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▶ ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨークの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】マルチプレックスエピゲノム編集
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20231116BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20231116BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231116BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231116BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231116BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20231116BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20231116BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231116BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231116BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231116BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20231116BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231116BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231116BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231116BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231116BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20231116BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20231116BHJP
   A61K 35/545 20150101ALN20231116BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/55 ZNA
C12N15/62 Z
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
A61K35/30
A61P25/00
A61P3/00
A61P13/12
A61P27/16
A61P27/02
A61P17/00
A61P9/00
A61P21/00
A61P7/00
A61P25/08
A61K35/545
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528045
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 US2021058938
(87)【国際公開番号】W WO2022103935
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/174,297
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/112,331
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】306018457
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リウ,エックス.,ショーン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA06
4C087ZA33
4C087ZA34
4C087ZA36
4C087ZA51
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZC21
(57)【要約】
本開示は、細胞のエピゲノムを改変するためのシステム及び方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
(a)デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列であって、前記dCpf1が(i)次の変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aのうちの1つ以上、または(ii)次の変異:D833Aを含むCpf1である、前記第1のポリヌクレオチド配列と、
(b)1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列と、を含む、前記システム。
【請求項2】
前記1つ以上のガイド配列が、1つ以上のCRISPR RNA(crRNA)分子、1つ以上のシングルガイドRNA(sgRNA)分子、1つ以上のガイドRNA(gRNA)分子、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のポリヌクレオチド配列及び前記第2のポリヌクレオチド配列が単一のベクター上にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のポリヌクレオチド配列及び前記第2のポリヌクレオチド配列が異なるベクター上にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2のポリヌクレオチド配列が、2つ以上の標的配列にハイブリダイズする2つ以上のcrRNA分子をコードする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記dCpf1がリボヌクレアーゼ(RNase)活性を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記エフェクタードメインがTET2、Dnmt3bまたはCTCFである、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記エフェクタードメインが、エピゲノムを改変する活性を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記エフェクタードメインがヒストンサブユニットを修飾する酵素である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記エフェクタードメインが、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)、またはヒストンデメチラーゼである、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記HATがp300である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記エフェクタードメインが、DNAのメチル化状態を改変する酵素である、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記エフェクタードメインが、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)または10-11転座(TET)メチルシトシンジオキシゲナーゼタンパク質である、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記DNMTタンパク質がDnmt3bである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記TETタンパク質がTet2である、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記エフェクタードメインがCTCFである、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記CTCFが野生型CTCFまたはDNA結合変異体CTCFである、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記DNA結合変異体CTCFが、次の変異:K365A、R368A、R396A、及びQ418Aのうちの1つ以上を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記エフェクタードメインが転写活性化ドメインである、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記転写活性化ドメインがVP64またはNF-κB p65に由来する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記エフェクタードメインが転写サイレンサーまたは転写抑制ドメインである、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記転写抑制ドメインが、クルッペル関連ボックス(KRAB)ドメイン、ERFリプレッサードメイン(ERD)、またはmSin3A相互作用ドメイン(SID)である、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記転写サイレンサーがヘテロクロマチンタンパク質1(HP1)、またはメチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)である、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記Cpf1が、Flavobacterium brachiophilum、Parcubacteria bacterium、Peregrinibacteria bacterium、Acidaminococcus sp.、Porphyromonas macacae、Lachnospiraceae bacterium、Porphyromonas crevioricanis、Prevotella disiens、Moraxella bovoculi、Leptospira inadai、Lachnospiraceae bacterium(MA2020)、Francisella novicida、Candidatus methanoplasma termitum、またはEubacterium eligens由来である、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
請求項1に記載のシステムを含む組成物。
【請求項26】
請求項1に記載のシステムを含む細胞。
【請求項27】
請求項1に記載のシステムを含む1つ以上のベクター。
【請求項28】
前記1つ以上のベクターが組換えレンチウイルスベクターを含む、請求項27に記載の1つ以上のベクター。
【請求項29】
細胞のエピゲノムを改変する方法であって、前記方法が、前記細胞を請求項1に記載のシステムと接触させることを含む、前記方法。
【請求項30】
細胞のエピゲノムを改変する方法であって、前記方法が、前記細胞を、
(a)デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列であって、前記dCpf1が(i)次の変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aのうちの1つ以上、または(ii)次の変異:D833Aを含む、前記第1のポリヌクレオチド配列と、
(b)1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列と、を含むシステムと接触させることを含む、前記方法。
【請求項31】
前記第1のポリヌクレオチド配列及び前記第2のポリヌクレオチド配列が単一のベクター上にある、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
患者の疾患を治療する方法であって、
(a)デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列であって、前記dCpf1が(i)次の変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aのうちの1つ以上、または(ii)次の変異:D833Aを含むCpf1である、前記第1のポリヌクレオチド配列と、
(b)1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列と、を含むシステムを前記患者に投与することを含む方法。
【請求項33】
前記第1のポリヌクレオチド配列及び前記第2のポリヌクレオチド配列が単一のベクター上にある、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記1つ以上の標的配列が、MECP2、PHEX、COL4A5、COL4A3、COL4A1、IKBKG、PORCN、DMD/DYS、RPS6KA3、LAMP2、NSDHL、PDHA1、HDAC8、SMC1A、CDKL5、OFD1、WDR45、KDM6A、CASK、FINA、ALAS2、HNRNPH2、MSL3、及びIQSEC2からなる群から選択される1つ以上の遺伝子内にある、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
1つ以上の標的配列が、表1または表2から選択される1つ以上の遺伝子内にある、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患が、X連鎖病である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記X連鎖病が表1から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患が、インプリンティング関連疾患である、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞が誘導多能性幹細胞(iPSC)またはヒト胚性幹細胞(hESC)である、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記iPSCが対象の線維芽細胞に由来する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記iPSCを培養して、ニューロンに分化させることをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記ニューロンを対象に投与することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月11日出願の米国仮出願第63/112,331号及び2021年4月13日出願の米国仮出願第63/174,297号の優先権を主張するものであり、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2021年11月11日に作成された上記ASCIIコピーは、01001-009113-WO0_SL.txtという名称であり、33キロバイトのサイズである。
【0003】
本開示は、細胞のエピゲノムを改変するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
伝統的に、エピジェネティクスは、細胞の増殖及び発生中にDNA配列を変更しない場合の遺伝子発現の遺伝的変化の研究を指していた。この定義は、酵母などの単細胞生物からヒトのような多細胞生物で観察されるさまざまなエピジェネティックな表現型の原因となる、DNAメチル化、ヒストン修飾、非コードRNA、及び3Dクロマチン構造を含むがこれらに限定されない分子メカニズムの理解が進むにつれて急速に進化している(Deichmann,U.(2016)Epigenetics:the origins and evolution of a fashionable topic.Dev.Biol.416,249-254)。エピジェネティックなメカニズムにより、ゲノムが発生シグナルと環境シグナルの両方を統合できるようになることが提案された(Jaenisch et al.(2003)Epigenetic regulation of gene expression:how the genome integrates intrinsic and environmental signals.Nat.Genet.33,245-254)。
【0005】
DNAメチルトランスフェラーゼ及びヒストンアセチルトランスフェラーゼなどのエピジェネティック修飾因子の遺伝学的研究により、発生及び機能の際のエピジェネティック制御の重要な役割が明らかになった。エピジェネティックな修飾の変化は、神経障害(神経発達疾患、精神疾患、及び神経変性疾患など)、がん、循環器疾患を含むさまざまな障害で報告されている。
【0006】
クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)-Casシステムは、プラスミド及びバクテリオファージなどの外来遺伝要素に対する耐性を付与する原核免疫システムである。CRISPR/Cas9システムは、標的DNAのRNA誘導型DNA結合及び配列特異的切断を利用する。ガイドRNA(gRNA)は、PAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)部位の上流の標的DNA配列に相補的であり得る。Cas(CRISPR関連)9タンパク質はgRNAと標的DNAに結合し、PAM部位の上流の定義された位置に二本鎖切断(DSB)を導入する。Geurts et al.,Science 325,433(2009);Mashimo et al.,PLoS ONE 5,e8870(2010);Carbery et al.,Genetics 186,451-459(2010);Tesson et al.,Nat.Biotech.29,695-696(2011).Wiedenheft et al.Nature 482,331-338(2012);Jinek et al.Science 337,816-821(2012);Mali et al.Science 339,823-826(2013);Cong et al.Science 339,819-823(2013))。ウイルスDNAだけでなく他の遺伝子も切断するようにプログラムできるCRISPR/Cas9システムの能力は、ゲノム工学の新しい場を開いた。CRISPR/Casシステムは、標的配列を変更せずに、転写の抑制と活性化を含む遺伝子制御にも使用されている。
【0007】
遺伝子発現及び/または3Dクロマチン構造を操作するエピゲノム編集ツールの開発は、細胞のエピゲノムを変更し、障害を治療するのに役立ち得る。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、システムであって、(a)デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)またはCas9(dCas9)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列と、(b)1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列と、を含むシステムを提供する。
【0009】
また、本開示に包含されるのは、システムであって、(a)デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)またはCas9(dCas9)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質、またはデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)もしくはCas9(dCas9)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列と、(b)1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列、または1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列と、を含むシステムである。
【0010】
融合タンパク質において、dCpf1(またはdCas9)は、エフェクタードメインと直接的または間接的に(例えば、リンカー及び/またはNLSを介して)融合される。
【0011】
dCpf1は、次の変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aのうちの1つ以上を含むCpf1であり得る。dCpf1は、次の変異:D833Aを含むCpf1であり得る。
【0012】
一実施形態では、dCpf1は、触媒的にデッドなLbCpf1(Lachnospiraceae bacterium由来)である。一実施形態では、dCpf1は、次の変異:D833Aを含むLbCpf1である。
