(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】SSZ-91を使用した高ナノ細孔容積触媒及び工程
(51)【国際特許分類】
B01J 29/74 20060101AFI20231116BHJP
C10G 45/64 20060101ALI20231116BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B01J29/74 M
C10G45/64
B01J35/10 301A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528071
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 US2021058896
(87)【国際公開番号】W WO2022103915
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イーファ
(72)【発明者】
【氏名】オジョ、アデオラ フローレンス
(72)【発明者】
【氏名】レイ、グワン - ダオ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
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4G169AA03
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4H129NA12
4H129NA25
4H129NA32
(57)【要約】
基油製品を作製するための向上した水素異性化触媒及び工程であって、当該触媒は、モレキュラーシーブSSZ-91及び高ナノ細孔容積アルミナを含むベース押出物を含む。当該触媒及び工程は、一般に、SSZ-91/高ナノ細孔容積アルミナ系触媒を用い、当該触媒を炭化水素原料と接触させることによって脱ろう基油製品を作製することに関する。触媒ベース押出物は、有利には、11~20nmの細孔径範囲での0.05~1.0cc/gの細孔容積を有するアルミナを含み、当該ベース押出物は、SSZ-91及びアルミナから形成され、2~50nmの細孔径範囲での0.12~1.80cc/gの全細孔容積を有する。当該触媒及び工程により、基油の収率が向上し、ガス及び燃料生産を減少させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油を含む脱ろう製品を製造するのに有用な水素異性化触媒であって、
モレキュラーシーブSSZ-91及びアルミナを含むベース押出物であって、前記アルミナは、11~20nmの細孔径範囲での0.05~1.0cc/gの細孔容積を有し、前記ベース押出物は、2~50nmの細孔径範囲での0.12~1.80cc/gの全細孔容積を有する、前記ベース押出物と、
周期表の第6族~第10族及び第14族から選択される少なくとも1つの調整剤とを含む、前記水素異性化触媒。
【請求項2】
前記調整剤は、周期表の第8族~第10族の金属を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記調整剤は、Ptを含む第10族の金属である、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記アルミナは、6~11nmの細孔径範囲での0.05~1.0cc/gの細孔容積、または6~11nmの細孔径範囲での0.06~0.8cc/gの細孔容積、または6~11nmの細孔径範囲での0.07~0.6cc/gの細孔容積を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記アルミナは、11~20nmの細孔径範囲での0.07~0.85cc/gの細孔容積、または11~20nmの細孔径範囲での0.09~0.7cc/gの細孔容積を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
前記アルミナは、20~50nmの細孔径範囲での0.05~1.0cc/gの細孔容積、または20~50nmの細孔径範囲での0.07~0.8cc/gの細孔容積、または20~50nmの細孔径範囲での0.09~0.6cc/gの細孔容積を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
前記アルミナは、2~50nmの細孔径範囲での0.3~2.0cc/gの全細孔容積、または2~50nmの細孔径範囲での0.5~1.75cc/gの全細孔容積、または2~50nmの細孔径範囲での0.7~1.5cc/gの全細孔容積を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
前記ベース押出物は、6~11nmの細孔径範囲での0.05~0.80cc/gの細孔容積、または6~11nmの細孔径範囲での0.08~0.60cc/gの細孔容積、または6~11nmの細孔径範囲での0.10~0.50cc/gの細孔容積を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
前記ベース押出物は、11~20nmの細孔径範囲での0.05~0.80cc/gの細孔容積、または11~20nmの細孔径範囲での0.08~0.60cc/gの細孔容積、または11~20nmの細孔径範囲での0.10~0.50cc/gの細孔容積を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項10】
前記ベース押出物は、20~50nmの細孔径範囲での0.02~0.35cc/gの細孔容積、または20~50nmの細孔径範囲での0.03~0.30cc/gの細孔容積、または20~50nmの細孔径範囲での0.05~0.25cc/gの細孔容積を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項11】
