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特表2023-549353SSZ-91及びSSZ-95を使用した触媒システムならびに工程
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】SSZ-91及びSSZ-95を使用した触媒システムならびに工程
(51)【国際特許分類】
   C10G 45/64 20060101AFI20231116BHJP
   B01J 29/74 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C10G45/64
B01J29/74 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528072
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 US2021058893
(87)【国際公開番号】W WO2022103913
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】17/095,337
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イーファ
(72)【発明者】
【氏名】レイ、グワン - ダオ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BB04A
4G169BC10A
4G169BC20A
4G169BC43A
4G169BC57A
4G169BC60A
4G169BC61A
4G169BC65A
4G169BC69A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CC14
4G169DA06
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4G169FA01
4G169FA02
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4G169FB65
4G169FC08
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4H129AA02
4H129CA01
4H129CA07
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4H129CA09
4H129CA10
4H129CA15
4H129CA17
4H129CA18
4H129CA25
4H129CA29
4H129DA20
4H129KA11
4H129KB03
4H129KB04
4H129KB05
4H129KC03X
4H129KC03Y
4H129KC04X
4H129KC05X
4H129KC07X
4H129KC16X
4H129KC17X
4H129KC17Y
4H129KD05X
4H129KD06X
4H129KD09X
4H129KD13X
4H129KD16X
4H129KD17X
4H129KD18X
4H129KD21X
4H129KD23X
4H129KD25X
4H129KD26X
4H129KD26Y
4H129KD31X
4H129KD44X
4H129NA12
4H129NA25
4H129NA32
4H129NA35
4H129NA37
(57)【要約】
モレキュラーシーブSSZ-91及びモレキュラーシーブSSZ-95を含む複合触媒システムを使用して基油製品を製造する向上された水素異性化触媒システムならびに工程。当該触媒システム及び工程は、一般に、モレキュラーシーブSSZ-91を含む触媒と、モレキュラーシーブSSZ-95を含む別個の触媒とを使用し、これらの触媒を炭化水素原料と連続的に接触させることによって脱ろう基油製品を作製することに関する。当該触媒システム及び工程は、他の有益な基油特性とともに、基油収率の向上をもたらす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油を含む脱ろう生成物を製造するのに有用な水素異性化触媒システムであって、
モレキュラーシーブSSZ-91を含む第1の触媒組成物と、
モレキュラーシーブSSZ-95を含む第2の触媒組成物とを含み、
前記第1の触媒組成物及び前記第2の触媒組成物は、炭化水素原料を前記第1の触媒組成物または前記第2の触媒組成物の一方と連続的に接触させ、第1の生成物を得ることができ、続いて前記第1の生成物をもう一方の触媒組成物と接触させ、第2の生成物を得るように配置される、前記水素異性化触媒システム。
【請求項2】
前記第1の触媒組成物及び前記第2の触媒組成物は、前記原料が前記第1の触媒組成物に供給されて前記第1の生成物を形成するように配置される、請求項1に記載の触媒システム。
【請求項3】
前記第1の触媒組成物及び前記第2の触媒組成物は、前記原料が前記第2の触媒組成物に供給されて前記第1の生成物を形成するように配置される、請求項1に記載の触媒システム。
【請求項4】
前記第1の触媒組成物及び前記第2の触媒組成物のそれぞれの前記モレキュラーシーブは、マトリックス材料と組み合わされて、第1の基材及び第2の基材をそれぞれ形成し、前記第1の触媒組成物及び前記第2の触媒組成物のそれぞれは、周期表の第6族~第10族及び第14族から選択され、任意選択でさらに周期表の第2族金属を含む少なくとも1つの改質剤をさらに含む、請求項1に記載の触媒システム。
【請求項5】