【0013】
一実施形態では、dCpf1は、触媒的にデッドなAsCpf1(Acidaminococcus sp.由来)である。一実施形態では、dCpf1は、次の変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aのうちの1つ以上を含むAsCpf1であり得る。一実施形態では、dCpf1は、次の変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aを含むAsCpf1であり得る。
【0014】
1つ以上のガイド配列は、1つ以上のCRISPR RNA(crRNA)分子、1つ以上のシングルガイドRNA(sgRNA)分子、1つ以上のガイドRNA(gRNA)分子、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0015】
第1のポリヌクレオチド配列と第2のポリヌクレオチド配列は、単一のベクター上にあってもよく、または異なるベクター上にあってもよい。
【0016】
第2のポリヌクレオチド配列は、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、または10以上の標的配列にハイブリダイズする、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、または10以上のガイド配列(例えば、crRNA、sgRNA、またはgRNA分子)をコードしていてもよい。
【0017】
dCpf1は、リボヌクレアーゼ(RNase)活性を有していてもよい。
【0018】
エフェクタードメインは、Tet2、Dnmt3b、CTCF、Tet1、Dnmt3a、またはp300であり得る。エフェクタードメインは、Tet2、Dnmt3b、CTCF、Tet1、Dnmt3a、またはp300の一部であり得る。エフェクタードメインは、Tet2、Dnmt3b、CTCF、Tet1、Dnmt3a、またはp300の生物学的に活性な一部であり得る。
【0019】
エフェクタードメインは、エピゲノムを改変する活性を有し得る。
【0020】
エフェクタードメインは、ヒストンサブユニットを修飾する酵素であり得る。
【0021】
エフェクタードメインは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)、またはヒストンデメチラーゼであり得る。例えば、HATはp300であってよい。
【0022】
エフェクタードメインは、DNAのメチル化状態を改変する酵素であり得る。
【0023】
エフェクタードメインは、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)または10-11転座(TET)メチルシトシンジオキシゲナーゼタンパク質であり得る。例えば、DNMTタンパク質はDnmt3bまたはDnmt3aである。TETタンパク質は、Tet2またはTet1であり得る。
【0024】
エフェクタードメインは、CCCTC結合因子(CTCF)であり得る。一実施形態では、CTCFはヒトCTCFである。CTCFは、野生型CTCFまたはDNA結合変異体CTCFであり得る。DNA結合変異体CTCFは、次の変異:K365A、R368A、R396A、及びQ418Aのうちの1つ以上を含み得る。CTCF変異体としては、CTCF(K365A)、CTCF(R368A)、CTCF(K365A、R368A)、CTCF(R396A)、及びCTCF(Q418A)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
エフェクタードメインは、VP64及びNF-κB p65などの転写活性化ドメイン、またはVP64もしくはNF-κB p65に由来する転写活性化ドメインであり得る。
【0026】
エフェクタードメインは、転写サイレンサーまたは転写抑制ドメインであり得る。転写抑制ドメインは、クルッペル関連ボックス(KRAB)ドメイン、ERFリプレッサードメイン(ERD)、またはmSin3A相互作用ドメイン(SID)であり得る。転写サイレンサーは、ヘテロクロマチンタンパク質1(HP1)、またはメチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)であり得る。
【0027】
Cpf1は、Lachnospiraceae bacterium、Acidaminococcus sp.、Flavobacterium brachiophilum、Parcubacteria bacterium、Peregrinibacteria bacterium、Porphyromonas macacae、Lachnospiraceae bacterium、Porphyromonas crevioricanis、Prevotella disiens、Moraxella bovoculi、Leptospira inadai、Francisella novicida、Candidatus methanoplasma termitum、またはEubacterium eligens由来であり得る。
【0028】
本開示は、本発明のシステムを含む組成物、本発明のシステムを含む細胞、及び本発明のシステムを含む1つ、2つ、またはそれ以上のベクターを提供する。
【0029】
1つ以上のベクターは、組換えレンチウイルスベクターを含み得る。
【0030】
本開示は、細胞のエピゲノムを改変する方法を提供する。この方法は、細胞を本発明のシステムと接触させることを含み得る。
【0031】
また、細胞のエピゲノムを改変するための本発明の方法に包含される。この方法は、細胞を、(a)デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列であって、dCpf1が(i)次の変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aのうちの1つ以上、または(ii)次の変異:D833Aを含むCpf1である、第1のポリヌクレオチド配列と、(b)1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列と、を含むシステムと接触させることを含み得る。
【0032】
本開示は、細胞のエピゲノムを改変する方法を提供する。この方法は、細胞を、(a)デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質、またはデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列と、(b)1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列、または1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列と、を含むシステムと接触させることを含み得る。
【0033】
特定の実施形態では、細胞は誘導多能性幹細胞(iPSC)またはヒト胚性幹細胞(hESC)である。例えば、iPSCは、対象の線維芽細胞に由来し得る。
【0034】
本発明の方法は、iPSCまたはhESCを培養して分化細胞(例えばニューロン)に分化させることをさらに含んでもよい。本発明の方法は、分化細胞(例えば、ニューロン)を対象に投与することをさらに含んでもよい。
【0035】
本開示は、患者の疾患を治療する方法を提供する。この方法は、患者に、(a)デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列であって、dCpf1が(i)次の変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aのうちの1つ以上、または(ii)次の変異:D833Aを含むCpf1である、第1のポリヌクレオチド配列と、(b)1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列と、を含むシステムを投与することを含み得る。
【0036】
本開示は、患者の疾患を治療する方法を提供する。この方法は、患者に、(a)デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質、またはデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列と、(b)1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列、または1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列と、を含むシステムを投与することを含み得る。
【0037】
1つ以上の標的配列は、MECP2、PHEX、COL4A5、COL4A3、COL4A1、IKBKG、PORCN、DMD/DYS、RPS6KA3、LAMP2、NSDHL、PDHA1、HDAC8、SMC1A、CDKL5、OFD1、WDR45、KDM6A、CASK、FINA、ALAS2、HNRNPH2、MSL3、及びIQSEC2からなる群から選択される1つ以上の遺伝子内にあるか、またはそれらと関連し得る。
【0038】
1つ以上の標的配列は、表1または表2の遺伝子から選択される1つ以上の遺伝子内にあるか、またはそれらと関連し得る。
【0039】
特定の実施形態では、この疾患は、X連鎖病である。X連鎖病は、表1の疾患から選択することができる。
【0040】
一実施形態では、疾患はレット症候群(RTT)である。
【0041】
特定の実施形態では、疾患はインプリンティング関連疾患である。インプリンティング関連疾患は、表2の疾患から選択することができる。
【0042】
疾患は、神経障害(神経発達障害、精神障害、及び神経変性障害など)、がん、または循環器疾患であり得る。
【0043】
本開示は、本発明のポリヌクレオチド(複数可)及び/または成分(例えば、タンパク質(複数可))を含むシステムを提供する。
【0044】
本開示は、本発明のシステムを含む組成物、または本発明のポリヌクレオチド(複数可)及び/または成分(例えば、タンパク質(複数可))を含む組成物を提供する。
【0045】
本開示は、本発明のシステムを含む細胞、または本発明のポリヌクレオチド(複数可)及び/または成分(例えば、タンパク質(複数可))を含む細胞を提供する。
【0046】
本開示は、本発明のポリヌクレオチド(複数可)または本発明のシステムを含む1つ以上のベクターを提供する。一実施形態では、1つ以上のベクターは組換えレンチウイルスベクターであってもよい。
【0047】
また、本開示に包含されるのは、細胞内または対象内のエンドヌクレアーゼ系を不活性化する方法である。この方法は、細胞を本発明のポリヌクレオチド、ベクター、システム、または組成物と接触させることを含み得る。この方法は、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、システム、または組成物を対象に投与することを含み得る。
【0048】
本開示は、細胞または対象におけるエピゲノムを改変するための方法を提供する。この方法は、細胞を本発明のポリヌクレオチド(複数可)、ベクター(複数可)、システム、または組成物と接触させることを含み得る。この方法は、本発明のポリヌクレオチド(複数可)、ベクター(複数可)、システム、または組成物を対象に投与することを含み得る。
【0049】
本開示は、対象における状態を治療する方法を提供する。この方法は、本発明のポリヌクレオチド(複数可)、ベクター(複数可)、システム、または組成物を対象に投与することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】crRNAアレイ、Cpf1、及び選択マーカーをコードする「オールインワン」ベクター(例えば、プラスミド)の略図である。
図2A】異なる直接反復(DR)を有するCpf1の変異分析を示す。アレイ1(Zetsche et al.,Cpf1 is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System,Cell,2015,163,3:759-771;Yamano et al.,Crystal Structure of Cpf1 in Complex with Guide RNA and Target DNA,Cell,2016,165:949- 962)及びアレイ2(Zetsche et al.,Multiplex gene editing by CRISPR-Cpf1 through autonomous processing of a single crRNA array,Nature Biotechnol.2017,35(1):31-34)の構造を示す。
図2B】異なる直接反復(DR)を有するCpf1の変異分析を示す。DNMT1、VEGFA、GRIN2B標的でインデルを誘導する異なるアレイを持つCpf1の能力を、Surveyorアッセイで調べた。アレイ1:19ヌクレオチド(nt)のDR+23ntのガイドRNA(gRNA);アレイ2:37ntのDR+23ntのgRNA。Cpf1-TetCD:Tet触媒ドメインと融合したCpf1。
図2C】異なる直接反復(DR)を有するCpf1の変異分析を示す。Cpf1及びCpf1-TetCDの発現レベルを示すウエスタンブロットである。
図3】Cpf1のRuvCドメインとNucドメインの重要な残基の変異分析を示す。DNMT1標的でインデルを誘導するCpf1の能力に対する変異の影響を、Surveyorアッセイによって調べた。
図4】AsCpf1のRuvCドメインとNucドメインの重要な残基の親和性分析を示す。DNMT1、VEGFA、及びGRIN2Bの標的DNA配列に結合するAsCpf1(DNase活性の触媒的にデッドなCpf1)の能力に対する点変異の影響を、クロマチン免疫沈降(ChIP)-qPCR(n=3、エラーバーは平均±SEMを示す)を使用して調べた。値はモック試料に対して正規化された。
図5A】dCpf1-p300(p300と融合した触媒不活性変異体Cpf1(dCpf1))システムの、遺伝子活性化のための標的ヒストンのアセチル化を媒介する最適化を示す。モック試料に対して正規化された相対的なMyoDのmRNAレベルを示す。
図5B】dCpf1-p300(p300と融合した触媒不活性変異体Cpf1(dCpf1))システムの、遺伝子活性化のための標的ヒストンのアセチル化を媒介する最適化を示す。抗HAタグ抗体によって検出される融合タンパク質の発現レベルを示すウエスタンブロットである。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である:dAsCpf1は、次の点変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aを有するAsCpf1である;dLbCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。「アレイ」という用語は、crRNA1~4を指す。
図6】dCpf1-p300システムによるMyoD遺伝子座でのH3K27アセチル化の編集の有効範囲を研究した結果を示す。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である:dAsCpf1は、次の点変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aを有するAsCpf1である;dLbCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。
図7A】dCpf1-p300システムによるMeCP2遺伝子座でのH3K27アセチル化の編集の有効範囲を研究した結果を示す。抗H3K27Ac抗体をChIP-qPCRに使用した。dC:dCdfl。
図7B】dCpf1-p300システムによるMeCP2遺伝子座でのH3K27アセチル化の編集の有効範囲を研究した結果を示す。ChIP-qPCRに抗HA抗体を使用した。dLbCpf1またはdCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。
図8】dCpf1-Dnmt3a(Dnmt3aと融合したdCpf1)が、dCas9-Dnmt3a(Dnmt3aと融合した触媒不活性変異体Cas9(dCas9))よりも高いDNAメチル化編集効率を提供することを示す。dCpf1-Dnmt3a及びcrRNAをコードするオールインワンベクターを使用した。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。dCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。
図9A】dCpf1-CTCFが複数の部位に結合できることを示す。レンチウイルスdCpf1-CTCFの構造の略図である。
図9B】dCpf1-CTCFが複数の部位に結合できることを示す。実験手順を示す。
図9C】dCpf1-CTCFが複数の部位に結合できることを示す。Cpf1-HAまたはCTCFに対する抗体を使用して、dCpf1-p300及びdCpf1-CTCFの標的化MeCP2遺伝子座への結合を調べたChIP-qPCRの結果を示す。dCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。
図10A】CTCFのDNA結合変異体(CTCF_K365A&R368A;CTCF_R396A;CTCF_Q418A)がdCpf1-CTCFのオフターゲット効果を減少させたことを示す。標的化MeCP2遺伝子座へのdCpf1-CTCFの結合を調べるために、抗HA抗体を用いてChIP-qPCRを行った。
図10B】CTCFのDNA結合変異体(CTCF_K365A&R368A;CTCF_R396A;CTCF_Q418A)がdCpf1-CTCFのオフターゲット効果を減少させたことを示す。抗HAまたは抗CTCF抗体によって検出されたタンパク質の発現レベルを示すウエスタンブロットである。dCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。
図11A】MeCP2遺伝子座のdCpf1-CTCF媒介DNAループを示す。crRNA-1を使用した場合のChIP-qPCRの結果を示す。
図11B】MeCP2遺伝子座のdCpf1-CTCF媒介DNAループを示す。crRNA-2を使用した場合のChIP-qPCRの結果を示す。
図12】MECP2デュアルカラーレポーターhES細胞株の略図である。
図13A】dCas9-Tet1(Tet1と融合したdCas9)によるMECP2プロモーターでのXi特異的DMRの脱メチル化を示す。sgRNA-1からsgRNA-10を含むsgRNA、及びパイロシーケンシング(pyro-seq)の領域(領域a~c)により標的化MECP2プロモーター(Lister et al.,Global Epigenomic Reconfiguration During Mammalian Brain Development,Science,2013,341(6146):1237905)の略図である。
図13B】dCas9-Tet1(Tet1と融合したdCas9)によるMECP2プロモーターでのXi特異的DMRの脱メチル化を示す。領域a~cのパイロシーケンシング(pyro-seq)の結果を示す。dC-T:dCas9-Tet1。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。
図14】メチル化編集がヒト胚性幹細胞(hESC)の不活性X染色体(Xi)上のMECP2の再活性化をもたらしたことを示唆する免疫蛍光画像を示す。細胞を、dCas9-Tet1-P2A-BFP(dC-T)を発現するレンチウイルスとsgRNA-mCherryを発現するレンチウイルス(10個のsgRNAを使用した)に感染させた。蛍光活性化細胞分取(FACS)を使用して、BFP+mCherry+であった細胞を単離した。感染細胞を免疫蛍光染色した。dC-T:dCas9-Tet1。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。
図15】MECP2の再活性化が、神経前駆細胞(NPC)及びニューロンで維持されたことを示す。dC-T:dCas9-Tet1。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。sgRNA:上で論じられた10個のsgRNA。
図16】単一のsgRNAを含むdCas9-Tet1がXi上でMECP2を再活性化するのに十分であることを示す。MECP2変異体860番RTT様ヒト胚性幹細胞(hESC)に、dCas9-Tet1-P2A-BFP(dCas9-Tet1)を発現するレンチウイルスとsgRNA-mCherry(10個のsgRNA)を発現するレンチウイルスを感染させた。蛍光活性化セルソーティング(FACS)を使用して、BFP+mCherry+である細胞を単離し、培養してESCコロニーを形成した。次いで、ESCをニューロンに分化させた。下のパネルは、MECP2のレベルを示すウエスタンブロットである。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。
図17A】メチル化編集されたニューロンにおけるニューロン細胞体サイズのレスキューを示す。野生型38番hESC、変異体860番RTT様hESC、及びメチル化編集された860番に由来するニューロンを使用して、MECP2及びMap2に対する免疫蛍光染色によって細胞体サイズを調べた。sgRNA:上で論じられた10個のsgRNA。dC-T:dCas9-Tet1。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。
