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特表2023-549273プロテインキナ-ゼ阻害剤としての置換されたピロロ[2,3-b]ピリジン及びピラゾロ[3,4-b]ピリジン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】プロテインキナ-ゼ阻害剤としての置換されたピロロ[2,3-b]ピリジン及びピラゾロ[3,4-b]ピリジン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20231115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
C07D471/04 CSP
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/437
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529093
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 CN2021130897
(87)【国際公開番号】W WO2022105746
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/115,027
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】522341366
【氏名又は名称】フォチョン・バイオサイエンシーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハオハン・タン
(72)【発明者】
【氏名】チホン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】ユンリン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】リフア・ジアン
(72)【発明者】
【氏名】シュ・リン
(72)【発明者】
【氏名】シンドン・ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイボ・ワン
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA04
4C065BB04
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ07
4C065KK04
4C065LL01
4C065PP03
4C065PP11
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、BTK阻害剤、その医薬組成物及びその使用方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
(I)
(式中、
は、C1-10アルキル基及びC3-10シクロアルキル基から選択され、アルキル基及びシクロアルキル基は、それぞれ、非置換であるか又はRから独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換され、
各Rは、ハロゲン及びメチル基から独立して選択され、
各Rは、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルキル-C1-4アルキル基、複素環基、複素環-C1-4アルキル基、アリール基、アリールC1-4アルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールC1-4アルキル基、ハロゲン、CN、-NO、-NR、-OR、-SR、-S(O)、-S(O)OR、-OS(O)、-S(O)NR、-P(O)R、-P(O)(OR)(OR)、-(CRNR、-(CROR、-(CRSR、-(CRS(O)、-(CRP(O)R、-(CRP(O)(OR)(OR)、-(CRCO、-(CRC(O)NR、-(CRNRC(O)R、-(CRNRCO、-(CROC(O)NR、-(CRNRC(O)NR、-(CRNRSONR、-NR(CRNR、-O(CRNR、-S(CRNR、-S(O)(CRNR、-C(O)R、-C(O)(CROR、-C(O)(CRNR、-C(O)(CRSR、-C(O)(CRS(O)、-CO、-CO(CRC(O)NR、-OC(O)R、-C(O)NR、-NRC(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)、-CR(=N-OR)、-C(=NR)R、-C(=NR)NR、-NRC(=NR)NR、-CHF、-CF、-OCHF及び-OCFから独立して選択され、各アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基及びヘテロアリール基は、非置換であるか又はヒドロキシ基、CN、アミノ基、ハロゲン、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換され、
各R及びRは、水素、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルキル-C1-4アルキル基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基、ジ(C1-10アルキル)アミノ基、複素環基、複素環-C1-4アルキル基、アリール基、アリールC1-4アルキル基、ヘテロアリール基及びヘテロアリールC1-4アルキル基から独立して選択され、各アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アルキルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、複素環基、アリール基及びヘテロアリール基は、非置換であるか又はハロゲン、CN、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、ヒドロキシ基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、アミノ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換され、
或いは、R及びRは、それらが結合している単一又は複数の原子と一緒に、酸素、硫黄、窒素及びリンから独立して選択された0個、1個若しくは2個の追加のヘテロ原子を含む4~12員複素環を構成し、該環は、ハロゲン、CN、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、ヒドロキシ基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、アミノ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された1個若しくは2個の置換基で任意に置換されてもよく、
各R及びRは、水素、ハロゲン、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルキル-C1-4アルキル基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基、ジ(C1-10アルキル)アミノ基、複素環基、複素環-C1-4アルキル基、アリール基、アリールC1-4アルキル基、ヘテロアリール基及びヘテロアリールC1-4アルキル基から独立して選択され、各アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アルキルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、複素環基、アリール基及びヘテロアリール基は、非置換であるか又はハロゲン、CN、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、ヒドロキシ基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、アミノ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換され、
或いは、R及びRは、それらが結合している単一又は複数の炭素原子と一緒に、酸素、硫黄及び窒素から独立して選択された0個、1個若しくは2個のヘテロ原子を含む3~12員環を構成し、該環は、ハロゲン、CN、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、ヒドロキシ基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、アミノ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された1個若しくは2個の置換基で任意に置換されてもよく、
各Rは、水素、CN、NO、C1-10アルキル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルキル-C1-4アルキル基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、-C(O)C1-4アルキル基、-C(O)C3-10シクロアルキル基、-C(O)OC1-4アルキル基、-C(O)OC3-10シクロアルキル基、-C(O)N(C1-4アルキル)、-C(O)N(C3-10シクロアルキル)、-S(O)1-4アルキル基、-S(O)3-10シクロアルキル基、-S(O)N(C1-4アルキル)及び-S(O)N(C3-10シクロアルキル)から独立して選択され、
mは、0、1、2、3、4及び5から選択され、
各rは、0、1及び2から独立して選択され、
各tは、0、1、2、3及び4から独立して選択される。)
【請求項2】
は、-CD、メチル基、エチル基、イソプロピル基及びシクロプロピル基から選択され、メチル基、エチル基、イソプロピル基及びシクロプロピル基は、それぞれ、非置換であるか又はRから独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
は、-CD、メチル基、エチル基、イソプロピル基及びシクロプロピル基から選択される、請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
各Rは、ハロゲン、CN、-NO、-NR、-OR、-SR、-S(O)、-S(O)OR、-OS(O)、-S(O)NR、-(CRNR、-(CROR、-(CRSR、-(CRS(O)、-(CRCO、-C(O)R、-C(O)(CRSR、-CO、-OC(O)R、-C(O)NR、-NRC(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-NRS(O)、-CHF、-CF、-OCHF及び-OCFから独立して選択される、請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
各Rは、ハロゲン、CN、-NO、-NH、-OH、CHF、-CF、-OCHF及び-OCFから独立して選択される、請求項4に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
mは、0、1、2、3及び4から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
mは、0、1及び2から選択される、請求項6に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
各Rは、F、Cl、Br及びメチル基から独立して選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
各Rは、F、Cl及びメチル基から独立して選択される、請求項8に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
は、Fである、請求項9に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
式(I)の
【化2】
部分の構造は、フェニル基、
【化3】
から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
式(I)の
【化4】
部分の構造は、フェニル基、
【化5】
から選択される、請求項11に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
【化6】
から選択される、化合物及びその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含有する、医薬組成物。
【請求項15】
BTK阻害に応答する病状を治療、改善又は予防する方法であって、それを必要とする個体に有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又はその少なくとも1種の医薬組成物を、任意に第2の治療剤と組み合わせて投与することを含む、方法。
【請求項16】
細胞増殖性障害疾患を治療する薬物の製造における、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項17】
細胞増殖性障害疾患は、B細胞増殖性障害疾患である、請求項16に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項18】
B細胞増殖性障害疾患は、B細胞悪性腫瘍、B細胞慢性リンパ性リンパ腫、慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、多発性硬化症、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、活性化B細胞様びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バ-キットリンパ腫/白血病、リンパ腫様肉芽腫症及び形質細胞腫を含むが、これらに限定されない、請求項17に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルトン型チロシンキナ-ゼ(BTK)活性を阻害できる化合物又はその薬学的に許容される塩、並びに薬物としての、癌、炎症などの過剰増殖性疾患又は免疫疾患及び自己免疫疾患の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌、炎症などの過剰増殖性疾患は、効果的な治療手段が提供されるように学術界の注目を集めている。これに関連して、増殖性疾患において役割を果たす特定の機序を同定し、標的とする努力が行われている。
【0003】
ブルトン型チロシンキナ-ゼ(BTK)は、非受容体チロシンキナ-ゼTecファミリ-のメンバ-に属し、B細胞及び骨髄細胞において発現し、かつB細胞受容体(BCR)経路において重要な調節の役割を果たす。B細胞受容体経路は、初期B細胞の発生、成熟B細胞の活性化、シグナル伝達及び生存などの過程に関与している。
【0004】
X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)は、既知の病因がヒトBTK機能の変異であり、機能の変異のため成熟B細胞を生成することができず、血清中の様々な免疫グロブリンが明らかに低下するか又は欠乏することを引き起こすヒト原発性免疫不全疾患である。また、BTKを調節すると、B細胞受容体経路により炎症性サイトカイン及びケモカインを生成するようにB細胞を誘導することができ、BTKが自己免疫疾患の治療には大きな潜在力を有することを示す。自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療におけるBTKの役割の証拠は、BTK欠損マウスモデルにおいて立証されている。したがって、BTK活性の阻害は、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患、例えば、関節リウマチ、多発性血管炎、重症筋無力症及び喘息の治療に用いることができる。
【0005】
また、BTKは、アポト-シスにおいて重要な役割を果たすことが既に報告されている。いくつかの悪性腫瘍において、BTKは、B細胞において過剰発現し、これは、腫瘍細胞の増殖及び生存に関連する。BTKを阻害すると、B細胞シグナル伝達経路に影響を与えることにより、B細胞の活性化を阻止し、悪性B細胞の増殖を阻害することができる。
【0006】
したがって、BTK活性の阻害は、癌、例えばB細胞リンパ腫、白血病及び他の血液系悪性腫瘍の治療に用いることができる。大量の臨床試験により、BTK阻害剤は癌に有効であることを示す。Ibrutinib(PCI-32765)は、アメリカ食品医薬品局によって承認された一番初めのBTK阻害剤であり、マントル細胞リンパ腫(MCL)、慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)及びワルデンシュトレ-ム型マクログロブリン血症(WM)を治療するために用いられる。BTK阻害剤は、他の疾患、例えば免疫疾患及び炎症の治療にも用いることができる。
