(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】結晶化金属硫酸塩を製造するためのプロセス及び方法
(51)【国際特許分類】
C01G 53/10 20060101AFI20231116BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20231116BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20231116BHJP
C22B 47/00 20060101ALI20231116BHJP
C25C 1/10 20060101ALI20231116BHJP
C25C 1/08 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C01G53/10
C22B3/44
C22B3/44 101Z
C22B3/44 101A
C22B23/00 102
C22B47/00
C25C1/10 B
C25C1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528363
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 CA2021051614
(87)【国際公開番号】W WO2022099422
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516029001
【氏名又は名称】ハッチ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジョン フレイザー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ウィンイェン トラック
(72)【発明者】
【氏名】ルイーザ カヒナ ハルクーク
【テーマコード(参考)】
4G048
4K001
4K058
【Fターム(参考)】
4G048AA07
4G048AB02
4G048AB08
4G048AC06
4G048AE05
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
4K001BA24
4K001DB01
4K001DB16
4K001DB18
4K001DB22
4K001DB23
4K001DB26
4K058BA16
4K058BA17
4K058BB04
4K058CA04
(57)【要約】
結晶化金属硫酸塩を生成するためのプロセス及び方法。結晶化金属硫酸塩は電池グレードであってよい。上記方法は、金属イオン含有ストリームを受け取るステップと、金属硫酸塩を上記ストリームから結晶化させるステップとを含むことができる。上記プロセスは、金属処理プラントからのストリームを受け取るステップと、金属硫酸塩を上記ストリームから結晶化させるステップとを含むことができる。上記プロセスは、金属イオン含有ストリームを結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップを含む金属電解採取プロセスであってよい。上記プロセス又は方法は、母液を上流又は金属電解採取プロセスに戻すステップを含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属硫酸塩の結晶化プロセスであって:
金属処理プラントからのストリームの少なくとも一部を受け取るステップであって、前記ストリームが金属イオンを含む、受け取るステップと;
硫酸塩源を提供して、前記金属イオンから金属硫酸塩を形成するステップと;
前記金属硫酸塩を結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップと;
前記結晶化金属硫酸塩を前記母液から分離するステップと;
前記母液を前記プロセスの上流に戻す、又は前記母液を前記金属処理プラントに戻すステップと、
を含むプロセス。
【請求項2】
金属イオン含有ストリームを結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップを含む、金属電解採取プロセス。
【請求項3】
金属処理プラントのためのプロセスであって:
前記プラントからストリームの少なくとも一部を受け取るステップと;
前記ストリームから金属硫酸塩を結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップと、
を含むプロセス。
【請求項4】
硫酸塩源を提供するステップが、前記ストリームから受け取った硫酸アニオンを提供することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
硫酸塩源を提供するステップが、硫酸を加えることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記母液を前記プラントに戻すことをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
結晶化の前に、前記ストリームを精製するステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
硫酸塩源を前記ストリームに加えるステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記母液のpHを調整するステップをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記母液のpHを調整するステップが、前記母液を塩基化することを含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記プラントが、金属電解採取プラント、金属の水素還元プラント、金属中間体生成プラント、又は金属酸化物生成プラントの1つ以上である、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ストリームの少なくとも一部を受け取るステップが、前記プラントのステップから前記一部を受け取ることを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記母液を戻すステップが、前記プラントの同じステップ又は異なるステップに前記母液を戻すことを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ストリームが、前記プラントの金属電解採取、金属の水素還元、金属中間体生成、又は金属酸化物生成のステップへの供給物である、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ストリームが、前記プラントの金属電解採取ステップからの陽極液である、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記母液が、前記プラントの前記金属電解採取、金属の水素還元、金属中間体生成、又は金属酸化物生成のステップの上流に戻される、請求項14又は15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記母液が、前記プラントの前記金属電解採取ステップの下流に戻される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項18】
前記ストリームが、ニッケル、コバルト、又はマンガンのイオンを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記ストリームがニッケルイオンを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記結晶化金属硫酸塩が水和塩である、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記結晶化金属硫酸塩が電池グレードの硫酸ニッケルである、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記ストリームが金属電解採取への供給物である、請求項1~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