前記モレキュラーシーブSSZ-91は、ZSM-48型ゼオライト材料を含み、前記モレキュラーシーブは、
前記ZSM-48型材料全体の少なくとも70%のポリタイプ6、
0~3.5重量パーセントの量のEUO型相、及び
1~8の平均アスペクト比を有する微結晶を含む多結晶集合体形態を有する、請求項1に記載の触媒システム。
【請求項6】
前記モレキュラーシーブSSZ-91の酸化ケイ素対酸化アルミニウムのモル比は、40~220もしくは50~220もしくは40~200、または50~140の範囲である、請求項5に記載の触媒システム。
【請求項7】
前記モレキュラーシーブSSZ-91は、
前記ZSM-48型材料全体の少なくとも80%もしくは90%のポリタイプ6、
0.1~2重量%のEU-1、
1~5もしくは1~3の平均アスペクト比を有する微結晶、
またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、請求項5に記載の触媒システム。
【請求項8】
前記モレキュラーシーブSSZ-95は、酸化アルミニウムに対する酸化ケイ素のモル比が20~70、全微細孔容積が0.005~0.02cc/gであり、SSZ-32と比較して最大50%のH-D交換可能な酸部位密度を有するMTT骨格のモレキュラーシーブである、請求項1に記載の触媒システム。
【請求項9】
前記改質剤の含有量は、0.01~5.0重量%もしくは0.01~2.0重量%、または0.1~2.0重量%(全触媒重量基準)である、請求項4に記載の触媒システム。
【請求項10】
前記触媒は、前記改質剤として、Pt、またはPt及びPdの組み合わせを、0.01~1.0重量%、または0.3~0.8重量%のPtまたは前記Pt及びPdの組み合わせの量で含み、任意選択で、さらにMgを含む、請求項4に記載の触媒システム。
【請求項11】
前記第1の触媒組成物及び前記第2の触媒組成物の一方または両方に対する前記マトリックス材料は、アルミナ、シリカ、セリア、チタニア、酸化タングステン、ジルコニア、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項4に記載の触媒システム。
【請求項12】
前記第1の触媒組成物及び前記第2の触媒組成物の一方または両方は、0.01~5.0重量%の前記改質剤、0~99重量%の前記マトリックス材料、及び0.1~99重量%の前記モレキュラーシーブを含む、請求項11に記載の触媒システム。
【請求項13】
前記第2段階生成物が、少なくとも約109の粘度指数及び/または約-10℃もしくは-13℃以下の流動点を有する基油製品であるか、あるいはそのような基油製品を製造するために使用される、請求項1に記載の触媒システム。
【請求項14】
基油製品の収率が増加した基油製品を作製する工程であって、水素異性化条件下で、炭化水素原料を請求項1に記載の水素異性化触媒システムと接触させ、基油製品を作製することを含む前記工程。
【請求項15】
前記炭化水素原料は、軽油、真空軽油、ロングレジデュー(long residue)、真空残渣、大気圧留出物、重質燃料、油、ワックス及びパラフィン、使用済み油、脱アスファルト残渣または原油、熱または触媒転化工程から得られるチャージ(charge)、シェールオイル、サイクルオイル、動物及び植物由来の脂肪、油及びワックス、石油及びスラックワックス、またはそれらの組み合わせを含む、請求項14に記載の工程。
【請求項16】
前記基油の収率は、請求項1に記載の触媒システムを使用すると、前記第1の触媒組成物または前記第2の触媒組成物のみを使用する同工程に比べて増加する、請求項14に記載の工程。
【請求項17】
前記基油の収率は、請求項1に記載の触媒システムを使用すると、前記第1の触媒組成物または前記第2の触媒組成物のみを使用する同工程に比べて、少なくとも約1重量%増加する、請求項16に記載の工程。
【請求項18】
前記第1の触媒組成物及び前記第2の触媒組成物は、前記炭化水素原料が前記第1の触媒組成物に供給されて前記第1の生成物を形成するように配置される、請求項14に記載の工程。
【請求項19】
前記第1の触媒組成物及び前記第2の触媒組成物は、前記炭化水素原料が前記第2の触媒組成物に供給されて前記第1の生成物を形成するように配置される、請求項14に記載の工程。
【請求項20】
前記第2段階生成物が、少なくとも約109の粘度指数及び/または約-13℃もしくは-10℃以下の流動点を有する基油製品であるか、あるいはそのような基油製品を製造するために使用される、請求項14に記載の工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月11日に出願された米国出願第17/095,337号に対する優先権の利益を主張するものであり、その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
モレキュラーシーブSSZ-91及びモレキュラーシーブSSZ-95を含む触媒を使用して炭化水素原料から基油を作製する水素異性化触媒システム及び工程。
【背景技術】
【0003】
炭化水素原料から基油を作製する水素異性化触媒脱ろう工程は、水素の存在下で脱ろう触媒システムを含む反応器に原料を導入することを含む。反応器内で、原料は、水素異性化脱ろう条件下で水素異性化触媒と接触し、異性化流をもたらす。水素異性化は、芳香族化合物及び残留窒素ならびに硫黄を除去し、直鎖パラフィンを異性化して低温流れ特性を改善する。基油製品から微量のいずれの芳香族化合物、オレフィンを除去し、色などを改善するために、第2の反応器内で、異性化流を水素化仕上げ触媒とさらに接触させてもよい。水素化仕上げユニットは、アルミナ担体及び貴金属、典型的にはパラジウム、またはパラジウムと組み合わせた白金を含む水素化仕上げ触媒を含み得る。
