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特表2023-549422圧電単結晶、その製造方法、並びにそれを用いた圧電及び誘電応用部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-24
(54)【発明の名称】圧電単結晶、その製造方法、並びにそれを用いた圧電及び誘電応用部品
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/22 20060101AFI20231116BHJP
   C04B 35/491 20060101ALI20231116BHJP
   C30B 1/02 20060101ALI20231116BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20231116BHJP
   H10N 30/097 20230101ALI20231116BHJP
   H10N 30/092 20230101ALI20231116BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20231116BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20231116BHJP
【FI】
C30B29/22 Z
C04B35/491
C30B1/02
H10N30/853
H10N30/097
H10N30/092
H10N30/20
H10N30/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534611
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 KR2021018537
(87)【国際公開番号】W WO2022124792
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0173604
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0171666
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523194514
【氏名又は名称】セラコンプ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CERACOMP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】70,Sunmoon-ro 221beon-gil,Tangjeong-myeon,Asan-si,Chungcheongnam-do 31460,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イ、ホ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、ウォン ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ムン チャン
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB03
4G077AB06
4G077BC60
4G077CA03
4G077EA01
4G077HA11
4G077JA05
(57)【要約】
圧電単結晶、その製造方法、並びに前記圧電単結晶を用いた圧電及び誘電応用部品に関する。圧電単結晶は、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオンの組成制御によって圧電単結晶の特性を極大化し、固相単結晶成長法によって、複雑な化学組成であっても、組成勾配なしに、均一な組成の単結晶を提供することができ、特に、本発明の圧電単結晶は、機械的衝撃に対する抵抗性が大きく、機械加工が容易な形態で提供することにより、圧電単結晶を用いた超音波トランスデューサ、圧電アクチュエータ、圧電センサ、誘電キャパシタを含む圧電応用部品及び誘電応用部品の分野に有用に適用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1:
化学式1
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(L)Ti]O
(前記式中、
Aは、PbまたはBaであり、
Bは、Ba、Ca、Co、Fe、Ni、Sn、及びSrからなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、
Cは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、
Lは、ZrまたはHfより選ばれた単独または混合形態であり、
Mは、Ce、Co、Fe、In、Mg、Mn、Ni、Sc、Yb、及びZnからなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、
Nは、Nb、Sb、Ta、及びWからなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、
0<a≦0.10、0<b≦0.05、0.05≦x≦0.58、及び0.05≦y≦0.62である)
の組成式を有しペロブスカイト型構造である
ことを特徴とする圧電単結晶。
【請求項2】
前記圧電単結晶において、Lが混合形態であるとき、下記の化学式2:
化学式2
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w,HfTi]O
(前記式中、0.01≦w≦0.20である)
の組成式を有する
請求項1に記載の圧電単結晶:
【請求項3】
前記式中、0.01≦a≦0.10、0.01≦b≦0.05である
請求項1に記載の圧電単結晶。
【請求項4】
前記式中、a/b≧2である
請求項1に記載の圧電単結晶。
【請求項5】
前記式中、0.10≦x≦0.58及び0.10≦y≦0.62である
請求項1に記載の圧電単結晶。
【請求項6】
前記圧電単結晶が、単結晶の内部の組成勾配が0.2乃至0.5モル%からなるものである
請求項1に記載の圧電単結晶。
【請求項7】
圧電単結晶の組成に、体積比で0.1乃至20%の強化第二相(P)をさらに含む
請求項1に記載の圧電単結晶。
【請求項8】
前記強化第二相Pは、金属相、酸化物相、または気孔(pore)である
請求項8に記載の圧電単結晶。
【請求項9】
前記強化第二相Pは、Au、Ag、Ir、Pt、Pd、Rh、MgO、ZrO、及び気孔(pore)からなる群より選ばれた少なくとも1種以上である
請求項8に記載の圧電単結晶。
【請求項10】
前記強化第二相Pは、圧電単結晶内において、粒子状で均一に分布するか、または一定のパターンを有して規則的に分布する
請求項8に記載の圧電単結晶。
【請求項11】
前記xとyは、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界(MPB)の組成から10モル%以内の範囲に属する
請求項1に記載の圧電単結晶。
【請求項12】
前記xとyは、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界(MPB)の組成から5モル%以内の範囲に属する
請求項1に記載の圧電単結晶。
【請求項13】
前記圧電単結晶が、キュリー温度(Curie temperature、T)が180℃以上であるとともに、菱面体晶相と正方晶相の相転移温度(phase transition temperature between rhombohedral phase and tetragonal phase、TRT)が100℃以上である
請求項1に記載の圧電単結晶。
【請求項14】
前記圧電単結晶が、電気機械結合係数(longitudinal electromechanical coupling coefficient、k33)が0.85以上である
請求項1に記載の圧電単結晶。
【請求項15】
前記圧電単結晶が、抗電界(coercive electric field、E)が3.5乃至12kV/cmである
請求項1に記載の圧電単結晶。
【請求項16】
前記圧電単結晶が、誘電定数(K )4,000乃至15,000、及び圧電定数(d33)1,400乃至6,000pC/Nを満たす
請求項1に記載の圧電単結晶。
