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特表2023-549336腫瘍及びがんへのT細胞侵入を促進するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】腫瘍及びがんへのT細胞侵入を促進するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20231116BHJP
   A61K 39/385 20060101ALI20231116BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231116BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231116BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20231116BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20231116BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20231116BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231116BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231116BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231116BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231116BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20231116BHJP
   C12N 15/16 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
A61K38/16
A61K39/385 ZNA
A61P35/00
A61P1/00
A61K38/08
A61K38/10
A61K47/65
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K39/39
C12N15/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527415
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 US2021058447
(87)【国際公開番号】W WO2022099128
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】63/110,905
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】519447916
【氏名又は名称】キャンサー アドヴァンシーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】CANCER ADVANCES INC.
(71)【出願人】
【識別番号】594140915
【氏名又は名称】ジョージタウン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】GEORGETOWN UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カトー, アレン
(72)【発明者】
【氏名】サットン, リンダ
(72)【発明者】
【氏名】スミス, ジル ピー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076BB11
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA23
4C084BA41
4C084DB52
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA03
4C085AA05
4C085AA06
4C085AA14
4C085BA10
4C085BA12
4C085BB11
4C085BB15
4C085CC07
4C085CC21
4C085CC23
4C085CC32
4C085DD62
4C085DD86
4C085DD90
4C085EE01
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF24
4C085GG01
(57)【要約】
提供されるのは、抗腫瘍及び/又は抗がん免疫療法を促進する方法である。幾つかの実施態様では、本方法は、任意選択的にリンカーを介して、免疫原性担体にコンジュゲートされたガストリン免疫原を含むコンジュゲートを含む組成物を、腫瘍及び/又はがん内への抗腫瘍T細胞の侵入を促進するのに十分な量及び経路で、それを必要とする対象に投与することを含み、それによって抗腫瘍及び/又は抗がん免疫療法が促進される。また提供されるのは、腫瘍及びがんの治療に使用するためのコンジュゲートを有する薬学的組成物、腫瘍及び/又はがんを治療するための方法、並びに対象における固形腫瘍及び/又はがんをキメラ抗原受容体-T(CAR-T)細胞療法に感作させるための方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗腫瘍及び/又は抗がん免疫療法を促進するための方法であって、任意選択的にリンカーを介して、免疫原性担体にコンジュゲートされたガストリン免疫原を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるコンジュゲートを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる組成物を、腫瘍及び/又はがん内への抗腫瘍T細胞の侵入を促進するのに十分な量及び経路で腫瘍及び/又はがんに投与することを含み、それによって抗腫瘍及び/又は抗がん免疫療法が促進される、方法。
【請求項2】
腫瘍及び/又はがんが、胃腸腫瘍及び/又はがん、任意選択的にガストリン依存性胃腸腫瘍及び/又はがん、更に任意選択的に膵臓腫瘍及び/又はがんであり、並びに/或いはガストリン反応性がん、任意選択的にガストリノーマ、肺がん、及び/又は甲状腺がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腫瘍及び/又はがんが、胃腸管の固形腫瘍及び/又はがん、任意選択的に膵臓の固形腫瘍及び/又はがんである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
免疫原性担体が、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、キーホールリンペットヘモシアニン、及びウシ血清アルブミンからなる群から選択される、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
リンカーがε-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンアミドエステルを含む、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
リンカーとガストリンペプチドとがアミノ酸スペーサーによって分離され、任意選択的にアミノ酸スペーサーが1から10アミノ酸長であり、更に任意選択的にアミノ酸スペーサーが7アミノ酸長である、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
組成物がアジュバント、任意選択的に油性アジュバントを更に含む、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
ガストリンペプチドが、EGPWLEEEEE(配列番号:1)、EGPWLEEEE(配列番号:2)、EGPWLEEEEEAY(配列番号:3)、及びEGPWLEEEEEAYGWMDF(配列番号:4)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
ガストリン関連腫瘍及び/又はがん、並びに/或いはガストリン反応性腫瘍及び/又はがんを治療するための医薬の製造に使用するための薬学的組成物であって、ガストリン関連腫瘍及び/又はがん内への抗腫瘍及び/又は抗がんT細胞の侵入を促進するのに十分な量でガストリン免疫原を含むコンジュゲートを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、薬学的組成物。
【請求項10】
腫瘍及び/又はがん、任意選択的にガストリン関連腫瘍及び/又はがんの治療に使用するための薬学的組成物であって、腫瘍及び/又はがん内への抗腫瘍及び/又は抗がんT細胞の侵入を促進するのに十分な量でガストリン免疫原を含むコンジュゲートを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、薬学的組成物。
【請求項11】
対象における腫瘍及び/又はがん、任意選択的にガストリン関連腫瘍及び/又はがん並びに/或いはガストリン反応性腫瘍及び/又はがんを治療するための方法であって、
(a)任意選択的にリンカーを介して、免疫原性担体にコンジュゲートされたガストリン免疫原を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるコンジュゲートを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる第一の組成物を、腫瘍及び/又はがん内への抗腫瘍及び/又は抗がんT細胞の侵入を促進するのに十分な量及び経路で対象に投与するステップ;並びに
(b)抗腫瘍及び/又は抗がんT細胞を含む第二の組成物を対象に投与するステップであって、抗腫瘍及び/又は抗がんT細胞は、腫瘍及び/又はがん上に存在する腫瘍関連抗原及び/又はがん関連抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を任意選択的に含む、ステップ
を含み、それによって腫瘍及び/又はがんが治療される、方法。
【請求項12】
腫瘍及び/又はがんが、胃腸腫瘍及び/又はがん、任意選択的にガストリン依存性胃腸腫瘍及び/又はがん、更に任意選択的に膵臓腫瘍及び/又はがんである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
免疫原性担体が、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、キーホールリンペットヘモシアニン、及びウシ血清アルブミンからなる群から選択される、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
リンカーがε-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンアミドエステルを含む、請求項11から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
リンカーとガストリンペプチドとがアミノ酸スペーサーによって分離され、任意選択的にアミノ酸スペーサーが1から10アミノ酸長であり、更に任意選択的にアミノ酸スペーサーが7アミノ酸長である、請求項11から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
組成物がアジュバント、任意選択的に油性アジュバントを更に含む、請求項11から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
ガストリンペプチドが、EGPWLEEEEE(配列番号:1)、EGPWLEEEE(配列番号:2)、EGPWLEEEEEAY(配列番号:3)、及びEGPWLEEEEEAYGWMDF(配列番号:4)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、請求項11から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
CARが、クローディン18.2抗原、グリピカン3抗原、メソテリン抗原、癌胎児抗原(CEA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、及びCD70抗原からなる群から選択される抗原に結合する、請求項11から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
対象における固形腫瘍及び/又はがんをキメラ抗原受容体-T(CAR-T)細胞療法に対して感作させるための方法であって、
(a)任意選択的にリンカーを介して、免疫原性担体にコンジュゲートされたガストリン免疫原を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるコンジュゲートを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる第一の組成物を、固形腫瘍及び/又はがん内へのCAR-T細胞の侵入を促進するのに十分な量及び経路で対象に投与するステップと;
(b)固形腫瘍及び/又はがん内に存在する抗原を標的とするCAR-T細胞を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる第二の組成物を対象に投与するステップ
を含み、これにより、対象における固形腫瘍及び/又はがんがCAR-T細胞療法に対して感作される、方法。
【請求項20】
固形腫瘍及び/又はがんが、固形胃腸腫瘍及び/又はがん、任意選択的に固形ガストリン依存性胃腸腫瘍及び/又はがん、更に任意選択的に固形膵臓腫瘍及び/又はがんである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
免疫原性担体が、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、キーホールリンペットヘモシアニン、及びウシ血清アルブミンからなる群から選択される、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
リンカーがε-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンアミドエステルを含む、請求項19から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
リンカーとガストリンペプチドとがアミノ酸スペーサーによって分離され、任意選択的にアミノ酸スペーサーが1から10アミノ酸長であり、更に任意選択的にアミノ酸スペーサーが7アミノ酸長である、請求項19から22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
組成物がアジュバント、任意選択的に油性アジュバントを更に含む、請求項19から23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
ガストリンペプチドが、EGPWLEEEEE(配列番号:1)、EGPWLEEEE(配列番号:2)、EGPWLEEEEEAY(配列番号:3)、及びEGPWLEEEEEAYGWMDF(配列番号:4)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、請求項19から24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
一又は複数の追加の抗腫瘍及び/又は抗がん療法を対象に施すことを更に含む、請求項19から25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
一又は複数の追加の抗腫瘍及び/又は抗がん療法が、免疫チェックポイント阻害剤を対象に投与することを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
免疫チェックポイント阻害剤が、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)、プログラム細胞死1受容体(PD-1)、及びプログラム細胞死1受容体(PD-1)、及びプログラム細胞死1受容体リガンド(PD-L1)からなる群から選択される標的ポリペプチドの生物学的活性を阻害する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、ペムブロリズマブ、AMP514、AUNP12、BMS-936559/MDX-1105、アテゾリズマブ、MPDL3280A、RG7446、RO5541267、MEDI4736、及びアベルマブからなる群から選択される、請求項27又は請求項28に記載の方法。
【請求項30】
対象における腫瘍及び/又はがんの増殖を低減及び/又は阻害する、請求項26から29の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
組成物が、約50μgから1000μg、約50μgから約500μg、約100μgから約1000μg、約200μgから約1000μg、及び約250μgから約500μgからなる群から選択される用量で投与され、任意選択的に、投与が、1回、2回、又は3回繰り返され、任意選択的に、2回目の用量が、初回用量の1週間後に投与され、3回目の用量が、投与される場合は、2回目の用量の1週間又は2週間後に投与される、請求項26から30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
一又は複数の追加の抗腫瘍及び/又は抗がん療法が、組成物の少なくとも初回用量の投与に続いて施される、請求項26から31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
CARが、クローディン18.2抗原、グリピカン3抗原、メソテリン抗原、癌胎児抗原(CEA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、及びCD70抗原からなる群から選択される抗原に結合する、請求項11から17の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
この出願は、2020年11月6日に出願された米国仮特許出願第63/110905号の利益を主張し、その開示はその全体が出典明示によりここに援用される。
【0002】
[技術分野]
本開示の主題は、免疫療法分子の腫瘍、特に固形腫瘍への侵入を促進するための組成物及び方法に関する。幾つかの実施態様では、本開示の主題は、ガストリンペプチドに対する体液性及び/又は細胞性免疫応答の誘導剤を、それを必要とする対象に投与することに関し、ここで、ガストリンペプチドに対する体液性及び/又は細胞性免疫応答の誘導剤は、限定されないがキメラ抗原受容体(CAR)及び/又はCARを発現するように改変されたT細胞(ここでは「CAR-T細胞」と呼ばれる)を含む免疫療法分子が腫瘍に到達しやすくする。
【0003】
[配列表の参照]
本開示に関連する配列表は、2021年11月5日に作成され、「1734_10_25_PCT_ST25.txt」という名称で5キロバイトのASCIIテキストファイルとして米国特許商標庁に電子的に提出している。EFS-Web経由で提出した配列表は、その全体が出典明示によりここに援用される。
【背景技術】
【0004】
胃腺癌(胃がん)は一般的な悪性腫瘍であり、世界のがん死亡率の世界第二位の主因である。限局性胃がん患者の50%超が屈して死に至るところ、手術に対する補助療法によって実現される約10%の治癒率の僅かな改善では容認できないため、新たな治療標的が切実に必要とされている。進行胃がん患者の予後は不良で、5年生存率は僅か20~30%である。第一選択状況における進行胃がんのための現在の標準治療は、フルオロピリミジン(例えば、5-フルオロウラシル;5FU)と白金(例えば、シスプラチン)含有化学療法剤の併用のままである。標的療法は、胃がんの治療に新たな可能性をもたらす可能性がある。HER2受容体が胃がんの約20%において見出されるため、トラスツズマブ(ハーセプチン)がHER2陽性胃がん患者に有益であることがToGA試験で実証されたので、標準化学療法にHER2受容体抗体を追加することが有益である可能性がある。Cancer Genome Atlas(TCGA)Research Networkでは、EBV(エプスタイン・バーウイルス)、MSI(マイクロサテライト不安定性)、GS(ゲノム安定性)、及びCIN(染色体不安定性)を含む分子分類に基づいて4群の胃がんを類型化した。腫瘍に対する免疫応答が、EBV及びMSIサブグループ内で重要な役割を果たす可能性がある。最近では免疫チェックポイント抗体が使用されており、研究者はこの免疫療法が胃がんに有益であるかどうかを探求している。KEYNOTE-012試験では、第1相試験においてPD-L1陽性であった39人の対象をペムブロリズマブを用いて試験し、全生存期間は11.4か月であった。KEYNOTE-059試験では、ペムブロリズマブ単独療法が、以前に治療を受けた胃がん又は胃食道がん患者の治療に有効であることが示された。別のPD-1抗体であるニボルマブは、CheckMate-649臨床試験の結果を受けて、化学療法と併用した胃がんの第一選択治療として承認された。現在、様々な免疫チェックポイント抗体を用いて多くの臨床試験が実施されており、これらの薬剤は胃がん患者に追加の治療選択肢を提供しているが、残念ながら全生存期間の中央値は依然として12か月未満にとどまっている。これらの理由により、胃がん患者の免疫療法に対する応答を改善するには、新しい戦略が必要とされている。免疫チェックポイント抗体に対する応答が依然として低い考えられる一つの理由は、腫瘍内の腫瘍浸潤CD8リンパ球の不足に関連している可能性がある。奏効率が低いもう一つの考えられる理由は、治療薬及び免疫細胞の浸透を妨げる腫瘍微小環境の線維化によるものである可能性がある。HER25などのがん細胞受容体を標的とする治療薬は生存期間を改善することが示されているが、胃がんに使用される殆どの化学療法薬剤は標的特異的ではない。
【0005】
胃腸(GI)ペプチドのガストリンは胃酸分泌と胃腸管の増殖に関与しており、ガストリンはコレシストキニンB受容体つまりCCK-BRを介してその効果を媒介する。胃前庭部のG細胞におけるガストリンの生理学的発現とは異なり、ガストリン遺伝子は胃がんの非内分泌上皮細胞でもまた新たに過剰発現され、そこで、自己分泌的に増殖を刺激することができる。同様に、CCK-BRもまたがん細胞で過剰発現され、この受容体はガストリンによるパラ分泌及び自己分泌刺激の両方に応答する。研究者は、切除されたヒト胃がんからのガストリン及びCCK-BRの発現を研究しており、殆どがCCK-BR及びガストリンを発現したことを見出した。また、高用量のプロトンポンプ阻害剤(PPI)の慢性使用、無酸症、又はヘリコバクター・ピロリ感染症により血中ガストリンレベルが上昇した場合、ガストリンはまた胃がんの増殖を刺激する可能性がある。ガストリンはヒト胃がんの増殖を刺激することが示されているため、研究者は、CCK-BRアンタゴニストを使用して胃がんにおけるガストリンの作用を遮断する手段と、ヒト試験でのその使用を研究してきた。
【0006】
ポリクローナル抗体刺激剤(PAS)は、ジフテリアトキソイドにコンジュゲートしているガストリン-17のアミノ末端配列に由来する9アミノ酸のエピトープで構成される治療用免疫原がんワクチンである。PASは、B-28-30及びT細胞の両方を活性化することによって免疫調節効果を発揮する。PASは、G17及び前駆体G17-Glyガストリンペプチドの異なるエピトープに対する抗体の産生を刺激する。これらの抗体はガストリンペプチドに結合して、腫瘍細胞の表面上のCCK-BRとのその相互作用を防ぐことができる。前臨床試験が、胃がんを含むCCK-BRを有する幾つかの動物モデルで実施された。動物モデルでは、PASによって生成された抗ガストリン抗体が増殖と転移を低減させることが示されている。ウサギで産生されたPAS抗体による受動免疫は、希釈剤で処置した対照と比較して、胃がん担持SCIDマウスの生存を改善した。
【0007】
現在までに、PASを用いて22件の臨床試験が行われている。このうち、840人の患者が膵臓がんの治療のための5件の臨床試験に登録され;234人の対象が胃がんにおける5件の臨床試験に登録され;475人の対象が進行結腸がんの10件の臨床試験に登録されている。胃がん臨床試験(GC4試験と呼ばれる)では、PAS+シスプラチン及び5FUで治療された進行胃がん患者の生存期間中央値は、抗体応答を生じなかったPAS+シスプラチン及び5FUで治療された対象(4.8か月)と比較して、ガストリンに対する防御抗体力価が上昇した対象において、有意に延長された(10.8か月)。22件の試験全てにおいて、注目されるPAS関連の有害事象は注射部位反応と発熱のみであった。
