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2023-549455脊髄性筋萎縮症を治療するための抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-27
(54)【発明の名称】脊髄性筋萎縮症を治療するための抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20231117BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231117BHJP
   C07K 16/22 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P21/00
C07K16/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524333
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 US2021056517
(87)【国際公開番号】W WO2022093724
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/105,850
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/106,172
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/200,955
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/201,157
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/202,317
(32)【優先日】2021-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/202,372
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/202,900
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/260,725
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/261,398
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】515120006
【氏名又は名称】スカラー ロック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SCHOLAR ROCK,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ノミコス ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ソン グオチェン
(72)【発明者】
【氏名】イアロビノ ライアン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ユン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、単剤療法としての、又はSMN上方制御薬/修正薬療法などの運動ニューロン指向療法の補助剤としてのいずれかの、ヒト対象の脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療するための抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体を含む治療方法、使用、及び組成物に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象の脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、前記治療が、アピテグロマブを2mg/kg超20mg/kg以下の量で4週間に1回又は月1回の間隔で少なくとも24週間又は6ヵ月間にわたって静脈内投与することによるSMAの治療を含む、使用のための組成物。
【請求項2】
前記投与が、臨床的利益を実現するのに十分である、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記治療が、運動機能の喪失を予防するのに十分である、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記治療が、運動機能の喪失を遅延させるのに十分である、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記治療が、運動機能を増加させるのに十分である、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記運動機能が、ベースライン時のHFMSEと比べた治療開始6ヵ月後のハマースミス機能運動評価尺度拡大版スコア(HFMSE)によって測定される、請求項3~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記アピテグロマブが、少なくとも52週間又は12ヵ月間にわたって投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記投与が、(a)治療前のベースラインと比べたHFMSEスコアの低下を予防し又は遅延させる;(b)前記ヒト対象が、ベースラインと比べたHFMSEスコアの増加、ベースラインと比べた改訂版上肢モジュールの増加、ベースラインと比べた改訂版ハマースミススコアの増加、又はベースラインと比べたWHO運動発達マイルストーンの数の増加を実現する;及び/又は(c)前記ヒト対象がベースラインと比べたHFMSEスコアの少なくとも1点、少なくとも2点又は少なくとも3点の増加を実現するのに十分である、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記ヒト対象が2歳以上の年齢である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記ヒト対象が2~21歳である、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記ヒト対象が2~10歳である、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記ヒト対象が2~5歳である、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記脊髄性筋萎縮症が遅発型SMAである、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記遅発型SMAが2型SMA又は歩行不能3型SMAである、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記遅発型SMAが歩行可能3型SMAである、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
アピテグロマブが10mg/kgの量で静脈内投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
アピテグロマブが20mg/kgの量で静脈内投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記対象がSMN1突然変異を有し、且つSMN2遺伝子を少なくとも2コピー有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記ヒト対象がまたSMN上方制御療法も投与される、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
前記SMN上方制御療法が、ヌシネルセン及び/又はリスジプラムから選択される、請求項19に記載の使用のための組成物。
【請求項21】
治療に選択された前記ヒト対象のベースライン血清潜在型ミオスタチン濃度が少なくとも1ng/mLであり(例えば、1.5ng/mlより高い、2ng/mlより高い、2.5ng/mlより高い、又は3ng/mlより高い)、及び任意選択で前記ヒト対象が遅発型SMA、好ましくは2型SMAを有する、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項22】
ヒト対象の脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、前記治療が、
(a)アピテグロマブの投与後に前記ヒト対象において定常状態で少なくとも250ng/ml(例えば、550~2400ng/ml)の血清潜在型ミオスタチン濃度を実現する;及び/又は
(b)アピテグロマブの投与後に前記ヒト対象において定常状態で少なくとも50ug/mlの血清アピテグロマブ濃度を実現する
のに十分な量でのアピテグロマブの投与を含む、使用のための組成物。
【請求項23】
前記定常状態がアピテグロマブの投与後14日以降である、請求項22に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
アピテグロマブを2mg/kg超20mg/kg以下の量で4週間に1回又は月1回の間隔で、好ましくは少なくとも52週間又は12ヵ月間にわたって投与することによる、ヒト対象における脊髄性筋萎縮症の治療用医薬品の製造におけるアピテグロマブの使用であって、任意選択で前記治療が、請求項1~23のいずれか一項に定義されるとおりであり、及び前記投与が、運動機能の喪失を予防若しくは遅延させる、又は運動機能を増加させるのに十分である、使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、この配列表は本明細書によって全体として参照により援用される。2021年10月22日に作成された前記ASCII複製物は、15094_0012-00304_SL.txtという名称で、サイズが30,325バイトである。
【0002】
関連出願
本願は、各々「USE OF ANTI-PRO/LATENT MYOSTATIN ANTIBODY FOR TREATING SPINAL MUSCULAR ATROPHY」と題される2020年10月26日に出願された米国仮特許出願第63/105,850号明細書;2020年10月27日に出願された同第63/106,172号明細書;2021年4月5日に出願された同第63/200,955号明細書;2021年4月15日に出願された同第63/201,157号明細書;2021年6月6日に出願された同第63/202,317号明細書;2021年6月8日に出願された同第63/202,372号明細書;2021年6月29日に出願された同第63/202,900号明細書;2021年8月30日に出願された同第63/260,725号明細書;及び2021年9月20日に出願された同第63/261,398号明細書の利益及びそれに対する優先権を主張するものであり、これらの内容は、全体として参照により本明細書に明示的に援用される。
【0003】
本開示は、ヒト患者の脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療するための抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体を含む治療方法、使用、及び組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
ミオスタチン、別名、GDF-8又はGDF8と略される成長分化因子8は、筋恒常性の制御因子である。ミオスタチンの喪失を引き起こす突然変異、並びにミオスタチン活性の薬理学的阻害は、ヒトを含めた幾つもの種で筋成長を増加させることが示されている。過去15年間にわたり、少なくとも15個の異なるミオスタチン阻害薬薬物候補が、小分子及び生物製剤を含め、様々な筋障害の治療を目標としてヒト患者で評価されてきたが、現在までのところ、臨床で成功を収めたものは1つもない(Hanna et al.(2019)Lancet Neurol.18(9):834-844;Rooks et al.(2020)JAMA Netw Open.3(10):e2020836)。多数が前臨床モデルでは有効性(例えば、筋量の増加)を示すことが可能であったが、現在までのところ、ヒト患者の筋障害の治療に臨床的利益を実現するに至るまでのその橋渡しに成功を収めたものは1つもない。更に、これらの阻害薬のほとんどは選択性を欠いていたため、アクチビンAなど、他の関連する成長因子に拮抗し、毒性の懸念をもたらした。これらの計画のほとんどは、現在中断されている。このように、多くの場合、満足のいく前臨床結果も、安全で有効な薬物への橋渡しには成功していない。
【0005】
筋疾患、詳細にはSMAに対する治療の唯一の標的として、ミオスタチン阻害は幾分かの懐疑論を持って迎えられている。例えば、SMA患者ではミオスタチン発現が低下することが示唆されているが、これは、ミオスタチンが有効な治療標的ではない可能性があることを示唆するものであった(Burch et al.(2017)J Neurol.264(3):541-553;Mariot et al.(2017)Nat Commun.8(1):1859。Latres et al.(April 2017)は、ミオスタチンよりむしろ、アクチビンAの方が、霊長類では筋量の制御因子として顕著であることを示唆し、アクチビンAの方が良好な治療標的となり得ることを指摘した。実際、同グループは、所持しているミオスタチン選択的阻害薬が利用可能であるにもかかわらず、IBMではミオスタチン選択的阻害薬とアクチビンA阻害薬との組み合わせで臨床に入ることを選択した。この計画は後に中止された。
【0006】
SMAは、脊髄の前角における運動ニューロンの変性によって四肢及び体幹の随意筋に萎縮が生じること特徴とするまれな常染色体劣性神経筋疾患である。SMAは、直接的には、ホモ接合性欠失によって引き起こされる生存運動ニューロン(SMN)タンパク質レベルの低下、及びまれには染色体5q13.2上の生存運動ニューロン1(SMN1)遺伝子内の突然変異によって生じる。SMNタンパク質の欠損は運動ニューロンの機能不全を引き起こし、最終的には死亡を招く。
【0007】
国によっては、小児及び成人SMA患者の治療にSPINRAZA(登録商標)(ヌシネルセン)が承認されており、SMN1遺伝子に二対立遺伝子突然変異を有する2歳未満のSMA小児患者の治療向けにZOLGENSMA(登録商標)(オナセムノゲンアベパルボベク)が承認されている。米国及び欧州では、小分子SMN療法であるEVRYSDI(商標)(リスジプラム)もまた承認されている。ヌシネルセンは、SMNタンパク質欠乏につながる突然変異によって引き起こされるSMAを治療するように設計されたSMN2指向性アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。リスジプラムも同じように働き、SMN2メッセンジャーRNAのスプライシングを修飾するピリダジン誘導体である。オナセムノゲンアベパルボベクは、ヒトSMNタンパク質をコードする遺伝子のコピーを送達するように設計された組換えアデノ随伴ウイルスベクター9型ベースの遺伝子療法である。
【0008】
ヌシネルセン、リスジプラム、オナセムノゲンアベパルボベク、及び開発中の他の製品など、SMN療法(又はSMN指向療法)は、主に運動ニューロンに作用して更なる喪失を防ぐ。この概念と一致して、延長SMN指向療法から報告された臨床データは、ヌシネルセンによる最初の15ヵ月間の治療において、HFMSEスコアのベースラインからの平均変化によって測定したとき改善があった後、効果はほぼ定常状態で一定となるように見えることを指し示している。次の3年以上にわたって運動機能のそれ以上の増強が限られていることが認められる(Darras et al.(2019)Neurology 92(21):e2492-e2506)。同様に、リスジプラムの長期評価では、12ヵ月後に、主要及び副次的エンドポイントの安定化又は軽微な/不定の改善しか見られなかった(Oskoui et al.“SUNFISH Part 2:24-month efficacy and safety of risdiplam in patients with type 2 or non-ambulant type 3 spinal muscular atrophy(SMA).”Presented at MDA Clinical and Scientific Conference 2021;March 15-18.Poster 80)。従ってSMN指向療法は、時間の経過に伴う運動機能の維持を助け得るが、長期にわたる運動機能増強の付与については限られていると言える。このように、承認されている治療は低年齢のSMA患者において、特に治療の初期段階で運動機能の改善を示しているが、そもそも症候性SMA患者の既存の萎縮及び運動機能障害に対処するような筋肉への直接的な作用はない。
【0009】
本開示の出願人は、以前、ミオスタチン阻害が特に有利になる可能性が高い適応疾患を選択する際の少なくとも3つの判定基準が、i)標的筋肉がアナボリック活性を示していること(例えば、なおも成長期にある);ii)運動単位(運動ニューロン及び神経支配している標的筋肉)が少なくとも部分的に機能上インタクトであること;及び、iii)標的筋肉が速筋(II型)線維に優先的に頼ることであると同定した(国際公開第2017/218592号パンフレットを参照されたい)。この認識に基づき、本出願人は、上記の判定基準(ii)に対処する併用SMN増強療法(例えば、SMN上方制御薬/修正薬療法)によって運動単位機能が増強されるSMA前臨床モデルでミオスタチンの選択的阻害の治療効果を実証しており、SMN上方制御薬/修正薬など、運動ニューロン増強剤の効果を補完するためにミオスタチン阻害薬などの筋増強剤を使用し得るという概念を裏付けた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在、SMAの治療に承認されている筋指向療法(例えば、筋増強療法)はない。結果的に、SMA患者の筋萎縮及び運動機能障害に対処することのできる有効な筋指向療法が必要とされ続けているが、未だ取り組みはなされていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、とりわけ、SRK-015としても知られるアピテグロマブなど、筋増強剤を使用してSMA患者を治療するための治療方法、使用、及び組成物を含む。様々な実施形態において、アピテグロマブ又はアピテグロマブを含む組成物がヒト対象の遅発型SMAの治療において、単剤療法として、又はSMN上方制御薬/修正薬療法(即ち、SMN療法)など、運動ニューロン指向療法の補助剤としてのいずれかで使用される。本明細書に提供されるデータは、ミオスタチンを選択的に阻害することによるヒト患者の運動機能改善を臨床的に実証した初めての例に相当する。従って、本開示は、本明細書に記載されるとおりのアピテグロマブ療法に反応するか、又はその他それから利益を得る可能性が高いSMA患者又は患者集団の同定及び選択を包含する。12ヵ月間にわたって本アピテグロマブ療法を受けた2型及び3型SMA患者のデータからは、一般的な傾向として、バックグラウンド療法、例えば、SMN上方制御薬/修正薬療法の継続期間(又は受けた用量数)に関係なく、年齢が低い患者集団ほど反応が一層ロバストであることが指摘される。これは、標的筋肉のタンパク同化能力が、ミオスタチン阻害に対する反応性を決定する重要な要因であり得るという本発明者らの先の仮説と一致している(米国特許第10,946,036号明細書、この内容は全体として本明細書により援用される)。
【0012】
本明細書には、SMAを有する対象を治療するためのアピテグロマブ療法が提供される。本開示によれば、アピテグロマブを含む組成物を使用してヒト患者の遅発型SMAが治療される。アピテグロマブ療法は、患者への治療用量での組成物の静脈内投与を含む。治療用量とは、患者において臨床的利益を生み出すアピテグロマブの量を指す。臨床的利益(例えば、有効性)は、本明細書に記載されるものなどの好適な臨床エンドポイントによって測定又は判定し得る。本明細書に提示されるデータによれば、一部の実施形態において、治療用量は、4週間毎(即ち、Q4W)又は毎月投与したとき、2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブである。一部の実施形態において、5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、12mg/kg及び15mg/kgなど、20mg/kg未満の治療用量が検討されてもよい。一部の実施形態において、治療用量は10mg/kgである。一部の実施形態において、治療用量は20mg/kgである。一部の実施形態において、治療用量は、4週間に1回(即ち、Q4W)又は月1回投与される10mg/kgである。一部の実施形態において、治療用量は、4週間に1回(即ち、Q4W)又は月1回投与される20mg/kgである。様々な実施形態において、アピテグロマブ療法は、遅発型SMAを有する患者の運動機能を改善し得る。
【0013】
薬物動態学(PK)解析は、療法薬の投薬量(例えば、治療用量)とバイオアベイラビリティ(血清曝露量)との間の関係を提供する。一部の実施形態において、治療用量は、定常状態においてアピテグロマブの血清濃度をトラフで測定したとき(Ctrough)、アピテグロマブへの約25~250μg/mLの血清曝露量を実現する、又はそれを生じさせる用量である。この結果を実現する用量は、任意の好適な経路、例えば、静脈内又は皮下によって投与されてもよい。
【0014】
一部の実施形態において、治療用量は、投与(用量付与)から約2時間以内にアピテグロマブの血清濃度をピークで測定したとき(Cmax)、約1100μg/mL以下の血清曝露量、例えば、約25~1100μg/mLを実現する、又はそれを生じさせる用量である。この結果を実現する用量は、任意の好適な経路、例えば、静脈内又は皮下によって投与されてもよい。
【0015】
薬力学(PD)解析は、潜在型ミオスタチン(LM)の血清濃度により測定したときの標的会合の判定を可能にする。一部の実施形態において、治療用量は、好ましくは定常状態で、例えば、アピテグロマブの投与から14日以上経った後に測定した潜在型ミオスタチンの少なくとも約100又は好ましくは少なくとも約250ng/mLの血清濃度を実現する、又はそれを生じさせる用量である。この結果を実現する用量は、任意の好適な経路、例えば、静脈内又は皮下によって投与されてもよい。例えば、潜在型ミオスタチンの血清濃度は、約250ng/mL以上、400ng/mL又は550ng/ml超又は700ng/ml超又は950ng/ml超又は1100ng/ml超等であり得る。
【0016】
アピテグロマブ又は別の選択的ミオスタチン阻害薬は、SMAの治療に単独で使用されても(例えば、単剤療法)、又はSMN指向療法など、別の療法と併せて使用されても(例えば、追加/補助療法又は組み合わせ療法)、いずれであってもよい。一部の実施形態において、対象はSMN上方制御薬療法で治療される。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、ヌシネルセン(SPINRAZA(登録商標))、リスジプラム(Evrysdi(登録商標))、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベク(ZOLGENSMA(登録商標))である。一部の実施形態において、SMN制御薬療法は、ヌシネルセンである。一部の実施形態において、SMN制御薬療法は、リスジプラムである。一部の実施形態において、SMN制御薬療法は、オナセムノゲンアベパルボベクである。一部の実施形態において、対象はSMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始した。
【0017】
一部の実施形態において、SMN指向療法及びアピテグロマブ療法(例えば、筋指向療法)は、組み合わせ療法として使用される。このように、患者の遅発型SMAの治療においてSMN修正薬及びアピテグロマブが使用されてもよく、ここでこの治療は、SMAを治療するのに十分な量のSMN修正薬及びアピテグロマブの投与を含み、ここでアピテグロマブ療法は、患者に2mg/kg超20mg/kg以下の用量で4週間毎に又は毎月静脈内投与される。一部の実施形態において、SMN修正薬はSMN1指向遺伝子療法であり、ここで任意選択で、SMN1指向療法は遺伝子療法である。一部の実施形態において、SMN修正薬はSMN2指向療法であり、ここで任意選択で、SMN2指向療法はスプライシング修飾薬である。一部の実施形態において、SMN修正薬は、経口投与、髄腔内投与又は静脈内投与されてもよい。一部の実施形態において、患者は遅発型SMAを有する。一部の実施形態において、患者は2型SMAを有する。一部の実施形態において、患者は歩行不能3型SMAを有する。一部の実施形態において、患者は歩行可能3型SMAを有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を2コピー有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を3コピー有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を4コピー有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を5コピー有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を6コピー有する。一部の実施形態において、患者はこの組み合わせ療法を5歳未満の年齢で始める。一部の実施形態において、患者はこの組み合わせ療法を2歳未満の年齢で始める。一部の実施形態において、患者はこの組み合わせ療法を生後6週間未満の年齢で始める。一部の実施形態において、患者はこの組み合わせ療法を5歳以上の年齢で始める。一部の実施形態において、患者は遺伝子スクリーニングによってSMAと診断され(例えば、SMN1突然変異の保因者と同定され)、ここで任意選択で、遺伝子スクリーニングは、例えば1つ又は複数のSMN1突然変異に関する新生児スクリーニング、子宮内スクリーニングである。一部の実施形態において、患者は発症前である。
【0018】
一部の実施形態において、SMAの治療にアピテグロマブ療法が追加又は補助療法として使用される。このように、患者の遅発型SMAの治療においてアピテグロマブを含む組成物が使用されてもよく、ここでこの治療は、治療用量のアピテグロマブを含む組成物の静脈内投与を含み、ここで治療用量は、4週間毎に又は毎月2mg/kg超20mg/kg以下であり、及びここで患者はSMN修正薬療法で治療される。一部の実施形態において、SMN修正薬はSMN1指向療法であり、ここで任意選択で、SMN1指向療法は遺伝子療法である。一部の実施形態において、SMN修正薬はSMN2指向療法であり、ここで任意選択で、SMN2指向療法はスプライシング修飾薬である。一部の実施形態において、SMN修正薬はいずれも、経口投与、髄腔内投与又は静脈内投与されてもよい。一部の実施形態において、患者は2型SMAを有する。一部の実施形態において、患者は歩行不能3型SMAを有する。一部の実施形態において、患者は歩行可能3型SMAを有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を2コピー有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を3コピー有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を4コピー有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を5コピー有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を6コピー有する。一部の実施形態において、患者はSMN修正薬療法を5歳未満の年齢で始める。一部の実施形態において、患者はSMN修正薬療法を5歳以上の年齢で始める。一部の実施形態において、患者は遺伝子スクリーニングによってSMAと診断され(例えば、SMN1突然変異の保因者と同定され)、ここで任意選択で、遺伝子スクリーニングは新生児スクリーニングである。一部の実施形態において、患者は発症前である。一部の実施形態において、患者は、アピテグロマブ療法の前にSMN修正薬で治療される。一部の実施形態において、患者は、SMN修正薬療法を受ける前にアピテグロマブで治療される。
【0019】
アピテグロマブ療法から利益を受け得るSMA患者には、以下の判定基準のうちの1つ以上を満たす者が含まれる:SMAに対する療法を受ける前に5q SMA及び遅発型(及び/又は2型又は3型)SMAの診断記録を有する;WHO運動マイルストーンの定義に従い自力で座ることができる歩行不能の対象;10メートルを30秒以内に助けなしで自力で歩くことができる歩行可能な対象;63点以下の改訂版ハマースミス評価尺度(Revised Hammersmith Scale)スコア及び/又は10点以上のハマースミス機能運動評価尺度拡大版(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded)スコアを有する対象;気管切開下陽圧換気又は治療前2週間以内の連日16時間を超える慢性的な昼間の非侵襲的換気補助を使用しない対象;治療前の2週間以内に対象のウェルビーイングを妨げる何らか急性の又は併存する病態を有しない対象;重度の脊柱側彎又は拘縮を有しない対象;及び/又は承認済みのSMN指向療法、例えば、SMN上方制御薬(別名、SMN修正薬)療法以外の全身性コルチコステロイド薬、バルプロ酸、又は筋若しくは神経筋への効果を持つ可能性のある療法を60日以内に使用しない対象。筋又は神経筋への効果を持つ可能性のある療法としては、アンドロゲン類、インスリン様成長因子、成長ホルモン、全身性β作動薬、ボツリヌス毒素、筋弛緩薬、筋増強サプリメント又はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が挙げられる。一部の実施形態において、患者は、SMAに対する療法を受ける前に5q SMA及び遅発型(及び/又は2型又は3型)SMAの診断記録を有し、且つ上記に挙げた追加の判定基準のうちの1つ以上を満たす。様々な実施形態において、本明細書に開示される方法は、例えば本明細書に開示される投薬量又はレジメンに従うアピテグロマブによる治療への1例又は複数例のかかる患者又は患者集団の選択を含む。
【0020】
アピテグロマブ療法から利益を受け得るSMA患者には、以下の判定基準のうちの1つ以上を満たす者が含まれる:smn2遺伝子を1、2、3又は4コピー有し、且つ世界保健機関(WHO)運動発達評価尺度に基づく粗大運動マイルストーンの1つ以上を実現する:1)支えなしで座る(例えば、少なくとも10秒間頭を起こしておく;腕又は手を使わずにバランスをとる);2)手及び膝をついて這う(例えば、少なくとも3回の連続した動きで、腹部が接地面に触れない);3)補助ありで立つ(例えば、何にも寄り掛かることなく少なくとも10秒間両足で直立する);4)補助ありで歩く(例えば、安定した物につかまりながら少なくとも5歩進む);5)支えなしで立つ(例えば、人又は物に触れずに少なくとも10秒間);及び、6)支えなしで歩く(例えば、自力で少なくとも5歩進む)。
【0021】
アピテグロマブ療法から利益を受け得るSMA患者には、以下の判定基準のうちの1つ以上を満たす者が含まれる:smn2遺伝子を1、2、3又は4コピー有し、且つハマースミス機能運動評価尺度拡大版(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded:HFMSE)に基づく粗大運動マイルストーンのうちの1つ以上を実現する:1)定頸(例えば、仰臥位にある間、頭を起こす又は起こしたまま保つことができる);2)寝返りを打つ;3)三脚位で座る(例えば、座っているときに手を使って体を支える);4)支えなしで座る;5)支えありで立つ;6)四つ這い/ハイハイ;7)つかまり立ち(例えば、つかまり立ちをして、家具に沿ってつたい歩きをする);8)支えなしで立つ;9)自力で数歩進むが倒れる;10)一人で歩く(例えば、自力で歩く、支えなしで歩く);11)しゃがんで物(例えば、玩具)を拾う;12)歩いて/四つ這いで階段を上り下りする;13)跳躍する;14)足を交互に出して階段を上がる;15)片足で跳ぶ;16)足を交互に出して階段を下りる。
【0022】
一部の実施形態において、本明細書に開示されるとおりのアピテグロマブで治療される患者は、SMN療法(SMN指向療法)、例えば、ヌシネルセンなどのSMN上方制御薬(修正薬)療法を受けたことがあるか、又はそれで治療される。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬(修正薬)療法を5歳未満の年齢で開始する。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬(修正薬)療法を5歳以降の年齢で開始する。一部の実施形態において、SMN修正薬療法は、SMN2上方制御薬療法である。一部の実施形態において、SMN修正薬療法は、SMN1遺伝子療法である。
【0023】
一部の実施形態において、患者は、アピテグロマブ療法を少なくとも6ヵ月(例えば、6ヵ月、12ヵ月、又はそれ以上)にわたり、運動機能改善、疾患安定化、又は疾患進行の遅延によって特徴付けられる臨床的利益を実現するのに十分な治療用量で受ける。
【0024】
一部の実施形態において、患者はアピテグロマブ療法を受け、運動機能の改善を達成し得る。運動機能改善は、HFMSEスコア又はRHSスコアの増加に対応し得る。例えば、患者は、6ヵ月間又は12ヵ月間のアピテグロマブによる治療(即ち、アピテグロマブ療法)の後にベースラインに対するHFMSEスコアの少なくとも1点、2点、3点、4点、5点又はそれ以上の増加を実現し得る。一部の実施形態において、12ヵ月間のアピテグロマブ療法は、低年齢でバックグラウンドSMN療法を開始した患者においてベースラインに対するHFMSEスコアの3点又はそれ以上の増加(例えば、少なくとも3点、少なくとも5点、少なくとも10点、約20点以下)を生み出し得る。一部の実施形態において、HFMSEスコアの改善はバックグラウンド療法、例えば、バックグラウンドSMN上方制御薬/修正薬療法と相加的であり、及び相乗的であってもよい。
【0025】
一部の実施形態において、患者はアピテグロマブ療法を受け、疾患安定化を示し得る。疾患安定化は、ベースラインに対するHFMSEスコア又はRHSスコアの正味ゼロ(例えば、少なくとも変化がないか、又は増加)又はゼロに近い変化に対応し得る。一部の実施形態において、これは、未治療患者集団(例えば、自然歴)、又は先行技術の方法(例えば、バックグラウンド療法)で治療される患者集団では運動機能が徐々に悪化することが予想されるのに対し、臨床的に有意味なアウトカムである。
【0026】
一部の実施形態において、アピテグロマブ療法を受ける患者は、疾患進行の遅延を示し得る。疾患進行の遅延には、好適な対照(例えば、特定の患者集団の自然歴を呈する未治療の患者)と比較したときの、例えば、時間の経過に伴うHFMSEスコアの減少速度が緩慢になることが含まれ得る。一部の実施形態において、遅延には、歩行可能SMAから歩行不能SMAへの移行が先延ばしになることが含まれ得る。
【0027】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、アピテグロマブの投与を受けない対照と比べて、患者集団の治療奏効率を増加させることが可能である。
【0028】
任意の実施形態において、アピテグロマブの治療有効量は、12ヵ月間の治療後に患者に重篤有害事象を引き起こさない。
【0029】
本開示は、少なくとも一部には、潜在型ミオスタチンの活性化の選択的阻害能を有する抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体が、バックグラウンドSMN上方制御薬療法(例えば、ヌシネルセン)で治療中であってもよく、又は治療中でなくてもよいSMA患者を含め、SMAを有するヒト患者の筋機能を改善することができ、及び場合によっては、特定の患者集団では典型的に予想されない又は観察されない意外な程度にまで改善することが、有害事象を回避しつつできるという発見に基づく(例えば、Mercuri et al.(2018)New England Journal of Medicine.378(7):625-635と比較されたい)。それに応じて、本開示は、ヒト対象のSMAを治療するための抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体を含む方法、使用、及び組成物の様々な実施形態を提供する。更に、神経筋疾患の治療への選択的ミオスタチン阻害の臨床的利益を実証する本明細書に提示されるデータに基づけば、本開示はまた、他の選択的ミオスタチン阻害薬も同じように使用し得るという概念も包含する。それらには、例えば、ミオスタチンの選択的阻害能を有するが、アクチビンAなどの他の関連する成長因子は残しておく中和抗体、及びミオスタチンと優先的に結合するように操作されたリガンドトラップが含まれ得る。
【0030】
一部の実施形態において、2超20以下(mg/kg)の治療有効量のアピテグロマブは、対象において以下の1つ以上:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持することを実現する。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月静脈内投与される2超20以下(mg/kg)のアピテグロマブの用量である。一部の実施形態において、この患者集団ではベースラインからの平均的悪化が観察され得るが、大多数の患者は疾患安定化を示す(RHSの変化なし又は増加)。一部の実施形態において、患者集団中の一部(例えば、10%以上、例えば、15%以上、20%以上)の患者は、単剤療法としてのアピテグロマブによる12ヵ月間の治療後にRHSの3点以上の増加を実現する。
【0031】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物及びSMN療法(例えば、SMN上方制御薬)を含む組成物を投与することを含む方法を提供し、ここで対象には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、例えば少なくとも14例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてハマースミス機能運動評価尺度拡大版(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded:HFMSE)スコアの少なくとも1点の平均増加を生み出すのに十分な2超20以下(mg/kg)の量で投与される。一部の実施形態において、本開示は、SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物を提供し、ここで対象には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、例えば少なくとも14例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも1点の平均増加を生じさせるのに十分な2超20以下(mg/kg)の量で投与される。一部の実施形態において、本開示は、SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用を提供し、ここで対象には、ピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、例えば少なくとも14例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも1点の平均増加を生じさせるのに十分な2mg/kg超20mg/kg以下(例えば、10mg/kg又は20mg/kg)の量で投与される。
【0032】
一部の実施形態において、SMAは、遅発型SMAである。一部の実施形態において、SMAは、2型SMAである。一部の実施形態において、SMAは、歩行不能3型SMAである。一部の実施形態において、対象は、5~21歳である。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、ヌシネルセン、リスジプラム、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクである。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、ヌシネルセンである。一部の実施形態において、十分な量は、2超20以下(mg/kg)、任意選択で約5、10、15、又は20mg/kgの静脈内用量である。一部の実施形態において、アピテグロマブの治療用量は、患者、例えば、患者集団の大部分(例えば、50%超、60%超など)のHFMSEを1点以上増加させるのに十分、及び/又は、患者、例えば、患者集団の少なくとも20%(例えば、少なくとも25%)のHFMSEを3点以上増加させるのに十分である。
【0033】
一部の実施形態において、SMAは遅発型SMAであり、遅発型SMAは2型SMAであり、ここで患者はバックグラウンドSMN修正薬療法を低年齢で(5歳未満の年齢で)開始した。アピテグロマブ療法は、この患者集団で有意な運動機能改善を実現し得る(例えば、HFMSEスコアの5点以上の増加)。一部の実施形態において、患者は、12ヵ月間のアピテグロマブ療法後にベースラインに対してHFMSEの3点以上の増加、5点以上の増加、又は10点以上の増加を達成し、ここでベースラインは、アピテグロマブの初回投与より前に、又はその時点で測定される。
【0034】
一部の実施形態において、対象は、WHO運動発達マイルストーン分類に基づけば、生後4~9ヵ月の年齢で助けなしで座る能力を獲得していない患者である。一部の実施形態において、対象は、生後4~9ヵ月の年齢で助けなしで座る能力のある患者である。一部の実施形態において、対象は、生後5~11ヵ月の年齢で助けを借りて立つ能力を獲得していない患者である。一部の実施形態において、対象は、生後5~11ヵ月の年齢で助けを借りて立つ能力のある患者である。一部の実施形態において、対象は、生後5~13ヵ月の年齢で手及び膝をついて這う能力を獲得していない患者である。一部の実施形態において、対象は、生後5~13ヵ月の年齢で手及び膝をついて這う能力のある患者である。一部の実施形態において、対象は、生後6~14ヵ月の年齢で助けを借りて歩く能力を獲得していない患者である。一部の実施形態において、対象は、生後6~14ヵ月の年齢で助けを借りて歩く能力のある患者である。一部の実施形態において、対象は、生後7~14ヵ月の年齢でつかまらずに立つ能力を獲得していない患者である。一部の実施形態において、対象は、生後7~14ヵ月の年齢でつかまらずに立つ能力のある患者である。一部の実施形態において、対象は、生後8~18ヵ月の年齢でつかまらずに歩く能力を獲得していない患者である。一部の実施形態において、上述の患者のうち歩くことができない者はいずれも、2型又は3型SMAを有すると特徴付けることもできる。一部の実施形態において、上述の患者のうち(補助あり又はなしで)歩くことができる者はいずれも、3型SMAを有すると特徴付けることもできる。一部の実施形態において、対象は、SMN上方制御薬/修正薬療法を5歳未満の年齢で開始した。一部の実施形態において、対象は、SMN上方制御薬/修正薬療法を5歳以降の年齢で開始した。一部の実施形態において、上述の患者はいずれも、ミオスタチン阻害薬(例えば、アピテグロマブ)による6~12ヵ月間の治療後に、WHO運動発達マイルストーンによる1つ以上の新規マイルストーンを獲得し得る。一部の実施形態において、上述の患者はいずれも、ミオスタチン阻害薬(例えば、アピテグロマブ)による6~12ヵ月間の治療後に、WHO運動発達マイルストーンによる1、2、又は3つの新規マイルストーン、例えば、自力で歩く能力、自力で立つ能力、補助ありで立つこと、手及び膝で這うこと、及び/又は補助ありで歩くことのうちの1つ以上を獲得し得る。
【0035】
一部の実施形態において、アピテグロマブで治療すべき標的患者集団には、ミオスタチン阻害薬(例えば、アピテグロマブ)療法の開始時点で12歳以下である者が含まれる。一部の実施形態において、標的患者集団には、2歳以上である者が含まれる。一部の実施形態において、標的患者集団には、2~12歳である者が含まれる。一部の実施形態において、標的患者集団には、2~5歳である者が含まれる。
【0036】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、SMN上方制御薬療法に必要な髄腔内注射を(例えば脊椎固定に起因して)受けることができないか、又はその治療を受けないことを選んだSMA患者に単剤療法として投与される。
【0037】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象の遅発型SMAの治療用医薬組成物(例えば、医薬品)の製造におけるアピテグロマブの使用を提供する。この医薬品は、対象に2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブの用量で4週間毎に又は毎月投与することが意図され、ここで任意選択で、対象は、SMAに対する運動ニューロン指向療法を5歳未満の年齢で開始しており、及びここで運動ニューロン指向療法はSMN1又はSMN2発現を増加させる。製造方法には、アピテグロマブに対応する組換え抗体、又はその抗原結合断片の産生能を有する、アピテグロマブ免疫グロブリンポリペプチドの重鎖及び軽鎖の核酸配列を持つ1つ又は複数のベクターを含む細胞株を提供することが含まれ得る。かかる細胞株を使用することにより、哺乳類細胞培養物、例えばCHO細胞など、細胞培養物でアピテグロマブを生産することができる。一部の実施形態において、アピテグロマブの生産には、大規模(例えば、250L、1000L、2000L 3000、4000L等)バイオリアクターを利用してもよい。次に細胞培養物から組換え抗体分子を精製し、その精製抗体を、アピテグロマブと1つ以上の賦形剤とを含む医薬組成物へと製剤化し得る。この方法は、典型的には滅菌ろ過ステップを含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与に好適な、約50mg/mLアピテグロマブを含有する液体製剤である。
【0038】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、ガラスバイアルなど、複数回用量バイアルに収容される。一部の実施形態において、中にアピテグロマブを収容している容器(ガラスバイアルなど)は、キットの一部である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】遅発型SMA患者におけるアピテグロマブの有効性及び安全性を評価する実薬治療研究の治療期間についての概略的デザインを示す。52週間の治療期間にわたり、実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート1及び2に登録した患者は高用量(20mg/kg)アピテグロマブの投与を受け、コホート3に登録した患者は、低用量(2mg/kg)又は高用量(20mg/kg)のいずれかのアピテグロマブの投与を受けるように盲検方式で無作為化(1:1)される。
図2】実施例1に示すとおりの、遅発型SMA患者におけるアピテグロマブの有効性及び安全性を評価する実薬治療研究の延長期間(extension peri)についての概略的デザインを示す。52週間の治療期間(図1)を完了した患者は、更なる52週間の延長期間への登録を選択できる。
図3A-B】5歳未満の年齢で承認済みのSMN上方制御薬(ヌシネルセン)による治療を開始していた2型SMA患者を登録した、アピテグロマブ実薬治療研究の中の無作為化二重盲検の一部分である、実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート3からの6ヵ月中間結果を示す。低用量(2mg/kgアピテグロマブ4週間に1回又は毎月(Q4W))又は高用量(20mg/kgアピテグロマブQ4W)を受けるように患者を1:1の比で無作為化した;両治療群とも、承認済みのSMN上方制御薬療法(ヌシネルセン)と併せる。図3Aは、個別のHFMSE反応を示す。図3Bは、HFMSEスコアのベースラインからの変化の平均値(±SEM)を示す。
図4】実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート1、2、及び3からの6ヵ月中間結果の薬物動態学(PK)解析を示す。28日目から始めて、測定は投与前トラフ濃度である。
図5】実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート1、2、及び3からの6ヵ月中間結果の薬力学(PD)解析を示す。
図6A-B】承認済みのSMN上方制御薬による治療を既に受けている最中の2型又は歩行不能3型SMAを有する平均年齢11.7歳(範囲8~19歳)の15人の患者を登録した非盲検シングルアームコホートである、実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート2からの6ヵ月中間結果を示す。患者は、承認済みのSMN上方制御薬療法(ヌシネルセン)と併せて20mg/kgのアピテグロマブQ4Wで治療される。図6Aは、個別のHFMSE反応を示す。図6Bは、HFMSEスコアのベースラインからの変化の平均値(±SEM)を示す。
図7A-B】歩行可能3型SMAを有する23人の患者を登録した非盲検シングルアームコホートである、実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート1からの6ヵ月中間結果を示す。患者は、単剤療法として、又は承認済みのSMN上方制御薬療法(ヌシネルセン)と併せて、20mg/kgのアピテグロマブQ4Wで治療される。図7Aは、個別のRHS反応を示す。図7Bは、RHSスコアのベースラインからの変化の平均値(±SEM)を示す。
図8】遅発型SMAにおけるヌシネルセンSHINE試験の結果を示し、及びWilliams et al.Minimal clinically important differences of the Expanded Hammersmith Functional Motor Scale in later-onset spinal muscular atrophy:results from the phase 3 CHERISH trial.米国マネージドケアファーマシー学会(American Academy of Managed Care Pharmacy)第31回年次総会;2019年3月25~28日;San Diego,CA,USAでの発表から再掲する。
図9A-D】実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート3からの12ヵ月トップライン結果を示す。図9Aは、個別のHFMSE反応を示す。図9Bは、HFMSEスコアのベースラインからの変化の平均値(±SEM)を示す。図9Cは、2型歩行不能>2歳コホートの患者におけるHFMSEレスポンダー分析を示す。図9Dは、治療の全体的な時系列の概略図及び2型歩行不能>2歳コホートの20mg/kgアームの患者におけるベースラインと比較したときのHFMSEスコアの変化を示す。
図10A-C】実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート2からの12ヵ月トップライン結果を示す。図10Aは、個別のHFMSE反応を示す。プロトコル遵守解析では、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬による治療に起因してベースラインから-7点の変化を示した1例の患者を除外する。図10Bは、HFMSEスコアのベースラインからの変化の平均値(±SEM)を示す。図10Cは、2/3型歩行可能5~21歳コホートの患者におけるHFMSEレスポンダー分析を示す。
図11A-C】実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート1からの12ヵ月トップライン結果を示す。図11Aは、個別のRHS反応を示す。図11Bは、RHSスコアのベースラインからの変化の平均値(±SEM)を示す。図11Cは、3型歩行可能5~21歳コホートの患者のRHSレスポンダー分析を示す。
図12A-B】コホート1、2、及び3からの12ヵ月トップライン結果の薬物動態学(PK)解析を示す。図12Aでは、28日目から始めて、測定は投与前トラフ濃度である。図12Bでは、28日目から始めて、140日目及び336日目を除き、測定は投与前トラフ濃度である。140日目及び336日目は、測定はCmaxレベルである。
図13】実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート1、2、及び3からの12ヵ月トップライン結果の薬力学(PD)解析を示す。
図14】ヌシネルセンと併せて2mg/kg(濃い色の丸)又は20mg/kg(薄い色の丸)アピテグロマブの投与を受けている患者についての実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート3におけるHFMSEスコアの変化に対して標的会合をプロットするグラフを示す。
図15A-C】図15Aは、健常ボランティア(SAD及びMAD)を実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート1、2、及び3と比べたときのそれらの間でのベースライン潜在型ミオスタチン濃度の比較を示す。図15B図15Cは、健常ボランティア(SAD)及びコホート1、2、3における潜在型ミオスタチン濃度の変化倍数を示す。
図16】健常ボランティア(SAD及びMAD)を実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート1、2、及び3と比べたときのベースライン潜在型ミオスタチン濃度と体重との間の相関を示す。
図17】実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート1、2、及び3におけるクリアランスと体重との間の相関についての線形回帰を示す。
図18】実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート1、2、及び3におけるクリアランスと年齢との間の相関についての線形回帰を示す。
図19】SMAD反応性ルシフェラーゼレポーターアッセイの結果を示す。組換えプロミオスタチンをアピテグロマブ、mTLL2及びフューリンプロテアーゼとインキュベートした後、続いて、SMAD反応性ルシフェラーゼレポーターベクターをトランスフェクトしたCAGA細胞上でインキュベートした。アピテグロマブがタンパク質分解プロセシング及び活性成長因子の放出を阻害する能力を測定し、%阻害率としてプロットした。
図20A-D】実施例1に示すとおりの複数用量後のアピテグロマブの血清濃度時間プロファイルを示す。週1回反復IV用量:4週間にわたるカニクイザルへの10、30、及び100mg/kgと、続く4週間の回復相(図20A)、4週間にわたる成体ラットへの10、30、及び100mg/kgと、続く4週間の回復相(図20B)、26週間にわたる成体ラットへの30、100、及び300mg/kgと、続く8週間の回復期間(図20C)、及び7週間にわたる若齢ラットへの30、100、及び300mg/kgと、続く4週間の回復相(図20D)の後の雄及び雌動物の血清中でアピテグロマブを測定した。示されるデータは平均値±標準偏差である。用量記号:10(丸)、30(四角)、100(三角)、及び300(菱形)mg/kg。
図21A-D】実施例1に示すとおりの複数用量後のアピテグロマブの血清潜在型ミオスタチン濃度時間プロファイルを示す。毎週用量のアピテグロマブ:4週間にわたるカニクイザルへの10、30、及び100mg/kgと、続く4週間の回復相(図21A)、4週間にわたる成体ラットへの10、30、及び100mg/kgと、続く4週間の回復相(図21B)、26週間にわたる成体ラットへの30、100、及び300mg/kgと、続く8週間の回復期間(図21C)、及び7週間にわたる若齢ラットへの30、100、及び300mg/kgと、続く4週間の回復相(図21D)を投与した動物において血清潜在型ミオスタチンを測定した。示されるデータは平均値±標準偏差である。用量記号:10(塗り潰した丸)、30(四角)、100(三角)、及び300(菱形)mg/kg。
図22A-B】図22Aは、実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート2及び3における先行ヌシネルセン治療の継続期間の関数としてのベースラインからの12ヵ月HFMSE変化を示す。図22Bは、歩行不能患者が受けたヌシネルセン維持用量数の関数としてのベースラインからの12ヵ月HFMSE変化を示す。
図23A-D】実施例1、第1.1節に示すとおりのコホート2及び3について年齢の関数としての12ヵ月HFMSE変化の事後解析を示す。図23Dは、アピテグロマブ20mg/kg又は2mg/kgで治療した歩行不能患者のプールコホートにおけるベースラインからのHFMSE変化を示す。
図24A-B】実施例1に示すとおりの、脊柱側彎又は関節拘縮のない患者と比べた脊柱側彎又は関節拘縮を有する患者における12ヵ月運動機能スコアの比較を示す。図24Aは、歩行不能2型及び2/3型SMA患者からのプールHFMSEスコアを示す。図24Bは、歩行可能3型SMA患者からのプールRHSスコアを示す。
図25】実施例1に示すとおりの、運動機能スコアによって測定したときの2型歩行不能>2歳コホートの患者における用量反応を示す。
図26A-D】実施例1に示すとおりの、2型SMA患者における年齢に対するHFMSEスコアの変化で測定したときの運動機能の改善、潜在型ミオスタチンレベルの変化倍数、及びアピテグロマブの薬物動態学的濃度の間の関係の分析を示す。図26Aは、HFMSEスコアの変化と年齢との間の関係を示す。図26Bは、潜在型ミオスタチンレベルの変化倍数(LM倍数)とアピテグロマブの薬物動態学的濃度との間の関係を示す。図26Cは、年齢で正規化した運動機能の変化と年齢で正規化した潜在型ミオスタチンレベルの変化倍数との間の関係を示す。図26Dは、年齢で正規化した運動機能の変化と年齢で正規化したLM倍数/PK濃度との間の関係を示す。
図27A-B】図27Aは、HFMEスコアの変化とベースライン潜在型ミオスタチンとの間の関係を示す。図27Bは、実施例1に示すとおりの、年齢正規化後の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
定義
本開示を一層容易に理解することができるように、初めに特定の用語を定義する。これらの定義は、本開示の残りの部分を踏まえて、且つ当業者が理解するとおりに読まれなければならない。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。更なる定義は、この詳細な説明全体を通じて示される。
【0041】
アピテグロマブ:アピテグロマブ(別名「SRK-015」)は、ミオスタチンのプロフォーム-即ち、プロミオスタチン及び潜在型ミオスタチン-に高親和性で特異的に結合することによってミオスタチン活性化を阻害する臨床試験用の完全ヒトモノクローナル抗体である。例えば、CAS登録番号2278276-46-1;医薬品の国際一般名(INN)(2020)WHO Drug Information,Vol.34,No.2の272~273頁を参照のこと;また、GtoPdb Ligand ID:11180;GtoPdb PubChem SID:434122240;IMGT/mAb-DBデータベースID:829;NIH ChemIDplusデータベース:RN:2278276-46-1;UNII:UZ54216N0Yも参照のこと。アピテグロマブは、ヒト免疫グロブリンG4(IgG4)/λアイソタイプである。アピテグロマブは、選択的ミオスタチン阻害薬(ミオスタチン選択的活性化阻害薬)である。例えば、国際公開第2017/049011号パンフレットを参照のこと。用語「選択的ミオスタチン阻害薬」(又は「ミオスタチン選択的阻害薬」)は、アクチビンAなど、構造的に関連する成長因子に重大な影響を及ぼすことなくミオスタチン/GDF-8の活性化又は活性を遮断し、それを阻害し、又は他に何らかそれに拮抗する能力を有する薬剤を指す。アピテグロマブは、以下の表3Bに示すとおりの、配列番号15の重鎖アミノ酸配列と配列番号16の軽鎖アミノ酸配列とを含む。
【0042】
ベースライン:本明細書で使用されるとき、用語「ベースライン」又は「ベースラインスコア」は、SMA関連パラメータ(例えば、運動機能評価尺度に基づくスコア、例えば、改訂版ハマースミススコア(Revised Hammersmith Score:RHS)スコア又はハマースミス機能運動評価尺度拡大版(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded:HFMSE)スコア)の文脈では、本開示のSMA療法による治療時又は治療前の(例えば、アピテグロマブの単独での、又はSMN上方制御薬療法を含むバックグラウンド療法の補助剤としての初回投与前、又は初回投与時点での)患者のSMA関連パラメータの数値を指す。
【0043】
一部の実施形態において、アピテグロマブ、例えば、アピテグロマブ単剤療法で治療することになる患者(例えば、歩行可能SMAを有する患者)のベースラインRHSスコアは、アピテグロマブによる治療の開始時又は開始前に測定される。一部の実施形態において、アピテグロマブ、例えば、SMN上方制御薬療法の補助剤としてのアピテグロマブで治療することになる患者(例えば、歩行可能SMAを有する患者)のベースラインRHSスコアは、アピテグロマブによる治療の開始時又は開始前に測定される。一部の実施形態において、患者は、ベースライン測定時点でSMN上方制御薬療法で治療中である。一部の実施形態において、患者は、ベースライン測定前の少なくとも6ヵ月間にわたってSMN上方制御薬療法で治療中であった。例えば、一部の実施形態において、アピテグロマブで治療することになる患者(例えば、歩行可能SMAを有する患者)は、26点以上のベースラインRHSスコアを有する。一部の実施形態において、患者は、63点以下のベースラインRHSスコアを有する。一部の実施形態において、患者は、26~63点の範囲のベースラインRHSスコアを有する。
【0044】
他の実施形態において、アピテグロマブ、例えば、SMN上方制御薬療法のバックグラウンド療法の補助剤としてのアピテグロマブで治療することになる患者(例えば、遅発型SMA患者、例えば、2型又は歩行不能3型SMAなどの歩行不能型のSMAを有する患者)のベースラインHFMSEスコアが測定される。一部の実施形態において、ベースラインスコアは、アピテグロマブによる治療(即ち、アピテグロマブ療法)の開始時又は開始前に測定される。一部の実施形態において、患者は、ベースライン測定時点でSMN上方制御薬療法で治療中である。一部の実施形態において、患者は、ベースライン測定前の少なくとも6ヵ月間にわたってSMN上方制御薬療法で治療中であった。一部の実施形態において、患者は、ベースライン測定が行われる時点であるアピテグロマブ療法の開始時点で少なくとも2年間にわたってSMN上方制御薬療法で治療中であった。一部の実施形態において、従ってアピテグロマブ療法の治療効果の判定に使用されるベースラインスコアは、バックグラウンド療法の結果としての治療効果がある場合には、それに加えたものである。一部の実施形態において、患者は、治療前と比べて測定した運動機能スコアの例えば1~7点の増加をもってバックグラウンド療法に反応した。一部の実施形態において、アピテグロマブで治療することになる患者(例えば、2型及び歩行不能3型SMAなどの歩行不能型のSMAを有する患者)は、12点以上のベースラインHFMSEスコアを有する。一部の実施形態において、患者は、44点以下のベースラインHFMSEスコアを有する。一部の実施形態において、患者は、12~44点の範囲のベースラインHFMSEスコアを有する。
【0045】
コホート:本明細書で使用されるとき、用語「コホート」又は「コホート集団」は、年齢、SMA疾患重症度(例えば、2型及び/又は3型SMA)、併用治療(例えば、SMN上方制御薬療法)等、因子又は影響を共有しているヒト対象の群又は集団を指す。一部の実施形態において、本明細書で使用されるとき、「コホート」は、年齢、SMA疾患重症度、及び/又は併用治療を共有しているヒト対象の群を指す。例えば、一部の実施形態において、コホートは、SMN上方制御薬療法を受けていない者、並びにSMN上方制御薬療法を既に受けているSMA患者を含めた、年齢5~21歳の歩行可能3型SMA患者を含む。他の実施形態において、コホートは、患者が5歳になった後に開始されたSMN上方制御薬療法を既に受けている年齢5~21歳の2型及び歩行不能3型患者を含む。他の実施形態において、コホートは、患者が5歳になる前又はなった前に開始されたSMN上方制御薬療法を既に受けている年齢2歳以上の2型SMA患者を含む。
【0046】
対照:用語「対照」又は「対照試料」は、本明細書で使用されるとき、例えば、健常対象からの試料、対象にある種の疾患又は病態を引き起こし得る又は対象がそれに罹り易くなり得る欠損を有する対象からの試料、目的の疾患又は病態を有する対象、プラセボで治療された対象からの試料、治療前の対象からの試料、シャム又は緩衝液で治療された対象又は試料、未治療の対象又は試料などを含め、任意の臨床的に又は科学的に関連性のある比較用試料、集団、又は対応物を指す。一部の実施形態において、アピテグロマブによる治療を受けている又はそれを必要としている患者又は患者集団が、対照患者又は患者集団と比較されてもよい。一部の実施形態において、対照患者又は患者集団は、アピテグロマブの投与を受けない患者又は患者集団である。
【0047】
~を阻害する又は~の阻害:用語「~を阻害する」又は「~の阻害」は、本明細書で使用されるとき、測定可能な量だけ低下させることを意味し、完全な予防又は阻害を含み得るが、それが必須というわけではない。
【0048】
有効量:用語「有効」及び「治療上有効」は、その意図される1つ又は複数の目的、即ち、対象における所望の生物学的又は医薬的反応を遂げる、及び/又は患者集団において統計的に有意な臨床的利益(例えば、有効性)を実現する能力又は量を指す。例えば、本開示の特定の実施形態において、意図される目的とは、インビボでミオスタチンの活性化を阻害すること、ミオスタチン阻害に関連する臨床的に有意味なアウトカムを実現することであり得る。「有効量」(又は治療有効量、又は治療用量)は、疾患のパラメータの検出可能な変化、例えば、疾患のパラメータ、症状、又は下流効果の減速、休止、逆転、縮小、又は改善を生み出すのに十分な投薬量又は用量設定レジメンであり得る。この用語は、疾患を完全に治癒する量の使用を包含するが、それが必須というわけではない。本明細書において抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体の用量(例えば、アピテグロマブの用量)とは、本明細書に記載されるとおりの治療有効用量を指し得る。
【0049】
関連性のある意図される目的の測定は、客観的であっても(即ち、何らかのアッセイ又はマーカーにより測定可能である)、又は主観的であってもよい(即ち、対象が効果の指標又は感じ方を与える)。一部の実施形態において、治療有効量は、SMAのある種の臨床判定基準(例えば、現れる症状、疾患の進行/病期、遺伝子プロファイル等により決定されるとおりの)を満たす患者集団に投与したとき、その集団中で統計的に有意な治療反応が得られる量である。
【0050】
一部の実施形態において、有効量とは、特定のレジメンに従い投与したとき、有害効果が存在する場合に、それが患者にとって治療レジメンを続行するのに十分に忍容可能であり、且つ療法の利益が毒性のリスクに勝るような、合理的に受け入れ可能なレベルの有害効果(例えば、毒性)でありながら、肯定的な臨床アウトカムを生み出す量である。当業者は、本開示の一部の実施形態において、ある投薬量が肯定的なアウトカムと相関のある投薬量レジメンの文脈での投与に適切な量を含有する場合に、その投薬量が有効量を含有すると見なし得ることを理解するであろう。
【0051】
遅発型SMA:本明細書で使用されるとき、特に明示的に定義しない限り、用語の遅発型SMAとは、生後6ヵ月後までSMA症状の発生を呈しない(例えば、6ヵ月健診時に症状が検出されない)患者を指す。遅発型SMA患者はまた、当該技術分野において公知の従来の疾患分類に基づくと2型、3型又は4型SMAを有すると特徴付けることができる患者でもあり得る。遅発型SMA患者は、典型的にはSMN2遺伝子を少なくとも2コピー(例えば、2コピー、3コピー、4コピー、又はそれ以上、例えば、2~4コピー)有する。一部の実施形態において、遅発型SMA患者は、SMN指向療法、例えばSMN上方制御薬など、運動ニューロン指向療法で治療されるか、又はそれを受けたことがある(例えば、かかる療法を5歳未満の年齢で受けたことがある)。遅発型SMAとは対照的に、早期発症型又は乳児発症型SMAは、生後6ヵ月以前の年齢で症状が現れるSMAを指す(当該技術分野において公知の従来の分類を用いて1型SMAと類別することもできる患者を含む)。比較すると、早期又は乳児発症型SMA患者は、典型的にはSMN2遺伝子を1又は2コピー有する。
【0052】
一部の実施形態において、遅発型SMA患者はSMN2遺伝子を2~4コピー有する。一部の実施形態において、遅発型SMA患者はSMN2遺伝子を1~2コピー有する。一部の実施形態において、早期治療介入による遅発型SMA患者(即ち、介入がなければ生後6ヵ月未満の年齢で症状が発生していたであろう患者)はまた、「新たに出現する」又は「治療により出現した」遅発型SMA患者又は患者集団とも称され得る。一部の実施形態において、治療により出現した遅発型SMA患者は、遺伝子型(例えば、1~2コピーのSMN2遺伝子)、表現型(例えば、歩行)、及び/又は疾患経過及びミオスタチン治療に対する反応が異なり得る。一部の実施形態において、遅発型SMAを有する患者は、治療、例えば、SMN指向治療がなければ補助なしに歩く及び/又は座ることはできなかったであろう(例えば、1型及び/又は歩行不能2型SMAを有したであろう)が、治療のおかげで、そうすることが可能である。一部の実施形態において、治療、例えば、SMN指向治療がなければ生後18ヵ月までに歩く能力を失ったであろうなど、歩行不能3型を有したであろう治療により出現した遅発型SMA患者は、治療のおかげで生後18ヵ月時に歩く能力を保持している。歩行可能3型SMA患者の治療を考えるとき、一部の実施形態では任意の歩行可能患者が治療される。一部の実施形態において、3型患者は、介入がなくても生後18ヵ月まで歩く能力を保持しているであろう者である。一部の実施形態において、3型患者は、介入がなければ歩く能力を失っているであろう者である。一部の実施形態において、患者は新生児スクリーニングを通じて同定され、疾患発症前に治療、例えば、SMN指向療法が開始される。一部の実施形態において、SMA症状の発生は、新生児スクリーニング後の早期治療開始のおかげで観察されない。一部の実施形態において、治療された患者は、4型SMAを有する(例えば、SMN2遺伝子を4コピー以上有する、且つ症状の発生がはるかに後の、例えば、18歳以降の年齢である患者)。
【0053】
自然歴:SMAの自然歴とは、ある人のSMAの治療しない場合の時間の経過に伴う進行を指す。
【0054】
進行:疾患(例えば、SMA)の進行は、ある期間にわたって症状が増悪する過程又は状態の悪化である。薬理学的介入(例えば、療法)がなければ、進行は、特定の患者集団で観察されるその疾患の自然歴に反映され、又はそれに対応する。疾患進行は、状態が増悪する速度、及び/又は、状態が悪くなる程度によって判定し得る。それに応じて、有効性には、薬物又は療法が疾患の進行を遅延させる又は減速させる能力が含まれ得る。例えば、患者は時間が経つと運動機能スコアの悪化を示し得るが、自然歴に基づき予想し得るよりも緩慢な速度であり得る。有効性には、薬物又は療法が悪化の程度を低減する能力が含まれ得る。有効性には、疾患の安定化、即ち、1つ又は複数の機能パラメータの時間の経過に伴う変化が少なくとも正味ゼロであることが含まれ得る。
【0055】
SMN療法/SMN指向療法:本開示の文脈では、用語「SMN療法」又は「SMN指向療法」(本明細書では同義的に使用される)は、SMAの治療を目的として患者の機能性SMNタンパク質の量又は利用能を増加させることを目指した薬理作用剤(薬物、生物製剤)を指す。かかる作用剤には、SMN修正薬/上方制御薬が含まれる。例えば、SMN1指向療法には、欠失した又は突然変異したSMN1遺伝子を補う又は置き換えることを意図した遺伝子療法が含まれ得る。SMN2指向療法には、生体の少なくとも部分的に機能性のSMNタンパク質の利用能を増加させるためにSMN2バックアップ遺伝子のある種の1つ又は複数のエクソンを標的化するスプライシング修飾薬が含まれ得る。SMN療法の非限定的な例としては、ヌシネルセン、オナセムノゲンアベパルボベク、及びリスジプラムが挙げられる。
【0056】
定常状態:本明細書で使用されるとき、用語「定常状態」は、ある分子(例えば、アピテグロマブ)の総取込み量がその消失と完全に動的平衡状態にある状況を指す。一部の実施形態において、アピテグロマブの定常状態血清濃度は、アピテグロマブの例えばヒト対象又はヒト対象コホートへの投与後の最大血清濃度(即ち、Cmax)又は最小(トラフ)血清濃度(即ち、Cmin又はCtrough)として測定される。一部の実施形態において、薬物動態(PK)解析では、アピテグロマブの最大血清濃度を用いてアピテグロマブの定常状態が決定される。一部の実施形態において、PK解析では、アピテグロマブの最小血清濃度を用いてアピテグロマブの定常状態が決定される。一部の実施形態において、薬力学的(PD)標的は潜在型ミオスタチンである。一部の実施形態において、アピテグロマブのPDプロファイルは、血清中の潜在型ミオスタチン濃度を測定することにより評価される。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は定常状態濃度である。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、例えばヒト対象又はヒト対象コホートにおける投与前又はトラフ濃度(即ち、Cmin又はCtrough)として測定される。
【0057】
対象:用語「対象」は、治療適用の文脈では、治療、診断等、臨床ケア又は介入を受ける、又はそれを必要としている個体を指す。好適な対象には、限定はされないが、哺乳類(例えば、ヒト及び非ヒト哺乳類)を含めた脊椎動物が含まれる。対象がヒト対象である場合、用語「患者」を同義的に使用し得る。臨床の文脈では、用語「患者集団」又は「患者サブ集団」は、臨床判定基準、病歴、健康状態、性別、年齢層、遺伝子判定基準、及び/又は生活様式要因など、一組の判定基準の範囲内に入る一群の個体を指して使用される。一部の実施形態において、患者又は患者集団は、SMA患者又は患者集団である。一部の実施形態において、患者又は患者集団は、早期発症型又は乳児発症型SMA患者又は患者集団である。一部の実施形態において、患者又は患者集団は、遅発型SMA患者又は患者集団である。一部の実施形態において、患者又は患者集団は、2型SMA患者又は患者集団である。一部の実施形態において、患者又は患者集団は、歩行不能3型SMA患者又は患者集団である。一部の実施形態において、患者又は患者集団は、歩行可能3型SMA患者又は患者集団である。一部の実施形態において、患者又は患者集団は、歩行可能遅発型SMA患者又は患者集団である。一部の実施形態において、患者又は患者集団は、歩行不能患者又は患者集団である。一部の実施形態において、患者又は患者集団は、発症前又は無症候患者又は患者集団である。一部の実施形態において、患者又は患者集団は、症候性患者又は患者集団である。一部の実施形態において、患者又は患者集団は、SMN2遺伝子を2コピー以上、例えば、2~3コピー、2~4コピー、3~4コピー等有する。一部の実施形態において、患者又は患者集団は遅発型SMAを有し、SMN2遺伝子を2コピー以上、例えば、2~3コピー、2~4コピー、3~4コピー等有する。
【0058】
標的会合:本明細書で使用されるとき、用語「標的会合」は、ある分子(例えば、アピテグロマブ)が、例えば骨格筋にあるその意図したインビボ標的(例えば、潜在型ミオスタチン)に結合する能力を指す。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチンレベルは、ベースライン時(即ち、治療前)は比較的低く、アピテグロマブによる治療後に増加し得る。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチンレベルの増加は、例えば骨格筋におけるアピテグロマブとの標的会合を指示している。一部の実施形態において、潜在型ミオスタチンの治療後の高いレベルと比較したときの低いベースライン血清レベルは、薬物標的の大部分が、全身に循環しているというよりむしろ、骨格筋内に滞留していることを指示している。一部の実施形態において、標的会合の飽和は、ある種の治療効果(例えば、有効性)を実現するのに十分な投薬量であることを指示しており、但し、飽和しなくとも有効性に達することは可能であり得る。
【0059】
治療用量:用語「治療用量」は、患者に特定の方法で(例えば、特定の用量設定レジメンを用いて)投与したとき、治療効果を測定する臨床エンドポイントによって(例えば、本明細書で考察される臨床エンドポイント測定値の1つ以上によって)決まるとおりの有効性を実現するのに十分な量(例えば、アピテグロマブの量)を指す。例えば、アピテグロマブの治療用量は、4週間毎に静脈内投与するとき、2mg/kg超20mg/kg以下であり得る。特定の実施形態において、アピテグロマブの治療用量は、4週間毎に静脈内投与するとき、10mg/kg又は20mg/kgである。
【0060】
