(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】燃焼器システム及び方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/22 20060101AFI20231116BHJP
F23R 3/36 20060101ALI20231116BHJP
F23R 3/34 20060101ALI20231116BHJP
F23J 7/00 20060101ALI20231116BHJP
F23K 5/00 20060101ALI20231116BHJP
F02C 7/224 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
F02C7/22 A
F23R3/36
F23R3/34
F23C99/00 317
F23K5/00 302
F02C7/224
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528498
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 GB2021052839
(87)【国際公開番号】W WO2022101608
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501125275
【氏名又は名称】ユニバーシティ カレッジ カーディフ コンサルタンツ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アグスティン・ヴァレラ・メディナ
【テーマコード(参考)】
3K065
3K068
【Fターム(参考)】
3K065TA01
3K065TC08
3K065TD05
3K065TD09
3K065TF09
3K068AA05
3K068BA02
3K068CA05
(57)【要約】
第1の燃料を含む第1の噴射流体及び第2の燃料を含む第2の噴射流体をガスタービンエンジンの燃焼室に送達するように構成されたガスタービンエンジン燃料噴射装置を備えるシステムが開示される。装置は、第1の噴射流体が第1の流れで送達され、第2の噴射流体が第2の流れで送達されるように、第1の噴射流体及び第2の噴射流体を送達するように構成される。さらに、第1の流れ及び第2の流れの両方が送達され、第1の流れが第2の流れによって実質的に半径方向に取り囲まれる最初の場所に対応する送達ゾーンが存在するようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の燃料を含む第1の噴射流体と第2の燃料を含む第2の噴射流体とをガスタービンエンジンの燃焼室に送達するように構成されたガスタービンエンジン燃料噴射装置を備えるシステムであって、
前記装置が、前記第1の噴射流体及び前記第2の噴射流体を送達するように構成され、それにより、前記第1の噴射流体が第1の流れで送達され、前記第2の噴射流体が第2の流れで送達され、かつ、最初の場所に対応する送達ゾーンが存在し、前記最初の場所において、記第1の流れ及び前記第2の流れの両方が送達され、前記第1の流れが前記第2の流れによって実質的に半径方向に取り囲まれる、システム。
【請求項2】
前記装置が、前記第1の流れ及び前記第2の流れを実質的に同じ方向に送達するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の流れ及び前記第2の流れが、別々の対応する第1の出口及び第2の出口から送達される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
送達された後に前記第1の燃料及び前記第2の燃料との燃焼のための空気を送達するように構成され、前記第1の出口の半径方向内側にあり、かつ前記第1の出口によって半径方向に取り囲まれた空気出口を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の流れにおける前記第1の噴射流体の少なくとも一部の初期燃焼が、前記第2の流れにおける前記第2の噴射流体の少なくとも一部の点火のためのパイロットとして働く、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の燃料が反応の速い燃料を含み、前記第2の燃料が反応の遅い燃料を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記送達ゾーンが、前記第1の噴射流体及び前記第2の噴射流体が前記装置によって送達されるコアンダ発生体によって半径方向に取り囲まれ画定される、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記コアンダ発生体が、前記装置を半径方向に取り囲む管状部分を備え、前記管状部分が、一定の断面の半径方向内面を有し、前記管状部分の下流の前記半径方向内面にフレア部分を接続される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記管状部分の前記半径方向内面と連続テーパ部分の半径方向内面とが、縁部の形態の不連続部で交わる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記フレア部分が、前記連続テーパ部分に接続され、実質的に半径方向に延びる下流面を有するリム部分を備える、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記連続テーパ部分の前記半径方向内面と前記リム部分の前記下流面とが、縁部の形態の不連続部で交わる、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記コアンダ発生体が、燃焼器缶によって画定された燃焼室内に延び、前記コアンダ発生体の半径方向外面と前記燃焼器缶の半径方向内面とによって半径方向に境界付けられ、かつ前記燃焼器缶の上流面によって軸方向に境界付けられた渦領域を形成する、請求項7から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記燃焼室が、前記装置の下流にあり、リッチ燃焼が発生する一次燃焼ゾーンと、前記一次燃焼ゾーンの下流にあり、無炎燃焼が発生する二次燃焼ゾーンとを備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記燃焼器缶が、前記二次燃焼ゾーン内または前記二次燃焼ゾーンに隣接する少なくとも1つの空気入口を備えることができ、少なくとも1つの前記空気入口が、追加の空気を前記燃焼室に送達するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
クラッカが、前記燃焼室内に配置され、前記燃焼室が、前記燃焼室内の燃焼流体と、前記クラッカ内の第1のチャネルを通過し、それによって、第1のクラッカ流体を2種以上の化学種に化学分解する第1のプロセスを経る前記第1のクラッカ流体との間に熱接触を提供するように構成される、請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記化学種のうちの1種が前記第1の燃料である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記クラッカが、前記燃焼室内の前記燃焼流体と、前記クラッカ内の第2のチャネルを通過し、それにより、その化学的性質を変えることなく第2のクラッカ流体の熱エネルギーを増加させる第2のプロセスを経る前記第2のクラッカ流体との間に熱接触を提供するようにさらに構成される、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第2のクラッカ流体が前記第2の燃料である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記システムが、燃料熱交換器を備え、前記燃料熱交換器が、前記ガスタービンエンジンの圧縮機内に移動する空気流の少なくとも一部と、前記装置によって前記第2の噴射流体で送達するために移動する前記第2の燃料の流れとを熱接触させるように構成される、請求項1から18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記ガスタービンエンジンからの排気流体流の少なくとも一部と、前記装置及び/または前記燃焼室への送達のために移動する水流とを熱接触させるように構成された排気流体熱交換器を備える、請求項1から19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載のシステムを備えるガスタービンエンジン。
【請求項22】
第1の燃料を含む第1の噴射流体と第2の燃料を含む第2の噴射流体とを燃焼室に送達するステップであって、それにより、前記第1の噴射流体が第1の流れで送達され、前記第2の噴射流体が第2の流れで送達されるように、かつ、最初の場所に対応する送達ゾーンが存在し、前記最初の場所において、前記第1の流れ及び前記第2の流れの両方が送達され、前記第1の流れが前記第2の流れによって実質的に半径方向に取り囲まれる、ステップを含む、ガスタービンエンジンにおいて燃料を噴射する方法。
【請求項23】
燃焼室と前記燃焼室内に配置されたクラッカとを備えるガスタービンエンジン流体システムであって、
前記クラッカが、前記燃焼室内の燃焼流体と、前記クラッカ内の第1のチャネルを通過し、それによって、第1のクラッカ流体を2種以上の化学種に化学分解する第1のプロセスを経る前記第1のクラッカ流体との間に熱接触を提供するように構成される、ガスタービンエンジン流体システム。
【請求項24】
請求項23に記載のシステムを備えるガスタービンエンジン。
【請求項25】
第1のクラッカ流体に第1のプロセスを実行して、前記第1のクラッカ流体を2種以上の化学種に化学分解する方法であって、
当該方法が、前記第1のクラッカ流体をガスタービンエンジンの燃焼室に通して、前記燃焼室内の燃焼流体と前記第1のクラッカ流体との間に熱接触を提供するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼器システム及び方法に関する。本発明の態様は、燃料噴射装置を備えるシステムと、ガスタービンエンジンと、ガスタービンエンジンに燃料を噴射する方法と、ガスタービンエンジン流体システムとに関する。本開示は、特に、ただし限定されるものではないが、アンモニア燃料によって少なくとも部分的に燃料供給されるように構成された燃焼器に適用可能であり得る。本開示は、発電の分野で使用するためのガスタービンエンジンまたはボイラで使用される燃焼器に特に適用可能であり得るが、他の分野(例えば、海洋、航空宇宙、及び列車用途)にも関連する。
【背景技術】
【0002】
この背景技術のセクションは、アンモニア燃料供給されるガスタービンエンジンに関連して提供されるが、これは便宜上のものに過ぎず、開示される技術は代替的なシステムに適用されることが理解されよう。
【0003】
環境への影響に関連して、燃料としてアンモニアを(例えば、ガスタービンエンジンにおいて)使用することは、灯油及び燃料油などの炭素系燃料と比較して潜在的な利点を有する。具体的には、空気とのアンモニア燃焼は、二酸化炭素及び水ではなく、窒素及び水を生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それにもかかわらず、アンモニアは他の課題を示す。空気中でのアンモニアの燃焼は窒素酸化物(望ましくない排出生成物)を生成し、またアンモニアは空気中ではほとんど燃焼しない。後者の問題は、アンモニアの点火を生じさせるのを助けるために水素などの追加の燃料を使用することによって克服することができる。しかしながら、これは、水素が高温の空気中で燃焼して窒素酸化物及び水を生成し得るため、窒素酸化物の生成を増幅させる場合がある。水素などの第2の燃料を貯蔵することはまた、さらなる複雑さ及び危険性を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、第1の燃料を場合により含む第1の噴射流体と第2の燃料を場合により含む第2の噴射流体とをガスタービンエンジンの燃焼室に送達するように場合により構成されたガスタービンエンジン燃料噴射装置を場合により備えるシステムであって、装置が、第1の噴射流体が第1の流れで送達され、第2の噴射流体が第2の流れで送達されるように、かつ場合により、第1の流れ及び第2の流れの両方が送達され、場合により第1の流れが第2の流れによって実質的に半径方向に取り囲まれる最初の場所に対応する送達ゾーンが存在するように、第1の噴射流体及び第2の噴射流体を送達するように場合により構成される、システムが提供される。