【0007】
したがって、BTK阻害活性を有する化合物は、上記疾患の予防及び治療に重要な意味を有する。BTK阻害剤は、WO2008039218、WO2008121742などの文献に報告されているが、多くのBTK阻害剤は、半減期が短いか又は毒性がある。したがって、新規なBTK阻害剤に対する需要は、依然として強く、新規なBTK阻害剤は、過剰増殖性疾患を治療する際に、治療効果、安定性、選択性、安全性及び薬力学的特徴の少なくとも一方において利点を有する。本発明は、新規なBTK阻害剤に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新規な化合物、その薬学的に許容される塩、その医薬組成物、及びその薬物としての応用を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本発明は、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化1】
(I)
式中、
は、C1-10アルキル基及びC3-10シクロアルキル基から選択され、アルキル基及びシクロアルキル基は、それぞれ、非置換であるか又はRから独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換され、
各Rは、ハロゲン及びメチル基から独立して選択され、
各Rは、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルキル-C1-4アルキル基、複素環基、複素環-C1-4アルキル基、アリール基、アリールC1-4アルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールC1-4アルキル基、ハロゲン、CN、-NO、-NR、-OR、-SR、-S(O)、-S(O)OR、-OS(O)、-S(O)NR、-P(O)R、-P(O)(OR)(OR)、-(CRNR、-(CROR、-(CRSR、-(CRS(O)、-(CRP(O)R、-(CRP(O)(OR)(OR)、-(CRCO、-(CRC(O)NR、-(CRNRC(O)R、-(CRNRCO、-(CROC(O)NR、-(CRNRC(O)NR、-(CRNRSONR、-NR(CRNR、-O(CRNR、-S(CRNR、-S(O)(CRNR、-C(O)R、-C(O)(CROR、-C(O)(CRNR、-C(O)(CRSR、-C(O)(CRS(O)、-CO、-CO(CRC(O)NR、-OC(O)R、-C(O)NR、-NRC(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)、-CR(=N-OR)、-C(=NR)R、-C(=NR)NR、-NRC(=NR)NR、-CHF、-CF、-OCHF及び-OCFから独立して選択され、各アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基及びヘテロアリール基は、非置換であるか又はヒドロキシ基、CN、アミノ基、ハロゲン、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換され、
各R及びRは、水素、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルキル-C1-4アルキル基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基、ジ(C1-10アルキル)アミノ基、複素環基、複素環-C1-4アルキル基、アリール基、アリールC1-4アルキル基、ヘテロアリール基及びヘテロアリールC1-4アルキル基から独立して選択され、各アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アルキルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、複素環基、アリール基及びヘテロアリール基は、非置換であるか又はハロゲン、CN、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、ヒドロキシ基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、アミノ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換され、
或いは、R及びRは、それらが結合している単一又は複数の原子と一緒に、酸素、硫黄、窒素及びリンから独立して選択された0個、1個若しくは2個の追加のヘテロ原子を含む4~12員複素環を構成し、該環は、ハロゲン、CN、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、ヒドロキシ基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、アミノ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された1個若しくは2個の置換基で任意に置換されてもよく、
各R及びRは、水素、ハロゲン、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルキル-C1-4アルキル基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基、ジ(C1-10アルキル)アミノ基、複素環基、複素環-C1-4アルキル基、アリール基、アリールC1-4アルキル基、ヘテロアリール基及びヘテロアリールC1-4アルキル基から独立して選択され、各アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アルキルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、複素環基、アリール基及びヘテロアリール基は、非置換であるか又はハロゲン、CN、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、ヒドロキシ基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、アミノ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換され、
或いは、R及びRは、それらが結合している単一又は複数の炭素原子と一緒に、酸素、硫黄及び窒素から独立して選択された0個、1個若しくは2個のヘテロ原子を含む3~12員環を構成し、該環は、ハロゲン、CN、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、ヒドロキシ基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、アミノ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された1個若しくは2個の置換基で任意に置換されてもよく、
各Rは、水素、CN、NO、C1-10アルキル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルキル-C1-4アルキル基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、-C(O)C1-4アルキル基、-C(O)C3-10シクロアルキル基、-C(O)OC1-4アルキル基、-C(O)OC3-10シクロアルキル基、-C(O)N(C1-4アルキル)、-C(O)N(C3-10シクロアルキル)、-S(O)1-4アルキル基、-S(O)3-10シクロアルキル基、-S(O)N(C1-4アルキル)及び-S(O)N(C3-10シクロアルキル)から独立して選択され、
mは、0、1、2、3、4及び5から選択され、
各rは、0、1及び2から独立して選択され、
各tは、0、1、2、3及び4から独立して選択される。
【0010】
別の態様では、本発明は、式(I)の化合物又は少なくとも1つのその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含有する医薬組成物を提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、BTKを調節する方法を提供し、該方法は、それを必要とする系又は個体に治療有効量の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又はその医薬組成物を投与することにより、BTKを調節することを含む。
【0012】
別の態様では、また、本発明は、BTK阻害に応答する病態を治療、改善又は予防する方法を提供し、該方法は、それを必要とする系又は個体に有効量の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又はその医薬組成物を、任意に別の治療薬物と組み合わせて投与して、上記病態を治療することを含む。
【0013】
或いは、本発明は、BTKにより媒介される病態を治療する薬物の製造における、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。特定の実施例では、上記化合物は、BTKにより媒介される病態を治療するために、単独で、又は他の治療薬物と組み合わせて使用されてもよい。
【0014】
或いは、本発明は、BTKにより媒介される病態の治療するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0015】
特定的に、上記病態は、自己免疫疾患、異種免疫疾患、アレルギ-性疾患、炎症性疾患又は細胞増殖性障害を含むが、これらに限定されない。
【0016】
また、本発明は、BTKにより媒介される病態を治療する方法を提供し、該方法は、それを必要とする系又は個体に有効量の式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は医薬組成物を投与するか、又は任意に他の治療薬物と組み合わせて投与して、上記病態を治療することを含む。
【0017】
或いは、本発明は、BTKにより媒介される疾患を治療する薬物の製造における、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。特定の実施例では、上記化合物は、上記細胞増殖性障害を治療するために、単独で、又は化学療法剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0018】
特定的に、上記病態は、自己免疫疾患、異種免疫疾患、アレルギ-性疾患、炎症性疾患又は細胞増殖性障害を含むが、これらに限定されない。
【0019】
いくつかの実施例では、病態は、細胞増殖性障害である。ある実施例では、細胞増殖性障害は、B細胞増殖性障害であり、B細胞悪性腫瘍、B細胞慢性リンパ性リンパ腫、慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、多発性硬化症、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、活性化B細胞様びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バ-キットリンパ腫/白血病、リンパ腫様肉芽腫症及び形質細胞腫を含むが、これらに限定されない。
【0020】
いくつかの実施例では、病態は、自己免疫疾患であり、関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬、変形性関節症、若年性関節炎、炎症性腸疾患、クロ-ン病、潰瘍性結腸炎、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、急性播種性脳脊髄炎、アジソン病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、グッドパスチャ-症候群、特発性血小板減少性紫斑病、強皮症、原発性胆汁性肝硬変、ライタ-症候群、乾癬、自律神経機能不全、神経性筋強直症、間質性膀胱炎、エリテマト-デス、全身性エリテマト-デス及びル-プス腎炎を含むが、これらに限定されない。
【0021】
いくつかの実施例では、病態は、異種免疫疾患であり、移植片対宿主病、移植、輸血、アナフィラキシ-(anaphylaxis)、アレルギ-(allergy)、I型過敏症反応、アレルギ-性結膜炎、アレルギ-性鼻炎及びアレルギ-性皮膚炎を含むが、これらに限定されない。
【0022】
いくつかの実施例では、病態は、炎症性疾患であり、喘息、虫垂炎、眼瞼炎、細気管支炎、気管支炎、滑液包炎、子宮頸管炎、胆管炎、胆嚢炎、大腸炎、結膜炎、膀胱炎、涙腺炎、皮膚炎、皮膚筋炎、脳炎、心内膜炎、子宮内膜炎、小腸炎、結腸炎、上顆炎、精巣上体炎、筋膜炎、結合組織炎、胃炎、腸炎、肝炎、化膿性汗腺炎、咽喉炎、乳房炎、髄膜炎、炎症性心筋炎、筋炎、腎炎、精巣炎、卵巣炎、骨炎、中耳炎、膵炎、流行性耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、間質性肺炎、急性肺炎、直腸炎、前立腺炎、腎盂腎炎、鼻粘膜炎、卵管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、腱炎、扁桃炎、ブドウ膜炎、膣炎、血管炎及び外陰炎を含むが、これらに限定されない。
【0023】
本発明の上記化合物を使用する上記方法では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、細胞若しくは組織を含有する系、又はヒト若しくは動物個体などの哺乳動物個体を含む個体に投与されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0024】
用語
特に定義しない限り、本特許出願に使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。特に説明しない限り、本特許出願に参照される全ての特許、特許出願、開示された資料などは、全体が参照により組み入れられる。本特許出願における同じ用語について、複数の定義があれば、この章の定義が優先される。
【0025】
前述の一般的な説明及び後の詳細な説明は、説明的なものに過ぎず、いかなる請求項を限定するものではないことが理解されるべきである。本特許出願では、特に説明しない限り、使用される単数形は複数形を含有する。なお、明細書及び添付の特許請求の範囲において、特に説明しない限り、「1」、「1個」、「この」という単数形の指示は、複数形の指示を含有する。また、特に説明しない限り、「又は」は、「及び/又は」を表す。また、「含有」、「含む」などの類似用語は、限定的なものではない。
【0026】
特に説明しない限り、本特許出願に使用される質量スペクトル、核磁気共鳴、高速液体クロマトグラフィ-、赤外線及び紫外線/可視光スペクトル、並びに一般的な薬理学的技術は、従来技術である。特に定義しない限り、本特許出願における分析化学、有機合成化学、薬物及び製薬化学に関する命名、実験方法及び技術は、いずれも既知である。標準技術は、化学合成、化学分析、薬物の製造、製剤、投与、及び患者の治療に用いることができる。反応及び精製技術は、メ-カ-の使用説明書、既知の一般的な技術、又は本特許出願に記載される方法を参照して実施することができる。上記技術及び操作は、既知の一般的な方法及び本明細書に引用された文献の方法で実施することができる。明細書において、基及び置換基は、安定した構造及び化合物を形成するために、当業者により選択されてもよい。
【0027】
化学式で置換基を指示する場合、化学式における置換基について、左から右へ書かれるものと右から左へ書かれるものとは同じである。例えば、CHOとOCHとは同じである。
【0028】
「置換」とは、水素原子が置換基で置換されることを指す。なお、特定の原子上の置換基は、その価数により限定される。
【0029】
本明細書に使用される用語「Ci-j」又は「i~j員」とは、該部分がi~j個の炭素原子又はi~j個の原子を有することを指す。例えば、「C1-6アルキル基」とは、上記アルキル基が1~6個の炭素原子を有することを指す。同様に、C3-10シクロアルキル基とは、上記シクロアルキル基が3~10個の炭素原子を有することを指す。
【0030】
任意の変数(例えばR)が化合物の構造に1回以上現れる場合、それぞれの場合に独立して定義される。したがって、例えば、基が0~2個のRで置換される場合、該基は、多くとも2個のRで任意に置換されてもよく、かつそれぞれの場合にRが独立して選択される。なお、このような組み合わせにより安定した化合物を生成する場合にのみ、置換基及び/又はその変異体の組み合わせを許容する。
【0031】
「1個以上」又は「少なくとも1個」とは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又はそれ以上を指す。
【0032】