治療:本明細書で使用されるとき、疾患又は障害(例えば、SMA)を「治療すること」又はそれの「治療」という用語は、例えば、治療がないベースラインと比較したとき(例えば、治療がないときに観察される疾患進行が治療によって止まる場合)、かかる疾患又は障害の発生を減速させ、遅延させ、又は予防すること、又はかかる疾患又は障害に関連する状態の進行、重大化又は悪変、進行又は重症度を逆転させ、緩和し、改善し、阻害し、緩徐にし、安定化させ、又は止めることを意味する。この用語には、疾患又は障害の完全な治療又は予防が含まれるが、それが必ずしも必要というわけではない。一部の実施形態において、「治療すること」又は「治療」は、障害、疾患の症状、又はSMAに罹り易い素因を根治し、治癒し、緩和し、軽減し、変化させ、修復し、改善し、向上させ、又は影響を及ぼすことを目的とした、SMAを有する対象への1つ以上の活性薬剤の(同時に又は逐次的に)、又は1つ以上の活性薬剤を含む1つ以上の組成物の投与を指す。
【0061】
治療により出現した患者集団:SMA患者集団の従来の分類又は型(例えば、0型、1型、2型、歩行不能3型、歩行可能3型、4型等)は、主として、SMN2遺伝子コピー数と強い相関を示す疾患の症状発現の自然歴に基づいている。従来の分類に基づけば、0型は、動きが低下している又は全くない子宮内で発症した最も重症度の高い形態であり、であり、出生時に機械的人工換気を必要とする。近年、承認済みのSMN指向療法(例えば、SMN2上方制御薬、SMN1遺伝子療法等)及び新生児スクリーニングが利用可能になりつつあることに伴い、本明細書において「新たに出現した」又は「治療により出現した」患者集団と称される新たに出現する患者集団を記述するための更なる分類が必要になり得る。これらの集団では、患者が低年齢でSMN指向療法を開始している場合、自然歴及び/又は遺伝子解析に基づき予想されるSMAの症状発現が変わり得る。換言すれば、疾患遺伝子型に関係なく、早期介入が、自然歴から予想される疾患進行の経過に影響を与え得る。例えば、SMN1欠失及び1コピーのSMN2遺伝子が確認されている乳児が、早期SMN療法を受けると、それを受けなければ1型SMAを発症すると予想されたことになる乳児について、12ヵ月時に支えなしで座ることが可能であり得る。SMN2遺伝子を2コピー有するSMA患者は、SMN指向療法を受けなければ重度の(例えば、2型)疾患型を発症するものと予想され得るが、SMN指向療法により、特に早期介入により、かかる患者の臨床所見は、より軽度の疾患型に似たものになり得る。かかる療法の結果として、歩行不能3型SMA患者(歩く能力を失った患者)が歩く能力を再び獲得し得るか、又は2型SMA患者が初めて歩き得る。同様に、生後18ヵ月以降の年齢で歩行不能3型SMAを発症すると予想された患者が、早期SMN指向療法により、年齢が高くなっても歩く能力の保持を呈し、更に異なる表現型(例えば、歩行)及び/又はSMA治療に対する反応を呈し得る(Mercuri et al.(2020)Nature Reviews Neurology,16:706-715)。SMA療法における医学の進歩に伴う変化に適応しようと、この分野は、様々な疾患をより上手く表現することを目指して、ある種の命名法/用語法の調整を含め、進化し続ける。そのため、用語「遅発型SMA」は、本明細書で使用されるとき、特に指示がない限り、遺伝子型に関係なく、SMN指向療法があろうとなかろうと、生後6ヵ月以降の年齢で症候発生(例えば、臨床症状発現)が起こる患者又は患者集団を表すことが意図される。一方、生後6ヵ月未満の年齢で症候発生が起こる患者は、本明細書では、症状が最初に検出される具体的な年齢に応じて「早期発症型」又は「乳児発症型」SMAと称される。
【0062】
1型SMA:典型的には、1型SMAの小児は、この疾患の自然歴上、急速に悪化する。初期症状には、筋緊張低下、小さい又は弱い筋肉、呼吸困難、嚥下障害、弱い咳又は弱い泣声、及び座位不能が含まれる。1型の乳児は極めて脆弱で、座ることができない。生後5~6ヵ月で、患者は典型的には呼吸及び/又は栄養補助が必要である。90%を超える患者が、2歳の誕生日を迎える前に死亡する。かかる患者は、典型的にはSMN2遺伝子を1~2コピー有する。
【0063】
2型SMA:2型SMAの小児は、治療介入がなければ歩行不能であり、SMN2遺伝子を3コピー有することが多く、生後6~18ヵ月の年齢で症候性になる。筋脱力が極めてよく見られ、補助なしで立つ又は歩く能力に影響が出て、典型的には車椅子を必要とする。概して、こうした小児は2歳未満の年齢で能力を失い始める。しかし、こうした小児は自力で座り、定頸し、及び寝返りを打つことができる。
【0064】
3型SMA:3型SMA患者では、例えば、臨床的分類及び/又は座る又は歩くなどの身体的マイルストーンに基づけば、症状は生後18ヵ月以降の年齢で、通常は幼児期早期に始まり得る。この患者はSMN2遺伝子を3又は4コピー又はそれ以上有することが多く、重症度が高い方の型の歩行不能3型SMAは、典型的には3コピーのSMN2遺伝子と関連付けられ(3a型)、重症度が低い方の型の歩行不能3型SMAは、典型的には4コピーと関連付けられている(3b型)。典型的には3型SMA患者は、少なくとも最初は補助ありで歩いたりよじ登ったりし、食器を使って食べ、自分で服を着ることができるが、概して助けなしで走ったり、跳んだり又はよじ登ったりすることはできない。この患者は、成長に伴い、歩く及びよじ登る能力を含めた多くの運動機能を失う。3型患者の中では、歩くことができる者は歩行可能3型SMAと称され、一方、歩く能力を失った者は歩行不能3型SMAと称される。3型患者は、4~16歳までに、例えば、平均して約10歳の年齢で歩行運動を失うことが多い。
【0065】
4型SMA:4型SMAは、まれな成人発症型のSMAである。この患者は、通常、SMN2遺伝子を4コピー以上有し、通常、軽度の筋脱力が見られるのみであり、これは約18歳で始まり得るが、多くの場合には更に高い年齢(例えば、20代又は30代)で始まり得る。
【0066】
実施例(operating examples)の中、又は特に指示される場合を除き、本明細書で使用される成分又は反応条件の分量を表す全ての数値は、全ての例が用語「約」によって修飾されていると理解されなければならない。用語「約」は、パーセンテージとの関連で使用されるとき、±1%を意味し得る。
【0067】
不定冠詞「ある(a)」及び「ある(an)」は、ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、明確にそうでない旨が指示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されなければならない。
【0068】
語句「及び/又は」は、ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、そのように等位接続されている要素の「いずれか一方又は両方」、即ち、ある場合には接続されて存在し、他の場合には離接的に存在する要素を意味すると理解されなければならない。明確にそうでない旨が指示されない限り、任意選択で、「及び/又は」節によって具体的に特定されている要素以外にも、具体的に特定されているそれらの要素に関係があるか、又は無関係かにかかわらず、他の要素が存在し得る。このように、非限定的な例として、「A及び/又はB」という表現は、「~を含んでいる(comprising)」などの非制限的な文言と併せて使用されるとき、一部の実施形態では、Bを伴わないA(任意選択でB以外の要素を含む);他の実施形態では、Aを伴わないB(任意選択でA以外の要素を含む);更に他の実施形態では、A及びBの両方(任意選択で他の要素を含む)等を指し得る。
【0069】
ここで本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、1つ以上の要素の列挙を参照する語句「少なくとも1つ」は、その要素の列挙にある要素のうちの任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしもその要素の列挙中に具体的に列挙されているありとあらゆる要素の少なくとも1つを含んでいるわけではなく、その要素の列挙にある要素の任意の組み合わせを除外しないと理解されなければならない。この定義はまた、任意選択で、具体的に列挙されているそれらの要素に関係があるか、又は無関係かにかかわらず、語句「少なくとも1つ」が指す要素の列挙中に具体的に特定されている要素以外に要素が存在し得ることも許容する。このように、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は、同等に、「A又はBの少なくとも1つ」、又は、同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一部の実施形態では、任意選択で2つ以上を含めた、少なくとも1つのAであり、Bが存在しないこと(及び任意選択でB以外の要素を含む)を指し得る;他の実施形態では、任意選択で2つ以上を含めた、少なくとも1つのBであり、Aが存在しないこと(及び任意選択でA以外の要素を含む);更に他の実施形態では、任意選択で2つ以上を含めた、少なくとも1つのA、及び任意選択で2つ以上を含めた、少なくとも1つのB(及び任意選択で他の要素を含む)等を指し得る。
【0070】
特許請求の範囲の中での「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞を使用した請求項要素の修飾は、それ自体は、ある請求項要素の別の要素と比べた優先、先行、若しくは順序又は方法の行為を行う時間的順序を一切含意せず、単に特定の呼称の請求項要素を、(序数詞を使用する以外には)同じ呼称の別の要素と区別してそれらの請求項要素を区別するための標識として使用されるに過ぎない。
【0071】
本明細書に提供される範囲は、その範囲内にある全ての値の省略表現であると理解される。例えば、1~10の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、又は部分的範囲、例えば、2~8、1~5等を含むと理解される。
【0072】
本明細書に引用する全ての参考文献は、あらゆる目的から参照によって援用される。参考文献と本明細書が矛盾する場合、本明細書が優先するものとする。明確にするため、本明細書に別個の実施形態の文脈で記載されている本開示の組成物及び方法の特定の特徴がまた、単一の実施形態に組み合わせて提供されてもよいことは理解されるべきである。逆に、簡潔にするため、単一の実施形態の文脈で記載されている本開示の組成物及び方法の様々な特徴がまた、別個に、又は任意の部分的な組み合わせで提供されてもよい。
【0073】
脊髄性筋萎縮症(SMA)
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、多くの場合に致命的となる消耗性の神経筋疾患であり、乳児死亡の最も多く見られる遺伝的原因である(Awano et al.(2014)Neurotherapeutics 11:786-795)。SMAは、生存運動ニューロン1(SMN1)遺伝子の突然変異又は欠失が関わる常染色体劣性遺伝的障害である。具体的には、SMAはSMNタンパク質のレベルの低下によって生じ、脊髄の前角細胞の生存を促進するには、十分な量のこのSMNタンパク質が必要である。運動ニューロンが失われる結果、深刻な筋萎縮が生じ、多くの場合に呼吸不全が原因で死亡につながる(Monani(2005)Neuron 48:885-896)。SMAの筋病理は、除神経された又は部分的に除神経された筋線維に相当すると考えられる小径の萎縮性線維の存在によって特徴付けられる。萎縮性線維の存在は、運動ニューロンの喪失又は機能不全によって引き起こされる運動ニューロン除神経の古典的な指標である。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者と異なり、SMA患者は、この疾患の最も重症度の高い例であっても、壊死及び炎症性変化の特徴を呈しない(Le Verche V.et al.Spinal Muscular Atrophy;Disease Mechanisms and Therapy 2017;Ch.21:341-356)。
【0074】
SMA患者は機能性SMN1遺伝子を欠いているが、パラロガス遺伝子、SMN2は、転写物をトランケートする選択的スプライシングに起因して、低レベルの機能性SMNタンパク質を産生する。分子医学技法の発達により、SMN1及びSMN2の両方のコピー数の遺伝子タイピングに基づくSMA患者の診断が進歩している。SMA患者はまた、臨床所見に基づいて診断され、実現した最大の運動マイルストーン及び症状発生時の年齢に基づいて表現型が分類される。疾患修飾性薬物により、従来の診断及び分類は一部が変化しつつある。分類は、一部の実施形態では、療法開始年齢、症状発生年齢、及び/又はSMN2コピー数のうちの1つ以上に基づき、例えば別個に行われ得るか、又は発症年齢及び重症度のみによって定義される従来の分類を越えて臨床におけるSMA表現型の定義を改良するために行われ得る(Jedrzejowska M.et al.Degener Neurol Neuromuscul Dis.2020;10:39-47)。
【0075】
本明細書で使用されるとき、特に明示的に定義しない限り、用語「遅発型SMA」は、当該技術分野において公知の従来のSMA分類によって定義されるとおりの2型、3型(歩行可能及び歩行不能型)及び4型SMAを包含することが意図される。一部の実施形態において、遅発型SMA患者は、SMN上方制御薬などの運動ニューロン指向療法で治療されるか、又はそれを受けたことがある(例えば、5歳未満の年齢でかかる療法を受けたことがある)。一部の実施形態において、遅発型SMA患者は、SMN2遺伝子を少なくとも2コピー有する(例えば、少なくとも3コピー又は少なくとも4コピーのSMN2)。一部の実施形態において、遅発型SMA患者は、生後6ヵ月以降の年齢でSMAの診断可能な症状を発症する。SMAを有する対象は、この疾患の症状を呈する前に、又は診断可能な症状が発生した後に治療され得る。
【0076】
本明細書で使用されるとき、用語「乳児発症型SMA」又は「早期発症型SMA」は、当該技術分野において公知の従来のSMA分類によって定義されるとおりの1型SMAを包含する。一部の実施形態において、乳児発症型SMA患者は、SMN上方制御薬などの運動ニューロン指向療法で治療されるか、又はそれを受けたことがある。一部の実施形態において、乳児発症型SMA患者はSMN2を1コピー有する。一部の実施形態において、乳児発症型SMA患者は、生後6ヵ月未満の年齢でSMAの診断可能な症状を発症する。一部の実施形態において、乳児発症型SMA患者は、生後6ヵ月未満の年齢で診断可能な症状を発症した可能性があったが、例えばSMN上方制御薬による治療のおかげで発症していない。一部の実施形態において、こうした対象は、例えば、SMN2コピー数に基づき乳児発症型SMAと診断され、疾患発症年齢以外にも、他の要因、例えば、遺伝子型(SMN2コピー数など)、表現型(歩行又は他の観察される運動形質など)、及び/又はSMA療法に対する反応を基準として遅発型SMA患者と区別される。
【0077】
SMA分類及び疾患特徴の概要を以下に提供する。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
遺伝子型に基づくSMA分類
SMAが臨床的に不均一性である原因は、一部には、この疾患の複雑な遺伝学にある。SMN1遺伝子の突然変異によってSMAが生じる(Lefebvre et al.(1995)Cell 80:155-165);しかしながら、ヒトでは、ほぼ同一の遺伝子SMN2が、SMN1のすぐ近くに位置する(Monani et al.(1999)Hum Mol Genet 8:1177-1183)。これらの遺伝子の主な違いはCからTへの転移であり、これによりエクソンスプライシングサイレンサーが作り出されるため、最終的なmRNA転写物からエクソン7が取り除かれることになる。このトランケート型のSMNタンパク質は不安定で、急速に分解される。それにも関わらず、SMN2から産生されるmRNAの約10%は正しくスプライシングされて完全長SMNタンパク質を産生し、しかしその量は、SMN1の損失を完全に埋め合わせるには不十分である。
【0081】
SMN2のコピー数は個体毎に異なり、SMA疾患重症度と強い相関がある。コピー数が多くなるほど(例えば、3又は4コピー)、概してより軽症型のSMAに関連する。単一のSMN2コピーのSMA患者はまれであるが、このコピー数は、予後不良の重度1型表現型の極めて高い予測指標である。1型のSMAを持つ患者の大多数は、SMN2を1又は2コピー有する;2型の患者はほとんどが、SMN2を3コピー有する;及び3型の患者はほとんどが、SMN2を3又は4コピー有する。例示として、Calucho et al.((2018)Neuromuscular Disorders.28:208-215 at Table 2)によれば、1型SMA患者の約80%が1又は2つのSMN2コピーを保因し、2型患者の約94%が2又は3コピーを保因し、3型患者の約93%が3又は4コピーを保因し、及び4型患者のほぼ100%が4~6つのSMN2コピーを保因する。
【0082】
従来のSMA分類には、重症度の高い順に、1型、2型、3型及び時に4型SMAが含まれる。1型SMAは、典型的には出生時~生後6ヵ月の間に診断され、及び、早期介入がなければ、患者は自力で座るのに十分な筋力を一度も獲得することがない。介入なければ、ほとんどの1型患者は、呼吸補助なしに2歳過ぎまで生存することはない。2型及び3型の人はSMNタンパク質の産生量が多く、重症度が低いが、なおも人生を一変させる型のSMAである。2型患者は、概して生後6~18ヵ月の年齢で診断される。この患者は補助なしで座ることができるが、助けなしで歩くことはできない。3型SMAでは、患者は典型的には生後18ヵ月を過ぎた年齢で診断され、補助なしで座り、歩くことができるが、後年、車椅子に頼ることになり得る。従って、3型SMAには、歩行可能及び歩行不能の両方のサブ集団が含まれる。多くの歩行可能3型SMA患者は、疾患の進行に伴い、ある時点で歩行不能に移行する。4型SMAは成人発症型で、表現型は軽度であり、極めてまれである。
【0083】
型別のSMA層別化は有用な臨床パラダイムであるが、疾患表現型は、離散的な分類というよりむしろ連続体として存在する。例えば、SMA遺伝子突然変異を保因している患者が発症前である(明白な疾患表現型が現れていない)こともあり得る。
【0084】
ある場合には、SMN遺伝子(SMN1など)の遺伝子突然変異を保因する患者は表現型が発症前であり、治療することが遺伝子スクリーニングに基づいて同定され得る。一部の実施形態において、疾患の発現が遅れる理由は、少なくとも一部には、SMN上方制御薬療法(例えば、SMN2上方制御薬療法及びSMN1遺伝子療法)などの早期介入にあり得る。早期介入とは、概して、5歳になる前、例えば、4歳、3歳、2歳、1歳になる前、又は出生直後に治療が開始されることを意味する。近年、新生児遺伝子スクリーニングが広く利用可能になりつつあり、これは、SMAなどの遺伝的障害を持って生まれた個体の同定を可能にするものである。例えば、米国では、多くの州が、ルーチンの新生児スクリーニングのパネルに、数ある公知の遺伝的障害の中でも特にSMAを取り入れており、このスクリーニングは、典型的には生まれて最初の数日間に行われる。従って、疾患を発症する可能性が高いSMN遺伝子(SMN1)の突然変異を保因する乳幼児を早期に、多くの場合に無症候性(発症前)のうちに同定することができる。早期発見及び診断は、例えばその子供が症状を発症し始める前であっても、早期治療介入につながり得る。これは、ある種の臨床発現の予防を助けることができ、及び/又はSMAの発生又は進行を遅らせることができる。
【0085】
遺伝子スクリーニングは新生児/乳児対象で行われ得るとともに、子宮内でも(例えば、胎児でも)行われ得る。一部の実施形態において、対象は、例えば、子宮内での、又は新生児/乳児としてのいずれかの遺伝子スクリーニングにより、SMN突然変異の保因者と同定され、又は同定されたことがある。一部の実施形態において、遺伝子スクリーニングは、新生児/乳児として(例えば、出生から24時間以内に)行われる。他の実施形態において、遺伝子スクリーニングは、子宮内で行われる。
【0086】
発症に基づくSMA分類
SMAの重症型は、典型的には初期症状が、例えば生後6ヵ月未満の年齢で現れる。
【0087】
これは、遅発型SMAと対比して、乳児発症型と称することができる。出生時に、又は生後6ヵ月までにSMA症状が存在するとき、その疾患はまた、SMA1型でもある(乳児発症型又はウェルドニッヒ・ホフマン病とも呼ばれる)。乳幼児は、典型的には全身性の筋脱力、弱い泣声、及び呼吸困難を有する。
【0088】
SMN2遺伝子コピー数などの遺伝子型に基づくSMA分類に関係なく、遅発型SMAという用語は、特に指示がない限り、(症状が現れたときの)疾患発症時期によって定義される。例えば、遅発型SMAは、生後6ヵ月以降の年齢で症状が発生する疾患として定義することができる(SMA2型又は3型と分類される可能性が最も高い)。
【0089】
最近になって、ヌシネルセンなど、承認済みのSMN上方制御薬療法が利用可能であることに伴い、特定の患者の遺伝子型に基づくと一層重症度の高い表現型のSMAの発生を遅らせること、及び/又はその重症度を低減することにおいて早期介入が特に有効であることが示されている。例えば、1型SMAと診断された(又は、SMN2遺伝子のコピー数の低さに起因して、それを発症するリスクがあった)一部の患者は、SMN上方制御薬療法による早期介入により、遅発型SMAと一層整合性の高いものへと表現型が変化し得る。
【0090】
一部の実施形態において、症状の発生に基づく定義は、疾患進行の通常の経過又は時系列を変化させるような早期介入を受けるある種の患者集団を分類するのに有用である。
【0091】
ミオスタチンの標的化による筋機能の改善-ミオスタチン阻害
患者の運動機能を改善する一つの治療手法は、SMAなどの筋肉病態を有する対象の骨格筋を直接標的化して筋萎縮を低減し、ひいては筋力を改善することである。ミオスタチンの阻害は、SMA患者など、筋病態を有する患者の筋量及び筋機能を増加させるのに有望な手法を提供する。ミオスタチンは、TGFβスーパーファミリーのメンバーであり、筋成長の負の制御因子である。遺伝的にミオスタチンが失われると、著しく筋量が増加するため、筋細胞肥大及び過形成の両方が生じることになる(McPherron et al.(1997)Nature 387:83-90)。ミオスタチン機能喪失型突然変異と同様に、ミオスタチンの薬理的阻害によってもまた筋量は増加し、これは筋肥大によって媒介されるもので、過形成によるのではない(Lee et al.(2001)Proc Natl Acad Sci USA 98:9306-9311)。加えて、動物モデルでのエビデンスは、ミオスタチンシグナル伝達を遮断すると、四肢の不動化、癌悪液質、及びコルチコステロイド治療に関連する筋萎縮が予防されることを示唆している(Latres et al.(2015)Skelet Muscle 5:34;Smith et al.(2015)Mol Cancer Ther 14:1661-1670;Wang et al.(2017)Am J Phys Med Rehabil 96(6):430-437;Zhou et al.(2010)Cell 142:531-543)。ノックアウトマウスの最初の報告以来、ウシ、イヌ、及びヒトにおいてミオスタチンの突然変異及び関連する筋肥大が同定されている。ミオスタチンの欠損が何らかの有害な効果を引き起こすようには見えない。
【0092】
ミオスタチンが失われると筋量に著明な効果が及ぶこと、並びにミオスタチンの突然変異で観察される病変はないことから、この成長因子は、サルコペニア、癌悪液質、筋ジストロフィー、及び非活動性萎縮を含め、筋消耗が著しい特徴である適応疾患の重要な治療標的となっている。複数の企業が、ミオスタチンを阻害する、従って筋量及び筋力を増加させる種々の手法を探究しているところである。最も一般的なミオスタチン阻害手法は、(1)成熟成長因子に結合してそれを阻害する抗体(一般的に「中和」抗体と称される)、(2)ミオスタチン受容体ActRIIBに対する抗体、(3)ActRIIB-Fcなどの可溶性リガンドトラップ、及び(4)フォリスタチンなど、ミオスタチン阻害薬のウイルス媒介性発現である(Amato et al.(2014)Neurology 83:2239-2246;Becker et al.(2015)Lancet Diabetes Endocrinol 3:948-957;Campbell et al.(2017)Muscle Nerve 55(4):458-464;Mendell et al.(2015)Mol Ther 23:192-201;Wagner et al.(2008)Neurol 63:561-571)。しかしながら、ミオスタチンを標的化することに加えて、これらの療法の多くはまた、GDF-11及びアクチビンなどの関連するファミリーメンバーも阻害する。成熟ミオスタチン及びGDF-11のアミノ酸配列は90%同一であるため、ミオスタチンに特異的に結合するが、GDF-11には結合しない抗体を生成することは困難である。ミオスタチン、GDF-11、及びアクチビンは全て、ActRIIBを通じてシグナルを送る;そのため、ActRIIBを遮断する抗体又は可溶性ActRIIBリガンドトラップは、従って3つ全ての成長因子の活性を阻害することになる(Lee et al.(2005)Proc Natl Acad Sci USA 102:18117-18122)。これらの療法の幾つかはまた、BMP9及びBMP10など、更に遠縁の成長因子にも、親和性は低いが結合する。この特異性の欠如は、望ましくない副作用の可能性をもたらす。まとめると、これらの観察からは、関連する成長因子のうちの1つ以上のシグナル伝達経路を不注意に阻害することによって引き起こされ得る有害効果のリスクを最小限に抑えるため、ミオスタチンシグナル伝達の選択的阻害薬を開発することの重要性が指摘される。
【0093】
それに応じて、本明細書には、プロミオスタチン及び/又は潜在型ミオスタチンへの結合能を有する、従って、ミオスタチン活性の阻害能を有する抗体、及びSMAなどの筋萎縮に関連する疾患及び障害の治療のためのその使用が開示される。一部の実施形態において、出回っている潜在型症候群の有病率を所与とすれば、本明細書には、成熟した成長因子よりむしろ、一層豊富にある且つ一層長寿命のミオスタチン前駆体、例えば、プロミオスタチン及び潜在型ミオスタチンを特異的に標的化する治療が提供される。いかなる特定の理論によっても拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載される抗体は、例えば、I型(ALK4/5)及びII型(ACTRIIA/B)受容体に結合することにより、プロミオスタチン及び/又は潜在型ミオスタチンが、ミオスタチン経路を活性化させる能力を有する「活性」型のミオスタチンと考えられる成熟ミオスタチンになるタンパク質分解活性化を防ぎ得る。
【0094】
本明細書で使用されるとき、用語「抗体」は、任意の天然に存在する、組換えの、修飾された、又は操作された免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン様構造体又はその抗原結合断片若しくは一部分、又はその誘導体を包含する。従って、この用語は、標的抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子を指し、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、及び多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)が含まれる。インタクトな抗体は、概して少なくとも2つの完全長重鎖と2つの完全長軽鎖とを含むことになるが、一部の例では、重鎖のみを含み得るラクダ科動物に天然に存在する抗体など、それより少ない鎖を含み得る。抗体は、単一の供給源のみに由来してもよく、又は「キメラ」であってもよく、即ち、抗体の異なる一部分が2つの異なる抗体に由来してもよい。抗体、又はその抗原結合部分は、ハイブリドーマで、組換えDNA技法により、又はインタクトな抗体の酵素的若しくは化学的切断により作製されてもよい。抗体という用語には、本明細書で使用されるとき、それぞれ、モノクローナル抗体、二重特異性抗体などの多重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書では時に「抗体模倣体」と称されることもある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合体(本明細書では時に「抗体コンジュゲート」と称されることもある)が含まれる。本明細書に開示される治療方法、使用、及び組成物の様々な実施形態において、抗体は、プロミオスタチン/潜在型ミオスタチン抗体(例えば、アピテグロマブ)である。プロミオスタチン/潜在型ミオスタチン:本明細書で使用されるとき、用語「プロミオスタチン/潜在型ミオスタチン」は、プロミオスタチン、潜在型ミオスタチン、又は両方を指す。一部の実施形態において、抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体は、プロミオスタチンに特異的に結合する。一部の実施形態において、抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体は、潜在型ミオスタチンに特異的に結合する。一部の実施形態において、抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体は、潜在型ミオスタチン及びプロミオスタチンの両方に特異的に結合する。一部の実施形態において、抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチンはアピテグロマブであり、潜在型ミオスタチン及びプロミオスタチンの両方に特異的に結合する。
【0095】
本明細書で使用されるとき、用語「成熟ミオスタチン」は、成熟した生物学的に活性な形態のミオスタチンを指す。一部の実施形態において、成熟ミオスタチンは、ミオスタチン受容体結合及び/又は活性化能力を有する。インビボでの成熟ミオスタチンのそのプロミオスタチン形態からの活性化及び放出は、幾つかの個別的なプロテアーゼ切断イベントにより達成される。まず第一に、「プロミオスタチン」がプロタンパク質転換酵素によって切断される結果、「潜在型ミオスタチン」になり、そこでは成熟ミオスタチンがその受容体に結合しないようにプロドメインの一部分によって遮蔽されている。成熟ミオスタチンの活性化及び放出は、mTLL-2など、BMP/トロイドファミリーからの更なるプロテアーゼによる潜在型ミオスタチンの切断後に達成される。本明細書で使用されるとき、用語「成熟ミオスタチン」は、完全長成熟ミオスタチン、並びに生物学的活性を保持している完全長成熟ミオスタチンの断片の両方を指し得る。成熟ミオスタチンに結合するいわゆる中和抗体は、それによって、成熟ミオスタチンがその細胞受容体に結合してそれを活性化させる能力を妨害する。
【0096】
本明細書で使用されるとき、用語「ミオスタチンのプロフォーム」は、N末端潜伏関連ペプチド(LAP)ドメインに関連する不活性な(例えば、前駆体又は潜在)形態のミオスタチン成長因子を指す。ミオスタチンのプロフォームは、二量体を含む。この用語は、「プロミオスタチン」及び「潜在型ミオスタチン」の両方を包含する。この用語は、LAPドメインに関連しない成熟成長因子(GDF-8)を除外する。
【0097】
用語「プロミオスタチン(pro myostatin)」(又は「プロミオスタチン(promyostatin)」)は、ジスルフィド結合したホモ二量体であって、その各分子が、カルボキシル末端成熟ミオスタチンドメインに共有結合的に結合したアミノ末端プロドメインを含むホモ二量体を含む成熟ミオスタチンの不活性な前駆体を指す。一部の実施形態において、「プロミオスタチン」は、プロタンパク質転換酵素、又はBMP/トロイドファミリーのプロテアーゼのいずれによっても切断されていない。プロミオスタチン及び潜在型ミオスタチン(下記参照)は、ミオスタチン/GDF-8のプロフォームである。
【0098】
本明細書で使用されるとき、用語「潜在型ミオスタチン」は、ジスルフィド結合したホモ二量体であって、その各分子が、カルボキシル末端成熟ミオスタチンドメインに非共有結合的に結合したアミノ末端プロドメインを含むホモ二量体を含む成熟ミオスタチンの不活性な前駆体を指す。一部の実施形態において、「潜在型ミオスタチン」は、プロタンパク質転換酵素によって切断されたが、BMP/トロイドファミリーのプロテアーゼによっては切断されていないプロミオスタチンから生成される。一部の実施形態において、「潜在型ミオスタチン」は、プロドメインとカルボキシ末端成熟ミオスタチンドメインとをインビトロで組み合わせて、それらを正しく折り畳ませることにより生成されてもよい。例えば、Sengle et al.(2011)J.Biol.Chem.,286(7):5087-5099を参照のこと。プロミオスタチン(上記参照)及び潜在型ミオスタチンは、ミオスタチン/GDF-8のプロフォームである。
【0099】
本明細書で使用されるとき、用語「特異的結合」又は「特異的に結合する」は、抗体又はその抗原結合部分が抗原の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)に対して特定の親和性(例えば、Biacore(登録商標)により測定したK)を呈することを意味する。一部の実施形態において、抗体が標的に対して少なくとも約10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、又はそれ以下のKを有する場合、抗体又はその抗原結合部分は標的、例えばプロミオスタチン/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する。本開示の文脈では、「抗原に高親和性で特異的に結合する抗体」とは、概して1.0×10-8M以下のKを指す。一部の実施形態において、抗体又はその抗原結合部分はまた、それが当該の標的に対し、他の抗原に対して示される結合の強さよりも比較的大きい強さで結合する場合、例えば、標的抗原(例えば、プロミオスタチン/潜在型ミオスタチン)に対し、非標的抗原(例えば、成熟ミオスタチン(GDF-8)、GDF-11、及び/又はその他、TGFβ成長因子スーパーファミリーのメンバー)に対する親和性の10倍、100倍、1000倍、又はそれ以上の相対的親和性で結合する場合、標的抗原に「選択的に」(即ち、「優先的に」)結合するとも言い得る。
【0100】
一部の実施形態において、本明細書に開示される治療方法、使用、及び組成物における使用のための抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体は、ミオスタチンのその前駆体からの活性化段階を阻害する。一部の実施形態において、本明細書に開示される治療方法、使用、及び組成物における使用のための抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体は、潜在型ミオスタチンの活性化を阻害する。一部の実施形態において、抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体は、以下の表1~表4に示す重鎖及び軽鎖CDR配列、重鎖及び軽鎖可変領域配列、及び/又は完全重鎖及び軽鎖配列を含む。
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】
【0104】
【表6】
【0105】
アピテグロマブ(別名「SRK-015」)は、ミオスタチンのプロフォーム-即ち、プロミオスタチン及び潜在型ミオスタチン-に高親和性で特異的に結合する臨床試験用の完全ヒトモノクローナル抗体である。アピテグロマブは、ヒト免疫グロブリンG4(IgG4)/λアイソタイプである。これは、上記に示す配列(配列番号15の重鎖アミノ酸配列及び配列番号16の軽鎖アミノ酸配列を含む)を含む。国際出願PCT/US2016/052014号明細書(国際公開第2017/049011号パンフレット)及び米国特許出願第15/760,393号明細書(米国特許出願公開第2018-0344844号明細書;米国特許第10,751,413号明細書)が、アピテグロマブの配列を開示しており、各々、かかる配列の開示について参照により本明細書に援用される。一部の実施形態において、本明細書に開示される治療方法、使用、及び組成物における使用のための抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体は、アピテグロマブである。
【0106】
一部の実施形態において、本明細書に記載される抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体又は抗原結合断片は、Kabat番号付け方式により定義されるとおりの配列番号1(HCDR1)、配列番号2(HCDR2)、及び配列番号3(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);及び配列番号4(LCDR1)、配列番号5(LCDR2)、及び配列番号6(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。
【0107】
一部の実施形態において、本明細書に記載される抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体又は抗原結合断片は、IMGT付番方式により定義されるとおりの配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)、及び配列番号9(HCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR);及び配列番号10(LCDR1)、配列番号11(LCDR2)、及び配列番号12(LCDR3)のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。
【0108】
様々な実施形態において、抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体又は抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び/又は配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0109】
様々な実施形態において、抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体又は抗原結合断片は、配列番号15の重鎖アミノ酸配列、及び/又は配列番号16の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0110】
アピテグロマブは、プロミオスタチン/潜在型ミオスタチン複合体のプロドメイン内にある「アーム」領域に結合し、潜在型/不活性複合体からの成熟成長因子(即ち、GDF-8)の放出を阻害する。アピテグロマブの結合はプロミオスタチン/潜在型ミオスタチンに特異的であり、従ってアピテグロマブは、成熟GDF-8又はGDF-11(又はTGFβ成長因子スーパーファミリーの任意の他のメンバー)には結合しないため、他の生物学的経路に影響を及ぼすことなくミオスタチンシグナル伝達を選択的に標的化することが可能となる。
【0111】
アピテグロマブによるミオスタチン活性化の阻害は、プロミオスタチン及び潜在型ミオスタチンの蓄積につながり得る。プロミオスタチンは主に骨格筋内に見られ、潜在型ミオスタチンは主に血清中に見られるため、一部の実施形態では、血清潜在型ミオスタチンレベルがアピテグロマブの標的会合、例えば、骨格筋におけるアピテグロマブとの標的会合のマーカーとして働き得る。同じような方法で、一部の実施形態では、血清潜在型ミオスタチンレベルが、GYM329など、他のプロミオスタチン/潜在型(atent)ミオスタチン抗体の標的会合マーカーとして類似した方法で働き得る。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチンレベルは、ベースライン時(即ち、治療前)は比較的低く、アピテグロマブによる治療後に増加し得る。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチンレベルの増加は、アピテグロマブとの標的会合、例えば、骨格筋におけるアピテグロマブとの標的会合を指示している。一部の実施形態において、潜在型ミオスタチンの治療後の高いレベルと比較したときの低いベースライン血清レベルは、薬物標的の大部分が、全身に循環しているというよりむしろ、骨格筋内に滞留していることを指示している。一部の実施形態において、標的会合の飽和は、ある種の治療効果(例えば、有効性)を実現するのに十分な投薬量であることを指示しており、但し、飽和しなくとも有効性に達することは可能であり得る。
【0112】
特定の実施形態において、本開示は、代替の抗ミオスタチン抗体又は抗原結合断片、例えば、抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体又は抗原結合断片、例えば、選択的抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体、例えば、PCT/JP2015/006323号明細書(この内容は、本明細書によって全体として参照により援用される)に開示される抗体又は抗原結合断片のいずれか1つなどの使用を包含する。本明細書で使用されるとおりのミオスタチン選択的阻害薬は、GYM329など、本明細書に記載されるとおりの代替の抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体又は抗原結合断片であってもよい。特定の実施形態において、本開示は、PCT/JP2015/006323号明細書に開示されるとおりのMST1032-G1mのヒト化変異体である抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体又は抗原結合断片を包含する。特定の実施形態において、本開示は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3の3つのCDR配列を含む重鎖可変ドメインと、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の3つのCDR配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体又は抗原結合断片を包含し、ここで重鎖CDRは、それぞれ、XDIS(HCDR1;配列番号17);IISYAGSTYYASWAKG(HCDR2;配列番号18);GVPAYSXGGDL(HCDR3;配列番号19)のアミノ酸配列を含み;及び軽鎖CDRは、それぞれ、XSQSVYXNWLS(LCDR1;配列番号20);WASTLAX(LCDR2;配列番号21);及びAGGYGGGXYA(LCDR3;配列番号22)のアミノ酸配列を含む(式中、X~Xの各々は、任意のアミノ酸残基である)。特定の実施形態において、Xは、S又はHであり;Xは、Y、T、又はDであり;Xは、T又はHであり;Xは、Q又はTであり;Xは、S又はTであり;Xは、D又はHであり;Xは、N又はEであり;Xは、S又はYであり;Xは、L又はRである。特定の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号23~28;29~34;35~40;又は41~46の6つのCDR配列を含む。特定の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号47~50のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。特定の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、配列番号51~54のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、以下の表に列挙されるものからの一組の6つのCDR(例えば、同じMST1032変異体抗体からの)又は一対のVH/VL(例えば、同じMST1032変異体抗体からの)を含む。
【0113】
【表7】
【0114】
【表8】
【0115】
【表9】
【0116】
【表10】
【0117】
【表11】
【0118】
【表12】
【0119】
特定の実施形態において、本開示は、SMAを有する対象を治療するための代替の抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体としてのGYM329又は上記の表3C~表3Hからの配列(例えば、一組の6つのCDR又は一対の可変ドメイン)のいずれかを含む抗体の使用を包含する。特定の実施形態において、GYM329又は上記の表3C~表3Hからの配列のいずれかを含む抗体は、SMAの治療のためのSMN上方制御薬療法(例えば、リスジプラム、ヌシネルセン及び/又はオナセムノゲンアベパルボベク)と併せて使用される。特定の実施形態において、GYM329又は上記の表3C~表3Hからの配列のいずれかを含む抗体は、歩行可能な、又は自力で歩く能力を有するSMA対象の治療に使用される。特定の実施形態において、対象は遅発型SMAを有する。特定の実施形態において、対象は早期発症型SMAを有する。特定の実施形態において、患者は歩行不能SMAを有する。特定の実施形態において、対象は年齢が2~10歳である。特定の実施形態において、対象は、過去にSMN上方制御薬による治療歴がある。特定の実施形態において、対象は、過去にリスジプラム、ヌシネルセン及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクによる治療歴がある。特定の実施形態において、対象は、過去にSMN上方制御薬による治療歴がない。特定の実施形態において、GYM329は、歩行可能な、又は自力で歩く能力を有する対象、好ましくは年齢が2~10歳の対象のSMAの治療に使用され、ここでこの使用は、GYM329をリスジプラムと併せて対象に投与することを含み、ここで対象は、過去に少なくとも1用量のリスジプラム、ヌシネルセン又はオナセムノゲンアベパルボベクの投与歴がある。一部の実施形態において、対象は10メートルを30秒以内に歩く又は走ることができ、及び/又は5q常染色体劣性SMA及び症候性疾患の確定遺伝子診断を有する。一部の実施形態において、GYM329又は上記の表3C~表3Hからの配列のいずれかを含む抗体の単独での、又はSMN上方制御薬と併せた使用は、治療がない場合と比べて改善につながり得る。改善は、RHS及び/又は運動機能尺度32(Motor Function Measure-32:MFM32)スコアによって測定し得る。改善は、MRI及び/又は二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)スキャンによって測定したときの筋量の改善であり得る。改善は、筋力計によって測定したときの筋力の改善であり得る。改善は、SMA自立性評価尺度(SMA Independence Scale:SMAIS)によって判定されるとおりであり得る。改善は、前述の測定基準のうちの2つ以上に見られ得る。
【0120】
一部の実施形態において、抗ミオスタチン抗体、例えば、GYM329又はアピテグロマブなどの抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体を含む組成物が、生後2ヵ月以上の患者のSMAの治療に使用され、ここで任意選択で、この治療はリスジプラム(EVRYSDI(登録商標))を更に含む。一部の実施形態において、GYM329又はアピテグロマブ及びリスジプラムは、組み合わせ療法として患者に投与される。一部の実施形態において、GYM329又はアピテグロマブは、リスジプラムによる治療歴のある患者(即ち、その投与歴がある患者)に追加又は補助療法として投与される。一部の実施形態において、リスジプラムは、GYM329又はアピテグロマブによる治療歴のある患者(即ち、その投与歴がある患者)に追加又は補助療法として投与される。一部の実施形態において、患者は生後2~7ヵ月であり、ここで任意選択で、患者は1型SMAを有するか、又は有する疑いがある。一部の実施形態において、患者は2~25歳であり、ここで任意選択で、患者は2型又は3型SMAを有する。一部の実施形態において、患者は任意の年齢であり(例えば、乳児、小児、又は成人)、1型、2型又は3型SMAを有する。
【0121】
SMN療法
SMNタンパク質レベルを回復させる治療手法については、SMN1遺伝子置換療法、SMN2スプライシングを調節する小分子、及びアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を使用してSMN2イントロンスプライシングサイレンサーを遮断し、ひいてはエクソン7インクルージョンを増加させるものを含め、多数の研究が行われている。
【0122】
アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を使用したSMN1遺伝子置換療法の有益性がマウスSMAモデルにおいて示されており、AveXisからのAAV9-SMN1ベクターであるAVXS-101が第I相臨床試験で評価されている(NCT02122952を参照のこと)(Passini et al.(2010)J Clin Invest 120:1253-1264)。
【0123】
他の手法は、より大きな割合の転写物においてエクソン7が保持されることで完全長SMNタンパク質の産生増加につながるようなSMN2スプライシングの調節に着目するものである。Novartis及びPTC Therapeutics/Rocheは、両者ともSMN2エクソン7インクルージョンを選択的に増強する小分子を開発しており、マウスSMAモデルにおいて完全長SMNタンパク質レベルの増加及び治療有効性が得られている(Calder et al.(2016)J Med Chem 59:10067-10083;Naryshkin et al.(2014)Science 345:688-693;Palacino et al.(2015)Nat Chem Biol 11:511-517;Ratni et al.(2016)J Med Chem 59:6086-6100)。両企業からのこれらの小分子は第2相臨床試験で評価されている(治験NCT02913482、NCT03032172、NCT02908685、NCT022688552を参照のこと)。軽度及び重度SMA前臨床モデルにおけるRG7800、SMN-C2、及びSMN-C3の経口投与では、治療したマウスにおいて、媒体と比較したとき、これらの化合物によって脳及び筋組織の両方のSMNタンパク質レベルが増加したことが示された。これらの分子はまた、血液脳関門(BBB)も効率的に通り抜けた。重度SMAマウスモデルでは、両方の化合物とも、媒体と比較して運動行動が正常となり、体重及び生存率が増加した。しかしながら、この臨床プログラムは安全性への懸念から中断された。
【0124】
更なる小分子ベースのSMN2スプライシング修正薬が、例えば、米国特許出願公開第2009/0031435号明細書;及び米国特許第8,399,437号明細書(各々の内容は全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。しかしながら、当該技術分野において公知のSMN2スプライシング修正薬、例えばリスジプラムを含めた、及び当業者には明らかであろう他の小分子スプライシング修正薬が、本開示の範囲内にあることが理解されなければならない。
【0125】
第3の手法は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を使用して、例えば、SMN2イントロンスプライシングサイレンサーを遮断し、ひいてはエクソン7インクルージョンを増加させるというものであり、この場合もやはり、マウスSMAモデルにおいて疾患がレスキューされる(Hua et al.(2010)Genes Dev 24:1634-1644;Hua et al.(2011)Nature 478:123-126;Passini et al.(2011)Sci Transl Med 3:72ra18)。Biogen/Ionisは、ASOスプライシング修飾薬であるヌシネルセンを開発しており、これは臨床的有効性を示しており、FDAの承認を受けてSpinraza(商標)として販売された(Chiriboga et al.(2016)Neurology 86:890-897;Finkel et al.(2016)Lancet 388:3017-3026;FDA,Nusinersen;Office of drug evaluation decisional memorandum(2016))。しかしながら、ヌシネルセンは、投与の度に全身麻酔下で髄腔内送達する必要がある。加えて、アンチセンス修正薬ヌシネルセンは有望であることが証明されているが、臨床的有効性は中程度であるように見える:乳児発症型SMA(I型)の中では、患者の60%が非奏効例であることが報告されており、ヌシネルセン治療患者の43%は、プラセボと比較したとき、ハマースミス機能運動評価尺度(拡大版)(Hammersmith Functional Motor Scale(Expanded):HFMSE)による3点以上の増加を達成せず、一方で治療した患者群の増加平均は6点未満であった。従って、ヌシネルセン治療によっては部分的改善が実現するに過ぎない。
【0126】
これらの分子はいずれも、前臨床で、及びヌシネルセンは臨床で、有意な有効性を示しているが、この疾患の完全な根治をもたらすものは1つもない。マウスモデルでは、小分子及びASOスプライシング修飾薬の両方が疾患重症度を有意に低下させるものの、それにも関わらず治療動物は、健常動物と比較すると、長寿命、体重、筋量、及び筋機能の点で欠陥がある(Hua et al.(2011)Nature 478:123-126;Feng et al.(2016)Hum Mol Genet 25:964-975)。乳児発症型SMAにおける二重盲検臨床試験では、ヌシネルセンは中間解析時点で臨床的に有意味な利益をもたらした(プラセボの0%に対して治療済みの41%で、ハマースミス乳児神経学的検査(Hammersmith Infant Neurological Examination)を用いた運動マイルストーンの改善が見られた)。到達される運動機能マイルストーンはI型患者にとって印象的なものであり、81例中5例の治療患者が助けなしで座ることができる(これらの患者ではほぼ一度も到達されないマイルストーン)。それにも関わらず、これらの患者は、全範囲にわたる発達マイルストーンを実現しておらず、正常な個体であれば、それらの実現したマイルストーンは失望させられるものと見なされるであろう。2型SMAにおける第2のプラセボ対照試験では、ヌシネルセンは、この場合もやはり臨床的に有意味な改善を示し、ハマースミス機能運動評価尺度-拡大版(Hammersmith Functional Motor Scale-Expanded:HFMSE)のスコアはプラセボ群と比べて5.9点増加した。HFMSEの最高スコアは66点であり、ほとんどの2型患者はスコアが20点を下回ることに留意されたい(Glanzman et al.(2011)J Child Neurol 26:1499-1507;Kaufmann et al.(2011)Arch Neurol 68:779-786)。それにも関わらず、この試験で患者の43%は少なくとも3点の運動機能の改善を実現できなかった。これらの結果は、SMN2スプライシング調節薬には、SMA疾患経過患者クオリティ・オブ・ライフに有意な効果を及ぼす可能性があるが、追加的な機能獲得には、疾患の負担を低減する更なる改善が必要であることを指示している。
【0127】
本明細書で使用されるとき、用語「運動ニューロン指向療法」は、神経機能を改善する(例えば、増強する又は回復させる)ことを目的とした薬剤を指す。かかる療法は、運動ニューロンとその標的筋肉との間の損なわれたシグナル伝達が関わる病態の治療に有用である。具体的には、運動ニューロン指向療法は、筋肉を神経支配するニューロンの完全ではないが部分的な喪失が関わる病態の治療において特に有用であり得る。一部の実施形態において、運動ニューロン指向療法は、遺伝子療法、小分子、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。一部の実施形態において、運動ニューロン指向療法は、「SMN上方制御薬」である。本開示に係るアピテグロマブと併せた使用に好適な例示的運動ニューロン指向療法(例えば、SMN上方制御薬)としては、限定はされないが:ヌシネルセン;リスジプラム;及びオナセムノゲンアベパルボベクが挙げられる。一部の実施形態において、運動ニューロン指向療法は、細胞(例えば、対象の体内にある細胞)の運動ニューロン機能を完全に回復させる能力を有する薬剤である。一部の実施形態において、運動ニューロン指向療法は、細胞(例えば、対象の体内にある細胞)の運動ニューロン機能を部分的に回復させる能力を有する薬剤である。一部の実施形態において、運動ニューロン指向療法は、細胞(例えば、対象の体内にある細胞)の運動ニューロン機能の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又はそれ以上を回復させる能力を有する薬剤である。当業者は、運動ニューロン機能に、典型的には、膜興奮性、軸索輸送、小胞輸送、神経伝達物質放出、ミトコンドリア機能、及び/又はミトコンドリア利用能が含まれ、かかる機能が当業者に公知のアッセイを用いて測定されることを理解するであろう。
【0128】
本明細書で使用されるとき、用語「SMN上方制御薬」又は「SMN上方制御薬療法」(これはまた、同義的にSMN療法、SMN指向療法、SMN修正薬、SMN増強療法、又はSMN増強薬とも称され得る)は、SMN遺伝子発現(例えば、SMN1遺伝子発現及び/又はSMN2遺伝子発現)、SMNタンパク質産生、及び/又は機能性SMN活性を増加させる又は改善するために使用することのできる任意の療法又は化合物を指す。SMN上方制御薬は、中枢性修正薬又は全身性修正薬であり得る。中枢性上方制御薬は、髄腔内経路から中枢神経系(CNS)に直接投与されてもよい。対照的に、全身性上方制御薬は任意の経路から投与され、例えば経口投与されてもよく、CNSのみならず、体全体にわたって他の組織に影響を及ぼす。SMN上方制御薬には、例えば、SMN2転写物のスプライシングを変化させるスプライシング修正薬/修飾薬が含まれる。全身的に送達されるSMNスプライシング修飾薬はまた、SMNが発現する他の(即ち、非神経性)組織のSMNスプライシングにも影響を及ぼし得る。
【0129】
一部の実施形態において、「機能性SMNタンパク質」は、運動ニューロン機能及び/又は生存を促進する能力を有する。一部の実施形態において、「機能性SMNタンパク質」は、細胞(例えば、対象の体内にある細胞)の運動ニューロン機能を完全に回復させる能力を有する。一部の実施形態において、機能性SMNタンパク質は、細胞(例えば、対象の体内にある細胞)の運動ニューロン機能を部分的に回復させる能力を有する。一部の実施形態において、機能性SMNタンパク質は、細胞(例えば、対象の体内にある細胞)の運動ニューロン機能の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又はそれ以上を回復させる能力を有する。一部の実施形態において、完全長SMNタンパク質は、正しくスプライシングされたSMN mRNAのタンパク質翻訳(例えば、細胞における)の結果である。一部の実施形態において、機能性SMNタンパク質は、エクソン7を持つSMN2 mRNAからコードされる。
【0130】
好適な「SMN上方制御薬」の例としては、スプライシング修飾薬、SMN遺伝子置換又は遺伝子療法、SMN転写増強薬、SMNタンパク質翻訳増強薬、及びSMNタンパク質安定薬が挙げられる。一部の実施形態において、かかるSMN上方制御薬は、小分子薬剤、生物製剤、又は核酸であってもよい。一部の実施形態において、SMN上方制御薬は、SMN2の小分子スプライシング修飾薬である。一部の実施形態において、SMN上方制御薬は、SMN2のアンチセンスRNAスプライシング修飾薬である。一部の実施形態において、遺伝子療法は、患者への1つ以上のトランス遺伝子の導入を含む。一部の実施形態において、遺伝子導入は、ウイルスベクター及び脂質ベースの担体など、好適なベクターの使用によって実現する。ウイルスベクター媒介性遺伝子送達について、遺伝子療法には、対象における有害な免疫応答を最小限に抑えるため、初期治療に特定の血清型を使用し、続いて後続の治療に異なる血清型を使用することが関わり得る。一部の実施形態において、遺伝子療法には、CRISPR/Cas9技術又はその変法など、標的化したゲノム編集が関わる。本開示に係るアピテグロマブと併せた使用に好適なSMN上方制御薬の非限定的な例としては、限定はされないが:ヌシネルセン;リスジプラム;及びオナセムノゲンアベパルボベクが挙げられる。ヌシネルセンは、SMNタンパク質欠損につながる突然変異によって引き起こされるSMAを治療するように設計されたSMN2指向アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。例えば、Darras et.al.(2019)Neurology.92(21)e2492-e2506;Mercuri et.al.(2018)N Engl J Med.378:625-635を参照のこと。リスジプラムも同じように働き、SMN2メッセンジャーRNAのスプライシングを修飾するピリダジン誘導体である。例えば、Oskoui et al.“SUNFISH Part 2:24-month efficacy and safety of risdiplam in patients with type 2 or non-ambulant type 3 spinal muscular atrophy(SMA).”Presented at MDA Clinical and Scientific Conference 2021;March 15-18.Poster 80を参照のこと。オナセムノゲンアベパルボベクは、ヒトSMNタンパク質をコードする遺伝子のコピーを送達するように設計された組換えアデノ随伴ウイルスベクター9型ベースの遺伝子療法である。
【0131】
一部の実施形態において、SMN上方制御薬は、遺伝子療法、小分子、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。一部の実施形態において、SMN上方制御薬は、オリゴヌクレオチド分子である。一部の実施形態において、SMN上方制御薬は、アンチセンス分子である。一部の実施形態において、SMN上方制御薬は、SMN2遺伝子の発現を増加させるアンチセンス分子である。一部の実施形態において、SMN上方制御薬は、エクソン7を持つSMN2 mRNAの発現を増加させるアンチセンス分子である。一部の実施形態において、SMN上方制御薬は、機能性SMNタンパク質、例えば、エクソン7を持つSMN2 mRNAによってコードされるSMNタンパク質の発現を増加させるアンチセンス分子である。例えば、SMN2遺伝子のイントロン7にあるイントロンスプライシングサイレンサー部位(ISS)を阻害することを指向するアンチセンスオリゴヌクレオチドはプレmRNAプロセシングを調節することができ、SMN2の成熟mRNA転写物内でエクソン7インクルージョンが起こる確率が高まることにつながるため、機能性SMNタンパク質の産生増加が生じる。
【0132】
用語「スプライシング修正薬」、「スプライシング調節薬」、及び「スプライシング修飾薬」は、本明細書で使用されるとき、同義的であり、SMN2遺伝子によってコードされるものなど、RNA転写物のスプライシング異常を修正し、及び/又はSMNタンパク質の発現を調節する薬剤を指す。一部の実施形態において、SMN2スプライシング修正薬は、SMN2プレmRNAにおけるエクソン7のインクルージョンを増加させる。一部の実施形態において、SMN2プレmRNAにおけるエクソン7のインクルージョンが増加すると、ニューロン機能及び/又は生存を促進する能力を有するSMNタンパク質など、細胞又は対象における機能性SMNタンパク質の(例えば、SMN2遺伝子からの)発現の増加につながる。
【0133】
一部の実施形態において、SMN上方制御薬は、遺伝子療法である。本明細書で使用されるとき、用語「遺伝子療法」は、核酸を使用して対象の病態を治癒し、根治し、又は他の形で改善する任意の手技を指す。遺伝子療法では、核酸は特異的な細胞へと送達される。送達方法にはウイルス的手段及び非ウイルス的手段が含まれ、それらは当該技術分野において公知である。例えば、Patil et al.(2005)AAPS J.7(1):E61-E77;Gascon et al.,Non-Viral Delivery Systems in Gene Therapy(2013);Somiari et al.(2000)Molecular Therapy,2(3):178-187;Herweijer and Wolff(2003)Gene Therapy 10(6):453-458;Nayerossadat et al.(2012)Advanced Biomedical Research 1(2):1-11を参照のこと。遺伝子療法を送達するためのウイルス的手段には、ウイルスベクターの使用が関わる。ウイルスベクターは、治療用遺伝子ペイロードを運ぶことのできる、且つ野生型ウイルス感染に典型的に付随する副作用なしに感染及び続く特異的組織への前記ペイロードの伝播を可能にするように再プログラム化されている遺伝子修飾されたウイルスである。ウイルスベクターとして、レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、及びエプスタイン・バーウイルスを含め、幾つものウイルスを使用することができる。野生型ウイルスよりも安全性が高いものの、ウイルスベクターは免疫応答を引き起こし得るため、場合によっては非ウイルス的送達方法の使用が必要となる。一部の実施形態において、ウイルスベクターは、AAVウイルスベクターである。非ウイルス的送達方法としては、限定はされないが、ネイキッドDNAの注射、電気穿孔、遺伝子銃ボンバードメント、及び超音波などの物理的方法、並びに生化学的方法が挙げられる。別の送達技法、マグネトフェクションは、物理的要素と生化学的要素とを組み合わせる。
【0134】
一部の実施形態において、SMN上方制御薬の「有効量」とは、細胞(例えば、対象の体内にある細胞)の運動ニューロン機能を完全に回復させる能力を有する薬剤の量である。一部の実施形態において、SMN上方制御薬は、細胞(例えば、対象の体内にある細胞)の運動ニューロン機能を部分的に回復させる能力を有する薬剤である。一部の実施形態において、SMN上方制御薬の「有効量」とは、細胞(例えば、対象の体内にある細胞)の運動ニューロン機能の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又はそれ以上を回復させる能力を有する薬剤の量である。一部の実施形態において、運動ニューロン機能には、膜興奮性、軸索輸送、小胞輸送、神経伝達物質放出、ミトコンドリア機能、及び/又はミトコンドリア利用能が含まれる。
【0135】
一部の実施形態において、SMN上方制御薬は、機能性SMNタンパク質の発現を、例えば、SMN2 mRNA転写物におけるエクソン7のインクルージョンを促進することによって増加させる薬剤、例えば、小分子又はオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)である。一部の実施形態において、細胞は、対象、例えば、SMN上方制御薬を投与される対象の体内にある細胞である。一部の実施形態において、SMN上方制御薬は、細胞、例えば、対象の細胞中にある、エクソン7を含まないSMN2 mRNAと比較したときの、エクソン7を含むSMN2 mRNAの相対量を増加させる。一部の実施形態において、SMN上方制御薬の「有効量」は、細胞内にあるSMN2 mRNAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又はそれ以上がエクソン7を持つなど、細胞(例えば、対象の体内にある細胞)中にある正しくスプライシングされたSMN2 mRNAの量を増加させる。一部の実施形態において、SMN上方制御薬の「有効量」は、対象におけるエクソン7を持つSMN2 mRNAのレベルを少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、又はそれ以上増加させる。一部の実施形態において、SMN上方制御薬の「有効量」は、対象における機能性SMNタンパク質のレベルを少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、又はそれ以上増加させる。
【0136】
SMN修正薬の臨床的利益
5歳以上の歩行不能遅発型SMA患者の間では、この患者集団の自然歴に基づけば、平均HFMSEスコアが12ヵ月の期間に悪化することが予想され、HFMSEスコアの3点以上の増加を示す患者は僅か(例えば、5%未満)である(Mercuri et al.(2016)Neuromuscul Disord.26(2):126-131)。これを背景に、ヌシネルセンは、この療法を5歳以上の年齢で開始した患者では、限られた臨床的利益しかもたらさないことが報告されている。より具体的には、CHERISH研究では、ヌシネルセンを5歳以上の年齢で開始した患者には、15ヵ月間のヌシネルセン治療の後に0.5点を超える平均HFMSEの悪化があり、この期間にHFMSEスコアの3点以上の増加を示した患者は15%未満であった(Mercuri et.al.(2018)N Engl J Med.378:625-635、例えば、図2A)。これらの患者は、この先行研究では15ヵ月を過ぎても更に観察された。ヌシネルセンによる長期治療は、疾患の安定化、例えば、それ以上の運動機能喪失の予防を提供するように見える。この年齢層の患者の大多数は、HFMSEの改善が見られず、3点以上の増加を実現することはまれである。
【0137】
ヌシネルセンを早期に(5歳より前の年齢で)開始した歩行不能遅発型SMA患者の間では、既発表のデータから、ヌシネルセン治療患者が最初の15ヵ月間の療法を過ぎると主として安定し、又は中程度の漸進的な改善を見せることが示唆される。CHERISH研究におけるヌシネルセン治療患者のほとんどは、療法開始時点で年齢が5歳未満であった。CHERISH研究では、ヌシネルセンを投与された患者は、最初の15ヵ月間の治療でほぼ4点の平均HFMSEの改善を見せた。CHERISHにおけるこの初期15ヵ月間ヌシネルセン治療を過ぎて、患者が長期SHINE研究に繰り越し登録したとき、これらの患者は長期ヌシネルセン治療相の間に主として運動機能の安定又は中程度に過ぎない漸進的な平均的改善を示した。患者は約4.5年にわたる治療後に約4.6点の増加を示した(図8を参照のこと、これはWilliams et alからの再掲である)。Minimal clinically important differences of the Expanded Hammersmith Functional Motor Scale in later-onset spinal muscular atrophy:results from the phase 3 CHERISH trial.米国マネージドケアファーマシー学会(American Academy of Managed Care Pharmacy)第31回年次総会;2019年3月25~28日;San Diego,CA,USAでの発表)。
【0138】
歩行可能3型SMA患者の縦断的研究からの自然歴データは、この患者集団に関する更なる背景的洞察を提供する。これらのデータは、歩行可能3型SMA患者に運動機能の悪化がよく見られ、場合によってはそれは重度である(例えば、歩行運動の喪失)ことを示している(Coratti et al.(2020)American Neurology Association,88:1109-1117、例えば、図1)。130例の歩行可能3型SMA患者の研究では(時間が経って、一部の患者は追跡不能例となっている)、ベースライン時に平均年齢10.05歳及び平均HFMSEスコア52.81点。12ヵ月判定時、HFMSEのベースラインからの平均変化は-0.79点であり、11例の患者が歩行運動を喪失していた(歩行運動喪失の平均年齢は10.21歳(SD±6.43歳)であった)。7歳までの患者では、中程度の機能改善を伴う相対的安定性が観察されたが、続いてその後数年間に急に悪化した。
【0139】
同様に、別のSMN修正薬であるリスジプラムの長期評価では、治療利益が実証されたが、12ヵ月後に主要及び副次的エンドポイントの安定化又は軽微な/不定の改善があったに過ぎなかった(Oskoui et al.“SUNFISH Part 2:24-month efficacy and safety of risdiplam in patients with type 2 or non-ambulant type 3 spinal muscular atrophy(SMA).”Presented at MDA Clinical and Scientific Conference 2021;March 15-18.Poster 80)。
【0140】
追加/補助療法、組み合わせ療法
本開示は、患者のSMAを治療することを目的とした、運動ニューロン指向療法(例えば、SMN療法)である第1の薬剤と、筋指向療法(例えば、ミオスタチン阻害薬、例えば、アピテグロマブ)である第2の薬剤とを含む追加療法(補助療法とも称される)及び組み合わせ療法を含む。これらの2つの薬剤を互いに併せて使用すると、治療効果が増強される。追加又は補助療法とは、バックグラウンド療法を続行中の患者に療法が投与されることを意味する。例えば、アピテグロマブなどの筋指向療法は、SMN療法を既に受けている最中のSMA患者に投与されてもよい。比較して、組み合わせ療法とは、医師又は医師チームによって手配された又は予め決められた治療レジメンの一環としての患者への両療法の投与を指す。組み合わせ療法及び追加療法は、別個に投与されてもよく、又は同じセッティングで、例えば、同じ臨床来院の間に投与されてもよい。
【0141】
様々な実施形態において、本開示は、運動ニューロン指向療法、例えば、SMN上方制御薬など、運動ニューロン欠損に対処する療法も受ける患者におけるSMAの治療のための抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体(例えば、アピテグロマブ)の使用を提供する。本開示は、SMN上方制御薬で治療される対象のSMAの治療方法であって、抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体の投与を含む方法を包含する。様々な実施形態において、抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体は、アピテグロマブである。
【0142】
一部の実施形態において、SMN療法と併せて使用されるアピテグロマブは、相加的な臨床的利益を提供する。一部の実施形態において、SMN療法と併せて使用されるアピテグロマブは、相乗的な臨床的利益を提供する。「相乗的」とは、2つの薬剤を追加療法又は組み合わせ療法のいずれかとして互いに併せて使用したとき、それらが一緒になって、各々の単剤療法により達成される効果の合計よりも大きい有効性を実現することを意味する。
【0143】
アピテグロマブは、SMN上方制御薬療法の奏効例、奏効不良例、又は非奏効例のいずれであるSMA患者にも投与され得る。奏効不良例又は非奏効例については、ミオスタチンシグナル伝達を同時に阻害すると、一部には筋機能の増強に起因して神経筋シグナル伝達が改善し得るため、それによって非奏効例の神経支配する運動ニューロンのSMN上方制御薬に対する反応性が高まり得る。特定の理論によって拘束されることを望むものではないが、筋肉成分の増強が正のフィードバックによってニューロン成分に影響を及ぼし、及び神経筋シグナル伝達の双方向性の性質に起因して、逆もまた同様であり得ることが企図される。
【0144】
SMN上方制御薬の奏効不良例及び/又は非奏効例は、それにも関わらずミオスタチン阻害から利益を得ることができるが、例示的患者集団には、SMN上方制御薬の奏効例である者が含まれる。これらの個体における運動機能は、SMN上方制御薬療法などの運動ニューロン指向療法と併せて使用されるアピテグロマブなどのミオスタチン阻害療法によって更に改善され得ることが企図される。
【0145】
語句「~と併せて」は、2つ以上の治療用薬剤(例えば、SMN上方制御薬療法と併せて使用されるアピテグロマブ)を含むSMAの治療レジメンの文脈では、それらの2つ以上の療法を受ける対象において、第1の療法の治療効果が第2及び/又は追加の療法の治療効果と時間的及び/又は空間的に重複することを意味する。2つ以上の療法は、単一の製剤として投与されなくてもよく、またそれらは同時に投与される必要も、同じ経路で投与される必要もない。第1、第2、及び/又は追加の組成物は、併用して(例えば、同時に)、個別に、又は逐次的に投与されてもよい。従って、2つ以上の療法は、併用投与用に単一の製剤として製剤化されてもよく、又は逐次、併用、若しくは同時投与用にそれらの療法の個別の製剤として製剤化されてもよい。SMAを治療する第1の療法(例えば、アピテグロマブ)で治療された対象に、SMAを治療する第2の追加的な療法(例えば、SMN上方制御薬療法)が投与されるとき、その第2の追加的な療法は、「追加」療法又は「補助」若しくは「補助的」療法と称され得る。
【0146】
一部の実施形態において、2つ以上の治療用薬剤(例えば、上方制御薬療法などのSMN指向療法と併せて使用されるアピテグロマブ)を含む本明細書に記載される治療レジメンは、各薬剤単独を使用する単剤療法と比較したとき、患者における臨床的利益の改善を実現する。具体的には、SMN上方制御薬療法などの運動ニューロン指向療法と併せて、アピテグロマブなどのミオスタチン阻害療法で罹患筋肉を標的化すると、ミオスタチン阻害療法又は運動ニューロン指向療法単独と比べて有益な臨床アウトカムが生み出され得る。かかる効果は、それぞれの単剤療法と比較したとき相加的又は相乗的であり得る。一部の実施形態において、2つ以上の療法を組み合わせる効果は相加的であり、即ち、一緒に使用される療法の効果が、独立に使用したときのそれらの療法の効果の合計と等しいか、又はほぼ等しい。一部の実施形態において、2つ以上の療法を組み合わせる効果は相乗的、即ち超相加的であり、即ち、一緒に使用される療法の効果が、独立に使用したときのそれらの療法の効果の合計よりも大きい。
【0147】
