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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(54)【発明の名称】アゾベンゼン光反応性化合物の製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20231115BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20231115BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20231115BHJP
【FI】
A61K31/167
A61K47/69
A61P27/02
A61K9/08
A61K9/20
A61K41/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549959
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 US2021056323
(87)【国際公開番号】W WO2022093652
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/106,297
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523156121
【氏名又は名称】バイヨン・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】クレイマー,リチャード・エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】カオ,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】グカシアン,ホバネス
(72)【発明者】
【氏名】ストレム,ブライアン・エム.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA36
4C076BB11
4C076CC10
4C076EE39
4C076FF70
4C084AA11
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA33
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA05
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA33
(57)【要約】
アゾベンゼン光スイッチ化合物およびアルキル化シクロデキストリンを含む医薬組成物が本明細書で開示される。そのような組成物は、様々な網膜障害を治療するために眼に投与され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル化シクロデキストリン、および
式(I)の化合物
【化1】
(式中、Rの各々は独立して、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、および-S(O)10から選択され;
xは、0~5の整数であり;
yは、0~4の整数であり;
は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール,置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、および置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
、R、およびRは独立して、水素、C2-8アルキル、置換C2-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、および置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
各Rは独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-S(O)R10、および-S(O)10から選択され;
10およびR11は独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、および置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
12は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、および置換C4-10シクロアルケニルから選択され;ならびに
13は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C-C10アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、-CH-N(CHCH 、および-CH-SO から選択される)
またはそれらの薬学的に許容される塩;
を含み、
式(I)の化合物中のアゾ結合が、シスまたはトランスのいずれであってもよく、ならびに
シクロデキストリンと式(I)の化合物とのモル比が、1:1~500:1である、医薬組成物。
【請求項2】
前記アルキル化シクロデキストリンが、式(II):
【化2】
またはその薬学的に許容される塩(式中、pは4、5、または6であり、Rは、各存在において独立して、-OHおよび置換されていてもよい-O-C-Cアルキルから選択され、ここで、少なくとも1つのRは置換されていてもよい-O-C-Cアルキルである)の構造を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物中のすべてのシクロデキストリン分子の、置換されていてもよい-O-C-Cアルキルによる平均置換度が4~9である、請求項1~2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中のすべてのシクロデキストリン分子の、置換されていてもよい-O-C-Cアルキルによる平均置換度が6.5~7.5である、請求項1~2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つのRが、O-(C-Cアルキレン)-SO -T(式中、Tは、各存在において、薬学的に許容されるカチオンから独立して選択される)である、請求項2~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのRが、ヒドロキシで置換された-O-C-Cアルキルである、請求項2~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
pが5である、請求項2~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記シクロデキストリンが、式(III):
【化3】
(式中、各Rは独立して、-Hまたは-(CH-SO Naであり、組成物中のすべてのシクロデキストリン分子の-(CH-SO Naによる平均置換度は6~7.1である)の構造を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記式(I)の化合物が、
【化4】
(式中、式(I)の化合物中のアゾ結合はシスまたはトランスのいずれかであり得る)、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記式(I)の化合物が、構造:
【化5】
(式中、構造中のアゾ結合はシスまたはトランスのいずれかであり得る)、またはその薬学的に許容される塩を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
シクロデキストリン対式(I)の化合物のモル比が2:1~350:1である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
シクロデキストリン対式(I)の化合物のモル比が3:1~150:1である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記式(I)の化合物の濃度が50μM~200μMである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記式(I)の化合物の濃度が75μM~150μMである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記式(I)の化合物の濃度が約100μMである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物中の式(I)の分子の50%超におけるアゾ結合がトランスである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物中の式(I)の分子の70%超におけるアゾ結合がトランスである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物中の式(I)の分子の90%超におけるアゾ結合がトランスである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物中の式(I)の分子の95%超におけるアゾ結合がトランスである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物中の式(I)の分子の50%超におけるアゾ結合がシスである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物中の式(I)の分子の70%超におけるアゾ結合がシスである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物中の式(I)の分子の90%超におけるアゾ結合がシスである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物中の式(I)の分子の95%超におけるアゾ結合がシスである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物中の式(I)の分子の50%超が前記シクロデキストリンと錯形成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物中の式(I)の分子の70%超が前記シクロデキストリンと錯形成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物中の式(I)の分子の90%超が前記シクロデキストリンと錯形成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物中の式(I)の分子の95%超が前記シクロデキストリンと錯形成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物中の式(I)の分子の50%未満が前記シクロデキストリンと錯形成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物中の式(I)の分子の30%未満が前記シクロデキストリンと錯形成している、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物中の式(I)の分子の10%未満が前記シクロデキストリンと錯形成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
バッファーをさらに含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
水溶液である、請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記溶液が、250mOsm~350mOsmの重量オスモル濃度を有する、請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
再構成に適した固体である、請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
網膜障害を治療する方法であって、網膜障害を有する対象の硝子体内に請求項1~33のいずれか一項に記載の組成物を注射することを含む方法。
【請求項36】
前記網膜障害が、網膜色素変性(retinitis pigmenosa)または加齢黄斑変性である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記注射の前に、前記組成物を光に曝露することを含む、請求項35~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記光が、350nm~500nmの波長を有する光を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が200J/ml~2000J/mlの350nm~500nmの光に曝露される、請求項37~38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、網膜障害を治療するためのアゾベンゼン化合物の医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
