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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20231116BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20231116BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231116BHJP
   C08G 69/02 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K7/02
C08K3/013
C08G69/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528743
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2021080555
(87)【国際公開番号】W WO2022101075
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/114,117
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21150952.6
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マキロイ, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント, マシュー
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB01
4J001EB14
4J001EB37
4J001EC08
4J001EC14
4J001EE16D
4J001EE28E
4J001GA12
4J001GB02
4J001GB03
4J001JA01
4J001JA04
4J001JB07
4J001JB23
4J001JB31
4J002CL031
4J002CL032
4J002DA016
4J002DA086
4J002DA096
4J002DA116
4J002DE067
4J002DE227
4J002DE237
4J002DG027
4J002DG047
4J002DH047
4J002DJ007
4J002DJ016
4J002DJ047
4J002DK006
4J002DL006
4J002FA042
4J002FA046
4J002FD012
4J002FD016
4J002FD200
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
ポリアミド組成物が提供され、これは、高いガラス転移温度(Tg)を特徴とする少なくとも1種のポリアミドと、少なくとも1種の繊維充填剤と、少なくとも1種の添加剤とを含有する。この組成物は、物品の製造及び静電塗装用途において使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- DSCで測定される少なくとも130℃のガラス転移温度(T)を有する少なくとも1種のポリアミドポリマー[ポリマー(PA)]を組成物の総重量を基準として20~85重量%;
- 少なくとも1種の繊維状充填剤[充填剤(F)]を組成物の総重量を基準として10~75重量%;
- アルカリ土類金属の酸化物;アルカリ土類金属の炭酸塩;アルカリ土類金属のリン酸塩;アルカリ土類金属の硫酸塩;アルカリ金属の硫酸塩;アルカリ金属の炭酸塩;周期表のIIB族金属の酸化物;周期表のIIB族金属の硫化物;及び無機充填剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤[添加剤(A)]を組成物の総重量を基準として0.01重量%~5重量%未満;
含有する組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
前記ポリマー(PA)の前記繰り返し単位の少なくとも50モル%が、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン及び/又は芳香族ジアミンから好ましくは選択される少なくとも1種のジアミンを含むジアミン成分と;脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、及び/又は芳香族ジカルボン酸から好ましくは選択される少なくとも1種のジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と;を含む反応混合物[反応混合物(RM)]の重縮合から形成される、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
- 前記脂肪族ジアミンが、1,3-ジアミン-プロパン(「3」)、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン(「D」)、1,6-ジアミノヘキサン(「HMDA」又は「6」)、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7-テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、2,5-ジモノテトラヒドロフラン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン、及びこれらの混合物からなる群から選択され;
- 前記脂環式ジアミンが、イソホロンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス-p-アミノシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,3-BAC」)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,4-BAC」)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(「MACM」)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(「PACM」)、及びこれらの混合物からなる群から選択され;
