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特表2023-549486肺がんを治療するためのKRASG12C阻害剤及びPD-L1結合アンタゴニストを含む方法及び組成物
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  • 特表-肺がんを治療するためのKRASG12C阻害剤及びPD-L1結合アンタゴニストを含む方法及び組成物 図1A
  • 特表-肺がんを治療するためのKRASG12C阻害剤及びPD-L1結合アンタゴニストを含む方法及び組成物 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-27
(54)【発明の名称】肺がんを治療するためのKRASG12C阻害剤及びPD-L1結合アンタゴニストを含む方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/517 20060101AFI20231117BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231117BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231117BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231117BHJP
【FI】
A61K31/517
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 N
C07K16/28 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527690
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 US2021058874
(87)【国際公開番号】W WO2022103904
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/113,606
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンジェリスタ, マリー
(72)【発明者】
【氏名】マーチャント, マーク アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】シュッツマン, ジェニファー リー
(72)【発明者】
【氏名】リン, ティンークン マーク
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ステファニー ロイヤー
(72)【発明者】
【氏名】マンドルカール, サンディハ ヴィナイアーク
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB01
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC46
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA14
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
肺がんを治療するための併用療法(組成物)、並びにその方法及び使用が本明細書に提供され、該併用療法は、本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ)とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)化合物1
又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)PD-L1結合アンタゴニストと、
を含む、併用療法。
【請求項2】
前記PD-L1結合アンタゴニストが、抗PD-L1抗体である、請求項1に記載の併用療法。
【請求項3】
前記抗PD-L1抗体がアテゾリズマブである、請求項1又は2に記載の併用療法。
【請求項4】
化合物1がそのアジピン酸塩である、請求項1~3のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項5】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、第1の21日サイクルの1~21日目にQD投与され、アテゾリズマブが前記第1の21日サイクルの1日目にQ3W投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の併用。
【請求項6】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、錠剤又はカプセル剤として経口投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項7】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が約50mg~500mgの量で投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項8】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、約5mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg又は500mgの量で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項9】
アテゾリズマブが約1000mg~約1400mgの量でQ3W投与される、請求項3~8のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項10】
アテゾリズマブが約840mgの量でQ2W投与されるか、約1200mgの量でQ3W投与されるか、又は約1680mgの量でQ4W投与される、請求項9に記載の併用療法。
【請求項11】
アテゾリズマブが患者に静脈内で約1200mgの用量でQ3W投与される、請求項9又は10に記載の併用療法。
【請求項12】
KRasG12C変異を含む肺がんにおける使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項13】
前記肺がんが非小細胞肺癌腫(NSCLC)である、請求項12に記載の併用療法。
【請求項14】
(a)第1の21日サイクル1~21日目にQD投与される化合物1
又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)前記第1の21日サイクルの1日目にQ3W投与されるアテゾリズマブと、
を含む、併用療法。
【請求項15】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、第1の21日サイクルの1~21日目に約50mg~500mgの量でQD投与され、アテゾリズマブが、前記第1の21日サイクルの1日目に約1200mgの量でQ3W投与される、請求項14に記載の併用療法。
【請求項16】
KRasG12C変異によって媒介される肺がんを有する患者におけるそのような肺がんを治療する方法であって、
(a)化合物1
又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)PD-L1結合アンタゴニストと、
を含む、有効量の併用療法を投与することを含む、方法。
【請求項17】
前記PD-L1結合アンタゴニストが、抗PD-L1抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗PD-L1抗体がアテゾリズマブである、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
化合物1がそのアジピン酸塩である、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、第1の21日サイクルの1~21日目にQD投与され、アテゾリズマブが前記第1の21日サイクルの1日目にQ3W投与される、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、錠剤又はカプセル剤として経口投与される、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が約50mg~500mgの量で投与される、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、約5mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg又は500mgの量で投与される、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
アテゾリズマブが約1000mg~約1400mgの量でQ3W投与される、請求項18~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
アテゾリズマブが約840mgの量でQ2W投与されるか、約1200mgの量でQ3W投与されるか、又は約1680mgの量でQ4W投与される、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
アテゾリズマブが前記患者に静脈内で約1200mgの用量でQ3W投与される、請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記肺がんがNSCLCである、請求項16~26のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項28】
前記肺がんが、腺癌腫、扁平上皮肺癌腫又は大細胞肺癌腫である、請求項16~26のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項29】
KRasG12C変異を含むNSCLCを有する患者におけるそのようながんを治療する方法であって、
(a)第1の21日サイクルの1~21日目にQDされる化合物1
又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)前記第1の21日サイクルの1日目にQ3W投与されるアテゾリズマブと、
を含む、有効量の併用療法を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項30】
(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、前記第1の21日サイクルの1~21日目に約50mg~500mgの量でQD投与され、
(ii)アテゾリズマブが、前記第1の21日サイクルの1日目に1200mgの量でQ3W投与される、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
アテゾリズマブが、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の投与後に投与される、請求項18~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
NSCLCを有する患者におけるNSCLCを治療する方法であって、有効量の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、PD-L1結合アンタゴニストとを含む治療レジメンを前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項33】
化合物1がアジピン酸塩である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記PD-L1結合アンタゴニストがアテゾリズマブである、請求項32又は請求項33に記載の方法。
【請求項35】
(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、第1の21日サイクルの1~21日目に約50mg~500mgの量でQD投与され、
(ii)アテゾリズマブが、前記第1の21日サイクルの1日目に1200mgの量でQ3W投与される、
請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記患者が、感受性EGFR変異、ALK再構成、ROS1再構成、BRAF V600E変異、NTRK融合、及びRET融合、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される変異を有しないと診断される、請求項16~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
本明細書に記載の肺がんの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とアテゾリズマブとを含む併用療法の使用(U1)。
【請求項38】
(i)第1の21日サイクルの1~21日目に化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記第1の21日サイクルの1日目にアテゾリズマブをQ3W投与することと、を含む投薬レジメンを更に含む、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
(i)前記第1の21日サイクルの1~21日目に約50~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記第1の21日サイクルの1日目に約1200mgのアテゾリズマブをQ3W投与することと、を更に含む、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
肺がんを治療するための医薬を製造するための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とアテゾリズマブとを含む併用療法の使用(U5)。
【請求項41】
(i)第1の21日サイクルの1~21日目に化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記第1の21日サイクルの1日目にアテゾリズマブをQ3W投与することと、を更に含む、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
(i)第1の21日サイクルの1~21日目に約50~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記第1の21日サイクルの1日目に約1200mgのアテゾリズマブをQ3W投与することと、を更に含む、請求項41に記載の使用。そのような一実施形態では、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。
【請求項43】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩によるKRasG12Cのアルキル化が前記患者において測定される、請求項16~36のいずれか一項に記載の方法又は請求項37~42のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月13日に出願された米国仮特許出願第63/113,606号の優先権を主張し、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
KRasG12C阻害剤(例えば、化合物1)及びPD-L1結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ)を含む併用療法、並びにそのような併用療法及びKRasG12C阻害剤を使用する方法が本明細書で提供される。
【0003】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に援用される。2021年10月18日に作成された当該ASCIIコピーの名称はP36528-Sequence_listing_ST25.txtであり、サイズは9546バイトである。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
カーステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(KRAS)は、細胞の増殖、分化、及び生存を調節するために細胞外増殖因子シグナルを伝達するタンパク質の細胞内ネットワークであるRAS/MAPKシグナル伝達経路の中心的構成要素である。KRASにおける変異は、固形腫瘍に一般的に見られ、腫瘍形成及び攻撃的な腫瘍成長に関連するグリシン12(G12)、グリシン13及びグルタミン61を含むいくつかのアミノ酸に変化をもたらし得るDer et al.Proc Natl Acad Sci U S A 1982;79:3637-40;Parada et al.Nature 1982;297:474-8;Santos et al.Nature 1982;298:343-7;Taparowsky et al.Nature 1982;300:762-5;Capon et al.Nature 1983;304:507-13)。G12からシステイン(G12C)への変化をもたらす発癌性KRAS変異は、非-小細胞肺癌(NSCLC)(約12%)、結腸直腸癌(CRC)(約4%)、及び他の腫瘍型(≦4%)で一般的である(Bailey et al.Nature 2016;531:47-52;Campbell et al.Nat Genet 2016;48:607-16;Giannakis et al.Cell Reports 2016;15:857-65;Hartmaier et al.Genome Med 2017;9(16);Jordan et al.Cancer Discov 2017;7:596-609)。
【0005】
NSCLC、CRC及び他の固形腫瘍を含む、KRasG12C変異を持つ進行期腫瘍(以下、KRasG12C陽性腫瘍と呼ぶ)は不治であり、予後不良である(Roman et al.2018;Wan et al.2019)。さらに、進行期KRasG12C-陽性癌を有する患者は、選択された化学療法及び標的療法から得られる利益が限られている可能性があり、したがって有効な利用可能な治療選択肢が制限される(Roman et al.2018)。
【0006】
したがって、KRasG12C変異を持つNSCLC等のがんを治療するための有効な治療法及び併用療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本明細書では、当技術分野におけるこれら及び他の課題に対する解決策が提供される。
【0008】
一態様では、本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、本明細書に記載のPD-L1結合アンタゴニストとを含む併用療法が本明細書で提供される。
【0009】
そのような一実施形態では、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブである。別のそのような実施形態では、化合物1は、そのアジピン酸塩である。別のそのような実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、第1の21日サイクルの1~21日目にQD投与され、アテゾリズマブが第1の21日サイクルの1日目にQ3W投与される。更に別の実施形態では化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、第1の21日サイクルの1~21日目に約50mg~500mgの量でQD投与され、アテゾリズマブは、第1の21日サイクルの1日目に約1200mgの量でQ3W投与される。
【0010】
別の態様では、KRasG12C変異によって媒介される肺がんを有する患者におけるそのような肺がんを治療する方法であって、有効量の本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、本明細書に記載のPD-L1結合アンタゴニストと含む併用療法を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0011】
別の態様では、KRasG12C変異を含むNSCLCを有する患者におけるそのようながんを治療する方法であって、(a)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩であって、第1の21日サイクルの1~21日目にQD投与される化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、(b)第1の21日サイクルの1日目にQ3W投与されるアテゾリズマブとを含む、有効量の併用療法を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0012】
