本明細書で固体又は液体のいずれかと見なされる形態に含まれる。
【0083】
経口投与のための固体製剤として、組成物は、粉末、顆粒、圧縮錠剤、丸剤、カプセル、カシェ、チューインガム、ウェハー、ロゼンジなどの形態に製剤化され得る。そのような固体組成物は、典型的には、1つ以上の不活性希釈剤又は食用担体を含有する。加えて、以下のアジュバント:シロップ、アカシア、ソルビトール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、トラガカントゴム又はゼラチン、及びそれらの混合物などの結合剤;デンプン、ラクトース又はデキストリンなどの賦形剤、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル、コーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はSterotexなどの潤滑剤;ラクトース、マンニトール、デンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール、メチルセルロース及びそれらの混合物などの充填剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、ポリエチレングリコールなどの高分子量ポリマー、ステアリン酸などの高分子量脂肪酸、シリカ、ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動化剤;ショ糖又はサッカリンなどの甘味剤、ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジ香料などの香料、着色剤、並びに着色剤のうちの1つ以上が存在してもよい。組成物がカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態である場合、組成物は、上記の種類の材料に加えて、ポリエチレングリコール又は脂肪油などの液体担体を含有し得る。
【0084】
製剤は、液体、例えばエリキシル、シロップ、溶液、水性若しくは油性エマルジョン若しくは懸濁液、又は使用前に水及び/若しくは他の液体媒体で再構成され得る乾燥粉末の形態であり得る。液体は、2つの例として、経口投与用又は注射による送達用であり得る。経口投与を意図する場合、好ましい組成物は、本発明の化合物に加えて、甘味剤、増粘剤、保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸アルキル)、染料/着色剤及び風味増強剤(着香剤)のうちの1つ以上を含有する。注射によって投与されることが意図される組成物には、界面活性剤、保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸アルキル)、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤(例えば、ソルビトール、グルコース、又は他の糖シロップ)、緩衝剤、安定剤及び等張剤のうちの1つ以上が含まれ得る。乳化剤は、レシチン又はソルビトールモノオレエートから選択され得る。
【0085】
本発明の液体医薬製剤は、それらが溶液、懸濁液又は他の同様の形態であるかどうかにかかわらず、以下のアジュバント:注射用水、生理食塩水、好ましくは生理食塩水、リンガー液、等張塩化ナトリウムなどの滅菌希釈剤、溶媒又は懸濁媒体として機能し得る合成モノグリセリド又はジグリセリドなどの固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶媒;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの等張性を調整するための薬剤のうちの1つ以上を含み得る。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又は複数回投与バイアルに封入することができる。生理食塩水は、好ましいアジュバントである。注射可能な医薬組成物は、好ましくは滅菌されている。
【0086】
医薬製剤は、局所投与を意図してもよく、その場合、担体は、溶液、エマルジョン、軟膏、クリーム又はゲル基剤を好適に含み得る。基剤は、例えば、以下のワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、水及びアルコールなどの希釈剤、並びに乳化剤及び安定剤のうちの1つ以上を含み得る。増粘剤は、局所投与用の医薬組成物中に存在し得る。経皮投与を意図する場合、組成物は、経皮パッチ又はイオン導入装置を含み得る。
【0087】
製剤は、例えば、直腸内で融解して薬物を放出する坐剤の形態での直腸投与を意図し得る。直腸投与用組成物は、好適な非刺激性賦形剤として油性基剤を含有し得る。そのような基剤には、ラノリン、ココアバター及びポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。低融点ワックスは、脂肪酸グリセリド及び/又はココアバターの混合物が好適なワックスである坐剤の調製に好ましい。ワックスを融解させ、撹拌することによって、アミノシクロヘキシルエーテル化合物をその中に均一に分散させてもよい。次いで、溶融した均一な混合物を好都合な大きさの型に注ぎ、冷却し、それによって固化させる。
