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特表2023-549392塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーの製造方法及びこのようなコポリマーを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーの製造方法及びこのようなコポリマーを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/06 20060101AFI20231116BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20231116BHJP
   C08F 2/16 20060101ALI20231116BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C08F214/06
C08L27/06
C08F2/16
C08F2/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528633
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2021080884
(87)【国際公開番号】W WO2022101117
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】20207585.9
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523176129
【氏名又は名称】イノヴィン ユーロップ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】エルマン トーマス
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BD091
4J011AA07
4J011AA08
4J011JA07
4J011JB02
4J011JB06
4J011JB13
4J011JB14
4J011JB22
4J011JB26
4J011NA25
4J011NB04
4J100AC03P
4J100AL03Q
4J100AL04Q
4J100CA04
4J100DA25
4J100DA37
4J100DA48
4J100DA50
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA21
4J100FA28
4J100FA30
4J100FA35
4J100FA37
(57)【要約】
本発明は、塩化ビニル及び(メタ)アクリル酸エステルのコポリマーの製法及び望ましい性質を有する、塩化ビニル及び(メタ)アクリル酸エステルのコポリマーを含む組成物に関する。特に、塩化ビニルモノマーAと(メタ)アクリル酸アルキルモノマーBを反応させることによる、塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーCの製法であって、A)第1工程において、i)反応器内の水性媒体中に、塩化ビニルモノマーAと(メタ)アクリル酸アルキルモノマーBとを含む第1の混合物を提供し、a.Bの量が、Bの総量の20~100%であり、b.Aの量が、Aの総量の15~80%であり、c.A:Bの質量比が、25:75~75:25であり、ii)前記第1の混合物を重合させ、前記重合が、a.反応器を温度T1に加熱すること、b.開始剤を添加して重合を始めることによって行われ、c.重合開始時のBの量が、Bの総量の100%未満である場合、重合開始後、この第1工程において、残りのBを反応器に添加し、d.重合開始時のAの含量が、Aの総量の80%未満である場合、重合開始後、この第1工程において、更なるモノマーAを反応器に添加してもよく、ただし、この第1工程において添加するモノマーAは、モノマーAの総量の80%未満のままであり、e.モノマーBの総量の少なくとも50%が反応するまで、重合を継続し、B)第2工程において、i)残りのモノマーAを添加して第2の混合物を形成し、第2の混合物を重合させることを含む製法を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニルモノマーAと(メタ)アクリル酸アルキルモノマーBを反応させることによる、塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーCの製造方法であって、第1工程と第2工程とを含み、
A)第1工程において、
i)反応器内の水性媒体中に、塩化ビニルモノマーAと(メタ)アクリル酸アルキル モノマーBとを含む第1の混合物を提供し、
a.Bの量が、Bの総量の20~100%であり、
b.Aの量が、Aの総量の15~80%であり、
c.A:Bの質量比が、25:75~75:25であり、
ii)前記第1の混合物を重合させ、前記重合が、
a.反応器を温度T1に加熱すること、
b.開始剤を添加して重合を始めること
によって行われ、
c.重合開始時のBの量が、Bの総量の100%未満である場合、重合開始後、この 第1工程において、残りのBを反応器に添加し、
d.重合開始時のAの量が、Aの総量の80%未満である場合、重合開始後、この第 1工程において、更なるモノマーAを反応器に添加してもよく、ただし、この第1工程 において添加するモノマーAは、Aの総量の80%未満のままであり、
e.モノマーBの総量の少なくとも50%が反応するまで、重合を継続し、
B)第2工程において、
i)残りのモノマーAを添加して第2の混合物を形成し、第2の混合物を重合させる 、
前記製造方法。
【請求項2】
重合中に1種以上の連鎖移動剤が存在し、特に第1の混合物に存在する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
温度T1が、少なくとも55℃である、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
第2工程において残りのモノマーAを添加する前に、反応器の温度を、温度T1より少なくとも10℃低い温度T2に低下させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
製造された塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーが、10~50質量%の(メタ)アクリル酸アルキル及び50~90質量%の塩化ビニル、好ましくは30~50質量%の(メタ)アクリル酸アルキル及び50~70質量%の塩化ビニルを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
(メタ)アクリル酸アルキルモノマーBが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸エチルヘキシルから選択されるアクリル酸アルキルであり、最も好ましくはアクリル酸ブチルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
開始前の第1の混合物中のモノマーBの量が、Bの総量の少なくとも50%であり、好ましくはBの全量である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
第1の混合物中のA:Bの質量比が、45:55~65:35の範囲である、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
モノマーBの総量の少なくとも80%が反応するまで、第1工程における重合を継続する、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された、塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマー。
【請求項11】
塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマー組成物であって、
a.10~50質量%の(メタ)アクリル酸アルキル及び50~90質量%の塩化ビニルを含む、塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーであり、