別の態様では、NSCLCを有する患者におけるNSCLCを治療する方法であって、有効量の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、PD-L1結合アンタゴニストとを含む治療レジメンを患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0013】
別の態様では、本明細書に記載の肺がんの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含む併用療法の使用(U1)が本明細書で提供される。
【0014】
別の態様では、肺がんを治療するための医薬を製造するための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含む併用療法の使用(U5)が本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A図1Aは、Balb/cマウスにおけるCT26.KRAS12C-クローン#12:B2G9同系結腸直腸(CRC)腫瘍におけるmu抗PD-L1 mAbの単剤(SA)用量の効果を示す。
図1B図1Bは、図1Aと同じモデルにおける本明細書に記載の化合物1のアジピン酸塩のSA用量の効果を示す。
図1C図1Cは、化合物1のアジピン酸塩を抗PD-L1 mAbと組み合わせて投薬する効果を示す。
【0016】
図2図2は、単独又は抗PD-L1と組み合わせて投薬した化合物1のアジピン酸塩で処置したCT26.KRAS12C-クローン#12:B2G9同系結腸直腸(CRC)腫瘍担持Balb/cマウスの腫瘍体積を示す。
【0017】
図3図3は、単独及び抗PD-L1と組み合わせて投薬した化合物1のアジピン酸塩で処置したBalb/cマウスにおけるCT26.KRAS12C-クローン#12:B2G9同系結腸直腸(CRC)腫瘍の個々の体重データを示す。
【0018】
図4図4は、単独又は抗PD-L1と組み合わせて投薬した化合物1のアジピン酸塩で処置したBalb/cマウスにおけるCT26.KRAS12C-クローン#12:B2G9同系結腸直腸(CRC)腫瘍の個々の腫瘍体積データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
定義
以下の略語が本明細書で使用される:

【0020】
特に定義されていない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。例えば、Singleton et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 2nd ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY 1994);Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,NY 1989)を参照されたい。本発明の実施においては、本明細書に記載されるものと類似した又は同等の任意の方法、装置、及び材料を使用することができる。
【0021】
以下の定義は、本明細書で頻繁に用いられる特定の用語の理解を容易にするために提供されており、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。本明細書で言及されている全ての参照文献は、その全体が参照により援用される。
【0022】
本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、「約」及び「およそ」という用語は、組成物又は剤形の成分の用量、量、又は重量パーセントを指す場合には、指定された用量、量、又は重量パーセントから得られるものと同等の薬理的効果を提供するために、当業者によって認識される用量、量、又は重量パーセントを意味する。等価用量、量、又は重量パーセントは、指定された用量、量、又は重量パーセントの30%、20%、15%、10%、5%、1%、又はそれ未満の範囲内であり得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「KRasG12C阻害剤」は、残基12に対応する位置にGlyからCysへの変異を含む変異KRasタンパク質に特異的に結合する共有結合阻害剤を指す。
【0024】
「化合物1」は、構造:
【化1】
を有し、化学名1-((S)-4-((R)-7-(6-アミノ-4-メチル-3-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-6-クロロ-8-フルオロ-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)キナゾリン-4-イル)-3-メチルピペラジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オンを有する。一実施形態では、化合物1はアジピン酸塩である。
【0025】
「薬学的に許容され得る」という用語は、動物、例えばヒトに適切に投与された場合に、副反応、アレルギー反応、又は他の副作用を生み出さない、分子要素及び組成物を指す。
【0026】
本発明の化合物は、薬学的に許容され得る塩等の塩の形態であることができる。「薬学的に許容され得る塩」には、酸付加塩と塩基付加塩の両方が含まれる。「薬学的に許容され得る酸付加塩」とは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等の無機酸と共に形成される、遊離塩基の生物学的有効性及び性質を保持し、かつ生物学的又は別様において望ましい塩を意味し、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、エンボニン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等の有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸、及びスルホン酸の部類から選択され得る。一実施形態では、塩はアジピン酸で形成される。
【0027】
「薬学的に許容され得る塩基付加塩」としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩等の無機塩基に由来する塩が挙げられる。具体的な塩基付加塩は、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩である。薬学的に許容され得る有機無毒性塩基に由来する塩としては、一級、二級、及び三級アミン、天然に存在する置換アミン、環式アミン、及び塩基性イオン交換樹脂を含む置換アミン、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トロメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂等の塩が挙げられる。具体的な有機無毒性塩基としては、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トロメタミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、及びカフェインが挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、トリフルオロ酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、ピルビン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、重硫酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、マロン酸塩、キシナホ酸塩、アスコルビン酸塩、オレイン酸塩、ニコチン酸塩、サッカリン酸塩、アジピン酸塩、ギ酸塩、グリコール酸塩、パルミチン酸塩、L-乳酸塩、D-乳酸塩、アスパラギン酸塩、リンゴ酸塩、L-酒石酸塩、D-酒石酸塩、ステアリン酸塩、フロ酸塩(例えば、2-フロ酸塩又は3-フロ酸塩)、ナパジシル酸塩(ナフタレン-1,5-ジスルホン酸塩、又はナフタレン-1(スルホン酸)-5-スルホン酸塩)、エジシル酸塩(エタン-1,2-ジスルホン酸塩、又はエタン-1-(スルホン酸)-2-スルホン酸塩)、イソチオン酸塩(2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩)、2-メシチレンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、2,5-ジクロロベンゼンスルホン酸塩、D-マンデル酸塩、L-マンデル酸塩、ケイ皮酸塩、安息香酸塩、アジピン酸塩、エシル酸塩、マロン酸塩、メシチル酸塩(2-メシチレンスルホン酸塩)、ナプシル酸塩(2-ナフタレンスルホン酸塩)、カンシル酸塩(カンファー10-スルホン酸塩、例えば(1S)-(+)-10-カンファー-スルホン酸塩)、グルタミン酸塩、グルタル酸塩、馬尿酸(2-(ベンゾイルアミノ)酢酸塩)、オロチン酸塩、キシル酸塩(p-キシレン-2-スルホン酸塩)、及びパモ酸塩(2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ジナフチルメタン-3,3’-ジカルボン酸塩)から選択される。
【0029】
「阻害する」及び「低減する」という用語、又はこれらの用語のあらゆる変形は、所望の結果を達成するための、測定可能なあらゆる低減又は完全な阻害を含む。例えば、約、最大で約、又は少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又はそれ以上、又はこれらの任意の範囲変数の減少、通常と比較しての活性の低下が存在し得る。
【0030】
「PD-L1結合アンタゴニスト」、「PD-L1阻害剤」、及び「PD-L1遮断抗体」という用語は、本明細書では互換的に使用され、PD-L1とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1及び/又はB7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減する、遮断する、阻害する、消失させる、又は妨害する分子を指す。いくつかの例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1及び/又はB7-1への結合を阻害する。いくつかの例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、並びにPD-L1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-1及び/又はB7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、又は妨害する他の分子を含む。一例では、PD-L1結合アンタゴニストは、機能不全のT細胞を機能不全にしないようにする(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)ように、PD-L1を介するシグナル伝達を介してTリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によって又はそれを介して媒介される負の共刺激性シグナルを低減する。いくつかの例では、PD-L1結合アンタゴニストはPD-L1に結合する。いくつかの例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体(例えば、抗PD-L1アンタゴニスト抗体)である。例示的な抗PD-L1アンタゴニスト抗体としては、アテゾリズマブ、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、MSB0010718C(アベルマブ)、SHR-1316、CS1001、エンバホリマブ、TQB2450、ZKAB001、LP-002、CX-072、IMC-001、KL-A167、APL-502、コシベリマブ、ロダポリマブ、FAZ053、TG-1501、BGB-A333、BCD-135、AK-106、LDP、GR1405、HLX20、MSB2311、RC98、PDL-GEX、KD036、KY1003、YBL-007及びHS-636が挙げられる。好ましい態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、アテゾリズマブである。
【0031】
「プログラム死リガンド1」及び「PD-L1」という用語は、本明細書では、天然配列のヒトPD-L1ポリペプチドを指す。天然配列PD-L1ポリペプチドは、Uniprot受託番号Q9NZQ7で提供される。例えば、天然配列PD-L1は、Uniprot受託番号Q9NZQ7-1(アイソフォーム1)に記載のアミノ酸配列を有し得る。別の例において、天然配列PD-L1は、Uniprot受託番号Q9NZQ7-2(アイソフォーム2)に記載のアミノ酸配列を有し得る。更に別の例において、天然配列PD-L1は、Uniprot受託番号Q9NZQ7-3(アイソフォーム3)に記載のアミノ酸配列を有し得る。PD-L1はまた、当技術分野において「プログラム細胞死1リガンド1」、「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7-H」、及び「PDL1」としても言及される。
【0032】
Kabatナンバリングシステムは一般に、可変ドメイン(およそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)内の残基に言及するときに使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EUナンバリングシステム」又は「EU指標」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及する際に使用される(例えば、Kabat et alで報告されるEUインデックス、上記参照)。「KabatにおけるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。
【0033】
本明細書の目的では、「アテゾリズマブ」は、PD-L1に結合し、配列番号1の重鎖配列及び配列番号2の軽鎖配列を含むFc操作ヒト化非グリコシル化IgG1カッパ免疫グロブリンである。アテゾリズマブは、Fc領域アミノ酸残基のEUナンバリングを使用して重鎖(N297A)の297位に単一アミノ酸置換(アスパラギンからアラニンへ)を含み、Fc受容体への結合が最小限の非グリコシル化抗体をもたらす。アテゾリズマブは、2015年1月16日に発行されたWHO Drug Information(International Nonproprietary Names for Pharmaceutical Substances),Proposed INN:List 112,Vol.28,No.4にも記載されている(485頁を参照)。
【0034】
いくつかの例では、抗PD-L1抗体は、(a)配列番号1又は配列番号1の配列と少なくとも95%の配列同一性(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVH、(b)配列番号2又は配列番号2の配列と少なくとも95%の配列同一性(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVL、又は(c)(a)に記載のVH及び(b)に記載のVLを含む。
【0035】
一実施形態では、抗PD-L1抗体は、以下を含むアテゾリズマブを含む:
(a)重鎖(VH)アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号1)、及び
(b)軽鎖(VL)アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号2)。
【0036】
「がん」という用語は、身体の一部における異常細胞の制御されない分裂によって引き起こされる疾患を指す。一例では、がんは肺がんである。別の例では、がんはNSCLCである。本明細書で使用される場合、「がん」は、KRasG12C変異を有することを特徴とするがんを指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「治療すること」は、有効量の治療剤(例えば、アテゾリズマブ、又は化合物1若しくはその薬学的に許容され得る塩)、又は治療剤の組み合わせ(例えば、アテゾリズマブと、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩)による有効ながん治療を含む。治療は、第一選択治療(例えば、患者は以前に治療されていない可能性がある、又は事前全身治療を受けたことがない)又は第二選択治療若しくはそれ以降の治療であり得る。例えば、患者は、癌性細胞の増殖の低減(又は破壊)、疾患に起因する症状の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬物療法の用量の低減、及び/又は患者の生存期間の延長を含むが、これらに限定されない、本明細書に記載のがんに関連する1つ以上の症状が軽減又は排除された場合、「治療」に成功する。
【0038】
疾患の「進行の遅延」という用語は、本明細書に記載のがんの発症を先延ばしにする、妨げる、遅延させる、遅らせる、安定化する、及び/又は延期することを指す。この遅延は、治療されている本明細書に記載のがん及び/又は患者の病歴に応じて、様々な時間長であり得る。当業者には明らかであるように、十分又は有意な遅延は、患者ががんを発症しないという点で予防を事実上包含し得る。
【0039】
本明細書において、「有効量」は、治療結果を達成する本明細書に記載の治療剤(例えば、アテゾリズマブ及び/又は化合物1若しくはその薬学的に許容され得る塩)の量を指す。いくつかの例では、治療剤又は治療剤の組み合わせの有効量は、本明細書で提供される臨床エンドポイントを達成する薬剤又は薬剤の組み合わせの量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに患者における所望の応答を誘発する薬剤の能力等の要因に応じて異なり得る。有効量は、治療上有益な作用が治療の任意の毒性作用又は有害作用を上回るものでもある。いくつかの実施形態では、有効量の薬物は、癌細胞の数を減少させ、腫瘍サイズを低減させ、癌細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、遅らせるか、又は停止し)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、遅らせるか、又は停止し)、腫瘍増殖を阻害し(すなわち、遅らせるか、又は停止し)、及び/又は疾患に関連する症状のうちの1つ以上を軽減する効果を有し得る。有効量を1回以上の投与で投与することができる。本明細書に記載の薬物、化合物、薬学的組成物、又は併用療法の有効量は、直接的又は間接的に治療的治療を達成するのに十分な量であり得る。
【0040】
「客観的奏効率」又は「ORR」とは、RECIST v1.1に従って治験責任医師が決定して、≧4週間離れた2回の連続した機会における、完全寛解又は部分寛解が確認された患者の割合を指す。
【0041】
「奏効期間」又は「DOR」とは、記録された客観的応答の最初の発生から、RECIST v1.1に従って治験責任医師が決定した疾患の進行、又は何らかの原因による死亡のうち、いずれか早い方の日付までの時間を指す。
【0042】
「無増悪生存」又は「PFS」とは、登録から、RECIST v1.1を使用して治験責任医師が決定した、最初の記録された疾患の進行の発生又は何らかの原因による死亡のうち、いずれか早い方の日付までの時間を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「完全奏効」及び「CR」は、すべての標的病変の消失及び(該当する場合)腫瘍マーカーレベルの正常化を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「部分奏効」及び「PR」は、1つ以上の非-標的病変の持続及び/又は(適用可能な場合)腫瘍マーカーレベルの正常限界を超える維持を指す。PRはまた、CR、新しい病変、及び非標的病変における明白な進行の不存在下での標的病変の直径の合計の≧30%の減少も指す場合がある。
【0045】
