(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】過酸化水素合成用作動溶液の再生触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20231116BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20231116BHJP
B01J 23/96 20060101ALI20231116BHJP
C01B 15/023 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B01J23/63 M
B01J35/10 301G
B01J23/96 M
C01B15/023 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528754
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 KR2021016340
(87)【国際公開番号】W WO2022103150
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0152644
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514079170
【氏名又は名称】ヒソン カタリスツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、ホ ドン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ドン グン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヒョン ア
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ヨン サン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ジョン ミン
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA10
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA06A
4G169BA06B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC09A
4G169BC12A
4G169BC13A
4G169BC14A
4G169BC16A
4G169BC35A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC66A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BD05A
4G169BD07A
4G169BD12A
4G169BD15A
4G169CB81
4G169DA05
4G169EA04Y
4G169EB18Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC03X
4G169EC06X
4G169EC06Y
4G169EC14X
4G169EC14Y
4G169EC15X
4G169EC15Y
4G169EC21X
4G169EC21Y
4G169EC22Y
4G169EC24
4G169EC29
4G169FB09
4G169FB19
4G169FB30
4G169FB46
4G169FB57
4G169FB63
(57)【要約】
過酸化水素合成用作動溶液の触媒、その製造方法、及び作動溶液の再生方法に関し、詳しくは、過酸化水素製造用作動溶液の再生工程に使用される触媒であってスピネル担体を用いたパラジウム触媒及びその製造方法、並びにこれを活用した作動溶液の再生技術に関する。本発明の触媒は、再生反応又は水添反応において高効率及び高い物理/化学的耐久性を示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素合成用作動溶液の再生触媒であって、担体にパラジウム及び補助金属が担持された形態であり、前記担体はスピネル構造体を含む
ことを特徴とする触媒。
【請求項2】
前記スピネル構造体は、アルミニウム系スピネル構造体であって、MgAl
2O
4、ZnAl
2O
4、CaAl
2O
4、FeAl
2O
4、(Mg,Zn)Al
2O
4、(Mg,Fe)Al
2O
4から選択された
請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記スピネル構造体は、アルミナがさらに含有されているアルミナ-スピネル複合酸化物である
請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記補助金属は、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンジウム、ジルコニウム、チタン、ラジウム、シリコン及びアルミニウムよりなる群から選択された
