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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-27
(54)【発明の名称】懸垂型超伝導伝送線路
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/34 20060101AFI20231117BHJP
   H02J 4/00 20060101ALI20231117BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
H02G15/34
H02J4/00
H02J1/00 301E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527393
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 US2021058926
(87)【国際公開番号】W WO2022108818
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/115,140
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523163185
【氏名又は名称】ヴェイル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アッシュワース,スティーブン ポール
(72)【発明者】
【氏名】モリコーニ,フランコ
(72)【発明者】
【氏名】ハイデル,ティモシー デイビッド
【テーマコード(参考)】
5G066
5G165
【Fターム(参考)】
5G066AA20
5G165PA04
5G165PA05
(57)【要約】
冷却機構を有する電力伝送システムと、それを動作させる方法と、が説明される。電力伝送システムは、複数の支持塔アセンブリを含み得る。支持塔アセンブリの各々は、支持塔を含む。支持塔アセンブリのうち1つ以上は、終端部(すなわち、接続点であって、それを介して電流及び/又は冷却材が伝送線路に進入すること及び/又は伝送線路から出ていくことができるもの)を含む。電力伝送システムは、地表の上方に懸垂された複数の導体アセンブリも含む。各導体アセンブリは、電気導体を含み、一対の支持塔の間に配置され、その一対の支持塔によって機械的に支持される。電力伝送システムは、電力伝送システムの動作中に導体アセンブリの冷却のために終端部のうちの少なくとも1つに冷却材流体を送達する冷却材供給システムも含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持塔と、
地表の上方に懸垂された複数の導体アセンブリであって、前記複数の導体アセンブリの各導体アセンブリは前記複数の支持塔のうちの一対の支持塔の間に配設されると共にその一対の支持塔によって機械的に支持され、各導体アセンブリは、超伝導体材料を含む電気導体を含み、前記超伝導体材料を周囲温度未満の温度範囲内に維持するための冷却材流を受け取るように構成されている、導体アセンブリと、
を備える、電力伝送システム。
【請求項2】
各導体アセンブリは、前記冷却材流を含有するように構成された断熱ジャケットを更に含み、
前記断熱ジャケットは、前記電力伝送システムの動作電圧から電気的に絶縁されない、請求項1の電力伝送システム。
【請求項3】
各導体アセンブリは、前記電気導体の温度と同様の温度に維持される内面を有する断熱ジャケットを更に含み、
前記断熱ジャケットは、関連する前記導体アセンブリを機械的に支持するように構成されている、請求項1の電力伝送システム。
【請求項4】
複数の機械的支持体を更に含み、
前記複数の機械的支持体の各機械的支持体は、前記複数の導体アセンブリのうち1つの導体アセンブリを機械的に支持するように構成されている、請求項1の電力伝送システム。
【請求項5】
前記複数の導体アセンブリの各導体アセンブリは、断熱ジャケットと、前記電気導体と前記断熱ジャケットとの間に配設された誘電絶縁体と、を更に含み、
前記誘電絶縁体は、架橋ポリエチレン(XLPE)又はポリプロピレンラミネート紙(PPLP)のうち1つを含む、請求項1の電力伝送システム。
【請求項6】
前記複数の導体アセンブリの各導体アセンブリは、2つの同心壁の間に配設された誘電絶縁体を有する断熱ジャケットを更に含み、
前記誘電絶縁体は、XLPE又はPPLPのうち少なくとも1つを含む、請求項1の電力伝送システム。
【請求項7】
前記複数の導体アセンブリの各導体アセンブリは、断熱ジャケットと誘電絶縁体とを更に含み、
前記誘電絶縁体は、前記断熱ジャケットの外面と前記導体アセンブリの外面との間に配設される、請求項1の電力伝送システム。
【請求項8】
各導体アセンブリは、電気的に接地された断熱ジャケットと、前記電気導体と前記断熱ジャケットとの間に配設された誘電絶縁体と、を更に含む、請求項1の電力伝送システム。
【請求項9】
前記複数の支持塔のうち少なくとも1つの支持塔は、前記電力伝送システムの動作中に液体寒剤によって生成される蒸気を排気するように構成された中間冷却所を含む、請求項1の電力伝送システム。
【請求項10】
複数の支持塔アセンブリであって、前記複数の支持塔アセンブリの各支持塔アセンブリが、支持塔と、複数の終端部のうち1つの終端部と、を含む、複数の支持塔アセンブリと、
地表の上方に懸垂された複数の導体アセンブリであって、前記複数の導体アセンブリの各導体アセンブリは、前記複数の支持塔のうちの一対の支持塔の間に配設されると共にその一対の支持塔によって機械的に支持される、複数の導体アセンブリと、
前記電力伝送システムの動作中に前記導体アセンブリの冷却のために前記複数の終端部のうち少なくとも1つの終端部に寒剤を送達するように構成された極低温供給システムと、を備えており、
前記複数の導体アセンブリの各導体アセンブリは、超伝導通電要素と、前記超伝導通電要素の温度を周囲温度未満の温度範囲内に維持するために前記寒剤が中を通って流れる断熱ジャケットと、を含む、
電力伝送システム。
【請求項11】
前記寒剤は、液体窒素、液体水素、液体ヘリウム、液体ネオン、液体天然ガス、又は、液体空気のうち少なくとも1つを含む、請求項10の電力伝送システム。
【請求項12】
前記断熱ジャケットのうち少なくとも1つは、前記電力伝送システムの動作電圧から電気的に絶縁されない、請求項10の電力伝送システム。
【請求項13】
前記断熱ジャケットのうち少なくとも1つは、電気的に接地される、請求項10の電力伝送システム。
【請求項14】
前記超伝導通電要素は、複数の超伝導体含有ワイヤ又は複数の超伝導体含有テープのうち1つを含む、請求項10の電力伝送システム。
【請求項15】
前記複数の支持塔アセンブリのうち少なくとも1つの支持塔アセンブリは、前記電力伝送システムの動作中に前記寒剤によって生成される蒸気を排気するように構成された中間冷却所を含む、請求項10の電力伝送システム。
【請求項16】
前記極低温供給システムは、前記寒剤を前記複数の終端部のうち前記少なくとも1つの終端部に選択された温度及び圧力で供給するように構成された調節ユニットを備える、請求項10の電力伝送システム。
【請求項17】
前記断熱ジャケットのうち少なくとも1つは関連する前記懸垂された導体アセンブリを機械的に支持する、請求項10の電力伝送システム。
【請求項18】
前記断熱ジャケットのうち少なくとも1つは、その内部に配設されると共に関連する前記懸垂された導体アセンブリを機械的に支持するように構成された引張支持要素を含む、請求項10の電力伝送システム。
【請求項19】
前記複数の導体アセンブリの各導体アセンブリは、前記複数の支持塔アセンブリのうちの関連する支持塔アセンブリに絶縁体を介して接続され、
前記絶縁体は、前記関連する支持塔アセンブリからの前記導体アセンブリの電気的絶縁を提供する、請求項10の電力伝送システム。
【請求項20】
前記複数の導体アセンブリは、伝送線路を形成し、
前記寒剤は、前記電力伝送システムの動作中に前記伝送線路に平行な方向に沿って流れる、請求項10の電力伝送システム。
【請求項21】
複数の支持塔アセンブリであって、前記複数の支持塔アセンブリの各支持塔アセンブリが、支持塔と、複数の終端部のうち1つの終端部と、を含む、複数の支持塔アセンブリと、
地表の上方に懸垂された複数の導体アセンブリであって、前記複数の導体アセンブリの各導体アセンブリは、前記複数の支持塔のうちの一対の支持塔の間に配設されると共にその一対の支持塔によって機械的に支持される、複数の導体アセンブリと、
前記電力伝送システムの動作中に前記導体アセンブリの冷却のために前記複数の終端部のうち少なくとも1つの終端部に冷却材流体を送達するように構成された冷却材供給システムと、を備えており、
前記複数の導体アセンブリの各導体アセンブリは、超伝導通電要素と、前記電力伝送システムの動作中に前記超伝導通電要素を熱から保護するように構成された断熱ジャケットと、を含む、
電力伝送システム。
【請求項22】
前記冷却材流体の温度又は圧力のうち一方を修正するように構成された複数の再冷却所を更に備え、
前記複数の再冷却所の各再冷却所は、前記電力伝送システムの動作電圧に維持されて接地電位から絶縁される、請求項21の電力伝送システム。
【請求項23】
前記冷却材流体の温度又は圧力のうち一方を修正するように構成された複数の再冷却所を更に備え、
前記複数の再冷却所の各再冷却所は、接地電位に維持される、請求項21の電力伝送システム。
【請求項24】
前記複数の支持塔アセンブリのうち少なくとも1つの支持塔アセンブリは、前記電力伝送システムの動作中に前記冷却材流体によって生成される蒸気を排気するように構成された中間冷却所を含む、請求項21の電力伝送システム。
【請求項25】
前記冷却材流体は、液体窒素、液体水素、液体ヘリウム、液体ネオン、液体天然ガス、又は液体空気のうち1つを含む、請求項21の電力伝送システム。
【請求項26】
各断熱ジャケットは、2つの同心壁の間に配設された誘電絶縁体を更に含み、
前記誘電絶縁体は、架橋ポリエチレン(XLPE)又はポリプロピレンラミネート紙(PPLP)のうち1つを含む、請求項21の電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001] 本願は、2020年11月18日に提出され「Suspended Superconducting Transmission Lines」と題された米国仮特許出願第63/115,140号の優先権及び利益を主張するものであり、同出願の開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は送電の分野に関し、より具体的には、架空懸垂型伝送線路を使用した交流(AC)又は直流(DC)電力の分配に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]電力は、典型的には、その発生点から消費者負荷へ、電力網(「グリッド」)を使用して移動される。電力網は、発電機、変圧器、開閉装置、伝送線路及び分配線路、並びに制御装置及び保護装置などの構成要素を含む。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本明細書に記載される実施形態は、冷却機構を備える電力伝送システムと、それを動作させる方法と、に関する。いくつかの実施形態においては、電力伝送システムは、複数の支持塔アセンブリを含む。支持塔アセンブリの各々は支持塔を含む。支持塔アセンブリのうち1つ以上は、終端部(すなわち、接続点であって、それを介して電流及び/又は冷却材が伝送線路に進入すること及び/又は伝送線路から出ていくことができるもの)を含む。電力伝送システムは、地表の上方に懸垂された複数の導体アセンブリを更に含む。各導体アセンブリは、電気導体を含み、複数の支持塔のうちの一対の支持塔の間に配設され、その一対の支持塔によって機械的に支持される。各導体アセンブリは、超伝導通電要素を含み、超伝導体材料を周囲温度未満の温度範囲内に維持するための冷却材流を受け取るように構成されている。いくつかの実施形態においては、各導体アセンブリは、冷却材流を含有するための熱的に絶縁性のジャケット(本明細書では断熱ジャケット(「TIJ」)とも称される)を任意選択的に含むことができる。いくつかの実施形態においては、断熱ジャケットは、電力伝送システムの動作電圧から電気的に絶縁されない。電力伝送システムは、電力伝送システムの動作中に導体アセンブリの冷却のために複数の終端部のうち少なくとも1つの終端部に冷却材流体を送達する冷却材供給システムを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】[0005] 一実施形態による、超伝導架空電力伝送システム例の構成要素を示すブロック図である。