「投与期間」又は「サイクル」とは、本明細書に記載の1つ以上の薬剤(すなわち、化合物1若しくはその薬学的に許容され得る塩、及びアテゾリズマブ)の投与を含む期間、及び本明細書に記載の1つ以上の薬剤の投与を含まない任意の期間を指す。例えば、サイクルは合計21日間とすることができ、サイクルの各日に本明細書に記載の1つ以上の薬剤(例えば、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩、及びアテゾリズマブ)の投与を含む。別の例では、サイクルは全長が28日間であり得、21日間及び7日間の休止期間にわたる本明細書に記載の1つ以上の薬剤(例えば、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩、及びアテゾリズマブ)の投与を含む。「休止期間」とは、本明細書に記載の薬剤(例えば、化合物又はその薬学的に許容され得る塩、及びアテゾリズマブ)のうちの少なくとも1つが投与されない期間を指す。一実施形態では、休止期間とは、本明細書に記載の薬剤(例えば、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩、及びアテゾリズマブ)のいずれも投与されない期間を指す。本明細書で提供される休止期間は、場合によっては、化合物1若しくはその薬学的に許容され得る塩、又はアテゾリズマブではない別の薬剤の投与を含むことができる。このような場合、休止期間中の別の薬剤の投与は、本明細書に記載の薬剤の投与の妨害になったり、不利益を与えたりすべきではない。一例では、本明細書で使用されるサイクルは、休止期間のない21日間のサイクルを指す。
【0046】
「投薬レジメン」とは、1回以上のサイクルを含む、本明細書に記載の薬剤の投与期間を指し、各サイクルは、本明細書に記載の薬剤の投与を異なる時間又は異なる量で含むことができる。
【0047】
「QD」は、本明細書に記載の薬剤を1日1回投与することを指す。
【0048】
「BID」は、本明細書に記載の薬剤を1日2回投与することを指す。
【0049】
「Q3W」は、本明細書に記載の薬剤を3週間に1回投与することを指す。
【0050】
「PO」は、本明細書に記載の薬剤の経口投与を指す。
【0051】
「IV」は、本明細書に記載の任意の薬剤の静脈内投与を指す。
【0052】
等級付けされた有害事象とは、NCI CTCAEによって確立された重症度の等級付け尺度を指す。一実施形態では、有害事象は、以下の表に従って等級付けされる。

【0053】
「患者」という用語は、ヒト患者を指す。患者は成人であってもよい。
【0054】
「抗体」という用語は、具体的には、それらが所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを包含する。一例では、抗体は完全長モノクローナル抗体である。
【0055】
本明細書で使用される場合、IgG「アイソタイプ」又は「サブクラス」という用語は、それらの定常領域の化学的及び抗原的特性によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを意味する。
【0056】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分類され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成は周知であり、例えば、Abbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)に一般的に記載されている。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有結合又は非共有結合によって形成される、より大きな融合分子の一部であり得る。
【0057】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、以下に記載の抗体フラグメントではない、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために本明細書で同義に使用される。この用語は、Fc領域を含む抗体を指す。
【0058】
「Fc領域」という用語は、本明細書では定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、ネイティブ配列Fc領域とバリアントFc領域を含む。一態様では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端までに及ぶ。しかしながら、宿主細胞によって産生される抗体は、重鎖のC末端から1つ以上、特に1つ又は2つのアミノ酸の翻訳後開裂を受けてもよい。したがって、完全長重鎖をコードする特定の核酸分子の発現によって、宿主細胞によって産生する抗体は、完全長重鎖を含んでいてもよく、又は完全長重鎖の開裂したバリアントを含んでいてもよい。これは、重鎖の最後の2つのC末端アミノ酸がグリシン(G446)及びリジン(K447)である場合にあり得る。したがって、Fc領域のC末端リジン(Lys447)、又はC末端グリシン(Gly446)及びリジン(Lys447)が存在してもよく、又は存在していなくてもよい。Fc領域を含む重鎖のアミノ酸配列は、別途示されない限り、本明細書ではC末端リジン(Lys447)なしで示される。一態様では、本明細書に開示される抗体に含まれる、本明細書で明記したFc領域を含む重鎖は、更なるC末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447)を含む。一態様では、本明細書に開示される抗体に含まれる、本明細書で明記したFc領域を含む重鎖は、更なるC末端グリシン残基(G446)を含む。一態様では、本明細書に開示される抗体に含まれる、本明細書で明記したFc領域を含む重鎖は、更なるC末端リジン残基(K447)を含む。一実施形態では、Fc領域は、重鎖の単一アミノ酸置換N297Aを含む。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されるような、EUナンバリング方式(EUインデックスとも呼ばれる)に従う。
【0059】
「ネイキッド抗体」は、異種部分(例えば、細胞傷害性部分)又は放射性標識にコンジュゲートしていない抗体を指す。ネイキッド抗体は、医薬組成物中に存在していてもよい。
【0060】
「抗体フラグメント」は、好ましくはその抗原-結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。いくつかの例では、本明細書に記載の抗体フラグメントは、抗原結合フラグメントである。抗体フラグメントの例としては、Fab、F(ab’)、及びFvフラグメント、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、並びに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち集団を構成する個々の抗体が、例えば天然に生じる変異を含むか又はモノクローナル抗体調製物の生成中に生じる、通常少量で存在するバリアント等ありうるバリアント抗体を除き、同一である、及び/又は同じエピトープに結合する。様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない種々の技術によって作製されてもよい。
【0062】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」又は「HVR」という用語は、配列内で超可変であり、抗原結合特異性を決定する、抗体可変ドメインの領域、例えば「相補性決定領域」(CDR)のそれぞれを意味する。
【0063】
一般に、抗体は6つのCDRを含み、3つがVHにあり(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、3つがVLにある(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)。本明細書における例示的なCDRとしては、
(a)アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)及び96-101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
(b)アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3)に生じるCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991));並びに
(c)アミノ酸残基27c-36(L1)、46-55(L2)、89-96(L3)、30-35b(H1)、47-58(H2)及び93-101(H3)で生じる抗原接触(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996))が挙げられる。
【0064】
特に指示がない限り、CDRは、上記Kabat et al.に従い決定される。当業者は、CDRの表記は、上記Chothia、上記McCallum、又は、任意の他の、科学的に認可された命名システムに従い決定することができることを理解するであろう。
【0065】
「フレームワーク」又は「FR」は、相補性決定領域(CDR)以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3及びFR4の4つのFRドメインからなる。したがって、CDR及びFR配列は、一般的に、VH(又はVL)において次の配列で出現する:FR1-CDR-H1(CDR-L1)-FR2-CDR-H2(CDR-L2)-FR3-CDR-H3(CDR-L3)-FR4。
【0066】
「Kabatにおけるような可変ドメイン残基ナンバリング」又は「Kabatにおけるようなアミノ酸位置ナンバリング」という用語、及びそれらの変形は、Kabat et al.,(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリング方式を使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはHVRの短縮、又はそれへの挿入に対応する、より少ないアミノ酸又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによってナンバリングされた配列との相同領域での整列によって決定され得る。
【0067】
「添付文書」という用語は、そのような治療用製品の使用に関する適応症、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌及び/又は警告に関する情報を含む、治療用製品の市販のパッケージに慣習的に含まれている説明書を指すために使用される。
【0068】
本明細書で使用される場合、「と組み合わせて」とは、別の治療様式に加えて1つの治療様式、例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ)及び化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の投与を含む治療レジメンの投与を指す。したがって、「と組み合わせて」とは、患者への他の治療様式の投与前、投与中、又は投与後の1つの治療様式の投与を指す。
【0069】
1つ以上の他の薬物と「同時に」投与される薬物は、同一治療サイクル中、1つ以上の他の薬物と同じ治療日に、また必要に応じて1つ以上の他の薬物と同じ時間に投与される。例えば、3週間毎に付与される癌療法の場合、同時に投与される薬物はそれぞれ、3週間のサイクルの1日目に投与される。
【0070】
併用療法
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)及びPD-L1結合アンタゴニストを含む併用療法(組成物)が本明細書で提供される。
【0071】
いくつかの例では、PD-L1結合アンタゴニストは抗PD-L1抗体である。様々な抗PD-L1抗体が本明細書において企図され、記載される。本明細書の例のいずれにおいても、単離された抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7-1に示されるようなヒトPD-L1、又はそのバリアントに結合することができる。いくつかの例では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間及び/又はPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの例では、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの例では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2フラグメントからなる群から選択される抗体フラグメントである。いくつかの例では、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの例では、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。例示的な抗PD-L1抗体としては、アテゾリズマブ、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、MSB0010718C(アベルマブ)、SHR-1316、CS1001、エンバホリマブ、TQB2450、ZKAB001、LP-002、CX-072、IMC-001、KL-A167、APL-502、コシベリマブ、ロダポリマブ、FAZ053、TG-1501、BGB-A333、BCD-135、AK-106、LDP、GR1405、HLX20、MSB2311、RC98、PDL-GEX、KD036、KY1003、YBL-007及びHS-636が挙げられる。本発明の方法及びそれらを作製する方法において有用な抗PD-L1抗体の例は、国際特許出願公開第2010/077634号及び米国特許第8,217,149号に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0072】
いくつかの例では、抗PD-L1抗体は、
(a)それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号3)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号4)及びRHWPGGFDY(配列番号5)のHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列、並びに
(b)それぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号6)、SASFLYS(配列番号7)及びQQYLYHPAT(配列番号8)のHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3配列を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、以下を含む:
(a)以下のアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH):EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号9)、及び
(b)以下のアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(VL):DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号10)。
【0074】
いくつかの例では、抗PD-L1抗体は、(a)配列番号9又は配列番号9の配列と少なくとも95%の配列同一性(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVH、(b)配列番号10又は配列番号10の配列と少なくとも95%の配列同一性(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むVL、又は(c)(a)に記載のVH及び(b)に記載のVLを含む。
【0075】
一実施形態では、抗PD-L1抗体は、以下を含むアテゾリズマブを含む:
(a)重鎖アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号1)、及び
(b)軽鎖アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号2)。
【0076】
いくつかの例では、抗PD-L1抗体はアベルマブ(CAS登録番号:1537032-82-8)である。MSB0010718Cとしても知られるアベルマブは、ヒトモノクローナルIgG1抗PD-L1抗体(Merck KGaA、Pfizer)である。
【0077】
いくつかの例では、抗PD-L1抗体はデュルバルマブ(CAS登録番号:1428935-60-7)である。MEDI4736としても知られるデュルバルマブは、国際公開第2011/066389号及び米国特許出願公開第2013/034559号に記載されている、Fc最適化ヒトモノクローナルIgG1カッパ抗PD-L1抗体(MedImmune、AstraZeneca)である。
【0078】
いくつかの例では、抗PD-L1抗体はMDX-1105(Bristol Myers Squibb)である。BMS-936559としても知られているMDX-1105は、国際公開第2007/005874号に記載されている抗PD-L1抗体である。
【0079】
いくつかの例では、抗PD-L1抗体はLY3300054(Eli Lilly)である。
【0080】
いくつかの例では、抗PD-L1抗体はSTI-A1014(Sorrento)である。STI-A1014はヒト抗PD-L1抗体である。
【0081】
いくつかの例では、抗PD-L1抗体はKN035(Suzhou Alphamab)である。KN035は、ラクダファージディスプレイライブラリーから生成されたシングルドメイン抗体(dAB)である。
【0082】
いくつかの例では、抗PD-L1抗体は、(例えば、腫瘍微小環境中のプロテアーゼによって)切断されると、抗体抗原結合ドメインを活性化して、例えば、非結合性立体部位を除去することによって、その抗原を結合させることができるようにする、切断可能な部位又はリンカーから構成される。いくつかの例では、抗PD-L1抗体はCX-072(CytomX Therapeutics)である。
【0083】
いくつかの例では、抗PD-L1抗体は、6つのHVR配列(例えば、3つの重鎖HVR及び3つの軽鎖HVR)、及び/又は米国特許出願公開第20160108123号、国際公開第2016/000619号、国際公開第2012/145493号、米国特許第。国際公開第9,205,148号、国際公開第2013/181634号、又は国際公開第2016/061142号に記載される抗PD-L1抗体からの重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0084】
なお更なる特定の態様では、抗PD-L1抗体は、低下した又は最小のエフェクター機能を有する。更に特定の態様では、「エフェクターレスFc変異(effector-less Fc mutation)」又は非グリコシル化(aglycosylation)変異に起因する。なお更なる例では、エフェクターなしのFc突然変異は、定常領域内のN297A又はD265A/N297A置換である。なお更なる例では、エフェクターなしのFc突然変異は、定常領域内のN297A置換である。いくつかの例では、単離された抗PD-L1抗体は、非グリコシル化されている。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合型又はO結合型のいずれかである。N結合型とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合型グリコシル化とは、糖類、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンも使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、(N結合型グリコシル化部位について)上述のトリペプチド配列のうちの1種が除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。この変化は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、又はトレオニン残基の別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニン又は保存的置換)との置換によって行われ得る。
【0085】
一態様では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)及びアテゾリズマブを含む併用療法が本明細書で提供される。一実施形態では、本明細書に記載の併用療法は、本明細書に記載の特定の種類の肺がんの治療に有用である。
【0086】
一態様では、最初の21日サイクルの1~21日目にQD投与される化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、抗PD-L1抗体とを含む併用療法が本明細書で提供される。