- 前記芳香族ジアミンが、m-フェニレンジアミン(「MPD」)、p-フェニレンジアミン(「PPD」)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(「3,4’-ODA」)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(「4,4’-ODA」)、p-キシリレンジアミン(「PXDA」)、及びm-キシリレンジアミン(「MXDA」)からなる群から選択され;
- 前記脂環式ジカルボン酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、2,2ジメチルグルタル酸、アジピン酸(「6」)、2,4,4トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸(「10」)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸(「12」)、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸からなる群から選択され;
- 前記脂環式ジカルボン酸が1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(「CHDA」)であり;
- 前記芳香族ジカルボン酸が、イソフタル酸(「IA」)、テレフタル酸(「TA」)、ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)、4,4’-ビ安息香酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)-ケトン、4,4’ -ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)-プロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、及びビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼンからなる群から選択される;
請求項2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
前記ポリマー(PA)が、
- 脂肪族、脂環式ジアミン、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのジアミン成分と、
- 脂肪族、脂環式、芳香族ジカルボン酸、及びそれらの混合物から選択される少なくともジカルボン酸成分と、
を含む反応混合物[反応混合物(RM)]の重縮合から形成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項5】
前記ポリマー(PA)が、
- 1,3-ジアミノプロパン(「3」)、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン(「D」)、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、3-メチルヘキサメチレンジアミン、1,6-ジアミノヘキサン(「HMDA」又は「6」)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,3-BAC」)、1,4-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン(「1,4-BAC」)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(「MACM」)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(「PACM」)、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのジアミン成分と;
、テレフタル酸(「TA」又は「T」)、イソフタル酸(「IA」又は「I」)、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(「CHDA」)、ドデカン二酸(「I2」)、セバシン酸、ウンデカン二酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのジカルボン酸成分と;
を含む反応混合物[反応混合物(RM)]の重縮合から形成される、請求項4に記載の組成物(C)。
【請求項6】
前記ポリマー(PA)が、
- 1,3-ジアミノプロパン(「3」)、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン(「HMDA」又は「6」)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(「MACM」)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(「PACM」)、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのジアミン成分と;
、- テレフタル酸(「TA」又は「T」)、イソフタル酸(「IA」又は「I」)、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(「CHDA」)、ドデカン二酸(「12」)、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのジカルボン酸成分と;
を含む反応混合物[反応混合物(RM)]の重縮合から形成される、請求項5に記載の組成物(C)。
【請求項7】
前記ポリマー(PA)が、46/6T;[6/3]/T;MACM/12;[PACM/MACM]/[I/12];6T/DT;[4,6,D]/[T/I];6T/6I;[6/BAC]/[T/CHDA]からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物(C)。
【請求項8】
前記ポリマー(PA)が、
- 1,000g/モル~40,000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)(ポリスチレン標準を用いるASTM D5296を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定);及び/又は
- 少なくとも130℃、好ましくは少なくとも135℃、且つ190℃以下のガラス転移温度(T)(ASTM D3418に従って測定);及び/又は
- 360℃以下、より好ましくは350℃以下、且つ少なくとも280℃の融点(T)(ASTM D3418に従って示差走査熱量計(DSC)を使用して決定);