【請求項17】
(a)請求項1に記載の圧電単結晶を構成する組成を有する多結晶体のマトリクス粒子(matrix grains)の平均大きさを調節して、異常粒の数密度(number density:number of abnormal grains/unit area)を減少させるステップと、
(b)前記ステップ(a)によって得られた異常粒の数密度が低下した多結晶体を熱処理して異常粒を成長させるステップと、を含むが、前記圧電単結晶を構成する組成の粉末を800乃至900℃未満の温度でか焼し、粉末成形体を得て、前記粉末成形体を焼結する1次熱処理工程、及び前記単結晶成長時に2次熱処理工程を行う
ことを特徴とする圧電単結晶の製造方法。
【請求項18】
前記1次及び2次熱処理工程が、900乃至1,300℃で行われる
請求項17に記載の圧電単結晶の製造方法。
【請求項19】
前記熱処理が、1乃至20℃/分の昇温速度で、1乃至100時間の間行われる
請求項18に記載の圧電単結晶の製造方法。
【請求項20】
前記多結晶体のマトリクス粒子の平均粒径(R)は、異常粒の生成が生じる臨界粒径(異常粒の数密度が「0(zero)」になるマトリクス粒子の平均粒径、R)の0.5乃至2倍の大きさ範囲(0.5R≦R≦2R)内に調節される
請求項17に記載の圧電単結晶の製造方法。
【請求項21】
請求項1ないし16のいずれかに記載の圧電単結晶からなる圧電体、または、前記圧電単結晶とポリマーとが複合化された圧電体を用いた
ことを特徴とする圧電応用部品及び誘電応用部品。
【請求項22】
前記圧電応用部品及び誘電応用部品が、超音波トランスデューサ(ultrasonic transducers)、圧電アクチュエータ(piezoelectric actuators)、圧電センサ(piezoelectric sensors)、誘電キャパシタ(dielectric capacitors)、電界放射トランスデューサ(Electric Field Generating Transducers)、及び電界-振動放射トランスデューサ(Electric Field and Vibration Generating Transducers)からなる群より選ばれたいずれか一つである
請求項21に記載の圧電応用部品及び誘電応用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電単結晶、その製造方法、並びに前記圧電単結晶を用いた圧電及び誘電応用部品に係り、さらに詳しくは、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオンの組成制御によって圧電単結晶の特性を向上させ、高い誘電定数(K ≧4,000~15,000)、高い圧電定数(d33≧1,400~6,000pC/N)、高い抗電界(E≧4~12kV/cm)を同時に実現し、さらには、固相単結晶成長法によって製造されることにより、複合した化学組成であっても、組成勾配なしに、均一な圧電単結晶を提供し、機械的特性を併せ持つペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶、その製造方法、並びに前記圧電単結晶を用いた圧電及び誘電応用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)の圧電単結晶は、既存の圧電多結晶体材料に比べて遥かに高い誘電定数(K )と圧電定数(d33とk33)を示し、圧電アクチュエータ、超音波トランスデューサ、圧電センサ、及び誘電キャパシタなどのような高性能部品に利用され、各種薄膜素子の基板材料としてもその応用が期待される。
【0003】
現在まで開発されたペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶には、PMN-PT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO)、PZN-PT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O-PbTiO)、PInN-PT(Pb(In1/2Nb1/2)O-PbTiO)、PYbN-PT(Pb(Yb1/2Nb1/2)O-PbTiO)、PSN-PT(Pb(Sc1/2Nb1/2)O-PbTiO)、PMN-PInN-PT、PMN-PYbN-PT、及びBiScO-PbTiO(BS-PT)などがある。このような単結晶は、溶融(melting)時に共融(congruent melting)挙動を示し、通常は既存の単結晶成長法であるフラックス法(flux method)やブリッジマン法(Bridgman method)等で製造されていた。
【0004】
しかしながら、既存に開発されたPMN-PT及びPZN-PTの圧電単結晶は、常温で高い誘電及び圧電特性(K >4,000、d33>1,400pC/N、k33>0.85)を示すという長所があるが、低い相転移温度(T及びTRT)、低い抗電界(E)、脆性(brittleness)などの欠点により、圧電単結晶の使用温度範囲や使用電圧条件、圧電単結晶の応用部品の製作条件などがかなり制限される。
【0005】
一般に、ペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶は、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界、すなわち、MPB(morphotropic phase boundary)組成の近傍領域で誘電及び圧電特性が最も高いと知られている。
【0006】
しかしながら、ペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶は、一般に、菱面体晶相であるときに最も優れた誘電及び圧電特性を示すことから、菱面体晶相の圧電単結晶の応用が最も活発であるが、菱面体晶相の圧電単結晶は、菱面体晶相及び正方晶相の相転移温度(TRT)以下でだけ安定した挙動を示すので、菱面体晶相が安定した挙動を示し得る最大温度であるTRT以下でだけその使用が可能である。よって、TRT相転移温度が低い場合は、菱面体晶相の圧電単結晶の使用温度が低くなり、かつ圧電単結晶応用部品の製作温度及び使用温度もTRT以下に制限される。
【0007】
また、相転移温度(T及びTRT)及び抗電界(E)が低い場合は、機械加工、応力、発熱、及び駆動電圧下で圧電単結晶のポーリングが除去(depoling)されやすくなり、優れた誘電及び圧電特性を喪失してしまう。したがって、相転移温度(T及びTRT)及び抗電界(E)の低い圧電単結晶は、単結晶応用部品の製作条件、使用温度条件、及び駆動電圧条件などが制限される。PMN-PT単結晶の場合、一般に、T<150℃、TRT<80℃、及びE<2.5kV/cmであり、PZN-PT単結晶の場合、一般に、T<170℃、TRT<100℃、及びE<3.5kV/cmである。また、このような圧電単結晶で製作された誘電及び圧電応用部品も、製造条件、使用温度範囲や使用電圧条件などが制限され、圧電単結晶応用部品の開発及び実用化の障害要因となってきていた。
【0008】
圧電単結晶の短所を克服するために、PInN-PT、PSN-PT、及びBS-PTなどのような新たな組成の単結晶が開発され、また、PMN-PInN-PT及びPMN-BS-PTなどのように混ざり合った単結晶組成も研究されてきた。
【0009】
しかしながら、このような単結晶の場合、誘電定数、圧電定数、相転移温度、抗電界、及び機械的特性などを同時に改善することができず、Sc及びInなどのような高価な元素を主成分とする組成からなる圧電単結晶は、高い単結晶の製造コストのため単結晶の実用化の障害要因となっていた。
【0010】
現在まで開発されたPMN-PTを含むペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶が低い相転移温度を示す理由は、大きく三つに分けられるが、第一は、PTとともに主な構成成分となるリラクサ(relaxor;PMNやPZNなど)の相転移温度が低いということである。
【0011】
非特許文献1には、ペロブスカイト型構造の圧電セラミックス多結晶体の正方晶相と立方晶相の相転移温度(T)が表1に提示されている。圧電単結晶のキュリー温度は、同じ組成の多結晶体のキュリー温度とほぼ同じであるため、多結晶体のキュリー温度から圧電単結晶のキュリー温度を推定することができる。
【0012】