i.100ppm未満の残りの(メタ)アクリル酸アルキルモノマー、
ii.少なくとも200%の破断伸び、及び
iii.10℃未満、好ましくは-10℃~10℃のTg1
を有する前記コポリマーと、
b.少なくとも1種の固化防止剤と
を含む、前記組成物。
【請求項12】
塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーが、30~50質量%の(メタ)アクリル酸アルキル及び50~70質量%の塩化ビニルを含む、請求項11に記載の塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマー組成物。
【請求項13】
(メタ)アクリル酸アルキルモノマーBが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸エチルヘキシルから選択されるアクリル酸アルキルであり、最も好ましくはアクリル酸ブチルである、請求項11又は請求項12に記載の塩化ビニル-アクリル酸エステルコポリマー組成物。
【請求項14】
Tg1が5℃未満、より好ましくは0℃未満である、請求項11~13のいずれか1項に記載の塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマー組成物。
【請求項15】
55℃の水に30日間浸漬した後の吸水率が10%未満である、請求項11~14のいずれか1項に記載の塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマー組成物。
【請求項16】
ショアAが、93以下である、請求項11~15のいずれか1項に記載の塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマー組成物。
【請求項17】
請求項11~16のいずれか1項に記載の塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマー組成物から形成されたPVC物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル及び(メタ)アクリル酸アルキルのコポリマーの製造方法に関し、また、望ましい性質を有する、塩化ビニル及び(メタ)アクリル酸アルキルのコポリマーを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(PVC)は、現在の市場において最も重要な熱可塑性材料の1種である。PVCは、非常に良好な機械的及び物理的性質を有するため、多くの用途に使用されている。
PVCの製造には、いくつかの方法が知られている。例えば、PVCは、懸濁剤の存在下、懸濁液中で塩化ビニルの懸濁重合によって製造することができる。これにより、通常100~200ミクロンオーダーの粒径を有するPVC粒子のスラリー(又は懸濁液)が得られる。次に、得られたPVCのスラリーを、通常、遠心分離の後に流動層乾燥を行うことにより乾燥し、多孔質(すなわち、吸着性)PVCを提供する。懸濁法により生産されたPVCは、「S-PVC」と称する。S-PVCは、可塑剤を吸収してドライブレンドを提供することができる。
PVCはまた、ペースト重合(paste polymerisation)法として一般的に知られている方法によって得ることができる。ペースト法は、重合により、S-PVC法と比べて、比較的小さいサイズ(通常0.2~5ミクロン)のポリマー粒子のラテックスを得ることを特徴とすることができる。ラテックスは、例えば、噴霧乾燥により乾燥して、凝集体の形態のPVC粒子を得ることができる。乾燥したPVCポリマー粒子は、通常、懸濁PVC法によって得られた乾燥粒子よりもはるかに小さい。
PVCホモポリマー自体は、一般的にかなり硬い。可塑剤をPVCに添加して、柔軟性を高めることが知られている。これらの物質は、低揮発性の液体又は固体であってもよい。しかしながら、一般的に、このような物の柔軟性は長く持たない。PVCの柔軟性を改善する別の方法は、改善した柔軟性を与えるコモノマーの存在下で重合を行うことにより、PVCを「あらかじめ可塑化する(pre-plasticise)」ことである。特に好ましいコモノマーは、アクリレート及びメタクリレートである。例えば、国際公開2015/090657号公報は、ハロゲン化ビニルと第2のモノマー(好ましくはアクリレート)を反応させることによるポリマーの製造方法であって、重合が、各モノマーの量を制御する一連の工程で行われる、前記製造方法を記載している。この文献は、最終生成物中のモノマー比が適切であれば、追加の可塑剤を添加する必要がないことと指摘している。
【発明の概要】
【0003】
我々は、今回、塩化ビニル及び(メタ)アクリル酸アルキルのコポリマーの更なる製造方法、特に、予想外に改善された性質を有する、塩化ビニル及び(メタ)アクリル酸アルキルのコポリマーを提供する更なる製造方法を見出した。
【0004】
したがって、第1の観点において、塩化ビニルモノマーAと(メタ)アクリル酸アルキルモノマーBと反応させることによる、塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーCの製造方法であって、第1工程と第2工程とを含み、
A)第1工程において、
i)反応器内の水性媒体中に、塩化ビニルモノマーAと(メタ)アクリル酸アルキル モノマーBとを含む第1の混合物を提供し、
a.Bの量が、Bの総量の20~100%であり、
b.Aの量が、Aの総量の15~80%であり、
c.A:Bの質量比が、25:75~75:25であり、
ii)前記第1の混合物を重合させ、前記重合が、
a.反応器を温度T1に加熱すること、
b.開始剤を添加して重合を始めること
によって行われ、
c.重合開始時のBの量が、Bの総量の100%未満である場合、重合開始後、この 第1工程において、残りのBを反応器に添加し、
d.重合開始時のAの量が、Aの総量の80%未満である場合、重合開始後、この第 1工程において、更なるモノマーAを反応器に添加してもよく、ただし、この第1工程 において添加するモノマーAは、Aの総量の80%未満のままであり、
e.モノマーBの総量の少なくとも50%が反応するまで、重合を継続し、
B)第2工程において、
i)残りのモノマーAを添加して第2の混合物を形成し、第2の混合物を重合させる 、
前記製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の具体的な特徴としては、
i)すべての(メタ)アクリル酸アルキルモノマーBを第1工程中に添加し、このモノマーの少なくとも50%を第1工程において反応させなければならないこと、
ii)塩化ビニルモノマーAの総量の少なくとも20%を第2工程で(すなわち、すべての(メタ)アクリル酸アルキルを添加した後に)添加すること、が挙げられる。
最終的な塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーは、一般的に、10~50質量%の(メタ)アクリル酸アルキル及び50~90質量%の塩化ビニル、好ましくは30~50質量%の(メタ)アクリル酸アルキル及び50~70質量%の塩化ビニルを含む(コポリマー中の各モノマーのパーセンテージは計算することもできるが、例えば、1H NMRを使用して測定するのが好ましいことに留意されたい)。
本明細書において、用語(メタ)アクリル酸アルキルは、アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルを包含するものとして使用する。(メタ)アクリル酸アルキルモノマーBは、好ましくは式:
2C=C(R’)C(=O)-O-R (1)
を有するものである(式中、Rは、1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、R’は、H又はメチルである)。
アルキル基は、直鎖状又は分枝状であってもよい。好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルは、アクリル酸アルキルである。
したがって、モノマーBは、好ましくはアクリル酸アルキルモノマーBであり、より好ましくは式:
2C=C(H)C(=O)-O-R (1)
を有するものである(式中、Rは、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である)。
