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特表2023-549389燃料電池および燃料電池における反応流体流および冷却流体流を分離する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】燃料電池および燃料電池における反応流体流および冷却流体流を分離する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0267 20160101AFI20231116BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20231116BHJP
   H01M 8/0202 20160101ALI20231116BHJP
   H01M 8/2418 20160101ALI20231116BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20231116BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231116BHJP
【FI】
H01M8/0267
H01M8/0258
H01M8/0202
H01M8/2418
H01M8/02
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528625
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 GB2021052967
(87)【国際公開番号】W WO2022106818
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】2018069.1
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2108940.4
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522425699
【氏名又は名称】ブランブル エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】メイスン、トーマス ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】エンゲブレッツェン、エリック チャールズ
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126AA11
5H126AA14
5H126AA15
5H126AA22
5H126BB06
5H126CC06
5H126EE07
5H126EE33
5H126JJ00
(57)【要約】
【解決手段】本開示は、少なくとも一つのイオン透過膜と、当該少なくとも一つのイオン透過膜の反対の表面上に設けられる少なくとも一つのアノードおよび少なくとも一つのカソードと、を備える少なくとも一つの燃料電池ボードと、冷却流体が実質的に少なくとも一つの燃料電池ボードの少なくとも一つのアノードのみに向けられるように当該少なくとも一つのアノードの近くに設けられ、当該少なくとも一つの燃料電池ボードに冷却流体を供給するように設けられる少なくとも一つの第1流路と、を備える燃料電池を提供する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのイオン透過膜と、当該少なくとも一つのイオン透過膜の反対の表面上に設けられる少なくとも一つのアノードおよび少なくとも一つのカソードと、を備える少なくとも一つの燃料電池ボードと、
冷却流体が実質的に前記少なくとも一つの燃料電池ボードの前記少なくとも一つのアノードのみに向けられるように当該少なくとも一つのアノードの近くに設けられ、当該少なくとも一つの燃料電池ボードに前記冷却流体を供給するように設けられる少なくとも一つの第1流路と、
を備える燃料電池。
【請求項2】
反応流体が実質的に前記少なくとも一つの燃料電池ボードの前記少なくとも一つのカソードのみに向けられるように当該少なくとも一つのカソードの近くに設けられ、当該少なくとも一つの燃料電池ボードに前記反応流体を供給するように設けられる少なくとも一つの第2流路を更に備える、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記少なくとも一つの燃料電池ボードは、前記少なくとも一つのアノードを前記少なくとも一つのイオン透過膜を通じて前記少なくとも一つのカソードに接続するように構成される少なくとも一つの電気コネクタを備える、請求項1または2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記燃料電池ボードは、ペアで設けられる複数のアノードおよび複数のカソードと、アノードおよびカソードの隣り合うペアを前記少なくとも一つのイオン透過膜を通じて接続するように構成される複数の電気コネクタと、を備える請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項5】
前記少なくとも一つの燃料電池ボードは、複数の燃料電池ボードを含み、
前記少なくとも一つの第1流路は、複数の第1流路を含み、
各燃料電池ボードについて、前記アノードは前記少なくとも一つのイオン透過膜の第1表面上に配置され、前記カソードは前記少なくとも一つのイオン透過膜の前記第1表面と反対の第2表面上に配置され、
前記複数の燃料電池ボードは、各燃料電池ボードの前記第1表面が隣り合う燃料電池ボードの前記第1表面に対向し、各燃料電池ボードの前記第2表面が隣り合う燃料電池ボードの前記第2表面に対向し、前記複数の第1流路が隣り合う燃料電池ボードの前記第1表面の間のみに設けられるように設けられる、
請求項3または4に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記複数の燃料電池ボードに反応流体を供給するように設けられる複数の第2流路を更に備え、
前記反応流体が実質的に前記複数のカソードに向けられるように、前記複数の第2流路は隣り合う燃料電池ボードの前記第2表面の間のみに設けられる、
請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記複数の第2流路は、前記複数の第1流路が前記冷却流体を向ける方向に実質的に垂直な方向に前記反応流体を向けるように設けられる、請求項6に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記複数の第2流路は、前記複数の第1流路が前記冷却流体を前記燃料電池ボード内に向ける方向と実質的に反対の方向に、前記反応流体を前記燃料電池ボード内に向けるように設けられ、
前記第1流路は、前記燃料電池ボード内への前記冷却流体の入力後に、当該冷却流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられ、
前記第2流路は、前記燃料電池ボード内への前記反応流体の入力後に、当該反応流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられる、
請求項6に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記第1流路は、前記燃料電池ボードへの前記冷却流体の入力後に、当該冷却流体がいずれも当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な二つの異なる方向に当該燃料電池ボードを出るようにも設けられ、
前記第2流路は、前記燃料電池ボードへの前記反応流体の入力後に、当該反応流体がいずれも当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な二つの異なる方向に当該燃料電池ボードを出るようにも設けられる、
請求項8に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記複数の第2流路は、前記複数の第1流路が前記燃料電池ボード内に前記冷却流体を向ける方向と実質的に反対の方向に、前記燃料電池ボード内に前記反応流体を向けるように設けられ、
前記第1流路は、前記燃料電池ボード内への前記冷却流体の入力後に、当該冷却流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に反対の少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられ、
前記第2流路は、前記燃料電池ボード内への前記反応流体の入力後に、当該反応流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に反対の少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられる、
請求項6に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記第1流路は、前記燃料電池ボードの第1側から当該燃料電池ボードの当該第1側と反対の第2側の方に前記冷却流体を当該燃料電池ボード内に向け、当該冷却流体が当該第1側から当該燃料電池ボードを出るように当該第1側に戻すように設けられる、請求項10に記載の燃料電池。
【請求項12】
前記複数の第2流路は、前記複数の第1流路が前記燃料電池ボード内に前記冷却流体を向ける方向と反対の方向に、前記燃料電池ボード内に前記反応流体を向けるように設けられ、
前記第1流路は、前記燃料電池ボード内への前記冷却流体の入力後に、当該冷却流体が当該燃料電池ボード内に向けられる方向と実質的に同じ少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられ、
前記第2流路は、前記燃料電池ボード内への前記反応流体の入力後に、当該反応流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に垂直または好ましくは実質的に反対の少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられる、
請求項6に記載の燃料電池。
【請求項13】
前記第1流路および/または第2流路の一または複数は、前記冷却流体および/または前記反応流体を前記燃料電池ボードの第1側から当該燃料電池ボード内に向け、前記冷却流体および/または前記反応流体を前記燃料電池ボードの第1側と反対の当該燃料電池ボードの第2側から導出するように設けられ、
好ましくは、前記第1流路の一または複数は、前記冷却流体を前記燃料電池ボードの第1側から当該燃料電池ボード内に向け、前記冷却流体を前記燃料電池ボードの第1側と反対の当該燃料電池ボードの第2側から導出するように設けられる、
請求項6から11のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項14】
隣り合う燃料電池ボードの間に配置される複数のスペーサを更に備える、請求項5から11のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項15】
前記スペーサは、前記第1流路および/または第2流路を方向付けるための流体入口点および/または流体出口点を有する、請求項14に記載の燃料電池。
【請求項16】
少なくとも一つのイオン透過膜と、少なくとも一つのアノードと、少なくとも一つのカソードと、を備える少なくとも一つの燃料電池ボードを提供することと、
前記少なくとも一つのアノードおよび前記少なくとも一つのカソードを、前記少なくとも一つのイオン透過膜の反対の表面上に設けることと、
冷却流体が実質的に前記少なくとも一つの燃料電池ボードの前記少なくとも一つのアノードのみに向けられるように当該少なくとも一つのアノードの近くに、当該少なくとも一つの燃料電池ボードに前記冷却流体を供給するための少なくとも一つの第1流路を設けることと、
を備える燃料電池における冷却流体流を分離する方法。
【請求項17】
反応流体が実質的に前記少なくとも一つの燃料電池ボードの前記少なくとも一つのカソードのみに向けられるように当該少なくとも一つのカソードの近くに、当該少なくとも一つの燃料電池ボードに前記反応流体を供給するための少なくとも一つの第2流路を設けることを更に備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記燃料電池ボードに、ペアで設けられる複数のアノードおよび複数のカソードを提供することと、
複数の電気コネクタを提供することと、
同じ燃料電池ボード上のアノードおよびカソードの隣り合うペアを、複数の電気コネクタで前記少なくとも一つのイオン透過膜を通じて接続することと、
を更に備える請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
複数の燃料電池ボードを提供することと、
各燃料電池ボードについて、各アノードを前記少なくとも一つのイオン透過膜の第1表面上に配置し、各カソードを前記少なくとも一つのイオン透過膜の前記第1表面と反対の第2表面上に配置することと、
各燃料電池ボードの前記第1表面が隣り合う燃料電池ボードの前記第1表面に対向し、各燃料電池ボードの前記第2表面が隣り合う燃料電池ボードの前記第2表面に対向するように前記複数の燃料電池ボードを設けることと、
前記複数の燃料電池ボードに冷却流体を供給するための複数の第1流路を、隣り合う燃料電池ボードの前記第1表面の間のみに設けることと、