【0006】
例えば、異なる燃料が異なる性能及び/または特性を提供する場合、燃焼のために複数の異なる燃料を使用することが望ましい場合がある。例として、ある燃料は、より良好な効率、より容易もしくは安全な貯蔵を提供することができ、より容易に利用可能とすることができ、及び/または汚染排出物をより少ない種類またはより少ない量とすることができるが、別の燃料よりも燃焼しにくいことがある。したがって、より容易に燃焼する後者の燃料は、燃焼しにくい燃料に点火するのに十分な温度をもたらすために燃焼されることがある。したがって、このような組み合わせで燃料を燃焼させることによって利益が生じ得る。
【0007】
噴射流体、したがって燃料を上述のように成層した状態で/層状に送達することによって、噴射流体中の送達される種の反応を異なる速度及び/または温度で発生させることができ、燃焼の完全性、発生する反応、及び/または排出物組成の制御を可能にすることができる。例えば、第1の流れにおける第1の燃料のより高温の燃焼(火炎のコアの近くで発生する)からの反応生成物は、第2の流れにおける未燃焼の第2の燃料とさらに反応することができ、それによって望ましくない燃焼生成物を除去し、それによって望ましくない排出物を低減することができる。この目的のための未燃焼の第2の燃料の利用可能性は、第2の流れが第1の流れから半径方向外側に、火炎のより高温のコアから離れて配置された結果として高めることができ、その結果、第2の流れの燃焼する量が少なくなる可能性がある。さらなる例として、第1の流れを取り囲む第2の流れの存在は、第1の燃料の燃焼からの反応生成物が、第2の流れの取り囲む第2の燃料によって少なくとも部分的に制約され、第2の流れの取り囲む第2の燃料と反応する可能性がより高いことを意味し得る。またさらなる例として、第1の流れ(半径方向内側)は、燃焼器内で再循環される可能性がより高いものであり得る第2の流れ(半径方向外側)よりも、関連する燃焼器を通るより直接的な経路をたどる傾向があり得る。このことは、第1の燃料のかなりの割合が1以上の下流燃焼プロセスにおいてより低い温度で燃焼されることが望ましい場合に有利であり得る。さらに、噴射流体、したがって最終的には燃料を、例えば混合流ではなく別々の流れで噴射することによって、燃料のより正確な計量を実現することができ、点火段階及び燃焼プロセスのより良好な制御が可能になる。
【0008】
いくつかの実施形態では、装置は、第1の流れ及び第2の流れを実質的に同じ方向に送達するように構成される。この方向は、例えば、燃料噴射装置が設けられるように構成された燃焼器及び/または燃料噴射装置が設けられるように構成されたガスタービンエンジンに対する軸方向であってもよい。これにより、第1の流れ及び第2の流れが、第1の流れが第2の流れによって取り囲まれた状態で、近接して送達されることを容易にすることができる。共通の方向はまた、送達ゾーン及びその下流における特定の流れ特性を促進し得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1の流れ及び第2の流れは、別々の対応する第1の出口及び第2の出口から送達される。第2の出口は、第1の出口を実質的に取り囲んでもよく、直接取り囲んでもよい。追加的または代替的に、出口は隣接していてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1の出口は、第1の噴射流体流を第2の噴射流体流に導くように配置されるように、放射面に対して角度を付けられる。したがって、第1の出口は、放射面及び軸平面の両方に対して角度を付けられ得る。角度付きノズルは、化学量論的燃焼のために第1の噴射流体の第1の燃料を送達し、したがって温度を上昇させ得る。追加的に、燃焼室内の反応物の再循環に関して有利であり得る、軸方向の向きから火炎を曲げて反らす傾向があり得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の出口及び第2の出口は実質的に同心である。このようにして、角度方向に関係なく、第1の噴射流体及び/または第2の噴射流体の均一な流れを得ることができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1の出口は環状断面を有する。これにより、送達ゾーン及び/または燃焼室に追加の流体を送達するために、少なくとも1つのさらなる出口を第1の出口の半径方向内側に配置することが可能になり得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、第2の出口は環状断面を有する。これにより、第2の出口の半径方向内側に、かつ第2の出口によって取り囲まれて第1の出口を配置することが容易になり得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、システムは、送達された後に第1の燃料及び第2の燃料との燃焼のための空気を送達するように構成され、第1の出口の半径方向内側にあり、かつ第1の出口によって半径方向に取り囲まれた空気出口を備える。空気出口は、円形断面を有してもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1の出口及び空気出口は、バーナヘッドに設けられてもよい。
【0016】
上述の出口のそれぞれが、出口の他方の一方または両方と軸方向に整列されてもよいし、出口の他方の一方または両方から軸方向に離れてもよい。各出口は、連続的であってもよいし、複数の別個の開口部を含んでもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、装置は、第1の噴射流体が第1の出口に送達される第1の通路を備える。第1の通路は、断面が環状であってもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、装置は、第1の通路の半径方向外側に、かつ第1の通路を半径方向に取り囲む第2の通路を備え、第2の通路を通って第2の噴射流体が第2の出口に送達される。第2の通路は、断面が環状であってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、第2の通路は、第2の噴射流体に第2の出口からのその送達のための接線方向スワールを提供するように構成された角度スワーラを備える。このスワールは、第1の流れ及び第2の流れの混合及び相互作用に対する改善された制御を可能にすることができ、そして、第1の流れ及び第2の流れの化学成分間の反応速度、したがって潜在的に排出組成に対する制御を提供することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、システムは、装置によって燃焼室に送達される前に第2の噴射流体の残りの部分に補助燃料を送達するように構成された第2の通路内にある補助燃料出口を備える。これにより、補助燃料と第2の噴射流体の残りの部分との混合を強化することができる。補助燃料出口は、補助燃料のフラッシュバックを防止するのに役立ち得るため、角度スワーラの下流にあってもよい。補助燃料は、燃焼室における第2の燃料の燃焼を助ける働きをし得る水素ガス及び/またはメタンガスなどの第2の燃料よりも高い反応速度を有する反応物であってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、システムは、補助燃料がそれを通って補助燃料出口に送達される補助燃料通路を備える。補助燃料通路は、第1の通路と第2の通路との間に設けられてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、システムは、第2の噴射流体の温度を制御するために、加熱流体室内の加熱流体が第2の通路内の第2の噴射流体と熱接触するように構成された加熱流体室を備える。加熱流体の熱エネルギーは、燃焼室における第1の燃料及び第2の燃料の燃焼によって発生され得る。加熱流体は、例えば、水及び/または蒸気であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、システムは、第1の通路の半径方向内側にあり、第1の通路によって半径方向に取り囲まれた空気通路を備え、空気通路を通して空気が空気出口に送達される。空気通路は、断面が円形であってもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、空気通路は、空気出口から送達するための軸方向スワールを空気に与えるように構成された軸方向スワーラを備える。空気出口から送達される空気の軸方向スワールは、第1の噴射流体、例えば第1の燃料の少なくとも一部を燃焼させる、送達ゾーン内の小さな中央火炎を安定させるのに役立ち得る。加えて、第1の噴射流体の点火された第1の燃料をスワールさせることによって、送達ゾーン及び/または送達ゾーンの近傍に再循環を生じさせることができ、その結果、渦破壊を介して送達ゾーンの近傍に再循環が生じる。これは、送達ゾーンの近傍での第1の燃料の滞留時間を増加させ、(例えば、後の段階よりもむしろ)ここでのその燃焼の完全性を高めることができ、これは、第2の噴射流体の未燃焼成分との反応によるこの燃焼プロセスの生成物の減少の可能性に関して有利な効果を有し得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1の流れにおける第1の噴射流体の少なくとも一部の初期燃焼は、第2の流れにおける第2の噴射流体の少なくとも一部の点火のためのパイロットとして働く。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1の燃料及び第2の燃料のうちの一方は反応の遅い燃料を含み、他方は反応の速い燃料を含む。反応の遅い燃料は、反応の速い燃料と比較して、空気中で容易に燃焼せず、及び/または著しく低減された範囲の条件(例えば、温度)でのみ空気中で燃焼する燃料であってもよい。反応の速い燃料の存在なしに燃焼室で優勢である条件の少なくともいくつかの下では、反応の遅い燃料は、燃焼しないタイプのものであり得る。したがって、反応の速い燃料の存在及び性質は、反応の遅い燃料の燃焼を可能にし得る。第1の燃料及び第2の燃料の反応速度の差は、それぞれの燃料の化学成分、すなわち、第1の燃料及び第2の燃料が(例えば、それぞれの燃料の相ではなく)異なる化学組成であることに起因し得る。反応の遅い燃料は、例えばアンモニアガスであってもよく、並びに/または反応の速い燃料は、例えば水素ガス及び/もしくはメタンガスであってもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1の燃料は反応の速い燃料を含み、第2の燃料は反応の遅い燃料を含む。この組み合わせは、システムアーキテクチャを補完することができる。具体的には、半径方向外側の第2の流れにおける反応の遅い燃料は、燃焼火炎の高温コアから部分的に分離されてもよく、これは、反応の遅い燃料のかなりの割合が未燃焼のままであり得ることを意味し得る。少なくとも燃焼器内での十分な再循環により、この未燃焼の反応の遅い燃料は、燃焼炎の中心の近くで生じる燃焼プロセス全体の望ましくない燃焼生成物と反応し得る。さらに、反応の速い燃料の流れを取り囲む流れにおける反応の遅い燃料の送達は、反応の速い燃料の燃焼から燃焼生成物を捕捉する傾向があり、それらの生成物と反応の速い燃料との反応を増加させる。例えば、反応の速い燃料が水素ガスであり、反応の遅い燃料がアンモニアガスまたはアンモニアブレンドである場合、水素の中心燃焼はNOxを生じさせる可能性があり、NOxは排出物において望ましくない。しかしながら、NOxは、未燃焼アンモニア、形成されたラジカル、及び/もしくはそれを取り囲む他の種と反応し、並びにまたはそれと共に再循環して窒素ガス及び蒸気を生成することができる。さらに、アンモニアの燃焼によって生成されるNOxは、第1の噴射流体と第2の噴射流体との間の接触点でラジカルを取り囲むことによっても還元させることができる。またさらに、中央の流れで送達される反応の速い燃料、例えば水素では、燃焼プロセスの任意の下流領域へのより直接的な経路をたどる傾向があり得る(すなわち、反応の遅い燃料を含む周囲層よりも循環される可能性が低い)。例えば、これが無炎燃焼ゾーンを含む場合、燃焼条件が望ましくない排出物を生じる可能性がより低い、この燃焼ゾーンに反応の速い燃料のかなりの割合を可能な限り直接送達することが望ましい場合がある。