第二は、正方晶相と菱面体晶相が境界をなすMPBが温度軸に対して垂直でなく緩やかに傾いていて、菱面体晶相と正方晶相の相転移温度(TRT)を高めるためには、キュリー温度(T)の低下が不可欠となることから、キュリー温度(T)、及び菱面体晶相と正方晶相の相転移温度(TRT)を同時に高めることは困難であった。
【0013】
第三は、相転移温度が比較的高いリラクサ(PYbN、PInNやBiScOなど)をPMN-PTなどに混ぜ込む場合にも、相転移温度が組成に比例して単純に増加しないか、または誘電及び圧電特性が低下するという問題を発生させるためである。
【0014】
さらには、非特許文献1に提示されたRelaxor-PT系単結晶は、主に溶融工程を用いる既存の単結晶成長法であるフラックス法及びブリッジマン法などで製造されるが、単結晶の製造工程上の理由から、組成が均一な大きな単結晶の製造は困難であり、かつ製造コストが高く、大量生産が困難であるため、未だ商用化には成功していない。
【0015】
また、一般に、圧電セラミックス単結晶は、圧電セラミックス多結晶体(polycrystalline ceramics)に比べて機械的強度及び破壊靭性が低いため、小さな機械的衝撃にも壊れやすいという欠点がある。このような圧電単結晶の脆性は、圧電単結晶を用いた応用部品の製作と応用部品の使用の際に圧電単結晶の破壊を誘発しやすく、圧電単結晶の使用に大きな制限となっていた。したがって、圧電単結晶の商用化のためには、圧電単結晶の誘電及び圧電特性の向上と併せて、圧電単結晶の機械的特性の向上が必要である。
【0016】
ここに、本発明者らは、従来の問題点を改善し、高性能及び高精密の高付加価値市場に適用可能なレベルの圧電単結晶を提供するために努力し続けた結果、圧電単結晶を構成する化学組成が複雑になると、圧電特性が向上する結果から、単結晶の圧電特性を向上させるために、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオンの組成を設計し、固相単結晶成長法によって、複合した化学組成であっても、組成勾配なしに、均一で、かつ圧電特性が改善され、機械的特性を併せ持つ圧電単結晶の製造を確認することにより、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】大韓民国特許第0564092号(2006.03.27公告)
【特許文献2】大韓民国特許第0743614号(2007.07.30公告)
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】IEEE Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics,and Frequency Control,vol.44,no.5,1997,pp.1140-1147.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、新規な組成式を有するペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)の圧電単結晶を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、前記圧電単結晶の製造方法を提供することである。
【0021】
本発明のまた他の目的は、前記圧電単結晶を用いた圧電部品及び誘電部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記したような目的を達成するために、本発明は、下記の化学式1の組成式を有する圧電単結晶を提供する。
【0023】
化学式1
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(L)Ti]O
前記式中、Aは、PbまたはBaであり、
Bは、Ba、Ca、Co、Fe、Ni、Sn、及びSrからなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、
Cは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、
Lは、ZrまたはHfより選ばれた単独または混合形態であり、
Mは、Ce、Co、Fe、In、Mg、Mn、Ni、Sc、Yb、及びZnからなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、
Nは、Nb、Sb、Ta、及びWからなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、
0<a≦0.10、
0<b≦0.05、
0.05≦x≦0.58、
0.05≦y≦0.62である。
【0024】
このとき、前記Lが混合形態であるとき、下記化学式2の組成式を有する圧電単結晶を提供する。
【0025】
化学式2
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w,HfTi]O
前記式中、A、B、C、M、及びNは、前記化学式1の定義と同じであり、a、b、x、及びyも同じである。但し、0.01≦w≦0.20を示す。
【0026】
本発明の化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、0.01≦a≦0.10及び0.01≦b≦0.05を満たす組成であり、さらに好ましくは、前記式中、a/b≧2を満たすことである。
【0027】
本発明の化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、0.10≦x≦0.58及び0.10≦y≦0.62を満たすことがさらに好ましい。
【0028】
また、本発明の化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、単結晶の内部の組成勾配が0.2乃至0.5モル%からなるものであって、均一性の特徴を与える。
【0029】
前記圧電単結晶の組成に、体積比で0.1乃至20%の強化第二相(P)をさらに含んでもよく、前記強化第二相Pは、金属相、酸化物相、または気孔(pore)である。
【0030】
さらに具体的に、前記強化第二相Pは、Au、Ag、Ir、Pt、Pd、Rh、MgO、ZrO、及び気孔(pore)からなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、前記強化第二相Pは、圧電単結晶内において、粒子状で均一に分布するか、または一定のパターンを有して規則的に分布する。
【0031】
また、圧電単結晶において、前記xとyは、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界(MPB)の組成から10モル%、さらに好ましくは、前記xとyは、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界(MPB)の組成から5モル%以内の範囲に属するものである。
【0032】
以上の圧電単結晶は、キュリー温度(Curie temperature、T)が180℃以上であるとともに、菱面体晶相と正方晶相の相転移温度(phase transition temperature between rhombohedral phase and tetragonal phase、TRT)が100℃以上である圧電単結晶を提供する。
【0033】
また、前記圧電単結晶が、電気機械結合係数(longitudinal electromechanical coupling coefficient、k33)が0.85以上であり、抗電界(coercive electric field、E)が3.5乃至12kV/cmを満たす。
【0034】
特に、前記圧電単結晶は、誘電定数(K )4,000乃至15,000、及び圧電定数(d33)1,400乃至6,000pC/Nを満たす。
【0035】
本発明は、前記圧電単結晶を製造する方法であって、
(a)前記組成を有する多結晶体のマトリクス粒子(matrix grains)の平均大きさを調節して、異常粒の数密度(number density:number of abnormal grains/unit area)を減少させるステップと、
(b)前記ステップ(a)によって得られた異常粒の数密度が低下した多結晶体を熱処理して異常粒を成長させるステップと、を含むが、前記圧電単結晶を構成する組成の粉末を800乃至900℃未満の温度でか焼し、粉末成形体を得て、前記粉末成形体を焼結する1次熱処理工程、及び前記単結晶成長時に2次熱処理工程を行う圧電単結晶の製造方法を提供する。
