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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】陰イオン交換膜水電解用酸化電極
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/075 20210101AFI20231116BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20231116BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20231116BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20231116BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20231116BHJP
   C25B 11/061 20210101ALI20231116BHJP
   C25B 11/03 20210101ALI20231116BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20231116BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20231116BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C25B11/075
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B11/052
C25B11/061
C25B11/03
B01J37/03 B
B01J37/02 301B
B01J23/755 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528317
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 KR2021016363
(87)【国際公開番号】W WO2022103158
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0150363
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(71)【出願人】
【識別番号】592127149
【氏名又は名称】韓国科学技術院
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】291,Daehak-ro Yuseong-gu,Daejeon 34141,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギル・ホ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】チ・ウ・ロ
(72)【発明者】
【氏名】キュ・ホ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ソ・ジョン
【テーマコード(参考)】
4G169
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA17
4G169BA47C
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BB05C
4G169BC02C
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CB81
4G169CC40
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EB11
4G169EB12X
4G169EB12Y
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169ED05
4G169EE06
4G169FA01
4G169FA04
4G169FB09
4G169FB24
4G169FB27
4G169FB57
4G169FC03
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC09
4G169FC10
4K011AA11
4K011AA22
4K011AA50
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB19
4K021DB36
4K021DB53
(57)【要約】
本発明は、低コスト、高性能および高安定性の陰イオン交換膜水電解用酸化電極を提供する。具体的には、本発明の一実施形態では、ニッケル金属;および前記ニッケル金属の一面または両面上に位置し、ニッケルと鉄が含まれた単層構造(monolayer)の層状複水酸化物(layered double hydroxide,LDH);を含む、陰イオン交換膜水電解用酸化電極を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル金属;および
前記ニッケル金属の一面上に位置し、ニッケルと鉄が含まれた単層構造(monolayer)の層状複水酸化物(layered double hydroxide,LDH);
を含む、陰イオン交換膜水電解用酸化電極。
【請求項2】
前記層状複水酸化物内のニッケル/鉄の重量比率は、15/85~85/15である、請求項1に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極。
【請求項3】
前記ニッケル金属の片面当たり前記層状複水酸化物のローディング量は、0.1~5mg/cmである、請求項1に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極。
【請求項4】
前記ニッケル金属の厚さは、150~350μmである、請求項1に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極。
【請求項5】
前記ニッケル金属の気孔度は、50~200PPIである、請求項1に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極。
【請求項6】
ホルムアミド水溶液に、アルカリ水溶液、そしてニッケルソースおよび鉄ソースを含む金属水溶液を投入して、原料混合溶液を製造する段階;
前記原料混合溶液を反応させて、ニッケルと鉄が含まれた単層構造(monolayer)の層状複水酸化物(layered double hydroxide,LDH)を生成する段階;および