を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項9】
前記添加剤(A)が、アルカリ土類金属の酸化物(最も好ましくはCaO)、アルカリ土類金属の炭酸塩(最も好ましくはCaCO)、アルカリ土類金属のリン酸塩(最も好ましくはCa(PO);アルカリ土類金属の硫酸塩;アルカリ金属の硫酸塩(最も好ましくはNaSO)、アルカリ金属の炭酸塩(最も好ましくはNaCO);IIB族金属の酸化物(最も好ましくはZnO);IIB族金属の硫化物(最も好ましくはZnS);及び無機充填剤(最も好ましくはウォラストナイト、タルク、及びゼオライト)からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項10】
前記添加剤(A)が、前記組成物(C)の総重量を基準として0.05重量%~3重量%未満、より好ましくは0.10重量%~2重量%未満、更に好ましくは1重量%未満の量である、請求項9に記載の組成物(C)。
【請求項11】
前記充填剤(F)が、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維、及びこれらの混合物のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項12】
前記充填剤(F)が、ガラス繊維、炭素繊維、又はそれらの混合物から選択される、請求項11に記載の組成物(C)。
【請求項13】
前記充填剤(F)が、前記組成物(C)の総重量を基準として好ましくは25~75重量%、より好ましくは35~65重量%の量でガラス繊維を含む、請求項12に記載の組成物(C)。
【請求項14】
前記充填剤(F)が、
- 前記組成物(C)の総重量を基準として2~55重量%の量の炭素繊維;又は
- 前記組成物(C)の総重量を基準として7~40重量%の量の、炭素繊維とガラス繊維との混合物であって、前記ガラス繊維に対する前記炭素繊維の重量比が少なくとも0.05且つ4以下である混合物;
を含有する、請求項12に記載の組成物(C)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物(C)を含む物品。
【請求項16】
流動粉体浸漬塗装法、スプレー法、及び電着塗装法によって行われる、請求項15に記載の物品の塗装方法。
【請求項17】
- DSCで測定される少なくとも130℃、より好ましくは少なくとも150℃のガラス転移温度(T)を有する少なくとも1種のポリアミドポリマー[ポリマー(PA)]を前記組成物の総重量を基準として20~85重量%;
- 炭素繊維又は炭素繊維とガラス繊維との混合物から選択される少なくとも1種の繊維状充填剤[充填剤(F)]を前記組成物の総重量を基準として10~75重量%;
- アルカリ土類金属の酸化物;アルカリ土類金属の炭酸塩;アルカリ土類金属のリン酸塩;アルカリ土類金属の硫酸塩;アルカリ金属の硫酸塩;アルカリ金属の炭酸塩;周期表のIIB族金属の酸化物;周期表のIIB族金属の硫化物;及び無機充填剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤[添加剤(A)]を前記組成物の総重量を基準として0.01重量%~5重量%未満;
含有する組成物[組成物(C1)]を含む物品。
【請求項18】
前記方法が静電塗装によって行われる、請求項17に記載の物品の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月16日出願の米国仮特許出願第63/114117号及び2021年1月11日出願の欧州特許出願公開第21150952.6号に基づく優先権を主張するものであり、これらのそれぞれは、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
高いガラス転移温度(Tg)を特徴とする少なくとも1種のポリアミドと、少なくとも1種の繊維状充填剤と、少なくとも1種の添加剤とを含有するポリアミド組成物であって、静電塗装用途に適した物品を製造するために使用することができる組成物が提供される。
【背景技術】
【0003】
新車の塗装仕上げは、多くの場合、車両の唯一の最も目立つ視覚的特徴とみなされる。仕上がりが滑らかであり、均一であり、且つ魅力的である場合、車両を見る人は、車両の品質に関して肯定的な影響を受けやすい。逆に、塗装仕上げに欠陥が含まれる場合、車両を見る人は、車両全般の品質が低いと考えやすい。
【0004】
したがって、車両製造業者及び塗料供給業者は、車両の仕上げの品質及び耐久性を改善し、車両への塗料の塗布に関連する欠陥を排除するために、強化された塗料塗布プロセスを生み出すために莫大な資金を費やしてきた。
【0005】
これらの努力がなされたにもかかわらず、優れた機械的特性と高いガラス転移温度(Tg)を維持しながらも、基材と静電塗装された塗料のベースコートとの間で優れた接着性を示す組成物(「Eコートプロセス」とも呼ばれる)が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
優れた機械的特性を示しながらもEコートプロセスに適した、高いガラス転移温度を有するポリアミドポリマーを含有する組成物が提供される。
【0007】
第1態様では、本発明は、
- DSCで測定される少なくとも130℃、より好ましくは少なくとも150℃のガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1種のポリアミドポリマー[ポリマー(PA)]を組成物の総重量を基準として20~85重量%;
- 少なくとも1種の繊維状充填剤[充填剤(F)]を組成物の総重量を基準として10~75重量%;及び
- アルカリ土類金属の酸化物;アルカリ土類金属の炭酸塩;アルカリ土類金属のリン酸塩;アルカリ土類金属の硫酸塩;アルカリ金属の硫酸塩;アルカリ金属の炭酸塩;周期表のIIB族金属の酸化物;周期表のIIB族金属の硫化物;及び無機充填剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤[添加剤(A)]を組成物の総重量を基準として0.01重量%~5重量%未満;
含有する組成物[組成物(C)]に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましくは、ポリマー(PA)は、少なくとも1つのアミド結合(-NH-C(=O)-)を有する繰り返し単位を少なくとも50モル%有する。