アルキル基は、直鎖状又は分枝状であってもよい。好ましいアクリル酸アルキルモノマーBの例として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸エチルヘキシルが挙げられ、最も好ましいのは、アクリル酸ブチルである。
【0006】
2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルモノマーを使用してもよく、この場合、組み合わせた(メタ)アクリル酸アルキルは、本発明の目的のために、モノマーBとみなされるべきである。したがって、この場合、(メタ)アクリル酸アルキルの総量の20~100%が第1の混合物中に存在し、モノマーAとすべての(メタ)アクリル酸アルキルとの質量比が25:75~75:25であり、第1の混合物に添加しなかったあらゆる(メタ)アクリル酸アルキルのすべてを、第1工程の中に添加する。
しかしながら、好ましくは単一の(メタ)アクリル酸アルキルモノマーを使用し、好ましい実施形態においては、単一のアクリル酸アルキルモノマーである。
他のモノマー(すなわち、塩化ビニルでもなく、(メタ)アクリル酸アルキルでもない)を重合させることもでき、その後、製造されたコポリマー中に存在することになる。好ましくは、このようなモノマーは、最終生成物の20質量%未満、より好ましくは10質量%未満の量で存在する。存在する場合、好ましくは、このようなモノマーを上記の第1工程又は第2工程のいずれかにおいて導入することができるが、好ましくはこのようなモノマーを第1工程において導入し、より好ましくはこのようなモノマーを完全に第1の混合物に導入する。
【0007】
より一般的な方法の工程に目を向けると、重合方法は、一般的に懸濁重合法として行われる。重合工程は、その後、懸濁重合法について知られている任意の適切な装置で適切に行うことができる。
通常、重合は、適切な懸濁剤の存在下、水性懸濁液中で起こる。重合には、任意の適切な懸濁剤を使用することができるが、特に好ましい懸濁剤は、水溶性セルロースエステル及び様々な加水分解度のポリ酢酸ビニルである。必要である場合、これらの懸濁剤を第2の懸濁剤と一緒に使用することができる。使用量は広範囲に変動し得るが、使用する塩化ビニルに対して計算して、一般的に0.05~1.5質量%である。また、PVCを得るための塩化ビニルの懸濁重合に使用するのに従来から知られている他の添加剤も存在してもよく、緩衝剤及び連鎖移動剤が挙げられる。
本発明において、1種以上の連鎖移動剤を使用するのが特に好ましい。連鎖移動剤は、塩化ビニルの重合、特により高い温度及びより高い圧力で行われる重合において、分子量を制御するのに使用されることが知られている。連鎖移動剤は、本発明の方法において有用であり、改善した表面仕上げを有する生成物を形成できるコポリマーをもたらすことを見出した。
最も好ましくは、少なくとも1種の連鎖移動剤が、第1の混合物中に存在する(すなわち、開始時に存在する)。
適切な連鎖移動剤は、この技術分野においてよく知られている。通常、それらは、少なくとも1つの弱い化学結合を有し、連鎖移動反応を促進する。一般的な連鎖移動剤として、チオール、及び四塩化炭素などのハロカーボンが挙げられる。本発明において、チオール、特にメルカプタン(メタンチオール)などのアルカンチオール、最も好ましくは1-ドデカンチオールが、特に良好な結果を提供することを見出した。
【0008】
好ましくは、第1工程において反応器が加熱される温度T1は、少なくとも55℃、例えば、少なくとも60℃である。通常、T1は、60~80℃、例えば、65~75℃の範囲である。
第1工程における圧力は、通常上昇させる。工程開始時の圧力は、一般的に温度T1及び使用するモノマーに依存する。第1工程中の圧力は変化することがある。通常、第1工程中の圧力は、4~14バール(400~1400kPa)、例えば、6~12バール(600~1200kPa)の範囲である。
(本明細書で使用される場合、すべての圧力は、別途示されていない限り、絶対圧力である。)
第1の混合物中のBの量は、Bの総量の20~100%である。本明細書において使用される場合、「Bの総量」は、方法に添加するモノマーBの総量である。通常、これは、コポリマーCを得るために反応させるのが望まれるモノマーBの量でもある(一般的に、(メタ)アクリル酸アルキルモノマーBは、塩化ビニルモノマーAよりも反応性が高く、本発明において、すべてを第1工程において添加する。したがって、通常、反応終了時の転化率は、モノマーBについて、実質的に100%と仮定できる。このような場合、「添加量」と「反応させるのが望まれる量」は同じになる。)。好ましくは、第1の混合物中(すなわち、開始前)のBの量は、Bの総量の少なくとも50%、例えば、少なくとも75%である。最も好ましい実施形態において、すべてのモノマーBを、第1の混合物(すなわち、開始前)に添加する。
【0009】
第1の混合物中のAの量は、Aの総量の15~80%である。第1の混合物中のAの量は、好ましくはAの総量の60%未満である。本明細書において使用される場合、「Aの総量」は、方法に添加する塩化ビニルモノマーAの総量である。一般的に、方法終了時の塩化ビニルモノマーAの総転化率は、100%である必要はなく、むしろ塩化ビニルモノマーA及びモノマーBの望ましい合計量(質量%)を含むコポリマーCが得られるように選択する。したがって、「Aの総量」には、反応して最終のコポリマーCを生成する塩化ビニルモノマーAだけではなく、方法終了時に未反応である塩化ビニルモノマーAも含まれる。いくつかの実施形態においては、全体として高い塩化ビニルモノマーAの転化率が得られるが、他の実施形態においては、より大過剰の塩化ビニルモノマーAを方法、特に第2工程において添加し、方法が、より低い塩化ビニルモノマーの転化率で行われる一方で、同じ生成物の組成を得る場合がある。しかしながら、どのよう操作しても、どのように多くのモノマーAを第1工程において添加しても、最も好ましい実施形態において、第1工程において添加する塩化ビニルモノマーAは、第1の混合物中(すなわち、開始前)に存在する。
第1の混合物中のA:Bの質量比は、好ましくは40:60~70:30(例えば、45:55~65:35)、より好ましくは50:50~60:40の範囲である。
【0010】
重合は、任意の適切な重合開始剤によって開始させることができる。PVCの懸濁重合用の適切な開始剤はよく知られており、例えば、有機過酸化物及び無機過酸化物、又はジアゾ化合物が挙げられる。適切な開始剤の具体例として、ジ-tertブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド及びアセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシドなどのペルオキシ化合物が挙げられる。本発明の重合方法での使用に特に適したモノマー可溶性のフリーラジカル重合開始剤は、アルキル基に最大20個の炭素原子が含まれるジアルキルパーオキシジカーボネート(用語「アルキル」は「シクロアルキル」を含む)(例えば、ジエチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジエチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、及びビス(4-tertブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート);アゾ化合物(例えば、2,2’-アゾ-ビス-2,4-ジメチルバレロニトリル及びアゾ-ビス-イソブチロニトリル);並びにペルオキシエステル(特に、ペルオキシネオデカノアート、例えば、ジメチルヒドロキシブチルペルオキシネオデカノアート及びテトラメチルブチルペルオキシネオデカノアート)である。これらの開始剤は、従来の量で使用することができる(一般的に、塩化ビニルに対して計算して、0.01~1質量%である)。
また、開始剤を段階的に添加してもよく、最初の量を添加して重合を開始させ、第1工程中に及び/又は第2工程中に更なる開始剤を添加して重合活性を維持することもできる。
【0011】