図17B】メチル化編集されたニューロンにおけるニューロン細胞体サイズのレスキューを示す。細胞体のサイズは、Image Jによって定量化された。sgRNA:上で論じられた10個のsgRNA。dC-T:dCas9-Tet1。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。
図18A】メチル化編集されたニューロンにおけるニューロン活動のレスキューを示す。野生型38番hESC、変異体860番RTT様hESC、及びメチル化編集された860番に由来するニューロンを使用して、多電極アッセイによって分化後の電気物理特性を調べた。sgRNA:上で論じられた10個のsgRNA。dC-T:dCas9-Tet1。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。
図18B】メチル化編集されたニューロンにおけるニューロン活動のレスキューを示す。分化後67日平均発火頻度を示す。sgRNA:上で論じられた10個のsgRNA。dC-T:dCas9-Tet1。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。
図19】MECP2の再活性化がニューロンで安定していなかったことを示す。野生型38番hESC、変異体860番RTT様hESC、及びメチル化編集された860番に由来するニューロンに、レンチウイルスdCas9-Tet1及び10個のsgRNAを感染させ、qPCRによってGFPの発現を調べた。sgRNA:上で論じられた10個のsgRNA。
図20】ニューロンにおける再活性化のために、dCpf1-CTCFを使用してXi上のMECP2遺伝子座に人工回避物を構築する戦略の略図である。
図21A】RTTニューロンにおけるメチル化編集とDNAループの組み合わせがニューロンの活動をレスキューしたことを示す。MECP2遺伝子座における標的化CTCFアンカー部位を示す。上で論じられたsgRNAが使用された。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。dCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。dCpf1-CTCFは、CTCFと融合したdCpf1である。
図21B】RTTニューロンにおけるメチル化編集とDNAループの組み合わせがニューロンの活動をレスキューしたことを示す。実験計画の略図である。上で論じられたsgRNAが使用された。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。dCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。dCpf1-CTCFは、CTCFと融合したdCpf1である。
図21C】RTTニューロンにおけるメチル化編集とDNAループの組み合わせがニューロンの活動をレスキューしたことを示す。多電極アッセイによって調べられたニューロンの電気物理学的特性を示す。上で論じられたsgRNAが使用された。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。dCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。dCpf1-CTCFは、CTCFと融合したdCpf1である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明のシステムは、インビトロとインビボの両方で(例えば、患者において、マウスなどの動物モデルにおいて)、哺乳動物細胞内の1つまたは複数のゲノム遺伝子座において、DNAメチル化、ヒストンアセチル化、及びDNAループを含むが、これらに限定されないエピゲノムを正確に編集することができる。システムは、DNAメチル化、ヒストンアセチル化、DNAループなどの状態を変更することのできる、Dnmt3a/b、Tet1/2、p300、及びCTCFを含むがこれらに限定されない1つ以上のエフェクタータンパク質/ドメインと融合した、CRISPR/Cas9のオルソログである、触媒的にデッドなCpf1(dCpf1)を含み得る。
【0052】
Cpf1は、本発明の方法及びシステムにおいて使用することができる(Zetsche et al.,Cpf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System,Cell,163(3):759-771)。
【0053】
本開示は、システムであって、(a)デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列であって、dCpf1が(i)次の変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aのうちの1つ以上、または(ii)次の変異:D833Aを含むCpf1である、第1のポリヌクレオチド配列と、(b)1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列と、を含むシステムを提供する。
【0054】
特定の実施形態では、DNaseの触媒的にデッドなCpf1(dCpf1)は、RNAse活性を有する。
【0055】
標的配列は、遺伝子のメチル化可変領域(DMR)、エンハンサー、プロモーター、及び/またはCTCF結合部位内またはその近傍に位置し得る。標的配列は、遺伝子のDMR、エンハンサー、プロモーター、及び/またはCTCF結合部位を含み得る。1つ以上の標的配列(例えば、ゲノム配列)は、遺伝子の転写開始部位(TSS)の50kB以内に位置し得る。
【0056】
標的配列は、疾患関連遺伝子のメチル化可変領域(DMR)、エンハンサー、プロモーター、及び/またはCTCF結合部位内またはその近傍に位置し得る。標的配列は、疾患関連遺伝子のDMR、エンハンサー、プロモーター、及び/またはCTCF結合部位を含み得る。
【0057】
標的配列はゲノム配列であってもよい。特定の実施形態では、細胞内で、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の標的配列(例えば、ゲノム配列)が改変されている。
【0058】
本開示は、システムであって、(a)デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)及びエフェクタードメインを含み、dCpf1が、(i)次の変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aのうちの1つ以上、もしくは(ii)次の変異:D833Aを含むCpf1である融合タンパク質、または該融合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列と;(b)1つ以上の標的配列にハイブリダイズする1つ以上のガイド配列、または1つ以上のガイド配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列と、を含む、システムを提供する。
【0059】
特定の実施形態において、触媒的に不活性なCpf1(dCpf1)またはCas9(dCas9)は、Tet2、Dnmt3b、CTCF、Tet1、Dnmt3a、またはp300と融合される。特定の実施形態では、融合タンパク質をメチル化または非メチル化のプロモーター、またはエンハンサーに標的化することにより、遺伝子の発現を活性化またはサイレンシングすることができる。融合タンパク質によるCTCFループアンカー部位の標的化されたデノボメチル化は、CTCF結合をブロックしてDNAループを妨害し、隣接するループの遺伝子発現を変更することができる。
【0060】
ガイド配列は、CRISPR RNA(crRNA)分子、単一ガイドRNA(sgRNA)分子、ガイドRNA(gRNA)、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0061】
第1のポリヌクレオチド配列と第2のポリヌクレオチド配列は、単一のベクター上、または異なるベクター上にあってもよい。
【0062】
第2のポリヌクレオチド配列は、2つ以上の標的配列にハイブリダイズする2つ以上のガイド配列をコードし得る。
【0063】
特定の実施形態では、システムは、キメラタンパク質(または融合タンパク質)を発現するオールインワンベクターと、エピゲノム編集を媒介するためにキメラタンパク質を1つ以上のゲノム遺伝子座に標的化するための1つのcrRNAまたはcrRNAのアレイを含む。本発明者らの実験結果は、標的遺伝子座でのエピジェネティックな状態の確実な変化を示している本発明の方法及びシステムは、複数のエピジェネティックな事象の生物学的機能を調査し、新規治療戦略のために疾患関連のエピジェネティックな事象を操作することを可能にする。
【0064】
本開示は、ポリヌクレオチドであって、(a)デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドヌクレアーゼ及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質をコードする第1の配列と、(b)2つ以上のゲノム配列にハイブリダイズする2つ以上のガイド配列をコードする第2の配列と、を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0065】
ヌクレアーゼは、触媒的にデッドなCpf1(dCpf1)であり得る。ヌクレアーゼは、触媒的にデッドなCas9(例えば、spCas9)であり得る。触媒的にデッドなCas9(dCas9)は、次の変異:D10A及びH840Aのうちの1つ以上を含み得る。dCpf1は次の変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aのうちの1つ以上を含み得る。dCpf1は、次の変異:D833Aを含むCpf1であり得る。
【0066】
本開示は、ポリヌクレオチドであって、(a)デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)デッドCpf1(dCpf1)及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質をコードする第1の配列であって、dCpf1が(i)次の変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aのうちの1つ以上、または(ii)次の変異:D833Aを含むCpf1である、第1の配列と、(b)2つ以上のゲノム配列にハイブリダイズする2つ以上のガイド配列をコードする第2の配列と、を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0067】
Cpf1は、Flavobacterium brachiophilum、Parcubacteria bacterium、Peregrinibacteria bacterium、Acidaminococcus sp.、Porphyromonas macacae、Lachnospiraceae bacterium、Porphyromonas crevioricanis、Prevotella disiens、Moraxella bovoculi、Leptospira inadai、Lachnospiraceae bacterium(MA2020)、Francisella novicida、Candidatus methanoplasma termitum、またはEubacterium eligens由来であり得る。
【0068】
一実施形態では、dCpf1は、触媒的にデッドなLbCpf1(Lachnospiraceae bacterium由来)である。別の実施形態では、dCpf1は、触媒的にデッドなAsCpf1(Acidaminococcus sp.由来)である。さらに別の実施形態では、dCpf1は、触媒的にデッドなFbCpf1(Flavobacterium brachiophilum由来)である。
【0069】
AsCpf1は、UniProt番号UniProtKB-U2UMQ6(CS12A_ACISB)を有し、対応するアミノ酸配列を含み得る。LbCpf1は、UniProt番号UniProtKB-A0A182DWE3(A0A182DWE3_9FIRM)を有し、対応するアミノ酸配列を含み得る。
【0070】
本開示で論じるこれらのタンパク質/ポリペプチドのそれぞれについて、多数の異なるアイソフォームが存在し得、本明細書では、関連する配列を提供するための一般アクセッション番号、NCBI参照配列(RefSeq)アクセッション番号、GenBankアクセッション番号、及び/またはUniProt番号が提供される。タンパク質/ポリペプチドはまた、他の配列を含んでもよい。アクセッション番号(例えば、UniProt番号)が使用されるすべての場合において、アクセッション番号は、本開示のシステム/方法で使用され得るタンパク質または遺伝子の一実施形態を指す。
【0071】
AsCpf1は、以下のアミノ酸配列を含み得る/有し得る(配列番号43;Acidaminococcus sp.):MTQFEGFTNL YQVSKTLRFE LIPQGKTLKH IQEQGFIEED KARNDHYKEL KPIIDRIYKT YADQCLQLVQ LDWENLSAAI DSYRKEKTEE TRNALIEEQA TYRNAIHDYF IGRTDNLTDA INKRHAEIYK GLFKAELFNG KVLKQLGTVT TTEHENALLR SFDKFTTYFS GFYENRKNVF SAEDISTAIP HRIVQDNFPK FKENCHIFTR LITAVPSLRE HFENVKKAIG IFVSTSIEEV FSFPFYNQLL TQTQIDLYNQ LLGGISREAG TEKIKGLNEV LNLAIQKNDE TAHIIASLPH RFIPLFKQIL SDRNTLSFIL EEFKSDEEVI QSFCKYKTLL RNENVLETAE ALFNELNSID LTHIFISHKK LETISSALCD HWDTLRNALY ERRISELTGK ITKSAKEKVQ RSLKHEDINL QEIISAAGKE LSEAFKQKTS EILSHAHAAL DQPLPTTLKK QEEKEILKSQ LDSLLGLYHL LDWFAVDESN EVDPEFSARL TGIKLEMEPS LSFYNKARNY ATKKPYSVEK FKLNFQMPTL ASGWDVNKEK NNGAILFVKN GLYYLGIMPK QKGRYKALSF EPTEKTSEGF DKMYYDYFPD AAKMIPKCST QLKAVTAHFQ THTTPILLSN NFIEPLEITK EIYDLNNPEK EPKKFQTAYA KKTGDQKGYR EALCKWIDFT RDFLSKYTKT TSIDLSSLRP SSQYKDLGEY YAELNPLLYH ISFQRIAEKE IMDAVETGKL YLFQIYNKDF AKGHHGKPNL HTLYWTGLFS PENLAKTSIK LNGQAELFYR PKSRMKRMAH RLGEKMLNKK LKDQKTPIPD TLYQELYDYV NHRLSHDLSD EARALLPNVI TKEVSHEIIK DRRFTSDKFF FHVPITLNYQ AANSPSKFNQ RVNAYLKEHP ETPIIGIDRG ERNLIYITVI DSTGKILEQR SLNTIQQFDY QKKLDNREKE RVAARQAWSV VGTIKDLKQG YLSQVIHEIV DLMIHYQAVV VLENLNFGFK SKRTGIAEKA VYQQFEKMLI DKLNCLVLKD YPAEKVGGVL NPYQLTDQFT SFAKMGTQSG FLFYVPAPYT SKIDPLTGFV DPFVWKTIKN HESRKHFLEG FDFLHYDVKT GDFILHFKMN RNLSFQRGLP GFMPAWDIVF EKNETQFDAK GTPFIAGKRI VPVIENHRFT GRYRDLYPAN ELIALLEEKG IVFRDGSNIL PKLLENDDSH AIDTMVALIR SVLQMRNSNA ATGEDYINSP VRDLNGVCFD SRFQNPEWPM DADANGAYHI ALKGQLLLNH LKESKDLKLQ NGISNQDWLA YIQELRN
【0072】
特定の実施形態では、AsCpf1は、配列番号43に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約75%、少なくとももしくは約80%、少なくとももしくは約85%、少なくとももしくは約90%、少なくとももしくは約95%、少なくとももしくは約99%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含み得る/有し得る。
【0073】
特定の実施形態では、AsCpf1は、配列番号43に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約75%、少なくとももしくは約80%、少なくとももしくは約85%、少なくとももしくは約90%、少なくとももしくは約95%、少なくとももしくは約99%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含み得/有し得、AsCpf1は、D908、E993、R1226、及びD1263を含む。
【0074】
LbCpf1は、以下のアミノ酸配列を含み得る(配列番号44;Lachnospiraceae bacterium):AASKLEKFTN CYSLSKTLRF KAIPVGKTQE NIDNKRLLVE DEKRAEDYKG VKKLLDRYYL SFINDVLHSI KLKNLNNYIS LFRKKTRTEK ENKELENLEI NLRKEIAKAF KGAAGYKSLF KKDIIETILP EAADDKDEIA LVNSFNGFTT AFTGFFDNRE NMFSEEAKST SIAFRCINEN LTRYISNMDI FEKVDAIFDK HEVQEIKEKI LNSDYDVEDF FEGEFFNFVL TQEGIDVYNA IIGGFVTESG EKIKGLNEYI NLYNAKTKQA LPKFKPLYKQ VLSDRESLSF YGEGYTSDEE VLEVFRNTLN KNSEIFSSIK KLEKLFKNFD EYSSAGIFVK NGPAISTISK DIFGEWNLIR DKWNAEYDDI HLKKKAVVTE KYEDDRRKSF KKIGSFSLEQ LQEYADADLS VVEKLKEIII QKVDEIYKVY GSSEKLFDAD FVLEKSLKKN DAVVAIMKDL LDSVKSFENY IKAFFGEGKE TNRDESFYGD FVLAYDILLK VDHIYDAIRN YVTQKPYSKD KFKLYFQNPQ FMGGWDKDKE TDYRATILRY GSKYYLAIMD KKYAKCLQKI DKDDVNGNYE KINYKLLPGP NKMLPKVFFS KKWMAYYNPS EDIQKIYKNG TFKKGDMFNL NDCHKLIDFF KDSISRYPKW SNAYDFNFSE TEKYKDIAGF YREVEEQGYK VSFESASKKE VDKLVEEGKL YMFQIYNKDF SDKSHGTPNL HTMYFKLLFD ENNHGQIRLS GGAELFMRRA SLKKEELVVH PANSPIANKN PDNPKKTTTL SYDVYKDKRF SEDQYELHIP IAINKCPKNI FKINTEVRVL LKHDDNPYVI GIDRGERNLL YIVVVDGKGN IVEQYSLNEI INNFNGIRIK TDYHSLLDKK EKERFEARQN WTSIENIKEL KAGYISQVVH KICELVEKYD AVIALEDLNS GFKNSRVKVE KQVYQKFEKM LIDKLNYMVD KKSNPCATGG ALKGYQITNK FESFKSMSTQ NGFIFYIPAW LTSKIDPSTG FVNLLKTKYT SIADSKKFIS SFDRIMYVPE EDLFEFALDY KNFSRTDADY IKKWKLYSYG NRIRIFAAAK KNNVFAWEEV CLTSAYKELF NKYGINYQQG DIRALLCEQS DKAFYSSFMA LMSLMLQMRN SITGRTDVDF LISPVKNSDG IFYDSRNYEA QENAILPKNA DANGAYNIAR KVLWAIGQFK KAEDEKLDKV KIAISNKEWL EYAQTSVK
【0075】
特定の実施形態では、LbCpf1は、配列番号44に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約75%、少なくとももしくは約80%、少なくとももしくは約85%、少なくとももしくは約90%、少なくとももしくは約95%、少なくとももしくは約99%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。
【0076】
特定の実施形態では、LbCpf1は、配列番号44に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約75%、少なくとももしくは約80%、少なくとももしくは約85%、少なくとももしくは約90%、少なくとももしくは約95%、少なくとももしくは約99%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含み得、AsCpf1は、D833を含む。