【0028】
いくつかの実施形態では、第2の燃料は、補助燃料とすることができる反応の速い燃料をさらに含む。これは、第1の燃料の反応の速い燃料と同じであってもよい。第2の燃料における反応の速い燃料の提供は、燃焼室における反応の遅い燃料の燃焼を助けることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、第2の噴射流体は、1以上の種の他の成分を追加的に含む。これらの他の成分は、例えば、燃焼に使用するため(例えば、空気)、燃焼生成物と反応するため、並びに/または燃焼器内の流体、例えば蒸気の質量を増加させるため、並びに/または燃焼及び/もしくは反応の速度を制御するために提供され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、送達ゾーンは、コアンダ発生体によって半径方向に取り囲まれ、かつ画定される。
【0031】
いくつかの実施形態では、コアンダ発生体は、装置を半径方向に取り囲む管状部分を備え、管状部分は、一定の断面の半径方向内面を有し、管状部分の下流の半径方向内面にフレア部分を接続される。管状部分は、略円筒形であってもよい。コアンダ発生体(及び特に管状部分)は、初期火炎及び燃焼の開始を乱流から保護するのを助けることができる。コアンダ発生体(及び特にフレア部分)は、燃焼器内の再循環流の生成を助けるために、第1の流れ及び第2の流れに初期方向を提供するのを助けることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、フレア部分は、下流方向に漸進的に拡大する断面を有する半径方向内面を有し、管状部分に接続された連続テーパ部分を備える。これは、半径方向外側の方向により大きな成分を有するように、装置からの初期の流れを曲げる傾向がある低圧領域を発生させることができる。したがって、火炎が平坦化されると考えられる。これは、初期の流れを最終的に燃焼室の側壁に到達させる傾向があり、その結果、流れの一部が下流方向に移動するように、また一部が上流方向に移動するように方向を変えられ得る。下流部は、さらに方向を変えられて燃焼室の中心を下方に移動することによって、最終的に部分的に再循環され得る。上流部は、コアンダ発生体を取り囲む渦を形成し、渦に捕捉される傾向があり得る。再循環は、滞留時間を増加させ、潜在的に燃焼の完全性及び/または望ましくない燃焼生成物がさらに反応する機会を高めることができる。再循環はまた、特に、別の流体、例えば蒸気を伴う熱伝達プロセスによって生じる温度を制御することによって燃焼温度を低下させることができ、これは望ましく、無炎燃焼の助けとなり得る。火炎の平坦化はまた、火炎をバーナヘッドから離れるように導く働きをし、それによってバーナヘッドの損傷を経時的に低減し、それによってメンテナンス要件を低減する可能性がある。
【0033】
いくつかの実施形態では、管状部分の半径方向内面と連続テーパ部分の半径方向内面とは、縁部の形態の不連続部で交わる。これは、縁部の下流に低圧の小さなトロイダル領域を発生させるのを助けることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、フレア部分は、実質的に半径方向に延びる下流面を有し、連続テーパ部分に接続されたリム部分を備える。リム部分は、半径方向外側の方向により大きな成分を有するように、装置からの初期の流れをさらに曲げるさらなる低圧領域を発生させることができる。したがって、これは、上述の再循環プロセスの生成を助けることができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、連続テーパ部分の半径方向内面とリム部分の下流面とは、縁部の形態の不連続部で交わる。これは、縁部の下流に低圧の小さなトロイダル領域を発生させるのを助けることができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、コアンダ発生体は、燃焼器缶によって画定された燃焼室内に延び、コアンダ発生体の半径方向外面と燃焼器缶の半径方向内面とによって半径方向に境界付けられ、かつ燃焼器缶の上流面によって軸方向に境界付けられた渦領域を形成する。この渦領域は、渦停留領域と考えることができる。装置によって送達され、半径方向外向き成分を有して移動する流体は、燃焼器缶の側壁に到達することができ、部分的には上流方向に導かれ得る。その後、流れは、最初に燃焼器缶の上流壁によって、次にコアンダ発生体の半径方向外面によって再び方向を変えられ得る。この流れは、渦領域において渦を形成する傾向があり得る。渦領域は、渦の形成の助けとなるように構成され得る。よって、例えば、上述の壁及び各面は、少なくとも実質的に中断されていなくてもよく、及び/または連続的であってもよい。さらに、渦の形成を妨げないように、渦領域内の他の材料、例えば燃料、空気などの噴射が省略されてもよい。システムでは、第1の流れ及び第2の流れを介する燃料のみが噴射され得る。渦は、制御可能な温度で滞留時間を増加させ得る。さらに、渦は、燃焼の完全性及び/または望ましくない燃焼生成物のさらなる反応の機会を高める傾向があり得る。理解されるように、燃焼器缶は、実質的に円筒形であってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、燃焼器缶の上流壁は、平板状の形態と比較して上流壁の表面積を増加させるように構成された形態を有する。上流壁は、例えば、その構造に起伏(例えば、コルゲーション、キャスタレーション、チャネル、またはピーク及びトラフ)またはフィンなどの構造を含んでもよい。このことにより、加熱流体室が適切に配置されている(例えば、燃焼器缶の上流壁に隣接している、及び/または燃焼器缶の上流壁と熱接触している)場合、燃焼室内の流体と加熱流体室内の流体との間の熱エネルギー伝達の増加が促進され得る。加熱流体室は、燃焼器缶の上流壁の形態にかかわらずそのように配置され得ることに留意されたい。加熱流体室内の加熱流体と燃焼室内の流体との間の熱伝達は、燃焼室内の、特に渦領域内の流体を冷却する働きをし得る。このことは、それ自体が排出物として望ましくない場合がある燃焼生成物のさらなる反応を助け得る。この形態は、追加的または代替的に、所与の重量の材料に対して上流壁の強度を増加させ得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、燃焼器缶の上流面は起伏を含むことができる。起伏は、各起伏のピーク及びトラフのそれぞれが半径方向に延びるように構成されてもよい。起伏は、繰り返しパターンで設けられてもよいし、不規則であってもよい。このような起伏は、渦領域内の流体における渦の形成をさらに助ける働きをし得る。理解されるように、起伏は、上述のように表面積を増加させる構造によって形成されてもよく、かつ/または実際に形成されてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、燃焼器缶の上流面は、上流面が半径方向外側から半径方向内側方向にさらに下流に移動するように、半径方向に対して傾斜及び/または勾配を付けられ得る。上流面が傾斜を付けられる場合、上流面は、放射面に対して約15度~約60度の角度を形成し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、水及び/または蒸気が、燃焼器缶の上流壁の1以上のポートを通って渦領域に噴射され得る。このようにして噴射された蒸気は、特に渦領域内の流体の温度を低下させる働きをし得、それ自体が排出物として望ましくない場合がある燃焼生成物のさらなる反応を助け得る。ポートは、ポート位置の場所において燃焼器缶の上流面に実質的に垂直な方向に水及び/または蒸気を噴射するように構成され得る。このことは、渦領域内の流体を渦に形成するのを助け得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、コアンダ発生体の外面は、実質的に凹状の形状を有する。半径方向外面は、例えば、管状部分の半径方向内面、連続テーパ部分の半径方向内面、及び/またはリム部分の下流面にそれぞれ対応する位置において、それぞれが設けられる程度まで実質的に平行であってもよい。このようにして、コアンダ発生体の外面は、適切に方向転換する入射流体流によって渦領域内の渦の形成を促進することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、燃焼器缶は、その半径方向内面が縮径するようにテーパを付けられている腰部を有することができ、腰部は、燃焼器缶に沿ったその位置に関して、アセンブリから下流に移動し、燃焼器缶の半径方向内壁に向かう移動方向の成分を増加させるためにコアンダ発生体によって方向転換される流体流と実質的に交差するように、配置される。腰部は、燃焼器缶側壁において、アセンブリからの流れを、下流に移動して最終的に再循環される流れと、上流に移動して最終的に渦を形成する流れとに方向転換を促進する傾向があり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、燃焼室が、装置の下流にあり、リッチ燃焼が発生する一次燃焼ゾーンと、一次燃焼ゾーンの下流にあり、無炎燃焼が発生する二次燃焼ゾーンとを備える。二次燃焼ゾーンは、一次燃焼ゾーンのすぐ下流にあってもよい。二次燃焼ゾーンは、一次燃焼ゾーンと比較して、燃焼生成物及び/または他の反応生成物及び/またはさらなる流体成分における湿度レベルの上昇及び/またはより高い燃料希釈を有することができる。二次燃焼ゾーンでは、燃焼は、実質的に1300K以下の温度で起こり得る。より低い温度に起因して、無炎燃焼は、第1の燃料であり得る水素などの反応の速い燃料を燃焼させる場合には特に、望ましくない排出生成物及び第2の燃料のリッチ燃焼からの微量物の生成の減少を助け得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、燃焼器缶が、二次燃焼ゾーン内または二次燃焼ゾーンに隣接する少なくとも1つの空気入口を備えることができ、少なくとも1つの空気入口が、追加の空気を燃焼室に送達するように構成される。少なくとも1つの空気入口は、二次燃焼ゾーンの開始部分に近接して配置されてもよい。少なくとも1つの空気入口は、より完全な燃焼のための混合及び滞留時間を促進し、安定性を高めることができる軸方向-接線方向スワールを発生させるように構成され得る。この空気の送達は、二次燃焼ゾーンに存在する第1の燃料及び第2の燃料の希釈を容易にすることができ、目立たないモードでの燃焼を可能にし、潜在的に無炎燃焼を容易にする。
【0045】
いくつかの実施形態では、燃焼器缶が、二次燃焼ゾーン内または二次燃焼ゾーンに隣接する少なくとも1つの窒素入口を備えることができ、少なくとも1つの窒素入口が、窒素を燃焼室に送達するように構成される。少なくとも1つの窒素入口は、二次燃焼ゾーンの開始部分に近接して配置されてもよい。少なくとも1つの窒素入口は、より完全な燃焼のための混合及び滞留時間を促進し、安定性を高めることができる軸方向-接線方向スワールを発生させるように構成され得る。このような窒素の噴射により、二次燃焼ゾーンにおける反応性及び温度を低下させることができ、無炎燃焼のための正しい条件をさらに促進し、及び/または燃焼器の下流のタービンにおいてより安定した膨張を生じさせることができる。送達される窒素は、燃焼室内に配置されたクラッカから供給されてもよい(以下でさらに説明する)。
【0046】