【0004】
典型的な水素異性化触媒脱ろう工程において一般的に直面する課題は、とりわけ、1つ以上の製品についての曇り点、流動点、粘度及び/または粘度指数限界などの関連製品仕様を満たしながら、製品収率のよい製品(複数可)を提供することである。また、芳香族化合物を飽和させ、芳香族化合物の含有量を減らすことにより、例えば色及び酸化安定性に対して、製品の品質をさらに改善するための、例えば水素化仕上げ中のさらなるアップグレードを使用し得る。しかしながら、上流の水素化処理及び水素化分解工程での残留有機硫黄及び窒素の存在は、下流の工程及び最終基油製品の品質に重大な影響を与える可能性がある。
【0005】
直鎖パラフィンの脱ろうは、水素異性化、分岐の再分配、二次水素異性化など、多くの水素転換反応を含む。連続した水素異性化反応は、分岐の再分配を伴う分岐度の増加をもたらす。分岐の増加は、一般に連鎖分解の可能性を高め、燃料収率の増加をもたらし、基油/潤滑油の収率を低下させる。したがって、水素異性化遷移種の形成を含むこのような反応を最小限に抑えることで、基油/潤滑油の収率を高めることができる。
【0006】
したがって、ワックス分子を異性化し、望ましくない分解や水素異性化反応を減らすことで基油/潤滑油の収率を増加させるために、基油/潤滑油製品のためのより堅牢な触媒システムが必要である。よって、良好な収率の基油/潤滑油製品を提供しながら、基油/潤滑油製品を作製するための触媒、触媒システム、及び工程に対する必要性が継続されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ワックス含有炭化水素原料を、一般に基油製品の収率が高い基油または潤滑油を含む高品位な製品に転化するための水素異性化触媒システム及び工程に関する。触媒システム及び工程としは、モレキュラーシーブSSZ-91を含む第1の触媒組成物と、モレキュラーシーブSSZ-95を含む第2の触媒組成物とを含む触媒システムが採用される。第1の触媒組成物及び第2の触媒組成物は、炭化水素原料を第1の触媒組成物または第2の触媒組成物のいずれかと連続的に接触させ、第1段階生成物を得、続いて第1段階生成物をもう一方の触媒組成物と接触させ、第2段階生成物を得るように配置される。水素異性化工程において、脂肪族非分岐パラフィン系炭化水素(n‐パラフィン)がイソパラフィン及び環状種に転化することで、基油製品の流動点及び曇り点が原料に比べて低下される。SSZ-91及びSSZ-95の組み合わせから形成される触媒システムにより、SSZ-91触媒またはSSZ-95触媒を使用して独自に作製される基油製品に比べ、基油/潤滑油製品の収率が増加した基油製品が有利に提供されることが見出された。
【0008】
一態様において、本発明は、好適な炭化水素供給流の水素化処理により、基油、特に1つ以上の製品グレードの基油製品を含む脱ろう生成物を製造するのに有用な水素異性化触媒システム及び工程に関する。必ずしもこれに限定されるものではないが、本発明の一目的は、基油製品の収率を増加させると同時に、基油製品の他の有利な特性を提供することである。
【0009】
第1の触媒組成物は、一般にモレキュラーシーブSSZ-91を含み、第2の触媒組成物は、一般にモレキュラーシーブSSZ-95を含む。それぞれの触媒組成物はまた、マトリックス材料と、周期表の第6族~第10族及び第14族から選択される少なくとも1つの改質剤とを含み得る。改質剤は、周期表の第2族金属をさらに含み得る。
【0010】
一般に、当該水素異性化工程は、水素異性化条件下で炭化水素原料を水素異性化触媒システムと接触させ、基油製品または生成物流を生成することを含む。当該原料を、まず第1の触媒組成物または第2の触媒組成物のいずれかと接触させ、第1段階生成物を得、続いて第1段階生成物を他の触媒組成物(すなわち、対応する第2の触媒組成物または第1の触媒組成物)と接触させ、第2段階生成物を得ることが可能である。第2段階生成物は、それ自体が基油製品であってもよく、基油製品を作製するために使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、この工程により、少なくとも約109の粘度指数及び/または約-10℃または-13℃以下の流動点を有する基油製品を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、1つ以上の態様の例示的な実施形態が示されているが、開示される工程、及びその工程は、いずれかの数の技法を用いて実施してよい。本開示は、本明細書に例示及び記載されているいずれの例示的な設計及び実施形態も含め、本明細書に例示されている例示的または具体的な実施形態、図面、及び技法に限定されるものではなく、添付の請求項の範囲及びその均等物の全範囲内で改変してよい。
【0012】
別段に示されていない限り、本開示には、下記の用語、専門用語、及び定義を適用する。本開示で用語が使用されているが、本明細書で具体的に定義されていない場合、その定義が本明細書で適用される他の開示または定義と矛盾せず、またはその定義が適用される請求項を不定または無効にしない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminology,2nd ed(1997)の定義が適用され得る。参照により本明細書に援用されるいずれかの文献によって定められているいずれかの定義または用途が、本明細書に定められている定義または用途と矛盾する限りにおいては、本明細書に定められている定義または用途が適用されると理解されたい。