特に説明しない限り、用語「ヘテロ」とは、ヘテロ原子又はヘテロ原子基(すなわち、ヘテロ原子を含む基)、すなわち炭素原子及び水素原子以外の原子又はこれらの原子を含む基を指す。好ましくは、ヘテロ原子は、独立してO、N、S、Pなどから選択される。2個以上のヘテロ原子に関する実施形態では、2個以上のヘテロ原子は、同じであってもよく、一部が異なっても全部が異なってもよい。
【0033】
「水素」とは、H、H、Hを指す。
【0034】
「アルキル基」とは、単独で使用されるか又は他の用語と組み合わせて使用されることに関わらず、特定の数の炭素原子を有する分岐又は直鎖の飽和脂肪族炭化水素基を指す。特に指定しない限り、「アルキル基」とは、C1-10アルキル基を指す。例えば、「C1-6アルキル基」における「C1-6」とは、直鎖又は分岐配置で1個、2個、3個、4個、5個、又は6個の炭素原子を有する基を指す。例えば、「C1-8アルキル基」は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基を含むが、これらに限定されない。
【0035】
「シクロアルキル基」とは、単独で使用されるか又は他の用語と組み合わせて使用されることに関わらず、飽和の単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の炭化水素環系を指し、一般的に3~16個の環原子を有する。シクロアルキル基の環原子は、いずれも炭素であり、かつシクロアルキル基は、0個のヘテロ原子及び0個の二重結合を含有する。多環式シクロアルキル基において、2個以上の環は、縮合されても、架橋されても、スピロ縮合されてもよい。単環式系の実例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基を含むが、これらに限定されない。「架橋シクロアルキル基」は、3~10個の炭素原子を含む多環式系であり、1個若しくは2個のアルキレン架橋を含み、各アルキレン架橋は、1個、2個若しくは3個の炭素原子からなり、それぞれ環系の2個の隣接しない炭素原子を結合させる。シクロアルキル基は、アリール基又はヘテロアリール基と縮合してもよい。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、ベンゼン縮合したものである。架橋シクロアルキル系の代表的な例は、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.2]ノナン、ビシクロ[3.3.1]ノナン、ビシクロ[4.2.1]ノナン、トリシクロ[3.3.1.03,7]ノナン及びトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(アダマンタン)を含むが、これらに限定されない。上記シクロアルキル基は、環系における任意の置換可能な原子を介して親分子部分に結合することができる。
【0036】
「アルケニル基」とは、単独で使用されるか又は他の用語と組み合わせて使用されることに関わらず、2~10個の炭素原子を含み、かつ少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する非芳香族直鎖、分岐又は環状の炭化水素基を指す。いくつかの実施形態では、環状とは、単環式又は多環式を指す。多環式アルケニル基において、2つ以上の環は、縮合、架橋又はスピロ環により結合されてもよい。いくつかの実施例では、1つの炭素-炭素二重結合、最大4つの非芳香族炭素-炭素二重結合が存在する可能性がある。したがって、「C2-6アルケニル基」とは、2~6個の炭素原子を含むアルケニル基を指す。アルケニル基は、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、2-メチルブテニル基、シクロペンテニル基及びシクロヘキセニル基を含むが、これらに限定されない。アルケニル基における直鎖、分岐又は環状の部分は、二重結合を含む可能性があり、かつ置換アルケニル基が指定される場合、それが置換される可能性があることを示す。
【0037】
「アルキニル基」とは、単独で使用されるか又は他の用語と組み合わせて使用されることに関わらず、2~10個の炭素原子を含み、かつ少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖、分岐又は環状の炭化水素基を指す。いくつかの実施例では、最大3つの炭素-炭素三重結合が存在する可能性がある。したがって、「C2-6アルキニル基」とは、2~6個の炭素原子を含むアルキニル基を指す。アルキニル基は、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、3-メチルブチニル基などを含むが、これらに限定されない。アルキニル基における直鎖、分岐又は環状の部分は、三重結合を含む可能性があり、置換アルキニル基が指定される場合、それが置換される可能性があることを示す。
【0038】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を指す。
【0039】
単独で使用されるか又は他の用語と組み合わせて使用される「アルコキシ基」とは、酸素原子と単結合で結合している、以上のように定義されたアルキル基を指す。アルコキシ基と分子は、酸素原子で結合している。アルコキシ基は、-O-アルキル基として表されてもよい。「C1-10アルコキシ基」とは、1~10個の炭素原子を含むアルコキシ基を指し、直鎖又は分岐構造であってもよい。アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などを含むが、これらに限定されない。
【0040】
単独で使用されるか又は他の用語と組み合わせて使用される「シクロアルコキシ基」とは、酸素原子と単結合で結合している、以上のように定義されたシクロアルキル基を指す。シクロアルコキシ基と分子は、酸素原子で結合している。シクロアルコキシ基は、-O-シクロアルキル基として表されてもよい。「C3-10シクロアルコキシ基」とは、3~10個の炭素原子を含むシクロアルコキシ基を指す。シクロアルコキシ基は、アリール基又はヘテロアリール基と縮合してもよい。いくつかの実施形態では、シクロアルコキシ基は、ベンゼン縮合したものである。シクロアルコキシ基は、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などを含むが、これらに限定されない。
【0041】
単独で使用されるか又は他の用語と組み合わせて使用される「アルキルチオ基」とは、硫黄原子と単結合で結合している、以上のように定義されたアルキル基を指す。アルキルチオ基と分子は、硫黄原子で結合している。アルキルチオ基は、-S-アルキル基として表されてもよい。「C1-10アルキルチオ基」は、1~10個の炭素原子を含むアルキルチオ基を指し、直鎖又は分岐構造であってもよい。アルキルチオ基は、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、ヘキシルチオ基などを含むが、これらに限定されない。
【0042】
単独で使用されるか又は他の用語と組み合わせて使用される「シクロアルキルチオ基」とは、硫黄原子と単結合で結合している、以上のように定義されたシクロアルキル基を指す。シクロアルキルチオ基と分子は、硫黄原子で結合している。シクロアルキルチオ基は、-S-シクロアルキル基として表されてもよい。「C3-10シクロアルキルチオ基」とは、3~10個の炭素原子を含むシクロアルキルチオ基を指す。シクロアルキルチオ基は、アリール基又はヘテロアリール基と縮合してもよい。いくつかの実施形態では、シクロアルキルチオ基は、ベンゼン縮合したものである。シクロアルキルチオ基は、シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロヘキシルチオ基などを含むが、これらに限定されない。
【0043】
単独で使用されるか又は他の用語と組み合わせて使用される「アルキルアミノ基」とは、窒素原子と単結合で結合している、以上のように定義されたアルキル基を指す。アルキルアミノ基と別の分子は、窒素原子で結合している。アルキルアミノ基は、-NH(アルキル)として表されてもよい。「C1-10アルキルアミノ基」とは、1~10個の炭素原子を含むアルキルアミノ基を指し、直鎖又は分岐構造であってもよい。アルキルアミノ基は、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ヘキシルアミノ基などを含むが、これらに限定されない。
【0044】
単独で使用されるか又は他の用語と組み合わせて使用される「シクロアルキルアミノ基」とは、窒素原子と単結合で結合している、以上のように定義されたシクロアルキル基を指す。シクロアルキルアミノ基と他の分子は、窒素原子で結合している。シクロアルキルアミノ基は、-NH(シクロアルキル)として表されてもよい。「C3-10シクロアルキルアミノ基」とは、3~10個の炭素原子を含むシクロアルキルアミノ基を指す。シクロアルキルアミノ基は、アリール基又はヘテロアリール基と縮合してもよい。いくつかの実施形態では、シクロアルキルアミノ基は、ベンゼン縮合したものである。シクロアルキルアミノ基は、シクロプロピルアミノ基、シクロブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などを含むが、これらに限定されない。
【0045】
単独で使用されるか又は他の用語と組み合わせて使用される「ジ(アルキル)アミノ基」とは、窒素原子と単結合で結合している、以上のように定義された2つのアルキル基を指す。ジ(アルキル)アミノ基と分子は、窒素原子で結合している。ジ(アルキル)アミノ基は、-N(アルキル)として表されてもよい。「ジ(C1-10アルキル)アミノ基」とは、2つのアルキル基部分がそれぞれ1~10個の炭素原子を含むジ(C1-10アルキル)アミノ基を指し、直鎖又は分岐構造であってもよい。
【0046】
単独で使用されるか又は他の用語と組み合わせて使用される「アリール基」とは、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個の炭素原子を有する単価、単環式、二環式又は三環式の芳香族炭化水素環系(「C6-14アリール基」)を指し、特に、6個の炭素原子を有する環(「Cアリール基」)、例えば、フェニル基、又は10個の炭素原子を有する環(「C10アリール基」)、例えば、ナフチル基、又は14個の炭素原子を有する環(「C14アリール基」)、例えば、アントリル基を指す。アリール基は、シクロアルキル基又は複素環基と縮合してもよい。
【0047】
置換ベンゼン誘導体で形成され、かつ環原子に自由原子価電子を有する二価の基は、置換フェニレン基と命名される。名称が「-基」で終わる一価の多環式炭化水素基から誘導される二価の基は、自由原子価電子を有する炭素原子から1個の水素原子を除去して得られ、その名称が一価の基の名称に「-イデン(-idene)」を加えることにより得られるものであり、例えば、2つの結合部位を有するナフチル基は、ナフチリデン基と呼ばれる。
【0048】
単独で使用されるか又は他の用語と組み合わせて使用される「ヘテロアリール基」とは、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個の環原子を有し(「5~14員ヘテロアリール基」)、特に5個、6個、9個又は10個の原子を有し、かつN、O及びSから選択された、同じであっても異なってもよい少なくとも1個のヘテロ原子を含む単価、単環式、二環式又は三環式の芳香環系を指す。ヘテロアリール基は、シクロアルキル基又は複素環基と縮合してもよい。いくつかの実施例では、「ヘテロアリール基」とは、
N、O及びSから選択されたヘテロ原子を1~4個、いくつかの実施例では1~3個含み、残りがいずれも炭素原子である5~8員芳香族単環と、
N、O及びSから選択されたヘテロ原子を1~6個、いくつかの実施例では1~4個、又はいくつかの実施例では1~3個含み、残りがいずれも炭素原子であり、かつ少なくとも1個のヘテロ原子が芳香環に存在する8~12員二環と、
N、O及びSから選択されたヘテロ原子を1~8個、いくつかの実施例では1~6個、いくつかの実施例では1~4個、又はいくつかの実施例では1~3個含み、残りがいずれも炭素原子である11~14員三環とを指す。
【0049】
ヘテロアリール基におけるS及びOの総数が1より大きい場合、これらのヘテロ原子は、互いに隣接しない。いくつかの実施例では、ヘテロアリール基におけるS及びOの総数は、2以下である。いくつかの実施例では、ヘテロアリール基におけるS及びOの総数は、1以下である。
【0050】
ヘテロアリール基の例は、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-ピラジニル基、3-ピラジニル基、2-ピリミジニル基、4-ピリミジニル基、5-ピリミジニル基、6-ピリミジニル基、1-ピラゾリル基、3-ピラゾリル基、4-ピラゾリル基、5-ピラゾリル基、1-イミダゾリル基、2-イミダゾリル基、4-イミダゾリル基、5-イミダゾリル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、チエニル基、フラニル基などを含むが、これらに限定されない。
【0051】
さらに、ヘテロアリール基は、インドリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、キノキサリル基、キノリル基、イソキノリル基を含むが、これらに限定されない。「ヘテロアリール基」は、任意の窒素含有ヘテロアリール基のN-オキシド誘導体を含む。
【0052】
命名が「-基」で終わる一価のヘテロアリール基から誘導された二価の基は、自由原子価電子を有する炭素原子から1個の水素原子を除去して得られ、一価の基の名称に「-イデン(-idene)」を加えることにより命名され、例えば、2つの結合部位を有するピリジル基は、ピリジリデン基と呼ばれる。
【0053】
「複素環」(及びこれにより変換された「複素環の」又は「複素環基」)とは、飽和又は不飽和、単環式又は多環式(例えば、二環式又は三環式)の環状脂肪族炭化水素系を広く指し、一般的に3~16個の環原子を有し、酸素、硫黄、窒素及びリンから独立して選択された少なくとも1個(例えば、2個、3個若しくは4個)のヘテロ原子(好ましくは、酸素、硫黄、窒素)を含む。多環式系において2つ以上の環は、縮合、架橋又はスピロ環により結合されてもよく、複素環は、アリール基又はヘテロアリール基と縮合してもよい。いくつかの実施例では、複素環は、ベンゼン縮合したものである。複素環は、1つ以上のオキソ又はイミノ部分で置換された環系をさらに含む。いくつかの実施例では、複素環におけるC、N、S及びP原子は、オキソで任意に置換される。いくつかの実施例では、複素環におけるC、S及びP原子は、イミノ基で任意に置換され、かつイミノ基は、非置換であっても置換されてもよい。安定した構造を形成することを前提として、複素環における炭素原子又はヘテロ原子は、いずれも結合部位であってもよい。複素環に置換基がある場合、該置換基は、安定した化学構造を形成することを前提として、複素環におけるいかなるヘテロ原子又は炭素原子に結合してもよい。
【0054】
好適な複素環は、例えば1-ピロリジニル基、2-ピロリジニル基、3-ピロリジニル基、1-イミダゾリジニル基、2-イミダゾリジニル基、3-イミダゾリジニル基、4-イミダゾリジニル基、5-イミダゾリジニル基、1-ピラゾリジニル基、2-ピラゾリジニル基、3-ピラゾリジニル基、4-ピラゾリジニル基、5-ピラゾリジニル基、1-ピペリジニル基、2-ピペリジニル基、3-ピペリジニル基、4-ピペリジニル基、1-ピペラジニル基、2-ピペラジニル基、3-ピペラジニル基、1-ヘキサヒドロピリダジニル基、3-ヘキサヒドロピリダジニル基、4-ヘキサヒドロピリダジニル基及びテトラヒドロピリジニル基を含む。また、モルホリニル基、例えば、1-モルホリニル基、2-モルホリニル基、3-モルホリニル基及び4-モルホリニル基を含む。1つ以上のオキソ部分を有する複素環の実例は、ピペリジニル-N-オキシド、モルホリニル-N-オキシド、1-オキソ-チオモルホリニル基及び1,1-ジオキソ-チオモルホリニル基を含むが、これらに限定されない。二環式複素環は、
【化2】
を含むが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書に使用される「アリールアルキル基」とは、以上のように定義されたアリール基で置換された、以上のように定義されたアルキル基を指す。例示的なアラルキル基は、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基などを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例では、アラルキル基は、7~20個又は7~11個の炭素原子を含む。「アリールC1-4アルキル基」を使用する場合、「C1-4」とは、アリール基部分ではなく、アルキル基部分の炭素原子の数を指す。
【0056】
本明細書に使用される「複素環-アルキル基」とは、以上のように定義された複素環基で置換された、以上のように定義されたアルキル基を指す。「複素環C1-4アルキル基」を使用する場合、「C1-4」とは、複素環基部分ではなく、アルキル基部分の炭素原子の数を指す。
【0057】