前記ベース押出物は、2~50nmの細孔径範囲での0.20~1.65cc/gの全細孔容積、または2~50nmの細孔径範囲での0.25~1.50cc/gの全細孔容積を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項12】
前記モレキュラーシーブSSZ-91は、ZSM-48型ゼオライト材料を含み、前記モレキュラーシーブは、
ZSM-48型材料全体の少なくとも70%のポリタイプ6、
0~3.5重量パーセントの量のEUO型相、及び
1~8の平均アスペクト比を有する微結晶を含む多結晶凝集形態を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項13】
前記調整剤の含有量は、0.01~5.0重量%もしくは0.01~2.0重量%、または0.1~2.0重量%(全触媒重量基準)である、請求項1に記載の触媒。
【請求項14】
前記触媒は、調整剤として、0.01~1.0重量%または0.3~0.8重量%の量のPtを含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項15】
前記モレキュラーシーブの酸化ケイ素対酸化アルミニウムのモル比は、40~220もしくは50~220もしくは40~200、または50~140の範囲である、請求項1に記載の触媒。
【請求項16】
前記モレキュラーシーブSSZ-91は、
ZSM-48型材料全体の少なくとも80%もしくは90%のポリタイプ6、0.1~2重量%のEU-1、
1~5もしくは1~3の平均アスペクト比を有する微結晶、
またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項17】
前記触媒は、アルミナ、シリカ、セリア、チタニア、酸化タングステン、ジルコニア、またはそれらの組み合わせから選択される追加のマトリックス材料をさらに含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項18】
前記触媒は、0.01~5.0重量%の前記調整剤、0~99重量%の前記マトリックス材料、及び0.1~99重量%の前記モレキュラーシーブSSZ-91を含むか、または前記触媒は、0.01~5.0重量%の前記調整剤、15~85重量%の前記マトリックス材料、及び15~85重量%の前記モレキュラーシーブSSZ-91を含む、請求項17に記載の触媒。
【請求項19】
前記マトリックス材料は、15~65重量%の第1のマトリックス材料と、前記第1のマトリックス材料とは異なる、15~65重量%の第2のマトリックス材料とを含む、請求項18に記載の触媒。
【請求項20】
基油製品収率が増加した基油製品を作製する工程であって、水素異性化条件下で、炭化水素原料を請求項1に記載の水素異性化触媒と接触させ、基油製品を作製することを含む工程。
【請求項21】
前記炭化水素原料は、軽油、真空軽油、ロングレジデュー(long residue)、真空残渣、大気圧留出物、重質燃料、油、ワックス及びパラフィン、使用済み油、脱アスファルト残渣または原油、熱または触媒転化工程から得られるチャージ(charge)、シェールオイル、サイクルオイル、動物及び植物由来の脂肪、油及びワックス、石油及びスラックワックス、またはそれらの組み合わせを含む、請求項20に記載の工程。
【請求項22】
アルミナ成分が11~20nmの細孔径範囲での0.05~1.0cc/g、または0.07~0.85cc/g、または0.09~0.70cc/gの細孔容積を有さない点だけが異なる比較の水素異性化触媒を用いる同工程に比べ、請求項1に記載の触媒を用いる前記基油は、収率が向上する、請求項20に記載の工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月11日に出願された米国出願第17/095,010号に対する優先権の利益を主張するものであり、その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
モレキュラーシーブSSZ-91のベース押出物及び高ナノ細孔容積アルミナを含む触媒を使用して炭化水素原料油から基油を作製するための水素異性化触媒及び工程。
【背景技術】
【0003】
炭化水素原料から基油を作製する水素異性化触媒脱ろう工程は、水素の存在下で脱ろう触媒システムを含む反応器に原料を導入することを含む。反応器内で、原料は、水素異性化脱ろう条件下で水素異性化触媒と接触し、異性化流をもたらす。水素異性化は、芳香族化合物及び残留窒素ならびに硫黄を除去し、直鎖パラフィンを異性化して低温流れ特性を改善する。基油製品から微量のいずれの芳香族化合物、オレフィンを除去し、色などを改善するために、第2の反応器内で、異性化流を水素化仕上げ触媒とさらに接触させてもよい。水素化仕上げユニットは、アルミナ担体及び貴金属、典型的にはパラジウム、またはパラジウムと組み合わせた白金を含む水素化仕上げ触媒を含み得る。
【0004】
典型的な水素異性化触媒脱ろう工程において一般的に直面する課題は、とりわけ、1つ以上の製品についての曇り点、流動点、粘度及び/または粘度指数限界などの関連製品仕様を満たしながら、製品収率のよい製品(複数可)を提供することである。また、芳香族化合物を飽和させ、芳香族化合物の含有量を減らすことにより、例えば色及び酸化安定性に対して、製品の品質をさらに改善するための、例えば水素化仕上げ中のさらなるアップグレードを使用し得る。しかしながら、上流の水素化処理及び水素化分解工程での残留有機硫黄及び窒素の存在は、下流の工程及び最終基油製品の品質に重大な影響を与える可能性がある。
【0005】
直鎖パラフィンの脱ろうは、水素異性化、分岐の再分配、二次水素異性化など、多くの水素転換反応を含む。連続した水素異性化反応は、分岐の再分配を伴う分岐度の増加をもたらす。分岐の増加は、一般に連鎖分解の可能性を高め、燃料収率の増加をもたらし、基油/潤滑油の収率を低下させる。したがって、水素異性化遷移種の形成を含むこのような反応を最小限に抑えることで、基油/潤滑油の収率を高めることができる。
【0006】