【0009】
本明細書において、繰り返し単位のモル%は、別段の明記がない限り、示されたポリマー(例えばポリマー(PA))中の繰り返し単位の総モル数に対するものである。
【0010】
いくつかの実施形態では、ポリアミドは、少なくとも1つのアミド結合を有する繰り返し単位を、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は少なくとも99.5モル%有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、ポリアミドポリマー(PA)は、ジアミン成分とジカルボン酸成分とを含む反応混合物[反応混合物(RM)]の重縮合から形成される。ジアミン成分及びジカルボン酸成分は、反応混合物中にそれぞれジアミン及びジカルボン酸をそれぞれ含む。いくつかのそのような実施形態では、少なくとも50モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は少なくとも99モル%のポリアミドポリマー(PA)の繰り返し単位が、反応混合物(RM)の重縮合から形成される。
【0012】
ジアミン成分中の各ジアミンは別個のものであり、独立して、脂肪族又は芳香族のいずれかであってよく、下記式で表される:
N-R-NH
(式中、
- Rは、結合、並びに1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ、及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC~C15アルキル及びC~C30アリールからなる群から選択され;
- Mは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg、及びCaからなる群から選択される)。
【0013】
好ましくは、前記脂肪族ジアミンは、ジアミン-プロパン(「3」)、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン(「D」)、1,6-ジアミノヘキサン(「HMDA」)、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7-テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、2,5-ジモノテトラヒドロフラン、及びN,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミンからなる群から選択される。
【0014】
脂肪族ジアミンには、脂環式ジアミンも含まれる。
【0015】
好ましい脂環式ジアミンは、イソホロンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス-p-アミノシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,3-BAC」)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,4-BAC」)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(「MACM」)、及びビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(「PACM」)からなる群から選択される。
【0016】
好ましくは、脂肪族ジアミンは、1,3-ジアミノプロパン(「3」)、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、HMDA、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン(「D」)、1,3-BAC、1,4-BAC、PACM、MACM、及びイソホロンジアミンからなる群から選択される。
【0017】
好ましい芳香族ジアミンは、m-フェニレンジアミン(「MPD」)、p-フェニレンジアミン(「PPD」)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(「3,4’-ODA」)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(「4,4’-ODA」)、p-キシリレンジアミン(「PXDA」)、及びm-キシリレンジアミン(「MXDA」)からなる群から選択される。
【0018】
より好ましくは、芳香族ジアミンは、PXDA及びMXDAからなる群から選択される。
【0019】
ジカルボン酸成分中の各ジカルボン酸は、別個のものであり、独立して、脂肪族又は芳香族のいずれかであってよく、以下の式によって表される:
【化1】
(式中、
- Rは、1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ、及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC~C20アルキル、フェニル、インダニル、及びナフチルからなる群から選択され;
- Mは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg、及びCaからなる群から独立して選択される)。
【0020】
好ましい脂肪族ジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、2,2ジメチルグルタル酸、アジピン酸(「6」)、2,4,4トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸(「12」)、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸からなる群から選択される。
【0021】
脂肪族ジカルボン酸には、脂環式ジカルボン酸も含まれる。
【0022】
好ましい脂環式ジカルボン酸は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(「CHDA」)、アジピン酸(「6」)、及びセバシン酸(「10」)からなる群から選択される。より好ましくは、脂肪族ジカルボン酸はCHDAである。
【0023】