【0013】
「API比重」とは、ASTM D4052-11によって決定される、水に対する石油原料または生成物の比重を指す。
【0014】
「粘度指数」(VI)は、ASTM D2270-10(E2011)により決定される、潤滑油の温度依存性を表する。
【0015】
「真空軽油」(VGO)は、原油の真空蒸留際の副産物であり、基油にアップグレードするために水素化処理装置または芳香族抽出に送ることができる。VGOは一般に、沸点範囲分布が、0.101MPaで343℃(649°F)から593℃(1100°F)間の炭化水素で構成されている。
【0016】
「処理」、「処理された」、「アップグレードする」、「アップグレーディング」、及び「アップグレードされた」とは、油原料と併せて使用するときには、水素化処理が施されているか、もしくは水素化処理を施した原料、または得られた材料もしくは粗生成物であって、その原料の分子量が低下しているか、その原料の沸点範囲が縮小しているか、アスファルテンの濃度が低下しているか、炭化水素遊離基の濃度が低下しているか、及び/または硫黄、窒素、酸素、ハロゲン化物、及び金属などの不純物の量が減少しているものを説明するものである。
【0017】
「水素化処理」とは、望ましくない不純物を除去し、及び/または炭素質原料を所望の生成物に転化する目的で、その炭素質原料を高めの温度及び圧力で、水素及び触媒と接触させる工程を指す。水素化処理工程の例としては、水素化分解、水素化処理、接触脱ろう、及び水素化仕上げが挙げられる。
【0018】
「水素化分解」とは、水素化及び脱水素に、炭化水素の分解/破砕を伴う工程、例えば、より重質な炭化水素をより軽質な炭化水素に転化すること、あるいは芳香族化合物及び/またはシクロパラフィン(ナフテン)を非環状分岐パラフィンに転化することを指す。
【0019】
「水素化処理」とは、典型的には水素化分解と併せて、硫黄及び/または窒素含有炭化水素原料を、硫黄及び/または窒素含有量が減少した炭化水素生成物に転化し、硫化水素及び/またはアンモニア(それぞれ)を副生成物として生成する工程を指す。水素の存在下で行われるそのような工程またはステップには、炭化水素原料の成分(例えば、不純物)の水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属化、及び/または水素化脱芳香族化、及び/または原料中の不飽和化合物の水素化が含まれる。水素化処理の種類及び反応条件に応じて、水素化処理工程の生成物は、例えば、粘度、粘度指数、飽和分含有率、低温特性、揮発性、及び減極性が改善され得る。「保護層」及び「保護床」という用語は、本明細書では同義的かつ互換的に使用され得、水素化処理触媒または水素化処理触媒層を指す。保護層は、炭化水素脱ろう用触媒システムの成分であってもよく、少なくとも1つの水素異性化触媒の上流に配置されてもよい。
【0020】
「接触脱ろう」または水素異性化とは、水素の存在下で触媒と接触させることにより、直鎖パラフィンをより分岐した対応物に異性化する工程を指す。
【0021】
「水素化仕上げ」とは、微量の芳香族化合物、オレフィン、着色体、及び溶媒を除去することにより、水素化仕上げ生成物の酸化安定性、UV安定性、及び外観を改善することを目的とした工程を指す。UV安定性とは、UV光及び酸素にさらされたときの試験対象の炭化水素の安定性を指す。紫外線及び空気への曝露時に視認可能であり、通常は凝集塊または曇りとして見られる沈殿物が形成されるか、または着色の進行が生じた場合に不安定性が示される。水素化仕上げについての一般的な説明は、米国特許第3,852,207号及び同第4,673,487号において見つけることが可能である。
【0022】
「水素(Hydrogen)」または「水素(hydrogen)」という用語は、水素自体及び/または水素源となる化合物もしくは複数の化合物を指す。
【0023】
「カットポイント」とは、所定の分離度に達する真沸点(TBP)曲線上の温度を指す。
【0024】
「流動点」とは、制御された条件下で油が流れ始める温度を指す。流動点は、例えばASTM D5950によって決定し得る。
【0025】
「曇り点」とは、特定の条件下で油を冷却したときに、潤滑油基油試料がヘイズを発生し始める温度を指す。潤滑油基油の曇り点は、その流動点と相補的である。曇り点は、例えばASTM D5773によって決定され得る。
【0026】
「TBP」とは、ASTM D2887-13による模擬蒸留(SimDist)によって決定された含炭化水素原料または生成物の沸点を指す。
【0027】
「含炭化水素」、「炭化水素」、及び類似の用語は、炭素原子及び水素原子のみを含む化合物を指す。その炭化水素に特定の基が存在する場合、別の識別子を用いて、当該特定の基の存在を示すことが可能である(例えば、ハロゲン化炭化水素とは、当該炭化水素中の水素原子と等しい数で置き換えた1つ以上のハロゲン原子が存在することを示す)。
【0028】