【0087】
一態様では、最初の21日サイクルの1~21日目にQD投与される化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、最初の21日サイクルの1日目にQ3W投与されるアテゾリズマブとを含む併用療法が本明細書で提供される。
【0088】
本明細書に記載の併用療法の一実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、固定用量のQD投与として投与される。一実施形態では、投与は経口(PO)であり、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、錠剤又はカプセルとして製剤化される。そのような一実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、フィルムコーティング錠として製剤化(及び投与)される。
【0089】
本明細書に記載の併用療法の一実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約5mg~600mg、5mg~500mg、5mg~400mg、5mg~300mg、5mg~250mg、5mg~200mg、5mg~150mg、5mg~100mg、5mg~50mg、5mg~25mg、25mg~600mg、25mg~500mg、25mg~400mg、25mg~300mg、25mg~250mg、25mg~200mg、25mg~150mg、25mg~100mg、25mg~50mg、50mg~600mg、50mg~500mg、50mg~400mg、50mg~300mg、50mg~250mg、50mg~200mg、50mg~150mg、又は50mg~100mgの量でQD投与される。別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約5mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg又は500mgの量で投与される。別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約50mg、100mg、200mg、300mg又は400mgの量で投与される。別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約50mg、100mg、200mg、又は400mgの量で投与される。好ましい一実施形態では、本明細書に記載の併用療法の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、アジピン酸塩として投与される。そのような実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の量は、遊離塩基形態に対する量として投与される。一実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、本明細書に記載される量(例えば、50mg、100mg、200mg又は400mg)でBID投与される。
【0090】
本明細書に記載の併用療法の一実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは添付文書に従って投与される。好ましい実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストはアテゾリズマブである。
【0091】
一般的な提案として、ヒトに投与されるPD-L1結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ)の治療有効量は、1回以上の投与によるかどうかにかかわらず、患者の体重の約0.01~約50mg/kgの範囲となる。
【0092】
いくつかの例示的実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、約0.01~約45mg/kg、約0.01~約40mg/kg、約0.01~約35mg/kg、約0.01~約30mg/kg、約0.01~約25mg/kg、約0.01~約20mg/kg、約0.01~約15mg/kg、約0.01~約10mg/kg、約0.01~約5mg/kg、又は約0.01~約1mg/kgの用量で投与され、例えば、毎日、毎週、2週間ごと、3週間ごと、又は4週間ごとに投与される。
【0093】
一例では、PD-L1結合アンタゴニストは、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、又は約1500mgの用量でヒトに投与される。いくつかの例では、PD-L1結合アンタゴニストは、3週間ごとに約1000mg~約1400mg(例えば、3週間ごとに約1100mg~約1300mg、例えば、3週間ごとに約1150mg~約1250mg)の用量で投与され得る。
【0094】
好ましい一実施形態では、本明細書に記載の併用療法は、本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含み、アテゾリズマブは、2週間ごとに約840mg(Q2W)、3週間ごとに約1200mg(Q3W)、又は4週間ごとに約1680mg(Q4W)の用量で患者に静脈内投与される。好ましい一実施形態では、本明細書に記載の併用療法は、本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含み、アテゾリズマブは患者に静脈内で約1200mgの用量でQ3W投与される。そのような一実施形態では、本明細書に記載の併用療法は、約50mg、100mg、200mg又は400mgの用量でPO QD投与される本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含み、アテゾリズマブは、患者に静脈内で約1200mgの用量でQ3W投与される。
【0095】
一実施形態では、本明細書に記載の併用療法は、KRasG12C変異を含む肺がんを治療するために使用される。特定の一実施形態では、併用療法は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)及びアテゾリズマブを含み、併用療法は、本明細書に記載のKRasG12C変異を含む肺がんを治療するためのものである。そのような一実施形態では、肺がんは非小細胞肺癌腫(NSCLC)である。別のそのような実施形態では、肺がんは、腺癌腫、扁平上皮肺癌腫又は大細胞肺癌腫である。肺がんはステージI又はステージIIの肺がんであり得る。一実施形態では、肺がんはステージIII又はステージIVの肺がんであり得る。
【0096】
別の態様では、KRasG12C変異を含む肺がんの治療に有用な併用療法であって、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)と、アテゾリズマブとを含む併用療法が本明細書で提供される。そのような一実施形態では、肺がんはNSCLCである。
【0097】
更に別の態様では、KRasG12C変異を含む肺がんの治療に有用な併用療法が本明細書で提供され、併用療法は化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)を含み、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は最初の21日サイクルの1~21日目にQD投与され、アテゾリズマブは最初の21日サイクルの1日目にQ3W投与される。好ましい一実施形態では、肺がんはNSCLCである。
【0098】
更に別の態様では、KRasG12C変異を含む肺がんの治療に有用な併用療法が本明細書で提供され、併用療法は化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)を含み、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は最初の21日サイクルの1~21日目に約50mg~400mgの量でQD投与され、アテゾリズマブは最初の21日サイクルの1日目に約1200mgの量でQ3W投与される。好ましい一実施形態では、肺がんはNSCLCである。
【0099】
治療方法
KRasG12C変異によって媒介される肺がんを有する患者において肺がんを治療する方法も本明細書で提供される。一態様では、KRasG12C変異によって媒介される肺がんを有する患者におけるそのような肺がんを治療する方法であって、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)と、PD-L1結合アンタゴニストとを含む、有効量の併用療法を投与することを含む方法が本明細書で提供される。一態様では、KRasG12C変異によって媒介される肺がんを有する患者におけるそのような肺がんを治療する方法であって、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)と、アテゾリズマブとを含む、有効量の併用療法を投与することを含む方法が本明細書で提供される。一実施形態では、本方法は、7日間の休止期間を更に含む。
【0100】
本明細書で提供される一実施形態では、肺がんは非小細胞肺癌腫(NSCLC)である。本明細書で提供される方法の別の実施形態では、肺がんは、腺癌腫、扁平上皮肺癌腫又は大細胞肺癌腫である。そのような一実施形態では、がんは肺腺癌腫である。別のそのような実施形態では、肺がんは小細胞肺癌腫である。別の実施形態において、肺がんは小細胞肺癌腫である。更に別の実施形態では、肺がんは腺腫瘍、カルチノイド腫瘍、又は未分化癌腫である。肺がんはステージI又はステージIIの肺がんであり得る。一実施形態では、肺がんはステージIII又はステージIVの肺がんであり得る。
【0101】
KRasG12C変異を含むNSCLCを有する患者におけるそのようながんを治療する方法も本明細書で提供され、該方法は、(i)第1の21日サイクルの1~21日目に化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)第1の21日サイクルの1日目にアテゾリズマブをQ3W投与することと、を含む投薬レジメンを含む、本明細書に記載の併用療法を患者に投与することを含む。本明細書で提供される方法の一実施形態では、本方法は腺癌腫を治療するために使用される。本明細書で提供される方法の一実施形態では、本方法は2サイクル以上を含む。そのような一実施形態では、本方法は、サイクル間に7日間の休止期間を更に含む。
【0102】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、固定用量のQD投与として投与される。一実施形態では、投与は経口(PO)であり、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、錠剤又はカプセルとして製剤化される。1つの実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、5mg~600mg、5mg~500mg、5mg~400mg、5mg~300mg、5mg~250mg、5mg~200mg、5mg~150mg、5mg~100mg、5mg~50mg、5mg~25mg、25mg~600mg、25mg~500mg、25mg~400mg、25mg~300mg、25mg~250mg、25mg~200mg、25mg~150mg、25mg~100mg、25mg~50mg、50mg~600mg、50mg~500mg、50mg~400mg、50mg~300mg、50mg~250mg、50mg~200mg、50mg~150mg、又は50mg~100mgの量でQD投与される。別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約5mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg又は500mgの量で投与される。別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約50mg、100mg、200mg、300mg又は400mgの量で投与される。別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約50mg、100mg、200mg、又は400mgの量で投与される。好ましい一実施形態では、本明細書に記載の併用療法の化合物1は、アジピン酸塩として投与される。そのような実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の量は、遊離塩基形態に対する量として投与される。
【0103】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、アテゾリズマブは、約0.01~約45mg/kg、約0.01~約40mg/kg、約0.01~約35mg/kg、約0.01~約30mg/kg、約0.01~約25mg/kg、約0.01~約20mg/kg、約0.01~約15mg/kg、約0.01~約10mg/kg、約0.01~約5mg/kg、又は約0.01~約1mg/kgの用量で投与され、例えば、毎日、毎週、2週間ごと、3週間ごと、又は4週間ごとに投与される。
【0104】
一例では、アテゾリズマブは、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、又は約1500mgの用量でヒトに投与される。いくつかの例では、アテゾリズマブは、3週間ごとに約1000mg~約1400mg(例えば、3週間ごとに約1100mg~約1300mg、例えば、3週間ごとに約1150mg~約1250mg)の用量で投与され得る。
【0105】
本明細書に記載の方法の好ましい一実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は本明細書に記載されるように投与され、アテゾリズマブは患者に静脈内に約1200mgの用量でQ3W投与される。
【0106】
KRasG12C変異を含むNSCLCを有する患者におけるそのようながんを治療する方法も本明細書で提供され、該方法は、(i)第1の21日サイクルの1~21日目に化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を約50mg~500mgの量でQD投与することと、(ii)第1の21日サイクルの1日目にアテゾリズマブを1200mgの量でQ3W投与することと、を含む投薬レジメンを含む、本明細書に記載の併用療法を患者に投与することを含む。本明細書で提供される方法の一実施形態では、本方法は腺癌腫を治療するために使用される。
【0107】
本明細書で提供される方法は、投薬レジメンの一部として、本明細書に記載の併用療法の投与を含み得る。そのような一実施形態では、投薬レジメンは、1回以上のサイクルを含む。別の実施形態では、投薬レジメンは、少なくとも2回のサイクルを含む。別の態様では、本明細書で提供される投薬レジメンは、2、3、4、5、6、8、10、12、16、18、20、24、30、36、42、48、54、60、66又は72回のサイクルを含む。更に別の実施形態では、投薬レジメンは、約2~72、2~66、2~60、2~54、2~48、2~42、2~36、2~30、2~24、2~18、2~12又は2~6回のサイクルを含む。一実施形態では、投薬レジメンは、所望の応答(例えば、PFS、OS、ORR、及び/又はDOR)が所望の転帰に達するまでの(例えば、本明細書に記載の対照と比較して、PFS、OS、ORR、及び/又はDORが増加)、本明細書に記載の併用療法の任意の回数のサイクルでの投与を含む。別の実施形態では、投薬レジメンは、毒性が発現するか、又は患者が他の方法で更なる投与を妨げる1つ以上の有害事象(AE)を経験するまでの、任意の回数のサイクルでの本明細書に記載の併用療法の投与を含む。更に別の実施形態では、投薬レジメンは、疾患進行までの任意のサイクル数での本明細書に記載の併用療法の投与を含む。
【0108】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、患者には、合計で1~50用量、例えば、1~50用量、1~45用量、1~40用量、1~35用量、1~30用量、1~25用量、1~20用量、1~15用量、1~10用量、1~5用量、2~50用量、2~45用量、2~40用量、2~35用量、2~30用量、2~25用量、2~20用量、2~15用量、2~10用量、2~5用量、3~50用量、3~45用量、3~40用量、3~35用量、3~30用量、3~25用量、3~20用量、3~15用量、3~10用量、3~5用量、4~50用量、4~45用量、4~40用量、4~35用量、4~30用量、4~25用量、4~20用量、4~15用量、4~10用量、4~5用量、5~50用量、5~45用量、5~40用量、5~35用量、5~30用量、5~25用量、5~20用量、5~15用量、5~10用量、10~50用量、10~45用量、10~40用量、10~35用量、10~30用量、10~25用量、10~20用量、10~15用量、15~50用量、15~45用量、15~40用量、15~35用量、15~30用量、15~25用量、15~20用量、20~50用量、20~45用量、20~40用量、20~35用量、20~30用量、20~25用量、25~50用量、25~45用量、25~40用量、25~35用量、25~30用量、30~50用量、30~45用量、30~40用量、30~35用量、35~50用量、35~45用量、35~40用量、40~50用量、40~45用量、又は45~50用量のアテゾリズマブが投与される。好ましい一実施形態では、用量は静脈内投与される。
【0109】
特定の実施形態では、本明細書に記載の併用療法の治療剤(例えば、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩、及びアテゾリズマブ)は、当技術分野で公知の任意の適切な方法で投与され得る。例えば、アテゾリズマブは、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩として連続的に(異なる日に)、又は同時に(同日又は同じ治療サイクル中に)投与され得る。一実施形態では、アテゾリズマブは、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の投与後に投与される。いくつかの例では、アテゾリズマブは、化合物1の投与後に投与され、又はその薬学的に許容され得る塩は同日に投与され得る。一実施形態では、アテゾリズマブは、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を投与した後、同日に投与され得る。例えば、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、各サイクルの1日目にアテゾリズマブを投与する前に各サイクルの1日目に投与することができ、次いで、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、21日サイクルの次の20日間QD投与される。
【0110】
好ましい実施形態では、アテゾリズマブは静脈内投与される。一例では、アテゾリズマブは60分かけて静脈内投与され得、最初の注入が許容され得る場合、その後の注入は全て30分かけて送達され得る。いくつかの例では、PD-1軸結合アンタゴニストは、静脈内プッシュ又はボーラスとして投与されない。
【0111】
一実施形態では、アテゾリズマブは表1に従って投与される。
【表1】
【0112】
有効量の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、アジピン酸塩)と、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ)とを含む治療レジメンを患者に投与することを含む、肺がんを有する患者におけるそのがんを治療するための方法も本明細書で提供される。そのような方法の一実施形態では、化合物1はアジピン酸塩であり、PD-L1結合アンタゴニストはアテゾリズマブである。そのような方法の別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、本明細書に記載のQDで、及び本明細書に記載の量(例えば50mg~500mg)で投与される。そのような方法の別の実施形態では、アテゾリズマブは、本明細書に記載のQ3Wで、及び本明細書に記載の量(例えば1200mg)で投与される。そのような方法では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩及びアテゾリズマブは、本明細書に記載されるように投与され得る。
【0113】