を更に備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
反応流体が実質的に前記複数のカソードに向けられるように、隣り合う燃料電池ボードの前記第2表面の間のみに複数の第2流路を設けることを更に備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の第2流路は、前記複数の第1流路が前記冷却流体を向ける方向に実質的に垂直な方向に前記反応流体を向けるように設けられる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の第2流路は、前記複数の第1流路が前記冷却流体を前記燃料電池ボード内に向ける方向と実質的に反対の方向に、前記反応流体を前記燃料電池ボード内に向けるように設けられ、
前記第1流路は、前記燃料電池ボード内への前記冷却流体の入力後に、当該冷却流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられ、
前記第2流路は、前記燃料電池ボード内への前記反応流体の入力後に、当該反応流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられる、
請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第1流路は、前記燃料電池ボードへの前記冷却流体の入力後に、当該冷却流体がいずれも当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な二つの異なる方向に当該燃料電池ボードを出るようにも設けられ、
前記第2流路は、前記燃料電池ボードへの前記反応流体の入力後に、当該反応流体がいずれも当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な二つの異なる方向に当該燃料電池ボードを出るようにも設けられる、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の第2流路は、前記複数の第1流路が前記燃料電池ボード内に前記冷却流体を向ける方向と実質的に反対の方向に、前記燃料電池ボード内に前記反応流体を向けるように設けられ、
前記第1流路は、前記燃料電池ボード内への前記冷却流体の入力後に、当該冷却流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に反対の少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられ、
前記第2流路は、前記燃料電池ボード内への前記反応流体の入力後に、当該反応流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に反対の少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられる、
請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記第1流路は、前記燃料電池ボードの第1側から当該燃料電池ボードの当該第1側と反対の第2側の方に前記冷却流体を当該燃料電池ボード内に向け、当該冷却流体が当該第1側から当該燃料電池ボードを出るように当該第1側に戻すように設けられる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
隣り合う燃料電池ボードの間に複数のスペーサを配置することを更に備え、
オプションで、一または複数のスペーサが、前記少なくとも一つの第1流路を定める一体化された冷却導管と共に構成される、
請求項19から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記冷却流体は、反応流体より高いレートで向けられる、請求項19から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
一または複数のスペーサは、反応流体を前記少なくとも一つの燃料電池ボードに供給するための少なくとも一つの第2流路を定める一体化された反応導管と共に構成される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項29】
スペーサは、前記第1流路および/または第2流路を方向付けるための流体入口点および/または流体出口点を有する、請求項26から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
それぞれが、少なくとも一つのイオン透過膜と、ペアで設けられる複数のアノードおよび複数のカソードと、複数の電気コネクタと、を備える複数の燃料電池ボードであって、前記複数のアノードが前記少なくとも一つのイオン透過膜の第1表面上に配置され、前記複数のカソードが前記少なくとも一つのイオン透過膜の前記第1表面と反対の第2表面上に配置され、前記複数の電気コネクタがアノードおよびカソードの隣り合うペアを前記少なくとも一つのイオン透過膜を通じて接続するように設けられる、複数の燃料電池ボードと、
前記複数の燃料電池ボードに冷却流体を供給するように設けられる複数の第1流路と、
を備え、
各燃料電池ボードの前記第1表面が隣り合う燃料電池ボードの前記第1表面に対向し、各燃料電池ボードの前記第2表面が隣り合う燃料電池ボードの前記第2表面に対向し、前記冷却流体が実質的に各燃料電池ボードの前記複数のアノードのみに向けられるように、前記複数の第1流路が隣り合う燃料電池ボードの前記第1表面の間のみに設けられるように、前記複数の燃料電池ボードが設けられる、
燃料電池。
【請求項31】
前記燃料電池ボードは多層プリント基板(PCB)を備える、請求項1から15または30のいずれかに記載の燃料電池または請求項16から29のいずれかに記載の燃料電池における冷却流体流を分離する方法。
【請求項32】
前記少なくとも一つのアノードおよび前記少なくとも一つのカソードは、前記少なくとも一つのイオン透過膜の反対の表面上にプリントされ、
前記燃料電池ボードの前記少なくとも一つのイオン透過膜は、前記多層PCBに接着される、
請求項31に記載の燃料電池または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池および燃料電池における反応流体流および冷却流体流を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(例えば、固体高分子電解質燃料電池)は、リアクタントまたはオキシダント(例えば、純粋な酸素または空気)および燃料(例えば、水素または水素を含む混合物、または炭化水素または炭化水素派生物)から電気エネルギーおよび熱を生成する電気化学デバイスである。燃料電池技術は、発電所、乗物およびラップトップコンピュータ等のステーショナリおよびモバイルでの用途が見つかっている。
【0003】
典型的には、燃料電池は、自由電子ではないイオン(例えば、水素イオン)が一方の電極から他方の電極へ通過することを可能にする電解質膜によって分離された二つの電極(アノードおよびカソード)を備える。電極上の触媒は、アノード上の燃料が電子および陽子/陽イオンを分離する反応、およびカソード上のオキシダントの水への還元反応を加速する。そして、例えば電気デバイスに電力を供給するための電流を生成する回路が、アノードおよびカソードの間に形成されうる。酸素または反応空気等の反応流体はカソードに供給され、水素等の燃料はアノードに供給される。
【0004】
電解質膜によって分離された電極の単一のペアは、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)または燃料電池ボードと呼ばれる。適度な負荷の下で稼働する燃料電池MEAが生成する約0.7Vの出力電圧は、多くの用途にとってはしばしば低すぎる。この電圧を高めるために、MEAは図1に示されるようなスタックに組み立てられる。各MEA1は、二つの電解質層の間に挟まれたイオン透過膜を備える電解質膜1a(例えば、ナフィオン(商標)膜)の層を有し、アノード2およびカソード3が電解質膜のいずれかの側に設けられる。隣り合うMEAは導電性バイポーラセパレータプレート4によって分離され、燃料6(例えば、水素)およびオキシダント5(例えば、酸素ガスまたは「反応空気」)はバイポーラプレートの反対側に提供されるチャネルを通じて流れる。エンドプレート9は、電気コネクタ7、8を介して外部の回路に接続される。燃料電池におけるスタックにおけるこれらのMEAの数は総電圧を決定し、各膜電極の表面積は総電流を決定する。電極の近くの触媒層は、電極での反応のレートおよび効率を高める。
【0005】
燃料電池の性能は、多くのファクタによって決定される。電解質膜における正しい含水量を維持することが、燃料電池の性能を最適化する上で重要である。膜は、稼働および燃料電池の電流が低下しないようなイオン電流の効率的な伝導のために、あるレベルの水分を必要とする。セルによって生成された水は、カソードに沿ったガス流によって除去されるまたは吸い取られる。
【0006】
燃料電池スタックの過熱も問題を引き起こすため、冷却がしばしば必要とされる。これは、一般的に、スタック内を循環する冷却流体(例えば、空気または水)を供給することによって達成される。加えて、反応流体(例えば、酸素または反応空気)が、反応を維持するためにカソードによって必要とされる。従来技術のセットアップでは(例えば、WO2012/117035を参照)、冷却流体および反応流体が同じチャネルまたは流れにおいてカソードに供給される。
【0007】
従来、燃料電池はバイポーラ構成にスタックされる。ここで、一つのMEAのアノードは隣り合うMEAのカソードに対向または対面し、MEAの面に垂直に電流が流れるように、一つのMEAのアノードから隣り合うMEAのカソードに電流を流すためのバイポーラセパレータプレートが二つのMEAの間に提供される。このようなバイポーラ構成では、MEAのアノードが隣り合うMEAのカソードに対向するため、カソードにリアクタントを供給して燃料電池内から余熱を除去するために、冷却流体は典型的には反応流体と混ざった状態で燃料電池内を循環する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、冷却流は一般的に反応流と比べてより高い流量を必要とし、混合流は必要な水分をカソードから除去してしまうため、イオン経路の導電性の低下および燃料電池効率の低下をもたらす。
【0009】
以上に鑑み、改良された燃料電池、燃料電池スタック、燃料電池デザインおよびこれらの燃料電池の使用を提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
好ましい実施形態の態様は、少なくとも一つのイオン透過膜と、当該少なくとも一つのイオン透過膜の反対の表面上に設けられる少なくとも一つのアノードおよび少なくとも一つのカソードと、を備える少なくとも一つの燃料電池ボードと、冷却流体が実質的に少なくとも一つの燃料電池ボードの少なくとも一つのアノードのみに向けられるように当該少なくとも一つのアノードの近くに設けられ、当該少なくとも一つの燃料電池ボードに冷却流体を供給するように設けられる少なくとも一つの第1流路と、を備える燃料電池を提供する。
【0011】
好ましい実施形態では、燃料電池の燃料電池ボードが、少なくとも一つのイオン透過膜と、イオン透過膜のいずれかの側に設けられる少なくとも一つのアノードおよび少なくとも一つのカソードと、を備える。好ましい実施形態によれば、冷却流体がアノードのみに向けられるように、少なくとも一つの冷却流路(第1流路)が燃料電池ボードのアノード側の近くのみに設けられる。この場合、冷却流体はカソードに向けられないため、カソードから水分を除去することが防止される。このように、電解質を湿らせて燃料電池効率を維持するために、カソードでの湿気が所望レベルに維持されうる。完全に分離された空気流は、分離されたインレットおよびアウトレットを使用すること、および燃料電池スタックにおける反応流体および冷却流体の混合が起こらないことを意味する。
【0012】
いくつかの実施形態では、燃料電池が、反応流体が実質的に少なくとも一つの燃料電池ボードの少なくとも一つのカソードのみに向けられるように当該少なくとも一つのカソードの近くに設けられ、当該少なくとも一つの燃料電池ボードに反応流体を供給するように設けられる少なくとも一つの第2流路を更に備えてもよい。第1流路を燃料電池ボードのアノード側の近くのみに設け、第2流路を燃料電池ボードのカソード側の近くに設けることによって、冷却流体流が反応流体流から分離される。この場合、冷却流体流は、反応流体流と独立に、必要に応じて異なる流量、圧力、および/または成分を有するように制御されてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、少なくとも一つの燃料電池ボードが、少なくとも一つのアノードを少なくとも一つのイオン透過膜を通じて少なくとも一つのカソードに接続するように構成される少なくとも一つの電気コネクタを備えてもよい。アノードを電気コネクタでイオン透過膜を通じてカソードに接続することは、膜の面に沿った方向に電流が流れることを可能にする。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの膜貫通電気コネクタが、アノードおよびカソードが少なくとも部分的に重複する領域において、膜に亘って電極を接続してもよく、少なくとも一つの膜貫通電気コネクタは、均質的な化学デポジションプロセス等によって生成されてもよい。
【0014】