特定のフォトクロミックアゾベンゼン化合物はフォトスイッチ挙動を示し、それによって化合物は光異性化を受け、化合物の長さおよび幾何学的形状を変化させる。かかる化合物はタンパク質と相互作用し、それにより、化合物が光異性化を受けるとタンパク質機能を変化させることができる。これらの化合物は、網膜神経節細胞の膜タンパク質および上流ニューロンとの相互作用によって変性網膜に光感受性を付与することが示されている。したがって、かかる化合物は、網膜障害に罹患している患者の視力を改善するために使用することができる。しかしながら、これらの化合物の多くは難溶性であり、投与後に眼内に十分に分散しない。したがって、アゾベンゼン化合物の改善された製剤が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、
アルキル化シクロデキストリン、および
式(I)の化合物
【化1】
(式中、Rの各々は独立して、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、および-S(O)10から選択され;
xは、0~5の整数であり;
yは、0~4の整数であり;
は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール,置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、および置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
、R、およびRは独立して、水素、C2-8アルキル、置換C2-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、および置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
各Rは独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-S(O)R10、および-S(O)10から選択され;
10およびR11は独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、および置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
12は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、および置換C4-10シクロアルケニルから選択され;ならびに
13は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C-C10アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、-CH-N(CHCH 、および-CH-SO から選択される)
またはそれらの薬学的に許容される塩;
を含み、
式(I)の化合物中のアゾ結合は、シスまたはトランスのいずれであってもよく、ならびに
シクロデキストリンと式(I)の化合物とのモル比が、1:1~500:1である、
医薬組成物を含む。
【0004】
いくつかの実施形態は、網膜障害を治療する方法であって、網膜障害を有する対象の硝子体内に組成物を注射することを含む方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1Aは、網膜神経節細胞のスパイクラスターおよび発火頻度プロットを示す。図1Bは、光応答指数のヒストグラムを示す。図1Cは、光応答性網膜神経節細胞の相対変化を比較した正規化ヒストグラムを示す。図1Dは、光応答指数とSBE-CD量との相関を示すグラフである。
図2図2Aは、2光子顕微鏡の概略図である。図2Bは、網膜の光応答性細胞の顕微鏡写真を示す。図2Cは、相関顕微鏡写真のオーバーレイを示す。図2Dは、網膜からの光応答性細胞の割合のプロットである。図2Eは、活動ラスターを示す。
図3図3Aは、網膜からのスパイクラスターおよび頻度プロットを示す。図3Bは、網膜神経節細胞の単離後の網膜からのスパイクラスターおよび頻度プロットを示す。図3Cは、光応答性指数の時間経過を示すプロットである。図3Dは、光増感の時間経過を比較するグラフである。図3Eは、光応答を化合物存在量と相関させる散布図である。
図4図4Aは、網膜の空間的光応答指数プロットおよび写真を示す。図4Bは、網膜の相関顕微鏡写真を示す。図4Cは、距離の関数としての光応答性細胞の割合のプロットである。図4Dは、光応答の一貫性を示す棒グラフを表す。
図5図5Aは、距離の関数としての光応答性細胞の割合のプロットである。図5Bは、光応答の一貫性を示す棒グラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書に記載の様々な実施形態は、シクロデキストリンおよびアゾベンゼン光反応性化合物を含む医薬組成物を含む。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンはアルキル化シクロデキストリンである。これらの組成物は、網膜色素変性(retinitis pigmenosa)または加齢黄斑変性などの網膜障害を含む眼の様々な障害を治療するために、硝子体内注射などによって対象に投与することができる。様々な実施形態では、組成物は、眼内のアゾベンゼン化合物の均一な組織分布および光増感効果の延長を達成する完全に可溶性の水溶液を提供することができる。
【0007】
アゾベンゼン化合物
本明細書に記載の使用に適したアゾベンゼン光反応性化合物としては、国際出願公開第2010/051343号に記載のものを挙げることができ、当該出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、
アゾベンゼン化合物は、
式(I):
【化2】
(式中、Rの各々は独立して、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、および-S(O)10から選択され;
xは、0~5の整数であり;
yは、0~4の整数であり;
は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール,置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、および置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
、R、およびRは独立して、水素、C2-8アルキル、置換C2-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、および置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
各Rは独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-S(O)R10、および-S(O)10から選択され;
10およびR11は独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、および置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
12は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、および置換C4-10シクロアルケニルから選択され;ならびに
13は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C-C10アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、-CH-N(CHCH 、および-CH-SO から選択される)
またはそれらの薬学的に許容される塩;
の構造を有する。
【0008】
いくつかの実施形態では、各Rはそれぞれ、ハロ、C1-10アルキル、-NR1011、および-NR12C(O)R13から独立して選択される。
【0009】
前述の実施形態のいずれかでは、Rは水素またはエチルであり得る。
【0010】
前述の実施形態のいずれかでは、xは0または1であり得る。
【0011】
前述の実施形態のいずれかでは、yは0または1であり得る。
【0012】
前述の実施形態のいずれかでは、R、R、およびRはそれぞれ、エチルであり得る。
【0013】
前述の実施形態のいずれかでは、Rは、ハロまたはC1-10アルキルであり得る。
【0014】
前述の実施形態のいずれかでは、R10およびR11は、水素、C1-10アルキルおよび置換C1-10アルキルから独立して選択することができる。
【0015】
前述の実施形態のいずれかでは、R12は水素であり得る。
【0016】
前述の実施形態のいずれかでは、R13は、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-8アルケニル、およびC6-10アリールから選択することができる。
【0017】
式(I)は、トランス配置のアゾ結合を表しているが、本明細書で特に指示しない限り、式はシスおよびトランス配置の両方を包含することを理解されたい。
【0018】
式(I)のいくつかの特定の実施形態は、以下の構造:
【化3】
またはそれらの薬学的に許容される塩を含み、式(I)の化合物のアゾ結合は、本明細書で特に指示しない限り、シスまたはトランスのいずれかであり得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、化合物1:
【化4】
またはその薬学的に許容される塩の構造を有し、構造中のアゾ結合は、シスまたはトランスのいずれかであり得る。
【0020】
「薬学的に許容される塩」という用語は、化合物の生物学的有効性および特性を保持し、薬学的に使用するのに生物学的または他の点で望ましくないものではない塩を指す。多くの場合、本明細書の化合物は、アミノおよび/またはカルボキシル基またはそれに類似する基の存在によって酸性および/または塩基性の塩を形成することができる。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸を用いて形成され得る。塩を誘導することができる無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。塩を誘導することができる有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基を用いて形成され得る。塩を誘導することができる無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどが挙げられ、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩が特に好ましい。塩を誘導することができる有機塩基としては、例えば、第1級、第2級および第3級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂など、具体的にはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびエタノールアミンが挙げられる。1987年9月11日に公開されたJohnstonらの国際公開第87/05297号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のように、多くのこのような塩が当技術分野で公知である。
【0021】
本明細書で使用される場合、「C-C」または「Ca-b」(「a」および「b」は整数である)は、特定の基の炭素原子の数を指す。すなわち、基は、「a」以上「b」以下の炭素原子を含むことができる。したがって、例えば、「C-Cアルキル」または「C1-4アルキル」基は、1~4個の炭素を有するすべてのアルキル基、すなわち、CH-、CHCH-、CHCHCH-、(CHCH-、CHCHCHCH-、CHCHCH(CH)-および(CHC-を指す。
【0022】
本明細書で使用される「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、元素の周期表の第7欄の放射線安定性原子のいずれか1つ、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味し、フッ素および塩素が好ましい。
