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特表2023-549367ケラチン物質上の有機化合物の光変換のための特定の金属酸化物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ケラチン物質上の有機化合物の光変換のための特定の金属酸化物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20231116BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q5/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528311
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2021081788
(87)【国際公開番号】W WO2022112053
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】2012072
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・ジャンヌ-ローズ
(72)【発明者】
【氏名】アンリ・サマン
(72)【発明者】
【氏名】イアニス・デリギアンナキス
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ロウロウディ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB211
4C083AB212
4C083AC102
4C083CC31
4C083DD16
4C083DD39
(57)【要約】
本発明は、ケラチン物質の表面、又は前記ケラチン物質と接触する対象物の表面における有機化合物の堆積物を低減及び/又は除去するための、式An-x:(式中、Aは、ビスマス、カルシウム、ナトリウム、ランタン、バリウム、銅、スズ、マグネシウム、亜鉛、及び銀から選択される金属を表し;Bは、タングステン、バナジウム、ガリウム、ニオブ、及びストロンチウムから選択される金属を表し;aは1~4の範囲の整数であり;bは1~10の範囲の整数であり;nは3~6の範囲の整数であり;xは0.1~5の範囲内の、nより小さい10進数である)の少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む固体粒子の使用に関する。本発明は又、そのような固体粒子を含む化粧用組成物又は物品を使用して、ケラチン物質又はケラチン物質と接触する対象物の表面を美容的処置し、続いて光に暴露する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン物質、特にヒトのケラチン物質の表面、又は前記ケラチン物質と接触する対象物の表面における有機化合物の堆積物を防止、低減、及び/又は除去するための、式An-x
(式中、
Aは、ビスマス、カルシウム、ナトリウム、ランタン、バリウム、銅、スズ、マグネシウム、亜鉛、及び銀から選択される金属を表し;
Bは、タングステン、バナジウム、ガリウム、ニオブ、及びストロンチウムから選択される金属を表し;
aは1~4の範囲の整数であり;
bは1~10の範囲の整数であり;
nは3~6の範囲の整数であり;
xは0.1~5の範囲内の、nより小さい10進数である)
の少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む固体粒子の使用。
【請求項2】
Aがビスマス及びバリウムから選択され、好ましくはAがビスマスを表す、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Bがタングステン及びバナジウムから選択され、好ましくはBがタングステンを表す、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記酸化物OM1が、式BiWO6-xを有し、xは、0.2~1.5、好ましくは0.3~1の範囲内で、さらに好ましくはxは0.5以上且つ厳密には1未満の10進数である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記金属酸化物OM1が、式M
(式中、
Mは遷移金属を表し;
cは1~3の範囲の整数であり;
kは、0.1~4の範囲内の10進数である)
の第2の金属酸化物OM2と組み合わされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記酸化物OM2が式CuOを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記金属酸化物OM2の量に対する前記金属酸化物OM1の量のモル比が、1以上、好ましくは2以上、より優先的には3以上、さらに優先的には4以上、さらに好ましくは4より大きい、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
前記少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む前記固体粒子が、火炎噴霧熱分解によって得られるか、又は得ることができる、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む前記固体粒子が、1~1000nm、好ましくは10~200nmの範囲の数平均径を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
身体によって分泌されるタンパク質及び脂肪性物質の堆積、特に皮脂の堆積物を防止、低減、及び/又は除去するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
ケラチン物質又はケラチン物質と接触する対象物の表面の美容的処置のための方法であって、
(1)前記物質又は前記表面に、請求項1~4、8、及び9のいずれか一項に記載の式An-xの少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む固体粒子を含む化粧用組成物を適用するステップ;その後
(2)前記物質又は前記表面を自然光又は人工光に曝露するステップ;
を含む方法。
【請求項12】
ステップ(1)で使用される前記化粧用組成物が、少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む前記粒子中に又は異なる固体粒子中に存在する請求項5~7のいずれか一項に記載の式Mの少なくとも1種の金属酸化物OM2をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記化粧用組成物中の前記金属酸化物OM1の含有量が、前記組成物の合計質量に対して0.4質量%~40質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%、より好ましくは1質量%~10質量%、さらに優先的には1.5質量%~5質量%の範囲であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属酸化物OM2の含有量が、前記組成物の合計質量に対して0.1質量%~10質量%、好ましくは0.15質量%~5質量%、さらに好ましくは0.25質量%~1.5質量%の範囲であることを特徴とする、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ケラチン物質の美容的処置方法であって、
(1)前記物質を、請求項1~4、8、及び9のいずれか一項に記載の式An-xの少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む固体粒子を含む物品と接触させるステップ;その後
(2)前記物品を自然光又は人工光に暴露するステップ、
を含む方法。
【請求項16】