燃料電池は、単一の燃料電池ボードまたは複数の燃料電池ボードを備えてもよい。いくつかの実施形態では、燃料電池ボードが、ペアで設けられる複数のアノードおよび複数のカソードと、アノードおよびカソードの隣り合うペアを少なくとも一つのイオン透過膜を通じて接続するように構成される複数の電気コネクタと、を備えてもよい。燃料電池ボードに複数のアノード/カソードのペアを提供することによって、燃料電池ボードの総出力電圧が高められる。
【0015】
いくつかの実施形態では、燃料電池が複数の燃料電池ボードおよび複数の第1流路を含んでもよい。そして、各燃料電池ボードについて、アノードは少なくとも一つのイオン透過膜の第1表面上に配置されてもよく、カソードは少なくとも一つのイオン透過膜の第1表面と反対の第2表面上に配置されてもよい。複数の燃料電池ボードは、各燃料電池ボードの第1表面が隣り合う燃料電池ボードの第1表面に対向し、各燃料電池ボードの第2表面が隣り合う燃料電池ボードの第2表面に対向するように設けられてもよい。複数の第1流路は、隣り合う燃料電池ボードの第1表面の間のみに設けられてもよい。複数の燃料電池ボードをスタックすることによって、燃料電池の総出力電圧が比例的に高められる。更に、燃料電池ボードのアノード側が隣り合う燃料電池ボードのアノード側に対向するように燃料電池ボードを設けることによって、アノード間の空間のみにクーラントを向けるための冷却流路を設けることが可能になる。
【0016】
いくつかの実施形態では、燃料電池が、複数の燃料電池ボードに反応流体を供給するように設けられる複数の第2流路を更に備えてもよい。反応流体が実質的に複数のカソードに向けられるように、複数の第2流路は隣り合う燃料電池ボードの第2表面の間のみに設けられてもよい。燃料電池ボードのカソード側が隣り合う燃料電池ボードのカソード側に対向するように燃料電池ボードを設けることによって、カソード間の空間にリアクタントを向けるための反応流路を設けることが可能になる。このように、本配置は、冷却流体流が反応流体流から分離されることを可能にする。
【0017】
いくつかの実施形態では、複数の第2流路が、複数の第1流路が冷却流体を向ける方向に実質的に垂直な方向に反応流体を向けるように設けられてもよい。このように、冷却流体流の影響を反応流体流から更に分離できる。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数の第2流路が、複数の第1流路が冷却流体を燃料電池ボード内に向ける方向と実質的に反対の方向に、反応流体を燃料電池ボード内に向けるように設けられうる。第1流路は、燃料電池ボード内への冷却流体の入力後に、当該冷却流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられうる。第2流路は、燃料電池ボード内への反応流体の入力後に、当該反応流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられうる。第1流路は、燃料電池ボードへの冷却流体の入力後に、当該冷却流体がいずれも当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な二つの異なる方向に当該燃料電池ボードを出るようにも設けられうる。第2流路は、燃料電池ボードへの反応流体の入力後に、当該反応流体がいずれも当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な二つの異なる方向に当該燃料電池ボードを出るようにも設けられうる。
【0019】
いくつかの実施形態では、複数の第2流路が、複数の第1流路が燃料電池ボード内に冷却流体を向ける方向と実質的に反対の方向に、燃料電池ボード内に反応流体を向けるように設けられうる。第1流路は、燃料電池ボード内への冷却流体の入力後に、当該冷却流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に反対の少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられうる。第2流路は、燃料電池ボード内への反応流体の入力後に、当該反応流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に反対の少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられうる。第1流路は、燃料電池ボードの第1側から当該燃料電池ボードの当該第1側と反対の第2側の方に冷却流体を当該燃料電池ボード内に向け、当該冷却流体が同じ第1側から当該燃料電池ボードを出るように当該第1側に戻すように設けられうる。流体出力および流体入力は、ボード/燃料電池スタックの同じ側にある。いくつかの実施形態では、第1流路および/または第2流路の一または複数が、冷却流体および/または反応流体を燃料電池ボードの第1側から当該燃料電池ボード内に向け、冷却流体および/または反応流体を燃料電池ボードの第1側と反対の当該燃料電池ボードの第2側から導出するように設けられる。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1流路および第2流路の両方の一または複数が、一または複数の燃料電池ボードの第1側の単一の中央点で、流体を燃料電池ボード内に入力でき、流体は実質的に中央でない(非中央)二つの点(中央入力点の周辺または、この燃料電池ボードの第1側/同じ側の二つの非入力側の二つの点)で燃料電池ボードから出るまたは出力されるように流れる。この出力流は、入力流の方向と実質的に反対の方向である。流体出力および流体入力は、ボード/燃料電池スタックの同じ側にある。好ましくは、この配置は反応流体のための第2流路に適用される。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1流路および第2流路の両方の一または複数が、一または複数の燃料電池ボードの第1側の二つの周辺、非中央または側方の点で、流体を燃料電池ボード内に入力でき、この燃料電池ボードの第1側の単一の中央点で流体が燃料電池ボードから出るまたは出力されるように流れる。この流れは、燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に反対の方向である。流体出力および流体入力は、ボード/燃料電池スタックの同じ側にある。好ましくは、この配置は反応流体のための第2流路に適用される。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1流路または第2流路の一または複数がまっすぐに燃料電池ボードを横断し、流体はボードの反対側で実質的に同じ方向に燃料電池ボードを出入りする。この「線状」流は、スタック/燃料電池の一方側からスタック/燃料電池の他方側へまっすぐに向かう。これは、燃料電池ボードが矩形状の場合、燃料電池ボードの長辺または短辺に沿ったものでもよい。好ましくは、燃料電池ボードが矩形状の場合、このような流れは短辺に垂直である。すなわち、入力および出力は燃料電池ボードの長辺となる。これは、ここで記述される任意のこのような線状流に当てはまる。ここで、第1流路は依然として第2流路から分離されており、入力は燃料電池ボードまたは燃料電池スタックの異なる側からとなる。換言すれば、いくつかの実施形態では、第1流路および/または第2流路が、冷却流体を燃料電池ボードの第1側(入力)から当該燃料電池ボード内に向け、冷却流体を燃料電池ボードの第1側と反対の当該燃料電池ボードの第2側(出力)から導出するように設けられる。これらの実施形態では、第1流路が直進横断型の場合、第2流路は、ここで記述される第2流路の任意の一つでよい。これらの実施形態では、第2流路が直進横断型の場合、第1流路は、ここで記述される第1流路の任意の一つでよい。
【0023】
いくつかの実施形態で好ましくは、第1流路の一または複数が、燃料電池ボードの第1側から当該燃料電池ボード内に冷却流体を向け、燃料電池ボードの第1側と反対の燃料電池ボードの第2側から冷却流体を導出するように設けられ、第2流路の一または複数が、燃料電池の第1側の二つの周辺、非中央または側方の点で、反応流体を燃料電池ボード内に入力するように設けられ、燃料電池ボードの同じ第1側における単一の中央点で流体が燃料電池ボードから出るまたは出力されるように流れる。出力方向は、入力方向と実質的に反対の方向である。
【0024】
いくつかの実施形態では、複数の第2流路が、複数の第1流路が冷却流体を燃料電池ボード内に向ける方向と実質的に同じ方向に、反応流体を燃料電池ボード内に向けるように設けられる。第1流路は、燃料電池ボード内への冷却流体の入力後に、当該冷却流体が当該燃料電池ボード内に向けられる方向と実質的に同じ少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられうる。第2流路は、燃料電池ボード内への反応流体の入力後に、当該反応流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に反対の少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられうる。
【0025】
いくつかの実施形態では、複数の第2流路が、複数の第1流路が冷却流体を燃料電池ボード内に向ける方向と反対の方向に、反応流体を燃料電池ボード内に向けるように設けられる。第1流路は、燃料電池ボード内への冷却流体の入力後に、当該冷却流体が燃料電池ボード内に向けられる方向と実質的に同じ少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられる。第2流路は、燃料電池ボード内への反応流体の入力後に、当該反応流体が燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に垂直または反対の少なくとも一つの方向(冷却流体の出力と同じ方向)に当該燃料電池ボードを出るように設けられうる。燃料電池ボードからの出力は、これらの実施形態において、共通または共用の出力または排出となりうる。
【0026】
ここで記述されるいくつかの実施形態では、任意または他の実施形態の第1流路が、任意または他の実施形態の第2流路と組み合わされうる。これは、異なるタイプの流路の組合せを可能にするという本発明の他の利点をもたらし、アノードに向けられる流体およびカソードに向けられる流体について異なる流路タイプを許容する。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1流路および第2流路への入力が別でありうるが、これらは共通の出力または排出を共有してもよい。第1流路および第2流路についての燃料電池または燃料電池ボードからの排出は、効率的およびコンパクトな燃料電池デザインのために組み合わされてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、ファンカウルが流体(好ましくは、空気)を、スタックに導入する、スタックから導出するおよび/またはスタックに亘って導く。
【0029】
ここで記述される任意の実施形態では、流体流を方向付けまたは制御するための一または複数の更なる手段によって、流体流が方向付けまたは制御されてもよい。これらは、スタックまたは燃料電池ボードに亘って流体の流れを所望の態様に方向付ける、または燃料電池ボードに亘る流体流をカソードやアノードに対して方向付けまたは制御する。これは、カソード/アノードへの反応流体/冷却流体の分配を支援する。これらの手段は、流体流をブロックする、妨げるまたは方向付けるための物理的手段でもよい。これらは、インサートまたはバッフルでもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、流体流を方向付けるための手段がファンカウルに取り付けられる。いくつかの実施形態では、流体流を方向付けるための手段が非導電性である。いくつかの実施形態では、流体流を方向付けるための手段がプラスチックまたはプラスチックインサートである。
【0031】
いくつかの実施形態では、流体流を方向付けるための手段が、二つ以上の実質的に曲がったまたは実質的にU字状のプラスチックインサートを備える。好ましくは、二つの実質的に曲がったまたは実質的にU字状のプラスチックインサートにおいて、一方のインサートが他方のインサートより大きい。好ましくは、これらは、燃料電池ボードの一方側または一方の半分上の入力に対して流体を方向付けて、ボードの表面積の実質的に全てに亘って流体を流した後、ボードの他方側または他方の半分上の出力に対して流体を方向付けられる。流体は、ボード内に入力された方向と実質的に反対の方向に、ボード(出力)から流出できる。あるいは、流体は、ボード内に入力された方向と実質的に同じ方向に、ボード(出力)から流出できる。好ましくは、流体はボードに亘るU字状の流路を経て、ボードに入力された同じ方向に流出する。
【0032】