本明細書に使用される「シクロアルキル-アルキル基」とは、以上のように定義されたシクロアルキル基で置換された、以上のように定義されたアルキル基を指す。「C3-10シクロアルキル-C1-4アルキル基」を使用する場合、「C3-10」とは、アルキル基部分ではなく、シクロアルキル基部分の炭素原子の数を指す。「C1-4」とは、シクロアルキル基部分ではなく、アルキル基部分の炭素原子の数を指す。
【0058】
本明細書に使用される「ヘテロアリールアルキル基」とは、以上のように定義されたヘテロアリール基で置換された、以上のように定義されたアルキル基を指す。「ヘテロアリールC1-4アルキル基」を使用する場合、「C1-4」とは、ヘテロアリール基部分ではなく、アルキル基部分の炭素原子の数を指す。
【0059】
幾とおりもの語義を避けるため、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、複素環アルキル基、アリール基及び/又はそのヘテロアリール基の置換が言及される場合、その意味は、これらの基を単独で置換することを指すか又はこれらの基を組み合わせて置換することである。すなわち、RがアリールC1-4アルキル基であり、かつ非置換であってもよく、少なくとも1個の置換基で置換され、例えばRから独立して選択された1個、2個、3個若しくは4個の置換基で置換されてもよい場合、アリール基部分は、非置換であってもよく、少なくとも1個の置換基で置換され、例えばRから独立して選択された1個、2個、3個若しくは4個の置換基で置換されてもよく、アルキル基部分も非置換であってもよく、少なくとも1個の置換基で置換され、例えばRから独立して選択された1個、2個、3個若しくは4個の置換基で置換されてもよいことが理解されるべきである。
【0060】
「薬学的に許容される塩」とは、無機塩基又は有機塩基及び無機酸又は有機酸を含む、薬学的に許容される非毒性の塩基又は酸から製造された塩を指す。無機塩基の塩は、例えば、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、二価マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛の塩から選択されてもよい。さらに、薬学的に許容される無機塩基の塩は、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムの塩から選択されてもよい。固体形態の塩は、1つ以上の結晶形態又は結晶多形体で存在し得、そして、水和物の形態のような溶媒和物で存在し得る。薬学的に許容される非毒性の有機塩基の塩は、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンの塩、置換アミン(天然に存在する置換アミンを含む)、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N′-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノ-ル、2-ジメチルアミノエタノ-ル、エタノ-ルアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンから選択されてもよい。
【0061】
本特許出願に指す化合物が塩基である場合、その塩は、少なくとも1種の薬学的に許容される非毒性の酸を用いて製造される必要があり、これらの酸は、無機酸及び有機酸から選択される。例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファ-スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、及びp-トルエンスルホン酸から選択される。いくつかの実施例では、これらの酸は、例えば、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸、酒石酸から選択されてもよい。
【0062】
化合物又はその薬学的に許容される塩「の投与」又は「を投与する」とは、治療を必要とする個体に本発明における化合物又はその薬学的に許容される塩を提供することを指す。
【0063】
「有効量」とは、研究者、獣医師、臨床医又は他の臨床者が観察できる組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的な反応を誘発できる化合物又はその薬学的に許容される塩の投与量を指す。
【0064】
「組成物」は、特定の量の特定成分を含有する製品、及びこれらの特定の量の特定成分を任意に直接的又は間接的に組み合わせて製造された製品を含む。医薬組成物は、有効成分と担体としての不活性成分とを含有する製品、及び該成分のうちの任意の2つ以上の組み合わせ、複合化若しくは凝集から、又は該成分のうちの1つ以上の解離から、又は該成分のうちの1つ以上の他の種類の反応若しくは相互作用から直接的又は間接的に得られた製品を含有する。
【0065】
「薬学的に許容される」とは、製剤の他の成分と適合し、かつ使用者に許容不可能なほど有害ではないことを指す。
【0066】
「個体」とは、疾患、病態などに罹患している個体を指し、哺乳動物及び非哺乳動物を含む。哺乳動物は、ヒトと、チンパンジ-、他の類人猿及びサルなどの非ヒト霊長類動物と、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの飼養動物と、ウサギ、イヌ、ネコなどの家畜と、ラット、マウス、モルモットなどのげっ歯類を含む実験動物との哺乳類の任意のメンバ-を含むが、これらに限定されない。非哺乳類動物は、鳥類、魚類などを含むが、これらに限定されない。本発明の一実施例では、哺乳動物は、ヒトである。
【0067】
「治療」は、疾患又は症状を緩和、軽減又は改善し、他の症状を予防し、症状の潜在的な代謝因子を改善又は予防し、疾患又は症状を阻害し、例えば、疾患又は症状の進行を阻止し、疾患又は症状を軽減し、疾患又は症状の緩和を促進し、或いは、疾患又は症状の徴候を停止させることを含み、外延的に予防することを含む。「治療」は、治療上の利益及び/又は予防上の利益の実現をさらに含む。治療上の利益とは、治療される病態の根絶又は改善を指す。また、治療上の利益は、潜在的な疾患に関連する1つ以上の生理学的徴候を根絶又は改善することにより達成され、患者が依然として潜在的な疾患に罹患しているにも関わらず、患者に疾患の改善が観察される。予防上の利益とは、組成物が、特定の疾患を発症するリスクがある患者、又は疾患の診断がなされていない場合でも、この疾患の生理学的病態の1つ以上が報告される患者に投与され得ることを指す。
【0068】
「保護基」(Pg)とは、化合物における他の官能基と反応して特定の官能基をブロック又は保護するための置換基を指す。例えば、「アミノ保護基」とは、化合物におけるアミノ官能基をブロック又は保護する、アミノ基に結合した置換基を指す。好適なアミノ保護基は、アセチル基、トリフルオロアセチル基、t-ブトキシカルボニル基(BOC)、ベンジルオキシカルボニル基(CBZ)及び9-フルオレニルメトキシカルボニル保護基(Fmoc)を含む。同様に、「ヒドロキシル保護基」とは、ヒドロキシ基の機能を効果的にブロック又は保護できるヒドロキシ基の置換基を指す。適切な保護基は、アセチル基及びシリル基を含むが、これらに限定されない。「カルボキシル保護基」とは、カルボキシル基の機能を効果的にブロック又は保護できるカルボキシル基の置換基を指す。一般的なカルボキシル保護基は、-CHCHSOPh、シアノエチル基、2-(トリメチルシリル)エチル基、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル基、2-(p-トルエンスルホニル)エチル基、2-(p-ニトロフェニルスルフィニル)エチル基、2-(ジフェニルホスフィノ)-エチル基、ニトロエチル基などを含む。保護基の一般的な記述及び使用説明について、文献T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley&Sons、New York、1991を参照されたい。
【0069】
「NH保護基」は、トリクロロエトキシカルボニル基、トリブロモエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、p-ニトロベンジルホルミル基、o-ブロモベンジルオキシカルボニル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、フェニルアセチル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、t-ペンチルオキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、p-メトキシベンジルオキシカルボニル基、3,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、4-(フェニルアゾ)ベンジルオキシカルボニル基、2-フルフリルオキシカルボニル基、ジフェニルメトキシカルボニル基、1,1-ジメチルプロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、フタロイル基、スクシニル基、アラニル基、ロイシル基、1-アダマンチルオキシカルボニル基、8-キノリルオキシカルボニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、2-ニトロフェニルチオ基、メタンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、N,N-ジメチルアミノメチレン基、ベンジリデン基、2-ヒドロキシベンジリデン基、2-ヒドロキシ-5-クロロベンジリデン基、2-ヒドロキシ-l-ナフチルメチレン基、3-ヒドロキシ-4-ピリジルメチレン基、シクロヘキシリデン基、2-エトキシカルボニルシクロヘキシリデン基、2-エトキシカルボニルシクロペンチリデン基、2-アセチルシクロヘキシリデン基、3,3-ジメチル-5-オキシシクロヘキシリデン基、ジフェニルホスホリル基、ジベンジルホスホリル基、5-メチル-2-オキシ-2H-1,3-ジオキソ-ル-4-イル-メチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基及びトリフェニルシリル基を含むが、これらに限定されない。
【0070】
「C(O)OH」保護基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、p-ニトロベンジル基、p-メトキシベンジル基、ビス(p-メトキシフェニル)メチル基、アセチルメチル基、フェナシル基、p-ニトロフェナシル基、p-ブロモフェナシル基、p-メタンスルホンフェナシル基、2-テトラヒドロピラニル基、2-テトラヒドロフラニル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-(トリメチルシリル)エチル基、アセトキシメチル基、プロピオニルオキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、フタルイミドメチル基、スクシンイミドメチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、メチルチオメチル基、2-メチルチオエチル基、フェニルチオメチル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、3-メチル-3-ブテニル基、アリール基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基及びt-ブチルメトキシフェニルシリル基を含むが、これらに限定されない。
【0071】
「OH又はSH」保護基は、ベンジルオキシカルボニル基、4-ニトロベンジルオキシカルボニル基、4-ブロモベンジルオキシカルボニル基、4-メトキシベンジルオキシカルボニル基、3,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、1,1-ジメチルプロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、ジフェニルメトキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、2,2,2-トリブロモエトキシカルボニル基、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基、2-(フェニルスルホニル)エトキシカルボニル基、2-(トリフェニルホスホニオ)エトキシカルボニル基、2-フルフリルオキシカルボニル基、1-アダマンチルオキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、4-エトキシ-1-ナフチルオキシカルボニル基、8-キノリルオキシカルボニル基、アセチル基、ホルミル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、メトキシアセチル基、フェノキシアセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、メチル基、t-ブチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-トリメチルシリルエチル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、3-メチル-3-ブテニル基、アリール基、ベンジル(フェニルメチル)、p-メトキシベンジル基、3,4-ジメトキシベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、ベンジルオキシメチル基、2-メトキシエトキシメチル基、2,2,2-トリクロロ-エトキシメチル基、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル基、1-エトキシエチル基、メタンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基及びt-ブチルメトキシフェニルシリル基を含むが、これらに限定されない。
【0072】
本発明の化合物に幾何異性体が存在し得る。本発明の化合物にE又はZの配置の炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素二重結合が存在し得、ここで「E」は、カ-ン・インゴルド・プレロ-グ(Cahn-Ingold-Prelog)順位則に従って、より高い順位の置換基が炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素二重結合の反対側にあることを表し、「Z」は、より高い順位の置換基が炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素二重結合の同じ側にあることを表す。本発明の化合物は、「E」と「Z」の異性体の混合物として存在する場合もある。シクロアルキル基又は複素環基の周りの置換基は、シス又はトランスの配置であると指定されてもよい。また、本発明は、アダマンタン環系の周りの置換基配置から生じる種々の異性体及びそれらの混合物を含む。アダマンタン環系における単一の環の周りの2個の置換基は、Z又はEの対向配置であると指定されてもよい。例えば、C.D.Jones、M.Kaselj、R.N.Salvatore、W.J.le Noble J.Org.Chem.1998、63、2758-2760を参照する。
【0073】
本発明の化合物は、R配置又はS配置の不斉置換炭素原子を含む場合があり、「R」及び「S」の定義については、IUPAC 1974 Recommendations for Section E、Fundamental Stereochemistry、Pure Appl.Chem.(1976)45、13~10を参照する。不斉置換炭素原子を含む化合物は、R配置とS配置の不斉置換炭素原子が等量であれば、ラセミ体である。そのうちの1種の配置の量が別の配置の量よりも多い場合、キラル炭素原子の配置は、量が多い配置で表され、好ましくは鏡像異性体過剰率が約85~90%であり、より好ましくは約95~99%であり、さらに好ましくは約99%以上である。したがって、本発明は、ラセミ混合物、相対的及び絶対的な立体異性体、並びに相対的及び絶対的な立体異性体の混合物を含有する。
同位体濃縮化合物又は同位体標識化合物
【0074】
本発明の化合物は、自然界で最も一般的な原子質量及び質量数とは異なる原子質量及び質量数を有する1個以上の原子を含有する同位体標識又は同位体濃縮形態で存在することができる。同位体は、放射性又は非放射性の同位体であってもよい。水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素、ヨウ素などの原子の同位体は、H、H、13C、14C、15N、18O、32P、35S、18F、36Cl及び125Iを含むが、これらに限定されない。これら及び/又は他の原子の他の同位体を含む化合物は、本発明の範囲内である。
【0075】