【0077】
特定の実施形態では、エフェクタードメインは、TET2、Dnmt3b、またはCTCFである。特定の実施形態では、エフェクタードメインは、ポリペプチドがDNAループを改変できるCTCFである。
【0078】
本開示は、細胞のエピゲノムを改変する方法を提供する。この方法は、細胞を本発明のシステムと接触させることを含み得る。
【0079】
本開示は、患者の疾患を治療する方法を提供する。この方法は、本発明のシステムを患者に投与することを含み得る。
【0080】
本発明のポリペプチド(複数可)/システムは、細胞のエピゲノムまたは細胞内のゲノム配列を改変するための方法において使用され得る。この方法は、細胞を本発明のシステム/ポリヌクレオチド(複数可)と接触させることを含む。ゲノム配列は、任意の適切なゲノム配列であり得る。特定の実施形態では、ゲノム配列は、BDNFプロモーターでなくてもよいし、BDNFプロモーターであってもよく、またはMyoDのエンハンサーであってもよい。
【0081】
本発明のシステム/方法は、正確な遺伝子活性化またはサイレンシングを可能にし得る。本発明のシステム/方法は、1つを超えるゲノム遺伝子座の多重編集を可能にすることができる。本発明のシステム/方法は、単一のベクターを使用して複数の部位でエピゲノム編集を可能にすることができる。
【0082】
米国特許出願公開第20190359959号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
本開示は、細胞中のX連鎖病関連遺伝子またはインプリンティング関連疾患関連遺伝子を改変するための方法を提供する。特定の実施形態では、本発明のシステム/方法を使用して障害/疾患を治療することができる。例えば、システム/方法を適用して、表1から選択されるX連鎖病に関連する遺伝子、または表2から選択されるインプリンティング関連疾患に関連する遺伝子の野生型対立遺伝子を、エピジェネティック編集によって再活性化することができる。
【0084】
本発明のシステムは、表1から選択されるX連鎖病に関連する遺伝子、または表2から選択されるインプリンティング関連疾患に関連する遺伝子などの疾患関連遺伝子に関連する標的配列を標的とし得る。
【0085】
表1及び表2は、本発明のシステム/方法を使用して治療及び/または修正することができる疾患及び疾患関連遺伝子の例示的なリストを提供する。
【0086】
特定の実施形態では、疾患関連遺伝子は、メチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)である。MECP2は構成的ヘテロクロマチンの重要な構成要素であり、染色体の維持と転写サイレンシングに重要である(Janssen et al.,Heterochromatin:guardian of the genome,Annu.Rev.Cell Dev.Biol.34,265-288(2018).Allshire et al.,Ten principles of heterochromatin formation and function.Nat.Rev.Mol.Cell Biol.19,229-244(2018).Lyst et al.,Rett syndrome:a complex disorder with simple roots.Nat.Rev.Genet.16,261-275(2015))。MECP2遺伝子における変異は、進行性の神経発達障害であるレット症候群を引き起こし(Ip et al.,Rett syndrome:insights into genetic,molecular and circuit mechanisms,Nat.Rev.Neurosci.19,368-382(2018).Amir et al.,Rett syndrome is caused by mutations in X-linked MECP2,encoding methyl-CpG-binding protein 2,Nat.Genet.23,185-188(1999))、これは幼児期の女児に影響を及ぼす重度の精神障害及び自閉症のような症状に関連している。現在、RTTに対して承認された治療法はない。
【0087】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】

【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0088】
いくつかの態様では、1つ以上の核局在化配列(NLS)が触媒的に不活性な部位特異的ヌクレアーゼ(例えば、dCpf1、dCas9など)とエフェクタードメインとの間に融合されている。
【0089】
特定の態様では、標的配列(例えば、ゲノム配列)の1つ以上は、疾患または状態に関連している。
【0090】
特定の態様では、方法は、細胞を、DNAメチル化を阻害または増強する薬剤と接触させることをさらに含み得る。薬剤は小分子であってもよい。例えば、薬剤は5-アザシチジンまたは5-アザデオキシシチジンである。
【0091】
特定の態様では、方法は、DNAメチル化を阻害または増強する薬剤を対象に投与することをさらに含み得る。薬剤は小分子であってもよい。例えば、薬剤は5-アザシチジンまたは5-アザデオキシシチジンである。
【0092】
細胞内の1つ以上の目的の遺伝子の発現を調節する方法であって、メチル化可変領域が、遺伝子の転写開始部位の50kB以内に位置する、方法も開示される。この方法は、細胞を本発明のシステムと接触させることを含んでもよく、ガイド配列は、メチル化可変領域を標的とする。
【0093】
いくつかの態様では、メチル化可変領域は細胞内で高メチル化されており、エフェクタードメイン(例えば、Tet2またはTet1)は脱メチル化活性を有する。他の態様では、メチル化可変領域は細胞内でメチル化されておらず、エフェクタードメイン(例えば、Dnmt3a)はメチル化活性を有する。
【0094】
標的配列は、メチル化可変領域(DMR)を含み得る。メチル化可変領域は、異なる細胞型の細胞間(例えば、筋肉細胞対ニューロンまたは皮膚細胞対肝細胞)で可変的にメチル化され得る。メチル化可変領域は、罹患細胞と非罹患細胞との間(例えば、がん対非がん細胞)で可変的にメチル化され得る。メチル化可変領域は、分化状態間(例えば、前駆細胞対最終分化細胞)で可変的にメチル化され得る。1つ以上の遺伝子の発現に対する効果(例えば、改変から最大約0.5、1、2、5、10、20、50、100、500kb以内または約1、2、5、または10MB以内)は評価され得る。いくつかの態様では、メチル化可変領域は、高メチル化または非メチル化であり得る。
【0095】
いくつかの態様では、本発明のシステム/方法は、異常に高メチル化されたゲノム配列を脱メチル化することができるか、または異常にメチル化されていないゲノム配列をメチル化することができる。いくつかの態様では、異常に高メチル化された配列または異常にメチル化されていない配列は、疾患または障害において生じ得る。他の態様では、異常にメチル化されていないCTCF部位(例えば、CTCF結合部位)をメチル化するか、または異常にメチル化されているCTCF部位のメチル化を除去することは重要である。CTCF部位のメチル化または脱メチル化を変更すると、異常にメチル化されていない配列または領域、または異常に高メチル化された配列または領域を示す疾患または障害を治療または予防することができる。例えば、CTCFループは、CTCF結合部位をメチル化することによって開かれ得、それにより、その遺伝子の発現を増加させたい場合(例えば、遺伝子の発現が異常に低い、及び/または治療目的またはその他の目的で発現の増加が望まれる場合)、ループの外側にある遺伝子をループ内のエンハンサーの制御下に置く。
【0096】
いくつかの態様では、本発明のシステム/方法は、プロモーター配列を改変し得る。メチル化または非メチル化のプロモーター配列への本発明のシステムの標的化は、遺伝子の発現の活性化またはサイレンシングを引き起こし得る。
【0097】
いくつかの態様では、本発明のシステム/方法は、エンハンサー配列を改変し得る。メチル化または非メチル化のエンハンサー配列への本発明のシステムの標的化は、遺伝子の発現の活性化またはサイレンシングを引き起こし得る。
【0098】
いくつかの態様では、本発明のシステム/方法は、CTCF結合部位を改変し得る。CTCF結合部位への本発明のシステムの標的化は、CTCF結合に影響を及ぼし得、遺伝子発現を変化させ得るDNAループを妨害または増加させ得る(例えば、隣接ループにおいて)。
【0099】
特定の実施形態では、ガイド配列はRNA配列である。一態様では、単一のRNA配列は、調節または改変されているゲノム配列の1つ以上(例えば、すべて)に相補的であり得る。一態様では、単一のRNAは、単一の標的ゲノム配列に相補的である。2つ以上の標的ゲノム配列が調節または改変される特定の態様では、複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)のRNA配列が使用され、それぞれのRNA配列は、1つの標的ゲノム配列に相補的(特異的)である。いくつかの態様では、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ以上のRNA配列は、同じ標的配列の異なる部分に相補的(特異的)である。一態様では、2つ以上のRNA配列が、DNAの同じ領域の異なる配列に結合する。いくつかの態様では、単一のRNA配列は、ゲノム配列の少なくとも2つ以上(例えば、すべて)の標的に相補的である。1つ以上のゲノム配列に相補的なRNA配列の部分、及び触媒的に不活性な部位特異的ヌクレアーゼに結合するRNA配列の部分を、細胞、接合体、胚、または非ヒト動物へと、単一の配列または2つ(またはそれ以上)の別個の配列として導入できることも、当業者には明らかであろう。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性な部位特異的ヌクレアーゼに結合する配列は、ステムループを含む。
【0100】
特定の実施形態では、システムは、(1つ以上の)調節領域、オープンリーディングフレーム(ORF;スプライシング因子)、イントロン配列、細胞内の1つ以上のゲノム配列の染色体領域(例えば、テロメア、セントロメア)の全部または一部に相補的である1つ以上のガイド配列(または1つ以上のガイド配列をコードするポリヌクレオチド配列)を含む。いくつかの態様では、1つ以上のゲノム配列によって標的とされる調節領域は、プロモーター、エンハンサー、及び/またはオペレーター領域である。いくつかの態様では、調節領域の全部または一部が、1つ以上のガイド配列によって標的にされる。1つ以上のガイド配列によって標的とされる領域の全部または一部は、メチル化可変領域であり得る。いくつかの態様では、メチル化可変領域は、1つ以上の遺伝子(例えば、内在性遺伝子、外来性遺伝子)または(1つ以上の)転写開始部位(TSS)の、正確に、または約25塩基、50塩基、100塩基、200塩基、300塩基、400塩基、500塩基、600塩基、700塩基、800塩基、900塩基、1000塩基、1500塩基内、2000塩基、5000塩基、10000塩基、20000塩基、50000塩基、またはそれ以内またはそれ以上上流にある。いくつかの態様では、メチル化可変領域は、1つ以上の遺伝子(例えば、内在性遺伝子、外来性遺伝子)またはTSSの、正確に、または約25塩基、50塩基、100塩基、200塩基、300塩基、400塩基、500塩基、600塩基、700塩基、800塩基、900塩基、1000塩基、1500塩基内、2000塩基、5000塩基、10000塩基、20000塩基、50000塩基、またはそれ以内またはそれ以上下流にある。1つ以上のガイド配列によって標的とされる調節領域は、遺伝子(例えば、内在性または外来性)またはTSSの5’末端またはその付近に完全にまたは部分的に存在し得る。遺伝子の5’末端は、非転写(フランキング)領域(例えば、プロモーターの全部または一部)及び転写領域の一部を含み得る。
【0101】
本明細書に記載される場合、1つ以上のガイド配列は、(1つ以上の)触媒的に不活性な部位特異的ヌクレアーゼに対する(1つ以上の)結合部位も含む。触媒的に不活性な部位特異的ヌクレアーゼは、dCpf1などの触媒的に不活性なCRISPR関連(Cas)タンパク質であり得る。特定の態様では、1つ以上のガイド配列が1つ以上の標的配列にハイブリダイズすると、触媒的に不活性な部位特異的ヌクレアーゼが1つ以上のガイド配列に結合する。
【0102】
一態様では、複数のゲノム配列が調節される(例えば、多重活性化)。
【0103】
特定の実施形態では、方法は、細胞を非ヒト哺乳動物に導入することをさらに含む。非ヒト哺乳動物はマウスであってもよい。
【0104】
この方法は、本発明のシステム/ポリヌクレオチド(複数可)を細胞に導入することを含み得る。
【0105】
本開示は、疾患関連遺伝子を改変する方法を提供する。この方法は、本発明のシステム/ポリヌクレオチド(複数可)を細胞に導入することを含み得る。
【0106】
特定の実施形態では、ガイド配列は、配列番号14~33に示されるヌクレオチド配列(または該ヌクレオチド配列の相補的配列)に対して、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約75%、少なくとももしくは約80%、少なくとももしくは約85%、少なくとももしくは約90%、少なくとももしくは約95%、少なくとももしくは約99%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含み得る。
【0107】
特定の実施形態では、ガイド配列は、配列番号14~33に示されるヌクレオチド配列(または該ヌクレオチド配列の相補的配列)に対して、約80%~約100%、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約75%、少なくとももしくは約80%、少なくとももしくは約85%、少なくとももしくは約90%、少なくとももしくは約95%、少なくとももしくは約99%、少なくとももしくは約81%、少なくとももしくは約82%、少なくとももしくは約83%、少なくとももしくは約84%、少なくとももしくは約85%、少なくとももしくは約86%、少なくとももしくは約87%、少なくとももしくは約88%、少なくとももしくは約89%、少なくとももしくは約90%、少なくとももしくは約91%、少なくとももしくは約92%、少なくとももしくは約93%、少なくとももしくは約94%、少なくとももしくは約95%、少なくとももしくは約96%、少なくとももしくは約97%、少なくとももしくは約98%、少なくとももしくは約99%、または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0108】
エフェクタードメインは、細胞のエピゲノムを改変する活性を有し得る。エフェクタードメインは、ゲノム配列(例えば、遺伝子)の発現及び/または活性化を調節する分子(例えば、タンパク質またはポリペプチド)であり得る。
【0109】
いくつかの態様では、エフェクタードメインは、遺伝子の一方または両方の対立遺伝子を改変する。エフェクタードメインは、核酸配列及び/またはタンパク質として導入することができる。いくつかの態様では、エフェクタードメインは、構成的または誘導可能なエフェクタードメインであり得る。いくつかの態様では、Cas(例えば、dCpf1)核酸配列またはそのバリアント及びエフェクタードメイン核酸配列は、キメラ配列として細胞に導入される。いくつかの態様では、エフェクタードメインは、Casタンパク質と会合する(例えば、結合する)分子に融合される(例えば、エフェクター分子は、Casタンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片に融合される)。いくつかの態様では、Cas(例えば、dCpf1)タンパク質またはそのバリアント及びエフェクタードメインを融合または連結してキメラタンパク質を作成し、キメラタンパク質として細胞に導入する。いくつかの態様では、Cas(例えば、dCpf1)タンパク質とエフェクタードメインは、タンパク質-タンパク質相互作用として結合する。いくつかの態様では、Cas(例えば、dCpf1)タンパク質とエフェクタードメインは共有結合している。いくつかの態様では、エフェクタードメインは、Cas(例えば、dCpf1)タンパク質と非共有結合する。いくつかの態様では、Cas(例えば、dCpf1)核酸配列とエフェクタードメイン核酸配列は、別個の配列及び/またはタンパク質として導入される。いくつかの態様では、Cas(例えば、dCpf1)タンパク質とエフェクタードメインは、融合も連結もされていない。
【0110】
本明細書に示されるように、(1つ以上の)エフェクタードメイン(例えば、生物学的に活性な部分)の全部または一部と連結された触媒的に不活性なCasタンパク質(例えば、dCpf1)の融合は、1つ以上のゲノム配列の活性及び/または発現を調節する(例えば、転写もしくはクロマチン構成に特定の効果を発揮するか、特定の種類の分子を特定のDNA座に持ち込むか、または局所ヒストンもしくはDNA状態のセンサーとして作用する)ための1つ以上のガイド配列によって特異的なDNA部位に誘導され得るキメラタンパク質を作製する。特定の態様では、エフェクタードメインの全部または一部と連結されたdCpf1の融合は、1つ以上のRNA配列によって特異的なDNA部位に誘導されて、1つ以上のゲノム配列のメチル化または脱メチル化を調節または改変することができるキメラタンパク質を作製する。本明細書で使用される場合、「エフェクタードメインの生物学的に活性な部分」は、エフェクタードメイン(例えば、「最小」または「コア」ドメイン)の機能を(例えば、完全に、部分的に、最小限に)維持する部分である。
【0111】
エフェクタードメインは、DNAのメチル化状態を改変する酵素であり得る。エフェクタードメインは、メチル化活性または脱メチル化活性(例えば、DNAメチル化またはDNA脱メチル化活性)を有し得る。例えば、エフェクタードメインは、DNAメチルトランスフェラーゼ(Dnmt3b及びDmnt3aなどのDNMT)または10-11転座(TET)メチルシトシンジオキシゲナーゼタンパク質(Tet2またはTet1など)であり得る。エフェクタードメインは、ACIDA、MBD4、Apobec1、Apobec2、Apobec3、Tdg、Gadd45a、Gadd45b、またはROS1であってよく、エフェクタードメインは、Dnmt1、Dnmt3a、Dnmt3b、CpGメチルトランスフェラーゼM.SssI、またはM.EcoHK3 IIであり得る。
【0112】
エフェクタードメインは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)、またはヒストンデメチラーゼ(例えば、LSD1)などのヒストンサブユニットを修飾する酵素であり得る。一実施形態では、HATはp300である。
【0113】
エフェクタードメインは、野生型CTCFまたはDNA結合変異体CTCFを含むCTCFであり得る。特定の実施形態では、DNA結合変異体CTCFは、次の変異:K365A、R368A、R396A、及びQ418Aのうちの1つ以上を含む。
【0114】
エフェクタードメインは、転写活性化ドメイン、例えば、VP64、VPR、またはNF-κB p65に由来する転写活性化ドメインであり得る。エフェクタードメインは、転写サイレンサー(ヘテロクロマチンタンパク質1(HP1)、もしくはメチルCpG結合タンパク質2(MeCP2))、または転写抑制ドメイン(例えば、クルッペル関連ボックス(KRAB)ドメイン、ERFリプレッサードメイン(ERD)、もしくはmSin3A相互作用ドメイン(SID))であり得る。
【0115】
エフェクタードメインの例としてはまた、転写(al)活性化ドメイン、コアクチベータードメイン、転写因子、転写休止解除因子ドメイン、転写伸長ドメインの負の調節因子、転写リプレッサードメイン、クロマチンオーガナイザードメイン、リモデラードメイン、ヒストン修飾ドメイン、DNA修飾ドメイン、及びRNA結合ドメインが挙げられる。エフェクタードメインの他の例としては、ヒストンマークリーダー/インタラクター、及びDNA修飾リーダー/インタラクターが挙げられる。
【0116】
本発明の一態様では、dCpf1のエフェクタードメインへの融合は、全長または部分長エフェクタードメインの単一コピーまたは複数/タンデムコピーの融合であり得る。他の融合は、エフェクタードメインの分割(機能的に相補的な)バージョンとの融合であり得る。
【0117】
エフェクタードメインの他の例は、PCT公開第WO2014172470号及び米国出願公開第US20160186208号に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0118】
いくつかの態様では、Cas(例えば、dCpf1)タンパク質は、エフェクタードメインのN末端またはC末端に融合することができる。
【0119】
一態様では、dCpf1と1つ以上のエフェクタードメインの全部または一部との融合は、1つ以上のリンカーを含む。一態様では、リンカーは、1つ以上のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、リンカーは、2つ以上のアミノ酸を含む。一態様では、リンカーはアミノ酸配列GSを含む。いくつかの態様では、Cas(例えば、dCpf1)と2つ以上のエフェクタードメインとの融合は、ドメイン間に散在する1つ以上のリンカー(例えば、GSリンカー)を含む。いくつかの態様では、1つ以上の核局在化配列は、触媒的に不活性なヌクレアーゼ(例えば、dCpf1)とエフェクタードメインとの間に位置し得る。例えば、融合タンパク質は、dCpf1-NLS-Tet2、dCpf1-NLS-Dnmt3b、またはdCpf1-NLS-CTCFを含み得る。