いくつかの実施形態では、蛇行流、環状流または直進流/線状流等の任意の他の経路を流体流が取ってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、隣り合う燃料電池ボードの間に配置される複数のスペーサを燃料電池が更に備えてもよい。オプションで、一または複数のスペーサが、少なくとも一つの第1流路を定める一体化された冷却導管と共に構成されてもよい。加えてまたは代えて、一または複数のスペーサは、反応流体を少なくとも一つの燃料電池ボードに供給するための少なくとも一つの第2流路を定める一体化された反応導管と共に構成されてもよい。加えてまたは代えて、一または複数のスペーサは一体化された導管なしで構成されてもよいが、例えば、加圧空気が所望の方向(例えば、入口に垂直な方向)にスペーサを出入りするような入口点および出口点を設けることによって、流体流が所望の方向に向けられる。スペーサは、第1流路および/または第2流路を方向付けるための流体入口点および/または流体出口点を有しうる。いくつかの実施形態では、スペーサが流路を方向付けるための手段を備えてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、燃料電池の燃料電池ボードが多層プリント基板(PCB)を備えてもよい。オプションで、少なくとも一つのアノードおよび少なくとも一つのカソードが、少なくとも一つのイオン透過膜の反対の表面上にプリントされてもよく、燃料電池ボードの少なくとも一つのイオン透過膜が、多層PCBに接着されてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、燃料電池が、燃料が燃料電池ボードおよび/または燃料電池を出入りすることを可能にするための流体インレットおよび流体アウトレットを更に備える。インレットおよびアウトレットは分離されているため、燃料電池スタックにおいて反応流体および冷却流体の混合が起こらない。
【0036】
いくつかの実施形態では、冷却流体の流れのレートが反応流体のレートより高い。これは、5℃を超える温度で稼働する際に好ましい。
【0037】
好ましい実施形態の態様は、ここで記述されるようなスペーサを提供する。いくつかの実施形態では、スペーサが多層プリント基板(PCB)材料を備えてもよい。これらは、燃料電池スタックを通じて電流が流れることを可能にするために、少なくとも部分的に銅めっきされてもよい。いくつかの実施形態では、スペーサが、第1、第2または他の流路が燃料電池ボードに亘って通ることを可能にするPCBフレームであり、流れがボードに亘って向けられることを担保するための手段として機能する。いくつかの実施形態では、スペーサがめっきされた貫通孔を備える。
【0038】
好ましい実施形態の他の態様は、燃料電池における冷却流体流を分離する方法を提供する。この方法は、少なくとも一つのイオン透過膜と、少なくとも一つのアノードと、少なくとも一つのカソードと、を備える少なくとも一つの燃料電池ボードを提供することと、少なくとも一つのアノードおよび少なくとも一つのカソードを、少なくとも一つのイオン透過膜の反対の表面上に設けることと、冷却流体が実質的に少なくとも一つの燃料電池ボードの少なくとも一つのアノードのみに向けられるように当該少なくとも一つのアノードの近くに、当該少なくとも一つの燃料電池ボードに冷却流体を供給するための少なくとも一つの第1流路を設けることと、を備える。方法は、ここで記述されるような燃料電池または燃料電池ボードを利用してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、方法が、反応流体が実質的に複数のカソードに向けられるように、隣り合う燃料電池ボードの第2表面の間のみに複数の第2流路を設けることを更に備える。
【0040】
いくつかの実施形態では、複数の第1流路が冷却流体を向ける方向に実質的に垂直な方向に反応流体を向けるように複数の第2流路が設けられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、複数の第2流路が、複数の第1流路が冷却流体を燃料電池ボード内に向ける方向と実質的に反対の方向に、反応流体を燃料電池ボード内に向けるように設けられる。第1流路は、燃料電池ボード内への冷却流体の入力後に、当該冷却流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられる。第2流路は、燃料電池ボード内への反応流体の入力後に、当該反応流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられうる。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1流路が、燃料電池ボードへの冷却流体の入力後に、当該冷却流体がいずれも当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な二つの異なる方向に当該燃料電池ボードを出るようにも設けられる。第2流路は、燃料電池ボードへの反応流体の入力後に、当該反応流体がいずれも当該燃料電池ボード内に向けられた方向に実質的に垂直な二つの異なる方向に当該燃料電池ボードを出るようにも設けられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、複数の第2流路が、複数の第1流路が燃料電池ボード内に冷却流体を向ける方向と実質的に反対の方向に、燃料電池ボード内に反応流体を向けるように設けられる。第1流路は、燃料電池ボード内への冷却流体の入力後に、当該冷却流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に反対の少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられる。第2流路は、燃料電池ボード内への反応流体の入力後に、当該反応流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に反対の少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられる。
【0044】
いくつかの実施形態では、第1流路が、燃料電池ボードの第1側から当該燃料電池ボードの当該第1側と反対の第2側の方に冷却流体を当該燃料電池ボード内に向け、当該冷却流体が当該第1側から当該燃料電池ボードを出るように当該第1側に戻すように設けられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、第1流路および第2流路の両方の一または複数が、一または複数の燃料電池ボードの第1側の単一の中央点で、流体を燃料電池ボード内に入力でき、流体は実質的に中央でない(非中央)二つの点(中央入力点の周辺または、この燃料電池ボードの第1t同じ側の二つの非入力側の二つの点)で燃料電池ボードから出るまたは出力されるように流れる。この出力流は、入力流の方向と実質的に反対の方向である。流体出力および流体入力は、ボード/燃料電池スタックの同じ側にある。好ましくは、この配置は反応流体のための第2流路に適用される。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1流路および第2流路の両方の一または複数が、一または複数の燃料電池ボードの第1側の二つの周辺、非中央または側方の点で、流体を燃料電池ボード内に入力でき、この燃料電池ボードの第1側の単一の中央点で流体が燃料電池ボードから出るまたは出力されるように流れる。この流れは、燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に反対の方向である。流体出力および流体入力は、ボード/燃料電池スタックの同じ側にある。好ましくは、この配置は反応流体のための第2流路に適用される。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1流路または第2流路の一または複数がまっすぐに燃料電池ボードを横断し、流体はボードの反対側で実質的に同じ方向に燃料電池ボードを出入りする。この「線状」流は、スタック/燃料電池の一方側からスタック/燃料電池の他方側へまっすぐに向かう。これは、燃料電池ボードが矩形状の場合、燃料電池ボードの長辺または短辺に沿ったものでもよい。好ましくは、燃料電池ボードが矩形状の場合、このような流れは短辺に垂直である。すなわち、入力および出力は燃料電池ボードの長辺となる。これは、ここで記述される任意のこのような線状流に当てはまる。ここで、第1流路は依然として第2流路から分離されており、入力は燃料電池ボードまたは燃料電池スタックの異なる側からとなる。換言すれば、いくつかの実施形態では、第1流路および/または第2流路が、冷却流体を燃料電池ボードの第1側(入力)から当該燃料電池ボード内に向け、冷却流体を燃料電池ボードの第1側と反対の当該燃料電池ボードの第2側(出力)から導出するように設けられる。これらの実施形態では、第1流路が直進横断型の場合、第2流路は、ここで記述される第2流路の任意の一つでよい。これらの実施形態では、第2流路が直進横断型の場合、第1流路は、ここで記述される第1流路の任意の一つでよい。
【0048】
いくつかの実施形態で好ましくは、第1流路の一または複数が、燃料電池ボードの第1側から当該燃料電池ボード内に冷却流体を向け、燃料電池ボードの第1側と反対の燃料電池ボードの第2側から冷却流体を導出するように設けられ、第2流路の一または複数が、燃料電池の第1側の二つの周辺、非中央または側方の点で、反応流体を燃料電池ボード内に入力するように設けられ、燃料電池ボードの同じ第1側における単一の中央点で流体が燃料電池ボードから出るまたは出力されるように流れ、出力方向が入力方向と実質的に反対の方向である。
【0049】
いくつかの実施形態では、複数の第2流路が、複数の第1流路が冷却流体を燃料電池ボード内に向ける方向と実質的に同じ方向に、反応流体を燃料電池ボード内に向けるように設けられる。第1流路は、燃料電池ボード内への冷却流体の入力後に、当該冷却流体が当該燃料電池ボード内に向けられる方向と実質的に同じ少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられうる。第2流路は、燃料電池ボード内への反応流体の入力後に、当該反応流体が当該燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に反対の少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられうる。
【0050】
いくつかの実施形態では、複数の第2流路が、複数の第1流路が冷却流体を燃料電池ボード内に向ける方向と反対の方向に、反応流体を燃料電池ボード内に向けるように設けられる。第1流路は、燃料電池ボード内への冷却流体の入力後に、当該冷却流体が燃料電池ボード内に向けられる方向と実質的に同じ少なくとも一つの方向に当該燃料電池ボードを出るように設けられうる。第2流路は、燃料電池ボード内への反応流体の入力後に、当該反応流体が燃料電池ボード内に向けられた方向と実質的に垂直または反対の少なくとも一つの方向(冷却流体の出力と同じ方向)に当該燃料電池ボードを出るように設けられうる。燃料電池ボードからの出力は、これらの実施形態において、共通または共用の出力または排出となりうる。
【0051】
いくつかの実施形態では、任意または他の実施形態の第1流路が、任意または他の実施形態の第2流路と組み合わされうる。これは、異なるタイプの流路の組合せを可能にするという本発明の他の利点をもたらし、アノードに向けられる流体およびカソードに向けられる流体について異なる流路タイプを許容する。
【0052】
いくつかの実施形態では、第1流路および第2流路への入力が別でありうるが、これらは共通の出力または排出を共有してもよい。第1流路および第2流路についての燃料電池または燃料電池ボードからの排出は、効率的およびコンパクトな燃料電池デザインのために組み合わされてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、ファンカウルが流体(好ましくは、空気)を、スタックに導入する、スタックから導出するおよび/またはスタックに亘って導く。
【0054】
ここで記述される任意の実施形態では、流体流を方向付けまたは制御するための一または複数の更なる手段によって、流体流が方向付けまたは制御されてもよい。これらは、スタックまたは燃料電池ボードに亘って流体の流れを所望の態様に方向付ける、または燃料電池ボードに亘る流体流をカソードやアノードに対して方向付けまたは制御する。これは、カソード/アノードへの反応流体/冷却流体の分配を支援する。これらの手段は、流体流をブロックする、妨げるまたは方向付けるための物理的手段でもよい。これらは、インサートまたはバッフルでもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、流体流を方向付けるための手段がファンカウルに取り付けられる。いくつかの実施形態では、流体流を方向付けるための手段が非導電性である。いくつかの実施形態では、流体流を方向付けるための手段がプラスチックまたはプラスチックインサートである。
【0056】
いくつかの実施形態では、隣り合う燃料電池ボードの間に複数のスペーサを配置することを方法が更に備える。オプションで、一または複数のスペーサが、少なくとも一つの第1流路を定める一体化された冷却導管と共に構成されてもよい。加えてまたは代えて、一または複数のスペーサは、反応流体を少なくとも一つの燃料電池ボードに供給するための少なくとも一つの第2流路を定める一体化された反応導管と共に構成されてもよい。加えてまたは代えて、一または複数のスペーサは一体化された導管なしで構成されてもよいが、例えば、加圧空気が所望の方向(例えば、入口に垂直な方向)にスペーサを出入りするような入口点および出口点を設けることによって、流体流が所望の方向に向けられる。スペーサは、第1流路および/または第2流路を方向付けるための流体入口点および/または流体出口点を有しうる。いくつかの実施形態では、スペーサが流路を方向付けるための手段を備えてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、燃料電池の燃料電池ボードが多層プリント基板(PCB)を備えてもよい。オプションで、少なくとも一つのアノードおよび少なくとも一つのカソードが、少なくとも一つのイオン透過膜の反対の表面上にプリントされてもよく、燃料電池ボードの少なくとも一つのイオン透過膜が、多層PCBに接着されてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、冷却流体が反応流体より高いレートで導かれる。