ニッケル金属の一面または両面上に、前記層状複水酸化物を塗布する段階;を含む、陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法。
【請求項7】
前記金属水溶液は、
総量(100重量%)中の、ニッケルソース0.5~1.5重量%、鉄ソース0.1~1.0重量%、および残部の水を含む、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ水溶液は、
水酸化ナトリウム水溶液である、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法。
【請求項9】
前記水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度は、
0.05~5Mである、請求項8に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法。
【請求項10】
前記ホルムアミド水溶液は、
総量(100体積%)中の、ホルムアミド15~40体積%および残部の水を含む、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法。
【請求項11】
前記原料混合溶液の製造時、
前記ホルムアミド水溶液100重量部を基準として、前記アルカリ水溶液50~200重量部、および前記金属水溶液50~200重量部を混合する、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法。
【請求項12】
前記原料混合溶液の反応は、
pH9~11範囲内で行われる、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法。
【請求項13】
前記原料混合溶液の反応は、
70~90℃の温度範囲内で行われる、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法。
【請求項14】
前記原料混合溶液の反応は、
1~20分間行われる、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法。
【請求項15】
前記原料混合溶液の反応後、
洗浄溶媒を用いて前記層状複水酸化物を洗浄する段階;および
前記洗浄された前記層状複水酸化物を水に分散させる段階;をさらに含む、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法。
【請求項16】
前記層状複水酸化物の塗布時、
前記層状複水酸化物にナフィオン溶液を添加した後に塗布する、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法。
【請求項17】
前記層状複水酸化物の塗布時、
噴霧乾燥方法を用いる、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法。
【請求項18】
前記層状複水酸化物の塗布時、
前記ニッケル金属は70~90℃のホットプレート上に位置する、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法。
【請求項19】
陰イオン交換膜;および
前記陰イオン交換膜の両側にそれぞれ位置する還元電極および酸化電極を含み、
前記酸化電極は請求項1に記載の酸化電極である、陰イオン交換膜水電解セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2020年11月11日付韓国の特許出願第10-2020-0150363号に基づく優先権利益を主張し、当該韓国の特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は陰イオン交換膜水電解用酸化電極に関する。
【背景技術】
【0003】
化石燃料の枯渇と環境汚染を解決できる次世代エネルギ源である水素を環境に優しい方法で生産できる技術に対する重要性が増している。
【0004】
最近、韓国の産業通商資源部で発表した水素経済活性化ロードマップによれば、多くの部分の水素生産を環境にやさしい方法とすることを予定しており、環境にやさしい水素生産の代表的な技術である水電解の発展がより一層切実に求められている。
【0005】
これと関連して、電気分解方式を用いた水電解(水電気分解、water electrolysis)技術に対する研究が活発に行われており、代表的な低温水電解技術としてはプロトン交換膜水電解(proton exchange membrane water electrolysis,PEMWE)およびアルカリ水電解(alkaline water electrolysis,AWE)が知られている。
【0006】
その中で、アルカリ水電解はアルカリ水溶液が反応物として使用されてアルカリ水溶液に対する耐食性が強い電極物質が求められる。電極物質の候補としてはニッケル、鉄、コバルトなど非白金系の金属で、比較的低コストの電極物質を使用できる。電極は水電解コストのかなりの部分を占めるため、非白金系金属を使用すると水素生産コストを下げることができるという長所がある。ただし、アルカリ水電解システムは、大きな空間を必要とし、電極面積当たり電流量が低くて水素生産時に要求される高い過電圧(overpotential)による効率低下という短所がある。
【0007】
一方、プロトン交換膜水電解はコンパクト(compact)なシステムデザインにより高いエネルギ密度を有するという長所がある。しかしながら、プロトン交換膜の酸性雰囲気に耐えられる白金系金属が必須として求められて水素生産コストが増加する短所がある。
【0008】
それに反して、陰イオン交換膜水電解(anion exchange membrane water electrolysis,AEMWE)は、既存のシステムの長所を活用しながらも、短所は解消できるシステムに該当する。アルカリ環境であるため非白金系金属を電極物質として使用でき、コンパクトなシステムデザインで好ましいエネルギ密度を得ることができる。
【0009】
ただし、陰イオン交換膜水電解は既存のシステムに比べてまだ研究が多く進められておらず、そのため、基準になる交換膜や電極物質が知られていない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、低コスト、高性能および高安定性の陰イオン交換膜水電解用酸化電極を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