【0120】
いくつかの態様では、1つ以上のゲノム配列の1つのコピーが改変される。いくつかの態様では、細胞内の1つ以上のゲノム配列の両方のコピーが改変される。いくつかの態様では、改変される1つ以上のゲノム配列は、細胞にとって内在性である。特定の態様では、ゲノム配列の少なくとも2つは内在性ゲノム配列である。いくつかの態様では、ゲノム配列の少なくとも2つは外来性ゲノム配列である。少なくとも2つのゲノム配列が存在するいくつかの態様では、ゲノム配列の少なくとも1つは内在性ゲノム配列であり、ゲノム配列の少なくとも1つは外来性ゲノム配列である。いくつかの態様では、ゲノム配列の少なくとも2つは内在性遺伝子である。いくつかの態様では、ゲノム配列の少なくとも2つは外来性遺伝子である。少なくとも2つのゲノム配列が存在するいくつかの態様では、ゲノム配列の少なくとも1つは内在性遺伝子であり、ゲノム配列の少なくとも1つは外来性遺伝子である。いくつかの態様では、ゲノム配列の少なくとも2つは、少なくとも1kB離れている。いくつかの態様では、ゲノム配列の少なくとも2つは異なる染色体上にある。
【0121】
本方法は、細胞における多重エピゲノム編集を提供し得る。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の方法を使用して、(単一の)細胞内のゲノム配列(例えば、遺伝子)の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30などの改変を可能にする。特定の態様では、1つのゲノム配列が(単一の)細胞において改変される。いくつかの態様では、2つのゲノム配列が(単一の)細胞において改変される。いくつかの態様では、3つのゲノム配列が(単一の)細胞において改変される。いくつかの態様では、4つのゲノム配列が(単一の)細胞において改変される。いくつかの態様では、5つのゲノム配列が(単一の)細胞において改変される。
【0122】
「調節する」または「改変する」とは、目的のレベル(発現レベル)、活性、プロセス、経路、または現象の質的または量的変化、変化、または改変を引き起こすかまたは促進することを意味する。非限定的に、そのような変化は、プロセス、経路、または現象のさまざまな構成要素または枝の相対的な強さまたは活性の増加、減少、または変化であり得る。
【0123】
本発明のシステム/方法は、対象及び/または細胞への投与(または細胞との接触)後、約2時間で、約5時間で、約10時間で、約24時間で、約1日間で、約2日間で、約3日間で、約4日間で、約5日間で、約6日間で、約1週間で、約2週間で、約3週間で、約4週間で、約5週間で、約6週間で、約7週間で、約8週間で、約9週間で、約10週間で、約11週間で、約1か月間で、約2か月間で、約3か月間で、約4か月間で、約5か月間で、約6か月間で、約1週間~約2週間で、または異なる時間枠内で、少なくとももしくは約10%、少なくとももしくは約15%、少なくとももしくは約20%、少なくとももしくは約25%、少なくとももしくは約30%、少なくとももしくは約35%、少なくとももしくは約40%、少なくとももしくは約45%、少なくとももしくは約50%、少なくとももしくは約55%、少なくとももしくは約60%、少なくとももしくは約65%、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約75%、少なくとももしくは約80%、少なくとももしくは約85%、少なくとももしくは約90%、少なくとももしくは約91%、少なくとももしくは約92%、少なくとももしくは約93%、少なくとももしくは約94%、少なくとももしくは約95%、少なくとももしくは約96%、少なくとももしくは約97%、少なくとももしくは約98%、または少なくとももしくは約99%で、少なくとも1つの(野生型)遺伝子またはタンパク質の発現レベルまたは活性の増加、または少なくとも1つの(変異)遺伝子またはタンパク質の発現レベルまたは活性の減少をもたらし得る。
【0124】
対象及び/または細胞への投与(または細胞との接触)後、約2時間で、約5時間で、約10時間で、約24時間で、約1日間で、約2日間で、約3日間で、約4日間で、約5日間で、約6日間で、約1週間で、約2週間で、約3週間で、約4週間で、約5週間で、約6週間で、約7週間で、約8週間で、約9週間で、約10週間で、約11週間で、約1か月間で、約2か月間で、約3か月間で、約4か月間で、約5か月間で、約6か月間で、約1週間~約2週間で、または異なる時間枠内で、標的配列(例えば、第1の標的配列)を含まないポリヌクレオチドと比較して、約1%~約100%、約5%~約90%、約10%~約80%、約5%~約70%、約5%~約60%、約10%~約50%、約15%~約40%、約5%~約20%、約1%~約20%、約10%~約30%、少なくとももしくは約5%、少なくとももしくは約10%、少なくとももしくは約15%、少なくとももしくは約20%、少なくとももしくは約30%、少なくとももしくは約40%、少なくとももしくは約50%、少なくとももしくは約60%、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約80%、少なくとももしくは約90%、少なくとももしくは約100%、約10%~約90%、約12.5%~約80%、約20%~約70%、約25%~約60%、または約25%~約50%、少なくとももしくは約2倍、少なくとももしくは約3倍、少なくとももしくは約4倍、少なくとももしくは約5倍、少なくとももしくは約6倍、少なくとももしくは約7倍、少なくとももしくは約8倍、少なくとももしくは約9倍、少なくとももしくは約10倍、少なくとももしくは約1.5倍、少なくとももしくは約2.5倍、少なくとももしくは約3.5倍、少なくとももしくは約15倍、少なくとももしくは約20倍、少なくとももしくは約50倍、少なくとももしくは約100倍、少なくとももしくは約120倍、約2倍~約500倍、約1.1倍~約10倍、約1.1倍~約5倍、約1.5倍~約5倍、約2倍~約5倍、約3倍~約4倍、約5倍~約10倍、約5倍~約200倍、約10倍~約150倍、約10倍~約20倍、約20倍~約150倍、約20倍~約50倍、約30倍~約150倍、約50倍~約100倍、約70倍~約150倍、約100倍~約150倍、約10倍~約100倍、約100倍~約200倍、(野生型)遺伝子またはタンパク質の発現レベル及び/または活性は増加し得るか、または(変異型)遺伝子またはタンパク質の発現レベル及び/または活性は減少し得る。
【0125】
CRISPR/CasシステムのCas酵素は、Cas9、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csbl、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1、そのホモログ、そのオルソログ、またはその改変版であり得る。
【0126】
一実施形態では、Cas酵素はCpf1である。
【0127】
一例として、CRISPR/Casは、例えば治療用途のためにウイルスベクターによってコードされ得る。
【0128】
gRNA(またはcrRNA、またはsgRNA)は、標的配列(「標的領域」または「標的DNA」)に対して、完全に相補的または実質的に相補的(例えば、少なくとも約70%(例えば、少なくとももしくは約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上相補的))であり得る。特定の実施形態では、gRNA(またはcrRNA、もしくはsgRNA)配列(またはgRNA(またはcrRNA、もしくはsgRNA)の標的化セグメント)は、標的配列に対して100%の相補性を有する。gRNA(またはcrRNA、もしくはsgRNA)の標的化セグメントは、標的配列と完全な相補性を有し得る。gRNA(またはcrRNA、もしくはsgRNA)の標的化セグメントは、標的配列と部分的な相補性を有し得る。特定の実施形態では、gRNA(またはcrRNA、もしくはsgRNA)の標的化セグメントは、標的配列の対応するヌクレオチドと相補的でない(ミスマッチ)1、2、3、4、5、6、7、または8個のヌクレオチドを有するか、または含む。
【0129】
特定の実施形態では、gRNA(またはcrRNA、もしくはsgRNA)は、約10ヌクレオチド~約150ヌクレオチドの長さである。
【0130】
特定の実施形態では、gRNA(またはcrRNA、もしくはsgRNA)の標的化セグメントは、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26ヌクレオチドの長さである。特定の実施形態では、gRNA(またはcrRNA、もしくはsgRNA)の標的化セグメントは、10~100、10~90、10~80、10~70、10~60、10~50、10~40、10~30、10~20、または10~15ヌクレオチドの長さである。特定の実施形態では、gRNA(またはcrRNA、もしくはsgRNA)の標的化セグメントは、20~100、20~90、20~80、20~70、20~60、20~50、20~40、20~30、または20~25ヌクレオチドの長さである。
【0131】
一実施形態では、相補性の程度は、gRNA(またはcrRNA、もしくはsgRNA)の他の特性とともに、標的核酸へのCas分子の標的化を可能にするのに十分である。
【0132】
いくつかの実施形態では、標的配列は、必須遺伝子または非必須遺伝子内に位置する。一実施形態では、標的配列は、本明細書に記載の遺伝子(例えば、疾患関連遺伝子)に由来し得る。
【0133】
本開示は、本明細書に記載のシステム;本明細書に記載のポリペプチド(複数可);本明細書に記載の核酸(複数可);本明細書に記載のベクター(複数可);または本明細書に記載の組成物を含む細胞を提供する。
【0134】
細胞は、脊椎動物、哺乳動物(例えば、ヒト)、げっ歯類、ヤギ、ブタ、トリ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウシ、ウマ、ヒツジ、魚類、または霊長類の細胞であり得る。細胞は植物細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。
【0135】
細胞は、体細胞、幹細胞、有糸分裂細胞または有糸分裂後の細胞、ニューロン、線維芽細胞、または接合体であり得る。細胞、接合体、胚、または出生後の哺乳動物は、脊椎動物(例えば、哺乳動物)由来であり得る。いくつかの態様では、脊椎動物は哺乳類または鳥類である。特定の例としては、霊長類(例えば、ヒト)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ブタ、または鳥類(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ)の細胞、接合体、胚、または出生後の哺乳動物が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞、接合体、胚、または出生後の哺乳動物が単離される(例えば、単離された細胞、単離された接合体、単離された胚)。いくつかの実施形態では、マウス細胞、マウス接合体、マウス胚、またはマウスの出生後の哺乳動物が使用される。いくつかの実施形態では、ラット細胞、ラット接合体、ラット胚、またはラットの出生後の哺乳動物が使用される。いくつかの実施形態では、ヒト細胞、ヒト接合体、またはヒト胚が使用される。
【0136】
細胞は、体細胞、生殖細胞、または出生前細胞であり得る。細胞は、接合体、胚盤胞または胚細胞、幹細胞、有糸分裂コンピテント細胞、減数分裂コンピテント細胞であり得る。
【0137】
本発明のシステムまたは組成物は、細胞、接合体、胚、ヒト対象、または非ヒト哺乳動物に導入され得る。
【0138】
一実施形態では、細胞は、がん細胞または疾患もしくは障害を特徴とする他の細胞である。
【0139】
一実施形態では、標的配列は、ヒト細胞の核酸に由来する。一実施形態では、標的配列は、体細胞、生殖細胞、出生前細胞、例えば、接合体、胚盤胞または胚、胚盤胞細胞、幹細胞、有糸分裂コンピテント細胞、減数分裂コンピテント細胞の核酸に由来する。
【0140】
一実施形態では、標的配列は染色体核酸に由来する。一実施形態では、標的配列はオルガネラ核酸に由来する。一実施形態では、標的配列はミトコンドリア核酸に由来する。一実施形態では、標的配列は葉緑体核酸に由来する。
【0141】
一実施形態では、細胞は、望ましくない増殖を特徴とする細胞、例えば、がん細胞である。一実施形態では、細胞は、ウイルスに感染した細胞、細菌に感染した細胞などの、望ましくないゲノム成分(例えば、ウイルスのゲノム成分)を特徴とする細胞である。
【0142】
本開示は、本明細書に記載のポリペプチド(複数可);本明細書に記載の核酸(複数可);本明細書に記載のベクター(複数可);本明細書に記載のシステム;または本明細書に記載の細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0143】
本開示は、細胞のエピゲノムを調節する方法を提供する。この方法は、細胞を本発明のポリヌクレオチド(複数可)(核酸(複数可))、本発明のシステム、または本発明の組成物と接触させることを含み得る。
【0144】
一態様では、本開示は、細胞を改変する方法、例えば細胞の標的核酸の構造、例えば配列を改変する方法であって、細胞を本発明のポリヌクレオチド(複数可)(核酸(複数可))、本発明のシステム、または本発明の組成物と接触させることを含む方法を特徴とする。
【0145】
別の態様では、本開示は、対象を治療する方法を特徴とする。この方法は、有効量の本発明のポリヌクレオチド(複数可)(核酸(複数可))、本発明のシステム、または本発明の組成物を対象に投与する(または対象の細胞に接触させる)ことを含み得る。
【0146】
本開示は、対象における疾患または状態を治療する方法を提供する。この方法は、本発明のポリヌクレオチド(複数可)(核酸(複数可))、本発明の組成物、本発明のシステム、または本発明の細胞を対象に投与することを含み得る。
【0147】
一実施形態では、対象は動物または植物である。一実施形態では、対象は、哺乳動物、霊長類、またはヒトである。
【0148】
本開示は、本明細書に記載のポリペプチド(複数可);本明細書に記載の核酸(複数可);本明細書に記載のベクター(複数可);本明細書に記載のシステム;または本明細書に記載の組成物を含むキットを提供する。キットは、本明細書に記載の方法において、システム、ポリペプチド(複数可)、核酸(複数可)、ベクター(複数可)、または組成物を使用するための使用説明書を含み得る。
【0149】
本発明のシステム/方法は、本明細書に記載のX連鎖病または本明細書に記載のインプリンティング関連疾患を治療するために使用することができる。
【0150】
本開示は、細胞中のX連鎖病関連遺伝子またはインプリンティング関連疾患関連遺伝子を改変するための方法を提供する。この方法は、細胞を本発明のシステム/ポリヌクレオチド(複数可)または組成物と接触させることを含み得る。
【0151】
細胞は、X連鎖病またはインプリンティング関連疾患などの疾患を有する対象由来のものであり得る。細胞は、X連鎖病またはインプリンティング関連疾患などの疾患を有する対象由来の細胞に由来し得る。
【0152】
細胞は、幹細胞、ニューロン、有糸分裂後の細胞、または線維芽細胞であり得る。いくつかの態様では、細胞はヒト細胞またはマウス細胞である。
【0153】
細胞は、例えば対象の線維芽細胞に由来する誘導多能性幹細胞(iPSC)であり得る。細胞はESCであってもよい。
【0154】
この方法は、iPSCまたはESCを培養して、例えばニューロンに分化させることをさらに含んでもよい。この方法は、分化細胞(例えば、ニューロン)を対象に投与することをさらに含んでもよい。
【0155】
細胞は、対象にとって自家性または同種異系であり得る。
【0156】
本開示は、対象におけるX連鎖病またはインプリンティング関連疾患を治療するための方法を提供する。この方法は、治療有効量の本発明のシステム、ポリヌクレオチド(複数可)、または組成物を対象に投与することを含み得る。
【0157】
「疾患」、「障害」、または「状態」という用語は交換可能に使用され、生物の健康状態及び/または正常な機能からのいずれかの変化、例えば、罹患した個人に対して、疼痛、不快感、機能障害、苦痛、変性、または死を引き起こす身体または心の異常を指し得る。疾患には、当業者に知られている任意の疾患が含まれる。例としては、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、がん、高血圧、糖尿病(例えば、II型糖尿病)、循環器疾患、及び脳卒中(虚血性、出血性)が挙げられる。
【0158】
いくつかの実施形態では、疾患は、精神疾患、神経疾患、神経発達疾患、神経変性疾患、循環器疾患、自己免疫疾患、がん、代謝疾患、または呼吸器疾患である。いくつかの実施形態では、疾患は、精神疾患、神経疾患、または神経発達疾患、例えば、統合失調症、うつ病、双極性障害、てんかん、自閉症、依存症である。神経変性疾患としては、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症が挙げられる。
【0159】
いくつかの実施形態では、疾患は、自己免疫疾患、例えば、急性播種性脳脊髄炎、円形脱毛症、抗リン脂質症候群、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌症候群、自己免疫性ぶどう膜炎、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、I型糖尿病(例えば、若年性糖尿病)、多発性硬化症、強皮症、強直性脊椎炎、サルコイド、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、乾癬、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性関節炎、乾癬性関節炎、ベーチェット症候群、ライター病、バーガー病、皮膚筋炎、多発性筋炎、抗好中球細胞質抗体関連血管炎(例えば、多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症としても知られる)、顕微鏡的多発血管炎、及びチャーグ・ストラウス症候群)、強皮症、シェーグレン症候群、抗糸球体基底膜疾患(グッドパスチャー症候群を含む)、拡張型心筋症、原発性胆汁性肝硬変、甲状腺炎(例、橋本甲状腺炎、バセドウ病)、横断性脊髄炎、及びギラン・バレー症候群である。
【0160】
いくつかの実施形態では、疾患は呼吸器疾患、例えば、呼吸器系に影響を及ぼすアレルギー、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺高血圧症、肺線維症、及びサルコイドーシスである。
【0161】
いくつかの実施形態では、疾患は腎疾患、例えば、多発性嚢胞腎、ループス、腎症(ネフローゼもしくは腎炎)、または糸球体腎炎(任意の種類)である。
【0162】
いくつかの実施形態では、疾患は、例えば、加齢に関連する視力喪失または難聴である。
【0163】
いくつかの実施形態では、疾患は、感染症、例えば、ウイルス、細菌、真菌、または寄生生物によって引き起こされる任意の疾患である。
【0164】
いくつかの実施形態では、疾患は、ゲノム配列において高メチル化(例えば、異常な高メチル化)または非メチル化(例えば、異常な非メチル化)を示す。例えば、脆弱X症候群はFMR-1の高メチル化を示す。本発明のシステムは、CCG過剰メチル化を特異的に脱メチル化し、FMG-1を再活性化し、それによって脆弱X症候群を治療するために使用することができる。本明細書に記載の方法は、異常なメチル化(例えば、過剰メチル化または非メチル化)を示す疾患または障害を治療または予防するために使用することができる。
【0165】
ポリヌクレオチド/ベクターは、組換えレンチウイルスベクター、またはAAV2ベクターもしくはAAV8ベクターなどのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり得る。
【0166】
本発明のシステムは、任意の適切な手段によって送達され得る。特定の実施形態では、システムは、インビボで送達される。他の実施形態では、システムは、対象/患者へのインビボ送達に有用な改変細胞を提供するために、インビトロで単離/培養された細胞(例えば、自家iPSC細胞)に送達される。
【0167】
本開示に記載のウイルス粒子の注射の代替として、細胞補充療法を使用して疾患を予防、是正、または治療することができ、本開示の方法は、単離された患者の細胞(エクスビボ)に適用され、その後に、「修正された」細胞を患者に戻すことが続く。
【0168】
一実施形態では、本開示は、本発明のシステムまたは組成物を真核細胞に導入することを提供する。
【0169】
細胞は幹細胞であってもよい。幹細胞の例としては、多能性、全能性、多分化能、及び単能性幹細胞が挙げられる。多能性幹細胞の例としては、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、胎児性幹細胞、成体幹細胞、胚性癌細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)が挙げられる。
【0170】