【0088】
製剤は、固体又は液体投薬単位の物理的形態を改変する様々な材料を含み得る。例えば、組成物は、有効成分の周りにコーティングシェルを形成する材料を含み得る。コーティングシェルを形成する材料は、典型的には不活性であり、例えば、糖、シェラック及び他の腸溶性コーティング剤から選択され得る。あるいは、有効成分をゼラチンカプセル又はカシェに入れてもよい。
【0089】
医薬製剤は、気体投薬単位からなっていてもよく、例えば、エアロゾルの形態であってもよい。エアロゾルという用語は、コロイド性のものから加圧パッケージからなるシステムに及ぶ種々のシステムを示すために使用される。送達は、液化ガス若しくは圧縮ガス、又は有効成分を分注する好適なポンプシステムによるものであり得る。本発明の化合物のエアロゾルは、(1又は複数の)有効成分を送達するために、単相、二相又は三相系で送達され得る。エアロゾルの送達には、必要な容器、活性化剤、弁、サブ容器などが含まれ、これらが一緒になってキットを形成してもよい。
【0090】
いくつかの生物学的に活性な化合物は、遊離塩基の形態又は薬学的に許容され得る塩の形態、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩及び当技術分野で公知の他の塩であり得る。適切な塩は、適切な使用様式(例えば、経口又は非経口投与経路)のための化合物の生物学的利用能又は安定性を高めるように選定されるであろう。
【0091】
本発明はまた、製剤の使用説明書と共に医薬製剤を収容するキットを提供する。好ましくは、市販のパッケージは、製剤の1つ以上の単位用量を収容する。光及び/又は空気に敏感な製剤は、特別な包装及び/又は製剤を必要とし得る。例えば、光に対して不透明である、及び/又は周囲空気との接触から密封されている、及び/又は好適なコーティング若しくは賦形剤と共に製剤化されている包装が使用され得る。
【0092】
本発明の製剤は、単独で、又は他の化合物(例えば、小分子、核酸分子、ペプチド若しくはペプチド類似体)と組み合わせて、担体又は任意の薬学的若しくは生物学的に許容され得る担体の存在下で提供することができる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」又は「賦形剤」は、生理学的に適合性であるありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、並びに吸収遅延剤などを含む。担体は、任意の適切な投与形態に好適であり得る。薬学的に許容され得る担体には、一般に、滅菌水溶液又は分散液及び滅菌粉末が含まれる。補足的な活性化合物も製剤に組み込むことができる。
【0093】
本発明による製剤の「有効量」は、治療有効量又は予防有効量を含む。「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために、必要な投薬量及び期間で有効な量を指す。製剤の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する化合物の能力などの要因に応じて変動し得る。投薬レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整され得る。治療有効量はまた、製剤又は活性化合物のいかなる毒性又は有害作用にも治療的に有益な作用が上回る量であり得る。「予防有効量」は、所望の予防結果を達成するために、必要な投薬量及び期間で有効な量を指す。典型的には、予防有効量が治療有効量よりも少なくなり得るように、予防用量が疾患の前又は初期段階で対象に使用される。任意の特定の対象について、治療のタイミング及び用量は、個々の必要性及び組成物の投与を管理又は監督する人の専門的判断に従って、経時的に(例えば、タイミングは、毎日、1日おき、毎週、毎月であってもよい)調整され得る。
【0094】
治療用途では、観察された併用治療効果が個々の有効成分の治療効果の合計よりも大きい場合、又は有効成分が単独では生じることができない新しい治療効果が生じる場合、有効成分間の相乗効果が発生する。したがって、製剤の成分が相乗的に有効な量で存在する場合、製剤は、同等の投薬量で単独で投与された個々の有効成分によって達成されるよりも大きい治療効果をもたらす。これに関連して、治療効果の増強は、有効性若しくは効力の増加及び/又は有害作用の減少の形態をとり得る。相乗効果は、対象における有効成分の薬物動態及び/又は薬力学によって全体的又は部分的に媒介され得、その結果、製剤中の成分の量及び割合は、インビボで相乗的であり得る。このインビボ相乗効果は、有効性のインビトロアッセイにおいても相乗的である量及び割合で有効成分を含む製剤を用いて行われ得る。したがって、本明細書で使用される場合、「相乗的に有効な量」という用語は、インビボ及び/又はインビトロで相乗的な量を指す。