【発明の概要】
【0008】
この概要は、本開示の主題の幾つかの実施態様を列挙し、多くの場合、これらの実施態様の変形及び置換を列挙する。この概要は、多くの多様な実施態様の単なる例示に過ぎない。所与の実施態様の一又は複数の代表的な特徴の言及も同様に例示的なものである。そのような実施態様は、典型的には、言及された特徴の有無にかかわらず存在しうる;同様に、その特徴は、この概要に列挙されているかどうかに関係なく、本開示の主題の他の実施態様に適用することができる。過度の繰り返しを避けるため、この概要では、そのような特徴の全ての可能な組み合わせを列挙したり、示唆したりするものではない。
【0009】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、抗腫瘍及び/又は抗がん免疫療法を促進するための方法に関する。幾つかの実施態様では、該方法は、任意選択的にリンカーを介して、免疫原性担体にコンジュゲートされたガストリン免疫原を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるコンジュゲートを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる組成物を、腫瘍及び/又はがん内への抗腫瘍免疫療法分子、任意選択的にCAR又はCAR-T細胞の侵入を促進するのに十分な量及び経路で腫瘍及び/又はがんに投与することを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、それによって抗腫瘍及び/又は抗がん免疫療法が促進される。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、胃腸腫瘍及び/又はがん、任意選択的にガストリン依存性胃腸腫瘍及び/又はがん、更に任意選択的に膵臓腫瘍及び/又はがんである。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、胃腸管の固形腫瘍及び/又はがん、任意選択的に膵臓の固形腫瘍及び/又はがんである。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、ガストリン反応性がん、例えば限定されないが、ガストリノーマ、肺がん、及び/又は甲状腺がんである。幾つかの実施態様では、免疫原性担体は、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、キーホールリンペットヘモシアニン、及びウシ血清アルブミンからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、リンカーはε-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンアミドエステルを含む。幾つかの実施態様では、リンカーとガストリンペプチドとがアミノ酸スペーサーによって分離され、任意選択的にアミノ酸スペーサーが1から10アミノ酸長であり、更に任意選択的にアミノ酸スペーサーが7アミノ酸長である。幾つかの実施態様では、組成物はアジュバント、任意選択的に油性アジュバントを更に含む。幾つかの実施態様では、ガストリンペプチドは、EGPWLEEEEE(配列番号:1)、EGPWLEEEE(配列番号:2)、EGPWLEEEEEAY(配列番号:3)、及びEGPWLEEEEEAYGWMDF(配列番号:4)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0010】
幾つかの実施態様では、本開示の主題はまたガストリン関連腫瘍及び/又はがんを治療するための医薬の製造に使用するための薬学的組成物に関する。幾つかの実施態様では、薬学的組成物は、ガストリン関連腫瘍及び/又はがん内への抗腫瘍及び/又は抗がんT細胞の侵入を促進するのに十分な量でガストリン免疫原を含む一又は複数のコンジュゲートを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0011】
幾つかの実施態様では、本開示の主題はまた腫瘍及び/又はがん、任意選択的にガストリン関連腫瘍及び/又はがんの治療に使用するための薬学的組成物に関し、薬学的組成物は、腫瘍及び/又はがん内への抗腫瘍及び/又は抗がんT細胞の侵入を促進するのに十分な量でガストリン免疫原を含むコンジュゲートを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0012】
幾つかの実施態様では、本開示の主題はまた対象における腫瘍及び/又はがん、任意選択的にガストリン関連腫瘍及び/又はがんを治療するための方法に関する。幾つかの実施態様では、該方法は、任意選択的にリンカーを介して、免疫原性担体にコンジュゲートされたガストリン免疫原を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるコンジュゲートを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる第一の組成物を、腫瘍及び/又はがん内への抗腫瘍及び/又は抗がんT細胞の侵入を促進するのに十分な量及び経路で対象に投与するステップ;並びに抗腫瘍及び/又は抗がんT細胞を含む第二の組成物を対象に投与するステップであって、抗腫瘍及び/又は抗がんT細胞は、腫瘍及び/又はがん上に存在する腫瘍関連抗原及び/又はがん関連抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を任意選択的に含む、ステップを含み、それによって腫瘍及び/又はがんが治療される。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、胃腸腫瘍及び/又はがん、任意選択的にガストリン依存性胃腸腫瘍及び/又はがん、更に任意選択的に膵臓腫瘍及び/又はがんである。幾つかの実施態様では、免疫原性担体は、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、キーホールリンペットヘモシアニン、及びウシ血清アルブミンからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、リンカーはε-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンアミドエステルを含む。幾つかの実施態様では、リンカーとガストリンペプチドとがアミノ酸スペーサーによって分離され、任意選択的にアミノ酸スペーサーが1から10アミノ酸長であり、更に任意選択的にアミノ酸スペーサーが7アミノ酸長である。幾つかの実施態様では、組成物はアジュバント、任意選択的に油性アジュバントを更に含む。幾つかの実施態様では、ガストリンペプチドは、EGPWLEEEEE(配列番号:1)、EGPWLEEEE(配列番号:2)、EGPWLEEEEEAY(配列番号:3)、及びEGPWLEEEEEAYGWMDF(配列番号:4)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、CARは、クローディン18.2抗原、グリピカン3抗原、メソテリン抗原、癌胎児抗原、前立腺幹細胞抗原、及びCD70抗原からなる群から選択される抗原に結合する。
【0013】
幾つかの実施態様では、本開示の主題はまた対象における固形腫瘍及び/又はがんをキメラ抗原受容体-T(CAR-T)細胞療法に対して感作させるための方法に関する。幾つかの実施態様では、該方法は、任意選択的にリンカーを介して、免疫原性担体にコンジュゲートされたガストリン免疫原を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるコンジュゲートを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる第一の組成物を、固形腫瘍及び/又はがん内へのCAR-T細胞の侵入を促進するのに十分な量及び経路で対象に投与するステップと;固形腫瘍及び/又はがん内に存在する抗原を標的とするCAR-T細胞を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる第二の組成物を対象に投与するステップを含み、これにより、対象における固形腫瘍及び/又はがんがCAR-T細胞療法に対して感作される。幾つかの実施態様では、第一の組成物と第二の組成物は同時に投与される。幾つかの実施態様では、第一の組成物と第二の組成物は異なる時間に投与される。幾つかの実施態様では、第一の組成物と第二の組成物は、それぞれ複数回投与される。幾つかの実施態様では、固形腫瘍及び/又はがんは、固形胃腸腫瘍及び/又はがん、任意選択的に固形ガストリン依存性胃腸腫瘍及び/又はがん、更に任意選択的に固形膵臓腫瘍及び/又はがんである。幾つかの実施態様では、固形腫瘍及び/又はがんは、固形ガストリン反応性がん、例えば限定されないがガストリノーマ、肺がん、及び/又は甲状腺がんである。
【0014】
本開示の主題の方法の幾つかの実施態様では、免疫原性担体は、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、キーホールリンペットヘモシアニン、及びウシ血清アルブミンからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、リンカーはε-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンアミドエステルを含む。幾つかの実施態様では、リンカーとガストリンペプチドとがアミノ酸スペーサーによって分離され、任意選択的にアミノ酸スペーサーが1から10アミノ酸長であり、更に任意選択的にアミノ酸スペーサーが7アミノ酸長である。幾つかの実施態様では、第一の組成物はアジュバント、任意選択的に油性アジュバントを更に含む。幾つかの実施態様では、ガストリンペプチドは、EGPWLEEEEE(配列番号:1)、EGPWLEEEE(配列番号:2)、EGPWLEEEEEAY(配列番号:3)、及びEGPWLEEEEEAYGWMDF(配列番号:4)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0015】
幾つかの実施態様では、本開示の方法は、一又は複数の追加の抗腫瘍及び/又は抗がん療法を対象に施すことを更に含む。幾つかの実施態様では、一又は複数の追加の抗腫瘍及び/又は抗がん療法は、免疫チェックポイント阻害剤を対象に投与することを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。幾つかの実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)、プログラム細胞死1受容体(PD-1)、及びプログラム細胞死1受容体(PD-1)、及びプログラム細胞死1受容体リガンド(PD-L1)からなる群から選択される標的ポリペプチドの生物学的活性を阻害する。幾つかの実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、ペムブロリズマブ、AMP514、AUNP12、BMS-936559/MDX-1105、アテゾリズマブ、MPDL3280A、RG7446、RO5541267、MEDI4736、及びアベルマブからなる群から選択される。
【0016】
幾つかの実施態様では、本開示の方法は、対象における腫瘍及び/又はがんの増殖を低減及び/又は阻害する。幾つかの実施態様では、第一の組成物は、約50μgから1000μg、約50μgから約500μg、約100μgから約1000μg、約200μgから約1000μg、及び約250μgから約500μgからなる群から選択される用量で投与され、任意選択的に、投与は、1回、2回、又は3回繰り返され、任意選択的に、2回目の用量が、初回用量の1週間後に投与され、3回目の用量が、投与される場合は、2回目の用量の1週間又は2週間後に投与される。幾つかの実施態様では、一又は複数の追加の抗腫瘍及び/又は抗がん療法が、組成物の少なくとも初回用量の投与に続いて施される。幾つかの実施態様では、CARは、クローディン18.2抗原、グリピカン3抗原、メソテリン抗原、癌胎児抗原(CEA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、及びCD70抗原からなる群から選択される抗原に結合する。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは、胃腫瘍及び/又はがん、膵臓腫瘍及び/又はがん、肝臓がん、それらに由来する転移性病変、又は対象の胃、膵臓、肝臓、肺、脳、又は他の組織又は器官への転移である。
【0017】
従って、抗腫瘍及び/又は抗がん免疫療法を促進するための組成物及び方法を提供することが本開示の主題の目的である。
【0018】
本開示の主題の目的は上に述べた通りで、ここに開示される組成物及び方法によって全部が又は部分的に達成されるが、他の目的は、以下に最もよく記載されている添付図面と関連して説明が進むにつれて明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A-C】図1A~1F。インビトロでのマウス胃がん細胞の特性評価。(図1A)CCK-BRのmRNA発現は、正常なマウス組織と比較して、YTN及びNCC胃がん細胞において60倍を超えて増加している。(図1B)PD-L1のqRT-PCRによるmRNA発現は、正常組織と比較して胃がんYTN及びNCC細胞において顕著に増加している。(図1C)外因性ガストリンは、インビトロでマウスNCC胃がん細胞の増殖を刺激する(p=0.004)。
図1D-E】(図1D)NCC胃がん細胞ではガストリンペプチドの発現が検出される。(図1E)YTN胃がん細胞ではガストリンペプチドの発現が検出される。
図1F】二次抗体のみで染色した対照細胞は、非特異的免疫反応性の証拠を示さない。スケールバーは200μm。
図2A図2A~2G。PASワクチン接種は、単独で又はPD-1 Abとの併用で、マウスにおけるYTN胃がん腫瘍の増殖と転移を阻害する。(図2A)各治療群に対する経時的なYTN腫瘍体積とそれぞれの線の傾きが示されている。PD-1 Ab単独療法は、PBS処置対照と比較してYTN腫瘍増殖の速度を変化させなかった。PAS単独療法(p=0.023)又はPD-1 Abとの併用(p=0.0003)で治療されたマウスの腫瘍では、マウスの腫瘍増殖は有意に減少した。
図2B-C】(図2B)PD-1 Abとの併用でPASで治療したマウスでは、エクスビボでの最終腫瘍塊はサイズの減少を示した(p=0.09)。(図2C)各治療群に対する転移数は、転移が対照(PBS処置)マウス及びPD-1 Abで治療されたマウスでのみ観察されたことを示している。PAS単独療法又はPD-1 Abとの併用でPASで治療したマウスでは転移は見出せなかった。
図2D-G】転移はH&E染色により組織学的に確認された。(図2D)胃壁に浸潤している浸潤性YTN腫瘍。(図2E)転移を伴う腹膜播種。(図2F)腸間膜脂肪におけるYTN腫瘍細胞の浸潤。(図2G)腹壁骨格筋に浸潤しているYTNがん。
図3A図3A~3D。腫瘍増殖及び線維化に対するPAS及びPD-1 Ab治療の効果。(図3A)YTN腫瘍の各コホートについて、Ki67染色細胞の平均数±SEMを示す。PD-1 Ab腫瘍におけるKi67免疫反応性は、PBS処置対照と比較して増加した(p<0.05)。Ki67染色は、PAS単独療法又はPD-1 Abとの併用で治療されたマウスの腫瘍において有意に減少した(p<0.0001)。
図3B】各治療群に対するKi67抗体と反応した腫瘍の代表的な画像を低倍率(2X、バースケール、2mm)及び高倍率(40X、ボックス挿入)で示す。
図3C-D】(図3C)線維化をマッソントリクローム染色で染色した各治療群の腫瘍の代表的な画像(スケールバー=200μm)。(図3D)線維化染色の平均値±SEMを、統合密度によって解析して各治療ごとに示す。腫瘍内線維化は、PBS処置対照腫瘍と比較して、全ての治療群で減少した。併用療法群の腫瘍はまた、PD-1 Ab単独療法で治療したマウスの腫瘍よりも少ない線維化を示した。(PBSと比較**p<0.01;***p<0.001;PD-1 Abと比較p<0.05)。
図4A-B】図4A~4D。PAS単独療法及びPD-1 Abとの併用は腫瘍免疫細胞シグネチャーを変化させる。(図4A)各治療又は対照群からの代表的な低倍率腫瘍(スケールバー600μm)及びCD8Tリンパ球に対する抗体で染色した高倍率(20X;ボックス挿入)腫瘍。(図4B)カラムは、各群のYTN腫瘍切片におけるCD8免疫反応性細胞の数の平均±SEMを表す。PAS単独療法及びPD-1 Abとの併用により、PBS処置マウスの腫瘍と比較して、YTN腫瘍におけるCD8-免疫反応性T細胞の数が有意に増加する。PASとPD-1 Abの併用はまたPAS単独療法と比較してCD8細胞の数を顕著に増加させた。
図4C-D】(図4C)各治療群又は対照群からの代表的な低倍率腫瘍(スケールバー600μm)と、M2分極腫瘍関連マクロファージ(TAM)を検出するためにアルギナーゼに対する抗体で染色した高倍率(20X、ボックス挿入)腫瘍。(図4D)画像の統合密度によるコンピューター解析により、PAS処置マウスの腫瘍において免疫反応性が有意に減少したことが確認された。PASとPD-1 Abの両方で治療したマウスの腫瘍では、アルギナーゼ陽性TAMの免疫反応性が更に低下した。***PBSと比較してp<0.001;###PASと比較してp<0.001。
図5A-D】図5A~5H。ヒト胃組織アレイ(US Biomax#BC01011)からのヒト胃がん及び正常組織における免疫組織化学によるCCK-BRタンパク質発現。胃癌(多組織結合パネル)組織アレイ(カタログ番号BC01011; US Biomax,Inc.,Rockville,Maryland,United States of America)を4℃において一晩1:200の力価でCCK-BR抗体(カタログ番号77077;Abcam,Waltham,Massachusetts,United States of America)で染色した。(図5A~5C)腸型の組織を代表する胃がん画像を示す。(図5D)びまん性の組織型を持つ胃がんの代表的な画像を示す。
図5E-H】(図5E)びまん性の組織型を持つ胃がんの代表的な画像を示す(図5F)胃癌粘液性腺癌。(図5G)胃がん印環組織;矢印は印環細胞を指す。(図5H)正常なヒト胃組織。
【発明を実施するための形態】
【0020】
見出しは、参照のために、また特定のセクションを見つけやすくするためにここに含められる。これらの見出しは、その中で説明される概念の範囲を限定することを意図したものではなく、これらの概念は、明細書全体を通じて他のセクションにも適用可能である。
【0021】
I.定義
ここで使用される用語法は、特定の実施態様を説明することのみを目的としており、本開示の主題を限定することを意図したものではない。
【0022】
次の用語は当業者にはよく理解されていると考えられるが、次の定義を、本開示の主題の説明を容易にするために記載する。
【0023】
以下に別段の定義がない限り、ここで使用される全ての技術及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有することが意図される。ここで用いられる技術への言及は、当業者には明らかであろうそれらの技術の変形又は同等の技術の代替を含み、当該技術分野で一般に理解されている技術を指すことが意図される。次の用語は当業者にはよく理解されていると考えられるが、次の定義は、本開示の主題の説明を容易にするために記載される。
【0024】
本開示の主題を説明する際に、多くの技術及びステップが開示されることが理解される。これらのそれぞれには個別の利点があり、それぞれを他の開示された技術の一又は複数、又は場合によっては全てと組み合わせて使用することもできる。
【0025】
従って、明確にするために、この説明では、個々のステップのあらゆる可能な組み合わせを不必要な形で繰り返すことは控える。それにも関わらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが完全に本開示の請求項記載の主題の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
【0026】
長年の特許法の慣例に従って、「a」、「an」、及び「the」という用語は、特許請求の範囲を含み、この出願で使用される場合、「一又は複数」を指す。例えば、「阻害剤」という語句は、複数の同じ阻害剤を含む、一又は複数の阻害剤を指す。同様に、「少なくとも一つ」という語句は、エンティティを指すためにここで用いられる場合、限定されないが、1と100の間及び100を超える整数値を含み、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、又はそれ以上の該エンティティを指す。
【0027】
特に明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される成分、反応条件などの量を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。質量、重量、時間、体積、濃度、又はパーセンテージの量などの測定可能な値を指す場合にここで使用される「約」という用語は、特定された量からの、幾つかの実施態様では±20%、幾つかの実施態様では±10%、幾つかの実施態様では±0.5%、幾つかの実施態様では±1%、幾つかの実施態様では±0.5%、及び幾つかの実施態様では±0.1%の変動を、そのような変動が開示された方法を実施し及び/又は開示された組成物を用いるのに適切であるため、包含することを意味する。従って、特に明記しない限り、この明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、本開示の主題によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化しうる近似値である。
【0028】
ここで使用される場合、「及び/又は」という用語は、エンティティのリストの文脈で使用される場合、単独で又は組み合わせて存在しているエンティティを指す。従って、例えば、「A、B、C、及び/又はD」という語句には、A、B、C、及びDが個別に含まれるが、A、B、C、及びDの任意かつ全ての組み合わせ及びサブコンビネーションも含まれる。
【0029】
ここで使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子の断片によって実質的にコードされる一又は複数のポリペプチドを含むタンパク質を指す。免疫グロブリン遺伝子には、典型的には、カッパ(κ)、ラムダ(λ)、アルファ(α)、ガンマ(γ)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、及びミュー(μ)定常領域遺伝子、並びに種々の免疫グロブリン可変遺伝子が含まれる。軽鎖はκ又はλの何れかに分類される。哺乳動物では、重鎖はγ、μ、α、δ、又はεとして分類され、これが免疫グロブリンのクラス、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEをそれぞれ定める。他の種は、他の軽鎖及び重鎖遺伝子を有し(例えば、所定の鳥類は、鶏が卵の黄身に沈着させる免疫グロブリンタイプである、IgYと呼ばれるものを産生する)、それらは同様に、本開示の主題に包含される。幾つかの実施態様では、「抗体」という用語は、限定されないが、EGPWLEEEEE(配列番号:1)、EGPWLEEEE(配列番号:2)、EGPWLEEEEAY(配列番号:3)、及びEGPWLEEEEEAYGWMDF(配列番号:4)に示されるアミノ酸配列内に存在するエピトープを含む、ガストリン遺伝子産物上に存在するエピトープに特異的に結合する抗体を指す。
【0030】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は四量体を含むことが知られている。各四量体は、各対が一つの「軽」鎖(約25キロダルトン(kDa)の平均分子量)と一つの「重」鎖(約50~70kDaの平均分子量)を有する、二つの同一対のポリペプチド鎖から構成される。ポリペプチド鎖の二つの同一対は、重鎖領域内に存在するジスルフィド結合によって二量体形態で一緒に保持される。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100から110以上のアミノ酸の可変領域を定める。可変軽鎖(V)及び可変重鎖(V)という用語は、それぞれこれらの軽鎖及び重鎖を指す。
【0031】