「周期表」という用語は、IUPAC Periodic Table of the Elements dated Jun.22,2007のバージョンを指し、周期表の族番号表示は、Chemical and Engineering News,63(5),26-27(1985)に記載されているとおりである。「第2族」とは、IUPACの第2族元素、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第6族」とは、IUPACの第6族元素、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)を指す。「第7族」とは、IUPACの第7族元素、例えば、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第8族」とは、IUPACの第8族元素、例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第9族」とは、IUPACの第9族元素、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第10族」とは、IUPACの第10族元素、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。「第14族」とは、IUPACの第14族元素、例えば、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを指す。
【0029】
「担体」という用語は、特に、「触媒担体」という用語で使用する場合には、典型的には、表面積の大きい固体である従来の材料のうち、触媒材料を担持する材料を指す。担体材料は、不活性または触媒反応に関与することが可能であり、多孔性または非多孔性であり得る。典型的な触媒担体としては、様々な種類の炭素、アルミナ、シリカ、及びシリカ-アルミナ、例えば、非晶質シリカアルミネート、ゼオライト、アルミナ-ボリア、シリカ-アルミナ-マグネシア、シリカ-アルミナ-チタニア、ならびにそれらに他のゼオライト及び他の複合酸化物を加えることによって得られる物質が挙げられる。
【0030】
「モレキュラーシーブ」とは、フレームワーク構造内に、細孔の均一な分子寸法を有しており、モレキュラーシーブの種類に応じて、ある特定の分子のみが、そのモレキュラーシーブの細孔構造に到達できる一方で、その他の分子が、例えば分子のサイズ及び/または反応性により排除されるようになっている物質を指す。「モレキュラーシーブ」及び「ゼオライト」という用語は、同義語であり、(a)中間体ならびに(b)最終または標的モレキュラーシーブ、及び(1)直接合成または(2)結晶化後処理(二次修飾)によって生成されるモレキュラーシーブを含む。二次合成技術は、ヘテロ原子格子置換またはその他の技術による中間材料からの目的材料の合成を可能にする。例えば、アルミノケイ酸塩は、中間体ホウケイ酸塩からBのAlへの結晶化後ヘテロ原子格子置換により合成することができる。このような技術は公知であり、例えば米国特許第6,790,433号に記載されている。ゼオライト、結晶性アルミノリン酸塩、及び結晶性シリコアルミノリン酸塩は、モレキュラーシーブの代表例である。
【0031】
本開示では、組成物、及び方法または工程が、各種の成分またはステップを「含む」という観点で説明されている場合が多いが、その組成物及び方法は、別段の記載のない限り、その各種の成分もしくはステップ「から本質的になって」もよいし、またはその各種の成分もしくはステップ「「からなって」もよい。
【0032】
「a」、「an」、及び「the」という用語は、複数の選択肢、例えば、少なくとも1つを含むことを意図している。例えば、「遷移金属」または「アルカリ金属」の開示は、特に明記しない限り、遷移金属またはアルカリ金属の1つ、または2つ以上の混合物もしくは組み合わせを包含することを意味する。
【0033】
本明細書における詳細な説明及び特許請求の範囲内のいずれの数値も、示されている値が「約」または「およそ」によって修飾されており、当業者であれば予測するであろう、実験での誤差及び変動が考慮されている。
【0034】
一態様において、本発明は、基油/潤滑油を含む脱ろう生成物を作製するのに有用な水素異性化触媒システムであり、当該触媒システムは、モレキュラーシーブSSZ-91を含む第1の触媒組成物と、モレキュラーシーブSSZ-95を含む第2の触媒組成物とを含む。第1の触媒組成物及び第2の触媒組成物は、炭化水素原料を第1の触媒組成物または第2の触媒組成物のいずれかと連続的に接触させ、第1段階生成物を得、続いて第1段階生成物をもう一方の触媒組成物と接触させ、第2段階生成物を得るように配置される。第1の触媒組成物は、一般にモレキュラーシーブSSZ-91を含み、第2の触媒組成物は、一般にモレキュラーシーブSSZ-95を含む。それぞれの触媒組成物はまた、マトリックス材料と、周期表の第6族~第10族及び第14族から選択される少なくとも1つの改質剤とを含み得る。改質剤は、周期表の第2族金属をさらに含み得る。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、基油を含む脱ろう生成物を製造するのに有用な水素異性化工程に関し、当該工程は、水素異性化条件下で炭化水素原料を水素異性化触媒システムと接触させ、基油製品または生成物流を生成することを含む。当該原料を、まず第1の触媒組成物または第2の触媒組成物のいずれかと接触させ、第1段階生成物を得、続いて第1段階生成物を他の触媒組成物(すなわち、対応する第2の触媒組成物または第1の触媒組成物)と接触させ、第2段階生成物を得ることが可能である。第2段階生成物は、それ自体が基油製品であってもよいし、基油製品を製造するために使用されてもよい。
【0036】