一部の実施形態において、アピテグロマブをSMN上方制御薬療法と併せて使用することの1つ以上の有益な治療効果(例えば、少なくとも1つの症状又は疾患進行リスク/速度に及ぼす効果)は、相加的である。一部の実施形態において、アピテグロマブをSMN上方制御薬療法と併せて使用することの1つ以上の有益な治療効果(例えば、少なくとも1つの症状又は疾患進行リスク/速度に及ぼす効果)は、相乗的である。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法と併せて使用されるアピテグロマブは、組み合わせる効果が相加的であるもの、相乗的であるもの、及び/又は1つ以上の追加的な組み合わせ利益を提供するものである。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法と併せて使用されるアピテグロマブは、SMAの少なくとも1つの有効性パラメータ(例えば、HFMSEスコア)に相加的又は相乗的効果を提供する。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法と併せて使用されるアピテグロマブは、SMA患者及び/又はSMA患者集団のHFMSEスコアに相加的又は相乗的効果を提供する。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法と併せて使用されるアピテグロマブは、SMN上方制御薬療法単独による治療と比較したとき、HFMSEスコアの更なる増加を提供する(例えば、実施例1を参照のこと;図8及びDarras et.al.(2019)Neurology.92(21)e2492-e2506もまた参照のこと)。一部の実施形態において、HFMSEスコアの更なる改善は、相加的である。一部の実施形態において、HFMSEスコアの更なる改善は、相乗的である。
【0148】
患者選択
本開示は、アピテグロマブなど、選択的ミオスタチン阻害薬で治療するのに好適なヒト対象の同定又は選択を含む。好適なヒト対象は、単剤療法としての、又は別の療法と併せた(又はそれと組み合わせた)、いずれかのアピテグロマブ療法から利益を得る可能性が高い患者である。
【0149】
かかる療法から利益を得る可能性が高いSMA患者には、以下の判定基準のうちの1つ以上を満たす者が含まれる:SMAに対する療法を受ける前に5q SMA及び遅発型(例えば、2又は3型)SMAの診断記録を有する;WHO運動マイルストーンの定義するとおり自力で座ることができる歩行不能の対象;10メートルを30秒以内に支えなしで自力で歩くことができる歩行可能な対象;改訂版ハマースミス評価尺度(Revised Hammersmith Scale:RHS)スコアが63点以下及び/又はハマースミス機能運動評価尺度拡大版(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded)スコアが10点以上の対象;気管切開下陽圧換気又は治療前2週間以内の連日16時間を超える慢性的な昼間の非侵襲的換気補助を使用しない対象;治療前の2週間以内に対象のウェルビーイングを妨げる何らか急性の又は併存する病態を有しない対象;重度の脊柱側彎又は拘縮を有しない対象;及び/又は承認済みのSMN上方制御薬(別名、SMN修正薬)療法以外の全身性コルチコステロイド薬、バルプロ酸、又は筋若しくは神経筋への効果を持つ可能性のある療法を60日以内に使用しない対象。筋又は神経筋への効果を持つ可能性のある療法としては、アンドロゲン類、インスリン様成長因子、成長ホルモン、全身性β作動薬、ボツリヌス毒素、筋弛緩薬、筋増強サプリメント又はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が挙げられる。一部の実施形態において、患者は、SMAに対する療法を受ける前に5q SMA及び遅発型(例えば、2又は3型)SMAの診断記録を有し、及び上記に挙げた追加の判定基準のうちの1つ以上を満たす。一部の実施形態において、例えば2型SMA患者では、年齢で正規化した運動機能の変化と年齢で正規化した潜在型ミオスタチンレベルの変化倍数との間に正の相関がある。様々な実施形態において、本明細書に開示される方法は、アピテグロマブなど、ミオスタチン阻害薬による、例えば本明細書に開示される投薬量又はレジメンに従う治療への1例又は複数例のかかる患者又は患者集団の選択を含む。
【0150】
単剤療法としての、又は別の療法と併せた(又はそれと組み合わせた)、いずれかのアピテグロマブ療法に特に高い反応を示し得るSMA患者には、年齢が2歳以下の、任意の型のSMAを有する者、並びにSMA1型の表現型を示すか、又は3コピー以下のSMN2を有する者が含まれる。一部の実施形態において、アピテグロマブは、低年齢の患者、例えば、年齢が21歳未満の集団において、そうした患者の方が背景のタンパク同化活性が高いため、増強された治療有効性を有し得る。一部の実施形態において、低年齢の患者、例えば、21歳未満の患者、又はタンパク同化活性がある患者が、アピテグロマブ療法を受ける。一部の実施形態において、患者は年齢が2歳又はそれより低年齢、例えば、出生~生後24ヵ月である。一部の実施形態において、患者は生後6週間又はそれより低年齢、例えば、出生~生後6週間である。一部の実施形態において、患者は2~21歳である。一部の実施形態において、患者は13~21歳である。一部の実施形態において、患者は年齢が12歳又はそれより低年齢である。一部の実施形態において、患者は2~12歳である。一部の実施形態において、患者は5~12歳である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、思春期が始まる前の(例えば、12歳より前の)患者で特に効果があり得る。一部の実施形態において、アピテグロマブ治療は、低年齢患者(例えば、12歳より低い年齢の患者)の思春期の始まりに関連する運動機能の劇的な悪化を予防する効果があり得る。一部の実施形態において、患者は約2歳である。一部の実施形態において、患者は2歳より低い年齢である。一部の実施形態において、患者は、SMA1型の表現型を示す。一部の実施形態において、患者は3コピー以下のSMN2を有する。様々な実施形態において、本明細書に開示される方法は、アピテグロマブなど、ミオスタチン阻害薬による、例えば、本明細書に開示される投薬量又はレジメンに従う治療への1例又は複数例のかかる患者又は患者集団の選択を含む。
【0151】
単剤療法としての、又は別の療法と併せた(又はそれと組み合わせた)、いずれかのアピテグロマブ療法に特に高い反応を示し得る患者には、ベースライン(即ち、アピテグロマブ療法の開始前の)血清潜在型ミオスタチン(LM)濃度が少なくとも1ng/mLである(例えば、1.5ng/mlより高い、2ng/mlより高い、2.5ng/mlより高い、3ng/mlより高い、又はそれより高い)2型SMAを有する患者が含まれる。一部の実施形態において、単剤療法としての、又は別の療法と併せた(又はそれと組み合わせた)、いずれかのアピテグロマブ療法は、ベースライン血清LM濃度が低い患者と比較したとき、ベースライン血清LM濃度が高い患者において更に有効性が高くなり得る。一部の実施形態において、かかる療法は、12歳より低い年齢の患者において特に有効であり得る。一部の実施形態において、かかる療法は、2歳より低い年齢の患者において特に有効であり得る。一部の実施形態において、12歳より低い年齢の、且つベースライン血清LM濃度が少なくとも1ng/mLである(例えば、1.5ng/mlより高い、2ng/mlより高い、2.5ng/mlより高い、3ng/mlより高い、又はそれより高い)2型SMA患者は、アピテグロマブ療法に特に高い反応を示し得る。一部の実施形態において、2歳より低い年齢の、且つベースライン血清LM濃度が少なくとも1ng/mLである(例えば、1.5ng/mlより高い、2ng/mlより高い、2.5ng/mlより高い、3ng/mlより高い、又はそれより高い)2型SMA患者は、アピテグロマブ療法に特に高い反応を示し得る。一部の実施形態において、アピテグロマブ療法は、2mg/kg超のアピテグロマブ、例えば、10mg/kg又は20mg/kgを投与することを含む。
【0152】
一部の実施形態において、SMAを治療する方法は、ベースライン血清LM濃度が少なくとも1ng/mLの(例えば、1.5ng/mlより高い、2ng/mlより高い、2.5ng/mlより高い、3ng/mlより高い、又はそれより高い)患者にアピテグロマブ療法を単剤療法としてか、又は別の療法と併せるか(又はそれと組み合わせるか)のいずれかで投与することを含む。一部の実施形態において、SMAを治療する方法は、12歳より低い年齢の、且つベースライン血清LM濃度が少なくとも1ng/mLの(例えば、1.5ng/mlより高い、2ng/mlより高い、2.5ng/mlより高い、3ng/mlより高い、又はそれより高い)患者にアピテグロマブ療法を単剤療法としてか、又は別の療法と併せるか(又はそれと組み合わせるか)のいずれかで投与することを含む。一部の実施形態において、SMAを治療する方法は、2歳より低い年齢の、且つベースライン血清LM濃度が少なくとも1ng/mLの(例えば、1.5ng/mlより高い、2ng/mlより高い、2.5ng/mlより高い、3ng/mlより高い、又はそれより高い)患者にアピテグロマブ療法を単剤療法としてか、又は別の療法と併せるか(又はそれと組み合わせるか)のいずれかで投与することを含む。一部の実施形態において、アピテグロマブ療法は、2mg/kg超のアピテグロマブ、例えば、10mg/kg又は20mg/kgを投与することを含む。
【0153】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースライン血清LM濃度が少なくとも1ng/mLの(例えば、1.5ng/mlより高い、2ng/mlより高い、2.5ng/mlより高い、3ng/mlより高い、又はそれより高い)患者において、単剤療法としてか、又は別の療法と併せるか(又はそれと組み合わせるか)のいずれかでSMAの治療に使用される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースライン血清LM濃度が少なくとも1ng/mLの(例えば、1.5ng/mlより高い、2ng/mlより高い、2.5ng/mlより高い、3ng/mlより高い、又はそれより高い)12歳より低い年齢の患者において、単剤療法としてか、又は別の療法と併せるか(又はそれと組み合わせるか)のいずれかでSMAの治療に使用される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースライン血清LM濃度が少なくとも1ng/mLの(例えば、1.5ng/mlより高い、2ng/mlより高い、2.5ng/mlより高い、3ng/mlより高い、又はそれより高い)2歳より低い年齢の患者において、単剤療法としてか、又は別の療法と併せるか(又はそれと組み合わせるか)のいずれかでSMAの治療に使用される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、2mg/kg超のアピテグロマブ、例えば、10mg/kg又は20mg/kgでの投与に好適である。
【0154】
様々な実施形態において、SMA患者(例えば、上記に記載される例示的SMA患者のいずれか)は、SMN指向療法を続行中である(それを受けている最中である)か、又はそれによる治療歴がある。一部の実施形態において、SMN指向療法は、ヌシネルセン及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクを含む。一部の実施形態において、患者は、ヌシネルセンを続行中である(それを受けている最中である)か、又はそれによる治療歴がある。一部の実施形態において、患者は過去にヌシネルセンによる治療歴がある。一部の実施形態において、患者は、過去にオナセムノゲンアベパルボベクの投与歴がある。
【0155】
様々な実施形態において、本開示は、アピテグロマブなどのミオスタチン阻害薬により、単独で、又はSMN指向療法と併せて(又はそれと組み合わせて)1例又は複数例の患者又は患者集団を治療する方法を提供し、ここで1例又は複数例の患者又は患者集団は、以下の判定基準のうちの1つ以上を満たす:2歳以下の年齢でいずれかの型のSMAを有する、SMA1型の表現型を示す、及び/又は3コピー以下のSMN2を有する。一部の実施形態において、治療は、例えば歴本明細書に開示される投薬量又はレジメンに従うアピテグロマブ療法を単剤療法として含む。一部の実施形態において、治療は、例えば本明細書に開示される投薬量又はレジメンに従うヌシネルセン又はオナセムノゲンアベパルボベクなどのSMN指向療法と併せて(又はそれと組み合わせて)アピテグロマブ療法を含む。一部の実施形態において、患者は、ヌシネルセンを続行中である(それを受けている最中である)か、又はそれによる治療歴がある。一部の実施形態において、患者は過去にヌシネルセンによる治療歴がある。一部の実施形態において、患者は、過去にオナセムノゲンアベパルボベクの投与歴がある。
【0156】
一部の実施形態において、患者は症候性又は発症前である。
【0157】
発症前の患者には、単独で、又は1つ以上の追加的な遺伝子修飾の同定(例えば、SMN2コピー数の決定)と組み合わせて、SMN1遺伝子における1つ以上の突然変異の保因者と遺伝的に同定されている者が含まれる。SMA患者の遺伝的同定は、新生児スクリーニングの一環として行われてもよい。同定(例えば、診断)の時点で、患者(例えば、新生児)は明白な/明らかな症状を示していないこともあるが(無症候性)、しかし遺伝的特徴及び場合によっては他の要因に基づき、患者はこの疾患を発症すると予想され得る。
【0158】
重症例では、生まれたばかりの新生児が既に疾患の徴候を示し得る(即ち、症候性である)。典型的には、かかる患者は、SMAの自然歴に基づけば、1型SMAを有する可能性が高く、概して、介入がなければ自力で座る能力を獲得できないものと予想される。
【0159】
一部の実施形態において、患者は新生児患者(年齢が生後0~6ヵ月)である。一部の実施形態において、患者は小児患者で、年齢が生後6ヵ月~17歳である。一部の実施形態において、患者は5歳未満である。場合によっては、患者は5歳以下、例えば、2~5歳の年齢である。一部の実施形態において、患者は年齢が2歳以下、例えば、出生~生後24ヵ月である。一部の実施形態において、患者は年齢が生後6週間以下、例えば、出生~生後6週間である。一部の実施形態において、患者は2歳以上である。一部の実施形態において、患者は2~12歳の年齢である。一部の実施形態において、患者は2~12歳の年齢である。一部の実施形態において、患者は13~21歳の年齢である。一部の実施形態において、患者は5歳以上、例えば、5~17歳の年齢である。一部の実施形態において、患者は年齢5~21歳である。一部の実施形態において、患者は成人である。
【0160】
一部の実施形態において、患者は、SMN2上方制御薬及び/又はSMN1遺伝子療法など、SMN修正薬療法を受けたことがないか、又はそれで治療されない。一部の実施形態において、患者は、SMN2上方制御薬療法及び/又はSMN1遺伝子療法など、SMN修正薬療法を受けたことがあるか、又はそれで治療される。一部の実施形態において、患者はSMN修正薬療法を5歳未満の年齢で開始するか、又は開始した。一部の実施形態において、患者はSMN修正薬療法を5歳以降の年齢で開始するか、又は開始した。
【0161】
一部の実施形態において、患者は、アピテグロマブなどの選択的ミオスタチン阻害薬による治療前、12ヵ月の間に運動機能判定テストスコア(例えば、HFMSE及びRHSスコア)の1点以上の減少により指示される、運動機能が悪化しつつあるなどの疾患進行を示している。
【0162】
一部の実施形態において、本明細書において治療される患者は、選択的ミオスタチン阻害薬(例えば、アピテグロマブ)による治療開始前少なくとも6ヵ月の間に運動機能(例えば、HFMSE及びRHSスコアによって測定したときの)の悪化速度が大きく変わっていないなど、疾患悪化安定期間にある。一部の実施形態において、患者は、選択的ミオスタチン阻害薬(例えば、アピテグロマブ)による治療開始前の少なくとも6ヵ月の間に患者の運動機能(例えば、HFMSE及びRHSスコアによって測定したときの)が大きく変わっていないなど、疾患の安定を呈する。一部の実施形態において、患者は歩行不能SMAを有する。一部の実施形態において、患者は2型又は3型歩行不能SMAを有する。一部の実施形態において、患者は歩行可能SMAを有する。一部の実施形態において、患者は3型歩行可能SMAを有する。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法を5歳未満の年齢で開始した。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法を5歳以降の年齢で開始した。一部の実施形態において、患者は年齢が2歳以下、例えば、出生~生後24ヵ月である。一部の実施形態において、患者は2~12歳である。一部の実施形態において、患者は年齢が生後6週間以下、例えば、出生~生後6週間である。一部の実施形態において、患者は2~12歳であり、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、ヌシネルセン)を5歳未満の年齢で開始した。一部の実施形態において、患者は2~12歳であり、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、ヌシネルセン)を5歳以降の年齢で開始した。一部の実施形態において、患者は5~12歳であり、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、ヌシネルセン)を5歳以降の年齢で開始した。
【0163】
一部の実施形態において、患者は、SMN1遺伝子の二対立遺伝子突然変異及びSMA1型の臨床診断を有する5q脊髄性筋萎縮症(SMA)の患者であるか、又は患者は、SMN1遺伝子の二対立遺伝子突然変異及び3コピー以下のSMN2遺伝子を有する5q SMAの患者である。かかる患者は、遺伝子療法(例えば、SMN1遺伝子療法)と併せて選択的ミオスタチン阻害薬で治療されてもよい。一部の実施形態において、患者は、遺伝子療法を受ける時点で体重が2.6kg~21.0kgである。一部の実施形態において、患者の運動マイルストーンが、首がすわる、仰向けから横向きに寝返りを打つ、支えなしで30秒間座る、支えなしで少なくとも10秒間座る等、モニタされ得る。
【0164】
一部の実施形態において、患者は、座ることはできるが、一度も歩いたことのない2型SMA患者であり、ここでこの患者は2~18歳の年齢である。一部の実施形態において、SMN1遺伝子療法は、2~18歳の年齢の、座ることはできるが、一度も歩く能力を獲得したことのない患者において2型SMAの治療に使用され、及びここでこの患者はミオスタチン阻害薬で治療され、ここで任意選択で、ミオスタチン阻害薬は、アピテグロマブ、GYM329、トレボグルマブ、又は前述のいずれか1つの変異体など、ミオスタチン選択的阻害薬である。一部の実施形態において、ミオスタチン阻害薬は、2~18歳の年齢の、座ることはできるが、一度も歩く能力を獲得したことのない患者において2型SMAの治療に使用され、及びここでこの患者はSMN1遺伝子療法で治療され、ここで任意選択で、SMN1遺伝子療法はオナセムノゲンアベパルボベクを含む。好ましい実施形態において、ミオスタチン阻害薬は、アピテグロマブ、GYM329、トレボグルマブ、又は前述のいずれか1つの変異体など、ミオスタチン選択的阻害薬である。一部の実施形態において、SMN1遺伝子療法及びミオスタチン阻害薬は、2~18歳の年齢の、座ることはできるが、一度も歩く能力を獲得したことのない患者においてSMAの治療において組み合わせ療法として使用され、及びここでこの患者はミオスタチン阻害薬で治療され、ここで任意選択で、ミオスタチン阻害薬は、アピテグロマブ、GYM329、トレボグルマブ、又は前述のいずれか1つの変異体など、ミオスタチン選択的阻害薬であり、及びここで更に任意選択で、SMN1遺伝子療法はオナセムノゲンアベパルボベクを含む。一部の実施形態において、抗体変異体は、既知の抗体と比較したとき有意な相同性(例えば、>90%配列同一性)の核酸及び/又はアミノ酸配列を有してもよく、1つ以上の物理的及び/又は機能的特性を保持している。
【0165】
一部の実施形態において、患者は、アピテグロマブなどの選択的ミオスタチン阻害薬による治療前の少なくとも6ヵ月の間に運動機能判定テストスコア(例えば、HFMSE及びRHSスコア)が大きく変わっていないなど、運動機能によって判定したとき疾患の安定を呈する。一部の実施形態において、患者は、SMN修正薬療法を受けたことがあるか、又はそれで治療される。
【0166】
一部の実施形態において、患者は、脊椎固定術、例えば、一次脊椎後方固定術を受けたことがある。
【0167】
本開示によれば、患者の選択又は分類は、smn2遺伝子コピー数と比べた、実現した最も高い運動マイルストーンに基づき得る。従って、本開示は、患者のSMAの治療におけるミオスタチン選択的阻害薬(アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブなど)の治療的使用を含み、ここで治療は、ミオスタチン選択的阻害薬を含む組成物の投与を含む。好ましい実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬はアピテグロマブであり、これは治療用量で静脈内投与されてもよく、ここで治療用量は、2mg/kg超20mg/kg以下(10mg/kgなど)である。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1、2、3又は4コピー有し、且つ、粗大運動マイルストーン:1)頭を起こす/支える(即ち、定頸、例えば、仰臥位にある間、頭を起こす又は起こしたまま保つことができる);2)寝返りを打つ;3)三脚位で座る(例えば、座っているときに手を使って体を支える)又は支えありで座る;4)支えなしで座る;5)支え/補助ありで立つ;6)四つ這い/ハイハイ;7)つかまり立ち;8)補助ありで歩く(例えば、家具に沿ってつたい歩きをする);9)支えなしで立つ;10)自力で数歩進むが倒れる;11)一人で歩く(例えば、自力で歩く、支えなしで歩く);12)しゃがんで物(例えば、玩具)を拾う;13)歩いて/四つ這いで階段を上り下りする;14)走る;15)跳躍する;16)足を交互に出して階段を上がる;17)片足で跳ぶ;18)足を交互に出して階段を下りる、のうちの1つ以上を実現する。
【0168】
一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、うつ伏せのまま頭を起こす又は起こしたまま保つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、寝返りを打つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えありで座ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えなしで座ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えありで立つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、這うことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、つかまり立ちすることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、補助ありで歩くことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えなしで立つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、自力で(支えなしで)歩くことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、走ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、跳躍することである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、足を交互に出して階段を上がることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、片足で跳ぶことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、足を交互に出して階段を下りることである。
【0169】
一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、うつ伏せのまま頭を起こす又は起こしたまま保つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、寝返りを打つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えありで座ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えなしで座ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えありで立つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、這うことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、つかまり立ちすることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、補助ありで歩くことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えなしで立つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、自力で(支えなしで)歩くことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、走ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、跳躍することである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、足を交互に出して階段を上がることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、片足で跳ぶことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、足を交互に出して階段を下りることである。
【0170】
一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、うつ伏せのまま頭を起こす又は起こしたまま保つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、寝返りを打つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えありで座ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えなしで座ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えありで立つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、這うことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、つかまり立ちすることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、補助ありで歩くことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えなしで立つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、自力で(支えなしで)歩くことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、走ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、跳躍することである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、足を交互に出して階段を上がることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、片足で跳ぶことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、足を交互に出して階段を下りることである。
【0171】
一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えありで座ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えなしで座ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えありで立つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、這うことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、つかまり立ちすることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、補助ありで歩くことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えなしで立つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、自力で(支えなしで)歩くことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、走ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、跳躍することである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、足を交互に出して階段を上がることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、片足で跳ぶことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、足を交互に出して階段を下りることである。
【0172】
一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えありで座ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えなしで座ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えありで立つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、這うことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、つかまり立ちすることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、補助ありで歩くことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、支えなしで立つことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、自力で(支えなしで)歩くことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、走ることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、跳躍することである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、足を交互に出して階段を上がることである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、片足で跳ぶことである。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、実現した最も高い運動マイルストーンが、足を交互に出して階段を下りることである。
【0173】
一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、自力で歩くというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、自力で立つというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、補助ありで立つというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、手及び膝で這うというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を1コピー有し、補助ありで歩くというWHO運動発達マイルストーンを実現している。
【0174】
一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、自力で歩くというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、自力で立つというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、補助ありで立つというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、手及び膝で這うというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を2コピー有し、補助ありで歩くというWHO運動発達マイルストーンを実現している。
【0175】
一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、自力で歩くというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、自力で立つというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、補助ありで立つというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、手及び膝で這うというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を3コピー有し、補助ありで歩くというWHO運動発達マイルストーンを実現している。
【0176】
一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、自力で歩くというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、自力で立つというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、補助ありで立つというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、手及び膝で這うというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピー有し、補助ありで歩くというWHO運動発達マイルストーンを実現している。
【0177】
一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、自力で歩くというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、自力で立つというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、補助ありで立つというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、手及び膝で這うというWHO運動発達マイルストーンを実現している。一部の実施形態において、患者はsmn2遺伝子を4コピーより多く有し、補助ありで歩くというWHO運動発達マイルストーンを実現している。
【0178】
【表13】
【0179】
一部の実施形態において、対象は、生後3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月又は12ヵ月未満の年齢で頭を起こす又は支えることができる。
【0180】
一部の実施形態において、対象は、生後6ヵ月、9ヵ月又は12ヵ月未満の年齢で寝返りを打つことができる。
【0181】
一部の実施形態において、対象は、生後6ヵ月、9ヵ月又は12ヵ月未満の年齢で支えありで座る又は三脚位で座ることができる。
【0182】
一部の実施形態において、対象は、生後6ヵ月、9ヵ月又は12ヵ月未満の年齢で支えなしで座ることができる。
【0183】
一部の実施形態において、対象は、生後9ヵ月又は12ヵ月未満の年齢で支えありで立つことができる。
【0184】
一部の実施形態において、対象は、生後12ヵ月未満の年齢で支えなしで立つことができる。
【0185】
一部の実施形態において、対象は、生後6ヵ月、9ヵ月又は12ヵ月未満の年齢で四つ這い又はハイハイができる。
【0186】
一部の実施形態において、対象は、生後9ヵ月又は12ヵ月未満の年齢でつかまり立ちができる。
【0187】
一部の実施形態において、対象は、生後12ヵ月又は15ヵ月未満の年齢で補助ありで歩くことができる。
【0188】
一部の実施形態において、対象は、生後12ヵ月、又は15ヵ月未満の年齢で補助なしで歩くことができる。
【0189】
一部の実施形態において、対象は、生後15ヵ月、18ヵ月又は24ヵ月未満の年齢で走ることができる。
【0190】
一部の実施形態において、対象は、生後15ヵ月、18ヵ月又は24ヵ月未満の年齢で跳躍ができる。
【0191】
一部の実施形態において、対象は、生後15ヵ月、18ヵ月又は24ヵ月未満の年齢でしゃがんで物を拾うことができる。
【0192】
一部の実施形態において、対象は、生後15ヵ月、18ヵ月又は24ヵ月未満の年齢で歩いて又は四つ這いで階段を上り下りすることができる。
【0193】
一部の実施形態において、対象は、生後30ヵ月又は36ヵ月未満の年齢で足を交互に出して階段を上がることができる。
【0194】
一部の実施形態において、対象は、生後36ヵ月(3歳)未満の年齢で足を交互に出して階段を下りることができる。
【0195】
一部の実施形態において、対象は、4歳又は5歳未満の年齢で片足で跳ぶことができる。
【0196】
本開示は、患者のSMAの治療におけるアピテグロマブの治療的使用を提供し、ここでこの治療は、治療用量のアピテグロマブを含む組成物の静脈内投与を含み、ここで治療用量は、2mg/kg超20mg/kg以下(10mg/kgなど)であり、及びここで任意選択で、患者は、以下の1つ又は複数の分類のいずれかから選択されてもよく、又は患者は、以下を特徴とする。
【0197】
患者は年齢が2歳以下、例えば、出生~生後24ヵ月である。
【0198】
患者は年齢が生後6週間以下、例えば、出生~生後6週間である。
【0199】
患者は年齢が2歳以上である。
【0200】
患者は2~21歳である。
【0201】
患者は2~12歳である。
【0202】
患者は2~5歳である。
【0203】
患者は5~12歳である。
【0204】
患者は13~21歳である。
【0205】
患者は遅発型SMAを有する。
【0206】
患者は2型SMAを有する。
【0207】
患者は3型SMAを有し、ここで任意選択で、患者は歩行不能3型SMAを有する。
【0208】
患者は3型SMAを有し、ここで任意選択で、患者は歩行可能3型SMAを有する。
【0209】
患者は、SMN2遺伝子を少なくとも2コピー有し、例えば、SMN2遺伝子を2、3、4、5、又は6コピー有し;又は、ここで任意選択で、患者はSMN2遺伝子を2~4コピー有する。
【0210】
患者は、SMN2遺伝子を少なくとも2コピー有し、例えば、SMN2遺伝子を2、3、4コピー有し;又は、ここで任意選択で、患者はSMN2遺伝子を2~4コピー有し、ここで任意選択で、患者は2型SMA又は歩行不能3型SMAを有する。
【0211】
患者はSMN2遺伝子を少なくとも3コピー有し、例えば、SMN2遺伝子を3、4、5、又は6コピー有し;又は、ここで任意選択で、患者はSMN2遺伝子を3~5コピー有し、ここで任意選択で、患者は歩行可能SMAを有し、ここで更に任意選択で、歩行可能SMAは4型SMAである。
【0212】
患者はSMA(例えば、任意の型のSMA)を有し、2歳以下であり、ここで任意選択で、患者はSMN療法による治療歴があり、ここで更に任意選択で、SMN療法は、SMN2上方制御薬(ヌシネルセンなど)又はSMN1遺伝子療法を含む。
【0213】
患者は、SMN2遺伝子が3コピー以下の1型SMAを有し、ここで任意選択で、患者はSMN療法による治療歴があり、ここで更に任意選択で、SMN療法は、SMN2上方制御薬(ヌシネルセンなど)又はSMN1遺伝子療法を含む。
【0214】
患者はSMAの症候性である。
【0215】
患者は発症前SMAを有する。
【0216】
患者は1つ又は複数のSMA突然変異の保因者と同定されるが、無症候(発症前)である。
【0217】
患者はSMN指向療法による治療歴がない。
【0218】
患者は、SMN指向療法を続行中である(それを受けている最中である)か、又はそれによる治療歴があり、ここで任意選択で、SMN指向療法は、遺伝子療法、スプライシング修飾薬、又はこれらの組み合わせであり、ここで更に任意選択で、スプライシング修飾薬は、SMN2スプライシングを修飾する核酸ベースの薬剤又は低分子量化合物である。
【0219】
患者は、SMN指向療法を続行中である(それを受けている最中である)か、又はそれによる治療歴があり、ここで任意選択で、SMN指向療法は、遺伝子療法、スプライシング修飾薬、又はこれらの組み合わせであり、ここで更に任意選択で、スプライシング修飾薬は、SMN2スプライシングを修飾する核酸ベースの薬剤又は低分子量化合物であり;及びここで患者はSMN指向療法を5歳未満の年齢で始めた。
【0220】
患者は、SMN指向療法を続行中である(それを受けている最中である)か、又はそれによる治療歴があり、ここで任意選択で、SMN指向療法は、遺伝子療法、スプライシング修飾薬、又はこれらの組み合わせであり、ここで更に任意選択で、スプライシング修飾薬は、SMN2スプライシングを修飾する核酸ベースの薬剤又は低分子量化合物であり、及びここで患者はSMN指向療法を5歳以上の年齢で始めた。
【0221】
患者は、アピテグロマブ療法の開始時点で(例えば、アピテグロマブの初回用量を受ける前に)少なくとも12ヵ月間にわたってSMN指向療法を続行中である。
【0222】
患者は、アピテグロマブ療法の開始時点で(例えば、アピテグロマブの初回用量を受ける前に)少なくとも15ヵ月間にわたってSMN指向療法を続行中である。
【0223】
患者は、アピテグロマブ療法の開始時点で(例えば、アピテグロマブの初回用量を受ける前に)少なくとも24ヵ月間にわたってSMN指向療法を続行中である。
【0224】
患者は、アピテグロマブ療法の開始時点で5歳以下である。
【0225】
患者は、アピテグロマブ療法の開始時点で2歳以下である。
【0226】
患者は、アピテグロマブ療法の開始時点で生後6週間以下である。
【0227】
患者は、アピテグロマブの初回用量を受ける時点で5歳未満の年齢である。
【0228】
患者は、少なくとも10点、例えば、少なくとも13点のベースラインHFMSEスコア、例えば、13~39点、例えば、39点以下のスコアを有する。
【0229】
一部の実施形態において、本開示は、2~12歳の、アピテグロマブ治療の開始前に少なくとも6ヵ月間のSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、ヌシネルセン又はリスジプラム)を受けていた患者のSMAの治療におけるアピテグロマブの治療的使用を提供し、ここでアピテグロマブ治療は、10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブを含む組成物の、例えば4週間に1回又は月1回の静脈内投与を含む。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法を5歳未満の年齢で開始した。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法を5歳以降の年齢で開始した。一部の実施形態において、本開示は、2~12歳の、アピテグロマブ治療の開始前に少なくとも6ヵ月間のリスジプラムを受けていた患者のSMAの治療におけるアピテグロマブの治療的使用を提供し、ここでアピテグロマブ治療は、10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブを含む組成物の4週間に1回又は月1回の静脈内投与を含む。一部の実施形態において、本開示は、2~12歳の、アピテグロマブ治療の開始前に少なくとも10ヵ月間のヌシネルセンを受けていた患者のSMAの治療におけるアピテグロマブの治療的使用を提供し、ここでアピテグロマブ治療は、10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブを含む組成物の4週間に1回又は月1回の静脈内投与を含む。
【0230】
一部の実施形態において、本開示は、5~12歳の、アピテグロマブ治療の開始前に少なくとも6ヵ月間のSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、ヌシネルセン又はリスジプラム)を受けていた患者のSMAの治療におけるアピテグロマブの治療的使用を提供し、ここでアピテグロマブ治療は、10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブを含む組成物の、例えば4週間に1回又は月1回の静脈内投与を含む。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法を5歳未満の年齢で開始した。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法を5歳以降の年齢で開始した。一部の実施形態において、本開示は、5~12歳の、アピテグロマブ治療の開始前に少なくとも6ヵ月間のリスジプラムを受けていた患者のSMAの治療におけるアピテグロマブの治療的使用を提供し、ここでアピテグロマブ治療は、10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブを含む組成物の4週間に1回又は月1回の静脈内投与を含む。一部の実施形態において、本開示は、5~12歳の、アピテグロマブ治療の開始前に少なくとも10ヵ月間のヌシネルセンを受けていた患者のSMAの治療におけるアピテグロマブの治療的使用を提供し、ここでアピテグロマブ治療は、10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブを含む組成物の4週間に1回又は月1回の静脈内投与を含む。
【0231】
一部の実施形態において、本開示は、13~21歳の、アピテグロマブ治療の開始前に少なくとも6ヵ月間のSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、ヌシネルセン又はリスジプラム)を受けていた患者のSMAの治療におけるアピテグロマブの治療的使用を提供し、ここでアピテグロマブ治療は、20mg/kgのアピテグロマブを含む組成物の、例えば4週間に1回又は月1回の静脈内投与を含む。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法を5歳未満の年齢で開始した。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法を5歳以降の年齢で開始した。一部の実施形態において、本開示は、13~21歳の、アピテグロマブ治療の開始前に少なくとも6ヵ月間のリスジプラムを受けていた患者のSMAの治療におけるアピテグロマブの治療的使用を提供し、ここでアピテグロマブ治療は、20mg/kgのアピテグロマブを含む組成物の4週間に1回又は月1回の静脈内投与を含む。一部の実施形態において、本開示は、13~21歳の、アピテグロマブ治療の開始前に少なくとも10ヵ月間のヌシネルセンを受けていた患者のSMAの治療におけるアピテグロマブの治療的使用を提供し、ここでアピテグロマブ治療は、20mg/kgのアピテグロマブを含む組成物の4週間に1回又は月1回の静脈内投与を含む。
【0232】
一部の実施形態において、本開示は、年齢が5歳以下である患者のSMAの治療におけるアピテグロマブの治療的使用を提供し、ここで患者は、アピテグロマブ治療の開始前にSMN上方制御薬/修正薬療法を受けたことがなく、ここで治療は、アピテグロマブを含む組成物とSMN上方制御薬/修正薬療法、例えば、ヌシネルセン又はリスジプラム)を含む組成物との併用(例えば、同時、個別、又は逐次)投与を含む。一部の実施形態において、アピテグロマブを含む組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブを含む組成物は、4週間に1回又は月1回の頻度で投与される。
【0233】
一部の実施形態において、本開示は、年齢が2歳以下、例えば、出生~生後24ヵ月である患者のSMAの治療におけるアピテグロマブの治療的使用を提供し、ここで患者は、アピテグロマブ治療の開始前にSMN上方制御薬/修正薬療法を受けたことがなく、ここで治療は、アピテグロマブを含む組成物とSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、ヌシネルセン又はリスジプラム)を含む組成物との併用(例えば、同時、個別、又は逐次)投与を含む。一部の実施形態において、本開示は、年齢が生後6週間以下、例えば、出生~生後6週間である患者のSMAの治療におけるアピテグロマブの治療的使用を提供し、ここで患者は、アピテグロマブ治療の開始前にSMN上方制御薬/修正薬療法を受けたことがなく、ここで治療は、アピテグロマブを含む組成物とSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、ヌシネルセン又はリスジプラム)を含む組成物との併用(例えば、同時、個別、又は逐次)投与を含む。一部の実施形態において、患者は発症前SMAを有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を2コピー有する。一部の実施形態において、アピテグロマブを含む組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブを含む組成物は、4週間に1回又は月1回の頻度で投与される。
【0234】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト患者の発症前SMAの治療におけるミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブの治療的使用を提供する。一部の実施形態において、患者は、ミオスタチン選択的阻害薬治療の開始前に過去にSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を受けたことがない。一部の実施形態において、患者は、過去にSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を受けたことがあるか、又はそれを受けている最中である。一部の実施形態において、治療は、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物と、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を含む組成物との併用(例えば、同時、個別、又は逐次)投与を含む。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を2コピー有する。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物は、4週間に1回又は月1回の頻度で投与される。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、プロ潜在型ミオスタチンに選択的に結合する。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、アピテグロマブである。
【0235】
一部の実施形態において、本開示は、年齢が5歳以下である患者のSMAの治療におけるミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブの治療的使用を提供する。一部の実施形態において、患者は、ミオスタチン選択的阻害薬治療の開始前に過去にSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を受けたことがない。一部の実施形態において、患者は、過去にSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を受けたことがあるか、又はそれを受けている最中である。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を5歳以下の年齢で投与される。一部の実施形態において、SMAの治療は、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物と、SMN上方制御薬/修正薬療法、例えば、SMN1遺伝子療法を含む組成物との併用(例えば、同時、個別、又は逐次)投与を含む。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態において、患者は発症前SMAを有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を2コピー有する。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物は、4週間に1回又は月1回の頻度で投与される。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、プロ潜在型ミオスタチンに選択的に結合する。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、アピテグロマブである。
【0236】
一部の実施形態において、本開示は、年齢が2歳以下、例えば、出生~生後24ヵ月である患者のSMAの治療におけるミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブの治療的使用を提供する。一部の実施形態において、患者は、ミオスタチン選択的阻害薬治療の開始前に過去にSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を受けたことがない。一部の実施形態において、患者は、過去にSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を受けたことがあるか、又はそれを受けている最中である。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を2歳以下の年齢(例えば、出生~生後24ヵ月)で投与される。一部の実施形態において、治療は、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物と、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を含む組成物との併用(例えば、同時、個別、又は逐次)投与を含む。一部の実施形態において、患者は発症前SMAを有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を2コピー有する。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物は、4週間に1回又は月1回の頻度で投与される。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、プロ潜在型ミオスタチンに選択的に結合する。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、アピテグロマブである。
【0237】
一部の実施形態において、本開示は、年齢が生後6週間以下、例えば、出生~生後6週間である患者のSMAの治療におけるミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブの治療的使用を提供し、ここで治療は、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物と、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を含む組成物との併用(例えば、同時、個別、又は逐次)投与を含む。一部の実施形態において、患者は、ミオスタチン選択的阻害薬治療の開始前に過去にSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を受けたことがない。一部の実施形態において、患者は、過去にSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を受けたことがあるか、又はそれを受けている最中である。一部の実施形態において、患者は発症前SMAを有する。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を2コピー有する。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物は、4週間に1回又は月1回の頻度で投与される。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、プロ潜在型ミオスタチンに選択的に結合する。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、アピテグロマブである。
【0238】
一部の実施形態において、本開示は、患者の発症前SMAの治療における使用のためのミオスタチン選択的阻害薬及びSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を提供し、ここで治療は、SMAを治療するのに有効な量での発症前患者へのミオスタチン選択的阻害薬及びSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)の投与を含む。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を2コピー有し、及び/又はここで患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)の投与時点で生後6週間以下である。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、アピテグロマブ、GYM329又はトレボグルマブである。
【0239】
一部の実施形態において、本開示は、患者の発症前SMAの治療における使用のためのミオスタチン選択的阻害薬及びSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を提供し、ここで治療は、SMAを治療するのに有効な量での発症前患者へのミオスタチン選択的阻害薬及びSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)の投与を含み、ここで患者はSMN2遺伝子を2コピー有し、ここで患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)の投与時点で生後6週間以下であり、及びここでミオスタチン選択的阻害薬は、アピテグロマブ、GYM329又はトレボグルマブである。
【0240】
一部の実施形態において、本開示は、患者の発症前SMAの治療における使用のためのミオスタチン選択的阻害薬を提供し、ここで治療は、SMAを治療するのに有効な量での発症前患者へのミオスタチン選択的阻害薬の投与を含む。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を2コピー有する。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を生後6週間以下で投与される。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、アピテグロマブ、GYM329又はトレボグルマブである。
【0241】
一部の実施形態において、本開示は、患者の発症前SMAの治療における使用のためのミオスタチン選択的阻害薬を提供し、ここで治療は、SMAを治療するのに有効な量での発症前患者へのミオスタチン選択的阻害薬の投与を含み、ここで患者はSMN2遺伝子を2コピー有し、ここで患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を生後6週間以下で投与され、及びここでミオスタチン選択的阻害薬は、アピテグロマブ、GYM329又はトレボグルマブである。
【0242】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト患者の発症前SMAの治療におけるSMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)の治療的使用を提供し、ここで治療は、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を含む組成物とミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物との併用(例えば、同時、個別、又は逐次)投与を含む。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法の開始前に過去にミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを受けたことがない。一部の実施形態において、患者は、過去にミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを受けたことがあるか、又は受けている最中である。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を5歳以下の年齢で投与される。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を2歳以下(例えば、出生~生後24ヵ月)で投与される。一部の実施形態において、患者は、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を生後6週間以下の年齢(例えば、出生~生後6週間)で投与される。一部の実施形態において、患者はSMN2遺伝子を2コピー有する。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬、例えば、アピテグロマブ、GYM329、又はトレボグルマブを含む組成物は、4週間に1回又は月1回の頻度で投与される。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、プロ潜在型ミオスタチンに選択的に結合する。一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、アピテグロマブである。
【0243】
一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、生後2ヵ月以上の、リスジプラムなど、SMN2上方制御薬で治療される患者のSMAの治療に使用される。
【0244】
一部の実施形態において、ミオスタチン選択的阻害薬は、SMN2遺伝子が3コピー以下(例えば、2コピー、3コピー)の患者、又は1型SMAと診断されている患者の発症前SMAの治療に使用され、ここで患者は、オナセムノゲンアベパルボベクなど、遺伝子療法を受ける。任意選択で、患者は生後6週間以下である。更に任意選択で、患者は体重が2.6kg~21.0kgである。
【0245】
一部の実施形態において、本開示は、患者の発症前SMAの治療における使用のためのSMN1上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を提供し、ここで治療は、SMAを治療するのに有効な量での発症前患者へのSMN1上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)の投与を含み、ここで患者は、SMN1上方制御薬/修正薬療法(例えば、SMN1遺伝子療法)を生後6週間以下で投与され、ここで患者は、ミオスタチン選択的阻害薬で更に治療され、及びここでミオスタチン選択的阻害薬は、アピテグロマブ、GYM329又はトレボグルマブである。
【0246】
更なる適応疾患
本明細書に提示されるデータは、アピテグロマブについての開示される治療レジメンが、例えば、用量選択を含め、SMA患者以外にもヒト患者に臨床的利益を提供し得ることを指し示している。アピテグロマブは、SMAのある種の属性を共有する他の適応疾患と診断されたヒト患者に臨床的利益を提供し得る。かかる属性には、比較的低年齢の患者集団の疾患、筋肉が構造的にインタクトな又は機能が保持されている疾患、速筋線維に影響がある疾患、及び速筋線維に頼る確立されたエンドポイントが利用可能であることなどの判定基準のうちの1つ以上が含まれる。
【0247】
本明細書に開示される抗体(例えば、アピテグロマブ)による治療から利益を受け得るSMA以外の更なる適応疾患としては、限定はされないが、ベッカー型筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、及び他の筋ジストロフィーなど、ジストロフィー、並びに遅発型ポンペ病、癌治療後筋力回復、及びグルココルチコイド誘発性ミオパチー(例えば、ステロイド療法を中止することができない一部の患者)が挙げられる。ベッカー型筋ジストロフィーは、本明細書に開示される抗体(例えば、アピテグロマブ)による治療に特に好適であり得る。ベッカー型筋ジストロフィー患者は、典型的には、デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者と比較したとき循環ミオスタチンレベルが高い(例えば、Burch et al.(2017)J Neurol.264(3):541-553;Mariot et al.(2017)Nat Commun.8:1859を参照のこと)。他の実施形態において、治療される適応疾患は、癌治療後筋力回復、例えば、小児患者における癌治療後筋力回復(一部の小児は化学療法から重度の筋消耗を発症し得るため)である。本明細書に開示される抗体(例えば、アピテグロマブ)を単剤療法として、又は追加療法として使用して、他の安定化させるための治療(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーにおける遺伝子療法又はリソソーム蓄積障害における酵素補充療法などの治療)を増強する筋指向的手法を提供し得る。
【0248】
投薬量の選択及び投与
本明細書に開示される方法、使用、及び組成物の様々な実施形態では、治療を必要としているヒト対象に、有効量の抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体(例えば、アピテグロマブ)が静脈内投与で、例えば、ある期間にわたる持続注入によって投与される。
【0249】
用語「投与する」、「投与すること」、及び「投与」には、治療用薬剤、例えば、抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体(例えば、アピテグロマブ)を対象の全身へと、又は対象の体内若しくは体上にある特定の領域に送達する(それぞれ、全身投与及び局所投与)任意の方法が含まれる。一部の実施形態において、治療用薬剤は、アピテグロマブである。一部の実施形態において、アピテグロマブは、組成物、例えば、医薬組成物としての投与用に製剤化される。一部の実施形態において、アピテグロマブは静脈内投与用に製剤化される。例えば、一部の実施形態において、アピテグロマブは、静脈内注射/注入によって、例えば、静脈内注入によって投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、静脈内注入によって、例えば、約1~2時間かけて投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、静脈内注入によって約2時間かけて投与される。一部の実施形態において、注入時間は2時間未満であるが、1時間より短いことはない。
【0250】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、体重換算用量、即ち、患者の体重に依存する用量として患者に投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブの好適な投薬量には、2超20以下(mg/kg)、任意選択で、約5、10、15、又は20mg/kgが含まれる。一部の実施形態において、アピテグロマブの治療用量は10mg/kgである。一部の実施形態において、アピテグロマブの治療用量は20mg/kgである。一部の実施形態において、同様の安全性プロファイルを保ちつつ20mg/kgを超える用量が使用されてもよく、但し、例えば、それぞれ20mg/kg及び2mg/kgの、意外にも良好な治療的及びPKプロファイルを所与とすれば、高い投薬量の必要性は少なくなり得る。
【0251】
6ヵ月及び12ヵ月研究の標的会合分析によれば(本明細書の実施例を参照のこと)、20mg/kgのアピテグロマブが標的飽和を実現し、一方、2mg/kgは部分的な標的会合を示したことが指摘される。これらの観察は、静脈内投与されるアピテグロマブの治療用量が20mg/kg以下2mg/kg超であり得ることを裏付けている。
【0252】
アピテグロマブのPK解析では、薬物クリアランスと年齢(図18参照)又は体重(図17参照)との間の相関が示される。これらのデータからは、年齢が低い患者(体重が軽い)ほど、年齢が高い患者(体重が重い)と比べてアピテグロマブのより緩徐なクリアランスを示すことが指摘される。この所見は、好適な中間用量についての用量選択が、例えば、5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、15mg/kg等であることを指し示すものであり得る。
【0253】
一部の実施形態において、アピテグロマブの好適な投薬量は20mg/kgである。一部の実施形態において、アピテグロマブの好適な投薬量は10mg/kgである。一部の実施形態において、アピテグロマブは、患者に4週間毎に又は毎月5mg/kg、7.5mg.kg、10mg/kg又は12mg/kgで静脈内投与される。
【0254】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、患者に20mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態において、20mg/kgの用量で投与したときのその有利な安全性プロファイルに起因して、アピテグロマブは、患者に20mg/kgより高い用量で投与されてもよく、例えば、ここでその用量は、30mg/kg以下、例えば、25mg/kgである。一部の実施形態において、アピテグロマブは、患者に20mg/kgより高い用量(例えば、約25mg/kg、約30mg/kg)で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、患者に10~20mg/kgの用量で4週間毎に又は毎月静脈内投与される。
【0255】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、患者に約4週間に1回、月1回等投与される。かかる抗体は、静脈内注射/注入で、例えば、静脈内注入によるか、又は別の好適な投与経路により(例えば、皮下に(例えば、皮膚の下に)又は髄腔内に(例えば、脊髄内に)投与されてもよい。同様に、SMN上方制御薬、例えば、スプライシング修飾薬は、経口的に、例えば口から、又は別の好適な投与経路により投与されてもよい。
【0256】
一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの投与前にSMN上方制御薬の投与を受けた。一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの投与と同じ時点でSMN上方制御薬の投与を併用して受けているところである。一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの投与後にSMN上方制御薬の投与を受けることになる。
【0257】
一部の実施形態において、SMN上方制御薬の投与を受ける対象には、SMN上方制御薬(例えば、ヌシネルセン)の用量(例えば、維持用量)の少なくとも24時間前に(例えば、少なくとも36時間、少なくとも48時間、又はそれ以上前に)アピテグロマブが投与される。一部の実施形態において、SMN上方制御薬の投与を受ける対象には、SMN上方制御薬(例えば、ヌシネルセン)の用量(例えば、維持用量)の少なくとも14日後に(例えば、最低21日、又はそれ以上後に)アピテグロマブが投与される。
【0258】
一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの投与から6ヵ月以内にSMN上方制御薬の投与を受けた。一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの投与から3ヵ月以内にSMN上方制御薬の投与を受けた。一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの投与から6ヵ月、5ヵ月、4ヵ月、3ヵ月、2ヵ月、又は1ヵ月以内にSMN上方制御薬の投与を受けた。一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの投与から4週間、3週間、2週間、又は1週間以内にSMN上方制御薬の投与を受けた。一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの投与と同じ日にSMN上方制御薬の投与を受けた。
【0259】
一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの投与から6ヵ月以内にSMN上方制御薬の投与を受けることが見込まれる。一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの投与から3ヵ月以内にSMN上方制御薬の投与を受けることが見込まれる。一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの投与から6ヵ月、5ヵ月、4ヵ月、3ヵ月、2ヵ月、又は1ヵ月以内にSMN上方制御薬の投与を受けることが見込まれる。一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの投与から4週間、3週間、2週間、又は1週間以内にSMN上方制御薬の投与を受けることが見込まれる。
【0260】
一部の実施形態において、SMN上方制御薬はアンチセンスヌクレオチドであり、対象の中枢神経系に髄腔内注射で投与される。一部の実施形態において、アンチセンスヌクレオチドは、対象に数ヵ月毎に、例えば、毎月、2ヵ月毎、3ヵ月毎、4ヵ月毎、5ヵ月毎、6ヵ月毎又は12ヵ月毎に投与される。他の実施形態において、初期治療は、より高頻度の投与を伴い、その後、より頻度の少ない維持用量が続き得る。
【0261】
一部の実施形態において、SMN上方制御薬は小分子であり、対象に経口投与される。一部の実施形態において、小分子は、対象に毎日投与される。他の実施形態において、小分子は、対象に毎週、隔週又は毎月投与される。
【0262】
一部の実施形態において、SMN上方制御薬は遺伝子療法であり、静脈内注射で投与される。一部の実施形態において、SMN上方制御薬は遺伝子療法であり、髄腔内注射で投与される。一部の実施形態において、初期治療は、より高頻度の投与を伴い、その後、より頻度の少ない維持用量が続き得る。遺伝子療法に対する不適切な免疫応答を回避するためには、頻度の少ない維持用量が好ましいとし得る。
【0263】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、対象に静脈内投与で、例えば、静脈内注入によって投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは対象に、4週間に1回又は毎月投与される。一部の実施形態において、初期治療は、より高頻度の投与を伴い、その後、より頻度の少ない維持用量が続き得る。一部の実施形態において、アピテグロマブは、最初はより高い用量(例えば、負荷用量)が与えられ、その後、1つ以上の後続のより低い用量(例えば、1つ以上の維持用量)が続き得る。一部の実施形態において、アピテグロマブの1つ又は複数の初期用量は20mg/kgで投与され、続いて1つ以上のより低い用量(例えば、15mg/kg。10mg/kg、5mg/kg、2mg/kg、又は1mg/kg)が、例えば、初期20mg/kg用量の投与の4週間後又は1ヵ月後に投与されてもよく、例えば、ここで1つ以上のより低い用量は、その後4週間に1回又は月1回投与され、又は負荷用量に用いられたものよりも長い間隔で投与される。
【0264】
SMAの治療の「有効量」とは、本明細書で使用されるとき、限定はされないが、対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持すること等を含め、臨床的有効性を実現する量であり得る。
【0265】
SMA療法の臨床的利益には、1)運動機能改善、2)運動機能維持(疾患安定化)又は3)疾患進行の遅延が含まれ得る。
【0266】