具体的には、本発明の一実施形態では、ニッケル金属;および前記ニッケル金属の一面または両面上に位置し、ニッケルと鉄が含まれた単層構造(monolayer)の層状複水酸化物(layered double hydroxide,LDH);を含む、陰イオン交換膜水電解用酸化電極を提供する。
【0012】
本発明の他の一実施形態では、ボトムアップ方式(bottom-up method)を用いてニッケルと鉄が含まれた層状複水酸化物(layered double hydroxide,LDH)を単層構造(monolayer)に合成した後、ニッケル金属の一面または両面上に蒸着させる一連の工程を含む、陰イオン交換膜水電解用酸化電極を製造する方法を提供する。
【0013】
本発明のまた他の一実施形態では、陰イオン交換膜;および前記陰イオン交換膜の両側にそれぞれ位置する還元電極および酸化電極を含み、前記酸化電極は前述した一実施形態の酸化電極である、陰イオン交換膜水電解セルを提供する。
【発明の効果】
【0014】
前記一実施形態の酸化電極は、非貴金属(non-precious metal)のニッケルと鉄を含むため、低コストで短時間内に効率的に生産することが可能であり、このようなニッケルと鉄が含まれた単層構造(monolayer)の層状複水酸化物(layered double hydroxide,LDH)を含むことにより多層構造(multilayer)に比べて高性能と高安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】陰イオン交換膜水電解装置の原理を示す図である。
図2a】B-NiFe-LDH合成方法を示す図である。
図2b】M-NiFe-LDH合成方法を示す図である。
図3a】B-NiFe-LDHを用いた酸化電極の製造方法を示す図である。
図3b】M-NiFe-LDHを用いた酸化電極の製造方法を示す図である。
図4a】製造例2(B-NiFe-LDH)のTEMイメージである。
図4b】製造例2(B-NiFe-LDH)のTEMイメージである。
図4c】同一スケールでのEDSマッピングイメージである。
図4d】製造例1(M-NiFe-LDH)のTEMイメージである。
図4e】製造例1(M-NiFe-LDH)のTEMイメージである。
図4f】同一スケールでのEDSマッピングイメージである。
図5】粉末状態である比較例1の触媒(B-NiFe-LDH)、水に分散してコロイダル(colloidal)状を形成した実施例1の触媒(M-NiFe-LDH)、そしてオーブンで乾燥されて粉末(powder)状になった実施例1の触媒(M-NiFe-LDH)について、それぞれのXRDパターンを示す図である。
図6a】比較例1の酸化電極(B-NiFe-LDH on Ni foam)のSEMイメージである。
図6b】比較例1の酸化電極(B-NiFe-LDH on Ni foam)のSEMイメージである。
図6c】比較例1の酸化電極(B-NiFe-LDH on Ni foam)のSEMイメージである。
図6d】実施例1の酸化電極(M-NiFe-LDH on Ni foam)のSEMイメージである。
図6e】実施例1の酸化電極(M-NiFe-LDH on Ni foam)のSEMイメージである。
図6f】実施例1の酸化電極(M-NiFe-LDH on Ni foam)のSEMイメージである。
図7a】比較例1~5の各陰イオン交換膜水電解セルの電流-電圧グラフである。
図7b】実施例1~4の各陰イオン交換膜水電解セルの電流-電圧グラフである。
図7c】実施例3、比較例3および5のそれぞれの陰イオン交換膜水電解セルの電流-電圧グラフである。
図8】実施例3、比較例3および比較例6の各陰イオン交換膜水電解セルの安定性評価グラフである。
【0016】
本発明で、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するために使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素と区別する目的にのみ使用される。
【0017】
また、本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解されなければならない。
【0018】
また、本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」または「上に」形成されると言及される場合は、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成され得ることを意味する。
【0019】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
陰イオン交換膜水電解用酸化電極
本発明の一実施形態では、ニッケル金属;および前記ニッケル金属の一面上に位置し、ニッケルと鉄が含まれた単層構造(monolayer)の層状複水酸化物(layered double hydroxide,LDH);を含む、陰イオン交換膜水電解用酸化電極を提供する。
【0021】
これは、非貴金属(non-precious metal)のニッケルと鉄を含むので、低コストで生産が可能であり、このようなニッケルと鉄が含まれた単層構造(monolayer)の層状複水酸化物(layered double hydroxide,LDH)を含むことにより多層構造(multilayer)に比べて高性能と高安定性を確保することができる。
【0022】
1)前記一実施形態の酸化電極において、前記ニッケル金属の一面または両面上に位置し、ニッケルと鉄が含まれた単層構造(monolayer)の層状複水酸化物(layered double hydroxide,LDH)は酸素発生触媒として機能する。
【0023】
換言すれば、前記一実施形態の酸化電極は、単層構造触媒層を含み、このような単層構造触媒層が、すなわちニッケルと鉄が含まれた層状複水酸化物である。
【0024】
一般に、層状複水酸化物(layered double hydroxide,LDH)は、2次元構造を有するイオン性固体(ionic solid)の一種である。
【0025】
具体的には、[(AcB)-Z-(AcB)]の多層構造(multilayer)を有し、ここでcは金属プロトン層を表し、AとBはそれぞれ水酸化イオン(OH)層を表し、Zは他の陰イオンと中性分子(例:水)を含む層を意味し、nは繰り返し数を意味する。
【0026】
前記[AcB-Z-AcB]単位で、挿入された陰イオンまたは中性分子(Z)は弱く結合されており、他の陰イオンまたは中性分子と交換可能である。また、陰イオンまたは中性分子(Z)を間に置くAcB層間の距離は層間基底間隔(interlayer basal spacing)という。
【0027】
2)一般的な触媒分野で、バルク(bulk)状態のニッケル-鉄層状複水酸化物は、高い触媒性能を生じると知られている。