図2】[0006] 一実施形態による、OH電力伝送線路及び関連するサブシステムを含む超伝導OH電力伝送システムを示す。
図3】[0007] 一実施形態による、超伝導OH電力伝送線路/システム用の導体アセンブリの一区画の斜視図を示す。
図4】[0008] 一実施形態による、1つ以上の超伝導体(超伝導体ワイヤ又はテープ)に隣接しTIJ内に配設された電気絶縁部を含む、超伝導OH電力伝送線路/システム用の導体アセンブリの一区画の斜視図を示す。
図5】[0009] 一実施形態による、TIJの外部に配設された電気絶縁部を含む、超伝導OH電力伝送線路/システム用の導体アセンブリの一区画の斜視図を示す。
図6】[0010] 一実施形態による、冷却材管を含む、超伝導OH電力伝送線路/システムにおいて使用される導体アセンブリの一区画の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0011] 本明細書において説明される実施形態は、超伝導体ケーブル及び冷却機構を備える電力伝送システムと、それを製造し動作させる方法と、に関する。本明細書に記載される、電力伝送システムにおいて用いられる超伝導体ケーブルは、超伝導性を維持しながら、従来のワイヤの電流の最大10倍で動作することができる。より高い電流は、より低い電圧及びより小さい送電線用地(rights-of-way)を可能にする。加えて、エネルギは、既知のシステムとは対照的に、電力伝送システムを通じて、より高速に、狭い送電線用地を通り、エネルギ損失を低減されて移送され得る。また、超伝導体を備える電力伝送システムに能動冷却機構を組み込むことによって、本開示の電力伝送線路は、既知のシステムとは対照的に、低減されたサグ及びクリープ並びに/又は経時的により一貫したサグ及びクリープを呈し得る。換言すれば、本開示の電力伝送線路は、電力伝送線路の能動的に制御された温度を考慮して、経時的に可変的でない又は実質的に変化しないサグ及び/又はクリープを呈し得る。
【0007】
[0012] 既知の電力伝送システムは、連続的な電気導体を使用して発電所を消費者負荷と相互接続する。火力(例えば蒸気駆動)発電設備、原子力発電設備、水力発電設備、天然ガス発電設備、太陽光発電設備、及び風力発電設備などの発電所は、典型的には15kVから25kVの範囲のAC電圧で電気エネルギを発生させる。エネルギを長距離にわたって輸送するために、関連する電圧は、発電所において、例えば昇圧変圧器を介して増大される。超高圧(EHV)電力伝送線路は、230kV以上の電圧で、地理的に離れた変電所にエネルギを輸送することができる。中間変電所では、電圧は降圧変圧器を介して高電圧(HV)レベルまで低減され得、エネルギは、220から110kVの範囲の電圧で動作する電力伝送線路を介してHV変電所に輸送される。負荷により近いHV変電所では、電圧は更に69kVまで低減され、副伝送線路がHV変電所を多くの分配所に接続する。分配変電所では、電圧は35kVから12kVの範囲の値まで低減され、その後、柱上又はパッドマウント降圧変圧器を介して、4160/480/240/120Vで負荷に分配される。伝送及び分配に使用される正確な電圧は、異なる地域及び異なる国で僅かに変化する。
【0008】
[0013] 米国では、EHV電力伝送線路は230kVから800kVの公称電圧を有し、HV電力伝送線路は115kVから230kVの公称電圧を有する。69kVから115kVの電圧の場合、線路はサブ伝送レベルにあると考えられ、60kV未満では分配レベルにあると考えられる。これらの指定を区分する電圧値は、ある程度任意であり、管轄権を有する当局及び/又は場所に応じて変化し得る。既知のEHV電力伝送線路が400~500マイルまでエネルギを輸送することができるのに対し、HV電力伝送線路は200マイルまでエネルギを輸送することができ、サブ伝送線路はエネルギを50~60マイル輸送することができる。高電圧DC(HVDC)電力伝送線路は、長距離にわたって又は水中でエネルギを伝送するために使用される。HVDCシステムにおいては、発電機によって発生されたAC電圧が整流され、エネルギがDCケーブルを介して受電所に伝送され、そこでインバータを使用してDC電圧を変換してACに戻す。
【0009】
[0014] 上述したように、電気導体は、発電機と消費者負荷(「負荷」)との間の連続的な接続を形成するために使用される。電気導体は、適宜、バスバー、地下ケーブル、及び/又は架空(すなわち物理的に懸垂された)線路(伝送及び分配の両方)を含み得る。架空(「OH」)電力伝送線路は主に開放廊下で又は広い道路に沿って使用されるのに対し、地下ケーブルは人口密度の高い都市の混雑したエリアで使用され得る。OH伝送システムは、地上で電気導体を支持する塔又は柱(「パイロン」とも称される)などの支持構造のシステムを含む。OH電力伝送システムはまた、導体を互いに及び塔から電気的に絶縁された状態に保ちながら導体を塔に機械的に接続する誘電絶縁体、並びに電気接地及び機械的完全性を提供する要素も含む。電気接地及び機械的完全性を提供する要素は、構造基礎、接地電極、及びシールド導体を含み得る。各支持構造は、以下のタイプのうちの1つであり得る。(A)通過/連続型(すなわち、補助の冷却材入口もしくは出口なしで、且つ冷却材の再冷却、再加圧、もしくは流れ制御を実施することなく、冷却材流の連続性及び電力伝送の連続性を提供する)、(B)流れ補充型(すなわち、冷却材流の連続性及び電力伝送の連続性を提供し、補助の冷却材入口及び/もしくは出口を含むが、冷却材の再冷却、再加圧、もしくは流れ制御を実施しない)、(C)冷却材処理型(すなわち、冷却材流の連続性及び電力伝送の連続性を提供し、冷却材の再冷却、再加圧、もしくは流れ制御を実施するが、補助の冷却材入口もしくは出口はない)、又は(D)組み合わせ型(すなわち、冷却材流の連続性及び電力伝送の連続性を提供し、補助の冷却材入口もしくは出口を備え、冷却材の再冷却、再加圧、もしくは流れ制御を実施する)。本明細書に記載されるOH伝送システムは、支持構造A,B,C,及びD、又はこれらのサブセットの任意の組み合わせを含むことができる。支持構造は、電力伝送線路の電圧、場所、及び/又は地方自治体もしくは他の規制当局の要件などに応じて、種々の設計のいずれかを有し得る。例示的な設計は、格子状又は管状の塔、片持ち支持された又は支線付きの柱及びマスト、並びに骨組式構造を含む。このような支持構造を製作するために使用される材料は、例えば、亜鉛めっき鋼、コンクリート、木材、プラスチック及び/又は繊維ガラス合成材を含み得る。
【0010】
[0015] OH電力伝送線路のための導体は、裸金属(bare metal)(例えば銅、アルミニウム、もしくはアルミニウムと鋼とのマトリックス)であってもよく、又は電気誘電絶縁材で被覆されもしくは包まれていてもよい。裸金属導体は絶縁導体よりも安価であり、したがって、OH電力伝送線路において一般に好適である。アルミニウムは、銅よりも低い導電率を有するが、そのより低いコスト及びより軽い重量に起因して、OH電力伝送線路においてより一般的に使用されている。アルミニウム導体の機械的強度を高めるために、鋼撚り線が導体コアに導入され、それによって複合導体を形成してもよい。このアルミニウム導体鋼強化(ACSR)導体は、現在のところOH電力伝送線路において使用される最も一般的な導体である。最近では、アルミニウムと複合材料及び/又は他の金属とのマトリックスを備える「高温低サグ」導体もグリッド内に配備されている。グリッドの分配領域において、及びより低い電圧(例えば25kV未満)では、誘電的に絶縁されたOH導体が遥かに一般的である。地下導体は、他の導体又は地面/土壌との電気的接触を防止するために、典型的には電気絶縁材で被覆される。
【0011】
[0016] 裸OH導体(bare OH conductor)は、OH電力伝送システムにおいて使用されるとき、典型的には、柱又は塔から懸垂され、絶縁体によって支持され、地面/土壌、草木、及び他の構造に対して所定の最小隙間を維持するように設計される。典型的には、周囲空気が、裸OH導体のシステムにおいて用いられる電気絶縁媒体である。換言すれば、裸OH導体のシステムに固定される追加の構造はない。絶縁体は、柱/塔のタイプ及び場所に応じて、種々の異なる構成で柱又は塔に取り付けられ得る。絶縁体は、セラミック、磁器、ガラス、及び複合材など、種々の異なる材料から製作することができる。絶縁体は、電気的、機械的、及び環境的ストレスに耐えるように設計及び選択される。電力伝送線路の寿命にわたり、連続的な動作と、切り替え、故障、及び落雷によって生成される関連する一時的な過電圧とに起因して、絶縁体内では電気的ストレスが発生し得る。機械的ストレスも、導体の自重、氷形成、及び風荷重の結果として絶縁体内で発生し得る。環境的ストレスは、絶縁体の電気的性能及び機械的性能の両方に影響を与えるおそれがあり、周囲温度の変動、UV放射、雨、着氷、汚染、及び高度によって引き起こされ得る。
【0012】
[0017] 支持構造によって懸垂されているとき、導体は、典型的には湾曲形状を呈し、2つの最も近接した懸垂柱又は塔の間のある点で発生する、地面までの最小隙間を有する。地面までの、又は他の通電部品(energized parts)までの最小隙間は、典型的には、その場所(例えば州又は連邦)について採用された技術標準によって決定されると共に、伝送線路の電圧に依存する。より高い電圧の線路は、典型的には、地面までのより大きな所定の最小隙間を有し、結果としてより高い懸垂柱又は塔を使用する。
【0013】
[0018] 既知のOH導体は、非ゼロの電気抵抗率を有する。導体が電力を搬送しているとき、電流は熱を発生させ、導体温度は周囲温度を超えて上昇する。導体の電気抵抗は温度の増加につれて線形的に増加し、したがって関連する抵抗損失(IR)が高電力レベルにおいて有意になり得る。このような損失も、導体が搬送することができる電力を制限し得る。なぜなら、導体はその構成材料の特性によって決定される最大動作温度を有するからである。過度に高い温度で動作すると、導体の材料特性を経時的に劣化させるおそれがある。
【0014】
[0019] 上昇した導体温度は、熱膨張に起因して、導体の長さを増加させ得、それによって地面までの隙間を減少させる(すなわち、「サグ」を増加させる)。導体はまた、張力に起因して経時的に伸長又は「クリープ」し、永久的に増加したサグをもたらし得る。この増加したサグは、導体の設置中に地面までの最小隙間を決定するときに考慮され得る。導体を最大許容サグに到達させる最大電流又は電力は、「熱的制限(thermal limit)」として知られている。
【0015】