ステップ(1)で使用される前記物品が、少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む前記粒子中に又は異なる固体粒子中に存在する請求項5~7のいずれか一項に記載の式Mの少なくとも1種の金属酸化物OM2をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記金属酸化物OM2の量に対する前記金属酸化物OM1の量のモル比が、1以上、好ましくは2以上、より優先的には3以上、さらに優先的には4以上、さらに好ましくは4より大きい、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(2)が、紫外範囲の200nmから赤外範囲の3000nmまでの波長を有する1つ以上の電磁波を放出する光源を使用して、光照射によって行われることを特徴とする、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記光源が、可視範囲の波長を有する放射を放出するLEDランプであることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン物質、特に皮膚、頭皮、及びケラチン繊維(毛髪など)のようなヒトのケラチン物質上に存在し得る望ましくない有機化合物の光変換のための、特定の金属酸化物の使用に関する。この特定の使用により、ケラチン物質の表面、又は前記ケラチン物質と接触する対象物の表面における有機化合物の堆積物を除去することができる。
【0002】
本発明は、そのようなある金属酸化物を使用する、ケラチン物質又はケラチン物質と接触する対象物の表面の美容的処置のための方法にも関する。
【0003】
本発明により、特に、ケラチン物質のオイリング現象を低減及び/又は減速することが可能になる。
【背景技術】
【0004】
ケラチン物質は、その表面に望ましくない有機化合物が堆積又は形成されるため、時間の経過とともに美的性質の一部を失う傾向がある。これは、自然なオイリング(特に皮脂の分泌に関連)、汗、ふけの脱離、汚染、湿気などの非常に多様な要因に起因する可能性がある。これらは、人体によって分泌される化合物(皮脂、タンパク質誘導体、死んだ皮膚残渣などの脂肪性物質)又はケラチン物質上に堆積する外部化合物、例えば汚れ、自動車や産業由来の汚染物質などの可能性がある。
【0005】
ケラチン物質上にこれらの有機化合物が存在すると、不快感を生じさせる可能性がある、且つ/又は美的問題を引き起こす可能性がある。特に、これらの化合物は、ケラチン物質の視覚的外観及び感触に有害である。
【0006】
したがって、例えば、自然なオイリングは髪を重くし、その結果髪を固まらせる傾向がある。その場合、髪はよりスタイリングが難しくなり、不快な油っぽい光沢と不快なワックスのような感触になる。同様に、皮膚による皮脂の分泌は、特に顔面において、特に魅力に欠けるとされる油っぽい光沢のある外観を皮膚に与える。
【0007】
望ましくない有機化合物を除去するために、石鹸、シャワージェル、シャンプーなどの洗剤組成物が一般的に使用される。これは、ケラチン物質を洗剤組成物で洗浄することが非常に有効であり、身体から分泌される化合物と外部環境からの汚れの両方を除去することが可能になるためである。
【0008】
しかしながら、洗浄の有益な効果は急速に薄れ、望ましくない有機化合物は数日で、さらには数時間で再び付着し、上述した問題を再度引き起こす。その結果、これらの問題を回避することを望む者は、洗浄頻度を増加させる傾向があり、これは、しばしば体の分泌物を刺激してその垢を増加させる影響があり、その結果、ケラチン物質が洗浄された後のケラチン物質の自然な再オイリングの速度を加速する影響を有する。
【0009】
さらに、これらの洗浄では、望ましくない化合物が現れたときに定期的な除去を行い、ケラチン物質のきれいな外観を維持することは不可能である。一般的には、ケラチン物質を洗浄する前に、望ましくない化合物が十分に蓄積されるのを待つことになる。洗浄は定期的に繰り返さなければならず、2回の洗浄の合間に望ましくない化合物の存在に悩まされることが一般的である。
【0010】
さらに、これらの洗浄を行うためには、水の供給源、好ましくは熱水又は温水が必要である。洗剤組成物は、頭皮、皮膚、又は目に刺すような不快感を引き起こす可能性のある大量の界面活性剤を含むことが多い。
【0011】
ケラチン物質をより迅速に洗浄し、それらを濡らさないようにするために、「ドライ」シャンプー又は使い捨てワイプなどの乾燥組成物を使用することが既に提案されている。ドライシャンプーによる洗浄は、吸収性粒子を毛髪に噴霧し、その後汚れを取り除くために頭髪を積極的にブラッシングすることからなる。しかしながら、一般的には汚れを完全に除去することは非常に困難である。その結果は、髪がくすみ、ツヤがなくなり、ザラザラした手触りになるなど、あまり満足のいくものではない。さらに、繊維製品である支持体上に付着した洗剤組成物を含む使い捨てワイプの使用は、環境問題を引き起こす。
【0012】
同様に知られている解決策は、ケラチン物質から望ましくない化合物(皮脂や汚染物質などを含む)の全部又は一部を化学酸化によって除去することである。この原理は、酸化剤と髪から除去すべき化合物とを一緒にすることである。しかしながら、その効果が即効的であり、反応中の酸化剤の完全な消費に関連する酸化剤の持続性がないことを考慮すると、長時間継続することができないため、この技術は満足のいくものではない。さらに、使用される酸化剤は、ケラチン物質に有害な作用を及ぼす可能性がある。
【0013】
また、例えば酸化チタンなどの触媒の存在下で、紫外線の存在下での光触媒作用によって、ケラチン物質から異物又は望ましくない物質の全部又は一部が除去されることも知られている。しかしながら、これらの光触媒は、可視光の照射下では限られた活性しか有さない。光変換の速度は遅すぎることが多い。これは、望ましくない化合物が除去されるよりも速く蓄積することを意味する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、特に上記問題を解決することである。
【0015】
より具体的には、本発明は、天然有機化合物(特に身体から分泌されるもの)と外部環境からの有機化合物の両方の堆積に関連するオイリングを低減及び/又は遅らせるために、ケラチン物質、特にヒトのケラチン物質の美容的処置方法を提供することを目的とする。本発明は、特に、ケラチン物質への皮脂の堆積物を防止及び/又は低減することを可能にする。
【0016】
本発明は、ケラチン物質と接触する対象物の表面に堆積し得る有機化合物を除去することも可能にする。
【0017】
この問題に関して行われた多くの研究の後、出願人は、これらの目的及び他の目的が、上述した特定の金属酸化物の粒子を使用することによって達成できることを見出した。
【0018】
したがって、本発明は、ケラチン物質、特にヒトのケラチン物質の表面、又は前記ケラチン物質と接触する対象物の表面における有機化合物の堆積物を防止、低減、及び/又は除去するための、式An-x
(式中、
Aは、ビスマス、カルシウム、ナトリウム、ランタン、バリウム、銅、スズ、マグネシウム、亜鉛、及び銀から選択される金属を表し;
Bは、タングステン、バナジウム、ガリウム、ニオブ、及びストロンチウムから選択される金属を表し;
aは1~4の範囲の整数であり;
bは1~10の範囲の整数であり;
nは3~6の範囲の整数であり;
xは0.1~5の範囲内の、nより小さい10進数である)
の少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む固体粒子の使用に関する。
【0019】
出願人は、上で定義した特定のOM1酸化物が、既に堆積している有機化合物の除去とそのような化合物が出現したときの分解の両方を可能にするのに十分に速い速度で、ケラチン物質上に存在し得る有機化合物の光分解を非常に効果的に触媒し、それによって堆積物の低減及び新しい堆積物の蓄積を防止できることを発見した。
【0020】
したがって、本発明は、ケラチン物質上に存在し得る望ましくない有機化合物の堆積物を(これらが外部環境に起因する化合物(例えば着色、汚れ、汚染物質)であるか、体から分泌された化合物、特に体から分泌されたタンパク質及び脂肪性物質、特に皮脂であるかにかかわらず)防止及び/又は低減することを可能にする。したがって、本発明は、有機化合物が出現したときにそれらを除去し、ケラチン物質の継続的な清浄性を保つことを可能にする。
【0021】
さらに、ケラチン物質が対象物と接触している場合、程度の差はあるものの、ケラチン物質の表面から対象物の表面への有機化合物の移動がしばしば起こる。これは、特に、皮膚、頭皮、毛髪に接触する布地、及び一般的にはこれらと接触するあらゆる対象物で起こり得る。本発明は、これらの対象物の表面における堆積物を防止及び/又は低減することも可能にする。
【0022】
本発明は、本発明による酸化物が有効なままである限り、弱い又は中程度の露光源、特に自然光の存在下を含め、処理されたケラチン物質又は表面を強い光源にさらす必要はない。さらに、本発明による金属酸化物は、外部環境(低レベルの日照を含む)及び内部環境の両方において、光源への直接曝露がない場合を含めて有効である。
【0023】