ナトリウム塩の結晶化を抑制するために、ホウ酸が前記ストリーム中に存在する、又は前記ストリームに加えられる、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
ホウ酸が、結晶化のために受け取られる前記ストリームの前記一部にのみ加えられる、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記金属硫酸塩を結晶化させるステップが、第1の結晶化ステップ及び第2の結晶化ステップを含み、前記第1の結晶化ステップからの前記結晶化金属硫酸塩が、前記第2の結晶化ステップにおいて再溶解され再結晶される、請求項1~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記第2の結晶化ステップからの母液が、前記第1の結晶化ステップ、又は前記プラント若しくはプロセスの別のステップのいずれかに戻される、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記母液が、前記母液が戻されるストリーム中のナトリウム、アンモニウム、又は別の不純物のカチオン濃度を低下させるために、前記プラントの溶媒抽出ステップ中の有機抽出剤に対する、回収すべき前記金属硫酸塩のプレロードに用いられるブリードストリームである、請求項1~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記金属硫酸塩を結晶化させるステップが、前記ストリームを硫酸で処理することをさらに含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
前記母液が酸性である、請求項1~28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記母液を前記プラントに戻すステップが、前記母液を前記プラントの上流で浸出剤として用いることを含む、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
結晶化金属硫酸塩の製造方法であって:
金属イオン含有ストリームの少なくとも一部を受け取るステップと;
金属硫酸塩を前記ストリームから結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップと;
前記母液をブリードストリームとして前記方法のステップに戻すステップと、
を含む、方法。
【請求項32】
結晶化の前に、前記ストリームを精製するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
硫酸塩源を前記ストリームに加えるステップをさらに含む、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記母液のpHを調整するステップをさらに含む、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記母液のpHを調整するステップが、前記母液を塩基化することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記母液を戻すステップが、金属電解採取プロセス、金属の水素還元プロセス、金属中間体生成プロセス、又は金属酸化物生成プロセスの1つ以上における1つ以上のステップに前記母液を戻すことを含む、請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ストリームの少なくとも一部を受け取るステップが、金属電解採取プロセス、金属の水素還元プロセス、金属中間体生成プロセス、又は金属酸化物生成プロセスにおけるステップから前記一部を受け取ることを含む、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記母液を戻すステップが、前記プロセスの同じステップ又は異なるステップに前記母液を戻すことを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ストリームが、金属電解採取プロセスからの陽極液である、請求項31~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記金属イオン含有ストリームが、ニッケル、コバルト、又はマンガンのイオンを含む、請求項31~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記金属イオン含有ストリームがニッケルを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記母液を戻すステップが、前記母液を浸出剤として用いることを含む、請求項31~41のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月12日に出願された米国仮特許出願第63/112,891号明細書(この内容全体が参照により本明細書に援用される)の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、金属処理プラント及び電解採取プロセスとの関連を含む、結晶化金属硫酸塩を製造するためのプロセス及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
結晶化金属硫酸塩は、リチウムイオン電池などの電池中に用いられる。例えば、結晶化金属硫酸塩は、リチウムイオン電池中に用いられるカソード材料の製造に用いられる供給材料であってよい。電池の需要は、輸送の電化などの持続する技術の進歩、及び従来のエネルギー源からの二酸化炭素の生成の減少の要望とともに増加している。金属処理プラントと統合される又は金属処理プラントで用いられるプロセス及び方法などの、結晶化金属硫酸塩を製造するためのプロセス及び方法が望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
単なる例として添付の図を参照しながら、これより本開示の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本開示の一実施形態による結晶化金属硫酸塩の製造プロセスの概略図であり、このプロセスは、金属電解採取(EW)又は水素還元プロセスの金属イオン含有供給物を受け取ることを含む。
【
図2】本開示の別の一実施形態による金属硫酸塩の生成プロセスの概略図であり、このプロセスは、金属電解採取プロセス又は金属中間体生成プロセスのストリームを受け取ることを含む。
【
図3】本開示の一実施形態による実施例1のプロセスの概略図である。
【
図4】本開示の一実施形態による実施例2のプロセスの概略図である。
【
図5】本開示の一実施形態によるニッケル電解採取プラントと統合された結晶化プロセスの概略図である。
【
図6】本開示の一実施形態によるニッケル電解採取プラントと統合された結晶化プロセスの概略図である。
【
図7】結晶化金属硫酸塩を生成するための一般的なプロセスの流れ図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