別の実施例では、同位体標識化合物は、重水素(H)、トリチウム(H)又は14C同位体を含む。本発明の同位体標識化合物は、当業者によく知られている方法で得ることができる。これらの同位体標識化合物は、本発明の実施例及び反応図を参照して、非標識試薬を同位体標識試薬に置換することにより得ることができる。いくつかの例では、化合物を同位体標識試薬で処理し、原子をその同位体原子に置換し、例えば、DSO/DOなどの重水素化酸の作用により水素を重水素に置換することができる。
【0076】
本発明の同位体標識化合物は、BTK阻害剤の薬効結合アッセイにおける標準とすることができる。同位体を含む化合物は、薬学的研究に使用されて、非同位体標識親化合物の作用機序及び代謝経路を評価することにより、化合物のインビボ代謝運命を研究することができる(Blakeら、J.Pharm.Sci.64、3、367~391(1975))。このような代謝研究は、安全で効果的な治療薬物の設計に対して非常に重要であり、患者が使用した、インビボ活性化合物又は親化合物の代謝産物が毒性又は発癌性を有することを判断することができる(Fosterら、Advances in Drug Research Vol.14、pp.2~36、Academic press、London、1985、 Katoら、J.Labelled Compounds.Radiopharmaceuticals、36(10)、927~932(1995)、 Kushnerら、Can.J.Physiol.Pharmacology、77、79~88(1999))。
【0077】
また、「ヘビ-ドラッグ(heavy drugs)」と呼ばれる重水素化薬物などの、非放射性活性同位体を含む薬物は、BTK活性に関連する疾患及び病態を治療するために用いることができる。化合物中のある同位体の比率がその天然の存在度を超えることは、濃縮と呼ばれる。濃縮量は、例えば、約0.5mol%、1mol%、2mol%、3mol%、4mol%、5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、10mol%、12mol%、16mol%、21mol%、25mol%、29mol%、33mol%、37mol%、42mol%、46mol%、50mol%、54mol%、58mol%、63mol%、67mol%、71mol%、75mol%、79mol%、84mol%、88mol%、92mol%、96mol%~約100mol%を含むが、これらに限定されない。
【0078】
薬物が安定した同位体で標識されると、pKa、液体溶解性などのその物理化学的性質を変更することができる。同位体置換は、リガンド-受容体相互作用に関連する領域に影響を与えると、これらの作用及び変化は、薬物分子の薬力学的応答に影響を与える可能性がある。安定した同位体標識分子のある物理的性質は、非標識分子の物理的性質とは異なる一方、化学的及び生物学的性質は、同じであるが、重同位体の質量が増加するため、重同位体及び別の原子を含有する任意の化学結合が軽同位体とその原子との化学結合よりも強いという1つの重要な例外がある。それに応じて、代謝又は酵素変換部位に同位体が存在すると、該反応を緩めるため、非同位体標識化合物と比較して、その薬物動態プロファイル又は薬効を変化させる可能性がある。
【0079】
実施形態(1)では、本発明は、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化3】
(I)
式中、
は、C1-10アルキル基及びC3-10シクロアルキル基から選択され、アルキル基及びシクロアルキル基は、それぞれ、非置換であるか又はRから独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換され、
各Rは、ハロゲン及びメチル基から独立して選択され、
各Rは、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルキル-C1-4アルキル基、複素環基、複素環-C1-4アルキル基、アリール基、アリールC1-4アルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールC1-4アルキル基、ハロゲン、CN、-NO、-NR、-OR、-SR、-S(O)、-S(O)OR、-OS(O)、-S(O)NR、-P(O)R、-P(O)(OR)(OR)、-(CRNR、-(CROR、-(CRSR、-(CRS(O)、-(CRP(O)R、-(CRP(O)(OR)(OR)、-(CRCO、-(CRC(O)NR、-(CRNRC(O)R、-(CRNRCO、-(CROC(O)NR、-(CRNRC(O)NR、-(CRNRSONR、-NR(CRNR、-O(CRNR、-S(CRNR、-S(O)(CRNR、-C(O)R、-C(O)(CROR、-C(O)(CRNR、-C(O)(CRSR、-C(O)(CRS(O)、-CO、-CO(CRC(O)NR、-OC(O)R、-C(O)NR、-NRC(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)、-CR(=N-OR)、-C(=NR)R、-C(=NR)NR、-NRC(=NR)NR、-CHF、-CF、-OCHF及び-OCFから独立して選択され、各アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基及びヘテロアリール基は、非置換であるか又はヒドロキシ基、CN、アミノ基、ハロゲン、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換され、
各R及びRは、水素、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルキル-C1-4アルキル基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基、ジ(C1-10アルキル)アミノ基、複素環基、複素環-C1-4アルキル基、アリール基、アリールC1-4アルキル基、ヘテロアリール基及びヘテロアリールC1-4アルキル基から独立して選択され、各アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アルキルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、複素環基、アリール基及びヘテロアリール基は、非置換であるか又はハロゲン、CN、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、ヒドロキシ基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、アミノ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換され、
或いは、R及びRは、それらが結合している単一又は複数の原子と一緒に、酸素、硫黄、窒素及びリンから独立して選択された0個、1個若しくは2個の追加のヘテロ原子を含む4~12員複素環を構成し、該環は、ハロゲン、CN、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、ヒドロキシ基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、アミノ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された1個若しくは2個の置換基で任意に置換されてもよく、
各R及びRは、水素、ハロゲン、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルキル-C1-4アルキル基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基、ジ(C1-10アルキル)アミノ基、複素環基、複素環-C1-4アルキル基、アリール基、アリールC1-4アルキル基、ヘテロアリール基及びヘテロアリールC1-4アルキル基から独立して選択され、各アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アルキルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、複素環基、アリール基及びヘテロアリール基は、非置換であるか又はハロゲン、CN、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、ヒドロキシ基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、アミノ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換され、
或いは、R及びRは、それらが結合している単一又は複数の炭素原子と一緒に、酸素、硫黄及び窒素から独立して選択された0個、1個若しくは2個のヘテロ原子を含む3~12員環を構成し、該環は、ハロゲン、CN、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、ヒドロキシ基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、C1-10アルキルチオ基、C3-10シクロアルキルチオ基、アミノ基、C1-10アルキルアミノ基、C3-10シクロアルキルアミノ基及びジ(C1-10アルキル)アミノ基から独立して選択された1個若しくは2個の置換基で任意に置換されてもよく、
各Rは、水素、CN、NO、C1-10アルキル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルキル-C1-4アルキル基、C1-10アルコキシ基、C3-10シクロアルコキシ基、-C(O)C1-4アルキル基、-C(O)C3-10シクロアルキル基、-C(O)OC1-4アルキル基、-C(O)OC3-10シクロアルキル基、-C(O)N(C1-4アルキル)、-C(O)N(C3-10シクロアルキル)、-S(O)1-4アルキル基、-S(O)3-10シクロアルキル基、-S(O)N(C1-4アルキル)及び-S(O)N(C3-10シクロアルキル)から独立して選択され、
mは、0、1、2、3、4及び5から選択され、
各rは、0、1及び2から独立して選択され、
各tは、0、1、2、3及び4から独立して選択される。
【0080】
別の実施形態(2)では、本発明に係る実施形態1の化合物又はその薬学的に許容される塩において、Rは、-CD、メチル基、エチル基、イソプロピル基及びシクロプロピル基から選択され、メチル基、エチル基、イソプロピル基及びシクロプロピル基は、それぞれ、非置換であるか又はRから独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換される。別の実施形態では、Rは、メチル基、エチル基、イソプロピル基及びシクロプロピル基から選択され、メチル基、エチル基、イソプロピル基及びシクロプロピル基は、それぞれ、非置換であるか又はRから独立して選択された少なくとも1個の置換基で置換される。
【0081】
別の実施形態(3)では、本発明に係る実施形態(2)の化合物又はその薬学的に許容される塩において、Rは、-CD、メチル基、エチル基、イソプロピル基及びシクロプロピル基から選択される。別の実施形態では、Rは、メチル基、エチル基、イソプロピル基及びシクロプロピル基から選択される。
【0082】
別の実施形態(4)では、本発明に係る実施形態(2)の化合物又はその薬学的に許容される塩において、各Rは、ハロゲン、CN、-NO、-NR、-OR、-SR、-S(O)、-S(O)OR、-OS(O)、-S(O)NR、-(CRNR、-(CROR、-(CRSR、-(CRS(O)、-(CRCO、-C(O)R、-C(O)(CRSR、-CO、-OC(O)R、-C(O)NR、-NRC(O)R、-OC(O)NR、-NRC(O)OR、-NRS(O)、-CHF、-CF、-OCHF及び-OCFから独立して選択される。
【0083】
別の実施形態(5)では、本発明に係る実施形態(4)の化合物又はその薬学的に許容される塩において、各Rは、ハロゲン、CN、-NO、-NH、-OH、CHF、-CF、-OCHF及び-OCFから独立して選択される。
【0084】
別の実施形態(6)では、本発明に係る実施形態(1)~(5)のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩において、mは、0、1、2、3及び4から選択される。
【0085】
別の実施形態(7)では、本発明に係る実施形態(6)の化合物又はその薬学的に許容される塩において、mは、0、1及び2から選択される。
【0086】
別の実施形態(8)では、本発明に係る実施形態(1)~(7)のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩において、各Rは、F、Cl、Br及びメチル基から独立して選択される。
【0087】
別の実施形態(9)では、本発明に係る実施形態(8)の化合物又はその薬学的に許容される塩において、各Rは、F、Cl及びメチル基から独立して選択される。
【0088】
別の実施形態(10)では、本発明に係る実施形態(9)の化合物又はその薬学的に許容される塩において、Rは、Fである。
【0089】
別の実施形態(11)では、本発明に係る実施形態(1)~(9)のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩において、式(I)の
【化4】
部分の構造は、フェニル基、
【化5】
から選択される。別の実施形態では、式(I)の
【化6】
部分の構造は、フェニル基、
【化7】
から選択される。
【0090】
別の実施形態(12)では、本発明に係る実施形態(11)の化合物又はその薬学的に許容される塩において、式(I)の
【化8】
部分の構造は、フェニル基、
【化9】
から選択される。
【0091】
別の実施形態(13)では、本発明に係る化合物は、
【化10】
及びその薬学的に許容される塩から選択される。
【0092】
別の実施形態(14)では、本発明は、実施形態(1)~(13)のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物を提供する。
【0093】
別の実施形態(15)では、本発明は、BTK阻害に応答する病状を治療、改善又は予防する方法であって、それを必要とする個体に有効量の実施形態(1)~(13)のいずれか一項に記載の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又はその少なくとも1種の医薬組成物を、任意に第2の治療剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。
【0094】
別の実施形態(16)では、本発明は、細胞増殖性障害疾患を治療する薬物の製造における、実施形態(1)~(13)のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0095】
別の実施形態(17)では、本発明に係る実施形態(16)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用において、細胞増殖性障害疾患は、B細胞増殖性障害疾患である。
【0096】
別の実施形態(18)では、本発明に係る実施形態(17)の化合物又はその薬学的に許容される塩において、B細胞増殖性障害疾患は、B細胞悪性腫瘍、B細胞慢性リンパ性リンパ腫、慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、多発性硬化症、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、活性化B細胞様びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バ-キットリンパ腫/白血病、リンパ腫様肉芽腫症及び形質細胞腫を含むが、これらに限定されない。
【0097】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示された化合物又はその薬学的に許容される塩を含有するキットと、成分が投与される疾患状態、成分の保存情報、投与情報、及び成分の投与方法に関する指示からなる群から選択される1つ以上の情報を含む説明書とを提供する。特別な変形例では、キットは、複数回投与形態の化合物を含有する。
【0098】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示された化合物又はその薬学的に許容される塩を含有する製品と、包装材料とを提供する。1つの変形例では、包装材料は、容器を含む。特別な変形例では、上記容器は、化合物が投与される疾患状態、保存情報、投与情報及び/又は化合物の投与方法に関する指示からなる群から選択される1つ以上の内容を示すラベルを含む。別の変形例では、製品は、複数回投与形態の化合物を含む。
【0099】
別の態様では、本発明は、個体に本明細書に開示された化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む治療方法を提供する。