本発明は、特に皮脂などのケラチン物質の油性排出物、及びこれらの排出物の変換から生じる化合物、例えば酸素又はオゾン又は微生物剤による酸化から生じるアルデヒド又はケトン又は過酸化物誘導体などを破壊することを可能にする。したがって、本発明は、これらの油性排出物に起因する不都合、例えばてかりのある汚れた外観、又は油っぽい臭い、又は落屑のような不快感の反応を引き起こす可能性のある刺激性化合物を低減することを可能にする。本発明は、水性の身体分泌物から生じる有機化合物、及びそれらの水性排出物から生じる有機化合物の変換から生じる化合物、例えば酸素又はオゾン又は微生物剤による酸化から生じる酸誘導体などを破壊することも可能にする。したがって、これらの水性排出物のベタつき、汚れ、衣服の跡、又は臭いの側面などの不都合が軽減される。
【0024】
望ましくない化合物は、体からの分泌によって発生する可能性があるが、空気によって運ばれる、或いはケラチン物質との接触によって堆積する可能性もある。本発明は、その量を減らすことを可能にし、したがって、使用者は、ケラチン物質上に蓄積し得る汚染、臭気、バクテリア、細菌、及び他の微生物の欠点を克服することができる。
【0025】
1つの変形形態によれば、本発明による酸化物粒子は、ケラチン物質と接触する対象物上に堆積する化合物を除去又はその量を減少させるために使用される。これは、特に対象物の取り扱い中に身体と接触することによって生じるものなどの脂肪性物質の場合であり、対象物に汚れた外観を与える。これは、香料のような揮発性有機分子、又はヒト及び動物からの臭い、又は堆積後に悪臭のある化合物を与えるように変化して対象物に悪臭の側面を与える化合物にも当てはまる。これらの不都合に対処するために、本発明による酸化物粒子は、対象物の表面に適用することができ、或いは一体化することができる。
【0026】
本発明による使用は、特に、ケラチン物質又はそれと接触する対象物の表面から脂肪性物質を除去することを可能にする。これは、ケラチン物質のオイリング現象、特に皮脂の分泌によるその自然な再オイリングを減少させることを可能にする。
【0027】
本発明は、ケラチン物質又はケラチン物質と接触する対象物の表面の美容的処置のための方法であって、
(1)前記物質又は前記表面に、上で定義した式An-xの少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む固体粒子を含む化粧用組成物を適用するステップ;その後
(2)前記物質又は前記表面を自然光又は人工光に曝露するステップ;
を含む方法にも関する。
【0028】
第1の好ましい実施形態によれば、金属酸化物OM1を含む粒子は、火炎噴霧熱分解(FSP)法によって調製される。
【0029】
同様に好ましい第2の実施形態によれば、金属酸化物OM1は、酸化物OM1とは異なる第2の金属酸化物OM2と組み合わせて使用され、以下に説明するように、前記第2の酸化物OM2は、酸化物OM1を含む粒子中に、又は異なる固体粒子中に存在することができる。
【0030】
本発明の他の主題、特性、態様及び利点は、以下の説明及び実施例を読むことにより、さらにより明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書では、特に指示がない限り、
- 「少なくとも1つ」という表現は、「1つ又は複数」という表現と均等であり、それに置き換えられ得、
- 「~」という表現は、「~の範囲」という表現と均等であり、それに置き換えられ得、且つ限界点が含まれることを示唆し、
- 「ヒトのケラチン物質」という表現は、特に皮膚、頭皮、爪のみならず、毛髪、体毛、まつ毛、及び眉毛などのヒトのケラチン繊維を含み、
- 「アルキル」は、「アルキル基」、すなわちC~C10、特にC~C、より特にC~C、優先的にはC~C直鎖又は分岐状炭化水素系基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルを意味するものと理解され、
- 「アリール」基は、6~22個の炭素原子を含む単環式又は縮合若しくは非縮合多環式の炭素に基づく基であって、その少なくとも1つの環が芳香族である基を意味すると理解され、優先的には、アリール基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、インデニル、アントラセニル又はテトラヒドロナフチル、好ましくはフェニルであり、
- 「アリーレート」基は、ナフタレート又はナフテネートなど、1つ以上の-C(O)Oカルボキシレート基を含むアリール基を意味すると理解され、
- 「錯体化金属」は、金属が「金属錯体」又は「配位化合物」を形成し、中心原子に対応する金属イオンが1つ以上の電子供与体(配位子)に化学的に結合していることを意味すると理解され、
- 「配位子」は、配位する有機化学基又は化合物を意味すると理解される。すなわち、これは少なくとも1つの炭素原子を含み、金属に配位することができ、一旦配位又は錯体化すると、所定の数の電子を持つ配位球の原理に対応する金属化合物(内部錯体又はキレート)になる-Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,“Metal complex dyes“,2005,p.1-42を参照のこと。より具体的には、配位子は、誘起及び/若しくはメソメリー効果を介して電子供与性の少なくとも1つの基を含む有機基、より特に少なくとも1つのアミノ、ホスフィノ、ヒドロキシ若しくはチオール電子供与性基を担持する有機基であるか、又は配位子は、持続性カルベン、特に「アルジェンゴ」型(イミダゾール-2-イリデン)であるか若しくは少なくとも1つのカルボニル基を含む。配位子としては、より具体的には、以下のものを挙げることができる:i)少なくとも1つのリン原子-P<を含有するもの(すなわちホスフィン、例えばトリフェニルホスフィン)、ii)式R-C(X)-CR’R’’-C(X)-R’’’の二座配位子(式中、R及びR’’’’は、同一であるか又は異なり、直鎖又は分岐状(C~C)アルキル基を表し、且つR’及びR’’は、同一であるか又は異なり、水素原子又は直鎖若しくは分岐状(C~C)アルキル基を表し、優先的には、R’及びR’’は水素原子を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子又はN(R)基(ここで、Rは、水素原子又は直鎖若しくは分岐状(C~C)アルキル基を表す)を表す)、例えばアセチルアセトン又はβ-ジケトン、iii)式[HO-C(O)]n-A-C(O)-OH及びその脱プロトン化形態(式中、Aは、nが値ゼロを有するときに1価基を、又はnが1以上であるときに多価基を表し、それは、1つ以上のヘテロ原子が任意選択的に介在し、且つ/又はとりわけ1つ以上のヒドロキシル基で任意選択的に置換されている、1~20個の炭素原子を含む炭化水素に基づいた、飽和又は不飽和の環式又は非環式の芳香族又は非芳香族であり、好ましくは、Aは、1つ以上のヒドロキシル基で任意選択的に置換されている1価(C~C)アルキル基又は多価(C~C)アルキレン基を表し、且つnは、0~10(両端値を含む)の整数を表し、好ましくは、nは、0~5、例えば0、1又は2である)の(ポリ)ヒドロキシカルボン酸配位子、例えば乳酸、グリコール酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸及びアリーレート、例えばナフタレート;及びiv)2~5つのヒドロキシル基を含むC~C10ポリオール配位子、とりわけエチレングリコール、グリセロール、さらにより特に、配位子は、カルボキシ基、カルボキシレート基又はアミノ基を有し、特に、配位子は、アセテート基、(C~C)アルコキシレート基、(ジ)(C~C)アルキルアミノ基、及びアリーレート基、例えばナフタレート基又はナフテネート基から選択される。
【0032】
「燃料」という用語は、二酸素とエネルギーを用いて、熱を生じる化学反応:燃焼で燃焼する液体化合物を意味すると理解される。特に、液体燃料は、プロトン性溶媒、特にメタノール、エタノール、イスプロパノール、n-ブタノール、グリコールなどのアルコール;メチルエステル及びアセテートから誘導されるもの(2-エチルヘキシルアセテートなど)などのエステル、酸(酢酸、2-エチルヘキサン酸(EHA)など)、非環状エーテル(エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチルtert-アミルエーテル(TAME)、メチルtert-ヘキシルエーテル(THEME)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)、エーテルtert-アミルエーテル(TAEE)、ジイソプロピルエーテル(DIPE)など)、環状エーテル(テトラヒドロフラン(THF)など)、芳香族炭化水素又はアレーン(キシレンなど)、非芳香族炭化水素から特に選択される非プロトン性溶媒;並びにこれらの混合物から選択される。燃料は、アセチレン、メタン、プロパン又はブタンなどの液化炭化水素及びそれらの混合物から任意選択的に選択され得る。