[0020] 多くのOH導体は、製造業者が課した75℃の動作温度上限を有する。周囲温度及び風の所定の条件下での所与の動作温度制限に対する最大定格電流は、電流容量として知られている。OH導体は、典型的には、75℃で2,000アンペア(2,000A)までの定格電流容量で利用可能である。いくつかの「高温」導体は、225℃の温度まで、永久的な損傷又は過度のサグなしに、安全に動作することができる。しかしながら、数百マイルの長さにわたって伝送線路を225℃に維持することのエネルギ損失は大きい。
【0016】
[0021] OH伝送線路の「物理的な熱的制限」とは、OH伝送線路がその最大動作温度に到達する前に輸送することができる電力の量を指す。物理的な熱的制限は、大気温度、太陽、風、時刻(太陽の角度)などの周囲条件に依存し得る。OH伝送線路のオペレータがOH伝送線路のすべての場所における状態をリアルタイムで知ることは困難であるから、熱的制限は控えめに設定されることが多く、場合によっては、「動的」制限が使用され得るシナリオと比較して、伝送線路が有意に未活用となることにつながる。
【0017】
[0022] 上記に鑑みると、電流容量を増加させて、特定の電圧で搬送される電力を増加させることが望ましい。また、より高価でより高い動作温度の材料の使用を回避するために、電力を伝送する際の全体的なエネルギ損失を低減することが望ましい。さらに、最大限の利用を可能にするために、伝送線路の容量限界に対する環境の影響を除去することが望ましい。電力伝送線路のための送電線用地の獲得及び許可は、新しい電力線路を設置すること又は既存の線路の容量を増加させることに対する主要な障害の1つである。よって、新しい伝送線路を設計するとき、(例えば既存の伝送線路の)既存のシステム電圧仕様との互換性を保証することは、既存の送電線用地の再利用を容易にし、それによってコストを削減する。送電線用地の幅は、塔の高さ、ひいては動作電圧に依存する。所与の電力に対してより低い電圧で動作することは、より低い塔又は柱の使用を容易にし、それによって環境への影響を低減すると共に、潜在的には社会的受容性を高める。
【0018】
[0023] いくつかの用途では、導体を電気的に絶縁して、発火する可能性を低減させることが望ましい。導体を電気絶縁材で包囲することは、導体を熱的にも絶縁し得るが、それによって、所与の電力散逸に対して導体の温度を増加させる。これは、熱的に制限された導体の電流容量を減少させ、したがって所与の電圧に対する電力を減少させる。
【0019】
[0024] いくつかの電気的に絶縁された導体は、絶縁体の外側に接地電位(又は負のシステム電圧)の第2の導体層を含む。この外側「シールド」導体が内側(「コア」)導体と同じ電流容量を有しており、回路が常にコアと同じであるが反対の極性を有する電流を搬送するように構成されている場合、外部磁場及び電場は常にゼロである。電流搬送シールドはまた、潜在的なシステムの利益を伴って、導体の自己インダクタンスを低減するように作用し得る。しかしながら、電気抵抗が非ゼロのシールドは、電流を搬送するときに熱を発生させ、したがってシステムの熱的制限を低下させる。
【0020】
[0025] 上記に鑑みると、上述した既知のシステムの電流よりも高い電流で及び/又は既知のシステムの電圧よりも低い電圧レベルでAC電力及び/又はDC電力を搬送することができ、柱又は塔から懸垂されることができ、その電力容量が環境条件に実質的に依存せず、その熱に対する電力/エネルギ損失がより低く、低減された視覚的影響を有し、且つ所与の電力定格に対してより狭い送電線用地を利用する、伝送線路システムの必要がある。そのような伝送線路システムの導体は、電気的に絶縁されていてもよく、任意選択的には、電流容量を有意に減少させないシールド層を含んでいてもよい。このような伝送線路システムが、本開示の主題である。
【0021】
[0026] いくつかの実施形態によれば、AC電力又はDC電力を輸送するためのシステムは、1つ以上の超伝導材料を使用して構築され、時間シフトされ得る低減されたエネルギ損失を示す、懸垂型OH電力伝送線路を含む。システムはまた、超伝導材料を特定の動作温度に維持するために、断熱材と、動作中に流動する冷却材と、を含む。システムの機械的構成要素は、それらの機械的特性がOH電力伝送線路の物理的懸垂に十分であることに基づいて選択される。
【0022】
[0027] いくつかの実施形態においては、懸垂型架空電力伝送線路を介してAC電力又はDC電力を輸送するための電力システムは、複数のワイヤ(「テープ」とも称される)を有する導電性要素を含む。複数のワイヤは、少なくとも1つの超伝導体を含む。電力システムは、導体の周囲から導体に到達する熱の量を最小化するための断熱ジャケット(「TIJ」)も含む。TIJは、システム電圧レベルに維持され得、又は電気的に接地され得る。電力システムは、導体を支持するため及び例えば架空電力伝送線路のように導体を地面から離して懸垂するためにTIJ内に配設された機械的引張支持要素も含む。電力システムは、電力システムの動作中に超伝導体を所定の動作温度まで冷却するように及び電力システムの動作中に電力システム内で発生した熱及び/又は電力システムの動作中に電力システムに進入する熱を除去することによって動作温度を所定の温度範囲内に維持するように構成された、冷却材供給システムも含む。電力システムは、冷却材流体(例えば液体、気体、又は液体と気体との組み合わせ)を、その冷却材流体を伝送線路に流入させると共に伝送線路に沿って流動させることによって、伝送線路の1つ以上の場所(例えば始端、終端、及び/又は1つもしくは複数の中間点)に送達するように構成された、冷却材送達及び調節システムも含む。電力システムは複数の終端部も含み、それらを介して電流及び/又は冷却材が伝送線路に進入すること及び/又は伝送線路から出ていくことができる。1つ以上の実施形態においては、電力システムは1つ又は複数の中間調節部(intermediate conditioners)(本明細書では「再冷却所」又は「中間冷却所」とも称される)も含むことができ、冷却材はそこで動作温度及び動作圧力に維持される。中間調節部はシステム電圧レベルに維持されて接地電位から絶縁され得、又は中間調節部は接地電位に維持され得る。他の実施形態においては、中間調節部は電力システムに含まれない。電力システムは排気システムも含み、この排気システムは、再冷却所及び/又は複数の終端部の少なくとも1つのサブセットと共に配置され、冷却材によって生成された過剰な蒸気を大気に排気するように構成されている。電力システムはまた、伝送線路を支持するように構成された1つ以上の塔及び/又は柱と、伝送線路を1つ又は複数の塔/1つ又は複数の柱上に機械的に支持するように且つ伝送線路を1つ又は複数の塔/1つ又は複数の柱から電気的に絶縁するように構成された複数の誘電絶縁体と、を含む。
【0023】
[0028] 本明細書においては機能要素が別々に列挙されているが、2つ以上の機能を1つの要素に組み合わせることは有利であり得る。例えば、機械的引張支持体は、TIJの一部から形成されてもよい。本明細書において説明される実施形態の実施例(implementation)は、比較的低損失で長距離にわたる高電流電力伝送を支援することができる。
【0024】
[0029] 図1は、一実施形態による電力伝送システム100の構成要素を示すブロック図である。電力伝送システム100は、導体アセンブリ120を介して電気的に結合された塔アセンブリ110A,110B(集合的に塔アセンブリ110と称される)を含む。冷却材供給システム130は、塔アセンブリ110及び導体アセンブリ120に流体結合されている。いくつかの実施形態においては、電力伝送システムは、超伝導OH電力伝送システムを含み得る。
【0025】
[0030] いくつかの実施形態においては、電力は、外部電力網又は他の外部電源から電力伝送システム100に入力され得る。電力は、1つ以上の電気的接続を介して塔アセンブリ110Aに送られる。電力はその後、導体アセンブリ120を介して塔アセンブリ110Bに送られる。電力は、塔アセンブリ110Bから、追加の塔アセンブリ110又は1つ以上の消費者負荷に送られ得る。図示するように、電力伝送システム100は2つの塔アセンブリ110を含む。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100は、用途及び/又は電力が伝送される距離に応じて、任意の数の塔アセンブリ110を含むことができる。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100は、少なくとも約2つ、少なくとも約3つ、少なくとも約4つ、少なくとも約5つ、少なくとも約6つ、少なくとも約7つ、少なくとも約8つ、少なくとも約9つ、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約400、又は少なくとも約450、又は少なくとも約500、又は少なくとも約550、又は少なくとも約600、又は少なくとも約650、又は少なくとも約700、又は少なくとも約750、又は少なくとも約800、又は少なくとも約850、又は少なくとも約900、又は少なくとも約950、又は少なくとも約1,000、又は少なくとも約2,000、又は少なくとも約3,000、又は少なくとも約4,000、又は少なくとも約5,000、又は約5,000から約10,000の塔アセンブリ110を含み得る。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100は、約10,000以下、約7,500以下、約5,000以下、約2,500以下、約1,500以下、約1,000以下、約500以下、約450以下、約400以下、約350以下、約300以下、約250以下、約200以下、約150以下、約100以下、約90以下、約80以下、約70以下、約60以下、約50以下、約40以下、約30以下、約20以下、約10以下、約9つ以下、約8つ以下、約7つ以下、約6つ以下、約5つ以下、約4つ以下、又は約3つ以下の塔アセンブリ110を含み得る。上記で参照した塔アセンブリ110の数の組み合わせ(例えば少なくとも約2つと約500以下又は少なくとも約10と約50以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100は、約2つ、約3つ、約4つ、約5つ、約6つ、約7つ、約8つ、約9つ、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、又は約500の塔アセンブリ110を含み得る。
【0026】
[0031] 図示するように、電力伝送システム100は、塔アセンブリ110の間に電気結合を提供する1つの導体アセンブリ120を含む。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100は、用途及び/又は電力が伝送される距離に応じて、任意の数の導体アセンブリ120を含むことができる。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100は、互いに隣接する塔アセンブリ110の間に電気結合を提供する、少なくとも約1つ、少なくとも約2つ、少なくとも約3つ、少なくとも約4つ、少なくとも約5つ、少なくとも約6つ、少なくとも約7つ、少なくとも約8つ、少なくとも約9つ、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約400、又は少なくとも約450、又は少なくとも約500、又は少なくとも約550、又は少なくとも約600、又は少なくとも約650、又は少なくとも約700、又は少なくとも約750、又は少なくとも約800、又は少なくとも約850、又は少なくとも約900、又は少なくとも約950、又は少なくとも約1,000、又は少なくとも約2,000、又は少なくとも約3,000、又は少なくとも約4,000、又は少なくとも約5,000、又は約5,000から約10,000の導体アセンブリ120を含み得る。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100は、互いに隣接する塔アセンブリ110の間に電気結合を提供する、約10,000以下、約7,500以下、約5,000以下、約2,500以下、約1,500以下、約1,000以下、約500以下、約450以下、約400以下、約350以下、約300以下、約250以下、約200以下、約150以下、約100以下、約90以下、約80以下、約70以下、約60以下、約50以下、約40以下、約30以下、約20以下、約10以下、約9つ以下、約8つ以下、約7つ以下、約6つ以下、約5つ以下、約4つ以下、約3つ以下、又は約2つ以下の導体アセンブリ120を含み得る。上記で参照した導体アセンブリ120の数の組み合わせ(例えば少なくとも約2つと約500以下又は少なくとも約10と約50以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100は、互いに隣接する塔アセンブリ110の間に電気結合を提供する、約1つ、約2つ、約3つ、約4つ、約5つ、約6つ、約7つ、約8つ、約9つ、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、又は約500の導体アセンブリ120を含み得る。