結晶化金属硫酸塩を製造するためのプロセスが望ましい。さらに、既存のプラントプロセス、例えば金属電解採取、金属の水素還元、金属中間体生成、又は金属酸化物生成を有するこのようなプロセスを用いることで、ある種の利点を得ることができた。例えば、本明細書に記載の1つ以上の実施形態によって、ニッケル金属を生成するニッケル(Ni)電解採取(EW)プロセスが改善される。1つ以上の実施形態では、Ni EWへのNi含有供給物の一部、又はNi EWからのNi含有陽極液の一部は、結晶化(別の精製及び/又は不純物除去ステップを伴う)を用いて処理されて、電池グレードの硫酸ニッケルが生成される。1つ以上の実施形態では、Ni含有供給物及び陽極液からの水の一部は、結晶化中に除去され、プロセスには戻されず、これによってプラント水のバランスを制御し、プラントのボトルネックをなくす方法が得られる。これは、例えば、プラントのボトルネックをなくすこと、及び/又はさらなる製造を可能にすることによって、ニッケル電解採取プラントに対する負荷の軽減に役立てることができる。本開示はニッケル電解採取に限定されない。1つ以上の実施形態では、例えば、ニッケル電解採取、コバルト電解採取、及び/又はマンガン電解採取への供給物から、又はこれらから得られる処理ストリームから、結晶化金属硫酸塩を生成することができる。1つ以上の実施形態では、結晶化金属硫酸塩は、例えば、金属の水素還元、金属中間体生成、及び/又は金属酸化物生成への供給物から、又はこれらから得られる処理ストリームから生成することができる。幾つかの実施形態では、例えば金属電解採取又は金属中間体生成からの処理ストリームの使用は、結晶化金属硫酸塩の製造に適切となりうる。例えば金属の水素還元又は金属酸化物生成から得られる金属イオンが枯渇した処理ストリームは、結晶化金属硫酸塩の生成には適切ではない場合がある。あらゆる適切な金属イオン含有ストリームを、本明細書に開示される方法及びプロセスに用いることができる。本発明によるこのような方法及びプロセスは、例えば、生成物の多様化、プラント水のバランスを制御するためのプラント水の出口の提供、プラント操業費用(OPEX)の削減、及び/又はプラントのボトルネックの解消に役立つ場合がある。
【0007】
特に定義されるのでなければ、本明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。
【0008】
本明細書及び請求項において用いられる場合、文脈が明確に別のことを示すのでなければ、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、複数の指示対象を含む。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「含む」という用語は、引き続く一覧が、非網羅的であり、必要に応じて、あらゆる別の追加の適切な項目、例えば1つ以上のさらなる特徴、成分、及び/又は構成要素を含む場合も含まない場合もあることを意味するものと理解される。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「金属硫酸塩」は、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び/又は硫酸マンガンのいずれか1つを意味することができる。さらに、「金属電解採取」は、ニッケル、コバルト、及び/又はマンガンの金属のいずれか1つ又は組み合わせを生成する電解採取プロセスを意味することができる。「金属の水素還元」は、ニッケル又はコバルトの水素還元のプロセスを意味することができる。「金属中間体生成」は、混合水酸化物の生成又は水酸化コバルトの生成のプロセスを意味することができる。「金属酸化物生成」は、主として硫酸塩化学を基礎とする上流の湿式冶金経路によって生じうる、酸化ニッケル、酸化コバルト、及び/又は酸化マンガンの生成のプロセスを意味することができる。
【0011】
本明細書において用いられる場合、「結晶化」、「結晶化する」、又は「結晶化された」は、溶液中で金属硫酸塩から選択的に形成され、結果として(X線回折によって示されるように)結晶性化合物が得られる、結晶ネットワークを形成するプロセスを意味することができる。本明細書に開示されるプロセス又は方法の1つ以上の実施形態では、非結晶化金属硫酸塩の結晶化は、非結晶化金属硫酸塩を選択的に結晶化させるのに十分な条件下で、晶析装置中で非結晶化金属硫酸塩を含む供給物ストリームを受け取ることを含む。1つ以上の実施形態では、供給物は、結晶化前に前処理が行われる。1つ以上の実施形態では、供給物は、結晶化前に硫酸で処理される。1つ以上の実施形態では、供給物は、所望の金属硫酸塩の結晶化を促進するのに十分な量の硫酸で処理される。1つ以上の実施形態では、供給物は、硫酸ナトリウム又は別の塩などの望ましくない生成物の結晶化を抑制するのに十分な量の硫酸で処理される。1つ以上の実施形態では、非結晶化金属硫酸塩の選択的結晶化は、溶液からのNiSO4、CoSO4、及び/又はMnSO4のいずれか1つ又は組み合わせの選択的に結晶化(例えば、供給材料によりナトリウム、リチウム、マンガンに対する減圧下の強制循環晶析装置によって)を行って、母液中に結晶化金属硫酸塩を生成することを含むことができる。次にこれらの結晶化金属硫酸塩を晶析装置から取り出し、次にそれらを母液から単離することができる。1回の結晶化サイクル(例えば、1つの晶析装置を使用)では、結晶化金属硫酸塩の生成に不十分である(例えば汚れた供給材料を伴って生成する)場合は、晶析装置から取り出した結晶を、純水又は回収水中に溶解させた後、第2の結晶化サイクル(例えば、第2の晶析装置を使用)に導入して、再結晶させることができる。結晶化後、母液は、望ましくない塩/金属(例えば、Mg、Na、カルシウム、K、ホウ酸塩など)を依然として含む場合があり、非結晶化金属硫酸塩及び/又はさらなる可溶化金属イオンが残存する場合もある。溶液中に残存する望ましくない材料から残存する非結晶化金属硫酸塩を選択的に回収するために、母液を晶析装置から「ブリード」させることができる。晶析装置からのブリードストリームは、金属電解採取、金属の水素還元、金属中間体生成、又は金属酸化物生成のプラントなどのプラント中の上流に用いることができる。ブリードストリームは、プラントのプロセス中の金属電解採取、金属の水素還元、金属中間体生成、又は金属酸化物生成のステップの上流に戻すことができる。様々な種類の晶析装置が、供給物溶液からの非結晶化金属硫酸塩の選択的結晶化を行うのに適切となる場合がある。このような晶析装置としては、蒸発晶析装置、強制循環(FC)晶析装置、間接強制循環(IFC)晶析装置、及びドラフトチューブバッフル(DTB)晶析装置が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような晶析装置の条件及び操作パラメーターは、結晶化させる金属硫酸塩の種類及び純度、及び/又は供給物溶液中の不純物の種類及び濃度に応じて選択することができる。
【0012】
本明細書において用いられる場合、「ストリーム」は、処理プラント中のいずれかのステップを出入りする流体を意味する。「供給物」及び「処理ストリーム」という用語は、「ストリーム」と同義で用いることができ、「供給物」は、より具体的には、処理プラント中のステップに入るものを意味し、「処理ストリーム」は、より具体的には、処理プラント中のステップから出るものを意味する。「母液」及び「ブリードストリーム」という用語は、結晶化プロセスからの残留液体を表すために、本明細書において同義で用いることができる。本明細書に開示されるプロセス又は方法の1つ以上の実施形態では、ストリーム又は供給物は、中間供給材料であってよい。中間供給材料は、元の又は原材料の供給材料から前処理されている供給材料である。中間供給材料は、元の原材料の供給材料よりも低濃度の不純物を前処理後に含むことができる。1つ以上の実施形態では、ストリーム又は供給物は、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、及び/又はホウ酸塩などの不純物に加えて、コバルト、マンガン、及び/又はニッケルなどの電池の材料の製造に望ましい金属を含む。あらゆる適切な金属イオン含有ストリームを本明細書に記載の方法又はプロセスに用いることができる。ストリームは、プロセスの金属電解採取、金属の水素還元、金属中間体生成(若しくは沈殿)、又は金属酸化物生成のステップへの供給ストリームの少なくとも一部であってよい。ストリームは、金属電解採取又は金属中間体生成からの処理ストリームの少なくとも一部であってよい。
【0013】
本明細書において用いられる場合、「プロセス」、「処理プロセス」、又は「処理」は、処理プラント中のプロセス又はステップを意味することができる。処理プラント中のステップは、前処理ステップ、不純物処理ステップ、又はこれら両方の組み合わせをさらに含むことができる。処理プラント中の「ステップ」は、機械的処理(例えば研削又は破砕);浸出;残留物の分離;不純物の除去;溶媒抽出;金属電解採取;金属の水素還元;金属中間体生成;金属酸化物生成;試薬を用いた処理(例えば酸性化、塩基性化、又は中和);又は別の物理的処理(例えば結晶化、蒸発、遠心分離、溶解、濾過、又は精製)のいずれか1つ又はこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本明細書において用いられる場合、「不純物」は、本明細書に記載の金属硫酸塩ではない、又は本明細書に記載の金属硫酸塩若しくは結晶化金属硫酸塩の形成には寄与しない供給材料の成分を意味する。本明細書において用いられる場合、「不純物」は、供給材料から単離されると、有用である、価値のある、又は望ましい材料となる場合がある。さらに、金属硫酸塩自体が、別の金属硫酸塩中の「不純物」となる場合がある。例えば、硫酸マンガン及び/又はコバルトは、1つ以上の実施形態において、結晶化硫酸ニッケルなどの中の不純物と見なされる場合がある。