【0033】
第1の金属酸化物OM1
本発明で使用される固体粒子は、式An-x
(式中、
Aは、ビスマス、カルシウム、ナトリウム、ランタン、バリウム、銅、スズ、マグネシウム、亜鉛、及び銀から選択される金属を表し;
Bは、タングステン、バナジウム、ガリウム、ニオブ、及びストロンチウムから選択される金属を表し;
aは1~4の範囲の整数であり;
bは1~10の範囲の整数であり;
nは3~6の範囲の整数であり;
xは0.1~5の範囲内の、nより小さい10進数である)
の少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む。
【0034】
Aは、好ましくはビスマス及びバリウムから選択され、より好ましくはAはビスマスを表す。
【0035】
Bは、好ましくはタングステン及びバナジウムから選択され、より好ましくはBはタングステンを表す。
【0036】
整数a及びb及びxは、金属A及びBの性質に依存する。
【0037】
10進数xは、好ましくは0.1~1.9、より優先的には0.2~1.5、さらに好ましくは0.3~1の範囲内である。特に好ましくは、xは0.5以上であり、且つ厳密に1未満である。
【0038】
特定の好ましい一実施形態によれば、酸化物OM1は、式BiWO6-xを有し、xは、0.2~1.5、好ましくは0.3~1の範囲内の10進数であり;さらに好ましくはxは0.5以上且つ厳密に1未満である。
【0039】
好ましくは、金属酸化物OM1は結晶状態である。
【0040】
任意選択的な第2の金属酸化物OM2
好ましい一実施形態によれば、金属酸化物OM1は、式M
(式中、
Mは遷移金属を表し;
cは1~3の範囲の整数であり;
kは、0.1~4の範囲内の10進数である)
に対応するOM2で示される第2の金属酸化物と組み合わされる。
【0041】
2種類の酸化物OM1及びOM2を組み合わせて使用することで、望ましくない有機化合物の光変換速度をさらに高めることが可能になる。これにより、同一の露光量であれば、これらの化合物の除去効果を高めることができ、或いは、例えば屋内や冬の使用時などの低強度の露光の存在下を含め、良好な効果を維持することができる。
【0042】
好ましくは、Mは銅を表す。
【0043】
特に好ましい一実施形態によれば、酸化物OM2は式CuOを有する。
【0044】
好ましくは、金属酸化物OM2は結晶状態である。
【0045】
金属酸化物OM2は、後述するように、金属酸化物OM1を含む粒子(粒子P1で表す)中に、又は異なる粒子P2の形態で存在することができる。
【0046】
好ましくは、金属酸化物OM2は、金属酸化物OM1よりも少ない量で使用される。より好ましくは、金属酸化物OM2の量に対する金属酸化物OM1の量のモル比は、1以上、好ましくは2以上、より優先的には3以上、さらに優先的には4以上、さらに好ましくは4より大きい。
【0047】
金属酸化物の固体粒子
以下において、P1は金属酸化物OM1を含む粒子を表す。
【0048】
前記粒子P1は、金属酸化物OM1を単独で、又は他の金属酸化物、例えば特に上述した酸化物OM2と組み合わせて含む。
【0049】
好ましい一実施形態によれば、粒子P1は上部コーティング層を含まない。
【0050】
特に好ましい一実施形態によれば、粒子P1は、完全に前記酸化物OM1から構成される。
【0051】
粒子P1は、好ましくは1~1000nm、より好ましくは10~200nmの範囲の数平均径を有する。
【0052】
同様に好ましい一実施形態によれば、前記第2の酸化物OM2は、前記粒子P1とは異なる固体粒子P2の形態であり、これは好ましくは1~300nm、好ましくは2~20nm、より優先的には2~10nmの範囲の数平均径を有する。
【0053】
後者の実施形態では、好ましくは、粒子P1の数平均径は、前記粒子P2の数平均径よりも大きく、より優先的には、粒子P1の数平均径は、粒子P2の数平均径の2倍以上である。
【0054】
後者の実施形態では、好ましくは、酸化物OM2を含む粒子P2は、酸化物OM1を含む粒子P1と連結している。粒子は、特に、粒子P1が互いに及び/又は粒子P2に連結されているか(各粒子P1は、粒子P1及び粒子P2のいずれかと接触していてもよい)、或いは粒子P1のそれぞれが粒子P2のみに連結されている(粒子P2は、粒子P1が互いに直接接触しないように粒子P1間に挿入されている)、クラスターの形態であってよい。
【0055】
本発明による粒子P1及びP2の数平均径は、透過型電子顕微鏡又はX線回折(XRD)によって決定することができる。
【0056】
固体粒子の調製
好ましい一実施形態によれば、本発明で使用される前記少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む固体粒子P1は、火炎噴霧熱分解(FSP)によって得られるか、又は得ることができる。
【0057】
同様に、金属酸化物OM2を含む粒子P2が使用される場合、これらの粒子P2は、好ましくは、火炎噴霧熱分解によって得られるか、又は得ることができる。
【0058】
好ましい一実施形態によれば、酸化物OM1及びOM2は、単一のFSP装置内で同じ火炎内で調製される。
【0059】
火炎噴霧熱分解又はFSPは、一般的には有機又は無機の好ましくは引火性の噴霧可能な液体の形態で、多様な金属前駆体から出発することにより、形態を制御して各種の金属の単一若しくは混合酸化物(例えば、SiO、Al、B、ZrO、GeO、WO、Nb、SnO、MgO、ZnO)の超微細粉末を合成し、且つ/又はそれらを各種の基材に堆積するために本質的に開発された周知の方法であり、火炎中に噴霧された液体は、燃焼されることにより、とりわけ、これらの各種の基材に火炎自体により噴霧された金属酸化物のナノ粒子を放出する。この方法は、シリカの層で覆われた酸化物粒子の製造のためにも使用されてきた。この方法の原理は、例えばJohnson Mattheyによる“Flame Spray Pyrolysis:a Unique Facility for the Production of Nanopowders”,Platinum Metals Rev.,2011,55,(2),149-151という表題の最近(2011)の刊行物において想起されている。FSPプロセス及び反応器の多数の変形形態も、例えば以下の特許又は特許出願に記載されている:米国特許第5958361号明細書、米国特許第2268337号明細書、国際公開第01/36332号パンフレット又は米国特許第6887566号明細書、国際公開第2004/005184号パンフレット又は米国特許第7211236明細書、国際公開第2004/056927号パンフレット、国際公開第2005/103900号パンフレット、国際公開第2007/028267号パンフレット又は米国特許第8182573号明細書、国際公開第2008/049954号パンフレット又は米国特許第8231369号明細書、国際公開第2008/019905号パンフレット、米国特許出願公開第2009/0123357号明細書、米国特許出願公開第2009/0126604号明細書、米国特許出願公開第2010/0055340号明細書、国際公開第2011/020204号パンフレット。
【0060】
好ましい一実施形態によれば、前記少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む固体粒子P1は、少なくとも以下のステップを含むプロセスによって調製される:
a.1種以上の金属A前駆体及び1種以上の金属B前駆体を可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合物に添加することにより、組成物(C)を調製すること;その後
b.火炎噴霧熱分解装置において、上で定義した式An-xの金属酸化物OM1の粒子P1が得られるまで、組成物(C)及び酸素含有ガスを噴射することによって火炎を形成すること。
【0061】
本発明に従って使用することができる金属A及びBの前駆体並びに可燃性溶媒は、火炎噴霧熱分解で従来使用されている金属前駆体及び可燃性溶媒から選択することができる。
【0062】
好ましくは、組成物(C)に含まれる金属A前駆体及び金属B前駆体は、少なくとも1つの炭素原子を含む1つ以上の配位子と任意選択的に錯体を形成しているA及びBの1つ以上の原子をそれぞれ含む。
【0063】
より優先的には、前記配位子は、アセテート基、ナイトレート基、アンモニウム基、(C~C)アルコキシレート基、(ジ)(C~C)アルキルアミノ基、及びアリーレート基、例えばナフタレート基、又はナフテネート基から選択される。
【0064】