【0028】
ここで、ニッケルと鉄が含まれたバルク(bulk)状態の層状複水酸化物(NiFe-LDH)、すなわちニッケルと鉄が含まれた多層構造(multilayer)の層状複水酸化物であり得る。以下、前記バルク状態のニッケルと鉄が含まれた層状複水酸化物を「B-NiFe-LDH」と呼ぶ。
【0029】
具体的には、B-NiFe-LDHは、第1水酸化イオン(OH-)層(A)、ニッケルおよび鉄を含む金属層(c)、および第2水酸化イオン(OH-)層(B)を含む単層構造(monolayer)を一つの単位(AcB)とし;2個の単位(AcB)の間には他の陰イオンであるCO 2-、OHなどと共に、中性分子である水などを含み(Z)、複数の単位が積層された構造[(AcB)-Z-(AcB)]を有する。
【0030】
このようなB-NiFe-LDHは陰イオン交換膜水電解触媒として使用するには大きな短所があるが、その代表的な理由は低い電気伝導性と低い安定性を有するからである。
【0031】
具体的には、B-NiFe-LDHで、支持体平面(basal plane)が酸素発生反応の反応点として作用して、反応物として使用されるOH-が速く多層構造に拡散できず、触媒層の間が部分的な酸性環境を有するようになって触媒が溶解するという短所がある。これは、アルカリ水電解より高温、高電流で作動する陰イオン交換膜水電解において大きな問題点として発現する。
【0032】
それに対して、M-NiFe-LDHの場合、B-NiFe-LDHとは異なり、すべての支持体平面(basal plane)が反応物(OH-)に露出している構造を有する。このような構造上、OHが消耗して、部分的な酸性環境が発生せず、触媒が溶解する問題点を解消できる。換言すれば、M-NiFe-LDHはB-NiFe-LDHによる低い安定性の問題を解決できる。
【0033】
前記一実施形態の酸化電極は、ニッケルと鉄が含まれた単層構造(monolayer)の層状複水酸化物(layered double hydroxide,LDH)を含む。以下、前記単層構造のニッケル-鉄層状複水酸化物を「M-NiFe-LDH」と呼ぶ。
【0034】
M-NiFe-LDHは、一つの単位(AcB)のみを含み、B-NiFe-LDHの低い電気伝導性と低い安定性の問題を解決できる。具体的には、M-NiFe-LDHはその単層構造によって、B-NiFe-LDHに比べて固有の酸素発生反応活性(intrinsic OER activity)が高く、陰イオン交換膜水電解性能を改善できる。
【0035】
一方、前記一実施形態の酸化電極において、前記M-NiFe-LDHはボトムアップ方式(bottom-up method)またはトップダウン方式(top-down method)を用いて製造することができる。
【0036】
この中で、ボトムアップ方式(bottom-up method)がトップダウン方式(top-down method)に比べて製造工程が簡素でかつ効率的な電極製造が可能である。
【0037】
前記M-NiFe-LDHの製造方式については後述する。
【0038】
3)さらに、ニッケル金属を基材(substrate)として使用することによって、電気伝導性をさらに補完することができる。
【0039】
具体的には、M-NiFe-LDHは、B-NiFe-LDHに比べて薄い厚さを有するため、基材による影響をより多く受ける。これと関連して、ニッケル金属(例えばニッケルフォーム、Ni foam)のように電気伝導性が高い物質を基材(substrate)として使用することによって、酸化電極の電気伝導性をさらに補完することができる。
【0040】
4)したがって、前記一実施形態の酸化電極は、ボトムアップ方式で製造されたM-NiFe-LDHを触媒層として含み、ニッケル金属を基材(substrate)として含むことにより、安定性が向上すると同時に電気伝導性が改善された。
【0041】
そのため、触媒層を全く含まない酸化電極;B-NiFe-LDHを触媒層として含む酸化電極;トップダウン方式で製造されたM-NiFe-LDHを触媒層として含む酸化電極;などに比べて、最適の触媒量を増やし、水電解セルの性能を高めることができる。
【0042】
以下、前記一実施形態の酸化電極をより詳細に説明する。
【0043】
層状複水酸化物内のニッケル/鉄の重量比率
前記層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)内のニッケル/鉄の重量比率は、15/85~85/15であり得る。
【0044】
前記範囲内で、前記ニッケル/鉄の重量比率が25/75に近づくほど、酸素発生反応中の過電圧が減少して、触媒性能が増加し得る。この比率より大きくなるかまたは減るほど酸素発生反応過電圧が増加して触媒性能が低下する。これを考慮して、前記ニッケル/鉄の重量比率を制御できる。
【0045】
例えば、前記層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)内のニッケル/鉄の重量比率は、25/85~85/25である範囲内に制御できる。
【0046】
層状複水酸化物のローディング量
前記ニッケル金属の片面当たり、前記層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)のローディング量は、0.1~5mg/cmであり得る。
【0047】
前記範囲内で、前記層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)のローディング量が増加するほど陰イオン交換膜水電解セルの性能が改善され、3mg/cmで最も高い性能を示し、3mg/cm超過の範囲で性能が減少し得る。
【0048】
このような傾向を考慮して、前記ニッケル金属の片面当たり、前記層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)のローディング量は、0.1mg/cm以上、0.3mg/cm以上、0.6mg/cm以上、または1mg/cm以上であり、かつ5mg/cm以下、4.5.mg/cm以下、または4mg/cm以下である範囲内に制御できる。
【0049】
前記層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)の厚さは、そのローディング量に比例して増加し得る。
【0050】
ニッケル金属
前記ニッケル金属は、内部に多数の気孔を含むニッケルフォーム(Ni foam)であり得る。例えば、前記ニッケル金属の気孔度は、50~200PPI(Pores per inch)、具体的には70~170PPI,例えば110PPIであり得る。
【0051】
また、前記ニッケル金属の厚さは150~350μm、具体的には200~300μm、例えば250μmであり得る。