理解されるように、少なくとも1つの空気入口及び少なくとも1つの窒素入口は、組み合わされた空気及び窒素入口であってもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、燃焼室は、一次燃焼ゾーンと二次燃焼ゾーンとの間にバッフルを備え、バッフルは、燃焼室の断面積を減少させ、それによって一次燃焼ゾーンから二次燃焼ゾーンに通過する流体のための流れ狭窄を形成する。バッフルは、半径方向に燃焼室内の実質的に中央に配置されてもよく、バッフルの周囲に一次燃焼ゾーンと二次燃焼ゾーンとの間で通路を画定する。通路は、例えば環状であってもよい。バッフルは、中央頂点を有し得る上流方向を向く突出部を有し得る。バッフルは、例えば、ドーム状であってもよく、円錐であってもよく、円錐台であってもよく、卵形であってもよく、または球形であってもよい。バッフルは、一次燃焼ゾーン内の再循環の形成を助け得る。具体的には、バッフルは、燃焼室の半径方向端部に向かって下流方向に移動する流れを、燃焼室の中心により近く上流に移動するように旋回させるのを助け得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、クラッカが、燃焼室内の燃焼流体と、クラッカ内の第1のチャネルを通過し、それによって、第1のクラッカ流体を2種以上の化学種に化学分解する第1のプロセスを経る第1のクラッカ流体との間に熱接触を提供するように構成された燃焼室内に配置される。クラッカを燃焼室内に配置することにより、分解に必要な熱をクラッカ内で発生させることができる。分解の生成物は有用であり得、特に、第1の噴射流体及び/または第2の噴射流体、例えば第1の燃料及び/またはシステムで使用される他の流体の成分の1以上の種を生成するのに有用であり得る。例として、第1のクラッカ流体はアンモニアであってもよく、これはクラッカ内で窒素と水素とに分解され得る。水素は第1の燃料であってもよく、窒素は二次燃焼ゾーンの燃焼室に送達されてもよい。クラッカは、バッフルとして働き得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、化学種のうちの1種が第1の燃料である。第1の噴射流体の第1の燃料は、第1のチャネルの出口を介してクラッカから送達されてもよく、中間段階(例えば、分子ふるい)で1以上の種の他の化学種から分離されてもよい。分子ふるいは、クラッカ内でアンモニアから分解された水素ガス及び窒素ガスを分離するのに適し得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、別の化学種が窒素である。この窒素は、燃焼器缶の窒素入口に送達されてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、クラッカが、燃焼室内の燃焼流体と、クラッカ内の第2のチャネルを通過し、それにより、その化学的性質を変えることなく、または実質的に変えることなく第2のクラッカ流体の熱エネルギーを増加させる第2のプロセスを経る第2のクラッカ流体との間に熱接触を提供するようにさらに構成される。第2のクラッカ流体がその温度を上昇させることが望ましい場合がある。第2のクラッカ流体は、例えば、第1の燃料及び第2の燃料のうちの一方であってもよく、その温度が上昇すると、より容易に及び/またはより高い効率で燃焼することができる。追加的または代替的に、第2のクラッカ流体は、クラッカを冷却することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、第1のクラッカ流体と第2のクラッカ流体とは同じ組成である。流体は、同じリザーバに由来するのであってよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、第2のクラッカ流体は第2の燃料である。第2の噴射流体の第2の燃料は、第2のチャネルの出口を介してクラッカから出てもよい。第2のクラッカ流体は、例えばアンモニアであってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、第1のチャネル及び第2のチャネルは、第2のクラッカ流体よりも第1のクラッカ流体が大きな熱を燃焼室内の流体から受けるように、クラッカ内に配置される。このことは、例えば、クラッカの高温側(例えば、一次燃焼ゾーンに面する側)の近くに第1のチャネルを配置し、クラッカの低温側(例えば、二次燃焼ゾーンに面する側)の近くに第2のチャネルを配置することによって、または異なる通路に異なる熱伝導特性を有する材料を使用することによって実現され得る。生じた差分は、異なる所望の加熱レベル(例えば、第1のクラッカ流体の化学分解をもたらし、第2のクラッカ流体の単純な加熱をもたらす加熱レベル)を容易にし得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、システムは、ガスタービンエンジンの圧縮機内に移動する空気流の少なくとも一部と、装置によって第2の噴射流体内で送達するために移動する第2の燃料の流れとを熱接触させるように構成された燃料熱交換器を備える。このことは、冷凍を介して圧縮機に移動する空気流の温度を低下させることができる。さらに、このようにして、第2の燃料は、燃焼の前に加温されてもよく、これにより効率を改善し、及び/または第2の燃料の所望の貯蔵状態(例えば液体)から所望の燃焼状態(例えば、気体)への状態変化を生じることができる。このことは、クラッカにおける第2の燃料のさらなる加温及び/または分解の前に完了され得る。さらに、圧縮機に入る空気の質量は、その冷却によって増加され、したがって効率が潜在的に高まる。
【0056】
いくつかの実施形態では、システムは、ガスタービンエンジンからの排気流体流の少なくとも一部と、装置及び/または燃焼室への送達のために移動する水流とを熱接触させるように構成された排気流体熱交換器を備える。水は、例えば、排気流体熱交換器を通過した結果として蒸気に変換されてもよく、並びに/または燃焼器内での質量を増加させるために第2の噴射流体の一部として送達されてもよく、並びに/または1以上の代替手段を介して、例えば、一次燃焼ゾーン及び/もしくは二次燃焼ゾーン内の代替の1以上のポート(専用または非専用)を介して燃焼室に導入されてもよい。追加的または代替的に、蒸気の少なくとも一部が、装置による第2の噴射流体の送達の前に、熱交換を介して(例えば、装置における熱交換を介して)第2の噴射流体を予め加温するために使用されてもよい。追加的または代替的に、特に水/蒸気が過剰である場合、過剰な水/蒸気が地域暖房及び/または農業で使用されてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、システムは、ガスタービンエンジンからの排気流体流の少なくとも一部を冷却して、排気流体流の少なくとも一部から水を分離するように構成された凝縮器を備える。水は、例えば、凝縮器によって蒸気から液体水に変換されてもよく、凝縮器は、気体の形態で残っている1以上の種の残りの排気流体成分から水を分離することができる。排気流体は、凝縮プロセスによって水から分離されると大気に排出され得る窒素ガスを含んでもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、装置及び/または燃焼室への送達のために移動する水流は、凝縮器によって生成された水である。追加的または代替的に、凝縮器によって生成された水の少なくとも一部は、装置を冷却するために使用されてもよい。
【0059】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様のシステムを備えるガスタービンエンジンが提供される。
【0060】
本発明の第3の態様によれば、第1の燃料を場合により含む第1の噴射流体と第2の燃料を場合により含む第2の噴射流体とを、場合により、第1の噴射流体が第1の流れで送達され、第2の噴射流体が第2の流れで送達されるように、かつ場合により、第1の流れ及び第2の流れの両方が場合により送達され、第1の流れが第2の流れによって実質的に半径方向に取り囲まれる最初の場所に対応する送達ゾーンが存在するように、燃焼室に送達するステップを場合により含む、ガスタービンエンジンにおいて燃料を噴射する方法が提供される。
【0061】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の燃料及び/または第2の燃料の少なくとも一部を初期リッチ燃焼プロセスで燃焼させるステップと、その後、第1の燃料及び/または第2の燃料の少なくとも一部を無炎燃焼プロセスで燃焼させるステップとを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の燃料及び/または第2の燃料の燃焼によって発生された熱を使用して第1のクラッカ流体を加熱して、その第1のクラッカ流体を2種以上の化学種に化学分解させることを含む第1のプロセスを実行するステップを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、化学種のうちの1種が第1の燃料である。
【0064】
いくつかの実施形態では、別の化学種が窒素である。
【0065】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の燃料及び/または第2の燃料の燃焼によって発生された熱を使用して第2のクラッカ流体を加熱し、それにより、その化学的性質を変えることなく第2のクラッカ流体の熱エネルギーを増加させることを含む第2のプロセスを実行するステップを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、第1のクラッカ流体と第2のクラッカ流体とは同じ組成である。
【0067】
いくつかの実施形態では、本方法は、ガスタービンエンジンの圧縮機内に移動する空気流の少なくとも一部と、第2の噴射流体内に送達するために移動する第2の燃料の流れとを熱接触させるステップを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、本方法は、ガスタービンエンジンからの排気流体流の少なくとも一部と、燃焼室に送達するために、及び/または第2の噴射流体の送達前に熱交換によって第2の噴射流体を予め加温するために移動する水流とを熱接触させるステップを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、本方法は、ガスタービンエンジンからの排気流体流の少なくとも一部を凝縮して、排気流体流の少なくとも一部から水を分離するステップを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、水流は凝縮プロセスによって生成された水である。
【0071】
本発明の第4の態様によれば、燃焼室と、場合により燃焼室内に場合により配置されたクラッカとを場合により備えるガスタービンエンジン流体システムであって、場合により、クラッカが、燃焼室内の燃焼流体と、クラッカ内の第1のチャネルを場合により通過し、それによって場合により第1のクラッカ流体を2種以上の化学種に化学分解する第1のプロセスを場合により経る第1のクラッカ流体との間に熱接触を提供するように場合により構成される、ガスタービンエンジン流体システムが提供される。クラッカを燃焼室内に配置することにより、分解に必要な熱をクラッカ内で発生させることができる。分解生成物は有用であり得、特に、燃焼器で使用される1以上の種の燃料または他の反応物を生成するのに有用であり得る。例として、第1のクラッカ流体はアンモニアであってもよく、これはクラッカ内で窒素と水素とに分解され得る。水素は、燃焼器において燃料として使用することができ、及び/または窒素は、燃焼室の少なくとも一部の冷却及び/または反応性の低減に使用するために燃焼室に送達することができる。後者は、特定の形態の燃焼、例えば燃焼器の少なくとも一部における無炎燃焼の発生をサポートすることができる。このことは、その中で生じる化学反応の性質の点で、例えば望ましくない排出物を低減する点で有利であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、化学種のうちの1種は、燃焼室での燃焼に使用するための第1の燃料である。第1の噴射流体の第1の燃料は、第1のチャネルの出口を介してクラッカから送達されてもよく、中間段階(例えば、分子ふるい)で1以上の種の他の化学種から分離されてもよい。分子ふるいは、クラッカ内でアンモニアから分解された水素ガス及び窒素ガスを分離するのに適し得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、別の化学種が窒素である。