好ましい芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸(「IA」)、テレフタル酸(「TA」)、ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)(例えばナフタレン-2,6-ジカルボン酸(「2,6-NDA」))、4,4’-ビ安息香酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)-ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)-プロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、及びビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼンからなる群から選択される。
【0024】
より好ましくは、芳香族ジカルボン酸は、IA、TA及び2,6-NDAからなる群から選択される。
【0025】
反応混合物(RM)の重縮合によって形成される各繰り返し単位は別個のものであり、以下の式によって独立して表される:
【化2】
(式中、R1、R2、及びMは上で定義した通りである)。
【0026】
当業者であれば、各繰り返し単位がジアミンの脱水素化及びジカルボン酸の脱ヒドロキシル化によって形成されることを認識するであろう。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記ポリマー(PA)は、
- 脂肪族、脂環式ジアミン、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのジアミン成分と、
- 脂肪族、脂環式、芳香族ジカルボン酸、及びそれらの混合物から選択される少なくともジカルボン酸成分と、
の縮合生成物である。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記ポリマー(PA)は、
- 1,3-ジアミノプロパン(「3」)、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン(「D」)、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、3-メチルヘキサメチレンジアミン、1,6-ジアミノヘキサン(「HMDA」又は「6」)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(「1,3-BAC」)、1,4-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン(「1,4-BAC」)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(「MACM」)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(「PACM」)、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのジアミン成分と;
-テレフタル酸(「TA」)、イソフタル酸(「IA」)、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(「CHDA」)、ドデカン二酸(「12」)、セバシン酸(「10」)、ウンデカン二酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのジカルボン酸成分と;
の縮合生成物である。
【0029】
いくつかの実施形態では、ポリマー(PA)は、
- 1,3-ジアミノプロパン(「3」)、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン(「HMDA」又は「6」)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(「MACM」)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(「PACM」)、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のジアミンを含むジアミン成分と;
- テレフタル酸(「TA」又は「T」)、イソフタル酸(「IA」又は「I」)、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(「CHDA」)、ドデカン二酸(「12」)、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と;
を含む反応混合物(RM)の重縮合から形成される。
【0030】
いくつかの実施形態では、ポリマー(PA)は、46/6T;[6/3]/T;MACM/12;[PACM/MACM]/[I/12];6T/DT;[4,6,D]/[T/I];6T/6I;[6/BAC]/[T/CHDA]からなる群から選択される。
【0031】
好ましくは、ポリマー(PA)は、1,000g/モル~40,000g/モル、例えば2,000g/モル~35,000g/モル、又は4,000~30,000g/モルの範囲の数平均分子量Mnを有し得る。数平均分子量Mnは、ポリスチレン標準物質を用いて、ASTM D5296を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0032】
好ましくは、前記ポリマー(PA)は、少なくとも130℃、好ましくは少なくとも135℃のガラス転移温度(T)を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー(PA)は、190℃以下、180℃以下、又は170℃以下のTを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー(PA)は、135℃~190℃、140℃~190℃、145℃~185℃、150℃~185℃、150℃~180℃、又は150℃~170℃のTを有する。Tは、ASTM D3418に従って測定することができる。
【0033】
好ましくは、前記ポリマー(PA)は、ASTM D3418に従って示差走査熱量計(DSC)を用いて決定される360℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは340℃以下の融点(T)を有する。
【0034】
好ましくは、前記ポリマー(PA)は、ASTM D3418に準拠して示差走査熱量計(DSC)を用いて決定される少なくとも280℃、より好ましくは少なくとも295℃、更に好ましくは少なくとも300℃の融点(T)を有する。
【0035】