【0023】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、完全に飽和した(すなわち、二重結合または三重結合を含まない)直鎖または分枝炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有し得る(本明細書に現れるときはいつでも、「1~20」などの数値範囲は、所与の範囲内の各整数を指し、例えば、「1~20個の炭素原子」は、アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、20個以下の炭素原子からなっていてもよいことを意味するが、本定義は、数値範囲が指定されていない「アルキル」という用語の存在も包含する)。アルキル基は、1~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルキルであってもよい。アルキル基は、1~4個の炭素原子を有する低級アルキルであってもよい。化合物のアルキル基は、「C1-4アルキル」または同様の呼称として指定され得る。単なる例として、「C1-4アルキル」は、アルキル鎖に1~4個の炭素原子があること、すなわち、アルキル鎖がメチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルからなる群から選択されることを示す。典型的なアルキル基には、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第3級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが含まれる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」は、1つ以上の水素をハロゲンで置換した、鎖中に1~12個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基を指す。ハロアルキル基の例としては、限定するものではないが、-CF、-CHF、-CHF、-CHCF、-CHCHF、-CHCHF、-CHCHCl、-CHCFCF、ならびに当業者および本明細書で提供される教示に照らして、前述の例のいずれか1つと等価であると考えられる他の基が挙げられる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」は、式-OR(式中、Rは、上記に定義されるアルキルである)、例えば限定するものではないが、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、およびtert-ブトキシなどを含む「C1-9アルコキシ」を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキル」は、1つ以上のヘテロ原子、すなわち、限定するものではないが、窒素、酸素および硫黄を含む炭素以外の元素を鎖骨格に含む直鎖または分枝炭化水素鎖を指す。ヘテロアルキル基は、1~20個の炭素原子を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない「ヘテロアルキル」という用語の存在も包含する。ヘテロアルキル基は、1~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのヘテロアルキルであってもよい。ヘテロアルキル基は、1~4個の炭素原子を有する低級ヘテロアルキルであってもよい。様々な実施形態では、ヘテロアルキルは、1~4個のヘテロ原子、1~3個のヘテロ原子、1または2個のヘテロ原子、または1個のヘテロ原子を有し得る。化合物のアルキル基は、「C1-4ヘテロアルキル」または同様の呼称として指定され得る。ヘテロアルキル基は、1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。単なる例として、「C1-4ヘテロアルキル」は、ヘテロアルキル鎖に1~4個の炭素原子、さらに鎖の骨格に1つ以上のヘテロ原子が存在することを示す。
【0027】
用語「芳香族」は、共役π電子系を有する環または環系を指し、炭素環式芳香族基(例えば、フェニル)および複素環式芳香族基(例えば、ピリジン)の両方を含む。この用語は、環系全体が芳香族であるという条件で、単環式または縮合環多環式(すなわち、隣接する原子対を共有する環)基を含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、環骨格に炭素のみを含む芳香環または環系(すなわち、2つの隣接する炭素原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。アリールが環系である場合、系中のすべての環は芳香族である。アリール基は、6~18個の炭素原子を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない「アリール」という用語の存在も包含する。いくつかの実施形態では、アリール基は、6~10個の炭素原子を有する。アリール基は、「C6-10アリール」、「CもしくはC10アリール」または同様の呼称として指定され得る。アリール基の例としては、限定するものではないが、フェニル、ナフチル、アズレニルおよびアントラセニルが挙げられる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「アリールオキシ」および「アリールチオ」は、RO-およびRS-(式中、Rは、上記に定義されるアリールである)、例えば、限定するものではないが、フェニルオキシを含む「C6-10アリールオキシ」または「C6-10アリールチオ」などを指す。
【0030】
「アラルキル」または「アリールアルキル」は、アルキレン基を介して置換基として結合したアリール基であり、限定するものではないが、ベンジル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピルおよびナフチルアルキルを含む「C7-14アラルキル」などである。場合によっては、アルキレン基は低級アルキレン基(すなわち、C1-4アルキレン基)である。
【0031】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、1つ以上のヘテロ原子、すなわち、限定するものではないが、窒素、酸素および硫黄を含む炭素以外の元素を環骨格に含む芳香環または環系(すなわち、2つの隣接する原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。ヘテロアリールが環系である場合、系中のすべての環は芳香族である。ヘテロアリール基は、5~18個の環員(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含む環骨格を構成する原子の数)を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない「ヘテロアリール」という用語の存在も包含する。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、5~10個の環員または5~7個の環員を有する。ヘテロアリール基は、「5~7員ヘテロアリール」、「5~10員ヘテロアリール」または同様の呼称として指定され得る。様々な実施形態では、ヘテロアリールは、1~4個のヘテロ原子、1~3個のヘテロ原子、1~2個のヘテロ原子、または1個のヘテロ原子を含有する。例えば、様々な実施形態では、ヘテロアリールは、1~4個の窒素原子、1~3個の窒素原子、1~2個の窒素原子、2個の窒素原子および1個の硫黄または酸素原子、1個の窒素原子および1個の硫黄または酸素原子、または1個の硫黄または酸素原子を含有する。ヘテロアリール環の例としては、限定するものではないが、フリル、チエニル、フタラジニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソインドリルおよびベンゾチエニルが挙げられる。
【0032】
「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルキル」は、アルキレン基を介して置換基として結合したヘテロアリール基である。例としては、限定するものではないが、2-チエニルメチル、3-チエニルメチル、フリルメチル、チエニルエチル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソオキサゾリルアルキルおよびイミダゾリルアルキルが挙げられる。場合によっては、アルキレン基は低級アルキレン基(すなわち、C1-4アルキレン基)である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「カルボシクリル」は、環系骨格に炭素原子のみを含有する非芳香族環式環または環系を意味する。カルボシクリルが環系である場合、2つ以上の環は、縮合、架橋またはスピロ結合様式で一緒に結合され得る。カルボシクリルは、環系中の少なくとも1つの環が芳香族でないことを条件として、任意の飽和度を有していてよい。したがって、カルボシクリルには、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニルが含まれる。カルボシクリル基は、3~20個の炭素原子を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない「カルボシクリル」という用語の存在も包含する。カルボシクリル基は、3~10個の炭素原子を有する中程度の大きさのカルボシクリルであってもよい。カルボシクリル基は、3~6個の炭素原子を有するカルボシクリルであってもよい。カルボシクリル基は、「C3-6カルボシクリル」または同様の呼称として指定され得る。カルボシクリル環の例としては、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、アダマンチルおよびスピロ[4.4]ノナニルが挙げられる。
【0034】
「(カルボシクリル)アルキル」は、アルキレン基を介して置換基として結合したカルボシクリル基であり、例えば、限定するものではないが、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルブチル、シクロブチルエチル、シクロプロピルイソプロピル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘプチルメチルなどを含む「C4-10(カルボシクリル)アルキル」である。場合によっては、アルキレン基は低級アルキレン基である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」は、完全に飽和したカルボシクリル環または環系を意味する。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を有し、環系中の環が芳香族ではないカルボシクリル環または環系を意味する。一例はシクロヘキセニルである。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」は、環骨格に少なくとも1つのヘテロ原子を含有する非芳香族環式環または環系を意味する。ヘテロシクリルは、縮合、架橋またはスピロ結合様式で一緒に結合され得る。ヘテロシクリルは、環系中の少なくとも1つの環が芳香族でないことを条件として、任意の飽和度を有していてよい。(1または複数の)ヘテロ原子は、環系の非芳香族環または芳香族環のいずれかに存在し得る。ヘテロシクリル基は、3~20個の環員(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含む環骨格を構成する原子の数)を有し得るが、本定義は、数値範囲が指定されていない「ヘテロシクリル」という用語の存在も包含する。ヘテロシクリル基は、3~10個の環員を有する中程度の大きさのヘテロシクリルであってもよい。ヘテロシクリル基は、3~6個の環員を有するヘテロシクリルであってもよい。ヘテロシクリル基は、「3~6員ヘテロシクリル」または同様の呼称として指定され得る。
【0038】
様々な実施形態では、ヘテロシクリルは、1~4個のヘテロ原子、1~3個のヘテロ原子、1~2個のヘテロ原子、または1個のヘテロ原子を含有する。例えば、様々な実施形態では、ヘテロシクリルは、1~4個の窒素原子、1~3個の窒素原子、1~2個の窒素原子、2個の窒素原子および1個の硫黄または酸素原子、1個の窒素原子および1個の硫黄または酸素原子、または1個の硫黄または酸素原子を含有する。好ましい6員単環式ヘテロシクリルでは、(1または複数の)ヘテロ原子は、O、NまたはSのうちの1~3つまでから選択され、好ましい5員単環式ヘテロシクリルでは、(1または複数の)ヘテロ原子は、O、NまたはSから選択される1つまたは2つのヘテロ原子から選択される。ヘテロシクリル環の例としては、限定するものではないが、アゼピニル、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジオキソラニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、オキシラニル、オキセパニル、チエパニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ジオキソピペラジニル、ピロリジニル、ピロリドンイル、ピロリジニル、ピロリジオニル、4-ピペリドニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、1,3-ジオキシニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキシニル、1,4-ジオキサニル、1,3-オキサチアニル、1,4-オキサチイニル、1,4-オキサチアニル、2H-1,2-オキサジニル、トリオキサニル、ヘキサヒドロ-1,3,5トリアジニル、1,3-ジオキソリル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオリル、1,3-ジチオラニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、1,3-オキサチオラニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロ-1,4-チアジニル、チアモルホリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンズイミダゾリジニルおよびテトラヒドロキノリンが挙げられる。