【0027】
[0032] 塔アセンブリ110の各々は、関連する誘電絶縁体(図示しない)を含み得る。塔アセンブリ110の各々は、塔又は他の機械的支持構造(図示しない)も含み得る。塔アセンブリ110のうち1つ以上は終端部を含み、それを介して電流及び/又は冷却材が伝送線路に進入すること及び/又は伝送線路から出ていくことができる。いくつかの実施形態においては、塔アセンブリ110のうち1つ以上は中間冷却所(ICS)を含み得る。
【0028】
[0033] いくつかの実施形態においては、導体アセンブリ120は、導体アセンブリ120が地上で懸垂されるように、懸垂型導体アセンブリ(SCA)を含み得る。換言すれば、塔アセンブリ110AはSCAを介して塔アセンブリ110Bに物理的に結合され得る。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100と外部電力網又は他の外部電源との間の電気結合は、SCAを含み得る。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100と1つ以上の消費者負荷との間の電気結合は、SCAを介し得る。いくつかの実施形態においては、本明細書において説明されるSCAは、超伝導OH電力伝送線路を含み得る。
【0029】
[0034] 図示するように、電力伝送システム100は1つの冷却材供給システム130を含む。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100は、複数の冷却材供給システム130を含み得る。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100は、用途及び/又は電力が伝送される距離に応じて、任意の数の冷却材供給システム130を含むことができる。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100は、少なくとも約1つ、少なくとも約2つ、少なくとも約3つ、少なくとも約4つ、少なくとも約5つ、少なくとも約6つ、少なくとも約7つ、少なくとも約8つ、少なくとも約9つ、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、又は少なくとも約90、又は少なくとも約100の冷却材供給システム130を含み得る。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100は、約100以下、約90以下、約80以下、約70以下、約60以下、約50以下、約40以下、約30以下、約20以下、約10以下、約9つ以下、約8つ以下、約7つ以下、約6つ以下、約5つ以下、約4つ以下、約3つ以下、又は約2つ以下の冷却材供給システム130を含み得る。上記で参照した冷却材供給システム130の数の組み合わせ(例えば少なくとも約2つと約100以下又は少なくとも約10と約50以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム100は、約1つ、約2つ、約3つ、約4つ、約5つ、約6つ、約7つ、約8つ、約9つ、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、又は約100の冷却材供給システム130を含み得る。いくつかの実施形態においては、連続する冷却材供給システム130間の距離は、約25キロメートル(km)、又は約30km、又は約35km、又は約40km、又は約45km、又は約50km、又は約55km、又は約60km、又は約65km、又は約70km、又は約75km、又は約80km、又は約85km、又は約90km、又は約95km、又は約100km、又は約50kmから約100km、又は約50kmから約150kmであり得る。
【0030】
[0035] いくつかの実施形態においては、塔アセンブリ110のうち1つ以上は冷却材供給システム130のうち1つ以上と流体連通し得る。いくつかの実施形態においては、冷却材供給システム130は冷却材貯蔵ユニットを含み得る。いくつかの実施形態においては、冷却材供給システム130は冷却材温度を制御するための調節ユニットを含み得る。いくつかの実施形態においては、冷却材供給システム130は、関連する冷却材導管を介して塔アセンブリ110A(又は塔アセンブリ110のいずれか)に流体的に結合され得る。電力伝送システム100の動作中、冷却材流体は、冷却材システム130から塔アセンブリ110に流れ又はポンプで送り込まれて超伝導OH電力伝送線路を冷却し得る。
【0031】
[0036] 図2は、一実施形態による電力伝送システム200を図示している。電力伝送システム200は、塔アセンブリ210A,210B,210C(集合的に塔アセンブリ210と称される)と、導体アセンブリ220A,220B(集合的に導体アセンブリ220と称される)と、冷却材供給システム230と、を含む。いくつかの実施形態においては、塔アセンブリ210、導体アセンブリ220、及び冷却材供給システム230は、図1を参照して上述した塔アセンブリ210、導体アセンブリ120、及び冷却材供給システム130と同じ又は実質的に同様であり得る。よって、塔アセンブリ210、導体アセンブリ220、及び冷却材供給システム230の特定の態様は、本明細書においてはより詳細には説明されない。
【0032】
[0037] 図2に示すように、電力伝送システム200は、OH電力伝送システムであり、OH電力伝送線路を含む。いくつかの実施形態においては、電力伝送システム200は、超伝導OH伝送システムを含み得る。いくつかの実施形態においては、OH電力伝送線路とは、一連の相互接続された導体セグメント(例えば電気的接続221及び導体アセンブリ220A,220B)を指す。
【0033】
[0038] 塔アセンブリ210A,210B,210Cは、塔217A,217B,217C(集合的に塔217と称される)と、誘電絶縁体216A,216B,216C(集合的に誘電絶縁体216と称される)と、を含む。1つ以上の塔アセンブリ210は終端部215を含む。いくつかの実施形態においては、終端部215は接続点として作用し、それを介して電流が導体アセンブリ220に進入すること及び/又は導体アセンブリ220から出ていくことができる。いくつかの実施形態においては、終端部215は接続点として作用し、それを介して冷却材が導体アセンブリ220に進入すること及び/又は導体アセンブリ220から出ていくことができる。
【0034】
[0039] いくつかの実施形態においては、導体アセンブリ220はSCAを含み得る。導体アセンブリ220(図3を参照して以下で更に詳細に説明される)は、各々が、TIJに包囲された少なくとも1つの導電素子を含む。実施例に応じて、導体アセンブリ220の各々は、電力伝送システムの設計に従い、3つの導体(例えば三相AC電力伝送の場合)、2つの導体(例えばDC双極電力伝送の場合)、又は任意の他の数の導体を含み得る。いくつかの実施形態においては、導体アセンブリ220は、電力伝送線路、OH伝送線路、及び/又は超伝導OH伝送線路を集合的に定義することができる。
【0035】
[0040] 図2に示すように、冷却材供給システム230は、冷却材流体(液体、気体、又は液体と気体との組み合わせを含む)を貯蔵するように及び/又は冷却材流体を所定の流速で調節ユニット234に供給するように構成された冷却材貯蔵ユニット232を含む。冷却材流体は、例えば、液体窒素、液体ヘリウム、液体ネオン、液体水素、液体天然ガス、又は液体空気を含むことができる。調節ユニット234は、冷却材流体が伝送線路に進入する前に(例えば冷却材流体の温度を低下させること及び/又は圧力を上昇させることによって)冷却材流体を調節し、次に、調節された冷却材流体(液体、気体、又は液体と気体との組み合わせを含む)を、伝送線路の一部に、指定された温度(例えば約77K)及び圧力(例えば約10バールから約15バール、もしくは約25バールから約30バール)で、又は指定された温度範囲内の温度及び指定された圧力範囲内の圧力で送達する。その後、冷却材は、1つ以上の冷却材導管236及び終端部215を通って導体アセンブリ220に流入する。電力は、外部電力網(図2の矢印「A」を参照)から電気的接続221を通って電力伝送システム200に進入し、冷却材流と並行に、終端部215から始まり導体アセンブリ220を通る伝送を開始する。終端部215及び導体アセンブリ220は、誘電絶縁体216によって塔217から絶縁されている。動作中、冷却材流体、電流、及び電力は、導体アセンブリ220に沿って且つそれを通って流れる。
【0036】
[0041] 本開示のいくつかの実施形態においては、電力伝送システム200は、例えば、流れる冷却材流体の一部を気化させること及びその蒸気をOH電力伝送線路から排気することによってOH電力伝送線路から熱を抽出する、1つ以上の構成要素を含む。熱は、例えば、電流及び/又は周囲環境からの侵入熱(heat-in-leak)の結果として発生し得る。図2の実施形態においては、気化プロセス及び排気プロセスは、1つ以上の中間冷却所218を使用して実現される。いくつかの実施形態においては、液体冷却材流体の気化は、OH電力伝送線路の内側で、OH電力伝送線路の長さに沿った複数の場所において発生する。例えば、排気は、中間冷却所218と同様の柱上設置機器において発生し得る。
【0037】
[0042] いくつかの実施形態においては、冷却材は液体空気であり、電力伝送システム200の動作中に、関連する蒸発種(すなわち窒素、アルゴン、酸素)の大気又は周囲環境への排気が実施され得る。液体ヘリウム又は液体ネオンを冷却材として採用する他の実施形態においては、使用済みの冷却材が、電力伝送システム200から、(例えば、液体状態への再冷却後に)その後の再利用/再使用のために密閉空間(contained space)内に導かれてもよい。
【0038】
[0043] いくつかの実施形態においては、冷却材は、液体窒素及び/又は液体酸素など、液体空気の1つ以上の(例えば組み合わせた)成分を含む。例えば、冷却材の組成は窒素及び酸素を含むことができ、酸素が組成全体の約0.001%から約21%(例えば約1%)のパーセンテージを構成する。換言すれば、組成は酸素と窒素との組み合わせを含むことができ、酸素の量は、液体空気の量(21%酸素)と純粋な液体窒素の量(例えば約0.001%酸素)との間のどこかに該当する。
【0039】