運動機能は、HFMSE及び/又はRHSなど、好適な手段によって判定されてもよく、歩行可能患者の運動機能の判定には、後者のRHSが用いられることが多い。一部の実施形態において、HFMSEは、歩行不能患者の運動機能の判定に、より頻繁に用いられる。適切なベースラインと比べたそれぞれのスコアの増加が、運動機能改善を指示する。一部の実施形態において、増加は、少なくとも1点、少なくとも2点、少なくとも3点、少なくとも4点、又は少なくとも5点である。一部の実施形態において、増加は、1点以上、2点以上、3点以上、4点以上、又は5点以上である。一部の実施形態において、本明細書に開示されるSMA療法(例えば、アピテグロマブを含むSMA療法)は運動機能を増強するため、治療の開始後6ヵ月又は12ヵ月の時点で測定されるHFMSEスコア又はRHSスコア(例えば、HFMSEスコア)がベースラインを少なくとも1、3、5、7、又は10点上回ることになり、及びここでベースラインは、治療開始時又は開始前に入手される。一部の実施形態において、本明細書に開示されるSMA療法(例えば、アピテグロマブを含むSMA療法)は、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも5点の増加を生み出す。一部の実施形態において、本明細書に開示されるSMA療法(例えば、アピテグロマブを含むSMA療法)は、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの6~20点以上の増加を生み出す。一部の実施形態において、本明細書に開示されるSMA療法(例えば、アピテグロマブを含むSMA療法)は、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも7点の増加を生み出す。
【0267】
一部の実施形態において、運動機能スコア(例えば、HFMSE又はRHSスコア)の改善は、SMA重症度及び/又はSMN修正薬療法(例えば、ヌシネルセン)による治療時間の長さと正の相関があり得る。一部の実施形態において、運動機能スコア(例えば、HFMSE又はRHSスコア)の改善は、年齢及び/又は進行疾患の特徴と逆相関し得る。一部の実施形態において、進行疾患の特徴としては、脊柱側彎及び/又は関節拘縮が挙げられる。一部の実施形態において、関節拘縮は、筋肉、腱、靱帯が縮んで変形が生じることに起因して起こり得るものであり、症状としては、疼痛及び関節運動の喪失が挙げられる。一部の実施形態において、SMAを治療する方法は、脊柱側彎及び/又は関節拘縮がない患者にアピテグロマブ療法を単剤療法としてか、又は別の療法と併せるか(又はそれと組み合わせるか)のいずれかで投与することを含む。一部の実施形態において、アピテグロマブは、脊柱側彎及び/又は関節拘縮がない患者において、単剤療法としてか、又は別の療法と併せるか(又はそれと組み合わせるか)のいずれかで、SMAの治療に使用される。
【0268】
一部の実施形態において、SMA療法は、2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブの4週間毎又は毎月の静脈内投与を含む。一部の実施形態において、SMA療法は、約20mg/kgのアピテグロマブの4週間毎又は毎月の静脈内投与を含む。一部の実施形態において、本明細書に開示されるSMA療法(例えば、アピテグロマブを含むSMA療法)は、時間が経過しても患者の運動機能が維持される、又は換言すれば、時間の経過に伴う進行を予測するこの疾患の自然歴に対抗して悪化が予防されるなど、疾患安定化を実現し得る。一部の実施形態において、適切なベースラインに対する運動機能スコアの変化が正味ゼロであることが、疾患安定化を反映している。一部の実施形態において、本明細書に開示されるSMA療法(例えば、アピテグロマブを含むSMA療法)により疾患進行が安定化するため、治療の開始後6ヵ月又は12ヵ月の時点で測定されるHFMSEスコア又はRHSスコアがベースラインより下がることはなく、又は悪化が0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5点を超えることはなく、及びここでベースラインは、治療開始時又は開始前に入手される。一部の実施形態において、本明細書に開示されるSMA療法(例えば、アピテグロマブを含むSMA療法)により疾患進行が安定化するため、少なくとも12ヵ月間の治療後にRHSスコアがベースラインスコアと比べて1点、2点、又は3点未満のRHSスコアの悪化を含むことになる。一部の実施形態において、SMA療法は、2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブの4週間毎又は毎月の静脈内投与を含む。一部の実施形態において、SMA療法は、約20mg/kgのアピテグロマブの4週間毎又は毎月の静脈内投与を含む。一部の実施形態において、SMA療法は、対象の運動機能をWHO運動発達マイルストーンによる少なくとも1マイルストーンだけ増加させるのに十分な投与となるような治療有効量のアピテグロマブを投与することを含む。一部の実施形態において、SMA療法は、対象の運動機能をWHO運動発達マイルストーンによる1、2、又は3マイルストーンだけ増加させるのに十分な投与となるような治療有効量のアピテグロマブを投与することを含む。一部の実施形態において、WHO運動発達マイルストーンには、自力で歩く能力、自力で立つ能力、補助ありで立つこと、手及び膝で這うこと、及び/又は補助ありで歩くことのうちの1つ以上が含まれる。
【0269】
一部の実施形態において、本明細書に開示されるSMA療法(例えば、アピテグロマブを含むSMA療法)は、アピテグロマブの投与を受ける患者集団において、それを受けない対照群と比較したとき、疾患状態を維持する助けとなり得る。疾患状態の維持とは、それらの患者において、例えば時間の経過に伴う運動機能の変化によって判定したときの、罹患筋の更なる増悪を予防することを指す。一部の実施形態において、治療により、例えば、好適なベースライン(例えば、未治療の患者)と比較したときの疾患機能の変化速度が減速することによって判定されるとおり、疾患進行が減速し得る。従って、運動機能テストスコアに改善が見られない場合であっても、アピテグロマブは、疾患進行に対抗することによって臨床的利益を提供し得る。このように、かかる臨床的利益は、対照群と比較したとき、アピテグロマブで治療される患者集団がテスト前のスコアを維持する時間、又は時間の経過に伴うスコアの低下速度の減速を示す時間がより長くなるという観察として現れ得る。
【0270】
一部の実施形態において、本明細書に開示されるSMA療法(例えば、アピテグロマブを含むSMA療法)は、例えば、HFMSE又はRHSによるスコアの低下によって測定されるとおりの運動機能の低下を遅らせることにより、及び/又は歩行可能から歩行不能への移行を遅らせること、呼吸補助又は介入の必要性を遅らせること等により、疾患の進行を減速させ得る。
【0271】
本明細書において実証されるとおり、ヒト患者におけるミオスタチンの選択的阻害による臨床的利益が意外な程度まで実現することに基づけば、SMA又は他の筋障害の治療に異なるミオスタチン選択的阻害薬(アピテグロマブ以外)を使用し得ることが企図される。それに応じて、本開示は、ヒト対象のSMAなどの筋障害の治療における使用のためのミオスタチン選択的阻害薬を含み、ここで任意選択で、対象は運動ニューロン指向療法で更に治療され、ここで更に任意選択で、運動ニューロン指向療法は、SMN2上方制御薬療法及びSMN1遺伝子療法など、SMN上方制御薬療法を含む。
【0272】
治療の生物学的効果
本明細書に開示されるSMA療法(例えば、アピテグロマブを含むSMA療法)は、ヒト対象における任意の型のSMA、特に遅発型のSMAの治療に好適であり得る。
【0273】
本明細書に記載される療法から利益を受け得る患者集団には、歩行不能SMAの患者集団及び歩行可能SMAの患者集団が含まれる。一部の実施形態において、本明細書に開示されるSMA療法は、2型及び歩行不能3型SMAなど、歩行不能型のSMAに対する療法と考えられる。他の実施形態において、本明細書に開示されるSMA療法は、歩行可能3型SMAなど、歩行可能型のSMAに対する療法と考えられる。
【0274】
遺伝子型に基づく診断により、発症前であり得る患者(明白な疾患表現型が現れていない)を含め、SMA遺伝子突然変異を保因する患者の同定が可能である。一部の実施形態において、本明細書に開示されるSMA療法による治療に好適な対象は、SMN1の突然変異の直接診断(例えば、5q SMAの染色体直接診断)を有する。一部の実施形態において、対象は、運動表現型に基づく診断に加えて、5q SMAの診断を有する。
【0275】
一部の実施形態において、SMAを有する対象は、2歳以上である。一部の実施形態において、SMAを有する対象は、5~21歳である。単独で、又はSMN上方制御薬と併せて投与される抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体(例えば、アピテグロマブ)の臨床効果は、有効性に関して様々な手段によってモニタ及び/又は評価することができる。例示的なかかる生物学的に有益な効果については、本明細書に提供される。対象における有益な生物学的効果は、抗プロミオスタチン/抗潜在型ミオスタチン抗体(例えば、アピテグロマブ)の単剤療法としての、又はSMN上方制御薬と併せた投与によって実現することができる。一部の実施形態において、単剤療法としての、又はSMN上方制御薬と併せたアピテグロマブは、以下に記載する生物学的効果の1つ以上を生じさせるのに有効な量で投与される。
【0276】
時間の経過に伴う患者の疾患進行並びに療法の効果の追跡には、SMA患者において信頼性をもって測定され得る機能的評価尺度を判定する能力が用いられてもよい。筋機能は、筋力及び力発生など、生理学的測定値によって判定し得る一方、運動機能評価尺度は、日常生活における患者の機能に関連した、筋力それ自体を定量化する尺度と比べて意味及び関連性をより多く持つような方法で疾患の進行をモニタする。一部の実施形態において、SMAの治療を必要としている、又はその治療下にある患者は、本明細書に記載される運動機能判定テスト又は機能的アウトカム尺度のいずれか1つ以上(例えば、HFMSE、RHS、6MWT、WHO運動マイルストーン、RULM、30秒間立ち上がりテスト、耐久シャトルナインホールペグテスト[ESNHPT]、及び/又は耐久シャトルボックスブロックテスト[ESBBT]のうちの1つ以上)など、機能的評価尺度を用いて評価される。
【0277】
一部の実施形態において、SMA(例えば、遅発型SMA)患者は、改訂版ハマースミス評価尺度(Revised Hammersmith Scale:RHS)を用いて評価される。一部の実施形態において、RHSの施行には、床上起き上がり時間及び10メートル歩行/走行テストが含まれる。一部の実施形態において、RHSは、2型SMA患者、並びに3型SMAの歩行可能及び歩行不能患者の身体能力に関する36項目の臨床評価である。RHSは、0、1、2点で段階評価される33項目を含み、0点が最も低いレベルの能力/機能を表し、2点が最も高いレベルの能力を表す(Ramsey et al.(2017)PLoS One.12(2):e0172346)。残りの3項目は、0、1点で採点され、0点が能力がないことを表し、1点が実現する能力を表す。実現可能な最高点は、69点である。
【0278】
一部の実施形態において、アピテグロマブで治療することになる患者(例えば、歩行可能SMA患者)は、治療前に26点以上のベースラインRHSスコアを有する。一部の実施形態において、患者は、63点以下のベースラインRHSスコアを有する。一部の実施形態において、患者は、26~63点の範囲のベースラインRHSスコアを有する。一部の実施形態において、患者は歩行可能SMA、例えば、歩行可能3型SMAを有する。
【0279】
一部の実施形態において、SMA(例えば、遅発型SMA)の患者は、10メートル歩行/走行テストを用いて評価される。一部の実施形態において、10メートル歩行/走行テストは、3型SMAの歩行可能患者に使用されるRHSの強化機能である。10メートル歩行/走行テストは、10メートルを歩く/走るのにかかる時間を測定するものである。
【0280】
一部の実施形態において、SMA(例えば、遅発型SMA)の患者は、床上起き上がり時間テストを用いて評価される。一部の実施形態において、床上起き上がり時間テストは、3型SMAの歩行可能患者に使用されるRHSの強化機能である。床上起き上がり時間テストは、床から立ち上がるのにかかる時間を測定するものである。
【0281】
一部の実施形態において、SMA(例えば、遅発型SMA)の患者は、6分間歩行テスト(6-minute Walk Test:6MWT)を用いて評価される。6MWTは、歩行可能遅発型SMA患者の臨床研究に用いられた運動能力及び疲労の判定である(Young et al.(2016).Muscle Nerve.54(5):836-842)。患者は、6分間にわたり25メートルのコースに沿って可能な限り速く歩くように指示される。毎分距離及び6分間で歩いた総距離が測定される。
【0282】
一部の実施形態において、SMA(例えば、遅発型SMA)の患者は、30秒間立ち上がりテストを用いて評価される。30秒間立ち上がりテストは、下肢の機能的強度の判定として研究者及び臨床医によって用いられている(Jones et al.(1999)Res Q Exerc Sport.70:113-119)。このテストは、機能レベルの低い一般的な老齢集団に用いられる信頼性のある実行可能なツールである修正版30秒間立ち上がりの研究に基づき歩行可能SMA集団用に修正されたものであり(McAllister and Palombaro(2019).J Geriatr Phys Ther.0(0):1-6)、施設に入居している退役軍人の転倒リスクに関係した(Applebaum et al.(2017).PLoS One.12(5):e0176946;Le Berre et al.(2016)Percept Mot Skills.123:138-152)。このテストは、患者が30秒間で最高何回座位から立位に変えることができるかを測定する。
【0283】
一部の実施形態において、SMA(例えば、遅発型SMA)の患者は、ハマースミス機能運動評価尺度拡大版(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded:HFMSE)を用いて評価される(Main M,Kairon H,Mercuri E,Muntoni F.The Hammersmith functional motor scale for children with spinal muscular atrophy:a scale to test ability and monitor progress in children with limited ambulation.Eur J Paediatr Neurol.2003;7(4):155-9)。一部の実施形態において、HFMSEは、2型及び3型SMA患者の身体能力の判定に用いられる(O’Hagen et al.(2007)Neuromuscul Disord.17(9-10):693-697;Glanzman et al.(2011)J Child Neurol.26(12):1499-1507)。一部の実施形態において、HFMSEは、歩行不能SMA患者の評価に用いられる。HFMSEは、以下を含めた、様々な活動を行う個人の能力を判定する33項目からなる:
1.台/椅子に座る
2.長座位
3.座位で片手を頭まで
4.座位で両手を頭まで
5.仰臥位から側臥位
6.腹臥位から右回りで仰臥位
7.腹臥位から左回りで仰臥位
8.仰臥位から右回りで腹臥位
9.仰臥位から左回りで腹臥位
10.座位から臥位
11.前腕で体を支える
12.腹臥位から頭を起こす
13.両腕を伸ばして体を支える
14.臥位から座位
15.四つ這い
16.四つ這い歩き
17.仰臥位から頭を起こす
18.支えありで立位
19.支えなしで立位
20.歩く
21.右股関節の屈曲
22.仰臥位で左股関節の屈曲
23.膝立ち位から右片膝立ち位
24.膝立ち位から左片膝立ち位
25.膝立ち位から左脚を踏み出して立位
26.膝立ち位から右脚を踏み出して立位
27.立位から座位
28.しゃがむ
29.前方に12インチ跳躍する
30.手すりを使用して階段を上る
31.手すりを使用して階段を下りる
32.手すりを使用せずに階段を上る
33.手すりを使用せずに階段を下りる。
【0284】
上記に挙げたパラメータについて各動きの質及び遂行できるかどうかが0、1、2点で段階評価され、ここでは0点ができないことを表し、1点が、変更又は改変を加えて実施したことを表し、2点が、変更又は改変を加えていないことを表す。実現可能な最高点は、66点である。
【0285】
一部の実施形態において、アピテグロマブで治療することになる患者(例えば、2型又は歩行不能3型SMAなど、歩行不能型のSMAの患者)は、治療前に12点以上のベースラインHFMSEスコアを有する。一部の実施形態において、患者は、44点以下のベースラインHFMSEスコアを有する。一部の実施形態において、患者は、12~44点の範囲のベースラインHFMSEスコアを有する。一部の実施形態において、患者は歩行不能型のSMAを有する。一部の実施形態において、患者は2型SMAを有する。一部の実施形態において、患者は歩行不能3型SMAを有する。
【0286】
一部の実施形態において、SMA(例えば、遅発型SMA)の患者は、改訂版上肢モジュール(Revised Upper Limb Module:RULM)を用いて評価される。RULMは、歩行不能SMA患者(低年齢小児並びに成人)の上肢機能についての20項目による判定である(Mazzone et al.(2017)Muscle Nerve.55(6):869-874)。19項目の採点により、膝から手を置く、ボタンを押す、及びトークンを拾い上げるなど、日常生活に関係する機能を検査する。項目は0、1、2点で採点され、0点ができないことを表し、1点が変更を加えればできることを表し、2点が支障なくできることを表す。実現可能な最高スコアは、37点である。一部の実施形態において、RULMは、歩行不能SMA患者の評価に用いられる。一部の実施形態において、RULMは、例えばベースライン判定の時点で、生後30ヵ月以上の患者が全項目を行う。
【0287】
一部の実施形態において、SMA(例えば、遅発型SMA)の患者は、世界保健機関(World Health Organization:WHO)運動発達マイルストーンを用いて評価される。WHO多施設成長参照研究(Multicentre Growth Reference Study:MGRS)において、世界中の乳児及び低年齢小児の成長及び発達を判定するための成長曲線が作成された(de Onis et al.(2004)Food Nutr Bull.25 Suppl:S1-89)。MGRSは、その主要目的として、出生時から5歳までの年齢の小児の成長及び発達を判定するための曲線及び関連するツールの構築を掲げた。MGRSの別の特徴は、支えなしで座る、両手両膝で四つ這い歩き、補助ありで立つ、補助ありで歩く、自力で立つ、及び自力で歩くなどの粗大運動発達マイルストーンを含め、運動マイルストーンの実現年齢の収集がそれに含まれたことである(Wijnhoven et al.(2004)Food Nutr Bull.25(1 Suppl):S37-45;WHO Multicentre Growth Reference Study Group(2006)Acta Paediatr Suppl;450:86-95)。一部の実施形態において、例えば2型及び歩行不能3型SMA患者の運動発達マイルストーンの判定に、粗大運動発達についてのWHO MGRSパフォーマンス判定基準が利用される。
【0288】
一部の実施形態において、SMA(例えば、遅発型SMA)の患者は、耐久シャトルナインホールペグテスト(Endurance Shuttle Nine Hole Peg Test:ESNHPT)を用いて評価される。ESNHPTは、重度のSMA罹患患者向けの耐久テストである。患者は、オリジナルの9穴ペグテストを各自の最高速度の75%で繰り返し行うように指示される。往復の動作は、聴覚キューによって指示される設定された速度に基づき、患者が2回連続でビープ音に応じ損なうと、テストは終了となる。主要アウトカムパラメータは、「限界に達するまでの時間(Tlim)」、予め設定した強度で作業を維持できる時間である。最大テスト継続時間は20分である(Stam et al.(2018)BMJ Open.8(7):e019932)。一部の実施形態において、ESNHPTは、歩行不能SMA患者の評価に用いられる。一部の実施形態において、ESNHPTは、8歳以上の年齢の患者が全項目を行う。
【0289】
一部の実施形態において、SMA(例えば、遅発型SMA)の患者は、耐久シャトルボックスブロックテスト(Endurance Shuttle Box and Block Test:ESBBT)を用いて評価される。ESBBTは、中等度のSMA罹患患者向けの耐久テストである。患者は、オリジナルのボックスブロックテストを各自の最高速度の75%で繰り返し行うように指示される。往復の動作は、聴覚キューによって指示される設定された速度に基づき、患者が2回連続でビープ音に応じ損なうと、テストは終了となる。主要アウトカムパラメータは、「限界に達するまでの時間(Tlim)」、予め設定した強度で作業を維持できる時間である。最大テスト継続時間は20分である(Stam et al.(2018)BMJ Open.8(7):e019932)。一部の実施形態において、ESBBTは、歩行不能SMA患者の評価に用いられる。一部の実施形態において、ESBBTは、8歳以上の年齢の患者が全項目を行う。
【0290】
一部の実施形態において、SMA(例えば、遅発型SMA)の患者は、小児障害インベントリー評価コンピュータ適応テスト(Pediatric Evaluation of Disability Inventory Computer Adaptive Test:PEDICAT)を用いて評価される。一部の実施形態において、介護者(親及び/又は法的保護者であっても、又はそうでなくてもよい)がPEDICAT判定の全項目を行う。一部の実施形態において、PEDICAT判定は、患者に対しては施行されず、又は介護者が存在しない場合、施行されない。PEDICATは、患者が日常の機能を遂行する能力を判定する介護者が全項目を行う質問票である(Haley et al.(2005)Arch Phys Med Rehabil.86(5):932-939)。一部の実施形態において、PEDICATは、患者が何らかの機能判定テストを実施するのを介護者が見ていない場所で介護者が入力する。回答は4段階評価(できない~容易)で採点される。このテストは、出生~21歳までの機能を判定するのに好適である。PEDICATの特性はSMA集団で研究されている。2016年に結果が発表されたRasch分析によれば、PEDICATの運動及び日常活動ドメインの能力の分布が2型及び3型集団で最良に表されることが明らかになった(Pasternak et al.(2016)Muscle Nerve.54(6):1097-1107)。
【0291】
一部の実施形態において、SMA(例えば、遅発型SMA)の患者は、患者報告アウトカム測定情報システム(Patient-reported Outcomes Measurement Information System:PROMIS)を用いて評価される。PROMISは、患者又は代理の親が誰の助けも借りず全項目を行うことを意図した人間中心尺度である(Ader(2007)Med Care.5(5):S1-S2)。疲労プロファイルドメインは、軽度の主観的疲労感から、抗し難い消耗性の持続する脱力感に至るまでの範囲の症状を測定する。この自己報告式尺度は8~17歳の小児に好適であり、親代理人の報告による尺度は5~17歳の小児に好適である。年齢18~21歳の患者は、成人用の様式のPROMISの全項目を行い得る。一部の実施形態において、PROMISは、5歳以上の年齢の患者が全項目を行う。
【0292】
SMAを治療するための方法、使用、及び組成物
様々な実施形態において、アピテグロマブ療法は、約25~250マイクログラム毎ミリリットルの平均血清濃度(Ctrough)を実現する量で(単独で、又は少なくとも1つの追加療法と組み合わせて)投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブ療法は、約25~700マイクログラム毎ミリリットルの平均血清濃度(Cmax)を実現する量で(単独で、又は少なくとも1つの追加療法と組み合わせて)投与される。
【0293】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べた改訂版ハマースミススコア(Revised Hammersmith Score:RHS)スコアの低下を予防し又は遅延させるのに十分な量で投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物を提供し、ここで対象には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べてRHSスコアの低下を予防し又は遅延させるのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAを治療するためのアピテグロマブを含む組成物の使用を提供し、ここで対象には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べてRHSスコアの低下を予防し又は遅延させるのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用を提供し、ここで対象には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べてRHSスコアの低下を予防し又は遅延させるのに十分な量で投与される。
【0294】
一部の実施形態において、SMAは、遅発型SMAである。一部の実施形態において、SMAは、歩行可能3型SMAである。一部の実施形態において、対象は、5~21歳である。一部の実施形態において、十分な量は、2mg/kg超20mg/kg以下、任意選択で約5、10、15、又は20mg/kgの用量である。一部の実施形態において、十分な量は、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0295】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、例えば少なくとも12ヵ月間の治療後に、RHSスコアを安定化させる又はその0.4点未満の減少を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、治療前のベースラインスコアと比べてRHSスコアの少なくとも0.2点の平均増加、任意選択でベースラインと比べてRHSスコアの0.3点、0.5点、少なくとも0.7点、少なくとも1点、少なくとも2点、又は少なくとも3点の平均増加、例えば、少なくとも11例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースラインと比べてRHSスコアの少なくとも1点の平均増加、例えば、少なくとも11例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースラインと比べてRHSスコアの少なくとも3点の平均増加、例えば、少なくとも11例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、例えば、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインと比べて評価したとき、RHSスコアを安定化させる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、例えば、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインと比べて評価したとき、約0.5、0.4、0.3、0.2又は0.1のRHSスコアの低下を抑える量で投与される。
【0296】
一部の実施形態において、対象は、SMN上方制御薬療法で治療される。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、ヌシネルセン、リスジプラム、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクである。一部の実施形態において、SMN制御薬療法は、ヌシネルセンである。一部の実施形態において、対象はSMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始した。一部の実施形態において、アピテグロマブは、例えば、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインと比べて評価したとき、RHSスコアを安定化させる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、例えば、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインと比べて評価したとき、約0.5、0.4、0.3、0.2又は0.1のRHSスコアの低下を抑える量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースラインと比べてRHSスコアの少なくとも0.3点の平均増加、例えば、少なくとも11例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、8週間後にベースラインと比べてRHSスコアの少なくとも0.3点の平均増加、例えば、少なくとも11例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0297】
一部の実施形態において、対象はSMN上方制御薬療法で治療されない。一部の実施形態において、アピテグロマブは、例えば、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインと比べて評価したとき、RHSスコアを安定化させる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、例えば、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインと比べて評価したとき、約0.5、0.4、0.3、0.2又は0.1のRHSスコアの低下を抑える量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースラインと比べてRHSスコアの少なくとも0.7点の平均増加、例えば、少なくとも11例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、8週間後にベースラインと比べてRHSスコアの少なくとも0.7点の平均増加、例えば、少なくとも11例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0298】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、例えば少なくとも12ヵ月間にわたる治療経過の平均値で決定したとき、少なくとも約100マイクログラム毎ミリリットル、例えば、約100~500マイクログラム毎ミリリットル(例えば、約100、200、300、400、又は500マイクログラム毎ミリリットル)の血清濃度(Ctrough)を実現する量で投与される。一部の実施形態において、血清濃度(Ctrough)は、約100~450マイクログラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0299】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、例えば少なくとも12ヵ月間にわたる治療経過の平均値で決定したとき、少なくとも約300マイクログラム毎ミリリットルの血清濃度(Cmax)を実現する量で投与される。一部の実施形態において、血清濃度(Cmax)は、少なくとも約300~1100マイクログラム毎ミリリットル、例えば、300~800である。一部の実施形態において、血清濃度(Cmax)は、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)である。一部の実施形態において、血清濃度は、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清濃度は、定常状態血清濃度である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0300】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも12ヵ月間の治療経過にわたって定常状態で決定したとき少なくとも約100ナノグラム毎ミリリットルの血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも12ヵ月間の治療経過にわたって定常状態で決定したとき少なくとも約250ナノグラム毎ミリリットルの血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも約400ナノグラム毎ミリリットルの血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050又は1100ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、約550~2400ナノグラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、トラフで測定される定常状態濃度である。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0301】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、対象において以下のうちの1つ以上:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持することを実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0302】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物及びSMN上方制御薬を含む組成物を投与することを含む方法を提供し、ここで対象には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べてハマースミス機能運動評価尺度拡大版(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded:HFMSE)スコアの少なくとも0.5又は1点の平均増加、例えば、少なくとも13又は14例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせるのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、本開示は、SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物を提供し、ここで対象には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも0.5又は1点の平均増加、例えば、少なくとも13又は14例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせるのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、本開示は、SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAを治療するためのアピテグロマブを含む組成物の使用を提供し、ここで対象には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも0.5又は1点の平均増加、例えば、少なくとも13又は14例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせるのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、本開示は、SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用を提供し、ここで対象には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも0.5又は1点の平均増加、例えば、少なくとも13又は14例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせるのに十分な量で投与される。
【0303】
一部の実施形態において、SMAは、遅発型SMAである。一部の実施形態において、SMAは、2型SMAである。一部の実施形態において、SMAは、歩行不能3型SMAである。一部の実施形態において、対象は、5~21歳である。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、ヌシネルセン、リスジプラム、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクである。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、ヌシネルセンである。一部の実施形態において、十分な量は、2mg/kg超20mg/kg以下、任意選択で約5、10、15、又は20mg/kgの用量である。一部の実施形態において、十分な量は、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0304】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、16週間後に、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも0.5点又は1点の増加、例えば少なくとも13又は14例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点、少なくとも3点、少なくとも4点、又は少なくとも5点の増加、例えば少なくとも13又は14例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも3点の増加、例えば少なくとも13又は14例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも5点の増加、例えば少なくとも13又は14例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0305】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも約300マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル、例えば、少なくとも約400、500、600、700、800、900、1000、又は1100の血清濃度(Cmax)を実現する量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、血清濃度は、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清濃度は、定常状態血清濃度である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0306】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも約100マイクログラム毎ミリリットル、例えば、少なくとも約200、300、又は400マイクログラム毎ミリリットルの血清濃度(Ctrough)を実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0307】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも約250ナノグラム毎ミリリットル、例えば、少なくとも約400又は500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、約550~1650ナノグラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、トラフで測定される定常状態濃度である。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0308】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、対象において以下のうちの1つ以上:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持することを実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0309】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物及びSMN上方制御薬を含む組成物を投与することを含む方法を提供し、ここで対象には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加、例えば、少なくとも8又は9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせるのに十分な量で投与され、及びここで対象は、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した。一部の実施形態において、本開示は、SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物を提供し、ここで対象には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加、例えば、少なくとも8又は9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせるのに十分な量で投与され、及びここで対象は、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した。一部の実施形態において、本開示は、SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAを治療するためのアピテグロマブを含む組成物の使用を提供し、ここで対象には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加、例えば、少なくとも9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせるのに十分な量で投与され、及びここで対象は、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した。一部の実施形態において、本開示は、SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用を提供し、ここで対象には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加、例えば、少なくとも8又は9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせるのに十分な量で投与され、及びここで対象は、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した。
【0310】
一部の実施形態において、SMAは、遅発型SMAである。一部の実施形態において、SMAは、2型SMAである。一部の実施形態において、対象は、2歳以上の年齢である。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、ヌシネルセン、リスジプラム、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクである。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、ヌシネルセンである。一部の実施形態において、十分な量は、2mg kg超20mg/kg以下、任意選択で約5、10、15、又は20mg/kgの用量である。一部の実施形態において、十分な量は、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0311】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、8週間後又は12ヵ月後に、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加、例えば少なくとも8又は9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、例えば少なくとも12ヵ月間の治療後に、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも3点、少なくとも4点、少なくとも5点、少なくとも6点、又は少なくとも7点の平均増加、例えば少なくとも8又は9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも3点の平均増加、例えば少なくとも8又は9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも5点の平均増加、例えば少なくとも8又は9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも6点の平均増加、例えば少なくとも8又は9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも7点の平均増加、例えば少なくとも8又は9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせる量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0312】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも約25~1100マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットルの血清濃度(Cmax)を実現する量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブ(apetigromab)は2mg/kgで投与され、約25~55マイクログラム毎ミリリットルの血清濃度が達成される。一部の実施形態において、アピテグロマブ(apetigromab)は2mg/kg超20mg/kg以下で投与され、約250~1100マイクログラム毎ミリリットルの血清濃度が達成される。一部の実施形態において、血清濃度は、600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)である。一部の実施形態において、血清濃度は、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清濃度は、定常状態血清濃度である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、約112日後又は約5半減期後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、2mg/kg超20mg/kg以下の量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。一部の実施形態において、アピテグロマブの用量を増加させると、血清濃度(Cmax)の用量反応が生じ、例えば、用量を2mg/kgから20mg/kgまで10倍に増加させると、Cmaxの10倍の増加が生じる。
【0313】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも約25マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル、例えば、少なくとも約50、100、200、300、又は400マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットルの血清濃度(Ctrough)を実現する量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブ(apetigromab)は2mg/kgで投与され、約25~55マイクログラム毎ミリリットルの血清濃度が達成される。一部の実施形態において、アピテグロマブ(apetigromab)は2mg/kg超20mg/kg以下で投与され、約100~400マイクログラム毎ミリリットルの血清濃度が達成される。一部の実施形態において、2mg/kg超20mg/kg以下の量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。一部の実施形態において、アピテグロマブの用量を増加させると、血清濃度(Ctrough)の用量反応が生じ、例えば、用量を2mg/kgから20mg/kgまで10倍に増加させると、Ctroughの10倍の増加が生じる。
【0314】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも約250ナノグラム毎ミリリットル、例えば、少なくとも約400ナノグラム毎ミリリットル又は500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、約550~1100又は600~1000ナノグラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、トラフで測定される定常状態濃度である。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0315】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、対象において以下のうちの1つ以上:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持することを実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0316】
一部の実施形態において、本開示は、SMAを治療する方法であって、患者集団にアピテグロマブを含む組成物を投与することを含む方法を提供し、ここで患者集団には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、患者集団中の臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な量で投与され、及びここで臨床奏効率は、6分間歩行テスト及び/又は30秒間立ち上がりテストによって測定される。一部の実施形態において、本開示は、SMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物を提供し、ここで患者集団には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、患者集団中の臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な量で投与され、及びここで臨床奏効率は、6分間歩行テスト及び/又は30秒間立ち上がりテストによって測定される。一部の実施形態において、本開示は、SMAを治療するためのアピテグロマブを含む組成物の使用を提供し、ここで患者集団には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、患者集団中の臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な量で投与され、及びここで臨床奏効率は、6分間歩行テスト及び/又は30秒間立ち上がりテストによって測定される。一部の実施形態において、本開示は、SMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用を提供し、ここで患者集団には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、患者集団中の臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な量で投与され、及びここで臨床奏効率は、6分間歩行テスト及び/又は30秒間立ち上がりテストによって測定される。
【0317】
一部の実施形態において、患者集団は、遅発型SMA集団である。一部の実施形態において、患者集団は、歩行可能3型SMA集団である。一部の実施形態において、患者集団は、5~21歳のヒト対象を含む。一部の実施形態において、患者集団は、SMN上方制御薬療法で治療される。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、ヌシネルセン、リスジプラム、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクである。一部の実施形態において、SMN制御薬療法は、ヌシネルセンである。一部の実施形態において、患者集団は、SMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始した。一部の実施形態において、十分な量は、2mg/kg超20mg/kg以下、任意選択で約5、10、15、又は20mg/kgの用量である。一部の実施形態において、十分な量は、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0318】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、血清濃度は、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清濃度は、定常状態血清濃度である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0319】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、約550~1100又は600~1000ナノグラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、トラフで測定される定常状態濃度である。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0320】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、対象において以下のうちの1つ以上:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持することを実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0321】
一部の実施形態において、本開示は、SMAを治療する方法であって、患者集団にアピテグロマブを含む組成物を投与することを含む方法を提供し、ここで患者集団には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、患者集団中の臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な量で投与され、及びここで臨床奏効率は、改訂版上肢モジュール(Revised Upper Limb Module:RULM)及び/又は世界保健機関(World Health Organization:WHO)マイルストーンによって測定される。一部の実施形態において、本開示は、SMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物を提供し、ここで患者集団には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、患者集団中の臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な量で投与され、及びここで臨床奏効率は、RULM及び/又はWHOマイルストーンによって測定される。一部の実施形態において、本開示は、SMAの治療におけるアピテグロマブを含む組成物の使用を提供し、ここで患者集団には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、患者集団中の臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な量で投与され、及びここで臨床奏効率は、RULM及び/又はWHOマイルストーンによって測定される。一部の実施形態において、本開示は、SMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用を提供し、ここで患者集団には、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月又は12ヵ月間にわたり、患者集団中の臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な量で投与され、及びここで臨床奏効率は、RULM及び/又はWHOマイルストーンによって測定される。
【0322】
一部の実施形態において、患者集団は、遅発型SMA集団である。一部の実施形態において、患者集団は、2型SMA集団である。一部の実施形態において、患者集団は、歩行不能3型SMA集団である。一部の実施形態において、患者集団は、年齢が2歳以上のヒト対象を含む。一部の実施形態において、患者集団は、5~21歳のヒト対象を含む。一部の実施形態において、患者集団は、SMN上方制御薬療法で治療される。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、ヌシネルセン、リスジプラム、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクである。一部の実施形態において、SMN制御薬療法は、ヌシネルセンである。一部の実施形態において、十分な量は、2mg/kg超20mg/kg以下、任意選択で約5、10、15、又は20mg/kgの用量である。一部の実施形態において、十分な量は、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0323】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、血清濃度は、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清濃度は、定常状態血清濃度である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0324】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、約550~1100又は600~1000ナノグラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、トラフで測定される定常状態濃度である。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0325】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、対象において以下のうちの1つ以上:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持することを実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0326】
一部の実施形態において、本開示は、2歳以上の年齢のヒト対象の遅発型SMAを治療する方法であって、毎月2mg/kg超20mg/kg以下の用量のアピテグロマブを対象に静脈内注入によって投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、本開示は、2歳以上の年齢のヒト対象の遅発型SMAの治療における使用のためのアピテグロマブを提供し、ここでは2mg/kg超20mg/kg以下の用量のアピテグロマブが静脈内注入によって毎月投与される。一部の実施形態において、本開示は、2歳以上の年齢のヒト対象の遅発型SMAを治療するためのアピテグロマブの使用を提供し、ここでは2mg/kg超20mg/kg以下の用量のアピテグロマブが静脈内注入によって毎月投与される。一部の実施形態において、本開示は、2歳以上の年齢のヒト対象の遅発型SMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用を提供し、ここでは2mg/kg超20mg/kg以下の用量のアピテグロマブが静脈内注入によって毎月投与される。
【0327】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、10mg/kg又は20mg/kgの用量で毎月投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、SMN上方制御薬療法の補助剤として投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、ヌシネルセンを含むSMN上方制御薬療法の補助剤として投与される。
【0328】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、血清濃度は、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清濃度は、定常状態血清濃度である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0329】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、約550~1100又は600~1000ナノグラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、トラフで測定される定常状態濃度である。一部の実施形態において、この量は、毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0330】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、対象において以下のうちの1つ以上:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持することを実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0331】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象の遅発型SMAを治療する方法であって、対象に2mg/kg超20mg/kg以下(10mg/kg~20mg/kg、例えば、例えば、10mg/kg又は20mg/kg)のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含む方法を提供し、ここで対象は、SMAに対する運動ニューロン指向療法を5歳未満の年齢で開始しており、及び運動ニューロン指向療法はSMN1又はSMN2発現を増加させる。一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象の遅発型SMAの治療における使用のためのアピテグロマブを提供し、ここで治療は、対象に2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含み、ここで対象は、SMAに対する運動ニューロン指向療法を5歳未満の年齢で開始しており、及び運動ニューロン指向療法はSMN1又はSMN2発現を増加させる。一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象の遅発型SMAを治療するためのアピテグロマブの使用を提供し、ここで治療は、対象に2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含み、ここで対象は、SMAに対する運動ニューロン指向療法を5歳未満の年齢で開始しており、及び運動ニューロン指向療法はSMN1又はSMN2発現を増加させる。一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象の遅発型SMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用を提供し、ここで治療は、対象に2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含み、ここで対象は、SMAに対する運動ニューロン指向療法を5歳未満の年齢で開始しており、及び運動ニューロン指向療法はSMN1又はSMN2発現を増加させる。
【0332】
一部の実施形態において、治療は、6ヵ月又は12ヵ月後に、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加、例えば少なくとも8又は9例の対象のコホートにおける平均増加をもたらす。一部の実施形態において、運動ニューロン指向療法は、ヌシネルセン、リスジプラム、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクである。一部の実施形態において、運動ニューロン指向療法は、ヌシネルセンである。一部の実施形態において、アピテグロマブは、静脈内注入によって投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、2mg/kg超20mg/kg以下の用量で4週間毎に又は毎月投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、10mg/kg又は20mg/kgの用量で4週間毎に又は毎月投与される。一部の実施形態において、遅発型SMA患者はまた、2型SMA、3型SMA、又は4型SMA患者としても分類される。一部の実施形態において、3型SMAは、歩行可能又は歩行不能である。
【0333】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、血清濃度は、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清濃度は、定常状態血清濃度である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、約550~1100又は600~1000ナノグラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、トラフ濃度である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、対象において以下のうちの1つ以上:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持することを実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0334】
一部の実施形態において、本開示は、5歳未満の年齢でSMN上方制御薬療法を受けなかったヒト対象のSMAを治療する方法であって、対象に2mg/kg超20mg/kg以下(例えば、10mg/kg又は20mg/kg)の用量のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含む方法を提供し、ここでアピテグロマブにより疾患進行が安定化するため、治療の開始後6ヵ月又は12ヵ月の時点で測定されるHFMSEスコア又はRHSスコアがベースラインより下がることはなく、又は悪化が0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5点を超えることはなく、及びここでベースラインは、治療開始時又は開始前に入手される。一部の実施形態において、本開示は、5歳未満の年齢でSMN上方制御薬療法を受けなかったヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを提供し、ここで治療は、対象に2mg/kg超20mg/kg以下(例えば、10mg/kg又は20mg/kg)の用量のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含み、ここでアピテグロマブにより疾患進行が安定化するため、治療の開始後6ヵ月の時点で測定したHFMSEスコア又はRHSスコアがベースラインより下がることはなく、及びここでベースラインは、治療開始時又は開始前に入手される。一部の実施形態において、本開示は、5歳未満の年齢でSMN上方制御薬療法を受けなかったヒト対象のSMAを治療するためのアピテグロマブの使用を提供し、ここで治療は、対象に2mg/kg超20mg/kg以下(例えば、10mg/kg又は20mg/kg)の用量のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含み、ここでアピテグロマブにより疾患進行が安定化するため、治療の開始後6ヵ月の時点で測定したHFMSEスコア又はRHSスコアがベースラインより下がることはなく、及びここでベースラインは、治療開始時又は開始前に入手される。一部の実施形態において、本開示は、5歳未満の年齢でSMN上方制御薬療法を受けなかったヒト対象のSMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用を提供し、ここで治療は、対象に2mg/kg超20mg/kg以下(例えば、10mg/kg又は20mg/kg)の用量のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含み、ここでアピテグロマブにより疾患進行が安定化するため、治療の開始後6ヵ月の時点で測定したHFMSEスコア又はRHSスコアがベースラインより下がることはなく、及びここでベースラインは、治療開始時又は開始前に入手される。
【0335】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、静脈内注入によって投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、10mg/kgの用量で4週間毎に又は毎月投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、20mg/kgの用量で4週間毎に又は毎月投与される。
【0336】
一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、血清濃度は、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清濃度は、定常状態血清濃度である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、約550~1100又は600~1000ナノグラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、トラフ濃度である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、対象において以下のうちの1つ以上:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持することを実現する量で投与される。一部の実施形態において、この量は、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。
【0337】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象の遅発型SMAの治療における使用のためのアピテグロマブを提供し、ここで治療は、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の最大血清濃度を実現する量でアピテグロマブを投与することを含む。
【0338】
一部の実施形態において、最大血清濃度は、少なくとも600マイクログラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、最大血清濃度は、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清濃度は、定常状態血清濃度である。一部の実施形態において、この量は、2mg/kg超のアピテグロマブの用量である。一部の実施形態において、この量は、静脈内注入によって4週間毎に又は毎月投与される2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブ、任意選択で約5、10、15、又は20mg/kgの用量である。一部の実施形態において、この量は、静脈内注入によって4週間毎に又は毎月投与される10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも1点の平均増加、例えば少なくとも8又は9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせるのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加、例えば、少なくとも9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせるのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、遅発型SMA患者は、2型又は3型SMA患者であり、及び任意選択でここで対象は、SMN上方制御薬療法を続行中であり、及び任意選択でここで対象は、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した。
【0339】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象の遅発型SMAの治療における使用のためのアピテグロマブを提供し、ここで治療は、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量でアピテグロマブを投与することを含む。
【0340】
一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、約550~1100又は600~1000ナノグラム毎ミリリットルである。一部の実施形態において、血清潜在型ミオスタチン濃度は、定常状態濃度である。一部の実施形態において、この量は、2mg/kg超のアピテグロマブの用量である。一部の実施形態において、この量は、静脈内注入によって4週間毎に又は毎月投与される2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブ、任意選択で約5、10、15、又は20mg/kgの用量である。一部の実施形態において、この量は、静脈内注入によって4週間毎に又は毎月投与される10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも1点の平均増加、例えば少なくとも8又は9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせるのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加、例えば、少なくとも9例の対象のコホートにおける平均増加を生じさせるのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、遅発型SMAは、2型又は3型SMAを有すると分類される患者のものであり、及び任意選択でここで対象は、SMN上方制御薬療法を続行中であり、及び任意選択でここで対象は、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した。
【0341】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物を提供し、ここで治療は、運動機能改善、疾患安定化、又は疾患進行の遅延によって特徴付けられる臨床的利益を生じさせるような、少なくとも600マイクログラム毎ミリリットルの血清曝露量を実現するのに十分な用量でのアピテグロマブの投与を含む。一部の実施形態において、治療は、約10mg/kg又は約20mg/kgアピテグロマブでの組成物の静脈内投与を含む。
【0342】
一部の実施形態において、用量は、4週間毎に又は毎月静脈内投与される約10mg/kg又は約20mg/kgである。一部の実施形態において、SMAは遅発型SMAであり、ここで任意選択で、遅発型SMAは、2型SMA、3型SMA、又は4型SMAであり、ここで更に任意選択で、3型SMAは、歩行可能又は歩行不能である。一部の実施形態において、SMAは遅発型SMAであり、ここで任意選択で、遅発型SMAは、生後6ヵ月以降の年齢での症状発生によって表現型的に特徴付けられる。一部の実施形態において、SMAは遅発型SMAであり、ここで任意選択で、遅発型SMAは、SMN2遺伝子を2コピー以上有することによって遺伝子型的に特徴付けられ、ここで任意選択で、対象は、SMN2遺伝子を2、3、4、5、又は6コピー保因する。
【0343】
一部の実施形態において、ヒト対象は、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始しており、ここで任意選択で、対象はアピテグロマブ治療の開始より前に、又は開始時点で、12~44点又は14~42点のベースラインHFMSEスコアを有する。一部の実施形態において、ヒト対象は、SMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始しており、ここで任意選択で:アピテグロマブ治療の開始より前に、又は開始時点で、a)対象は13~39点のベースラインHFMSEスコアを有する、及び/又はb)対象は44~62点のベースラインRHSスコアを有する。一部の実施形態において、ヒト対象はSMN上方制御薬療法で治療されず、ここで任意選択で、対象は26~63点のベースラインRHSスコアを有する。