水素異性化触媒システム及び工程で使用されるモレキュラーシーブSSZ-91は、例えば、米国特許第9,802,830号、同第9,920,260号、同第10,618,816号、及びWO2017/034823に記載されている。モレキュラーシーブSSZ-91は、一般に、ZSM-48型ゼオライト材料を含む。当該モレキュラーシーブは、ZSM-48型材料全体の少なくとも70%のポリタイプ6、0~3.5重量パーセントの量のEUO型相、及び平均アスペクト比が1~8の微結晶を含む多結晶集合体形態を有する。モレキュラーシーブSSZ-91の酸化ケイ素対酸化アルミニウムのモル比は、40~220または50~220または40~200の範囲であってよい。いくつかの場合において、モレキュラーシーブSSZ-91は、ZSM-48型材料全体の少なくとも70%のポリタイプ6、0~3.5重量パーセントの量のEUO型相、及び平均アスペクト比が1~8の微結晶を含む多結晶集合体形態を有し得る。いくつかの場合において、SSZ-91材料は、生成物に存在するZSM-48型材料全体の少なくとも90%がポリタイプ6で構成されている。ポリタイプ6の構造には、国際ゼオライト協会の構造委員会によって、骨格コード*MREが付与されている。「*MRE型モレキュラーシーブ」及び「EUO型モレキュラーシーブ」という用語には、Atlas of Zeolite Framework Types,eds.Ch.Baerlocher,L.B.Mccusker and D.H.Olson,Elsevier,6th revised edition,2007及び国際ゼオライト協会のウェブサイト(http://www.iza-online.org)上のゼオライト構造のデータベースに記載されているように、国際ゼオライト協会の骨格に割り当てられている全てのモレキュラーシーブ及びそのアイソタイプが含まれる。
【0037】
前述の特許では、モレキュラーシーブSSZ-91、その作製方法、及びそれから形成される触媒に関する追加の詳細が提供される。
【0038】
水素異性化触媒システム及び工程で使用されるモレキュラーシーブSSZ-95は、例えば、米国特許第9,573,124号、同第10052619号、同第10272422号、及びWO2015/179228に記載されている。モレキュラーシーブSSZ-95は、一般に、酸化アルミニウムに対する酸化ケイ素のモル比が20~70、全微細孔容積が0.005~0.02cc/gであり、SSZ-32と比較して最大50%のH-D交換可能な酸部位密度を有するMTT骨格のモレキュラーシーブである。
【0039】
第1の触媒組成物及び第2の触媒組成物のそれぞれのモレキュラーシーブは、一般に、マトリックス材料と組み合わされ、それぞれ第1の基材及び第2の基材を形成する。基材は、例えば、篩をマトリックス材料と組み合わせ、混合物を押出して成形された押出物を形成した後、その押出物を乾燥及びか焼することによって、ベース押出物として形成する。第1の触媒組成物及び第2の触媒組成物のそれぞれは、典型的には、周期表の第6族~第10族及び第14族から選択される少なくとも1つの改質剤をさらに含み、任意選択で第2族の金属をさらに含む。改質剤は、改質剤化合物を含む含浸溶液を使用して添加し得る。
【0040】
第1の触媒組成物及び第2の触媒組成物の一方または両方に好適なマトリックス材料としては、アルミナ、シリカ、セリア、チタニア、酸化タングステン、ジルコニア、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、第1の触媒組成物及び/または第2の触媒組成物及び工程のためのアルミナはまた、2020年11月11日に出願された米国特許第17/095,010号(整理番号T-11311)に記載されている「HNPV」アルミナと略称される「高ナノ細孔容積」アルミナであり得、同特許の内容は参照により本明細書に援用される。好適なアルミナは市販されており、例えば、SasolのCatapal(登録商標)アルミナ及びPural(登録商標)アルミナ、またはUOPのVersal(登録商標)アルミナが挙げられる。
【0041】
好適な改質剤は、周期表(IUPAC)の第6族~第10族及び第14族から選択される。好適な第6族の改質剤は、第6族元素、例えばクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)、ならびにそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれの組み合わせを含む。好適な第7族の改質剤は、第7族元素、例えば、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第8族の改質剤は、第8族元素、例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第9族の改質剤は、第9族元素、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第10族の改質剤は、第10族元素、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。好適な第14族の改質剤は、第14族元素、例えば、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含む。また、任意の第2族の改質剤は、第2族元素、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、及びそれらの元素、化合物、またはイオン形態のいずれかの組み合わせを含んで存在してもよい。
【0042】