相乗効果の数値定量化は、多くの場合、試験した各薬物の部分阻害濃度(FIC)の合計を表す部分阻害濃度指数(FICI)として表され、FICは、組み合わせて使用した場合の各薬物の最小阻害濃度(MIC、標準的なインビトロアッセイ-レサズリンに基づく標準的な比色アッセイで細菌の目に見える増殖を防ぐ薬物の最低濃度)を単独で使用した場合の各薬物のMICで割ることによって薬物ごとに決定される。非常に一般的な用語では、1より低い又は高いFICIは、それぞれ正の相関のある活性(少なくとも相加的な相乗効果)又は正の相互作用の欠如を示す。より明確には、2つの化合物の相乗効果は、≦0.5のFICIとして保守的に定義され得る(Odds,2003;with additivity or additive synergy corresponding to a FICI of >0.5 to ≦1;no interaction(indifference)corresponding to a FICI of >1 to≦4;and antagonism corresponding to a FICI of >>4を参照されたい)。3つの化合物の相乗効果は、≦1.0のFICIと定義されている(Berenbaum,1978;Yu et al.,1980)。
【0095】
[実施例]
以下の実施例に示すように、BRAFMT MSS細胞株は、DNA複製ストレス及びUPR活性化の誘導物質であるBOLD-100に対する感受性の増加を示す。BOLD-100は、BRAFMT CRC細胞においてROSの急激な増加及びATR/CHKDNA損傷シグナル伝達キナーゼの活性化をもたらす。ATR阻害は、BRAFMT CRCにおいてBOLD-100と組み合わせた場合、細胞生存率を有意に低下させ、細胞死を増加させる。
【0096】
[実施例1]
小胞体タンパク質応答(UPR)及びDNA修復は、最も悪い結果を伴うCMS1/BRAFMTサブグループにおいて調節解除された主要な経路である。
【0097】
GSE59857データセットのデータ分析:ヒートマップは、R Studioバージョン1.3.959を使用したCMScallerアプリケーションの使用によって作成した。CMScallerアプリケーションは、CRC前臨床モデルのコンセンサス分子サブタイプ(CMS)分類を提供する(Guinney et al.,Nat Med.2015年11月;21(11):1350-6;CMS1「microsatellite instability immune」、超変異、マイクロサテライト不安定性及び強い免疫活性化;CMS2「canonical」、上皮、顕著なWNT及びMYCシグナル伝達活性化;CMS3「metabolic」、上皮及び明らかな代謝調節不全;並びにCMS4「mesenchymal」、顕著な形質転換成長因子β活性化、間質浸潤及び血管新生を参照されたい。)。
【0098】
材料:同質遺伝子対及び非同質遺伝子V600E BRAFMT及びBRAFWT細胞のパネルを使用した。ルテニウムベースの小分子阻害剤であるBOLD-100は、BOLD Therapeuticsから入手した。FDA承認化合物ライブラリーを使用した。
【0099】
方法:Cell Titre Glo、アネキシンV/PI高含有量スクリーニング、フローサイトメトリー、ウェスタンブロッティング、カスパーゼ8、3/7活性、ROS-GloaH2O2、RNAiアッセイを使用した。Illumina Novoseqプラットフォーム及びReactome Pathway Analysisを使用して、BOLD-100で処理したBRAFMT/WTCRC細胞に対してRNAseq及び生物情報学的分析を実行した。
【0100】
図1に示すように、GSE59857データセットは、その作成時にプラットフォームに埋め込まれ、したがって、CMScallerの実装のためにRの「Biobase」及び「limma」パッケージを使用して、Log2正規化されたこのデータセットからヒートマップを作成した。CMScallerプログラム内の「サブカメラ」機能は、CMSプロファイルによる遺伝子セット分析及び層別化後に作成されたヒートマップを視覚化するために利用される。次いで、これらのヒートマップは、X軸に沿ったCMSプロファイル及びY軸に沿ったホールマークによる経路名を収容する。
【0101】
[実施例2]
BRAFMT、MSS CRC細胞は、BOLD-100による処理に対して感受性である
図2に例示されるように、BRAFMT、CMS1 CRC細胞は、BOLD-100による処理に対して増大した感受性を示す。上部:A.BRAFMT V600E HT-29細胞を指示された時間BOLD-100で処理し、GRP78、CHOP及びPARPレベルをウェスタンブロッティング(WB)によって決定した。B.HT-29細胞を指示された時間BOLD-100で処理し、HSPA5、ATF4及びDDIT3mRNAレベルをRT-PCRを使用して定量した。生の値をハウスキーピング遺伝子ACTB及びGAPDHの発現に対して正規化し、ΔΔCT法を使用して分析した。下部:A.CRC細胞を漸増濃度のBOLD-100で処理し、CellTitre-Glo(登録商標)アッセイを使用して細胞生存率を決定した。Prismソフトウェアパッケージを使用してIC50を計算した。B.CRC細胞をBOLD-100で48時間処理した。アネキシンV/ヨウ化プロピジウム(PI)染色を使用してハイコンテンツスクリーニングによりアポトーシスを評価した。グラフは、100μMのBOLD-100で処理した後の陽性染色細胞の百分率を示す。3回の独立した実験の平均値を示す。