【0344】
一部の実施形態において、運動機能改善は、アピテグロマブによる6ヵ月間の治療後における運動機能判定スコアのベースラインに対する少なくとも1点の増加を含む。一部の実施形態において、運動機能改善は、アピテグロマブによる6ヵ月間の治療後における運動機能判定スコアのベースラインに対する少なくとも2点の増加を含む。一部の実施形態において、運動機能改善は、アピテグロマブによる6ヵ月間の治療後における運動機能判定スコアのベースラインに対する少なくとも3点の増加を含む。一部の実施形態において、運動機能改善は、アピテグロマブによる6ヵ月間の治療後における運動機能判定スコアのベースラインに対する少なくとも4点の増加を含む。一部の実施形態において、運動機能改善は、アピテグロマブによる6ヵ月間の治療後における運動機能判定スコアのベースラインに対する少なくとも5点の増加を含む。一部の実施形態において、疾患安定化は、アピテグロマブによる6ヵ月間の治療後における運動機能判定スコアの正味の損失がないことを含み、ここで任意選択で、対象は、12ヵ月間で運動機能判定スコアの悪化によって特徴付けられる疾患進行が統計的に現れる患者集団に分類される。一部の実施形態において、運動機能判定スコアは、HFMSEスコア又はRHSスコアである。
【0345】
一部の実施形態において、本開示は、アピテグロマブを使用してSMA患者において目標飽和度を実現する方法であって、SMA患者に約10mg/kg又は約20mg/kgのアピテグロマブを静脈内注入によって4週間毎に又は毎月投与することを含む方法を提供する。
【0346】
一部の実施形態において、本開示は、アピテグロマブを使用してSMA患者において目標飽和度を実現する方法であって、SMA患者に少なくとも600マイクログラム毎ミリリットルの血清曝露量を実現するのに十分な用量でアピテグロマブを投与することを含む方法を提供し、ここで任意選択で、アピテグロマブは、静脈内注入によって4週間毎に又は毎月投与される。
【0347】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象の歩行可能SMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたって投与することを含む方法を提供し、ここで対象は、アピテグロマブ治療の開始より前に又は開始時に少なくとも26点のベースラインRHSスコアを有し、及びここで少なくとも600マイクログラム毎ミリリットルのアピテグロマブの血清曝露量を実現するアピテグロマブ治療は、疾患を改善し、又は安定化させるのに十分である。一部の実施形態において、対象は、SMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始した。一部の実施形態において、ベースラインRHSスコアは、63点以下である。
【0348】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象の2型又は歩行不能3型SMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたって投与することを含む方法を提供し、ここで対象は、SMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始しており、及びここで対象は、少なくとも600マイクログラム毎ミリリットルの血清曝露量を実現するアピテグロマブ治療の開始より前に又は開始時に13点以上、39点以下、又は両方(13~39点)のベースラインHFMSEスコアを有する。一部の実施形態において、組成物は、6ヵ月後にベースラインに対してHFMSEスコアの少なくとも1点の増加を実現するのに十分である。
【0349】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象の2型又は歩行不能SMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたって投与することを含む方法を提供し、ここで対象は、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始しており、及び対象は、少なくとも600マイクログラム毎ミリリットルの血清曝露量を実現するアピテグロマブ治療の開始より前に又は開始時に12点以上、44点以下、又は両方(12~44点)のベースラインHFMSEスコアを有する。一部の実施形態において、組成物は、6ヵ月後にベースラインに対してHFMSEスコアの少なくとも1点又は3点の増加を実現するのに十分である。一部の実施形態において、アピテグロマブは約20mg/kgで用量設定される。
【0350】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト患者の遅発型SMAの治療における使用のための選択的ミオスタチン阻害薬を提供し、ここでヒト患者は歩行不能SMAを有し、ここで患者は12~44点の範囲のベースラインHFMSEスコアを有し、及びここで患者はSMN上方制御薬療法で治療され、ここで任意選択で、選択的ミオスタチン阻害薬は、潜在型ミオスタチン複合体に特異的に結合することによって成熟ミオスタチンの放出を防ぐ抗体である。一部の実施形態において、選択的ミオスタチン阻害薬は、成熟ミオスタチンに結合する中和抗体又はリガンドトラップである。
【0351】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト患者の遅発型SMAの治療における使用のための選択的ミオスタチン阻害薬及びSMN上方制御薬を提供し、ここで患者は44点以下のベースラインHFMSEスコアを有し、ここで任意選択で、選択的ミオスタチン阻害薬は、潜在型ミオスタチン複合体に特異的に結合することによって成熟ミオスタチンの放出を防ぐ抗体であり、ここで更に任意選択で、SMN上方制御薬は、SMN2上方制御薬及び/又はSMN1遺伝子療法である。一部の実施形態において、選択的ミオスタチン阻害薬は、成熟ミオスタチンに結合する中和抗体又はリガンドトラップである。
【0352】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物を提供し、ここで治療は、4週間毎に又は毎月2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブの用量での対象への組成物の静脈内投与を含み、ここで対象は、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始するか、又は開始した。一部の実施形態において、SMAは、遅発型SMAである。一部の実施形態において、対象は、SMN2遺伝子を2コピー以上有する。一部の実施形態において、SMAは2型SMAであり、ここで任意選択で、対象はSMN2遺伝子を2~4コピー有する。一部の実施形態において、対象は、歩行不能である。一部の実施形態において、対象は、2歳以上の年齢である。一部の実施形態において、対象は、SMN1遺伝子の突然変異の保因者と遺伝的に同定され、ここで任意選択で、対象は、SMAの症候を有しない又はその症候を有する。一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの初回用量を受けるより前に、又はそれを受ける時点で、少なくとも12点のベースラインHFMSEスコアを有する。一部の実施形態において、組成物は、少なくとも約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチンの持続的な(定常状態の)標的会合を実現するのに十分な量で対象に投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブの量又は用量は、10mg/kg又は20mg/kgである。一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの初回用量を受ける時点で少なくとも4用量のSMN上方制御薬療法を受けたことがある。一部の実施形態において、対象は、2型SMAを有する。一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも5点の増加を生じさせるのに十分な用量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの6~20点又はそれ以上の増加、及び好ましくは少なくとも7点の増加を生じさせるのに十分な用量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブを含む組成物は、4週間毎に又は毎月20mg/kgで静脈内投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブを含む組成物は、4週間毎に又は毎月10mg/kgで静脈内投与される。一部の実施形態において、組成物は、約50mg/mLの濃度で製剤化される。
【0353】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象においてベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも7点の増加を達成する方法であって、対象に約10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも12ヵ月間にわたって投与することを含む方法を提供し、ここで対象は遅発型SMAを有し、ヌシネルセンによる治療を5歳未満の年齢で開始した。
【0354】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAの治療をモニタする方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与すること;及び血清潜在型ミオスタチン濃度を検出することを含む方法を提供し、ここで少なくとも約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチン濃度が治療有効性を指示し、ここで対象は遅発型(任意選択で2型)SMAを有し、ヌシネルセンによる治療を5歳未満の年齢で開始した。一部の実施形態において、対象は、歩行不能である。一部の実施形態において、対象は、2歳以上の年齢である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、10mg/kg又は20mg/kgの用量で4週間毎に又は毎月投与される。一部の実施形態において、本方法は、少なくとも約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチン濃度を有する対象に追加用量のアピテグロマブを投与することを更に含む。
【0355】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を投与することを含む方法を提供し、ここでアピテグロマブは、2mg/kg超約20mg/kg以下の量(例えば、10mg/kg又は20mg/kg)で4週間毎に又は毎月投与され、ここで対象が少なくとも約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチン濃度を有する場合には、アピテグロマブの投与は最大3回連続で省かれ、ここで対象は遅発型SMAを有し、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した。一部の実施形態において、アピテグロマブは、静脈内注入によって投与される。一部の実施形態において、対象は歩行不能であり、及び/又は2型SMAを有する。一部の実施形態において、対象は、2歳以上の年齢である。
【0356】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAを治療する方法であって、対象に選択的ミオスタチン阻害薬を含む組成物を投与することを含む方法を提供し、任意選択でここで選択的ミオスタチン阻害薬は、プロミオスタチン/潜在型ミオスタチンに選択的に結合する抗体であり、及びここで選択的ミオスタチン阻害薬は、対象において定常状態で少なくとも約100ng/mL又は好ましくは少なくとも約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチン濃度を達成する量で投与され、ここで対象は遅発型(任意選択で2型)SMAを有し、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した。一部の実施形態において、血清濃度は、定常状態濃度である。一部の実施形態において、対象は、歩行不能である。一部の実施形態において、対象は、2歳以上の年齢である。一部の実施形態において、選択的ミオスタチン阻害薬は、アピテグロマブである。一部の実施形態において、アピテグロマブは、静脈内注入によって投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、20mg/kgの用量で4週間毎に又は毎月投与される。
【0357】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物を提供し、ここで治療は、対象への組成物の2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブの用量での4週間毎又は毎月の静脈内投与を含み、ここで対象は、SMN上方制御薬療法で治療され、ここで対象は、SMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始するか、又は開始した。一部の実施形態において、SMAは2型SMA又は3型SMAであり、ここで任意選択で、対象はSMN2遺伝子を2~4コピー有する。一部の実施形態において、対象は歩行不能3型SMAを有する。一部の実施形態において、対象は、SMN1遺伝子の突然変異の保因者と遺伝的に同定され、ここで任意選択で、対象は、SMAの症候を有しない又はその症候を有する。一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの初回用量を受けるより前に、又はそれを受ける時点で、少なくとも13点のベースラインHFMSEスコアを有する。一部の実施形態において、組成物は、少なくとも約100ng/mL又は好ましくは少なくとも約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチンの持続的な(定常状態の)標的会合を実現するのに十分な量で対象に投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブの用量は、10mg/kg又は20mg/kgである。一部の実施形態において、対象は5~21歳である。一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの低下がない又は最小限であることを実現するのに十分な用量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも1点の増加、及び好ましくは少なくとも3点の増加を生じさせるのに十分な用量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブの用量は20mg/kgである。
【0358】
一部の実施形態において、本開示は、歩行不能SMAを有するヒト対象の疾患進行を安定化させる方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも12ヵ月間にわたって投与することを含む方法を提供し、ここで対象は、SMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始するか、又は開始した。一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの低下がない又は最小限であることを実現するのに十分な用量で投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブは、約20mg/kgの用量で投与される。
【0359】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物を提供し、ここで治療は、対象への組成物の2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブの用量での4週間毎又は毎月の静脈内投与を含み、ここで対象は歩行可能SMAを有し、及びここで任意選択で、対象は、SMN上方制御薬療法を受けたことがない。一部の実施形態において、対象は歩行可能3型SMAを有し、ここで任意選択で、対象は、SMN2遺伝子を3コピー以上有する。一部の実施形態において、対象は、SMN1遺伝子の突然変異の保因者と遺伝的に同定され、ここで任意選択で、対象は、SMAの症候を有しない又はその症候を有する。一部の実施形態において、対象は、アピテグロマブの初回用量を受けるより前に、又はそれを受ける時点で、少なくとも26点のベースラインRHSスコアを有する。一部の実施形態において、組成物は、少なくとも約100ng/mL又は好ましくは少なくとも約、約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチンの持続的な(定常状態の)標的会合を実現するのに十分な量で対象に投与される。一部の実施形態において、アピテグロマブの用量は、10mg/kg又は20mg/kgである。一部の実施形態において、アピテグロマブは、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてRHSスコアを安定化させるのに十分な用量で投与される。一部の実施形態において、RHSスコアの安定化には、ベースラインスコアと比べたRHSスコアの悪化が1点、2点、又は3点未満であることが含まれる。一部の実施形態において、アピテグロマブの用量は20mg/kgである。一部の実施形態において、対象は、SMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始した。
【0360】
一部の実施形態において、本開示は、SMAを有するヒト対象の歩行運動の喪失を予防し又は遅延させる方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブの用量で4週間毎に又は毎月、少なくとも12ヵ月間にわたって投与することを含む方法を提供し、ここで対象は歩行可能SMAを有し、及びここで任意選択で、対象は、SMN上方制御薬療法を受けたことがない。一部の実施形態において、患者は歩行可能3型SMAを有する。一部の実施形態において、進行は、歩行可能SMA患者集団の自然歴と比べて、12ヵ月間のアピテグロマブ治療後に歩行可能から歩行不能への移行が遅延することによって判定される。一部の実施形態において、進行は、歩行可能SMA患者集団の自然歴と比べて、12ヵ月間のアピテグロマブ治療後にベースラインに対する運動機能スコアの悪化速度が遅くなる又は悪化の程度が小さくなることによって判定される。一部の実施形態において、組成物は、約50mg/mLのアピテグロマブの濃度で製剤化される。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、ヌシネルセン、オナセムノゲンアベパルボベク、及び/又はリスジプラムを含む。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、ヌシネルセンを含む。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、髄腔内投与を含む。
【0361】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象のSMAの治療における使用のためのSMN上方制御薬療法及び筋指向療法を提供し、ここで治療は、年齢が5歳になる前のSMN上方制御薬療法の開始を含み、及びここで筋指向療法は、アピテグロマブを含む組成物の2mg/kg超20mg/kg以下の用量での4週間毎又は毎月の静脈内投与を含み、ここで任意選択で、アピテグロマブの用量は、約10mg/kgである。一部の実施形態において、アピテグロマブを含む組成物は、約50mg/mLの濃度で製剤化される。一部の実施形態において、SMN上方制御薬療法は、ヌシネルセン、オナセムノゲンアベパルボベク、及び/又はリスジプラムを含む。
【0362】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象の遅発型SMAの治療方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を2超20以下(mg/kg)の治療用量で4週間毎に又は毎月静脈内投与すること含む方法を提供し、ここで組成物は、約50mg/mLの濃度で製剤化される。一部の実施形態において、治療用量は、少なくとも約100ng/mL又は好ましくは少なくとも約250ng/mLの潜在型ミオスタチンの定常状態血清濃度を実現するのに十分な用量である。一部の実施形態において、対象はSMN2遺伝子を2~4コピー有する。一部の実施形態において、対象は2型SMAを有する。一部の実施形態において、対象は、生後12ヵ月の年齢で上体起こして座る能力を有するか、又は有したとともに、生後18ヵ月の年齢で歩く能力を欠いているか、又は欠いていた。一部の実施形態において、対象は歩行不能3型SMAを有する。一部の実施形態において、対象は、生後18ヵ月の年齢までに歩く能力を失った。一部の実施形態において、対象は、SMN2遺伝子を3~6コピー有する。一部の実施形態において、対象は歩行可能3型SMAを有する。一部の実施形態において、対象は、生後18ヵ月の年齢で歩く能力を保持していた。一部の実施形態において、対象は、生後18ヵ月以降の年齢で歩行可能から歩行不能への移行を起こす。一部の実施形態において、対象は、SMN指向療法で治療される。一部の実施形態において、対象は、5歳未満の年齢でSMN指向療法を開始するか、又は開始した。一部の実施形態において、対象は、5歳以上の年齢でSMN指向療法を開始するか、又は開始した。一部の実施形態において、SMN指向療法は、SMN1指向療法及び/又はSMN2指向療法である。一部の実施形態において、SMN1指向療法は、遺伝子療法である。一部の実施形態において、遺伝子療法は、SMN1遺伝子置換を含むウイルスベクターを含む。一部の実施形態において、SMN2指向療法は、スプライシング修飾剤であるか、又はそれを含む。一部の実施形態において、スプライシング修飾剤は、SMN2エクソンに結合することによってエクソンのスプライシングを修飾する核酸を含む。一部の実施形態において、スプライシング修飾剤は、SMN2エクソンに結合することによってエクソンのスプライシングを修飾する低分子量化合物を含む。一部の実施形態において、治療用量は、12ヵ月間のアピテグロマブ療法後に対象の運動機能の増強を生じさせるのに十分であり、ここで任意選択で、運動機能は、HFMSE又はRHSによって判定される。一部の実施形態において、運動機能の増強は、ベースラインに対する運動機能スコアの増加を含み、ここで任意選択で、増加は少なくとも1点、3点、5点、又は10点である。一部の実施形態において、ベースラインは、SMN指向療法後に判定される運動機能スコアを含む。一部の実施形態において、ベースラインは、SMN指向療法を受けたことがない対象で判定される運動機能スコアを含む。一部の実施形態において、治療用量は、対象が分類されるSMA患者集団の自然歴と比べて疾患進行の遅延を生じさせるのに十分である。
【0363】
一部の実施形態において、本開示は、ヒト対象の遅発型SMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物を提供し、ここで治療は、対象への組成物の2超20以下(mg/kg)の治療用量での4週間毎又は毎月の静脈内投与を含み、ここで任意選択で、組成物は、約50mg/mLの濃度で製剤化され、ここで更に任意選択で、治療用量は、少なくとも約100ng/mL又は好ましくは少なくとも250ng/mLの潜在型ミオスタチンの定常状態血清濃度を実現するのに十分である。一部の実施形態において、対象はSMN2遺伝子を2~4コピー有する。一部の実施形態において、対象は2型SMAを有する。一部の実施形態において、対象は、生後12ヵ月の年齢で上体起こして座る能力を有するか、又は有したとともに、生後18ヵ月の年齢で歩く能力を欠いているか、又は欠いていた。一部の実施形態において、対象は歩行不能3型SMAを有する。一部の実施形態において、対象は、生後18ヵ月の年齢までに歩く能力を失った。一部の実施形態において、対象は、SMN2遺伝子を3~6コピー有する。一部の実施形態において、対象は歩行可能3型SMAを有する。一部の実施形態において、対象は、生後18ヵ月の年齢で歩く能力を保持していた。一部の実施形態において、対象は、生後18ヵ月以降の年齢で歩行可能から歩行不能への移行を起こす。一部の実施形態において、対象は、SMN指向療法で治療される。一部の実施形態において、対象は、5歳未満の年齢でSMN指向療法を開始するか、又は開始した。一部の実施形態において、対象は、5歳以上の年齢でSMN指向療法を開始するか、又は開始した。一部の実施形態において、SMN指向療法は、SMN1指向療法及び/又はSMN2指向療法である。一部の実施形態において、SMN1指向療法は、遺伝子療法である。一部の実施形態において、遺伝子療法は、SMN1遺伝子置換を含むウイルスベクターを含む。一部の実施形態において、SMN2指向療法は、スプライシング修飾剤であるか、又はそれを含む。一部の実施形態において、スプライシング修飾剤は、SMN2エクソンに結合することによってエクソンのスプライシングを修飾する核酸を含む。一部の実施形態において、スプライシング修飾剤は、SMN2エクソンに結合することによってエクソンのスプライシングを修飾する低分子量化合物を含む。一部の実施形態において、治療用量は、12ヵ月間のアピテグロマブ療法後に対象の運動機能の増強を生じさせるのに十分であり、ここで任意選択で、運動機能は、HFMSE又はRHSによって判定される。一部の実施形態において、運動機能の増強は、ベースラインに対する運動機能スコアの増加を含み、ここで任意選択で、増加は少なくとも1点、3点、5点、又は10点である。一部の実施形態において、ベースラインは、SMN指向療法後に判定される運動機能スコアを含む。一部の実施形態において、ベースラインは、SMN指向療法を受けたことがない対象で判定される運動機能スコアを含む。一部の実施形態において、治療用量は、対象が分類されるSMA患者集団の自然歴と比べて疾患進行の遅延を生じさせるのに十分である。
【0364】
一部の実施形態において、本開示は、治療を必要としているヒト対象の歩行不能又は遅発型SMAの治療方法であって、対象に2mg/kg超20mg/kg以下の投薬量のアピテグロマブをQ4Wで(即ち、4週間毎に)又は毎月静脈内投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、毎月の投薬量は、静脈内注入で投与される10mg/kgである。一部の実施形態において、毎月の投薬量は、静脈内注入で投与される20mg/kgである。
【0365】
一部の実施形態において、本開示は、治療を必要としているヒト対象の遅発型SMAの治療方法であって、少なくとも約10、20、30、40、60、80、100、200、300又は400ng/mLの定常状態血清潜在型ミオスタチン濃度を実現するのに十分な量で対象にアピテグロマブを静脈内投与することを含む方法を提供する。
【0366】
一部の実施形態において、本開示は、治療を必要としているヒト対象の歩行不能又は遅発型SMAの治療方法であって、少なくとも約250ng/mLの定常状態血清潜在型ミオスタチン濃度を実現するのに十分な量で対象にアピテグロマブを静脈内投与することを含む方法を提供する。
【0367】
一部の実施形態において、本開示は、歩行可能SMAのヒト対象のSMAの進行を減速させる方法であって、対象に2mg/kg超20mg/kg以下の投薬量のアピテグロマブをQ4Wで(即ち、4週間毎に)又は毎月静脈内投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、対象は歩行可能3型SMAを有する。一部の実施形態において、進行は、歩行可能SMA患者集団の自然歴と比べて、12ヵ月間のアピテグロマブ治療後に歩行可能から歩行不能への移行が遅延することによって判定される。一部の実施形態において、進行は、歩行可能SMA患者集団の自然歴と比べて、12ヵ月間のアピテグロマブ治療後にベースラインに対する運動機能スコアの悪化速度が遅くなる又は悪化の程度が小さくなることによって判定される。
【0368】
当業者には、本明細書に記載される本発明の方法の他の好適な変形例及び応用例が自明であり、本発明の範囲又は本明細書に開示される実施形態から逸脱することなく好適な均等物を使用してそれらを実現し得ることは容易に明らかであろう。ここまでに本発明を詳細に説明したが、説明のために含まれるに過ぎない、且つ限定することは意図しない以下の例を参照すれば、それが更に明確に理解されるであろう。
【実施例
【0369】
実施例1.遅発型SMA患者におけるアピテグロマブの実薬治療研究
SMAでは、現在、SMAを引き起こす根本的な遺伝的欠陥への対処を助けるために利用可能な承認済みのSMN上方制御薬が3つあるが、患者はなおも深刻な運動機能障害を有し得る。かかるSMN上方制御薬(SMN修正薬としても知られる)が、SMA疾患経過の安定化を助けるために現在利用可能であることに伴い、運動機能の改善を促すことを目的とした補完的な筋指向療法が望ましい。運動機能の改善に加えて、かかる療法は、小児集団における慢性投与を含め、慢性投与が可能な安全性プロファイルを有することになり、薬物投与の負担が少なく、且つ全SMA集団に広く適用可能なものであり得る。
【0370】
ヒトプロミオスタチン/潜在型ミオスタチンに結合する完全ヒトモノクローナル抗体であるアピテグロマブは、疾患を安定化させるSMN上方制御薬の利益を補完することを意図した筋指向療法である。アピテグロマブは、潜在型のミオスタチンを標的化することにより、筋生物学の範疇の外側で様々な役割を果たす近縁の成長因子を回避することが可能である。
【0371】
年齢2~21歳の遅発型SMA患者(例えば、2型及び3型SMA患者)におけるアピテグロマブの安全性及び有効性を評価するため、患者にアピテグロマブを承認済みのSMA治療に加えて、又はアピテグロマブ単剤療法として投与する。単剤療法患者を除いては、全ての患者がバックグラウンドヌシネルセンの投与を受ける。かかる患者は負荷治療相を過ぎている必要があり、及びこれらの患者は本研究への登録前に平均約5回のヌシネルセン維持用量の投与(これは約2年間の治療に相当する)を受け終わっていた。ヌシネルセンを2年間投与し続けた後であっても、これらの患者のベースラインHFMSEスコアは20点台前半から半ばにとどまっていた。
【0372】
本研究(「TOPAZ」とも称される;ClinicalTrials.gov識別番号:NCT03921528)では、約58例の男性及び女性遅発型SMA患者が、これ以降コホートと言い表す3つの別個の並行サブ集団に登録する。患者は52週間の治療期間中、アピテグロマブの投与を4週間毎に又は毎月受け、ここでコホート1及び2の患者は高用量(20mg/kg)アピテグロマブに直接割り付けられ、コホート3の患者は、低用量(2mg/kg)及び高用量(20mg/kg)アピテグロマブに二重盲検で1:1に無作為化される。
・コホート1、N=23:歩行可能3型患者、年齢5~21歳、そのうち約10例は承認済みのSMA治療を受けていない、並びに患者が5歳になった後に開始された承認済みのSMA治療を既に受けている患者。
・コホート2、N=15:2型及び歩行不能3型患者、年齢5~21歳、患者が5歳になった後に開始された承認済みのSMA治療を既に受けている。
・コホート3、N=20:2型患者、年齢2歳以上、患者が5歳になる前に開始された承認済みのSMA治療を既に受けている。
【0373】
スクリーニング期間では、インフォームドコンセント(及び、地元当局の要求に応じて、患者のインフォームドアセント)が提供された後、及び初回用量の投与前28日以内に、全ての患者のスクリーニング及び適格性判断を行う。初回用量投与の少なくとも7日前に、スクリーニング用の運動機能アウトカム測定を行う。全ての後続の運動機能アウトカム測定は、投与前96時間以内に行う。このスクリーニング期間に入手された情報が、「治療ベースライン」(「ベースライン」とも称される)を提供する。
【0374】
患者は、投与後2時間までモニタする。治療期間の用量投与後は毎回、7日以内に安全性チェックインのため患者に連絡をとる。治療期間の初回用量投与の14日後に患者は外来を受診する。2回目の用量投与後、研究終了まで4週間毎に又は毎月来院を行う。52週間の治療期間を完了した患者は、更に52週間の期間にわたる延長期間への登録を選択することができる。治療期間の完了と延長期間の開始との間に休みはない。延長期間への参加に関する同意書に署名後、患者は治療期間364日目(来院15回目)を完了し、同じ日に直ちに延長期間364日目(延長1回目)を開始する。
【0375】
52週間の治療期間を完了し、延長期間に登録しないことを選んだ患者は、364日目(来院15回目)の後に12週間安全性フォローアップ期間が続く。延長期間を完了した患者は、728日目(延長14回目)の後に12週間安全性フォローアップ期間が続く。患者は、治療期間、延長期間、及び安全性に関するフォローアップ期間全体を通じてモニタされる。
【0376】
1 研究デザイン
1.1 全体的な研究デザイン
年齢2~21歳の遅発型SMA患者におけるアピテグロマブの実薬治療研究では、患者にアピテグロマブが単剤療法として、又はSMAに承認済みのSMN上方制御薬療法に加えて投与される(表5)。本研究には、これ以降コホートと言い表す3つの別個の並行サブ集団に約55名のSMA患者が登録する:
・コホート1、N=20:歩行可能3型患者、年齢5~21歳、そのうち少なくとも10例は、承認済みのSMA治療を受けていない、並びに患者が5歳になった後に開始された承認済みのSMA治療を既に受けている患者。
・コホート2、N=15:2型又は歩行不能3型患者、年齢5~21歳、患者が5歳になった後に開始された承認済みのSMA治療を既に受けている。
・コホート3、N=20:2型患者、年齢2歳以上、患者が5歳になる前に開始された承認済みのSMA治療を既に受けている。
【0377】
本研究への患者の参加は、3つのパート、スクリーニング、治療、及びフォローアップからなる:
1.スクリーニング期間では、インフォームドコンセント(及び、地元当局の要求に応じて、患者のインフォームドアセント)が提供された後、及び初回用量の投与前28日以内に、全ての患者のスクリーニング及び適格性判断を行う。初回用量投与の少なくとも7日前に、スクリーニング用の運動機能アウトカム測定を行う。全ての後続の運動機能アウトカム測定は、投与前96時間以内に行う。
2.52週間の治療期間中、コホート1及び2に登録した患者は高用量(20mg/kg)アピテグロマブの投与を受け、コホート3に登録した患者は、低用量(2mg/kg)又は高用量(20mg/kg)のいずれかのアピテグロマブの投与を受けるように盲検方式で無作為化(1:1)される(図1)。治療は全て、4週間に1回又は毎月、静脈内注入により約2時間かけて投与する。初回用量は0日目に、及び最終回用量は336日目に投与され、合計13用量である。各投与来院について前後±7日のウィンドウがあり、用量間は最低21日及び最高35日とする。
患者は投与後約2時間まで研究施設でモニタする。最初の2回の投与後に患者に急性反応がない場合、及びそうすることが安全と判断された場合、注入時間を2時間未満に変更してもよく、但し1時間より短くないものとする。
投与後は毎回、施設が安全性チェックインとして7日以内に患者に連絡をとる。患者は初回用量投与の14日後に外来受診する。2回目の用量投与後、研究終了まで4週間毎に又は毎月来院を行う(表6)。治療期間中、全ての投与及び運動機能アウトカム測定は研究施設で行われる。
治療期間の最終来院は、364日目(来院15回目)である。
52週間の治療期間を完了した患者は、更なる52週間の延長期間に登録することを選択できる(図2)。治療期間と延長期間との間に投与の中断はない。初回用量は、来院15回目の治療期間完了後の364日目に投与され、最終回用量は700日目に投与され、合計13用量である。
治療は全て、4週間に1回又は毎月、静脈内(IV)注入により約2時間かけて投与される。各投与来院について前後±7日のウィンドウがあり、用量間は最低21日及び最高35日とする。
患者は投与後約2時間まで研究施設でモニタする。注入所要時間は1時間より短くなければよい。
3.52週間の治療期間を完了し、任意選択の延長期間に登録しないことを選んだ患者は、364日目の後に12週間安全性フォローアップ期間が続く。52週間の延長期間を完了した患者は、728日目の後に12週間安全性フォローアップ期間が続く。
【0378】
1.2 治療割付け
コホート1及び2の適格患者は、高用量(20mg/kg)アピテグロマブの投与を受ける。コホート3の患者は、層別化なしに低用量(2mg/kg)又は高用量(20mg/kg)アピテグロマブに1:1で無作為化される。任意選択の延長期間に登録した患者は、中間及び/又は主要解析によって決まるとおり、自身が治療期間中に受けていた同じ用量を引き続き受けることもあり、又は受けないこともある。
【0379】
【表14】
【0380】
【表15】
【0381】
【表16】
【0382】
【表17】
【0383】
【表18】
【0384】
【表19】
【0385】
1.3 安全性管理及び中止規則
1.3.1 安全性監視
本研究の全期間(治療期間及び延長期間を含む)を通じて、患者の安全性を判定するため安全性データを約12週間毎に、及び必要に応じて特別に機会を設けて精査する。
【0386】
1.3.2 用量調整のための薬物動態学的判定基準
予め指定された中間解析(第6.4節を参照のこと)の一環として、コホート毎にPK及びPDデータを精査する。SMA患者の薬物曝露量及び標的会合レベルを評価して、それらを先行する第1相健常成人研究で見られたレベルと比較する。必要に応じて複数のコホートのデータを組み合わせてもよく、それらは生物統計学者によって提供される。それらの結果に基づき、及び任意の利用可能な安全性データを考慮して、コホート特異的用量レベルを調整し得る。用量レベルをどのように調整しようとも、投与頻度(即ち、4週間毎又は毎月)は変更せず、第1相研究で試験したとおり、最高用量は30mg/kgを超えない。
【0387】
1.3.3 研究中止規則
本研究の投与は、新たに出現した安全性への懸念のために、その1つ又は複数の事象が完全に評価され、適切な対応方針が提言されるまで、任意の時点で一時中止され得る。
【0388】
行われ得る提言としては、投与を再開し、変更なしに研究を継続するというもの、プロトコルを変更して研究を継続するというもの、研究を終了するというもの、又は判断を下す前に更に多くのデータ、入力、及び検討が必要であるというものであり得る。研究終了の判断基準は、研究の実施中に生じ得る、又はアピテグロマブ前臨床及び臨床プログラムのデータからの安全性への懸念の判定に基づく。本研究は、自由裁量で、又はそれ以上の薬物曝露があれば患者を過度の危険にさらすことになり得ると判断された場合に、任意の時点で中断され得る。本研究が予定より早く終了となった場合にも、患者はその最終回投与後の12週間にわたるフォローアップが継続される。
【0389】
1.3.4 個別の中止規則
任意の個々の患者に対する投与は、当該患者のウェルビーイングのために更なる投与を一時中止又は中断することが正当であるようなアピテグロマブ関連の重篤有害事象(SAE)、又はアピテグロマブ関連の臨床的に重大だが重篤でないAEが患者に見られる場合、一時中止又は中断されてもよい。その投与が一時中止となった患者について、そのAEが解消された後に限り、及びそうすることが安全であると見なされるであろう場合に限り、投与が再開されてもよい。投与が中断となった患者について、患者は、その最終回用量の投与後か、又は任意の進行中の臨床的に重大なAEが解消するまでか、いずれか遅く起こった方の後12週間にわたってフォローアップが継続される(AE解消の定義については、第5.2.1節を参照のこと)。
【0390】
個々の患者に対するアピテグロマブの投与はまた、患者の安全性が脅かされ得る場合に、上記に記載されるもの以外の安全性への懸念から一時中止又は中断されてもよい。患者の安全性又はデータの信頼性を危うくする任意の単一の事象又は事象の組み合わせを評価する。
【0391】
個別の中止判定基準を満たすSAE又は他の毒性のいずれかを発症する患者は慎重にモニタされ、それには、以下が含まれ得る:
・追加の臨床検査及び/又は他の臨床的検討
・追加の来院又はフォローアップ期間の延長
・専門家に相談を求める
【0392】
2 患者の選択及び撤回
2.1 患者組入れ基準
1.コホート1及び2についてはスクリーニングの時点で年齢5~21歳;コホート3についてはスクリーニングの時点で年齢2歳以上。
2.推定平均余命がスクリーニングから2年超。
3.患者が法的に成人している場合、患者によって署名されたインフォームドコンセント書類。患者が法的に未成年者である場合、適用可能であれば、及び参加地の法規制上の要件に従って、患者の親又は法的保護者によって署名されたインフォームドコンセント書類並びに口頭又は書面で得られた患者の同意。
4.5q SMAの診断記録。
5.SMAに承認されている療法による任意の治療を受ける前に遅発型(例えば、2型又は3型)SMAと診断されている、
6.歩行不能患者は、スクリーニング時に世界保健機関(World Health Organization:WHO)運動マイルストーンの定義に従い自力で座ることができる(少なくとも10秒間頭を起こして真っすぐに座位を維持する;腕又は手を使わずに体のバランスをとる又は姿勢を支える)。自力で歩く能力を一度も有したことがない患者は2型に分類される。過去に助けなしで歩く能力を有した患者は3型に分類される。
7.歩行可能患者は、スクリーニング時に自力で支え又は補助具なしに10メートル歩く能力を有する。
8.コホート1について、スクリーニング時にRHSスコア63点以下。
9.コホート2及び3について、スクリーニング時にHFMSEスコア10点以上。
10.スクリーニング前の少なくとも6ヵ月間にわたって同じバックグラウンドSMA療法を受けている(例えば、ヌシネルセンなど、承認済みのSMN上方制御薬療法を続行中である、又はいかなるSMA療法も続行中でない)、及び本研究の全期間を通じて当該の療法を続行中のままであると見込まれる。
a.SMN上方制御薬療法ヌシネルセンを受けている場合、負荷レジメンが完了して維持用量投与を開始しており(即ち、少なくとも1回の維持用量を完了しており)、スクリーニング前に初回維持用量後少なくとも4週間が経過している。
11.過去6ヵ月間にわたって栄養状態が安定しており、本研究の全期間を通じて安定していると見込まれる。
12.本研究の全期間を通じて患者が運動機能アウトカム測定を行う上で妨げとなり得る身体的制約がない。
13.本研究の全期間を通じて、末梢静脈を用いて、又は本研究とは無関係な理由で(即ち、バックグラウンドの医療ケアのため、及び本研究においてアピテグロマブの投与を受ける目的でなく)患者に留置されている長期静脈アクセス器具を用いて試験薬注入を受け、血液試料を提供することができる。
14.研究施設への移動を含め、プロトコルを遵守することができ、全ての研究手順及び研究来院を完了することができる。
15.研究終了までに性的成熟に達していると予想される患者については、研究の規定による避妊要件を遵守する:
a.妊娠の可能性がある女性(定義については第5.1.7.4節を参照のこと)は、スクリーニング時に妊娠検査が陰性であり、本研究の期間にわたり、及び試験薬の最終回用量後18週間にわたり、高度に有効な避妊手段(常に正しく使用したときの失敗率が1年に1%以下)を利用することに同意する。有効な避妊方法は、排卵抑制法(経口、膣内、経皮)に関連する併用(エストロゲン及びプロゲストーゲン含有)ホルモン避妊法、排卵抑制法(経口、注射、インプラント)に関連するプロゲストーゲン単独ホルモン避妊法、子宮内避妊器具(IUD)、子宮内ホルモン放出システム(IUS)、両側卵管閉塞術、パートナーが精管切除済みである、又は禁欲に限定する。この指導の文脈では、禁欲は、研究治療に関連する全リスク期間中の異性間性交渉を断つと定義される場合に限り、高度に有効な方法と見なされる。禁欲を信頼できるかどうかは、研究の継続期間及び患者の好む通常の生活様式を踏まえて評価する必要がある。
b.妊娠の可能性がある女性パートナーのいる男性患者は禁欲中であるか、又は本研究の全期間を通じて、及び試験薬の最終回用量後18週間にわたってコンドームの使用を殺精子薬と共に又はそれ無しで利用することに同意する。
【0393】
2.2 患者除外基準
1.気管切開下陽圧換気の使用
2.投与前2週間の連日16時間を超える慢性的な昼間の非侵襲的換気補助の使用、又は研究の継続期間にわたって慢性的にかかる昼間の換気補助を定期的に受けることが見込まれる。
3.活動性全身感染症を含め、スクリーニングから14日以内の患者のウェルビーイングを妨げる何らかの急性の又は併存する病態であり、何らかの理由により急性治療又は入院観察が必要であること。
4.スクリーニング時の重度の脊柱側彎及び/又は拘縮。臨床的判断に基づけば、存在するいずれの脊柱側彎又は拘縮も過去6ヵ月間にわたって安定しており、且つ本研究の期間中安定していて、本研究の全期間を通じていずれの機能アウトカム測定についても患者が評価を受ける妨げとならないことが見込まれる。
5.妊娠中又は授乳中。
6.スクリーニング前6ヵ月以内における、又は本研究の期間中に見込まれる、いずれかの機能アウトカム測定について患者が評価を受ける能力を実質的に制限する可能性があると見なされる、脊椎又は股関節手術を含めた大きな整形外科的又はその他の介入手技
7.mAb又はFcドメインを担持する組換えタンパク質(可溶性受容体-Fc融合タンパク質など)、アピテグロマブ、又はアピテグロマブの賦形剤に対する過敏性反応の既往歴。
8.スクリーニング前60日以内の全身性コルチコステロイド薬の使用。吸入又は局所ステロイド薬は許容される。
9.スクリーニング前3ヵ月又は5半減期のいずれか長い方の期間内における治験薬による治療。
10.スクリーニング前60日以内における承認済みのSMN上方制御薬療法以外の筋への重大な効果を持つ可能性のある療法(アンドロゲン類、インスリン様成長因子、成長ホルモン、全身性β作動薬、ボツリヌス毒素、又は筋弛緩薬若しくは筋増強サプリメントなど)又は神経筋への重大な効果を持つ可能性のある療法(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬など)の使用。
11.スクリーニング前60日以内におけるバルプロ酸の使用。
12.治験責任医師の意見によれば、安全性又は服薬厳守を損ない得る、患者が本研究の完了に成功する上での妨げとなるであろう、又は結果の解釈を妨害するような、任意の他の状態を患者が呈する。
【0394】
2.3 患者離脱基準
患者は任意の時点で同意を撤回し得る。本研究への参加は、患者の同意なしに任意の時点で終了し得る。患者は以下の理由のいずれかにより本研究から離脱し得る:
・プロトコル違反
・重篤な又は忍容し難いAE(第1.3.4節を参照のこと)
・臨床検査パラメータの臨床的に重大な変化(第1.3.4節を参照のこと)
・治験依頼者又は治験責任医師の決定
・患者及び/又は親若しくは保護者の要請
【0395】
2.4 患者の再スクリーニング、補充、及び超過登録
スクリーニング判定に基づいて適格であると決定された、そのベースライン来院及び初回注入(0日目)の遅れの原因となる急性の又は併存する病態が見られる患者は、スクリーニング期間の終了後最長で更に14日間は再スクリーニングしなくても引き続き適格とし得る。患者は、事象の解消後、そうすることが安全と見なされる場合には、治療期間への参加を継続し得る。スクリーニング期間外となる14日を超える遅れを生じさせる急性の臨床的事象が見られる患者をスクリーニングすることにより、適格性を決定するため再スクリーニングする。
【0396】
アピテグロマブを4用量受ける前、及び2回の投与後HFMSE又はRHS判定が行われる前に安全関連以外の理由で研究から離脱する患者は、補充し得る。
【0397】
あるコホートがその所要数の患者を登録した時点でスクリーニング期間中の患者は、適格であると決定された後に登録を継続し得る。
【0398】
分析のロバスト性を確保するため、あるコホートの患者が、研究の続行中にそのバックグラウンドの承認済みSMA治療を大きく変更する(例えば、患者がヌシネルセンを中断し、又はそのSMAに対する標準治療の一環として新規の承認済み治療を開始する)結果として、当該コホートに追加の患者を登録し得る。
【0399】
2.5 任意選択の延長期間への患者登録
延長期間に登録することを選んだ患者は、364日目(来院15回目)に行われる何らかの判定を実施する前に、インフォームドコンセント様式を精査し、それに署名しなければならない。患者は、52週間の治療期間の完了後に延長期間への登録に適格であると決定される。
【0400】
3 研究治療
3.1 試験薬の説明
アピテグロマブ薬物製品は、透明で無色乃至やや黄色の溶液であり、本質的に目視可能な粒子を含まない。この薬物製品配合物は、動物由来の賦形剤を含有しない。
【0401】
アピテグロマブは、20mm Flurotec(登録商標)コートブロモブチルゴム栓、及びロイヤルブルー色のフリップオフキャップによる20mmクリンプシール付きの6R透明USP/EP I型ホウケイ酸ガラスバイアルに保存された無菌で保存剤不含の液体である。アピテグロマブは滅菌ろ過され、抜き取るのに十分な容積を提供するように充填されている。各バイアルは、単回使用の投与に限ることが意図される。アピテグロマブは2~8℃で安定している。
【0402】
3.2 試験薬の調製及び投与
試験薬の各静脈内投与用量の調製に関して、指示が提供される。試験薬の調製及び調剤は、施設の薬局が取り扱う。試験薬の安全な取り扱いに関して、指示が提供される。
【0403】
アピテグロマブは、コホートの割り付け(第1.2節)に従い、2つの用量レベル:20mg/kg及び2mg/kgのうちの一方が患者に投与される。用量は標準生理食塩水で希釈し、2時間(+10分のウィンドウ)かけて静脈内投与する。最初の2回の投与後に患者に急性反応がない場合、及びそうしても安全であろうと判断された場合、注入時間を2時間未満に変更してもよく、但し1時間より短くないものとする。
【0404】
用量は全て、末梢静脈から(又は患者がそのバックグラウンドの医療ケア用に末梢挿入型中心カテーテル若しくはポートなどの長期静脈アクセス装置を有する場合、そのような装置から)投与する。新規の長期静脈アクセス装置の留置は本研究の一環になく、参加要件ではなく、アピテグロマブの投与を受けることのみがその理由であるならば、実施されるべきではない。
【0405】
急性反応が起こった場合、以降の投与を一時中止し、その急性反応によって表されるリスクを評価する。かかる評価には、事象の性質、薬物との関連性、並びに事象の重篤度及び重症度の検討を取り入れる。
【0406】
急性インフュージョンリアクションが見られた患者には、標準的手順に従い介入を実施しなければならず、必要に応じて、低速での注入の再開、注入の終了、薬物治療の投与、又は他の医学的対症手段を挙げることができる。
【0407】
3.3 無作為化及び盲検化
コホート1及び2は20mg/kg用量のアピテグロマブに直接割り付け、一方、コホート3の患者は、2mg/kg又は20mg/kgのいずれかのアピテグロマブの投与を受けるようにウェブ自動応答システム(Interactive Web-based Randomization System:IWRS)を用いて二重盲検方式で無作為化(1:1)する。
【0408】
ここで指定するとおり、薬剤師を除いては、全員がコホート3のアピテグロマブ用量レベルの割り付けに関して盲検化される。施設薬剤師は、本研究の全期間を通じて盲検されないままである。個々の有効性データは、予め指定された中間解析が実施されるまで(第6.4節を参照のこと)盲検化される。中間解析の一環として含まれない有効性データは、治療期間のデータベースロックまで、又は必要と見なされるまで盲検化されたままである。選定された人員が、研究管理を確実にするための有効性データへのアクセスを有する。
【0409】
盲検解除手順については、第5.7.1.5節を参照のこと。6ヵ月時点(168日目)の中間解析及び/又は52週間(364日目)の主要解析に基づき、コホート3の割り付け及び盲検化指示は、同じままであっても、又は変更してもよい。
【0410】
3.4 試験薬の服薬厳守
試験薬は、資格のある担当者の監督下で投与する。研究施設は、限定はされないが、米国(US)連邦規則集(Code of Federal Regulations:CFR)、医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonisation(ICH)of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)、1996年医療保険の携行性と説明責任に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996)、並びに適用される地域及び連邦政府の規則を含め、あらゆる適用される法律、規則、及びガイドラインを遵守することが求められる。
【0411】
3.5 試験薬の包装及び表示
試験薬は、臨床試験研究に関する適用される地域及び規制当局の要求事項に従い供給し、包装し、及び表示する。
【0412】
3.6 試験薬の保管及びアカウンタビリティ
アピテグロマブの供給品は全て、用量調製に必要となるまで、確実に鍵の掛かった、権限のある人員のみが立ち入り可能な場所に、冷蔵で(2℃~8℃/36°F~46°F)、紙箱に入れて遮光下に保管する。
【0413】
臨床研究全体を通じて治験製品の厳密なアカウンタビリティ記録を保守する。施設薬剤師が、受け取った治験製品の在庫を管理し、日付、数量、及び用途を含め、薬物の処分記録を保守する。調剤及びアカウンタビリティ記録は全て、検閲に利用可能とする。試験薬アカウンタビリティは現場での監視査察中に確認される。研究の終了時、全ての試験薬の最終的なアカウンタビリティを行う。
【0414】
3.7 試験薬の処分及び返却
研究監視員による試験薬のアカウンタビリティを受けて、使用済みのバイアルは、十分に立証された破壊手順を含む各施設の標準作業手順(SOP)に従い施設で破壊し得る。未使用のバイアルは、最後処分のため(例えば、その指定された保管場所に)返却しなければならない。
【0415】
3.8 並行治療
研究中に患者に見られる任意のAEに対して医学的に適応される、又は患者に標準的な対症療法の一環として提供される並行治療又は介入手技は、自由裁量で許容され、本プロトコルに概要が示される制限のいずれにも優先する。
【0416】
患者は、自身が登録されているコホートに従い承認済みのSMA治療を受け得る(第1.2節)。患者は、試験薬の初回用量投与前の少なくとも6ヵ月間及び本研究の全期間を通じて同じバックグラウンドSMA療法を続行中のままである(例えば、ヌシネルセンなどのSMN上方制御薬療法を続行中であるか、又はいかなるSMA療法も続行中でない)と予想される。患者のそのSMAに対する標準ケア治療の変更を企図する治験責任医師は、それについて事前に協議することが推奨される。
【0417】
SMN上方制御薬治療、ヌシネルセンの投与を受ける患者は、アピテグロマブの投与を受けてから少なくとも24時間経った後、又は任意の予定されているアピテグロマブ試験薬投与来院の少なくとも14日前にその維持用量を受ける。予定されているアピテグロマブ投与前14日以内に行われることになる患者のヌシネルセン治療のタイミングに変更があれば、事前に協議される。
【0418】
スクリーニング前の3ヵ月(又は5半減期、いずれか長い方)及び本研究の全期間を通じて、治験中の療法は許容されない。
【0419】
以下の薬物又は製品の並行使用は、本研究における治療効果の判定を妨げる可能性がある。従って、スクリーニングから最終来院時まで、以下の使用は禁じられる。
・運動機能アウトカム測定が行われる任意の研究来院から14日以内の生ワクチン。
・全身性コルチコステロイド薬。吸入及び局所ステロイド薬は許容される。
・承認済みのSMN上方制御薬療法以外の筋への重大な効果を持つ可能性のある任意の療法(アンドロゲン類、インスリン様成長因子、成長ホルモン、全身性β作動薬、ボツリヌス毒素、筋弛緩薬又は筋増強サプリメントなど)又は神経筋への重大な効果を持つ可能性のある任意の療法(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬など)。
・バルプロ酸。
【0420】
4 有効性、薬物動態学、及び薬力学の判定
4.1 有効性エンドポイント
表6及び表7に指示される時点で主要、副次的、及び三次的有効性エンドポイントを判定する。各コホートの有効性エンドポイントについては、表9に概要を示す。機能アウトカム測定(例えば、HFMSE/RHS、6MWT、WHO運動マイルストーン、RULM、30秒間立ち上がり、耐久シャトルナインホールペグテスト[ESNHPT]、及び/又は耐久シャトルボックスブロックテスト[ESBBT])は、理学療法士が実施し、判定する。判定順序、判定期間、及び判定間の休息期間の要件については、別途、理学療法士訓練マニュアルに概要を示す。
【0421】
研究中に、機能アウトカム判定を安全に実施できなくなる可能性のあるAE(例えば、筋骨格傷害)を発症する患者に対しては、試験薬との関連性の有無にかかわらず、研究手順は行わない。AEが解消され次第、及びそうすることが安全である場合には、表6及び表7に指示されるとおりの次の予定されている判定時点で当該研究手順の実施を再開する。
【0422】
【表20】
【0423】
4.1.1 有効性パラメータ
4.1.1.1 改訂版ハマースミス評価尺度(Revised Hammersmith Scale:RHS)
RHSは、歩行可能患者サブ群(コホート1)に実施する。RHSの施行には、床上起き上がり時間及び10メートル歩行/走行テストが含まれる。RHSは、2型SMA患者、並びに3型SMAの歩行可能及び歩行不能患者の身体能力に関する36項目の臨床評価である。RHSは、0、1、2点で段階評価される33項目を含み、0点が最も低いレベルの能力/機能を表し、2点が最も高いレベルの能力を表す(Ramsey et al.(2017)PLoS One.12(2):e0172346)。残りの3項目は、0、1点で採点され、0点が能力がないことを表し、1点が実現する能力を表す。実現可能な最高点は、69点である。
【0424】
4.1.1.2 10メートル歩行/走行
10メートル歩行/走行テストは、3型SMAの歩行可能患者に使用されるRHSの強化機能である。これは、10メートルを歩く/走るのにかかる時間を測定するものである。
【0425】
4.1.1.3 床上起き上がり時間
床上起き上がり時間テストは、3型SMAの歩行可能患者に使用されるRHSの強化機能である。これは、床から立ち上がるのにかかる時間を測定するものである。
【0426】
4.1.1.4 6分間歩行テスト(6-minute Walk Test:6MWT)
6MWTは、歩行可能遅発型SMA患者の臨床研究に用いられた運動能力及び疲労の判定である(Young et al.(2016).Muscle Nerve.54(5):836-842)。コホート1の歩行可能患者が6MWTの全項目を行う。患者は、6分間にわたり25メートルのコースに沿って可能な限り速く歩くように指示される。毎分距離及び6分間で歩いた総距離が測定される。
【0427】
4.1.1.5 30秒間立ち上がり
30秒間立ち上がりテストは、下肢の機能的強度の判定として研究者及び臨床医によって用いられている(Jones et al.(1999)Res Q Exerc Sport.70:113-119)。このテストは、機能レベルの低い一般的な老齢集団に用いられる信頼性のある実行可能なツールである修正版30秒間立ち上がりの研究に基づき歩行可能SMA集団用に修正されたものであり(McAllister and Palombaro(2019).J Geriatr Phys Ther.0(0):1-6)、施設に入居している退役軍人の転倒リスクに関係した(Applebaum et al.(2017).PLoS One.12(5):e0176946;Le Berre et al.(2016)Percept Mot Skills.123:138-152)。このテストは、患者が30秒間で最高何回座位から立位に変えることができるかを測定する。
【0428】
4.1.1.6 ハマースミス機能運動評価尺度拡大版(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded:HFMSE)
HFMSEは、2型及び3型SMA患者の身体能力を判定するものであり(O’Hagen et al.(2007)Neuromuscul Disord.17(9-10):693-697;Glanzman et al.(2011)J Child Neurol.26(12):1499-1507)、歩行不能患者サブ群(コホート2及び3)について実施する。これは、以下を含めた、様々な活動を行う個人の能力を判定する33項目からなる:
1.台/椅子に座る
2.長座位
3.座位で片手を頭まで
4.座位で両手を頭まで
5.仰臥位から側臥位
6.腹臥位から右回りで仰臥位
7.腹臥位から左回りで仰臥位
8.仰臥位から右回りで腹臥位
9.仰臥位から左回りで腹臥位
10.座位から臥位
11.前腕で体を支える
12.腹臥位から頭を起こす
13.両腕を伸ばして体を支える
14.臥位から座位
15.四つ這い
16.四つ這い歩き
17.仰臥位から頭を起こす
18.支えありで立位
19.支えなしで立位
20.歩く
21.右股関節の屈曲
22.仰臥位で左股関節の屈曲
23.膝立ち位から右片膝立ち位
24.膝立ち位から左片膝立ち位
25.膝立ち位から左脚を踏み出して立位
26.膝立ち位から右脚を踏み出して立位
27.立位から座位
28.しゃがむ
29.前方に12インチ跳躍する
30.手すりを使用して階段を上る
31.手すりを使用して階段を下りる
32.手すりを使用せずに階段を上る
33.手すりを使用せずに階段を下りる
【0429】
各動きの質及び遂行できるかどうかを0、1、2点で段階評価し、ここでは0点ができないことを表し、1点が、変更又は改変を加えて実施したことを表し、2点が、変更又は改変を加えないことを表す。実現可能な最高点は、66点である。
【0430】
4.1.1.7 改訂版上肢モジュール(Revised Upper Limb Module:RULM)
RULMは、歩行不能SMA患者(低年齢小児並びに成人)の上肢機能についての20項目による判定である(Mazzone et al.(2017)Muscle Nerve.55(6):869-874)。19項目の採点により、膝から手を置く、ボタンを押す、及びトークンを拾い上げるなど、日常生活に関係する機能を検査する。項目は0、1、2点で採点され、0点ができないことを表し、1点が変更を加えればできることを表し、2点が支障なくできることを表す。実現可能な最高スコアは、37点である。歩行不能患者サブ群(コホート2及び3)がRULMを実施する。RULMは、ベースライン判定の時点で生後30ヵ月以上の患者が全項目を行う。
【0431】
4.1.1.8 WHO運動発達マイルストーン
世界保健機関(World Health Organization:WHO)多施設成長参照研究(Multicentre Growth Reference Study)パフォーマンス判定基準を利用して、コホート2及びコホート3に登録した2型及び歩行不能3型SMA患者の運動発達マイルストーンを判定する。
【0432】
4.1.1.9 耐久シャトルナインホールペグテスト(Endurance Shuttle Nine Hole Peg Test:ESNHPT)
ESNHPTは、重度のSMA罹患患者向けの耐久テストである。患者は、オリジナルの9穴ペグテストを各自の最高速度の75%で繰り返し行うように指示される。往復の動作は、聴覚キューによって指示される設定された速度に基づき、患者が2回連続でビープ音に応じ損なうと、テストは終了となる。主要アウトカムパラメータは、「限界に達するまでの時間(Tlim)」、予め設定した強度で作業を維持できる時間である。最大テスト継続時間は20分である(Stam et al.(2018)BMJ Open.8(7):e019932)。スクリーニング時にRULMの項目Aのスコアが3点以下の歩行不能患者は、スクリーニング時及び全ての後続の判定でESNHPTを行う。ESNHPTは、研究中に年齢が8歳以上であるか、又は8歳になる患者が全項目を行う。
【0433】
4.1.1.10 耐久シャトルボックスブロックテスト(Endurance Shuttle Box and Block Test:ESBBT)
ESBBTは、中等度のSMA罹患患者向けの耐久テストである。患者は、オリジナルのボックスブロックテストを各自の最高速度の75%で繰り返し行うように指示される。往復の動作は、聴覚キューによって指示される設定された速度に基づき、患者が2回連続でビープ音に応じ損なうと、テストは終了となる。主要アウトカムパラメータは、「限界に達するまでの時間(Tlim)」、予め設定した強度で作業を維持できる時間である。最大テスト継続時間は20分である(Stam et al.(2018)BMJ Open.8(7):e019932)。スクリーニング時にRULMの項目Aのスコアが3点より高い歩行不能患者は、スクリーニング時及び全ての後続の判定でESBBTを行う。ESBBTは、研究中に年齢が8歳以上であるか、又は8歳になる患者が全項目を行う。
【0434】
4.1.1.11 小児障害インベントリー評価コンピュータ適応テスト(Pediatric Evaluation of Disability Inventory Computer Adaptive Test:PEDICAT)
介護者(親及び/又は法的保護者であっても、又はそうでなくてもよい)がPEDICAT判定の全項目を行う。介護者が存在しない場合、PEDICAT判定は施行されてはならない。PEDICAT判定は、患者に施行されてはならない。PEDICATは、患者が日常の機能を遂行する能力を判定する介護者が全項目を行う質問票である(Haley et al.(2005)Arch Phys Med Rehabil.86(5):932-939)。PEDICATは、患者が何らかの機能判定テストを実施するのを介護者が見ていない場所で介護者が入力する。研究期間全体を通じて同じ介護者が判定を入力しなければならない。回答は4段階評価(できない~容易)で採点される。このテストは、出生~21歳までの機能を判定するのに好適である。PEDICATの特性はSMA集団で研究されている。2016年に結果が発表されたRasch分析によれば、PEDICATの運動及び日常活動ドメインの能力の分布が2型及び3型集団で最良に表されることが明らかになった(Pasternak et al.(2016)Muscle Nerve.54(6):1097-1107)。
【0435】
4.1.1.12 患者報告アウトカム測定情報システム(Patient-reported Outcomes Measurement Information System:PROMIS)
PROMISは、患者又は代理の親が誰の助けも借りず全項目を行うことを意図した人間中心尺度である(Ader(2007)Med Care.5(5):S1-S2)。疲労プロファイルドメインは、軽度の主観的疲労感から、抗し難い消耗性の持続する脱力感に至るまでの範囲の症状を測定する。この自己報告式尺度は8~17歳の小児に好適であり、親代理人の報告による尺度は5~17歳の小児に好適である。介護者がこの様式の全項目を行う場合、研究期間全体を通じて同じ介護者が様式の全項目を行う。年齢18~21歳の患者は、成人用の様式のPROMISの記入を完成させる。PROMISは、ベースライン判定の時点で5歳以上の年齢であるか、又は5歳になる患者が全項目を行う。
【0436】
4.2 薬物動態学(PK)血液試料採取
表6及び表7の判定スケジュールに指示されるとおり、試験薬注入前にアピテグロマブ濃度の測定用の血液試料を入手する。0日目、140日目、336日目、及び700日目に、投与後(注入終了から)2時間(+30分のウィンドウ)の試料採取を末梢静脈穿刺によって採取する。
【0437】
各採取試料は、ほぼ等容積の試料セットに分割して、必要であれば再試験できるようにする。PK血液試料からのアリコートは、適宜追加の免疫原性又はPD試験に用いることができ、ベースライン試料は、PK、PD、及び/又は抗薬物抗体(ADA)アッセイバリデーションの裏付けに使用することができる。
【0438】
4.3 薬力学(PD)血液試料採取
潜在型ミオスタチンレベルの測定用の血液試料を採取する。これらの血液試料は、表6及び表7の判定スケジュールに指示されるとおり、注入前に入手する。0日目の投与後(注入終了から)2時間(+30分のウィンドウ)の試料採取は、末梢静脈穿刺によって採取する。
【0439】
各採取試料は、ほぼ等容積の試料セットに分割して、必要であれば再試験できるようにする。PD血液試料からのアリコートは、適宜追加のPK又は免疫原性試験に用いることができ、ベースライン及び投与後試料は、PK、PD、及び/又はADAアッセイバリデーションの裏付けに使用することができる。
【0440】
4.4 免疫原性血液試料採取
表6及び表7の判定スケジュールに指示されるとおり、注入前に抗アピテグロマブ抗体の測定用の血液試料を入手する。
【0441】
各採取試料は、ほぼ等容積の試料セットに分割して、必要であれば再試験できるようにする。免疫原性試料からのアリコートは、適宜追加のPK又はPD試験に用いることができ、ベースライン試料は、PK、PD、及び/又はADAアッセイバリデーションの裏付けに使用することができる。
【0442】
5 安全性の判定
5.1 安全性パラメータ
5.1.1 人口統計学的情報/病歴
患者の人口統計学的情報及び病歴は、原資料及び電子的症例報告書(eCRF)に記録する。人口統計学的特性には、年齢、性別、人種、及び民族を含める。病歴には、患者のSMA歴並びに現在及び過去の関連性のある医学的状態(手術、アレルギー、及び並行薬物治療)を盛り込む。
【0443】
5.1.2 バイタルサイン
表6及び表7に提供される判定スケジュールに従い、バイタルサインを実施する。ルーチンのバイタルサイン判定には、注入前、注入開始から注入中15分毎(±5分)、注入終了時、及び注入後1及び2時間(±15分)に収集される心拍数、血圧、及び呼吸数が含まれる。体温は注入前に収集する。
【0444】
5.1.3 体重及び身長
表6及び表7に提供される判定スケジュールに従い、体重及び身長を収集する。体重は、体重換算用量を計算するため各投与から48時間以内に収集し、身長は、運動機能アウトカム測定を行う来院時に収集する。自力で立つことができる者については、いずれも立っているときの身長を収集する。患者が歩行不能であるか、又は立つのに支えを必要とする場合、尺骨長さを用いて身長の代理尺度を推定し得る。
【0445】
5.1.4 理学的検査
表6及び表7に提供される判定スケジュールに従い、完全な理学的検査を実施する。各検査所見は原資料及びeCRFに記録する。理学的検査には、以下の判定が含まれる:全体的な外観、皮膚、リンパ節、頭部-眼-耳-鼻-咽頭、頸部、腹部、四肢、及び呼吸器、心血管、筋骨格、及び神経身体系。
【0446】
5.1.5 心電図
表6及び表7に指示される時点で、12誘導心電図(ECG)を収集する。ECGは、読取り前に毎回、患者を少なくとも5分間安静にさせておいて実施する。ECGはトリプリケートで、各々約1~2分空けて実施する。注入当日、ECGは注入開始前2時間以内に収集する。ECGは、判定のため中央読取り専門業者に送る。
【0447】
5.1.6 並行薬物治療
並行薬物治療については全て、患者がICFに署名した時点から最終回用量投与の12週間後まで収集する。
【0448】
5.1.7 臨床検査判定
表6及び表7に指示される時点で、臨床検査(適格性スクリーニング、血清化学、血液学、検尿、及び凝固、PK及びPD試料採取、及び抗薬物抗体検査)を確立された方法を用いて実施する。同じ判定時点で複数の試料採取タイプを実施する場合、試料は、以下の順番に(その時点でどの試料タイプを収集すべきかに応じて)抜き取る:臨床検査安全性試料(血液学、凝固、血清化学、検尿)、PK、PD、抗薬物抗体。必要であれば再検査できるように、PK、PD、及び抗薬物抗体試料からのアリコートを予備として確保してもよい。52週間の治療期間を完了する各患者の総採血量は、約158mLである。延長期間に登録しない、12週間安全性フォローアップ期間を完了する患者は、約25mLの追加の採血を有する。
【0449】
52週間延長期間を完了する各患者の総採血量は、約77mLである。次に12週間安全性フォローアップ期間を完了する患者は、約13mLの追加の採血を有する。
【0450】
抗薬物抗体(ADA)検査。標準的手順を用いて患者試料中のADAを判定する。簡潔に言えば、初回スクリーニングステップでADA反応に関して陽性又は陰性結果が出る。架橋アッセイを用いてADAを検出してもよい(即ち、標識されたバージョンのアピテグロマブを使用して抗アピテグロマブ抗体の2本のアーム間に「架橋」を形成する電気化学発光アッセイ)。架橋アッセイは、他の検出方法(例えば、従来のELISA)と比較したとき、例えば感度の向上をもたらし得る。スクリーニング陰性の試料はADAを欠いていると見なされ、スクリーニング陽性の試料は、一部の例では、確認アッセイに進める。
【0451】
確認アッセイでは、アピテグロマブにおけるスパイク有り及び無しで試料を検査する。スパイクされたアピテグロマブは、試料中に存在する任意のADAに結合することができる。スパイクしていない試料と比較したとき、アピテグロマブに対する反応の特異性を確認することができる。アピテグロマブに陽性反応を示すと確認された試料は、段階希釈液を用いて再アッセイして、抗体反応の相対強度(即ち、力価)を判定し得る。この値は、典型的には、この確認アッセイでもなお陽性反応を示す患者試料の最も高い希釈度として表される。
【0452】
他の場合には、確認アッセイは省略し、力価測定データを使用して陽性ADA反応を確認する。力価が低い試料(即ち、所定の閾値を下回る、例えば、1:32の希釈度の閾値を下回る力価)は陰性と見なし、力価が高い試料(即ち、所定の閾値を上回る、例えば、1:32の希釈度の閾値を上回る力価)は陽性と見なす。試料中のADA反応の判定には、1:32の希釈度の力価閾値を用い得る。力価測定情報は同時に収集することができる。
【0453】
5.1.7.1 血液学及び凝固
以下の血液学及び凝固パラメータを判定する:
・ヘモグロビン
・赤血球数
・ヘマトクリット
・白血球百分率
・絶対血小板数
・平均赤血球血色素量
・平均赤血球血色素濃度
・平均赤血球容積
・活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
・プロトロンビン時間/国際標準化比(PT/INR)
【0454】
5.1.7.2 血液化学
以下の血液化学パラメータを判定する:
・アルブミン
・アラニンアミノトランスフェラーゼ
・アルカリホスファターゼ
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
・ビリルビン(総及び直接)
・血中尿素窒素
・カルシウム
・二酸化炭素
・塩化物
・クレアチニン
・クレアチンホスホキナーゼ
・γグルタミルトランスフェラーゼ
・グルコース
・妊娠(女性のみ)
・乳酸デヒドロゲナーゼ
・マグネシウム
・リン酸塩
・カリウム
・ナトリウム
・総コレステロール
・全タンパク質
・トリグリセリド類
・尿酸
【0455】
5.1.7.3 検尿
以下の検尿パラメータを判定する:
・ビリルビン
・血液顕微鏡法(検尿に異常がある場合)
・グルコース
・ケトン類
・亜硝酸塩
・pH
・タンパク質
・比重
【0456】
5.1.7.4 妊娠検査
女性は、初経後から閉経後になるまでは、永久に不妊でない限り妊娠の可能性がある。永久不妊化方法としては、子宮摘出術、両側卵管摘除術及び両側卵巣摘除術が挙げられる。閉経後状態は、別の医学的原因がないにもかかわらず12ヵ月間にわたって月経がないこととして定義される。
【0457】
妊娠の可能性がある女性について、表6及び表7に指示される時点で妊娠検査を行う。尿又は血清検査が許容されるが、尿検査陽性は血清検査で確認する。
【0458】
研究中に妊娠した患者は、それ以降の試験薬投与を受けてはならず、第5.7.1.3節に概要を示す手順に従い追跡しなければならない。
【0459】
5.2 有害及び重篤有害事象
5.2.1 有害事象の定義
5.2.1.1 有害事象
有害事象(AE)は、医薬製品を投与される患者又は臨床試験患者に発生する任意の医学的に都合の悪い事であり、それは必ずしも投与される治療と因果関係があるとは限らない。従って、AEは、医薬品に関係があるか否かにかかわらず、その医薬品の使用に時間的に関連する任意の好ましくない、又は意図したものでない徴候(検査所見の異常を含む)、症状、又は疾患であり得る。
・AEは、新規事象であってもよく、又は研究中の任意の時点でベースラインから重大化しつつある又は重症度、重篤度、若しくは頻度の点で増悪した既存の状態であってもよい。
・AEは、理学的検査値、臨床検査値、又は他の診断的調査報告値のベースラインからの臨床的に重大な変化であり得る。
【0460】
治療により出現した有害事象(TEAE)とは、試験薬の初回用量後に始まるか、又は試験薬の投与前から始まり、試験薬の投与後に重症度/グレード又は臨床試験用薬剤との関係が増悪したAEである。
【0461】
スクリーニング時に既に存在する医学的状態は、いずれも病歴として記録しなければならず、AEとして報告されてはならず、但し、存在する医学的状態又は徴候又は症状の重症度、頻度、又は重篤度が研究中任意の時点で変化した場合を除く。その場合、それはAEとして報告しなければならない。
【0462】
5.2.1.2 重篤有害事象
SAEは、以下のアウトカムのいずれかを生じさせる任意の用量で起こる任意の有害な経験である:
・死亡
・生命を脅かす経験;注記:「生命を脅かす」とは、その事象が起こった時点で患者に直ちに死亡のリスクがある状況を指す;これは、その重症度が更に高かったならば死亡を引き起こしたであろう可能性のある事象は指さない。
・入院又は既に入院している場合の入院の延長。この判定基準によれば、以下は除外する:
・期間が24時間未満のAEに関する緊急治療室外来受診/入院は、このリスト中にある他のSAE基準のいずれかに該当しない限り、SAEの基準に該当しない。