改質剤は、有利には、1つ以上の第10族金属を含む。第10族金属は、例えば、白金、パラジウム、またはそれらの組み合わせであり得る。白金は、いくつかの態様において、別の第6族~第10族及び第14族の金属とともに、好適な第10族の金属である。これらに限定されるものではないが、第6族~第10族及び第14族の金属は、Pt、Pd、Ni、Re、Ru、Ir、Sn、またはそれらの組み合わせからさらに絞り込んで選択され得る。第1の触媒組成物及び/または第2の触媒組成物中の第1の金属として、Ptと共に、第1の触媒組成物及び/または第2の触媒組成物中の任意の第2の金属もまた、Pd、Ni、Re、Ru、Ir、Snなどの第6族~第10族及び第14族の金属またはそれらの組み合わせからさらに絞り込んで選択され得る。より具体的な例として、触媒は、第10族金属として、0.01~5.0重量%もしくは0.01~2.0重量%、または0.1~2.0重量%、より具体的には0.01~1.0重量%または0.3~0.8重量%のPtを含み得る。第6族~第10族及び第14族の金属として、Pd、Ni、Re、Ru、Ir、Sn、またはそれらの組み合わせから選択される任意の第2の金属は、0.01~5.0重量%もしくは0.01~2.0重量%、または0.1~2.0重量%、より具体的には0.01~1.0重量%及び0.01~1.5重量%の量で存在し得る。
【0043】
第1の触媒組成物及び第2の触媒組成物中の金属含有量は、有用な範囲にわたって変動されてもよく、例えば、触媒中の改質金属の全含有量は、0.01~5.0重量%もしくは0.01~2.0重量%、または0.1~2.0重量%(全触媒重量基準)であり得る。いくつかの例において、触媒組成物は、改質金属の1つとして、0.1~2.0重量%のPt及び第6族~第10族及び第14族から選択される0.01~1.5重量%の第2の金属、または0.3~1.0重量%のPt及び0.03~1.0重量%の第2の金属、または0.3~1.0重量%のPt及び0.03~0.8重量%の第2の金属を含む。いくつかの場合において、第6族~第10族及び第14族から選択される任意の第2の金属に対する第1の金属の第10族の比率は、5:1~1:5、または3:1~1:3、または1:1~1:2、または5:1~2:1、または5:1~3:1、または1:1~1:3、または1:1~1:4の範囲であり得る。より具体的な場合において、第1の触媒組成物及び/または第2の触媒組成物は、0.01~5.0重量%の改質金属、1~99重量%のマトリックス材料、及び0.1~99重量%のモレキュラーシーブSSZ-91またはSSZ-95を含む。
【0044】
ベース押出物は、任意の好適な方法に従って作製し得る。例えば、第1の触媒組成物及び/または第2の触媒組成物に対するベース押出物は、複数の成分を一緒に混合し、十分に混合されたSSZ-91/マトリックス材料及び/またはSSZ-95/マトリックス材料の混合物を押出して、ベース押出物を形成することによって都合よく製造し得る。次に、押出物を乾燥及びか焼し、続いてベース押出物に任意の改質剤を充填する。好適な含浸技術を使用し、改質剤をベース押出物上に分散し得る。しかしながら、ベース押出物を作製する方法は、特定の工程条件または技術に従って特に限定されることを意図するものではない。
【0045】
炭化水素原料は、一般に、様々な基油原料から選択されてもよく、有利には、軽油、真空軽油、ロングレジデュー(long residue)、真空残渣、大気圧留出物、重質燃料、油、ワックス及びパラフィン、使用済み油、脱アスファルト残渣または原油、熱または触媒転化工程から得られるチャージ(charge)、シェールオイル、サイクルオイル、動物及び植物由来の脂肪、油及びワックス、石油及びスラックワックス、またはそれらの組み合わせを含む。炭化水素原料はまた、400~1300°F、または500~1100°F、または600~1050°Fの蒸留範囲の原料炭化水素留分を含んでもよく、及び/または炭化水素原料は、約3~30cStまたは約3.5~15cStの範囲でKV100(100℃での動粘度)を有する。
【0046】
いくつかの場合において、工程は、SSZ-91及びSSZ-95触媒組成物がPt改質金属またはPtと別の改質剤との組み合わせを含む場合、炭化水素原料として、真空軽油(VGO)などの軽質または重質の中性基油原料に有利に用いられ得る。
【0047】
生成物(複数可)または生成物流は、1つ以上の基油製品の製造、例えば、約2~30cStの範囲でKV100を有する複数のグレードの製造に使用され得る。いくつかの場合において、そのような基油製品は、約-10℃、または-13℃以下の流動点を有し得る。
【0048】
工程及び触媒システムはまた、追加の工程ステップまたはシステム構成要素と組み合わせることが可能であり、例えば、原料は、任意選択で、炭化水素原料をSSZ-91触媒組成物またはSSZ-95触媒組成物と接触させる前に、水素化処理触媒を用いて水素化処理条件にさらしてもよく、この場合、水素化処理触媒は、約0.1~1重量%のPt及び約0.2~1.5重量%のPdを含有する耐火性無機酸化物材料を含む保護層触媒を含む。
【0049】
本工程及び触媒システムによってもたらされる利点の中には、SSZ-91触媒組成物のみ、またはSSZ-95触媒組成物のみが使用される同工程と比較して、モレキュラーシーブSSZ-91及びモレキュラーシーブSSZ-95をベースとする第1の触媒組成物及び第2の触媒組成物の組み合わせを使用して製造される基油製品の収率の向上が挙げられる。例えば、基油の収率は、同工程でSSZ-91触媒組成物のみ、またはSSZ-95触媒組成物のみが使用される場合と比較して、第1及び第2のSSZ-91及びSSZ-95触媒組成物の組み合わせを使用した場合は、少なくとも約0.5重量%または1.0重量%で顕著に増加する可能性がある。
【0050】