【0102】
[実施例3]
発癌性BRAFは、BOLD-100処理に対する応答の決定因子である
図3に示すように、発癌性BRAFは、BOLD-100処理に対する応答の決定因子である。A.上:同質遺伝子型BRAFMT及びBRAFWT CRC細胞を漸増濃度のBOLD-100で72時間処理し、CellTitre-Glo(登録商標)アッセイを使用して細胞生存率を決定した。Prismソフトウェアパッケージを使用してIC50を計算した。下部:BOLD-100で48時間処理したCRC細胞中のPARP。B.1μgのBRAFV600E発現構築物で12時間一過性にトランスフェクトし、続いてBOLD-100で24時間処理したVT1CRC細胞におけるBRAF、pMEK1/2、MEK1/2、ATF4、CHOP、PARP及び切断型C3の発現。C.左:CRC細胞をベムラフェニブ及びBOLD-100で48時間共処理し、PARP、GRP78、CHOP、pMEK1/2、MEK1/2レベルをWBによって決定した。右:CRC細胞を、BOLD-100と組み合わせて、薬物なし(対照)、ベムラフェニブ、BOLD-100又はベムラフェニブで72時間共処理した。CI値は、Chou及びTalalayの方法を使用して計算し、CI<0.3、0.3<CI<0.7、0.7<CI<0.85、0.85<CI<1、CI=1、及びCI>1は、それぞれ非常に強い相乗作用、強い相乗作用、中程度の相乗作用、わずかな相乗作用、相加的相互作用、及び拮抗作用を示す。
【0103】
[実施例4]
BOLD-100誘導性細胞死は、カスパーゼ8に依存する
図4に示すように、このモデルにおけるBOLD-100誘導性細胞死は、カスパーゼ8に依存する。A.:178個の標的TSGに対する一次siRNAスクリーニングの陽性ヒット。sRNAをBOLD-100での処理を24時間実施し、続いてBOLD-100での処理を48時間実施した。46個の標的を同定し、その結果、BOLD-100に対する感受性又は抵抗性のいずれかが増加した(ロバストz-スコア±1に基づく)。B.46個の標的に対する2つのさらなるsiRNA配列を使用した二次siRNAスクリーニングからの陽性ヒット。C.CRC細胞をDMSO又は20μMの汎カスパーゼ阻害剤、z-VAD-FMKと3時間プレインキュベートし、続いてBOLD-100で48時間処理し、その後PARP(上)及びカスパーゼ-3/7活性アッセイ(下)についてWB分析によってアポトーシスを評価した。D.上:CRC細胞を10nMのC8、C9又はC8/C9siRNAで24時間トランスフェクトし、その後、BOLD-100で48時間処理した。アポトーシスを、PARP(左)及びカスパーゼ-3/7活性(右)についてWB分析によって評価した。下:対になったCRISPR HCT116 C8WT及びHCT116 C8null細胞をBOLD-100で48時間処理した。アポトーシスを、PARP(左)及びカスパーゼ-3/7活性レベル(右)についてWBによって決定した。
【0104】
[実施例5]
BOLD-100処理は、BRAFMT CRCにおけるDNA損傷修復経路の調節解除をもたらす
図5に示すように、BOLD-100処理は、BRAFMT CRCにおけるDNA損傷修復経路活性化をもたらす:A.同質遺伝子型BRAFMT及びWTCRC細胞におけるBOLD-100による3時間及び24時間の処理後の有意に(p<0.05;1.5倍変化)ダウンレギュレートされた遺伝子及びアップレギュレートされた遺伝子のヒートマップ。B.BRAFMT VACO432細胞株における有意にダウンレギュレートされた遺伝子及びアップレギュレートされた遺伝子のメタコア経路分析。
【0105】
[実施例6]
ATR阻害は、BOLD-100処理に対する応答を著しく増加させる
図6に示されるように、ATR阻害は、BRAFMT CRC細胞におけるBOLD-100処理に対する応答を著しく増加させる。FDAは、BRAFMT CRCにおけるBOLD-100処理後に調節解除された有意な経路を標的とする薬物スクリーニングを承認した。BRAFMT HT-29(A)及びVACO432(B)細胞を、単独で、又はBOLD-100と組み合わせて、60個のFDA承認薬のBOLD-100、IC10、IC20、IC30用量で72時間共処理し、CellTitre-Glo(登録商標)アッセイを使用して細胞生存率を決定した。組み合わせ処理についてロバストzスコアを計算し、50μM BOLD-100の効果に対して正規化した。<-1のr-Zスコアを有する組み合わせは、BOLD-100処理に対する感受性を高めると考えられた。組み合わせたBOLD-100/AZD6738処理の細胞生存率を、GraphPad Prism8.0を使用してグラフ化した。C.BOLD-100及びAZD6738による14日間の共処理後のBRAFMT LIM2405、VACO432及びRKO CRC細胞におけるクローン原性生存アッセイ。生存を、GraphPad Prism8.0を使用してグラフ化した。