いくつかの例では、治療レジメンは、1つ以上の追加の治療の投与を含み、追加の治療は、1つ以上の副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生及び/又は重症度を軽減することを意図した薬剤、例えば、抗悪心剤、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン又は同等物、例えば1~2mg/kg/日の用量)、ホルモン補充薬(複数可)等)である。
【0114】
本明細書で提供される患者は、評価されなければならず、本明細書に記載のKRasG12C変異についての確認された試験結果を有さなければならない。NSCLCと診断された本明細書に記載の患者は、既知の付随する第2の発癌性ドライバ(例えば、NSCLCの場合:感受性EGFR変異、ALK再構成、ROS1再構成、BRAF V600E変異、NTRK融合、RET融合;又は結腸若しくは直腸の腺癌腫の場合:BRAF V600E変異、ERBB2増幅)を有してはならない。一実施形態では、そのような第2の発癌性ドライバは、NGS(例えば、Foundation Medicine,Inc.(FMI)によるNGSアッセイ)を使用して決定される。
【0115】
実施形態では、本明細書に記載の患者は、既知で未治療の又は活動性の中枢神経系(CNS)転移(進行しているか、又は対症療法のために抗痙攣薬若しくはコルチコステロイドを必要とする)を有していない。患者は、そのような患者が治療されたCNS転移の病歴を有する場合、本明細書に記載の方法を使用して治療してもよく、そのような患者は以下を有する:(1)CNS外の測定可能又は評価可能な疾患;(2)頭蓋内出血又は脊髄出血の既往なし;(3)CNS転移の治療としてのコルチコステロイドに対する継続的な必要性がなく、コルチコステロイドは、本明細書に記載の併用療法の投与の≧2週間前に中止され、CNS転移に起因する進行中の症候はない;(4)本明細書に記載のサイクル1の1日目の前の7日間以内の定位放射線照射又は14日間以内の全脳放射線照射なし;及び(5)CNS向け治療の完了とスクリーニング放射線学的研究との間の暫定的な進行の証拠はない。
【0116】
一実施形態では、本明細書に記載の患者は、KRasG12C特異的阻害剤による事前の治療を受けていない。
【0117】
別の実施形態では、本明細書に記載の患者は、本明細書に記載の併用療法の投与前3週間以内に化学療法、免疫療法若しくは抗癌療法としての生物学的療法、又は本明細書に記載の併用療法の投与前2週間以内に内分泌療法による治療を受けていないが、ただし、以下を除く:
(a)内分泌感受性癌(例えば、前立腺癌、子宮内膜癌、ホルモン受容体陽性乳癌)に対するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト又はアンタゴニストを用いたホルモン療法;
(b)任意の薬物関連毒性が完全に消散しているならば、規制当局によって承認されたキナーゼ阻害剤を、本明細書に記載の併用療法の投与の2週間前まで使用してもよい;又は
(c)本明細書に記載の併用療法の投与前の3週間又は5半減期(いずれか短い方)以内の治験薬による治療。
【0118】
別の実施形態では、本明細書に記載の患者は、本明細書に記載の併用療法の投与開始前4週間以内に、癌療法として放射線療法(上記の骨転移に対する緩和放射線照射及びCNS転移に対する放射線照射以外)を受けていない。更に別の実施形態では、本明細書に記載の患者は、本明細書に記載の併用療法の投与前2週間以内に骨転移に対する緩和放射線照射を受けていない。
【0119】
別の実施形態では、本明細書に記載の患者は、重症筋無力症、筋炎、自己免疫性肝炎、心筋炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、炎症性腸疾患、抗リン脂質抗体症候群、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、ギラン・バレー症候群、又は多発性硬化症を含むがこれらに限定されない自己免疫疾患又は免疫不全の活動が活動性であるもの、又はその病歴を有しないが、ただし、以下を除く:
(a)甲状腺補充ホルモンを服用している自己免疫関連甲状腺機能低下症の病歴を有する患者;
(b)インスリンレジメンを受けている制御された1型糖尿病患者;
湿疹、乾癬、慢性単純性苔癬、又は皮膚症状のみを伴う白斑(例えば、乾癬性関節炎を有する患者は除外される)を有する患者は、以下の条件の全てが満たされるならば、アテゾリズマブによる治療に適格である:
(i)発疹が覆っている体表面積は10%未満でなければならない
(ii)疾患は1日目に十分に制御されており、低効力の局所コルチコステロイドのみを必要とする;
(iii)過去12ヶ月以内にソラレン+紫外線A照射、メトトレキサート、レチノイド、生物学的薬剤、経口カルシニューリン阻害剤、又は高効力若しくは経口コルチコステロイドを必要とする基礎症状の急性増悪の発生がない。
(d)特発性肺線維症、器質化肺炎(例えば、閉塞性細気管支炎)、薬剤性間質性肺炎、若しくは特発性間質性肺炎の病歴、又活動性間質性肺炎の証拠。
(e)本明細書に記載される、アテゾリズマブの投与前4週間以内又はアテゾリズマブによる治療中の5薬物排出半減期(いずれか長い方)以内の全身免疫抑制薬(限定されないが、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、サリドマイド及び抗TNF-α剤を含む)による治療、ただし、以下を除く:
(i)急性低用量全身免疫抑制薬又は1回パルス用量の全身免疫抑制薬(例えば、造影剤アレルギーのための48時間のコルチコステロイド)を受けた患者;又は
(ii)ミネラルコルチコイド(例えば、フルドロコルチゾン)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)若しくは喘息のためのコルチコステロイド、又は起立性低血圧若しくは副腎機能不全のための低用量コルチコステロイドを受けた患者
【0120】
さらに、本明細書に記載の肺がんの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(U1)が本明細書で提供される。一実施形態では、本明細書に記載の肺がんの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(U2)が本明細書で提供される。
【0121】
さらに、本明細書に記載の肺がんの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(U3)であって、(i)第1の21日サイクルの1~21日目に化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)第1の21日サイクルの1日目にアテゾリズマブをQ3W投与することと、を含む投薬レジメンを含む併用療法の使用が本明細書で提供される。
【0122】
さらに、本明細書に記載の肺がんの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(U4)であって、(i)第1の21日サイクルの1~21日目に約50~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)第1の21日サイクルの1日目に約1200mgのアテゾリズマブをQ3W投与することと、を含む投薬レジメンを含む併用療法の使用が本明細書で提供される。そのような一実施形態では、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。
【0123】
さらに、本明細書に記載の肺がんの治療のための医薬の製造のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(U5)が本明細書で提供される。
【0124】
さらに、本明細書に記載の肺がんの治療のための医薬の製造のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(U6)であって、(i)第1の21日サイクルの1~21日目に化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)第1の21日サイクルの1日目にアテゾリズマブをQ3W投与することと、を含む投薬レジメンを含む、本明細書に記載の併用療法の使用が本明細書で提供される。
【0125】
さらに、本明細書に記載の肺がんの治療のための医薬の製造のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(U7)であって、(i)第1の21日サイクルの1~21日目に約50~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)第1の21日サイクルの1日目に約1200mgのアテゾリズマブをQ3W投与することと、を含む投薬レジメンを含む併用療法の使用が本明細書で提供される。そのような一実施形態では、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。
【0126】
本明細書に記載される使用のそのような実施形態では、肺がんはNSCLCであり得る。本明細書に記載される使用の別のこのような実施形態では、本明細書に記載の患者は、NSCLC、腺癌腫、扁平上皮肺癌腫、大細胞肺癌腫、又はKRasG12C変異によって媒介されるSCLCと診断される。
【0127】
併用治療の開発は、例えば、許容され得る毒性を維持しつつ有効性の改善につながりうる併用療法のための薬剤の選択を含めて、課題を有している。1つの特定の課題は、併用の漸進的な毒性を識別する必要性である。本明細書に記載の方法の一実施形態では、本明細書に記載の併用療法(例えば、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩、及びアテゾリズマブ)は、時差投薬スケジュールを含む投薬レジメンで投与される。そのような一実施形態では、患者は、対照(例えば、SOC療法、本明細書に記載の1つの薬剤(例えば、化合物1若しくはその薬学的に許容され得る塩、又はアテゾリズマブ)単独による治療)に匹敵する有害事象(AE)の数又はグレードの低下を有する。
【0128】
有害事象が発生した場合、次の4つの選択肢が存在すると一般的に理解されている:(1)任意の付随療法を用いてそのまま治療を継続;(2)投薬レジメンにおける1つ以上の薬剤の用量を調整;(3)投薬レジメンにおける1つ以上の薬剤の投与を一時中断;又は、(4)投薬レジメンにおける1つ以上の薬剤の投与を中止。一実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の量は変更されない。別の実施形態では、投与されるアテゾリズマブの量は変更されない。一実施形態では、アテゾリズマブの投与が中断される場合、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の次の投与は、アテゾリズマブの投与が再開されるのと同じ日に行われる。一実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、食物なしで投与される(すなわち、患者は投与の少なくとも2時間前及び1時間後に食事をしてはならない)。
【0129】
一実施形態では、本明細書に記載の患者は、グレード2以下のAEとして胃腸毒性を経験する。そのような一実施形態では、胃腸毒性は、下痢、悪心又は嘔吐である。別の実施形態では、本明細書に記載の患者は光毒性を経験する。そのような実施形態では、患者は、屋外で日焼け止め及び防護服を着用すべきである。
【0130】
本明細書に記載の患者は、以下を含む付随療法を投与することもできる:(a)抗発作薬又はワルファリン;(b)経口避妊薬又は他の可能な維持療法;(c)研究薬物による初期治療の前に予防的に投与すべきでないことを条件とする、制吐薬及び下痢止め薬;(d)標準的な臨床診療に従って投与される鎮痛薬;(e)骨転移又は骨減少症/骨粗鬆症のためのビスホスホネート及びデノスマブ療法;及び/又は(f)マルチビタミン、カルシウム及びビタミンC、D及びEサプリメント。
【0131】
本明細書に記載の患者は、(1)強力/中程度のCYP3A4阻害剤(例えば、アタザナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、サキナビル、クラリスロマイシン、テリスロマイシン、エリスロマイシン、トロレアンドマイシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、アプレピタント、コニバプタン、フルボキサミン、ジルチアゼム、ネファゾドン、ミベフラジル、ベラパミル、及びグレープフルーツジュース又はグレープフルーツサプリメント);(2)強力/中程度のCYP3A4誘導剤(例えば、リファンピン、カルバマゼピン、フェニトイン、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、エファビレンツ、ネビラピン、エトラビリン、モダフィニル、ハイパーフォリン(セントジョーンズワート)及びシプロテロン)及びシプロテロンを含む)を含む治療を同時に服用しない場合がある。
【0132】
別の実施形態では、本明細書に記載の患者は、以下のいずれの治療も投与されない:
(a)本明細書に記載の併用療法の投与前の3週間又は5半減期(いずれか短い方)、又はそのような治療中の任意の他の治験療法(化合物1若しくはその薬学的に許容され得る塩、又はアテゾリズマブを除く);
(b)以下を除く、化学療法、放射線療法、免疫療法、生物学的療法、薬草療法、又はホルモン療法を含む、FDAによって承認されているか実験的であるかにかかわらずがんの治療を意図した付随療法:
(i)内分泌感受性癌(例えば、前立腺癌、子宮内膜癌、ホルモン受容体陽性乳癌)に対するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト又はアンタゴニストを用いたホルモン療法;
(ii)ホルモン補充療法又は経口避妊
(c)以下の全身応答の状況における新たな脳転移を除いて、明確な進行性疾患に対する放射線療法:全身性疾患の制御を示した患者(臨床的利益[すなわち、≧3ヶ月間にわたるPR、CR又はSD]を受けたと定義される)であるが、放射線照射で治療可能な脳転移を発症した患者は、(治験責任医師の評価に基づく)疾患の全身性進行及び/又は脳における更なる進行のいずれかを経験するまで、研究中に化合物1又はその薬学的に許容され得る塩による治療を継続することが可能になる。
(d)キニジン又は他の抗不整脈薬;
(e)第1のサイクルの1日目の7日前からの造血コロニー刺激因子(CSF;例えば、顆粒球CSF;フィルグラスチム、顆粒球/マクロファージCSF;サルグラモスチム、ペグフィルグラスチム、エリスロポエチン、ダルベポエチン及びトロンボポエチン)の開始又は用量の増加
(f)本明細書に記載の併用療法の投与前4週間以内及びアテゾリズマブの最終投与後5ヶ月間の生弱毒化ワクチン(例えば、FluMist(登録商標));
(g)本明細書に記載の併用療法の投与前及び投与中の4週間以内又は5薬物排出半減期(いずれか長い方)の全身性免疫刺激剤(インターフェロン及びIL2を含むが、これらに限定されない)。
【0133】
患者層別化
そのような方法の一実施形態では、患者は、本明細書に記載のKRasG12C変異を含むがんと診断される。別のそのような実施形態において、患者は、PD-L1を発現するがんを有すると診断される。そのような診断は、患者から採取された1つ以上の試料及び本明細書に記載の試験から行うことができる。一実施形態では、試料は、対象から採取された腫瘍試料である。そのような一実施形態では、試料は、本明細書に記載の任意の治療の投与前に採取される。別のそのような実施形態では、試料は、本明細書に記載の少なくとも1つの薬剤の投与前に採取される。いくつかの実施形態では、治療を評価するために、本明細書に記載の併用療法による治療中に指定の間隔で腫瘍試料を採取することができる。
【0134】
腫瘍又はがんがKRasG12C変異を含むか否かを決定することは、K-Rasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を評価することにより、K-Rasタンパク質のアミノ酸配列を評価することにより、又は、推定されるK-Ras変異タンパク質の特性を評価することにより、実施することができる。野生型ヒトK-Rasの配列(例えば受託番号NP203524)は当技術分野で公知である。そのような一実施形態では、本明細書に記載の患者からの試料を、例えば免疫組織化学(IHC)又はNGS配列決定を使用してKRasG12C変異について評価する。
【0135】
PD-L1の発現は、本明細書に記載の使用のための方法及び組成物のいずれかに従って治療された患者において評価され得る。使用のための方法及び組成物は、患者から得られた生物学的試料(例えば、腫瘍試料)中のPD-L1の発現レベルを決定することを含み得る。他の例では、患者から得られた生物学的試料(例えば、腫瘍試料)中のPD-L1の発現レベルは、治療開始前又は治療開始後に決定されている。PD-L1発現は、任意の適切なアプローチを使用して決定され得る。例えば、PD-L1発現は、米国特許出願公開第15/787,988号及び同第15/790,680号に記載されているように決定され得る。任意の適切な腫瘍試料、例えばホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料、保管腫瘍試料、新鮮腫瘍試料又は凍結腫瘍試料を使用してもよい。
【0136】
例えば、PD-L1の発現は、検出可能なPD-L1発現レベルを発現する腫瘍浸潤免疫細胞に含まれる腫瘍試料の割合に関して、検出可能なPD-L1発現レベルを発現する腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞の割合として、及び/又は検出可能なPD-L1発現レベルを発現する腫瘍試料中の腫瘍細胞の割合として決定され得る。前述の例のいずれにおいても、腫瘍浸潤免疫細胞によって構成される腫瘍試料のパーセンテージは、患者から得られた腫瘍試料の切片において、腫瘍浸潤免疫細胞によって覆われる腫瘍領域のパーセンテージ(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、SP142抗体)を使用してIHCによって評定されるように)に関してであり得ることが理解されるべきである。例えば、SP142(Ventana)、SP263(Ventana)、22C3(Dako)、28-8(Dako)、E1L3N(Cell Signaling Technology)、4059(ProSci,Inc.)、h5H1(Advanced Cell Diagnostics)及び9A11を含む任意の適切な抗PD-L1抗体を使用してもよい。いくつかの例では、抗PD-L1抗体はSP142である。他の例では、抗PD-L1抗体はSP263である。
【0137】
いくつかの例では、患者から得られる腫瘍試料は、腫瘍試料中の1%未満の腫瘍細胞、腫瘍試料中の1%以上の腫瘍細胞、腫瘍試料中の1%~5%未満の腫瘍細胞、腫瘍試料中の5%以上の腫瘍細胞、腫瘍試料中の5%~50%未満の腫瘍細胞又は腫瘍試料中の50%以上の腫瘍細胞において、検出可能なPD-L1発現レベルを有する。
【0138】
いくつかの例では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の1%未満、腫瘍試料の1%超、腫瘍試料の1%~5%未満、腫瘍試料の5%超、腫瘍試料の5%~10%未満、又は腫瘍試料の10%超を構成する腫瘍浸潤免疫細胞中の検出可能なPD-L1発現レベルを有する。
【0139】
いくつかの例では、腫瘍試料は、表A及び/又は表Bにそれぞれ示される診断評定のための基準に従って、腫瘍浸潤免疫細胞及び/又は腫瘍細胞におけるPD-L1陽性についてスコア化され得る。
【0140】
【0141】
【0142】
本明細書に記載の併用療法を適用することによる、本明細書に記載の患者における、腫瘍増殖を阻害する方法又は腫瘍退縮を生じる方法もまた、本明細書で提供される。一実施形態では、本明細書に記載される1回以上の21日サイクルで、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とアテゾリズマブとを投与することを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載の肺がんを有する患者における腫瘍増殖を阻害する方法が、本明細書で提供される。
【0143】
一実施形態では、本明細書に記載される1回以上の21日サイクルで、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とアテゾリズマブとを投与することを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載の肺がんを有する患者における腫瘍退縮を生じさせるか又は改善する方法が本明細書で提供される。
【0144】
キット