【0039】
「(ヘテロシクリル)アルキル」は、アルキレン基を介して置換基として結合したヘテロシクリル基である。例としては、限定するものではないが、イミダゾリニルメチルおよびインドリニルエチルが挙げられる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「アシル」は、-C(=O)R(式中、Rは、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。非限定的な例としては、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ベンゾイルおよびアクリルが挙げられる。
【0041】
「O-カルボキシ」基は、「-OC(=O)R」基(式中、Rは、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。
【0042】
「C-カルボキシ」基は、「-C(=O)OR」基(式中、Rは、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。非限定的な例としては、カルボキシル(すなわち、-C(=O)OH)が挙げられる。
【0043】
「シアノ」基は、「-CN」基を指す。
【0044】
「シアナト」基は、「-OCN」基を指す。
【0045】
「イソシアナト」基は、「-NCO」基を指す。
【0046】
「チオシアナト」基は、「-SCN」基を指す。
【0047】
「イソチオシアナト」基は、「-NCS」基を指す。
【0048】
「スルフィニル」基は、「-S(=O)R」基(式中、Rは、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。
【0049】
「スルホニル」基は、「-SOR」基(式中、Rは、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。
【0050】
「S-スルホンアミド」基は、「-SONR」基(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。
【0051】
「N-スルホンアミド」基は、「-N(R)SO」基(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。
【0052】
「O-カルバミル」基は、「-OC(=O)NR」基(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。
【0053】
「N-カルバミル」基は、「-N(R)OC(=O)R」基(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。
【0054】
「O-チオカルバミル」基は、「-OC(=S)NR」基(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。
【0055】
「N-チオカルバミル」基は、「-N(R)OC(=S)R」基(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。
【0056】
「C-アミド」基は、「-C(=O)NR」基(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。
【0057】
「N-アミド」基は、「-N(R)C(=O)R」基(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。
【0058】
「アミノ」基は、「-NR」基(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、本明細書で定義される場合、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルである)を指す。
【0059】
「アミノアルキル」基は、アルキレン基を介して結合したアミノ基を指す。
【0060】
「アルコキシアルキル」基は、アルキレン基を介して結合したアルコキシ基、例えば「C2-8アルコキシアルキル」などを指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、置換された基は、1つ以上の水素原子が別の原子または基と交換された非置換の親基に由来する。特に他のことが示されない限り、基が「置換されている」と見なされる場合、その基は、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cヘテロアルキル、C-Cカルボシクリル(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、C-C-カルボシクリル-C-C-アルキル(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、5~10員ヘテロシクリル(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、5~10員ヘテロシクリル-C-C-アルキル(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、アリール(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、アリール(C-C)アルキル(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、5~10員ヘテロアリール(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、5~10員ヘテロアリール(C-C)アルキル(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、C-Cアルコキシ、C-Cアルコキシ(C-C)アルキル(すなわち、エーテル)、アリールオキシ、スルフヒドリル(メルカプト)、ハロ(C-C)アルキル(例えば、-CF)、ハロ(C-C)アルコキシ(例えば、-OCF)、C-Cアルキルチオ、アリールチオ、アミノ、第4級アンモニウム、アミノ(C-C)アルキル、ニトロ、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、アシル、シアナト、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、スルフィニル、スルホニル、およびオキソ(=O)から独立して選択される1つ以上の置換基により置換されていることを意味する。ある基が「~で置換されていてもよい」と記載されている場合はいつでも、その基は上記の置換基で置換され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、(1または複数の)置換された基は、C-Cアルキル、アミノ、ヒドロキシ、およびハロゲンから個別に独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0063】
特定のラジカルの命名規則は、文脈に応じて、モノラジカルまたはジラジカルのいずれかを含み得ることを理解されたい。例えば、置換基が分子の残りの部分への2つの結合点を必要とする場合、置換基はジラジカルであると理解される。例えば、2つの結合点を必要とするアルキルとして同定される置換基には、-CH-、-CHCH-、-CHCH(CH)CH-などのジラジカルが含まれる。他のラジカル命名規則は、ラジカルが「アルキレン」または「アルケニレン」などのジラジカルであることを明確に示している。
【0064】
アルキル化シクロデキストリン
本明細書で使用される場合、「アルキル化シクロデキストリン」は、シクロデキストリン上のヒドロキシ置換基上の1つ以上の水素原子が、他の置換基で置換されていてもよいアルキル基で置き換えられているシクロデキストリンである。一実施形態では、本明細書に記載の使用のためのアルキル化シクロデキストリンは、式(II):
【化5】
またはその薬学的に許容される塩(式中、pは4、5、または6であり、Rは、各存在において独立して、-OHおよび置換されていてもよい-O-C-Cアルキルから選択され、ここで、少なくとも1つのRは置換されていてもよいアルキルである)の構造を有する。
【0065】
-O-C-Cアルキルを置換するための任意選択の置換基としては、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cヘテロアルキル、C-Cカルボシクリル(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、C-C-カルボシクリル-C-C-アルキル(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、5~10員ヘテロシクリル(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、5~10員ヘテロシクリル-C-C-アルキル(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、アリール(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、アリール(C-C)アルキル(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、5~10員ヘテロアリール(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、5~10員ヘテロアリール(C-C)アルキル(ハロ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、およびC-Cハロアルコキシで置換されていてもよい)、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、C-Cアルコキシ、C-Cアルコキシ(C-C)アルキル(すなわち、エーテル)、アリールオキシ、スルフヒドリル(メルカプト)、ハロ(C-C)アルキル(例えば、-CF)、ハロ(C-C)アルコキシ(例えば、-OCF)、C-Cアルキルチオ、アリールチオ、アミノ、アミノ(C-C)アルキル、ニトロ、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、アシル、シアナト、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、スルフィニル、スルホニル、およびオキソ(=O)が挙げられる。
【0066】
いくつかの実施形態では、pは5である(すなわち、このシクロデキストリンはβ-シクロデキストリンである)。いくつかの実施形態では、アルキル化シクロデキストリンはスルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリンである。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRは、O-(C-Cアルキレン)-SO -T(式中、Tは、各存在において、薬学的に許容されるカチオンから独立して選択される)である。Tの適切な例としては、とりわけ、H、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K)、アルカリ土類金属(例えば、Ca+2、Mg+2)、アンモニウムイオンおよびアミンカチオン、例えば(C-C)-アルキルアミン、ピペリジン、ピラジン、(C-C)-アルカノールアミン、エチレンジアミンおよび(C-C)-シクロアルカノールアミンのカチオン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態では、アルキル化シクロデキストリンは、式(III):
【化6】
(式中、各Rは独立して、-Hまたは-(CH-SO Naであり、組成物中のすべてのシクロデキストリン分子の-(CH-SO Naによる平均置換度は6~7.1である)の構造を有する。例えば、いくつかの実施形態では、アルキル化シクロデキストリンは、CAPTISOL(登録商標)であり得る。
【0068】
本明細書に記載の組成物では、組成物中のシクロデキストリンの個々の分子は、特定の置換基に対して様々な置換度を有し得る。したがって、特定の置換基に対する平均置換度(ADS)によってそのような組成物を特徴付けることが一般的である。したがって、例えば、6~7.1のADSは、組成物中のシクロデキストリンの各分子が特定の置換基に対して整数の置換度を有するが、組成物中にそのような置換度の分布があり、平均で6~7.1をもたらすことを示す。
【0069】
さらなる例示的なスルホアルキルエーテル(SAE)-CD誘導体には、以下が含まれる:
【表1】
【0070】
(式中、xは平均置換度を表す。)いくつかの実施形態では、アルキル化シクロデキストリンは塩として形成される。
【0071】