モノマーBの総量の少なくとも50%が反応するまで、第1工程における重合を継続する。少なくとも70%、例えば、少なくとも80%のモノマーBが反応するまで、好ましくは少なくとも90%のモノマーBが反応するまで、第1工程における重合を継続するのが好ましい。モノマーの転化率を決定する方法は当業者に知られており、重量測定(JM Goldwasser and A Rudin, J. Polym. Sci. Polym. Chem. ED., 1982, Vol. 20, p. 1993)及び熱量測定(A Urretabizkaia, et al. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem., 1994; Vol. 32, p. 1761)が挙げられる。一例として、当業者は、生成物中のコモノマーBの含有量対時間及び生産率から、転化率を決定することができる。これより、当業者は、特定の条件のセットについて、転化率対時間を決定することができるか、又は広範な条件をカバーするモデルを提供することができる。
本発明の第1工程後、残りのモノマーAを添加して第2の混合物を形成し、続いて重合させる、第2工程を行う。「残りのモノマーA」は、方法に添加するモノマーAの量の残りを意味する。既に言及したように、通常、この場合には、過剰のモノマーAが含まれ、未反応のままであることが意図される。
【0012】
(例えば、最終のコポリマーCを製造するために反応させることが望まれるAの総量の80%を第1工程において反応器に添加する場合、所望のモノマーAを少なくとも更に20%第2工程において添加しなければならないが、これ以上の過剰のモノマーAを添加してもよい。同様に、最終のコポリマーCを製造するために反応させることが望まれるAの総量の60%しか第1工程において反応器に添加しない場合、所望のモノマーAを少なくとも更に40%第2工程において添加しなければならないが、やはりこれ以上の過剰のモノマーAを添加してもよい。)
モノマーAの全体的な転化率がコポリマーC中の所望のモノマーAの量に相当するまで、重合は、この工程において継続すべきである。必要である場合、この工程(及び第1工程)におけるモノマーの転化率は、この技術分野において知られている方法、例えば、上述した方法により測定してもよい。しかしながら、一般的に、両工程は関連しているが、特定のモノマーAを転換させるというよりは、所望の生成物が得られるように第2工程を行う。特に、既に言及したように、方法終了時の塩化ビニルモノマーAの総転化率は100%となる必要はなく、むしろ塩化ビニルモノマーA及びモノマーBの望ましい合計量(質量%)を含むコポリマーCを得るように選択する。
それにもかかわらず、この第2工程における転化率は、モノマーAの全体的な転化率の少なくとも20%の反応等当量に相当するであろう(なぜなら、これは、この工程において添加されるモノマーAの総量の最小量であるからである)。好ましくは、方法は、比較的高い、例えば、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%のモノマーAの全体的な転化率で行われる。
【0013】
通常、方法に添加するモノマーAの総量は、最終のコポリマーCを製造するために反応させることが望まれるモノマーAの量の200%未満である。しかしながら、この総量もモノマーAの全体的な転化率も特に重要ではなく、なぜなら未反応のモノマーAはすべて、分離及び再利用することができるからである。第2工程において添加するモノマーAの量(すなわち、あらゆる過剰のモノマーAを含む)は、通常、第2工程中に、この第2工程において添加するモノマーAの量の少なくとも半分と同等の転化率が起こるような量である。
実施形態において、第2工程におけるモノマーAの添加前に、反応器の温度を調整することができる。特に好ましい実施形態において、温度を著しく低下させ、特に、温度T1より少なくとも10℃低い温度T2に低下させるのが好ましい。したがって、好ましい実施形態において、第2工程は、
i)反応器の温度を、温度T1より少なくとも10℃低い温度T2に調整すること、
ii)残りのモノマーAを添加して第2の混合物を形成し、第2の混合物を重合させること、を含む。
したがって、この実施形態において、第1工程を終了することができ、反応器の温度を低下することにより第2工程を開始する。
【0014】
加えて、温度調整の有無と関係なく、第1工程の終了時に、重合反応を、重合禁止剤の添加によって停止することができる。
任意の適切な禁止剤を使用することができる。一般的に、禁止剤は、第1工程に使用する開始剤に応じて当業者が選択することになる。適切な開始剤の例は、この技術分野においてよく知られている。それらの例としては、開始剤に応じて、ヨウ素/ヨウ化物含有禁止剤、アルカリ金属水酸化物及びアミン(ジエチルヒドロキシアミンが挙げられる)などの塩基が挙げられ、α-メチルスチレンも挙げられる。例えば、ジエチルパーオキシジカーボネートが開始剤である場合、ヨウ化カリウムは、この工程にとって有効な禁止剤である。
第1工程の終了時に禁止剤を使用する場合、その後の第2工程における重合は、更なる開始剤の添加によって、場合によって、追加の塩化ビニルモノマーAの後に又はそれとともに追加することによって、再開することができる。
開始剤は、工程(a)に使用したものと同じでもよく、異なってもよいが、好ましくは同じものである。また、必要に応じて、従来の他の添加剤、例えば、ポリビニルアルコールを添加してもよい。
【0015】
既に議論したように、第1工程において添加するモノマーAの量は、モノマーAの総量の80%未満でなければならない。したがって、モノマーAの総量の少なくとも20%を第2工程において導入する。好ましくは、モノマーAの総量の60%未満を第1工程中に導入する。したがって、好ましくは、モノマーAの総量の少なくとも40%を第2工程において導入する。最も好ましくは、モノマーAの総量の少なくとも45%を第2工程において導入する。
既述のとおり、好ましい実施形態において、第2工程における温度T2は、温度T1より少なくとも10℃低い。より好ましくは、第2工程における温度T2は、温度T1より少なくとも20℃低い。絶対的な意味で、第2工程における温度T2は、通常60℃未満、例えば、30~60℃の範囲であり、より好ましくは50℃未満、最も好ましくは40~50℃の範囲である。
第2工程における圧力は、通常上昇させる。工程開始時の圧力は、一般的に温度T2及び使用するモノマーに依存する。第2工程中の圧力は変化することがある。通常、第2工程中の圧力は、2~16バール(200~1600kPa)の範囲、例えば、3~8バール(300~800kPa)の範囲である。
モノマー/所望の生成物の組成の、所望の転化率に到達するまで、第2工程における重合を継続する。必要に応じて、追加の開始剤を第2工程中に添加してもよい。
【0016】
第2工程を終了させるために、禁止剤を添加してもよい。任意の適切な禁止剤を使用することができ、第1工程の終了時に使用した禁止剤の選択肢と同様、一般的に、禁止剤は、使用する開始剤、特に、第2工程に使用する開始剤に応じて当業者が選択する。適切な開始剤の例は、この技術分野においてよく知られており、前述のとおりである。しかしながら、一般的に、この工程の目的が重合を永久に停止することであるため(すなわち、再開する必要がない)、より大量又はより強い効果を有する禁止剤を使用することができる。
ジエチルパーオキシジカーボネートが開始剤である場合、この工程用の特に好ましい禁止剤は、NaOHなどのアルカリ金属水酸化物である。第2工程の終了時に、消泡剤を添加してもよい。主に塩化ビニルモノマーAである、あらゆる未反応のモノマーを反応器の減圧によって取り除くことができ、その後、ポリマー固形分を回収することができる。通常、ポリマー固形分は、ストリッピング工程を経た後、ろ過及び乾燥に供する。ポリマーは、任意の適切な方法、例えば、流動床乾燥器で乾燥することができる。好ましい実施形態において、乾燥前に固化防止剤を添加する。
製造された塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーは、通常0.450~0.700g/mLのかさ密度を有する。粒径分布は、通常、D50が50~300ミクロンとなるような分布である。
【0017】
コポリマーは、通常、40,000~80,000のMn、及び100,000~200,000のMwを有する。Mw/Mnは、通常2~4である。Mzは、160,000~300,000であり得る。本明細書において使用される場合、上記の各々は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定する(一般的に、試料を通常THFに可溶化し、ろ過して、この技術分野において知られている適切なカラムを備える液体クロマトグラフに注入する。結果は、好ましくは3回の注入の平均である。校正のために、PVCの標準試料を使用する)。