【0052】
陰イオン交換膜水電解用酸化電極の製造方法
本発明の他の一実施形態では、ボトムアップ方式(bottom-up method)を用いてニッケルと鉄が含まれた層状複水酸化物(layered double hydroxide,LDH)を単層構造(monolayer)に合成した後、ニッケル金属の一面または両面上に蒸着させる一連の工程を含む、陰イオン交換膜水電解用酸化電極を製造する方法を提供する。
【0053】
M-NiFe-LDHを合成する方法としては、トップダウン方式(top-down method)とボトムアップ方式(bottom-up method)が考慮される。この中でも、前記一実施形態では、トップダウン方式に比べて製造工程が簡素でかつ効率的な電極製造が可能なボトムアップ方式を用いる。
【0054】
具体的には、前記一実施形態の酸化電極の製造方法は、ホルムアミド水溶液に、アルカリ水溶液、そしてニッケルソースおよび鉄ソースを含む金属水溶液を投入して、原料混合溶液を製造する段階;前記原料混合溶液を反応させて、ニッケルと鉄が含まれた単層構造(monolayer)の層状複水酸化物(layered double hydroxide,LDH)を生成する段階;およびニッケル金属の一面または両面上に、前記層状複水酸化物を塗布する段階;を含む。
【0055】
トップダウン方式の場合、B-NiFe-LDHから単層構造のNiFe-LDHを製造できる。これは、挿入陰イオン交換(intercalated anion exchange)によりB-NiFe-LDHの層間基底間隔(interlayer basal spacing)を増やし、ホルムアミド(formamide)溶媒に分散させた後超音波処理(sonication)して各層を剥離する方法(exfoliation)により、約1~2週程度の長い時間が求められる。
【0056】
このようなトップダウン方式を用いる場合、最終的に得られるM-NiFe-LDHはホルムアミド(formamide)溶媒に分散している状態であるから、溶媒除去段階で問題が発生し得る。ホルムアミド(formamide)は揮発性が低い液体であるため速い乾燥が不可能である。そのため、トップダウン方式を用いる場合、効率的な電極製造が不可能であるという致命的な問題がある
【0057】
それに対して、ボトムアップ方式はワンステップ(one-step)反応によりM-NiFe-LDHを製造できるため、製造工程が簡素化され、約1時間内に合成が可能であるため、製造時間を大きく短縮できる。
【0058】
また、ボトムアップ方式で合成する場合、最終的に得られるM-NiFe-LDHは蒸留水に分散している状態であり、トップダウン方式のホルムアミド(formamide)溶媒に比べて速い乾燥が可能であり、効率的な電極製造を可能にする。
【0059】
原料混合溶液の製造
前記金属水溶液は、総量(100重量%)中の、ニッケルソース0.5~1.5重量%、例えば0.7~1.3重量%;鉄ソース0.1~1.0重量%、例えば0.2~0.7重量%;および残部の水を含むものであり得る。
【0060】
前記ニッケルソースおよび前記鉄ソースの含有量を調節することによって、最終収得物(すなわち、M-NiFe-LDH)内のニッケルおよび鉄の含有量を制御できる。
【0061】
前記ニッケルソースは硝酸ニッケル(Ni(NO)またはその水和物(Ni(NO・6HO)であり、前記鉄ソースは硝酸鉄(Fe(NO)またはその水和物(Fe(NO・9HO)であり得る。
【0062】
前記アルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液であり得る。
【0063】
具体的には、前記水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度は、0.05~5M,例えば0.1~3M;および残部の水を含むものであり得る。
【0064】
前記水酸化ナトリウム水溶液は、触媒合成時に求められるOHを提供して、pH9~11に調節する役割をすることができる。前記水酸化ナトリウム水溶液内の水酸化ナトリウム含有量が前記範囲を満たす場合、目的とする触媒の形状、大きさなどを得ることができる。
【0065】
前記ホルムアミド水溶液は、総量(100体積%)中の、ホルムアミド15~40体積%、例えば20~30体積%;および残部の水を含むものであり得る。
【0066】
前記ホルムアミド水溶液は、触媒合成時に水酸化物と相互作用をして、z-axis(層状構造)への成長を抑制する役割をすることができる。そのため、前記ホルムアミド水溶液内のホルムアミド含有量が前記範囲を満たす場合、前記層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)を得ることができる。
【0067】
前記原料混合溶液の製造時、前記ホルムアミド水溶液100重量部を基準として、前記アルカリ水溶液50~200重量部、例えば70~130重量部;および前記金属水溶液50~200重量部、例えば70~130重量部;を混合するものであり得る。
【0068】
原料混合溶液の反応(M-NiFe-LDHの製造)
前記原料混合溶液の反応時、前記アルカリ水溶液を用いて前記原料混合溶液のpHを9~11、例えば9.5~10.5の範囲内に制御できる。
【0069】
前記原料混合溶液の反応時、pHは触媒の最終形態に影響を及ぼし得る。前記範囲内のpHが維持される限り、前記層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)がよく合成される。
【0070】
前記原料混合溶液の反応は、70~90℃、例えば75~85℃の温度範囲内で行われ得る。
【0071】
前記原料混合溶液の反応時、温度は触媒が合成される速度に影響を及ぼして触媒の形状、大きさなどに影響を及ぼし得る。
【0072】
前記原料混合溶液の反応は、1~20分、例えば5~15分間行われ得る。
【0073】
前記原料混合溶液の反応時、反応時間は触媒の結晶性に影響を及ぼし得る。
【0074】
反応(M-NiFe-LDHの製造)の後処理
前記原料混合溶液の反応後、洗浄溶媒を用いて前記層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)を洗浄する段階;および前記洗浄された前記層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)を水に分散させる段階;をさらに含むことができる。
【0075】
具体的には、洗浄溶媒(例えば、水およびエタノールの混合液)を用いて前記層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)を洗浄して、前記層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)内の残存する不純物を前記溶媒内に溶解させた後、遠心分離して前記不純物が溶解した溶媒を除去することができる。