したがって、ワックス分子を異性化し、望ましくない分解や水素異性化反応を減らすことで基油/潤滑油の収率を増加させるために、基油/潤滑油製品のためのより堅牢な触媒が必要である。よって、良好な収率の基油/潤滑油製品を提供しながら、燃料生産を低減させる基油/潤滑油製品を作製するための触媒及び工程に対する必要性が継続されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ワックス含有炭化水素原料を、一般に基油製品の収率が高い基油または潤滑油を含む高品位な製品に転化するための水素異性化触媒及び工程に関する。そのような工程では、モレキュラーシーブSSZ-91と高ナノ細孔容積(HNPV)アルミナとの混合物から形成されたベース押出物を含む触媒システムが採用される。水素異性化工程において、脂肪族非分岐パラフィン系炭化水素(n‐パラフィン)がイソパラフィン及び環状種に転化することで、基油製品の流動点及び曇り点が原料に比べて低下される。SSZ-91/HNPVアルミナのベース押出物から形成された触媒により、他の触媒を使用して作製された基油製品に比べ、基油/潤滑油製品の収率が増加した基油製品を有利に提供されることを見出した。
【0008】
一態様において、本発明は、好適な炭化水素供給流の水素化処理により、基油、特に1つ以上の製品グレードの基油製品を含む脱ろう製品を製造するのに有用な水素異性化触媒及び工程に関する。必ずしもこれに限定されるものではないが、本発明の一目的は、基油製品の収率を増加させると同時に、ガス及び燃料グレード製品の生産を低減させることである。
【0009】
一般に、当該触媒は、モレキュラーシーブSSZ-91及びHNPVアルミナを含むベース押出物と、周期表の第6族~第10族及び第14族から選択される少なくとも1つの調整剤とを含み、当該アルミナは、11~20nmの細孔径範囲での0.05~1.0cc/gの細孔容積を有し、当該ベース押出物は、2~50nmの細孔径範囲での0.12~1.80cc/gの全細孔容積を有する。
【0010】
一般に、当該工程は、水素異性化条件下で炭化水素原料を水素異性化触媒と接触させ、生成物または生成物流を生成することを含む。当該水素異性化触媒は、モレキュラーシーブSSZ-91及びHNPVアルミナと、周期表の第6族~第10族及び第14族から選択される少なくとも1つの調整剤とを含み、当該アルミナは、11~20nmの細孔径範囲での0.05~1.0cc/gの細孔容積を有し、当該ベース押出物は、2~50nmの細孔径範囲での0.12~1.80cc/gの全細孔容積を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、1つ以上の態様の例示的な実施形態が示されているが、開示される工程、及びその工程は、いずれかの数の技法を用いて実施してよい。本開示は、本明細書に例示及び記載されているいずれの例示的な設計及び実施形態も含め、本明細書に例示されている例示的または具体的な実施形態、図面、及び技法に限定されるものではなく、添付の請求項の範囲及びその均等物の全範囲内で改変してよい。
【0012】
別段に示されていない限り、本開示には、下記の用語、専門用語、及び定義を適用する。本開示で用語が使用されているが、本明細書で具体的に定義されていない場合、その定義が本明細書で適用される他の開示または定義と矛盾せず、またはその定義が適用される請求項を不定または無効にしない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed(1997)の定義が適用され得る。参照により本明細書に援用されるいずれかの文献によって定められているいずれかの定義または用途が、本明細書に定められている定義または用途と矛盾する限りにおいては、本明細書に定められている定義または用途が適用されると理解されたい。
【0013】
「API比重」とは、ASTM D4052-11によって決定される、水に対する石油原料または生成物の比重を指す。
【0014】
「粘度指数」(VI)は、ASTM D2270-10(E2011)により決定される、潤滑油の温度依存性を表する。
【0015】
「真空軽油」(VGO)は、原油の真空蒸留際の副産物であり、基油にアップグレードするために水素化処理装置または芳香族抽出に送ることができる。VGOは一般に、沸点範囲分布が、0.101MPaで343℃(649°F)から593℃(1100°F)間の炭化水素で構成されている。
【0016】
「処理」、「処理された」、「アップグレードする」、「アップグレーディング」、及び「アップグレードされた」とは、油原料と併せて使用するときには、水素化処理が施されているか、もしくは水素化処理を施した原料油、または得られた材料もしくは粗生成物であって、その原料油の分子量が低下しているか、その原料油の沸点範囲が縮小しているか、アスファルテンの濃度が低下しているか、炭化水素遊離基の濃度が低下しているか、及び/または硫黄、窒素、酸素、ハロゲン化物、及び金属などの不純物の量が減少しているものを説明するものである。
【0017】
「水素化処理」とは、望ましくない不純物を除去し、及び/または炭素質原料を所望の生成物に転化する目的で、その炭素質原料を高めの温度及び圧力で、水素及び触媒と接触させる工程を指す。水素化処理工程の例としては、水素化分解、水素化処理、接触脱ろう、及び水素化仕上げが挙げられる。
【0018】
「水素化分解」とは、水素化及び脱水素に、炭化水素の分解/破砕を伴う工程、例えば、より重質な炭化水素をより軽質な炭化水素に転化すること、あるいは芳香族化合物及び/またはシクロパラフィン(ナフテン)を非環状分岐パラフィンに転化することを指す。
【0019】