本明細書に記載の併用療法は、投与のための本明細書に記載の1つ以上の薬剤を含むキットとして提供することができる。一実施形態では、キットは、本明細書に記載のアテゾリズマブと組み合わせて投与するための化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)を含む。別の実施形態では、キットは、アテゾリズマブと共に包装された化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)を含み、該キットは、各薬剤の別々の処方された投与量を含む。
【0145】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)と、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ)とを含む製造品又はキットも本明細書で提供される。いくつかの例では、製造品は、肺がんを治療するため又は肺がんの進行を遅延させるためにPD-L1結合アンタゴニストを使用するための説明書を含む添付文書を更に含む。そのような一実施形態では、肺がんはNSCLSである。一実施形態では、製造品は、患者におけるNSCLCを治療するため、又はその進行を遅延させるために、アテゾリズマブを化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を更に含む。
【0146】
いくつかの例では、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ)及び化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)は、同じ容器又は別々の容器に入っている。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、及びシリンジが挙げられる。容器は、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニル若しくはポリオレフィン等)、又は金属合金(ステンレス鋼若しくはハステロイ等)等の様々な材料から形成され得る。いくつかの例では、容器は、製剤を保持し、容器上のラベル又は容器に関連するラベルは、使用上の指示を示し得る。製造品又はキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書付きの添付文書を含む、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含み得る。いくつかの例では、製造品は、1つ以上の別の薬剤(例えば、更なる化学療法剤又は抗新生物剤)を更に含む。1つ以上の薬剤に好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、及びシリンジが挙げられる。
【0147】
本明細書に記載の任意の製造品又はキットは、本明細書に記載の方法のいずれかに従って化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)及び/又はPD-L1結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ)を患者に投与するための説明書を含み得る。
【0148】
バイオマーカー
一実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩によるKRasG12Cのアルキル化が患者において測定される。そのような一実施形態では、測定は、試料を使用して実施され、本明細書で提供されるKRasG12Cのアルキル化について試験される。別の実施形態では、末梢血からのctDNAバイオマーカー(例えば、KRasG12C)の評価を行う。更に別の実施形態では、DNA変異状態及びコピー数を含む、DNA、RNA及びタンパク質の変化;RNA発現レベル、局在化及びスプライシング;並びにタンパク質発現(例えば、PD-L1)が決定される。
【0149】
一実施形態では、対になった治療前及び治療中の新鮮な腫瘍生検の分析による、KRAS/MAPK標的遺伝子(例えば、DUSP6、SPRY4)、経路成分(例えば、pERK、pS6)及び関連バイオマーカー(例えば、Ki67)の調節を行う。
【0150】
実施形態
以下に、本発明の例示的な実施形態を提供する。
【0151】
実施形態1:
(a)化合物1
【化2】
又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)PD-L1結合アンタゴニストと、
を含む、併用療法。
【0152】
実施形態2:前記PD-L1結合アンタゴニストが、抗PD-L1抗体である、実施形態1に記載の併用療法。
【0153】
実施形態3:前記抗PD-L1抗体がアテゾリズマブである、実施形態1又は2に記載の併用療法。
【0154】
実施形態4:化合物1がそのアジピン酸塩である、実施形態1~3のいずれか一項に記載の併用療法。
【0155】
実施形態5:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、第1の21日サイクルの1~21日目にQD投与され、アテゾリズマブが第1の21日サイクルの1日目にQ3W投与される、実施形態1~4のいずれか一項に記載の併用療法。
【0156】
実施形態6:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、錠剤又はカプセル剤として経口投与される、実施形態1~5のいずれか一項に記載の併用療法。
【0157】
実施形態7:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が約50mg~500mgの量で投与される、実施形態1~6のいずれか一項に記載の併用療法。
【0158】
実施形態8:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、約5mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg又は500mgの量で投与される、実施形態1~7のいずれか一項に記載の併用療法。
【0159】
実施形態9:アテゾリズマブが約1000mg~約1400mgの量でQ3W投与される、実施形態3~8のいずれか一項に記載の併用療法。
【0160】
実施形態10:アテゾリズマブが約840mgの量でQ2W投与されるか、約1200mgの量でQ3W投与されるか、又は約1680mgの量でQ4W投与される、実施形態9に記載の併用療法。
【0161】
実施形態11:アテゾリズマブが患者に静脈内で約1200mgの用量でQ3W投与される、実施形態9又は10に記載の併用療法。
【0162】
実施形態12:KRasG12C変異を含む、肺がんにおける使用のための、実施形態1~11のいずれか一項に記載の併用療法。
【0163】
実施形態13:前記肺がんが非小細胞肺癌腫(NSCLC)である、実施形態12に記載の併用療法。
【0164】
実施形態14:
(a)第1の21日サイクルの1~21日目にQD投与される化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)第1の21日サイクルの1日目にQ3W投与されるアテゾリズマブとを含む、併用療法。
【0165】
実施形態15:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、前記第1の21日サイクルの1~21日目に約50mg~500mgの量でQD投与され、アテゾリズマブが、前記第1の21日サイクルの1日目に約1200mgの量でQ3W投与される、実施形態14に記載の併用療法。
【0166】
実施形態16:KRasG12C変異によって媒介される肺がんを有する患者おけるそのような肺がんを治療する方法であって、
(a)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)PD-L1結合アンタゴニストと、
を含む、有効量の併用療法を投与することを含む、方法。
【0167】
実施形態17:PD-L1結合アンタゴニストが、抗PD-L1抗体である、実施形態16に記載の方法。
【0168】
実施形態18:抗PD-L1抗体がアテゾリズマブである、実施形態16又は17に記載の方法。
【0169】
実施形態19:化合物1がそのアジピン酸塩である、実施形態16~18のいずれか一項に記載の方法。
【0170】
実施形態20:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、第1の21日サイクルの1~21日目にQD投与され、アテゾリズマブが第1の21日サイクルの1日目にQ3W投与される、実施形態18又は19に記載の方法。
【0171】
実施形態21:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、錠剤又はカプセル剤として経口投与される、実施形態16~20のいずれか一項に記載の方法。
【0172】
実施形態22:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が約50mg~500mgの量で投与される、実施形態16~21のいずれか一項に記載の方法。
【0173】
実施形態23:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、約5mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg又は500mgの量で投与される、実施形態16~22のいずれか一項に記載の方法。
【0174】
実施形態24:アテゾリズマブが約1000mg~約1400mgの量でQ3W投与される、実施形態18~23のいずれか一項に記載の方法。
【0175】
実施形態25:アテゾリズマブが約840mgの量でQ2W投与されるか、約1200mgの量でQ3W投与されるか、又は約1680mgの量でQ4W投与される、実施形態18~24のいずれか一項に記載の方法。
【0176】
実施形態26:アテゾリズマブが患者に静脈内で約1200mgの用量でQ3W投与される、実施形態18~25のいずれか一項に記載の方法。
【0177】
実施形態27:前記肺がんがNSCLCである、実施形態16~26のいずれか一項に記載の併用療法。
【0178】
実施形態28:前記肺がんが、腺癌腫、扁平上皮肺癌腫又は大細胞肺癌腫である、実施形態16~26のいずれか一項に記載の併用療法。
【0179】
実施形態29:KRasG12C変異を含むNSCLCを有する患者におけるそのようながんを治療する方法であって、
(a)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩であって、第1の21日サイクルの1~21日目にQD投与される化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)第1の21日サイクルの1日目にQ3W投与されるアテゾリズマブとを含む、
有効量の併用療法を前記患者に投与することを含む、方法。
【0180】
実施形態30:
(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、第1の21日サイクルの1~21日目に約50mg~500mgの量でQD投与され、
(ii)アテゾリズマブが、第1の21日サイクルの1日目に1200mgの量でQ3W投与される、
実施形態29に記載の方法。
【0181】
実施形態31:アテゾリズマブが、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の投与後に投与される、実施形態18~30のいずれか一項に記載の方法。
【0182】
実施形態32:NSCLCを有する患者におけるNSCLCを治療する方法であって、有効量の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、PD-L1結合アンタゴニストとを含む治療レジメンを前記患者に投与することを含む、方法。
【0183】
実施形態33:化合物1がアジピン酸塩である、実施形態32に記載の方法。
【0184】
実施形態34:前記PD-L1結合アンタゴニストがアテゾリズマブである、実施形態32又は実施形態33に記載の方法。
【0185】
実施形態35:
(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、第1の21日サイクルの1~21日目に約50mg~500mgの量でQD投与され、
(ii)アテゾリズマブが、第1の21日サイクルの1日目に1200mgの量でQ3W投与される、
実施形態32~34のいずれか一項に記載の方法。
【0186】
実施形態36:前記患者が、感受性EGFR変異、ALK再構成、ROS1再構成、BRAF V600E変異、NTRK融合、及びRET融合、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される変異を有しないと診断される、実施形態16~35のいずれか一項に記載の方法。
【0187】
実施形態37:本明細書に記載の肺がんの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含む併用療法の使用(U1)。
【0188】
実施形態38:(i)第1の21日サイクルの1~21日目に化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)第1の21日サイクルの1日目にアテゾリズマブをQ3W投与することと、を含む投薬レジメンを更に含む、実施形態37に記載の使用。
【0189】
実施形態39:(i)前記第1の21日サイクルの1~21日目に約50~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記第1の21日サイクルの1日目に約1200mgのアテゾリズマブをQ3W投与することと、を更に含む、実施形態38に記載の使用。
【0190】
実施形態40:肺がんを治療するための医薬を製造するための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、アテゾリズマブとを含む併用療法の使用(U5)。
【0191】
実施形態41:(i)第1の21日サイクルの1~21日目に化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)第1の21日サイクルの1日目にアテゾリズマブをQ3W投与することと、更に含む、実施形態40に記載の使用。
【0192】
実施形態42:(i)前記第1の21日サイクルの1~21日目に約50~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記第1の21日サイクルの1日目に約1200mgのアテゾリズマブをQ3W投与することと、を更に含む、実施形態41に記載の使用。そのような一実施形態では、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。
【0193】
実施形態43:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩によるKRasG12Cの前記アルキル化が前記患者において測定される、実施形態16~36のいずれか一項に記載の方法又は実施形態37~42のいずれか一項に記載の使用。
【0194】
次の実施例は、限定ではなく、例示として提示されている。
【実施例
【0195】
実施例1:前臨床的相乗効果:
【0196】
化合物1のアジピン酸塩と抗PD-L1療法とを組み合わせた非臨床データはまた、いずれかの処置単独の使用と比較して、マウスにおいてより大きな腫瘍減少を伴う相乗効果を示した。
【0197】
化合物1のアジピン酸塩と抗PD-L1モノクローナル抗体(mAb)との組み合わせを、CRISPR操作CT26.KRAS12C-クローン#12:B2G9マウス結腸直腸(CRC)同系腫瘍モデルにおいて評価した。
【0198】
試験薬剤化合物1のアジピン酸塩は、0.5%(w/v)メチルセルロース中7.5mg/mLの濃度の溶液中にあった。抗PD-L1 mAb(Mu IgG1抗PD-L1(6E11);以下、抗PD-L1と称する)は、ヒスチジンバッファー#8(20nM酢酸ヒスチジン、240nMスクロース、0.02%Tween 20(商標)、pH5.5)中の溶液中にあった。経口投薬ビヒクル対照は0.5%(w/v)メチルセルロースであった。試験剤は、4℃~7℃の温度範囲を維持するように設定された冷蔵庫に保存した。すべての処置及びビヒクル対照の投薬溶液を3週間にわたって週に1回調製した。
【0199】
平均体重22gの9~10週齢の雌Balb/cマウスをCharles River Laboratory(ホリスター、カリフォルニア州)から得た。健康であるように見え、明らかな異常がない動物のみを研究に使用した。ハツカネズミ結腸癌腫CT26細胞は、American Type Culture Collection(メリーランド州ロックビル)から入手した。CT26.KRAS12C-クローン#12:B2G9は、CT26細胞におけるG12CのCRISPRノックインに由来する。細胞をin vitroで培養し、対数増殖-期に採取し、マトリゲル(BD Biosciences;カリフォルニア州サンノゼ)を1:1の比で含有するハンクス平衡塩類溶液(HBSS)に再懸濁した。次いで、細胞を70匹のBalb/cマウスの右側胸部の皮下に移植した。各マウスに100μLの体積で 0.1 × 10個の細胞を注射した。腫瘍を、平均腫瘍体積159~228mmに達するまで監視した。マウスを腫瘍体積に基づいて6つの群に分配し、1群当たりn=8匹のマウスとした。6つすべての群にわたる平均腫瘍体積は、投薬開始時に198mmであった。
【0200】
マウスに、ビヒクル(100μLの0.5%MC及び100μLの0.5%MCT)、50mg/kgの化合物1のアジピン酸塩(遊離-塩基当量として表される)を与えた。MCビヒクル及び化合物1のアジピン酸塩を、QDで100μLの体積で21日間、強制経口投与により経口的に(PO)投与した。同位体対照mAb及び抗PD-L1 mAbを、初回用量については10mg/kgで静脈内(IV)投与し、その後の用量については5mg/kgで腹腔内(IP)投薬し、週2回(BIW)スケジュールで投与した。
【0201】
腫瘍サイズ及びマウス体重を、研究の経過にわたって週に2回記録した。腫瘍体積が2000mmを超えたとき、又は体重減少がそれらの開始重量の≧20%であった場合、マウスを直ちに安楽死させた。

【0202】
用量の調製、並びに腫瘍及び体重の測定。全ての濃度を、この研究で使用したヌードマウス系統の平均体重25gに基づいて計算した。腫瘍体積を、Ultra Cal-IVノギス(モデル54 - 10 - 111;Fred V.Fowler Co.;マサチューセッツ州ニュートン)を使用して二次元(長さ及び幅)で測定し、Excel、バージョン14.2.5(Microsoft Corporation;ワシントン州レドモンド)を使用して分析した。腫瘍体積を以下の式を用いて計算した:
腫瘍サイズ(mm)=(より長い測定×より短い測定)×0.5
【0203】
抗-腫瘍応答が認められ、部分応答(PR)は初期腫瘍体積からの>50%の減少として定義され、完全応答(CR)は腫瘍体積の100%の減少として定義された。
【0204】
動物の体重を、Adventura Pro AV812スケール(Ohaus Corporation;ニュージャージー州パインブルック)を使用して測定した。重量変化率を、以下の式を使用して計算した。
体重変化(%)=[(現在の体重/初回体重)-1)×100]
【0205】
有効性の推定値は、共通期間にわたる元の(すなわち、変換されていない)スケールに適合する関連群の1日平均ベースライン補正AUC間のパーセント差を計算することによって得た。
【0206】
抗腫瘍効果を、化合物1のアジピン酸塩(30mg/kg、PO、QD)単独での処置後のヒトNCI-H2122 NSCLC異種移植片を有するヌードマウスにおいて、抗PD-L1(10mg/kg、IV、初回用量、次いで5mg/kg、IP、BIW)と比較して評価した。単剤(SA)処置は、腫瘍増殖阻害(TGI)をもたらした。化合物1のアジピン酸塩によるSA処置は、3/8の部分応答(PR)を伴う123%のTGIをもたらした。抗PD-L1によるSA処置は、ビヒクル対照と比較して、1/8のPRを伴う-38%のTGIをもたらした(図1図4を参照)。化合物1のアジピン酸塩と抗PD-L1との組合せにより、2/8のPR及び5/8のCRを伴う147%のTGIが得られた(図1及び図2を参照)。体重の変化率(図4を参照)によって判定したところ、全ての処置は忍容性が高かった。
【0207】
Balb/cマウスにおけるCT26.KRAS12C-クローン#12:B2G9同系結腸直腸(CRC)腫瘍における単独又は抗PD-L1と組み合わせて投薬した化合物1のアジピン酸塩の抗-T腫瘍活性の概要:

CI=信頼区間;CR=完全奏効;PR=部分応答;QD=1日1回;TI=腫瘍発生率。
注:AUCに基づく腫瘍成長阻害の%TGI=パーセント(式についてはデータ分析のセクションを参照)。