この窒素は、燃焼器の二次燃焼ゾーン内または二次燃焼ゾーンに隣接する窒素入口に送達されてもよく、少なくとも1つの窒素入口が、窒素を燃焼室に送達するように構成される。二次燃焼ゾーンは、例えば、リッチ燃焼が発生する一次燃焼ゾーンの下流に配置され得る無炎燃焼ゾーンであってもよい。窒素は、例えば反応性及び/または温度を低下させることによって、無炎燃焼に必要なまたは望ましい条件を形成するのを助けることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、クラッカが、燃焼室内の燃焼流体と、クラッカ内の第2のチャネルを通過し、それにより、その化学的性質を変えることなく第2のクラッカ流体の熱エネルギーを増加させる第2のプロセスを経る第2のクラッカ流体との間に熱接触を提供するようにさらに構成される。第2のクラッカ流体がその温度を上昇させることが望ましい場合がある。第2のクラッカ流体は、例えば、燃焼器で使用するための燃料であってもよく、その温度が上昇すると、より容易に及び/またはより高い効率で燃焼することができる。追加的または代替的に、第2のクラッカ流体は、クラッカを冷却することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、第1のクラッカ流体と第2のクラッカ流体とは同じ組成である。流体は、同じリザーバに由来するのであってよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、第2のクラッカ流体は、燃焼室での燃焼に使用するための第2の燃料である。第2の噴射流体の第2の燃料は、第2のチャネルの出口を介してクラッカから出てもよい。第2のクラッカ流体は、例えばアンモニアであってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、第1のチャネル及び第2のチャネルは、第2のクラッカ流体よりも第1のクラッカ流体が大きな熱を燃焼室内の流体から受けるように、クラッカ内に配置される。このことは、例えば、クラッカの高温側(例えば、リッチ燃焼が起こり得る一次燃焼ゾーンに面する側)の近くに第1のチャネルを配置し、クラッカの低温側(例えば、二次燃焼ゾーンに面する側)の近くに第2のチャネルを配置することによって、または異なる通路に異なる熱伝導特性を有する材料を使用することによって実現され得る。生じた差分は、異なる所望の加熱レベル(例えば、第1のクラッカ流体の化学分解をもたらし、第2のクラッカ流体の単純な加熱をもたらす加熱レベル)を容易にし得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、システムは、ガスタービンエンジンの圧縮機内に移動する空気流の少なくとも一部と、燃焼室への噴射のために移動する第2の燃料の流れとを熱接触させるように構成された燃料熱交換器を備える。このようにして、第2の燃料は、燃焼の前に加温されてもよく、これにより効率を改善し、及び/または第2の燃料の所望の貯蔵状態(例えば液体)から所望の燃焼状態(例えば、気体)への状態変化を生じることができる。このことは、クラッカにおける第2の燃料のさらなる加温及び/または分解の前に完了され得る。さらに、圧縮機に入る空気の質量は、その冷却によって増加され、したがって効率が潜在的に高まる。
【0079】
いくつかの実施形態では、システムは、1以上の種の燃料を燃焼室に送達するための燃料噴射装置を備える。送達される燃料は、第1の燃料及び第2の燃料であってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、システムは、ガスタービンエンジンからの排気流体流の少なくとも一部と、システムの装置及び/または燃焼室への送達のために移動する水流とを熱接触させるように構成された排気流体熱交換器を備える。水は、例えば、排気流体熱交換器を通過した結果として蒸気に変換されてもよく、並びに/または燃焼器内での質量を増加させるために第2の噴射流体の一部として送達されてもよく、並びに/または1以上の代替手段を介して、例えば、一次燃焼ゾーン及び/もしくは二次燃焼ゾーン内の代替の1以上のポート(専用または非専用)を介して燃焼室に導入されてもよい。追加的または代替的に、蒸気の少なくとも一部が、装置による第2の噴射流体の送達の前に、熱交換を介して(例えば、装置における熱交換を介して)第2の噴射流体を予め加温するために使用されてもよい。追加的または代替的に、特に水/蒸気が過剰である場合、過剰な水/蒸気が地域暖房及び/または農業で使用されてもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、システムは、ガスタービンエンジンからの排気流体流の少なくとも一部を冷却して、排気流体流の少なくとも一部から水を分離するように構成された凝縮器を備える。水は、例えば、凝縮器によって蒸気から液体水に変換されてもよく、凝縮器は、気体の形態で残っている1以上の種の残りの排気流体成分から水を分離することができる。排気流体は、凝縮プロセスによって水から分離されると大気に排出され得る窒素ガスを含んでもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、燃料噴射装置及び/または燃焼室への送達のために移動する水流は、凝縮器によって生成された水である。追加的または代替的に、凝縮器によって生成された水の少なくとも一部は、装置を冷却するために使用されてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、燃焼室が、装置の下流にあり、リッチ燃焼が発生する一次燃焼ゾーンと、一次燃焼ゾーンの下流にあり、無炎燃焼が発生する二次燃焼ゾーンとを備える。二次燃焼ゾーンは、一次燃焼ゾーンのすぐ下流にあってもよい。二次燃焼ゾーンは、一次燃焼ゾーンと比較して、燃焼生成物及び/または他の反応生成物及び/またはさらなる流体成分における湿度レベルの上昇及び/またはより高い燃料希釈を有することができる。二次燃焼ゾーンでは、燃焼は、実質的に1300K以下の温度で起こり得る。より低い温度に起因して、無炎燃焼は、第1の燃料であり得る水素などの反応の速い燃料を燃焼させる場合には特に、望ましくない排出生成物の生成の減少を助け得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、燃焼器の燃焼器缶が、二次燃焼ゾーン内または二次燃焼ゾーンに隣接する少なくとも1つの空気入口を備えることができ、少なくとも1つの空気入口が、追加の空気を燃焼室に送達するように構成される。少なくとも1つの空気入口は、二次燃焼ゾーンの開始部分に近接して配置されてもよい。少なくとも1つの空気入口は、より完全な燃焼のための混合及び滞留時間を促進し、安定性を高めることができる軸方向-接線方向スワールを発生させるように構成され得る。この空気の送達は、二次燃焼ゾーンに存在する第1の燃料及び第2の燃料の希釈を容易にすることができ、目立たないモードでの燃焼を可能にし、潜在的に無炎燃焼を容易にする。
【0085】
いくつかの実施形態では、燃焼器缶が、二次燃焼ゾーン内または二次燃焼ゾーンに隣接する少なくとも1つの窒素入口を備えることができ、少なくとも1つの窒素入口が、窒素を燃焼室に送達するように構成される。少なくとも1つの窒素入口は、二次燃焼ゾーンの開始部分に近接して配置されてもよい。少なくとも1つの窒素入口は、より完全な燃焼のための混合及び滞留時間を促進し、安定性を高めることができる角度スワールを発生させるように構成され得る。このような窒素の噴射により、二次燃焼ゾーンにおける反応性及び温度を低下させることができ、無炎燃焼のための正しい条件をさらに促進し、及び/または燃焼器の下流のタービンにおいてより安定した膨張を生じさせることができる。送達される窒素は、クラッカから供給され得る。
【0086】
理解されるように、少なくとも1つの空気入口及び少なくとも1つの窒素入口は、組み合わされた空気及び窒素入口であってもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、燃焼室は、一次燃焼ゾーンと二次燃焼ゾーンとの間にバッフルを備え、バッフルは、燃焼室の断面積を減少させ、それによって一次燃焼ゾーンから二次燃焼ゾーンに通過する流体のための流れ狭窄を形成する。バッフルは、半径方向に燃焼室内の実質的に中央に配置されてもよく、バッフルの周囲に一次燃焼ゾーンと二次燃焼ゾーンとの間で通路を画定する。通路は、例えば環状であってもよい。バッフルは、中央頂点を有し得る上流方向を向く突出部を有し得る。バッフルは、例えば、ドーム状であってもよく、円錐であってもよく、円錐台であってもよく、卵形であってもよく、または球形であってもよい。バッフルは、一次燃焼ゾーン内の再循環の形成を助け得る。具体的には、バッフルは、燃焼室の半径方向端部に向かって下流方向に移動する流れを、燃焼室の中心により近く上流に移動するように旋回させるのを助け得る。
【0088】
本発明の第5の態様によれば、第4の態様のシステムを備えるガスタービンエンジンが提供される。
【0089】
本発明の第6の態様によれば、第1のクラッカ流体に第1のプロセスを実行して、場合により第1のクラッカ流体を2種以上の化学種に化学分解する方法であって、本方法が、場合により第1のクラッカ流体をガスタービンエンジンの燃焼室に通して、場合により燃焼室内の燃焼流体と第1のクラッカ流体との間に熱接触を提供するステップを含む、方法が提供される。
【0090】
本出願の範囲内において、上記の段落、特許請求の範囲、並びに/または以下の説明及び図面に記載された様々な態様、実施形態、例、及び代替形態、そして特にその個々の特徴は、単独でまたは任意の組み合わせで理解され得ることが明示的に意図されている。つまり、すべての実施形態及び/または任意の実施形態の特徴は、そのような特徴が矛盾しない限り、任意の仕方及び/または組み合わせで組み合わされ得る。本出願人は、当初はそのように請求されていなくても、任意の他の請求項の任意の特徴に従属するように、及び/または任意の他の請求項の任意の特徴を組み込むように、任意の最初に出願された請求項を補正する権利を含み、任意の最初に出願された請求項を変更する、またはそれに応じて任意の新規の請求項を出願する権利を留保する。
【0091】
ここで、添付の図面を参照しながら、本発明の1以上の実施形態を単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】本発明の一実施形態によるシステムの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるシステムの部分切り欠き図である。
【
図3】本発明の一実施形態による燃料噴射装置を備えるシステムの一部の断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるクラッカを備えるシステムの一部の部分切り欠き図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるシステムの流体の流れを示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるシステムの温度プロファイルを示す断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるシステムの概略図である。
【
図8a】本発明の一実施形態によるシステムの一部の斜視図である。
【
図8b】本発明の一実施形態によるシステムの一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0093】
まず、
図1、
図2、及び
図7を参照すると、システムが全体的に1で示されている。システム1は、全体的に3で示されるガスタービンエンジンと、全体的に5で示される支持流体処理アセンブリとを備える。流体処理アセンブリは、ガスタービンエンジン3に燃料を供給し、ガスタービンエンジン3からの排気生成物を管理する。
【0094】
ガスタービンエンジン3は、圧縮機7と、燃焼器9と、タービン10とを備える。理解されるように、特定の実施態様に応じて、圧縮機7及びタービン10のそれぞれが複数の段を含むことができる。
【0095】
図1及び
図2は、燃焼器9を示している。燃焼器9は、ガスタービンエンジン燃料噴射装置11と、燃焼室13とを有する。