「水素化処理」とは、典型的には水素化分解と併せて、硫黄及び/または窒素含有炭化水素原料を、硫黄及び/または窒素含有量が減少した炭化水素生成物に転化し、硫化水素及び/またはアンモニア(それぞれ)を副生成物として生成する工程を指す。水素の存在下で行われるそのような工程またはステップには、炭化水素原料の成分(例えば、不純物)の水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属化、及び/または水素化脱芳香族化、及び/または原料中の不飽和化合物の水素化が含まれる。水素化処理の種類及び反応条件に応じて、水素化処理工程の生成物は、例えば、粘度、粘度指数、飽和分含有率、低温特性、揮発性、及び減極性が改善され得る。「保護層」及び「保護床」という用語は、本明細書では同義的かつ互換的に使用され得、水素化処理触媒または水素化処理触媒層を指す。保護層は、炭化水素脱ろう用触媒システムの成分であってもよく、少なくとも1つの水素異性化触媒の上流に配置されてもよい。
【0020】
「接触脱ろう」または水素異性化とは、水素の存在下で触媒と接触させることにより、直鎖パラフィンをより分岐した対応物に異性化する工程を指す。
【0021】
「水素化仕上げ」とは、微量の芳香族化合物、オレフィン、着色体、及び溶媒を除去することにより、水素化仕上げ生成物の酸化安定性、UV安定性、及び外観を改善することを目的とした工程を指す。UV安定性とは、UV光及び酸素にさらされたときの試験対象の炭化水素の安定性を指す。紫外線及び空気への曝露時に視認可能であり、通常は凝集塊または曇りとして見られる沈殿物が形成されるか、または着色の進行が生じた場合に不安定性が示される。水素化仕上げについての一般的な説明は、米国特許第3,852,207号及び同第4,673,487号において見つけることが可能である。
【0022】
「水素(Hydrogen)」または「水素(hydrogen)」という用語は、水素自体及び/または水素源となる化合物もしくは複数の化合物を指す。
【0023】
「BET表面積」は、その沸点におけるN2吸着によって求める。BET表面積は、P/P0=0.050、0.088、0.125、0.163、及び0.200の5点法によって計算する。まず、試料を400℃で6時間、N2流の存在下で乾燥して前処理し、水または有機物などの吸着揮発性物質を除去する。
【0024】
「カットポイント」とは、所定の分離度に達する真沸点(TBP)曲線上の温度を指す。
【0025】
「流動点」とは、制御された条件下で油が流れ始める温度を指す。流動点は、例えばASTM D5950によって決定し得る。
【0026】
「曇り点」とは、特定の条件下で油を冷却したときに、潤滑油基油試料がヘイズを発生し始める温度を指す。潤滑油基油の曇り点は、その流動点と相補的である。曇り点は、例えばASTM D5773によって決定され得る。
【0027】
「ナノ細孔直径」及び 「ナノ細孔容積」は、N2の沸点での吸着によって決定され、E.P.Barrett、L.G.Joyner、及びP.P.Halendaの「The determination of pore volume and area distributions in porous substances. I.Computations from nitrogen isotherms.」J.Am.Chem.Soc.73,373‐380,1951に記載のBJH法によりN2等温線から計算される。まず、試料を400℃で6時間、N2流の存在下で乾燥して前処理し、水または有機物などの吸着揮発性物質を除去する。それぞれd10、d50、及びd90と呼ばれる、総ナノ細孔容積の10%、50%、及び90%での細孔直径も、そのようなN2吸着測定から決定し得る。
【0028】
「TBP」とは、ASTM D2887-13による模擬蒸留(SimDist)によって決定された含炭化水素原料または生成物の沸点を指す。
【0029】
「含炭化水素」、「炭化水素」、及び類似の用語は、炭素原子及び水素原子のみを含む化合物を指す。その炭化水素に特定の基が存在する場合、別の識別子を用いて、当該特定の基の存在を示すことが可能である(例えば、ハロゲン化炭化水素とは、当該炭化水素中の水素原子と等しい数で置き換えた1つ以上のハロゲン原子が存在することを示す)。
【0030】
「周期表」という用語は、IUPAC Periodic Table of the Elements dated Jun.22,2007のバージョンを指し、周期表の族番号表示は、Chemical and Engineering News,63(5),26-27(1985)に記載されているとおりである。「第2族」とは、IUPACの第2族元素、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第6族」とは、IUPACの第6族元素、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)を指す。「第7族」とは、IUPACの第7族元素、例えば、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第8族」とは、IUPACの第8族元素、例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第9族」とは、IUPACの第9族元素、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第10族」とは、IUPACの第10族元素、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第14族」とは、IUPACの第14族元素、例えば、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。
【0031】
「担体」という用語は、特に、「触媒担体」という用語で使用する場合には、典型的には、表面積の大きい固体である従来の材料のうち、触媒材料を担持する材料を指す。担体材料は、不活性または触媒反応に関与することが可能であり、多孔性または非多孔性であり得る。典型的な触媒担体としては、様々な種類の炭素、アルミナ、シリカ、及びシリカ-アルミナ、例えば、非晶質シリカアルミネート、ゼオライト、アルミナ-ボリア、シリカ-アルミナ-マグネシア、シリカ-アルミナ-チタニア、ならびにそれらに他のゼオライト及び他の複合酸化物を加えることによって得られる物質が挙げられる。