[0044] いくつかの実施形態においては、各中間冷却所218は、(図2に示されるように)1つ以上の誘電絶縁体216によって、関連する塔217Bから絶縁される。1つ以上の誘電絶縁体は、導体アセンブリ220を塔217から絶縁する誘電絶縁体216と同じであってもよく、又は、1つ以上の誘電絶縁体は、中間冷却所218のみを支持する別個の誘電絶縁体であってもよい。後者の場合、窒素を導体アセンブリ(220)から中間冷却所218に流すために、「ジャンパ」冷却材導管が使用され得る。他の実施形態では、中間冷却所218は、介在する誘電絶縁体なしに接地され(すなわち塔217Bに取り付けられ)てもよい。そのような場合、液体冷却材は、塔アセンブリ210Bを塔217Bに取り付ける誘電絶縁体216の中心を通って流れ得る。誘電絶縁体は、高電圧環境から接地電位への液体(非導電性であってもよい)の輸送を容易にすることができる。
【0040】
[0045] いくつかの実施形態においては、気化冷却及び排気は、中間冷却所218のうち1つ以上の中で「電圧で」(すなわち電力伝送システム200の動作電圧と同じ電圧で)発生する。他の実施形態においては、気化冷却及び排気は、中間冷却所218のうち1つ以上の中で、接地電位で発生する。更に他の実施形態においては、気化冷却は、中間冷却所218のうち1つ以上の中で、電圧で発生するが、排気は、中間冷却所218のうち1つ以上の中で、接地電位で発生する。
【0041】
[0046] いくつかの実施形態においては、冷却材貯蔵ユニット232、1つ又は複数の冷却材導管236、導体アセンブリ220、並びに任意選択的には調節ユニット234及び/又は終端部215が、集合的に「冷却材送達及び調節システム」(例えば、液体窒素送達及び調節システム)と称され得る。いくつかの実施形態においては、(例えば図2に示され同図を参照して説明される)冷却材送達及び調節システムは、バルブなし冷却材送達及び調節システムである。換言すれば、冷却材貯蔵ユニット232、1つ又は複数の冷却材導管236、導体アセンブリ220、並びに任意選択的には調節ユニット234及び/又は終端部215は、冷却材の循環のためのバルブなしで動作することができる。代替的又は追加的に、いくつかの実施形態においては、冷却材送達及び調節システムは、冷却材流体の供給部(例えば図2の冷却材貯蔵ユニット232)を1つだけ含み、OH電力伝送線路の長さに沿った補助冷却システムは含まない。代替的又は追加的に、いくつかの実施形態においては、冷却材送達及び調節システムは、塔(例えば図2の塔217)に配置された複数の冷却材流体の供給部(例えば図2の冷却材貯蔵ユニット232)を含むが、電力伝送線路の懸垂型導体アセンブリの長さに沿った冷却材流体の補助供給部は含まない。塔に配置された冷却材流体の複数の供給部を含む冷却材供給システムは、OH電力伝送システム内の各塔に冷却材流体の供給部を含むことができる。塔に配置された冷却材流体の複数の供給部を含む冷却材供給システムは、OH電力伝送線路内を既に流れている(例えば、先行する冷却材流体の供給を介してOH電力伝送線路に送達された)液体冷却材(例えば液体窒素、液体水素、液体ヘリウム、液体ネオン、液体天然ガス、又は液体空気)の気化を使用して、冷却材流体の供給部のうち少なくともいくつかを排他的に又は実質的に排他的に冷却するように構成され得る。代替的又は追加的に、いくつかの実施形態においては、冷却材供給システムは、冷却材流体をOH電力伝送線路の外部に全く排出せず、又は冷却材流体を懸垂型導体アセンブリの長さに沿ったOH電力伝送線路の外部に排出しない。
【0042】
[0047] 図3は、一実施形態による、超伝導OH電力伝送線路/システム用の(例えば図1の導体アセンブリ120として使用される)導体アセンブリ320の一区画の斜視図を示す。図3に示すように、導体アセンブリ320は、複数の超伝導体ワイヤ又はテープ322を含む。ワイヤ又はテープ322は、例えば、非螺旋状の巻かれたワイヤ又はテープ(すなわち、以下で更に述べる巻型の表面などの表面に沿って敷設されたワイヤ又はテープ)、スペーサと交互配置された複数のテープなどを含むことができる。超伝導体ワイヤ又はテープ322が「臨界温度」未満(例えば-100℃以下)に冷却されると、超伝導体ワイヤ又はテープ322は無抵抗で又は実質的に無抵抗で直流又は定電流(すなわちDC電流)を搬送することができ、よって、超伝導体ワイヤ又はテープ322においてDC電流から発生する熱はない。交流又は時変電流(すなわちAC電流)は、超伝導体ワイヤ又はテープ322において(非超伝導材料と比較して)少量の熱を発生させ得る。例えば、導体アセンブリ320は、動作中に典型的に約68W/mの熱を発生させる既知のアルミニウム導体鋼強化(「ACSR」)ケーブルとは対照的に、1,000Armsを搬送するときに0.5W/mの熱を発生させ得る。
【0043】
[0048] 超伝導体ワイヤ又はテープ322は、巻型324上に、例えば(図3に示すように)螺旋状に、層毎に複数の超伝導体ワイヤを備える複数の層で巻かれてもよい。代替的には、超伝導ワイヤ/テープは、巻型324上に非螺旋状に設置されてもよい。層毎のワイヤ/テープの数、超伝導体ワイヤ/テープの幅又は直径、巻き付けの角度及び方向、並びに層の数などのパラメータは、所望の用途に基づいて、例えば、AC損失を最小化するように及び/又は導体アセンブリ320の自己インダクタンスを最小化するように選択又は調節され得る。同様に、所望の巻き角を有する層の数が、導体アセンブリ320の所望の機械的及び/又は電気的特性を生成するように選択されてもよい。超伝導体ワイヤ又はテープ322及び巻型324は、集合的に導体コアと称され得る。
【0044】
[0049] いくつかの実施形態においては、巻型324は、気体、蒸気及び/又は液体冷却材流体を搬送して導体アセンブリ320の冷却を支援することができるように、中空である。代替的又は追加的には、巻型324は、液体、蒸気又は気体冷却材の入来又は退出を可能にするように、多孔性であってもよい。
【0045】
[0050] いくつかの実施形態においては、巻型324は、導体アセンブリ320の懸垂中に(例えば懸垂型導体アセンブリの一部として)張力の一部又は全部を担持又は保持し得る。
【0046】
[0051] TIJ326は、超伝導体ワイヤ又はテープ322を包囲し、超伝導体ワイヤ又はテープ322に到達する周囲からの熱の量を最小化するように構成された冷却材流通空間328を定義する。動作中、TIJ326の内面は冷却材の温度まで冷却され得るが、TIJ326の外面は周囲温度であり得、TIJ326の内面は耐荷重性であり得る(すなわち機械的支持を提供する)。代替的又は追加的には、TIJ326内に配置された別個のケーブル又はチューブが、耐荷重性であると共に機械的支持を提供してもよい。
【0047】
[0052] TIJ326自体は、例えば、互いに離間された2つの同心金属パイプを含むことができ、その2つの金属パイプの間には真空又は別の物質(例えば二酸化炭素(CO2)、不活性ガスなど)が配設される。別の一例として、TIJ326は、波形又は他の手段によって可撓性にされた、互いに離間された2つの同心金属パイプを含んでいてもよく、その2つの可撓性金属パイプの間には真空又は別の物質(例えば不活性ガス)が配設される。更に別の一例として、TIJ326自体は、例えば、互いに離間された2つの同心金属パイプを含むことができ、その2つの金属パイプの間には真空又は別の物質(例えば二酸化炭素(CO2)、不活性ガスなど)が配設され、同心金属パイプの間隔及び/又は材料がTIJ326を半剛性にする。本明細書で使用される「半剛性」という句は、機械的負荷の下で僅かに(例えば、10メートル以上の曲率半径まで)屈曲することができる特性を指し得る。いくつかの実施形態においては、TIJは、発泡フォームなどの別のタイプの断熱材を含むことができる。TIJ326は、出荷、輸送及び設置に適した長さを有するセグメントで製造されてもよい。
【0048】
[0053] いくつかの実施形態においては、TIJ326の内部表面は、動作温度まで冷却されると熱的に収縮するように構成されている(又はそのような機械的/材料特性を有している)。この収縮は、例えば、動作温度が-100℃未満である場合に有意であり得る。TIJ326の外壁は、導体アセンブリ320の他の要素と共に、TIJ326の内部表面の長さの減少に対応するように構成される(又はそのような機械的/材料特性を有する)ことができる。いくつかの実施例においては、導体アセンブリ320の引張強度を提供する1つ以上の要素は、TIJ326の内壁の熱収縮と同様の又は一致する収縮を呈するように選択される。そのような実施例では、導体アセンブリ320は、周囲温度で、特定の予め計算された張力で、OH電力伝送線路を支持する柱又は塔の間に設置され得る。この張力は、柱/塔間の導体アセンブリ320の許容可能なサグと、地面レベルへの許容可能な最接近と、をもたらす。動作中、動作温度まで冷却されると、導体アセンブリ320(張力下)は収縮し、導体アセンブリ320の機械的張力は増加し、サグは減少する。動作温度での張力は、その後、電力伝送線路での使用に許容可能な限度内に維持される。
【0049】
[0054] いくつかの実施形態においては、冷却材流通空間328は流動する液体冷却材で満たされる。超伝導体ワイヤ又はテープ322が1つ以上の極低温に冷却された超伝導体を含む場合には、冷却材流体は液体寒剤(例えば、液体窒素、液体水素、液体ヘリウム、液体ネオン、液体天然ガス、又は液体空気)であり得る。極低温の実施形態においては、冷却要件を最小化するために、周囲から導体アセンブリ320に進入する熱エネルギは最小化されるべきである。これは、例えば二重壁真空断熱パイプラインをTIJ326として使用することによって、達成することができる。
【0050】
[0055] いくつかの実施形態においては、超伝導OH電力伝送(及び/又は分配)システムの文脈で使用されるとき、導体コア(すなわち超伝導体ワイヤ又はテープ322及び巻型324)、冷却材、並びにTIJ326は、システム動作電圧に維持される。
【0051】
[0056] いくつかの実施形態においては、TIJ326は、固体絶縁材料を使用して誘電的に絶縁されはしない。その代わりに、1つ又は複数の断熱部材が1つ又は複数の導体と同じ電圧で動作するようにシステムが設計されている場合に、既知の伝送導体を誘電的に絶縁するために空気が使用され得る手法と同様に、空気が絶縁材として使用され得る。断熱部材が線路電圧で動作する「温誘電体」を備える超伝導ケーブルを開発しようとする以前の試みは、地下用途に関連し、外部固体絶縁材を必要するものであった。そのような固体絶縁体は、本開示の実施形態には含まれない。
【0052】
[0057] 上述したように、いくつかの実施形態においては、懸垂型導体アセンブリは、1つ以上の誘電絶縁体を使用して塔に取り付けられる。いくつかのそのような実施形態では、誘電絶縁体は、液体窒素及び/又は蒸気窒素を、超伝導OH電力伝送システムの1つ以上の高電圧領域から接地電位に輸送するように構成される。適切な動作温度が維持されることを確実にするために、TIJ326に進入する熱、又はTIJ326内の電気エネルギ損失及び/もしくは磁気エネルギ損失によって発生する熱は、超伝導OH電力伝送システムから除去されるべきである。超伝導OH電力伝送システムの1つ以上の塔に配設された中間冷却所が、これを達成するために使用され得る。1つ又は複数の中間冷却所が沸騰冷却材を利用することによって過剰な蒸気を生成する場合、この過剰分は大気に排気され得る。
【0053】
[0058] いくつかの実施形態においては、図3に示すような導体アセンブリが複数、柱又は塔によって支持されて、導体アセンブリと地面との間に十分な隙間を維持する。柱又は塔間の間隔及び導体アセンブリの引張強度は、所望の懸垂が動作全体を通して維持されることができるように選択され得る。導体アセンブリに対する張力は、超伝導OH電力伝送システムの冷却領域内に配設された、巻型324、TIJ326の内壁、及び/又は追加の力担持部材(鋼ロープ又はワイヤ等)など、超伝導OH電力伝送システムの1つ以上の構成要素によって担持/保持され得る。