上記で述べた工程に従うことにより、望ましい性質の改善された組み合わせを有するコポリマー生成物が形成されることを見出した。これらの性質については、以下に更に説明するが、低レベルの残留(メタ)アクリル酸アルキルモノマー、高い値の破断伸び、及び比較的低いガラス転移温度(Tg1)を含む。生成物はまた、良好な値の硬度(ショアA)及び低温柔軟温度(cold flex temperature)を示し、シクロヘキサノン中でゲル相を形成せず高粘度(K値)を示す。
【0018】
以下にも更に議論するが、コポリマーは、シクロヘキサノンによく溶けることにも特に留意されたい。特に、コポリマーの不溶分は、5質量%未満である。
以下にも更に議論するが、コポリマーは、通常、吸水率が低いことにも特に留意されたい。特に、55℃の水に30日間浸漬した後の吸水率は、10%未満である。
したがって、第2の観点において、本発明は、第1の観点の方法により製造された塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、特に、好ましくは
i.残留(メタ)アクリル酸アルキルモノマーが100ppm未満、
ii.少なくとも200%の破断伸び、及び
iii.10℃未満、好ましくは-10℃~10℃のTg1
を有する、前記塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーを提供する。
また、第3の観点において、本発明は、塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマー組成物であって、
a.10~50質量%の(メタ)アクリル酸アルキル及び50~90質量%の塩化ビニルを含む、塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーであり、
i.残留(メタ)アクリル酸アルキルモノマーが100ppm未満、
ii.少なくとも200%の破断伸び、及び
iii.10℃未満、好ましくは-10℃~10℃のTg1
を有する前記コポリマーと、
b.少なくとも1種の固化防止剤と
を含む、前記組成物を提供する。
【0019】
第1の観点と同様、第2の観点の塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマー及び第3の観点の組成物のコポリマー成分は、好ましくは30~50質量%の(メタ)アクリル酸アルキル及び50~70質量%の塩化ビニルを含む。
第1の観点について既に説明したコポリマーの他の特徴は、第2の観点のコポリマー及び第3の観点のコポリマー成分にとっても好ましい。
第2及び第3の両観点に関して、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルは、好ましくはアクリル酸アルキル、より好ましくは式:
2C=C(H)C(=O)-O-R (1)
のモノマーに由来する(式中、Rは、1~10個の炭素原子を有するアルキル基である)。
アルキル基は、直鎖状又は分枝状であってもよいが、好ましくは直鎖状である。好ましいモノマーの例として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸エチルヘキシルが挙げられ、最も好ましいのは、アクリル酸ブチルである。2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルが存在してもよいが、好ましくは単一の(メタ)アクリル酸アルキルモノマーが存在し、好ましい実施形態においては、単一のアクリル酸アルキルモノマーである。
他のモノマー(すなわち、塩化ビニルでもなく、(メタ)アクリル酸アルキルでもない)が、コポリマー中に存在することもできる。好ましくは、このようなモノマーは、最終生成物の20質量%未満、より好ましくは10質量%未満の量で存在する。
【0020】
第2の観点のコポリマー及び第3の観点の組成物のコポリマー成分はまた、第1の観点について既に説明した他の好ましいコポリマーの性質(例えば、かさ密度、粒径分布及び分子量の性質について)を有する。
第2/第3の観点のコポリマー/コポリマー成分、及び第3の観点のコポリマー組成物の更なる性質のいくつかについて、以下に説明する。疑義を避けるために、我々は、「コポリマー」と称するが、この用語は、第1の観点で製造されたコポリマー、第2の観点のコポリマー、及び第3の観点の組成物のコポリマー成分を包含するために使用する。
コポリマーは、100ppm未満の残留(メタ)アクリル酸アルキルモノマーを有する。本明細書において使用される場合、残留(メタ)アクリル酸アルキルの含有量は、85℃において、密閉バイアル内のtert-ブチルメチルエーテルを用いて残留(メタ)アクリル酸アルキルモノマーを抽出した後に得られた抽出物に対して行われるGCによって測定することができる。次に、抽出物をGCにより分析する(本発明での測定は、ジメチルシロキサンカラム(長さ50m、フィルムの厚さ1.2μm、内径0.32mm)を使用してスプリットレス注入モードで操作する、水素炎イオン化検出器を備えるAgilent 6890Nを使用することにより決定した)。
低レベルの(メタ)アクリル酸アルキルは大きな利点であり、なぜなら(メタ)アクリル酸アルキルは、生成物に、許容できない臭気を与える可能性があり、多くの用途に適さなくなる可能性があるからである。
【0021】
これは、国際公開2015/090657号公報に記載の生成物、例えば、一般的に、100ppmをはるかに上回る残留アクリレートレベルを示すものと比べて、特に有利な点の1つである。好ましくは、コポリマーは、70ppm未満の残留(メタ)アクリル酸アルキルモノマー、より好ましくは50ppm未満、例えば、20ppm未満の残留(メタ)アクリル酸アルキルモノマーを有する。有利には、本発明の方法により、医療市場又は類似の市場に参入するのに必要な品質を有する様々なポリマーを得ることを可能にする。例えば、医療用途が、明らかな理由で、特定の物理化学的性質(70ppm以下の残留アクリル酸ブチルの含有量が挙げられる)を必要とすることが、これは、本発明によって容易に達成できる。
(残留塩化ビニルは、一般的に(メタ)アクリル酸アルキルよりも除去しやすいが、疑義を避けるために、コポリマーも低レベルの残留塩化ビニルを有する(通常1ppmよりもはるかに少なく、一般的に0.1ppm未満、例えば、0.02ppm未満である)。)
残留塩化ビニルの含有量は、ISO 24538(2008)に記載の方法を使用する、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー技術を使用して測定することができる(本発明での測定は、水素炎イオン化検出器及びRT Q-Bondカラム(30m、フィルムの厚さ20μm、内径0.52mm)を備える、Thermo Finnigan TRACE GCを使用して測定した)。
破断伸びは、割れることなく形状の変化に耐える試験片の能力の測定であり、特に、制御された温度において試験片を破断した後の増加した長さと初期の長さとの間の比である。本明細書において使用される場合、破断伸びは、1BAサンプルタイプについて、ISO 527-2(2012)に準拠して測定すべきである(本発明での測定は、インストロン5500シリーズ試験機を使用して測定した)。破断伸びは、好ましくは少なくとも300%、例えば、少なくとも400%である。実施形態において、破断伸びは、少なくとも500%であり得る。
【0022】
コポリマーはまた、良好な値の引張弾性率を有する。本明細書において使用される場合、引張弾性率はまた、1BAサンプルタイプについて、ISO 527-2(2012)に準拠して測定する(本発明での測定は、インストロン5500シリーズ試験機を使用して測定した)。引張弾性率は、好ましくは少なくとも3MPa、例えば、4~70MPaである。
本発明のコポリマーはまた、Tg1として測定される10℃未満、好ましくは-10℃~10℃のガラス転移温度を有する。実施形態において、ガラス転移温度Tg1は、5℃未満、より好ましくは0℃未満である。Tg1が低いため、追加の可塑剤なしで、組成物を低温で使用できる。