【0032】
「モレキュラーシーブ」とは、フレームワーク構造内に、細孔の均一な分子寸法を有しており、モレキュラーシーブの種類に応じて、ある特定の分子のみが、そのモレキュラーシーブの細孔構造に到達できる一方で、その他の分子が、例えば分子のサイズ及び/または反応性により排除されるようになっている物質を指す。「モレキュラーシーブ」及び「ゼオライト」という用語は、同義語であり、(a)中間体ならびに(b)最終または標的モレキュラーシーブ、及び(1)直接合成または(2)結晶化後処理(二次修飾)によって生成されるモレキュラーシーブを含む。二次合成技術は、ヘテロ原子格子置換または他の技術による中間材料からの標的材料の合成を可能にする。例えば、アルミノケイ酸塩は、中間体ホウケイ酸塩からBのAlへの結晶化後ヘテロ原子格子置換により合成することができる。このような技術は公知であり、例えば米国特許第6,790,433号に記載されている。ゼオライト、結晶性アルミノリン酸塩、及び結晶性シリコアルミノリン酸塩は、モレキュラーシーブの代表例である。
【0033】
本開示では、組成物、及び方法または工程が、各種の成分またはステップを「含む」という観点で説明されている場合が多いが、その組成物及び方法は、別段の記載のない限り、その各種の成分もしくはステップ「から本質的になって」もよいし、またはその各種の成分もしくはステップ「「からなって」もよい。
【0034】
「a」、「an」、及び「the」という用語は、複数の選択肢、例えば、少なくとも1つを含むことを意図している。例えば、「遷移金属」または「アルカリ金属」の開示は、特に明記しない限り、遷移金属またはアルカリ金属の1つ、または2つ以上の混合物もしくは組み合わせを包含することを意味する。
【0035】
本明細書における詳細な説明及び特許請求の範囲内のいずれの数値も、示されている値が「約」または「およそ」によって修飾されており、当業者であれば予測するであろう、実験での誤差及び変動が考慮されている。
【0036】
一態様において、本発明は、基油/潤滑油を含む脱ろう製品を製造するのに有用な水素異性化触媒であり、当該化触媒は、モレキュラーシーブSSZ-91及びアルミナから形成されるベース押出物であって、当該アルミナは、11~20nmの細孔径範囲での0.05~1.0cc/gの細孔容積を有し、当該ベース押出物は、2~50nmの細孔径範囲での0.12~1.80cc/gの全細孔容積を有する当該ベース押出物と、周期表の第6族~第10族及び第14族から選択される少なくとも1つの調整剤とを含む。
【0037】
さらなる態様において、本発明は、基油を含む脱ろう製品を製造するのに有用な水素異性化工程に関するものであり、当該工程は、水素異性化条件下で炭化水素原料を水素異性化触媒と接触させて生成物または生成物流を生成することを含み、当該水素異性化触媒は、モレキュラーシーブSSZ-91及びアルミナから形成されるベース押出物であって、当該アルミナは、11~20nmの細孔径範囲での0.05~1.0cc/gの細孔容積を有し、当該ベース押出物は、2~50nmの細孔径範囲での0.12~1.80cc/gの全細孔容積を有する当該ベース押出物と、周期表の第6族~第10族及び第14族から選択される少なくとも1つの調整剤とを含む。
【0038】
水素異性化触媒及び工程で使用されるモレキュラーシーブSSZ-91は、例えば、米国特許第9,802,830号、同第9,920,260号、同第10,618,816号、及びWO2017/034823に記載されている。モレキュラーシーブSSZ-91は、一般に、ZSM-4型ゼオライト材料を含む。当該モレキュラーシーブは、ZSM-48型材料全体の少なくとも70%のポリタイプ6、0~3.5重量パーセントの量のEUO型相、及び平均アスペクト比が1~8の微結晶を含む多結晶集合体形態を有する。モレキュラーシーブSSZ-91の酸化ケイ素対酸化アルミニウムのモル比は、40~220または50~220または40~200の範囲であってよい。いくつかの場合において、SSZ-91材料は、生成物に存在するZSM-48型材料全体の少なくとも90%がポリタイプ6で構成されている。ポリタイプ6の構造には、国際ゼオライト協会の構造委員会によって、骨格コード*MREが付与されている。「*MRE型モレキュラーシーブ」及び「EUO型モレキュラーシーブ」という用語には、Atlas of Zeolite Framework Types,eds.Ch.Baerlocher,L.B.Mccusker and D.H.Olson,Elsevier,6th revised edition,2007及び国際ゼオライト協会のウェブサイト(http://www.iza-online.org)上のゼオライト構造のデータベースに記載されているように、国際ゼオライト協会の骨格に割り当てられている全てのモレキュラーシーブ及びそのアイソタイプが含まれる。
【0039】
前述の特許では、モレキュラーシーブSSZ-91、その作製方法、及びそれから形成される触媒に関する追加の詳細が提供される。
【0040】
水素異性化触媒及び工程で使用されるアルミナは、一般に「高ナノ細孔容積」アルミナと呼ばれ、本明細書では「HNPV」アルミナと略される。HNPVアルミナは、平均細孔直径の範囲内のその細孔容積に従って都合よく特徴付けられ得る。本明細書で「NPV」と略される「ナノ細孔容積」という用語は、アルミナの細孔容積範囲及びそれらの範囲内の値、例えば、6~11nmの細孔径範囲、11~20nmの細孔径範囲、及び20~50nmの細孔径範囲のNPV細孔容積を定義する好都合な標識を提供する。一般に、アルミナは、11~20nmの細孔径範囲での0.05~1.0cc/gの細孔容積、またはより具体的には、11~20nmの細孔径範囲での0.07~0.85cc/gの細孔容積、または11~20nmの細孔径範囲での0.09~0.7cc/gの細孔容積を有する。独立して、または前述の11~20nmの範囲に加え、アルミナは、6~11nmの細孔径範囲での0.05~1.0cc/gの細孔容積、または6~11nmの細孔径範囲での0.06~0.8cc/gの細孔容積、または6~11nmの細孔径範囲での0.07~0.6cc/gの細孔容積を有してもよい。独立して、または前述の6~11nm及び11~20nmの範囲に加え、アルミナは、20~50nmの細孔径範囲での0.05~1.0cc/gの細孔容積、または20~50nmの細孔径範囲での0.07~0.8cc/gの細孔容積、または20~50nmの細孔径範囲での0.09~0.6cc/gの細孔容積を有してもよい。