請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記担体に、塩素、リン、フッ素よりなる群から選択された少なくとも1種のハロゲン成分がさらに含まれている
請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
前記担体の内部において、パラジウムは担体の表面から離隔して環状に存在する
請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
前記担体の内部において、パラジウムは担体の表面から5~10μm離隔して存在する
請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
前記パラジウムは、前記担体に0.005~0.16wt%/m
2の活性密度で存在する
請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
前記補助金属は、前記担体に0.0001~0.002wt%/m
2の密度で均一に存在する
請求項1に記載の触媒。
【請求項10】
前記ハロゲン成分は、前記担体に0.004~0.04wt%/m
2の密度で均一に存在する
請求項5に記載の触媒。
【請求項11】
前記担体は、7~14nmの気孔サイズ、0.2~0.5m
3/gの気孔容積、及び70~200m
2/gの比表面積を有する
請求項1に記載の触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素合成用作動溶液の触媒、その製造方法、作動溶液の再生方法に関し、さらに詳しくは、過酸化水素製造用作動溶液の再生工程に使用される触媒であってスピネル担体を用いたパラジウム触媒及びその製造方法、及びこれを活用した作動溶液の再生技術に関する。本発明の触媒は、再生反応又は水添反応において高効率及び高い物理/化学的耐久性を示す。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素は、半導体、医薬品、化学物質合成などのさまざまな分野で使用される化合物である。過酸化水素は、水素と酸素を用いた直接合成方法、又はアントラキノン類化合物からの連続的な水素添加及び酸化工程を用いたアントラキノン方法によって製造される。アントラキノン方法を用いた過酸化水素の製造技術は、次の通りに説明される。
【0003】
【0004】
アルキルアントラキノン(通常、2-エチル-アントラキノン、EAQという)を適当な有機溶媒に溶解した作動溶液(WS、Working Solution)に水素添加、酸化工程を繰り返し行って過酸化水素を製造する。このような水素添加、酸化工程を繰り返し行うと、副産物としてテトラヒドロアントラキノン(THAQ)などが作動溶液中に蓄積され、触媒内へのコークの沈積による触媒不活性化により過酸化水素の製造及び再生効率が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に、副産物であるテトラヒドロアントラキノン(THAQ)をアントラキノンに再生する工程で用いられるパラジウム系触媒は、担体の酸点制御のためにマグネシウムなどの助触媒を一緒に投入して製造されるが、触媒反応が繰り返されることにより、担体に固定されていた助触媒は徐々に触媒から脱離して再生反応活性が次第に低くなるという問題点があり、触媒耐久性のためには、担体に担持されている金属の付着力が重要になっている。したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、過酸化水素作動溶液の再生反応または過酸化水素製造工程に使用できる耐酸性及び耐久性を有するパラジウム触媒及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、特に触媒酸点と気孔構造が制御された担体を使用し、パラジウム活性層を担体の内部に環状に位置させて活性金属の担体内の密度を高め、補助金属の導入によりパラジウム粒子の分散度を向上させ、これにより反応活性が向上する結果を得た。また、本発明の触媒は、活性金属が担体の内部に位置しており、反応中の摩耗による活性金属の損失を抑制させることで触媒の耐久性が向上する。
【0007】
したがって、上記課題は、スピネル構造の担体を適用した耐酸性及び耐熱性のパラジウム触媒によって解決できる。また、パラジウム分散性を高めるために、スピネル構造の担体に担持される補助金属が適用されたパラジウム触媒によって、上記課題は解決できる。また、担体の内部で環状構造のパラジウム触媒によって耐久性/活性安定性が改善できる。
【0008】