抗体は、典型的には、インタクトな免疫グロブリンとして、又は様々なペプチダーゼによる消化によって産生されうる、多くの特徴が明確な断片として存在する。例えば、抗体分子をパパインで消化させると、ジスルフィド結合のN末端側の位置で抗体が切断される。これにより、三つの断片が生成される:軽鎖と重鎖のN末端を持つ二つの同一「Fab」断片と、ジスルフィド結合によって一緒に保持された重鎖のC末端を含む「Fc」断片である。一方、ペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合のC末端で抗体を消化して、「F(ab)’」断片として知られる断片を産生し、これは、ジスルフィドによって結合されたFab断片の二量体である。F(ab)’断片は穏やかな条件下で還元され得、ヒンジ領域のジスルフィド結合を切断し、それによってF(ab’)二量体を二つのFab’単量体に変換する。Fab’単量体は本質的にヒンジ領域の一部を有するFab断片である(例えば、他の抗体断片のより詳細な説明については、Paul,1993を参照)。これらの様々な断片に関して、Fab、F(ab’)、及びFab’断片には、少なくとも一つのインタクトな抗原結合ドメインが含まれ、よって抗原に結合することができる。
【0032】
様々な抗体断片がインタクトな抗体の消化という観点から定義されるが、当業者であれば、(限定されないが、Fab’断片を含む)これらの断片の様々なものが化学的に又は組換えDNA法を利用することによって新たに合成できることを理解するであろう。従って、ここで使用される「抗体」という用語には、全抗体の修飾によって産生されるか、又は組換えDNA法を使用して新たに合成される抗体断片がまた含まれる。幾つかの実施態様では、「抗体」という用語は、少なくとも一つの抗原結合ドメインを有する断片を含む。
【0033】
抗体はポリクローナル又はモノクローナルでありうる。ここで使用される場合、「ポリクローナル」という用語は、抗体の所与の集合内に一緒に存在する、異なる抗体産生細胞(例えば、B細胞)に由来する抗体を指す。例示的なポリクローナル抗体には、限定されないが、特定の抗原に結合し、動物が抗原に対して免疫応答を生じた後にその動物の血液中に見出される抗体が含まれる。しかしながら、抗体のポリクローナル調製物は、少なくとも非同一の二つの抗体を混合することによって人工的に調製することもできることが理解される。従って、ポリクローナル抗体には、典型的には、任意の所与の抗原の異なるエピトープ(時折「抗原決定基」又は単に「決定基」と呼ばれる)に対する(すなわち、結合する)異なる抗体が含まれる。
【0034】
ここで使用される場合、「モノクローナル」という用語は、単一の抗体種及び/又は単一の抗体種の実質的に均一な集団を指す。別の言い方をすると、「モノクローナル」とは、天然に存在する可能な変異、又は少量で存在しうる翻訳後修飾を除いて、抗体が特異性及び親和性において同一である、個々の抗体又は個々の抗体の集団を指す。典型的には、モノクローナル抗体(mAb)は、単一B細胞又はその子孫細胞によって産生される(但し、本開示の主題は、ここに記載の分子生物学的技術によって産生される「モノクローナル」抗体をまた包含する)。モノクローナル抗体(mAb)は高度に特異的であり、典型的には単一抗原部位に対して作られる。更に、ポリクローナル抗体調製物とは対照的に、所与のmAbは典型的には、抗原上の単一エピトープに対して作られる。
【0035】
mAbは、その特異性に加えて、他の抗体に汚染されないで合成できるという点で、幾つかの目的に対して有利な場合がある。しかしながら、「モノクローナル」という修飾語は、何らかの特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、幾つかの実施態様では、本開示の主題のmAbは、Kohler等,1975によって最初に記載されたハイブリドーマ法を使用して調製され、幾つかの実施態様では、細菌又は真核動物細胞又は植物細胞において組換えDNA法を使用して作製される(例えば、その全内容が出典明示によりここに援用される米国特許第4816567号を参照)。mAbはまた、例えば、Clackson等,1991及びMarks等,1991に記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0036】
本開示の主題の抗体、断片、及び誘導体には、キメラ抗体もまた含まれうる。抗体との関連でここで使用される場合、「キメラ」という用語とその文法的変形語は、ある種由来の抗体定常領域に実質的又は排他的に由来する定常領域と、別の種の可変領域の配列に実質的又は排他的に由来する可変領域とを有する抗体誘導体を指す。特定の種類のキメラ抗体は「ヒト化」抗体であり、この抗体は、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR)をヒト抗体のCDRと置換することによって産生される(例えば、PCT国際特許出願公開第1992/22653号を参照)。従って、幾つかの実施態様では、ヒト化抗体は、対応するヒト抗体領域に実質的又は排他的に由来するCDR以外の定常領域及び可変領域と、ヒト以外の哺乳動物に実質的又は排他的に由来するCDRを有する。
【0037】
本開示の主題の抗体、断片、及び誘導体はまた単鎖抗体及び単鎖抗体断片でありうる。単鎖抗体断片は、ここに記載される全抗体の可変領域及び/又はCDRの少なくとも一つを有するが、それら抗体の定常ドメインの一部又は全てを欠いているアミノ酸配列を含む。これらの定常ドメインは抗原結合には必要ではないが、全抗体の構造の主要部分を構成する。
【0038】
単鎖抗体断片は、定常ドメインの一部又は全てを含む抗体の使用に関連する問題の幾つかを克服できる。例えば、単鎖抗体断片は、生体分子と重鎖定常領域との間の望ましくない相互作用、又は他の望ましくない生物学的活性を含まない傾向がある。加えて、単鎖抗体断片は全抗体よりもかなり小さいため、全抗体よりも高い毛細血管透過性を有しており、単鎖抗体断片が局在化して標的の抗原結合部位により効率的に結合できるようになる。また、抗体断片は原核細胞内で比較的大規模に産生できるため、その生産が容易になる。更に、単鎖抗体断片のサイズは比較的小さいため、全抗体よりもレシピエントに免疫応答を誘発する可能性が低くなる。本開示の主題の単鎖抗体断片には、限定されないが、単鎖断片可変(scFv)抗体及びそれらの誘導体、例えば、限定されないが、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFv、ダイアボディ、及びトリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体、及びミニボディが含まれる。
【0039】
Fv断片は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のN末端の可変断片に対応する。Fv断片は、Fab断片よりもその二つの鎖の相互作用エネルギーが低いようである。VドメインとVドメインの結合を安定させるために、それらはペプチド(Bird等,1988;Huston等,1988を参照)、ジスルフィド架橋(Glockshuber等,1990)、及び「ノブ・イン・ホール」変異(Zhu等,1997)で連結されている。ScFv断片は、当業者によく知られた方法により産生することができる(例えば、Whitlow等,1991及びHuston等,1993を参照)。
【0040】
scFvは、大腸菌などの細菌細胞又は真核細胞内で産生されうる。scFvの一つの潜在的な欠点は、多価結合による結合力の増加を妨げうる生成物の一価性とその短い半減期である。これらの問題を克服する試みには、化学的結合によって追加のC末端システインを含むscFvから(Adams等,1993;McCartney等,1995)、又は不対C末端システイン残基を含むscFvの自発的な部位特異的二量体化によって(Kipriyanov等,1995を参照)、二価(scFv’)を産生するものがある。
【0041】
或いは、限定されないが、二重特異性抗体(「ダイアボディ」と呼ばれることもある(Holliger等,1993を参照))を含む多重特異性抗体を形成するために、ペプチドリンカーを3から12残基に短縮することにより、scFvに多量体を強制的に形成させることができる。リンカーの還元はまた更にscFv三量体(三重特異性抗体、「トリアボディ」と呼ばれることもある;Kortt等,1997を参照)及び四量体(四重特異性抗体、「テトラボディ」と呼ばれることもある;Le Gall等,1999を参照)を生じうる。二価scFv分子の構築は、「ミニ抗体」(Pack等,1992を参照)及び「ミニボディ」(Hu等,1996を参照)を形成するタンパク質二量体化モチーフとの遺伝子融合によっても達成できる。scFv-scFvタンデム((scFv))は、二つのscFv単位を第三のペプチドリンカーによって連結することによって産生されうる(Kurucz等,1995を参照)。
【0042】
特定のタイプの多量体scFvは、特異性の一つがT細胞及び/又は免疫エフェクター細胞と結合し、別の特異性が目的の抗原に結合する結合分子である「二重特異性T細胞エンゲージャー」(BiTe;例えば、Halland等,2020を参照)である。BiTeは、例えば、米国特許第9988452号;第10113003号;第10183992号;第10301391第;及び第10358492号に記載されており、そのそれぞれは、その全体が出典明示によりここに援用される。幾つかの実施態様では、BiTeは、CD3分子に結合する特異性を含む。
【0043】
二重特異性ダイアボディは、ある抗体由来のVドメインを短いリンカーによって別の抗体のVドメインに連結してなる二つの単鎖融合産物の非共有的結合を通じて産生することができる(Kipriyanov等,1998を参照)。そのような二重特異性ダイアボディの安定性は、上に記載したジスルフィド架橋又は「ノブ・イン・ホール」変異の導入によって、又は二つのハイブリッドscFv断片がペプチドリンカーを介して連結される単鎖ダイアボディ(scDb)の形成によって(Kontermann等,1999を参照)、増強することができる。
【0044】
四価の二重特異性分子は、例えば、scFv断片をIgG分子のCHドメインに、又はヒンジ領域を介してFab断片に融合させることによって、生成することができる(Coloma等,1997を参照)。或いは、四価の二重特異性分子は、二重特異性単鎖ダイアボディの融合によって作製されている(Alt等,1999を参照)。より小さい四価の二重特異性分子は、ヘリックス-ループ-ヘリックスモチーフを含むリンカーを用いたscFv-scFvタンデム(DiBiミニ抗体;Muller等,1998を参照)、又は分子内ペアリングを防止する配向で4つの抗体可変ドメイン(V及びV)を含む単鎖分子(タンデムダイアボディ;Kipriyanov等,1999を参照)の何れかの二量体化によって形成することもできる。
【0045】
二重特異性F(ab’)断片は、Fab’断片の化学結合又はロイシンジッパーを介したヘテロ二量体化によって作製されうる(Shalaby等,1992;Kostelny等,1992を参照)。また利用可能であるものは単離されたV及びVドメインである(米国特許第6172197号;第6248516号;及び第6291158号を参照)。
【0046】
本開示の主題には、抗ガストリン抗体の機能的等価物も含まれる。ここで使用される場合、抗体を指す「機能的等価物」という語句は、所与の抗体の結合特性に匹敵する結合特性を有する分子を指す。幾つかの実施態様では、キメラ化抗体、ヒト化抗体、及び単鎖抗体、並びにそれらの断片は、それらの基礎となる対応する抗体の機能的等価物と考えられる。
【0047】
機能的等価物にはまた本開示の主題の抗体の可変領域又は超可変領域のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するポリペプチドも含まれる。アミノ酸配列に関してここで使用される場合、「実質的に同じ」という語句は、Pearson&Lipman,1988に従うFASTA検索法によって決定して、別のアミノ酸配列に対して、幾つかの実施態様では少なくとも80%、幾つかの実施態様では少なくとも85%、幾つかの実施態様では少なくとも約90%、幾つかの実施態様では少なくとも約91%、幾つかの実施態様では少なくとも92%、幾つかの実施態様では少なくとも93%、幾つかの実施態様では少なくとも94%、幾つかの実施態様では少なくとも95%、幾つかの実施態様では少なくとも96%、幾つかの実施態様では少なくとも97%、幾つかの実施態様では少なくとも98%、幾つかの実施態様では少なくとも約99%の配列同一性を持つ配列を指す。幾つかの実施態様では、同一性パーセントの計算は、本開示の主題の抗体のアミノ酸配列の全長にわたって実施される。
【0048】
機能的等価物には、本開示の主題の全抗体の結合特性と同じ又は同等の結合特性を有する抗体の断片が更に含まれる。そのような断片は、一つ又は両方のFab断片、F(ab’)断片、F(ab’)断片、Fv断片、又は少なくとも一つの抗原結合ドメインを含む他の断片を含みうる。幾つかの実施態様では、抗体断片は、本開示の主題の全抗体の6つのCDR全てを含むが、そのような領域の全てよりも少ない、例えば3つ、4つ、又は5つのCDRを含む断片もまたここで定義される機能的同等物でありうる。更に、機能的等価物は、次の免疫グロブリンクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE、及びそれらのサブクラス、並びに非哺乳動物対象に適切であるかも知れない他のサブクラスの何れか一つのメンバーであるか、又はそれらを組み合わせることができる(例えば、ニワトリやその他の鳥類の種のIgY)。
【0049】
機能的等価物には、本開示の主題の全タンパク質の特徴と同じ又は同等の特徴を有するペプチドが更に含まれる。そのようなペプチドは、治療された対象において免疫応答を誘発しうる、全タンパク質の一つ又は複数の抗原を含みうる。
【0050】
機能的等価物には、アプタマー及び他の非抗体分子も含まれるが、但し、そのような分子が、本開示の主題の全抗体の結合特性と同じ又は同等の結合特性を有することを条件とする。
【0051】
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」、「含む(containing)」、又は「を特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の未記載の要素及び/又は方法ステップを排除するものではない。「含む(comprising)」とは、指定された要素及び/又はステップが存在するが、他の要素及び/又はステップを追加することができ、依然として関連する主題の範囲内に含まれることを意味する専門用語である。
【0052】
ここで使用される場合、「からなる(consisting of)」という語句は、特に記載されていない任意の要素、ステップ、又は成分を除外する。「からなる(consists of)」という語句が、前段部の直後ではなく、特許請求の範囲の特徴部の文節に出現する場合、その文節に記載されている要素のみを限定するものであり;他の要素は全体として請求項から除外されるものではないことに留意のこと。
【0053】
ここで使用される場合、「から本質的になる」という語句は、関連する開示又は請求項の範囲を、特定された材料及び/又はステップに加えて、開示され及び/又は請求項に記載された主題の基本的及び新規な特徴に実質的に影響を与えないものに限定する。例えば、薬学的組成物は、一つの薬学的活性薬剤又は複数の薬学的活性薬剤「から本質的になる」ことができ、これは、記載された薬学的活性薬剤が、薬学的組成物中に存在する唯一の薬学的活性薬剤であることを意味する。しかしながら、担体、添加物、及び/又は他の不活性薬剤がそのような薬学的組成物中に存在し得、存在する可能性が高く、「から本質的になる」という語句の性質内に包含されることに留意のこと。
【0054】
「含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」、及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語に関して、これら三つの用語のうちの一つがここで使用される場合、本開示の請求項記載の主題は、他の二つの用語の何れかの使用を含みうる。例えば、幾つかの実施態様では、本開示の主題は、抗体を含む組成物に関する。従って、本開示を検討した後に当業者であれば、本開示の主題が、本開示の主題の抗体から本質的になる組成物、並びに本開示の主題の抗体からなる組成物を包含することを理解するであろう。
【0055】
ここで使用される場合、「免疫細胞」という語句は、限定されないが、抗原提示細胞、B細胞、好塩基球、細胞傷害性T細胞、樹状細胞、好酸球、顆粒球、ヘルパーT細胞、白血球、リンパ球、マクロファージ、マスト細胞、メモリー細胞、単球、ナチュラルキラー細胞、好中球、食細胞、形質細胞、γδT細胞、NKT細胞、及び粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞を含む、哺乳動物免疫系の細胞を指す。
【0056】
ここで使用される場合、「免疫応答」という語句は、限定されないが、自然免疫、体液性免疫、細胞性免疫、免疫、炎症反応、獲得(適応)免疫、自己免疫、及び/又は過剰免疫を含む免疫を指す。
【0057】
ここで使用される場合、「ガストリン関連がん」という語句は、幾つかの実施態様では、ガストリン遺伝子産物が、腫瘍及び/又はがん細胞に外因的に適用された場合とまた自己分泌及びパラ分泌機構を介してインビボの両方で腫瘍及び/又はがん細胞増殖を刺激する栄養ホルモンとして作用する、腫瘍又はがん又はそれら由来の細胞である。例示的なガストリン関連がんには、膵臓がん、胃がん、胃食道がん、及び結腸直腸がんが含まれる。幾つかの実施態様では、「ガストリン関連がん」は、それ自体がガストリンを産生する腫瘍又はがん又はそれら由来の細胞であり、幾つかの実施態様では、ガストリンが、腫瘍、がん、及び/又はそれら由来の細胞(例えば、ガストリノーマ)の増殖に対してホルモン効果及び/又はフィードバック効果をもたらし得、並びに/或いはガストリン反応性の腫瘍及び/又はがん(例えば、ガストリン及び/又はガストリン受容体(例えば、CCK-B受容体)を介したガストリンシグナル伝達によってその増殖が刺激される腫瘍及び/又はがん、又はそれら由来の細胞)である。
【0058】
ここで使用される「ポリヌクレオチド」という用語には、限定されないが、DNA、RNA、相補的DNA(cDNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子核RNA(snRNA)、短核小体RNA(snoRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ゲノムDNA、合成DNA、合成RNA、及び/又はtRNAが含まれる。
【0059】
ここで使用される場合、「単鎖可変断片」、「単鎖抗体可変断片」、及び「scFv」抗体という語句は、リンカーペプチドによって連結された、重鎖及び軽鎖のみの可変領域を含む抗体の形態を指す。
【0060】
ここで使用される「対象」という用語は、任意の無脊椎動物又は脊椎動物種のメンバーを指す。従って、「対象」という用語は、幾つかの実施態様では、限定されないが、脊索動物門(例えば、硬骨魚綱(硬骨魚)、両生綱(両生類)、爬虫綱(爬虫類)、鳥綱(鳥類)、及び哺乳綱(哺乳類)のメンバー)及びそこに包含される全ての目及び科を含む、動物界の任意のメンバーを包含することを意図している。
【0061】
従って、本開示の主題の組成物及び方法は、温血脊椎動物に特に有用である。従って、幾つかの実施態様では、本開示の主題は、哺乳動物及び鳥類に関する。より特定的に提供されるのは、ヒト及び他の霊長類などの哺乳動物、並びに絶滅の危機に瀕しているため重要な哺乳動物(シベリアトラなど)、経済的に重要な哺乳動物(ヒトによる消費のために農場で飼育されている動物)及び/又はヒトにとって社会的に重要な哺乳動物(ペットとして又は動物園で飼われている動物)、例えば、ヒト以外の肉食動物(ネコ及びイヌなど)、ブタ(swine)(ブタ(pigs)、雄ブタ、及びイノシシ)、反芻動物(ウシ、雄ウシ、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン、及びラクダなど)、齧歯類(マウス、ラット、及びウサギなど)、有袋類、及びウマに由来し、並びに/或いはそれらにおいて使用するための組成物及び方法である。また提供されるのは、動物園で飼育されている絶滅危惧種の鳥類、並びに家禽(fowl)、より具体的には、ヒトにとって経済的にも重要であるため、家畜化された家禽、例えば、家禽(poultry)、例えば七面鳥、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウなどを含む鳥類への開示された方法及び組成物の使用である。従って、また提供されるのは、限定されないが、家畜化されたブタ(swine)(ブタ(pigs)及び雄ブタ)、反芻動物、ウマ、家禽などを含む家畜に対する開示された方法及び組成物の使用である。
【0062】
ここで使用される場合、「T細胞」及び「Tリンパ球」という用語は互換性があり、同義的に使用される。例には、限定されないが、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、ヘルパーT細胞及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0063】
ここで使用される場合、「治療薬」という語句は、疾患又は障害、例えば限定されないが、ガストリン関連腫瘍及び/又はがんを、例えば、治療し、阻害し、予防し、その影響を軽減し、その重症度を低減させ、発症の可能性の低減させ、その進行を遅らせ、及び/又は治癒するために使用される薬剤を指す。
【0064】
ここで使用される「治療」及び「治療する」という用語は、治療的処置と予防的又は防止的方策の両方を指し、その目的は、標的とされる病的状態を予防し又は遅らせ(軽減させ)、病的状態を予防し、有益な結果を追求し又は獲得し、並びに/或いはたとえ治療が最終的に成功しなかったとしても、個体が状態、疾患、又は障害を発症する見込みを低下させることである。治療を必要とする者には、既にその状態にある者並びに状態、疾患、又は障害に罹りやすいか、又はその素因がある者、或いはその状態を予防すべき者が含まれる。
【0065】
ここで使用される場合、「腫瘍」という用語は、悪性か良性かを問わず、あらゆる新生物細胞の成長及び/又は増殖、並びにその転移の開始、進行、増殖、維持がガストリンの自己分泌及び/又はパラ分泌作用によって直接的又は間接的に影響を受ける全ての前がん性及びがん性の細胞及び組織を指す。「がん」及び「腫瘍」という用語は、ここでは互換的に使用され、限定されないが、膵臓がん、胃がん、胃食道がん、及び結腸直腸がん(ここでは集合的に「ガストリン関連」腫瘍及び/又はがんと呼ばれる)を含む、対象における任意の組織の原発性と転移性の両方の固形腫瘍及び癌腫を指すことができる。ここで使用される場合、「がん」及び「腫瘍」という用語は、多細胞腫瘍、並びに個々の新生物又は前新生物細胞を指すことも意図される。幾つかの実施態様では、がん又は腫瘍は、限定されないが癌腫などの上皮組織のがん又は腫瘍を含む。幾つかの実施態様では、腫瘍は腺癌であり、それは、幾つかの実施態様では、膵臓、肝臓、胃、食道、結腸、又は直腸の腺癌、並びに/或いはそれらに由来する転移性細胞である。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんは線維化(線維症)と関連しており、これは、腫瘍及び/又はがんの発生の直接的又は間接的な結果として、線維化の一つ又は複数の領域が典型的には腫瘍及び/又はがんの領域に発生することを意味する。
【0066】
ここに開示される全ての遺伝子、遺伝子名、及び遺伝子産物は、ここに開示される組成物及び方法が適用できる任意の種に由来するホモログ及び/又はオルソログに対応することが意図される。従って、該用語には、限定されないが、ヒト及びマウス由来の遺伝子及び遺伝子産物が含まれる。特定の種に由来する遺伝子又は遺伝子産物が開示される場合、この開示は例示のみを意図しており、それが現れる文脈が明確に示していない限り、限定として解釈されるべきではないことが理解される。従って、例えば、GENBANK(登録商標)生物配列データベース受入番号:NM_000805.5及びNP_000796.1(それぞれ配列番号:11及び12)に提示されるガストリン遺伝子産物については、開示されるヒト核酸配列及びアミノ酸配列は、限定されないが、他の哺乳類、魚類、両生類、爬虫類、及び鳥類を含む他の動物由来の相同及びオルソロガスガストリン遺伝子及び遺伝子産物を包含することが意図される。また包含されるのは、限定されないが、対応するGENBANK(登録商標)登録に開示されたもの(例えば、NP_000796.1及びNM_000805.5;それぞれ配列番号:11及び12)を含む、ガストリンアミノ酸配列をコードする任意且つ全てのヌクレオチド配列である。
【0067】
II.ポリクローナル抗体刺激剤(PAS)を含む組成物