【0096】
装置11は、
図3により詳細に示されている。装置は、第1の噴射流体及び第2の噴射流体を燃焼室13に送達するように構成され、この場合の第1の噴射流体は第1の燃料(水素ガス)であり、この場合の第2の噴射流体は、第2の燃料(アンモニアガス)、補助燃料(水素ガス)、空気、及び蒸気の混合物によって構成される。その結果、第1の噴射流体は、反応の速い燃料である第1の燃料を含み、第2の噴射流体は、反応の遅い燃料である第2の燃料と、反応の速い燃料である補助燃料とを含む。
【0097】
第1の噴射流体及び第2の噴射流体は、対応する別個の第1の出口15及び第2の出口17によって燃焼室13に送達される。第1の噴射流体を送達するための第1の出口15は、断面が環状であり、個別のオリフィスから構成されるリングを備える。第2の噴射流体を送達するための第2の出口17は、これも断面が環状であり、第1の出口15を取り囲み、その周りに完全なリングを形成する。2つの出口15、17は、それらが互いに近接しており、それらを別個の出口として画定するのに必要な壁以外、いかなる他の出口または構造によっても分離されないという意味で隣接する。第1の出口15及び第2の出口17は同心である。加えて、空気を燃焼室13に送達するように構成された空気出口19が、第1の出口15によって取り囲まれるように設けられ、第1の噴射出口15は、その周りに完全なリングを形成する。空気出口は、断面が円形であり、第1の出口15及び第2の出口17と同心である。空気出口19及び第1の出口15は、バーナヘッド21において組み合わされる。
【0098】
第1の出口15、第2の出口17、及び空気出口19はすべて、それらの対応する流体を実質的に軸方向に送達するように向けられるが、第1の出口15は、半径方向外向き成分を有するように第1の噴射流体の流れ方向を方向付けるように放射面に対して角度を付けられる。
【0099】
第1の噴射流体は、装置11の第1の通路23によって第1の出口15に送達される。第2の噴射流体は、断面が環状であり、第1の通路23を取り囲む第2の通路25によって第2の出口17に送達される。第2の通路25内には角度スワーラ27があり、第2の噴射流体が第2の出口17を介して送達されるときに第2の噴射流体に角度スワールを与える。角度スワーラ27の下流かつ第2の出口17の上流では、第2の通路25は補助燃料出口29を有する。補助燃料(この場合、水素)は、補助燃料出口29を介して、第2の通路25の第2の出口17に向かって既に流れている第2の噴射流体の残りの成分に添加される。補助燃料は、補助燃料通路31の補助燃料出口29に送達される。補助燃料通路31は、断面が環状であり、第1の通路23と第2の通路25との間に設けられ、第1の通路23を取り囲み、第2の通路25によって取り囲まれる。空気は、断面が円形であり、第1の通路23によって取り囲まれる空気通路33によって空気出口19に送達される。加えて、空気通路は、軸方向スワーラ35を備える。
【0100】
第2の通路25の周囲には加熱流体室37があり、加熱流体室37は、断面が環状であり、加熱流体室37を通過する加熱流体が第2の通路25にある第2の噴射流体と熱接触するように構成される。このことにより、第2の噴射流体を加熱することができる。この場合、加熱流体は水及び/または蒸気である。
【0101】
上記によれば、半径方向内側から半径方向外側に向かって、主要な出口に関して、空気出口19、第1の出口15、及び第2の出口17が配置される。さらに、半径方向内側から半径方向外側に向かって、通路及び室の観点に関して、空気通路33、第1の通路23、補助燃料通路31、第2の通路25、及び加熱流体室37が配置される。
【0102】
本実施形態では、燃焼室13は、上流壁41、側壁43、及び下流壁45を有する実質的に円筒形の燃焼器缶39によって画定される。装置11の一部は、第1の出口15、第2の出口17、及び空気出口19が燃焼室13の上流壁41の軸方向下流に配置されるように、上流壁41を通って突出する。第1の出口15、第2の出口17、及び空気出口19は、燃焼器缶39と共通の中心軸を共有する。さらに、第1の出口15、第2の出口17、及び空気出口19は、すべて実質的に軸方向に整列している(ただし、他の実施形態ではそうである必要はない)。第1の出口15、第2の出口17、及び空気出口19のすぐ下流の燃焼室13の領域(すなわち、3つすべての流体が対応する出口15、17、及び19から送達された最初の下流位置)は、燃焼室13の送達ゾーン47である。送達ゾーン47は、コアンダ発生体49によって半径方向外側方向に取り囲まれる。コアンダ発生体49はまた、出口15、17、及び19の軸方向上流で上流壁41まで延び、かつ出口15、17、及び19の下流に延びる。
【0103】
コアンダ発生体49は、上流壁41から軸方向に延びる円筒形の管状部分51を有する。管状部分51は、出口15、17、及び19を超えて軸方向に延びる。管状部分51の下流で、コアンダ発生体49はフレア部分53を有する。フレア部分53は、連続テーパ部分55と、リム部分57とを有する。連続テーパ部分55は、管状部分51から延び、円錐台形状を有する。連続テーパ部分55は、下流方向に漸進的に拡大する断面を有する半径方向内面を有し、連続テーパ部分55の半径方向内面は、縁部において管状部分51の半径方向内面と交わる。本実施形態では、漸進的に拡大する断面は、一定の勾配の傾斜を形成する。リム部分57は、連続テーパ部分55から延び、概ね半径方向に延びる下流面を有する。リム部分57の下流面と連続テーパ部分55の半径方向内面とは、縁部において交わる。組み合わされると、連続テーパ部分55及びリム部分57は、ベル状の形状を形成し、管状部分51の半径方向内面、並びに連続テーパ部分55及びリム部分51の下流面は、一緒になって実質的に凸状の輪郭を有する。
【0104】
出口15、17、及び19の下流のコアンダ発生体の軸方向範囲は、円筒形の管状部分51の直径よりも小さい。
【0105】
燃焼室13には、コアンダ発生体49の半径方向外側に渦領域59が形成される。渦領域59は、実質的に凹状の輪郭を有するコアンダ発生体49の半径方向外面61と、燃焼器缶39の側壁43とによって半径方向に境界付けられる。渦領域59は、燃焼器缶39の上流壁41によって軸方向に境界付けられる。渦領域59の残りの下流側は、燃焼室13の残りの部分に開口している。
【0106】
燃焼器缶39の上流壁41の少なくとも一部は、加熱流体室37と熱接触し、加熱流体室37もまた、第2の通路25を取り囲み、第2の通路25と熱接触する。このようにして、加熱流体室37及び上流壁41を介して、加熱流体(例えば、水及び/または蒸気)もまた、渦領域59内の流体を冷却する働きをし得る。特定の実施形態では、加熱流体は、渦領域59の加湿を増強し、及び/または燃焼室13内の流体の温度をさらに低下させるために、燃焼室13内に再循環、排出、または噴射され得る。
【0107】
次に、
図8a及び
図8bを参照すると、本実施形態では、加熱流体の一部は、一連のポート42aを介して、加熱流体室37から上流壁41を通って燃焼室13に噴射される。ポート42aは、燃焼器缶39の上流面42bに実質的に垂直な方向に加熱流体を噴射するように構成される。上流面42bは、上流面42bが半径方向外側から半径方向内側方向にさらに下流に移動するように、半径方向に対して勾配を付けられる。この傾斜した上流面42bに垂直な加熱流体の噴射は、渦領域59内の流体を渦に形成するのを助けることができる。
【0108】
燃焼器缶39の上流壁41は、平板状の形態と比較して上流壁41の表面積を増加させるように構成された形態を有する。特に、上流壁41は、その構造にコルゲーション構造42cを含み、周方向に交互のピーク42d及びトラフ42eのパターンをもたらし、各ピーク42d及びトラフ42eは半径方向に延びる。このパターンは、燃焼器缶39の上流面42b及び加熱流体室37に面する反対側表面42fの両方に存在する。
【0109】
燃焼器缶39は、その半径方向内面が縮径するようにテーパを付けられる腰部63を有する。腰部63は、その軸方向位置に関して、連続テーパ部分55の半径方向内面の突起と燃焼器缶39の側壁43との交点を示すリングと実質的に整列するように配置される。
【0110】
燃焼室13は、大まかに、その上流側半分に実質的に対応する一次燃焼ゾーン65と、その下流側半分に実質的に対応する二次燃焼ゾーン67とに分かれる。一次燃焼ゾーン65及び二次燃焼ゾーン67は、(本実施形態では)2つの特徴によって互いに区分される。一次燃焼ゾーン65から二次燃焼ゾーン67への移行部と実質的に軸方向に整列しているのは、燃焼器缶39の側壁43を通る空気及び窒素入口69である。空気及び窒素入口69は、角度方向に規則的に間隔を置いて配置された複数のポート71を備える。各ポート71は、噴射された空気及び窒素の混合物の角度スワールを発生させるように角度が付けられる。空気及び窒素入口69には、燃焼缶39の一次燃焼ゾーン部分の半径方向外側に、かつこれを取り囲む環状ダクト(図示せず)を介して圧縮機7から空気の供給が与えられる。
【0111】
加えて、一次燃焼ゾーン65から二次燃焼ゾーン67への移行部と実質的に軸方向に整列しているのは、バッフル73である。このことは、
図2及び
図4から最もよく分かる。バッフル73は、燃焼室13の中心に支持され、それによって燃焼室13の断面積を、バッフルの外周と燃焼器缶39の側壁43との間である環状部に局所的に減少させる。本実施形態では、バッフル73は、実質的に楕円形の形状であり、上流方向に面し、中央頂点75を有する突出部を有する。本実施形態では、バッフル73はまた、クラッカである。クラッカ73は、燃焼室13内でクラッカ73を支持する構造を通過する対応する入口及び出口に接続された第1のチャネル及び第2のチャネル(図示せず)を内部に有する。第1のチャネル及び第2のチャネルは、第1のチャネルが第2のチャネルよりもクラッカ73の上流端に近くなるように、クラッカ73内に配置される。一次燃焼ゾーン65では二次燃焼ゾーン67よりも燃焼が高温であるため、第1のチャネルを通過する第1のクラッカ流体は、第2のチャネルを通過する第2のクラッカ流体(例えば、約400℃)よりも多く加熱される(例えば、約700℃まで)。本実施形態では、第1のクラッカ流体と第2のクラッカ流体とは同じ組成であり、アンモニアである。第1のチャネルでは、アンモニアが水素ガス(第1の燃料)と窒素ガスとに化学分解される。第2のチャネルでは、アンモニアは化学分解されず、代わりに加熱される。
【0112】
第1のチャネルの出口は、化学種同士を分離する(この場合、水素ガスを窒素ガスから分離する)ための分子ふるい(図示せず)に通じる。分子ふるいから、分離された水素は、第1の通路23及び補助燃料通路31に導かれる。分子ふるいによって分離された窒素ガスは、空気と混合して二次燃焼ゾーン67に噴射されるために空気及び窒素入口69に導かれる。
【0113】
第2のチャネルの出口は、第2の噴射流体の第2の燃料として使用するために、加熱されたアンモニアを送達するための第2の通路25に通じる。第2のチャネルへの入口は、燃料熱交換器77(
図7参照)からそのアンモニアを受け入れる。燃料熱交換器77は、燃料タンク(図示せず)からアンモニアの供給を受け、そのアンモニアをガスタービンエンジン3の圧縮機7に移動する空気流の少なくとも一部と熱接触させる。クラッカ73の第2のチャネルへの入口に送達されるのは、燃料熱交換器77を通過することによって温められたアンモニアである。さらに、液体アンモニアが気体アンモニアに膨張することにより、圧縮機7に移動する空気流が冷却される。
【0114】
さらなる流体処理が、排気流体熱交換器79(
図7参照)によって行われる。蒸気及び窒素が、燃焼プロセスにおいて発生し、ガスタービンエンジン3の排気から回収される。この排気流体流の少なくとも一部が、水流と熱接触する。水流は、第2の噴射流体の成分として使用するために第2の通路25に送達され、そして第2の通路25の第2の噴射流体を加熱し、燃焼室13の流体を冷却し、冷却及び希釈の目的で渦領域59に送達するために加熱流体室37に送達される。水流は、それ自体が排気流体流に由来する。排気流体流が排気流体熱交換器79を通過すると、凝縮器81を通過する。凝縮器81では、排気流体中の水も窒素から分離される。水が排気流体熱交換器79に送達される間に、窒素は大気に排出される。水はまた、燃焼プロセスの残留NOx及び未燃焼アンモニア排出生成物を希釈する。