本発明は、スピネル構造体の担体にパラジウム及び補助金属が担持された形態の過酸化水素合成用作動溶液の再生または過酸化水素合成触媒を提供する。非限定的に、前記スピネル構造体は、アルミニウム系スピネル構造体であって、MgAl2O4、ZnAl2O4、CaAl2O4、FeAl2O4、(Mg,Zn)Al2O4、(Mg,Fe)Al2O4から選択できる。また、前記スピネル構造体は、アルミナがさらに含有されているアルミナ-スピネル複合酸化物であってもよい。本発明の触媒において、前記補助金属は、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンジウム、ジルコニウム、チタン、ラジウム、シリコン及びアルミニウムよりなる群から選択できる。本発明の触媒担体には、塩素、リン、フッ素よりなる群から選択された少なくとも1種のハロゲン成分がさらに含まれることができる。本発明において、前記担体の内部において、パラジウムは担体の表面から離隔して環状に存在し、具体的には、前記担体の内部において、パラジウムは担体の表面から5~10μm離隔して存在することができる。本発明の触媒における活性成分であるパラジウムは、前記担体に0.005~0.16wt%/m2の活性密度で存在することができ、前記補助金属は、前記担体に0.0001~0.002wt%/m2の密度で均一に存在することができ、選択的に、前記ハロゲン成分は、前記担体に0.004~0.04wt%/m2の密度で均一に存在することができる。本発明の触媒における前記担体は、7~14nmの気孔サイズ、0.2~0.5m3/gの気孔容積、及び70~200m2/gの比表面積を有することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明による触媒は、担体の内部で副反応を誘発する酸点を抑制して反応選択性が高く、活性金属が担体の内部に集約された環状構造を持っており、補助金属の導入によってパラジウムの高分散化が誘導される。本発明による触媒は、マグネシウムが担体骨格内に位置して触媒を再使用する際にマグネシウムの脱離を防止することができるマグネシウムアルミネートスピネル構造を使用しており、補助金属を用いてその上にパラジウムを位置させて分散度を高めてパラジウムの活性点の数を増加させることにより、反応活性の最大化を達成した。また、反応中に発生する触媒の物理的摩耗からパラジウム活性金属を保存することができるため、高度の耐久性を確保した。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の実施例1~3で使用された触媒担体のXRDパターンである。
【
図3】本発明の実施例1による触媒のSEM及びEPMA画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明によって開示される耐久性/耐酸性を有する触媒は、作動溶液再生用触媒として開発されたが、過酸化水素製造用水添触媒への適用も可能である。本発明では、主に作動溶液再生用触媒について説明するが、適用分野は、再生反応に限定しない。本発明において、触媒活性成分は担体に担持され、担体は支持体とも呼ばれる。
【0012】
本発明は、スピネル構造体として酸点が制御された担体を適用したパラジウム触媒に関する。本発明で使用されるスピネル構造とは、一般に、X及びY金属がXY2O4の立方晶結晶形態を有し、酸素アニオンが立方密集した格子状に配列され、カチオン金属X及びYが格子における八面体及び四面体部位の一部又は全部を占める構造体を意味する。本発明において、特に過酸化水素製造用又は作動溶液再生用触媒に適用できるスピネル構造体は、耐酸性及び耐熱性を持っており、表面塩基性質を有するアルミニウム系スピネル構造体であるMgAl2O4、ZnAl2O4、CaAl2O4、FeAl2O4、(Mg,Zn)Al2O4、(Mg,Fe)Al2O4の形態が例示できる。好ましくは、アルミナの広い表面積とスピネル構造体の塩基性を同時に使用することが可能なAl2O3-XY2O4複合酸化物の形態が使用できる。
【0013】
本発明によるパラジウム触媒は、パラジウム分散性を高めるために、スピネル構造の担体に補助金属が適用できる。補助金属は、その上に触媒活性成分を位置させて分散度を増加させることにより、パラジウムの活性点の数を増やし、反応活性の最大化を達成することができると判断される。好ましくは、補助金属であるセリウムを例示することができ、パラジウムの高分散性を誘導する。また、補助金属として、カルシウム、バリウム、ストロンジウム、ジルコニウム、チタン、ラジウム、シリコン、またはアルミニウムが適用できる。
【0014】
本発明によるパラジウム触媒における触媒活性成分であるパラジウムは、担体の内部で環状構造に形成される。環状構造とは、通常、円形構造の触媒において外郭から一定間隔離隔した内部に触媒活性成分が集中して形成された構造であって、外郭及び触媒の中心には活性成分が存在しない。環形成の有無及び環の厚さは、合成過程で使用される試薬の種類及び濃度によって異なり、環状構造は、反応中に発生する触媒の物理的摩耗から活性金属を保存することができるため、高度の耐久性を維持することができる。
【0015】
本発明は、マグネシウムとアルミナの混合物を熱処理して製造されたスピネル構造のマグネシウムアルミネート担体にセリウムを担持させ、焼成してセリウムを固定した後、パラジウムを含浸し、還元して得られたパラジウム触媒及びその製造方法に関するものであり、これを作動溶液の再生工程で使用すると、効率的な再生転換率を確認する。
【0016】
実施例1