ガストリンワクチンポリクローナル抗体刺激剤(PAS)は、幾つかの実施態様では、マウスとヒトにおいて同一であり、リンカー分子を介してジフテリアトキソイド(DT)にコンジュゲートされる、ガストリンのN末端配列に由来する9アミノ酸ガストリンエピトープを含む。このコンジュゲートは、PASを作るために油性アジュバントに配合されている。PASは特異的で高親和性のポリクローナル抗ガストリン抗体の産生を刺激するが、DT単独では効果がなかった(Watson等,1996)。前臨床試験が、結腸がん(Singh等,1986;Smith及びSolomon,1988;Upp等,1989;Smith等,1996)、胃がん(Smith等,1998;Watson等,1989)、肺がん(Rehfeld等,1989)、及び膵臓がん(Smith等,1990;Smith等,1991;Smith等,1991;Segal等,2014)を含むガストリン反応性の胃腸(GI)がんを有する幾つかの動物モデルで実施された。
【0068】
動物では、PASで産生された抗ガストリン抗体は胃腸腫瘍の増殖と転移を軽減することが示されている(Watson等,1995;Watson等,1996;Watson等,1999a)。PASによる能動免疫とPASで産生された抗ガストリン抗体による受動免疫(Watson等,1999a)の両方が、GIがんの動物モデルにおいて腫瘍増殖を阻害することが示されている(Watson等,1998;Watson等,1999a)。
【0069】
PASはまた、胃がんの第二相臨床試験、並びに膵臓がんの第二相及び第三相臨床試験で生存率の改善において顕著な見通しを示している。PASワクチン接種は、ガストリンに対する中和抗体の産生によって実証されるように、体液性免疫応答を誘発することが示されている。ガストリンを除去することにより、ワクチンは腫瘍増殖を遅らせ、長期にわたる腫瘍殺傷活性をもたらす可能性がある。PAS投与は、限定されないが、胃腺癌及びPDACなどの様々な腺癌を含む様々な腫瘍及び/又はがんにおいて不適切に発現される(すなわち、過剰発現される)がん胎児性タンパク質ガストリンに対して体液性抗体応答及び細胞性免疫応答を生じさせる。この不適切なガストリン発現は、自己分泌及びパラ分泌増殖促進効果を引き起こす。ガストリンに対する体液性抗体の引き続く産生を伴うPAS投与は、この病理的増殖促進効果を排除するのに役立つ。加えて、ガストリンに対するPAS媒介の体液性免疫応答は、不適切なガストリン発現に関連する血管新生の促進、アポトーシスの回避、細胞遊走の増加、及び侵襲性酵素発現の増加を逆転させるのにも役立つ(Watson等,2006)。
【0070】
幾つかの実施態様では、PASは3つのサブユニットを含む。第一サブユニットはガストリンエピトープであり、これは、幾つかの実施態様では、システイン残基で終わるカルボキシ末端の7アミノ酸スペーサー配列を有するヒトG17のアミノ末端アミノ酸残基1~9を含むペプチドである。この第一サブユニットの例示的な配列は、EGPWLEEEE(配列番号:2)である。
【0071】
PASの第二サブユニットは、第一サブユニットを第三サブユニットに共有結合させるリンカーである。幾つかの実施態様では、リンカーはε-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンアミドエステル(eMCS)であるが、限定されないが、ポリエチレングリコールリンカーなどの非ペプチドリンカーを含む任意のリンカーをこの目的に使用することもできる。
【0072】
PASの第三サブユニットはジフテリアトキソイド(DT)であり、これは、第一サブユニットに対する体液性応答(特に、胃エピトープに対する体液性応答)を促進する担体タンパク質として使用される。しかしながら、幾つかの実施態様では、限定されないが、破傷風トキソイド又はウシ血清アルブミンなど、ジフテリアトキソイド以外の担体タンパク質を用いることができることに留意のこと。
【0073】
幾つかの実施態様では、その三サブユニットが筋肉内(i.m.)注射用に製剤化され、その製剤は優れた物理的、化学的、及び薬学的特性を有する。PASはまた、ガストリンに対する中和抗体の生成と共にB細胞応答を誘発する。ガストリンは細胞増殖を増加させ、血管新生を促進し、アポトーシスの回避を促進し、細胞遊走を増加させ、侵襲性酵素の発現を増加させ、所定の腫瘍微小環境(例えば、PDAC)における線維化に関連しているため、これはがんに関連している。本開示の主題の幾つかの態様によれば、ガストリンの作用が遮断されると、CD8リンパ球が腫瘍に流入し、それらが免疫療法に応答しやすくなる(例えば、T細胞媒介応答)。ここに開示されている通り、PASはまた、T細胞応答と、ガストリン刺激に応答してサイトカインを産生するCD8細胞を誘発する。
【0074】
PASは、治療用ワクチン又は免疫療法として設計できる。PAS誘導性体液性抗体は高度に特異的で、典型的にはG17及びGly-G17に対する高い親和性を特徴とする。
【0075】
PASは、ガストリンに対する抗体の治療上有効なレベルを一貫して誘導した。合計1542人の患者を対象とした22件の臨床試験が完了している。重要なのは、PASによる治療は、優れた安全性と忍容性プロファイルを示し、更に結腸直腸がん、胃がん、及び膵臓がんの患者において延命効果をもたらしたことである。単独療法として使用される場合、例示的な用量及びスケジュールは、0、1、及び3週間目に250μg/0.2mlの用量であることが特定された。
【0076】
まとめると、22件の試験とPASで治療を受けた1500人を超える患者から得られうる結論は次の通りである:
(a)非臨床データは、抗G17抗体のインビトロ及びインビボ両方の抗腫瘍効果を示しており、ヒト膵臓がんモデルを含む様々ながんモデルにおいて幅広い治療指数を示した。
(b)PASは非常に安全で忍容性の高い用量で投与でき、有害反応や負の自己免疫効果の誘発もなく、ガストリンに対するB細胞抗体応答を効果的に生じる;及び
(c)多数の臨床試験により、膵臓がんを含む胃腸腫瘍に対して延命効果と、抗G17抗体応答の生成と生存期間の改善との相関関係が実証された。
【0077】
しかし、臨床試験では長期生存者がいることもまた実証されており、PAS投与によって更なる治療効果が得られたことが示唆されている。如何なる特定の作用理論にも束縛されることは望まないが、PAS治療がこれらの対象において細胞傷害性T細胞及びメモリー細胞の活性化を特徴とするT細胞性免疫応答をまた誘導したかもしれないこともありうる。
【0078】
III.CARとそれを産生する方法
キメラ抗原受容体(CAR)は、一つ又は複数のT細胞シグナル伝達ドメインに連結された抗体の抗原結合ドメイン(限定されないがscFvなど)を含む人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチドである。CARの特性には、非MHC拘束的方法で選択された標的に対してT細胞の特異性及び反応性を向け直すその能力が含まれ、それによってモノクローナル抗体の抗原結合特性が用いられる。非MHC拘束性抗原認識により、CARを発現するT細胞に抗原プロセシングとは独立して抗原を認識する能力が与えられ、腫瘍エスケープの主要な機構が迂回される。更に、CARは、T細胞内で発現される場合、有利なことに、内因性T細胞受容体(TCR)のα鎖及びβ鎖と二量体化しない。CARとそれを調製する方法は、一般に米国特許第6410319号;第8389282号;及び第10059923号;並びに米国特許出願公開第2007/0036773号、第2009/0180989号、第2009/0257991号、第2011/0038836号、第2012/0058051号、第2012/0213783号、及び第2012/0252742号に記載されており、これらのそれぞれはその全体が出典明示によりここに援用される。
【0079】
ここで使用される場合、「抗原特異性を有する」及び「抗原特異的応答を誘発する」という語句は、CARが、抗原へのCARの結合が免疫応答を誘発するように、抗原、幾つかの実施態様では腫瘍関連抗原(TAA)、がん関連抗原(CAA)、又はその免疫原性エピトープに特異的に結合し、免疫学的に認識できることを意味する。
【0080】
ここで使用される場合、「抗原特異的標的領域」(ASTR)という語句は、特定の抗原及び/又はエピトープを標的とする(すなわち、結合する)CARの領域を指す。本開示の主題のCARは、幾つかの実施態様では、一つのASTRを含み(すなわち、単一特異性であり)、幾つかの実施態様では、二つの異なる抗原及び/又はエピトープを標的とする(すなわち、二重特異性である)二つの標的化領域を含む。幾つかの実施態様では、CARは、少なくとも三つ以上の異なる抗原を標的とする(すなわち、三重特異性又は多重特異性である)三つ以上の標的化領域を含む。CAR上の標的化領域は細胞外にある。幾つかの実施態様では、抗原特異的標的化領域は、抗体又はその機能的等価物又はその断片又はその誘導体を含み、幾つかの実施態様では、標的化領域のそれぞれが、異なる抗原又はエピトープを標的とする。標的化領域は、全長重鎖、Fab断片、単鎖Fv(scFv)断片、二価単鎖抗体又はダイアボディを含み得、そのそれぞれが標的抗原に特異的である。しかし、数多くの代替物、例えば結合したサイトカイン(サイトカイン受容体を担持する細胞の認識につながる)、アフィボディ、天然に存在する受容体由来のリガンド結合ドメイン、(例えば腫瘍細胞上の)受容体に対する可溶性タンパク質/ペプチドリガンド、ペプチド、及び免疫応答を促すワクチンがあり、それぞれ、本開示の主題の様々な実施態様で使用されうる。実際、当業者には理解されるように、所与の抗原に高い親和性で結合する殆ど全ての分子をASTRとして使用することができる。
【0081】
従って、ここで使用される場合、「キメラ抗原受容体」、「CAR」、又は「CARs」という用語は、抗原特異性を細胞(例えばT細胞、例えばナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞又はその組み合わせ)上に抗原特異性を移植する改変受容体を指す。CARは、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体、又はキメラ免疫受容体としても知られている。本開示の主題のCARは、一つ又は複数のASTR、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、一つ又は複数の共刺激ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む。二つ以上のASTRが存在する実施態様では、二つ以上のASTRが少なくとも二つの異なる抗原を標的とすることができ、タンデムに配置され、リンカー配列によって分離されうる。幾つかの実施態様では、細胞外スペーサードメインは任意選択的である。幾つかの実施態様では、CARは、腫瘍に関連する抗原又はエピトープを標的とする単一特異性CARであり、幾つかの実施態様では、腫瘍は線維化を特徴とする腫瘍でありうる。
【0082】
幾つかの実施態様では、CARは、ガストリン遺伝子産物又はガストリンがリガンドである受容体に結合するASTRを含む。ガストリンに結合する例示的な抗体は、米国特許第7235376号及び第8808695号(それぞれ、その全体が出典明示によりここに援用される)に記載されており、限定されないが、ハイブリドーマ490-1(ATCC受入番号PTA-6189)、ハイブリドーマ491-1(ATCC PTA-6190)、及びハイブリドーマ495-1(ATCC受入番号PTA-6191)によって産生されるモノクローナル抗体を含む。ガストリン受容体CCK-Bに結合する例示的抗体は、米国特許第8388966号及び米国特許出願公開第2003/0086941号に記載されている(それぞれ、その全体が出典明示によりここに援用される)。幾つかの実施態様では、これらの抗体の何れかからのパラトープ及び/又はパラトープ含有抗体断片を、CARに組み込むことができ、ついで、CARを、幾つかの実施態様では、本開示の主題の組成物及び方法で使用するために、CAR-T細胞に組み込むことができる。幾つかの実施態様では、CARは、市販の抗CCK-B抗体、例えば限定されないが、ThermoFisher Scientific(例えば、カタログ番号PA5-84814、PA5-103116、PA5-32348など)、Creative Biolabs(例えば、カタログ番号MOB-2496CT、MOB-3741z-S(P)、MOB-3741z-F(E)、及びMOB-3741z)、LSBio(例えば、カタログ番号LS-C128133-20)、Novus Biologicals(例えば、カタログ番号NLS6535)、Sigma-Aldrich(例えば、カタログ番号SAB1402711)、Abcam(例えば、カタログ番号ab27441及びab83180)などにより販売されているものなどからのパラトープ及び/又はパラトープ含有抗体断片を組み込む。
【0083】
ここで使用される場合、「共刺激ドメイン」(CSD)という語句は、メモリー細胞の増殖、生存、及び/又は発達を促進するCARの部分を指す。本開示の主題のCARは、一つ又は複数の共刺激ドメインを含みうる。幾つかの実施態様では、各共刺激ドメインは、TNFRスーパーファミリーのメンバー、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、Dap10、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、又はそれらの任意の組み合わせの一つ又は複数のメンバーの共刺激ドメインを含む。(例えば、他のタンパク質からの)他の共刺激ドメインは当業者には明らかであり、本開示の主題の代替の実施態様と関連して使用することができる。
【0084】
ここで使用される場合、「細胞外スペーサードメイン」(ESD)という語句は、ASTRと膜貫通ドメインとの間にある親水性領域を指す。幾つかの実施態様では、本開示の主題のCARは、細胞外スペーサードメインを含む。幾つかの実施態様では、本開示の主題のCARは細胞外スペーサードメインを含まない。細胞外スペーサードメインには、限定されないが、抗体のFc断片又はその断片又は誘導体、抗体のヒンジ領域又はその断片又は誘導体、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工スペーサー配列、又はそれらの組み合わせが含まれうる。細胞外スペーサードメインの例には、限定されないが、CD8αヒンジ、及び例えばGly3又はIgGのCH1及びCH3ドメイン(限定されないがヒトIgG4など)と同じくらい小さくてもよいポリペプチドから作製された人工スペーサーが含まれる。幾つかの実施態様では、細胞外スペーサードメインは、(i)IgG4のヒンジ、CH2、及びCH3領域;(ii)IgG4のヒンジ領域;(iii)IgG4のヒンジ及びCH2;(iv)CD8αのヒンジ領域;(v)IgG1のヒンジ、CH2、及びCH3領域;(vi)IgG1のヒンジ領域;(vi)IgG1のヒンジ及びCH2領域;及び/又は(vii)IgDのヒンジ領域の何れか一つ又は複数である。他の細胞外スペーサードメインは当業者には明らかであり、本開示の主題の任意の実施態様に関連して使用されうる。
【0085】
幾つかの実施態様では、本開示の主題のCARの結合ドメインの後にはヒンジ領域が続き、これは、適切な細胞/細胞接触、抗原結合、及び活性化を可能にするために抗原結合ドメインをエフェクター細胞表面から遠ざける領域を指す(例えば、Patel等,1999を参照)。幾つかの実施態様では、ヒンジ領域は免疫グロブリンヒンジ領域であり、野生型免疫グロブリンヒンジ領域又は修飾免疫グロブリンヒンジ領域でありうる。ここに記載のCARで使用される他の例示的なヒンジ領域には、CD8a、CD4、CD28、及びCD7などの1型膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域が含まれ、これはこれらの分子に由来する野生型ヒンジ領域であり得、又は修飾型でありうる。幾つかの実施態様では、ヒンジ領域は、IgDヒンジ領域又はその部分配列である。
【0086】
ここで使用される場合、「修飾ヒンジ領域」という語句は、(a)幾つかの実施態様では、最大30%のアミノ酸変化(例えば、限定されないが、アミノ酸の置換、付加、及び/又は欠失を含む、最大25%のアミノ酸変化、最大20%のアミノ酸変化、最大15%のアミノ酸変化、最大10%のアミノ酸変化、又は最大5%のアミノ酸変化)を有する野生型ヒンジ領域;(b)幾つかの実施態様では、最大30%のアミノ酸変化(例えば、限定されないが、アミノ酸の置換、付加、及び/又は欠失を含む、最大25%のアミノ酸変化、最大20%のアミノ酸変化、最大15%のアミノ酸変化、最大10%のアミノ酸変化、又は最大5%のアミノ酸変化)を伴う、幾つかの実施態様では、少なくとも10アミノ酸長(例えば、少なくとも11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、又はそれ以上のアミノ酸長)である野生型ヒンジ領域の一部;或いは(c)(幾つかの実施態様では、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15、又は少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15アミノ酸長でありうる)コアヒンジ領域を含む野生型ヒンジ領域の一部を指す。修飾ヒンジ領域が、ここに記載のCARにおける結合ドメインと別の領域(例えば、膜貫通ドメイン)との間に介在し、それらを連結している場合、キメラ融合タンパク質が、その標的(例えば、腫瘍関連抗原又はエピトープ)への特異的結合を維持することが可能になる。
【0087】
ここで使用される場合、「細胞内シグナル伝達ドメイン」(ISD)又は「細胞質ドメイン」という語句は、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞にその特殊な機能を実施するように指示するCARの部分を指す。エフェクター機能シグナルを伝達するドメインの例には、限定されないが、T細胞受容体複合体のゼータ鎖又はそのホモログの何れか(例えば、イータ鎖、FcεR1γ及びβ鎖、MB1(Igα)鎖、B29(Igβ)鎖など)、ヒトCD3ゼータ鎖、CD3ポリペプチド(デルタ及びイプシロン)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP70など)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lynなど)、CD2、CD5、CD28などのT細胞形質導入に関与する他の分子が含まれる。他の細胞内シグナル伝達ドメインは当業者には明らかであり、本開示の主題の任意の実施態様に関連して使用することができる。
【0088】
ここで使用される場合、「リンカー」、「リンカードメイン」、及び「リンカー領域」という語句は、本開示の主題のCARの任意のドメイン及び/又は領域を一緒に連結する、約1から100アミノ酸長のオリゴ又はポリペプチド領域を指す。幾つかの実施態様では、リンカーは、隣接するタンパク質ドメインが互いに自由に移動できるように、グリシン及びセリンのような可動性残基を含み、本質的にそれらからなり、又はそれらからなる。二重特異性、三重特異性、及び多重特異性CARの場合におけるように、二つの隣接ドメインが互いに立体的に干渉しないようにすることが望ましい場合には、より長いリンカーを使用できる。リンカーは切断可能又は非切断可能でありうる。切断可能リンカーの例には、2Aリンカー(例えば、T2A;出典明示によりその全体がここに援用される米国特許第8802374号を参照)、2A様リンカー、又はそれらの機能的等価物、及びそれらの組み合わせが含まれる。幾つかの実施態様では、リンカーには、ピコルナウイルス2A様リンカー、ブタテッショウウイルス(P2A)、テセアアシグナウイルス(T2A)のシス作用性ヒドロラーゼエレメント(CHYSEL)配列、又はそれらの組み合わせ、バリアント、及び機能的等価物が含まれる。幾つかの実施態様では、リンカー配列は、2Aグリシンと2Bプロリンの間の切断をもたらすAsp-Val/Ile-Glu-X-Asn-Pro-Gly2A-Pro2Bモチーフを含みうる。他のリンカーは当業者には明らかであり、本開示の主題の任意の実施態様に関連して使用されうる。
【0089】
ここで使用される場合、「膜貫通ドメイン」(TMD又はTD)という語句は、細胞膜を横切るCARの領域を指す。本開示の主題のCARの膜貫通ドメインは、膜貫通タンパク質(例えば、I型膜貫通タンパク質)、人工疎水性配列、又はそれらの組み合わせの膜貫通領域である。他の膜貫通ドメインは当業者には明らかであり、本開示の主題の任意の実施態様に関連して使用されうる。
【0090】
CARとCARを発現するように改変されたT細胞とは、CARに存在する様々な構成要素に基づいて、「第一世代」、「第二世代」、「第三世代」、又は「第四世代」と記述できる。「第一世代」CARには、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメイン、典型的にはCD3ゼータ細胞内ドメインが含まれる。「第二世代」CARは更に共刺激ドメインを含む。「第三世代」CARは、限定されないが4-IBBシグナル伝達ドメイン及び/又はOX40シグナル伝達ドメインなどの他のシグナル伝達ドメインを更に含む。「第四世代」CAR T細胞は、典型的には、第二世代又は第三世代CARの存在を特徴とし、増殖性サイトカイン(例えば、IL-12;Pegram等,2012)又は追加の共刺激リガンド(例えば、4-1BBL;Stephan等,2007)を発現するように更に改変されている。
【0091】
従って、本開示の主題は、幾つかの実施態様では、限定されないが、腫瘍関連抗原及び/又はエピトープなどの腫瘍内に存在する抗原に結合するCARを提供するもので、本開示のCARが結合する抗原及び/又はエピトープが、腫瘍細胞によって発現されるが、非腫瘍細胞によっては発現されないことを意味する。
【0092】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、腫瘍関連エピトープに対して向けられたキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸分子を提供する。幾つかの実施態様では、核酸は、CARをコードするDNA及び/又はRNA、任意選択的にmRNAでありうる。幾つかの実施態様では、核酸分子は、結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び刺激ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む抗体又は抗体断片を含むCARをコードし、結合ドメインは腫瘍関連抗原(TAA)又はエピトープに結合する。
【0093】
CARはまた膜貫通ドメイン(TD)を含み、幾つかの実施態様では、本開示のCARのTDは、T細胞受容体(TCR)アルファ鎖、TCRベータ鎖、TCRゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及びCD154からなる群から選択されるタンパク質のTDである。幾つかの実施態様では、TDは、それぞれヒト及びマウスCD28分子の膜貫通ドメインに対応する、アミノ酸配列FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号:5)又はアミノ酸配列FWALVVVAGVLFCYGLLVTVALCVIWT(配列番号:6)を含む。TDは一般に、CARを発現する細胞の膜にCARを固定する役割を果たすだけであるため、修飾がTDとして機能するTDの能力を破壊しない限り、既知のTDの配列の修飾がまた許容される。従って、幾つかの実施態様では、TDは、アミノ酸配列FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(すなわち、GENBANK(登録商標)受入番号NP_001230007.1のヒトT細胞特異的表面糖タンパク質CD28前駆体のアミノ酸34~60、配列番号:5)又はアミノ酸配列FWALVVVAGVLFCYGLLVTVALCVIWT(すなわち、GENBANK(登録商標)受入番号NP_031668.3のマウスT細胞特異的表面糖タンパク質CD28前駆体のアミノ酸151~177;配列番号:6)の少なくとも一つ、二つ、又は三つだが20、10、又は5つ以下の修飾を有するアミノ酸配列、又はそれと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0094】