【0041】
アルミナはまた、細孔径範囲における全細孔容積に関して特徴付けられ得る。例えば、前述のNPV細孔容積に加え、または個別且つ独立して、アルミナは、2~50nmの細孔径範囲での0.3~2.0cc/gの全細孔容積、または2~50nmの細孔径範囲での0.5~1.75cc/gの全細孔容積、または2~50nmの細孔径範囲での0.7~1.5cc/gの全細孔容積を有してもよい。
【0042】
SSZ-91シーブ/HNPVアルミナから形成されるベース押出物を含む触媒は、一般に、周期表(IUPAC)の第6族~第10族及び第14族から選択される少なくとも1つの調整剤をさらに含む。好適な第6族の調整剤は、第6族元素、例えばクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)、ならびにそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第7族の調整剤は、第7族元素、例えば、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第8族の調整剤は、第8族元素、例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第9族の調整剤は、第9族元素、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第10族の調整剤は、第10族元素、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第14族の調整剤は、第14族元素、例えば、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。また、任意の第2族の調整剤は、第2族元素、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含んで存在してもよい。
【0043】
調整剤は、有利には、1つ以上の第10族金属を含む。第10族金属は、例えば、白金、パラジウム、またはそれらの組み合わせであり得る。白金は、いくつかの態様において、別の第6族~第10族及び第14族の金属とともに、好適な第10族の金属である。これらに限定されるものではないが、第6族~第10族及び第14族の金属は、Pt、Pd、Ni、Re、Ru、Ir、Sn、またはそれらの組み合わせからさらに絞り込んで選択され得る。触媒中の第1の金属としてPtと共に、第2の第6族~第10族及び第14族の金属からさらに絞り込んで選択され得る触媒中の任意の第2の金属もまた、Pd、Ni、Re、Ru、Ir、Sn、またはそれらの組み合わせから選択される。より具体的な例として、触媒は、第10族金属として、0.01~5.0重量%もしくは0.01~2.0重量%、または0.1~2.0重量%、より具体的には0.01~1.0重量%または0.3~0.8重量%のPtを含む。第6族~第10族及び第14族の金属として、Pd、Ni、Re、Ru、Ir、Sn、またはそれらの組み合わせから選択される任意の第2の金属は、0.01~5.0重量%もしくは0.01~2.0重量%、または0.1~2.0重量%、より具体的には0.01~1.0重量%及び0.01~1.5重量%の量で存在し得る。
【0044】
触媒中の金属含有量は、有用な範囲にわたって変動されてもよく、例えば、触媒中の修飾金属の全含有量は、0.01~5.0重量%もしくは0.01~2.0重量%、または0.1~2.0重量%(全触媒重量基準)であり得る。いくつかの例において、触媒は、修飾金属の1つとして、0.1~2.0重量%のPt及び第6族~第10族及び第14族から選択される0.01~1.5重量%の第2の金属、または0.3~1.0重量%のPt及び0.03~1.0重量%の第2の金属、または0.3~1.0重量%のPt及び0.03~0.8重量%の第2の金属を含む。いくつかの場合において、第6族~第10族及び第14族から選択される任意の第2の金属に対する第1の金属の第10族の比率は、5:1~1:5、または3:1~1:3、または1:1~1:2、または5:1~2:1、または5:1~3:1、または1:1~1:3、または1:1~1:4の範囲であり得る。
【0045】
触媒は、アルミナ、シリカ、セリア、チタニア、酸化タングステン、ジルコニア、またはそれらの組み合わせから選択される追加のマトリックス材料をさらに含み得る。より具体的な場合において、第1の触媒は、0.01~5.0重量%の修飾金属、1~99重量%のマトリックス材料、及び0.1~99重量%のモレキュラーシーブSSZ-91/HNPVアルミナベース押出物を含む。触媒はまた、より狭義で記載されてもよい。例えば、触媒は、0.01~5.0重量%の調整剤、15~85重量%のマトリックス材料、及び15~85重量%のモレキュラーシーブSSZ-91を含んでもよい。2つ以上のマトリックス材料が使用されてもよい。例えば、マトリックス材料は、約15~65重量%の第1のマトリックス材料及び約15~65重量%の第2のマトリックス材料を含み得る。そのような場合、第1及び第2のマトリックス材料は、一般に、材料の種類または細孔容積及び細孔分布特性などの1つ以上の特徴が異なる。1つ以上のマトリックス材料が使用される場合、第1、第2(及び任意の他の)マトリックス材料は、同じ種類のマトリックス材料であってもよく、例えば、マトリックス材料は1つ以上のアルミナを含んでもよい。
【0046】