【0036】
また他の製造方法として、前記組成を有する多結晶体のマトリクス粒子の平均粒径を調節して、異常粒の数密度を低下させる条件下で、多結晶体を熱処理する圧電単結晶の製造方法を提供する。
【0037】
上記において、多結晶体の異常粒の数密度が低下した状態で発生した少数の異常粒のみを成長させ続けて単結晶を得ることができる。
【0038】
前記多結晶体の熱処理前に、多結晶体に種子単結晶を接合させて、熱処理中に種子単結晶を多結晶体内に成長させ続ける圧電単結晶の製造方法を提供することができる。このとき、前記多結晶体のマトリクス粒子の平均粒径(R)は、異常粒の生成が生じる臨界粒径(異常粒の数密度が「0(zero)」になるマトリクス粒子の平均粒径、R)の0.5乃至2倍の大きさ範囲(0.5R≦R≦2R)内に調節されることである。
【0039】
さらには、本発明は、前記圧電単結晶からなる圧電体、または、前記圧電単結晶とポリマーとが複合化された圧電体を用いた圧電応用部品及び誘電応用部品を提供する。
【0040】
前記圧電体を用いた圧電応用部品及び誘電応用部品は、超音波トランスデューサ(ultrasonic transducers)、圧電アクチュエータ(piezoelectric actuators)、圧電センサ(piezoelectric sensors)、誘電キャパシタ(dielectric capacitors)、電界放射トランスデューサ(Electric Field Generating Transducers)、及び電界-振動放射トランスデューサ(Electric Field and Vibration Generating Transducers)からなる群より選ばれたいずれか一つに適用できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明による圧電単結晶は、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオンの復号組成によって、高い誘電定数(K )、高い圧電定数(d33とk33)、高い相転移温度(TとTRT)、及び高い抗電界(E)の誘電特性を顕著に改善することができる。
【0042】
また、本発明の圧電単結晶は、固相単結晶成長法によって複合した化学組成であっても、組成勾配なしに、均一であり、圧電特性を向上させることができるとともに、固相単結晶成長法過程で生成する気孔によって、機械的衝撃に対する抵抗性が大きく、機械加工が容易な形態で提供可能な製造方法を提供することができる。
【0043】
さらには、本発明は、機械的特性を併せ持ち、広い温度領域と使用電圧条件で使用可能にする長所があり、高い誘電特性に基づき、高性能、高精密の高付加価値が要求される分野に適用されることができる。
【0044】
したがって、単結晶の大量生産に適合した固相単結晶成長法を用いて圧電単結晶を製造し、高価な原料を含まない単結晶組成を開発して、圧電単結晶の商用化を可能にし、本発明による応用部品は、優れた特性の圧電単結晶を用いて、広い温度領域において、圧電応用部品及び誘電応用部品を製作して使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0046】
本発明は、下記の化学式1の組成式を有する圧電単結晶を提供する。
【0047】
化学式1
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(L)Ti]O
前記式中、Aは、PbまたはBaであり、
Bは、Ba、Ca、Co、Fe、Ni、Sn、及びSrからなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、
Cは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、
Lは、ZrまたはHfより選ばれた単独または混合形態であり、
Mは、Ce、Co、Fe、In、Mg、Mn、Ni、Sc、Yb、及びZnからなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、
Nは、Nb、Sb、Ta、及びWからなる群より選ばれた少なくとも1種以上であり、
0<a≦0.10、
0<b≦0.05、
0.05≦x≦0.58、
0.05≦y≦0.62である。
【0048】
本発明の化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、化学的組成が複合されながら、圧電特性がさらに増加する傾向に基づき、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオンを複合組成で構成する。
【0049】
このとき、化学式1の組成式を有する圧電単結晶において、[A]サイトイオンの複合組成を具体的にみれば、[A1-(a+1.5b)]で構成されてもよく、前記Aの組成は、有鉛または無鉛元素を含み、本発明の実施例では、AがPbである有鉛系圧電単結晶に限定して説明するが、これに限定されるものではない。
【0050】
前記[A]サイトイオンにおいて、B組成は、金属二価元素、好ましくは、Ba、Ca、Co、Fe、Ni、Sn、及びSrからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、C組成は、金属三価の元素であれば使用可能である。
【0051】
好ましくは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、さらに好ましくは、ランタン系元素を1種または2種の混合形態として使用する。
【0052】
本発明の実施例では、[A]サイトイオンにおいて、C組成は、La、Sm、Biを含んだ単独または少なくとも1種の混合組成として説明しているが、これに限定されるものではない。
【0053】
前記化学式1の組成式を有する圧電単結晶における[A]サイトイオンの複合組成において、[A]サイトイオンに該当する[A1-(a+1.5b)]の組成は、目標とする物性を実現するための要件として、Aが有鉛系または無鉛系圧電単結晶であるとき、金属二価元素及び金属三価元素の組み合わせで構成されることを特徴とする。
【0054】
すなわち、0.01≦a≦0.10及び0.01≦b≦0.05を満たさなければならず、さらに好ましくは、a/b≧2を満たすものである。このとき、前記において、aが0.01未満であれば、ペロブスカイト相が不安定であるという問題があり、0.10を超過すれば、相転移温度が低くなり過ぎ、実際の使用が難しくなり、好ましくない。
【0055】
また、a/b≧2の要件を外れると、誘電及び圧電特性が最大化されないか、または単結晶の成長が制限されるという問題がある。
【0056】
このとき、化学式1の組成式を有する圧電単結晶における[A]サイトイオンの複合組成において、金属三価元素または金属二価元素の単独で構成された場合に比べて、複合組成である場合、優れた誘電定数を実現することができる。
【0057】
一般的に知られている[A][MN]O-PbTiO-PbZrO状態図は、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界(MPB)の周りにおいて優れた誘電及び圧電特性を示す組成領域を示す。[A][MN]O-PbTiO-PbZrO状態図において、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界組成領域において誘電及び圧電特性が最大となり、MPB組成領域から離れるにつれて次第に誘電及び圧電特性が低下する。そして、MPB組成領域から菱面体晶相領域の中への5モル%以内の組成範囲では、誘電及び圧電特性の低下が少なく非常に高い誘電及び圧電特性値を維持し、また、MPB組成領域から菱面体晶相領域の中への10モル%以内の組成範囲では、誘電及び圧電特性が連続して低下するが、誘電及び圧電応用部品に適用するのに十分に高い誘電及び圧電特性値を示す。MPB組成領域から正方晶相領域の中へとその組成が変わっていく場合は、菱面体晶相領域の中へとその組成が変わっていく場合に比べて、誘電及び圧電特性がより速く低下する。しかしながら、正方定常領域中への5モル%以内の組成範囲や10モル%以内の組成範囲である場合にも、誘電及び圧電特性が連続して低下していたが、誘電及び圧電応用部品に適用するのに十分に高い誘電及び圧電特性値を示す。
【0058】