【0106】
[実施例7]
ATR小分子阻害剤AZD6738、M4344及びベルゾセルチブは、BRAFMT CRCにおけるBOLD-100処理後に細胞死を増加させる
図7に示されるように、ATR SMI AZD6738、M4344及びベルゾセルチブは、BRAFMT CRCにおけるBOLD-100処理後に細胞死を増加させる。HT-29及びVACO432 CRC細胞を、BOLD-100及びATRi AZD6738、M4344又はベルゾセルチブで48時間共処理し、アポトーシスを、PARP並びに切断型カスパーゼ-3(A)及びカスパーゼ3/7活性アッセイ(B)についてWB分析を使用して評価した。C.BRAFMT CRC細胞VACO432、COLO205及びLIM2405を、BOLD-100及びATRi AZD6738、M4344又はベルゾセルチブで48時間共処理し、アポトーシスをPIフローサイトメトリーによって評価した。
【0107】
[実施例8]
BOLD-100は、BRAFMT CRC細胞においてROS依存性ATR/CHK1キナーゼ活性化及び細胞死を誘導する
図8に示すように、BOLD-100は、BRAFMT CRC細胞においてROS依存性ATR/CHK1キナーゼ活性化及び細胞死を誘導する。A.BRAFMT CRC細胞を指示された時間BOLD-100で処理し、ATR/KAP1/CKH1/CHK2発現/活性をWBによって測定した。B.CRC細胞をBOLD-100及びAZD6738で48時間共処理し、ATR/KAP1及び下流キナーゼのリン酸化/発現を測定した。C.CRC細胞を指示された時間BOLD-100で処理し、ROS-Glo(商標)H2O2アッセイを使用してROSの作成を測定した。D.及びE.NACで3時間前処理し、続いてBOLD-100でさらに24時間処理した細胞におけるWB及びカスパーゼ3/7活性。
【0108】
[実施例9]
BOLD-100は、困難なCMS1及びCMS4 CRCの処理において最も効果的である
この実施例では、20個の結腸癌細胞株を漸増濃度のBOLD-100で72時間処理し、生存率を標準的なCell Titer-Glo(CTG)発光細胞生存率アッセイによって測定した。Prismソフトウェアパッケージを使用して、用量応答曲線から各細胞株のIC50を決定した。結腸癌細胞株を、CRC前臨床モデルのコンセンサス分子サブタイプ(CMS)分類に基づいて異なるサブタイプに分類した。図9に示すように、CMS1及びCMS4サブタイプは、BOLD-100単独療法処理に対して最も応答性が高いことが示された。最小から最大へのIC50の分布を2方向バーで示し、中央値を水平バーで示す。BRAF変異を有するCMS1サブタイプ及びCMS4サブタイプは、最悪の全生存率及び奏効率を有し、これはBOLD-100が治療困難なサブタイプの結腸癌の治療に驚くほど有効であることを実証している。
【0109】
[実施例10]
ATR阻害は、多発性骨髄腫におけるBOLD-100処理に対する応答を著しく増加させる
骨髄腫は、主に骨髄に常在する形質細胞に関与するリンパ系悪性腫瘍であるが、悪性形質細胞は、末梢血、軟部組織及び器官にも見られ得る。したがって、骨髄腫は、罹患部位によって区別され得る形態で現れる形質細胞障害であり、多発性骨髄腫では、いくつかの異なる領域が罹患しており、形質細胞腫では、1つの部位のみが罹患しており、限局性骨髄腫では、隣接する部位が罹患しており、髄外骨髄腫では、骨髄以外の組織の関与がある。したがって、本明細書で使用される場合、「骨髄腫」という用語は、それ自体当技術分野で認識されている疾患の範囲を指す。この疾患の範囲内で、再発性MMは、一般に、典型的には客観的臨床基準に基づいて、以前の奏効後の疾患の再発と見なされ、再発性/難治性MM(RRMM)は、一般に、以前の療法で最小応答(MR)以上を達成した患者の療法又は最後の治療の60日以内に非応答性又は進行性になる疾患と定義される。RRMMの処理は、特定の課題をもたらす。
【0110】