好ましくは、可燃性溶媒は、プロトン性可燃性溶媒、非プロトン性可燃性溶媒、及びそれらの混合物から;より優先的にはアルコール、エステル、酸、非環状エーテル、環状エーテル、芳香族炭化水素又はアレーン、非芳香族炭化水素、及びそれらの混合物から;さらに好ましくは(C~C)アルキルカルボン酸、例えば酢酸又は2-エチルヘキサン酸(EHA)、(C~C)アルカン(モノ/ジ/トリ)オール、例えばエチレングリコール、(C~C)アルキルカルボニル(C~C)アルコキシ、例えば2-エチルヘキシルアセテート、ジ(C~C)アルキルエーテル、例えばエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチルtert-アミルエーテル(TAME)、メチルtert-ヘキシルエーテル(THEME)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)、エチルtert-アミルエーテル(TAEE)、ジイソプロピルエーテル(DIPE)、テトラヒドロフラン(THF)、キシレン、及びそれらの混合物から選択される。
【0065】
好ましい一実施形態によれば、可燃性溶媒は、少なくとも3つの炭素原子を含む非プロトン性可燃性溶媒及びそれらの混合物から、さらにより優先的にはキシレン、テトラヒドロフラン、2-エチルヘキシルアセテート、及びそれらの混合物から選択される。
【0066】
別の実施形態によれば、可燃性溶媒は、少なくとも2つの炭素原子を含むプロトン性可燃性溶媒及びそれらの混合物から、さらにより優先的には酢酸、エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸(EHA)、及びそれらの混合物から選択される。
【0067】
有利には、組成物(C)中の金属A及びBの前駆体の合計含有量は、組成物(C)の合計質量に対して1質量%~90質量%、特には5質量%~80質量%、好ましくは10質量%~70質量%、より優先的には25質量%~60質量%である。
【0068】
粒子P1を調製する方法は、組成物(C)及び酸素含有ガスを火炎噴霧熱分解(FSP)装置に噴射して火炎を形成するステップ(b)をさらに含む。
【0069】
このステップ(b)では、組成物(C)及び酸素含有ガスは、有利には、互いに独立した2回の噴射により、火炎噴霧熱分解装置に噴射される。換言すると、組成物(C)及び酸素含有ガスは、個別に噴射される。すなわち、組成物(C)及び酸素含有ガスは、単一ノズルを利用して噴射されない。
【0070】
より具体的には、組成物(C)は、一方の管によって輸送され、酸素含有ガス(「分散酸素」とも呼ばれる)は、他方の管によって輸送される。2つの管の入口は、酸素含有ガスが負圧を生成してベンチュリ効果によって組成物(C)を吸い上げて、液滴に変換するように配置される。
【0071】
ステップ(b)は、任意選択的に、酸素と、1つ以上の可燃性ガスとを含む「プレミックス」混合物の追加の噴射をさらに含み得る。この「プレミックス」混合物は、「支援火炎酸素」とも呼ばれ、点火して組成物(C)及び酸素含有ガス(すなわち「分散酸素」)から生じる火炎を維持することが意図される支援火炎の生成を可能にする。
【0072】
好ましくは、ステップ(b)では、組成物(C)、酸素含有ガス、及び任意選択的に存在する場合には「プレミックス」混合物が、「包囲管」とも呼ばれる反応管に噴射される。好ましくは、この反応管は、金属又は石英で作製される。有利には、反応管は、20cm以上、より優先的には40cm以上、さらに50cm以上の高さを有する。有利には、前記反応管の長さは、30cm~300cm、好ましくは40cm~200cm、より優先的には45cm~100cmであり、さらに好ましくは、この長さは50cmである。
【0073】
一方の組成物(C)中に存在する溶媒の質量と、他方の酸素含有ガスの質量との質量比は、以下のように定義される。
【0074】
すなわち、最初に、酸素含有ガス(酸化剤化合物とも呼ばれる)の量は、組成物(C)によって形成される集合体、すなわち一方の可燃性溶媒及び亜鉛前駆体と、他方の酸素含有ガスとを化学量論比において燃焼反応で一緒に反応させることができるように計算される(したがって酸化剤化合物の過剰又は不足が生じない)。
【0075】
「計算された酸化剤」とも呼ばれるこの計算された酸素含有ガスの量から始めて、「噴射される酸化剤」とも呼ばれる噴射される酸素含有ガスの量をこれから導くために、新しい計算が以下の式:噴射される酸化剤=計算された酸化剤/φ(ここで、φは、好ましくは、0.30~1.0、より優先的には0.7~1.0である)に従って実行される。
【0076】
この方法は、特に、An Introduction to Combustion:Concepts and Applications,3rd ed.;McGraw-Hill:New York,2012においてTurns,S.R.によって定義されている。
【0077】
好ましくは、ステップ(b)で形成された火炎は、火炎の少なくともの一部で2000℃以上の温度である。
【0078】
金属酸化物OM2を含む固体粒子P2は、粒子P1の調製について上述したものと同じ原理に従って調製することができる。
【0079】
好ましい一実施形態によれば、前記少なくとも1種の金属酸化物OM2を含む固体粒子P2は、少なくとも以下のステップを含む方法によって調製される:
a.1種以上の金属Mの前駆体を可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合物に添加することによって組成物(C’)を調製するステップ;その後
b.火炎噴霧熱分解装置において、上で定義した式Mの金属酸化物OM2の粒子P2が得られるまで、組成物(C’)及び酸素含有ガスを噴射することによって火炎を形成するステップ。
【0080】
当業者は、粒子P1の調製について上述した詳細な説明を粒子P2の調製に合わせる方法を容易に理解するであろう。
【0081】
好ましい一実施形態によれば、固体粒子P1及びP2は、同じ火炎噴霧熱分解装置内で同時に調製される。
【0082】
この実施形態では、前記少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む固体粒子P1は、少なくとも以下のステップを含む方法によって、前記少なくとも1種の金属酸化物OM2を含む固体粒子P2と一緒に調製される:
a.一方で1種以上の金属A前駆体及び1種以上の金属B前駆体を可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合物に添加することによって第1の組成物(C)を調製し、他方では1種以上の金属M前駆体を可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合物に添加することによって第2の組成物(C’)を調製するステップ;その後、
b.火炎噴霧熱分解装置において、上で定義した式An-xの金属酸化物OM1の粒子P1及び上で定義した式Mの金属酸化物OM2の粒子P2が得られるまで、組成物(C)及び(C’)並びに酸素含有ガスを噴射することによって火炎を形成するステップ。
【0083】
好ましい一実施形態によれば、2つの別個の組成物(C)及び(C’)の代わりに、可燃性溶媒中又は可燃性溶媒の混合物中で、1種以上の金属A前駆体と、1種以上の金属B前駆体と、1種以上の金属M前駆体とを含む単一の組成物(C’’)が使用される。
【0084】
使用
少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む前記固体粒子P1の本発明による使用は、ケラチン物質、特にヒトのケラチン物質の表面、又は前記材料と接触する対象物の表面における望ましくない有機化合物の堆積物を低減し、さらには除去することを目的とする。
【0085】
好ましくは、前記ケラチン物質は、皮膚、頭皮、及び毛髪から選択される。
【0086】
好ましくは、望ましくない有機化合物は、身体から分泌されるタンパク質及び脂肪性物質から選択される。本発明は、特に、ケラチン物質の表面、又はケラチン物質と接触する対象物の表面における皮脂の堆積物を防止、低減、及び/又は除去することを目的とする。
【0087】
本発明の実施のために、上述した粒子P1及び任意選択的な粒子P2は、処理されるケラチン物質又は表面と接触させられる。次いで、処理されるケラチン物質又は表面が光にさらされる。
【0088】
本発明の一実施形態によれば、上述した粒子P1及び任意選択的な粒子P2は、ケラチン物質又は処理される表面に直接適用される。前記粒子は、そのままで、粉末形態で、或いは化粧用組成物中に分散した形態で適用することができる。
【0089】
本発明の別の実施形態によれば、上述した粒子P1及び任意選択的な粒子P2は、ケラチン物質に適用されることが意図された物品に組み込まれる。粒子は、特に吸収性物品の場合には前記物品に組み込むことができ、或いは物品が吸収性でない場合(例えば革製の物品など)には、特に物品の表面に含浸することができる。