【0059】
好ましい実施形態の更なる態様は、燃料電池を提供する。この燃料電池は、それぞれが、少なくとも一つのイオン透過膜と、ペアで設けられる複数のアノードおよび複数のカソードと、複数の電気コネクタと、を備える複数の燃料電池ボードであって、複数のアノードが少なくとも一つのイオン透過膜の第1表面上に配置され、複数のカソードが少なくとも一つのイオン透過膜の第1表面と反対の第2表面上に配置され、複数の電気コネクタがアノードおよびカソードの隣り合うペアを少なくとも一つのイオン透過膜を通じて接続するように設けられる、複数の燃料電池ボードと、複数の燃料電池ボードに冷却流体を供給するように設けられる複数の第1流路と、を備える。各燃料電池ボードの第1表面が隣り合う燃料電池ボードの第1表面に対向し、各燃料電池ボードの第2表面が隣り合う燃料電池ボードの第2表面に対向し、冷却流体が実質的に各燃料電池ボードの複数のアノードのみに向けられるように、複数の第1流路が隣り合う燃料電池ボードの第1表面の間のみに設けられるように、複数の燃料電池ボードが設けられる。発明の第1態様に関して前述された任意の実施形態が、発明の本態様に適用されてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、冷却流体が反応流体より高いレートで導かれる。
【0061】
ここで記述されるような発明の態様は置換可能であり、任意の組合せで互いに使用されうる。例えば、方法および燃料電池の実施形態は置換可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
以下の付随する図面を参照して本開示の実施形態が記述される。
【0063】
図1は、スタックされた燃料電池を側面視で模式的に示す。
【0064】
図2は、燃料電池ボードのスタックを備える燃料電池の断面を示す。
【0065】
図3は、燃料電池ボードの断面を示す。
【0066】
図4aは、バイポーラ構成における冷却流体流および反応流体流を模式的に示す。
【0067】
図4bは、一実施形態に係る冷却流体流および反応流体流を模式的に示す。
【0068】
図5aは、従来の燃料電池スタックを示す。
【0069】
図5bは、一実施形態に係る燃料電池スタックを示す。
【0070】
図6は、図5aの燃料電池および図5bの燃料電池の性能の比較結果を示す。
【0071】
図7aは、チャネルを有するスペーサの断面を示す。
【0072】
図7bは、内部導管を有するスペーサを上面視で示す。
【0073】
図7cは、一実施形態に係る燃料電池スタックを、空気流が燃料電池を出入りする様子と共に示す。
【0074】
図8aは、一実施形態に係る燃料電池スタックを示す。
【0075】
図8bは、一実施形態に係る燃料電池スタックを別の視点で示す。
【0076】
図8cは、一実施形態に係る燃料電池スタックを、空気流が燃料電池を出入りする様子と共に示す。
【0077】
図9aは、スペーサを上面視で示す。
【0078】
図9bは、スペーサを側面視で示す。
【0079】
図9cは、点線で示される空気流と共にスペーサを上面視で示す。
【0080】
図10aは、一実施形態に係る燃料電池スタックを示す。
【0081】
図10bは、一実施形態に係る燃料電池スタックを別の視点で示す。
【0082】
図10cは、一実施形態に係る燃料電池スタックを、空気流が燃料電池を出入りする様子と共に示す。
【0083】
図11aは、スペーサを上面視で示す。
【0084】
図11bは、点線で示される空気流と共にスペーサを上面視で示す。
【0085】
図11cは、点線で示される空気流と共にスペーサを上面視で示す。
【0086】
図12は、ファンカウルを有する燃料電池スタックを示す。
【0087】
図13は、例示的な燃料電池ボードに亘って流体流を方向付けるためのファンカウルおよびインサートを示す。
【0088】
図14aは流体速度モデルを示し、図14bは流体圧力モデルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0089】
以下では、実施形態が付随する図面を参照して詳細に記述される。以下の詳細な記述では、関連する教示の完全な理解を提供するために、多くの具体的な細部が例示によって記述される。しかし、本教示がこれらの具体的な細部を伴わずに実施されてもよいことは、当業者にとって明らかである。
【0090】
燃料電池は、一般的に、一または複数の燃料電池ボードを含む。ここで、各燃料電池ボードは、少なくとも一つのイオン透過膜と、当該イオン透過膜のいずれかの側に設けられる少なくとも一つのアノードおよび少なくとも一つのカソードと、を備える。好ましい実施形態によれば、冷却流体がアノードのみに向けられるように、冷却流路(第1流路)は燃料電池ボードのアノード側の近くのみに設けられる。換言すれば、冷却流体はカソードに向けられないため、カソードから水分を除去することが防止される。このように、電解質を湿らせて燃料電池効率を維持するために、カソードでの湿気が所望レベルに維持されうる。
【0091】
図2は、従来技術の例示的な燃料電池(例えば、WO2012/117035を参照)を示す。高められた電圧および電力を提供するために、複数の燃料電池ボード22が、二つのエンドプレート21の間にスタックされている。電極ペアは、ナフィオン(商標)膜等のポリマー電解質10の単一の層のいずれの側に沿って直列に設けられる。アノード11は、これらの膜の一表面上に配置され、ギャップによって分離されるカソード12は、これらの膜の他(反対)表面上に配置される。二つの隣り合う電極ペアのアノードおよびカソードは、互いに部分的に重複してもよい。膜貫通電気コネクタ13は、重複領域において膜を通って電極を接続し、均質的な化学デポジションプロセスによって形成されてもよい。電極の近くの触媒層は、電極での反応を促進する。水素ガス等の燃料17は、燃料電池ボード22の面に沿って流れてアノード11に供給され、酸素ガスまたは空気等のリアクタントまたはオキシダント16は、燃料電池ボード22の表面に沿って流れてカソード12に供給される。上表面の一方のエッジにおける一つの電極および燃料電池ボードの下表面の他方のエッジにおける一つの電極は、電気接続18、19を介して外部の回路に接続される。この直列配置では、電極ペアの表面積が燃料電池ボード22についての電流の大きさを決定するが、電圧は当該燃料電池ボード22上の電極ペアの数に比例して高くなる。
【0092】
ここで、それぞれが電気的に絶縁性の材料(例えば、プラスチック)によって構成されるスペーサを備える燃料電池ボードのそれぞれの間において、電気的に絶縁性のスペーサ20がスタック中に一体化される。従来技術のように電気的に絶縁性のスペーサ20が提供されるが、これらは必須ではなく省略されてもよい。スペーサ20は、リアクタント分配システムと一体化されうる。スペーサ20は、オプションで、冷却流体を供給するための冷却システムに関する一体化されたチャネルまたは導管を備え、更にオプションで、膜に水和水を届けるまたは生産水を取り出すための分配システムを備えてもよい。個々のセルのサイズ(電極のペアの表面積)は、燃料電池ボードについての電流の大きさを決定する。燃料電池ボード上の個々のセルの総数は、生成される電圧を決定する。スタックにおける燃料電池ボードの数は、燃料電池スタックの総電流の大きさを決定する。
【0093】
従来技術(例えば、WO2012/117035を参照)において記述されているスペーサや燃料電池スタックは、反応流路および冷却流路のデカップルまたは分離を目的とするものではない。特に、従来技術には、クーラントが燃料電池ボードのアノードのみに向けられ、リアクタントが燃料電池ボードのカソードのみに向けられるような、反応流体および冷却流体の分離に関する記述がない。
【0094】
図3は、他の例示的な燃料電池ボード22を示す。電極ペアは、ナフィオン(商標)膜等のポリマー電解質10の単一の層のいずれの側に沿って直列に設けられて、膜またはシートを形成する。ギャップ15によって分離されるアノード11は、この膜の一表面上に配置され、ギャップ15によって分離されるカソード12は、この膜の他(反対)表面上に配置される。二つの隣り合う電極ペアのアノードおよびカソードは、互いに部分的に重複してもよい。膜貫通電気コネクタ13は、重複領域において膜を通って電極を接続し、均質的な化学デポジションプロセスによって形成されてもよい。電極の近くの触媒層は、電極での反応を促進する。水素ガス等の燃料16は、燃料電池ボード22の面に沿って流れてアノードをサポートし、酸素ガスまたは空気等のリアクタントまたはオキシダント17は、燃料電池ボードの表面に沿って流れてカソードをサポートする。上表面の一方のエッジにおける一つの電極および燃料電池ボードの下表面の他方のエッジにおける一つの電極は、電気接続18、19を介して外部の回路に接続される。この直列配置では、電極ペアの表面積が燃料電池ボード22についての電流の大きさを決定するが、電圧は当該燃料電池ボード22上の電極ペアの数に比例して高くなる。
【0095】
各燃料電池ボード上のエンドカソードおよびアノード11は、第1および第2出力ライン23、24のそれぞれに電気接続18、19を介して接続される。スタックにおける各燃料電池ボードおよび第2出力ライン24の間の接続は、セルに対する直接的なパワーハンドリングおよび制御を提供する電界効果トランジスタ(FET)スイッチ等のスイッチメカニズム25によって制御されうる。これらのスイッチのそれぞれは、個々の制御ライン26によって制御されうる。
【0096】
従来の燃料電池では、隣接する燃料電池ボードの間に配置されるバイポーラプレートが、燃料電池ボードの面に垂直な方向に、一の燃料電池ボードのアノードから隣接する燃料ボードのカソードに電流が流れることを可能にする。このように、燃料電池ボードは、一の燃料電池ボードのアノードが隣り合う燃料電池ボードのカソードに対向する、アノード/カソード/アノード/カソード構成でスタックされる。本実施形態によれば、膜貫通電気接続が、燃料電池ボードの面に沿った方向に電流が流れることを可能にする。このため、スタックの燃料電池ボードの間の電気コンタクトについての要請がなくなる。このように、燃料電池ボードは、隣り合う燃料電池ボードのアノード側(または、カソード側)が互いに対面または対向する、アノード/アノード/カソード/カソード構成でスタックされうる。
【0097】
反応流体流が反応を維持するためにカソードで必要とされる一方で、冷却流体流は燃料電池スタック内から余熱を除去するためにしばしば必要とされる。燃料電池ボードがアノード/カソード/アノード/カソード構成でスタックされる場合、図4aに示されるように、アノードおよびカソードの両方が二つの隣り合う燃料電池ボードの間の空間に存在するため、冷却流体流は反応流体流と混合された状態のみで循環できる。しかし、燃料電池は、イオン経路の良好な導電性を実現して効率的に稼働できるように、水分および湿気を必要とする。冷却流体の流量を大きくすると、燃料電池における反応によって生成される水分の多くが除去されてしまい、燃料電池効率を低下させて燃料電池の性能に影響を及ぼす。
【0098】
本実施形態では、アノード/アノード/カソード/カソード構成が、燃料電池における冷却流体流および反応流体流が分離されることを可能にする。図4bに示されるように、本構成は、二つの隣り合う燃料電池ボードのアノードおよび二つの隣り合う燃料電池ボードのカソードの間の交互のギャップを可能にする。このように、冷却流体はアノード間のギャップのみに向けられ、反応流体はカソード間のギャップに向けられうる。
【0099】
いくつかの実施形態では、交互のギャップのそれぞれを通じて流れる冷却流体および反応流体が互いに垂直に供給されうるため、燃料電池に対する冷却流体および反応流体の影響を更に分離する。図4bに見られるように、本配置は、流体が二つの方向(xおよびy)から供給されることを可能にする。このように、本実施形態によれば、燃料電池における反応を維持するための反応流体流がカソードに対してx方向に供給されうる一方で、所望の燃料電池温度を維持するための冷却流体流がアノードに対してy方向に別々に供給されうる。この場合、燃料電池効率を維持するための所望レベルにカソードの周りの湿気を保ちながら、余熱が効果的に除去されうるように、冷却流体は反応流体より大幅に高い流量で供給されうる。更に、本配置は、各種の稼働条件において、燃料電池システムに対する寄生電源要求を低減できる。例えば、高温条件では、カソード上での水の保持の向上によって冷却要求が低くなる。
【0100】
従来の燃料電池および本開示の実施形態に係る燃料電池の性能を比較するための実験が行われた。
【0101】
図5aは、空気流のための九つのスロットを有するアノード/カソード/アノード/カソード(バイポーラ)8モジュールスタック構成の従来の燃料電池50-1の一例を示す。ここでの「スロット」は、燃料電池または燃料電池ボードにおけるインレットまたはアウトレットを記述するために使用される。各モジュールは、11個の燃料電池ボードを備え、88セルスタック燃料電池を構成する。燃料電池50-1は、冷却空気流および反応空気流を八つの燃料電池モジュール内および中に導くためのファン52を備え、空気流はスロット56を通じて燃料電池50-1から出る。水素燃料は、インレット54aを通じて入り、アウトレット54bを通じて出る。