【0208】
CT26.KRAS12C-クローン#12:B2G9同系CRC腫瘍モデルにおいて、併用抗腫瘍有効性研究を実施した。CT26腫瘍モデルにおいてチェックポイント阻害剤を用いて生成されたデータ(REF)と一致して、単剤抗PD-L1は腫瘍成長を阻害することができなかった(-38%TGI、1/8 PR)。化合物1のアジピン酸塩による単剤処置は、3/8のPRを伴って腫瘍(123%TGI)を退縮させた。対照的に、化合物1のアジピン酸塩と抗PD-L1との組み合わせは、腫瘍退縮の改善(147%TGI)をもたらし、腫瘍の大部分が2/8のPR及び5/8のCRで応答し、7/8(87.5%)が69日目までの持続的応答を示した。(図1及び図2を参照)。これらのデータは、化合物1のアジピン酸塩を抗PD-L1等のチェックポイント阻害と組み合わせることが、CT26.KRAS12C変異同系腫瘍モデルにおいて抗腫瘍活性の改善をもたらし得ることを実証している。
【0209】
実施例2:
【0210】
進行期又は転移性NSCLCに対する初期全身治療の選択肢(利用可能な標的療法を有する既知の発癌性ドライバなし)には、化学療法を伴う又は伴わないPD-1/PD-L1阻害剤が含まれるGong,et al.J Immunother Cancer 2018;6:8)。その後の治療選択肢には、白金含有化学療法の併用、それに続く疾患制御期間が限られた単剤化学療法が含まれ得る(NCCN Guidelines Version 2.2020(a).Non-Small Cell Lung Cancer)。少数の患者が長期の疾患制御を達成するが、一般に、進行期又は転移性NSCLCは依然として不治の疾患である。最近のデータは、KRAS変異状態が単剤PD-1阻害剤療法に対する応答に関連し得ること、及び化学療法+PD-1阻害剤がKRAS変異状態にかかわらず有効であり得ることを示唆している(Gadgeel S,et al.Annals of Oncology,Volume 30,Issue Supplement_11,December 2019 ESMO Immuno-Oncology Congress 2019.LBA5;Herbst RS,et al.Ann Oncol 30,Issue Supplement_11,December 2019.ESMO Immuno-Oncology Congress 2019.LBA4)。
【0211】
KRASは、がんの最大25%において最も頻繁に変異した癌遺伝子であり、標準治療の選択に対する耐性及び全体的な予後不良に関連している。選択的阻害剤は、RAS/MAPK経路の他のノードを標的とする抗癌療法として開発されているが、KRAS癌タンパク質は、スイッチIIポケットOstrem,et al.Nature 2013;503:548-51)の最近の発見までは薬にならないと考えられていた。この知見により、KRAS、具体的にはKRASG12C変異を標的とする共有結合性小分子阻害剤が初期の臨床開発で評価されている。
【0212】
他のKRASG12C阻害剤。AMG 510(ソトラシブ)は、KRASG12Cを不活性なGDP結合状態でロックすることによってKRASG12Cを不可逆的に阻害する小分子である。AMG-510は現在、進行中の臨床研究で調査されている。これらの研究の患者は、研究に入る前に、中央値3(0から11の範囲)の転移性疾患に対する抗癌療法の先行ラインを受けた。全体として、治療関連有害事象が患者の56.6%で報告され、患者の11.6%が治療-関連のグレード3又は4の事象を経験し、患者の1.6%が治療関連の重篤な有害事象を経験した。複数の患者で発生するグレード3の事象には、ALT増加、下痢、貧血、AST増加及びアルカリホスファターゼ増加が含まれた。1人の患者はグレード4の治療関連ALT増加を経験し、1人の患者はグレード3の治療関連ALT及びAST増加のためにAMG 510を中止した。抗腫瘍活性が報告されているが、AMG-510に関連する有害事象が存在する。患者は、NSCLC患者の32.2%において確認された客観的奏効を有し、奏効期間の中央値は患者において10.9ヶ月(1.1+から13.6の範囲)であった。PFS中央値は、NSCLCを有する患者において6.3ヶ月(範囲、0.0~14.9+)であると報告された(Hong et al.New Eng J Med 2020;383:1207-17)。
【0213】
MRTX849は、KRASG12C変異を有する進行性固形腫瘍を有する患者の臨床研究で評価されている変異選択的小分子KRASG12C阻害剤である。最近、合計17人の患者(NSCLC患者10人及びCRC患者4人を含む)からのデータが報告され、そのうち12人の患者が少なくとも1回の治療中に腫瘍評価を受けた(NSCLC患者6人及びCRC患者4人を含む)。ほとんどの患者は、研究参加前に3回以上の事前の抗癌レジメンを受けていた(17人中12人の患者、71%)。以下の治療関連有害事象が患者の>10%で報告された:下痢、悪心、AST増加、嘔吐、疲労、ALT増加、クレアチニン増加、腹部膨満、腹痛、ALP増加、貧血、食欲不振、脱水、口渇、味覚異常、呼吸困難、QT延長、低マグネシウム血症及び発疹。グレード3の事象には、疲労、食欲不振、及び呼吸困難(それぞれ1名の患者)が含まれた。PRによる抗腫瘍活性が、評価されたすべての用量レベルにわたって、NSCLC患者6名中3名及びCRC患者4名中1名において達成された(Janne et al.AACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics October 2019)。
【0214】
化合物1。KRASG12Cに対する化合物1の特異性は、その作用機序と共にof KRASG12Cの強力かつ不可逆的な阻害をもたらし、治療関連毒性を最小限に抑えながら抗腫瘍活性を最大化する広範な治療指数を可能にすると予想される。KRASG12C-陽性癌を目的とした特異的療法は、KRASG12C を有する進行期癌を有する患者にとってより忍容性が高く効果的な治療選択肢を提供し得る。この実施例において使用されるように、化合物1は、特に明記されていない限り、本明細書に記載されるような化合物1のアジピン酸塩のことを指す。
【0215】
KRASG12C阻害剤の有効性を改善するための1つの戦略は、KRAS阻害がT細胞浸潤を促進し、腫瘍微小環境を調節して癌細胞死滅を促進できるという証拠の増加に焦点を当てている(Canon et al.Nature 2019;575:217-23)。したがって、このアプローチは、抗癌免疫応答を集合的に増強するために、KRASG12C阻害剤を、癌免疫サイクルに沿った重篤な事象を標的とする他の抗癌療法と組み合わせることを目的とする(Chen and Mellman,Immunity 2013;39:1-10)。
【0216】
in vitro及びin vivo薬理学研究は、化合物1がKRASG12Cの非常に強力かつ選択的な共有結合阻害剤であり、KRASG12C-陰性癌細胞株よりもKRASG12C-陽性癌細胞の増殖阻害において20,000-倍を超える選択性を示すことを実証している。化合物1を用いた作用機序研究は、DUSP6及びSPRY4等のKRAS標的遺伝子に加えて、リン酸化(p)ERK及びpS6等の下流MAPK経路成分が阻害され、KRASG12C-陽性癌細胞株においてアポトーシス誘導が観察されることを実証している。さらに、化合物1は強力な単剤活性を有し、KRASG12C-陽性肺腫瘍のいくつかの非臨床異種移植片モデルにおいて腫瘍成長を阻害する。これらのin vitro及びin vivo薬理研究は、局所進行性又は転移性KRASG12C-陽性固形腫瘍を有する患者の治療のための化合物1の使用を支持する。
【0217】
今日までに完了した非臨床毒物学研究の結果は、化合物1の毒性プロファイルの堅固な特徴付けを提供し、がんを有する患者における化合物1の投与を支持する。化合物1の潜在的な単回用量及び反復用量の経口毒性、遺伝毒性、光毒性及び安全性薬理を評価するために、包括的な非臨床毒性研究を完了した。KRASG12C 変異は健康な動物には存在しないため、KRASG12C阻害に薬理学的に関連する非臨床種はない。
【0218】
アテゾリズマブ。アテゾリズマブは、PD-L1を標的とし、PD-L1と、その受容体であるPD-1及びB7-1(CD80としても知られる)との間の相互作用を阻害するヒト化IgG1モノクローナル抗体である(両方ともT細胞上に発現される阻害性受容体として機能する)。アテゾリズマブによるPDL-1結合の治療的遮断は、腫瘍-特異的T-細胞応答の大きさ及び質を増強し、抗-腫瘍活性の改善をもたらすことが示されている(Fehrenbacher et al.2016;Rosenberg et al.2016)。アテゾリズマブは、Fc受容体への結合が最小限であり、したがって、検出可能なFcエフェクター機能及び活性化エフェクターT細胞の関連する抗体-媒介性クリアランスを排除する。
【0219】
アテゾリズマブは、非臨床モデル及び癌患者の両方において抗-腫瘍活性を示し、多種多様な悪性腫瘍における潜在的な治療法として研究されている。アテゾリズマブは、単剤として進行癌において、またアジュバント療法の状況において、並びに化学療法、標的療法及び癌免疫療法と組み合わせて研究されている。
【0220】
アテゾリズマブは、局所進行性又は転移性尿路上皮癌腫、NSCLC、小細胞肺癌腫、トリプルネガティブ乳癌、黒色腫及び肝細胞癌腫の治療のために(単剤として及び/又は他の抗癌療法と組み合わせて)承認されている。
【0221】
アテゾリズマブとの併用療法の理論的根拠。腫瘍免疫療法の分野で出現している臨床データは、がんに対するT細胞応答の増強に焦点を当てた治療法が、NSCLCを含む転移性癌を有する患者において有意な生存利益をもたらし得ることを実証している(Chen and Mellman 2013;Sun et al.2020)。転移性NSCLCでは、単独療法として及び/又は化学療法と組み合わせたPD-L1/PD-1阻害剤は、標準的な化学療法と比較して生存の有意な改善を実証しており、これはNSCLCの治療のためのこれらの薬剤の承認につながり、NSCLCにおいて臨床的利益を達成するためのPD-L1/PD-1経路の阻害を検証する(Borghaei et al.New Eng J Med 2015;373:1627-39;Herbst et al.;Reck et al.N Eng J Med 2016;375:1823-33;Rittmeyer et al.Lancet 2017;389:255-65;Gandhi et al.New Eng J Med 2018;31;378:2078-92;Socinski et al.New Eng J Med 2018;378:2288-301;West et al.Lancet Oncol 2019;20:924-37)。さらに、PD-L1及びPD-1阻害剤の安全性プロファイルは、かなりの毒性に関連し、高齢者及びパフォーマンスステータスの悪い患者による忍容性が低いことが多い多くの化学療法の組み合わせよりも忍容性が高いようである。
【0222】
進行癌に対する効果的な免疫療法に対する1つの潜在的な障害は、腫瘍内の免疫抑制性微小環境であり得る。変異KRAS活性が免疫抑制性微小環境の促進に役割を果たし得(Cullis et al.Cold Spring Harb Perspect Med 2018;8:a031849)、変異KRAS活性の阻害が免疫微小環境の調節に役立ち得るという証拠がある。
【0223】
非臨床モデルからの機構的及び有効性データに基づいて、化合物1は、進行性又は転移性KRASG12C-陽性NSCLC患者においてアテゾリズマブと組み合わせて投与される。化合物1と組み合わせたアテゾリズマブの用量は、21日の各サイクルの1日目に1200mg IVであり、化合物1は、KRASG12Cを選択的に阻害するが、KRAS、KRASの野生型形態、又はRASファミリーの他のメンバーの他の変異は選択的に阻害しない経口共有結合性抗癌治療剤である。非臨床研究は、化合物1によるKRASG12C-陽性癌細胞株又は腫瘍異種移植片モデルの治療が、KRAS経路シグナル伝達の減少、増殖の抑制、及びアポトーシスの誘導をもたらすことを実証している。
【0224】
この研究は、以下のエンドポイントに基づいて、アテゾリズマブと組み合わせた化合物1の活性を評価するものである:客観的奏効率(ORR);奏効期間(DOR);及び無増悪生存期間(PFS)。
【0225】
バイオマーカー。この研究は、単一薬剤としての、又はアテゾリズマブと組み合わせた化合物1に対する応答を予測する(すなわち、予測バイオマーカー)、活性の早期代替物、より重症な疾患状態への進行に関連する(すなわち、予後バイオマーカー)、KRASG12C阻害剤(例えば、化合物1)に対する獲得耐性に関連する、有害事象の発生に対する感受性に関連する、又は有害事象監視若しくは調査の改善をもたらし得る(すなわち、安全性バイオマーカー)、アテゾリズマブと組み合わせた化合物1の活性の証拠を提供し得る(すなわち、薬力学的[PD]バイオマーカー)、又は疾患生物学及び薬物安全性の知識及び理解を高め得るバイオマーカーを同定及び/又は評価する。対応するバイオマーカーエンドポイントには、血液、血漿、及び腫瘍組織における探索的バイオマーカーと、安全性、PK、活性、又は他のバイオマーカーエンドポイントとの間の関係が含まれる。
【0226】
研究パラメータ。この研究への参加基準を満たさない患者(スクリーニング失敗)は、治験責任医師の裁量で最大2回の再スクリーニング機会(参加者あたり合計3回のスクリーニング)の資格を得る場合がある。患者は、事前に同意フォームに署名した後30日以内に再スクリーニングされた場合、同意フォームに再署名する必要はない。再スクリーニングされる患者については、全ての適格基準を再評価しなければならず、本明細書に記載の適格基準を満たすために、必要に応じてスクリーニング評価を繰り返さなければならない。
【0227】
研究は、最大28日間のスクリーニング期間、治療期間、及び患者が研究薬の最終投薬後又は別の抗癌療法を受ける(どちらか先に起こる方)までの治療特異的期間の安全性転帰について追跡される安全性追跡期間からなる。別途の同意を与える患者は、循環腫瘍DNA(ctDNA)の中央検査を通じてKRasG12C変異状態についてスクリーニングされ得る。
【0228】
調査者により測定される、許容されない毒性、及び明確な病気の進行がない場合、患者は、研究終了まで、化合物1による治療を継続する。
【0229】
全ての患者は、研究を通して、及び研究治療の最終投薬後又は別の抗癌療法の開始までの治療特異的期間(どちらが先に起こる方)にわたり、有害事象について綿密に監視される。有害事象はNCI CTCAE v5.0に従って類別される。
【0230】
化合物1の開始用量は、50mg PO QDとなる。単一患者用量漸増コホートを、漸増用量レベルの化合物1で治療することになる。
【0231】
患者には、治験薬又は承認されたPD-L1/PD-1阻害剤単剤、又はそれとの併用療法を含み得る少なくとも1つの事前の全身療法に対する疾患進行又は不耐性を有する局所進行性、再発性又は転移性の不治のKRasG12C陽性NSCLC患者が含まれる。
【0232】
組織及び循環腫瘍DNA評価からのKRasG12C変異状態。NSCLCの約12%、CRCの4%、膵臓癌の2%、及び多くの他の固形腫瘍(それぞれ≦4%の保有率)がKRasG12C変異を保有している。化合物1は、KRasG12Cを標的とする強力かつ高度に選択的な阻害剤であるが、KRAS、KRASの野生型形態、又はRASファミリーの他のメンバーにおける他の変異は標的としない。したがって、KRasG12C変異を有する腫瘍を有する患者のみが、本明細書に記載の併用療法の投与に適格である。KRAS変異の状態は、FoundationOne(登録商標) CDx(F1CDx)アッセイ、米国食品医薬品局(FDA)承認のブロードコンパニオン診断(CDx)アッセイ、FoundationOne(登録商標) Liquid CDx(F1L CDx)アッセイ、並びに他のFDA承認(FDA 2020)又は十分に検証された実験室開発試験を、臨床検査室改善修正法(Clinical Laboratory Improvement Amendments(CLIA))で検証された又は同等に認証された実験室で行って、判定してもよい。以前の研究は、KRasG12C変異の発生が初期事象(Jamal-Hanjani et al.N Engl J Med 2017;376:2109-21)であることを示しており、保管組織の分析は、化合物1治療に対するKRasG12C-陽性腫瘍を有する患者の選択の十分な代替物であることを示唆している。
【0233】
薬力学的経路調節。化合物1は、KRasG12Cのアルキル化によって下流のMAPKシグナル伝達を抑制し、それによって不活性なGDP結合状態にロックするKRasG12C阻害剤である。非臨床モデルでは、化合物1によるKRasG12Cアルキル化のレベル及びMAPK経路抑制の程度は、化合物1に対する応答と相関する。治療前及び治療中の腫瘍組織収集は、MAPK経路抑制及び抗腫瘍活性と化合物1治療との相関の評価を可能にするであろう。MAPK経路抑制の程度は、MAPK標的遺伝子のRNA分析(例えば、DUSP6、SPRY4)又はリン酸化下流マーカーの免疫組織化学(IHC)分析(例えば、pERK、pS 6)を使用して評価することができる。さらに、治療中の腫瘍組織生検は、化合物1によるKRasG12Cアルキル化のレベルの直接評価を可能にし得る。これらのPDバイオマーカーの評価は、将来の用量選択を伝え得る。
【0234】
化合物1に対する耐性に関連する遺伝子のシーケンシング。標的化次世代シークエンシング(NGS)及び全エクソームシークエンシング等のDNAシークエンシング技術は、化合物1に対する応答及び/又は耐性のバイオマーカーを同定する独自の機会を提供し得る。癌関連遺伝子の配列決定は、化合物1に対する新規及び獲得耐性機構の同定をもたらし得る。
【0235】
タンパク質、RNA及びDNA分析。腫瘍細胞におけるシグナル伝達活性(例えば、MAPK、PI3K/AKT)及び腫瘍微小環境における免疫活性(例えば、PD-L1)の評価は、単剤又は併用療法としての化合物1治療に対する感受性又は耐性における貴重な洞察を提供し得る。IHCによって評価されるPD-L1発現は、PD-L1発現に基づくサブグループにおける抗腫瘍活性の分析ために行われ得る。
【0236】
タンパク質の変異活性化に加えて、RNAの発現レベル又はDNAの変化もまた、シグナル伝達経路の活性を調節し得る。腫瘍のRNAプロファイリングは、研究に登録された患者の固有のサブタイピングを可能にする。サブタイプと患者の転帰との間の潜在的な関連性の分析により、化合物1に応答する可能性が最も高い患者の亜集団を同定してもよい。
【0237】
体細胞腫瘍変異分析及び他のバイオマーカーのための血漿試料。がんを有する患者の血液検体から得られた無細胞DNAが、腫瘍内の細胞のDNA及び変異状態を表すctDNAを含むという証拠が増えてきている(Diehl et al.2008;Maheswaran et al.2008)。血漿から癌関連変異(例えば、KRAS)を検出するためのアッセイが検証されている。これらのアッセイの結果は、腫瘍標本の分析から決定された変異状態と相関し得る。治療に対する応答を監視するためのctDNAの使用は、非常に興味深い領域であり、特定の治療の候補を特定し、がんの変異状態を経時的に監視するために臨床現場で使用するための早期の非侵襲的かつ定量可能な方法を可能にし得る(Wan et al.Nat Rev Cancer 2017;17:223-38)。研究治療中及び患者が化合物1で進行した後の様々な時点で収集されたctDNAの分析は、研究治療に対する応答及び獲得耐性の機構を同定するのに役立ち得る。
【0238】
次世代シーケンシングのための血液試料。次世代シーケンシング(NGS)技術は、大量のシーケンシングデータを生成することができる。腫瘍DNAは、腫瘍形成プロセスのために、報告された染色体変化及び報告されていない染色体変化の両方を含み得る。以前に報告されていないゲノム変化における配列決定コールの制御を助けるために、投薬前の血液試料を採取して、変化が体細胞性であるかどうかを決定する。
【0239】
疾患進行時の任意の腫瘍生検試料。KRASG12C阻害剤に対する耐性の機構を理解することは、併用療法の開発にとって重要であり、耐性を予防するための次世代阻害剤を開発する機会を提供し得る。注目すべき例としては、EGFR阻害剤で進行する患者におけるEGFRにおけるT790Mゲートキーパ獲得変異、及びBRAF阻害剤で進行するBRAF変異型メラノーマ癌におけるMAPK経路の再活性化が挙げられる。
【0240】
すべての群において、腫瘍組織は、更なる探索的バイオマーカー分析を行うために疾患進行時に収集され得る。これらの分析には、DNA及びRNA NGS、又は共通の分子的及び生物学的経路に関連する癌関連遺伝子及びバイオマーカーを評価するためのタンパク質ベースの方法が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0241】