【0100】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示された化合物又はその薬学的に許容される塩をBTKと接触させることにより、BTKを阻害する方法を提供する。
【0101】
別の態様では、本発明は、インビボでBTKの活性を阻害するために、本明細書に開示された化合物又はその薬学的に許容される塩を個体内に存在させることを含む、BTKを阻害する方法を提供する。
【0102】
別の態様では、本発明は、BTKを阻害する方法であって、インビボで第2の化合物に変換される第1の化合物を個体に投与することを含み、第2の化合物がインビボでBTKの活性を阻害し、かつ第2の化合物が以上の実施形態のいずれか一項に記載の化合物及び変異体である方法を提供する。
【0103】
別の態様では、本発明は、BTKの活性が疾患状態の病理及び/又は症状の一因である該疾患状態を治療する方法であって、該疾患状態に対して治療有効量の本明細書に開示される化合物又はその薬学的に許容される塩を個体内に存在させることを含む方法を提供する。
【0104】
別の態様では、本発明は、BTKの活性が疾患状態の病理及び/又は症状の一因である該疾患状態を治療する方法であって、インビボで第2の化合物に変換される第1の化合物を個体に投与することを含み、第2の化合物がインビボでBTKの活性を阻害する方法を提供する。なお、本発明の上記化合物は、変換前の化合物であっても変換後の化合物であってもよい。
【0105】
上記各方法の変形例では、疾患状態は、癌性増殖性疾患(例えば、脳、肺、扁平上皮細胞、膀胱、胃、膵臓、乳腺、頭、頸部、腎臓部(renal)、腎臓、卵巣、前立腺、結腸直腸、表皮、食道、精巣、婦人科又は甲状腺の癌)、非癌性増殖性疾患(例えば、皮膚の良性過形成(例えば、乾癬)、再狭窄及び良性前立腺肥大(BPH))、膵炎、腎臓疾患、痛み、胚盤胞着床防止、血管形成又は血管新生に関連する疾患(例えば、腫瘍血管新生、急性及び慢性の炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、アテロ-ム性動脈硬化症、炎症性腸疾患)、皮膚病(例えば、乾癬、湿疹及び強皮症)、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性症、血管腫、神経膠腫、黒色腫、カポジ肉腫、卵巣癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸癌及び類表皮癌)、喘息、好中球走化性(例えば、心筋梗塞及び脳卒中の再灌流傷害及び炎症性関節炎)、敗血症性ショック、免疫抑制に価値があるT細胞媒介性疾患(例えば、臓器移植拒絶、移植片対宿主病、エリテマト-デス、多発性硬化症及び関節リウマチの予防)、アテロ-ム性動脈硬化症、成長因子カクテルに対するケラチノサイト応答の阻害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び他の疾患から選択される。
【0106】
別の態様では、本発明は、BTK遺伝子の変異が、例えば、黒色腫、肺癌、結腸癌、及び他のタイプの腫瘍を含む疾患状態の病理及び/又は症状の一因である該疾患状態を治療する方法を提供する。
【0107】
別の態様では、本発明は、以上の実施形態のいずれか一項に記載の化合物及び変異体の、薬物としての使用に関する。別の態様では、本発明は、BTK阻害薬物の製造における、以上の実施形態のいずれか一項に記載の化合物及び変異体の使用に関する。
【0108】
別の態様では、本発明は、BTKの活性が病理及び/又は症状の一因である疾患状態を治療する薬物の製造における、以上の実施形態のいずれか一項に記載の化合物及び変異体の使用に関する。
投与及び医薬組成物
【0109】
一般的には、本発明の上記化合物は、単独で、又は1種以上の治療剤と組み合わせて、本分野において既知である一般的に許容される方式のいずれかを介して、治療有効量で投与される。治療有効量は、被験者の疾患の重篤性、年齢及び相対的な健康状況、使用される化合物の薬効、並びに本分野に既知の他の要因に依存して広く変化し得る。例えば、腫瘍性疾患及び免疫系疾患の治療に対して、必要な投与量は、投与モ-ド、治療される具体的な病態及び望まれる効果に応じて異なる。
【0110】
一般的に、1日投与量が体重あたり0.001~100mg/kg、具体的には、体重あたり約0.03~2.5mg/kgである場合に、満足な結果を得ることができる。ヒトなどの大型哺乳動物の1日投与量は、例えば、1日4回以下の分割投与量で、又は徐放形態で便利に投与される、約0.5mg~約2000mgであり、より具体的には、0.5mg~1000mgであってもよい。経口投与に好適な単位投与量形態は、約1~50mgの活性成分を含有する。
【0111】
本発明の上記化合物は、任意の一般的な経路により、例えば、錠剤又はカプセルの形態で経腸的に、例えば、経口的に、例えば、注射液又は懸濁液の形態で非経口的に、或いは、例えば、ロ-ション、ジェル、軟膏、若しくはクリ-ムの形態で、又は経鼻剤若しくは坐剤の形態で局所的に医薬組成物の形態で投与されてもよい。
【0112】
遊離塩基又は薬学的に許容される塩の形態の本発明の上記化合物と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は希釈剤とを含有する医薬組成物は、混合、造粒、コ-ティング、溶解又は凍結乾燥のプロセスにより一般的な方式で製造されてもよい。例えば、医薬組成物は、本発明の上記化合物と少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は希釈剤との組み合わせを含有し、薬学的に許容される担体又は希釈剤と混合することにより、一般的な方式で製造されてもよい。経口投与用の単位投与量形態は、例えば、約0.1mg~約500mgの活性物質を含有する。
【0113】
一実施例では、医薬組成物は、懸濁液又は分散液、例えば、等張水溶液を含む、活性成分の溶液である。活性成分を単独で又はマンニト-ルなどの担体と共に含む凍結乾燥組成物の場合、使用前に分散液又は懸濁液を製造することができる。医薬組成物は、滅菌されてもよく、及び/又は、防腐剤、安定剤、湿潤剤若しくは乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節する塩及び/若しくは緩衝剤などの補助剤を含んでもよい。好適な防腐剤は、アスコルビン酸などの酸化防止剤と、ソルビン酸又は安息香酸などの殺微生物剤とを含むが、これらに限定されない。溶液又は懸濁液は、カルボキシメチルセルロ-スナトリウム、カルボキシメチルセルロ-ス、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ゼラチンを含むが、これらに限定されない増粘剤、又はツイ-ン80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエ-ト)などの可溶化剤をさらに含んでもよい。
【0114】
油中の懸濁液は、油性成分として、一般的に注射目的で使用される植物油、合成油又は半合成油を含んでもよい。実施例では、酸成分として、8~22個の炭素原子、又はいくつかの実施形態では、12~22個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸を含有する液体脂肪酸エステルを含む。好適な液体脂肪酸エステルは、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸又は対応する不飽和酸、例えば、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、プランジン酸及びリノ-ル酸を含むが、これらに限定されず、必要に応じて、酸化防止剤、例えば、ビタミンE、3-カロチン又は3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシトルエンを含んでもよい。これらの脂肪酸エステルのアルコ-ル成分は、6個の炭素原子を有してもよく、かつ一価又は多価、例えば、一価、二価又は三価のアルコ-ルであってもよい。好適なアルコ-ル成分は、メタノ-ル、エタノ-ル、プロパノ-ル、ブタノ-ル若しくはペンタノ-ル、又はこれらの異性体、エチレングリコ-ル及びグリセロ-ルを含むが、これらに限定されない。
【0115】
他の好適な脂肪酸エステルは、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、LABRAFIL(登録商標)M2375、(ポリオキシエチレングリセロ-ル)、LABRAFIL(登録商標)M1944 CS(杏仁油の加アルコ-ル分解により製造され、グリセリド及びポリエチレングリコ-ルエステルを含む不飽和ポリエチレングリコ-ル化グリセリド)、LABRASOL(商標)(TCMの加アルコ-ル分解により製造され、グリセリド及びポリエチレングリコ-ルエステルを含有する飽和ポリエチレングリコ-ル化グリセリド、いずれもフランスGaKefosse会社から入手可能)、及び/又はMIGLYOL(登録商標)812(ドイツHuls AG会社の、鎖長がC8~C12の飽和脂肪酸トリグリセリド)、並びに綿実油、杏仁油、オリ-ブ油、ヒマシ油、ゴマ油、大豆油又は落花生油などの植物油を含むが、これらに限定されない。
【0116】
経口投与用の医薬組成物は、例えば、活性成分を1種以上の固体担体と混合し、必要に応じて、得られた混合物をペレット化し、かつさらなる賦形剤を添加することにより上記混合物又は粒子を加工して、錠剤又は錠剤コアを形成することにより、得ることができる。
【0117】
好適な担体は、充填剤(例えば、糖類(例えば、ラクト-ス、ショ糖、マンニト-ル又はソルビト-ル)、セルロ-ス製剤及び/又はリン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウム又はリン酸水素カルシウム))、及び結合剤(例えば、デンプン(例えば、トウモロコシ、小麦、米又はジャガイモのデンプン)、メチルセルロ-ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロ-ス、カルボキシメチルセルロ-スナトリウム及び/又はポリビニルピロリドン)、及び/又は、必要に応じて、崩壊剤(例えば、上記デンプン、カルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸又はその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム))を含むが、これらに限定されない。さらなる賦形剤は、流動調整剤及び潤滑剤、例えば、ケイ酸、タルク、ステアリン酸若しくはその塩(例えば、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウム)、及び/又はポリエチレングリコ-ル、或いはこれらの誘導体を含む。
【0118】
錠剤コアには、特に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコ-ル及び/又は二酸化チタンを含んでもよい濃縮糖溶液、又は好適な有機溶媒若しくは溶媒混合物に溶解したコ-ティング溶液、又は腸溶性コ-ティングに好適なセルロ-ス製剤の溶液、例えば、酢酸フタル酸セルロ-ス若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロ-スフタレ-トの溶液を使用することにより、好適な、任意で腸溶性のコ-ティングを提供することができる。例えば、識別のために、又は異なる用量の活性成分を示すために、錠剤又は錠剤コ-ティングに染料又は顔料を添加してもよい。
【0119】
また、経口投与用の医薬組成物は、ゼラチンを含む硬カプセル、又はゼラチンと可塑剤(例えば、グリセロ-ル又はソルビト-ル)とを含む軟密封カプセルを含んでもよい。硬カプセルは、例えば、充填剤(例えば、トウモロコシデンプン)、結合剤及び/又は流動促進剤(例えば、タルク又はステアリン酸マグネシウム)、及び任意に安定剤と混合した活性成分を粒子の形態で含んでもよい。軟カプセルにおいて、好適な液体賦形剤、例えば、脂肪油、パラフィン油、又は液体ポリエチレングリコ-ル、エチレングリコ-ル若しくはプロピレングリコ-ルの脂肪酸エステルに活性成分を溶解又は懸濁させてもよく、これに、安定剤及び洗浄剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステル型の洗浄剤を添加してもよい。
【0120】
直腸内投与に適した医薬組成物は、例えば、活性成分と坐剤基剤との組み合わせを含有する坐剤である。好適な坐剤基剤は、例えば、天然若しくは合成のトリグリセリド、パラフィン系炭化水素、ポリエチレングリコ-ル、又は高級アルカノ-ルである。
【0121】
非経口投与に適した医薬組成物は、水溶性形態の活性成分、例えば、水溶性塩の水溶液、又は増粘物質、例えば、カルボキシメチルセルロ-スナトリウム、ソルビト-ル及び/若しくはデキストランと、必要に応じて、安定剤とを含有する水性注射懸濁液を含んでもよい。活性成分は、任意に賦形剤と共に、凍結乾燥物の形態であってもよく、好適な溶媒を添加することにより非経口投与前に溶液にすることができる。使用される解決手段は、例えば、非経口投与の場合、注入溶液として用いられてもよい。注射製剤の製造は、一般的に、滅菌条件下で実施され、例えばアンプル又はバイアルに充填されて、容器の密封が行われる。
【0122】
本発明は、a)遊離形態又は薬学的に許容される塩の形態の本発明に開示された化合物と、b)少なくとも1つの助剤とを含有する医薬組成物、例えば、キットをさらに提供する。該キットは、その使用についての説明書を含有してもよい。
併用療法
【0123】
本特許出願の上記化合物又は薬学的に許容される塩は、単独で又は他の治療剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0124】
例えば、補助剤(adjuvant)を使用して本発明における化合物の治療効果を向上させることができ(例えば、補助薬物を単独で使用すると、治療上の利益が極めて小さいが、別の薬物と組み合わせて使用すると、個体に対する治療上の利益を向上させることができる)、或いは、例えば、本発明の化合物を、同様に治療効果を有する別の治療剤と組み合わせて使用すると、個体に対する治療効果を向上させることができる。例えば、痛風を治療する場合、本発明の化合物を使用するときに、痛風を治療する別の薬物と組み合わせて使用すると、臨床的利益を向上させる可能性がある。或いは、例えば、本発明の化合物を使用するときの副作用が吐き気であれば、制吐剤と組み合わせて使用することができる。或いは、併用療法は、理学療法、心理療法、放射線療法、疾患領域に対する圧迫療法、休憩、食事改善などを含むが、これらに限定されない。どのような疾患、病態又は病状に関係なく、2種の療法により、個体の治療上の利益が相加効果又は相乗効果を有する。
【0125】
本特許出願の化合物が他の治療剤と組み合わせて使用される場合、本特許出願の化合物の医薬組成物は、他の薬物と同じ投与経路で投与されてもよく、物理的及び化学的性質が異なるため、異なる投与経路で投与されてもよい。例えば、本特許出願の化合物は、経口投与されると、良好な血中レベルを生成し維持することができ、別の治療剤は、静脈内投与する必要がある可能性がある。したがって、本特許出願の化合物は、他の治療剤と同時に、逐次又は別々に投与されてもよい。
実施例
【0126】
式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の合成方法は、様々であり、本実例で列挙されたのは代表的な方法である。しかしながら、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、他の合成スキ-ムにより合成することもできることに留意すべきである。
【0127】
式(I)で表されるある化合物において、原子と他の原子との間の結合により、特別な立体異性体(例えば、キラル中心)が存在する可能性がある。式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の合成により、異なる異性体(鏡像異性体、ジアステレオマ-)の混合物が生じる可能性がある。ある特定の立体配置を特に説明しない限り、列挙された化合物は、いずれも様々な可能な立体異性体を含む。
【0128】
式(I)で表される化合物は、例えば、本発明の化合物の遊離塩基形態を薬学的に許容される無機酸又は有機酸と反応させることにより、薬学的に許容される酸付加塩として製造することができる。或いは、式(I)で表される化合物を遊離酸形態で薬学的に許容される無機塩基又は有機塩基と反応させることにより、薬学的に許容される塩基付加塩として製造する。式(I)で表される化合物の薬学的に許容される塩の製造に適した無機及び有機の酸及び塩基について、本願の定義部分に説明する。また、式(I)で表される化合物の塩形態は、出発原料又は中間体の塩を使用して製造することもできる。
【0129】