(本明細書において使用される場合、ガラス転移温度は、DSCで測定される加熱-冷却-加熱のサイクルから測定する。測定は、ISO 11357-2(2013)の方法に基づく方法に準拠して、10mgのポリマーの試料を圧着型アルミニウムパン(crimped aluminium pan)に載せ、50mL/minの窒素の流の下、-60℃から170℃まで20℃/minで加熱することにより行う。データは、この標準に記載のハーフステップ高さ法(half-step-height method)を使用して解析する。)
コポリマーはまた、良好な値の硬度(ショアA)及び低温柔軟温度を示し、シクロヘキサノン中でゲル相を形成せず高粘度(K値)を示し、ポリマー鎖長に対して均一性と高分子量を表す。
コポリマーのショアAは、通常95未満、例えば、93以下、好ましくは90以下である。ショアAは、通常少なくとも60、一般的に少なくとも65である。好ましい範囲は70~90、例えば80~90である。好ましい最大値/範囲は、別の可塑剤の添加なしで、「柔らかい」用途に使用できるコポリマーを提供する。一方、より高い値は、多くの用途にとって硬すぎる物を提供する可能性がある。本明細書において使用されるショアAは、ISO 868(2003)に記載のデュロメータによる押込み法を使用して測定する。
K値は、ISO 1628-2(1998)の方法に準拠して測定することができる。好ましくは、K値は、少なくとも60である。90まで、例えば、80までのK値が好ましい。最も好ましいK値は、65~75の範囲である。
【0023】
低温柔軟温度は、低温でのねじり剛性の測定である。本明細書において使用される場合、ISO 458-1(1985)に準拠して測定すべきである。コポリマーの低温柔軟温度は、好ましくは-5℃未満、より好ましくは-10℃未満である。
既述のとおり、コポリマーの特別な特徴は、シクロヘキサノンによく溶けることである。特に、コポリマーの不溶分は、5質量%未満である。本明細書において使用される場合、シクロヘキサノン不溶分(「不溶分」)は、以下の方法により測定する。
i)2グラムの塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーの試料を200mLのシクロヘキサノンに入れる。
ii)溶液を25℃において30分間攪拌する。
iii)溶液をろ過し、フィルター上に残った固形分を乾燥して秤量する。
不溶分%は、乾燥した固形分の質量と元の試料の質量(すなわち、2g)を比較することにより計算する。
コポリマーの不溶分は、通常2質量%未満、例えば、1質量%未満である。最も好ましくは、コポリマーは、完全に可溶性であり、本明細書において使用される場合、上記方法を使用することで、目立った不溶性成分が観察されないことを意味する。
シクロヘキサノンへの溶解度は、塩化ビニルポリマーの正確な特徴付けにとって特に重要なパラメーターである。例えば、GPC解析(分子量測定に使用する)及びK値の決定は、多くの場合、シクロヘキサノン又はTHFに溶解させた試料に対して行う。試料がすべて溶解していない場合、決定された測定値は、試料を正確にしてない。
また、本発明に関する特別な利点は、高い溶解度により、コポリマーの効率的なリサイクルの最適化に有利になり得ることである。例えば、コポリマーは、第3の観点における固化防止剤及び/又は耐用年数の終わりに市販品に存在する他のいかなる不溶性成分から、効率的に分離することができる。
【0024】
また、既述のとおり、コポリマーの更なる特別な特徴は、好ましくは吸水率が低いことである。特に、30日後の吸水率は、10質量%未満である。本明細書において使用される場合、吸水率を、以下の方法により測定する。
1)コポリマー又はコポリマー組成物の試料を、3phrのCa/Zn安定剤と一緒にし、160℃において2本ロールミルで均質化し、170℃においてプレスして厚さ1mmを有するフィルムを形成する。これから、直径5mmを有するディスクを切り出す(通常の質量は、ディスク当たり2.0~2.4gである)。
2)試料を、互いに接触しないように耐酸性ワイヤーに通して、シリカゲル上のデシケーター内に室温で24時間乾燥させる。
3)試料を個々に秤量した後(W1)、耐酸性ワイヤーに戻す。
4)試料を水と一緒にビーカーに入れる。アルミニウム箔を上に置き、ビーカーを55℃(+/-1℃)のインキュベーター又は水浴に入れる。
5)試料を定期的に取り出し、室温の水に15分間入れて冷却させ、ペーパータオルで乾燥させて表面の水を除き、5分以内に再び秤量する(W2)。
6)吸水率%を計算する。吸水率=((W2-W1)/W1)*100%
本発明のコポリマー及びコポリマー組成物は、好ましくは非常に低い吸水率を示し、屋根材などの屋外用途に使用される材料、又は長時間保管される材料にとって有利である。通常、吸水率は、7日間で2%未満である。通常、吸水率は、30日間で10%未満、より好ましくは5%未満である(いずれの場合も、55℃で測定される)。
【0025】
一方、例として、乳化重合により製造された塩化ビニル-(メタ)アクリル酸エステルコポリマーは、通常、かなり高い吸水率を示すことが分かっている。
本発明の第3の観点のコポリマー組成物はまた、固化防止剤を含む。固化防止剤は、その名前が示しているように、ポリマー粒子の固化を防止する成分である。ポリマーが「粘着性を有する」場合、固化が、特に問題となる可能性があり、ポリマーの取り扱い及び乾燥が難しくなる。
この点で、国際公開2015/090657号公報は、ポリマーの粘着性に起因する低くすぎるTgを避けることを示唆している。一方、本発明において、低いTg1が好ましく、第3の観点において、我々は、固化防止剤を使用して粘着性の問題に対処している。
固化を低下又は防止して、「粘着性を有する」ポリマーであっても自由に流れることを保証するのに使用できる固化防止剤は、この技術分野においてよく知られており、例えば、エボニックが販売している、シペルナート(登録商標)特殊シリカ、アエロジル(登録商標)フュームドシリカ及びエアロキシド(登録商標)親水性フュームド金属酸化物が挙げられる。
固化防止剤は、当業者が決定できる、任意の適切な量で添加することができる。通常、本発明の第3の観点の組成物中の固化防止剤とコポリマーとの比が、0.1:99.9~10:90、好ましくは1:99~10:90となるように、固化防止剤を添加する。いくつかの実施形態において、他の成分、例えば、他の添加剤を組成物に添加してもよいが、通常、固化防止剤とコポリマー成分についてのこれらの比は維持される。
【0026】
第2の観点のコポリマー(及び第3の観点のコポリマー組成物)は、10分超の誘導時間及び19分超の安定時間を有する、良好な熱安定性を示す。値は、180℃において放出された塩化水素とあらゆる酸性生成物の検出に基づく、ISO 182-3(1993)に記載の手順を使用して決定することができる。本明細書での測定に使用した機械は、メトローム製の763PVCサーモマットであった。
コポリマー、特に第3の観点のコポリマー組成物は、任意の適切な用途に使用することができる。特に好ましい用途は、従来の可塑剤の移行により、そのような可塑化製品に適さなくなるおそれがある用途であるが、より一般的に適切な用途として、
-同質の高級なビニルタイル(LVT)、異質の高級なビニルタイルを含む、弾性床材
-屋根及び建築用膜
-スイミングプールライナー
-人工的なビニルレザー(室内装飾材料、靴、ベルト、財布、がま口、旅行かばん等)
-フレキシブルホース:自動車用、園芸用、耐溶剤性&耐油性/ガス用/抗菌性ホース
-履物:靴底、インソール、ライナー、アッパー及びサンダル
-ワイヤー及びケーブル
-窓用ラミネーションフィルム、窓用ガスケット
-医療機器:チューブ、マスク、血液/尿/透析/血清バック
-おもちゃ
-食品に接触する軟包装
-文房具
-スッテカー
-吊り天井
-工業用ホースの軟質部分
が挙げられる。
【実施例
【0027】
実施例において、以下の測定方法を使用した。
i)重水素化テトラヒドロフランを溶媒として使用するブルカー500MHz NMRで1H NMRにより、アクリル酸ブチルの含有量を決定した。
ii)ISO 60(1977)と同等の方法により、かさ密度を測定した。
iii)ISO 1624(2001)と同等の方法により、平均粒度を測定した。
iv)ISO 1269(2006)と同等の方法により、揮発分を測定した。