【0076】
これにより洗浄された層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)を水に分散させて、層状複水酸化物(M-NiFe-LDH)および水を含む水溶液を最終的に得ることができる。
【0077】
M-NiFe-LDHの塗布
前記ニッケル金属の一面上に前記層状複水酸化物の塗布時、前記層状複水酸化物をおよび水を含む水溶液を塗布し得る。
【0078】
また、前記層状複水酸化物にナフィオン溶液を添加した後に塗布し得る。
【0079】
ここで、ナフィオンは触媒とともに分散して塗布されるため、反応中に触媒が脱離されることを防止するバインダ(binder)の役割をすることができる。前記ナフィオン溶液としては、総量(100重量%)中のナフィオン含有量が5~10重量%であるものを使用することができる。
【0080】
前記層状複水酸化物の塗布時、噴霧乾燥方法を用いることができる。
【0081】
また、前記層状複水酸化物の塗布時、前記ニッケル金属は70~90℃のホットプレート上に位置するものであり得る。
【0082】
前記噴霧乾燥を用いる場合、触媒の均一な塗布に有利であり、この時、前記ニッケル金属の温度が前記範囲内にある場合、溶媒の蒸発速度をよく制御して触媒が均一に塗布されるようにすることができる。
【0083】
陰イオン交換膜水電解セル
本発明の他の一実施形態では、陰イオン交換膜;および前記陰イオン交換膜の両側にそれぞれ位置する還元電極および酸化電極を含み、前記酸化電極は前述した一実施形態の酸化電極である、陰イオン交換膜水電解セルを提供する。
【0084】
これは、前述した一実施形態の酸化電極を含むことにより、水電解性能が向上したものであり得る。
【0085】
以下、前述した一実施形態の酸化電極に係る説明は省略し、その他の構要素について詳細に説明する。
【0086】
図1は前記一実施形態の水電解セルを示す図である。
【0087】
前記一実施形態の水電解セルは、前記還元電極および前記酸化電極とそれぞれ連結されたpotentiostatを含むことができる。
【0088】
前記酸化電極は前述した一実施形態の酸化電極を使用して、前記還元電極としては白金(Pt)および炭素(C)が炭酸紙(carbon paper)上に複合コートされたものを使用することができる。
【0089】
図1では一つの水電解セルのみを示したが、一つの水電解セルを単位セルとし、複数の単位セルを直列に積層して水電解スタックを構成することもできる。
【0090】
前記水電解スタックは電解液タンク(図示せず)を含み得、前記電解液タンクは水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)などのアルカリ水溶液を保存し、これを前記陰イオン交換膜に供給する役割をすることができる。
【0091】
前記電解液タンクから前記陰イオン交換膜にアルカリ水溶液が供給され、前記酸化電極および前記還元電極に直流電源が印加されると、前記陰イオン交換膜内のアルカリ水溶液の分解生成物である水酸化イオン(OH)は前記酸化電極の表面で触媒反応して酸素、水、および電子を発生させて、電子は外部導線に沿って還元電極に移動し得る。前記還元電極の表面では電子と水が触媒反応して、水素と水酸化イオン(OH)を発生させ得る。前記酸化電極で発生した酸素および前記還元電極で発生した水素はそれぞれ、前記単位セル外部の貯蔵タンク(図示せず)に移動させて貯蔵することができる。
【0092】
その他の内容は、当業界に広く知られている水電解セルおよび水電解スタックを参照して実現することができる。
【実施例
【0093】
以下、発明の理解を深めるために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は発明を例示するためであり、発明をこれらに限定するものではない。
【0094】
<製造例>
製造例1:ボトムアップ方式によるM-NiFe-LDHの製造
超純水(Deionized water)20mlにNi(NO・6HO 218.1mgとFe(NO・9HO 101.0mgを溶かして、Solution A(金属水溶液)を準備した。ここで、Ni:Feの金属重量比は3:1である。
【0095】
これとは独立して、超純水(Deionized water)20mlにNaOHを溶かして0.25M濃度でSolution B(アルカリ水溶液)を準備した。
【0096】
恒温水槽(Water bath)の内部温度は80℃に準備した。
【0097】
100ml容量の丸底フラスコ(round bottom flask)に超純水(deionized water)15mlとホルムアミド(formamide)5mlを投入して、内部温度が80℃に維持される恒温水槽(Water bath)内に前記丸底フラスコを浸漬した後、600rpmの速度で攪拌(stirring)してホルムアミド水溶液を製造した。その後、約5分ほど放置した。
【0098】
常温(Room temperature)の空気(air)雰囲気の条件で、前記丸底フラスコに前記Solution Aと前記Solution Bを同時に投入しながら、pH=10を維持させた。前記各Solutionの投入は滴下(drop-by-drop)方式で行い、10分内に投入を完了した。
【0099】
前記各Solutionの投入が完了すれば、10分間600rpmの速度で攪拌(stirring)した。
【0100】
その後、常温(Room temperature)で30分間冷却(cool down)させた後、遠心分離機(centrifuge)により超純水(deionized water)で3回、エタノール(ethanol)で1回洗浄(washing)した。
【0101】
前記遠心分離機を用いて洗浄する際にゲル(gel)が沈殿する場合は、これをbath sonicationにより十分に分散させた後、再び洗浄工程を行うことができる。
【0102】
前記洗浄工程を完了した後水に分散させて保管して、この時、濃度はICPにより確認することができる。
【0103】
そのため、M-NiFe-LDHおよび水を含む水溶液(以下、「製造例1のM-NiFe-LDH水溶液」いう)を得た。前記製造例1のM-NiFe-LDH水溶液内の固形分含有量は、全体水溶液100重量%中の約88.33重量%である。
【0104】
製造例2:B-NiFe-LDHの製造
超純水(Deionized water)40mlにNiCl・6HO 32mmolとFeCl 10.7mmolを投入して、bath sonicationにより十分に分散させて、Solution Cを準備した。ここで、Ni:Feの金属重量比は3:1である。