PbTiOとPbZrOとの間の相境界(MPB)は、PbTiO:PbZrO=x:y=0.48:0.52(モル比)として知られている。
【0059】
MPB組成領域から菱面体晶相領域の中へ及び正方晶相領域の中へとその組成がそれぞれ5モル%変わる場合は、xとyの最大値は、それぞれ0.53と0.57(言い換えれば、xが最大である場合のx:y=0.53:0.47であり、yが最大である場合のx:y=0.43:0.57である)となる。また、MPB組成領域から菱面体晶相領域の中へ及び正方晶相領域の中へとその組成がそれぞれ10モル%変わっていく場合には、xとyの最大値は、それぞれ0.58と0.62(言い換えれば、xが最大である場合のx:y=0.58:0.42であり、yが最大である場合のx:y=0.38:0.62である)となる。MPB組成領域から菱面体晶相領域の中へ及び正方晶相領域の中へのそれぞれ5モル%以内の組成範囲では、高い誘電及び圧電特性値を維持し、また、MPB組成領域から菱面体晶相の中へ及び正方晶相領域の中へのそれぞれ10モル%以内の組成範囲では、誘電及び圧電応用部品に適用するのに十分に高い誘電及び圧電特性値を示す。
【0060】
また、PbTiOとPbZrOの含有量、すなわち、xとyの値が0.05以下である場合は、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界を作ることができないか、または相転移温度と抗電界が低すぎて本発明には適していない。
【0061】
前記化学式1において、好ましくは、0.05≦x≦0.58であり、さらに好ましくは、0.10≦x≦0.58である。このとき、xが0.05未満である場合には、相転移温度(TとTRT)、圧電定数(d33、k33)または抗電界(E)が低く、xが0.58を超過する場合には、誘電定数(K )、圧電定数(d33、k33)または相転移温度(TRT)が低いからである。
【0062】
一方、前記化学式1において、好ましくは、0.05≦y≦0.62であり、さらに好ましくは、0.10≦y≦0.62を満たすことである。その理由は、yが0.05未満である場合には、相転移温度(TとTRT)、圧電定数(d33、k33)または抗電界(E)が低く、0.62を超過する場合には、誘電定数(K )または圧電定数(d33、k33)が低いからである。
【0063】
本発明の化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)における[B]サイトイオンにおいて、金属四価元素を含むが、特に、L組成に対して、ZrまたはHfより選ばれた単独または混合形態に限定する。
【0064】
前記混合形態であれば、下記化学式2の組成式を有する圧電単結晶を提供する。
【0065】
化学式2
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w,HfTi]O
【0066】
前記式中、A、B、C、M、及びNは、前記化学式1の定義と同じであり、a、b、x、及びyも同じであり、但し、0.01≦w≦0.20を示す。
【0067】
このとき、前記wが0.01未満であれば、誘電及び圧電特性が最大化されないという問題があり、0.20を超過すれば、誘電及び圧電特性が急激に低下して好ましくない。
【0068】
以上の化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオンの複合組成と[B]サイトイオンの組成を組み合わせることにより、キュリー温度(Curie temperature、T)が180℃以上であり、同時に菱面体晶相と正方晶相の相転移温度(phase transition temperature between Rhombohedral phase and tetragonal phase、TRT)が100℃以上である圧電単結晶である。このとき、キュリー温度が180℃未満であれば、抗電界(E)を5kV/cm以上または相転移温度(TRT)を100℃以上に上げ難いという問題がある。
【0069】
また、本発明による化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、電気機械結合係数(k33)が0.85以上であり、前記電気機械結合係数が0.85未満であれば、圧電多結晶体セラミックスと特性が類似し、エネルギー変換効率が低くなるので、好ましくない。
【0070】
本発明による圧電単結晶は、抗電界(E)が3.5乃至12kV/cmであることが好ましく、前記抗電界が3.5kV/cm未満であれば、圧電単結晶の加工時または圧電単結晶応用部品の製作または使用時にポーリング(poling)が除去されやすいという問題がある。
【0071】
また、本発明による圧電単結晶は、高い誘電定数(K ≧4,000~15,000)、及び高い圧電定数(d33≧1,400~6,000pC/N)を同時に満たす。
【0072】
また、本発明の化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、単結晶の内部の組成勾配が0.2乃至0.5モル%からなり、均一性のある単結晶を提供することができる。
【0073】
ジルコン酸鉛(PbZrO)は、230℃の高い相転移温度を有するのみならず、MPBが温度軸に対してさらに垂直になるようにする効果があり、高いキュリー温度を維持しながら、高い菱面体晶相と正方晶相の相転移温度(TRT)が得られ、TとTRTが同時に高い組成を開発することができる。
【0074】
従来、圧電単結晶の組成にジルコン酸鉛を混ぜる場合にも、相転移温度がジルコン酸鉛の含量に比例して増加するからである。したがって、ジルコニウム(Zr)またはジルコン酸鉛を含むペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶は、既存の圧電単結晶の問題点を克服することができる。また、ジルコニア(ZrO)またはジルコン酸鉛は、既存の圧電多結晶の材料において主成分として用いられており、安価な原料であるので、単結晶の原料価格を高めずに、本発明の目的を達成することができる。
【0075】
これに対して、ジルコン酸鉛を含むペロブスカイト型圧電単結晶は、溶融時、PMN-PTとPZN-PTなどとは異なり、共融(Congruent melting)挙動を示さず、非共融(Incongruent melting)挙動を示す。したがって、非共融挙動を示すと、固相の溶融時、液相と固相のジルコニア(solid phase ZrO)に分離され、液相内の固相ジルコニア粒子が単結晶成長を妨害して、溶融工程を用いる一般の単結晶成長法であるフラックス法とブリッジマン法などでは製造することができない。
【0076】
また、溶融工程を用いる一般の単結晶成長法では、強化第二相を含む単結晶の製造が難しく、未だ報告されたことがない。これは、溶融温度以上で強化第二相が液相と化学的に不安定で反応するので、独立的な第二相形態を維持することができず、消滅するからである。また、液相内において、第二相と液相の密度差によって、第二相と液相の分離が生じ、第二相を含む単結晶の製造が難しく、さらに単結晶の内部に強化第二相の体積分率(volume fraction)、大きさ(size)、形状(shape)、配列(arrangement)、及び分布(distribution)などを調節することができない。
【0077】
よって、本発明は、溶融工程を用いない固相単結晶成長法を用いて強化第二相を含む圧電単結晶を製造する。固相単結晶成長法では、単結晶の成長が溶融温度以下で行われるので、強化第二相と単結晶との化学的反応が抑制され、強化第二相は、単結晶の内部に独立的な形状で安定して存在することができるようになる。
【0078】
また、単結晶の成長が強化第二相を含む多結晶体で行われ、単結晶の成長中、強化第二相の体積分率、大きさ、形状、配列、及び分布などの変化がない。したがって、強化第二相を含む多結晶体を作る工程において、多結晶の内部の強化第二相の体積分率、大きさ、形状、配列、及び分布などを調節して単結晶を成長させると、結果的に、所望の形状の強化第二相を含む単結晶、すなわち、第二相強化圧電単結晶(second phase-reinforced single crystals)を製造することができる。
【0079】