v)ISO 24538(2008)に準拠したヘッドスペースガスクロマトグラフィー技術を使用し、及び既に説明したように、Thermo FinniganタイプTRACE GCを使用し、残留塩化ビニルモノマーを測定した。
vi)85℃において密閉バイアル内のtert-ブチルメチルエーテルによる残留(メタ)アクリル酸アルキルモノマーの抽出後に得られた抽出物に対して行われるGCにより、及び既に説明したように、Agilent 6890N GCを使用し、残留(メタ)アクリル酸アルキルモノマーを測定した。
vii)ISO 1628-2(1998)により、K値を測定した。
viii)既に説明したように、ISO 182-3(1993)により、熱安定性(誘導時間及び安定時間)を測定した。
ix)既に説明したように、ISO 11357-2標準に基づく方法により、Tgピークを決定した。
x)既に説明したように、ISO 868(2003)に準拠して、ショア硬度を決定した。
xi)既に説明したように、ISO 527-2(2012)に準拠して、1BAサンプルタイプについて、引張弾性率及び破断伸びのいずれも測定した。
xii)既に説明したように、吸水率を測定した。
【0028】
実施例1:
方法
スターラーを備える容量94Lの重合反応器に、水54Kg、25.75gr/Kgで72.5%の加水分解度を有するポリビニルアルコールの水溶液3197gr、30.15gr/Kgで88%の加水分解度を有するポリビニルアルコールの水溶液682gr、消泡剤(Erol amp 1232)30gr、30gr/Kgの緩衝剤(ヘキサメタリン酸ナトリウム-NaHP)の水溶液30gr、500gr/Kgの熱安定剤(ステアリン酸カルシウム)の水性分散液50gr、及び連鎖移動剤(1-ドデカンチオール)5grを入れた。
反応器を閉じ、撹拌速度を70rpmに設定したら、真空引きとその後の窒素パージを2サイクル行ない、最後に真空引きを行った。その後、アクリル酸ブチル4470gr、続いて塩化ビニル5215grを充填し、撹拌速度を300rpmに設定した。
ダブルジャケットで、重合温度を70℃に上昇させた。重合温度(70℃)において、濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液9.0grを投入し、重合を開始した。CR>5%で、濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液13grを投入し(2回目の投入)、CR>10%で、濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液15grを投入した(3回目の投入)。アクリル酸ブチルの転化率が80%超の値に到達するまで、反応を、これらの条件下で維持した。その後、10gr/Kgの禁止剤(KI)の水溶液30grを添加し、重合温度を45℃未満の温度に冷却した。
【0029】
次に、塩化ビニル5948gr、続いて31.65gr/Kgで80%の加水分解度を有するポリビニルアルコールの水溶液434gr、最後に濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液30grを充填した。塩化ビニルの総転化率が63.7%に到達するまで、反応を、これらの条件下で維持した。その後、220gr/Kgの禁止剤(苛性ソーダ-NaOH)の水溶液30gr及び消泡剤(Erol amp 1232)30grを重合媒体に添加した。未反応の塩化ビニルを、反応器を減圧することにより除いた。次に、懸濁液をろ過により分離した。
一部を流動床乾燥器内で60℃の空気で乾燥させ、コポリマー生成物を提供した。更なる一部を2phrの固化防止剤と混合した後、また流動床乾燥器内で60℃の空気で乾燥させ、コポリマー組成物を形成した。
【0030】
コポリマー生成物
1H NMRにより測定したコポリマー中のアクリル酸ブチルの含有量は、38.6質量%であった。かさ密度は、0.567g/cm3であり、平均粒度は、236ミクロンであった。
揮発分は、0.3質量%未満であり、残留アクリル酸ブチルモノマーは、12ppmであった。
これは、国際公開2015/090657号公報の方法に準拠して得られた材料よりもはるかに少なかった。
K値は、74.2であり、熱安定性は、22.2分の誘導時間及び53.4分の安定時間であった。
試料は、2つのTgピークを示し、Tg1は-2℃であり、第2のピークは78.3℃であり、Tg1が低いため、追加の可塑剤なしで、コポリマーを低温で使用できる。
3phrのCa/Zn安定剤と一緒にし、続いて160℃において2本ロールミルで均質化し、170℃においてプレスしたコポリマーの試料について、引張特性を測定した。
コポリマーは、86.5のショア硬度A、22.7MPaの引張弾性率及び324%の破断伸びを有するものであった。
したがって、有利なTg1及び残留アクリル酸ブチルのみならず、コポリマーはまた、高い値の破断伸びを含む良好な引張特性を示した。
吸水率も測定した。吸水率は、2日後に0.76%であり、7日後に1.25%であり、30日後に2.97%であった。
【0031】
固化防止剤を含む組成物
固化防止剤を含む組成物は、粘着又は凝集の兆候を示さなかった、自由流動性の組成物であった。組成物は、2つのTgピークを示し、Tg1は-1.1℃であり、第2のピークは79.1℃であった。これらは、コポリマー自体について得られたものと同様であり、固化防止剤がこれらに大きな影響を与えないことを示した。既述のとおり、Tg1が低いため、追加の可塑剤なしで、組成物を低温で使用できる。
3phrのCa/Zn安定剤と一緒にし、続いて160℃において2本ロールミルで均質化し、170℃においてプレスした組成物の試料について、引張特性を測定した。組成物は、88のショア硬度A、23.1MPaの引張弾性率及び343%の破断伸びを有するものであった。これらもまた、コポリマー自体について得られたものと同様であり、固化防止剤がこれらに大きな影響を与えないことを示した。
したがって、組成物も、有利なTg1及び残留アクリル酸ブチル、並びに高い値の破断伸びを含む良好な引張特性を示した。
吸水率も測定した。吸水率は、2日後に1.06%であり、7日後に1.92%であり、30日後に4.52%であった。
【0032】
実施例2:
方法
スターラーを備える容量94Lの重合反応器に、水56357gr、28.7gr/Kgで72.5%の加水分解度を有するポリビニルアルコールの水溶液2869gr、27.05gr/Kgで88%の加水分解度を有するポリビニルアルコールの水溶液507gr、消泡剤(Erol amp 1232)30gr、500gr/Kgの熱安定剤(ステアリン酸カルシウム)の水性分散液30gr、及び連鎖移動剤(1-ドデカンチオール)5.0grを入れた。
反応器を閉じ、撹拌速度を70rpmに設定したら、真空引きとその後の窒素パージを2サイクル行ない、最後に真空引きを行った。その後、アクリル酸ブチル4470gr、続いて塩化ビニル4574grを充填し、撹拌速度を275rpmに設定した。
ダブルジャケットで、重合温度を70℃に上昇させた。重合温度(70℃)において、濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液9.0grを投入し、重合を開始した。CR>5%で、濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液13grを投入し(2回目の投入)、CR>10%で、濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液15grを投入した(3回目の投入)。アクリル酸ブチルの転化率が80%超の値に到達するまで、反応を、これらの条件下で維持した。その後、10gr/Kgの禁止剤(KI)の水溶液30grを添加し、重合温度を45℃未満の温度に冷却した。
次に、塩化ビニル5489gr、続いて28.3gr/Kgで80%の加水分解度を有するポリビニルアルコール水溶液485gr、最後に濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液30grを充填した。塩化ビニルの総転化率が52.5%に到達するまで、反応を、これらの条件下で維持した。その後、220gr/Kgの禁止剤(苛性ソーダ-NaOH)の水溶液30gr及び消泡剤(Kem Foam X6615)30grを重合媒体に添加した。未反応の塩化ビニルを、反応器を減圧することにより除いた。次に、懸濁液をろ過により分離し、続いて混合物を流動床乾燥器内で60℃の空気で乾燥させ、コポリマー生成物を提供した。