本開示の主題の核酸分子は、幾つかの実施態様では、細胞外ヒンジ領域によってTDに連結される抗TAA結合ドメイン、及び/又は細胞内ヒンジ領域を介して細胞内ドメインに連結されるTDをコードしうる。細胞外ヒンジ領域は、CARに結合ドメインとTDとの間の可動性を提供し、幾つかの実施態様では、サイトカイン分泌及びCARによる標的細胞の細胞媒介死滅に影響を与えうる(Sadelain等,2009)。CARに用いることができる細胞外及び細胞内ヒンジ領域の非限定的な例には、CD8α又はCD28からの免疫グロブリン及び免疫グロブリン様ドメインのFc領域(例えば、米国特許第8465743号に開示されたヒトCD8及びCD28の細胞外及び細胞内ヒンジ)が含まれる。幾つかの実施態様では、本開示のCARは、ヒンジ領域を含み、幾つかの実施態様では、限定されないが、GENBANK(登録商標)受入番号AAA52771.1(配列番号:13)のアミノ酸101~158、又はその部分配列を含む免疫グロブリンデルタ鎖のヒンジ領域を含む。
【0095】
CARはまた、一般に一つ又は複数の共刺激ドメイン及び一つ又は複数のシグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインも含む。而して、本開示の主題の単離核酸分子は、共刺激ドメインをコードする配列を更に含む。幾つかの実施態様では、共刺激ドメインは、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される共刺激分子の細胞内ドメインを含む。本開示の主題の共刺激ドメインの特定の非限定的な例は、限定されないが、GENBANK(登録商標)受入番号NP_006130.1のアミノ酸123~220(配列番号:14)又はGENBANK(登録商標)受入番号NP_031668.3のアミノ酸124~218(配列番号:15)を含む、ヒト又はマウスCD28ポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含む。共刺激ドメインとして機能するドメインの能力に有意に影響を与えない共刺激ドメインの修飾もまた許容される。従って、幾つかの実施態様では、コードされた共刺激ドメインは、GENBANK(登録商標)受入番号NP_006130.1のアミノ酸123~220(配列番号:14)又はGENBANK(登録商標)受入番号NP_031668.3のアミノ酸124~218(配列番号:15)の何れかのアミノ酸配列の少なくとも一つ、二つ、又は三つだが20、10、又は5つ以下の修飾を有するアミノ酸配列を含むか、或いはそれと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0096】
本開示の主題の核酸分子は少なくとも一つの細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARをまたコードする。例示的で非限定的な細胞内シグナル伝達ドメインには、4-1BB及び/又はCD3ゼータに由来するものが含まれる。より具体的には、細胞内シグナル伝達ドメインは、GENBANK(登録商標)受入番号NP_000725.1のアミノ酸52~163(配列番号:16)を含むヒトCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメイン、又はGENBANK(登録商標)受入番号NP_001106862.1のアミノ酸52~164(配列番号:17)を含むマウスCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含みうる。ここでも同様に、修飾が細胞内シグナル伝達ドメインとして機能する細胞内シグナル伝達ドメインの能力を破壊しない限り、細胞内シグナル伝達ドメインの配列の修飾がまた許容される。而して、幾つかの実施態様では、コードされた細胞内シグナル伝達ドメインは、GENBANK(登録商標)受入番号NP_000725.1のアミノ酸52~163(配列番号:16)又はGENBANK(登録商標)受入番号NP_001106862.1のアミノ酸52~164(配列番号:17)に示されたアミノ酸配列の少なくとも一つ、二つ、又は三つだが20、10、又は5つ以下の修飾を有するアミノ酸配列を含むか、或いはそれと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0097】
幾つかの実施態様では、共刺激ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに融合させて、二重機能を有する細胞内ドメインを作製する。限定ではなく例として、ここに開示される共刺激ドメインの一つを、ここに開示される細胞内シグナル伝達ドメインの一つとインフレームで融合させることができる。幾つかの実施態様では、細胞内ドメインは、GENBANK(登録商標)受入番号NP_000725.1のアミノ酸52~163(配列番号:16)に融合されたGENBANK(登録商標)受入番号NP_006130.1のアミノ酸123~220(配列番号:14)を含み、ここで、細胞内ドメインを含む配列は、同じフレーム内で単一のポリペプチド鎖として発現される。
【0098】
CARはまた、限定されないが、CD8リーダー配列などのリーダー配列を含みうる。CARに含まれうるCD8リーダー配列の非限定的な例は、GENBANK(登録商標)生物配列データベースの受入番号NP_741969.1のアミノ酸1~21(配列番号:18)に対応するヒトCD8リーダー配列である。
【0099】
幾つかの実施態様では、本開示の主題のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列は、(i)ヒトMUC1ポリペプチドの腫瘍排他的エピトープに結合する結合ドメイン、及び(ii)CD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。幾つかの実施態様では、核酸は共刺激シグナル伝達ドメインを更にコードし、幾つかの実施態様では、共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28シグナル伝達ドメイン及び4-1BBシグナル伝達ドメインからなる群から選択される。
【0100】
而して、本開示の主題は、幾つかの実施態様では、結合ドメイン、膜貫通ドメイン(TD)、及び細胞内ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)分子を提供し、ここで、結合ドメインはTAA又はそのエピトープに結合する。幾つかの実施態様では、結合ドメインは、クローディン18.2抗原、グリピカン3抗原、メソテリン抗原、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、及びCD70抗原のTAA又はそのエピトープ、又は抗体のパラトープを含むその断片に結合する抗体の部分配列であり、任意選択的に結合ドメインはヒト又はヒト化される。幾つかの実施態様では、結合ドメインはscFvである。
【0101】
本開示のCAR分子の幾つかの実施態様では、TDは、T細胞受容体(TCR)アルファ鎖、TCRベータ鎖、TCRゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及びCD154からなる群から選択されるタンパク質のTDを含む。幾つかの実施態様では、TDは、(i)GENBANK(登録商標)受入番号NP_001230007.1のヒトT細胞特異的表面糖タンパク質CD28前駆体のアミノ酸34~60、又はGENBANK(登録商標)受入番号NP_031668.3のマウスT細胞特異的表面糖タンパク質CD28前駆体のアミノ酸151~177(配列番号:15);(ii)GENBANK(登録商標)受入番号NP_001230007.1のヒトT細胞特異的表面糖タンパク質CD28前駆体のアミノ酸34~60、又はGENBANK(登録商標)受入番号NP_031668.3のマウスT細胞特異的表面糖タンパク質CD28前駆体のアミノ酸151~177(配列番号:15);又は(iii)GENBANK(登録商標)受入番号NP_001230007.1のヒトT細胞特異的表面糖タンパク質CD28前駆体のアミノ酸34~60又はGENBANK(登録商標)受入番号NP_031668.3のマウスT細胞特異的表面糖タンパク質CD28前駆体のアミノ酸151~177(配列番号:15)に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。
【0102】
本開示のCAR分子の幾つかの実施態様では、結合ドメインはヒンジ領域によって膜貫通ドメインに連結されている。幾つかの実施態様では、ヒンジ領域は、GENBANK(登録商標)受入番号AAA52771.1のアミノ酸101~158(配列番号:13)、又はその部分配列を含む。
【0103】
幾つかの実施態様では、本開示のCAR分子は、共刺激ドメイン、任意選択的に、OX40、CD2、CD3、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、及び4-1BB(CD137)からなる群から選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む共刺激ドメイン、又は任意選択的にそれらと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を更に含む。
【0104】
幾つかの実施態様では、CAR分子は、細胞内シグナル伝達ドメインを更に含み得、幾つかの実施態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BBの機能的シグナル伝達ドメイン、CD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメイン、又はその両方、前記アミノ酸配列の少なくとも一つ、二つ、又は三つだが20、10、又は5つ以下の修飾を有するアミノ酸配列、又はそれと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0105】
幾つかの実施態様では、本開示のCAR分子は更に、リーダー配列、任意選択的に、ヒトCD8アルファ鎖前駆体のアミノ酸1~21に由来するアミノ酸配列を含むリーダー配列(例えば、GENBANK(登録商標)受入番号NP_001139345.1を参照)、又はそれと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0106】
幾つかの実施態様では、本開示の核酸分子は、ベクター、任意選択的に発現ベクター内に存在する。従って、本開示の主題は、幾つかの実施態様では、本開示の主題の核酸分子及び/又は本開示の主題の本開示のCARをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。幾つかの実施態様では、ベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、及びレトロウイルスベクターからなる群から選択され、その何れも幾つかの実施態様では発現ベクターでありうる。幾つかの実施態様では、本開示の主題のベクターは、核酸分子又はヌクレオチド配列に作用可能に連結されたプロモーター、任意選択的にEF-1プロモーターを更に含む。幾つかの実施態様では、ベクターはインビトロ転写ベクターである。幾つかの実施態様では、核酸分子又はヌクレオチド配列は、ポリアデニル化シグナル及び/又はポリ(A)テールを更に含み、及び/又はコードする。幾つかの実施態様では、ベクター内の核酸分子又はヌクレオチド配列は、3’-UTRを更に含む。
【0107】
従って、幾つかの実施態様では、本開示の主題は、本開示の主題のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含むベクターを提供し、CARは、TAA又はそのエピトープに結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、CD28の共刺激シグナル伝達ドメイン、及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。幾つかの実施態様では、抗原結合ドメインは、TAA又はそのエピトープに結合する抗体又はその断片である。
【0108】
本開示の主題の幾つかの実施態様では、ベクターは宿主細胞内に存在する。幾つかの実施態様では、宿主細胞はヒトT細胞、任意選択的にCD8T細胞である。
【0109】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、ここに開示される抗TAA CARを発現する細胞を作製するための方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、ここに開示される抗TAA CARをコードするベクターをT細胞に形質導入することを含む。
【0110】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、RNA改変細胞の集団を作製するための方法をまた提供し、これは、幾つかの実施態様では、インビトロ転写されたRNA又は合成RNAを細胞内に導入することを含み、ここで、RNAは、本開示の主題の抗TAA CAR分子をコードする核酸を含む。
【0111】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、CARをコードする核酸をインビボで発現させるための方法をまた提供する。
【0112】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、がんと診断されたヒト又は他の哺乳動物において遺伝子改変T細胞の持続集団を作製するための方法を提供する。幾つかの実施態様では、本開示の方法は、TAA又はそのエピトープに結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達ドメインを含む共刺激シグナル伝達領域、及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むCARを発現するように遺伝子改変されたT細胞をヒト又は他の哺乳動物に投与することを含み、遺伝子改変T細胞の持続集団は、投与後少なくとも1か月間ヒト内で持続する。幾つかの実施態様では、遺伝子改変T細胞の持続集団は、ヒト及び/又はその子孫細胞に投与された少なくとも一つのT細胞を含む。幾つかの実施態様では、遺伝子改変T細胞の持続集団はメモリーT細胞を含む。幾つかの実施態様では、遺伝子改変T細胞の持続集団は、ヒトにおいて投与後少なくとも3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、2年、又は少なくとも3年持続する。幾つかの実施態様では、がんは胃関連がんであり、幾つかの実施態様では、がんは線維化を特徴とするがんである。
【0113】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、がんと診断されたヒト又は他の哺乳動物において遺伝子改変T細胞の集団を増殖させるための方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、tTAA又はそのエピトープに結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達ドメインを含む共刺激シグナル伝達領域、及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むCARを発現するように遺伝子改変されたT細胞をヒト又は他の哺乳動物に投与することを含み、投与された遺伝子改変T細胞が、ヒトにおいて子孫T細胞の集団を産生する。幾つかの実施態様では、ヒトの子孫T細胞はメモリーT細胞を含む。幾つかの実施態様では、ヒトに投与されるT細胞は自己T細胞である。幾つかの実施態様では、子孫T細胞の集団は、ヒトにおいて投与後少なくとも3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、2年間、又は少なくとも3年持続する。
【0114】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、T細胞によって分泌されるサイトカインの量を調節するための方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、本開示の主題のCARを発現するようにT細胞を遺伝子改変することを含む。幾つかの実施態様では、T細胞によって分泌されるサイトカインの量は、インビボ、インビトロ、又はエクスビボで制御性T細胞の増殖を減少させる。
【0115】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、T細胞への活性化誘導性カルシウム流入の量を減少させるための方法を提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、本開示の主題のCARを発現するようにT細胞を遺伝子改変することを含む。幾つかの実施態様では、T細胞への活性化誘導性カルシウム流入の量を減少させることにより、インビボ、インビトロ、又はエクスビボでのT細胞の活性化誘導性細胞死が防止される。
【0116】
IV.CARを用いる治療及び/又は予防のための方法
本開示の主題は、望ましくないガストリン発現及び/又は生物学的活性、並びに/或いは線維化に関連する疾患、状態、又は障害を治療及び/又は予防するための方法をまた提供し、線維化は、幾つかの実施態様では、本開示の主題の治療用組成物への細胞、組織、又は器官のアクセスを阻害する線維化でありうる。
【0117】
幾つかの実施態様では、本開示の方法は、哺乳動物、任意選択的にヒトに抗腫瘍及び/又は抗がん治療を提供することに関する。幾つかの実施態様では、本開示の方法は、本開示の主題のCAR分子を発現する細胞の有効量を哺乳動物又はヒトに投与することを含む。CAR分子を発現する細胞は、幾つかの実施態様では自己T細胞であり得、幾つかの実施態様では、細胞は同種T細胞である。
【0118】
本開示の主題の方法はまた、疾患、状態、又は障害を有する哺乳動物、任意選択的にヒトの治療に関し、本方法は、本開示の主題のCAR分子を含む細胞の有効量を哺乳動物に投与することを含む。幾つかの実施態様では、疾患、状態、又は障害は、がん又は悪性腫瘍などの増殖性疾患、又は骨髄形成異常、骨髄異形成症候群、又は前白血病などの前がん状態から選択されるか、又はガストリンの異常な発現又は線維化に起因するか又は関連した異常なガストリンシグナル伝達に関連する非がん関連適応症である。幾つかの実施態様では、ガストリン関連疾患、状態、又は障害は、ガストリン又はその受容体を発現する腫瘍又はがんであり、例えば、限定されないが、結腸腫瘍及び/又はがん、胃腫瘍及び/又はがん、膵臓腫瘍及び/又はがん、甲状腺腫瘍及び/又はがん、肺腫瘍及び/又はがん、肝細胞腫瘍及び/又はがん、並びに食道腫瘍及び/又はがんである。
【0119】
幾つかの実施態様では、CAR分子を発現する細胞は、CAR分子を発現する細胞の投与に関連した一又は複数の副作用を改善する薬剤の投与をまた含む併用療法の一部として投与される。
【0120】
本開示の主題はまた、ヒト患者の固形腫瘍、任意選択的に線維性腫瘍微小環境に関連する固形腫瘍を治療するための方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、抗腫瘍有効量の改変ヒトT細胞、任意選択的に改変自己T細胞の集団を含む薬学的組成物をヒト患者に投与することを含み、ここで、T細胞は、本開示の主題のCARをコードする核酸配列を含む。幾つかの実施態様では、CARは、TAA又はそのエピトープに結合する抗原結合ドメイン、任意選択的にヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、CD28共刺激シグナル伝達領域、及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。幾つかの実施態様では、T細胞の抗腫瘍有効量は、ヒト患者の体重1kg当たり10から10細胞である。幾つかの実施態様では、T細胞の抗腫瘍有効量は、ヒト患者の体重1kg当たり10から10細胞である。幾つかの実施態様では、抗原結合ドメインは、TAA又はそのエピトープに結合する抗体又はその断片である。幾つかの実施態様では、抗原結合断片は、Fab断片又はscFvを含む。幾つかの実施態様では、改変T細胞は、ヒト患者においてインビボで複製し、及び/又はヒト患者においてメモリーT細胞を形成する。幾つかの実施態様では、改変T細胞はヒト患者に静脈内投与される。幾つかの実施態様では、改変T細胞は、ヒト患者において、任意選択的に投与後、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、又は36か月間、持続する。
【0121】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、哺乳動物、任意選択的にヒトにおける標的細胞集団又は組織に対するT細胞媒介免疫応答を刺激するための方法にまた関する。幾つかの実施態様では、本方法は、CARを発現するように遺伝子改変された細胞の有効量を哺乳動物に投与することを含み、CARは、TAA又はそのエピトープに結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達ドメインを含む共刺激シグナル伝達領域、及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。
【0122】
幾つかの実施態様では、哺乳動物において抗腫瘍免疫を誘導するための方法は、CARを発現するように遺伝子改変された細胞の有効量を哺乳動物に投与することを含み、CARは、TAA又はそのエピトープに結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達ドメインを含む共刺激シグナル伝達領域、及びCD3ゼータシグナル伝達を含み、それによって哺乳動物において抗腫瘍免疫を誘導する。
【0123】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、TAA又はそのエピトープの発現に関連する疾患、障害、又は状態を有する哺乳動物を治療するための方法にまた関する。幾つかの実施態様では、本方法は、TAA又はそのエピトープに結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達ドメインを含む共刺激シグナル伝達領域、及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むCARを発現するように遺伝子改変された細胞の有効量を哺乳動物に投与することを含み、それによって哺乳動物を治療する。幾つかの実施態様では、細胞は自己T細胞である。
【0124】
本開示の主題は、幾つかの実施態様では、がんを有するヒトを治療する方法にまた関する。幾つかの実施態様では、本方法は、TAA又はそのエピトープに結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達ドメインを含む共刺激シグナル伝達領域、及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むCARを発現するように遺伝子改変されたT細胞をヒトに投与することを含む。
【0125】
V.薬学的組成物
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、幾つかの実施態様では、本開示の主題の方法において用いることができる薬学的組成物を提供する。
【0126】
ここで使用される場合、「薬学的組成物」とは、薬学的組成物がそれを必要とする対象に投与される治療又は他の方法の一部として用いられることになる組成物を指す。幾つかの実施態様では、それを必要とする対象は、その少なくとも一つの症状、特徴、又は結果が、腫瘍及び/又はがん及び/又はそれに関連する細胞に直接的及び/又は間接的に作用する薬学的組成物の生物学的活性のためが少なくとも部分的に改善されることが期待される腫瘍及び/又はがんを有する対象である。
【0127】
薬学的組成物を調製するための技術は当該技術分野で知られており、幾つかの実施態様では、薬学的組成物は、薬学的組成物が投与されることになる対象に基づいて製剤化される。例えば、幾つかの実施態様では、薬学的組成物はヒト対象に使用するために製剤化される。従って、幾つかの実施態様では、薬学的組成物はヒトでの使用のために薬学的に許容される。
【0128】