細胞は体細胞であってもよい。体細胞は、動物から新たに単離されたものなどの初代細胞(非不死化細胞)であってもよく、培養中の長期増殖(例えば、3か月以上)または無限増殖(不死化細胞)が可能な細胞株に由来してもよい。成体の体細胞は、個体、例えばヒト対象から得ることができ、当業者が利用できる標準的な細胞培養プロトコールに従って培養することができる。本発明の態様で使用される体細胞としては、例えば、ヒト細胞、非ヒト霊長類細胞、またはげっ歯類(例えば、マウス、ラット)の細胞などの哺乳動物細胞が挙げられる。それらは、一般に生きた体細胞を含む器官または組織から、例えば、皮膚、肺、膵臓、肝臓、胃、腸、心臓、乳房、生殖器、筋肉、血液、膀胱、腎臓、尿道及び他の泌尿器などのさまざまな器官から周知の方法によって得ることができる。さまざまな実施形態において有用な哺乳動物の体細胞としては、例えば、線維芽細胞、セルトリ細胞、顆粒膜細胞、ニューロン、膵臓細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、毛包細胞、ケラチノサイト、造血細胞、メラノサイト、軟骨細胞、リンパ球(Bリンパ球及びTリンパ球)、マクロファージ、単球、単核細胞、心筋細胞、骨格筋細胞などが挙げられる。
【0171】
神経疾患の治療のために、患者のiPSC細胞を単離し、エクスビボでニューロンに分化させることができる。疾患関連遺伝子の変異によって特徴付けられる患者のiPSC細胞またはニューロンは、疾患関連遺伝子の野生型対立遺伝子の発現またはサイレンシング(例えば、疾患関連遺伝子の転写がブロックされている)をもたらす様式で、本開示の方法を用いて操作することができる。
【0172】
「誘導多能性幹細胞」は、一般にiPS細胞またはiPSCと略され、非多能性細胞、典型的には成体体細胞、または、再プログラミング因子と呼ばれる特定の因子を導入することにより、線維芽細胞、造血細胞、筋細胞、ニューロン、表皮細胞などの最終分化細胞から人工的に調製されたタイプの多能性幹細胞を指す。
【0173】
本方法は、iPS細胞を分化細胞、例えばニューロンに分化させることをさらに含んでもよい。
【0174】
例えば、患者の線維芽細胞を皮膚生検から採取し、iPS細胞に形質転換することができる(Dimos JT et al.(2008)Induced pluripotent stem cells generated from patients with ALS can be differentiated into motor neurons.Science 321:1218-1221;Nature Reviews Neurology 4,582-583(November 2008)、Luo et al.,Generation of induced pluripotent stem cells from skin fibroblasts of a patient with olivopontocerebellar atrophy,Tohoku J.Exp. Med.2012,226(2):151-9)。CRISPRを介した改変は、この段階で行うことができる。修正された細胞クローンは、RFLPアッセイによってスクリーニング及び選択できる。次いで、修正された細胞クローンを例えばニューロンに分化させ、そのニューロン特異的マーカーについて試験する。十分に分化したニューロンは、ドナー患者に自家移植することができる。
【0175】
細胞は、細胞を投与される対象に対して自家性または同種異系であり得る。
【0176】
「自家性」という用語は、それが後に個体に再導入される同じ個体に由来する任意の材料を指す。
【0177】
「同種異系」という用語は、材料が導入される個体と同じ種の異なる動物に由来する任意の材料を指す。同じ種の2つ以上の個体は、互いに同種異系であると言われる。
【0178】
対象に投与される細胞療法のための修正された細胞。本開示に記載される細胞(例えば、ニューロン)は、薬学的に許容される担体とともに製剤化され得る。例えば、細胞は、単独で、または医薬製剤の成分として投与することができる。細胞(例えば、ニューロン)は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、溶質もしくは懸濁剤もしくは増粘剤を含んでもよい、1つ以上の薬学的に許容される滅菌等張水溶液もしくは非水溶液(例えば、平衡塩類溶液(BSS))、分散液、懸濁液もしくはエマルション、または使用直前の無菌の注射用の溶液または分散液に再構成され得る無菌粉末と組み合わせて投与され得る。
【0179】
本開示に従って治療することができる対象には、本発明から利益を得ることができるすべての動物が含まれる。そのような対象としては、哺乳動物、好ましくはヒト(幼児、小児、青年及び/または成人)が含まれるが、イヌ及びネコなどの動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギなどの家畜、及び実験室の動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)であってもよい。
【0180】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、交換可能に使用される。これらの用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体のいずれかである、任意の長さのポリマー形態のヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドの例としては、DNA、遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、短鎖干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、及びプライマーが挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド配列内の1つ以上のヌクレオチドをさらに修飾することができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、標識剤とのコンジュゲーションなどによって、重合後にさらに修飾することができる。
【0181】
「Cas9」という用語は、この名前で参照されるCRISPR関連エンドヌクレアーゼを指す。非限定的な例示的なCas9、例えば、UniProtKB G3ECR1(CAS9_STRTR)、またはStaphylococcus aureusのCas9、ならびにヌクレアーゼのデッドなCas9、オルソログ、及びそれらのそれぞれの生物学的同等物が本明細書に提供される。オルソログとしてはStreptococcus pyogenesのCas9(「spCas9」)、Streptococcus thermophiles、Legionella pneumophilia、Neisseria lactamica、Neisseria meningitides、Francisella novicida由来のCas 9、ならびにAcidaminococcus spp.及びFrancisella novicida U112を含む様々な細菌の種由来のCpf1(Cas9と同様の切断機能を実施する)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0182】
本明細書で使用される場合、「gRNA」または「ガイドRNA」という用語は、CRISPR技術を使用する修正のために特定の遺伝子を標的とするために使用されるガイドRNA配列を指す。標的特異性のためにgRNA及びドナー治療用ポリヌクレオチドを設計する技術は、当該技術分野で周知である(例えば、Doench,J.,et al.Nature biotechnology 2014;32(12):1262-7,Mohr,S.et al.(2016)FEBS Journal 283:3232-38,及びGraham,D.,et al.Genome Biol.2015;16:260)。gRNAは、CRISPR RNA(crRNA)とトランス活性化CRIPSPR RNA(tracrRNA)を含む融合ポリヌクレオチド、またはCRISPR RNA(crRNA)とトランス活性化CRIPSPR RNA(tracrRNA)を含むポリヌクレオチドを含む、または代替的にそれらから本質的になる、またはさらにそれらからなることができる。いくつかの態様では、gRNAは合成である(Kelley,M.et al.(2016)J of Biotechnology 233(2016)74-83)。本明細書で使用される場合、gRNAの生物学的等価物としては、Casまたはその等価物を細胞ゲノムの特定の領域などの特定のヌクレオチド配列に導くことができるポリヌクレオチドまたは標的化分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
ヌクレアーゼドメインに1つ以上の変異があるヌクレアーゼ欠損またはヌクレアーゼ欠損のCasタンパク質(例えば、dCas9)は、ガイド配列(例えば、gRNA)と複合体を形成した場合、DNA結合活性を保持する。dCasタンパク質は、エフェクタードメインまたはタンパク質タグを、gRNAによって一致する部位へのタンパク質融合によって繋ぎ止め、局在化することができるため、RNA誘導型DNA結合酵素を構成する。
【0184】
gRNAは、特定の遺伝子、任意で疾患、障害、または状態に関連する遺伝子を標的とするように生成することができる。したがって、Casと組み合わせて、ガイドRNAはCRISPR/Casシステムの標的特異性を促進する。本明細書で論じるように、プロモーターの選択(例えば、特定の器官または組織における発現を促進するポリヌクレオチドをコードするガイドRNAのプロモーターを選択する)などのさらなる態様は、標的特異性を達成する追加のメカニズムを提供し得る。したがって、特定の疾患、障害、または状態に適したgRNAの選択が本明細書で企図される。
【0185】
いくつかの実施形態では、Cas(例えば、Cas9)ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を改変して、タンパク質の活性を変更する。いくつかの実施形態では、Cas(例えば、Cas9)ヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCas(例えば、Cas9)(または触媒的に不活性化/欠陥のあるCas9もしくはdCas9)である。一実施形態では、dCas(例えば、dCas9)は、野生型Cas(例えば、Cas9)の一方または両方のエンドヌクレアーゼ触媒部位(RuvC及びHNH)での点変異のためにエンドヌクレアーゼ活性を欠くCasタンパク質(例えば、Cas9)である。例えば、dCas9には触媒活性残基(D10及びH840)の変異が含まれており、ヌクレアーゼ活性がない。場合によっては、dCasは標的DNAの相補鎖と非相補鎖の両方を切断する能力が低下している。非限定的な例として、場合によっては、dCas9は、S.pyogenesのCas9のアミノ酸配列のD10AとH840Aの変異の両方を保有する。いくつかの実施形態では、dCas9が触媒活性の低下または欠損を有する場合(例えば、Cas9タンパク質がD10、G12、G17、E762、H840、N854、N863、H982、H983、A984、D986、及び/またはA987変異、例えば、D10A、G12A、G17A、E762A、H840A、N854A、N863A、H982A、H983A、A984A、及び/またはD986Aを有する場合)、Casタンパク質は、対象ポリヌクレオチド(例えば、gRNA)のCas結合配列と相互作用する能力を保持する限り、対象ポリヌクレオチド(例えば、gRNA)のDNA標的化配列により標的ポリヌクレオチド配列へと誘導されるために、依然として部位特異的に標的DNAに結合できる。
【0186】
本開示は、疾患関連遺伝子を改変することができる遺伝子編集方法を提供し、転じてこれは、疾患に苦しむ患者のためのインビボ遺伝子治療に使用することができる。
【0187】
ヌクレアーゼ(例えば、dCpf1)は、DNA、mRNA、またはタンパク質の形態で細胞に導入することができる。配列特異的ヌクレアーゼは、タンパク質の形態で、または配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸、例えば、mRNAもしくはcDNAの形態で細胞に導入することができる。核酸は、プラスミドまたはウイルスのベクターなどのより大きな構築物の一部として、または例えばエレクトロポレーション、脂質小胞、ウイルストランスポーター、マイクロインジェクション、及び微粒子銃によって直接送達することができる。
【0188】
本発明のシステム/方法で使用されるガイド配列(例えば、crRNA、sgRNA、gRNAなど)は、約5~100のヌクレオチドの長さ、またはそれ以上(例えば、5、6、7、8、9、10,11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36,37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62,63、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87,88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100ヌクレオチドの長さ、またはそれ以上)であり得る。一実施形態では、ガイド配列(例えば、crRNA、sgRNA、gRNAなど)は、約15~約30ヌクレオチドの長さ(例えば、約15~29、15~26、15~25、16~30、16~29、16~26、16~25、または約18~30、18~29、18~26、または18~25ヌクレオチドの長さ)であり得る。
【0189】
本開示の方法はまた、腫瘍抑制遺伝子における変異の存在により生じるがんを予防、修正、または治療するために使用することができる。腫瘍抑制遺伝子の例としては、網膜芽細胞腫感受性遺伝子(RB)遺伝子、p53遺伝子、結腸癌で欠失した(DCC)遺伝子、大腸腺腫様ポリポーシス(APC)遺伝子、pl6、BRCA1、BRCA2、MSH2、及び神経線維腫症タイプ1(NF-1)腫瘍抑制遺伝子(Lee at al.Cold Spring Harb Perspect Biol.2010 Oct;2(10))が挙げられる。
【0190】
本開示の方法は、疾患の異なる段階(例えば、初期、中期、または後期)の患者を治療するために使用され得る。本方法は、患者を1回または複数回治療するために使用され得る。したがって、治療期間はさまざまであり得、複数回の治療が含まれてもよい。
【0191】
さらに、本開示の方法は、特定の遺伝子ヒト化マウスモデルならびに患者由来細胞に適用することができ、設計されたsgRNAの効率及び有効性ならびにヒト細胞における部位特異的組換え頻度を決定することを可能にし、それらはその後使用され得る臨床現場でのガイドとなり得る。
【0192】
本発明のシステムを標的化細胞及び/または被対象に送達するために、さまざまなウイルス構築物を使用することができる。そのような組換えウイルスの非限定的な例としては、組換えレンチウイルス、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)、組換えアデノウイルス、組換えレトロウイルス、組換えポックスウイルス、及び当該技術分野で他の既知のウイルス、ならびにプラスミド、コスミド、及びファージが挙げられる。遺伝子送達ウイルス構築物の選択肢は周知である(例えば、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,1989;Kay,M.A.,et al.,2001 Nat.Medic.7(1):33-40;及びWalther W.and Stein U.,2000 Drugs,60(2):249-71を参照されたい)。
【0193】
AAVウイルスベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10または他の既知及び未知のAAV血清型を含むがこれらに限定されない任意のAAV血清型の中から選択され得る。特定の実施形態では、AAV2及び/またはAAV8が使用される。
【0194】
AAVという用語は、その他の点で要求される場合を除いて、すべてのサブタイプ、血清型、偽型、及び天然に存在する形態と組換え形態の両方を包含する。偽型AAVは、ある血清型からのキャプシドタンパク質及び第2の血清型のウイルスゲノムを含むAAVを指す。
【0195】
さらに、ナノ粒子ベース及び脂質ベースのmRNAまたはタンパク質の送達システムなどの送達ビヒクルは、ウイルスベクターの代替として使用できる。代替送達ビヒクルのさらなる例としては、レンチウイルスベクター、リボ核タンパク質(RNP)複合体、脂質ベースの送達システム、遺伝子銃、流体力学的、エレクトロポレーションまたはヌクレオフェクションマイクロインジェクション、及び遺伝子銃が挙げられる。Nayerossadat et al.(Adv Biomed Res.2012;1:27)及びIbraheem et al.(Int J Pharm.2014 Jan 1;459(1-2):70-83)によって、さまざまな遺伝子送達方法が詳細に論じられている。
【0196】
本開示のベクターは、構成的、調節可能もしくは誘導可能、細胞型特異的、組織特異的、または種特異的である、当該技術分野で公知の多数のプロモーターのいずれかを含むことができる。転写を指示するのに十分な配列に加えて、本発明のプロモーター配列は、転写の調節に関与する他の調節エレメント(例えば、エンハンサー、コザック配列、及びイントロン)の配列も含むことができる。遺伝子の構成的発現を駆動するのに有用な多くのプロモーター/調節配列が当該技術分野で利用可能であり、例えば、CMV(サイトメガロウイルスプロモーター)、EF1a(ヒト伸長因子1αプロモーター)、SV40(サルの空胞化ウイルス40プロモーター)、PGK(哺乳類ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター)、Ubc(ヒトユビキチンCプロモーター)、ヒトβ-アクチンプロモーター、げっ歯類β-アクチンプロモーター、CBh(ニワトリβ-アクチンプロモーター)、CAG(CMVエンハンサー、ニワトリベータアクチンプロモーター、及びウサギベータグロビンスプライスアクセプターを含むハイブリッドプロモーター)、TRE(テトラサイクリン応答エレメントプロモーター)、H1(ヒトポリメラーゼIII RNAプロモーター)、U6(ヒトU6小型核プロモーター)などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、RNA、膜貫通タンパク質、または他のタンパク質の誘導性及び組織特異的発現は、そのような分子をコードする核酸を誘導性または組織特異的プロモーター/調節配列の制御下に置くことによって達成することができる。この目的に有用な組織特異的または誘導可能なプロモーター/調節配列の例としては、ロドプシンプロモーター、MMTV LTR誘導性プロモーター、SV40後期エンハンサー/プロモーター、シナプシン1プロモーター、ET肝細胞プロモーター、GSグルタミン合成酵素プロモーター、及びその他多数が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、金属、グルココルチコイド、テトラサイクリン、ホルモンなどの誘導剤に応答して誘導され得る当該技術分野で周知のプロモーターも、本発明での使用が意図される。したがって、本開示は、それに作動可能に連結された所望のタンパク質の発現を駆動することができる、当該技術分野で知られている任意のプロモーター/調節配列の使用を含むことを理解されたい。
【0197】
本開示によるベクターは、多種多様な宿主細胞に形質転換、トランスフェクト、またはその他の方法で導入することができる。トランスフェクションとは、任意のコード配列が実際に発現されるか否かにかかわらず、宿主細胞によるベクターの取り込みを指す。多数のトランスフェクション方法が当業者に知られており、例えば、リポフェクタミン、リン酸カルシウム共沈、エレクトロポレーション、DEAE-デキストラン処理、マイクロインジェクション、ウイルス感染、及び当該技術分野で知られている他の方法である。形質導入とは、細胞へのウイルスの侵入、及びウイルスベクターゲノムによって送達される配列の発現(例えば、転写及び/または翻訳)を指す。組換えベクターの場合、「形質導入」は、一般に、細胞への組換えウイルスベクターの侵入、及びベクターゲノムによって送達される目的の核酸の発現を指す。
【0198】
所望の組換えDNAを含む組換えウイルスベクター(複数可)は、薬学的組成物へと製剤化することができる。そのような製剤は、pHを適切な生理学的レベルに維持するための緩衝生理食塩水または他の緩衝液、例えばHEPESなどの薬学的及び/または生理学的に許容されるビヒクルまたは担体、ならびに任意選択で、他の薬剤、医薬品、安定剤、緩衝剤、担体、アジュバント、希釈剤などの使用を含む。注射の場合、担体は典型的には液体である。例示的な生理学的に許容される担体としては、無菌で発熱物質を含まない水及び無菌で発熱物質を含まないリン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。
【0199】
一実施形態では、担体は等張塩化ナトリウム溶液である。別の実施形態では、担体は平衡塩類溶液である。一実施形態では、担体はTweenを含む。ウイルスを長期間保存する場合は、グリセロールまたはTween-20の存在下で凍結することができる。
【0200】