好ましくは、組成物(C)は、前記ポリマー(PA)を、組成物(C)の総重量基準で25~80重量%、より好ましくは30~75重量%、更に好ましくは35~70重量%の量で含有する。
【0036】
組成物(C)は、組成物の総重量を基準として10~75重量%の少なくとも1種の繊維状充填剤[充填剤(F)]を更に含む。
【0037】
本明細書及び以下の特許請求の範囲内で使用される「繊維状充填剤[充填剤(F)]」は、長さ、幅、及び厚さを有する材料であり、平均長さは幅及び厚さの両方よりかなり大きい。好ましくは、このような材料は、少なくとも5の、長さと、幅及び厚さの最少のものとの間の平均比として定義されるアスペクト比を有する。
【0038】
好ましくは、前記充填剤(F)は、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、及びスチール繊維のうちの少なくとも1つから選択される。ガラス繊維及び炭素繊維が最も好ましい。
【0039】
繊維は、ウィスカー、短繊維、連続繊維、シート、プライ(ply)及びこれらの組み合わせの形態であり得る。
【0040】
更に、連続繊維は、一方向、多次元、不織、織り、編み、ステッチ、巻き及び編組の構成並びにスワールマット、フェルトマット及びチョップドマットの構造のいずれかを採用することができる。繊維トウは、クロストウステッチ、緯糸挿入編ステッチ、又はサイジングなどの少量の樹脂によって、そのような構成で所定の位置に固定することができる。
【0041】
本明細書で使用される「連続繊維」は、10mm超の長さを有する繊維である。
【0042】
一実施形態によれば、充填剤(F)は炭素繊維である。
【0043】
本発明に有用な炭素繊維は、例えばレーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)、芳香族ポリアミド又はフェノール樹脂などの異なるポリマー前駆体の熱処理及び熱分解によって得ることができる。適切な炭素繊維は、ピッチ系材料から得ることもできる。当業者に公知の様々な炭素繊維が商業的供給源から入手可能である。
【0044】
いくつかの実施形態において、炭素繊維は標準弾性率炭素繊維又は中間弾性率炭素繊維である。標準弾性率炭素繊維は、227GPa~235GPaの引張弾性率を有する。中間弾性率炭素繊維は、282GPA~289GPaの引張弾性率を有する。
【0045】
炭素繊維は未使用炭素繊維又は再生(使用済み又はポスト工業)炭素繊維(熱分解されるか又は過大の)であってよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、炭素繊維は、少なくとも1mm、少なくとも3mm、少なくとも4mm、少なくとも5mm、又は少なくとも6mmの平均長さを有する。いくつかの実施形態では、ガラス繊維は10mm以下の平均長さを有する。いくつかの実施形態では、炭素繊維は、1mm~10mm、3mm~10mm、4mm~10mm、5mm~10mm、又は6mm超から10mmまでの平均長さを有する。
【0047】
別の実施形態によれば、充填剤(F)はガラス繊維である。
【0048】
ガラス繊維は、円形断面、又は卵形、楕円形、若しくは長方形を含む非円形断面(いわゆる「扁平ガラス繊維」)を有し得る。
【0049】
有利には、本発明の組成物(C)で使用されるガラス繊維は扁平ガラス繊維である。
【0050】
いくつかの実施形態において、扁平ガラス繊維は、少なくとも2、好ましくは少なくとも2.2、より好ましくは少なくとも2.4、より一層好ましくは少なくとも3のアスペクト比を有する。それに加えて又はその代わりに、一部の実施形態においては、ガラス繊維のアスペクト比は、多くとも8、好ましくは多くとも6、より好ましくは多くとも4である。
【0051】
アスペクト比は、ガラス繊維の断面最長径対同じ断面最短径の比として定義される。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態では、扁平ガラス繊維は、2~6、好ましくは、2.2~4のアスペクト比を有する。
【0053】
ガラス繊維は、連続繊維又はチョップドガラス繊維として添加され得る。
【0054】
ガラス繊維は、通常、5μm~20μm、好ましくは5μm~15μm、より好ましくは7μm~12μmの相当直径を有する。
【0055】
A、C、D、E、M、ECR、S、R、Tガラス繊維などの全てのガラス繊維のタイプ(Additives for Plastics Handbook,2nd ed,John Murphyの5.2.3章、第43~48頁に説明されている)、又はそれらの任意の混合物又はそれらの混合物を用いることができる。E-ガラス繊維及びS-ガラス繊維が最も好ましい。
【0056】
好ましくは、組成物(C)は、組成物(C)の総重量を基準として10~70重量%、より好ましくは20~65重量%の量で前記充填剤(F)を含む。
【0057】
好ましい実施形態によれば、充填剤(F)が炭素繊維から選択される場合、組成物(C)中の充填剤(F)の量は、組成物(C)の総重量を基準として2~55重量%、より好ましくは5~50重量%、更に好ましくは8~45重量%である。
【0058】
好ましい実施形態によれば、充填剤(F)がガラス繊維から選択される場合、組成物(C)中の充填剤(F)の量は、組成物(C)の総重量を基準として25~75重量%、より好ましくは35~65重量%である。
【0059】
別の好ましい実施形態によれば、充填剤(F)は、炭素繊維とガラス繊維との混合物を含み、より好ましくはそれからなる。
【0060】
この実施形態によれば、組成物(C)中の充填剤(F)の総量は、好ましくは組成物(C)の総重量を基準として7~40重量%である。
【0061】
好ましくは、ガラス繊維に対する炭素繊維の重量比(組成物(C)中の炭素繊維の重量/組成物(C)中のガラス繊維の重量)は、少なくとも0.05、少なくとも0.15、少なくとも0.2、少なくとも0.5、少なくとも0.75、又は少なくとも1である。組成物(C)が炭素繊維及びガラス繊維を含むいくつかの実施形態では、ガラス繊維に対する炭素繊維の重量比は、4以下、3以下、2以下、又は1以下である。組成物(C)が炭素繊維及びガラス繊維を含むいくつかの実施形態では、ガラス繊維に対する炭素繊維の重量比は、0.05~4、0.05~3、0.05~2、0.05~1、0.15~4、0.15~3、0.15~2、0.15~1、0.2~5、0.2~4、0.2~3、0.2~1、0.5~4、0.5~3、0.5~2、0.5~1、1~4、1~3、又は1~2である。
【0062】
組成物(C)は、組成物の総重量を基準として0.01重量%~5重量%未満の少なくとも1種の添加剤(A)を更に含む。