したがって、従来、単結晶成長法であるフラックス法とブリッジマン法では、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、複合組成で圧電単結晶を製造することができない。特に、溶融工程を含むフラックス法とブリッジマン法の場合、製造工程において、単結晶の内部の組成勾配が1乃至5モル%以上で製造されるのに対して、本発明の固相単結晶成長法では、単結晶の内部の組成勾配が0.2乃至0.5モル%の均一な組成で製造されてもよい。
【0080】
したがって、本発明は、固相単結晶成長法によって、ジルコン酸鉛を含むペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオンの複合組成及び[B]サイトイオン間の組合せが複雑な組成であっても、均一に圧電単結晶を成長させることにより、従来、圧電単結晶に比べて、誘電定数(K ≧4,000~15,000)、圧電定数(d33≧1,400~6,000pC/N)、及び抗電界(E≧4~12kV/cm)が顕著に高くなった新規な圧電単結晶を提供することができる。
【0081】
また、本発明の固相単結晶成長法による圧電単結晶の製造方法は、フラックス法とブリッジマン法に比べて、低い工程価格で大量生産が可能である。
【0082】
具体的に、本発明の固相単結晶成長法による圧電単結晶の製造方法は、
(a)前記組成を有する多結晶体のマトリクス粒子(matrix grains)の平均大きさを調節して、異常粒の数密度(number density:number of abnormal grains/unit area)を減少させるステップと、
(b)前記ステップ(a)によって得られた異常粒の数密度が低下した多結晶体を熱処理して異常粒を成長させるステップと、を含む。
【0083】
また他の製造方法として、前記組成を有する多結晶体のマトリクス粒子の平均粒径を調節して、異常粒の数密度を低下させる条件下で、多結晶体を熱処理する圧電単結晶の製造方法を提供する。
【0084】
上記において、多結晶体の異常粒の数密度が低下した状態で発生した少数の異常粒のみを成長させ続けて単結晶を得ることができる。
【0085】
前記多結晶体の熱処理前に、多結晶体に種子単結晶を接合させて、熱処理中に種子単結晶を多結晶体内に成長させ続ける圧電単結晶の製造方法を提供することができる。
【0086】
前記製造方法において、圧電単結晶を構成する組成を有する粉末を800乃至900℃未満の温度でか焼し、粉末成形体を得て、前記粉末成形体を焼結する1次熱処理工程、及び前記単結晶成長時に2次熱処理工程によって圧電単結晶を製造する。
【0087】
このとき、前記1次及び2次熱処理工程が、900乃至1,300℃で、1乃至20℃/分の昇温速度で、1乃至100時間の間行われることが好ましい。さらに好ましくは、1,000乃至1,200℃で1次熱処理し、以降、2次熱処理して単結晶を成長させる。
【0088】
前記多結晶体のマトリクス粒子の平均粒径(R)は、異常粒の生成が生じる臨界粒径(異常粒の数密度が「0(zero)」になるマトリクス粒子の平均粒径、R)の0.5乃至2倍の大きさ範囲(0.5R≦R≦2R)内に調節されることである。このとき、前記多結晶体のマトリクス粒子の平均粒径0.5Rよりも小さい場合(0.5R>R)には、異常粒の数密度が高過ぎ、単結晶が成長せず、多結晶体のマトリクス粒子の平均粒径が2Rよりも大きい場合(2R<R)には、異常粒の数密度は「0」であるが、単結晶の成長速度が遅過ぎ、大きな単結晶を製造することができない。
【0089】
本発明は、前記圧電単結晶の単独からなる、または、前記圧電単結晶とポリマーとが複合化された圧電体を提供する。
【0090】
前記ポリマーは、特に限定されないが、代表的な一例として、エポキシ樹脂を混用するとき、機械的衝撃に対する抵抗性が大きく、機械加工が容易な形状で提供され得る。
【0091】
さらには、本発明は、化学式1の組成式を有するペロブスカイト型圧電単結晶からなる圧電体、または、圧電単結晶とポリマーとが複合化された圧電体を用いた圧電応用部品及び誘電応用部品を提供する。具体的に、圧電応用部品は、超音波トランスデューサ(医療用超音波診断器、ソナー用トランスデューサ、非破壊検査用トランスデューサ、超音波洗浄機、超音波モータなど)、圧電アクチュエータ(d33型アクチュエータ、d31型アクチュエータ、d15型アクチュエータ、微細位置制御用の圧電アクチュエータ、圧電ポンプ、圧電バルブ、圧電スピーカなど)、圧電センサ(圧電加速度計など)、電界放射トランスデューサ(Electric Field Generating Transducers)、及び電界-振動放射トランスデューサ(Electric Field and Vibration Generating Transducers)などがある。
【0092】
また、誘電応用部品は、高効率キャパシタ(capacitor)、赤外線センサ、誘電体フィルタなどがある。
【0093】
<実施例>
以下、実施例によって、本発明についてさらに詳しく説明する。
本実施例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0094】
<実施例1~6>[A]サイトイオンの複合組成を満たした圧電単結晶の製造
ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)の圧電単結晶を固相単結晶成長法で製造するが、前記[A]サイトイオンの複合組成からなる、表1に示された実施例1乃至実施例6の圧電単結晶を製造した。また、粉末合成工程において、過量のMgOとPbOを追加して、製造された単結晶の内部には、MgO第二相と気孔強化相2vol%が含まれるようにした。先ず、MgOとNb粉末をボールミリングして混合した後、か焼してMgNb相を製造し[コロンバイト(Columbite)法を適用]、追加で原料粉末を定量比でさらに混合し、か焼して、ペロブスカイト相粉末を製造した。前記製造された粉末に、過量のPbOとMgOを添加して混合粉末を製造した。前記混合粉末を成形した後、200MPaの靜水圧で加圧成形し、粉末成形体は900℃と1300℃との間の様々な温度で、25℃間隔で、100時間までそれぞれ熱処理した。多結晶体のマトリクス粒子の平均粒径(R)を、異常粒の生成が生じる臨界粒径の0.5倍以上2倍以下である大きさ範囲(0.5R≦R≦2R)に調節できる条件として、添加される過量PbOの量が10~20mol%の範囲と決定され、熱処理温度が1000~1200℃範囲と決定された(1次焼結)。このように製造された多結晶体上にBa(Ti0.7Zr0.3)Oの種子単結晶を載置して熱処理し(単結晶成長熱処理)、種子単結晶の多結晶体内への連続的な成長を用いて多結晶体組成の単結晶を製造した。
【0095】
前記多結晶体のマトリクス粒子の平均粒径(R)を異常粒の生成が生じる臨界粒径(異常粒の数密度が「0(zero)」になるマトリクス粒子の平均粒径、R)の0.5倍以上2倍以下である大きさ範囲(0.5R≦R≦2R)に調節したとき、種子単結晶は多結晶体の内部で連続的に成長した。本実施例では、過量PbOの量と熱処理温度を調節したとき、多結晶体のマトリクス粒子の平均粒径(R)を異常粒の生成が生じる臨界粒径の0.5倍以上2倍以下である大きさ範囲に調節することができた。多結晶体のマトリクス粒子の平均粒径(R)を0.5R≦R≦2Rの範囲に調節したとき、熱処理中にBa(Ti0.7Zr0.3)Oの種子単結晶が多結晶体の内部で連続的に成長して、多結晶のような組成の単結晶が製造され、成長した単結晶の大きさは20×20mm以上であった。また、セラミックス粉末成形体の1次焼結と単結晶成長の熱処理中に雰囲気内の酸素分圧を変化させながら圧電単結晶を製造した。
【0096】
<実施例7~9>[B]サイトイオンの複合組成を満たした圧電単結晶の製造
実施例1のような固相単結晶成長法で、[B]サイトイオンの複合組成を満たす下記表1に提示された実施例7乃至実施例9の圧電単結晶を製造した。また、粉末合成工程において、過量のMgOとPbOを追加して、製造された単結晶の内部には、MgO第二相と気孔強化相2vol%が含まれるようにした。
【0097】
固相単結晶成長法で製造された実施例1乃至9の圧電単結晶についての誘電及び圧電特性をインピーダンス分析器とd33メーターなどを用いて分析した。
【0098】
【表1】
【0099】
<実験例1>(Pb、Sr、La)(Mg1/2Nb2/3)(Zr、Ti)Oの圧電単結晶の誘電及び圧電特性
評価1
前記実施例1で製造された(Pb、Sr、La)(Mg1/2Nb2/3)(Zr、Ti)Oの圧電単結晶について、下記表2に提示されたように、[A]サイトイオンの複合組成のうち、a/bによって製造された圧電単結晶の誘電及び圧電特性を評価した。