【0105】
これとは独立して、超純水(Deionized water)40mlにNaOH 68.3mmolとNaCO 21.3mmolを溶かして、Solution Dを準備した。
【0106】
250ml容量の丸底フラスコ(round bottom flask)に超純水(deionized water)80mlを入れて、600rpmの速度で攪拌(stirring)した。
【0107】
常温(Room temperature)の空気(air)雰囲気で、前記丸底フラスコに前記Solution Cと前記Solution Dを同時に投入しながら、pH=8.5を維持させた。
【0108】
前記各Solutionの投入が完了すれば、24時間の間600rpmの速度で攪拌(stirring)した。
【0109】
その後、遠心分離機(centrifuge)により超純水(deionized water)で3回、エタノール(ethanol)で1回洗浄(washing)した。
【0110】
前記遠心分離機を用いて洗浄した後、60℃のコンベクションオーブン(convection oven)で24時間の間乾燥させた。
【0111】
その後、乳棒、乳鉢を用いて粉末(powder)形態に細かく粉砕した後、真空(vacuum)条件で保管した。
【0112】
<実施例>
実施例1
(1)酸化電極の製造
バイアルに、前記製造例1のM-NiFe-LDH水溶液10mL、10重量%のナフィオン(Nafion)を含むナフィオン水溶液158.730mLを入れて、20Hzの超音波処理を1時間の間行った。
【0113】
80℃のホットプレート(hot plate)上に、気孔度110PPIおよび厚さ250μmのニッケルフォーム(Ni foam)を配置した。前記ニッケルフォーム(Ni foam)上に、前記超音波処理された水溶液を均一に噴射して触媒層を形成した。
【0114】
この時、噴霧乾燥装置(製品名:INFINITY CR plus 0,4[v2.0],製造会社:INFINITY)を用いて2l/minの噴射速度で噴射して、ニッケルフォーム(Ni foam)の片面当たり触媒層のローディング量が1.0mg/cmである実施例1の酸化電極を製造した。
【0115】
(2)陰イオン交換膜水電解セルの製造
前記実施例1の酸化電極を使用してそれぞれの水電解セルを製造した。
【0116】
具体的には、還元電極としては白金触媒が担持されたカーボン(40wt% Pt/C)をカーボン紙(carbon paper)にカーボンコート(spray coating)した電極を使用し、陰イオン交換膜(SustainionTM,Dioxide Material社)を使用した。
【0117】
前記陰イオン交換膜を間に置いて、その両側に前記酸化電極と前記還元電極を位置させて酸化電極/陰イオン交換膜/還元電極の順に積層された積層体を製造した後、ガスケット(gasket)を置いて100kg・f・cmのトルク(Torque)で加圧して、実施例1の陰イオン交換膜水電解セルを完成した。
【0118】
前記セルは5cmの反応面積を有しており、酸化電極に反応物(1M KOH)と生成物(酸素)を伝達する通路としてTitanium block with single serpentine flow-patternを使用し、還元電極には反応物(1M KOH)と生成物(水素)を伝達する通路としてgraphite block with single serpentine flow-patternを使用した。このblockはgold plated current collectorと当接しており、これはポテンショスタットと連結されている。その他の内容は当業界に一般的に知られている陰イオン交換膜水電解セルの製造方法に従った。
【0119】
実施例2
ニッケルフォーム(Ni foam)の片面当たり触媒層のローディング量を2.0mg/cmに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で実施例2の酸化電極および陰イオン交換膜水電解セルを製造した。
【0120】
実施例3
ニッケルフォーム(Ni foam)の片面当たり触媒層のローディング量を3.0mg/cmに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で実施例3の酸化電極および陰イオン交換膜水電解セルを製造した。
【0121】
実施例4
ニッケルフォーム(Ni foam)の片面当たり触媒層のローディング量を4.0mg/cmに変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で実施例4の酸化電極および陰イオン交換膜水電解セルを製造した。
【0122】
比較例1
(1)酸化電極の製造
バイアルに、前記製造例2のB-NiFe-LDH粉末50mg、10重量%のナフィオン(Nafion)を含むナフィオン水溶液158.730mLを入れて、20Hzの超音波処理を1時間の間行った。
【0123】
80℃のホットプレート(hot plate)上に、気孔度110PPIおよび厚さ250μmのニッケルフォーム(Ni foam)を配置した。前記ニッケルフォーム(Ni foam)上に、前記超音波処理された水溶液を均一に噴射して触媒層を形成した。
【0124】
この時、噴霧乾燥装置(製品名:INFINITY CR plus 0,4[v2.0],製造会社:INFINITY)を用いて2l/minの噴射速度で噴射して、ニッケルフォーム(Ni foam)の片面当たり触媒層のローディング量が1.0mg/cmである比較例1の酸化電極を製造した。
【0125】
(2)陰イオン交換膜水電解セルの製造
前記実施例1の酸化電極の代わりに前記比較例1の酸化電極を使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で比較例1の水電解セルを製造した。
【0126】
比較例2
ニッケルフォーム(Ni foam)の片面当たり触媒層のローディング量を1.5mg/cmに変更したことを除いては、比較例1と同様の方法で比較例2の酸化電極および陰イオン交換膜水電解セルを製造した。
【0127】
比較例3
ニッケルフォーム(Ni foam)の片面当たり触媒層のローディング量を2.0mg/cmに変更したことを除いては、比較例1と同様の方法で比較例3の酸化電極および陰イオン交換膜水電解セルを製造した。
【0128】
比較例4
ニッケルフォーム(Ni foam)の片面当たり触媒層のローディング量を3.0mg/cmに変更したことを除いては、比較例1と同様の方法で比較例4の酸化電極および陰イオン交換膜水電解セルを製造した。
【0129】
比較例5