触媒ベース押出物はまた、全細孔容積及び特定の平均細孔径範囲内の細孔容積の両方において、細孔容積によって好適に特徴付けられる。HNPVアルミナと同様に、ベース押出物は、6~11nmの細孔径範囲、11~20nmの細孔径範囲、及び20~50nmの細孔径範囲での細孔容積に従って特徴付けられ得る。一般に、ベース押出物は、2~50nmの細孔径範囲での0.12~1.80cc/gの全細孔容積、またはより具体的には、2~50nmの細孔径範囲での0.20~1.65cc/gの全細孔容積、または2~50nmの細孔径範囲での0.25~1.50cc/gの全細孔容積を有する。
【0047】
独立して、または前述の2~50nmの全細孔容積に加え、ベース押出物は、6~11nmの細孔径範囲での0.05~0.80cc/gの細孔容積、または6~11nmの細孔径範囲での0.08~0.60cc/gの細孔容積、または6~11nmの細孔径範囲での0.10~0.50cc/gの細孔容積を有してもよい。独立して、または前述の6~11nmの細孔容積及び2~50nmの全細孔容積に加え、ベース押出物は、11~20nmの細孔径範囲での0.05~0.80cc/gの細孔容積、または11~20nmの細孔径範囲での0.08~0.60cc/gの細孔容積、または11~20nmの細孔径範囲での0.10~0.50cc/gの細孔容積を有してもよい。独立して、または前述の6~11nm及び11~20nmの細孔容積範囲、ならびに2~50nmの全細孔容積範囲に加え、ベース押出物は、20~50nmの細孔径範囲での0.02~0.35cc/gの細孔容積、または20~50nmの細孔径範囲での0.03~0.30cc/gの細孔容積、または20~50nmの細孔径範囲での0.05~0.25cc/gの細孔容積を有してもよい。
【0048】
ベース押出物は、任意の好適な方法に従って作製し得る。例えば、ベース押出物は、複数の成分を一緒に混合し、十分に混合されたSSZ-91/HNPVアルミナベース材料を押出して、ベース押出物を形成することによって都合よく製造し得る。次に、押出物を乾燥及びか焼し、続いてベース押出物に任意の調整剤を充填する。好適な含浸技術を使用し、調整剤をベース押出物上に分散し得る。しかしながら、ベース押出物を作製する方法は、特定の工程条件または技術に従って特に限定されることを意図するものではない。
【0049】
炭化水素原料は、一般に、様々な基油原料から選択されてもよく、有利には、軽油、真空軽油、ロングレジデュー(long residue)、真空残渣、大気圧留出物、重質燃料、油、ワックス及びパラフィン、使用済み油、脱アスファルト残渣または原油、熱または触媒転化工程から得られるチャージ(charge)、シェールオイル、サイクルオイル、動物及び植物由来の脂肪、油及びワックス、石油及びスラックワックス、またはそれらの組み合わせを含む。炭化水素原料はまた、400~1300°F、または500~1100°F、または600~1050°Fの蒸留範囲の原料炭化水素留分を含んでもよく、及び/または炭化水素原料は、約3~30cStまたは約3.5~15cStの範囲でKV100(100℃での動粘度)を有する。
【0050】
いくつかの場合において、工程は、SSZ-91/HNPVアルミナ触媒がPt修飾金属またはPtと別の修飾子との組み合わせを含む場合、炭化水素原料として、真空軽油(VGO)などの軽質または重質の中性基油原料に有利に用いられ得る。
【0051】
生成物(複数可)または生成物流は、1つ以上の基油製品の製造、例えば、約2~30cStの範囲でKV100を有する複数のグレードの製造に使用され得る。いくつかの場合において、そのような基油製品は、約-5℃、または-12℃、または-14℃以下の流動点を有し得る。
【0052】
工程及びシステムはまた、追加の工程ステップまたはシステム構成要素と組み合わせることが可能であり、例えば、原料は、任意選択で、炭化水素原料をSSZ-91/HNPVアルミナ水素異性化触媒と接触させる前に、水素化処理触媒を用いて水素化処理条件にさらしてもよく、この場合、水素化処理触媒は、約0.1~1重量%のPt及び約0.2から1.5重量%のPdを含有する耐火性無機酸化物材料を含む保護層触媒を含む。
【0053】
本工程及び触媒システムによって提供される利点としては、モレキュラーシーブSSZ-91及びアルミナ(以下、「SSZ-91/アルミナ」触媒という)を含み、11~20nmの細孔径範囲での0.05~1.0cc/g(または、より具体的な場合、0.07~0.85cc/gもしくは0.09~0.70cc/g)の細孔容積を有するHNPVアルミナ成分を含まない類似の触媒を用いる同工程に比べ、モレキュラーシーブSSZ-91及びHNPVアルミナ(以下、「SSZ-91/HNPVアルミナ」触媒という)を含む本発明の触媒システムを用いて製造される基油製品の収率が向上することである。さらに、いくつかの場合において、本発明のSSZ-91/HNPVアルミナ触媒を使用する場合、このような類似のSSZ-91/アルミナ触媒を用いる同工程に比べ、基油収率が少なくとも約0.5重量%または1.0重量%で顕著に増加する。本発明のSSZ-91/HNPVアルミナ触媒及び工程はまた、このような同じ類似のSSZ-91/アルミナ触媒と比較して、燃料及びガス生成が少ないという追加の利点を提供する。
【0054】
実際には、水素化脱ろうは主に、基油からワックスを除去することによって基油の流動点を低下させるため、及び/または基油の曇り点を低下させるために使用される。典型的には、脱ろうは、ワックスを処理するための触媒工程を用い、脱ろう原料は、一般に、脱ろうの前にアップグレードされて粘度指数を増加させ、芳香族及びヘテロ原子含有量を減少させ、脱ろう原料中の低沸点成分の量を減少させる。いくつかの脱ろう触媒は、ワックス分子を低分子量分子に分解することにより、ワックス転換反応を完結する。他の脱ろう工程は、炭化水素原料に含まれるワックスをワックス異性化による工程に転換し、異性化されていない分子対応物よりも低い流動点を有する異性化分子を生成し得る。本明細書で使用される場合、異性化は、接触水素異性化条件下でワックス分子の異性化に水素を使用する水素異性化工程を包含する。