担体製造ステップ:硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2・6H2O、Aldrich(株))、硝酸アルミニウム(Al(NO3)3・9H2O、Aldrich(株))及びアンモニア水(28wt%NH4OH、デジョン化金(株))を用いて担体を製造した。まず、硝酸マグネシウムを蒸留水に溶解させた後、Mg/Alのモル比を0.5にして硝酸アルミニウムを溶解させて水溶液を製造した。この水溶液にアンモニア水を加えてpH10.5に合わせて常温で12時間撹拌した後、噴霧乾燥機を用いて水分が除去された約100ミクロンサイズのビーズを製造した。その後、乾燥機を用いて105℃で12時間十分に乾燥させた。900℃で10時間熱処理して、スピネル結晶性を有する酸化物担体(マグネシウムアルミネート)を得た。
【0017】
触媒製造ステップ:補助金属として使用されたセリウムは、前駆体として硝酸セリウム(Ce(NO3)3・6H2O)を使用し、活性金属として使用されたパラジウムは、前駆体として塩化パラジウム酸(H2PdCl4)を使用した。まず、マグネシウムアルミネート担体を、触媒の全重量に対して0.25%に相当するセリウムが溶けたイオン水に混合した。その後、セリウムが担持された組成物を空気雰囲気下に550℃で2時間熱処理して金属を固定した。その後、触媒の全重量に対して、1.0%に相当するパラジウム前駆体と、1.0%に相当する過酸化水素(H2O2)及び0.2%に相当するHClを添加し、攪拌しながら80℃まで昇温させ、その温度で1時間維持した。
【0018】
触媒還元ステップ:セリウム-パラジウムが担持された複合体に還元剤を投入して行った。還元剤としては、ギ酸ナトリウム(NaCOOH)を使用した。還元の際にNaがイオン化して十分な水素を発生させることができるように温度を60℃まで昇温させ、その温度で1時間維持して
図1の触媒を完成した。
【0019】
触媒物性:セリウムは、担体の内部に均一に分布した。パラジウムは、主に担体の外郭から離隔して15μmの厚さで分布したリング(ring)構造体を示した。触媒内のパラジウム活性密度は、0.1559wt%/m2と計算された。本発明で言及される活性密度とは、活性金属が位置している部分の担体表面積当たりの活性金属の量を意味するものであり、この値が高いという意味は、一定体積の担体内に反応を起こすことが可能な金属活性点の数が多いことを意味し、これは、触媒活性に比例する値として理解される。
【0020】
実施例2
実施例1の担体製造ステップで熱処理温度を700℃にした以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。
【0021】
触媒物性:担体結晶相は、アルミナ相とマグネシウムアルミネート相とが混合された形態であり、実施例1と同様に活性金属がリング(Ring)状の構造を示した。パラジウムは、主に担体の外郭から離隔して16μmの厚さで分布したリング構造体を示し、製造された触媒内のパラジウム活性密度は0.0679wt%/m2と計算された。
【0022】
実施例3
実施例1の担体製造ステップで熱処理温度を500℃にした以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。
【0023】
触媒物性:担体結晶相は、アルミナ相であり、実施例1と同様の活性金属がリング(Ring)状の構造を示した。パラジウムは主に担体の外郭から離隔して14μmの厚さで分布したリング構造を示し、製造された触媒中のパラジウム活性密度は0.0646wt%/m2と計算された。
【0024】
比較例1
スピネル構造の担体ではなく、純粋なアルミナ担体を使用した。これにより、マグネシウムは、含浸法を用いてアルミナ担体に担持した。まず、触媒の全重量に対して、4.5%に相当する硝酸マグネシウムと、0.25%に相当する硝酸セリウムをイオン水に混合した。製造されたマグネシウム-セリウム複合溶液を乾式湿潤法を用いてアルミナ担体に含浸した。マグネシウム-セリウムが担持された組成物を空気雰囲気下に550℃で2時間熱処理して金属を固定した。その後、水200mlにマグネシウム-セリウムが持担されたアルミナ組成物100gを添加し、触媒の全重量に対して、1.0%に相当するパラジウム前駆体、1.0%に相当する過酸化水素及び0.2%に相当するHClを添加し、攪拌しながら80℃まで昇温させ、その温度で30分間維持した。
【0025】
触媒還元過程は、マグネシウム-セリウム-パラジウムが担持された複合体に還元剤を投入して行った。還元剤としては、ギ酸ナトリウム(NaCOOH)を使用した。還元の際に、Naがイオン化して十分な水素を発生させることができるように温度を60℃まで昇温させ、その温度で1時間を維持した。
【0026】
触媒物性:マグネシウムとセリウムは、担体の内部に均一に分布している。パラジウムは、主に担体の外郭から離隔して16μmの厚さで分布したリング構造体を示した。製造された触媒中のパラジウム活性密度は0.0491wt%/m2と計算された。
【0027】
比較例2
パラジウム担持の際に過酸化水素を使用していない以外は、比較例1と同様にして触媒を製造した。
【0028】
触媒物性:マグネシウム、セリウム及びパラジウムがいずれも担体の内部に均一に分布している。製造された触媒中のパラジウム活性密度は0.005wt%/m2と計算された。
【0029】
比較例3
セリウムを担持していない以外は、比較例2と同様の方法で行うことにより、触媒を製造した。触媒物性:マグネシウムとパラジウムがいずれも担体の内部に均一に分布している。製造された触媒中のパラジウム活性密度は0.0051wt%/m2と計算された。