【0102】
図5bは、冷却空気流のための五つのスロットおよび反応空気のための四つのスロットを有するアノード/アノード/カソード/カソード8モジュールスタック構成の一実施形態に係る燃料電池50-2を示す。上記と同様に、各モジュールは、11個の燃料電池ボードを備え、88セルスタック燃料電池を構成する。燃料電池50-2は、反応空気流を導くためのリアクタントファン52aおよび冷却空気流を導くためのクーラントファン52bを備える。本実施形態では、反応空気流が冷却空気流に直交するように、リアクタントファン52aおよびクーラントファン52bが設けられる。このように、冷却空気流がスロット56bを通じて燃料電池50-2から出る一方で、反応空気流はスロット56aを通じて燃料電池50-2から出る。水素燃料は、インレット54aを通じて入り、アウトレット54bを通じて出る。
【0103】
実験のために、燃料電池50-1および燃料電池50-2の各スタックには、「1.5x stoich」(または、0.1 L/minの最小流量)および0.5バールの背圧の研究グレードの水素が供給された。各燃料電池50-1および50-2のスタックは、それぞれ所定の電流密度で10分間保持された。データ点として記録された保持電流密度の最後の1分の平均と共に、電圧は毎秒記録された。中央モジュールの外表面で各燃料電池50-1および50-2について測定された温度は、55℃に制御された。ネット電力は、燃料電池50-1の場合はスタック出力電力およびファン52によって消費された電力の差を判定することによって測定され、燃料電池50-2の場合はスタック出力電力およびリアクタントファン52aおよびクーラントファン52bによって消費された電力の差を判定することによって測定された。電力密度は、総アクティブ領域の分数として演算された。構成50-1および50-2の両方において、同じモジュールが使用された。
【0104】
図6は、実験による比較結果を示す。燃料電池50-1において冷却流体流および反応流体流が混ざった場合と比較して、燃料電池50-2において冷却流体流および反応流体流が分離された場合に性能の向上が見られた。上図は異なる電流密度での電圧の向上を評価し、下図は異なる電流密度での電力密度の向上を評価した。
【0105】
図6において見られるように、電圧出力および電力密度の両方について、より高い電流密度で性能の向上が顕著である。これは、電流密度が高まるにつれて、反応要求より大幅に高いレートで冷却要求が高まるためである。冷却流体流および反応流体流を分離することによって、電流密度が高まるにつれてアノードへの冷却流量を高められる一方で、カソードへの反応流量をより低く選択することによってカソードでの湿気が維持されうる。このように、燃料電池性能を維持するために電解質膜を湿らせながら、効果的に余熱を除去できる。
【0106】
いくつかの実施形態では、隣り合う燃料電池ボードの間にスペーサ20が提供されてもよい。これらの実施形態では、スペーサ20が、冷却流体流または反応流体流を導くためのチャネルおよび/または導管と共に構成されてもよい。図7aは、例えばリアクタントが流通するように表面にエッチングされたチャネル27を有するスペーサ20の一実施形態を示す。図7bは、冷却ガスまたは冷却液が燃料電池ボードのアノード層の間を循環することを可能にするための、スペーサ20における内部冷却チャネルまたは導管28(点線によって示される)の可能なレイアウトの一実施形態を示す。スペーサは従来技術(例えば、WO2012/117035を参照)でも見られるかもしれないが、クーラントが燃料電池ボードのアノードのみに向けられ、リアクタントが燃料電池ボードのカソードのみに向けられるような、反応流体および冷却流体の分離についての記述はない。
【0107】
ここで使用されるように、用語「スペーサ」は、燃料電池ボードの間または一部として設けられうる、燃料電池ボードに/の内部に/の周りに/の外部等に流体を導くための任意の手段を意味する。スペーサは、流体流を許容する空間をボードの間に提供する。他のこのような用語または手段のタイプが、燃料電池ボードの内部に/に/の周りに/の外部に流体流を許容または案内するという同じ目的を達成するために利用されうる。
【0108】
図7cは、流れが燃料電池50-2を出入りできる様子を模式的に示す。51aは燃料電池内に入る一の流れを表し、51bは燃料電池から出る同じ流れを表す。53aは燃料電池内に入る他の流れを表し、53bは燃料電池から出る同じ流れを表す。51a/51bおよび53a/53bは、それぞれ冷却流および反応流でもよいし、その逆でもよい。いずれの場合でも、冷却流および反応流は互いに実質的に垂直に示される。本実施形態では、冷却流体流がいずれかの側に提供され、反応流が垂直側に提供されうる。本実施形態では、冷却流および反応流がセルの面に亘ってまっすぐに流れ、セルに入った側と反対のセルの側から出る。本図では明示されないが、スタックの異なる層に反応流または冷却流を提供するために、流れは燃料電池スタックまたは個々の燃料電池ボードを異なるレベルで出入りする。本実施形態では、マルチスタック燃料電池が使用される。しかし、本技術は、単一の燃料電池ボードを有する燃料電池に適用されうる。この場合、冷却流体流は燃料電池ボードのアノード側に向けられ、反応流体流は燃料電池ボードのカソード側に向けられる。
【0109】
図1および4bが、それぞれ単一のアノード/カソードのペアを有する燃料電池ボードを示す一方で、各燃料電池ボードは図2および3における複数のアノード/カソードのペアを有するように示される。本技術は、それぞれが単一のアノード/カソードのペアを有する一または複数の燃料電池ボードを備える燃料電池に適用されうる、または、各ボード上に複数のアノード/カソードのペアを備える一または複数の燃料電池ボードを備える燃料電池に適用されうる。
【0110】
冷却流体は、燃料電池内から熱を取り出すのに適した空気または水または任意の他の流体でよい。反応流体は、酸素ガス、空気または加圧空気または任意の他の適切な流体でよい。
【0111】
例示される発明は反応燃料(すなわち、アノードに対する還元可能ガス)として水素を使用するが、燃料電池は全ての適切な燃料(特に、加圧流体)と共に使用されうる。ここで使用されるように「流体」は、決まった形状を持たずに外部の圧力に容易に屈する物質(例えば、ガスまたは液体)を表す。ここで記述されるシステムおよび方法で使用される燃料は流体である。これらの燃料は、水素または水素含有混合物や、炭化水素または炭化水素派生物でもよい。燃料は、メタンまたはプロパン等の他のガス状燃料でもよい。燃料は、メタンまたはプロパン等の他のガス状燃料でもよく、流体は空気および酸素等のオキシダントを含む。例えば、直接メタノール燃料電池では、メタノールが使用されうる。ここで使用されるように、燃料電池ボードへの導入/からの導出は、燃料電池ボード内への入力/外への出力を表す。これは、流体が燃料電池ボードの関連するコンポーネントと相互作用できるように、特に、反応流体が燃料電池ボードのカソードと反応できるように、または、冷却流体が燃料電池ボードのアノードを冷却できるように、流体の方向を表す。
【0112】
システムおよび方法は、周知の加圧燃料ストレージユニットまたはコンテナと共に使用されうる。燃料は、ボトルまたはキャニスタ等の加圧ストレージユニット内に格納されうる。これらは、例えば、700および10バールの間の圧力でもよい。特に、燃料ストレージユニットは、ここで記述される燃料電池との使用(すなわち、150および350バールの間の圧力)にとって適切である。
【0113】
いくつかの実施形態では、冷却流体と異なる成分または密度を有する反応流体を供給することが望ましい。例えば、航空宇宙用途では、高い高度の航空機における燃料電池は、低い酸素レベルの低圧環境で稼働しうる。カソードでの反応を望ましいレートに維持するため、カソードに供給される反応空気における酸素レベルを高めるのが有利である。反応流を冷却流から分離することによって、加圧されていない大気が冷却空気としてアノードに供給されながら、低圧大気がカソードに反応空気として供給される前に加圧されうる。
【0114】
いくつかの実施形態では、イオンおよび電子を生成または消費するための燃料(アノード電極上)およびオキシダント(カソード電極上)との反応を、電極上の触媒層が加速する。
【0115】
燃料電池、燃料電池ボードおよびコンポーネントは、グラファイトまたは金属等の任意の適切なおよび望ましい材料から構成される。いくつかの実施形態では、燃料電池、燃料電池ボードまたはコンポーネントが、プリント基板(PCB)で構成されうる。燃料電池における個々の層は、PCB、すなわち、互いに接着されてエポキシ含有グラスファイバーコンポジットを使用したソリッドな構造となる電流収集および分配層およびリアクタント分配層から構成されうる。PCBは、個々の層を互いに接着し、MEAをPCBに接着するために使用される材料の量を含むように予め含浸されたコンポジットファイバーから作られてもよい、または、予め含浸されたコンポジットファイバーマスクがPCBに適用されてもよい。MEAは、PCB上にレーザ接着されて、燃料電池ボードを構成してもよい。燃料電池スタックを構成するために、複数のボードが互いに積層されうる。電極間のギャップおよびエポキシ樹脂によってこれらのギャップにおいて実現されるシーリングは、分離された流れが混ざること(すなわち、冷却空気、リアクタントおよび燃料流が混ざること)を防止する。
【0116】
実施形態のためのPCBは、公知の方法で生成されてもよい。絶縁層は、エポキシ樹脂プリプレグと共に積層されてもよい、FR-1、FR-2、FR-3、FR-4、FR-5、FR-6、CEM-1、CEM-2、CEM-3、CEM-4、CEM-5、ポリテトラフルオロエチレン、およびG-10等の絶縁基板によって構成されてもよい。導電領域を構成するために、銅の薄層が絶縁基板全体に適用された後に所望の導電パターンを残すようにマスクを使用してエッチングされてもよいし、電気メッキによって適用されてもよい。
【0117】
PCB技術は、各種の要素が低コストで大量に製造されることを可能にするという利点を有する。例えば、スタックされた後に同時にルーティングされる薄いラミネートボードを使用することによって、複数のフローフィールドボードが同時に製造されうる。そして、個別にルーティングされたボードは、一緒にスタックおよび積層される。これらは軽い一方で高い機械的強度も有し、一緒に積層されると個々の層の間の良好な接触と共に強固な構造を提供する。このように、モノリシックで軽く完全にシールされた構造が生成される。単純なPCBもエンドボードとして使用されうる。PCBボードの使用は、本燃料電池、燃料電池ボードおよびコンポーネントが、金属等の他の材料を使用する場合に存在しうる質量またはサイズのペナルティなしで構成されることも可能にする。
【0118】
PCBからの燃料電池の構成およびそれらの利点は、参照によって本書に援用されるWO2013164639において更に記述されている。
【0119】
燃料電池スタックがPCB技術に基づいて作られる実施形態では、電極の複数のバンドが膜の上および下表面上にスクリーンプリントされてもよく、膜は多層PCBに接着されてもよい。アノードおよびカソードは、同じ方向に延びるバンドによって形成されてもよく、膜貫通電気コネクタによってペアで接続されてもよい。電気コネクタは、電解質膜に沿ったバンドに形成されてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、膜貫通電気コネクタを形成するために、金属または他の導電材料が膜内に化学的に形成される。材料は、燃料電池の稼働条件下の膜内で化学的に安定であるのが好ましく、典型的には希金属(例えば、Pt、Au、Ru、Ir、Rh、Pd)または希金属の酸化物でもよい。膜中に導電バンドを形成するための各種のアプローチは、その内容が参照によって本書に援用されるWO2012117035において記述されている。
【0121】
いくつかの実施形態では、触媒層が電極上に提供されてもよい。この層は、燃料電池製造の当業者によって一般的に理解されるように、興味のある反応にとっての適切な触媒材料で構成されてもよい。例えば、触媒層は、カーボン上に堆積された白金ナノ粒子によって構成されてもよく、陽子伝導ポリマー(例えば、ナフィオン(商標))が結合されてもよい。
【0122】
燃料電池ボードは、任意の適切なおよび望ましい寸法で構成されてもよい。いくつかの実施形態では、電解質膜層の厚さは、1-200μmの間でもよく、好ましくは5-100μmの間でもよい。電極バンドの幅は、1mm-5cmでもよく、好ましくは2mm-1cmでもよい。電極バンド間のギャップ幅は、0.1mm-1.5cmの間でもよく、好ましくは0.2mm-1cmの間でもよい。膜貫通電気コネクタの幅は、1μm-2mmでもよく、好ましくは10μm-1mmでもよい。
【0123】
なお、燃料電池ボードおよび燃料電池スタックの構成は、ここでは図示される実施形態に即して「水平」および「鉛直」面に関して記述される。しかし、これらの用語は明確性のためだけに使用され、発明の範囲を限定するものではない。燃料電池ボードが水平面に限られない任意の面に設けられうることは読者にとって明らかである。更に、用語「正反対」は、整列した電極に限定されない。アノードは、ポリマー電解質の一の面上に配置され、同じ電解質膜層の反対の面上のカソードの正反対に配置される。
【0124】
ここでの「流れ」への参照は、補助の有無に関わらず、流体流路やチャネル等に沿って、流体の流れが許容されること、または、実質的に導かれることを表す。