幾つかの実施態様における本開示の主題の薬学的組成物は、ガストリンペプチド及び/又はCCK-B受容体に対する能動及び/又は受動体液性免疫応答を誘導及び/又は提供する第一の薬剤;並びに免疫チェックポイント阻害剤(CPI)を含む。幾つかの実施態様では、第一の薬剤は、ガストリンペプチド、抗ガストリン抗体、及び抗CCK-R抗体からなる群から選択される。幾つかの実施態様では、第一の薬剤は、ガストリンペプチド、任意選択的に、EGPWLEEEEE(配列番号:1)、EGPWLEEEE(配列番号:2)、EGPWLEEEEEAY(配列番号:3)、及びEGPWLEEEEEAYGWMDF(配列番号:4)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるガストリンペプチドを含む。幾つかの実施態様では、配列番号:1~4の何れかのアミノ酸位置1のグルタミン酸残基は、ピログルタミン酸残基である。幾つかの実施態様では、ガストリンペプチドは免疫原性担体にコンジュゲートされ、任意選択的に、免疫原性担体は、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、キーホールリンペットヘモシアニン、及びウシ血清アルブミンからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、ガストリンペプチドはリンカーを介して免疫原性担体にコンジュゲートされ、任意選択的にリンカーはε-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンアミドエステルを含む。
【0129】
幾つかの実施態様では、リンカーとガストリンペプチドとは、アミノ酸スペーサーによって分離されており、任意選択的に、アミノ酸スペーサーは、1から10アミノ酸長であり、更に任意選択的に、アミノ酸スペーサーは、7アミノ酸長である。
【0130】
体液性免疫応答を誘発するように設計された本開示の主題の薬学的組成物は、幾つかの実施態様では、アジュバント、任意選択的に油性アジュバントを更に含みうる。例示的なアジュバントには、限定されないが、モンタニドISA-51(Seppic,Inc.);QS-21(Aquila Pharmaceuticals,Inc.);アルラセルA;オレイン酸;破傷風ヘルパーペプチド;GM-CSF;シクロホスアミド;カルメットゲラン桿菌(BCG);コリンバクテリウム・パルバム(corynbacterium parvum);レバミゾール、アジメゾン(azimezone);イソプリニゾン(isoprinisone);ジニトロクロロベンゼン(DNCB);フロイントアジュバント(完全及び不完全)を含むキーホールリンペットヘモシアニン(KLH);ミネラルゲル;水酸化アルミニウム(ミョウバン);リゾレシチン;プルロニックポリオール;ポリアニオン;ペプチド;油エマルジョン;核酸(例えば、dsRNA)ジニトロフェノール;ジフテリア毒素(DT);トール様受容体(TLR、例えば、TLR3、TLR4、TLR7、TLR8又はTLR9)アゴニスト(例えば、エンドトキシン、例えばリポ多糖類(LPS);モノホスホリルリピドA(MPL);ポリイノシン・ポリシチジン酸(ポリ-ICLC/HILTONOL(登録商標);Oncovir,Inc.,Washington,DC,United States of America);IMO-2055、グルコピラノシルリピドA(GLA)、QS-21-キラヤサ科シャボンノキ樹皮から抽出されたサポニン(ソープバーク木又はソープバークとしても知られる);レシキモド(TLR7/8アゴニスト)、CDX-1401-融合タンパク質でNY-ESO-1腫瘍抗原に結合した樹状細胞受容体DEC-205に対して特異性を有する完全ヒトモノクローナル抗体からなる;Juvarisのカチオン性脂質DNA複合体;Vaxfectin;並びにそれらの組み合わせが含まれる。
【0131】
本開示の薬学的組成物の幾つかの実施態様では、第一の薬剤は、EGPWLEEEEE(配列番号:1)、EGPWLEEEE(配列番号:2)、EGPWLEEEEEAY(配列番号:3)、及びEGPWLEEEEEAYGWMDF(配列番号:4)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、抗ガストリン体液性応答を誘導するのに有効な量のガストリンペプチドを含み、第二の薬剤は、ガストリン関連腫瘍又はがんを有する対象に投与されると、ガストリン関連腫瘍又はがんに対する細胞性免疫応答を誘導し又は促進するのに有効な量の免疫療法分子を含む。
【0132】
本開示の薬学的組成物の幾つかの実施態様では、第一の薬剤は、一つ又は複数の抗CCK-B受容体抗体を含み、ガストリン関連腫瘍又はがんを有する対象に投与されると、ガストリン関連腫瘍又はがん上に存在するCCK-B受容体を介したガストリンシグナル伝達を低減し又は阻害するのに十分な量で薬学的組成物中に存在する。
【0133】
本開示の主題の薬学的組成物は、幾つかの実施態様では、ガストリン関連腫瘍及び/又はがんを治療するために用いられる。幾つかの実施態様では、本開示の主題の薬学的組成物は、膵臓がんを治療することを意図する。
【0134】
ここに記載の組成物は、幾つかの実施態様では、薬学的に許容される担体を含む組成物を含む。適切な製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、殺菌性抗生物質、及び製剤を意図されるレシピエントの体液と等張にする溶質を含みうる水性及び非水性の滅菌注射液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含みうる水性及び非水性の滅菌懸濁液が含まれる。幾つかの実施態様では、本開示の主題の製剤は、アジュバント、任意選択的に油性アジュバントを含む。
【0135】
本方法で使用される組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルジョンなどの形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの配合剤を含みうる。本方法で使用される組成物は、限定されないが、口周囲、静脈内、腹腔内、筋肉内、及び腫瘍内製剤を含む形態をとることができる。或いは、又は加えて、有効成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)で構成するための粉末形態でありうる。
【0136】
製剤は、単位用量又は複数回用量の容器、例えば密封されたアンプル及びバイアルで提供することができ、使用直前に滅菌液体担体を添加することだけを必要とする凍結又はフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。
【0137】
経口投与の場合、組成物は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);フィラー(例えば、乳糖、微結晶セルロース又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される添加物を用いて一般的な技術によって調製される、例えば錠剤又はカプセルの形態をとることができる。錠剤は、当該技術分野で知られている方法によってコーティングされうる。例えば、向神経活性ステロイドは、ヒドロクロロチアジドと組み合わせて、結腸に到達するまで向神経活性ステロイドを保護する腸溶性又は遅延放出コーティングを有するpH安定化コアとして製剤化することができる。
【0138】
経口投与用の液体製剤は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形態をとることができ、或いは使用前に水又は他の適切なビヒクルで構成するための乾燥品として提供されうる。そのような液体製剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素添加食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール又は分別植物油);及び保存料(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル、又はソルビン酸)などの薬学的に許容される添加物を用いて一般的な技術によって調製することができる。製剤は、必要に応じて、緩衝塩、香味料、着色料、及び甘味料をまた含みうる。経口投与用の製剤は、活性化合物の制御放出をもたらすように適切に製剤化することができる。頬側投与の場合、組成物は一般的な方法で製剤化された錠剤又はトローチ剤の形態をとることができる。
【0139】
化合物はまた、移植又は注射用の製剤として製剤化することもできる。従って、例えば、化合物は、適切な高分子材料又は疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂を用いて、又は難溶性誘導体として(例えば、難溶性塩として)製剤化することができる。
【0140】
化合物はまた、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、又は水中油中水型エマルジョンとして投与される油中に製剤化することもできる。
【0141】
化合物はまた、直腸用組成物(例えば、ココアバター又は他のグリセリドなどの一般的な坐剤基剤を含む坐剤又は停留浣腸)、クリーム又はローション、又は経皮パッチに製剤化することもできる。
【0142】
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、ヒトでの使用に薬学的に許容される組成物を用いる。当業者ならば、ヒトでの使用に薬学的に許容される組成物中に存在することができる成分の性質と、またヒトでの使用に薬学的に許容される組成物からどの成分を除外すべきかを理解している。
【0143】
ここで使用される場合、「治療有効量」、「治療的に有効な量」、「治療量」、及び「有効量」という語句は互換的に使用され、測定可能な応答(例えば、治療対象における生物学的又は臨床的に関連する応答)を得るのに十分な治療組成物の量を指す。本開示の主題の薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、特定の対象に対して所望の治療応答を達成するのに有効な量の活性化合物を投与するように変えることができる。選択される投薬量レベルは、治療用組成物の活性、投与経路、他の薬物又は治療との組み合わせ、治療される状態の重症度、治療対象の状態及び以前の病歴などに依存しうる。しかしながら、所望の治療効果を達成するのに必要なレベルよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることは、当業者の技量の範囲内である。治療組成物の効力は変動する場合があり、故に「治療的に有効な量」は変わりうる。しかしながら、当業者であれば、本開示の主題の候補修飾薬の効力及び有効性を容易に評価し、それに応じて治療計画を調整することができる。
【0144】
本開示の主題のここでの開示を検討した後、当業者であれば、特定の製剤、組成物と共に使用される投与方法、及び他の要因を考慮して、個々の対象に合わせて投薬量を調整することができる。用量の更なる計算では、対象の身長と体重、症状の重症度と段階、及び追加の有害な健康状態の存在を考慮することができる。そのような調整又は変更、並びにそのような調整又は変更をいつどのように行うかの評価は、医療分野の当業者にはよく知られている。
【0145】
従って、幾つかの実施態様では、「有効量」という用語は、測定可能な抗腫瘍及び/又は抗がん生物活性をもたらすのに十分な、ガストリンペプチドに対して体液性又は細胞性免疫応答を提供し及び/又は誘導する薬剤を含み、並びに或いはガストリン遺伝子産物の発現を阻害する核酸、その薬学的に許容される塩、その誘導体、又はそれらの組み合わせを含む組成物の量を指すためにここで使用される。本開示の主題の組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、特定の対象及び/又は用途に対して所望の応答を達成するのに有効な量の活性化合物を投与するように変更することができる。選択される投薬量レベルは、組成物の活性、製剤、投与経路、他の薬物又は治療との組み合わせ、治療される状態の重症度、治療される対象の健康状態及び以前の病歴を含む様々な要因に依存しうる。幾つかの実施態様では、最小用量が投与され、用量制限毒性の非存在下で用量が最小有効量まで増量される。有効用量の決定及び調整、並びにそのような調整をいつどのように行うかの評価は、当業者に知られている。
【0146】
ここに開示される組成物の投与では、マウス動物モデルに投与される用量に基づいてヒト投薬量を推定する一般的な方法を、当業者に知られている技術を使用して実施することができる。この方法では、体重ではなく、所定の代謝及び排泄機能と良好な相関関係が得られるため、薬物用量を体表面積1平方メートル当たりのミリグラムで与えることもできる。更に、体表面積は、Freireich等,1966に記載されているように、成人と小児、並びに様々な動物種の薬物投与量の共通の分母として使用できる。簡単に言えば、任意の所与の種におけるmg/kg用量を等価mg/m用量として表すためには、その用量に適切なkm係数を掛ける。ヒト成人の場合、100mg/kgは100mg/kg×37kg/m=3700mg/mに等価である。
【0147】
処方と用量に関する追加のガイダンスについては、米国特許第5326902号;第5234933号;PCT国際公開第WO93/25521号;Remington等,1975;Goodman等,1996;Berkow等,1997;Speight及びHoldford,1997;Ebadi,1998;Duch等,1998;Katzung,2001;Gerbino,2005を参照のこと。
【0148】
本開示の組成物は、任意の投与形態及び/又は任意の投与経路によって対象に投与することができる。幾つかの実施態様では、製剤は、徐放性製剤、制御放出製剤、又は徐放及び制御放出の両方のために設計された製剤である。ここで使用される場合、「徐放」という用語は、ほぼ一定量の活性薬剤が時間の経過と共に対象に利用可能になるような活性薬剤の放出を指す。「制御放出」という語句はより広範で、一定レベルである場合もそうでない場合もある、経時的な活性薬剤の放出を指す。特に、「制御放出」は、活性成分が必ずしも一定速度で放出されるわけではない状況及び製剤を包含するが、経時的に放出を増加させること、経時的に放出を減少させること、及び/又は増加放出、減少放出、又はそれらの組み合わせの一又は複数の期間を伴う一定の放出を含みうる。従って、「徐放」は「制御放出」の一形態であるが、後者には、異なる時間に送達される活性薬剤の量の変化を利用する送達様式も含まれる。
【0149】
幾つかの実施態様では、徐放性製剤、制御放出製剤、又はそれらの組み合わせは、経口(oral)製剤、経口(peroral)製剤、頬側製剤、経腸製剤、経肺製剤、直腸製剤、膣製剤、経鼻製剤、舌製剤、舌下製剤、静脈内製剤、動脈内製剤、心臓内製剤、筋肉内製剤、腹腔内製剤、経皮製剤、頭蓋内製剤、皮内製剤、皮下製剤、エアロゾル化製剤、眼用製剤、移植可能な製剤、デポ注射製剤、経皮製剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。幾つかの実施態様では、投与経路は、経口(oral)、経口(peroral)、頬側、経腸、肺、直腸、膣、鼻、舌、舌下、静脈内、動脈内、心臓内、筋肉内、腹腔内、経皮、頭蓋内、皮内、皮下、眼、インプラント経由、及びデポ注射経由からなる群から選択される。適用可能な場合、連続注入は標的部位での薬物の蓄積を高めることができる(例えば、米国特許第6180082号を参照)。経皮製剤及び組成物の送達方法に関して、米国特許第3598122号;第5016652号;第5935975号;第6106856号;第6162459号;第6495605号;及び第6582724号;並びに米国特許出願公開第2006/0188558号をまた参照のこと。幾つかの実施態様では、投与は、経口、静脈内、腹腔内、吸入、及び腫瘍内からなる群から選択される経路を介してなされる。
【0150】
ここに開示された方法に従って使用される、本開示の主題の組成物の特定の投与様式は、限定されないが、用いられる製剤、治療される状態の重症度、組成物中の活性薬剤(例えば、PAS)が局所的又は全身的に作用することが意図されているかどうか、投与後の活性薬剤の代謝又は除去の機構を含む様々な要因に依存しうる。
【0151】
VI.方法と使用
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、ガストリン関連腫瘍及び/又はがんの治療、ガストリン関連腫瘍及び/又はがんを治療するための医薬の製造、ガストリン関連腫瘍及び/又はがんの増殖の阻害、ガストリン関連腫瘍及び/又はがんに対する体液性及び/又は細胞性免疫反応の誘導及び/又は促進、腫瘍及び/又はがんに対する細胞性免疫応答の誘導剤に対する対象におけるガストリン及び/又はCCK-B受容体シグナル伝達に関連する腫瘍及び/又はがんの感作、特に膵臓がんの観点での腫瘍及び/又はがんに関連する線維化の形成の予防、軽減、及び/又は排除;ガストリン関連腫瘍及び/又はがんの転移の予防、軽減、及び/又は排除;腫瘍及び/又はがんにおける腫瘍浸潤CD8リンパ球の数の増加;腫瘍及び/又はがんに存在するFoxP3抑制性T制御細胞の数の低減;及びガストリン関連腫瘍及び/又はがんに応答する対象におけるTEMRA細胞の数の増加に関連した様々な方法及び/又は使用の観点で薬学的組成物を用いることに関する。これらの方法及び/又は使用のそれぞれを、ここで以下に更に詳細に記載する。
【0152】
VI.A.ガストリン関連腫瘍及び/又はがんを治療するための方法
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、ガストリン関連腫瘍及び/又はがんを治療するための方法に関する。幾つかの実施態様では、本方法は、それを必要とする対象(例えば、ガストリン関連腫瘍及び/又はがんを有する対象)に、ガストリンペプチド及び/又はCCK-B受容体に対して能動及び/又は受動体液性免疫応答を誘導及び/又は提供する第一の薬剤と;ガストリン関連腫瘍又はがんに対する細胞性免疫応答を誘導及び/又は提供する第二の薬剤とを含む有効量の組成物を投与することを含む。従って、幾つかの実施態様における本開示の方法は、ガストリンペプチド及び/又はCCK-B受容体に対する能動及び/又は受動体液性免疫応答の提供及び/又は誘導と、ガストリン関連腫瘍及び/又はがんに対する細胞性免疫応答の誘導及び/又は提供という二つの異なる免疫治療活性を一緒に提供する一つ又は複数の活性薬剤を有する薬学的組成物の使用に依存する。
【0153】
ガストリンペプチド及び/又はCCK-B受容体に対する能動及び/又は受動体液性免疫応答の提供及び/又は誘導に関して、本開示の主題の薬学的組成物中に存在する第一の薬剤は、ガストリンに対する能動体液性応答を誘導するように設計されたガストリンペプチド、並びに/或いはガストリン及び/又はCCK-B受容体、幾つかの実施態様では、ガストリン関連腫瘍及び/又はがん上に存在するCCK-B受容体に対して受動体液性応答を提供するように設計された抗ガストリン抗体及び/又は抗CCK-R抗体からなる群から選択される。如何なる特定の作用理論にも束縛されることは望まないが、ガストリンペプチド及び/又はCCK-B受容体に対する能動及び/又は受動体液性免疫応答は、対象に存在する循環ガストリンの量を減少させることによりCCK-B受容体へのガストリン結合を減少させることにより、並びに/或いは中和及び/又は遮断抗体を用いてCCK-B受容体へのガストリンの結合を妨害することにより、CCK-B受容体を介してガストリン関連腫瘍及び/又はがんにおけるガストリンシグナル伝達を部分的又は完全に阻害するように設計されている。
【0154】
従って、幾つかの実施態様では、第一の薬剤は、ガストリンペプチド、任意選択的に、EGPWLEEEEE(配列番号:1)、EGPWLEEEE(配列番号:2)、EGPWLEEEEEAY(配列番号:3)、及びEGPWLEEEEEAYGWMDF(配列番号:4)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるガストリンペプチドを含み、配列番号:1~4の何れかのアミノ酸位置1のグルタミン酸残基はピログルタミン酸残基である。幾つかの実施態様では、ガストリンペプチドは、薬学的組成物中で、免疫原性担体に、任意選択的にリンカー、更に任意選択的にε-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンアミドエステルを含むリンカーを介して、コンジュゲートされる。免疫原性担体の非限定的な例には、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、キーホールリンペットヘモシアニン、及びウシ血清アルブミンが含まれる。第一の薬剤の構造はここで前により詳細に記載しているが、幾つかの実施態様では、リンカーとガストリンペプチドはアミノ酸スペーサーによって分離され、任意選択的にアミノ酸スペーサーは1から10アミノ酸長であり、更に任意選択的にアミノ酸スペーサーは7アミノ酸長である。
【0155】
この開示を考慮すれば当業者には理解されるように、幾つかの実施態様では、薬学的組成物は、能動抗ガストリン体液性免疫応答が望まれる場合にガストリンペプチド及び/又はガストリンペプチドコンジュゲートの免疫原性を促進するために、アジュバント、任意選択的に油性アジュバントを更に含む。
【0156】
幾つかの実施態様では、ガストリン関連腫瘍又はがんに対する細胞性免疫応答を誘導するために、本開示の主題の方法は、CAR及び/又はCAR-T細胞を含む薬学的組成物を用い、ここで、CARは、TAA、CAA、又はそのエピトープに結合する。例示的なTAA/CAAには、限定されないが、クローディン18.2(GENBANK(登録商標)受入番号NP_001002026.1;胃及び膵臓がんによって発現;抗クローディン18.2CARの考察については、PCT国際特許出願公開第2020/135674号、米国特許出願公開第20180233511号、及び米国特許第10377822号を参照)、グリピカン-3(GENBANK(登録商標)受入番号NP_001158089.1;肝臓がんで発現;抗グリピカン-3CARの考察については、米国特許出願公開第2017/0369561号及び第2019/0046659号を参照)、メソテリン(GENBANK(登録商標)受入番号NP_005814.2;膵臓がんで発現;抗メソテリンCARの考察については、米国特許第9272002号及び米国特許出願公開第2018/0244796号を参照)、癌胎児性抗原(CEA;GENBANK(登録商標)受入番号Q13982-1、胃がん、結腸がん、及び肝転移で発現;抗CEA CARの考察については米国特許出願公開第2017/0145095号を参照)、前立腺幹細胞抗原(PSCA;GENBANK(登録商標)受入番号NP_005663.2、膵臓がんで発現;抗PSCA CARの考察については米国特許出願公開第2020/0140520号を参照)、及びCD70抗原(GENBANK(登録商標)受入番号NP_001243.1、膵臓がんによって発現;抗CD70 CARの考察については米国特許出願公開第2018/0230224号を参照)が含まれる。様々なTAA及び/又はCAAに結合するCARは、中国、hsanghaiのCARsgen Therapeutics(例えば、胃及び膵臓腫瘍及びがんに対するクローディン18.2を標的とするCAR)、テキサス州ヒューストンのKuur Therapeutics(例えば、肝臓腫瘍及びがんのグリピカン3を標的とするCAR)、ペンシルベニア大学(例えば、膵臓腫瘍及びがんについてメソテリンを標的とするCAR)、カリフォルニア州サンディエゴのSorrento Therapeutics社(例えば、胃、結腸、及び膵臓腫瘍及びがん、及び肝転移のCEAを標的とするCAR)、テキサス州ヒューストンのBellicum Pharmaceuticals(例えば、膵臓腫瘍及びがんのPSCAを標的とするCAR)、並びに国立がん研究所(NCI;例えば、CD70膵臓腫瘍及びがんを標的とするCAR)を含む様々な供給源によって市販されており、並びに/或いは開発中である。
【0157】
幾つかの実施態様では、本開示の主題の組成物及び方法は、一つ又は複数のチェックポイント阻害剤を用いることができる。知られているように、チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント活性を有する標的ポリペプチドの一つ又は複数の生物学的活性を阻害する。例示的なそのようなポリペプチドには、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)ポリペプチド、プログラム細胞死1受容体(PD-1)ポリペプチド、及びプログラム細胞死1受容体リガンド(PD-L1)ポリペプチドが含まれる。幾つかの実施態様では、チェックポイント阻害剤は、PD-1ポリペプチドとPD-L1ポリペプチドとの間の相互作用を阻害し又は防止することによって、結合し、T細胞と腫瘍細胞との間の相互作用を妨害する抗体又は小分子を含む。例示的なそのような抗体及び小分子の例には、限定されないが、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、ペムブロリズマブ、AMP514、AUNP12、BMS-936559/MDX-1105、アテゾリズマブ、MPDL3280A、RG7446、RO5541267、MEDI4736、アベルマブ及びデュルバルマブが含まれる。