本発明のシステム、細胞、または組成物は、所望の器官または組織への直接送達、注射、経口、吸入、鼻腔内、気管内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、及び他の非経口投与経路によって投与され得る。追加的に、所望であれば、投与経路を組み合わせてもよい。投与は、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、髄腔内、脳室下、硬膜外、脳内、脳室内、網膜下、硝子体内、関節内、眼内、腹腔内、子宮内、皮内、皮下、経皮、経粘膜、及び吸入を含むが、これらに限定されない、任意の好適な経路を介してなし得る。
【0201】
投与の最も有効な手段及び投与量を決定する方法は、当業者に知られており、治療に使用される組成物、治療の目的、及び治療される対象によって異なる。単回または複数回の投与は、担当医師により選択された用量レベル及びパターンに合わせて行うことができる。用量は投与経路によって影響を受ける可能性があることに留意されたい。薬剤の適切な投与製剤及び投与方法は、当該技術分野で知られている。
【0202】
数値を参照するときに本明細書で使用される場合、「約」という用語は、指定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、または0.1%の変動を包含することを意味する。
【0203】
本明細書で使用される場合、対象の疾患または障害を「治療する」またはその「治療」は、(1)疾患になりやすい、もしくは疾患の症状をまだ呈示していない対象において、症状もしくは疾患が発生するのを予防すること;2)疾患を阻害すること、もしくはその発達を阻害すること;または3)疾患もしくは疾患の症状を緩和すること、もしくはそれらの退縮を引き起こすこと、を示す。当該技術分野で理解されるように、「治療」とは、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の技術の目的のために、検出可能または検出不可能かにかかわらず、有益なまたは望ましい結果には、1つ以上の病状の緩和または改善、状態(疾患を含む)の程度の減少、状態(疾患を含む)の状態の安定化(すなわち悪化しない)、状態(疾患を含む)の進行の遅延または緩徐化、状態(疾患を含む)、状況の改善または好転、及び緩解(部分的または完全)を含むことができるが、それらに限定されない。一態様では、「治療」という用語は予防を除外する。
【0204】
本発明を実施するための具体的な態様の以下の実施例は、例証目的で提示されるにすぎず、決して本発明の範囲を限定するようには意図されていない。
【実施例
【0205】
実施例1 dCpf1を使用する多重エピゲノム編集
dCpf1が、標的化ヒストンアセチル化を媒介するp300または標的化DNAループを媒介するCTCFなどのエフェクタータンパク質と融合されている、一連の操作されたキメラタンパク質を試験した。遺伝子発現と3Dクロマチン構造を操作するこれらのエピゲノム編集ツールを検証した。
【0206】
Cpf1は、単一の転写物(設計されたCRISPRアレイ)から複数のcrRNAを生成して、複数の配列を標的にするのに十分である。本発明の方法では、crRNAアレイ、Cpf1、及び選択マーカーをコードする「オールインワン」ベクター(例えば、プラスミド)を使用することができる(図1)。
【0207】
DNMT1、VEGFA、GRIN2B標的でインデルを誘導する異なるアレイを持つCpf1の能力を、Surveyorアッセイで調べた(図2B)。アレイ1には19ヌクレオチド(nt)のDRと23ntのガイドRNA(gRNA)が含まれ、アレイ2には37ntのDRと23ntのgRNAが含まれていた。
【0208】
HEK293T細胞を使用して、さまざまな直接反復(DR)でAsCpf1を試験した。それぞれの構築物プラスミドをHEK293T細胞にトランスフェクトした後、Surveyorアッセイ用にゲノムDNAを抽出し、DNMT1、VEGFA、及びGRIN2B遺伝子座の切断効率を以下に示す標的配列と比較した。本発明者らの結果は、19ntのDR(UAAUUUCUACUCUUGUAGAU;配列番号1)が37ntのDRよりも良好に機能することを示した(図2B)。それぞれの構築物の発現は、ウエスタンブロットによって検証された(図2C)。
標的配列:
DNMT1:TTAATGTTTCCTGATGGTCCATGTCTGTTACTCGCCTGTCAA(配列番号2)
VEGFA:TCCCTCTTTGCTAGGAATATTGAAGGGGGCAGGGGAAGGCGG(配列番号3)
GRIN2b:GTTGGGTTTGGTGCTCAATGAAAGGAGATAAGGTCCTTGAAT(配列番号4)
【0209】
結果は、Cpf1が多重標的化能力を有し、アレイ2のDR配列はアレイ1ほど効果的ではなかったことを示している。さらに、Cpf1-TetCD融合タンパク質は、Cpf1 RNaseとDNaseの活性の両方とも維持していた。
【0210】
HEK293T細胞を使用して、どの点変異がAsCpf1のDnase活性を無効にしたかを試験した。それぞれの構築物プラスミドをHEK293T細胞にトランスフェクトした後、Surveyorアッセイ用にゲノムDNAを抽出し、DNMT1遺伝子座の切断効率を上に示す標的配列(配列番号2)と比較した。図3の結果は、RuvC及びNuCのドメインの点変異D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aが、AsCpf1 DNase活性をサイレンシングしたことを示している(DNase活性の触媒的にデッドなCpf1)。
【0211】
AsCpf1のRuvC及びNucのドメインにおける重要な残基の親和性分析を行った。DNMT1、VEGFA、及びGRIN2Bの標的DNA配列に結合するAsCpf1(DNase活性の触媒的にデッドなCpf1)の能力に対する点変異の影響を、クロマチン免疫沈降(ChIP)-qPCR(n=3、エラーバーは平均±SEMを示す)を使用して調べた。値はモック試料に対して正規化された。図4の結果は、変異R1226AがDNA標的に対して最も高い親和性を示したことを示している。
【0212】
HEK293T細胞を使用して、Cpf1のどのオルソログ(複数可)を使用してp300と融合し、遺伝子活性化のための標的ヒストンアセチル化を媒介できるかを試験した。それぞれの構築物プラスミドをHEK293T細胞にトランスフェクトした後、RNAを抽出してqPCRを実行し、標的化MyoD遺伝子座の発現を比較した。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である:dAsCpf1は、次の点変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aを有するAsCpf1である;dLbCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。本発明者らの結果(図5A~5B)は、dCas9-p300と比較して、27アミノ酸のリンカーを有する触媒的にデッドなLbCpf1が、MyoDのmRNA発現を活性化するのに最も良好に作用したことを示した。27アミノ酸リンカーのアミノ酸配列は:GGGGSPKKKRKVGPKKKRKVDGGGGSE(配列番号7)である。27アミノ酸リンカーをコードするヌクレオチド配列は:ggtggcggaggctcgccaaaaaagaagagaaaggtaggtccaaagaaaaaacgaaaagtagatggtggcggaggatccgaa(配列番号8)である。
【0213】
MyoDの標的配列を以下に示す。
CX_ANL083-Cpf1-MyoD-g1(23nt)(プロモーター):taaaaaaaTTGGCTCTCCGGCACGCCCTTTCATCTACAAGAGTAGAAATTGACG(配列番号9)
CX_ANL084-Cpf1-MyoD-g1(23nt)(プロモーター):
CTAGCGTCAATTTCTACTCTTGTAGATGAAAGGGCGTGCCGGAGAGCCAAtttttttaat(配列番号10)
【0214】
dLbCpf1-p300の有効範囲も研究された。それぞれの構築物プラスミドをHEK293T細胞にトランスフェクトした後、抗H3K27Ac抗体を使用するChIP-qPCRを実行して、標的化MyoD遺伝子座のアセチル化レベルを比較した。図6の結果は、dLbCpf1-p300の有効範囲がcrRNAの約2000bp上流とcrRNAの約1000bp下流であることを示した。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である;dAsCpf1は、次の点変異:D908A、E993A、R1226A、及びD1263Aを有するAsCpf1である;dLbCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。
【0215】
図7A~7Bは、dCpf1-p300システムによるMeCP2遺伝子座でのH3K27アセチル化の編集の有効範囲を研究した結果を示す。図7Aでは、抗H3K27Ac抗体をChIP-qPCRに使用した。図7Bでは、ChIP-qPCRに抗HA抗体を使用した。dLbCpf1またはdCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。
【0216】
図8は、dCpf1-Dnmt3aがdCas9-Dnmt3よりも高いDNAメチル化編集効率を提供することを示している。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である;dCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。
【0217】
sgRNAは、p16遺伝子座を標的とするように設計された(配列番号11):
atttggcagttaggaaggttgtatcgcggaggaaggaaacggggcgggggcggatttctttttaacagagtgaacgcactcaaacacgcctttgctggcaggcgggggagcgcggctgggagcagggaggccggagggcggtgtggggggcaggtggggaggagcccagtcctccttccttgccaacgctggctctggcgagggctgcttccggctggtgcccccgggggagacccaacctggggcgacttcaggggtgccacattcgctaagtgctcggagttaatagcacctcctccgagcactcgctcacggcgtccccttgcctggaaagataccgcggtccctccagaggatttgagggacagggtcggagggggctcttccgccagcaccggaggaagaaagaggaggggctggctggtcaccagagggtggggcggaccgcgtgcgctcggcggctgcggagagggggagagcaggcagcgggcggcggggagcagcATGGAGCCGGCGGCG GGGAGCAGCATGGAGCCTTCGGCTGACTGGCTGGCCACGGCCGCGGCCCGGGGTCG GGTAGAGGAGGTGCGGGCGCTGCTGGAGGCGGGGGCGCTGCCCAACGCACCGAAT AGTTACGGTCGGAGGCCGATCCAGGTGGGTAGAGGGTCTGCAGCGGGAGCAGGGGA TGGCGGGCGACTCTGGAGGACGAAGTTTGCAGGGGAATTGGAATCAGGTAGCGCTT CGATTCTCCGGAAAAAGGGGAGGCTTCCTGG。
【0218】
sgRNA配列はtcctccttccttgccaacgctggct(配列番号12;dCas9-Dnmt3aとともに使用)及びgctggcaggcgggggagcgcgg(配列番号13;dCpf1-Dnmt3aとともに使用)である。
【0219】
dCpf1-CTCFが複数のCTCFアンカー部位を標的にできるかどうかを試験した。それぞれの構築物プラスミドをHEK293T細胞にトランスフェクトした後、Cpf1-HAまたはCTCFに対する抗体を使用するChIP-qPCRを実行して、dCpf1-CTCFまたはdCpf1-p300の標的化MeCP2遺伝子座への結合を調べた。本発明者らの結果(図9A~9C)は、標的化されたゲノム部位でdCpf1-CTCFを検出できることを示した。dCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。
【0220】
特定のCTCFアミノ酸残基の変異により、CTCFとDNAの間の親和性を減少させ得ることが報告されている。CTCF変異体としては、CTCF(K365A)、CTCF(R368A)、CTCF(K365A、R368A)、CTCF(R396A)、及びCTCF(Q418A)が挙げられる(Yin et al.,Molecular mechanism of directional CTCF recognition of a diverse range of genomic sites,Cell Research(2017):1365-1377)。
【0221】
CTCFのDNA結合変異体は、dCpf1-CTCFのオフターゲット効果を減少させた(図10A~10B)。抗HA抗体を用いるChIP-qPCRを実施し、dCpf1-CTCFの標的化MeCP2遺伝子座への結合を調べた(図10A)。dCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。
【0222】
図11A~11Bは、crRNA-1(図11A)またはcrRNA-2(図11B)のいずれかを使用する、dCpf1-CTCFが媒介するMeCP2遺伝子座のDNAループ/結合を示す。
【0223】
実施例2 多重エピゲノム編集はMeCP2を再活性化してレット症候群ニューロンをレスキューする
レット症候群は、主に女児(8,500人に1人)にみられる神経疾患である。症状としては、脳のサイズが小さくなる(小頭症)、話すことができない、手を意図的に使えなくなる、歩行の問題、異常な呼吸パターンなどが挙げられる。
【0224】
レット症候群は、X染色体上のMECP2のヘテロ接合変異によって引き起こされる。本発明者らは、新しく開発されたツール(dCas9-Tet及びdCpf1-CTCFを含む)を適用して、レット症候群の治療戦略として不活性X染色体上のMECP2遺伝子の野生型対立遺伝子を再活性化した。レット症候群様hESCとこのhESC系統に由来するニューロンを使用し、多重エピゲノム編集を行った。
【0225】
結果は、レット症候群様hESCの不活性X染色体上のMECP2対立遺伝子を特異的に再活性化し、機能的にレスキューされたニューロンを導き出すことができることを示している。また、dCas9-Tetを介したDNAメチル化編集とdCpf1-CTCFを介したDNAループを組み合わせて、ニューロンの不活性X染色体上の野生型MECP2対立遺伝子の安定した再活性化を達成することもできる。本発明のシステム/方法はまた、他のX連鎖病を治療するために使用され得る。
【0226】
MECP2デュアルカラーレポーター(図12)により、1)XiでのMECP2再活性化の検出;2)Xaに対する編集効果を調べること;及び3)オフターゲット効果の評価が可能になる。
【0227】
dCas9-Tet1によるMECP2プロモーターでのXi特異的DMRの脱メチル化を研究した(図13A~13B)。図13Aは、sgRNA-1~sgRNA-10を含むsgRNA及びパイロシーケンシング(pyro-seq)のための領域(領域a~c)によって標的化される、MECP2プロモーターの略図である(Lister et al.,Global Epigenomic Reconfiguration During Mammalian Brain Development,Science,2013,341(6146):1237905)。図13Bは、領域a~cのパイロシーケンシング(pyro-seq)の結果を示す。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。
【0228】
ヒトMeCP2プロモーター領域のDMRを標的とするsgRNA-1~sgRNA-10を含むsgRNAは以下のとおりである。
SL-586_hMeCP2_DMR_sgRNA-1_For:TTGG AGCAGCAAAGTTGCCCACCC(配列番号14)
SL-587_hMeCP2_DMR_sgRNA-1_Rev:AAAC GGGTGGGCAACTTTGCTGCT(配列番号15)
SL-588_hMeCP2_DMR_sgRNA-2_For:TTGG TAGTGATATTGAGAAAATGT(配列番号16)
SL-589_hMeCP2_DMR_sgRNA-2_Rev:AAAC ACATTTTCTCAATATCACTA(配列番号17)
SL-590_hMeCP2_DMR_sgRNA-3_For:TTGG CAGCCAATCAACAGCTGGAG(配列番号18)
SL-591_hMeCP2_DMR_sgRNA-3_Rev:AAAC CTCCAGCTGTTGATTGGCTG(配列番号19)
SL-592_hMeCP2_DMR_sgRNA-4_For:TTGG GCCATCACAGCCAATGAC(配列番号20)
SL-593_hMeCP2_DMR_sgRNA-4_Rev:AAAC GTCATTGGCTGTGATGGC(配列番号21)
SL-594_hMeCP2_DMR_sgRNA-5_For:TTGG AGGAGGAGAGACTGTGAGT(配列番号NO:22)
SL-595_hMeCP2_DMR_sgRNA-5_Rev:AAAC ACTCACAGTCTCTCCTCCT(配列番号23)
SL-596_hMeCP2_DMR_sgRNA-6_For:TTGG GGAGGGGGAGGGTAGAGAGG(配列番号24)
SL-597_hMeCP2_DMR_sgRNA-6_Rev:AAAC CCTCTCTACCCTCCCCCTCC(配列番号25)
SL-598_hMeCP2_DMR_sgRNA-7_For:TTGG GGGAGGAAGAGGGGCGTC(配列番号26)
SL-599_hMeCP2_DMR_sgRNA-7_Rev:AAAC GACGCCCCTCTTCCTCCC(配列番号27)
SL-600_hMeCP2_DMR_sgRNA-8_For:TTGG TGAGAGCTCAGGAGCCCTTG(配列番号28)
SL-601_hMeCP2_DMR_sgRNA-8_Rev:AAAC CAAGGGCTCCTGAGCTCTCA(配列番号29)
SL-602_hMeCP2_DMR_sgRNA-9_For:TTGG CCTACTTGTTCCTGCTAGAT(配列番号30)
SL-603_hMeCP2_DMR_sgRNA-9_Rev:AAAC ATCTAGCAGGAACAAGTAGG(配列番号31)
SL-604_hMeCP2_DMR_sgRNA-10_For:TTGG AGGTGGTTATAGTTCCCATC(配列番号32)
SL-605_hMeCP2_DMR_sgRNA-10_Rev:AAAC GATGGGAACTATAACCACCT(配列番号33)
【0229】
hMECP2プロモーターのpyro-seqでは、領域aを次のプライマーで増幅し、それに応じて配列決定プライマーによって配列決定した。
SL-813_hMECP2 promoter_No1_For:GAGGGGGAGGGTAGAGAG(配列番号34)
SL-814_hMECP2 promoter_No 1_Rev_Biotin:
CTCCCTCCTCTCCAAAAAAAAACTATAATA(配列番号35)
SL-815_hMECP2 promoter_No1_Seq:GGGAGGGTAGAGAGG(配列番号36)
【0230】
領域bは、以下のプライマーで増幅され、それに応じて配列決定プライマーによって配列決定された。
SL-816_hMECP2 promoter_No2_For:GGGTAGAGGGGGGTAGAAATT(配列番号37)
SL-817_hMECP2 promoter_No2_Rev_Biotin:ACCCCCACCTCTCCCTAAAT(配列番号38)
SL-818_hMECP2 promoter_No2_Seq:AGAGTTTAGGAGTTTTTGT(配列番号39)
【0231】
領域cは、以下のプライマーで増幅され、それに応じて配列決定プライマーによって配列決定された。
SL-819_hMECP2 promoter_No3_For:GAGTTGTGGGATTTAGAATATAATGT(配列番号40)
SL-820_hMECP2 promoter_No3_Rev_Biotin:CTCCTTCTCCCCCATTCCATAAATTTC(配列番号41)
SL-821_hMECP2 promoter_No3_Seq:GTTAGATGGGGAAAGG(配列番号42)
【0232】
細胞を、dCas9-Tet1-P2A-BFP(dC-T)を発現するレンチウイルスとsgRNA-mCherryを発現するレンチウイルス(上記で論述した10個のsgRNAを使用した)に感染させた。蛍光活性化細胞分取(FACS)を使用して、BFP+mCherry+であった細胞を単離した。感染細胞を免疫蛍光染色した。免疫蛍光画像は、メチル化編集がhESCの不活性X染色体(Xi)上のMECP2の再活性化をもたらすことを示唆した(図14)。dC-T:dCas9-Tet1。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。
【0233】
MECP2の再活性化は、神経前駆細胞(NPC)及びニューロンで維持された(図15)。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。
【0234】