【0125】
ここでの「燃料電池ボード」または「燃料電池ボード」への参照は、PCBカソードプレート101およびPCBアノードプレート102の間に挟まれた膜電極接合体(MEA)113を表す。本実施形態では、三つの層が一緒に積層される。いくつかの燃料電池ボードは、積層構造の一部としてPCBキャップ層を有してもよい。燃料電池ボードは、燃料電池モジュールと表されてもよい。「燃料電池ボード」の使用は、MEAまたはボードの他のコンポーネントのサイズ、形状または配置を限定する趣旨ではない。燃料電池ボードは、ボードのサイズ、形状または寸法について限定する趣旨ではなく、ここで記述されるMEAおよびPCBを表すための用語に過ぎない。
【0126】
ここでの「めっきされた貫通孔」(PTH:プレートd Through Hole)への参照は、燃料電池ボードのスタッキングにおいて、燃料電池を通る導管を形成するために並ぶ孔を定める。この導管は、燃料電池ボードの平らな表面に実質的に垂直に延びる。めっきされた貫通孔は、スペーサまたは燃料電池の他のコンポーネント上に設けられてもよい。PCB材料(例えば、FR-4)が絶縁性であるため、めっきされた貫通孔が必要である。PCBのいずれかの側が銅表面によって導電性を有するように、PTHが導入されなければならない。これらは、PCB材料(これ自体は、銅の層、FR4の層、および他の銅の層である)を通って開けられた孔によって形成されてもよい。これらの孔が電気めっきディップ処理を経ると、銅が各孔のエッジを繋いでPCB材料の銅の二つの層の間の連続性を生成する。この後に追加的なステップがオプションで実行されてもよい。これらのステップでは、i)樹脂が使用されて孔の残りを埋める(存在する任意の孔を通って流れるように樹脂をPCB上に供給することによって達成される)、ii)樹脂によって埋められた孔が両側において銅でキャップされるように、再度の電気めっきディップ処理を実行する、iii)PCBの表面が平らであることを担保するために、この後に弱めのミリング処理があってもよい。
【0127】
ここで記述される燃料電池は、燃料電池スタックについて期待されている任意のパワー出力を実現可能な燃料電池でありうる。これは、例えば、200Wのパワー出力、150Wのパワー出力、100Wのパワー出力、90Wのパワー出力、80Wのパワー出力、70Wのパワー出力、60Wのパワー出力、50Wのパワー出力、40Wのパワー出力、30Wのパワー出力、20Wのパワー出力、10Wのパワー出力、5Wのパワー出力でありうる。これは燃料電池の最大パワー出力であり、セルは必要とされる任意のパワー出力に設定可能である。ここで記述される燃料電池は、例えば、少なくともまたは最小で5Wのパワー出力、少なくとも10Wのパワー出力、少なくとも20Wのパワー出力、少なくとも30Wのパワー出力、少なくとも40Wのパワー出力、少なくとも50Wのパワー出力、少なくとも60Wのパワー出力、少なくとも70Wのパワー出力、少なくとも80Wのパワー出力、少なくとも90Wのパワー出力、少なくとも100Wのパワー出力、少なくとも150Wのパワー出力、少なくとも200Wのパワー出力を実現可能な燃料電池でありうる。閉カソード配置等の他のカソード配置は、150kW以上を出力できる可能性がある。
【0128】
図8aおよび図8bは、一実施形態に係る燃料電池80-1を二つの異なる視点から示す。これは、冷却空気流のインレットのための二つのスロットおよび反応空気のインレットのための三つのスロットを有するアノード/アノード/カソード/カソード4モジュールスタック構成を有する。冷却空気および反応空気の出口のための五つの空気アウトレットスロットが示される。各モジュールは、11個の燃料電池ボードを備え、44セルスタック燃料電池を構成する。燃料電池は、反応空気流を導くためのリアクタントファンおよび冷却空気流を導くためのクーラントファンを備える(ファンは不図示)。本実施形態は、Tフロー空気流デザインを有する。
【0129】
本実施形態でも、反応空気流および冷却空気流が分離されるが、ここでは反応空気流が冷却空気流と反対の入口方向になるように設けられる。本実施形態では、反応空気流および冷却空気流の両方が、スタックの反対側からインレットスロットを通じてスタックに入る。ここで、この空気はスタックの二つの長辺に入るが、それぞれが正反対側(ここでは、両方とも長辺)から入る。冷却空気は、二つのスロット88aを通じて燃料電池スタックに入り、反応空気は、三つのスロット88bを通じて燃料電池に入る。スタックへの冷却空気流はアノードの露出側のみに到達し、スタックへの反応空気流はカソードの露出側のみに到達する。本実施形態では、反応空気流および冷却空気流の両方が、スタックの短辺からスタックを出る。本実施形態では、空気流(冷却空気および反応空気の両方)が、入った方向に実質的に垂直な辺から/方向に出る。ここで、反応空気流はスロット86aを通じて燃料電池を出て、冷却空気流はスロット86b(破線)を通じて燃料電池を出る。スロット86aおよび86bは、スタックを通じて互いに交互に設けられる。
【0130】
燃料電池スタックは、図示のエンドプレート31を有する燃料電池ケーシング内に格納される。本実施形態では、三つのカソードスペーサ(そのうちの一つに図8aにおいて93のラベルが付されている)、二つのアノードスペーサ(そのうちの一つに図8bにおいて95のラベルが付されている)および四つの燃料電池ボード400が設けられる。複数の電気接続点46が見える。図8aおよび8bの実施形態では、8個の燃料電池ボードの間に離れた五つのスペーサがスタックにある。電気接続点82は、これらのスペーサ上に位置する(三つが燃料電池の一方側および二つが他方側)。これらには、図19aおよび19bにおいてラベルが付されていない。
【0131】
図8cは、空気流が燃料電池(本実施形態では80-1)を出入りする様子を模式的に示す。81aは、燃料電池内への冷却空気流を表す。83aは、燃料電池内への反応空気流を表す。81bは、燃料電池から出る冷却空気流を表す。83bは、燃料電池から出る反応空気流を表す。流れは前述されたようにスロットを出入りする。冷却空気および反応空気は、燃料電池の異なる面/プレート/ボード/レベルにおいて燃料電池を出入りし、図8aおよび8bに示されるように、冷却空気および反応空気の入口および出口のためのスロットは異なるプレートにある。本図では明示されないが、スタックの異なる層に反応流または冷却流を提供するために、流れは燃料電池スタックまたは個々の燃料電池ボードを異なるレベルで出入りする。冷却流および反応流は一つの辺に入るが、両方とも二つの辺から出る。
【0132】
この代表的な実施形態では、燃料電池が長辺および短辺を有する。しかし、燃料電池/燃料電池ボードは、正方形や六角形等の異なる形状でもよい。但し、改良された空気流ダイナミクスを実現するためには、反応空気および冷却空気は反対側から入るが、入力の辺に実質的に垂直な異なる辺から出る、または、一つの辺に入った場合には二つの辺から出る。本実施形態では実質的に垂直な空気流が示されるが、他の角度(180度、90度または0度ではない)も可能である。すなわち、垂直は単に代表例である。
【0133】
燃料電池の各側の単一のファンからの空気流は、各側の二つの88aまたは三つの88bスロットに対して向けられる。反応空気にとって、86aの中央スロットは、対向するカソード層の二つの組(すなわち、異なる燃料電池ボード上のカソード/カソードペアの二つの組)に向かう空気流を作り、86aの上方および下方またはエッジスロットは、一つのカソード層だけに作用する。より大きいスタックでは、各中央スロットまたは各非エッジスロットは、二つの対向するカソード層に作用し、エンドスロットは孤立したカソード層に作用する。カソードギャップの数は、常に「モジュールの数/2+1」である。
【0134】
本実施形態で示されるように(但し、全ての実施形態に適用可能である)、冷却流体または反応流体のための単一のスロットまたは入口点は、複数の層に作用できる。一つの反応空気流スロットが二つの対向するカソード層に作用する本実施形態で示されるように、流れは一つのスロットまたは入口点から入り、上方または下方の複数の層まで流通する。
【0135】
冷却空気流および反応空気流のためのインレットおよびアウトレットスロットは、隣接する燃料電池ボードの間に配置されるスペーサ内にある。図8aおよび8bの実施形態では、4個の燃料電池ボードの間に離れた五つのスペーサがスタックにある。電気接続点82は、これらのスペーサ上に位置する(三つが燃料電池の一方側および二つが他方側)。スペーサは、図9aから9cにおいて見られる。
【0136】
図8aから8cに示される実施形態では、空気流(冷却空気および反応空気の両方)が入った方向に実質的に垂直な方向に一辺から出る。本実施形態は、スタックに亘る単一の方向における空気流の距離を低減することによって、スタックの長さに亘る大きな勾配を防止し、空気流の圧力を低減するようにも機能するという、前述された発明の実施形態に対して追加的な利点を有する。図8aから8cに示される実施形態は、空気流がセルの面をまっすぐに横切って流れて入った側と反対側で出入りする場合に現れうる流入口の近くの空気流のデッドスポットを最小化するという追加的な利点を有する。これは、空気インレットの近くのスポットがセルの他の部分ほど多くのクーラントまたはリアクタントの流れを受け取らない、図5b/7cにおいて見られる例示的な実施形態において起こりうる。
【0137】
図9aは、図8a、8bおよび8cに示される燃料電池スタックにおいて使用される単一のスペーサを上面視で示す。点線の円96は、存在する空気流のためのスペーサの辺上のルーティング領域を示す。一方側94はインレット空気を許容するために開けられており、反対側92は空気がアウトレット96から出るように閉じられている。電気接続点82にもラベルが付されている。図9bは、存在する空気流のためのスペーサの辺上のルーティング領域を示す点線の円96を有する、同じ単一のスペーサを側面視で示す。図9cは、点線で示される空気流を有する図9aおよび9bと同じスペーサを示す。空気流は、インレット98から入り、アウトレット96を介して出る。入力空気からの空気圧力は、スペーサの近くの露出されたアノードまたはカソードを冷却する、または、それに反応空気を提供するための、スペーサを通じたT字状の流れを実現する。図8a、8b、8cに示されるTフロー空気流デザインの代替的な実施形態は、Uフロー空気流デザインである。図9a、9bおよび9cに示されるものの代替的なデザインを有するスペーサは、図9cに示されるものと異なる空気流を提供できる。これらのスペーサおよびこの空気流デザインは、例えば、図5b、8aおよび8bに示される燃料電池において使用されうる。
【0138】
この例のスペーサ92およびここで記述される他のスペーサでは、銅めっきがスペーサのエッジ上のみにあり、一方側のみが面の間の導電性を有する。例えば、図9aでは、これはめっきされた貫通孔が見られる右側にある。スペーサは、一方側のみで導電性を有してもよく、それらのエッジのみに沿って銅めっきされてもよい。これらのスペーサを利用する実施形態では、全てのセルを直列に置くために、電流が「ジグザグ」に上下におよび複数の燃料電池ボード400のスタックに亘って流れる。スペーサの他の所で銅がめっきされた場合、モジュール上の隣り合うセルの間の電気ショートが発生する恐れがある。スペーサの一方側が他方側より厚くならないように、非導電側の銅が存在する。これは、モジュールの辺上のみに存在するシールに亘って均等な圧縮を可能にする。ガスケットは、隣り合うモジュールの間をシールするスペーサに配置され、全てがスタックのコーナーにある。スペーサの短いエッジ上に銅を加えることによって、この点での厚さがスタックを通じて同じになる。
【0139】
図10aは、一実施形態に係る燃料電池100-1を二つの異なる視点から示す。これは、冷却空気流のインレットのための二つのスロットおよび反応空気のインレットのための三つのスロットを有する、アノード/アノード/カソード/カソード4モジュールスタック構成を有する。本実施形態では、冷却空気および反応空気の両方が、燃料電池の同じ側にインレットおよびアウトレットを有する。図8a、8bおよび8cに示される実施形態と比較すると、分離されたアウトレットスロット(図8a、8bおよび8cにおける86a、86b)がない。ここで、反応空気の組み合わされた入力および出力のための三つの組み合わされたインレット/アウトレットスロットが示され、冷却空気の組み合わされた入力および出力のための二つの組み合わされたインレット/アウトレットスロットが示される。各モジュールは、11個の燃料電池ボードを備え、44セルスタック燃料電池を構成する。燃料電池は、反応空気流を導くためのリアクタントファンおよび冷却空気流を導くためのクーラントファンを備える(ファンは不図示)。本実施形態は、Uフロー空気流デザインを有する。
【0140】
本実施形態でも、反応空気流および冷却空気流が分離され、ここでは反応空気流が冷却空気流と反対の入口方向になるようにも設けられる。本実施形態では、反応空気流および冷却空気流の両方が、スタックの反対側からインレットスロットを通じてスタックに入る。この空気はスタックの二つの長辺に入るが、それぞれが正反対側(ここでは、両方とも長辺)から入る。冷却空気は、二つのスロット108aを通じて燃料電池スタックに入り、反応空気は、三つのスロット108bを通じて燃料電池に入る。スタックへの冷却空気流はアノードの露出側のみに到達し、スタックへの反応空気流はカソードの露出側のみに到達する。これは、図8a、8b、8cに示される実施形態と原則として全て同じである。
【0141】