・本研究への参加中にベースラインから増悪していない既存の病態についてのインフォームドコンセント前に計画されていた医学的/外科的手技のための予定された入院又は待機的入院。しかしながら待機手術中に発生する予期せぬ合併症及び/又は入院の延長はAEとして記録し、重篤度を判定しなければならない。社会的又は状況的理由(即ち、滞在場所がない、来院するのに病院が遠過ぎる、レスパイトケア)による病院への受け入れは、入院とは見なされない。
・永続的な又は重大な障害又は無能力又は普通の生活機能を遂行する能力の実質的な崩壊
・先天異常又は出生時欠損
・重要な医学的事象と見なされる。重要な医学的事象とは、直ちに生命を脅かしたり、又は死亡若しくは入院を引き起こしたりすることはないが、患者を危険にさらし得る、又は上記の定義に列挙されるアウトカムのうちの1つを防ぐために介入が必要となり得るものである。かかる医学的事象の例としては、緊急治療室又は在宅での集中治療を要するアレルギー性気管支痙攣、入院に至らない血液悪液質若しくは痙攣、又は薬物依存症の発症が挙げられる。
【0463】
5.2.1.3 投薬過誤
全ての投薬過誤(限定はされないが、投与経路及び間違った用量を含む)は、プロトコル逸脱として報告する。逸脱報告には、患者が症候性か否かに関する情報を含め、簡単な説明を提供しなければならない。投薬の詳細はeCRFに盛り込まなければならない。
【0464】
過量投与は、ある製品について推奨される/予定された投薬量からの重大な変動として定義される。本研究の用量投与は管理下にある臨床セッティングで行われ、過量投与は見込まれていない。しかしながら、事故が起こった場合には、本研究について、アピテグロマブの過量投与は20mg/kgの少なくとも2倍の用量と見なされる。
【0465】
過量投与はAEとは見なされず、AE又はSAEが起こらない限り、eCRFにAEとして記録してはならない。全ての過量投与は(それがAEを引き起こすか否かにかかわらず)、過量投与様式に記録し、施設が過量投与を認識したときから24時間以内に報告する。過量投与がSAEを引き起こした場合、SAE様式及び過量投与様式の両方を記入して報告する。
【0466】
5.2.1.4 妊娠
妊娠はAEでない;しかしながら、女性患者又は男性研究患者の女性パートナーが研究の実施中に妊娠した場合、第5.7.1.3節に提供される手順に従いMedpaceが通知を受ける。試験薬の続行中に妊娠した患者は、それ以降の用量投与を直ちに中止され、第5.7.1.3節に提供される手順に従いフォローアップを受ける。
【0467】
5.2.1.5 治療により出現した有害事象
AEは、その発生時点が試験薬の初回用量の投与後、最終回のフォローアップ来院までである場合、又は発生時点が試験薬投与より前であり、そのAEによって安全性フォローアップ期間中に重症度が増加する場合、治療により出現したAEである。
【0468】
5.3 有害事象のモニタリング
インフォームドコンセント様式(ICF)への署名時から最終回のフォローアップ来院まで、SAEを含め、AEの発生に関して各患者をモニタする。
・患者はAEのエビデンスに関して問診及び/又は診察を受ける。AEの発生可能性に関する患者の問診は、「前回の来院以降、具合はいかがですか?」など、一般化する。患者から特定のAEの有無を聞き出してはならない。
・AEを有する患者は、解消又は安定化するまで(持続的な機能障害の場合)、又は事象が慢性的な性質のものに変わるか、若しくは患者が死亡するまでモニタする。
・AE、AEの結果として取られた処置、及びフォローアップ結果は、eCRF並びに患者の原資料に記録する。フォローアップ臨床検査結果は、患者の原資料と共に綴じて保管しなければならない。
【0469】
患者が用量投与の中断を余儀なくされる任意のSAE又はAEについては、1つ又は複数の事象の最終的な解消又は安定化が得られるまで、臨床的必要に応じて関連する臨床判定及び臨床検査を繰り返す。患者は、最終回用量後12週間までフォローアップが継続される。
【0470】
安全性臨床検査分析は、全て中央検査室で実施する。臨床検査値を報告し、可能性のあるAEとしての臨床的意義及び異常値に関して精査する。
【0471】
5.3.1 試験薬との関係(因果関係判定)
任意のAE(SAEを含む)と治験製品の使用との関係については、関係がある、又は関係がないとして、臨床上の判断に基づき、及びあらゆる利用可能な情報を用いて判定し、それには以下の要因の考察が含まれ得る:
・試験薬投与からの時系列
・基礎疾患、合併症、併発症
・他の薬物の併用
・AEの症状発現が治験製品の既知の作用又は毒性と一致しているかどうか
・身体的及び/又は精神的ストレスに曝されている
・試験薬の薬理学及び薬物動態学
・治験製品の用量減量又は使用中止(デチャレンジ)によって解消又は改善するAE。複数の製品を同じ時点で中断する場合、判断を用いなければならない。
【0472】
試験薬とAEとの間の因果関係は、以下の分類のうちの1つを用いて判定する:
・関係なし:関係なしとの判定と一致する要因には、以下が含まれ得る:
・時間的関係が欠けている(例えば、試験薬の投与後妥当な時間枠内に事象が発生しなかった);又は
・他の原因となる要因(例えば、既存の病態、他の並行薬物治療)の方が、その事象がより適切に説明される
・関係あり:関係ありとの判定と一致する要因には、以下が含まれ得る:
・正の時間的関係がある(例えば、試験薬の投与後妥当な時間枠内に事象が発生した)
・別の原因よりも治験製品によってAEがより適切に説明される(例えば、治験製品についてのこれまでの知識又は治験製品のクラスと一致するパターンをAEが示す)。
【0473】
5.4 予測可能性の判定
規制上の報告要件の一環として、AEについての予測可能性の判定(医薬品の薬理学的特性から見込まれる可能性のあるものに基づくのでない、過去に観察された観点から予想される/予想されない)を実施する。1つ又は複数の反応の性質、重篤度、重症度又はアウトカムが参照安全性情報と一致しない場合、有害反応は予想外と見なされる。
【0474】
5.5 有害事象共通用語規準
臨床的及び臨床検査AEは、国立癌研究所(National Cancer Institute:NCI)有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events:CTCAE)、バージョン5.0を使用してグレード分類する。
【0475】
用語「重度」は、多くの場合に、特定の事象の強度(重症度)を言い表すために用いられる(軽度、中等度、又は重度の心筋梗塞など);しかしながら、事象それ自体の医学的意義は比較的軽微であり得る(重度の悪心など)。これは「重篤」とは同じでなく、重篤は、通常は患者の生活又は機能に脅威を与える事象に関連する患者/事象アウトカム又は作用基準に基づく。
【0476】
5.6 有害事象の記録
ICFへの署名時から最終回のフォローアップ来院まで、SAEを含め、AEの発生に関して各患者をモニタする。患者及び/又はその法的保護者が問診を受け、AEのエビデンスに関して患者を診察してもよい。AEを有する患者は、関連する臨床評価及び臨床検査でモニタする。
【0477】
各AEについて、要求される情報を評価し、eCRF及び患者の原資料に記録する。
【0478】
5.6.1 eCRFへのAEの記録に関する指示
5.6.1.1 徴候及び症状に対する診断の記録
医学的診断/症候群に相当する徴候及び症状を患者が訴える場合、eCRFには、各徴候及び症状でなく、むしろ最終的な診断/症候群を記録しなければならない(例えば、咳、鼻水、発熱=上気道感染症)。しかしながら、医学的診断を行うことができない場合には、必要に応じて、各徴候又は症状を個別のSAE又はAEとして記録しなければならない。
【0479】
5.6.1.2 臨床検査値又はバイタルサインの異常
臨床検査値又はバイタルサインの異常が以下の少なくとも1つに該当しない限り、プロトコルが定義する臨床検査値及びバイタルサインをAEとして報告してはならない:
・1つ又は複数の試験薬の調整又は治療の中断が必要である;
・医学的又は外科的介入が必要である;
・既存の診断又は症候群の一部と見なされない付随する徴候/症状を伴う(又は既存の診断又は症候群の一部と見なされる場合、疾患増悪を伴う);又は
・臨床的に重大と見なされる
【0480】
5.7 重篤有害事象の報告
5.7.1 重篤有害事象報告
5.7.1.1 初期報告
インフォームドコンセントの時点から研究来院最終回までに発生するSAEは全て、発生の認識から24時間以内にMedpace Clinical Safetyに報告する(これは、前述の重篤判定基準のいずれかに該当する任意のAEを指す)。本研究の後に発生する試験薬に関係があると見なされるSAEは全て報告する。
【0481】
SAEの報告は、本研究用の電子データキャプチャ(EDC)システムにてSAE様式に電子的に記入する。この様式を記入し終えると、Medpace Safety職員が電子的に通知を受け、その様式が回収される。任意の補足書類(例えば、退院要約、診断結果)を施設が編集し、Medpace Clinical Safetyに送る。
【0482】
5.7.1.2 フォローアップ報告
SAEは、解消、安定化(持続的機能障害の場合)まで、又は事象が慢性的な性質のものになるか、若しくは患者が死亡するまでフォローする。SAEの解消は、以下として定義される:
・残効を伴い又は伴わずに解消した
・既存の病態についてのベースラインに戻った
・臨床検査値がベースラインに戻ったか、又は安定化した
・事象にそれ以上の改善又は増悪が予想されない
・致死的アウトカム-剖検が実施される場合、利用可能になり次第、剖検報告書を速やかに提供しなければならない。
【0483】
フォローアップ情報を受け取ってから、又はそれを認識してから24時間以内に、本研究用のEDCシステムにてSAE様式を電子的に更新し、Medpace Clinical Safetyに任意の補足書類(例えば、患者退院要約又は剖検報告書)を提出する。患者補足書類は全て、医薬品の臨床試験の実施の基準(Good Clinical Practice:GCP)に従い詳細な個人情報について編集する。EDCシステムにアクセスできない場合、SAEの初期報告について上記に概要を示した手順を参照されたい。
【0484】
5.7.1.3 妊娠の報告
本研究の過程で女性患者又は男性患者の女性パートナーが妊娠した場合、事象を認識してから24時間以内にMedpace Clinical Safetyに妊娠を報告する。次にMedpace Clinical Safetyが子宮内曝露(Exposure in Utero:EIU)様式の記入用紙を転送する。24時間以内にEIU様式を記入し、Medpace Clinical Safetyに返送する。妊娠情報(該当する場合、新生児の状態を含む)を収集することへの同意を得る。
【0485】
可能なときはいつでも、患者又はパートナーを妊娠の完了までフォローしなければならない。妊娠のアウトカムが分かったら、24時間以内にフォローアップEIU様式を記入し、Medpace Clinical Safetyに送らなければならない。妊娠の完了時、妊娠のアウトカムを文書に残す。妊娠のアウトカムが、SAEとして直ちに分類される判定基準を満たす場合(即ち、分娩後合併症、自然流産、死産、新生児死亡、又は先天異常)、SAEの報告手順に従う。
【0486】
5.7.1.4 施設内治験審査委員会/医療機関内倫理委員会への報告
各施設の報告規則に従い、任意の緊急報告を各施設のIRB又はIECに報告する。
【0487】
5.7.1.5 本研究中の患者治療の盲検解除
重篤な予想外の薬物関連AEが発生した場合、Medpace clinical safetyは、規制当局機関への報告を目的としてコホート3の患者の用量レベルを提供し得る。
【0488】
本研究では、患者は全員がアピテグロマブの投与を受けるため、コホート3患者の用量レベル(即ち、高用量と低用量)の盲検解除は推奨されない。薬物関連SAEが発生した場合、患者のケアを提供するために医学的に必要と見なされれば、IWRSシステムから患者の用量レベルを入手してもよい。
【0489】
5.7.2 規制保健当局への緊急報告
関係する保健当局及び全ての治験責任医師への関連性のある安全性情報についての緊急報告は、各地の法規制に従い管理する。
【0490】
6 統計
6.1 一般的方法論
解析は全て、GCP規格に基づきプロスペクティブなSAPを用いて実施する。分析は、統計解析システム(Statistical Analysis System:SAS)(バージョン9.4以降、Cary、North Carolina)を用いて行う。
【0491】
本研究は、3つの別個のコホートと見なされる;従って、別個のコホート検定に第1種の過誤は割り当てられない。中間解析に公式の統計的検定は適用せず、α消費関数は適用しない。両側95%信頼区間を報告する。
【0492】
全3コホートが予め指定された登録数(下記参照)及び治療期間に達したとき(第6.4節を参照のこと)、中間解析が行われる;各コホートが52週間の治療期間を完了次第、最終解析を行う。最終解析については、重大なプロトコル違反と軽微なプロトコル違反とを区別するため、生物統計データ評価会議(Biostatistics Data Review Meeting)を開催する。プロトコル遵守集団及び治療企図(ITT)集団の両方を分析し、ここでITT集団が主要解析集団である。
【0493】
6.2 分析戦略
予め指定された安全性及び有効性エンドポイントは全て、コホート別及びコホート3については用量群別に分析する。何らかのベースライン後データがある患者は全て、中間及び主要解析に組み入れる。加えて、高用量の安全性及び有効性データは、コホート、用量レベル、及び受けているバックグラウンドSMA療法を考慮に入れて、異なるコホート/用量の組み合わせについて分析する。ベースラインからの変化の分析については(患者をその自身の奏効分析対照として利用するため)、初回用量投与前の最後の観察をベースラインとして使用する。コホート3低用量対高用量治療アウトカムはまた、記述的アウトカムとしての奏効までの時間についても評価する。
【0494】
6.2.1 安全性分析
安全性データは、バイタルサイン、臨床検査アウトカム、並行薬物治療、ECG、及びAEについて評価する。臨床的に重大なアウトカムは書き留める。バイタルサイン及び臨床検査アウトカムは、コホート内では対応のあるt検定を用いて、及びコホート3についての2つの用量群間では対応のないt検定を用いて評価する;対応のある差及び対応のない差について、対応する両側95%信頼区間(CI)も同じく計算する。異なるコホート/用量の組み合わせについての同様の分析も調べる。AEは、国際医薬用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities:MedDRA)でコード化する;治療により出現した有害事象(TEAE)に重点を置く;TEAEの種類、発生率、重症度、関係、発生及び解消時点は、記述的に提示する;単一群について正確二項検定を用いて発生率を判定し、及びフィッシャーの正確検定を用いてコホート3内で低用量治療群と高用量治療群とを比較する。最初のTEAE事象、最初の関連するTEAE、及び最初の重篤なTEAEが起こるまでの時間をカプラン・マイヤー生命表を用いて提示する。
【0495】
6.2.2 有効性分析
表6及び表7に指定する時点において、連続エンドポイント(例えば、HFMSEスコア、RHSスコア、RULMスコア等)による複数の測定値に関して有効性データを評価する。主要エンドポイント及び他の有効性連続エンドポイントは、コホート内では対応のあるt検定を用いて、及びコホート3についての2つの用量群間では対応のないt検定を用いて分析する;対応のある差及び対応のない差について、対応する両側95%CIも同じく計算する。異なるコホート/用量の組み合わせについての同様の分析も調べる。有効性データは、共変量としての時間、用量、及び用量時間相互作用に伴う集団及び対象別変化に対処する縦断的モデルによって更に調べ、ここでは、年齢、ヌシネルセン治療期間、及びスクリーニングHFMSEスコアが共変量として加わる可能性がある。プロトコルに指定されるとおりの分析に変更があれば、SAPに詳しく説明する。
【0496】
ベースラインからの変化の特異的分布(ベースラインからの単位変化のウォーターフォール表示)及び特定のマイルストーンを達成する患者の比率を判定するため、HFMSE、RHS、及びWHO運動発達エンドポイントを更に分類する。比率及びウィルソン法に基づく95%信頼区間を報告する。
【0497】
有効性及び将来の研究計画の裏付けとして、ベースライン後のマイルストーンにおけるHFMSE、RHS、RULM、及び他の単位基準の測定値に関するベースラインからの改善の分布を表示するウォーターフォール図を作成する。
【0498】
カプラン・マイヤー生命表及びログランク検定を用いてコホート3の低用量と高用量との有効性までの時間を比較して、アウトカム改善までの時間を判定する。
【0499】
6.2.3 薬物動態学的及び薬力学的分析
フォローアップ来院最終回までの投与前及び投与後に採取した血液試料を使用して、アピテグロマブ濃度及びパラメータ並びに循環潜在型ミオスタチン濃度を決定する。アピテグロマブ濃度は一覧を作成し、記述統計学を用いて表形式で要約し、コホート別に時点に対してプロットする。潜在型ミオスタチン濃度は患者毎に一覧を作成し、コホート別に要約する。
【0500】
6.2.4 抗アピテグロマブ抗体分析
抗薬物抗体データは一覧を作成し、記述統計学を用いて表形式で要約する。陽性が確認された試料は、中和活性の存在に関して更に検査する。
【0501】
6.3 標本サイズの理論的根拠
各コホートの標本サイズは、実施上の考慮点に基づいた。各コホートにつき15~20例の患者という標本サイズが、第1種の過誤を両側5%として対応のあるt検定を用いて予め指定された対立仮説に対して各治療群内でのベースラインからの平均変化が関わる帰無仮説を棄却する80%の検出力を提供する。表10は、80%の検出力及び両側5%の第1種の過誤で検出することのできる用量群内での効果量並びに両側p=0.05によれば差がないという帰無仮説を棄却する効果量を提供する。例として、HFMSEのベースラインからの変化について2.5単位の標準偏差(SD)を仮定すれば、平均1.7単位のHFMSEの改善(n=20)及び平均2単位のHFMSEの改善(n=15)を80%の検出力で検出することができる一方、平均1.2単位のHFMSEの改善(n=20)及び平均1.3単位のHFMSEの改善が、両側p=0.05に達する(ベースラインからの変化についての両側95%CIとして0を除外する)。
【0502】
【表21】
【0503】
加えて、コホート3の総標本サイズ(n=20)は、1:1の無作為化(高用量対低用量)について両側5%の第1種の過誤で臨床的に有意味な改善を得るための用量間の予め指定された差に対してベースラインからの平均変化がないという帰無仮説を棄却する80%の検出力を提供する。
【0504】
表11は、80%の検出力及び両側5%の第1種の過誤で検出できるであろう効果量並びにコホート3の低用量対高用量の比較についてベースラインからの変化がないという帰無仮説を棄却するために必要な効果量を提供する。HFMSEについてベースラインからの変化のSDが2.5単位であるならば、そのとき低用量と高用量との間に平均2.4単位の差があれば、両側p=0.05に達することになる(用量群間の平均差としての両側95%CI下限値として0を除外する)。
【0505】
【表22】
【0506】
7 中間有効性及び安全性結果
7.1 概要
中間有効性及び安全性データは、合わせると、SMAを抱えながら生活している患者の85%超に相当するサブ集団である2型又は3型SMA患者における概念実証を示す。アピテグロマブによる治療は、3コホート全ての患者でハマースミス評価尺度スコア(主要有効性エンドポイント)の改善につながった(表12)。患者の大部分は、少なくとも1点の増加を実現したが、これは個人レベルで有意味である。各コホートのかなり大きな割合の患者は少なくとも3点の増加も実現したが、これは臨床的に極めて有意味であり、他の場合にはいずれの所与の患者においても起こることはまれである。6ヵ月間の治療後に、安全性シグナルは同定されなかった。
【0507】
6ヵ月中間解析時点では、3コホート全てでハマースミス評価尺度スコアのベースラインからの平均増加が観察された(全患者の67%がハマースミススコアの1点以上の改善を実現した)。各コホートのかなり大きな割合の患者がハマースミススコアの3点以上の増加を実現した(全患者の35%がハマースミススコアの3点以上の増加を実現した)。本研究の二重盲検無作為化部分(コホート3)では、用量に伴い有効性が増加する用量反応もまた観察された。全ての評価時点で、低用量アームと比較したとき高用量アームについてHFMSEスコアの数値的改善が一層大きいことが観察された。6ヵ月中間解析時点で、コホート3の高用量アームはハマースミス機能運動評価尺度拡大版(HFMSE)のベースラインからの平均5.6点の改善を達成しており、比較して低用量アームが達成した改善は平均2.4点であった。観察されたこの用量反応は、PK及びPDデータによって裏付けられた。
【0508】
【表23】
【0509】
意外にも、コホート2など、ヌシネルセン治療中に患者に典型的に運動機能の安定化が見られる患者集団では、アピテグロマブによる治療時にベースラインからのHFMSEの平均的改善が観察された。更に、3つのコホートの各々で、この高いハードルに達する患者の割合がかなり大きいことが観察された。いずれか所与の患者における3点の改善の達成は高いハードルのアウトカムであり、観察されることはまれである。本研究全体で、ほとんどの患者に、ベースラインからの少なくとも1点の改善によって測定されるとおりの改善が見られた。運動課題の遂行能力の改善を獲得することは、SMAを抱えながら生活している患者にとって重要であり、HFMSE又はRHSによって測定したときの運動機能の改善は、各患者の生活に有意味な影響を与える可能性がある。
【0510】
7.2 ベースライン人口統計学的情報及び特性
ベースライン人口統計学的情報及び特性を表13に示す。
【0511】
【表24】
【0512】
7.3 コホート分析
7.3.1 コホート3
本研究のこの無作為化二重盲検部分には、5歳未満の年齢で承認済みのSMN上方制御薬(ヌシネルセン)による治療を開始していた2型SMA患者が登録した。これらの患者は、約2年間にわたりヌシネルセンを続行中であった。ヌシネルセンを受けていても、これらの患者のベースライン平均HFMSEスコアは20点台前半であった。
【0513】
低用量(2mg/kgアピテグロマブQ4W)又は高用量(20mg/kgアピテグロマブQ4W)の投与を受けるように20例の患者を1:1の比で無作為化した;両方の治療群とも、承認済みのSMN上方制御薬療法(ヌシネルセン)と併せる。2例の患者(高用量アームの1例及び低用量アームの1例)について、各々、施設への立ち入り制限のために6ヵ月中間解析時点で3用量のアピテグロマブを逸していた;これらの患者の6ヵ月時点は中間解析に含めなかった。このコホートの主要目的は、安全性及びHFMSEのベースラインからの平均変化を判定することである。
【0514】
ベースライン時、高用量アームの患者は平均年齢が3.8歳(範囲2~6歳)及び平均HFMSEスコアが、可能な最高スコア66点中23.5点(範囲14~42点)であった一方、低用量アームの患者は平均年齢が4.1歳(範囲2~6歳)及び平均HFMSEスコアが26.1点(範囲12~44点)であった。
【0515】
6ヵ月中間解析時点で:
・HFMSEスコアのベースラインからの平均変化:
・20mg/kg用量(n=9):+5.6点(+2.5,+8.7の95%CI)
・2mg/kg用量(n=9):+2.4点(-0.9,+5.8の95%CI)
・HFMSEスコアの1点以上の増加を達成する患者の割合:
・20mg/kg用量:100%(9/9例)
・2mg/kg用量:67%(6/9例)
・HFMSEスコアの3点以上の増加を達成する患者の割合:
・20mg/kg用量:67%(6/9例)
・2mg/kg用量:44%(4/9例)
・HFMSEスコアの5点以上の増加を達成する患者の割合:
・20mg/kg用量:56%(5/9例)
・2mg/kg用量:33%(3/9例)
【0516】
高用量アームでは、低用量での67%と比較したとき、100%の患者が少なくとも1点の改善を達成した。3点の改善という高いハードルを見ると、低用量アームの44%と比較して、高用量アームの67%の患者がこの閾値を実現した。高用量アームの半数を超える患者は、ベースラインからの少なくとも5点の増加を実現した。高用量では、より大きい改善が実現した:高用量(20mg/kg)で治療した患者は、判定した全ての時点(8週目、16週目、及び6ヵ月中間解析時点)で、低用量(2mg/kg)と比較したとき、HFMSEスコアのベースラインからの数値的に一層大きい改善を実現した(表14;図3A図3B)。高用量での数値的に一層大きい改善は、ベースラインからの平均変化という点でも、HFMSEスコアの3点以上の増加を達成する患者の割合という点でも、両方で観察された。
【0517】
【表25】
【0518】
改善のプラトーにはまだ達していないように見える:HFMSEスコアの改善は、6ヵ月の治療期間で徐々に増加した。12ヵ月データが、効果の永続可能性及び更なる運動機能の獲得可能性を評価する更なる洞察を提供し得る。
【0519】
PK及びPD結果は、観察された有効性の用量反応を裏付けている:
・高用量による治療は、低用量よりも高い薬物曝露レベルにつながった。アピテグロマブは、モノクローナル抗体でよく見られるものと一致するPKプロファイルを呈し、薬物曝露量は用量比例的であった(図4)。
・高用量による治療では、より高い標的会合レベルが実現し、低用量による治療では、完全な目標飽和度は達成されなかった(図5)。
【0520】
7.3.2 コホート2
この非盲検シングルアームコホートには、承認済みのSMN上方制御薬による治療を既に受けている最中である2型又は歩行不能3型SMAを有する平均年齢が11.7歳(範囲8~19歳)の15人の患者が登録した。これは、SMN上方制御薬療法単独が、歴史的に見て、運動機能の改善というよりむしろ、安定化を主にもたらすように見える患者集団である。この患者集団は、本研究への登録前の約2年間にわたりヌシネルセンで治療されており、ベースラインHFMSEスコアが20点台半ばであった。
【0521】
患者は、承認済みのSMN上方制御薬療法(ヌシネルセン)と併せて20mg/kgのアピテグロマブQ4Wで治療される。ベースライン時、患者は平均HFMSEスコアが可能な最高スコア66点中22.7点(範囲13~39点)であった。1例の患者は、施設への立ち入り制限のために6ヵ月中間解析時点で3用量のアピテグロマブを逸していた;この患者の6ヵ月時点は中間解析に含めなかった。このコホートの主要目的は、安全性及びHFMSEのベースラインからの平均変化を判定することである。
【0522】
バックグラウンドSMN療法が主に運動機能の安定化をもたらすことが概して予想されるこの患者集団では、アピテグロマブによるHFMSEスコアの一貫した改善が示された(表15;図6A図6B)。このコホートの71%の患者がHFMSEの少なくとも1点の増加を実現した一方、21%の患者が少なくとも3点の増加を実現した。6ヵ月中間解析時点では:
・HFMSEスコアのベースラインからの平均変化(n=14):+1.4点(+0.1,+2.7の95%CI)
・HFMSEスコアの1点以上の増加を達成する患者の割合:71%(10/14例)
・HFMSEスコアの3点以上の増加を達成する患者の割合:21%(3/14例)
・HFMSEスコアの5点以上の増加を達成する患者の割合:14%(2/14例)
・HFMSEスコアの改善は6ヵ月間の治療期間にわたって徐々に増加したとともに、改善のプラトーにはまだ達していないように見える。12ヵ月データが、効果の永続可能性及び更なる運動機能の獲得可能性を評価する更なる洞察を提供し得る。
【0523】
【表26】
【0524】
7.3.3 コホート1
この非盲検シングルアームコホートには、歩行可能3型SMAを有する23人の患者が登録した。患者は20mg/kgのアピテグロマブQ4Wで、単剤療法としてか、又は承認済みのSMN上方制御薬療法(ヌシネルセン)と併せるか、いずれかで治療される。これは、SMN上方制御薬療法単独が、歴史的に見て、運動機能の改善というよりむしろ、安定化を主にもたらすように見える患者集団である。このコホートの主要目的は、安全性及び改訂版ハマースミス評価尺度(Revised Hammersmith Scale:RHS)のベースラインからの平均変化を判定することである。
【0525】
ベースライン時、両方の患者サブ群とも、患者は平均年齢が12.6歳(範囲7~21歳)及びRHSスコアが可能な最高スコア69点中49.6点(範囲26~63点)であった。アピテグロマブ単剤療法群の患者は平均年齢が12.1歳(範囲7~19歳)及び平均RHSスコアが47.6点(範囲26~63点)であった。アピテグロマブで治療される、且つSMN上方制御薬(ヌシネルセン)の投与を受けている群の患者は、平均年齢が13.1歳(範囲7~21歳)及び平均RHSスコアが51.3点(範囲43~62点)であった。1例の患者は、アピテグロマブとは無関係と判定された理由で本試験を中断したが、治療企図に基づく中間解析には組み入れた。
【0526】
6ヵ月中間解析時点で:
・RHSスコアのベースラインからの平均変化:
・アピテグロマブプール(n=23):+0.5点(-1.2,+2.2の95%CI)
・アピテグロマブ単剤療法(n=11):+0.7点(-2.5,+4.0の95%CI)
・アピテグロマブ+ヌシネルセン(n=12):+0.3点(-1.4,+2.0の95%CI)
・RHSスコアの1点以上の増加を達成する患者の割合:
・アピテグロマブプール:52%(12/23例)
・アピテグロマブ単剤療法:64%(7/11例)
・アピテグロマブ+ヌシネルセン:42%(5/12例)
・RHSスコアの3点以上の増加を達成する患者の割合:
・アピテグロマブプール:26%(6/23例)
・アピテグロマブ単剤療法:36%(4/11例)
・アピテグロマブ+ヌシネルセン:17%(2/12例)
・RHSスコアの5点以上の増加を達成する患者の割合:
・アピテグロマブプール:9%(2/23例)
・アピテグロマブ単剤療法:9%(1/11例)
・アピテグロマブ+ヌシネルセン:8%(1/12例)
【0527】
アピテグロマブ単剤療法及びバックグラウンドヌシネルセンへの追加としての両方でRHSの改善が観察された(表16;図7A図7B)。中間解析時点でのRHSの少なくとも1点の増加によって測定したとき、52%の患者に改善が見られ、約26%の患者が少なくとも3点の増加を実現した。自然歴は、歩行可能集団がかなり不均一であることを示しており、多くの患者は時間とともに運動機能が悪化する。観察された単剤療法アームと追加アームとの同等の効果は、臨床効果がアピテグロマブによるものであることを示唆している。
【0528】
【表27】
【0529】
7.4 追加の副次的エンドポイント
中間解析結果では、歩行不能患者についての改訂版上肢モジュール(Revised Upper Limb Module:RULM)及び世界保健機関(World Health Organization:WHO)運動発達マイルストーンによって測定したときの運動機能の初期改善傾向が示された。歩行可能3型患者の時限運動テストでは、有意味な改善は観察されなかった。
【0530】
7.5 全体的な安全性及び忍容性
6ヵ月中間解析の間、安全性シグナルは同定されなかった(表17)。有害事象の発生率及び重症度は、基礎をなす患者集団及びバックグラウンド療法と一致した。
【0531】
【表28】
【0532】
5つの最も多く報告されたTEAEは、頭痛、上気道感染症、発熱、鼻咽頭炎、及び咳であった。
【0533】
上気道感染症の既往歴を有する1例の患者(コホート1)に、入院に至るグレード2ウイルス性上気道感染症の重篤なTEAEが見られた。この事象は続発症なく解消し、アピテグロマブとは無関係と判定された。
【0534】
1例の患者(コホート1)は、グレード2の筋疲労のため本研究を中断したが、これはアピテグロマブの投与開始前に始まったものであった。この事象は、アピテグロマブとは無関係と判定された。
【0535】
2例の患者(コホート1)は歩行不能であり、これは重大な障害と見なされた(両例ともグレード3)。事象は依然として継続中である。この事象は、アピテグロマブとは無関係と判定された。
【0536】
1例の患者(コホート1)は腰椎穿刺後症候群(グレード2)で入院した。この事象は続発症なしに解消し、アピテグロマブとは無関係と判定された。
【0537】
1例の患者(コホート1)に腰椎穿刺後症候群(重篤でないグレード3)が見られた。この事象は続発症なしに解消し、アピテグロマブとは無関係と判定された。
【0538】
2mg/kgアピテグロマブの投与を受けた1例の患者(コホート3)は、アデノイド及び扁桃肥大並びに予定されたアデノイド口蓋扁桃摘出術(グレード2)により入院した。この事象は続発症なしに解消し、アピテグロマブとは無関係と判定された。
【0539】
グレード2の脚筋疲労(登録前に発症したもの)を有する1例の患者(コホート1)は、試験に入って約2ヵ月後に同意を撤回した。
【0540】
治療により出現した有害事象(TEAE)であり、6ヵ月中間解析時に発生率が5%を超えたものを表18に掲載する。グレード3(重度)以上の有害事象の報告はなかった。
【0541】
【表29】
【0542】
【表30】
【0543】
8 12ヵ月有効性及び安全性結果
8.1 概要
4週間毎に(Q4W)投与する静脈内アピテグロマブの有効性及び安全性を12ヵ月の治療期間にわたって評価した。6ヵ月中間解析と一致して、12ヵ月トップライン有効性及び安全性データから、2型又は3型SMA患者における概念実証が更に示された。
【0544】
単剤療法患者を除いては、全ての患者がバックグラウンドヌシネルセンの投与を受けている最中であった(表13)。かかる患者は負荷治療相を過ぎている必要があり、及びこれらの患者は本研究への登録前に平均約5回のヌシネルセン維持用量の投与(これは約2年間の治療に相当する)を受け終わっていた。コホート2及び3のベースラインHFMSEスコアは、ヌシネルセンによる2年間の治療後であっても、20点台前半~半ばであった。これらの患者は、12ヵ月の治療期間の終了時には、平均約3年間にわたるヌシネルセンによる治療歴があった。
【0545】
コホート1(単剤療法の又はヌシネルセンと併せた20mg/kgアピテグロマブ、7~21歳の年齢の歩行可能3型患者)では、改訂版ハマースミス評価尺度(RHS)のベースラインからの平均変化が0.3点の悪化であることが観察された(表23)。大部分の患者(57%(13/23例)の患者)は、0点より大きいRHSスコアのベースラインからの変化に反映されるとおり、その運動機能を維持するか、又はそれが改善した。この有効性シグナルは、他の場合には概して悪化が予想される患者集団においてアピテグロマブが臨床効果を持つ可能性を示唆するものであり得る(Coratti et al.(2020)American Neurology Association,88:1109-1117)。
【0546】
コホート2(ヌシネルセンと併せた20mg/kgアピテグロマブ、8~19歳の年齢の2型及び歩行不能3型患者)では、12ヵ月の治療期間の終了時にハマースミス機能運動評価尺度拡大版(HFMSE)のベースラインからの平均変化が0.6点の改善であることが観察された(表22)。64%(9/14例)の患者が、ベースラインからの1点を超える増加を達成し、29%(4/14例)の患者が、ベースラインからの3点を超える増加を達成した。これらの結果は、6ヵ月中間解析で観察された運動機能の改善に永続性がある可能性を実証している。これは、12ヵ月という時間枠では一般的には運動機能改善が期待されない患者集団であるため、これらのデータはまた、アピテグロマブに更に治療能力がある可能性も実証している(Mercuri et.al.(2018)N Engl J Med.378:625-635;Mercuri et al.(2016)Neuromuscul Disord.26(2):126-131)。
【0547】
コホート3(ヌシネルセンと併せた2又は20mg/kgアピテグロマブ、5歳未満の年齢でヌシネルセンを開始した2~6歳の2型患者)では、それぞれ20mg/kg用量及び2mg/kg用量アームでHFMSEのベースラインからの平均変化が7.1点及び5.3点の改善であることが観察された(表21)。全コホートでは、59%(10/17例)の患者がベースラインからの5点を超える増加を達成し、35%(6/17例)の患者が10点を超える増加を達成した。これらの結果は、6ヵ月中間解析と比べて運動機能が更に改善していることを実証している。
【0548】
WHO運動発達マイルストーンは、HFMSEよりも実質的に難易度の高い主要な機能的段階の実現を見るものであり、バックグラウンドヌシネルセン療法を後年になってから(5歳以上の年齢で)開始した3例の患者を含め、35例中7例の歩行不能患者に獲得があった。ヌシネルセンの慢性維持相の間、12ヵ月間のアピテグロマブ治療では、コホート2(3/15例)及びコホート3(2mg/kgアームで2/10例及び20mg/kgアームで2/10例)において20%の患者が新規のWHO運動発達マイルストーンを1つ以上獲得することにつながった。これは2~6歳の年齢の患者及び8~19歳の年齢の患者で観察された。5例の患者は、自力で歩く能力を獲得した1例の患者及び自力で立つ能力を獲得した1例の患者を含め、1つの新規WHO運動発達マイルストーンを実現した。コホート2の1例の患者は、2つの新規WHO運動発達マイルストーン(補助ありで立つ及び手及び膝で這う)を獲得し、コホート3(20mg/kgアーム)の1例の患者は、3つの新規WHO運動発達マイルストーン(補助ありで立つ、手及び膝で這う、及び補助ありで歩く)を獲得した。ベースライン時のWHO運動発達マイルストーン数の平均は、コホート2で1.4、及びコホート3高用量アームで1.6、及びコホート3低用量アームで1.8であった。
【0549】
臨床的有効性(HFMSE改善)及び標的会合(潜在型ミオスタチン濃度)に関して、引き続き用量反応が観察された。両方の用量(2及び20mg/kg)とも高い標的会合レベルが生じたが、低用量と比べると、20mg/kg用量の方が比較的高いレベルを生じた。
【0550】
PKに関して、12ヵ月時に評価した全用量でCmax及びAUCinfについて曝露量の用量比例的増加が観察された。Cmaxについて蓄積はほとんど乃至全く観察されなかった(2倍未満の増加)。血清濃度-時間曲線下面積(AUC)は、線形台形近似法を利用して計算した。AUCinfについて、全コホートで初回用量と6回目の用量との間、並びに初回用量と13回目の用量との間に蓄積が観察された。しかしながら、AUCinfでは6回目用量と13回目用量との間に蓄積はほとんど乃至全くなく、これは、6回目用量までに定常状態に達したためと予想された。研究下の2つの用量(2又は20mg/kg)のいずれでも、標的介在性の薬物消失(TMDD)は観察されなかった。しかしながら、濃度の変動は、2mg/kg群の方が大きかった。終末排出速度及び半減期は、平均濃度対時間プロファイルの終末相の対数線形回帰によって計算した(調整後のr理想値>0.75)。平均半減期はコホート1について8.4~31.7日、コホート2について6.92~33.5日、コホート3(2mg/kg)について5.67~41日、及びコホート3(20mg/kg)について12.3~37.5日の範囲であった。このデータにはスパースサンプリングがあった。年齢とクリアランスとの間には有意な相関があり、年齢が低い患者ほど、年齢が高い患者と比べてクリアランスが有意に低かった。また、体重とクリアランスとの間にも相関があり、体重が重い患者ほどクリアランスが高かった。クリアランスは、年齢が高くなるにつれ増加が認められた。全PKパラメータは、来院1、7、及び13回目のデータのみから計算した。他の全ての用量については、トラフ値の比較を利用した。
【0551】
PDに関して、ベースライン潜在型ミオスタチン濃度は、全てのSMAコホートで健常成人よりも低かった。体重とベースライン潜在型ミオスタチン濃度との間には有意な相関があり、体重が重い患者ほどベースライン潜在型ミオスタチン濃度が高かった。コホート1は、全ての測定時点で平均ベースライン潜在型ミオスタチン濃度が最も高かった。コホート2及びコホート3(20mg/kg)は、本研究の全期間を通じて同程度の潜在型ミオスタチン濃度であった。コホート3(2mg/kg)は、全体的に潜在型ミオスタチン濃度が最も低く、ベースラインからの変化倍数が最も小さかった。潜在型ミオスタチンのベースラインからの最も大きい変化倍数はコホート3(20mg/kg)で観察され、続いてコホート2、及びコホート1であった。
【0552】
有害事象の発生率及び重症度は、基礎をなす患者集団及び/又はバックグラウンド療法(ヌシネルセン)と一致し、治療により出現した有害事象で5つの最も多い報告は、頭痛、発熱、上気道感染症、咳、及び鼻咽頭炎であった。58例中3例の登録患者に抗薬物抗体が低力価で存在した。このADAによる薬物曝露量への明らかな影響はなく、いずれの過敏性反応とも関連性はなかった。12ヵ月トップライン解析の一環として、アピテグロマブに関する安全性シグナルは同定されなかった。
【0553】
分析は全て、統計解析計画書(Statistical Analysis Plan:SAP)に予め指定された。主要有効性治療企図解析(ベースライン時N=58、12ヵ月時n=54)では、4例の患者について、それらの患者が各々施設への立ち入り制限のために3回連続で投与を逸した後、除外した(全例が同じ研究施設)。プロトコル遵守解析(N=48)は主要有効性治療企図解析と同様であったが、20%を超える投与の逸失又は禁止されている並行薬物治療の使用など、重大と見なされるプロトコル逸脱のあった更なる患者を除外した。感度分析(N=58)を行い、統計的判定において主要解析から除外した4例の更なる患者も組み入れることによって主要有効性治療企図解析のロバスト性を判定した。感度分析には、本研究の全ての患者を組み入れた(3回投与を逸した患者を含む)。
【0554】
全体的に見て、12ヵ月トップライン結果からは、アピテグロマブが遅発型SMA患者の運動機能を改善する治療能力を提供し得ることが示唆される。アピテグロマブの安全性プロファイルは、12ヵ月トップラインの読み取り時点では、小児SMA集団において慢性投与できる可能性を支持している。
【0555】
【表31】
【0556】
【表32】
【0557】
8.2 コホート分析
8.2.1 コホート3
本研究のこの無作為化二重盲検並行群間部分には、5歳未満の年齢で承認済みのSMN上方制御薬(ヌシネルセン)による治療を開始していた年齢2歳以上の2型SMA患者が登録した。低用量(2mg/kgアピテグロマブQ4W)又は高用量(20mg/kgアピテグロマブQ4W)の投与を受けるように20例の患者を1:1の比で無作為化した。両方の治療群とも、承認済みのSMN上方制御薬(ヌシネルセン)と併せた。3例の患者(高用量アームの2例及び低用量アームの1例)は、各々、施設への立ち入り制限のために3回連続でアピテグロマブの投与を逸し、予め指定された主要治療企図解析から除外した。コホート3の主要目的は、12ヵ月間の治療後の安全性及びHFMSEのベースラインからの平均変化を判定することであった。患者は平均してヌシネルセン治療をベースライン時に約2年間及び12ヵ月の治療期間の終了時に約3年間受けていた。
【0558】
CHERISH研究及びSHINE延長研究の臨床データから、低年齢で治療を開始した患者を含め、ヌシネルセンで治療される歩行不能遅発型SMA患者の臨床経過に関して背景の洞察がもたらされる。CHERISH研究におけるほとんどのヌシネルセン治療患者は、療法開始時点で5歳未満の年齢であった。CHERISH研究では、ヌシネルセンの投与を受けた患者には、最初の15ヵ月間の治療で平均HFMSEのほぼ4点の改善が見られた。この最初の15ヵ月間のヌシネルセン治療を過ぎて、患者がSHINE研究に繰り越し登録したとき、それらの患者は、続く長期ヌシネルセン治療相では主に、運動機能の安定化を示すか、又は中程度の漸進的な平均的改善のみを示した(図8、これはWilliams et al.Minimal clinically important differences of the Expanded Hammersmith Functional Motor Scale in later-onset spinal muscular atrophy:results from the phase 3 CHERISH trial.米国マネージドケアファーマシー学会(American Academy of Managed Care Pharmacy)第31回年次総会;2019年3月25~28日;San Diego,CA,USAでの発表から再掲する。対照的に、現在の研究のコホート3の患者(研究開始前にヌシネルセンの投与を受けていた)は、12ヵ月の期間にわたって補助的アピテグロマブ療法で治療したとき、CHERISH及びSHINE研究のデータに基づくと予想されるHFMSEスコアの安定化というよりむしろ、HFMSEスコアの更なる平均増加を呈した。
【0559】
コホート3有効性データは、SMN指向療法を5歳未満の年齢で開始した患者において、12ヵ月時における運動機能のかなりの大きさの更なる改善を実証している。HFMSEスコアのベースラインからの平均変化は、20mg/kg及び2mg/kgアームについて、それぞれ7.1点及び5.3点の改善であった(表21;図9A図9D)。大多数の年齢2歳超の2型歩行不能患者(63%)には、臨床的に有意味な改善と見なされることが多いHFMSEの3点を超える改善が見られた。注目すべきことに、年齢2歳超の2型歩行不能患者では、以前報告された慢性ヌシネルセン治療に反応したプラトーの間に7.1点の増加が観察された(Dagbay KB et al.J Biol Chem.2020;295(16):5404-5418)。コホート3全体で大多数(59%)の患者がベースラインに対してHFMSEの少なくとも5点の増加を実現し、35%の患者がHFMSEの10点より大きい増加を実現した。1例の患者には20点の増加が見られ、別の患者には18点の増加が見られた。注目すべきは、6ヵ月中間解析では、HFMSEスコアのベースラインからの改善が10点より大きかったのは、1例の患者のみであった。高用量及び低用量の両方のアピテグロマブアームについてのこれらの観察された運動機能の改善は、ヌシネルセン単独で予想されるよりも大きかった。これらの結果は、SMAにおいてアピテグロマブに治療能力があることのエビデンスを提供し、20mg/kg及び2mg/kgの両方の用量アームで6ヵ月中間解析と12ヵ月トップライン解析との間にHFMSEスコアの更なる改善が起こったことを実証している。プロトコル遵守解析及び感度分析では、主要治療企図解析と同様の結果が示された。更に、2mg/kgアーム並びに20mg/kgアームの両方の患者に用量反応が観察され、アピテグロマブの投与から約2ヵ月後という早さで利益の増加が観察された(図25;2型歩行不能2歳超コホート)。
【0560】
改善の大きさ及び改善までの潜時の両方の差が、対象が平均2年間にわたって続行中であった基礎をなすSMN増強治療を超える利益を患者にもたらす上でのアピテグロマブの役割を裏付けるエビデンスを提供する。
【0561】
歩行不能患者の有効性データもまた、改訂版上肢運動(revised Upper Limb Motor:RULM)機能スコアによって測定したとき、12ヵ月時に運動機能の改善を実証した。プールした20mg/kg及び2mg/kgアームについて、RULMスコアのベースラインからの平均変化は+1.0点であり、95%信頼区間は-1.7~3.7点であった。更に、2mg/kgアームの33%(3/9例)の患者及び20mg/kgアームの29%(2/7例)の患者が、RULM機能のベースラインと比べた2点以上の改善を実現し、ここでRULMの2点の増加は、多くの場合に臨床的に有意味であると見なされる。
【0562】
【表33】
【0563】
8.2.2 コホート2
この非盲検シングルアームコホートには、承認済みのSMN上方制御薬(ヌシネルセン)による治療を5歳以降の年齢で開始していた年齢5~21歳の2型又は歩行不能3型SMAの15人の患者が登録した。患者は、20mg/kgのアピテグロマブQ4Wにより、承認済みのSMN上方制御薬(ヌシネルセン)と併せて治療された。1例の患者は、施設への立ち入り制限のために3回連続でアピテグロマブの投与を逸し、予め指定された主要治療企図解析から除外した。コホート2の主要目的は、12ヵ月の治療期間後の安全性及びHFMSEのベースラインからの平均変化を判定することであった。
【0564】
これは、SMN上方制御薬療法単独が、歴史的に見て、運動機能の改善というよりむしろ、安定化を主にもたらすように見える患者集団である。歩行不能遅発型SMAにおけるヌシネルセンCHERISH研究の臨床データによれば、この患者集団に関する背景の洞察が得られる。CHERISH研究では、ヌシネルセンを5歳以上の年齢で開始した一部の患者において、15ヵ月間の治療後に0.5点を超える平均HFMSEの悪化があり、HFMSEスコアの3点以上の増加を達成した患者は15%未満であった(Mercuri et.al.(2018)N Engl J Med.378:625-635、例えば図2A)。この試験の大多数の患者についてHFMSE改善は見られず、3点以上の増加が実現することはまれであった。別個の研究では、自然歴データは、5歳以上の年齢の患者について、12ヵ月間の経過中にHFMSEスコアの平均的悪化があることを示した。更に、HFMSEスコアの3点以上の増加を達成した患者は5%未満であった(Mercuri et al.(2016)Neuromuscul Disord.26(2):126-131)。
【0565】
対照的に、本研究のコホート2では、12ヵ月時の平均HFMSEの改善が観察され、大多数の患者が1点以上の増加を実現した。有効性データからは、ベースラインからの運動機能の改善が実証された。HFMSEスコアのベースラインからの平均変化は0.6点であった(表22;図10A図10C)。6ヵ月中間解析時の10例の患者と比較したとき、12ヵ月時点で9例の患者がHFMSEスコアの改善を実証したことに伴い、6ヵ月中間解析からの効果が永続した可能性が観察された。大多数(64%)の患者がHFMSEの少なくとも1点の増加を実現した。かなり大きい割合(43%)の患者が12ヵ月間の治療後にベースラインからのHFMSEの少なくとも2点の増加を実現し、及び(29%)の患者がHFMSEの少なくとも3点の増加を実現したが、これはこの患者集団ではまれなアウトカムである。更に、14%の患者がHFMSEスコアの少なくとも4点の改善を実現し、14%の患者が少なくとも5点の改善を実現し、7%の患者が少なくとも6点の改善を実現した。29%の患者にはHFMSEの3点を超える改善が見られた;HFMSEスコアの3点以上の改善は、多くの場合に臨床的に有意味であると考えられる(図10C;2/3型歩行不能;年齢5~21歳コホート)。
【0566】
歩行不能患者の有効性データもまた、改訂版上肢運動(revised Upper Limb Motor:RULM)機能スコアによって測定したとき、12ヵ月時における運動機能の改善を実証した。RULMスコアのベースラインからの平均変化は+1.2点であり、95%信頼区間は-0.5~2.9点であった。更に、36%(5/14例)の患者、ベースラインと比べてRULM機能の2点以上、ここでRULMの2点の増加は、臨床的に有意味であると見なされる。
【0567】
加えて、SMA上方制御薬/修正薬療法を5歳以上の年齢で開始した患者の間では、12歳以下の年齢の患者においてアピテグロマブ治療後のHFMSEの増加が一層顕著であり得ることが企図される。12ヵ月有効性結果によれば、年齢が5~12歳の患者では(コホート2)、75%(6/8例)の患者がHFMSEのベースラインからの1点を超える増加を達成し、50%(4/8例)がHFMSEのベースラインからの3点を超える増加を達成したことが示された。歩行不能患者では、全体での+0.6点(-1.4,2.7点)のHFMSEスコアの平均的改善と比較したとき、年齢5~12歳の患者においてHFMSEスコアの平均的改善が+1.6点(-1.3,4.6点)であることが観察された。歩行不能患者における12ヵ月HFMSE変化及び先行するヌシネルセン療法の継続期間の分析によれば、相関が最小限であることが示され(図22A図22B)、観察されたHFMSEの増加には、ヌシネルセン治療よりもアピテグロマブが一層大きく寄与し得ることが示唆される。まとめると、これらの結果は、受けた維持用量数とは無関係に、他の場合には平均して改善はないと予想される患者集団の運動機能を改善するアピテグロマブの治療能力を示唆している。感度分析では、主要治療企図解析及びプロトコル遵守解析と同様の結果が示された。主要有効性エンドポイントのHFMSEスコアの改善は、本研究で利用したバックグラウンド療法と相加的であったが、これは相乗的となり得る。
【0568】
コホート2及びコホート3データの事後分析によれば、12歳未満の患者及び/又は安定した疾患悪化を呈する患者は、アピテグロマブ治療後にベースラインからのHFMSE変化がより大きく改善したことが示された(図23A図23D)。図23Dは、アピテグロマブ20mg/kg又は2mg/kgで治療した歩行不能患者のプールコホートのベースラインからのHFMSE変化を示す;データは、COVID-19関連施設への立ち入りが制限されたため3用量のアピテグロマブを各々逸した4例の患者を除外しており、主要(治療企図)解析には含めなかった。プールした歩行不能患者の全年齢範囲で観察されたHFMSEの改善は、より低い年齢でのアピテグロマブ治療の開始に関連するより高い臨床的利益を示した。SMN上方制御薬/修正薬療法の開始年齢に基づく患者の更なる層別化が、特にアピテグロマブ治療が奏効する患者集団を同定する助けになり得ることが企図される。例えば、一部の実施形態において、年齢が12歳未満の、SMN上方制御薬/修正薬療法(例えば、ヌシネルセン又はリスジプラム)を5歳未満の年齢で開始した患者は、アピテグロマブ治療が特に奏効し得る。
【0569】
歩行不能2型及び2/3型患者のプールデータによれば、脊柱側彎又は関節拘縮の症候のない歩行不能患者でHFMSEスコアの増加が観察されたように、HFMSEスコアのより大きい改善と患者の脊柱側彎及び/又は関節拘縮の存在との間に逆相関が実証された(図24A)。COVID-19に起因する施設の制限のために3回連続で投与を逸した患者は除外した;SD脊柱側彎(7.7点)最小値-7点,最大値20点、SD(5.4点)最小値-7点,最大値13点;SD拘縮(7.1点)最小値-3点,最大値20点、SD(2.3点)最小値-7点,最大値13点。
【0570】
コホート2の1例の患者(上述のとおりの、施設への立ち入り制限のために3回連続でアピテグロマブの投与を逸した1例とは異なる患者)が、本研究の前及びその最中にアセチルコリンエステラーゼ阻害薬による並行治療を受けていたと同定され、これは研究プロトコル上許容されないものであった。この患者には12ヵ月時点でHFMSEスコアの7点の悪化が見られた。予め指定された手法に従いこの患者を除外したプロトコル遵守解析では、コホート2のHFMSEスコアのベースラインからの平均変化は1.2点の改善であった。
【0571】
【表34】
【0572】
8.2.3 コホート1
この非盲検シングルアームコホートには、年齢5~21歳の歩行可能3型SMAを有する23人の患者が登録した。患者は、単剤療法としてか、又は承認済みのSMN上方制御薬(ヌシネルセン)と併せるか、いずれかの20mg/kgのアピテグロマブQ4Wで治療した。コホート1の主要目的は、12ヵ月の治療期間後の安全性及び改訂版ハマースミス評価尺度(Revised Hammersmith Scale:RHS)のベースラインからの平均変化を判定することであった。
【0573】
これは、SMN上方制御薬療法単独が、歴史的に見て、運動機能の改善というよりむしろ、安定化を主にもたらすように見える患者集団である。歩行可能SMA患者は、約6歳まで運動機能の改善を示した後、徐々に悪化する段階を青年期まで迎え、次に思春期前後及び20歳になるまで急激に悪化する。思春期前後の年齢が最も脆弱な期間であるように見えるため、従って運動機能の安定化は重要な治療利益を提供し得る(C Vuillerot et al.Archives of Physical Medicine and Rehabilitation 2013;94:1555-61)。
【0574】
この患者集団でのSMN上方制御薬療法単独の臨床的有効性は十分に確立されておらず、又は特徴付けられていないが、ある縦断的研究の自然歴データから背景の洞察が得られる。この縦断的研究によれば、歩行可能3型SMA患者に運動機能の悪化がよく見られ、それは場合によっては重度である(例えば、歩行運動の喪失)ことが指摘される(Coratti et al.(2020)American Neurology Association,88:1109-1117、例えば、図1)。この研究では、130例の歩行可能3型SMA患者について(一部の患者は、時間が経って追跡不能例となった)、ベースライン時に平均年齢が10.05歳及び平均HFMSEスコアが52.81点であった。12ヵ月判定時、HFMSEのベースラインからの平均変化は-0.79点であり、11例の患者が歩行運動を喪失した(歩行運動を喪失した平均年齢は10.21歳(SD±6.43歳)であった)。7歳までの年齢の患者には、中程度の機能改善を伴う相対的安定が観察されたが、続いてその後数年間に急激に悪化した。
【0575】
本研究では、コホート1(プール集団)において12ヵ月時にRHSの平均悪化があったが、大多数の患者はRHSスコアをベースラインから維持しているか、又は改善した。RHSスコアのベースラインからの平均変化は0.3点の悪化であった(表23;図11A図11C)。コホート1の有効性データは、57%のプール患者にRHSスコアの維持又は改善(ベースラインからの変化が0点より大きい)が観察され、22%のプール患者がRHSスコアのベースラインからの少なくとも3点の増加を実現し、及び17%の歩行可能3型SMA患者にRHSスコアのベースラインからの3点を超える改善が見られたとおり、この患者集団でアピテグロマブに臨床効果がある可能性を示唆している。RHSスコアの3点を超える改善は、多くの場合に臨床的に有意味と見なされる。プロトコル遵守解析及び感度分析は、主要治療企図解析と同様の結果を示した。
【0576】
歩行可能3型患者のプールRHSスコアはまた、脊柱側彎又は関節拘縮に制限されない歩行可能患者でRHSスコアのより大きい増加が観察されたように、RHSスコアのより大きい改善と脊柱側彎又は関節拘縮の特性との間の逆相関も実証した(図24B)。COVID-19に起因する施設の制限のために3回連続で投与を抜かした患者は除外した;SD脊柱側彎(0.7点)最小値-4点,最大値4点、SD(-1.5点)最小値-12点,最大値8点;SD拘縮(1.1点)最小値-2点,最大値4点、SD(-1.5点)最小値-12点,最大値8点。
【0577】
【表35】
【0578】
8.3 全体的な安全性及び忍容性
12ヵ月の治療期間中、安全性シグナルは同定されなかった(表24)。有害事象の発生率及び重症度は、基礎をなす患者集団及び/又はバックグラウンド療法と一致した。
【0579】
【表36】
【0580】
5つの最も多く報告されたTEAEは、頭痛(24%)、発熱(22%)、上気道感染症(22%)、咳(22%)、及び鼻咽頭炎(21%)であった(表25)。
【0581】
5例の患者に重篤なTEAEが見られ、それらはいずれもアピテグロマブとは無関係と判定された。1例の別の患者(コホート1)が、重篤でないグレード3の腰椎穿刺後症候群を呈した。この事象は続発症なく解消し、アピテグロマブとは無関係と判定された。
【0582】
1例の患者(コホート1)は、グレード2の筋疲労のため本研究を中断したが、これはアピテグロマブの投与開始前に始まったものであった。この事象は、アピテグロマブとは無関係と判定された。
【0583】
アピテグロマブ治療後に、58例中3例の登録患者に抗薬物抗体(ADA)が低力価で存在した。薬物曝露量への明らかな影響は観察されず、任意の過敏性反応に関連するADAも観察されなかった。1例の患者において、最終回の来院中に1回のみADAが観察され、別の患者にはADAが2回観察され、第3の患者には低力価ADAが200日を超えて持続した。2mg/kg群のアピテグロマブ濃度には、恐らくはADAによって引き起こされるより大きい変動があった。これらの患者において、アピテグロマブのクリアランスに明らかな効果が及ぶことはない。研究下の2つの用量(2又は20mg/kg)のいずれでも、標的介在性の薬物消失(TMDD)は観察されなかった。
【0584】
【表37】
【0585】
8.4 PK/PD
薬物動態学(PK)及び薬力学(PD)結果は、有効性における継続的な用量反応を裏付けるものである。アピテグロマブの慢性投与後に用量比例的な持続的薬物曝露が観察された(図12A図12B)。判定した全ての時点で、2mg/kg用量と比べて20mg/kg用量でHFMSEスコアのベースラインからの数値的により大きい平均的改善が実現した。この臨床的に観察された用量反応は、薬力学的(標的会合)結果と一致した。20mg/kg及び2mg/kgの両方の用量で高い標的会合レベルが生じ(ベースラインからの100倍を超える増加)、20mg/kg用量の方が、比較的高い絶対標的会合レベルを呈した(図13)。コホート1が、最も高い平均ベースライン潜在型ミオスタチン濃度を有した。ヌシネルセンと併せて2mg/kg及び20mg/kg用量の投与を受けている患者について、標的会合をHFMSEスコアの変化に対してプロットした(図14)。
【0586】
図15Aは、健常成人ボランティア(SAD及びMAD)とコホート1、2、及び3との間のベースライン潜在型ミオスタチン濃度の比較を示す。ベースライン潜在型ミオスタチン濃度は、コホートよりも健常成人ボランティアで有意に高かった。この相関は、体重、並びに疾患状態の両方に関連するものであり得る。図15B図15Cは、健常成人ボランティア(SAD)及びコホート1、2、及び3における潜在型ミオスタチン濃度の変化倍数を示す。治療後の血清潜在型ミオスタチン濃度の増加は、例えば骨格筋中での、アピテグロマブによる標的会合を指示している。かかる標的会合は、疾患重症度、体重、年齢、SMAの型及び/又は機能有効性測定値と相関し得る。
【0587】
図16は、健常成人ボランティア(SAD及びMAD)対コホート1、2、及び3におけるベースライン潜在型ミオスタチン濃度と体重との間の相関を示す。ベースライン潜在型ミオスタチン濃度は患者体重と相関した。全体的に見て、患者体重が重いほど、ベースライン潜在型ミオスタチン濃度が高くなる。図17は、コホート1、2、及び3におけるクリアランスと体重との間の相関についての線形回帰を示す。
【0588】
図18は、コホート1、2、及び3におけるクリアランスと年齢との間の相関についての線形回帰を示す。年齢が上がるにつれてクリアランスは増加した。年齢が低い患者ほど、年齢が高い患者と比べてクリアランスが有意に緩慢であった。
【0589】
8.5 薬力学的又は予測バイオマーカーとしての潜在型ミオスタチン
図26は、2型SMA患者からアピテグロマブ治療後365日目に収集したデータに基づいた、年齢に対するHFMSEスコアの変化によって測定したときの運動機能の改善、潜在型ミオスタチンレベルの変化倍数(ベースライン時とアピテグロマブ投与後のレベルを比較する)、及びアピテグロマブの薬物動態学的濃度の間の関係の分析を示す。図26Aでは、HFMSEスコアの変化と年齢との間に強い相関が見られる(n=23、p=0.0043)。このデータは、遅発型SMAの患者集団内では、年齢が低い患者ほどミオスタチン選択的阻害(inhition)が特に有益であり得ることを示唆している。図26Bでは、潜在型ミオスタチンレベルの変化倍数(LM倍数)とアピテグロマブのPK濃度との間に正の相関が見られ(n=14、p=0.0086)、血清潜在型ミオスタチンレベルが、プロミオスタチン/潜在型ミオスタチンを標的とするミオスタチン阻害薬の標的会合バイオマーカーとして働くことが指摘される。図26Cでは、年齢で正規化した運動機能の変化と年齢で正規化した潜在型ミオスタチン(LM)レベルの変化倍数との間に強い正の相関が見られる。図26Dでは、年齢で正規化した運動機能の変化と年齢で正規化したLM倍数/PK濃度との間に正の相関が見られる(n=14、p=0.0084)。
【0590】
図27Aでは、HFMEスコアの変化とベースライン潜在型ミオスタチンとの間の関係が見られる。図27Bでは、年齢で正規化したベースライン潜在型ミオスタチンレベルと年齢で正規化した運動機能の変化との間に有意な相関が見られる(p<0.0001)。この観察から、ベースライン潜在型ミオスタチンレベルが有効性の指標となることが示唆される。
【0591】
9 略語及び用語定義の一覧
本実施例全体を通じて以下の略語及び専門用語を使用する:
6MWT 6分間歩行テスト
ADA 抗薬物抗体
AE 有害事象
APTT 活性化部分トロンボプラスチン時間
ASO アンチセンスオリゴヌクレオチド
CFR 連邦規則集
CHO チャイニーズハムスター卵巣
ECG 心電図
eCRF 電子的症例報告書
EDC 電子データキャプチャ
EIU 子宮内曝露
ESNHPT 耐久シャトルナインホールペグテスト
ESBBT 耐久シャトルボックスブロックテスト
FDA 食品医薬品局
GCP 医薬品の臨床試験の実施の基準(Good Clinical Practice)
GDF11 成長分化因子11
GLP 優良試験所規範(Good Laboratory Practice)
HFMSE ハマースミス機能運動評価尺度拡大版
ICF インフォームドコンセント用紙
ICH 医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonisation)
IEC 医療機関内倫理委員会
IgG4 免疫グロブリンG4
IRB 治験審査委員会(Institutional Review Board)
ITT 治療企図(Intention to Treat)
IV 静脈内
IWRS ウェブ自動応答システム
LSMEANS 最小二乗平均
mAb モノクローナル抗体
MAD 複数回漸増用量
MedDRA 国際医薬用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities)
NOAEL 無毒性量
PD 薬力学
PEDICAT 小児障害インベントリー評価コンピュータ適応テスト(Pediatric Evaluation of Disability Inventory Computer Adaptive Test)
PK 薬物動態学
PT/INR プロトロンビン時間/国際標準化比
PROMIS 患者報告アウトカム測定情報システム
RHS 改訂版ハマースミス評価尺度
RULM 改訂版上肢モジュール
SAD 単回漸増用量
SAE 重篤有害事象
SAP 統計解析計画書
SAS 統計解析システム
SD 標準偏差
SMA 脊髄性筋萎縮症
SMN 生存運動ニューロン
SOP 標準作業手順
SRK-015 抗プロミオスタチン抗体(アピテグロマブ)
SST 安全性監視チーム
TEAE 治療により出現した有害事象
WHO 世界保健機関
【0592】
実施例2.筋萎縮疾患の治療に対するアピテグロマブの前臨床安全性判定及びトキシコキネティクス
アピテグロマブを使用した包括的な一組の前臨床研究を、成体カニクイザル並びに成体及び若齢ラットにおける薬理学及び薬力学的判定並びにインビボ毒性及びトキシコキネティクス(TK)研究を含め、実施した。インビトロ研究により、アピテグロマブがプロミオスタチンの活性化を阻害する能力を確認した。アピテグロマブをサルに4週間及び成体ラットに最長26週間投与した毒性研究では、毎週の静脈内投与が持続的な血清曝露及び標的会合を実現し、良好に忍容され、最高300mg/kgの試験した最も高い用量でも、治療関連の有害な所見はなかったことが示された。加えて、8週間若齢ラット研究の結果は、300mg/kgで、神経発達、運動、及び生殖アウトカムを含め、いずれのエンドポイントについても何ら有害効果は見られなかった。要約すれば、非臨床薬理学、薬物動態学、及び毒性学データから、アピテグロマブが、他のミオスタチン経路阻害薬で観察される毒性を呈しない選択的ミオスタチン活性化阻害薬であることが実証された。これらのデータは、成人及び小児(2歳超)の両方の脊髄性筋萎縮症(SMA)患者におけるアピテグロマブの進行中の臨床研究の実施を裏付けている。
【0593】
材料及び方法
被験物質及び媒体
インビトロ研究用に、Expi293(商標)細胞に重鎖及び軽鎖発現ベクターを一過性にトランスフェクトすることにより、アピテグロマブを作製した(Pirruccello-Straub et al.(2018)Sci Rep.8(1):2292)。ラット及びカニクイザル研究用に、重鎖及び軽鎖を安定に発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株でアピテグロマブを発現させた。アピテグロマブは、緩衝液中50mg/mLの名目濃度のストック溶液として提供し、-60~-80℃で保存した。媒体対照を、但し抗体なしで対応させた。
【0594】
インビトロ薬理学及び組織交差反応性
ミオスタチンプロドメイン及び成熟成長因子についての配列相同性。ヒト、カニクイザル、及びラットミオスタチンプロドメイン及び成熟成長因子ペプチドの配列同一性をUniProtデータベースから入手した(参照番号O14793、Q95J86、O35312)(UniProt Consortium et al.(2021)Nucleic Acids Res.49(D1):D480-D489)。ClustalOmegaを用いて、その予測されるシグナルペプチドのない成熟タンパク質配列を使用してペアワイズアラインメントを実施し(Madeira et al.(2019)Nucleic Acids Res.47(W1):W636-W641)、続いてパーセント配列同一性を分析した。
【0595】
アピテグロマブ結合親和性。ヒト、カニクイザル、及びラットプロミオスタチンアイソフォームに対するアピテグロマブの結合親和性を、バイオレイヤー干渉法(ForteBio Octet QKe)を用いて、以前に記載されている方法に従い(Pirruccello-Straub et al.(2018)Sci Rep.8(1):2292)測定した。簡潔に言えば、この結合実験では、アピテグロマブをヒトFc捕捉チップ(ForteBio)に固定化し、各種のプロミオスタチンの会合及び解離を評価した。全てのベースラインステップ、ビオチン化抗原の負荷、並びに抗体会合及び解離ステップは、PBS pH7.4を0.002%Tween 20及び0.01%BSAと共に含有する1×反応速度緩衝液中で実施した。会合を300秒間続行し、次に解離を1×反応速度緩衝液中で少なくとも600秒間実施した。データ解析は、ForteBioデータ分析ソフトウェア、バージョン8.2で実施した。次に、会合及び解離の両方を考慮する1:1大域的当てはめモデルを利用して、各抗原抗体/コンストラクト対についての単一濃度Kを決定した。
【0596】
プロミオスタチン活性化アッセイ。アピテグロマブがヒト、カニクイザル、及びラットプロミオスタチンの活性化を阻害する能力を、以前に記載されている細胞ベースの活性化アッセイ(Pirruccello-Straub et al.(2018)Sci Rep.8(1):2292)で測定した。500nMのヒト、カニクイザル、又はラットプロミオスタチンの試料を様々な量のアピテグロマブと共に平衡に達するまでインキュベートした。次にこの混合物を、組換えで過剰発現させたプロタンパク質転換酵素(フューリン/PACE3又はPSCK5)及びトロイドプロテアーゼ(BMP-1又はmTLL2)を含有する細胞上清と共に37℃で16時間インキュベートした。SMAD活性化に反応性を示す安定に組み込まれたpGL4プラスミド(Promega、Madison、WI)を含有する293T細胞の培養物に試料を加えることにより、タンパク質分解によって成熟ミオスタチン成長因子がどの程度放出されるかを判定した。細胞をミオスタチン反応液と6時間インキュベートし、続いてBRIGHT-GLOTM試薬(Promega、Madison、WI)を製造者の指示に従い使用してルシフェラーゼ発現を検出した。
【0597】
組織交差反応性試験(TCR)。アピテグロマブのオンターゲット及びオフターゲット組織結合の可能性を評価するヒト組織におけるGLP組織交差反応性試験を、Reno、NVのCharles River LaboratoriesにてICHS6(R1)に従い行った。1組織につき少なくとも3ドナー及び38組織の正常ヒト組織パネルの凍結切片(Special Pathology Services(SPS)ヒト組織バンクから供給された)に、アピテグロマブを2つの濃度(最適=5.0及び高濃度=25.0μg/mL)で適用した。使用した組織パネルには、モノクローナル抗体の開発及び特性評価についてのEMEAガイドライン文書に提案されている一覧にある全ての組織並びにFDA/生物学評価研究センター(Center for Biologics Evaluation and Research:CBER)が推奨する組織の全てが含まれた(EMEA,「モノクローナル抗体及び関連製品の開発、生産、特性評価及び規格に関するガイドライン(Guideline on development,production,characterization and specification for monoclonal antibodies and related products)」(Annex I),2016;FDA/CBER,「ヒト使用向けのモノクローナル抗体製品の製造及び検査における考慮点(Points to Consider in the Manufacture and Testing of Monoclonal Antibody Products for Human Use)」,1997)。アピテグロマブの特異性を評価するため、ヒトIgG4ラムダ抗体を対照物質として使用した。加えて、Flp-In T-Rex 293細胞株(Invitrogen、カタログ番号R78007)にDNAコンストラクトをトランスフェクトすることにより陽性対照としてのプロミオスタチン/潜在型ミオスタチンを発現させ、及び陰性対照としてトランスフェクションなしに使用した。ビオチン化抗ヒトIgG4二次抗体を使用して細胞組織試料中のアピテグロマブの局在結合を実施した。
【0598】
カニクイザル及びラットにおけるインビボ毒性及びトキシコキネティクス試験
インビボ毒性研究はMadison、WIのCovance Laboratoriesで行い、但し例外で、若齢ラット毒性研究はGreenfield、INのCovance Laboratoriesで行った。試験は全て、適用可能な医薬品規制調和国際会議(ICH)のガイドラインに従い、米国食品医薬品局(FDA)のGLP規則(連邦規則集第21篇第58部)に準拠して行った。プロトコルは、施設内動物管理使用委員会(IACUC)により審査され、承認された。大腿骨組織の組織学、顕微鏡的評価、及び骨デンシトメトリーは、Charles River Laboratories Montreal ULC、Senneville、QC、Canadaにより経済協力開発機構(OECD)の優良試験所規範の原則に準拠して行われた。若齢ラット試験については、発達神経毒性組織学をFrederick、MDのTox Path Specialists(TPS)で行い、発達神経毒性病理学は、Longmont、COのGEMpath,Inc.により(非GLP)行われた。26週間ラット試験については、X線写真評価(非GLP)が、Madison、WIの資格のある獣医学画像診断のコンサルタントにより行われた。研究デザインを表26に要約する。
【0599】
カニクイザル毒性研究。雄及び雌カニクイザル(24~50ヵ月齢)を無作為に治療群に割り付け、制御された環境(20~26℃;30~70%相対湿度;12時間明暗周期)にてステンレス鋼ケージ内で集団飼育した。動物には、ケージエンリッチメント装置及び飼料、Certified Primate Diet 5048番(PMI Nutrition International Certified LabDiet(登録商標))を1日1回~2回与え、水道水は自由に摂取させた。
【0600】
成体及び若齢ラット毒性研究。雄及び雌スプラーグドーリー(SD)ラット(成体研究、6~8週齢;若齢研究、F1発達アーム用PND21及び交配アーム用15~16週齢)を無作為に治療群に割り付けた。成体試験では、全ての動物を集団飼育し、若齢試験では、F1動物をPND21から始めて個別に飼育し、未処置の交配用の雄を個別に飼育し(交尾時を除く)、未処置の雌を集団飼育した(交尾時及び妊娠中を除く)。飼育は、制御された環境(20~26℃;30~70%相対湿度;12時間明暗周期)にてDiamond Soft(登録商標)床敷を入れたポリカーボネートケージ内とし、但し例外で、交配時は動物を底が金網のステンレス鋼ケージに入れた。飼料、Certified Rodent Diet 2014C番又は2016C番(Envigo RMS,Inc.)及び水道水を自由に摂取させ、動物にケージエンリッチメント装置を提供した。
【0601】
安全性及び他の特殊な評価。毒性研究は全て、以下の一般的エンドポイントを評価した:死亡率、臨床観察、体重、摂食量。動物の一般的な臨床観察を1日2回実施し、サルでは投与後2~3時間、及びラットでは1日1回ケージサイド観察を行うことにより急性毒性を判定した。詳細観察は毎週、投与日に実施した。摂食量は、サルでは1日1回、成体ラットでは週1回、及び若齢動物については3~4日毎に(体重に応じた間隔)測定した。体重は、サル及び成体ラットについて週1回、及び若齢試験では3~4日毎に測定した。また、全ての試験に、臨床病理学(血液学、血清化学、凝固、及び検尿)及び解剖病理学(肉眼的及び顕微鏡的)評価も、大腿二頭筋及び腓腹筋の骨格筋重量の更なる収集と共に含まれた。トキシコキネティクス、抗薬物抗体(ADA)及び標的会合(血清潜在型ミオスタチン)分析用に、血液試料を収集した。サル及び成体ラット研究について実施した他の安全性評価には、眼科検査(両種);及びサルについてのみ、バイタルサイン測定;心電図;神経学的検査;並びに呼吸数及び心拍数の測定が含まれた。
【0602】
26週間ラット研究では、以下の特殊エンドポイントを評価した:機能観察バッテリー(FOB)、移所運動活性判定、インビボX線画像評価(大腿骨頭及び大腿骨頸)、末梢骨定量的コンピュータ断層撮影法(pQCT)によるエキソビボ骨塩量及びデンシトメトリー、並びに大腿骨の組織病理学。
【0603】