式(I)で表される化合物の遊離酸又は遊離塩基は、対応する塩基付加塩又は酸付加塩により製造することができる。酸付加塩形態の式(I)で表される化合物は、例えば、好適な塩基(例えば、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウムなど)で処理されることにより、対応する遊離塩基に変換することができる。塩基付加塩形態の式(I)で表される化合物は、例えば、好適な酸(例えば、塩酸など)で処理されることにより、対応する遊離酸に変換することができる。
【0130】
式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩のN-酸化物は、本分野に既知の方法で製造することができる。例えば、N-酸化物は、不活性有機溶媒(例えば、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素)中、0~80℃の条件下で、非酸化形態の式(I)で表される化合物を酸化剤(例えば、トリフルオロ過酢酸、ペルマレイン酸(permaleic acid)、過安息香酸、過酢酸及びメタクロロ過安息香酸など)と反応させることにより得ることができる。或いは、式(I)で表される化合物のN-酸化物は、出発原料のN-酸化物により製造することもできる。
【0131】
非酸化形態の式(I)で表される化合物は、対応する不活性有機溶媒(例えば、アセトニトリル、エタノ-ル、ジオキサン水溶液など)中、0~80℃の条件下で、そのN-酸化物を還元剤(例えば、硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭化リンなど)と反応させることにより製造することができる。
【0132】
式(I)で表される化合物の保護誘導体は、当業者によく知られている方法に従って製造することができる。保護基の添加及び除去に関する技術の詳細な説明については、T.W.Greene、Protecting Groups in Organic Synthesis、3rd edition、John Wiley&Sons、Inc.1999を参照する。
【0133】
これらの方法、経路及び実施例に使用された記号及び常識は、いずれも現行の科学文献、例えば、米国化学会誌又は生物化学雑誌で用いられたものと一致する。特に説明しない限り、標準的な単一文字又は三文字の略語は、一般的に、L型アミノ酸残基を指す。特に説明しない限り、全ての使用された出発原料は、いずれも市場のサプライヤ-から購入され、使用時にさらに精製されない。例えば、実例及び明細書全体を通して以下の略語が用いられる:g(グラム)、mg(ミリグラム)、L(リットル)、mL(ミリリットル)、μL(マイクロリットル)、psi(ポンド/平方インチ)、M(モル)、mM(ミリモル)、i.v.(静脈内注射)、Hz(ヘルツ)、MHz(メガヘルツ)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、RT(環境温度)、min(分間)、h(時間)、mp(融点)、TLC(薄層クロマトグラフィ-)、Rt(保持時間)、RP(逆相)、MeOH(メタノ-ル)、i-PrOH(イソプロパノ-ル)、TEA(トリエチルアミン)、TFA(トリフルオロ酢酸)、TFAA(トリフルオロ酢酸無水物)、THF(テトラヒドロフラン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、EtOAc(酢酸エチル)、DME(1,2-ジメトキシエタン)、DCM(ジクロロメタン)、DCE(ジクロロエタン)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、DMPU(N,N′-ジメチルプロピレン尿素)、CDI(1,1-カルボニルジイミダゾ-ル)、IBCF(クロロギ酸イソブチル)、HOAc(酢酸)、HOSu(N-ヒドロキシスクシンイミド)、HOBT(1-ヒドロキシベンゾトリアゾ-ル)、EtO(ジエチルエ-テル)、EDCI(1-(3-ジメチルアミノプロピル)3-エチルカルボジイミド塩酸塩)、BOC(t-ブトキシカルボニル基)、FMOC(9-フルオレニルメトキシカルボニル基)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、CBZ(ベンジルオキシカルボニル基)、Ac(アセチル基)、atm(大気圧)、TMSE(2-(トリメチルシリル)エチル基)、TMS(トリメチルシリル基)、TIPS(トリイソプロピルシリル基)、TBS(t-ブチルジメチルシリル基)、DMAP(4-ジメチルアミノピリジン)、Me(メチル)、OMe(メトキシ)、Et(エチル)、tBu(t-ブチル)、HPLC(高速液体クロマトグラフィ-)、BOP(ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド)、TBAF(テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド)、mCPBA(メタクロロ過安息香酸)。
【0134】
エ-テル又はEtOとは、いずれもジエチルエ-テルを指し、塩水とは、飽和NaCl水溶液を指す。特に説明しない限り、全ての温度は、℃温度(摂氏度)を指し、全ての反応は、室温で不活性雰囲気で実施された。
【0135】
H NMRスペクトルは、Varian Mercury Plus 400核磁気共鳴分光計で記録された。化学シフトは、ppmで表される。結合定数は、いずれもヘルツ(Hz)を単位とする。分裂パタ-ンは、見かけの多重度を記述するものであり、そして、s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(カルテット)、m(マルチプレット)、及びbr(ブロ-ド)と表記する。
【0136】
低解像度質量スペクトル(MS)及び化合物の純度デ-タは、エレクトロスプレ-イオン化検出器(ESI)、紫外線検出器(220及び254nm)及び蒸発光散乱検出器(ELSD)を備えるShimadzu LC/MSシングル四重極システムで取得された。薄層クロマトグラフィ-は、Superchem groupの0.25mmのシリカゲルプレ-ト(60F-254)で実施し、5%のリンモリブデン酸エタノ-ル溶液、ニンヒドリン又はp-メトキシベンズアルデヒド溶液を使用し、かつ紫外線ランプで観察した。フラッシュカラムクロマトグラフィ-は、シリカゲル(200~300メッシュ、青島海洋化学工業有限公司)で実施した。
合成スキ-ム
【0137】
式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、様々な方法で合成することができ、いくつかの例示的な方法を以下の実施例に提供する。他の合成方法は、当業者が本発明に開示されている情報に基づいて容易に提供することができる。
【0138】
以下に記載の各反応において、活性基が他の望ましくない反応に関与することを回避するように、これらの活性基を保護する必要がある可能性があり、これらの活性基は、ヒドロキシ基、アミノ基、イミン基、チオ基、カルボキシル基などであり、最終生成物に含まれる。一般的な保護基について、T.W.Greene and P.G.M.Wuts in 「Protective Groups in Organic Chemistry」 John Wiley and Sons、1991を参照することができる。
【0139】
本発明の全ての化合物の合成スキ-ムを、以下のスキ-ム及び実施例により説明する。使用される出発原料は、市販の商品からのもの又は従来のプロセス方法若しくは本明細書に例示した方法に従って製造できるものである。
【0140】
以下の合成スキ-ムに列挙された中間体は、文献に基づいて得られたもの又は従来の類似の合成方法に基づいて合成されたものである。
【0141】
式Iで表される化合物の製造方法の説明として、式Iで表される化合物の合成方法は、スキ-ム1に示すとおりである。アザインド-ル化合物II-A(商業的に提供される)におけるNHを保護し、さらにN-フルオロベンゼンスルホンイミドでフッ素化してフッ素化合物II-Cを得た。II-Cを用いて合成スキ-ム2に示すように指向性オルトメタル化(DoM)方法によりビフルオリドII-Dを製造することができる。II-Dにおいて保護基が脱離してNBSと臭素化反応を行ってII-Dを臭化物IIに変換し、次に中間体IIIと結合し、n-ブチルリチウム(n-BuLi)の条件でIVを製造した。塩基(例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA))の作用で、アミンVとアリールフッ化物IVが反応することにより式Iの化合物を得た。
【化11】
合成スキ-ム1
【0142】
中間体Vの製造のさらなる説明として、Vの1つの合成経路は、スキ-ム2に示すとおりである。商業的に提供されるV-Aを出発物質とする。メチルスルホニル化及びアミノ保護によりスルホン酸エステルV-Bを製造することができる。スルホン酸エステルV-Bを試薬、例えばNaNと反応させ、その後PPhで還元して第一級アミンV-Dを製造することができる。第一級アミンV-Dのスルホニル化及びBoc基の脱離により式Vの化合物を得た。
【化12】
合成スキ-ム2
【0143】
いくつかの状況で、反応を促進するか又は不必要な反応生成物の生成を回避するために、上記合成スキ-ムの順序は、状況に応じて調整することができる。本発明をより十分に理解するために、以下の実施例を提供する。これらの実施例は、例に過ぎず、本発明を限定するものと理解すべきではない。
中間体A
【0144】
(3R,6S)-6-(メチルスルホニルアミドメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アンモニウムクロリド(A)
【化13】
【0145】
(3R,6S)-6-(((t-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミン(A-1)
【0146】
(3R,6S)-6-(((t-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミン(A-1)は、特許WO2018/69863に記載の方法に従って製造されたものである。
【0147】
t-ブチル((3R,6S)-6-((t-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-2)
【0148】
氷浴下で(3R,6S)-6-(((t-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アミン(A-1)(5.00g、20.4mmol)のDCM(150mL)溶液にTEA(3.10g、30.6mmol)を添加して(Boc)O(5.10g、23.5mmol)を滴下し、得られた溶液をRTで18h撹拌した。次に該混合物を2%のクエン酸(2×)、HO及び飽和食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させて濃縮して、次のステップに直接的に用いることができるt-ブチル((3R,6S)-6-((t-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-2)の粗生成物を得た。MS-ESI(m/z):346[M+1]
【0149】
t-ブチル((3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-3)
【0150】
0℃でt-ブチル((3R,6S)-6-((t-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-2)(7.00g、20.4mmol)のTHF(20mL)溶液にTBAF(THFにおいて1.0Mである)(61.0mL、61.2mmol)溶液を滴下し、RTで2.5h撹拌した。濃縮してEtOAcに溶解させた後、順次HO、5%NaOH、5%クエン酸及び食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させて濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、10~50%EtOAcのノルマルヘキサン溶液で溶出して表題化合物のt-ブチル((3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-3)を得た。MS-ESI(m/z):232[M+1]
【0151】
((2S,5R)-5-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)メチルメタンスルホネ-ト(A-4)
【0152】
氷浴下でt-ブチル((3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-3)(15.0g、64.9mmol)のDCM(150mL)溶液にTEA(9.90g、97.4mmol)を添加してMsCl(8.93g、77.9mmol)を滴下し、得られた溶液を0℃で1h撹拌した。混合物を水で希釈して5%のクエン酸及び飽和食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させて濃縮して、次のステップに直接的に用いることができる((2S,5R)-5-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)メチルメタンスルホネ-ト(A-4)の粗生成物を得た。MS-ESI(m/z):310[M+1]
【0153】
t-ブチル((3R,6S)-6-(アジドメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-5)
【0154】
((2S,5R)-5-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)メチルメタンスルホネ-ト(A-4)(19.1g、61.9mmol)のDMSO(150mL)溶液にNaN(28.2g、433mmol)を添加して100℃で6h撹拌した。混合物をRTに冷却し、EtOAcで希釈してHO及び飽和食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させて濃縮して、次のステップに直接的に用いることができるt-ブチル((3R,6S)-6-(アジドメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-5)の粗生成物を得た。MS-ESI(m/z):257[M+1]
【0155】
t-ブチル((3R,6S)-6-(アミノメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-6)
【0156】
t-ブチル((3R,6S)-6-(アジドメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-5)(15.7g、61.3mmol)のTHF(150mL)溶液にPPh(48.2g、184mmol)及びHO(11.0g、613mmol)を添加し、混合物を45℃で6h撹拌した。混合物をRTに冷却した後に濃縮し、残留物にHCl(0.5M、150mL)を添加してEtOAc(2×)で抽出し、水相をNaCOでpHほぼ8~9に調節した後にDCM/MeOH(10:1、3×)で抽出し、NaSOで乾燥させて濃縮して、次のステップに直接的に用いることができるt-ブチル((3R,6S)-6-(アミノメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-6)の粗生成物を得た。MS-ESI(m/z):231[M+1]
【0157】
t-ブチル((3R,6S)-6-(メタンスルホンアミドメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-7)
【0158】
氷浴下でt-ブチル((3R,6S)-6-(アミノメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-6)(4.50g、19.6mmol)のDCM(100mL)溶液にTEA(2.97g、29.6mmol)を添加してMsCl(2.69g、23.5mmol)を滴下し、得られた溶液を0℃で0.5h撹拌した。混合物を水で希釈して5%クエン酸及び飽和食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させて濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、50~70%EtOAcのノルマルヘキサン溶液で溶出して、表題化合物のt-ブチル((3R,6S)-6-(メタンスルホンアミドメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-7)を得た。MS-ESI(m/z):309[M+1]
【0159】
(3R,6S)-6-(メチルスルホニルアミドメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アンモニウムクロリド(A)
【0160】