MECP2変異体860番RTT様ヒト胚性幹細胞(hESC)に、dCas9-Tet1-P2A-BFP(dCas9-Tet1)を発現するレンチウイルスとsgRNA-mCherry(10個のsgRNA)を発現するレンチウイルスを感染させた。蛍光活性化セルソーティング(FACS)を使用して、BFP+mCherry+である細胞を単離し、培養してESCコロニーを形成した。次いで、ESCをニューロンに分化させた。結果は、単一のsgRNAと組み合わせたdCas9-Tet1が、XiでMECP2を再活性化するのに十分であることを示している(図16)。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。
【0235】
野生型38番hESC、変異体860番RTT様hESC、及びメチル化編集された860番に由来するニューロンを使用して、MECP2及びMap2に対する免疫蛍光染色によって細胞体サイズを調べた(図17A)。細胞体のサイズは、Image J(図17B)によって定量化された。結果は、メチル化編集されたニューロンにおけるニューロン細胞体サイズのレスキューを示している。sgRNA:上で論じられた10個のsgRNA。dC-T:dCas9-Tet1。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。
【0236】
野生型38番hESC、変異体860番RTT様hESC、及びメチル化編集された860番に由来するニューロンを使用して、多電極アッセイによって分化後の電気物理特性を調べた(図18A)。図18A~18Bは、メチル化編集されたニューロンにおけるニューロン活動のレスキューを示す。sgRNA:上で論じられた10個のsgRNA。dC-T:dCas9-Tet1。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。
【0237】
野生型38番hESC、変異体860番RTT様hESC、及びメチル化編集された860番に由来するニューロンに、レンチウイルスdCas9-Tet1及び10個のsgRNAを感染させ、qPCRによってGFPの発現を調べた。結果は、MECP2の再活性化がニューロンにおいて安定していなかったことを示している(図19)。sgRNA:上で論じられた10個のsgRNA。
【0238】
X染色体の不活性化には、複数層のエピジェネティックなメカニズムがある。dCpf1-CTCFを使用して、dCas9-Tet1によるニューロンの再活性化のために、XiのMECP2遺伝子座に人工回避物を構築した。図21A~21Cは、RTTニューロンにおけるメチル化編集とDNAループの組み合わせがニューロン活動をレスキューしたことを示す。dCas9は、次の点変異:D10A及びH840Aを有するCas9である。dCpf1は、次の点変異:D833Aを有するLbCpf1である。
【0239】
方法
プラスミドの設計と構築
pJFA344C7(Addgeneプラスミド:49236)からPCR増幅されたTet1触媒ドメイン、MLM3739(Addgeneプラスミド:49959)からのTet1不活性触媒ドメイン、及びtagBFP(合成された遺伝子ブロック)を、レンチウイルスをパッケージ化するためのFUWベクター(Addgeneプラスミド:14882)にAscI、EcoRI、及びPfIMIによってクローニングした。標的sgRNA発現プラスミドは、アニーリングしたオリゴを改変されたpgRNAプラスミド(Addgeneプラスミド:44248)にAarI部位で挿入することによりクローニングした。IDTから購入したバクテリオファージAcrIIA4をコードする合成gBlockを、レンチウイルスをパッケージ化するための改変されたFUWベクターにAscI及びEcoRIによってクローニングした。すべての構築物は、トランスフェクションの前に配列決定された。
【0240】
細胞培養とレンチウイルスの生産
iPSCは、mTeSR1培地(STEMCELL、#85850)または標準hESC培地:[15%ウシ胎仔血清(GIBCO HI FBS、10082-147)、5%KnockOut Serum Replacement(Invitrogen)、2mMのL-グルタミン(MPBio)、1%非必須アミノ酸(Invitrogen)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Lonza)、0.1mMのb-メルカプトエタノール(Sigma)、及び4ng/mlのFGF2(R&D systems)を補充したDMEM/F12(Invitrogen)]を含む照射マウス胚性線維芽細胞(MEF)のいずれかで培養した。dCas9-Tet1-P2A-BFP、sgRNA、及びAcrIIA4を発現するレンチウイルスは、標準的なパッケージングベクター(pCMV-dR8.74及びpCMV-VSVG)と一緒にFUW構築物またはpgRNA構築物をHEK293T細胞にトランスフェクトし、続いて超遠心ベースの濃縮によって生成された。ウイルス力価(T)は、293T細胞の感染効率に基づいて計算された。ここで、T=(P*N)/(V)、T=力価(TU/ul)、p=蛍光マーカーによる感染陽性細胞の%、N=形質導入時の細胞数、V=使用したウイルスの総量。注 TUは変換単位を表す。NPCを標識するレンチウイルス(EF1A-GFP及びEF1A-RFP)は、Cellomics Technologyから購入した。
【0241】
マルチ電極アレイ記録
2週齢または4週齢の分化ニューロン培養物をAccutaseを使用して解離し、5×10個の細胞をPEIコーティングAxion Biosystems#M768-GL1-30Pt200アレイのそれぞれの単一ウェルに播種した。5分間の自発活動の記録は、示された日に行われた。ニューロンのそれぞれのタイプの生物学的トリプリケートが含まれていた。
【0242】
免疫細胞化学、免疫組織化学、顕微鏡、及び画像解析
iPSCとニューロンを4%パラホルムアルデヒド(PFA)で室温で10分間固定した。PBST中の10%正常ロバ血清(NDS)でブロッキングする前に、細胞をPBST(0.1%トリトンX-100を含む1×PBS溶液)で透過処理した。次に、細胞を5%NDSを含むPBSTで適切に希釈した一次抗体とともに室温で1時間または4℃で12時間インキュベートし、PBSTで室温で3回洗浄し、次いで5%NDS及び核を染色するためのDAPIを含むTBST中の目的の二次抗体とインキュベートした。この研究では、次の抗体を使用した:ニワトリ抗GFP(1:1000、Aves Labs)、ウサギ抗FMRP(1:50、Cell Signaling)、ニワトリ抗MAP2(1:1000、Encor Biotech)、ヤギ抗mCherry(1:1000、SICGEN)。画像は、Zeiss LSM710共焦点顕微鏡でキャプチャされ、Zenソフトウェア、ImageJ/Fiji、及びAdobe Photoshopで処理された。イメージングベースの定量化では、特に指定のない限り、3~5の代表的な画像を定量化し、ExcelまたはGraphpad Prismを使用してデータを平均±SDとしてプロットした。
【0243】
FACS分析
レンチウイルス形質導入後に感染陽性細胞を単離するために、処理された細胞をトリプシンで解離し、製造者のプロトコールに従ってBD FACSAriaセルソーターの対象となる増殖培地で単一細胞懸濁液を調製した。FlowJoソフトウェアを使用してデータを分析した。
【0244】
ウエスタンブロット
細胞は、プロテイナーゼ阻害剤(Invitrogen)を含むRIPAバッファーによって溶解され、標準的な免疫ブロット分析にかけられた。マウス抗Cas9(1:1000、Active Motif)、マウスα-チューブリン(1:1000、Sigma)、マウス抗FMR1polyG(1:1000、EMD Millipore)、ウサギ抗FMRP(1:100、Cell Signaling)抗体が使用された。
【0245】
RT-qPCR
製造者の使用説明書に従って、Trizol、続いてDirect-zol(Zymo Research)を使用して細胞を回収した。First-strand cDNA合成(Invitrogen SuperScript III)を使用して、RNAをcDNAに変換した。SYBR Green(Invitrogen)を用いて定量的PCR反応を調製し、7900HT Fast ABI装置で実施した。
【0246】
クロマチン免疫沈降
クロマチン免疫沈降(ChIP)は、若干の修正を加えて、(Lee et al.,2006 Chromatin immunoprecipitation and microarray-based analysis of protein location.Nat.Protoc.1,729-748)に記載されているように実施した。増殖培地に10分の1容量の新鮮な11%ホルムアルデヒド溶液(11%ホルムアルデヒド、50mMのHEPES pH7.3、100mMのNaCl、1mMのEDTA pH8.0、0.5mMのEGTA pH8.0)を加えることにより、細胞を室温で15分間架橋させ、続いて125mMのグリシンで5分間クエンチングした。細胞を1×PBSで2回すすぎ、シリコンスクレーパーを使用して回収し、液体窒素で瞬間凍結した。凍結した架橋細胞を-80℃で保存した。1億個の細胞からの溶解物の免疫沈降のために、50mlのプロテインG Dynabeads(Life Technologies #10009D)と5mgの抗体を次のように調製した。Dynabeadsを、PBS中の0.5%BSA(w/v)で5分間、3回洗浄した。磁気ビーズを抗体と4℃で一晩結合させ、PBS中の0.5%BSA(w/v)で3回洗浄した。
【0247】
細胞は、以下のようにChIPのために調製された。すべてのバッファーには、新たに調製された1×cOmpleteプロテアーゼ阻害剤(Roche、11873580001)が含まれていた。凍結した架橋細胞を氷上で解凍し、次いで溶解バッファーI(50mMのHEPES-KOH、pH7.5、140mMのNaCl、1mMのEDTA、10%グリセロール、0.5%NP-40、0.25%Triton X-100、1×プロテアーゼ阻害剤)中に再懸濁し、4℃で10分間回転させ、次いで4℃で5分間1350rcf.で回転させた。ペレットを溶解バッファーII(10mMのTris-HCl、pH8.0、200mMのNaCl、1mMのEDTA、0.5mMのEGTA、1×プロテアーゼ阻害剤)に再懸濁し、4℃で10分間回転させ、4℃で5分間1350rcf.で回転させた。ペレットを超音波処理バッファー(20mMのTris-HCl pH8.0、150mMのNaCl、2mMのEDTA pH8.0、0.1%SDS、及び1%Triton X-100、1×プロテアーゼ阻害剤)に再懸濁し、氷上(18-21W)でそれぞれ30秒で10サイクル、サイクル間に氷上で60秒でMisonix 3000超音波処理器で超音波処理した。超音波処理された溶解物は、4℃で10分間16,000rcfでの遠心分離によって1回清澄化された。50uLを投入用に確保し、次いで残りを抗体に結合した磁気ビーズとともに4℃で一晩インキュベートして、指定の因子が結合したDNA断片を濃縮した。ビーズを次の緩衝液のそれぞれで2回洗浄した:洗浄緩衝液A(50mMのHEPES-KOH pH7.5、140mMのNaCl、1mMのEDTA pH8.0、0.1%Na-Deoxycholate、1%Triton X-100、0.1%SDS)、洗浄緩衝液B(50mMのHEPES-KOH pH7.9、500mMのNaCl、1mMのEDTA pH8.0、0.1%Na-Deoxycholate、1%Triton X-100、0.1%SDS)、洗浄緩衝液C(20mMのTris-HCl pH8.0、250mMのLiCl、1mMのEDTA pH8.0、0.5%Na-Deoxycholate、0.5%IGEPAL C-630、0.1%SDS)、洗浄緩衝液D(0.2%Triton X-100を含むTE)、及びTE緩衝液。200μLの溶出緩衝液(50mMのTris-HCL pH8.0、10mMのEDTA、1%SDS)中で断続的にボルテックスしながら65℃で1時間インキュベーションすることにより、DNAをビーズから溶出させた。架橋は、65℃で一晩逆転させた。溶出したDNAを精製するために、200uLのTEを添加し、次いで2.5mLの33mg/mLのRNase A(Sigma、R4642)を添加し、37℃で2時間インキュベートすることによってRNAを分解した。タンパク質は、10mLの20mg/mLのプロテイナーゼK(Invitrogen、25530049)を添加し、55℃で2時間インキュベートすることによって分解された。フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール抽出を行った後、エタノール沈殿を行った。次いで、DNAを50uLのTEに再懸濁し、配列決定に使用した。精製されたChIP DNAを使用して、イルミナのマルチプレックス配列決定ライブラリを調製した。イルミナ配列決定用のライブラリは、イルミナTruSeq DNA試料調製v2キットに従って調製された。増幅されたライブラリは、200~400bpの断片を捕捉するように設定されたSage ScienceのPippin Prepシステムで2%ゲルカセットを使用してサイズ選択された。キットのプロトコールに従って、KAPA Biosystems Illumina Library Quantificationキットを使用して、qPCRによってライブラリを定量化した。ライブラリは、Illumina HiSeq 2500で40塩基をシングルリードモードで配列決定した。
【0248】
Cas9 ChIP-seqピーク呼び出し方法
Cas9 ChIP-seqデータは次のように分析された。読み取りは、一意のマッピングと完全な一致を要件として、STAR(Dobin et al.,STAR:ultrafast universal RNA-seq aligner.Bioinformatics,2013,29,15-21)を使用して逆多重化され、ヒトゲノム(hg19)にマッピングされる。ピークは、配列決定深度に一致するようにサンプリングされた同数の折りたたまれた読み取りとともにMACS(Zhang et al.,Model-based analysis of ChIP-seq(MACS),Genome Biol.,2008,9,R137)を使用して呼び出された。
【0249】
ChIP-BS-seq
抗Cas9 ChIP実験は、上記のように行った。BS変換及び配列ライブラリの調製は、使用説明書に従って、EpiNext High-Sensitivity Bisulfite-Seqキット(EPIGENTEK、#P-1056A)及びEpiNext NGS Barcode(EPIGENTEK、#P-1060)によって行われた。生データを分析するために、FastQCで識別されたillumina読み取り中のアダプター配列は、Trim Galoreで削除された。BS-SeqアライナーBismark(Krueger and Andrews,Bismark:a flexible aligner and methylation caller for Bisulfite-Seq applications,Bioinformatics,2011,27,1571-1572)は、読み取りをヒトゲノムhg19に割り当て、bismark_methylation_extractorでメチル化を呼び出すために使用された。一意にマップされた読み取りの数を増やすために、最初のビスマークアラインメントの後、FastQC分析に基づいて、マッピングされていない読み取りの50から5塩基と30から1塩基がトリミングされた。得られたトリミングされた読み取りは、ビスマークを使用してゲノムに整列された。どちらの場合も、bismarkはオプション「-non_directional -un-ambiguous-bowtie2 -N 1 -p 4-score_min L,-6,-0.3-solexa1.3-quals」を使用して実行された。dC-T試料とdC-dT試料の間でdCas9-Tet1結合部位のメチル化レベルを比較するために、それぞれのCpGが、ChIP-BS-seqによって、iPSCでの少なくとも10回の読み取りまたはニューロンでの5つの読み取りでカバーされた少なくとも20個のCpG部位を含む抗Cas9 ChIP-seqピークのみを選択して、メチル化レベルを計算した。iPSC細胞の結合部位の数は1018であり、ニューロンでは670である。scan_for_matchesを使用して、これらの結合部位に由来する配列でGGCGGCGGCGGCGGCGGCGGNGGモチーフを検索した。Rスクリプトは、グラフを生成するために作成された。
【0250】
重亜硫酸変換、PCR、及び配列決定
DNAの重亜硫酸変換は、EpiTect Bisulfiteキット(QIAGEN)を製造者の使用説明書に従って使用して確立した。得られた修飾されたDNAは、遺伝子座特異的PCRプライマーを使用する2番目のラウンドに続いて、ネステッドPCRの最初のラウンドによって増幅された。ネステッドPCRの1番目のラウンドは次のように行われた:94℃で4分間;55℃で2分間;72℃で2分間;ステップ1~3を1回繰り返す;94℃で1分間;55℃で2分間;72℃で2分間;ステップ5~7を35回繰り返す;72℃で5分間;12℃を保つ。2回目のPCRは次のとおりである:95℃で4分間;94℃で1分間;55℃で2分間;72℃で2分間;ステップ2~4を35回繰り返す;72℃で5分間;12℃を保つ。得られた増幅産物をゲル精製し、pCR2.1-TOPO-TAクローニングベクター(Life technologies)にサブクローニングし、配列決定した。
【0251】
DNAメチル化分析
重亜硫酸塩で変換されたすべてのゲノムDNA試料のPyro-seqは、製造者の使用説明書に従ってPyroMark Q48 Autoprep(QIAGEN)で実行された。CGGトリヌクレオチド反復のメチル化分析:CGG反復のメチル化状態は、Asuragen AmplideX_mPCRアプローチを用いてClaritas Genomics Inc.によって分析された。
【0252】
Surveyorアッセイ
CRISPR複合体の標的配列への配列特異的結合を誘導するgRNA、crRNA、またはsgRNAの能力は、Surveyorアッセイなどの任意の適切なアッセイによって評価され得る。
【0253】
Surveyorアッセイは、DNA混合物中の変異と多型を検出する。Surveyorヌクレアーゼは、セロリ由来のミスマッチ特異的ヌクレアーゼのCELファミリーのメンバーである。Surveyorヌクレアーゼは、一塩基多型(SNP)または小さな挿入もしくは欠失の存在によるミスマッチを認識して切断する。Surveyorヌクレアーゼは、少なくとも12ヌクレオチドまでのすべての塩基置換及び挿入/欠失を含む、両方のDNA鎖のミスマッチ部位の3’側を高い特異性で切断する。
【0254】
SURVEYORヌクレアーゼは、少なくとも12ヌクレオチドまでのすべての塩基置換及び挿入/欠失を含む、両方のDNA鎖のミスマッチ部位の3’側を高い特異性で切断する。Surveyorヌクレアーゼ技術には、次の4つのステップが含まれる:(i)Cas9/Cpf1ヌクレアーゼを介した切断を受けた細胞または組織試料から標的DNAを増幅するためのPCR;(ii)影響を受けたDNAと影響を受けていないDNAの間でヘテロ二本鎖を形成するためのハイブリダイゼーション(影響を受けたDNA配列は影響を受けたDNA配列とは異なるため、ミスマッチに起因するバルジ構造が変性及び再生後に形成され得る);(iii)アニーリングしたDNAをSurveyorヌクレアーゼで処理してヘテロ二本鎖を切断する(すなわちバルジを切断する);(iv)例えばアガロースゲル電気泳動などの最適な検出/分離プラットフォームを使用する、消化されたDNA産物の分析。Cas9ヌクレアーゼを介した切断効率は、Surveyorヌクレアーゼで消化されたDNAと未消化のDNAの比率によって推定できる。この技術は非常に感度が高く、32コピーに1コピーという低い頻度で存在する希少な変異体を検出することができる。Surveyor変異アッセイキットは、Integrated DNA Technologies(IDT),Coraville,IAから市販されている。
【0255】
本発明の範囲は、上記で具体的に示し記載されたものによって限定されない。当業者は、材料、構成、構造、及び寸法の図示された例に対する適切な代替案があることを認識するであろう。特許及びさまざまな刊行物を含む多数の参考文献が、本発明の説明において引用され、論じられている。そのような参考文献の引用及び考察は、単に本発明の説明を明確にするために提供されるものであり、いかなる参考文献も、本明細書に記載された本発明に対する先行技術であることを認めるものではない。本明細書に引用され、論じられているすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されているものの変形、修正、及び他の実施に想到するであろう。本発明の特定の実施形態を示し説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、変更及び修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。前述の記載に示される事項は、限定ではなく例示としてのみ提供されている。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
図20
図21A
図21B
図21C
【手続補正書】
【提出日】2023-09-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023549348000001.app
【国際調査報告】