【0015】
本開示の一実施形態によると、方法及びプロセス、又はプラントのための方法及びプロセスが提供される。この方法及びプロセスは、プラントのステップなどからのストリームの少なくとも一部を受け取るステップと;ストリームからの金属硫酸塩を結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップと;プラントの同じステップ若しくは異なるステップなどに母液を戻すステップとを含む。プラントは、金属電解採取プラント、金属の水素還元プラント、金属中間体生成プラント、又は金属酸化物生成プラントであってよい。
【0016】
一態様では、本開示は、金属硫酸塩を結晶化させるプロセスであって、金属処理プラントからストリームの少なくとも一部を受け取るステップであって、上記ストリームが金属イオンを含むステップと;硫酸塩源を上記ストリームに加えて金属硫酸塩を形成するステップと;上記ストリームから上記金属硫酸塩を結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップと;上記母液から上記結晶化金属硫酸塩を分離するステップと;上記母液を上記プロセスの上流に戻すステップ、又は上記母液を上記金属処理プラントに戻すステップとを含むプロセスを提供する。
【0017】
一態様では、本開示は、処理プラントを用いて結晶化金属硫酸塩を生成する方法であって、上記処理プラント中のステップからストリームの少なくとも一部を受け取るステップと;上記ストリームから金属硫酸塩を結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップと;上記処理プラント中の同じステップ若しくは異なるステップに上記母液をブリードストリームとして戻すステップとを含み、上記処理プラントが、金属電解採取プラント、金属の水素還元プラント、金属中間体生成プラント、又は金属酸化物生成プラントである方法を提供する。
【0018】
一態様では、本開示は、金属電解採取プラント、金属の水素還元プラント、金属中間体生成プラント、又は金属酸化物生成プラントのためのプロセスであって、金属電解採取、金属の水素還元、金属中間体生成、又は金属酸化物生成のプラントから供給ストリームの少なくとも一部を受け取るステップと;上記ストリームから金属硫酸塩を結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップと;上記母液を上記プラントに戻すステップとを含むプロセスを提供する。一態様では、本開示は、金属電解採取プラントのためのプロセスであって、金属電解採取プラントから陽極液の少なくとも一部を受け取るステップと;上記ストリームから金属硫酸塩を結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップと;上記母液を上記金属電解採取プラント又は上流プロセスに戻すステップとを含むプロセスを提供する。一態様では、本開示は、金属硫酸塩を結晶化させるプロセスであって、金属電解採取、金属の水素還元、金属中間体生成、又は金属酸化物生成のプラントから副ストリームとして金属含有供給物を受け取るステップと;金属含有供給物から金属硫酸塩を結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップと;上記母液をブリードストリームとしてプラントに供給するステップとを含むプロセスを提供する。
【0019】
ストリームの受け取り
1つ以上の実施形態では、本開示は、金属処理プラントのためのプロセスであって、プラントからストリームの少なくとも一部を受け取るステップと;上記ストリームから金属硫酸塩を結晶化させて、母液中に結晶化金属硫酸塩を形成するステップとを含むプロセスを提供する。1つ以上の実施形態では、金属処理プラントは、ニッケル電解採取のためのプラントであってよい。1つ以上の実施形態では、結晶化金属硫酸塩は、例えば、ニッケル電解採取、コバルト電解採取、及び/又はマンガン電解採取への供給物から、又はそれらからの処理ストリームから生成することができる。1つ以上の実施形態では、結晶化金属硫酸塩は、例えば、金属の水素還元、金属中間体生成、及び/又は金属酸化物生成への供給物から、又はそれらからの処理ストリームから生成することができる。
【0020】
1つ以上の実施形態では、本明細書に開示されるプロセス又は方法は、既存のプラントとともに用いるものであってよいし、又は新しく設計されたプラントと統合することができる。プラントからのストリームはプロセス又は方法に直接移送することができ、又はストリームは、上記プロセス又は方法で受け取る前に、保管、輸送、若しくは精製を行うことができる。
【0021】
ストリーム又はその一部は、プラントのステップから受け取ることができる。ストリームは、プラントの金属電解採取、金属の水素還元、金属中間体生成、又は金属酸化物生成のステップへの供給物であってよい。ストリームは、プラントの金属電解採取ステップからの陽極液であってよい。
【0022】
幾つかの実施形態では、例えば金属電解採取又は金属中間体生成からの処理ストリームの使用は、結晶化金属硫酸塩の生成に適切となる場合がある。例えば金属の水素還元又は金属酸化物生成から得られる金属イオンが枯渇した処理ストリームは、結晶化金属硫酸塩の生成に適切とならない場合がある。あらゆる適切な金属イオン含有ストリームを本明細書に開示される方法及びプロセスに用いることができる。
【0023】
ストリームは、ニッケル、コバルト、又はマンガンのイオンを含むことができる。ストリームは、金属硫酸塩を含む水溶液であってよい。ストリームは、さらなる処理を行わずに受け取り結晶化させることができ、又はストリームは、1つ以上の精製ステップによって精製することができる。
【0024】
1つ以上の実施形態では、ホウ酸をストリームに加えることができる。ホウ酸は、ナトリウム塩の結晶化を抑制するために加えることができる。ホウ酸は、結晶化のために受け取られるストリームの一部にのみ加えることができる。1つ以上の実施形態では、ホウ酸は、ストリーム中に既に存在していてもよい。例えば、ホウ酸は、ニッケル電解採取に有益な添加剤となることができ、ニッケル電解採取からのニッケル含有陽極液のストリーム中に存在することができる。
【0025】
1つ以上の実施形態では、金属硫酸塩の結晶化は、硫酸によりストリームを処理するステップをさらに含む。この方法又はプロセスは、結晶化ステップ中又は精製ステップ中にストリームを硫酸で処理するステップを含むことができる。ストリームが金属硫酸塩を含む場合は、硫酸をストリームに加える場合も加えない場合もある。ストリームが金属イオンを含む場合は、硫酸又は別の硫酸塩源をストリームに加えることができる。
【0026】
精製
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のプロセス又は方法は、結晶化の前に任意にストリームを精製するステップをさらに含む。精製は、金属硫酸塩を含む水溶液(例えば、プラントからのストリーム)を精製することを含むことができ、このストリームに対して、Cu(例えば、スルフィド化、溶媒抽出、セメンテーション、イオン交換などによる)、Fe及びAl(例えば、沈殿、イオン交換などによる)、Zn(例えば、スルフィド化、溶媒抽出、イオン交換などによる)、Co(例えば、溶媒抽出、イオン交換、沈殿などによる)、Ca(例えば、溶媒抽出、イオン交換などによる)、Mg(例えば、溶媒抽出、イオン交換などによる)、又はF(例えば、カルシウム/石灰の添加による)などの特定の不純物又は成分を除去するための精製段階(本明細書では不純物又は成分の除去段階とも呼ばれる)のいずれか1つ又は組み合わせが行われる。除去すべき不純物又は成分の種類及び量は、少なくとも部分的には、ストリームが形成される供給材料の種類、及びプロセスによって生成される最終生成物の規格によって決定される。