【0030】
実験例:担体特性
実施例1~3及び比較例1~3で製造された担体の結晶相及び気孔構造は、表1及び
図2に示す。
【0031】
【0032】
表1及び
図2から確認されるように、実施例1~3のスピネル構造は、担体の焼成温度によって決定され、温度が高くなるほど、比表面積と気孔容積は減少したものの、気孔サイズは次第に増加する結果を示す。
図2において、実施例3の回折ピークは、アルミナ単独の結晶性を持っておりスピネル構造が形成されず、実施例2の700℃熱処理担体の場合、アルミナとスピネル結晶相が混在する。熱処理温度を高めて、実施例1のように900℃以上で熱処理する場合、最終的に純粋なスピネル結晶相を有し、表1の結果のように担体の気孔サイズが著しく増加したことからみて、これを実際の触媒反応に使用した場合に反応物と生成物の触媒内の円滑な拡散及び移動を予想することができた。
【0033】
実験例2:担体の内部でのパラジウムの物理化学的特性
表2は、実施例1~3及び比較例1~3の触媒に対して化学吸着分析器(chemisorption analyzer)及び電子プローブ微量分析器(EPMA、Electron Probe Micro Analyzer)を用いたパラジウムの分散度、粒子サイズ及び粒子内のパラジウム分布を測定した結果である。
【0034】
【0035】
表2の分析内容によると、セリウム未担持の比較例3は、実施例1~3及び比較例1~2と比較してパラジウム分散度が著しく低くなることを確認することができ、比較例3を除いては概して高いパラジウム分散度及び低いパラジウム粒子サイズを示していた。上記の結果に基づいて、セリウムが担体の表面に位置してパラジウム金属を小さな粒子にして均一に分散させる役目をしていることを確認することができる。触媒粒子中のパラジウムの分布は過酸化水素及び塩酸によって調節され、これを用いて触媒の表面にリング状にパラジウム粒子を位置させることができた。実施例1~3及び比較例1におけるパラジウム金属分布は、触媒の外郭から5~8μmの間隔をおいて製造された。リングの厚さは、10~20μmの間に分布することを確認した。実施例1の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)及びEPMA画像を
図3に示した。
【0036】
実験例3:触媒再生効率
実施例及び比較例触媒の再生効率を測定するために再生評価反応を行った。反応器は、SUS材質の攪拌式反応システムを用いて評価した。円形攪拌式反応器にマグネチックバーを入れ、水素化反応の際に発生した副産物作動溶液50gに触媒10gを投入して再生効率を測定した。触媒活性は転換率として表し、計算式は次の通りである。
転換率(%)=[(作動溶液のTHAQ面積値-反応物のTHAQ面積値)/(作動溶液のTHAQ面積値)]*100
【0037】
活性分析は、液体クロマトグラフィー(LC、Liquid chromatography)分析器を用いて測定し、パラジウムの含有量は、誘導結合プラズマ(ICP、Inductively Coupled Plasma Spectrometer)分析器で測定し、その結果を表3に示した。表3は、実施例及び比較例から製造された触媒を用いたTHAQ->EAQ転換率評価結果である。
【0038】
【0039】
触媒活性は、触媒担体にパラジウムが均一に担持された比較例2、3に比べて、リング状に担持された実施例1~3及び比較例1でより優秀に評価された。その結果から、金属活性点は、触媒の表面に集中することが反応物との接触頻度数を高めることになり、より速い触媒反応が行われることが分かった。リング状の触媒中では、特に実施例1で最も高い活性を示しているが、これから担体の気孔サイズが大きいほど、触媒内で反応物と生成物の拡散及び移動が容易であって反応速度が速くなるという結果が得られた。次に、触媒耐久性を示すために、触媒反応-触媒再生(550℃で6時間熱処理)を50回行った後の活性評価結果を見ると、初期活性に比べて数値が低くはなったものの、やはり初期活性の手順と同一であった。マグネシウムの含有量は、実施例1の場合にはほとんど損失がないのに対し、残りの実施例及び比較例の場合には一部損失があった。また、マグネシウム損失量と活性結果との相関関係があることが分かった。
【0040】
最後に、24時間ボールミル(Ball mill)を用いて物理的な衝撃を加えた後、微粉を除去した一定サイズの触媒のみを選別して反応評価を行った。ボールミルを用いて触媒の外部に持続的な衝撃を加えるとき、触媒は、外部の物理的な衝撃により表面の粒子が壊れて失われるが、これは、商業工程においても同じ傾向である。その結果、24時間ミリングした触媒評価の結果、パラジウムがリング状に存在する触媒が初期性能と類似の性能を維持することが確認された。これは、リング状の触媒の最外郭にはパラジウムが存在しないため、表面の粒子が失われてもパラジウム活性物質の損失は最小化されることを意味する。パラジウム活性層が表面との間隔がない均一型触媒の場合には、触媒表面粒子の損失はパラジウム活性物質の損失を意味する。その結果は、触媒中のパラジウム含有量損失率の分析結果から確認した。
【国際調査報告】