選択基準。患者は次の研究登録基準を満たさなければならない:
●インフォームドコンセント書類の署名時の年齢が≧18歳
●RECIST v 1.1による評価可能又は測定可能な疾患;
●0又は1の、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス
●≧12週の平均余命
●以下により定義される、研究治療開始前の、14日以内の、十分な血液学的及び臓器機能:
o絶対好中球数≧1200/μL;
oヘモグロビン≧9g/dL;
o血小板数≧100,000/μL;
o総ビリルビン≦1.5×ULN;
o血清アルブミン≧2.5g/dL;
oAST及び≦2.5×ULN、ただし以下の例外がある:
●実証された肝転移を有する患者は、AST及び/又はALT≦5.0×ULNを有し得る。
oCockcroft-Gault糸球体濾過量推定に基づく血清クレアチニン≦1.5×ULN又はクレアチニンクリアランス≧50mL/分:
(140-年齢)×(kg単位の体重)×(女性の場合は0.85)
72×(mg/dL単位の血清クレアチニン)
●妊娠可能な女性の場合:以下に定義するように、禁欲(異性間の性交を控える)又は避妊を使用することの同意、及び卵の提供を控えることの同意:
●避妊手術を受けていない男性の場合:以下に定義するように、禁欲(異性間の性交を控える)又は避妊を使用することの同意、及び精子の提供を控えることの同意:
●バイオマーカー適格性の確認:KRasG12C変異の存在を実証する血液の中央検査、又は血液若しくは腫瘍組織の各施設の検査のいずれかからの有効な結果(例えば、CLIA又は同等に認定された実験室で行われる検証済みポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベース又はNGSアッセイ)。
【0242】
追加の選択基準。
●FMI NGSアッセイによって、又は、各施設CLIA認定若しくは同等認定の実験室で行われる、治験依頼者が承認した検証済みのPCRベース若しくはNGSアッセイによって決定される、既知の付随する第2の発癌性ドライバ(例えば、感受性EGFR変異、ALK再構成、ROS1再構成、BRAF V600E変異、NTRK融合、RET融合)を伴わない、組織学的に実証された、局所進行性、再発性又は転移性の不治NSCLC
o疾患の進行又は少なくとも1回の事前の全身療法に対する不耐性。これには、治験中又は承認されたPD-L1/PD-1阻害剤の単剤又はそれとの併用療法が含まれ得る。
●リンパ球数≧0.5×109/L(500/μL)
●以下によって定義される、研究治療の開始前14日以内の適切なウイルス血清学:
oスクリーニング時の陰性HIV試験;
oスクリーニング時のB型肝炎表面抗原(HBsAg)陰性;
oスクリーニング時のB型肝炎表面抗体(HBsAb)陽性;
oスクリーニング時のC型肝炎ウイルス(HCV)抗体検査陰性。
【0243】
一般的な除外基準。以下の基準のいずれかを満たす患者は除外される:
●丸剤を嚥下することができない又は嚥下したくない;
●研究及びフォローアップ手順を遵守することができない;
●吸収不良症候群又は経腸吸収を妨げる他の症状;
●症候性、未治療、又は活発に進行する中枢神経系(CNS)転移;
●治療されたCNS転移の病歴を有する患者は、以下の基準の全てを満たすことを条件とする:
oCNS外の測定可能又は評価可能な疾患;
o頭蓋内出血又は脊髄出血の病歴なし;
oCNS転移の治療としてのコルチコステロイドに対する継続的な必要性はなく、コルチコステロイドは本明細書に記載の薬剤の投与前に≧2週間中止され、CNS転移に起因する進行中の症候はない;
oサイクル1の1日目の前の7日間以内に定位放射線照射なし、又は14日間以内に全脳放射線照射なし;
oCNSに向けられた治療の完了とスクリーニング放射線学的検査との間の暫定的な進行の証拠はない;
●髄膜疾患又は癌性髄膜炎;
●隔週又はより頻繁に再発性ドレナージ操作を必要とする、制御されない胸水、心膜滲出液、又は腹水;
o患者が操作から十分に回復しており、血流力学的に安定して症候的に改善している場合、留置型の胸腔又は腹部カテーテルが可能となる;
●患者の安全性に影響を及ぼし得る任意の活動性感染症、又はサイクル1の1日目の前7日以内に抗生物質の静脈内投与を必要とする重篤な感染症;
●ウイルス性若しくはその他の肝炎、現在のアルコール乱用、又は硬変を含む、臨床的に顕著な肝疾患の病歴;
●既知のHIV感染症;
●制御されない高カルシウム血症(>1.5mmol/Lのイオン化カルシウム若しくはカルシウム>12mg/dL、又は補正血清カルシウム≧ULN)、又はビスホスホネート療法若しくはデノスマブの継続的な使用を必要とする症候性高カルシウム血症;
●サイクル1の1日目の前の4週間以内の顕著な外傷性傷害又は大きな外科的治療;
●慢性下痢、短腸症候群又は胃切除術を含む有意な上部胃腸手術、炎症性腸疾患(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎)の病歴又は何らかの活動性腸炎症(憩室炎を含む)を有する患者;
●任意のKRASG12C阻害剤による事前治療
●以下を除く、本明細書に記載の薬剤の投与前3週間以内の抗癌療法としての化学療法、免疫療法若しくは生物学的療法、又は本明細書に記載の薬剤の投与前2週間以内の内分泌療法による治療:
o内分泌感受性癌(例えば、前立腺癌、子宮内膜癌、ホルモン受容体陽性乳癌)に対するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト又はアンタゴニストを用いたホルモン療法;
o規制当局によって承認されたキナーゼ阻害剤は、研究治療の開始の2週間前まで使用してもよい;
●本明細書に記載の薬剤の投与前の3週間又は5半減期(どちらか短い方)以内の治験薬による治療。
●本明細書に記載の薬剤の投与前4週間以内の癌療法としての放射線療法(骨転移に対する緩和放射線照射及びCNS転移に対する放射線照射以外);
●化合物1の投与前2週間以内の骨転移に対する緩和的放射線照射;
●消散していない以前の抗癌療法からの有害事象;
●スクリーニング前5年以内の他の悪性腫瘍の病歴;
●以下を含む、臨床的に有意な心血管機能不全の既往歴又は活動性の臨床的に有意な心血管機能不全:
o本明細書に記載の薬剤の投与前6ヶ月以内の脳卒中又は一過性虚血発作の病歴;
o本明細書に記載の薬剤の投与前6ヶ月以内の心筋梗塞の病歴;
oニューヨーク心臓病学会クラスIII又はIVの心疾患又は薬物療法を必要とする鬱血性心不全
o制御されない不整脈、薬物療法を必要とする又は活動性の心室性不整脈の病歴;
o症候性又は不安定狭心症である冠動脈心疾患;
oフリデリシア式(QTcF)を用いて補正した先天性QT延長症候群又はQT間隔>470ms;
oQT間隔を延長させることが知られている薬物療法による現在の治療;
●妊娠中若しくは授乳中、又は研究中若しくは化合物1の最終投与後6ヶ月以内に妊娠することを意図している;
●重症筋無力症、筋炎、自己免疫性肝炎、心筋炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、炎症性腸疾患、抗リン脂質抗体症候群、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、ギラン・バレー症候群、又は多発性硬化症を含むがこれらに限定されない自己免疫疾患又は免疫不全の活動が活動性であるもの、又はその病歴、ただし、以下を除く:
o甲状腺補充ホルモンを服用している自己免疫関連甲状腺機能低下症の病歴を有する患者;
oインスリンレジメンを受けている制御された1型糖尿病患者;
o以下の条件の全てを満たすことのみを条件とする、皮膚症状を伴う、湿疹、乾癬、慢性単純性苔癬又は白斑を有する患者:
●発疹が覆っている体表面積は<10%でなければならない;
●疾患は1日目に十分に制御されており、低効力の局所コルチコステロイドのみを必要とする;
●過去12ヶ月以内にソラレン+紫外線A照射、メトトレキサート、レチノイド、生物学的薬剤、経口カルシニューリン阻害剤、又は高効力若しくは経口コルチコステロイドを必要とする基礎症状の急性増悪の発生がない;
●特発性肺線維症、器質化肺炎(例えば、閉塞性細気管支炎)、薬剤性間質性肺炎、若しくは特発性間質性肺炎の病歴、又活動性間質性肺炎の証拠。
●初回投与前及びアテゾリズマブによる治療中の4週間以内又は5薬物排出半減期(いずれか長い方)以内の全身免疫抑制薬(限定されないが、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、サリドマイド及び抗TNF-α剤を含む)による治療、ただし、以下を除く:
o急性低用量全身免疫抑制薬又は1回パルス用量の全身免疫抑制薬(例えば、造影剤アレルギーのための48時間のコルチコステロイド)を受けた患者;
oミネラルコルチコイド(例えば、フルドロコルチゾン)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)若しくは喘息のためのコルチコステロイド、又は起立性低血圧若しくは副腎機能不全のための低用量コルチコステロイドを受けた患者。
【0244】
以下の表に列挙される免疫不全又は自己免疫疾患の病歴を有する患者は、研究への参加から除外される。この除外に対する可能な例外は、自己免疫疾患の臨床的疑いが低い、アトピー性疾患又は小児関節痛等の実体の病歴を有する患者であり得る。安定した用量の甲状腺補充ホルモンを受ける自己免関連甲状腺機能低下症の病歴を有する患者は、この研究に適格であり得る。さらに、感染因子の治療時に消散した急性感染性疾患の一過性の自己免疫症状は排除されない(例えば、急性ライム関節炎)。


【0245】
研究治療製剤、包装及び取扱い。
【0246】
化合物1。化合物1は、以下の3つの強度の活性医薬成分(API)粉末カプセル(PIC)製剤として供給される:5mg、25mg及び100mg(遊離塩基当量)。さらに、100mg(遊離塩基当量)の用量強度のフィルムコーティング錠製剤も臨床使用のために供給される。化合物1の製剤は、86°F(30℃)以下で保存し、水分から保護すべきである。
【0247】
化合物1の用量を家庭で投与するためには、次の来院まで、又は1サイクルにわたって持続するのに十分な数のカプセル又は錠剤を患者に分配すべきである。患者は、患者がクリニックを訪問するときを除いて、本明細書で提供されるような化合物1を自己投与するであろう。患者は、別段の指示がない限り、化合物1を毎日ほぼ同時に服用すべきである。患者は、割り当てられた用量濃度及びスケジュールに従い、服用するカプセル又は錠剤の数及び強度に関して指示を受ける。
【0248】
別段の指示がない限り、化合物1は空の胃に摂取されるべきであり、すなわち、投与の少なくとも2時間前及び1時間後に食物を避けるべきである。水分摂取に制限はない。重要なことに、化合物1のカプセル又は錠剤は、最低240mL(8液量オンス)の水で完全に(噛まずに)嚥下される。患者が化合物1の任意の用量を逃すか、又はカプセル若しくは錠剤を吐き出す場合、その用量をスキップし、次の予定された用量での投薬を再開するように患者に指示すべきである。服用し忘れた用量は補充しない。
【0249】
アテゾリズマブ。アテゾリズマブは、1200mg/20mLバイアル内のIV製剤として供給される。アテゾリズマブは、化合物1の投与後、各21日サイクルの1日目に1200mgの固定用量でIV注入によって投与される。アテゾリズマブ投与の開始は、化合物1の経口投与後約30分であるべきである。アテゾリズマブの投与は、訓練された人員並びに潜在的に重篤な反応を管理するための適切な機器及び薬剤に直ちにアクセスできる監視された設定で行われる。アテゾリズマブ注入は、本明細書の表1に概説される説明書に従って投与される。アテゾリズマブの用量変更は許可されない。
【0250】
所与のサイクルでの有害事象により、アテゾリズマブ投与が一時停止される場合、次回の投薬サイクルは、アテゾリズマブ投与が再開可能になるまで開始してはならない。そのため、現在のサイクルを過ぎた21日間延ばすことができ、患者は化合物1受け続けてもよい。次回サイクルの1日目は、アテゾリズマブの投与が再開される時点に対応しなければならない。
【0251】
付随療法。付随療法は、本明細書に記載の少なくとも1つの薬剤の最初の投与の7日前から本明細書に記載の少なくとも1つの薬剤の最後の投与までに、本明細書に記載の薬剤に加えて患者によって使用される任意の薬物療法(例えば、処方薬、市販薬、ワクチン、ハーブ療法又はホメオパシー療法、栄養補助食品)からなる。
【0252】
許可された治療。患者は、(a)抗痙攣薬又はワルファリン;(b)適格基準で指定されている経口避妊薬又は他の可能な維持療法を服用してもよく、(c)制吐薬及び下痢止め薬は、研究薬による初期治療の前に予防的に投与すべきではなく、(d)鎮痛薬;(e)骨転移若しくは骨減少症若しくは骨粗鬆症のためのビスホスホネート及びデノスマブ療法;又はマルチビタミン、カルシウム及びビタミンC、D及びEサプリメントが許容され得る。
【0253】
注意を要する治療。CYP酵素及び化合物1に関連する効果のために注意を払って与えられる薬物療法としては、例えば、(1)強力/中程度のCYP3A4阻害剤(限定されないが、アタザナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、サキナビル、クラリスロマイシン、テリスロマイシン、エリスロマイシン、トロレアンドマイシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、アプレピタント、コニバプタン、フルボキサミン、ジルチアゼム、ネファゾドン、ミベフラジル、ベラパミル、及びグレープフルーツジュース又はグレープフルーツサプリメントを含む);(2)強力/中程度のCYP3A4誘導剤(限定されないが、リファンピン、カルバマゼピン、フェニトイン、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、エファビレンツ、ネビラピン、エトラビリン、モダフィニル、ハイパーフォリン(セントジョーンズワート)及びシプロテロンを含む)が挙げられる。INR及び/又はaPTTが、本明細書に記載の任意の薬剤の投与前の14日以内に(施設の基準に従って)治療限界内にあり、かつ、患者が、研究治療の開始前の≧1週間、安定した用量の抗凝固剤を服用している限り、治療目的のための全用量経口抗凝固剤又は非経口抗凝固剤の使用。薬物療法のリストは包括的であることを意図していない。
【0254】
注意を払って与えられるその他の薬物療法。全身性コルチコステロイド、免疫抑制薬、及びTNF-α阻害剤。
【0255】
禁止される治療。以下の付随療法の使用は、本明細書に記載の薬剤の最初の投与中及び投与前の少なくとも7日間は禁止される:
●本明細書に記載の薬剤の最初の投与前の3週間又は5半減期(どちらか短い方)以内の治験療法;
●以下を除く、化学療法、放射線療法、免疫療法、生物学的療法、薬草療法、又はホルモン療法を含む、FDAによって承認されているか実験的であるかにかかわらずがんの治療を意図した付随療法:
o内分泌感受性癌(例えば、前立腺癌、子宮内膜癌、ホルモン受容体陽性乳癌)に対するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト又はアンタゴニストを用いたホルモン療法;
oホルモン補充療法又は経口避妊
●全身応答の状況における新たな脳転移を除いて、明確な進行性疾患に対する放射線療法:全身性疾患の制御を示した患者(臨床的利益[すなわち、≧3ヶ月間にわたるPR、CR又はSD]を受けたと定義される)であるが、放射線照射で治療可能な脳転移を発症した患者は、(治験責任医師の評価に基づく)疾患の全身性進行及び/又は脳における更なる進行のいずれかを経験するまで、研究中に化合物1による治療を継続することが可能になる;
●キニジン又は他の抗不整脈薬;
●第1のサイクルの1日目の7日前からの造血コロニー刺激因子(CSF;例えば、顆粒球CSF;フィルグラスチム、顆粒球/マクロファージCSF;サルグラモスチム、ペグフィルグラスチム、エリスロポエチン、ダルベポエチン及びトロンボポエチン)の開始又は用量の増加
●本明細書に記載の薬剤の初回投与前4週間以内、アテゾリズマブ治療中、及びアテゾリズマブの最終投与後5ヶ月間の生弱毒化ワクチン(例えば、FluMist(登録商標));
●本明細書に記載の薬剤の初回投与前及び研究治療中の4週間以内、又は5薬物排出半減期(いずれか長い方)の全身性免疫刺激剤(インターフェロン及びIL2を含むが、これらに限定されない)。
【0256】
化合物1に関連するリスク。化合物1の投与は、下痢、悪心、嘔吐、口腔粘膜刺激、最小から軽度のトランスアミナーゼ上昇、及び光毒性に関連している。
【0257】
アテゾリズマブに関連するリスク。アテゾリズマブは、以下のようなリスクと関連している:注入関連反応(IRR)及び免疫介在性肝炎、肺臓炎、大腸炎、膵炎、真性糖尿病、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、副腎機能不全、下垂体炎、ギラン・バレー症候群、筋無力症症候群又は重症筋無力症、髄膜脳炎、心筋炎、腎炎及び筋炎。免疫介在性反応は、任意の器官系を伴い得、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)及びマクロファージ活性化症候群(MAS)をもたらし得る。
【0258】
免疫調節剤で観察されたほとんどの免疫媒介有害事象は軽度で自己限定的であったが、そのような事象は早期に認識され、潜在的な主要合併症を回避するために迅速に治療されるべきである(Di Giacomo et al.2010)。アテゾリズマブと化合物1との併用に関連する潜在的な重複毒性は、胃腸毒性及び肝臓トランスアミナーゼの上昇である。
【0259】
治療の中断。化合物1が毒性のために以前の研究治療から>21日間保持される場合、研究治療を再開すべきではない。化合物1は、研究治療の毒性又は疾患進行に関連しない予期しない併発する医療事象のために最大21日間停止され得る。
【0260】
有害事象。本明細書で定義される有害事象は、原因の帰属にかかわらず、本明細書に記載の併用療法において本明細書に記載の薬剤を投与された臨床試験対象における任意の不都合な医学的発生を指す。「重症」及び「重篤」という用語は、同義語ではない。重症度は、有害事象の強度(例えば、軽度、中等度、若しくは重度と評価されるか、又はNCI CTCAEに従って)を指し、事象自体は、比較的医学的に重要でない可能性がある(更なる所見のない重度の頭痛等)。
【0261】
監視されるべき有害事象には、悪心、嘔吐、下痢、口内炎、粘膜炎、肝炎又はALT若しくはASTの上昇、ビリルビン上昇又は臨床的黄疸、全身性エリテマトーデス、腎炎、過敏症を示唆する事象、注入媒介反応、サイトカイン放出症候群(CRS)、インフルエンザ様疾患、及び血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、心房細動、心筋炎、心膜炎、血管炎、筋炎、ブドウ膜炎、網膜炎、視神経炎、自己免疫性溶血性貧血、スティーブンス・ジョンソン症候群、水疱性皮膚炎、及び中毒性表皮壊死症が含まれる。
【0262】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、「含む(comprise、comprises、及びcomprising)」という語句は、文脈上別段の必要がある場合を除き、非排他的な意味で用いられる。本明細書に記載の実施形態は、「からなる」及び/又は「から本質的になる」実施形態を含むことが理解される。
【0263】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別のことを指示しない限り、範囲の上限及び下限と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在する値との間の、下限の単位の10分の1までの各介在値が、本明細書に包含されるものと理解されたい。より小さい範囲(rangers)に独立して含めることができるこれらの小さい範囲の上限及び下限もまた、記載された範囲における具体的に除かれる限界値を条件として、本明細書に包含される。記載された範囲に限界値の一方又は両方が含まれる場合、それらの含まれる限界値のいずれか又は両方を除く範囲もまた、本明細書に含まれる。
【0264】
本明細書に記載された発明の多くの修正及び他の実施形態は、これらの発明が、前述の説明及び関連する図面に提示された教示の恩恵を受けて関連する当業者には思い浮かぶであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、変更及び他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。本明細書では特定の用語が使用されているが、これらは、一般的で説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
【配列表】
2023549486000001.app
【国際調査報告】