【0054】
[0059] 各導体アセンブリ320は、非冷却(すなわち周囲温度)状態で一対の柱の間に設置することができ、懸垂されたときに第1の曲率(例えば懸垂線)を呈する。第1の曲率は第1のサグとして説明することができ、これは柱に加えられる張力に依存する。冷却材が導体アセンブリ320内を流れ始めると、導体アセンブリ320の内部温度が低下し、熱収縮により、引張力を支える導体アセンブリ320の1つ又は複数の要素が収縮するか又は短くなる。この収縮はサグの減少を引き起こし、第1の曲率とは異なる(且つ第1の曲率よりも浅い)第2の曲率をもたらし、張力が増加する。1つ又は複数の要素の長さの減少は、例えば液体窒素を使用して冷却される導体アセンブリの場合、例えば約0.5%であり得る。上述したように、いくつかの実施形態においては、超伝導OH電力伝送システムの冷却領域内に配設された全ての構成要素は、長さが同様に収縮するように構成されている(又はそのような機械的特性もしくは材料特性を有する)。換言すれば、設置周囲温度と動作温度との間の熱収縮の差は、構成要素のうち1つ以上の永久変形をもたらすであろう熱収縮の差よりも小さい。例えば、構成要素のうち1つが収縮差による引張応力下に置かれる場合、その応力は、(4という工学的安全係数が用途に適切であると仮定すると)降伏応力の4分の1未満であり得る。既知のシステムとは全く対照的に、本開示の超伝導OH電力伝送線路は、全ての電気負荷及び環境温度下で、同じサグ(又は実質的に同じラグ)、ひいては同じ地面までの隙間(又は実質的に同じ地面までの隙間)を呈する。
【0055】
[0060] いくつかの実施形態においては、超伝導OH電力伝送システムの冷却領域内に配設される全ての構成要素は、同じタイプの材料から製作される。
【0056】
[0061] 電力伝送線路のキャパシタンスは、ACグリッド内の電力伝送線路の動作特性を決定すると共にサージインピーダンス負荷(すなわち、電力伝送線路に沿って伝搬する単一波の電圧及び電流の振幅の比)に影響を及ぼすパラメータの1つである。電力伝送線路のキャパシタンスは、電力伝送線路の外側エンベロープから回路の他の位相及び/又は地面の配置によって決定される上限距離までの電場を積分することによって決定され得る。導体付近の電場は、1/r(rは導体の中心からの距離である)として変化し、その結果、「電圧で」の包絡線の半径はキャパシタンスを有意に決定する。TIJ326の外壁がシステム動作電圧に維持された状態の、図3のアセンブリは、既知の電力伝送線路のキャパシタンスよりも低いキャパシタンスを有し、これは動作上の利点を提供する。
【0057】
[0062] 図4は、一実施形態による、1つ以上の超伝導体(超伝導体ワイヤ又はテープ422)に隣接しTIJ426内に配設された電気絶縁材427(例えば架橋ポリエチレン(「XLPE」)又はポリプロピレンラミネート紙(「PPLP」))を含む、超伝導OH電力伝送線路/システム用の導体アセンブリ420の一区画の斜視図を示す。TIJ426は、超伝導体ワイヤ又はテープ422に到達する周囲からの熱の量を最小化するように構成された冷却材流通空間428を定義する。図4に示すように、電気絶縁材427は、超伝導OH電力伝送線路/システムの動作中に電気絶縁材427が超伝導体動作温度まで冷却されるように、完全にTIJ426内に配設される。図4の実施形態は、「冷誘電体設計」と称され得る。電気絶縁材427の厚さは、TIJ426内の他の全ての構成要素が短絡のリスクなしに接地電位に維持されることを確実にするように選択され得る。図4の実施形態においては、導体から離れた電場は存在しない(すなわち、電場ベクトルの大きさは、電場ベクトルの方向にかかわらず、ゼロである)。1つ以上の図4の導体アセンブリを使用する超伝導OH電力伝送線路は、電力線路と接触する任意の物体(例えば木の枝、草木)が接地への短絡を形成せず、燃料に着火しないという点で、「火災の危険が最小の」電力線路と称され得る。他の実施形態においては、電気絶縁材427の厚さは、完全に満たない電気絶縁(すなわち部分的な電気絶縁)を達成するレベルで選択されてもよく、その場合、電気絶縁材427は、電気短絡に対する高抵抗バリアを提示し、異常な電流の流れを低減する。1つ以上のこのような導体アセンブリを使用する超伝導OH電力伝送線路は、「火災の危険が低減された」電力線路と称され得る。
【0058】
[0063] 図5は、一実施形態による、TIJ526の外部に配設された電気絶縁材527を含む、超伝導OH電力伝送線路/システム用の導体アセンブリ520の一区画の斜視図を示す。TIJ526は、超伝導体ワイヤ又はテープ522に到達する周囲からの熱の量を最小化するように構成された冷却材流通空間528を定義する。電気絶縁材527はTIJ526の外側にあるので、電気絶縁材527は、超伝導OH電力伝送線路/システムの動作中には、超伝導体動作温度まで冷却されない。よって、図5の実施形態は、「温誘電体」設計と称され得る。電気絶縁材527の厚さは、導体アセンブリ520が短絡のリスクなしに接地電位に接触することができるように選択され得る。図4の導体アセンブリ420と同様、図5の導体アセンブリ520から離れた電場は存在しない。1つ以上の図5の導体アセンブリを使用する超伝導OH電力伝送線路は、電力線路と接触する任意の物体(例えば木の枝、草木)が接地への短絡を形成せず、燃料に着火しないという点で、「火災の危険が最小の」電力線路と称され得る。
【0059】
[0064] いくつかの実施形態においては、導電層(図示しない)が、図5の実施形態の電気絶縁材527の少なくとも一部(例えば外部表面全体)に適用される。導電層は、例えば超伝導巻線又は非超伝導巻線を含むことができる。導電層は、導体コア(超伝導体ワイヤ又はテープ522及び巻型524を含む)の電流と等しい(又は実質的に等しい)がそれと比較して反対の極性(例えば瞬時AC又はAC)の電流を導電層が搬送するように、電気的に接地され得るか、又は非ゼロ電位に電気的に接続され得る。上述したように導電層が電気的に接地されるか又は非ゼロ電位に接続されるとき、導体アセンブリ520の動作は、TIJ526の外側に電場又は磁場をもたらさない。1つ以上のこのような図5の導体アセンブリを使用する超伝導OH電力伝送線路は、「外部電磁場(「EMF」)ゼロ」電力線路と称され得る。
【0060】
[0065] いくつかの実施形態においては、外側導電層(本明細書においては「シールド層」と称される)が、図5の実施形態の電気絶縁材527の少なくとも一部(例えば外部表面全体)に適用される。外側導電層は、例えば、超伝導巻線又は非超伝導巻線を含むことができる。導体アセンブリ520を含む電力線路の動作中、シールド層内を流れる電流は、AC電力線路の自己インダクタンスを制御するように制御され得る。例えば、シールド層が、導体コアの電流と大きさが等しく極性が反対である電流を搬送する場合には、電力線路の外側に磁場は存在せず、電力線路の自己インダクタンスは最小化される。逆に、外部手段を使用してシールド電流を低減することは、電力線路の自己インダクタンスを増加させ得る。よって、グリッド及び/又は電力線路の電力流は有利に制御され得る。シールド層は、電力線路の全長又は電力線路の長さの一部に沿って設置され得る。
【0061】
[0066] いくつかの実施形態においては、外側導電層(本明細書においては「シールド層」と称される)が、図5の実施形態の電気絶縁材527の少なくとも一部(例えば外部表面全体)に適用される。外側導電層は、例えば、超伝導巻線又は非超伝導巻線を含むことができる。加えて、1よりも大きい透磁率を有する材料がシールド層の外側に設置される。導体アセンブリ520を含む電力線路の動作中に、シールド層が、導体コアの電流と大きさが等しく極性が反対である電流を搬送する場合には、磁場は磁性層に影響せず、電力線路の自己インダクタンスは最小化される。逆に、外部手段を使用してシールド電流を低減させることは、磁場が磁性材料と相互作用することを可能にし、それによって電力線路の自己インダクタンスを有意に増加させる。よって、グリッド及び/又は電力線路の電力流は有利に制御され得る。シールド層及び/又は磁性材料は、電力線路の全長又は電力線路の長さの一部に沿って設置され得る。
【0062】
[0067] 図5ではTIJ526内に単一の導体コアを含むものとして図示及び説明されているが、導体アセンブリ520は、代替的には、同じTIJ526内に複数(例えば2つ、3つ、4つ、5つ、又は5つから10)の導体コアを含むことができる。例えば、2つの導体コアが、例えばDC双極システムの2つの極として、導体アセンブリ520のTIJ526内に含まれてもよい。別の一例としては、3つの導体コアが、例えば3位相AC電力伝送システムの3つの位相として、導体アセンブリ520のTIJ526内に含まれてもよい。
【0063】
[0068] 図6は、「分配冷却」アプローチを用いた、超伝導OH電力伝送線路/システム(例えば図1の超伝導OH電力伝送システムに類似)において使用される導体アセンブリ620の短い一区画の斜視図を示す。導体アセンブリは、TIJ626によって定義される冷却材流通空間628の圧力よりも大きな圧力で液体冷却材(例えば液体窒素、液体ヘリウム、液体ネオン、液体水素、液体天然ガス、又は液体空気)を搬送するための冷却材管629を含む。冷却材管629は、例えば冷却材管629の長さに沿って特定の間隔で発生する複数の細孔又はオリフィスを含むように製作され得る。導体アセンブリ620の動作中、液体冷却材は、細孔又はオリフィスを通って冷却材管629を出て冷却材流通空間628に進入することができ、したがって、冷却材流通空間628は、冷却材蒸気及び液体、すなわち二相(二相性)流体を含有する。冷却材流通空間628内へ漏洩する熱又はTIJ326内で発生した熱は、二相流体の温度を、冷却材流通空間628内の局所圧力で液体冷却材の沸点に達するまで上昇させる。その結果、冷却材流通空間628内の冷却材液は沸騰して、十分な冷却材が存在する場合には、冷却領域を冷却材の局所圧力依存沸騰温度(又は「飽和温度」)に維持する。一例として、冷却材が液体窒素であり、冷却材流通空間628が大気圧である場合、飽和温度はおよそ-196℃(77K)である。
【0064】
[0069] 図6の導体アセンブリ620の代替的な一実施例においては、液体冷却材は、冷却材流通空間628内を流れ、(例えば指定された間隔の)複数の細孔又はオリフィスを介して冷却材管629に進入し得る。導体アセンブリ620の動作中、熱は、伝導及び/又は対流を介して冷却材流通空間628内の液体冷却材から冷却材管629に伝達され、それによって冷却材管629内の液体冷却材を沸騰させ、その場合、冷却材管629は飽和温度の冷却材蒸気を搬送するであろう。
【0065】
[0070] 図6を参照して冷却材流通空間628内に配設されているものとして図示及び説明されているが、他の実施形態においては、冷却材管629は、導体コアの巻型624内に配設されていてもよい。更に他の実施形態においては、冷却材管629は省略されてもよく、巻型624が冷却材管として機能してもよい。冷却材管629は、導体の懸垂の引張力の全部又は一部を支持又は保持するように構成され得る。
【0066】
[0071] いくつかの実施形態においては、冷却材管(図6の冷却材管629など)を含む導体アセンブリの動作中、導体アセンブリの全長に沿って蒸気が発生する。そのような実施形態においては、関連する電力伝送システム内では、別個の搭上設置中間冷却所が使用されなくてもよい。そのような実施形態においては、搭上設置機器は依然として電力伝送線路に沿った場所に配置され得るが、そのような搭上設置機器の役割は、主に導体アセンブリから蒸気を除去して排気のために準備することであり得、蒸気を発生させることではない。