【0090】
物品は繊維製品のタイプ、例えばタオルやティータオルなどの吸収性の場合がある布片や、キッチンロールなどの吸収性の紙、又は非吸収性であってよい。
【0091】
物品への粒子の含浸は、前記粒子の粉末を使用して散布することによって行うことができ、任意選択的には固定ステップがその後に及び/又は先行して行われ得る。或いは、溶媒中に分散した前記粒子を含む組成物を塗布し、これをその後蒸発させることによって行うことができる。
【0092】
物品は、特にヘアブラシなどのケラチン繊維用のブラシであってよく、前記ブラシは、本発明による粒子のコーティングを含む。前記ブラシは、その後、処理されるケラチン物質に適用され、例えば毛髪の場合には、これは前記ブラシで1回以上梳かされる。ブラシは、その後、好ましくは自然光又は人工光にさらされる。特に、ブラシは、光がそこから漏れないように設計されたチャンバー内で非常に強い光(>0.1W/cm)にさらすことができる。処理されたケラチン繊維は、自然光又は人工光にさらされた前記ブラシで、必要な回数再度処理されてもよい。したがって、接触中にブラシが吸収した有機化合物が露光中に除去されるという意味で、ブラシは清潔に保たれる。水又は洗浄組成物を適用することによって、ブラシを時々、典型的には10回の使用ごとに1回洗浄することが可能である。
【0093】
一変形形態によれば、ブラシは、人工光を発生させるための少なくとも1つの手段をさらに備える。特定の一実施形態によれば、粒子はブラシの毛の基部に配置され、人工光発生器は毛の他端に配置される。ブラシがケラチン繊維を1回以上通過した後、皮脂は迅速に破壊される。
【0094】
本発明の別の変形形態によれば、粒子P1及び任意選択的な粒子P2は回収装置で使用される。回収装置とは、ケラチン物質との摩擦後に、皮脂などの有機化合物の回収を可能にする装置を意味すると理解される。回収装置は、布、シェル、衣服、又は帽子などの取り扱いを必要としないシステムであってもよい。その後、回収された有機化合物を除去するために、回収装置を自然光又は人工光中に置くことができる。
【0095】
処置方法
第1の実施形態によれば、本発明は、ケラチン物質又はケラチン物質と接触する対象物の表面の美容的処置のための方法であって、
(1)前記物質又は前記表面に、上述した式An-xの少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む固体粒子を含む化粧用組成物を適用するステップ;その後
(2)前記物質又は前記表面を自然光又は人工光に曝露するステップ;
を含む方法に関する。
【0096】
好ましくは、ステップ(1)で使用される化粧用組成物は、上述した粒子P1又は異なる固体粒子P2中に存在する、上述したMの少なくとも1種の金属酸化物OM2をさらに含む。
【0097】
前記化粧用組成物は、様々なガレヌス形態であってもよい。したがって、本発明の組成物は、粒子P1と、任意選択的な粒子P2とを単独で、或いは粉末担体との混合物として含む(粉状)粉末の形態であってよい。
【0098】
化粧用組成物は、多少は流動性のある液体の形態、例えば、クリーム、ミルク、又はクリームジェルのような単純な又は複雑なエマルジョン(水中油型若しくはO/W型と略記、油中水型若しくはW/O型、油中水中油型若しくはO/W/O型又は水中油中水型若しくはW/O/W型)の形態、又はゲル、ペースト、若しくは噴霧装置用組成物の形態であってもよい。
【0099】
化粧用組成物は、好ましくは化粧用媒体中に分散された、本発明による金属酸化物の粒子を含む。「化粧用媒体」は、人体物質への適用に適した媒体を意味すると理解される。
【0100】
好ましい一実施形態によれば、前記化粧用媒体は、水及び/又は1種以上の有機溶媒を含む。好ましくは、組成物は、組成物の合計質量に対してとりわけ5質量%~95質量%の含有率で水を含む。
【0101】
「有機溶媒」という用語は、化学的に変性することなく別の物質を溶解することができる有機物質を意味する。本発明の組成物で使用され得る有機溶媒の例としては、例えば、低級C~Cアルカノール、例えばエタノール及びイソプロパノール、ポリオール及びポリオールエーテル、例えば2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、並びにジエチレングリコールモノエチルエーテル及びモノメチルエーテル、並びに芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール又はフェノキシエタノール並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0102】
これらが存在する場合、有機溶媒は、好ましくは、組成物の合計質量に対して約0.1質量%~40質量%、より優先的には約1質量%~30質量%、さらに優先的には5質量%~25質量%の割合で存在する。
【0103】
本発明の組成物は、脂肪相をさらに含んでいてもよく、且つ直接又は逆エマルジョンの形態であってもよい。
【0104】
特定の一実施形態によれば、化粧用組成物は、無水組成物の形態、例えば油又はアルコール溶液の形態であってもよい。「無水組成物」という用語は、組成物の合計質量に対して2質量%未満の水、好ましくは1質量%未満の水、さらにより優先的には0.5質量%未満の水を含有する組成物又はさらに水を含まない組成物を意味することが意図される。この種の組成物において、存在する可能性がある水は、組成物の調製中に加えられたものではなく、混合された成分によってもたらされる残存水に相当する。
【0105】
本発明に係る組成物は、当業者に周知の技術に従って調製され得る。
【0106】
化粧用組成物中の金属酸化物OM1の含有量は、組成物の合計質量に対して好ましくは0.4質量%~40質量%、より優先的には0.5質量%~20質量%、さらにより良好には1質量%~10質量%、さらにより優先的には1.5%~5質量%の範囲である。
【0107】
金属酸化物OM2も存在する場合、その含有量は、組成物の合計質量に対して0.1~10質量%、好ましくは0.15~5質量%、さらに好ましくは0.25~1.5質量%の範囲にある。
【0108】
好ましい一実施形態によれば、化粧用組成物は、上記2種の金属酸化物OM1及びOM2を含み、金属酸化物OM2の含有量に対する金属酸化物OM1の含有量のモル比は、1以上、好ましくは2以上、より優先的には3以上、さらに優先的には4以上、さらに好ましくは4より大きい。
【0109】
組成物は、増粘剤、香料、真珠光沢剤、防腐剤、日焼け止め、アニオン性若しくは非イオン性若しくは両性若しくはカチオン性の界面活性剤、アニオン性若しくは非イオン性若しくは両性のポリマー、カチオン性ポリマー、タンパク質、タンパク質加水分解物、セラミド、疑似セラミド、直鎖若しくは分岐のC16~C40鎖を有する脂肪酸(18-メチルエイコサン酸など)、ヒドロキシ酸、ビタミン、プロビタミン(パンテノールなど)、シリコーン、植物油、鉱油、合成油、ふけ防止剤、及び化粧品分野で従来使用されており、本発明による組成物の安定性及び特性に悪影響を及ぼさないその他の添加剤から選択される1種以上の添加剤も含んでいてもよい。
【0110】
これらの添加剤は、組成物の合計質量に対して0.001質量%~50質量%の範囲であってよい割合で、本発明による組成物中に任意選択的に存在する。各添加剤の正確な量は、その性質及び機能に応じて当業者によって容易に決定される。
【0111】
ケラチン物質又は処理される表面への組成物の適用は、手で、噴霧器で、エアゾールで、アプリケーターエンドピースで、ディスペンサーコームで、又は組成物を含浸させたタオル(又はワイプ)で行うことができる。
【0112】
この適用に続いて、ケラチン物質又は処理される表面が乾燥されてもよい。乾燥段階は、任意選択的に、ヘアドライヤー、加熱フード、ストレートアイロン、カールアイロン、加熱コームを使用する加熱によって、又は任意の他の加熱装置によって行うことができる。
【0113】
上述した組成物がケラチン物質又は処理される表面に適用された後、これらは光にさらされる。
【0114】
光という用語は、紫外線(UV)及び/又は可視及び/又は近赤外線(NIR)タイプであってよい電磁放射を意味する。それは、自然光(特に屋外又は屋内環境での使用の場合、例えば窓の近く)であっても、或いは人工光、特に紫外線及び/又は可視光線を放出するランプからの光(例えば屋内環境での使用の場合)であってもよい。
【0115】
好ましくは、美容的処置方法のステップ(2)は、紫外(UV)範囲の200nmから赤外(IR)範囲の3000nmまでの波長を有する1つ以上の電磁波を放出する光源(又はランプ)を使用して、光照射によって行われる。