若齢ラット研究では、以下の特殊エンドポイントを評価した:発達ランドマーク、解剖学的及び発達神経毒性(DNT)及び神経病理学、雄及び雌生殖力エンドポイント、神経行動学的所見及び大腿骨のエキソビボ骨分析(即ち、pQCTによるミネラル含量及びデンシトメトリー、X線撮影、長さ、組織病理学)。DNT病理学検査には、「優良規範(best practice)」の非臨床毒性研究時の神経系試料採取についての推奨事項に挙げられているとおりの主要神経構造を含め(Bolon et al.(2013)Toxicol Pathol.41:1028-1048;Bolon et al.(2018)Toxicol Pathol.46:372-402)、脳、脊髄、後根神経節、及び神経からの多数の切片の判定が関わった。
【0604】
【表38】
【0605】
【表39】
【0606】
カニクイザル及びスプラーグドーリー(SD)ラット血清中のアピテグロマブの定量化。カニクイザル及びSDラットの両方の血清においてバリデートされたELISAを用いてアピテグロマブの存在に関して血清試料を分析した。アッセイプレートを組換えプロミオスタチンでコートし、ウシ血清アルブミン(BSA)溶液でブロックした。血清試料を最低必要希釈率(MRD)(1:100)に希釈するか、又は分析物がアッセイの定量範囲内にあることが更に確実となるように希釈した。次に、希釈した試料をアッセイプレートでインキュベートした。結合したアピテグロマブをヤギ抗ヒト西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)試薬を使用して検出し、テトラメチルベンジジン(TMB)を使用してアッセイシグナルを発生させた。標準曲線を1/Y2重み付けの5パラメータロジスティック関数に当てはめた。定量範囲は、血清中200~10,000ng/mLアピテグロマブである。全ての試験について、試料分析は、Tampa、FLのBiologics Development Servicesで行われた(GLP)。
【0607】
カニクイザル及びSDラット血清中の抗アピテグロマブ抗体の検出。アピテグロマブに対する抗薬物抗体(ADA)の存在に関して、電気化学発光(ECL)架橋フォーマットプレートベースアッセイを用いて血清試料を判定した。試料を100mM酢酸で酸性化してあらゆるADA複合体を解離させ、続いてトリス緩衝液で中和し、ビオチン化及びルテニウムコンジュゲートアピテグロマブと共にインキュベートした。次に、中和した試料をストレプトアビジンコートアッセイプレートでインキュベートし、アッセイシグナルを測定した。次に、確立されたカットポイント値を上回るアッセイシグナルを生じた試料を確認アッセイでアッセイし、そこではアッセイシグナルの免疫枯渇を明らかにするため中和試料に過剰量のアピテグロマブを加えた。このアッセイを、1:20のMRDを用いて、カニクイザル及びSDラットの両方の血清で用いることができるようにバリデートした。SDラットアッセイでは4.23ng/mL及びカニクイザルアッセイでは23.5ng/mLで感度を測定した。全ての試験について、試料分析は、Tampa、FLのBiologics Development Servicesで行われた(GLP)。
【0608】
カニクイザル及びSDラット血清中の潜在型ミオスタチンの定量化。潜在型ミオスタチン濃度は、全潜在型ミオスタチン(即ち、結合及び未結合)を選択的に検出する適格なECLアッセイを用いて定量化した。カニクイザル血清中でのこのアッセイの定量化については、Cote et al.(2020)SLAS Discov Adv Sci Drug Discov.25(1):95-103に記載されており、ここではこのプロトコルを変更なしに用いた。このアッセイの変法はまた、SDラット血清でも適格であった。アッセイ感度は血清中10ng/mLの潜在型ミオスタチンであり、最高1mg/mLのアピテグロマブの薬物忍容性を実現した。全ての試験について、潜在型ミオスタチンは、Cambridge、MAのScholar Rock,Inc.で測定された(非GLP)。
【0609】
トキシコキネティクス。試験毎に、Phoenix WinNonLin(Certara、Princeton、NJ)を使用してトキシコキネティクスパラメータを計算した。IVボーラス用量投与経路、名目用量レベル、及び名目試料採取時点を使用して、ノンコンパートメント解析を実施した。定量限界を下回った濃度(200ng/mL未満)は、記述統計では0として扱った。曲線下面積(AUC)判定は線形台形公式を用いて計算した。終末相半減期(t1/2)は、平均濃度対時間プロファイルの終末相の対数線形回帰によって推定した。終末相中の明確に見える少なくとも3点、r2調整値>0.7、及び少なくとも3半減期の時間間隔を使用して半減期を特徴付けた。蓄積率(AR)は、4週間カニクイザル研究を除く全ての研究について、[投与最終日のCmax又はAUC0-168]/[投与初日のCmax又はAUC0-168]として計算した。4週間カニクイザル研究では、投与最終日でなく、むしろ22日目値を使用してARは計算した。
【0610】
結果
毒性研究用の種選択
インビボ毒性研究の開始前に、アピテグロマブ毒性の判定に適切なげっ歯類種及び非げっ歯類種としてラット及びカニクイザルをICH S6及びS9ガイドライン(FDA,「産業界のためのガイダンス:S9 抗悪性腫瘍薬の非臨床評価(Guidance for Industry:S9 Nonclinical Evaluation for Anticancer Pharmaceuticals)」.Silver Spring,MD 20993:FDA,2010;FDA,「産業界のためのガイダンス:S6(R1) バイオテクノロジー応用医薬品の前臨床安全性評価(Guidance for Industry:S6(R1)Preclinical Safety Evaluation of Biotechnology-Derived Pharmaceuticals)」.Silver Spring,MD 20993:FDA,2012)に従い評価した。アピテグロマブが筋量を増加させ、及び強化する能力は、以前に健常動物並びに2つのSMAモデルを含めた複数のげっ歯類筋萎縮モデルにおける前臨床薬理学試験で実証されている(Pirruccello-Straub et al.(2018)Sci Rep.8(1):2292;Long et al.(2019)Hum Mol Genet.28(7):1076-1089)。本明細書に記載される試験について、ヒト、ラット及びカニクイザルでミオスタチンプロドメインの配列同一性を比較し、アピテグロマブのインビトロ結合及び活性が確認された。
【0611】
ミオスタチンプロドメインは全種で同様の配列同一性及びアピテグロマブへの結合性を有する。アピテグロマブはヒトミオスタチンプロドメインに選択的に結合し、他の近縁のTGFβファミリー成長因子、特にGDF-11及びアクチビンには結合しない(Pirruccello-Straub et al.(2018)Sci Rep.8(1):2292)。ヒト及びラットミオスタチンプロドメインは94.5%の配列相同性を共有し、一方、ヒトとカニクイザルとのミオスタチンプロドメイン間の配列同一性は99.7%である(表27)。同様に、ヒト、ラット及びカニクイザルにおける成熟ミオスタチン成長因子の配列は、高い配列同一性を共有している。更に、アピテグロマブは、ヒト、ラット及びカニクイザルの間で、2.00×10-9M~4.86×10-9Mの範囲の、プロミオスタチンに対する同様の結合親和性を有し(表27)、これらの種間でのアピテグロマブの活性が同様である可能性が示唆される。
【0612】
【表40】
【0613】
アピテグロマブはタンパク質分解性のプロミオスタチン活性化を阻害する。以前に記載されている細胞ベースの活性アッセイを用いて(Pirruccello-Straub et al.(2018)Sci Rep.8(1):2292)、アピテグロマブのインビトロ活性を判定した。アピテグロマブの阻害活性が種間で同様であることを確認するため、このアッセイでは、ヒト、カニクイザル及びラットプロミオスタチンがタンパク質分解活性化により成熟ミオスタチン成長因子となるのをアピテグロマブが遮断する能力を測定した。結果として得られた曲線の当てはめから、各プロミオスタチン形態のIC50値を計算した。アピテグロマブはプロミオスタチンのタンパク質分解活性化を阻害し(IC50=1017nM)、また、カニクイザルプロミオスタチン(IC50=584nM)及びラットプロミオスタチン(IC50=153nM)の活性化も予防する(図19)。
【0614】
アピテグロマブのヒト組織交差反応性
アピテグロマブはヒト組織においてオフターゲット結合を呈しない。アピテグロマブのオンターゲット及びオフターゲット組織結合の可能性を評価するため、3例の異なるヒトドナーからのヒト組織のフルパネル(ICHS6(R1))を使用してGLP組織交差反応性研究を行った。アピテグロマブは陽性及び陰性対照細胞株に結合した;しかしながら、アピテグロマブは、いずれのヒト組織においても特異的陽性染色を示さなかった。
【0615】
カニクイザル及びラットにおけるアピテグロマブのインビボ安全性判定
第1相臨床研究の開始を裏付けるため、カニクイザル及びラットで4週間GLP毒性研究を行った(Barrett et al.(2021)Abstract 253.24th Annual International Annual Congress of the World Muscle Society,Copenhagen,Denmark)。追加の反復用量GLP研究をラットで行い、これには、小児集団における投与を裏付けるため若齢ラット毒性研究及び成体動物における長期26週間毒性研究が含まれた。
【0616】
カニクイザルにおける4週間毒性研究。雄及び雌カニクイザルにアピテグロマブを週1回、IVボーラスによって0(媒体)、10、30、及び100mg/kgの用量で投与相の1、8、15、22、及び29日目に(合計5用量)4週間にわたって投与し、その後に4週間の(無治療)回復相が続いた。この研究で死亡は観察されず、全ての動物が予定された剖検時まで生存した。臨床所見、摂食量、眼科検査、臨床化学、血液学、凝固、又は検尿に関してアピテグロマブ関連の有害効果はなかった。アピテグロマブ治療動物では、対照動物と比較して筋量(腓腹筋及び二頭筋)がやや高かったが、その効果には用量反応がなく、個体間にばらつきが見られた。安全性薬理学的エンドポイント(即ち、神経学的検査、呼吸数、及び心電図記録法)は、治療関連作用がないことを実証した。投与相又は回復相の動物にアピテグロマブ関連の肉眼的又は顕微鏡的所見は観察されなかった。全体的に見て、評価したいずれのエンドポイントに関しても、治療関連の有害な所見はなく、NOAELは100mg/kgであり、これは試験した最も高い用量であった。
【0617】
成体SDラットにおける4週間毒性研究。雄及び雌ラットにアピテグロマブを週1回、IVボーラスによって0(媒体)、10、30、及び100mg/kgの用量で投与相の1、8、15、22、及び29日目に(合計5用量)4週間にわたって投与し、その後に4週間の(無治療)回復相が続いた。アピテグロマブ関連の死亡は観察されなかった。臨床所見、摂食量、眼科検査、血液学、凝固、又は検尿に関してアピテグロマブ関連の有害効果はなかった。10mg/kg以上を投与した動物でアピテグロマブ関連の体重増加が観察されたが、これは摂食量がより多いことと相関するのでなく、実に終了時の骨格筋重量の増加と相関した。具体的には、アピテグロマブを投与した全ての群で、解剖病理所見は骨格筋組織(左二頭筋、右二頭筋、左腓腹筋、又は右腓腹筋)の重量増加に限られており(場合によっては有意性に達した)、平均的効果は対照に対して約3~32%の範囲であった;しかしながら、微視的相関はなかった。筋量の増加は、健常及び疾患動物モデルで既報告のとおり(Pirruccello-Straub et al.(2018)Sci Rep.8(1):2292;Long et al.(2019)Hum Mol Genet.28(7):1076-1089)、プロミオスタチン及び潜在型ミオスタチンを標的とする抗体であるアピテグロマブの見込まれた薬理効果であった。投与相の終わりに幾つかの軽微なアピテグロマブ関連の臨床化学所見(例えば、僅かに高いグロブリン濃度、僅かに高い全タンパク質濃度及び低いアルブミン:グロブリン(A:G)比)が、主に100mg/kgを投与した動物に観察され、多くが可逆性のエビデンスを呈した。グロブリン濃度の増加は、循環中の高いアピテグロマブ(IgG4免疫グロブリン)レベルに関連した可能性もある。評価したいずれのエンドポイントに関しても治療関連の有害な所見は観察されず、無毒性量(NOAEL)は100mg/kgであり、これは試験した最も高い用量であった。
【0618】
成体SDラットにおける26週間毒性研究。ICH S6(R1)(Cavagnaro et al.(2002)Nat Rev Drug Discov.1(6):469-475;FDA,「産業界のためのガイダンス:S6(R1)バイオテクノロジー応用医薬品の前臨床安全性評価(Guidance for Industry:S6(R1)Preclinical Safety Evaluation of Biotechnology-Derived Pharmaceuticals)」.Silver Spring,MD 20993:FDA,2012)に従い、4週間ラット及びカニクイザル毒性研究の結果が同様である(即ち、毒性が観察されない)という理由で、アピテグロマブの更なる毒性判定にラットを単一の毒性種として選択した。アピテグロマブをIVボーラスによって30、100、及び300mg/kgの用量で週1回、雄及び雌ラットに26週間にわたって合計27用量投与した。アピテグロマブ関連の死亡は観察されなかった。臨床所見、摂食量、臨床化学、血液学、眼科検査、機能観察バッテリー(FOB)検査、骨ミネラル濃度(大腿骨)、インビボX線撮影(大腿骨)、肉眼的病理学及び顕微鏡的病理学評価に関してアピテグロマブ関連の有害効果はなかった。4週間ラット試験と同様に、アピテグロマブ関連の臨床化学効果は、比べると高いが最小限である全タンパク質及びグロブリン濃度に限られており、解剖病理学的所見は骨格筋重量(左及び右上腕二頭筋)の僅かな増加に限られていた。骨格筋量の増加は全てのアピテグロマブ治療群に起こり、対照と比べて約15~33%の範囲であり、筋線維の最小限乃至僅かな肥大という顕微鏡的所見と相関した。これらの筋肉の変化が回復相の間中持続し、しかし用量反応性ではなかった(Pirruccello-Straub et al.(2018)Sci Rep.8(1):2292;Long et al.(2019)Hum Mol Genet.28(7):1076-1089)。アピテグロマブの週1回のIVボーラス投与による最長26週間にわたる投与は成体SDラットにおいて良好に忍容され、NOAELは、300mg/kgの試験した最も高い用量であった。
【0619】
SDラットにおける若齢毒性研究。小児SMA患者(年齢2歳以上)への投与を裏付けるため、若齢ラットGLP毒性研究を行った。若齢ラットに、2歳のヒトに相当する生後(PND)21日目から、動物が性的に成熟し、主要臓器及び免疫系の発育が概して完了するPND63日目まで、7週間にわたって投与する(FDA、「S11 小児用医薬品開発の非臨床安全性試験(Nonclinical Safety Testing in Support of Development of Paediatric Medicines)」,2020)。研究デザインには、ミオスタチン経路阻害が若齢動物の発生・生殖生物学に及ぼす効果を調べるため、神経毒性学、生殖力、並びに生殖・発生毒性学エンドポイントもまた取り入れた(表26)。
【0620】
本研究では、アピテグロマブをIVボーラス投与によって30、100、及び300mg/kgの週用量で投与した。死亡率、臨床所見、摂食量、臨床病理学、眼科検査、及び解剖病理学評価に関して、アピテグロマブ関連の効果は観察されなかった。雄では平均体重又は体重増加に関してアピテグロマブ関連の効果は観察されなかった;しかしながら、雌については、全投与期間(PND21~63日目)にわたって平均体重増加の点でアピテグロマブ関連の有害でない有意な増加が見られ、これは、一部の動物については、回復相に入っても持続した。アピテグロマブ治療若齢ラットでは幾つかの臨床病理学所見が観察されたが、全体的にその規模が小さいため、いずれも有害でないと見なされた。それらには、100mg/kg/用量以上を投与した雌雄両方での全タンパク質及び/又はグロブリン濃度の最小限乃至軽度の上昇、それによって生じたアルブミン:グロブリン比の最小限の低下、300mg/kg/用量を投与した雄でのトリグリセリド濃度の軽度の低下並びに100mg/kg/用量以上を投与した雄及び300mg/kg/用量を投与した雌でのナトリウム濃度の最小限の低下が含まれた。グロブリンの変化は、循環中のアピテグロマブが原因であった可能性もある。成体動物で実施した研究と同様に、アピテグロマブ治療の雄及び雌では、絶対筋重量(二頭筋及び/又は腓腹筋)の増加があり、平均的効果は対照に対して約13~28%の範囲であり、明らかな微視的相関又は用量反応はなかった。加えて、特殊研究エンドポイントのいずれについても、解剖学的及び発達神経毒性(DNT)及び神経病理組織学、神経行動学的評価(聴覚性驚愕反射、移所運動活性、又はモーリス水迷路)、発生学的性的ランドマーク、及び骨分析(デンシトメトリー、X線撮影、大腿骨長、及び大腿骨組織病理学)を含め、有害な毒性は観察されなかった。最後に、治療した雄及び雌を未治療動物と繁殖させた後、アピテグロマブは生殖パラメータ(発情周期、繁殖成績、産仔数、生殖力、精子判定)に有害効果を及ぼさなかった;しかしながら、一部の雌について、妊娠中にアピテグロマブ関連の平均体重の増加が観察された。PND21日目~PND63日目までの、アピテグロマブのIVボーラス投与による週1回投与(合計7用量)は、若齢SDラットで良好に忍容され、NOAELは、300mg/kgの試験した最も高い用量であった。
【0621】
カニクイザル及びラットにおけるアピテグロマブの複数回投与トキシコキネティクス
アピテグロマブ複数回投与TKプロファイル、TKパラメータ、及び抗薬物抗体を、成体ラット及びカニクイザルでは4週間研究で、成体ラット、及び若齢ラット研究では26週間研究で評価した。全ての研究において、治療動物のアピテグロマブへの全身曝露が確認された(図20A図20D)。Cmax及びAUC0-168パラメータは、用量レベルが増加するに伴い用量比例的に増加し、複数回投与後に蓄積を示した(表28)。加えて、雄動物と雌動物との間でアピテグロマブ曝露量に差はなかった。全ての研究及び用量群で、アピテグロマブは、反応速度に関して性差を最小限しか乃至全く示さず、用量比例的曝露を実現し、及び複数用量後の蓄積を実証した。
【0622】
カニクイザルにおける複数回投与TK(4週間)。1、8、15、22、及び29日目、雄及び雌カニクイザルにアピテグロマブの5用量のIVボーラスを10、30、及び100mg/kgの用量レベルで投与した。1日目及び22日目の後にTKパラメータを決定した。投与した全ての動物において、投与1時間後の初回試料採取時点でCmaxが観察され、但し例外で、22日目は、100mg/kg群の1例の動物についてCmaxは投与48時間後に観察された(表28)。特徴的な排出相がないため、アピテグロマブのt1/2は本研究では測定しなかった。アピテグロマブCmax及びAUC0-168によって判定したときの曝露量は、1日目及び22日目に用量依存的増加を実証し、10~100mg/kgまでほぼ用量比例的であったことから、標的が完全に飽和していることが示唆される。動物は、投与及び回復の全期間を通じて曝露量を維持し(図20A)、全ての用量で1日目から22日目に蓄積が観察された(表28)。いずれの用量でも、アピテグロマブ投与後にADAが発生した動物はいなかった。
【0623】
成体スプラーグドーリーラットにおける複数回投与TK(4週間)。1、8、15、22、及び29日目、雄及び雌ラットにアピテグロマブの5用量のIVボーラスを10、30、及び100mg/kgの用量レベルで投与した。1日目及び29日目の後にTKパラメータを決定した。両日とも、全群で1時間の初回試料採取時点でCmaxが観察され、アピテグロマブは29日目に326~358時間の範囲のt1/2を達成した(表28)。アピテグロマブCmax及びAUC0-168によって判定したときの曝露量は、1日目及び29日目に用量依存的増加を実証し、10~100mg/kgまで概して用量比例的であったことから、標的が完全に飽和していることが示唆される。動物は、投与及び回復の全期間を通じて曝露量を維持し、全ての用量で毎週の投与後の蓄積が観察された(図20B)。10mg/kg群の1例及び30mg/kg群の1例の2例の雌は、投与相の全ての間隔でADA陰性であったが、回復相の15及び29日目にADA陽性であり、これは、これらの動物について(この群の他の動物と比較して)29日目の用量投与後に測定されるアピテグロマブの濃度が低いことと相関した。他の動物は全て、研究全体を通じてADA陰性であった。
【0624】
成体スプラーグドーリーラットにおける複数回投与TK(26週間)。雄及び雌ラットにアピテグロマブの27用量のIVボーラスを30、100、及び300mg/kgの用量レベルで26週間にわたって投与した。1日目及び183日目の後にTKパラメータを決定した。両日とも、全群で1時間の初回試料採取時点でCmaxが観察され、183日目にアピテグロマブは256~346時間の範囲のt1/2を達成した(表28)。アピテグロマブCmax及びAUC0-168によって判定したときの曝露量は用量依存的増加を実証し、概して用量比例的であった。動物は、投与及び回復の全期間を通じて曝露量を維持し、全ての用量で毎週の投与後の蓄積が観察された(図20C)。30mg/kg群では、1例の雄(43日目)及び2例の雌(42日目及び99日目に1例ずつ)にADAが検出された。雄についてはアピテグロマブの血清濃度は影響を受けなかったが、雌は両方とも曝露量の減少を示した。100及び300mg/kg用量群のいずれの動物にも、いずれの間隔においてもADAは検出されなかった。
【0625】
若齢スプラーグドーリーラットにおける複数回投与TK。アピテグロマブのPKプロファイル及びパラメータを複数回投与TKラット若齢研究で評価した。PND21日目~PND63日目に、若齢雄及び雌ラットにアピテグロマブの7用量のIVボーラスを30、100、及び300mg/kgの用量レベルで投与した。PND21日目及びPND63日目の後にPKパラメータを決定した。両日とも、全群で1時間の初回試料採取時点でCmaxが観察され、アピテグロマブはPND63日目に265~330時間の範囲のt1/2を達成した(表28)。アピテグロマブCmax及びAUC0-168によって判定したときの曝露量は用量依存的増加を実証し、概して用量比例的であった。動物は、投与及び回復の全期間を通じて曝露量を維持し、全ての用量で毎週の投与後の蓄積が観察された(図20D)。動物は全て、ADA陰性であると決定された。
【0626】
カニクイザル及びラットにおけるアピテグロマブとの標的会合
本研究の投与相及び回復相にわたる血清潜在型ミオスタチンレベルを測定することにより、アピテグロマブとの標的会合を決定した(図21A図21D)。潜在型ミオスタチンのベースラインレベルは全研究で20~100ng/mLの範囲であった。いずれの研究においても、アピテグロマブの初回用量後、血清潜在型ミオスタチン濃度はベースラインと比べて増加し、投与相及び回復相全体を通じてその上昇した濃度が保たれた。投与後に実現した潜在型ミオスタチンの絶対レベルは、用量の増加に伴い増加したが、用量比例的ではなかった。アピテグロマブ曝露量と同様に、確認されたADA反応に関連する潜在型ミオスタチン濃度の顕著な変化があった。ADA陽性動物は、群平均値から除外した。
【0627】
【表41】
【0628】
概要
前臨床毒性及びTK研究(表1)を行い、アピテグロマブの安全性及び曝露プロファイルを特徴付けた(Pirruccello-Straub et al.(2018)Sci Rep.8(1):2292)。
【0629】
ラット及びカニクイザルの両方における4週間毒性研究からの非臨床安全性データから、IVボーラス注射によって週1回、4週間にわたって最高100mg/kgの用量で投与したとき、アピテグロマブが良好に忍容されたことが示された。アピテグロマブはまた、成体ラットにおける26週間研究及び若齢ラットにおける8週間研究の両方でも良好に忍容され、これらの研究は各々、試験した最も高い用量、300mg/kgのNOAELであった。
【0630】
アピテグロマブによる研究では、成体及び若齢ラット又は成体サルの精巣の重量又は組織病理に変化は同定されず、若齢ラット研究において尾側精巣上体重量、精子運動能、濃度、又は形態に関するアピテグロマブ関連の効果はなかった。若齢ラット研究では、プロミオスタチン阻害によって引き起こされる生殖効果の可能性があるかを決定するため、機能アウトカムとして生殖力エンドポイントもまた調べた。アピテグロマブは、若齢ラットの発情周期、繁殖成績、及び産仔数などの生殖力パラメータに何ら効果を及ぼさなかった。これらのデータは、アピテグロマブが、非特異的ミオスタチン阻害薬で観察されるオフターゲット生殖器効果の可能性を回避し得ることを示唆している。
【0631】
アピテグロマブ治療がFOB、移所運動活性、及び発達神経病理組織学に及ぼす影響を若齢ラットで評価した。これらのエンドポイントのいずれに関しても、アピテグロマブ関連の有害所見はなく、若齢げっ歯類では、アピテグロマブによる潜在型ミオスタチンの特異的阻害によってはCNSにいかなる望ましくない影響も生じないことが確認された。
【0632】
アピテグロマブが心血管組織病理学及び/又は生理学に及ぼす影響をラット及びサルで評価した。心臓の重量及び組織病理学にアピテグロマブ関連の変化はなかった。更に、アピテグロマブは、心電図の定量的及び定性的判定によって判断するとき、心臓機能にいかなる有害な影響も及ぼさなかった。これらのデータは、ラット及びサルにおいてプロミオスタチン及び潜在型ミオスタチンの特異的標的化がいかなる望ましくない心臓毒性にも関連しないことを示唆している。
【0633】
アピテグロマブが骨に及ぼす効果を成体及び若齢動物で評価した。アピテグロマブによって骨ミネラル濃度、骨長、骨組織病理学が変化することはなく、X線所見に何ら効果は見られなかった。安全性判定のいずれにおいても、骨パラメータに及ぼすアピテグロマブ関連の有害効果は観察されなかった。
【0634】
ラット及びサルにおけるアピテグロマブの複数回投与TKプロファイルから、全ての動物で全身曝露があり、おおよその用量比例性及び複数回投与後の薬物の蓄積を伴うことが指摘される。毒性研究で実現したアピテグロマブ曝露は、治療した動物における骨格筋量の増加からも明らかなとおり、薬力学的効果を生み出すのに十分であった。更に、潜在型ミオスタチンの循環レベルの増加から、アピテグロマブが標的と会合し、飽和させる能力が指摘された。
【0635】
全体的に見て、アピテグロマブのインビボ毒性学判定は、最高300mg/kgで、成体ラットにおける最長26週間及び若齢ラットにおける8週間の慢性研究で同定された毒性のない好ましい安全性プロファイルを実証した。この非臨床毒性データは、マウスSMAモデルにおける前臨床薬理学研究を補完する。
【0636】
実施例3.ヌシネルセン又はリスジプラムによる治療下の遅発型脊髄性筋萎縮症患者におけるアピテグロマブの有効性及び安全性を評価する試験
この第3相試験の目的は、ヌシネルセン又はリスジプラムによるバックグラウンド療法を受けている遅発型脊髄性筋萎縮症(SMA)患者における運動機能の改善に関して、プラセボと比較したアピテグロマブの安全性及び有効性を評価することである。生存運動ニューロン(SMN)上方制御薬療法は、運動機能の悪化を予防し又は低減することにより、臨床アウトカムを有意に改善することが示されているが、しかしながら、標的化したSMN上方制御薬療法はSMN依存的経路に重点を置くもので、骨格筋に直接影響を与えることによって既に起こっている萎縮を好転させるものではないため、患者は依然として実質的な運動機能障害を被り得る。結果的に、SMA患者の筋萎縮に対処し、それによって運動機能を改善する補完療法的筋指向療法が医学的に必要とされ続けているが、未だ満たされていない。アピテグロマブは、ミオスタチン活性化の選択的阻害薬としてのその新規作用機序により、基礎SMN上方制御薬療法による治療下にあるSMA患者の広範な集団において運動機能に対する臨床的に有意味な効果を生み出す可能性を持っている。
【0637】
本試験は、スクリーニング時に年齢が2~21歳で、遅発型SMA(即ち、2型及び3型SMA)と診断済みの、承認されているSMN上方制御薬療法を受けている最中である患者で行うことにより、ヌシネルセンの補助療法としてのアピテグロマブの有効性及び安全性を確認し、及びリスジプラムの補助療法としてのアピテグロマブの有効性及び安全性を評価することになる。ヌシネルセン及びSMN上方制御薬リスジプラムは、両方とも、機能性SMNタンパク質の産生を増加させることによってSMAにおけるSMNタンパク質欠乏を治療するものであるため、ヌシネルセンで観察されている既報告の肯定的結果は、補助療法としての臨床試験用アピテグロマブの裏付けとなる。
【0638】
患者集団
患者は、スクリーニング時に年齢が2~21歳であること、及び平均余命がスクリーニングから少なくとも2年であることを含む予め指定された組入れ基準を満たすことになる。患者は5q SMAの診断記録を有し、且つヌシネルセン(nusinersin)又はリスジプラムのいずれかの投与を受ける前に遅発型、即ち、2型又は3型SMAと診断された者でなければならない。患者はスクリーニング時に歩行不能であり、且つスクリーニング時にWHO運動マイルストーンに従い自力で座ることができなければならない。患者は、少なくとも10ヵ月間のヌシネルセン(nusinersin)の投与又は少なくとも6ヵ月間のリスジプラムの投与のいずれかをスクリーニング前に完了していなければならない。患者はスクリーニング時にHFMSEスコアが10以上45以下であり、且つ運動機能アウトカム測定を受ける妨げとなり得るような身体的制約があってはならない。患者は、試験薬注入を受け、静脈内から血液試料を提供することができなければならず、及び出産年齢の女性患者は、避妊を遵守することに同意しなければならない。
【0639】
除外基準には、任意の時点でオナセムノゲンアベパルボベクの投与歴があること;アピテグロマブの前治療歴;SMN上方制御薬療法への重度の過敏性反応又は不耐性の既往歴;及びモノクローナル抗体又はFcドメインを担持する組換えタンパク質、アピテグロマブ、又はアピテグロマブの賦形剤への過敏性反応の既往歴が含まれる。除外基準にはまた、侵襲的換気又は気管切開術の必要があること;過去6ヵ月間の栄養状態が安定していなかったこと、及び試験の間中安定している見込みがないこと;経胃/経鼻胃栄養チューブの医学的必要性があって、大部分の栄養がこの経路によって与えられる場合;及び患者が任意の運動機能アウトカム測定に関して評価を受ける能力を実質的に制限する可能性のあるスクリーニング前6ヵ月以内の脊椎又は股関節手術を含めた大きな整形外科的又は他の介入手技、又は試験中にそれが見込まれることも含まれる。除外基準には更に、スクリーニング前3ヵ月以内又は5半減期以内のいずれか長い方における他の臨床試験中の治験薬による治療;スクリーニング前90日以内のバルプロ酸又はヒドロキシウレアの使用;スクリーニング前60日以内の承認済みのSMN上方制御薬療法以外の筋への重大な効果を持つ可能性のある療法又は神経筋への重大な効果を持つ可能性のある療法の使用;スクリーニング前60日以内の全身性コルチコステロイド薬の使用(吸入又は局所ステロイド薬は許容される);スクリーニング前7日以内の活動性全身感染症を含めた患者のウェルビーイングを妨げる何らかの急性の又は併存する病態であり、何らかの理由により急性治療、又は入院観察が必要であること;スクリーニング時の重度の拘縮又は脊柱側彎;投与前2週間の連日16時間を超える慢性的な昼間の非侵襲的換気補助の使用、又は試験の間中にわたって慢性的にかかる昼間の換気補助を定期的に受けると見込まれること;妊娠中又は授乳中;及び治験責任医師の意見によれば、安全性又は服薬厳守を危うくし得る、患者が試験の完了に成功する上での妨げとなるであろう、又は結果の解釈を妨害するような任意の他の病態又は臨床的に重大な臨床検査結果若しくはECG値が含まれる。
【0640】
試験デザイン
本試験には、スクリーニング、治療、及び安全性フォローアップ期間が含まれることになる。患者は静脈内(IV)注入によって10mg/kg又は20mg/kgアピテグロマブ又はプラセボの投与を受けるように無作為化されることになる。約204例の男性及び女性遅発型SMA患者を主要有効性集団(スクリーニング時に2~12歳)又は探索的サブ集団(スクリーニング時に13~21歳)のいずれかに無作為化することになる。主要有効性集団の患者は探索的サブ集団の患者と別個に無作為化することになる。
【0641】
主要有効性集団について、スクリーニング時に2~12歳である約156例の患者を、アピテグロマブ10mg/kg、アピテグロマブ20mg/kg、又はプラセボの4週間毎の投与を52週間の治療期間にわたって受けるように1:1:1に二重盲検で無作為化することになる。主要有効性集団の無作為化は、バックグラウンド療法の種類(即ち、ヌシネルセン又はリスジプラム)及びSMN上方制御薬療法の開始年齢(5歳以上及び5歳未満)で層別化することになる。
【0642】
探索的サブ集団については、スクリーニング時に13~21歳である最大48例の患者を、アピテグロマブ20mg/kg又はプラセボを4週間毎に52週間の治療期間にわたって受けるように2:1に二重盲検で無作為化することになる。探索的サブ集団の無作為化は、バックグラウンド療法の種類(即ち、ヌシネルセン又はリスジプラム)で層別化することになる。
【0643】
スクリーニング期間(-28日目~-1日目)では、インフォームドコンセントが提供された後にスクリーニング及び適格性判断を行うことになる。初回投与の最低7日前までにスクリーニング運動機能アウトカム測定を行うことになる。
【0644】
治療期間は1日目から始まる。投与後、患者は過敏性反応に関してモニタされることになり、及び投与後は毎回、患者は安全性チェックインのため7日以内に施設から電話連絡を受けることになる。治療期間の終了まで、患者の施設来院が4週間毎に行われることになる。治療期間中の活性判定には、小児障害インベントリー評価コンピュータ適応テスト(Pediatric Evaluation of Disability Inventory-Computer Adapted Test:PEDI-CAT)、患者報告アウトカム測定情報システム(Patient Reported Outcomes Measurement Information System:PROMIS)疲労簡易版(Fatigue Short Form)、神経筋疾患患者の介護者体験評価(Assessment of Caregiver Experience with Neuromuscular Disease:ACEND)質問票及びコロンビア自殺重症度評価尺度(Columbia-Suicide Severity Rating Scale:C-SSRS)が含まれることになる。PEDI-CATは、患者が日常の機能を遂行する能力を判定する介護者が全項目を行う質問票であり、出生~21歳のSMA患者の機能の判定に好適である。PROMISは、5歳以上の患者に好適な疲労症状の人間中心尺度である。これは、8歳以上の患者による、及び患者が8歳未満である場合にはその代理人による自己報告式である。PROMISは、軽度の主観的疲労感から、抗し難い消耗性の持続する脱力感に至るまでの範囲の症状を測定する。C-SSRSは、自殺念慮及び行動並びに治療により出現した自殺念慮及び行動を測定する。
【0645】
主要有効性集団については、プラセボと比較したときの2つの用量レベル(10mg/kg及び20mg/kg)を評価することになる。探索的サブ集団(subpoplation)には、20mg/kgの用量又はプラセボを4週間毎に又は毎月与えることになる。アピテグロマブの投与は全て、静脈内注入によることになる。
【0646】
患者は全て、プラセボ群に無作為化された者を含め、承認済みのSMA治療(即ち、ヌシネルセン又はリスジプラム)を受け続けることになる。患者は、ヌシネルセンについてはスクリーニングの少なくとも10ヵ月前又はリスジプラムについてはスクリーニングの少なくとも6ヵ月前から試験の全期間を通じて同じバックグラウンドSMA療法を続行中のままであったと予想される。ヌシネルセンの投与を受ける患者は、試験薬の投与を受けてから少なくとも24時間後に、又はいずれかの予定されている試験薬投与来院の少なくとも14日前に、その維持用量を受けなければならない。予定された試験薬投与前14日以内に該当するであろう患者のヌシネルセン治療のタイミングに変更があれば、事前にメディカルモニターと協議しなければならない。
【0647】
治療期間(来院14回目の12ヵ月判定)を完了した患者には、その時点で延長試験への参加の選択肢が与えられ得る。延長試験に登録しないことを選んだ患者は、来院14回目の後、20週間安全性フォローアップ期間でフォローされることになる。安全性フォローアップ期間の活性判定にもまた、PEDI-CAT、PROMIS、ACEND質問票及びC-SSRSが含まれることになる。
【0648】
個々の患者の試験参加全体は、約4週間のスクリーニング、52週間の試験来院及び20週間の安全性フォローアップからなることになる。
【0649】
主要有効性集団中少なくとも50%の患者が来院14回目判定を完了したとき、中間解析が行われることになる。本試験は、予め指定されたα消費関数に基づく境界値を超えた場合、中間解析時に早期有効性を主張し得る。早期有効性を主張する場合、本試験は中止されることになり、主要有効性集団及び探索的サブ集団の両方について治療割り付けの盲検が解除されることになり、及び全ての患者に延長試験への参加の選択肢が与えられることになる。早期有効性を主張しない場合、主要有効性集団の全ての患者が有効性及び安全性プロファイルを更に特徴付けるため12ヵ月判定を完了するまで、本試験は二重盲検で無作為化されたまま継続することになる。
【0650】
この試験の主要解析は、「主要有効性集団」、即ち、スクリーニング時に2~12歳である患者のデータを使用して実施することになる。主要有効性集団として2歳~12歳という年齢範囲に集中することにより、信頼性の高い検出力のある試験が容易となり、一方、アピテグロマブがより広い年齢範囲に及ぼす効果の調査は、13歳~21歳の年齢範囲における探索的サブ集団解析を通じて実現することができる。
【0651】
有効性及び安全性判定
検査すべき運動機能アウトカム測定は、HFSME、WHO運動発達マイルストーン及びRULMである。全ての患者についてHFSMEを実施することになり、これは、0、1及び2点で段階評価される33項目からなり、0点ができないことを表し、1点が、変更又は改変を加えて実施したことを表し、2点が、変更又は改変を加えない実施を表す。全ての患者について、WHO運動発達マイルストーン判定もまた実施することになり、これは、自力で歩く能力を獲得するまでの普遍的且つ基礎的な6つで一組の粗大運動マイルストーンである。スクリーニング時に年齢が少なくとも生後30ヵ月の患者は、日常生活に関係のある機能を検査する歩行不能患者における上肢機能の19項目判定、RULMを実施することになる。
【0652】
安全性判定には、人口統計学的情報及び病歴、バイタルサイン、体重及び高さ、理学的検査、心電図、及び並行薬物治療が含まれることになり、これらが収集され、文書化されることになる。臨床検査には、血清化学、血液学、検尿、及び凝固、PK及びPD試料採取、妊娠及びADA検査が含まれることになる;これらは、確立された方法を用いて実施することになる。リスジプラムは、中枢神経系への介入による自殺念慮及び自殺行動のリスクがあるため、モニタリングを実施することになる。6歳以上の年齢の患者には、C-SSRSを使用することになり、4~5歳の患者には、C-SSRSのごく低年齢の小児/認知障害版を使用することになる。
【0653】
アピテグロマブの有効性は、プラセボと比較したベースラインから12ヵ月までのHFMSE総スコアの変化によって判定することになる。主要アウトカムは、アピテグロマブ対プラセボで治療した主要有効性集団における治療企図(ITT)集団のHFMSEのベースラインからの12ヵ月までの平均変化の差である。ITT集団とは、患者が正しい治療を受けていないか、又は他の何らかの点でプロトコルに従っていない場合であっても、主要有効性集団における無作為化した全ての患者として定義される。目的の主要仮説は、基礎SMN上方制御薬療法で治療されている2~12歳の患者においてアピテグロマブ20mg/kgがプラセボと比較して優れた有効性を有するかどうかである。20mg/kg群で優れていると実証された場合、バックグラウンドSMA上方制御薬療法で治療されている2~12歳の患者においてアピテグロマブ10mg/kgがプラセボと比較して優れた有効性を有するかどうかという仮説を検証して、生物学的至適用量を決定することになる。
【0654】
無作為化時のベースラインHFMSE総スコア及び層別化係数に関して調整したロジスティックモデルを用いて、副次的エンドポイント、12ヵ月時のHFMSE総スコアのベースラインからの変化が3点以上である患者の割合を、アピテグロマブ20mg/kg(及び/又は10mg/kg)群とプラセボとの間で比較することになる。
【0655】
薬物動態学、薬力学及び免疫原性
治療期間中1、29、113、169、225、281、337及び365日目及びフォローアップ期間の終了時に全血試料を収集して、血清濃度を測定することを含め、アピテグロマブの薬物動態学(PK)を評価することになる。新たに出現したPKデータを収集して分析したところで、収集すべき試料数の減少を反映してPK試料スケジュールを調整してもよい。
【0656】
PK試料を収集するのと同じ時点で薬力学的研究(PD)及び免疫原性判定用の全血を収集することになる。患者の秘密保持が保たれ、治療割り付けを非盲検化し得るアピテグロマブ濃度情報は、治療割り付けの盲検が解除され終えるまで、臨床試験施設には、又は盲検化された職員には報告されないことになる。アピテグロマブのPDは、血清循環潜在型ミオスタチン濃度を測定することによって評価することになる。新たに出現したPDデータを収集して分析したところで、収集すべき試料数の減少を反映してPD試料スケジュールを調整してもよい。
【0657】
アピテグロマブに結合する抗体に関して血清試料をスクリーニングすることになり、陽性が確認された試料の力価を報告することになる。アピテグロマブに対する任意の検出された抗体の安定性を確かめ、及び/又はアピテグロマブの免疫原性を更に特徴付けるため、他の分析を実施し得る。アピテグロマブに対する抗体の検出及び特徴付けは、バリデートされたアッセイ方法を用いて実施することになる。アピテグロマブに対する抗体の検出用に収集した試料は全て、抗体データの解釈が可能となるように、アピテグロマブ血清濃度に関しても評価することになる。抗体は、アピテグロマブの活性を中和させるその能力に関して更に特徴付け、及び/又は評価し得る。試料は、アピテグロマブに対する免疫応答の更なる分析が可能となるように、最後の患者の最終来院後最長15年間にわたって、又は各施設の規則に従い保存し得る。
【0658】
目的及びエンドポイント
主要有効性集団
目的は、2~12歳の患者においてHFMSEを使用してプラセボと比較したアピテグロマブの有効性を判定することである。エンドポイントは、12ヵ月時のHFMSE総スコアのベースラインの変化である。
【0659】
目的は、2~12歳の患者において臨床的改善を有する患者の数に基づきプラセボと比較したアピテグロマブの有効性を判定することである。エンドポイントは、12ヵ月時にHFMSE総スコアのベースラインからの3点以上の変化があった患者の割合である。
【0660】
目的は、2~12歳の患者において改訂版上肢モジュール(Revised Upper Limb Module:RULM)を使用して上肢機能の変化を測定することにより、プラセボと比較したアピテグロマブの有効性を判定することである。エンドポイントは、12ヵ月時のRULM総スコアのベースラインからの変化である。
【0661】
目的は、2~12歳の患者において世界保健機関(World Health Organization:WHO)運動発達マイルストーンの数の変化を測定することにより、プラセボと比較したアピテグロマブの有効性を判定することである。エンドポイントは、12ヵ月時に達成したWHO運動発達マイルストーンの数のベースラインからの変化である。
【0662】
目的は、2~12歳の患者において他の予め指定された時点における追加的な運動機能アウトカム測定の変化及びHFMSEの変化を評価することにより、プラセボと比較したアピテグロマブの有効性を更に判定することである。エンドポイントは、(i)12ヵ月時のベースラインからのHFMSEスコアの様々な大きさの変化を実現する患者の割合;(ii)12ヵ月時のベースラインからのRULMスコアの様々な大きさの変化を実現する患者の割合;(iii)12ヵ月時にベースラインと比べて新規WHO運動発達マイルストーンを達成する患者の割合;(iv)他の予め指定された時点におけるHFMSE総スコアのベースラインからの変化;(v)他の予め指定された時点におけるRULM総スコアのベースラインからの変化;及び(vi)他の予め指定された時点で達成されたWHO運動発達マイルストーンの数のベースラインからの変化である。
【0663】
目的は、2~12歳の患者においてHFMSEを使用して全治療期間にわたる運動機能のベースラインからの変化を測定することにより、プラセボと比較したアピテグロマブの有効性を判定することである。エンドポイントは、12ヵ月の治療期間中の全時点にわたるHFMSE総スコアのベースラインからの変化である。
【0664】
目的は、2~12歳の患者においてHFMSEを使用してプラセボと比較したアピテグロマブの治療効果が出るまでの時間を判定することである。エンドポイントは、アピテグロマブとプラセボとの間を比較して、治療効果(HFMSE総スコアのベースラインからの3点以上の変化)が出るまでの時間である。
【0665】
目的は、2~12歳の患者においてアピテグロマブが患者/介護者報告型の能力障害、易疲労感、並びに自殺念慮及び自殺行動に及ぼす効果を評価することである。エンドポイントは、(i)PEDI-CATのベースラインからの変化;(ii)PROMIS疲労質問票のベースラインからの変化;(iii)ACENDのベースラインからの変化;及び(iv)C-SSRSのベースラインからの変化である。
【0666】
主要有効性集団/探索的サブ集団
目的は、少なくとも1用量のアピテグロマブの投与を受ける無作為化した全ての遅発型SMA患者においてアピテグロマブの安全性及び忍容性を判定することである。エンドポイントは、治療により出現した有害事象(TEAE)及び重篤有害事象(SAE)の重症度別の発生率である。
【0667】
目的は、少なくとも1用量のアピテグロマブの投与を受ける無作為化した全ての遅発型SMA患者においてアピテグロマブの薬物動態学(PK)を特徴付けることである。エンドポイントは、血液試料からの血清中のアピテグロマブ濃度である。
【0668】
目的は、少なくとも1用量のアピテグロマブの投与を受ける無作為化した全ての遅発型SMA患者においてアピテグロマブの薬力学的(PD)効果を評価することである。エンドポイントは、血液試料中の循環潜在型ミオスタチン濃度レベルである。
【0669】
目的は、少なくとも1用量のアピテグロマブの投与を受ける無作為化した全ての遅発型SMA患者においてアピテグロマブの免疫原性を評価することである。エンドポイントは、血液試料からの血清中のアピテグロマブに対する抗薬物抗体(ADA)が存在するか否かである。
【0670】
目的は、13~21歳の患者及び2~21歳の患者においてHFMSEを使用してプラセボと比較したアピテグロマブの有効性を判定することである。エンドポイントは、12ヵ月時のHFMSE総スコアのベースラインからの変化である。
【0671】
目的は、2~21歳の患者において臨床的改善のあった患者の数に基づきプラセボと比較したアピテグロマブの有効性を判定することである。エンドポイントは、12ヵ月時にHFMSE総スコアのベースラインからの変化が3点以上であった患者の割合である。
【0672】
目的は、13~21歳の患者及び2~21歳の患者においてRULMを使用してベースラインと治療期間終了時との間で上肢機能の変化を測定することにより、プラセボと比較したアピテグロマブの有効性を判定することである。エンドポイントは、12ヵ月時におけるRULM総スコアのベースラインの変化である。
【0673】
目的は、13~21歳の患者及び2~21歳の患者においてWHO運動発達マイルストーンの数の変化を測定することにより、プラセボと比較したアピテグロマブの有効性を判定することである。エンドポイントは、12ヵ月時に達成したWHO運動発達マイルストーンの数のベースラインからの変化である。
【0674】
目的は、13~21歳の患者及び2~21歳の患者において他の予め指定された時点における追加的な運動機能アウトカム測定の変化及びHFMSEの変化を評価することにより、プラセボと比較したアピテグロマブの有効性を判定することである。エンドポイントは、(i)12ヵ月時にベースラインからのHFMSEスコアの様々な大きさの変化を実現する患者の割合;(ii)12ヵ月時にベースラインからのRULMスコアの様々な大きさの変化を実現する患者の割合;(iii)12ヵ月時にベースラインと比べて新規WHO運動発達マイルストーンを達成する患者の割合;(iv)他の予め指定された時点におけるHFMSE総スコアのベースラインからの変化;(v)他の予め指定された時点におけるRULM総スコアのベースラインからの変化;及び(vi)他の予め指定された時点で達成したWHO運動発達マイルストーンの数のベースラインからの変化である。
【0675】
目的は、13~21歳の患者及び2~21歳の患者においてHFMSEを使用して全治療期間にわたる運動機能のベースラインからの変化を測定することにより、プラセボと比較したアピテグロマブの有効性を判定することである。エンドポイントは、12ヵ月の治療期間中の全時点にわたるHFMSE総スコアのベースラインからの変化である。
【0676】
目的は、13~21歳の患者においてHFMSEを使用してプラセボと比較したアピテグロマブの効果が安定化するまでの時間を判定することである。エンドポイントは、アピテグロマブとプラセボとの間を比較して悪化する(HFMSE総スコアのベースラインからの少なくとも-3点の変化)までの時間である。
【0677】
目的は、2~21歳の患者においてHFMSEを使用してプラセボと比較したアピテグロマブの治療効果が出るまでの時間を判定することである。エンドポイントは、アピテグロマブとプラセボとの間を比較して治療効果(HFMSE総スコアのベースラインからの1点以上の変化)が出るまでの時間である。
【0678】
目的は、13~21歳の患者及び2~21歳の患者においてアピテグロマブが易疲労感、介護者報告式の能力障害、並びに自殺念慮及び自殺行動に及ぼす効果を評価することである。エンドポイントは、(i)PEDI-CATのベースラインからの変化;(ii)PROMIS疲労質問票のベースラインからの変化;(iii)ACENDのベースラインからの変化;及び(iv)C-SSRSのベースラインからの変化である。
【0679】
実施形態
1.ヒト対象のSMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べた改訂版ハマースミススコア(Revised Hammersmith Score:RHS)スコアの低下を予防し又は遅延させるのに十分な2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与することを含む方法。
2.ヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、対象にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べたRHSスコアの低下を予防し又は遅延させるのに十分な2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与される、使用のための組成物。
3.ヒト対象のSMAを治療するためのアピテグロマブを含む組成物の使用であって、対象にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べたRHSスコアの低下を予防し又は遅延させるのに十分な2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与される、使用。
4.ヒト対象のSMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用であって、対象にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、治療前のベースラインスコアと比べたRHSスコアの低下を予防し又は遅延させるのに十分な2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与される、使用。
5.SMAが遅発型SMAである、実施形態1に記載の方法、実施形態2に記載の使用のための組成物、又は実施形態3又は4に記載の使用。
6.SMAが歩行可能3型SMAである、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
7.対象が5~21歳である、実施形態1~6のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
8.十分な量が2mg/kg超20mg/kg以下、任意選択で約5、10、15、又は20mg/kgの用量である、実施形態1~7のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
9.十分な量が、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
10.アピテグロマブが、例えば少なくとも11例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてRHSスコアの少なくとも0.2点の平均増加、任意選択でベースラインと比べてRHSスコアの0.3点、0.5点、少なくとも0.7点、少なくとも1点、少なくとも2点、又は少なくとも3点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態1~9のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
11.対象がSMN上方制御薬療法で治療される、実施形態1~10のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
12.SMN上方制御薬療法が、ヌシネルセン、リスジプラム、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクである、実施形態11に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
13.SMN制御薬療法が、ヌシネルセンである、実施形態11又は12に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
14.対象がSMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始した、実施形態11~13のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
15.アピテグロマブが、例えば少なくとも11例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べてRHSスコアの少なくとも0.3点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態11~14のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
16.アピテグロマブが、8週間後に、例えば少なくとも11例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べてRHSスコアの少なくとも0.3点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態11~15のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
17.量が、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態15又は16に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
18.対象がSMN上方制御薬療法で治療されない、実施形態1~10のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
19.アピテグロマブが、例えば少なくとも11例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べてRHSスコアの少なくとも0.7点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態18に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
20.アピテグロマブが、8週間後に、例えば少なくとも11例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べてRHSスコアの少なくとも0.7点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態18又は19に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
21.量が、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態18~20のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
22.アピテグロマブが、例えば少なくとも11例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べてRHSスコアの少なくとも1点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態1~21のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
23.アピテグロマブが、例えば少なくとも11例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べて少なくとも3点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態1~22のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
24.アピテグロマブが、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の血清濃度を実現する量で投与される、実施形態1~23のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
25.血清濃度が、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである、実施形態24に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
26.血清濃度が、定常状態血清濃度である、実施形態24又は25に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
27.アピテグロマブが、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される、実施形態1~26のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
28.アピテグロマブが、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される、実施形態1~27のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
29.血清潜在型ミオスタチン濃度が、約550~2400ナノグラム毎ミリリットルである、実施形態28に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
30.血清潜在型ミオスタチン濃度が、トラフで測定される定常状態濃度である、実施形態28又は29に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
31.アピテグロマブが、対象において以下のうちの1つ以上を実現する量で投与される:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持すること、実施形態1~30のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
32.量が、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態24~31のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
33.ヒト対象のSMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物とSMN上方制御薬を含む組成物とを投与することを含む方法において、対象にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、例えば少なくとも14例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてハマースミス機能運動評価尺度拡大版(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded:HFMSE)スコアの少なくとも1点の平均増加を生じさせるのに十分な2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与される、方法。
34.SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、対象にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、例えば少なくとも14例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも1点の平均増加を生じさせるのに十分な2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与される、使用のための組成物。
35.SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAを治療するためのアピテグロマブを含む組成物の使用であって、対象にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、例えば少なくとも14例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも1点の平均増加を生じさせるのに十分な2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与される、使用。
36.SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用であって、対象にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、例えば少なくとも14例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも1点の平均増加を生じさせるのに十分な2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与される、使用。
37.SMAが遅発型SMAである、実施形態33に記載の方法、実施形態34に記載の使用のための組成物、又は実施形態35又は36に記載の使用。
38.SMAが2型SMAである、実施形態33~37のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
39.SMAが歩行不能3型SMAである、実施形態33~37のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
40.対象が5~21歳である、実施形態33~39のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
41.SMN上方制御薬療法が、ヌシネルセン、リスジプラム、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクである、実施形態33~40のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
42.SMN上方制御薬療法が、ヌシネルセンである、実施形態33~41のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
43.十分な量が、約5、10、15、又は20mg/kgの用量である、実施形態33~42のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
44.十分な量が、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態33~43のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
45.アピテグロマブが、16週間後に、例えば少なくとも14例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも1点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態33~44のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
46.量が、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態45に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
47.アピテグロマブが、例えば少なくとも14例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点、少なくとも3点、少なくとも4点、又は少なくとも5点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態33~46のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
48.アピテグロマブが、例えば少なくとも14例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも3点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態33~47のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
49.アピテグロマブが、例えば少なくとも14例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも5点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態33~48のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
50.アピテグロマブが、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の血清濃度を実現する量で投与される、実施形態33~49のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
51.血清濃度が、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである、実施形態50に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
52.血清濃度が、定常状態血清濃度である、実施形態50又は51に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
53.アピテグロマブが、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される、実施形態33~52のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
54.アピテグロマブが、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される、実施形態33~53のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
55.血清潜在型ミオスタチン濃度が、約550~1650ナノグラム毎ミリリットルである、実施形態54に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
56.血清潜在型ミオスタチン濃度が、トラフで測定される定常状態濃度である、実施形態54又は55に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
57.アピテグロマブが、対象において以下のうちの1つ以上を実現する量で投与される:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持すること、実施形態33~56のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
58.量が、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態47~57のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
59.ヒト対象のSMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物とSMN上方制御薬を含む組成物とを投与することを含む方法において、対象にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、例えば少なくとも9例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加を生み出すのに十分な2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与され、及び対象がSMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した、方法。
60.SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、対象にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、例えば少なくとも9例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加を生み出すのに十分な2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与され、及び対象がSMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した、使用のための組成物。
61.SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAを治療するためのアピテグロマブを含む組成物の使用であって、対象にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、例えば少なくとも9例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加を生み出すのに十分な2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与され、及び対象がSMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した、使用。
62.SMN上方制御薬の投与を受けているヒト対象のSMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用であって、対象にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、例えば少なくとも9例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加を生み出すのに十分な2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与され、及び対象がSMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した、使用。
63.SMAが遅発型SMAである、実施形態59に記載の方法、請求項60に記載の使用のための組成物、又は請求項61又は62に記載の使用。
64.SMAが2型SMAである、実施形態59~63のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
65.対象が2歳以上の年齢である、実施形態59~64のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
66.SMN上方制御薬療法が、ヌシネルセン、リスジプラム、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクである、実施形態59~65のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
67.SMN上方制御薬療法が、ヌシネルセンである、実施形態59~66のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
68.十分な量が、約5、10、15、又は20mg/kgの用量である、実施形態59~67のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
69.十分な量が、4週間毎に又は毎月20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態59~68のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
70.アピテグロマブが、8週間後に、例えば少なくとも9例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態59~69のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
71.量が、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態70に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
72.アピテグロマブが、例えば少なくとも9例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも3点、少なくとも4点、又は少なくとも5点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態59~71のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
73.アピテグロマブが、例えば少なくとも9例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも3点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態59~72のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
74.アピテグロマブが、例えば少なくとも9例の対象のコホートにおいて、ベースラインと比べてHFMSEスコアの少なくとも5点の平均増加を生じさせる量で投与される、実施形態59~73のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
75.アピテグロマブが、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の血清濃度を実現する量で投与される、実施形態59~74のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
76.血清濃度が、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである、実施形態75に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
77.血清濃度が、定常状態血清濃度である、実施形態75又は76に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
78.アピテグロマブが、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される、実施形態59~77のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
79.アピテグロマブが、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される、実施形態59~78のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
80.血清潜在型ミオスタチン濃度が、約550~1100又は600~1000ナノグラム毎ミリリットルである、実施形態79に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
81.血清潜在型ミオスタチン濃度が、トラフで測定される定常状態濃度である、実施形態79又は80に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