RTでt-ブチル((3R,6S)-6-(メタンスルホンアミドメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)ウレタン(A-7)(4.00g、12.9mmol)及びHCl(ジオキサンにおいて4.0Mである)(25mL)の化合物をRTでDCM(15mL)中で2h撹拌した。混合物を濃縮して、次のステップに直接的に用いることができる(3R,6S)-6-(メチルスルホニルアミドメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アンモニウムクロリド(A)の粗生成物を得た。MS-ESI(m/z):209[M+1]
中間体B
【0161】
4,5-ジフルオロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(B)
【化14】
【0162】
4-ブロモ-1-(トリイソプロピルシリル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(B-1)
【0163】
氷浴下で4-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(20.0g、102mmol)のTHF(400mL)溶液にNaH(60%、鉱物油に分散する)(4.87g、122mmol)を添加して0~5℃で0.5h撹拌した。その後にTIPSCl(23.1g、120mmol)を滴下し、RTで0.5h撹拌した。HOで該混合物をクエンチし、EtOAc(2×)で抽出し、HO及び飽和食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させて濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、ノルマルヘキサンで溶出して、表題化合物の4-ブロモ-1-(トリイソプロピルシリル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(B-1)を得た。MS-ESI(m/z):353/355(1:1)[M+1]
【0164】
4-フルオロ-1-(トリイソプロピルシリル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(B-2)
【0165】
-78℃で4-ブロモ-1-(トリイソプロピルシリル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(B-1)(20.0g、56.7mmol)のTHF(300mL)溶液にn-BuLi(ノルマルヘキサンにおいて2.5Mであり、45mL、113mmol)を滴下し、混合物を該温度で0.5h撹拌した。その後にNFSI(21.4g、68.0mmol)のTHF(100mL)溶液を滴下し、-78℃で1h撹拌した。次にsat.NHCl(aq)で混合物をクエンチし、EtOAc(3×)で抽出し、HO及び飽和食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させて濃縮して、次のステップに直接的に用いることができる4-フルオロ-1-(トリイソプロピルシリル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(B-2)の粗生成物を得た。MS-ESI(m/z):293[M+1]
【0166】
4,5-ジフルオロ-1-(トリイソプロピルシリル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(B-3)
【0167】
-78℃で4-フルオロ-1-(トリイソプロピルシリル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(B-2)(27.9g、95.5mmol)のTHF(360mL)溶液にs-BuLi(ノルマルヘキサンにおいて1.3Mであり、162mL、210mmol)を滴下し、混合物を該温度で0.5h撹拌した。その後にNFSI(75.2g、239mmol)のTHF(230mL)溶液を滴下し、-78℃で1h撹拌した。次にsat.NHCl(aq)で混合物をクエンチし、EtOAc(3×)で抽出し、HO及び飽和食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させて濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、ノルマルヘキサンで溶出して、表題化合物の4,5-ジフルオロ-1-(トリイソプロピルシリル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(B-3)を得た。MS-ESI(m/z):311[M+1]
【0168】
4,5-ジフルオロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(B)
【0169】
RTで4,5-ジフルオロ-1-(トリイソプロピルシリル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(B-3)(20.0g、64.5mmol)及びHCl(EtOAcにおいて4.0Mである)(66mL)をDCM(134mL)中で4h撹拌した。混合物を濃縮してsat.NaHCO(aq)でクエンチし、EtOAc(3×)で抽出し、HO及び飽和食塩水で洗浄し、NaSOを乾燥させて濃縮して、次のステップに直接的に用いることができる4,5-ジフルオロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(B)の粗生成物を得た。MS-ESI(m/z):155[M+1]
中間体C
【0170】
メチル4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-2-フルオロ安息香酸エステル(C)
【化15】
【0171】
55℃でメチル2,4-ジフルオロ安息香酸エステル(5.00g、29.1mmol)、2,6-ジフルオロフェノ-ル(4.53g、34.9mmol)及びCsCO(19g、858mmol)の化合物をDMSO(80mL)中で4h撹拌した。混合物をRTに冷却した後、HOで希釈してMTBE(3×)で抽出し、HO及び飽和食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させて濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、0~1%EtOAcのノルマルヘキサン溶液で溶出して、表題化合物のメチル4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-2-フルオロ安息香酸エステル(C)を得た。MS-ESI(m/z):283[M+1]
実施例1
【0172】
N-(((2S,5R)-5-((3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-2-フルオロベンゾイル)-5-フルオロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)メチル)メタンスルホンアミド(1)
【化16】
【0173】
3-ブロモ-4,5-ジフルオロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(1a)
【0174】
室温で4,5-ジフルオロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(B)(4.74g、30.8mmol)のDMF(50mL)溶液にNBS(5.37g、30.2mmol)を添加し、混合物を室温で0.5h撹拌した。混合物を水(150mL)に注ぎ、沈殿した固体を濾過して収集し、水で洗浄し、空気中で乾燥させて3-ブロモ-4,5-ジフルオロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(1a)を得た。MS-ESI(m/z):233/235(1:1)[M+1]
【0175】
(4,5-ジフルオロ-1H-ピロロ[2、3-b]ピリジン-3-イル)(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-2-フルオロフェニル)ケトン(1b)
【0176】
-78℃で3-ブロモ-4,5-ジフルオロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(1a)(500mg、2.15mmol)のTHF(12mL)溶液にn-BuLi(ノルマルヘキサンにおいて2.5Mであり、2.0mL、4.94mmol)を滴下した後に、該温度で20分間撹拌し、その後にメチル4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-2-フルオロ安息香酸エステル(C)(728mg、2.58mmol)のTHF(5mL)溶液を滴下した。該混合物を-78℃で1時間反応させた。該温度で、1NのHCl(15mL)をゆっくりと添加した後にRTに回復させ、水(10mL)を添加して希釈した後に、EtOAc(2×)で抽出し、抽出物を飽和食塩水で洗浄してNaSOで乾燥させた。溶媒残留物を減圧蒸留してシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、20~70%EtOAcのノルマルヘキサン溶液で溶出して、(4,5-ジフルオロ-1H-ピロロ[2、3-b]ピリジン-3-イル)(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-2-フルオロフェニル)ケトン(1b)を得た。MS-ESI(m/z):404[M+1]
【0177】
N-(((2S,5R)-5-((3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-2-フルオロベンゾイル)-5-フルオロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)メチル)メタンスルホンアミド(1)
【0178】
(3R,6S)-6-(メチルスルホニルアミドメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-アンモニウムクロリド(A)(586mg、2.40mmol)及び(4,5-ジフルオロ-1H-ピロロ[2、3-b]ピリジン-3-イル)(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-2-フルオロフェニル)ケトン(1b)(486mg、1.20mmol)のn-BuOH(10mL)溶液にDIPEA(1.55g、12.0mmol)を添加して115℃で16h撹拌した。冷却した後に濃縮し、混合物を水で希釈してEtOAc(2×)で抽出し、抽出物をNaSOで乾燥させて濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、1~3%MeOH in DCMで溶出して、表題化合物のN-(((2S,5R)-5-((3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)-2-フルオロベンゾイル)-5-フルオロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)メチル)メタンスルホンアミド(1)を得た。MS-ESI(m/z):593[M+1]
【0179】
実施例1について記載したのと実質的に同じ方法に従って、購入したもの又は文献における方法に従って製造したものを出発物質として用いることにより、表1に列挙する実施例2~8を製造した。実施例2~8の名称及び構造を表1に示す。
【表1A】
【表1B】
対照化合物1
【0180】
(5-エトキシ-4-(((3R,6S)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)アミノ)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)(2-フルオロ-4-(2-フルオロフェノキシ)フェニル)ケトン(対照化合物1)
【0181】
文献WO2020239124の方法を参照して対照化合物1を製造した。
キナ-ゼアッセイ
【0182】
BTK(C481S)のキナ-ゼ活性反応を、Reaction Biology Corporationで測定した。新鮮な反応緩衝液(20mMのHepes(pH7.5)、10mMのMgCl、1mMのEGTA、0.02%のBrij35、0.02mg/mlのBSA、0.1mMのNaVO、2mMのDTT、1%のDMSO)に、BTK(C481S)反応基質pEY(poly[Glu:Tyr](4:1))(Sigma、Cat.#P7244-250MG)を製造した。BTK(C481S)(SignalChem、Cat.#B10-12CH)を基質溶液に添加し、かつ穏やかに混合した。BTK(C481S)と基質の反応系の最終濃度を、それぞれ6nMと0.2mg/mlにした。試験化合物に対して、10個の濃度/応答モ-ドで、1μMから3倍の勾配希釈を行った。
【0183】
100%DMSOに溶解した試験化合物を超音波流体処理システム(Echo550、ナノリットル範囲)によりキナ-ゼ反応系に添加し、かつ室温で20分間インキュベ-トした。10μMの[33P]-ATP(ATP:Sigma、Cat.#A7699、[33P]-ATP:Hartmann Analytic、Cat.#SCF-301-12)を反応液に添加して反応を開始し、かつ室温で120分間インキュベ-トした。特定の親和性分析法で蛍光強度を検出した。対照群(DMSO)の蛍光強度比と比較することにより、化合物の各濃度での阻害パ-セントを計算し、かつGraphPad Prismソフトウェアにより化合物のIC50値を得た。
【0184】
選択された化合物を、本明細書に記載の生物学的方法に従って測定した。その結果を表2に示す。
【表2】
細胞増殖試験
【0185】
化合物のDOHH2(DSMZ catalog#:ACC47)細胞増殖に対する阻害作用を測定することにより、化合物が細胞におけるBTKの活性を阻害することができるか否かを検出した。試験において、DOHH2細胞増殖を阻害することによりBTKに対する化合物の阻害活性を検出した。細胞をトリプシン処理し、細胞をいずれも5000個/ウェルの細胞濃度で96ウェルプレ-トに接種し、37℃で、5%のCOで4hインキュベ-トした。96ウェル細胞培養プレ-トに、1群に3つの平行ウェルを設けて、異なる濃度(最終濃度10000、3333.3、1111.1、270.4、123.5、41.2、13.7、4.6及び1.5nM)の化合物を添加し、37℃で、5%のCOで120hインキュベ-トした。各ウェルに、100μLの培地あたり20μLのMTSの濃度でMTSを添加した。2hインキュベ-トした後、各ウェルに25μLの10%のSDSを添加して反応を終了させた。マイクロプレ-トリ-ダ-で490nm及び650nmでの吸収を測定した。GraphPad Prism5.0を用いてIC50を計算した。
【0186】
選択された化合物を、本明細書に記載の生物学的方法に従って測定した。その結果を表3に示す。
【表3】
薬物動態実験
【0187】
本試験は、実施例1、実施例2の雄性Sprague-Dawley(SD)ラット(北京維通利華実験動物技術有限会社によって提供される)体内の薬物動態性質を研究することを目的とした。
【0188】
動物に対して、それぞれ5mg/kgの実施例1、実施例2の溶液を単回胃内投与した。投与された製剤の溶媒は、10%のDMSO(Sigma、ロット番号:STBJ 2353):60%PEG 400(Pan Reac AppliChem、ロット番号:1480132):30%の水であり、2mg/mLの濃度で溶液を形成することができる。血漿試料の収集時点は、投与前、投与後の0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、12及び24時間であった。LC/MS/MS方法を適用して血漿試料中の実施例1、実施例2の濃度を測定した。(液相:Waters UPLC、質量スペクトル:API 4000)。この結果を表4に示す。
【表4】
【0189】
本試験は、実施例1の雄性ビ-グル犬(北京知識生物技術有限会社によって提供される)体内の薬物動態性質を研究することを目的とした。
【0190】
動物に対して、それぞれ3mg/kg及び5mg/kgの実施例1、参照化合物1の溶液を単回胃内投与した。投与された製剤の溶媒は、いずれも10%のジメチルスルホキシド(Sigma、ロット番号:STBJ 2353):60%ポリエチレングリコ-ル400(Pan Reac AppliChem、ロット番号:1480132):30%の水であり、5mg/mLの濃度で溶液を形成することができる。血漿試料の収集時点は、投与前、投与後の0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、12及び24時間であった。LC/MS/MS方法を適用して血漿試料における実施例1、参照化合物1の濃度を測定した。(液相:Waters、質量スペクトル:API 4000)。その結果を表5に示す。
【表5】
【国際調査報告】