【0100】
さらに具体的には、前記製造された[Pb1-(a+1.5b)SrLa][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]O(a=0.02;0.0≦b≦0.1)の単結晶において、b[La(+3)の含量]とa/b[Sr(+2)/La(+3)の割合]の変化による誘電定数、相転移温度(T及びTRT)、圧電定数、及び抗電界(E)の特性変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定して、下記表2に記載した。
【0101】
【表2】
【0102】
前記表2の結果から、(001)圧電単結晶(a=0.02;b=0.01;a/b=2)の圧電電荷定数、誘電定数、及び誘電損失特性を評価した結果、圧電定数(d33)は2,650[pC/N]であり、誘電定数は8,773であり、誘電損失(tanδ)は0.5%であった。
【0103】
前記の結果、b[La(+3)の含量]とa/b[Sr(+2)/La(+3)の割合]の変化によって、圧電単結晶の物性が大きく変化することが観察された。特に、「a/b<2」である組成では、単結晶の成長が制限的に起こり、成長した単結晶も、多くの欠陥を含んだ。また、「a/b<2」である組成では、誘電損失が大きく増加し、誘電及び圧電定数も大きく減少した。
【0104】
したがって、「a/b≧2」である組成領域において、単結晶の成長速度及び成長した単結晶の状態も相対的に優れた。このような結果は、「a/b≧2」組成の圧電単結晶が、さらに優れた圧電特性と単結晶の成長特性により、実際の応用可能性が高いことを示した。
【0105】
また、前記製造された[Pb1-(a+1.5b)SrLa][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]O(0.0<a≦0.15、b=0.01)の単結晶において、a[Sr(+2)の含量]とa/b[Sr(+2)/La(+3)の割合]の変化による誘電定数、相転移温度(T及びTRT)、圧電定数、及び抗電界(E)の特性変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定して、下記表3に記載した。
【0106】
【表3】
【0107】
前記表3に示すように、a[Sr(+2)の含量]とa/b[Sr(+2)/La(+3)の割合]の変化によって、圧電単結晶の物性が大きく変化することが観察された。特に、「a/b<2」である組成では、単結晶の成長が制限的に起こり、また、成長した単結晶も多くの欠陥を含んだ。また、「a/b<2」である組成では、誘電及び圧電定数も大きく減少し、誘電損失が大きく増加した。
【0108】
したがって、「a/b≧2」である組成領域において、単結晶の成長速度及び成長した単結晶の状態も相対的に優れた。このような結果は、「a/b≧2」組成の圧電単結晶が、さらに優れた圧電特性と単結晶の成長特性により、実際の応用可能性が高いことを示した。
【0109】
前記実施例1で製造された[Pb1-(a+1.5b)SrLa][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]Oの単結晶において、a[Sr(+2)の含量]、b[La(+3)の含量]、a/b[Sr(+2)/La(+3)の割合]の変化による圧電単結晶の成長(Growth)と圧電物性を評価すると、「0.01≦a≦0.10」と「0.01≦b≦0.05」の組成領域において、単結晶の成長と物性に優れた。さらに好ましくは、a/b≧2である場合、最も優れた圧電単結晶を開発することができた。
【0110】
<実験例2>(Pb、Ca、Sr、Sm)(Mg1/2Nb2/3)(Zr、Ti)Oの圧電単結晶の誘電及び圧電特性
評価2
前記実施例2で製造された[Pb1-(a+1.5b+c)CaSrSm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O(0.0≦a≦0.15、0.0≦b≦0.1、0.0≦c≦0.1)組成の圧電単結晶について、[A]サイトイオンの複合組成のうち、a[Sr(+2)の含量]、c[Ca(2+)の含量]、(a+c)/b[(Sr(+2)+Ca(2+))/Sm(+3)の割合]の変化による誘電定数、相転移温度(TとTRT)、圧電定数、及び抗電界(E)の特性変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定して、下記表4に記載した。
【0111】
【表4】
【0112】
前記表4の結果から、(001)圧電単結晶(a=0.02、b=0.01、c=0.00)の圧電電荷定数、誘電定数、及び誘電損失特性を評価した結果、圧電定数(d33)は4,457[pC/N]であり、誘電定数は14,678であり、誘電損失(tanδ)は1.0%であった。
【0113】
前記表4に示すように、a[Sr(+2)の含量]、c[Ca(2+)の含量]、及び(a+c)/b[(Sr(+2)+Ca(2+))/Sm(+3)の割合]の変化によって、圧電単結晶の物性が大きく変化することが観察された。特に、「(a+c)/b<2」である組成では、単結晶成長が制限的に行われ、成長した単結晶も多くの欠陥を含んだ。また、「(a+c)/b<2」である組成では、誘電損失が大きく増加し、誘電及び圧電定数も大きく減少した。
【0114】
したがって、「(a+c)/b≧2」である組成領域において、単結晶の成長速度及び成長した単結晶の状態も相対的に優れた。このような結果は、「(a+c)/b≧2」組成の圧電単結晶が、さらに優れた圧電特性と単結晶の成長特性により、実際の応用可能性が高いことを示した。
【0115】
また、前記実施例2で製造された[Pb1-(a+1.5b+c)CaSrSm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O(0.0≦a≦0.15、0.0≦b≦0.1、c=0.01)の単結晶において、a[Sr(+2)の含量]、b[Sm(3+)の含量]、及び(a+c)/b[(Sr(+2)+Ca(2+))/Sm(+3)の割合]の変化による誘電定数、相転移温度(TとTRT)、圧電定数、抗電界(E)の特性変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定して、下記表5に記載した。
【0116】
【表5】
【0117】
前記表5に示すように、単結晶において、a[Sr(+2)の含量]、b[Sm(3+)の含量]、及び(a+c)/b[(Sr(+2)+Ca(2+))/Sm(+3)の割合]の変化によって、圧電単結晶の物性が大きく変化することが観察された。特に、「(a+c)/b<2」である組成では、単結晶の成長が制限的に行われ、また、成長した単結晶も多くの欠陥を含んだ。また、「(a+c)/b<2」である組成では、誘電損失が大きく増加し、誘電及び圧電定数も大きく減少した。
【0118】
したがって、「(a+c)/b≧2」である組成領域において、単結晶の成長速度及び成長した単結晶の状態も相対的に優れた。このような結果は、「(a+c)/b≧2」組成の圧電単結晶が、さらに優れた圧電特性と単結晶の成長特性により、実際の応用可能性が高いことを示した
【0119】
また、前記実施例2で製造された[Pb1-(a+1.5b+c)CaSrSm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O(0.0≦a≦0.15、0.0≦b≦0.1、0.0≦c≦0.1)の単結晶において、a[Sr(+2)の含量]、b[Sm(+3)の含量]、c[Ca[+2]の含量]、及び(a+c)/bの変化による圧電単結晶の成長(Growth)と圧電物性を評価すると、「0.01≦(a+c)≦0.10」と「0.01≦b≦0.05」の組成領域において、単結晶成長と物性に優れた。さらに好ましくは、(a+c)/b≧2である場合、最も優れた圧電単結晶を開発することができた。
【0120】
<実験例3>(Pb、Ni、Sm)(Mg1/2Nb2/3)(Zr、Ti)Oの圧電単結晶の誘電及び圧電特性
評価3
前記実施例3で製造された[Pb1-(a+1.5b)NiSm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O(0.0≦a≦0.15、0.0≦b≦0.1)組成の圧電単結晶について、a=0.02、 0.0≦b≦0.1組成の単結晶において、a[Niの含量]とa/b[Ni/Smの割合]の変化による誘電定数、圧電定数、及び電気機械結合係数(k33)の特性変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定して、下記表6に記載した。