【0055】
好適な水素化脱ろう条件は、一般に、使用される原料、使用される触媒、所望の収率、及び基油の所望の特性によって決まる。典型的な条件としては、500°F~775°F(260℃~413℃)の温度、15psig~3000psig(0.10MPa~20.68MPaゲージ)の圧力、0.25hr‐1~20hr‐1のLHSV、2000SCF/bbl~30,000SCF/bbl(356~5340m3H2/m3原料)の原料に対する水素の比率が挙げられる。一般に、水素は、生成物から分離され、異性化ゾーンへ再循環される。一般に、本発明の脱ろう工程は、水素の存在下で行われる。典型的には、炭化水素に対する水素の比率は、炭化水素1バレル当たり約2000~約10,000標準立方フィートH2の範囲内であり、通常、炭化水素1バレル当たり約2500~約5000標準立方フィートH2である。上記の条件は、水素化処理ゾーンの水素化処理条件、ならびに第1及び第2の触媒の水素異性化条件に適用し得る。好適な脱ろう条件及び工程は、例えば、米国特許第5,135,638号、同第5,282,958号、及び同第7,282,134号に記載されている。
【0056】
好適な触媒システムは、一般に、さらなる水素化仕上げステップの前に原料がSSZ-91/HNPVアルミナ触媒と接触するように配置された、SSZ-91/HNPVアルミナ触媒を含む触媒を含む。SSZ-91/HNPVアルミナ触媒は、単独で、他の触媒と組み合わせて、及び/または層状触媒システムで使用され得る。追加の処理ステップ及び触媒が含まれてもよく、例えば、上述のように、水素化処理触媒(複数可)/ステップ、保護層、及び/または水素化仕上げ触媒(複数可)/ステップが含まれてもよい。
【実施例】
【0057】
SSZ-91は、米国特許第10,618,816号に従って合成され、アルミナは、SasolのCatapal(登録商標)アルミナ及びPural(登録商標)アルミナ、及びUOPのVersal(登録商標)アルミナとして提供された。モレキュラーシーブSSZ-91のアルミナに対するシリカの比率(SAR)は、120以下であった。本実施例で使用されるアルミナの特性を表1に示す。
【表1】
【0058】
実施例1‐水素異性化触媒Aの作製
比較の水素異性化触媒Aを次のように調製した。微結晶SSZ-91を表1の従来の非HNPVアルミナと合成し、65重量%のSSZ-91ゼオライトを含む混合物を得た。混合物を押出し、乾燥及びか焼し、乾燥及びか焼した押出物を、白金を含む溶液に含浸させた。全体的な白金の充填量は0.6重量%であった。
【0059】
実施例2‐水素異性化触媒Bの作製
水素異性化触媒Bを触媒Aについて記載したように作製し、65重量%のSSZ-91及び35重量%のHNPVアルミナIを含む混合物を得た。乾燥及びか焼した押出物に白金を含浸させ、全体の白金充填量を0.6重量%とした。
【0060】
実施例3‐水素異性化触媒Cの作製
比較の水素異性化触媒Cを、触媒Aについて記載したように作製し、45重量%のSSZ-91及び55重量%の従来の非HNPVアルミナ触媒を含む混合物を得た。乾燥及び焼成した押出物に白金を含浸させ、全体の白金充填量を0.325重量%とした。
【0061】
実施例4‐水素異性化触媒Dの作製
水素異性化触媒Dを触媒Aについて記載したように作製し、45重量%のSSZ-91及び55重量%のHNPVアルミナIを含む混合物を得た。乾燥及びか焼した押出物に白金を含浸させ、全体の白金充填量を0.325重量%とした。
【0062】
実施例5‐水素異性化触媒Eの作製
水素異性化触媒Eを触媒Aについて記載したように作製し、45重量%のSSZ-91、20重量%のHNPVアルミナI、及び35重量%のHNPVアルミナIIを含む混合物を得た。乾燥及び焼成した押出物に白金を含浸させ、全体の白金充填量を0.325重量%とした。
【0063】
触媒A~Eの組成の詳細を表2にまとめる。
【表2】
【0064】
触媒A~Eの細孔径、細孔容積、及び触媒表面積の詳細を表3にまとめる。
【表3】
【0065】
実施例6‐触媒A及びBの水素異性化性能
触媒A及びBを用いて、表4に示す特性を有する軽質中性真空軽油(VGO)水素化分解原料を水素異性化した。
【表4】
【0066】
水素異性化反応は、2つの固定床反応器を備えたマイクロユニットで実行さした。実験は、全圧2100psigで実施した。原料を、表2~3に列挙された触媒AまたはBのうちの1つが設けられた水素異性化反応器に2の液空間速度(LHSV)で通過させた。次いで、水素異性化生成物を、水素化仕上げ触媒を充填した第2の反応器で水素化仕上げし、潤滑油製品の品質をさらに改善した(米国特許第8790507号に記載)。水素化仕上げ触媒は、Pt、Pd、及び担体から構成される。水素異性化反応温度は、580~680°Fの範囲に調節された。
【0067】
油に対する水素の比率は、約3000scfbであった。潤滑油製品は、蒸留部を通して燃料から分離された。SSZ-91/非HNPVアルミナベース押出物をベースとする比較触媒A及びSSZ-91/HNPVアルミナベース押出物から形成された触媒Bの潤滑油製品収率を表5に示す。
【表5】
【0068】
非HNPVベース押出物成分を有する触媒Aと比較して、HNPVベース押出物成分を有する触媒Bは、約1重量%の基油/潤滑油製品の増加を示した。触媒Bはまた、非HNPVの比較触媒Aと比較して、少ない燃料及びガスを生成した。
【0069】
本発明の1つ以上の実施形態の上記の説明は、主に例示のためのものであり、変形形態を用いてよく、その上、その変形形態が、本発明の本質に組み込まれることは認識されている。本発明の範囲を判断する際には、下記の請求項を参照すべきである。
【0070】
米国特許の実施慣行の目的上、及び認められる場合には、その他の特許庁においては、本発明の上記の説明で引用したいずれの特許及び刊行物も、それらに含まれるいずれかの情報が、上記の開示内容と整合し及び/または上記の開示内容を補う限りにおいては、参照により、本明細書に援用される。
【国際調査報告】