【0027】
除去すべき不純物又は成分の例としては、ナトリウム(Na)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びマンガン(Mn)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。除去する必要が生じうる成分は、ニッケル、コバルト、及びマンガンのいずれか1つ又は2つを含むことがき、これによって、結晶化硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、及び硫酸マンガン(MnSO4)のただ1つ又は2つが、例えば電池グレードの金属硫酸塩などの最終生成物として用いるために晶析装置から単離される。別の場合では、硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、及び硫酸マンガン(MnSO4)の3つ全てが、晶析装置から単離される。電池グレードの金属硫酸塩が必要な場合、例えば、電池グレードの硫酸ニッケルに許容されるそのような不純物に関して特定の製品規格(例えば、制限)が存在し、上記製品規格を超える量でプロセスの供給材料、水、又は試薬の中に存在するそのようなあらゆる不純物は、それらの濃度を低下させる必要がある。
【0028】
ストリームから不純物又は成分を除去するための多数の適切な方法が存在する。そのような方法としては、沈殿、大気圧又は加圧浸出、スルフィド化、溶媒抽出、イオン交換、並びにセメンテーションが挙げられるが、これらに限定されるものではない。適切な方法(及びそれらの運転条件)の選択は、少なくとも部分的には、除去すべき不純物又は成分の種類及び量、並びにプロセスによって生成される最終生成物の規格に応じて行われる。例えば、銅は、沈殿、溶媒抽出、スルフィド化、セメンテーション、又はイオン交換などによって除去することができ、鉄及びアルミニウムは、沈殿、又はイオン交換などによって除去することができ、亜鉛は、スルフィド化、溶媒抽出、又はイオン交換などによって除去することができ、コバルト及び/又はマンガンは、溶媒抽出、イオン交換、又は酸化沈殿などによって除去することができる。それぞれの方法の条件及び操作パラメーターは、一般に知られており、除去すべき不純物又は成分の種類及び量に応じて選択することができる。
【0029】
例えば、セメンテーションは、第1の金属イオンと第1の固体金属との間の酸化還元反応を伴うプロセスであり、これによって、第1金属イオンは第1の固体金属によって還元されて第2の固体金属になり、次に第1の固体金属は酸化されて第2の金属イオンとなる。セメンテーションは、例えば銅を除去するために選択することができるが、その理由は、別の試薬を用いることなく価値のある金属をプロセスに加えることができ(例えば、ニッケル粉末が第1の固体金属として用いられる場合、Niを加えることによって);及び/又はプロセスに酸又は塩基の試薬を加える必要なしに不純物の除去を(例えば、還元によって)行うことが可能となりうるからである。
【0030】
ストリームから不純物又は成分を除去するための精製段階は、酸又は塩基の試薬の使用を最小限にするために選択することができる。例えば、Cuは、ニッケル粉末を用いたセメンテーションによって除去することができ、これはわずかな酸を必要とし、塩基は必要とせず、酸を生成しないが、対照的に、溶媒抽出(SX)によるCuの除去は、除去される1モルのCu当たり1モルの硫酸が必要であり、上記の加えられる酸の全ては下流の塩基によって中和する必要がある。Fe及びAlなどの別の不純物は、pHを(例えば約5.5まで)上昇させることによる沈殿により除去することができ、このためには塩基を加える必要があるが、酸を加える必要はなく、塩基は、外部の中和剤として、又はプロセスの下流で生成した塩基性金属塩として導入することができる。対照的に、イオン交換(IX)によるFe及びAlの除去は、Fe及びAlを交換カラム上に搭載するために塩基を加える必要があり、交換カラムからFe及びAlを取り出すために酸を加える必要もあり、それらの不純物を廃棄できる形態に変換するためにさらなる試薬又はプロセスステップも必要である。
【0031】
本開示の1つ以上の実施形態では、処理プロセスであって、非結晶化金属硫酸塩を含むストリームが、供給材料からのカルシウム及び/又はマグネシウム不純物の第2の部分をさらに含み、精製が、フッ化物源を上記ストリームに加えるステップと、上記フッ化物源を、カルシウム及び/又はマグネシウム不純物の第2の部分と選択的に反応させるステップと、フッ化カルシウム及び/又はフッ化マグネシウム化合物を形成するステップと、浸出した溶液からフッ化カルシウム及び/又はフッ化マグネシウム化合物を沈殿させるステップとを含む、処理プロセスが提供される。
【0032】
本開示の1つ以上の実施形態では、処理プロセスであって、非結晶化金属硫酸塩を含むストリームが、供給材料からのカルシウム及び/又はマグネシウム不純物の第2の部分をさらに含み、精製は、ストリーム溶液からのカルシウム及び/又はマグネシウム不純物の少なくとも第2の部分を、溶媒抽出試薬の上又は中に選択的に抽出する溶媒抽出ステップを含む、処理プロセスが提供される。1つ以上の実施形態では、溶媒抽出ステップは、カルシウム及び/又はマグネシウム不純物を溶媒抽出試薬からスクラビングすることをさらに含む。
【0033】
結晶化/Coの結晶化
本明細書に記載のプロセス及び方法は、プラントからのストリームから金属硫酸塩を結晶化させて結晶化金属硫酸塩を形成することを含む。
【0034】
ストリーム又は任意に精製されたストリームは、溶液からの硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び/又は硫酸マンガンのいずれか1つ又は組み合わせの選択的結晶化又は共結晶化に十分な条件下で晶析装置中に導入される。このような選択的結晶化は、1つ以上の結晶化金属硫酸塩(例えば、ニッケル、マンガン、及び/又は硫酸コバルト)を母液中に得るために、ストリーム中に残存するアンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの成分(供給材料によって決定される)に対して行われる。
【0035】
硫酸ニッケル、硫酸マンガン、及び/又は硫酸コバルトの選択的結晶化又は共結晶化を行うために、様々な種類の晶析装置が適切となりうる。このような晶析装置としては、蒸発晶析装置、強制循環(FC)晶析装置、間接強制循環(IFC)晶析装置、及びドラフトチューブバッフル(DTB)晶析装置が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような晶析装置の条件及び操作パラメーターは、結晶化させる金属硫酸塩の種類及び純度、及び/又はストリーム中の不純物の種類及び濃度に応じて選択することができる。例えば、IFC又はDTB晶析装置が用いられる場合、金属硫酸塩の結晶化時に、より粗い結晶が形成されることがあり、これによって、リチウム、ナトリウムマグネシウム、及び/又はカリウムなどの上記結晶化中の不純物の混入を抑制することができる。強制循環晶析装置が用いられる場合、これは、ストリームを周囲温度(例えば、約25℃)まで瞬間的に冷却するために減圧下で操作することができ、次にこれによって水の蒸発及び金属硫酸塩の結晶化を促進することができる。このような場合、蒸発させる遊離水の量は、リチウム又はナトリウムなどのある種の不純物の飽和点に到達するのに必要な量より少なくすることができる。リチウム及びナトリウムなどの不純物に対して硫酸ニッケル、硫酸コバルト、及び硫酸マンガンをともに選択的に結晶化させるために晶析装置が用いられる場合、晶析装置は、1~5の間、又は1.5~2.5の間のpHレベルで運転することができる。幾つかの実施形態では、0未満、1.5未満、又は0.5~1.5の間のpHレベルが有効である。
【0036】