【0158】
本開示の主題の薬学的組成物は、体液性応答と細胞性応答の両方が対象において誘導及び/又は提供されることを条件として、様々な量の各活性薬剤を含み得、薬学的組成物中に存在する各薬剤の量を、治療の有効性を最大化し、及び/又は治療の望ましくない副作用を最小限に抑えるため調整することができる。しかしながら、幾つかの実施態様では、本開示の主題の薬学的組成物は、約50μgから約1000μg、約50μgから約500μg、約100μgから約1000μg、約200μgから約1000μg、及び約250μgから約500μgからなる群から選択される用量で投与され、任意選択的に、その投与は、一回、二回、又は三回繰り返され、任意選択的に、二回目の用量は、初回投与の1週間後に投与され、三回目の用量は、投与されるならば、二回目の投与から1週間又は2週間後に投与される。
【0159】
幾つかの実施態様では、本開示の主題のガストリン関連腫瘍及び/又はがんを治療するための方法は、それを必要とする対象に、腫瘍/又はがんにおけるガストリンの一つ又は複数の生物学的活性を直接的又は間接的に阻害する第一の薬剤と、腫瘍及び/又はがんに対する細胞性免疫応答の刺激剤を含む第二の薬剤とを投与することを含む。而して、幾つかの実施態様では、第一の薬剤は、ガストリンペプチドに対する体液性免疫応答を提供及び/又は誘導することによって、腫瘍及び/又はがんにおけるガストリンの一つ又は複数の生物学的活性を直接的又は間接的に阻害し、任意選択的に、薬剤は、抗ガストリン抗体及び対象において中和抗ガストリン抗体の産生を誘導するガストリンペプチドからなる群から選択され;並びに/或いはガストリン遺伝子産物の発現を阻害する核酸を含む。ガストリン遺伝子産物の発現を阻害する核酸は、この開示を考慮すれば当業者には理解されるであろうし、例はここで上で検討している。幾つかの実施態様では、第一の薬剤は、第二の薬剤への腫瘍及び/又はがんのアクセスを促進し、幾つかの実施態様では、第二の薬剤は、限定されないが、抗腫瘍及び/又は抗がん免疫療法分子、例えば限定されないが、TAA及び/又はCAAに結合するCAR、並びに/或いは抗腫瘍及び/又は抗がんCARを含むCAR-T細胞である。
【0160】
抗ガストリン抗体は当該技術分野で知られており、米国特許第5607676号、第5609870号;第5622702号;第5785970号;第5866128号;及び第6861510号に記載されている。PCT国際特許出願国際公開第2003/005955号及び国際公開第2005/095459号をまた参照のこと。これらの米国特許及びPCT国際特許出願公開公報のそれぞれの内容は、その全体がここに援用される。幾つかの実施態様では、抗ガストリン抗体は、ガストリン17(G17)内に存在するエピトープに対する抗体である。幾つかの実施態様では、エピトープは、アミノ酸配列EGPWLEEEEE(配列番号:1)、EGPWLEEEE(配列番号:2)、EGPWLEEEEEAY(配列番号:3)、及びEGPWLEEEEEAYGWMDF(配列番号:4)のうちの一つ又は複数の中に存在する。
【0161】
幾つかの実施態様では、本開示の主題の薬学的組成物の対象への投与は、膵臓がんに関連する線維化(線維症)の減少を誘導し、及び/又はその発症を予防する。
【0162】
幾つかの実施態様では、本開示の治療方法は、対象におけるガストリン関連腫瘍及び/又はがんの増殖及び/又は生存を阻害するように設計される。従って、幾つかの実施態様では、本開示の方法は、ガストリン免疫原、一つ又は複数の抗ガストリン抗体、一つ又は複数の抗CCK-B受容体抗体、又はそれらの任意の組み合わせを含む第一の薬剤と;チェックポイント阻害剤を含む第二の薬剤を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0163】
従って、幾つかの実施態様では、本開示の主題は、ガストリン関連腫瘍及び/又はがんを治療する医薬の調製のためのここに開示される薬学的組成物の使用、並びにガストリン関連腫瘍及び/又はがんを治療するためのここに開示される薬学的組成物の使用を提供する。
【0164】
幾つかの実施態様では、ここに開示される多剤薬学的組成物は、同様の対象を何れかの薬剤で個別に治療する場合よりも、ガストリン関連腫瘍及び/又はがんの促進された、より効果的な、及び/又はより成功した治療をもたらす。
【0165】
VI.B.ガストリン関連腫瘍及び/又はがんへの免疫療法分子のアクセスを誘導及び/又は促進するための方法
PASは腫瘍微小環境(TME)を変化させ、免疫ベース療法を受けやすくすることが示されている。PAS療法は線維化を低減し、腫瘍関連マクロファージを腫瘍促進(M2)マクロファージから腫瘍死滅(M1)マクロファージに再分極させ、腫瘍浸潤リンパ球(CD8)の数を増加させる。固形腫瘍におけるCAR T細胞の有効性の欠如は、CAR T細胞の流入を妨げるTMEのこれらの特徴に関連していると提案されている。我々は、PASを加えると、CAR T細胞の浸透と固形腫瘍を有するその細胞の治療におけるその有効性を向上させると考える。我々は、膵臓がんに重点を置いて、GIがんにおけるCAR T細胞療法の促進におけるPASの役割を試験することを提案する。
【0166】
従って、幾つかの実施態様では、本開示の主題は、対象におけるガストリン関連腫瘍及び/又はがんへの免疫療法分子のアクセスを誘導及び/又は促進するための方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、本方法は、ガストリン関連腫瘍又はがんを有する対象に、ガストリン関連腫瘍又はがん上に存在するCCK-B受容体を介してガストリンシグナル伝達を低減又は阻害する薬剤を含む有効量の組成物を投与することを含み、それにより、対象のガストリン関連腫瘍及び/又はがんへの免疫療法分子のアクセスが促進される。
【0167】
ここで使用される場合、「免疫療法分子」という語句は、個体において少なくとも一つの治療効果を達成するのに十分な免疫応答を生成し及び/又はそれに寄与する任意の分子を指す。幾つかの実施態様では、免疫療法分子は、腫瘍及び/又はがん関連抗原に結合し、腫瘍及び/又はがん関連抗原に対する免疫応答を引き起こす分子である。幾つかの実施態様では、免疫療法分子はキメラ抗原受容体(CAR)であり、これは、幾つかの実施態様では、CAR T細胞の表面に存在する。
【0168】
ここで使用される場合、「ガストリン関連腫瘍及び/又はがんに対する細胞性免疫応答を誘導及び/又は促進する」という語句及びその文法的変形語は、ガストリン関連腫瘍又はがん上に存在するCCK-B受容体を介したガストリンシグナル伝達を低減又は阻害する薬剤を含む有効量の組成物をガストリン関連腫瘍及び/又はがんを有する対象に投与した結果、T細胞ベースの免疫応答のレベルが、投与後の関連時間において対象において、治療がなかった場合に対象に存在していたであろうよりも高い状況を指す。ガストリン関連腫瘍又はがん上に存在するCCK-B受容体を介したガストリンシグナル伝達を減少させ又は阻害する薬剤には、ガストリンペプチドとCCK-B受容体の相互作用を妨害しうるここに開示の薬剤が含まれ、限定されないが、ガストリンペプチド及び/又は免疫原、抗ガストリン抗体、抗CCK-B受容体抗体、ガストリン/CCK-Bシグナル伝達の小分子阻害剤、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0169】
幾つかの実施態様では、本開示の主題はまた、対象におけるガストリン及び/又はCCK-B受容体シグナル伝達に関連する腫瘍及び/又はがんを、腫瘍及び/又はがんに対する細胞性免疫応答の誘導剤に対して感作させるための方法を提供する。ここで使用される場合、「対象におけるガストリン及び/又はCCK-B受容体シグナル伝達に関連する腫瘍及び/又はがんを、細胞性免疫応答の誘導剤に対して感作させる」という語句は、治療がない状態で細胞性免疫応答の一つ又は複数の誘導剤が対象に投与される場合の対象における細胞性免疫応答のレベルと比較して、細胞性免疫応答の一つ又は複数の誘導剤が対象に投与される場合の対象における細胞免疫応答のレベルをもたらす治療を指す。幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがんに対する細胞性免疫応答の誘導剤はCARであり、任意選択的にCARはCAR-T細胞上に存在する。
【0170】
幾つかの実施態様では、本方法は、対象に、ガストリンペプチドに対する能動及び/又は受動体液性免疫応答を誘導及び/又は提供する第一の薬剤と、腫瘍及び/又はがんに対して細胞性免疫反応を誘導及び/又は提供する第二の薬剤、又はそれらの組み合わせを含む組成物であって、任意選択的に、第一の薬剤及び第二の薬剤が、対象における細胞性免疫応答又は中和抗ガストリン抗体の産生を誘導するガストリンペプチド及び/又はその断片及び/又は誘導体並びに中和抗ガストリン抗体及び/又はその断片及び/又は誘導体からなる群から個別に選択される組成物;並びに/或いはガストリン遺伝子産物の発現を阻害する核酸を含む組成物;並びに/或いはCCK-B受容体におけるガストリンの生物学的機能を遮断する薬剤を含む組成物を投与することを含む。幾つかの実施態様では、抗ガストリン抗体は、ガストリン17(G17)内に存在するエピトープに対する抗体である。
【0171】
従って、幾つかの実施態様では、対象におけるガストリン及び/又はCCK-B受容体シグナル伝達に関連する腫瘍及び/又はがんを、細胞性免疫応答の誘導剤に対して感作させるための本方法は、対象におけるガストリンペプチドに対する能動及び/又は受動体液性免疫応答の両方を対象に提供するため、並びに腫瘍及び/又はがんに対する細胞性免疫応答を誘導及び/又は提供するため、ここに開示される薬学的組成物を対象に投与することを含む。
【0172】
VI.C.腫瘍及び/又はがんに関連する線維化を予防、軽減、及び/又は排除するための方法
限定されないが、固形腫瘍、膵臓がんなどを含む、様々な腫瘍及びがんは、緻密な線維化環境をまた特徴とし(Neesse等,2011)、これが血管新生を促進し、腫瘍部位への免疫療法薬の浸透を阻害する可能性のある物理的障壁を作り出す(Templeton及びBrentnall,2013)。ここに開示されるのは、限定されないが、免疫チェックポイント阻害剤を含む一つ又は複数の他の抗腫瘍剤及び/又は抗がん剤と任意選択的に組み合わせてPASを投与すると、固形腫瘍(膵臓がんなど)の特徴である線維化の性質を低減させることができるという予期せぬ驚くべき知見である。如何なる特定の作用理論にも束縛されることは望まないが、線維化の減少は、限定されないがCAR、CAR-T細胞、チェックポイントmAbなどの巨大分子を含む他の活性薬剤のより良好な浸透を促進しうる。これは、おそらく免疫療法分子及び/又はチェックポイントmAbの腫瘍細胞への浸透不足のためである、所定の固形腫瘍及び他のがんが、これまでチェックポイント阻害剤及び他の抗腫瘍/抗がん治療法での治療に対する相対的な非感受性を特徴としてきた理由を部分的に説明している。従って、本開示の主題の一態様は、他の抗腫瘍/抗がん分子(例えば、CAR、免疫チェックポイント阻害剤など)と組み合わせたPASが、単独療法として与えられた場合は別々に抗腫瘍/抗がん活性を有するが、ここに開示されるような併用療法として与えられる場合、それらは遥かに大きな活性を有する。
【0173】
所定の腫瘍及びがんの本質的な線維性の性質に対処し、大きな治療分子(限定されないが、モノクローナル抗体(mAb)、CARなど)の腫瘍環境へのより大なるアクセスを可能にするために有益であるために、本開示の主題に従って、多様ではあるが相補的又は相乗的でさえある作用機序を有する新規で革新的な薬物の組み合わせが提供される。如何なる特定の作用理論にも拘束されることを望まないが、併用療法の一部として一緒に投与される場合、(任意選択的に一つ又は複数の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて)PASとCARは、腫瘍及び/又はがんに関連する線維化を低減させることで、腫瘍及びがんにCAR-T細胞及び/又は免疫チェックポイント阻害薬などの化学療法薬がより到達しやすくなる相乗効果をもたらすことができ、抗腫瘍/抗がん治療薬(例えば、抗腫瘍CAR-T細胞)がガストリン関連腫瘍に対する細胞性免疫応答を誘導できるようになる。
【0174】
PASによる治療は、自己分泌及びパラ分泌の腫瘍/がん増殖因子ガストリンに対する体液性免疫応答(つまり、抗体応答)を生じる。その際、PASは、細胞増殖、アポトーシス、血管新生、浸潤、及び転移に影響を与えることにより、腫瘍/がんの表現型に影響を与える。ここに開示されるように、PASはまた、限定されないがPDACなどの固形腫瘍に関連した線維化を減少させるのにもまた有効である。如何なる特定の作用理論にも束縛されることを望まないが、これは、限定されないが免疫療法分子(例えば、CAR及び免疫チェックポイント阻害性mAb)などの大きな分子の腫瘍部位へのアクセス能力を高めると考えられ、これにより、より大きな細胞免疫効果が促進されることが期待される。PASはまたガストリンに対する細胞性免疫応答も引き起こす。従って、ここに開示されるのは、固有の線維化並びに有効性のために腫瘍及び/又はがんへのアクセスを必要とする治療薬に耐性のある所定の腫瘍及びがんの不応性の性質に対処するために、CAR、CAR-T細胞、並びに/或いは抗PD-1、抗PD-L1、及び/又は抗CTLA-4 mAbなどの免疫チェックポイント阻害剤の投与と組み合わせてPASを投与することにより、腫瘍及び/又はがんを治療するための方法である。
【0175】
従って、幾つかの実施態様では、本開示の主題は、腫瘍及び/又はがんの細胞を、腫瘍及び/又はがんにおけるガストリンの一つ又は複数の生物学的活性を直接的又は間接的に阻害する薬剤と接触させることにより、腫瘍及び/又はがん、任意選択的に膵臓がん及び/又は固形腫瘍に関連する線維化の形成を、予防、軽減、及び/又は排除するための方法を提供する。ガストリンの一つ又は複数の生物学的活性を直接的又は間接的に阻害する薬剤は、ここで上に開示されており、ガストリンペプチドに対して体液性免疫応答を提供し及び/又は誘導する薬剤(限定されないが、抗ガストリン抗体、及び/又はその断片及び/又は誘導体)、及び対象において中和抗ガストリン抗体の産生を誘導するガストリンペプチド;ガストリン遺伝子産物の発現を阻害する阻害性核酸;ガストリンホルモンの機能を遮断する小分子化合物、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。幾つかの実施態様では、抗ガストリン抗体は、ガストリン17(G17)内に存在するエピトープに対する抗体を含み、エピトープは、幾つかの実施態様では、アミノ酸配列EGPWLEEEEE(配列番号:1)、EGPWLEEEE(配列番号:2)、EGPWLEEEEEAY(配列番号:3)、及びEGPWLEEEEEAYGWMDF(配列番号:4)の一又は複数内に存在する。
【0176】
ここに開示されたガストリン及びガストリンペプチドの他の免疫原性形態と同様に、幾つかの実施態様では、ガストリンペプチドは免疫原性担体、任意選択的に、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、キーホールリンペットヘモシアニン、及びウシ血清アルブミンからなる群から選択される免疫原性担体にコンジュゲートされる。
【0177】
幾つかの実施態様では、腫瘍及び/又はがん、任意選択的に固形腫瘍及び/又は膵臓がんに関連する線維化の形成を予防、軽減、及び/又は排除するための方法は、腫瘍及び/又はがんを、限定されないがCAR又はCAR-T細胞などの免疫療法剤などの、腫瘍及び/又はがんに対する細胞性免疫応答の刺激剤を含む第二の薬剤と接触させることを更に含む。第一の薬剤及び/又は免疫療法剤と併用して用いることができる細胞性免疫応答の他の例示的な刺激剤には、限定されないが、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、ペムブロリズマブ、AMP514、AUNP12、BMS-936559/MDX-1105、アテゾリズマブ、MPDL3280A、RG7446、RO5541267、MEDI4736、及びアベルマブを含む、免疫チェックポイント阻害剤、例えば細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)、プログラム細胞死1受容体(PD-1)、及びプログラム細胞死1受容体リガンド(PD-L1)からなる群から選択される標的ポリペプチドの生物学的活性を阻害するものが含まれる。
【0178】
幾つかの実施態様では、線維化の形成を予防、軽減、及び/又は排除する腫瘍及び/又はがんは、固形腫瘍又は膵臓がんである。
【0179】
要約すると、幾つかの実施態様では、本開示の主題は、第一線治療として単独で、任意の他の第一線治療と組み合わせて、又はガストリン関連腫瘍及び/又はがんを有する対象に適切と考えられる任意の他の治療法と組み合わせて、ガストリン関連腫瘍及び/又はがんを治療するための、免疫療法剤(例えば、CAR及び/又はCAR-T細胞で、任意選択的に一つ又は複数の免疫チェックポイント阻害剤と併用)との関連でガストリン免疫原を含む本開示の組成物の使用に関する。
【0180】
VI.D.固形腫瘍及び/又はがんをキメラ抗原受容体-T(CAR-T)細胞療法に対して感作させるための方法
幾つかの実施態様では、本開示の主題は、対象における固形腫瘍及び/又はがんをキメラ抗原受容体-T(CAR-T)細胞療法に対して感作させる方法をまた提供する。ここで使用される場合、「固形腫瘍及び/又はがんをキメラ抗原受容体-T(CAR-T)細胞療法に対して感作させる」という語句は、治療がなかった場合と比べてCAR-T細胞治療法に対する固形腫瘍及び/又はがんの感受性と比較して、治療の結果として固形腫瘍及び/又はがんがCAR-T細胞療法に対してより感受性になる治療を指す。如何なる特定の作用理論にも束縛されることを望まないが、幾つかの実施態様では、治療は、CAR-T細胞療法に対する腫瘍のより大きなアクセスしやすさを生じさせ、幾つかの実施態様では、固形腫瘍に侵入するCAR-T細胞に対する線維化又は何らかの他の物理的障害を低減させることを含みうる。
【0181】
従って、幾つかの実施態様では、本方法は、免疫原性担体にコンジュゲートされ、任意選択的にリンカーを介してコンジュゲートされたガストリン免疫原を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるコンジュゲートを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる第一の組成物を、固形腫瘍及び/又はがん内へのCAR-T細胞の侵入を促進するのに十分な量と経路で対象に投与し;且つ固形腫瘍及び/又はがん内に存在する抗原に対して標的化されるCAR-T細胞を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる第二の組成物を対象に投与することにより、対象における固形腫瘍及び/又はがんをCAR-T細胞療法に感作させることを含む。ここに記載されるように、幾つかの実施態様では、固形腫瘍及び/又はがんは、固形胃腸腫瘍及び/又はがん、任意選択的に固形ガストリン依存性胃腸腫瘍及び/又はがん、更に任意選択的に固形膵臓腫瘍及び/又はがんである。
【0182】
本開示の方法は、併用療法の観点でもまた用いることができ、幾つかの実施態様では、本方法は、対象に一つ又は複数の追加の抗腫瘍及び/又は抗がん療法を施すことを更に含む。一つ又は複数の追加の抗腫瘍及び/又は抗がん療法は、CAR-T細胞療法で治療されている腫瘍及び/又はがんのタイプに適切な追加の抗腫瘍及び/又は抗がん療法でありうる。而して、一つ又は複数の追加の抗腫瘍及び/又は抗がん療法は、幾つかの実施態様では、限定されないが、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)阻害剤、プログラム細胞死1受容体(PD-1)阻害剤、プログラム細胞死1受容体リガンド(PD-L1)阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせなどの免疫チェックポイント阻害剤(CPI)を対象に投与することを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなりうる。例示的なCPIには、限定されないが、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、ペムブロリズマブ、AMP514、AUNP12、BMS-936559/MDX-1105、アテゾリズマブ、MPDL3280A、RG7446、RO5541267、MEDI4736、及びアベルマブが含まれる。
【0183】
対象における固形腫瘍及び/又はがんをキメラ抗原受容体-T(CAR-T)細胞療法に対して感作させた結果、本開示の方法は、第一の組成物が投与されなかった場合に起こったであろうことと比較して対象における腫瘍及び/又はがんの増殖を低減し及び/又は阻害する。
【0184】
VII.結論
従って、本開示の主題は、幾つかの実施態様では、体液性抗体免疫応答(例えば、ガストリンがんワクチンPASを使用)及び細胞性免疫応答(例えば、ガストリンがんワクチンPAS、TAA及び/又はCAAに結合するCAR、任意選択的にCAR-T細胞上に存在するCARを、更に任意選択的に免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用)の両方を個別に又は一緒に生成する方法の組み合わせを使用する、がんの治療のための併用療法に関する。より具体的には、細胞性免疫抗腫瘍効果と組み合わせて体液性及び細胞性免疫抗腫瘍応答を生成する、薬剤クラスの本記載の組み合わせを使用した、ヒト及び動物胃腸腫瘍の治療における予期せぬ相加的及び/又は相乗的効能が記載される。
【0185】
より具体的には、本開示の主題は、幾つかの実施態様では、(i)腫瘍増殖因子又は循環腫瘍増殖因子(例えば、限定されないがPOASなどのガストリン免疫原)に対する体液性B細胞性免疫応答を誘導し;且つ(ii)腫瘍及び/又はがんに対する細胞性免疫応答(すなわち、抗腫瘍及び/又はがんT細胞応答)誘導及び/又は促進して、細胞傷害性Tリンパ球応答を誘発する(例えば、CAR及び/又はCAR-T細胞を、任意選択的に一つ又は複数のCPIと組み合わせて使用して)薬物の特定の組み合わせの使用に関する。
【0186】
而して、幾つかの実施態様では、ここに開示されるのは、腫瘍免疫、特に抗腫瘍T細胞性免疫応答に対する腫瘍免疫を克服する第二の活性薬剤と組み合わせた、ガストリンがんワクチンと、任意選択的に免疫チェックポイントの失敗を克服する一つ又は複数の更なる活性薬剤の組み合わせを使用して、ヒト及び動物の腫瘍及びがんを治療する方法である。従って、幾つかの実施態様では、本開示の主題は、B細胞及び/又は抗体免疫応答、並びに増殖因子ガストリン及び/又は別のTAA及び/又はCAAの活性型に対する細胞性免疫応答を誘発することに向けられたがんワクチンを用いて特定のヒトがんを治療することに関し、このワクチン治療はまた、CAR、CAR-T細胞による治療に対して腫瘍をより応答性にし、幾つかの実施態様では免疫チェックポイント阻害剤に対してより応答性にし、よって抗腫瘍効果を高めた予想外の相加的な、又は相乗的な併用治療効果さえ生じる。
【0187】
加えて、本開示の主題の薬学的組成物は、幾つかの実施態様では、治療される腫瘍及び/又はがんによって発現されるTAA及び/又はCAAに結合するCARを含むCAR-T細胞である、CD8腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の数を増強するのに十分な量のここに開示された薬学的組成物を、ガストリン関連腫瘍又はがんを有する対象に投与することによって、ガストリン関連腫瘍又はがんの転移を予防、軽減、及び/又は排除するために用いることができる。
【0188】
本開示の主題の組成物及び方法に関して、幾つかの実施態様では、投与により、薬学的組成物が投与されなかった場合に起こるであろうものと比較して、対象の生存期間が改善され、腫瘍増殖が減少し、及び/又は対象における化学療法剤及び/又は免疫チェックポイント療法の有効性が増強される。
【実施例
【0189】
実施例のための材料と方法
次の実施例は、例証的な実施態様を提供する。本開示及び当業者の一般的なレベルを考慮すると、当業者であれば、次の実施例が例示のみを意図しており、本開示の主題の範囲から逸脱することなく多くの変化、修正、及び変更を採用できることが理解されるであろう。
【0190】