【0116】
「光照射」という用語は、ケラチン物質の、人工の光波、すなわちランプによって放出される光波へのあらゆる曝露を意味すると理解される。光のスペクトルは、UV領域(200~400nm)、可視領域(400~750nm)、及び赤外領域(745nm~3μm)内の波長を含み得る。
【0117】
UV領域で発光するランプについては、Ullmann’s Encyclopedia”Ultraviolet and Visible Spectroscopy”,2008,Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA,Weinheim,10.1002/14356007.b05 383.pub2,point3.2に記載されているものを挙げることができる。ランプ全般については、Ullmann’s Encyclopedia”Lamps”2005,Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA,Weinheim 10.1002/14356007.a15 115及びUllmann’s Encyclopedia”Photochemistry”2005,Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA,Weinheim 10.1002/14356007.a19 573,point 3.2”light sources”に記載されているものを挙げることができる。
【0118】
本発明の方法で使用されるランプは、特に、白熱灯、ハロゲンランプ又は蛍光灯;低圧ランプ、例えばナトリウムランプ又はネオンランプ、高圧ランプ、例えば水銀ランプ、ハライドランプ、フラッシュランプ、例えばキセノンフラッシュランプ、蛍光エキシマランプ、例えばキセノン蛍光エキシマランプ、例えばキセノン蛍光エキシマランプ、50~1000mWの発光ダイオードすなわちLEDランプ、ブラックライトやウッドライトを放射するランプ、及びレーザーであってよい。
【0119】
好ましい一実施形態によれば、光源として、可視領域(400~745nm)の波長を有する放射を放出するLEDランプが使用される。
【0120】
同様に好ましい一変形形態によれば、美容的処置方法のステップ(2)は、ケラチン物質を自然の太陽光又は日光に暴露することによって行われる。
【0121】
ケラチン物質又は処理される表面の光への曝露は、好ましくは10分~180分、より優先的には30分~90分の範囲の時間行われる。
【0122】
第2の実施形態によれば、本発明は、ケラチン物質の美容的処置方法であって、
(1)前記物質を、上で定義した式An-xの少なくとも1種の金属酸化物OM1を含む固体粒子を含む物品と接触させるステップ;その後
(2)前記物品を自然光又は人工光に暴露するステップ、
を含む方法に関する。
【0123】
好ましくは、ステップ(1)で使用される物品は、粒子P1又は上述した異なる固体粒子P2中に存在する、上述した式Mの少なくとも1種の金属酸化物OM2をさらに含む。
【0124】
ステップ(1)で使用される物品は、ケラチン物質に適用することができる任意の対象物、特に上述した繊維製品又はブラシであってよい。ステップ(1)の間、望ましくない有機化合物は、前記物品の表面上への移動によって堆積される。
【0125】
ステップ(2)は、前記物品を光に暴露することによって行われる。そのような暴露の条件は、第1の実施形態に関して上述したものである。この光への曝露により、光分解による望ましくない有機化合物を破壊することができる。
【0126】
以下の実施例は、本発明を例示する役割を果たすものであるが、本質的に限定するものではない。
【実施例
【0127】
以下の実施例では、粒子は、キャピラリーノズル(直径500μmのキャピラリー)を介して液体がバーナーに供給される火炎噴霧熱分解装置(又はFSP装置)において調製される。生成した炎は、熱分解炎を囲む管に包まれる。管は、FSPデバイスのノズルの上に配置される。管は、20cm~60cm、特には30cm~50cm、例えば40cmの長さを有する金属又は石英製の円筒である。炎は通常5cm~15cmの間の長さを有し、500℃~2000℃の温度である。噴霧された金属の前駆体(Bi、W、Cuなど)が炎の中で燃焼し、粒子が形成される。その後、粒子は、好ましくは350℃~420℃の温度に維持されたガラス繊維フィルター上で上流に集められる。粒子を回収するためのFSPノズルとフィルターとの間の距離は、40cm~80cm、好ましくは55cm~65cmである。
【0128】
実施例1:FSPによる粒子粉末の調製
組成物C1は、250mMのメタタングステン酸アンモニウム水和物及び500mMの硝酸ビスマスを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル/無水エタノール/酢酸混合物から構成される有機溶媒に溶解することによって調製される。
【0129】
次に、この組成物C1、さらに純酸素がFSP装置に噴射される。
【0130】
1.1.BiWO6-x粒子の調製(本発明)
噴射に使用される流量は、組成物C1が7ml/分であり、ガス(O)が4l/分である。
【0131】
このようにして得られた粉末に対して、300℃の温度に1時間さらすことによって熱による後処理が行われる。これによりその結晶性を改善することができる。
【0132】
粉末は黄緑色であり、BiWO6-x粒子(xは0.1より大きく厳密に1より小さい10進数である)を含む。
【0133】
粒子の数平均サイズは25nmである(X線回折又はXRDにより測定)。
【0134】
1.2.BiWO粒子の調製(比較)
噴射に使用される流量は、組成物C1が7ml/分であり、ガス(O)が5l/分である。
【0135】
このようにして得られた粉末に対して、300℃の温度に1時間さらすことによって熱による後処理が行われる。
【0136】
粉末は黄緑色であり、BiWO粒子を含む
【0137】
粒子の数平均サイズは25nmである(X線回折又はXRDにより測定)。
【0138】
1.3.粒子のキャラクタリゼーション
上の1.1及び1.2で調製したBiWO6-x及びBiWOの粒子は、400~500nmの可視領域におけるラマン分光法によって、特にBiWO6-xの粒子と比較してBiWOの粒子の吸光度が高い(典型的には約20%高い)ことによって区別される。
【0139】
2つのタイプの粒子は、電子常磁性共鳴分光法(又はEPR分光法)によっても区別される。上の1.1で調製したBiWO6-x粒子のEPRスペクトルは、典型的にはBiWOの結晶格子中の酸素原子の空孔に特徴的なg=2.002のシグナルを有する。この方法は感度が非常に高く、xが0.1より大きい亜酸化物が実際に存在することが確認される。
【0140】
対照的に、BiWO6-xの粒子とBiWOの粒子は、通常XRDのピークの位置によっては区別されない。
【0141】
通常、本発明による金属酸化物粒子は、亜酸化物(例えば式BiWO6-x)であり:
1)X線回折(XRD)において、その化学量論的に酸化された同族体(例えばBiWO)と同様のピーク位置を有し;
2)400~500nmの領域における吸光度が、その化学量論的に酸化された同族体(例えばBiWO)の吸光度よりも少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%低いラマン分光プロファイルを有し;及び/又は
3)その化学量論的に酸化された同族体(特にBiWO)が有さない、2の領域、特にg=2.002のシグナルを含むEPR分光プロファイルを有する。
【0142】
実施例2:FSPによる粒子混合物の調製
組成物C2は、25mMの硝酸銅、250mMのメタタングステン酸アンモニウム水和物、及び500mMの硝酸ビスマスを、ジエチレングリコールモノブチルエーテル/無水エタノール/酢酸混合物から構成される有機溶媒に溶解することによって調製される。
【0143】
次に、この組成物C2、さらに純酸素がFSP装置に噴射される。
【0144】
2.1.BiWO6-x粒子とCuO粒子との混合物の調製(本発明)
噴射に使用される流量は、組成物C2が7ml/分であり、ガス(O)が4l/分である。
【0145】
このようにして得られた粉末に対して、300℃の温度に1時間さらすことによって熱による後処理が行われる。粉末は明るい褐色であり、BiWO6-x粒子(xは0.1より大きく、厳密に1より小さい10進数である)とCuO粒子との混合物から形成されている。
【0146】
得られた粉末のEPRスペクトルは、BiWOの結晶格子と比較して酸素原子の空孔に特徴的なg=2.002のシグナルを有する。
【0147】