さらに、晶析装置の条件及び操作パラメーターは、1つの金属硫酸塩、又は複数の金属硫酸塩の組み合わせが、溶液中の別の硫酸塩及び成分(例えば、不純物)に対して選択的に結晶化されるように選択することができる。例えば、1つ又は2つの金属硫酸塩の濃度が、ストリーム中で非常に低濃度であり、第3の金属硫酸塩がはるかに高い濃度である場合、晶析装置のブリード速度(例えば、十分高いブリード速度)を注意深く選択することによって、第3の金属硫酸塩を1つ又は2つの金属硫酸塩に対して選択的に結晶化することが可能となり得る。
【0037】
晶析装置の条件及び操作パラメーターは、結晶化金属硫酸塩の純度を管理するために選択することもできる。結晶化中の晶析装置からの母液のブリーディング、及びブリーディングが起こる速度は、例えば不純物の結晶化を選択的に抑制することによって、結晶化金属硫酸塩の純度に影響を与えることがある。本明細書において用いられる場合、特定の不純物の結晶化を選択的に抑制するためのブリード速度の選択は、異なる不純物の結晶化を抑制するよりも、特定の不純物の結晶をより抑制する可能性のあるブリード速度の範囲内に晶析装置ブリード速度を設定することを意味する。ブリード速度は、特定の不純物の結晶化の抑制が最大化されるように選択することができる。不純物は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどであってよい。母液のより高いブリード速度の使用は、結晶化金属硫酸塩の純度に影響しうる母液中の不純物及び別の成分をより低濃度に維持することに役立つ。一例では、任意に精製されたストリームが、主な供給材料不純物中で30%増加するために、例えば10の低純度である場合、これによって、約5~10%のより低い金属硫酸塩結晶化シングルパス収率及びより多い全体的な母液のブリードが得られる。
【0038】
さらに、不純物の溶解度は温度依存性である場合があり、したがって、晶析装置の温度及び晶析装置ブリード速度の選択は、結晶化させる金属硫酸塩の純度の管理に有効となりうる。例えば、硫酸リチウムの溶解度は温度上昇とともに低下し、そのため晶析装置がより高い温度で操作される場合、ストリーム中に残存するあらゆる硫酸リチウムを沈殿させて、結晶化金属硫酸塩の純度に影響を与えることができる。しかし、晶析装置がより低い温度で操作される場合、硫酸リチウムは溶液中に残存することがあり、晶析装置のブリード速度を増加させることで、硫酸リチウムを晶析装置から除去して、これが溶液から金属硫酸塩の結晶化とともに出てくることを防止することができる。或いは、晶析装置が異なる温度条件下で操作され、同じブリード速度が維持される場合、異なる量のリチウム汚染物質を得ることができる。対照的に、ナトリウムの溶解度は温度上昇とともに増加する。そのため、晶析装置がより高い温度で操作される場合、ナトリウムは溶液中に残存することができ、晶析装置のブリード速度を増加させることで、金属硫酸塩の結晶化とともに溶液から出ることが可能となる前に、ナトリウムを晶析装置から除去することができる。しかし、晶析装置がより低い温度で操作される場合、母液中に残存するナトリウムは、そのより低い溶解度のために沈殿することができ、又はニッケルと反応して、結晶化金属硫酸塩の純度に影響を与えうる複塩を形成することができる。
【0039】
不純物の溶解度は、ストリーム及び/又は母液中に存在する遊離水の量に依存する場合もあり、したがって、晶析装置中の水の量の管理は、結晶化させる金属硫酸塩の純度の管理の有効な手段となりうる。例えば、幾つかの場合では、金属硫酸塩は、金属硫酸塩水和物(すなわち、結晶の一体部分として明確な比率で結合した結晶化金属硫酸塩及び水分子)として溶液から結晶化し、これによって母液中の水の濃度が低下する。遊離水の濃度を低下させることによって、母液中の不純物(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)の濃度を、溶液から結晶化し、結晶化金属硫酸塩の純度に影響を与える点まで増加させることもできる。しかし、晶析装置中で、十分な量の水がストリーム及び/又は母液に加えられる場合、又はその量の過剰の水が上流処理後にストリーム中に残存する場合(例えば、少なくとも水和物形成のために失われると予想される量の水)、その遊離水の存在が、溶液からの不純物の結晶化を抑制することができる。
【0040】
結晶化金属硫酸塩は、晶析装置から取り出すことによって母液から単離することができる。例えば、結晶化金属硫酸塩は、スラリーとして取り出すことができ、これをフィルターに通したり遠心分離したりすることで、母液から結晶が分離される。次に濾液又は遠心分離液(すなわち、母液)は、晶析装置に戻すことができ、又はその一部をブリードさせることができ、単離された結晶は、フィルター上での洗浄、又は遠心分離を行い、乾燥させることができる。幾つかの場合では、ストリームが汚れた供給材料から形成される場合など、1つのみの晶析装置の使用では、適切に純粋な結晶化金属硫酸塩を生成するのに不十分である。第1の晶析装置から取り出された結晶を、次に水(例えば、純水又は回収水)中に溶解させた後、第2の晶析装置中に導入して再結晶させ、さらに精製することができる。
【0041】
上記プロセスによって、結晶化した硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、及び硫酸マンガン(MnSO4)のいずれか1つ又は組み合わせを生成することができる。上記プロセスによって、結晶化した硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(Co-SO4)、及び硫酸マンガン(MnSO4)のいずれか1つ又は2つを生成することができる。上記プロセスによって、結晶化した硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、及び硫酸マンガン(MnSO4)の3つ全てを生成することができる。上記プロセスから単離される結晶化金属硫酸塩の中で、一部は電池グレードとなることができる。上記プロセスから単離される結晶化金属硫酸塩の中で、一部は電気めっきへの使用に適切となりうる。上記プロセスから単離される結晶化金属硫酸塩の中で、一部は金属硫酸塩水和物(例えば、結晶の一体部分として種々の比率で結合した結晶化金属硫酸塩及び水分子;例えば、金属硫酸塩1つ当たり1つの水分子、又は金属硫酸塩1つ当たり6つの水分子、又は金属硫酸塩1つ当たり7つの水分子)となることができる。
【0042】
本開示の1つ以上の実施形態では、金属硫酸塩の結晶化は、金属硫酸塩を結晶化させるときに不純物の結晶化を選択的に抑制するために、母液をブリードさせることと、及び晶析装置からのブリード速度を制御することとをさらに含む。1つ以上の実施形態では、金属硫酸塩の結晶化は、金属硫酸塩を結晶化させるときに不純物の結晶化を選択的に抑制するために、晶析装置からの水の蒸発速度を制御することと、晶析装置への水の添加を制御することとの1つ以上によって、晶析装置中の遊離水の量を制御することをさらに含む。
【0043】
本開示の1つ以上の実施形態では、金属硫酸塩の結晶化は、水溶液からの硫酸ニッケル、硫酸マンガン、及び硫酸コバルトのいずれか1つ又は2つの選択的結晶化を含む。本明細書に記載のプロセスの1つ以上の実施形態では、金属硫酸塩結晶化は、水溶液からの硫酸ニッケル、硫酸マンガン、及び硫酸コバルトのいずれかの組み合わせの選択的結晶化を含む。本明細書に記載のプロセスの1つ以上の実施形態では、結晶化金属硫酸塩は、電池グレードの結晶化金属硫酸塩、又は電気めっきグレードの結晶化金属硫酸塩である。
【0044】
1つ以上の実施形態では、ストリームは金属イオンを含む。ストリームが金属硫酸塩の結晶化に十分な硫酸塩を含まない場合は、ストリームに硫酸塩源を加えることができる。硫酸塩源は、精製ステップ中又は結晶化ステップ中にストリームに加えることができる。1つ以上の実施形態では、硫酸塩源は硫酸である。1つ以上の実施形態では、ある金属硫酸塩の結晶化が別のものより好都合となるなどあらゆる適切な目的のためにストリーム又は晶析装置に硫酸を加えることができる。例えば、硫酸ニッケルの結晶化が硫酸ナトリウムの結晶化よりも好都合となるように、硫酸を加えることができる。
【0045】
再循環