【0067】
[0072] いくつかの実施形態においては、電力伝送線路は、電力伝送線路のいずれの終端にも冷却材供給部を組み込まない分配冷却システムを含む。むしろ、全ての冷却材流体(例えば液体窒素、液体ヘリウム、液体ネオン、液体水素、液体天然ガス、又は液体空気)は、1つ以上の冷却材供給部(例えば中間冷却所)を介し、電力伝送線路を構成する複数の懸垂型導体アセンブリに沿って、電力伝送線路に導入され、電力伝送線路によって(例えば気化及び/又は排気を介して)消費される(全てのLN2が冷却のために線路長に沿って利用/蒸発される)。任意選択的には、中間冷却所のうち1つ以上は、電力伝送線路内での両方向への冷却材の流れを促進するように構成される。例えば、個々の冷却材供給部が25kmの距離にわたって冷却材を供給するように構成されている場合には、その個々の冷却材供給部の第1のインスタンスが、電力伝送線路の第1の終端から電力伝送線路に沿って25kmの場所に配置され得、それによって、電力伝送線路の第1の終端に向かって25kmの距離にわたり後方に(すなわち第1の方向に)及び電力伝送線路に沿って25kmの距離にわたり前方に(すなわち第1の方向とは反対の第2の方向に)冷却材を供給する。電力伝送線路が十分に長い場合には、個々の冷却材供給部の第2のインスタンスが、電力伝送線路の第1の終端から電力伝送線路に沿って75kmの場所に配置され得る(それによって、電力伝送線路の第1の終端から50kmから100kmの電力伝送線路の区画に冷却材を供給する)。
【0068】
[0073] いくつかの実施形態においては、電力伝送線路は、冷却材流体を電力伝送線路に導入するために、冷却材供給部を電力伝送線路の一方の終端には組み込むが電力伝送線路の他方の終端には組み込まない分配冷却システムを含む。また、冷却材流体(例えば液体窒素、液体ヘリウム、液体ネオン、液体水素、液体天然ガス、又は液体空気)は、電力伝送線路を構成する複数の懸垂型導体アセンブリに沿って、電力伝送線路に導入され、電力伝送線路によって(例えば気化及び/又は排気を介して)消費される(全てのLN2が冷却のために線路長に沿って利用/蒸発される)。
【0069】
[0074] いくつかの実施形態においては、分配冷却システム(例えば、図6の導体アセンブリ620を含み、冷却材管を有し、導体アセンブリの内側で蒸気を発生させる)は、各区画の端部に残留窒素流が存在しないように、したがって電力伝送線路の端部に冷却材が蓄積しないように、制御される。
【0070】
[0075] いくつかの実施形態においては、周期的冷却システム(すなわち、塔アセンブリの内側に配置された熱交換器において蒸気を発生させる冷却システム)が、冷却所の端部に非ゼロの冷却材流を有する。そのような冷却材流を管理するために、冷却材は、第1の冷却材供給場所から一方向のみで輸送されてもよく、電力伝送線路の一区画の端部は電力伝送線路の次の区画のための第2の冷却材供給場所に位置していてもよい。このような構成では、電力伝送線路の第1の区画からの過剰な冷却材は、第2の冷却材供給場所にある1つ又は複数の冷却材貯蔵タンクに流れ込み、最終的には再調節されて電力伝送線路の次の区画を冷却するために使用され得る。電力伝送線路の遠隔終端の過剰な液体窒素は、再利用され、貯蔵され、電力伝送線路の終端から別の場所に(例えば、トラックによって冷却材供給場所のうちの1つに)輸送され、及び/又はその場所で空気中に気化されてもよい。
【0071】
[0076] 他の実施形態においては、周期的冷却システムは、一方の極(DC用途の場合)又は2つの位相(AC用途の場合)の各冷却材供給場所から電力伝送線路に沿った両方向への冷却材流と、それに続く他方の極(DC)又は第3の位相(AC)の冷却材供給場所に返る冷却材の戻りとを容易にするように構成され、それによって、電力伝送線路の1つ又は複数の端部における過剰な冷却材流を捕捉及び管理する必要性をなくす。
【0072】
[0077] いくつかの実施形態においては、電力伝送システムは、超伝導体を低温に維持するための1つ以上の断熱ジャケットと、1つ以上の誘電絶縁体とを含む。他の実施形態においては、電力伝送システムは、超伝導体を低温に維持するための1つ以上の断熱ジャケットを含むが、誘電絶縁体は含まない。そのような実施形態では、空気が誘電絶縁を提供し得る。
【0073】
[0078] いくつかの実施形態においては、電力伝送システムは、各々が地表から地表に対して垂直な方向に沿って延伸する複数の支持塔と、複数の導体アセンブリと、を含む。各導体アセンブリは、一対の支持塔の間に配設されると共にその一対の支持塔によって懸垂された構成で機械的に支持され、各導体アセンブリは、超伝導体材料を含む電気導体を含む。各導体アセンブリは、超伝導体材料を周囲温度未満の温度範囲内に維持するための冷却材流を受け取るように構成されている。各導体アセンブリは、冷却材流を含有するように構成された断熱ジャケットを含んでいてもよく、断熱ジャケットは電力伝送システムの動作電圧から電気的に絶縁されない。
【0074】
[0079] いくつかの実施形態においては、各導体アセンブリは、電気導体の温度と同様の温度に維持される内側/内部表面を有する断熱ジャケットを更に含み(その一方で断熱ジャケットの外側/外部表面は周囲温度に維持される)、断熱ジャケットは、関連する導体アセンブリを機械的に支持するように構成される。また、断熱ジャケットは、電気導体の電圧と等しい電圧に維持され得る。断熱ジャケットは、真空、不活性ガス、又は断熱発泡体のうちの1つ以上を含むことができる。
【0075】
[0080] いくつかの実施形態においては、電力伝送システムは複数の機械的支持体も含み、複数の機械的支持体の各機械的支持体は複数の導体アセンブリのうち1つの導体アセンブリを機械的に支持するように構成されている。
【0076】
[0081] いくつかの実施形態においては、複数の導体アセンブリの各導体アセンブリは、断熱ジャケットと、電気導体と断熱ジャケットとの間に配設された誘電絶縁体と、を更に含み、誘電絶縁体は固体誘電体材料(例えばXLPE又はPPLP)を含む。
【0077】
[0082] いくつかの実施形態においては、複数の導体アセンブリの各導体アセンブリは、2つの同心壁の間に配設された誘電絶縁体を有する断熱ジャケットを更に含み、誘電絶縁体は固体誘電体材料(例えばXLPE又はPPLP)を含む。
【0078】
[0083] いくつかの実施形態においては、複数の導体アセンブリの各導体アセンブリは、断熱ジャケットと誘電絶縁体とを更に含み、誘電絶縁体は断熱ジャケットの外面と導体アセンブリの外面との間に配設される。他の実施形態においては、複数の導体アセンブリの各導体アセンブリは、断熱ジャケットと誘電絶縁体とを更に含み、誘電絶縁体は導体アセンブリの最も外側にある構成要素であり、したがって誘電絶縁体の外面が導体アセンブリの外面となる。
【0079】
[0084] いくつかの実施形態においては、電力伝送システムは、複数の支持塔アセンブリと、地表の上方に懸垂された複数の導体アセンブリと、極低温供給システム(例えば液体窒素供給システム)と、を含む。支持塔アセンブリの各々は、支持塔と終端部とを含む。導体アセンブリの各々は、一対の支持塔の間に配設され、その一対の支持塔によって機械的に支持される。極低温供給システムは、寒剤(例えば、液体窒素、液体水素、液体ヘリウム、液体ネオン、液体天然ガス、又は液体空気のうち少なくとも1つを含む)を、電力伝送システムの動作中に、終端部のうち少なくとも1つに、導体アセンブリの冷却のために送達するように構成されている。導体アセンブリの各々は、超伝導通電要素(例えば超伝導体含有ワイヤ又は超伝導体含有テープ)と、超伝導体材料の温度を周囲温度未満の温度範囲内に維持する流動冷却材を受け取るように構成された断熱ジャケットと、を含む。断熱ジャケットは、導体アセンブリ内に冷却材を含有するように、及び冷却材の流れを方向付けるか又は管理するように、構成され得る。断熱ジャケットはまた、冷却材に到達する周囲熱の量を低減又は制限することもできる。冷却材は1つ以上の寒剤を含み得る。冷却材は、例えば、環境から電力伝送システムに進入する熱を吸収することによって、及び/又は、導体アセンブリ内で発生する熱を吸収することによって、電力伝送システムの動作中に超伝導通電要素を熱から保護することができる。導体アセンブリ内で発生する熱は、例えば、電力流、冷却材流、変動する電圧に起因する絶縁材料内のエネルギ損失(例えば誘電損失)、変動する磁場に起因する導電材料におけるエネルギ損失(例えば渦電流損失)、及び/又は変動する磁場に起因する磁性材料におけるエネルギ損失(例えば磁気ヒステリシス損失)に起因し得る。
【0080】
[0085] いくつかの実施形態においては、断熱ジャケットのうち少なくとも1つは、電力伝送システムの動作電圧から電気的に絶縁されない。他の実施形態においては、断熱ジャケットのうち少なくとも1つは電気的に接地され、誘電絶縁体が電気導体と断熱ジャケットとの間に配設される。
【0081】
[0086] いくつかの実施形態においては、支持塔アセンブリのうち少なくとも1つは、電力伝送システムの動作中に寒剤によって生成される蒸気を排気するように構成された中間冷却所を含む。
【0082】
[0087] いくつかの実施形態においては、極低温供給システムは、寒剤を終端部に供給するため、及び、寒剤がそこを通って流れるときに寒剤の温度を測定又は調整するため、の調節ユニットを含む。
【0083】
[0088] いくつかの実施形態においては、断熱ジャケットのうち少なくとも1つは、関連する懸垂型導体アセンブリを機械的に支持するように構成された引張支持要素を含む。
【0084】
[0089] いくつかの実施形態においては、導体アセンブリの各々は、複数の支持塔アセンブリのうちの関連する支持塔アセンブリに絶縁体を介して接続され、絶縁体は、関連する支持塔アセンブリからの導体アセンブリの電気的絶縁を提供する。
【0085】
[0090] いくつかの実施形態においては、導体アセンブリは伝送線路を形成し、寒剤は、電力伝送システムの動作中に伝送線路に平行な方向に沿って流れる。
【0086】
[0091] いくつかの実施形態においては、電力伝送システムは、複数の支持塔アセンブリと、地表の上方に懸垂された複数の導体アセンブリと、冷却材供給システムと、を含む。支持塔アセンブリの各々は、支持塔と終端部とを含む。導体アセンブリの各々は、一対の支持塔の間に配設され、その一対の支持塔によって機械的に支持される。冷却材供給システムは、冷却材(例えば液体窒素、液体水素、液体ヘリウム、液体ネオン、液体天然ガス、又は液体空気)を、電力伝送システムの動作中に、終端部のうち少なくとも1つに、導体アセンブリの冷却のために送達するように構成されている。導体アセンブリの各々は、超伝導通電要素(例えば超伝導体含有ワイヤ又は超伝導体含有テープ)と、電力伝送システムの動作中に冷却材を含有するための断熱ジャケットと、を含む。冷却材は超伝導通電要素を周囲温度未満の温度範囲内に維持する。
【0087】
[0092] 実施形態によっては、本開示の終端部は、末端終端部(すなわち、電力伝送線路の終端に配設される)、再冷却終端部、又は、「パススルー」終端部(すなわち、電力及び冷却材がそれを通って流れることは可能にするが、冷却材を供給せず、電力伝送線路を終端しない)という3つの異なるタイプのうちの1つであり得る。
【0088】
[0093] いくつかの実施形態においては、電力伝送システムは、冷却材の温度(及び任意選択的には圧力)を修正するように構成された1つ以上の再冷却所も含む。そのような各再冷却所は、電力伝送システムの動作電圧に維持され得ると共に、接地電位から絶縁され得る。代替的には、そのような各再冷却所は、接地電位に維持され得る。
【0089】