【0115】
システム1の使用の際、第2の燃料である液体アンモニア燃料は、燃料タンクから燃料熱交換器77に圧送され、そこで圧縮機7に流入する空気流の少なくとも一部との熱交換を経る。この熱交換により、アンモニアの熱エネルギーが増加し、燃焼効率が向上する。この熱交換はまた、アンモニアの状態を貯蔵時の液体から気体に変化させ、圧縮機に移動する空気流を冷却し、ガスタービンエンジン3を通過する空気の質量がより大きくなる。その後、アンモニアの一部は、クラッカ73の第2のチャネルを通って圧送される。第2のチャネルでは、第2のクラッカ流体として、アンモニアは、燃焼室13の燃焼流体との熱交換を介してその熱エネルギーをさらに増加させる第2のプロセスを経る。その後、アンモニアは、第2の燃料として、また第2の噴射流体の成分としての最終的な送達のために、第2の通路25に圧送される。
【0116】
一方、燃料熱交換器77からのアンモニア燃料の別の部分が、クラッカ73の第1のチャネルを通過する。そこで、第1のクラッカ流体として、アンモニアは、燃焼室13の燃焼流体との熱交換に起因する第1の化学分解プロセスを経て、水素と窒素との2つの化学種になる。その後、水素及び窒素は分子ふるいを通して圧送され、水素と窒素とに分離される。第1の燃料である水素は、第1の噴射流体として使用するために第1の通路23に圧送され、補助燃料として使用するために補助燃料通路31に圧送される。このように、第1の燃料は、システム1によって第2の燃料から生成される。窒素は、空気及び窒素入口69に圧送される。
【0117】
装置11内で、本実施形態では第1の噴射流体を構成する第1の燃料、すなわち水素ガスは、第1の通路23を通ってバーナヘッド21において第1の出口15から出るように圧送される。その送達の時点で、第1の出口15によって噴射された水素は、実質的に軸方向下流方向に移動する、環状断面の第1の流れで送達されるが、放射面に対する第1の出口15の角度付けによっていくらかの半径方向外向き成分が付与される。第1の流れが送達されると、第1の流れは、これもバーナヘッド21において、空気出口19から同時に送達されるスワールする空気と部分的に組み合わされる。空気出口21から送達された空気は、圧縮機7によって空気出口に送達され、空気通路33及びその軸方向スワーラ35を通過する。
【0118】
装置11内で、第2の通路25の第2の燃料、すなわちアンモニアガスは、圧縮機7によって第2の通路25に送達された空気と、排気流体熱交換器79から加熱流体室37を介して到来する加熱水から第2の通路25に噴射された水及び/または蒸気と混合される。この混合物は、角度スワーラ27を有する第2の通路25の一部を通過する。その後、水素ガスは、補助燃料通路31及び補助燃料出口29によって第2の通路25に導入され、それにより第2の通路に既に存在するアンモニア、空気、及び蒸気と混合される。結果として得られる混合物は第2の噴射流体を構成し、第2の噴射流体は第2の出口17を通って圧送される。その送達の時点で、第2の出口17によって噴射された第2の噴射流体は、環状断面の第2の流れで送達され、実質的に軸方向下流方向に移動する。第2の流れは、2つの流れが送達ゾーン47に送達されるときに第1の流れを実質的に取り囲む。よって、第1の流れの実質的に任意の部分から半径方向外側の方向に移動する場合、第2の流れに遭遇する。本実施形態では、排気流体熱交換器79からの水及び/または蒸気が第2の通路25に噴射されることに加えて、ポート42aを介して渦領域59に別々に直接噴射されるが、他の実施形態では、これらの一方のみまたは他方のみが発生してもよいし、どちらも発生しなくてもよいことに留意されたい。
【0119】
第1の噴射流体及び第2の噴射流体の成分の量並びに渦領域59に直接噴射される水及び/または蒸気の量は、噴射される総蒸気量が噴射される総燃料量の0%~40%になるように選択され得る(すなわち、燃料及び蒸気は、燃料対蒸気が5:2の比率、または何らかのより高い燃料対蒸気の比率で噴射される)。
【0120】
送達ゾーン47に送達されると、第1の流れは点火器(図示せず)によって点火される。空気出口21から送達される空気に対する軸方向スワーラ35の効果は、点火された水素にスワール火炎をもたらし、次いで渦破壊を介して送達ゾーン47の近傍に再循環を生じさせることができる。第1の流れの水素は容易に点火されるが、第2の流れのアンモニアはそれほどには容易に点火されない。第1の流れの点火された水素は、第2の流れのアンモニアの点火のためのパイロットとして働く。したがって、第1の流れの水素は、第2の流れのアンモニアを点火する際に有用な目的を果たすが、燃焼プロセスのこの高温の初期段階におけるその燃焼機構は、排出物の観点から望ましくない窒素酸化物を生成する(すなわち、(H2+(O2+N2(空気))=>NOx+H2O)。しかしながら、第2の流れの未燃焼アンモニア及びアンモニアラジカル(例えばNH2)は、窒素酸化物を還元して窒素に戻すことができ(すなわち、NH3+NOx=>N2+H2O)、燃焼温度条件は約1200~1600Kであり、アンモニア濃度は約30%~40%である。第1の流れは、流れが送達ゾーン47に入り、一次燃焼ゾーン65に入るときに第2の流れによって取り囲まれるため、第1の燃料の水素と第2の燃料のアンモニアとの燃焼で生成される窒素酸化物は、第2の燃料の未燃焼アンモニア及びアンモニアラジカルに遭遇する可能性がより高く、したがって還元され得る。(第1の出口15の角度付けの結果として)第2の流れに向かう進行方向の成分を有する第1の流れも、この可能性を高め得る。軸方向スワーラ35の結果として送達ゾーン47の近傍で発生する再循環は、滞留時間を増加させ、したがって、送達された水素がこの段階で燃焼して窒素酸化物を生成する割合を増加させることができる。この段階でより多くの割合の水素を燃焼させることは、周囲の第2の流れ中の(すなわち、周囲の第2の流れ及び第1の流れの移動方向に起因する)第2の燃料の未燃焼アンモニア及びアンモニアラジカルに遭遇する可能性がより高い生成された窒素酸化物を考慮すると有利であり得る。さらに、第2の噴射流体(そしてひいては第2の燃料のアンモニア)は、第1の噴射流体の半径方向外側に送達されることにより、燃焼する、したがって最も高温である火炎のコアから幾分遮蔽/除去されため、追加のアンモニアは未燃焼状態で保存され得る。そうすると、このことは、窒素酸化物を還元するために利用可能であり得る。
【0121】
第1の流れ及び第2の流れが下流に移動するにつれて、第1の流れ及び第2の流れは、コアンダ発生体の連続テーパ部分55及びリム部分57によってそれぞれ形成された半径方向外側方向の2つの別個の低圧ゾーンに順次遭遇する。これらは、半径方向外側方向における流体の移動方向の成分を増加させ、火炎を曲げ、ある程度平坦にする傾向がある。このことは、バーナヘッド21の温度をいくらか低下させる傾向があり、その応力を低減し、潜在的にそのメンテナンス/交換の必要性を低減する。理解されるように、別個の第1の流れ及び第2の流れは、それらの同一性を徐々に失い、少なくともある程度は混ざり合い、燃焼流体並びに他の反応物及び成分のより一般的な混合をもたらす。燃焼流体は、下流及び半径方向外側に移動し続ける。火炎を曲げる際のコアンダ発生体49の初期効果、燃焼器缶39の腰部63、側壁43、及び上流壁41、並びにコアンダ発生体49の半径方向外面61の組み合わせは、渦領域59内の流体の混合物の渦停留を形成する傾向がある。加えて、火炎を曲げる際のコアンダ発生体49の初期効果、燃焼器缶39の腰部63、側壁43、並びにクラッカ73による一次燃焼ゾーン65からの出口の部分的な遮断の組み合わせは、より大きな中心再循環の形成を引き起こす傾向がある。これにより、一次燃焼ゾーン65の残りの部分を、酸素が枯渇した領域内の燃焼後の高温ラジカルで実質的に満たすことができ、したがって窒素酸化物の還元をさらに促進することができる。
【0122】
渦領域59における渦停留の形成は、(実質的に半径方向に流体を導く傾向があり得る)コルゲーション構造42cと、ポート42aを介して噴射される水及び/または蒸気(半径方向内側及び下流の成分を有する噴射方向)との両方によってさらに促進され得る。
【0123】
コアンダ発生体49の曲げ効果が
図5から分かり、渦停留及びより大きな中心再循環の形成の初期段階が
図6から分かる。渦停留及びより大きな中心再循環の両方が、燃焼室13内、特に一次燃焼ゾーン65内の流体の滞留時間を増加させる。このことは、微量の未燃焼アンモニア及び未反応アンモニアラジカルによる窒素酸化物の還元を促進するためのさらなる混合を生じさせ、より多くの時間を可能にする。加えて、渦停留、水温制御、及び中央再循環は、一次燃焼ゾーン65の温度を幾分低下させ、この低下により適した温度(すなわち、1200~1500Kの範囲内)をもたらすことができる。第2の噴射流体の蒸気成分はまた、流体の質量、ひいては発生される動力を増加させるだけでなく、温度低下を助けることもできる。再循環が起こると、第2の噴射流体内の水素の存在は、未燃焼アンモニアの継続的な点火を助けることができる。
【0124】
また、燃焼室13内の流体の温度を低下させるのを助けるのは、加熱流体室37からポート42aを介して噴射された水及び/または蒸気、並びに加熱流体室37において水及び/または蒸気との熱交換を増加させるコルゲーション構造42cである。
【0125】
最終的に、ここではかなりの割合の水素及びアンモニアが燃焼され、かなりの水及び窒素成分によって希釈された流体の混合物は、クラッカ73の周囲と燃焼器缶39の側壁43との間にある環状部を通過する。よって、混合物は二次燃焼ゾーン67に入る。流体の混合物がクラッカ73を通過すると、それらはクラッカ73を加熱し、それによってクラッカが上述のように機能することを可能にし、その第1のチャネル及び第2のチャネル内の流体との熱交換を容易にする。
【0126】
所望の燃焼条件(以下でさらに説明する)を形成するために燃焼のための追加の空気を提供し、流体の混合物をさらに希釈するために、空気及び窒素が二次燃焼ゾーンの上流端の複数のポート71を介して噴射される。加えて、複数のポート71の性質によって与えられるスワールは、二次燃焼ゾーン67内の混合及び滞留を増加させるのを助ける。
【0127】
上述のように、比較的高温での水素の燃焼は、望ましくない窒素酸化物を生じる。したがって、より高温の一次燃焼ゾーン65内で十分な水素が燃焼されて第2の噴射流体のアンモニアが適切に点火されたならば、残りの水素は主に別の仕方で燃焼されることが好ましい。さらに、リッチ条件下でのアンモニア燃焼は水素生成にもつながり、この水素は一般に、酸素不足のために一次ゾーンで燃焼しないことが知られている。純粋な水素の場合、窒素酸化物形成の低減のために、燃焼が約1200%~1300K未満で起こることが望ましい。このことは、無炎燃焼が起こる二次燃焼ゾーン67で実現することができる。無炎燃焼では、火炎は存在せず、水素の燃焼は離散モードで起こる。これは、十分に希釈された反応物(例えば、水及び窒素で希釈された水素及び酸素)及び十分に低下した温度で起こり得る。つまり、水素分子及び酸素分子は反応するように存在するが、それらは、可視火炎を生成するのに単位体積当たり不十分な反応が生じるように十分に希釈される。このような条件は、いくつかの要因に起因して、二次燃焼ゾーン67において優勢であり得る。第一に、ほとんどの水素は、一次燃焼ゾーン65で既に燃焼されている。第二に、一次燃焼ゾーン65における燃焼は、希釈剤(主に水及び窒素)を生成し、一次燃焼ゾーン65における滞留時間の増加は、これらの希釈剤の生成を増加させ、混合を増加させ、温度の低下を可能にする。水及び窒素は、二次燃焼ゾーン65に到達する材料の90%超を含むことができ、95%超を含むことができる。第三に、複数のポート71を介した窒素の噴射は、二次燃焼ゾーン67への送達のための反応物をさらに希釈する。第1の出口15の位置(すなわち、より半径方向内側/中央の位置にある)により、第1の噴射流体の水素は、第2の噴射流体の成分よりも一次燃焼ゾーン65において再循環されにくくなる傾向があり、代わりに二次燃焼ゾーン67へのより直接的な経路をたどる傾向があることにさらに留意されたい。これは、一次燃焼ゾーン65でより少ない水素が燃焼され、二次燃焼ゾーン67でより多くの水素が燃焼され得るという点で有益であり得る。