実際には、水素化脱ろうは主に、基油からワックスを除去することによって基油の流動点を低下させるため、及び/または基油の曇り点を低下させるために使用される。典型的には、脱ろうは、ワックスを処理するための触媒工程を用い、脱ろう原料は、一般に、脱ろうの前にアップグレードされて粘度指数を増加させ、芳香族及びヘテロ原子含有量を減少させ、脱ろう原料中の低沸点成分の量を減少させる。いくつかの脱ろう触媒は、ワックス分子を低分子量分子に分解することにより、ワックス転換反応を完結する。他の脱ろう工程は、炭化水素原料に含まれるワックスをワックス異性化による工程に転換し、異性化されていない分子対応物よりも低い流動点を有する異性化分子を生成し得る。本明細書で使用される場合、異性化は、接触水素異性化条件下でワックス分子の異性化に水素を使用する水素異性化工程を包含する。
【0051】
好適な水素化脱ろう条件は、一般に、使用される原料、使用される触媒、所望の収率、及び基油の所望の特性によって決まる。典型的な条件としては、500°F~775°F(260℃~413℃)の温度、15psig~3000psig(0.10MPa~20.68MPaゲージ)の圧力、0.25hr‐1~20hr‐1のLHSV、2000SCF/bbl~30,000SCF/bbl(356~5340m/m原料)の原料に対する水素の比率が挙げられる。一般に、水素は、生成物から分離され、異性化ゾーンへ再循環される。一般に、本発明の脱ろう工程は、水素の存在下で行われる。典型的には、炭化水素に対する水素の比率は、炭化水素1バレル当たり約2000~約10,000標準立方フィートHの範囲内であり、通常、炭化水素1バレル当たり約2500~約5000標準立方フィートHである。上記の条件は、水素化処理ゾーンの水素化処理条件、ならびに第1及び第2の触媒の水素異性化条件に適用し得る。好適な脱ろう条件及び工程は、例えば、米国特許第5,135,638号、同第5,282,958号、及び同第7,282,134号に記載されている。
【0052】
当該触媒システム及び工程は、一般に、モレキュラーシーブSSZ-91及びモレキュラーシーブSSZ-95を含む第1の触媒組成物及び第2の触媒組成物の組み合わせに関して説明されてきたが、例えば、水素化処理触媒(複数可)/ステップ、ガード層、及び/または水素化仕上げ触媒(複数可)/ステップを含み、層状触媒及び処理ステップを含む追加の触媒が存在し得ることを理解されたい。
【実施例
【0053】
SSZ-91は米国特許第10,618,816号に従って合成され、SSZ-95は米国特許第10,272,422号に従って合成アルミナは、SasolのCatapal(登録商標)アルミナ及びPural(登録商標)アルミナ、及びUOPのVersal(登録商標)アルミナとして提供モレキュラーシーブSSZ-91のアルミナに対するシリカの比率(SAR)は、120以下であった。
【0054】
実施例1-水素異性化触媒の作製
水素異性化触媒Aを次のように作製した。微結晶SSZ-91をCatapal(登録商標)アルミナと合成し、65重量%のSSZ-91ゼオライトを含む混合物を得た。混合物を押出し、乾燥及びか焼し、乾燥及びか焼した押出物を、白金を含む溶液に含浸させた。全体的な白金の充填量は0.6重量%であった。
【0055】
実施例2‐水素異性化触媒Bの作製
水素異性化触媒Bを触媒Aについて記載したように作製し、45重量%のSSZ-95を含む混合物を得た。乾燥及びか焼した押出物に白金を含浸させ、全体の白金充填量を0.325重量%とした。
【0056】
実施例3‐触媒A及びB、ならびに組み合わせたA及びBシステムの水素異性化性能
触媒A及びBを用いて、表1に示す特性を有する真空軽油(VGO)水素化分解原料を水素異性化した。
【表1】
【0057】
水素異性化反応は、ストレートスルーマイクロユニット固定床反応器(リサイクルなし)内で、反応器に供給される原料と水素のみを用いて実行されました。実験は、全圧2300psigで実施した。原料を1hr-1のLHSVで反応器に通した。油に対する水素の比率は、約4000scfbであり、反応器の温度範囲は550~650°Fであった。基油製品は、蒸留部を通して燃料から分離された。
【0058】
実験は、触媒Aのみ、触媒Bのみ、同じ反応器内で触媒Bの上に触媒Aを有する層状触媒システム(「A/B」)、及び同じ反応器内で触媒Aの上に触媒Bを有する層状触媒システム(「B/A」)を使用して実行された。層状A/B及びB/A触媒システムは、50体積%の触媒Aと50体積%の触媒Bとを使用して実施した。触媒Aのみの実験を「規範事例」として用い、水素異性化触媒の温度差を決定した。触媒の水素異性化性能の結果を表2に示す。
【表2】
【0059】
触媒A(SSZ-91)及び触媒B(SSZ-95)単独使用と比較して、層状A/B及びB/A触媒システムは、2重量%以上の顕著に高い基油収率を示した。さらに、層状触媒システムの粘度指数は、単一触媒システムよりも約1~2ポイント高かった。
【0060】
本発明の1つ以上の実施形態に対する上記の説明は、主に例示のためのものであり、変形形態を用いてよく、その上、その変形形態が、本発明の本質に組み込まれることは認識されている。本発明の範囲を判断する際には、下記の請求項を参照すべきである。
【0061】
米国特許の実施慣行の目的上、及び認められる場合には、その他の特許庁においては、本発明の上記の説明で引用したいずれの特許及び刊行物も、それらに含まれるいずれかの情報が、上記の開示内容と整合し及び/または上記の開示内容を補う限りにおいては、参照により、本明細書に援用される。
【国際調査報告】