【0063】
好ましくは、前記化合物(A)は、アルカリ土類金属の酸化物(最も好ましくはCaO)、アルカリ土類金属の炭酸塩(最も好ましくはCaCO)、アルカリ土類金属のリン酸塩(最も好ましくはCa(PO);アルカリ土類金属の硫酸塩;アルカリ金属の硫酸塩(最も好ましくはNaSO)、アルカリ金属の炭酸塩(最も好ましくはNaCO);IIB族金属の酸化物(最も好ましくはZnO);IIB族金属の硫化物(最も好ましくはZnS);無機充填剤(最も好ましくはウォラストナイト、タルク、及びゼオライト)からなる群から選択される。
【0064】
好ましくは、組成物(C)は、前記組成物(C)の総重量を基準として好ましくは0.05重量%~3重量%未満、より好ましくは0.10重量%~2重量%未満、更に好ましくは1重量%未満の量で前記添加剤(A)を含む。
【0065】
組成物(C)は、唯一の添加剤(A)又は前記添加剤(A)の混合物を含み得る。組成物(C)が、上で詳述した添加剤(A)を1種のみ含む実施形態がより好ましい。
【0066】
任意選択的に、組成物(C)は、顔料、染料、強靭化剤、紫外線安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、加工助剤、造核剤、潤滑剤、難燃剤、煙抑制剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、及びカーボンブラックなどの追加の成分を含む。
【0067】
上述した成分のうちの1種以上が存在する場合、これらの総濃度は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満である。
【0068】
組成物は、有利には、前記少なくとも1種のポリマー(PA)を前記少なくとも1種の充填剤(F)及び前記少なくとも1種の添加剤(A)と溶融ブレンドすることによって調製される。
【0069】
好ましくは、ポリマー(PA)と前記少なくとも1種の充填剤(F)と少なくとも添加剤(A)との混合は、ドライブレンド及び/又は溶融混錬によって行われる。より好ましくは、ポリマー(PA)と前記少なくとも1種の充填剤(F)と少なくとも添加剤(A)との混合は、とりわけ連続デバイス又はバッチ式デバイスにおいて、溶融混錬によって行われる。
【0070】
好ましくは、成分は、一軸押出機若しくは二軸押出機、撹拌機、一軸若しくは二軸ニーダー、又はバンバリーミキサー等の溶融ミキサーに供給され、添加するステップは、全ての成分の同時添加又はバッチ式の段階的添加であってよい。
【0071】
原料がバッチ式で徐々に添加される場合、ポリマー系原料及び/又は非ポリマー系原料の一部がまず添加され、次いで、十分に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー系原料及び非ポリマー系原料と溶融混合される。
【0072】
充填剤(F)又は添加剤(A)が長い物理的形状(例えば長繊維及び連続繊維)を示す場合には、補強された組成物を調製するために延伸押出成形又は引抜成形が用いられ得る。
【0073】
組成物(C)は、物品の製造に有利に使用される。
【0074】
好ましくは、前記物品は、組成物(C)に対して熱可塑性樹脂に適したプロセス、例えば押出成形、射出成形、ブロー成形、回転成形、又は圧縮成形を行うことによって形成される。
【0075】
上で定義した組成物(C)を含む物品も提供される。
【0076】
充填剤(F)が炭素繊維又は炭素繊維とガラス繊維との混合物から選択される組成物(C)は、自動車用途で使用するための塗装された物品など、静電塗装に適した物品を製造するために有利に使用される。
【0077】
簡潔にするために明記しておくと、前記充填剤(F)が炭素繊維からなるか、又は炭素繊維とガラス繊維との混合物を含む組成物(C)は、本明細書では以後「組成物(C1)」と呼ばれる。
【0078】
組成物[組成物(C1)]を含む物品が提供され、これは、
- DSCで測定される少なくとも130℃、より好ましくは少なくとも150℃のガラス転移温度(T)を有する少なくとも1種のポリアミドポリマー[ポリマー(PA)]を組成物の総重量を基準として20~85重量%;
- 炭素繊維又は炭素繊維とガラス繊維との混合物から選択される少なくとも1種の繊維状充填剤[充填剤(F)]を組成物の総重量を基準として10~75重量%;
- アルカリ土類金属の酸化物;アルカリ土類金属の炭酸塩;アルカリ土類金属のリン酸塩;アルカリ土類金属の硫酸塩;アルカリ金属の硫酸塩;アルカリ金属の炭酸塩;周期表のIIB族金属の酸化物;周期表のIIB族金属の硫化物;及び無機充填剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤[添加剤(A)]を組成物の総重量を基準として0.01重量%~5重量%未満;
含有する。
【0079】
組成物(C1)中の炭素繊維及び/又はガラス繊維は、組成物(C)について上で定義した特性を有しており、組成物(C)について上記定義した量で使用することができる。
【0080】
また、上で定義した組成物(C1)を用いた物品の塗装方法であって、静電塗装、流動粉体浸漬塗装法、スプレー法、及び電着塗装法により塗装する方法も提供される。
【0081】
好ましくは、基板を塗装するための前記方法は、静電塗装によって行われる。
【0082】
本発明は、以下の実験の部に含有される実施例によってより詳細に本明細書で以下に例示されるが;実施例は例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例
【0083】
実験の部
材料及び方法
ポリアミド1:PA6、T/1、3-BAC、T/6、CHDA/1,3-BAC、CHDA(Tg=165℃及びTm=330℃)、コモノマーは以下の通りである:
- ヘキサメチレンジアミン(70重量%、Ascend Performance Materialsより)
- 1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(Mitsubishi Gas Chemical Companyより)
- テレフタル酸(Flint Hills Resourcesより)
- 1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(Eastman Chemical Companyより)
ポリアミド2:Radipol(登録商標)S24 PA6はRadici Groupから入手した