スルホアルキルエーテルシクロデキストリンの種々の実施形態としては、エイコサ-O-(メチル)-6G-O-(4-スルホブチル)-β-シクロデキストリン、ヘプタキス-O-(スルホメチル)-テトラデカキス-O-(3-スルホプロピル)-β-シクロデキストリン、ヘプタキス-O-[(1,1-ジメチルエチル)ジメチルシリル]-テトラデカキス-O-(3-スルホプロピル)-β-シクロデキストリン、ヘプタキス-O-(スルホメチル)-テトラデカキス-O-(3-スルホプロピル)-β-シクロデキストリン、およびヘプタキス-O-[(1,1-ジメチルエチル)ジメチルシリル]-テトラデカキス-O-(スルホメチル)-β-シクロデキストリンが挙げられる。スルホアルキル部分を含む他の公知のアルキル化シクロデキストリンとしては、スルホアルキルチオおよびスルホアルキルチオアルキルエーテル誘導体、例えば、オクタキス-(S-スルホプロピル)-オクタチオ-γ-シクロデキストリン、オクタキス-O-[3-[(2-スルホエチル)チオ]プロピル]-β-シクロデキストリン]およびオクタキス-S-(2-スルホエチル)-オクタチオ-γ-シクロデキストリンが挙げられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示のアルキル化シクロデキストリン組成物は、アルキル化シクロデキストリン1つあたり2~9、4~8、4~7.5、4~7、4~6.5、4.5~8、4.5~7.5、4.5~7、5~8、5~7.5、5~7、5.5~8、5.5~7.5、5.5~7、5.5~6.5、6~8、6~7.5、6~7.1、6.5~7.1、6.2~6.9または6.5のADSを有し、残りの置換基が-Hであるスルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリン組成物である。
【0073】
いくつかの実施形態では、式(I)のRは、-OHまたは非置換-O-C-Cアルキルである。このようなアルキル化シクロデキストリンは、アルキルエーテル(AE)-CDとして公知である。例示的なAE-CD誘導体には、以下が含まれる:
【0074】
【表2】
【0075】
(式中、MEはメチルエーテルを表し、EEはエチルエーテルを表し、PEはプロピルエーテルを表し、BEはブチルエーテルを表し、PtEはペンチルエチルを表し、HEはヘキシルエーテルを表し、およびyは平均置換度を表す)。
【0076】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRは、ヒドロキシルで置換された-O-C-Cアルキル(例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)である。さらなる例示的なヒドロキシアルキルエーテル(HAE)-CD誘導体には、以下が含まれる:
【0077】
【表3】
【0078】
(式中、HMEはヒドロキシメチルエーテルを表し、HEEはヒドロキシエチルエーテルを表し、HPEはヒドロキシプロピルエーテルを表し、HBEはヒドロキシブチルエーテルを表し、HPtEはヒドロキシペンチルエーテルを表し、HHEはヒドロキシヘキシルエーテルを表し、およびzは平均置換度を表す)。
【0079】
いくつかの実施形態では、混合置換基(例えば、スルホアルキルエーテルおよびアルキルエーテル置換基の両方を含む(SAE-AE-CD))を有するアルキル化シクロデキストリンが提供される。そのような誘導体の特定の実施形態には、1)SAEのアルキレン部分がAEのアルキル部分と同じ炭素数を有するもの;2)SAEのアルキレン部分が、AEのアルキル部分とは異なる数の炭素を有するもの;3)アルキルおよびアルキレン部分が、直鎖または分枝部分からなる群から独立して選択されるもの;4)アルキルおよびアルキレン部分が、飽和部分または不飽和部分からなる群から独立して選択されるもの;5)SAE基のADSがAE基のADSより大きいかもしくは近似しているもの;または6)SAE基のADSがAE基のADSよりも小さいもの;が含まれる。いくつかの実施形態は、SAE-HAE-CDを含む。
【0080】
アルキル化シクロデキストリンとしては、SAE-CD、HAE-CD、SAE-HAE-CD、HANE-CD、HAE-AE-CD、HAE-SAE-CD、AE-CD、SAE-AE-CD、中性シクロデキストリン、アニオン性シクロデキストリン、カチオン性シクロデキストリン、ハロ誘導体化シクロデキストリン、アミノ誘導体化シクロデキストリン、ニトリル誘導体化シクロデキストリン、アルデヒド誘導体化シクロデキストリン、カルボキシレート誘導体化シクロデキストリン、スルフェート誘導体化シクロデキストリン、スルホネート誘導体化シクロデキストリン、メルカプト誘導体化シクロデキストリン、アルキルアミノ誘導体化シクロデキストリン、またはスクシニル誘導体化シクロデキストリンを挙げることができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、アルキル化シクロデキストリン、例えば混合エーテルアルキル化シクロデキストリンは、例として、以下の表4に列挙されるものを含む。
【0082】
【表4】
【0083】
本明細書に開示の方法によって調製され得るアルキル化シクロデキストリンのさらなる例は、米国特許第5,438,133号、同第6,479,467号および同第6,610,671号に記載されており、これらの各々の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
所与のアルキル化シクロデキストリン組成物内で、その(1または複数の)アルキル化シクロデキストリンの置換基は同じであっても異なっていてもよい。例えば、SAEまたはHAE部分は、アルキル化シクロデキストリン組成物中の各存在時に同じタイプまたは異なるタイプのアルキレン(アルキル)ラジカルを有することができる。このような実施形態では、SAEまたはHAE部分のアルキレンラジカルは、アルキル化シクロデキストリン組成物中の各存在において、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシルであり得る。
【0085】
アルキル化シクロデキストリンは、官能基によるそれらの置換度、官能基中の炭素数、それらの分子量、誘導体化シクロデキストリンを形成するために使用されるベースシクロデキストリンに含まれるグルコピラノース単位の数、およびまたはそれらの置換パターンが異なり得る。さらに、官能基によるシクロデキストリンの誘導体化は、正確ではないが制御された様式で起こる。このため、置換度は、実際にはシクロデキストリン1つあたりの平均官能基数を表す数である(例えば、SBE-β-CDは、シクロデキストリン1つあたり平均7個の置換を有する)。したがって、平均置換度(「ADS」)は7である。いくつかの実施形態では、ADSは、キャピラリー電気泳動(CE)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、核磁気共鳴(NMR)分光法、またはそれらの組み合わせを含む技術によって決定され得る。さらに、シクロデキストリンのヒドロキシル基の置換の位置化学は、ヘキソース環の特定のヒドロキシル基の置換に関して可変である。この理由から、異なるヒドロキシル基の置換が誘導体化シクロデキストリンの製造中に起こる可能性があり、特定の誘導体化シクロデキストリンが、排他的または特異的ではないが、優先的な置換パターンを有すると思われる。上記を考慮すると、特定の誘導体化シクロデキストリン組成物の分子量はバッチごとに変動する可能性がある。
【0086】
単一の親シクロデキストリン分子には、誘導体化に利用可能な3v+6個のヒドロキシル部分が存在する。v=4(α-シクロデキストリン)の場合、その部分の置換度「y」は、1~18の値の範囲であり得る。v=5(β-シクロデキストリン)の場合、その部分の置換度「y」は、1~21の値の範囲であり得る。v=6(γ-シクロデキストリン)の場合、その部分の置換度「y」は、1~24の値の範囲であり得る。一般に、「y」はまた、1~3v+gの値の範囲であり、式中、gは、0~5の値の範囲である。いくつかの実施形態では、「y」は、1~2v+g、または1~1v+gの範囲である。
【0087】
特定の部分(例えば、SAE、HAEまたはAE)の置換度(「DS」)は、個々のシクロデキストリン分子に結合したSAE(HAEまたはAE)置換基の数、言い換えれば、シクロデキストリン1モルあたりの置換基のモルの尺度である。したがって、各置換基は、個々のアルキル化シクロデキストリン種に対して特有のDSを有する。置換基の平均置換度(「ADS」)は、本開示のアルキル化シクロデキストリン組成物内のアルキル化シクロデキストリンの分布に関するシクロデキストリン1分子あたりに存在する置換基の総数の尺度である。したがって、SAE-CDのADSは(CD 1分子あたり)4である。
【0088】
本開示のいくつかの実施形態は、1)アルキル化シクロデキストリンのヒドロキシル部分の半分超が誘導体化されているもの;2)アルキル化シクロデキストリンのヒドロキシル部分の半分以下が誘導体化されているもの;3)アルキル化シクロデキストリンの置換基が、各存在時において同じであるもの;4)アルキル化シクロデキストリンの置換基が、少なくとも2つの異なる置換基を含むもの;または5)アルキル化シクロデキストリンの置換基が、非置換アルキル、置換アルキル、ハロゲン化物(ハロ)、ハロアルキル、アミン(アミノ)、アミノアルキル、アルデヒド、カルボニルアルキル、ニトリル、シアノアルキル、スルホアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、チオアルキル、非置換アルキレン、置換アルキレン、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルからなる群から選択される置換基の1つ以上を含むもの;を含む。
【0089】
アルキル化シクロデキストリン組成物は、置換度が異なる複数のアルキル化シクロデキストリン分子を含むことができる。例えば、アルキル化シクロデキストリン分子は、親シクロデキストリンの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個またはそれ以上のヒドロキシル基が、置換基、例えばスルホアルキルエーテルで官能化され得る。そのような組成物において、平均置換度(ADS)は、本明細書に記載のように、特定の置換度を有するアルキル化シクロデキストリン分子の相対量に基づいて計算することができる。結果として、SAE-CD誘導体組成物のSAEのADSは、組成物中の個々のSAE-CD分子の置換度の加重平均を表す。例えば、SAE5.2-CD組成物は、複数のSAE-CD分子(式中、「x」(SAE基のDS)は、個々のシクロデキストリン分子について1~12の値を有する整数の範囲であり得る)の分布を含むが、SAE-シクロデキストリン分子の集団としては、「x」の平均値(SAE基のADS)が5.2である。
【0090】
アルキル化シクロデキストリン組成物は、高~中~低のADSを有することができる。アルキル化シクロデキストリン組成物はまた、アルキル化シクロデキストリン組成物内の異なる置換度を有するアルキル化シクロデキストリン分子の数である「スパン」が、広くても、または狭くてもよい。例えば、単一の置換度を有する単一種のアルキル化シクロデキストリンを含むアルキル化シクロデキストリン組成物はスパン1を有すると言われ、そのような場合、アルキル化シクロデキストリン分子の置換度は、そのアルキル化シクロデキストリン組成物のADSに等しい。例えば、スパン1を有するアルキル化シクロデキストリンの電気泳動図は、置換度に関して1つのアルキル化シクロデキストリン種のみを有するはずである。スパン2を有するアルキル化シクロデキストリン組成物は、それらの置換度が異なる2つの個別のアルキル化シクロデキストリン種を含み、その電気泳動図は、例えば、置換度が異なる2つの異なるアルキル化シクロデキストリン種を示すものと思われる。同様に、スパン3を有するアルキル化シクロデキストリン組成物のスパンは、それらの置換度が異なる3つの個別のアルキル化シクロデキストリン種を含む。アルキル化シクロデキストリン組成物のスパンは、典型的には、5~15、または7~12、または8~11の範囲である。
【0091】
親シクロデキストリンは、シクロデキストリンを形成するグルコピラノース残基のC-2位およびC-3位に2級ヒドロキシル基を含み、そのC-6位に1級ヒドロキシルを含む。これらのヒドロキシル部分はそれぞれ、置換基前駆体による誘導体化に利用可能である。使用される合成方法論に応じて、置換基部分は、利用可能なヒドロキシル位置の間でランダムにまたはいくらか規則正しく分布させることができる。置換基による誘導体化の位置異性も所望に応じて変えることができる。各組成物の位置異性は独立して選択される。例えば、存在する置換基の大部分は、親シクロデキストリンの1級ヒドロキシル基に、または2級ヒドロキシル基の一方もしくは両方に位置することができる。いくつかの実施形態では、置換基の一次分布はC-3>C-2>C-6であり、他の実施形態では、置換基の一次分布はC-2>C-3>C-6である。本開示のいくつかの実施形態は、置換基部分の少数がC-6位に位置し、置換基部分の大部分がC-2位および/またはC-3位に位置するアルキル化シクロデキストリン分子を含む。本開示のさらに他の実施形態は、置換基部分がC-2位、C-3位およびC-6位の間に実質的に均一に分布しているアルキル化シクロデキストリン分子を含む。