82.アピテグロマブが、対象において以下のうちの1つ以上を実現する量で投与される:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持すること、実施形態59~81のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
83.量が、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態72~82のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
84.SMAを治療する方法であって、患者集団にアピテグロマブを含む組成物を投与することを含む方法において、患者集団にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、患者集団中の臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な量で投与され、及び臨床奏効率が6分間歩行テスト及び/又は30秒間立ち上がりテストによって測定される、方法。
85.SMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、患者集団にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、患者集団中の臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な量で投与され、及び臨床奏効率が6分間歩行テスト及び/又は30秒間立ち上がりテストによって測定される、使用のための組成物。
86.SMAを治療するためのアピテグロマブを含む組成物の使用であって、患者集団にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、患者集団中の臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な量で投与され、及び臨床奏効率が6分間歩行テスト及び/又は30秒間立ち上がりテストによって測定される、使用。
87.SMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用であって、患者集団にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、患者集団中の臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な量で投与され、及び臨床奏効率が6分間歩行テスト及び/又は30秒間立ち上がりテストによって測定される、使用。
88.患者集団が遅発型SMA集団である、実施形態84に記載の方法、請求項85に記載の使用のための組成物、又は請求項86又は87に記載の使用。
89.患者集団が歩行可能3型SMA集団である、実施形態84~88のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
90.患者集団が5~21歳のヒト対象を含む、実施形態84~89のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
91.患者集団がSMN上方制御薬療法で治療される、実施形態84~90のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
92.SMN上方制御薬療法が、ヌシネルセン、リスジプラム、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクである、実施形態91に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
93.SMN制御薬療法が、ヌシネルセンである、実施形態91又は92に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
94.患者集団がSMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始した、実施形態91~93のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
95.十分な量が、2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブ、任意選択で約5、10、15、又は20mg/kgの用量である、実施形態84~94のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
96.十分な量が、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態84~95のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
97.アピテグロマブが、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の血清濃度を実現する量で投与される、実施形態84~96のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
98.血清濃度が、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである、実施形態97に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
99.血清濃度が、定常状態血清濃度である、実施形態97又は98に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
100.アピテグロマブが、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される、実施形態84~99のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
101.アピテグロマブが、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される、実施形態84~100のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
102.血清潜在型ミオスタチン濃度が、約550~1100又は600~1000ナノグラム毎ミリリットルである、実施形態101に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
103.血清潜在型ミオスタチン濃度が、トラフで測定される定常状態濃度である、実施形態101又は102に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
104.アピテグロマブが、対象において以下のうちの1つ以上を実現する量で投与される:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持すること、実施形態84~103のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
105.量が、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態97~104のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
106.SMAを治療する方法であって、患者集団にアピテグロマブを含む組成物を投与することを含む方法において、患者集団にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、患者集団における臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な2超20以下(mg/kg)の量で投与され、及び臨床奏効率が改訂版上肢モジュール(Revised Upper Limb Module:RULM)及び/又は世界保健機関(World Health Organization:WHO)マイルストーンによって測定される、方法。
107.SMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、患者集団にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、患者集団における臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な2超20以下(mg/kg)の量で投与され、及び臨床奏効率がRULM及び/又はWHOマイルストーンによって測定される、使用のための組成物。
108.SMAの治療におけるアピテグロマブを含む組成物の使用であって、患者集団にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、患者集団における臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な2超20以下(mg/kg)の量で投与され、及び臨床奏効率がRULM及び/又はWHOマイルストーンによって測定される、使用。
109.SMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用であって、患者集団にアピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたり、患者集団における臨床奏効率(奏効例の比率)を増加させるのに十分な2超20以下(mg/kg)の量で投与され、及び臨床奏効率がRULM及び/又はWHOマイルストーンによって測定される、使用。
110.患者集団が遅発型SMA集団である、実施形態106に記載の方法、請求項107に記載の使用のための組成物、又は請求項108又は109に記載の使用。
111.患者集団が2型SMA集団である、実施形態106~110のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
112.患者集団が歩行不能3型SMA集団である、実施形態106~110のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
113.患者集団が2歳以上の年齢のヒト対象を含む、実施形態106~112のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
114.患者集団が5~21歳のヒト対象を含む、実施形態106~113のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
115.患者集団がSMN上方制御薬療法で治療される、実施形態106~114のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
116.SMN上方制御薬療法が、ヌシネルセン、リスジプラム、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクである、実施形態115に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
117.SMN制御薬療法が、ヌシネルセンである、実施形態115又は116に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
118.十分な量が、約5、10、15、又は20mg/kgの用量である、実施形態106~117のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
119.十分な量が、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態106~118のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
120.アピテグロマブが、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の血清濃度を実現する量で投与される、実施形態106~119のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
121.血清濃度が、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである、実施形態120に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
122.血清濃度が、定常状態血清濃度である、実施形態120又は121に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
123.アピテグロマブが、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される、実施形態106~122のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
124.アピテグロマブが、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される、実施形態106~123のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
125.血清潜在型ミオスタチン濃度が、約550~1100又は600~1000ナノグラム毎ミリリットルである、実施形態124に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
126.血清潜在型ミオスタチン濃度が、トラフで測定される定常状態濃度である、実施形態124又は125に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
127.アピテグロマブが、対象において以下のうちの1つ以上を実現する量で投与される:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持すること、実施形態106~126のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
128.量が、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態120~127のいずれか一つに記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
129.2歳以上の年齢のヒト対象の遅発型SMAを治療する方法であって、2超20以下(mg/kg)のアピテグロマブを対象に静脈内注入によって毎月投与することを含む方法。
130.2歳以上の年齢のヒト対象の遅発型SMAの治療における使用のためのアピテグロマブであって、2超20以下(mg/kg)のアピテグロマブが静脈内注入によって毎月投与される、使用のためのアピテグロマブ。
131.2歳以上の年齢のヒト対象の遅発型SMAを治療するためのアピテグロマブの使用であって、2超20以下(mg/kg)のアピテグロマブが静脈内注入によって毎月投与される、使用。
132.2歳以上の年齢のヒト対象の遅発型SMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用であって、2超20以下(mg/kg)のアピテグロマブが静脈内注入によって毎月投与される、使用。
133.アピテグロマブが、毎月又は4週間毎に5、10、15、又は20mg/kg、好ましくは毎月又は4週間毎に20mg/kgの用量で投与される、請求項129に記載の方法、実施形態130に記載の使用のためのアピテグロマブ、又は請求項131又は132に記載の使用。
134.アピテグロマブがSMN上方制御薬療法の補助剤として投与され、及び/又は対象が2型SMA、歩行可能3型SMA、歩行不能3型SMA、又は4型SMAを有する、実施形態129~133のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
135.アピテグロマブが、ヌシネルセンを含むSMN上方制御薬療法の補助剤として投与される、実施形態129~134のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
136.アピテグロマブが、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の血清濃度を実現する量で投与される、実施形態129~135のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
137.血清濃度が、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである、実施形態136に記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
138.血清濃度が、定常状態血清濃度である、実施形態136又は137に記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
139.アピテグロマブが、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される、実施形態129~138のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
140.アピテグロマブが、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される、実施形態129~139のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
141.血清潜在型ミオスタチン濃度が、約550~1100又は600~1000ナノグラム毎ミリリットルである、実施形態140に記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
142.血清潜在型ミオスタチン濃度が、トラフで測定される定常状態濃度である、実施形態140又は141に記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
143.アピテグロマブが、対象において以下のうちの1つ以上を実現する量で投与される:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持すること、実施形態129~142のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
144.量が、毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態136~143のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
145.ヒト対象の遅発型SMAを治療する方法であって、対象に2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含む方法において、対象が、SMAに対する運動ニューロン指向療法を5歳未満の年齢で開始しており、及び運動ニューロン指向療法がSMN1又はSMN2発現を増加させる、方法。
146.ヒト対象の遅発型SMAの治療における使用のためのアピテグロマブであって、治療が、対象に2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含み、対象が、SMAに対する運動ニューロン指向療法を5歳未満の年齢で開始しており、及び運動ニューロン指向療法がSMN1又はSMN2発現を増加させ、任意選択で、対象がいずれかの型のSMAを有し且つ2歳以下であり、及びSMN療法を受けたことがあるか、又は、対象が3コピー以下のSMN2遺伝子の1型SMAを有し、及びSMN療法を受けたことがある、使用のためのアピテグロマブ。
147.ヒト対象の遅発型SMAを治療するためのアピテグロマブの使用であって、治療が、対象に2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含み、対象が、SMAに対する運動ニューロン指向療法を5歳未満の年齢で開始しており、及び運動ニューロン指向療法がSMN1又はSMN2発現を増加させる、使用。
148.ヒト対象の遅発型SMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用であって、治療が、対象に2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含み、対象が、SMAに対する運動ニューロン指向療法を5歳未満の年齢で開始しており、及び運動ニューロン指向療法がSMN1又はSMN2発現を増加させる、使用。
149.治療が、6ヵ月後に、例えば少なくとも9例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加をもたらす、実施形態145に記載の方法、請求項146に記載の使用のためのアピテグロマブ、又は請求項147又は148に記載の使用。
150.運動ニューロン指向療法が、ヌシネルセン、リスジプラム、及び/又はオナセムノゲンアベパルボベクである、実施形態145~149のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
151.運動ニューロン指向療法が、ヌシネルセンである、実施形態145~150のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
152.アピテグロマブが、静脈内注入によって投与される、実施形態145~151のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
153.アピテグロマブが、2mg/kg超20mg/kg以下の用量で4週間毎に又は毎月投与される、実施形態145~152のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
154.アピテグロマブが、10mg/kg又は20mg/kgの用量で4週間毎に又は毎月投与される、実施形態145~153のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
155.遅発型SMAが、2型SMA、3型SMA、又は4型SMAである、実施形態145~154のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
156.3型SMAが、歩行可能又は歩行不能である、実施形態155に記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
157.5歳未満の年齢でSMN上方制御薬療法を受けなかったヒト対象のSMAを治療する方法であって、対象に2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含む方法において、アピテグロマブにより疾患進行が安定化するため、治療の開始後6ヵ月の時点で測定したHFMSEスコア又はRHSスコアがベースラインより下がることはなく、及びベースラインは、治療開始時又は開始前に入手される、方法。
158.5歳未満の年齢でSMN上方制御薬療法を受けなかったヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブであって、治療が、対象に2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含み、アピテグロマブにより疾患進行が安定化するため、治療の開始後6ヵ月の時点で測定したHFMSEスコア又はRHSスコアがベースラインより下がることはなく、及びベースラインは、治療開始時又は開始前に入手される、使用のためのアピテグロマブ。
159.5歳未満の年齢でSMN上方制御薬療法を受けなかったヒト対象のSMAを治療するためのアピテグロマブの使用であって、治療が、対象に2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含み、アピテグロマブにより疾患進行が安定化するため、治療の開始後6ヵ月の時点で測定したHFMSEスコア又はRHSスコアがベースラインより下がることはなく、及びベースラインは、治療開始時又は開始前に入手される、使用。
160.5歳未満の年齢でSMN上方制御薬療法を受けなかったヒト対象のSMAの治療用組成物の製造におけるアピテグロマブの使用であって、治療が、対象に2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブを4週間毎に又は毎月投与することを含み、アピテグロマブにより疾患進行が安定化するため、治療の開始後6ヵ月の時点で測定したHFMSEスコア又はRHSスコアがベースラインより下がることはなく、及びベースラインは、治療開始時又は開始前に入手される、使用。
161.アピテグロマブが、静脈内注入によって投与される、請求項157に記載の方法、実施形態158に記載の使用のためのアピテグロマブ、又は実施形態159又は160に記載の使用。
162.アピテグロマブが、10mg/kg又は20mg/kgの用量で4週間毎に又は毎月投与される、実施形態157~161のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
163.アピテグロマブが、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の血清濃度を実現する量で投与される、実施形態145~162のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
164.血清濃度が、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである、実施形態163に記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
165.血清濃度が、定常状態血清濃度である、実施形態163又は164に記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
166.アピテグロマブが、約112日後に定常状態血清濃度を実現する量で投与される、実施形態145~165のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
167.アピテグロマブが、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量で投与される、実施形態145~166のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
168.血清潜在型ミオスタチン濃度が、約550~1100又は600~1000ナノグラム毎ミリリットルである、実施形態167に記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
169.血清潜在型ミオスタチン濃度が、トラフ濃度である、実施形態167又は168に記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
170.アピテグロマブが、対象において以下のうちの1つ以上を実現する量で投与される:対照の悪化と比較したとき運動機能を保持すること、疾患進行を遅延させること、歩行可能3型SMA患者が歩行不能になるのを遅延させる又は予防すること、呼吸補助又は介入の必要を遅延させる又は予防すること、対照と比較したときの1つ以上の運動機能スコアの悪化速度を低下させること、及び/又はベースラインと比較したときの1つ以上の運動機能スコアにおける少なくとも正味ゼロの変化を維持すること、実施形態145~169のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
171.量が、4週間毎に又は毎月10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態163~170のいずれか一つに記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
172.ヒト対象の遅発型SMAの治療における使用のためのアピテグロマブであって、治療が、少なくとも600マイクログラムのアピテグロマブ毎ミリリットル(例えば、少なくとも600、700、800、900、1000マイクログラム毎ミリリットル又はそれ以上)の最大血清濃度を実現する量でアピテグロマブを投与することを含む、使用のためのアピテグロマブ。
173.最大血清濃度が、少なくとも600マイクログラム毎ミリリットルである、実施形態172に記載の使用のためのアピテグロマブ。
174.最大血清濃度が、約600~1000マイクログラム毎ミリリットルである、実施形態172又は173に記載の使用のためのアピテグロマブ。
175.血清濃度が、定常状態血清濃度である、実施形態172~174のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
176.ヒト対象の遅発型SMAの治療における使用のためのアピテグロマブであって、治療が、少なくとも500ナノグラム毎ミリリットル(例えば、少なくとも500、550、600、又は650ナノグラム毎ミリリットル)の血清潜在型ミオスタチン濃度によって測定されるとおりの標的会合を実現するのに十分な量でアピテグロマブを投与することを含む、使用のためのアピテグロマブ。
177.血清潜在型ミオスタチン濃度が、約550~1100又は600~1000ナノグラム毎ミリリットルである、実施形態176に記載の使用のためのアピテグロマブ。
178.血清潜在型ミオスタチン濃度が、定常状態濃度である、実施形態176又は177に記載の使用のためのアピテグロマブ。
179.量が、2mg/kg超のアピテグロマブの用量である、実施形態172~178のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
180.量が、静脈内注入によって4週間毎に又は毎月投与される2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブ、任意選択で約5、10、15、又は20mg/kgの用量である、実施形態172~179のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
181.量が、静脈内注入によって4週間毎に又は毎月投与される10mg/kg又は20mg/kgのアピテグロマブの用量である、実施形態172~180のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
182.アピテグロマブが、例えば少なくとも9例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも1点の平均増加を生じさせるのに十分な量で投与される、実施形態172~181のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
183.アピテグロマブが、例えば少なくとも9例の対象のコホートにおいて、治療前のベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも2点の平均増加を生じさせるのに十分な量で投与される、実施形態172~182のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
184.遅発型SMAが2型又は3型SMAであり、及び任意選択で対象が、SMN上方制御薬療法を続行中であり、及び任意選択で対象が、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した、実施形態172~183のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
185.ヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブであって、治療が、運動機能改善、疾患安定化、又は疾患進行の遅延によって特徴付けられる臨床的利益を生じさせるような、少なくとも600マイクログラム毎ミリリットルの血清曝露量を実現するのに十分な用量でアピテグロマブを投与することを含む、使用のためのアピテグロマブ。
186.用量が、4週間毎に又は毎月投与される2mg/kg超20mg/kg以下、任意選択で約5、10、15、又は20mg/kg、任意選択で約10mg/kg又は20mg/kgである、実施形態185に記載の使用のためのアピテグロマブ。
187.SMAが、2型SMA、3型SMA、又は4型SMAであり、更に任意選択で、3型SMAが、歩行可能又は歩行不能である、実施形態185又は186に記載の使用のためのアピテグロマブ。
188.SMAが遅発型SMAであり、任意選択で、遅発型SMAが、生後6ヵ月以降の年齢での症状発生によって表現型的に特徴付けられる、実施形態185又は186に記載の使用のためのアピテグロマブ。
189.SMAが遅発型SMAであり、任意選択で、遅発型SMAが、SMN2遺伝子を2コピー以上有することによって遺伝子型的に特徴付けられ、任意選択で、対象がSMN2遺伝子を2、3、4、5、又は6コピー保因する、実施形態185又は186に記載の使用のためのアピテグロマブ。
190.ヒト対象が、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始しており、任意選択で、対象がアピテグロマブ治療の開始より前に、又は開始時点で、12~44点又は14~42点のベースラインHFMSEスコアを有する、実施形態185~189のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
191.ヒト対象が、SMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始しており、任意選択で:アピテグロマブ治療の開始より前に、又は開始時点で、a)対象が13~39点のベースラインHFMSEスコアを有する、及び/又はb)対象が44~62点のベースラインRHSスコアを有する、実施形態185~189のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
192.ヒト対象がSMN上方制御薬療法で治療されず、任意選択で、対象が26~63点のベースラインRHSスコアを有する、実施形態185~189のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
193.運動機能改善が、アピテグロマブによる6ヵ月間の治療後における運動機能判定スコアのベースラインに対する少なくとも1点の増加を含む、実施形態185~192のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
194.運動機能改善が、アピテグロマブによる6ヵ月間の治療後における運動機能判定スコアのベースラインに対する少なくとも2点の増加を含む、実施形態185~193のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
195.運動機能改善が、アピテグロマブによる6ヵ月間の治療後における運動機能判定スコアのベースラインに対する少なくとも3点の増加を含む、実施形態185~194のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
196.運動機能改善が、アピテグロマブによる6ヵ月間の治療後における運動機能判定スコアのベースラインに対する少なくとも4点の増加を含む、実施形態185~195のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
197.運動機能改善が、アピテグロマブによる6ヵ月間の治療後における運動機能判定スコアのベースラインに対する少なくとも5点の増加を含む、実施形態185~196のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
198.疾患安定化が、アピテグロマブによる6ヵ月間の治療後における運動機能判定スコアの正味の損失がないことを含み、任意選択で、対象が、12ヵ月間での運動機能判定スコアの悪化によって特徴付けられる疾患進行が統計的に現れる患者集団に分類される、実施形態185~197のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
199.運動機能判定スコアが、HFMSEスコア又はRHSスコアである、実施形態193~198のいずれか一つに記載の使用のためのアピテグロマブ。
200.アピテグロマブを使用してSMA患者において目標飽和度を実現する方法であって、SMA患者に少なくとも20mg/kgのアピテグロマブを静脈内注入によって4週間毎に又は毎月投与することを含む方法。
201.アピテグロマブを使用してSMA患者において目標飽和度を実現する方法であって、SMA患者に少なくとも600マイクログラム毎ミリリットルの血清曝露量を実現するのに十分な用量でアピテグロマブを投与することを含む方法において、アピテグロマブが静脈内注入によって4週間毎に又は毎月投与される、方法。
202.ヒト対象の歩行可能SMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたって投与することを含む方法において、対象が、アピテグロマブ治療の開始より前に又は開始時に少なくとも26点のベースラインRHSスコアを有し、及び少なくとも600マイクログラム毎ミリリットルのアピテグロマブの血清曝露量を実現するアピテグロマブ治療が、疾患を改善し、又は安定化させるのに十分である、方法。
203.対象が、SMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始した、実施形態202に記載の方法。
204.ベースラインRHSスコアが63点以下である、実施形態202又は203に記載の方法。
205.ヒト対象の2型又は歩行不能3型SMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたって投与することを含む方法において、対象が、SMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始しており、及び対象が、少なくとも600マイクログラム毎ミリリットルの血清曝露量を実現するアピテグロマブ治療の開始より前に又は開始時に少なくとも13点、39点以下、又は両方(13~39点)のベースラインHFMSEスコアを有する、方法。
206.組成物が、6ヵ月後にベースラインに対してHFMSEスコアの少なくとも1点の増加を実現するのに十分である、実施形態205に記載の方法。
207.ヒト対象の2型又は歩行不能SMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも6ヵ月間にわたって投与することを含む方法において、対象がSMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始しており、及び対象が、少なくとも600マイクログラム毎ミリリットルの血清曝露量を実現するアピテグロマブ治療の開始より前に又は開始時に少なくとも12点、44点以下、又は両方(12~44点)のベースラインHFMSEスコアを有する、方法。
208.組成物が、6ヵ月後にベースラインに対してHFMSEスコアの少なくとも1点又は3点の増加を実現するのに十分である、実施形態207に記載の方法。
209.アピテグロマブが約20mg/kgで用量設定される、実施形態202~208のいずれか一つに記載の方法。
210.ヒト患者の遅発型SMAの治療における使用のための選択的ミオスタチン阻害薬であって、ヒト患者が歩行不能SMAを有し、患者が12~44点の範囲のベースラインHFMSEスコアを有し、任意選択で、選択的ミオスタチン阻害薬が、4週間毎に又は毎月2mg/kg超20mg/kg以下の投薬量であり、及び患者がSMN上方制御薬療法で治療され、任意選択で、選択的ミオスタチン阻害薬が、潜在型ミオスタチン複合体に特異的に結合することによって成熟ミオスタチンの放出を防ぐ抗体であり、任意選択で、選択のミオスタチン阻害薬がアピテグロマブ又はその変異体である、使用のための選択的ミオスタチン阻害薬。
211.ヒト患者の遅発型SMAの治療における使用のための選択的ミオスタチン阻害薬及びSMN上方制御薬であって、患者が44点以下のベースラインHFMSEスコアを有し、任意選択で、選択的ミオスタチン阻害薬が、潜在型ミオスタチン複合体に特異的に結合することによって成熟ミオスタチンの放出を防ぐ抗体であり、更に任意選択で、SMN上方制御薬がSMN2上方制御薬及び/又はSMN1遺伝子療法であるか、又はそれを含み、任意選択で、選択的ミオスタチン阻害薬が、4週間毎に又は毎月2mg/kg超20mg/kg以下の投薬量であり、更に任意選択で、抗体がアピテグロマブ又はその変異体である、使用のための選択的ミオスタチン阻害薬及びSMN上方制御薬。
212.以下の判定基準のうちの1つ以上を満たすSMA患者が、SMAに対する療法を受ける前に5q SMA及び遅発型(2又は3型)SMAの診断記録を有する;歩行不能であり、及び例えばWHO運動マイルストーンの定義によるとき、自力で座ることができる;歩行可能及び10メートルを30秒以内に助けなしで自力で歩くことができる;63点以下の改訂版ハマースミス評価尺度スコア及び/又は10点以上のハマースミス機能運動評価尺度拡大版スコアを有する;気管切開下陽圧換気又は治療前2週間以内の連日16時間を超える慢性的な昼間の非侵襲的換気補助を使用しない;治療前の2週間以内に患者のウェルビーイングを妨げるいかなる急性の又は併存する病態も有しない;重度の脊柱側彎又は拘縮を有しない;及び/又は60日以内に全身性コルチコステロイド薬、バルプロ酸、又はSMN上方制御薬を除く筋若しくは神経筋への効果を持つ可能性のある療法を使用しない、請求項1~211のいずれか一項に記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
213.筋又は神経筋への効果を持つ可能性のある療法として、アンドロゲン類、インスリン様成長因子、成長ホルモン、全身性β作動薬、ボツリヌス毒素、筋弛緩薬、筋増強サプリメント又はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が挙げられる、実施形態212に記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
214.患者がSMAに対する療法を受ける前に5q SMA及び遅発型(2又は3型)SMAの診断記録を有し、且つ1つ以上の追加の判定基準を満たす:歩行不能であり、及び例えばWHO運動マイルストーンの定義によるとき、自力で座ることができる;歩行可能及び10メートルを30秒以内に助けなしで自力で歩くことができる;63点以下の改訂版ハマースミス評価尺度スコア及び/又は10点以上のハマースミス機能運動評価尺度拡大版スコアを有する;気管切開下陽圧換気又は治療前2週間以内の連日16時間を超える慢性的な昼間の非侵襲的換気補助を使用しない;治療前の2週間以内に患者のウェルビーイングを妨げるいかなる急性の又は併存する病態も有しない;重度の脊柱側彎又は拘縮を有しない;及び/又は60日以内に全身性コルチコステロイド薬、バルプロ酸、又はSMN上方制御薬を除く筋若しくは神経筋への効果を持つ可能性のある療法を使用しない、実施形態212又は213に記載の方法、使用のためのアピテグロマブ、又は使用。
215.ヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、治療が、4週間毎に又は毎月2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブの用量での対象への組成物の静脈内投与を含み、対象がSMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始するか、又は開始した、使用のための組成物。
216.SMAが遅発型SMAである、実施形態215に記載の使用のための組成物。
217.対象がSMN2遺伝子を2コピー以上有する、実施形態215又は216に記載の使用のための組成物。
218.SMAが2型SMAであり、任意選択で、対象がSMN2遺伝子を2~4コピー有する、実施形態215~217のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
219.対象が歩行不能である、実施形態215~218のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
220.対象が2歳以上の年齢である、実施形態215~219のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
221.対象が、SMN1遺伝子の突然変異の保因者と遺伝的に同定され、任意選択で、対象がSMAの症候を有しない又はその症候を有する、実施形態215~220のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
222.対象が、アピテグロマブの初回用量を受けるより前に、又はそれを受ける時点で、少なくとも12点のベースラインHFMSEスコアを有する、実施形態215~221のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
223.少なくとも約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチンの持続的な(定常状態の)標的会合を実現するのに十分な量で対象に投与される、実施形態215~222のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
224.アピテグロマブの用量が、10mg/kg又は20mg/kgである、実施形態215~223のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
225.対象が、アピテグロマブの初回用量を受ける時点で、少なくとも4用量のSMN上方制御薬療法を受けている、実施形態215~224のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
226.対象が2型SMAを有する、実施形態215~225のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
227.アピテグロマブが、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも5点の増加を生じさせるのに十分な用量で投与される、実施形態215~226のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
228.アピテグロマブが、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの6~20点以上の増加、及び好ましくは少なくとも7点の増加を生じさせるのに十分な用量で投与される、実施形態215~227のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
229.アピテグロマブの用量が、4週間毎に又は毎月20mg/kgである、実施形態228に記載の使用のための組成物。
230.対象が、座ることはできるが、一度も歩く能力を獲得したことがなく、更に任意選択で、対象が2~18歳の年齢である、実施形態215~229のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
231.対象がSMN2遺伝子を2コピー以上有し、対象が無症候(又は発症前)であり、SMN1遺伝子療法を2歳未満の年齢で受けたことがあり、任意選択で、SMN1遺伝子療法がオナセムノゲンアベパルボベクを含み、更に任意選択で、対象がSMN2遺伝子を2コピー、SMN2遺伝子を3コピー、又はSMN2遺伝子を4コピー有する、実施形態215~229のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
232.対象がSMN2遺伝子を2コピー有し、対象が、腹臥位のときに頭を持ち上げる又は定頸する能力を獲得している、実施形態215~229のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
233.対象がSMN2遺伝子を2コピー有し、対象が、寝返りを打つ能力を獲得している、実施形態215~229のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
234.対象がSMN2遺伝子を2コピー有し、対象が、支えありで座る能力を獲得している、実施形態215~229のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
235.対象がSMN2遺伝子を2コピー有し、対象が、支えなしで座る能力を獲得している、実施形態215~229のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
236.対象がSMN2遺伝子を2コピー有し、対象が、つかまり立ちをする能力を獲得している、実施形態215~229のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
237.対象がSMN2遺伝子を2コピー有し、対象が、這う能力を獲得している、実施形態215~229のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
238.対象がSMN2遺伝子を2コピー有し、対象が、補助ありで歩く能力を獲得している、実施形態215~229のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
239.対象がSMN2遺伝子を2コピー有し、対象が、自力で歩く能力を獲得している、実施形態215~229のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
240.ヒト対象において、ベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも7点の増加を達成する方法であって、対象に約20mg/kgのアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも12ヵ月間にわたって投与することを含む方法において、対象が遅発型SMAを有し、ヌシネルセンによる治療を5歳未満の年齢で開始した、方法。
241.ヒト対象のSMAの治療をモニタする方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月2mg/kg超20mg/kg以下の量で投与すること;及び血清潜在型ミオスタチン濃度を検出することを含む方法において、少なくとも約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチン濃度が治療有効性を指示し、対象が遅発型(任意選択で2型)SMAを有し、ヌシネルセンによる治療を5歳未満の年齢で開始した、方法。
242.対象が歩行不能である、実施形態241に記載の方法。
243.対象が2歳以上の年齢である、実施形態241又は242に記載の方法。
244.アピテグロマブが、20mg/kgの用量で4週間毎に又は毎月投与される、実施形態241~243のいずれか一つに記載の方法。
245.少なくとも約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチン濃度を有する対象に追加用量のアピテグロマブを投与することを更に含む、実施形態241~244のいずれか一つに記載の方法。
246.ヒト対象のSMAを治療する方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を投与することを含む方法において、アピテグロマブが、2mg/kg超約20mg/kg以下の量で4週間毎に又は毎月投与され、対象が少なくとも約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチン濃度を有する場合にはアピテグロマブの投与が最大3回連続で省かれてもよく、対象が遅発型SMAを有し、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した、方法。
247.アピテグロマブが静脈内注入によって投与される、実施形態246に記載の方法。
248.対象が歩行不能であり、及び/又は2型SMAを有する、実施形態246又は247に記載の方法。
249.対象が2歳以上の年齢である、実施形態246~248のいずれか一つに記載の方法。
250.ヒト対象のSMAを治療する方法であって、対象に選択的ミオスタチン阻害薬を含む組成物を投与することを含む方法において、任意選択で選択的ミオスタチン阻害薬が、プロミオスタチン/潜在型ミオスタチンに選択的に結合する抗体であり、及び選択的ミオスタチン阻害薬が、対象において少なくとも約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチン濃度を達成する量で投与され、対象が遅発型(任意選択で2型)SMAを有し、SMN上方制御薬療法を5歳未満の年齢で開始した、方法。
251.血清濃度が、定常状態濃度である、実施形態250に記載の方法。
252.対象が歩行不能である、実施形態250又は251に記載の方法。
253.対象が2歳以上の年齢である、実施形態250~252のいずれか一つに記載の方法。
254.選択的ミオスタチン阻害薬が、アピテグロマブである、実施形態250~253のいずれか一つに記載の方法。
255.アピテグロマブが静脈内注入によって投与される、実施形態254に記載の方法。
256.アピテグロマブが、20mg/kgの用量で4週間毎に又は毎月投与される、実施形態254又は255に記載の方法。
257.ヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、治療が、対象への組成物の2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブの用量での4週間毎又は毎月の静脈内投与を含み、対象がSMN上方制御薬療法で治療され、対象がSMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始するか、又は開始した、使用のための組成物。
258.SMAが2型SMA又は3型SMAであり、任意選択で、対象がSMN2遺伝子を2~4コピー有する、実施形態257に記載の使用のための組成物。
259.対象が歩行不能3型SMAを有する、実施形態257又は258に記載の使用のための組成物。
260.対象が、SMN1遺伝子の突然変異の保因者と遺伝的に同定され、任意選択で、対象がSMAの症候を有しない又はその症候を有する、実施形態257~259のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
261.対象が、アピテグロマブの初回用量を受けるより前に、又はそれを受ける時点で、少なくとも13点のベースラインHFMSEスコアを有する、実施形態257~260のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
262.約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチンの持続的な(定常状態の)標的会合を実現するのに十分な量で対象に投与される、実施形態257~261のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
263.アピテグロマブの用量が、10mg/kg又は20mg/kgである、実施形態257~262のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
264.対象が5~21歳である、実施形態257~263のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
265.アピテグロマブが、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの低下がない又は最小限であることを実現するのに十分な用量で投与される、実施形態257~264のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
266.アピテグロマブが、12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの少なくとも1点の増加、及び好ましくは少なくとも3点の増加を生じさせるのに十分な用量で投与される、実施形態257~264のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
267.アピテグロマブの用量が20mg/kgである、実施形態257又は266に記載の使用のための組成物。
268.歩行不能SMAを有するヒト対象の疾患進行を安定化させる方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を静脈内注入によって4週間毎に又は毎月、少なくとも12ヵ月間にわたって投与することを含む方法において、対象がSMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始するか、又は開始した、方法。
269.アピテグロマブが、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてHFMSEスコアの低下がない又は最小限であることを実現するのに十分な用量で投与される、実施形態268に記載の方法。
270.アピテグロマブが、約20mg/kgの用量で投与される、実施形態268又は269に記載の方法。
271.ヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、治療が、対象への組成物の2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブの用量での4週間毎又は毎月の静脈内投与を含み、対象が歩行可能SMAを有し、及び任意選択で、対象がSMN上方制御薬療法を受けたことがない、使用のための組成物。
272.対象が歩行可能3型SMAを有し、任意選択で、対象が、SMN2遺伝子を3コピー以上有する、実施形態271に記載の使用のための組成物。
273.対象が、SMN1遺伝子の突然変異の保因者と遺伝的に同定され、任意選択で、対象がSMAの症候を有しない又はその症候を有する、実施形態271又は272に記載の使用のための組成物。
274.対象が、アピテグロマブの初回用量を受けるより前に、又はそれを受ける時点で、少なくとも26点のベースラインRHSスコアを有する、実施形態271~273のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
275.約250ng/mLの血清潜在型ミオスタチンの持続的な(定常状態の)標的会合を実現するのに十分な量で対象に投与される、実施形態271~274のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
276.アピテグロマブの用量が10mg/kg又は20mg/kgである、実施形態271~275のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
277.アピテグロマブが、少なくとも12ヵ月間の治療後にベースラインスコアと比べてRHSスコアを安定化させるのに十分な用量で投与される、実施形態271~276のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
278.RHSスコアの安定化に、ベースラインスコアと比べたRHSスコアの悪化が1点、2点、又は3点未満であることが含まれる、実施形態277に記載の使用のための組成物。
279.アピテグロマブの用量が20mg/kgである、実施形態277又は278に記載の使用のための組成物。
280.対象がSMN上方制御薬療法を5歳以降の年齢で開始した、実施形態271~279のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
281.SMAを有するヒト対象の歩行運動の喪失を予防し又は遅延させる方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を2mg/kg超20mg/kg以下のアピテグロマブの用量で4週間毎に又は毎月、少なくとも12ヵ月間にわたって投与することを含む方法において、対象が歩行可能SMAを有し、及び任意選択で、対象がSMN上方制御薬療法を受けたことがない、方法。
282.患者が歩行可能3型SMAを有する、実施形態281に記載の方法。
283.進行が、歩行可能SMA患者集団の自然歴と比べて、12ヵ月間のアピテグロマブ治療後に歩行可能から歩行不能への移行が遅延することによって判定される、実施形態281又は282に記載の方法。
284.進行が、歩行可能SMA患者集団の自然歴と比べて、12ヵ月間のアピテグロマブ治療後にベースラインに対する運動機能スコアの悪化速度が遅くなる又は悪化の程度が小さくなることによって判定される、実施形態281~283のいずれか一つに記載の方法。
285.組成物が、約50mg/mLのアピテグロマブの濃度で製剤化される、実施形態215~284のいずれか一つに記載の使用のための組成物又は方法。
286.SMN上方制御薬療法が、ヌシネルセン、オナセムノゲンアベパルボベク、及び/又はリスジプラムを含む、実施形態215~285のいずれか一つに記載の使用のための組成物又は方法。
287.SMN上方制御薬療法がヌシネルセンを含む、実施形態286に記載の使用のための組成物又は方法。
288.SMN上方制御薬療法が髄腔内投与を含む、実施形態215~287のいずれか一つに記載の使用のための組成物又は方法。
289.ヒト対象のSMAの治療における使用のためのSMN上方制御薬療法及び筋指向療法であって、治療が、5歳未満の年齢でのSMN上方制御薬療法の開始を含み、及び筋指向療法が、アピテグロマブを含む組成物の2mg/kg超20mg/kg以下の用量での4週間毎又は毎月の静脈内投与を含み、任意選択で、アピテグロマブの用量が約10mg/kgである、使用のためのSMN上方制御薬療法及び筋指向療法。
290.アピテグロマブを含む組成物が、約50mg/mLの濃度で製剤化される、実施形態289に記載の使用のためのSMN上方制御薬療法及び筋指向療法。
291.SMN上方制御薬療法が、ヌシネルセン、オナセムノゲンアベパルボベク、及び/又はリスジプラムを含む、実施形態289又は290に記載の使用のためのSMN上方制御薬療法及び筋指向療法。
292.ヒト対象の遅発型SMAの治療方法であって、対象にアピテグロマブを含む組成物を2超20以下(mg/kg)の治療用量で4週間毎に又は毎月静脈内投与することを含む方法において、組成物が、約50mg/mLの濃度で製剤化される、方法。
293.治療用量が、少なくとも約250ng/mLの潜在型ミオスタチンの定常状態血清濃度を実現するのに十分な用量である、実施形態292に記載の方法。
294.対象がSMN2遺伝子を2~4コピー有する、292に記載の方法。
295.対象が2型SMAを有する、実施形態292又は284に記載の方法。
296.対象が、生後12ヵ月の年齢で上体起こして座る能力を有するか、又は有したとともに、生後18ヵ月の年齢で歩く能力を欠いているか、又は欠いていた、実施形態295に記載の方法。
297.対象が歩行不能3型SMAを有する、実施形態292又は294に記載の方法。
298.対象が、生後18ヵ月の年齢までに歩く能力を失った、実施形態297に記載の方法。
299.対象が、SMN2遺伝子を3~6コピー有する、実施形態292に記載の方法。
300.対象が歩行可能3型SMAを有する、実施形態292又は299に記載の方法。
301.対象が、生後18ヵ月の年齢で歩く能力を保持していた、実施形態299又は300に記載の方法。
302.対象が、生後18ヵ月以降の年齢で歩行可能から歩行不能への移行を起こす、実施形態301に記載の方法。
303.対象が、SMN指向療法で治療される、実施形態292~302のいずれか一つに記載の方法。
304.対象が、5歳未満の年齢でSMN指向療法を開始するか、又は開始した、実施形態303に記載の方法。
305.対象が、5歳以上の年齢でSMN指向療法を開始するか、又は開始した、実施形態303に記載の方法。
306.SMN指向療法が、SMN1指向療法及び/又はSMN2指向療法である、実施形態303~305のいずれか一つに記載の方法。
307.SMN1指向療法が、遺伝子療法である、実施形態306に記載の方法。
308.遺伝子療法が、SMN1遺伝子置換を含むウイルスベクターを含む、実施形態306に記載の方法。
309.SMN2指向療法が、スプライシング修飾剤であるか、又はそれを含む、実施形態306に記載の方法。
310.スプライシング修飾剤が、SMN2エクソンに結合することによってエクソンのスプライシングを修飾する核酸を含む、実施形態309に記載の方法。
311.スプライシング修飾剤が、SMN2エクソンに結合することによってエクソンのスプライシングを修飾する低分子量化合物を含む、実施形態309に記載の方法。
312.治療用量が、12ヵ月間のアピテグロマブ療法後に対象の運動機能の増強を生じさせるのに十分であり、任意選択で、運動機能がHFMSE又はRHSによって判定される、実施形態292~305のいずれか一つに記載の方法。
313.運動機能の増強が、ベースラインに対する運動機能スコアの増加を含み、任意選択で、増加が少なくとも1点、3点、5点、又は10点である、実施形態312に記載の方法。
314.ベースラインが、SMN指向療法後に判定される運動機能スコアを含む、請求項、実施形態に記載の方法。
315.ベースラインが、SMN指向療法を受けたことがない対象で判定される運動機能スコアを含む、実施形態313に記載の方法。
316.治療用量が、対象が分類されるSMA患者集団の自然歴と比べて疾患進行の遅延を生じさせるのに十分である、実施形態292~305のいずれか一つに記載の方法。
317.ヒト対象の遅発型SMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、治療が、対象への組成物の2超20以下(mg/kg)の治療用量での4週間毎又は毎月の静脈内投与を含み、任意選択で、組成物が、約50mg/mLの濃度で製剤化され、更に任意選択で、治療用量が、少なくとも250ng/mLの潜在型ミオスタチンの定常状態血清濃度を実現するのに十分である、使用のための組成物。
318.対象がSMN2遺伝子を2~4コピー有する、実施形態317に記載の使用のための組成物。
319.対象が2型SMAを有する、実施形態317又は318に記載の使用のための組成物。
320.対象が、生後12ヵ月の年齢で上体起こして座る能力を有するか、又は有したとともに、生後18ヵ月の年齢で歩く能力を欠いているか、又は欠いていた、実施形態319に記載の使用のための組成物。
321.対象が歩行不能3型SMAを有する、実施形態317~320のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
322.対象が、生後18ヵ月の年齢までに歩く能力を失った、実施形態317、318、及び321のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
323.対象がSMN2遺伝子を3~6コピー有する、実施形態317に記載の使用のための組成物。
324.対象が歩行可能3型SMAを有する、実施形態317又は323に記載の使用のための組成物。
325.対象が、生後18ヵ月の年齢で歩く能力を保持していた、実施形態324に記載の使用のための組成物。
326.対象が、生後18ヵ月以降の年齢で歩行可能から歩行不能への移行を起こす、実施形態324又は325に記載の使用のための組成物。
327.対象が、SMN指向療法で治療される、実施形態317~326のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
328.対象が、5歳未満の年齢でSMN指向療法を開始するか、又は開始した、実施形態327に記載の使用のための組成物。
329.対象が、5歳以上の年齢でSMN指向療法を開始するか、又は開始した、実施形態327に記載の使用のための組成物。
330.SMN指向療法が、SMN1指向療法及び/又はSMN2指向療法である、実施形態327~329のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
331.SMN1指向療法が、遺伝子療法である、実施形態330に記載の使用のための組成物。
332.遺伝子療法が、SMN1遺伝子置換を含むウイルスベクターを含む、実施形態331に記載の使用のための組成物。
333.SMN2指向療法が、スプライシング修飾剤であるか、又はそれを含む、実施形態330に記載の使用のための組成物。
334.スプライシング修飾剤が、SMN2エクソンに結合することによってエクソンのスプライシングを修飾する核酸を含む、実施形態333に記載の使用のための組成物。
335.スプライシング修飾剤が、SMN2エクソンに結合することによってエクソンのスプライシングを修飾する低分子量化合物を含む、実施形態333に記載の使用のための組成物。
336.治療用量が、12ヵ月間のアピテグロマブ療法後に対象の運動機能の増強を生じさせるのに十分であり、任意選択で、運動機能がHFMSE又はRHSによって判定される、実施形態317~335のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
337.運動機能の増強が、ベースラインに対する運動機能スコアの増加を含み、任意選択で、増加が少なくとも1点、3点、5点、又は10点である、実施形態336に記載の使用のための組成物。
338.ベースラインが、SMN指向療法後に判定される運動機能スコアを含む、実施形態337に記載の使用のための組成物。
339.ベースラインが、SMN指向療法を受けたことがない対象で判定される運動機能スコアを含む、実施形態337に記載の使用のための組成物。
340.治療用量が、対象が分類されるSMA患者集団の自然歴と比べて疾患進行の遅延を生じさせるのに十分である、実施形態317~339のいずれか一つに記載の使用のための組成物。
341.治療を必要としているヒト対象の歩行不能又は遅発型SMAの治療方法であって、対象に2mg/kg超20mg/kg以下の投薬量のアピテグロマブをQ4Wで(即ち、4週間毎に)又は毎月静脈内投与することを含む方法。
342.治療を必要としているヒト対象の歩行不能又は遅発型SMAの治療方法であって、少なくとも約250ng/mLの定常状態血清潜在型ミオスタチン濃度を実現するのに十分な量で対象にアピテグロマブを静脈内投与することを含む方法。
343.歩行可能SMAのヒト対象のSMAの進行を減速させる方法であって、対象に2mg/kg超20mg/kg以下の投薬量のアピテグロマブをQ4Wで(即ち、4週間毎に)又は毎月静脈内投与することを含む方法。
344.対象が歩行可能3型SMAを有する、請求項343に記載の方法。
345.進行が、歩行可能SMA患者集団の自然歴と比べて、12ヵ月間のアピテグロマブ治療後に歩行可能から歩行不能への移行が遅延することによって判定される、実施形態343又は344に記載の方法。
346.進行が、歩行可能SMA患者集団の自然歴と比べて、12ヵ月間のアピテグロマブ治療後にベースラインに対する運動機能スコアの悪化速度が遅くなる又は悪化の程度が小さくなることによって判定される、実施形態343又は344に記載の方法。
347.対象が2~12歳である、実施形態1~346のいずれか一つに記載の方法又は使用のための組成物。
348.対象が、SMN上方制御薬/修正薬療法を5歳未満の年齢で開始した、実施形態347に記載の方法又は使用のための組成物。
349.対象がSMN上方制御薬/修正薬療法を5歳以降の年齢で開始した、実施形態347に記載の方法又は使用のための組成物。
350.対象が5~12歳である、実施形態349に記載の方法又は使用のための組成物。
351.対象が13~21歳である、実施形態1~346のいずれか一つに記載の方法又は使用のための組成物。
352.対象が、SMN上方制御薬/修正薬療法を5歳未満の年齢で開始した、実施形態351に記載の方法又は使用のための組成物。
353.対象が、SMN上方制御薬/修正薬療法を5歳以降の年齢で開始した、実施形態351に記載の方法又は使用のための組成物。
354.対象がアピテグロマブ治療の開始時に歩行不能である、実施形態347~353のいずれか一つに記載の方法又は組成物。
355.対象が、アピテグロマブ治療の開始前少なくとも10ヵ月間にわたってヌシネルセンバックグラウンド療法を続行中であった、実施形態347~354のいずれか一つに記載の方法又は組成物。
356.対象が、アピテグロマブ治療の開始前少なくとも6ヵ月間にわたってリスジプラムバックグラウンド療法を続行中であった、実施形態347~354のいずれか一つに記載の方法又は組成物。
357.治療を必要としているヒト対象の2型又は3型歩行不能SMAの治療方法であって、対象に1用量以上のアピテグロマブを4週間に1回又は月1回、10mg/kg又は20mg/kgで静脈内投与することを含む方法において、対象が2~12歳である、方法。
358.ヒト対象の2型又は3型歩行不能SMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、治療が、対象に1つ以上の10mg/kg又は20mg/kg用量のアピテグロマブを4週間に1回又は月1回静脈内投与することを含み、対象が2~12歳である、組成物。
359.対象が、アピテグロマブ治療の開始前少なくとも10ヵ月間にわたってヌシネルセンバックグラウンド療法を続行中であった、実施形態357又は実施形態358に記載の方法又は組成物。
360.対象が、アピテグロマブ治療の開始前少なくとも6ヵ月間にわたってリスジプラムバックグラウンド療法を続行中であった、実施形態357又は実施形態358に記載の方法又は組成物。
361.治療を必要としているヒト対象の2型又は3型歩行不能SMAの治療方法であって、対象に1用量以上のアピテグロマブを4週間に1回又は月1回20mg/kgで静脈内投与することを含む方法において、対象が13~21歳である、方法。
362.ヒト対象の2型又は3型歩行不能SMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、治療が、対象に1つ以上の20mg/kg用量のアピテグロマブを4週間に1回又は月1回静脈内投与することを含み、対象が13~21歳である、組成物。
363.対象が、アピテグロマブ治療の開始前少なくとも10ヵ月間にわたってヌシネルセンバックグラウンド療法を続行中であった、請求項361又は請求項362に記載の方法又は組成物。
364.対象が、アピテグロマブ治療の開始前少なくとも6ヵ月間にわたってリスジプラムバックグラウンド療法を続行中であった、実施形態361又は実施形態362に記載の方法又は組成物。
365.治療を必要としているヒト対象のSMAの治療方法であって、対象に1用量以上のアピテグロマブを4週間に1回又は月1回静脈内投与することを含む方法において、対象が年齢5歳以下である、方法。
366.ヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、治療が、対象に1用量以上のアピテグロマブを4週間に1回又は月1回静脈内投与することを含み、対象が5歳以下である、組成物。
367.対象が、アピテグロマブ治療の開始前にSMN上方制御薬/修正薬療法を受けたことがない、実施形態365又は実施形態366に記載の方法又は組成物。
368.治療を必要としているヒト対象のSMAの治療方法であって、対象に1用量以上のアピテグロマブを4週間に1回又は月1回静脈内投与することを含む方法において、対象が年齢2歳以下である、方法。
369.ヒト対象のSMAの治療における使用のためのアピテグロマブを含む組成物であって、治療が、対象に1用量以上のアピテグロマブを4週間に1回又は月1回静脈内投与することを含み、対象が2歳以下である、組成物。
370.対象が、アピテグロマブ治療の開始前にSMN上方制御薬/修正薬療法を受けたことがない、実施形態368又は実施形態369に記載の方法又は組成物。
371.患者の発症前SMAの治療における組み合わせ療法としての使用のためのミオスタチン選択的阻害薬及びSMN1遺伝子療法であって、治療が、SMAを治療するのに有効な量での発症前患者へのミオスタチン選択的阻害薬及びSMN1遺伝子療法の投与を含み、任意選択で、患者がSMN2遺伝子を2コピー有し、及び更に任意選択で、患者がSMN1遺伝子療法の投与時点で生後6週間以下である、使用のためのミオスタチン選択的阻害薬及びSMN1遺伝子療法。
372.SMN2遺伝子が2コピーの患者の発症前SMAの治療における使用のためのミオスタチン選択的阻害薬であって、治療が、患者への有効量のミオスタチン選択的阻害薬の投与を含み、患者が生後6週間以下でSMN1遺伝子療法を投与される、使用のためのミオスタチン選択的阻害薬。
373.SMN2遺伝子が2コピーの患者の発症前SMAの治療における使用のためのSMN1遺伝子療法であって、治療が、生後6週間以下の患者へのSMN1遺伝子療法の投与を含み、及び患者がミオスタチン選択的阻害薬で更に治療される、使用のためのSMN1遺伝子療法。
374.ミオスタチン選択的阻害薬が、アピテグロマブ、GYM329又はトレボグルマブである、実施形態371~373のいずれか一つに記載の使用のためのミオスタチン選択的阻害薬及び/又はSMN1遺伝子療法。
375.ミオスタチン選択的阻害薬が、アピテグロマブ、トレボグルマブ又はGYM329と同じエピトープに結合する抗体又はその抗原結合断片であり、任意選択で、抗体又は断片が、アピテグロマブ、トレボグルマブ又はGYM329の変異体である、実施形態374に記載の使用のためのミオスタチン選択的阻害薬及び/又はSMN1遺伝子療法。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14
図15A-15C】
図16
図17
図18
図19
図20A-20D】
図21A-21D】
図22A
図22B
図23A
図23B
図23C
図23D
図24A-24B】
図25
図26A-26D】
図27A-27B】
【配列表】
2023549455000001.app
【国際調査報告】