造核剤:Mistron(登録商標)Vapor R(タルク)はImerys Performance Materialsから入手した
充填剤1:Tenax(登録商標)-JHT C493(炭素繊維)はTeijinから入手した
充填剤2:Chop Vantage(登録商標)HP3610(直径10μmの円形E-ガラス繊維)は、Nippon Electric Glassから入手した
強靭化剤:Royaltuf(商標)498無水マレイン酸グラフトEPDMは、Addivantから入手した。
変性剤:VitaCal O(酸化カルシウム)は、Mississippi Limeから入手した
添加剤パッケージ1:顔料(カーボンブラックCPTA-25759)及び熱安定剤(HSペレットブレンド)を含有-カーボンブラックとポリアミドとのCPTA-35759マスターバッチは、Clariantから入手した;Ajay North America製のポリフタルアミド用HSペレットブレンド熱安定剤
添加剤パッケージ2:オレフィン用熱安定剤(Naugard(商標)445芳香族アミン)を含有、Addivantから入手した。
【0084】
DSC(示差走査熱量測定)
以下を使用するDSCを用いて組成物のガラス転移温度(Tg)を測定した:
- 装置:TA Instruments DSC Q20-2
- 純度99.998%の窒素のキャリアガス1
- 流量:50ml/分
- 方法:ASTM D3418-15
- 方法の記録:(1:30.00℃で平衡化(2:20.00℃/分で350.00℃まで昇温)(3:1.00分間等温(4:サイクル1の終了をマーク(5:20.00℃/分で0.00℃まで昇温(6:サイクル2の終了をマーク(7:20.00℃/分で360.00℃まで昇温)(8:サイクル3の終了をマーク(9:方法の終了。
【0085】
溶融安定性
溶融安定性は、LCR-7000キャピラリーレオメーターを使用して実行した。材料をキャピラリーレオメーターにロードし、ごくわずかなせん断でバレル内にとどめた。1200s-1における溶融粘度を、バレル時間5分及び10分で測定した。溶融安定性は、5分後の粘度と10分後の粘度の比(T5/T10)として与えられる。
【0086】
塗装性試験
試験は、上に厚さ0.8mmの塗装膜を有するパネルで3回行った。
スクライビングツールは、2mm又は3mmのブレード間隔のテンプレートを使用するOlfa(登録商標)ナイフであった。
接着性の評価スケールは以下の通りである:
0→カットの縁は完全に滑らかであり、格子の正方形のいずれも切り離されていない。
1→カットの交点におけるコーティングの小さなフレークの剥離。最大5%のクロスカット領域が影響を受けた。
2→コーティングがエッジに沿って、及び/又はカットの交点で剥がれた。最小5%、最大15%のクロスカット領域が影響を受けた。
3→カットの縁に沿ってコーティングが部分的に又は全体的に大きなリボン状に剥がれた、及び/又は正方形の様々な部分で部分的に又は全体的に剥がれた。最小15%、最大35%のクロスカット領域が影響を受けた。
4→大きなリボンのカットの程度に沿ってコーティングが剥がれた、及び/又は一部の正方形が部分的又は全体的に剥がれた。最小35%、最大65%のクロスカット領域が影響を受けた。
5→65%を超えるクロスカット領域が影響を受けた。
「合格」のためには、初期接着力は0と評価される必要があった。
水浸漬(60±1℃の脱イオン水浸漬を24時間)後、0を「合格」、1を「かろうじて合格」、2以上を「不合格」とした。
【0087】
ポリアミド1の合成
ポリアミド1は、圧力制御バルブが取り付けられた蒸留ラインを備えたオートクレーブ反応器内で調製した。反応器に、498gの70%ヘキサメチレンジアミン、165gの1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、635gのテレフタル酸、20gの1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、355gの脱イオン水、7.2gの氷酢酸、及び0.32gのリン酸を入れた。反応器を密封し、窒素でパージし、260℃に加熱した。内圧を120psigに保つために、発生した水蒸気をゆっくりと放出した。温度を335℃に上げた。反応混合物を335℃に60分間保ちながら、反応器圧力を大気圧まで低下させた。ポリマーを反応器から取り出し、化合物配合物の調製において使用した。
【0088】
実施例(A):組成物の調製及び試験
以下の表1に詳述されている組成物を、Coperian ZSK-26TSE同方向混錬押出機を使用して、記載されている成分を所定の量で混合することによって調製した。
【0089】
【表1】
【0090】
上記組成物の熱的特性及び塗装性を、上記方法に従って測定した。結果は下の表2にまとめられている。
【0091】
【表2】
【0092】
表2の結果は、本発明の組成物(E-1)が改質剤を含まない組成物(対照、CE-1及びCE-3)と比較して大幅に改善された塗装性を有しており、それと同時に高いTgを示すことを明確に示している。
【0093】
24時間水に浸漬した後の塗装性試験に合格した組成物の機械的特性を評価した。結果は下の表3にまとめられている。
【0094】
【表3】
【0095】
表3の結果は、本発明の組成物(E-1)が優れた機械的特性を維持したことを明確に示している。多量の強靭化剤2を含む比較組成物(CE-4)は、許容可能な塗装性を示したものの、機械的特性が悪影響を受けた。
【0096】
実施例(B):組成物の調製及び試験
以下の表4に詳述されている組成物を、Coperian ZSK-26TSE同方向混錬押出機を使用して、記載されている成分を所定の量で混合することによって調製した。
【0097】
【表4】
【0098】
上の組成物の機械的特性を評価した。結果は下の表5にまとめられている。
【0099】
【表5】
【0100】
表5の結果は、本発明の組成物(E-2)が対照組成物と比較して優れた機械的特性のバランスを維持していたことを明確に示している。
【0101】
参照により本明細書中に組み込まれている特許、特許出願、及び公開資料の開示が、ある用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先する。
【0102】
本明細書では、本発明の特定の特徴のみが図示及び説明されているが、当業者は多くの修正及び変更を思い付くであろう。添付の特許請求の範囲は、本発明の趣旨に含まれる全てのそのような修正及び変更を網羅することが意図されていることを理解すべきである。
【国際調査報告】