粒子の数平均サイズは、BiWO6-x粒子が20nm(XRDにより測定)であり、CuO粒子が2.5nm(XRDにより測定)である。
【0148】
粉末中のCuOの量に対するBiWO6-xの量のモル比は20である。
【0149】
2.2.BiWO粒子とCuO粒子との混合物の調製(比較)
噴射に使用される流量は、組成物C2が7ml/分であり、ガス(O)が7l/分である。
【0150】
このようにして得られた粉末に対して、300℃の温度に1時間さらすことによって熱による後処理が行われる。
【0151】
粉末は明るい褐色であり、BiWO粒子とCuO粒子との混合物から形成されている。
【0152】
粒子の数平均サイズは、BiWO粒子が20nm(XRDにより測定)であり、CuO粒子が2.5nm(XRDにより測定)である。
【0153】
粉末中のCuOの量に対するBiWOの量のモル比は20である。
【0154】
実施例3:自然光照射下の薄層での皮脂除去試験
約10cmの表面積を有するガラスプレート上に、オレイン酸から構成される人工皮脂(33mg)の層を毎回広げることによって、5つの同一のプレートを準備する。
【0155】
次に、各プレートの表面に、次の粉末のいずれか10mgを堆積させる:
プレート1及びプレート5上:実施例1.1(本発明)からのBiWO6-x粒子から形成された粉末が堆積される;
プレート2上:実施例1.2(比較)からのBiWO粒子から形成された粉末が堆積される;
プレート3上:実施例2.1(本発明)からのBiWO6-x粒子とCuO粒子との混合物から形成された粉末が堆積される;
プレート4上:実施例2.2(比較)からのBiWO粒子とCuO粒子との混合物から形成された粉末が堆積される。
【0156】
次に、プレート1~4を中程度の日光(38mW/cm)に合計60分間暴露する。その後、プレートを秤量して、30分間、次いで60分間の光への曝露後にプレートから消失した皮脂の量を推定する。
【0157】
消失した皮脂の質量パーセント割合に関して得られた結果を、下の表1に詳細に示す。
【0158】
【表1】
【0159】
対照を行うために、プレート5(プレート1と同一)は光に暴露しなかった。t=60分における皮脂の消失は観察されなかった(消失の程度は5質量%未満と測定された)。
【0160】
上の結果は、本発明による粒子の使用が、比較粒子の使用よりも大幅に効果的に皮脂の除去を可能にすることを示している。BiWO6-x粒子から形成された粉末は優れた結果を与え、BiWO6-x粒子とCuO粒子との混合物から形成された粉末は、その効果をさらに高めることができる。
【0161】
実施例4:頭髪の皮脂除去のための試験
1000mgの皮脂を含む頭髪について検討される。半分は頭髪の見える領域、すなわち1000cmの表面積にある。したがって、見える表面積には、1cmあたり0.5mgの皮脂が存在する。この量は、毛髪に部分的に汚れた外観を与えるのに十分である。特に、頭髪に櫛を通すと、櫛の歯が通った部分に畝ができて髪がかたまったままになる傾向がある。
【0162】
試験1:
最初の試験では、実施例1.1からのBiWO6-x粒子から形成された粉末1000mgをエタノール50mlに分散させることによって組成物を製造する。この組成物12グラムを頭髪に塗布し、次いで髪が乾くまで10分間待機する。
【0163】
次に、20mW/cmと推定される室内環境(窓の後ろ)で、毛髪に自然光(太陽光)を当てる。表面の皮脂が十分に除去されて見えなくなるレベルに到達するまでに1時間必要であることが観察される。
【0164】
特に、処理された毛髪は光沢があり、櫛で処理する前よりも櫛で梳かした後の毛髪の房の分離が大幅によいことが観察される。処理された毛髪は洗ったばかりであるかのようにきれいにみえ、皮脂の存在により非常に油っぽくみえる処理前の毛髪とは異なり、油脂はもはや毛髪に存在しない。
【0165】
試験2:
実施例2.1からのBiWO6-x粒子とCuO粒子との混合物から形成された粉末1000mgをエタノール50ml中に分散させることによって得られる組成物を使用して試験1を繰り返す。
【0166】
表面の皮脂が十分に除去されて見えなくなるレベルに到達するまでに28分必要であることが観察される。
【0167】
試験3:
12グラムのエタノール(粒子なし)を使用して試験1を繰り返す。
【0168】
頭髪の外観に変化は見られず、毛髪は依然として油っぽいようにみえる。
【0169】
試験4:
実施例2.2からのBiWO粒子とCuの粒子との混合物から形成された粉末1000mgをエタノール50ml中に分散させることによって得られた組成物を使用して、試験1を繰り返す。
【0170】
1時間後、髪の油っぽさは減ったものの、きれいになっているようには見えない。これは、除去効率が不十分であり、頭髪の目に見える表面に約35%~40%の皮脂が残っていることによるものである。
【0171】
試験5:
試験2を繰り返すが、10分間乾燥させた後に毛髪を暗所に置く。
【0172】
頭髪の外観に変化は見られず、毛髪は依然として脂っぽく見える。
【0173】
実施例5:頭髪の清潔さを維持するための試験
実施例1.1からのBiWO6-x粒子から形成された粉末400mgをエタノール50ml中に分散させることにより、化粧用組成物を製造する。
【0174】
試験は、夜の22時に洗いたての中程度の長さの頭髪を有するモデルで行われる。頭髪は、髪がきれいに見えるように十分に皮脂が取り除かれる。髪が乾いた後、上の化粧用組成物12グラムを塗布し、根元をターゲットにして指先で根元をマッサージする。一晩でモデルの頭皮からは約500mgの皮脂が生成され、これは様々な接触(枕)によって時間経過と共に分散する。その後、日中に(ここでは10:00から22:00の範囲とみなされる)さらに500mgの皮脂が生成される。この第2の期間中にも、皮脂は、様々な接触(手や櫛など)を通じて、髪の長さに沿って分布する。
【0175】
モデルの頭髪の照射は、午前中に10mW/cmの比較的低いレベルで開始される。本発明による粒子を含む組成物を前夜に塗布したため、夜間に生成された500mgの皮脂が08:00から09:00までの1時間で破壊された。
【0176】
その日の残りの時間、本発明による粒子は、頭皮に現れた皮脂を破壊し続け、その後、接触や他の動きによって取り除かれる前に根元に移動する。1日の終わりに、毛髪は全体的にきれいなままであることが観察される。したがって、モデルは夕方に髪を洗う必要を感じない。
【0177】
翌日、起床時に髪は少し汚れているものの、朝の光が存在する間にきれいな外観に戻る。
【0178】
実施例6:ブラシを使用する試験
ブラシは、幅3mm、長さ1cmの吸収性フォームから製造された一連の80本の毛を、金属基材に接着剤で接合することによって製造される。その後、実施例4-試験2からの組成物12ml(エタノール50ml中のBiWO6-x粒子とCuO粒子との混合物から形成された粉末1000mgの分散液)をブラシに噴霧し、次いで乾燥させる。
【0179】
このブラシは、毛髪や根元を通すと、フォームの表面に粒子を保持したまま、皮脂の一部を吸収する。この特性は、接触点が乾燥している(無溶媒)ことに起因する。次に、皮脂が除去されるまで、ブラシを光源(4つの一連の1WのLEDランプ)の5cm上に置く(毛先を下にする)。
【0180】
1つの変形形態は、プレキシガラス製の基材と、基材の下に配置された一連のダイオードを使用することからなる。すると、毛髪をブラッシングして皮脂を回収し、接触した瞬間から皮脂を除去し始めることが可能である。その後、使用者がブラシを下に置くと、フォームの毛に集められた皮脂の除去を完了するために照射が続けられる。
【0181】
実施例7:パッケージについての試験
これらの試験では、香水などの化粧品が入った箱を覆うことを目的とした褐色の厚紙製のパッケージの2つの同一のコピーが使用される。
【0182】
最初の試験では、試験者がこのパッケージ上に指を置くと、試験者の指は皮脂の薄い層で覆われているため、目に見える跡がパッケージ上に残る。
【0183】
2番目の試験では、本発明による粒子のエタノール分散液を厚紙上に噴霧することによって、パッケージを前処理する。このために、BiWO6-x粒子とCuO粒子との混合物から形成された粉末(実施例2.1)10mgを無水エタノール10mlに分散し、次いでこの分散液を厚紙に噴霧して乾燥させる。試験者がこのパッケージ上に指を置くと、指は皮脂の薄い層で覆われているため、目に見える跡がパッケージ上に残ることが観察される。
【0184】
その後、2つのパッケージを、店舗の照明の典型である20cmの1Wの黄色のスポットライトから得られる光の下に配置する。
【0185】
10分後、2番目の試験のパッケージ上の指跡は、1時間後に見えなくなるまで徐々に消失することが観察される。この消失は、最初の試験のパッケージでは観察されない。
【国際調査報告】