【0092】
アルキル化シクロデキストリン組成物は、それぞれが個別の置換度(「IDS」)を有する複数の個別のアルキル化シクロデキストリン種の分布を含む。特定の組成物中のシクロデキストリン種のそれぞれの含有量は、キャピラリー電気泳動を使用して定量することができる。分析方法(例えば、荷電アルキル化シクロデキストリンについてのキャピラリー電気泳動)は、わずか5%の1つのアルキル化シクロデキストリンおよび95%の別のアルキル化シクロデキストリンを有する組成物を、単一のアルキル化シクロデキストリンを含む出発アルキル化シクロデキストリン組成物と区別するのに十分に感受性である。
【0093】
分布におけるアルキル化シクロデキストリンの個々の種間の上述の変動は、錯形成平衡定数K1:1の変化をもたらす可能性があり、これは次に、誘導体化シクロデキストリン対活性薬剤の必要なモル比に影響を及ぼす。平衡定数も温度によって幾分変動し、製造、貯蔵、輸送および使用中に起こり得る温度変動中に薬剤が可溶化されたままであるように、比の許容値が必要である。平衡定数もpHによって変動する可能性があり、製造、貯蔵、輸送および使用中に起こり得るpH変動中に薬剤が可溶化されたままであるように、比の許容値が必要である。平衡定数はまた、他の賦形剤(例えば、バッファー、防腐剤、酸化防止剤)の存在に起因して変化し得る。したがって、誘導体化シクロデキストリン対活性薬剤の比は、上述の変数を補償するために、本明細書に記載の比から変動させることができる。
【0094】
医薬組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、式(I)の化合物およびアルキル化シクロデキストリンを所定のモル比で含有する。様々な実施形態では、アルキル化シクロデキストリン対式(I)の化合物のモル比は、下限1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、30:1、50:1、または100:1、および上限10:1、15:1、20:1、30:1、40:1、50:1、70:1、100:1、120:1、150:1、200:1、250:1、300:1、350:1、400:1、450:1、500:1、600:1、750:1、および1000:1を有する。例えば、様々な実施形態では、アルキル化シクロデキストリン対式(I)の化合物のモル比は、1:1~500:1、1:1~300:1、1:1~150:1、1:1~100:1、2:1~350:1、2:1~200:1、2:1~100:1、3:1~200:1、3:1~150:1、3:1~100:1、3:1~50:1、4:1~150:1および4:1~100:1である。
【0095】
医薬組成物は、固体または液体製剤として提供され得る。例えば、対象への投与前に希釈剤を使用して再構成するのに適した固体製剤が提供され得る。再構成に適した希釈剤としては、例えば、滅菌水または生理食塩水を挙げることができる。液体製剤として、または固体製剤の再構成時に提供される場合、組成物は水溶液または懸濁液であり得る。
【0096】
本開示の液体製剤は、再構成のために固体製剤に変換することができる。本開示による再構成可能な固体組成物は、活性薬剤、誘導体化シクロデキストリン、および任意選択的に少なくとも1つの他の医薬賦形剤を含む。再構成可能な組成物を水性液体で再構成して、保存された液体製剤を形成することができる。組成物は、固体誘導体化シクロデキストリンと活性薬剤含有固体および任意選択的に少なくとも1つの固体医薬賦形剤の混合物を、活性薬剤の大部分が再構成前に誘導体化シクロデキストリンと錯形成しないように(包接錯体の存在が最小であるかまたは存在しない)含むことができる。あるいは、組成物は、活性薬剤の大部分が、再構成の前に誘導体化シクロデキストリンと錯形成する、誘導体化シクロデキストリンと活性薬剤との固体混合物を含むことができる。再構成可能な固体組成物はまた、活性薬剤の実質的に全部または少なくとも大部分が誘導体化シクロデキストリンと錯形成する、誘導体化シクロデキストリンと活性薬剤とを含むことができる。
【0097】
再構成可能な固体組成物は、以下のプロセスのいずれかに従って調製することができる。本開示の液体製剤を最初に調製し、次いで、凍結乾燥(フリーズドライ)、噴霧乾燥、噴霧フリーズドライ、貧溶媒沈殿、無菌噴霧乾燥、超臨界もしくは超臨界に近い流体を利用する様々なプロセス、または再構成のための固体を作製するための当業者に公知の他の方法によって固体を形成する。
【0098】
本開示の製剤に含まれる液体ビヒクルは、水性液体担体(例えば、水)、水性アルコール、水性有機溶媒、非水性液体担体、およびそれらの組み合わせを含むことができる。
【0099】
本開示の組成物は、従来の防腐剤、消泡剤、酸化防止剤、緩衝剤、酸性化剤、アルカリ化剤、錯形成促進剤、凍結保護剤、電解質、グルコース、乳化剤、油、可塑剤、溶解促進剤、安定剤、張度調整剤(tonicity modifier)、希釈剤、錯化剤、製剤に使用するための当業者に公知の他の賦形剤、それらの組み合わせなどの1つ以上の医薬賦形剤を含むことができる。
【0100】
本明細書で使用される場合、「アルカリ化剤」という用語は、生成物安定性のためのアルカリ性媒体を提供するために使用される化合物を意味することを意図している。そのような化合物としては、例として、限定するものではないが、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、有機アミン塩基、アルカリアミノ酸およびトロラミン、ならびに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0101】
本明細書で使用される場合、「酸性化剤」という用語は、生成物安定性のための酸性媒体を提供するために使用される化合物を意味することを意図している。そのような化合物としては、例として、限定するものではないが、酢酸、酸性アミノ酸、クエン酸、フマル酸および他のα-ヒドロキシ酸、塩酸、アスコルビン酸、リン酸、硫酸、酒石酸および硝酸ならびに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0102】
本明細書で使用される場合、従来の防腐剤は、バイオバーデンが増加する速度を少なくとも低減するが、汚染後にバイオバーデンを安定に維持するか、またはバイオバーデンを減少させるために使用される化合物である。そのような化合物としては、例として、限定するものではないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、チメロサール、メタクレゾール、ミリスチルガンマピコリニウムクロリド、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チモールおよびメチル、エチル、プロピルまたはブチルパラベン、ならびに当業者に公知の他のものが挙げられる。いくつかの防腐剤はアルキル化シクロデキストリンと相互作用してすることができ、したがって防腐剤の有効性を低下させることが理解されよう。それにもかかわらず、防腐剤の選択ならびに防腐剤およびアルキル化シクロデキストリンの濃度を調整することによって、十分に保存された製剤を見出すことができる。
【0103】
本明細書で使用される場合、「酸化防止剤」という用語は、酸化を阻害し、したがって酸化プロセスによる調製物の劣化を防止するために使用される薬剤を意味することを意図している。そのような化合物としては、例として、限定するものではないが、アセトン、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、チオグリコール酸、EDTA、ペンテト酸ナトリウム、およびメタ重亜硫酸ナトリウム、ならびに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0104】
本明細書で使用される場合、「緩衝剤」という用語は、酸またはアルカリの希釈または添加時のpHの変化に抵抗するために使用される化合物を意味することを意図している。そのような化合物としては、例として、限定するものではないが、酢酸、酢酸ナトリウム、アジピン酸、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸、グリシン、マレイン酸、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、乳酸、酒石酸、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム、一塩基性酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、トリス、酒石酸ナトリウムおよび無水クエン酸ナトリウム、ならびに二水和物および当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0105】
錯形成促進剤を本開示の製剤に添加することができる。このような薬剤が存在する場合、シクロデキストリン/活性薬剤の比を変えることができる。錯形成促進剤は、活性薬剤とシクロデキストリンとの錯形成を促進する1または複数の化合物である。適切な錯形成促進剤には、1つ以上の薬理学的に不活性な水溶性ポリマー、ヒドロキシ酸、ならびに特定の薬剤とシクロデキストリンとの錯形成を促進するために保存製剤に典型的に使用される他の有機化合物が含まれる。
【0106】
親水性ポリマーは、CD系防腐剤を含有する製剤の性能を改善するための錯形成促進剤、溶解促進剤および/または水分活性低下剤として使用することができる。Loftssonは、シクロデキストリンの性能および/または特性を向上させるためのシクロデキストリン(非誘導体化または誘導体化)との併用に適したいくつかのポリマーを開示している。適切なポリマーは、Pharmazie 56:746(2001);Int.J.Pharm.212:29(2001);Cyclodextrin:From Basic Research to Market,10th Int’l Cyclodextrin Symposium,Ann Arbor,MI,US,May 21-24,p.10-15(2000);PCT Int’l Pub.No.WO 99/42111;Pharmazie 53:733(1998);Pharm.Technol.Eur.9:26(1997);J.Pharm.Sci.85:1017(1996);European Patent Appl.No.0 579 435;Proc.of the 9th Int’l Symposium on Cyclodextrins,Santiago de Comostela,ES,May 31-June 3,1998,pp.261-264(1999);S.T.P.Pharma Sciences 9:237(1999);Amer.Chem.Soc.Symposium Series 737(Polysaccharide Applications):24-45(1999);Pharma.Res.15:1696(1998);Drug Dev.Ind.Pharm.24:365(1998);Int.J.Pharm.163:115(1998);Book of Abstracts,216th Amer.Chem.Soc.Nat’l Meeting,Boston,Aug.23-27 CELL-016(1998);J.Controlled Release 44:95(1997);Pharm.Res.(1997)14(11),S203;Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.37:1199(1996);Proc.of the 23rd Int’l Symposium on Controlled Release of Bioactive Materials 453-454(1996);Drug Dev.Ind.Pharm.22:401(1996);Proc.of the 8th Int’l Symposium on Cyclodextrins,Budapest,HU,Mar.31-Apr.2,1996,pp.373-376(1996);Pharma.Sci.2:277(1996);Eur.J.Pharm.Sci.4S:S144(1996);3rd Eur.Congress of Pharma.Sci.Edinburgh,Scotland,UK September 15-17,1996;Pharmazie 51:39(1996);Eur.J.Pharm.Sci.4S:S143(1996);U.S.Patents Nos.5,472,954 and 5,324,718;Int.J.Pharm.126:73(1995);Abstracts of Papers of the Amer.Chem.Soc.209:33-CELL(1995);Eur.J.Pharm.Sci.2:297(1994);Pharm.Res.11:S225(1994);Int.J.Pharm.104:181(1994);およびInt.J.Pharm.110:169(1994)に記載されており、これらの全開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