【0033】
コポリマー生成物
1H NMRにより測定したコポリマー中のアクリル酸ブチルの含有量は、46.1質量%であった。
平均粒度は、244ミクロンであり、揮発分は、0.3質量%未満であり、残留アクリル酸ブチルモノマーは、10ppm未満であった。
これは、国際公開2015/090657号公報の方法に準拠して得られた材料よりもはるかに少なかった。
かさ密度は、0.512g/cm3であり、K値は、75.7であり、熱安定性は、22.8分の誘導時間及び38.4分の安定時間であった。
試料は、2つのTgピークを示し、Tg1は-8.3℃であり、第2のピークは78.7℃であり、Tg1が低いため、追加の可塑剤なしで、コポリマーを低温で使用できる。
3phrのCa/Zn安定剤と一緒にし、続いて160℃において2本ロールミルで均質化し、170℃においてプレスしたコポリマーの試料について、引張特性を測定した。
コポリマーは、67のショア硬度A、4.3MPaの引張弾性率及び639%の破断伸びを有するものであった。
したがって、有利なTg1及び残留アクリル酸ブチルのみならず、コポリマーはまた、高い値の破断伸びを含む良好な引張特性を示した。
【0034】
実施例3:
方法
スターラーを備える容量94Lの重合反応器に、水54896gr、28.7gr/Kgで72.5%の加水分解度を有するポリビニルアルコール水溶液2869gr、30.15gr/Kgで88%の加水分解度を有するポリビニルアルコールの水溶液455gr、消泡剤(Erol amp 1232)30gr、500gr/Kgの熱安定剤(ステアリン酸カルシウム)の水性分散液50gr、及び連鎖移動剤(1-ドデカンチオール)5.0grを入れた。
反応器を閉じ、撹拌速度を70rpmに設定したら、真空引きとその後の窒素パージを2サイクル行い、最後に真空引きを行った。その後、アクリル酸ブチル4470gr、続いて塩化ビニル5031grを充填し、撹拌速度を275rpmに設定した。
【0035】
ダブルジャケットで、重合温度を70℃に上昇させた。重合温度(70℃)において、濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液9.0grを投入し、重合を開始した。CR>5%で、濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液13grを投入し(2回目の投入)、CR>10%で、濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液15grを投入した(3回目の投入)。アクリル酸ブチルの転化率が80%超の値に到達するまで、反応を、これらの条件下で維持した。その後、10gr/Kgの禁止剤(KI)の水溶液30grを添加し、重合温度を45℃未満の温度に冷却した。
次に、塩化ビニル5490gr、続いて28.3gr/Kgで80%の加水分解度を有するポリビニルアルコール水溶液485gr、最後に濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液30grを充填した。塩化ビニルの総転化率が53.8%に到達するまで、反応を、これらの条件下で維持した。その後、220gr/Kgの禁止剤(苛性ソーダ-NaOH)の水溶液30gr及び消泡剤(Kem Foam X6615)30grを重合媒体に添加した。未反応の塩化ビニルを、反応器を減圧することにより除いた。次に、懸濁液をろ過により分離し、続いて混合物を流動床乾燥器内で60℃の空気で乾燥させ、コポリマー生成物を提供した。
【0036】
コポリマー生成物
1H NMRにより測定したコポリマー中のアクリル酸ブチルの含有量は、44.1質量%であった。
平均粒度は、242ミクロンであり、揮発分は、0.3質量%未満であり、残留アクリル酸ブチルモノマーは、14ppm未満であった。
これは、国際公開2015/090657号公報の方法に準拠して得られた材料よりもはるかに少なかった。
かさ密度は、0.545g/cm3であり、K値は、75.0であり、熱安定性は、25.2分の誘導時間及び52.8分の安定時間であった。
試料は、2つのTgピークを示し、Tg1は-3.8℃であり、第2のピークは78.3℃であり、Tg1が低いため、追加の可塑剤なしで、コポリマーを低温で使用できる。
3phrのCa/Zn安定剤と一緒にし、続いて160℃において2本ロールミルで均質化し、170℃においてプレスしたコポリマーの試料について、引張特性を測定した。
コポリマーは、73のショア硬度A、5.6MPaの引張弾性率、及び459%の破断伸びを有するものであった。
したがって、有利なTg1及び残留アクリル酸ブチルのみならず、コポリマーはまた、高い値の破断伸びを含む良好な引張特性を示した。
【0037】
比較例1:
方法
この比較例において、比較的少ない量の塩化ビニルモノマーが、第1工程中に存在した。
スターラーを備える容量25Lの重合反応器に、水11,008gr、30.95gr/Kgで72.5%の加水分解度を有するポリビニルアルコールの水溶液1812gr、消泡剤(Tego Antifoam KS53)12gr、及び連鎖移動剤(1-ドデカンチオール)3.0grを入れた。
反応器を閉じ、撹拌速度を150rpmに設定したら、真空引きとその後の窒素パージを2サイクル行い、最後に真空引きを行った。その後、アクリル酸ブチル1788gr、続いて塩化ビニル832grを充填し、撹拌速度を300rpmに設定した。
ダブルジャケットで、重合温度を70℃に上昇した。重合温度(70℃)において、濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液7.5grを投入し、重合を開始した。CR>5%で、濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液7.5grを投入し(2回目の投入)、CR>10%で、濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液7.5grを投入した(3回目の投入)。アクリル酸ブチルの転化率が80%超の値に到達するまで、反応を、これらの条件下で維持した。その後、10gr/Kgの禁止剤(KI)の水溶液22grを添加し、重合温度を45℃未満の温度に冷却した。
次に、塩化ビニル5490gr、及び濃度300gr/Kgの、アジピン酸ジオクチル中のジエチルパーオキシジカーボネート溶液15grを充填した。塩化ビニルの総転化率が49.7%に到達するまで、反応を、これらの条件下で維持した。その後、245gr/Kgの禁止剤(アンモニア-NH3)の水溶液15gr及び消泡剤(Tego Antifoam KS53)12grを重合媒体に添加した。未反応の塩化ビニルを、反応器を減圧することにより除いた。次に、懸濁液をろ過により分離し、続いて、混合物を流動床乾燥器内で60℃の空気で乾燥させ、コポリマー生成物を提供した。
【0038】
コポリマー生成物
1H NMRにより測定したコポリマー中のアクリル酸ブチルの含有量は、36.3質量%であった。
平均粒度は、145ミクロンであり、揮発分は、0.3質量%未満であった。
K値は、73.7であり、熱安定性は、18.6分の誘導時間及び34.2分の安定時間であった。試料は、2つのTgピークを示し、Tg1は-15.5℃であり、第2のピークは84.3℃であった。
3phrのCa/Zn安定剤と一緒にし、続いて120℃において2本ロールミルで均質化し、130℃においてプレスした(実施例1~3で使用したような高い温度において処理するのは不可能であった)コポリマーの試料について、引張特性を測定した。
組成物は、95のショア硬度A、125MPaの引張弾性率、及び79%の破断伸びを有するものであった。
引張特性、特にショア硬度A、引張弾性率及び破断伸びは、本発明の方法により製造された生成物と比べて、比較的劣ることが分かった。例えば、この生成物は、実施例1と同様のアクリル酸ブチルの含有量を有したが、ショア硬度A及び引張弾性率が非常に高く、破断伸びが非常に低かった。
したがって、この例は、第1工程においてモノマーBと組み合わせる塩化ビニルの量を最小限にすることが、これらの性質に対して重要であることを示している。
【国際調査報告】