細胞株。この研究では二つのマウス細胞株を評価した。マウス胃がん細胞NCC-S1(NCC;Park等,2015)は、共同研究者であるコロンビア大学(New York,New York,United States of America)のTimothy Wang博士を通じてKim博士から提供された。これらの胃がん細胞は、同系マウスモデルで同所性に増殖させた場合、転移性であることが示されている。第二の胃がん細胞株YTN-16(YTN)は、Sachiyo Nomura教授(Yamamoto等,2018)によって樹立され、彼女の共同研究者であるバンダービルト大学医学部(Nashville,Tennessee,United States of America)のJames R.Goldenring博士を通して提供された。YTN細胞は、マウスに皮下注射した後でさえも浸潤性及び転移性であることが知られている。細胞を動物において使用する前に、IMPACT II PCRプロファイルによって検査したところ、全ての病原体に対して陰性であった。YTN細胞はDMEMを使用した培養で増殖させ、NCC細胞はRPMI培地で増殖させた;両方とも10%ウシ胎仔血清と共に37℃において加湿5%COインキュベーター内で行った。
【0191】
リアルタイムPCRによる細胞株及び受容体の特性評価。全RNAを細胞(Qiagen)から抽出し、サーマルサイクラー(Applied Biosystems)を使用して高速サイクルモードでqRT-PCRに供し、コレシストキニンB受容体(CCK-BR)の発現とPD-L1の発現を調べた。使用したプライマーには次のものを含めた:
CCK-BR順方向:5’-GATGGCTGCTACGTGCAACT-3’(配列番号:7)
CCK-BR逆方向:5’-CGCACCACCCGCTTCTTAG-3’(配列番号:8)
PD-L1順方向:5’-TGCGGACTACAAGCGAATCACG-3’(配列番号:9)
PD-L1逆方向:5’-CTCAGCTTCTGGATAACCCTCG-3’(配列番号:10)
qRT-PCRは高速サイクルモード(プライマーTm>60℃)に設定した。HPRTをノーマライザー対照遺伝子として使用した。対照RNAは、CCK-BRもPD-L1も発現しないため、マウス肝臓から抽出した。
【0192】
インビボ動物試験。全ての動物試験は、ジョージタウン大学(Washington D.C.,United States of America)の施設内動物管理使用委員会(IACUC)の承認下で倫理的な方法で行った。NCC細胞を使用してC57BL/6マウスに腫瘍を樹立するために幾つかの試みを行った。最初の試みは、ルシフェラーゼタグ付き5×10のNCCがん細胞を胃漿膜下組織に同所性に注射するものであった(n=40)。ルシフェリンで画像化し、マウスを解剖したところ、腫瘍は見つからなかった。次に、NCC細胞を右側腹部に合計0.1mL体積の1.5×10NCCがん細胞で皮下注射したが、33日後でも腫瘍は形成されなかった。YTN(5×10)細胞を40匹の雌C57BL/6マウスのそれぞれに0.2mL体積で注射した。YTN細胞は、マウスに皮下注射した後でも浸潤性及び転移性であることが知られている(Yamamoto等,2018)。腫瘍増殖をキャリパーで毎週測定し、体積をL×W2×0.5で計算した。
【0193】
治療。マウスを4治療群に分けた(n=各10)。対照マウスは、他の治療と同時に0.1mLのPBSの腹腔内注射で処置した。50μgのPD-1抗体(PD-1 Ab;クローンRMPI-14をBioX Cell(West Lebanon,New Hampshire,United States of America)から購入した)をベースライン(腫瘍接種後1週間;0週目)及び1、3、及び6週目に腹腔内投与した。250μgのPASをPD-1 Abと同時にそしてまた9週目に0.1mL体積で皮下投与した。10週間の増殖後、対照マウスは瀕死の状態に見えたので、マウスを倫理的に安楽死させ、腫瘍を摘出し、重量を量り、転移をカウントした。
【0194】
組織分析。全ての観察しカウントした転移を解剖し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色による確認のためにホルマリン固定し、パラフィン包埋した。腫瘍微小環境における線維化の分析のために、腫瘍をマッソントリクローム染色と反応させた。腫瘍の増殖指数を定量するために、組織切片(5μm)を、Ki67に対するウサギモノクローナル抗体(カタログ番号CRM325;Biocare Medical,Pacheco,California,United States of America;1:80希釈)と反応させた。CD8(カタログ番号98941;Cell Signaling Technology,Danvers,Massachusetts,United States of America;1:25希釈)を用いて腫瘍浸潤リンパ球を評価するために、及びM2分極腫瘍関連マクロファージを検査するためにアルギナーゼ-1に対するウサギポリクローナル抗体(カタログ番号PA5-29645;ThermoFisher Scientific,Waltham,Massachusetts,United States of America;1:1800希釈)を用いて、腫瘍組織切片(5μm)について免疫組織化学的染色をまた実施した。
【0195】
統計分析。線形回帰分析を使用して腫瘍増殖速度を分析し、各治療群間の増殖曲線の傾きを比較した。Aperio GT450装置を使用してスライドをスキャンし、高倍率視野当たりの免疫反応性細胞の数(Ki67及びCD8細胞の場合)についてAperio Image Scopeのソフトウェアを用いて画像を解析した。Aperioソフトウェアを使用して各腫瘍について同じ倍率及び同一の表面積の画像を撮影し(スライド当たり最大N=10)、線維化及びM2分極マクロファージ統合密度をImageJコンピュータソフトウェアで解析した。画像からの生データの結果を、GraphPad Prismバージョン9を用いてANOVA及びT検定(対照との多重比較のためのボンフェローニ補正あり)を使用して解析した。
【0196】
実施例1
免疫療法に対する腫瘍のアクセス可能性の促進
任意選択的に固形腫瘍における線維化の存在のため、潜在的に抗腫瘍免疫療法薬は腫瘍微小環境に到達できないので、抗腫瘍免疫療法に難治性である固形腫瘍を有する対象が特定される。免疫原性担体に、任意選択的にリンカーを介して、コンジュゲートされたガストリン免疫原を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなるコンジュゲートを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる第一の組成物を、抗腫瘍T細胞の腫瘍への侵入を促進するのに十分な量及び経路で対象に投与する。第一の組成物の投与は、必要に応じて、CAR及び/又はCAR-T細胞の腫瘍へのアクセスを増加させるのに十分な程度に線維化が低減するまで、一又は複数回繰り返す。ついで、固形腫瘍上に存在するTAAに結合するCAR及び/又は一つ又は複数のCAR-T細胞を含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる第二の組成物を、CAR及び/又はCAR-T細胞への腫瘍の到達を可能にするのに十分な量及び経路で一又は複数の機会に対象に投与し、その結果、腫瘍に対する免疫応答が対象において誘導され、それによって対象における固形腫瘍が治療される。第一の組成物及び/又は第二の組成物の追加の投与は、対象における固形腫瘍を治療するために必要に応じて実施される。
【0197】
実施例2
CCK-BR及びPD-L1受容体についての胃がん細胞の特徴付け
二つの別々のマウス胃がん細胞を、インビトロでのCCK-BR、PD-L1受容体、及びガストリンペプチドの発現について評価した。CCK-BR及びPD-L1の遺伝子発現は、非癌性マウス組織と比較して、NCC及びYTN胃がん細胞の両方で増加した(図1)。CCK-BR発現は、正常なマウス組織と比較して、マウスYTN及びNCC胃がん細胞において60倍を超えて増加した(図1A)。PD-L1 mRNA発現は、正常組織に対して、YTN細胞では52倍、NCC細胞では24倍増加した(図1B)。外因性ガストリンに曝露すると、NCC細胞の増殖が有意に増加した(p=0.004)(図1C)。免疫細胞化学により、NCC(図1D)及びYTN(図1E)胃がん細胞の両方で内因性ガストリンペプチドの発現が明らかになり、これらの胃がん細胞が自己分泌様式でCCK-BRを介して増殖を刺激するために独自のガストリンペプチドを産生することを示唆している。二次抗体のみと反応した対照細胞は染色について陰性であった(図1F)。
【0198】
実施例3
YTN腫瘍の増殖と転移に対するPASとPD-1の効果
経時的に測定したYTN胃がん腫瘍体積を図2Aに示す。PD-1 Ab単独療法による治療は、対照と比較して腫瘍増殖に効果はなかった。対照的に、PAS単独療法又はPASとPD-1 Abの併用で治療したマウスでは、経時的に腫瘍の増殖が顕著に遅延した。PAS単独療法は、PBS処置対照と比較して腫瘍増殖を31%遅らせた(p=0.023)。PASをPD-1 Abとの併用で投与した場合、腫瘍増殖は、PBS処置対照の腫瘍と比較して59%遅くなった(P=0.0003)。PASワクチン接種マウスの腫瘍の増殖速度を併用療法で治療したマウスの腫瘍の増殖速度と比較したところ、その差異は統計的に有意であった(p=0.0018)。これらの結果は、併用療法がPAS単独療法よりも優れていることを示唆した。切除時の腫瘍塊は、PAS及び併用治療マウスの方が小さかったが、この差は有意には達しなかった(図2B)。各群の転移の総数を解剖時にカウントし、組織学的検査によって確認した。図2Cは、特許出願の単独療法又はPD-1 Abと組み合わせたPASで治療したマウスには転移がなかったという注目すべき所見を示している。ヘマトキシリン及びエオシン染色により、対照マウス及びPD-1 Ab治療マウスから切除した組織が転移であることが確認された。図2D~2Gは、それぞれ、胃壁、腸間膜、腹膜、及び腹壁からのYTN転移の代表的な組織像を示す。
【0199】
腫瘍増殖に対する効果のもう一つの実証は、Ki67増殖指数の測定である。Ki67免疫反応性は、PBS及びPD-1 Ab処置マウスの腫瘍において増加した(図3A)。PAS単独療法又はPD-1 Abと組み合わせて治療したマウスの腫瘍では、増殖指数は顕著に減少している(図3A)。各治療群の低倍率(倍率2X)の代表的な画像を、各腫瘍の高倍率(40X)の挿入画像と共に図3Bに示す。PBS及びPD-1 Ab処置マウスの腫瘍では、顕著なKi67免疫反応性が特定される。対照的に、Ki67染色は、PD-1 Abの有無にかかわらず、PASで治療されたマウスの腫瘍では著しく減少している。これらの組織切片は、PAS及び併用治療マウスの腫瘍で増殖又は成長速度が低下したことを確信させる。
【0200】
実施例4
PASとPD-1 Abの併用療法は胃がんにおける線維化を減少させる
腫瘍線維化は、化学療法剤のがんへの浸透を妨げ、またTリンパ球の流入を制限すると考えられる。YTN胃腫瘍は、図3Cのマッソントリクローム染色を伴うPBS処置対照マウスの腫瘍に見られるように、特徴的な緻密な線維化を示す。PAS単独療法又はPD-1 Abと組み合わせたPASで治療したマウスの腫瘍では、線維化が明らかに減少している。コンピューターによる解析と線維化の統合密度の定量を各治療群ごとに図3Dに示す。PD-1 Ab治療マウスの腫瘍では線維化が若干減少したが、PAS治療と併用した場合は、線維化の量は更に顕著に減少した。
【0201】
実施例5
PASとPD-1 Abの併用療法は胃がんの免疫細胞シグネチャーを変化させる
がんにおける免疫チェックポイント療法の効果の欠如の一つの理由は、腫瘍浸潤T細胞の欠如によるものと考えられる。各治療群の腫瘍をCD8Tリンパ球について染色し、免疫反応性細胞の数を群間で比較した。図4Aは、PBS対照マウス及びPD-1 Ab治療マウスの胃腫瘍におけるCD8T細胞の不足を示す。CD8免疫反応性細胞の数は、PAS治療マウス及び併用療法で治療したマウスの腫瘍で目に見えて増加している(図4A)。CD8抗体で染色したYTN腫瘍のコンピューター解析では、PAS治療マウスの腫瘍におけるCD8Tリンパ球の顕著な増加、更には併用療法で治療したマウスにおけるCD8T細胞の更に有意に大なる増加が示される(図4B)。
【0202】
各群の腫瘍は、M2分極腫瘍関連マクロファージ(TAM)を検出するために、アルギナーゼに対する抗体を用いた免疫組織化学的染色をまた受けた。これらの免疫抑制性TAMは、対照マウス及びPD-1 Ab治療マウスの腫瘍に豊富である(図4C)。対照的に、PASと併用療法で治療したマウスの胃腫瘍では、アルギナーゼTAMSが著しく少ない。画像の統合密度でのコンピュータ解析(図4D)により、PAS治療マウスの腫瘍では免疫反応性が顕著に減少していることが確認される。PASとPD-1 Abの両方で治療されたマウスの腫瘍では、アルギナーゼ陽性TAMの免疫反応性が更に低下している(図4D)。
【0203】
実施例6
免疫組織化学によりヒト胃がんはCCK-BRを発現する
ヒト胃がん上皮細胞はCCK-BR免疫反応性について陽性であった(図5A~5H)。これは、ヒト対象へのPASの投与が、ガストリンを中和することによるこの受容体の活性化をまた減少させることを意味している。最も一般的な組織学的分類は、Lauren,1965に記載されており、そこでは、がんは、腸又はびまん性の二つのタイプの一つに組織学的に分類された。図5A~5Cは、上皮細胞による特徴的な腺又は細管線を示す腸型組織像を有するヒト胃がんアレイからの組織におけるCCK-BR免疫反応性を示す。組織学的びまん性胃癌細胞は凝集力に欠けており、独立して、又は小さなクラスターで組織に侵入する(Correa,2013)。代表的なびまん性胃がんはまたCCK-BR発現を示し、図5D及び5Eに示される。粘液性胃がん(図5F)及び印環胃がん(図5G)は、あまり一般的ではない組織型の胃がんである。正常なヒトの胃の腺におけるCCK-BR陽性細胞の特徴的な染色は図5Hに見られる。グレード1(164.8±1.4)、グレード2(159.7±1.4)、及びグレード3(162.8±1.1)として分類された腫瘍間でImageJで分析した統合密度によるCCK-BR染色の強度には、有意な差はなかった。
【0204】
実施例の考察
ここに開示されるのは、二つのマウス胃がん細胞及びヒト組織マイクロアレイを使用した、ガストリン:CCK-BRシグナル伝達経路が胃がんの増殖の刺激に重要であるという証拠である。CCK-BRは両方の細胞株で発現され、外因性ガストリンはインビトロで細胞増殖を刺激し、ガストリン感受性が確認された。免疫細胞化学により、胃がん細胞内での内因性ガストリン発現が明らかになり、胃がんが自己分泌機構によって自身の増殖を調節している可能性があることが示唆された。外因的に投与されたガストリン、又はがん細胞から内因的に産生されたガストリンはCCK-BR受容体を活性化し、細胞又は腫瘍増殖を引き起こす可能性があるため、ガストリンの相互作用を遮断する戦略は増殖を阻害するはずである。実際、ガストリンを標的とするワクチンは、マウスの胃がんの増殖を阻害し、転移を防ぐことができることが示されている。PASワクチンを単独療法として投与すると、マウスの腫瘍増殖を減少させた;しかし、腫瘍阻害効果は、PD-1 AbとPASの同時投与によって顕著な影響を受けた。単独療法で有効性を示すPASワクチンのような治療剤を有する明らかな利点は、胃がんの対象を治療する場合、必ずしも全ての対象が免疫チェックポイント抗体治療に適格であるわけではなく、又は一部の対象は免疫チェックポイント療法で副作用を経験している場合があることであり;従って、単独療法はこれらの対象を治療するための代替選択肢を提供しうる。しかしながら、免疫チェックポイント療法に適格な対象では、特許出願の追加により腫瘍の増殖が顕著に減少し、転移が防止される可能性がある。このワクチンであるPASは胃がん増殖を顕著に減少させ、この変化はKi67免疫反応性腫瘍細胞の数の顕著な減少によって組織学的に確認された。PAS療法はまた腫瘍微小環境における線維化を減少させた。PASワクチン接種はまた、CD8T細胞の数を増加させ、M2分極免疫抑制マクロファージの数を減少させることによって腫瘍免疫細胞シグネチャーを変化させ、腫瘍微小環境をPD-1 Ab療法などの他の治療法に対してより感受性にした。
【0205】
がん細胞はPD-L1の受容体を発現していたが、PD-1 Abによる単独療法では胃がん増殖及び転移を有意に減少させなかった。しかし、PD-1 Ab療法剤をPASとの併用で投与した場合、PAS療法単独よりも腫瘍増殖速度に大きな効果があった。PD-1 Abを伴うPASの効果促進の一つの説明は、二つの免疫療法を一緒に与えた場合のCD8T細胞の顕著な増加に起因すると考えられる。併用投与のもう一つの有益な知見には、アルギナーゼ陽性M2分極マクロファージの数に見られる相加効果が含まれる。我々は以前、PD-1 Ab療法単独では腫瘍阻害効果がなかったが、PASと併用した場合、PD-1 AbはPAS単独よりも大きな効果があったという、膵臓がんにおける腫瘍阻害に対する相加効果を記載した(Osborne等,2019a)。膵臓腫瘍における以前の研究で、我々はPD-1 Abと組み合わせたPASが腫瘍微小環境における線維化を減少させたことも示した。線維化の減少により、T細胞の流入が促進されることが期待される。
【0206】
ここに開示される所定の実験は、同系マウス腫瘍を有する免疫適格性マウスで実施されたが、ヒト胃がんアレイに対するCCK-BR免疫反応性の結果は、この研究の重要なトランスレーショナルで臨床的な関連性を裏付ける。両方のマウス胃がん(YTNとNCC)がCCK-BRを発現し、YTN腫瘍担持マウスをガストリンワクチンで治療すると、腫瘍の増殖と転移が顕著に減少したことが判明した。ガストリンはCCK-BRを活性化する主要なリガンドであり、PAS療法は中和ガストリン抗体とガストリン活性化メモリーT細胞を誘導するため(Osborne等,2019a)、この受容体でのシグナル伝達を減少させる能力ががん増殖阻害の中心となる。Sheng等,2020は、胃体中の成熟腸クロム親和性細胞様(ECL)細胞がCCK-BRを発現することと、胃峡部前駆細胞もまたCCK-BRを発現し、これが新しいECL細胞を供給することによって高ガストリン血症に応答したことを実証した。彼らの洗練された研究は、胃粘膜におけるCCK-BRを活性化する栄養ペプチドとしてのガストリンの重要性を裏付けている。我々は以前、CCK-BRが幾つかのヒト胃がん細胞株で発現していること(Smith等,1998)と、インビトロでのガストリン刺激増殖が選択的CCK-BRアンタゴニストL265260によってのみブロックされたことを示した。この現在の研究における多数のヒト胃がんにおけるCCK-BRに対するヒト胃がん組織アレイ免疫反応性は、ヒト対象における治療の潜在的標的としてのこの受容体の重要性を示唆している。腸及びびまん性の両方の組織学的胃がんタイプにおけるCCK-BR染色の発見は、この増殖経路を標的とする治療法を利用することの広範な意味を示唆している。粘液性及び印環組織型が発生する頻度は低いが、これらの組織型での予後は典型的にはより重篤である(Taghavi等,2012)。これらの頻度の低い組織型を有するヒト胃がんアレイ内の組織もまたCCK-BRに対して陽性に染色され、胃がんにおけるPAS療法の広範な応用の可能性を示唆している。
【0207】
免疫原としてのガストリンの研究は、1990年代初頭にスーザン・ワトソン博士によって開始された(Watson等,1996;Watson等,1999a;Watson等,1999b)。当時は人気がなかったが、ワトソン博士は、血清ガストリンと細胞関連ガストリンを中和できる高親和性抗G17抗体を産生することにより、GIがんの治療に免疫アプローチを採用することを決定した。結腸直腸腫瘍では血清ガストリンレベルが上昇していることが以前に報告されていたため(Smith等,1989)、彼女はその腫瘍について調査を開始することにした(Watson等,1995;Watson等,1996)。高親和性抗G17抗体を産生するために必要とされる、適切なアジュバント、投与スケジュール、用量濃度及びブースターに焦点を当てた豊富な臨床データが長年にわたって生成された。抗体力価が上昇すると、血清ガストリンレベルが低下したことが発見された(Rocha-Lima等,2014)。抗体力価を追跡することができ、ベースラインより1.2単位高い力価を有する患者では、結腸がん、膵臓がん、及び胃がんにおける彼らの生存期間が平均して2倍になったことが判明した。その過程で幾つかの驚くべき結果があった。先ず、PASはゲムシタビンと相乗効果があった;そして第二に、膵臓がんを含む幾つかの研究で、予期せぬ長期生存者が観察された。これらの結果は、ガストリンを中和する以上の何かがおそらく起こっていたのではないかという議論につながる;しかしながら、現在利用できるツールは当時は利用できなかった。三つ全ての適応症について肯定的な研究が行われ、製品の安全性プロファイルが十分に特徴付けられていたが、PASの開発は、その開発資金を提供していた企業が倒産したことで大きな後退を余儀なくされた。PASで治療された最後の患者は2004年であった。
【0208】
過去2年間で、PASの作用機序について多くのことが分かってきた。PASは、高親和性の抗G17抗体を産生するだけでなく、メモリーT細胞、NKT細胞、及びガンマデルタ細胞の増加により細胞性免疫応答を活性化する(Osborne等,2019a)。更に、幾つかの動物モデル(膵臓及び胃)の微小環境を一貫して変化させ、チェックポイント阻害剤との相乗効果をもたらした(Osborne等,2019a)。PASで治療されたマウスにおける転移の予防(Osborne等,2019b)は、上皮間葉移行の阻害によるものであり、この作用機序は、臨床プログラムで以前に観察された長期生存例の説明に役立つ可能性がある。観察された特許出願の治療法による線維化の減少は、ゲムシタビンで以前に発見された相乗効果を説明するのに役立つ可能性がある。前癌性KRASマウスモデルにおけるPASワクチン接種は、PASが膵臓線維化を減少させ、腫瘍微小環境の免疫細胞シグネチャーを変化させるだけでなく、膵臓がんを予防する前癌性PanIN病変の増殖と進行をまた減少させることを実証した(Smith等,2021)。そのデータは、PASをその使用方法をよりよく理解して臨床現場に戻すために説得力のあるものである。
【0209】
参考文献
限定されないが、全ての特許、特許出願及びそれらの刊行物、科学雑誌記事、及びデータベースエントリー(限定されないが、GENBANK(登録商標)生物配列データベースエントリー及びその中で利用可能な全ての注釈を含む)を含む本開示に列挙された全ての参考文献は、それらがここで用いられる方法論、技術、及び/又は組成物を補足し、説明し、その背景を提供し、及び/又は教示する範囲で、その全体が出典明示によってここに援用される。参考文献の検討は、単にその著者がなした主張を要約することを意図している。あらゆる参考文献(又はあらゆる参考文献の一部)も関連する先行技術であるという自認はしない。本出願人は、あらゆる引用参考文献の正確性と適切さについては異議を唱える権利を留保する。
【0210】
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米国特許出願公開第2006/0188558号,第2007/0036773号,第2009/0180989号,第2009/0257991号,第2011/0038836号,第2012/0058051号,第2012/0213783号,第2012/0252742号,第2017/0145095号,第2017/0369561号,第2018/0230224号,第2018/0244796号,第2019/0046659号,及び第2020/0140520号。
米国特許第3598122号;第4816567号;第5016652号;第5234933号;第5234933号;第5326902号;第5326902号;第5607676号;第5609870号;第5622702号;第5785970号;第5866128号;第5935975号;第6106856号;第6162459号;第6172197号;第6180082号;第6248516号;第6291158;第6410319号;第6495605号;第6582724号;第6861510号;第8389282号;第8802374号;第9272002号;第9988452号;第10059923号;第10113003号;第10183992号;第10301391号;第10358492号;及び第10377822号。
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【0211】
本開示の主題の様々な詳細は、本開示の主題の範囲から逸脱することなく変更されうることが理解されるであろう。更に、前述の説明は例証のみを目的としており、限定を目的とするものではない。
図1A-C】
図1D-E】
図1F
図2A
図2B-C】
図2D-G】
図3A
図3B
図3C-D】
図4A-B】
図4C-D】
図5A-D】
図5E-H】
【配列表】
2023549336000001.app
【国際調査報告】