他の適切なポリマーは、医薬製剤の分野で一般的に使用される周知の賦形剤であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,pp.291-294,A.R.Gennaro(editor),Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990);A.Martin et al.,Physical Pharmacy.Physical Chemical Principles in Pharmaceutical Sciences,3d ed.,pp.592-638(Lea&Febinger,Philadelphia,PA(1983);A.T.Florence et al.,Physicochemical Principles of Pharmacy,2d ed.,pp.281-334,MacMillan Press,London,UK(1988)に含まれ、これらの全開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに他の適切なポリマーとしては、水溶性天然ポリマー、水溶性半合成ポリマー(セルロースの水溶性誘導体など)および水溶性合成ポリマーが挙げられる。天然ポリマーには、イヌリン、ペクチン、アルギン誘導体(例えばアルギン酸ナトリウム)および寒天などの多糖類、ならびにカゼインおよびゼラチンなどのポリペプチドが含まれる。半合成ポリマーには、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのそれらの混合エーテル、ならびにヒドロキシエチル-エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルエチルセルロースなどの他の混合エーテル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびカルボキシメチルセルロースならびにその塩、特にカルボキシメチルセルロースナトリウムが含まれる。合成ポリマーには、ポリオキシエチレン誘導体(ポリエチレングリコール)およびポリビニル誘導体(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリスチレンスルホネート)、ならびにアクリル酸の様々なコポリマー(例えばカルボマー)が含まれる。水溶性、薬学的許容性および薬理学的不活性の基準を満たす、ここでは挙げられていない他の天然、半合成および合成ポリマーも同様に、本開示の範囲内であると考えられる。
【0108】
本明細書で使用される場合、「安定剤」という用語は、薬剤の治療活性を低下させる物理的、化学的、または生化学的プロセスに対して治療薬剤を安定化するために使用される化合物を意味することを意図している。適切な安定剤としては、例として、限定するものではないが、アルブミン、シアル酸、クレアチニン、グリシンおよび他のアミノ酸、ナイアシンアミド、アセチルトリプトホン酸ナトリウム、酸化亜鉛、スクロース、グルコース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、カプリル酸ナトリウムおよびサッカリンナトリウム、ならびに当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0109】
本明細書で使用される場合、「張度調整剤」という用語は、液体製剤の張度を調整するために使用することができる1または複数の化合物を意味することを意図している。適切な張度調整剤としては、グリセリン、ラクトース、マンニトール、デキストロース、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ソルビトール、トレハロースおよび当業者に公知の他のものが挙げられる。いくつかの実施形態では、液体製剤の張度は、血液または血漿の張度に近似する。
【0110】
本明細書で使用される場合、「消泡剤」という用語は、液体製剤の表面に形成される発泡の量を防止または低減する1または複数の化合物を意味することを意図している。適切な消泡剤としては、ジメチコン、シメチコン、オクトキシノールおよび当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0111】
本明細書で使用される場合、「凍結保護剤」という用語は、凍結乾燥中の物理的または化学的分解から活性治療剤を保護するために使用される化合物を意味することを意図している。そのような化合物には、例として、限定するものではないが、ジメチルスルホキシド、グリセロール、トレハロース、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および当業者に公知の他のものが含まれる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「乳化剤(emulsifier)」または「乳化剤(emulsifying agent)」という用語は、外相内の内相の液滴を安定化する目的でエマルジョンの相成分の1つ以上に添加される化合物を意味することを意図している。そのような化合物としては、例として、限定するものではないが、レシチン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキシエチレン-ソルビタンモノラウレート、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ステアリルアルコール、チロキサポール、トラガカント、キサンタンガム、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コレステロール、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オクトキシノール、オレイルアルコール、ポリビニルアルコール、ポビドン、モノステアリン酸プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、および当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0113】
溶解促進剤を本開示の製剤に添加することができる。溶解促進剤は、液体製剤中での活性薬剤の溶解度を向上させる1または複数の化合物である。このような薬剤が存在する場合、シクロデキストリン/活性薬剤の比を変えることができる。適切な溶解促進剤には、1つ以上の有機溶媒、洗剤、石鹸、界面活性剤、および特定の薬剤の溶解度を向上させるために非経口製剤に典型的に使用される他の有機化合物が含まれる。
【0114】
適切な有機溶媒としては、例えば、エタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポロキソマー、および当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0115】
本開示のアルキル化シクロデキストリンを含む製剤は、油(例えば、固定油、落花生油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油オリーブ油など)、脂肪酸(例えば、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸など)、脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルなど)、脂肪酸グリセリド、アセチル化脂肪酸グリセリド、およびそれらの組み合わせを含むことができる。本開示のアルキル化シクロデキストリンを含む製剤はまた、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、ヘキサデシルアルコール、グリセロール、プロピレングリコールなど)、グリセロールケタール(例えば、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールなど)、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)450など)、石油炭化水素(例えば、鉱油、ペトロラタムなど)、水、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤、およびそれらの組み合わせを含むことができる。
【0116】
水溶液として提供される場合、本明細書に記載の組成物は、式(I)の化合物を、限定するものではないが、下限25μM、30μM、40μM、50μM、60μM、70μM、80μM、90μM、100μM、110μM、120μM、150μM、または200μM、および上限500μM、400μM、300μM、250μM、225μM、200μM、175μM、150μM、125μM、および100μMを有する濃度範囲を含む様々な濃度で含み得る。例えば、様々な実施形態では、式(I)の化合物の濃度は、50μM~200μM、75μM~150μM、80μM~120μM、90μM~110μM、または約100μMである。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の液体製剤は、眼内への注射に適した特性を達成するためのバッファーおよび/または張度調整剤(tonicity modifying agent)を含む。例えば、様々な実施形態では、そのような液体組成物のpHは、6.0~8.0、6.0~7.5、6.0~6.8、6.5~7.5、または6.8~7.2の範囲であり得る。様々な実施形態では、そのような液体組成物の重量オスモル濃度は、200mOsm~500mOsm、200mOsm~400mOsm、または250mOsm~350mOsmの範囲であり得る。
【0118】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、式(I)の化合物のトランス型は、シス型よりもアルキル化シクロデキストリンとの結合親和性が高いと考えられる。さらに、式(I)の化合物とアルキル化シクロデキストリンとのゲスト-ホスト錯体は、化合物の溶解度を向上させるが、生物学的活性のための化合物の利用可能性も低下させると考えられる。したがって、溶解度向上とバイオアベイラビリティとのバランスをとることが望ましい。このバランスを達成するために、シクロデキストリン対化合物の比を上記のように選択することができる。さらに、式(I)の化合物のシスおよびトランス型の相対量はまた、シクロデキストリンと錯形成した化合物と遊離の化合物との所望の割合を達成するように選択することができる。
【0119】
本明細書に記載の組成物の様々な実施形態では、式(I)の化合物は、完全にまたは実質的に完全にシスまたはトランス配置であり得る。様々な実施形態では、組成物中の式(I)の分子の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%、または99.9%超がトランス配置にある。様々な他の実施形態では、組成物中の式(I)の分子の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%、または99.9%超がシス配置にある。
【0120】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、式(I)の化合物のトランス型は熱力学的に最も安定である。したがって、いくつかの実施形態では、化合物の50%超をトランス型で有する組成物が提供される。しかしながら、式(I)の化合物は、様々な波長の光に曝露されると立体異性化を起こし得る。したがって、いくつかの実施形態では、組成物の投与前に、シスおよびトランス型の相対量を、組成物を光に曝露することによって変化させることができる。したがって、いくつかの実施形態では、式(I)の分子の50%超をトランス配置で有する組成物が提供され、次いで、これを光に曝露して、組成物を、式(I)の分子の50%超をシス配置で有するもの、または少なくとも光に曝露する前よりも多量のシス配置の化合物を有するものに変換する。したがって、投与前に高い安定性を有する組成物が提供され得、次いで、投与直前に高いバイオアベイラビリティを有する組成物に変換される。いくつかの実施形態では、光はUV光である。
【0121】
いくつかの実施形態では、組成物は、貯蔵中は光フィルタリング容器または遮光容器(例えば、琥珀色バイアル)で維持され、次いで、投与前の一定期間透明容器に移される。いくつかの実施形態では、組成物は、所望のレベルの変換を達成するために、適切な波長、強度、および持続時間の光に特異的に曝露される。様々な実施形態では、提供される光は、350nm~500nm、350nm~450nm、350nm~400nm、約360nm、約380nm、または約450nmの波長を有する光を含む。いくつかの実施形態では、光は狭スペクトルであり得るが、他の実施形態では、所望の波長が光スペクトルに含まれる限り、広いスペクトルを有する。様々な実施形態では、提供される光の総量は、100J/ml~5000J/ml、150J/ml~4000J/ml、200J/ml~2000J/ml、または400J/ml~1000J/mlの範囲である。いくつかの実施形態では、特定の波長内で提供される光の総量は、100J/ml~5000J/ml、150J/ml~4000J/ml、200J/ml~2000J/ml、または400J/ml~1000J/mlの範囲である。いくつかの実施形態では、眼内への組成物の投与後に光への曝露が起こってもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、シクロデキストリンと錯形成した式(I)の化合物を50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または99.5%を超えて有し、残りの量の化合物が遊離の非錯形成形態である組成物が提供される。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンと錯形成した化合物を90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%未満で有する組成物が提供される。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンと錯形成した式(I)の化合物を第1の割合で有する組成物が提供され、次いで、これを光に曝露して、シクロデキストリンと錯形成した式(I)の化合物をより低い第2の割合で有する組成物を生成する。