1つ以上の実施形態では、本明細書に開示されるプロセス及び方法は、母液をプラントに戻すことを含む。プラントは、金属電解採取プラント、金属の水素還元プラント、金属中間体生成プラント、又は金属酸化物生成プラントの1つ以上であってよい。ストリームがプラントの特定のステップから上記プロセス又は方法に受け取られる場合、母液を戻すことは、母液をプラントの同じステップ又は異なるステップに戻すことを含む。母液は、プラントの金属電解採取、金属の水素還元、金属中間体生成、又は金属酸化物生成のステップの上流に戻すことができる。母液は、プラントの金属電解採取、金属の水素還元、金属中間体生成、又は金属酸化物生成のステップの下流に戻すことができる。
【0046】
1つ以上の実施形態では、本明細書に開示されるプロセス及び方法は、第1の結晶化ステップ及び第2の結晶化ステップにおいて金属硫酸塩を結晶化させることを含むことができる。第1の結晶化ステップで得られた結晶化金属硫酸塩は、結晶化ステップで再溶解させ再結晶させることができる。第1の結晶化ステップ及び/又は第2の結晶化ステップで得られた母液は、プラント又はプロセスの第1の結晶化ステップ又は別のステップのいずれかに再循環させたり戻したりすることができる。
【0047】
1つ以上の実施形態では、母液は、母液が戻されるストリーム中のナトリウム、アンモニウム、又は別の不純物のカチオン濃度を低下させるために、プラントの溶媒抽出ステップ中の有機抽出剤に対する、回収すべき金属硫酸塩のプレロードに用いられるブリードストリームであってよい。
【0048】
1つ以上の実施形態では、母液は酸性であってよい。酸性の母液はプラントに戻すことができる。酸性の母液はブリードストリームとして用いることができ、このブリードストリームは、プラントの上流で浸出剤として用いることができる。1つ以上の実施形態では、母液のpHを調整することができる。1つ以上の実施形態では、
図7中に示されるように、母液を塩基性化することができる。塩基性化された母液は、プロセスの上流で用いたり、プラントに戻したりすることができる。酸性化、中和、又は塩基性のいずれかが行われた母液は、本開示の意図から逸脱しないあらゆる適切な方法で用いたり廃棄したりすることができる。
【0049】
金属硫酸塩を生成するためのプロセス
本開示の1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のプロセス又は方法によって、硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、及び硫酸マンガン(MnSO4)のいずれか1つ又は組み合わせの選択的結晶化又は共結晶化が行われる。1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のプロセスによって、結晶化される硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、及び硫酸マンガン(MnSO4)の1つ又は2つの選択的結晶化又は共結晶化が行われる。1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のプロセスによって、結晶化される硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、及び硫酸マンガン(MnSO4)の3つすべての選択的共結晶化が行われる。1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のプロセスによって、電池グレードの結晶化金属硫酸塩が得られる。1つ以上の実施形態では、上記プロセスによって、電気めっきグレードの結晶化金属硫酸塩が得られる。1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のプロセスでは、電池グレードの結晶化金属硫酸塩を単離するために溶媒抽出回路は使用されない。1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のプロセスによって、資本コスト及び運転コストが減少し、結晶化金属硫酸塩の収率が増加し、及び/又は固体廃棄物として硫酸ナトリウムが減少する又はなくなる(外部中和剤として水酸化ナトリウムが使用され、電気分解によって硫酸ナトリウムが水酸化ナトリウムに変換して戻される場合、又は必要な外部中和剤の量が減少する場合)。
【0050】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のプロセス又は方法によって、資本コスト及び運転コストが減少するが、その理由は、結晶化金属硫酸塩を単離するために、溶媒抽出回路の代わりに晶析装置を使用するからである。結晶化にはエネルギー入力が必要であるが、添加試薬を使用する必要は無く、それによって運転コストが減少する。さらに、結晶化に関連する資本コストは、溶媒抽出回路に関連する資本コストよりも低い。
【0051】
別の実施形態では、本明細書に記載のプロセス又は方法は、試薬の使用が減少することによって資本コスト及び運転コストが減少する。例えば、硫酸ニッケルを形成するためのニッケル溶媒抽出回路では、生成される1モルの硫酸ニッケル当たり1モルの硫酸及び2モルの水酸化ナトリウムの消費が必要となる。対照的に、結晶化では、あらゆる添加試薬を使用する必要がない。本明細書に記載のプロセスは、精製段階の一部として溶媒抽出ステップが使用される場合でさえも試薬の使用を減少させることができ、その理由は上記溶媒抽出は、一般により小さな負荷となり(すなわち、より低濃度の不純物)、そのため必要な酸及び塩基が少ないからである。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のプロセスは、処理ステップ数を減少させることによって資本コスト及び運転コストが減少させる。プロセスステップ数の減少によって、資本コスト及び運転コストが減少するだけでなく、プロセスの複雑さも減少し、したがってプロセスを行うために必要なインフラストラクチャー及びスキルセットの複雑さが減少する。例えば、溶媒抽出は、抽出、スクラビング、及びストリッピングの複数の段階を必要とし、水性排出ストリームの処理、残滓の除去、有機蒸気の回収、及び防火のためのシステムを必要とする比較的複雑な単位操作である。結晶化金属硫酸塩を単離するために溶媒抽出回路の代わりに晶析装置を使用することによって、このようなプロセスの複雑性(及び関連のコスト)を回避することができる。
【0052】
別の実施形態では、本明細書に記載のプロセス又は方法では、プロセスの精製段階、又はプラントの上流ステップにおいて、ナトリウム、カリウム、又はマグネシウムなどの特定不純物又は成分が加わることが減少し又は防止されることによって、結晶化金属硫酸塩の収率が増加する。例えば、晶析装置中で結晶化金属硫酸塩のワンパス収率が増加すると、母液中のナトリウムなどの不純物の濃度も増加する。結果として、結晶化金属硫酸塩の純度を管理するために晶析装置のブリード速度も(例えば、母液中で不純物が飽和濃度に近づくことを抑制又は防止することによって)増加させる必要がある。しかし、晶析装置のブリード速度が増加すると、ブリードした非結晶化金属硫酸塩が塩基性化して沈殿し試薬を消費するので、非効率的となる場合がある。そのため、プロセスの浸出及び/又は精製段階においてこれらの不純物が加わることを減少させる又は防止することは、不純物と金属硫酸塩との共結晶化を回避しながらより低いブリード速度で晶析装置を操作できることを意味し、これによって結晶化金属硫酸塩のワンパス収率を改善することができ、同時に運転コストを減少させることもできる。本開示のプロセスの1つ以上の実施形態では、特定の不純物(例えば、ナトリウム、マグネシウムなど)が加わることは、晶析装置からブリードする母液から沈殿し塩基性化される塩基性金属塩(例えば、金属水酸化物Ni(OH)2、Co(OH)2、Mn(OH)2など)を用いることで減少し又は防止される。幾つかの実施形態では、不純物(例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウムなど)が塩基性金属塩の中に沈殿することを減少させる又は防止するために、塩基性金属塩の沈殿及び洗浄は、(例えば、pHレベルの選択、2段階沈殿回路の使用などによって)注意深く制御される。