【0128】
二次燃焼ゾーン67から排出されるのは燃焼生成物である。排気流体流は、主に水及び窒素である。水成分は、約30%~40%であってもよい。これは、水の濃度が約10%未満であり得る従来の化石燃料で動作する従来のガスタービンエンジンとは対照的であり得る。タービン10を通過すると、排気生成物は排気流体熱交換器79に導かれる。排気流体熱交換器79では、排気流体流からの熱エネルギーが水流に伝達される(水の温度を上昇させる)。水流は、第2の通路25の第2の噴射流体を加熱し、渦領域59の温度を制御するために、加熱流体室37に圧送される。次に、その一部はポート42aを介して渦領域59に噴射され、残りは第2の噴射流体の成分として使用するために第2の通路25に圧送される。水流の水は、排気流体流に由来する。排気流体流が排気流体熱交換器79を通過すると、流体は凝縮器81を通過する。凝縮器81では、排気流体中の水も窒素から分離される。水が排気流体熱交換器79に圧送される間に、窒素は大気に排出される。
【0129】
このように、システム1は、投入された単一種の燃料からそれ自体の燃料及び反応物を生成し、それが発生させる熱エネルギーの一部及び排気生成物の一部を利用する。
【0130】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された特徴のすべて、及び/またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップのすべては、そのような特徴及び/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされ得る。
【0131】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示される各特徴は、別段の明記のない限り、同じ、均等、または同様の目的を果たす代替的な特徴に置き換えることができる。したがって、別段の明記のない限り、開示された各特徴は、一般的な一連の均等または同様の特徴の一例にすぎない。
【0132】
本発明は、いかなる上述の実施形態の細部にも限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な特徴、もしくは任意の新規な組み合わせ、またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップの任意の新規なステップ、もしくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。特許請求の範囲は、上述の実施形態だけでなく、特許請求の範囲内に含まれる任意の実施形態も包含すると解釈されるべきである。例として、クラッカ及び関連する燃焼室を備えるシステムの一実施形態は、上記の実施形態で説明したシステムの残りの部分とは独立して、及び/または他のシステム特徴と関連して使用することができる。例えば、クラッカ及び関連する燃焼室を備えるシステムの一実施形態は、例えば使用される燃料及び/またはそれらの送達の仕方が異なる可能性がある異なるガスタービンエンジンに関連して使用することができる。さらなる例として、上述の実施形態では、蒸気は、第2の噴射流体の一部として、燃焼器缶39の上流壁41を通って噴射されるが、他の実施形態では、これらのうちの一方のみまたは他方のみが発生してもよいし、どちらも発生しなくてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 システム、3 ガスタービンエンジン、5 支持流体処理アセンブリ、7 圧縮機、9 燃焼器、10 タービン、11 ガスタービンエンジン燃料噴射装置、13 燃焼室、15 第1の出口、17 第2の出口、19 空気出口、21 バーナヘッド、23 第1の通路、25 第2の通路、27 角度スワーラ、29 補助燃料出口、31 補助燃料通路、33 空気通路、35 軸方向スワーラ、37 加熱流体室、39 燃焼器缶、41 上流壁、42a ポート、42b 上流面、42c コルゲーション構造、42d ピーク、42e トラフ、42f 反対側表面、43 側壁、45 下流壁、47 送達ゾーン、49 コアンダ発生体、51 管状部分、53 フレア部分、55 連続テーパ部分、57 リム部分、59 渦領域、61 半径方向外面、63 腰部、65 一次燃焼ゾーン、67 二次燃焼ゾーン、69 空気及び窒素入口、71 ポート、73 クラッカ/バッフル、75 中央頂点、77 燃料熱交換器、79 排気流体熱交換器、81 凝縮器
【手続補正書】
【提出日】2023-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の燃料を含む第1の噴射流体と第2の燃料を含む第2の噴射流体と
を燃焼室に送達するように構成され
た燃料噴射装置を備えるシステムであって、
前記装置が、前記第1の噴射流体及び前記第2の噴射流体を送達するように構成され、それにより、前記第1の噴射流体が第1の流れで送達され、前記第2の噴射流体が第2の流れで送達され、かつ、最初の場所に対応する送達ゾーンが存在し、前記最初の場所において、記第1の流れ及び前記第2の流れの両方が送達され、前記第1の流れが前記第2の流れによって実質的に半径方向に取り囲まれる、システム。
【請求項2】
前記装置が、前記第1の流れ及び前記第2の流れを実質的に同じ方向に送達するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の流れ及び前記第2の流れが、別々の対応する第1の出口及び第2の出口から送達される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
送達された後に前記第1の燃料及び前記第2の燃料との燃焼のための空気を送達するように構成され、前記第1の出口の半径方向内側にあり、かつ前記第1の出口によって半径方向に取り囲まれた空気出口を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の流れにおける前記第1の噴射流体の少なくとも一部の初期燃焼が、前記第2の流れにおける前記第2の噴射流体の少なくとも一部の点火のためのパイロットとして働く、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の燃料が反応の速い燃料を含み、前記第2の燃料が反応の遅い燃料を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記送達ゾーンが、前記第1の噴射流体及び前記第2の噴射流体が前記装置によって送達されるコアンダ発生体によって半径方向に取り囲まれ画定される、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記コアンダ発生体が、前記装置を半径方向に取り囲む管状部分を備え、前記管状部分が、一定の断面の半径方向内面を有し、前記管状部分の下流の前記半径方向内面にフレア部分を接続される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記管状部分の前記半径方向内面と連続テーパ部分の半径方向内面とが、縁部の形態の不連続部で交わる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記フレア部分が、前記連続テーパ部分に接続され、実質的に半径方向に延びる下流面を有するリム部分を備える、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記連続テーパ部分の前記半径方向内面と前記リム部分の前記下流面とが、縁部の形態の不連続部で交わる、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記コアンダ発生体が、燃焼器缶によって画定された燃焼室内に延び、前記コアンダ発生体の半径方向外面と前記燃焼器缶の半径方向内面とによって半径方向に境界付けられ、かつ前記燃焼器缶の上流面によって軸方向に境界付けられた渦領域を形成する、請求項7から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記燃焼室が、前記装置の下流にあり、リッチ燃焼が発生する一次燃焼ゾーンと、前記一次燃焼ゾーンの下流にあり、無炎燃焼が発生する二次燃焼ゾーンとを備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記燃焼器缶が、前記二次燃焼ゾーン内または前記二次燃焼ゾーンに隣接する少なくとも1つの空気入口を備えることができ、少なくとも1つの前記空気入口が、追加の空気を前記燃焼室に送達するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
クラッカが、前記燃焼室内に配置され、前記燃焼室が、前記燃焼室内の燃焼流体と、前記クラッカ内の第1のチャネルを通過し、それによって、第1のクラッカ流体を2種以上の化学種に化学分解する第1のプロセスを経る前記第1のクラッカ流体との間に熱接触を提供するように構成される、請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記化学種のうちの1種が前記第1の燃料である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記クラッカが、前記燃焼室内の前記燃焼流体と、前記クラッカ内の第2のチャネルを通過し、それにより、その化学的性質を変えることなく第2のクラッカ流体の熱エネルギーを増加させる第2のプロセスを経る前記第2のクラッカ流体との間に熱接触を提供するようにさらに構成される、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第2のクラッカ流体が前記第2の燃料である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記燃料噴射装置がガスタービンエンジン燃料噴射装置であり、前記燃焼室がガスタービンエンジンの燃焼室である、請求項1から18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記システムが、燃料熱交換器を備え、前記燃料熱交換器が、前記ガスタービンエンジンの圧縮機内に移動する空気流の少なくとも一部と、前記装置によって前記第2の噴射流体で送達するために移動する前記第2の燃料の流れとを熱接触させるように構成される、
請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記ガスタービンエンジンからの排気流体流の少なくとも一部と、前記装置及び/または前記燃焼室への送達のために移動する水流とを熱接触させるように構成された排気流体熱交換器を備える、
請求項19または20に記載のシステム。
【請求項22】
請求項19から21のいずれか一項に記載のシステムを備えるガスタービンエンジン。
【請求項23】
第1の燃料を含む第1の噴射流体と第2の燃料を含む第2の噴射流体とを燃焼室に送達するステップであって、それにより、前記第1の噴射流体が第1の流れで送達され、前記第2の噴射流体が第2の流れで送達されるように、かつ、最初の場所に対応する送達ゾーンが存在し、前記最初の場所において、前記第1の流れ及び前記第2の流れの両方が送達され、前記第1の流れが前記第2の流れによって実質的に半径方向に取り囲まれる、ステップを含む、ガスタービンエンジンにおいて燃料を噴射する方法。
【請求項24】
燃焼室と前記燃焼室内に配置されたクラッカとを備えるガスタービンエンジン流体システムであって、
前記クラッカが、前記燃焼室内の燃焼流体と、前記クラッカ内の第1のチャネルを通過し、それによって、第1のクラッカ流体を2種以上の化学種に化学分解する第1のプロセスを経る前記第1のクラッカ流体との間に熱接触を提供するように構成される、ガスタービンエンジン流体システム。
【請求項25】
請求項24に記載のシステムを備えるガスタービンエンジン。
【請求項26】
第1のクラッカ流体に第1のプロセスを実行して、前記第1のクラッカ流体を2種以上の化学種に化学分解する方法であって、
当該方法が、前記第1のクラッカ流体をガスタービンエンジンの燃焼室に通して、前記燃焼室内の燃焼流体と前記第1のクラッカ流体との間に熱接触を提供するステップを含む、方法。
【国際調査報告】