【0123】
本明細書に開示の液体製剤を調製する方法は、アルキル化シクロデキストリン組成物を含む第1の水溶液を形成すること;1つ以上の活性薬剤を含む第2の溶液または懸濁液を形成すること;ならびに前記第1および第2の溶液を混合して液体製剤を形成すること;を含む第1の方法を含むことができる。同様の第2の方法は、第2の溶液を形成することなく、1つ以上の活性薬剤を第1の溶液に直接添加することを含む。第3の方法は、アルキル化シクロデキストリンを、1つ以上の活性薬剤を含有する溶液/懸濁液に直接添加することを含む。第4の方法は、1つ以上の活性薬剤を含む溶液を粉末状または粒子状アルキル化シクロデキストリン組成物に添加することを含む。第5の方法は、1つ以上の活性薬剤を粉末状または粒子状のアルキル化シクロデキストリン組成物に直接添加すること、ならびに得られた混合物を第2の溶液に添加すること、を含む。第6の方法は、上記の方法のいずれかによって液体製剤を生成すること、ならびにその後、凍結乾燥、噴霧乾燥、無菌噴霧乾燥、噴霧フリーズドライ、貧溶媒沈殿、超臨界もしくは超臨界に近い流体を利用するプロセス、または再構成のための粉末を作製するための当業者に公知の別の方法によって固体材料を単離することを含む。
【0124】
液体製剤を調製する方法の具体的な実施形態には、以下のことが含まれる:1)方法が、0.1μm以上の孔径を有する濾過媒体を使用して製剤を滅菌濾過することをさらに含む;2)液体製剤を照射またはオートクレーブ処理によって滅菌する;3)方法が、溶液から固体を単離することをさらに含む;4)溶液中に溶解したおよび/または溶液と表面接触している酸素のかなりの部分が除去されるように、溶液を窒素もしくはアルゴンまたは他の不活性な薬学的に許容されるガスでパージする。
【0125】
再構成可能な固体医薬組成物のいくつかの実施形態は、以下のことを含む:1)医薬組成物が、アルキル化シクロデキストリン組成物と1つ以上の活性薬剤を含む固体、および任意選択的に少なくとも1つの固体医薬賦形剤の混合物を、該活性薬剤の大部分が再構成前にアルキル化シクロデキストリンと錯形成しないように含む;および/または2)組成物が、1つ以上の活性薬剤の大部分が、再構成前にアルキル化シクロデキストリンと錯形成する、アルキル化シクロデキストリン組成物と1つ以上の活性薬剤との固体混合物を含む。
【0126】
使用方法
本明細書に記載の組成物は、様々な網膜障害を治療するために使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物を使用して、網膜に光感受性を回復させるか、または眼の細胞に光感受性を付与することができる。例えば、本明細書に記載の組成物は、網膜色素上皮細胞および網膜神経感覚上皮に配置された細胞、例えば光受容細胞およびミューラー細胞に光感受性を付与することができる。
【0127】
本明細書に記載の組成物による治療に適した例示的な状態には、必ずしも限定するものではないが、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性(AMDまたはARMD)(滲出型(wet form));萎縮型(dry)AMD;未熟児網膜症;網膜色素変性(RP);糖尿病性網膜症;および緑内障、例えば、開放隅角緑内障(例えば、原発性開放隅角緑内障)、閉塞隅角緑内障および続発性緑内障(例えば、色素性緑内障、偽落屑緑内障ならびに外傷および炎症性疾患に起因する緑内障)が含まれる。
【0128】
本明細書に開示の組成物による治療に適したさらなる例示的な状態には、必ずしも限定するものではないが、網膜剥離、加齢性または他の黄斑症、網膜光障害(photic retinopathies)、手術誘発性網膜症、中毒性網膜症、未熟児網膜症、眼の外傷または侵入病変による網膜症、遺伝性網膜変性、手術誘発性網膜症、中毒性網膜症、眼の外傷または侵入病変による網膜症が含まれる。
【0129】
本明細書中に開示の組成物による治療に適した具体的な例示的な遺伝状態としては、必ずしも限定するものではないが、バルデ・ビードル症候群(常染色体劣性)、先天性黒内障(常染色体劣性);錐体または錐体桿体ジストロフィー(常染色体優性型およびX連鎖型);先天性停止性夜盲症(常染色体優性型、常染色体劣性型およびX連鎖型);黄斑変性(常染色体優性型および常染色体劣性型);視神経萎縮、常染色体優性型およびX連鎖型);網膜色素変性(常染色体優性型、常染色体劣性型およびX連鎖型);症候性または全身性網膜症(常染色体優性型、常染色体劣性型およびX連鎖型);ならびにアッシャー症候群(常染色体劣性)が挙げられる。
【0130】
本明細書に記載の組成物は、様々な経路を介して眼に送達され得る。本発明の医薬組成物は、眼への局所適用によって、または例えば硝子体腔もしくは網膜下(光受容体間)腔への眼内注射によって、眼内に送達され得る。あるいは、本発明の医薬組成物は、眼の周囲の組織内への挿入または注射によって局所的に送達され得る。本発明の医薬組成物は、経口経路を介して、または皮下、静脈内または筋肉内注射によって全身送達され得る。あるいは、本発明の医薬組成物は、カテーテルまたはインプラントによって送達されてもよく、そのようなインプラントは、シラスティックメンブレンもしくは繊維などの膜、生分解性ポリマー、またはタンパク質性材料を含む多孔質、非多孔質またはゼラチン状材料で作られる。本発明の医薬組成物は、発生を予防するために状態の発症前、例えば、眼の手術中に、または病態の発症直後、または急性もしくは長期状態の発生中に投与することができる。
【0131】
[実施例]
単離されたrd1網膜を、100μMの化合物1の製剤および300μM~34000μMへの漸増濃度のSBE-CDで処理した。光応答性は、多電極アレイ(MEA)電気生理学を使用して測定した。図1aは、300μMまたは34000μMのいずれかのSBE-CDと錯形成した100μMの化合物1で処理したrd1網膜由来の網膜神経節細胞(RGC)の代表的なスパイクラスターおよび発火頻度プロットを示す。化合物1を浴溶液(300μM)中に完全に可溶性に保つために最小量のSBE-CDを使用すると、最も強い光応答が達成されたが、過剰のSBE-CD(34000μM)を使用すると、光応答はほぼ排除された(図1a)。記録された各細胞の光応答性の程度を定量化するために、光刺激の有無により観察されたスパイク頻度の正規化された相対差を光応答指数(LRI)として定義した:
【数1】
【0132】
LRIを使用して生成されたヒストグラムは、未処理rd1組織と比較して、過剰のSBE-CDが、非常に弱いが依然として化合物1に細胞を光増感させ得ることを示した。対照的に、最小量のSBE-CDは、光応答性RGCの数を大幅に増加させた(図1bおよび図1c)。さらに、LRIは、使用されるSBE-CDの量に対して用量応答を有することが見出され、化合物1の有効性が、化合物1とSBE-CDとの化学量論比に応じて調整され得ることを示唆している(図1d)。
【0133】
化合物1がRGCを光増感する方法をよりよく理解するために、シナプシン-1の制御下で遺伝的にコードされたカルシウム指示薬GCaMP6fを発現するrd1マウス系統を作製して、2光子ライブイメージングのためにすべてのニューロンを標識した。次いで、これらのマウスから単離した網膜を100uMの化合物1と、300uMまたは1200uMのいずれかのSBE-CDとで処理し、シナプス遮断薬の存在下で画像化した。後者の濃度は、利用可能なシクロデキストリンの量を増加させて光増感を増強するが、光増感を完全にはクエンチしないように選択された。化合物1の吸光度とGCaMP6frefとのスペクトル重複のために、ライン間刺激モジュールを2光子顕微鏡用に開発した。ラスタースキャンフィールドのラインの間に刺激光の広視野フラッシュをパルスするMHzドライバの制御下で、455nmの刺激ビームを2光子イメージングビーム経路に結合した(図2a)。次いで、この設定は、同時に化合物1で処理したRGCを光刺激しながら、網膜のライブ動画をキャプチャーすることができる。
【0134】
どのニューロンが光に応答しているかを決定するために、収集された動画を、自己相関推定を使用して刺激期間と相互相関させた。正相関画素、例えば刺激期間中に強度の増加を示した画素は、緑色で強調表示され、負相関画素はマゼンタで強調表示された。次いで、これらの得られた相関する顕微鏡写真を使用して、光応答性細胞の数を定量した。図2bは、100μMの化合物1と、1200μMまたは300μMのいずれかのSBE-CDとで処理したrd1-GCaMP6f網膜からの、代表的な相関顕微鏡写真を示す。GCaMP6f活性と刺激との相互相関を使用して、緑色で示される光応答画素を同定した。負の相関を有する画素はマゼンタで示されている(スケールバー=30μm)。
【0135】
細胞の総数を同じ動画の最大Z投影からカウントし、化合物1製剤あたりの光応答性細胞の相対割合を決定するために使用した。図2cは、元のGCaMP6f動画の最大Z投影との相関顕微鏡写真のオーバーレイを示す。図2dは、未処理網膜と比較した、化合物1とSBE-CDとの2つの調製物で処理したrd1-GCaMP6f網膜由来の光応答性細胞の割合を示す(P>0.01=**、P>0.0001=****)。SBE-CDの化学量論比が低いほど、光応答性であるRGCの数が多くなった。未処理rd1組織における固有の光応答も観察され、光応答性細胞が細胞の総数のおよそ2%を占め、それらがipRGCを含有するメラノプシンであり得ることが示唆された。これらの画像は、応答性細胞が組織全体に分布し、内在性光応答性細胞よりもサイズが大きいことを明らかにしている。すべてのニューロンの記録されたΔF/Fを使用して、活動もラスター表示された(図2e)。
【0136】
SBE-CDで調製した化合物1の単回in vivo注射がRGCの光増感を延長することがさらに発見された。図3aは、rd1網膜からの100μMの化合物1および1200μMのSBE-CDの注射の2日後および28日後の代表的なスパイクラスターおよび頻度プロットを示す。図3bは、シナプス遮断薬のカクテルを使用したRGCの薬理学的単離後の、図3aの同じ組織からのスパイクラスターおよび頻度プロットを示す。図3cは、化合物1およびSBE-CDの注射後28日までのLRIの時間経過の観察を示す。図3dは、rd1網膜における、光増感時間経過とBENAQ取り込みの時間経過との比較を示す。図3eは、RGCにおける光応答の強度と網膜組織における化合物1の存在量とを相関させる散布図である。
【0137】
SBE-CDは網膜へのBENAQの分散を改善した。図4aは、DMSOと一緒に注射した化合物1対SBE-CDと一緒に注射した化合物1による光応答の分布を示す、MEAチップにマッピングされた空間LRIプロット(左)、およびDMSO中または1200μMのSBE-CD中の100μMの化合物1を注射した2日後に撮影したrd1-GCaMP6f網膜の代表的な実色写真を示す(右)(X=ボーラス注入が適用された硝子体腔の下の網膜上の位置。スケールバー=500μm)。図4bは、図4aに示すrd1-GCaMP6f網膜から得られた相関顕微鏡写真を示す。Xから350μm(領域1)または1050μm(領域2)離れた、対応する両方の網膜の2つの位置を画像化した(スケールバー=300μm)。図4cは、化合物1のDMSO系またはSBE-CD系注射におけるXからの半径距離に対する光応答性細胞の割合のプロットである。図4dは、DMSO中対SBE-CD中の600μmを超える光応答の一貫性を実証する棒グラフを示す。
【0138】
注射2週間後の2光子イメージングは、SBE-CDを使用した持続的な光増感を示す。図5aは、DMSOまたはSBE-CDを使用した注射の2週間後の、注射部位Xからの距離の関数としての光応答性細胞のプロットである。図5bは、DMSO中対SBE-CD中の600μmを超える光応答の一貫性を実証する棒グラフを示す。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
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図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図5-1】
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【国際調査報告】