ニッケルフォーム(Ni foam)それ自体を酸化電極として使用したことを除いては、比較例1と同様の方法で比較例5の酸化電極および陰イオン交換膜水電解セルを製造した。
【0130】
比較例6
前記比較例1のM-NiFe-LDH粉末の代わりに、市販のイリジウム酸化物(Iridium oxide,IrOx)を使用した。これ以外は比較例1と同様の方法で比較例6の酸化電極および陰イオン交換膜水電解セルを製造した。
【0131】
実験例1:酸化電極用バインダの評価
(1)TEM
製造例1(M-NiFe-LDH)および製造例2(B-NiFe-LDH)のTEM(Transmision Electron Microscope)イメージおよび元素分布イメージを得て、図4a~4fに示した。
【0132】
具体的には、図4aおよび4bは製造例2(B-NiFe-LDH)のTEMイメージであり、図4cは同一スケールでの元素分布を評価したものである。また、図4dおよび4eは製造例1(M-NiFe-LDH)のTEMイメージであり、図4fは同一スケールでの元素分布を評価したものである。
【0133】
図4aおよび4bで、製造例2(B-NiFe-LDH)の厚さが相対的に厚いことが確認され、これは層状構造として存在することがわかる。それに対して、図4dおよび4eで、製造例1(M-NiFe-LDH)は厚さが相対的に薄いこと(~1nm)が確認され、これは単層構造(monolayer)として存在することがわかる。
【0134】
(2)XRD
図5は、粉末状態である比較例1の触媒(B-NiFe-LDH)、水に分散してコロイダル(colloidal)状を形成した実施例1の触媒(M-NiFe-LDH)、そしてオーブンで乾燥されて粉末(powder)状になった実施例1の触媒(M-NiFe-LDH)について、それぞれのXRDパターンを示す図である。
【0135】
参考までに、酸化電極の製造工程には実施例1の触媒(M-NiFe-LDH)をコロイダル(colloidal)状として適用するが、製造後の乾燥された酸化電極には実施例1の触媒(M-NiFe-LDH)が乾燥された状態で存在する。
【0136】
XRDパターン上、比較例1の触媒(B-NiFe-LDH)は(003)ピークがはっきりと現れるが、実施例1の触媒(M-NiFe-LDH)がコロイダル(colloidal)状の場合は(003)ピークが現れない。これは、実施例1の触媒(M-NiFe-LDH)の合成時、ホルムアミド(formamide)によりNiFe-LDHのz-軸への成長が抑制されて単層に合成されたことを立証するものである。
【0137】
一方、前記コロイダル(colloidal)状である実施例1の触媒(M-NiFe-LDH)を乾燥させると、単層構造が積層(stacking)されることにより層状構造に変更され、比較例1の触媒(B-NiFe-LDH)と類似の(003)ピークが生成されたことが確認される。ただし、そのピーク強度が比較例1の触媒(B-NiFe-LDH)より低く、これは陰イオン交換膜水電解セルの適用時の性能差を引き起こし得る。
【0138】
実験例2:酸化電極の評価
実施例1および比較例1の各酸化電極について、SEM(Scanning Electron Microscope)イメージを得て図6aおよび6fに示した。
【0139】
SEMにより、電極表面での触媒の分布形態を確認することができる。
【0140】
具体的には、図6a~6cは比較例1の酸化電極(B-NiFe-LDH on Ni foam)のSEMイメージであり、バルク(bulk)状態のナノ粒子(nanoparticle)が固まった状態で存在することを確認することができる。
【0141】
それに対して、図6d~6fは実施例1の酸化電極(M-NiFe-LDH on Ni foam)のSEMイメージであり、単層構造(monolayer)のNiFe-LDHが密にくっついていてなめらかな表面が確認される。
【0142】
これと関連して、M-NiFe-LDHを使用するとニッケル金属(具体的には、Ni foam)との接触特性に優れ、陰イオン交換膜との接触特性にも優れ、陰イオン交換膜水電解セルの性能を改善できる。
【0143】
より具体的には、以下の実験例3で陰イオン交換膜水電解セルの性能を評価した。
【0144】
実験例3:陰イオン交換膜水電解セルの評価
(1)電流-電圧グラフ
比較例1~5の各陰イオン交換膜水電解セルの電流-電圧グラフを図7aに示し;実施例1~4の各陰イオン交換膜水電解セルの電流-電圧グラフを図7bに示し;実施例のうち最も優れた効率を示した実施例3、比較例のうち最も優れた効率を示した比較例3とともに比較例5のそれぞれの陰イオン交換膜水電解セルの電流-電圧グラフを図7cに示した。それぞれの駆動条件は50℃、1A/cmである。
【0145】
ここで「Energy conversion efficiency」を下記の公式により計算すると、
[式1]η[=E]_0/V
[式2]E_0=-ΔG/ηF
[式3]ΔG=ΔH-TΔS
前記式1ないし3において、
ηはエネルギ転換効率「energy conversion efficiency」であり、
E0は熱力学的に水電解に求められる電圧(HO→H+1/2 O)であり、
Vは測定した電圧であり、
ΔGは水電解反応後に変わる自由エネルギであり、
nは参加する電子数(2)であり、
Fはfaradaic constant(96485C/mol)である。
【0146】
前記式1ないし3を用いて計算すると、50℃、1A/cmでのB-NiFe-LDHの最高効率は69.5%であり、M-NiFe-LDHの最高効率は71.3%であり、Ni foamの効率は同じ条件で53.2%であることがわかる。
【0147】
(2)時間-電圧グラフ
実施例のうち最も優れた効率を示した実施例3、比較例のうち最も優れた効率を示した比較例3、市販のイリジウム酸化物(Iridium oxide,IrOx)触媒を使用した比較例6のそれぞれ陰イオン交換膜水電解セルについて安定性を評価した。
【0148】
具体的には、各陰イオン交換膜水電解セルについて、50℃、1A/cm条件で、定電流(Galvanostatic)実験を行い、過電圧(overpotential)の変化を測定した。その結果を図8に示した。
【0149】
図8で、市販のイリジウム酸化物(Iridium oxide,IrOx)触媒を使用した比較例6は、速い速度で過電圧が増加して性能が急激に低下することを確認することができる。
【0150】
それに対して、実施例3および比較例3の場合、比較例6に比べて安定した駆動を行った。中でも、実施例3の駆動がより安定的であることがわかる。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図7a
図7b
図7c
図8
【国際調査報告】