この実施例では、多発性骨髄腫細胞株を、24時間(図10(A)左パネル)又は48時間(図10(A)右パネル)のいずれかの間、漸増用量のATR阻害剤BAY 1895344と組み合わせた漸増用量のBOLD-100で処理し、細胞生存率を、標準的なCell Titer-Glo(CTG)発光細胞生存率アッセイによって測定した。図10(A)は、多発性骨髄腫細胞株MM.1Sにおける応答を示し、一方、図10(B)は、多発性骨髄腫細胞株KMS18における応答を示す。棒グラフは、ビヒクル対照と比較して、MM.1S細胞を用いたアッセイで生存している細胞の数を表す。散布図は、異なる用量レベルでの薬物組み合わせ間の相乗効果の程度を表す。散布図では、化合物相互作用を、Compusynソフトウェア、バージョン1.0を使用して、Chou及びTalalayによって記載された方法論に従って、中央方程式原理によって実行された多重薬物効果分析による組み合わせ指数(CI)として計算した(Chou TC.「Drug combination studies and their synergy quantification using the Chou-Talalay method.」Cancer Res.2010 Jan 15;70(2):440-6を参照されたい)。CI値は、薬物組み合わせの相乗的、相加的又は拮抗的挙動を示す1つの方法である。この方法を使用して、CI<1、=1、及び>1は、相乗作用、相加効果及び拮抗作用をそれぞれ示す。細胞生存率を低下させるための2つの薬物の相乗的相互作用が観察された。
【0111】
参考文献
Venderbosch S,Nagtegaal ID,Maughan TS,et al.Clin Cancer Res.2014;20(20):5322-30.
Lochhead P,Kuchiba A,Imamura Y,et al.J Natl Cancer Inst.2013;105(15):1151-6.
Kopetz,S.et al.Encorafenib,Binimetinib,and Cetuximab in BRAF V600E-Mutated Colorectal Cancer.N Engl J Med.381,1632-1643(2019).
Guinney,J.et al.The consensus molecular subtypes of colorectal cancer.Nat Med.21,1350-1356(2015).
Medico,E.et al.The molecular landscape of colorectal cancer cell lines unveils clinically actionable kinase targets.Nature communications.6,7002(2015).
Burris,H.A.et al.Safety and activity of IT-139,a ruthenium-based compound,in patients with advanced solid tumours:a first-in-human,open-label,dose-escalation phase I study with expansion cohort.ESMO open.1,e000154(2016).
本発明の様々な実施形態が本明細書に開示されているが、当業者の共通の一般知識に従って、本発明の範囲内で多くの適合及び修正を行うことができる。そのような修正は、実質的に同じ方法で同じ結果を達成するために、本発明の任意の態様の既知の均等物の置換を含む。「例示的」又は「例示された」などの用語は、本明細書では「例、事例、又は例示としての役割を果たす」を意味するために使用される。「例示的」また「例示された」として本明細書に記載された実施態様は、それに応じて、必ずしも他の実施態様よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではなく、そのような実施態様はすべて独立した実施形態である。特に明記しない限り、数値範囲は範囲を定義する数を含み、数値は必ず所与の小数への近似値である。「を含み、」という単語は、本明細書では「~を含むが、これらに限定されない」という句と実質的に同等のオープンエンド用語として使用され、「含む」という単語は対応する意味を有する。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「物」への言及は、2つ以上のそのようなものを含む。本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であることを認めるものではない。本明細書で引用された特許及び特許出願、並びにそのような文献及び刊行物で引用されたすべての文献を含むがこれらに限定されない任意の(1又は複数の)優先文献及びすべての刊行物は、あたかも個々の各刊行物が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示され、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、実施例及び図面を参照して実質的に上述したすべての実施形態及び変形を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、本発明は、医学的又は外科的治療を伴うステップを除外する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A-1】
図4A-2】
図4B
図4C
図4D
図5A-1】
図5A-2】
図5B-1】
図5B-2】
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10A
図10B
【国際調査報告】