【0053】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のプロセス又は方法では、結晶化母液の単離及び再循環のループを用いることによって結晶化金属硫酸塩の収率が増加する。このループの反復する性質によって、結晶化金属硫酸塩の非常に良好な回収が保証される。
【0054】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のプロセス又は方法では、金属イオンを含有するストリームから金属硫酸塩生成物が得られるので、資本コスト及び運転コストが減少する。これらの金属硫酸塩は、電池グレードになることができ、既存の金属処理プラントに対してさらなる有用な生成物となりうる。
【0055】
本明細書に記載の本発明をより十分に理解するため、以下の実施例が説明される。これらの実施例は単に説明を目的としていることを理解すべきである。したがって、これらによって本開示の範囲が限定されるべきではない。
【実施例】
【0056】
実施例1
Ni EWへのNi含有供給物の処理
ニッケル金属を生成するニッケル電解採取(Ni EW)プロセスのために、Ni EWに送られるNi含有供給物の一部は、(別の精製/不純物処理ステップとともに)結晶化を用いて処理して、電池グレードの硫酸ニッケルを生成することができる(
図1参照)。
【0057】
Ni EW供給物からの電池グレードの硫酸ニッケルの生成の特定の一実施形態を
図3中に示す。Ni EWプロセスにおいて、ニッケル含有供給材料は以下のステップで処理される:ニッケル浸出;残留物の分離;不純物除去;コバルトの溶媒抽出;及びニッケルの電解採取。ニッケル電解採取から得られるニッケル含有陽極液は、次に上流、例えば、ニッケル浸出ステップに戻される。
図3中に示される、Ni EWへのニッケル含有供給物は、部分的には粗ニッケル晶析装置に迂回させることができる。この実施例では、全Ni EW供給物の10~20%w/wが第1の(粗)ニッケル晶析装置に迂回し、供給物のニッケル含有量は80~90g/Lであった。第1の(粗)ニッケル晶析装置中のホウ酸濃度は、6~40g/L供給物であった。第1(粗)及び第2(純)ニッケル晶析装置の条件は、pH1~2において10~15℃であった。プロセスのニッケル回収率は60~85%であり、供給物1m
3当たり0.4~0.5m
3の水が除去された。
【0058】
ホウ酸濃度の増加は、ニッケル収率の増加に有益であることが分かった。ホウ酸濃度は、Ni EW中のホウ酸濃度に影響を与えることなく結晶化プロセス中で増加させることができる。なんらかの特定の理論によって束縛しようと望むものではないが、ホウ酸の増加によって、第1の(粗)晶析装置中のナトリウムの結晶化が抑制されることによってニッケルの収率が増加すると考えられる。
【0059】
第1(粗)及び/又は第2(純)結晶化ステップからの母液は、第1(粗)及び/又は第2(純)晶析装置からのブリードストリームと呼ばれる場合もあり、これはニッケル電解採取プラントに戻すことができる。例えば、
図3中に示されるように、ブリードストリームは、Ni EWへのニッケル含有供給物、不純物除去への供給物、及び/又はコバルト溶媒抽出ステップに戻される。
【0060】
図5は、
図3のようなニッケル電解採取プラントと統合された結晶化プロセスの一実施形態を示している。この実施形態では、結晶化は以下のステップを含む:予備蒸発;粗結晶化;遠心分離;再溶解;カルシウムイオン交換;炭素カラムによる精製;ポリッシュフィルタリング;第2の(純)結晶化;及び第2の遠心分離。このようなプロセスの利点の1つは、結晶化中にNi含有供給物から水の一部が除去され、プロセスに戻らないことである。特に、水は結晶化中に蒸発する。
【0061】
実施例2
Ni EWからのNi含有陽極液の処理
ニッケル金属を生成するニッケル電解採取(Ni EW)プロセスの場合、Ni EWから得られるNi含有陽極液の一部は、結晶化(別の精製/不純物処理ステップを伴う)を用いて処理して、電池グレードの硫酸ニッケルを生成することができる(
図2参照)。
【0062】
Ni EW陽極液から電池グレードの硫酸ニッケルを生成する特定の一実施形態を
図4中に示している。このプロセスでは、ニッケル含有供給材料は以下のステップによって処理される:ニッケル浸出;残留物の分離;不純物除去;コバルトの溶媒抽出;及びニッケルの電解採取。Ni EWからのニッケル含有陽極液は次に上流、例えばニッケル浸出ステップに戻すことができる。
図4中に示されるように、Ni EWステップからのニッケル含有陽極液は、一部が粗ニッケル晶析装置に迂回させることができる。この実施例では、全陽極液の30~40%w/wが第1の(粗)ニッケル晶析装置に迂回し、陽極液ストリームのニッケル含有率は40~50g/Lであった。第1の(粗)晶析装置の条件は20~30℃であり、第2の(純)ニッケル晶析装置では10~15℃であった。第1の(粗)晶析装置のブリードの酸性度は300~500g硫酸/Lであった。プロセスのニッケル回収率は60~85%であり、陽極液1m
3当たり0.4~0.5m
3の水が除去された。
【0063】
陽極液の酸性度によって、第1の(粗)晶析装置中のナトリウムの結晶化が抑制されることが分かった。なんらかの特定の理論によって束縛しようと望むものではないが、硫酸ナトリウムの溶解度は、硫酸濃度とともに(約1.7mH2SO4のある点まで)増加するが、一方、硫酸ニッケルの溶解度は硫酸の増加とともに低下することに留意されたい。例えば、25℃の(飽和)水溶液中の硫酸ナトリウムの溶解度は約1.5mol/kgであり、これは0.75mol/kgH2SO4では2mol/kgまで増加し、1.7mol/kgH2SO4では約2.5mol/kgまで増加する。1.7mol/kgH2SO4を超えると、硫酸ナトリウムの溶解度は低下する(例えば6~10mol/kgH2SO4で1mol/kg未満となり、約8mol/kgH2SO4において<0.1mol/kgの最小値となる)。25℃における水溶液中の硫酸ニッケルの溶解度は約2.5mol/kgであり、1mol/kgH2SO4中で約2.2mol/kgまで、2mol/kgH2SO4中で1.8mol/kg、3mol/kgH2SO4中で1.5mol/kgまで、4mol/kgH2SO4を超えると約1mol/kgまで低下する。
【0064】
第1の(粗)及び/又は第2の(純)結晶化ステップからの母液は、第1の(粗)及び/又は第2の(純)晶析装置からのブリードストリームと呼ばれる場合もあり、これはNi EWプラントに戻すことができる。例えば、
図4中に示されるように、ブリードストリームは、ニッケル電解採取からのニッケル含有陽極液ストリーム、不純物除去への供給物、及び/又はコバルト溶媒抽出ステップに戻される。
【0065】
図6は、Ni EW陽極液からの硫酸ニッケルを結晶化させるための
図4のようなニッケル電解採取プラントと統合された結晶化プロセスの一実施形態を示している。この実施形態では、結晶化は以下のステップを含む:予備蒸発;粗結晶化;遠心分離;再溶解;カルシウムイオン交換;炭素カラムによる精製;ポリッシュフィルタリング;第2の(純)結晶化;及び第2の遠心分離。このようなプロセスの利点の1つは、結晶化中に陽極液から水の一部が除去され、プロセスに戻らないことである。特に、水は結晶化中に蒸発する。
【0066】
本明細書に記載の実施形態は、単なる例であることを意図している。当業者によって特定の実施形態に対して変更、修正、及び変形を行うことが可能である。請求項の範囲は、本明細書に記載の特定の実施形態によって限定されるべきではないが、全体として本明細書と整合性のある方法で解釈されるべきである。
【0067】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、本発明が関与する当業者の水準を示しており、これらは、それぞれの個別の公開特許又は特許出願が参照により援用されると明確に個別に示されるかのように、同程度で参照により本明細書に援用される。
【0068】
このように本発明は説明されるが、同じことが多くの方法で変更可能なことは明らかであろう。このよう変形は、本発明の意図及び範囲からから逸脱すると見なすべきではなく、当業者には明らかとなる全てのこのような修正は、以下の請求項の範囲内に含まれることが意図される。
【国際調査報告】