[0094] いくつかの実施形態においては、支持塔アセンブリのうち少なくとも1つは、電力伝送システムの動作中に液体寒剤(例えば、液体窒素、液体水素、液体ヘリウム、液体ネオン、液体天然ガス、又は液体空気のうち少なくとも1つ)によって生成される蒸気を排気するための中間冷却所を含む。
【0090】
[0095] いくつかの実施形態においては、各断熱ジャケットは2つの同心壁の間に配設された断熱材を含み、断熱材は、真空、不活性ガス、又は断熱発泡体のうちの少なくとも1つを含む。
【0091】
[0096] 前述の概念及び本明細書内で議論される付加的概念の全ての組み合わせ(そのような概念が相互に矛盾しないことを前提とする)は、本明細書に開示される主題の一部であると想定される。参照により組み込まれる任意の開示においても現れ得る、本明細書中で明示的に使用される用語は、本明細書に開示される特定の概念と最も一致する意味を与えられるべきである。
【0092】
[0097] 図面は主に説明を目的とするものであって、本明細書に記載される主題の範囲を限定することは意図されない。図面は必ずしも縮尺通りではなく、場合によっては、本明細書に開示される主題の様々な態様が、異なる特徴の理解を容易にするために、図面中で誇張又は拡大されて示され得る。図面中、同じ参照符号は概して同じ特徴(例えば機能が類似した及び/又は構造が類似した要素)を指す。
【0093】
[0098] 本願の全体(表紙、発明の名称、見出し、背景、概要、図面の簡単な説明、詳細な説明、実施形態、要約、図、付録などを含む)は、例示として、実施形態が実用され得る様々な実施形態を示す。本願の利点及び特徴は、実施形態の代表的な例に過ぎず、網羅的及び/又は排他的なものではない。むしろ、それらは、実施形態の理解を助け実施形態を教示するために提示されており、全ての実施形態を代表するものではない。よって、本開示のある態様については本明細書では述べられていない。革新の特定の部分について代替的な実施形態が提示されていない可能性があること、又は更なる説明されていない代替的な実施形態が一部について利用可能であり得ることは、そのような代替的な実施形態を本開示の範囲から除外するものと見なされるべきではない。それらの説明されていない実施形態の多くは、同じ革新の原理を組み込み、他のものは均等であることが理解されるであろう。したがって、他の実施形態が利用されてもよく、本開示の範囲及び/又は趣旨から逸脱することなく、機能的、論理的、動作的、組織的、構造的、及び/又は位相幾何学的な修正が行われ得ることが理解されるべきである。よって、全ての例及び/又は実施形態は、本開示の全体を通して非限定的であると見なされる。
【0094】
[0099] また、本明細書において述べられている実施形態に関して、スペース及び繰り返しを削減する目的で説明されていない場合を除いて、本明細書で説明されていない実施形態に関して推論すべきではない。例えば、任意のプログラムコンポーネント(コンポーネントコレクション)、他のコンポーネント、並びに/又は図面及び/もしくは全体を通じて説明される任意の現在の特徴セットの任意の組み合わせの論理的及び/又は位相幾何学的な構造は、固定された動作順序及び/又は配置に限定されるものではなく、むしろ、任意の開示された順序は例示的であり、順序にかかわらず、全ての均等物が本開示によって想定されることが理解されるべきである。
【0095】
[0100] 「決定すること」という用語は多種多様な作用を包含し、したがって、「決定すること」は、計算すること、算出すること、処理すること、導出すること、調査すること、ルックアップすること(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造をルックアップすること)、確認することなどを含み得る。また、「決定すること」は、受け取ること(例えば情報を受信すること)、アクセスすること(例えばメモリ内のデータにアクセスすること)なども含み得る。また、「決定すること」は、解決すること、選択すること、選ぶこと、確立することなども含み得る。
【0096】
[0101] 「~に基づいて」という句は、明示的に別途特定されない限り、「~のみに基づいて」を意味しない。換言すれば、「~に基づいて」という句は、「~のみに基づいて」及び「少なくとも~に基づいて」の両方を表す。
【0097】
[0102] 様々な概念が1つ以上の方法として具現化され得、そのうちの少なくとも一例が提供されている。方法の一部として実施される行為は任意の適当な手法で順序付けされ得る。したがって、実施形態は、例示されたものとは異なる順序で行為が実施されるように構築されてもよく、これは、いくつかの行為を、たとえ例示された実施形態においては連続した行為として示されていても、同時に実施することを含み得る。よって、これらの特徴のうちいくつかは、単一の実施形態に同時には存在し得ないという点で、互いに矛盾する場合がある。同様に、いくつかの特徴は、革新のある態様には適用でき、他の態様には適用できない。
【0098】
[0103] また、本開示は、現在説明されていない他の革新を含み得る。出願人は、そのような革新を具現化し、その追加出願、継続出願、部分継続出願、分割出願、及び/又は同様のものを提出する権利を含め、そのような革新に関する全ての権利を保有する。よって、本開示の利点、実施形態、例、機能的特徴、論理的、動作的、組織的、構造的、位相幾何学的、及び/又は他の態様は、実施形態によって定義される本開示に対する限定又は実施形態の均等物に対する限定と考えられるべきではないことが理解されるべきである。
【0099】
[0104] 本明細書において定義及び使用される全ての定義は、辞書的定義、参照により組み込まれた文献における定義、及び/又は定義される用語の通常の意味を支配するものとして理解されるべきである。
【0100】
[0105] 本明細書において用いられるとき、特定の実施形態においては、「約」又は「およそ」という用語は、数値の前にある場合、その値プラス又はマイナス10%の範囲を示す。ある範囲の値が提示される場合には、文脈が別途明確に規定しない限り、その範囲の上限と下限との間に介在する、下限の単位の10分の1に至るまでの各値、及びその定められた範囲にある任意の他の定められた値又は介在する値は、本開示に包含される。これらのより小さな範囲の上限及び下限がそのより小さな範囲に独立的に含まれ得ることも、本開示に包含され、定められた範囲において特に除外された任意の限度に従属する。定められた範囲が限度のうち一方又は両方を含む場合には、それらの含まれる限度のうちいずれか又は両方を除く範囲も本開示に含まれる。
【0101】
[0106] 本明細書及び実施形態で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、そうでない旨の明示のない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0102】
[0107] 本明細書及び実施形態で使用される「及び/又は」という句は、それによって結合された要素、すなわち場合によっては接続的に存在し、場合によっては非接続的に存在する要素の「いずれか又は両方」を意味するものと理解されるべきである。「及び/又は」を用いて列挙された複数の要素も同様に、すなわちそれによって結合された要素のうちの「1つ以上」と理解されるべきである。「及び/又は」の節によって具体的に特定される要素以外に、それらの具体的に特定される要素と関連するか又は関連しないかを問わず、他の要素が任意選択的に存在する場合がある。したがって、非制限的な一例として、「備える(comprising)」などのオープンエンドの文言と関連して用いられる場合、「A及び/又はB」というときには、一実施形態ではAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)を、別の実施形態ではBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)を、更に別の実施形態ではA及びBの両方(任意選択的に他の要素を含む)を指す可能性がある、といった具合である。
【0103】
[0108] 本明細書及び実施形態で用いられるとき、「又は」は、上記で定義した「及び/又は」と同じ意味を有するものとして理解されるべきである。例えば、列挙されている項目を分けるとき、「又は」又は「及び/又は」は、包括的なものとして、すなわち、いくつかの又は列挙された要素のうち少なくとも1つであるが1つより多くも、及び任意選択的には更に列挙されていない項目も含むものとして解釈されるべきである。「~のうち1つのみ」もしくは「~のうちただ1つのみ」、又は実施形態において用いられる場合、「~からなる(consisting of)」など、そうではないと明示されている用語のみが、いくつかの又は列挙された要素のうちただ1つの要素を含むことを指す。概して、本明細書において用いられる「又は」という用語は、前に「いずれか」、「~のうち1つ」、「~のうち1つのみ」、又は「~のうちただ1つ」のような排他性の用語がある場合、排他的な代替案(すなわち「一方又は他方であるが両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるべきである。「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、実施形態において用いられる場合、特許法の分野において用いられる通常の意味を有するべきである。
【0104】
[0109] 本明細書及び実施形態で用いられるとき、1つ以上の要素の列挙を参照する「少なくとも1つ」という句は、その要素の列挙の中の要素のうち任意の1つ以上から選択された少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしもその要素の列挙の中に具体的に列挙された1つ1つの要素のうち少なくとも1つを含むわけではなく、その要素の列挙の中の要素の任意の組み合わせを排除しないものとして理解されるべきである。この定義は、具体的に特定される要素と関連するか又は関連しないかを問わず、「少なくとも1つ」という句が指す要素の列挙において具体的に特定される要素以外に要素が任意選択的に存在し得ることを可能にする。したがって、非制限的な一例として、「A及びBのうち少なくとも1つ」(又は同様に「A又はBのうち少なくとも1つ」、又は同様に「A及び/又はBのうち少なくとも1つ」)は、一実施形態においては、Bは存在せず(及び任意選択的にはB以外の要素を含み)、少なくとも1つの、任意選択的には1つよりも多くのAを指す可能性があり、別の実施形態においては、Aは存在せず(及び任意選択的にはA以外の要素を含み)、少なくとも1つの、任意選択的には1つよりも多くのBを指す可能性があり、更に別の実施形態においては、少なくとも1つの、任意選択的には1つよりも多くのAと、少なくとも1つの、任意選択的には1つよりも多くのBと、を指す(及び任意選択的には他の要素を含む)可能性がある、といった具合である。
【0105】
[0110] 実施形態において、及び上述の明細書において、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「担持する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「~で構成される(composed of)」などの全ての移行句は、オープンエンドのもの、すなわち含むが限定されないことを意味するものとして理解されるべきである。合衆国特許審査便覧セクション2111.03に記載されているように、「~からなる(consisting of)」及び「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という移行句のみが、それぞれクローズ又はセミクローズの移行句とされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】