本実施形態では、反応空気流および冷却空気流の両方が、スタックに入った側と同じ側からスタックを出る。スロット108aは、冷却空気のためのアウトレットとしても機能し、スロット108bは、反応空気のためのアウトレットとして機能する。電気接続点82にもラベルが付されている。
【0142】
図10cは、空気流が燃料電池(本実施形態では100-1)を出入りする様子を模式的に示す。101aは、燃料電池内への冷却空気流を表す。103aは、燃料電池内への反応空気流を表す。101bは、燃料電池から出る冷却空気流を表す。103bは、燃料電池から出る反応空気流を表す。流れは前述されたようにスロットを出入りする。冷却空気および反応空気は、燃料電池の異なる面/プレート/ボード/レベルにおいて燃料電池を出入りし、図10aおよび10bに示されるように、冷却空気および反応空気の入口および出口のためのスロットは、異なるレベルにおける異なるスペーサにある。ここで、冷却空気流および反応空気流は、依然として分離され、入力は互いに反対である。本図では明示されないが、スタックの異なる層に反応流または冷却流を提供するために、流れは燃料電池スタックまたは個々の燃料電池ボードを異なるレベルで出入りする。
【0143】
図10aから10cに示される実施形態では、空気流(冷却空気および反応空気の両方)が入った方向と同じ方向に一辺から出る。本実施形態は、空気流がセルの面をまっすぐに横切って流れる場合に現れうる空気流のデッドスポットを最小化し、空気流の圧力を低減することによってスタックに亘る空気流の距離を低減することによって、スタックの長さに亘る大きな勾配を防止するようにも機能するという、同じ追加的な利点(図5b/7cに記述される実施形態に対する図8aから8cに示される実施形態の追加的な利点)を有する。本実施形態は、従来の燃料電池スタック(例えば、図5aにおいて記述されたもの)と同様にスタックの二つの辺のみで空気がサービスされればよいため、製品デザインおよび製造を単純化するという追加的な利点を、分離された冷却空気流および反応空気流の利点および従来の燃料電池スタックに対するTフローデザインの利点と共に有する。Uフローデザインでは、スペーサがより簡単に製造できる。
【0144】
図11aは、図10a、10bおよび10cに示される燃料電池スタックにおいて使用される単一のスペーサを上面視で示す。一方側104は空気のインレットおよびアウトレットを許容するために開けられており、反対側102は空気が反対側104から出るように閉じられている。電気接続点82にもラベルが付されている。図11bは、点線で示される空気流を有する図11aと同じスペーサを示す。空気流は、108から入り、106の周りから出る。入力空気からの空気圧力は、スペーサの近くの露出されたアノードまたはカソードを冷却する、または、それに反応空気を提供するための、スペーサを通じたU字状の流れを実現する。このU字状の流れでは、中央点での入力後に空気がスタックを亘って流れる際に自然に分かれ、中央点の周辺の入力のいずれかの側の二つのアウトレット点からスペーサ/スタックを出る。
【0145】
空気および空気流がこれらのおよび先の実施形態について記述されるが、他の所で記述されるように他の適切な冷却流体/反応流体が流体流について利用されうる。
【0146】
更なる実施形態では、U字状の流れにおける空気の入力および出力の方向を逆にすることも可能である。空気はスペーサの二つの反対または周辺側で入力され、単一の中央アウトレットまたは出力点でスペーサ/スタックから出るように空気が流れうる。これは、点線で示される空気流を有する図11aと同じスペーサを示す図11cにおいて見られる。空気流は、108から入り、106の周りから出る。入力空気からの空気圧力は、スペーサの近くの露出されたアノードまたはカソードを冷却する、または、それに反応空気を提供するための、スペーサを通じたU字状の流れを実現する。これは、図11bにおいて見られるものと逆の流れである。
【0147】
この逆Uフローは、非逆Uフローに対して追加的な利点を有する。それは、分配ゾーンに亘って、より良い空気の分配を与える。これは、カソードに反応空気を分配するために利用される際に特に有利である。それは、より低い速度で改良された空気の分配を可能にする。
【0148】
リアクタントおよびクーラントの分離された流れは、カソードへの反応空気の分配および冷却空気の分配のための異なる空気流および/またはスペーサデザインを可能にする。これらは、燃料電池スタックの同じまたは反対の/異なる側でリアクタントおよびクーラントを流入/流出する配置と共に使用されうる。両配置は前述されており、ここで記述される異なる利点を提供する。
【0149】
更なる実施形態では、スタック/燃料電池の一方側からスタック/燃料電池の他方側までまっすぐな、直「線状の」流れが反応流または冷却流について利用されうる。これは、Tフロー、Uフローまたは逆Uフローと異なる流路であり、線状流である。この線状流は、Uフローまたは逆Uフローのクーラント分配と組み合わされうる。例えば、線状流が冷却流について使用され、逆Uフローが反応流について使用されうる。好ましくは、この線状流は、アノードに亘る冷却流について使用されうる。
【0150】
例えば図11bまたは11cにおいて見られるスペーサおよび流体流は、リアクタントをカソードに比較的低速で供給するために使用されうる。この低速は、高速なアノードへの冷却流体流との比較による。このアノードクーラントは、スタックの一方側からスタックの他方側へ供給され、線状流における一方側で入り反対側で出る。これは、矩形状スタックと共に使用される場合は一方の長辺から他方の長辺に流れるにつれて、アノード空気流に対する最低のインピーダンスおよびスタックに亘る最短の流路を提供する。線状流は、流れがスタックの一方側からスタックの他方側までまっすぐに横断することを可能にするためのスペーサまたは任意の他の手段によって導かれてもよい。
【0151】
本実施形態(および、全ての実施形態)における空気流は、空気流のアウトレットのための共通の排出を利用できる。ここで、反応冷却空気のアウトレットおよびアノード冷却空気のアウトレットは、スタックの同じ側にあって共通の排出を利用できる。アノードおよびカソードに供給するための空気等の流体入口は分離されるが、出力は結合される。
【0152】
ここで記述される燃料電池スタックは、スタックの内部に/の外部に/に亘って空気を導くためにファンカウルを利用してもよい。カウルはいくつかの目的(流体流(すなわち、ファンによる空気)を可能にするデバイスのためのマウンティング点を提供すること、外部システム/製品からスタック内に流体(例えば、空気)の流れを導くこと、およびスタックからシステム/製品外に排出流体流を導くこと)を有する。カウルは、典型的にプラスチック等の絶縁性材料から作られる。しかし、スタックおよびカウルの間に電気絶縁性がある場合は、金属カウル(すなわち、アルミニウムまたはステンレス鋼)が使用されうる。
【0153】
これらのカウルは、スタックに亘って反応空気および/または冷却空気を導くためのファンカウルとして記述されるが、他のタイプのクーラントまたはリアクタントを同様に燃料電池スタックに亘って分配するための同等のカウルまたは他のこのような手段が利用されうる。
【0154】
図12は、ファンカウルを有する燃料電池スタックを示す。二つのリアクタントインレットカウル150が示され、一つの冷却空気インレットカウル152が示される。リアクタントおよびクーラントがスタックを出ることができる共通の排出またはアウトレット154も示される。
【0155】
ここで記述される任意の実施形態では、カソード/アノードへの反応流体/冷却流体の分配を支援するために、スタックまたは燃料電池ボードに亘って流体の流れを所望の態様に方向付ける、更なる流体流を方向付けるための手段によって流体流が導かれてもよい。これらの手段は、スペーサに取り付けられてもよいし、スペーサの一部でもよい。または、これらはスペーサと別でもよいし、スペーサに取り付けられなくてもよい(例えば、ファンカウルに取り付けられる)。これらの手段は、流体流をブロックする、妨げるまたは方向付けるための物理的手段でもよい。これらは、インサートまたはバッフルでもよい。
【0156】
図13は、インサート250がファンカウルシステム252に取り付けられる、これの一例を示す。これらは、代替的なおよびいくつかの面で改良された態様で、ボード(または、コンポーネントプレート)に亘ってリアクタントまたはクーラントを分配するために、この燃料電池スタック/燃料電池ボードの面に亘って流体(ここでは例えば空気)が導かれることを可能にする。カウルインレット254は、他の所で記述されたように、流体(この例示的な実施形態では空気)をスペーサ102に入力する。しかし、一旦空気が入力されると、ファンからの圧力または力の下にあるため、流体流路258(ここでは矢印と共に示される)に沿ってスペーサ102の全体に分配される。ここで、流体流路258には、燃料電池ボードに亘ってスペーサ102を通じてプレートに亘って流体が流れる様子を示すラベルが付されている。流体はアウトレット/排出256に流れる。電気接続点82はスペーサ102上にラベルが付されている。これがアノードスペーサだった場合、アノードを冷却するためにアノードプレート上に冷却空気を導く。これがカソードスペーサだった場合、カソードで反応するためにカソードプレート上に反応空気を導く。
【0157】
ここで、T字状、U字状、逆U字状および線状流の代替的な流路が示される。この流れは、プレートの一方側から他方側への流れ(第1軸における「辺」を考慮する場合)を許容するが、流体出力は流体入力とスタック/プレート/スペーサの同じ側にある(第1軸と異なり垂直な第2軸における「辺」を考慮する場合)。これは、流れがUフローおよび逆Uフローの実施形態とスタックの同じ側の入力および出力であるため、導かれるUフローまたは代替的なUフローである。
【0158】
分離された流れを更に導くことは、改良された冷却および改良された反応の分配を可能にする。これは、燃料電池スタックがより高い温度でおよび/またはより効率的に稼働することを可能にする。
【0159】
ここで示される代替的なUフローは、先の実施形態において示された第1Uフローより低い流体圧力低下を示す。これは与えられた入力に対してより大きい流体の流量を可能にし、冷却流体流について利用された場合はより効果的な冷却を可能にし、または、反応流体流について利用された場合は反応レートの増加を可能にする。好ましくは、インサートを伴うこの流れのスタイルは、しばしば燃料電池デザインにおける制約要素である、アノードの冷却のための冷却流体流について利用される。インサート等の流体流を方向付けるための手段は、モジュールに亘って比較的バランスの取れた速度を可能にする。特に、アノードに流体を供給するためのこの代替的な/方向付けられたUフローは、カソードに流体を供給するためのUフローまたは逆Uフローと組み合わされ、完全に分離された空気流(インレットとアウトレットが分離され、スタックにおいて反応空気および冷却空気が混ざらない)を可能にする。
【0160】
一般的(および全ての実施形態に適用可能)に、燃料電池のほとんどの稼働条件にとって、反応流体流量より大きい冷却流体流量が好ましい。これの注意すべき例外は、燃料電池がより低い周辺温度(例えば、5℃以下)で稼働し、必要とされる流量が収斂しうる時である。
【0161】
図14aは、流体流の本実施形態の流体速度モデルを示し、図14bは、流体流の本実施形態の流体圧力モデルを示す。いずれの場合でも、流体は燃料電池ボードの左側で入力され、反対の右側で出力される。流れデザインは、図13において見られるものであり、インサート250にラベルが付されている。
【0162】
流体速度モデルを示す図14aでは、低速が入力ゾーン302および出力ゾーン304(グレースケール版の図では見えない青)において見られる。高速は例えば領域306(グレースケール版の図では見えない赤)において見られうる。
【0163】
流体圧力モデルを示す図14bでは、低圧が入力出力ゾーン310(グレースケール版の図では見えない青)において見られ、高圧が入力出力ゾーン308(グレースケール版の図では見えない赤)において見られる。良く分布された中圧が流れの全体(グレースケール版の図では見えない黄/緑)に亘って見られうる。
【0164】
方向付け手段(例えば、インサートまたはバッフル)は、任意の適切な材料で作られる。好ましくは、これらは、燃料電池スタックを通じて流れる電流と干渉しないように、例えば適切なプラスチック製で電気的に絶縁性である。
【0165】
図13および14では二つのインサートが示されるが、これは一例に過ぎず、流体流を方向付けるために単一のまたは二つより多いインサートが利用されうる。実質的にU字状デザインのインサートが示されたが、代替的な形状が利用されうる。スタックの特定の領域に対して流れを方向付けるための手段は、例えば、従来の流れが到達できなかったまたは弱かったスタックのデッドスポットに到達できるように流れを改良するために使用されうる。
【0166】
インサート等の流れを方向付けるための手段は、ここで記述される任意の実施形態および任意の流れパターン/タイプと共に利用されうる。例えば、流体流を方向付けるための手段は、T字状、U字状、逆U字状および線状流と組み合わされうる。本開示の範囲から逸脱することなく以上の例示的な実施形態に対して多くの改良および変更が加えられうることは、当業者にとって明らかである。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図10c
図11a
図11b
図11c
図12
図13
図14a
図14b
【国際調査報告】