【0121】
【表6】
【0122】
前記表6に示すように、a[Ni含量]とa/b[Ni/Sm割合]の変化によって、圧電単結晶の物性が大きく変化することが観察された。特に、「a/b<2」である組成では、単結晶成長が制限的に行われ、また、成長した単結晶も多くの欠陥を含んだ。また、「a/b<2」である組成では、誘電損失が大きく増加し、誘電及び圧電定数も大きく減少した。
【0123】
したがって、「a/b≧2」である組成領域において、単結晶の成長速度及び成長した単結晶の状態も相対的に優れた。このような結果は、「a/b≧2」組成の圧電単結晶が、さらに優れた圧電特性と単結晶の成長特性により、実際の応用可能性が高いことを示した
【0124】
また、前記実施例3で製造された[Pb1-(a+1.5b)NiSm][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O(0.0≦a≦0.15、0.0≦b≦0.1)の単結晶において、a[Ni含量]、b[Sm含量]、a/bの変化による圧電単結晶の成長(Growth)と圧電物性を評価すると、「0.01≦a≦0.10」と「0.01≦b≦0.05」の組成領域において、単結晶成長と物性に優れた。さらに好ましくは、a/b≧2である場合、最も優れた圧電単結晶を開発することができた。
【0125】
<実験例4>(Pb、Sr、Bi)(Mg1/2Nb2/3)(Zr、Ti)Oの圧電単結晶の誘電及び圧電特性
評価4
前記実施例4で製造された[Pb1-(a+1.5b)SrBi][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O(0.0≦a≦0.15、0.0≦b≦0.1)組成の圧電単結晶について、a=0.02、0.0≦b≦0.1組成の単結晶において、a[Sr含量]とa/b[Sr/Bi割合]の変化による誘電定数、圧電定数、及び電気機械結合係数(k33)の特性変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定して、下記表7に記載した。
【0126】
【表7】
【0127】
前記表7に示すように、a[Sr含量]とa/b[Sr/Bi割合]の変化によって、圧電単結晶の物性が大きく変化することが観察された。特に、「a/b<2」である組成では、単結晶成長が制限的に行われ、また、成長した単結晶も多くの欠陥を含んだ。また、「a/b<2」である組成では、誘電損失が大きく増加し、誘電及び圧電定数も大きく減少した。
【0128】
したがって、「a/b≧2」である組成領域において、単結晶の成長速度及び成長した単結晶の状態も相対的に優れた。このような結果は、「a/b≧2」組成の圧電単結晶が、さらに優れた圧電特性と単結晶の成長特性により、実際の応用可能性が高いことを示した。
【0129】
また、前記実施例4で製造された[Pb1-(a+1.5b)SrBi][(Mg1/3Nb2/30.35Zr0.30Ti0.35]O(0.0≦a≦0.15、0.0≦b≦0.1)の単結晶において、a[Sr含量]、b[Bi含量]、a/bの変化による圧電単結晶の成長(Growth)と圧電物性を評価すると、「0.01≦a≦0.10」と「0.01≦b≦0.05」の組成領域において、単結晶成長と物性に優れた。さらに好ましくは、a/b≧2である場合、最も優れた圧電単結晶を開発することができた。
【0130】
<実験例5>(Pb、Sr、Sm)(Mg1/2Nb2/3)(Zr、Hf)TiOの圧電単結晶の誘電及び圧電特性
評価5
前記実施例7で製造された[Pb0.98-1.5xSrSm][(Mg1/3Nb2/30.35(Zr1-xHf0.30Ti0.35]O(0.0≦a≦0.15、0.0≦b≦0.1、0.0≦x≦0.5)の圧電単結晶について、a[Sr含量]、b[Sm含量]、a/b[Sr/Sm割合]、及びx[Hf含量]の変化による誘電定数、圧電定数、及び電気機械結合係数(k33)の特性変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定して、下記表8に記載した。
【0131】
【表8】
【0132】
前記表8に示すように、a[Sr含量]、b[Sm含量]、a/b[Sr/Sm割合]、及びx[Hf含量]の変化によって、圧電単結晶の物性が大きく変化することが観察された。特に、「0.0≦x≦0.5」である組成では、単結晶成長がさらに速く行われ、また、成長した単結晶内における欠陥も減少した。また、「0.0≦x≦0.2」である組成では、誘電及び圧電定数も増加した。このような結果は、「0.0≦x≦0.5」である組成では、圧電単結晶が、さらに優れた圧電特性と単結晶の成長特性により、実際の応用可能性が高いことを示した
【0133】
<実験例6>(Pb、Ni、Sm)(Mg1/2Nb2/3)(Zr、Hf)TiOの圧電単結晶の誘電及び圧電特性
評価6
前記実施例9で製造された[Pb0.98-1.5xNiSm][(Mg1/3Nb2/30.35(Zr1-xHf0.30Ti0.35]O(0.0≦a≦0.1、0.0≦b≦0.1、0.0≦x≦0.5)の圧電単結晶について、a[Ni含量]、b[Sm含量]、a/b[Ni/Sm割合]、及びx[Hf含量]の変化による誘電定数、圧電定数、及び電気機械結合係数(k33)の特性変化を、それぞれインピーダンス分析器などを用いてIEEE法で測定して、下記表9に記載した。
【0134】
【表9】
【0135】
前記表9に示すように、a[Ni含量]、b[Sm含量]、a/b[Ni/Sm割合]、及びx[Hf含量]の変化によって、圧電単結晶の物性が大きく変化することが観察された。特に、「0.0≦x≦0.5」である組成では、単結晶成長がさらに速く行われ、また、成長した単結晶内における欠陥も減少した。また、「0.0≦x≦0.2」である組成では、誘電及び圧電定数も増加した。このような結果は、「0.0≦x≦0.5」である組成では、圧電単結晶が、さらに優れた圧電特性と単結晶の成長特性により、実際の応用可能性が高いことを示した。
【0136】
<実験例7> 破壊強度の測定
前記実施例1で製造された[Pb1-(a+1.5b)SrLa][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]O(0.0≦a≦0.15、b=0.01)組成の圧電単結晶について、単結晶内の気孔の含量による破壊強度(Fracture Strength)及び破壊靭性(Fracture Toughness)などの機械的特性を比較評価した。このとき、破壊強度値を、ASTM法によって4点曲げ強度測定法で測定し、その結果を、下記の表10(a=0.02、b=0.01)と表11(a=0.04、b=0.01)に記載した。
【0137】
【表10】
【0138】
【表11】
【0139】
前記結果から、固相単結晶成長法で製造された[Pb1-(a+5b)La][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]O(0.0≦a≦0.15、b=0.01)の圧電単結晶は、単結晶の内部に気孔を含む場合、破壊強度及び破壊靭性が増加する傾向を示し、気孔の含量が20%以内であるとき、高い破壊強度と破壊靭性の値を示した。特に、気孔の形状が球形に近いほど、機械的特性の向上の効果は増加した。したがって、単結晶の内部に気孔とMgOなどの強化相を含ませる場合は、単結晶の、外部の機械的衝撃に対する抵抗性が増加し、結果的に、複合体の単結晶の機械的性能が大きく向上した結果を示した。
【0140】
以上の結果から、圧電単結晶の組成により、圧電特性を最大化し、また、強化相を用いて単結晶の機械的特性を高めて、圧電単結晶の高い圧電特性を維持し、機械的脆性(Brittleness)特性を改善した、両特性の全てに優れた圧電単結晶を製作した。
【0141】
以上、本発明は、記載された具体例についてのみ詳しく説明されたが、本発明の技術思想の範囲内で、様々な変形及び修正が可能であることは、当業者にとって明白なものであり、これらの変形及び修正が、添付の特許請求の範囲に属する。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
前記強化第二相Pは、金属相、酸化物相、または気孔(pore)である
請求項7に記載の圧電単結晶。
【国際調査報告】